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特表2024-540875心房細動患者のための心房のデジタルツイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】心房細動患者のための心房のデジタルツイン
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20241029BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20241029BHJP
   A61B 5/343 20210101ALI20241029BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20241029BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20241029BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B5/367
A61B5/343
A61B5/33 100
A61B34/10
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522303
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 IB2022059805
(87)【国際公開番号】W WO2023062566
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,614
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/962,905
(32)【優先日】2022-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アモス・ヤリブ・アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】アミット・マティットヤフ
(72)【発明者】
【氏名】ツォレフ・リアット
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG05
4C127HH13
4C127LL08
4C160KK03
4C160KK63
4C160MM33
(57)【要約】
アブレーション処置ガイダンス方法が本明細書で提供される。アブレーション処置ガイダンス方法は、プロセッサ上で実行される生成エンジンによって実施される。アブレーション処置ガイダンス方法は、画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む入力を受信することと、画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成することと、を含む。アブレーション処置ガイダンス方法はまた、生成エンジンのユーザインターフェースを介して、デジタルツインを提示させて、解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、解剖学的構造の電気生理学情報を提供させることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション処置ガイダンスを提供するための生成エンジンを実行する少なくとも1つのプロセッサを備えるシステムであって、前記生成エンジンは、前記システムに、
1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む1つ以上の入力を受信させて、
前記1つ以上の画像及び前記伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成させて、
前記生成エンジンのユーザインターフェースを介して、前記デジタルツインを提示させて、前記解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、前記解剖学的構造の電気生理学情報を提供させる
ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記1つ以上の入力は、前記1つ以上の画像、前記伝導速度ベクトル推定値、及びベースライン記録又は格子ボルツマンモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生成エンジンは、到来方向推定、クラスタリング、ボクセル化、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、前記解剖学的構造を通る電気の流れを決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の入力は、心内心電図又は体表面心電図からの催不整脈作用を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記生成エンジンは、前記1つ以上の入力から前記伝導速度ベクトル推定値を自動的に識別して前記デジタルツインを生成するために、到来方向推定値を利用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記精密アブレーションガイダンスは、前記伝導速度ベクトル推定値に基づいて、電気が前記デジタルツインを通ってどのように流れるかをシミュレートすることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記生成エンジンは、1つ以上の追加の入力を受信し、
前記生成エンジンは、アブレーション処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ提案を生成するか、又は前記1つ以上の追加の入力に基づいて、前記デジタルツインの再マッピング動作を行う、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記生成エンジンは、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツイン局所興奮時間マップを生成し、
前記生成エンジンは、前記デジタルツイン局所興奮時間マップに影響を与えたアブレーションモデルに基づいて、前記デジタルツインモデルにおけるアブレーションされた細胞の伝導速度ベクトル推定値を更新する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記精密アブレーションガイダンスは、前記デジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートすることと、前記1つ以上の相互作用に基づいてアブレーションのための病巣を決定することとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記解剖学的構造は、心臓の心房を含み、前記1つ以上の入力は、患者固有のデータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサ上で実行される生成エンジンによって実施されるアブレーション処置ガイダンス方法であって、
前記生成エンジンによって、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む1つ以上の入力を受信することと、
前記生成エンジンによって、前記1つ以上の画像及び前記伝導速度ベクトル推定値を利用して解剖学的構造のデジタルツインを生成することと、
前記生成エンジンのユーザインターフェースを介して、前記デジタルツインを提示して、前記解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供し、前記解剖学的構造の電気生理学情報を提供することと、
を含むアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項12】
前記1つ以上の入力は、前記1つ以上の画像、前記伝導速度ベクトル推定値、及びベースライン記録又は格子ボルツマンモデルを含む、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項13】
前記生成エンジンは、到来方向推定、クラスタリング、ボクセル化、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、前記解剖学的構造を通る電気の流れを決定する、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項14】
前記1つ以上の入力は、心内心電図又は体表面心電図からの催不整脈作用を含む、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項15】
前記生成エンジンは、前記1つ以上の入力から前記伝導速度ベクトル推定値を自動的に識別して前記デジタルツインを生成するために、到来方向推定値を利用する、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項16】
前記精密アブレーションガイダンスは、前記伝導速度ベクトル推定値に基づいて、電気が前記デジタルツインを通ってどのように流れるかをシミュレートすることを含む、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項17】
前記生成エンジンは、1つ以上の追加の入力を受信し、
前記生成エンジンは、アブレーション処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ提案を生成するか、又は前記1つ以上の追加の入力に基づいて、前記デジタルツインの再マッピング動作を行う、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項18】
前記生成エンジンは、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツイン局所興奮時間マップを生成し、
前記生成エンジンは、前記デジタルツイン局所興奮時間マップに影響を与えたアブレーションモデルに基づいて、前記デジタルツインモデルにおけるアブレーションされた細胞の伝導速度ベクトル推定値を更新する、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項19】
前記精密アブレーションガイダンスは、前記デジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートすることと、前記1つ以上の相互作用に基づいてアブレーションのための病巣を決定することとを含む、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【請求項20】
前記解剖学的構造は、心臓の心房を含み、
前記1つ以上の入力は、患者固有のデータを含む、請求項11に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理に関する。より詳細には、本発明は、心房細動(aFib)患者のために心房のデジタルツインを生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
aFibなどの心不整脈は、心組織の領域が、正常な伝導性組織に関連する同期拍動周期に従わない場合に発生する。一般に、心不整脈は、投薬、アブレーション又は他の組織破壊手段によって治療することができる。しかし、進行期のaFibに関して、アブレーションのための最適な位置を知ることは、非常に困難になる。例えば、aFibは患者ごとに異なる可能性があり、心房組織は瘢痕及び/又はトリガを含む可能性があるので、最適なアブレーション位置をケースバイケースで決定することが必要な場合がある。
【0003】
現在、アブレーション位置の決定を支援するために、アブレーション処置は、心臓のデジタルシミュレーションを構築及び利用する。これらのデジタルシミュレーションは、標準的な解剖学的情報に基づいており、標準的な電気伝導を仮定している。したがって、これらのシミュレーションは十分に正確ではなく、効果的なガイダンスを促進しないことが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善されたアブレーション位置決定技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態によれば、アブレーション処置ガイダンス方法が本明細書において提供される。アブレーション処置ガイダンス方法は、少なくとも1つのプロセッサ上で実行される生成エンジンによって実施される。アブレーション処置ガイダンス方法は、生成エンジンによって、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む1つ以上の入力を受信することを含む。アブレーション処置ガイダンス方法はまた、生成エンジンによって、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成することを含む。アブレーション処置ガイダンス方法はまた、生成エンジンのユーザインターフェースを介して、デジタルツインを提示させて、解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、解剖学的構造の電気生理学情報を提供させることを含む。
【0006】
1つ以上の実施形態によれば、上記のアブレーション処置ガイダンス方法の実施形態は、装置、システム、及び/又はコンピュータプログラム製品として実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
より詳細な理解は、添付の図面と併せて例として示される以下の説明から得ることができ、図中の同様の参照番号は、同様の要素を示す。
図1】1つ以上の実施形態によって、本開示の主題の1つ以上の特徴を実装することができる例示的なシステムの図を示す。
図2】1つ以上の実施形態によるaFib患者の心房のデジタルツインを生成するための例示的なシステムのブロック図を示す。
図3】1つ以上の実施形態による方法を示す。
図4】1つ又は2つ以上の実施形態による、人工知能システムのグラフィック描写を示す。
図5】1つ以上の実施形態による、ニューラルネットワークの一例、及びニューラルネットワーク内で実施される方法のブロック図を示す。
図6】1つ又は2つ以上の実施形態による方法を示す。
図7】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図8】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図9】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図10】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図11】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図12】1つ以上の実施形態によるグラフを示す。
図13】1つ以上の実施形態によるインターフェースを示す。
図14】1つ以上の実施形態によるグラフを示す。
図15】1つ以上の実施形態による例示的なインターフェースを示す。
