(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含む組換え/融合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241025BHJP
C12N 9/48 20060101ALI20241025BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20241025BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241025BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20241025BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241025BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241025BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241025BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20241025BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N9/48
C07K16/10
C12N15/62 Z
C12N15/57
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/48
A61P31/14
A61K39/395 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525746
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 SG2022050775
(87)【国際公開番号】W WO2023075697
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10202112143T
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チェン-イ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チア イン
(72)【発明者】
【氏名】ミンハット、ラビアトゥル アダウィヤ ビンテ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ベイ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】デファルコ、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、チン-ウェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DC09
4C084NA14
4C084ZB331
4C085AA33
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2に対する結合親和性の改善された、アミノ酸位置T27、F28、K31、H34、Y41、及びQ42に1つ以上のアミノ酸置換を含む組み換え変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に関する。また、T27Y/K31 H/H34A、T27YZ K31 H/H34V、及びT27Y/K31 Y/H34Vを含むコンビナトリアル変異体ACE2、並びにコロナウイルス感染を治療及び予防するための該変異体ACE2の使用にも関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質又はその断片と免疫グロブリン断片とを含む組換え/融合ポリペプチド。
【請求項2】
免疫グロブリンFc断片(領域/ドメイン)、前記組換え/融合ポリペプチドの半減期を延長することができるタンパク質(例えば、アルブミン、ヒトアルブミン等)、結合価を高めることができるリンカー(例えば、剛性リンカー又はGGGGSリピート等の可動性リンカー)、又はそれらの組み合わせを含み、例えば、前記免疫グロブリンFc断片が、ヒトIgG Fc断片等のIgG Fc断片である、請求項1に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記免疫グロブリン断片が、配列:
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)
を含む、請求項1又は2に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項4】
ウイルスタンパク質に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記ウイルスタンパク質が、コロナウイルスタンパク質又はフラビウイルス科タンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等の重症急性呼吸器症候群ウイルスである、請求項5に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、1つ以上の変異、2つ以上の変異、3つ以上の変異、4つ以上の変異、5つ以上の変異、又は6つ以上の変異、又は7つ以上の変異、又は8つ以上の変異、例えば3つの変異を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、27位、28位、31位、34位、41位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置、例えば配列番号24に記載の27位、28位、31位、34位、41位、及び42位に1つ以上の変異を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、27位、31位、及び34位を含む群から選択されるアミノ酸位置、例えば配列番号24に記載の27位、31位、及び34位に変異を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27T、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42Q、Q42G、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34H、H34I、H34L、H34K、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31D、K31E、K31Q、K31G、K31H、K31I、K31L、K31K、K31M、K31F、K31P、K31S、K31T、K31W、K31Y、K31V;
F28A、F28R、F28N、F28D、F28E、F28Q、F28G、F28H、F28I、F28L、F28K、F28M、F28F、F28P、F28S、F28T、F28W、F28Y、F28V;
Y41A、Y41R、Y41N、Y41D、Y41E、Y41Q、Y41G、Y41H、Y41I、Y41L、Y41K、Y41M、Y41F、Y41P、Y41S、Y41T、Y41W、Y41Y、及びY41V
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34I、H34L、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31Q、K31H、K31I、K31K、K31M、K31F、K31W、K31Y、K31V;
F28W、F28Y;
Y41H、及びY41F
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、T27Y、K31Y、K31H、H34A、H34V、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、以下:
T27Y/K31H/H34A、
T27Y/K31Y/H34A、
T27Y/K31H/H34V、又は
T27Y/K31Y/H34V
の変異の組み合わせのうちの1つを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項14】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、以下:
T27Y/K31H/H34A
の変異の組み合わせを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項15】
ウイルスに結合可能であり、任意で、細胞侵入受容体に結合するウイルス(SARS-CoV-2等)の結合を遮断/干渉/阻害/妨害/中断することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項16】
SARS-CoV-2等のウイルスを中和する又は中和を媒介する(又は開始させる)ことができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、ACE2の天然ペプチダーゼ活性を消失させる1つ以上の変異を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、273位及び/又は505位、例えば、配列番号24に記載の273位及び/又は505位のアミノ酸位置に変異を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記ACE2タンパク質又はその断片が、R273Q及び/又はH505Lの変異、例えば、R273Q及びH505Lの両方を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項20】
R273Q及び/又はH505Lの変異を含む組換え/融合タンパク質又はその断片が、配列:
QSTIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQNGSSVLSEDKSKRLNTILNTMSTIYSTGKVCNPDNPQECLLLEPGLNEIMANSLDYNERLWAWESWRSEVGKQLRPLYEEYVVLKNEMARANHYEDYGDYWRGDYEVNGVDGYDYSRGQLIEDVEHTFEEIKPLYEHLHAYVRAKLMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGQFWTNLYSLTVPFGQKPNIDVTDAMVDQAWDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRNGANEGFHEAVGEIMSLSAATPKHLKSIGLLSPDFQEDNETEINFLLKQALTIVGTLPFTYMLEKWRWMVFKGEIPKDQWMKKWWEMKREIVGVVEPVPHDETYCDPASLFLVSNDYSFIRYYTRTLYQFQFQEALCQAAKHEGPLHKCDISNSTEAGQKLFNMLRLGKSEPWTLALENVVGAKNMNVRPLLNYFEPLFTWLKDQNKNSFVGWSTDWSPYADQSIKVRISLKSALGDKAYEWNDNEMYLFRSSVAYAMRQYFLKVKNQMILFGEEDVRVANLKPRISFNFFVTAPKNVSDIIPRTEVEKAIRMSRSRINDAFRLNDNSLEFLGIQPTLGPPNQPPVS
