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特表2024-540758高速列車給電伝動システム、AC-DC-ACトラクションコンバータ、及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】高速列車給電伝動システム、AC-DC-ACトラクションコンバータ、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241025BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529644
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2022132247
(87)【国際公開番号】W WO2023088302
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202111372257.6
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516379320
【氏名又は名称】西南交通大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 群湛
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 波
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲カイ▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 小▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲偉▼▲鵬▼
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA03
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA33
5H770DA41
5H770HA03Z
5H770JA17Z
(57)【要約】
三相給電伝動モードと単相給電伝動モードがあり、この2つのモードでの給電容量が等しい、高速列車給電伝動システムを提供する。自動識別又は運転室での遠隔制御により、地上トラクション給電システムが三相給電方式である場合、高速列車給電伝動システムは三相給電伝動モードに自動的に切り替わり、地上トラクション給電システムが単相給電方式である場合、高速列車給電伝動システムは単相給電伝動モードに自動的に切り替わる。地上トラクション給電システムの三相給電方式及び単相給電方式に合わせてモードを切り替えることによって、高速列車の三相給電伝動システムと単相給電伝動システムの両方に簡便且つ効果的に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上トラクション給電システムにより給電される高速列車給電伝動システムであって、
三相給電伝動モードと単相給電伝動モードであって、前記地上トラクション給電システムが三相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは三相給電伝動モードで動作し、前記地上トラクション給電システムが単相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは単相給電伝動モードで動作する、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードと、
前記地上トラクション給電システムが三相給電方式であると検出した場合、前記三相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御し、前記地上トラクション給電システムが単相給電方式であると検出した場合、前記単相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御する計測コントローラCTLと、
2本の給電バスの間に並列接続されて、三相給電バスのうちの2本を並列接続して残りのバスと単相回路を形成する、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKと、を含む、ことを特徴とする高速列車給電伝動システム。
【請求項2】
トラクションモータM1に電気的に接続されたAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1と、三相給電バスのうち異なる2相の間の電圧をそれぞれ検出する電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAと、をさらに含み、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAの出力端子は前記計測コントローラCTLの計測端子に接続され、前記計測コントローラCTLの出力端子は前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の制御端子及びトランスファスイッチKの制御端子に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の高速列車給電伝動システム。
【請求項3】
集電装置CA、集電装置CB、集電装置CC、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLC給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLC、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1、及びそのアウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1、並びにトラクションモータM1をさらに含み、前記三相給電バスは、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCであり、
前記集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの接触端子は地上トラクション給電システムに接続され、集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの結線端子は、それぞれ、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の先端に接続され、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の末端は、それぞれ、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLCを介して給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCに接続され、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCはさらに、それぞれ、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の先端は、それぞれ、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1を介して、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子に接続され、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を経てトラクションモータM1に接続され、
