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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241025BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526703
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022017011
(87)【国際公開番号】W WO2023085678
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154694
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516280679
【氏名又は名称】テグ・ギョンブク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・チュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ド・ヒ・パク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含む、リチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含むリチウム二次電池:
[化学式1]
LiSO
(前記化学式1中、
Rは、フッ素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~10のアルキル基であり、
【化1】
前記化学式2中、
Aは、炭素数3~5のヘテロ環基または炭素数3~5のヘテロアリール基であり、
R1は、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記化学式1のRはC2n+1であり、前記nは1~5のうち何れか1つの整数である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記化学式2のAは、炭素数3~5の含窒素ヘテロ環基または炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記非水電解液は、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートから選択される1種以上の第3添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記第1添加剤の含量が、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~5重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記第2添加剤の含量が、前記非水電解液の全重量を基準として0.01重量%~2重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒および直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、遷移金属の総モル数に対して70モル%以上のニッケルを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式3で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
[化学式3]
Li1+x(NiCoMn)O
(前記化学式3中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上であり、
x、a、b、c、およびdは、それぞれ、-0.2≦x≦0.2、0.70≦a<1、0<b≦0.25、0<c≦0.25、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。)
【請求項10】
前記化学式3のa、b、c、およびdは、それぞれ、0.80≦a<1、0<b≦0.15、0<c≦0.15、0≦d≦0.05である、請求項9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記負極活物質は、シリコン系物質を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月11日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0154694号に基づく優先権の利益を主張し、その全ての内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定の添加剤の組み合わせを含む電解液および高ニッケル正極材を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを貯蔵可能な負極活物質を含む負極との間にセパレータを介在して電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、リチウムイオンを伝達する媒体となる非水電解液を注入してから密封する方法により製造される。
【0004】
リチウム二次電池は、小型化が可能であり、エネルギー密度および使用電圧が高いため、モバイル機器、電子製品、電気自動車などの多様な分野に適用されている。特に、電気自動車および電力貯蔵システムなどの中大型デバイスに適用するためには低価格の高エネルギー正極素材が必須であるが、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOは、熱安定性が良くなく、価格が高いという欠点がある。
【0005】
したがって、LiCoOに代替可能な正極材として、ニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」という)が主に用いられており、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、価格が相対的に安く、高い可逆容量を有するという利点がある。しかしながら、高容量を実現するためにNCM系リチウム複合遷移金属酸化物中のニッケルの含量を高める場合、表面安定性が低下して電解質の分解反応が激しくなり、これにより、電池の抵抗が増加し、寿命特性が低下するという問題がある。
【0006】
したがって、かかる問題を改善することができる方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、2種の特定の添加剤の組み合わせを含む非水電解液を導入することで、NCM系正極活物質を含むリチウム二次電池の高温寿命特性を改善することを課題とする。
【0008】
また、前記非水電解液により、シリコン系負極材を含むリチウム二次電池のSEI膜の分解問題を効果的に解消することで、急速充電性能が向上したリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によると、本発明は、
リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液と、
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0010】
[化学式1]
LiSO
【0011】
前記化学式1中、
Rは、フッ素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~10のアルキル基であり、
【化1】
前記化学式2中、
Aは、炭素数3~5のヘテロ環基または炭素数3~5のヘテロアリール基であり、
R1は、炭素数1~3のアルキレン基である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリチウム二次電池は、特定の添加剤の組み合わせを含む非水電解液を含むことで、NCM系正極活物質および/またはSi系負極活物質を含むリチウム二次電池の寿命特性および急速充電性能を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