図16】1つ以上の実施形態による方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、信号処理システム、装置、及び方法が開示される。より詳細には、本明細書で開示されるのは、心房細動(aFib)患者のための心房のデジタルツインを生成する信号処理動作である。信号処理システム、装置、及び方法は、機械学習(ML)及び/又は人工知能(AI)を組み込んで、デジタルツイン及びそれに関連するデータを生成及び分析して、改善されたアブレーション位置決定技法を提供することができる。
【0009】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジンは、概して、信号処理システム、装置、及び方法に対応することができ、デジタルツインを生成及び分析するための1つ以上のML/AIアルゴリズムを含むことができる。この点に関して、生成エンジンは、医療デバイス機器によるプロセス操作及びそのハードウェアの処理に必然的に根差したプロセッサ実行可能なコード又はソフトウェアである。説明を容易にするため、生成エンジンは、心臓(例えば、その心房)をマッピングすることに関して本明細書に記載されている。しかしながら、任意の解剖学的構造、身体部分、器官、又はその部分を、本明細書に記載される生成エンジンによるマッピングの標的とすることができる。
【0010】
一般に、生成エンジンは、aFib患者のアブレーションのためのガイドツールとして機能する、心房のデジタルツインを生成/作成する。特に、デジタルツインは、パーソナライズされた心臓の電気的活動を有さない現在のデジタルシミュレーションよりも頑強である。言い換えると、デジタルシミュレーションは、標準的な電気伝導を仮定するとともに不整脈がそれ自体を繰り返すと仮定しているが、これはaFibの症状ではない。この点に関して、例えば、生成エンジンは、aFib患者の心臓の電気的活動を(例えば、不整脈トリガ及び心房壁物質に関する情報を考慮しながら)測定及び利用して、デジタルツインを生成及び作成する。更なる例として、生成エンジンは、伝導速度(conduction velocity、CV)ベクトル(例えば、直接心臓測定値)を入力として利用して、デジタルツインを生成及び作成する。CVベクトルは、本明細書で説明されるように、リアルタイムデータに基づくことができる。CVベクトルは、局所信号の進行に基づく。したがって、生成エンジンは、遠隔電場低減(far field reduction)アルゴリズムを利用して、CVベクトルを計算する前に遠隔電場(すなわち、心室活性化に基づく信号)を除去することができる。加えて、アブレーション処置中に、生成エンジンは、デジタルツインを連続的に更新すること、並びにデジタルツインに基づいて最適なアブレーション及び/又は追加の処置を提案することができる。
【0011】
生成エンジンの動作の結果として、デジタルツインは、現在のデジタルシミュレーションと比較して非常に正確なものとなる。したがって、生成エンジンの1つ以上の利点、技術的効果、及び/又は利益は、デジタルツインを使用してアブレーション処置中に心臓医師及び医療関係者に効果的なガイダンスを提供することを含むことができる。したがって、生成エンジンは、特に医療デバイス機器を利用及び変形して、心臓医師及び医療関係者が現在利用できないか、又は心臓医師及び医療関係者が現在行っていない信号処理動作を可能にする/実装する。
【0012】
図1は、本明細書の主題の1つ以上の特徴を1つ以上の実施形態に従って実装することができる、システム10として示される例示的なシステム(例えば、医療デバイス機器)の図である。システム10の全部又は一部は、本明細書に記載されるように、情報(例えば、生体測定データ及び/又は訓練データセット)の収集及び/又はML/AIアルゴリズム(例えば、生成エンジン101)の実装のために使用することができる。システム10は、図示されるように、レコーダ11と、心臓12と、カテーテル14と、モデル又は解剖学的マップ20と、電位図21と、スプライン22と、患者23と、医師24(又は医療専門家若しくは臨床医)と、位置パッド25と、電極26と、ディスプレイデバイス27と、遠位先端部28と、センサ29と、コイル32と、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)30と、電極皮膚パッチ38と、アブレーションエネルギー発生器50と、ワークステーション55(少なくとも1つのプロセッサ61と、生成エンジン101を記憶する少なくとも1つのメモリ62とを含む)とを含む。システム10の各要素及び/又はアイテムは、1つ以上のその要素及び/又はそのアイテムの代表であることに留意されたい。図1に示されるシステム10の例を変形して、本明細書に開示される実施形態を実施することができる。本開示の実施形態も、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。更に、システム10は、電気的活動を感知するための要素、有線又は無線コネクタ、処理装置及びディスプレイデバイスなどの、付加的な構成要素を含んでもよい。
【0013】
システム10は、患者23の血管系を通じて、心臓12の心腔又は血管構造内に医師24によって経皮的に挿入される複数のカテーテル14を含む。典型的には、送達シースカテーテル(カテーテル14の一例である)は、心臓12内の所望の場所付近の左心房又は右心房に挿入される。その後、複数のカテーテル14を送達シースカテーテルに挿入して、所望の位置に到達させることができる。複数のカテーテル14は、心内電位図(Intracardiac Electrogram、IEGM)信号の感知専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又は感知及びアブレーションの両方に専用のカテーテルを含み得る。IEGMを感知するように構成された例示的なカテーテル14が本明細書に示されている。医師24は、心臓12の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28を心臓壁と接触させる。アブレーションのために、医師24は、同様に、アブレーションカテーテルの遠位端をアブレーションのための標的部位に運ぶ。
【0014】
カテーテル14は、遠位先端部28において複数のスプライン22にわたって任意選択的に分布し、IEGM信号を感知するように構成された1つ、好ましくは複数の電極26を含む例示的なカテーテルである。カテーテル14は、遠位先端部28の位置及び配向を追跡するために、遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれたセンサ29を更に含んでもよい。任意選択的にかつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(three-dimensional、3D)位置及び配向を感知するための3つの磁気コイルを含む磁気ベースの位置センサである。
【0015】
センサ29(例えば、位置ベース又は磁気ベースの位置センサ)は、所定の作業体積内に磁場を生成するように構成された複数の磁気コイル32を含む位置パッド25とともに動作してもよい。カテーテル14の遠位端部28のリアルタイム位置は、位置パッド25によって生成され、センサ29によって感知される磁場に基づいて追跡されてもよい。磁気ベースの位置検知技術の詳細は、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、及び同第6,892,091号に記載される。
【0016】
システム10は、位置パッド25の位置参照及び電極26のインピーダンスベースの追跡を確立するために、皮膚接触のために患者23上に配置された1つ以上の電極パッチ38を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けられ、パッチ38において検知され、それにより、各電極の場所をパッチ38を介して三角測量することができる。インピーダンスベースの場所追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号及び同第8,456,182号に記載され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
レコーダ11は、電極18(例えば、体表面心電図(electrocardiogram、ECG)電極)で捕捉された電位図21と、カテーテル14の電極26で捕捉されたIEGMとを表示する。レコーダ11は、心拍リズムをペーシングするためのペーシング能力を含んでもよく、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続されてもよい。
【0018】
システム10は、アブレーションするように構成されたカテーテル14の遠位先端部28にある1つ以上の電極26にアブレーションエネルギーを伝達するように適合されたアブレーションエネルギー発生器50を含んでもよい。アブレーションエネルギー発生器50によって生成されるエネルギーは、不可逆エレクトロポレーション(IRE)をもたらすために使用され得るような単極又は双極高電圧DCパルスを含む、無線周波数(RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(PFA)エネルギー、又はそれらの組み合わせを含み得るが、それらに限定されない。
【0019】
患者インターフェースユニット(PIU)30は、カテーテルと、電気生理学的機器と、電源と、システム10の動作を制御するワークステーション55との間の電気通信を確立するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル14、場所パッド25、体表面ECG電極18、電極パッチ38、アブレーションエネルギー発生器50、及びレコーダ11を含んでもよい。任意選択的に、かつ好ましくは、PIU30は、カテーテルの位置のリアルタイム計算を実装し、ECG計算を実行するための処理能力を追加的に含む。
【0020】
ワークステーション55は、本明細書で更に説明されるように、メモリ62と、適切なオペレーティングソフトウェアがロードされたメモリ62又は記憶装置を有するプロセッサユニット61と、ユーザインターフェース機能とを含む。ワークステーション55は、任意選択的に、(1)心内膜解剖学的構造を3次元(3D)でモデリングし、モデル又は解剖学的マップ20をディスプレイデバイス27上に表示するためにレンダリングすることと、(2)記録された電位図21からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20上に重ね合わされた代表的な視覚的指標又は画像でディスプレイデバイス27上に表示することと、(3)心腔内の複数のカテーテルのリアルタイム位置及び配向を表示することと、(5)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位をディスプレイデバイス27上に表示することと、を含む、複数の機能を提供してもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA,92618)から市販されている、CARTO(商標)3システムとして、入手可能である。
【0021】
システム10は、(例えば、生成エンジン101を使用して)心臓の状態を検出、診断、及び/又は治療するために利用することができる。心不整脈などの心疾患は、特に老年人口において一般的かつ危険な医学的疾患として根強く残っている。例えば、システム10は、生体測定データ(例えば、心臓12など本明細書に記載されるような患者の器官の解剖学的及び電気的測定値)を取得し、心臓アブレーション処置を実施するように構成された外科用システム(例えば、Biosense Websterより販売されているCARTO(登録商標)システム)の一部とすることができる。より詳細には、心不整脈などの心疾患の治療では、心臓組織、心腔、静脈、動脈、及び/又は電気的経路の詳細なマッピングを得ることがしばしば求められる。例えば、(本明細書に記載されるような)カテーテルアブレーションを成功裏に行うための前提条件として、心不整脈の原因が心臓12の心腔において正確に位置特定されることがある。このような位置特定は、電気生理学的検査によって行われて、その調査の間に、心臓12の心腔内に導入されたマッピングカテーテル(例えば、カテーテル14)によって空間的に分解された電位を検出することができる。この電気生理学的検査、いわゆる電気解剖学的マッピングは3Dマッピングデータを提供し、これをディスプレイデバイス27上に表示することができる。多くの場合、マッピング機能及び治療機能(例えば、アブレーション)は単一のカテーテル又は一群のカテーテルによって提供され、マッピングカテーテルはまた、同時に治療(例えば、アブレーション)カテーテルとしても動作する。
【0022】
正常洞調律(NSR)を有する患者(例えば、患者23)では、心房、心室、及び興奮性伝導組織を含む心臓(例えば、心臓12)は、電気的に興奮して、同期した、パターンを有する形で拍動する。なお、この電気的興奮は、心内心電図(IC ECG)データなどとして検出することができる。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、心不整脈(例えば、心房細動又はaFib)を有する患者(例えば、患者23)では、心臓組織の異常領域は、正常な導電性組織に伴う同期した拍動周期に従わず、NSRを有する患者とは対照的である。これに対して、心組織の異常領域は隣接組織に異常伝導し、このため心臓周期が乱れて非同期的な心臓リズムになる。この非同期的心律動はまた、IC ECGデータとして検出することができる点に留意されたい。こうした異常伝導は、例えば、房室(AV)結節の伝導経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織など、心臓12の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。異常な導電性の組織のパターンがリエントリー経路につながることにより、洞律動の複数倍になり得る規則的なパターンで心腔が拍動する、心房粗動などの他の状態も存在する。
【0024】
例として、システム10が心疾患を検出、診断、及び/又は治療することを支援するため、医師24はベッド上に横たわる患者23の心臓12内にカテーテル14を誘導することができる。例えば、医師24は、カテーテル14の近位端の近くのマニピュレータ及び/又はシースからの偏向を用いてシャフトの遠位端を操作しながら、シースを通してシャフトを挿入することができる。1つ以上の実施形態によれば、カテーテル14をシャフトの遠位端に取り付けることができる。カテーテル14は、折り畳まれた状態でシースを通して挿入することができ、次いで、心臓12内で拡張させることができる。
【0025】
一般に、心臓12内のある点における電気的活動は典型的には、遠位先端部又はその近く(例えば、少なくとも1つの電極26)に電気センサ(例えば、センサ29)を収容したカテーテル14を心臓12内のその点へと前進させ、組織を電気センサと接触させ、その点におけるデータを取得することによって測定することができる。単一の遠位先端電極のみを収容したカテーテルタイプを使用して心腔をマッピングすることに伴う1つの難点は、心腔全体としての詳細なマップに求められる必要な数の点にわたって各点ごとにデータを集積するために長い時間が必要とされることがあることである。したがって、心腔内の複数の点における電気的活動を同時に測定するために、多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)が開発されてきた。
【0026】
