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特表2024-540845回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置
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  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図1
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図2
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図3A
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図3B
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図3C
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図4
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図5
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図6
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図7
  • 特表-回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】回転装置で生成された熱エネルギーを使用して熱エネルギーを貯蔵するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20241029BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20241029BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20241029BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20241029BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20241029BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B01J19/00 E
F28D20/00 Z
F28D20/02 Z
F23L15/00 Z
H02J15/00 H
H02J3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520882
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 FI2022050688
(87)【国際公開番号】W WO2023062284
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,433
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148164
【氏名又は名称】クールブルック オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ベリ マッティ プロラ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス オウニ
【テーマコード(参考)】
3K023
4G075
5G066
【Fターム(参考)】
3K023QA18
3K023QB10
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA22
4G075AA44
4G075AA45
4G075AA46
4G075AA61
4G075BB08
4G075BB10
4G075CA02
4G075DA01
4G075DA18
4G075ED01
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB05
4G075FC07
5G066HB08
5G066JB06
(57)【要約】
少なくとも1つの回転装置によって熱エネルギー生産・貯蔵プロセスにおいて流体媒体中へ熱エネルギーを投入する方法であって、回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含む、方法が提供される。この方法において、当該流体媒体流が固定ベーン及びロータブレードをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与される。この方法は、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で熱エネルギーの生産及び貯蔵を実施するように形成された熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込み、そして熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギー量を導き、投入エネルギーは電気エネルギーを含む、ことをさらに含む。回転装置及び関連する用途がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを生産し貯蔵する方法であって、前記方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
前記方法が、
- 前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、
- 当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度に加熱された流体媒体の流れが生成されるように熱エネルギー生産を実施するために、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、及び
- 前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内部に設けられた少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内へ、前記少なくとも1つの回転装置によって形成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、
をさらに含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットが、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に熱エネルギーを貯蔵するように形成された熱エネルギー貯蔵媒体を含み、そして前記熱エネルギー量が、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ転移される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内部に提供された熱エネルギー貯蔵媒体が、顕熱蓄熱(SHS)媒体、潜熱蓄熱(LHS)媒体、又は熱化学蓄熱(TCS)媒体のいずれか1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が、安定相材料又は相変化材料(PCM)を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が、固相、液相、気相、又はこれらの組み合わせのいずれか1つで提供される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が解離固体、液体、又はガス状化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が可動性であり、そして流体を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が溶融塩又は流動砂床を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が不動性であり、そして前記熱エネルギー貯蔵媒体が、金属、石、コンクリート、砂、セラミック、又はこれらの組み合わせのいずれか1つを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項10】
前記熱エネルギー貯蔵媒体が固定砂床又は岩床を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記回転装置内で、前記加熱された流体媒体を生成することを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記回転装置に入る流体媒体が、本質的にガス状の媒体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、空気、窒素(N)、蒸気(HO)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内での熱エネルギーの生産及び貯蔵中に生成されたオフガスからリサイクルされたリサイクルガスである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体から、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内に提供された熱転移流体へ、熱エネルギー量が転移される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記熱転移流体が合成油又は溶融塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体から、熱交換器を介して、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットへ、熱エネルギー量が転移される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体から、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内に提供された熱エネルギー貯蔵媒体へ、且つ/又は熱転移流体へ、前記熱エネルギー量が転移される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体中に浸漬された熱転移管ネットワークを介して、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ、前記熱エネルギーが転移され、前記熱エネルギー貯蔵媒体が不動性である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、好ましくは約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、さらに好ましくは約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、
前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記ロータブレードと、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記回転装置内で、前記ディフューザ領域が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって前記加熱された流体媒体を生成し、前記少なくとも2つの回転装置が並列又は直列に接続されている、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成し、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、前記連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、順番で前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある、請求項1から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる、請求項1から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれることにより、前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される、請求項1から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記熱エネルギー生産・貯蔵設備のエネルギー効率が改善され、且つ/又は前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内の温室効果ガス排出量及び粒子排出量が低減される、請求項1から36のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項38】
熱エネルギー生産・貯蔵設備であって、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットとを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれており、そして
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
前記少なくとも1つの回転装置が、
- 電気エネルギーを含む投入エネルギー量を受容するように、
- 当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度に加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、そして
- 前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内部に設けられた前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内へ、加熱された流体媒体の流れを供給するように、
形成されている、
熱エネルギー生産・貯蔵設備。
【請求項39】
