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特表2024-540864連結性ナノ構造を有する電気化学セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】連結性ナノ構造を有する電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20241029BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241029BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241029BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241029BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241029BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241029BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20241029BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241029BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241029BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241029BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241029BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20241029BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20241029BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M8/12 101
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M4/139
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/60
H01M8/0247
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522076
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022077721
(87)【国際公開番号】W WO2023066666
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2130282-3
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513091308
【氏名又は名称】スモルテク アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ベンエル
(72)【発明者】
【氏名】チー リー
【テーマコード(参考)】
4K021
5H017
5H018
5H029
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA15
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE06
5H018AA06
5H018AS02
5H018BB07
5H018BB08
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE05
5H018EE10
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029BJ12
5H029DJ07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050FA04
5H126AA12
5H126BB03
5H126BB05
5H126BB06
5H126DD05
(57)【要約】
層状構造を含む電気化学セルにおいて、層状構造が少なくとも第1の層(510)および第2の層(520)を含む電気化学セル。第1の層および第2の層は互いに隣接して配置され第1の界面を形成し、第1の界面は、第2の層(520)に面する第1の層(510)の第1の表面に連結された第1の複数の細長いナノ構造(511)および第1の層(510)に面する第2の層(520)の第2の表面に連結された第2の複数の細長いナノ構造(521)を含む。第1の複数の細長いナノ構造(511)および第2の複数の細長いナノ構造(521)は、器械的に絡合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状構造を含む電気化学セル(100、200、300)において、前記層状構造が少なくとも第1の層(510)および第2の層(520)を含み、前記第1の層および第2の層が互いに隣接して配置されて第1の界面を形成し、前記第1の界面が、前記第2の層(520)に面する前記第1の層(510)の第1の表面に連結された第1の複数の細長いナノ構造(511)および前記第1の層(510)に面する前記第2の層(520)の第2の表面に連結された第2の複数の細長いナノ構造(521)を含み、前記第1の複数の細長いナノ構造(511)および前記第2の複数の細長いナノ構造(521)が器械的に絡合されている、電気化学セル(100、200、300)。
【請求項2】
前記第1の複数の細長いナノ構造(511)中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかが、互いに平行に配向されており、前記第1の層(510)の延在平面に直交する方向に沿って延在している、請求項1に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項3】
前記第1の複数の細長いナノ構造(511)中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかが、前記第1の層(510)の前記延在平面に平行な方向に沿って延在している、請求項1又は2に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項4】
前記第2の複数の細長いナノ構造(521)中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかが、互いに平行に配向され、前記第2の層(520)の延在平面に直交する方向に沿って延在している、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項5】
前記第2の複数の細長いナノ構造(521)中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかが、前記第2の層(520)の延在平面に平行な方向に沿って延在している、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項6】
前記第1および/または第2の複数の細長いナノ構造(511、521)が細長いカーボンナノ構造を含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項7】
前記第1および/または第2の複数の細長いナノ構造(511、521)が、カーボンナノファイバ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブおよびカーボンナノウォールのいずれかを含む、請求項6に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項8】
前記第1および第2の複数の細長いナノ構造(511、521)が、金属、合金、半導体および金属酸化物のいずれかを含むナノ構造を含む、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項9】
前記第1および/または第2の複数の細長いナノ構造(511、521)が、耐食性を向上させるように配置された保護コーティングを含む、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項10】
前記保護コーティングが、チタン、金、白金または白金族金属のいずれかを含む、請求項9に記載の電気化学セル(100、200、300)。
【請求項11】
前記電気化学セルが前記層状構造を含む燃料電池(100)であり、前記層状構造が第1の導電性素子(113)および第2の導電性素子(123)を含み、前記層状構造がさらに、前記第1および第2の導電性素子にそれぞれ隣接して配置された第1の多孔質輸送層(112)および第2の多孔質輸送層(122)、前記第1および第2の多孔質輸送層(112、122)にそれぞれ隣接して配置された第1の電極触媒層(111)および第2の電極触媒層(121)、並びに前記第1および第2の電極触媒層(111、121)の間に配置されたイオン交換膜(130)を含んでいる、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記第1の層(510)が、前記第1および第2の導電性素子(113、123)のいずれかであり、前記第2の層(520)がそれぞれの前記第1または第2の多孔質輸送層(112、122)である、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記第1の層(510)が、前記第1および第2の多孔質輸送層(112、122)のいずれかであり、前記第2の層(520)が、それぞれの前記第1または第2の電極触媒層(111、121)である、請求項11または12に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記電気化学セルが前記層状構造を含む電解槽(200)であり、前記層状構造が第1の導電性素子(213)および第2の導電性素子(223)を含み、前記層状構造がさらに、前記第1および第2の導電性素子(213、223)にそれぞれ隣接して配置された第1の多孔質輸送層(212)および第2の多孔質輸送層(222)、前記第1および第2の多孔質輸送層(212、222)にそれぞれ隣接して配置された第1の電極触媒層(211)および第2の電極触媒層(221)、並びに前記第1および第2の電極触媒層(211、221)の間に配置されたイオン交換膜(230)を含んでいる、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記第1の層(510)が、前記第1および第2の導電性素子(213、223)のいずれかであり、前記第2の層(520)がそれぞれの前記第1または第2の多孔質輸送層(212、222)である、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記第1の層(510)が、前記第1および第2の多孔質輸送層(212、222)のいずれかであり、前記第2の層(520)が、それぞれの前記第1または第2の電極触媒層(211、221)である、請求項14または15に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記電気化学セルが少なくとも1つの層状構造を含む電池(300)であり、前記層状構造が集電体(312、322)および活性層(311、321)を含み、前記活性層が電極材料を含んでいる、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