前記トランスファスイッチKは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に並列接続され、前記電圧変成器PTABは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に設けられ、前記電圧変成器PTBCは、前記給電バスMBと給電バスMCとの間に設けられ、前記電圧変成器PTCAは、前記給電バスMCと給電バスMAとの間に設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載の高速列車給電伝動システム。
【請求項4】
前記地上トラクション給電システムには、給電機構TA及び給電機構TBが設けられており、前記集電装置CA、集電装置CBの接触端子は、それぞれ、地上トラクション給電システムの給電機構TA及び給電機構TBに接触して受電し、集電装置CCの接触端子はレールRに接触して受電する、ことを特徴とする請求項3に記載の高速列車給電伝動システム。
【請求項5】
n組のAC-DC-ACトラクションコンバータとn個のトラクションモータを含み、n組のAC-DC-ACトラクションコンバータは、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS2、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSi、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSnと記し、n個のトラクションモータは、トラクションモータM1、トラクションモータM2、…、トラクションモータMi、…、トラクションモータMnと記し、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCは、それぞれ、フィードアウトスイッチKQAi、フィードアウトスイッチKQBi、フィードアウトスイッチKQCiによって、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの先端に接続され、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSiの入力端子に接続され、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSiの出力端子は、アウトレットケーブルMAi、アウトレットケーブルMBi、アウトレットケーブルMCiを介してトラクションモータMiに接続され、i=1、2、...、nである、ことを特徴とする請求項3に記載の高速列車給電伝動システム。
【請求項6】
地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式か単相給電方式かを判断するステップと、
地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式である場合、三相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップと、
地上トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式である場合、単相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の高速列車給電伝動システムの制御方法。
【請求項7】
前記判断は、さらに、
前記高速列車給電伝動システムの計測コントローラCTLは、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAにより計測された電圧値をそれぞれ取得し、
電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された電圧値が等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式であると判定し、電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された3つの電圧値のうちの2つの電圧値を加算したものが残りの電圧値に等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式であると判定することである、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記高速列車給電伝動システムは、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKをさらに含み、
三相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御する前記ステップは、さらに、
前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して切断し、三相整流回路で動作するように高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御することであり、
前記高速列車給電伝動システムが単相給電伝動モードで動作するように制御する前記ステップは、さらに、
前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して閉じ、単相整流回路で動作するようにAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御することである、ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
請求項2~5のいずれか1項に記載の高速列車給電伝動システム用のAC-DC-ACトラクションコンバータであって、
入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1を含み、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間に並列接続され、入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1は、一端がAC-DC-ACトラクションコンバータの入力端子となり、他端がそれぞれ入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1に接続され、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1から引き出される三相出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を介してトラクションモータM1の入力端子に接続され、
三相給電伝動モードでの給電容量と単相給電伝動モードでの給電容量とが等しく、高速列車給電伝動システムの給電ケーブルLAの定格電流はIであり、給電ケーブルLBの定格電流はIであり、給電ケーブルLCの定格電流は1.732Iであり、前記AC-DC-ACコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBC1の定格電流=パワーチューブブリッジアームLBA1の定格電流の1.732倍=パワーチューブブリッジアームLBB1の定格電流の1.732倍である、ことを特徴とするAC-DC-ACトラクションコンバータ。