前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットが、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に熱エネルギーを貯蔵するように形成された熱エネルギー貯蔵媒体を含み、そして前記熱エネルギー量が、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ転移されるように、少なくとも1つの回転装置が前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットに接続されている、請求項38に記載の熱エネルギー生産・貯蔵設備。
【請求項40】
請求項1から37のいずれか1項に記載の方法を通して、熱エネルギーの生産及び貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成された、請求項38に記載の熱エネルギー生産・貯蔵設備。
【請求項41】
少なくとも2つの回転装置が集成体を成すように配置され、そして並列又は直列に接続されている、請求項38から40のいずれか1項に記載の熱エネルギー生産・貯蔵設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言えば、流体中へ熱エネルギー(熱)を投入するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、高い温度及び極めて高い温度で実施される熱エネルギーの生産及び貯蔵において、エネルギー効率を最適化し、そして温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減するツール及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
業界及び政府は、温室効果ガス(GHG)排出量を著しく低減するための技術を見出そうと闘っている。熱エネルギーの生成及び貯蔵を含む重工業プロセスは、企業、政府、及び国際機関によって設定された低排出量目標を達成するための重要な役割を担っている。
【0003】
熱エネルギー貯蔵(TES)は、再生可能エネルギー生成の間欠性、及び廃熱利用可能性に関連する難題に対処し、エネルギーの供給と需要とのミスマッチを軽減する主要技術である。熱エネルギー貯蔵は物理的実現にいくつかの方法がある。熱エネルギー貯蔵材料及びシステムを分類するいくつかの方法もある。顕熱蓄熱システム及び潜熱蓄熱システムが物理学の原理を利用するのに対して、熱化学蓄熱システムはこれに加えて化学反応を利用する。エネルギー貯蔵材料種は、種々異なる物理相で、つまり固体、液体、気体として、又は相変化材料(PCM)として存在する。TES材料の最も一般的なタイプは以下のように認識される。
【0004】
顕熱蓄熱(SHS)材料は、貯蔵プロセスに際して直面する温度範囲にわたって相変化させられることはない。したがって、SHS種の場合、貯蔵されたエネルギーの量が、貯蔵材料中の温度変動に対してほぼ比例する。SHS種は典型的には固体(例えば金属、石、及びセラミックス)、液体(例えば溶融塩)、又はこれらの組み合わせ(例えば溶融塩/石、溶融金属/セラミックス)である。SHS材料は比較的低廉であり、操作がシンプルであるので、これらの材料はかなり幅広く用いられている。
【0005】
潜熱蓄熱(LHS)材料は、相変化材料中のエネルギー貯蔵を伴う。相変化材料は典型的には固体から液体へ、そしてその逆にこれらの物理相を変化させる。相変化は熱の吸収又は放出を常に伴い、そして一定温度で発生する。貯蔵されたエネルギーは、溶融及び凍結の熱(エンタルピー)に対して等価である。PCMは固体-固体、固体-液体、固体-気体、及び液体-気体の材料種を含んでよく、固体-液体材料が最も一般的である。典型的な固体-固体材料は塩を含み、そして典型的な固体-液体材料は金属及び塩を含む。
【0006】
熱化学蓄熱(TCS)材料は、可逆熱化学反応によって熱を貯蔵し放出する。エネルギーは、吸熱反応によって生成された化合物の形態で貯蔵され、そしてエネルギーは、これらの化合物を発熱反応において再結合することによりいつでも回収することができる。貯蔵され放出されるエネルギーは、反応の熱(エンタルピー)に対して等価である。典型的なTCS材料種は、解離固体又は液体、又は触媒反応のためのガス状成分である。TESシステムはそこに利用される熱転移流体(HTF)に関して変化してもよい。
【0007】
蓄熱材料種に応じて、TESシステムの温度範囲は0℃~約1000℃である。低温蓄熱材料(作業温度範囲は0℃~約120℃である)が加熱、通気、及びエアコンディション(HVAC)システムにおいて使用されるのに対して、中間蓄熱材料(作業t範囲は約120~500℃である)及び高温(作業t範囲は500℃を超える)蓄熱材料は典型的には、発電(例えばソーラー発電)及び他の高温産業に関連する用途に使用される。蓄熱媒体を含む産業用(高温)蓄熱ユニットが典型的には、発電のために熱機関、例えば蒸気タービンに接続されている。これに加えて又はこの代わりに、熱エネルギー貯蔵部から回収された熱を、加熱又は他の熱消費の目的のために使用することもできる。典型的には、貯蔵温度が高ければ高いほど、システム効率は高くなる。したがって、効率的且つ環境に優しい形式で、貯蔵材料を500℃超の温度まで加熱するための高温流体を生産する必要が依然として存在する。
【0008】
産業における熱エネルギー貯蔵の一般用途は、いわゆる再生加熱又は再生熱交換器である。再生熱交換器、又はより一般的には再生器は、高温流体が低温流体へ転移される前に蓄熱媒体中に間欠的に貯蔵されるタイプの熱交換器である。このことを達成するために、高温流体はまず蓄熱媒体と接触させられ、次いで流体は低温流体によって押し退けられ、低温流体は熱を吸収する。通常、この用途は、このプロセスを周期的に又は繰り返し利用し、そしてしばしばいくつかの蓄熱部が必要となる。これらの蓄熱部は種々異なる熱吸収-脱離サイクル段の形態を成している。再生加熱は、産業革命時に開発された、溶鉱炉における熱風炉内に用いられるときの最も重要な技術の1つであった。その後、再生加熱は、平炉の効率を高めるためにガラス溶融炉において、そして製鋼において、また、高圧ボイラ、化学薬品製造、及び他の用途において用いられた。ここでは再生加熱は今日でも重要であり続ける。
【0009】
伝統的には、熱エネルギーは主として、著しいCO排出量を招く化石燃料の燃焼を通して生産されている。化石燃料の代わりに、木材又は他のバイオベースの材料を使用することには、重大な資源限界があり、また環境への他の顕著な影響、例えば持続可能な土地利用への影響がある。熱エネルギーの生産に関与するプロセスの電化が、排出量を低減するための解決手段とみなされている。電化に関する障害の1つは、熱エネルギーの生産及び貯蔵において必要な高い温度、例えば最大1000℃への到達であった。具体的には、電気がいくつかの高温プロセスのために用いられてはいるものの、大抵の場合には、技術も経済的側面もまだそのようにする位置にはない。
【0010】
熱転移媒体を直接加熱するために、そして蓄熱のための熱エネルギーを生成するために、集光型ソーラーパワー(集光型太陽熱発電)も用いられている。しかし、このような場合には、熱エネルギー貯蔵は太陽熱発電コレクタへの距離に束縛される。熱安定性及び蒸発温度が、集光型ソーラーパワーコレクタの場合は典型的には液体である熱転移媒体の最大許容温度に制限を課す。ソーラーパネルによる発電は、よりフレキシブルであり、ソーラーパネル現場に束縛されることはない。それというのも、ソーラーパネルは、蓄熱手段を(熱)消費装置に接近させるために、都市中心部の家屋の屋根の上のような、スペースが許す場所であればどこにでも設置できるからである。蓄熱用途におけるソーラーパワーの利用は、蓄熱コンセプト、及び任意には利用される熱転移流体に依存する。典型的な熱転移流体は、最大動作温度(t max)が約400℃の合成油、溶融塩(t max 約565℃)、及び空気(t max 約700℃)を含む。上述の流体に関連する問題点は、具体的にはソーラーパネル現場間の距離が長い場合の、熱損失、ポンピングコスト及び漏れを含む。熱転移流体として空気を使用するためには、転送パイプラインのサイズの拡張が必要となる。このことは熱転移インフラストラクチャのコストを著しく上昇させてしまう。
【0011】
加熱を目的として、いくつかの回転解決手段が提案されている。米国特許第11,098,725号明細書(Sanger他)に開示された液体力学的加熱器ポンプ装置は、加熱された流体及び/又は加圧された流体の流れを選択的に生成するために動作可能である。前述の液体動圧加熱器ポンプは、自動車車両の乗客コンパートメントを暖める熱を提供するために、そして他の能力、例えばウィンドウの除氷及びエンジンの冷却を可能にするために、自動車車両の冷却システム内に組み付けられるように設計されている。開示された装置は、エンジンを冷却するための加圧流体流を提供することもできる。開示された技術は摩擦に基づくものであり、また加熱されるべき流体は液体なので、提示されたデザインは、ガス空気力学の極端な乱流を伴う条件には適していない。
【0012】
米国特許第7,614,367号明細書(Frick)には、回転運動エネルギーを熱に変換することにより、流体を無炎加熱し、濃縮し、又は蒸発させるシステム及び方法が開示されている。流体加熱のために形成されたシステムは、回転運動エネルギー発生器と、回転加熱装置と、一次熱交換器とを、すべて閉ループ流体連通した形で含んでよい。回転加熱装置は水ブレーキ動力計であってよい。前記明細書は海洋掘削又は採油プラットフォームにおいて水を加熱するためのシステムの使用を開示している。しかしながら、提示されたシステムは、ガス状の媒体を加熱するのには適しておらず、また、高い温度及び極めて高い温度との使用には(液体安定性、蒸気圧などに基づき)実現し得ない。
【0013】
加えて、いくつかの回転ターボ機械型装置も、炭化水素(蒸気)クラッキングのプロセスを実施することで知られており、目標製品、例えばエチレン及びプロピレンの収率を最大化することを目的としている。
【0014】
これに関して、効率的な加熱システム、具体的には高い温度及び極めて高い温度に関連する用途に適したシステムを設計し製造することに関連する技術分野のアップデートが、流体物質の上昇する温度に伴う難題に効率的に且つ環境に優しく対処することに鑑みて、なおも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、関連技術の制約及び欠点から生じる問題の少なくともいくつかを解決し、又は少なくとも軽減することである。1つ又は2つ以上の目的は、本明細書中に記載された、加熱された流体媒体を生成するための方法、及び本明細書中に定義された回転装置の種々の実施態様によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様では、熱エネルギーを生産し且つ熱エネルギーを貯蔵する方法であって、前記方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。
【発明の効果】
【0017】
一実施態様では、熱エネルギーを生産し貯蔵する方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、エネルギー効率を改善するか、又は温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減し、あるいはこれら両方をもたらす。
【0018】
実施態様では、熱エネルギーを生産し貯蔵する方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、そして当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度に加熱された流体媒体の流れが生成されるように熱エネルギー生産を実施するために、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、及び前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内部に設けられた少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内へ、前記少なくとも1つの回転装置によって形成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、をさらに含む。
【0019】
別の態様では、熱エネルギーの生産及び貯蔵中に流体媒体中へ熱エネルギーを投入する方法が提供される。
【0020】
実施態様では、前記方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に熱エネルギーを貯蔵するように形成された少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットに動作接続された前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。実施態様では、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットが、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に熱エネルギーを貯蔵するように形成された熱エネルギー貯蔵媒体を含み、前記熱エネルギー量が、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ転移される。
【0021】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内部に提供された熱エネルギー貯蔵媒体が、顕熱蓄熱(SHS)媒体、潜熱蓄熱(LHS)媒体、又は熱化学蓄熱(TCS)媒体のいずれか1つである。実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵媒体が、安定相材料又は相変化材料(PCM)である。実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵媒体が、固相、液相、気相、又はこれらの組み合わせのいずれか1つで提供される。実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵媒体が解離固体、液体、又はガス状化合物を含む。
【0022】
実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵媒体が可動性であり、そして流体を含む。実施態様では、前記熱エネルギー貯蔵媒体が溶融塩又は流動砂床を含む。
【0023】