少なくとも1つの電極26及びその本体上に連結されたカテーテル針を含むことができるカテーテル14は、体内臓器(例えば、心臓12)の電気的信号などの生体測定データを得て、かつ/又はその組織領域(例えば、心臓12の心腔)をアブレーションするように構成することができる。電極26は、追跡コイル、圧電変換器、電極、又は組織領域をアブレーションするか又は生体測定データを取得するように構成された要素の組み合わせなどの任意の同様の要素を代表するものである点に留意されたい。1つ以上の実施形態によれば、カテーテル14は、軌跡情報を決定するために使用される1つ以上の位置センサを含むことができる。この軌跡情報を使用して、組織の収縮性などの運動特性を推測することができる。
【0027】
生体測定データ(例えば、患者生体測定値、患者データ、又は患者生体測定データ)は、局所興奮時間(local activation time、LAT)、電気的活動、トポロジー、双極マッピング、基準活動、心室活動、優位周波数、インピーダンスなどのうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。LATは、正規化された初期開始点に基づいて計算された、局所活性化に対応する閾値活動の時点であり得る。電気的活動は、1つ又は2つ以上の閾値に基づいて測定され得る任意の適用可能な電気信号であってもよく、信号対ノイズ比及び/又は他のフィルタに基づいて、感知及び/又は拡張され得る。トポロジーは、身体部分又は身体部分の一部の物理的構造に対応し得、身体部分の異なる部分に関する、又は異なる身体部分に関する物理的構造における変化に対応し得る。優位周波数は、身体部分の一部で一般的に見られる周波数又は周波数の範囲であってよく、同じ身体部分の異なる部分において異なり得る。例えば、心臓のPVの優位周波数は、同じ心臓の右心房の優位周波数と異なり得る。インピーダンスは、身体部分の特定の領域における抵抗測定値であり得る。
【0028】
生体測定データの例としては、これらに限定されるものではないが、患者識別データ、IC ECGデータ、双極心臓内基準信号、解剖学的及び電気的測定値、軌跡情報、身体表面(body surface、BS)ECGデータ、履歴データ、脳生体測定値、血圧データ、超音波信号、無線信号、音声信号、2次元又は3次元(3D)画像データ、血糖データ、及び温度データが挙げられる。生体測定データは一般的に、心血管疾患(例えば、不整脈、心筋症、及び冠動脈疾患)、及び自己免疫疾患(例えば、I型及びII型糖尿病)などの任意の数の様々な疾患を監視、診断、及び治療するために使用され得る。BS ECGデータは、患者の表面上の電極から収集されたデータ及び信号を含むことができ、IC ECGデータは、患者体内の電極から収集されたデータ及び信号を含むことができ、アブレーションデータは、アブレーションされた組織から収集されたデータ及び信号を含み得る点に留意されたい。更に、BS ECGデータ、IC ECGデータ、及びアブレーションデータは、カテーテル電極位置データとともに、1つ又は2つ以上の処置記録から導出され得る。
【0029】
例えば、カテーテル14は、電極26を使用して血管内超音波及び/又はMRIカテーテル法を実施して心臓12を画像化する(例えば、生体測定データを取得及び処理する)ことができる。心臓12の心腔内部の、カテーテル14を拡大図で示す。1つ以上の電極26を含む任意の形状が、本明細書に開示される実施形態を実装するために使用され得ることが理解されるであろう。
【0030】
カテーテル14の例としては、これらに限定されるものではないが、複数の電極を有する直線状カテーテル、バルーンを形成する複数のスパイン上に分散した電極を含むバルーンカテーテル、ラッソ、グリッド形状の複数の電極を有するカテーテル若しくは複数の電極を有するループカテーテル、高密度カテーテル、又は他の任意の適用可能な形状若しくは複合体が挙げられる。直線状カテーテルは、受信信号に基づいて及び/又は直線状カテーテルに対する外力(例えば、心臓組織)の作用に基づいて、捻れ、折れ曲がり、及び/又は他の形でその形状を変化させることができるように、完全に又は部分的に弾性であってよい。バルーンカテーテルは、患者の身体内に配備される際、その電極を心内膜表面に対して密接に接触した状態に保持することができるように設計することができる。一例として、バルーンカテーテルは、肺静脈(PV)などの管腔内に挿入され得る。バルーンカテーテルは収縮状態でPVに挿入することができ、それにより、PVに挿入されている間にバルーンカテーテルがその最大体積を占有することはない。バルーンカテーテルは、PVの内側にある間に拡張することができ、それにより、バルーンカテーテル上の電極は、PVの円形部分全体と接触する。PV又は任意の他の管腔の円形部分全体とのこのような接触は、効率的な撮像及び/又はアブレーションを可能とする。カテーテル14の他の例としては、PentaRay(登録商標)カテーテル及びConstellationカテーテルが挙げられる。
【0031】
他の例によれば、身体パッチ及び/又は身体表面電極(例えば、1つ以上の電極パッチ38)を患者23の身体上又は身体に近接して配置してもよい。1つ以上の電極26を有するカテーテル14を身体内(例えば、心臓12内)に配置することができるが、カテーテル14の位置を、カテーテル14の1つ以上の電極26と身体パッチ及び/又は身体表面電極との間で送受信される信号に基づいて100システムにより決定することができる。更に、電極26は、心臓12内などの患者23の身体内から生体測定データを感知することができる(例えば、電極26は、組織の電位をリアルタイムで感知する)。生体測定データは、決定されたカテーテル14の位置と関連付けることができ、それにより、患者の身体部分(例えば、心臓12)のレンダリングを表示し、身体部分の形状に重ね合わされた生体測定データを示すことができる。
【0032】
更なる例として、カテーテル14及びシステム10の他のアイテムは、ワークステーション55に接続することができる。ワークステーション55は、ML/AIアルゴリズム(これは生成エンジン101に含むことができる)を用いる任意のコンピューティングデバイスを含むことができる。例示的な実施形態によれば、ワークステーション55は、1つ以上のプロセッサ61(任意のコンピューティングハードウェア)及びメモリ62(任意の非一時的有形媒体)を含み、1つ以上のプロセッサ61は、生成エンジン101に関するコンピュータ命令を実行し、メモリ62は、1つ以上のプロセッサ61により実行するためのこれらの命令を記憶する。例えば、ワークステーション55は、生体測定データを受信及び処理して特定の組織領域が電気を伝導するかどうかを判定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ワークステーション55は、アブレーション処置ガイダンス方法の機能を実行するために、生成エンジン101(ソフトウェア内)によって更にプログラムされ得る。例えば、アブレーション処置ガイダンス方法は、入力(例えば、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む)を受信することと、画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成することと、デジタルツインを提示させて、解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、解剖学的構造の電気生理学情報を提供させることと、を含むことができる。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、ワークステーション55の外部にあってもよく、例えばカテーテル14内、外部デバイス内、モバイルデバイス内、クラウドベースのデバイス内に位置してもよく、又はスタンドアロン型プロセッサであってもよい。この点に関して、生成エンジン101は、ネットワークを介して電子形態で転送可能であり得る/ダウンロードすることができる。
【0034】
一例として、ワークステーション55は、ソフトウェア(例えば、生成エンジン101)及び/又は、カテーテル14への信号及びそのカテーテルからの信号を送信及び受信するとともに、システム10の他の構成要素を制御するための適当なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備えた汎用コンピュータなどのハードウェア(例えば、プロセッサ61及びメモリ62)を含む、本明細書に記載の任意のコンピューティングデバイスであってもよい。例えば、フロントエンド回路及びインターフェース回路は、ワークステーション55が少なくとも1つの電極26から信号を受信及び/又は少なくとも1つの電極111に信号を伝送することを可能にする入出力(I/O)通信インターフェースを含む。ワークステーション55は、典型的には、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)として構成されたリアルタイムノイズ低減回路を含み得る。リアルタイムノイズ低減回路の後にはアナログデジタル(analog-to-digital、A/D)ECG又は心電図/筋電図(electromyogram、EMG)信号変換集積回路が続く。ワークステーション55は、A/D ECG又はEMG回路から別のプロセッサへ信号を伝えることができ、及び/又は本明細書に開示される1つ以上の機能を実行するようにプログラムすることができる。
【0035】
生体測定データを視覚的に提示するための任意の電子デバイスであり得るディスプレイデバイス27は、ワークステーション55に接続されている。例示的な実施形態によれば、処置中、ワークステーション55は、ディスプレイデバイス27上で、医師24への身体部分のレンダリングの提示を促進し、身体部分のレンダリングを表すデータをメモリ62に記憶することができる。例えば、運動特性を示すマップを、心臓12内の十分な数の点でサンプリングされた軌跡情報に基づいてレンダリング/構築することができる。一例として、ディスプレイデバイス27は、身体部分のレンダリングを提示することに加えて、医療専門家115からの入力を受けるように構成され得るタッチスクリーンを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、医師24は、タッチパッド、マウス、キーボード、ジェスチャ認識装置などの1つ以上の入力デバイスを使用して、システム10の要素及び/又は身体部分のレンダリングを操作してもよい。例えば、入力デバイスを使用して、レンダリングが更新されるようにカテーテル14の位置を変更することができる。ディスプレイデバイス27は、同じ場所、又は別の病院若しくは別の医療提供者ネットワークなどの遠隔の場所に位置し得る点に留意されたい。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、システム10は、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、MRI、又はカテーテル14若しくは他の医療機器を利用する他の医療撮像技術を使用して生体測定データを得ることもできる。例えば、システム10は、1つ以上のカテーテル14又は他のセンサを使用して、心臓12のECGデータ及び/又は解剖学的及び電気的測定値(例えば、生体測定データ)を得ることができる。より詳細には、ワークステーション55は、ケーブルによって、患者23に貼付された接着皮膚パッチを含むBS電極に接続することができる。BS電極は、BS ECGデータの形態で生体測定データを取得/生成することができる。例えば、プロセッサ61は、患者23の身体部分(例えば、心臓12)内のカテーテル14の位置座標を決定することができる。位置座標は、身体表面電極と、カテーテル14又は他の電磁構成要素の電極26との間で測定されるインピーダンス又は電磁場に基づいたものであってよい。追加的に、又は代替的に、操縦に使用される磁場を生成する場所パッドは、ベッド(又はテーブル)の表面上に位置し得、また、ベッドとは別個であり得る。生体測定データは、ワークステーション55に送信し、メモリ62に記憶させることができる。代替的に、又は追加的に、生体データは、本明細書で更に記載するようなネットワークを使用して、ローカル又はリモートであってもよいサーバに送信されてもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、カテーテル14は、心臓12の心腔の組織領域をアブレーションするように構成され得る。例えば、心臓12の心腔内のカテーテル14を拡大図で示す。更に、少なくとも1つの電極26などのアブレーション電極を、体内の臓器(例えば、心臓12)の組織領域にエネルギーを与えるように構成してもよい。エネルギーは、熱エネルギーであってもよく、組織領域の表面から始まって組織領域の厚さに延びる組織領域への損傷を引き起こす可能性がある。アブレーション処置に関する生体測定データ(例えば、アブレーション組織、アブレーション位置など)は、アブレーションデータとみなすことができる。
【0039】
一例によれば、生体測定データを取得することに関して、多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を心臓12の心腔内に前進させることができる。電極のそれぞれの位置及び向きを確立するために、前後方向(AP)及び横方向の蛍光写真を取得することができる。ECGは、BS ECGからの洞律動におけるP波の発生及び/又は冠状静脈洞内に配置されたカテーテル14の電極26からの信号などの時間基準と関係のある心臓表面と接触する電極26のそれぞれから記録することができる。本明細書で更に開示されるシステムは、電気的活動を記録する電極と、心内膜壁に近接していないことにより電気的活動を記録しない電極と、を区別することができる。最初のECGが記録された後、カテーテルを再配置することができ、蛍光写真及びECGを再び記録することができる。次に、(例えば、心臓マッピングを介して)電気的マップは、上記のプロセスの反復から構築することができる。
【0040】
心臓マッピングは、1つ以上の技術を使用して実施することができる。一般に、心臓12の心臓領域、組織、静脈、動脈、及び/又は電気経路などの心臓領域のマッピングによって、瘢痕組織、不整脈源(例えば、電気的ローター)などの問題領域、健康な領域などの特定につながり得る。心臓領域は、本明細書で更に開示されるように、マッピングされた心臓領域の視覚的レンダリングがディスプレイを使用して提供されるようにマッピングすることができる。更に、心臓マッピング(心臓撮像の一例である)は、これらに限定されるものではないが、LAT、局所興奮速度、電気的活動、トポロジー、双極マッピング、優位周波数、又はインピーダンスなどの1つ以上のモダリティに基づくマッピングを含み得る。複数のモダリティに対応するデータ(例えば、生体測定データ)は、患者の身体に挿入されたカテーテル(例えば、カテーテル14)を使用して取得してもよく、対応する設定及び/又は医師24の好みに基づいて、同時に又は異なる時間にレンダリングするために与えてもよい。
【0041】
第1の技術の一例として、心臓マッピングは、心臓12内の正確な位置の関数として、心臓組織の電気的特性、例えばLATを感知することによって実施してもよい。対応するデータ(例えば、生体測定データ)は、心臓12内に前進させられ、かつその遠位先端部に電気センサ及び位置センサ(例えば、電極26)を有する、1つ以上のカテーテル(例えば、カテーテル14)により取得してもよい。具体例として、場所及び電気的活動は、心臓12の内側表面上の約10~約20箇所の点で最初に測定してもよい。これらのデータ点は一般に、心臓表面の予備再構成又はマップを満足な品質で生成するのに十分であり得る。予備マップは多くの場合、更なる点で測定されたデータと結合されて心臓の電気的活動の更に包括的なマップが生成され得る。臨床現場では、心腔の電気的活動の詳細な包括的マップを生成するために100箇所以上の部位(例えば数千)のデータを集積することも珍しいことではない。その後、生成された詳細なマップは、心臓の電気的活動の伝播を変化させ、正常な心律動を回復させるための治療活動方針、例えば、本明細書に記載される組織のアブレーションについての決定を行うための基準となり得る。
