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2024-540756酵素固定化担体及びその製造方法、固定化酵素及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】酵素固定化担体及びその製造方法、固定化酵素及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 11/082 20200101AFI20241025BHJP
【FI】
C12N11/082
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529623
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2021131878
(87)【国際公開番号】W WO2023087270
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524186833
【氏名又は名称】▲遼▼▲寧▼▲凱▼菜英医▲薬▼化学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヤーサ,ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 佳▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲竜▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 利▲騰▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 瑜霞
【テーマコード(参考)】
4B033
【Fターム(参考)】
4B033NA22
4B033NB04
4B033NB15
4B033NB34
4B033NB62
4B033NC03
4B033NC12
4B033ND02
4B033ND12
4B033NF01
4B033NF02
4B033NG09
4B033NH09
(57)【要約】
酵素固定化担体及びその製造方法、固定化酵素及びその製造方法を提供する。当該酵素固定化担体は、樹脂球マトリックスと、化学結合によって樹脂球マトリックスにリンクされた-N(CHCOOH)基と、配位作用によって-N(CHCOOH)基にキレートして吸着された金属イオンとを含み、ただし、樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂及び/又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、樹脂球マトリックスの粒径は、200~700μmである。これにより、酵素固定化担体の酵素に対する適合性は悪く、固定化効果は悪く、且つ固定化酵素の活性は悪く、繰り返し使用する過程で安定性は悪いという従来技術の課題を解決している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂球マトリックスと、化学結合によって前記樹脂球マトリックスにリンクされた-N(CHCOOH)基と、配位作用によって前記-N(CHCOOH)基にキレートして吸着された金属イオンとを含み、ただし、前記樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、前記樹脂球マトリックスの粒径は、200μm~700μmであることを特徴とする酵素固定化担体。
【請求項2】
前記アミノ型メタクリル樹脂が、Cの長さ又はCの長さの炭素鎖アームであるるアミノ官能基を有し、且つアミノ基の含有量が、30μmol/g~80μmol/gであり、
好ましくは、前記アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA、Seplite(登録商標)LX-1000EA、Lifetech(商標)ECR8309、Lifetech(商標)ECR8409、ESR-1、ESR-3又はESQ-1のうちの1種又は複数種であり、より好ましくは、前記アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA又はLifetech(商標)ECR8309のうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記エポキシ型メタクリル樹脂のエポキシ当量が、2μmol/g~5μmol/gであり、より好ましくは、前記エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-103B、EP200、Seplite(登録商標)LX-107B、Seplite(登録商標)LX-1000SW、Seplite(登録商標)LX-1000SD、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA、Lifetech(商標)ECR8285、Lifetech(商標)ECR8204、Lifetech(商標)ECR8209、ES-1、ES103、ES-101、ReliZyme(商標)HFA403又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種であり、より好ましくは、前記エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記金属イオンが、ニッケルイオン、鉄イオン、銅イオン又はコバルトイオンであることを特徴とする請求項1に記載の酵素固定化担体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酵素固定化担体と、それに固定された酵素とを含むことを特徴とする固定化酵素。
【請求項4】
前記酵素は、アミノ基転移酵素、ケト還元酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、一原子酸素添加酵素、アルケン還元酵素、イミン還元酵素及びアミノ酸脱水素酵素から選ばれるいずれか1種又は複数種であり、ただし、
前記アミノ基転移酵素は、クロモバクテリウム・ビオラセウム(ChromobacteriumviolaceumDSM30191)に由来するアミノ基転移酵素、又はアルスロバクター・シトレウス(Arthrobactercitreus)に由来するアミノ基転移酵素、又は放線菌門(Actinobacteria)に由来するアミノ基転移酵素、又はSciscionellasp.SE31に由来するアミノ基転移酵素であり、
前記ケト還元酵素は、Acetobactersp.CCTCCM209061に由来するカルボニル還元酵素、又はスポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomycessalmonicolor)に由来するケト還元酵素であり、
前記アルコール脱水素酵素は、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobiumbrockii)に由来するアルコール脱水素酵素であり、
前記ギ酸脱水素酵素は、カンジダ・ボイジニ(Candidaboidinii)に由来するギ酸脱水素酵素であり、
前記グルコース脱水素酵素は、リシニバチルス・スフェリカスG10(LysinibacillussphaericusG10)に由来するグルコース脱水素酵素であり、
前記一原子酸素添加酵素は、Rhodococcussp.Phi1に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はロドコッカス・ルーバー-SD1(Rhodococcusruber-SD1)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はブラキモナス・ペトロレオボランス(Brachymonaspetroleovorans)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素であり、
前記アルケン還元酵素は、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)に由来するアルケン還元酵素、又はChryseobacteriumsp.CA49に由来するアルケン還元酵素であり、
前記イミン還元酵素は、ストレプトマイセス属(Streptomycessp.)に由来するイミン還元酵素、又はバチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するイミン還元酵素であり、
前記アミノ酸脱水素酵素は、バチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するロイシン脱水素酵素、又はバチルス・スファエリクス(Bacillussphaericus)に由来するフェニルアラニン脱水素酵素、又はサーモアクチノマイセス・インターメディウスATCC33205(ThermoactinomycesintermediusATCC33205)に由来するアミノ酸脱水素酵素、又はサーモシントロファ・リポリティカ(Thermosyntrophalipolytica)に由来するアミノ酸脱水素酵素であることを特徴とする請求項3に記載の固定化酵素。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の酵素固定化担体の製造方法であって、
