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特表2024-540866揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/46 20060101AFI20241029BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/54 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N30/46 E
G01N30/88 C
G01N30/26 M
G01N30/86 J
G01N30/32 A
G01N30/54 F
G01N30/86 B
G01N30/86 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522135
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022078773
(87)【国際公開番号】W WO2023072645
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204423.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】フェルシューレン アルウィン ロヒール マーティン
(57)【要約】
本発明は、揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置2に関する。装置2は、第1のクロマトグラフィカラム8および第1の検出器12を含む。クロマトグラム中の全ての化合物の保持時間およびピーク高さは、自然の普遍的な定数ではなく、カラム寸法、材料および動作条件のような多くのパラメータに強く依存することが見出されている。追加の検出器22または追加のクロマトグラフィカラム24を利用することによって(追加の検出器22は検出器特性において第1の検出器12と異なり、および/または、追加のクロマトグラフィカラム24はカラム特性において第1のクロマトグラフィカラム8と異なる)、これらの冗長性を利用して、マーカについての信頼できるコンセンサス濃度値を決定することができ、その信頼度レベルを決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置であって、
サンプリング装置と、
第1クロマトグラフィカラムと、
前記サンプリング装置を前記第1クロマトグラフィカラムに接続するプロセス流路と、
前記第1クロマトグラフィカラムに接続される第1検出器と、
を有し、前記ガスクロマトグラフィ装置がさらに、
追加の検出器、
追加のクロマトグラフィカラム、
のうちの少なくとも1つを有し、
前記追加の検出器は検出器特性において前記第1検出器と異なり、および/または、前記追加のクロマトグラフィカラムはカラム特性において前記第1クロマトグラフィカラムと異なる、ガスクロマトグラフィ装置。
【請求項2】
サンプリングされるべき流体を前記サンプリング装置に案内するように構成されたサンプル流路と、
前記サンプル流路と前記プロセス流路とのいずれかを前記サンプリング装置に接続するためのバルブ装置と、
をさらに有し、
サンプリングモードにおいて、前記サンプリング装置が前記サンプル流路に接続され、分析モードにおいて、前記プロセス流路および前記クロマトグラフィカラムが前記サンプリング装置に接続される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項3】
前記サンプリング装置が、サンプルループおよび熱脱着器のうちのいずれかとして構成される、請求項1または2に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項4】
前記カラム特性が、
カラム寸法、
カラム材料、
カラム動作条件、
のうちの少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項5】
前記検出器特性が、
検出器原理、
検知材料、
センサ動作条件、
のうちの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項6】
ガスクロマトグラフィを用いて揮発性マーカの濃度を測定するための方法であって、
第1クロマトグラフィ条件の下で第1クロマトグラムを提供するステップと、
第2クロマトグラフィ条件の下で第2クロマトグラムを提供するステップであって、前記第2クロマトグラフィ条件が前記第1クロマトグラフィ条件と異なる、ステップと、
各クロマトグラム内の前記マーカに対応するピークを同定するステップと、
各クロマトグラムにおいて前記マーカに対応する前記ピークのピーク面積および/またはピーク高さを決定するステップと、
各クロマトグラムにおいて所定の較正情報を用いて既知のマーカ濃度に対するピーク面積および/またはピーク高さに基づいてマーカ濃度の推定値を決定するステップと、
2つの前記クロマトグラムからの前記マーカ濃度の2つの前記推定値から前記マーカ濃度のためのコンセンサス値を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項7】
異なる前記第1クロマトグラフィ条件および前記第2クロマトグラフィ条件が、単一のサンプルおよび複数の逐次的な注入を利用することにより確立され、各々の逐次的な注入に対してクロマトグラムが決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
異なる前記第1クロマトグラフィ条件および前記第2クロマトグラフィ条件が、複数の逐次的なサンプルおよび異なる動作条件を利用することにより確立される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記異なる動作条件が、