前記第1の層が前記集電体(312、322)であり、前記第2の層が、前記少なくとも1つの層状構造中の前記活性層(311、321)である、請求項17に記載の電気化学セル。
【請求項19】
電気化学セル(100、200、300)用の層状構造の製造方法において、前記層状構造が少なくとも第1の層(510)と第2の層(520)を含んでおり:
第1の複数の細長いナノ構造が前記第1の層(510)の第1の表面に連結されている、前記第1の複数の細長いナノ構造(511)を生成すること(S1)と;
第2の複数の細長いナノ構造が前記第2の層(520)の第2の表面に連結されている、前記第2の複数の細長いナノ構造(521)を生成すること(S2)と;
前記第1の層(510)の前記第1の表面が前記第2の層(520)の前記第2の表面に対面し、これにより前記第1の複数の細長いナノ構造(511)および前記第2の複数の細長いナノ構造(521)を器械的に絡合した状態にすることができるように、前記第1の層(510)を前記第2の層(520)に隣接して配置して第1の界面を形成すること(S3);
を含む方法。
【請求項20】
前記第1および/または第2の複数のナノ構造(511、521)を生成すること(S1、S2)が、基板上に前記細長いナノ構造を成長させること(S11、S21)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細長いナノ構造を前記基板上に成長させること(S11、S21)が、前記基板の表面上に成長触媒層を被着させること(S111、S211)および前記細長いナノ構造を前記成長触媒層上に成長させることを含んでいる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記成長触媒層を被着させることが、均一な成長触媒層を被着させること(S111、S211)および前記被着した均一な成長触媒層上にパターンを導入することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板の表面上に導電性層を被着させること(S112、S212)を含む、請求項20~22のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
耐食性を向上させるように配置される保護コーティングで前記第1および/または第2の複数のナノ構造(511、521)を被覆すること(S12、S22)を含む、請求項19~23のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル、例えば燃料電池、電解槽および電池、詳細には電気化学セルの構成要素を連結するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、燃料電池および電解槽などの電気化学セルは、現代のエネルギシステムにおいて幅広く応用されている。水の電解を通した水素ガスの生産は、化石燃料からの水素ガスの生産に置換するため、そして太陽光発電および風力発電などの断続的エネルギ源からの余剰の電気エネルギを化学的エネルギへと変換して貯蔵する手段としての両方のための有望な技術である。その一方で、燃料電池は、一部には例えば内燃機関に比べてその効率が高いこと、そして一部には持続的に生産される水素ガスなどの環境にやさしい燃料を容易に使用できることに起因して、化学的エネルギから電気エネルギへの変換のための魅力的な技術である。同様に、電池は、例えば電気自動車において増々使用されてきている。
【0003】
しかしながら、既存の電気化学セルは、セルの構成要素間の接触抵抗が高いという問題を抱えている。
【0004】
特許文献1は、接触抵抗が低減された電気化学セルのための構成要素を開示している。
【0005】
それでもなお、接触抵抗をさらに低くした電気化学セルが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/186047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、とりわけ構成要素間の接触抵抗の低下を提供する改良型電気化学セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、少なくとも部分的に、層状構造を含む電気化学セルによって得られる。層状構造は、少なくとも第1の層および第2の層を含み、第1の層および第2の層は互いに隣接して配置されて第1の界面を形成する。第1の界面は、第2の層に面する第1の層の第1の表面に連結された第1の複数の細長いナノ構造を含む。
【0009】
界面は同様に、第1の層に面する第2の層の第2の表面に連結された第2の複数の細長いナノ構造を含む。第1の複数の細長いナノ構造および第2の複数の細長いナノ構造は、器械的に絡合されている。
【0010】
第1および第2の複数の細長いナノ構造の器械的絡合は同様にインタロック構造を形成する第1および第2の複数の細長いナノ構造として説明することができる。有利には、これによって、第1および第2の層の間に器械的結合が形成され、層間のより良好な器械的接触および層間の電気的接触抵抗の削減がもたらされる。詳細には、第1および/または第2の層が一様でないまたは多孔質の表面を有する場合、第1および第2の複数の細長いナノ構造によって形成されるインタロック構造は、2つの裸の表面が接触状態に置かれる場合に比べて、2つの層間の接触面積を大幅に増大させ、それにより電気的接触抵抗を低下させることができる。
【0011】
電気化学セルの動作中に、第1および/または第2の層が形状および/または体積が変化する場合、さらなる利点が生じる可能性がある。第1および第2の複数の細長いナノ構造が、体積および/または形状の変化全体を通して器械的絡合を維持するように配置される場合、開示された器械的絡合によって電気的接触抵抗および層剥離のリスクの両方を削減することができる。
【0012】
いくつかの態様によると、第1の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、互いに平行に配向され、第1の層の延在平面に直交する方向に沿って延在することができる。同様にして、第2の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、互いに平行に配向され、第2の層の延在平面に直交する方向に沿って延在してよい。
【0013】
第1および/または複数の細長いナノ構造中の細長いナノ構造の少なくともいくつかがそれぞれの第1または第2の層の延在平面に直交する方向に沿って延在する場合、すなわち細長いナノ構造は、直交して配向されており、これにより、器械的絡合の形成が促進される。第1の複数の細長いナノ構造中に含まれる直交して配向されたナノ構造は、例えば、第2の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の間の空間内へと延在し、その逆も同様である。さらに、延在平面に直交する方向に沿った細長いナノ構造の範囲は、第1および/または第2の層の表面が一様でないことを補償するように調整可能である。
【0014】
他の態様によると、第1の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、第1の層の延在平面に平行な方向に沿って延在していてよい。同様にして、第2の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、第2の層の延在平面に平行な方向に沿って延在してよい。
【0015】
有利には、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造の細長いナノ構造のいくつかが、それぞれの第1および第2の層の延在平面に対して平行に延在する場合、これにより、直交して配向されたナノ構造が中へ延在できる空間を形成することによって、他方の層に連結された直交して配向された細長いナノ構造との器械的絡合の形成が促進される可能性がある。
【0016】
第1のおよび/または第2の複数の細長いナノ構造は細長いカーボンナノ構造を含んでいてよい。有利には、カーボンナノ構造は、優れた導電率および多くの電気化学セル内で使用するための適切な化学的安定性を示す。詳細には、細長いナノ構造は、カーボンナノファイバ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブおよびカーボンナノウォールのいずれかといった炭素同素体であってよい。カーボンナノファイバ、ナノワイヤ、ナノウォールおよびナノチューブの密度および形状などの特性は、ナノファイバ、ナノワイヤ、ナノウォールおよびナノチューブの製造条件を変更することによって容易に調整可能である。カーボンナノファイバ、ナノウォールおよびナノワイヤは同様に器械的に剛性であり、電気化学セルの組立ての間、第1および/または第2の層に対する配向性を維持しやすい。
【0017】
