(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】FCGammarおよびC1Qへの結合が無効化されたFCバリアント
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20241025BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241025BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241025BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241025BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241025BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241025BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241025BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
C07K16/00
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61P37/02
A61K39/395 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525844
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022048609
(87)【国際公開番号】W WO2023081160
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514283401
【氏名又は名称】ビステラ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサン, カルシク
(72)【発明者】
【氏名】オリンスキ, ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン, ラムキ
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ, アディティ
(72)【発明者】
【氏名】バブコック, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】シュリバー, ザッカリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD21
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、有意に低減したADCC、ADCP、およびCDC機能を有するFcバリアントを提供する。本明細書に記載されるように、本開示は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1q全てへの結合を無効化する変異の新規の組み合わせの同定に部分的に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、235位および265位にアミノ酸置換を含み、265位の前記アミノ酸がGlyに置換されていて、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記Fcバリアントが、234、237、329、330、または331位に1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234位および265位にアミノ酸置換を含み、234位の前記アミノ酸がValに置換されていて、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項4】
野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、F234位、L235位およびD265位にアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項5】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234V、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項6】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、F234V、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項5に記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234F、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項8】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、L234F、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項9】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項10】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項9に記載の単離ポリペプチド。
【請求項11】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項12】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、L234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項11に記載の単離ポリペプチド。
【請求項13】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項14】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む、請求項13に記載の単離ポリペプチド。
【請求項15】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項16】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項15に記載の単離ポリペプチド。
【請求項17】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項15に記載の単離ポリペプチド。
【請求項18】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項19】
前記Fcバリアントが、IgG1 Fc領域であり、L234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む、請求項18に記載の単離ポリペプチド。
【請求項20】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項21】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項20に記載の単離ポリペプチド。
【請求項22】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項23】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む、請求項22に記載の単離ポリペプチド。
【請求項24】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項25】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む、請求項24に記載の単離ポリペプチド。
【請求項26】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項27】
前記Fcバリアントが、IgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含む、請求項26に記載の単離ポリペプチド。
【請求項28】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項29】
前記Fcバリアントが、IgG2 Fc領域であり、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む、請求項28に記載の単離ポリペプチド。
【請求項30】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項31】
前記Fcバリアントが、IgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む、請求項30に記載の単離ポリペプチド。
【請求項32】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、235E、D265GおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項33】
前記Fcバリアントが、IgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、およびP329Gのアミノ酸置換を含む、請求項32に記載の単離ポリペプチド。
【請求項34】
野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドであって、前記Fcバリアントが、D265Gのアミノ酸置換および1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基がEUインデックスに従って番号付けされる、単離ポリペプチド。
【請求項35】
前記1つ以上のアミノ酸置換が、234、235、237、330、331、329、および/または328位にある、請求項34に記載の単離ポリペプチド。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の単離ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項38】
請求項1~35のいずれか一項に記載の単離ポリペプチドを作製する方法であって、抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、前記抗体またはその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で前記細胞を培養することと、を含む、方法。
【請求項39】
請求項1~35のいずれか一項に記載の単離ポリペプチドの治療有効量を投与することによって、疾患または障害を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫反応は、身体を侵して、感染または疾患を引き起こす異物から、身体がそれ自体を防御する機構である。この機構は、宿主に産生または投与された抗体が、その可変領域を介して抗原に結合する能力に基づく。抗原が抗体によって結合されると、抗原は、抗体の定常領域またはFcドメインによってしばしば部分的に媒介されて破壊される標的となる。
【0002】
例えば、抗体のFcドメインの、1つの活性は、標的抗原、例えば細胞病原体の溶解を支援することができる補体タンパク質に結合することである。Fc領域の別の活性は、他の免疫効果を誘発する能力を有する免疫細胞、またはいわゆるエフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)に結合することである。これらの免疫効果には、例えば、免疫活性化因子の放出、抗体産生の調節、エンドサイトーシス、食作用、および細胞を殺すことが含まれる。一部の臨床用途では、これらの反応は抗体の有効性に重要である一方、他の場合では、望ましくない副作用を誘発する。エフェクター媒介性副作用の一例は、急性発熱反応を引き起こす炎症性サイトカインの放出である。別の例は、抗原担持細胞の長期欠失である。
【0003】
抗体のエフェクター機能は、Fc領域を欠く抗体断片(例えば、Fab、Fab’2、または一本鎖抗体(sFv)など)を使用することによって回避することができるが、これらの断片は、短縮した半減期を有し、2つの抗原結合部位(例えば、Fab抗体断片および一本鎖抗体(sFv)の場合)の代わりに1つの抗原結合部位のみを有し、精製がより困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、とりわけ、有意に低減したADCC、ADCPおよびCDC機能を有するFcバリアントを提供する。本明細書に記載されるように、全てのFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qへの結合を無効にし、FcRnに結合するためのその能力を維持する、変異の新規の組み合わせの同定に、本開示は部分的に基づく。
【0005】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235位および265位にアミノ酸置換を含み、265位のアミノ酸はGlyに置換されていて、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0006】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、237、329、330または331位に1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234および237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、237、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、329位にアミノ酸置換をさらに含む。
【0007】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234位および265位にアミノ酸置換を含み、234位のアミノ酸はValに置換されていて、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0008】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、235および237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、235、237、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、235位にアミノ酸置換をさらに含む。
