(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241025BHJP
E04H 9/02 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522619
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2022013948
(87)【国際公開番号】W WO2023075148
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0144652
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524141441
【氏名又は名称】キム フンヨル
(71)【出願人】
【識別番号】524141452
【氏名又は名称】キム ヒョンジュ
(71)【出願人】
【識別番号】519239137
【氏名又は名称】キム、ニコル ユンジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム フンヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ニコル ユンジョン
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA13
2E139CA18
2E139CB04
2E139CB13
2E139CC02
3J048AA07
3J048AD11
3J048BG02
3J048BG07
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
本発明は、免震装置に関し、滑走台(100)と、該滑走台(100)の上面に載置される滑走体(200)とを含み、前記滑走台(100)の上面には、中心部から周縁方向に所定の長さ分だけ凹溝が設けられてなる少なくとも4つの滑走線溝(122)が等間隔で放射状に配置され、かつ、前記滑走体(200)の底面には、所定の直径を有する環状の溝が設けられてなる滑走サークル(222)が形成され、前記滑走線溝(122)および前記滑走サークル(222)に同時に収容されるとともに、前記滑走台(100)の上面と前記滑走体(200)の底面とが所定の間隔だけ離間した状態を保たせる滑走ボール(230)が設置されることにより、前記滑走台(100)及び前記滑走体(200)が前記滑走ボール(230)によって水平方向に互いに相対的に動けるようになり、地震による震動を吸収する免震装置に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑走台(100)と、該滑走台(100)の上面に載置される滑走体(200)とを含み、
前記滑走台(100)の上面には、中心部から周縁方向に所定の長さ分だけ凹溝が設けられてなる少なくとも4つの滑走線溝(122)が等間隔で放射状に配置され、かつ、
前記滑走体(200)の底面には、所定の直径を有する環状の溝が設けられてなる滑走サークル(222)が形成され、
前記滑走台(100)と前記滑走体(200)との間で、前記滑走線溝(122)および前記滑走サークル(222)に同時に収容されるとともに、前記滑走台(100)の上面と前記滑走体(200)の底面とが所定の間隔だけ離間した状態を保たせる滑走ボール(230)が備えられることにより、
前記滑走台(100)及び前記滑走体(200)が前記滑走ボール(230)によって水平方向に互いに相対的に動けるようになり、地震による震動を吸収する免震装置。
【請求項2】
前記滑走台(100)の上面は、下向きに凹んだ球面状をなし、前記滑走体(200)の底面は、前記滑走台(100)の上面に対応するように下向きに凸な球面状をなす、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記滑走サークル(222)は、直径の異なるものが同心円をなして複数個が形成される、請求項1に記載の免震装置。
【請求項4】
前記滑走台(100)の上面中央には、移動規制孔(140)が形成され、前記滑走体(200)の底面には、前記移動規制孔(140)に対応する移動規制突起(260)が形成され、
前記移動規制孔(140)には、入口が狭く形成される倒壊防止板室(142)が形成され、
前記移動規制突起(260)の下端には、倒壊防止板(142)が形成され、前記移動規制突起(260)が前記倒壊防止板室(142)に収容されることにより、
