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特表2024-540752ポリアミド樹脂、組成物、およびエンジニアリングプラスチックにおけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂、組成物、およびエンジニアリングプラスチックにおけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20241025BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241025BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C08G69/26
C08K7/14
C08L77/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529168
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2022074280
(87)【国際公開番号】W WO2023087547
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202111384712.4
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524014754
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】秦兵兵
(72)【発明者】
【氏名】趙元博
(72)【発明者】
【氏名】高源艶
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シウカイ
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001EB08
4J001EC04
4J001FA01
4J001FB03
4J001FC03
4J001FD01
4J001FD05
4J001GA13
4J001GD01
4J001JB02
4J001JB42
4J001JB50
4J002CL031
4J002DL006
4J002EJ067
4J002EP027
4J002EW067
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD077
(57)【要約】
本開示は、ポリアミド樹脂、組成物、およびエンジニアリングプラスチックにおける使用を提供する。前記ポリアミド樹脂は、ジアミン構造単位およびジカルボン酸構造単位を含み、0.7重量%以下の水抽出物含量およびP換算で10ppm~500ppmの次亜リン酸塩含量を有する。本開示によるポリアミド樹脂の調製方法は単純であり、プロセスパラメータの制御が容易であり、大型設備が不要であり、且つ量的生産が便利である。前記ポリアミド樹脂組成物は、成形サイクルが短い、結晶化速度が速い、外観品質が良好である、および耐食性が良好である等の利点を有し、酸性食品用の外包装および容器等の酸性環境下で使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂であって、ジアミン構造単位とジカルボン酸構造単位とを含み、0.7重量%以下の水抽出物含量、およびP換算で10ppm~500ppmの次亜リン酸塩含量を有する、ポリアミド樹脂。
【請求項2】
ジカルボン酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、且つジアミン構造単位の90mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来する;および/または
次亜リン酸塩は、アルカリ金属次亜リン酸塩およびアルカリ土類金属次亜リン酸塩を含み、好ましくは、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウムおよび次亜リン酸マグネシウムのうちのいずれか1つまたはそれらのうちの2つ以上の組合せを含む;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらにより好ましくは0.25重量%以上の水抽出物含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、P換算で、10ppm~300ppm、好ましくは10ppm~200ppmの次亜リン酸塩含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、1.8~4.0、好ましくは2.2~3.5、より好ましくは2.4~3.3の相対粘度を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、7未満、好ましくは5未満の黄色度を有する、
請求項1に記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂を含有する組成物であって、当該組成物は、重量部で以下の成分を含有する、組成物:
ポリアミド樹脂100部およびガラス繊維10~70部。
【請求項4】
前記ガラス繊維は、(2~800):1、好ましくは(200~650):1の長さ対直径比を有する;および/または、
前記ガラス繊維は、3mm~12mm、好ましくは3mm~8mmの長さを有する;および/または、
前記組成物は、酸化防止剤、核剤、滑剤、難燃剤、カップリング剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、および着色剤のうちのいずれか1つ、またはこれらのうちの2つ以上の組合せを含有している、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリアミド樹脂の調製方法であって、
当該方法は、以下のステップを含む、ポリアミド樹脂の調製方法:
S1、不活性ガス雰囲気中でナイロン塩溶液を調製する;
S2、前記ナイロン塩溶液を加熱して当該ナイロン塩溶液反応系の圧力を0.5~2.5MPaの圧力に上昇させ、0.5~4時間脱気することによって前記圧力を保持し、次いで、減圧して前記反応系内の圧力を0~0.7MPaに減らし、次いで、前記反応系を-0.01~-0.08MPaの真空度に真空化して、ポリアミド溶融物を得る;および
S3、前記ポリアミド溶融物を排出し、ストランドペレット化して、ポリアミドチップを得る。
【請求項6】