【0042】
更に、心臓マッピングは、心内電位場(例えば、IC ECGデータ及び/又は双極心内基準信号の一例である)の検出に基づいて生成することができる。大量の心臓電気的情報を同時に取得するために非接触的な方法を実施することができる。例えば、遠位端部分を有するカテーテルタイプは、その表面上にわたって分布し、信号感知及び処理手段への接続のために絶縁導電体に接続された一連のセンサ電極を備えることができる。端部のサイズ及び形状は、電極が心腔の壁から大きな間隔を隔てて配置されるようなものとすることができる。心内電位場は、1回の心拍の間に検出することができる。一例によれば、センサ電極は、互いに間隔を置いた平面内に位置する一連の円周上に分布させることができる。これらの平面は、カテーテルの端部の長軸に対して垂直であってよい。少なくとも2個の更なる電極を、端部の長軸の両端に隣接して配設することができる。より具体的な例として、カテーテルは、各円周上に等角で間隔を置いて配置された8個の電極を有する4つの円周を含んでもよい。したがって、この特定の実装形態では、カテーテルは、少なくとも34個の電極(32個の周方向電極と2個の端部電極)を含むことができる。別のより具体的な例として、カテーテルは、5本の柔軟な可撓性分枝、8本の放射状スプライン、又は平行なスプラインを有するフライ返し型(例えば、いずれも合計42個の電極を有し得る)などの他の多スプライン型カテーテルを含み得る。
【0043】
電気的又は心臓マッピングの例として、非接触式及び非拡張式多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)に基づく電気生理学的心臓マッピングシステム及び技術を実施することができる。ECGは、複数の電極(例えば、42~122個の電極など)を有する1つ以上のカテーテル14を用いて取得してもよい。この実装形態により、プローブ及び心内膜の相対的な幾何学的形状の知見を、経食道心エコー法などの独立した撮像モダリティによって得ることができる。独立した撮像の後、非接触式電極を使用して心臓表面電位を測定し、この表面電位からマップを構築することができる(例えば、場合によっては、双極心内基準信号を使用する)。この技術は、(独立した撮像工程の後に)以下の工程を含むことができる。すなわち、(a)心臓12内に配置されたプローブ上に配置された複数の電極を用いて電位を測定する工程、(b)プローブ表面と心内膜表面及び/又は他の基準との幾何学的関係を決定する工程、(c)プローブ表面と心内膜表面との幾何学的関係を表す係数の行列を生成する工程、及び(d)電極電位及び係数の行列に基づいて心内膜電位を決定する工程。
【0044】
電気的又は心臓マッピングの別の例として、心腔の電位分布をマッピングするための技術及び装置を実装することができる。心臓内多電極マッピングカテーテルアセンブリを心臓12に挿入することができる。マッピングカテーテル(例えば、カテーテル14)アセンブリは、1つ以上の一体型基準電極(例えば、1つ以上の電極26)を有する複数電極アレイ又はコンパニオン基準カテーテルを含むことができる。
【0045】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、電極は、ほぼ球状のアレイの形態で展開することができ、この球状のアレイは、基準電極によって、又は心内膜表面と接触させられる基準カテーテルによって心内膜表面上の点に対して空間的に参照することができる。好ましい電極アレイカテーテルは、多数の個々の電極部位(例えば、少なくとも24個)を有することができる。加えて、この例示的な技術は、アレイ上の電極部位の各々の位置を知ること、及び心臓の幾何学的形状を知ることで実施することができる。これらの位置は好ましくは、インピーダンスプレチスモグラフィ法によって決定される。
【0046】
電気的又は心臓マッピングの観点から、また、別の例によれば、カテーテル14は、多数の電極部位を画定する電極アレイを含み得る心臓マッピングカテーテルアセンブリとすることもできる。この心臓マッピングカテーテルアセンブリはまた、心臓壁を短針するために使用することが可能な遠位先端電極アセンブリを有する基準カテーテルを受容するための管腔を備えている。マップ心臓マッピングカテーテルアセンブリは、絶縁ワイヤの編組(例えば、編組内に24~64本のワイヤを有する)を含むことができ、ワイヤのそれぞれを使用して電極部位を形成することができる。心臓マッピングカテーテルアセンブリは、非接触電極部位の第1のセット及び/又は接触電極部位の第2のセットから電気的活動情報を取得するために使用されるように心臓12内に容易に配置可能である。
【0047】
更に、別の例によれば、心臓内の電気生理学的活動のマッピングを実施することができるカテーテル14は、心臓をペーシングするための刺激パルスを供給するように適合された遠位先端部、又は先端部と接触する組織をアブレーションするためのアブレーション電極を含むことができる。このカテーテル14は、直交電極の近傍の局所的な心臓電気的活動を示す差分信号を生成するための少なくとも一対の直交電極を更に備えることができる。
【0048】
本明細書で述べられるように、システム10を用いて心臓状態を検出、診断、及び/又は治療することができる。例示的な動作では、心腔内の電気生理学的データを測定するためのプロセスを、システム10によって実施してもよい。このプロセスは、部分的に、能動電極と受動電極のセットを心臓12内に配置することと、能動電極に電流を供給し、それにより心腔内に電場を発生させることと、受動電極部位の電場を測定することとを含んでもよい。受動電極は、バルーンカテーテルの膨張可能なバルーン上に配置されたアレイに含まれる。好ましい実施形態では、アレイは60~64個の電極を有すると言われる。
【0049】
別の例示的な動作として、心臓マッピングは、1つ以上の超音波トランスデューサを使用してシステム10によって実施されてもよい。超音波トランスデューサは、患者の心臓12に挿入されてもよく、心臓12内の様々な位置及び向きの複数の超音波スライス(例えば、2次元又は3次元スライス)を収集してもよい。特定の超音波トランスデューサの位置及び向きが分かる場合もあり、収集された超音波スライスは、後で表示することができるように記憶させることができる。カテーテル14(例えば、治療カテーテル)の位置に対応する1つ以上の超音波スライスを後で表示してもよく、カテーテル14は、1つ以上の超音波スライス上に重ね合わせてもよい。
【0050】
システム10を考慮すると、心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレット・リエントラント型であり得ることが分かる(例えば、IC ECGデータの別の例)。マルチウェーブレット・リエントラント型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速かつ反復する形で自律的に興奮する場合などの、巣状興奮源を有する場合もある(例えば、IC ECGデータの別の例)。心室頻拍(Ventricular tachycardia、V-tach又はVT)は、心室のうちの1つから発生する頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。
【0051】
例えば、aFibは、洞房結節によって生成される通常の電気インパルス(例えば、IC ECGデータの別の例)が心房静脈及びPVで生じる無秩序な電気インパルス(例えば、信号干渉)によって圧倒され、不規則なインパルスを心室に伝導させる場合に発生する。その結果、不規則な心拍が生じ、数分~数週間、又は更には数年間持続する場合がある。多くの場合、aFibは、しばしば脳卒中による死亡リスクをわずかに増加させる慢性的な状態である。aFibの治療方針は、心拍数を減らすか又は心律動を正常に戻す投薬治療である。更には、aFibを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために抗凝血剤を投与される場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のaFibは、薬剤不応、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると判断される。同期された電気的除細動もまた、aFibを通常の心律動に変換するために使用することができる。あるいは、aFibの患者には、カテーテルアブレーションによる治療も行われる。
【0052】
カテーテルアブレーションベースの治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれてもよい。電気又は心臓マッピング(例えば、本明細書に記載される任意の電気生理学的心臓マッピングシステム及び技術によって実施される)には、心臓組織に沿った波伝播の電位マップ(例えば、電圧マップ)、又は様々な組織内に位置する点への到達時間のマップ(例えば、LATマップ)を作成することが含まれる。局所的な心臓組織の機能不全を検出するために、電気的又は心臓マッピング(例えば、心臓マップ)を使用することができる。心臓マッピングに基づくアブレーションなどのアブレーションは、不要な電気信号の、心臓12のある部分から別の部分への伝播を停止又は変化させることができる。
【0053】
アブレーション法は、非伝導性の損傷部を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心臓組織壁に沿って伝導ブロックを作るためのマイクロ波、レーザ、及びより一般的には無線周波エネルギーの使用が挙げられる。エネルギー送達法の別の例としては、細胞膜を損傷する高い電場を与える不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)が挙げられる。2段階の処置(マッピングと、その後に続くアブレーション)においては、典型的には、1つ以上の電気センサ(例えば、電極26)を収容したカテーテル14を心臓12内に前進させ、多数の点におけるデータ(例えば、一般には生体測定データとして、又は具体的にはECGデータとして)を取得/獲得することによって、心臓12内の点における電気的活動が感知及び測定される。次いでECGデータを用いて、アブレーションを実施する心内膜の標的領域が選択される。
【0054】
心房細動及び心室頻拍などの困難な状態を医師が治療する際の心臓アブレーション及び他の心臓の電気生理学的処置は、ますます複雑化している。難治性不整脈の治療は現在、対象となる心腔の解剖学的構造を再構成するうえで3Dマッピングシステムの使用を頼りにすることができる。この点に関して、本明細書のシステム10によって採用される生成エンジン101は、一般的には生体測定データを、具体的にはECGデータを操作及び評価して、異常心拍又は不整脈を治療するためのより正確な診断、画像、スキャン、及び/又はマップを可能にする改善された組織データを生成する。例えば、心臓専門医は、ECGデータを生成及び分析するうえで、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,Calif.)により製造されるCARTO(登録商標)3 3DマッピングシステムのComplex Fractionated Atrial Electrograms(CFAE)モジュールなどのソフトウェアに依存する。システム10の生成エンジン101は、このソフトウェアを強化して、改善された生体測定データを生成及び分析し、これにより、aFibの(解剖学的及び機能的)心臓基質を表す心臓12(瘢痕組織を含む)の電気生理学的特性に関する複数の情報を更に提供する。
【0055】
したがって、システム10は、異常ECGの検出の観点から、心筋症の潜在的な不整脈原性基質の位置を特定するために、CARTO(登録商標)3 3Dマッピングシステムなどの3Dマッピングシステムを実装することができる。これらの心臓疾患に関連する基質は、心室腔(右及び左)の心内膜及び/又は心外膜層の細分化及び遅延ECGの存在と関連付けられている。例えば、低電圧又は中電圧の領域は、ECGの細分化及び遅延活動を示し得る。更に、洞律動の間において低電圧又は中電圧の領域は、持続性のまとまりのある心室性不整脈において識別される臨界峡部(critical isthmus)に対応し得る(例えば、許容されない心室頻拍、並びに心房内に当てはまる)。一般に、異常組織は、低電圧のECGによって特徴付けられる。しかしながら、心内膜-心外膜マッピングにおける初期の臨床経験によって、低電圧の領域は、こうした患者における唯一の不整脈発生機序として常に存在するとは限らないことが示されている。実際に、低電圧又は中電圧の領域は、洞律動の間にECGの細分化及び遅延活動を示す場合があり、これは、持続性のまとまりのある心室性不整脈の際に識別される臨界峡部(critical isthmus)に対応する(例えば、許容されない心室頻拍のみに当てはまる)。更に、多くの場合、ECGの細分化及び遅延活動は、正常又はほぼ正常な電圧振幅(>1~1.5mV)を示す領域で観察される。後者の領域は、電圧振幅に従って評価することができるが、心内信号によれば正常とはみなされず、したがって真の不整脈原性基質を表している。3Dマッピングは、主要疾患の進展によって分布にばらつきがあり得る、右/左心室の心内膜及び/又は心外膜層上の不整脈原性基質の位置を特定することができる。
【0056】
別の例示的な動作として、心臓マッピングは、1つ以上の多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を使用してシステム10によって実施することもできる。多電極カテーテルは、心臓12内の電気的活動を刺激及びマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位をアブレーションするために使用される。使用時には、多電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば大腿静脈に挿入された後、対象となる心臓12の心腔内へと案内される。典型的なアブレーション処置では、その遠位端に少なくとも1つの電極26を有するカテーテル14を心腔内に挿入することを伴う。基準電極が、患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置される第2のカテーテルによって、あるいはカテーテル14の1つ又は他の電極26から選択することによって、提供される。高周波(RF)電流がアブレーションカテーテル14の先端電極26に印加され、先端電極の周囲の媒質(すなわち、血液及び組織)を通り、基準電極に向かって電流が流れる。電流分布は、組織よりも伝導率の高い血液と比べて、組織に接触している電極表面量によって決まる。その電気抵抗が原因で組織の加熱が発生する。組織が十分に加熱されると、心臓組織において細胞破壊が引き起こされ、結果として、心臓組織内に電気的に非伝導性である損傷が形成される。この過程では、加熱された組織から電極自体への伝導によって先端電極26の加熱も生じる。電極の温度が十分に高くなり、場合により60℃を超えると、脱水された血中タンパク質の薄く透明な皮膜が、電極26の表面上に形成され得る。温度が上昇し続けると、この脱水層が徐々に厚くなり得、電極表面上に血液が凝固する。脱水された生物学的材料は、心内膜組織よりも高い電気抵抗を有するため、電気エネルギーの組織内部への流れに対するインピーダンスもまた増大する。インピーダンスが十分に高くなると、インピーダンス上昇が起こり、カテーテル14を身体から抜き取り、先端電極26を洗浄しなければならない。