【0009】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、F234位、L235位およびD265位にアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0010】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0011】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、F234V、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、F234V、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0012】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0013】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0014】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0015】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0016】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0017】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0018】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0019】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0020】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0021】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235A、G237A、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。 一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、234F、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L234V、L235A、G237A、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。 一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0022】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0023】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0024】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0025】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0026】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0027】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0028】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0029】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む。
【0030】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0031】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含む。
【0032】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0033】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0034】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0035】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、A235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0036】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235E、D265GおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0037】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、A235E、D265G、およびP329Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、およびP329Gのアミノ酸置換を含む。
【0038】
一態様では、本発明は、とりわけ、本発明のFcバリアントを含む単離ポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0039】
一態様では、本発明は、とりわけ、本発明のFcバリアントを含む単離ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供する。
【0040】
一態様では、本発明は、疾患または障害を治療する方法を提供し、前記方法は、Fcバリアントを含む単離ポリペプチドの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。一部の実施形態では、疾患または障害は、ANCA関連血管炎である。一部の実施形態では、疾患または障害は、C3腎症(C3G)である。一部の実施形態では、疾患または障害は、自己免疫疾患である。一部の実施形態では、疾患または障害は、滲出型加齢黄斑変性(wAMD)である。一部の実施形態では、疾患または障害は、受動型Heymann腎炎(NHP)である。一部の実施形態では、疾患または障害は、コラーゲン抗体惹起関節炎(CAIA)である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】
図1A~Dは、実施例2に記載されるアッセイによって決定された、様々なFcバリアントで操作されたAb1およびAb2の、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、およびC1qへの結合をそれぞれ示す一連の例示的なグラフである。
【
図1B】
図1A~Dは、実施例2に記載されるアッセイによって決定された、様々なFcバリアントで操作されたAb1およびAb2の、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、およびC1qへの結合をそれぞれ示す一連の例示的なグラフである。
【
図1C】
図1A~Dは、実施例2に記載されるアッセイによって決定された、様々なFcバリアントで操作されたAb1およびAb2の、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、およびC1qへの結合をそれぞれ示す一連の例示的なグラフである。
【
図1D】
図1A~Dは、実施例2に記載されるアッセイによって決定された、様々なFcバリアントで操作されたAb1およびAb2の、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、およびC1qへの結合をそれぞれ示す一連の例示的なグラフである。
【
図2A】
図2Aは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10、およびvFc17で操作されたAb1の発現レベルを示す例示的な棒グラフおよび表である。
【
図2B】
図2Bは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc17で操作されたAb1のタンパク質A結合特性を示す例示的なグラフおよび表である。
【
図3A】
図3Aは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1の、FcγRIへの結合を示す例示的なグラフであり、本発明のFcバリアントが、野生型IgG1およびIgG4と比較して、FcγRIへのFcの結合を有意に減少させることを実証している。
【
図3B】
図3Bは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1の、FcγRIIaおよびFcγRIIbへの結合を示す例示的なグラフであり、本発明のFcバリアントが、野生型IgG1およびIgG4と比較して、FcγRIIaおよびFcγRIIbへのFcの結合を有意に減少させることを実証している。
【
図3C】
図3Cは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1の、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbへの結合を示す例示的なグラフである。
【
図3D】
図3Dは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1の、C1qへの結合を示す例示的なグラフである。
【
図4A】
図4Aは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1によるADCCの誘導倍率(fold induction)を示す例示的なグラフである。
【
図4B】
図4Bは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1によるADCPの誘導倍率を示す例示的なグラフである。
【
図4C】
図4Cは、野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10またはvFc17で操作されたAb1によるCDCの誘導倍率を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に結合する(と免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。「結合する」または「と免疫反応する」とは、抗体が、所望の1つ以上の抗原決定基と反応することを意味する。抗体には、抗体断片が含まれる。抗体はまた、ポリクローナル、モノクローナル、キメラdAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2断片、scFv、およびFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定されない。抗体は、全抗体、または免疫グロブリン、または抗体断片であってもよい。
【0043】
Fcドメイン:本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。この用語には、天然配列のFc領域およびバリアントのFc領域が含まれる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延びている。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもよいし、存在しなくてもよい。本明細書に別段の指定がない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従っている。
【0044】
Fabアーム交換:用語「Fabアーム交換」は、IgG4抗体が「半分子」を交換できる現象を指し、本明細書ではFabアーム交換と称する活性である。特に二重特異性分子またはバイパラトピック分子では、これにより、未知の特異性を有する機能的に一価の抗体がもたらされ、したがって、治療有効性が低下する可能性がある。Fabアーム交換を阻害するために、Fcドメインに変異を導入することができる。S228P変異は、インビトロおよびインビボの両方でIgG4 FAEを検出不可能なレベルまで防止できることが知られている。
【0045】
ヒト化抗体:用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含有する、特定の免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはその断片である、非ヒト(例えば、マウス)抗体を含む。典型的には、ヒト化抗体は、相補的決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDRからの残基によって置換されるヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,Nature 321:522-525,1986、Riechmann et al.,Nature 332:323-327,1988、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536,1988)。
【0046】
モノクローナル抗体:用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、わずかな量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に向けられる。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。
【0047】
多重特異性抗体:本明細書で使用される場合、用語「多重特異性抗体」は、同一または異なる標的上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する結合分子、抗体、またはその抗原結合断片を指す。
【0048】
バイパラトピック抗体:本明細書で使用される場合、用語「バイパラトピック抗体」は、同じ標的抗原分子上の2つの異なる非重複エピトープに結合する能力を有する多重特異性抗体を指す。
【0049】