第1および第2の複数の細長いナノ構造は、同様に、金属、合金、半導体および金属酸化物のいずれかを含むナノ構造を含んでいてよい。このようなナノ構造は、高い導電率および優れた器械的な安定性を示し、これが1つの利点である。
【0018】
例えば高いまたは低いpHおよび高い電位の結果としてもたらされる電気化学セル内の厳しい化学的環境に起因して、電気化学セルの構成要素を形成する材料は腐食のリスクにさらされる可能性がある。したがって、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造は、耐食性を向上させるように配置された保護コーティングを含んでいてよい。保護コーティングは、チタン、金、白金または白金族金属のいずれかを含んでいてよい。
【0019】
態様に応じて、電気化学セルは、層状構造を含む燃料電池であってよい。その場合、層状構造は、第1の導電性素子および第2の導電性素子、ならびにそれぞれの第1および第2の導電性素子に隣接して配置された第1の多孔質輸送層および第2の多孔質輸送層を含む。層状構造はさらに、それぞれの第1および第2の多孔質輸送層に隣接して配置された第1の電極触媒層および第2の電極触媒層、そして第1および第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜を含む。
【0020】
燃料電池中に含まれた層状構造内の任意の隣接層対が、先に説明した通り、第1および第2の複数の細長いナノ構造を含む界面を形成してよい。有利にも、これにより、以上で説明した通りの他の利点と共に、隣接層間の電気的接触抵抗を削減することができる。
【0021】
一実施例によると、第1の層は、第1および第2の導電性素子のいずれかであってよく、このとき第2の層は、それぞれの第1または第2の多孔質輸送層であってよい。別の実施例によると、第1の層は、第1および第2の多孔質輸送層のいずれかであってよく、このとき第2の層は、それぞれの第1または第2の電極触媒層であってよい。
【0022】
他の態様によると、電気化学セルは、層状構造を含む電解槽であってよい。電解槽中、層状構造は、第1の導電性素子および第2の導電性素子を含む。層状構造はさらに、それぞれの第1および第2の導電性素子に隣接して配置された第1の多孔質輸送層および第2の多孔質輸送層、ならびにそれぞれの第1および第2の多孔質輸送層に隣接して配置された第1の電極触媒層および第2の電極触媒層を含む。層状構造は同様に、第1および第2の電極触媒層の間に配置されたイオン交換膜も含んでいる。
【0023】
電解槽中に含まれた層状構造内の任意の隣接層対が、先に説明した通り、第1および第2の複数の細長いナノ構造を含む界面を形成してよい。有利にも、これにより、以上で説明した通りの他の利点と共に、隣接層間の電気的接触抵抗を削減することができる。
【0024】
一実施例によると、第1の層は、第1および第2の導電性素子のいずれかであってよく、第2の層は、それぞれの第1または第2の多孔質輸送層であってよい。別の実施例によると、第1の層は、第1および第2の多孔質輸送層のいずれかであってよく、第2の層は、それぞれ第1または第2の電極触媒層であってよい。
【0025】
電気化学セルは同様に、少なくとも1つの層状構造を含む電池であってよい。電池内で層状構造は、集電体および活性層を含み、ここで活性層は電極材料を含んでいる。
【0026】
一実施例によると、電池は、液体電解質によって分離された集電体と活性層を各々含む2つの層状構造を含む。別の実施例によると、電池は、第1の集電体、第1の活性層、固体、半固体またはゲル様の電解質を含む電解質層、第2の活性層および第2の集電体を含む1つの層状構造を含んでいる。
【0027】
電池中に含まれた層状構造内の任意の隣接層対が、先に説明した通り、第1および第2の複数の細長いナノ構造を含む界面を形成してよい。有利にも、これにより、以上で説明した通りの他の利点と共に、隣接層間の電気的接触抵抗を削減することができる。
【0028】
さらに、電池セル内の活性層は、充電および放電中に体積変化を起こす可能性がある。第1および第2の複数の細長いナノ構造は、充電および放電サイクル全体を通して器械的絡合を維持するように配置され得、これが1つの利点である。したがって、第1の層は、集電体であってよく、第2の層は、少なくとも1つの層状構造中の活性層であってよい。
【0029】
本明細書中では同様に、層状構造を含む電気化学セル用の層状構造を製造するための方法も開示されている。層状構造は、少なくとも第1の層と第2の層を順番に含んでいる。該方法は、細長いナノ構造が第1の層の第1の表面に連結されている、第1の複数の細長いナノ構造を生成することを含む。該方法は同様に、第2の層の第2の表面に連結されている第2の複数の細長いナノ構造を生成することと、第1の層を第2の層に隣接して配置して第1の界面を形成し、第1の層の第1の表面が第2の層の第2の表面に対面するようにすることを含む。これにより第1の複数の細長いナノ構造および第2の複数の細長いナノ構造は、器械的絡合を通して第1および第2の層を連結することができる。
【0030】
第1および第2の複数の細長いナノ構造の器械的絡合は同様にインタロック構造を形成する第1および第2の複数の細長いナノ構造として説明することができる。有利には、これによって、第1および第2の層の間に器械的結合が形成され、層間のより良好な器械的接触および層間の電気的接触抵抗の削減がもたらされる。詳細には、第1および/または第2の層が一様でないまたは多孔質の表面を有する場合、第1および第2の複数の細長いナノ構造によって形成されるインタロック構造は、2つの裸の表面が接触状態に置かれる場合に比べて、2つの層間の接触面積を大幅に増大させることができる。
【0031】
第1および/または第2の複数のナノ構造を生成することは、基板上に細長いナノ構造を成長させることを含み得る。有利には、基板上に細長いナノ構造を成長させることにより、例えば第1および第2の層の間の器械的および電気的接触を改善させるために、ナノ構造の成長条件を調整することによって、ナノ構造の特性および形状を調整することが可能となる。例えば、構造的安定性を改善するように、細長いナノ構造の厚みを選択することができる。
【0032】
基板上に細長いナノ構造を成長させることは、基板の表面上に成長触媒層を被着させることおよび成長触媒層上に細長いナノ構造を成長させることを含んでいてよい。成長触媒層は、細長いナノ構造の成長を促進させる。成長触媒層の特性を改変することによって、成長した細長いナノ構造の特性を調整して、複数の細長いナノ構造の機能性を改善することができる。
【0033】
成長触媒層を被着させることは、均一成長触媒層を被着させることおよび被着した均一成長触媒層上にパターンを導入することを含んでいてよい。被着した均一成長触媒層上にパターンを導入することの利点は、基板上の表面積あたりのナノ構造数を制御することを可能にするという点にある。表面積あたりのナノ構造数は、例えば、層状構造の第1および第2の層の間の電気的および器械的接触を改善するように適応されてよい。
【0034】
態様に応じて、該方法は同様に、基板の表面上に導電性層を被着させることを含んでいてよい。有利には、基板の表面上に導電性層を被着させることにより、基板を電気的に接地する効果を生み出すことができる。ナノ構造を成長させる一部の方法にとっては、基板を電気的に接地することが有利であり得る。基板の表面上に導電性層が被着され、導電性層の上に成長触媒層が被着される場合、導電性層は同様に、触媒層と基板の間の原子および/または分子の交差拡散も妨げることができる。
【0035】
他の態様によると、該方法は同様に、耐食性を向上させるように配置された保護コーティングで第1および/または第2の複数のナノ構造を被覆することも含んでいてよい。保護コーティングは、電気化学セルの化学的環境から第1および第2の複数の細長いナノ構造を遮蔽し、劣化を防ぐことができる。
【0036】
概して、クレーム中で使用されている全ての用語は、本明細書中において明示的に別段の定義がなされているのでないかぎり、技術的分野におけるそれらの通常の意味で解釈されなければならない。「1つの/該要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」に対する言及は全て、別段の明示的な記載が無いかぎり、その要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの事例を意味するものとしてオープンに解釈されるものである。本明細書中で開示されているいずれの方法のステップも、明示的に記載されているのでないかぎり、開示されている正確な順序で実施される必要はない。本発明のさらなる特徴および利点は、添付のクレームおよび以下の説明を検討した時点で明らかになるものである。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、以下で説明されるもの以外の実施形態を創出するために、本発明の異なる特徴を組合わせることができるということを認識するものである。
【0037】
ここで、本開示について、添付図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、燃料電池を概略的に例示する。
図2図2は、電解槽を概略的に例示する。
図3図3は、電池を概略的に例示する。
図4図4は、スーパーキャパシタを概略的に例示する。
図5A図5Aは、連結性ナノ構造を概略的に例示する。
図5B図5Bは、連結性ナノ構造を概略的に例示する。
図5C図5Cは、連結性ナノ構造を概略的に例示する。
図5D図5Dは、連結性ナノ構造を概略的に例示する。
図6図6は方法を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の態様についてここで、添付図面を参照しながらより詳細に説明する。ただし、本明細書中で開示されている異なるデバイスおよび方法は、多くの異なる形態で実現可能であり、本明細書中に記載されている態様に限定されるものとみなされるべきではない。図面中の同様の番号は、全体を通して同様の要素を意味している。
【0040】
本明細書中で使用されている用語は、本開示の態様を記述するためだけのものであり、本発明を限定するよう意図されたものではない。本明細書中で使用される単数形態「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の指示が明確になされているのでないかぎり、複数も含むように意図されている。
