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特表2024-540771アンチエイジングスキンピール組成物およびその塗布方法
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  • 特表-アンチエイジングスキンピール組成物およびその塗布方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-01
(54)【発明の名称】アンチエイジングスキンピール組成物およびその塗布方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/368 20060101AFI20241025BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
A61K8/368
A61Q19/00
A61K8/365
A61K8/362
A61K8/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531317
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022050910
(87)【国際公開番号】W WO2023097004
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】17/535,430
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524196267
【氏名又は名称】ジャムルム リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JAMRM, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】アリシャール エス ザハル
(72)【発明者】
【氏名】トゥー キュー グエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン コッホ
(72)【発明者】
【氏名】タティアナ ケリー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC471
4C083AC472
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE12
(57)【要約】
スキンケア組成物および美容処置において皮膚の層を除去する方法である。スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含む。有効成分は、皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の1種以上の角質溶解剤、反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および真皮成分の合成を増進させる有効量の1種以上の薬剤を含む。1種以上のフリーラジカル中和剤および真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤は、中和されていない天然酸形態の酸であり、有効成分の総量はスキンケア組成物の50w/w%未満であり、スキンケア組成物のpHは1.5~3.5である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容的に許容される担体に混合された有効成分を含み、皮膚の剥離に使用するためのスキンケア組成物であって、
前記有効成分が、
(a)前記皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の角質溶解剤、
(b)反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および
(c)真皮成分の合成を増進させる有効量の1種以上の薬剤
を含み、
前記1種以上のフリーラジカル中和剤および前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤は、中和されていない天然酸の形態の酸であり、
前記スキンケア組成物のpHは1.5~3.5であり、また
前記有効成分の総量は、前記スキンケア組成物の50w/w%未満である、
スキンケア組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のスキンケア組成物において、前記角質溶解剤が、有効量の1種以上のα-ヒドロキシ酸(AHA)と有効量の1種以上のβ-ヒドロキシ酸(BHA)との混合物である、スキンケア組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のスキンケア組成物において、
前記AHAの有効量が、前記有効成分の5~60w/w%であり、また
前記BHAの有効量が、前記有効成分の10w/w%未満である、
スキンケア組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のスキンケア組成物において、
前記1種以上のAHAの各々の濃度が、有効成分の20w/w%未満であり、また
前記1種以上のBHAの各々の濃度が、有効成分の5w/w%未満である、
スキンケア組成物。
【請求項5】
請求項2に記載のスキンケア組成物において、
前記1種以上のAHAが、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、およびクエン酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記1種以上のBHAが、サリチル酸、トロパ酸、およびトレトカン酸のうちの少なくとも1つを含む、
スキンケア組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のスキンケア組成物であって、
前記1種以上のフリーラジカル中和剤が、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのフェノール酸を含み、また
