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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】半導体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20241029BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20241029BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20241029BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01T1/24
H01L31/10 E
G01J1/02 B
H01L27/144 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519517
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 FI2022050651
(87)【国際公開番号】W WO2023052686
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】20216020
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】カインローリ,マルック
(72)【発明者】
【氏名】キルピ,オリ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】バルプラ エアポ
(72)【発明者】
【氏名】プルッニラ,ミカ
【テーマコード(参考)】
2G065
2G188
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB05
2G065BA02
2G065BA32
2G065BA34
2G188AA02
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC28
4M118AA01
4M118AB01
4M118BA06
4M118CA03
4M118GA10
5F149AB01
5F149AB02
5F149AB07
5F149AB09
5F149AB17
5F149BB03
5F149DA22
5F149DA44
5F149FA02
5F149FA04
5F149FA05
5F149HA15
5F149LA02
5F149LA03
5F149LA06
5F149LA07
5F149XB43
(57)【要約】
本発明の例示的な態様によれば、放射線/光子入射窓の材料量が少ない半導体放射線検出装置及び光検出装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出装置であって、
半導体材料により構成される基板と、
前記基板の第1面上の電界発生層と、
前記基板の前記第1面上であって前記電界発生層に隣接する第1電気接点と、
前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側の第2電気接点と、
を備え、前記電界発生層は、
誘起電極と、
前記基板と前記誘起電極との間に設けられた電極絶縁体層と、
を備えることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記誘起電極は、グラフェン等の2次元材料を備える請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記誘起電極は、導体、半導体、半金属、例えば酸化インジウムスズ、薄いTiN、アルミニウム、金属等の光学的に透明な導体の内の少なくとも1つを含む請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記電極絶縁体は、Al、SiOの内の少なくとも1つを含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記誘起電極は、例えば、絶縁、導体及び/又は半導体層の複数の層を備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記複数の層は、前記電極の下の誘電体と共に、反射防止コーティング、光学バンドパス又はバンドストップフィルタ等の光学的に機能する積層を形成する請求項5に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記基板の抵抗率は1kΩcm以上、特に10kΩcmを超える請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記基板は、シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体、II-VI族半導体の内の少なくとも1つを含む請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記基板はドーピングされておらず、前記基板は意図的に添加された不純物を含まない請求項1乃至8の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項10】