KiまたはKd:本明細書で使用される場合、用語「Kd」は、本明細書で使用される場合、当技術分野で知られている特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指し、対象組成物について、その同族リガンドへの標的化部分の結合親和性のパラメータとして適用されるであろう。
【0050】
IC50:本明細書で使用される場合、用語「IC50」は、リガンドアゴニストの最大生物学的応答の半分を阻害するために必要な濃度を指し、一般的に競合結合アッセイによって決定される。
【0051】
EC50:本明細書で使用される場合、用語「EC50」は、半最大有効濃度を指す。EC50という用語は、指定された曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する薬物、抗体または毒性物質の濃度を指す。より簡単には、EC50は、所望の効果の50%を得るために必要な濃度として定義することができる。
【0052】
リンカー: 本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、2つの分子を接続し、多くの場合、2つの分子を好ましい配置に置くのに役立つ分子または分子群(モノマーまたはポリマーなど)を指す。分子を互いに共有結合するために、いくつかの戦略を使用し得る。これらには、タンパク質またはタンパク質ドメインのN末端とC末端との間のポリペプチド結合、ジスルフィド結合を介した結合、および化学架橋試薬を介した結合が含まれるが、これらに限定されない。この実施形態の一態様では、リンカーは、組換え技術またはペプチド合成によって生成される、ペプチド結合である。リンカーは、柔軟性を提供するアミノ酸残基を含有してもよい。したがって、リンカーペプチドは、主に以下のアミノ酸残基を含み得る:Gly、Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、それらが所望の活性を保持するように、2つの分子が、互いに対して正しい立体構造をとるように、2つの分子を連結するのに適切な長さを有するべきである。この目的に適した長さには、少なくとも1つおよび30以下のアミノ酸残基が含まれる。一実施形態では、リンカーは、約1~30アミノ酸長である。別の実施形態では、リンカーは、約1~15アミノ酸長である。さらに、リンカーペプチドに含有するために選択されるアミノ酸残基は、ポリペプチドの活性を著しく妨げない特性を呈するべきである。
【0053】
scFv:本明細書で使用される場合、用語「scFv」は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドと結合した免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。
【0054】
Fab : 本明細書で使用される場合、用語「Fab」は、その抗原結合領域またはその可変領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む抗体断片を指す。
【0055】
インビトロ : 本明細書で使用される場合、用語「インビトロ」は、多細胞生物体内ではなく、例えば、試験管または反応容器、細胞培養など、人工環境で起こる事象を指す。
【0056】
インビボ:本明細書で使用される場合、用語「インビボ」は、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物体内で起こる事象を指す。細胞ベースのシステムという観点から、この用語は、(例えば、インビトロシステムとは対照的に)生きた細胞内で起こる事象を指すように使用され得る。
【0057】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前および出生後の形態が含まれる。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は、疾患の診断または治療のために医療提供者を訪れる人を指す、患者とすることができる。用語「対象」は、本明細書では「個人」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に罹患するかまたは罹患しやすいのであり得るが、疾患または障害の症状を見せてもよいし、見せなくてもよい。
【0058】
機能不全: 本明細書で使用される場合、用語「機能不全」は、異常な機能を指す。分子(例えば、タンパク質)の機能不全は、そのような分子に関連する活性の増加または減少によって引き起こされる場合がある。分子の機能不全は、分子自体に関連する欠陥、または分子と直接的もしくは間接的に相互作用するか、もしくは分子を調節する他の分子に関連する欠陥によって引き起こされ得る。
【0059】
誘導体:本明細書で使用される場合、用語「誘導体」は、抗体、またはC5aR1抗体に関連して使用される場合、元の分子の機能および/または特性の少なくとも一部を保持する、元の分子の配列の一部を有する部分を指す。
【0060】
同一性:本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、当技術分野で知られている2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の、これらの分子の配列を比較する、配列間の関係を指す。関係は、行うことによって決定される。当技術分野では、「同一性」はまた、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度も意味し、場合によっては、複数のヌクレオチド配列または複数を意味する。それはアミノ酸配列文字列間の一致によって決定され得る。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって対処されるギャップアライメント(存在する場合)と、2つ以上の配列のより小さい配列との間を意味する。同一性の一致パーセントを測定する。
【0061】
類似性または類似:本明細書で使用される場合、用語「類似性」は、関連する概念に関して当技術分野で使用されるが、「同一性」とは対照的に、「類似性」は、同一性および保存的置換の一致の両方を指す。2つのポリペプチド配列が、例えば、20個のアミノ酸のうち10個の同一のアミノ酸を有し、残りが、全て非保存的置換である場合、同一性のパーセントと類似性のパーセントは、両方とも50%であることを含み、関連性を示す。同じ例では、さらに5つの保存的置換がある場合、同一性のパーセントは50%のままであるが、類似性のパーセントは75%である。したがって、保存的置換がある場合、2つのポリペプチド間の類似性のパーセントは、これら2つのポリペプチド間の同一性のパーセントよりも高い。
【0062】
治療:本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、特定の疾患、障害、および/または状態の、1つ以上の症状または特徴を、部分的または完全に軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症遅延、重症度の低減、および/または発生率を低減するために使用される任意の方法を指す。治療は、疾患と関連した病状の発症リスクを減少させる目的で、疾患の兆候を示さない対象および/または疾患の初期兆候のみを示す対象に施され得る。
【0063】
ベクター:用語「ベクター」は、外来性遺伝物質を複製または発現することができる別の細胞に人為的に運ぶために使用されるポリヌクレオチド(通常はDNA)を指す。非限定的な例示的なベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、および人工染色体が挙げられる。このようなベクターは、細菌およびウイルス源を含む様々な源に由来し得る。プラスミドの非限定的な例示的なウイルス源は、アデノ随伴ウイルスである。
【0064】
本開示の様々な態様を、以下のセクションで詳細に説明する。セクションの使用は、本開示を限定すること意図しない。各セクションは、本開示の任意の態様に適用することができる。本出願では、別段の記載がない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、単数および複数の両方の指示対象を含む。
詳細な説明
【0065】
抗体のFc領域は、抗体細胞傷害活性を制御し、抗体の血清半減期に影響を与える可能性がある。しかしながら、治療的状況では、抗体の細胞傷害性エフェクター機能は、しばしば望ましくないのであり、宿主免疫防御を活性化することによって、安全性の懸念および望ましくない副作用を生じさせ得る。追加の活性化が有害である場合、Fc-ガンマ受容体に結合できないように、IgG FcドメインをサイレンシングするためにFc操作が必要である。
【0066】
本開示は、IgG Fcドメインのサイレンシングに特に効果的である新しいクラスのFcバリアントを記載する。注目すべきことに、本発明の組み合わせFc変異は新規であり、Fcガンマ受容体およびC1qへの結合を低減し、望ましくないADCC、ADCP、およびCDCエフェクター機能を効果的に低減する。
Fc領域およびそのエフェクター機能
【0067】
抗体のFc領域は、いくつかのFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる数々の重要な機能的能力を付与する。IgGについては、Fc領域は、IgドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ2へつながるN末端ヒンジを含む。IgGクラスに対するFc受容体の重要なファミリーは、Fcガンマ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞アームとの間の伝達を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。ヒトでは、このタンパク質ファミリーは、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)、アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)、およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)、ならびにアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)を含む(Jefferis et al., 2002, Immunol Lett 82:57-65、参照により組み込まれる)。これらの受容体は、典型的には、Fcへの結合を媒介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内の一部のシグナル伝達事象を媒介し得る細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、肥満細胞、血小板、B細胞、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびγδT細胞を含む様々な免疫細胞で発現される。Fc/FcγR複合体の形成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原の部位に動員し、典型的には、細胞内のシグナル伝達事象、ならびに炎症メディエーターの放出、B細胞活性化、エンドサイトーシス、食作用、および細胞傷害性攻撃などの重要な後続の免疫反応をもたらす。細胞傷害性および貪食性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊する潜在的な機構である。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる(Raghavan et al., 1996, Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220; Ghetie et al., 2000, Annu Rev Immunol 18:739-766; Ravetch et al., 2001, Annu Rev Immunol 19:275-290、参照により組み込まれる)。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後、標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性貪食(ADCP)と呼ばれる。FcγRIIa(pdbアクセッションコード1H9V)(Sondermann et al., 2001, J Mol Biol 309:737-749)(pdbアクセッションコード1 FCG)(Maxwell et al., 1999, Nat Struct Biol 6:437-442)、FcγRIIb(pdbアクセッションコード2FCB)(Sondermann et al., 1999, Embo J 18:1095-1103)、およびFcγRIIIb(pdbアクセッションコード1E4J)(Sondermann et al., 2000, Nature 406:267-273、参照により組み込まれる)を含む、ヒトFcγRの細胞外ドメインのいくつかの構造が解明されている。全てのFcγRは、Cγ2ドメインのN末端および先行するヒンジで、Fc上の同じ領域に結合する。この相互作用は、構造的によく特徴付けられており(Sondermann et al., 2001, J Mol Biol 309:737-749、参照により組み込まれる)、ヒトFcγRIIIbの細胞外ドメインに結合したヒトFcのいくつかの構造が解明されていて(pdbアクセッションコード1E4K)(Sondermann et al., 2000, Nature 406:267-273)(pdbアクセッションコード1IISおよび1IIX)(Radaev et al., 2001, J Biol Chem 276:16469-16477、参照により組み込まれる)、ならびにヒトIgE Fd/FcεRIa複合体(pdbアクセッションコード1F6A)(Garman et al., 2000, Nature 406:259-266、参照により組み込まれる)の構造を有する。
【0068】
Fc上の重複しているが別個の部位は、補体タンパク質C1qのインターフェースとして機能する。Fc/FcγR結合がADCCを媒介するのと同様に、Fc/C1q結合は補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する。C1qは、セリンプロテアーゼC1rおよびC1sと複合体を形成して、C1複合体を形成する。C1qは、6つの抗体を結合することができるが、補体カスケードを活性化するには、2つのIgGへの結合で十分である。FcγRとのFc相互作用に類似して、異なるIgGサブクラスは、C1qに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3は、典型的には、IgG2およびIgG4よりもFcγRに実質的により良く結合する。
