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特表2024-540726排気ガス再循環による炭素回収システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】排気ガス再循環による炭素回収システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241025BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20241025BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20241025BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241025BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241025BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/75
B01D53/92 240
B01D53/92 310
B01D53/26 200
B01D53/26 300
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525816
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022048526
(87)【国際公開番号】W WO2023081125
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/274,652
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518414306
【氏名又は名称】チャート・エナジー・アンド・ケミカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】バクスター,ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ビッパーラ,ラビクマール
【テーマコード(参考)】
4D002
4D052
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA13
4D002BA20
4D002CA13
4D002EA01
4D002EA05
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB02
4D002HA04
4D002HA08
4D052AA00
4D052CE00
4D052CF00
4D052GA04
4D052GB00
4D052HA00
4D052HA11
4D052HA12
4D052HA13
4D052HA14
4D052HA42
4D052HA43
4D052HB01
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC10
4G146JC35
4G146JD06
(57)【要約】
極低温炭素回収システムは、熱機関と流体連通する排ガス冷却デバイスを備える。排ガス冷却デバイスは、熱機関の下流の流体流および冷却された液体冷却剤の流れを受け取り、その結果流体流は、冷却された液体冷却剤の流れによって冷却され、冷却された排ガス流が形成される。極低温炭素回収ユニットは、冷却された排ガス流の少なくとも一部を受け取り、冷却された排ガス流の第1の部分から二酸化炭素を分離し、これにより清浄な排ガス流および二酸化炭素の流れが形成される。液体冷却剤冷却デバイスは、清浄な排ガス流および液体冷却剤の流れを受け取り、清浄な排ガス流を使用して液体冷却剤の流れを冷却し、これにより冷却された液体冷却剤の流れが形成され、排ガス冷却デバイスに供給される。熱機関は、極低温炭素回収システムと流体連通し、排気ガス再循環流としての、排ガス冷却デバイスの下流にある分割流の一部、および空気流を受け取る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関の排気ガスから二酸化炭素を分離するシステムであって、前記システムが、
a.燃料の流れを受け取って消費し、その結果熱機関の排気流が生成されるよう構成された、熱機関と、
b.極低温炭素回収システムであって、
i)前記熱機関と流体連通し、排ガス冷却デバイス出口を有する排ガス冷却デバイスであり、前記排ガス冷却デバイスが、前記熱機関の下流の流体流および冷却された液体冷却剤の流れを受け取るよう構成され、その結果前記流体流が、前記冷却された液体冷却剤の流れによって冷却され、冷却された排ガス流が形成され、前記冷却された排ガス流が、前記排ガス冷却デバイス出口を通って、前記排ガス冷却デバイスを出る、排ガス冷却デバイスと、