前記第1電気接点は、前記電極絶縁体の周囲に位置する請求項1乃至9の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項11】
前記基板の厚さは100nmから50mm、好ましくは1μmから5000μmである請求項1乃至10の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項12】
前記電極絶縁体層は、強誘電体、強エレクトレット及び/又はエレクトレット材料の内の少なくとも1つを含む請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項13】
前記検出装置は、前記電極絶縁体の下に電界誘起反転層が形成されるように構成される請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項14】
前記電気接点は前記基板に接点ドーピングを備える請求項1乃至13の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項15】
前記第1電気接点は前記基板にフロント接点ドーピングウェルを備え、
前記検出装置は、前記電界誘起反転層と前記フロント接点ドーピングウェルとの間に、前記放射線誘起電流を流す為の電流流路が形成されるように構成されている請求項13に記載の放射線検出装置。
【請求項16】
前記第1電気接点は、前記電極絶縁体層の周囲に位置する請求項1乃至15の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項17】
前記検出装置は、前記電界発生層によって前記基板にPN接合が誘起されるように構成される請求項1乃至16の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項18】
前記検出装置は、片面加工のみを用いて製造される請求項1乃至17の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項19】
前記検出装置は、両面加工を用いて製造される請求項1乃至16の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項20】
放射線検出装置であって、
半導体材料により構成される基板と、
前記基板の第1面上の電界発生層であって、誘起電極と、前記基板と前記誘起電極との間に設けられた電極絶縁層とを備える電界発生層と、
前記電界発生層の周囲において前記基板の前記第1面上にある第1電気接点と、
前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側の第2電気接点と、
を備える放射線検出装置。
【請求項21】
前記第1電気接点は前記電界発生層を取り囲む請求項20に記載の放射線検出装置。
【請求項22】
前記第1電気接点は、前記基板に接点ドーピングウェルを備える請求項20又は21に記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置や光検出装置等の半導体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波検出装置では、一般に電磁波検出層として半導体材料が使用される。
【0003】
フォトダイオードは、光子(又は光)を電流に変換するP-N接合を有する半導体デバイスである。P層は正孔(プラス)を多く含み、N層は電子(マイナス)を多く含む。フォトダイオードは、これらに限定されるものではないが、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化インジウムガリウム等、様々な材料から製造することができる。夫々の材料は、コスト効果、感度の向上、波長範囲、低ノイズレベル、又は応答速度等、様々な特性を利用している。
【0004】
光検出装置は、フォトダイオード(PN接合、PIN接合、ショットキーダイオード)を含む様々な技術に基づくことができる。従来のPN接合の放射線検出装置や光検出装置は、検出装置の表面よりかなり深い位置にあるPN接合に基づいている。この為、入射窓と検出装置のPN接合との間に電気的な不感層が残るので、不感層内における放射線信号の吸収によって検出装置の電気出力信号が低下する。更に、従来のPN接合をベースとする検出装置では、PN接合の上部に中程度又は高濃度のドーピングを施すと、この領域におけるオージェ再結合が増加し、量子効率と出力信号が低下する。吸収による信号の減少は、特に紫外線やX線の光子や、ガンマ線の検出において不利に働く。PN接合の過剰な深さとドーピングに関連する信号の減少(オージェ再結合による)は、紫外線光子の吸収長が非常に小さい為、紫外線検出装置では極めて重要である。
【0005】
検出装置の表面近くにある浅いPN接合は、入射窓とPN接合の間の光電気的な不感層が最小限である為、高エネルギー光子(紫外線やX線等)の検出において特に必要とされる。誘起接合は、浅いPN接合を実現する効率的な方法を提供し、低エネルギー光子の検出においても効率的である。
【0006】