樹脂球マトリックスを提供するステップと、
前記樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップと、
前記-N(CHCOOH)基において配位作用によって金属イオンをキレートして吸着させて、前記酵素固定化担体を得るステップとを含み、
前記樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、前記樹脂球マトリックスの粒径は、200μm~700μmであることを特徴とする酵素固定化担体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂球マトリックスがアミノ型メタクリル樹脂である場合には、前記アミノ型メタクリル樹脂とクロロ酢酸ナトリウムを混合して、求核置換反応を行うことにより、前記アミノ型メタクリル樹脂に前記-N(CHCOOH)基をリンクさせることを特徴とする請求項5に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項7】
前記アミノ型メタクリル樹脂と前記クロロ酢酸ナトリウムの水溶液を20℃~25℃で30分間~60分間撹拌した後に、1mol/L~2mol/Lのアルカリ性の水溶液で反応系のpHを9~10に調整し、次に、温度を70℃~80℃に上げて、N雰囲気で20時間~30時間反応させることにより、前記アミノ型メタクリル樹脂に前記-N(CHCOOH)基をリンクさせ、
好ましくは、前記アルカリ性の水溶液が、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化リチウム溶液であることを特徴とする請求項6に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂球マトリックスがエポキシ型メタクリル樹脂である場合には、前記エポキシ型メタクリル樹脂とイミノ二酢酸二ナトリウムを混合して、付加反応を行うことにより、前記エポキシ型メタクリル樹脂に前記-N(CHCOOH)基をリンクさせることを特徴とする請求項5に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ型メタクリル樹脂と前記イミノ二酢酸二ナトリウムの水溶液を20℃~25℃で30分間~60分間撹拌した後に、温度を60℃~70℃に上げて、N雰囲気下で18時間~24時間反応させることにより、前記エポキシ型メタクリル樹脂に前記-N(CHCOOH)基をリンクさせることを特徴とする請求項8に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって前記-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップの後に、反応系に金属塩溶液を加えて、錯化反応を行うことにより、前記-N(CHCOOH)基において配位作用によって前記金属イオンをキレートして吸着させて、前記酵素固定化担体を得て、
好ましくは、前記錯化反応の過程で、反応温度が20℃~30℃であり、反応時間が1時間~4時間であり、
好ましくは、前記金属塩溶液が、塩化ニッケル水溶液、硫酸銅水溶液、塩化第一鉄水溶液又は塩化コバルト水溶液であり、
好ましくは、前記金属塩溶液における金属イオンと前記樹脂球マトリックスの質量比が(0.05~0.1):1であることを特徴とする請求項5~9のいずれか一項に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項11】
前記クロロ酢酸ナトリウムと前記アミノ型メタクリル樹脂の質量比は、(5~10):1であることを特徴とする請求項6に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項12】
前記イミノ二酢酸二ナトリウムと前記エポキシ型メタクリル樹脂の質量比は、(5~10):1であることを特徴とする請求項8に記載の酵素固定化担体の製造方法。
【請求項13】
請求項3又は4に記載の固定化酵素の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の酵素固定化担体と酵素に対して固定化反応を行わせて、前記固定化酵素を得るステップを含むことを特徴とする固定化酵素の製造方法。
【請求項14】
前記固定化酵素の製造方法が、
前記酵素固定化担体を第1溶媒に分散させて分散液を形成させることであって、前記第1溶媒は、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム水溶液及びイミダゾール緩衝液の混合溶液であるステップと、
前記分散液と、前記酵素を含む酵素液を反応させることにより、前記酵素と前記酵素固定化担体に対して前記固定化反応を行わせて、前記固定化酵素を得るステップとを含むことを特徴とする請求項13に記載の固定化酵素の製造方法。
【請求項15】
前記第1溶媒において、前記リン酸緩衝液の濃度は、0.1mol/L~0.2mol/Lであり、前記塩化ナトリウム水溶液の濃度は、0.5mol/L~1mol/Lであり、前記イミダゾール緩衝液の濃度は、0.05mol/L~0.1mol/Lであることを特徴とする請求項14に記載の固定化酵素の製造方法。
【請求項16】
前記分散液と前記酵素液が反応する過程において、反応温度は20℃~25℃であり、反応時間は16時間~24時間であり;好ましくは、1gの前記酵素固定化担体が4mL~8mLの前記酵素液と反応し、且つ前記酵素液中のタンパク質含有量が20mg/mL~25mg/mLであることを特徴とする請求項14に記載の固定化酵素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体触媒の分野に関し、具体的に言えば、酵素固定化担体及びその製造方法、固定化酵素及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体触媒は、既に薬物のグリーン合成の重要な部分となっており、薬物の構造単位及び中間体の触媒合成で最もフューチャーと応用を有する技術の1つであり、特に、キラル合成のために独特で置き換えにくい方法を提供している。産業的プロセスでは酵素が触媒として用いられることが益々増えているが、酵素の使用条件の穏やかさとそれ自身の変わりやすさにより、酵素には非常に厳しい環境要件を要し、且つリサイクルしにくいため、酵素の産業における使用が大幅に制限されている。固定化酵素技術の開発及び使用はこれらの課題を効果的に解決できるため、よく「生体触媒」と呼ばれる固定化酵素は産業的な有機合成及び生体内変換で幅広く用いられている。
【0003】
酵素の固定化方法は、物理的方法及び化学的方法の2つに大別できる。物理的方法は、主に吸着法及び包埋法を含み、化学的方法は、主に結合法及び架橋法を含む。吸着法は、非共有結合法とも呼ばれ、主に水素結合、ファンデルワールス力、疏水的相互作用、イオン結合などの非共有結合性相互作用によって酵素と吸着媒体を結合させる固定化法である。よく用いられる無機吸着材としては、シリカゲル、酸化アルミニウム、多孔質ガラス、珪藻土などがあり、よく用いられる有機吸着材は、主に、天然のアルギン酸塩、キチン、キトサン、セルロース、デンプンを含み、合成有機材料としては、ポリウレタン、マクロ孔質樹脂などがある。包埋法は、遊離酵素を特定のゲルなどの媒体の孔隙に包埋して固定させることであり、例えば、ポリアクリルアミド、アルギン酸カルシウムなどのゲル媒体を用いる包埋である。包埋法は、より簡単であり、且つ包埋された酵素のタンパク質構造が基本的に変わらず、酵素活性の損失も比較的小さいが、酵素成分の漏洩、酵素の不活化などの欠点がある。結合法は、即ち、共有結合による固定化であり、担体材料の有効な官能基と酵素関連官能基(例えば、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、ヒドロキシ基などの酵素タンパク質の側鎖基)との間の反応によって互いに結合することである。共有結合による固定化によって酵素と担体との間の結合がより強くなり、このような酵素と担体との間で生じる強い化学結合は酵素の流失を著しく緩和させ、酵素の再利用率を向上させることができる。しかし、当該方法は条件が厳しく、反応が激しく、酵素活性の損失が大きい(一般的には酵素活性の残存率は30%程度である)。架橋法とは、二官能性又は多官能性試薬(架橋試薬)によって酵素分子の間で、酵素分子と担体との間で架橋反応を行って、共有結合を形成することにより酵素の固定化を行う方法を指す。よく用いられる架橋試薬としては、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジアミン、無水シス-2-ブテン二酸、ビスアゾベンゼンなどがある。架橋剤を利用して酵素を架橋させて形成される担体なし酵素凝集体(cross-linkedenzymeaggregates、CLEA)についての研究が多く、例えば、フェニルアラニンアンモニアリアーゼのCLEA固定化及びスクロースホスホリラーゼのCLEA固定化である。以上から分かるように、上記の伝統的な酵素の固定化方法には欠点が少なからずあり、例えば、吸着固定化された酵素は流失しやすく、包埋固定化された後の酵素の基質及び生成物は拡散しにくく、共有結合法は、酵素の不活化を引き起こしやすく、架橋酵素の機械的特性は悪いなどである。
