(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】病変の経皮焼灼に最適な処置タイプを予測するデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20241029BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20241029BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241029BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20241029BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20241029BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B18/12
G16H50/20
G06N20/00
A61B18/18 100
A61B18/20
G16H20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572568
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 FR2022051866
(87)【国際公開番号】W WO2023057713
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
5L099
【Fターム(参考)】
4C026AA01
4C026HH21
4C160JK01
4C160KK01
4C160MM32
5L099AA04
5L099AA26
(57)【要約】
本発明は、患者の対象となる解剖学的構造(14)内の病変(13)を経皮焼灼するために最適な処置を選択する方法(100)を実行するデバイスに関する。方法は、病変(13)を見ることができる医療画像(12)から、利用可能な複数の処置の各々について、病変の焼灼に対して上記処置が成功する尤度を表す値を有する信頼スコアを計算するようにトレーニングされた機械学習アルゴリズム(20)を使用する。機械学習アルゴリズムは、別の患者の対象となる解剖学的構造内で病変を見ることができる医療画像と、上記別の患者の処置に利用可能な種々の処置から選択された処置と、上記別の患者に対する選択された処置の信頼スコアとを各々含むトレーニング要素(21)のセットを使用して事前にトレーニングされる。最適な処置は次いで、利用可能な異なる処置に対して計算された信頼スコアに基づいて選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサ(32)と、プログラムコード命令を記憶するコンピュータメモリ(31)とを備えた電子デバイス(30)であって、前記プログラムコード命令は、前記プロセッサ(31)により実行されると、患者の対象となる解剖学的構造(14)内の病変(13)の経皮焼灼に利用可能な幾つかの処置の中から少なくとも1つの最適な処置を選択する方法(100)を実施するように前記プロセッサ(31)を構成し、前記方法(100)は、
-前記患者で前に取得された、前記病変(13)を前記患者の前記対象となる解剖学的構造(14)内で見ることができる医療画像(12)を取得すること(101)と、
-異なる前記利用可能な焼灼処置の各々で、機械学習アルゴリズム(20)を使用して前記医療画像(12)から、前記患者の前記対象となる解剖学的構造(14)における前記病変(13)の前記焼灼での前記処置の成功確率を表す値を有する信頼指数を計算すること(104)であって、前記機械学習アルゴリズム(20)は、トレーニング要素(21)のセットから事前にトレーニングされており、前記トレーニング要素(21)の各々は、
・病変(23)を別の患者の前記対象となる解剖学的構造(24)内で見ることができる医療画像(22)、
・前記別の患者の処置に利用可能な前記異なる焼灼処置の中から選ばれた処置の識別情報、
・前記別の患者に対する前記処置の信頼指数
を含む、計算すること(104)と、
-前記異なる利用可能な処置について計算された前記信頼指数の関数として、少なくとも1つの最適な処置を選択すること(105)と、
を含む、電子デバイス(30)。
【請求項2】
利用可能な各処置は、高周波、マイクロ波、レーザ、凍結、電気穿孔、又は小線源の中から選ばれる焼灼技術を特徴とする、請求項1に記載の電子デバイス(30)。
【請求項3】
利用可能な各処置は、1つ又は複数のアプリケータによるエネルギー堆積戦略を特徴とし、前記戦略は、遠心型のエネルギー堆積及び求心収束型のエネルギー堆積の中から選ばれる、請求項2に記載の電子デバイス(30)。
【請求項4】
利用可能な各処置は、アプリケータ数及び/又は前記病変に対する前記アプリケータの位置を特徴とする、請求項3に記載の電子デバイス(30)。
【請求項5】
各トレーニング要素(21)について、前記信頼指数は、
-前記選ばれた処置を用いた場合に前記別の患者で再発が観測されたか又は観測されなかったか、及び/又は
-前記別の患者で再発が観測されていない状態での前記処置の終了と現在日との間で経過した期間の持続時間、及び/又は
-前記処置の前記終了と前記別の患者の再発との間で経過した期間の持続時間、及び/又は
-1人又は複数人の医療専門家による、前記別の患者に対して選ばれた処置の成功確率の推定
の関数として定義される、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項6】
前記方法(100)は、
パラメータのセットを前記患者の前記医療画像(12)と関連付けること(102)であって、前記パラメータのセットは、前記病変(13)、前記対象となる解剖学的構造(14)、及び/又は前記患者の特徴に関連する1つ又は複数のパラメータを含み、各トレーニング要素(21)は、前記病変(23)、前記対象となる解剖学的構造(24)、及び/又は前記参照要素(21)に対応する前記医療画像(22)が取得された前記別の患者の特徴に関連する同様のパラメータのセットを含む、関連付けること(102)と、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項7】