ステップS1において、1,5-ペンタンジアミンとジカルボン酸とを、(1~1.1):1のモル比で、前記ナイロン塩溶液の調製のために使用する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、圧力維持の終了時に232℃~260℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、減圧終了時に240℃~295℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、真空化後に250℃~290℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記真空度は、真空化後11~75分間維持される;および/または、
ステップS3において、前記ストランドペレット化は、15℃~50℃の水温で、水中で行われる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下のステップをさらに含む、請求項5に記載の方法:
S4、反応器中で前記ポリアミドチップを水と混合して混合物を得た後に、当該反応器内の空気を不活性ガスで置換する;および
S5、不活性ガス雰囲気中で、前記混合物を加熱および濾過し、前記ポリアミドチップをリンスおよび/または乾燥して、前記ポリアミド樹脂を得る。
【請求項8】
ステップS4において、前記反応器は、連続抽出カラムおよびバッチ反応器から選択される;および/または
ステップS4において、前記反応器内の空気は、真空ポンプを使用して前記反応器を真空化し、その後、前記反応器を窒素ガスまたは不活性ガスで再充填することによって置換される;および/または、
ステップS4において、前記反応器内の空気を置換するための操作が2回以上繰り返される;および/または、
ステップS4において、前記水は、脱イオン水、好ましくは脱酸素処理が施された脱イオン水である;および/または、
ステップS4において、前記水は、前記ポリアミドチップの質量の1倍以上、好ましくは前記ポリアミドチップの質量の2倍以上、例えば前記ポリアミドチップの質量の1~12倍、前記ポリアミドチップの質量の2~10倍、および前記ポリアミドチップの質量の2~6倍の質量で使用される;および/または、
ステップS4およびステップS5において、前記不活性ガスは、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの1種または2種を含有している、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップS5において、前記混合物は、4~50時間、好ましくは8~45時間加熱される;および/または、
ステップS5において、前記混合物は、80℃~140℃、好ましくは85℃~120℃で加熱される;および/または、
ステップS5において、前記リンスは、50℃~100℃の温度の温水を用いて実施される;および/または、
ステップS5において、前記乾燥は、真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥および高周波乾燥から選択される1つ以上によって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
エンジニアリングプラスチックにおける請求項1または2に記載のポリアミド樹脂あるいは請求項3または4に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、ポリマー材料の分野に属し、具体的には、ポリアミド樹脂およびその調製方法、組成物、ならびに繊維製品に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形のしやすさから、衣料用材料、工業用材料、繊維、または一般エンジニアリングプラスチックのための材料において広く使用され、注目を集めている。ポリアミド5Xは、バイオベースのペンタンジアミンと一連のジカルボン酸とから合成される直鎖状の長鎖高分子である。アミド結合は水素結合を形成しやすいため、ポリアミド5X繊維は、高い強度および優れた吸湿性を有する。ポリアミド5Xの重合中、環化反応の発生により、ポリマー高分子鎖は鎖内のアミド基交換反応中に2つのセグメントに切断されるか、または直鎖状低分子物質が直接脱水反応を受け、低分子ポリマーが生成される。一般に、水抽出物は、二量体、三量体のような、単量体から十量体までの範囲の低分子ポリマーであり、直鎖構造および環状構造を含む。これらの水抽出物の存在は、樹脂の性能および用途に影響を与える可能性がある。
【0003】
例えば、リレーおよびコンデンサのような超薄型の物品(厚さ0.3mm~0.4mm)の場合、当該物品が非常に薄いため、それらは、高温および高速での射出成形が要求され、その条件下では、材料自体の加熱およびせん断が他の射出成形条件よりも著しく高くなり、金型の汚れの発生が特に著しく、これは連続加工中に金型表面の定期的なクリーニングが必要となり、生産効率が低下する。さらに、ひどい場合には、前記物品の表面に白い斑点などの問題が発生し、製品の外観に深刻な影響を与える可能性がある。
【0004】
〔発明の概要〕
先行技術の技術および製品の欠点に対処するため、本開示の目的の一つは、ポリアミド樹脂を提供することである。
【0005】
前記ポリアミド樹脂は、ジアミン構造単位とジカルボン酸構造単位とを含み、0.7重量%以下の水抽出物含量、およびP換算で10ppm~500ppmの次亜リン酸塩含量を有する。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記水抽出物含量は、0.6重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。前記水抽出物は、主に、重合プロセス中にモノマー原料から生成されるオリゴマーであり、例えば、直鎖状または環状のモノマーからデカマーまでである。
【0007】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記水抽出物含量が上記で定義した範囲内にある場合、前記ポリアミド樹脂および後述するそれを含有する樹脂組成物の耐黄変性が改善される。
【0008】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記水抽出物含量が上記で定義した範囲内にある場合、前記ポリアミド樹脂および後述するそれを含有する樹脂組成物の機械的特性が改善される。
【0009】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記水抽出物含量が上記で定義した範囲内にある場合、前記ポリアミド樹脂および後述するそれを含有する樹脂組成物は、良好な外観品質を有し、且つ明らかな沈殿を有さない。
【0010】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記水抽出物含量が上記で定義した範囲内にある場合、前記ポリアミド樹脂および後述するそれを含有する樹脂組成物の耐酸腐食性が改善される。
