(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ジイソシアネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/10 20060101AFI20241028BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20241028BHJP
C07C 263/20 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
C07C263/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531681
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 KR2022018934
(87)【国際公開番号】W WO2023101340
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0169321
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ユジン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ジュヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・ウ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB48
4H006AB92
4H006AC55
4H006AD11
4H006BB12
4H006BC10
4H006BC19
4H006BC51
4H006BC52
4H006BE52
(57)【要約】
本発明は、純度が高く、長期保管時にも安定性に優れて、白濁が少ないジイソシアネートの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンまたはその塩をホスゲンと反応させて反応混合物を得る反応段階;および
前記反応混合物からジイソシアネートを分離する精製段階を含み、
前記精製段階は、170℃未満の温度にて16時間以下で行われる、ジイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
前記ジアミンは、1,2-キシリレンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,4-キシリレンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される1種以上であり、
前記ジアミン塩は、1,2-キシリレンジアミン塩酸塩、1,3-キシリレンジアミン塩酸塩、1,4-キシリレンジアミン塩酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,2-キシリレンジアミン炭酸塩、1,3-キシリレンジアミン炭酸塩、および1,4-キシリレンジアミン炭酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項3】
前記反応段階は、80℃~180℃で行われる、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項4】
前記精製段階は、100℃~150℃の温度で5時間~15時間行われる、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項5】
前記精製段階は、0.001~50kPaの圧力下での減圧蒸留および/または薄膜蒸留によって行われる、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項6】
前記精製段階は、
第1温度および第1圧力下で反応混合物を減圧蒸留して溶媒を除去する段階;
第2温度および第2圧力下で減圧蒸留して低沸点不純物を除去する段階;および
第3温度および第3圧力下で薄膜蒸留してオリゴマーを除去する段階を含むものである、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項7】
前記第3温度は、第1温度および/または第2温度に等しいか、より低く、
前記第3圧力は、第1圧力および/または第2圧力に等しいか、より低い、
請求項6に記載のジイソシアネートの製造方法。
【請求項8】
前記精製段階の後、ジイソシアネートの純度は、99%~100%である、請求項1に記載のジイソシアネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月30日付の韓国特許出願第10-2021-0169321号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、純度が高く、安定性が向上したジイソシアネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート化合物は、化学工業、樹脂工業分野だけでなく、光学材料をはじめとする精密化学製品として活用価値が高い化合物である。イソシアネート化合物の代表的な例であるキシリレンジイソシアネート(xylylene diisocyanate、以下、XDI)は、高級光学レンズの原料として高付加価値化学素材への需要が増加している。