ii)前記排ガス冷却デバイス出口と流体連通し、前記冷却された排ガス流の少なくとも一部を受け取り、前記冷却された排ガス流の前記第1の部分から二酸化炭素を分離するよう構成され、これにより清浄な排ガス流および二酸化炭素の流れが形成される、極低温炭素回収ユニットと、
iii)前記極低温炭素回収ユニットからの前記清浄な排ガス流、および、液体冷却剤の流れを受け取り、前記清浄な排ガス流を使用して前記液体冷却剤の流れを冷却するよう構成され、これにより前記冷却された液体冷却剤の流れが、形成され、前記排ガス冷却デバイスに供給される、液体冷却剤冷却デバイスと、
を備える、極低温炭素回収システムと、
を具備し、
c.前記熱機関が、前記極低温炭素回収システムと流体連通し、
i)排気ガス再循環流としての、前記排ガス冷却デバイスの下流の分割流の一部と、
ii)空気流と、
を受け取るよう構成された、システム。
【請求項2】
前記清浄な排ガス流が、周囲温度以下の温度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記排ガス冷却デバイスによって受け取られる前記流体流が、前記熱機関の排気ガス流である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱機関の排気流および液体流を受け取り、前記液体流を使用して前記タービンの排気流を冷却するよう構成され、これにより前記液体流が加熱され、前記流体流が前記排ガス冷却デバイスによって受け取られるように、排ガス流が形成される、熱回収熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記熱回収熱交換器によって受け取られた前記液体流が、少なくとも部分的に気化されて気化流を形成し、前記システムが、前記気化流によって駆動される蒸気タービンをさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記極低温炭素回収ユニットが、前記排ガス冷却デバイスおよび前記液体冷却剤冷却デバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱機関が、コンバインドサイクルタービンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記熱機関が、シンプルサイクルタービンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱機関が、内燃機関を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記分割流が、前記冷却された排ガス流である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記分割流が、前記清浄な排ガス流である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱機関が、前記極低温炭素回収ユニットから前記排気ガス再循環流を受け取る、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記排ガス冷却デバイスと前記極低温炭素回収ユニットとの間に配置された乾燥機をさらに備え、前記乾燥機が、前記排ガス冷却デバイス出口から前記冷却された排ガス流を受け取り、前記冷却された排ガス流から水を除去するよう構成され、これにより、少なくとも部分的に乾燥された排ガス流が形成され、前記乾燥機が、前記極低温炭素回収ユニットおよび前記熱機関と流体連通する出口を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記乾燥機が、乾燥剤または流体を使用する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記排ガス冷却デバイス出口から前記冷却された排ガス流を受け取り、(i)前記冷却された排ガス流を前記乾燥機の入口へ送るか、または(ii)前記排気ガス再循環流を前記熱機関へ送るよう構成された、流量増大デバイスをさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
d.前記熱機関と流体連通する出口を有する、第1の乾燥機と、
e.前記第1の乾燥機の前記出口と流体連通する入口、および前記極低温炭素回収ユニットと流体連通する出口を有する、第2の乾燥機と、
をさらに備え、