【0041】
以下の説明は、電気化学セルに関するものであり、電池、燃料電池および電解槽に焦点があてられている。しかしながら、当業者であれば、本明細書中で開示されている方法およびデバイスが、他のタイプの電気化学セル、例えばフロー電池、スーパーキャパシタおよびハイブリッドスーパーキャパシタなどにも同様に適用可能であるということを認識する。
【0042】
燃料電池中では、燃料由来の化学エネルギが、還元および酸化反応を通して電気エネルギに変換される。燃料電池は2つの電極および、電極間でイオンが移動できるようにする電解質を含む。電極は同様に、電気負荷に電気的に接続され、そこで、生成された電気エネルギが使用される。
【0043】
燃料電池電解質は、良好なイオン伝導体であり、すなわちイオンを輸送できると同時に、悪い電子伝導体であり、すなわち電子の輸送を妨害するものでなければならない。燃料電池電解質は液体、例えばアルカリ塩の溶液若しくは融解炭酸塩化合物の溶液か、または、ポリマ膜若しくは金属酸化物などの固体であってよい。ポリマ膜材料の例は、ナフィオンとしても知られるスルホン化テトラフルオロエチレン、およびポリスルホンまたはポリフェノール酸化物をベースとするポリマである。イオン伝導性金属酸化物は例えば、ドープジルコニウム酸バリウム、ドープセリウム酸バリウム、ドープ没食子酸ランタンまたは安定化ジルコニアであってよい。異なるタイプのイオンを伝導するためには、異なる電解質が好適であり得る。例えば、ナフィオンのようなスルホン化テトラフルオロエチレンベースの膜は、水素イオン、すなわちプロトンを伝導でき、したがって、プロトン交換膜またはPEMとして知られている。多くの金属酸化物が、酸素イオンを伝導するために好適である。
【0044】
好ましくは、電解質は、1つの電極から他の電極への電解質を通した燃料の輸送も妨害しなければならない。電解質が液体である場合には、1つの電極から他の電極への燃料輸送を妨害するために、追加のポリマ膜を加えてよい。他の場合には、燃料輸送を妨害するために膜に別の材料を加えてよい。一例として、ナフィオン膜を含むメタノール燃料電池においては、膜の片側にルテニウムを加えてよい。
【0045】
ナフィオンなどのイオン交換膜を使用する燃料電池は、膜がプロトンを伝導することから、多くの場合、プロトン交換膜燃料電池またはPEMFCと呼ばれる。PEMFCにおいては、水素ガスなどの水素含有燃料が、アノードとして知られる第1の電極において導入され、一方カソードとして知られる第2の電極では酸素含有ガスが導入される。アノードでは、水素は電極触媒を用いてプロトンおよび電子に分割される。これは水素酸化反応と呼ばれる。プロトンは、カソードまでイオン交換膜を横断し、一方電子は、アノードとカソードの間の電気接続を横断し、そこで、生成された電気エネルギを使用することができる。カソードでは、プロトンおよび電子が酸素還元反応を通して酸素と反応し水を形成する。この反応は同様に、電極触媒によって補助される。
【0046】
触媒は、例えば化学反応を開始させるのに必要とされるエネルギ量を低下させることによって化学反応を促す材料または化学化合物である。電極触媒は、燃料電池内で起こる水素酸化および酸素還元反応などの電気化学反応において使用される触媒である。燃料電池電極触媒は、白金、ルテニウムまたはパラジウムなどの貴金属を含むことが多い。
【0047】
PEMFCおよび固体イオン伝導体を使用する他の燃料電池において、アノードおよびカソード触媒は多くの場合、イオン交換膜の対向する表面上に電極触媒層として配置される。特にPEMFCについては、電極触媒層は多くの場合、ナノ粒子すなわち実質的に1マイクロメートル未満そしてほとんどの場合1~100nmの直径を有する粒子の形をした、白金などの電極触媒材料を含む。電極触媒層は典型的に同様に、多くの場合カーボンナノ粒子またはナノチューブなどのカーボンナノ材料、またはカーボンブラックを含む触媒バインダまたは担体も含んでいる。電極触媒層は同様に、イオン交換膜への水素イオンの輸送を促すように配置されたイオン伝導性ポリマおよびテフロン(登録商標)などの疎水性材料も含んでいてよい。態様に応じて、触媒層の厚みは5~50nmであってよい。他の態様によると、触媒層の厚みは、使用される触媒タイプに左右される可能性がある。
【0048】
対向する表面上に配置されたアノード電極触媒層およびカソード電極触媒層を有するイオン交換膜は、時として膜電極アセンブリと呼ばれる。
【0049】
燃料電池が動作するためには、イオンおよび電子がそれぞれイオン交換膜および電気負荷を通ってアノード側の電極触媒から移動し、カソード側の電極触媒に到達できなければならない。さらに、水素および酸素ガスなどの反応性ガスが電極触媒層に到達できなければならず、その一方で生成物である水蒸気がセルから除去されなければならない。大部分のPEMFCにおいて、このことは、各触媒層の隣りの層内に導電性の多孔質材料を、そして多孔質材料層の隣りに導電性素子を配置することによって達成される。
【0050】
多孔質材料層は例えば、多孔質輸送層、大量輸送層、ガス拡散層(GDL)または単に拡散層と呼ばれる場合がある。これらの用語のいくつか、例えばガス拡散層が一般に燃料電池との関連で使用され、一方、電解槽との関連では、多孔質輸送層などのいくつかの用語がより一般的に使用される。しかしながら、これらは全て、電極触媒層などの活性層へおよびこの活性層からの生成物および反応物の電子輸送および大量輸送の両方を同時に可能にする機能を果たす多孔質材料層を意味する。したがって、上述の異なる用語は、燃料電池との関連および電解槽との関連の両方において、本開示中では互換的に使用されるものとする。
【0051】
導電性材料、素子または構成要素は、ここでは、高い導電率を有する材料、素子または構成要素であるものとして考えられる。高い導電率とは、通常、金属または半導電性材料に結び付けられる導電率または100Sm-1超の導電率であり得る。
【0052】
図1は、イオン交換膜130、第1の電極触媒層111および第2の電極触媒層121を含む燃料電池100を示す。第1および第2の電極触媒層111、121は、イオン交換膜に隣接してかまたはイオン交換膜のいずれかの側に配置される。第1のPTL112および第2のPTL122が、イオン交換膜130から離れる方向に面する電極触媒層の側でそれぞれの第1および第2の電極触媒層111、121に隣接して配置されている。第1および第2のPTL112、122に隣接して、それぞれの電極触媒層111、121から離れる方向に面する側には、それぞれの導電性素子113、123が存在する。各導電性素子は、負荷140に対して電気的に接続されている。
【0053】
PTL112、122は、反応物および生成物、例えば水素ガス、酸素ガスおよび水をPTLの細孔を通って輸送できるようにする一方で、電極触媒層と導電性素子の間の電気的接触をなおも維持するように配置されている。PTLは、多くの場合、金属発泡体、多孔質炭素またはカーボン紙などの多孔質導電性材料を含む。PTLは同様に、電極触媒層111、121およびイオン交換膜130のための構造的支持体をも提供し得る。
【0054】
導電性素子113、123は多くの場合、鋼などの金属材料および/または炭素複合材などの他の導電性材料を含む。導電性素子113、123は、電気負荷に接続され、同様に燃料電池をその周囲環境から分離する。燃料電池が燃料電池スタックの一部を成している場合、導電性素子が1つの燃料電池のカソード側および隣接するセルのアノード側の一部を成していてよく、その場合、それをバイポーラ板と呼ぶことができる。他の考えられる用語は、セパレータプレート、セパレータ要素、またはフロープレートである。
【0055】
以上の段落では、プロトン交換膜を含み燃料として水素ガスを使用する燃料電池に焦点があてられているものの、当業者であれば、本明細書中で開示されている方法およびデバイスが他のタイプの燃料電池にも応用可能であるということを認識するものである。このような燃料電池の例は、燃料としてメタノールを使用する燃料電池、または異なるタイプの電解質、例えばアニオン交換膜または液体電解質を含む燃料電池であり得る。
【0056】
先に言及した通り、本開示は同様に、電解槽にも関する。水電解槽は、電気エネルギを用いて水を酸素ガスと水素ガスに分割する。電解槽は通常、燃料電池について上述した通り、同じまたは類似の構成要素を含んでいてよい。詳細には、水電解槽は、イオン伝導性電解質および2つの電極を含み、電極のうちの一方はカソード、他方はアノードである。カソードとアノードは電源に電気的に接続されている。他の上述のポリマ膜および固体酸化物イオン伝導体でも可能であるように、ナフィオンなどのプロトン交換膜は、電解槽内の電解質としても、燃料電池内の電解質としても、使用することができる。アルカリ溶液を含む液体電解質も同様に使用可能である。
【0057】
PEMなどのプロトン伝導性電解質を含む電解槽中では、アノード側に水が導入され、酸素発生反応として知られているものにおいて、酸素と水素に分離される。酸素は、酸素ガスを形成し、一方水素は、その後イオン交換膜を横断し、カソードに達するプロトンと、電源を介してカソードまで移動する電子とに分離される。カソードにおいて、プロトンと電子は水素発生反応を通して水素ガスを形成する。
【0058】
電解槽内で使用される電極触媒は、燃料電池内で使用されるものとは異なっていてよい。PEM電解質を使用する電解槽において、アノード側の電極触媒は多くの場合、酸化イリジウムを含み、一方、カソード側の電極触媒は概して白金または他の白金族金属を含む。アニオン交換膜、AEM、電解質を使用する電解槽においては、両方の電極触媒共、代用としてニッケルまたはコバルトなどの材料を含んでいてよい。
【0059】
PEMおよびAEMなどの固体電解質を含む電解槽において、アノードおよびカソードの電極触媒は、先に燃料電池について説明した通り、多くの場合、電極触媒層内で電解質膜の対向する側に配置されて、膜電極アセンブリを形成する。一方または両方の電極触媒がナノ粒子の形をしていてよい。電極触媒自体に加えて、電極触媒層は、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブまたは金属発泡体等の触媒担体を含んでいてよい。電極触媒層は同様に、イオン伝導性ポリマおよび疎水性材料、例えばテフロン(登録商標)を含んでいてよい。
【0060】
