(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】分析物の超高感度検出のための単一分子アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241029BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20241029BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20241029BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241029BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N33/543 597
G01N33/552
G01N33/545 Z
G01N33/543 541A
G01N33/53 U
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N33/53 V
G01N33/53 W
G01N33/53 B
G01N33/53 S
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520008
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022045798
(87)【国際公開番号】W WO2023059731
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォルト, デイビッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウー, コニー
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーガン, テイラー
(72)【発明者】
【氏名】アフマド, ルシュディ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS28
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、試料中の標的分析物の検出および定量のための超高感度法を提供する。方法を多重化して、複数の標的分析物の同時的検出および定量を可能にすることができる。方法は、アトモル濃度の検出限界を達成することができる。本発明はまた、関連する組成物およびキットも提供する。本発明の方法の非常に単純化された読み出しプロセスおよび改善された費用対効果は、POCシステムへの潜在的な統合を容易にすることができる。特に、本発明は、アトモル感度を達成し、一般的な検査基盤のみを必要とし、したがって、超高感度タンパク質検出の利用可能性を大きく増大させる、最新式のデジタルELISA技術、個別計数化のための分子オンビーズシグナル増幅(MOSAIC)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的分析物を検出する方法であって、
(a)前記標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、前記標的分析物に特異的に結合する捕捉部分を含む複数のビーズと、前記試料中の前記標的分析物が前記捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、
複数の前記ビーズが0個の標的分析物分子と会合し;
複数の前記ビーズが1個の標的分析物分子と会合し;
少なくとも約20%の前記ビーズが0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する、ステップ;
(b)ステップ(a)の生成物を、前記標的分析物に結合する検出部分と接触させるステップ、
(c)ステップ(b)の生成物を、前記検出部分に結合するシグナル増幅部分と接触させて、前記標的分析物を担持するそれぞれのビーズに関する検出可能なシグナルを生成させるステップ;ならびに
(d)フローサイトメトリーによって前記検出可能なシグナルを検出することによって、前記試料中の前記標的分析物を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記ビーズが、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、非磁気ビーズ、多孔性ビーズ、またはガラスビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉部分が、抗体、アプタマー、抗体模倣物質、ポリペプチド、核酸、分子インプリントポリマー、受容体、または低分子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出部分が、抗体、アプタマー、抗体模倣物質、ポリペプチド、核酸、分子インプリントポリマー、受容体、結合タンパク質、または低分子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シグナル増幅部分が、酵素および/または核酸分子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出可能なシグナルが、ローリングサークル増幅、次いで、相補的な蛍光標識されたDNAプローブとのハイブリダイゼーション;ローリングサークル転写;ハイブリダイゼーション連鎖反応;ループ媒介性等温増幅;ラジカル重合;チラミドシグナル増幅(TSA);酵素触媒近接標識(PL)重合;蛍光標識された酵素、ナノ粒子もしくは核酸コンカテマーを用いた、前増幅されたシグナルによる標識化;重合に基づくシグナル増幅;または磁気ビーズ-量子ドットイムノアッセイによって生成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーズの少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%が、0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出部分および前記シグナル増幅部分が直接連結される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出部分および前記シグナル増幅部分が、非共有結合性の親和性結合対によって連結され、前記検出部分が、前記非共有結合性の親和性結合対の第1のメンバーに連結され、前記シグナル増幅部分が、前記非共有結合性の親和性結合対の第2のメンバーに連結される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非共有結合性の親和性結合対が、ビオチン-ストレプトアビジン、ビオチン-アビジン、リガンド-受容体、抗原-抗体、または抗体結合タンパク質-抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的分析物のための前記捕捉部分を含む前記ビーズが、必要に応じて、異なる色、形状、またはサイズを有する、非標的分析物のための捕捉部分を含むビーズと異なる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フローサイトメトリーによって前記捕捉部分を含む前記ビーズを検出するステップをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
交差反応性または非特異的結合を減少させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
フローサイトメトリーによって前記ビーズおよび前記検出可能なシグナルを検出することによって、前記交差反応性または非特異的結合を減少させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記標的分析物が、タンパク質、核酸、多糖、脂質、細胞、脂肪酸、治療剤、生物、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が生体試料を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記生体試料が、(i)リンパ、全血、血漿、血清、末梢血単核細胞を含有する血液画分、尿、唾液、精液、汗、涙液、滑液、脳脊髄液、糞便、粘液、膣液、および髄液からなる群から選択される体液、または(ii)乳房組織、肝組織、膵組織、子宮頸部組織、肺組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋肉組織、滑膜組織、皮膚、毛包、骨髄、腫瘍組織、組織溶解物もしくはホモジネート、または臓器溶解物もしくはホモジネートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生体試料が血漿である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料が唾液である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(a)、(b)、(c)、またはその任意の組合せが、逐次、または同時に実施される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記試料中の前記標的分析物の濃度を測定するステップをさらに含み、前記試料中の前記標的分析物の前記濃度が、前記検出可能なシグナルのレベルに比例する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記試料中の追加の標的分析物の濃度を検出または測定するステップをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記追加の標的分析物が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種のまたはそれより多い標的分析物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の標的分析物が、タンパク質、核酸、多糖、脂質、細胞、脂肪酸、治療剤、生物、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンである、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記試料を、(i)前記追加の標的分析物に特異的に結合する追加の捕捉部分を含む複数のビーズ;(ii)前記追加の標的分析物に結合する追加の検出部分、および(iii)前記追加の検出部分に結合する追加のシグナル増幅部分と接触させて、追加の検出可能なシグナルを生成させるステップをさらに含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
試料中の第1の標的分析物および第2の標的分析物を検出する方法であって、
(a)前記第1の標的分析物および/または前記第2の標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、(i)前記第1の標的分析物に特異的に結合する第1の捕捉部分を含む複数の第1のビーズおよび(ii)前記第2の標的分析物に特異的に結合する第2の捕捉部分を含む複数の第2のビーズと、前記試料中の前記第1の標的分析物が前記第1の捕捉部分に結合するのに、および、前記試料中の前記第2の標的分析物が前記第2の捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、
複数の前記第1のビーズが0個の第1の標的分析物分子と会合し;複数の前記第1のビーズが1個の第1の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の前記第1のビーズが0個または1個の第1の標的分析物分子と会合し;および
複数の前記第2のビーズが0個の第2の標的分析物分子と会合し;複数の前記第2のビーズが1個の第2の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の前記第2のビーズが0個または1個の第2の標的分析物分子と会合する、ステップ;
(b)ステップ(a)の生成物を、(i)前記第1の標的分析物に結合する第1の検出部分、(ii)前記第2の標的分析物に結合する第2の検出部分と接触させるステップ;
(c)ステップ(b)の生成物を、(i)前記第1の標的分析物を担持する各ビーズについての第1の検出可能なシグナルを生成する前記第1の検出部分に結合する第1のシグナル増幅部分、および(ii)前記第2の標的分析物を担持する各ビーズについての第2の検出可能なシグナルを生成する前記第2の検出部分に結合する第2のシグナル増幅部分と接触させるステップ;ならびに
(d)フローサイトメトリーによって前記第1の検出可能なシグナルおよび前記第2の検出可能なシグナルを検出することによって、前記試料中の前記第1の標的分析物および前記第2の標的分析物を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項27】
前記第1の検出可能なシグナルおよび前記第2の検出可能なシグナルが異なるシグナルであり、必要に応じて、異なる色を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
フローサイトメトリーによって前記第1の捕捉部分を含む前記第1のビーズおよび前記第2の捕捉部分を含む前記第2のビーズを検出するステップをさらに含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の捕捉部分を含む前記第1のビーズおよび前記第2の捕捉部分を含む前記第2のビーズが異なるものであり、必要に応じて、異なる色、形状、またはサイズを有する、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
交差反応性または非特異的結合を減少させる、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
約0.1aM~約1mMの検出限界を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記検出限界が、約0.1aM~約1mM、約0.1aM~約1μM、約0.1aM~約1nM、約0.1aM~約1pM、約0.1aM~約1fM、約0.1aM~約900aM、約0.1aM~約800aM、約0.1aM~約700aM、約0.1aM~約600aM、約0.1aM~約500aM、約0.1aM~約400aM、約0.1aM~約300aM、約0.1aM~約200aM、または約0.1aM~約100aMである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記検出限界が、約1fM、約900aM、約800aM、約700aM、約600aM、約500aM、約400aM、約300aM、約200aM、約100aM、約90aM、約80aM、約70aM、約60aM、約50aM、約40aM、約30aM、約20aM、約10aM、または約1aM、または約0.1aMである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記シグナル検出にかかる時間が、試料あたり約1分未満、試料あたり約45秒未満、または試料あたり約30秒未満である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記試料が約2,000個~約100,000個のビーズと接触される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記試料が約2,000個のビーズ、約5,000個のビーズ、約10,000個のビーズ、約20,000個のビーズ、約50,000個のビーズ、または約100,000個のビーズと接触される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ビーズおよび前記試料が約1分~約48時間、約1分~約10時間、または約1時間~約4時間にわたってインキュベートされる、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ビーズおよび前記試料が、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、または約5時間にわたってインキュベートされる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/252,440号および2022年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/341,540号の優先権を主張する。前述の出願の各々の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、米国国立衛生研究所により与えられる、EB029777の下で政府支援と共に為された。米国連邦政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
タンパク質、核酸、および代謝物などの極端に低レベルの分子を正確に測定できることは、疾患診断、薬物探索、食品中の病原体検出、環境毒素検出、および生体プロセス制御を含む広範な臨床および環境適用にとって必須である。多くの潜在的なバイオマーカーは、現在の検査室方法の検出限界をはるかに下回るレベルで入手可能な生体液中に存在するため、超高感度測定技術が臨床診断において特に重要である(Cohen, L.; Walt, D. R., Chemical Reviews 2019, 119 (1), 293-321)。デジタル酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などのデジタル測定法は、従来のELISAなどの伝統的な分析技術と比較して最大で1000倍のはるかに改善された測定感度を有する(Rissin, D. M. et al., Nature Biotechnology 2010, 28, 595;Rissin, D. M.; Walt, D. R., Journal of the American Chemical Society 2006, 128 (19), 6286-6287;Rissin, D. M.; Walt, D. R., Nano Letters 2006, 6 (3), 520-523;Yelleswarapu, V. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 2019, 116 (10), 4489)。
【0004】
しかしながら、デジタル測定技術の感度は、多くの診断適用にとって、特に、疾患関連タンパク質の測定にとっては依然として不十分である。例えば、神経障害に関するいくつかのタンパク質バイオマーカーは、脳脊髄液中で上方調節されることが示されているが、これらの測定のためには高度に侵襲的な腰椎穿刺が必要であり、したがって、初期の疾患検出のために個体をスクリーニングすることを非現実的なものにしている(Robey, T. T.; Panegyres, P. K., Future Neurology 2019, 14 (1), FNL6;Olsson, B. et al., The Lancet Neurology 2016, 15 (7), 673-684;Galasko, D. R.; Shaw, L. M., Nature Reviews Neurology 2017, 13 (3), 131-132;Fortea, J. et al., The Lancet Neurology 2018, 17 (10), 860-869)。血液脳関門を通過して循環中に入る脳由来タンパク質はほんのわずかであるため、単純な血液検査によって稀なタンパク質バイオマーカーを検出および同定することができる高感度技術は、この満たされない診断的必要性に対処するのに極めて重要である(Hampel, H. et al., Nature Reviews Neurology 2018, 14 (11), 639-652;Simren, J. et al., Current Opinion in Neurobiology 2020, 61, 29-39;Parnetti, L et al., The Lancet Neurology 2019, 18 (6), 573-586)。分析感度の改善はまた、迅速な診療現場(POC)での診断が有効な医学的介入にとって必須であるが、唾液または尿などの容易に入手可能な生体液が必要とされる他の疾患において大きな課題である。これらの生体液は最小限の血清成分しか含有せず、タンパク質バイオマーカー検出のためには超高感度技術を必要とする。
【0005】
デジタルELISAにおいて感度の増大を目指す際の1つの主な障壁は、低い試料採取効率である。デジタルELISA法は測定感度を改善するために単一分子計数を利用するが、低い試料採取効率は、計数される標的分子の数を制限する。非常に低い標的濃度で、単一事象の計数に由来するポアソンノイズ、√N(式中、Nは計数された分子の数である)は、測定誤差に大きく寄与する。一例として、5%の試料採取効率では、完全な捕捉効率を仮定しても、10aMの試料100μL中の600個の標的分子のうちのわずか30個が計数されるであろう。理論的なポアソンノイズ関連変動係数(CV)、1/√Nは、この低い試料採取効率で18%であり、100%をはるかに下回る捕捉効率および実験誤差を考慮した場合、実際にははるかにより高い。この高い測定不確実性は、したがって、稀な分子の検出にとって大きな制限を課する。したがって、より多くの標的分子を計数するための試料採取効率の増大は、測定精度および感度を大きく改善することができるが、デジタルELISAにおいてはいまだ課題である。
【0006】