f.前記第1の乾燥機が、前記排ガス冷却デバイス出口から前記冷却された排ガス流を受け取り、前記冷却された排ガス流から水を除去するよう構成され、これにより、部分的に乾燥された排ガス流が形成され、前記部分的に乾燥された排ガス流を、前記第1の乾燥デバイス出口の外へ送り、その結果、前記部分的に乾燥された排ガス流の第1の部分が、前記第2の乾燥デバイスの前記入口へ送られ、前記排気ガス再循環流として、前記部分的に乾燥された排ガス流の第2の部分が、前記熱機関へ送られ、
g.前記第2の乾燥機が、前記部分的に乾燥された排ガス流の前記第1の部分から水を除去するよう構成され、これにより、より一層乾燥された排ガス流が形成され、前記極低温炭素回収ユニットへ送られる、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記排ガス冷却デバイスの前に、前記熱機関の下流の前記流体流を冷却するよう構成された、排熱回収熱交換器をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記排熱回収熱交換器が、前記極低温炭素回収ユニットから熱回収流を受け取り、前記熱回収流を温めるよう構成され、これにより前記熱機関の下流の前記流体流が冷却されて、戻り流が形成され、前記戻り流を前記極低温炭素回収ユニットへ送る、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記冷却された排ガス流を、前記極低温炭素回収ユニットが受け取る前に冷却し、前記清浄な排ガス流を、前記液体冷却剤冷却デバイスが受け取る前に温めるよう構成された、補助熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記極低温炭素回収ユニットが、前記冷却された排ガス流を受け取るよう構成された、極低温回収ユニットの乾燥機と、前記極低温回収ユニットの乾燥機から、乾燥された排ガス流を受け取って冷却するよう構成された、極低温回収ユニットの熱交換器とを備え、前記分割流が、前記極低温回収ユニットの熱交換器の下流にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱機関の下流の前記流体流が、前記熱機関の排気流の一部を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱機関の下流の前記流体流が、前記熱機関の排気流全体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
熱機関の排気ガスから二酸化炭素を分離する方法であって、
a.冷却された排ガス流が形成されるように、冷却された液体冷却剤の流れを使用して、前記熱機関の下流の流体流を冷却するステップと、
b.極低温炭素回収工程において、清浄な排ガス流および二酸化炭素の流れが形成されるように、前記冷却された排ガス流から二酸化炭素を分離するステップと、
c.前記冷却された液体冷却剤の流れが形成されるように、前記清浄な排ガス流を使用して、液体冷却剤の流れを冷却するステップと、
d.ステップa.の前記冷却するステップの下流の、分割流の一部を前記熱機関へ送るステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記清浄な排ガス流が、周囲温度以下の温度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップa.で冷却される前記流体流が、前記熱機関の排気ガス流である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
液体流が加熱され、ステップa.で冷却される前記流体流として、排ガス流が形成されるように、前記液体流を使用して前記熱機関の排気流を冷却するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記熱機関の排気流を冷却する一方で、前記液体流が、少なくとも部分的に気化されて蒸気流を形成し、前記方法が、前記蒸気流を蒸気タービンへ送るステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
乾燥された排ガス流を形成するために、ステップa.の前記冷却された排ガス流を乾燥させるステップをさらに含み、ステップb.が、前記乾燥された排ガス流の第1の部分から二酸化炭素を分離するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記冷却された排ガス流を乾燥させるステップが、乾燥剤または流体の使用を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記冷却された排ガス流および前記清浄な排ガス流を冷却するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]この出願は、2021年11月2日に出願された米国仮特許出願第63/274,652号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、概ね、ガスを精製するシステムおよび方法に関し、より詳細には、排気ガスの再循環を使用して、極低温炭素回収システムの供給流の二酸化炭素濃度を増加させる、炭素回収のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]キャリアガスまたはフィードガスのガス精製は、長年にわたって、業界における重要な工程である。