一般に、リチウム二次電池用電解液に広く用いられるLiPFなどのリチウム塩に含まれているアニオンは、熱分解または水分などにより、フッ化水素(HF)とPFのような分解産物を形成することになる。かかる分解産物は酸(acid)の性質を有しており、電池内で被膜もしくは電極の表面を劣化させる。
【0015】
電解液の分解産物と、繰り返される充放電による正極の構造変化などにより、正極中の遷移金属が電解液の内部に溶出されやすく、溶出された遷移金属は正極にさらに再蒸着(Re-deposition)して正極の抵抗を増加させる。さらに、溶出された遷移金属が電解液を介して負極に移動する場合、負極に電着され、SEI(solid electrolyte interphase)膜の破壊、およびさらなる電解液分解反応の原因となり、これにより、リチウムイオンの消費および抵抗が増加するなどの問題が発生する。
【0016】
また、電池の初期活性化時に、電解液反応により正極および負極に保護被膜が形成されるが、被膜が上記の理由から不安定になる場合、充放電もしくは高温露出時にさらなる電解液の分解が起こり、電池の劣化を促進し、ガスを発生させる。
【0017】
特に、ニッケルの含量が高い正極活物質を含む電池は、初期容量特性は改善されるが、充放電が繰り返される場合、副反応によりリチウム副産物およびガス発生量が増加し、電解液の分解反応が深刻化する恐れがある。
【0018】
かかる問題を解決するために、本発明者らは、下記化学式1で表される第1添加剤および下記化学式2で表される第2添加剤を非水電解液に含ませ、これは、電極上に有/無機複合SEI被膜を形成する効果があるため、より安定的な形態に膜が維持され、電解液の分解反応が激しくなることを防止することができることが分かった。
【0019】
以下では、本発明をなす各構成についてより詳細に説明する。
【0020】
非水電解液
本発明に係るリチウム二次電池は、リチウム塩、有機溶媒、下記化学式1で表される第1添加剤、および下記化学式2で表される第2添加剤を含む非水電解液を含む。
【0021】
以下で、非水電解液の各成分を具体的に説明する。
【0022】
(1)第1添加剤および第2添加剤
本発明の非水電解液は、下記化学式1で表される第1添加剤を含む。
【0023】
[化学式1]
LiSO
【0024】
前記化学式1中、
Rは、フッ素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~10のアルキル基である。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記化学式1のRはC2n+1であり、前記nは、1~5のうち何れか1つの整数であってもよく、好ましくは、1または4であってもよい。すなわち、前記第1添加剤は、LiSOCFまたはLiSOであってもよい。
【0026】
第1添加剤は、構造内にリチウムイオンとSOおよびC2n+1を含んでいるため、安定で、且つリチウムイオンの伝達に有利なSEI被膜を形成する効果がある。具体的に、SOは、リチウムイオンとの結合エネルギーが低いため、リチウムイオンが分離(decoupling)されやすく、C2n+1はLiF成分の被膜が形成されるように寄与する。
【0027】
本発明の一実施態様において、前記第1添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%であってもよい。溶媒の溶解度と、添加剤を投入した後の電解液の粘度を考慮すると、第1添加剤の含量が5重量%以下であることが好ましい。
【0028】
具体的に、前記第1添加剤がLiSO2n+1であり、nが3以下の整数である場合、前記第1添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として2重量%~4重量%であることが好ましく、nが4以上の整数である場合、前記第1添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~1重量%であることが好ましい。nによって溶解度に差があるため、最適の含量範囲に差がある。
【0029】
また、本発明の非水電解液は、下記化学式2で表される第2添加剤を含む。
【0030】
【化2】
【0031】
前記化学式2中、
Aは、炭素数3~5のヘテロ環基または炭素数3~5のヘテロアリール基であり、
R1は、炭素数1~3のアルキレン基である。
【0032】
前記化学式2で表される第2添加剤はプロパルギル(Propargyl)官能基を含むため、このような官能基が還元分解されながら、負極の表面に不動態能の高いSEI膜が形成され、負極自体の高温耐久性を改善することができるだけでなく、負極の表面における遷移金属の電着を防止することができる。また、前記プロパルギル基により、正極に含まれている金属性不純物の表面に吸着され、不純物が溶出されにくくする機能を果たすことができ、これにより、溶出された金属イオンが負極に析出されて発生し得る内部短絡を抑えることができる。尚、電解液の分解産物であるPFと結合し、HFの生成を抑えることで、第1添加剤により正極の表面に形成されるCEI(cathode electrolyte interphase)膜の破壊を防止し、電解液の追加分解を抑えることができる。
【0033】
すなわち、本発明の非水電解液を用いる場合、前記第1添加剤により、無機物に基づくLiF、LiSOF成分の被膜が形成されるとともに、第2添加剤中のプロパルギル官能基により、負極活物質表面を全体的に覆うことができる安定な有機物成分の被膜が形成されることができる。特に、シリコン系負極材を用いると、不安定なSEI被膜が形成される現象が激しくなるが、本発明の電解液を適用する場合、より安定な形態の有機/無機複合被膜が形成されるため、ニッケルの含量が高い正極材を用いる際に激しくなる電解液の分解反応を抑えることができ、これにより、負極の劣化も効果的に防止することができる。
【0034】
本発明の一実施態様において、前記化学式2のAは、炭素数3~5の含窒素ヘテロアリール基であってもよく、好ましくは、下記化学式2-1で表されるものであってもよい。
【0035】
【化3】
【0036】
前記化学式2-1中、
R1は、前記化学式2での定義のとおりである。
【0037】
本発明の一実施態様において、前記化学式2のR1は、炭素数1~3の直鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよく、好ましくは炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基、より好ましくはメチレン基であってもよい。
【0038】
本発明の一実施態様において、前記第2添加剤は、下記化学式2Aで表されるものであってもよい。
【0039】
【化4】
【0040】
本発明の一実施態様において、前記第2添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.01重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%であってもよい。第2添加剤の含量が2重量%以下であることが、初期抵抗を低める点から好ましい。
【0041】
(2)第3添加剤および第4添加剤
本発明の一実施態様において、前記非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)から選択される1種以上の第3添加剤をさらに含んでもよい。この場合、負極で前記第2添加剤が還元分解される時に、プロパルギルラジカルがVCまたはVEC二重結合を攻撃し、重合(polymerization)反応が起こりやすいため、負極上に有機物被膜が形成される際に、より迅速且つ効果的に活物質の表面を覆うことができる。
【0042】
本発明の一実施態様において、前記第3添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.01重量%~3重量%、好ましくは0.05重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%であってもよい。第2添加剤の含量が3重量%以下であることが、初期抵抗を低める点から好ましい。
【0043】
その他にも、本発明の非水電解液は、高電圧環境で電解液が分解されて電極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制の効果などをさらに向上させるために、必要に応じて、下記の添加剤を第4添加剤としてさらに含んでもよい。