【0003】
このようなイソシアネートは、反応性が高くて、保管環境によって変性しやすい。イソシアネートが変性する場合、純度が低下するだけでなく、透明度が低下し、白濁が発生するので、優れた外観特性、特に透明性が要求される光学分野への使用が不適である問題がある。
【0004】
そこで、イソシアネートに安定剤を施す方法が使用されているが、安定剤が着色の原因となりかねず、イソシアネート自体の安定性が低下する場合、効果が制限的な問題がある。
【0005】
そのため、長期保管時にも白濁の発生が抑制され、純度が維持され、変性の恐れがないイソシアネートの製造に関する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、純度が高く、長期保管時にも安定性に優れて、光学用樹脂の製造に適したジイソシアネートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明の一実施形態によれば、
ジアミンまたはその塩をホスゲンと反応させて反応混合物を得る反応段階;および
前記反応混合物からジイソシアネートを分離する精製段階を含み、
前記精製段階は、170℃未満の温度にて16時間以下で行われる、ジイソシアネートの製造方法が提供される。
【0008】
前記ジアミンは、1,2-キシリレンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,4-キシリレンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される1種以上であり、
前記ジアミン塩は、1,2-キシリレンジアミン塩酸塩、1,3-キシリレンジアミン塩酸塩、1,4-キシリレンジアミン塩酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,2-キシリレンジアミン炭酸塩、1,3-キシリレンジアミン炭酸塩、および1,4-キシリレンジアミン炭酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0009】
一実施形態において、前記反応段階は、80℃~180℃で行われる。
一実施形態において、前記精製段階は、100℃~150℃の温度で5時間~15時間行われる。
一実施形態において、前記精製段階は、0.001~50kPaの圧力下での減圧蒸留および/または薄膜蒸留によって行われる。
【0010】
一実施形態において、前記精製段階は、第1温度および第1圧力下で反応混合物を減圧蒸留して溶媒を除去する段階;第2温度および第2圧力下で減圧蒸留して低沸点不純物を除去する段階;および第3温度および第3圧力下で薄膜蒸留してオリゴマーを除去する段階を含むことができる。この時、前記第3温度は、第1温度および/または第2温度に等しいか、より低く、前記第3圧力は、第1圧力および/または第2圧力に等しいか、より低くてよい。
前記精製段階の後、ジイソシアネートの純度は、99%~100%であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジイソシアネートの製造方法によれば、純度が高く、長期保管時にも安定性に優れたジイソシアネートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0013】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明者らは、純度を高めることができながらも、長期保管時に白濁などの変性が発生しないように安定性が向上したジイソシアネートの製造方法に関して研究してきており、その結果、精製段階での最高温度および滞留時間を制御することによって、前記効果を達成できることを確認して、本発明を完成した。
【0015】
そのため、本発明の一実施形態によれば、
ジアミンまたはその塩をホスゲンと反応させて反応混合物を得る反応段階;および
前記反応混合物からジイソシアネートを分離する精製段階を含み、
前記精製段階は、170℃未満の温度にて16時間以下で行われる、ジイソシアネートの製造方法が提供される。
【0016】
以下、本発明を段階別に説明する。
まず、ジアミン、またはその塩をホスゲンと反応させて反応混合物を得る反応段階(ホスゲン化反応段階)を行う。
【0017】
前記ジアミンは、分子内のアミン基を2個含む芳香族、脂環族、または脂肪族アミンである。一実施形態において、前記ジアミンは、1,2-キシリレンジアミン(o-キシリレンジアミン、o-XDA)、1,3-キシリレンジアミン(m-キシリレンジアミン、m-XDA)、1,4-キシリレンジアミン(p-キシリレンジアミン、p-XDA)、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される1種以上で、目的とするジイソシアネートの構造により選択可能である。
【0018】
前記ジアミンの塩は、前記ジアミンと酸との反応で生成された塩を意味し、例えば、ジアミンと無水塩酸との反応で製造された塩酸塩、ジアミンと炭酸との反応で製造された炭酸塩などであってもよい。ジアミンは、ホスゲンと急激に反応するが、固体状態の塩に変換させて使用する場合、反応速度を緩和させることができる。
【0019】
