(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】距離評価を利用する記述子を用いたLIDAR装置の実装方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20241029BHJP
G01S 7/4861 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S7/4861
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517374
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022079357
(87)【国際公開番号】W WO2023067130
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522400548
【氏名又は名称】コンチネンタル オートノマス モビリティー ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Continental Autonomous Mobility Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Ringlerstrasse 17, 85057 Ingolstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス ペッテション
(72)【発明者】
【氏名】トマ メネロル
(72)【発明者】
【氏名】ロール バジャール
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA01
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB02
5J084CA03
5J084CA65
5J084EA22
(57)【要約】
本発明は、光検出及び測距(LIDAR)装置を自動車に実装する方法であって、以下のステップ、第1の記述子を決定するステップと、第2の記述子を決定するステップと、第1の記述子及び第2の記述子における対応する環境シグネチャを特定するステップとを含み、環境シグネチャの前記指標の各々は、以下の4つの状態、離間距離が第1の所定距離範囲外にある状態、離間距離が前記第1の所定距離範囲の下部セグメントにある状態、離間距離が前記第1の所定距離範囲の上部セグメントにある状態、離間距離が、所定の係数の範囲内で、実質的に等しい状態のうちの1つを表す値をとるように構成される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出及び測距(LIDAR)装置を自動車に使用する方法であって、以下のステップ、
前記自動車からその外部環境に向けて入射光線を放射するステップと、
前記自動車の光検出器(2、3)で反射光線を、戻されたものとして、受光するステップと、
反射光線を受光した前記光検出器の各セルに前記反射光線に関する量を表す値を関連付けるステップと
を含み、
前記方法が、以下のステップ、
前記光検出器のセルの選択範囲に対する第1の組の環境シグネチャ(6)を含む第1の記述子を決定するステップ(D1)であって、この第1の記述子は、反射光線を受光するための第1のシーケンス(S1)に対応する、前記ステップ(D1)と、
前記光検出器のセルの選択範囲に対する第2の組の環境シグネチャ(6)を含む第2の記述子を決定するステップ(D2)であって、この第2の記述子は、反射光線を受光するための第2のシーケンス(S2)に対応する、前記ステップ(D2)と、
前記第1の記述子及び前記第2の記述子における一致している前記環境シグネチャ(6)を特定するステップ(C)と
を更に含み、
前記光検出器の特定のセル(C
0)の環境シグネチャ(6)は、各々が前記特定のセル(C
0)の環境セルの所定のパターンの1つのセル(C
1)に関連付けられる、1組の距離指標として定義され、前記距離指標の各々は、以下の4つの状態、
前記当該セル(C
1)が、前記特定のセル(C
0)に関連付けられた前記離間距離に関する第1の所定距離範囲外にある離間距離に関連付けられている状態、
前記当該セル(C
1)が、前記第1の所定距離範囲の下部セグメントにある離間距離に関連付けられている状態、
前記当該セル(C
1)が、前記第1の所定距離範囲の上部セグメントにある離間距離に関連付けられている状態、
前記当該セル(C
1)が、前記特定のセル(C
0)に関連付けられた離間距離に、所定の係数の範囲内で、実質的に等しい離間距離に関連付けられている状態
のうちの1つを表す値をとるように適合されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の記述子を決定する前記ステップの間、セルの前記選択範囲が、離間距離に関連付けられたセルのみを含み、前記第2の記述子を決定する前記ステップの間、セルの前記選択範囲が、離間距離に関連付けられたセルのみを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の記述子及び前記第2の記述子が各々、セルの前記選択範囲の各特定のセル(C
0)に対して順次実行される、以下の動作、
前記特定のセル(C
0)の前記環境シグネチャ(6)を決定する第1の動作、
前記1組の環境シグネチャが前記特定のセル(C
0)のこの環境シグネチャ(6)と同一の環境シグネチャ(6)を全く含まない場合、前記特定のセル(C
0)のこの環境シグネチャを前記1組の環境シグネチャに追加する動作、
前記特定のセル(C
0)のこの環境シグネチャ(6)を前記1組の環境シグネチャに追加する動作であって、この環境シグネチャは、前記1組の環境シグネチャが前記特定のセル(C
0)のこの環境シグネチャと同一の環境シグネチャ(6)を既に含む場合、特徴的要素に関連付けられる、前記動作