前記パラメータのセットは、
-前記医療画像(12)が取得された前記患者の年齢、性別、体重、及び/又は身長、
-前記医療画像(12)が取得された前記患者により呈される併存疾患、
-前記病変(13)のサイズ及び/又は体積を表す値、
-前記病変(13、23)と前記対象となる解剖学的構造(14)の被膜との間の距離、
-前記病変(13)と前記病変に近い血管との間の距離、
-前記対象となる解剖学的構造(14)が肝臓である場合、前記病変(13)と前記病変に近い肝管との間の距離
の中から選ばれる1つ又は複数のパラメータを含む、請求項6に記載の電子デバイス(30)。
【請求項8】
前記方法(100)は、前記患者の前記医療画像(12)を変換すること(103)を含み、各トレーニング要素(21)の前記医療画像(22)は、前記機械学習アルゴリズム(20)のトレーニングに使用される前、同様の変換(203)を受ける、請求項1~7のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項9】
前記医療画像(12)を変換すること(103)は、
-前記医療画像(12)における前記病変をセグメント化すること(15)、及び/又は
-前記医療画像(12)における前記対象となる解剖学的構造をセグメント化すること、及び/又は
-前記医療画像(12)における血管をセグメント化すること、及び/又は
-前記対象となる解剖学的構造(14)が肝臓である場合、前記医療画像(12)における肝管をセグメント化すること
を含む、請求項8に記載の電子デバイス(30)。
【請求項10】
前記医療画像(12)を変換すること(103)は、寸法が予め決定される枠に従って、前記病変(13)の周囲の前記画像(12)をリフレーミングすることを含み、前記枠は前記トレーニング要素(21)の前記医療画像(22)の全てで共通し、前記枠に対する前記病変(23)の位置は、前記医療画像(22)毎に可変である、請求項8又は9に記載の電子デバイス(30)。
【請求項11】
前記方法(100)は、
-前記選択された最適な処置に対応する各トレーニング要素(21)について、処置される前記患者の前記医療画像(12)と前記トレーニング要素(21)の前記医療画像(22)との間の類似性を表す類似値を計算すること(106)と、
-前記計算された類似値の関数として、前記トレーニング要素(21)の前記セットの中から参照トレーニング要素を選択すること(107)と、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項12】
前記医療画像(12、22)は、断層像密度測定、磁気共鳴撮像、又は超音波により取得された、請求項1~11のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項13】
前記医療画像(12、22)は三次元である、請求項1~12のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項14】
前記対象となる解剖学的構造(14、24)は、肝臓、腎臓、又は肺であり、前記病変(13、23)は腫瘍又は嚢胞である、請求項1~13のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【請求項15】
前記機械学習アルゴリズム(20)は、医療画像(22)が前記対象となる解剖学的構造にいかなる病変も示さないトレーニング要素を用いて事前に更にトレーニングされる、請求項1~14のいずれか1項に記載の電子デバイス(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本特許出願は、最小侵襲性医療介入のスケジューリングの技術分野に属する。特に、本願は、患者の対象となる解剖学的構造における病変の経皮焼灼に利用可能な幾つかの処置の中から、最適な処置を選択する方法を実施するコンピュータ型の電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現行水準
患者の対象となる解剖学的構造(例えば、肺、腎臓、肝臓、骨構造等)における病変(例えば、腫瘍)の処置を目的とした医療介入を準備するために、施術者は一般に、医療画像に基づいて介入のスケジューリングを実行する。
【0003】
このスケジューリングの最初のステップの本質は、処置タイプを選択することにある。病状のタイプに従って処置を選択するための幾つかの主要な臨床実施指針が存在する。目的は、例えば、まず、手段として焼灼、移植、化学塞栓術による処置、又は放射線治療を用いることが最良であるか否かを判断することである。
【0004】
しかしながら、より正確な処置タイプを適宜選択することは困難なままである。
【0005】
より正確には、腫瘍の経皮焼灼の場合、種々の処置方法を適用することができる:高周波、マイクロ波、レーザ、凍結、電気穿孔、又は小線源。高周波、マイクロ波、レーザ、又は凍結に頼る方法は、熱的方法である。電気穿孔の本質は、2つの電極間で、数十個の数μsの高周波パルスを非常に高強度で送達して、細胞の膜機能の不可逆的改変を生じさせることにある。電気穿孔は比較的「穏やかな」焼灼技術であり、腫瘍の位置又は患者の虚弱性のいずれかにより、以前に熱的焼灼技術を用いて処理することができなかった腫瘍の処置の考慮を可能にする。小線源としては、腫瘍内部又はその近傍に放射線量を送達させることを目的とする。
【0006】
使用される技法が何であっても(熱エネルギー、電気エネルギー、高周波エネルギー等)、経皮焼灼には、エネルギーをin situで送達するための1つ又は複数のアプリケータを所定位置に配置することが伴う。送達されたエネルギーは、細胞レベル及び組織レベルの規模での不可逆的分解を誘導する。場合によっては、アプリケータの幾つかの連続した挿入により逐次又は幾つかのアプリケータの同時挿入及び活性化により同時に、重複焼灼を実行する必要があることが示されることがある。
【0007】