【0069】
Cγ2ドメインとCγ3ドメインとの間のFc上の部位は、新生児受容体FcRnとの相互作用を媒介し、その結合は、細胞内に取り込まれた抗体をエンドソームから血流に戻してリサイクルする(Raghavan et al., 1996, Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220; Ghetie et al., 2000, Annu Rev Immunol 18:739-766、参照により組み込まれる)。このプロセスは、全長分子の大きなサイズに起因する腎臓濾過の排除と相まって、1~3週間の範囲の好ましい抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合はまた、抗体輸送において重要な役割を果たす。Fc上のFcRnの結合部位はまた、細菌タンパク質AおよびGが結合する部位である。これらのタンパク質による緊密な結合は、典型的には、タンパク質精製中にタンパク質Aまたはタンパク質G親和性クロマトグラフィーを採用することによって抗体を精製する手段として利用される。それ故に、Fc上のこの領域の忠実性は、抗体の臨床特性およびそれらの精製の両方にとって重要である。ラットFc/FcRn複合体(Martin et al., 2001, Mol Cell 7:867-877、参照により組み込まれる)、ならびにタンパク質AおよびGとのFcの複合体(Deisenhofer, 1981, Biochemistry 20:2361-2370; Sauer-Eriksson et al., 1995, Structure 3:265-278; Tashiro et al., 1995, Curr Opin Struct Biol 5:471-481、参照により組み込まれる)の、利用可能な構造は、これらのタンパク質とFcの相互作用に関する洞察を提供する。
【0070】
本発明は、様々な状況で有用な、最適化されたFcバリアントを対象とする。上記で概説したように、現在の抗体療法は、様々な問題に悩まされている。本発明は、ADCC、ADCP、およびCDCなどの細胞傷害性エフェクター機能を媒介する能力の無効化を介した、抗体の治療有効性を増強するための有望な手段を提供する。
本発明のFcバリアント
【0071】
本発明のFcバリアントは、様々なFcポリペプチドでの使用を見出し得る。本発明のFcバリアントを含むFcポリペプチドは、本明細書では、「本発明のFcポリペプチド」と呼ばれる。本発明のFcポリペプチドは、抗体またはFc融合物などのより大きなポリペプチドの状況で、本発明のFcバリアントを含むポリペプチドを含む。すなわち、本発明のFcポリペプチドは、本発明のFcバリアントを含む抗体およびFc融合物を含む。本明細書で使用される場合、「本発明の抗体」とは、本発明のFcバリアントを含む抗体を意味する。本明細書で使用される場合、「本発明のFc融合物」とは、本発明のFcバリアントを含むFc融合物を指す。本発明のFcポリペプチドはまた、単離Fcと称される、Fc領域以外の追加のポリペプチド配列をほとんどまたは全く含まないポリペプチドを含む。本発明のFcポリペプチドはまた、Fc領域の断片を含む。以下に記載されるように、本発明の前述のFcポリペプチドのいずれかを、1つ以上の融合パートナーまたはコンジュゲートパートナーに融合して、所望の機能的特性を提供し得る。
【0072】
本明細書に記載の親Fcポリペプチドは、広範囲の供給源に由来してもよく、任意の生物由来の1つ以上のFc遺伝子によって実質的にコードされてもよく、その任意の生物には、ヒト、マウスおよびラットを含むがこれらに限定されない齧歯類、ウサギおよびノウサギなどのウサギ目、ラクダ、ラマ、およびヒトコブラクダなどのラクダ科、ならびに原猿類、広鼻猿類(新世界ザル)、オナガザル上科(旧世界ザル)、およびテナガザル、小型類人猿および大型類人猿を含むヒト上科を含むがこれらに限定されない非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されず、ヒトが最も好適である。本発明の親Fcポリペプチドは、抗体のIgG(ヒトサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む)、IgA(ヒトサブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、またはIgMクラスに属する配列を含むがこれらに限定されない、抗体クラスのいずれかに属する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされ得る。本発明の親Fcポリペプチドは、抗体のヒトIgGクラスに属する配列を含む。例えば、親Fcポリペプチドは、親抗体、例えば、ヒトIgG1抗体、ヒトIgA抗体、またはマウスIgG2aもしくはIgG2b抗体であってもよい。前記親抗体は、以下に詳細に記載されるように、非ヒト、キメラ、ヒト化、または完全なヒトであってもよい。親Fcポリペプチドは、何らかの方法で修飾または操作されてもよく、例えば、親抗体は、親和性成熟されてもよく、または操作されたグリコフォームを有してもよく、全てが以下にさらに完全に記載される。あるいは、親Fcポリペプチドは、Fc融合物、例えば、融合パートナーが細胞表面受容体を標的とするFc融合物であってもよい。あるいは、親Fcポリペプチドは、Fc領域の外側にある他のポリペプチド配列をほとんどまたは全く含まない、単離Fc領域であってもよい。親Fcポリペプチドは、天然に存在するFc領域であってもよく、またはFcポリペプチドの既存の操作されたバリアントであってもよい。重要なのは、親FcポリペプチドがFc領域を含み、次いでこれを変異させてFcバリアントを生成できることである。
【0073】
本発明のFcバリアントは、広範囲の製品での使用を見出し得る。一実施形態では、本発明のFcバリアントは、治療剤、診断剤、または研究試薬、好ましくは治療剤である。あるいは、本発明のFcバリアントは、農業または産業用途に使用され得る。本発明の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルである抗体組成物での使用を見出し得る。本発明のFcバリアントは、アゴニスト、アンタゴニスト、中和、阻害、または刺激であり得る。好ましい実施形態では、本発明のFcバリアントは、標的抗原を有する標的細胞、例えば、がん細胞を殺すために使用される。代替的な実施形態では、本発明のFcバリアントは、標的抗原を遮断、拮抗、または刺激するために使用される。代替的な好ましい実施形態では、本発明のFcバリアントは、標的抗原を遮断、拮抗、または刺激し、標的抗原を有する標的細胞を殺すために使用される。
最適化された特性
【0074】
本発明は、いくつかの治療的に関連する特性に対して最適化されたFcバリアントを提供する。Fcバリアントは、親Fcポリペプチドに対して1つ以上のアミノ酸修飾を含み、前記アミノ酸修飾(複数可)は、1つ以上の最適化された特性を提供する。本発明のFcバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって、その親Fcポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。それ故に、本発明のFcバリアントは、親と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する。あるいは、本発明のFcバリアントは、親と比較して、複数のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1~50個のアミノ酸修飾、約1~10個のアミノ酸修飾、または約1~約5個のアミノ酸修飾を有してもよい。それ故に、Fcバリアントの配列および親Fcポリペプチドの配列は、実質的に相同である。例えば、本明細書のバリアントFcバリアント配列は、親Fcバリアント配列と約80%の相同性、好ましくは少なくとも約90%の相同性、最も好ましくは少なくとも約95%の相同性を有することになる。
【0075】
本発明のFcバリアントは、様々な特性に対して最適化され得る。1つ以上の最適化された特性を示すように操作または予測されるFcバリアントは、本明細書では「最適化されたFcバリアント」と呼ばれる。最適化され得る特性としては、FcγRに対する親和性の増強または低減が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本発明のFcバリアントは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbを含むがこれらに限定されない、ヒトFcγRに対する親和性が低減または切除されるように最適化される。これらの実施形態は、ヒトにおいて強化された治療特性、例えば、エフェクター機能の低下および毒性の低下を有するFcポリペプチドを提供することが予想される。他の実施形態では、本発明のFcバリアントは、1つ以上のFcγRに対して親和性の増強を提供するが、1つ以上の他のFcγRに対して親和性の低下を提供する。例えば、本発明のFcバリアントは、FcγRIIIaへの増強した結合を有し得るが、FcγRIIbへの低減した結合を有し得る。あるいは、本発明のFcバリアントは、FcγRIIaおよびFcγRIへの増強した結合を有し得るが、FcγRIIbへの低減した結合を有し得る。さらに別の実施形態では、本発明のFcバリアントは、FcγRIIbに対して増強した親和性を有し得るが、1つ以上の活性化FcγRに対して低減した親和性を有し得る。
【0076】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIIaに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIIbに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIIcに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIIIaに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRIIIbに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、C1qに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcRnに対して増強した親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcRnに対する親和性を維持する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qに対して低減したまたは切除された親和性を有する。一部の実施形態では、Fcバリアントは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qに対して低減したまたは切除された親和性を有し、FcRnへの結合を保持する。
【0077】
本発明のFcバリアントはまた、アグリコシル化形態における増強した機能および/または溶液特性のために最適化されてもよい。好ましい実施形態では、本発明のアグリコシル化Fcバリアントは、親Fcバリアントのアグリコシル化形態よりも低減された親和性でFcリガンドに結合する。前記Fcリガンドは、FcγR、C1q、FcRn、ならびにタンパク質AおよびGを含むが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、またはサル、好ましくはヒトを含むが、これらに限定されない、任意の供給源由来であってもよい。代替的に好ましい実施形態では、Fcバリアントは、親Fcバリアントのアグリコシル化形態よりも安定および/または可溶性であるように最適化される。
操作されたFc変異
【0078】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234F/L235E/D265Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0079】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234F/L235E/G237A/D265Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0080】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234V/L235E/G237A/D265Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0081】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234F/L235E/D265G/A330S/P331Sを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0082】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234V/L235A/G237A/D265Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0083】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L234V/L235A/G237A/D265G/A330S/P331Sを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0084】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG1 