注入条件、
カラム流量、
カラム圧力速度、
カラム温度、
検出器温度、
のうちの少なくとも1つにより特徴づけられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マーカに対応するピークの同定が所定の較正情報に基づく、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の較正情報がピーク保持時間およびピーク変換係数を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の較正情報が、
ガウス標準偏差のピーク幅、
指数関数的ピーク広がりの時定数、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカ濃度の前記コンセンサス値の信頼度レベルを決定するステップを有する、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1クロマトグラフィ条件の下での第1クロマトグラムを提供し、前記第1クロマトグラフィ条件と異なる第2クロマトグラフィ条件の下での第2クロマトグラムを提供するように構成された提供ユニットと、
請求項6から13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサと、
を有するガスクロマトグラフィ装置。
【請求項15】
サンプル中のマーカの濃度を測定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータにより実行され、当該コンピュータに請求項6から13のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置、方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ装置は、気体化合物の濃度を検出および決定するための既知の装置である。それは、気体の混合物を個々の成分に分離する能力を有するクロマトグラフィカラムと、それを通過する気体の濃度および/または種類に応じて信号を出力する検出器とからなる。
【0003】
クロマトグラフィカラムは、分離することができる気体化合物の数が限られている。通常、これはカラムの長さの平方根で変化する。これは、いわゆるプロセスガスクロマトグラフに有益であり、マイクロガスクロマトグラフにさらに有益であるより短い長さのカラムについて、記録されたクロマトグラムが、単離されたピークのみからなるのではなく、部分的にまたは完全に重複するピークの重ね合わせからなることを意味する。これは、関心マーカに対応する実際のピークを識別し、隣接するピークの重複する寄与について補正された、関心マーカのピーク面積を決定することが困難になる可能性があることを意味する。これは、マーカ濃度の決定における不正確さ及び誤差をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、揮発性マーカの濃度をより正確に決定するためのガスクロマトグラフィ装置、方法およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置が提示される。当該装置は、サンプリング装置と、第1のクロマトグラフィカラムと、サンプリング装置をクロマトグラフィカラムに接続するプロセス流路と、第1のクロマトグラフィカラムに接続された第1の検出器とを有し、クロマトグラフィ装置は、追加の検出器と、追加のクロマトグラフィカラムとのうちの少なくとも1つを有し、追加の検出器は検出器特性によって第1の検出器とは異なり、および/または、追加のクロマトグラフィカラムはカラム特性によって第1のクロマトグラフィカラムとは異なる。
【0006】
クロマトグラム中の全ての化合物の保持時間およびピーク高さは、自然の普遍的な定数ではなく、カラム寸法、材料および動作条件のような多くのパラメータに強く依存することが見出されている。複数の同一でないクロマトグラフィ条件からの濃度決定を組み合わせることによって、それらの冗長性を利用して、マーカについての信頼できるコンセンサス濃度値を決定することができ、その信頼性レベルを決定することができる。
【0007】
好ましい実施形態では、ガスクロマトグラフィ装置は、サンプリングされる流体をサンプリング装置に案内するように構成されたサンプル流路と、サンプル流路またはプロセス流路のいずれかをサンプリング装置に接続するためのバルブ装置とをさらに有し、サンプリングモードでは、サンプリング装置がサンプル流路に接続され、分析モードでは、プロセス流路およびクロマトグラフィカラムがサンプリング装置に接続される。流体は、気体または気体に変換される液体のいずれであってもよい。
【0008】
ガスサンプリング装置は、好ましくは、以下のうちの1つとして構成される:サンプルループ、熱脱着器。サンプルループは、市販のガスクロマトグラフィ装置で広く利用可能である。熱脱着器は、連続的なクロマトグラフィ実行中に、吸着されたサンプルをカラムに注入される複数の画分に分割することを可能にすることが認識されている。このようにして、熱脱着器は、単一のサンプル、単一のカラム、および単一の検出器を使用する場合でさえ、複数の、特に逐次的なクロマトグラフィ条件を生成することを可能にする。
【0009】
カラム特性は、カラム寸法、特に、カラム長、カラム直径、カラム膜厚、カラム材料のいずれかまたはそれらの組み合わせ、カラム動作条件、特に、カラム温度、カラム圧力、カラム流量のいずれかまたは組み合わせのうちの少なくとも1つであることができる。この複数のカラムの実施形態の根本的な原理は、マーカ濃度が各状態から独立して決定され得るように、異なるピークパターンを有する複数のクロマトグラフィ条件の生成を可能にすることである。これにより、最終的な濃度推定値の堅牢性および信頼性をより高めることができる。