によって決定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記特徴的要素が、前記特定のセル(C
0)に関する光度の値であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
特定のセル(C
0)の前記環境シグネチャ(6)を決定するために使用される、環境セル(C
1)の前記所定のパターンが、この特定のセル(C
0)に対する前記環境セル(C
1)の相対配置の所定のパターンに従って前記特定のセル(C
0)を取り囲む所定数のセル(C
1)で構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
特定のセル(C
0)の前記環境シグネチャ(6)を決定するために使用される、前記1組の指標が、各々が環境セルの前記所定のパターンのセル(C
1)に割り当てられる、1組の2進数によって形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記2進数の各々が、前記指標を表す4つの値を符号化する2ビットを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記2進数が、
前記環境セル(C
1)が、前記第1の所定範囲外にある離間距離(D2)に関連付けられる場合、前記環境セル(C
1)に第1の2進数を割り当て、
前記環境セル(C
1)が、前記第1の所定範囲の前記下部セグメントにある離間距離(D2)に関連付けられる場合、前記環境セル(C
1)に第2の2進数を割り当て、
前記環境セル(C
1)が、前記第1の所定範囲の前記上部セグメントにある離間距離(D2)に関連付けられる場合、前記環境セル(C
1)に第3の2進数を割り当て、
前記環境セル(C
1)が、前記特定のセル(C
0)に関連付けられた前記離間距離(D1)に、前記所定の係数の範囲内で、実質的に等しい離間距離(D2)に関連付けられる場合、前記環境セル(C
1)に第4の2進数を割り当てる
ように、前記特定のセル(C
0)の環境セルの前記所定のパターンの各セル(C
1)に割り当てられることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定値が、各環境セル(C
1)に対して、この環境セル(D1)と前記特定のセル(C
0)とを隔てる距離(D3)によって重み付けされることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定距離範囲及び前記所定の係数が、各環境セル(C
1)に対して、前記センサ上の前記特定のセル(C
0)の位置に依存する値を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
各々が環境セルの前記所定のパターンのセル(C
1)に関連付けられる、前記環境シグネチャが各々、環境セルの前記所定のパターンに対して所定の順序で配置された前記2進数で構成されたワード(6)として配置されることを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反射光線を受光した前記光検出器の各セルに前記反射光線に関する量を表す値を関連付ける前記ステップの間、前記表示値が離間距離であり、前記離間距離が、前記セルと前記反射光線を返す物体との間の前記距離を表す値として定義されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の記述子の各環境シグネチャが前記第2の記述子の各環境シグネチャと比較される、マッチングステップを含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マッチングステップでは、非類似値は各対の環境シグネチャに対して決定され、一致しているとみなされた前記対の環境シグネチャは、非類似値が最も低い対の環境シグネチャであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非類似値が、
一方では、前記第1の所定範囲外にある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、この第1の所定範囲内にある離間距離に関する環境シグネチャを含む、前記対の環境シグネチャについての最大非類似値、
一方では、前記第1の所定範囲の前記下部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、前記第1の所定範囲の前記上部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含む、前記対の環境シグネチャについての中央非類似値、
一方では、前記第1の所定範囲の前記下部セグメント又は前記上部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、前記特定のセル(C
0)に関連付けられた前記離間距離に、前記所定の係数の範囲内で、実質的に等しい距離に関する環境シグネチャを含む、前記対の環境シグネチャについての最小非類似値
として決定されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の分野に関し、より具体的には、自動車に用いられるLIDAR装置に関する。
【0002】
LIDAR(光検出及び測距)装置は、自動車の周囲にある物体及び他の要素を検出し、車両と検出された物体との間の距離を測定することを可能にする装置である。
【0003】
自動車に用いられるLIDAR装置は、概して、入射光線を、すなわち車両の周囲に向けて放射するように設計された、発光体を含む。LIDAR装置はまた、車両の周囲に位置する物体によって反射された光線を、戻されたものとして、受光するように設計された、光検出器を含む。光線の放射から受光までの経過時間を測定することによって、また光の伝搬速度を考慮に入れることによって、LIDAR装置は、車両の周囲の物体の検出と、車両からこれらの物体までの距離の決定とを可能にする。