更に、幾つかのアプリケータが同時に活性化される場合、アプリケータによりエネルギーを堆積させる種々の戦略が存在する。特に、いわゆる「求心性」焼灼といわゆる「遠心性」焼灼とは区別される。
【0008】
遠心性焼灼戦略は、実施が比較的簡便であるため、現在最も広く使用されている。しかしながら、求心性収束焼灼戦略は、焼灼ゾーン及びその環境に対するよりよい適応性を提供する。求心性収束焼灼戦略は実際に、破壊限界をよりよく制御できるようにし、それにより、腫瘍の形態及び場所の関数としての焼灼ゾーンの特定の「モデリング」が可能になる。他方、健康な組織のより大きな犠牲を伴う。
【0009】
概念上は非常に似て見えるこれらの種々の方法は現実では、それらの方法により取得可能になる結果と同じだけ、実際用途に関してかなり異なる。
【0010】
特定の処置タイプの選択は、各臨床状況の特定の特徴に大きく依存する。特定の各処置タイプは、特定の臨床状況で、最良のベネフィット/リスク比率を提供することができる。
【0011】
特定の処置タイプの選択は一般に、施術者により施術者の実施又は好みに従って行われる。したがって、患者の対象となる解剖学的構造における病変の処置に選択される処置は、最適ではないことがあり、患者の病状の再発又は側枝病変に繋がる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、現在、患者の対象となる解剖学的構造における病変の焼灼に利用可能な処置のセットの中から最適な処置を選ぶに当たり、施術者を支援する満足のいく解決策はしかしながら存在しない。
【0013】
発明の概要
本発明の目的は、従来技術の欠点、特に上述した欠点を全体的又は部分的に是正することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、第1の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサ及びコンピュータメモリを備えた電子デバイスが提案される。コンピュータメモリはプログラムコード命令を記憶し、プログラムコード命令は、プロセッサにより実行されると、患者の対象となる解剖学的構造内の病変の経皮焼灼に利用可能な幾つかの処置の中から少なくとも1つの最適な処置を選択する方法を実施するようにプロセッサを構成する。実施される方法は、
-病変を患者の対象となる解剖学的構造内で見ることができる医療画像を取得することと、
-異なる利用可能な焼灼処置の各々で、機械学習アルゴリズムを使用して医療画像から、患者の対象となる解剖学的構造における病変の焼灼での上記処置の成功確率を表す値を有する信頼指数を計算することであって、機械学習アルゴリズムは、トレーニング要素のセットから事前にトレーニングされており、トレーニング要素の各々は、
・病変を別の患者の対象となる解剖学的構造内で見ることができる医療画像、
・上記別の患者の処置に利用可能な異なる焼灼処置の中から選ばれた処置の識別情報、
・上記別の患者に対する上記処置の信頼指数
を含む、計算することと、
-異なる利用可能な処置について計算された信頼指数の関数として、少なくとも1つの最適な処置を選択することと、
を含む。
【0015】
「経皮焼灼」は、対象となる解剖学的構造における病変を処置するための患者の皮膚を通した最小侵襲性介入を意味するものと理解される。
【0016】
対象となる解剖学的構造は、例えば、肝臓、肺、腎臓、又は骨構造である。病変は、例えば、腫瘍、嚢胞、又は動脈瘤である。対象となる解剖学的構造における病変を焼灼するために様々な処置を考えることができる。処置は特に、技術(高周波、マイクロ波、レーザ、凍結、電気穿孔等)の選択及び適用方法(各技術で、異なるエネルギー堆積戦略を考えることができる)の選択を特徴とすることができる。
【0017】
機械学習アルゴリズムは、入力として医療画像及び処置タイプをとり、出力として、上記処置の成功確率を表す値に対応する信頼指数を直接提供する。したがって、機械学習アルゴリズムは、患者の対象となる解剖学的構造の医療画像から、利用可能な各処置の信頼指数を計算できるようにする。次いで、正当に計算された信頼指数の関数として、最適な処置を選択することができる。例えば、信頼指数が最高の処置は、処置の成功確率が最高である処置に対応する。信頼指数は特に、再発リスクを表すことができる。場合によっては、例えば、異なる利用可能な処置が同じ値の信頼指数と関連付けられる場合、幾つかの最適処置候補が存在することがある。
【0018】
機械学習アルゴリズムは、トレーニング要素のセットに基づいて事前にトレーニングされる。各トレーニング要素は、例えば、利用可能な処置の1つに従って別の患者の対象となる解剖学的構造に対して過去に実行された介入と関連付けられる。その場合、トレーニング要素は、処置前の対象となる解剖学的構造の医療画像と、患者に対して実行された処置の識別情報と、この処置の信頼指数(信頼指数は、例えば、処置後に再発が観測されたか否かの関数として定義される)とを含む。
【0019】
しかしながら、トレーニング要素は、介入が別の患者で実際に行われることなく定義することもできる。実際に、患者の対象となる解剖学的構造の医療画像において見ることができる病変を処置すると考えられた処置の信頼指数は、理論的に特定することができる。例えば、信頼指数は、医療画像に基づいて医療専門家組織により推定することができる。この推定は、場合によっては、科学出版物及び/又は同様の病変を有する患者群に対して行われた実証的研究からの推奨により重み付けすることができる。
【0020】
トレーニング要素のセットは、処置される病変を示す医療画像から、特定の処置の信頼指数を計算するように機械学習アルゴリズムをトレーニングできるようにするデータベースに対応する。医療機関(病院、クリニック等)は、上記医療施設内で利用可能な処置についての各自のデータベースを作成し強化することができる(この施設で実行される新しい各介入について、新しいトレーニング要素をデータベースに追加することができる)。
【0021】