電解質を通したイオン輸送、電極触媒へおよび電極触媒からの反応物および生成物の大量輸送、およびセル内の要素間の優れた電気的接触についての要件は、電解槽の場合でも燃料電池の場合でも同様である。したがって、電解槽には同様に、多くの場合、各々の電極触媒層に隣接して配置された多孔質輸送層PTLおよび各PTLに隣接して配置された導電性素子が備わっている。PTLは、多くの場合チタンを含む、多孔質炭素材料、金属発泡体または金属メッシュを含んでいてよい。導電性素子は例えば、鋼またはチタンなどの金属材料、または導電性炭素複合材を含んでいてよい。
【0061】
図2は、イオン交換膜230、第1の電極触媒層211および第2の電極触媒層221を含む電解槽200を示す。第1および第2の電極触媒層は、イオン交換膜230のいずれかの側で、イオン交換膜に隣接して配置される。第1のPTL212および第2のPTL222が、イオン交換膜230から離れる方向に面する電極触媒層の側で第1および第2の電極触媒層に隣接して配置されている。第1および第2のPTL212、222に隣接して、それぞれの電極触媒層から離れる方向に面した側に、それぞれの第1および第2の導電性素子213、223が配置されている。両方の導電性素子共、電源240に接続されている。
【0062】
プロトン交換膜を含む水電解槽に加えて、本開示は、他のタイプの電解槽にも同様に適用されてよい。例えば、本開示は、水以外の液体または気体の電解に対して、およびプロトン交換膜の代りにアニオン交換膜または液体電解質などの別のタイプの電解質が使用される電解槽に対して適用可能である。
【0063】
本開示は同様に、電池にも関する。電池は概して、化学的エネルギを貯蔵しそれを電流として放出するために使用される。詳細には、電池セルの充電および放電を通して電気エネルギを貯蔵するために、充電池または二次電池セルを使用することができる。一般的に使用される充電池には、さまざまな形態のリチウムおよびリチウムイオン電池が含まれるが、例えばナトリウムイオン電池なども含まれていてよい。
【0064】
図3は、電解質330、電解質330のいずれかの側に配置された状態で示された、第1の電極311および第2の電極321を含む電池セル300を示している。電池セル300は同様に、両方共電気負荷340に接続された第1の導電性素子312および第2の導電性素子322も含んでいる。
【0065】
電池電解質は、液体、半固体またはゲルまたは固体であってよい。液体電解質は典型的に、液体水性または有機溶媒中の酸、塩基および/または塩の溶液を含み、一方半固体/ゲル電解質は塩およびポリマ骨格を含み得る。リチウムイオンまたはリチウムイオン電池において、液体電解質は、リチウム塩、例えばLiPF、LiAsF、LiClCOまたはLiBFおよび有機溶媒、例えば炭酸エチレン、炭酸ジエチルまたは炭酸プロピレンを含んでいてよい。ゲル電解質は、リチウム塩およびポリマ、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(フッ化ビニリデン)を含むことが多い。両方の液体およびゲル電解質共、第1および第2の電極311、321の中間に配置された多孔質または微小孔性のセパレータ膜331の使用を必要とし得る。多孔質膜は、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを含むことが多い。
【0066】
セパレータなる用語は、電気化学セルにおいて2通りに使用されるという点に留意されたい。第1は、燃料電池または電解槽の内部をその周囲環境から分離するために使用される導電性素子を意味するように使用され、これは本開示においては、セパレータ要素、セパレータプレートまたは導電性素子と呼ばれる。第2は、以上で言及した通り、電池セルの2つの半分を分離するために使用される膜である。本開示において、これはセパレータ膜と呼ばれる。
【0067】
リチウムまたはリチウムイオン電池において、第1の電極311またはアノードは例えば、金属リチウム、ケイ素または炭素材料、例えばグラファイトを含んでいてよい。電池が完全に充電されている場合、リチウムはグラファイト内にインターカレーションされてLiCを形成する。電池が放電されると、電子は、電気負荷を介してアノードからカソードへと移動し、一方リチウムイオンはアノードから電解質を通って第2の電極321またはカソードへと移動する。リチウムイオン電池内のカソードは、コバルト、鉄またはマンガンなどの遷移金属とリチウムの酸化物であってよく、一方リチウム電池内のカソードは、例えば硫黄を含んでいてよい。
【0068】
リチウムイオン電池内のアノードおよびカソードの材料、例えばグラファイトおよび酸化リチウムは、集電体としても知られる導電性素子上に被着させられる活性層へと形成されることが多い。アノードおよびカソード材料に加えて、活性層は、導電性添加剤ならびに、ポリマバインダ、例えばポリフッ化ビニリデンまたはスチレン-ブタジエンコポリマなどを含んでいてよい。導電性添加剤は、例えば炭素同素体、例えばカーボンナノチューブ、カーボンブラックまたはカーボンナノファイバであってよい。
【0069】
リチウムイオン電池内の集電体は、厚み10マイクロメートル前後の金属シートを含むことが多い。使用される金属は、電池セルの化学的環境に耐えるように選択される。一例として、集電体は銅またはアルミニウムを含み得る。
【0070】
本開示が適用可能である電気化学セルの別の例は、スーパーキャパシタである。スーパーキャパシタは、静電エネルギおよび電気化学エネルギ貯蔵の組合せを用いたエネルギ貯蔵デバイスである。図4は、第1および第2の集電体412、422を含むスーパーキャパシタ400を概略的に例示する。各集電体は、多孔質電極層411、421で被覆されている。2つの電極層の間には、電解質430および任意にはセパレータ膜431が存在し、2つの集電体は電気負荷440に接続されている。
【0071】
スーパーキャパシタ内の静電エネルギ貯蔵は、電解質中に含まれる正および負イオンが各電極層の表面で2重層を形成する2重層容量を通して行われる。キャパシタが充電されると、一方の電極が負の電荷を獲得し、他方の電極は正の電荷を獲得する。負極では、正イオンの層が電極表面近くに形成し、負イオンの層が正イオン層に隣接して形成する。正極では、表面に最も近いイオン層は、代わりに、負イオンを含み、第2の層は正イオンを含む。
【0072】
スーパーキャパシタ内の電気化学エネルギ貯蔵は、電気化学系の擬似容量として知られるものに起因する。これは、スーパーキャパシタの充電中に電解質中に含まれるイオンが負極に吸着し、イオンから電極への電子移動が発生したときに起こる。移動した電子はこのとき、集電体間の電気的接続を横断し、負極内に蓄積する。
【0073】
第1および第2の集電体412、422は、多くの場合アルミニウム、ステンレス鋼または銅などの金属である導電性材料を含み、一方、多孔質電極層411、421は多くの場合、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバなどの炭素同素体を含む。しかしながら、電極層411、421は同様に、例えば遷移金属酸化物および/または導電性ポリマ材料も含んでいてよい。電解質430は、硫酸などの酸または水酸化カリウムなどの塩基、または過塩素酸ナトリウムまたはリチウムなどの塩を含む水溶液であってよい。電解質は同様に、炭酸プロピレンまたは炭酸ジエチルなどの有機溶媒およびアンモニウム塩などの塩も含み得ると思われる。最後に、セパレータ膜431は、製織ガラスまたはセラミック繊維またはポリマ、例えばポリアクリロニトリルを含んでいてよい。
【0074】
スーパーキャパシタは、例えば集電体、電解質、およびセパレータ膜などの電池の構成要素に極めて類似した構成要素を含んでいるものの、活性層が多孔質電極層で置換されているという点を留意されたい。この類似性のため、本開示は、電池と同じ方法でスーパーキャパシタに対しても適用可能であり、スーパーキャパシタ内においても電池内と類似する利点がある。
【0075】
上述の異なるタイプの電気化学セル、すなわち燃料電池、電解槽、電池およびスーパーキャパシタは、例えば導電性素子、PLTおよび活性層または電極触媒層などの、異なる目的に役立つ多数の層を含んでいる。同様のことは、フロー電池およびハイブリッドスーパーキャパシタなどのシステムについてもあてはまる。効率の良いセル動作のためには、隣接する層間に良好な器械的接触を維持し、例えば燃料電池および電解槽においては導電性素子とPTL若しくはPTLと電極触媒層の間、又は電池において集電体と活性層の間の電気的接触抵抗を最小限に抑えることが重要である。しかしながら、例えば燃料電池および電解槽における多孔質輸送層を通した優れた大量輸送を維持することも同様に重要である。特に隣接する層は表面積全体にわたる密な接触を防ぐ突起、谷部および細孔を有する一様でない表面を有し得ることから、不充分な物理的接触の結果として、時としてより高い電気接触抵抗が発生する。この問題は、表面上での金属酸化物などの導電性でない化合物の形成によって悪化する。
【0076】
逆に、隣接する層間の器械的接触を改善できる場合には、電気接触抵抗を削減することができる。したがって、本明細書中では、図5を参照して、層状構造を含む電気化学セルが開示されている。層状構造は、少なくとも第1の層510および第2の層520を含み、ここで第1の層510および第2の層520は、互いに隣接して配置され、界面を形成する。界面は、第1の層510の第1の表面に連結された第1の複数の細長いナノ構造511を含み、ここで第1の表面は第2の層520に対面している。同様にして、第2の複数の細長いナノ構造521が、第1の層510に対面している第2の層520の第2の表面に連結されている。第1の複数の細長いナノ構造511および第2の複数の細長いナノ構造521は、器械的に絡合するように配置されている。
【0077】
本明細書において、層状構造とは、少なくとも2層を含む構造を意味するものとして考えられる。各層は、互いに実質的に平行でかつ典型的には層の2つの最大境界表面を形成する2つの大きい境界表面を有する。これらの境界表面を、層の第1および第2の側と呼ぶことができる。これらの境界表面に直交する方向での層の厚みは、概して、境界表面に沿ったいずれかの方向における層の範囲よりもはるかに小さい。
【0078】
層が、プレートまたはシートなどの平面的要素である場合、層の延在平面を、2つの大きな境界表面と実質的に平行な平面として定義することができる。その場合、層の厚みを、延在平面に直交する方向での層サイズとして定義してよい。
【0079】