具体的には、ジアミン塩としては、1,2-キシリレンジアミン塩酸塩、1,3-キシリレンジアミン塩酸塩、1,4-キシリレンジアミン塩酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン塩酸塩、1,2-キシリレンジアミン炭酸塩、1,3-キシリレンジアミン炭酸塩、および1,4-キシリレンジアミン炭酸塩、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩、および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン炭酸塩からなる群より選択される1種以上が使用できる。
【0020】
前記ジアミン塩の製造は、溶媒中で行われ、溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼンなどの塩素化芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素化炭化水素溶媒などを使用することができ、これらの2種以上を混合して使用することができる。これらの溶媒は、ホスゲン化反応の溶媒としても使用可能なため、前記溶媒中でジアミンと酸とを反応させてジアミン塩を得た後、別途の精製過程なしにホスゲンを投入してホスゲン化反応を行うことができる。
【0021】
前記ジアミン塩の製造は、60℃以下、好ましくは約5~30℃の温度で行われることが好ましく、反応中の反応熱によって一時的に温度が上昇できるが、反応器内の最大温度が90℃以下、または60℃以下に維持されることが好ましい。
【0022】
一方、ジアミンをホスゲンと反応させる場合、ホスゲンは、反応初期に一括投入されるか、または反応初期に一部投入後、残部が反応の途中に分割投入されてもよい。前記ホスゲンの投入時、ホスゲンの温度は-10℃~0℃であることが、猛毒性ホスゲンの流出を防止し、反応物の温度を円滑に上げられるので、好ましい。
【0023】
ホスゲン化反応時、反応器の温度は、80℃~180℃に調節することができる。好ましくは、100℃以上、または120℃以上かつ、150℃以下、または140℃以下の範囲であってもよい。このような温度条件で円滑なホスゲン化反応が行われ、製造されるジイソシアネートの熱分解を防止することができる。
【0024】
前記ジアミンとホスゲンとの反応時に副生成物の発生を抑制するための添加剤として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(4-Hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-oxyl;以下、4-hydroxy TEMPOという)、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン1-オキシル(4-メトキシ-TEMPO)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ベンジルオキシピペリジン-1-オキシル(4-ベンジルオキシ-TEMPO)、および4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(4-acetamido-2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-oxyl;以下、4-acetamido TEMPOという)からなる群より1種以上をさらに含むことができる。前記添加剤を使用する場合、添加剤の含有量は、ジアミンまたはジアミン塩100重量部に対して0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部または0.5~3重量部であってもよい。
【0025】
次いで、前記ホスゲン化反応後、得られた反応混合物からジイソシアネートを分離する精製段階を行う。
【0026】
イソシアネート基は、反応性が高くて副反応が起こりやすく、副反応により形成される不純物は、イソシアネート化合物の純度、色度などに影響を及ぼしかねないので、精製段階が必要である。ところで、本発明者らの研究結果、精製段階が過度に高温条件で行われたり、精製段階の時間が増加したりする場合、イソシアネート化合物の安定性が大きく低下することが確認された。したがって、本発明では、精製段階の温度を適正水準に維持し、精製段階の総時間(滞留時間)を制御することによって、ジイソシアネートの安定性を向上させることができるようにする。
【0027】
具体的には、本発明の製造方法において、前記精製段階は、170℃未満の温度で、16時間以下で行われる。精製段階の最高温度が170℃以上であったり、精製段階の滞留時間が16時間超過であったりする場合、製造されたジイソシアネートが過度の熱を吸収して安定性が低くなりうる。しかし、精製段階の温度を170℃未満、滞留時間を16時間以下に制御する場合には、精製される反応混合物の量に関係なくジイソシアネートの安定性向上効果を確保できる。
【0028】
好ましくは、前記精製段階の最高温度は、160℃以下、または150℃以下に維持される。一方、精製段階の最低温度は、ジイソシアネートの安定性に大きな影響を与えないので、特に制限されないが、精製工程の効率を考慮する時、100℃以上、または110℃以上であってもよい。
【0029】
また、前記精製段階の滞留時間は、16時間以下、または15時間以下であってもよい。精製段階の滞留時間が短いほどジイソシアネートの安定性は向上できるが、高純度に精製するために一定時間の精製過程が必要であることから、精製時間は、5時間以上、または8時間以上、または10時間以上、または13時間以上であることが好ましい。