【請求項10】
前記高速列車給電伝動システムのすべてのデバイス及びケーブルは、定格電圧Ue=3000Vで絶縁設計を行い、AC-DC-ACトラクションコンバータの正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間の直流電圧の定格値は、パワーチューブブリッジアーム直流耐圧よりも小さく、十分な安全マージンを残す前提で最高値を取る、ことを特徴とする請求項9に記載のAC-DC-ACトラクションコンバータ。
【請求項11】
前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、及び出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、すべてI型3レベル回路である、ことを特徴とする請求項9に記載のAC-DC-ACトラクションコンバータ。
【請求項12】
請求項2~5のいずれか1項に記載の高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータの制御方法であって、
AC-DC-ACトラクションコンバータの定格電圧をUe、トラクションモータの定格パワーをPeとし、トラクションの動作条件において、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、トラクションモータの出力定格パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.15Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、を含み、
地上トラクション給電システムの設計において、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子は、最小電圧値が0.6Ueの1.1倍以上、最大電圧値が1.2Ueの0.9倍以下であることを満たす、ことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
回生の動作条件において、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、トラクションモータの回生パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.2Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月19日に提出された、中国特許出願202111372257.6の利益を主張しており、当該出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、軌道交通の技術分野に関し、特に高速列車給電伝動システム、AC-DC-ACトラクションコンバータ、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の地下鉄やライトレールなどの軌道交通用のトラクション給電には、ほとんど直流1500V方式が使用されている。直流方式は、給電が無相で、列車がスムーズで運転するなどの利点があるが、トラクションエネルギー消費量の約30~50%を占める回生エネルギーを直接又は間接的に利用することが難しいため、高価なインバータ装置やエネルギー貯蔵装置を増設する必要があり、また、インバータ装置やエネルギー貯蔵装置が動作しなくなり、列車の回生ブレーキが効かなくなり空気ブレーキに切り替わり、運転の安全が脅かされる場合がある。さらに、存在する迷走電流は周囲の金属パイプや建物の鋼構造物に電気化学的腐食を引き起こし、迷走電流はこれまでに解決されておらず、広範囲かつ長期的な被害を引き起こしてしまう。
【0004】
このため、より高速化、より多くの輸送量が求められる中、一部の大都市の軌道交通では、幹線鉄道に単相電源周波数交流25kV方式を利用するようになり、その利点としては、給電能力が高く、システムの構成が簡単であり、その欠点としては、車載変圧器が重く、かさばるため、高速列車の貴重なスペースを占有し、軸重量が増加し、乗客の輸送効率に影響を与える。
【0005】
現在、幹線鉄道を代表とした交流トラクション給電には、単相電源周波数交流給電が主流であるが、同じ給電容量(能力)のもとで、三相発電機、電動機、変圧器、送電線がすべて、単相の同様のコンポーネントの製造や建設よりも材料を節約し、かつ、構造が簡単で、優れた性能を持ち、三相電力のパワーの瞬時値は一定に保たれる。中国特許出願第ZL201721675432.8号(三相トラクション給電システム)は、地上三相トラクション給電及び車載三相給電システムを提案している。この技術手段では、地上三相トラクション給電及び車載三相給電システムのソリューションしか実現できないため、車載三相給電伝動と単相給電伝動との互換性をいかに実現し、地上トラクション給電により柔軟に対応し、給電システムをより適応性のあるものにするかが今後の技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、車載三相給電伝動と単相給電伝動との互換性を効果的に解決し、給電システムの適用性を向上させることができる、高速列車給電伝動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明に採用される技術案は、具体的には、以下の通りである。
【0008】
地上トラクション給電システムにより給電される高速列車給電伝動システムであって、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードであって、前記地上トラクション給電システムが三相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは三相給電伝動モードで動作し、前記地上トラクション給電システムが単相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは単相給電伝動モードで動作する、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードを含む。
【0009】
さらに、前記高速列車給電伝動システムは、前記地上トラクション給電システムが三相給電方式であると検出した場合、前記三相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御し、前記地上トラクション給電システムが単相給電方式であると検出した場合、前記単相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御する計測コントローラCTLをさらに含む。
【0010】
さらに、前記高速列車給電伝動システムは、トラクションモータM1に電気的に接続されたAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1と、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKと、をさらに含み、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCの2組の給電バスのうち異なる2相の間の電圧をそれぞれ検出する電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAをさらに含み、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAの出力端子は前記計測コントローラCTLの計測端子に接続され、前記計測コントローラCTLの出力端子は前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の制御端子及びトランスファスイッチKの制御端子に接続される。