【0004】
しかし、市販されるアフィニティー樹脂は、多くがタンパク質精製樹脂であり、そのマトリックスは一般的にセルロース、架橋グルカン、アガロース、ポリアクリルアミド、多孔質ガラスビーズなどであり、そのうちアガロースゲルの方が最も幅広く使用されている。例えば、金属キレートアフィニティー樹脂は粒子サイズが小さく、大規模な使用とリサイクルが難しく、且つ粒子は高いせん断力で壊れやすいため、伝統的な撹拌タンク反応モードでは使用しにくい。また、その樹脂マトリックスは非常に親水性があり保存条件に対する要求が高く、アルコール溶液で保存し、且つ乾燥も極力避ける必要があるため、固定化酵素として用いることが不適切である。また、その高いコストから固定化酵素の産業的な使用で大きく影響されてしまっている。
【0005】
したがって、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良い新規な酵素固定化担体を提供する必要がある。また、化学反応における固定化酵素の使用では、酵素の活性がより多く保持されており、且つ繰り返し使用する過程で安定性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、酵素固定化担体及びその製造方法、固定化酵素及びその製造方法を提供することにより、酵素固定化担体の酵素に対する適合性が悪く、固定化効果が悪く、且つ固定化酵素の活性が悪く、繰り返し使用する過程で安定性が悪いという従来技術の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様によれば、酵素固定化担体が提供され、酵素固定化担体は、樹脂球マトリックスと、化学結合によって樹脂球マトリックスにリンクされた-N(CHCOOH)基と、配位作用によって-N(CHCOOH)基にキレートして吸着された金属イオンとを含み、ただし、樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、樹脂球マトリックスの粒径は、200~700μmである。
【0008】
さらに、アミノ型メタクリル樹脂では、アミノ型メタクリル樹脂が、Cの長さ又はCの長さの炭素鎖アームであるアミノ官能基を有し、且つアミノ基の含有量が、30~80μmol/gであり;好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA、Seplite(登録商標)LX-1000EA、Lifetech(商標)ECR8309、Lifetech(商標)ECR8409、ESR-1、ESR-3又はESQ-1のうちの1種又は複数種であり;より好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA又はLifetech(商標)ECR8309のうちの1種又は複数種であり;好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂のエポキシ当量が、2~5μmol/gであり;より好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-103B、EP200、Seplite(登録商標)LX-107B、Seplite(登録商標)LX-1000SW、Seplite(登録商標)LX-1000SD、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA、Lifetech(商標)ECR8285、Lifetech(商標)ECR8204、Lifetech(商標)ECR8209、ES-1、ES103、ES-101、ReliZyme(商標)HFA403又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種であり;より好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種であり;好ましくは、金属イオンが、ニッケルイオン、鉄イオン、銅イオン又はコバルトイオンである。
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様によれば、固定化酵素が提供され、固定化酵素は、上記の酵素固定化担体と、それに固定された酵素とを含む。
【0010】
さらに、酵素は、アミノ基転移酵素、ケト還元酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、一原子酸素添加酵素、アルケン還元酵素、イミン還元酵素及びアミノ酸脱水素酵素から選ばれいずれか1種又は複数種であり、ただし、アミノ基転移酵素は、クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191(ChromobacteriumviolaceumDSM30191)に由来するアミノ基転移酵素、又はアルスロバクター・シトレウス(Arthrobactercitreus)に由来するアミノ基転移酵素、又は放線菌門(Actinobacteria)に由来するアミノ基転移酵素、又はSciscionellasp.SE31に由来するアミノ基転移酵素であり;ケト還元酵素は、Acetobactersp.CCTCCM209061に由来するカルボニル還元酵素、又はスポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomycessalmonicolor)に由来するケト還元酵素であり;アルコール脱水素酵素は、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobiumbrockii)に由来するアルコール脱水素酵素であり;ギ酸脱水素酵素は、カンジダ・ボイジニ(Candidaboidinii)に由来するギ酸脱水素酵素であり;グルコース脱水素酵素は、リシニバチルス・スフェリカスG10(LysinibacillussphaericusG10)に由来するグルコース脱水素酵素であり;一原子酸素添加酵素は、Rhodococcussp.Phi1に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はロドコッカス・ルーバー-SD1(Rhodococcusruber-SD1)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はブラキモナス・ペトロレオボランス(Brachymonaspetroleovorans)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素であり;アルケン還元酵素は、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)に由来するアルケン還元酵素、又はChryseobacteriumsp.CA49に由来するアルケン還元酵素であり;イミン還元酵素は、ストレプトマイセス属(Streptomycessp.)に由来するイミン還元酵素、又はバチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するイミン還元酵素であり;アミノ酸脱水素酵素は、バチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するロイシン脱水素酵素、又はバチルス・スファエリクス(Bacillussphaericus)に由来するフェニルアラニン脱水素酵素、又はサーモアクチノマイセス・インターメディウスATCC33205(ThermoactinomycesintermediusATCC33205)に由来するアミノ酸脱水素酵素、又はサーモシントロファ・リポリティカ(Thermosyntrophalipolytica)に由来するアミノ酸脱水素酵素である。
【0011】
本発明の別の態様によれば、樹脂球マトリックスを提供するステップと、樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップと、-N(CHCOOH)基において配位作用によって金属イオンを吸着させて、酵素固定化担体を得るステップとを含み、ただし、樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、樹脂球マトリックスの粒径は、200~700μmである、上記の酵素固定化担体の製造方法が提供される。
【0012】
さらに、樹脂球マトリックスがアミノ型メタクリル樹脂である場合には、アミノ型メタクリル樹脂とクロロ酢酸ナトリウムを混合して、求核置換反応を行うことにより、アミノ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。