実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー貯蔵媒体が不動性であり、そして前記熱エネルギー貯蔵媒体が、金属、石、コンクリート、砂、セラミック、又はこれらの組み合わせのいずれか1つを含む。実施態様では、前記熱エネルギー貯蔵媒体が固定砂床又は岩床を含む。
【0024】
実施態様では、前記方法が、前記回転装置内で、前記加熱された流体媒体を生成することを含む。実施態様では、前記方法において、前記回転装置に入る流体媒体が、本質的にガス状の媒体である。実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、空気、窒素(N)、蒸気(HO)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含む。実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内での熱エネルギーの生産及び貯蔵中に生成されたオフガスからリサイクルされたリサイクルガスである。
【0025】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体から、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内に提供された熱転移流体へ、熱エネルギー量が転移される。実施態様では、前記方法において、前記熱転移流体が合成油又は溶融塩である。
【0026】
実施態様では、前記方法は、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する流体媒体流との間の熱伝達プロセスを通して、前記回転装置の外部で前記加熱された流体媒体を生成することをさらに含む。
【0027】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体から、熱交換器を介して、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットへ、熱エネルギー量が転移される。実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体から、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内に提供された熱エネルギー貯蔵媒体へ、且つ/又は熱転移流体へ、前記熱エネルギー量が転移される。実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体中に浸漬された熱転移管ネットワークを介して、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ、前記熱エネルギーが転移され、前記熱エネルギー貯蔵媒体が不動性である
【0028】
実施態様では、方法は、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、又は約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、又は約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む。
【0029】
実施態様では、前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む。
【0030】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される。
【0031】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。前記ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。
【0032】
実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が、本質的に螺旋状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に半径方向の軌道、のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って、そして左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路に沿って、入口と出口との間で流体流を実現するように形成されている。
【0033】
実施態様では、前記方法において、回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される。
【0034】
実施態様では、前記方法が、前記回転装置を通って、且つ/又は加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。
【0035】
実施態様では、前記方法が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって前記加熱された流体媒体を生成し、前記少なくとも2つの回転装置が並列又は直列に接続されていることを含む。実施態様では、前記方法が、連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成し、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱されることを含む。実施態様では、前記方法において、連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される。実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、順番で前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される。実施態様では、前記方法が、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記熱エネルギー生産・貯蔵部内へ導入することを含む。
【0036】
実施態様では、前記方法において、前記加熱されるべき流体媒体が、供給ガス、リサイクルガス、メイクアップガス、及び熱エネルギー生産プロセスによってリサイクル又は生成されたプロセス流体から成る群から選択される。
【0037】
実施態様では、前記方法は、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む。
【0038】
実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある。
【0039】
実施態様では、前記方法において、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる。
【0040】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれることにより、(例えば供給及び/又は生産を通して得られた)前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される。
【0041】
別の態様では、熱エネルギー生産・貯蔵設備が提供される。実施態様では、前記設備が、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットとを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれており、そして少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記少なくとも1つの回転装置が、電気エネルギーを含む投入エネルギー量を受容するように、当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度に加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、そして前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内部に設けられた前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット内へ、加熱された流体媒体の流れを供給するように、形成されている。
【0042】
実施態様では、前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットが、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備内に熱エネルギーを貯蔵するように形成された熱エネルギー貯蔵媒体を含み、そして前記熱エネルギー量が、前記少なくとも1つの回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体から、前記熱エネルギー貯蔵媒体へ転移されるように、少なくとも1つの回転装置が前記少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニットに接続されている。
【0043】
実施態様では、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む。一実施態様では、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された固定ベーンが、固定ガイドベーンとして形成されている。一実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。前記ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。いくつかの形態では、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンとして、ベーン付きディフューザが実現されてよい。
【0044】
実施態様では、前記熱エネルギー生産・貯蔵設備は、いくつかの前述の態様及び実施態様に基づく方法を通して、熱エネルギーの生産及び貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。
【0045】
さらなる態様では、集成体が設けられており、前記集成体がいくつかの前述の態様に基づく少なくとも2つの回転装置を含み、前記回転装置が並列又は直列に接続されている。
【0046】
さらなる態様では、配列が提供され、そして前記配列は、いくつかの前記態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含み、前記少なくとも1つの回転装置は、少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵媒体に接続されている。
【0047】
本発明の有用性は、それぞれの具体的なその実施態様に応じて、種々の理由から生じる。
【0048】
全体的に見て、本発明の実施態様は、例えば燃料燃焼型加熱器の代わりに熱エネルギーの生産及び貯蔵に使用されるように、高温流体、例えばガスを提供するための電化された回転流体加熱器をもたらす。提示された方法は、熱エネルギーを生成し、そしてこの熱エネルギーを高い温度及び極めて高い温度、例えば概ね500℃を超える温度で熱エネルギー貯蔵媒体中へ投入するのを可能にする。本発明は、約500℃~約2000℃の温度、すなわち熱エネルギーの生産及び貯蔵において用いられる温度に流体物質を加熱する装置及び方法を提供する。ここに開示された回転装置は、流体を所定の温度(例えば最大1700℃)まで加熱するのを可能にする。この温度は、いわゆるブースタ加熱の概念を通してさらに上昇させる(2000℃以上まで)ことができる。
【0049】
熱エネルギーの生産及び貯蔵は典型的には、高い熱エネルギー需要を有する、ひいては熱消費のためのユーティリティ、例えば燃焼型加熱器を採用する。前記熱消費ユーティリティは、流体を熱エネルギーの生産のために必要とされる温度まで加熱するために使用される。ここに提示された本発明は、コンベンショナルな熱消費ユーティリティ、例えば燃料燃焼型加熱器の代わりに、回転装置を使用するのを可能にする。方法において、燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することに伴う利点は、少なくとも、
- 電化加熱を支援すること、
- 温室効果ガス(例えばNO、CO、CO、NO)、燃料に由来する他の有害成分(例えばHCl、HS、SO、及び重金属)、粒子排出量及び煤煙排出量を排除するか、又は少なくとも著しく低減すること、
- 加熱器の体積が低減され、すなわち回転装置の体積が、コンベンショナルな処理加熱器又は熱交換器と比較して少なくとも1桁小さくなり得ること、
- 投資コストが減少すること、
- 引火性の有害な流体/ガスを使用する場合の安全性が改善されること、
- 大量のガスの取り扱いが実現可能であること、
- 圧力降下が存在しないこと、
- ガスの圧縮(ブロワ機能)のためにも回転(加熱器)装置を使用することが可能であること、したがって、蓄熱ユニット、パイプライン、及び/又は高温プロセスガスの生じ得るリサイクルに関する圧力低下を克服するための、付加的なブロワ、ファン、又は圧縮機の必要性をなくすること、
- ガスの直接加熱に際しての温度差に依存していないこと。回転装置内の温度上昇は、約10~1700℃以上であり得ること、
- 任意には熱交換器内の温度差を最適化することにより、流体の間接加熱に際して回転装置を使用することが可能であること、
- 高温プロセスガスの少なくとも部分的なリサイクルが可能であり、ひいては熱回収を改善してよりシンプルにし、そしてエネルギー効率を改善すること、
- 発熱反応によりガス温度を例えば2000℃以上までさらに高める反応性化学物質を添加することによって、加熱されるべきガスの温度をさらに上昇させることが可能である、
ことを含む。
【0050】
実施態様では、回転装置は、熱エネルギーの生産及び貯蔵に際して、直接又は間接の加熱又は熱エネルギー生成のためのコンベンショナルな燃焼型加熱器又はプロセス炉の代わりに使用することができる。再生可能電気のコスト効率が高められるのにともなって、つまり風力発電及びソーラー発電の急速な開発にともなって、化石燃料燃焼の代わりに、再生可能電気を動力源とする、本明細書に記載された回転装置を使用することが可能である。これは温室効果ガス排出を著しく低減することになる。回転装置は、流体を最大1700℃以上の温度に電化加熱することを可能にする。このような温度は、現行の電気加熱を用いることによって到達するのは困難又は不可能である。
【0051】