【0011】
さらに、前記高速列車給電伝動システムは、集電装置CA、集電装置CB、集電装置CC、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLC、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMC、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLC、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1、及びそのアウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1、並びにトラクションモータM1をさらに含み、
前記集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの接触端子は地上トラクション給電システムに接続され、集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの結線端子は、それぞれ、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の先端に接続され、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の末端は、それぞれ、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLCによって給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCに接続され、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCはさらに、それぞれ、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の先端は、それぞれ、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1によって給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子に接続され、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を経てトラクションモータM1に接続され、
前記トランスファスイッチKは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に並列接続され、前記電圧変成器PTABは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に設けられ、前記電圧変成器PTBCは、前記給電バスMBと給電バスMCとの間に設けられ、前記電圧変成器PTCAは、前記給電バスMCと給電バスMAとの間に設けられる。
【0012】
さらに、地上トラクション給電システムには、給電機構TA及び給電機構TBが設けられており、前記集電装置CA、集電装置CBの接触端子は、それぞれ、地上トラクション給電システムの給電機構TA及び給電機構TBに接触して受電し、集電装置CCの接触端子はレールRに接触して受電する。
【0013】
さらに、前記高速列車給電伝動システムは、n組のAC-DC-ACトラクションコンバータとn個のトラクションモータを含み、n組のAC-DC-ACトラクションコンバータは、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS2、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSi、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSnと記し、n個のトラクションモータは、トラクションモータM1、トラクションモータM2、…、トラクションモータMi、…、トラクションモータMnと記し、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCは、それぞれ、フィードアウトスイッチKQAi、フィードアウトスイッチKQBi、フィードアウトスイッチKQCiによって、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの先端に接続され、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSiの入力端子に接続され、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSiの出力端子は、アウトレットケーブルMAi、アウトレットケーブルMBi、アウトレットケーブルMCiを介してトラクションモータMiに接続され、i=1、2、...、nである。
【0014】
本発明の別の目的は、上記の高速列車給電伝動システムの制御方法であって、
地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式か単相給電方式かを判断し、トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式である場合、ステップBを行い、トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式である場合、ステップCを行うステップAと、
三相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップBと、
単相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップCと、を含む、制御方法を提供することである。
【0015】
さらに、前記ステップAは、さらに、
前記高速列車給電伝動システムの計測コントローラCTLは、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAにより計測された電圧値をそれぞれ取得し、電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された電圧値が等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式であると判定し、次に、ステップBを行い、電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された3つの電圧値のうちの2つの電圧値を加算したものが残りの電圧値に等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式であると判定し、次に、ステップCを行うことである。
【0016】
さらに、前記高速列車給電伝動システムは、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKを含み、前記ステップBは、さらに、