燃焼排ガスの処理は、その一例である。燃焼排ガスは、暖炉、オーブン、炉、ボイラ、蒸気発生器、または他の燃焼器からの排気ガスからなる。燃焼燃料源は、石炭、天然ガス、液体炭化水素、黒液、およびバイオマスを含む。燃焼排ガスは、燃焼方法および燃料源によって、組成が大きく異なる。空気を使用する燃焼では、排ガスの大部分は、窒素からなる。非窒素排ガスは、主に二酸化炭素(すなわちCO2)、水、および消費されなかった酸素からなる。発生源によっては、少量の一酸化炭素、窒素酸化物、二酸化硫黄、および他の数百種類の微量の化学物質が存在する。大部分の燃焼排ガス流には、混入した塵埃および煤煙も存在するであろう。
【0004】
[0004]窒素などの他の軽ガスから二酸化炭素を分離することは、炭素回収と呼ばれ、CO2排出およびそれに伴う環境への影響を軽減するのに重要である。このCO2が、温室効果および地球温暖化を拡大させる重要な要因を代表するものと、一般に考えられている。したがって、安全な貯留場所または別の用途に容易に搬送され得る、濃縮されたCO2の流れを生成するために、排ガスからCO2を回収する効率的な方法が明らかに必要である。
【0005】
[0005]残りの排ガスから単位質量のCO2を分離するのに必要な最小作業量は、CO2生成物の純度、分離される(回収される)CO2の割合、ガス中のCO2の初期量によって異なる。初期CO2含有量は、他の2つの変数よりもこの最小エネルギーに大きく影響し、初期CO2含有量が減るにつれて、比エネルギーの必要性(回収されるCO2の単位質量当たりのエネルギー)が増大する。
【0006】
[0006]多くの燃焼システムでは、排気ガスの一部が燃焼器入口に再循環する場合、すなわち、排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)として知られる工程において、排気ガスまたは排ガス中の初期CO2含有量が増加する。EGRは主に、燃焼に必要な量よりも実質的に多くの空気を処理するシステムに適用され、その主な例としては、タービン(シンプルサイクルとコンバインドサイクルとの両方)ならびにレシプロエンジンがある。レシプロエンジンにおけるEGRは、主に汚染を抑制するために使用される一般的な技法であるが、タービンでのEGRは稀である。タービンとレシプロエンジンとの両方が、多くの場合、ピーク燃焼温度を管理するか、または工程の効率を高めるために、再循環される排気ガスを冷却する必要がある。たとえば、タービンが発電機および圧縮機を駆動するコンバインドサイクルでは、排気流が、排熱回収ボイラ(heat recovery steam generator)で冷却され、その結果生じる流れは、復水器に送られる。
【0007】
[0007]炭素回収がより普及するにつれて、効率を高め、かつ/または他の炭素回収技術に他の運用上の利点をもたらす、新しいシステムおよび方法が必要となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本主題には、下記で説明され、特許請求される方法、デバイス、およびシステムにおいて、個別にまたは一緒に具現化され得る、いくつかの態様がある。これらの態様は、単独で使用されてもよく、または本明細書で説明される主題の他の態様と組み合わせて使用されてもよく、これらの態様を一緒に説明していることは、これらの態様を個別に使用すること、またはここに添付された特許請求の範囲に記載されている、個別または別の組合せでかかる態様を特許請求することを、排除することが意図されるものではない。
【0009】
[0009]一態様では、熱機関の排気ガスから二酸化炭素を分離するシステムは、燃料の流れを受け取って消費するよう構成され、その結果熱機関の排気流が生成される、熱機関と、極低温炭素回収システムとを備える。極低温炭素回収システムは、熱機関と流体連通し、排ガス冷却デバイス出口を有する、排ガス冷却デバイスを備える。排ガス冷却デバイスは、熱機関の下流の流体流および冷却された液体冷却剤の流れを受け取るよう構成され、その結果流体流は、冷却された液体冷却剤の流れによって冷却され、冷却された排ガス流が形成される。冷却された排ガス流は、排ガス冷却デバイス出口を通って、排ガス冷却デバイスから出る。極低温炭素回収ユニットは、排ガス冷却デバイス出口と流体連通し、冷却された排ガス流の少なくとも一部を受け取り、冷却された排ガス流の第1の部分から二酸化炭素を分離するよう構成され、これにより清浄な排ガス流および二酸化炭素の流れが形成される。液体冷却剤冷却デバイスは、極低温炭素回収ユニットからの清浄な排ガス流および液体冷却剤の流れを受け取り、清浄な排ガス流を使用して液体冷却剤の流れを冷却するよう構成され、これにより冷却された液体冷却剤の流れが形成され、排ガス冷却デバイスに供給される。熱機関は、極低温炭素回収システムと流体連通し、(i)排気ガス再循環流としての、排ガス冷却デバイスの下流の分割流の一部と、(ii)空気流とを受け取るよう構成される。
