IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロメガ コーポレイションの特許一覧

特表2024-540826一酸化窒素を検出するための化合物及び方法
<>
  • 特表-一酸化窒素を検出するための化合物及び方法 図1
  • 特表-一酸化窒素を検出するための化合物及び方法 図2
  • 特表-一酸化窒素を検出するための化合物及び方法 図3
  • 特表-一酸化窒素を検出するための化合物及び方法 図4
  • 特表-一酸化窒素を検出するための化合物及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】一酸化窒素を検出するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/68 20060101AFI20241029BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07D277/68 CSP
C12Q1/66
C12Q1/02
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519880
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022077390
(87)【国際公開番号】W WO2023056447
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/251,395
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】593089149
【氏名又は名称】プロメガ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン マシュー エイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン フイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ウェンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ホフスティーン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィデュギリーネ ジョランタ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ22
4B063QQ89
4B063QR02
4B063QR33
4B063QR57
4B063QR80
4B063QR90
4B063QS05
4B063QS28
4B063QS38
4B063QX02
(57)【要約】
試料中の一酸化窒素を選択的に検出するために使用可能な化合物を本明細書で開示する。当該化合物を含む組成物、及び、当該化合物を用いる一酸化窒素の検出方法もまた、本明細書で開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
またはその塩。
[式中:
1は、-CN及び
【化2】
から選択され;
2は、水素及びハロから選択され;
3は、水素、C1-C6アルキル、及びヒドロキシ-C1-C6-アルキルから選択され;
nは0、1、2、または3であり;
各R4は独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、-COORa、及び-CONRbcから選択され;
5は、水素及びC1-C4アルキルから選択され;かつ
a、Rb、及びRcはそれぞれ独立して、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、及びC1-C6ヘテロアルキルから選択される。]
【請求項2】
1は-CNである、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項3】
1
【化3】
である、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項4】
5は、水素及びメチルから選択される、請求項3に記載の化合物、またはその塩。
【請求項5】
2は水素である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項6】
3は水素である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項7】
3はヒドロキシ-C2-C4-アルキルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項8】
3は-CH2CH2CH2OHである、請求項7に記載の化合物、またはその塩。
【請求項9】
nは0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項10】
nは1である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩。
【請求項11】
4は、メトキシ及びニトロから選択される、請求項10に記載の化合物、またはその塩。
【請求項12】
【化4】
から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項13】
試料中での一酸化窒素の検出方法であって、
前記試料を、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩と接触させることと、
前記試料中にルシフェリン利用ルシフェラーゼがまだ存在しない場合に、前記試料を、前記ルシフェリン利用ルシフェラーゼと接触させることと、
前記試料中で発光を検出することと、
を含む前記検出方法。
【請求項14】
前記試料が、生細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、前記ルシフェリン利用ルシフェラーゼを発現する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ルシフェリン利用ルシフェラーゼを前記試料に添加することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ルシフェリン利用ルシフェラーゼが、ホタルルシフェラーゼまたはコメツキムシルシフェラーゼである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、またはその塩を含む、キット。
【請求項19】
ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素またはルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
バッファー試薬を更に含む、請求項18または19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月1日に出願された米国仮特許出願第63/251,395号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
試料中の一酸化窒素を選択的に検出するために使用可能な化合物を本明細書で開示する。当該化合物を含む組成物、及び、当該化合物を用いる一酸化窒素の検出方法もまた、本明細書で開示する。
【背景技術】
【0003】
一酸化窒素(NO)は、約2~6秒の半減期を持つ反応性分子であり、一酸化窒素合成酵素(eNOS、iNOS、及びnNOS)により、L-アルギニンから形成される。NOは、血管収縮及び免疫応答を調節する、重要なシグナル伝達分子である。NOは、スーパーオキサイドと速やかに反応して細胞毒性過酸化亜硝酸塩を形成するため、酸化ストレスにおいて重要な役割を果たす。したがって、細胞の一酸化窒素を直接検出する方法が、非常に求められている。NOを検出する現在の方法としては、グリース反応、及び、様々なNO反応性フルオロフォアを用いる、末端生成物(亜硝酸塩及び硝酸塩)の検出による間接比色分析測定が挙げられる。しかし、o-フェニレンジアミン系の反応性部分を含むものなどの、一般的に用いられているいくつかのプローブは、デヒドロアスコルビン酸などのビス求電子試薬と反応し、偽陽性を生成する傾向にある。したがって、NOを検出するための、定量的かつ特異的なアッセイが求められている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、式(I)の化合物;