【0004】
LIDAR装置は、概して、例えば、特定の操縦の場合に、運転者を支援するために、又は走行制御システムを実装するために自動車に用いられる。LIDAR装置はまた、自律走行車、すなわち、人間の運転者なしに自律的に運転することが可能な車両にも使用される。特に、LIDAR装置は、その精度のため、自律走行車用の駆動システムに不可欠であり、自律走行車がその周囲を知覚することを可能にし、これは、車両がその軌道を環境に適合させることを可能にする非常に重要な動作である。
【0005】
LIDAR装置が自動車に使用される場合の、LIDAR装置の信頼性は、安全性を保証することである。その上、LIDAR装置が自律走行車に使用される場合、乗員及び車両周囲の安全性が特に信頼性に基づくので、この信頼性は極めて重要である。
【0006】
LIDAR装置が車両に用いられる場合の、LIDAR装置は、外部環境の連続シーケンスの検出と、これらの様々なシーケンスに存在する同じ物体のマッチングを行うことを可能にする。よって、LIDAR装置は、車両が車両周囲の物体の移動を知覚することを可能にし、これらの移動は、車両の相対移動及び/又はこれらの物体の特定の移動に関連付けられる。したがって、LIDAR装置によって検出された様々なシーケンス間で物体のマッチングを行うことによって、あるシーケンスから別のシーケンスへの物体の移動を検出して定量化することが可能となる。この移動の認識は、特に、例えば、物体の何らかの移動、具体的には車両に干渉する可能性のある移動を検出することによって、特に車両及びその周囲の安全性を確保するための、自動車での、より具体的には自律走行車でのLIDAR装置の使用の基礎である。
【背景技術】
【0007】
自動車に用いられるLIDAR装置であって、物体のマッチングを行う手段を備えたLIDAR装置が知られている。
【0008】
先行技術のLIDAR装置は、概して、周囲の検出された各シーケンスに対して点群を決定し、これらの点群は、所与の瞬間における車両の周囲を表す。これらの点群の各々について、概して、点群内の「重要点」と呼ばれる特異点を検出するために複雑なアルゴリズムが用いられる。様々な重要点が様々なシーケンスで検出された後、これらのアルゴリズムは、様々なシーケンスにおける同じ重要点の存在を認識することを可能にする同定演算を実行する。
【0009】
先行技術のLIDAR装置は、これらの複雑なアルゴリズムを実行するためにかなりの演算資源を必要とし、重要点の正確且つ効率的な検出を可能にするために高分解能の光検出器の使用も必要とする。
【0010】
先行技術のLIDAR装置では、性能及び検出の安全性を高めることは、必然的に、光検出器の分解能を高めるとともに演算能力を高めることを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、先行技術の方法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、光検出及び測距(LIDAR)装置を自動車に使用する方法に関し、以下のステップ、
自動車からその外部環境に向けて入射光線を放射するステップと、
自動車の光検出器で反射光線を、戻されたものとして、受光するステップと、
反射光線を受光した光検出器の各セルに反射光線に関する量を表す値を関連付けるステップと
を含む。
【0013】
この方法は、以下のステップ、
光検出器のセルの選択範囲に対する第1の組の環境シグネチャを含む第1の記述子を決定するステップであって、この第1の記述子は、反射光線を受光するための第1のシーケンスに対応する、ステップと、
光検出器のセルの選択範囲に対する第2の組の環境シグネチャを含む第2の記述子を決定するステップであって、この第2の記述子は、反射光線を受光するための第2のシーケンスに対応する、ステップと、
第1の記述子及び第2の記述子における対応する環境シグネチャを特定するステップと
を更に含み、
光検出器の特定のセルの環境シグネチャは、各々が前記特定のセルの環境セルの所定のパターンの1つのセルに関連付けられる、1組の距離指標として定義され、前記距離指標の各々は、以下の4つの状態、
当該セルが、前記特定のセルに関連付けられた離間距離に関する第1の所定距離範囲外にある離間距離に関連付けられている状態、
当該セルが、前記第1の所定距離範囲の下部セグメントにある離間距離に関連付けられている状態、
当該セルが、前記第1の所定距離範囲の上部セグメントにある離間距離に関連付けられている状態、
当該セルが、前記特定のセルに関連付けられた距離に、所定の係数の範囲内で、実質的に等しい離間距離に関連付けられている状態
のうちの1つを表す値をとるように適合される。
【0014】
この場合の「記述子」という用語は、一意の記述子又は記述子のリストを包含する。
【0015】
LIDAR装置を使用するかかる方法は、限られた演算資源しか必要としない簡単な動作に基づく。加えて、この方法は、車両の周囲にある物体の最大限の検出安全性を確保し、これらの物体の移動を特定するために物体のマッチングを行いながら、低分解能の光検出器を備えたLIDAR装置を用いて実行することができる。
【0016】
本発明は、先行技術で遭遇したような、光検出器の分解能を高め、演算資源を増加させる傾向に対抗し、光検出器の分解能及びその演算能力の要件を緩和する一方で、性能及び安全性の観点から検出を向上させることを可能にする。
【0017】
実際に、本発明は、光検出器によって検出されたシーケンスにおける「重要点」を特定するための複雑な動作に基づくのではなく、むしろ、環境シグネチャの組によるこれらの様々なシーケンスの一般的な特徴付けに基づく。1組のシグネチャを形成する環境シグネチャの簡単且つ固有の文字によって、マッチングステップの計算に必要な資源が大幅に低減される。