【0013】
さらに、アミノ型メタクリル樹脂とクロロ酢酸ナトリウムの水溶液を20~25℃で30~60分間撹拌した後、1~2mol/Lのアルカリ性の水溶液で反応系のpHを9~10に調整し、次に、温度を70~80℃に上げて、N雰囲気下で20~30時間反応させることにより、アミノ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせ;好ましくは、アルカリ性の水溶液が、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化リチウム溶液である。
【0014】
さらに、樹脂球マトリックスがエポキシ型メタクリル樹脂である場合には、エポキシ型メタクリル樹脂とイミノ二酢酸二ナトリウムを混合して、付加反応を行うことにより、エポキシ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。
【0015】
さらに、エポキシ型メタクリル樹脂とイミノ二酢酸二ナトリウムの水溶液を20~25℃で30~60分間撹拌した後、温度を60~70℃に上げて、N雰囲気下で18~24時間反応させることにより、エポキシ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。
【0016】
さらに、樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップの後に、反応系に金属塩溶液を加えて、錯化反応を行うことにより、-N(CHCOOH)基に配位作用によって金属イオンを吸着させて、酵素固定化担体を得て;好ましくは、錯化反応の過程で、反応温度が20~30℃であり、反応時間が1~4時間であり;好ましくは、金属塩溶液が、塩化ニッケル水溶液、硫酸銅水溶液、塩化第一鉄水溶液又は塩化コバルト水溶液であり;好ましくは、金属塩溶液における金属イオンと樹脂球マトリックスの質量比が(0.05~0.1):1である。
【0017】
さらに、クロロ酢酸ナトリウムとアミノ型メタクリル樹脂の質量比は、(5~10):1である。
【0018】
さらに、イミノ二酢酸二ナトリウムとエポキシ型メタクリル樹脂の質量比は、(5~10):1である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、上記の酵素固定化担体と酵素に対して固定化反応を行わせて、固定化酵素を得るステップを含む、上記の固定化酵素の製造方法が提供される。
【0020】
さらに、固定化酵素の製造方法は、酵素固定化担体を第1溶媒に分散させて分散液を形成させることであって、第1溶媒は、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム水溶液及びイミダゾール緩衝液の混合溶液であるステップと、分散液と、酵素を含む酵素液を反応させることにより、酵素と酵素固定化担体に対して固定化反応を行わせて、固定化酵素を得るステップとを含む。
【0021】
さらに、第1溶媒において、リン酸緩衝液の濃度は、0.1~0.2mol/Lであり;塩化ナトリウム水溶液の濃度は、0.5~1mol/Lであり;イミダゾール緩衝液の濃度は、0.05~0.1mol/Lである。
【0022】
さらに、分散液と酵素液が反応する過程で、反応温度は20~25℃であり、反応時間は16~24時間であり;好ましくは、1gの酵素固定化担体が4~8mLの酵素液と反応し、且つ酵素液中のタンパク質含有量が20~25mg/mLである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記の担体は、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとし、化学結合によって樹脂球マトリックスに-N(CHCOOH)基が接続されており、金属イオンは配位作用によって-N(CHCOOH)基に吸着して接続されている。当該担体を使用すると、第一に、その樹脂球マトリックスの粒径(200~700μm)は伝統的なアフィニティー樹脂(20~80μm)よりも大きく、リサイクル性がより良い。また、通常のアフィニティー樹脂と比べてその機械的強度はより高く、高いせん断力で樹脂球マトリックスが破砕する問題が避けられ、そして伝統的な撹拌タンク反応モードでは、固定化酵素の使用寿命がより長く、リサイクル性がより良い。第二に、それによって構成された含窒素ジ酢酸基、金属イオンの金属キレートアフィニティー構造は一般的な共有結合担体と比べて、担体がタンパク質末端のHisタグとしか結合しないため、酵素に対する適合性はより良く、固定化と同時に酵素活性を最大限に保持することができ、且つ酵素を繰り返し使用する場合の安定性はより高い。また、上記のタイプの樹脂は、コストがより低い。これにより、本発明の上記の担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良く、且つ固定化と同時に酵素の活性を最大限に保持することができる。さらに、これを用いて固定化して得られた固定化酵素は、その活性がより良く、繰り返し使用する過程で安定性がより高く、産業的な固定化酵素への使用により好適である。これにより、本発明は、酵素固定化担体の酵素に対する適合性が悪く、固定化効果が悪く、且つ固定化酵素の活性が悪く、繰り返し使用する過程で安定性が悪いという従来技術の課題を効果的に解決している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
なお、矛盾がない限り、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせてもよい。以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
背景技術の部分で述べたように、従来技術には、酵素固定化担体の酵素に対する適合性が悪く、固定化効果が悪く、且つ固定化酵素の活性が悪く、繰り返し使用する過程で安定性が悪いという課題がある。
【0026】
本発明は、上記の課題を解決するために、酵素固定化担体を提供し、酵素固定化担体は、樹脂球マトリックスと、化学結合によって樹脂球マトリックスにリンクされた-N(CHCOOH)基と、配位作用によって-N(CHCOOH)基にキレートして吸着された金属イオンとを含み、ただし、樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂であり、樹脂球マトリックスの粒径は、200~700μmである。
【0027】
本発明の上記の担体は、アミノ型メタクリル樹脂又はエポキシ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとし、化学結合によって樹脂球マトリックスに-N(CHCOOH)基が接続されており、金属イオンは配位作用によって-N(CHCOOH)基に吸着して接続されている。当該担体を使用すると、後の酵素固定化反応の過程で、酵素末端のHisタグは配位作用によって金属イオンに吸着することができる。具体的には、-N(CHCOOH)基が金属イオンと配位結合を形成するが、-N(CHCOOH)基は金属イオンの配位部位の全てを占拠せず、Hisタグを持っている酵素は引き続き金属イオンの残っており占拠されていない配位部位を占拠して、配位作用によって担体と固定化酵素を形成する。共有結合と比べると、その結合の過程では主体である酵素と担体とで化学反応が起きているため、主体である酵素が破壊され、且つその固定化酵素の剛性が強くなって、酵素活性が低いことを引き起こす。これと違って、本発明では酵素末端のHisタグが担体中の金属イオンと配位結合する形態を採用しているため、担体と主体である酵素が反応して接触することはないため、酵素活性の損失はより小さい。
【0028】
特に、本発明の上記の樹脂球マトリックスは、アミノ型メタクリル樹脂及び/又はエポキシ型メタクリル樹脂である。これにより、第一に、その樹脂球マトリックスの粒子は伝統的なアフィニティー樹脂よりも大きく、リサイクル性がより良い。また、その機械的強度はより高く、高いせん断力で樹脂球マトリックスが破砕する問題が避けられ、そして伝統的な撹拌タンク反応モードでは、固定化酵素の使用寿命がより長く、リサイクル性がより良い。第二に、それによって構成された担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化と同時に酵素活性を最大限に保持することができ、且つ酵素を繰り返し使用する場合の安定性はより高い。また、上記のタイプの樹脂は、コストがより低い。これにより、本発明の上記の担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良く、且つ固定化と同時に酵素の活性を最大限に保持することができる。さらに、これを用いて固定化して得られた固定化酵素は、その活性がより良く、繰り返し使用する過程で安定性がより高く、産業的な固定化酵素への使用により好適である。
【0029】
