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特表2024-540856植物生物刺激剤としての有機硫黄化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】植物生物刺激剤としての有機硫黄化合物
(51)【国際特許分類】
   A01N 41/10 20060101AFI20241029BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241029BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20241029BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241029BHJP
   C05F 11/10 20060101ALI20241029BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A01N41/10 Z
A01P21/00
A01N25/30
A01N25/04 101
C05F11/10
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521758
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 NL2022050576
(87)【国際公開番号】W WO2023059201
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2021/050610
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524133077
【氏名又は名称】クロップ ヘルス ビジョン ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】522360275
【氏名又は名称】エーエイチブイ インターナショナル ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】デ ボーア,レックス
(72)【発明者】
【氏名】グリムベルゲン,アルド ヤン
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
4H061
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
4H011AB03
4H011BA05
4H011BB07
4H011DA16
4H061AA01
4H061AA04
4H061DD11
4H061EE28
4H061JJ06
4H061KK09
4H061LL25
4H061LL26
(57)【要約】
本開示は、有機硫黄含有組成物、特には、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO:di-n-propyl thiosulfonate)及びジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS:di-n-propyl thiosulfinate)、ジメチルチオスルホナート、ジフェニルチオスルホナート、に関する。そのような組成物は、植物の為の生物刺激剤として有用である。特には、そのような組成物は、養分利用効率の向上、非生物的ストレスに対する耐性の向上、及び/又は品質特性の向上を結果としてもたらしうる。前記有機硫黄化合物を含む組成物はまた、農業使用の為に提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式Iに従う化合物又は下記の式Iに従う化合物を含む組成物の、植物の為の生物刺激剤としての使用、ここで、式Iは、
【化1】
であり、
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択される。
【請求項2】
生物刺激剤としての前記使用が、
a)養分利用効率、b)非生物的ストレスに対する耐性、及び/又はc)品質特性
のうちの1以上を向上させる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
下記の式Iに従う化合物又は下記の式Iに従う化合物を含む組成物を植物に提供することを含む方法
【化2】
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択される。
【請求項4】
前記化合物又は前記組成物が、前記植物の作物周期の間に少なくとも6回、前記植物に提供され、及び/又は前記組成物が、前記植物の作物周期の間に4~21日毎に前記植物に提供される、請求項1又は2に記載の使用又は方法。
【請求項5】
式Iに従う前記化合物が、0.01kg/ha~100kg/haの量で提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
式Iに従う前記化合物が、0.5mg/L~150mg/Lの量で前記植物に提供される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項7】
前記植物が、クレードの有胚植物類(Embryophyta)又はクレードの被子植物類(Angiospermae)に属し、好ましくは、ここで、前記植物が、ファレノプシス属(Phalaenopsis)、シュンラン属(Cymbidium)、キク属(Chrysanthenum)、バラ属(Rosa)、マメ科(Fabaceae)、アブラナ属(Brassica)、カボチャ属(Cucurbita)、ナス科(Solanaceae)、エンドウ属(Pisum)、ブドウ属(Vitis)、ワクシニア(Vaccinia)、及びアキノノゲシ属(Lactuca)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項8】
前記化合物又は前記組成物が、前記植物に、前記植物の種子に、又は前記植物若しくは前記種子の土壌に直接施与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項9】
前記化合物又は前記組成物が、点滴灌漑を介して施与される、請求項8に記載の使用又は方法。
【請求項10】
前記使用又は方法が、前記植物に、アミノ酸ベースの生物刺激剤を提供することを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項11】
下記の式Iに従う化合物と乳化剤とを含む農業用組成物:
【化3】
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択される。
【請求項12】
R1及びR2は互いに独立して、C1~6アルキル及びフェニルから選択され;
ここで、好ましくは、R1及びR2は互いに独立して、メチル、フェニル及びn-プロピルから選択される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項13】
式Iに従う前記化合物が、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、ジメチルチオスルホナート、及びジフェニルチオスルホナートからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項14】
式Iに従う前記化合物が、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)である、請求項13に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項15】
前記組成物が、肥料、殺虫剤、湿潤剤、抗菌化合物、殺菌剤、キレート化合物、芳香族化合物、及び/又は追加の生物刺激剤を更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項16】
前記組成物が乳化剤を含む、請求項1~10又は12~15のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項17】
前記組成物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールリシノール酸グリセリル、ユカ抽出物及びツイーン(Tween)のうちの1以上から選択される乳化剤を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項18】
前記組成物が、アミノ酸ベースの生物刺激剤を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【請求項19】
前記組成物が、遊離アミノ酸及びペプチドを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機硫黄含有組成物、特には、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO:di-n-propyl thiosulfonate)及びジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS:di-n-propyl thiosulfinate)、ジメチルチオスルホナート、ジフェニルチオスルホナート並びにジ-n-プロピルジスルフィド、に関する。そのような組成物は、植物の為の生物刺激剤として有用である。特には、そのような組成物は、養分利用効率の向上、非生物的ストレス耐性の向上、及び/又は品質特性(quality characteristics)の向上を結果としてもたらしうる。該有機硫黄化合物を含む組成物はまた、農業使用の為に提供される。
【背景技術】
【0002】
植物は、所望の特性、例えば高収量又は高品質、を得る為に、理想的には最適な条件下で栽培される。
【0003】
生育条件(growth conditions)は、根支持体(root substrate)、施肥、散水、排水、光の供給、温度、空気の動き、空気の湿度及び害虫駆除の観点から最適化されうる。園芸における作物及び植物の生産の間、ほとんどの前述された生育条件が厳密な管理下で維持される。しかしながら、制御システムが最適なパラメータを正確な制御下で維持することができない状況、例えば気象条件における急激な変化、がある。例としては、晴天と曇天の期間が交互に訪れ、その結果、短時間の日照と高温が生じたり、又はその逆が生じたりする。急激な温度変化、例えば、暖房の増加と湿度の低下を伴う寒い夜、により、結果として植物による蒸発率が高くなる。長い期間の曇天により、光合成速度が低下し、且つ湿度が高くなる。長時間の日光により、過剰な熱と低湿度が発生し、植物による蒸発が多くなる。
【0004】
好ましい生育期間の間であっても、植物が十分な水分と養分とを取り込むことができず、養分と水分とが過剰に存在する状況に比べて生育速度が遅くなるような生育条件が発生する場合がある。
【0005】
植物栄養素とは、植物の生育(growth)及び/又は植物の代謝の為に必要な化学元素及び化合物である。例えば、維管束植物の生育及び発達(development)の為には、下記の元素、すなわち、炭素原子(C)、水素原子(H)、酸素原子(O)、窒素原子(N)、リン原子(P)、カリウム原子(K)、硫黄原子(S)、カルシウム原子(Ca)、マグネシウム原子(Mg)、ホウ素原子(B)、塩素原子(Cl)、銅原子(Cu)、鉄原子(Fe)、マンガン原子(Mn)、モリブデン原子(Mo)、ニッケル原子(Ni)及び亜鉛原子(Zn)が必要である。多くの維管束植物はまた、ケイ酸原子(Si)を必要とする。
【0006】
農業において、窒素原子(N)、リン原子(P)、カリウム原子(K)、硫黄原子(S)、カルシウム原子(Ca)、マグネシウム原子(Mg)、ホウ素原子(B)、塩素原子(Cl)、銅原子(Cu)、鉄原子(Fe)、マンガン原子(Mn)、モリブデン原子(Mo)、ニッケル原子(Ni)、亜鉛原子(Zn)及びケイ酸原子(Si)が一般に肥料として供給される。これらの元素は、比較的純粋な塩として、又は複合有機物質、例えば堆肥、植物廃棄物、牛、鶏及び豚等の(部分的に)分解された動物の糞、として供給されることができ、栄養素の制限を防ぐ為に、通常は過剰に供給される。
【0007】
露地における農業の間に、植物は温室よりも変わりやすい条件下で栽培されることは明らかである。温度、日照及び根支持体/空気湿度だけでなく、風、霜、塩分、洪水及び干ばつも重要な非生物的要因である。記載された条件は、作物にとって非生物学的ストレスを結果としてもたらし、収穫量の低下及び作物の品質パラメータの悪化を結果としてもたらす。非生物的ストレスとは、特定の環境における生きている生物に対する非生物的要因の悪影響として定義される。一部の作物や観賞用植物は、管理された温室条件下であっても、非生物的ストレスに対する耐性が低いことは明らかである。これは、種(species)、亜種雑種(subspecies hybrid)、変種(variant)又は品種(cultivar)に強く依存する。
【0008】
近年、植物の特性を向上する為の手段として、植物生物刺激剤の使用が注目されてきている。Du Jardin,P (2012) “The science of plant biostimulants-a bibliographic analysis.Ad hoc Study Report to the European Commission DG ENTR;2012”によると、植物生物刺激剤とは、栄養素の含有量に関係なく、栄養効率、非生物的ストレス耐性及び/又は作物の品質形質(quality trait)を高めることを目的として植物に施与される何らかの物質又は微生物である。生物刺激剤は、生育、発達及び/又はストレス反応に潜在的な利益をもたらす方法で、植物の生理学的プロセスを変更する為の能力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の1つの目的は、農業での使用の為に適した植物生物刺激剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、下記の好ましい実施態様を提供する。
【0011】
1.下記の式Iに従う化合物又は下記の式Iに従う化合物を含む組成物の、植物の為の生物刺激剤としての使用、ここで、式Iは、
【化1】
であり、
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、好ましくは、ここで、式Iに従う該化合物は、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、ジ-n-プロピルジスルフィド、ジメチルチオスルホナート、又はジフェニルチオスルホナートである。
【0012】
2.下記の式Iに従う化合物又は下記の式Iに従う化合物を含む組成物を植物に提供することを含む方法
【化2】
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、好ましくは、ここで、式Iに従う該化合物は、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、ジ-n-プロピルジスルフィド、ジメチルチオスルホナート、又はジフェニルチオスルホナートである。好ましくは、該方法は、植物の生育速度、植物の発達、植物の収量及び/又は植物の収穫を増加させる為のものである。該方法はまた、植物の活力を増加させうる。好ましくは、該方法は、養分利用効率を増加させる為のものであり、生物学的ストレスに対する植物の耐性を増加させる為のものであり、植物の品質特性を向上させる為のものであり、及び/又は植物の為に土壌中に又は根圏中に保持される養分の利用可能性を増加させる為のものである。
【0013】
3.R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル及び置換されていてもよいアリールからなる群から選択される、項1又は2の実施態様に記載の使用又は方法。
【0014】
4.R1及びR2は互いに独立して、C1~6アルキル及びフェニルから選択され;ここで、該フェニル基は、C1~3アルキル又はC1~3アルコキシで置換されていてもよい;
ここで、好ましくは、R1及びR2は互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、フェニル、p-トリル及び4-メトキシフェニルから選択される、
項1~3の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0015】
5.R1及びR2が同一である、項1~4の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0016】
6.式Iに従う該化合物が、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、S-メチルメタンチオスルホナート、S-フェニルベンゼンチオスルホナート、ジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS)、メチルメタンチオスルフィナート、ブチルブタンチオスルフィナート、メチルプロペンチオスルフィナート、ジ-n-プロピルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ-n-ブチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジ-p-トリルジスルフィド、及びビス(4-メトキシフェニル)ジスルフィドからなる群から選択され、
ここで好ましくは、式Iに従う該化合物が、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)又はジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS)である、