【0018】
したがって、本発明は、低分解能の光検出器を備えた簡単且つロバストなLIDAR装置の使用を可能にする。したがって、これらのLIDAR装置は、設置面積、コスト、及び信頼性レベルが自動車生産規格に適合しない、先行技術のLIDAR装置には当てはまらなかった、低コスト生産及び高い信頼性レベルのための自動車規格に準拠している。
【0019】
本発明による方法は、これらの物体が均一な表面を有している場合、及び/又はこれらの物体が検出装置に向かって又は検出装置から離れる方向に移動している場合でも、あるシーケンスから別のシーケンスへの物体の検出において特に良好に機能する。それゆえ、方法は、物体が移動しているときでも、物体の輪郭及びこれらの同じような物体の本体を検出する。換言すれば、本発明による方法は、光学機器及び計算能力の観点から少ない資源で、先行技術と比較してより多くの物体を検出するために使用され得る。
【0020】
本発明による方法は、以下の追加の特徴を単独で又は組み合わせて含むことができる。
第1の記述子を決定するステップの間、セルの選択範囲は、離間距離に関連付けられたセルのみを含み、第2の記述子を決定するステップの間、セルの選択範囲は、離間距離に関連付けられたセルのみを含み、
第1の記述子及び第2の記述子は各々、セルの選択範囲の各特定のセルに対して順次実行される、以下の動作、特定のセルの環境シグネチャを決定する第1の動作、1組の環境シグネチャが特定のセルのこの環境シグネチャと同一の環境シグネチャを全く含まない場合、特定のセルのこの環境シグネチャを1組の環境シグネチャに追加する動作、特定のセルのこの環境シグネチャを1組の環境シグネチャに追加する動作であって、この環境シグネチャは、1組の環境シグネチャが特定のセルのこの環境シグネチャと同一の環境シグネチャを既に含む場合、特徴的要素に関連付けられる、動作によって決定され、
前記特徴的要素は、特定のセルに関連する光度の値であり、
特定のセルの環境シグネチャを決定するために使用される、環境セルの所定のパターンは、この特定のセルに対する環境セルの相対配置の所定のパターンに従って特定のセルを取り囲む所定数のセルで構成され、
特定のセルの環境セルを決定するために使用される、1組の指標は、各々が環境セルの所定のパターンのセルに割り当てられる1組の2進数によって形成され、
前記2進数の各々は、前記指標を表す4つの値を符号化する2ビットを含み、
2進数は、以下の方式、
環境セルが、前記第1の所定範囲外にある離間距離に関連付けられる場合、環境セルに第1の2進数を割り当て、
環境セルが、前記第1の所定範囲の下部セグメントにある離間距離に関連付けられる場合、環境セルに第2の2進数を割り当て、
環境セルが、前記第1の所定範囲の上部セグメントにある離間距離に関連付けられる場合、環境セルに第3の2進数を割り当て、
環境セルが、前記特定のセルに関連付けられた離間距離に、所定の係数の範囲内で、実質的に等しい離間距離に関連付けられる場合、環境セルに第4の2進数を割り当てる
方式で、特定のセルの環境セルの所定のパターンの各セルに割り当てられ、
前記所定値は、各環境セルに対して、この環境セルと特定のセルとを隔てる距離によって重み付けされ、
前記所定距離範囲及び所定の係数は、各環境セルに対して、センサ上の特定のセルの位置に依存する値を有し、
各々が環境セルの所定のパターンのセルに関連付けられる、環境シグネチャは各々、環境セルの所定のパターンに対して所定の順序で配置された2進数で構成されたワードとして配置され、
反射光線を受光した光検出器の各セルに反射光線に関する量を表す値を関連付けるステップの間、表示値は離間距離であり、離間距離は、セルと前記反射光線を返す物体との間の距離を表す値として定義され、
方法は、第1の記述子の各環境シグネチャが第2の記述子の各環境シグネチャと比較される、マッチングステップを含み、
前記マッチングステップでは、非類似値は、各対の環境シグネチャに対して決定され、一致しているとみなされた対の環境シグネチャは、非類似値が最も低い対の環境シグネチャであり、
前記非類似値は、
一方では、前記第1の所定範囲外にある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、この第1の所定範囲内にある離間距離に関する環境シグネチャを含む、対の環境シグネチャについての最大非類似値、
一方では、第1の所定範囲の下部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、第1の所定範囲の上部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含む、対の環境シグネチャについての中央非類似値、
一方では、第1の所定範囲の下部セグメント又は上部セグメントにある離間距離に関する環境シグネチャを含み、他方では、前記特定のセルに関連付けられた離間距離に、所定の係数の範囲内で、実質的に等しい距離に関する環境シグネチャを含む、対の環境シグネチャについての最小非類似値
として決定される。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の非限定的な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1の方法において記述子を生成するステップを示す。
【
図3】本発明による方法によって使用されるLIDAR装置の光検出器の一部を概略的に示す図である。
【
図4】本発明による方法によって使用される第1の所定距離範囲を示す。
【
図6】本発明による環境シグネチャを概略的に示す。
【
図7】第1の変形例についての
図3に類似した図である。
【
図8】第2の変形例についての