回転装置は、プロセスガス、不活性ガス、空気、又は任意のその他のガスを直接加熱するために、又はプロセス流体(液体、蒸気、ガス、蒸気/液体混合物など)を間接加熱するために使用することができる。前記回転装置内で生成された、加熱された流体は、ガス、蒸気、液体、及び固形材料のうちのいずれか1つを加熱するために使用することができる。回転装置は、固形、液状、又はガス状の化石燃料、いくつかの事例ではバイオベースの燃料で伝統的に燃焼又は加熱される(例えば予熱器としての)多数のタイプの炉、加熱器、キルン、ガス化器、及び反応器と少なくとも部分的に置き換えることができ、あるいはこれらと組み合わせることもできる。このようなアプライアンスの一例としては、炉、オーブン、キルン、加熱器、バーナ、焼却炉、ボイラ、乾燥器、コンベア装置、反応器、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの具体例は、高炉、キューポラ炉、ポット・アンド・タンク炉、シャフト炉、再生炉、回転キルン、蒸気ボイラ、触媒反応器、及び流動床反応器を含むが、これに限定されるものではない。貯蔵に向けて意図された熱エネルギーを生産し得るいかなる装置も、少なくとも部分的に回転装置と置き換えることができる。加熱されたガスは引火性、反応性、又は不活性であってよく、そしてリサイクルして回転装置へ戻すことができる。加熱に加えて、回転装置は複合ブロワ-加熱器として作用してよく、圧力を高め、そしてガスをリサイクルするのを可能にする。
【0052】
加熱された流体、例えばガスを種々の用途に使用することができる。加熱された物体は、固形材料、液体又はガスであり得る。ガスは数多くの(可逆)反応、又は相転移にさらに参加し、又は加熱媒体として使用される。加熱媒体として不活性高温ガスを使用することは、プロセス流体が高い圧力又は真空にあるときに好ましい手段となる。このように、熱エネルギーの生産及び貯蔵の改善は、熱エネルギーに依存する種々の用途において効率を高めることに関与し得る。
【0053】
本発明は温室効果ガス排出量(CO、CO、NO)及び粒子排出量の低減を可能にする。回転装置を使用することにより、プロセスのための閉加熱ループ又は準閉加熱ループを形成すること、そして煙道ガスを通した熱損失を低減することにより、これらのプロセスのエネルギー効率をさらに改善することもできる。コンベンショナルな加熱器内では、煙道ガスを部分的にしかリサイクルすることができない。
【0054】
加えて、本解決手段は、間接加熱に際して熱交換器内の温度差の改善された最適化を可能にする。
【0055】
本発明は、電気エネルギー、例えば再生可能源から得られる電気エネルギーを使用するフレキシビリティをさらに提供する。再生可能エネルギーは日を単位として、そしてさらに時間を単位として変化する。本発明は、例えば熱エネルギーの生産及び貯蔵に熱を提供するために、ここに開示された回転装置をコンベンショナルな燃料動作型(燃料燃焼型)加熱器と一体化することにより、再生可能電気生産のバランスをとることを可能にする。
【0056】
本発明はさらに、伝統的な化石燃焼炉及びソーラーコレクタと比較して、現場投資コストの低減を可能にする。さらに、本発明は、既存の解決手段と比較して、熱エネルギー貯蔵ユニットに対して著しく長い距離をおいて再生可能電気発電設備を設置することを可能にする。このことは、熱消費装置に対する前記熱エネルギー貯蔵ユニットの距離において、例えば蓄熱装置を熱消費装置に近づける上で、付加的なフレキシビリティをもたらす。
【0057】
「いくつかの(a number of)」という表現は、本明細書中では1から出発して例えば1、2、又は3までの任意の正の整数を意味する。「複数の(a plurality of)」という用語は、本明細書中では2から出発して例えば2、3、又は4までの任意の正の整数を意味する。「第1」及び「第2」という用語は、別段の明示がない限り、いかなる順番又は重要性をも示すことなしに、1つのエレメントを別のエレメントから区別するだけのために使用される。
【0058】
「ガス化」という用語は、ここでは、物質が任意の可能な手段によってガス状形態へ変換されることを示すために利用される。
【0059】
「熱(heat)」及び「熱エネルギー(thermal energy)」はここでは相互に置き換え可能に使用される。
【0060】
詳細な説明及び添付の図面を考察することにより、本発明の種々異なる実施態様が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された高温熱エネルギー生産・貯蔵設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。
図2図2は、実施態様に基づく回転装置を示す概略図である。
図3A図3Aは、実施態様に基づく、熱エネルギー生産のための装置を示す概略図である。
図3B図3Bは、実施態様に基づく、熱エネルギー生産のための装置を示す概略図である。
図3C図3Cは、実施態様に基づく、熱エネルギー生産のための装置を示す概略図である。
図4図4は、実施態様に基づく、熱エネルギーの生産及び貯蔵の方法を示す概略図である。
図5図5は、実施態様に基づく、熱エネルギーの生産及び貯蔵の方法を示す概略図である。
図6図6は、実施態様に基づく、熱エネルギーの生産及び貯蔵の方法を示す概略図である。
図7図7は、実施態様に基づく、熱エネルギーの生産及び貯蔵の方法を示す概略図である。
図8図8は、実施態様に基づく、熱エネルギーの生産及び貯蔵の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の詳細な実施態様が、添付の図面に関連してここに開示される。
【0063】
図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された熱エネルギー生産・貯蔵設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。破線で示されたブロックダイアグラム区分は、任意である。
【0064】
図1に関して、以下の符号は部材のために使用される。流れ:1.供給物、2.予熱された供給物又は供給混合物、3.回転装置(100)によって加熱された供給物、4.例えば(発熱)化学反応を通して温度を上昇/促進するように形成された付加的な(ブースタ)加熱器ユニット内でさらに加熱された供給物、5.熱回収部へ導かれた流体媒体、5’.その熱を流れ10へ転移した後の流れ5、6.反応性化合物又は反応性化合物の混合物、例えば反応性化学物質、又は付加的な加熱器ユニット103内で流体/ガスの温度を高めるために使用される支援燃料、7.熱エネルギー貯蔵ユニット101に入る熱転移流体(間接加熱器用途)、8.さらなる処理のために送られる、加熱されたプロセス流、9.熱回収部への供給物流、10.熱回収部からの高温流体流及び/又はリサイクル流。区分(ユニット):100.回転加熱器ユニット(回転装置)、101.熱エネルギー貯蔵ユニット、102.予熱器ユニット、103.付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)、104.熱回収ユニット。
【0065】
設備は、500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で、高温熱エネルギー生産・貯蔵に関連する産業プロセスを実施するように形成されている。
【0066】
実施態様では、設備は、500℃~1700℃の範囲内の温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約800~900℃以上の範囲内の温度で開始する、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、1000℃に本質的に等しい、又は約1000℃を超える温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約1100~1200℃以上の範囲内の温度で開始する、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に約1300~1700℃以上の範囲内の温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、1500℃に本質的に等しい、又は約1500℃を超える温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連するプロセスを実施するように形成されている。いくつかの実施態様では、設備は、約1700℃を超える温度で、例えば約2000℃以上で、例えば約1700℃~約2500℃の範囲内で熱エネルギー生産・貯蔵に関連する産業プロセスを実施するように形成することができる。設備は約1700℃で、約1800℃で、約1900℃で、約2000℃で、約2100℃で、約2200℃で、約2300℃で、約2400℃で、約2500℃で、そして上述の温度点の間に含まれる任意の温度値で、熱エネルギー生産・貯蔵に関連する産業プロセスを実施するように形成することができる。なお指摘しておくが、設備1000は、500℃未満の温度で産業プロセスの少なくとも一部を実施することから排除されない。
【0067】
熱エネルギー貯蔵ユニットは符号101によって示されている。区分101は、熱エネルギー貯蔵媒体(熱エネルギー貯蔵材料又は蓄熱材料とも呼ばれる)。を含む。いくつかの形態では、ユニット101は熱担体(熱転移流体、HTF)をさらに含む。実施態様では、蓄熱材料及と熱担体とは単一の媒体又は異なる物質であってよい。
【0068】
実施態様では、少なくとも1つの熱エネルギー貯蔵ユニット101内部に供給された熱エネルギー貯蔵媒体は、顕熱蓄熱(SHS)媒体、潜熱蓄熱(LHS)媒体、又は熱化学蓄熱(TCS)媒体のうちのいずれか1つとして形成されている。SHSシステムの場合、金属、石/岩、砂、コンクリート、及びセラミックス(固体)、及び溶融塩、水、及び油(液体)、又はこれらの固体材料及び液体材料の任意の組み合わせを一例として含む、固体材料又は液体材料のいずれか1つが利用されてよい。合成油又は鉱物油のいずれか1つを利用してもよい。
【0069】
模範的な溶融塩の一例としては、硝酸塩系材料(例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び/又は硝酸リチウム)、塩化物系材料(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び/又は塩化亜鉛の混合物)、フッ化物系材料、及び炭酸塩系材料が挙げられる。
【0070】
LHSシステムの場合、固体-固体、固体-液体、固体-気体、及び液体-気体相転移材料種を含む任意の適宜の相変化材料(PCM)が利用されてよい。相応に、任意の適宜のTCSシステムが利用されてよい。
【0071】
実施態様では、熱エネルギー貯蔵媒体は、1つ又は2つ以上の相から成る安定相材料、又は相変化材料(PCM)として形成されている。実施態様では、熱エネルギー貯蔵媒体は、固相、液相、気相、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つの形で提供される。これらの固体、液体、又はガス状化合物は、化合物の形成時及び解離時に相応して熱エネルギーが捕捉され解放されることに関連して化学反応させられるように形成されてよい。
【0072】
熱エネルギー貯蔵媒体は可動性であってよい。この場合、これは流体を含み、あるいは熱エネルギー貯蔵媒体は不動性の媒体であってもよい。可動性の熱エネルギー貯蔵媒体は、溶融塩又は流動材料性、例えば流動砂床を含み、又はこれから成っていてよい。一例としては、PCM材料を使用する可動性の熱エネルギー貯蔵システムが考えられる。
【0073】
不動性の熱エネルギー貯蔵媒体は、金属、石、コンクリート、砂、セラミック、又はこれらの組み合わせのいずれか1つを含み、又はこれから成っていてよい。浮動性の熱エネルギー貯蔵媒体は、例えば固定材料床、例えば固定砂床、又は岩床として形成されていてよい。
【0074】
本開示は、高い熱エネルギー需要のある産業プロセスにおいて続いて使用され得る熱エネルギーを、熱エネルギー貯蔵媒体を含む熱エネルギー貯蔵ユニット101内で生成し貯蔵するための装置及び方法を提供する。これにより、前記プロセスにおけるエネルギー効率を顕著に改善することができ、そして大気中へ放出される空気汚染物質量を低減することができる。図1は、これらの改善された設備及び方法を概略的に示している。
【0075】
実施態様では、方法は、少なくとも1つの回転装置(以後、装置(100))を含む又はこれから成る回転加熱器ユニット100によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。明確にするために、回転加熱器ユニットは、回転装置と同じ符号100によって、本開示において示されている。回転加熱器ユニットは好ましくは、プロセス設備1000内へ組み込まれている。実施態様では、加熱された流体媒体は、少なくとも1つの回転装置によって生産される。
【0076】
実施態様において、投入エネルギー量Eは、プロセス設備1000内へ(回転)加熱器ユニットとして組み込まれた少なくとも1つの回転装置100内へ導かれる。投入エネルギーEは好ましくは電気エネルギーを含む。いくつかの実施態様では、熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、約5~約100パーセントの範囲内、好ましくは約50~約100パーセントの範囲内で提供される。このように、熱エネルギー生産・貯蔵設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、(総投入エネルギーから)5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100パーセントのうちのいずれか1つ、又は上記点の間に含まれる任意の中間値を占めてよい。
【0077】
電気エネルギーは外部源又は内部源から供給することができる。実際には、装置内へ供給される電気投入エネルギーE1は、電力の観点で定義することができる。後者は単位時間あたりのエネルギー転移速度(ワットで測定される)として定義される。
【0078】
回転装置100は、供給物流1、以後、供給物1を受容するように形成されている。全体的に見ると、供給物1は、純粋な成分又は成分混合物として提供された任意の流体、例えば液体又はガス又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成ることができる。供給物は原料ガス、プロセスガス、メイクアップガス(いわゆる置換/補充ガス(replacement