項1~5の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0017】
7.該組成物中の有機硫黄化合物の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、が式Iに従う化合物から選択される、項1~6の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0018】
8.該組成物がジアリルチオスルフィナート(diallyl thiosulfinate)を含む場合に、ジアリルチオスルフィナートに対する化合物又は式Iに従う化合物の重量比が、0.1超、好ましくは1超、であり、及び、
ここで、該組成物がジアリルジスルフィドを含む場合に、ジアリルジスルフィドに対する化合物、又は式Iに従う化合物、の重量比が、0.1超、好ましくは1超、である、
項1~7の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0019】
9.生物刺激剤としての該使用が、
a)養分利用効率、b)非生物的ストレスに対する耐性、c)品質特性、及びd)土壌(soil)において又は根圏において保持される閉じこめられた養分(confined nutrients)の利用可能性
のうちの1以上を向上させる、項1~8の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0020】
10.該組成物がジアリルチオスルフィナートを本質的に含まない、項1~9の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0021】
11.該組成物がジアリルジスルフィドを本質的に含まない、項1~10の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0022】
12.該組成物が、式Iに従う化合物の少なくとも0.5mg/Lを含む、項1~11の実施態様のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【0023】
13.該植物が、クレードの有胚植物類(Embryophyta)又はクレードの被子植物類(Angiospermae)に属する、項1~12の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0024】
14.該植物が、ファレノプシス属(Phalaenopsis)、キク属(Chrysanthenum)、トマト(Solanum lycopersicum)及びレタス(Lactuca sativa)からなる群より選択される、項1~13の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0025】
15.該組成物が、肥料、殺虫剤、湿潤剤、抗菌化合物、殺菌剤、キレート化合物、芳香族化合物、及び/又は追加の生物刺激剤を更に含む、項1~14の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0026】
16.該化合物又は該組成物が、該植物に、該植物の種子に、又は該植物若しくは該種子の土壌に直接施与される、項1~15の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0027】
17.該化合物又は該組成物が、点滴灌漑(drip irrigation)を介して施与される、項16の実施態様に記載の使用又は方法。
【0028】
18.下記の式Iに従う化合物を含む組成物を、植物に、好ましくは灌漑(irrigation)を介して、提供することを含む方法:
【化3】
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、好ましくはここで、式Iに従う該化合物が、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、ジ-n-プロピルジスルフィド、ジメチルチオスルホナート、又はジフェニルチオスルホナートであり、
ここで、該組成物が、該植物の作物周期の間に少なくとも6回、該植物に提供され、及び/又は該組成物が、該植物の作物周期の間に4~21日毎に該植物に提供される。
【0029】
19.該組成物が乳化剤を含む、項1~18の実施態様のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【0030】
20.該組成物が、アミノ酸ベースの生物刺激剤を含む、項1~19の実施態様のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【0031】
21.該組成物が、遊離アミノ酸及びペプチドを含む、項1~20の実施態様のいずれか1項に記載の使用、方法又は組成物。
【0032】
22.該使用又は方法が、アミノ酸ベースの生物刺激剤を該植物に提供することを更に含む、項1~19の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0033】
23.該アミノ酸ベースの生物刺激剤が、8~15%(w/w)の遊離アミノ酸及び45~55%の付着アミノ酸を含む、項22の実施態様に記載の使用又は方法。
【0034】
24.式Iに従う化合物を含む該組成物とアミノ酸ベースの生物刺激剤とが、同じ作物周期内に提供される、項22又は23の実施態様に記載の使用又は方法。
【0035】
25.アミノ酸ベースの生物刺激剤が該植物に提供される少なくとも24時間前又は24時間後に、式Iに従う化合物を含む該組成物が提供される、項22~24の実施態様のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、植物生物刺激剤として使用する為の有機硫黄化合物と、植物の生育速度、植物の発達、植物の収量及び収穫、並びに本明細書において記載されている他の植物特性を増大させる為の方法とを提供する。
【0037】
幾つかの実施態様において、該有機硫黄化合物は、下記の式Iに従う化合物である:
【化4】
ここで、nは2であり;
ここで、一方のXは-S-であり、及び他方のXは、-S-、-S(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され;
並びに、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、及び置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択される。
【0038】
好ましい実施態様において、式Iに従う該化合物は、
【化5】
でない。
【0039】
好ましい実施態様において、式Iに従う該化合物は、
【化6】
でない。
【0040】
式Iに従う該化合物は、本明細書において、「有機硫黄化合物」(organosulfur compound)又は「生物刺激性有機硫黄化合物」(biostimulant organosulfur compound)として言及される。
【0041】
好ましくは、R1及びR2は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル及び置換されていてもよいアリールからなる群から選択される。より好ましくは、R1及びR2は互いに独立して、C1~6アルキル及びフェニルから選択され、ここで、該フェニル基は、C1~3アルキル又はC1~3アルコキシで置換されていてもよい。最も好ましくは、R1及びR2は互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、フェニル、p-トリル及び4-メトキシフェニルから選択される。
【0042】
好ましい実施態様において、R1及びR2は、同一である。
【0043】
好ましい実施態様において、各Xは-S-である。好ましい実施態様において、一方のXは-S-であり、及び他方のXは-S(O)-である。他の好ましい実施態様において、一方のXは-S-であり、及び他方のXは-S(O)2-である。
【0044】
好ましくは、式Iの該化合物は、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)、S-メチルメタンチオスルホナート、S-フェニルベンゼンチオスルホナート、ジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS)、メチルメタンチオスルフィナート、ブチルブタンチオスルフィナート、メチルプロペンチオスルフィナート、ジ-n-プロピルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ-n-ブチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジ-p-トリルジスルフィド、及びビス(4-メトキシフェニル)ジスルフィドからなる群から選択される。より好ましくは、式Iに従う該化合物は、ジ-n-プロピルチオスルホナート(PTSO)又はジ-n-プロピルチオスルフィナート(PTS)である。
【0045】
式Iの好ましい実施態様において、nは2であり、並びに一方のXは-S-であり、及び他方のXは-S(O)2-であり;並びに、R1及びR2は互いに独立して、C1~6アルキル及びフェニルから選択され、好ましくは、メチル、フェニル及びn-プロピルからなる群から選択される。
【0046】
好ましい実施態様において、式Iの該化合物は、プロピル-プロパンチオスルホナート(PTSO:propyl-propane thiosulfonate)であり、ジ-n-プロピルチオスルホナートとしてまた言及される。PTSOは、下記の構造を有する。
【化7】
【0047】
好ましい実施態様において、式Iの該化合物は、プロピル-プロパン-チオスルフィナート(PTS:propyl-propane-thiosulfinate)であり、ジ-n-プロピルチオスルフィナートとしてまた言及される。PTSは、下記の構造を有する。
【化8】
【0048】
好ましい実施態様において、式Iの該化合物は、ジメチルチオスルホナートである。
【0049】
好ましい実施態様において、式Iの該化合物は、ジフェニルチオスルホナートである。
【0050】
PTSO及びPTSが好ましい。本開示の化合物は、生物刺激剤として、及び本明細書において記載された方法において、一緒に又は個別に使用されうる。
【0051】
本明細書において使用される場合に、「アルキル」は、飽和脂肪族ヒドロカルビル基に関する。特に断らない限り、アルキル基は直鎖状又は分枝状であることができる。好ましくは、アルキル基は直鎖状である。本明細書において使用される場合に、アルキル基は、置換されていることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、アルキル基は、置換されていない。好ましい実施態様において、式Iにおいて、アルキルは、C1~6アルキル、より好ましくはC1~4アルキル、である。
【0052】
本明細書において使用される場合に、「アリール」は、6~24個の炭素原子、より好ましくは6~12個の炭素原子、を含む芳香族炭化水素環系を云い、並びに単環式構造及び多環式構造を含みうる。該アリール基が多環式構造である場合に、それは好ましくは二環式構造である。任意的に、該アリール基は、本明細書において更に特定されている1以上の置換基によって置換されていてもよい。好ましくは、該アリール基はメチル基又はメトキシ基で置換されている。該アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。最も好ましくは、アリール基はフェニルである。
【0053】
本明細書において使用される場合に、「アルケニル」は、1以上の炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族ヒドロカルビル基に関する。特に断らない限り、アルケニル基は、直鎖状又は分枝状であることができる。好ましくは、アルケニル基は直鎖状である。本明細書で使用される場合に、アルケニル基は置換されることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、アルケニル基は置換されていない。好ましい実施態様において、式Iにおいて、アルケニルは、C2~6アルケニル、より好ましくはC2~4アルケニル、である。
【0054】
本明細書において使用される場合に、「アルキニル」は、1以上の炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族ヒドロカルビル基に関する。特に断らない限り、アルキニル基は直鎖状又は分枝状であることができる。好ましくは、アルキニル基は直鎖状である。本明細書において使用される場合に、アルキニル基は置換されることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、アルキニル基は置換されていない。好ましい実施態様において、式Iにおいて、アルキニルは、C2~6アルキニル、より好ましくはC2~4アルキニル、である。
【0055】
本明細書において使用される場合に、「シクロアルキル」は、環状飽和脂肪族ヒドロカルビル基を云う。シクロアルキル基は、置換されることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、シクロアルキル基は、置換されていない。好ましい実施態様において、式Iにおいて、シクロアルキルは、C3~6シクロアルキル、より好ましくはC3~5シクロアルキル、である。
【0056】
本明細書において使用される場合に、「ヘテロアルキル」は、1以上のヘテロ原子を含む飽和脂肪族ヒドロカルビル基に関する。特に断らない限り、ヘテロアルキル基は直鎖状又は分枝状であることができる。好ましくは、ヘテロアルキル基は直鎖状である。本明細書において使用される場合に、ヘテロアルキル基は、置換されていることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、ヘテロアルキル基は置換されていない。好ましい実施態様において、式Iにおいて、ヘテロアルキルは、C1~6ヘテロアルキルであり、より好ましくはC1~4ヘテロアルキルである。好ましくは、ヘテロアルキル基は、O、N及びSからなる群より選択される1以上のヘテロ原子を含み、より好ましくは、ヘテロアルキル基は、2以下のヘテロ原子、最も好ましくは1つのヘテロ原子、を含む。好ましいヘテロアルキル基の例は、アルコキシ基(例えば、メトキシ基及びエトキシ基)並びにエーテルを包含する。
【0057】
本明細書において使用される場合に、「ヘテロシクロアルキル」は、1以上のヘテロ原子を含む環状飽和脂肪族ヒドロカルビル基を云う。ヘテロシクロアルキル基は、置換されていることができ又は置換されていないことができる。好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は置換されていないことができる。好ましい実施態様において、式Iにおいて、ヘテロシクロアルキルは、C1~5ヘテロシクロアルキル、より好ましくはC2~4ヘテロシクロアルキル、である。好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は、2以下のヘテロ原子、より好ましくは1つのヘテロ原子、を含む5員又は6員環構造である。好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は、O、N及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を含む。
【0058】
本明細書において使用される場合に、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子を含む芳香族環系を云う。好ましくは、ヘテロアリール基は、少なくとも2個の炭素原子(すなわち、少なくともC2)と1個以上のヘテロ原子N、O又はSとを含む。好ましくは、ヘテロアリール基は、多くとも5個の炭素原子を含む。好ましくは、ヘテロアリール基は、N、O及びSからなる群から選択される2以下のヘテロ原子を含む。好ましい実施態様において、ヘテロアリール基は、5員又は6員環構造である。任意的に、ヘテロアリール基は、本明細書において更に特定される1以上の置換基によって置換されていてもよい。好ましくは、該ヘテロアリール基は置換されていない。好適なヘテロアリール基の例は、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピロリル、フラニル、トリアゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、チエニル、ホスホリル及びオキサゾリルを包含する。
【0059】
本明細書において使用される場合に、「置換された」は、基が1以上の置換基を含むことを示す。好ましくは、該置換基は互いに独立して、ハロゲン、C1~3アルキル、-C(O)OH、-C(O)NH2、-OH、=O、C1~3アルコキシ、-NH2、-NH-C1~3アルキル、-NHC(O)-C1~3アルキル、-NO2、-SO3H、及びCF3からなる群から選択される。好ましくは、ハロゲンは、-Cl、-F、-Br、及び-Iからなる群から選択される。好ましい実施態様において、本明細書において開示されているような基は、3個以下の置換基、より好ましくは2個以下の置換基、最も好ましくは1個以下の置換基、を含む。
【0060】