前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤が、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む、
スキンケア組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のスキンケア組成物において、
前記少なくとも1つのジカルボン酸が、リンゴ酸、アゼライン酸、および酒石酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記少なくとも1つのフェノール酸が、没食子酸、コーヒー酸、およびノルジヒドログアイアレチン酸のうちの少なくとも1つを含み、また
前記少なくとも1つのトリテルペン酸は、アシアチン酸、ベツリン酸、オレアノール酸、ウルソール酸、およびマデカシン酸の少なくとも1つを含む、
スキンケア組成物。
【請求項8】
請求項6に記載のスキンケア組成物において、
前記1種以上のフリーラジカル中和剤の有効量は、前記少なくとも1つのジカルボン酸の有効量および、前記少なくとも1つのフェノール酸の有効量を含み、
前記少なくとも1つのジカルボン酸の有効量は、有効成分の0.15~15w/w%であり、
前記少なくとも1つのフェノール酸の有効量は、有効成分の0.005~3.5w/w%であり、また
前記少なくとも1つのトリテルペン酸の有効量は、有効成分の0.010~3.0w/w%である、
スキンケア組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のスキンケア組成物において、
1種以上のジカルボン酸の各々の濃度が5w/w%未満であり、
1種以上のフェノール酸の各々の濃度が1w/w%未満であり、また
1種以上のトリテルペン酸の各々の濃度が1w/w%未満である、
スキンケア組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のスキンケア組成物において、前記有効成分にはレゾルシノールがない、スキンケア組成物。
【請求項11】
スキンケア組成物を用いた美容処置において皮膚を剥離する方法において、
前記スキンケア組成物を、洗浄および脱脂された前記皮膚に塗布するステップと、
前記皮膚の表面を剥離するのに有効な時間、前記スキンケア組成物を前記皮膚上に保持するステップと、および
前記皮膚の別の層を除去するために、前記スキンケア組成物を再塗布し、前記スキンケア組成物を前記有効な時間、前記皮膚上に保持するステップと
を備え、
前記スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含み、
前記有効成分が、
(a)前記皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の角質溶解剤、
(b)反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための前記有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および
(c)真皮成分の合成を増進させる前記有効量の1種以上の薬剤
を含み、
前記1種以上のフリーラジカル中和剤および前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤は、中和されていない天然酸の形態の酸であり、
前記スキンケア組成物のpHは1.5~3.5であり、また
前記有効成分の総量は、前記スキンケア組成物の50w/w%未満である、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記再塗布するステップおよび前記保持するステップを繰り返して、2回目の来院で3層の皮膚を除去する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記再塗布するステップおよび前記保持するステップを繰り返して、3回目の来院で4層の皮膚を除去する、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、前記スキンケア組成物を前記有効な時間、前記皮膚上に保持する方法であって、更に、
前記有効な時間後に、前記スキンケア組成物をクレンザーで除去するステップを備える、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、前記角質溶解剤が、有効量の1種以上のα-ヒドロキシ酸(AHA)と有効量の1種以上のβ-ヒドロキシ酸(BHA)との混合物である、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記AHAの有効量が、前記有効成分の5~60w/w%であり、また
前記BHAの有効量が、前記有効成分の10w/w%未満である、
方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記1種以上のAHAの各々の濃度が、有効成分の20w/w%未満であり、また
前記1種以上のBHAの各々の濃度が、有効成分の5w/w%未満である、
方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、
前記1種以上のAHAが、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、およびクエン酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記1種以上のBHAが、サリチル酸、トロパ酸、およびトレトカン酸のうちの少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法において、
前記1種以上のフリーラジカル中和剤が、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのフェノール酸を含み、また
前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤が、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む、