図3に類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による方法は、車両の周囲にある物体の移動を特定するオプティカルフローを検出することによって車両の周囲を知覚するために自動車でのLIDAR装置の使用を可能にする。この方法は、基本的な演算手段を備えた低分解能のLIDAR装置を用いて実行することができる。この低分解能は、例えば、LIDAR装置の光検出器では128×32セルである。光検出器は概して、例えば、フォトダイオードで構成された、基本センサのアレイによって形成された感光板を含む。「画素」とも呼ばれる、光検出器の各セルは、基本検出要素を形成する。
【0024】
この128×32セルの低分解能に加えて、光検出器はまた、広角レンズを含むことができ、したがって、光検出器の各セルは、車両の周囲の画像における大きな表面に対応する光線(例えば、光検出器のセル当たり、車両から1~3m2、20m離れている)を検出する。
【0025】
LIDAR装置の構成はそれ自体知られており、本明細書では更に詳細に説明しない。LIDAR装置が、車両の周囲に向けて光パルスを放射するように設計された光源と、例えば、環境内の各物体からの離間距離に関連する点群を決定するために、車両の周囲の物体で反射した光線を受光して検出するように設計された基本セルのアレイによって形成された光検出器とを含むことに簡単に留意すべきである。
【0026】
したがって、方法はまず、LIDAR装置を動作させる従来のステップ、
自動車からその外部環境に向けて入射光線を放射するステップと、
自動車の光検出器で反射光線を、戻されたものとして、受光するステップと、
反射光線を受光した光検出器の各セルに反射光線に関する量を表す値を関連付けるステップと
共に使用される。
【0027】
本明細書で説明する例では、反射光線に関する量を表す値は離間距離であり、この離間距離は、セルと前記反射光線を返す物体との間の距離を表す値として定義される。反射光線に関する量を表すこの値は、例えば、反射強度、物体の表面の反射率、又はLIDAR装置によって検出できる任意の他の量によって補完することができる。
【0028】
離間距離は、入射光線の形で始まり物体での反射後に反射光線の形で戻る、各光線の移動時間に基づいて、LIDAR装置によって計算することができる。離間距離は、この物体と反射光線を受光する光検出器のセルとの間の距離に相当する。
【0029】
したがって、LIDAR装置は、光パルスが放射され、次いで光検出器によって集光される、連続シーケンスを有する。これらの連続シーケンスは、周囲の写真に相当する。これらの一連のシーケンスは、オプティカルフローを形成する。この方法は、連続シーケンスにおける移動を特定することを可能にし、その結果、自律走行車がその外部環境を知覚し、その運転を外部環境に適合させることを可能にするために、様々なシーケンス間の物体の移動を解析して定量化することができる。
【0030】
この目的を達成するために、方法は、オプティカルフローのシーケンスの各々を個別に考慮し、これらのシーケンスを対で比較して、連続する2つのシーケンス間の移動を評価する。
【0031】
本例では、連続する2つのシーケンスについて方法の実行を簡単に説明し、この基本的方法は、オプティカルフローを形成する連続する全てのシーケンスに対して連続的に実行できることが理解される。
【0032】
図1は、連続する2つのシーケンスに対する、すなわち、各々が車両の外側の物体に関する点群を生成する2つの周囲画像に対する方法の実行を概略的に示す。
【0033】
図1には、方法の様々なステップを含むものとしてLIDAR装置1が概略的に示されている。矩形S1は、LIDAR装置1が、車両周囲の第1のシーンに対応する点群を取得する、第1のシーケンスに対応する。矩形S2については、第1のシーケンスS1を取得した直後の第2のシーケンスの取得に対応する。
【0034】
したがって、第2のシーケンスS2の取得に続いて、LIDAR装置1は、各々がシーケンスS1、S2の画像に対応する2つの点群を有する。
【0035】
方法の目的は、シーケンスS1とシーケンスS2との間で行われた移動を検出することである。シーケンスS1とシーケンスS2との間のこの変化によって、車両から見た移動を決定することが可能となる。
【0036】
図1によれば、第1のシーケンスS1から生じたデータはまず、第1の記述子D1を決定し、次いでこの記述子D1をフィルタリングするF1ステップを経る。第2のシーケンスS2から生じたデータも、第2の記述子D2を決定してこの記述子をフィルタリングすることF2を含む同じ処理を経る。
【0037】
次に、方法は、これらのフィルタリングされた2つの記述子に基づいて、マッチングを行いM、次いでこのマッチングをフィルタリングするFMステップを行う。次に、これらのフィルタリングされたマッチングCは、LIDAR装置によって、例えば、物体の検出を向上させるために、又は物体自体の移動若しくは別の方法によって特定された物体の移動を解析できるように、自動車を制御するための他の要素によって使用することができる。
【0038】
図2は、シーケンスS1、S2の各々に対する記述子D1、D2を決定するステップを更に詳細に示す図である。
【0039】
記述子を決定するステップの間、シーケンスS1、S2に対応する点群に基づいて、方法はまず、光検出器の使用可能なセルを特定する(ステップE1)。この場合、光検出器の使用可能なセルは、外部環境内の物体の存在によって反射された光線を実際に受光したセルとして定義される。反射光線を受光しない光検出器のセルは、物体の存在を検出せず、この場合、使用可能とみなされるセルから除外される。これは、入射光線がその経路上に物体を見つけられず、入射光線が反射されないので光検出器に戻らない場合である。同様に、外部方法は、セル内の欠陥を特定するなどの、様々な理由から使用不可として特定のセルにマークを付している場合がある。したがって、記述子D1、D2を決定することは、反射光線を受光した光検出器のセル及び/又は任意の外部方法によって使用不可としてマークが付されていない光検出器のセルにのみ適用される。これらの使用可能なセルは、光検出器のセルの選択範囲を形成する。