【0010】
検出器特性は、検出器原理、検知材料、センサ動作条件のうちの少なくとも1つとすることができる。好ましくは、第1の検出器が追加の検出器に並列または直列に接続される。この点に関して、気体化合物とは無関係に、ピーク面積のppb濃度への普遍的な変換係数の意味で、全ての気体化合物に対して普遍的な感度を有する検出器は存在しないことが認識されている。したがって、2つの同一でない検出器は、異なる情報、異なる化合物の異なるピーク高さを与える。したがって、第1の検出器がマーカ濃度の決定を可能にする情報を既に与えている場合であっても、第2の、特に同一でない検出器を追加することには、これが異なる情報を追加するので、利点がある。これらの2つの検出器の組み合わせから、組み合わされた情報により、マーカ濃度のより信頼性の高い決定を得ることができる。
【0011】
一実施形態によれば、第1のカラムは、追加のカラムに並列または直列に接続される。追加のカラムは、第1の検出器に接続されることができる。追加のカラムは、第2の検出器に接続されることができる。
【0012】
本発明の別の態様では、ガスクロマトグラフィを使用して揮発性マーカの濃度を決定するための方法が提示され、この方法は、第1のクロマトグラフィ条件下で第1のクロマトグラムを提供するステップと、第2のクロマトグラフィ条件下で第2のクロマトグラムを提供するステップであって、第2のクロマトグラフィ条件が第1のクロマトグラフィ条件と異なる、ステップと、各クロマトグラム内のマーカに対応するピークを同定するステップと、各クロマトグラムについてのマーカに対応するピークのピーク面積および/またはピーク高さを決定するステップと、各クロマトグラムについての所定の較正情報を使用して既知のマーカ濃度についてのピーク面積および/またはピーク高さに基づいてマーカ濃度の推定値を決定するステップと、2つのクロマトグラムからのマーカ濃度の2つの推定値からマーカ濃度についてのコンセンサス値を決定するステップとを含む。
【0013】
言い換えれば、両方のクロマトグラフィ条件について、関心マーカは、それらの較正クロマトグラムからの予想ピーク幅を考慮に入れて、予想ピーク位置にフィッティングされる。両方のクロマトグラムの決定されたマーカ濃度間の比較から、マーカ濃度およびその信頼レベルのロバストな推定を行うことができる。
【0014】
第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、各クロマトグラフィ条件について単一のサンプルおよび同一でない検出器を利用することによって確立されることができる。好ましくは、同一でない検出器が互いに並列に、または互いに直列に接続される。
【0015】
第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、各クロマトグラフィ条件について単一のサンプルおよび同一でないカラムを利用することによって確立されることができる。好ましくは、各々の同一でないカラムについて、別個の検出器が利用され、および/または、共通の検出器が2つの同一でないカラムに利用される。カラムは互いに並列に、または互いに直列に接続されることができる。
【0016】
一実施形態では、第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、単一のサンプルおよび例えば熱脱着器からの複数の 逐次注入を利用することによって確立され、各々の 逐次注入についてクロマトグラムが決定される。
【0017】
さらなる実施形態では、第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、複数の逐次的なサンプルおよび異なる動作条件を利用することによって確立される。異なる動作条件は、注入条件、カラム流量、カラム圧力速度、カラム温度、検出器動作条件、例えば、化学抵抗検出原理に基づく検出器内の検出層の温度のうちの少なくとも1つによって特徴付けられることができる。
【0018】
好ましくは、マーカに対応するピークの同定は、所定の較正情報に基づく。一実施形態では、所定の較正情報は、ピーク保持時間およびピーク変換係数を含む。
【0019】
この点に関して、ピーク保持時間は、カラムへのサンプルの注入と、検出器において測定されるその最大応答との間の時間である。この保持時間は、極性/非極性、沸点などの気体化合物の種類、カラムの材料、例えば固定相の極性、カラムの寸法、カラムを通る流量およびカラムの温度、特に動的温度に依存する。ピーク変換係数h、特にマーカ濃度当たりのピーク面積は、その特定のマーカに対する検出器の検出器感度を示す。
【0020】
好ましくは、所定の較正情報は、ガウス標準偏差のピーク幅、指数ピーク広がりの時定数のうちの少なくとも1つをさらに含む。一実施形態では、本方法は、マーカ濃度のコンセンサス値の信頼レベルを決定することを含む。
【0021】
ピーク幅は、典型的にはピーク保持時間の平方根に比例する、カラム内の拡散広がりに起因する。指数関数的広がり時定数は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)として振る舞う検出器内部のガス体積に起因する場合があり、したがって、理想的なスパイク波形、特にディラックスパイク波形としてマーカが入ったとしても、検出器体積内の濃度は、検出器体積を体積流量で割ることで与えられる時定数での指数関数的減衰に従う。実際には、特にマイクロガスクロマトグラフのような短いカラムでは、指数関数的に広がる時定数がガウスピーク幅と比較して有意である。
【0022】