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)
を含む、請求項19に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記組換え/融合タンパク質又はその断片が、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項22】
前記4組換え/融合ポリペプチド又はその断片が、配列番号1~4からなる群から選択されるアミノ酸配列、例えば、配列番号1を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターでトランスフェクトされた又は前記ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~22のいずれかに記載の組換え/融合ポリペプチドを含む組成物。
【請求項27】
療法又は薬物として使用するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド又は請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
対象におけるウイルス感染の治療及び/又は予防において使用するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド又は請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
対象におけるウイルス感染を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、請求項1~22のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド又は請求項26に記載の組成物の使用。
【請求項30】
それを必要とする対象においてウイルス感染を治療及び/又は予防する方法であって、請求項1~22のいずれか一項に記載の組換え/融合ポリペプチド又は請求項26に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項31】
前記ウイルス感染が、コロナウイルス、特に重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等のコロナウイルス科のウイルスによって引き起こされる、請求項27又は28に記載の通り使用するための組換え/融合ポリペプチド若しくは組成物、請求項29に記載の使用、又は請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2等のウイルスに結合可能な、変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含む組換え/融合ポリペプチドに関する。また、該ポリペプチドを含む組成物、該ポリペプチドを用いる治療方法、及び他の使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
特定のウイルスに対する中和抗体(ワクチンによって誘発されるものも含む)は、感染を有効に阻止することができるが、多くの場合、特異性が高すぎてパンデミック中に自然変異によって生じるウイルスバリアントを阻害することはできない。また、あるウイルスに対する中和抗体は、同じ侵入受容体を利用する他のウイルスと交差反応しないことが多い。例えば、抗SARS-CoV-1(SARS)抗体の大部分はSARS-CoV-2(COVID-19)と反応せず、その逆も同様である。
【0003】
SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2を含む多くのコロナウイルスは、宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を侵入受容体として用いて感染を開始する。従って、ACE2の細胞外ドメインは、コロナウイルスのスパイク受容体結合ドメインへの結合について宿主細胞のACE2と競合することにより、全てのACE2依存性ウイルスのデコイとして機能することができる可能性がある。
【0004】
しかし、ネイティブ(野生型)ACE2はコロナウイルスのスパイクタンパク質に対する親和性が低いことが多い。従って、ACE2を治療薬として使用するのに好適なものにするためには、複数のコロナウイルス及びそのバリアントに対するACE2の親和性を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質又はその断片と免疫グロブリン断片とを含む組換え/融合ポリペプチドが提供される。
【0006】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、免疫グロブリンFc断片(領域/ドメイン)、組換え/融合ポリペプチドの半減期を延長することができるタンパク質(例えば、アルブミン、ヒトアルブミン等)、結合価を高めることができるリンカー(例えば、剛性リンカー又はGGGGSリピート等の可動性リンカー)、又はそれらの組み合わせを含み、例えば、免疫グロブリンFc断片は、ヒトIgG Fc断片等のIgG Fc断片である。
【0007】
一実施形態では、免疫グロブリン断片は、配列:
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)
を含む。
【0008】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドはウイルスタンパク質に結合する。
【0009】
一実施形態では、ウイルスタンパク質はコロナウイルスタンパク質又はフラビウイルス科タンパク質である。
【0010】
一実施形態では、コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等の重症急性呼吸器症候群ウイルスである。
【0011】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、1つ以上の変異、2つ以上の変異、3つ以上の変異、4つ以上の変異、5つ以上の変異、又は6つ以上の変異、又は7つ以上の変異、又は8つ以上の変異を含む。
【0012】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、28位、31位、34位、41位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置、例えば配列番号24に記載の27位、28位、31位、34位、41位、及び42位に1つ以上の変異を含む。
【0013】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、31位、及び34位を含む群から選択されるアミノ酸位置、例えば配列番号24に記載の27位、31位、及び34位に変異を含む。
【0014】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27T、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42Q、Q42G、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34H、H34I、H34L、H34K、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31D、K31E、K31Q、K31G、K31H、K31I、K31L、K31K、K31M、K31F、K31P、K31S、K31T、K31W、K31Y、K31V;
F28A、F28R、F28N、F28D、F28E、F28Q、F28G、F28H、F28I、F28L、F28K、F28M、F28F、F28P、F28S、F28T、F28W、F28Y、F28V;
Y41A、Y41R、Y41N、Y41D、Y41E、Y41Q、Y41G、Y41H、Y41I、Y41L、Y41K、Y41M、Y41F、Y41P、Y41S、Y41T、Y41W、Y41Y、及びY41V
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0015】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34I、H34L、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31Q、K31H、K31I、K31K、K31M、K31F、K31W、K31Y、K31V;
F28W、F28Y;
Y41H、及びY41F
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0016】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、T27Y、K31Y、K31H、H34A、H34V、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0017】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、以下:
T27Y/K31H/H34A、
T27Y/K31Y/H34A、
T27Y/K31H/H34V、又は
T27Y/K31Y/H34V
の変異の組み合わせのうちの1つを含む。
【0018】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、以下:T27Y/K31H/H34Aの変異の組み合わせを含む。
【0019】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドはウイルスに結合可能であり、任意で、組換え/融合ポリペプチドは、細胞侵入受容体に結合するウイルス(SARS-CoV-2等)の結合を遮断/干渉/阻害/妨害/中断することができる。