【0040】
以下のステップE2では、方法は、選択範囲のセルの1つに対する環境シグネチャを決定する。方法は、このステップE2及び次のステップが、選択範囲のセルの各々に順次適用されるように、このステップE2に戻る。更に、セルの選択範囲は、光検出器の板の縁部に位置しない使用可能なセルに限定することができる。
【0041】
好ましくは、選択範囲を形成する使用可能なセルであって、それゆえ、各々がステップE2及び次のステップを経る、使用可能なセルを、例えば、光検出器の板の左上端のセルから始まり、次いで、ステップE2及び次のステップの繰り返し毎に、隣接セルに対して継続する、順序で処理することができる。
【0042】
ステップE2はまず、選択範囲の第1のセルに対して実行される。この場合、この第1のセルに対する環境シグネチャを決定することは、所定のパターンに従って前記セルを取り囲むセルの各々に2進数を割り当てることを含む。本出願の用語を簡略化するために、本出願全体を通じて、環境シグネチャが決定されているセルを「特定のセル」と呼び、所定のパターンに従って特定のセルを取り囲むセルを「環境セル」と呼ぶ。環境シグネチャを決定することについて、
図3~
図8を参照して以下で更に詳細に説明する。
【0043】
環境シグネチャは、特定のセルの環境セルに関する一連の2進数で構成される。
【0044】
次に、方法は、特定のセルに関するこの環境シグネチャの決定に対応するステップE3に進む。そして、ステップE4は、この環境シグネチャを、1組の環境シグネチャを形成するリストに追加することにある。ステップE2の第1の繰り返し、すなわち、当該の第1の特定のセルに対するステップE2の繰り返しに関して、以前には環境シグネチャが記録されておらず、それゆえ、この繰り返しの環境シグネチャは全ての環境シグネチャに追加される(ステップE4)。選択範囲の次のセルを対象とする、以後のステップE2及び次のステップの繰り返しにおいて、新たな環境シグネチャが、1組の環境シグネチャに既に存在するシグネチャと同一であると特定された場合、ステップE5では、対象となっている新たなシグネチャも1組の環境シグネチャに追加されるが、今回は、特徴的要素も記憶される。本例では、この特徴的要素は、例えば、特定のセルの光度の値、又は特定のセル及びその環境セルの光度の平均値である。この特徴的要素は、1組の環境シグネチャのうちの同一である2つの環境シグネチャを分離するために使用される。
【0045】
次いで、方法は、ステップE2にループバックして、次に新たな特定のセルとして扱われる、選択範囲内の次のセルで新たな繰り返しを始める。
【0046】
新たなシグネチャを1組のシグネチャに追加するステップE4の後に、方法は、選択範囲の最後のセルに到達したかどうかを判定する、ステップE6に進む。したがって、ステップE6は、選択範囲の全てのセルがステップE2及び次のステップの繰り返しを確実に経ているかどうかを判定する。ステップE6の間、対象となっているセルが選択範囲の最後のセルでない場合に、方法は、ステップE2にループバックし、次いで、ステップEが、新たな特定のセルとして扱われる、選択範囲内の次のセルに対して実行される。
【0047】
ステップE6の間、対象となっているセルが実際に選択範囲の最後のセルである場合、このことは、ステップE2及び次のステップの繰り返しがセルの選択範囲全体に対して実行されていることを意味し、次に、方法は、環境シグネチャのリストが生成される、ステップE7に進む。
【0048】
ここで、特定のセルの環境シグネチャを決定すること(ステップE2)について、
図3及び
図4を参照して更に詳細に説明する。
【0049】
図3は、光検出器を形成するマトリクス板の一部を示す。このマトリクスは、基本感光セル(「画素」とも呼ばれる)で構成される。
図3に示す部分では、中央セルC
0は、他のセルC
1(灰色で示す)とC
2(白色で示す)とに取り囲まれて示されている。この例では、セルC
0は、環境シグネチャが決定されている特定のセルである。
【0050】
灰色セルC1は、セルC0の環境セル、すなわち、特定のセルC0の周囲に所定のパターン(灰色で視認できる)で配置されたセルである。
【0051】
特定のセルC
0の環境シグネチャを決定することは、パターンのセルC
1の各々に2進数を割り当てることを含む。
図3に白色で示すセルC
2などの、他のセル、及び光検出器の他の全てのセル(
図3で視認できる光検出器部分には図示せず)は、特定のセルC
0の環境シグネチャの決定のためには考慮されない。
【0052】
環境セルC1にどの2進数が割り当てられるかを決定するために、原則は、本例では、
この環境セルC1に関連付けられた離間距離が特定のセルC0に関連付けられた離間距離とかなり隔たりがある場合、第1の2進数を割り当てることと、
この環境セルC1に関連付けられた離間距離が特定のセルC0に関連付けられた離間距離に比較的近いが、より小さい場合、第2の2進数を割り当てることと、
この環境セルC1に関連付けられた離間距離が特定のセルC0に関連付けられた離間距離に比較的近いが、より大きい場合、第3の2進数を割り当てることと、
この環境セルC1に関連付けられた離間距離が特定のセルC0に関連付けられた離間距離に実質的に等しい場合、第4の2進数を割り当てることと
を含む。
【0053】
本例では、環境セルC
1の2進数についてのこれらの4つの可能性は、特定のセルC
0に関連付けられた離間距離と当該環境セルC
1に関連付けられた離間距離との比較によって決定される。
図4は、これらの離間距離の位置を概略的に示し、矢印18は、光検出器のセルに到達した反射光線を用いて装置によって測定された任意の距離に配置され得る、距離のスケールを示す。このスケールでは、特定のセルC
0に関連付けられた離間距離がマーカ10によって示される。それゆえ、マーカ10は、特定のセルC
