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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】方法及び触媒物品
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20241029BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20241029BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B01J35/57 N ZAB
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J37/04 102
B01J29/76 A
B01D53/94 222
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509020
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022079366
(87)【国際公開番号】W WO2023067134
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21204187.5
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-オロスコ、ソフィア
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC04
4D148BA03X
4D148BA11X
4D148BA35X
4D148BA36X
4D148BA41X
4D148BB02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BA14B
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EA19
4G169EB12Y
4G169EB18Y
4G169EC30
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA02A
4G169ZA07A
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09A
4G169ZF09B
(57)【要約】
本開示は、(a)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、硫酸鉄と、無機マトリックス成分と、有機助剤と、水性溶媒と、任意選択的に無機繊維と、を一緒に混合することによって、50重量%を超える固形分を有する可塑性混合物を形成することと、(b)可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、(c)成形物品を焼成して、固体触媒体を形成することと、を含む、触媒物品を形成するための方法に関する。本開示は、触媒物品、排気システム、及び排気ガスを処理する方法に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を形成するための方法であって、
(a)少なくとも以下の成分:
(i)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、
(ii)硫酸鉄と、
(iii)無機マトリックス成分と、
(iv)有機助剤と、
(v)水性溶媒と、を一緒に混合することによって、可塑性混合物を形成することであって、
前記混合物は、50重量%を超える固形分を有する、ことと、
(b)前記可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、
(c)前記成形物品を焼成して、固体触媒体を形成することと、を含み、
工程(a)が、10~35℃の範囲の温度で実施される、方法。
【請求項2】
工程(a)において、一緒に混合される前記成分が、(vi)無機繊維を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で使用される前記成分の相対的な量的割合は、工程(c)で形成された前記固体触媒体が、60~85重量%の鉄担持モレキュラーシーブ、20~40重量%のマトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含有するように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶性小細孔モレキュラーシーブが、ゼオライトであり、工程(a)で用いられた前記モレキュラーシーブ及び硫酸鉄の相対量が、0.03~0.6の範囲、0.05~0.5の範囲、0.1~0.4の範囲、又は0.1~0.2の範囲のアルミニウムに対する鉄の比を有する鉄担持ゼオライトを含む固体触媒体を提供するように選択され得る、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶性小細孔モレキュラーシーブが、CHA、AEI又はAFX、LTA又はERIから選択される骨格型を有する小細孔ゼオライトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性溶媒が、水である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で形成された前記可塑性混合物が、少なくとも60重量%、好ましくは、60~80重量%の範囲、より好ましくは、70~80重量%の範囲の固形分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機マトリックス成分が、アルミナ前駆体及び/又は粘土を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記硫酸鉄が、結晶性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)が、10~30℃の範囲、又は18~28℃の範囲の温度で実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)が、10~35℃の範囲、10~30℃の範囲、又は18~28℃の範囲の温度で実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)で形成された前記可塑性混合物が、いかなる追加の処理工程を伴うことなく、工程b)で直接用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の焼成前に、前記可塑性混合物の温度が、35℃を超えない、好ましくは30℃を超えない、より好ましくは28℃を超えない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に規定された方法により取得されるか、又は取得可能な、触媒物品。
【請求項15】
固体触媒体を含む触媒物品であって、前記固体触媒体が、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含み、100~700℃の範囲の温度でゼロ又は正である熱膨張係数(CTE)を有する、触媒物品。
【請求項16】