/ supplement gas))、及びこれに類するものであり得る。ガス状供給物は不活性ガス(空気、窒素ガス、蒸気、及びこれに類するもの)、又は反応性ガス(例えば酸素)、引火性ガス、例えば炭化水素、又は任意の他のガス、例えば水素及びアンモニアを含むことができる。供給物はプロセスに応じて選択される。すなわち、熱エネルギー貯蔵ユニット101内の熱エネルギー貯蔵媒体の性質(及び実際には前記熱エネルギー貯蔵媒体が配属する具体的な産業/産業の分野)が、供給物質の選択に対する特定の要件及び/又は制限を暗示する。
【0079】
供給物1が本質的にガス状の形態で装置100内へ入ることが好ましい。供給物の予熱、又は液状又は本質的に液状の供給物のガス状形態への変換は、任意の予熱器ユニット102内で実施することができる。予熱器ユニットは、(予)加熱器装置又は装置群として形成されている。予熱器ユニット102内では、最初はガス状形態(例えばプロセスガス)で提供された供給物流をさらに加熱(例えば過熱)することができる。予熱器ユニット102内では、供給物1が既にガス形態になっていなければこれを蒸発させ、そして任意には過熱することができる。
【0080】
予熱器ユニット102は、流体物質に熱を提供するように形成された任意のコンベンショナルな装置/システムであってよい。いくつかの形態では、予熱器ユニット102は燃焼型加熱器、例えば、加熱器内部に配置されたコイルを通って流れる流体供給物、例えばプロセス流体の温度を上昇させるために高温燃焼ガス(煙道ガス)を使用する直接燃焼型熱交換器であってよい。これに加えて又はこの代わりに、予熱器ユニット102は、熱回収ユニット104によって提供された供給物流10によって示されているように、熱エネルギー生産・貯蔵設備内の他のユニットによって利用可能となるエネルギーを活用するように形成することもできる。予熱器ユニット102はこのように、蒸気、電気、及び/又は排/リサイクル熱流を利用するように形成することができる。
【0081】
回転加熱器ユニット(装置100)によって、加熱された流体媒体を生産するために使用される供給物流1は、未使用の供給物(新鮮な供給物)及び/又はリサイクル流を含んでよい。したがって、供給物1は、新鮮な供給物、リサイクル(流体)流、及びこれらの混合物のうちのいずれか1種から成っていてよい。(予)熱された供給物を表す流れ2は、供給物1に加えて、すべてのリサイクル流、例えば回収区分104から到着したものを含んでよい(流れ10参照)。
【0082】
回転加熱器ユニット/回転装置100内では、温度は、熱エネルギー貯蔵媒体によって必要とされるレベルまで、又は回転装置によって達成される最大レベルまで高められる。回転装置100によって達成された温度上昇が十分ではない場合、且つ/又は例えば流体の温度を、流体がその熱を熱エネルギー貯蔵媒体へ転移したあとで再び上昇させる必要がある場合には、回転加熱器ユニット100(100A)の下流側に、「ブースタ」加熱器とさらに呼ばれる付加的な加熱器ユニット(100B、103)によって、温度をさらに高めることができる。図2Bに関する説明参照。それぞれの付加的な加熱器ユニットは、下記に基づいて実現された付加的な加熱装置を含み、又はこれから成る。
【0083】
蓄熱用途において、熱エネルギー貯蔵媒体から出るプロセス流から熱を回収することが可能である(ユニット101)。熱回収セクションは図1に符号104で示されている。回収された熱は、供給物流1(熱回収部へ入る流れ9、及び熱回収部から出る流れ10を参照)及び/又はリサイクル流(相応して流れ5及び10を参照)を加熱し、供給物流中へ投入しなければならない付加的な熱エネルギーを低減し、そしてエネルギー効率を高めるために使用することができる。ユニット104は、蓄熱ユニット101から出る流れ5から過剰の熱を捕捉し、そして供給物流9へこれを転移することにより、加熱された供給物流10を形成することができる。その熱を流れ9へ供与する流れ5は、流れ5’としてユニット104を出る。この形態は、流れ(5)がリサイクルにより回転装置100へ戻すのに適していない場合(例えば、蓄熱材料が砂床であり、そして流れ5がダスト粒子で汚染されている場合)に、蓄熱ユニット101を出る流れ(5)から熱を回収することができる。
【0084】
熱回収は、プロセスユニット101から出たガスを収集し、これらの流れの熱エネルギーを予熱器ユニット102及び/又は回転装置100へリサイクルすることを通して準備されてよい。熱回収装置104は、少なくとも1つの熱交換装置(図示せず)で代表することができる。任意の適宜の技術に基づく熱交換器を利用することができる。熱回収は、熱がどこか他の場所で消費される場合、又は安全性又はその他の理由により熱を回収することができない場合、供給ガスを加熱するのに際して任意であってよい。
【0085】
熱回収は、熱がどこか他の場所で消費される場合、又は安全性又はその他の理由により熱を回収することができない場合、供給ガスを加熱するのに際して任意であってよい。
【0086】
設備レイアウト1000では、熱回収ユニット104は、予熱器102の前及び/又は後に配置することができる。後者の形態では、熱回収ユニット104は、蓄熱ユニット101から流れる高温流体媒体(流れ5)から熱を回収するように配置されている。この熱は、上述のように、供給物流及びリサイクル流を加熱するようにさらに利用されてよい。他方において、熱回収ユニット104が予熱器102の前に配置されている場合には、供給物1はまずユニット104へ(流れ9として)導かれ、そして次いで予熱部102へ流れ10として戻される。このような場合には、ユニット104は第1予熱器として作用する。
【0087】
ユニット101内の熱エネルギー貯蔵のために必要とされる、加熱された流体媒体が、少なくとも1つの回転装置100によって生成される。
【0088】
一実施態様では、加熱された流体媒体は回転装置100内で生成される。ここでは前記装置を通して伝搬された流体媒体中へ、熱エネルギー量が直接に加えられる。回転装置内で生成された加熱された流体媒体は、熱エネルギー貯蔵ユニット101へ供給され、これによりその熱を前記ユニット101内部に提供された熱エネルギー貯蔵媒体へ転移する。いくつかの形態では、回転装置内で生成された加熱された熱流体媒体は、熱転移媒体である。いくつかの他の形態では、回転装置100内で生成された加熱された流体媒体は、どこか他の場所から熱エネルギー貯蔵ユニット101に入る熱転移媒体(流れ7、図1)を(間接的に)加熱するために使用されてよい。いくつかの形態では、回転装置内で生成された加熱された流体媒体と、熱交換ユニット101内部に提供された熱エネルギー貯蔵媒体(及び任意には熱転移流体)との間の熱転移は、熱交換器(図3B、符号105参照)を介して実施される。
【0089】
実施態様に基づく、精製設備及び/又は石油化学設備内へ供給されるべき加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータブレードを含むロータと、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、を含み、ロータがケーシング内部に閉じ込められている。装置100では、当該流体媒体流が前記回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬するときに、前記少なくとも1つのロータブレード列を通過したときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成される。
【0090】
回転装置100の実施形態は、米国特許第7,232,937号明細書(Bushuev)、米国特許第9,494,038号明細書(Bushuev)、及び米国特許第9,234,140号明細書(Seppala他)に基づく回転反応器装置、並びに米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に基づくラジアル反応器装置の開示内容に概ね従う。前記明細書の内容全体はここに参照することにより援用される。実施態様に基づく方法を採用するように形成され得る、任意の他の実施形態を利用することもできる。
【0091】
上で参照した特許文献において、回転ターボ機械タイプの装置は、炭化水素を処理するための、具体的にはスチームクラッキングするための反応器として設計されている。これらの用途に対する大まかな要件は、ガスの急速加熱、高い温度、短い滞留時間、及び栓流(軸方向の混合を暗示しない流動モデル)である。これらの要件は、ターボ機械タイプの反応器が、比較的小さな容積内に収容されるいくつかの加熱段を有するデザインをもたらす。
【0092】
本開示は、回転装置(限定はしないが上で参照したものを含む)を電化し、そして高温蓄熱101においてさらに供給される、加熱された流体媒体を生成するための加熱器として使用することができる。回転装置加熱器ユニットを蓄熱ユニット及びプロセス101中へ組み込むことにより、温室効果ガス及び粒子の排出量を著しく低減することができる。一例としては、回転装置は種々の用途(下記)において、燃料燃焼型加熱器に取って代わることができる。温度範囲は、(上で参照した反応器装置で概ね達成可能な)約1000℃から少なくとも約1700℃まで、そしてさらに2500℃まで広げることができる。これらの高い温度を達成し得る回転装置の構成は、空気力学的ハードルが存在しないことにより可能である。
【0093】
実施態様に基づいて高温熱エネルギー生産・貯蔵設備内へ組み込まれ、且つ実施態様に基づく方法のために、加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、こうして、少なくとも1つのロータユニットがロータ軸上に取り付けられた状態で、水平方向(長手方向)軸線に沿って位置決めされたロータ軸を含む。ロータユニットは、ロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって配置された複数のロータ(作業)ブレードを含む。ロータブレードは一緒に、ロータブレード・カスケードを形成する。回転装置100はこのように、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータ(作業)ブレードを含み、これらのロータブレードは、本質的に環状のロータブレード集成体又はロータブレード・カスケードを形成している。
【0094】
実施態様では、装置は、少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に位置する集成体を成すように配置された複数の固定ベーンをさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。
【0095】
いくつかの実施態様では、複数の固定ベーンは固定ベーン・カスケード(ステータ)を成すように配置することができる。固定ベーン・カスケードは、少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する、本質的に環状の集成体として提供される。少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する集成体を成すように配置された固定ベーンは、固定ガイドベーン、例えば(入口)ガイドベーン(IGV)として提供されてよく、そして流体流をロータ内へ所定の方向に導くように、例えばロータ固有の作業投入能力を制御し、そしていくつかの事例ではこれを最大化するように、固定ベーンは中心軸の周りにプロフィール、寸法、及び配置関係に関して形成されていてよい。
【0096】
回転装置は、2つ又は3つ以上の本質的に環状のロータブレード列(ロータブレード・カスケード)がロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的に配置された状態で形成されている。このような場合には、固定ガイドベーンは、第1ロータブレード列の上流側に、各ロータブレード列の上流側に順番に、又はロータブレード列の連続的な配置における任意の選択されたロータブレード列の上流側に設けられていてよい。
【0097】
実施態様では、回転装置100は、少なくとも1つのロータブレード列(ロータブレード・カスケード)の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成することができる。いくつかの形態では、ベーン付き又はベーン無しのディフューザが、少なくとも1つのロータブレード・カスケードの下流側の前記ディフューザ領域内に配置されている。いくつかの形態では、ディフューザは、複数の固定(ステータ)ベーンとして実現することができる。これらの固定ベーンは、ロータの下流側の本質的に環状の集成体として提供されるディフューザベーン・カスケードを成すように配置される。
【0098】
ロータ、固定ガイドベーン、及びディフューザ領域は、ケーシング内に形成された内部通路(ダクト)内部に閉じ込められている。
【0099】
例えば米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に記載されたようないくつかの形態では、ディフューザ(装置)を設けることが省かれ、そしてディフューザ領域は、ロータの下流側に配置されたダクトの本質的にベーン無しの部分(いわゆるベーンレス・スペース)によって形成されてよく、そしてロータから到着する高速流体流を拡散するように、そのジオメトリ及び/又は寸法パラメータに関して形成されてよい。
【0100】
ダクトのベーン無し部分を設けることは、上記回転装置100のすべての形態に共通している。形態に応じて、ベーン無し部分(ベーンレス・スペース)はロータブレードの下流側(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、又はディフューザベーン・カスケードの下流側(Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)に配置されている。例えばSeppala他によって記載されたいくつかの形態では、ケーシング内部の内部通路内の回転ブレード列及び固定ブレード列は、ベーン無し部分がロータブレードの下流側に配置された固定ディフューザベーンからの出口と、後続のロータブレード・カスケードユニットのロータブレードの上流側に配置された固定ガイドブレードへの入口との間に形成されるように配置されている。
【0101】
「上流側」及び「下流側」という用語はここでは、装置全体を通した流体流の方向(入口から出口へ)における、所定の部分又は構成部分、ここではロータに対する構造的な部分又は構成部分の空間的且つ/又は機能的な配置を意味する。
【0102】