本発明のさらなる態様では、ガスクロマトグラフィ装置が提示される。この装置は、第1のクロマトグラフィ条件下で第1のクロマトグラムを提供し、第1のクロマトグラフィ条件とは異なる第2のクロマトグラフィ条件下で第2のクロマトグラムを提供するように構成された提供ユニットと、請求項6~13のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成されるプロセッサとを有する。
【0023】
さらに別の態様では、サンプル中のマーカの濃度を決定するためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムはコンピュータに、請求項6~13のいずれかに記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0024】
請求項1および14のガスクロマトグラフィ装置、請求項6のガスクロマトグラフィを使用して揮発性マーカの濃度を決定するための方法、および請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に定義されるように、類似のおよび/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることができることを理解されたい。
【0026】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置の実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図2】揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置の別の実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図3】代替の構成におけるガスクロマトグラフィ装置の別の実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図4】揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置の別の実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図5】揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置の他の実施形態を示す図。
図6】ガスクロマトグラフィ装置のさらに別の実施形態を示す。
図7】ガスクロマトグラフィ装置を使用して揮発性マーカの濃度を決定するための方法を示す図。
図8】ガスクロマトグラフィ装置の別の実施形態を示す。
図9】本発明による方法を示す、複数の検出器で得られたサンプルクロマトグラムa~dを示す図。
図10】本発明による方法を示す、複数のカラムで得られたサンプルクロマトグラムa~dを示す図。
図11】本発明による方法を示す、複数の注入で得られたサンプルクロマトグラムa~dを示す図。
図12】が本発明による方法を示す、複数のサンプルで得られたサンプルクロマトグラムa~dを示す図。
図13】本発明による方法を示す。複数のサンプルで得られた代替のサンプルクロマトグラムa~dを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、揮発性マーカの濃度を決定するためのガスクロマトグラフィ装置2の第1の実施形態を例示的かつ概略的に示す。ガスクロマトグラフィ装置2は、工業プロセスにおける連続的なガス混合物の監視を可能にする。ガスクロマトグラフィ装置2は、サンプルループ26として構成されたサンプリング装置4を備える。サンプルループ26は、バルブ装置14を利用して2つのモード、すなわちサンプリングモードと分析モードとを切り替えられることができる、画定された内容積を含む。サンプリングモードでは、サンプルループ26がサンプル流路6に接続される。これは、点線の助けを借りて図1に示される。バルブ装置14が分析モードに切り替えられると、サンプルループ26は第1のクロマトグラフィカラム8に接続される。これは、破線の助けを借りて図1に示されている。ガスクロマトグラフィ装置2は、以下のように操作される:
【0029】
バルブ装置14は、最初に、サンプリングされるべきガスがサンプルループ26を通るように送られることを意味するサンプリングモードに切り替えられる。サンプルループ26内のガスの組成が分析されるガスを表すようになるのに十分な時間が経過した後、バルブ装置14は分析モードに切り替えられる。圧力制御器18により、キャリアガスソース16によって供給されるキャリアガスは、サンプループ26内のガスサンプルをプロセス流路10によって第1のクロマトグラフィカラム8内に輸送し、ここで、ガスサンプルは、特にカラム8の固定相との相互作用によって気体化合物に分離され、異なる時点でカラム8を出て、第1の検出器12によって記録される。
【0030】
第1の検出器12は、第1のクロマトグラフィ条件下で第1のクロマトグラムを提供する。第1の検出器12は、第2の検出器22に接続される。第2の検出器22は、第2のクロマトグラフィ条件下で第2のクロマトグラムを提供する。言い換えれば、第1の検出器12と第2の検出器22は、同一でない信号を出力する。第2の検出器22は、ガス出口20に接続される。
【0031】
例えば、検出器12,22は、光イオン化、炎イオン化、化学抵抗、アンペロメトリック、熱伝導、容量性のような、異なるタイプの検出器から選択することができ、または、化学抵抗検出器およびアンペロメトリック検出器の場合、 同じタイプだが異なる材料に基づくものから選択されることができ、あるいは、同じタイプで同じ材料であっても、異なる条件下で使用されるもの、例えば、異なるホットプレート温度で使用される2つの同一の化学抵抗検出器から、選択されることができる。