現行のデジタルELISA手法は、単一の標的タンパク質分子を担持する個々のビーズを単離するためにマイクロウェルまたは油中水液滴を利用する(Rissin, D. M. et al. Nature Biotechnology 2010, 28, 595;Yelleswarapu, V. et al. Proceedings of the National Academy of Sciences 2019, 116 (10), 4489;Kim, S. H. et al., Lab on a Chip 2012, 12 (23), 4986-4991;Witters, D. et al. Lab on a Chip 2013, 13 (11), 2047-2054)。デジタルELISAに関する現在の技術水準は、抗体でコーティングされた常磁性ビーズ上に単一の標的分子を捕捉し、単一分子計数のためにフェムトリットルサイズのマイクロウェル中に個々のビーズを単離する、単一分子アレイ(Simoa)である(Rissin, D. M. et al. Nature Biotechnology 2010, 28, 595)。試料中の標的分子の数を上回る大過剰数のビーズを使用して、それぞれのビーズが0個または1個の捕捉された標的分子を有し、ポアソン分布に従う、デジタル測定を確保する。それぞれの捕捉された分子を、ビオチン化された検出抗体で標識して、免疫複合体サンドイッチを形成させた後、酵素コンジュゲートストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)で標識する。続いて、ビーズを、蛍光性酵素基質と共に、それぞれが多くても1個のビーズに適合することができるマイクロウェル中にロードする。マイクロウェルを油で密閉する際に、高い局部濃度の蛍光生成物を、SβG分子を担持するビーズを含有する各ウェル中で触媒的に生成させる。したがって、標的分子の数は、「オン」および「オフ」ウェルを計数することによって測定される。
【0007】
Simoaはサブフェムトモル濃度の検出限界を達成することができ、超高感度タンパク質検出のための現在の絶対的基準であるが、その感度は、低い試料採取効率によって制限されている。ビーズの総数のうちのわずか約5%が、重力(またはQuanterix HD-X Analyzerの場合、磁気引力)によってマイクロウェル中にロードされ、分析され得る(Wilson, D. H. et al., Journal of Laboratory Automation 2015, 21 (4), 533-547)。電界指向性ビーズローディング、疎水性中親水性マイクロウェルアレイ、およびデジタルマイクロフルイディクスを含む、ビーズのローディングを改善するための他の方法も探索されている(Barbee, K. D. et al., Lab on a Chip 2009, 9 (22), 3268-3274;Decrop, D. et al., ACS Applied Materials & Interfaces 2017, 9 (12), 10418-10426;Decrop, D. et al., Analytical Chemistry 2016, 88 (17), 8596-8603)。これらの方法は高いビーズローディング効率を有するが、デジタルイムノアッセイ感度のその改善の証明は依然として制限されている。ビーズローディングを増加させるために流体力と磁力との組合せを使用する磁気メニスカススウィーピング(meniscus sweeping)は、改善された感度を有するが、他の手法と同様、複雑な製作方法およびワークフローが、POC適用におけるその使用を制限する(Kan, C. W. et al. Lab on a Chip 2020, 20 (12), 2122)。デジタルバイオアッセイにおける試料採取効率を改善するための別の戦略は、油中水液滴中へのビーズ封入である。デジタル液滴に基づくイムノアッセイは、最大で60%のビーズローディング効率を有することが示されており、現在のSimoa技術の感度と同等か、またはそれよりも最大で一桁高い改善された感度を示した(Yelleswarapu, V. et al. Proceedings of the National Academy of Sciences 2019, 116 (10), 4489)。液滴マイクロフルイディックシステムは、多様な適用についてよく確立されているが、高度に制御された、ハイスループットの液滴生成の必要性が、POCシステムに統合する場合により高い複雑性を導入する追加の製作およびプロセシングステップを導入する。さらに、液滴の有意な画分がビーズを含有しないが、依然としてイメージングしなければならないため、イメージング処理量の改善が依然としてPOCインプリメンテーションを目指す別の課題である。
したがって、高い試料採取効率ならびに診療現場(POC)での適用のための単純な製作方法およびワークフローで分析物を検出し、その濃度を測定するために使用することができる高感度かつ定量的な検出手法が依然として当技術分野で必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cohen, L.; Walt, D. R., Chemical Reviews 2019, 119 (1), 293-321
【非特許文献2】Rissin, D. M. et al., Nature Biotechnology 2010, 28, 595
【非特許文献3】Rissin, D. M.Walt, D. R., Journal of the American Chemical Society 2006, 128 (19), 6286-6287
【非特許文献4】Rissin, D. M.; Walt, D. R., Nano Letters 2006, 6 (3), 520-523
【非特許文献5】Yelleswarapu, V. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 2019, 116 (10), 4489
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
タンパク質および核酸などの、低レベルの分析物の測定は、臨床診断適用にとって重要であるが、感度が不十分なため依然として困難である。単一分子アレイ(Simoa)などの超高感度デジタルELISA技術は、非常に低い濃度の疾患関連タンパク質の検出を達成するために開発されたが、大きく複雑な機器、高い費用、および複雑なワークフローなどの制限に依然として直面しており、診療現場での適用を非現実的なものにしている。さらに、現在のデジタル検出法の検出限界を下回って存在する多くの潜在的な疾患バイオマーカーが依然として存在する。
【0010】
上記の課題に対処する超高感度検出法が本明細書に記載される。本発明の方法の非常に単純化された読み出しプロセスおよび改善された費用対効果は、POCシステムへの潜在的な統合を容易にすることができる。特に、本発明は、アトモル感度を達成し、一般的な検査基盤のみを必要とし、したがって、超高感度タンパク質検出の利用可能性を大きく増大させる、最新式のデジタルELISA技術、個別計数化のための分子オンビーズシグナル増幅(MOSAIC)を提供する。本発明は、オンビーズシグナル生成を利用し、したがって、シグナル区画化のためにマイクロウェルまたは液滴などの個別容器へのビーズ単離を必要とせず、複雑な微細加工または液滴生成の要件を除去する。
【0011】
さらに、本発明は、検出手法としてフローサイトメトリーの使用に焦点を当て、フローサイトメトリーは、多くの研究所によって容易に利用可能であり、低コストでマイクロフルイディックシステムに適合させて、本発明を、現行の検査基盤および診療現場形式への迅速な組み込みにより適したものにすることもできる(Asghari, M. et al. Scientific Reports 2017, 7 (1) 12342)。単一分子の局部的シグナル増幅のための方法に、フローサイトメトリーの迅速でハイスループットの検出能力を統合することによって、絶対的基準であるデジタルELISA法、Simoaよりも一桁改善された低アトモル濃度の検出限界が得られた。フローサイトメトリー読み出しを用いた他のデジタル測定戦略が以前に開発されたが、これらの方法は、フェムトモル濃度またはそれより高い検出限界に限定されており、アトモル感度はタンパク質検出についてはまだ証明されていない。以前のデジタルELISA法と比較したMOSAICの重要な利点は、はるかにより迅速な、自動化された-試料あたり1分未満のシグナルの読み出しである。多くのベンチトップ型フローサイトメーターに既に内蔵されている96ウェルプレート試料採取モードによる自動化は、最新式のワークフローをさらに提供する。
【0012】
迅速なオンビーズシグナル増幅戦略の適用に加えて、MOSAICの高い試料採取効率を活用して、感度を増強させるためのアッセイビーズ数を体系的に減少させて、低アトモル濃度のタンパク質濃度を検出することができる。MOSAICの改善された感度は、唾液中の低存在量のサイトカインなどの、生体液中の以前には検出不可能であった分析物の測定を可能にする。さらに、単一の試料内で分析することができるビーズ型の数はマイクロウェルまたは他の区画の総数によってもはや制限されないため、MOSAICはデジタルELISAの多重化機能を拡張する。MOSAICにおける多重化の増加の例として、8つのタンパク質標的が、少量の血漿を使用して、アトモルから低フェムトモル感度で同時に測定された。
【0013】
現行のデジタルELISA法と比較したMOSAICの増強された感度、単純性、および多用途性は、超高感度タンパク質検出を広く利用可能にし、多様な臨床適用のために以前には検出不可能であったバイオマーカーの探索を目指すかなりの前進をもたらす。
【0014】
したがって、本発明は、一態様では、試料中の標的分析物を検出する方法を提供し、方法は、(a)標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、標的分析物に特異的に結合する捕捉部分を含む複数のビーズと、試料中の標的分析物が捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、複数のビーズが0個の標的分析物分子と会合し;複数のビーズが1個の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%のビーズが0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する、ステップ;(b)ステップ(a)の生成物を、標的分析物に結合する検出部分と接触させるステップ、(c)ステップ(b)の生成物を、検出部分に結合するシグナル増幅部分と接触させて、標的分析物を担持するそれぞれのビーズに関する検出可能なシグナルを生成させるステップ;ならびに(d)フローサイトメトリーによって検出可能なシグナルを検出することによって、試料中の標的分析物を検出するステップを含む。
【0015】
一部の実施形態では、ビーズは、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、非磁気ビーズ、多孔性ビーズ、またはガラスビーズを含む。
【0016】
一部の実施形態では、捕捉部分は、抗体、アプタマー、抗体模倣物質、ポリペプチド、核酸、分子インプリントポリマー、受容体、結合タンパク質または低分子を含む。
【0017】
一部の実施形態では、検出部分は、抗体、アプタマー、抗体模倣物質、ポリペプチド、核酸、分子インプリントポリマー、受容体、結合タンパク質、または低分子を含む。
【0018】
一部の実施形態では、シグナル増幅部分は、酵素および/または核酸分子を含む。
【0019】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、ローリングサークル増幅、次いで、相補的な蛍光標識されたDNAプローブとのハイブリダイゼーション;ローリングサークル転写;ハイブリダイゼーション連鎖反応;ループ媒介性等温増幅;ラジカル重合;チラミドシグナル増幅(TSA);酵素触媒近接標識(PL)重合;蛍光標識された酵素、ナノ粒子もしくは核酸コンカテマーを用いた、前増幅されたシグナルによる標識化;重合に基づくシグナル増幅;または磁気ビーズ-量子ドットイムノアッセイによって生成される。
【0020】
一部の実施形態では、ビーズの少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%が、0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する。
【0021】
一部の実施形態では、検出部分およびシグナル増幅部分は、直接連結される。
【0022】
一部の実施形態では、検出部分およびシグナル増幅部分は、非共有結合性の親和性結合対によって連結され、検出部分が、非共有結合性の親和性結合対の第1のメンバーに連結され、シグナル増幅部分が、非共有結合性の親和性結合対の第2のメンバーに連結される。
【0023】
一部の実施形態では、非共有結合性の親和性結合対は、ビオチン-ストレプトアビジン、ビオチン-アビジン、リガンド-受容体、抗原-抗体、または抗体結合タンパク質-抗体である。
【0024】
一部の実施形態では、標的分析物のための捕捉部分を含むビーズは、必要に応じて、異なる色、形状、またはサイズを有する、非標的分析物のための捕捉部分を含むビーズと異なる。
【0025】
一部の実施形態では、方法は、フローサイトメトリーによって捕捉部分を含むビーズを検出するステップをさらに含む。
【0026】
一部の実施形態では、方法は、交差反応性または非特異的結合を減少させる。一部の実施形態では、フローサイトメトリーによってビーズおよび検出可能なシグナルを検出することによって、交差反応性または非特異的結合を減少させる。
【0027】
一部の実施形態では、標的分析物は、タンパク質、核酸、多糖、脂質、細胞、脂肪酸、治療剤、生物、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンである。
【0028】
一部の実施形態では、試料は、生体試料、環境試料または合成物質を含む。
【0029】
一部の実施形態では、生体試料は、(i)リンパ、全血、血漿、血清、末梢血単核細胞を含有する血液画分、尿、唾液、精液、汗、涙液、滑液、脳脊髄液、糞便、粘液、膣液、および髄液からなる群から選択される体液、または(ii)乳房組織、肝組織、膵組織、子宮頸部組織、肺組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋肉組織、滑膜組織、皮膚、毛包、骨髄、腫瘍組織、組織溶解物もしくはホモジネート、または臓器溶解物もしくはホモジネートである。
【0030】
一部の実施形態では、生体試料は、血漿である。
【0031】
一部の実施形態では、生体試料は、唾液である。
【0032】
一部の実施形態では、方法は、試料中の標的分析物の濃度を測定するステップをさらに含み、試料中の標的分析物の濃度が、検出可能なシグナルのレベルに関連する。
【0033】
一部の実施形態では、方法は、試料中の追加の標的分析物の濃度を検出または測定するステップをさらに含む。
【0034】
一部の実施形態では、追加の標的分析物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種のまたはそれより多い標的分析物を含む。
【0035】
一部の実施形態では、追加の標的分析物は、タンパク質、核酸、多糖、脂質、細胞、脂肪酸、治療剤、生物、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンである。
【0036】
一部の実施形態では、方法は、試料を、(i)追加の標的分析物に特異的に結合する追加の捕捉部分を含む複数のビーズ;(ii)追加の標的分析物に結合する追加の検出部分、および(iii)追加の検出部分に結合する追加のシグナル増幅部分と接触させて、追加の検出可能なシグナルを生成させるステップをさらに含む。
【0037】
別の態様では、本発明は、試料中の第1の標的分析物および第2の標的分析物を検出する方法を提供し、方法は、(a)第1の標的分析物および/または第2の標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、(i)第1の標的分析物に特異的に結合する第1の捕捉部分を含む複数の第1のビーズおよび(ii)第2の標的分析物に特異的に結合する第2の捕捉部分を含む複数の第2のビーズと、試料中の第1の標的分析物が第1の捕捉部分に結合するのに、および、試料中の第2の標的分析物が第2の捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、複数の第1のビーズが0個の第1の標的分析物分子と会合し;複数の第1のビーズが1個の第1の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の第1のビーズが0個または1個の第1の標的分析物分子と会合し;および複数の第2のビーズが0個の第2の標的分析物分子と会合し;複数の第2のビーズが1個の第2の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の第2のビーズが0個または1個の第2の標的分析物分子と会合する、ステップ;(b)ステップ(a)の生成物を、(i)第1の標的分析物に結合する第1の検出部分、(ii)第2の標的分析物に結合する第2の検出部分と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の生成物を、(i)第1の標的分析物を担持する各ビーズについての第1の検出可能なシグナルを生成する第1の検出部分に結合する第1のシグナル増幅部分、および(ii)第2の標的分析物を担持する各ビーズについての第2の検出可能なシグナルを生成する第2の検出部分に結合する第2のシグナル増幅部分と接触させるステップ;ならびに(d)フローサイトメトリーによって第1の検出可能なシグナルおよび第2の検出可能なシグナルを検出することによって、試料中の第1の標的分析物および第2の標的分析物を検出するステップを含む。
【0038】
一部の実施形態では、第1の検出可能なシグナルおよび第2の検出可能なシグナルは、異なるシグナルであり、必要に応じて、異なる色を有する。
【0039】
一部の実施形態では、方法は、フローサイトメトリーによって第1の捕捉部分を含む第1のビーズおよび第2の捕捉部分を含む第2のビーズを検出するステップをさらに含む。
【0040】
一部の実施形態では、第1の捕捉部分を含む第1のビーズおよび第2の捕捉部分を含む第2のビーズは、異なるものであり、必要に応じて、異なる色、形状、またはサイズを有する。
【0041】
一部の実施形態では、方法は、交差反応性または非特異的結合を減少させる。一部の実施形態では、フローサイトメトリーによってビーズおよび検出可能なシグナルを検出することによって、交差反応性または非特異的結合を減少させる。
【0042】
一部の実施形態では、方法は、約0.1aM~約1mMの検出限界を有する。
【0043】
一部の実施形態では、検出限界は、約0.1aM~約1mM、約0.1aM~約1μM、約0.1aM~約1nM、約0.1aM~約1pM、約0.1aM~約1fM、約0.1aM~約900aM、約0.1aM~約800aM、約0.1aM~約700aM、約0.1aM~約600aM、約0.1aM~約500aM、約0.1aM~約400aM、約0.1aM~約300aM、約0.1aM~約200aM、または約0.1aM~約100aMである。
【0044】
一部の実施形態では、検出限界は、約1fM、約900aM、約800aM、約700aM、約600aM、約500aM、約400aM、約300aM、約200aM、約100aM、約90aM、約80aM、約70aM、約60aM、約50aM、約40aM、約30aM、約20aM、約10aM、または約1aM、または約0.1aMである。
【0045】
一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約1分未満、試料あたり約45秒未満、または試料あたり約30秒未満である。
【0046】
一部の実施形態では、試料は、約2,000個~約100,000個のビーズと接触される。一部の実施形態では、試料は、約2,000個のビーズ、約5,000個のビーズ、約10,000個のビーズ、約20,000個のビーズ、約50,000個のビーズ、または約100,000個のビーズと接触される。
【0047】
一部の実施形態では、ビーズおよび試料は、約1分~約48時間、約1分~約10時間、または約1時間~約4時間にわたってインキュベートされる。一部の実施形態では、ビーズおよび試料は、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、または約5時間にわたってインキュベートされる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な単一分子アッセイ(個別計数化のための分子オンビーズシグナル増幅(MOSAIC))の概略図を描写する。単一の標的分子は、それぞれのビーズがポアソン分布に従って0個または1個の標的分子を担持するような、過剰数の抗体でコーティングされた常磁性ビーズを用いて最初に捕捉される。ビオチン化された検出抗体との単一の免疫複合体サンドイッチの形成およびストレプトアビジン-DNAコンジュゲートを用いた標識化の際に、ローリングサークル増幅を実行して、それぞれの免疫複合体に結合した長いDNAコンカテマーを生成する。蛍光標識されたDNAプローブをRCA産物にハイブリダイズさせて、フローサイトメトリーによる「オン」および「オフ」ビーズの計数化を可能にする。
【0050】
【
図2-1】
図2A~Dは、異なる分析物およびアッセイビーズ数にわたるMOSAICアッセイの分析感度を描写する。
図2Aは、異なるアッセイビーズ数を使用するIL-10 MOSAICアッセイに関する較正曲線を提供する。シグナルの読取り値は、ビーズあたりの平均分子(AMB)で示される。
図2Bは、検出限界(LOD)に対するMOSAICアッセイビーズ数の効果およびIL-10検出に関するバックグラウンドに対するシグナル(signal-to-background)を描写する。LOD値を、バックグラウンドAMBを上回る3標準偏差として算出した。それぞれのアッセイビーズ数に関する相対バックグラウンドに対するシグナルを、100000個のアッセイビーズを使用する特定のキャリブレータ―のバックグラウンドに対するシグナルに対して正規化された同じキャリブレータ―のバックグラウンドに対するシグナルとして決定した。
図2Cは、100000個のアッセイビーズおよび400000個のヘルパービーズを使用した、対応するIL-10 Simoaアッセイに関する較正曲線を提供する。
図2Dは、LODに対するMOSAICアッセイビーズ数の効果および追加の分析物にわたる相対バックグラウンドに対するシグナルを描写する。全てのエラーバーは、ブランクについて実施された6回反復と共に、3回反復の標準偏差を表す。
【0051】
【
図3-1】