全体的に見ると、作業ブレード・カスケードを備えたロータは、作業ブレード列の一方又は両方の側に本質的に環状の集成体(カスケードと呼ばれる)を成すように配置された固定(ステータ)ベーン列の間に位置決めすることができる。ロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的(順番に)配置された2つ又は3つ以上のロータブレード/ロータブレード・カスケード列を含む形態が、これらの間に固定ブレードを有する又は有しない状態で考えられる。ロータブレード列の間に固定ベーンが存在しない場合には、ダクトを通って伝搬する流体媒体の速度はそれぞれ後続の列において増大する。このような場合には、複数の定置ベーンが第1ロータブレード・カスケードの上流側に前記順番で(固定ガイドベーンとして)、そして最後のロータブレード・カスケードの下流側に(固定ディフューザベーンとして)、集成体を成すように配置されてよい。
【0103】
任意には固定ディフューザベーン集成体(ディフューザ領域)を備えたケーシング内部に閉じ込められた、ロータブレード列(ロータブレード・カスケード)と、前記ロータブレードの下流側に位置するダクトの一部とは、完全なエネルギー転換サイクルを媒介するように形成された最小限のプロセス段(以後、段)とみなすことができる。したがって、少なくとも1つの回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードから出てダクト内を後続のロータブレード列へ向かって伝搬するか、又は本質的にトロイド形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道に続く同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。(ロータの周囲を閉じ込める)ダクトは好ましくは、流体流がダクト内で伝搬すると、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられるように成形されている。
【0104】
少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する固定ガイドブレード列は、エネルギー変換サイクル中の回転ブレード列(カスケード)の進入時の所要の流動条件を準備する。
【0105】
いくつかの形態では、プロセス段は、(ロータブレードの上流側の)固定ガイドベーンと、ロータブレード列と、前記ロータブレードの下流側に配置されたディフューザ領域とから成る集成体によって確立される。ディフューザ領域は、任意にはディフューザベーンが設けられたタクトの本質的にはベーン無しの部分として提供される。固定ガイドベーン、少なくとも1つのロータブレード列、及びディフューザ領域をそれぞれ通して制御された状態で、流体媒体流が連続的に伝搬することにより可能になるエネルギー変換サイクル中、ロータ軸の機械エネルギーが運動エネルギーへ変換され、そしてさらに流体の内部エネルギーへ変換され、続いて流体温度が高められる。回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードを出てディフューザ領域を通ってダクト内を通過して、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられたときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列内で、流れは加速し、そして軸及び回転ブレードの機械エネルギーは流体流へ転移される。各ロータブレード列の少なくとも一部では、流れは超音速流状態へ達し得る。ディフューザ領域内では、ロータから到着した高速流体流は、顕著なエントロピー増大を伴って拡散される。これにより流れは運動エネルギーを流体物質の内部エネルギー内へ散逸し、ひいては熱エネルギーを流体中へ提供する。ディフューザの上流側の流れが超音速である場合、流体流の運動エネルギーは、多重ショック及び粘性混合及び散逸のシステムを通して流体の内部エネルギーへ変換される。流体の内部エネルギーが増大する結果、流体温度が上昇する。エネルギー変換機能は、例えばロータブレードの下流側に配置されたダクトのベーン無しの部分によって(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、且つ/又は拡散ベーン集成体によって(Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)果たすことができる。
【0106】
回転装置100は、多段又は単一段解決手段として形成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に配置されたいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って連続的に配置された1~5つのロータブレード列)を含むと考えることができる。
【0107】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された模範的形態において、回転装置100は実質的にリングトーラスの形状で実現することができる。ここでは子午面におけるダクトの断面はリング状プロフィールを形成する。装置は、固定ガイドベーン(ノズルベーン)と固定拡散ベーンとの間に配置されたロータユニットを含む。段は、固定ノズルベーン、ロータブレード、及び拡散ベーンの列を有する状態で形成されている。これらを通って流体流は、本質的に螺旋状の軌道に基づいて確立された流路にしたがって、連続的に伝搬する。この形態において、流体流は、装置内部の入口と出口との間を伝搬しながら、数回にわたって回転ロータブレード・カスケードを通って循環する。同様のリング形状の形態がBushuevの米国特許第9,494,038号明細書に記載されている。
【0108】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された別の模範的形態では、回転装置100は、本質的に管状の軸方向タイプのターボ機械として形成することができる。このような形態では、装置は延長された(細長い)ロータハブを含む。このロータハブに沿って、複数のロータブレードがいくつかの連続的な列を成すように配置されている。ロータはケーシング内部に閉じ込められている。ケーシングの内面は固定(ステータ)ベーンとディフューザベーンとを備えている。固定ベーン及びディフューザベーンは、ステータ、ロータ・カスケード、及びディフューザ・カスケードのブレード/ベーンが、ロータハブに沿って長手方向に(ロータシャフトの長さに沿って入口から出口まで)交互に位置している。長手方向においてロータに沿った特定の位置におけるロータ・カスケードのブレードは、それぞれ固定ガイド(ノズル)ベーン及び拡散ベーンの隣接する対と一緒に段を形成する。
【0109】
記載された形態において、後続の段は、段の間にブレード/ベーンのないスペースを有する。
【0110】
Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書に概要を示されたさらに別の模範的形態では、回転装置100は、ラジアル・ターボ機械として形成することができる。ラジアル・ターボ機械は概ね遠心圧縮機又は遠心ポンプのための設計に従う。「遠心」という用語は、装置内部の流体流が半径方向であることを暗示し、したがって、装置は本開示では「ラジアルフロー装置」と呼ばれることがある。装置は細長い軸上に取り付けられたいくつかのロータユニットを含む。各ロータユニットには固定ガイドベーンが先行する。エネルギー変換を可能にする方式で成形されたダクトのベーン無し部分(例えばU字ベンド又はS字ベンド)が、ロータユニットの後に配置されている。加えて形態は、ロータの下流側に配置された別個のディフューザ装置(ベーン付き又はベーン無し)を含んでもよい。
【0111】
上記すべての形態において、回転装置100は、本明細書中に開示された方法において同様に機能する。動作中、熱エネルギー生産及び貯蔵設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ導かれる投入エネルギー量は、ロータの機械エネルギーへ変換される。回転装置内の状態は、流量状態を作り出すように調節される。この流量状態にあるときには、ロータの回転ブレードによって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流が少なくとも1つのロータブレード列から出て、ダクト及び/又はディフューザ領域を通過することにより後続のロータブレード列又は同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列には、固定ガイドベーンが先行してよい。したがって調節し得る状態は、少なくとも回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬する流体媒体流を調節することを含む。流れの調節は、このような装置の動作関連パラメータ、例えば温度、質量流量、圧力などを調節することを含んでよい。これに加えて又はこの代わりに、流れの状態は、ケーシング内部に形成されたダクトの形状を変更することにより調節することができる。
【0112】
いくつかの模範的な形態では、回転装置は、Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書のいずれか一方において論じられた、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において論じられた、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書において論じられた本質的に半径方向の軌道、及びBushuevの米国特許第7,232,937号明細書において論じられているような、左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成することができる。回転装置の空気力学的設計は様々であり得る。
【0113】
回転装置は駆動エンジンを利用する。全体的に見ると、装置は種々の駆動エンジン具、例えば電動モータを利用することができ、あるいは、装置はガスタービン又は蒸気タービン、又は任意の他の適宜の駆動装置によって直接に駆動することができる。本開示の目的上、任意の適宜のタイプの電動モータ(すなわち、電源から機械的負荷へエネルギーを転移し得る装置)を利用することができる。モータ駆動軸とロータ軸との間に配置された好適なカップリング、並びに種々のアプライアンス、例えば出力コンバータ、コントローラ、及びこれに類するものは、ここでは説明しない。
【0114】
回転加熱器ユニット(100)は、例えば並列に配置されたいくつかの回転装置ユニットを含んでよい。これらのユニットは、共通の熱エネルギー貯蔵媒体、例えば炉に(直接に又は間接に、例えばいくつかの熱交換器を通して)接続されてよい。
【0115】
いくつかの形態では、いくつかの回転装置ユニットをいくつかの熱エネルギー貯蔵媒体に接続することができる。異なる形態が考えられ、例えばn+x個の回転装置をn個の貯蔵媒体に接続してもよい。nはゼロ以上であり、そしてxは1以上である。こうして、いくつかの形態では、設備1000、及び具体的には回転加熱器ユニット100は、例えば共通の貯蔵媒体に接続された1、2、3又は4つの並列の回転装置ユニットを含んでよい。4を超える回転装置の数も排除されない。いくつかの回転装置を共通の熱エネルギー貯蔵媒体に並列接続するときには、前記装置100の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを有してよく、例えば電動モータ駆動型反応器を、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される装置と組み合わせることができる。
【0116】
電力(単位時間当たりのエネルギー転移速度と定義される)を、装置の回転軸を推進するために使用される電動モータに電流を供給することを通して、回転装置内へ供給することができる。回転装置内への電力の供給は(回転加熱器ユニット/装置100及び/又は熱エネルギー生産・貯蔵設備1000に対して)外部源から実現することができる。これに加えて又はこの代わりに、電気エネルギーを設備1000の内部で生産することもできる。
【0117】
外部源は、持続可能なエネルギー生産のために提供された種々の支援設備を含む。こうして、電力は少なくとも1つの再生可能エネルギー源を活用する発電システム、又は異なる再生可能エネルギー源を活用する発電システムの組み合わせから供給することができる。再生可能エネルギーの外部源は太陽光発電、風力発電、及び/又は水力発電として提供することができる。こうして、電力は以下のユニット、すなわち、太陽光発電システム、風力発電システム、及び水力発電システムのうちの少なくとも1つからプロセス中へ受容されてよい。いくつかの模範的な例では、外部電力源として原子力発電所が提供されてよい。原子力発電所は一般にエミッションフリーとみなされる。「原子力発電所」は、伝統的な原子力、そしてこれに加えて又はこの代わりに、核融合電力を使用するものと解釈されるべきである。
【0118】
電気は、発電機を駆動するための運動エネルギー源としてタービンを利用する発電所から供給することができる。いくつかの事例では、少なくとも1つの装置100を駆動するための電力は、例えば別個の設備として、又はコジェネレーション設備内部、及び/又は複合サイクル発電所内部で提供される少なくとも1つのガスタービン(GT)から供給することができる。電力はこうして、以下のユニット、すなわち複合サイクルガスタービンプラント(CCGT)、及び/又は熱回収と組み合わされた電気生産、及び熱電併給(CHP)を通した利用のために形成されたコジェネレーション設備、のうちの少なくとも1つから供給することができる。いくつかの例では、CHPプラントは、記載のプロセスにおける再生可能エネルギーのシェアを大きくするためのバイオマス燃焼プラントであり得る。これに加えて又はこの代わりに、電力の供給は、任意にはエンジン発電所の一部として提供された、火花点火エンジン、例えばガスエンジン、及び/又は圧縮エンジン、例えばディーゼルエンジンから実現することができる。さらに、典型的には蒸気タービンの使用によって媒介される形で、化石原料、例えば石炭、油、天然ガス、ガソリン、及びこれに類するものから電気エネルギーを生産するように形成された任意のコンベンショナルな発電所を使用して、回転装置100のための投入エネルギーとして電気エネルギーを生成することもできる。また、再生可能エネルギー源として水素を利用して、燃料電池を使用して例えば電気へ再変換することもできる。