医療画像に加えて、機械学習アルゴリズムは、病変、対象となる解剖学的構造、又は患者に関連するパラメータ(メタデータ)のセットに基づくこともできる。これらのパラメータは、医療画像上で自動的に決定されてもよく(例えば、画像セグメント化若しくは人工知能に基づいて処理アルゴリズムを介して)又はユーザにより手動で決定されてもよい。これらのパラメータは、例えば、病変のサイズ、対象となる解剖学的構造若しくは他の解剖学的構造に対する病変の位置、患者の物理的及び医学的状態等に対応することができる。
【0022】
本発明を実施するために、異なるタイプの機械学習アルゴリズムを考えることができる:決定木フォレスト(文献では「ランダムフォレスト」)、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、k平均分割等。
【0023】
本発明によるデバイスは種々の利点を提供する。特に、病変の経皮焼灼に最適な処置の信頼性の高い予測を取得できるようにする。予測の信頼度は、トレーニング要素の数に伴って上がる。したがって、多数のトレーニング要素から機械学習アルゴリズムをトレーニングすることが好ましい。また、最適な処置を非常に迅速に識別できるようになる。くわえて、本発明によるデバイスは、必ずしも経皮焼灼の専門家である必要がない人々(例えば、この実施の訓練中であるインターン生又は医師)により使用することができる。したがって、提案される解決策により、誰でも経皮焼灼による処置を行えるようになる。
【0024】
特定の実施態様では、本デバイスは、以下の特徴の1つ又は複数を単独で又は技術的に可能な全ての組合せで更に含むことができる。
【0025】
特定の実施態様では、利用可能な各処置は、高周波、マイクロ波、レーザ、凍結、電気穿孔、又は小線源の中から選ばれる焼灼技術を特徴とする。
【0026】
特定の実施態様では、利用可能な各処置は、1つ又は複数のアプリケータによるエネルギー堆積戦略を特徴とし、上記戦略は、遠心型のエネルギー堆積及び求心収束型のエネルギー堆積の中から選ばれる。
【0027】
特定の実施態様では、利用可能な各処置は、アプリケータ数及び/又は腫瘍に対する上記アプリケータの位置を特徴とする。
【0028】
特定の実施態様では、各トレーニング要素について、信頼指数は、
-選ばれた処置を用いた場合に上記別の患者で再発が観測されたか又は観測されなかったか、及び/又は
-上記別の患者で再発が観測されていない状態での処置の終了と現在日との間で経過した期間の持続時間、及び/又は
-処置の終了と上記別の患者の再発との間で経過した期間の持続時間、及び/又は
-1人又は複数人の医療専門家による、上記別の患者に対して選ばれた処置の成功確率の推定
の関数として定義される。
【0029】
特定の実施態様では、方法は、パラメータのセットを患者の医療画像と関連付けることを含み、パラメータの上記セットは、病変、対象となる解剖学的構造、及び/又は患者の特徴に関連する1つ又は複数のパラメータを含む。各トレーニング要素は、病変、対象となる解剖学的構造、及び/又は上記参照要素に対応する医療画像が取得された別の患者の特徴に関連する同様のパラメータのセットを含む。
【0030】
特定の実施態様では、パラメータのセットは、
-医療画像が取得された患者の年齢、性別、体重、及び/又は身長、
-医療画像が取得された患者により呈される併存疾患、
-病変のサイズ及び/又は体積を表す値、
-病変と対象となる解剖学的構造の被膜との間の距離、
-病変と病変に近い血管との間の距離、
-対象となる解剖学的構造が肝臓である場合、病変と病変に近い肝管との間の距離
の中から選ばれる1つ又は複数のパラメータを含む。
【0031】
特定の実施態様では、方法は、患者の医療画像を変換することを含み、各トレーニング要素の医療画像は、機械学習アルゴリズムのトレーニングに使用される前、同様の変換を受ける。
【0032】
特定の実施態様では、医療画像を変換することは、
-医療画像における病変をセグメント化すること、及び/又は
-医療画像における対象となる解剖学的構造をセグメント化すること、及び/又は
-医療画像における血管をセグメント化すること、及び/又は
-対象となる解剖学的構造が肝臓である場合、医療画像における肝管をセグメント化すること
を含む。
【0033】
特定の実施態様では、医療画像を変換することは、寸法が予め決定される枠に従って、病変の周囲の画像をリフレーミングすることを含み、上記枠はトレーニング要素の医療画像の全てで共通し、枠に対する病変の位置は、医療画像毎に可変である。
【0034】
特定の実施態様では、方法は、
-選択された最適な処置に対応する各トレーニング要素について、処置される患者の医療画像とトレーニング要素の医療画像との間の類似性を表す類似値を計算することと、
-計算された類似値の関数として、トレーニング要素のセットの中から参照トレーニング要素を選択することと、
を含む。
【0035】
特定の実施態様では、医療画像は、断層像密度測定、磁気共鳴撮像、又は超音波により取得された。
【0036】
特定の実施態様では、医療画像は三次元である。
【0037】
特定の実施態様では、対象となる解剖学的構造は、肝臓、腎臓、又は肺であり、病変は腫瘍又は嚢胞である。
【0038】
特定の実施態様では、トレーニング要素のセットは、医療画像が対象となる解剖学的構造にいかなる病変も示さないトレーニング要素を含む。
【0039】
図の説明
本発明は、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むこと、及び
図1~4を参照することでよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】患者の対象となる解剖学的構造における病変の焼灼に最適な処置を選択する方法の主要ステップの概略表現である。
【
図2】患者の対象となる解剖学的構造における病変の焼灼に最適な処置を選択できるようにする電子デバイスの概略表現である。
【
図3】機械学習アルゴリズムのトレーニングに使用される参照要素のセットを収集するステップの概略表現である。
【
図4】参照トレーニング要素が選択される、最適な処置を提供する方法の特定の実施態様の概略表現である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