図3A~Dは、試料採取効率の増大が分析感度および精度を改善することを描写する。
図3A~3Bは、IL-10(
図3A)およびIFN-γ(
図3B)に関するMOSAIC較正曲線から無作為にサンプリングされた様々なビーズ数のサブセットから生成された較正曲線に関する検出限界を記載する。それぞれの色は、出発総アッセイビーズ数を示す。それぞれの点は、100個の無作為にサンプリングされたサブセットの中央値を表し、エラーバーは四分位範囲を表す。白丸は、上位四分位点が、非常に低いビーズサブセットサイズでの非常に高い測定変動係数(CV)のため正の無限値を有していた値を示す。
図3C~3Dは、IL-10(
図3C)およびIFN-γ(
図3D)に関する様々なビーズ数の無作為にサンプリングされたビーズサブセットに関するバックグラウンドシグナルの測定CVを提供する。
【0052】
【
図4-1】
図4A~Dは、MOSAICおよびSimoaを使用したヒト血漿および唾液におけるIFN-γ濃度の測定を描写する。
図4A~4Dは、MOSAICとSimoaアッセイとの間の、17個のヒト血漿(
図4A、
図4B)試料および26個の唾液(
図4C、
図4D)試料における測定されたIFN-γ濃度を提供する。示された濃度は、4倍の希釈率を考慮した内因性IFN-γ濃度を表し、検出限界(LOD)および定量下限(LLOQ)も、4倍の希釈率を反映する。ピアソン相関係数は、血漿試料および唾液試料(検出可能な値の間で)について、それぞれ、0.80および0.31であった。唾液における低い相関係数は、Simoaを使用した、ほんのわずかの検出可能な試料ならびにSimoaまたはMOSAICのLLOQに近いIFN-γレベルを有する複数の試料に起因し得る。赤色の破線は、バックグラウンド(バッファーのみ)のAMBを上回る3標準偏差として算出されたアッセイのLODを示す。アッセイのLOD未満の測定値を有する試料に、LODに等しい値を割り当てた。エラーバーは、2回反復の標準偏差を表す。
【0053】
【
図5-1】
図5A~Dは、MOSAIC技術を用いた多重化を描写する。
図5Aは、4重MOSAICアッセイと対応する4重Simoaアッセイとの間でのヒト血漿中のサイトカイン測定値の相関を描写する。濃度、LOD、およびLLOQ値は、両方のアッセイにおいて使用された4倍の希釈率を反映する。アッセイのLOD未満の測定値を有する試料に、LODに等しい値を割り当てた。
図5B~5Cは、8重MOSAICアッセイ(
図5B)および2つの4重Simoaアッセイ(
図5C)を使用した、ヒト血漿(上)および唾液(下)における8つのタンパク質分析物の測定された濃度を提供する。示された濃度は、それぞれ、16倍および8倍希釈された血漿および唾液試料における、測定された濃度の値である。アッセイのLOD未満の測定値に、LODに等しい値を割り当て、白丸で示す。
図5Dは、MOSAICを用いた多重化の概略図を提供する。異なる標的分析物に対する抗体でコーティングされたビーズは、異なる波長、強度を示す異なる蛍光色素を使用すること、および/または複数のビーズサイズを使用することによってコード化される。それぞれのビーズ型上での単一の分析物分子の捕捉、単一の免疫複合体サンドイッチの形成、およびストレプトアビジン-DNAを用いた標識化の際に、ローリングサークル増幅を実行し、ビーズの混合物をフローサイトメトリーによって分析する。異なる蛍光チャネル中の一連のゲートによってビーズを区別した後、それぞれのビーズ型に関する、ビーズあたりの平均分子を、プローブの色に対応する蛍光チャネルにおける強度から決定する。
【0054】
【
図6-1】
図6A~6Eは、異なるアッセイビーズ数にわたって個々のサイトカインについて実施されたMOSAICアッセイに関する較正曲線を描写する。エラーバーは、3~6回反復の標準偏差を表す。
【0055】
【
図7-1】
図7A~7Eは、個々のサイトカインについて実施されたSimoaアッセイに関する較正曲線を描写する。アッセイの検出限界は、赤色の破線で示される。エラーバーは、3回反復およびブランクの6回反復の標準偏差を表す。
【0056】
【
図8-1】
図8A~8Cは、4時間の標的捕捉時間で実施されたMOSAICアッセイを描写する。
図8A~8Bは、4時間の標的捕捉時間による異なるアッセイビーズ数にわたるIL-10(
図8A)およびIFN-γ(
図8B)のMOSAICアッセイに関する較正曲線を提供する。ビーズを4時間にわたって試料と共にインキュベートし、標的捕捉の最後の時間に検出抗体を添加した。エラーバーは、それぞれのキャリブレータ―に関する3回反復およびブランクに関する6回反復の標準偏差を表す。
図8Cは、4時間の標的捕捉時間によるIL-10およびIFN-γのMOSAICアッセイの検出限界および定量下限を記載する。
【0057】
【
図9-1】
図9A~9Cは、ヒト唾液において実施されたMOSAICおよびSimoaアッセイを描写する。
図9A~9Bは、希釈バッファーとしてStartingBlock(商標)Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific)を使用する、唾液において実施されたIFN-γ(
図9A)およびIL-12p70(
図9B)のMOSAICおよびSimoaアッセイに関する較正曲線を提供する。IFN-γに関するアッセイの検出限界(LOD)は、MOSAICおよびSimoaについて、それぞれ29.6および86.9aMであった。IL-12p70に関するアッセイのLODは、MOSAICおよびSimoaについて、それぞれ44.2および304.3aMであった。10,000個のアッセイビーズを両方のMOSAICアッセイのために使用し、100,000個のアッセイビーズを、400,000個のヘルパービーズと共に、対応するSimoaアッセイのために使用した。
図9Cは、MOSAICおよびSimoaを使用した、26個の唾液試料中の測定されたIL-12p70濃度を描写する。赤色の破線で示された、濃度およびアッセイのLODは、希釈率で乗算したアッセイ測定値を表す。
【0058】
【
図10-1】
図10A~10Dは、4重MOSAICアッセイを描写する。
図10A~10Bは、IL-6、IL-1β、IL-10、およびIFN-γに関する4重MOSAIC(
図10A)およびSimoa(
図10B)アッセイに関する較正曲線を提供する。
図10Cは、4重MOSAICおよびSimoaアッセイの検出限界および定量下限を記載する。
図10Dは、4重MOSAICアッセイにおける各分析物のドロップアウト曲線のグラフを提供する。各グラフは、多重アッセイにおける漸増量の個々の分析物に関するそれぞれのビーズのシグナル応答を示し、エラーバーは二連の測定値の標準偏差を表す。
【0059】
【
図11-1】
図11A~11Dは、IFN-γ、IL-1β、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、IL-18、およびVEGFに関する8重MOSAICアッセイおよび2つの4重Simoaアッセイに関する代表的な較正曲線を描写する。
図11A~11Bは、血漿(
図11A)および唾液(
図11B)測定のために使用された試料希釈液で得られた代表的な8重MOSAICアッセイの較正曲線を提供する。
図11C~11Dは、血漿(
図11C)および唾液(
図11D)測定のために使用された試料希釈液で得られた対応する4重Simoaアッセイの較正曲線を提供する。エラーバーは、ブランクについて実施された6回反復と共に、3回反復の標準偏差を表す。
【0060】
【
図12-1】
図12は、3つの個々のヒト血漿試料における8重MOSAICアッセイの希釈線形性を描写する。線形回帰からのr
2値の範囲を、各分析物について示す。血漿#1について、4倍希釈と8倍希釈との間の希釈線形性が弱かったため、4倍の希釈率の測定値を線形回帰から除外した。したがって、全ての報告された血漿測定値について16倍の最終希釈率を選択して、一貫した測定正確度を確保した。エラーバーは、二連の測定値の標準偏差を表す。
【0061】
【
図13-1】
図13は、8重MOSAICアッセイにおける各分析物のドロップアウト曲線を描写する。各グラフは、漸増量の個々の分析物に関するそれぞれのビーズのシグナル応答を示し、エラーバーは二連の測定値の標準偏差を表す。
【0062】
【
図14-1】
図14A~14Bは、8重MOSAICアッセイにおける分析物のそれぞれに関する血漿(
図14A)および唾液(
図14B)におけるMOSAICおよびSimoaによる測定値の相関を描写する。2つの別々の4重Simoaアッセイを、比較として実施した。検出限界(LOD)および定量下限(LLOQ)値は、血漿試料における16倍の希釈率を考慮した有効なLODおよびLLOQ値に対応する。全ての試料の測定された濃度から決定された、ピアソン相関係数を各分析物について示す。濃度がいずれかの方法のLLOQに近かったか、またはそれ未満であった分析物に関するMOSAICとSimoaとの間のより弱い相関は、LLOQまたはLODに近いより低い測定精度を含む、いくつかの因子に起因し得る。本発明者らはスパイクおよび回収実験ならびに希釈線形性実験によって8重MOSAICアッセイを検証したが、MOSAICおよびSimoaアッセイに対するマトリックス効果の差異は、より低い濃度範囲でより弱い相関に寄与した可能性もある。エラーバーは、二連の測定値の標準偏差を表す。
【0063】
【
図15-1】
図15A~15Dは、MOSAICアッセイのためにフローサイトメトリーによってビーズを同定するための代表的なゲーティング戦略を描写する。ゲーティングを、FlowJo(商標)ソフトウェアを使用して実施した。代表的なゲートを、488多重ビーズ(Quanterix Corp.)について示す。
図15Aは、初期の前方対側方散乱ゲートを適用してデブリの大部分を除去した場合のゲーティング戦略を描写する。
図15Bは、ビーズを蛍光チャネルによってさらに同定した場合のゲーティング戦略を描写する。
図15Cは、最終ゲートを適用して単一ビーズを同定した場合のゲーティング戦略を描写する。
図15Dは、ATTO 647N標識されたDNAプローブを使用する、20,000個のアッセイビーズでの異なるIL-10濃度に関する蛍光強度の代表的な散乱プロットおよびヒストグラムを提供する。続いて、ビーズあたりの平均分子(AMB)値を、実施例に記載されるPythonを使用して蛍光強度値から決定した。
【0064】
【
図16-1】
図16は、3つの個々のヒト唾液試料における8重MOSAICアッセイの希釈線形性を描写する。線形回帰からのr
2値の範囲を、各分析物について示す。唾液#1について、4倍希釈と8倍希釈との間の希釈線形性が弱かったため、4倍の希釈率の測定値を線形回帰から除外した。全ての報告された唾液測定値について8倍の最終希釈率を選択して、一貫した測定正確度を確保した。エラーバーは、二連の測定値の標準偏差を表す。
【0065】
【
図17-1】
図17は、8重MOSAICアッセイのために使用したビーズゲーティング戦略を描写する。異なる蛍光チャネルにおける一連のゲートを使用して、ビーズ型を識別し、異なるビーズ型からなるあらゆる凝集体を除去した。ピンク色で強調されたゲーティングされた集団は、単一のビーズのさらなるゲーティングおよびプローブチャネルにおける蛍光強度のその後の分析の前のそれぞれのビーズ型を表す。
【0066】
【
図18】
図18は、非バーコード化多重MOSAICおよびバーコード化多重MOSAIC形式の両方の概略図を描写する。バーコード化多重MOSAIC形式については、独自のDNA鋳型を多重MOSAICアッセイにおいてそれぞれの検出抗体にコンジュゲートし、RCA反応において対応する独自の蛍光色素コンジュゲート化プローブと対合させた。対照的に、非バーコード化多重MOSAIC形式においては、全ての検出抗体をビオチン化し、同じストレプトアビジン-DNAコンジュゲートおよび蛍光プローブで標識し、したがって、交差反応性結合事象をマスクした。
【0067】
【
図19】
図19Aおよび
図19Bは、非バーコード化多重MOSAIC(
図19A)およびバーコード化多重MOSAIC(
図19B)についての、漸増濃度のそれぞれの個々の標的タンパク質に関するドロップアウト曲線を描写する。バーコード化多重MOSAICにおける正確な捕捉ビーズ-プローブの色の対のみの含有は、交差反応シグナルの除去を可能にし、したがって、より正確な多重測定を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
本発明は、標的分析物の濃度の検出または測定のための方法および組成物を提供する。
【0069】
血液または唾液などの最小限に侵襲的な生体液中のタンパク質バイオマーカーの定量的かつ超高感度の検出は、より迅速な疾患診断、処置、モニタリング、および疾患再発モニタリングと共に、医学的診断を革命的に変化させる潜在性を有する。デジタル酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)および単一分子アレイ(Simoa)などの技術は、タンパク質、核酸、および他の生物学的に関連する低分子を含む、低存在量分析物の超高感度検出を可能にする。しかしながら、これらの技術は、大きく複雑な機器、高い費用、および複雑なワークフローなどの制限に依然として直面しており、診療現場での適用を非現実的なものにしている。さらに、現在のデジタル検出法の検出限界を下回って存在する多くの潜在的な疾患バイオマーカーが依然として存在する。
【0070】
本発明の発明者らは、低から中アトモル濃度のタンパク質濃度を検出することができる、革新的、ハイスループットで、非常に入手しやすい単一分子測定プラットフォームを開発した。デジタルELISA手法における稀な標的分子の試料採取における低効率の課題に対処することによって、現在、超高感度タンパク質検出のための絶対的基準である現在のSimoa技術を10倍以上上回って感度が増強された。本発明の方法によって達成されたアトモル濃度の検出限界(LOD)は、従来のイムノアッセイと比較して少なくとも3~4桁の改善に相当する。標的分子を担持する各ビーズに非拡散性蛍光シグナルを局在化させることによって、このプラットフォームは、シグナル区画化のためにマイクロウェルまたは液滴中へのビーズローディングの必要性を取り除くだけではなく、改善された試料採取効率のために有意により多くのビーズを分析し、それによって、感度を増強させることもできる。
【0071】
この単純な手法は、現在のSimoa技術の約5%の試料採取効率と比較して、全ビーズの平均で約50~60%の分析を可能にし、これは約10倍の増加である。低い試料濃度では、特に、100%をはるかに下回る捕捉効率(本研究において開発された本発明のアッセイにおける全ての捕捉および標識化ステップにわたって約1~3%)と共に、ポアソンノイズ関連測定CVを最小化するために試料採取の改善が必要不可欠である。本発明の方法の有意に改善された試料採取効率はまた、従来のSimoaと比較して少ないアッセイビーズの使用を可能にし、「オン」ビーズの画分を増加させ、それによって、バックグラウンドに対するシグナルを増大させる。より低い解離定数を有する親和性試薬を使用し、親和性試薬およびストレプトアビジン-DNA標識の非特異的結合を減少させることによって、感度のさらなる改善を達成することができる。より良好な親和性試薬の開発および非特異的結合を減少させる方法と共に、本発明の方法は、潜在的には、ゼプトモル濃度のタンパク質濃度まで検出することができる。アトモル感度と共に、本発明の方法は、結核などの様々な疾患の基礎となる新しいバイオマーカーおよび生物学的機構の探索を目指す道を開くことができる。
【0072】
本発明の方法での感度の一桁またはそれより多い改善の達成はまた、多くの他のがん型および神経障害に関する新しい血液に基づくバイオマーカーの探索のための重要な意味合いを保持する。アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患のための診断血液検査は、高侵襲性の腰椎穿刺が必要であるため、現在は非常に困難である、幅広いスクリーニングおよび早期診断にとって特に必要不可欠であることがわかっているであろう。バイオマーカーレベルが有意な疾患進行後にのみ検出可能となる多くの場合、本発明の方法の感度の増強は、健康転帰の改善のために初期段階での疾患診断を促進することができる。
【0073】
重要なことに、本発明の方法はまた、デジタルバイオアッセイシグナル読み出しの単純性を増大させ、さらなる開発の際に、潜在的には、POCプラットフォームに統合し、したがって、現在のPOC診断における低感度の課題に対処することができる。デジタルイムノアッセイにおける感度の増強のための試料採取効率の増大はビーズ液滴アレイおよび液滴デジタルELISA法においても示されてきたが、これらの方法は、製作およびプロセシングステップにおいてさらなる複雑性をもたらす。対照的に、本発明の方法の読み出しプロセスは、多くの研究室が容易に利用でき、低費用でマイクロフルイディックシステムに適合化させることもできる、フローサイトメトリーのみを必要とし、本発明を、現行の検査基盤および診療現場形式への迅速な組み込みにより適したものにする。
【0074】
さらに、ドロップキャスト単一分子アッセイなどの以前のデジタルELISA法と比較した本発明の別の重要な利点は、はるかにより迅速な、自動化されたシグナル読み出しである。ドロップキャスト単一分子アッセイ(dSimoa)はビーズ上に捕捉された単一分子を計数するためのビーズドロップキャスト法を可能にしたが、これらの方法は、複数の視野にわたって全てのビーズを捕捉するために、試料あたりの長いイメージング時間を必要とし、したがって、処理量を制限する。対照的に、本発明は、はるかに迅速な試料読み出し速度を可能にする。シグナル読み出しにかかる時間は、試料あたり、約1分未満である。多くのベンチトップ型フローサイトメーターに既に組み込まれている96ウェルプレート試料採取モードによる自動化は、最新式のワークフローをさらに提供する。
【0075】
定義
本明細書で使用される場合、用語「約」とは、記載される値の10%上または下の範囲内にある値を指す。
【0076】
「標的分析物」とは、検出、測定、定量、または評価しようとする任意の原子、分子、イオン、分子イオン、化合物、粒子、細胞、ウイルス、複合体、またはそれらの断片を意味する。標的分析物は、試料(例えば、液体試料(例えば、生体試料または環境試料))中に含有されていてもよい。例示的な標的分析物としては、限定されるものではないが、低分子(例えば、有機化合物、ステロイド、ホルモン、ハプテン、生体アミン、抗生物質、マイコトキシン、有機汚染物質、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、もしくは二次代謝物)、タンパク質(糖タンパク質もしくはプリオン)、核酸、多糖、脂質、脂肪酸、細胞、気体、治療剤、生物(例えば、病原体)、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンが挙げられる。標的分析物は、天然に存在するか、または合成であってもよい。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「低分子」とは、5000Da未満の分子量を有する任意の分子を意味する。例えば、一部の実施形態では、低分子は、有機化合物、ステロイド、ホルモン、ハプテン、生体アミン、抗生物質、マイコトキシン、シアノトキシン、ニトロ化合物、残留薬物、残留殺虫剤、有機汚染物質、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、または二次代謝物である。
【0078】
本明細書で互換的に使用される用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」とは、少なくとも2個の共有結合で連結されたヌクレオチド単量体を指す。この用語は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、そのハイブリッド、およびその混合物を包含する。ヌクレオチドは、典型的にはホスホジエステル結合によって核酸中で連結されているが、用語「核酸」はまた、他の型の連結または骨格(例えば、ホスホロチオエート、ホスホラミド、ホスホロジチオエート、O-メチルホスホロアミデート、モルホリノ、ロックド核酸(LNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、およびペプチド核酸(PNA)連結または骨格など)を有する核酸アナログも包含する。核酸は、一本鎖、二本鎖であってもよいか、または一本鎖配列と二本鎖配列との両方の部分を含有してもよい。核酸は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドとの任意の組合せ、ならびに例えば、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシルを含む塩基、および改変塩基または非標準塩基の任意の組合せを含有してもよい。
【0079】
本明細書における「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合で連結されたアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチド模倣構造で構成されていてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、天然に存在するアミノ酸と合成アミノ酸との両方を意味する。例えば、ホモ-フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的にとってアミノ酸であると考えられる。側鎖は、(R)または(S)配置であってもよい。一部の実施形態では、アミノ酸は、(S)またはL-配置である。天然に存在しない側鎖が使用される場合、非アミノ酸置換基を使用して、例えば、in vivoでの分解を防止するか、または遅延させることができる。用語「部分」は、全長ポリペプチドまたは参照ポリペプチドよりも少ないアミノ酸(例えば、約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%少ないアミノ酸)を含有する、断片(例えば、切断生成物もしくは組換え産生された断片)またはエレメントもしくはドメイン(例えば、活性を有するポリペプチドの領域)などの、タンパク質の任意の領域を含む。
【0080】