【化1】
またはその塩を提供し、式中:
1は、-CN及び
【化2】
から選択され;
2は、水素及びハロから選択され;
3は、水素、C1-C6アルキル、及びヒドロキシ-C1-C6-アルキルから選択され;
nは0、1、2、または3であり;
各R4は独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、-COORa、及び-CONRbcから選択され;
5は、水素及びC1-C4アルキルから選択され;かつ
a、Rb、及びRcはそれぞれ独立して、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、及びC1-C6ヘテロアルキルから選択される。
【0005】
いくつかの実施形態では、R1-CNである。いくつかの実施形態では、R1
【化3】
である。いくつかの実施形態では、R5は、水素及びメチルから選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、R2は水素である。
【0007】
いくつかの実施形態では、R3は水素である。いくつかの実施形態では、R3は、ヒドロキシ-C2-C4-アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は、-CH2CH2CH2OHである。
【0008】
いくつかの実施形態では、nは0である。いくつかの実施形態では、nは1である。いくつかの実施形態では、R4は、メトキシ及びニトロから選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物は以下
【化4】
ならびにこれらの塩から選択される。
【0010】
別の態様では、試料中での一酸化窒素の検出方法であって、
上記試料を、本明細書で開示する化合物(例えば、式(I)の化合物)、またはその塩と接触させることと、
前記試料に既に存在していない場合に、前記試料を、ルシフェリン利用ルシフェラーゼと接触させることと、
上記試料中で発光を検出することと、
を含む、上記方法を本明細書で開示する。
【0011】
いくつかの実施形態では、試料は、生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ルシフェリン利用ルシフェラーゼを発現する。いくつかの実施形態では、方法は、ルシフェリン利用ルシフェラーゼを試料に添加することを含む。いくつかの実施形態では、ルシフェリン利用ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、またはコメツキムシルシフェラーゼである。
【0012】
別の態様では、本明細書で開示する化合物(例えば、式(I)の化合物)、またはその塩を含むキットを本明細書で開示する。いくつかの実施形態では、キットは、ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素、または、ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、バッファー試薬を更に含む。
【0013】
他の態様及び実施形態は、以下の説明及び図面の観点から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本明細書で開示するものなどの化合物を用いて、細胞内の一酸化窒素を検出する方法の、図解概要を示す。
図2】細胞の試料または他の検体内の一酸化窒素を検出するルミネセンスアッセイの図解概要を示す。「処理」ステップとは、一酸化窒素プローブの前、後、または、これと同時に添加することができる、未知の実験構成成分(例えば、薬剤候補)の添加を意味する。
図3】実施例2に示す、無細胞試料内の一酸化窒素を検出するアッセイからのデータを示す。
図4】実施例3に示す、リポ多糖体(LPS)及びインターフェロンγ(INFγ)による、相乗的なNO刺激の後の、細胞内の一酸化窒素を検出するアッセイからのデータを示す。
図5】5A~5Bは、NOレベル(図5A)を増加させるためのスーパーオキサイドスカベンジャーとしてMitoTEMPOを用いる、スーパーオキサイド(SO)及びNOの、SIN-1誘導の概略図、ならびに、実施例4に示す、SIN-1及びMitoTEMPOで処理した5つの異なる細胞株内でNOを検出するアッセイからのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
他の反応性窒素及び酸素種よりも、一酸化窒素の検出に対して高い特異性を有する、プローブ化合物、特に、ケージドアミノルシフェリン及びアミノシアノベンゾチアゾール化合物、ならびにこれらの誘導体を本明細書で開示する。一酸化窒素との反応の際に、安定したレポーター生成物が形成され、アッセイを、均質な「添加及び読取り」プレートベースのフォーマット、または、培地サンプリングによるキネティックモードで実施することができるようになる。
【0016】
定義
本明細書に記載する実施形態の実施または試験の際に、本明細書に記載の方法及び材料に類似したまたは同等の、任意の方法及び材料を使用することは可能であるが、いくつかの好ましい方法、組成物、装置、及び材料について、本明細書で記載する。しかし、本材料及び方法について記載する前に、特定の分子、組成物、方法論、または手順は、日常的な実験及び最適化に従い変化し得るため、本発明は、本明細書に記載する特定の分子、組成物、方法論、または手順に限定されないものと理解されるべきである。また、明細書で用いる用語は、単に特定の様式または実施形態を説明するためのものであり、本明細書に記載する実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されなければならない。
【0017】
本明細書において別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例えば、本明細書に記載する、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションと関連して用いる任意の専門用語、ならびに、これらの技術は周知であり、かつ、当該技術分野において一般的に使用されているものである。用語の意味及び範囲は明確でなければならないが、何らかの潜在的な曖昧さが発生する場合は、本明細書で提供する定義を、あらゆる辞書または外的な定義に優先する。更に、文脈によって別途必要とされる場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0018】
本明細書において、また付属の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈によってそうでない旨が明確に示されないかぎり、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「ペプチド(a peptide)」と言う場合には、1つ以上のペプチド及び当業者には周知のその等価物のことを指す、といった具合である。
【0019】