いくつかの実施例によると、層状構造内に含まれる層は、湾曲していてよく、その場合大きい境界表面は曲面である。いくつかのタイプの電池の場合にそうであるように、電気化学セルが円筒状に巻かれる場合、層は例えば円筒または円筒形シェルを形成し得る。同様にこれらの層を折り畳んでU字形を形成してもよい。しかしながら、これらの場合、曲率半径は、典型的に、その表面が本明細書中で論述されている細長いナノ構造に関連するスケールではおおよそ平面となるのに充分な大きさである。したがって、層の延在平面は、本開示の目的のためには、曲面に対する接線方向の平面で近似可能である。当業者であれば、本開示がこのような巻回されたまたは折畳まれた電気化学セルに対しても適用可能であることを理解するであろう。
【0080】
第1の層510および第2の層520は、第1の層510の第1の側が第2の層520の第2の側に面し、第1および第2の層510、520の延在平面が実質的に平行である状態で、互いに隣接して配置されている。実質的に平行とは、この場合、延在平面が20度未満、好ましくは10度未満の角度を成していることを意味する。
【0081】
ナノ構造は、少なくとも1つの寸法において1マイクロメートルよりも実質的に小さいサイズ、好ましくは1~100nmのサイズを有する構造である。本明細書において、細長いナノ構造は、幅などの別の寸法に比べ、例えば長さなどの少なくとも1つの寸法において実質的に大きいナノ構造である。
【0082】
一例として、長さおよび直径によって特徴付けされる実質的に円筒形のナノ構造を考慮する。ナノ構造は、長さが直径よりも有意に大きい場合、例えば長さが直径の2倍超大きい場合に、細長いものとみなされてよい。実質的に円錐形、円錐台形、矩形または任意の形状であるナノ構造にも同様の論法を適用することができる。
【0083】
細長いナノ構造は、例えば、直線、螺旋、分岐、波状または傾斜状であってもよい。任意には、これらの細長いナノ構造は、ナノワイヤ、ナノホーン、ナノチューブ、ナノウォール、結晶質ナノ構造または非晶質ナノ構造として分類可能である。
【0084】
別の実施例として、幅、長さおよび高さによって特徴付けされる実質的に平面のナノ構造を考慮されたい。ナノ構造は、幅が長さおよび/または高さよりも有意に小さい場合に細長いものとみなされ、例えば幅は長さおよび/または高さの50%未満であり得る。任意には、幅は、長さまたは高さよりもはるかに小さく、幅が長さまたは高さの1%以下となる場合がある。このような場合、長さおよび高さは、同様であってもよく、又は高さが長さよりも大きくてもよい。一例として、高さは長さの2倍であってよい。このような細長いナノ構造は、ナノフレークまたはナノウォールと呼ばれることがある。
【0085】
第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521中に含まれる細長いナノ構造は、例えば化学結合、接着剤または他のいくつかの付着手段によってそれぞれの第1および第2の層510、520の表面に付着されてよい。態様に応じて、第1および第2の複数の細長いナノ構造は、それぞれの第1および第2の層510、520の表面上で成長させられていてよく、その場合、これらの複数の細長いナノ構造は、表面に対し強い化学結合を有し得る。好ましくは、細長いナノ構造は、ナノ構造と表面の間の電気接触抵抗が低くなるような方法で表面に取り付けられるべきである。
【0086】
本明細書中で、器械的絡合とは、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521がインタロック構造を形成して、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521が、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造511、521の表面積の大部分にわたって接触状態になるように保証されていることを意味する。表面積の大部分とは、例えば前記表面積の50%超であってよい。
【0087】
先に言及した通り、細長いナノ構造は、1つの寸法において他の寸法よりも大きいものであり得る。この寸法に沿った軸を細長いナノ構造の長さ軸とみなし、この寸法におけるナノ構造のサイズをナノ構造の長さとみなす。他の寸法におけるナノ構造のサイズは、ナノ構造幅と呼ぶことができ、大部分の円筒形ナノ構造についてはナノ構造直径と呼ぶことができる。
【0088】
細長いナノ構造の長さ軸は、ナノ構造の配向も示す。例えば、細長いナノ構造は、長さ軸が層の延在平面に直交して若しくはほぼ直交して延在する場合、又はそれと同様に、長さ軸が延在平面の法線ベクトルと平行またはほぼ平行である場合に、第1および第2の層510、520に直交して配向されていると言うことができる。一方で、細長いナノ構造は、長さ軸が法線ベクトルにほぼ直交しているかまたは延在平面にほぼ平行である場合に、第1または第2の層510、520に平行に配向されていると言うことができる。
【0089】
細長いナノ構造がナノフレークまたはナノウォールである場合、ナノ構造の最小寸法、すなわち幅に沿った軸を、幅軸とみなしてよい。このとき、長さ軸は、ナノ構造の幅軸に直交する軸である。任意には、長さ軸は、ナノ構造の最大寸法に沿って延在してよい。この場合、ナノ構造は、幅軸が層の延在平面に平行でありかつ/または長さ軸が層の延在平面に直交している場合に、第1または第2の層510、520に直交して配向されていると言うことができる。
【0090】
インタロック構造を形成するためには、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521のうちの少なくとも1つの中に含まれる細長いナノ構造のうちの少なくともいくつかを、それぞれの第1または第2の層510、520の延在平面に直交する方向に沿って互いに平行に配向させることが有利である。
【0091】
このことは、ナノ構造が完全に直線であるかまたは第1または第2の層510、520の延在平面に完全に直交していることを意味するものではない。ナノ構造は概して延在平面に直交する方向に沿って延在していてよい。このことは、ナノ構造が延在平面の法線ベクトルに対して適度な傾斜を有し得る、またはそれらが前後に湾曲して螺旋状または波状形状を形成してよい、ということを意味すると考えられる。すなわち、ナノ構造は、法線ベクトルの全体的方向に延在している。これに関連して、適度の傾斜とは、細長いナノ構造の長さ軸と延在平面の法線ベクトルの間の角度が40度未満であり、そして好ましくは30度未満であってよいということを意味する。
【0092】
細長いナノ構造のうちの少なくともいくつかが、第1または第2の層510、520の延在平面の法線ベクトルに対して一定の角度で延在していることも同様に有利であり得る。細長いナノ構造の長さ軸と延在平面の法線の間の角度は、例えば40~60度の範囲内であってよい。有利には、角度は、例えば第1および/または第2の層の特性に応じて、または電気化学セルを組立てるために用いられる製造方法に応じて選択されてよい。
【0093】
態様によって、個別のナノ構造の長さ軸は、法線ベクトルに対し異なる角度を有していてよく、こうして、第1または第2の複数の細長いナノ構造511、521内の全ての細長いナノ構造が互いに完全に平行であるわけではなくなっている。一例として、2つの細長いナノ構造の長さ軸の間の角度は、45度未満、好ましくは30度であってよい。別の例として、2つの細長いナノ構造の長さ軸間の角度は、45度以上であってよい。
【0094】
第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521のうちの少なくとも1つの中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは同様に、それぞれの第1または第2の層510、520の延在平面に対し平行な方向に沿って配向されてもよい。これらの細長いナノ構造は互いに平行に配向される必要はなく、延在平面と平行なまたはほとんど平行な任意の配向を有していてよい。ナノ構造は例えば、延在平面との関係において30度未満、好ましくは15度未満の角度で延在していてよい。同様に、ナノ構造は必ずしも完全に直線でなく、例えば湾曲形状、波状または螺旋形状を有していてよい。
【0095】
図5A、B、CおよびDは、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521がそれぞれの第1および第2の表面に対して取付けられている状態の、第1および第2の層510、520を示す。図5Aは、それぞれの層の延在平面に直交する方向に沿って延在する両方の複数の細長いナノ構造の中に含まれる細長いナノ構造を示している。第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521は、第2の複数の細長いナノ構造中のナノ構造の間の空間を第1の複数の細長いナノ構造中のナノ構造が占有している状態で、インタロック構造を形成している。
【0096】
図5Bは、第2の複数の細長いナノ構造521中に含まれる細長いナノ構造が第2の層520の延在平面に沿って延在している一方で、第1の層510の延在平面に直交する方向に沿って延在する第1の複数の細長いナノ構造511中に含まれる細長いナノ構造を示している。ここでもまた、第1および第2の複数の細長いナノ構造は、インタロック構造を形成している。
【0097】
第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521中に含まれる細長いナノ構造の幅、長さおよび間隔は、器械的絡合およびインタロック構造の形成を促進するように選択されてよい。間隔というのはここでは、第1および第2の層510、520の延在平面に沿った隣接する細長いナノ構造間の距離を意味している。
【0098】
一例として、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521は両方共、図5Aに示されているように、それぞれの第1または第2の層510、520の延在平面に直交して配向されたナノ構造を含んでいてよい。このとき、インタロック構造の形成は、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521中に含まれる細長いナノ構造が同程度の幅と長さを有し、各々の複数の細長いナノ構造中のナノ構造間の間隔が幅と同程度のものである場合に促進される可能性がある。同程度の幅、長さなどとは、第2の複数の細長いナノ構造521中に含まれるナノ構造の平均的幅および長さが、第1の複数の細長いナノ構造511中のものと20%以下しか異ならないことを意味するものとして考えられる。第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521の両方において、ナノ構造の長さは、例えば10~20マイクロメートルであり得、ナノ構造の幅は、100nm前後であり得る。ナノ構造間の間隔は、100~120nmであってよい。