これらの図において、図にわたり同一の参照は同一又は類似の要素を示す。明確にするために、別記される場合を除き、表される要素は必ずしも同じ縮尺であるとは限らない。
【0042】
発明の実施形態の詳細な説明
図1は、患者の対象となる解剖学的構造における病変の焼灼に最適な処置を選択する方法100の主要ステップを概略的に表す。最適な処置は幾つかの利用可能な処置の中から選ばれる。場合によっては、幾つかの処置が、方法100により、それらの中のどれが最適であるかを判断することができずに、最適であると示される可能性があることに留意されたい。
【0043】
方法100は、コンピュータ、タブレット、携帯電話、及び他のそのような類いの電子デバイスにより実施される。
図2は、そのような電子デバイス30の例示的な一実施形態を概略的に示す。電子デバイス30は、少なくとも1つのプロセッサ32と、プログラムコード命令を記憶したコンピュータメモリ31とを備え、プログラムコード命令は、プロセッサ32により実行されると、本発明による処置を選択する方法100を実施するようにプロセッサ32を構成する。
【0044】
したがって、コンピュータメモリ31は、電子デバイス30により読み取ることができ、上記電子デバイス30により実行されると、電子デバイス30に処置を選択する方法100を実施させる命令を含む記憶媒体に対応する。
【0045】
本発明は、プログラムが電子デバイス30により実行されると、電子デバイス30に処置を選択する方法100を実施させる命令を含むコンピュータプログラムの形態をとることもできる。
【0046】
方法100は、病変13を患者の対象となる解剖学的構造14内で見ることができる医療画像12を取得するステップ101を含む。
【0047】
考慮される例では、医療画像12は、断層像密度測定(文献における「コンピュータ断層撮影スキャン」の「CTスキャン」)により取得された二次元医療画像である。しかしながら、医療画像が別の医療撮像モダリティ、例えば、MRI(「磁気共鳴撮像」)又は超音波により取得されることを妨げるものは何も存在しない。また、医療画像が三次元画像であることを妨げるものも何も存在しない。
【0048】
医療画像12は、例えば、電子デバイス30のコンピュータメモリ31に記憶され、プロセッサ32により処理される。医療画像12は、例えば、有線通信手段又は無線通信手段(これらの手段は
図2に表されていない)を介して電子デバイス30に送信される。別の例によれば、電子デバイス30は、医療画像12が記憶された外付けメモリ周辺機器、例えば、USB(「ユニバーサルシリアルバス」の頭字語)スティックに接続することができる。いずれの場合でも、電子デバイス30は、処置される患者の前に取得された医療画像12を取得するように構成される。
【0049】
考慮される例では、非限定的に、対象となる解剖学的構造は肝臓であり、病変はがん性腫瘍である。しかしながら、本発明は、対象となる別の解剖学的構造(例えば、肺、人造、骨構造等)及び/又は他のタイプの病変(例えば、嚢胞、動脈瘤、転移等)に適用することも可能である。
【0050】
少なくとも1つの最適な処置が選ばれる利用可能な処置は、例えば、そのような主要を処置するために医療施設で使用される異なる複数の処置に対応する。
【0051】
利用可能な処置は、特に、高周波、マイクロ波、レーザ、凍結、電気穿孔、又は小線源の中から選ばれる焼灼技術を特徴とすることができる。これらの種々の技術は、肝臓のがん性腫瘍を処置する分野の当業者には既知である。
【0052】
利用可能な処置は、1つ又は複数のアプリケータ(針、電極、プローブ等)によるエネルギー堆積戦略を更に特徴とすることができる。エネルギー堆積戦略は、特に、遠心型のエネルギー堆積及び求心収束のエネルギー堆積の中から選ぶことができる。
【0053】
長い間、好ましいエネルギー堆積戦略は、エネルギーが腫瘍の中心(アプリケータが挿入される場所)から腫瘍の周縁に等方的に送達される遠心カバレッジ方式に従っていた。場合によっては、異なる位置に挿入されたアプリケータの幾つかの連続した活性化により逐次又は異なる位置における幾つかのアプリケータの同時活性化により同時に重複焼灼を実行する必要があることが示されることがある。遠心型の堆積戦略は、特に簡便で証明されている技法であるという利点を提供する。しかしながら、幾つかの特定の状況(特に、腫瘍のサイズ若しくは堆積の関数として又は病変に近い解剖学的構造の関数として)では、遠心型の戦略が常に最適であるわけではない。その場合、本質が腫瘍の周縁から中心にエネルギー収束を行うことにある別のエネルギー堆積戦略(求心収束型戦略)が好ましいこともある。
【0054】
焼灼技術及びエネルギー堆積戦略に加えて、利用可能な処置は、使用されるアプリケータ数及び/又は腫瘍に対する上記アプリケータの位置を更に特徴とすることができる。
【0055】
アプリケータの位置は一般に、腫瘍に対して特定されるが、腫瘍の環境(即ち、腫瘍に近い解剖学的構造:骨、血管、危険に曝される臓器等)に対して特定することも可能である。
【0056】
方法100は、利用可能な異なる焼灼処置の各々について、患者の対象となる解剖学的構造14における病変13の焼灼での上記処置の成功確率を表す値を有する信頼指数を計算するステップ104を含む。利用可能な異なる処置の信頼指数は、事前にトレーニングされた機械学習アルゴリズム20により医療画像12から計算される。
【0057】
図1に示されるように、機械学習アルゴリズムは、トレーニングステップ206中、トレーニング要素21のセットからトレーニングされる。各トレーニング要素21は、例えば、利用可能な処置の1つに従って別の患者の対象となる解剖学的構造における病変を処置するために過去に実行された介入と関連付けられる。その場合、トレーニング要素21は、処置前の上記別の患者の対象となる解剖学的構造の医療画像と、上記別の患者に対して実行された処置の識別情報と、この処置の信頼指数とを含む。
【0058】
各トレーニング要素21について、信頼指数は、例えば、選ばれた処置を用いた上記別の患者で再発が観測されたか否かの関数として定義することができる(いかなる再発もない場合、処置の成功確率は比較的高く、逆に、再発があった場合、処置の成功確率は低い)。