【0030】
前記精製段階は、一般にイソシアネート化合物の精製に使用される方法により行われる。一実施形態において、前記精製段階は、蒸留塔を用いた減圧蒸留および/または薄膜蒸留によって行われる。前記減圧蒸留および/または薄膜蒸留は、上述した温度および滞留時間条件を満足しながら、高純度精製が可能に、0.001~50kPaの圧力下で行われる。
【0031】
前記減圧蒸留に用いられる蒸留塔は、棚段塔(plate tower)、または充填塔(packed tower)が制限なく使用可能である。蒸留塔の理論段数は、例えば、2以上、または5以上、または10以上でかつ、60以下、または40以下であってもよい。
【0032】
前記減圧蒸留時の温度は、170℃未満を維持し、具体的には、100℃以上、または130℃以上でかつ、160℃以下、または150℃以下であってもよい。減圧蒸留時の圧力は、0.001kPa以上、または0.005kPa以上、または0.01kPa以上でかつ、50kPa以下、30kPa以下、10kPa以下、または1kPa以下であってもよい。前記減圧蒸留時の温度および圧力は、蒸留塔の塔低温度を意味する。
【0033】
また、前記減圧蒸留時の塔頂温度は、10℃以上、または20℃以上でかつ、100℃以下、または80℃以下であってもよく、圧力は、塔低圧力と同じく、0.001kPa以上、または0.005kPa以上、または0.01kPa以上でかつ、50kPa以下、30kPa以下、10kPa以下、または1kPa以下であってもよい。
【0034】
前記薄膜蒸留は、蒸発器、凝縮器、および減圧手段を備える薄膜蒸留装置を用いて行われる。薄膜蒸留装置の回転子の回転速度は、50rpm以上、または120rpm以上、または200rpm以上でかつ、500rpm以下、400rpm以下、または350rpm以下であってもよい。薄膜蒸留時の温度も、170℃未満を維持し、一例として、100℃以上、または110℃以上でかつ、160℃以下、130℃以下であってもよく、圧力は、0.001kPa以上、または0.005kPa以上、または0.01kPa以上でかつ、50kPa以下、30kPa以下、10kPa以下、または1kPa以下であってもよい。
【0035】
このような減圧蒸留条件および/または薄膜蒸留条件下で精製段階の滞留時間を低減しながらも精製効率を高めることができ、これによって高純度のジイソシアネート化合物を得ることができる。
【0036】
一実施形態において、前記精製段階は、温度および/または圧力条件を変化させながら多段階で行われる。一例として、溶媒除去、低沸点不純物除去、およびオリゴマー除去段階を順次に進行させて、精製段階を行うことができる。
【0037】
具体的には、170℃未満の温度および0.001~50kPaの圧力下;または130~150℃の温度および0.01~1kPaの圧力下で精製段階を行いかつ、第1温度および第1圧力下で溶媒除去のための減圧蒸留を進行させ、次いで、第2温度および第2圧力下で低沸点不純物を除去した後、薄膜蒸留装置を用いて第3温度および第3圧力下でオリゴマーを除去することによって、精製段階を行うことができる。
【0038】
この時、第1温度~第3温度は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、第1圧力~第3圧力は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。一例として、前記第3温度は、第1温度および/または第2温度に等しいか、より低く、前記第3圧力は、第1圧力および/または第2圧力に等しいか、より低くてよい。
【0039】
一方、前記減圧蒸留段階の前、ホスゲン化反応が完了した反応器の内部で未反応のホスゲンと塩化水素ガスを除去するために、窒素バブリングする段階をさらに行うことができる。
【0040】
上述した製造方法により、ジイソシアネートが製造できる。前記ジイソシアネートは、使用されたジアミンにより、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0041】
前記本発明の製造方法により製造されたジイソシアネートは、精製後の純度が99%~100%であってもよい。好ましくは、前記ジイソシアネートの純度は、99.2%以上、または99.4%以上であってもよく、さらに好ましくは、100%であってもよい。
【0042】
一方、前記ジイソシアネートは、上述のように、温度および滞留時間が制御された精製段階を経て製造されることによって、長期保管時にも安定性に優れて、変性が少なく、色および透明度に優れているという長所を示す。
【0043】
具体的には、前記ジイソシアネートは、製造後6ヶ月間冷蔵(4℃)条件で保管した時の純度と製造直後の初期純度との差が1.5%以下、または1%以下であってもよい。
【0044】
一例として、前記ジイソシアネートは、製造後6ヶ月間冷蔵(4℃)条件で保管した後に測定した純度が98%以上、または98.4%以上、または98.6%以上であってもよい。前記保管後の純度は高いほど優れており、理論的に100%であってもよいし、一例として、99.5%以下、または99%以下であってもよい。
【0045】
また、前記ジイソシアネートは、製造後6ヶ月間冷蔵(4℃)条件で保管した後に発生した白濁物質の含有量が0.8重量%未満、0.5重量%以下、0.3重量%以下、または0.1重量%以下であってもよく、好ましくは、0重量%であってもよい。