本明細書で使用する場合、「及び/または」という用語は、個別に列挙した項目のいずれかを含む、列挙した項目のありとあらゆる組み合わせを含む。例えば、「A、B、及び/またはC」は、A、B、C、AB、AC、BC、及びABCを包含し、これらはそれぞれ、記述「A、B、及び/またはC」により別個に説明することができるものとみなされる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「~を含む(comprise)」という用語及びその言語学的な変化形は、更なる特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を除外することなく、列挙される特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を示す。これに対して、「~からなる」なる用語及びその言語学的な変化形は、列挙される特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を示し、なおかつあらゆる記載されていない特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などは、通常伴う不純物を例外として除外する。「から本質的になる」という語句は、列挙される特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)など、及び、組成物、システム、または方法の基本的性質に実質的に影響を及ぼさない、任意の追加の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)を意味する。本明細書の多くの実施形態は、オープンな「~を含む(comprising)」という言葉を用いて説明される。そのような実施形態は、「からなる」及び/または「から本質的になる」という閉鎖形式の複数の実施形態を包含しており、これらは代替的に、そのような文言を使用して特許請求または記載され得る。
【0021】
本明細書における数値範囲の列挙のために、それらの間に同じ程度の精度で介在する各数値が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲については、数字7及び8は、6及び9に加えて企図され、6.0~7.0の範囲については、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に企図される。
【0022】
「発光」とは、適切な条件下で、例えば、ルシフェリン(例えば、アミノルシフェリン)、またはアミノシアノベンゾチアゾール化合物(例えば、一酸化窒素の、式(I)の化合物との反応後に生成されるもの)などの、好適な基質の存在下での、ルシフェラーゼ酵素の光出力を意味する。光出力は、ルシフェリン基質の添加時に開始し得る、発光反応の開始時に、光出力の瞬間的な、または、ほぼ瞬間的な測定値(場合によっては、「T=0」発光または「フラッシュ」と呼ばれる)として測定することができる。反応チャンバ(例えば、96ウェルプレートなどのプレート)を、例えば、照度計または光電子増倍管を用いて、光出力を測定することができる読取り装置内に配置させることができる。光出力または発光は、例えば、同一反応チャンバで数秒、数分、数時間などの期間に経時的に測定されてもよい。光出力または発光は、経時的平均、シグナルの減衰半減期、一定期間にわたるシグナルの合計、またはピーク出力として報告されてもよい。発光は、相対発光量(RLU)として測定することができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「試料」という用語は、その最も広義に使用される。ある意味において、それは、いずれかの供給源から得られた検体または培養物、ならびに生物学的試料及び環境試料を含むことを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から得られ、流体、固体、組織、及び気体を含むことができる。生物学的試料は、血液製剤(血漿、血清など)などを含む。試料は、細胞、細胞溶解物、または、精製形態の本明細書に記載する酵素、ペプチド、及び/またはポリペプチド(例えば、精製タンパク質試料)もまた意味することができる。細胞溶解物は、溶解剤により溶解されている細胞、または、ウサギ網状赤血球もしくは小麦胚溶解物などの溶解物を含むことができる。試料は、インビトロ試料、及び、無細胞発現系などの無細胞試料もまた含むことができる。環境試料は、表面物質、土壌、水、結晶、及び工業試料などの、環境物質を含む。試料は、精製タンパク質試料などの、精製試料もまた含むことができる。しかしながら、これらの例は、本発明に該当する試料の種類を限定すると解釈されるべきではない。
【0024】
以下に特定の官能基及び化学用語の定義をより詳細に説明する。本開示の目的に関して、元素は、元素の周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の見返しに準拠して特定され、特定の官能基は概して、上記Handbook中に記載のとおりに定義される。更に、有機化学の一般原則、加えて、特定の官能部分及び反応性は、Sorrell,Organic Chemistry,2nd edition,University Science Books,Sausalito,2006;Smith,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanism,and Structure,7th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2013;Larock,Comprehensive Organic Transformations,3rd Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2018;及び、Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されており、これらそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、直鎖または分枝状飽和炭化水素を意味する。アルキル鎖としては、例えば、1~30個の炭素原子(C1-C30アルキル)、1~24個の炭素原子(C1-C24アルキル)、例えば、1~16個の炭素原子(C1-C16アルキル)、1~14個の炭素原子(C1-C14アルキル)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~10個の炭素原子(C1-C10アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)、1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)、または1~4個の炭素原子(C1-C4アルキル)を挙げることができる。アルキルの代表的な例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、及びn-ドデシルが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分枝状炭化水素鎖を意味する。二重結合(複数可)は、炭化水素鎖内の任意の位置に位置することができる。アルケニルの代表的な例としては、限定するものではないが、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、及び3-デセニルが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含有する直鎖または分枝状炭化水素鎖を意味する。三重結合(複数可)は、炭化水素鎖内の任意の位置に位置することができる。アルキニルの代表的な例としては、限定するものではないが、エチニル、プロピニル、及びブチニルが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義する、アルキル基を意味する。アルコキシの代表的な例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、及びtert-ブトキシが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「アミノ」という用語は、基-NRxyを意味し、式中、Rx及びRyは、水素及びアルキル(例えば、C1-C4アルキル)から選択される。
【0030】