【0020】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2等のウイルスを中和する又は中和を媒介する(又は開始させる)ことができる。
【0021】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、ACE2の天然ペプチダーゼ活性を消失させる1つ以上の変異を含む。
【0022】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、273位及び/又は505位、例えば配列番号24に記載の273位及び/又は505位のアミノ酸に変異を含む。
【0023】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、R273Q及び/又はH505Lの変異、例えば、R273Q及びH505Lの両方を更に含む。
【0024】
一実施形態では、R273Q及び/又はH505Lの変異を含む組換え/融合タンパク質又はその断片は、
QSTIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQNGSSVLSEDKSKRLNTILNTMSTIYSTGKVCNPDNPQECLLLEPGLNEIMANSLDYNERLWAWESWRSEVGKQLRPLYEEYVVLKNEMARANHYEDYGDYWRGDYEVNGVDGYDYSRGQLIEDVEHTFEEIKPLYEHLHAYVRAKLMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGQFWTNLYSLTVPFGQKPNIDVTDAMVDQAWDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRNGANEGFHEAVGEIMSLSAATPKHLKSIGLLSPDFQEDNETEINFLLKQALTIVGTLPFTYMLEKWRWMVFKGEIPKDQWMKKWWEMKREIVGVVEPVPHDETYCDPASLFLVSNDYSFIRYYTRTLYQFQFQEALCQAAKHEGPLHKCDISNSTEAGQKLFNMLRLGKSEPWTLALENVVGAKNMNVRPLLNYFEPLFTWLKDQNKNSFVGWSTDWSPYADQSIKVRISLKSALGDKAYEWNDNEMYLFRSSVAYAMRQYFLKVKNQMILFGEEDVRVANLKPRISFNFFVTAPKNVSDIIPRTEVEKAIRMSRSRINDAFRLNDNSLEFLGIQPTLGPPNQPPVSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)の配列を含む。
【0025】
一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号1~4からなる群から選択されるアミノ酸配列、例えば、配列番号1を含む。
【0027】
一態様では、上記で定義した組換え/融合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが提供される。
【0028】
一態様では、上記で定義したポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0029】
一態様では、上記で定義したベクターでトランスフェクトされたか又は該ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0030】
一態様では、上記で定義した組換え/融合ポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0031】
一態様では、療法又は薬物として使用するための、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物が提供される。
【0032】
一態様では、対象におけるウイルス感染の治療及び/又は予防において使用するための使用するための、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物が提供される。
【0033】
一態様では、対象におけるウイルス感染を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物の使用が提供される。
【0034】
一態様では、それを必要とする対象においてウイルス感染を治療及び/又は予防する方法であって、上記で定義される組換え/融合ポリペプチド又は組成物を該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0035】
一実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス、特に重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等のコロナウイルス科のウイルスによって引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】SARS-CoV-1(モデル1)及びSARS-CoV-2(モデル2)のウイルスに結合するACE2の構造モデリングを示す。
【
図1B】より親和性の高い結合ポリペプチドを計算により予測するためのフローチャートを示す。
【
図2】Octetバイオレイヤー干渉(BLI)センサOctetバイオレイヤー干渉(BLI)センサに固定化されたSARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のRBDタンパク質に対する粗ACE2ポリペプチドバリアントの反応速度測定を示す。
【
図3A】SARS-CoV-2 RBD(COVID-19)に対するACE2バリアントの解離速度(k
off)を示す。
【
図3B】SARS-CoV-1 RBD(SARS)に対するACE2バリアントの解離速度(k
off)を示す。
【
図4A】SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2のウイルスのRBDに対するACE2バリアントの親和性測定を示す。
【
図4B】SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2のウイルスのRBDに対するACE2バリアントの反応速度測定を示す。
【
図5】偽ウイルス中和アッセイによるSARS-CoV-2、そのバリアント、及びSARS-CoV-1に対するACE2バリアントのEC
50値(ng/mL)を示す。数値は2回の独立した測定の平均を表す。
【
図6】BLIアッセイによって測定したコウモリSARS様コロナウイルスのRBDに対するACE2-YHA-Fcバリアント及び野生型ACE2の結合親和性を示す。ACE2-YHA-Fc及びWT ACE2-FcはいずれもR273Q/H505L変異を有する。200nM~3.125nMのMBP-TEV-RBD濃度範囲(2倍希釈)を用いて、固定化されたACE2-FcのコウモリRBDへの結合を試験した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本明細書で使用するとき、「組換えポリペプチド」という用語は、任意の組換えDNA技術を用いて作製されたポリペプチドを指す。
【0038】
本明細書で使用するとき、「融合ポリペプチド」という用語は、別々の遺伝子によってコードされており、2つのドメインが単一ユニットとして転写及び翻訳され、それによって単一のポリペプチドを産生するように接合されている少なくとも2つのドメインを含むポリペプチドを指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して接続された任意の数のアミノ酸残基の単一線状鎖を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「アンジオテンシン変換酵素2」又は「ACE2」という用語は、ジペプチジルカルボキシジペプチダーゼのアンジオテンシン変換酵素ファミリーに属し、ヒトアンジオテンシン1変換酵素とかなりの相同性を有するタンパク質を指す。ACE2は、アンジオテンシンIのアンジオテンシン1-9への、アンジオテンシンIIの血管拡張剤アンジオテンシン1-7への切断を触媒する。ACE2は、様々なヒトの臓器で発現することが知られており、その臓器及び細胞特異的な発現から、心臓血管及び腎臓の機能、更には生殖機能の調節において役割を果たしている可能性があることが示唆されている。更に、コードされているタンパク質は、ヒトコロナウイルスHCoV-NL63並びにヒト重症急性呼吸器症候群コロナウイルスSARS-CoV及びSARS-CoV-2(後者はコロナウイルス疾患-2019(COVID-19)の原因物質である)のスパイク糖タンパク質の機能的受容体である。この遺伝子には複数のスプライスバリアントが見出されており、dACE2(又はMIRb-ACE2)のスプライスバリアントはインターフェロン誘導性であることが判明している。指定しない限り、ACE2という用語は、一般に、ヒトACE2(Uniprot ID Q9BYF1及び/又はNCBI参照配列NP_068576.1)又はヌクレオチドNM 021804.3によってコードされているものを指す。
【0041】
本明細書で使用するとき、「免疫グロブリン」又は「抗体」という用語は、2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖を含む二価のY字形分子を指す。ジスルフィド結合は、重鎖と軽鎖との対及び2本の重鎖を互いに連結させる。各鎖は、配列が異なり、抗原結合に関与する1つの可変ドメインからなり、これらはそれぞれ重鎖及び軽鎖についてVHドメイン及びVLドメインとして知られている。また、各鎖は、少なくとも1つの定常ドメインからなる。軽鎖には定常ドメイン(CL)が1つ存在し、重鎖には少なくとも3つ(CH1、CH2、及びCH3)、アイソタイプによって時には4つ(CH4)存在する。ヒトには、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のサブクラスを含む)、及びIgMを含む5つの異なるクラス又はアイソタイプの抗体が存在する。
【0042】
本明細書で使用するとき、「免疫グロブリン断片」という用語は、Fab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、シングルドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価、又は四価の抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってよいがこれらに限定されない抗体を指す(例えば、Holliger and Hudson,2005,Nature Biotech.23(9):1126-1136;Adair and Lawson,2005,Drug Design Reviews - Online 2(3),209-217を参照)。これら抗体断片を作製及び製造する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165-181を参照)。