前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して切断し、三相整流回路で動作するように高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御することであり、前記ステップCはさらに、
前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して閉じ、単相整流回路で動作するようにAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御する。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、上記の高速列車給電伝動システム用のAC-DC-ACトラクションコンバータを提供することである。
【0018】
前記AC-DC-ACトラクションコンバータは、入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1を含み、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間に並列接続され、入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1は、一端がAC-DC-ACトラクションコンバータ入力端子となり、他端が、それぞれ、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1に接続され、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1から引き出される三相出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を介して、トラクションモータM1の入力端子に接続される。
【0019】
さらに、前記高速列車給電伝動システムのすべてのデバイス及びケーブルは、定格電圧Ue=3000Vで絶縁設計を行い、AC-DC-ACトラクションコンバータの正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間の直流電圧の定格値は、パワーチューブブリッジアーム直流耐圧よりも小さく、十分な安全マージンを残す前提で最高値を取る。
【0020】
さらに、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、及び出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、すべてI型3レベル回路である。
【0021】
さらに、三相給電伝動モードでの給電容量と単相給電伝動モードでの給電容量とが等しく、高速列車給電伝動システムの給電ケーブルLAの定格電流はIであり、給電ケーブルLBの定格電流はIであり、給電ケーブルLCの定格電流は1.732Iであり、前記AC-DC-ACコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBC1の定格電流=パワーチューブブリッジアームLBA1の定格電流の1.732倍=パワーチューブブリッジアームLBB1の定格電流の1.732倍である。
【0022】
本発明の更なる目的は、高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータの制御方法であって、AC-DC-ACトラクションコンバータの定格電圧をUe、トラクションモータの定格パワーをPeとし、トラクションの動作条件において、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、トラクションモータの出力定格パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.15Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、を含み、
地上トラクション給電システムの設計において、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子は、最小電圧値が0.6Ueの1.1倍以上、最大電圧値が1.2Ueの0.9倍以下であることを満たす、制御方法を提供する。
【0023】
さらに、回生の動作条件において、前記方法は、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、トラクションモータの回生パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.2Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、を含む。
【0024】
本発明の作動原理は以下の通りである。
【0025】
三相給電バス(給電バスMA、給電バスMB、給電バスMC)のうちの2本を並列接続して残りの1つと単相回路を形成し、並列接続した2本を分離すると残りの1つとともに三相回路にすることができ、このプロセスは、バイパストランスファスイッチ(トランスファスイッチK)により実現され得る。給電ケーブル及びAC-DC-ACコンバータパワーチューブの容量は、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードの2つのモードを満たすように設定されなければならず、この2つのモードでの給電容量が等しいとすれば、給電ケーブルの利用率が最適になり、この2つのモードでの伝動容量が等しいとすれば、AC-DC-ACコンバータパワーチューブの容量利用率が最適になる。三相給電バスの2つずつの線間電圧の値の大きさの関係から、三相給電バスによる給電の対象となる地上トラクション給電システムが三相給電方式か単相給電方式かを判定し、それによって、トランスファスイッチを制御して、車載三相給電伝動モードと単相給電伝動モードとを自動的に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1.本発明による高速列車給電伝動システムは、地上三相トラクション給電システム又は地上単相トラクション給電システムに適用することができ、かつ、この2つの異なる給電方式の間の柔軟な変換に自動的に対応することができる。本発明は、三相の場合給電能力が高いことと単相の場合給電が簡単であるという2つの利点を利用して、高速列車伝動システムにおける単相給電方式と三相給電方式の互換性を実現し、給電プランの設計をより柔軟にし、線路の応用場面を大幅に広げる。
2.給電容量が等しいことを前提として、三相モードと単相モードの定格容量を設定することによって、給電ケーブルやAC-DC-ACコンバータパワーチューブの容量利用率を最適にすることができる。
3.3000Vは国家標準の電圧等級であるので、高速列車の給電伝動電圧と国家標準の電圧等級が一致し、それによって、関連設備、電化製品のコストを大幅に下げ、信頼性を高めることができる。
4.既存の高速列車伝動システムと比べ、車載トラクション変圧器を省略し、AC-DC-ACトラクションコンバータが給電母線から直接電力を取り受けられるようにし、それによって、高速列車の軸重量を大幅に軽減し、高速列車の有効積載スペースを増やし、運転エネルギー消費を節約し、運転効率を向上させる。
5.本発明は、幹線鉄道だけでなく、都市軌道や都市鉄道にも使用することができる。