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、単一の環(単環式)、または、縮合環系を含む複数の環(二環式もしくは三環式)を有し、ヘテロ原子を有しない、芳香族炭素環式環を意味する。本明細書で使用する場合、アリールは、6~20個の炭素原子(C6-C20アリール)、6~14個の環炭素原子(C6-C14アリール)、6~12個の環炭素原子(C6-C12アリール)、または、6~10個の環炭素原子(C6-C10アリール)を含有する。アリール基の代表的な例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントレニルが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子を含有し、ヘテロ原子を含有しない、飽和炭素環式環を意味する。シクロアルキルは、単環式、二環式、架橋式、縮合、またはスピロ環式であってよい。シクロアルキルの代表的な例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、及びビシクロ[5.2.0]ノナニルが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義するように、少なくとも1つの水素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個の水素原子)がハロゲンで置き換えられているアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、アルキル基の各水素原子はハロゲンで置き換えられている。ハロアルキルの代表的な例としては、限定されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及び3,3,3-トリフルオロプロピルが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ハロアルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義する、ハロアルキル基を意味する。ハロアルコキシの代表的な例としては、限定されるものではないが、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、及び2,2,2-トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」という用語は、炭素原子(及び、任意の会合する水素原子)の1つ以上がそれぞれ独立して、例えば、-NH-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-などのヘテロ原子基で置き換えられている、本明細書で定義する、アルキル基を意味する。例えば、1、2、または3個の炭素原子は独立して、同一または異なるヘテロ原子基で置き換えられてよい。ヘテロアルキル基の例としては、限定されないが、-CH2OCH3、-CH2SCH3、-CH2NHCH3、-CH2N(CH32、-CH2S(O)CH3、及び-CH2S(O)2CH3が挙げられる。ヘテロアルキルは、アルキルの炭素原子が酸化されている(即ち、-C(O)-である)基もまた含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置き換えられている、本明細書で定義する、アルキル基を意味する。
【0038】
基または部分が置換可能である場合、「置換された」という用語は、「置換された」を用いる表現で示される基における、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個;いくつかの実施形態では、1、2、または3個;及び、他の実施形態では、1または2個)の水素が、列挙され示される基の選択で、または、当業者に周知の好適な置換基(例えば、以下で列挙する基の1つ以上)で、示される原子の通常の価数を超えないことを条件にして、置き換えられることが可能であることを意味する。置換基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アミノ、アミド、アミジノ、アリール、アジド、カルバモイル、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、グアニジノ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ヒドラジノ、イミノ、オキソ、ニトロ、ホスフェート、ホスフェート、ホスホネート、スルホン酸、チオール、チオン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用する場合、化学構造において、表示:
【化5】
は、ある部分が別の部分に結合した点(例えば、化合物の残部への置換基)を表す。
【0040】
本明細書に記載する化合物に関して、基またはその置換基は、選択及び置換が、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を、例えば自然に受けない、安定した化合物をもたらすように、原子の許容原子価及び置換基に従い選択することができる。
【0041】
置換基が、左から右に向かって書かれる、それらの従来の化学式により明記される場合、それらの置換基は、右から左に構造を記載することで生じる置換基を、任意選択的に包含する、例えば、-CH2O-は、任意選択的に-OCH2-もまた列挙し、-OC(O)NH-は、任意選択的に、-NHC(O)O-もまた列挙する。
化合物
【0042】
式(I)の化合物:
【化6】
またはその塩を本明細書で開示し、式中:
1は、-CN及び
【化7】
から選択され;
2は、水素及びハロから選択され;
3は、水素、C1-C6アルキル、及びヒドロキシ-C1-C6-アルキルから選択され;
nは0、1、2、または3であり;
各R4は独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、-COORa、及び-CONRbcから選択され;
5は、水素及びC1-C4アルキルから選択され;かつ
a、Rb、及びRcはそれぞれ独立して、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、及びC1-C6ヘテロアルキルから選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、R1-CNである。いくつかの実施形態では、R1
【化8】
である。いくつかの実施形態では、R5は、水素及びメチルから選択される。いくつかの実施形態では、R5は水素である。いくつかの実施形態では、R5はメチルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、R2は水素である。
【0045】
いくつかの実施形態では、R3は水素である。いくつかの実施形態では、R3は、ヒドロキシ-C2-C4-アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は、-CH2CH2CH2OHである。
【0046】
いくつかの実施形態では、nは0である。
【0047】
いくつかの実施形態では、nは1である。いくつかの実施形態では、R4は、メトキシ及びニトロから選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、化合物は以下
【化9】
ならびにそれらの塩から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、化合物は塩形態、例えば、対イオンと会合した親化合物の荷電形態である。化合物の中性形態は、塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を従来の様式で単離することによって再生され得る。化合物の親形態は、極性溶媒中での溶解度などのある特定の物理的特性において、種々の塩形態とは異なるが、さもなければ塩は、本開示の目的に関して、化合物の親形態と同じである。
【0050】