【0011】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.25重量%以上の水抽出物含量を有する。前記水抽出物含量が上記で定義した範囲を下回ると、前記ポリアミド樹脂および後述するそれを含有する樹脂組成物の性能がある程度低下する。
【0012】
前記ポリアミド樹脂の前記水抽出物含量とは、前記ポリアミド樹脂を脱イオン水中で加熱して抽出処理した場合(例えば、前記ポリアミド樹脂を、97℃~100℃の水で、24時間抽出した場合)に、抽出処理前のポリアミド樹脂の質量に対する、抽出処理後に水に抽出され得る成分の質量のパーセンテージである。
【0013】
水抽出物含量(%)=[(水抽出前のポリアミド樹脂の質量(m)-水抽出後のポリアミド樹脂の質量(m))/水抽出前のポリアミド樹脂の質量(m)]×100%。
【0014】
抽出条件は、例えば、97℃~100℃の水を用いてポリアミド樹脂を24時間抽出することを含み、ポリアミド樹脂と水との質量比は1:48~51、例えば1:50である。
【0015】
さらに、水抽出物含量の測定方法は以下の通りである:ポリアミド樹脂試料を130℃の風乾オーブン中で7時間乾燥させた後、アルミニウム製プラスチック袋内に密封し、乾燥機に入れて冷却する。その後、約2gの前記ポリアミド樹脂試料を秤量し、実質量(m)を記録する;前記ポリアミド樹脂試料を250mLの丸底フラスコに入れ、脱イオン水100mLを加え、得られた混合物を97℃から100℃で24時間還流加熱して、前記ポリアミド樹脂試料を水で抽出した後、前記ポリアミド樹脂試料を水から取り出し、脱イオン水で3回洗浄し、その後、前記ポリアミド樹脂試料を130℃の風乾オーブンで7時間乾燥させる;その後、前記ポリアミド樹脂試料を予め秤量しておいたアルミニウム製プラスチック袋に移し、当該アルミニウム製プラスチック袋に密封した後、乾燥機に入れて冷却し、アルミニウム製プラスチック袋および前記ポリアミド試料の合計重量ならびにアルミニウム製プラスチック袋の重量をそれぞれ秤量し、前者から後者を差し引いて、水抽出後の前記ポリアミド試料の重量(m)を得た。水抽出前および水抽出後の前記ポリアミド試料の重量の差から、前記水抽出物含量を算出する。水抽出物含量(%)=[(m-m)/m]×100%。
【0016】
さらに、ポリアミド樹脂溶融物の前記水抽出物含量を測定する場合、当該溶融物を密閉容器に導入し、冷却した後、サンプリングし、上記の方法に従って測定する。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記水抽出物は、GPC法によって決定される場合、200g/mol~2,000g/molの数平均分子量を有する。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記水抽出物は、以下の構造のうちの1つまたは2つを含む:
【化1】

ここで、n1およびn2は独立して1~8の整数から選択され、好ましくは、n1およびn2は独立して1~6の整数から選択され、より好ましくは、n1およびn2は独立して1~5の整数から選択され、さらに好ましくは、n1は2、3または4であり、n2は2、3、4または5であり、m1は4であり、m2は4である。
【0019】
本開示の好ましい実施形態において、次亜リン酸塩は、P換算で、10ppm~300ppm、好ましくは10ppm~200ppmの含有量で含まれる。
【0020】
本開示の好ましい実施形態において、次亜リン酸塩は、アルカリ金属次亜リン酸塩およびアルカリ土類金属次亜リン酸塩を含み、好ましくは、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、および次亜リン酸マグネシウムのいずれか1つ、または上記の2つ以上の組合せを含む。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記ポリアミド樹脂中のペンタンジアミン構造単位は、化学的に誘導されたペンタンジアミンまたは生物学的に誘導されたペンタンジアミン、好ましくは生物学的に誘導された1,5-ペンタンジアミンから得ることができる。
【0022】
本開示の好ましい実施形態において、前記ジカルボン酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、前記ジアミン構造単位の90mol%以上が、1,5-ペンタンジアミンに由来する。
【0023】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂中の前記ジアミン構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上が、1,5-ペンタンジアミンに由来する。
【0024】
さらに、前記ポリアミド樹脂中の前記ジアミン構造単位は、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミンおよびドデカンジアミンに由来する1つ以上の構造単位をさらに含むことができる。
【0025】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂中の前記ジカルボン酸構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上が、アジピン酸に由来する。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記ポリアミド樹脂中の前記ジカルボン酸構造単位は、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸に由来する1つ以上の構造単位をさらに含み得る。
【0027】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂中のジアミン構造単位およびジカルボン酸構造単位で構成されたポリアミド(メインポリマー)の含有量は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。前記ジアミン構造単位および前記ジカルボン酸構造単位は、上記のように定義付けられる。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記ポリアミド樹脂は、次亜リン酸塩に加えて添加剤を含む。
【0029】
前記添加剤は、末端封止剤、核剤、酸化防止剤、消泡剤および流動性改善剤のいずれか1つ、またはそれらの2つ以上の組合せを含むが、これらに限定されるものではない。末端封止剤は、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸および酢酸を含む。