数多くの有機硫黄化合物が、アリウム科(Allium family)に属する植物からの抽出物において、同定されている。プロピルプロパンチオスフィネート(PTS:propyl-propane-thiosufinate)は、アリウム科に属する植物、特には、アリウム・セパ(Allium cepa)(タマネギ(onion))、アリウム・アンペロプラサム(Allium ampeloprasum)(リーキ(leek))、アリウム・シェノプラサム(Allium schoenoprasum)(チャイブ(chive))、及びアリウム・チネンセ(Allium chinense)(ラッキョ(Chinese onion))中に含まれる天然化合物である。プロピイン(Propiin)は、アリイナーゼ(alliinase)によってプロピルスルフェン酸(propylsulfenic acid)に加水分解され、プロピルスルフェン酸(propylsulfenic acid)が凝縮して水が失われてPTSを生成する(J.Chromatogr.A 1112 (2006) 3~22)。PTSとさらに反応することにより、PTSOの生成を結果として生じる。PTSの為の最良の植物供給源のうちの1つ、アリウム・シェノプラサム(Allium schoenoprasum)(チャイブ(chive))である(Rose et al.Nat.Prod.Rep.,2005,22,351~368の表3を参照)。PTSとは対照的に、PTSOはタマネギ中に存在しない。PTSOは「アリウム由来」として文献において記載されているが、本発明者等は、タマネギ抽出物からのPTSOの測定を記載した如何なる文献も知らない。実施例10は、タマネギ油、タマネギ抽出物、ニンニク油、又はニンニク抽出物中にPTSOが検出可能な限界値で存在しないことを実証している。
【0061】
アリウム・サティヴム(Allium sativum)(ニンニク(garlic))には、検出できないレベルのPTSが含まれているが、有意な量のアリシン(すなわち、ジアリルチオスルフィナート(diallyl thiosulfinate))が含まれていることが報告されており、アリウム・セパ(Allium cepa)(タマネギ(onion))、アリウム アスカロニカム(Allium ascalonicum)(エシャロット(shallot))又はアリウム・シェノプラサム(Allium schoenoprasum)(チャイブ(chive))の抽出物において検出されることができない(Rose et al.)。アリシンは、生のニンニク組織が損傷を受けることに応じて、酵素アリイナーゼによって触媒される反応で非タンパク原性アミノ酸であるアリイン(S-アリルシステインスルホキシド)から、少量のメチルアリルチオスルフィナート(methyl allyl thiosulfinate)と共に主要化合物として生成される(Molecule,19,2014,12591~12618及びJ.Chromatogr.A 1112 (2006) 3~22)。アリシンは不安定であり、一連の他の硫黄含有化合物、例えばジアリルジスルフィド、へとすぐに転化される。アリシンは不安定な化合物である故に、農業におけるその使用は限られている(Fujisawa et al (2008) J Agric Food Chem:56 (11):4229~4235)。
【0062】
該化合物は、天然源から抽出されることも又は合成的に製造されることもできる。化合物PTS及びPTSOの両方がまた、商業的に入手可能である。幾つかの実施態様において、該化合物は、天然源、例えば植物、から得られる。化合物は、様々な方法で植物材料から抽出されることができる。適切な方法は、化合物の化学的特性に依存する。例えば、非極性溶媒から抽出を開始し、引き続き、極性が増加する溶媒で抽出することができる。代替的には、該植物の化合物が、アルコール中で抽出されることができる。
【0063】
本開示は、本明細書において開示されている(すなわち、式Iに従う)生物刺激性有機硫黄化合物を含む組成物を提供する。
【0064】
幾つかの実施態様において、該組成物は、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、の1以上の有機硫黄化合物を含む。好ましくは、該組成物は、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、のPTSOを含む。幾つかの実施態様において、該組成物は、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、のPTSを更に含む。そのような組成物はまた、本明細書において「有機硫黄化合物の濃縮された溶液」として言及される。
【0065】
幾つかの実施態様において、本明細書において開示されている組成物の有機硫黄化合物の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、は、式Iに従う化合物から選択される。幾つかの実施態様において、該組成物の有機硫黄化合物の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、がPTSO及びPTSから選択される。
【0066】
該濃縮された組成物は一般的に、使用前に1:100~1:100,000で希釈され、作用溶液(working solutions)を形成する。本明細書において、「作用する」(working)とは、該組成物、例えば溶液、が植物に施与されることができることを示し、他の濃度が、作用しない実施態様に関することを示すものでないことが理解されるであろう。
【0067】
好適な組成物は、本明細書において開示されている有機硫黄化合物を少なくとも0.5mg/L含む。好ましくは、該組成物は、少なくとも0.5mg/L、より好ましくは少なくとも1mg/L、の有機硫黄化合物(特には、PTSO)を含む。幾つかの実施態様において、作用溶液(working solution)は、少なくとも10mg/Lの有機硫黄化合物(特には、少なくとも10mg/LのPTSO)を含む。
【0068】
好ましくは、該組成物は、少なくとも1μmol/L、より好ましくは少なくとも10μmol/L、の有機硫黄化合物(特には、PTSO)を含む。幾つかの実施態様において、作用溶液は、少なくとも35μmol/Lの有機硫黄化合物(特には、少なくとも35μmol/LのPTSO、より特には少なくとも50μmol/LのPTSO)を含む。
【0069】
好ましくは、該組成物は、特に作用溶液として使用される場合に、10mmol/L以下、より好ましくは8mmol/L以下、の有機硫黄化合物(特には、PTSO)を含む。幾つかの実施態様において、作業溶液は、6mmol/L以下の有機硫黄化合物(特には、PTSO)を含む。好ましい実施態様において、作業溶液は、3.5mmol/L以下のPTSOより好ましくは1.5mmol/L以下のPTSO、を含む。
【0070】
好ましい実施態様において、式Iに従う該化合物は、200mg/L以下、好ましくは150mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下、の濃度で植物に施与される(すなわち、作用溶液)。好ましい実施態様において、植物に施与される該組成物は、50mg/L以下を含む。幾つかの実施態様において、植物に施与される該組成物は、0.5~150mg/L、好ましくは0.5~100mg/Lを含む。幾つかの実施態様において、植物に施与される該組成物は、0.5~50mg/Lを含む。幾つかの実施態様において、植物に施与される該組成物は、1~50mg/Lを含む。幾つかの実施態様において、植物に施与される該組成物は、1~10mg/Lを含む。
【0071】
大きな作物は一般的により多量を必要とする故に、必要なPTSOの量が作物の大きさに依存することを当業者は認識するであろう。例示的な実施態様として、平均植物密度は例えば、30,000株/haであり、10,000リットルのPTSO溶液/haが施与される。
【0072】
幾つかの実施態様において、該組成物は追加の有機硫黄化合物を含み、該追加の有機硫黄化合物は、生物刺激剤として作用してもよく、又は生物刺激剤として作用しなくてもよい。好ましくは、該組成物中の有機硫黄化合物の少なくとも60重量%は、式Iに従う化合物から選択される。
【0073】
幾つかの実施態様において、該組成物がジアリルチオスルフィナートを含む場合に、ジアリルチオスルフィナートに対する化合物又は式Iに従う化合物の重量比が、0.1超、好ましくは1超、より好ましくは少なくとも10:1である。該組成物が式Iの2以上の化合物を含む場合に、これら全ての化合物の重量がジアリルチオスルフィナートの重量と比較して上記比に達することが理解されるであろう。
【0074】
幾つかの実施態様において、該組成物がジアリルジスルフィドを含む場合に、ジアリルジスルフィドに対する化合物、又は式Iに従う化合物、との重量比は、0.1超、好ましくは1超、より好ましくは少なくとも10:1、である。該組成物が式Iの2以上の化合物を含む場合に、これら全ての化合物の重量がジアリルジスルフィドの重量と比較して上記比になることが理解されるであろう。
【0075】
好ましくは、そのような組成物は、ジアリルチオスルフィナートを実質的に含まない。本明細書において使用される場合に、「実質的に含まない」とは、例えば50%以上のPTSOを有する濃縮された組成物に言及する場合、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、のジアリルチオスルフィナートを含む組成物を云う。希釈されている作用溶液は、有意に少ないジアリルチオスルフィナートを含むであろう。
【0076】
本開示の組成物はまた、好ましくは、ジアリルジスルフィドを実質的に含まない。本明細書において使用される場合に、「実質的に含まない」とは、濃縮された組成物、例えば50%以上のPTSOを有する濃縮された組成物、に言及する場合に、5重量t%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、のジアリルジスルフィドを含む組成物を云う。希釈されている作用溶液は、有意に少ないジアリルジスルフィドを含むであろう。
【0077】
該組成物は、任意の好適な「農業上許容される担体、賦形剤及び/又は溶媒」を含みうる。そのような担体及び溶媒は、当業者に知られており、植物又はその環境に対して許容できないほど損傷を与えず、及び/又は使用者又は暴露されうる他の人々に対して安全でない。例えば、農業上許容される担体は、固体担体、ゲル担体、液体担体、懸濁物、又はエマルションであってもよい。溶媒の非限定的な例は水である。
【0078】
好ましい実施態様において、該組成物は更に、乳化剤を更に含む。好適な乳化剤は、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールリシノール酸グリセリルを包含する。ユカ抽出物並びにツイーン(Tween)がまた、好適な乳化剤である。幾つかの実施態様において、該組成物は、40~70%の乳化剤、好ましくは55~60%の乳化剤、を含み、特には、乳化剤がプロピレングリコールとポリエチレングリコールリシノール酸グリセリルとの組み合わせである。幾つかの実施態様において、該組成物は、特には乳化剤がユカ抽出物である場合に、70~92%の乳化剤、好ましくは約90%の乳化剤、を含む。幾つかの実施態様において、特には該乳化剤がツイーン(Tween)である場合に、該組成物は、25~70%の乳化剤、好ましくは25~35%の乳化剤、を含む。好ましくは、該組成物は、本明細書において開示されているような化合物(例えば、PTSO)を1~30%、好ましくは3~10%、含む。該組成物は更に、ビタミン及びミネラル、例えば、ビタミンH並びにビタミンB1、B2、B3、B5、B6及びB12、を含んでいてもよい。そのような組成物は、本明細書において更に開示されているように、植物に施与される為の作用溶液に希釈されることができる。
【0079】
幾つかの実施態様において、該組成物は更に、肥料、殺虫剤、湿潤剤、抗菌化合物、殺菌剤、キレート化合物、芳香族化合物、及び/又は追加の生物刺激剤を含む。
【0080】
当業者はまた、肥料、殺虫剤、湿潤剤、抗菌化合物、殺菌剤、キレート化合物、芳香族化合物、及び/又は追加の生物刺激剤(特には、本明細書において記載されているようなアミノ酸ベースの生物刺激剤)がまた、別個の組成物中に提供されうることを理解するであろう。例えば、本開示は更に、本明細書において開示されている本発明の化合物又は組成物を該植物に提供すること、及び、肥料、殺虫剤、湿潤剤、抗菌化合物、殺菌剤、キレート化合物、芳香族化合物及び/又は追加の生物刺激剤から選択される1以上の追加の薬剤を該植物に提供することを含む方法を企図する。好ましくは、該追加の薬剤は、本発明の化合物とほぼ同時に提供される。該追加の薬剤はまた、本発明の化合物の前又は後に、例えば本発明の化合物の数時間又は数日の前又は後に提供されてもよい。好ましくは、本発明の化合物及び追加剤は、互いに7日以内に提供される。該追加の薬剤は好ましくは、作物周期の間に複数回提供される。例えば、該追加の薬剤は、4~14日毎に施与されうる。該追加の薬剤は、作物周期の間に少なくとも4回、好ましくは少なくとも6回、施用されうる。特には、式Iを含む組成物及び該追加の薬剤は、同じ作物周期の間に両方とも提供される。
【0081】
幾つかの実施態様において、本明細書において開示されている方法及び使用は、アミノ酸ベースの生物刺激剤を植物に施与することを更に含む。本明細書において言及される場合に、「アミノ酸ベースの生物刺激剤」は、少なくとも10%(w/w)、好ましくは少なくとも15%(w/w)、のアミノ酸を含む。幾つかの実施態様において、該生物刺激剤は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%(w/w)、のアミノ酸を含む。該アミノ酸は、遊離アミノ酸(すなわち、遊離形態のアミノ酸)であってもよく、又は(例えば、ペプチド結合を介して)他のアミノ酸に結合されていてもよい。幾つかの実施態様において、該アミノ酸生物刺激剤は、8~15%(w/w)の遊離アミノ酸と45~55%の付着アミノ酸とを含む。そのような生物刺激剤は一般的に、使用前に1:10~1:1,000に希釈される。
【0082】
アミノ酸ベースの生物刺激剤及びそれらの使用方法は当業者に知られており、Metalosate Calcium及びMetalosate Fe(Albion Minerals,Layton,UT,USA);Agrocean B(Agrimer,Plouguerneau,France);Tecamin Brix,Tecamin Max,Tecnokel Amino Mix,及びTerra-Sorb Foliar(Agritecno Fertilizantes,Valencia,Spain);Amino Quelant Ca(Bioiberica,Barcelona,Spain);Bosfoliar Activ(COMPO EXPERT,Munster,Germany);NaturalCrop SL (NaturalCrop Poland Sp.z o.o.,Warszaw,Poland);並びに、Delfan Plus (Tradecorp,Madrid,Spain)を包含する。Molecules.2018 Feb;23(2):470の、アミノ酸生物刺激剤AminoPrimとAminoHort(夫々15%と20%のアミノ酸、及び夫々0.27%と2.1%の微量元素を含む)の組成物の説明についての表2を参照されたい。
【0083】
Terra Sorb商標Complexは別の好適なアミノ酸ベースの生物刺激剤であり、該別の好適なアミノ酸ベースの生物刺激剤は、20%(w/w)の下記の遊離アミノ酸;ASP、SER、GLU、GLY、HIS、ARG、THR、ALA、PRO、CIS、TYR、VAL、MET、LYS、ILE、LEU、PHE、及びTRPを含む。Terra Sorb Complexはまた、窒素5.5%(そのうち、5%は有機窒素であり、並びにB(1.5%)、Mg(0.8%)、Fe(1%)、Zn(0.1%)、Mn(0.1%)、Mo(0.001%)及び25%の有機物を含む。
【0084】
好ましいアミノ酸ベースの生物刺激剤は、Isabion商標である。Isabion商標は、水、灰分、遊離アミノ酸、並びに短鎖ペプチド及び長鎖ペプチドの混合物である。
【0085】
好ましくは、Isabion商標は、33.5%(w/w)の水、4%(w/w)の灰分、及び62.50%(w/w)の有機物の混合物である。特には、該混合物は10.3%(w/w)の遊離アミノ酸と47.96%(w/w)の付着アミノ酸を含む。遊離アミノ酸は、3.80%(w/w)のグリシン、1.45%(w/w)のプロリン、1.87%(w/w)のアラニン、0.27%(w/w)のグルタミン酸、0.85%(w/w)のヒドロキシプロリン、0.35%(w/w)のアスパラギン酸、0.20%(w/w)のロイシン、0.35%(w/w)のリジン、0.09%%(w/w)のバリン、0.33%(w/w)のチロシン、0.16%(w/w)のフェニルアラニン、0.07%(w/w)のイソロイシン、0.12%(w/w)のアルギニン、0.08%(w/w)のスレオニン、0.08%(w/w)のメチオニン、0.10%(w/w)のヒスチジン及び0.13%(w/w)のセリンを含む。
【0086】
付着アミノ酸は、8.65%(w/w)のグリシン、8.78%(w/w)のプロリン、5.16%(w/w)のアラニン、6.33%(w/w)のグルタミン酸、5.35%(w/w)のヒドロキシプロリン、2.71%(w/w)のアスパラギン酸、1.90%(w/w)のロイシン、1.68%(w/w)のリジン、1.67%(w/w)のバリン、1.14%(w/w)のチロシン、1.18%(w/w)のフェニルアラニン、0.87%(w/w)のイソロイシン、0.80%(w/w)のアルギニン、0.66%(w/w)のスレオニン、0.57%(w/w)のメチオニン、0.37%(w/w)のヒスチジン及び0.14%(w/w)のセリンを含む。
【0087】
更に、付着アミノ酸は、短鎖ペプチド及び/又は長鎖ペプチドであることができる。該短鎖ペプチドの分子量は一般的に、およそ1160Da~およそ3500Daである。該長鎖ペプチドの分子量は一般的に、およそ3600Da~およそ8500Daである。
【0088】