【0043】
本明細書で使用するとき、「ウイルスタンパク質」という用語は、ウイルスによって生成される任意のタンパク質、例えばウイルスエンベロープ又はウイルスカプシドタンパク質を指す。
【0044】
本明細書で使用するとき、「コロナウイルス」という用語は、プラス鎖一本鎖RNAゲノム及びヌクレオキャプシド又はらせん対称を有する、エンベロープを有するウイルス群を指す。コロナウイルスは、その表面から突き出た棍棒状のスパイクを特徴とし、電子顕微鏡写真では星のコロナに似ていることからこの名前がついた。コロナウイルスの例としては、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、アルファコロナウイルス1、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ベータコロナウイルス1、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-Cov)、ネズミコロナウイルス、トリコロナウイルス、ブタコロナウイルスHKU15等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用するとき、「フラビウイルス科」という用語は、主にダニ及び蚊等の節足動物媒介者を介して伝播する、プラス鎖一本鎖エンベロープRNAウイルスのファミリーを指す。フラビウイルス科のメンバーとしては、西ナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ジカウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用するとき、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1」又は「SARS-CoV-1」という用語は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となるコロナウイルスの株を指す。
【0047】
本明細書で使用するとき、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」又は「SARS-CoV-2」という用語は、新型コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の原因となるコロナウイルスを指す。
【0048】
SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2はいずれも、肺内の上皮細胞に感染する、エンベロープを有するプラス鎖一本鎖RNAウイルスである。ウイルスはACE2に結合することによって宿主細胞に侵入し、ヒト、コウモリ、及びネコを含むがこれらに限定されない様々な生物に感染することが知られている。
【0049】
「Sタンパク質」と略される「スパイクタンパク質」及び「表面糖タンパク質」と互換的に使用される「ラージスパイク糖タンパク質」という用語は、本明細書で使用するとき、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を指す。Sタンパク質は、S1及びS2サブユニットと呼ばれる2つのサブユニットからなる180~200kDaの三量体クラスI融合タンパク質である。S1サブユニット(記号:CoV_S1、Pfam:PF01600、InterPro:IPR002551)は、672アミノ酸(Sタンパク質の残基14~685)で構成され、ヒト受容体アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用を介した宿主細胞への結合の媒介に関与している。S2(記号:CoV_S2、Pfam:PF01601、InterPro:IPR002552)サブユニットは、588アミノ酸(残基686~1273)で構成され、2つの7アミノ酸繰り返しドメインを介して6ヘリックス束を形成することによりウイルス細胞膜の融合を媒介する。従って、Sタンパク質は、宿主細胞との結合及び侵入において重要な役割を果たしている。Sタンパク質のアミノ酸配列は、GenBank番号QHD43416.1に記載されている。
【0050】
本明細書で使用するとき、「変異」という用語は、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質のアミノ酸配列の変化、又はペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードしている核酸配列の変化を指す。変異の4つの主な原因は、自然変異、複製中のエラーによる変異、DNA修復中に導入される変異、及び変異原によって引き起こされる誘発変異である。変異は、遺伝子の重複、倍数化、及び大きな染色体領域の欠失等の大規模な変異と、挿入、欠失、及び置換等の通常1個又は数個のヌクレオチドに影響する小規模な変異とに更に分類することができる。
【0051】
本明細書で使用するとき、「中和」という用語は、典型的には、ウイルス粒子の表面、そのような結合ウイルス受容体に結合し、それによってウイルスの転写又は合成に先行するウイルス複製サイクルの段階を遮断することにより、ウイルスの感染性を低下させることを指す。
【0052】
本明細書で使用するとき、「対象」という用語は、患者及び非患者を含む。「患者」とという用語は、フラビウイルス感染等の医学的状態に罹患しているか又は罹患している可能性の高い個体を指し、一方、「非患者」とは、医学的状態に罹患しておらず、罹患する可能性の低い個体を指す。「非患者」は、健常個体、非疾患個体、及び/又は医学的状態を有していない個体を含む。「対象」という用語は、ヒト及び動物を含む。動物は、ネズミ等を含む。「ネズミ」とは、マウス、ラット等のネズミ科の任意の哺乳動物を指す。
【0053】
「治療」、「治療する」、及び「療法」という用語、並びにこれらの同義語は、本明細書で使用するとき、治療的な処置及び予防的(prophylactic)又は防止的(preventative)な措置の両方を指し、その目的は、疾患(フラビウイルス感染症等)、症状、及び障害を含むがこれらに限定されない医学的状態を予防する又は減速させる(減弱する)ことである。また、医学的状態は、疾患又は障害、例えば炎症に対する身体の応答も含む。このような治療を必要としているものは、既に医学的状態を有しているものに加えて、医学的状態になりやすいもの又は医学的状態を予防したいものを含む。
【0054】
本明細書で使用するとき、「治療剤」という用語は、薬物、タンパク質、ペプチド、遺伝子、化学化合物、又は他の薬学的活性成分を指す。
【0055】
「及び/又は」という用語、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味についての明示的な裏付けを提供すると解釈されるべきである。
【0056】
更に、本明細書における記載では、「実質的に」という語は、使用される場合は常に、「全体に」又は「完全に」等を含むがこれらに限定されないと理解される。更に、「含む(comprising、comprise)」等の用語は、使用される場合は常に、明示的には列挙されていない他の構成要素に加えてこのような用語の後に列挙されている要素/構成要素を広く含むという点で、制限のない説明的言語であることが意図される。例えば、「含む」が使用される場合、「ある」特徴への言及は、「少なくとも1つ」のその特徴への言及でもあることが意図される。「からなる(consisting、consist)等の用語は、適切な文脈では、「含む」等の用語の部分集合であると考えられ得る。従って、「含む」等の用語を用いて本明細書に開示される実施形態では、これら実施形態が「からなる」等の用語を用いた対応する実施形態についての教示を提供することが理解されるであろう。更に、「約」、「およそ」等の用語は、使用される場合は常に、典型的には、合理的なばらつき、例えば、開示されている値の±5%のばらつき、又は開示されている値の4%のばらつき、又は開示されている値の3%のばらつき、開示されている値の2%のばらつき、又は開示されている値の1%のばらつきを意味する。
【0057】
更に、本明細書における記載では、特定の値を範囲で開示している場合がある。範囲の端点を示す値は、好ましい範囲を示すことが意図される。範囲が記載されている場合は常に、その範囲が、その範囲内の個々の数値に加えて全ての可能な部分範囲を網羅し、教示することが意図される。すなわち、範囲の端点を不変の限度であると解釈すべきではない。例えば、1%~5%の範囲の記述は、個々に1%、2%、3%、4%、及び5%等のその範囲内の値に加えて、1%~2%、1%~3%、1%~4%、2%~3%等の部分範囲も具体的に開示されることが意図される。また、範囲内の個々の数値には、整数、分数、及び小数も含まれることを理解されたい。更に、範囲が記載されている場合は常に、その範囲は、示されている数値の端点から更に小数点以下又は有効数字(適切な場合)2桁までの値を網羅し、教示することも意図される。例えば、1%~5%の範囲の記述は、1.00%~5.00%の範囲、また1.0%~5.0%の範囲及びその範囲に及ぶ全ての中間値(1.01%、1.02%...4.98%、4.99%、5.00%及び1.1%、1.2%...4.8%、4.9%、5.0%等)も具体的に開示されることが意図される。上記の具体的な開示の意図は、任意の深さ/幅の範囲に適用可能である。
【0058】
本明細書で使用するとき、「少なくとも95%同一」とは、その全長にわたって参照配列と95%以上同一、例えば96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を指すことが意図される。同一性パーセントを計算するために、ソフトウェアプログラムを使用することができる。
【0059】
更に、幾つかの実施形態について説明するとき、本開示は、特定の一連の工程として方法及び/又はプロセスを開示している場合がある。しかし、特に必要とされない限り、方法又はプロセスは、開示された特定の一連の工程に限定されるべきではないことが理解されるであろう。他の一連の工程も可能であり得る。本明細書に開示される工程の特定の順序は、過度の制限として解釈されるべきではない。特に必要とされない限り、本明細書に開示される方法及び/又はプロセスは、記載されている順序で実行される工程に限定されるべきではない。一連の工程は変更してもよいが、依然として本開示の範囲内である。
【0060】