方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記少なくとも1つのジカルボン酸が、リンゴ酸、アゼライン酸、および酒石酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記少なくとも1つのフェノール酸が、没食子酸、コーヒー酸、およびノルジヒドログアイアレチン酸のうちの少なくとも1つを含み、また
前記少なくとも1つのトリテルペン酸は、アシアチン酸、ベツリン酸、オレアノール酸、ウルソール酸、およびマデカシン酸の少なくとも1つを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年11月24日に出願された「ANTI-AGING SKIN PEEL COMPOSITION AND METHOD OF APPLICATION」と題する米国出願第17/535,430号の優先権を主張するものであり、この出願は、その全体が実施例として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の新規な態様は、スキンケアの分野に関するものであり、より詳細には、皮膚バリアが損なわれている間に、有益なフリーラジカル中和剤および真皮成分の合成を増進させる薬剤の送達とともに、皮膚の初期制御された表面的な創傷をもたらす方法および対応するスキンケア組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚の角質除去と若返りには、非常に長い歴史がある。初期の記録によると、古代エジプト人は、外見および質感を改善するために、酸乳および動物油、アラバスターなどの物質を肌に塗っていた。ローマ時代には、ブドウなどの果物を使って肌の角質を除去していた。その他にも、硫黄、マスタード、石灰岩などの物質を含んだ湿布薬を用いて、そばかすを薄くしたり、肌の色を均一にしたりする治療も行われていた。このような古代の記録は、スキンケアが特に女性にとって重要であったことを示している。
【0004】
1874年、ウィーンのフェルディナント・フォン・ヘブラという皮膚科医が、肝斑、そばかす、アジソン病などの色素沈着の治療にピーリング技術を用いた。1882年、ドイツの皮膚科医パウル・G・ウンナは、皮膚の生化学的プロセスに関する調査に基づき、皮膚疾患の治療に関する自身の研究について述べた。彼の報告を受けて、他の著者たちも研究を発表し始めた。第一次世界大戦中の1917年、ダグラス・モンゴメリーは、皮膚の治癒および「美化(beautifying)」のために包帯の下にピーリング剤を使用することを発表した。ケミカルピーリングの使用は1960年代に勢いを増し始め、70年代および80年代には、より表面的な治療のためにα-ヒドロキシ酸(AHA)が導入された。スキンピーリングは、一般的に酸の技術に基づいている。酸とは、プロトンを供与できる分子(またはイオン)のことである。酸の一般的な例としては、塩酸、酢酸、硫酸、クエン酸などがある。酸の強さはpHで表され、pHは「水素の電位(potential of Hydrogen)」の略語である。pHは1~14まであり、酸はpH7以下、塩基はpH7以上である。pHが7の溶液は中性、つまり酸性でも塩基性でもないと考えられている。酸が強いほどpHは低くなる。逆に強い塩基はpHが高くなる。
【0005】
ケミカルピーリングは、皮膚の表皮表面にある死んだケラチノサイト皮膚細胞の上層(複数可)を剥離、剥脱(ピーリング)、または剥落(スラフィングオフ)させ、新しい健康な表皮細胞および真皮の細胞外マトリックス(基質)の成分の産生を刺激することによって、皮膚を若返らせる手段である。ケミカルピーリングは、特定の深さの皮膚に制御された損傷を導入するように設計されている。治癒プロセスが起こるにつれて若返り効果が得られ、肌の質感と外観が改善される。ケミカルピーリングは様々な深さの皮膚をターゲットにすることができ、しばしば表層ケミカルピーリング、中層ケミカルピーリング、深層ケミカルピーリングと呼ばれる。
【0006】
表層ピーリングは、準備として皮膚の軽いクレンジングおよび脱脂、より低い酸濃度および強さ、より高いpH範囲、媒体デリバリーシステム中のより少ない浸透性溶媒、およびより少ない反復塗布パスおよび皮膚露出時間を利用する。中程度の深さのピーリングでは、中程度のクレンジングおよび皮膚の脱脂、中程度の酸濃度および強さ、より低いpH範囲、媒体デリバリー系(システム)内におけるより多くの浸透性溶媒、より多くの繰り返し塗布回数および皮膚露出時間を利用する。深層ケミカルピーリングは、皮膚の積極的なクレンジングおよび脱脂、高い酸濃度と強さ、非常に低いpH範囲、媒体デリバリー系内における溶媒の量の増加、多くの繰り返し塗布パス、および皮膚露出時間の延長を利用する。
【0007】
ケミカルピーリングの望ましくない副作用には、発赤、腫脹、かゆみ、かさぶた形成、瘢痕形成、炎症後色素沈着、感染などがある。副作用の重症度は、ケミカルピーリングの強さおよび深さとともに増加する。ケミカルピーリングの回復時間もまた、ケミカルピーリングの強さおよび深さによって長くなる。例えば、表層ケミカルピーリングは1~28日で完治するが、深層ケミカルピーリングは完治までに3~6ヵ月かかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の新規な態様は、所望のピーリングおよび剥離効果を提供するために、皮膚の初期制御された表面的な創傷をもたらすスキンケア組成物に向けられている。スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含む。前記有効成分が、前記皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の1種以上の角質溶解剤、反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および真皮成分の合成を増進させる有効量の1種以上の薬剤を含む。前記1種以上のフリーラジカル中和剤および前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤は、中和されていない天然酸の形態の酸であり、前記有効成分の総量は前記スキンケア組成物の50w/w%以下であり、前記スキンケア組成物のpHは1.5~3.5である。
【0009】