【0057】
ここで図2を参照すると、1つ又は2つ以上の実施形態による、本開示の主題の1つ又は2つ以上の特徴が実装され得るシステム200の略図が示される。システム200は、aFib患者の心房のデジタルツインを生成するように構成することができる。
【0058】
システム200は、患者202(例えば、図1の患者23の一例)に対して、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、リモートコンピューティングシステム208、第1のネットワーク210、及び第2のネットワーク211を含んでいる。更に、装置204は、生体測定センサ221(例えば、図1のカテーテル14の一例)、プロセッサ222、ユーザ入力(UI)センサ223、メモリ224、及び送受信機225を含むことができる。説明を容易にし、簡潔にするため、図1の生成エンジン101を図2で再使用している点に留意されたい。
【0059】
一実施形態によれば、装置204は、図1のシステム10の一例であってよく、装置204は、患者の内部の構成要素及び患者の外部の構成要素の両方を含むことができる。別の実施形態によれば、装置204は、取り付け可能なパッチ(例えば、患者の皮膚に取り付けられる)を含む患者202の外部の装置であってよい。別の実施形態によれば、装置204は、患者202の身体の内部のもの(例えば、皮下移植可能な)とすることができ、装置204を、経口注入、静脈若しくは動脈を介した外科的挿入、内視鏡手術、又は腹腔鏡手術を含む任意の適用可能な方法によって患者202の体内に挿入することができる。一実施形態によれば、単一の装置204が図2に示されているが、例示的なシステムは、複数の装置を含むことができる。
【0060】
したがって、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、生成エンジン101に対するコンピュータ命令を実行するようにプログラムされ得る。一例として、メモリ223は、装置204が生体測定センサ201を介して生体測定データを受信及び処理することができるように、プロセッサ222が実行するこれらの命令を記憶する。このように、プロセッサ222及びメモリ223は、ローカルコンピューティングデバイス206及び/又はリモートコンピューティングシステム208のプロセッサ及びメモリを代表するものである。
【0061】
装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、生成エンジン101及びその機能を個別又は集合的に記憶、実行、及び実装するソフトウェア及び/又はハードウェアの任意の組み合わせとすることができる。更に、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、本明細書に記載されるように、様々な通信技術を利用した任意の数及び組み合わせのコンピューティングデバイス及びネットワークを含む、及び/又は使用する電子的コンピュータフレームワークとすることができる。装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、異なるサービスに合わせて変更することが可能な、又は他と独立していくつかの機能を再構成することが可能な、容易にスケーラブルで、拡張可能な、モジュール式のものとすることができる。
【0062】
ネットワーク210及び211は、有線ネットワーク、無線ネットワークであってもよく、又は1つ若しくは2つ以上の有線及び無線ネットワークを含んでもよい。一実施形態によれば、ネットワーク210は、近距離ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)、又はパーソナルエリアネットワーク(personal area network、PAN))の一例である。情報は、Bluetooth、Wi-Fi、Zigbee、Z-Wave、近接場通信(near field communication、NFC)、ウルトラバンド、Zigbee、又は赤外線(infrared、IR)などの様々な近距離無線通信プロトコルのうちのいずれか1つを使用して、装置204とローカルコンピューティングデバイス206との間で近距離ネットワーク210を介して送信することができる。更に、ネットワーク211は、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(wide area network、WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラー電話ネットワーク、又はローカルコンピューティングデバイス206とリモートコンピューティングシステム208との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体のうちの1つ又は2つ以上のものの一例である。情報は、様々な長距離無線通信プロトコル(例えば、TCP/IP、HTTP、3G、4G/LTE、又は5G/New Radio)のいずれか1つを使用して、ネットワーク211を介して送信することができる。なお、ネットワーク210及び211の有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は任意の他の有線接続を使用して実装することができ、無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星通信、又は任意の他の無線接続法を使用して実装することができる。
【0063】
動作中、装置204は、ネットワーク210を介して、患者202に関連する生体測定データを、連続的又は定期的に、取得、監視、記憶、処理、及び通信することができる。更に、装置204、ローカルコンピューティングデバイス206、及び/又はリモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク210及び211を介して通信する(例えば、ローカルコンピューティングデバイス206は、装置204とリモートコンピューティングシステム208との間のゲートウェイとして構成することができる)。例えば、装置204は、ネットワーク210を介してローカルコンピューティングデバイス206と通信するように構成された図1のシステム10の一例であり得る。ローカルコンピューティングデバイス206は、例えば、固定/独立型デバイス、基地局、デスクトップ/ラップトップコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、又はネットワーク211及び210を介して他のデバイスと通信するように構成された他のデバイスとすることができる。ネットワーク211上の、若しくはネットワーク211に接続された物理サーバとして、又はネットワーク211のパブリッククラウドコンピューティングプロバイダ(例えば、Amazon Web Services(AWS)(登録商標))内の仮想サーバとして実装されるリモートコンピューティングシステム208は、ネットワーク211を介してローカルコンピューティングデバイス206と通信するように構成することができる。したがって、患者202に関連する生体測定データを、システム200全体を通じて通信することができる。
【0064】
装置204の要素がここで説明される。生体測定センサ221は、例えば、異なる種類の生体測定データが観察/取得/入手されるように、1つ以上の環境条件を電気信号に変換するように構成された1つ以上のトランスデューサを含むことができる。例えば、生体測定センサ221は、電極(例えば、図1の電極26)、温度センサ(例えば、熱電対)、血圧センサ、血糖センサ、血中酸素センサ、pHセンサ、加速度計、及びマイクロフォンのうちの1つ以上を含むことができる。
【0065】
生成エンジン101を実行するうえで、プロセッサ222は、生体測定センサ221によって取得された生体測定データを受信、処理、及び管理し、かつ生体測定データを、記憶させるためにメモリ224に、かつ/又は送受信機225を介してネットワーク210全体に通信するように構成することができる。1つ又は2つ以上の他の装置204からの生体測定データはまた、送受信機225を介してプロセッサ222によって受信されてもよい。また、以下でより詳細に説明するように、プロセッサ222は、UIセンサ223から受信される異なるタッピングパターン(例えば、シングルタップ又はダブルタップ)に選択的に応答して、パッチの異なるタスク(例えば、データの取得、記憶、又は送信)が、検出されたパターンに基づいて起動されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ222は、ジェスチャの検出に関して可聴フィードバックを生成することができる。
【0066】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、実行時に、画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む入力を受信し、画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して解剖学的構造のデジタルツインを生成し、ユーザインターフェースを介して、デジタルツインを提示し、解剖学的構造の精密アブレーションガイダンス及び電気生理学情報を提供することができる。
【0067】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、実行時に、1つ以上のアブレーション(アブレーションは電気穿孔であり得ることに留意されたい)を実行した後に、デジタルツインに基づいてLAT活動の再推定を行うことができる。この場合、デジタルツインは、生成エンジン101が、心拍源(例えば、洞房結節又はSA結節)の識別に基づいてLATマップを生成し、各方向のCVに基づいて心臓12内の信号の進行を計算することを可能にする。したがって、生成エンジン101の技術的効果、利点、及び利益のうちの1つ以上は、実際のLATマップ(CARTO(登録商標)3において現在生成されるような)及びデジタルツインLATマップを同じインターフェース上で提供可能にすることを含む。更に、アブレーションの後で、アブレーション推定モデル(CARTO VISITAG(商標)モデルなど)を使用して、アブレーションされた位置のCVを生成エンジン101によって更新することができる。したがって、デジタルツインLATマップも、1250f CV更新に基づいて更新することができる。したがって、生成エンジン101の技術的効果、利点、及び利益のうちの1つ以上は、心臓14を再マッピングすることなくアブレーションの後でLATマップのシミュレーションを可能にすることを含む。したがって、1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツインLATマップを生成することができ、デジタルツインLATマップに影響を与えたアブレーションモデルに基づいて、デジタルツインモデル内のアブレーションされた細胞/組織のCVベクトル推定値を更新することができる。1250
UIセンサ223は、例えば、タップ又はタッチなどのユーザ入力を受信するように構成された圧電センサ又は静電容量センサを含む。例えば、UIセンサ223は、患者202が装置204の表面をタップ又はタッチすることに応答して、容量性結合を実施するように制御されてもよい。ジェスチャ認識は、抵抗容量性、表面容量性、投影容量性、表面超音波、圧電及び赤外線タッチなどの、様々な容量型のうちのいずれか1つにより実施することができる。静電容量センサは、表面のタップ又はタッチが監視デバイスを起動させるように、表面の小さい領域又は長さにわたって配置されてもよい。
【0068】
メモリ224は、磁気、光学、又は電子メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の適当な揮発性及び/又は不揮発性メモリ)などの任意の非一時的有形媒体である。メモリ224は、プロセッサ222によって実行されるコンピュータ命令を記憶する。
【0069】
送受信機225は、別個の送信機及び別個の受信機を含み得る。あるいは、送受信機225は、単一のデバイスに一体化された送信機及び受信機を含み得る。
【0070】
動作中、装置204は、生成エンジン101を利用して、生体測定センサ221を介して患者202の生体測定データを観察/取得して、メモリに生体測定データを記憶し、送受信機225を介してシステム200全体でこの生体測定データを共有する。生成エンジン101は、次いで、モデル、遠隔電場低減アルゴリズム、ニューラルネットワーク、ML、及び/又はAIを利用して、心房細動(aFib)患者のための心房のデジタルツインを生成する信号処理動作を実行することができる。
【0071】
ここで図3を参照すると、1つ以上の実施形態による、方法300(例えば、図1及び/又は図2の生成エンジン101によって実行される)が示されている。方法300は、心臓の心房をナビゲートするためのアブレーション処置ガイダンス方法の一例であり得る。方法300は、デジタルツインを介してより正確に電気生理学をより良く理解することを可能にする、心臓12の電気活動に対する多段階操作を提供することによって、改善されたアブレーション位置決定技術の必要性に対処する(例えば、心房壁物質に関する情報だけでなく、不整脈トリガも考慮する)。
【0072】
方法は、ブロック310で開始し、ここで、生成エンジン101は1つ以上の入力を受信する。1つ以上の入力は、本明細書に記載されるような生体データ、及び心臓12の1つ以上の画像(例えば、CT、MRIなど)を含むことができる。1つ以上の入力は、リアルタイムデータであるとともに患者固有のものであり得る。より詳細には、1つ以上の入力は、IC ECG及び/又はBS ECGのベースライン記録、以前の/現在のCVベクトル推定値、及び/又は心房に沿って伝搬する典型的な波をシミュレートするための格子ボルツマンモデルを含むことができる。1つ以上の実施形態によれば、システム10は、多電極カテーテル(例えば、カテーテル14)を利用して、電極によって覆われた心臓領域から複数の取得物(例えば、ベースライン記録)を得ることができる。1つ以上の実施形態によれば、入力は、画像、伝導速度ベクトル推定値、及びベースライン記録又は格子ボルツマンモデルを含む。更に、入力は、IC ECG及び/又はBS ECGからの催不整脈作用であり得る。
【0073】
ブロック320において、生成エンジン101はデジタルツインを生成する。例えば、生成エンジン101は、aFib患者23の心臓12の左心房のデジタルツインを作成する。心臓12のデジタルツインは、画像及び他の入力に基づくことができる。1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して心臓12のデジタルツインを生成する。デジタルツインはまた、ベースライン記録、CVベクトル推定値、及び/又は格子ボルツマンモデルに基づくことができる。したがって、生成エンジン101が画像及び他の入力を得ると、生成エンジン101は解剖学的構造を構築して、電気がその解剖学的構造を通ってどのように流れるかを決定することができる。ブロック320においてデジタルツインを生成する1つ以上の動作は、限定はしないが、到来方向(direction of arrival、DOA)推定(330)、クラスタリング(340)、ボクセル化(350)、及び動的3D生成(360)の実行を含むことができる。この点に関して、生成エンジン1010は、DOA推定、クラスタリング、ボクセル化、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、心臓12を通る電気の流れを決定する。デジタルツインを生成する動作が本明細書で更に説明されるが、理解を容易にするためにそれぞれを簡単に説明する。