更に、本開示は、本明細書で論じた特徴/特性のうちの1つ以上を有する実施形態を提供するが、これら特徴/特性のうちの1つ以上は、他の代替実施形態では否定される場合もあり、本開示は、そのような否定及びこれら関連する代替実施形態についての裏付けを提供することが理解されるであろう。
【0061】
実施形態の説明
当業者であれば、広く記載されている本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されている実施形態に他の変形及び/又は変更を加えることができることが理解されるであろう。例えば、本明細書の記載では、異なる例示的な実施形態の特徴は、異なる例示的な実施形態間で混合、結合、交換、組み込み、採用、改変、包含等を行ってもよい。従って、本実施形態は、全ての観点で例示的なものであり、制限的なものではないと考えられる。
【0062】
一態様では、変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質又はその断片と免疫グロブリン断片とを含む組換え/融合ポリペプチドが提供される。
【0063】
有利なことに、本明細書に開示されるポリペプチドは、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)等のウイルスのスパイクタンパク質に対する結合親和性が改善されている。更に、開示されるポリペプチドは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2バリアントの偽ウイルスに対する中和能が増強されている。従って、本明細書に開示されるポリペプチドは、療法、例えばSARS及びCOVID-19等のウイルス感染症の治療において使用できる可能性が高い。
【0064】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、免疫グロブリンFc断片(領域/ドメイン)、組換え/融合ポリペプチドの半減期を延長することができるタンパク質(例えば、アルブミン、ヒトアルブミン等)、結合価を高めることができるリンカー(例えば、剛性リンカー又はGGGGSリピート等の可動性リンカー)、又はそれらの組み合わせを含み、例えば、免疫グロブリンFc断片は、ヒトIgG Fc断片等のIgG Fc断片である。
【0065】
様々な実施形態では、免疫グロブリン断片は、Fc領域/ドメイン、1つ以上のCH領域/ドメイン、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(ScFv)及び/又はFv断片、ヒンジ領域/ドメイン、並びにそれらの断片又は部分を含み得るが、これらに限定されない。
【0066】
幾つかの実施形態では、組換え/融合ポリペプチドはまた、例えばIgの定常重鎖、可変重鎖、定常軽鎖、可変軽鎖、ヒンジ領域、及び/又はFcドメインの全部又は一部を含むがこれらに限定されない免疫グロブリン分子又は抗体の部分、並びにそれらのバリアントを含有していてもよい。例えば、本明細書に記載の組換え/融合ポリペプチドをヒトIgGの一部と組み合わせてもよい。様々な実施形態では、免疫グロブリンのタイプは、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY等であるがこれらに限定されない1つ以上のタイプを含み得る。様々な実施形態では、免疫グロブリンのタイプは、クラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、又はそれらのサブクラスの免疫グロブリンであってもよい。
【0067】
一実施形態では、免疫グロブリン断片は、IgG Fc断片である。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、ヒトIgG Fc断片、例えば配列番号23を含むFc断片である。従って、一実施形態では、免疫グロブリン断片は、配列:
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)
を含む。
【0068】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドはウイルスタンパク質に結合する。
【0069】
一実施形態では、ウイルスタンパク質はコロナウイルスタンパク質又はフラビウイルス科タンパク質である。
【0070】
一実施形態では、コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等の重症急性呼吸器症候群ウイルスである。従って、一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2に結合する。
【0071】
様々な実施形態では、SARS-CoV-2は、アルファバリアント、ベータバリアント、ガンマバリアント、イプシロンバリアント、エータバリアント、イオタバリアント、カッパバリアント、カッパバリアント、ミューバリアント、ゼータバリアント、デルタバリアント等の当技術分野で公知の様々なバリアントを含む。様々な実施形態では、本明細書に記載のウイルスは、SARS-CoV-2、CoV-2 V483A、CoV-2 G476S、CoV-2 L455I/F456V、CoV-2 V483I、CoV-2 N439K、CoV-2 S494P、CoV-2 D614G、CoV-2 S477N、CoV-2 A222V、CoV-2 Y453F、CoV-2 N501Y、CoV-2 E406W、CoV-2 Q493F、CoV-2 Q493K、CoV-2 L455F、CoV-2 E484K、CoV-2 G485D、CoV-2 F486K、CoV-2 F486V、CoV-2 F486A、CoV-2 F486L、CoV-2 K417N、CoV-2 N501Y/D614G、CoV-2 E406W/D614G、CoV-2 K417N/E484K/N501Y、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P.1)、カッパ(B.1.617.1)、デルタ(B.1.617.2)、イプシロン(B.1.429)、SARS-CoV-1等であるがこれらに限定されないバリアントを含む。
【0072】
様々な実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、1つの変異、又は2つの変異、又は3つの変異、又は4つの変異、又は5つの変異、又は6つの変異、又は7つの変異、又は8つの変異を含み得る。様々な実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、少なくとも1つの変異、又は少なくとも2つの変異、又は少なくとも3つの変異、又は少なくとも4つの変異、又は少なくとも5つの変異、又は少なくとも6つの変異、又は少なくとも7つの変異、又は少なくとも8つの変異を含み得る。様々な実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、1つ以下の変異、又は2つ以下の変異、又は3つ以下の変異、又は4つ以下の変異、又は5つ以下の変異、又は6つ以下の変異、又は7つ以下の変異、又は8つ以下の変異を含み得る。
【0073】
様々な実施形態では、変異は、置換、挿入、欠失、重複、フレームシフト等を含み得るが、これらに限定されない。
【0074】
一実施形態では、変異は、置換である。
【0075】
様々な実施形態では、置換は、アミノ酸を、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン等であるがこれらに限定されない天然アミノ酸に置き換える。様々な実施形態では、置換はシステインによる置換を含まない。従って、様々な実施形態では、置換は、アミノ酸を、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン等であるがこれらに限定されない天然アミノ酸に置き換える。
【0076】
様々な実施形態では、置換は、類似の特性を有する別のものに置換する保存的置換であってもよい。例えば、あるアミノ酸を同じグループの別のアミノ酸で置換することである。様々な実施形態では、置換は、異なる特性を有するアミノ酸による置換を含み得る。様々な実施形態では、置換は、本明細書に記載の組換えポリペプチドの生物学的活性に影響を与えることなく行われる。本明細書に記載の変異は、ネイティブACE2タンパク質と実質的に同じ構造を有する変異型ACE2タンパク質を提供することが理解されるであろう。従って、本明細書に記載の変異型ACE2タンパク質は、ウイルスタンパク質又はその断片に結合することができる。様々な実施形態では、変異型ACE2タンパク質は、ウイルスタンパク質又はその断片に結合する能力は依然として維持しているが、天然のペプチダーゼ活性は消失又は減少している。様々な実施形態では、置換によりウイルスタンパク質との結合親和性が増大する。
【0077】
様々な実施形態では、変異は、SARS-CoV及び/又はSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質に結合するACE2のコンパクト領域に存在し得る。例えば、変異は、PDB構造2AJF(SARS-CoV、ACE2 Uniprot ID Q9BYF1;Spike GP Uniprot ID P59594、DOI 10.2210/pdb2AJF/pdb)及び6M0J(SARS-CoV-2、ACE2 Uniprot ID Q9BYF1、Spike GP Uniprot ID P0DTC2;DOI10.2210/pdb6M0J/pdb)に示されている位置に存在し得る。
【0078】
様々な実施形態では、指定の位置は、ACE2とSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質との間の結合安定性を高めるように選択され得る。様々な実施形態では、指定の実施形態は、自由エネルギー計算を用いて決定することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、本開示における変異は、残基間の衝突を最小限に抑えながら、接触領域内の疎水性及び/又は嵌合を増加させることによって界面の補完性を高める。
【0079】
様々な実施形態では、ACE2は、本明細書で使用するとき、ACE2の細胞外ドメインを指す。様々な実施形態では、ACE2は、本明細書で使用するとき、ヒトACE2(Uniprot ID Q9BYF1及び/又はNCBI参照配列NP_068576.1)のアミノ酸18~740、又はヌクレオチドNM 021804.3によってコードされているものを指す。従って、一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、ACE2の変異型細胞外ドメインを含む。
【0080】