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換D265Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0085】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L235E/D265G/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0086】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換F234V/L235E/D265G/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0087】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換F234V/L235A/G237A/D265G/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0088】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L235E/G237A/D265G/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0089】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L235E/G237A/P329G/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0090】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換L235E/G237A/L328R/S228Pを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0091】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG2 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換D265G/A330S/P331Sを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0092】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG2 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換A235E/D265G/A330S/P331Sを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0093】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG2 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、アミノ酸置換A235E/D265G/P329Gを含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0094】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235位および265位にアミノ酸置換を含み、265位のアミノ酸はGlyに置換されていて、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0095】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、237、329、330または331位に1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234および237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、234、237、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、329位にアミノ酸置換をさらに含む。
【0096】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234位および265位にアミノ酸置換を含み、234位のアミノ酸はValに置換されていて、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0097】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、235および237位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、235、237、330および331位にアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、235位にアミノ酸置換をさらに含む。
【0098】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG4 Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、F234位、L235位およびD265位にアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0099】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0100】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、F234V、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、F234V、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0101】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0102】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0103】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0104】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0105】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0106】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234V、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0107】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0108】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234F、L235E、D265D、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0109】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0110】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235A、G237A、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。 一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、234F、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L234V、L235A、G237A、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。 一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L234V、L235A、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0111】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0112】
一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、L234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG1 Fc領域であり、L234V、L235A、G237A、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0113】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0114】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、およびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235EおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0115】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0116】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびD265Gのアミノ酸置換を含む。
【0117】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0118】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む。
【0119】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0120】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、S228P、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG4 Fc領域であり、S228P、L235E、G237AおよびL328Rのアミノ酸置換を含む。
【0121】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0122】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0123】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0124】
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、A235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、A330SおよびP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0125】
一態様では、本発明は、とりわけ、野生型ヒトIgG Fc領域のFcバリアントを含む単離ポリペプチドを提供し、前記Fcバリアントは、235E、D265GおよびP329Gのアミノ酸置換を含み、残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
一部の実施形態では、Fcバリアントは、IgG2 Fc領域である。一部の実施形態では、Fcバリアントは、A235E、D265G、およびP329Gのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、FcバリアントはIgG2 Fc領域であり、A235E、D265G、およびP329Gのアミノ酸置換を含む。
Fcバリアントを有する抗体の設計
【0126】
本発明のFcバリアントは抗体であってもよく、本明細書では「本発明の抗体」と称される。本発明の抗体は、抗体のIgG(ヒトサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む)、IgA(ヒトサブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスを含むがこれらに限定されない、抗体クラスのいずれかに属する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる、免疫グロブリン配列を含んでもよい。本発明の抗体は、抗体のヒトIgGクラスに属する配列を含むことが最も好ましい。本発明の抗体は、非ヒト、キメラ、ヒト化、または完全ヒトであってもよい。当業者によって理解されるであろうように、これらの異なるタイプの抗体は、「人間らしさ」の程度、またはヒトの免疫原性の潜在的なレベルを反映する。これらの概念の説明については、Clark et al., 2000およびその中に引用される参考文献を参照されたい(Clark, 2000, Immunol Today 21:397-402、参照により組み込まれる)。キメラ抗体は、ヒト抗体の定常領域に動作可能に連結された、非ヒト抗体の可変領域、例えばマウスまたはラット起源のVHドメインおよびVLドメインを含む。前記非ヒト可変領域は、上述の任意の生物、好ましくは哺乳類、最も好ましくは齧歯類または霊長類に由来してもよい。一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、Newman et al., 1992, Biotechnology 10:1455-1460、米国特許第5,658,570号、および米国特許第5,750,105号(参照により組み込まれる)に記載されるような、サル可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、可変領域は、非ヒト源に由来するが、その免疫原性は、タンパク質工学を使用して低減されている。好ましい実施形態では、本発明の抗体はヒト化されている(Tsurushita & Vasquez, 2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells, 533-545, Elsevier Science (USA)、参照により組み込まれる)。本明細書で使用される「ヒト化」抗体とは、ヒトフレームワーク領域(FR)と、非ヒト(通常はマウスまたはラット)抗体由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)とを含む抗体を意味する。CDRを提供する非ヒト抗体は、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。ヒト化は、主に、アクセプター(ヒト)VLおよびVHフレームワークへのドナーCDRの移植に依拠する(Winter米国特許第5,225,539号、参照により組み込まれる)。この戦略は、「CDR移植」と呼ばれる。選択されたアクセプターフレームワーク残基の対応するドナー残基に対する「逆突然変異」が、最初の移植された構築物で失われる親和性を回復するためにしばしば必要とされる(米国特許第5,530,101号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、米国特許第6,180,370号、米国特許第5,859,205号、米国特許第5,821,337号、米国特許第6,054,297号、米国特許第6,407,213号、参照により組み込まれる)。ヒト化のための多くの他の方法が当該技術分野で知られており(Tsurushita & Vasquez, 2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells, 533-545, Elsevier Science (USA)、参照により組み込まれる)、こうした方法のいずれも、免疫原性を低下させるためにFcバリアントを改変するための本発明での使用を見出し得る。ヒト化抗体は最適にはまた、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含むことになり、それ故に典型的にはヒトFc領域を含むことになる。