【0059】
再発が観測されない状態で、処置の終了と現在日との間で経過した期間の持続時間が、処置の信頼指数の定義に使用される因子であることもできる(この期間が長いほど、処置の成功確率は高い)。
【0060】
再発があった場合、信頼指数を特定するために、処置の終了と再発との間で経過した期間の持続時間を考慮に入れることが可能である(この期間が短いほど、信頼指数は低い)。
【0061】
トレーニング要素を収集するステップ200及び機械学習アルゴリズムをトレーニングするステップ206が、最適な処置を選択する方法100に先立って実行される(したがって、最適な処置を選択する方法100の一部をなさない)ことに留意されたい。
【0062】
介入が実際に別の患者に対して実行されることなく、トレーニング要素21を取得してもよいことにも留意されたい。実際に、別の患者の対象となる解剖学的構造の医療画像で見ることができる病変の処置に考えられる処置の信頼指数は、医療専門家組織により理論的に特定することができる。
【0063】
利用可能な異なる処置の信頼指数が機械学習アルゴリズムにより計算されると、選択ステップ105中、利用可能な異なる処置から少なくとも1つの最適な処置を選択することが可能になる。例えば、最適な処置は、計算された信頼指数が最高である処置に対応する。先に示したように、場合によっては、例えば、利用可能な異なる処置が同じ値の信頼指数と関連付けられる場合、幾つかの最適な処置候補が存在することがある。
【0064】
トレーニング要素21のセットは、処置される病変を示す医療画像から、特定の処置の信頼指数を計算するように機械学習アルゴリズムをトレーニングするために使用されるデータベースに対応する。このデータベースは、患者の対象となる解剖学的構造における病変を示す新しい医療画像が利用可能になる都度及びこの病変の特定の処置の信頼指数が特定される都度、時間の経過に伴って充実させることができる。
【0065】
トレーニング要素21の形成に使用される可能性が高い事例に対して選択の適用を考えることが可能である。特に、トレーニング要素21が実際に行われた介入に基づいて構築される場合、腫瘍を全体的にカバーするのに焼灼マージンが十分であった介入のみを考慮することが有利である。実際に、焼灼マージンが十分でなかったであろう介入の場合、再発が主に不十分な焼灼マージンに起因した可能性があるのに反して、腫瘍再発の原因が選ばれた処置タイプによるものと見なされる恐れがある。焼灼マージンは、例えば、病変の周縁と焼灼領域の周縁との間の最小距離として定義される。一般に、焼灼領域が病変を全体的にカバーし、焼灼マージンが閾値、例えば5ミリメートルに少なくとも等しいことが適切である。
【0066】
図3は、機械学習アルゴリズムのトレーニングに使用されるトレーニング要素の収集200を概略的に表す。
【0067】
トレーニング要素21を得るために、最初のステップは、病変23が別の患者の対象となる解剖学的構造24内で見ることができる医療画像22を収集すること(ステップ201)であるべきである。
【0068】
例えば、利用可能な異なる処置の中からの特定の処置を用いて病変23を焼灼するために過去に介入が行われた別の患者であることができる。好ましくは、この介入は同じ医療施設内で行われたものであるが、別の施設で行われたものであってもよい。しかしながら、介入のために適用された処置は、利用可能な処置の1つに対応すべきである。しかしながら、先に示したように、病変の処置を目的とした介入が実際に行われることは重要ではない。
【0069】
次に、病変23を処置するために、利用可能な異なる処置の中から特定の処置が識別されるべきである(ステップ204)。介入が行われた場合、それは病変23の焼灼に選ばれた処置である(この選択は、特に、本発明による選択方法を使用して行うことが可能であったか又は1人若しくは複数人の医療専門家による医療画像22の研究から行うことが可能であった)。医療画像22に基づいて1人又は複数人の医療専門家により最も適切であると推定された処置であることも可能である。
【0070】
最後に、選ばれた処置の信頼指数が特定されるべきである(ステップ205)。この信頼指数は、上述した異なる方法に従って特定することができる。介入が行われた場合、信頼指数は、特に、処置後に再発が観測されたか否かの関数、再発が観測されない状態での処置の終了と現在日との間で経過した期間の持続時間の関数、又は処置の終了と再発との間で経過した期間の持続時間の関数等として定義することができる。信頼指数は、医療画像に基づいて1人又は複数人の医療専門家により推定されてもよい(特に、病変23に対していかなる介入もまだ行われていない場合、又は介入後再発の発生の有無についての情報を取得することが可能ではない場合)。
【0071】
機械学習アルゴリズム20は、病変、対象となる解剖学的構造、又は患者に関連するパラメータ(メタデータ)のセットに基づいてもよい。それにより、機械学習アルゴリズム20により行われた予測の正確性を補強することが可能になる。
【0072】
パラメータは、例えば、ユーザにより手動で特定される。これに代えて又は加えて、パラメータは、医療画像で自動的に特定することができる(例えば、画像セグメント化又は人工知能に基づく処理アルゴリズムを介して)。
【0073】
これらのパラメータは特に、患者の物理的又は医学的特徴に対応することができる:患者の年齢、性別、体重、及び/又は身長、又は患者が有する特定の併存疾患の識別情報(心不全、免疫不全、アルコール依存症等)。パラメータは、病変のサイズ若しくは堆積を表す値、病変と対象となる解剖学的構造の被膜との間の距離、又は病変と病変に近い特定の解剖学的構造(血管、肝管等)との間の距離に対応してもよい。これらの全ての特徴は実際に、特定の処置と関連付けられた有効性又はリスクに対して影響を及ぼし得る(特定の処置は、大きなサイズの病変には示されず、病変付近の血管の存在は熱的処置の有効性に影響を及ぼし、処置によっては、脆弱な患者にとってはリスクが高すぎる等)。
【0074】