既存の誘起接合検出装置は、検出装置表面への誘起表面電荷の堆積に基づいている。それらは表面電荷の特性、例えば表面密度や寿命に依存している。更に、誘起層で放射線が吸収されると、吸収された信号が失われる為、検出装置にとって有害である。誘起層のこれら全ての特徴は、利用可能な材料、堆積及び堆積後のプロセスによって制限される、この層の材料特性によって決定される。検出装置の上部誘電体(入射窓)内部における電荷の現在の生成方法は、信頼性、安定性及び歩留まりの問題を提起している。例えば、引用により本明細書に組み込まれる、ドンスベルク(Doensberg)等著による刊行物「n型シリコンフォトダイオードに基づく予測可能な量子効率検出装置(Predictable quantum efficient detector based on n-type silicon photodiodes)」、2017年、メトロロジア(Metrologia)54巻821頁には、Al2О(AlО、酸化アルミニウム)ベースの誘起接合検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ドンスベルク(Doensberg)等「n型シリコンフォトダイオードに基づく予測可能な量子効率検出装置(Predictable quantum efficient detector based on n-type silicon photodiodes)」、2017年、メトロロジア(Metrologia)54巻821頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の範囲は独立請求項に定義されている。幾つかの実施形態は従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、放射線検出装置であって、
半導体材料により構成される基板と、
前記基板の第1面上の電界発生層と、
前記基板の前記第1面上であって前記電界発生層に隣接する第1電気接点と、
前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側に位置する第2電気接点と、
を備え、前記電界発生層は、誘起電極と、前記基板と前記誘起電極との間に設けられた電極絶縁体層とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、本明細書に開示される放射線検出装置の何れか1つを製造する方法が提供される。第2の態様の更なる態様によれば、製造は、片面加工又は両面加工を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】乃至
図1B】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
図2】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
図3】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
図4】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
図5】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、放射線/光子入射窓の材料量が少なく、半導体基板のドーピングが最小限の、光検出装置等の半導体放射線検出装置を提供する。
【0014】
本明細書中「検出装置」とあるが、これは半導体検出装置を意味し、例えば放射線検出装置、光検出装置等、任意の適切な検出装置を含む。
【0015】
少なくとも幾つかの実施形態において、浅いPN接合は、上部誘電体(入射窓)内部の表面電荷層に依存することなく実現することができ、これは、より優れた信頼性、安定性及び歩留まり、並びに新規な調整可能な機能(半導体の背景ドーピングを自由に選択できる為)に繋がる。
【0016】
本開示の実施形態において、半導体基板は最小限のドーピングのみを必要とする。より具体的には、幾つかの実施形態において、接合は誘起層によって形成される為、接合を形成する為にドーピングは必要無い。言い換えれば、ドーピングは、例えば、フロント及びバック接点、並びにガード接点にのみ使用され、これにより、放射線は、特に検出装置の前側において、ドーピングされた領域を通過しない。
【0017】
本開示は、機能する為に固定表面電荷を必要としない誘起接合について説明するものであり、従って表面電荷の制限に拘束されるものではない。用途のニーズに応じて、表面電荷は本開示の装置の性能を高める為にも使用できる。
【0018】
本開示は、放射線検出においてピンダイオードデバイスと共に使用することができる誘起電極を使用してシリコン表面に不動態化を導入する実施形態について説明する。デバイスの裏面を追加パターニングすることにより、誘起電極のリーク電流による干渉を受けずに電流を読み出すことができる。
【0019】
性能の向上は、本明細書に記載の実施形態によって有益に達成される。特に、誘起電極にグラフェンを使用する場合等、グラフェンを使用する場合には、低量又は最小量の材料が入射窓内に存在する。更に、PN接合の形成及び強度は、誘起電極に印加する電圧によって広い範囲で制御することができる。誘起電極は、抵抗率の高い半導体層でもよい。検出半導体表面における誘起電荷による誘起作用は、誘起電極の導電率を高める相互誘起作用に繋がる。表面電荷の損失や獲得によって動作が影響されない為、表面電荷によって誘起される接合と比較して、信頼性の向上が達成される。そして、新しい読み出し方式は、例えば裏面にパターニング電極やガード電極を使用する場合等、従来の方法の限界を克服する。
【0020】