特に、化合物が、アニオン性である、または、アニオンであり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩は、1つ以上の好適なカチオンと共に形成されることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属カチオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類カチオン、ならびに、他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。カリウム及びナトリウム塩が、特に好適であり得る。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(即ち、NH4 +)、ならびに、置換アンモニウムイオン(例えば、NH31 +、NH22 +、NHR3 +、及びNR4 +)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンは、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、加えて、リジン及びアルギニンなどのアミノ酸に由来するものである。いくつかの実施形態では、化合物はカリウム塩である。いくつかの実施形態では、化合物はナトリウム塩である。
【0051】
化合物がカチオン性である、または、カチオン性であり得る官能基を有する(例えば、-NH2が-NH3 +であり得る)場合、塩は、好適なアニオンと共に形成されることができる。適切な無機アニオンの例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、およびリンの無機酸から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。好適な有機アニオンの例としては、以下の有機酸:2-アセチルオキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、テトラフルオロホウ酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び、吉草酸に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、化合物は、塩化物塩、臭化物塩、またはヨウ化物塩などのハロゲン化物塩である。いくつかの実施形態では、化合物は、テトラフルオロホウ酸塩またはトリフルオロメタンスルホン酸塩である。
【0052】
化合物は、多数の好適な方法により調製することができ、これらのいくつかは、実施例に示される。化合物及び中間体は、有機合成の当業者に周知の方法により、単離及び精製することができる。化合物を単離及び精製するための慣用の方法の例は、例えば、Furniss、Hannaford、Smith、及びTatchellによる、“Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry”,5th edition(1989)、pub. Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されているような、任意の活性炭による前処理を用いた高温または低温での再結晶、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での昇華、及び摩砕によるシリカゲル、アルミナ、またはアルキルシラン基で誘導体化されたシリカなどの固体担体でのクロマトグラフィーを含み得るがこれらに限定されない。
【0053】
個々のステップごとの反応条件及び反応時間は、使用される特定の反応物及び使用される反応物中に存在する置換基に応じて変化し得る。反応は、従来の方法で、例えば残留物から溶媒を除去することにより後処理されてもよく、更に、限定するものではないが、結晶化、蒸留、抽出、摩砕及びクロマトグラフィーなどの当該技術分野で一般的に公知の方法に従って精製されてもよい。別段の記載がない限り、出発材料及び試薬は、市販されているか、または化学文献に記載された方法を用いて市販されている材料から当業者により調製され得る。
【0054】
反応条件の適切な操作、合成経路の試薬及び順序、反応条件と適合し得ない任意の化学官能基の保護、ならびに方法の反応順序における適切な時点での脱保護を含む標準的な実験が、本開示の範囲に含まれる。適切な保護基、及びそのような適切な保護基を使用して異なる置換基を保護及び脱保護する方法は、当業者に周知であり、その例は、Greensの書籍、表題Protective Groups in Organic Synthesis(4thed.)、John Wiley & Sons,NY(2006)に記載されているPGM Wets and TW Greeneに見出すことができる。
【0055】
開示した化合物の光学的に活性な形態が必要とされる場合、これは、(例えば、適切な反応ステップの不斉誘導により調製される)光学的に活性な出発物質を用いる、本明細書に記載する手順のうちの1つを実施することにより、または、(クロマトグラフィー分離、再結晶、もしくは酵素分割などの)標準的な手順を用いる、化合物または中間体の立体異性体の混合物を分割することにより、得ることができる。
【0056】
同様に、化合物の純粋な幾何異性体が必要とされる場合、これは、純粋な幾何異性体を出発物質として用い、本明細書に記載する手順のうちの1つを実施することにより、または、クロマトグラフィー分離などの標準的な手順を用いる、化合物または中間体の幾何異性体の混合物を分割ことにより、得ることができる。
【0057】
記載する合成スキーム及び具体例は例示のものであり、本開示の範囲、または特許請求の範囲を限定するものと読み取ってはいけない。合成方法及び具体例の代替物、変更、及び等価物が企図される。
【0058】
本開示は、自然界に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で1つ以上の原子を置き換えているという事実を除けば、式(I)で列挙されたものに同一である、同位体標識された化合物もまた含む。本発明の化合物に組み込むのに適した同位体の例は、それぞれ、限定するものではないが、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36C1などの水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素である。同位体標識された式(I)の化合物は、概して、当業者に公知の従来の技術によって、または、同位体標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用して、付随する実施例に記載されるものに類似したプロセスによって調製され得る。
【0059】
使用方法、システム、及びキット
本明細書で開示する化合物(例えば、式(I)の化合物)を用いる一酸化窒素の検出方法を本明細書で開示する。化合物は、反応性部分、特に、
【化10】
を特徴とする。理論に拘束されることを望むものではないが、化合物は、スキーム1に示す一酸化窒素と反応すると考えられる。NOと酸素の生成物(三酸化二窒素)は、反応性部分の硫黄と速やかに反応し、良好な脱離基であるチオニトライトを付随的に放出しながら、中間体であるジアミノオキサジアゾールを形成する。オキサジアゾールは、速やかに加水分解して、ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素用の基質であるアミノルシフェリンまたはアミノシアノベンゾチアゾールを放出し、これによって発光が生じる。ルシフェリン、アミノルシフェリン、ヒドロキシシアノベンゾチアゾール、及びアミノシアノベンゾチアゾール化合物を利用して発光を生み出すルシフェラーゼ(「ルシフェリン利用ルシフェラーゼ」または「ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素」)としては、昆虫などの、様々な生体で見出されるもの(例えば、Photinus pyralis及びPhoturis pennsylvanica(北米のホタル)、Pyrophorus plagiophthalamus(ジャマイカコメツキムシ)、Renilla reniformis(ウミシイタケ)、ならびにいくつかの細菌(例えば、Xenorhabdus luminescens及びVibrio spp))が挙げられる。
【0060】
スキーム1.