【0032】
第1の検出器12および第2の検出器22は、直列に配置される。第1の実施形態では、第1のクロマトグラフィ条件で第1のクロマトグラムを生成し、第2のクロマトグラフィ条件で第2のクロマトグラムを生成するために、単一のサンプル、単一のカラム8、および単一のクロマトグラフィ分離のみが必要とされる。
【0033】
図2は、図1に示された実施形態と同様のガスクロマトグラフィ装置2の代替の実施形態を示す。図1および図2の実施形態の主な違いは、図2の第1の検出器12および第2の検出器22が並列に接続されていることである。そして、第1の検出器12および第2の検出器22は、図1を参照して説明されたように、検出器の種類、利用される材料、または動作条件などの検出器特性に関して異なる。第1の検出器12および第2の検出器22は、ガス出口20に接続される。
【0034】
図3は、装置2が少なくとも2つのカラム8, 24、すなわち、第1のクロマトグラフィカラム8および第2のクロマトグラフィカラム24を含む、ガスクロマトグラフィ装置2の代替の実施形態を図示する。図3の実施形態では、第1のクロマトグラフィカラム8が第2のクロマトグラフィカラム24と並列に接続される。第1のクロマトグラフィカラム8は、第1の検出器12に接続される。第2のクロマトグラフィカラム24は、第2の検出器22に接続される。第1の検出器12および第2の検出器22は、ガス出口20に接続される。
【0035】
図3に示される実施形態の基本原理は、特に図7を参照して説明されるように、推定される最終濃度における更なるロバスト性および信頼性を可能にするために、マーカ濃度が各状態から独立して決定され得るように、異なるピークパターンを有する複数のクロマトグラフィ条件の作成を可能にすることである。
【0036】
図4は、複数のカラム8, 24を利用するガスクロマトグラフィ装置2の代替の実施形態を示す。図4の実施形態では、第1のクロマトグラフィカラム8がサンプルループ26に接続される。さらに、第1のクロマトグラフィカラム8は、第1の検出器12に接続される。第1の検出器12は、第2のクロマトグラフィカラム24に接続される。第2のクロマトグラフィカラム24は、第2の検出器22に接続される。第2の検出器22は、ガス出口20に接続される。言い換えれば、図3の実施形態と比較して、カラム8, 24および検出器12, 22は直列に接続される。図3および4の実施形態では、第1の検出器12は第2の検出器22とは異なり、第1のクロマトグラフィカラム8は第2のクロマトグラフィカラム24とは異なる。図4の実施形態は、サンプリングされたガスが2つのストリームに分割されず、完全なサンプル量が両方の検出器で利用可能であるので、より高い検出限界からの恩恵を受ける。
【0037】
図5は、第1のクロマトグラフィカラム8および第2のクロマトグラフィカラム24を含む別の代替の複数カラムの実施形態を示す。両方のクロマトグラフィカラム8, 24は共通の検出器12に接続され、そして共通の検出器12はガス出口20に接続されている。カラム8, 24は、それらのカラム寸法(特にカラム長、カラム直径またはカラム膜厚)、カラム材料、またはカラム動作条件(特にカラム温度、カラム圧力またはカラム流量)に関して異なっていることができる。図5の実施形態の主な利点は、単一の検出器12のみが必要とされるので、全体的な装置コストが低減されることである。異なるクロマトグラフィ条件は、共通の検出器12によって記録されたクロマトグラムの異なるセクションを利用することによって生成される。
【0038】
図6は、図1図5のサンプルループ26の代わりに、熱脱着器28が使用される、ガスクロマトグラフ装置2の代替の実施形態を示す。バルブ装置14が(点線で示される)サンプリングモードに切り替えられると、サンプルガス流は熱脱着器28を通るように送られる。熱脱着器28は、周囲温度において動作するとき、入力ガス流から或る範囲の揮発性化合物を取り込んで貯蔵する。所望の量のガスをサンプリングした後、6ポートバルブとして構成されたバルブ装置14は、破線によって示される分析位置に切り替えられる。分析位置では、キャリアガスソース16によって供給されるキャリアガスが熱脱着器28を通って第1のクロマトグラフィカラム8に向かって送られる。熱脱着器28を特定の設定点温度まで急速に加熱することによって、サンプリングフェイズ中に前もって吸収されていた化合物が脱着され、クロマトグラフィカラム8に注入される。
【0039】
脱着される揮発性化合物の範囲は、実際の設定温度に依存する。一般に、より高い沸点を有する揮発性化合物は、より低い沸点を有する化合物よりも、収着剤から脱着されるために、より高い温度を必要とする。熱脱着器28は、逐次的なクロマトグラフィ実行中に、吸着されたサンプルをクロマトグラフィカラム8に注入される複数の画分に分離することを可能にすることが認識されている。
【0040】
このようにして、熱脱着器28は、単一のサンプル、単一のカラム8および単一の検出器12を使用しても、複数のまたは逐次的なクロマトグラフィ条件を生成することを可能にする。図6の実施形態に開示された装置2の動作原理は、以下の通りである:
【0041】
このプロセスは、サンプルを熱脱着器28に移送することから始まる。次に、注入条件Aとして、例えば熱脱着器28を100℃の温度に加熱することにより、取り込まれたサンプルの一部をクロマトグラフカラム8に注入する。そして、得られたクロマトグラムAは、検出器12によって記録される。その後、注入条件Bとして、取り込まれたサンプルの更なる部分が、例えば熱脱着器28を150℃の温度に加熱することによって、カラムに注入される。得られたクロマトグラムBは、検出器によって記録される。
【0042】