【0044】
前記第4添加剤は、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ニトリル系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、ベンゼン系化合物、およびリチウム塩系化合物から選択される1種以上であってもよい。
【0045】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0046】
前記スルトン系化合物は、負極の表面で還元反応による安定なSEI膜を形成することができる物質であって、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンから選択される1種以上の化合物であってもよく、具体的に、1,3-プロパンスルトン(PS)であってもよい。
【0047】
前記サルフェート系化合物は、負極の表面で電気的に分解され、高温貯蔵時にもクラックが生じない安定なSEI膜を形成することができる物質であって、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)から選択される1種以上であってもよい。
【0048】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトから選択される1種以上であってもよい。
【0049】
前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリル、エチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル(ASA3)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ2-ブテン(DCB)、および1,2,3-トリス(2-シアノエチル)プロパン(TCEP)から選択される1種以上であってもよい。
【0050】
前記アミン系化合物は、トリエタノールアミンおよびエチレンジアミンから選択される1種以上であってもよく、前記シラン系化合物はテトラビニルシランであってもよい。
【0051】
前記ベンゼン系化合物は、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、およびテトラフルオロベンゼンから選択される1種以上であってもよい。
【0052】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩と異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP;LiPO)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB;LiB(C)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムテトラフェニルボレート、およびリチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(LiDFOP)から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0053】
一方、前記第4添加剤の含量は、前記非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~5重量%であってもよい。前記添加剤の含量が上記の範囲である場合、正極および負極への被膜形成による副反応抑制効果が得られる。
【0054】
(3)有機溶媒
本発明の非水電解液は、有機溶媒を含む。
【0055】
前記有機溶媒としては、リチウム電解質に通常用いられる種々の有機溶媒が制限されずに使用できる。例えば、前記有機溶媒は、環状カーボネート系溶媒、直鎖状カーボネート系溶媒、直鎖状エステル系溶媒、環状エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくは、環状カーボネート系溶媒および直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を含んでもよい。
【0056】
前記環状カーボネート系溶媒は、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高いため電解質中のリチウム塩を解離させやすく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)を含んでもよい。
【0057】
また、前記直鎖状カーボネート系溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0058】
前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解液を製造するために、環状カーボネート系溶媒と直鎖状カーボネート系溶媒の混合物を用いることが好ましい。
【0059】
前記直鎖状エステル系溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートから選択される1種以上であってもよく、好ましくは、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、またはプロピルプロピオネートであってもよい。
【0060】
前記環状エステル系溶媒は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンから選択される1種以上であってもよい。
【0061】
前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルから選択される1種以上であってもよく、好ましくは、スクシノニトリルであってもよい。
【0062】
前記非水電解液の全重量中において、有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、前記化学式1で表される化合物、添加剤、およびリチウム塩の含量を除いた残部は、別に断らない限り、全て有機溶媒である。
【0063】
(4)リチウム塩
本発明の非水電解液は、リチウム塩を含む。
【0064】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものなどが制限されずに使用でき、具体的に、前記リチウム塩は、カチオンとしてLiを含み、アニオンとして、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、BFCHF、PF 、PF 、PO 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNから選択される何れか1つ以上を含んでもよい。
【0065】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(FSO(LiFSI)、LiTFSI、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、LiSOCF、LiPO、リチウムビス(オキサレート)ボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(Lithium difluoro(oxalate)borate、LiFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(Lithium difluoro(bisoxalato) phosphate、LiDFOP)、リチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalate) phosphate、LiTFOP)、およびリチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(Lithium fluoromalonato(difluoro) borate、LiFMDFB)から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、LiPFであってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様において、前記リチウム塩および有機溶媒を含む非水性有機溶液中のリチウム塩の濃度は、0.5M~4.0M、具体的に0.5M~3.0M、より具体的に0.8M~2.0Mであってもよい。リチウム塩の濃度が上記の範囲である場合、低温出力改善およびサイクル特性改善の効果を十分に確保するとともに、粘度および表面張力が過度に高くなることを防止し、適切な電解液含浸性が得られる。