調整可能性に関しては、本明細書で提示される少なくとも幾つかの実施形態の構造を介して、誘起電極に印加される電圧によって誘起される電荷キャリア密度が、印加電圧を変更することによって自由に選択され得るという利点が得られる。事実上、これにより、動作中であっても、PN接合の特性を広い範囲で電気的に制御することができる。これにより、検出装置の感度とダイナミックレンジを向上することができる。
【0021】
誘起電極は、複数の絶縁、伝導及び/又は半導体層を備えることもでき、これらは、誘起機能に加えて、電極の下の誘電体と共に、活性半導体層内部において光子の所望の検出可能な吸収を高める、光学的に機能的な積層を形成する。このような材料の積層は、反射防止コーティング、光学バンドパス又はバンドストップフィルタを形成することができる。誘電体は複数の層(例えば、Al-TiOナノラミネート)を備えることができ、吸収を最大化する為の設計自由度を更に高めることができる。積層内の幾つかの層は、例えば光学的に共振する誘電体やプラズモニック構造を使用して、所望の吸収を高めるようにパターン化することもできる。
【0022】
一実施形態において、検出装置は、下層がグラフェンのような光学的に極薄の導電層又は半導体層であり、上層がパターン化された金属である誘起電極を備える。このアプローチでは、光学的に極薄の層が均一な誘起電極として機能する。金属層のスペクトル応答特性は、層の形状によって調整される為、吸収と感度を最大にするべく、入射電磁場が活性半導体で最大になる。この設計には、金属層でプラズモンを励起し、金属中の散逸を最小限にするという有益な効果がある。
【0023】
本開示の実施形態において、本開示に係る検出装置は基板を備える。基板は、高抵抗率の半導体材料で構成されてもよい。基板は、N型であってもP型であってもよく、平面、凹凸面、又はこれら2つの組み合わせを有してもよい。適切な半導体材料には、シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体、II-VI族半導体(CdTe等)が含まれる。
【0024】
本開示の実施形態において、本開示に係る検出装置は、基板の第1面上に電界発生層を備える。電界発生層は、電極絶縁体下で、シリコン表面に電子又は正孔を誘起する為に使用される。このような誘起電荷は、ピンダイオードの動作中にリーク電流の増加を引き起こす空乏領域がシリコン-誘電体界面に達しないように、表面を不動態化する。誘起層(誘起電荷層)は、検出装置のカソード/アノードとしても動作する。
【0025】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、基板の第1面上で、電界発生層に隣接する第1電気接点を備える。第1面は、基板の所謂前面又は上面とすることができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、基板の第2面上で、電界発生層とは反対側に第2電気接点を備える。第2面は、基板の所謂背面又は底面とすることができる。
【0027】
幾つかの実施形態において、電界発生層は誘起電極を含んでいてもよい。誘起電極は、グラフェン、光学的に透明な導体、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、薄いTiN、アルミニウム又は他の金属(例えば高エネルギーX線及びガンマ線用途の為)、半金属、半導体(誘起接合-誘起電極相互誘起の為)の内の少なくとも1つから形成されてもよい。電極は、パターン化された層、又は複数のパターン化された層を備えてもよい。幾つかの実施形態において、層は異なる材料であってもよい。幾つかの実施形態において、誘起電極は2D材料を含んでもよく、2D材料という用語は、原子の単層からなる、又は含む結晶性固体を指す。2D材料としては、グラフェン、グラフィン、ボロフェン、シリセン、アンチモネン等が挙げられる。
【0028】
本開示の実施形態において、電界発生層は、基板と誘起電極との間に電極絶縁体層を備える。電極絶縁体層は、Al(例えばALD)、SiO(例えば熱、LPCVD TEOS SiO、PECVD SiO、ALD SiO)の内の少なくとも1つから形成してもよい。又、電極絶縁体層に、強誘電体材料、強エレクトレット材料及び/又はエレクトレット材料を用いてもよい。適切な材料としては、ScAlN(スカンジウムドープ窒化アルミニウム)、HfZrO(酸化ハフニウムジルコニウム)、強エレクトレット材料(空気で満たされたセル状ポリマー構造を備えるポリマーフォームを含み、例えばポリマーはポリプロピレンであってもよい)、及びエレクトレット材料が挙げられる。エレクトレットは、準永久的な電荷又は双極子分極を持つ誘電体材料である。例えば、酸化シリコンと窒化シリコンの積層は、表面をコロナ電荷で帯電させ、その後層をアニールすることで安定したエレクトレットにすることができる。帯電したエレクトレットは、まずエレクトレット材料を加熱し、その後強い電界の存在下で冷却することによっても製造することができる。この誘起電荷は数十年以上安定している。更に、ポリマー材料を使用することもできる。適切なエレクトレット材料の例としては、ポリマー(PTFE等のフッ素ポリマーを含む)、又は酸化ケイ素と窒化ケイ素の積層等が挙げられる。エレクトレット材料を使用する利点は、電気分極の発現に加えて、1つ又は2つの極性の静的表面及び/又は体積電荷を保持する能力である。
【0029】