【0030】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂中の添加剤は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の含有量で存在する。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド56樹脂である。前記ポリアミド56樹脂は、90重量%以上、さらに95重量%以上、さらに97重量%以上、さらに99重量%以上のポリアミド56含有量を有する。
【0032】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂は、1.8~4.0、好ましくは2.2~3.5、さらに好ましくは2.4~3.3の相対粘度を有する。
【0033】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂は、7未満、好ましくは5未満、さらに好ましくは4.2未満の黄色度を有する。
【0034】
本開示の第2の目的は、前記ポリアミド樹脂を調製する方法を提供することである。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記方法は以下のステップを含む:
S1、不活性ガス雰囲気中でナイロン塩溶液を調製する;
S2、前記ナイロン塩溶液を加熱して当該ナイロン塩溶液反応系の圧力を0.5~2.5MPaに上昇させ、0.5~4時間脱気することによって前記圧力を保持し、次いで、減圧して前記反応系内の圧力を0~0.7MPa(ゲージ圧)に減らし、次いで、前記反応系を-0.01~-0.08MPaの真空度に真空化して、ポリアミド溶融物を得る;および
S3、前記ポリアミド溶融物を排出し、ストランドペレット化して、ポリアミドチップを得る。
【0036】
別段の記載がない限り、または明らかに矛盾しない限り、本開示において言及される圧力はゲージ圧を指す。本開示において、前記ナイロン塩およびポリアミド塩は互換的に使用することができる。
【0037】
このうち、ステップS1において、1,5-ペンタンジアミンとジカルボン酸とを、(1~1.1):1のモル比で、前記ナイロン塩溶液の調製のために使用する。
【0038】
ステップS2において、前記反応系の温度は、圧力維持の終了時に232℃~260℃である。
【0039】
ステップS2において、前記反応系の温度は、減圧終了時に240℃~295℃、さらに243℃~288℃である。
【0040】
ステップS2において、真空化後の前記反応系の温度は、250℃~290℃、さらに252℃~285℃である。
【0041】
ステップS2において、真空度は、真空化後11~75分の期間にわたって維持される。
【0042】
ステップS3において、ポリアミドチップまたはポリアミドペレットを得るために、前記ストランドペレット化は、15℃~50℃の水温で、水中で行われる。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記方法は、以下のステップをさらに含む:
S4、反応器中で前記ポリアミドチップを水と混合して混合物を得た後に、当該反応器内の空気を不活性ガスで置換する;および
S5、不活性ガス雰囲気中で、前記混合物を加熱および濾過し、前記ポリアミドチップをリンスおよび/または乾燥して、前記ポリアミド樹脂を得る。
【0044】
ステップS4において、前記反応器は、閉鎖環境に形成できるものである。ステップS4において、前記反応器は、例えば、連続抽出カラムまたはバッチ反応器であり得る。
【0045】
好ましくは、ステップS4において、前記反応器内の空気を、真空ポンプを用いて置換して当該反応器を真空にし、その後、窒素ガスまたは不活性ガスで当該反応器を再充填することができる。前記反応器内の空気を置換するための上記の操作は、2回以上繰り返すことができる。
【0046】
ステップS4において、前記水は脱イオン水であり、さらに脱酸素処理を受けた脱イオン水であり、ここで、前記脱酸素処理は、熱脱酸素、超音波脱酸素、真空脱酸素、化学的脱酸素、分解脱酸素、もしくは任意の他の脱酸素方法のうちの1つ、またはそれらの2つ以上の組合せであり得る。いくつかの好ましい実施形態において、前記脱酸素処理後に、脱イオン水は、0.5mg/L以下、さらに0.1mg/L以下の溶存酸素含量を有する。
【0047】
ステップS4において、前記水は、ポリアミドチップの質量の1倍以上、好ましくは2倍以上、例えば1~12倍、1~10倍、2~10倍、2~6倍、1.5倍、2.3倍、2.5倍、3倍、5倍、または8倍の質量で使用される。
【0048】
ステップS1、ステップS4およびステップS5において、前記不活性ガスは、アルゴンガス、およびヘリウムガス等のうちの1種または2種を含み、さらに好ましくは、高純度アルゴンガス、および高純度ヘリウムガスを含む。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ステップS4における空気の置換は、以下のように行われる:前記反応器を-0.1MPa~-0.001MPa(ゲージ圧)の真空度に真空化し、5~20分間保持し、その後、窒素ガスまたは不活性ガスで再充填し、さらに好ましくは、空気を置換する操作を5~15回、さらに好ましくは8~10回繰り返す。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ステップS5において、前記混合物は、4~50時間、好ましくは8~45時間加熱される。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ステップS5において、前記混合物は、80℃~140℃、好ましくは85℃~120℃の温度で加熱される。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ステップS5における前記リンスは、50℃~100℃の温度の熱水によって実施される。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ステップS5における前記乾燥は、真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥および高周波乾燥のうちの1つ以上によって実施される。
【0054】
本開示の第三の目的は、以下の成分を重量部で含む樹脂組成物を提供することである:ポリアミド樹脂100部およびガラス繊維10~70部。
【0055】
本開示の好ましい実施形態において、前記ガラス繊維は、(2~800):1、さらに(200~650):1の長さ対直径比を有する。
【0056】
本開示の好ましい実施形態において、前記ガラス繊維は、3mm~12mm、好ましくは3mm~8mmの長さを有する。