【0046】
前記ジイソシアネートの純度、冷蔵保管後の純度および白濁物質の含有量の測定法は、後述する実施例で具体化される。
【0047】
上述した本発明の製造方法により製造されたジイソシアネートは、安定性に優れ、透明度が高くて、光学素子を製造するための重合性組成物に好適に使用できる。前記重合性組成物は、例えば、本発明のジイソシアネートと、ポリオールおよび/またはポリチオール成分とを含むものであってもよい。
【0048】
このような重合性組成物は、透明性に優れ、黄変が少なくて、眼鏡レンズ、カメラレンズなどを製造するための光学用材料に好適に使用できる。
【0049】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更および修正が添付した特許請求の範囲に属することは言うまでもない。
【0050】
[実施例]
実施例1
(1)反応段階
反応器に、1,2-ジクロロベンゼン471gと純度99.4%のメタ-キシリレンジアミン(m-XDA)32.5g、4-hydroxy TEMPO0.24gを入れて、常温(23±5℃)で無水塩酸を20g/hrの速度で注入して撹拌した。前記無水塩酸を注入する過程で温度が50℃まで上昇した。
【0051】
無水塩酸を4時間注入後に形成された塩を常温に冷却し、ホスゲン43gを反応器内に投入後、反応器の温度を130℃となるように加熱した。この時、ホスゲンの投入時点から反応終了時点までドライアイス-アセトン冷却器でホスゲンが外部に流出しないようにした。
反応器の温度が130℃に到達した後、反応溶液が透明になるように2時間反応器の温度を125~135℃に維持した。溶液が透明になったことで反応終了を確認した。
【0052】
(2)精製段階
前記(1)段階が完了した後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力10.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力1.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、130℃、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、メタ-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)を得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である150℃であり、精製段階は計15時間かかった。
【0053】
実施例2
実施例1の(1)段階と同様の方法でm-XDAのホスゲン化反応を行った。
以後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力5.0kPa、塔低温度140℃、塔頂温度50℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力0.5kPa、塔低温度140℃、塔頂温度50℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、130℃、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、m-XDIを得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である140℃であり、精製段階は計16時間かかった。
【0054】
比較例1
実施例1の(1)段階と同様の方法でm-XDAのホスゲン化反応を行った。
以後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力5.0kPa、塔低温度140℃、塔頂温度50℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力0.5kPa、塔低温度140℃、塔頂温度50℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、130℃、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、m-XDIを得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である140℃であり、精製段階は計32時間かかった。
【0055】
比較例2
実施例1の(1)段階と同様の方法でm-XDAのホスゲン化反応を行った。
以後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力10.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力1.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、130℃、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、m-XDIを得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である150℃であり、精製段階は計24時間かかった。
【0056】
比較例3
実施例1の(1)段階と同様の方法でm-XDAのホスゲン化反応を行った。