6.システムの給電容量が等しい前提の下で、車載三相給電伝動モード又は単相給電伝動モードの間の切り替えを付加することによって、これらのモードをそれぞれ地上トラクション給電システムの三相給電方式又は単相給電方式に対応させることにより、高速列車における三相給電伝動と単相給電伝動システムの互換性を便利かつ効果的に実現でき、しかも、モードの切り替えが簡単で、技術が信頼でき、性能が優れており、実施しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付の図面は、本発明の実施例の更なる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、以下の発明を実施するための形態と共に本発明の実施例を説明するために使用されるが、本発明の実施例を限定するものではない
【0028】
図1】本発明の基本構造の模式図である。
図2】本発明の実施例の拡張構造の模式図である。
図3】本発明の制御のフローチャートである。
図4】本発明のAC-DC-ACトラクションコンバータの構造模式図である。
図5】本発明のトラクション制御の模式図である。
図6】本発明のブレーキ制御の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の構想をよりよく理解するために、以下の実施例を通じて本発明の作動原理をさらに説明する。
【0030】
実施例1
本実施例は、地上トラクション給電システムにより給電される高速列車給電伝動システムであって、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードであって、前記地上トラクション給電システムが三相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは三相給電伝動モードで動作し、前記地上トラクション給電システムが単相給電方式である場合、前記高速列車給電伝動システムは単相給電伝動モードで動作する、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードを含む高速列車給電伝動システムを提供する。
【0031】
ここで、地上トラクション給電システムには三相給電と単相給電の2つの方式が存在することを考慮して、本実施例による高速列車給電伝動システムは、三相給電伝動モードと単相給電伝動モードを含み、高速列車給電伝動システムの作動モードは地上トラクション給電システムの給電方式に応じて選択され、それによって、高速列車給電伝動システムと地上トラクション給電システムとを一致させ、1つの給電伝動モードしかない従来の高速列車給電伝動システムと比べ、本実施例による高速列車給電伝動システムは、単相給電伝動モード及び三相給電伝動モードの両方に対応することができる。また、給電伝動モードを切り替える際には、自動検出により切り替えてもよいし、手動により切り替えてもよい(トランスファスイッチKを手動で閉じるか又は切断する)。
【0032】
高速列車給電伝動システムが三相給電伝動モードでも単相給電伝動モードでも動作するような技術的目的は、本実施例で後述する好ましい形態によって達成されてもよいし、2つの個別の伝動システム(三相給電伝動システムと単相給電伝動システム)を利用して異なる給電伝動モードを切り替えてもよいが、コストや負荷重量を考慮して、本実施例では、2つの個別の伝動システムの場合については説明しない。
【0033】
好ましくは、本実施例では、高速列車給電伝動システムは、地上トラクション給電システムが三相給電方式であると検出した場合、三相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御し、地上トラクション給電システムが単相給電方式であると検出した場合、三相給電伝動モードで動作するように前記高速列車給電伝動システムを制御する計測コントローラCTLをさらに含む。
【0034】
好ましくは、図1に示すように、本実施例では、高速列車給電伝動システムは、トラクションモータM1に電気的に接続されたAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1と、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKと、を含み、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCの三相給電バスのうち異なる2相の間の電圧をそれぞれ検出する電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAをさらに含み、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAの出力端子は、前記計測コントローラCTLの計測端子に接続され、前記計測コントローラCTLの出力端子は、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の制御端子及びトランスファスイッチKの制御端子に接続される。ここで、トランスファスイッチKは主に給電伝動モードを切り替えるものである。
【0035】
ここで、三相給電バスとは、本実施例で後述する給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCであり、三相給電バスは、地上トラクション給電システムから電力を取り受け、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1へ電気エネルギーを供給する。
【0036】
好ましくは、図1に示すように、本実施例では、高速列車給電伝動システムは、集電装置CA、集電装置CB、集電装置CC、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLC、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMC、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLC、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1、及びそのアウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1、並びにトラクションモータM1を含み、
前記集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの接触端子は、地上トラクション給電システムに接続され、集電装置CA、集電装置CB、集電装置CCの結線端子は、それぞれ、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の先端に接続され、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0、集電ケーブルLC0の末端は、それぞれ、集電スイッチKLA、集電スイッチKLB、集電スイッチKLCを介して給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCに接続され、給電バスMA、給電バスMB、給電バスMCはさらに、それぞれ、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の先端は、それぞれ、フィードアウトスイッチKQA1、フィードアウトスイッチKQB1、フィードアウトスイッチKQC1を介して給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCに接続され、フィードアウトケーブルLNA1、フィードアウトケーブルLNB1、フィードアウトケーブルLNC1の末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子に接続され、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を経てトラクションモータM1に接続され、