【0119】
外部源及び内部源として実現された上述の電力源のいかなる組み合わせも考えられる。低排出量の電力を別の(外部の)源から取り込むことは、熱エネルギー生産及び貯蔵設備のエネルギー効率を改善する。
【0120】
回転装置の駆動エンジン内への電力を含む投入エネルギーの導入にはさらに、任意には設備1000内の他の場所、又は前記設備の外部で生成された熱エネルギーを利用して、出力タービンから機械軸出力を駆動エンジンへ導くことが付随し得る。軸出力は、1つの回転エレメントから別の回転エレメントへ伝達された機械出力と定義され、軸のトルクと回転速度との合計として計算される。機械出力は、単位時間あたりの作業量又はエネルギー量(ワットで測定)と定義される。
【0121】
実際には、例えば電動モータ及び出力タービンからの軸出力は、これらのうちのいずれか一方が全軸出力又はその一部を提供し得るように分割することができる。
【0122】
図2及び図3A~3Cは、設備1000内部の回転加熱器ユニットを形成する回転装置100の、予熱器ユニット102、温度ブースタ区分103、及び熱回収ユニット104の関する模範的レイアウトを示している。以下の符号は部材のために使用される。すなわち100、100A、100B-回転加熱器ユニット(回転装置)、101-蓄熱ユニット、102-予熱器ユニット、103-付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)、105-間接加熱の為の熱交換装置。
【0123】
図2は、回転装置を通して導かれた流体媒体流(供給物流1)中に熱を投入するように形成された回転装置100の基本実施形態を概略的に示している。装置100から出た加熱された流れが、それぞれ符号2で示されている。基本実施形態において、流体の体積が、装置100のケーシング内の入口と出口との間に形成された流路に沿って伝搬している間に、所定の温度まで加熱されるように、回転装置100のロータシステムは空気力学的に形成されている(いわゆる「ワンパス」実施形態)。装置100は1つの段において、約10℃~約120℃の範囲内の、いくつかの形態では約500℃までの温度上昇(デルタT、ΔT)を可能にする。したがって、多段実施形態の場合には流体は「ワンパス」の実施に際して1000℃まで加熱することができる(10段装置の場合には1段あたり100℃の温度上昇)。流体媒体が装置段を通過するのに費やす滞留時間は数秒に満たない規模、例えば約0.01~1.0ミリ秒の規模なので、基本形態において既に、高速の効率的な加熱を達成することができる。温度上昇は必要に応じて最適化することができる。
【0124】
図3Aは、いわゆるブースタ加熱に関与する基本概念を示している。ブースタ加熱は、独立型の加熱装置100の能力を超えて流体媒体、例えばプロセスガスを加熱する任意の方法である。
【0125】
温度ブーストは、熱的、化学的、又はその両方のものとみなすことができる。「熱的ブースト」とも呼ばれる第1形態の場合、付加的な回転加熱器装置(図3A、3B、及び3Cに符号100Bとして示されている)が、「一次」回転加熱器装置(図3A、3B、及び3Cに符号100Aとして示されている)の下流側に配置されている。装置100A、100Bは、本開示の範囲内では回転加熱器ユニット100として概ね認識される。加熱された流体媒体の生成はこのように、連続して接続された少なくとも2つの回転装置100A、100Bを設けることによって達成し得る。流体媒体流(供給物流1)は、ここでは一次加熱器と呼ばれる、連続内の少なくとも第1の回転装置(100A)内で所定の温度に加熱される。そして第1の回転装置100A内で「予熱された」、当該第2の回転装置100Bを通って伝搬する流体媒体流(流れ3参照)中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流(流れ2参照)は、該連続内の少なくとも第2の回転装置(100B)内でさらに加熱される。装置100Bはしたがってブースタ加熱器と呼ばれる。装置100A、100Bは同一であってよく、またサイズ又は内部設計に関して変化していてもよい。例えば符号100Bのような2つ又は3つ以上のブースタ装置の列を、一次加熱器100Aの後に配置することができる。ブースタ装置は並列又は直列に、あるいはその回転速度及び空気力学特性の最適化を可能にする任意の組み合わせで配置することができる。
【0126】
第2の付加的又は代替的な形態(さらに「化学的ブースト」とも呼ばれる)では、符号103(図1、2B)で示された付加的な加熱装置は、これを通って伝搬する流体媒体流中へ反応性成分5、例えば可燃燃料を受容し、これにより、蓄熱体101へ前記流体媒体流を導く前に発熱反応によって熱を提供するように構成されている。この形態では、付加的な加熱器ユニット/加熱装置103を通して導かれた流体媒体流中に反応性化学物質5を導入(例えば注入)することにより、温度ブーストを達成することができる。なお、図2Bの流れ5は、図1に示された流れ8に相当する。
【0127】
反応性化学物質に基づくブースタ加熱器ユニット103は、熱的ブースタ加熱器ユニット100、100B(図3A)の後、又は一次加熱器100、100A(図1)のすぐ後に配置されてよい。反応性化学物質(反応物質)5(図3A)は燃焼ガス、例えば水素ガス、炭化水素、アンモニア、酸素、空気、他のガス及び/又は任意の他の適宜の反応性化合物、任意には触媒を含んでよい。ユニット103において、発熱反応によって、流体流は、化学物質媒介加熱に関与しない単一の回転装置によっては典型的には達成し得ないレベルまで加熱することができる(流れ4参照)。例えば、燃料ガス、例えば水素は、酸素含有プロセスガス、例えば空気中に導入することができる。高温において、水素と酸素とは発熱反応に入ることによって、水分子を生産する(水素燃焼)。
【0128】
燃料ガスを空気(又は富化酸素)とともにバーナを通してブースタ加熱器ユニット103内へ注入することにより、ガスの温度を上昇させ得る。実現し得るならば、他のいかなる反応性ガスを注入することによっても熱を生成することもできる。
【0129】
化学的ブーストのために構成された付加的な加熱器103は、パイプ片として、又は発熱反応が行われるチャンバとして形成されてよく、且つ/又は付加的な熱エネルギーを生産するための発熱反応に対応するために反応性化合物を受容するように配置された少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。ブースタ区分103はこのように、少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。任意には、反応性化学物質は、熱消費プロセス101に直接に注入することができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、反応性化学物質媒介ブーストは、相応に変更された単一の装置100、103内で実施することもできる。
【0130】
ブースタ加熱に関与する配置関係において、第1の回転装置(100A)内で所定の温度まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で最大限度までさらに上昇させることができる。一例としては、一次加熱器(100A)内で約1700℃まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で2500℃以上までさらに上昇させることができる。
【0131】
上述の概念を別々に又は組み合わせて用いることにより、並列又は直列に(連続に)接続された装置100のいずれか1つに、反応性化学物質5を導入することができる。ブースタ加熱器を設けることは任意である。
【0132】
付加的又は代替的な形態において、予熱及び付加的な加熱を同じ装置100内で実施することもできる(図示せず)。このことは、多段形態において達成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に位置するいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って1~5つのロータブレード列が連続的に配置されている)を含む。
【0133】
これに加えて又はこの代わりに、例えば回転装置100内で一度加熱された流体の温度を、流体がその熱を蓄熱ユニット/プロセス101(図示せず)へ転移した後で再び上昇させる必要がある場合に、ブースタ加熱を用いることができる。
【0134】
少なくとも2つの回転装置、例えば100A、100B、及び任意には103(103が回転装置100として実施される場合)を並列又は直列に接続すると、回転装置集成帯を確立することができる(例えば図3A~3C参照)。「一次」加熱器100A又は「ブースタ」加熱器100B、103として実現された回転装置100間の接続は、機械的且つ/又は機能的であり得る。少なくとも2つの個々の、物理的に一体化された又は一体化されていない個々の装置ユニット間が連携されると、機能的(例えば達成可能な熱投入に関して)な接続を確立することができる。後者の場合、いくつかの補助装置を介して、少なくとも2つの回転装置間の連携を確立することができる(図示せず)。いくつかの形態では、集成体は、互いにミラー状に反映するように接続された少なくとも2つの装置を含む。これにより、前記少なくとも2つの装置はこれらの中心(ロータ)軸を介して少なくとも機能的に接続される。このようなミラー状の形態は、直列に(連続に)機械的に接続された少なくとも2つの回転装置100を有するものとさらに定義し得るのに対して、機能的接続は並列(アレイ状)の接続とみなすことができる。いくつかの事例では、前記「ミラー状」の配列はさらに変更を加えることにより、少なくとも2つの入口と、配列の本質的に中心に配置された共通の排出(放出)モジュールとを含むことができる。
【0135】
回転装置(図3Aの100A、100B、103参照)を同じ(ロータ)軸上で集成することができる。各回転装置は任意には、装置の独立した最適化を可能にする別々の駆動装置(モータ)を備えることができる。2つ又は3つ以上の別々の回転装置が使用されると、動作温度及び圧力の観点から、建築費(材料など)を最適化することができる。
【0136】
これに加えて又はこの代わりに、集成体内部の少なくとも1つの回転装置は、流体流の圧力を高めるように設計することができる。したがって、集成体内の少なくとも1つの回転装置には、加熱器機能とブロワ機能との組み合わせを割り当てることができる。
【0137】
これに加えて又はこの代わりに、反応性ガス又は不活性ガスを含有する流れ(例えば図1における流れ6)を回転装置100へ、又は前記装置の下流側に位置する任意の機器(図示せず)へ供給することができる。
【0138】
図3Bは、間接プロセス加熱を伴う回転装置100を示している。回転装置は、熱交換器105内で流体を間接加熱するために使用することができる。熱交換器のタイプは、最適な熱転移のために必要に応じて選択することができる。加熱用ガス(流れ1~3参照)は、加熱及び安全性にとって最適であるように選択することができる(例えば蒸気、N、空気)。回転装置100内で加熱されたガスはこうして、どこか他の場所から熱交換器へ入る「低温」熱転移流体流11にその熱を転移するために使用してよく、これにより、蓄熱ユニット101(図示せず)内でさらに使用されるべき加熱された熱転移流体流12を生成する。あるいは、蓄熱ユニット101を「熱交換器」(図1参照)として形成することにより、回転装置(1-4)から流れる加熱されたガスと、別個の流れ7として熱転移流体とを受容することもできる。
【0139】
回転装置100内で加熱されたガスは大気圧に近いことが可能であり、あるいは圧力を上昇させることにより、熱転移を改善することもできる。回転装置を使用することにより、下流側の熱交換器内の温度差の最適化が可能になる。これによりさらに、熱交換器のサイズを最小化し、そして表面温度が過度に高いことに起因して熱交換器表面に発生し得る不所望な反応(ファウリング、コーキング)を回避することができる。プロセス加熱器において、高い表面温度はプロセス加熱器内の過剰なファウリングを引き起こすおそれがある。間接加熱を用いることにより、例えば、動作圧力も通常低い重質流の蒸発のための油精製において、プロセス加熱器を交換することができる。
【0140】
図3Cは回転加熱器装置100(100A)を、予熱器102と、熱エネルギー貯蔵媒体101(図示せず)からリサイクルされたリサイクルプロセス流体(流れ4)と一緒に示している。予熱器は、電気式、燃焼型、燃焼エンジン、ガスタービンなどであってよく、これはプロセスにおける任意の高温流から余剰の熱を回収するための熱交換器であり得る。予熱器102を設けることは任意である。この概念は、装置100Aの下流側に位置する任意のブースタ加熱器100Bを含むことができる。熱的又は化学的なブースタ加熱が利用されてよい。流れ1’は、予熱器102へ送られる(供給物)流体を表す。前記流体は回転装置100A、100Bを通ってさらに伝搬され、そこで供給物は加熱され、そして流れ3において蓄熱器へ送られる。
【0141】
回転装置100A、100Bのいずれか1つは、流体リサイクル装置(図3Cの流れ4参照)を備えることができる。回転装置と流体リサイクル装置とのいかなる組み合わせも考えられる。少なくとも1つの回転装置による流体媒体流の再循環を通して、流体流のリサイクルが可能になる。
【0142】
いくつかの形態において、回転装置100は蓄熱プロセス(101)において場合によっては生成され且つ蓄熱プロセス(101)から排出された低酸素含量の煙道ガスを利用することができる。このような場合には、燃焼型加熱器から排出された高温煙道ガスはリサイクルガス(図3Cの流れ4)と混合されることにより、回転加熱器100、100A内での加熱のために使用される。記載の事例において使用される煙道ガス中の酸素含量は好ましくは、安全な加熱を可能にするための引火性限界を下回る。
【0143】
図4~8は、高温熱エネルギー貯蔵用途における回転装置100の使用を示している。
【0144】
本明細書中に使用される「熱エネルギー貯蔵」は、先ず熱源から貯蔵部内へ熱エネルギー(熱)を転移し、そして次いで貯蔵された熱をヒートシンク内へ回収するプロセスである。用途に応じて、熱源、貯蔵媒体、及びヒートシンクの材料及び相は互いに異なっていてよい。
【0145】