【0074】
ブロック330及び340において、DOA推定及びクラスタリングは、単極信号から心房活動をセグメントごとに分析することによって局所CVベクトルを推定するボトムアップ手法であり得る。DOA推定は、催不整脈作用のCVベクトルを自動的に識別することに留意されたい(例えば、システム10は、DOA推定値を利用して、CVベクトル推定値を自動的に識別し、デジタルツインを生成することができる)。すなわち、全てのセグメントが処理されると、生成エンジン101は、DOAクラスタを検出するためにクラスタリングする(例えば、クラスタリングの出力は、1~3個の典型的な伝導速度ベクトルであり得る)。より具体的には、ボトムアップステージ手法は、電気生理学測定値の点ごとに伝導速度ベクトル及び病巣源位置を出力し、最後のステージは、病巣源に基づいて電気流シミュレーションのパターンを推定するために格子ボルツマンモデルを使用する。
【0075】
ブロック350において、生成エンジン101は、最良のCVベクトルを見つけるためにボクセル化する(すなわち、1つ以上のボクセルを処理する)。この点に関して、心房は、K個のボクセルにボクセル化され(すなわち、心房は、1つ以上のボクセルに分割され)、各ボクセルからは、その最近傍の6つのみが見える。更に、生成エンジン101は、最も良いCVベクトルを決定するために、ごく近隣に興奮波が見られる確率を使用する。ブロック360において、生成エンジン101は、(最良のCVベクトルに沿って)波を提示する動的3D生成を実行する。この点に関して、1つ以上の入力から構築されるデジタルツイン(例えば、画像から構築された解剖学的構造)は、動的3D生成と位置合わせされる。
【0076】
ブロック370において、生成エンジン101は、医師24のためのユーザインターフェースにおいてデジタルツインを提示する。1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、デジタルツインを提示して、精密アブレーションガイダンスを提供し、解剖学的構造(すなわち、心臓12)の電気生理学情報を提供する。例えば、ユーザインターフェースの精密アブレーションガイダンスは、伝導速度ベクトル推定値に基づいて(例えば、最良のCVベクトルに基づいて)電気がデジタルツインを通ってどのように流れるかを示す1つ以上のシミュレーション及び/又はデジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用を含むことができ、1つ以上の相互作用に基づいてアブレーションのための病巣を決定する。より具体的には、生成エンジン101は、任意のアブレーションが行われる前に、アブレーション処置のためのガイダンスツールとして作用する。このようにして、医師24は、心臓12の心房のリアルタイム状態を評価し、それに応じてデジタルツインと相互作用することができる。
【0077】
ブロック380において、生成エンジン101は、1つ以上の追加の入力を受信する。1つ以上の追加の入力は、リアルタイムデータであるとともに患者固有のものであり得る。1つ以上の入力は、バイオメトリックデータ、カテーテルの運動、CT画像、MRI画像、リアルタイム超音波画像、追加のIC ECG及び/又はBS ECG記録、並びに/若しくは更新されたCVベクトル推定値を含むことができる。1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、1つ以上の追加の入力を受信し、アブレーション処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ提案を生成し、(1つ以上の追加の入力に基づいて)デジタルツインの再マッピング動作を行う。例えば、医師24は、ブロック370で提示されたデジタルツインを見た後で、カテーテル14を新しい位置に移動させるなど、1つ以上の決定を行う。生成エンジン101は、シミュレーションを生成するために、新しい位置、及び新しい位置に関連付けられて更新されたバイオメトリック情報を(1つ以上の追加の入力として)利用する。生成エンジン101は、異なるアブレーションアプローチをシミュレートし、最小面積のアブレーションで不整脈を低減するアプローチを提案する。生成エンジン101は、どの病巣がアブレーションにとってより重要であるかを決定するために、巣状興奮間の相互作用をシミュレートする。方法300の技術的効果及び利点は、生成エンジン101が、バイポーラ電圧マップを使用して実際の瘢痕を含むこと、又は医師24が各位置においてアブレーションしようとしているという仮定に基づいてシミュレートされた瘢痕を含むことを可能にすること含む。1つ以上の実施形態によれば、ブロック380の動作は任意選択であり得る。
【0078】
破線ブロック380(任意選択)において、アブレーションが行われる。この任意選択の工程は、1つ以上の追加の入力に従ってブロック370及び380で提示されたシミュレーションに基づいて医師24によって実行することができる。1つ以上の追加の入力が受信され、及び/又はアブレーションが行われた後、生成エンジン101は、ブロック320に戻ることによって、再マッピング動作(矢印395によって表される)を行うことができる。
【0079】
方法300の全部又は一部は、本明細書で説明されるように、ML/AIに関する生成エンジン101によって実装され得る。図4は、1つ又は2つ以上の実施形態による、AIシステム400のグラフィック描写を示す。図示されるように、AIシステム400は、メモリ又は他の記憶ユニット上に記憶され得るデータ410(例えば、バイオメトリックデータ)を含む。更に、AIシステム400は、図1図2の生成エンジン101のソフトウェア態様(例えば、その中のML/AIアルゴリズム)を表すマシン420及びモデル430を含む。マシン420及びモデル430はともに、転帰440を生成することができる。AIシステム400は、図1のカテーテル14、図1のワークステーション55、及び/又は図2の装置204を表すことができるハードウェア450を含むことができる。適切な場合、理解を容易にするため、図4図5の説明は、図1図3を参照して行う。一般的に、AIシステム400のML/AIアルゴリズム(例えば、図1図2の生成エンジン101によって実施される)は、データ410を使用してハードウェア450に対して動作して、マシン420を訓練してモデル430を構築し、転帰440を予測する。
【0080】
例えば、マシン420は、ハードウェア450上で実行されるソフトウェアコントローラとして動作する。データ410(例えば、本明細書に記載される生体測定データ)は、ハードウェア450に関連付けられた進行中データ(すなわち、連続的に収集中のデータ)又は出力データであり得る。データ410はまた、現在収集中のデータ(例えば、カテーテル14の位置)、履歴データ、又はハードウェア450からの他のデータを含むことができ、外科手術中の測定値を含むことができ、外科手術の転帰と関連付けることができ、収集され、心臓処置の転帰(又はLA T、電気活動、トポロジー、双極マッピング、基準活動、心室活動、優位周波数、インピーダンスのうちの1つ以上)と相関がある図1の心臓12の温度を含むことができる。データ410は、ハードウェア450に関連付けることができる。データ410は、マシン420によって1つ以上のサブセットに分割され得る。
【0081】
更に、マシン420を訓練する。これには収集されたデータ410の分析及び相関が含むことができる。例えば、心臓の場合では、温度及び転帰のデータ410を、心臓処置中の図1の心臓12の温度と正又は負の処置転帰との間に相関又は関連が存在するかを判定するために訓練することができる。別の実施形態によれば、マシン420を訓練することは、1つ以上のサブセットを用いた図1の生成エンジン101による自己訓練を含むことができる。この点に関して、例えば、図1の生成エンジン101は、デジタルツインを生成し、波の伝搬をシミュレートするために、学習する。
【0082】
モデル430は、データ410上に構築される。モデル430を構築することは、物理的ハードウェア又はソフトウェアモデリング、アルゴリズムモデリング、及び/又は収集及び訓練されたデータ410(又はそのサブセット)を表すことを目的とした同様のモデリングを含むことができる。いくつかの態様では、モデル430の構築は、マシン420による自己訓練動作の一部である。モデル430は、ハードウェア450の動作をモデル化するとともに、ハードウェア450から収集されたデータ410をモデル化してハードウェア450によって得られる転帰440を予測するように構成することができる。(ハードウェア450に関連付けられたモデル430の)転帰440の予測では、訓練されたモデル430を用いることができる。例えば、また、本開示の理解を深めるため、心臓の場合、36.5℃~37.89℃(すなわち、華氏97.7度及び華氏100.2度)の処置中の温度が心臓処置からの肯定的な結果をもたらす場合、これらの温度を使用した所与の処置で転帰440を予測してもよい。したがって、予測された転帰440を使用して、マシン420、モデル430、及びハードウェア450を適宜構成することができる。
【0083】
したがって、AIシステム400が説明されたように動作するために、その中のML/AIアルゴリズムは、ニューラルネットワークを含むことができる。一般に、ニューラルネットワークは、ニューロンのネットワーク又は回路であり、あるいは現代的な意味では、人工ニューロン又はノード又はセルで構成される人工ニューラルネットワーク(ANN)である。
【0084】
例えば、ANNは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑なグローバル挙動を示すことができる処理要素(人工ニューロン)のネットワークを含む。ニューロンのネットワーク又は回路のこれらの接続は、重みとしてモデル化される。正の重みは興奮性の接続を反映し、負の値は抑制性の接続を意味する。入力は重みで修正され、線形結合を使用して合計される。活性化関数が、出力の振幅を制御することができる。例えば、出力の許容範囲は通常0~1であるが、-1~1の場合もある。多くの場合、ANNは、ネットワークを通って流れる外部情報又は内部情報に基づいてその構造を変更する適応型システムである。
【0085】
より実用的な言葉で言えば、ニューラルネットワークは、入力と出力との間の複雑な関係をモデル化するために、又はデータのパターンを見つけるために使用することができる非線形統計データモデリング又は意思決定ツールである。したがって、ANNは、データセットを介して訓練される間に、予測モデリング及び適応制御アプリケーションに使用することができる。経験から生じる自己学習がANN内で発生する可能性があり、複雑で一見無関係な一組の情報から結論を導き出すことができる点に留意されたい。人工ニューラルネットワークモデルの有用性は、それらを使用して、観測から関数を推定し、かつそれを使用することができるという事実にある。教師なしニューラルネットワークは、入力分布の顕著な特徴をキャプチャする入力の表現の学習、及び、最近では、観測データの分布関数を暗黙的に学習することができるディープラーニングアルゴリズムにも使用することができる。ニューラルネットワークでの学習は、データ(例えば、生体測定データ)又はタスク(例えば、任意の数の様々な疾患の監視、診断、及び治療)の複雑さのためにそのような関数の設計を手作業では行えない用途において特に有用である。
【0086】
AIシステム400では、その中のML/AIアルゴリズムは、それらが適用されるタスクに従って一般的に分割されたニューラルネットワークを含むことができる。これらの分割は、時間系列予測及びモデリングを含む回帰分析(例えば、関数近似)、パターン及び配列認識を含む分類、新規な検出及び連続的意思決定の作成、フィルタリングを含むデータ処理、クラスタリング、盲信号分離、及び圧縮のカテゴリ内に入る傾向がある。例えば、ANNの適用領域は、医療処置から生じる患者バイオメトリックデータのセマンティックプロファイルを作成することを支援するための医療診断及び治療を含む。
【0087】
1つ以上の実施形態によれば、ニューラルネットワークは、長・短期記憶ニューラルネットワークアーキテクチャ、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アーキテクチャ、又は他の同様のものを実装し得る。ニューラルネットワークは、多数の層、多数の接続(例えば、符号器/復号器接続)、規則化技術(例えば、ドロップアウト)、及び最適化特徴に関して構成可能であり得る。
【0088】
長・短期記憶ニューラルネットワークアーキテクチャは、フィードバック接続を含み、単一のデータ点(例えば、画像など)をデータのシーケンス全体(例えば、スピーチ又は動画)とともに処理することができる。長・短期メモリニューラルネットワークアーキテクチャの単位は、セル、入力ゲート、出力ゲート、及び忘却ゲートで構成することができ、セルは任意の時間間隔にわたって値を記憶し、ゲートは、セルへの及びセルからの情報の流れを調節する。
【0089】
CNNアーキテクチャは、1つの層内の各ニューロンが次の層内の全てのニューロンに接続される並進不変特性を有する共有重みアーキテクチャである。CNNアーキテクチャの正則化技術は、データ内の階層パターンを利用し、より小さくより単純なパターンを使用してより複雑なパターンを編成することができる。ニューラルネットワークがCNNアーキテクチャを実装する場合、アーキテクチャの他の構成可能な態様は、それぞれのステージにおける多数のフィルタ、カーネルサイズ、層ごとの多数のカーネルを含み得る。
【0090】
ここで図5を参照すると、ニューラルネットワーク500の一例及びニューラルネットワーク500内で実行される方法501のブロック図が、1つ以上の実施形態に従って示されている。ニューラルネットワーク500は、本明細書に記載されるML/AIアルゴリズムの実装(例えば、図1~2の生成エンジン101によって実装される)を支援するように動作する。ニューラルネットワーク500は、図4のマシン420及び/又はハードウェア450などのハードウェアに実装することができる。本明細書に示されるように、図4図5の説明は、適切な場合、理解を容易にするため、図1図3を参照して行う。
【0091】
例示的動作では、図1の生成エンジン101は、ハードウェア450からデータ410を収集することを含む。ニューラルネットワーク500において、入力層510は、複数の入力(例えば、図5の入力512及び514)によって表される。方法501のブロック520に関して、入力層510は入力512及び入力514を受信する。入力512及び入力514は、生体測定データを含むことができる。例えば、データ410を収集することは、ハードウェア450の1つ以上の処置記録からデータセット(データ410によって表される)に生体測定データ(例えば、BS ECGデータ、IC ECGデータ、及びアブレーションデータ)を集積することであり得る。
【0092】