要するに、本発明は、酵素固定化担体の酵素に対する適合性が悪く、固定化効果が悪く、且つ固定化酵素の活性が悪く、繰り返し使用する過程で安定性が悪いという従来技術の課題を効果的に解決している。
【0030】
好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂が、Cの長さ又はCの長さの炭素鎖アームであるアミノ官能基を有し、且つアミノ基の含有量が、30~80μmol/gであり;好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA、Seplite(登録商標)LX-1000EA、Lifetech(商標)ECR8309、Lifetech(商標)ECR8409、ESR-1、ESR-3又はESQ-1のうちの1種又は複数種であり;より好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000HA、Seplite(登録商標)LX-1000EPN、Seplite(登録商標)LX-EPHA又はLifetech(商標)ECR8309のうちの1種又は複数種であり;
【0031】
好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂のエポキシ当量が、2~5μmol/gであり;より好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-103B、EP200、Seplite(登録商標)LX-107B、Seplite(登録商標)LX-1000SW、Seplite(登録商標)LX-1000SD、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA、Lifetech(商標)ECR8285、Lifetech(商標)ECR8204、Lifetech(商標)ECR8209、ES-1、ES103、ES-101、ReliZyme(商標)HFA403又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種であり;より好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂が、Seplite(登録商標)LX-1000EP、Seplite(登録商標)LX-109s、Seplite(登録商標)LX-1000HFA又はReliZyme(商標)EC-HFAのうちの1種又は複数種である。
【0032】
樹脂球マトリックスは上記のタイプから選ばれ、一方では、その機械的強度がより高く、粒子が伝統的なアフィニティー樹脂よりも大きく、コストがより安いため、より大規模に使用しやすくなり、産業的生産の将来性は明るい。他方では、それによって構成された担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化と同時に酵素活性を最大限に保持することができ、且つ酵素を繰り返し使用する場合の安定性はより高い。上記の樹脂の提供元は、以下のとおりである。
【表1】
【0033】
酵素と担体の結合の安定性を一層向上させるために、好ましくは、金属イオンが、ニッケルイオン、鉄イオン、銅イオン又はコバルトイオンであり;より好ましくは、金属イオンが、ニッケルイオン、銅イオン又はコバルトイオンである。
【0034】
本発明は、また、固定化酵素を提供し、固定化酵素は、上記の酵素固定化担体と、それに固定された酵素とを含む。
【0035】
前述した各理由から、本発明の上記の担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良く、且つ固定化と同時に酵素の活性を最大限に保持することができる。さらに、これを用いて固定化して得られた固定化酵素は、その活性がより良く、繰り返し使用する過程で安定性がより高く、産業的な固定化酵素への使用により好適である。
【0036】
本発明の固定化酵素は、酵素に幅広い適合性があり、酵素は、例えば、アミノ基転移酵素、ケト還元酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、一原子酸素添加酵素、アルケン還元酵素、イミン還元酵素及びアミノ酸脱水素酵素のうちのいずれか1種又は複数種を含むがこれらに限られず、なお、次の酵素に対してより好適である。アミノ基転移酵素は、クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191(ChromobacteriumviolaceumDSM30191)に由来するアミノ基転移酵素、又はアルスロバクター・シトレウス(Arthrobactercitreus)に由来するアミノ基転移酵素、又は放線菌門(Actinobacteria)に由来するアミノ基転移酵素、又はSciscionellasp.SE31に由来するアミノ基転移酵素であり;ケト還元酵素は、Acetobactersp.CCTCCM209061に由来するカルボニル還元酵素、又はスポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomycessalmonicolor)に由来するケト還元酵素であり;アルコール脱水素酵素は、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobiumbrockii)に由来するアルコール脱水素酵素であり;ギ酸脱水素酵素は、カンジダ・ボイジニ(Candidaboidinii)に由来するギ酸脱水素酵素であり;グルコース脱水素酵素は、リシニバチルス・スフェリカスG10(LysinibacillussphaericusG10)に由来するグルコース脱水素酵素であり;一原子酸素添加酵素は、Rhodococcussp.Phi1に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はロドコッカス・ルーバー-SD1(Rhodococcusruber-SD1)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素、又はブラキモナス・ペトロレオボランス(Brachymonaspetroleovorans)に由来するシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素であり;アルケン還元酵素は、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)に由来するアルケン還元酵素、又はChryseobacteriumsp.CA49に由来するアルケン還元酵素であり;イミン還元酵素は、ストレプトマイセス属(Streptomycessp.)に由来するイミン還元酵素、又はバチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するイミン還元酵素であり;アミノ酸脱水素酵素は、バチルス・セレウス(Bacilluscereus)に由来するロイシン脱水素酵素、又はバチルス・スファエリクス(Bacillussphaericus)に由来するフェニルアラニン脱水素酵素、又はサーモアクチノマイセス・インターメディウスATCC33205(ThermoactinomycesintermediusATCC33205)に由来するアミノ酸脱水素酵素、又はサーモシントロファ・リポリティカ(Thermosyntrophalipolytica)に由来するアミノ酸脱水素酵素である。本発明の上記の酵素の酵素番号、提供元及び酵素の配列情報は、以下のとおりである。
【表2】
【0037】
なお、上記の酵素配列はいずれも従来技術で開示されている酵素であり、本発明は上記の酵素を用いて本発明の酵素固定化担体の性能を検証するだけである。
【0038】
固定化酵素の活性及び繰り返し使用する場合の安定性を一層向上させるために、より好ましくは、酵素がアミノ基転移酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-1000HA、LX-1000EPN、LX-EPHA又はLX-109sのうちの1種又は複数種であり;酵素がギ酸脱水素酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-1000EPN、LX-109s、LX-1000HFA、ECR8285又はEC-HFAのうちの1種又は複数種であり;酵素がケト還元酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-109s、LX-EPHA、ECR8285、LX-1000HA又はECR8409のうちの1種又は複数種であり;酵素が一原子酸素添加酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-109s、LX-EPHA又はLX-1000HAのうちの1種又は複数種であり;酵素がイミン還元酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-109s及び/又はLX-EPHAであり;酵素がアミノ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素又はアルケン還元酵素である場合には、マトリックス樹脂が、LX-109s、LX-1000EPN、LX-EPHA又はLX-1000HAのうちの1種又は複数種である。