本明細書で互換的に使用される、用語「ビーズ」、「粒子」および「ミクロスフェア」は、小さい個別の粒子を意味する。好適なビーズとしては、限定されるものではないが、常磁性ビーズ、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、多孔性ビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、メチルスチレンビーズ、アクリルポリマービーズ、カーボングラファイトビーズ、二酸化チタンビーズ、ラテックスまたは架橋デキストラン、例えば、SEPHAROSEビーズ、セルロースビーズ、ナイロンビーズ、架橋ミセル、およびTEFLON(登録商標)ビーズが挙げられる。一部の実施形態では、球状ビーズが使用されるが、非球状または不規則な形状のビーズを使用してもよいことが理解されるべきである。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「捕捉部分」とは、標的分析物に特異的に結合することができる任意の分子、粒子などを意味する。捕捉部分は、ビーズにコンジュゲート、捕捉、付着、結合、または固定されてもよい。例えば、一部の実施形態では、捕捉部分は、抗体(例えば、全長抗体(例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、もしくはIgM抗体)または抗原結合抗体断片(例えば、scFv、Fv、dAb、Fab、Fab’、Fab’2、F(ab’)2、Fd、Fv、もしくはFeb))、アプタマー、抗体模倣物質(例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、もしくはナノCLAMP)、抗体IgG結合タンパク質(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、もしくは組換えタンパク質A/G)、ポリペプチド、核酸、または低分子である。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「検出部分(detecting moiety)」または「検出部分(detection moiety)」とは、標的分析物に特異的に結合するか、もしくはそうでなければ標的分析物と特異的に会合することができる任意の分子、粒子など、または標的分析物に結合するか、もしくはそうでなければ標的分析物と会合する別の分子(例えば、捕捉部分)を意味する。例えば、一部の実施形態では、検出部分は、抗体(例えば、全長抗体(例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、もしくはIgM抗体)または抗原結合抗体断片(例えば、scFv、Fv、dAb、Fab、Fab’、Fab’2、F(ab’)2、Fd、Fv、もしくはFeb))、アプタマー、抗体模倣物質(例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、もしくはナノCLAMP)、分子インプリントポリマー、受容体、ポリペプチド、核酸、または低分子である。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「シグナル増幅部分」とは、検出部分に特異的に結合する、またはそうでなければそれと特異的に会合することができ、検出を可能にする、検出可能な、例えば、増幅されたシグナルを生成することができる任意の分子、粒子などを意味する。シグナルは、任意の検出可能なシグナル、例えば、フローサイトメトリーもしくは光学アッセイによって検出可能な、光学的に検出可能な標識、例えば、蛍光もしくは化学発光、または比色標識であってもよいか、または任意の他の標識、例えば、非光学アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴もしくは他の方法を使用する)によって検出可能な、金ビーズもしくは他の標識であってもよい。一部の実施形態では、シグナル増幅部分は、酵素および/またはDNA分子、例えば、DNAプライマーおよび鋳型、例えば、直列に連結された同じDNA配列の複数のコピーを含有するコンカテマーまたは長い連続的DNA分子を含む。シグナル増幅部分は、生成されたコンカテマーにハイブリダイズすることができる、検出可能な標識を有するプローブ、例えば、蛍光標識されたDNAプローブをさらに含む。
【0084】
第1の部分(例えば、捕捉部分)が、第2の部分(例えば、標的分析物)と、試験試料の他の成分または夾雑物とを区別するのに十分な特異性で第2の部分に結合する場合、第1の部分は、第2の部分に「特異的に結合する」(またはその文法的変化形)。結合は、非特異的結合を除去するための洗浄ステップを含む、アッセイの条件下で結合したままになるのに一般的に十分なものであるが、一部の実施形態では、すなわち、低親和性結合パートナーを検出するためには、洗浄ステップは望ましくない。一部の実施形態では、第1の部分は、約10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、10-14M、10-15Mの、またはそれより低い平衡解離定数(KD)で第2の部分に特異的に結合する。
【0085】
用語「交差反応性」とは、非標的分析物、例えば、異なる分析物、または夾雑物、または試験試料の他の成分との、標的分析物のための捕捉部分を含むビーズの非特異的結合を指す。
【0086】
用語「非共有結合性の親和性結合対」とは、分子の対、例えば、非共有結合複合体に結合し、それを形成する、第1のメンバーおよび第2のメンバーを指す。例示的な非共有結合性の親和性結合対としては、限定されるものではないが、ビオチン-ビオチン結合タンパク質(例えば、ビオチン-ストレプトアビジンおよびビオチン-アビジン)、リガンド-受容体、抗原-抗体もしくは抗原結合断片、ハプテン-抗ハプテン、免疫グロブリン(Ig)結合タンパク質-Ig、ジゴキシゲニン(dioxigenin)、SNAPタグ、CLIPタグ、または他の相補的結合パートナーが挙げられる。非共有結合性の親和性結合対のメンバーは、任意の好適な結合親和性を有してもよい。例えば、親和性結合対のメンバーは、約10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、10-14M、10-15Mの、またはそれより低い平衡解離定数(KDまたはKd)で結合してもよい。
【0087】
「病原体」は、限定されるものではないが、ウイルス(例えば、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV))、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)))、ヘルペスウイルス、アデノウイルスなど)、細菌(例えば、Mycobacterium tuberculosis、またはE.coli)、原生動物、真菌、またはプリオンを含む、その宿主に対して疾患または病気を引き起こし得る因子である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、任意の動物を意味する。一実施形態では、対象は、ヒトである。対象となり得る他の動物としては、限定されるものではないが、非ヒト霊長類(例えば、サル、ゴリラ、およびチンパンジー)、飼育動物(例えば、ウマ、ブタ、ロバ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ヤク、アルパカ、およびラマ)、ならびにコンパニオンアニマル(例えば、ネコ、トカゲ、ヘビ、イヌ、魚、ハムスター、モルモット、ラット、マウス、および鳥類)が挙げられる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」および「マーカー」は、対象の試料におけるそのものの発現または存在を、本明細書に記載の方法によって検出することができ、それが、例えば、予後の決定にとって、または治療剤に対する哺乳動物対象の応答性もしくは感度のモニタリングにとって有用である、分析物(例えば、低分子、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、または糖脂質に基づく分子マーカー)を互換的に指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「生体試料」とは、体液、体組織(例えば、腫瘍組織)、細胞、または他の供給源を含む、対象から得られた、または対象に由来する任意の生体試料を指す。体液は、例えば、リンパ、全血(新鮮な、凍結された、または乾燥および再水和されたものを含む)、血漿(新鮮な、凍結された、または乾燥および再水和されたものを含む)、血清(新鮮な、凍結された、または乾燥および再水和されたものを含む)、末梢血単核細胞を含有する血液画分、尿、唾液、精液、汗、涙液、滑液、脳脊髄液、糞便、粘液、膣液、および髄液である。試料はまた、乳房組織、肝組織、膵組織、子宮頸部組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋肉組織、滑膜組織、皮膚、毛包、骨髄、腫瘍組織、組織溶解物もしくはホモジネート、または臓器溶解物もしくはホモジネートも含む。哺乳動物から組織生検および体液を取得するための方法は、当技術分野で周知である。
【0091】
「環境試料」とは、環境から得られる任意の試料、例えば、水試料、土壌試料、大気試料、地球外材料などを意味する。環境試料は、生体分子または生物を含有してもよい。
【0092】
本発明の方法
本発明は、試料中の標的分析物を検出する方法を提供する。方法は、試料中の標的分析物の濃度を測定することを含んでもよい。
【0093】
一態様では、本発明は、試料中の標的分析物を検出する方法を提供する。方法は、(a)標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、標的分析物に特異的に結合する捕捉部分を含む複数のビーズと、試料中の標的分析物が捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、複数のビーズが0個の標的分析物分子と会合し;複数のビーズが1個の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%のビーズが0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する、ステップ;(b)ステップ(a)の生成物を、標的分析物に結合する検出部分と接触させるステップ、(c)ステップ(b)の生成物を、検出部分に結合するシグナル増幅部分と接触させて、標的分析物を担持するそれぞれのビーズに関する検出可能なシグナルを生成させるステップ;ならびに(d)フローサイトメトリーによって検出可能なシグナルを検出することによって、試料中の標的分析物を検出するステップを含む。
【0094】
標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、分析物のビーズへの結合を可能にして、ビーズ-分析物複合体を形成させる条件下で、目的の分析物に特異的に結合することができる捕捉部分にコンジュゲートされた複数のビーズと最初に接触させる。ビーズ-分析物複合体が形成されたら、方法は、分析物を、検出部分およびシグナル増幅部分と接触させること、ならびにフローサイトメトリーによる単一の標的分析物を担持する各ビーズの検出を可能にする、オンビーズの非拡散性検出可能シグナル、例えば、蛍光シグナルを生成させることを含む。ビーズ上にシグナルを局在化させることによって、本発明の方法は、マイクロウェルまたは液滴におけるシグナル区画化の必要性を取り除く。
【0095】
一部の実施形態では、本発明の方法のステップ(a)、(b)、(c)、またはその任意の組合せは、逐次、または同時に実施される。
【0096】
一部の実施形態では、ビーズの少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が、0個または1個の標的分析物分子のいずれかと会合する。
【0097】
本発明の方法は、試料中の標的分析物の濃度を測定することも含む。一部の実施形態では、濃度は、標的分析物の存在を示す少なくとも1つのシグナルの強度レベルと比例する、例えば、正比例する、または反比例する。
【0098】
一部の実施形態では、本発明の方法は、約0mM~約5mM、例えば、約0.1aM~約5mM、約0.1aM~約4mM、約0.1aM~約3mM、約0.1aM~約2mM、約0.1aM~約1mM、約0.1aM~約1μM、約0.1aM~約1nM、約0.1aM~約1pM、約0.1aM~約1fM、約0.1aM~約900aM、約0.1aM~約800aM、約0.1aM~約700aM、約0.1aM~約600aM、約0.1aM~約500aM、約0.1aM~約400aM、約0.1aM~約300aM、約0.1aM~約200aM、または約0.1aM~約100aMの検出限界を有する。一部の実施形態では、本発明の方法の検出限界は、約1fM、約900aM、約800aM、約700aM、約600aM、約500aM、約400aM、約300aM、約200aM、約100aM、約90aM、約80aM、約70aM、約60aM、約50aM、約40aM、約30aM、約20aM、約10aM、約1aM、または約0.1aMである。
【0099】
本発明の方法は、試料中の1つまたは複数の追加の標的分析物の濃度を検出または測定することをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、方法は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約14、約16、約18、約20種、またはそれより多い異なる標的分析物の濃度を検出または測定することを含んでもよい。
【0100】
一部の実施形態では、標的分析物は、低分子、タンパク質、核酸、多糖、脂質、細胞、脂肪酸、治療剤、生物、ウイルス、毒素、ペプチド、オリゴ糖、リポタンパク質、糖タンパク質、グリカン、またはホルモンである。追加の標的分析物は、本明細書に記載されるまたは当該技術分野で公知の任意の好適な標的分析物であり得る。一部の実施形態では、方法は、試料を、(i)追加の標的分析物に特異的に結合する追加の捕捉部分を有する複数のビーズ;(ii)追加の標的分析物に結合する追加の検出部分、および(iii)追加の検出部分に結合する追加のシグナル増幅部分と接触させて、追加の検出可能なシグナルを生成させるステップをさらに含む。
【0101】
一態様では、本発明は、試料中の第1の標的分析物および第2の標的分析物を検出する方法を提供し、方法は、(a)第1の標的分析物および/または第2の標的分析物を含有するか、または含有することが疑われる試料を、(i)第1の標的分析物に特異的に結合する第1の捕捉部分を含む複数の第1のビーズおよび(ii)第2の標的分析物に特異的に結合する第2の捕捉部分を含む複数の第2のビーズと、試料中の第1の標的分析物が第1の捕捉部分に結合するのに、および、試料中の第2の標的分析物が第2の捕捉部分に結合するのに十分な条件下および時間にわたって接触させるステップであって、複数の第1のビーズが0個の第1の標的分析物分子と会合し;複数の第1のビーズが1個の第1の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の第1のビーズが0個または1個の第1の標的分析物分子と会合し;および複数の第2のビーズが0個の第2の標的分析物分子と会合し;複数の第2のビーズが1個の第2の標的分析物分子と会合し;少なくとも約20%の第2のビーズが0個または1個の第2の標的分析物分子と会合する、ステップ;(b)ステップ(a)の生成物を、(i)第1の標的分析物に結合する第1の検出部分、(ii)第2の標的分析物に結合する第2の検出部分と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の生成物を、(i)第1の標的分析物を担持する各ビーズについての第1の検出可能なシグナルを生成する第1の検出部分に結合する第1のシグナル増幅部分、および(ii)第2の標的分析物を担持する各ビーズについての第2の検出可能なシグナルを生成する第2の検出部分に結合する第2のシグナル増幅部分と接触させるステップ;ならびに(d)フローサイトメトリーによって第1の検出可能なシグナルおよび第2の検出可能なシグナルを検出することによって、試料中の第1の標的分析物および第2の標的分析物を検出するステップを含む。
【0102】
別の態様では、本発明は、試料中の第1の標的分析物、第2の標的分析物および第3のまたはそれ以降の標的分析物を検出する方法であって、(a)試料中の第1の標的分析物が第1の捕捉部分に結合する、試料中の第2の標的分析物が第2の捕捉部分に結合する、および試料中の第3のまたはそれ以降の標的分析物が第3のまたはそれ以降の捕捉部分に結合するのに十分な条件下で、および時間にわたって、第1の標的分析物、第2の標的分析物および/または第3のまたはそれ以降の標的分析物を含有する、または含有すると疑われる試料を、(i)第1の標的分析物に特異的に結合する第1の捕捉部分を含む複数の第1のビーズ、(ii)第2の標的分析物に特異的に結合する第2の捕捉部分を含む複数の第2のビーズ、および(iii)第3のまたはそれ以降の標的分析物に特異的に結合する第3のまたはそれ以降の捕捉部分を含む複数の第3のまたはそれ以降のビーズと接触させるステップであって、ここで、複数の第1のビーズが0個の第1の標的分析物分子と会合し、複数の第1のビーズが1個の第1の標的分析物分子と会合し、第1のビーズの少なくとも約20%が0個または1個の第2の標的分析物分子のいずれかと会合し、複数の第2のビーズが0個の第2の標的分析物分子と会合し、複数の第2のビーズが1個の第2の標的分析物分子と会合し、第2のビーズの少なくとも約20%が0個または1個の第2の標的分析物分子のいずれかと会合し、複数の第3のビーズが0個の第3の標的分析物分子と会合し、複数の第3のビーズが1個の第3の標的分析物分子と会合し、第3のビーズの少なくとも約20%が0個または1個の第3の標的分析物分子のいずれかと会合する、ステップ;(b)ステップ(a)の生成物を、(i)第1の標的分析物に結合する第1の検出部分、(ii)第2の標的分析物に結合する第2の検出部分、および(iii)第3のまたはそれ以降の標的分析物に結合する第3のまたはそれ以降の検出部分と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の生成物を、(i)第1の検出部分に結合して第1の標的分析物を担持する各ビーズに関する第1の検出可能なシグナルを生成する第1のシグナル増幅部分、(ii)第2の検出部分に結合して第2の標的分析物を担持する各ビーズに関する第2の検出可能なシグナルを生成する第2のシグナル増幅部分、および(iii)第3のまたはそれ以降の検出部分に結合して第3のまたはそれ以降の標的分析物を担持する各ビーズに関する第3のまたはそれ以降の検出可能なシグナルを生成する第3のまたはそれ以降のシグナル増幅部分と接触させるステップ;ならびに(d)フローサイトメトリーによって第1の検出可能なシグナル、第2の検出可能なシグナル、および第3のまたはそれ以降の検出可能なシグナルを検出し、それによって、試料中の第1の標的分析物、第2の標的分析物、および第3のまたはそれ以降の標的分析物を検出するステップを含む、方法を提供する。
【0103】
前述の方法はいずれも、試料中の1つまたは複数の標的分析物の濃度に基づいて、対象に関する、疾患、例えば、結核の予後または診断を提供することを含んでもよい。前述の方法はいずれも、試料中の1つまたは複数の標的分析物の濃度に基づいて、患者のための治療を選択することを含んでもよい。前述の方法はいずれも、試料中の1つまたは複数の標的分析物の濃度に基づく、治療により対象を処置することを含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、方法を使用して、初期段階で検出および診断できることが活動性結核の発症および疾患の拡散を防止するために必要不可欠である疾患である、結核を予後または診断することができる。
【0104】
一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたは複数の標的分析物、例えば、試料中のMycobacterium tuberculosisによって発現される1つまたは複数の分子を検出および/または定量することを含む。他の実施形態では、本発明の方法は、試料中の1つまたは複数の標的分析物の存在および/または濃度に基づく対象に関する結核の予後または診断を含む。方法はまた、試料中の1つまたは複数の標的分析物の存在および/または濃度に基づいて、治療を選択すること、または治療により対象を処置することを含んでもよい。
【0105】
ビーズ
本発明の方法は、所望の分析物に結合する捕捉部分にコンジュゲートされたマイクロまたはナノ粒子ビーズの使用を含む。ビーズは、様々な材料から作製することができる。一般に、ポリスチレンおよびポリエチレンなどの材料を含む、任意のポリマー材料またはプラスチック材料を使用して、マイクロ粒子、マイクロビーズ、またはナノ粒子を作出することができる。一部の実施形態では、マイクロ粒子は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、および/またはポリアミドなどの生体適合性ポリマー材料から形成させることができる。ある特定の実施形態では、Au、Ag、Pt、Al、Cu、Ni、Fe、Cd、Se、Ge、Pd、Sn、酸化鉄、TiO2、Al2O3、およびSiO2のうちの1つまたは複数から形成される金属、金属酸化物、半導体、および/または半導体酸化物製のマイクロおよび/またはナノ粒子を、多くのサイズで作製し、使用することができる。例えば、単結晶酸化鉄ナノ粒子(MION)および架橋酸化鉄(CLIO)粒子を使用することができる。限定されるものではないが、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、非磁気ビーズ、多孔性ビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、メチルスチレンビーズ、アクリルポリマービーズ、カーボングラファイトビーズ、二酸化チタンビーズ、ラテックスまたは架橋デキストラン、例えば、SEPHAROSEビーズ、セルロースビーズ、ナイロンビーズ、架橋ミセル、およびTEFLON(登録商標)ビーズなどの、任意の好適なビーズを、本発明の文脈において使用することができる。ある特定の実施形態では、ビーズは、常磁性ビーズである。一部の実施形態では、ビーズは、様々な形状、サイズおよび/または色を有してもよい。一部の実施形態では、例えば、フローサイトメトリーによってビーズを検出または識別して、非特異的結合または交差反応性を除去することができるように、1個の分析物のための捕捉部分を含むビーズは、異なる分析物のためのビーズとは異なる形状、サイズおよび/または色を有する。一部の実施形態では、球状ビーズが使用されるが、非球状または不規則な形状のビーズを使用してもよい。一部の実施形態では、ビーズは、検出可能なシグナルまたは標識、例えば、蛍光標識、化学発光標識、もしくは比色標識を含むか、またはそれにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、検出可能なシグナルまたは標識を、フローサイトメトリーもしくは光学アッセイ、または本明細書に記載される、もしくは当技術分野で公知の任意の他の検出方法によって検出することができる。ビーズ上の、標識、例えば、蛍光標識の色は、検出しようとするそれぞれ異なる分析物について異なっていてもよい。