【0067】
正極
本発明に係るリチウム二次電池は、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極を含む。
【0068】
具体的に、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、遷移金属の総モル数に対して、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上のニッケルを含むものであってもよい。
【0069】
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合遷移金属酸化物は、不安定な構造により、電極と電解液の界面で化学的/電気化学的反応が加速化される問題があるため、これを改善するためには、電解液の構成要素が重要である。
【0070】
特に、高ニッケル(High-Ni)の正極活物質は、高電圧で構造が崩壊されやすく、この過程で、活物質粒子の割れとともに活性酸素種(reactive oxygen species)が生じ、生じた活性酸素種と電解液の反応により電解液の分解反応が激しくなるという問題がある。
【0071】
本発明に係るリチウム二次電池は、上述のように、前記第1添加剤および第2添加剤を含む非水電解液により、電極との界面で発生する電解液の分解反応を制御することで、これを改善することができる。
【0072】
本発明の一実施態様において、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式3で表されるものであってもよい。
【0073】
[化学式3]
Li1+x(NiCoMn)O
【0074】
前記化学式3中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上であり、
x、a、b、c、およびdは、それぞれ、-0.2≦x≦0.2、0.70≦a<1、0<b≦0.25、0<c≦0.25、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0075】
好ましくは、前記化学式3のa、b、c、およびdは、それぞれ、0.80≦a<1、0<b≦0.15、0<c≦0.15、0≦d≦0.05であってもよく、より好ましくは、0.85≦a≦0.95、0.025≦b≦0.1、0.025≦c≦0.1、0≦d≦0.05であってもよい。
【0076】
本発明の一実施態様において、前記化学式3のMはAlであってもよく、この場合、安定性の点から有利である。
【0077】
本発明に係る正極は、正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0078】
前記正極集電体としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが用いられてもよい。
【0079】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下する恐れがある。
【0080】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合、および集電体への結合を補助する成分であって、通常、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体であってもよい。
【0081】
また、前記導電材は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を付与する物質であって、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。
【0082】
前記導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、およびサーマルブラックなどのカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブおよびグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維および金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛およびチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体などの導電性素材;またはこれらの組み合わせが選択されてもよい。
【0083】
また、前記正極スラリーの溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられることができる。例えば、正極活物質、バインダー、および導電材を含む正極スラリー中の固形分の濃度が40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0084】
負極
本発明に係るリチウム二次電池は、負極活物質を含む負極を含み、前記負極は、負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極スラリーを負極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延することで製造することができる。
【0085】
前記負極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さを有する。かかる負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅またはステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの;またはアルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0086】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質はシリコン系物質を含んでもよい。
【0087】
前記シリコン系物質は、Si、SiO(0<x<2)、およびSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)から選択される1種以上であり、好ましくはSiである。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(dubnium)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。Siは、SiOと比べて高い理論容量を有している利点がある。
【0088】
シリコン系負極活物質は、容量がグラファイトに比べて約10倍近く高いため、質量ローディング(mg・cm-2)を低め、電池の急速充電性能を向上させることができる。但し、不可逆反応によるリチウムイオン損失率が高く、体積変化が大きいため、寿命に悪影響を与える恐れがあるという問題があるが、前述の非水電解液を適用することで、このような問題を解決することができる。具体的に、シリコン系負極活物質を含有した負極、特に、Si100%の負極は、炭素系負極活物質を含有した負極に比べて、充放電過程で大きい体積変化によりSEI被膜が割れやすく、さらに再生成される反応が持続的に起こるという問題があるが、本発明に係る非水電解液を適用する場合、前述のようにSEI被膜を強化することができるため、かかる問題を効果的に解消することができる。
【0089】
本発明の一実施態様において、前記シリコン系物質は、前記負極活物質の全重量を基準として、70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%で含まれてもよく、より好ましくは、前記負極活物質がシリコン系物質からなるものであってもよい。シリコン系物質が上記の範囲で含まれる場合、負極容量増加および急速充電性能向上の効果が得られる。
【0090】