【0010】
[0010]別の態様では、熱機関の排気ガスから二酸化炭素を分離する方法は、冷却された排ガス流が形成されるように、冷却された液体冷却剤の流れを使用して、熱機関の下流の流体流を冷却するステップと、極低温炭素回収工程において、清浄な排ガス流および二酸化炭素の流れが形成されるように、冷却された排ガス流から二酸化炭素を分離するステップと、冷却された液体冷却剤の流れが形成されるように、清浄な排ガス流を使用して、液体冷却剤の流れを冷却するステップと、初期の冷却ステップの下流の、分割流の一部を、熱機関へ送るステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0011]本開示のシステムおよび方法の第1の実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
図2】[0012]本開示のシステムおよび方法の第2の実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
図3】[0013]本開示のシステムおよび方法の第3の実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
図4】[0014]本開示のシステムおよび方法の第4の実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]本明細書では、ライン、導管、配管、通路、および同様の構造体、ならびに対応する流れは、両方とも、図に示された同じ要素番号で呼ばれる場合があることに留意されたい。
【0013】
[0016]さらに、本明細書で使用され、当技術分野で知られている、熱交換器とは、相異なる温度の2つ以上の流れ間で、または流れと周囲との間で、間接的な熱交換が行われるデバイスまたはデバイス内の領域である。加えて、本明細書で参照されるすべての熱交換器は、1つまたは複数の熱交換器デバイスに組み込まれてもよく、またはそれぞれが、個別の熱交換器デバイスであってもよい。本明細書で使用される、「連通」、「連通している」などの用語は、別段の指定がない限り、一般に流体連通を指す。また、連通する2つの流体が、混合時に熱交換する場合があるが、かかる交換が、熱交換器内で起こる可能性があるが、かかる交換は、熱交換器内での熱交換と同じものではないみなされるものとする。
【0014】
[0017]本明細書で使用される、「高い」、「中間の」、「温かい」、「冷たい」などの用語は、当技術分野で通例である、同等の流れに関する用語である。
【0015】
[0018]図面に関連して明細書で挿入される参照番号は、他の特徴に関する文脈を提示するために、共通の要素または構成要素に関して明細書で追加説明することなく、1つまたは複数の後続の図で繰り返される場合がある。
【0016】
[0019]特許請求の範囲では、文字(たとえば、a.、b.、およびc.)が、特許請求されたステップを特定するために使用されている。これらの文字は、方法のステップを参照する助けとなるように使用され、特許請求の範囲でかかる順序が具体的に列挙されていない限り、かつ列挙されている場合はその範囲内のみにおいて、特許請求されたステップが実行される順序を示すことが意図されるものではない。
【0017】
[0020]本開示のシステムおよび方法は、排気ガス再循環(EGR)を使用して、熱機関の下流で排気ガスの部分流を分離し、好ましくはガスを冷却し、分離された流れを入ってくる空気と混合することにより、排気ガス中のCO2濃度を高める。本開示のシステムおよび方法は、再循環流に関与する冷却場所および範囲、ならびに炭素回収工程における冷却による熱の、可能性のある使用法に関する革新を実現する。
【0018】
[0021]再循環された排気流は、シンプルサイクルタービンおよびコンバインドサイクルタービンの場合、圧縮機の上流で吸入空気と混合する。圧縮機を出た、圧縮された混合流は、タービンに送られ、燃焼および冷却の助けとなる。この開示における図は、熱機関である、コンバインドサイクルシステムを示している。しかし、同じ処置が、シンプルサイクルタービン、内燃機関、および排気ガスが空気供給流の一部の代わりになることができる任意のシステムなど、他の熱機関に適用される。