Isabion商標は通常、水で希釈され、葉面散布又は灌漑用水で施与される。葉面散布の為に作用溶液を提供する場合に、Isabion商標は通常、200~300ml/100L水に希釈される。
【0089】
Isabion商標の推奨用量は、葉面散布の場合に200ml/hl~300ml/hlであり、灌漑システムの場合に2L/ha~3L/haである。霜が降ったり又は作物が被害を受けたりした場合には、該用量は、葉面散布の場合には400ml/hlまで増量されることができ、灌漑システムの場合には4L/haまで増量されることができる。
【0090】
【表A】
【0091】
例示的な実施態様において、式Iに従う化合物又は式Iに従う化合物を含む組成物を植物に提供すること、及びアミノ酸ベースの生物刺激剤、例えばIsabion商標、を該植物に提供することを含む方法が提供される。
【0092】
幾つかの実施態様において、式Iに従う該化合物及びアミノ酸ベースの生物刺激剤が単一の組成物中に提供される。従って、本開示は、式Iに従う化合物とアミノ酸ベースの生物刺激剤とを含む組成物を提供する。
【0093】
幾つかの実施態様において、該組成物は、式Iに従う化合物、グリシン及びプロリンを含む。幾つかの実施態様において、該組成物は、式Iに従う化合物と、グリシン及びプロリンからなる群から選択される遊離アミノ酸とを含む。好ましくは、式Iに従う化合物と、グリシン及びプロリンからなる群から選択される遊離アミノ酸と、ペプチドとを含む。
【0094】
好ましくは、該組成物は更に、アラニン、グルタミン酸及びヒドロキシプロリンからなる群から選択される遊離アミノ酸を含み;より好ましくは、該組成物はより更には、アスパラギン酸、ロイシン、リジン、バリン、チロシン、フェニルアラニン、イソロイシン、アルギニン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン及びセリンからなる群から選択される遊離アミノ酸を含む。
【0095】
幾つかの実施態様において、式Iに従う化合物;遊離アミノ酸として、アラニン、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、ロイシン、リジン、バリン、チロシン、フェニル-アラニン、イソロイシン、アルギニン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、グリシン及びプロリン;並びに、ペプチドを含む組成物が提供される。
【0096】
好ましい実施態様において、本明細書において記載された式Iを含む組成物と、本明細書において記載されたアミノ酸ベースの生物刺激剤とが、別々の組成物として提供される。好ましくは、式Iに従う化合物を含む組成物は、アミノ酸ベースの生物刺激剤が該植物に提供される少なくとも24時間前(又は1~3日前)又は24時間後(又は1~3日後)に提供される。i)本明細書において記載された式Iを含む組成物と、ii)本明細書において記載されたアミノ酸ベースの生物刺激剤とを含む部品キットがまた提供される。
【0097】
好ましい実施態様において、式Iを含む組成物は、1.5mg/kg以下の乾燥物の量でカドミウム(Cd)を更に含む。好ましい実施態様において、該組成物は、2mg/kg以下の乾燥物の量で六価クロム(Cr VI)を含む。好ましい実施態様において、該組成物は、120mg/kg以下の乾燥物の量で鉛(Pb)を含む。好ましい実施態様において、該組成物は、1mg/kg以下の乾燥物の量で水銀(Hg)を含む。好ましい実施態様において、該組成物は、50mg/kg以下の乾燥物の量でニッケル(Ni)を含む。好ましい実施態様において、該組成物は、40mg/kg以下の乾燥物の量で無機ヒ素(As)を含む。好ましい実施態様において、該組成物は、1500mg/kg以下の乾燥物の量で無機亜鉛(Zn)を含む。
【0098】
ジメチルチオスルホナート、ジフェニルチオスルホナート
【0099】
本開示は、植物生物刺激剤として使用する為の、本明細書において開示されている有機硫黄化合物と該化合物を含む組成物とを提供する。該化合物及び該組成物は、植物を処理する為の方法において使用されうる。そのような方法は、植物の生育速度及び/又は発達を増加させる為に、植物の収量を増加させる為に、又は植物の収穫を増加させる為に有用でありうる。
【0100】
幾つかの実施態様において、本明細書において開示されている化合物又は組成物を植物に提供することを含む方法が提供される。植物は、当技術分野において既知の任意の手段によって、例えば、根、花、葉及び茎を介した局所的栄養物、散水栄養物、噴霧又は湿潤溶液、コーティング、パイリング(piling)、空中溶液(aerial solution)、表皮、血管内など、該化合物又は組成物を提供されうる。好ましい経路は、根を介した取り込み、散布、空中投与又は局所投与である。好ましい投与経路は、灌注(例えば、点滴/滴下灌注)を用いた根を介するものである。理論に縛られることは望まないが、根に直接化合物が提供されることにより、例えば葉に散布するよりも向上された効果が提供される場合がある。下記の表17において散布と点滴灌漑との間の結果を比較する。特には該組成物が地中に浸透して根に到達できる場合には、植物への散布がまた効果的である。
【0101】
幾つかの実施態様において、本発明の化合物は、作物周期の間に複数回提供される。本明細書において使用される場合に、作物周期とは、発芽から作物の収穫までの時間を云う。
【0102】
例えば、該化合物は、作物周期の間に少なくとも4回、好ましくは少なくとも6回、施与されうる。好ましくは、該化合物は4~27日ごと、特に4~14日ごとに施用される。例示的な実施態様において、化合物は、1~2週間ごとに提供される。例示的な実施態様において、化合物は、4~27日ごと、好ましくは4~14日ごと、及び作物周期中に少なくとも4回、好ましくは少なくとも6回、提供される。該化合物の最初の投与は好ましくは、発芽直後である。該化合物の効果は最後の投与後数週間持続するが、少なくとも収穫予定日の7日前まで化合物を施与することが推奨される。
【0103】
該化合物又は該組成物は、植物(根及び地上部分、例えば、葉、茎、花、実、枝(branches)、大枝(limbs)、根等を包含する、挿し木、出現した苗、及び定着した植生を包含する)に、植物の種子(例えば、発芽前)に、又は周囲の土壌に、特には植物の根圏に、施与されうる。本明細書において使用される場合に、語「根圏」は、生きている植物の根に隣接する土壌の領域を云う。根圏の幅は一般的に、根の表面から100mm以内である。
【0104】
該化合物又は該組成物は、単回の投与で施与されてもよく、又は複数回の投与として施与されてもよい。例えば、該組成物は、毎日、毎週、毎月、又は毎年提供されうる。例示的な実施態様において、該組成物は、毎日1回、1週間、又は生物刺激剤が有効になるまで提供されうる。
【0105】
植物への散水は水やりターンとして行われ、供給される水の量は、植物が供給された水の一部を排水として排出するように選択される。このことは、有機硫黄組成物が相対的に早く洗い流されることを意味する。根支持体中の濃度を均一にする為に、有機硫黄組成物は、所望の速度で該組成物を放出する粒状物として投与されうる。この様式において、長期間にわたって一定の濃度が提供される。
【0106】
幾つかの実施態様において、本明細書において開示されている組成物は、スプレー溶液として提供される。該組成物が植物に噴霧される場合、該溶液は、蒸発する小さな表面体積比を有する液滴として葉上に堆積され得、それにより、該組成物が残留物として葉に残ることをもたらしうる。この影響は、該組成物に湿潤剤を含有させることによって低減されることができる。
【0107】
有機硫黄化合物の施与量は、様々な要因、例えば、投与方法、投与時間、使用される特定の化合物の分解速度、処理の期間、殺虫剤処理、組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、年数、重さ、一般的な健康状態、及び以前の処理を包含する上記の様々な要因、並びに農業技術において周知の要因に依存する。当技術分野における通常の技術を有する園芸家、植物栽培家又は農家は、必要される組成物の有効量を容易に決定することができる。
【0108】
生育が遅い植物、例えばサボテン及び多肉植物、には、より低い濃度/量の有機硫黄化合物が投与されることができることは、当業者には明らかである。水中の濃度/量及び施与の頻度は、植物種(plant species)、亜種(subspecies)、栽培品種(cultivar)、雑種(hybrid)、変種(variant)に依存することが当業者にはまた明らかである。その上、該植物が耐えることができる投与量は、植物の生育段階及びサイズに依存することは、当業者には明らかである。その上、水中の濃度/量及び施与の頻度が、生育条件、例えば、光、温度、蒸発、根支持体中の栄養濃度及びpH、空気の動き、並びに他の殺虫剤の施与に依存することは、当業者には明らかである。その上、水中の濃度/量及び施与の頻度が、それが施与される瞬間、昼、夜、季節及び天候に依存することは、当業者には明らかである。
【0109】
例示的な実施態様において、有機硫黄化合物、好ましくはPTSO、は、0.01kg/ha~100kg/haの量で提供される。
【0110】
好ましくは、ラン(orchids)、好ましくはファレノプシス属(Phalaenopsis)、に使用する為に、該有機硫黄化合物、好ましくはPTSO、は、10kg/ha~100kg/ha、より好ましくは20kg/ha~60kg/ha、の量で提供される。好ましくは、キク(Chrysanthemum)における使用の場合に、該有機硫黄化合物、好ましくはPTSO、は、0.01kg/ha~1kg/ha、より好ましくは0.01kg/ha~0.25kg/ha、の量で提供される。
【0111】
幾つかの実施態様において、式Iの化合物、又は該化合物を含む組成物は、該植物に、該植物の種子に、又は該植物若しくは種子の土壌に、直接施与される。
【0112】
実施例において実証されているように、本明細書において開示された化合物は、植物に対して、特に植物の品質特性に対して、有利な効果を有する。それ故に、該化合物は、植物/土壌添加剤、肥料、及び生物刺激剤として有用である。
【0113】
好ましい実施態様において、語「生物刺激剤」は、植物又は植物の根圏の以下の特性:a)養分利用効率、b)生物学的ストレス耐性、c)品質形質(品質特性としてまた知られる)、及びd)土壌又は根圏における閉じこめられた養分の利用可能性、のうちの1以上を向上させることを目的として、製品の養分含有量とは独立して、植物の栄養プロセスを刺激するところの製品、特には化合物又は組成物、を云う。
【0114】
好ましい実施態様において、生物刺激剤としての本明細書において記載された化合物の使用は、
a)養分利用効率、b)非生物的ストレスに対する耐性、c)品質形質、及びd)土壌において又は根圏において保持される閉じこめられた養分の利用可能性。
のうちの1以上を向上させることに関する。
【0115】
好ましい実施態様において、生物刺激剤としての使用は、抗菌剤及び/又は抗真菌剤としての使用を包含しない。
【0116】
好ましくは、本明細書において開示された有機硫黄化合物は、
養分利用効率を高める、及び/又は
非生物ストレスに対する植物の耐性を高める、及び/又は
植物の品質特性を向上させる、及び/又は
土壌において又は根圏において保持される養分の、植物の為の利用可能性を高める。
【0117】
より好ましくは、本明細書において開示された有機硫黄化合物は、
養分利用効率を高める、及び/又は
非生物ストレスに対する植物の耐性を高める、及び/又は
植物の品質特性を向上させる。
【0118】
養分利用効率
【0119】
本明細書において使用される場合に、養分利用効率は、当技術分野における通常の定義で使用される。典型的には、養分利用効率は、単位投入量(肥料、栄養含有量分)当たりの収量(バイオマス)として定義される(例えば、Nutrient Use Efficiency in Plants,Concepts and Approaches,Editors:Hawkesford,Malcolm J.,Kopriva,Stanislav,De Kok,Luit J.(Eds.) ISBN 978-3-319-10635-9を参照)。好ましくは、栄養素は窒素(N)及び/又はリン(P)である。
【0120】
当業者は、植物の養分利用効率を決定する為の方法を熟知しており、それ故に、生物刺激剤が該養分利用効率を高めるか否かを確立することができることがまた十分に可能である。例えば、圃場研究において、養分利用効率は、生物刺激剤で処理された圃場と未処理の対照圃場との間の作物収量及び/又は養分取り込みの差に基づいて計算されることができ、又は同位体で標識付けされた養分を用いて、適用された養分の作物及び土壌の回収を推定することによって計算されることができる(例えば、A.Dobermann,Nutrient use efficiency - measurement and management:例えば、A Dobermann,Nutrient use efficiency - measurement and management:Fertilizer Best Management Practices,2007,ISBN:2-9523139-2-Xを参照)。
【0121】
非生物的ストレス
【0122】
本明細書において使用される場合に、非生物的ストレスは、特定の環境において生きている有機体に対する非生物学的要因の負の影響として定義される。このように、非生物的ストレスに対する植物の耐性が向上するということは、該植物が、通常、植物に対して負の影響を有する非生物的ストレス因子、例えば、植物の生育速度の低下、に耐える能力が向上することを示す。非生物的ストレス要因は、干ばつ、過剰な水分(特には、多すぎる雨又は高すぎる湿度)、多すぎる又は少なすぎる直射日光、強風、最適でない土壌構造、塩分(特には、過塩分)、低すぎる又は高すぎる温度、温度における強い及び/又は急激な変動、並びに他の極端な環境を包含するが、これらに限定されない。一方、植物病原菌又は害虫は生物的ストレスと呼ばれる。
【0123】
非生物的ストレスから結果として生じる植物に対する悪影響には、植物の生育速度の低下、植物の最高樹高が低下すること、根の形成が低下すること、葉の発達不良を起こすこと(例えば、葉が小さくなる、葉の色が異なる)、虫害又は病原菌による被害を受けやすくなること、花又は花茎が小さくなることを包含するが、これらに限定されるものでない。
【0124】
植物を生物刺激剤で処理した結果としての、非生物的ストレスに対する植物の耐性の平均的な向上は、生物刺激剤で処理された植物を有する圃場と未処理の対照とを比較することによって測定されることができ、ここで、該処理された植物及び該対照の植物は、実質的に同じ非生物的ストレス因子に付され、例えば、該処理された植物及び対照の植物が同じ圃場又は隣接する圃場で栽培される場合である。
【0125】
好ましい実施態様において、非生物的ストレスは、ファレノプシス属(Phalaenopsis)の植物において、干ばつ、過剰な水、直射日光、暑さ、及び/又は寒さであり、それらにより、生育が遅くなること、根の形成が減少すること、葉が青白く又は赤くなること、昆虫又は病原体の被害を受けやすくなること、及び/又は花又は花茎が少なくなることを結果として生じる。
【0126】
好ましい実施態様において、非生物的ストレスは、キク属(Chrysanthemum)の植物において、十分な根の不足、高すぎる温度、及び/又は空気の動きの為に、根の形成が不十分で遅くなる故に、栄養素の取り込みが少なすぎること、又は水が少なすぎることに関する。
【0127】
品質形質(Quality traits)
【0128】
品質形質(品質特性としてまた知られている)の定義は、植物の属又は種に依存しうる。典型的に、当業者、例えば農家又は栽培者、は、どの植物がどの品質形質に関連するかを知っている。
【0129】
作物/観賞用植物とそれらの品質特性の幾つかの例が以下に記載されている。他の品質特性は、下記の表31に記載されている。
【0130】
【表B】
【0131】
語「植物の品質における向上」とは、本明細書において開示されている化合物の施与がない場合に、同じ条件下で生育した対照植物における同じ形質と比較した場合の、或る形質の質的又は量的な向上を云う。そのような形質は、植物の向上された視覚的外観、収穫物の向上された品質、例えば種子、実、葉、野菜;収穫物の視覚的向上、向上された栄養含有量、高められた貯蔵寿命等を包含するが、これらに限定されない。
【0132】
幾つかの実施態様において、該植物の品質は、植物の活力である。向上された植物活力は例えば、植物の向上された植物のバイタリティ;向上された植物立ち;向上された出穂;及び/又はより発達した根系;高められた結節;より大きな葉身;向上された葉色、増加した植物サイズ;増加した植物重量;増加した植物高;劣悪な土壌又は不利な気候で栽培された場合の増加した収量;より早い開花/結実/発芽/穀粒成熟;より速く且つより均一な成熟等を包含する。
【0133】
幾つかの実施態様において、該植物の品質は、植物の量であり、植物(例えば、穀物、ナッツ、実、野菜、種子等)の収量を云う。向上された植物収量は、例えば、バイオマス生産における増加、及び植物体の収穫能力の向上を包含する。
【0134】
幾つかの実施態様において、向上された品質特性とは、植物の向上された視覚的外観、収穫物の向上された品質、向上された栄養含有量、高められた貯蔵寿命、向上された植物活力、及び向上された植物収量から選択される特徴のうちの1以上を云う。
【0135】
土壌において又は根圏において保持された閉じこめられた養分の利用可能性
【0136】
当業者は認識しているように、栄養素の一部は土壌中又は根圏中に閉じ込められ得、ある量の栄養素が植物に利用できなくなる。閉じこめられた養分は、土壌又は根圏における低い移動性を有する養分、及び/又は水中に溶けにくい養分を包含するが、これらに限定されない。低い移動性は例えば、他の土壌成分、例えば、粘土サイズの粒子又は鉱物に関連付けられた有機物と栄養素が相互作用する結果でありうる。栄養塩と他の土壌成分との物理化学的相互作用により、植物に対する養分の利用可能性が制限される可能性がある(Jilling et al.Biogeochemistry (2018) 139:p.103~122)。