前記固体触媒体が、100℃~700℃の範囲の温度で、0~5×10-6/Kの範囲のCTEを有する、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記固体触媒体が、
a.60~85重量%の鉄担持小細孔モレキュラーシーブと、
b.20~40重量%のマトリックス成分と、
c.0~10重量%の無機繊維と、を含む、請求項15又は16に記載の触媒物品。
【請求項18】
排気システムであって、窒素系還元剤源と、窒素系還元剤を、流動する排気ガス中に注入するための注入器と、を備え、前記注入器が、請求項14~17のいずれか一項に記載の触媒物品から上流に配設されている、排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含む触媒物品を形成するための方法に関する。具体的には、本発明は、排気ガスにおける窒素酸化物(nitrogen oxide、NO)の選択的触媒還元での使用に好適な押出成形触媒物品を形成するための方法に関する。本開示は、触媒物品、排気システム、及び排気ガスを処理する方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式及び固定式の源からの排出物を処理するために使用される多数の触媒コンバータが、毎年、製造されている。自動車における使用のための触媒コンバータは、典型的には、排気ガスの貫流のためのチャネルが設けられている、押出成形セラミックハニカムモノリスを備える。モノリスのチャネルは、(「ウォッシュコート」として既知である)触媒活性材によってコーティングされ得る。代替的に、押出成形モノリス自体が(「全活性押出成形物」又は「押出成形触媒」と称される)触媒活性材で形成される。
【0003】
全活性押出成形物を生成するために、触媒活性成分が、押出成形プロセスに好適であるように流動学的特性が設定された押出組成物に含まれる。この押出組成物は、可塑性(つまり、容易に成形又はモールド可能)、粘性の高い組成物である。押出組成物に所望の流動学的特性を持たせ、押出成形物にも機械的特性を持たせるには、典型的に、接合剤又は添加剤を押出組成物に添加する。次いで、この可塑性組成物は、例えば、ハニカム体を調製するための押出成形プロセスに供される。こうして得た、いわゆる「グリーン」体を、続いて高温焼成処理して、最終的な押出成形触媒体を形成する。
【0004】
全活性押出成形物は、一般的に、成形物の第1の端部から第2の端部まで延びる、均一なサイズの、かつ平行なチャネルを有するハニカムの形態の一体構造を含む。一般的に、チャネルは、第1の端部及び第2の端部の両端において開放されている、いわゆる、「フロースルー型」構造である。代替的に、第1の上流端におけるチャネルは、好適なセラミックセメントで塞ぐことができ、第1の上流端において塞がれていないチャネルもまた、第2の下流端において塞がれて、いわゆるウォールフロー型フィルタを形成することができる。
【0005】
アンモニアによる窒素酸化物(NO)の選択的触媒還元(NH-SCR)は、自動車、トラック、機関車、及び船舶などの車両のための、固定源及び移動エンジン、原則的にはディーゼルエンジンから放出された排気ガスからのNOの軽減のための最も実用的かつ効率的な技法であると考えられる。
【0006】
既知のSCR(選択的接触還元(selective catalytic reduction))触媒としては、バナジウム系触媒及びモレキュラーシーブが挙げられる。有用なモレキュラーシーブとしては、例えば、アルミノシリカート(ゼオライト)又はシリコアルミノホスファート(silicoaluminophosphate、SAPO)であり得る結晶性又は準結晶性材料が挙げられる。このようなモレキュラーシーブは、規則的な結晶内空洞及び分子寸法のチャネルを有する骨格を形成するために、例えば、環に連結された、繰り返しSiO、AlO、及び任意選択的にPO四面体単位で構築されている。四面体単位(環員)の特定の配置は、モレキュラーシーブの骨格を生じさせるものであり、慣例によって、各独特の骨格には、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association、IZA)によって独特の3文字コード(例えば、「CHA」)が割り当てられている。既知のSCR触媒であるモレキュラーシーブの骨格の例としては、骨格型コードCHA(チャバザイト(chabazite))、BEA(ベータ(beta))、MOR(モルデナイト(mordenite))、AEI、MFI、及びLTAが挙げられる。
【0007】
モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)はまた、細孔径、例えばモレキュラーシーブの骨格中に存在する四面体原子の最大数によって分類することができる。本明細書に定義されるように、CHAなどの「小細孔」モレキュラーシーブは、8個の四面体原子の最大環サイズを含有し、一方、中細孔モレキュラーシーブ、例えばMFIは、10個の四面体原子の最大環サイズを含有し、BEAなどの大細孔モレキュラーシーブは、12個の四面体原子の最大環サイズを含有する。小細孔及び中細孔モレキュラーシーブ、特に、小細孔モレキュラーシーブは、例えば、改善されたSCR性能及び/又は改善された炭化水素耐性を提供し得るため、SCR触媒における使用に好ましい。
【0008】
モレキュラーシーブ触媒は、金属促進化され得る。金属促進化モレキュラーシーブ触媒の例としては、鉄、銅、及びパラジウム促進化モレキュラーシーブが挙げられ、金属は、モレキュラーシーブ内に担持され得る。金属担持モレキュラーシーブにおいて、担持された金属は、「骨格外金属」の種類、すなわち、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部に存在する金属であり、モレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まない。
【0009】
特定の鉄及び銅担持小細孔及び中細孔ゼオライトは、アンモニアによる一酸化窒素及び/又は二酸化窒素の選択的触媒還元(NH-SCR)において高い触媒活性を実証することが知られており、鋭意検討されている。比較的良好な低温(200~450℃)NH-SCR触媒活性は、Cu-SSZ-13(CHA)ゼオライトから得ることができることが知られている(例えば、国際公開第2008/132452(A2)号を参照されたい)。しかしながら、一般に、Fe担持ゼオライトは、Cu含有ゼオライトよりも良好な高温度触媒活性を示し、そのため、Fe担持ゼオライトは、NH-SCR用途に特に注目されている。更に、Cu含有ゼオライトの使用は、より高い反応温度でNOの形成をもたらし得る。
【0010】
Fe担持ゼオライトを調製するためのいくつかの方法が文献に言及されている。鉄担持ゼオライトの直接合成は、複雑なプロセスであり、合成条件に依存する(M.Moliner,ISRN Materials Science,2012,Article ID 789525を参照されたい)。代替案は、市販のゼオライト担体を使用し、続いて、湿式含浸、湿式イオン交換、又は固体イオン交換のいずれかによって、ゼオライトの合成後処理によって鉄を添加することである。
【0011】