本開示の新規な態様はまた、スキンケア組成物を用いて美容的ピーリング処置において皮膚の最上層(複数可)を剥離する方法にも向けられ、この方法は、皮膚を洗浄および脱脂することによって皮膚を準備するステップと、前記スキンケア組成物を前記皮膚に塗布するステップと、剥離が起こるのに有効な時間、前記スキンケア組成物を前記皮膚上に保持するステップと、前記スキンケア組成物を再塗布し、前記皮膚表面を更に剥離するのに有効な時間、前記スキンケア組成物を前記皮膚上に保持するステップと、を備える。スキンケア組成物は、化粧品として許容される担体に混合された有効成分を含む。前記有効成分は、前記皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の1種以上の角質溶解剤、反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および真皮成分の合成を増進させる有効量の1種以上の薬剤を含む。前記1種以上のフリーラジカル中和剤および前記真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤は、中和されていない天然酸の形態の酸であり、前記有効成分の総量は前記スキンケア組成物の50w/w%以下であり、前記スキンケア組成物のpHは1.5~3.5である。
【0010】
本発明の他の態様、実施形態および特徴は、添付の図と併せて考慮すると、以下の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。図において、様々な図に示されている各同一または実質的に類似の構成要素は、単一の数字または表記によって表されている。分かりやすくするため、すべての図にすべての構成要素が表示されているわけではない。また、当業者が本発明を理解するために図示が必要でない場合には、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけではない。
【0011】
本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかし、本発明自体、ならびにその好ましい使用方法、更なる目的および利点は、添付の図と共に読まれる場合、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示的な実施形態に従った、スキンケア組成物を用いた美容手順を利用して皮膚の表面を剥離するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
老化した皮膚は、小じわ、しわ、荒れた肌理、弛み、くすんだ外観、および不均一な肌色の存在によって特徴付けられる。加えて、時間の経過とともに、ヒトの皮膚細胞は、より少ないエネルギーおよびより多くのフリーラジカルを産生し、細胞外基質/マトリックス(ECM:extracellular matrix)のタンパク質を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs:matrix metalloproteinases)のレベルおよび活性が増加し、その結果、弾力性とハリが失われる。ECMタンパク質の例としては、コラーゲンおよびエラスチンが挙げられる。
【0014】
ヒトの皮膚にケミカルピーリングを塗布すると、外層の剥離が起こり、死んだ皮膚細胞が除去され、その下の皮膚組織に傷がつく。従来のケミカルピーリングは、主にα-ヒドロキシ酸で処方され、β-ヒドロキシ酸の効果は少ないが、皮膚表面の死んだ皮膚細胞とその下の生きた皮膚組織との間の結合を攻撃することによって作用する。これらのケミカルピーリングは、タンパク質の変性作用を引き起こし、皮膚のケラチンバリアを破壊し、その破壊を引き起こす。この破壊によって皮膚細胞が剥がれ落ちると同時に、炎症性サイトカインおよびケモカインの放出が誘発され、新しいECMタンパク質の再生のための治癒シグナルが活性化される。皮膚におけるこの活性は、小じわおよびしわの減少、皮膚の弛みの減少、肌の色調の均一化、より輝きのある肌の外観をもたらす。更に、最初にコントロールされた皮膚の表面的な創傷は、その後、創傷治癒の過程で皮膚の若返り効果ももたらす。
【0015】
ケミカルピーリングの浸透および活性の程度は、皮膚の特定の準備(皮膚のクレンジングおよび脱脂の程度)、使用される酸の種類および強さ、製剤のpH、媒体デリバリー系、反復塗布パスの数、および皮膚がケミカルピーリングに曝される時間の長さを含む、多くの要因に依存する。表層ケミカルピーリングは、表皮内および真皮-表皮接合部に浸透し、表面レベルの小じわ、にきび、および肌の色むらの治療に理想的である。中深度ケミカルピーリングは、表皮から真皮乳頭部まで浸透し、深いしわ、傷跡、および色むらの治療に適している。深層ケミカルピーリングは、表皮全体、真皮乳頭部、網状真皮中層まで浸透し、深いしわ、傷跡、肝斑、および前がん性増殖の除去に最適である。
【0016】
そうでなければ、下層の皮膚を保護し、望ましい若返り効果を促進するのに役立つはずの有益なスキンケア成分は、ピーリングに含まれず、なぜなら、困難な酸性環境は、それらの成分の不安定性および機能性の低下をもたらすからである。したがって、有益なスキンケア成分は、ケミカルピーリング処置後の不確定な時期に適用される別の処置後製品に含まれることが多い。しかし、これらの有益なスキンケア成分は、十分に機能し皮膚を再生するために、皮膚のバリアに浸透することが困難である。
【0017】
本件出願人の知る限り、いずれの従来技術も、毎日のスキンケア養生法において使用されるほとんどのスキンケア組成物がケミカルピーリングの低いpHでは許容されないため、中和されていない天然酸の形態で、スキンケア組成物には通常含まれない有益でありユニークな酸と組み合わされたα-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸を利用する表面的~中深度ピーリングを開示していない。中和されていない天然酸の形態は、一般的なスキンケア製品に慣用的に使用されているpHバランスのとれたスキンケア組成物に見られる部分的に中和された形態よりも効果的である。これらのユニークな酸は、活性酸素/窒素種を中和する性質および、コラーゲンおよびエラスチンの合成といったアンチエイジングの生体刺激特性を持つ。