【0137】
土壌及び根圏における閉じ込められた養分の利用可能性を測定する様々な方法が利用可能である(例えば、Brinkley and Vitousek,Soil nutrient availability,in:Plant Physiological Ecology:Field Methods and Instrumentation (ed.by Pearcy,Ehleringer,Mooney,and Rundel),2000,ISBN:13:978-0-412-40730-7を参照)。
【0138】
その上、
植物の成長速度及び/又は発達を増加させる為の、
植物の収率を増加させる為の、
植物の収穫を増加させる為の
方法が提供される。当業者によって理解されるように、例えば植物の生育速度における増加とは、本明細書において開示されている化合物で処理された植物の生育速度が、処理無しに同様の条件下で生育した植物の生育速度と比較して増加することを云う。
【0139】
本明細書において使用される場合に、語「植物」は、作物植物、観賞植物、樹木、草、一年草、多年草、又は植物界に属する他の一般的に栽培されるものを包含する。本明細書において使用される場合に、語「作物植物」は、商業的価値を有する植物種を包含し、それらは商業的使用の為に植えられ、そして栽培される。従って、作物植物は、花卉及び非花卉、多年草及び一年草、樹木、低木、野菜植物、果樹、芝、及び地被植物を包含する。
【0140】
好適な植物は、シュンラン属(Cymbidium)、オンシジウム属(Oncidium)、ミルトニア属(Miltonia)、パフィオペディルム属(Paphiopedilum)、シプリペディウム属(Cypripedium)、エビネ属(Calanthe)及びラン属(orchid genus)の交配種、ブロメリア(Bromelia)、ベゴニア(Begonia)、インパチェンス(Impatiens)、ツツジ(Azalea)、シダ類(ferns);園芸作物であるところの、アマトウガラシ(sweet pepper)、トマト、ナス、キュウリ、ズッキーニ等;耕種作物であるところの、小麦、ジャガイモ、ビート、チョア(chore)、ルツェルン(Luzerne)等;耕種園芸作物であるところの、エンダイブ(endive)、カリフラワー、芽キャベツ(Brussels sprouts)、レタス、ブロッコリー、チコリ(chicory)、エンドウ豆(peas)、インゲン豆(beans)、レッドキャベツ(red cabbage)、ケール(kale)等;庭木であるところの、ツツジ(Azalea)、モクレン(magnolia)、レンギョウ(forsythia)、シャクヤク(peony)、タチアオイ(hollyhock)、キングサリ(laburnum)、ヤシ(palm)、フジ(wisteria)等;果樹及び灌木であるところの、リンゴの木、ナシの木、サクラの木、プルーンの木、スグリ(gooseberry)、クロフサスグリ(black currant)、ブルーベリーの木、クランベリの木ー等;熱帯果実であるところの、バナナ、パパイヤ、キャッサバ、パイナップル、アボカド、マンゴー等を包含する。
【0141】
好ましくは、該植物は、クレードの有胚植物類(Embryophyta)に属する。好ましくは、該植物は維管束植物である。例示的な実施態様において、植物は、作物植物、例えばレタス種(Lactuca sativa)(レタス)、である。
【0142】
他の好ましい実施態様において、該植物は、クレードの被子植物類(Angiospermae)に属する。好ましくは、該植物は、ナス(nightshades)(ナス科:Solanaceae)の植物、キュウリ(cucumber)(キュウリ科:Cucurbitaceae)の植物、バラ(roses)(バラ科:Rosaceae)の植物、ラン(orchids)(ラン科:Orchidaceae)の植物、ユリ(lily)(ユリ科:Liliaceae)の植物、キク(composite)(キク科:Asteraceae又はCompositae)の植物、カーネーション(carnation)(カーネーション科:Caryophyllaceae)の植物、アブラナ(crucifers)(アブラナ科:Brassicaceae又はCruciferae)の植物、イネ(grass)(イネ科:Poaceae)の植物、及びセリ(umbellifers)(セリ科:Apiaceae又はUmbelliferae)の植物からなる群から選択される科に属する。
【0143】
好ましい実施態様において、該植物は、ナス(nightshades)(ナス科:Solanaceae)の植物に属する。好ましくは、該植物は、ナス属(Solanum)又はトウガラシ属(Capsicum)する。好ましくは、該植物はナス属(Solanum)に属し、且つトマト(S.lycopersicum)、ジャガイモ(S.tuberosum)、ナス(S.melongena)及びペピーノ(S.muricatum)からなる群から選択される。他の好ましい実施態様において、該植物は、トウガラシ属(Capsicum)に属し、且つペパー種(pepper)(トウガラシ(C.annuum))、特には、アマトウガラシ(sweet pepper)、チリペッパー(chili pepper)及びハラペーニョ(jalapeno)、に属する。
【0144】
好ましい実施態様において、該植物は、キュウリ科(Cucurbita ceae)に属する。好ましくは、該植物は、キュウリ属(Cucumis)又はカボチャ属(Cucurbita)に属する。好ましくは、該植物はキュウリ属(Cucumis)に属し、且つキュウリ(cucumber)(C.sativus)、シュガーメロン(sugar melon)及びガーキン(gherkin)(C.anguria)からなる群から選択される。他の好ましい実施態様において、該植物は、カボチャ属(Cucurbita)に属し、且つペポカボチャ(C.pepo)(特には、ズッキーニ(zucchini))及びカボチャ(pumpkins)(C.argyrosperma、C.digitate、C.maxima及びC.moschata)からなる群から選択される。
【0145】
好ましい実施態様において、該植物は、バラ科(Rosa ceae)に属する。好ましくは、該植物は、イチゴ(Fragaria)、ナシ(Pyrus)、リンゴ(Malus)、バラ(Rosa)、及びキイチゴ(特には、Rubus亜科、及びblackberries亜科)に属する。
【0146】
好ましい実施態様において、該植物は、ラン科(orchid family)(Orchidaceae)に属する。例示的な実施態様において、該植物は、観賞用植物、例えばラン(orchid)、特には、ファレノプシス属(Phalaenopsis genus)、又は他の顕花植物、例えばシュンラン属(Cymbidium)からのもの、である。
【0147】
好ましい実施態様において、該植物は、ユリ科(lily family)(Liliaceae)に属する。好ましくは、該植物は、チューリップ(Tulipa)又はユリ(lilies)(Lillium)の属に属する。
【0148】
好ましい実施態様において、該植物は、キク科(compositefamily)(Asteraceae又はCompositae)に属する。好ましくは、該植物は、キク(Chrysanthemum)、アステリア(Asterea)又はアキノノゲシ(Lactuca)の属に属する。
【0149】
好ましい実施態様において、該植物は、カーネーション科(carnation family)(Caryophyllaceae)に属する。
【0150】
好ましい実施態様において、該植物は、アブラナ科(crucifers family)(Brassica ceae又はCruciferae)に属する。好ましくは、該植物は、アブラナ属(Brassica)に属する。
【0151】
好ましい実施態様において、該植物は、イネ科(grass family)(Poaceae)に属する。好ましくは、該植物は、コムギ(Triticum)、イネ(Oryza)又はトウモロコシ(Zea)の属に属する。
【0152】
好ましい実施態様において、該植物は、セリ科(umbellifers family)(Apiaceae又はUmbelliferae)に属する。好ましくは、該植物は、ニンジン(carrots)(Caucus carota)、パーズニップ(parsnip)(Pastinaca sativa)、アニス(anise)(Pimpinella anisum)、コエンドロ(coriander)(Coriandrum sativum)、クミン(cumin)(Cuminum cyminum)から成る群から選択される。幾つかの実施態様において、該植物はクミンでない。
【0153】
好ましくは、該植物は、ファレノプシス属(Phalaenopsis)、シュンラン属(Cymbidium)、キク属(Chrysanthenum)、バラ属(Rosa)、マメ科(Fabaceae)(好ましくはPhaseolus、より好ましくはPhaseolus vulgaris)、アブラナ属(Brassica)(好ましくはBrassica oleracea及びBrassica rapa)、カボチャ属(Cucurbita)(好ましくはCucurbita pepo giromontiina、Cucumus melo、及びCucumus sativus)、ナス科(Solanaceae)(好ましくは、Solanum又はCapsicum、より好ましくは、Solanum lycopersicum又はCapsicum annuum)、Vitis (好ましくはVitis vinifera)、Vaccinia(好ましくは、Vaccinia corymbosum又はVaccinium cyanococcusi)、及びLactuca(好ましくは、Lactuca sativa)からなる群から選択される。
【0154】
本明細書において使用される場合に、語「含む」及びその活用形は、該語に続く項目は含まれるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。加えて、動詞「からなる」は、本明細書において定義されている化合物又は補助化合物が、具体的に識別されているものよりも1以上の追加の成分を含んでいてもよいことを意味する「本質的になる」によって置き換えられてもよく、ここで、該1以上の追加の成分は、本発明の固有の特性を変更しない。
【0155】
冠詞「1つ」(a)及び「1つ」(an)は、本明細書において、冠詞の文法的対象が1つであること又は2以上であること(すなわち、少なくとも1つ)を云う為に使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素又は2以上の要素を意味する。
【0156】
語「およそ」又は「約」は、数値(およそ10、約10)に関連付けて使用される場合に、好ましくは、該値が、その値の1%以上又は1%未満の10という所与の値であってもよいことを意味する。
【0157】
本発明は以下の実施例において更に説明される。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明を明確にする為のものである。
【0158】
実施例
【0159】
本実験は、生物刺激剤としてのPTSO/PTSの効果を初めて実証した。生育条件(水やり、施肥、光、温度、空気の動き、空気湿度)が観賞用鉢植え胡蝶蘭(Phalaenopsis)交配種「ピュアシルク」(Pure silk)の為に最適であったにもかかわらず、様々な量のPTSO/PTSの投与は、下記の実施例2において実証されているように、より高い生育率と向上させた植物特性を結果としてもたらした。温室内の気温が高く且つ光が多い時期には、処理済の植物は高い速度で成長し続け、一方、未処理の植物の生育は遅くなった。明らかに、PTSOで処理された植物は、増加した非生物的ストレスの期間に対してよりよく抵抗することができた。
【0160】
下記実施例3は、キク(Chrysanthemum)の挿し木を様々な量のPTSO/PTSで処理することにより、生育が増加し、且つ根の発達がより良くなる結果をもたらしたことを示す。この実験設計において、挿し木の最適な発根及び前生育の為に、同じ条件下で処理された挿し木を未処理の挿し木と比較した。この例において、PTSO/PTSでの処理により、最適な条件下での未処理の挿し木と比較して、増加した発根及び生育を実証した。その上、これらの実験はまた、より効率的な養分の取り込みという追加的な効果を示した。このことは、本明細書において使用されるPTSO/PTS組成物が生物刺激剤であることを示す。
【0161】
実施例1.PTSO及びPTSの分離
【0162】
範囲:
【0163】
本明細書において記載されている多くの例の場合に、PTSOの水性抽出物が使用され、本明細書においてPTSO抽出物(PE)として言及され、少なくとも56%のPTSO(重量%)及び14%以下のPTS(重量%)を含む。
【0164】
研究設計:化合物の極性に従う該化合物の溶出順序は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high-performance liquid chromatography)から推定される。分離の為の条件は、移動相としてヘプタンと酢酸エチルとを用いる薄層クロマトグラフィー(TLC:thin-layer chromatography)によって決定される。長さ110cm及び直径25cmのフラッシュカラムに、ヘプタン中15kgのシリカ(ACROS Organics商標からの粒子径40~60μm)が充填され、そして、該カラムが一晩安定された。極性を0%から40%まで徐々に上げることによってて精製が行われた。プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって両方とも識別された関心のある画分、すなわちPTS(=ピーク6)及びPTSO(=ピーク7)は、20リットルの移動相の使用後に溶出し始め、そして、2リットルの画分サイズに集められた。画分は各化合物のTLC同定に従って分離され、そして、各化合物(PTS又はPTSO)について対応する画分が一緒にされた。溶媒がロータリーエバポレーションによって蒸発され、PTSの精製された画分(32435-2-A)及びPTSOの2つの精製された画分(MHA32435-2-B、MHA32435-2-C)を表1に概説するように得た。
【0165】
98%超の必要な純度が画分MHA32435-2-B(=PTSO)でのみ達成され、一方、画分MHA32435-2-A(PTS)及びMHA32435-2-C(=PTSOの2番目の画分)は、98%未満の純度を示し、所望の純度を得る為には2回目のフラッシュクロマトグラフィーによる更なる精製を必要とした。
【0166】
PTS(MHA32435-2-A)の再精製は、フラッシュカラム(長さ50cm及び、直径20cm)に2kgのシリカ(粒子径40~60μm,ACROS Organics商標)を充填し、移動相として酢酸エチルとヘプタンを用い、そして、極性を0%から20%まで上げることによって行われた。関心のある画分が250mlの画分サイズに集められ、TLCによって同定され、そして、一緒にされた。溶媒がロータリーエバポレーションによって蒸発されて、98%超の純度を有するPTS(EWR32514-01-1)を得た。
【0167】
PTSOの不純物画分(MHA32435-2-B)の再精製は、MHA32435-2-Aの場合と同じ移動相を使用して、同じフラッシュカラムで行われ、但し、3kgのシリカ(カラム充填用)を用い、極性を0%から30%に増加させ、そして画分サイズを100mlとした点で異なる。該再精製により、表1において概略を示されているように、純度98%超を有するPTSOの2つの画分(EWR32514-02-1及びEWR32514-02-02)が結果とし得られた。
【0168】
【表1】
【0169】
この実施例から、PTSO及びPTSが高純度まで精製されたことが実証された。
【0170】
以下に記載されている実施例2~5の場合に、PTSO抽出物(PE)は56%のPTSOと約30%のポリエチレングリコールリシノール酸グリセリルとを含む。
【0171】
実施例2.観賞用植物の処理
【0172】
範囲:本実施例において、PTSO抽出物の生物刺激効果が実証された。この目的の為に、胡蝶蘭(Phalaenopsis)「ピュアシルク」(Pure silk)が選択された。植物の生育及び発達は下記の3段階を包含する:(1)栄養成長(vegetative growth)、(2)花の誘発及び(3)花茎の発達。
【0173】
以下に述べられている処理の後、開花誘発期間の終了で該植物が評価された。販売時に、該植物の開花が評価された。
【0174】
植物栽培の手順
【0175】
胡蝶蘭(Phalaenopsis)「ピュアシルク」(Pure silk)の株が分裂組織から生産され、あらかじめ成長させた。胡蝶蘭栽培業者に引き渡された株は、下記の手順で処理された。該株は、中位の大きさのバーク(middle-sized bark)中の透明な12cmの鉢に鉢植えされ(供給業者:Bas van Buuren B.V.,De Lier)、29℃で30週間栽培され、そして、5日毎に水及び肥料(100リットル/m2)がシャワーされた(EC 1.1)。
【0176】
必要であれば、該株は人工光に曝露された(午前7時から午後6時まで)。開花誘発の為に、該株が冷やされ、19℃で2ヶ月間栽培された。その後、該株は20~25℃で3~4ヶ月間栽培され、必要に応じて人工光に任意的に曝露された。このようにして、市場の需要に沿った適切な大きさの開花株が得られた。
【0177】