モレキュラーシーブに鉄を添加するための、既知の湿式イオン交換方法では、典型的には、酢酸鉄等の鉄塩を、活性金属前駆体として用い、活性金属前駆体は、水溶液中のモレキュラーシーブと反応する。イオン交換を加速させるために、かかるプロセスは、典型的には、加熱工程を必要とし、70~80℃の範囲の温度に、最長数時間にわたって、混合物が加熱され得る。更に、得られる金属担持モレキュラーシーブが、全活性押出成形物を形成するための、押出成形用ペーストに用いられ得る前に、追加の処理工程(例えば、フィルタリング、蒸発、噴霧乾燥、焼成等)が必要とされ得る。
【0012】
また更に、合成後処理による、Fe担持ゼオライトの調製に関連する問題は、鉄種の凝集であり、これは、ゼオライトにおける鉄種の不均質な分布をもたらす(例えば、L.Kustov et al.,Topics in Catalysis,238(2006)pp.250-259を参照されたい)。
【0013】
国際公開第2020/148186号は、(i)メソ多孔性を導入するためのゼオライト微結晶の処理、(ii)湿式含浸又は湿式イオン交換を介する(i)の生成物への金属の導入、及び(iii)(ii)の生成物に対する水熱結晶化の実施を必要とする鉄担持ゼオライトの形成方法について記載している。
【0014】
本発明は、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを触媒活性材として用いる、押出成形触媒物品の調製のための改善されたプロセスを提供する。
【0015】
本開示の第1の態様によると、触媒物品を形成するための方法が提供され、方法は、
(a)少なくとも以下の成分:
(i)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、
(ii)硫酸鉄と、
(iii)無機マトリックス成分と、
(iv)有機助剤と、
(v)水性溶媒と、を一緒に混合することによって、可塑性混合物を形成することであって、
混合物は、(混合物の総重量に基づいて)50重量%を超える固形分を有する、ことと、
(b)可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、
(c)成形物品を焼成して、固体触媒体を生成することと、を含み、
工程(a)は、10~35℃の範囲の温度で実施される。
【0016】
有利な点として、成形物品を焼成するために用いられた熱は、モレキュラーシーブへの鉄担持量を促進させるために用いられ得ることが見出されている。これにより、湿式イオン交換又は含浸プロセス中における、いかなる加熱工程に対する要件、及び高価な高温耐熱機器に対する要件も回避され得る。更に、湿式イオン交換又は含浸プロセスにおいて典型的な長い反応期間並びに/又は噴霧乾燥等のエネルギー及び手間のかかるプロセスが回避され得る。これにより、第1の態様による方法は、より効率的かつ経済的であり得る。
【0017】
また更に、第1の態様による方法の工程(a)において調製された混合物は、いかなる更なる処理工程も必要とすることなく、押出成形用ペーストとして直接用いられ得ることが見出されている。特に、第1の態様の方法は、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含む押出成形触媒を製造する際に、消費される水の総量を低減させ得、これは、従来、プレ担持小細孔モレキュラーシーブの粉状形態が用いられ、粉状形態が、湿式プロセス、それに続く乾燥及び/又は焼成を介して調製されたからである。
【0018】
有利な点として、第1の態様に従って調製された触媒は、銅塩を使用して同様の様式で調製された触媒に匹敵するNOx転化率を提供し得、バナジウム系SCR触媒と比較して改善されたNOx転化率を提供し得、両方の場合において、高温で有意に改善されたNO選択率を提供し得ることが見出されている。更に、驚くべきことに、第1の態様に従って調製された触媒は、改善された熱膨張特性を有し得ることが見出されている。
【0019】
本開示の第2の態様によると、第1の態様の方法によって取得されるか、又は取得可能な触媒物品が提供される。
【0020】
本開示の第3の態様によると、押出成形固体触媒体を含む触媒物品が提供され、固体触媒体は、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含み、100℃~700℃の範囲の温度で0以上である熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)を有する。好ましくは、触媒物品は、100℃~700℃の範囲の温度で、0~5×10-6/K、例えば0.5×10-6/K~4×10-6/Kの範囲のCTEを有する。
【0021】
本開示の第4の態様によると、排気システムが提供され、排気システムは、窒素系還元剤源と、窒素系還元剤を、流動する排気ガス中に注入するための注入器と、を備え、注入器は、第2又は第3の態様による触媒物品よりも上流に配設されている。
【0022】
本開示の第5の態様によると、排気ガスを処理する方法が提供され、方法は、排気ガスを第2又は第3の態様による触媒と接触させることを含む。好ましくは、排気ガスは、300~600℃、より好ましくは350~550℃、例えば400~500℃の範囲の温度を有する。排気ガスは、固定源由来であり得る。
【0023】
第6の態様によると、窒素系還元剤を使用して排気ガス中の窒素酸化物を選択的に二窒素に還元するための、第2又は第3の態様による触媒物品の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の第1の態様に従って調製された触媒によって達成されたNO転化率を、(i)硫酸鉄の代わりに銅塩を使用して調製された触媒、(ii)代替鉄塩を使用して調製された触媒、(iii)予め交換された鉄担持ゼオライトを使用して調製された触媒、及び(iv)バナジウム系SCR触媒、と比較して示すグラフである。
図2】本開示の第1の態様に従って調製された触媒によって達成されたNO選択活性を、(i)硫酸鉄の代わりに銅塩を使用して調製された触媒、(ii)代替鉄塩を使用して調製された触媒、(iii)予め交換された鉄担持ゼオライトを使用して調製された触媒、及び(iv)バナジウム系SCR触媒、と比較して示すグラフである。
図3】本開示による触媒物品のCTEを示すグラフである。
図4】本開示の第1の態様に従って調製された触媒によって達成されたNO転化率を示すグラフである。
図5】本開示の第1の態様に従って調製された触媒によって達成されたNO選択活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これから、本開示を更に説明することになる。以下の節において、本開示の異なる態様/実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0026】
更に、本明細書において使用される際、用語「含む(comprising)」は、定義「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」と交換することができる。「含む(comprising)」という用語は、指定された要素が必須であることを意味することを意図するものであるが、他の要素が追加され得、かつ依然として、請求項の範囲内に構成を形成し得る。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、指定された材料又は工程、並びに、特許請求される発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しないものに請求項の範囲を限定する。「からなる(consisting of)」という用語は、通常それに関連する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めることに対して請求項を閉鎖する。