前記トランスファスイッチKは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に並列接続され、前記電圧変成器PTABは、前記給電バスMAと給電バスMBとの間に設けられ、前記電圧変成器PTBCは、前記給電バスMBと給電バスMCとの間に設けられ、前記電圧変成器PTCAは、前記給電バスMCと給電バスMAとの間に設けられる。
【0037】
好ましくは、地上トラクション給電システムには、給電機構TA及び給電機構TBが設けられており、前記集電装置CA、集電装置CBの接触端子は、それぞれ、地上トラクション給電システムの給電機構TA及び給電機構TBに接触して受電し、集電装置CCの接触端子は、レールRに接触して受電する。
【0038】
ここで、地上トラクション給電システムは、給電機構TAと給電機構TBを含んでもよく、また、接地するレールRをさらに含んでもよく、高速列車給電伝動システムの給電バスMA及び給電バスMBは、それぞれ、給電機構TA及び給電機構TBから電力を受け取ることができ、給電バスMCはレールRに電気的に接続され、地上トラクション給電システムの給電機構TA及び給電機構TB及びレールRによる三相給電の場合、本実施例のトランスファスイッチK1は切断され、給電機構TA又は給電機構TBが個別に給電する場合、給電機構TA又は給電機構TBは、レールRと単相給電を行い、本実施例のトランスファスイッチKは閉じられる。
【0039】
本実施例では、集電装置CA、集電装置CBにおいて、給電機構TA及び給電機構TBに接触する端部は接触端子であり、集電ケーブルLA0、集電ケーブルLB0に接続された端部は結線端子であり、集電装置CCにおいて、レールRに接触する端部は接触端子であり、集電ケーブルLC0に接続された端部は結線端子である。
【0040】
好ましくは、図2に示すように、本実施例では、高速列車給電伝動システムは、n組のAC-DC-ACトラクションコンバータと、n個のトラクションモータと、を含んでもよく、n組のAC-DC-ACトラクションコンバータは、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS2、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSi、…、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSnと記し、n個のトラクションモータは、トラクションモータM1、トラクションモータM2、…、トラクションモータMi、…、トラクションモータMnと記し、給電ケーブルLA、給電ケーブルLB、給電ケーブルLCは、それぞれ、フィードアウトスイッチKQAi、フィードアウトスイッチKQBi、フィードアウトスイッチKQCiによって、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの先端に接続され、フィードアウトケーブルLNAi、フィードアウトケーブルLNBi、フィードアウトケーブルLNCiの末端は、AC-DC-ACトラクションコンバータTDSiの入力端子に接続され、i=1、2、...、nである。
【0041】
以上より、本発明の実施例は以下の利点を持つ。
1.本発明による高速列車給電伝動システムは、地上三相トラクション給電システム又は地上単相トラクション給電システムに適用することができ、かつ、この2つの異なる給電方式の間の柔軟な変換に自動的に対応することができる。本発明は、三相の場合給電能力が高いことと単相の場合給電が簡単であるという2つの利点を利用して、高速列車伝動システムにおける単相給電方式と三相給電方式の互換性を実現し、給電プランの設計をより柔軟にし、線路の応用場面を大幅に広げる。
2.給電容量が等しいことを前提として、三相モードと単相モードの定格容量を設定することによって、給電ケーブルやAC-DC-ACコンバータパワーチューブの容量利用率を最適にすることができる。
3.3000Vは国家標準の電圧等級であるので、高速列車の給電伝動電圧と国家標準の電圧等級が一致し、それによって、関連設備、電化製品のコストを大幅に下げ、信頼性を高めることができる。
4.既存の高速列車伝動システムと比べ、車載トラクション変圧器を省略し、AC-DC-ACトラクションコンバータが給電母線から直接電力を取り受けられるようにし、それによって、高速列車の軸重量を大幅に軽減し、高速列車の有効積載スペースを増やし、運転エネルギー消費を節約し、運転効率を向上させる。
5.本発明は、幹線鉄道だけでなく、都市軌道や都市鉄道にも使用することができる。
6.システムの給電容量が等しい前提の下で、車載三相給電伝動モード又は単相給電伝動モードの間の切り替えを付加することによって、これらのモードをそれぞれ地上トラクション給電システムの三相給電方式又は単相給電方式に対応させることにより、高速列車における三相給電伝動と単相給電伝動システムの互換性を便利かつ効果的に実現でき、しかも、モードの切り替えが簡単で、技術が信頼でき、性能が優れており、実施しやすい。
【0042】
実施例2
図3に示すように、本実施例は、実施例1による高速列車給電伝動システムの制御方法のプロセスを提供し、このプロセスは、
地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式か単相給電方式かを判断し、トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式である場合、ステップBを行い、トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式である場合、ステップCを行うステップAと、
三相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップBと、
単相給電伝動モードで動作するように高速列車給電伝動システムを制御するステップCと、を含む。
【0043】
前記ステップAは、さらに、
前記高速列車給電伝動システムの計測コントローラCTLは、前記電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、及び電圧変成器PTCAにより計測された電圧値をそれぞれ取得し、電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された電圧値が等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が三相給電方式であると判定し、次に、ステップBを行い、電圧変成器PTAB、電圧変成器PTBC、電圧変成器PTCAにより計測された3つの電圧値のうちの2つの電圧値を加算したものが残りの電圧値に等しい場合、地上トラクション給電システムの給電方式が単相給電方式であると判定し、次に、ステップCを行うことである。
【0044】
好ましくは、前記高速列車給電伝動システムは、給電伝動モードを切り替えるトランスファスイッチKを含み、前記ステップBは、さらに、