【0057】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記ガラス繊維は、上記で定義した範囲内のパラメータを有する場合、前記樹脂組成物の機械的特性が改善される。
【0058】
さらに、前記組成物は、酸化防止剤、核剤、滑剤、難燃剤、カップリング剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、および着色剤のうちのいずれか1種、または上記の2種以上の組合せを含んでもよい。
【0059】
さらに、前記酸化防止剤は、0.02~2重量部の量で存在し、前記酸化防止剤は、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、およびホスファイト系酸化防止剤のうちのいずれか1つ、例えば、酸化防止剤168、酸化防止剤1098、酸化防止剤1010、および酸化防止剤S9228のうちのいずれか1種、または上記の2種以上の組合せを含む。
【0060】
本開示の好ましい実施形態において、耐酸性試験において、前記樹脂組成物の表面に析出物(浮遊繊維)が存在しないか、または少量のみ存在する。
【0061】
本開示の好ましい実施形態において、前記樹脂組成物の射出成形後に、明らかな金型汚損がないか、または少量の金型汚損のみ存在する。
【0062】
本開示の好ましい実施形態において、前記ポリアミド樹脂は、上記のように定義される。
【0063】
以下のステップを含む、ポリアミド樹脂組成物の調製方法:
前記成分を二軸押出機に加えて混合し、その後、二軸押出機から押し出し、冷却し、且つペレット化して、ポリアミド組成物を得る。
【0064】
さらに、前記混合の間、前記ガラス繊維は、前記二軸押出機の側面供給口から供給される。
【0065】
さらに、前記成分は、混合され、前記二軸押出機内で210℃~290℃の温度で溶融される。
【0066】
本開示の実施形態において、前記混合中に、前記二軸押出機は、7ゾーン加熱モードを採用し、ゾーン1の温度は210℃~250℃であり、および/またはゾーン2の温度は210℃~250℃であり、および/またはゾーン3の温度は240℃~260℃であり、ゾーン4の温度は260℃~280℃であり、および/またはゾーン5の温度は270℃~290℃であり、および/またはゾーン6の温度は270℃~290℃であり、および/またはゾーン7の温度は255℃~285℃であり;ここで、ゾーン1からゾーン7への方向は、供給口からダイへの方向である。
【0067】
前記二軸押出機のダイ温度は、260℃~275℃である。
【0068】
前記二軸押出機のスクリュー速度は、350r/分~500r/分である。
【0069】
前記二軸押出機は、1:(30~50)、好ましくは1:40のD/L比(直径対長さ比)を有する。
【0070】
本開示の第4の目的は、エンジニアリングプラスチックにおける前述のポリアミド樹脂または組成物の使用を提供することである。
【0071】
本開示は、従来技術に対して少なくとも以下の利点を有する:
1.本開示によるポリアミド樹脂の調製方法は単純であり、プロセスパラメータの制御が容易であり、大型の設備が不要であり、且つ量的生産が便利である。
【0072】
2.前記ポリアミド樹脂組成物は、成形サイクルが短く、結晶化速度が速く、射出成形における金型汚損が少なく、且つ外観品質が良いという利点を有する。そのため、前記ポリアミド樹脂組成物は、電気分野および電子分野のデバイスに適用し得る。
【0073】
3.前記ポリアミド樹脂組成物は、耐酸腐食性の利点を有し、且つ酸性食品の外包装や容器など、酸性環境下において使用することができる。
【0074】
〔詳細な説明〕
本開示の目的、技術的解決策、および利点をより明らかにするために、本開示の実施形態における技術的解決策を、本開示の実施形態と併せて明確かつ完全に以下に説明する。明らかに、説明される実施形態は、実施形態の全てではなく、本開示の実施形態の一部に過ぎない。本開示の実施形態に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって達成され得る他の全ての実施形態は、本開示の保護範囲内に入る。
【0075】
1.相対粘度ηrの測定方法
ウッベローデ粘度計を用いた濃硫酸法:乾燥ポリアミド樹脂試料0.5±0.0002gを正確に秤量し、濃硫酸(98%)50mLを加えて溶解し、25℃の恒温水槽中で、濃硫酸のフロータイム(t)とポリアミド樹脂溶液のフロータイム(t)とを測定および記録する。相対粘度の計算式:相対粘度ηr=t/t
【0076】
2.ポリアミド樹脂の水抽出物含量の測定方法
各ポリアミド樹脂試料を、130℃の風乾オーブン中で7時間乾燥させ、その後、アルミニウム製プラスチック袋内に密封し、乾燥機に入れて冷却し、ポリアミド樹脂試料約2gを正確に秤量して実質量とする(m)。秤量したポリアミド樹脂試料を、250mL丸底フラスコに入れ、脱イオン水100mLを加え、得られた混合物を97℃~100℃で24時間加熱還流して、ポリアミド樹脂試料を水で抽出し、その後、ポリアミド樹脂試料を取り出し、脱イオン水で3回洗浄し、その後、ポリアミド樹脂試料を130℃の風乾オーブン中で7時間乾燥させる。ポリアミド樹脂試料を予め秤量したアルミニウム製プラスチック袋に移し、当該アルミニウム製プラスチック袋に密封し、その後、乾燥機に入れて冷却し、アルミニウム製プラスチック袋とポリアミド樹脂試料との合計重量ならびにアルミニウム製プラスチック袋の重量をそれぞれ秤量し、前者から後者を差し引いて水抽出後のポリアミド樹脂試料の重量(m)を得る。水抽出前および水抽出後のポリアミド試料の重量の差から、水抽出物量を算出する。水抽出物含量(%)=[(m-m)/m]×100%。
【0077】
ポリアミド樹脂溶融物の水抽出物含量を測定する場合、当該溶融物を密閉容器に導入し、冷却した後、サンプリングし、上記の方法に従って測定する。
【0078】
3.黄色度(YI)
黄色度は、HG/T 3862に従って試験される。
【0079】
4.結晶化度試験
各ポリアミド樹脂試料を、示差走査熱量測定(DSC)を用いる結晶化度分析に供する:実施例および比較例から得られた各ポリアミド樹脂試料を、50℃/分の昇温速度で、室温から280℃に加熱し、280℃で3分間保持し、その後、前記試料を10℃/分の速度で室温に冷やして、結晶化温度および半結晶化時間を得る。
【0080】
5.引張強度
引張強度は、ISO 527-2に従って、50mm/分の引張速度で試験される。
【0081】
6.曲げ強度
曲げ強度は、ISO 178に従って、2mm/分の速度で試験される。
【0082】
7.耐酸性試験