強誘電体、強エレクトレット及び/又はエレクトレット材料を使用する利点は、製造中に分極の方向を制御することによって誘起電荷の極性を選択できることである。更に、典型的なSiО又はAlОベースの実装では、堆積と熱処理に基づいてのみ電荷を増加させることができる為、これらの限られた方法のみを使用して誘起電荷を増加させることは困難である。しかしながら、強誘電体、強エレクトレット及び/又はエレクトレット材料を使用する場合、電荷は、堆積及び/又は熱処理に加えて、製造プロセス中の外部電界及び/又は電荷を使用して制御することができる為、改善された方法で制御することができる。更に、上記の材料を使用することで、放射線吸収、電荷持続時間、電荷安定性、耐熱性、製造工程への適合性を考慮する際に、様々な選択肢が提供される。
【0030】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、2次電極又は入力部が誘起電極の上又は下に堆積され、そこから電気的に絶縁された浮動電極構造を備える。誘起電極は高抵抗材料で完全に囲まれている為、これらの入力部は誘起電極に容量的に接続されているだけである。従って、直流動作点については、誘起電極は浮動ノードである。
【0031】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は1つ以上のガードレールを備える。ガードレールは、ダイオード領域の外側から発生する電流を収集する為に使用することができる。
【0032】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、0.5kΩcm以上の抵抗率値を有する基板を備える。シリコンの場合、非常に良好な値は10kΩcm以上である。
【0033】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、少なくとも1つのドーパントを含み、前記ドーパントは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、リチウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、金、白金、テルル、硫黄、スズ、ベリリウム、亜鉛、クロム、炭素、セレン、マグネシウム、塩素、ヨウ素、フッ素の内の少なくとも1つの材料を含む。フロント接点とガードのドーピングは、基板がP型の場合はN型ドーピングとし、基板がN型の場合はP型ドーピングとする。バック接点とガードのドーピングは基板がP型の場合はP型ドーピングとし、基板がN型の場合はN型ドーピングとする。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、意図的に添加された不純物を含まない、ドーピングされていない基板を備える又はこれから成る。このような基板は、純粋な半導体結晶、又は空孔等の結晶学的欠陥に由来する天然由来のドーピングを有する半導体結晶を備える又はこれから成ってもよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、検出装置は、ウェル及びドーピングを備える第1接点を備える。当該第1接点は、電界発生層の誘電体層の周囲に配置されてもよい。一実施形態において、第1電気接点は電極絶縁体層を覆う。
【0036】
幾つかの実施形態において、検出装置の基板の厚さは200nmから50mm、好ましくは1μmから5000μmである。
【0037】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、電極絶縁体の分極を備え、例えば、電極絶縁体は、強誘電体、強エレクトレット、及び/又はエレクトレット材料を含み、誘起電極がその上に配置されてもよい。これにより、電荷を改良された方法で制御でき、すなわち、層の分極又は「プログラミング」は、誘起電極に電圧パルスを印加することによって行うことができるという利点が得られる。これにより、動作中に電荷、ひいてはPN接合の特性を電気的に変化させることができる。特に、有益な実施形態は、電極絶縁体が強誘電体材料を備える場合である。
【0038】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、電極絶縁体の下の誘起電極によって電界誘起反転層が誘起されるように構成される。P型基板を使用する場合、これは、電子が半導体-酸化物界面の非常に薄い層に現れることを意味し、P型材料で優勢な正孔と反対に帯電している為、反転層と呼ばれる。N型基板では、反転層は正孔によって同様に形成される。反転層が形成されると、誘起電荷Qの増加に伴って空乏幅が拡大しなくなる。
【0039】
第1の例示的な実施形態において、グラフェンを誘起材料として用い、Al2O3(Al)を電極絶縁体材料として用いる。デバイスの概略図を図2に示す。
【0040】
第1の例示的な実施形態において、誘起電極は、電極絶縁体下のシリコン表面に電子又は正孔を誘起する為に使用される。このような誘起電荷は、ピンダイオードの動作中にリーク電流の増加を引き起こす空乏領域がシリコン-誘電体界面に達しないように表面を不動態化する。誘起層は、検出装置のカソード/アノードとしても動作する。
【0041】
誘起電極からダイオードのフロント接点へのリーク電流Ielecは、全電流に影響する。この追加電流は、バック接点から測定される電流には加算されない。バックサイドパターニングとバック接点からの電流読み出しは、フロント接点における誘起電極のリーク電流の問題を解決する為に使用される。場合によっては、有用な光電流の成分が誘起電極に流れることもある。