0上に光線を反射させた物体と光検出器との間の距離に対応する。このマーカ10の周囲には、離間距離が特定のセルC
0に関連付けられた離間距離に、所定の係数19の範囲内で、実質的に等しいとみなされる同等範囲15が定められる。係数19は、光検出器が作製される材料の物理的特性、特に計測分解能に基づいて選択される。この例では、係数19は、光検出器の分解能の0.5倍に等しい。
【0054】
下限閾値13及び上限閾値14もまた、矢印18のスケール上に定義され、したがって、
特定のセルC0に関連付けられた離間距離よりも小さい(閾値13の限界内の)離間距離の値に対応する下部セグメント16と、
特定のセルC0に関連付けられた離間距離よりも大きい(閾値14の限界内の)離間距離の値に対応する上部セグメント17と
からなる、第1の所定距離範囲を形成する。
【0055】
追加的に、本例では、再び
図3を参照すると、各環境セルC1の2進数は、以下の表に従って2ビットに符号化される。
【0056】
【0057】
図3の例示的な例では、環境セルC
1の各々に関連付けられた2進数が、関連する各セルC
1内に概略的に示されている。
【0058】
図5は、特定のC
0に対するシグネチャを決定するときに環境セルC
1の各々に割り当てられる2進数を決定するための基準を概略的に示す。
図5は、光検出器の板2(概略的に側面図で示す)と、光検出器の光学レンズ3と、2つの物体4、5が周囲に存在する簡単な例による車両の周囲とを概略的に示す。
【0059】
図5は、光検出器の板2上に、特定のセルC
0と、2進数が決定されている環境セルC
1とを概略的に示す。この例では、セルC
0は、セルC
0と物体4との間の距離(
図4にマーカ10によって概略的に示す)に相当する離間距離D1に関連付けられ、環境セルC
1は、セルC
1と物体5との間の距離に相当する離間距離D2に関連付けられる。
【0060】
次に、セルC1は、
離間距離D2が閾値14よりも大きいか又は閾値13よりも小さい場合、セルC1に2進数00が割り当てられ、
離間距離D2が閾値13よりも大きいか又は係数19だけ減少させた距離D1よりも小さい場合、セルC1に2進数01が割り当てられ、
離間距離D2が閾値14よりも小さいか又は係数19だけ増大させた距離D1よりも大きい場合、セルC1に2進数10が割り当てられ、
離間距離D2が範囲15内に含まれる場合、すなわち、離間距離D2が距離D1に実質的に等しい(係数19だけ増減させた距離D1に等しい)場合、セルC1に2進数11が割り当てられるように、セルC1に割り当てられる2進数を有する。
【0061】
ここで示す2進数は実施形態のほんの一例にすぎず、方法が、セルC1の状態について示す4つの可能性を4つの異なる2進数が特定した瞬間から始まり、他の任意の2進数と共に使用され得ることは明らかである。
【0062】
任意選択的に、閾値13及び14並びに係数19は、板2上のセルC1の位置に応じて調整することができる。この場合、差異D2-D1は、板2上のセルC0とセルC1との間の距離D3で重み付けすることによって評価される。
【0063】
一実施形態によれば、方法は、反射光線のいくつかの層を特定するように適合されたLIDAR装置を用いて実行される。多層LIDAR装置と呼ばれる、これらの既知のLIDAR装置は、反応現象を考慮に入れることができる、同じシーケンスについて、光検出器の同じセルで反射したいくつかの光線が取得されることを可能にする。例えば、LIDAR装置は、半反射板、霧、又は光線の部分反射を生じさせる任意の他の要素に向けて入射光線を放射すると、LIDAR装置の光検出器は、半反射要素によって反射された第1の光線を受光し、次いで場合により、半反射要素の後ろに位置する物体であって、同じく入射光線を反射させる物体によって反射された他の光線も受光する。これらの多層LIDAR装置では、光検出器の各セルは、いくつかの(概ね最大4つの)離間距離に関連付けられる。この場合、環境セルC1に2進数を割り当てるときに、このセルC1に関連付けられた全ての離間距離が考慮される。
【0064】
所定のパターンの環境セルC1(
図3において灰色で視認できる)の各々に2進数が割り当てられている場合、方法は、特定のセルC0に対応する全ての環境セルC1の全ての2進数を含む2進ワードを決定する。
【0065】
この2進ワード6の例が
図6に示されており、この数値は、
図3のセルC1の各々に割り当てられた2進数の例に相当し、左から右に、上から下に読み取られる。
図6に示す2進ワード6は、(特定のセルC0の周りに均等に分布する16個の環境セルC1を含む、
図3に例として提供される所定のパターンを有する)32ビット2進ワードである。この32ビットワード6は、特定のセルC0の環境シグネチャを形成する。この32ビット形式は、様々なシーケンスのマッチングにおいて良好な結果をもたらす環境シグネチャを生成するのに十分であり、安価なプロセッサを使用する一般的なアーキテクチャに対応する。
【0066】
本例では、方法は、フィルタリング動作(
図1の動作F1、F2)も含み、この動作では、特定の環境シグネチャ6は、整合性基準に基づいて無視される。これらの整合性基準は、好ましくは、方法の高い実行速度と、少ない所要の演算資源とを確保するとともに、誤検出を回避するために、簡単なものである。これらの整合性基準は、例えば、異常に大量の同じ2進数を含む全てのシグネチャ6を無視することを含む。
図6の32ビット2進ワード6の例では、例えば、同じ2進数0又は同じ2進数1を24回よりも多く含むシグネチャは無視され、1組の環境シグネチャに含まれない。したがって、1組の環境シグネチャは、整合性基準によって提供される特定の特徴も有するシグネチャ6を含む。
【0067】
図1を参照すると、マッチングステップMの間、第1のシーケンスS1に対応する1組の環境シグネチャが、第2のシーケンスS2に対応する1組のシグネチャと比較される。他のシーケンスのシグネチャ6と同一であるシーケンスの各シグネチャ6は、シーケンスS1から他のシーケンスS2への移動として特定される。