好ましくは、トレーニング要素21の作成に使用される同じパラメータが、最適な処置を選択する方法100の間にも使用される。このために、
図1及び
図3に示されるように、トレーニング要素21を収集するステップ200は、各トレーニング要素21について、パラメータのセットを上記トレーニング要素21に対応する医療画像22と関連付けるステップ202を含む。方法100は、処置される患者の医療画像12と同様のパラメータのセットを関連付けるステップ102も含む。トレーニング要素21のセットの医療画像22とそれぞれ関連付けられるパラメータのセット及び処置される患者の医療画像12と関連付けられたパラメータのセットは全て、互いと同様である。これは、パラメータのセットが全て同じタイプのパラメータを含む(しかしながら、パラメータの値は一般にパラメータのセット毎に異なる)ことを意味する。
【0075】
図3に示されるように、トレーニング要素21を収集することは、上記トレーニング要素21に対応する医療画像22を変換するステップ203を含むこともできる。この変換203は、例えば、医療画像22における病変23のセグメント化25に対応することができる。他の例によれば、変換203は、対象となる解剖学的構造24及び/又は医療画像22における特定の解剖学的構造(血管、肝管等)のセグメント化に対応することもできる。
図3に示される例では、取得された変換された画像22’は、病変のセグメント化25を含む。
図1に示されるように、最適な処置を選択する方法100は、処置される患者の医療画像12を変換する同様のステップ103を含む。
図1に示される例では、取得された変換された画像12’は、病変13のセグメント化15を含む。
【0076】
特定の実施態様では、医療画像12、22の変換103、203は、寸法が予め決定される、例えば128×128ピクセルの枠に従って病変13、23の周囲の画像12、22をリフレーミングすることを含む。枠の寸法は、トレーニング要素21の全ての医療画像22で同じである。しかしながら、有利なことには、枠に対する病変23の位置は医療画像22毎に異なる。そのような準備により、機械学習アルゴリズム20の予測誤差を低減することが可能である(実際に、必ずしも常に該当するとは限らない、処置される病変が主に医療画像の中央にあることをアルゴリズムに学習させるのを回避することは重要である)。
【0077】
パラメータのセットを関連付けるステップ102、202及び医療画像12、22を変換するステップ103、203は任意選択的である(
図1及び
図3において点線で表されている理由である)。機械学習アルゴリズム20は実際には、医療画像12、22に含まれる情報に専ら基づくことができる。しかしながら、パラメータのセットを関連付けるステップ102、202及び/又は医療画像12、22を変換するステップ103、203は、追加情報を機械学習アルゴリズム20に与えられるようにし、ひいては予測の正確性を強化する。
【0078】
本発明による選択方法100の実施に異なるタイプの機械学習アルゴリズムを考えることができる。機械学習アルゴリズムは、処置される患者で取得された医療画像12において見ることができる病変13を焼灼するのに利用可能な各処置の信頼指数を予測しなければならない。
【0079】
Ω={(Xi,Ti,Ii)|i=1:N)をトレーニング要素21のセットとし、式中
・Xi=[xi1,xi2,・・・,xij,・・・,xiK]は、インデックスiのトレーニング要素と関連付けられた医療画像22から抽出されたK個の特徴に対応するK次元を有する空間の点であり(これらのパラメータは場合によっては、変換された医療画像22’から及び/又はインデックスiのトレーニング要素と関連付けられたパラメータのセットから抽出されてもよい)、
・Tiは、利用可能な異なる処置の中からの特定の処置であり、
・Iiは、インデックスiのトレーニング要素と関連付けられた医療画像22で見ることができる病変の焼灼に対する処置Tiの成功確率を表す信頼指数であり、
・Nは、考慮されるトレーニング要素のセット内の要素数である。
【0080】
信頼指数Iiは、例えば、10点満点でのスコアに対応する(例えば、指数Iiは0~10の整数値をとる)。別の例によれば、信頼指数Iiは、処置Tiの成功確率を表す0~1の正規化された値に対応することができる。
【0081】
Nの値が十分に大きい(例えば、少なくとも1000に等しい、更には少なくとも5000に等しい)場合、利用可能な各処置Tについて、処置される患者の医療画像(及び場合によっては患者自身)にリンクされた特徴のセットXから値Iを計算するように機械学習アルゴリズムをトレーニングすることが可能である。
【0082】
このために、「ニューラルネットワーク」型の機械学習アルゴリズムを使用することができる。少なくとも2つの異なる方法を考えることができる。第1の方法の本質は、異なるニューロンを異なる点Xiに適用して、特定の処置Tiの値Iiを予測することにある。この場合、特徴xijは手で定義される(又は「ハンドクラフト」される)。しかしながら、ドメインについての深い知識が必要とされる。別の方法の本質は、ニューラルネットワークへの特徴の選択を委任することにある。この2番目の方法では、ニューラルネットワークの入力は、処置される病変13を見ることができる医療画像12であり、特徴は、トレーニングプロセス中、定義されたニューラルネットワークの畳み込みフィルタにより抽出される。しかしながら、医療画像12の一部をなさない追加の特徴(メタデータ)の使用はなお可能である。これらの追加の特徴は、特に、ニューラルネットワークの最後の層において導入することができる。
【0083】