【0106】
前述の方法のいずれかにおいて、ビーズは、磁気ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)である。一部の実施形態では、ビーズは、約0.01μm~約10μm、例えば、約0.01μm、約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm、約1μm、約1.5μm、約2μm、約2.5μm、約3μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、約6μm、約6.5μm、約7μm、約7.5μm、約8μm、約8.5μm、約9μm、約9.5μm、または約10μmのサイズ(例えば、直径)を有する。一部の実施形態では、ビーズは、約1μm~約5μm、約1μm~約4μm、約1μm~約3μm、または約1μm~約2μmのサイズを有する。
【0107】
前述の方法はいずれも、試料を、約1,000個~約5,000,000個のビーズ、例えば、約1000個、約2000個、約5000個、約10,000個、約20,000個、約30,000個、約40,000個、約50,000個、約60,000個、約70,000個、約80,000個、約90,000個、約100,000個、約200,000個、約300,000個、約400,000個、約500,000個、約600,000個、約700,000個、約800,000個、約900,000個、約1,000,000個、約2,000,000個、約3,000,000個、約4,000,000個、または約5,000,000個のビーズと接触させることを含んでもよい。一部の実施形態では、方法は、試料を、約2,000個~約100,000個のビーズ、約10,000個~約5,000,000個のビーズ、約10,000個~約4,000,000個の捕捉プローブ、約10,000個~約3,000,000個のビーズ、約10,000個~約2,000,000個の捕捉プローブ、約10,000個~約1,000,000個のビーズ、約10,000個~約500,000個の捕捉プローブ、約10,000個~約400,000個のビーズ、約10,000個~約300,000個のビーズ、約10,000個~約200,000個のビーズ、または約10,000個~約100,000個のビーズと接触させることを含んでもよい。一部の実施形態では、方法は、試料を、約2,000個のビーズ、約5,000個のビーズ、約10,000個のビーズ、約20,000個のビーズ、約50,000個のビーズ、または約100,000個のビーズと接触させることを含んでもよい。一部の実施形態では、方法は、試料を、約20,000個のビーズと接触させることを含んでもよい。
【0108】
本発明の方法の感度および/または試料採取効率を、ビーズの数に基づいて調整することができる。一部の実施形態では、ビーズ数の減少は、方法の感度を改善することができる。他の実施形態では、ビーズ数の増加は、方法の感度を改善することができる。使用されるビーズの数を、検出されるそれぞれの分析物について最適化することもできる。
【0109】
捕捉部分、検出部分およびシグナル増幅部分
本発明の方法における使用のためのビーズは、目的の分析物に特異的に結合することができる捕捉部分でコーティングされる、例えば、それにコンジュゲートされる。捕捉部分が標的分析物に結合したら、ビーズ-分析物複合体が形成される。検出部分およびシグナル増幅部分は、単一の標的分析物を担持する各ビーズに関するオンビーズで非拡散性の検出可能なシグナルを生成させるために使用される。
【0110】
捕捉および/または検出部分は、標的分析物に特異的に結合するか、またはそうでなければそれと特異的に会合することができる。任意の好適な捕捉および/または検出部分を、本発明の文脈において使用することができる。例えば、一部の実施形態では、捕捉部分および/または検出部分は、抗体、アプタマー、抗体模倣物質、ポリペプチド、核酸、分子インプリントポリマー、受容体、結合タンパク質、または低分子であってもよい。抗体は、全長抗体(例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、もしくはIgM抗体)または抗原結合抗体断片(例えば、scFv、Fv、dAb、Fab、Fab’、Fab’2、F(ab’)2、Fd、Fv、もしくはFeb)であってもよい。抗体模倣物質は、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、またはナノCLAMPであってもよい。
【0111】
一部の実施形態では、捕捉および/または検出部分は、例えば、分析物がタンパク質またはペプチドである場合、分析物に結合する抗体もしくはその抗原結合部分またはアプタマーである。一部の実施形態では、捕捉および/または検出部分は、目的の核酸の一部と相補的であるオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、捕捉および/または検出部分は、分析物がホルモンなどの分子である場合、タンパク質、例えば、受容体のリガンド結合部分である。
【0112】
方法は、オンビーズシグナル増幅ステップをさらに含む。具体的には、方法は、試料を、検出部分に結合して、単一の標的分析物を担持する各ビーズの検出を可能にする検出可能なシグナルを生成するシグナル増幅部分と接触させることを含む。シグナルは、任意の検出可能なシグナルであってもよい。一部の実施形態では、シグナルは、フローサイトメトリーまたは光学アッセイによって検出可能な、蛍光または化学発光または比色標識などの光学的に検出可能な標識を含む。
【0113】
一部の実施形態では、シグナル増幅部分は、酵素、例えば、phi29 DNAポリメラーゼ、および/または核酸分子、例えば、DNAプライマーおよび鋳型、例えば、直列に連結された同じDNA配列の複数のコピーを含有するコンカテマーまたは長い連続的DNA分子を含む。シグナル増幅部分は、生成されたコンカテマーにハイブリダイズすることができる、検出可能な標識を有するプローブ、例えば、蛍光標識されたDNAプローブまたは蛍光標識されたDNAプローブのレシオメトリック(ratiometric)な組合せをさらに含む。一部の実施形態では、検出可能な標識は、異なる標的分析物について異なる色を含む。一部の実施形態では、異なる標的分析物を、異なるビーズ、例えば、異なる色、蛍光強度、形状またはサイズを有するビーズと、異なる検出可能な標識、例えば、異なる色または異なる比の色を有する標識との組合せを使用することによって検出することができ、これをフローサイトメトリーによって識別することができる。
【0114】
一部の実施形態では、方法は、例えば、フローサイトメトリーによってビーズおよび検出可能なシグナルを検出することによって、交差反応性または非特異的結合を減少させる。一部の実施形態では、蛍光標識をコードした捕捉ビーズと、DNA鋳型にコンジュゲートされた検出抗体との独自の対が、各分析物について使用される。それぞれの独自のDNA鋳型にコンジュゲートされた抗体は、RCA反応の間に増幅された場合、特異的な蛍光色素とコンジュゲートしたDNAプローブまたは色素とコンジュゲートしたDNAプローブのレシオメトリックな組合せで標識される。それぞれのプローブの色または色のレシオメトリックな組合せを、フローサイトメトリーにおける複数の検出チャネルを使用して識別することができる。ビーズ上での単一の分析物分子の捕捉の際に、独自のプライマー-鋳型配列とコンジュゲートした検出抗体の混合物を添加し、その後、洗浄し、蛍光色素とコンジュゲートしたDNAプローブの混合物を含有するRCA反応中に再懸濁する。各分析物は、(1)捕捉ビーズの色、蛍光強度、またはサイズと、(2)蛍光プローブの色または色の比との独自の対に対応する。結果として、捕捉ビーズとプローブシグナルとの「正確な」一致した対のみが、各分析物について「オン」ビーズと分類されるが、捕捉ビーズとプローブの色の「誤った」対、すなわち、交差反応性結合事象は、さらなる分析から除外される。
【0115】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、ローリングサークル増幅(RCA)によって生成される。RCAのために、ストレプトアビジン標識または検出抗体は、DNAプライマーおよび鋳型とコンジュゲートされる。各ビーズ-分析物複合体に結合した生成されたDNAコンカテマーを、検出のための多数の相補的な蛍光標識されたDNAプローブとハイブリダイズさせることができる。これらの方法では、RCAの時間を増加または減少させることによって、感度を調整することができる。
【0116】
他の核酸増幅法、例えば、ハイブリダイゼーション連鎖反応、ループ媒介性等温増幅、ラジカル重合、酵素触媒近接標識(PL)重合(例えば、Branon et al., Nat Biotechnol. 2018, 36(9):880-887を参照されたい);重合に基づくシグナル増幅(例えば、Badu-Tawiah et al., Lab Chip, 2015, 15, 655に記載された、例えば、可視光誘導性重合);磁気ビーズ-量子ドットイムノアッセイ(Kim et al., ACS Sens. 2017, 2, 6, 766-772);またはイムノシグナルハイブリダイゼーション連鎖反応(isHCR)(Lin et al., Nat Methods. 2018 Apr;15(4):275-278)を使用して、オンビーズシグナルを生成することができる。Dunbar and Das, J Clin Virol. 2019; 115: 18-31に記載されたような、分岐DNAアッセイを使用することもできる。
【0117】
あるいは、増幅されたオンビーズシグナルを、チラミドシグナル増幅(TSA)、ビオチンリガーゼ、および操作されたアスコルビン酸ペルオキシダーゼなどの近接依存性標識法を使用して生成することができる。触媒リポーター沈着(CARD)とも称されるTSAは、低存在量で存在する分析物の検出を可能にする高感度法である。TSAは、免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーション実験において使用されており、デジタルELISAのために使用されてきた(Akama et al., Anal. Chem. 2016, 88 (14), 7123-7129)。TSAでは、HRP(例えば、第2の結合部分に結合した)は、標識されたチラミドの、反応性ラジカルへの変換を触媒した後、近隣のチロシン残基に共有結合し、高密度の検出可能なシグナルを生成する。
【0118】
一部の実施形態では、方法は、検出部分を、前増幅させたシグナル、例えば、標識されたポリマーまたはナノ粒子または核酸コンカテマーと接触させることを含む;例えば、Tang et al., Analyst, 2013,138, 981-990;Hansen et al., Anal Bioanal Chem. 2008; 392(1-2): 167-175;Wu et al., Chem 2017, 2, 760-790;Gormley et al., Nano Lett. 2014, 14, 11, 6368-6373(酵素または金属イオンによって生成されたラジカルを重合させて、複数の金ナノ粒子(AuNP)を絡ませるポリマーを形成させる));Melnychuk and Klymchenko, J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 34, 10856-10865(色素をロードしたポリマー性ナノ粒子)を参照されたい。
【0119】
一部の実施形態では、検出部分は、シグナル増幅部分に直接連結される。一部の実施形態では、検出部分およびシグナル増幅部分は、間接的に、例えば、非共有結合性の親和性結合対によって連結され、ここで、検出部分は、非共有結合性の親和性結合対の第1のメンバーに連結され、シグナル増幅部分は、非共有結合性の親和性結合対の第2のメンバーに連結される。一部の実施形態では、非共有結合性の親和性結合対は、ビオチン-ストレプトアビジン、ビオチン-アビジン、ジゴキシゲニン、SNAPタグ、CLIPタグ、リガンド-受容体、抗原-抗体、または抗体結合タンパク質-抗体、または当技術分野で公知の任意の他の相補的結合パートナーである。一部の実施形態では、検出部分はビオチン分子に結合され、シグナル増幅部分、例えば、DNAコンカテマーはストレプトアビジン分子にコンジュゲートされる。
【0120】
検出
本発明は、フローサイトメトリーによるシグナル分子計数化を可能にする単一の捕捉された標的分子からのオンビーズシグナル生成を使用する。非拡散性蛍光シグナルを、標的分子を担持する各ビーズに局在化することによって、この方法は、フローサイトメトリーによって「オン」および「オフ」ビーズを迅速に計数することを可能にする。
【0121】
本発明は、いくつかの点で過去のデジタル検出法とは異なる:(1)シグナルは各ビーズに局在化され、したがって、複雑な微細加工または液滴生成に関する要件を取り除くので、それはシグナル区画化のためにマイクロウェルまたは液滴などの個々の容器中へのビーズ単離を必要としない;(2)それは現在のSimoa技術よりも多いパーセンテージのビーズを計数することができ(約5%と比較して少なくとも30%)、したがって、検出限界を約一桁改善するため、それは稀な標的分子の試料採取効率を増加させる;(3)フローサイトメトリーは、多くの研究室が容易に利用でき、低費用でマイクロフルイディックシステムに適合化させることもでき、本発明を、現行の検査基盤および診療現場形式への迅速な組み込みにより適したものにする。
【0122】
さらに、本発明は、Luminexアッセイなどの他のフローサイトメトリーに基づくイムノアッセイとは異なる:(1)それは、現行のフローサイトメトリーに基づくイムノアッセイにおけるようにビーズあたり複数の標的分子の代わりに、ビーズ上に単一の標的分子を捕捉することによってデジタル検出を達成し、したがって、数桁のはるかに低い検出限界を可能にする;(2)それは、フローサイトメトリーによって検出可能なシグナルを生成するためにビーズあたり複数の標的分子を必要とする蛍光標識された二次抗体に依拠するのではなく、それぞれ個々の標的分子に関する検出可能なシグナルを得るためにシグナル増幅を使用する。
【0123】
以前のデジタルELISA法と比較した本発明の別の重要な利点は、はるかにより迅速な、自動化されたシグナル読み出しである。多くのベンチトップ型フローサイトメーターに既に組み込まれている96ウェルプレート試料採取モードによる自動化は、最新式のワークフローをさらに提供する。
【0124】
一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約5分未満である。一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約4分未満である。一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約3分未満である。一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約2分未満である。一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約1分未満である。一部の実施形態では、シグナル検出にかかる時間は、試料あたり約30秒未満である。
【0125】
本発明の方法によって生成されるオンビーズシグナルを検出および/または定量することができ、検出および/または定量を、試験される試料中の標的分析物の存在、量、および/または濃度を関連付けることができる。
【0126】
一部の実施形態では、オンビーズシグナルは、フローサイトメーターによって検出される。フローサイトメーターは、粒子懸濁液を狭い管の中に供給し、懸濁された粒子を1個ずつ分離し、それぞれの粒子にレーザーを照射し、ならびにレーザーによって励起された粒子からの蛍光放射および粒子によるレーザーの散乱を検出および測定する装置である。
【0127】
本発明における使用のためのフローサイトメーターは特に限定されず、任意の従来のフローサイトメーターをそのまま使用することができる。それは、例えば、1つまたは複数の検出領域中で単一波長の光を放出するレーザー源(例えば、He/Neまたはアルゴン)を有する。異なる波長で光を放出するレーザー源を、異なる検出領域にインストールすることができる。レーザーを、ビーム整形レンズを使用することによって収束させることができる。
【0128】
レーザーを照射する前に、ビーズを縦一列に集中させる。伝統的なフローサイトメーターでは、シース液(例えば、IsoFlowシース液(商標名、Beckmann Coulterによって製造)、Dakoシース液(商標名、Dako Japanによって製造)など)、および標的分析物を含有する試料溶液をフローセルに導入し、そこでシース液および試料溶液は相互に混合することなく層流を形成する。フローセルにおける流動中に、試料コアがシース液の間に保持され、それがレーザー照射ゾーンを通過するときにレーザーによって照射されるにつれて、試料溶液は試料コアを形成しながら流動する。しかしながら、Deanフォーカシング、粘弾性フォーカシング、物理的閉じ込め、または他の方法を使用して、ビーズを整列させることもできる。
【0129】
一部の実施形態では、フローサイトメーターは、単一の標的分子に関する検出データの獲得を可能にする。他の実施形態では、フローサイトメーターは、単一の測定操作で複数の標的の同時測定を可能にする。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物を、異なるビーズ、例えば、異なる色、形状またはサイズを有するビーズと、異なる検出可能な標識、例えば、異なる色を有する標識との組合せを使用することによって検出することができ、これをフローサイトメトリーによって識別することができる。
【0130】
本発明における使用のためのフローサイトメーターは、FACS Calibur(Becton,Dickinson and Companyによって製造)、PERFLOW Ana(The Furukawa Electric Co.,Ltd.によって製造)、EPICS ALTRA(Beckmann Coulterによって製造)、CyAn(Dako Japanによって製造)、またはJSAN(Bay bioscience Co.,Ltd.によって製造)などの市販のフローサイトメーターであってもよい。「フローサイトメーター」はまた、ビーズおよびオンビーズシグナルの検出を可能にするのに十分なフローサイトメーターの一部の、または全部の特徴を再現する他のデバイスも含むことが理解される。
【0131】
標的分析物
当業者によって理解されるように、本発明の方法を使用して、多数の標的分析物を検出し、必要に応じて、定量することができる。任意の好適な標的分析物を、本発明の方法を使用して調査することができる。以下に列挙される標的分析物が非限定例として提供される。標的分析物は、天然に存在するか、または合成であってもよい。
【0132】
一部の実施形態では、標的分析物は、限定されるものではないが、タンパク質(例えば、抗体、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、もしくはIL-36)、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン(IFN、例えば、IFN-ベータおよびIFN-ガンマ)、コロニー刺激因子(例えば、CSF、G-CSF、GM-CSFなど)、ケモカイン、腫瘍壊死因子(TNF-アルファおよびTNF-ベータを含むTNF)、骨形成タンパク質(BMP)など)、受容体(例えば、インターロイキン受容体、受容体チロシンキナーゼなど)、リガンド、酵素(例えば、ポリメラーゼ、カテプシン、カルパイン、アミノトランスフェラーゼ(例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)もしくはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT))、プロテアーゼ(例えば、カスパーゼ)、リパーゼ、オキシドレダクターゼ、キナーゼ、ヌクレオチドシクラーゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼなど)、もしくはプリオン)、核酸(例えば、DNAもしくはRNA、例えば、マイクロRNA)、多糖、脂質、細胞(例えば、原核細胞(例えば、細菌(例えば、Mycobacterium tuberculosis、もしくはE.coli))もしくは真核細胞(例えば、真菌細胞もしくはヒト細胞)、腫瘍細胞を含む)、脂肪酸、糖タンパク質、生体分子、治療剤(例えば、抗体、融合タンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)、サイトカイン、可溶性受容体など)、生物(例えば、病原体)、ウイルス(例えば、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV))、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなど)、または低分子を含む。一部の実施形態では、標的分析物は、細菌、例えば、Mycobacterium tuberculosisによって発現される分子であってもよい。一部の実施形態では、標的分析物は、翻訳後改変(例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化、ユビキチン化など)されていてもよい。
【0133】