以後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力10.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力1.0kPa、塔低温度150℃、塔頂温度60℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、m-XDIを得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である150℃であり、精製段階は計32時間かかった。
【0057】
比較例4
実施例1の(1)段階と同様の方法でm-XDAのホスゲン化反応を行った。
以後、反応器の内部に窒素を吹き込んで常温に冷却した。ホスゲンが除去された反応混合物を段数20の棚段塔を用いて圧力50.0kPa、塔低温度170℃、塔頂温度80℃の条件で減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、圧力10.0kPa、塔低温度170℃、塔頂温度80℃の条件で減圧蒸留して低沸点不純物を除去した後、0.5kPaで回転子が200rpmで回転する薄膜蒸留装置を用いて蒸留してオリゴマーを除去して、m-XDIを得た。
前記精製段階で最高温度は減圧蒸留時の温度である170℃であり、精製段階は計16時間かかった。
【0058】
実験例
(1)XDIの純度測定
GCを用いて前記実施例および比較例のm-XDIの純度を分析した。まず、精製直後のm-XDI組成物に対してGC分析を行い、m-XDIを6ヶ月間冷蔵(4℃)条件で保管した後、GC分析を行った。6ヶ月後に白濁が進行したm-XDIについては、不溶性の白濁物質を濾過した後、濾液に対するGC分析を行った。
【0059】
分析に使用したGCはHP-6890であり、FIDで検出した。使用したカラムはDB-17(30m*0.25mm*0.5μm)、キャリアガスは窒素(1.0mL/min)、オーブン温度は80℃→5℃/min→160℃(8min)→20℃/min→280℃(18min)である。
【0060】
(2)白濁度評価および白濁物質の含有量の測定
m-XDIを6ヶ月間冷蔵(4℃)条件で保管した後、白濁発生の有無を肉眼で確認した。肉眼上白濁が発生したm-XDIは300gを計量した後、フィルタで濾過して、濾過した固形分(白濁物質)の重量を測定し、これから白濁物質の含有量(重量%)を計算した。
【0061】
(3)光学材料の製造および透明度評価
前記実施例および比較例で得られた各m-XDIを用いて、下記の方法で重合性組成物および光学素子(プラスチックレンズ)を製造した。
【0062】
m-XDI20.8g、zelec UN(離型剤、酸性リン酸エステル、Stepan社製)0.04g、biosorb583(紫外線吸収剤、2-(2’-hydroxy-5’-t-octylphenyl)benzotriazole、Sakai Chemical industry Co.,Ltd社製)0.04gを、常温のフラスコで約20分間撹拌した。
【0063】
すべての成分がよく混合されたことを肉眼で確認した後、dibutyltin chloride0.002gを追加的に入れて、10分間撹拌して混合物を作った。この混合物に2,3-bis(2-sulfanyl ethyl sulfanyl)propane-1-thiol19.2gを添加し、5mbarで脱泡し、1時間撹拌して重合性組成物を調製した。
【0064】
前記重合性組成物を1μm PTFEフィルタで濾過後、ガラスモールドとテープとで構成されるモールド型に注入した。このモールド型をオーブンに投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温し、20時間重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出して離型し、120℃で6時間アニーリングしてプラスチックレンズを製造した。
【0065】
前記レンズに対して一般蛍光灯およびジルコニウムランプ(Y-100G)を用いて肉眼で白濁現象の発生程度を評価した。
【0066】
<評価基準>
C(Clear):蛍光灯およびジルコニウムランプ下ですべて透明である
S.H(Slightly lamp Haze):蛍光灯下では透明であるが、ジルコニウムランプ下で一部濁っていることが観察される
L.H(Lamp Haze):蛍光灯下では透明であるが、ジルコニウムランプ下で濁っていることが観察される
V.H(Visual Haze):蛍光灯およびジルコニウムランプ下ですべて濁っていることが観察される
【0067】
【0068】
前記表1を参照すれば、精製段階の最高温度を170℃未満とし、精製段階の滞留時間を16時間以下に調節して製造した実施例1および2のXDIは、純度が優れたものに維持され、長期保管安定性に優れて白濁が発生しないことを確認することができる。また、実施例1および2のXDIを用いて製造した光学素子は、優れた透明度を示すことを確認することができた。
【0069】
しかし、比較例1~4のように、XDIの製造時、精製段階の温度が過度に高かったり、温度が適正であっても精製段階の滞留時間が過度に長い場合は、精製直後の純度は優れているが、長期保管時に白濁が発生したり純度が著しく減少するなどXDIの安定性が低下し、結局、これを用いて製造された光学素子の品質にも影響を及ぼすことを確認することができる。
【国際調査報告】