2020年7月に、若い胡蝶蘭がバークに鉢植えされた。7月は暑く且つ晴れた月で、該栽培者が遮光スクリーンを使用していたにもかかわらず、該株は、濃い緑色/赤みを帯びた垂れ下がった細い葉を示し、生育はほとんど進んでいなかった。これは、植物が非生物的ストレスを受けていたことを示した。根の数と根の生育は、透明ポットを通じて目視検査によって観察された。根の数と根の生育においてかなりのばらつきが、該株の群内で観察された。
【0178】
PTSO抽出物による様々な希釈液と処理回数についての植物の感受性を決定することを目的に、以下の実験設計が設定された。1m2の面積(約100株を含む)が、以下のように、PTSO/PTSの希釈液で処理され、そして、水(10L/m2)で希釈したものが手動でシャワーされた。希釈されたPTSO抽出物を用いた手動散水は、5日間の定期的なシャワーの後に直接行われた。この方法において、対照株と処理済の株との根支持体の水分含量はほぼ同じであった。
【0179】
処理1::PTSO抽出物を1,000倍希釈した供給溶液(EC 1.1)で2回処理、水やりの1回おきに与えられた(間隔は10日間);
処理2:PTSO抽出物を2,500倍希釈した供給溶液(EC 1.1)で2回処理、水やりの1回おきに与えられた(間隔は10日間);
処理3:PTSO抽出物を1,000倍希釈した供給溶液(EC 1.1)で8回処理、水やりの1回おきに与えられた(間隔は10日間);
処理4:PTSO抽出物を2,500倍希釈した供給溶液(EC 1.1)で8回処理、水やりの1回おきに与えられた(間隔は10日間);
処理後、該処理された株は対照株、すなわち未処理株、と同じ栽培手順を経た。
【0180】
36週間後、該株が、下記の特徴でスコア付けされた。
【0181】
植物間の差は、根の量、根の途切れがちな生育、葉の進行する発達、葉の数と長さ、株及びバークの質(色と保水性、すなわち推定重量、によって評価)で表された。評価が下記のように行われた:対照株から、最も大きい株と最も小さい株が選ばれた。最大のものが5でレート付けされ、且つ最小のものが1でレート付けされた。
【0182】
根の形成のレート付けに関しても、同じスコアリング付け手順に従われた:根が最も多い株に5がレート付けされ、且つ根が最も少ない株が1とレート付けされた。
【0183】
完全に発達した最大の葉の長さが、巻き尺で測定された。
【0184】
葉が「6~7枚」とは、6枚の葉が既に完全に発達されており、且つ7枚目の葉がまだ成長していることを意味する。
【0185】
「葉の厚さ」は、手で弓なりにしたときの葉の抵抗によってスコア付けされた。
【0186】
「バークの質」(Bark quality)は、組成物の程度を判断することでスコア付けされた。該バークが濡れていて且つ泥状であるほど、スコアは低くなる。
【0187】
「進歩的な生育」(Progressive growth)は、植物の葉が前の葉よりもどの程度大きくなっているかを推定するものである。特には、最後に完全に発達した葉が、最後から2番目に発達した葉と比較された。
【0188】
「植物の大きさ」は、下記の通りにスコア付けされた:株が大きいほど、スコアが高くなる。
【0189】
「植物特性」の場合に、該植物の大きさに主眼が置かれた。
【0190】
対照株が1~5でレート付けされ、処理済の株と比較された。処理済の株のうちのいずれか1つが評価基準に関してより良く発達された場合、それらは5点超をスコア付けされることができる。「植物特性」が最も悪かった植物が「1」とレート付けされ、且つ最も良かった株が「5」とレート付けされた。
【0191】
結果及び議論
【0192】
測定値の平均が、下記の表2にまとめられており、生データに基づいている。データは処理から36週間後に集められた。該株は、開花誘発の為に2週間温室の冷蔵部分を離れたばかりであった。
【0193】
【表2】
【0194】
PTSO抽出物の1,000倍希釈液と2,500倍希釈液で2回処理された株は、対照に比べて根の生育は有意に少ないことを示した。これらの処理済の株は、対照株の根よりも発達されていなかったにもかかわらず、処理済の株の根は、該株がより早く生育することを可能にする。
【0195】
両方の希釈液で8回処理された株についても、同様の、しかしより顕著な観察が行われた。該株のサイズは全ての処理の中で最大であった。加えて、根はかなり良好に発達していることを示した。その上、根の数が多いだけでなく、根の成長頂部が大きく、且つ太かった。その結果、胡蝶蘭の株に最も大きな影響を与えたのは、1,000倍希釈液を8回施与した処理であると結論づけられた。
【0196】
表1において示されているように、根支持体であるバークの品質がまたスコア付けされた。バークは、植物の栽培の間に微生物の活動によって徐々に分解される。該バークが分解されると、湿った嫌気性物質へと変化し、根の枯死につながる可能性がある。表1では、対照株(3.18)に比べて、処理済の株(2.72~3)についてバークの質がわずかに低いことを示しているが、これらの差は非常に小さいため、処理済の株に悪影響はないと考えられる。
【0197】
結論
【0198】
スコア付けされた株の特性に対するPTSO抽出物の非常に顕著な効果が実証された。生育刺激が、対照株と比較して観察された。植物成長ホルモンがPTSO抽出物中に含まれていない故に、この組成物は生物刺激剤のカテゴリー下に入る。非生物的ストレス(干ばつ、暑さ、非常に強い光の期間があった)を結果としてもたらした実験の間に、該株が最大生育速度で生育できないことは明らかであった。実験において、PTSO抽出物が非生物的ストレスを補う能力があることが示された。
【0199】
施肥条件は全ての植物で全く同じであったが、PTSO抽出物で処理された株において、植物特性が向上されると共に、より多くの植物バイオマスが形成された。このことは、PTSO抽出物で処理された株についての養分利用効率が高かったことを示す。
【0200】
他の興味深い観察は、該株が葉に非常にはっきりとした輝きを有していたことであった。このことは、葉上のより厚いワックス層の形成に起因しており、該株のより良い健康状態を示すものと考えられている。理論によって縛られることは望まないが、ワックスの厚い層は典型的には葉の上部表面からの水分蒸発を減少させ、それが非生物的ストレスにおける減少に寄与したと考えられている。
【0201】
PTSO抽出物が2回施与された胡蝶蘭(Phalaenopsis)の処理後の観察では、6か月を超える栽培期間にわたって長期効果を誘発するのに十分であることが示されており、それは非常に驚くべきことであった。
【0202】
該株の開花は上記処理による影響を受けず、該株は優れた商業的製品となった。しおれ、花の異常、茎の形又は大きさに異常は観察されなかった。
【0203】
この実施例において、PTSO抽出物が強力な生体刺激剤であることが明確に示されている。
【0204】
実施例2b.胡蝶蘭(Phalaenopsis)株の処理
【0205】
範囲:本実施例において、植え替え後の生存期間と、栽培期間の間の花茎の生産について実証された。この目的の為に、様々な胡蝶蘭(Phalaenopsis)の交配種が選択された。植物の生育及び発達は下記の3つの段階を包含する:(1)栄養成長(vegetative growth)、(2)花の誘導及び(3)花茎の発達。実施例2において記載されたものと同じ生育計画(grow-up regime)に従った。以下に述べられている処理の後、植え替え後の失敗率と栽培周期の終了時の花茎数で評価された。
【0206】
範囲:胡蝶蘭の栽培の間、生産者は移植後に重大な損失に直面する。これは、該交配種のサイズ、状態及び遺伝的背景に応じて、最大10%に達しうる。この実施例において、PTSO抽出物が移植後の(若い)胡蝶蘭(Phalaenopsis)の失敗を大幅に減少させ、且つ該株の販売前の花茎の数を増加させることが実証された。この目的の為に、胡蝶蘭(Phalaenopsis)の様々な交配種が分裂組織から生育され、Floriculturaで直径5cmになるまで70穴トレイで予備栽培された。その後、該株は生産者に引き渡され、70穴トレイから、基質としてエンドウ豆/ココス・プラグ(pea/cocos plugs)を有する45穴トレイに移植された(Xcellent Plug Quick plug B.V.,Monster,The Netherlands)。
【0207】
株の植え替えはストレスの多い時期であると考えられている。根が傷つくことは避けられず、植え替え直後の根支持体(バーク)は、保湿性及び毛細管現象の観点で最適な性質を有していないことが多い。該株はこれを干ばつとして、すなわち一種の非生物的ストレス、として経験する。
【0208】
植え替え後、2500倍に希釈されたPTSO抽出物で毎週処理された(800ml/ha)。植え替えから26週間後、13,000株が失敗(=完全な枯死)を確認され、未処理の株の13,000株と比較された。結果が下記の表2aにおいて表されている。
【0209】
【表2a】
【0210】
これらの結果から、PTSO抽出物による処理が、ストレスの多い処理として考えられうる植え替え後の生存率に強いプラスの効果有することは明らかである。
【0211】
26週間後、該株が透明な12cmポットに鉢上げされ、そして、実施例2において示されているのと同じ栽培計画(cultivation regime)で栽培された。
【0212】
交配種であるMekong、Orinoco、Ferrara及びGoyaが、実施例2において示されている生育で評価され、これら全ての交配種で生育促進が観察された(生データはここには示されていない)。
【0213】
冷蔵室において花茎を誘発した後、1株当たりの花茎数が数えられた。その為に、1交配あたり800株が評価された(下記の表2bを参照)。
【0214】
【表2b】
【0215】
表2bから、同じ条件下で栽培された場合、処理後に形成された花茎の数は対照群よりも多いことが明らかである。このことにより、PTSO抽出物が生物刺激剤といえる。
【0216】
実施例3.キク(Chrysanthemum)の挿し木の処理
【0217】
PTSO抽出物が、EUの規則2019/1009において定義されている生物刺激活性について試験された。結果は、キク(Chrysanthemum)の挿し木の発根及び生育について、言及された4つの特性の発生が確認された。実験は独立研究機関Vertify(オランダ)によって実施された。
【0218】
範囲:この実施例において、PTSO抽出物の生物刺激剤としての効果が実証された。この目的の為に、キク(Chrysanthemum)の変種「Chic」の挿し木が選ばれた。キク(Chrysanthemum)の挿し木は、平らな植物容器(「プロット」、各プロットは30株で構成される)に肥料を施した標準的な培養土に植えられた。
【0219】
全ての処理で、以下に示されているように、1週間の間隔をあけて、3回の反復処理が根に対して行われた。温室内の温度、光制御及び相対湿度は、気候コンピュータ(Sercom)を用いて記録された。
【0220】
処理後、開花誘発期の終わりに該株が評価された。最後の評価は、最後の処理から13日後に行われた。該挿し木は、根の形成、茎の長さ、及び株の全体的な状態について判定された。
【0221】
植物細胞の手順
【0222】
同じ長さの根を有する根付きキク(Chrysanthemum)「Chic」の挿し木が、オランダのRoyal van Zantenから届けられた。
【0223】
試験は温室施設内で管理された条件下で行われた。40×60cm及び深さ10cmの木箱(crate)に、肥料を施した標準的な培養土(有機培地)が満たされ、そこにキク(Chrysanthemum)の挿し木が植えられた。各プロットは、各々15株を有する2つの木箱(crate)で構成された(1プロット当たり30株)。
【0224】
処理(特定の希釈)は、1週間間隔で3回の施与で構成され、最初の施与は移植の1週間前(発根期)に行われ、2回目の施与は移植時に行われた。最後の施与は移植の1週間後に行われた。処理の無作為化が試験温室内で行われ、そして、Genstatソフトウェアを使用して植物が配置された位置が決定される。試験結果の統計分析が、同じソフトを用いて行われる。詳細はこの実施例の結果の部において記載されている。
【0225】
温室コンパートメント内の温度及び相対湿度は、気候コンピュータを用いて記録され、そして、夫々23℃及び50%に設定された。
【0226】
根を標的とする施与は、灌注(drench)又はスプレーで行われた。根への最初の施与は、およそ15分間、株を溶液中に灌注することによって行われた。未処理のプロットは水中に浸された。挿し木が土の入った木箱に移植されるまで、該挿し木の根が水に灌注されたまま該クレート内に保管された。更なる施与は、溶液を土壌にスプレーし、その後、穏やかな雨を降らせて発根ゾーン内に製品を取り込ませることによって行われた。施与と評価の詳細が下記の表3においてまとめられている。
【0227】
【表3】
【0228】
処理が、下記の表4においてまとめられている。Previcur Energyは殺菌剤であり、及びTrianum-Pは生物学的殺菌剤である。
【0229】
【表4】
【0230】
各評価日において、1プロット当たり10株の中心株の草丈が測定された。一般的な作物活力に関する追加評価がおこなわれた。一般的な作物活力は、1~10のインデックススケールで記録され(1=非常に貧弱な作物活力;10=優れた(普通以上の)作物活力)、及び一般的な健康状態の印象に基づいている。最終評価日において、地上部の植物塊の新鮮重量が測定された。木箱の底面での発根密度が記録された。この目的の為に、木箱がひっくり返され、そして、底の下側を覆っている根のパーセンテージが推定された。
【0231】
統計解析がGenstat(LSD検定,95%)を用いて行われた。表中のPは確率を意味する。Pが0.05以下の場合、2つの処理間の差は統計的に有意である。最小有意差(lsd:least significant difference)とは、95%(P=0.05)で有意に異なる処理間の最小差である。同じ文字で示された値には有意な差がない(P=0.05)。
【0232】
1リットルのPTSO抽出物が、1,000リットルの水内に溶かされ(希釈率1:1,000)、1,001リットルのこの量が表面積1haの土壌上にスプレーされた。)
【0233】
結果
【0234】
作物の高さを分析した後の結果が、下記の表5においてまとめられている。
【0235】
【表5】
【0236】
最も高い濃度(1:1000)を有するPTSO抽出物の場合に、移植時の0 DA-Bでは、他の全ての処理と比較して、該株は有意に低かった。1:2,500の濃度では、灌注(drench)処理による株の高さに対する悪影響は認められなかった。
【0237】
繰り返し施与の後も及び試験期間の間も、差は目に見えるものであった。PTSO抽出物で用量反応が構築された。最も背の高い株は、濃度1:10,000及び濃度1:50,000で測定された。
【0238】
一般的な作物活力は、1~10のインデックススケールで記録された(1=非常に貧弱な作物活力;10=優れた(普通以上の)作物活力)。作物活力は、植物の色及び形状に関する主観的な測定である。結果が、下記の表6においてにまとめられている。
【0239】
【表6】
【0240】
一般的な作物の活力については、1:1,000の濃度でのPTSO抽出物のみが、他の全ての処理と比較して低い結果であった。最終評価日(移植後19日目)に、地上部の植物塊の新鮮重量が測定された。木箱底面の発根密度が記録された。結果が下記の表7においてまとめられている。
【0241】
【表7】
【0242】
土壌処理として施与された1:1,000の濃度でのPTSO抽出物を用いて処理された植物の地上部の植物塊の新鮮重量は、他の処理に比べて少なかった。移植時の発根は影響を受けているように見えたが、移植後19日目に得られた最終結果では、発根に対する悪影響を示さなかった。この処理では、発根密度は他の処理に比べて更に高かった。PTSO抽出物を用いた全ての土壌処理後、発根密度は、未処理プロット並びに基準であるPrevicur Energy及びTrianum-Pの両方と同等であるか(表7における項目7)、又はそれらよりも高かった(表7における項目4~6及び8)。
【0243】
最高濃度(1:1,000)でのPTSO抽出物を用いて発根期(灌注)の間に最初に施与した後に、根はほとんど見られなかった。未処理のプロットと比較して、株はまた短かった。また、PTSO抽出物の1:2,500の濃度では、未処理並びに基準であるPrevicur Energy及びTrianum-Pと比較して、少ない根の数が観察された。
【0244】
反復施用後及び試験期間の間、土壌施用後に、PTSO抽出物による処理についての用量反応関係が観察された。最も背の高い株は、より低い濃度のPTSO抽出物、すなわち1:10,000及び1:50,000、で測定された。これらの濃度では、植え付けから2週間後まで、未処理の株と比較して有意に高かった。最も高濃度のPTSO抽出物、すなわち1:1,000のPTSO抽出物、に伏された場合に、株は他の全ての処理に比べて小さかった。該差は、最終評価日(移植後19日目)で、新鮮重量によっても反映された。
【0245】
1:1,000の濃度でPTSO抽出物を用いた処理の間に、発根期(灌注)の間の発根が影響を受け、他の処理に付されたものに比べて株が小さくなったが、最終的な発根に対する悪影響は見られなかった。1:1,000の濃度でのPTSO抽出物を用いて処理した後に、移植後19日目での発根は、試験された他の濃度を用いた処理に比べて数値的に更に良好であった。その上、PTSO抽出物を土壌処理として施与したときに、未処理のプロット並びに並びに基準であるPrevicur Energy及びTrianum-Pと比較して、数値的に良好な発根を結果として生じた。
【0246】
キク属(Chrysanthenum)は大量に生産される切り花であり、重量で小売りされる。この実施例において、該組成物がより多くの重量をもたらし、それ故に、園芸家にとって有益であることが明確に実証されている。