【0127】
一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、単一特異性抗体である。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、多重特異性抗体である。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、二重特異性抗体である。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は多重パラトピック抗体であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変領域配列を含み、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変領域配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変領域配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。一実施形態では、第1および第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。二重特異性抗体またはバイパラトピック抗体は、2つ以下の抗原またはエピトープに対する特異性を有する。二重特異性またはバイパラトピック抗体分子は、典型的には、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変領域配列、および第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変領域配列によって特徴付けられる。一実施形態では、二重特異性抗体分子またはバイパラトピック抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはその断片とを含む。一実施形態では、第1および第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一部の実施形態では、本開示に提示されるバイパラトピック抗体は、Fab-Fcおよび単鎖可変領域断片(scFv)を含み、Fcはリンカーを介してscFvに連結される。
【0128】
一部の実施形態では、バイパラトピック抗体は、2つのアーム単鎖Fab-Fc設計を備えた二重特異性抗体であり、2つの半抗体(共通のFcヘテロ二量体ならびに固有のVH-CHドメインおよびVL-CLドメイン)を組み立てるための、CH3ドメインにおける「ノブ・イン・ホール(knobs-in-holes)」(KiH)変異を含む。一部の実施形態では、KiH変異は、一方のCH3ドメインのT366Y変異を使用してノブを作製し、もう一方のCH3ドメインのY407T変異を使用してホールを作製できることを含む。一部の実施形態では、一方のCH3ドメインのF405A変異を使用してノブを作製し、もう一方のCH3ドメインのT394W変異を使用してホールを作製することができる。一部の実施形態では、一方のCH3ドメインのT366W変異を使用してノブを作製し、もう一方のCH3ドメインのY407A変異を使用してホールを作製することができる。一部の実施形態では、バイパラトピックscFv-Fc分子は、ノブ・ホール技術(例えば、ホール変異:Y349C、T366S、L368A、Y407V、ノブ変異:S354C、T366Wを含む)を用いて作製することができる。
【0129】
一部の実施形態では、バイパラトピック抗体は、表2に記載される抗体フォーマットを含む。
表2 バイパラトピック抗体のフォーマット
【表2】
【0130】
一実施形態では、バイパラトピック抗体分子は、2つの重鎖可変領域と2つの軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗C5aR1抗体分子は、Fab、F(ab’)2、Fv、Fd、または単鎖Fv断片(scFv)を含む。
【0131】
一部の実施形態では、本出願で使用されるFcドメインは、IgG、IgM、IgE、Fc部分を含むか、またはそれらに由来する。上述のKiH変異に加えて、Fcドメインは、S228P変異を含む。一部の実施形態では、S228Pは、抗体の均質性を強化した。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG Fcドメインを含むか、またはIgG Fcドメインに由来する。一部の実施形態では、IgG Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcドメインである。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインに由来するか、またはそれを含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、S228P変異を有するIgG4 Fcドメインに由来するか、またはそれを含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインに由来するか、またはそれを含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、S228P変異を有するIgG1 Fcドメインに由来するか、またはそれを含む。
【0132】
いくつかの例示的な実施形態では、単一特異性抗体およびバイパラトピック抗体は、抗体の熱安定性を強化するために改変されまたは変異させられ得る。抗体の熱安定性は、凝集開始温度を決定することによって評価することができる。抗体の安定性を高める方法の1つは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される熱転移中点(thermal transition midpoint)(Tm)を上昇させることである。一般に、タンパク質Tmは、その安定性と相関し、溶液中のアンフォールディングおよび変性に対するその感受性、ならびにタンパク質のアンフォールド傾向に依存する分解プロセスと逆相関する。いくつかの研究により、DSCによって熱安定性として測定された製剤の物理的安定性のランキングと、他の方法によって測定された物理的安定性との間の相関関係が見出されている(Maa et al.(1996)Int.J.Pharm.140:155-68、Remmele et al.(1997) Pharm.Res.15:200-8、Gupta et al.(2003)AAPS PharmSci.5E8:2003、Bedu-Addo et al.(2004)Pharm.Res.21:1353-61、Zhang et al.(2004)J.Pharm.Sci.93:3076-89)。製剤研究では、Fab Tmが対応するmAbの長期の物理的安定性に影響を与えることを示唆している。
【0133】
いくつかの例示的な実施形態では、ジスルフィド結合の戦略的導入は、単量体タンパク質およびマルチサブユニットタンパク質を安定化することができ、抗体の熱安定性を強化することにおける役割を果たすことができる。
【0134】
いくつかの例示的な実施形態では、トリプトファン(TRP)、チロシン(TYR)、フェニルアラニン(PHE)、およびヒスチジン(HIS)などの芳香族アミノ酸(AA)とのπスタッキング相互作用の戦略的導入は、抗体の熱安定性を強化することにおける役割を果たす。
【0135】
一部の実施形態では、反対の正または負の全電子電荷を有するアミノ酸側鎖の間に生じる塩橋、すなわち(中性pHで)GluまたはAsp対ArgまたはLysの戦略的導入は、タンパク質、特に抗体の安定性を強化する。
【0136】
いくつかの例示的な実施形態では、単一特異性抗体またはバイパラトピック抗体は、1つ以上の熱安定性を強化する改変を含む。一部の実施形態では、熱安定性を強化する改変は、システイン残基の導入である。
【0137】
一部の実施形態では、例示的なバイパラトピック抗体のTmは、65℃を超える。一部の実施形態では、例示的なバイパラトピック抗体のTmは、60℃を超える。例示的なバイパラトピック抗体のTmは、55℃を超える。一部の実施形態では、例示的なバイパラトピック抗体のTmは、50℃を超える。
【0138】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、scFv抗体または単鎖抗体をFabのFcドメインに連結するために使用される。好適なリンカーのいくつかの例には、単一のグリシン(G)残基、ジグリシンペプチド(GG)、トリペプチド(GGG)、4つのグリシン残基を有するペプチド(GGGG)、5つのグリシン残基を有するペプチド(GGGGG)、6つのグリシン残基を有するペプチド(GGGGGG)、7つのグリシン残基を有するペプチド(GGGGGGG)、8つのグリシン残基を有するペプチド(GGGGGGGG)が含まれる。ペプチドGGGGS、ペプチドGGGGSGGGGS、ペプチドGGGGSGGGGSGGGGS、ペプチドGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS、ペプチドGGSGSSGSGG、QRIEGおよびペプチドGQPKAAPなどのアミノ酸残基の他の組み合わせを使用してもよい。他の好適なリンカーには、単一のSer残基、およびVal残基、ジペプチドRTQP、SS、TK、SL、TKGPS、TVAAP、QPKAAが含まれる。上記で列記した例は、いかなる方法でも本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、グリシン、およびプロリンからなる群から選択されるランダムに選択されたアミノ酸を含むリンカーは、結合タンパク質に好適であることが示されている。リンカー配列の追加の説明については、例えば、WO2012135345を参照されたい。
【0139】
リンカー中のアミノ酸残基の同一性および配列は、リンカー内で達成するために必要な二次構造要素のタイプに応じて変化し得る。例えば、グリシン、セリン、およびアラニンは、最大限の柔軟性を有するリンカーに最良である。グリシン、プロリン、トレオニン、およびセリンのいくつかの組み合わせは、より剛直で伸長したリンカーが必要な場合に、有用である。所望される特性に応じて、必要に応じてより大きなペプチドリンカーを構築するために、任意のアミノ酸残基は、他のアミノ酸残基と組み合わせたリンカーとして考慮することができる。
標的
【0140】
事実上、本発明のFcバリアントによって、以下の標的の列記に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、および/またはエピトープを含むが、これらに限定されない、任意の抗原を標的としてもよい:17-IA、4-1BB、4Dc、6-keto-PGF1a、8-iso-PGF2a、8-oxo-dG、 A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレッシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、アルファ-1-アンチトリプシン、アルファ-V/ベータ-1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、Bリンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2 BMP-2a、BMP-3オステオゲニン、BMP-4 BMP-2b、BMP-5、BMP-6 Vgr-1、BMP-7(0P-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-DNA、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C3b、C4、C5、C5a、C5a受容体1(C5aR1)C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cAMP、がん胎児性抗原(CEA)、がん関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、 カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、 CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、CD89、CD95、CD123、CD137、 CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス菌毒素、ウエルシュ菌毒素、CKb8-1、CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、 CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、des(1-3)-IGF-1(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、Dnアーゼ、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、 EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、ET-1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、FLIP、Flt-3、Flt-4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3)、GDF-8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-アルファ1、GFR-アルファ2、GFR-アルファ3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIlb/111a)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP-capまたはNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV)gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心臓ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、 ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IGFBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、 IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18R、IL-23、インターフェロン(INF)-アルファ、INF-ベータ、INF-ガンマ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンアルファ2、インテグリンアルファ3、インテグリンアルファ4、インテグリンアルファ4/ベータ1、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ5(アルファV)、インテグリンアルファ5/ベータ1、インテグリンアルファ5/ベータ3、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ1、インテグリンベータ2、インターフェロンガンマ、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、 LAMP、LAP、LAP(TGF-1)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bpi、LBP、LDGF、LECT2、レフティー、Lewis-Y抗原、Lewis-Y関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺界面活性剤、黄体形成ホルモン、リンホトキシンベータ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、メタロプロテアーゼ、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP、MIP-1-アルファ、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Mud)、MUC18、ミュラー管抑制因子、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、NCA90、NCAM、NCAM、ネプリリシン、ニューロトロフィン-3、-4、または-6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGF-ベータ、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK-1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロレラキシン、タンパク質C、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F、 RSV Fgp、Ret、リウマチ因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF-1、SERINE、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、SIGIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAP-II、TACE、TACI、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARC、TCA-3、T細胞受容体(例えば、T細胞受容体アルファ/ベータ)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-アルファ、TGF-ベータ、TGF-ベータパン特異的、TGF-ベータR1(ALK-5)、TGF-ベータRII、TGF-ベータRIIb、TGF-ベータRIII、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ4、TGF-ベータ5、トロンビン、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF-アルファ、TNF-アルファベータ、TNF-ベータ2、TNFα、TNF-R1、TNF-RII、TNFRSF10A(TRAIL R1Apo-2、DR4)、TNFRSF10B(TRAIL R2DR5、KILLER、TRICK-2A、TRICK-B)、TNFRSF10C(TRAIL R3DcRl、LIT、TRID)、TNFRSF10D(TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1A(TNF R1CD120a、p55~60)、TNFRSF1B(TNF RIICD120b、p75~80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3(LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas Apo-1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTRAIL R2TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1TNFRH1)、TNFRSF25(DR3 Apo-3、LARD、TR-3、TRAMP、WSL-1)、TNFSF10(TRAIL Apo-2リガンド、TL2)、TNFSF11(TRANCE/RANKリガンドODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo-3リガンド、 DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、 TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(Light HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンドAITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンドgp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンドCD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(FasリガンドApo-1リガンド、 APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンドCD70)、TNFSF8(CD30リガンドCD153)、TNFSF9(4-1BBリガンドCD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェリン受容体、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA125、Lewis Y関連炭水化物を発現する腫瘍関連抗原、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VE-カドヘリン-2、VEFGR-1(flt-1)、 VEGF、VEGFR、VEGFR-3(flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、 フォン・ヴィレブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、ならびにホルモンおよび成長因子の受容体。
【0141】
一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、補体因子に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、SARS-CoV-2に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、アミロイドベータプロトフィブリルに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、LAG-3に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CD3に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、VEGFに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、Ang-2に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、PD-1に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、EGFRに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IFNAR1に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CD19に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IL-17Aに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IL-17Bに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IL-13に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、アンジオポエチン様3に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、神経成長因子に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、エボラウイルスに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、HER2に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、GD2に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、BCMAに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IL-6Rに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、TROP-2に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IGF-1Rに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CD38に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、Nectin-4に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、P-セレクチンに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CD79bに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、スクレロスチンに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、IFNガンマに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CCR4に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、CGRP受容体に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、補体因子に対する受容体に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C5a受容体1に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C5aに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C3に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C3aに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C3bに特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C3受容体に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fcバリアントを含む抗体は、C10に特異的に結合する。
ベクター
【0142】
本明細書に記載されるような、Fcバリアントを含む単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターがさらに本明細書に提供される。
【0143】
一実施形態では、ベクターは本明細書に記載の核酸を含む。例えば、ベクターは、本明細書に開示される抗体分子のうちの1つ以上から選択される抗体分子の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸を含み得る。
【0144】
特定の実施形態では、ベクターは、Fcバリアント領域をコードするヌクレオチド配列、またはそれと実質的に相同な配列(例えば、それらと少なくとも約85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上同一の配列、および/または1つ以上の置換、例えば保存された置換を有する配列)を含む。
【0145】