方法501のブロック525では、ニューラルネットワーク500は、データ410の任意の部分(例えば、AIシステム400によって生成されたデータセット及び予測)を用いて入力512及び514をコード化して、潜在表現又はデータコード化を生成する。潜在表現は、複数の入力から導出される1つ以上の中間的データ表現を含む。1つ以上の実施形態によれば、潜在表現は、図1の生成エンジン101の要素ごとの活性化関数(例えば、シグモイド関数又は正規化線形関数)によって生成される。図5に示すように、入力512及び514は、ノード532、534、536、及び538を含むように示された隠れ層530に与えられる。ニューラルネットワーク500は、ノード532、534、536、及び538の隠れ層530を介して処理を実行して、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される、複雑なグローバル挙動を示す。したがって、層510と層530との間の移行は、入力512及び入力514を受けて、これをディープニューラルネットワーク(層530内)に転送して、入力の一部のより小さな表現(例えば、結果的に生じる潜在表現)を学習する符号器段階とみなすことができる。
【0093】
ディープニューラルネットワークは、CNN、長・短期記憶ニューラルネットワーク、完全接続ニューラルネットワーク、又はこれらの組み合わせであり得る。入力512及び514は、心内ECG、身体表面ECG、又は心内ECG及び身体表面ECGであってよい。この符号化は、入力512及び入力514の次元数削減をもたらす。次元数削減は、一組の主要変数を得ることによって、考慮されているランダム変数(入力512及び入力514の)の数を低減するプロセスである。例えば、次元数削減は、データ(例えば、入力512及び入力514)を、高次元空間(例えば、10次元よりも高い)から低次元空間(例えば、2~3次元)に変換する特性抽出であり得る。次元数削減の技術的効果及び利点としては、データ410の時間及び記憶空間要件を低減すること、データ410の可視化性を改善すること、及びMLのためのパラメータ解釈性を改善することが挙げられる。このデータ変換は、線形又は非線形であり得る。受信(ブロック520)及び符号化(ブロック525)の動作は、生成エンジン101による多段階データ操作のデータ準備部分とみなすことができる。
【0094】
方法510のブロック545において、ニューラルネットワーク500は、潜在表現を復号化する。復号化ステージは、符号器出力(例えば、結果として生じる潜在表現)を受け、別のディープニューラルネットワークを使用して入力512及び入力514の特定の形態を再構築することを試みる。この点に関して、ノード532、534、536、及び538は組み合わされて、方法510のブロック560に示されるように、出力層550に出力552を生成する。すなわち、出力層590は、削減された次元で、ただし信号干渉、信号アーチファクト、及び信号ノイズなしで、入力512及び入力514を復元する。出力552の例としては、クリーンにされた生体測定データ(例えば、IC ECGデータのクリーン/ノイズ除去バージョンなど)が挙げられる。クリーンにされた生体測定データの技術的効果及び利益には、任意の数の様々な疾患のより正確な監視、診断、及び治療を可能にすることが含まれる。
【0095】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、aFib患者(例えば、患者120)のための心臓12の心房のデジタルツイン(例えば、心房デジタルツイン(atria digital twin)又はADT)を作成することに関して説明される。本明細書に記載されるように、aFibは、世界的なヘルスケアの主要課題である。例えば、aFibの開始及び維持は完全には理解されておらず、これが有効かつ信頼できる療法の開発を妨げてきた。aFibの治療は、多くの場合、カテーテルアブレーションによるものであり、この場合、障害の開始又は永続化の原因であると判定された心筋の領域を標的として、高周波エネルギーの局所的な印加又は凍結により当該領域を電気的に不活性にする。
【0096】
例えば、発作性aFibの場合、カテーテルアブレーションは、80%~90%の範囲の成功率で、比較的良好な転帰をもたらす。しかしながら、持続性aFib患者のためのカテーテルアブレーション療法は、補助的アブレーション戦略の全ての形態をもってしても、約50%の成功率であまり有効ではない(また、アブレーション処置の約33%が、持続性又は長期持続性aFibを有する患者において行われる)。肺静脈隔離(pulmonary vein isolation、PVI)は、第1のアプローチであり得るが、他のアブレーション戦略が、患者のこの区分に対する治療の有効性を高めるために開発されている。
【0097】
aFib維持を担う駆動機構がいくつかある。病巣、ローター、及び心外膜-心内膜解離。最近の臨床研究は、病巣、複合細分化心房電位図(complex fractionated atrial electrogram、CFAE)、及び高優位周波数(high dominant frequency、DF)を対象としている。しかしながら、これらのアブレーション戦略のいずれも、PVIアプローチに何らかの価値を加えることが示されていない。これらのアブレーション戦略が価値を付加しない1つ以上の理由は、これらのアブレーション戦略が、持続性aFibにおいて1つのモダリティのみを調査し、そのモダリティ(例えば、単純又は複雑、病巣挙動又は非病巣挙動、早期又は後期、分割又は非分割)を、アブレーション処置から1年以上経過した後のaFibからの開放の成否に関連付けることを含み得る一方で、EP及びアブレーションパラメータの多くが無視されている。
【0098】
生成エンジン101は、aFib患者(例えば、患者120)のためのADTを生成及び提供することによって、これらの懸念を克服する。例えば、ADTは、アブレーション処置のベースライン記録中にIC ECGデータをモデル化し、全ての利用可能な臨床観察と同じもの(例えば、同一条件下で)を作成する。ADTに基づき、生成エンジン101は、aFibの速やかなかつ長期的な停止について異なるアブレーションアプローチを試験し、対応する成功を予測することができる。したがって、生成エンジン101の1つ以上の利点、技術的効果、及び/又は利益は、アブレーション治療調査のための費用効果が高く、安全で、倫理的な解決策を含む。すなわち、生成エンジン101は、心房の患者固有モデル(すなわち、ADT)を作成する。患者固有モデルは、心房の3D表現、電気生理学モデリング、及び他のモデリングに関するいくつかの課題に対処することができる。生成エンジン101はまた、時変収縮伝導流をシミュレートし、心房の血行動態流をシミュレートし、心室のデジタルツインを作成するとき、同じことを適用することができる。生成エンジン101はまた、IC ECG、CVベクトルを推定するための心房の3D撮像、及びデータに最も良く適合するN個の典型的な電気流をシミュレートするための格子ボルツマンモデルを使用することによって、これらの懸念を克服する。例えば、生成エンジン101は、深層学習アルゴリズムを利用及び適用して、12誘導ECG信号のセットからボクセルごとのCVベクトルを推定することができる。図5に関して本明細書で述べたように、生成エンジン101は、3D解剖学的構造、BC ECG、及びBS電極の3D位置からCV推定するためのML/AIアーキテクチャを含むことができる。
【0099】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、ADTとして、aFib患者(例えば、患者120)の左心房のデジタルツインを生成する。このADTは、本明細書で説明されるように(少なくとも図3を参照)、IC-ECGのベースライン記録、CVベクトル推定、及び左心房に沿って伝搬する典型的な波をシミュレートするための格子ボルツマンモデルから生成される。ADTは、双極電圧マップを使用した実際の瘢痕、又は医師24が各位置でアブレーションしようとしているという仮定に基づく模擬瘢痕を含むことができる。したがって、ADTは、アブレーション処置のためのガイドツールとして使用することができる。ADTはまた、(ADTにわたって)異なるアブレーションアプローチをシミュレートし、最小面積のアブレーションで不整脈を低減するもの(例えば、最小有効面積を有するアプローチ)を選択することができる。ADTは、(心房デジタルツインに関して)巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートしてどの病巣がアブレーションにとってより重要であるかを決定することができる。aFibの性質を考慮して、ADTは、解剖学的情報に基づくデジタルシミュレーションなどにおいて不整脈がそれ自体を繰り返すと仮定せず、標準的な電気伝導を仮定することに留意されたい。
【0100】
ここで図6を参照すると、方法600が1つ以上の実施形態に従って示されている。ブロック605は点線で示され、入力ブロックを示すことに留意されたい。ブロック610、615、620、625、630、635、640、645、650、675、及び680は破線であり、処理ブロックを示し、ブロック655、665、670、及び685は破線であり、出力ブロックを示す。方法600は、DOA推定に基づく速度推定及び病巣源検出(すなわち、DOA推定に基づくCV及び病巣検出のためのプロセス)を行う。DOAは、催不整脈作用のCVベクトルを自動的に識別するための方法と考えることができることに留意されたい。更に、方法600は、電極によって覆われた心臓領域から複数の取得を得るために多電極カテーテルを使用することなどの、局所CVベクトルを推定するためのボトムアップ手法であり得る。
【0101】
ブロック605において、生成エンジン101は、入力記録(例えば、電極によって覆われた心臓領域からの複数の取得物)を受信する。ブロック610において、生成エンジン101は、単極信号ごとに心房検出を実行する。決定ブロック615において、生成エンジン101は、単極信号から心房活動をセグメントごとに分析する。
【0102】
並行して、ブロック620において、生成エンジン101は、カテーテル14を2D空間に更に投影する。決定ブロック625において、2つの優位固有値の和の3つの固有値の和に対する比が95%より高いなど、有効な射影が存在するかどうかを決定する。すなわち、生成エンジン101が2D空間に投影することができない場合、方法はブロック630に進む(NOの矢印によって示されるように)。そうでない場合、方法600はブロック635に進む(YESの矢印で示すように)。ブロック630及び635において、3D又は2D加重DOAモデル推定が、カテーテルを2D空間に投影する能力に基づいて開始される。
【0103】
決定ブロック640において、生成エンジン101は、モデル(例えば、ADT)の推定誤差が大きいか小さいかを決定する。モデルの推定誤差が大きすぎる(例えば、7ミリ秒より大きい)場合、方法600は、ブロック645に進む(NOの矢印によって示されるように)。ブロック645において、DOA推定のための反復モードが適用される。DOA推定のための反復モードが、図11図14に関して示されている。
【0104】
決定ブロック650において、生成エンジン101は、モデル(例えば、ADT)の推定誤差が大きいか小さいか(例えば、7ミリ秒よりも大きいか)を再び決定する。モデルの推定誤差が大きすぎる(例えば、7ミリ秒より大きい)場合、方法600は、(NOの矢印によって示されるように)出力ブロック655に進む。出力ブロック655において、生成エンジン101は、DOAのための/からの任意の不良セグメントを記憶する。
【0105】
有効なDOAがブロック640及び/又は650において検出された場合(YESの矢印で示すように)、LATは出力ブロック665において補正される。出力ブロック670において、全てのセグメントが処理されるまで、1つ以上のDOAポイントもメモリ62に記憶される。例えば、方法600は、全てのセグメントを終了するなど、決定ブロック615にループすることができる。
【0106】
ブロック675において、全てのセグメントが処理されると(矢印676を参照)、DOAクラスタの検出のためにk平均クラスタリングが行われる。k平均クラスタリングは、カテーテル14(例えば、PentaRay(登録商標)カテーテル)の位置ごとに典型的なCVベクトルを授与/提供/生成することができる。ブロック680において、生成エンジン101は、病巣源検出が開始される検出段を実行する(すなわち、支配的なCVベクトルのうちの1つ以上の起点がカテーテル14の中心から8mm以内にある場合、病巣検証の機構が適用される)。出力ブロック685において、生成エンジン101は、病巣源を検証することができる(例えば、その近傍の電極内に10個以上の最も早いS波パターンがある場合)。
【0107】
1つ以上の実施形態によれば、DOA推定、病巣検出、及びLAT改善、並びに図6の他の態様が、本明細書で更に説明される。
【0108】
セグメントごとのDOAに関して、モデルベースのDOAをデータの各セグメントに適用することができる。例えば、モデルベースDOAは、少なくとも10個の局所心房活性化のセットを含むことができ、tは電極の局所心房活動の時間であり、=1,...,m、10≦m≦Nであり、ここでNは、カテーテル14内の有効電極の数である(例えば、PentaRay(登録商標)カテーテルについてはN=20)。生成エンジン101が、単一の波が3D空間内の任意の点から生じ、単一の波が一定のCVでカテーテル14に向かって進行すると仮定/決定する場合、生成エンジン101は、式1に従ってJ(θ)、すなわちモデルの「総コスト」を定義することができる。ここで、x,y,zは電極の位置の座標であり、x,y,zはDOAが計算される位置の座標である。
【0109】
【数1】
【0110】
すなわち、生成エンジン101は、更に
【0111】
【数2】
を、(x,y,z)に位置しtに到達するDOA点から、(x,y,z)に位置するi電極までの距離として定義する。生成エンジン101は更に、t_0を、全ての電極に対するバイアス到達時間として定義し、vは波の1/CVである。J(θ)の
【0112】
【数3】
の項は、カテーテル14の原点により近い解を選び、心房の解剖学的構造内で解を見つける確率を増加させる正則化項である。モデルベースDOAの目的は、総コストJ(θ)を最小化する「最良」のθ=(x,y,z,t,v)を見つけることによって、総コストJ(θ)を最小化することである。生成エンジン101は、vが0より大きいという制約を伴う勾配降下推定手順を使用することによって、この目的を達成する。勾配降下は、k番目の反復において多変量関数J(θ)が定義され、点θの近傍において微分可能である場合、J(θ)は式2に従ってJ(θ)の負の勾配の方向においてθから最も速く減少するという観察に基づくことができる。
θk+1=θ-γ・∇J(θ) 式2
【0113】
∇は微分演算を表しγは学習速度係数である。γは、変換を確実にするために小さくすることがでるが、J(θ)の遅い変換又は極小値への収束に対処するために、過剰に小さくしないようにできることに留意されたい。1つ以上の実施形態によれば、後に式3~7によってそれぞれ以下に示されるように、勾配降下アルゴリズムの正式な記述は、(x,y,z,t,v)の各パラメータについて、J(θ)の微分方程式を導出することを含むことができる。
【0114】
【数4】
【0115】
図7~11は、1つ以上の実施形態による、インターフェース700、800、900、1000、及び1100を示す。インターフェース700、800、900、1000、及び1100は、生成エンジン101によって生成することができる。図7のインターフェース700は、心房活動のセグメントに基づくDOA推定の一例を示す。インターフェース700の第1の部分710は、局所興奮時間(t-円)の位置及びDOAモデルに基づくそれらの対応する推定された局所興奮時間(四角)の位置を有するユニポーラ信号のセットを提供する。インターフェース700の上の図720は、推定された巣状興奮(内側にxを有する円)を示す。他の円は、X-Y空間内の電極の位置を表す。インターフェース700の下の図730は、左心房の解剖学的構造上のカテーテル14の実際の位置を表す。