また、好ましい一実施態様において、前記負極活物質は、Siのみからなるもの、すなわち、純シリコン(Pure Si)であってもよい。
【0091】
また、前記負極活物質は、シリコン系物質の他にも、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質;金属またはこれらの金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープおよび脱ドープできる物質;リチウム金属;および遷移金属酸化物から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0092】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらをともに用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などのような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0093】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が使用できる。
【0094】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnxMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0095】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Sn、SnO、Sn-Y’(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。前記元素Y’は、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(dubnium)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Si、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0096】
前記遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0097】
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、60重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0098】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体の間の結合を補助する成分であって、通常、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの種々の共重合体などが挙げられる。
【0099】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材;またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。
【0100】
前記負極スラリーの溶媒は、水;またはNMPおよびアルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、バインダー、および導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、バインダー、および導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0101】
セパレータ
本発明に係るリチウム二次電池は、前記正極と負極との間にセパレータを含む。
【0102】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム二次電池でセパレータとして通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に、電解液のイオンの移動に対して低抵抗であり、且つ優れた電解液含浸能力および安全性を有するものが好ましい。
【0103】
具体的には、セパレータとして、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム;またはこれらの2層以上の積層構造体が使用可能である。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされたセパレータが用いられてもよく、単層または多層構造として用いられてもよい。
【0104】
上記のような本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器;およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いられることができる。
【0105】
これにより、本発明の他の実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、およびそれを含む電池パックが提供される。
【0106】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;および電力貯蔵用システムの何れか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用されることができる。
【0107】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などであってもよい。
【0108】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能であるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおける単位電池としても好適に使用可能である。
【0109】
以下、具体的な実施例により本発明を具体的に説明する。
【0110】
<実施例>
実施例1.
(非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した後、LiPFが1.0Mとなるように溶解させて非水性有機溶液を製造した。LiSOCF0.5wt%、前記化学式2Aで表される化合物0.3wt%、ビニレンカーボネート(VC)0.5wt%、および残部の前記非水性有機溶液を混合し、非水電解液100wt%を製造した。
【0111】
(リチウム二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.6:0.8:1.6の重量比で添加し、正極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ13.5μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0112】
負極活物質(Si100wt%)、導電材(Super-C)、およびバインダー(スチレン-ブタジエンゴム)を70:20:10の重量比で、溶媒である水に添加して負極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0113】
前記正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータ、および負極を順に積層して電極組立体を製造した。
【0114】
パウチ形の電池ケース内に上記で組み立てられた電極組立体を収納し、上記で製造された非水電解液を注液してリチウム二次電池を製造した。
【0115】
実施例2.
非水電解液の製造時に、LiSOCFの含量を3重量%に変更したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0116】
実施例3.
非水電解液の製造時に、LiSOCFに代えてLiSOを使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0117】
実施例4.
非水電解液の製造時に、LiSOCFに代えてLiSOを使用したことを除き、前記実施例2と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0118】
比較例1.