図4は、本開示に基づく熱エネルギー生産・貯蔵プロセス400の一実施態様を示している。回転装置100に動力供給するためにエネルギー源402が使用される。一実施態様では、エネルギー源402は再生可能エネルギーであり、間欠的にのみ利用可能であり得る。回転装置100は熱転移ガス404、例えば空気又は別のガスを受容し、そして蒸気の熱転移ガス404を加熱する。加熱されたガス406は、熱エネルギー貯蔵媒体408を含む熱エネルギー貯蔵ユニット101へ引き渡され、加熱されたガス406からの熱を熱エネルギー貯蔵媒体408へ転移する。熱エネルギー貯蔵媒体408中に貯えられた熱エネルギーは、産業プロセス410における後続の時点に放出されてよい。
【0146】
主要産業用途に適した蓄熱媒体は、1000℃までの温度を含む耐高温性の低コスト材料を含む。このような媒体は、高容量の高温蓄熱設備を低減されたコストで建設することを可能にする。好適な低コスト貯蔵媒体のいくつかの模範的実施態様は、岩、砂、コンクリート、及び/又は溶融塩を含む。
【0147】
熱エネルギーの生産及び貯蔵のプロセスに回転装置100を組み入れるためには、熱担体(熱転移流体HTF)がガス状熱担体であることが必要である。不活性ガス、例えば空気、窒素、又は蒸気は、回転装置によって加熱し、続いて回転装置によって生成された熱を熱エネルギー貯蔵媒体中へ搬送することができる。適切な場合には任意の他のガスを利用してもよい。
【0148】
ヒートシンクの一実施態様は、高温高圧蒸気である。この蒸気は例えば、圧縮機又は発電機に動力を供給する蒸気タービンへ熱エネルギーを送達することができる。低温ヒートシンクの一実施態様は、地域暖房である。ここでは、高い熱エネルギー要件が、再生可能電気の利用可能性と一致しないことがしばしばある。再生可能電気によって生産された熱エネルギーの熱エネルギー貯蔵は、既存のシステムに対する有益な改善策となる。
【0149】
顕熱高温蓄熱(SHTHS)の場合、例えば液体又は固体蓄熱媒体(例えば砂、加圧水、溶融塩、油、セラミック、岩)の温度が高められ、蓄熱媒体へ熱エネルギーを付与する。この熱エネルギーは続いて、100℃を上回る温度を必要とする高温用途において使用するために放出されてよい。媒体中に貯蔵された熱エネルギーの量は、媒体の密度、比熱、体積、及び温度変化に対して比例する。
【0150】
いくつかの実施態様では、回転装置100は、加熱されたガスを熱エネルギー貯蔵媒体上へ吹き付けて、熱エネルギー貯蔵媒体への熱エネルギー転移を引き起こすことにより、熱エネルギー貯蔵媒体(図1の符号101、図4の符号408)のための加熱器として作用することができる。一実施態様では、回転装置100は、熱エネルギーを高温の岩、砂、又はコンクリート内に転移して貯蔵するために熱エネルギーを生成するように形成されている。いくつかの実施態様では、回転装置100は再生可能源(風、太陽)から生産された電気を投入エネルギーとして利用する。これにより、特にピーク電気需要時間中にその電気の使用が商業的に実現可能になる。本明細書中に記載された回転装置を利用することにより、(高温)熱エネルギー貯蔵は、低コストの間欠的な再生可能電気と、例えばプロセス産業用途によって必要とされる持続的な熱エネルギー流との間のバッファとして作用することができる。
【0151】
いくつかの実施態様では、回転装置100は、(最大1700℃の)高い温度に到達する流体を生成することができる。このことは、前記蓄熱媒体の比容積当たり、より大量の熱エネルギーを蓄熱媒体へ転移することを可能にする。続いて、熱エネルギーはより高い温度で回収することができる。より多くの過剰の熱エネルギーを生成して貯蔵することにより、高圧蒸気生成又は蒸気タービンを介して熱エネルギーの電気への変換のような用途が、より達成しやすくなり、また達成するためのコスト効果が高くなる。
【0152】
いくつかの実施態様では、回転装置100は、上記熱エネルギーの増大とともに、回転装置に入るガス状媒体の圧力を高めるようにさらに形成されている。高温且つ高圧のガス状媒体は、蓄熱材料のより大きいサイズ又はより高密度の床、層、又は体積を、より容易に通過する。
【0153】
いくつかの実施態様では、回転装置100は、前記ガス状媒体がその熱エネルギーを蓄熱媒体中へ放出した後、ガス状加熱媒体(熱転移媒体)へ熱エネルギーを付与するように形成されている。ガス状媒体のリサイクルは、システムの熱効率を相応に改善する。(装置100内で加熱された)ガス状熱転移媒体から蓄熱媒体への熱エネルギー転移はしばしば不完全であるので、リサイクルされたガス状熱転移媒体は、残留熱エネルギーを含有し、したがって一度使用されたこのような熱担体中に貯蔵された熱の回収が可能になる。リサイクルされたガスを加熱するために必要なエネルギー量を相応に低減することができる。
【0154】
いくつかの実施態様では、回転装置100は、再生電気発電の速度、及び全体的な電気エネルギー需要に応じて、熱エネルギー生成、例えば高温熱生成のために再生可能電気を選択的に利用するように形成されている。このことは、再生可能エネルギーがそのピーク生産速度にある時間中に、すなわち利用可能性が最高であり且つ電気料金が最低である時間中に、回転装置が再生可能電気を優先的に用いることを可能にする。このような選択的な利用を可能にすることにより、再生エネルギー生産の経済的利点を最大化しつつ、高温熱生成を具体的用途に必要なレベルに維持することができる。
【0155】
回転装置100によって生産されたガス状熱転移媒体から蓄熱媒体への、そして蓄熱媒体からヒートシンク、例えば蒸気への熱エネルギー転移プロセスは、蓄熱媒体及びその相の性質に応じて異なる。蓄熱媒体が可動性媒体、例えば流体(例えば溶融塩)、又は流動砂床である場合には、蓄熱媒体は、高温貯蔵部と低温貯蔵部とに分割することができる。(装置100から流れる)ガス状熱転移媒体と流体蓄熱材料との間の熱エネルギー交換中、流体蓄熱媒体は低温貯蔵部から高温貯蔵部へ流れ、そして高温貯蔵部と低温貯蔵部との間に位置決めされた直接熱交換器又は間接熱交換器内で加熱される。熱エネルギーの放出/回収中には、蓄熱媒体は、高温貯蔵部から低温貯蔵部へ流れ、そしてその熱を直接熱交換器又は間接熱交換器内のヒートシンクへ転移する。蓄熱媒体が不動性媒体、例えばコンクリート、固定砂床、又は岩床である場合には、熱源から、そしてヒートシンクへの熱エネルギー転移は、床内に浸漬された熱転移管内で行うか、又はそれぞれ熱装入相及び熱放出相において高温ガス及び低温ガスが床を直接通過するようにすることによって行うことができる。
【0156】
図5~8は、可動性(流体)蓄熱媒体及び不動性蓄熱媒体に対応する熱装入サイクル及び熱放出サイクルを示す。
【0157】
図5は、模範的な熱エネルギー生産・貯蔵サイクル500を示している。エネルギー源502は回転装置100に電気を提供する。いくつかの実施態様では、エネルギー源502は再生可能エネルギー源である。いくつかの実施態様では、エネルギー源502は、複数の源からの電気エネルギー、例えば再生可能エネルギー及び地域送電網からの電気とから成っている。上記のように、熱エネルギーを生成する際に依存される再生可能エネルギー量は、再生可能エネルギー生産の速度及び効率に応じて変動してよい。したがって、エネルギー源502は、種々の電気エネルギー源を種々の比で含んでよく、また二次的なファクタ、例えば時刻、地域送電網の状況的なエネルギー需要、(太陽エネルギー及び/又は風力エネルギーが利用可能な状況における)天候に基づいて変化してよい。
【0158】
エネルギー源502によって動力供給された回転装置100は、ガス状加熱媒体504と、リサイクルされたガス状加熱媒体506とを受容する。いくつかの実施態様では、ガス状加熱媒体は空気又は(水)蒸気である。他の実施態様では、ガス状加熱媒体は、熱エネルギー生成プロセスからの排ガス又はリサイクルガスである。上述の、回転装置100内で実施された加熱動作を通して、加熱されたガス状媒体508が生産される。加熱されたガス状媒体508は熱担体又は熱転移流体とさらに呼ばれる。いくつかの実施態様では、加熱されたガス状媒体508の温度は約1000℃ではあるものの、加熱されたガス状媒体の温度は、利用可能なエネルギー源、リサイクルされたガス状媒体の温度、具体的な用途のニーズ、又はこれに類するものに応じて変化してよい。
【0159】
加熱されたガス状媒体508は熱交換器510へ移る。熱交換器510は、低温貯蔵部512及び高温貯蔵部514に熱的に接続されており、そして流体蓄熱媒体は、低温貯蔵部512から熱交換器510を介して高温貯蔵部514へ流れる。こうして、加熱サイクル中には、ガス状加熱媒体508の熱エネルギーは、熱交換器510を通して、流体蓄熱媒体512、514へ転移される。いくつかの実施態様では、熱交換器510はコンベンショナルなラジエータ様式の交換器であり、流体蓄熱媒体は大きい表面積を有する管内にあり、ガス状加熱媒体はこれらの管を通過する。
【0160】
ガス状加熱媒体から流体蓄熱媒体への熱エネルギー転移時には、低温貯蔵部512の温度は例えば約500℃であってよく、そして高温貯蔵部514の温度は例えば約800℃であってよい。熱エネルギー転移後、加熱されたガス状媒体は、低減された温度、例えば約900℃を有する熱交換器510を出、そして回転装置100へリサイクルされる。
【0161】
図6は、可動性(流体)蓄熱媒体を有する高温熱エネルギー貯蔵システムのための模範的な熱エネルギー放出サイクル600を示している。いくつかの実施態様、例えば図6に示された実施態様では、放出サイクル600は、図5に示された熱エネルギー生産・貯蔵プロセス500の後に熱エネルギーの放出を含んでよい。供給水602が、熱交換器604を通過させられる。供給水602は、任意の適宜の水源であってよい。模範的な実施態様では、供給水602は、約60バール~約100バールの圧力と、約270℃の温度とを有するボイラ供給水である。低温貯蔵部512と高温貯蔵部514との間には、熱交換器604が位置決めされており、熱交換器604は図5の熱交換器510と同様に動作する。供給水602が熱交換器604を通過するのに伴って、高温貯蔵部514内の流体蓄熱媒体中に貯蔵された熱エネルギーが供給水へ転移され、これを気化する。過熱された蒸気606は熱交換器を出る。模範的実施態様では、過熱された蒸気606は、約60バール~約100バールの圧力と、約450℃の温度とを有する。
【0162】
図5及び6において、高温貯蔵部及び低温貯蔵部は、例えば溶融塩、流動砂、又は任意の他の適宜の蓄熱材料の形態を成していてよい。提示された例では、蓄熱区分512及び514は集合的に蓄熱ユニット101(図1)を表す。
【0163】
図7は、不動性蓄熱媒体を利用した、模範的な熱エネルギー生産・貯蔵サイクル700を示している。エネルギー源702は回転装置100に電気を提供する。いくつかの実施態様では、エネルギー源702は再生可能エネルギー源である。いくつかの実施態様では、エネルギー源702は、複数の源からの電気エネルギー、例えば再生可能エネルギー及び地域送電網からの電気とから成っている。上記のように、熱エネルギーを生成する際に依存される再生可能エネルギー量は、再生可能エネルギー生産の速度及び効率に応じて変動してよい。したがって、エネルギー源702は、種々の電気エネルギー源を種々の比で含んでよく、また二次的なファクタ、例えば時刻、地域送電網の状況的なエネルギー需要、(太陽エネルギー及び/又は風力エネルギーが利用可能な状況における)天候に基づいて変化してよい。
【0164】
図7に示された実施態様では、エネルギー源702によって動力供給された回転装置100は、リサイクルされたガス状加熱媒体704と、リサイクルされたガス状加熱媒体704とを受容する。いくつかの実施態様では、ガス状加熱媒体は空気である。他の実施態様では、ガス状加熱媒体は、熱エネルギー生成プロセスからの排ガス又はリサイクルガスである。上述の、回転装置100内で実施された加熱動作を通して、加熱されたガス状媒体706が生産される。いくつかの実施態様では、加熱されたガス状媒体706の温度は約1000℃ではあるものの、加熱されたガス状媒体の温度は、利用可能なエネルギー源、リサイクルされたガス状媒体の温度、具体的な用途のニーズ、又はこれに類するものに応じて変化してよい。
【0165】
加熱されたガス状媒体706は不動性蓄熱媒体708へ移る。不動性蓄熱媒体708は、図5及び6に示された流体蓄熱媒体とは異なり、流動不能であることを特徴とする。不動性蓄熱媒体708は、加熱されたガス状媒体706によって加熱される。いくつかの実施態様では、不動性蓄熱媒体708は、不動性蓄熱媒体の体積全体を通して分配された熱転移配管網を含み、加熱されたガス状媒体からの効率的な熱エネルギー転移を可能にする。他の実施態様では、不動性蓄熱媒体は多孔質であるので、加熱されたガス状媒体は、不動性蓄熱媒体自体の上を直接に流れてよい。
【0166】
加熱されたガス状媒体706から不動性蓄熱媒体708への熱エネルギーが転移されると、不動性蓄熱媒体708は例えば約500℃から約800℃へ温度変化してよい。熱エネルギー転移後、リサイクルされたガス状媒体704は、低減された温度、例えば約900℃を有する不動性蓄熱媒体708を出、そして回転装置100へリサイクルされる。
【0167】
図8は、不動性蓄熱媒体を有する高温熱エネルギー貯蔵システムのための模範的な熱エネルギー放出サイクル800を示している。いくつかの実施態様、例えば図8に示された実施態様では、放出サイクル800は、図7に示された熱エネルギー生産・貯蔵プロセス700の後に熱エネルギーの放出を含んでよい。供給水802が、不動性蓄熱媒体804を通過させられる。供給水802は、任意の適宜の水源であってよい。模範的な実施態様では、供給水802は、約60バール~約100バールの圧力と、約270℃の温度とを有するボイラ供給水である。不動性蓄熱媒体804は、図7の不動性蓄熱媒体708と同様に動作する。供給水802が不動性蓄熱媒体708を横切るか又は通過するのに伴って、不動性蓄熱媒体内に貯蔵された熱エネルギーが供給水へ転移され、これを気化する。過熱された蒸気806は不動性蓄熱媒体を出る。模範的実施態様では、過熱された蒸気806は、約60バール~約100バールの圧力と、約450℃の温度とを有する。いくつかの実施態様では、熱エネルギー転移の結果として、不動性蓄熱媒体は約800℃から約500℃まで温度変化させられる。
【0168】
図7及び8において、不動性蓄熱媒体は、例えば砂床、岩床、コンクリート、又は任意の他の適宜の蓄熱材料の形態を成していてよい。提示された例では、蓄熱区分708(図7)及び804(図8)は蓄熱ユニット101(図1)を表す。
【0169】
当業者には明らかなように、技術の発展とともに、本発明の基本的な考えを種々の方法で実現し組み合わせることができる。本発明及びその実施態様はこのように上記実施例に限定されることはなく、これらは添付の特許請求の範囲内で広く変化し得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】