【化11】
【0061】
一酸化窒素との反応によりアンケージングする前に、式(I)の化合物は、ルシフェラーゼ酵素とは非反応性であり、発光が一酸化窒素の存在下にて観察されるのみである。反応性部分は、他の反応性窒素及び酸素種よりも、一酸化窒素に対して選択的であることが示されている(例えば、実施例のデータを参照されたい)。デヒドロアスコルビン酸などのビス求電子試薬と反応して偽陽性を生成する傾向にある、最も一般的に用いられるo-フェニレンジアミンベースの反応性部分とは異なり、チオセミカルバジド部分では、レポーター分子を放出するために生じなければならない2ステップ(オキサジアゾールへの環化、続いて加水分解)によって、偽陽性は起こり得る可能性が低い。
【0062】
式(I)の化合物の別の利点は、アンケージド生成物が生物発光により検出され、(蛍光プローブと同様に)外光を必要としないことである。更に、一酸化窒素種は不安定であるものの、式(I)の化合物の、一酸化窒素との反応の際に、アンケージド化合物は安定である。NOは、細胞により生成され続けるため、安定したアンケージド化合物は蓄積し続け、(例えば、ルシフェラーゼ反応を用いて)光の生成を測定することで検出することができる。光の生成は、NOの生成と直接相関し、短命のNOを検出するための、便利で定量的なアプローチを提供する。アンケージドアミノルシフェリンまたはアミノシアノベンゾチアゾール化合物は、均質の「添加及び読取り」フォーマットを用いて、試料に直接検出試薬を添加することにより、または、培地サンプリング及びルシフェリン検出により、異なる時点で、培地へのルシフェリン誘導体の放出を測定することにより、測定することができる。
【0063】
したがって、本開示は、試料中での一酸化窒素の検出方法であって、上記方法は、上記試料を式(I)の化合物と接触させることと、上記試料に既に存在していない場合に、上記試料を、ルシフェリン利用ルシフェラーゼと接触させることと、上記試料中で発光を検出することと、を含む、上記方法を提供する。
【0064】
方法は、試料を式(I)の化合物と接触させるステップを含む。式(I)の化合物は、例えば、溶媒、緩衝液、塩、洗剤、添加剤などの他の構成成分を含むことができる溶液の一部であることができる。例えば、式(I)の化合物は、ジメチルスルホキシドなどの溶媒中の溶液として、または、リン酸塩緩衝生理食塩水などの緩衝液中の溶液として調製することができる。いくつかの実施形態では、方法は、まず、試料を式(I)の化合物と接触させることと、試料を一定期間インキュベートして、一酸化窒素を式(I)の化合物と反応させることと、を含む。いくつかの実施形態では、本インキュベーションステップは、約1分~約4日、約15分~約1日、約1時間~約12時間、または、これらの間の任意の範囲の一定期間の間、実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベーションステップは、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、または約12時間実施することができる。
【0065】
特定の実施形態では、ルシフェリン利用ルシフェラーゼは試料にまだ存在しておらず、適宜、方法は、試料をルシフェリン利用ルシフェラーゼと接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、ルシフェリン利用ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、またはコメツキムシルシフェラーゼである。
【0066】
ルシフェリン利用ルシフェラーゼを試料と接触させるときに、ルシフェリン利用ルシフェラーゼを、ルシフェラーゼ反応混合物の一部として含めることができる。「ルシフェラーゼ反応混合物」は、ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素、及び、ルシフェラーゼ酵素に光シグナルを生成させる他の物質を含有する。発光シグナルを生成するのに必要な物質、ならびに、これに必要な物質の具体的な濃度及び/または量は、用いられるルシフェラーゼ酵素に依存するであろう。一般に、昆虫ルシフェラーゼに関しては、追加の物質としては、ATP、及び、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム(Mg2+)塩を挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なpHで反応を維持するための緩衝液、ルシフェラーゼ活性の維持を補助するための、PRIONEXまたはウシ血清アルブミン(BSA)などの添加剤、還元剤、洗剤、エステラーゼ、塩、アミノ酸(例えば、D-システイン)などを含む他の物質を、溶液に添加することができる。例示的なルシフェラーゼ反応混合物は、昆虫ルシフェラーゼ、MgSO4、ATP、Tergitol NP-9、及びトリシンを含有する。
【0067】
他の実施形態では、ルシフェリン利用ルシフェラーゼは、試料に既に存在する。例えば、このような実施形態では、試料は、ルシフェリン利用ルシフェラーゼ酵素を発現する細胞を含むことができる。
【0068】
上記方法のいくつかの実施形態では、方法は、候補薬剤化合物、または、化合物が試料と接触したときに生成される一酸化窒素の量を測定するのに有用な任意の化合物などの、別の化合物を、試料と接触させるステップを更に含む。このような実施形態では、化合物は、式(I)の化合物と同時に、試料と接触させることができるか、または、式(I)の化合物が添加された後で、試料に添加することができる。
【0069】
細胞ベースアッセイの実施形態では、細胞は、適切な細胞溶解緩衝液の中で溶解することができる。動物細胞に対しては、Triton X 100またはTergitolなどの非イオン性洗剤を0.1~1.0%含む緩衝液で、典型的には十分である。細菌、植物、真菌、または酵母細胞は通常、溶解させるのが一層困難である。洗剤、凍結/解凍サイクル、低張性緩衝液、音波処理、キャビテーション、または、これらの方法の組み合わせを用いることができる。溶解物を生成する溶解方法は、ルシフェラーゼもしくは他の酵素活性、または、他の分子もしくは状態の検出と適合性がある。
【0070】
上記実施形態のいずれかでは、試料は、任意の好適な容器の中に含有されることができる。例えば、試料は、バイアルの中、または、プレート(例えば、96ウェルプレート)のウェルの中に存在することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、プレートリーダーを用い、プレート(例えば、96ウェルプレート)のウェルで直接発光を検出するのではなく、少量の培地を試料から取り除き、取り除いた培地中での発光を検出することにより、培地に放出されたルシフェリンを監視することができる。このような方法により、一酸化窒素生成時のキネティック情報を得ることができる。
【0072】
本開示は、本明細書に記載する化合物(即ち、式(I)の化合物、またはその塩)を含むシステムまたはキットを更に提供する。システムまたはキットは、単独で、または、水、DMSO、もしくは緩衝液などの溶媒中に、化合物を含む。化合物が単独で提供される場合、システムまたはキットは、化合物が溶解することができる溶媒を更に含むことができる。システムまたはキットは、アッセイを行い、試料中の一酸化窒素を検出するために用いる、1種以上の試薬、例えば、上述した試薬を更に含むことができる。システムまたはキットは、アッセイを行い、試料中の一酸化窒素を検出するための取扱説明書などの、取扱説明書を更に含むことができる。
【0073】
以下の実施例は、本開示の態様を更に示すが、もちろん、その範囲をいかなる方法によっても限定するものと解釈すべきではない。
【実施例
【0074】