非水電解液の製造時に、LiSOCFを添加せず、正極活物質としてLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02に代えてLiCoOを使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0119】
比較例2.
非水電解液の製造時に、LiSOCFを添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0120】
比較例3.
非水電解液の製造時に、前記化学式2Aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0121】
比較例4.
非水電解液の製造時に、前記化学式2Aで表される化合物を添加しなかったことを除き、前記実施例3と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0122】
<実験例>
実験例1:高温(45℃)寿命特性の評価
実施例および比較例で製造されたそれぞれのリチウム二次電池を、0.1C CCで活性化した後、脱ガスを行った。
【0123】
その後、25℃で、定電流-定電圧(CC-CV)の充電条件で、3.6Vまで0.33C CCで充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で、2.5Vまで0.33Cで放電をした。次に、45℃で、定電流-定電圧(CC-CV)の充電条件で、3.6Vまで0.33C CCで充電した後、0.05 C current cutを行い、CC条件で、2.5Vまで0.33Cで放電した。
【0124】
上記の充放電を1サイクルとし、高温(45℃)で充放電を実施しながら、充放電器(5V、6A)を用いて1サイクル後および300サイクル後の放電容量および抵抗をそれぞれ測定した。
【0125】
測定された放電容量および抵抗をそれぞれ下記式1および式2に代入し、容量維持率(capacity retention)および抵抗増加率を計算し、その結果を下記表1に示した。
【0126】
体積増加率は、1サイクル後および300サイクル後に浮力方式により測定した体積を下記式3に代入して計算した。
【0127】
[式1]
容量維持率(%)=(300サイクル後の放電容量/1サイクル後の放電容量)×100
【0128】
[式2]
抵抗増加率(%)={(300サイクル後の抵抗-1サイクル後の抵抗)/1サイクル後の抵抗}×100
【0129】
[式3]
体積増加率(%)={(300サイクル後の体積-1サイクル後の体積)/1サイクル後の体積}×100
【0130】
【表1】
【0131】
前記表1の結果から、化学式1で表される第1添加剤および化学式2で表される第2添加剤をともに含む電解液を使用した実施例1~4の電池は、高ニッケルの正極活物質およびSi負極を含むにもかかわらず、高温での容量維持率が95%以上、抵抗増加率および体積増加率が何れも5%以下であって、非常に優れた性能を示すことが確認できる。これに対し、第1添加剤を含まない電解液を使用した比較例1および2の電池、第2添加剤を含まない電解液を使用した比較例3および4の電池は、実施例1~4の電池に比べて容量維持率、抵抗増加率、および体積増加率が何れも著しく低下していることが確認できる。
【0132】
すなわち、第1添加剤および第2添加剤をともに含む場合、リチウム二次電池の高温性能を改善するのに大きい効果があることが分かる。
【0133】
実験例2:急速充電性能の評価
前記実施例および比較例で製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して、SOC(State Of Charge)8%の状態のリチウム二次電池を準備した後、25℃で、下記表2に記載のようにSOC状態によってC-レートを変化させながら充電を行い、各充電区間毎に1秒間隔を置いて電圧値を確認し、電圧プロファイルを測定した。
【0134】
【表2】
【0135】
その後、各区間で得られた各区間毎の電圧値にて終了条件を設定し、CCモードで充電した時の充電量を記録した。そして、さらにCCモードで、0.5CでSOC8%まで放電した。上記の充電および放電を行うことを1サイクル(cycle)とし、300サイクルを進行した後、前記実験例1と同様の方式により容量維持率、抵抗増加率、および体積増加率を計算し、下記表3に記載した。
【0136】
【表3】
【0137】
前記表3の結果から、化学式1で表される第1添加剤および化学式2で表される第2添加剤をともに含む電解液を使用した実施例1~4の電池は、高ニッケルの正極活物質およびSi負極を含むにもかかわらず、急速充放電条件での性能も比較例1~4の電池に比べて優れていることが確認できる。
【0138】
これに対し、第1添加剤を含まない電解液を使用した比較例1および2の電池、第2添加剤を含まない電解液を使用した比較例3および4の電池は、実施例1~4の電池に比べて、容量維持率、抵抗増加率、および体積増加率が何れも著しく低下していることが確認できる。
【0139】
このことから、第1添加剤および第2添加剤をともに含む場合のみに限って、本発明の効果が達成されることができることが確認された。
【国際調査報告】