前記移動規制突起(260)が移動規制孔(140)から外れなくなり、滑走体(200)が滑走台(100)から離脱しなくなる、請求項1に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を吸収し、構造物を地震から保護することができるようにする免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震が発生すると、建物などの構造物に垂直方向または水平方向に振動が伝えられるが、水平方向への振動は、構造物を激しく揺らす。振動の度合いが酷い場合、構造物を部分的に損傷させて安定性を低下させ、構造物を崩壊させるという最悪の状況が発生することもある。これにより、地震による被害を防ぐために免震装置が設置される。このような免震装置は、平常時は構造物を支承している状態を維持し、地震が発生すると、地震による振動を吸収して構造物を地震から保護する作用をする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、地震が発生した状況下で構造体に加わる振動を効果的に吸収して構造物を安全に保護可能にする免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、滑走台と、該滑走台の上面に載置される滑走体とを含み、前記滑走台の上面には、中心部から周縁方向に所定の長さ分だけ凹溝が設けられてなる少なくとも4つの滑走線溝が等間隔で放射状に配置され、かつ、前記滑走体の底面には、所定の直径を有する環状の溝が設けられてなる滑走サークルが形成され、前記滑走台と前記滑走体との間で、前記滑走線溝および前記滑走サークルに同時に収容されるとともに、前記滑走台の上面と前記滑走体の底面とが所定の間隔だけ離間した状態を保たせる滑走ボールが備えられることにより、前記滑走台及び前記滑走体が前記滑走ボールによって水平方向に互いに相対的に動けるようになり、地震による震動を吸収する免震装置を提案する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、地震が発生した状況下で構造物に加えられる振動を効果的に吸収することができるので、地震発生時に構造物を安全に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】構造物に免震装置が設置された状態を示す図である。
【
図2】本発明による免震装置の主要構成を示す概略例示図である。
【
図3】本発明による免震装置の主要構成を示す概略分解図である。
【
図4】本発明による滑走台及び滑走体の相対的な動きを示す例示図である。
【
図5】本発明による滑走台及び滑走体の相対的な動きを示す例示図である。
【
図6】本発明による免震装置において、滑走サークルが複数個形成されている状態を示す例示図である。
【
図7】本発明による免震装置において、補助滑走体が形成された状態を示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を添付の
図1~
図7を参照して詳細に説明する。
【0008】
図1は、構造物に免震装置が設置された状態を示す図である。
【0009】
同図に示すように、本発明による免震装置10は、構造物と地盤との水平方向のアイソレーションのために設置されるものであって、構造物における、垂直方向の荷重に耐える箇所に設置される。構造物の柱の下端部分に設置されてもよい。
【0010】
図2は、本発明による免震装置の主要構成を示す概略例示図であり、
図3は、本発明による免震装置の主要構成を示す概略分解図である。
【0011】
本発明による免震装置10は、主な構成として、滑走台100と、滑走体200と、滑走ボール230とを含む。
【0012】
滑走台100は、所定の厚さを有し、上面は下向きに凹んだ球面状に形成されることができる。滑走台100は、所定の厚さを有する円板状であってもよいが、それに限定されず、多角形の板状であってもよい。
【0013】
滑走台100の上面には、中心部から周縁方向に凹溝が設けられて滑走線溝122が形成される。滑走線溝122は、一定の長さに形成され、前記溝の形状は、断面が円弧状、台形状をなすように形成されることができ、滑走台100の上面の縁に近い箇所まで形成されることができる。このような滑走線溝122は、複数個が放射状に配設される。複数個の滑走線溝122は、互いに等間隔で形成され、好ましくは、3つ以上形成されることにより、力のバランスを確保可能にする。
【0014】
滑走体200は、一定の厚さと面積を有するものであって、滑走台100の上面に載置される。滑走体200の底面は、滑走台100の上面と対応する形状であるが、滑走台100の上面が下向きに凹んだ球面状に形成される場合は、それに合わせて凸な球面をなすように形成される。
【0015】
滑走体200の底面には、所定の直径を有する滑走サークル222が形成される。滑走サークル222は、滑走体200の底面の中央を中心とする円環からなるものであって、滑走体200の底面に溝が凹設されてなる。
【0016】
滑走サークル222は、直径の異なる同心円をなしながら複数個が形成されてもよい。また、滑走サークル222を形成する前記溝の形状は、断面が円弧状、台形状等であってもよい。
【0017】
前述したように、滑走台100の上面に形成された滑走線溝122と、滑走体200の底面に形成された滑走サークル222とは、滑走体200が滑走台100の上面に載置されると、互いに交差する。