【0068】
マッチングステップMでは、第2のシーケンスS2の各特定のセルC0の環境シグネチャが、第1のシーケンスS1の全ての環境シグネチャ、すなわち、第1のシーケンスS1に対する光検出器の各セルの環境シグネチャと比較される。
【0069】
このマッチングステップMについて、方法は、比較すべき2つの環境シグネチャ間の「非類似度」の概念を使用する。この非類似度の概念は、物理的距離に関するものではなく、むしろ、環境シグネチャが別の環境シグネチャと同じ物体に対応する又は対応しない確率の観点から離間距離の概念に関するものである。したがって、2つの環境シグネチャ間の強い非類似度によって、これらの2つの環境シグネチャが、あるシーケンスから別のシーケンスへの同じ物体に対応していないとみなされ、逆に、2つの環境シグネチャ間の弱い非類似度(特定の閾値までの)によって、2つの環境シグネチャが、考慮される両方のシーケンスで同じ物体を特定しているとみなされる。
【0070】
本例では、2つの環境シグネチャ間の全非類似度は、考慮されるシーケンスの各2進数と他のシーケンスの2進数とを分ける非類似度の和に等しい。それゆえ、環境シグネチャの各2進数は、他の環境シグネチャの全ての2進数と1つずつ比較され、2進数間のこれらの非類似度が加算され、2つの環境シグネチャ間の非類似値が得られる。
【0071】
好ましい実施形態によれば、2つの2進数間の非類似度のこの概念は、可能な各対に非類似値(2進数間の一致確率に基づく値)を割り当てることによって適用される。以下の表は、2つの2進数a及びbの全ての可能性についてのこれらの値の割り当ての例を示す。
【0072】
【0073】
この表では、2進数aは、00、01、10、及び11の4つの値をとることができる。2進数bについても同様である。
【0074】
対の2進数00-00、01-01、10-10、及び11-11に非類似値0が割り当てられる。このゼロの非類似値は、比較された2進数が同一であるので、高い一致確率に相当する。
【0075】
他の可能な対の2進数に、A、B、又はCの非類似値が割り当てられる(ここで、Aは最も高い非類似値であり、Cは最も低い非類似値である)。
所定距離範囲外の(閾値13と閾値14との間の)離間距離からこの範囲内の離間距離への移動は起こりそうにないとみなされる。したがって、対の2進数00-01、00-10、00-11に最大非類似値Aが割り当てられる、
所定距離範囲(閾値13と閾値14との間)の上部セグメント17における離間距離からこの範囲の下部セグメント16への移動、又はその逆は、適度に起こり得るとみなされる。したがって、対の2進数10-01に中央非類似値Bが割り当てられる、
所定距離範囲(閾値13と閾値14との間)のセグメント(下部16又は上部17)の一方における離間距離からこの範囲の中央セグメント15への移動、又はその逆は、非常に起こり得るとみなされる。したがって、対の2進数01-11、10-11に最小非類似値Cが割り当てられる。
A、B、及びCの値は、特定の用途に合わせて校正され得る。本例では、A、B、及びCの値は、それぞれ5、2、及び1である。
マッチングM中に、各特定のセルC0に対して、
第2のシーケンスにおけるこのセルC0の環境シグネチャと、
第1のシーケンスにおける各セルの各環境シグネチャとによって形成された各対に対して非類似値が算出される。
【0076】
最も低い非類似値を示す1対の環境シグネチャは、一致しているとみなされる。言換すれば、第2のシーケンスにおけるセルC0で見た物体は、1対の環境シグネチャの非類似度が最も低いため、第1のシーケンスにおける別のセルで見た物体と同じ物体とみなされる。
【0077】
したがって、非常に少ない計算資源を使用して、高レベルの動作安全性を伴って2つのシーケンス間で同じ物体を特定することができる。資源使用量が少ない他の方法とは異なり、非類似度演算手法はまた、環境シグネチャがビット毎に同一でない場合でも環境シグネチャのマッチングを行うことを可能にする。
【0078】
任意選択的に、2対の環境シグネチャが等しい非類似値を有する場合、これらの値は、光度などの、別の基準に基づいて分離される。光度が当該の特定のセルの光度に最も近いセルが選択される。
【0079】
本例では、方法はまた、シーケンスS1とシーケンスS2の両方に存在すると特定されたシグネチャ6を、整合性基準に従って、フィルタリングすることを含む、フィルタリングステップFM(
図1を参照)を含む。前述のように、これらの整合性基準は、好ましくは簡単なものである。これらの整合性基準は、車両の周囲の物体が所定の閾値未満の速度でしか移動できないという原則から始まり、オプティカルフローの概念に関することができる。例えば、2つの同一のシグネチャ、シーケンスS1における一方のシグネチャと、シーケンスS2における他方のシグネチャは、例えば、時速250kmでの、高速を示すシーケンスS1とシーケンスS2との間の移動に関するものとして特定され、この特定された一致は無視される。
【0080】
したがって、最終ステップC(
図1)では、方法は、一方のシーケンスS1から他方のシーケンスS2への一致している環境シグネチャ6を有する特定のセルC
0のフィルタリングされたリストを提供する。したがって、LIDAR装置には、その周囲での移動を表す値が提供される。
【0081】
方法の変形実施形態が使用され得る。例えば、
図7及び
図8は、環境シグネチャを決定するために特定のセルC
0の周囲に適用できる所定のパターンの他の2つの例示的な例を提供する。
【0082】
図7は、32ビット2進ワードを返すが、環境セルC
2の異なる配置から32ビット2進ワードを返す所定のパターンを示す。
図8については、16ビット環境シグネチャを返す8個のセルの所定のパターンの使用を示す。
【国際調査報告】