図7は、ガスクロマトグラフィを使用して揮発性マーカの濃度を決定するための方法100の実施形態を示す。方法100は、第1のクロマトグラフィ条件下で第1のクロマトグラムを提供するステップ102と、第2のクロマトグラフィ条件下で第2のクロマトグラフィ条件を提供するステップ104とを含み、第2のクロマトグラフィ条件は第1のクロマトグラフィ条件とは異なる。クロマトグラフィ条件の各々に対して単一のサンプルおよび同一ではない検出器を利用することによって、第1のクロマトグラフィ条件は第2のクロマトグラフィ条件と異なり得る。あるいは、異なるクロマトグラフィ条件は、各クロマトグラフィ条件について単一のサンプルおよび同一でないカラムを利用することによって確立されることができる。各々の同一でないカラムについて別個の検出器が利用されることができ、または共通の検出器が2つの同一でないカラムに利用されることができる。
【0043】
あるいは、第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、単一のサンプルおよび複数の逐次的な注入を利用することによって確立されることができ、各々の逐次的な注入についてクロマトグラムが決定される。あるいは、第1および第2の異なるクロマトグラフィ条件は、複数の逐次的なサンプルおよび異なる動作条件を利用することによって確立され得る。異なる動作条件は、注入条件、カラム流量、カラム圧力速度、カラム温度、または検出器動作条件(例えば化学抵抗センサのホットプレート温度)によって特徴付けられることができる。
【0044】
方法100はさらに、各クロマトグラム内のマーカに対応するピークを同定するステップ106を含む。ピークの同定106は、所定の較正情報に基づくことができる。所定の較正情報は、クロマトグラフィ条件のそれぞれについて、ピーク保持時間、ピーク幅、特にガウス標準偏差のピーク幅、好ましくは指数関数的ピーク広がりの時定数を含むことができる。
【0045】
方法100はさらに、各クロマトグラムのマーカに関連するピークのピーク面積および/またはピーク高さを決定するステップ108と、各クロマトグラムの所定の較正情報を使用して、既知のマーカ濃度のピーク面積および/またはピーク高さに基づいてマーカ濃度の推定値を決定するステップ110とを含む。方法100はさらに、2つのクロマトグラムからのマーカ濃度の2つの推定値からマーカ濃度のコンセンサス値を決定するステップ112を含む。
【0046】
図8は、クロマトグラフィ装置200の代替の実施形態を示す。クロマトグラフィ装置200は、提供ユニット202を備える。提供ユニット202は、第1のクロマトグラフィ条件下で第1のクロマトグラムを提供し、第2のクロマトグラフィ条件下で第2のクロマトグラフィ条件を提供するように構成され、第2のクロマトグラフィ条件は、第1のクロマトグラフィ条件とは異なる。
【0047】
用語「提供する」は、クロマトグラムが装置自体の助けを借りて決定されるか、または外部ソースから装置に提供されるかのいずれかであることを理解されたい。クロマトグラフィ装置200は、プロセッサ204をさらに有する。プロセッサ204は、請求項6~13のいずれかに記載の方法のステップを実行するように、特に図7に示される方法のステップを実行するように構成される。
【0048】
図9は、図1に示される実施形態に対する本発明による方法を示すサンプルクロマトグラムa~dを示す。パネルaおよびbは、(既知の濃度、この場合は1モルppbで)純粋な関心マーカを含むサンプルについて、検出器A(左、図1の検出器12)およびB(右、図1の検出器22)で記録されたクロマトグラムを示す。
【0049】
クロマトグラムAおよびBに記録された、結果として得られたマーカピークは、4つの特性によって定義される:
- ピーク保持時間μ: サンプルをカラムに注入してから検出器で測定される最大応答までの時間。この保持時間は、ガスの種類(例えば極性/非極性)、沸点、カラムの材料(例えば固定相の極性)、カラムの寸法、カラムを通る流量およびカラムの温度(特にカラムの動的温度)に依存する。
- ガウスピーク幅σ: これは、典型的にはピーク保持時間の平方根に比例する、カラム内の拡散広がりに起因する。
- 指数関数的広がり時定数τ:これは連続攪拌槽型反応器(CSTR)として挙動する検出器内部のガス体積から生じ、理想的な(Dirac)スパイク波形としてマーカが入っても、検出器体積内の濃度は検出器体積で割った体積で与えられる時定数τでの指数関数的減衰に従う。実際には、特に短いカラムの場合、指数関数的広がり時定数はガウスピーク幅σと比較して有意である。
- ピーク変換係数h、特にマーカ濃度当たりのピーク面積、または代替的に、マーカ濃度当たりのピーク高さは、その特定のマーカに対する検出器の検出器感度を示す。
【0050】
典型的には、2つの同一でない検出器AおよびBが使用されるとき、感度が異なる可能性が最も高く、場合によっては時定数も異なり、保持時間も異なるが、ガウスピーク幅は典型的には互いに等しい。
【0051】
図9の残りの2つのパネルcおよびdは、前述のマーカを含む成分の混合物を含有するガスサンプルから得られるクロマトグラムAおよびBを示す。パネルcおよびdは同じサンプルおよび同じカラムに対応するが、サンプル内部の様々な成分に対する検出器AおよびBの間の同一ではない感度のために異なる。
【0052】
これらは、化合物が少なくとも部分的に重複するピークを示す、短いカラム機器を用いて得られるクロマトグラムの典型的な例である。課題は、関心マーカの濃度を決定することであり、したがって、記録されたクロマトグラム全体に対するマーカの寄与を決定することである。ところで、ほとんどの検出器は線形出力を有しており、これは、混合物に対するそれらの出力が、すべての個々の成分が別々に測定される場合に生じる出力の合計に等しいことを意味する。
【0053】