【0027】
結晶性モレキュラーシーブは、典型的には、アルミニウム、ケイ素、及び/又はリンから構成される。結晶性モレキュラーシーブは、概して、酸素原子の共有によって結合される、SiO、AlO、及び任意選択的にPO四面体単位を繰り返して、三次元配列(例えば、骨格)を有する。小細孔モレキュラーシーブは、最大で8個の四面体原子の環サイズを有する。
【0028】
モレキュラーシーブに関連して、「H形態」という用語は、骨格の電荷が陽子(つまり、Hカチオン)によって平衡を保たれる、アニオン性骨格を有するモレキュラーシーブを指す。
【0029】
モレキュラーシーブに関連して、用語「NH 形態」は、骨格の電荷がアンモニウムカチオン(NH カチオン)によって平衡を保たれる、アニオン性骨格を有するモレキュラーシーブを指す。
【0030】
結晶性小細孔モレキュラーシーブがアルミノシリカート骨格を有する場合、モレキュラーシーブは、好ましくはゼオライトである。
【0031】
小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から選択される骨格型を有し得る。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、KFI、LEV、LTA、SFW、及びRHOからなる骨格型の群から選択される骨格型を有する。より好ましくは、小細孔結晶性モレキュラーシーブは、AEI、AFX、CHA、LTA、ERI、又はAEI-CHA連晶である骨格型を有する。最も好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA骨格型を有する。
【0032】
結晶性モレキュラーシーブがゼオライトの場合、ゼオライトのシリカ-アルミナ比(silica-to-alumina ratio、SAR)は、5~200、好ましくは、5~100、より好ましくは、10~80であり得る。例えば、ゼオライトは、5~30又は10~30のシリカ-アルミナ比(SAR)を有し得る。
【0033】
結晶性小細孔モレキュラーシーブは、好ましくは、粉状結晶性モレキュラーシーブ(すなわち、粒子形態)であり、粒子は、個々の結晶、結晶の凝集体、又は両方の組み合わせを含む。結晶性モレキュラーシーブは、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)によって測定される際、0.5以上、好ましくは、約0.5~約15μm、例えば、約0.5~10μm、約0.5~約5μm、約1~約5μm、又は、約2~約5μmの平均結晶サイズを有し得る。
【0034】
粉状結晶性モレキュラーシーブは、好ましくは、約30μm未満のD90粒径を有する。粉状結晶性モレキュラーシーブは、好ましくは、約50μm未満のD99粒径を有する。本明細書において使用される際、用語「D90粒径」及び「D99粒径」は、粒径分布を指す。D90粒径の値は、特定の試料状態中の総粒子の90体積%が存在する、以下の粒径値に対応する。D99粒径の値は、特定の試料状態中の総粒子の99体積%が存在する、以下の粒径値に対応する。D90粒径及びD99粒径は、レーザ回折法を使用して(例えば、Malvern Mastersizer 2000を使用して)、求めることができる。
【0035】
所望に応じて、第1の態様の方法の工程a)で可塑性混合物を形成する前に、モレキュラーシーブは、ジェット粉砕、湿式粉砕、又は蒸気アシストジェット粉砕等の粒径削減処理を受け得る。
【0036】
第1の態様の工程(a)で一緒に混合される成分は、H又はNH 形態の2つ以上の結晶性小細孔モレキュラーシーブを含み得る。これにより、工程(c)で形成され、得られる固体触媒体は、2つ以上の異なる種類の鉄担持モレキュラーシーブを含み得る。
【0037】
硫酸鉄は、硫酸鉄(II)又は硫酸鉄(III)であり得る。
【0038】
硫酸鉄は、結晶性形態で可塑性混合物を形成する他の成分と組み合わされ得る。
【0039】
工程(a)で用いられたモレキュラーシーブ及び硫酸鉄の相対量は、モレキュラーシーブの目標鉄担持量に依存するであろう。工程(c)で生成される固体内に存在する鉄担持モレキュラーシーブは、(鉄担持モレキュラーシーブの総重量に基づいて)0.1重量%以上~10.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以上~7.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上~5.0重量%以下の鉄担持量を有し得る。
【0040】
特に、結晶性小細孔モレキュラーシーブは、ゼオライトであり、工程(a)で用いられたモレキュラーシーブ及び硫酸鉄の相対量は、0.03~0.6の範囲、好ましくは0.05~0.5の範囲、例えば0.1~0.4、より好ましくは0.1~0.2の範囲のアルミニウムに対する鉄の比を有する鉄担持ゼオライトを含む固体触媒体を提供するように選択され得る。
【0041】
本明細書で使用される際、用語「水性溶媒」は、水を含有する溶媒を指す。好ましくは、水性溶媒は、本質的に水からなる。すなわち、水性溶媒は、水を含有するが、微量の非水性(例えば、有機又は無機)不純物も含有し得る。水は、脱イオン水又は脱塩水であり得る。
【0042】
工程(a)で形成された可塑性混合物は、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%の固形分を有する。「固形分」は、混合物の総重量に基づいて、可塑性混合物内に存在する固形材料の割合を意味する。特に、可塑性混合物は、ペーストの形態をとり得る。混合物の固形分は、好ましくは、60~80重量%の範囲、より好ましくは、70~80重量%の範囲である。例えば、混合物の固形分は、約75重量%であり得る。
【0043】
無機マトリックス成分は、最終的な固体触媒体に構造的一体性及び/又は多孔性を提供する不活性充填剤(永久接合剤とも称される)を含み得る。焼成の過程において、無機マトリックス成分は、固体触媒体が剛性及び機械的強度を備えるよう、焼結ブリッジを形成し得る。一部の無機マトリックス成分は、製造を補助するうえで望ましい特性を寄与し得る。例えば、粘土は、本質的に可塑性を有するため、工程(a)で形成された混合物内に含ませることによって、所望のレベルの可塑性を実現又は促進し得る。
【0044】
好ましくは、無機マトリックス成分は、焼成時にアルミナを形成する、ベーマイト又はバイエライト等のアルミナ前駆体を含む。無機マトリックス成分は、好ましくは、ベーマイトを含む。
【0045】
代替的に又は追加的に、無機マトリックス成分は、例えば、コロイドシリカ、シラン、又は、ポリシロキサン等の、シリカ又はシリカ前駆体を含み得る。
【0046】
代替的に又は追加的に、無機マトリックス成分は、粘土を含み得る。好適な粘土は、ベントナイト、耐火粘土、アタパルガイト(attapulgite)、フラー土(fullers earth)、セピオライト、ヘクトライト、スメクタイト、カオリン、珪藻土、及びそれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む。
【0047】