一部の実施形態では、標的分析物は、少なくとも約1000Da、例えば、少なくとも約1500Da、少なくとも約2000Da、少なくとも約2500Da、少なくとも約3000Da、少なくとも約3500Da、少なくとも約4000Da、少なくとも約4500Da、または少なくとも約5000Daの分子量を有する。
【0134】
一部の実施形態では、標的分析物は、捕捉部分および検出部分によって認識され得る1つまたは複数の結合部位を有してもよい。標的分析物を、本発明の方法に基づくサンドイッチアッセイ形式で検出することができる。一部の実施形態では、ビーズは、0個もしくは1個の標的分析物分子のいずれかと会合し得るか、またはビーズを、1つもしくは複数の、例えば、1、2、3、4、もしくは5個、もしくはそれより多い標的分析物分子と会合してもよい。
【0135】
本明細書に記載される方法はいずれも、例えば、多重化アッセイにおいて、標的分析物を検出すること、および必要に応じて、それを定量することをさらに含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、方法は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約14、約16、約18、約20種、またはそれより多い異なる標的分析物を検出し、必要に応じて、定量することを含んでもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物を、異なるビーズ、例えば、異なる色、形状またはサイズを有するビーズと、異なる検出可能な標識、例えば、異なる色を有する標識との組合せを使用することによって検出することができ、これをフローサイトメトリーによって識別することができる。
【0136】
一部の実施形態では、標的分析物は、翻訳後改変(例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化、ユビキチン化など)されていてもよい。
【0137】
前述の方法のいずれかにおいて、試料中の標的分析物の濃度は、約0mM~約5mM、例えば、約0.1aM~約5mM、約0.1aM~約4mM、約0.1aM~約3mM、約0.1aM~約2mM、約0.1aM~約1mM、約0.1aM~約1μM、約0.1aM~約1nM、約0.1aM~約1pM、約0.1aM~約1fM、約0.1aM~約900aM、約0.1aM~約800aM、約0.1aM~約700aM、約0.1aM~約600aM、約0.1aM~約500aM、約0.1aM~約400aM、約0.1aM~約300aM、約0.1aM~約200aM、または約0.1aM~約100aMの範囲であってもよい。
【0138】
前述の方法のいずれかにおいて、ビーズおよび試料のためのインキュベーション時間を調整して、バックグラウンドに対するシグナル比(signal-to-background ratio)および分析感度を増強することができる。一部の実施形態では、インキュベートすることを、約1分~約48時間、約1分~約10時間、または約1時間~約4時間にわたって実施することができる。一部の実施形態では、インキュベートする時間は、約分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約40時間、または約48時間である。
【0139】
一部の実施形態では、ビーズおよび試料は、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、または約5時間にわたってインキュベートされる。一実施形態では、インキュベートする時間は、約1時間である。
【0140】
試料
任意の好適な試料を、本発明の文脈において使用することができる。例えば、一部の実施形態では、試料は、液体試料(例えば、生体試料または環境試料)である。例示的な生体試料としては、限定されるものではないが、体液、体組織(例えば、腫瘍組織)、細胞、または他の供給源が挙げられる。例示的な体液としては、限定されるものではないが、例えば、リンパ、全血(新鮮な、または凍結されたものを含む)、血漿(新鮮な、または凍結されたものを含む)、血清(新鮮な、または凍結されたものを含む)、末梢血単核細胞を含有する血液画分、尿、唾液、精液、汗、涙液、滑液、脳脊髄液、糞便、粘液、膣液、および髄液が挙げられる。試料はまた、乳房組織、肝組織、膵組織、子宮頸部組織、肺組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋肉組織、滑膜組織、皮膚、毛包、骨髄、腫瘍組織、組織溶解物もしくはホモジネート、および臓器溶解物もしくはホモジネートも含む。哺乳動物から組織生検および体液を取得するための方法は、当技術分野で周知である。他の実施形態では、試料は、環境試料、例えば、水試料、土壌試料、大気試料、地球外材料などであってもよい。
【0141】
分析される流体試料の体積は、潜在的には、例えば、使用される/利用可能な捕捉プローブの数、検出プローブの数などのいくつかの因子に応じて、様々な範囲の体積内の任意の量であってもよい。非限定例として、試料体積は、約0.01μl、約0.1μl、約1μl、約5μl、約10μl、約100μl、約1ml、約5ml、約10mlなどであってもよい。一部の場合、流体試料の体積は、約0.01μl~約10ml、約0.01μl~約1ml、約0.01μl~約100μl、または約0.1μl~約10μlである。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法における使用の前に流体試料を希釈してもよい。例えば、分析物分子の供給源が体液(例えば、血液、血漿、または血清)である実施形態では、流体を適切な溶媒(例えば、PBS緩衝液などの緩衝液)で希釈してもよい。流体試料を、使用前に、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍、約50倍、約100倍、またはそれより大きく希釈してもよい。試料を、複数の捕捉プローブもしくは検出可能部分を含む溶液に添加するか、または複数の捕捉プローブもしくは検出可能部分を試料に直接添加するか、もしくは溶液として添加することができる。
【0143】
組成物
本発明は、試料中の標的分析物の検出および必要に応じて、定量において使用することができる組成物を提供する。例えば、本発明は、(a)複数の捕捉部分(例えば、抗体)に連結されている、ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)、(b)検出部分(例えば、抗体)、この検出部分は、非共有結合性の親和性結合対の第1のメンバー(例えば、ビオチン部分)に連結されている、および(c)シグナル増幅部分(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ、DNAプライマー、DNAコンカテマー、および蛍光標識されたプローブ)、このシグナル増幅部分(例えば、DNAコンカテマー)は、非共有結合性の親和性結合対の第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン部分)に連結されている、を含む組成物であって、検出部分がビーズ上の捕捉部分によって捕捉された標的分析物の1つに結合し、シグナル増幅部分が、非共有結合性の親和性結合対の第1のメンバーが非共有結合性の親和性結合対の第2のメンバーに結合することによって検出部分に結合している、組成物を提供する。
【0144】
キット
本発明は、流体試料中の標的分析物の濃度を検出または測定するためのキットを提供する。キットは、例えば、複数のビーズ(例えば、常磁性ビーズ)を含んでもよい。提供される複数のビーズは、本明細書に記載のような、様々な特性およびパラメーターを有してもよい。複数のビーズを、標的分析物に特異的に結合する捕捉部分でコーティングすることができる。また、複数のビーズを、検出のために、検出可能なシグナルまたは標識、例えば、蛍光標識にコンジュゲートすることもできる。キットは、標的分子がビーズ上の捕捉部分によって捕捉されたら、標的分子に特異的に結合することができる検出部分を含んでもよい。キットは、フローサイトメトリーによって検出可能であるオンビーズ非拡散性シグナルを生成することができるシグナル増幅部分をさらに含んでもよい。提供される捕捉部分、検出部分およびシグナル増幅部分は、本明細書に記載されるような、様々な特性およびパラメーターを有してもよい。
【0145】
キットはまた、検出可能なシグナルにより試料を収集するための反応容器を含んでもよい。反応容器を、試料中のビーズを受け取って、含有するように構成することができる。
【0146】
本明細書に記載されるキットおよび製品を、例えば、実施例において、本明細書に記載される方法またはアッセイのいずれかを実行するために構成することができる。
【0147】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の成分の使用のための指示を含んでもよい。すなわち、キットは、例えば、流体試料中の標的分析物(複数可)の濃度の尺度を決定するためのシステムと共に使用するための、ビーズおよび反応容器の使用の記載を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「指示」は、指示および/または推奨(promotion)の構成要素を定義し、典型的には、本発明の包装に関する、またはそれと関連する書面による指示を含んでもよい。指示はまた、キットの使用者が、指示がキットと関連することを明確に認識するような任意の様式で提供される任意の口頭の、または電子的な指示を含んでもよい。さらに、キットは、本明細書に記載されるように、特定の適用に応じて他の成分を含んでもよい。
【実施例】
【0148】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解される。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示目的に過ぎず、その観点で様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲内ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。
【0149】
(実施例1)
MOSAIC:アトモル感度を有するハイスループット高多重デジタルタンパク質検出
多くの臨床診断適用における主要な課題は、血漿または唾液などの生体液中の低存在量のタンパク質および他の生体分子の測定である。デジタル酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などのデジタル技術の出現は、従来のタンパク質検出法と比較して1000倍の感度の増大を可能にした。しかしながら、現在のデジタルELISA技術は、その検出限界未満で存在するバイオマーカーに対する不十分な感度を依然として有しており、特殊な機器または時間消費的なワークフローを必要とし、その幅広いインプリメンテーションを限定してきた。これらの課題に対処するために、本発明者らは、これらの他の方法と比較して、感度の一桁の増強と共に、低アトモル濃度の検出限界を達成する、より高感度、最新式で迅速なデジタルELISAプラットフォームである、個別計数化のための分子オンビーズシグナル増幅(MOSAIC)を開発した。MOSAICは、処理量を大きく増加させ、現行の検査基盤に容易に統合される、迅速な、自動化可能なフローサイトメトリー読み出しを使用する。MOSAICは稀な標的分子のための高い試料採取効率を提供するため、アッセイビーズ数を容易に調整して、高い測定精度を有してバックグラウンドに対するシグナル比を増強することができる。さらに、MOSAICの溶液に基づくシグナル読み出しは、マイクロウェルまたは液滴に基づくデジタル法とは対照的に、フェムトモルまたはそれより下の感度で高次多重化について同時に分析することができるビーズ型の数を拡大する。原理証明の実証として、唾液中の低存在量サイトカインの検出能および血漿中の8種のタンパク質分析物の超高感度多重化測定の改善を目指して、MOSAICを適用した。MOSAICのアトモル感度、迅速な処理量、および広い多重化機能は、タンパク質バイオマーカー探索ならびに多様な疾患適用のための診断検査を潜在的に促進することができる非常に利用しやすく多用途の超高感度プラットフォームを提供する。
【0150】
MOSAICプラットフォームの開発。
迅速なフローサイトメトリーシグナル読み出しを示す超高感度デジタルELISAプラットフォームを確立するために、過剰数の抗体でコーティングされたビーズ上に捕捉された単一の標的分子から局在化蛍光シグナルを生成するための方法を使用した(
図1)
6。ビーズ上での単一の免疫複合体サンドイッチの形成およびDNAプライマー-鋳型対にコンジュゲートしたストレプトアビジンによる標識化の際に、ローリングサークル増幅(RCA)を実行して、それぞれの免疫複合体サンドイッチに結合したDNAコンカテマーを形成させる。RCA反応への蛍光標識されたDNAプローブの組み込みは、コンカテマーへのin situでのハイブリダイゼーションを可能にし、したがって、標的分子を担持する各ビーズ上で強力な蛍光シグナルを産生する。増幅されたシグナルはそれぞれの免疫複合体サンドイッチに結合するため、続いて、個々のビーズを、蛍光「オン」および「オフ」ビーズの計数化のためのフローサイトメトリーによって分析する。
【0151】
この読み出し法を使用して計数する単一分子の実現可能性を評価するために、がん、自己免疫疾患、および感染症全体にわたって多様な役割を有する抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)の検出を目指してMOSAICを最初に適用した12、13。「オン」ビーズは、RCAコンカテマーの不均一なサイズ分布のため、様々な範囲の蛍光強度に及んだ。期待値最大化を使用して蛍光強度値に2混合ガウスモデルを当てはめることによって、「オン」ビーズと「オフ」ビーズとを識別するためのカットオフ値を決定した14。より低い濃度では、ほぼ全てのビーズがより低い(「オフ」)ガウスモデルに入り、それらがこのガウスモデルの平均の5標準偏差より高かった場合、ビーズを「オン」として計数した。より高い濃度では、標識が「オフ」または「オン」ガウスモデルから引き出される尤度に基づいてビーズについてそれらを予測した。このアルゴリズムを使用して、本発明者らは、「オン」ビーズの画分の尺度である、ビーズあたりの平均分子(AMB)を一貫して定量することができた。
【0152】
MOSAICにおける高い試料採取効率は感度を改善させる。
重要なことに、ほぼ全てのビーズ溶液をフローサイトメトリーによって分析することができるため、MOSAICは高い試料採取効率を達成する。試料あたり全初期アッセイビーズの約50~60%が分析され、これはSimoaと比較して試料採取効率の10倍を上回る増加に相当する。十分な測定精度を維持しながら、全アッセイビーズの数を減少させること、標的分子のビーズに対する比、それによって、バックグラウンドに対するシグナル比を増大させることによって、MOSAICの分析感度を最大化することができる。MOSAICにおけるより少ないビーズ数を使用して感度を増強する可能性を活用するために、アッセイビーズ数を、IL-10については100,000個から2,000個まで体系的に変化させた。バックグラウンドに対するシグナル比は、ビーズ数の減少と共に改善した(
図2A)。バックグラウンドに対するシグナル比の改善を定量するために、0.2fMのキャリブレータ―のバックグラウンドに対するシグナル比を、それぞれの較正曲線において、100,000個のビーズの較正曲線のものに対して正規化した。この相対バックグラウンドに対するシグナル比はビーズの数が減少するにつれ増大し、検出限界(LOD)の対応する改善が観察され、100,000個のビーズと比較して感度が約一桁増強された(
図2B)。しかしながら、ビーズ数を2,000個のビーズまでさらに減少させたとき、非常に少ないビーズ数での測定精度に対するポアソンノイズの効果の増大に起因して、分析感度はさらに改善しなかった。最大感度は20,000個のビーズで達成され、LODは15.9aMで、これは、対応するSimoaアッセイと比較して12倍を上回る感度の増強を表している(
図2Cおよび表1)。標準的なSimoaアッセイは、典型的には500,000個の全アッセイビーズを使用するが、MOSAICとのより密接な比較のために、分析された全ビーズがより少ないにもかかわらず、バックグラウンドに対するシグナル比の改善のために400,000個のヘルパービーズと共に100,000個のアッセイビーズが使用された。
表1. 様々な分析物に関する最適化されたMOSAICアッセイおよび対応するSimoaアッセイの検出限界(LOD)および定量下限 (LLOQ)値。LODおよびLLOQ値は、バックグラウンドを上回る、それぞれ3および10標準偏差として算出される。
【表1】
【0153】
ビーズ数を減らすことが他の分析物についてもMOSAICの感度を同様に増強することができるかどうかを評価するために、MOSAICプラットフォームを追加のサイトカインにも拡大し、各分析物に対するビーズ数の同様の変更を実施した(
図2D、
図6A~6Eおよび表2)。100,000個から10,000個へのビーズ数の減少の際のバックグラウンドに対するシグナルの改善は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン-8(IL-8)、およびインターロイキン-12p70(IL-12p70)についても観察され、最適感度はIFN-γおよびIL-8については10,000個のビーズで達成された。IL-12p70については、バックグラウンドに対するシグナルの増大にもかかわらず、感度は全ビーズ数にわたって依然として類似していたが、100,000個のアッセイビーズを使用して5.8aMの最も低いLODが達成された。IL-6およびIL-1βについては、ビーズ数を100,000個から減少させると、バックグラウンドに対するシグナルのわずかな増大があった。この観察と一致して、LODは、アッセイビーズ数を減少させてもそれほど改善しなかった。バックグラウンドに対するシグナルの増強の欠如から予想される通り、これらの分析物について対応するSimoaアッセイと比較して感度のわずか3~5倍の改善が観察された;これらの改善は、試料採取効率の増加に起因し得る。本発明者らの結果は、MOSAICが、超高感度タンパク質検出に関する現在の最先端であるSimoaと比較して3~12倍高い感度を達成することを示している(表1および
図7A~7E)。標準的なデジタルELISAと比較して、MOSAICのはるかにより高い試料採取効率に起因して、10,000個のビーズまでのはるかにより少ないビーズ数を使用して、十分な測定精度を維持しながら、いくつかの分析物に関するバックグラウンドに対するシグナルを増強することができる。バックグラウンドに対するシグナル改善の程度は特定の抗体ペアに依存するが、各分析物についてアッセイビーズ数を容易に最適化することができる。
表2. 全てのシングルプレックスMOSAICアッセイについての分析感度。異なるアッセイビーズ数にわたって全てのサイトカインについて実施されたMOSAICアッセイの検出限界(LOD)および定量下限(LLOQ)。
【表2-1】
【表2-2】
【0154】
MOSAICアッセイの再現性を試験するために、いくつかの選択した曲線に関して異なる日に同一の較正曲線を測定し、同様のAMB値およびLODを得た。結果として、2つの別々の較正曲線の平均LODがこれらの曲線について報告される。これらのアッセイの再現性のさらなる確認として、全ての反復物の組合せから得られたLODも、単一の較正曲線中の別々の曲線間で評価し、報告された平均LOD値と類似する値を得た。
【0155】
アッセイビーズの数を減らすことは存在する捕捉抗体分子の数も低減するため、捕捉速度はより遅い可能性がある。したがって、より長い標的捕捉時間がバックグラウンドに対するシグナル比および分析感度をさらに増強させることができるかどうかを調査した。しかしながら、IL-10とIFN-γとの両方について、1時間から4時間への標的捕捉時間の増加は、類似するか、またはわずかに悪いLODをもたらした(
図8A~8C)。したがって、より効率的なワークフローのために、その後の実験においては1時間の標的捕捉時間を使用した。
【0156】
MOSAICにおける試料採取効率の改善から生じる感度改善の程度を決定するために、IL-10およびIFN-γについて得られた較正曲線間でビーズのサブセットの無作為な試料採取を実施し、感度および精度に対する分析されるビーズの数の効果を検査した。少ない事象数で生じる高いポアソンノイズと一致して、わずか数百個のビーズを分析した場合に得られたLODは、全ての出発アッセイビーズ数にわたって非常に高かった(
図3A~B)。各サブセットのサイズについて、無作為の試料採取を100回繰り返し、これらの低い試料採取効率で予想された低い精度および再現性と一致して、1,000個またはそれより少ないビーズを分析した場合に、反復サブセット間の算出されたLODにおいて高い変動が観察された。分析されるアッセイビーズのパーセンテージが増大するにつれて、分析感度はかなり改善すると共に、分析されるビーズの数が数千個を上回って増加するにつれて、感度の増大はより小さくなる。さらに、試料採取効率の増大に伴う感度の改善は、バックグラウンドシグナルの測定変動係数の低下と対応していた(
図3C~3D)。したがって、これらの結果は、MOSAICの感度の増強における試料採取効率の改善の重要な役割を経験的に支持する。
【0157】
MOSAICは生体液中の低存在量分析物の検出能を改善する。
次に、MOSAICの性能を生体液において活用して、その感度の増強が低存在量のバイオマーカーの検出能を改善することができるかどうかを調査した。代表的なサイトカインとして、IFN-γを、ヒト血漿試料のコホート中でMOSAICと対応するSimoaアッセイとの両方を使用して測定した(
図4A~4B)。10,000個のアッセイビーズを使用してMOSAICによって測定されたIFN-γ濃度は、Simoaによって測定されたものとの良好な相関を示し、MOSAICアッセイの正確度を支持していた。さらに、IFN-γは両方法を使用して血漿において一般に検出可能であったが、17個の血漿試料のうちの1個はSimoaによって検出不可能なままであったのに対して、より高感度のMOSAICアッセイは100%の検出能を達成した。
【0158】