この例では、較正クロマトグラムから、関心マーカが6.1分の保持時間を有することが知られている。マーカの真の濃度は1.3ppbである。
【0054】
ここで、パネルcおよびdに関して、本発明によるフィッティングアプローチを説明する。サンプルクロマトグラムにおけるマーカの同定において、予想される保持時間だけでなく、予想されるガウスおよび指数ピーク幅も考慮される。したがって、2つの指数関数的に広がったガウス分布を有する6分のサンプル領域をフィッティングすることを試みることになり、そのうちの1つは、較正されたマーカと正確に同じピークパラメータを有する。パネルcに示されるフィッティングは、aにおける較正から予想される保持時間、ガウスおよび指数ピーク幅を正確に有するピークを含む。同様に、パネルdに示されるフィッティングは、bにおける較正と同一のピークを含む。さらに、これらの2つのフィッティングの成功は、1.3ppbに完全に一致するそれらの結果として生じる濃度を比較することによって結論付けられることができる。
【0055】
指数関数的に広がった1つのガウス分布によって6分前後のピークをフィッティングさせようとする別の戦略は、不正確であることが分かっている。
【0056】
図10は、本発明による方法を例示する異なるカラムで得られたサンプルクロマトグラムを示す。上部パネルでは、カラム材料が関心マーカの保持時間およびガウスピーク幅の両方に影響を及ぼすことが分かる。したがって、ほとんどの化合物の保持時間、および相対的な溶出順序が、カラムAとカラムBの間で異なることが明らかである。これは、条件Aの下で、関心マーカをマスキングする重複するピークが存在する場合、条件Bの下でマーカおよびマスキングピークの両方がシフトする場合、偶然にも、マーカピークが周囲のピークからより隔離される可能性を最大にする。
【0057】
この実施形態で使用される方法は、本発明の一般的な方法と一致しており、両方の条件について、この場合、両方のカラムにおいて、関心マーカは、期待されるピーク位置において、それらの較正クロマトグラムからの期待されるピーク幅を考慮に入れて、フィッティングされる。両方のクロマトグラムから決定されたマーカ濃度間の比較から、マーカ濃度およびその信頼レベルのロバストな推定を行うことができる。
【0058】
図11は、本発明による方法を説明する、複数回の注入で得られたサンプルクロマトグラムa~dを示す。左側の2つのパネルは、前の実施形態で使用されたものと同じマーカおよびサンプル、特に混合物を示す。この参考例では、図6の熱脱着器で取り込まれたサンプルが、十分に高い温度で単一の注入イベントでカラムに完全に注入される。
【0059】
図11の残りのパネルにおいて、2つの注入条件AおよびBが示されている。注入条件Aは低温で行われ、熱脱着器からカラムへの化合物の部分的な注入をもたらす。中央下のパネルにおいて、特に低温の注入条件Aの下で、低い保持時間を有する化合物が脱着され、これは典型的にはより低い沸点を有する化合物であることが観察され得る。関心マーカを含む、より高い保持時間を有する化合物は明らかに、注入Aの間、熱脱着器の内部に残るが、その後、高温の注入条件Bの間、脱着される。いくつかの中間の化合物は条件Aにおいて部分的に脱着され、および状態Bにおいて部分的に脱着されることに留意されたい。
【0060】
本発明の方法によれば、サンプルに使用する前に、装置は、関心マーカに対する較正を必要とする。これは、既知の濃度の純粋な関心マーカからなるサンプルに対して正確なクロマトグラフィ条件を実行することを意味する。注入条件AおよびBの下で得られた較正クロマトグラフを右上のパネルに示す。ここで、この特定の例では、関心マーカは条件Aにおいて脱着されないことが分かる。本方法の最終ステップにおいて重要なことは、測定されたサンプル中の2つの注入AとBとの間のマーカの分離が較正中の分裂と一致するかどうかを評価することである。これは、決定された濃度の信頼レベルを高める。
【0061】
このアプローチの付加的な利点は、クロマトグラフィの実行毎の化合物の総数が減少し、ピークのより容易なフィッティングを可能にすることである。オプションとして、および有益には、連続する注入条件に対応するカラム動作条件は、例えば、クロマトグラムAの記録中の注入Aをもたらす低沸点の化合物について最適化されるように異なり得る。加えて、注入Bの間の高沸点化合物についても同様である。その場合、図11の例とは異なり、注入AおよびBにおけるマーカフィッティングは保持時間およびピーク幅について同じパラメータを共有する必要はない。正確に同じカラム動作条件での較正から、マーカパラメータが分かる。加えて、本発明の一般的な方法に従い、それらは、サンプルクロマトグラムにおけるマーカピークのフィッティングのために使用される。
【0062】
図12は、本発明による方法を例示する、複数サンプルで得られたサンプルクロマトグラムを示す。この実施形態では、複数の同一でないクロマトグラフィ条件が、異なる条件下で逐次的にサンプルを分析することによって実現される。
【0063】
ガスサンプル、例えば温室または畜舎の室内空気を自律的に取り込みおよび分析することができる既知の装置では、追加のサンプルに容易にアクセスすることができる。加えて、短いカラムについて、分析時間が数分以内に進行することを考慮すると、後続のサンプルは、ほぼ同等の組成を有する可能性が高い。この実施形態の利点は、装置アーキテクチャにおいて二重の要素が必要とされないので、コスト効率的であり、これは、単一のカラムおよび単一の検出器で十分であることを意味する。
【0064】
理想的には、同一の組成物の2つの連続するサンプルが、異なる条件、例えば異なる注入条件A かB、および/または、異なるカラム動作条件AかB(圧力/流量および温度条件を含む)、および/または、異なる検出器動作条件AかB(化学抵抗センサにおけるホットプレート温度設定を含む)の下で分析されることが必要である。