【0018】
滑走ボール230は、金属等の引張強度および降伏強度が高い材質からなり、滑走線溝122と滑走サークル222とが互いに交差する箇所に設置される。これにより、滑走ボール230が滑走線溝122及び滑走サークル222に同時に収容および設置され、その結果、滑走線溝122に設置された滑走ボール230が滑走体200を支承する。
【0019】
滑走ボール230が設置されると、滑走台100の上面と滑走体200の底面とは、所定の間隔だけ離れた状態を保つ。これは、滑走ボール230の寸法、すなわち、滑走ボール230の直径として、滑走台100の上面と滑走体200の底面との間が所定の間隔だけ離れた状態を保つようにするものを選択することにより達成する。
【0020】
ここで、滑走線溝122と滑走サークル222の個数に応じて、滑走線溝122と滑走サークル222とが交差する箇所の数も変わる。例えば、滑走線溝122または滑走サークル222の個数が増えると、互いに交差する箇所が増え、当たり前に、滑走ボール230の設置個数も増加する。このように、滑走ボール230の設置個数が増える場合、荷重を分散させることができるので荷重を支承する能力が向上する。従って、この点に鑑み、滑走線溝122または滑走サークル222の数及び滑走ボール230の設置個数を決定する。
【0021】
一方、本発明において、滑走体200が滑走台100の上面から離脱しないようにする構成を採用してもよい。これは、滑走台100の上面中央に設けられた移動規制孔140および滑走体200の底面に形成された移動規制突起260によって達成できる。
【0022】
移動規制孔140は、所定の深さ及び直径を有するように形成される溝であり、移動規制突起260は、移動規制孔140の直径よりも薄い厚さを有するように形成される。したがって、移動規制孔140内で移動規制突起260が所定分だけ動くことができながらも、水平方向への振動が発生しても前記移動規制突起260が移動規制孔140から外れなくなることにより、滑走体200が滑走台100の上面から離脱しなくなる。
【0023】
上述したような構成において、滑走台100に載置された滑走体200が倒れないようにする倒壊防止手段が備えられることができる。
【0024】
倒壊防止手段は、移動規制突起260の下端に形成される板状の倒壊防止板262と、移動規制孔140の下方に形成される倒壊防止板室142とを含んで構成できる。倒壊防止板室142は、倒壊防止板262が動けるように余裕空間を有しかつ入口が狭く形成される。従って、倒壊防止板262が倒壊防止板室142内で動くことができながらも、離脱しなくなることにより、滑走体200の倒れを防ぐ。この構成において、倒壊防止板室142は、滑走台100に形成されるものであるから、滑走台100が倒壊防止板室142を基準に高さ方向に半分に分けられて組み立てられることにより、倒壊防止板室142に倒壊防止板262を収容可能である。例えば、滑走台100の底面が着脱自在に構成される係合板180で形成されることにより、係合板180が倒壊防止板室142の底を形成する構造が採用され得る。この構成において、倒壊防止板262は、係合板180を滑走台100から取り外した状態で滑走台100の下方から倒壊防止板室142に進入させた後、移動規制突起260に係合させる。
【0025】
上述した基本的な構成に加えて、本発明による免震装置10は、前述した滑走台100と滑走体200とを主な構成とし、弾性クッション400、受け台500、構造物支承台700、保護膜800のうちの一部又は全部をさらに備えてなることができる。
【0026】
弾性クッション400は、滑走台100の下方に設置され、滑走台100を弾性的に支承する。弾性クッション400は、弾性を有する材質、例えばゴムやポリウレタンで形成されることができ、一定の面積と厚さを有するように形成されて弾性的に垂直方向の振動を吸収する。
【0027】
受け台500は、板状をなして上面に弾性クッション400が安着されることにより弾性クッション400を支える。受け台500の上面には、弾性クッション400が安着される鍋が形成されることにより、弾性クッション400が滑らないように動きを規制することができる。上述した鍋は、滑走台100の底面にも同様に形成されて弾性クッション400を上下に把持可能にする。
【0028】
ここで、受け台500は、弾性クッション400を介在して滑走台100とボルト600で結合される。ボルト600は、複数個が同心円上で一定の間隔を置いて配置され、滑走台100と弾性クッション400とを結合する。この時、ボルト600は、上下動可能な状態で締結されるとともに、ばねが嵌められて弾性クッション400の収縮及び膨張に応じて滑走台100が上下動することができるように形成される。
【0029】
構造物支承台700は、滑走体200の上面に連結されるように形成されるもので、構造物を支承する。構造物支承台700には、一定の厚さを有しかつ板状をなして上面に構造物が載置可能に構成されており、軸球742が下端に形成された軸棒740が下方へ突出し、軸棒740が滑走体200に形成される軸穴242で回動可能に結合される。これにより、構造物支承台700は滑走体200で回動可能に載置される。