【0099】
別の例として、図5Bに例示されているように、第1の複数の細長いナノ構造511は、第1の層510の延在平面に直交して配向されたナノ構造を含んでいてよく、一方第2の複数の細長いナノ構造は、第2の層520の延在平面に対して平行に配向されたナノ構造を含んでいてよい。第1の複数の細長いナノ構造511中に含まれるナノ構造が第2の複数の細長いナノ構造521中に含まれる細長いナノ構造の幅に比例する長さおよび間隔を有する場合、インタロック構造の形成がこうして促進され得る。第2の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の厚みは、例えば100nm前後であり、この場合、第1の複数の細長いナノ構造中に含まれる細長いナノ構造の長さおよびその間の間隔は、100nm以上であってよい。
【0100】
第2の複数の細長いナノ構造521が、第2の層520の延在平面に対してほぼ平行な細長いナノ構造を含んでおり、それでもなお延在平面に対し一定の角度で延在している場合、ナノ構造が第2の層520から延在する最大距離を考慮することが有利であり得る。このとき、この距離は、層の延在平面に対する法線に沿って測定される。第1の層510の延在平面に直交して配向された第1の複数の細長いナノ構造511中のナノ構造の長さは、このとき、この最大距離を超えるように選択可能である。
【0101】
細長いナノ構造の長さ、幅および間隔が第1または第2の複数のナノ構造全体を通して均一でなくてもよく、例えばナノ構造の製造方法に応じてナノ構造毎に変動してよいということに留意することが重要である。したがって、以上で示されている値は、近似値とみなされるべきである。
【0102】
第1の界面を形成する第1および/または第2の表面は、例えば第1および/または第2の層510、520が多孔質であるため、または表面が隆起、尾根部および/または溝を含んでいるために、一様でない場合がある。この場合、一様でないことにより、表面がその表面積の一部分上で接触状態になるのを妨げられ、2つの層間の電気接触抵抗の増加をもたらす可能性がある。第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521は、この問題を軽減するために使用されてよい。例えば、第1の複数の細長いナノ構造511からの全ての細長いナノ構造に第2の複数の細長いナノ構造521に到達するのに十分な長さとすることを確実にするために、第1または第2の複数の細長いナノ構造511、521の中に含まれる細長いナノ構造、特に延在平面に直交して配向されたナノ構造の長さを調整することが有利である場合がある。その逆も同様である。一様でない表面上の細長いナノ構造が、図5Cおよび5D中に例示されている。
【0103】
第1および/または第2の層510、520の表面が一様でない場合には、層の延在平面は必ずしも表面の全ての部分に平行ではないという点に留意されたい。細長いナノ構造の平行または直交配向は、ナノ構造が付着している表面の部分に対してではなく延在平面に対して定義される。図5Cおよび5Dにおいて、延在平面は破線512、522で標示されている。
【0104】
いくつかの事例では、第1または第2の層510、520のいずれかが、電気化学セルの動作中に体積変化する材料を含んでいてよい。一例として、電池内の活性層は、充電または放電中のイオンの進入につれて拡張し得る。細長いナノ構造の長さ、幅および間隔は有利には、第1および第2の層510、520が最大限に拡張した時点および層が最大限に収縮した時点の両方において、器械的絡合を維持しインタロック構造を形成するように調整されてよい。これにより例えば、層が長時間の動作中に剥離しにくくすることができる。
【0105】
器械的絡合に起因して、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521の間に密な器械的接触が創出され、第1および第2の層510、520の間の器械的接触が改善されることになる。器械的接触の改善は、特に細長いナノ構造が導電性材料を含む場合に、電気的接触の改善および接触抵抗の削減を導くことになる。この場合、器械的絡合は同様に、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521の間の接触抵抗が低い電気的接続をも確立する。このことはそれ自体、第1および第2の層510、520の間の電気的接続の改善をもたらす。
【0106】
第1の複数の細長いナノ構造511中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、互いに平行に配向され、第1の層510の延在平面に直交する方向に沿って延在してよい。第1の複数の細長いナノ構造511中に含まれる細長いナノ構造のいくつかは、同様に、第1の層510の延在平面に平行な方向に沿って延在してもよい。
【0107】
同様にして、第2の複数の細長いナノ構造521中に含まれる細長いナノ構造の少なくともいくつかは、互いに平行に配向され、第2の層520の延在平面に直交する方向に沿って延在してよい。第2の複数の細長いナノ構造521中に含まれる細長いナノ構造のいくつかは、同様に、第2の層520の延在平面に平行な方向に沿って延在してもよい。
【0108】
好ましくは、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造511、521中に含まれる細長いナノ構造は、導電性材料、すなわち金属または半導体のものと同程度の導電率を有する材料を含む。これには、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521の間の電気的接続を改善するという利点がある。
【0109】
したがって、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造511、521は、金属、金属合金、半導体および金属酸化物のいずれかを含むナノ構造を含んでいてよい。
【0110】
電気化学セルにおいては、例えば触媒担体および拡散層材料として、ならびに電池の活性層の中で、炭素材料が、その優れた導電率および化学的安定性のために使用されることが多い。詳細には、燃料電池中ではアノードおよびカソードの両方の側で、および電解槽中ではカソードの側で、炭素材料が使用される。その化学的安定性のため、細長いカーボンナノ構造は、非導電性化合物が表面上に形成しにくいという利点を有し、これは、電気接触抵抗を低く維持するために有利である。第1および/または第2の層510、520の表面上のカーボンナノ構造の存在も、セルの化学的環境から表面を遮蔽することによって層自体の化学的劣化を防止することもできる。
【0111】
細長いカーボンナノ構造の形状および構造は、例えばナノ構造の所望の密度または形状、ナノ構造の所望の厚みまたは長さまたは表面積あたりの所望のナノ構造数を得るように、ナノ構造の成長条件を調整することによって改変可能である。詳細には、カーボンナノファイバおよびナノワイヤが、曲げ剛性および捩り剛性が高いという利点を有し、これにより、構成要素を共にプレス加工することなどによる方法で燃料電池が組立てられる場合に変形しにくくし、かつ第1および/または第2の層510、520に対して所望の配向を維持しやすくなる。
【0112】
したがって、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造511、521は、細長いカーボンナノ構造を含んでいてよい。細長いカーボンナノ構造は例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブおよびカーボンナノウォールのいずれかといった炭素同素体を含んでいてよい。
【0113】
態様に応じて、第1の複数の細長いナノ構造511は、第1の層510の延在平面に直交して配向されたカーボンナノファイバを含み、一方第2の複数の細長いナノ構造521は、第2の層520の延在平面に対し平行に配向されたカーボンナノチューブを含む。他の態様によると、第1および第2の複数の細長いナノ構造511、521の両方が、それぞれの第1および第2の層510、520の延在平面に直交して配向されたカーボンナノファイバを含む。
【0114】
電気化学セル中の化学的環境は、いくつかの材料の腐食および/または劣化をひき起こす可能性がある。炭素材料は概して燃料電池内および電解槽中のカソード側で使用するのに充分な化学的安定性を有するものの、電解槽中のアノード側などで使用するためには追加の表面処理を必要とする場合がある。例えば鋼などの電気化学セル中で使用される他の材料では、電気化学セル中の環境に耐えるために追加の処理が必要となる。したがって、第1および/または第2の複数の細長いナノ構造511、521は、耐食性を向上させるように配置された保護コーティングを含んでいてよい。保護コーティングは、第1および/または第2の層510、520の表面の全てまたは一部に延在してよい。一例として、保護コーティングは、チタン、金、白金、白金族金属またはそれらの組合せのいずれかを含んでいてよい。別の例として、保護コーティングは、セラミック材料または金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを含んでいてよい。保護コーティングは同様に、炭素系材料を含んでいてもよい。
【0115】
態様によって、上述の電気化学セルは、層状構造を含む燃料電池100であってよい。層状構造は、第1の導電性素子113および第2の導電性素子123ならびに、それぞれの第1および第2の導電性素子に隣接して配置された第1の多孔質輸送層112および第2の多孔質輸送層122を含む。層状構造は同様に、それぞれの第1および第2の多孔質輸送層112、122に隣接して配置された第1の電極触媒層111および第2の電極触媒層121、そして第1および第2の電極触媒層111、121の間に配置されたイオン交換膜130も含んでいる。