各ポリアミド樹脂試料を、40℃の10重量%酢酸水溶液中に180日間浸漬し、各試料の表面における析出物を観察し、1~5に等級分けする。ここでは、グレード1は析出物が大量に発生するので最も悪く、グレード5は明らかな析出物がないので最も良い。
【0083】
調製例1
(1)窒素ガス条件下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸および水を、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とのモル比1.08:1で均一に混合して、60重量%(ただし、%はナイロン塩溶液の質量%)のナイロン塩溶液を調製し;当該ナイロン塩溶液をサンプリングし、10重量%の濃度に希釈した。このときのpH値は、7.85であった。
【0084】
(2)ナイロン塩溶液1200gと次亜リン酸ナトリウム500ppmとを重合反応器に加え、加熱して反応系内の圧力を1.5時間で2.3MPaに昇圧し、その後、当該圧力を脱気により3時間にわたって維持し、圧力保持プロセス終了時に、反応系の温度は245℃であり、その後、反応系内の圧力を1時間で0.003MPa(ゲージ圧)に減圧し、減圧完了後の反応系の温度は273℃であった。反応系を32分間真空化し、真空度-0.06MPaに維持し、真空化後の反応系の温度を272℃として、ポリアミド56の溶融物を得た。
【0085】
(3)ステップ(2)で得られた溶融物を排出し、水温20℃の水冷下でストランドペレット化を行なって、ポリアミド56のチップを得た。
【0086】
実施例1
(a)調製例1で調製したポリアミド56のチップと脱酸素脱イオン水とを、当該チップと当該脱酸素脱イオン水との質量比1:6にて反応器に添加した。以下のように、反応器内の空気を窒素ガスで置換した:反応器を-0.09MPa(ゲージ圧)の真空度に真空排気し、この真空度で10分間保持し、その後、窒素ガスを再充填し、窒素ガスの置換を9回繰り返した。
【0087】
(b)窒素ガス雰囲気下で、得られた混合物を90℃で32時間加熱し、その後、濾過して水からチップを分離し、得られたチップを95℃の水でリンスし、その後、105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0088】
実施例2
(1)窒素ガス雰囲気下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸および水を、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とのモル比1:1で均一に混合して、70重量%(但し、%はナイロン塩溶液の質量%)のナイロン塩溶液を調製し;当該ナイロン塩溶液をサンプリングし、10重量%の濃度に希釈した。このときのpH値は、7.96であった。
【0089】
(2)ナイロン塩溶液1200gと次亜リン酸ナトリウム300ppmとを重合反応器に加え、加熱して反応系内の圧力を1.5時間で2.0Mに昇圧し、その後、当該圧力を脱気により3時間にわたって2.40MPaに維持し、圧力保持プロセス終了時に、反応系の温度は243℃であり、その後、反応系内の圧力を1時間かけて0.005MPa(ゲージ圧)に減圧し、減圧完了後の反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空化し、真空度-0.08MPaに維持し、真空化後の反応系の温度を290℃として、ポリアミド56の溶融物を得た。
【0090】
(3)ステップ(2)で得られた溶融物を排出し、20℃の水冷下でストランドペレット化を行なって、ポリアミド56のチップを得た。
【0091】
(4)ポリアミド56のチップと脱酸素脱イオン水とを、当該チップと当該脱酸素脱イオン水との質量比1:6にて反応器に添加した。以下のように、空気を窒素ガスで置換した:反応器を-0.07MPa(ゲージ圧)の真空度に真空排気し、この真空度で10分間保持し、その後、窒素ガスを再充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返した。
【0092】
(5)ステップ(4)における反応器に窒素ガスを導入して保護し、得られた混合物を96℃で46時間加熱し、その後、濾過して水からチップを分離し、得られたチップを95℃の水でリンスし、その後、105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0093】
実施例3
(a)調製例1で調製したポリアミド56のチップと脱酸素脱イオン水とを、当該チップと当該脱酸素脱イオン水との質量比1:12にて反応器に添加した。以下のように、反応器内の空気を窒素ガスで置換した:反応器を-0.09MPa(ゲージ圧)の真空度に真空排気し、この真空度で10分間保持し、その後、窒素ガスを再充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返した。
【0094】
(b)ステップ(a)における反応器に窒素ガスを導入して保護し、得られた混合物を95℃で55時間加熱し、その後、濾過して水からチップを分離し、得られたチップを95℃の熱水でリンスし、その後、105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0095】
実施例4
(1)窒素ガス雰囲気下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸および水を、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とのモル比1.05:1で均一に混合して、60重量%(但し、%はナイロン塩溶液の質量%)のナイロン塩溶液を調製し;当該ナイロン塩溶液をサンプリングし、10重量%の濃度に希釈した。このときのpH値は、7.98であった。
【0096】
(2)ナイロン塩溶液1200gと次亜リン酸ナトリウム1200ppmとを重合反応器に加え、加熱して反応系内の圧力を1.5時間で2.0MPaに昇圧し、その後、当該圧力を脱気により3時間にわたって維持し、圧力保持プロセス終了時に、反応系の温度は243℃であり、その後、反応系内の圧力を1時間で0.005MPa(ゲージ圧)に減圧し、減圧完了後の反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空化し、真空度-0.08MPaに維持し、真空化後の反応系の温度を290℃として、ポリアミド56の溶融物を得た。
【0097】
(3)ステップ(2)で得られた溶融物を排出し、20℃の水冷下でストランドペレット化を行なって、ポリアミド56のチップを得た。
【0098】
(4)前記チップを105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0099】
実施例5