これらのユニークな酸には、ヒドロキシ桂皮酸およびその誘導体、ジカルボン酸、ペンタシクロトリテルペン酸およびその誘導体を含むトリテルペノイドなどのフェノール化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本開示に記載されるスキンケア組成物の新規な態様は、安定な製剤を有し、有益な活性酸素/窒素種を中和する成分および抗老化添加剤を、中和されていない天然酸の形態で含むケミカルピーリングを提供し、これらの成分は、皮膚バリアが損なわれているとき、および有益な添加剤が皮膚に最もよく浸透することができるときに、初期の制御された表面的な創傷プロセスの間に皮膚に直ちに送達することができる。改良されたスキンケア製剤は、典型的なスキンピールのみによって通常経験されるものを超えて、皮膚表面の剥離の間に強化された若返り効果を提供することができる。本明細書に記載のスキンケア組成物は、皮膚における基質(マトリックス)メタロプロテアーゼ(MMP)の活性を低下させ、皮膚におけるコラーゲンおよびエラスチンの産生を促進し、皮膚における活性酸素/窒素種中和活性を増加させることができる添加剤を含む。
【0019】
非限定的な実施形態において、スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された複数の有効成分を含む。化粧品として許容される担体は、半浸透性の懸濁液または溶液であり得る。有効成分は、皮膚表面層の剥離およびピーリング、およびその下にある生きた皮膚組織の保護をもたらすように選択される。スキンケア組成物のpHは、1.5~3.5、より具体的には1.75~2.75である。より特定の実施形態では、スキンケア組成物のpHは2.0~3.0である。
【0020】
一実施形態において、有効成分は、皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための角質溶解剤、反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための中和剤、および真皮成分の合成を増進させる薬剤を含む。前記角質溶解剤としては、1種以上のα-ヒドロキシ酸、1種以上のβ-ヒドロキシ酸、またはα-ヒドロキシ酸とβ-ヒドロキシ酸との混合物を挙げることができる。α-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸は、剥離効果のために皮膚を変性させる働きをする。中和剤(複数可)は、少なくとも1種のジカルボン酸、少なくとも1種のフェノール酸、またはジカルボン酸(複数可)とフェノール酸(複数可)との混合物を含むことができる。中和剤(複数可)は、窒素および酸素フリーラジカルの両方を抑制する役割を果たす。真皮成分の合成を増進させる薬剤は、少なくとも1種のトリテルペン酸を含むことができる。真皮成分の合成を増進させるこれらの薬剤は、コラーゲンおよびエラスチンを増加させ、および/またはMMPを減少させることができる。これらの有効成分の各カテゴリーについて、以下の段落でより詳細に説明する。
【0021】
<角質溶解剤>
角質溶解剤は、皮膚の角質溶解を誘導するためにスキンケア組成物に含まれる、美容的に許容される成分または成分の混合物である。角質溶解剤としては、AHA、BHA、またはAHAとBHAとの混合物を挙げることができる。
【0022】
[α-ヒドロキシ酸:AHAs/Alpha-Hydroxy Acids]
AHAは天然酸である。一般的なAHAの例としては、クエン酸(柑橘類に含まれる)、グリコール酸(サトウキビに含まれる)、乳酸(酸乳およびトマトジュースに含まれる)、リンゴ酸(リンゴに含まれる)、酒石酸(ブドウに含まれる)などが挙げられる。AHAは、細胞間のタンパク質複合体(例えば、ヘミデスモソーム、デスモソーム)を分解し、角化細胞を緩ませて除去することで、ケラチノサイトの細胞増殖を増加させ、ケミカルピーリングの効果に寄与すると考えられている。これにより、より厚い表皮の生成が可能になる。
【0023】
AHAには、隣接する炭素原子上のヒドロキシル基(すなわち、OH基)で置換されたカルボン酸が含まれる。ほとんどのAHAは、モノカルボン酸またはジカルボン酸に分類される。グリコール酸および乳酸を例として以下に示す。
【化1】
【化2】
【0024】
[β-ヒドロキシ酸:Beta-Hydroxy Acids]
β-ヒドロキシ酸(BHA)は、2個の炭素原子で隔てられたカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基を含む有機化合物である。BHAの例としては、トロパ酸、トレトカン酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、およびサリチル酸が挙げられる。
【0025】
サリチル酸の化学式を以下に示す。主な用途は、抗菌作用および角質溶解作用である。天然には柳の樹皮に含まれる。
【化3】
【0026】
新規なスキンケア組成物に含まれ得る角質溶解剤の非限定的なリストは、以下の表1に提供される。
【0027】
【表1】
【0028】
<真皮成分の合成を増進させる薬剤>
真皮成分の合成を増進させる薬剤は、本開示に記載のスキンケア組成物の若返り効果を高めることができる有効成分である。真皮成分の合成を増進させる薬剤の少なくとも一部は、皮膚におけるコラーゲンおよびエラスチン、すなわちECMタンパク質の産生を促進することによって、若返り効果を高める。真皮成分の合成を増進させる他の薬剤は、皮膚におけるMMPの活性を阻害することができる。MMPはECMの成分を分解する酵素である。したがって、これらのMMPを阻害することは、ECMタンパク質の分解を抑えることにより、皮膚の再生を促進するのに役立つ。
【0029】
[トリテルペン酸]
トリテルペン酸は、本明細書ではトリテルペノイドとも呼ばれ、生物活性のある光化学物質であり、自然界に存在する。これらは、多くの薬用植物、例えば、カンゾウ属、ギムネマ属、センテラアジアチカ、ツバキ、サンザシ属、およびオレア属に見出すことができ、これらの植物は、糖尿病および糖尿病合併症の治療のために伝統医学で一般的に使用されている。オレアノール酸、グリチルリチン、グリチルレチン酸、ウルソール酸、ベツリン、ベツリン酸、およびルペオールなどの多くの生理活性五環式トリテルペノイドは、コラーゲンの増加、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の減少、脂質過酸化の抑制、細胞の抗酸化防御の改善、および抗炎症特性など、複数の生物学的活性を示している。