前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して切断し、三相整流回路で動作するように高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御することであり、前記ステップCはさらに、前記計測コントローラCTLは、トランスファスイッチKを制御して閉じ、単相整流回路で動作するようにAC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子を制御する。
【0045】
なお、トランスファスイッチKは、計測コントローラCTLにより自動的に制御されてもよく、運転者が運転室で遠隔制御してもよい。
【0046】
ここで、地上トラクション給電システムには三相給電と単相給電の2つの方式が存在することを考慮して、本実施例による高速列車給電伝動システムの制御方法は、まず、地上トラクション給電システムの給電方式を判定し、次に、高速列車給電伝動システムの作動モードを制御し、それによって、高速列車給電伝動システムと地上トラクション給電システムをマッチングさせる。
【0047】
実施例3
図4に示すように、本実施例は、入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1を含み、入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、バスコンデンサBUSC1、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間に並列接続され、入力側インダクタINA1、インダクタINB1、インダクタINC1は、一端がAC-DC-ACトラクションコンバータの入力端子となり、他端がそれぞれ入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1に接続され、出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1から引き出される三相出力端子は、アウトレットケーブルMA1、アウトレットケーブルMB1、アウトレットケーブルMC1を介してトラクションモータM1の入力端子に接続される、実施例1による高速列車給電伝動システム用のAC-DC-ACトラクションコンバータを提供する。
【0048】
本実施例では、上記の高速列車給電伝動システム用の定格電圧が提供され、好ましくは、前記高速列車給電伝動システムのすべてのデバイス及びケーブルは、定格電圧Ue=3000Vで絶縁設計を行い、AC-DC-ACトラクションコンバータの正極直流バスBUS+と負極直流バスBUS-との間の直流電圧の定格値は、パワーチューブブリッジアーム直流耐圧よりも小さく、十分な安全マージンを残す前提で最高値を取る。
【0049】
好ましくは、前記AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBA1、パワーチューブブリッジアームLBB1、パワーチューブブリッジアームLBC1、及び出力側パワーチューブブリッジアームMBA1、パワーチューブブリッジアームMBB1、パワーチューブブリッジアームMBC1は、すべてI型3レベル回路である。ここで、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1としてI型3レベル回路の三相バックツーバックコンバータが使用され、それにより、三相給電伝動システムへの適用が可能になり、一方、コンバータの電圧レベルが向上し、3000V入力電圧の要件を満たすようになり、これは、入力電圧レベル3000Vに応じて選択される最適な回路形態である。
【0050】
本実施例はまた、前記給電ケーブルの定格電流の選択方法、及びAC-DC-ACトラクションコンバータのパワーチューブブリッジアームの定格電流の選択方法を提供する。好ましくは、三相給電伝動モードでの給電容量と単相給電伝動モードでの給電容量とが等しく、高速列車給電伝動システムの給電ケーブルLAの定格電流はIであり、給電ケーブルLBの定格電流はIであり、給電ケーブルLCの定格電流は1.732Iであり、前記AC-DC-ACコンバータTDS1の入力側パワーチューブブリッジアームLBC1の定格電流=パワーチューブブリッジアームLBA1の定格電流の1.732倍=パワーチューブブリッジアームLBB1の定格電流の1.732倍である。このような定格容量を設定することにより、AC-DC-ACコンバータTDS1の容量利用率を最適にすることができる。
【0051】
実施例4
本実施例は、実施例1による高速列車給電伝動システムのAC-DC-ACトラクションコンバータの制御方法を提供し、AC-DC-ACトラクションコンバータの定格電圧はUeと記し、トラクションモータの定格パワーはPeと記し、図5に示すように、トラクションの動作条件において、前記方法は、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータはトラクションモータの出力定格パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.15Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの出力パワーを制御するステップと、を含み、
地上トラクション給電システムの設計において、AC-DC-ACトラクションコンバータTDS1の入力端子は、最小電圧値が0.6Ueの1.1倍以上、最大電圧値が1.2Ueの0.9倍以下であることを満たす。
【0052】
図6に示すように、回生の動作条件において、前記方法は、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~1.1Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、トラクションモータの回生パワーをPeに制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.8Ue~0.7Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0.8Peに直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が0.7Ue~0.6Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、0.8Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、
AC-DC-ACトラクションコンバータの入力側電圧が1.1Ue~1.2Ueの間である場合、AC-DC-ACトラクションコンバータは、Peから0に直線的に低下するようにトラクションモータの回生パワーを制御するステップと、を含む。
【0053】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、上記の好ましい実施形態は本発明に対する制限とみなすべきではなく、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で定められた範囲に準じるものである。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で、いくつかの改良及び修正を加えることもでき、これらの改良及び修正もまた、本発明の保護範囲とみなされるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】