【0019】
[0022]本開示のシステムおよび方法の第1の実施形態を示す、工程流れ図および概略図が、図1に提示されている。燃料の流れ10は、熱機関8によって受け取られ、消費される。一実施形態では、熱機関は、燃料の流れを受け取るコンバインドサイクルのタービン12を備えることができる。タービン12は、その結果、シャフト16を介して圧縮機14に動力を供給する。タービンはまた、発電機(図示せず)または他のシステム構成要素に動力を供給することもできる。単なる一例として、燃料の流れ10は、天然ガスを含むことができる。
【0020】
[0023]代替実施形態では、熱機関8は、シンプルサイクルタービン、内燃機関、または排気ガスが空気供給流の一部の代わりになることができる任意のシステムを含んでもよい。
【0021】
[0024]排気ガス流18は、熱機関8(図示の実施形態ではタービン12である)を出て、部分的または全体的に、図示の実施形態では排熱回収ボイラ(HRSG:heat recovery steam generator)22に統合された、任意選択の熱回収熱交換器に送られる。当技術分野で知られているように、HRSGは、排ガス流18および液体流24(通常は水)を受け取る、1つまたは複数の熱交換器を備える。液体流は、HRSG22内で、排気ガス流によって温められ、その結果、蒸気流26が生成される。蒸気は、蒸気タービン32に送られ、蒸気タービンを回転させ、蒸気タービンは、発電機または他の構成要素に動力を供給するために使用され得る。蒸気タービンから、蒸気タービンの排気流34が出る一方で、排ガス流36として冷却されたタービンの排気流が、HRSGから出る。排ガス流36は、一部または全部が、極低温炭素回収システム40の冷却塔38などの、排ガス冷却デバイスに送られる。冷却塔38の代わりに、当技術分野で知られている、液体スプレーを備える水平ダクトを含むがこれに限定されるものではない、代替冷却デバイスが使用されてもよい。
【0022】
[0025]極低温炭素回収システム40の冷却塔42などの、液体冷却剤冷却デバイスは、液体冷却剤供給流44を受け取り、下記で説明されるように冷却される。冷却塔42の代わりに、当技術分野で知られている、液体スプレーを備える水平ダクトを含むがこれに限定されるものではない、代替冷却デバイスが使用されてもよい。単なる一例として、液体冷却剤は水であってもよい。冷却された液体冷却剤の流れ46は、排ガス冷却塔38へ流れる。排ガス流36が、排ガス冷却塔38を通り、排ガス冷却塔38内で液体冷却剤の流れ46と接触することにより、冷却された排ガス流48が、排ガス冷却塔52から出る。温められた液体冷却剤の流れ54は、排ガス冷却塔12の底部から出る。
【0023】
[0026]冷却された排ガス流48の一部は、排気ガス再循環流56として分岐する。この流れは、図示の実施形態では圧縮機14を備える熱機関8に送り返され、圧縮機は、冷却空気流58も受け取る。蒸気56および58は、熱機関の圧縮機14内で組み合わされて圧縮され、これにより圧縮された混合流62が形成される。この流れは、タービン12に送られ、熱機関8内での冷却および燃焼の助けとなる。
【0024】
[0027]単なる一例として、排気ガス再循環流56を形成するために、冷却された排ガス流48の約30%が分流されてもよい。単なる例として、流れ48の一部を分流して流れ56を形成するために、ライン48または56に配置される分流器、逸らせ板、または送風機が使用されてもよい。
【0025】
[0028]本開示のシステムの代替実施形態では、排気ガス再循環蒸気56は、極低温炭素回収システム40の排ガス冷却塔38の後ろの、任意の代替場所から分岐してもよい。たとえば、排気ガス再循環流56は、極低温回収ユニット64の流れから、または清浄な排ガス流72から分岐することができ、その両方が下記で説明される。
【0026】
[0029]冷却された排ガス流の、排気ガス再循環流56が流れ48から分流された後に残る部分は、炭素回収供給流66として、極低温炭素回収システム40の極低温炭素回収ユニット64に送られる。炭素回収供給流66は、上記で説明された排気ガス再循環(EGR)により、(EGRのないシステムと比較されると)二酸化炭素濃度がより高く、質量流量がより軽い。単なる一例として、本開示のシステムの実施形態は、炭素回収供給流66の二酸化炭素濃度を、濃度レベル4%から濃度10%まで高めることができる。炭素回収供給流66の二酸化炭素濃度をさらに高めるために、より大部分の冷却された排ガス流48が、または上記で言及された他の流れが、流れ56へ分流されてもよい。
【0027】