【0042】
ガードリングは、ダイオードの領域外で発生する電流を集める為に使用される。
【0043】
図1Aは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る検出装置101の例示的な実施形態の断面図である。検出装置101は、基板1と、電極絶縁体2と、誘起電極3と、フロントガード接点(FGC)4と、フロント接点5と、誘起電極への接点6と、バック接点ドーピング7と、バック接点8と、バックガード接点(BGC)9と、バックガード接点10とを備える。更に、検出装置101は、フロントガードドーピング(FGD)11及び13、フロント接点ドーピング(FCD)12及び14、並びにバックガードドーピング(BGD)15及び16を備えてもよい。
【0044】
図1Bは、検出装置101の例示的な実施形態の断面図であり、基板がP型、フロント接点ドーピングがN型、バック接点ドーピングがP型の場合における基板及び誘起電流の流れ並びに電子正孔の流れが図示されている。フロントガード及びバックガードは、基板寄生電流を収集する。
【0045】
図中で使用されている用語、すなわちe、h、I、Ielec等に関して、eは電子、hは正孔、Iはガード電極によって収集された半導体基板からの寄生電流、そしてIelecは誘起電極からフロント接点へのリーク電流である。Velecは電極電圧、VdiodeはPN接合にわたって印加される電圧である。Vguardはガード電極に印加される電圧である。
【0046】
図2は、少なくとも幾つかの実施形態に係る、片面加工によって作製された、電極誘起接合に基づく半導体検出装置102の例示的な実施形態の断面図である。検出装置102はP型基板で示されており、フロント接点ドーピングはN型であり、バック接点ドーピングはP型である。
【0047】
リーク電流Ielecが存在する場合、測定されたダイオード出力電流は、式Icorr diode=Idiode-Ielecによって補正されなければならない。補正された電流Icorr diodeは、バック接点ドーピング7、基板1の一部及びフロント接点ドーピング12、14を介してバック接点8とフロント接点5の間に流れる放射線誘起電流を表す。基板1の一部は、電極絶縁体2の下の基板1の表面層における電界発生層2、3によって誘起された電界誘起反転層(図示せず)を備える。基板1の一部は更に、電界誘起反転層とバック接点ドーピング7との間の基板1の体積を備え、この体積は空乏領域を備える。
【0048】
図3は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る、検出装置103の例示的な実施形態の断面図である。半導体検出装置103は、両面加工によって作製された誘起接合に基づく。検出装置103は、フロント接点ドーピングがN型であり、バック接点ドーピングがP型であるP型基板1を備える。バック接点8から測定されるダイオード電流は、リーク電流Ielecの影響を受けない。
【0049】
図4は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る検出装置104の例示的な実施形態の断面図である。半導体検出装置104は、片面加工によって作製された電極仕事関数誘起接合に基づく。検出装置は、フロント接点ドーピングがN型であり、バック接点ドーピングがP型であるP型基板を備える。リーク電流Ielecが存在する場合、それは測定されたダイオード出力電流に寄与し、誘起電極は追加の電流コレクタとして機能する。
【0050】
図5は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る検出装置105の例示的な実施形態の断面図である。半導体検出装置105は、両面加工によって作製された電極仕事関数誘起接合に基づく。基板表面と誘起電極材料の仕事関数の差が有効誘起電圧として作用する。検出装置105は、フロント接点ドーピングがN型であり、バック接点ドーピングがP型であるP型基板を備える。バック接点から測定されるダイオード電流は、リーク電流Ielecの影響を受けない。
【0051】
更なる実施形態において、検出装置は、バック接点がN型であり、フロント接点がP型であるN型基板を備える。
【0052】
更なる実施形態において、図5の検出装置と同様に、フロント接点5と接点6は、製造工程中にこれらの層を構造的に組み合わせることによって電気的に接続される。これにより、検出装置の一部ではない回路に接続を行う必要がない為、構造がより安定し、製造工程がより簡単になるという利点がある。
【0053】
本開示は、少なくとも、全スペクトル範囲の光検出装置:単一画素及び画像アレイ(カメラから光量センサ等の膨大な用途)、紫外線の検出:ソーラーブラインド紫外線検出装置、軍事用途:武器又は爆発物の発射による閃光の検出、X線、幅広い医療への用途:コンピュータ断層撮影(CT)、歯科用X線等、材料分析、構造モニタリング、X線税関検査(非侵入検査等)の分野における用途に好適であり、産業上の利用可能性を見出すことができる。更に、少なくとも幾つかの実施形態は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、粒子線等の放射線に感度があり、安全や監視の用途に有益である。
【0054】
図に示す検出装置を含め、本明細書に開示する検出装置の構造には、以下の材料の組み合わせを採用することができる。単一の材料の組み合わせが単一の行に開示されている。