【0247】
これらの実験から、生体刺激効果を得る為には、この生物刺激剤の適切な量が投与されなければならないことがまた明らかである。
【0248】
実施例4.レタス種子及び苗の処理
【0249】
レタス(Lactuca sativa)の変種「volare」の種子が、Enza Zadenから、並びにTrianum PはBayer AG,Crop Science Divisionから得られた。
【0250】
播種箱(45個、30cm、深さ8cm、9リットルの土壌/播種箱)には、レタスが播種される為の細かい有機培地からなる標準的な播種用土壌(BVB Substrates)が満たされた。得られた播種用土壌は生産者によって施肥され、実験期間の間に施肥の追加は行われなかった。各プロットは50粒の種子を有する1つの播種箱で構成され、深さ2cmで植えられた。
【0251】
表8において示されているように、播種前に種子が近接処理された。
【0252】
【表8】
【0253】
PTSO抽出物を伴う溶液が水道水で調製された。施与は、該調製された溶液に種子を10分間灌注することによって行われた。灌注後、種子が風乾され、そして播種された。未処理の種子は水中に灌注された。「活力種子」が基準薬剤として用いられた。発芽まで箱に蓋がされた。温度は21℃に設定され、湿度は70~95%で変化された。光曝露は、植物から30cmの距離で25ワットのLEDチューブ3個によって実現された(50μmol)。発芽後、該蓋が外された。
【0254】
治療法の無作為化は手動で行われた。試験結果の統計分析はGenstatソフトウェアを用いて行われた。温度、光制御及び相対湿度は気候コンピュータ(Sercom)を用いて制御され及び記録された。
【0255】
試験の詳細が下記の表9においてまとめられている。
【0256】
【表9】
【0257】
全ての種子が完全に発芽したときに、該株は正常、小型、又は異常(奇形の子葉又は葉を有する株)のいずれかにスコア付けされ、一般的な作物の活力は1~10のインデックススケールで記録された。最終評価日(種子を植え付け後4週間目)に、地上部の植物塊の新鮮重量が測定された。
【0258】
各評価日において、発芽した株の数がプロット毎に数えられた。完全発芽後、該株は正常、小型、又は異常(奇形の子葉又は葉を有する株)のカテゴリーにスコア付けされた。その上、一般的な作物の活力が1~10のインデックススケールで記録された(1=非常に貧弱な作物活力;10=優れた(普通以上の)作物活力)。最終評価日には、地上部の植物塊の新鮮重量が測定された。統計解析はGenstatを用いて行われた(LSD検定,95%)。表中、Pは確率を意味する。Pが0.05以下の値を有する場合に、2つの処理間の差は統計的に有意である。最小有意差(lsd:least significant difference)とは、95%(P=0.05)における有意に異なる処理間の最小差である。同じ文字を有する値には有意な差はない(P=0.05)。例えば、12 DA-Sでの処理において、未処理株(「a」)と活力種子(「a」)、PE;1:50,000(「a」)又はPE;1:25,000(「ab」)との間に統計的に有意な差は観察されなかったが、未処理株(「a」)とPE;1:10,000(「bc」)及びPE;1:5,000(「c」)との間には統計的に有意な差が観察された。同様に、PE;1:5,000(「c」)処理は、PE;1:10,000(「bc」)を除く他の全ての処理と有意に異なった。
【0259】
結果及び議論
【0260】
各評価日において、発芽した株の数がプロット毎に数えられた。
【0261】
全ての植物が完全に発芽したときに、該株は、正常、小型、又は異常(奇形の子葉又は葉を有する株)のいずれかにスコア付けされた。
【0262】
結果が、下記の表10及び表11においてまとめられている。
【0263】
【表10】
【0264】
【表11】
【0265】
発芽した株の数と正常な株の数との間にはわずかな差しか見られず、小さな株又は異常な株物はほとんど見られなかったことがわかる。
【0266】
発芽の間及び完全発芽時では、発芽した株の数及び正常な株の数の両方において処理間で有意差は見られなかった。全ての処理で、発芽レベルは非常に良好であった。処理は、苗木の発芽又は品質に肯定的にも否定的にも影響しなかった。
【0267】
播種後12日目及びそれ以降の評価日付において、株の脱落が見られ、特には、未処理の、活力種子、及び低いPE濃度で見つかった。説明は見つからなかった。植物病原菌又は他のプラークは検出されなかった。
【0268】
処理間で有意な差が認められた。PEで用量反応が構築された。最高濃度(1:5,000)のPEでは、株の脱落は見られなかった。最低濃度(1:50,000)では、PEは未処理プロットと同程度であった。
【0269】
PEの希釈倍率が低い場合(すなわち、高濃度のPE)において、種子に灌注施与として適用されるときに、未処理の種子からの苗と比較して、苗はより回復力が高かった。1:5,000の濃度と1:10,000の濃度とで有意な効果が測定された。活力種子の場合において、未処理のプロットでは効果が観察されなかった。
【0270】
一般的な作物の活力は1~10のインデックススケールで記録された(1=非常に貧弱な作物活力;10=優れた(普通以上の)作物活力)。作物の活力は、株、この場合は色及び形状、に関する推定値である(下記の表12)。
【0271】
【表12】
【0272】
1:5,000及び1:10,000の希釈率では、低濃度の活力種子及び未処理のプロットと比較して、幾つかのより活力のある株が結果として得られた。
【0273】
最終評価日(播種後28日目;発芽後24日目)において、地上部の植物塊の新鮮重量が測定された。結果が、下記の表13においてまとめられている。
【0274】
【表13】
【0275】
PTSO抽出物希釈液を用いた全ての処理では、対照よりも新鮮重量における増加がもたらされた。結論として、全ての処理で発芽レベルは非常に良好であった。処理は、苗の発芽又は初期品質に悪影響を与えなかった。1:5,000及び1:10,000のPEで処理された種子から発芽した苗は、未処理の種子及び活力種子から発芽した苗に比べて、有意に回復力が高かった。株からの落葉はより少なく(±1%対±10%未処理)、作物の活力が未処理のプロットに比べて良好であった。また、播種後28日目に測定された作物の重量は、1:5,000及び1:10,000のPEで処理された場合に大きく、未処理に対して11%増の重量、ベンチマークである活力種子よりも26%増である結果をもたらした。その時の株の大きさは、生長した葉が4~6枚であった。
【0276】
参照剤である活力種子では、未処理のプロットと比較して影響は測定されなかった。
【0277】
結論
【0278】
本実施例は、PTSO抽出物を使用することにより、レタスの玉(heads)が大きくなり、養分の投入量当たりの収量(すなわち、養分利用効率のマーカー)が増加すること並びに作物の活力が増加することが実証され、本明細書に開示された化合物の生物刺激効果の更なる証拠を提供した。
【0279】
実施例5.トマト株の処理
【0280】
範囲:この実施例において、PTSO抽出物(PE)の生物刺激効果と投与方法とが実証された。この目的の為に、商業用トマト生産品種「Xandor」が選択された。
【0281】
植物栽培の手順
【0282】
Axia seeds(オランダ)からのトマト品種「Xandor」が使用された。該トマトの株は60cmの大きさに予め育てられた。
【0283】
該品種「Xandor」のトマト株が前培養され、そして、春に温室内でロックウールマット(rock wool mats)(Grodan(ROCKWOOL B.V.))に植えられた。該株には、Priva B.V.によって提供されるコンピューターシステムによって実際の蒸発量と天候とに応じて供給され及びオンライン調整された。植物供給における全ての養分は過剰に供給され、該組成物は毎週サンプリングされ、そして、養分の制限についてチェックされた。EC値は2.3~3.0に維持され、pHは5.4に保たれ、そして、継続的に修正された。下記の表14は、調整、監視、制御された生育パラメータを示す。表14は設定を示すが、実際の値は、日中の気象条件における変化の為にかなり異なる。
【0284】
【表14】
【0285】
【表15】
【0286】
処理が、下記の表16においてまとめられている。セレナーデ(Serenade)はトマト作物においてしばしば施与される殺菌剤である。
【0287】
【表16】
【0288】
各処理は13の株のグループからなる。
【0289】
施与されたスプレー量は各回150ml/m2、マット上に施与散布する場合には100ml/株が与えられた。一般的な作物の活力に対する追加評価が行われた。一般的な作物の活力は、1~10のインデックススケールで記録され(1=非常に貧弱な作物活力;10=優れた(普通以上の)作物活力)、一般的な健康状態の印象に基づいている。作物の活力基準は、「株の一般的な状態(該株の新鮮さ、葉の堅さ、健康な葉)」、「トマトの1玉(tomato head)の品質」(該1玉(head)の直径、茎の太さ、並びに1(非常に貧弱な)~10(優れた)、並びに葉の色(1(黄色)~5(緑色)でレート付けされた)。
【0290】
その上、1週間に1度、完熟トマトが収穫され、そして計測された。
【0291】
統計解析はGenstatを用いて行われた(LSD検定,95%)。表中、Pは確率を意味する。Pが0.05以下の値を有する場合に、2つの処理間の差は統計的に有意である。最小有意差(lsd:least significant difference)とは、95%(P=0.05)における有意に異なる処理間の最小差である。同じ文字を有する値には有意な差はない(P=0.05)。
【0292】
マットへの植え付け後、この品種について予想されたように作物の発達が進んだ。124日目に評価が開始された。結果が下記の表17~表20において提示されている。
【0293】
表17は、PTSO抽出物がトマトの累積生産量に悪影響を与えず、1:10,000の希釈でトマトの累積生産量がわずかに増加したことを実証した。多くの植物品質パラメータ例えば、トマトの玉(tomato head)の品質(表18)、植物の健康状態(表19)及び作物の色(表20)を含む上記の植物品質パラメータ、がスコア付けされた。PTSO抽出物の全ての希釈液は、トマトの玉(tomato heads)、植物の状態及び植物の色に関して、向上された品質を示した。
【0294】
施肥条件は全ての植物について同じであったが、PTSO抽出物で処理された株においては、向上された植物特性と共に、より多くの植物バイオマスが形成された。このことは、PTSO抽出物で処理された株の養分利用効率がより高かったことを示す。トマト作物栽培の最初の4週間にPTSO抽出物が施与されたトマト株に対する処理後になされた観察により、6ヶ月以上の栽培期間にわたって肯定的な効果を誘発する為に十分であることが示されたが、それは非常に驚くべきことであった。
【0295】
しおれ、花芽及び/又は落花、果実、茎若しくは葉の形状若しくは大きさの観点で異常は観察されなかった。
【0296】
全ての処理が作物の品質パラメータの向上を示したにもかかわらず、1つの投与方法のみが収穫量を増加する際に有効であることが見つけられた。すなわち、25,000倍に希釈されたPTSO抽出物での滴下による繰り返し処理である。これにより、トマトの累積生産量の8%の増加を結果としてもたらした。
【0297】
この実施例において、PTSO抽出物が、特に灌漑用水によって複数回与えられた場合に、強力な生物刺激剤であることが明確に示されている。
【0298】
【表17】
【0299】
【表18】
【0300】
【表19】
【0301】
【表20】
【0302】
実施例5b.トマトの様々な品種の処理
【0303】
この実施例において、PTSO抽出物(PE)の生物刺激剤効果が、トマトの様々な品種と、異なる栽培者とで実証された。
【0304】
範囲:様々な品種のトマト株が、異なる生産者で栽培され、そして、PTSO抽出物で処理された。下記の表20aにおいて、トマトの品種と生産者とがまとめられている。実施例5において記載されたものと同じトマト栽培計画(tomato cultivation regime)が用いられた。
【0305】
【表20a】
【0306】
結論:PTSO抽出物での処理は、試験された全てのトマトの品種で収量増加を明らかに示し、且つ広く適用可能である。
【0307】
実施例6 レタス
【0308】
上記からの結果に基づき、5.2%のPTSOを含む農業用組成物が調製された。該組成物は更に、59%の乳化剤(プロピレングリコール及びポリエチレングリコールリシノール酸グリセリル)を含む。該組成物は、本明細書において、「PTSO組成物5.2」と言及される。
【0309】
露地レタス変種Icebergの果樹園が選択された。無作為化完全ブロック計画(randomised complete block design)が行われ、各処理は4回反復された。120kPaの圧力及び10000L/haの水量で、点滴灌漑システム(drip irrigation system)を通じて6回の点滴施与が行われた。
【0310】
処理1:未処理チェック+ファーマープログラム+マターオーガニック(MATTER ORGANIC)10L/ha
処理2:0.5L/haのPTSO組成物5.2+ファーマープログラム+マターオーガニック(MATTER ORGANIC)10L/ha
処理3:1L/haのPTSO組成物5.2+ファーマープログラム+マターオーガニック(MATTER ORGANIC)10L/ha
【0311】
本明細書に記載された実施例において、「ファーマープログラム」(FARMER PROGRAM)とは、生産者(farmers)によって使用される標準的な栽培条件、例えば、養分、標準的な作物保護、光計画(light regime)等、を云う。
【0312】
処理
【0313】
該処理は14~24日の間隔で、およそ2週間毎に6回適用された。最後の処理は処理「F」として言及され、10DA-Fと言及されるブロー(blow)は、最後の処理(処理「F」)の10日後に実施された評価を言及する。
【0314】
市場流通可能な収量(marketable yield)(1ヘクタール当たりのレタスの数、1ヘクタール当たりのレタスのキログラム数(kg/ha)、レタス1個当たりの重さ(グラム)、及び収穫物中の市場性レタスのパーセンテージ)が、10DA-Fで評価された。加えて、1ヘクタール当たりの非市場性レタスの数、収穫物中の非市場性レタスのパーセンテージが10DA-Fで評価された。
【0315】
処理1が100%の値を与えられたときに、上記処理の残りは市場流通可能な収量についてより高い値を示した。処理3が最高の値を示し(1ヘクタール当たりの実数で102%、1ヘクタール当たりのキログラム数で121%、1つの実当たりの平均グラム数で118%、収穫物中の市場性レタスのパーセンテージで102%)、処理2がそれに続いた(1ヘクタール当たりの実数で101%、1ヘクタール当たりのキログラム数で110%、1つの実当たりの平均グラム数で108%、収穫物中の市場性レタスの割合で102%)。
【0316】
処理1が100%の値を与えられたときに、上記処理の残りは市場流通しない収量について低い値を示した。処理3が最低の値を示し(1ヘクタール当たりの実数と収穫物中の市場流通しないレタスのパーセンテージで61%)、処理2がそれに続いた(1ヘクタール当たりの実数と収穫物中の市場流通しないレタスのパーセンテージで69%)。
【0317】
実験室試験は、類似した発達段階を有する1プロット当たり8株のレタスで行われ、10DA-Fで1回の評価が実行され、地上部新鮮重量(g)、根重(g)、レタスの硬さ(kg/cm2)及び実直径(cm)が評価された。
【0318】
地上部の新鮮重量と根の新鮮重量に関しては、処理1が100%の値を与えられたときに、上記処理の残りの方がより高い値を示した。地上部と根の最高の新鮮重量は、処理3で得られ(夫々、117%と123%)、処理2がそれに続いた(夫々、107%と101%)。
【0319】
レタスの直径に関して、処理1が100%の値を与えられたときに、処理3が107%の値を有し、及び処理2が104%の値を有した。
【0320】
レタスの硬さに関して、処理1が100%の値を与えられたときに、処理3が133%の値を有し、及び処理2が125%の値を有した。
【0321】
最後に、各収穫から同じような発達段階のレタスが1プロット当たり5個ずつ取り出され、そして重量が測定され、6℃の冷蔵室に置かれ、そして、次の13日間でレタス1個あたりの重量減少が評価された;92DAP(Days After Plant:植えた後の日数)、93DAP、94DAP、95DAP、96DAP、97DAP、98DAP、99DAP、100DAP、101DAP、102DAP、103DAP及び104DAP(保存期間全体にわたって1個のレタス当たりの減少する重量のパーセンテージを計算)。次に、同じレタスが、室温(14℃)で放置され、そして次の7日間にレタス1個当たりの重量減少が再評価された;105DAP、106DAP、107DAP、108DAP、109DAP、110DA及び111DAP(保存期間全体にわたって1個のレタス当たりの減少する重量の最後のパーセンテージを計算)。
【0322】
実施例7 キュウリ
【0323】
キュウリの変種Katrinaの果樹園が選択された。基本的なプロットは、18m2であり、1プロット当たり13株であった。10000L/haの水量及び120kPaの圧力で、PTSO組成物5.2については14回の点滴施与(施与ABCDEFGHIJKLMN)及び、Isabion商標については7回の点滴施与(ACEGIKM)が点滴灌漑システムを用いて行われた。該施与は、PTSO組成物5.2については7日間の間隔で、及びIsabion商標については14日間の間隔で実行された。
【0324】
処理1:未処理チェック
処理2:ファーマーチェック