【0030】
トリテルペン酸の例としては、以下に示すウルソール酸が挙げられる。
【化4】
【0031】
新規なスキンケア組成物に含まれ得る真皮成分の合成を増進させる薬剤の非限定的なリストを、以下の表2に提供する。
【0032】
【表2】
【0033】
<フリーラジカル中和剤>
フリーラジカル中和剤は、反応性化学種による細胞損傷を無効にするために選択された有効成分である。最も一般的な反応性化学種は、反応性酸素種(ROS)および反応性窒素種(RNS)である。活性酸素はOから生成される反応性の高い化学物質で、過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、およびα-酸素がその例である。RNSもまた反応性の高い化学物質であるが、一酸化窒素とスーパーオキシドの反応から生成され、ペルオキシナイトライトを形成する。ROS/RNSによって引き起こされるダメージは、細胞老化の主な原因と考えられている。フリーラジカル中和剤は、既知のメカニズムに従って、1種以上のROS/RNS亜種を無害化することができる。フェノール酸およびジカルボン酸の一部は、フリーラジカル中和剤として機能することができる。
【0034】
[フェノール酸]
フェノール酸は、フェノールカルボン酸とも呼ばれ、芳香族酸化合物である。芳香族酸化合物の例には、フェノール環および有機カルボン酸機能(C6-C1骨格)を含む物質が含まれる。天然に存在する2種類のフェノール酸は、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシケイ皮酸であり、それぞれ安息香酸およびケイ皮酸の非フェノール性分子から誘導される。フェノール酸の例は、以下に示すコーヒー酸および没食子酸である。
【化5】
【化6】
【0035】
[ジカルボン酸]
ジカルボン酸は、2つのカルボキシル官能基(-COOH)を含む有機化合物である。ジカルボン酸の一般的な分子式はHOOC-R-COOHであり、ここでRは脂肪族または芳香族であり得る。ジカルボン酸は、モノカルボン酸と同様の化学的挙動および反応性を示す。ジカルボン酸は、ポリアミドおよびポリエステルなどのコポリマーの調製によく使用される。最も広く使用されているジカルボン酸はアジピン酸で、天然食品業界で風味増強に使用されている。ジカルボン酸の他の例としては、アゼライン酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸があり、いずれも人体のアミノ酸である。中和剤として機能するジカルボン酸の例としては、以下に示すアゼライン酸が挙げられる。
【化7】
【0036】
新規なスキンケア組成物に含まれ得るフリーラジカル中和剤の非限定的なリストを、以下の表3に提供する。
【0037】
【表3】
【実施例
【0038】
非限定的な例では、美容処置において皮膚の表面を剥離及びピーリングするためのスキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含む。有効成分は、皮膚に所望の程度の角質溶解を誘導するための有効量の1種以上の角質溶解剤、反応性化学種からの細胞損傷を無効にするための有効量の1種以上のフリーラジカル中和剤、および真皮成分の合成を増進させる有効量の1種以上の薬剤を含む。本明細書で使用する場合、「有効量(effective amount)」という語句は、当業者の健全な判断の範囲内で、治療される状態を有意に好転させることができる十分な量の化合物を意味するが、望ましくない副作用を回避するのに十分な低量である。化合物の有効量は、処置される特定の状態、処置される生物学的対象の年齢および状態、状態の重症度、処置の期間、および当業者の知識および専門知識の範囲内の他の因子によって変化し得る。この非限定的な例では、有効成分の総量はスキンケア組成物の30(w/w)t%未満であり、スキンケア組成物のpHは1.5~3.5である。
【0039】
この非限定的な例では、角質溶解剤は、表1に列挙した角質溶解剤から選択される任意の1種以上の酸から選択することができる。角質溶解剤が1種以上のAHAである場合、前記AHAの有効量はスキンケア組成物の4~70w/w%、より詳細には7~60w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のAHAから形成される角質溶解剤の有効量は、スキンケア組成物の約20.1w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、前記1種以上のAHAの各々の濃度は、化粧品製剤の12w/w%未満、より詳細には化粧品製剤の11w/w%未満である。より特定の実施形態では、前記AHAの各々の濃度は10w/w%以下である。
【0040】
角質溶解剤が、表1の角質溶解剤のリストから選択される1種以上のBHAおよび/またはその誘導体を含む場合、1種以上のBHAの有効量は、スキンケア組成物の0.2~0.3w/w%、より詳細には0.225~0.275w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のBHAの有効量は約0.25w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、前記1種以上のBHAの各々の濃度は、化粧品製剤の1w/w%未満、より特に0.5w/w%未満である。より特定の実施形態では、前記BHAの各々の濃度は0.25w/w%以下である。
【0041】
この非限定的な例では、真皮成分の合成を増進させる薬剤はトリテルペン酸およびその誘導体であり、これらは表2から選択することができる。真皮成分の合成を増進させる1種以上の薬剤の有効量は、スキンケア組成物の0.01~3.0w/w%、より特に0.01~1.5w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のトリテルペン酸の有効量は約0.01w/w%である。
【0042】
この非限定的な例において、フリーラジカル中和剤は、フェノール酸およびその誘導体、ならびにジカルボン酸およびその誘導体を含み、これらは表3に示される酸から選択することができる。フリーラジカル中和剤がフェノール酸およびその誘導体を含む場合、1種以上のフェノール酸の有効量は、化粧品製剤の0.005~3.5w/w%、より特に1~2.5w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のフェノール酸の有効量は、化粧品製剤の約1.75w/w%である。