MOSAICのより優れた感度が生体液中の低存在量分析物の検出能を改善することができるかどうかをさらに評価するために、MOSAICを唾液に適用した。唾液は血液から唾液腺まで濾過された最小限の血清成分を含有するため、多くの潜在的なバイオマーカーは血液中よりも唾液中にはるかにより低いレベルで存在し、超高感度技術を必要とする。原理証明として、MOSAICを使用して、唾液試料のコホート中のIFN-γのレベルを測定した。IFN-γはSimoaを使用した場合には唾液試料のわずか42%(11/26)において検出可能であったが、低ビーズMOSAICアッセイの増強された感度は、65%(17/26)を上回る唾液試料までIFN-γの検出能を改善させた(
図4C~4D)。Simoaを使用した場合に検出可能なIFN-γレベルを有する全ての唾液試料は、MOSAICによって検出可能であり、正に相関した測定値を示した。血漿と比較して唾液におけるMOSAICとSimoaとの測定値間の広い変動性は、異なるアッセイを用いた異なるマトリックス干渉効果に起因し得る。しかしながら、唾液においてスパイクおよび回収実験を実施した場合、70~130%の許容範囲内の回収が観察された(表3)。LODよりも上であるにもかかわらずSimoaによって検出不可能であったいくつかの唾液試料においてIFN-γレベルを検出するMOSAICの能力は、少ないビーズ数でのその増強されたバックグラウンドに対するシグナルおよび感度だけでなく、低い濃度で測定精度を増大させるより高い試料採取効率にも起因し得る。さらに、過剰のストレプトアビジン-DNAから増幅されるRCA産物を最小化するための、Simoaと比較してMOSAICにおいて実施されるより徹底的な洗浄は、干渉成分の除去の改善に寄与し得る。
表3. 3つの個々のヒト唾液試料の唾液において実施されたMOSAICアッセイに関するスパイクされた組換えヒトIFN-γおよびIL-12p70タンパク質の回収率。唾液試料はStartingBlock(商標) Blocking Buffer (Thermo Fisher Scientific)で4倍に希釈された。回収率は、二連の測定の平均±標準偏差として報告される。
【表3】
【0159】
Simoaによって検出不可能であるアトモル濃度の内因性タンパク質を検出するMOSAICの能力は、非常に低い存在量のバイオマーカーのためのその潜在的な診断有用性を強調する。MOSAICを使用した場合、唾液中のさらにより低い存在量の分析物、IL-12p70の検出能の改善も、Simoaによる0%から約12%まで、または26個の唾液試料のうちの3個まで達成された(
図9A~9C)。MOSAICの感度は大部分の試験した唾液試料においてIL-12p70を検出するには不十分なままであったが、結果は、その増強された感度が、唾液中のそのような稀な分析物の「氷山の一角」を明らかにし始めるだけでなく、さらにより感度の高い方法の必要性も強調することを示している。
【0160】
MOSAICの多重化機能。
MOSAICの感度の増強に加えて、そのオンビーズシグナル生成戦略およびフローサイトメトリー読み出しは、デジタルELISAの多重化機能を拡張することができる。現在のデジタルイムノアッセイは、典型的には個々の標的を単離するための区画の総数における制約に一部起因して、多重化することができる分析物の数に限りがある
15。対照的に、MOSAICの溶液に基づく読み出しは、原理的には、各分析物に関するアッセイビーズ数による容易に調整可能な感度およびダイナミックレンジで1個の試料において無限数のビーズ型の分析を可能にする。MOSAICの多重化機能を検証するために、本発明者らは最初に、異なる蛍光色素にコードされたビーズを使用して、IL-6、IL-1β、IL-10、およびIFN-γに関する多重化アッセイを開発した。このアッセイは、ヒト血漿において中から高アトモル感度および許容し得る回収率を示し、血漿中に存在するサイトカインの濃度範囲においてわずかな交差反応性を示した(表4および
図10A~10D)。さらなる検証として、血漿におけるその測定値は、特に、両方の方法のLLOQを優に上回る分析物濃度に関して、対応する4重Simoaアッセイ(four-plex Simoa assay)のものと良好に相関していた(
図5A)。
表4. 4倍希釈でのヒト血漿における
図5に報告される4重MOSAICアッセイに関するスパイクされた組換えタンパク質の回収率。回収率は、二連の測定の平均±標準偏差として報告される。
【表4】
【0161】
高い正確度で同時に複数の分析物を測定するMOSAICの能力が確立されたら、異なる蛍光色素および強度を有する追加のビーズを組み込むことによって、MOSAICの多重化多用途性の増大を探索した。原理証明として、MOSAICアッセイを、サイトカインIL-6、IL-1β、IL-10、IFN-γ、IL-12p70、IL-5、およびIL-18、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)について、デジタルELISA法と共に以前に報告されたことがない8重アッセイに統合した。高い分析感度が維持され、LOD値は中アトモルから低フェムトモル濃度の範囲であった(
図11A~11Dおよび表5A~5B)。16倍の希釈率を使用してヒト血漿にアッセイを適用して、スパイクおよび回収実験における全ての分析物にわたって許容し得る回収率および一貫した希釈線形性を確保した(表6A、6Bおよび7ならびに
図12および
図16)。重要なことに、測定された濃度範囲にわたってわずかな交差反応性があった(
図13)。MOSAICの格別の感度はさらに、限られた試料体積からのより多くの臨床情報の収集を可能にすることに加えて、交差反応性に起因する潜在的な偽シグナルを最小化するためにより高い希釈率の使用を可能にする。2回反復にわたって15μL未満の血漿を使用して、これらの8種のタンパク質を血漿試料のコホート中で測定し、その測定値を、2つの4重Simoaアッセイのものと比較した。測定された濃度は、高い検出能を示す分析物に関する2つの方法間で全体として相関し、高多重MOSAICアッセイの正確度をさらに支持していた(
図5B~5Cおよび
図14A~B)。したがって、MOSAICは、非常に小さい試料体積を使用して、幅広いバイオマーカーパネルの超高感度多重化測定を可能にする。
表5A. 血漿測定のために使用された試料希釈液における8重MOSAICアッセイおよび対応する4重Simoaアッセイの検出限界(LOD)および定量下限(LLOQ)値。値は、別の日に実施された3つの較正曲線の中央値[範囲]として報告される。LODおよびLLOQ値は、バックグラウンドを上回る、それぞれ、3および10標準偏差として算出される。
【表5-1】
表5B. 唾液測定のために使用された試料希釈液における8重MOSAICアッセイおよび対応する4重Simoaアッセイの検出限界(LOD)および定量下限(LLOQ)値。LODおよびLLOQ値は、バックグラウンドを上回る、それぞれ、3および10標準偏差として算出される。
【表5-2】
表6A. 8倍希釈でのヒト血漿における8重MOSAICアッセイに関するスパイクされた組換えヒトタンパク質の回収率。回収率は、二連の測定の平均±標準偏差として報告される。
【表6-1】
表6B. 8倍希釈でのヒト唾液における8重MOSAICアッセイに関するスパイクされた組換えヒトタンパク質の回収率。回収率は、二連の測定の平均±標準偏差として報告される。
【表6-2】
表7. 16倍希釈でのヒト血漿における8重MOSAICアッセイに関するスパイクされた組換えヒトタンパク質の回収率。回収率は、二連の測定の平均±標準偏差として報告される。
【表7】
【0162】
考察
非常に低いレベルのタンパク質バイオマーカーを測定する能力は、がん、感染症、および神経変性疾患の診断などの臨床適用において依然として重要な課題である。デジタル測定技術は感度の1000倍の増加を可能にしたが、アトモルまたはそれより低い濃度のタンパク質は依然として利用可能ではなく、初期段階においてバイオマーカーレベルが非常に低い場合がある疾患のバイオマーカー探索および早期検出における努力を制限してきた。1つの注目に値する例は、非侵襲的に収集され、潜在的な診断価値がある多様なタンパク質を含有するが、血漿中よりもはるかに低いレベルで含有する唾液であり、現行のデジタルELISA技術に対する格別の課題である。唾液中のIFN-γおよびIL-12p70の原理証明測定は、稀なバイオマーカー候補の未知の領域を明らかにする際のMOSAICの潜在的な有用性を強調する。重要なことに、MOSAICの高い試料採取効率のため、本発明者らは、アッセイビーズの数を減少させて、十分な測定精度を維持しながら、バックグラウンドに対するシグナルを増強することができた。ビーズ数の減少は異なる分析物に関して異なる程度で感度を改善したが、その結果は、特定の適用にとって必要とされる所望の感度およびダイナミックレンジに従って各分析物についてビーズ数を容易に調整することができることを示している。
【0163】
重要なことに、MOSAICは、デジタルELISA技術の幅広いインプリメンテーションを制限してきた、特殊な機器の要件を回避する。ビーズを個々の区画に単離する必要性を取り除くことにより、MOSAICはフローサイトメトリーを使用した単一分子計数化を可能にし、したがって、デジタルELISAを、現行の広く利用可能な検査基盤に変える。最近開発されたドロップキャスト単一分子アッセイおよび液滴デジタルELISAを含む、以前のデジタルELISA法と比較したMOSAICの重要な利点は、はるかにより迅速で、自動化された-試料あたり1分未満のシグナルの読み出しである。ドロップキャスト単一分子アッセイ(dSimoa)は、ビーズ上に捕捉された単一分子を計数化するための単純なビーズドロップキャスト法を可能にし、試料採取効率および分析感度を約10倍増加させた。しかしながら、これらの方法は、複数の視野にわたって全てのビーズを捕捉するために、試料あたりに長いイメージング時間を必要とし、したがって、処理量を制限する。多くのベンチトップ型フローサイトメーターに既に組み込まれている96ウェルプレート試料採取モードによる自動化は、最新式のワークフローをさらに提供する。
【0164】
感度の増強および利用しやすいワークフローに加えて、MOSAICはデジタルELISAに対して多重化機能の増大を導入する。単一の試料中の複数の分析物を同時に測定する能力は、試料処理能力およびバイオマーカーシグネチャー探索を加速することができ、新生児の唾液またはフィンガープリック血液などの限られた試料体積を用いた適用において特に重要である。デジタルELISAならびに最近開発された超高感度平面ELISAプラットフォームにおける多重化は、様々な診断適用において大きな有用性を示したが16~18、ビーズ閉じ込め法において同時に分析することができるビーズ型の数は、区画の総数および低いビーズ分析効率によって制限されている。対照的に、MOSAICの溶液に基づく読み出しは、単一の試料において分析することができるビーズ型の総数に関するこの物理的制約を除去する。MOSAICにおける試料採取効率はビーズの総数によって影響されないため、多重MOSAICアッセイにおける各分析物の所望のダイナミックレンジは、アッセイビーズ数によって容易に調整可能であり、各試料中のビーズの数またはビーズ型に関する上限はない。色および蛍光強度による多重化に加えて、多用途のフローサイトメトリー読み出しは、ビーズをサイズによって識別する能力を提供し、したがって、多重化可能なビーズ型のパレットを拡張する。交差反応性はより高次の多重アッセイにおいては依然として潜在的な制限を有するが、アトモル感度のMOSAICは、良好な標的検出能を維持しながら、より高い希釈率の使用を可能にし、したがって、交差反応性が最小限である濃度範囲に測定値を保持することができる。さらに、より小さい多重パネルを、シグナル読み出し、ならびに連続的標的捕捉のために単一の試料中の全ビーズのその後の組合せと共に使用することができる19。
【0165】
MOSAICの低アトモル感度にもかかわらず、稀な分析物に関するさらにより高い感度および検出能を達成するためには、さらなる研究が必要である。より高親和性の試薬の開発およびスクリーニングを用いて、サブアトモル濃度のLODを達成することができる。さらに、現在のMOSAICワークフローにおける洗浄ステップはマイクロプレートウォッシャーを使用して自動化されているが、さらなる研究は、測定精度の改善のために自動化液体取り扱いプラットフォームへのアッセイ全体の統合を探索する。
【0166】
まとめると、オンビーズシグナル増幅の力およびフローサイトメトリーの多面的能力を利用することにより、MOSAICは、フローサイトメーターを有する任意の研究室が利用しやすい、アトモル感度、より高次の多重化、および迅速なハイスループット読み出しを有する超高感度タンパク質検出法を提供する。
【0167】
方法
材料
本研究において使用される全ての親和性試薬、組換えタンパク質、およびDNAオリゴは、以下に列挙される。バッファーおよび常磁性ビーズは、Quanterix CorporationおよびBangs Laboratoriesから購入した。カスタムDNAオリゴは、Integrated DNA TechnologiesおよびMilliporeSigmaから購入した。
【表10-1】
【表10-2】
【0168】
捕捉および標識化試薬の調製。
50K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルター(MilliporeSigma)を使用して、捕捉抗体をBead Conjugation Buffer(Quanterix)で緩衝液交換した。フィルター中の抗体溶液にBead Conjugation Bufferを500μLまで添加した後、14,000×gで5分間、3回遠心分離することによって緩衝液交換を実行し、遠心分離サイクル間に450μLのBead Conjugation Bufferを添加した。フィルターを新しい管中で反転させること、1000×gで2分間遠心分離すること、フィルターを50μLのBead Conjugation Bufferですすぐこと、および1000×gで2分間、もう1回遠心分離することによって、緩衝液交換された抗体を回収した。次いで、緩衝液交換された抗体の濃度を、NanoDrop分光光度計を使用して測定した。各ビーズ型について、ビーズを300μLのBead Wash Buffer(Quanterix)で3回および300μLのBead Conjugation Buffer(Quanterix)で2回洗浄した後、冷Bead Conjugation Buffer中に再懸濁した。各分析物に関するビーズ数およびコンジュゲーション条件は、以下の表に示される。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)(Thermo Fisher Scientific)の1mgのバイアルを、100μLの冷Bead Conjugation Bufferに溶解し、所望の体積をビーズに添加した。ビーズを室温または4℃のいずれかで30分間振とうさせた。ビーズ上のカルボキシル基のEDC活性化後、ビーズを、300μLの冷Bead Conjugation Bufferで1回洗浄した後、緩衝液交換された抗体溶液中に再懸濁した。室温または4℃のいずれかで2時間ビーズを振とうした後、300μLのBead Wash Bufferで2回洗浄することにより、抗体コンジュゲーションを実行した。次いで、抗体にカップリングしたビーズを、300μLのBead Blocking Buffer(Quanterix)で振とうしながら、室温で30分間ブロッキングクした。300μLのBead Wash BufferおよびBead Diluent(Quanterix)でそれぞれ1回洗浄した後、ビーズを、Bead Diluent中に再懸濁し、Beckman Coulter Z1 Particle Counterを用いて計数し、4℃で保存した。
表8. 本実施例で使用された抗体でコーティングされた捕捉ビーズのカップリング条件。8重MOSAICアッセイとSimoaとの比較のために、Quanterix からの、それぞれ、488、647、700、および750多重ビーズを使用するIL-6、VEGF、IL-18、およびIL-12p70に関する4重アッセイを実施した。
【表8】
【0169】
非改変形態で得られたIFN-γ検出抗体を除いて、検出抗体をビオチン化形態で得た。Biotinylation Reaction Buffer(Quanterix)中で1mg/mLに再構成させ、水中に新鮮に溶解された40倍モル過剰のNHS-PEG4-Biotin(Thermo Fisher Scientific)を添加することにより、IFN-γ検出抗体をビオチン化した。ビオチン化反応を室温で30分間にわたって実行した後、50K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルターを用いてビオチン化抗体を精製した。サイクル間に450μLのBiotinylation Reaction Bufferを添加して、14,000×gで5分間の5回の遠心分離サイクルを実施した後、フィルターの新しい管中での反転および1000×gで2分間の遠心分離によって精製された抗体を回収した。次いで、フィルターを50μLのBiotinylation Reaction Bufferですすいだ後、1000×gで2分間、もう1回遠心分離し、NanoDrop分光光度計を用いて抗体濃度を定量した。
【0170】
ストレプトアビジン-DNAコンジュゲートの調製。
95℃で2分間にわたってNEBNext Quick Ligation Buffer(New England Biolabs)中で33.8μMのプライマーおよび40.6μMの鋳型の溶液を加熱し、90分かけて室温まで冷却することにより、5’アジド改変プライマーをRCAのためのDNA鋳型にアニーリングさせた。次いで、T4 DNAリガーゼを添加し、室温で3時間インキュベートしてライゲーションを実施した。次いで、ライゲーション反応物を65℃で10分間加熱して、リガーゼを不活化した後、室温まで冷却した。ライゲーション反応物を、7K MWCO Zebaスピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、1mMのEDTAを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で緩衝液交換した。コンジュゲーションのために、ストレプトアビジン(Biolegend 280302)を、10K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルターを使用してPBSで緩衝液交換し、20倍モル過剰のジベンゾシクロオクチン-PEG4-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(DBCO-PEG4-NHS、MilliporeSigma)と共に、室温で30分間インキュベートし、1mMのEDTAを含むPBS中、10K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルターを用いて精製した。次いで、2倍モル過剰のライゲーションしたプライマー-鋳型をDBCO改変ストレプトアビジンに添加し、4℃で一晩インキュベートした。コンジュゲートを、5mM EDTA、0.1%BSA、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS中、-80℃でアリコートで保存した。
【0171】
MOSAICアッセイ
Homebrew Sample Diluent(Quanterix)で所望の濃度に希釈された抗体でコーティングされたビーズおよび検出抗体を用いて、96ウェルプレート(Greiner Bio-One、655096)中でMOSAICアッセイを実施した。10μLの抗体でコーティングされたビーズと共に、100μLの試料体積を使用した。2ステップのアッセイのために、10μLの検出抗体を各試料に添加した。プレートを密閉し、標的捕捉のために1時間振とうした後、BioTek 405 TS Microplate Washerを使用してSystem Wash Buffer 1(Quanterix)を用いて洗浄した。3ステップアッセイのために、100μLの検出抗体を、標的捕捉および洗浄ステップの後にビーズに添加した後、10分間インキュベートし、さらに洗浄した。次いで、5mM EDTAを含むSample Diluent中に希釈した100μLのコンジュゲートをビーズに添加し、所望の時間にわたって振とうすることにより、免疫複合体サンドイッチをストレプトアビジン-DNAで標識した。次いで、試料をSystem Wash Buffer 1で8サイクルにわたって洗浄し、新しい96ウェルプレートに移し、200μLのSystem Wash Buffer 1でさらに1回洗浄した後、60μLのRCA反応混合物中に再懸濁した。RCA混合物は、50mMのTris-HCl(pH7.5)、10mMの(NH4)2SO4、および10mMのMgCl2中の0.5mMのデオキシヌクレオチドミックス(New England Biolabs)、0.33U/μLのphi29 DNAポリメラーゼ(Lucigen)、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA、New England Biolabs)、1nMの蛍光標識されたDNAプローブ(Integrated DNA Technologies)、および0.1%のTween(登録商標)-20からなっていた。ATTO-647NおよびATTO-565標識されたDNAプローブを、それぞれ、単一標的および多重MOSAICアッセイのために使用した。各試料へのRCA混合物の添加の際に、プレートを37℃で1時間振とうした後、0.1%Tween(登録商標)-20および5mM EDTAを含む150μLのPBSを添加して、反応を停止させた。試料を、200μLの同じPBS-Tween(登録商標)-EDTA緩衝液で1回洗浄し、0.1%BSAを添加した100μLの緩衝液中に再懸濁した。試料を、管またはプレート試料採取モードのいずれかで、6個のレーザーを備えたCytoFlex LXフローサイトメーター(Beckman Coulter)を使用して測定した。漂白剤および緩衝液ウェルを、異なる試料間に含めて、潜在的な試料のキャリーオーバーを最小化した。多重MOSAICアッセイを、同じ試料中で異なる蛍光色素にコードされたビーズを組み合わせて、シングルプレックスMOSAICアッセイと同じプロトコールに従って実行した。
【0172】