「ランダムフォレスト」型の機械学習アルゴリズムを使用することもできる。分類木が、機械学習の技術分野で最も人気のあるアルゴリズムの一部をなし、最も強力な方法の基礎である。例えば、木構造において、ノードは、特定のルールに従って分類誤差を最小化する変数xijを選択し、リーフは特定の処置Tiの信頼指数Iiを表す。トレーニング要素のセットを使用して、変数xij及び各ノードで使用される特定のルールを定義する。例えば、木の最初のノードは、病変の体積及び「4cm3未満の腫瘍体積」ルールに対応することができる。体積が4cm3未満の場合、第2のノードは、例えば、病変のタイプ(肝細胞がん、転移等)に対応することができる。木のノードの経路(ルールセットの検証に対応する)は、処置Tiの信頼指数Iiの予測値に到達できるようにする。トレーニング要素21のセットΩに基づいてランダムサンプリングプロセスにより、利用可能な異なる処置に複数の分類木を作成することができる。Xの新しい値について、各木はIの値を与え、ついで単純な多数決により最終予測を行うことができる。各木は一般に、その他の木から独立して構築され、最終決定において同じ重みを有する。
【0084】
別の例によれば、「AdaBoost」型の機械学習アルゴリズムを使用することができる(用語「適応ブースト」の略)。AdaBoost法の従来の実施の本質は、続く低分類器が、先行する分類器により不良に分類されたサンプルにより大きな重みを与えるように調整される(典型的には、単一ノードを有する分類木の)低分類器の組合せにことにある。ランダムフォレストと異なり、AdaBoost法では、低分類器はその他の分類器から独立せず、最終分類において同じ重みも持たない。ここで対処される問題において、最初の低分類器は、例えば、病変の体積に対応する単一ノードで構成され、次の分類器は、例えば、病変のタイプに対応する単一ノードを有し、最初の分類器の分類誤差を補正するように作成される。
【0085】
別の例によれば、「サポートベクターマシン」型の機械学習アルゴリズムを使用することができる。この技法は、例えば、二進的に、第1の信頼指数I(例えば、特定の閾値よりも大きい成功確率に対応する)を有する特定の処置により処置される患者に対応する点Xを、同じ処置で処置されたが、異なる信頼指数I’(例えば、上記閾値未満の成功確率に対応する)を有する患者に対応する点X’から分離できるようにする。そのために、カーネル関数は異なる点に適用されて、より高次元の空間における超平面により分離できるようにする。したがって、この技法は特定の処置の信頼指数(所定の閾値に関する成功確率を知らせる)を予測できるようにする(サポートベクターマシンは二進分類器である)。より細かい粒度の信頼指数及び幾つかの処置候補を管理できるようにするために、問題は幾つかの二進問題に細分することができる(「1対1及び1対残り」と呼ばれる手法)。
【0086】
更に別の例によれば、「k平均」型の機械学習アルゴリズムを使用することができる。これは、グループの点Xと関連する平均
【数1】
との間の距離の和Sを最小化する平均
【数2】
(pは例えば1~Mで変化し、Mはグループ数である)により表される異なるグループ(「クラスタ」)にトレーニングデータX
iを一緒にグループ化する教師なし学習法である:
[数1]
【数3】
【0087】
ここで考慮される事例では、所与の処置について、Mは例えば、信頼指数がとることが可能な値の数に対応する(例えば、信頼指数が0~10で変化する整数値に対応する場合、M=11である)。アルゴリズムがトレーニングされると、Xで表される新しい患者の信頼指数が、Xに最も近い平均
【数4】
を探すことにより特定される。
【0088】
分類アルゴリズム及び回帰アルゴリズムの両方という他のタイプの機械学習アルゴリズムを考えることも可能である。特定のタイプの機械学習アルゴリズムの選択は、本発明の変形形態にすぎない。
【0089】
処置を実行する施術者にとって、特に、選択された最適な処置と同じ処置で以前に処置された同様の事例に対応する参照医療画像を取得することが有利であり得る。このために、
図4に示される特定の実施態様では、方法100は、選択された最適な処置に対応する各トレーニング要素21の類似値を計算するステップ106を含む。類似値は、処置される患者の医療画像12と、考慮されるトレーニング要素21の医療画像22との間の類似性を表す。次いで、方法100は、計算された類似値の関数として、トレーニング要素21のセットの中から参照トレーニング要素を選択するステップ107を含む。例えば、参照要素は、最高の類似値を有するトレーニング要素21に対応する。次いで、この参照要素と関連付けられた医療画像22は施術者により使用されて、処置される患者の臨床事例を参照要素に対応する臨床事例と比較することができる。高い類似値は、参照要素の医療画像で見ることができる病変が、処置される患者の医療画像で見ることができる病変と同様であることを示す。それにより、選択された最適な処置の妥当性について施術者に安心を与えられるようにすることができる。施術者は、参照要素に対応する事例の病変を処置するために行われた介入候補の進行又は結果についての情報をとることもできる。
【0090】
病変を焼灼するために患者に対して介入を行うことのベネフィット/リスク比率が十分ではないことがあり得る(焼灼の有益な治療効果が、その実施にリンクされるリスクよりも低い場合)。そのような場合、病変を焼灼しないことが好ましい。したがって、病変を焼灼しないという選択肢が治療候補の一部をなすと考えることが可能である。換言すれば、方法100により選択される最適な処置は、病変を処置しないことであることができる。例えば、患者の医療画像12において施術者により病変として識別された要素が実際には病変ではない場合又は良性病変である場合もある。
【0091】
これらの理由により、対象となる解剖学的構造において病変が見られない医療画像22を用いて機械学習アルゴリズム20をトレーニングすることが有利であり得る。したがって、特定の実施態様では、機械学習アルゴリズム20のトレーニングに使用されたトレーニング要素21の幾つかと関連付けられた医療画像22は、対象となる解剖学的構造において見ることができるいかなる病変も示さない。
【0092】
上記説明は、その種々の特徴及び利点を通して、本発明が設定された目的を達成することを明らかに示す。特に、本発明は、患者の対象となる解剖学的構造における病変の経皮焼灼に最適な処置の信頼性の高く迅速な予測を取得することを可能にする。更に、本発明は、必ずしも経皮焼灼の専門家であるとは限らない人々により使用することができ、したがって、提案された解決策により、誰でも経皮焼灼による処置を行えるようになる。
【国際調査報告】