処理3:0.4L/haのPTSO組成物5.2+4L/haのIsabion商標+41gの遊離アミノ酸、40gの窒素、118gの有機炭素
処理4:0.4L/haのPTSO組成物5.2
【0325】
市場流通可能な収量(1ヘクタール当たりの実のキログラム数(kg/ha)、1ヘクタール当たりの実の数、及び実の重量(g))が、保存期間全体にわたって1個のレタス当たりの減少する重量のパーセンテージを計算して、3DA-B(すなわち、処理Bの3日後)、6DA-B、3DA-C、6DA-C、3DA-D、6DA-D、3DA-E、7DA-E、4DA-F、1DA-G、5DA-G、3DA-H、6DA-H、3DA-I、7DA-I、5DA-J、3DA-K、7DA-K、4DA-L、1DA-M、5DA-M及び3DA-Nで評価され、そして、最後に総収量及び平均値を算出した。実の直径及び長さ(mm)は、3DA-E及び7DA-Kで評価された。
【0326】
市場流通可能な収量(1ヘクタール当たりの実のkg、及び1ヘクタール当たりの実の数)に関しては、処理1が100%の値を与えられたときに、処理3が最高の収量(kg/haで116%及び実の数で113%)を得ており、処理4がそれに続き(kg/haで112%及び実の数で110%)、そして、処理2がそれに続いた(kg/haで104%及び実の数で104%)。
【0327】
実の直径に関しては、処理1が100%の値を与えられたときに、処理3が103~104%の結果をもたらし、処理4が102~104%の結果をもたらし、及び処理1が102~103%の結果をもたらした。
【0328】
実の長さに関しては、処理1が100%の値を与えられたときに、処理3が106~107%の結果をもたらし、処理4が106%の結果をもたらし、処理1が103~105%の結果をもたらした。
【0329】
実施例8 クローニングされたシンビジウム(Cymbidium)株の処理
【0330】
切り花を生産するシンビジウムの生産者は通常、花が咲き始めることができる前に自分自身で株を育てなければならない。可能な限り均一である花を得る為には、該生産者はクローン(分裂組織)からそれらの株を前成長させなければならない。花の生産が経済的に所望のレベルに達するまでには、5年以上かかる場合がある。
【0331】
株の生育及び発達は下記の3つの段階を包含する:(1)シュート形成の終わりに擬似球根が形成される栄養成長(vegetative growth)、(2)花の誘発、及び(3)花茎の発達。植物を開花サイズまで成長させる為に、成長時間を出来るだけ短く保つことは、経済的に興味深いことである。この実験設計において、PTSO抽出物(少なくとも56%の乳化されたPTSO(PE))が、シンビジウム(Cymbidium)の若株に対するPTSOの生物刺激効果を実証する為に使用される。
【0332】
この目的の為に、ラン科シンビジウム(Cymbidium)「49er」の若い分裂株が選ばれた。該株は、フラスコから移植された後、まだ最初の仮根を発達する前であった。下記に述べられている処理の後に、該株は206日後に以下に示されている評価が行われた。
【0333】
実験設計
【0334】
植物栽培の手順
【0335】
シンビジウム(Cymbidium)「49er」の株が、分裂組織から作られた。シンビジウム(Cymbidium)の生産者に届けられることに応じて、該株は、オスモコート(Osmocote)肥料粒(1,25kg/,M3)が加えられた中サイズのココピート(coco peat)内の9cmの黒色ポットに鉢植えされた。該株には、注入システムを介した自動散水システムを介して40mlの肥料供給(EC 0.4)が1日に2回供給された。該株は、
温室の条件に適応し、植え替えからおよそ4か月後にPTSO抽出物での処理が開始された。
【0336】
該実施例において、1処理当たり25株が使用された。株間は約15cmであった。葉の生育に関して、最も大きい葉の長さと最大幅、仮根の形成、最終的な大きさと外観及び新芽の数を測定することによって該株が監視された。根の数と根の緑色の先端が目視によって監視された。その上、外観及び健全性に関して該株に対する総合的判断がなされた。1処理当たり、8~24の株が判定された。
【0337】
PTSO抽出物の希釈、頻度、及び繰り返し処理の介入時間が下記の表21において示されている。植物には、指示された希釈のPTSO抽出物40mlが手動で与えられた。対照には、上述された標準的な施肥植物供給40mlが与えられた。処理後、該処理済の株は対照株、すなわち未処理の株と同じ栽培手順を受けた。
【0338】
【表21】
【0339】
該株は、t=0、t=112日及びt=206日目に、指示された変数についてスコア付けされた。
【0340】
仮根の高さ及び太さ;長さ;並びに幅が、テープライン(tape-line)を使用することによって測定された。根の量と、新鮮で白く生育した根の先端とが1~10のスケールで推定された。
【0341】
該根の量は、該株の根と、対照グループの平均的な根形成を有する株とを比較した後に判定された。この目的の為に、該株がポットから取り出され、対照処理の「平均」として判断される標準的な株と比較された。
【0342】
新鮮な根の先端の数は下記の通りに判定された:1:0~20%の根が白い成長した根の先端を示した;2:20~40%の根が白い成長した根の先端を示した;3:40~60%の根が新鮮な成長した根の先端を示した;4:60~80%の根が成長した白い根の先端を示した;5:80~100%の根が成長した白い根の先端を示した。「新芽の出現」は、新芽の数を、処理の判定された株の総数で割った数として計算される。
【0343】
株の「堅牢さ」(Robustness)は、株が対照グループの平均的な株と比較された後に与えられた任意の判断であり、1~10の範囲で変化し、1が最低スコアであり、及び10が最高スコアである。
【0344】
結果
【0345】
表22~表24において、処理の平均の結果が表されている。
【0346】
【表22】
【0347】
【表23】
【0348】
【表24】
【0349】
実験の間、全ての植物は十分に発達し、PTSO抽出物による該株に対する悪影響は検出されなかった。t=0における該株についてのランク付けがなされたが(表2)、厳密に言えば、株間の差は極めて小さかった。このことは、分裂組織から生育し、実験開始前の4ヶ月間に同じ条件下で栽培されたところの植物にとっては通常のことである。本明細書の以下において、該株は、表21において提示されているスケジュールに従って処理された。
【0350】
112日後、処理11の株は有意に大きく、且つより堅牢であった(表23)。高いスコアを有する十分に発達した堅牢な株は、(予備の炭水化物の貯蔵の為の)相対的に大きな仮根、(光合成の為の)大きな葉面、成長の早い大きな新芽、並びに水及びミネラルを取り込む為の十分に発達した根系を有するところの植物である。PTSO抽出物を反復して与えることにより、より肯定的な効果を結果としてもたらした(例えば、処理7~処理11を参照)。
【0351】
実施例9.レタス(lettuce)及びアマトウガラシ(sweet peppers)に対する有機硫黄化合物の効果
【0352】
実験設計:有機硫黄化合物の生物刺激効果が、レタス(lettuce)及びアマトウガラシ(Capsicum annuum "Ritmico")に対して試験された。試験した化合物は、ジ-n-プロピルジスルフィド(CAS番号629-19-6)、ジ-n-プロピルチオスルホナート(すなわち、PTSO,CAS番号1113-13-9)、ジメチルチオスルホナート(CAS番号2949-92-0)、及びジフェニルチオスルホナート(Cas番号1212-08-4)を包含する。ジメチルチオスルホナート及びジフェニルチオスルホナートはAdrich-Sigmaから得られた。PTSOは実施例1において記載されているように精製された。安定で且つ均質なエマルションを得る為に、該化合物が乳化剤溶液(表25)内に溶解されて、作物に決められた溶液が供給されるようにされた。このようにして、有機硫黄化合物の沈殿又は不混和の発生が防止される。本明細書における実施例として、「PTSO組成物5.2」は、5.2%のPTSOを含み及び59%の乳化剤(プロピレングリコール及びポリエチレングリコールリシノール酸グリセリル)を更に含むところの農業用組成物を云う。農業用組成物中の「PTSO組成物5.2Yuka」は、5.2%のPTSO及び90.2%のユカ抽出物(Yuka extract)を含む。農業用組成物中の「PTSO組成物5.2ツイーン(Tween)」は、5.2%のPTSO、30.1%のツイーン(Tween)、30.1%のDMSO及び30%の水を含む。対照と処理とが下記の表27において示されている。
【0353】
試験化合物が与えられる量はモル量に基づいて標準化され、同じモル量がPTSOとして与えられた。エマルションは、表25において示されているように必要量の化合物を100mlの50%のツイーン(Tween)80及び50mlのDMSO中に添加することによって調製された。その後、同じ混合液で最終容量250mlまで補充され、そして、37℃のオービタルシェーカー(orbital shaker)でインキュベートされた(30分,250rpm)。
【0354】
【表25】
【0355】
播種前に、レタスの種子が表25において示されているように1000倍に希釈されたエマルション内に浸され、そして、10分間インキュベートされた。各処理は4回行われた。表26において、レタス(lettuce)及びアマトウガラシ(sweet peppers)の生育設定がまとめられており、並びに表27において、レタス(lettuce)の実現した生育条件と収穫の概要が提示されている。
【0356】
表27において示されているように、レタス(lettuce)の全ての処理により、対照と比較して相対的な新鮮重量/株における増加、及び対照と比較して1株当たりの収穫重量における増加が示された。アマトウガラシ(sweet peppers)の生育を測定した時点では、実はまだ存在しなかった。しかしながら、予備的な結果では、全ての処理により、対照と比較して相対的な大きさによって測定される作物活力における増加をもたらしたことを示した。
【0357】
【表26】
【0358】
【表27】
【0359】
実施例10.タマネギ(onion)中とニンニク油(garlic oil)中のPTSOの分析
【0360】
範囲:タマネギ、及びニンニク油、並びにタマネギとニンニクとの抽出物が、Hemat S.Abd El-Salam et al.(2014) I Enhancement of Cumin (Cuminum cyminum L.) Productivity Using Some Natural Plant Extracts.Egypt.J.Hort.Vol.41,No.2,p 209~219に記載されている通りに得られた。サンプルは、下記の通りにPTSOの存在について分析された。
【0361】
実験設計:PTSO(ジ-n-プロピルチオスルホナート)の存在が、LC-MS/MSによって検出された。PTSO(CAS番号1113-13-9)の標準物質は、Symeres(Mercachem Holding B.V.)から有機合成によって得られた。化合物の同一性は、1H-NMR及びLC-MSによって確認され、及び純度はLC-UVによって決定され、そして、99.1%超であると決定された。
【0362】
このサンプルは平衡化グラフを作成する為に使用された。スパイク(spiking)と平衡化(equilibration)の為に、HPLC等級のメタノール中に2~200μMの純粋なPTSOを含むサンプルが調製された。
【0363】
LC-MS/MS(API4000,Sciex)は下記の構成を有していた:同期モード設定はLC-Sync、プレカラムとしてVanguard BEH C18 2.1 x 5mm、及びHPLCカラムとしてAcquity BEH C18 2.1 x 50mm 1.7μmが使用された。インジェクターはNexer社から供給された。
【0364】
オーブンが40℃に設定された。ポンプモードは三元流(ternary flow)であった。ポンプの設定は下記の通りであった:総流量は0.4ml/分であった;ポンプBの濃度(%)は0.0であり、ポンプCの濃度(%)は50.0である。ポンプBとポンプCのカーブは0であり、最小圧力と最大圧力の限界は夫々、0と16,000psiであった。ポンプAには、溶液LC-A(UPW(Ultrapure water)(超純水)中の5%メタノール中0.05%FA(Formic Acid)(ギ酸))が使用された。ポンプCは、メタノールを送液する為に使用された。
【0365】
MSの設定:
【0366】
【表28】
【0367】
【表29】
【0368】
方法:2.00~200μM(PTSO)の範囲における検量線標準物質がMeOH中に新たに調製された。
【0369】
サンプルからのPTSOの単離は、有機溶媒(メタノール(MeOH)、酢酸エチル(EtOAc)、n-ブタノール及びジクロロメタン(DCM))への抽出によって行われた。サンプルと抽出液の比は最大1以下である。分取調査の結果は、サンプルの抽出効率は30~40%であることを示し、それ故に、手順には参照サンプルが含められる必要がある。
【0370】
20μlのサンプル量が、オートサンプラーによって注入された。
【0371】
抽出物が、API 4000 LC-MS/MSシステム(PTSO)を用いて分析された。
【0372】
データ取得が、AB SciexからのAnalystソフトウェア(バージョン1.6.3)を用いて行われた。ピーク面積の積分の後に、Analystを使用して回帰がまた行われた。濃度が、下記の式に従って、加重線形回帰(weighted linear regression)を使用して計算された:y=a+bx(重み付け係数=1/x2)、ここで、x=PTSO濃度(μM)、y=ピーク面積比、a=切片、及びb=傾き。
【0373】
PTSOについての検量線範囲は2.0~200μMであり、定量分析範囲は2.0μM超であり、定性分析範囲は1.0μM超であり、いずれもサンプル量は20μlである。
【0374】
結果:
【0375】
【表30】
【0376】
これらの結果から、タマネギとニンニクには、個々の油と抽出物に由来するPTSOが検出されなかったことが実証される。
【0377】
実施例11.他の作物に対する効果
【0378】
範囲:PTSO抽出物の効果は、他の様々な作物に対して試験された。下記の表31は、少なくとも1つの測定変数における目に見える効果が観察されたところの作物からの結果を記載する。
【0379】
研究設計:下記の表32は、試験された作物とそれに対応する生育条件及び処理をまとめたものである。該作物は、植物栽培機(plant growers)で前栽培され、そして、一定の通気(昼夜)を有するビニールハウス内又は露地に、植えられた。植物にはプラグ(plugs)を介して又は灌漑用水が与えられた。該植物供給中の養分全てが過剰に供給された。作物に応じて、一定期間ごとに実が収穫され、そして、該実の累積重量が決定された。PTSO抽出物は、植物供給を介して根経由で供給された。限られた作物数で、根の形成とクロロフィル含有量がまた測定された。
【0380】
下記の表32において、監視された生育変数と収穫物とが表されている。生育パラメータである、温度、相対湿度及び光供給についてかなりばらつきがある。なぜならば、これらのパラメータは、管理されておらず、且つ日中に変化する天候に左右されるからである。気象条件は季節によって変化し、従って、実験が開始された月が表中に示されている。6月では光強度が最も高く、昼夜の温度、対応する相対湿度及び蒸発量の変動が最も大きい。これらの(極端な)変動は、高い非生物的ストレスを結果としてもたらす。PTSO抽出物は植物の非生物的ストレスに対する感受性を低下させると考えられる故に、該非生物的ストレス要因の変化が大きいほど、処理による作物に対するプラスの効果がより顕著になることが予想された。
【0381】
下記の表33は、PTSO抽出物が、作物の特性、例えば、傷んだ葉、作物の色、変形した葉又は大きさ、茎、実の形及び花、に対する何らかの否定的な影響を与えず、更には根の形成にも否定的な影響を与えなかったことを実証している。作物の状態は変わらないか、より良くなった。
【0382】
生育条件は、PTSO抽出物で処理した株と未処理の株(対照)とで同じに保たれた。このことは、PTSO抽出物で処理された植物についての養分利用効率はより高かったことを意味し、このことにより、PTSOは生物刺激剤である。
【0383】
温室の通気は日中一定であり、温度の関数として制御されていない故に、風と太陽とに応じて温度及び湿度の大きな偏差が予想される。相対空気湿度は温度に反比例して変化し、従って、大きな偏差がまた予想される。暑い時期には灌漑用水の供給がまた制限される場合があり、その結果、水分の取り込みが少なすぎて細胞の膨圧が緩み、葉が垂れ下がり、気孔が閉じてしまうことを生じる。その瞬間、光合成は停止する。これらの制御されていない環境要因は多くの非生物的ストレスを結果としてもたらし、理論によって縛られることは望まないが、PTSO抽出物は、植物に対する生物学的ストレスの影響を軽減し、結果として、光合成関連の代謝産物のレベルの高いレベル、より健康な作物及びより高い作物収量をもたらすことが示唆されている。作物に応じて、根系の向上及びクロロフィルレベルの向上のような、更なるプラスの特性が観察された(表33)。他の作物(バラ:より太く及び/又は長い茎、及び光沢のある葉;メロン:より緑でより大きな葉;さやいんげん(string beans):著しく大きい作物;トマト:より大きい頭、及びより多い葉緑素)では、生育が著しく早く、且つ向上された作物の特性が得られた。
【0384】
表31は、PTSO抽出物での処理後に、向上された作物特性の概要を提供する。全てのありうる作物特徴が監視されたわけではなく、従って、他の特徴が向上された可能性もあるが、本実験においては測定されなかった。
【0385】
【表31】
【0386】
【表32】
【0387】
【表33】
【国際調査報告】