ベクターには、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージ、または酵母人工染色体(YAC)が含まれるが、これらに限定されない。数多くのベクターシステムを用いることができる。例えば、ベクターの、1つのクラスは、例えば、ウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。ベクターの、別のクラスは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、およびフラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNA要素を利用する。
【0146】
さらに、DNAをその染色体内に安定的に組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択され得る。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に対するプロトトロピー(prototropy)、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅などの重金属に対する耐性などを提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結されてもよく、または同時形質転換によって同じ細胞に導入されてもよい。mRNAの最適な合成には、追加の要素も必要となる場合がある。これらの要素は、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルを含んでもよい。
【0147】
構築物を含有する発現ベクターまたはDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターは適切な宿主細胞にトランスフェクトされるかまたは導入され得る。これを達成するために、例えば、原形質融合、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクション、または他の従来的な技術などの様々な技術が用いられてもよい。原形質融合の場合、細胞は培地中で増殖され、適切な活性についてスクリーニングされる。
【0148】
得られたトランスフェクト細胞を培養し、産生される抗体分子を回収するための方法および条件は、当業者に知られており、本記載に基づいて、使用される特定の発現ベクターおよび哺乳類宿主細胞に応じて、変更または最適化され得る。
治療的使用
【0149】
本発明のFcバリアント(例えば、抗体)を含む単離ポリペプチドは、以下を含むが、これらに限定されない、様々な疾患の治療のために使用することができる:黒色腫、wAMD、DME、食道扁平上皮がん、1型糖尿病、非小細胞肺がん、喘息、CNS、子宮頸がん、寒冷凝集素症、全身性エリテマトーデス、乾癬、アトピー性皮膚炎、子宮内膜がん、膀胱がん、エボラ感染、HER2+乳がん、多発性骨髄腫、乳がん、甲状腺眼症、鎌状赤血球症、HIV感染、胃がん、炭疽感染、骨量減少、クローン病、ANCA関連血管炎、ループス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、C3糸球体症(C3G)、C3糸球体腎炎(C3GN)、膜性増殖性糸球体腎炎II型(DDD)、化膿性汗腺炎(HS)、非典型溶血性尿毒症症候群、ループス腎炎、IgA腎症、重症筋無力症、黄斑変性、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、神経障害性疼痛、COVID-19感染、アレルギー性喘息、慢性閉塞性肺疾患、 水疱性類天疱瘡、壊疽性膿皮症、乾癬、血管外溶血を伴う発作性夜間ヘモグロビン尿症、急性腎障害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、地図状萎縮(GA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、加齢黄斑変性(AMD)。
【0150】
一部の実施形態では、本発明は、疾患または障害を治療する方法を提供し、前記方法は、Fcバリアントを含む単離ポリペプチドの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。一部の実施形態では、疾患または障害は、ANCA関連血管炎である。一部の実施形態では、疾患または障害は、C3腎症(C3G)である。
【0151】
一部の実施形態では、本発明のFcバリアントは、抗原に特異的に結合する抗体へと操作され得る。一部の実施形態では、本発明のFcバリアントは、表3に列挙される抗体へと操作され得る。
表3 市販の治療用抗体
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【実施例】
【0152】
本開示の他の特徴、目的、および利点は、以下の実施例で明らかになる。しかしながら、本実施例は、本開示の実施形態を示す一方で、例示のみによって与えられ、限定ではないことが理解されるべきである。本開示の範囲内の様々な変更および修正は、実施例から当業者に明らかとなるであろう。
実施例1. 新しいFc変異の発生
【0153】
Fcガンマ受容体は、IgG抗体のFc領域を認識し、結合する。この結合は、エフェクター機能を誘発することによって免疫反応を調節する。一部の疾患の適応症では、治療用抗体がFcガンマ受容体と相互作用し、生来のFcガンマ受容体活性化を増強することが有益であり得るが、他の適応症ではそれは有害であり得る。追加の活性化が有害である場合、Fc-ガンマ受容体に結合できないように、IgG FcドメインをサイレンシングするためにFc操作が必要である。この実施例では、IgG Fcドメインのサイレンシングに特に効果的である新しいFcバリアントが操作された。注目すべきことに、本発明のFc変異の組み合わせは、新しいのであり、Fcガンマ受容体およびC1qに対する親和性を無効にするのに効果的である。本発明のFcバリアントを表1に示す。
表1. 新規Fcバリアント
【表1】
実施例2. FcバリアントはFcγ受容体およびC1q結合の有意な低減を示した
【0154】
本実施例は、表1に示される新しいFcバリアントが、Fcガンマ受容体およびC1q結合の無効化に成功したことを確認する。Fcバリアントを、抗体「Ab1」および「Ab2」へと操作したのであり、その各々は、別個の可変ドメインを含み、異なる抗原を標的とする。
Fcガンマ受容体およびC1q結合を決定する方法
【0155】
このプロトコルは、Octet Red 384システム上のバイオレイヤーインターフェロメトリ(BLI)またはELISAを使用して、Fcサイレンシングされた抗体がFcガンマ受容体またはC1qに結合する程度を決定するために使用され得る方法を記載する。FcγRI、FcγRIIa H167、FcγRIIb、FcγRIIIa V176、およびFcγRIIIb結合を、HIS1KバイオセンサーのいずれかのNiNTAを使用して評価した。両方の手順において、Fcガンマ受容体を最初にバイオセンサー上に装填し、次いでこれをカゼインまたはBSAのいずれかでブロックして、バイオセンサー上の任意の非結合リガンドへの抗体の非特異的結合を防止した。次に、バイオセンサーを抗体に導入した後、短い解離段階のためにブロッキング緩衝液に戻した。得られた結合センサグラムを使用して、各測定された相互作用の強度を定性的に評価し、一方で、最大の平衡結合応答を定量的読み出しとして使用し、最大の平衡結合応答は結合親和性に比例した。当該技術分野で既知の方法に従って、C1qへの結合を、同様の様式で測定した。
結果
【0156】
図1A~Cに示すように、全てのFcバリアントは、それらの対応する野生型IgGアイソタイプと比較して、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIbへの結合を有意に低減させた。注目すべきことに、Ab1およびAb2の両方について、vFc07~vFc12およびvFc16~vFc24のうちのいずれのFc領域も、FcγRI、FcγRIIaおよびFcγRIIbに結合しなかった。また、単一変異D265Gが、FcγRI、FcγRIIa、およびFcγRIIb結合を有意に低減することができたことも注目に値した(
図1A~CのvFc13とIgG1 WTを比較されたい)。加えて、全てのFcバリアントは、可変領域(Ab1またはAb2)に関係なく、それらの対応する野生型IgGアイソタイプと比較して、C1qへの結合を有意に低減させた(
図1D)。
実施例3. Fcγ受容体およびC1q結合の低減における2つのFcバリアントのさらなる検証
【0157】
本実施例は、本発明のFcバリアントが、Fcガンマ受容体およびC1q結合を首尾よく無効化したことを検証する。この特定の実施例では、実験では、2つのFcバリアント、vFc10およびvFc17を使用した。vFc10は、IgG1アイソタイプにおいてL234F/L235E/D265G/A330S/P331S変異を含み、vFc17は、IgG4-S228PアイソタイプにおいてF234V/L235E/D265G変異を含む。(S228P変異は、IgG分子のコアヒンジ中のジスルフィドを安定化することによってFabアーム交換を低減する。) これら2つのFcバリアントを、それぞれ抗体「Ab1」へと操作した。操作された抗体を、実施例2に記載の方法によって、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qへの結合について試験した。
【0158】
抗体の大きな欠点は、それらの厳しい産生要件である(Garber, 2001, Nat Biotechnol 19:184-185; Dove, 2002, Nat Biotechnol 20:777-779、参照により組み込まれる)。したがって、操作された抗体が、発現および精製収量によって制限されないことは重要である。抗体Ab1に操作された野生型IgG1、野生型IgG4、vFc10、またはvFc17 Fc領域を、当該技術分野で知られている方法に従って培地中で発現させ、発現収量を測定した。
図2Aに示すように、vFc10またはvFc17 Fcバリアントを有する両方の抗体は、高い収量を生じ、野生型IgG1抗体よりも有意に高い収量であり、野生型IgG4抗体と同等またはより高い収量であった。当業者であれば理解するであろうように、タンパク質Aは、免疫グロブリンのFc部分と相互作用する。したがって、Fcバリアントに導入された変異がタンパク質A結合特性を変化させないことを確認するために、Octet実験を実施した。Fcバリアントが野生型IgG1またはIgG4と類似の結合を示し、変異がタンパク質A結合特性を変化させないことを実証することを、
図2Bは示す。
【0159】
図3Aに示すように、vFc10およびvFc17の両方は、抗体と対になったとき、FcγRI結合をほぼベースラインレベルに無効化した。同様に、vFc10およびvFc17の両方は、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、およびFcγRIIIb結合を、ほぼベースラインレベルに無効化した(
図3B~3C)。IgG4は、それをC1qへの結合から部分的に遮蔽する、短いヒンジおよび低いFabアーム柔軟性を有する。
図3Dは、Ab1と対になったとき、vFc10もvFc17もC1q結合を導入しなかったことを示す。
【0160】
全体として、本実施例のデータは、試験した2つのFcバリアントが、抗体の可変領域と対になったときに、全てのFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qへの結合の無効化を示したことを示す。
実施例4. FcバリアントはADCC、ADCP、およびCDC誘導の有意な低減を示した
【0161】
IgGサブクラスの抗体は、配列が可変であり、抗原の結合を担当するF(ab)ドメインと、配列が一定であり、様々な抗体エフェクター機能を媒介することを担当するFcドメインとを有する、二機能性分子である。これらの機能は、補体成分C1qとの相互作用、または主に白血球の表面上に発現されるFcγRのファミリーとの相互作用によって主に誘発される。Fcガンマ受容体(FcγR)は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、貪食(ADCP)、および補体依存性細胞傷害(CDC)などの細胞媒介性細胞傷害性エフェクター機能を誘発する。
【0162】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、抗ウイルス免疫療法および抗腫瘍療法に重要なIgGのFc依存性エフェクター機能である。NK細胞媒介性ADCCは、主にIgG-Fc受容体(FcγR)IIIaを介して誘発される。単球、マクロファージ、好中球、好酸球、および樹状細胞(DC)を含む食細胞は、FcγRI、FcγRII、およびFcαRIを発現し、これらは全て免疫複合体の取り込みを媒介し得る。ADCPは、細胞表面上の主要組織適合性複合体(MHC)分子上の提示のために、分解および抗原処理のためのリソソームに複合体を輸送することによって、感染した宿主からの免疫複合体の除去をもたらす。興味深いことに、一部のウイルスは、リソソーム分解から逃れることによって、食細胞に感染するためにこの機構を利用している(「感染の抗体依存性増強」で以下に記載される)。
【0163】
本実施例は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qへの結合を無効化することができた本発明のFcバリアントが、低減したADCC、ADCP、およびCDC機能を有することを示す。
【0164】
この特定の実施例では、実験では、2つのFcバリアント、vFc10およびvFc17を使用した。vFc10は、IgG1アイソタイプにおいてL234F/L235E/D265G/A330S/P331S変異を含み、vFc17は、IgG4-S228PアイソタイプにおいてF234V/L235E/D265G変異を含む。これら2つのFcバリアントを、それぞれ抗体「Ab1」へと操作した。ADCC、ADCP、およびCDC誘導の量を、抗体濃度に対して測定した。
【0165】
図4Aは、VFc10およびVFc17が、野生型IgG1抗体と比較して低いADCCを維持したことを示す。同様に、VFc10およびVFc17は、野生型IgG1抗体と比較して、低いADCPおよびCDCを維持した(
図4Bおよび
図4C)。
【0166】
全体として、本実施例のデータは、本発明のFcバリアントが、全てのFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびC1qへの結合を無効化し、ADCC、ADCP、およびCDC機能を効果的に低下させたことを示す。
均等物および範囲
【0167】
当業者は、本明細書に記載される本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ以下の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【国際調査報告】