任意選択的、工程(a)で一緒に混合される成分は、無機繊維を更に含み得る。好適な無機繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、及びセラミック繊維からなる群から選択され得る。有利な点として、無機繊維は、焼成物の機械的堅牢性を改善し得る。
【0048】
有機助剤は、処理の向上のために、又は、最終的な固体触媒体に所望の特性を導入するために使用されるが、焼成工程中に焼失する。こうした材料により、可塑性処理を向上させ、かつ/又は固体触媒体に多孔性を導入することができる。第1の態様の工程(a)での使用に好適な有機助剤は、アクリル繊維(押出成形補助剤及び孔形成剤)、セルロース誘導体(可塑剤及び/又は乾燥補助剤)、他の有機可塑剤(例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)又はポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)、潤滑剤(押出成形補助剤)、及び水溶性樹脂のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、例えば、触媒物品が多機能である(つまり、2つ以上の触媒機能を発揮する)ことが望ましい場合、更なる触媒活性材が、工程(a)で形成された可塑性混合物に内包され得る。
【0050】
工程(a)で使用される成分の相対的な量的割合は、可塑性混合物が必要な固形分を有するように、かつ有機助剤が焼失した後の固体触媒体が、(固体触媒体の総重量に基づいて)55~85重量%、好ましくは60~85重量%の鉄担持モレキュラーシーブ、及び20~40重量%の無機マトリックス成分を含有するように選択され得る。出発材料の適切な量の選択は、申し分なく当業者の能力の範囲内である。好ましくは、工程(a)で使用された成分の相対的な量的割合は、工程(c)で生成された固体触媒体が、(固体触媒体の総重量に基づいて)60~85重量%の鉄担持モレキュラーシーブ、20~40重量%の無機マトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含有するように選択される。
【0051】
工程(a)で形成された可塑性混合物は、例えば、(可塑性混合物の総重量に基づいて)25~70重量%の、H又はNH4+形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、0.06~8重量%の硫酸鉄と、12~33重量%の無機マトリックス成分と、0~8重量%の無機繊維と、最大15重量%の有機助剤と、を含み得る。
【0052】
工程(a)では、可塑性混合物は、成分を一緒に混合することで形成される。成分は、任意の順序で一緒に混合され得る。好ましくは、混合物は実質的に均一、つまり、混合物中の成分分布が実質的に均一となっている。成分は、任意の好適な方法によって混合され得る。好ましくは、成分はニーディング(kneading)によって混合される。
【0053】
可塑性混合物のpHは、任意選択的に、酸又は塩基の添加によって調整されてもよい。
【0054】
工程(a)は、周囲温度で実施され得る。好ましくは、工程(a)は、10~30℃の範囲の温度で実施される。例えば、工程(a)は、18~28℃の範囲の温度で実施され得る。
【0055】
本発明の特筆すべき利点は、工程(a)で形成された可塑性混合物を、そのまま押出成形用ペーストとして直接使用することができることである。よって、工程a)で形成された混合物は、いかなる追加の処理工程を伴うことなく、工程b)において直接用いられ得る。
【0056】
工程(b)では、当該技術分野で周知の押出成形技法によって、混合物をモールドし得る。例えば、混合物は、押出成形用プレス又は押出成形用の型を備えた押出機を使用して、モールドされ得る。
【0057】
工程(b)は、周囲温度で実施され得る。好ましくは、工程(b)は、10~35℃の範囲、好ましくは、10~30℃の範囲の温度で実施される。例えば、工程(b)は、18~28℃の範囲の温度で実施され得る。
【0058】
最も好ましくは、工程(a)及び(b)は両方とも、10~35℃、好ましくは、10~30℃、より好ましくは、18~28℃の範囲の温度で実施される。
【0059】
好ましくは、工程(c)の焼成前に、可塑性混合物の温度は、35℃を超えない。例えば、工程(c)の焼成前に、可塑性混合物の温度は、30℃以下又は28℃以下に維持され得る。
【0060】
好ましくは、成形物品は、ハニカムモノリス形状をとる。ハニカム体は、都合に合わせた任意の大きさ及び形状を有し得る。代替的に、成形物品は、板又はペレットのような、他の形状をとり得る。
【0061】
工程(c)の焼成前に、成形物品を乾燥プロセスに供し得る。よって、第1の態様の方法は、工程(c)実施前に、工程(b)で形成された成形物品を乾燥させることを更に含み得る。成形物品の乾燥は、フリーズドライ及びマイクロ波乾燥(例えば、国際公開第2009/080155号を参照されたい)を含む、標準的な技法によって実施され得る。
【0062】
第1の態様の工程(c)では、工程(b)で形成された(任意選択的に乾燥された)成形物品を焼成して、固体触媒体を形成する。「焼成する」又は「焼成」という用語は、熱処理工程を指す。焼成によって、あらゆる残留溶媒の除去、並びに有機助剤の(例えば、焼失による)除去が行われ、それにより、成形物品が固化される。
【0063】
成形物品の焼成は、当該技術分野において周知の技法によって実施され得る。特に、焼成は、(例えば、ベルト式炉を使用して)静的又は動的に実施され得る。
【0064】
成形物品がハニカムモノリスの形状を有する場合、ハニカムのチャネルに加熱された気体を流す、フロースルー型焼成技法が用いられ得る。
【0065】
好ましくは、焼成工程(c)は、500~900℃、好ましくは、600~800℃の範囲の温度で実施される。
【0066】
好ましくは、成形物品は、最長5時間、好ましくは、1~3時間焼成される。
【0067】
工程(c)で実施される焼成は、複数の熱処理工程を含み得、例えば、成形物品は、第1の温度で第1の熱処理、次いで、第2の温度で第2の熱処理が施され得る。
【0068】
例えば、焼成は、還元雰囲気又は酸化性雰囲気下で実施され得る。複数の熱処理工程が用いられる場合、異なる工程が、異なる雰囲気下で実施され得る。
【0069】
第3の態様による触媒物品において、固体触媒体は、60~85重量%のFe担持小細孔モレキュラーシーブ、20~40重量%のマトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含み得る。
【0070】
有利な点として、第3の態様による触媒物品の押出成形固体触媒体は、100~700℃の範囲の温度でゼロ又は正であるCTEを有する。CTEが正である場合、ゼロに近いことが好ましい。熱膨張係数(CTE)は、物体が加熱時にどれだけ膨張又は収縮するかの尺度である。負のCTEを有する触媒物品は、収縮を受けやすい場合がある。
【0071】
好ましくは、固体触媒体は、100℃~700℃の範囲の温度で、0~5×10-6/Kの範囲のCTEを有する。例えば、固体触媒体は、100℃~700℃の範囲の温度で、0.5×10-6/K~5×10-6/Kの範囲又は0.5×10-6/K~4×10-6/Kの範囲のCTEを有する。
【0072】