(1)窒素ガス雰囲気下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸および水を、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とのモル比1.05:1で均一に混合して、60重量%(但し、%はナイロン塩溶液の質量%)のナイロン塩溶液を調製し;当該ナイロン塩溶液をサンプリングし、10重量%の濃度に希釈した。このときのpH値は、7.98であった。
【0100】
(2)ナイロン塩溶液1200gと次亜リン酸ナトリウム2400ppmとを重合反応器に加え、加熱して反応系内の圧力を1.5時間で2.0MPaに昇圧し、その後、当該圧力を脱気により3時間にわたって維持し、圧力保持プロセス終了時に、反応系の温度は243℃であり、その後、反応系内の圧力を1時間で0.005MPa(ゲージ圧)に減圧し、減圧完了後の反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空化し、真空度-0.08MPaに維持し、真空化後の反応系の温度を290℃として、ポリアミド56の溶融物を得た。
【0101】
(3)ステップ(2)で得られた溶融物を排出し、水温20℃の水冷下でストランドペレット化を行なって、ポリアミド56のチップを得た。
【0102】
(4)前記チップを105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0103】
実施例6
(1)窒素ガス雰囲気下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸および水を、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とのモル比1.05:1で均一に混合して、60重量%(但し、%はナイロン塩溶液の質量%)のナイロン塩溶液を調製し;当該ナイロン塩溶液をサンプリングし、10重量%の濃度に希釈した。このときのpH値は、7.98であった。
【0104】
(2)ナイロン塩溶液1200gと次亜リン酸ナトリウム85ppmとを重合反応器に加え、加熱して反応系内の圧力を1.5時間で2.0MPaに昇圧し、その後、当該圧力を脱気により3時間にわたって維持し、圧力保持プロセス終了時に、反応系の温度は243℃であり、その後、反応系内の圧力を1時間で0.005MPa(ゲージ圧)に減圧し、減圧完了後の反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空化し、真空度-0.08MPaに維持し、真空化後の反応系の温度を290℃として、ポリアミド56の溶融物を得た。
【0105】
(3)ステップ(2)で得られた溶融物を排出し、水温20℃の水冷下でストランドペレット化を行なって、ポリアミド56のチップを得た。
【0106】
(4)前記チップを105℃で15時間真空乾燥して、ポリアミド56の樹脂を得た。
【0107】
実施例1~6において得られたポリアミド樹脂を、相対粘度、水抽出物含量、次亜リン酸の含有量(P換算)、結晶化温度、半結晶化時間、耐酸性および黄色度について試験した。試験結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例1~6のポリアミド樹脂、ガラス繊維および酸化防止剤を、それぞれ原料として用いて、ポリアミド組成物を調製した。当該組成物の配合を表2に示す。
【0110】
前記組成物は、以下のように調製した:
ポリアミド樹脂、ガラス繊維および酸化防止剤を原料として用い、二軸押出機内で混練し、その後、二軸押出機から押し出されたストランドを冷却媒体としての水中でポリアミドの融点未満の温度に冷却し、ペレット化してポリアミド樹脂組成物を得た。二軸押出機は、7ゾーン加熱モードを採用し、ゾーン1からゾーン7までの温度は、連続して250℃、260℃、260℃、280℃、270℃、270℃および270℃であった。ダイ温度は260℃であり、スクリュー速度は480r/分であり、二軸押出機のD/L比は1:40であった。
【0111】
得られたポリアミド樹脂組成物を110℃で5時間乾燥し、その後、以下の条件下で、試料厚み3mmで射出成形を行った:バレル温度280℃および金型表面温度110℃。射出成形を50回連続して行ない、金型の高光沢面における金型汚損を観察し、5段階で評価した。ここでは、金型汚損の量は、グレード1からグレード5まで順次減少し、グレード1は金型汚損が大量に発生するので最も悪く、グレード5は明らかな金型汚損がないので最も良い。射出成形試料の試験結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
最後に、上述の実施例は、本開示の技術的解決策を例示することのみを意図しており、それを限定するものではないことに留意すべきである。本開示を前述の実施例を参照して詳細に説明したが、当業者であれば、前述の実施例に記載された技術的解決策に修正を加えてもよく、またはその技術的特徴の一部または全部に同等の置換を行ってもよく、これらの修正または置換によって、対応する技術的解決策の本質が本開示の実施例における技術的解決策の範囲から逸脱することはないことを理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂であって、ジアミン構造単位とジカルボン酸構造単位とを含み、0.7重量%以下の水抽出物含量、およびP換算で10ppm~500ppmの次亜リン酸塩含量を有する、ポリアミド樹脂。
【請求項2】
ジカルボン酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、且つジアミン構造単位の90mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来する;および/または
次亜リン酸塩は、アルカリ金属次亜リン酸塩およびアルカリ土類金属次亜リン酸塩を含む;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、0.05重量%以上の水抽出物含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、P換算で、10ppm~300ppmの次亜リン酸塩含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、1.8~4.0の相対粘度を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、7未満の黄色度を有する、
請求項1に記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