【0043】
この非限定的な例において、フリーラジカル中和剤がジカルボン酸およびその誘導体を含む場合、1種以上のジカルボン酸の有効量は、化粧品製剤の0.15~15w/w%、または化粧品製剤の3~7w/w%、より特に4~6w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のジカルボン酸の有効量は、化粧品製剤の約5.1w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、1種以上のジカルボン酸の各々の濃度は、化粧品製剤の3w/w%未満、より特に化粧品製剤の2.75w/w%未満である。より特定の実施形態では、ジカルボン酸の各々の濃度は2.5w/w%以下である。
【0044】
別の非限定的な例では、スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含む。有効成分には、有効量の1種以上のAHA、有効量の1種以上のBHA、有効量の1種以上の五環式トリテルペン酸、有効量の1種以上のフェノール酸、および有効量の1種以上のジカルボン酸が含まれる。この他の非限定的な例では、有効成分の総量はスキンケア組成物の30w/w%未満であり、スキンケア組成物のpHは1.5~3.5である。
【0045】
更に別の非限定的な例では、スキンケア組成物は、化粧品として許容される担体に混合された有効成分を含む。有効成分は、有効量の1種以上のAHA、有効量の1種以上のBHA、および有効量の1種以上のジカルボン酸を含む。この他の非限定的な例では、有効成分の総量はスキンケア組成物の30w/w%未満であり、スキンケア組成物のpHは1.5~4である。
【0046】
この他の非限定的な例では、AHAは、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、およびクエン酸から選択される1種以上を含むことができる。更に、AHAの有効量は、スキンケア組成物の15~25w/w%、より詳細には17.5~22.5w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、AHAの有効量は、スキンケア組成物の約20.1w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、1種以上のAHAの各々の濃度は、化粧品製剤の12w/w%未満、より特に11w/w%未満である。より特定の実施形態では、AHAの各々の濃度は10w/w%以下である。
【0047】
この他の非限定的な例では、ジカルボン酸は、リンゴ酸、アゼライン酸、および酒石酸のうちの1種以上を含むことができる。更に、1種以上のジカルボン酸の有効量は、化粧品製剤の3~7w/w%、より特に4~6w/w%未満である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のジカルボン酸の有効量は、化粧品製剤の約5.1w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、1種以上のジカルボン酸の各々の濃度は、化粧品製剤の3w/w%未満、より特に化粧品製剤の2.75w/w%未満である。より特定の実施形態では、ジカルボン酸の各々の濃度は2.5w/w%以下である。
【0048】
この他の非限定的な例では、BHAは、サリチル酸およびカプリロイルサリチル酸の1種以上を含むことができる。更に、1種以上のBHAの有効量は、スキンケア組成物の0.2~0.3w/w%、より詳細には0.225~0.275w/w%である。この非限定的な例の特定の実施形態では、1種以上のBHAの有効量は約0.25w/w%である。この非限定的な例の1つ以上の実施形態において、1種以上のBHAの各々の濃度は、化粧品製剤の1w/w%未満、より特に0.5w/w%未満である。より特定の実施形態では、BHAの各々の濃度は0.25w/w%以下である。
【0049】
先の実施例の1つ以上、または別の実施例において、1種以上のジカルボン酸はアゼライン酸であり、これは活性酸素種のフリーラジカル除去のために選択される。
【0050】
先の実施例の1つ以上、または別の実施例において、1種以上のジカルボン酸は酒石酸であり、1種以上のフェノール酸は没食子酸であり、酒石酸および没食子酸は活性窒素種のフリーラジカル除去のために選択される。
【0051】
先の実施例の1つ以上、または別の実施例において、1種以上のフェノール酸は没食子酸およびコーヒー酸の混合物であり、1種以上の五環式トリテルペン酸はオレアノール酸であり、没食子酸、コーヒー酸、およびオレアノール酸は、皮膚のコラーゲン産生を増進させるために選択される。
【0052】
先の実施例の1つ以上、または別の実施例において、1種以上の五環式トリテルペン酸はオレアノール酸であり、これは皮膚の脂質過酸化を抑制し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性を抑制するために選択される。
【0053】
先の実施例の1つ以上において、前記スキンケア組成物はレゾルシノールを欠いている。レゾルシノールは、剥離効果を提供することができるが、高濃度で長期間曝露されると、全身毒性および甲状腺機能亢進症を含む、より重篤な副作用を引き起こす可能性がある。したがって、本明細書に記載のスキンケア組成物は、一般的なケミカルピーリング成分に関連する1つの一般的な健康リスクを回避する。
【0054】
図1は、例示的な実施形態による、美容処置において皮膚の層を除去するためのプロセスのフローチャートである。フローチャート100のステップは、医師、看護師、またはエステティシャンなどのスキンケアの専門家によって患者に実施され得る。美容処置の例は、ケミカルスキンピールである。更に、本方法は、治療の最初の外来診察、すなわち来院の間に患者に使用することができ、さらなる外来診察は、最大合計4回のパスでより多くの治療パスを必要とする。
【0055】