様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、ACE2のC末端ドメインを含んでいてもよい/含んでいなくてもよい。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2と相互作用するドメインを含み得る。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質と相互作用するドメインを含み得る。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2(SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質等)に結合可能な切断型ACE2を含み得る。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2(SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質等)に結合親和性を有しない切断型ACE2を含まない。
【0081】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、28位、31位、34位、41位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置に1つ以上の変異を含む。有利なことに、本発明者らは、これら指定のアミノ酸位置が、ACE2とウイルススパイクタンパク質との相互作用を変化させる可能性があり、例えば、ACE2とウイルススパイクタンパク質との間の界面安定性に影響を及ぼす可能性があることを見出した。従って、これら位置のうちの1つ以上に変異を導入すると、ウイルススパイクタンパク質に対するACE2の結合親和性が高まる可能性が高くなる。
【0082】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、31位、34位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置に変異を含む。別の実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、31位、及び34位を含む群から選択されるアミノ酸位置に変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、27位、31位、及び34位のアミノ酸位置に変異を含む。驚くべきことに、これら指定のアミノ酸位置に変異を導入すると、ウイルスのスパイクタンパク質に対する解離速度が遅くなった。
【0083】
幾つかの実施形態では、記載されるアミノ酸位置は、ヒトACE2(Uniprot ID Q9BYF1及び/又はNCBI参照配列NP_068576.1)に従ってACE2を参照して1位から計算されるか、又はヌクレオチドNM 021804.3によってコードされている通りである。
【0084】
様々な実施形態では、ヒトACE2は、配列:
MSSSSWLLLSLVAVTAAQSTIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQNGSSVLSEDKSKRLNTILNTMSTIYSTGKVCNPDNPQECLLLEPGLNEIMANSLDYNERLWAWESWRSEVGKQLRPLYEEYVVLKNEMARANHYEDYGDYWRGDYEVNGVDGYDYSRGQLIEDVEHTFEEIKPLYEHLHAYVRAKLMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGRFWTNLYSLTVPFGQKPNIDVTDAMVDQAWDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRNGANEGFHEAVGEIMSLSAATPKHLKSIGLLSPDFQEDNETEINFLLKQALTIVGTLPFTYMLEKWRWMVFKGEIPKDQWMKKWWEMKREIVGVVEPVPHDETYCDPASLFHVSNDYSFIRYYTRTLYQFQFQEALCQAAKHEGPLHKCDISNSTEAGQKLFNMLRLGKSEPWTLALENVVGAKNMNVRPLLNYFEPLFTWLKDQNKNSFVGWSTDWSPYADQSIKVRISLKSALGDKAYEWNDNEMYLFRSSVAYAMRQYFLKVKNQMILFGEEDVRVANLKPRISFNFFVTAPKNVSDIIPRTEVEKAIRMSRSRINDAFRLNDNSLEFLGIQPTLGPPNQPPVSIWLIVFGVVMGVIVVGIVILIFTGIRDRKKKNKARSGENPYASIDISKGENNPGFQNTDDVQTSF(配列番号24)
を含む。
【0085】
従って、一実施形態では、27位、28位、31位、34位、41位、及び42位のアミノ酸位置における変異とは、配列番号24に記載の27位、28位、31位、34位、41位、及び42位のアミノ酸位置における変異を指す。従って、一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、配列番号24に記載の27位、28位、31位、34位、41位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置に1つ以上の変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、配列番号24に記載の27位、31位、34位、及び42位を含む群から選択されるアミノ酸位置に1つ以上の変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、配列番号24に記載の27位、31位、及び34位を含む群から選択されるアミノ酸位置に1つ以上の変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、配列番号24に記載の27位、31位、及び34位のアミノ酸位置に変異を含む。
【0086】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27T、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42Q、Q42G、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34H、H34I、H34L、H34K、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31D、K31E、K31Q、K31G、K31H、K31I、K31L、K31K、K31M、K31F、K31P、K31S、K31T、K31W、K31Y、K31V;
F28A、F28R、F28N、F28D、F28E、F28Q、F28G、F28H、F28I、F28L、F28K、F28M、F28F、F28P、F28S、F28T、F28W、F28Y、F28V;
Y41A、Y41R、Y41N、Y41D、Y41E、Y41Q、Y41G、Y41H、Y41I、Y41L、Y41K、Y41M、Y41F、Y41P、Y41S、Y41T、Y41W、Y41Y、及びY41V
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0087】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、
T27A、T27R、T27N、T27D、T27E、T27Q、T27G、T27H、T27I、T27L、T27K、T27M、T27F、T27P、T27S、T27W、T27Y、T27V;
Q42A、Q42R、Q42N、Q42D、Q42E、Q42H、Q42I、Q42L、Q42K、Q42M、Q42F、Q42P、Q42S、Q42T、Q42W、Q42Y、Q42V;
H34A、H34R、H34N、H34D、H34E、H34Q、H34G、H34I、H34L、H34M、H34F、H34P、H34S、H34T、H34W、H34Y、H34V;
K31A、K31R、K31N、K31Q、K31H、K31I、K31K、K31M、K31F、K31W、K31Y、K31V;
F28W、F28Y;
Y41H、及びY41F
からなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0088】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、T27Y、K31Y、K31H、H34A、H34V、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、K31Y変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、K31H変異を含む。一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、H34V変異を含む。
【0089】
有利なことに、本発明者らは、これら指定の変異が、SARS-CoV-1及び/又はSARS-Cov-2のRBD等のウイルススパイクタンパク質に対して最も遅い解離速度を示す変異体をもたらすことを立証した。
【0090】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、以下:
T27Y/K31H/H34A、
T27Y/K31Y/H34A、
T27Y/K31H/H34V、又は
T27Y/K31Y/H34V
の変異の組み合わせのうちの1つを含む。
【0091】
有利なことに、これら三重変異の組み合わせを含む組換え/融合ポリペプチドは、単一変異を有するポリペプチドと比較して、SARS-CoV-1及び/又はSARS-Cov-2のRBD等のスパイクタンパク質に対する結合親和性が著しく改善された。
【0092】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、以下:T27Y/K31H/H34Aの変異の組み合わせを含む。有利なことに、T27Y/K31H/H34Aを含む組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-Cov-2のRBD等のウイルススパイクタンパク質に対して最良の全体的な結合親和性を示した。驚くべきことに、このような三重変異体ポリペプチドは、単一のT27Y、K31H、又はH34Aの変異を有するポリペプチドと比較して、広範囲のSARS-CoV-2バリアント(30を超えるバリアント)及びSARS-CoV-1にわたって中和能も著しく改善された。更に、三重変異体ポリペプチドは、少なくとも5つのコウモリSARS様コロナウイルス株に対して高い結合親和性を示した。