【0065】
両方の場合について、例示的なクロマトグラムを図12に示す。クロマトグラムは、以下のように生成される:方法がサンプルAを注入器、例えば熱吸着剤に移すことから開始する。次に、サンプルがカラムに注入され、クロマトグラフィ条件Aが得られる。サンプルAをカラムに注入した直後に、全てのサンプル成分がカラムから溶出する前に、第2のサンプルBを注入器に再び移すことができる。次いで、好ましくはカラムが再び空になると、カラムに新しい注入を行うことができ、クロマトグラフィ条件Bが得られる。残りの工程は先の実施形態と同一である。
【0066】
理想的には、サンプルAおよびBは等しい組成を有する。これは、2つのサンプルが長い遅延なしに取得され得る(サンプルAの全ての成分がカラムから溶出される前に、既に第2のサンプルBが注入器に再び移され得る)ので、実際的に実現可能である。
【0067】
後続のクロマトグラフィ条件が注入条件のみで異なる場合の例を図12に示す。図12の例は図11の例に似ている。この例では、最初のサンプルAはカラムに完全に注入さえる(注入条件A)。後続のサンプルBは、低い熱脱着温度での注入Bと高温での注入Cの2回の部分注入に分割される。この結果、3つのクロマトグラムが得られ、各々についてマーカ濃度が決定されることができ、対応する較正測定値に基づいて一貫性が評価されることができる。この実施例では、サンプルAのフィッティングされたマーカ濃度がサンプルBの2つのフィッティングされたマーカ濃度の合計に等しく、さらにサンプルBの2つのフィッティングされたマーカ濃度が較正と一致する相対値を有する場合、決定された濃度についての信頼レベルは高くなる。
【0068】
連続するクロマトグラフィ条件が等しい注入を有するが、カラム流および温度などのクロマトグラフィ動作条件が異なる別の場合を図13に示す。
【0069】
この実施例では、同じ組成の3つの連続するサンプルA、B、Cを、3つの異なるカラム動作条件で分析する。各サンプルは、3つの化合物:オキソラン、シクロヘキサンおよびジオキサンからなる。条件Aは、15cm/sのカラム線速度、および50℃の温度に対応し、これらの3つの化合物について最も低い保持時間をもたらす。条件Bは、15cm/sのカラム線速度に対応するが、カラム温度は30℃に低下しており、より高い拡がりが3つの化合物の保持時間の間にもたらされる。条件Cは、デフォルトのカラム温度である50℃に相当するが、線速度が7.5cm/sに低下しており、3つ全ての保持時間が増加する。
【0070】
この実施例では、シクロヘキサンが関心マーカである。明らかに、(3つのサンプルA、B、Cの全てにおける)シクロヘキサンのピークフィットパラメータが純粋なシクロヘキサン較正のパラメータと一致し、最も重要なことには、3つの連続するサンプルA、B、Cの全てにおいて決定されたシクロヘキサンの濃度値が同じ濃度値を与える場合、これは、コンセンサス濃度値における高い信頼度を与える。
【0071】
この実施形態では、連続するサンプルが意図的に異なる条件下で分析される。これは、連続するサンプルが同一の条件下で分析される、再現測定の平凡な場合とは異なる。本明細書に開示される本発明の方法の利点は、単なる再現よりも高い信頼度で濃度値をもたらすことである。
【0072】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、及び実施されることができる。
【0073】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。
【0074】
単一のユニット又は装置が、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0075】
第1のクロマトグラフィ条件で第1のクロマトグラムを提供すること、および第2のクロマトグラフィ条件で第2のクロマトグラムを提供すること、または1つもしくはいくつかのユニットもしくはデバイスによって実施される上述の同定もしくは決定ステップなどの手順は、任意の他の数のユニットもしくはデバイスによって実施されることができる。これらの手順は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、および/または専用ハードウェアとして実施されることができる。
【0076】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶され/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システム等を介して、他の形態で配信されてもよい。
【0077】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0078】
本発明は、揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置に関する。本装置は、第1のクロマトグラフィカラムおよび第1の検出器を含む。クロマトグラム中の全ての化合物の保持時間およびピーク高さは、自然の普遍的な定数ではなく、カラム寸法、材料および動作条件のような多くのパラメータに強く依存することが見出されている。追加の検出器または追加のクロマトグラフィカラムを利用することによって(追加の検出器は検出器特性において第1の検出器と異なり、および/または、追加のクロマトグラフィカラムはカラム特性において第1のクロマトグラフィカラムと異なる)、これらの冗長性を利用して、マーカについての信頼できるコンセンサス濃度値を決定することができ、その信頼度レベルを決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】