本開示の第2又は第3の態様による触媒物品は、燃焼排気ガス流の処理に用いられ得る。すなわち、触媒物品は、内燃機関(移動式又は固定式のいずれか)、ガスタービン、又は発電プラント(例えば、石炭又は石油を燃料とした発電プラント)等の燃焼プロセスに由来する排気ガスを処理するために使用され得る。特に、触媒物品は、300~600℃、より好ましくは350~550℃、例えば400~500℃の範囲の温度を有する排気ガスを処理するために使用され得る。本開示の触媒物品の好ましい用途は、定置内燃機関、ガスタービン、又は発電プラントなどの固定源からの排気ガスを処理するための排気システムである。特に、触媒物品は、SCR触媒として用いられ得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、例えば、触媒物品が多機能である(つまり、2つ以上の触媒機能を同時に発揮する)ことが望ましい場合、方法は、触媒ウォッシュコートを触媒物品に塗布する更なる工程を含み得る。よって、第1の態様の方法は、工程(c)で生成された固体触媒体を、触媒活性材が含まれた組成物でコーティングする、工程(d)を更に含み得る。例えば、この組成物は、SCR触媒及び/又はアンモニアスリップ触媒(ammonia slip catalyst、ASC)を含み得る。このようなウォッシュコート工程は、当該技術分野において周知のプロセスによって実施され得る。したがって、第2又は第3の態様による触媒物品は、固体触媒体に塗布された触媒ウォッシュコートを更に含み得る。
【0074】
固体触媒体は、各チャネルが、両端で開放され、チャネルが基材の全軸長にわたって延在する、フロースルー型ハニカムモノリスとして構成され得る。代替的に、固体触媒体は、一部のチャネルが物品の一端部で塞がれ、他のチャネルが反対側の端部で塞がれる、フィルタ基材として構成され得る。このような配置は当該技術分野においてウォールフロー型フィルタとして知られるようになった。ウォールフロー型フィルタの形成は、固体触媒体の多孔性の好適な設定によって影響され得る。最終的な固体触媒体の多孔性は、例えば、有機細孔形成成分を第1の態様の工程(a)で用いられる有機助剤に組み込むことによって、制御され得る。
【0075】
触媒物品は、排気ガス処理システムの一部であり得、触媒物品は、窒素系還元剤源の下流に配設されている。
【実施例
【0076】
以下の実施例を参照して、本開示を更に説明するが、これは例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0077】
・比較例A
粉末状H+型SSZ-13(CHA)ゼオライトを、炭酸銅(CuCO.Cu(OH))、粘土鉱物、粉末状合成ベーマイトアルミナ(Pural(登録商標)SB)、及びガラス繊維(CP160、MUHLMEIER社から入手可能)と混合し、次いで、pH値4を有する水溶液中で、カルボキシメチルセルロース、可塑剤/押出成形補助剤(Zusoplast,オレイン酸、グリコール、酸、及びアルコールの混合物,Zschimmer & Schwarz GmbH & Co KGの商標名)、及びポリエチレンオキシド(Alkox(登録商標)PEO)と室温で混合して、モールド可能なペーストを形成した。モールド可能なペーストは、64重量%の固形分を有していた。出発材料の量的割合を、最終固体触媒体が、65重量%の銅及びゼオライト(Cu及びゼオライトの総量に基づいて、0.16のCu/Al比を含む)、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有するように選択した。
【0078】
モールド可能なペーストを、20℃で、1インチの直径の円形断面及び500cpsi(1平方インチ当たりのセル数(cells per square inch))のセル密度を有するフロースルー型ハニカムに押出成形した。押出成形されたハニカムは、国際公開第2009/080155号に記載の方法に従って、2ミリバールで数時間フリーズドライされ、その後、実験室規模のマッフル炉で600℃の温度で焼成され、固体触媒体を形成した。
【0079】
・実施例1
炭酸銅の代わりに、結晶性硫酸鉄(II)が用いられたことを除いて、比較例Aで用いられた方法に従って、モールド可能なペーストを調製した。ペースト調製で用いられた他の全ての成分は、同じであった。出発材料の量的割合を、65重量%の鉄及びゼオライト(Fe及びゼオライトの総量に基づいて、0.16のFe/Al比を含む)、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、比較例Aと同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0080】
・実施例2
モールド可能なペーストを、実施例1で用いられた方法に従って調製した。出発材料の量的割合を、65重量%の鉄及びゼオライト(Fe及びゼオライトの総量に基づいて、0.08のFe/Al比を含む)、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、比較例Aと同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0081】
・実施例3
モールド可能なペーストを、実施例1で用いられた方法に従って調製した。出発材料の量的割合を、65重量%の鉄及びゼオライト(Fe及びゼオライトの総量に基づいて、0.24のFe/Al比を含む)、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、比較例Aと同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0082】
・比較例B
硫酸鉄の代わりに、クエン酸鉄(クエン酸アンモニウム鉄(III))が結晶性形態で用いられたことを除いて、実施例1で用いられた方法に従って、モールド可能なペーストを調製した。ペースト調製で用いられた他の全ての成分は、同じであった。出発材料の量的割合を、65重量%の鉄及びゼオライト(Fe及びゼオライトの総量に基づいて、0.16のFe/Al比を含む)、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、実施例1と同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0083】
・比較例C
実施例1と同じ形状及び寸法を有する市販の押出成形バナジウム系SCRを得た。
【0084】
・比較例D
形態のゼオライト及び硫酸鉄の代わりに、0.16のFe/Al比を有する予め交換された鉄担持SSZ-13(CHA)ゼオライト(湿式含浸プロセスを介して予め調製されたもの)が用いられたことを除いて、実施例1で用いられた方法に従って、モールド可能なペーストを調製した。出発材料の量的割合を、65重量%の鉄担持ゼオライト、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、実施例1と同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0085】
・比較例E
金属塩を添加せずに、H形態のSSZ-13(CHA)ゼオライトのみが用いられたことを除いて、実施例1で用いられた方法に従って、モールド可能なペーストを調製した。出発材料の量的割合を、65重量%のH型ゼオライト、25重量%のγ-Al及び粘土鉱物、並びに10重量%のガラス繊維を含有する最終固体触媒体を提供するように選択した。次いで、実施例1と同じ形状及び寸法を有するフロースルー型ハニカムに、モールド可能なペーストを押出成形し、次いで、同じ方式で乾燥及び焼成して、固体触媒体を形成した。