【0093】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチドはウイルスに結合可能であり、任意で、組換え/融合ポリペプチドは、細胞侵入受容体に結合するウイルス(SARS-CoV-2等)の結合を遮断/干渉/阻害/妨害/中断することができる。
【0094】
様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2等のウイルスに強力に結合する。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2等のウイルスのタンパク質(スパイクタンパク質等)に強力に結合する。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2の細胞侵入受容体への結合等のウイルスの結合に対して強力な遮断/干渉/阻害/妨害/中断作用を有する。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドの関連EC50値は、約0.1nM~約360nM、約0.5nM~約100nM、約0.5nM~約50nM、約0.5nM~約25nM、約0.5nM~約10nM、約0.5nM~約9nM、又は約0.5nM~約8nMである。幾つかの実施形態では、組換え/融合ポリペプチドの関連EC50値は、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、又は約8nM以下、又は約7nM以下、又は約6nM以下、又は約5nM以下、又は約4nM以下、又は約3nM以下、又は約2nM以下、又は約1nM以下である。
【0095】
幾つかの実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2等のウイルスの、細胞、任意でヒト細胞、更に任意でACE2発現/提示細胞への侵入を中和する又は中和を媒介することができる。
【0096】
様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドは、SARS-CoV-2等のウイルスの細胞侵入に対して強力な中和作用を有する。様々な実施形態では、組換え/融合ポリペプチドの関連EC50値は、約1ng/mL~約17000ng/mL、約5ng/mL~約1000ng/mL、約5ng/mL~約100ng/mL、約5ng/mL~約60ng/mL、約5ng/mL~約30ng/mL、又は約5ng/mL~約12ng/mLである。幾つかの実施形態では、組換え/融合ポリペプチドの関連EC50値は、約500ng/mL以下、約100ng/mL以下、又は約50ng/mL以下、又は約40ng/mL以下、又は約30ng/mL以下、又は約20ng/mL以下、又は約10ng/mL以下である。
【0097】
従って、一実施形態では、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)及び/又は重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)を認識/相互作用/結合することができる組換え/融合ポリペプチドが提供される。
【0098】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、ACE2の天然ペプチダーゼ活性を消失させる1つ以上の変異を含む。このような変異を含むことの利点は、ACE2の酵素活性によって引き起こされる望ましくない副作用のリスクが減少することである。
【0099】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、273位及び/又は505位、例えば配列番号24に記載の273位及び/又は505位のアミノ酸位置に変異を含む。有利なことに、273位及び/又は505位における変異は、ACE2の天然ペプチダーゼに影響を与えることができる。
【0100】
一実施形態では、ACE2タンパク質又はその断片は、R273Q及び/又はH505Lの変異、例えば、R273Q及びH505Lの両方を更に含む。
【0101】
一実施形態では、R273Q及び/又はH505Lの変異を含む組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列:
QSTIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQNGSSVLSEDKSKRLNTILNTMSTIYSTGKVCNPDNPQECLLLEPGLNEIMANSLDYNERLWAWESWRSEVGKQLRPLYEEYVVLKNEMARANHYEDYGDYWRGDYEVNGVDGYDYSRGQLIEDVEHTFEEIKPLYEHLHAYVRAKLMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGQFWTNLYSLTVPFGQKPNIDVTDAMVDQAWDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRNGANEGFHEAVGEIMSLSAATPKHLKSIGLLSPDFQEDNETEINFLLKQALTIVGTLPFTYMLEKWRWMVFKGEIPKDQWMKKWWEMKREIVGVVEPVPHDETYCDPASLFLVSNDYSFIRYYTRTLYQFQFQEALCQAAKHEGPLHKCDISNSTEAGQKLFNMLRLGKSEPWTLALENVVGAKNMNVRPLLNYFEPLFTWLKDQNKNSFVGWSTDWSPYADQSIKVRISLKSALGDKAYEWNDNEMYLFRSSVAYAMRQYFLKVKNQMILFGEEDVRVANLKPRISFNFFVTAPKNVSDIIPRTEVEKAIRMSRSRINDAFRLNDNSLEFLGIQPTLGPPNQPPVSEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)を含む。
【0102】
一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、以下の表1に示す通り、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号1~4からなる群から選択されるアミノ酸配列、例えば、配列番号1を含む。従って、一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、組換え/融合タンパク質又はその断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0111】
一態様では、上記で定義した組換え/融合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが提供される。
【0112】
様々な実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドは、本明細書に記載の配列と類似性又は同一性を有するポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含み得る。例えば、本明細書に記載のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドは、本明細書に記載の配列と比較して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含み得る。配列同一性パーセントは、例えば、BLAST、NBLAST、XBLAST等のプログラムを使用して、当技術分野で公知の方法を使用して求めることができる。
【0113】
一態様では、上記で定義したポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0114】
幾つかの実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルス粒子、ファージ、バキュロウイルス、酵母プラスミド、脂質ベースのビヒクル、ポリマーミクロスフィア、リポソーム、及び細胞ベースのビヒクル、コロイド金粒子、リポ多糖、ポリペプチド、多糖、ウイルスビヒクル、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、泡沫状ウイルス、サイトメガロウイルス、セムリキ森林ウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、RNAウイルスベクター、DNAウイルスベクター、及びプラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクターからなる群から選択され、更に任意で、該ポリヌクレオチドは、ペプチド合成を指示するために発現制御配列(複数可)に作動可能に連結され、より更に任意で、該ベクターは、形質転換された宿主細胞を選別するための表現型形質を提供するために1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0115】
一態様では、上記で定義したベクターでトランスフェクトされたか又は該ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0116】
本発明の分子をコードしているDNA配列の発現には、任意の好適な宿主細胞/ベクター系を用いることができる。細菌、例えば大腸菌(E.coli)及び他の微生物系を用いてもよく、真核生物、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系を用いてもよい。好適な哺乳動物宿主細胞としては、CHO細胞、ミエローマ細胞、又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0117】
一実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、例えば哺乳動物細胞、及び/又は植物細胞を含み得る。様々な実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等であるがこれらに限定されない哺乳動物細胞であってよい。
【0118】
一態様では、上記で定義した組換え/融合ポリペプチドを含む組成物が提供される。一実施形態では、組成物は、治療用組成物又は医薬組成物を含む。従って、一態様では、上記で定義した組換え/融合ポリペプチドを含む医薬組成物及び/又は治療用組成物が提供される。
【0119】
一実施形態では、組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤、バッファ、又は担体を更に含む。
【0120】
薬学的に許容し得る塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等の鉱酸塩;又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩等の有機酸の塩を使用してよい。