以下の略称を、実施例で使用する:AcOHは酢酸であり、DCEはジクロロエタンであり、DIPEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、ESは電気スプレーであり、EtOAcは酢酸エチルであり、hは時間であり、HPLCは高速液体クロマトグラフィーであり、LCMSは液体クロマトグラフィー質量分析であり、MeCNはアセトニトリルであり、TFAはトリフルオロ酢酸であり、THFはテトラヒドロフランである。
【0075】
実施例1:化合物の合成
中間体1:6-((3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)アミノ)ベンゾ[d]チアゾール-2-カルボニトリル
【化12】
【0076】
20mLのバイアルに、6-アミノベンゾ[d]チアゾール-2-カルボニトリル(100mg、0.571mmol)、3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロパナール(118mg、0.628mmol)、DCE(1.5mL)、及びAcOH(0.034mL、0.57mmol)を添加した。混合物を60℃で15分間撹拌した。混合物を室温まで冷却した。混合物に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(181mg、0.856mmol)を添加した。1時間後、溶出液としてヘプタン中の0→50%EtOAcで溶出させるシリカゲルクロマトグラフィーにより混合物を精製し、中間体1の6-((3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)アミノ)ベンゾ[d]チアゾール-2-カルボニトリルを得た。LCMS(C17253OSSi)(ES,m/z)348 [M+H]+
【0077】
化合物1: N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド
【化13】
【0078】
20mLのバイアルに、トリホスゲン(84.7mg、0.285mmol)及びTHF(3mL)を添加した。混合物を撹拌した。混合物に、6-アミノベンゾ[d]チアゾール-2-カルボニトリル(100mg、0.571mmol)及びDIPEA(0.399mL、2.28mmol)の、THF(3mL)溶液を滴加した。5分後、混合物に、N-(4-ニトロフェニル)ヒドラジンカルボチオアミド(242mg、1.14mmol)を添加した。30分後、混合物を濃縮し、逆相HPLC(MeCN/水 w/0.1% TFA)により精製し、化合物1のN-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミドを得た。LCMS (C1611732)(ES,m/z)414[M+H]+。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 10.27 (s, 1H), 9.99 (s, 1H), 9.55 (s, 1H), 8.59 (d, J = 13.8 Hz, 2H), 8.20 (dd, J = 19.2, 8.5 Hz, 3H), 7.98 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 9.1 Hz, 1H)。
【0079】
下表1の化合物を、化合物1の方法と同様の方法で調製した。
【表1】
【0080】
化合物5:N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-N-(3-ヒドロキシプロピル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド
ステップ1:N-(3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)-N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド
【化14】
【0081】
化合物1の方法と同様の方法で、中間体1からN-(3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)-N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミドを調製した。LCMS(C2531742Si)(ES,m/z)586[M+H]+
【0082】
ステップ2:N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-N-(3-ヒドロキシプロピル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド
【化15】
【0083】
20mLのバイアルに、N-(3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピル)-N-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド(22.7mg、0.0388mmol)、THF(1mL)、AcOH(1mL)、及び水(0.5mL)を添加した。この混合物を室温で撹拌した。5時間後、溶媒を蒸発させた。残渣を逆相HPLC(MeCN/水 w/0.1% TFA)により精製し、化合物5のN-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-N-(3-ヒドロキシプロピル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミドを得た。LCMS(C1917742)(ES, m/z)472[M+H]+1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 10.13 (d, J = 245.7 Hz, 1H), 8.58 (d, J = 25.8 Hz, 1H), 8.45 - 8.27 (m, 2H), 8.22 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 4.44 (s, 1H), 3.83 (d, J = 8.3 Hz, 3H), 3.11 (s, 1H), 1.67 (s, 2H)。NMRスペクトルは、回転異性体が存在することを示す。
【0084】
化合物6:(S)-2-(6-(2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸
【化16】
【0085】
化合物1のN-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド(20.0mg、0.0484mmol)を含有する20mLのバイアルに、DMF(5mL)を添加した。混合物を撹拌した。混合物に、pH8のリン酸緩衝液(1.5mL)中の、D-システイン(7.0mg、0.058mmol)溶液を添加した。混合物を逆相HPLC(MeCN/水 w/0.1% TFA)により精製し、化合物6の(S)-2-(6-(2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸を得た。LCMS(C1915753) (ES, m/z) 518 [M+H]+1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 10.26 (s, 1H), 9.98 (s, 1H), 9.41 (s, 1H), 8.56 (s, 1H), 8.45 (s, 1H), 8.22 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.07 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.64 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 5.43 (t, J = 9.1 Hz, 1H), 3.79 (t, J = 10.6 Hz, 1H), 3.69 (dd, J = 11.2, 8.4 Hz, 1H)。