【0086】
・触媒試験
比較例A、B、C、D、及び実施例1の同一体積の試料に対し、合成触媒活性試験(synthetic catalytic activity test、SCAT)装置で、500℃で、以下の入口ガス混合物(300ppmのNO(0%のNO)、300ppmのNH(NOxに対するアンモニアの比(Ammonia to NOx ratio、ANR)=1.0)、9.3%のO、7%のHO、残りはN)を使用して、120000時間-1の空間速度(space velocity、SV)で試験した。
【0087】
結果を図1及び図2に示す。
【0088】
図1は、500℃で各試料によって達成されたNO転化率を示し、図2は、500℃で各試料について測定されたNO選択率を示す。
【0089】
図1及び図2に示されるデータによって実証されるように、実施例1は、比較例Aと比較して同様のNO転化率及び改善されたNO選択率、並びに比較例Bと比較して改善されたNOx転化率及び改善されたNO選択率を達成する。実際、実施例1に従って調製された触媒物品については、NOは検出されなかったが、比較例A及びBの両方ともNO形成を示した。更に、実施例1の性能は、比較例Dの性能と同等であり、これは、実施例1で達成された鉄担持量が、予め交換された鉄担持ゼオライトの鉄担持量と同様であることを示す。有利な点として、実施例1の調製は、比較例Dの全体的な調製と比較して、より少ないプロセス工程及び低減されたエネルギー消費を必要とした。更に、実施例1の触媒物品は、従来のバナジウム系触媒(比較例C)と比較して、有意に改善されたNO及びNO性能を達成する。
【0090】
実施例1及び比較例Eで調製された触媒物品の試料を、膨張計(Linseis製のL75 VS 1750℃)を使用して、ある温度範囲にわたってCTE測定に供した。結果を図3に示す。図3から分かるように、実施例1は、試験された温度範囲全体にわたって正のCTEを有する。有利な点として、実施例1のCTEは、比較例EのCTEよりもゼロに近い。
【0091】
実施例1、2、及び3で調製された触媒物品の同一体積の試料に対し、合成触媒活性試験(SCAT)装置で、500℃で、以下の入口ガス混合物(300ppmのNO(0%のNO)、300ppmのNH(NOxに対するアンモニアの比(ANR)=1.0)、9.3%のO、7%のHO、残りはN)を使用して、120000時間-1の空間速度(SV)で試験した。結果を図4及び図5に示す。
【0092】
図4は、500℃で各試料によって達成されたNO転化率を示し、図5は、500℃で各試料について測定されたNO選択率を示す。
【0093】
図4及び図5に示されるデータによって実証されるように、実施例1、2及び3において調製された触媒物品の全ては、高いNOx転化率及び優れたNO選択率を達成する。実際、実施例1、2、又は3に従って調製された触媒物品のいずれについてもNOは検出されなかった。更に、図4に示されるデータから、鉄担持ゼオライトのFe/Al比がNOx転化率に影響し得ることが分かる。
【0094】
本開示の更なる態様及び実施形態を以下に番号を振った条項に記載する。
条項1.触媒物品を形成するための方法であって、
(a)少なくとも以下の成分:
(i)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、
(ii)硫酸鉄と、
(iii)無機マトリックス成分と、
(iv)有機助剤と、
(v)水性溶媒と、を一緒に混合することによって、可塑性混合物を形成することであって、
混合物は、50重量%を超える固形分を有する、ことと、
(b)可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、
(c)成形物品を焼成して、固体触媒体を形成することと、を含む、方法。
【0095】
条項2.工程(a)において、一緒に混合される成分が、(vi)無機繊維を更に含む、条項1に規定された方法。
【0096】
条項3.触媒物品を形成するための方法であって、
(a)以下の成分:
(i)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、
(ii)硫酸鉄と、
(iii)無機マトリックス成分と、
(iv)有機助剤と、
(v)水性溶媒と、
(vi)任意選択的な無機繊維と、を一緒に混合することによって、可塑性混合物を形成することであって、
混合物は、50重量%を超える固形分を有する、ことと、
(b)可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、
(c)成形物品を焼成して、固体触媒体を形成することと、を含む、方法。
【0097】
条項4.触媒物品を形成するための方法であって、
(a)以下の成分:
(i)H又はNH 形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、
(ii)硫酸鉄と、
(iii)無機マトリックス成分と、
(iv)有機助剤と、
(v)水性溶媒と、
(vi)任意選択的な無機繊維と、を一緒に混合することによって、可塑性混合物を形成することであって、
可塑性混合物は、50重量%を超える固形分を有する、ことと、
(b)可塑性混合物を成形物品にモールドすることと、
(c)成形物品を焼成して、固体触媒体を形成することと、からなり、
工程(b)の後、かつ工程(c)の前に、成形物品を任意選択的に乾燥させる、方法。
【0098】
条項5.工程(a)で使用された成分の相対的な量的割合は、工程(c)で形成された固体触媒体が、55~85重量%の鉄担持モレキュラーシーブ、及び20~40重量%の無機マトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含有するように選択される、条項1~4のいずれか一項に規定された方法。
【0099】
条項6.工程(a)で使用された成分の相対的な量的割合は、工程(c)で形成された固体触媒体が、60~85重量%の鉄担持モレキュラーシーブ、及び20~40重量%の無機マトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含有するように選択される、条項1~5のいずれか一項に規定された方法。
【0100】
条項7.工程(a)で形成された可塑性混合物が、(可塑性混合物の総重量に基づいて)25~70重量%の、H又はNH4+形態の結晶性小細孔モレキュラーシーブと、0.06~8重量%の硫酸鉄と、12~33重量%の無機マトリックス成分と、0~8重量%の無機繊維と、最大15重量%の有機助剤と、を含む、条項1~6のいずれか一項に規定された方法。
【0101】
条項8.結晶性小細孔モレキュラーシーブが、小細孔ゼオライトである、条項1~7のいずれか一項に規定された方法。
【0102】
条項9.ゼオライトが、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、KFI、LEV、LTA、SFW、及びRHOから選択される骨格型を有する、条項8に規定された方法。
【0103】
条項10.結晶性小細孔モレキュラーシーブが、CHA、AEI又はAFX、LTA、又はERIから選択され、好ましくは、CHA又はAEIから選択される骨格型を有する小細孔ゼオライトである、条項1~9のいずれか一項に規定された方法。
【0104】