【0121】
治療用組成物における薬学的に許容し得る担体は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール等の液体を更に含有していてもよい。更に、このような組成物には、湿潤若しくは乳化剤、又はpH緩衝物質等の補助物質が存在していてもよい。このような担体によって、患者による服用のために医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤に製剤化することが可能になる。薬学的に許容し得る担体に関する綿密な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)において入手可能である。
【0122】
一態様では、療法又は薬物として使用するための、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物が提供される。
【0123】
一態様では、対象におけるウイルス感染の治療及び/又は予防において使用するための使用するための、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物が提供される。
【0124】
一態様では、対象におけるウイルス感染を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、上記で定義した組換え/融合ポリペプチド又は組成物の使用が提供される。
【0125】
一態様では、それを必要とする対象においてウイルス感染を治療及び/又は予防する方法であって、上記で定義される組換え/融合ポリペプチド又は組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0126】
一態様では、それを必要とする対象においてウイルスを中和する方法であって、上記で定義した組換え/融合タンパク質及び/又は組成物を投与することを含み、例えば、該ウイルスが、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2等のコロナウイルスである方法が提供される。
【0127】
一実施形態では、組換え/融合ポリペプチド又は組成物は、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内、鼻腔内、非経口等を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の投与様式によって対象に投与される。
【0128】
一実施形態では、対象は、サル、ウサギ、マウス、ラット、ブタ、又はイヌ等の哺乳動物である。一実施態様では、対象は、ヒトである。
【0129】
一実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス、特に重症急性呼吸器症候群1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群2(SARS-CoV-2)等のコロナウイルス科のウイルスによって引き起こされる。
【0130】
一態様では、本明細書に記載のタンパク質、組成物、療法、生成物、又は方法が提供される。
【実施例】
【0131】
本開示の例示的な実施形態は、以下の議論から、また適用可能な場合には図面と併せて、当業者により深く理解され、容易に明らかになるであろう。本発明の範囲を逸脱することなく、他の改変を行ってもよいことが理解されるべきである。幾つかを1つ以上の実施形態と組み合わせて新規の例示的な実施形態を形成することができるので、例示的な実施形態は必ずしも相互に排他的ではない。実施例の実施形態は、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0132】
実施例1-より親和性の高いACE2ポリペプチドバリアントの開発
親和性改善操作は、構造モデリングと、変異させたときにウイルスのスパイクタンパク質との相互作用が変化する可能性のあるアミノ酸位置の計算による予測から始めた。
図1Aは、SARS-CoV-1(モデル1)及びSARS-CoV-2(モデル2)のウイルスに結合するACE2の構造モデリングを示す。
図1Bは、より親和性の高い結合ACE2ポリペプチドバリアントを計算により予測するためのプロセスのフローチャートを示す。
【0133】
その天然のペプチダーゼ活性を消失させる変異R273Q/H505Lを有するACE2バリアントを、ヒトIgG1 Fcとの融合タンパク質としてクローニングした。変異研究のための計算による予測によって、27位、28位、31位、34位、41位、及び42位のアミノ酸が選択された。各位置のアミノ酸を、部位特異的変異誘発によってシステインを除く全ての可能な天然アミノ酸に置換し、ACE2変異体を一過性トランスフェクションによってExpiCHO-S細胞で発現させた。次いで、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)からの解離を求めるために、粗組換えACE2変異体をバイオレイヤー干渉法(BLI)による結合解析に供した。
【0134】
分析結果を
図2並びに
図3A及び3Bに示す。一方又は両方の抗原に対してより遅い解離速度を示したACE2バリアントを選別し、組み合わせて、更なる解析のためのコンビナトリアル変異体を形成した。
【0135】
実施例2-コンビナトリアルACE2ポリペプチドバリアントの開発
4つのコンビナトリアルACE2バリアント:T27Y/K31H/H34A(YHA)、T27Y/K31H/H34V(YHV)、T27Y/K31Y/H34A(YYA)、及びT27Y/K31Y/H34V(YYV)を作製した。これらはいずれもACE2の酵素活性を消失させる2つの追加の変異R273Q/H505Lを含有する。野生型ACE2(これもR273Q/H505Lを含有)と共にこれら4つのACE2バリアントの親和性をバイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定した。ACE2タンパク質を抗ヒトIgG Fc(AHC)センサに捕捉させ、受容体結合ドメイン(RBD)との結合を200nMから始めて3.125nMまで2倍希釈で測定した。親和性測定に用いたSARS-CoV-2又はSARS-CoV-1のRBDを、マルトース結合タンパク質(MBP)のC末端に融合させた。その結果、T27Y/K31H/H34A(YHA)、T27Y/K31H/H34V(YHV)、T27Y/K31Y/H34A(YYA)、及びT27Y/K31Y/H34V(YYV)の三重変異体の組み合わせは全て、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2の両方のRBDに対する結合親和性が著しく改善することが示された(
図4A参照)。最適なバリアントACE2-YHAは、SARS-CoV-1 RBD及びSARS-CoV-2 RBDにそれぞれ0.75nM及び1.69nMのKD値で結合し、これはWT ACE2よりも55倍及び15倍低かった。K31H変異は、K31YよりもSARS-CoV-1 RBDに対する結合親和性を改善し、H34A変異は、H34VよりもSARS-CoV-2 RBD結合を改善した。親和性及び反応速度の結果を
図4A及び4Bに示す。
【0136】
その後、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2、並びにSARS-CoV-2バリアントのパネルに対する野生型及び変異型のACE2の中和能を、偽ウイルス中和アッセイ法によって測定した。EC
50値を
図5にまとめる。
【0137】
一般に、結合親和性は中和効力とよく相関することが観察された。3つの単一アミノ酸変異体(ACE2-T27Y、ACE2-K31H、及びACE2-H34A)及びWT(野生型)ACE2-Fcは全ての偽型ウイルスを中和することができたが、異なる変異体を中和する効果はまちまちであった。対照的に、ACE2-YHAは、広範囲のSARS-CoV-2バリアント及びSARS-CoV-1にわたって高い中和能を保持し、IC50はほとんどの場合5ng/mL~60ng/mLの範囲であった。それは、SARS-CoV-1並びにE406W、E406W/D614G、及びF486A等の幾つかのSARS-CoV-2バリアントにおいて著しく改善された効力を示し、IC50がWT ACE2よりも9倍超低かった。
【0138】
実施例3-コウモリコロナウイルスに対するACE2-YHAバリアントの結合親和性
次に、5つのコウモリSARS様コロナウイルス株LYRa11、Rs4084、Rs4231、Rs7327、RsSCH014に対するACE2-YHAバリアントの結合親和性を試験した。
【0139】
LYRa11及びRs7327のRBD配列はSARS-CoV-1に酷似していることが知られているが、Rs4231、RsSHC014、及びRs4084はRBD領域においてより大きなSARS-CoV-1との遺伝的差異を示した。Rs7327、Rs4231、及びRsSHC014のスパイクを発現する偽型ウイルスは、ヒトACE2発現細胞で複製することができた。そこで、これらコロナウイルスのRBDを生成し、反応速度結合アッセイのためにMBPタンパク質のC末端と融合させた。アッセイの結果を
図6に示す。
【0140】
ACE2-YHAは、WT ACE2と比較して1.9倍~2.7倍の結合親和性の改善を示した。組換えWT ACE2は、これら5つの株の偽型ウイルスの細胞侵入を阻止することが以前に示されており、このことから、結合親和性が改善したACE2-YHAバリアントも交差CoV中和作用を有するはずであることが示唆される。
【0141】
用途
本発明者らは、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2のコロナウイルスのスパイクタンパク質に対する親和性を高めた、変異型アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含む新規の組換え/融合ポリペプチドを開発した。具体的には、本開示は、ACE-YHA2として知られている組換えポリペプチドが、30を超える既存のSARS-CoV-2バリアント株のスパイクタンパク質を発現する偽型ウイルスを中和する能力を有することを実証する。
【0142】
従って、本明細書に開示されるポリペプチドは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2バリアント偽ウイルスに対する中和能を高めることができ、従って、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2等のウイルスに対する汎用的な治療薬として機能する可能性がある。
【配列表】
【国際調査報告】