【0039】
本発明は、また、樹脂球マトリックスを提供するステップと、樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップと、-N(CHCOOH)基において配位作用によって金属イオンを吸着させて、酵素固定化担体を得るステップとを含む、上記の酵素固定化担体の製造方法を提供する。
【0040】
前述した各理由から、本発明の上記の担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良く、且つ固定化と同時に酵素の活性を最大限に保持することができる。さらに、これを用いて固定化して得られた固定化酵素は、その活性がより良く、繰り返し使用する過程で安定性がより高く、産業的な固定化酵素への使用により好適である。
【0041】
一つの好ましい実施形態では、樹脂球マトリックスがアミノ型メタクリル樹脂である場合には、アミノ型メタクリル樹脂とクロロ酢酸ナトリウムを混合して、求核置換反応を行うことにより、アミノ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。より好ましくは、アミノ型メタクリル樹脂とクロロ酢酸ナトリウムの水溶液を室温で30~60分間撹拌した後、1~2mol/Lのアルカリ性の水溶液で反応系のpHを9~10に調整し、次に、温度を70~80℃に上げて、N雰囲気下で20~30時間反応させることにより、アミノ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせ;好ましくは、アルカリ性の水溶液が炭酸ナトリウム水溶液、希水酸化ナトリウム溶液又は水酸化リチウム溶液である。これにより、本発明は、アミノ型メタクリル樹脂球マトリックスの転化率がより高く、且つ反応の過程がより穏やかである。
【0042】
一つの好ましい実施形態では、樹脂球マトリックスがエポキシ型メタクリル樹脂である場合には、エポキシ型メタクリル樹脂とイミノ二酢酸二ナトリウムを混合して、付加反応を行うことにより、エポキシ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。より好ましくは、エポキシ型メタクリル樹脂とイミノ二酢酸二ナトリウムの水溶液を20~25℃で30~60分間撹拌した後に、温度を60~70℃に上げて、N雰囲気下で18~24時間反応させることによりエポキシ型メタクリル樹脂に-N(CHCOOH)基をリンクさせる。これにより、本発明は、エポキシ型メタクリル樹脂球マトリックスの転化率がより高く、且つ反応の過程がより穏やかである。
【0043】
一つの好ましい実施形態では、樹脂球マトリックスにおいて化学結合によって-N(CHCOOH)基をリンクさせるステップの後に、反応系に金属塩溶液を加えて、錯化反応を行うことにより、-N(CHCOOH)基に配位作用によって金属イオンを吸着させて、酵素固定化担体を得る。好ましくは、錯化反応の過程で、反応温度が2~30℃であり、反応時間が1~4時間であり;金属塩溶液は、塩化ニッケル、硫酸銅、塩化第一鉄、塩化コバルトなどである。これにより、反応条件はより適切であり、反応して得られた酵素固定化担体は収率がより高く、純度がより高い。より好ましくは、金属塩溶液における金属イオンと樹脂球マトリックスの質量比が(0.05~0.1):1である。
【0044】
アミノ型マトリックス樹脂の転化率を一層向上させるために、好ましくは、クロロ酢酸ナトリウムとアミノ型メタクリル樹脂の質量比が(5~10):1である。
【0045】
エポキシ型マトリックス樹脂の転化を一層向上させるために、好ましくは、イミノ二酢酸二ナトリウムとエポキシ型メタクリル樹脂の質量比が(5~10):1である。
【0046】
本発明は、また、上記の酵素固定化担体と酵素に対して固定化反応を行わせて、固定化酵素を得るステップを含む、上記の固定化酵素の製造方法を提供する。
【0047】
前述した各理由から、本発明の上記の担体は、酵素に対する適合性がより良く、固定化効果がより良く、且つ固定化と同時に酵素の活性を最大限に保持することができる。さらに、これを用いて固定化して得られた固定化酵素は、その活性がより良く、繰り返し使用する過程で安定性がより高く、産業的な固定化酵素への使用により好適である。
【0048】
好ましくは、固定化酵素の製造方法が、酵素固定化担体を第1溶媒に分散させて分散液を形成させることであって、第1溶媒は、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム水溶液及びイミダゾール緩衝液の混合溶液であるステップと、分散液と、酵素を含む酵素液を反応させることにより、酵素と酵素固定化担体に対して固定化反応を行わせて、固定化酵素を得るステップとを含む。第1溶媒は、固定化のためのより穏やかで適切な環境を作っており、酵素の活性を保護し、酵素の固定化効果を強化させ、酵素液中の非標的タンパク質が固定されることを防ぐことができる。これにより、上記の担体の酵素に対する適合性を一層向上させており、且つ酵素の固定化効果はより良く、活性はより良い。
【0049】
固定化酵素の活性及び繰り返し使用する場合の安定性を一層向上させるために、好ましくは、第1溶媒で、リン酸緩衝液の濃度が0.1~0.2mol/Lであり;好ましくは、塩化ナトリウム水溶液の濃度が0.5~1mol/Lであり;好ましくは、イミダゾール緩衝液の濃度が0.05~0.1mol/Lである。
【0050】
反応の過程における安定性を向上させるとともに、反応効率を向上させるために、好ましくは、分散液と酵素液が反応する過程で、反応温度が20~25℃であり、反応時間が16~24時間である。より好ましくは、1gの酵素固定化担体が4~8mLの酵素液に対応し、且つ酵素液中のタンパク質含有量が20~25mg/mLである。これは、酵素がより充分に固定されることを促進し、負荷能力を提供し、固定化酵素に、より高い触媒活性を持たせるために役立つ。
【0051】
以下、特定の実施例を用いて本願を一層詳細に記述し、これらの実施例を本願の主張する保護範囲に対する制限と理解することができない。
【0052】
(実施例1)
酵素固定化担体におけるアミノ基転移酵素の固定化及び使用
アミノ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとする酵素固定化担体の製造:
5gのアミノ型メタクリル樹脂球マトリックスを取り出して、250mLの四つ口フラスコに加え、75mLの脱イオン水及び22.5gのクロロ酢酸ナトリウムを加え、室温下120rpmで機械的に撹拌して、担体を均一に分散させ、30分間撹拌した後に、1MのNaCO溶液でpHを9~10に調整し、次に、温度を70℃に上げてN保護下で20時間反応させた(途中でpHを複数回調整して、pHを9~10に維持させた)。反応終了後に、系を室温に冷却して中性になるまで水で洗浄した。系から液体を除去して、修飾後の担体を脱イオン水で2回洗浄し、100mLの5mol/LNiCl水溶液を加えて、3時間撹拌し、金属イオン系を除去して、脱イオン水で2回洗浄した。
【0053】
エポキシ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとする酵素固定化担体の製造:
5gのエポキシ型メタクリル樹脂球マトリックスを取り出して、250mLの四つ口フラスコに加え、75mLの2Mイミノ二酢酸二ナトリウム水和物溶液を加え、室温下120rpmで機械的に撹拌して、担体を均一に分散させ、30分間撹拌した後、次に、温度を60℃に上げてN保護下で18時間反応させた。反応終了後に、室温に冷却して中性になるまで水で洗浄した。系から液体を除去して、修飾後の担体を脱イオン水で2回洗浄し、100mLの5mmol/LNiCl水溶液を加えて、3時間撹拌し、金属イオン系を除去して、脱イオン水で2回洗浄した。
【0054】
アミノ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとする酵素固定化担体におけるアミノ基転移酵素の固定化:
1gの上記の酵素固定化担体を秤量して0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.5MのNaCl及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で複数回洗浄し、緩衝液を除去して、担体を保持して使用する。次に、4mLの酵素溶液を加え(タンパク質含有量が20~25mg/mLになるよう、0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.8MのNaCl及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で酵素溶液を調製し、補因子PLPが入っている)、20℃で16~24時間インキュベートして、緩衝液を除去した。0.5MのNaClを含有する20Mのリン酸緩衝液(pH8.0)及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で3回洗浄し、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.5MのNaCl緩衝液で1回洗浄し、緩衝液を除去して、固定化酵素を保持して使用する。