条項11.結晶性モレキュラーシーブが、シリカ-アルミナ比(SAR)が5~200、5~100、10~80、又は5~30のゼオライトである、条項1~10のいずれか一項に規定された方法。
【0105】
条項12.結晶性小細孔モレキュラーシーブが、粒子形態にあり、30μm未満のD90粒径を有する、条項1~11のいずれか一項に規定された方法。
【0106】
条項13.結晶性小細孔モレキュラーシーブが、粒子形態にあり、50μm未満のD99粒径を有する、条項1~12のいずれか一項に規定された方法。
【0107】
条項14.成分(i)が、H又はNH 形態の2つ以上の小細孔結晶性モレキュラーシーブを含む、条項1~13のいずれか一項に規定された方法。
【0108】
条項15.硫酸鉄が、結晶性形態にある、条項1~14のいずれか一項に規定された方法。
【0109】
条項16.硫酸鉄が、硫酸鉄(II)である、条項1~15のいずれか一項に規定された方法。
【0110】
条項17.硫酸鉄が、硫酸鉄(III)である、条項1~15のいずれか一項に規定された方法。
【0111】
条項18.水性溶媒が、水から本質的になる、条項1~17のいずれか一項に規定された方法。
【0112】
条項19.水性溶媒が、水である、条項1~18のいずれか一項に規定された方法。
【0113】
条項20.工程(a)で形成された可塑性混合物が、少なくとも60重量%の固形分を有する、条項1~19のいずれか一項に規定された方法。
【0114】
条項21.工程(a)で形成された可塑性混合物が、60~80重量%の範囲、より好ましくは、70~80重量%の範囲の固形分を有する、条項1~20のいずれか一項に規定された方法。
【0115】
条項22.無機マトリックス成分が、ベーマイト及び/又はバイエライト、好ましくは、ベーマイトを含む、条項1~21のいずれか一項に規定された方法。
【0116】
条項23.無機マトリックス成分が、粘土を含む、条項1~22のいずれか一項に規定された方法。
【0117】
条項24.粘土が、ベントナイト、耐火粘土、アタパルガイト、フラー土、セピオライト、ヘクトライト、スメクタイト、カオリン、珪藻土、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、条項23に規定された方法。
【0118】
条項25.工程(a)では、一緒に混合される成分が、(vi)無機繊維を更に含み、無機繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、セラミック繊維のうちの1つ以上を含む、条項1~24のいずれか一項に規定された方法。
【0119】
条項26.有機助剤が、アクリル繊維、セルロース誘導体、有機可塑剤、潤滑剤、及び水溶性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、条項1~25のいずれか一項に規定された方法。
【0120】
条項27.工程(a)では、成分がニーディングによって一緒に混合される、条項1~26のいずれか一項に規定された方法。
【0121】
条項28.工程(a)が、周囲温度で実施される、条項1~27のいずれか一項に規定された方法。
【0122】
条項29.工程(a)が、10~35℃の範囲、10~30℃の範囲、又は18~28℃の範囲の温度で実施される、条項1~28のいずれか一項に規定された方法。
【0123】
条項30.工程a)で形成された可塑性混合物が、いかなる追加の処理工程を伴うことなく、工程b)で直接用いられる、条項1~29のいずれか一項に規定された方法。
【0124】
条項31.工程(b)が、押出成形によって実施される、条項1~30のいずれか一項に規定された方法。
【0125】
条項32.工程(b)が、周囲温度で実施される、条項1~31のいずれか一項に規定された方法。
【0126】
条項33.工程(b)が、10~35℃の範囲、10~30℃の範囲、又は18~28℃の範囲の温度で実施される、条項1~32のいずれか一項に規定された方法。
【0127】
条項34.工程(c)の焼成前に、可塑性混合物の温度は、35℃を超えない、好ましくは、30℃を超えない、より好ましくは、28℃を超えない、条項1~33のいずれか一項に規定された方法。
【0128】
条項35.成形物品はハニカムモノリスである、条項1~34のいずれか一条に規定された方法。
【0129】
条項36.当該方法が、工程(b)で形成された成形物品を、工程(c)の前に乾燥することを更に含む、条項1~35のいずれか一項に規定された方法。
【0130】
条項37.工程(c)が、500~900℃の範囲、好ましくは、600~800℃の範囲の温度で実施される、条項1~36のいずれか一項に規定された方法。
【0131】
条項38.工程(c)において、焼成が最長5時間、好ましくは、1~3時間にわたって実施される、条項1~37のいずれか一項に規定された方法。
【0132】
条項39.工程(c)で形成された固体触媒体が、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含む、条項1~38のいずれか一項に規定された方法。
【0133】
条項40.工程(c)で形成された固体触媒体が、SCRに対して触媒活性である、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含む、条項1~39のいずれか一項に規定された方法。
【0134】
条項41.条項1~40のいずれか一項に規定された方法により取得されるか、又は取得可能な、触媒物品。
【0135】
条項42.固体触媒体を含む触媒物品であって、当該固体触媒体が、鉄担持小細孔モレキュラーシーブを含み、100~700℃の範囲の温度でゼロ又は正である熱膨張係数(CTE)を有する、触媒物品。
【0136】
条項43.固体触媒体が、100℃~700℃の範囲の温度で、0~5×10-6/Kの範囲のCTEを有する、条項42に規定された触媒物品。
【0137】
条項44.固体触媒体が、100℃~700℃の範囲の温度で、0.5×10-6/K~4×10-6/Kの範囲のCTEを有する、条項43に規定された触媒物品。
【0138】
条項45.固体触媒体が、60~85重量%のFe担持小細孔モレキュラーシーブ、20~40重量%のマトリックス成分、及び0~10重量%の無機繊維を含む、条項41~44のいずれか一項に規定された触媒物品。
【0139】
条項46.フロースルー型ハニカムモノリス又はウォールフロー型フィルタとして構成される、条項41~45のいずれか一項に規定された触媒物品。
【0140】
条項47.SCRに対して触媒活性である、条項41~46のいずれか一項に規定された触媒物品。
【0141】
条項48.排気システムであって、窒素系還元剤源と、窒素系還元剤を、流動する排気ガス中に注入するための注入器と、を備え、注入器が、条項41~47のいずれか一項に規定された触媒物品から上流に配設されている、排気システム。
【0142】
条項49.排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを条項41~47のいずれか一項による触媒物品と接触させることを含む、方法。
【0143】
条項50.排気ガスが300~600℃、より好ましくは350~550℃、例えば400~500℃の範囲の温度を有する、条項49に規定された方法。
【0144】
条項51.排気ガスが、固定源由来である、条項49又は50に規定された方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】