【0030】
保護膜800は、伸縮可能に形成される膜であって、一部が蛇腹状を成して延伸可能にする構成が採用できる。保護膜800は、滑走台100および滑走体200を内部に収容して保護し、振動が発生するとき、保護膜800が自然に伸縮されながら、本発明による免震装置が振動を吸収することを妨げなくなる。
【0031】
保護膜800は、弾性クッション400と、受け台500と、構造物支承台700とを備える場合、下端は、受け台500や滑走台100に固定され、上端は、構造物支承台700に固定されることにより、これらの構成の全部又は一部を収容して保護する。保護すべき対象はゴミ、異物、熱、火炎、水分等であるので、様々な外来汚染物質からこれらの構成を保護することにより、本発明による免震装置がどの環境下でもその機能をまともに果たすようにするとともに、使用寿命を極大化させる。
【0032】
図4及び
図5は、本発明による滑走台と滑走体の相対的な動きを示す例示図である。
【0033】
上述したような構成により、滑走体200が前記滑走台100の上面に載置されれば、滑走体200と滑走台100とは、相対的な水平方向への動きが自由になる。滑走ボール230a、230b、230c、230dに乗って互いに相対的に動けるようになることによる。
【0034】
図4に示すように、滑走台100を同図における右側に押す力が加わる場合、滑走体200が構造物に固定されている状態なので、滑走体200はほとんど動かず滑走台100が右に移動する。このとき、滑走台100の進行方向と一直線上に形成された滑走線溝122に収容された滑走ボール230a、230bは、元の位置で転がりながら滑走台100が右側に移動可能にし、力の進行方向と交差する滑走線溝122に収容された滑走ボール230c、230dは、当該滑走線溝122及び滑走サークル222に沿って滑走台100の中心側へ移動する。
【0035】
図5に示すように、滑走線溝122とは異なる方向である滑走台100を斜めに押す力が加わる場合、滑走体200が構造物に固定されている状態なので、滑走体は動かず滑走台100が右側に斜めに移動する。このとき、滑走ボール230は、滑走線溝122及び滑走サークル222に沿って動きながら滑走台100が斜めに移動することができるようにする。
【0036】
上述した構成によって、滑走体200が、構造物を支承している状態で、地震による振動が発生して滑走台100に水平方向や歪み方向など、何れの方向に力が加えられても、滑走台100の動きが滑走体200に伝えられることを減少させることができる。その結果、地震による振動が、滑走体200の支承している構造物に伝えられる程度を低減させることができる。
【0037】
図6は、本発明による免震装置において、滑走サークルが複数個形成された状態を示す例示図である。
【0038】
前述の本発明による免震装置において、滑走台100に形成される滑走線溝122と、滑走体200に形成される滑走サークル222とを複数個備えてもよいことを説明したところ、
図6では2つの滑走サークル222が形成された構造が示されている。この場合、それぞれの滑走線溝122ごとに2つの滑走ボール230が収容される。
【0039】
一方、
図6には、滑走サークル222を形成する溝の断面が円弧状に形成されたことが示されている。
【0040】
図7は、本発明による免震装置において、補助滑走体が形成された状態を示す例示図である。
【0041】
本発明による免震装置は、滑走台100と滑走体200との間に、補助滑走体300が形成されることができる。
【0042】
補助滑走体300は、一定の厚さを有するものであって、円板状または多角形の板状の構造をなすもので、上面の構造は、滑走台100の上面、すなわち滑走台100の上面の構成と同様である。そして、底面の構造は、滑走体200の底面の構造と同様に形成される。従って、滑走台100と滑走体200との間において、滑走台100上で滑走ボール230により支承され載置されることになり、補助滑走体300上には、滑走ボール230により支承される滑走体200が載置される。これにより、補助滑走体300および滑走体200が多段構造をなす免震装置が形成される。
【0043】
前記構成において、滑走台100及び滑走体200に設けられる移動規制孔140、移動規制突起260、倒壊防止板262と同様な構成が、補助滑走体300にも形成されてもよいが、その機能は同一である。
【符号の説明】
【0044】
10 免震装置
100 滑走台
122 滑走線溝
140 移動規制孔
142 倒壊防止板室
180 係合板
200 滑走体
222 滑走サークル
230 滑走ボール
242 軸穴
260 移動規制突起
262 倒壊防止板
300 補助滑走体
400 弾性クッション
500 受け台
600 ボルト
700 構造物支承台
740 軸棒
742 軸球
800 保護膜
【国際調査報告】