次亜リン酸塩は、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウムおよび次亜リン酸マグネシウムのうちのいずれか1つまたはそれらのうちの2つ以上の組合せを含む;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、0.1重量%以上の水抽出物含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、P換算で、10ppm~200ppmの次亜リン酸塩含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、2.2~3.5の相対粘度を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、5未満の黄色度を有する、
請求項2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂は、0.2重量%以上の水抽出物含量を有する;および/または、
前記ポリアミド樹脂は、2.4~3.3の相対粘度を有する、
請求項2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂は、0.25重量%以上の水抽出物含量を有する、
請求項2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項6】
請求項に記載のポリアミド樹脂を含有する組成物であって、当該組成物は、重量部で以下の成分を含有する、組成物:
ポリアミド樹脂100部およびガラス繊維10~70部。
【請求項7】
前記ガラス繊維は、(2~800):1の長さ対直径比を有する;および/または、
前記ガラス繊維は、3mm~12mmの長さを有する;および/または、
前記組成物は、酸化防止剤、核剤、滑剤、難燃剤、カップリング剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、および着色剤のうちのいずれか1つ、またはこれらのうちの2つ以上の組合せを含有している、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ガラス繊維は、(200~650):1の長さ対直径比を有する;および/または、
前記ガラス繊維は、3mm~8mmの長さを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ポリアミド樹脂の調製方法であって、
当該方法は、以下のステップを含む、ポリアミド樹脂の調製方法:
S1、不活性ガス雰囲気中でナイロン塩溶液を調製する;
S2、前記ナイロン塩溶液を加熱して当該ナイロン塩溶液反応系の圧力を0.5~2.5MPaの圧力に上昇させ、0.5~4時間脱気することによって前記圧力を保持し、次いで、減圧して前記反応系内の圧力を0~0.7MPaに減らし、次いで、前記反応系を-0.01~-0.08MPaの真空度に真空化して、ポリアミド溶融物を得る;および
S3、前記ポリアミド溶融物を排出し、ストランドペレット化して、ポリアミドチップを得る。
【請求項10】
ステップS1において、1,5-ペンタンジアミンとジカルボン酸とを、(1~1.1):1のモル比で、前記ナイロン塩溶液の調製のために使用する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、圧力維持の終了時に232℃~260℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、減圧終了時に240℃~295℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記反応系は、真空化後に250℃~290℃の温度を有する;および/または、
ステップS2において、前記真空度は、真空化後11~75分間維持される;および/または、
ステップS3において、前記ストランドペレット化は、15℃~50℃の水温で、水中で行われる、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
以下のステップをさらに含む、請求項に記載の方法:
S4、反応器中で前記ポリアミドチップを水と混合して混合物を得た後に、当該反応器内の空気を不活性ガスで置換する;および
S5、不活性ガス雰囲気中で、前記混合物を加熱および濾過し、前記ポリアミドチップをリンスおよび/または乾燥して、前記ポリアミド樹脂を得る。
【請求項12】
ステップS4において、前記反応器は、連続抽出カラムおよびバッチ反応器から選択される;および/または
ステップS4において、前記反応器内の空気は、真空ポンプを使用して前記反応器を真空化し、その後、前記反応器を窒素ガスまたは不活性ガスで再充填することによって置換される;および/または、
ステップS4において、前記反応器内の空気を置換するための操作が2回以上繰り返される;および/または、
ステップS4において、前記水は、脱イオン水である;および/または、
ステップS4において、前記水は、前記ポリアミドチップの質量の1倍以上の質量で使用される;および/または、
ステップS4およびステップS5において、前記不活性ガスは、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの1種または2種を含有している、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップS4において、前記水は、脱酸素処理が施された脱イオン水である;および/または、
ステップS4において、前記水は、前記ポリアミドチップの質量の1~12倍の質量で使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップS5において、前記混合物は、4~50時間加熱される;および/または、
ステップS5において、前記混合物は、80℃~140℃で加熱される;および/または、
ステップS5において、前記リンスは、50℃~100℃の温度の温水を用いて実施される;および/または、
ステップS5において、前記乾燥は、真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥および高周波乾燥から選択される1つ以上によって実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ステップS5において、前記混合物は、8~45時間加熱される;および/または、
ステップS5において、前記混合物は、85℃~120℃で加熱される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
エンジニアリングプラスチックにおける請求項に記載のポリアミド樹脂あるいは請求項に記載の組成物の使用。
【国際調査報告】