【0086】
下表2の化合物を、化合物6の方法と同様の方法で調製した。
【表2】
【0087】
化合物11:メチル=(S)-2-(6-(2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボキシレート
【化17】
【0088】
化合物1のN-(2-シアノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド(7.7mg、0.0186mmol)を含有する20mLのバイアルに、DMF(2mL)を添加した。混合物を撹拌した。混合物に、pH8のリン酸緩衝液(1mL)中の、D-システインメチルエステル(3.0mg、0.022mmol)溶液を添加した。混合物を逆相HPLC(MeCN/水 w/0.1% TFA)により精製し、化合物11(メチル=(S)-2-(6-(2-((4-ニトロフェニル)カルバモチオイル)ヒドラジン-1-カルボキサミド)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボキシレート)を得た。LCMS (C2017753)(ES,m/z)532[M+H]+1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 10.26 (s, 1H), 10.11 - 9.86 (m, 1H), 9.42 (s, 1H), 8.56 (s, 1H), 8.45 (s, 1H), 8.22 (dd, J = 9.1, 2.6 Hz, 2H), 8.12 - 8.04 (m, 1H), 7.99 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.63 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 6.51 (d, J = 16.7 Hz, 1H), 5.54 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 3.82 (t, J = 10.7 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.71 (t, J = 9.6 Hz, 1H)。
【0089】
実施例2:無細胞一酸化窒素の検出
活性酸素種(ヒポキサンチン(HX);25μM)、キサンチンオキシダーゼ(XO;0.2unit/mL)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD 1unit/mL)、過酸化水素(H22 0.03%)、一重項酸素(ローズベンガル;25μM)、ならびに、反応性窒素種(亜硝酸ナトリウム;100μM及び過酸化亜硝酸塩:50μM)を用い、一酸化窒素(NO)の無細胞検出及び特異性を、既知のNOドナーであるNONOate(100μM)と比較した。NOプローブ(化合物6、25μm)を、PBS含有96ウェルアッセイプレートのウェルの中で、上記検体と組み合わせた。96ウェルアッセイプレートの各ウェルは、50μLの一酸化窒素プローブ、及び、50μLの検体を含有した。室温での30分のインキュベーション後、100μLのルシフェリン検出試薬(Promega)を添加し、GloMax(Promega)照度計を用いて発光を測定した。データを図3に示す(RLU=相対発光量)。
【0090】
実施例3:リポ多糖体(LPS)及びインターフェロンγ(INFγ)による、相乗的なNO刺激後の、細胞内での一酸化窒素の検出
TIB71マクロファージ細胞(ウェル当たり30,000cell)を、10% FBSを含有する100μLのDMEM培地を含む、96ウェルアッセイプレートのウェルに播種した。翌日、培地を取り除き、10% FBS、ならびに、一酸化窒素プローブ(化合物6、25μm)結合培地(対照)、LPS(1ug/mL)、及び/またはINFγ(1ng/mL)を含有する、新しいDMEM培地で置き換えた。組織培養インキュベーター内で、37℃で24時間インキュベートした後、1体積のルシフェリン検出試薬(Promega)を添加し、GloMax(Promega)照度計を用いて発光を測定した。データを図4に示す(RLU=相対発光量)。
【0091】
実施例4:SIN-1処理細胞中での一酸化窒素の検出
生理的条件下で、SIN-1は、スーパーオキサイド(SO)及び一酸化窒素(NO)を生成する(図5Aを参照されたい)。NOはSOと速やかに反応し、過酸化亜硝酸塩を形成する。MitoTEMPOは、SOレベルを低下させ、その後、NOを増加させる、SOスカベンジャーである。5つの細胞株(ウェル当たり30,000cell)を、96ウェルアッセイプレートのウェルに播種し、組織培養インキュベーター内で、37℃で一晩インキュベートした。翌日、NOプローブ(化合物6、25μm)を培地(対照)、SIN-1(100μM)、またはSIN-1(100μM)、及びMitoTEMPO(200μM)と結合させた。37℃で2時間インキュベーションした後、1体積のルシフェリン検出試薬(Promega)を添加し、GloMax(Promega)照度計を用いて発光を測定した。データを図5Bに示す(RLU=相対発光量)。
【0092】
本明細書に引用される刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、それぞれの参考文献が個別にかつ具体的に参照により組み入れられることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
本発明の説明の文脈(特に、次の特許請求の範囲の文脈において)における、用語「a」、「an」及び「the」ならびに「少なくとも1」ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ以上の項目が後に続く「少なくとも1つの」という用語(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書で別途指示されない限り、または、文脈により明確に矛盾しない限り、一覧の項目群から選択される1つの項目(AまたはB)、または、列挙される項目群のうちの2つ以上の任意の組み合わせを意味するものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む」、及び「含有する」という用語は、別様が述べられない限り、開放型用語(すなわち、「含むがそれに限定されない」ことを意味する)であると解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別様が示されない限り、単に、範囲内に収まるそれぞれの別個の値を個々に指す速記方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別様が示されない限り、または文脈によって別様が明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書内に提供される任意及び全ての実施例、または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。いかなる本明細書の表現も、非請求要素を本発明の実践に必須であるとして示すと解釈されるべきではない。
【0094】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読む際に、当業者に明らかになり得る。発明者は、当業者がそのような変形を適切なように用いることを予期し、発明者は、発明が本明細書に具体的に記載されるのとは別様で実践されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。更に、その全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】