【0055】
エポキシ型メタクリル樹脂を樹脂球マトリックスとする酵素固定化担体におけるアミノ基転移酵素の固定化:
エポキシ型メタクリル樹脂におけるアミノ基転移酵素の固定化であって、1gのエポキシ型樹脂を秤量して0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.8MのNaCl緩衝液で複数回洗浄し、緩衝液を除去して、樹脂を保持して使用する。次に、0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.8MのNaCl緩衝液及び0.1gの酵素粉末で調製された4mLの酵素溶液を加え(補因子のピリドキサールリン酸PLPが入っている)、20℃で36~48時間インキュベートして、緩衝液を除去した。0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.5MのNaCl緩衝液で3回洗浄し、緩衝液を除去して、固定化酵素を保持して使用する。
【0056】
アミノ型メタクリル樹脂におけるアミノ基転移酵素の固定化であって、1gのアミノ型樹脂を秤量して0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で複数回洗浄し、緩衝液を除去して、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び最終濃度が2%であるグルタルアルデヒド溶液を加えた。次に、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.1gの酵素粉末で調製された4mLの酵素液を加え(補因子PLPが入っている)、20℃で16~24時間インキュベートして、緩衝液を除去した。0.5MのNaClを含有する20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で3回洗浄し、緩衝液を除去して、固定化酵素を保持して使用する。
【0057】
従来技術によるアフィニティークロマトグラフィー樹脂の市販品におけるアミノ基転移酵素の固定化:
【表3】
1gのバイオ・ラッドIMAC-Ni又はピュロライトMIDA-Ni固定化担体を秤量して0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.5MのNaCl及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で複数回洗浄し、緩衝液を除去して、担体を保持して使用する。次に、4mLの酵素溶液を加え(タンパク質含有量が20~25mg/mLになるよう、0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.8MのNaCl及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で酵素溶液を調製し、補因子PLPが入っている)、20℃で16~24時間インキュベートして、緩衝液を除去した。0.5MのNaClを含有する20Mのリン酸緩衝液(pH8.0)及び0.05Mのイミダゾール緩衝液で3回洗浄し、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)及び0.5MのNaCl緩衝液で1回洗浄し、緩衝液を除去して、固定化酵素を保持して使用する。
【0058】
固定化されたアミノ基転移酵素の活性及び繰り返し使用試験:
(一)
【化1】
【0059】
10mLの反応フラスコに、0.1gの主原料1を加え、4eqのイソプロピルアミン塩酸塩及び1mgのPLPを加え、反応液の最終体積が1mLになるよう、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を補足し、さらに0.01gの酵素粉末、又は0.01gの酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、30℃で16~20時間撹拌した。転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表1のとおりである。
【表4】
【0060】
(二):
【化2】
【0061】
10mLの反応フラスコに、0.05gのDMSOを加え、0.03gの主原料2を溶解して、3eqのイソプロピルアミン塩酸塩及び1mgのPLPを加え、反応液の最終体積が1mLになるよう、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を補足し、さらに0.01gの酵素粉末、又は0.01gの酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、30℃で16~20時間撹拌した。転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表2のとおりである。
【表5】
【0062】
(実施例2)
酵素固定化担体におけるギ酸脱水素酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をギ酸脱水素酵素と同じ質量置き換え、補因子を同じ質量のNADと置き換えることだけであった。
【0063】
固定化されたFDHの活性及び繰り返し使用試験:
【化3】
【0064】
50mLの反応フラスコに、5mLの0.1MTris-Cl緩衝液(pH8.0~9.0)を加え、100mgの主原料3を溶解し、108mgの塩化アンモニウム、80mgのアンモニウム塩を加えて、pHを7.5~8.0に調整し、次に、10mgのNAD、100mgのAADH-Bc遊離酵素及び5mgのFDH酵素粉末又は5mgの酵素粉末で製造された固定化FDHを加えた。30℃で16~20時間撹拌した。1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表3のとおりである。
【表6】
【0065】
(実施例3)
酵素固定化担体におけるケト還元酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をケト還元酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADと置き換えることだけであった。
【0066】
固定化されたケト還元酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化4】
【化5】
【0067】
10mLの反応フラスコに、0.5mLのイソプロピルアルコール(IPA)を加え、0.1gの原料4又は5を溶解し、0.5mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)及び10mgのNADを加え、さらに10mgの酵素粉末又は10mgの酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、30℃で16~20時間撹拌した。1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。反応データは、表4のとおりである。
【表7】
【0068】
(実施例4)
酵素固定化担体における一原子酸素添加酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素を一原子酸素添加酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADPと置き換えることだけであった。
【0069】
固定化された一原子酸素添加酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化6】
【0070】
10mLの反応フラスコに0.3mLのイソプロピルアルコールを加え、そして100mgの基質6、5mgのNADP、3mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)を加え、次に2mgのアルコール脱水素酵素ADH-Tb遊離酵素及び20mgのシクロヘキサノン一原子酸素添加酵素遊離酵素又は22mgの遊離酵素で製造された固定化酵素を加えた。30℃で16~20時間反応させて、転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してガスクロマトグラフィーで転化率を検出し、反応データは、表5のとおりである。
【表8】
【0071】
(実施例5)
アフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるイミン還元酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をイミン還元酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADと置き換えることだけであった。