[0030]極低温炭素回収ユニット64に入る炭素回収供給流66は、二酸化炭素が分離され、流れ68として極低温炭素回収ユニット64の外へ送られるように、処理される。結果として得られる清浄な排ガス流72も、極低温炭素回収ユニット64から出る。いくつかの実施形態では、清浄な排ガス流は、周囲温度以下の温度であってもよく、極低温炭素回収システムの冷却液冷却塔42に送られ、これにより、冷却塔42に入る、冷却液の流れ44も冷却される。結果として得られる、温められた清浄な排ガス流は、排出口ガス流74として冷却液冷却塔42から出る。
【0028】
[0031]当技術分野で知られている任意の炭素回収技術が、炭素回収システム40または極低温炭素回収ユニット64で使用されてもよい。単なる例として、炭素回収システム40または極低温炭素回収ユニット64は、すべてがSustainable Energy Solutions,Inc.に付与され、これらのそれぞれの内容が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,250,012号、米国特許第9,410,736号、米国特許第9,766,011号、米国特許第10,537,823号、米国特許第10,724,793号、米国特許第10,213,731号、米国特許第10,739,067号、米国特許第10,969,169号、および米国特許第10,995,984号、ならびにすべてがSustainable Energy Solutions,Inc.によって所有され、これらのそれぞれの内容がまた、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2020/0318900号、米国特許出願公開第2021/0299591号、米国特許出願公開第2018/0031315号、および米国特許出願公開第2019/0192999号に開示された技術を、使用することができる。
【0029】
[0032]システムの代替実施形態では、排ガス冷却塔38および/または液体冷却剤冷却塔42は、極低温炭素回収ユニット64に統合されてもよく、または極低温炭素回収ユニットの一部であってもよい。
【0030】
[0033]図2の実施形態では、送風機もしくは補助扇風機82、または他の流量増大デバイス、ならびに乾燥塔84および86などの一対の乾燥機が、図1の排ガス冷却塔38と極低温炭素回収ユニット64との間の極低温炭素回収システム40に追加されている。図2には2台の乾燥塔が示されているが、システムは、その代わりに、単一の乾燥塔または3台以上の乾燥塔を特徴とすることもできる。さらに、乾燥塔84および86の代わりに、当技術分野で知られている、代替タイプの乾燥機が使用されてもよい。加えて、システムの代替実施形態では、送風機または補助扇風機82が省略されてもよい。1台または複数の送風機または補助扇風機が、その代わりに、ライン94、96、および/または98のいずれかまたはすべてに配置されてもよい。
【0031】
[0034]図2に示されているように、冷却された排ガス流48は、送風機または補助扇風機82を通過し、次いで、第1の乾燥塔84に送られる。
【0032】
[0035]乾燥塔84の上部は、乾燥剤液体流92を受け取る。冷却された排ガス流48は、流量増大デバイス82を出た後、乾燥塔84に入り、そこで乾燥剤の流れと接触する。乾燥剤の流れは、その結果、冷却された排ガス流から、水蒸気、および他の潜在的な、二酸化炭素などの他の成分を回収して、流れ92として出る。
【0033】
[0036]単なる例として、乾燥剤液体流は、水と、以下の2つの群のうちのいずれかによる化合物との混合物からなり得る。i)炭酸カリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムマグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、および塩化カルシウムを含む、イオン性化合物、ならびにii)グリセロール、アンモニア、プロピレングリコール、エチレングリコール、エタノール、およびメタノールを含む、可溶性有機化合物。
【0034】
[0037]量を減らされた水を含む、部分的に乾燥された排ガス流94が、乾燥塔84の上部から出る。部分的に乾燥された排ガス流94の一部は、図1の実施形態と同様に、排気ガス再循環流96として分岐する。この流れは、熱機関8の圧縮機14に送り返され、圧縮機は、冷却空気流58も受け取る。蒸気96および58は、圧縮機14内で組み合わされて圧縮され、これにより圧縮された混合流62が形成される。この流れは、熱機関8のタービン12に送られ、冷却および燃焼の助けとなる。
【0035】
[0038]部分的に乾燥された排ガス流94の残りの部分は、流れ98として、極低温炭素回収システム40の第2の乾燥塔86へ流れる。第1の乾燥塔84と同様に、第2の乾燥塔86の上部は、乾燥剤液体流102を受け取る。流れ98は、第2の乾燥塔86に入り、そこで乾燥剤の流れと接触する。乾燥剤の流れは、その結果、部分的に乾燥された排ガス流98から、水蒸気、および他の潜在的な、二酸化炭素などの他の成分を回収して、流れ104として出る。