血漿および唾液試料を、プロテアーゼ阻害剤(Halt(商標)Protease Inhibitor Cocktail、Thermo Fisher Scientific)を含む、それぞれ、Sample DiluentまたはStartingBlock(商標)Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific)中に希釈した。血漿試料を、BioIVTおよびMass General Brigham Biobankから取得し、唾液試料を、BioIVTから取得した。全てのヒト試料を匿名化し、Mass General Brighamによる施設内審査委員会の承認の下で実験を実施した。全ての血漿および唾液試料を、4℃で、それぞれ、2000×gで10分間または21000×gで20分間遠心分離した後、測定のために希釈した。
表9. 本実施例におけるMOSAICおよびSimoaアッセイのために使用されるアッセイ条件。同じ検出抗体濃度および標的捕捉時間をそれぞれの対応するMOSAICおよびSimoaアッセイのために使用した。
【表9】
【0173】
Simoaアッセイ
全てのSimoaアッセイを、自動化試料プロセシング、イメージ分析、およびビーズあたりの平均酵素(AEB)の算出を備えた、HD-X Analyzer(Quanterix)で実施した。シングルプレックスMOSAICアッセイにおいて使用した同じ抗体でコーティングされたビーズを、全てのSimoaアッセイのために使用し、MOSAICアッセイと同じ検出抗体濃度を用いた。100,000個の抗体でコーティングされたビーズおよび400,000個のヘルパー(非コンジュゲート化)ビーズを、それぞれの単一Simoaアッセイのために使用したが、分析物あたり125,000個の抗体でコーティングされたビーズを、それぞれの4重Simoaアッセイのために使用した。ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)濃縮物(Quanterix)を、SβG Diluent(Quanterix)で、各アッセイのための望ましい濃度に希釈した。全てのアッセイ試薬および消耗品を、製造業者の指示に従ってHD-X Analyzerにロードした。
【0174】
データ分析
フローサイトメトリーデータを、FlowJo(商標)Software(Becton,Dickinson and Company)を用いて最初に分析した;前方散乱、側方散乱、およびビーズ蛍光に関するゲートを使用してビーズを同定した。前方散乱を使用して、単一のビーズをさらにゲーティングした(
図15A~D)。それぞれのビーズ集団に関するプローブ蛍光強度を、パッケージjax、numpy、pandas、scikit-learn、およびwaltlabtoolsを用いてPythonで分析した。2つのガウス混合モデルを、期待値最大化を使用して各ウェルに関する対数変換された蛍光強度に当てはめた。「オン」ビーズを計数する2つの方法を算出した。第1の方法では、ビーズを、期待値最大化アルゴリズムに従って一方または他方のガウシアンにおけるその予測メンバーシップに基づいて「オン」または「オフ」と割り当てた。第2の方法では、ビーズが低い方の(「オフ」)ガウシアンピークの平均よりも少なくとも5標準偏差上であった場合、それらを「オン」と計数した。2つのピークが同定可能であった場合、第1の方法がより良好な結果をもたらしたが、「オン」ビーズの数が非常に少ない場合、高い方のガウシアンは当てはめるのがより困難であり、したがって、第2の方法がより信頼できる推定値をもたらした。したがって、使用した測定基準は、正弦重み関数を用いた、2つの加重平均であった:第1の方法の重みは、sin
4(πf/2)(式中、fは、第1の方法(ガウス混合割り当て)に従う「オン」ビーズの画分である)によって与えられる。次いで、「オン」ビーズの画分を、ポアソン統計を使用してビーズあたりに結合した分析物分子の平均数に変換し、4パラメーターロジスティック較正曲線を使用して濃度に対してマッピングした。LODおよびLLOQを、それぞれ、バックグラウンドより3および10標準偏差上と算出し、ここで、補正率c
4(n)を標準偏差の不偏推定に適用した。GraphPad Prismを使用して、ピアソンの相関係数を算出した。
【0175】
方法のより詳細なバージョンは、以下の補足方法のセクションに見出すことができる。
【0176】
補足方法
抗体でコーティングされた捕捉ビーズの調製
1.ビーズを30秒間ボルテックスし、それらを振とう器上に置く。
2.抗体が凍結乾燥されている場合、MES緩衝液中で0.2mg/mLに再構成する。
3.抗体が溶液中にある場合、緩衝液交換する。
i.分光光度計または製造業者の分析証明書を使用して抗体ストック濃度または質量を測定する。80mgの抗体を含有する抗体ストック溶液の体積を算出する。
ii.この体積を、十分なMES緩衝液を用いて500μLの総体積にして、Amiconマイクロ遠心管中の清浄な50K Amiconフィルターに添加する。14,000×gで5分間遠心分離する。
iii.フロースルーを廃棄し、450μLのMES緩衝液をAmiconフィルターに迅速に添加する。14,000×gで5分間遠心分離する。合計3回の5分間の遠心分離をもう1回繰り返す。
iv.フロースルーを廃棄する。Amiconフィルターの頂部を上にして清浄なAmicon管を素早く反転させる。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
v.50μLのMES緩衝液でフィルター膜をすすぐ。繰り返し混合する。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
vi.MES緩衝液でブランキングして、分光光度計を使用して抗体濃度を測定する。精製された抗体の体積をピペットで測定する。抗体をMES緩衝液で希釈して、0.2mg/mLにする。
4.ビーズを洗浄する。
i.粒径分析装置または製造業者の分析証明書を使用してビーズ計数を決定する。4.2×108個のビーズを含有するビーズストック溶液の体積を算出する。
ii.上の表に与えられたビーズの体積を、試験管に移す。試験管を磁気分離装置上に置く。
iii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのBead Wash Bufferを添加し、ボルテックスし、パルススピンし、磁気分離装置に戻す。Bead Wash Bufferでさらに2回およびMES緩衝液で2回繰り返した。
iv.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのMES緩衝液を3回目に添加し、ボルテックスし、パルススピンし、ビーズを懸濁液中に残した。
5.ビーズを活性化する。
i.EDCの1個のバイアルを注意深く開き、100μLのMES緩衝液をゆっくり添加する。すぐにキャップを取り替え、溶解するまで手短にボルテックスする。
ii.9pLの再構成されたEDCをビーズの管に添加し、ボルテックスし、4℃で30分間振とうする。
6.抗体をビーズにコンジュゲートさせる。
i.パルススピンし、磁気分離装置上にビーズを置き、吸引し、磁石から取り出し、300μLのMES緩衝液を添加し、ボルテックスし、パルススピンし、磁気分離装置に戻す。
ii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、緩衝液交換した抗体の達成バッチ体積を添加し、ボルテックスする。4℃で2時間振とうする。
7.ビーズをブロックする。
i.パルススピンし、ビーズを磁気分離装置上に置く。
ii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのBead Wash Bufferを添加し、ボルテックスし、パルススピンし、磁気分離装置に戻す。1回繰り返す。
iii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのBead Blocking Bufferを添加し、ボルテックスする。室温で45分間振とうする。
8.最後の洗浄および再懸濁を実施する。
i.パルススピンし、ビーズを磁気分離装置上に置く。
ii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのBead Wash Bufferを添加し、ボルテックスし、パルススピンし、磁気分離装置に戻す。1回繰り返す。
iii.吸引し、磁気分離装置から取り出し、300μLのBead Diluentを添加し、ボルテックスし、パルススピンする。
iv.粒径分析装置を使用して最終的なビーズ計数を決定する。
注記:あるいは、2.8×108個の出発ビーズを使用するビーズカップリングを室温で実施することができ、EDC活性化および抗体コンジュゲーションステップを室温で実施する。
【0177】
検出抗体のビオチン化
1.抗体が凍結乾燥されている場合、PBS中で1mg/mLに再構成する。
2.抗体が溶液中にある場合、緩衝液交換する。
i.分光光度計または製造業者の分析証明書を使用して抗体ストック濃度または質量を測定する。130mgの抗体を含有する抗体ストック溶液の体積を算出する。
ii.この体積を、十分なPBSを用いて500μLの総体積にして、Amiconマイクロ遠心管中の清浄な50K Amiconフィルターに添加する。14,000×gで5分間遠心分離する。
iii.フロースルーを廃棄し、450μLのPBSをAmiconフィルターに迅速に添加する。14,000×gで5分間遠心分離する。合計3回の5分間の遠心分離をもう1回繰り返す。
iv.フロースルーを廃棄する。Amiconフィルターの頂部を上にして清浄なAmicon管を素早く反転させる。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
v.50μLのPBSでフィルター膜をすすぐ。繰り返し混合する。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
vi.PBSでブランキングして、分光光度計を使用して抗体濃度を測定する。精製された抗体の体積をピペットで測定する。抗体をPBSで希釈して、1mg/mLにする。
3.検出抗体をビオチン化する。
i.383μLの脱イオン水を添加することによって8.9mMのストック濃度にビオチンを再構成する。
ii.100μLの抗体および3μLのビオチンを清浄な試験管に添加し、ボルテックスし、パルススピンし、室温で30分間インキュベートする。
4.ビオチン化された抗体を精製する。
i.ビオチン化反応管の内容物を、Amiconマイクロ遠心管中の清浄なAmiconフィルターに移す。400μLのPBSでビオチン化反応管を洗浄し、それを同様にAmiconフィルターに移す。14,000×gで5分間遠心分離する。
ii.フロースルーを廃棄し、450μLのPBSをAmiconフィルターに迅速に添加する。14,000×gで5分間遠心分離する。合計5回の5分間の遠心分離をもう3回繰り返す。
iii.フロースルーを廃棄する。Amiconフィルターの頂部を上にして清浄なAmicon管を素早く反転させる。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
iv.50μLのPBSでフィルター膜をすすぐ。繰り返し混合する。1,000×gで2分間、反転させたAmiconフィルターと共に管を遠心分離する。
v.PBSでブランキングして、分光光度計を使用して抗体濃度を測定する。
【0178】
ストレプトアビジン-DNAコンジュゲートの調製
1.1×Quick Ligation Buffer中で35.8μMのプライマーおよび43.0μMの鋳型の溶液を作製する。
2.95℃で2分間、溶液を加熱し、90分かけて室温まで冷却させる。
3.T4 DNAリガーゼ(100μLの反応混合物あたり2,000,000U/mLの6μL)を添加し、室温で3時間インキュベートする。
4.65℃で10分間加熱して、リガーゼを不活化した後、室温まで冷却する。
5.Zebaスピン脱塩カラムを使用して、1mM EDTAを含むPBSに緩衝液交換する。
6.プライマーおよび鋳型の分子量ならびにライゲーション反応中の初期プライマー濃度を使用して、分光光度計を用いて濃度を測定して、緩衝液交換されたプライマー濃度を決定する。
7.10K Amiconフィルターを使用してPBSにストレプトアビジンを緩衝液交換し、分光光度計を用いて濃度を測定する。
8.室温で30分間、ジメチルスルホキシド中で5mg/mLに溶解された、20倍モル過剰のDBCO-PEG4-NHSと共にストレプトアビジンをインキュベートする。
9.14,000×gで5分間の4回の遠心分離サイクルおよび14,000×gで10分間の最後の遠心分離サイクルを用いる、1mM EDTAを含むPBS中の10K Amicon遠心分離フィルターを用いてDBCO改変されたストレプトアビジンを精製する。分光光度計を用いて濃度を測定する。
10.2倍モル過剰のライゲーションしたプライマー-鋳型(ステップ5で決定されたプライマー濃度に対して算出されたモル過剰)をDBCO改変ストレプトアビジンに添加し、4℃で一晩インキュベートする。
11.コンジュゲートを、5mM EDTA、0.1%BSA、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS中、-80℃でアリコートで保存する。
【0179】
MOSAICアッセイ手順
プレートウォッシャー上での全ての洗浄のために、System Wash Buffer 1を使用し、ビーズが磁気結合によってプレートの底部に保持されることを確保する。それぞれの洗浄サイクルは170μLである。
1.ビーズを30秒間ボルテックスし、Bead Diluentを適切な濃度に希釈して、10μL/試料中に所望の数のビーズを得る。本発明者らは、2×106個のビーズ/mLである、20,000個のビーズ/試料から開始するのを推奨する。多重化のために、一致する量の各ビーズ型を混合する。
2.較正曲線のために試料希釈液でのタンパク質標準の段階希釈を実施する。
3.試料を遠心分離し、試料希釈液で希釈する。本発明者らは、以下を推奨する:
a.血漿/血清:2,000×gで10分間遠心分離し、4~16倍希釈する。
b.唾液:21,000×gで20分間遠心分離し、4~16倍希釈する。
c.尿:10,000×gで5分間遠心分離し、1~2倍希釈する。
4.100μLの希釈した試料(またはキャリブレータ―)および10μLのビーズを各ウェルに添加する。
5.2ステップのアッセイを実施する場合、ビオチン化された検出抗体を3.6μg/mLに希釈する。10μLの検出抗体を各ウェルに添加する。
6.プレートを密封し、室温で1時間、650rpmで振とうしながらインキュベートする。
7.3ステップのアッセイを実施する場合:
i.プレートウォッシャー上で試料を3回洗浄する。
ii.ビオチン化された検出抗体を0.3μg/mLに希釈する。
iii.プレートをプレート磁石上に置いて、ウェルの一方の側にビーズを引き寄せる。吸引し、100μLの検出抗体を各ウェルに添加する。
iv.プレートを密封し、室温で10分間、600rpmで振とうしながらインキュベートする。
8.プレートウォッシャー上で試料を6回洗浄する。
9.プレートをプレート磁石上に置いて、ウェルの一方の側にビーズを引き寄せる。吸引し、5mM EDTAを含む試料希釈液で300pM(2ステップのアッセイに関する)または150pM(3ステップのアッセイに関する)に希釈された、100μLのストレプトアビジン-DNAコンジュゲートを各ウェルに添加する。
10.プレートを密封し、室温で15分間(2ステップのアッセイに関する)または10分間(3ステップのアッセイに関する)、650rpmで振とうしながらインキュベートする。
11.Zeba脱塩カラムを用いてphi29ポリメラーゼを10mM Tris-HCl(pH7.5)、100mM KCl、0.1mM EDTA、0.5%Tween(登録商標)-20、および0.5%NP-40で緩衝液交換して、ジチオトレイトールを除去する。
12.RCA反応混合物を作製する:
- 0.5mMのdNTPミックス
- 0.33U/μLのphi29 DNAポリメラーゼ
- 0.2mg/mLのBSA
- 1nMの蛍光標識されたDNAプローブ
- 0.1%のTween(登録商標)-20
- 50mMのTris-HCl
- 10mMの硫酸アンモニウム
- 10mMの塩化マグネシウム
13.プレートウォッシャー上で試料を8回洗浄する。
14.ピペットで混合して、ビーズを再懸濁し、試料を新しい96ウェルプレートに移す。
15.プレートをプレート磁石上に置いて、ウェルの一方の側にビーズを引き寄せる。吸引し、200μLのSystem Wash Bufferを添加する。吸引し60μLのRCA反応混合物中に再懸濁する。
16.プレートを密封し、37℃で1時間、650rpmで振とうしながらインキュベートする。
17.0.1%Tween(登録商標)-20および5mM EDTAを含む150μLのPBSを各ウェルに添加して、反応を停止させた。プレートをプレート磁石上に置いて、ウェルの一方の側にビーズを引き寄せ、吸引する(完全に乾燥しないように吸引する)。200μLの同じPBS-Tween(登録商標)-EDTA緩衝液を添加し、吸引し、0.1%BSAを添加した100μLの緩衝液中に再懸濁する。
18.24時間以内にフローサイトメーター上で試料を測定する。漂白剤および緩衝液または水を、異なる試料間で泳動させて、潜在的な試料のキャリーオーバーを最小化する。
19.フローサイトメトリー分析ソフトウェアを使用してビーズ集団を同定する。本発明者らは、サイズ/形状(前方および側方散乱)、次いで、蛍光に基づいてビーズをゲーティングすることを推奨する。
20.フローサイトメトリー分析ソフトウェアまたはwaltlabtools.mosaic Pythonモジュール中のゲートを使用してオフビーズからオンビーズを分離する。
21.waltlabtools Pythonパッケージなどのソフトウェアを使用して:
i.各試料のオンビーズの画分を、ビーズあたりの平均分子数(AMB)に変換する:AMB=-log(1-fon)。
ii.4パラメーターロジスティック較正曲線を、較正濃度およびAMBに回帰させる。
iii.較正曲線を使用して、試料の濃度を算出する。
【0180】
インキュベーション時間;試料の希釈および希釈液;アッセイプロトコール(2ステップ対3ステップ);ならびにビーズ、検出抗体、およびストレプトアビジン-DNAコンジュゲートの濃度を、各アッセイまたは適用のために最適化することができる。
参考文献
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【0181】
(実施例2)
バーコード化多重MOSAICアッセイ
本実施例は、バーコード化多重MOSAICアッセイを記載する。バーコード化多重MOSAICアッセイでは、蛍光色素にコードされた捕捉ビーズと、DNA鋳型バーコード化検出抗体との独自の対を、各分析物について使用した(
図18)。捕捉ビーズを、本明細書に記載のように調製し、抗体-DNAコンジュゲートを以下に詳述されるように調製した。それぞれの独自のDNA鋳型にコンジュゲートされた抗体は、RCA反応の間に増幅された場合、特異的な蛍光色素とコンジュゲートしたDNAプローブまたは色素とコンジュゲートしたDNAプローブのレシオメトリックな組合せで標識された。それぞれのプローブの色または色のレシオメトリックな組合せを、フローサイトメトリーにおける複数の検出チャネルを使用して識別することができる。ビーズ上での単一の分析物分子の捕捉の際に、独自のプライマー-鋳型配列とコンジュゲートした検出抗体の混合物を添加し、続いて洗浄し、蛍光色素とコンジュゲートしたDNAプローブの混合物を含有するRCA反応物中に再懸濁した。各分析物は、(1)捕捉ビーズの色、蛍光強度、またはサイズと、(2)蛍光プローブの色または色の比との独自の対に対応していた。結果として、捕捉ビーズとプローブシグナルとの「正確な」一致した対のみが、各分析物について「オン」ビーズと分類されたが、捕捉ビーズとプローブの色の「誤った」対、すなわち、交差反応性結合事象は、さらなる分析から除外される。対照的に、非バーコード化多重MOSAIC形式においては、全ての検出抗体をビオチン化し、同じストレプトアビジン-DNAコンジュゲートおよび蛍光プローブで標識した。
【0182】
図19Aおよび
図19Bは、非バーコード化多重MOSAIC(
図19A)およびバーコード化多重MOSAIC(
図19B)についての、漸増濃度のそれぞれの個々の標的タンパク質に関するドロップアウト曲線を描写する。図面によって示されるように、バーコード化多重MOSAICにおける正確な捕捉ビーズ-プローブの色の対のみの含有は、交差反応シグナルの除去を可能にし、したがって、より正確な多重測定を提供する。
【0183】
抗体-DNAコンジュゲートの調製
それぞれの検出抗体について、95℃で2分間にわたってNEBNext Quick Ligation Buffer(New England Biolabs)中で30μMのプライマーおよび30.3μMの鋳型の溶液を加熱し、90分かけて室温まで冷却することにより、5’アジド改変プライマーを独自のDNA鋳型にアニーリングさせた。次いで、T4 DNAリガーゼを添加し、室温で2時間インキュベートしてライゲーションを実施した。ライゲーション反応物を、7K MWCO Zebaスピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、1mMのEDTAを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に緩衝液交換した。コンジュゲーションのために、検出抗体を、凍結乾燥形態からPBS中で再構成させたか、または50K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルターを使用してPBSに緩衝液交換し、20倍モル過剰のジベンゾシクロオクチン-PEG4-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(DBCO-PEG4-NHS、MilliporeSigma)と共に、室温で30分間インキュベートし、1mMのEDTAを含むPBS中、50K Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルターを用いて精製した。次いで、2倍モル過剰のライゲーションしたプライマー-鋳型をDBCO改変抗体に添加し、4℃で一晩インキュベートした。コンジュゲートを、5mM EDTA、0.1%BSA、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS中、-80℃でアリコートで保存した。
【国際調査報告】