【0055】
【表1】
【0056】
例えば、上記実施形態1-42において、以下のドーパント及び接点材料が使用される。N型シリコン及びゲルマニウムの基板ドーパントは、リン、ヒ素、アンチモン等の元素を含んでもよい。P型シリコン及びゲルマニウムの基板ドーパントは、ホウ素及びアルミニウム等の元素を含んでもよい。フロント及びバック誘電体は、SiОを含んでもよい。フロント接点金属、フロントガード接点金属、誘起電極接点金属、バック接点金属及びバックガード接点金属は、アルミニウム、金、チタン、タングステン、ニッケル、銅、モリブデン等の金属を含んでもよい。(Pb,La)(Zr,Ti)Oの表記は、PbZrO、PbTiO、LaZrO、又はLaTiOを意味する。
【0057】
幾つかの実施形態において、検出装置の基板は、ドーパント濃度が1015ドーパント原子/cm未満、例えば1011ドーパント原子/cm未満、例えば10ドーパント原子/cm未満となるようなドーパントを含む。
【0058】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセス工程、又は材料に限定されるものではなく、当業者によって認識されるであろうそれらの均等物に拡張されることを理解されたい。又、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0059】
本明細書全体を通して、一実施形態又は実施形態への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な箇所で「一実施形態において」又は「実施形態において」という表現が現れるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指す訳ではない。例えば、約、実質的に等の用語を用いて数値に言及する場合、正確な数値も開示する。
【0060】
本明細書において、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストで示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが、別個の固有のメンバーとして個々に識別されるものとして解釈されるべきである。従って、このようなリストの個々のメンバーは、反対の指示無く、共通のグループにおけるそれらの提示にのみ基づいて、同じリストの他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。更に、本発明の様々な実施形態及び例が、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で言及されることがある。このような実施形態、例、及び代替物は、互いの事実上の均等物とは解釈されず、本発明の別個の自律的な表現と見なされることが理解される。
【0061】
更に、記載された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。先の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供する為に、長さ、幅、形状等の例のような多数の具体的な詳細を提供した。しかしながら、当業者であれば、本発明は、具体的な詳細の1つ以上がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等を用いても実施できることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避ける為に、周知の構造、材料、又は操作は示されず、又は詳細に説明されない。
【0062】
上述した例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、形態、使用法、及び実施の詳細において、発明能力を行使すること無く、本発明の原理及び概念から逸脱することなく、多数の改変を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲による以外は、本発明を限定することを意図していない。
【0063】
本明細書では、「備える(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、引用されていない特徴の存在を排除するものでも、要求するものでもない、開かれた限定として使用される。従属請求項に記載された特徴は、特に明示しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。更に、本書を通じて「1つの(a)」又は「1つの(an)」、すなわち単数形の使用は、複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0064】
101、102、103、104、105 検出装置
1 基盤
2 電極絶縁体
3 誘起電極
4 フロントガード接点
5 フロント接点
6 誘起電極への接点
7 バック接点ドーピング
8 バック接点
9、10 バックガード接点
11、13 フロントガードドーピング
12、14 フロント接点ドーピング
15、16 バックガードドーピング
17 フロント誘電体
18 バック誘電体
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】