【0036】
[0039]より一層乾燥された排ガス流106は、第2の乾燥塔86を出て極低温炭素回収ユニット64に送られ、そこで図1について上記で説明された、さらなる処理が行われる。
【0037】
[0040]いくつかの実施形態では、第1および第2の乾燥塔84および86内で、冷却された排ガス流48から、水蒸気のうちの1%から100%を除去することができる。
【0038】
[0041]当技術分野で知られている、代替タイプの乾燥機が図2の乾燥剤式乾燥機84および86の代わりになってもよい。
【0039】
[0042]図2の実施形態は、排気ガス再循環流96中の水分含有量を減らすことにより、流れ96の温度をより低くすることを可能にする。より具体的には、流れ96の水分含有量を減らすことにより、熱機関8の圧縮機14内での凍結は、はるかに低温になるまで起こらない。流れ96がより低温であることが、圧縮機14を通る質量流量を増加させ、その結果、熱機関8のタービン12の出力が増加する。本開示のシステムのいくつかの実施形態では、部分的に乾燥した流れ94の温度が、したがって排気ガス再循環流96の温度が、0℃程度に低くなり得る。
【0040】
[0043]システムの代替実施形態では、排ガス冷却塔38、液体冷却剤冷却塔42、流量増大デバイス82、ならびに/または第1および第2の乾燥塔84および86の一方もしくは両方が、極低温炭素回収ユニット64に統合されてもよく、または極低温炭素回収ユニット64の一部であってもよい。さらに、代替実施形態では、炭素回収ユニットの乾燥機が、乾燥機84および86の代わりに、極低温炭素回収熱交換器と共に、炭素回収ユニット64内に設けられてもよく、極低温炭素回収ユニットの乾燥機は、冷却された排ガス流を受け取って乾燥し、これにより乾燥された排ガス流が形成され、極低温炭素回収ユニットの熱交換器は、乾燥された排ガス流を受け取ってさらに冷却し、排気ガス再循環流として、得られた流れの一部が、熱機関に送られる。
【0041】
[0044]図3のシステムでは、極低温炭素回収システム40の排ガス冷却塔38および液体冷却剤冷却塔42と、極低温炭素回収ユニット64との間に、補助熱交換器112が追加されている。補助熱交換器112は、冷媒の流れ114を受け取り、これにより冷却された排ガス流48の、さらなる冷却を行う。これは、圧縮機14を通る質量流量を増やし、したがってタービン12の出力を増大させるために、排気ガス再循環流56を、より低温にすることを可能にする。補助熱交換器112はまた、清浄な排ガス流72のさらなる冷却も実現し、液体冷却剤冷却塔42内の冷却温度を、より低くすることを可能にする。
【0042】
[0045]温められた冷媒の流れ116は、補助熱交換器112を出て、冷媒の流れ114を生成するために、閉ループ冷凍サイクルで圧縮および冷却され得る。別法として、冷媒の流れ114を生成するために、開ループ冷凍システムが使用されてもよい。
【0043】
[0046]単なる例として、冷媒の流れ114は、プロパン、混合冷媒、R134A、または当技術分野で知られている、他の任意の冷媒を含むことができる。加えて、図3の補助熱交換器112の代わりに、当技術分野で知られている代替冷却デバイスが使用されてもよい。
【0044】
[0047]図3では、極低温炭素回収システム40の一部として示されているが、代替実施形態では、補助熱交換器112は極低温炭素回収システム40の一部でなくてもよい。
【0045】
[0048]図4のシステムでは、図2のHRSG22と極低温炭素回収システム40の排ガス冷却塔38との間に、補助熱回収熱交換器120が追加されている。補助熱回収熱交換器120は、極低温炭素回収ユニット64から冷却流124を受け取り、これにより、排ガス冷却塔38の前で、排ガス流36に対してさらなる冷却を行う。単なる一例として、冷却流124および温められた戻り流126は、極低温炭素回収ユニット64の蒸留塔によるリボイラサービスであってもよい。
【0046】
[0049]図4では、極低温炭素回収システム40の一部として示されているが、代替実施形態では、補助熱回収熱交換器120は極低温炭素回収システム40の一部でなくてもよい
【0047】
[0050]本開示の好ましい実施形態が図示され説明されてきたが、当業者には、本開示の精神、以下の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、その中で変更および修正が行われ得ることが明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】