【0072】
固定化されたイミン還元酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化7】
【0073】
2mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0~8.0)を10mLの球形反応器に加え、次に100mgの上記の基質7、10mgのNAD、60mgのギ酸アンモニウム、10mgのFDH及び10mgのIRED遊離酵素又は10mgの遊離酵素で製造された固定化IRED酵素又は10mgのFDH及び10mgのIRED遊離酵素で製造された共固定化酵素を加えた。30℃で20時間反応させた後に、転化率を検出し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、測定結果は、表6のとおりである。
【表9】
【0074】
(実施例6)
アフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるGDHの固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をグルタミン酸脱水素酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADPと置き換えることだけであった。
【0075】
固定化されたGDHの活性及び繰り返し使用試験:
【化8】
【0076】
10mLの反応フラスコに、0.125mLのメタノールを加え、0.25gの主原料8、4eqのグルコース及び1mgのNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を溶解し、反応液の最終体積が2mLになるよう、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)を補足し、さらに0.3gのADH-Tb酵素粉末及び10mgのGDH酵素粉末又は10mgのGDH酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、35℃で20時間撹拌した。1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応に投入して繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表7のとおりである。
【表10】
【0077】
(実施例7)
アフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるアルコール脱水素酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をアルコール脱水素酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADPと置き換えることだけであった。
【0078】
固定化されたアルコール脱水素酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化9】
【0079】
10mLの反応フラスコに、0.125mLのメタノールを加え、0.25gの主原料8を溶解して、4eqのグルコース及び1mgのNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を加え、反応液の最終体積が2mLになるよう、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)を補足し、さらに10mgのGDH酵素粉末及び0.3gのADH酵素粉末又は0.3gのADH酵素粉末で製造された固定化酵素又は0.3gのADH及び10mgのGDH酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、35℃で20時間撹拌した。1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応に投入して繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表8のとおりである。
【表11】
【0080】
(実施例8)
アフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるアルケン還元酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をアルケン還元酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNAD(P)と置き換えることだけであった。
【0081】
固定化されたアルケン還元酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化10】
【0082】
3mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0~8.0)を10mLの反応フラスコに入れ、次に、100mgの基質9を加え、続いて10mgのNAD(P)、80mgのギ酸アンモニウム、2mgのFDH及び10mgのERED遊離酵素又は10mgのERED遊離酵素で製造された固定化酵素又は2mgのFDH及び10mgのERED遊離酵素で製造された固定化酵素を加えた。30℃で16~20時間反応させて、転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してガスクロマトグラフィーで転化率を検出し、反応データは、表9のとおりである。
【表12】
【0083】
(実施例9)
アフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるアミノ酸脱水素酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、アミノ基転移酵素をアミノ酸脱水素酵素と等量で置き換え、補因子を同じ質量のNADと置き換えることだけであった。
【0084】
固定化されたアミノ酸脱水素酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化11】
【化12】
【0085】
20mLの反応フラスコに、5mLの0.1MTris-Cl緩衝液(pH8.0~9.0)を加えて、100mgの主原料10又は主原料11を溶解し、108mgの塩化アンモニウムを加えて、pHを7.5~8.0に調整し、次に、10~50mgのNAD、150mgのグルコース、5mgのGDH及び10mgのAADH遊離酵素又は10mgのAADH遊離酵素で製造された固定化酵素又は5mgのGDH及び10mgのAADH遊離酵素で製造された共固定化酵素を加えた。30℃で16~20時間撹拌した。転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表10のとおりである。
【表13】
【0086】
(実施例10)
異なる金属イオンアフィニティー修飾後のアミノ型及びエポキシ型メタクリル樹脂におけるアミノ基転移酵素の固定化及び使用
実施例1との違いは、等モル量のニッケルイオンを、それぞれ、コバルトイオン、銅イオンと置き換えることだけであった。
【0087】
固定化されたアミノ基転移酵素の活性及び繰り返し使用試験:
【化13】
【0088】
10mLの反応フラスコに、0.1gの主原料1を加え、4eqのイソプロピルアミン塩酸塩及び1mgのPLPを加え、反応液の最終体積が1mLになるよう、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を補足し、さらに0.01gの酵素粉末、又は0.01gの酵素粉末で製造された固定化酵素を加え、30℃で16~20時間撹拌した。転化率を測定し、1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表11のとおりである。
【表14】
【0089】
上述したのは、本発明を制限するためのものではなく、本発明の好ましい実施例に過ぎず、当業者にとって、本発明には様々な変更及び変化があってもよい。本発明の趣旨と原則において、いかなる補正、同等な置き換え、改善などを行っても、そのいずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
50mLの反応フラスコに、5mLの0.1MTris-Cl緩衝液(pH8.0~9.0)を加え、100mgの主原料3を溶解し、108mgの塩化アンモニウム、80mgのアンモニウム塩を加えて、pHを7.5~8.0に調整し、次に、10mgのNAD、100mgのAADH-Bc遊離酵素及び5mgのFDH酵素粉末又は5mgの酵素粉末で製造された固定化FDHを加えた。30℃で16~20時間撹拌した。1回の反応終了後毎に固定化酵素を分離して、次回の反応で繰り返し使用することで、繰り返し使用回数を検討する。系に対してHPLCで転化率を検出し、反応データは、表3のとおりである。
【表6】
【国際調査報告】