【0116】
このような燃料電池において、第1の界面を形成する第1および/または第2の層510、520は、第1および第2の導電性素子113、123、第1および第2の多孔質輸送層112、122または第1および第2の電極触媒層111、121のいずれかであってよい。一実施例によると、第1の層510は、第1および第2の導電性素子113、123のいずれかであってよく、第2の層520はそれぞれの第1または第2の多孔質輸送層112、122であってよい。別の実施例によると、第1の層510は、第1および第2の多孔質輸送層112、122のいずれかであってよく、第2の層520は、それぞれの第1または第2の電極触媒層111、121であってよい。
【0117】
他の態様によると、上述の電気化学セルは、層状構造を含む電解槽200であってよい。層状構造は、第1の導電性素子213および第2の導電性素子223ならびに、それぞれの第1および第2の導電性素子213、223に隣接して配置された第1の多孔質輸送層212および第2の多孔質輸送層222を含む。層状構造はさらに、それぞれの第1および第2の多孔質輸送層212、222に隣接して配置された第1の電極触媒層211および第2の電極触媒層221、そして第1および第2の電極触媒層211、221の間に配置されたイオン交換膜230も含んでいる。
【0118】
このような電解槽において、第1の界面を形成する第1および/または第2の層510、520は、第1または第2の導電性素子213、223、第1または第2の多孔質輸送層212、222または第1または第2の電極触媒層211、221のいずれかであってよい。一実施例によると、第1の層510は、第1および第2の導電性素子213、223のいずれかであってよく、第2の層520はそれぞれの第1または第2の多孔質輸送層212、222であってよい。別の実施例によると、第1の層510は、第1および第2の多孔質輸送層212、222のいずれかであってよく、第2の層520は、それぞれの第1または第2の電極触媒層211、221であってよい。
【0119】
上述の電気化学セルは同様に、少なくとも1つの層状構造を含む電池300であってもよく、層状構造は、集電体312、322および集電体312、322に隣接して配置された活性層311、321を含み、ここで活性層は電極材料を含む。
【0120】
任意には、電池内に含まれる層状構造は、第1の集電体312および第2の集電体322、第1の活性層311および第2の活性層321、そして第1および第2の活性層311、321の間に配置された固体、半固体またはゲル様の電解質層330を含む。電池は液体電解質によって分離された少なくとも1つの集電体および1つの活性層を各々含む2つの層状構造も含んでいてよい。
【0121】
一例として、第1の界面を形成する第1の層510および第2の層520は、それぞれ、少なくとも1つの層状構造内の集電体312、322および活性層311、321であってもよい。
【0122】
図5および6を参照すると、本明細書では、電気化学セルのための層状構造を製造する方法も開示されている。層状構造は少なくとも第1の層510および第2の層520を含む。該方法は、第1の複数の細長いナノ構造511を生成するステップS1を含み、ここで細長いナノ構造は、第1の層510の第1の表面に連結されている。該方法は同様に、第2の層520の第2の表面に連結されている第2の複数の細長いナノ構造521を生成するステップS2も含んでいる。該方法はさらに、第1の層510を第2の層520に隣接して配置して第1の界面を形成し、こうして、第1の層510の第1の表面が第2の層520の第2の表面に対面するようにするステップS3を含む。これにより第1の複数の細長いナノ構造511および第2の複数の細長いナノ構造521を器械的に絡合した状態にすることができる。
【0123】
複数の細長いナノ構造511、521は、複数の他の方法のうち、コロイドリソグラフィまたはナノスフェアリソグラフィ(nanosphere lithography)などのリソグラフィ法、集束イオンビーム機械加工およびレーザ機械加工を通して生成されてよい。炭素または有機化合物を含むナノファイバについては、炭化チタンなどの炭化物若しくはフェロセンなどの金属有機化合物のエレクトロスピニング又は塩素化といった方法も同様に使用してよい。
【0124】
第1および/または第2の複数のナノ構造511、521を生成するステップS1及びS2は、基板上で細長いナノ構造を成長させるステップS11、S21を含んでいてよい。基板上で細長いナノ構造511、521を成長させるステップS11、S21により、ナノ構造の高さやナノ構造間の間隔等を含むナノ構造の特性を広範に調整することが可能となる。態様によって、細長いナノ構造は、プラズマ化学気相成長法により成長させることができる。
【0125】
基板は、ケイ素、ガラス、ステンレス鋼、セラミックス、炭化ケイ素または他のあらゆる好適な基板材料などの材料を含んでいてよい。基板は同様に、高温で安定しているポリイミドなどのポリマを含んでいてもよい。任意には、基板は、電気化学セル用の構成要素、例えば導電性素子または燃料電池または電解槽の多孔質輸送層、または電池用の集電体であってよい。
【0126】
いくつかの細長いナノ構造を基板上に直接成長させることができる。一例として、カーボンナノウォールを、充分高い温度で基板上に直接成長させてもよい。充分高い温度は、例えば700~800℃であってよい。ナノウォールは、プラズマ中で成長させてよい。
【0127】
他の事例において、基板上に細長いナノ構造を成長させるステップS11、S21は、基板の表面上に成長触媒層を被着させるステップS111、S211、および成長触媒層上に細長いナノ構造を成長させるステップを含んでいてよい。本明細書中、成長触媒は、触媒活性がありナノ構造の形成中に含まれる化学的反応を促進する物質である。
【0128】
成長触媒は、ニッケル、鉄、白金、パラジウム、ニッケル-シリサイド、コバルト、モリブデン、金またはそれらの合金などの材料を含んでいてよい。一例として、成長触媒層の厚みは1~100nmであってよい。別の例として、成長触媒層は複数の成長触媒粒子を含んでいてよい。
【0129】
成長触媒層上に細長いナノ構造511、521を成長させるステップS11、S21は、ナノ構造が形成し得る温度まで成長触媒層を加熱するステップおよび反応物が成長触媒層と接触するような形で反応物を含む気体を提供するステップを含んでいてよい。ここで、反応物は、ナノ構造を形成するために使用される化学元素を含む化学的化合物または化学的化合物の混合物である。カーボンナノ構造用として、反応物は、メタン若しくはアセチレンなどの炭化水素を含んでいてよく、又は一酸化炭素を含んでいてもよい。
【0130】
成長触媒層を被着させるステップは、均一成長触媒層を被着させるステップS111、S211および被着した均一成長触媒層上にパターンを導入するステップを含んでいてよい。被着した均一成長触媒層上にパターンを導入するステップには、パターンに応じて成長触媒層の厚みを改変するステップ、またはいくつかの場所で成長触媒層を選択的に除去するステップが含まれる。成長触媒層上にパターンを導入するステップは、例えばコロイドまたはナノスフェアリソグラフィなどのリソグラフィ法により達成することができる。成長触媒層のパターン化によって、基板上の表面積あたりのナノ構造数を制御することが可能になる。
【0131】
基板上に細長いナノ構造を成長させるステップS11、S21は、基板の表面上に導電性層を被着させるステップS112、S212を含んでいてよい。このとき、導電性層の上に成長触媒層を被着させてよい。細長いナノ構造を成長させた後、細長いナノ構造の間または周りに延在する導電性層の部分を選択的に除去してよい。この除去は例えば、プラズマエッチング熱分解エッチングまたは電気化学エッチングなどのエッチングを通して達成可能である。
【0132】
導電性層は基板を電気的に接地し、このことは、プラズマ中での成長などのある種のナノ構造成長方法にとっての1つの利点である。それは同様に、成長触媒層と基板の間の原子の拡散も防止し得る。
【0133】
態様によって、導電性層の厚みは1~100ミクロンであってよい。他の態様によると、導電性層の厚みは1~100nmであってよい。
【0134】
態様によって、基板、成長触媒層および導電性層に加えて、追加の層が存在していてよい。追加の層内に含まれる材料は、成長したナノ構造の特性を調整するか、垂直に配向された成長を促すか、または他の形で成長プロセスの結果を改善するように選択されてよい。追加層は同様に、電気化学セルの構成要素、例えば導電性素子、多孔質輸送層または集電体も含んでいてよい。
【0135】
態様によって、導電性層および成長触媒層を含めた任意の層を被着させるステップは、蒸発、メッキ、スパッタリング、分子線エピタキシー、パルスレーザ被着、化学蒸着、スピンコーティング、スプレーコーティングまたは他の好適な方法といった方法によって実施されてよい。
【0136】
態様によって、細長いナノ構造は、電気化学セル用の構成要素を含む基板上に成長させられてよい。他の態様によると、細長いナノ構造は、他のいくつかの基板上に成長させられ、その後電気化学セル用の構成要素上に移送されてよい。
【0137】
任意には、成長後の細長いナノ構造上で追加の表面処理または条件付けを使用してもよい。表面処理は例えば、耐食性を改善すること、ナノ構造の表面の濡れ性を改善すること、ナノ構造の表面抵抗率を低下させること、または他のいくつかの有利な効果を達成することを目的としていてよい。表面処理は、例えば蒸発、メッキ、スパッタリング、分子線エピタキシー、パルスレーザ被着、化学蒸着、スピンコーティング、スプレーコーティングまたは他の好適な方法といった方法を通して、ナノ構造の表面上に物質を被着させることを含んでいてよい。表面処理は同様に、エッチングまたは官能化などの化学的処理も含んでいてよい。
【0138】
該方法は同様に、耐食性を向上させるように配置された保護コーティングで第1および/または第2の複数のナノ構造511、521を被覆するステップS12、S22も含んでいてよい。保護コーティングは、例えば金、白金またはチタンなどの材料を含んでいてよく、蒸発、メッキ、スパッタリング、分子線エピタキシー、パルスレーザ被着、化学蒸着、スピンコーティング、スプレーコーティングまたは他の好適な方法といった方法を通して被着されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【国際調査報告】