フローチャート100は、ステップ102において、所望の浸透深度および効果に基づいて塗布部位を準備することによって開始する。非限定的な実施形態において、塗布部位の準備は、塗布部位をクレンジングおよび脱脂することによって達成される。より積極的なクレンジングは、スキンケア組成物のより大きな浸透深度およびより強い効果、すなわち剥離の程度を提供する。最も一般的な塗布部位は顔の皮膚である。しかし、塗布部位は首または手のように老化の徴候を頻繁に示す皮膚の他の部位でもよい。
【0056】
ステップ104では、スキンケア組成物を塗布部位に塗布する。スキンケア組成物のpHは3.5以下であるが、実際のpHは所望の浸透深度および効果に基づく。より低いpHは、スキンケア組成物の浸透深度をより大きくし、より強い効果を提供する。いくつかの実施形態において、スキンケア組成物の許容可能なpHの範囲は、1.5~3.5とすることができ、pHを低下させる有効成分、例えばAHA、BHA、または他の酸成分の1つ以上の量を増加させることによって変更される。前述したように、スキンケア組成物は、美容的に許容される担体に混合された有効成分を含む。有効成分には、1種以上のAHAの有効量、1種以上のBHAの有効量、1種以上の五環式トリテルペン酸の有効量、1種以上のフェノール酸の有効量、および1種以上のジカルボン酸の有効量が含まれる。一実施形態では、有効成分の総量は、スキンケア組成物の50w/w%未満である。より詳細には、有効成分の総量はスキンケア組成物の40w/w%未満であり、特定の実施形態では、有効成分の総量はスキンケア組成物の30w/w%未満である。
【0057】
ステップ106において、スキンケア組成物は、塗布部位上に有効時間保持される。有効時間は、所望の浸透深度および効果に基づく。時間が長いほど、スキンケア組成物の浸透深度が増し、より強い効果が得られる。非限定的な実施形態において、皮膚を剥離する有効時間は、1~5分、より詳細には1.5~3分である。特定の実施形態では、皮膚を剥離するのに有効な時間は約2分である。
【0058】
ステップ108では、治療が完了したかどうかの判定が行われる。処理が完了していない場合、フローチャート100はステップ104に戻る。いくつかの実施形態では、所望の数の処置パスが実行されると、処置は完了する。処置パスの回数が多いほど、スキンケア組成物の浸透深度が増し、より強い効果が得られる。処理が完了すると、フローチャート100はステップ108からステップ110に進み、そこでスキンケア組成物が抑圧される/中和される。従来の中和剤を塗布することができ、これはスキンケア組成物の酸性度を打ち消して皮膚の傷つきを止める。ステップ110はまた、冷水によるクレンジングルーティンなど、当業者に公知の他の追加ステップを含むことができる。
【0059】
フローチャート100に記載されたスキンケア手順の効力は、塗布回数が増加するにつれて、また皮膚組織のより深い層を段階的に標的とすることによって増加する。したがって、非限定的な実施形態では、フローチャート100に記載された美容手順は、少なくとも3回の来院にわたって繰り返される。例えば、最初の来院では、美容処置は皮膚を剥離する。2回目の来院では、前記再塗布および前記保持するステップが繰り返され、美容処置が皮膚のさらなる層を剥離するようにすることができる。3回目の来院では、前記再塗布および前記保持するステップを繰り返し、美容処置が皮膚を更に剥離するようにすることができる。最適な結果を得るため、および皮膚が治癒するのに十分な時間を与えるために、各来院は、約2~6週間、またはより詳細には2~5週間の休止期間の間隔を空けるべきである。したがって、フローチャート100は、ステップ112において、次の治療サイクルを再び開始する前に、休止期間が経過したかどうかを判定することを含む。休止期間が経過している場合、フローチャート100はステップ102に進み、そこでプロセスが再び開始する。しかし、休止期間がまだ経過していない場合には、フローチャート100は、休止期間が経過するまでステップ114に進む。
【0060】
いくつかの要素を参照して本発明の実施形態を説明したが、本明細書に記載された実施形態に記載された任意の要素は例示的なものであり、新たな実施形態を形成するために適宜省略、置換、追加、組み合わせ、または再配置することができる。当業者であれば、本明細書を読めば、そのような追加の実施形態が本明細書に効果的に開示されていることを認識するであろう。例えば、本開示が、要素または、要素または要素の組み合わせを製造または使用するためのプロセスについての特性、構造、サイズ、形状、配置、または組成を記載する場合、特性、構造、サイズ、形状、配置、または組成はまた、追加の実施形態を提供するために、本明細書に記載される任意の他の要素または要素の組み合わせ、または要素もしくは要素の組み合わせを製造または使用するためのプロセスに組み込むことができる。
【0061】
更に、本明細書において、ある実施形態が、ある要素または要素群から構成されるとして記載される場合、追加の実施形態は、本質的にその要素または要素群から構成され得るか、またはその要素または要素群から構成され得る。また、本明細書では一般に、「含む(comprises)」というオープンエンドの用語が使用されるが、「実質的に~から(より)なる(consisting essentially of)」または「から(より)なる(consisting of)」という用語に置き換えることによって、追加の実施形態を形成することができる。
【0062】
本発明は、特に好ましい実施形態を参照して示し、説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、発明の形態および詳細において様々な変更がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。本発明者らは、当業者が適宜このような変形を採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載した以外の方法で本発明を実施することを意図している。したがって、本発明は、適用される法律により許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての変更および均等物を含む。更に、そのすべての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
図1
【国際調査報告】