【0116】
図8のインターフェース800は、例示的な等時線マップを示す。波は、内側にxを有する円810から伝搬している。各円は、影付きバーに従ってミリ秒(msec)単位の到着時間を表す。1つ以上の円830は、電極の位置を表し、その中の数字はミリ秒単位の推定誤差を表す。
【0117】
1つ以上の実施形態によれば、生成エンジン101は、次元削減、重み付きDOA推定、及び/又はDOA反復モードに関して上記のモデルベースDOAを変形することができる。
【0118】
次元削減に関して、カテーテル14を表面に投影することができる。投影は、最も高い固有値を有する2つの固有ベクトルを取る生成エンジン101によって行われる。2つの固有値によって保存されるエネルギーが95%より大きい場合、生成エンジン101は、式8~13によって示されるように、3D空間から表面への投影が、z次元のないθ=(x,y,z,t,v)に関して有効であると仮定/決定する。
【0119】
【数5】
【0120】
ここで図9を参照すると、1つ以上の実施形態によるインターフェース900が示されている。インターフェース900は、2DのDOA推定の例に関する(ここで、エネルギーの97.7%が保存され、したがって、2DのDOA推定が適用される)。インターフェース900の第1の部分910は、tに基づいてソートされたユニポーラ信号を提供する。ここで、四角はx,y,z,t,及びvの推定に基づいて推定されたtを表す。インターフェース900によって示される例では、単一の波がカテーテル14に向かって進行する。インターフェース900の上の図920は、推定された巣状興奮(内側にxを有する円)を示す。円は、X-Y空間における電極の位置を表す。インターフェース900の下の図930は、左心房の解剖学的構造上のカテーテル14の実際の位置を表す。
【0121】
重み付きDOA推定に関して、生成エンジン101は、浅い興奮よりも「信頼できる」「先鋭な」興奮を提供する。ここで、先鋭度はtにおけるユニポーラ信号の時間微分dv/dtに基づいて定義することができる。各tを、対応する時間微分dv/dtに基づいて0から1の間の重みにマッピングすることができる。式14~18に従って、2Dに対して交番を設定することができる。
【0122】
【数6】
【0123】
図10を参照すると、1つ以上の実施形態によるインターフェース1000が示されている。インターフェース1000は、巣状興奮として検出された重み付けDOAの例である。インターフェース1100のグラフは、電極(例えば、B5、B7、D13、C10など)にそれぞれ信号を提供する。インターフェース1000において、電極E19及びE20における最も早いS波パターンに留意されたい。インターフェース1000のチャート1001において、各円は、勾配の重みを表すことができる。
【0124】
DOA反復モードに関して、平均推定誤差が特定の閾値(例えば、7ミリ秒)を上回る場合、生成エンジン101は、DOA推定のための反復モードに入る。各反復において、最も大きい推定誤差を有する局所興奮時間がDOA推定から除去される。このプロセスは、10を超える有効な局所興奮時間がある間は、繰り返すことができる。
【0125】
図11を参照すると、1つ以上の実施形態によるインターフェース1100が示されている。このインターフェースは、カテーテル14の中心における巣状興奮の推定に関する情報をどのように表示するかの一例である。12.4ミリ秒という大きな推定誤差のために、生成エンジン101は反復モードを開始することに留意されたい。インターフェース1100のグラフは、特定の心拍及び興奮時間(すなわち、信号が電極の各対の下を通過した時間)を表す信号を提供する。インターフェース1100の3D画像は、左心房内の各電極の場所を表す。グラフで提示されるインターフェース1100の2D画像は、表面上の各電極対の位置及び相対的興奮時間を表す。
【0126】
図12を参照すると、1つ以上の実施形態による1つ以上のグラフ1210、1230、及び1250が示されている。1つ以上のグラフ1210、1230、及び1250は、(例えば、カテーテル14の中心における)病巣源の第1の反復、及び(例えば、電極の近くにずれて配置されている)巣状興奮の第2~第9の反復を図示する。グラフ1210は、反復ごとの最大誤差を示す。グラフ1230は、反復ごとの伝導速度を示す。グラフ1210及び1230の両方が組み合わされて、「妥当な解」に対するモデルの全体的な収束を示す(最大誤差は、第2の反復の後に5ミリ秒未満に低下し、CVは0.5mm/ミリ秒である)。グラフ1250において、ドット1260はDOA推定のための有効な電極を表し、電極は無効な電極を表し、「反復9」は、この電極が反復9においてDOA推定から除外されたことを表す。反復モデルは、ノイズの多い局所興奮時間の場合、又はカテーテル14に向かって伝搬する2つ以上の波を有する場合を処理するために使用されることに留意されたい。
【0127】
図13を参照すると、インターフェース1300は、反復9におけるDOA解(すなわち、モデルの実際の結果)の一例を示す。グラフ1301は、特定の心拍及び興奮時間(すなわち、信号が電極の各対の下を通過した時間)を表す信号を提供する。3D画像1305は、左心房内の各電極の場所を表し、グラフ内に提示される2D画像1310は、表面上の各電極対の位置及び相対的興奮時間を表す。1つ以上の実施形態によれば、グラフ1301は、遠隔電場活性化を除去した後の単極信号を示す(測定点を削除するために)。1つ以上の実施形態によれば、信号は、1つ以上のスプライン及びスプライン当たり1つ以上の電極を有するカテーテル14(例えば、48個の電極を有するOCTARAY(登録商標)マッピングカテーテル)によって取得することができる。モデルの推定誤差は重要な量である。推定誤差は、モデルの適合度の「良さ」の尺度である。最終モデルが、ある閾値(例えば、7ミリ秒)を上回る全体推定誤差をもたらすとき、生成エンジン101は、セグメントが分析に無効であると仮定することができる。無効セグメントの割合は、この対象におけるaFibの「複雑さ」の良好な尺度である。高密度カテーテル及び遠隔電場低減アルゴリズムを使用するとき、「推定誤差」は、電極のグループごとに、又は電極ごとに生成エンジン101によって計算することができ、「良好度」は、各電極によって生成することができる。
【0128】
セグメントDOAから伝導速度ベクトルに移動する生成エンジン101に関して、DOA項は、カテーテル14に向かって伝搬している波の推定される伝導速度及び(x,y)位置を表すことができることに留意されたい。本明細書で述べたように、生成エンジン101は、局所心房活動の伝導速度ベクトル単一セグメントの推定を提供することができる。セグメント持続時間は典型的には100~200ミリ秒である。更に、典型的な記録は、2.5~30秒の単極信号を有し、aFibの最中に約10~200個のセグメントを含む。したがって、全てのセグメントが処理されるまで全ての有効なDOAが記憶され、次にk平均クラスタリングが行われる。図14とグラフ1400は、1つ以上の実施形態によるDOAクラスタリングの例を示す。生成エンジン101は、DOAのクラスタリングに基づく記録ごとに決定を実行することができる。全ての円は、記録内のLATのセグメントからのDOA推定を表す。この記録には、データを「説明する」DOAの2つのクラスタがある。第1のクラスタ1410((-3.7mm,-0.2mm)における円)は、DOAの80.5%を含み、第2のクラスタ1420は、記録におけるDOAの19.5%を含む。クラスタリングの出力は、1~3個の典型的なCVベクトルである。
【0129】
優位クラスタがカテーテル14の中心から半径8mm以内に入る場合、生成エンジン101によって病巣源が検出される。病巣源はまた、最も早いS波パターンの少なくとも10個の標示(構成可能)が、病巣から8mmの半径内に位置する電極において見出される場合、検証されてもよい。病巣検出ベースのDOAは、巣状興奮にカテーテルを配置することなく、解剖学的構造上の位置に現れる可能性があるので、検証プロセスは任意選択であることに留意されたい。
【0130】
図15は、1つ以上の実施形態による、ユーザインターフェース1510及び1540を示す。インターフェースは、1510病巣マップを示す。インターフェース1540は、伝導速度の静的マップを示す。インターフェース1510及び1540のマップはDOAアルゴリズムに基づいており、左心房上に提示される。
【0131】
1つ以上の実施形態によれば、電気流シミュレーションのための格子ボルツマンモデルが説明される。生成エンジン101のDTAアルゴリズムのボトムアップステージは、電気生理学測定値の点ごとに、すなわち、PentaRay(登録商標)カテーテルによる測定値の位置ごとに、CVベクトル及び病巣源位置を出力する。生成エンジン101のアルゴリズムの最終段は、伝導速度ベクトルに基づいて電気流シミュレーションのパターンを推定するために格子ボルツマンモデルを使用する。心房は、K個のボクセルにボクセル化され、各ボクセルからは、その最近傍の6つのみが見える。前段からの測定値は、可能な伝導速度ベクトルのセットを各ボクセルに割り当てるために使用される。式19を参照されたい。φvはボクセルvに関連する伝導速度ベクトルMを表す。|φ|は、V/sec単位の実際の伝導速度であり、φix,φiyは、当該伝導速度のx成分及びy成分である。
【0132】
【数7】
【0133】
各時間サンプルtごとに、生成エンジン101は、伝導速度、サイクル長、及び境界条件の制約を受ける活性化の確率をボクセルごとに推定する。生成エンジン101は、0.5mV未満のバイポーラ電圧値を有する全てのボクセルが非導電性であり、波がこのボクセルを活性化することを制限されると仮定することができる。1つ以上の境界条件はまた、最良のアブレーションアプローチをシミュレートしようとするユーザからアルゴリズムへの入力として与えられる焼灼点又は焼灼線に基づいて、生成エンジン101によって仮定され得る。生成エンジン101は、時間0において、病巣源標示を伴う優位ボクセルが「発火」であるときに、動作/アルゴリズムを開始する。存在しない場合、病巣源は、臨床仮定に基づいて開始される。例えば、生成エンジン101は、ブッフマン束が正常洞調律中の左心房の電気的活性化のための優先経路であるので、病巣源位置としてブッフマン束を選択する。
【0134】
生成エンジン101は、式20に従って、病巣のごく近隣において興奮波が見られる確率を決定/計算する。
【0135】
【数8】
【0136】
は最近傍の7つのうちの1つを表し、dtは系内では1ミリ秒である。f(x+e,t+dt)=1の場合、生成エンジン101は、x+eの現在のCVを推定する(例えば、直近の20ミリ秒におけるボクセルx+e近隣の波の情報を収集することなど、いくつかの方法が生成エンジン101によって適用可能である)。次に、ボクセルx+eに関連付けられた推定CVとして示されるθ=[|θ|,θ,θ]により、CV基準は、式21~23に従って定義することができる。
【0137】
【数9】
【0138】
推定の開始時にα=1であり、αは、格子ボルツマンモデルが波の推定に失敗するたびに係数2だけ増加されることに留意されたい。所与の期待されるCVサンプルθに対して、全ての上記基準が満たされる場合、CV速度基準が満たされ、f(v+e,t+dt)は、1と等しくなる(例えば、v+eが瘢痕ボクセルではない場合も)。次に、生成エンジン101は、図16及び方法1600による修正格子ボルツマンモデルを実装することができる。
【0139】
方法1600は、ブロック620で開始する。ここでは生成エンジン101が心房セットφvをボクセルごとにボクセル化する。ブロック1640において、生成エンジン101は、病巣源の初期ボクセルを設定する。
【0140】
次いで、ブロック1660において、生成エンジン101は、各tについて、t←t+dtを決定する。更に、ブロック1660において、ボクセルvごとに、v+eが瘢痕ボクセルf(v+e,t+dt)=0である場合、ブレークする。更に、f(v,t)=1と仮定して、θを推定して、ボクセルv+eについて、時間t+dtにおいてCV基準が満たされた場合、f(v+e,t+dt)=1とし、CV基準が満たされない場合、f(v+e,t+dt)=0とする。
【0141】
決定ブロック1680において、生成エンジン101は、有効波が存在するかどうかを決定する。有効波が存在する場合、方法400は、ブロック1690に進み(1681の矢印によって示されるように)、ここで、生成エンジン101は、同じαを推定のために利用する(例えば、推定の開始時においてα=1であることに留意されたい)。有効波が存在しない場合、方法400は、(NOの矢印によって示されるように)ブロック1695に進み、ここで生成エンジン101はαを増やして再推定し、より高いαを返す。本明細書で言及されるように、格子ボルツマンモデルが波の推定に失敗するたびにαを2の倍数で増加させることができる(例えば、α,(α=α・2))。
【0142】
実装に関して、生成エンジン101は、病巣源の全体的な発火率を定義するためにCVを考慮する。更に、典型的な波が単一のサイクルについて推定されると、行列φvは、2つの異なる行列にすることができる。例えば、第1の行列は、伝導CV基準を満たしたφvの要素のみを含むことができ、第2の行列は、CV基準を満たさなかった要素を含むことができる。第2の行列を使用して、aFibにおける波の第2のシミュレーションを作成することができる。
【0143】
1つ以上の実施形態によれば、aFib患者のための心房のデジタルツインは、アブレーションのためのガイドツールとして機能するように、パーソナライズされた電気活動を有する心房の頑強なコンピュータ生成レプリカとすることができる。デジタルツインを生成及び作成するために、生成エンジンは、不整脈トリガ及び心房壁物質に関する情報を考慮しながら、心臓のパーソナライズされた電気活動及びCVベクトルを測定及び利用する。次いで、アブレーション処置中に、生成エンジンは、デジタルツインを連続的に更新するとともにデジタルツインに基づいて最適なアブレーション処置及び/又は追加処置を提案する。結果として、生成エンジンによって生成されるデジタルツインは、現在のデジタルシミュレーションと比較して非常に正確であり、心臓医師及び医療関係者によるアブレーション処置中の効果的なガイダンスのために使用することができる。
【0144】
1つ以上の利点及び技術的利益によれば、生成エンジン101及びADTは、異なるアブレーションアプローチをシミュレートし、最小限のアブレーション面積で不整脈を低減するアプローチを選択することができる。1つ以上の利点及び技術的利益によれば、生成エンジン101は、各焼灼線について、「瘢痕」行列を更新し、新しい境界に基づいてシミュレーションを作成する。1つ以上の利点及び技術的利益によれば、生成エンジン101は、心房サイクル長に対して活性化期間の持続時間を短縮することによって、アブレーションアプローチの成功を提供/サポートする。1つ以上の利点及び技術的利益によれば、生成エンジン101及びモデルは、巣状興奮間の相互作用をシミュレートして、どの病巣がアブレーションにとってより重要であるかを決定する。
【0145】
1つ以上の実施形態による、方法が提供される。本方法は、デジタルツインを介して精密な解剖学的構造の電気生理学を深く理解することを可能にする。本方法は、1つ以上のプロセッサによって実行される生成エンジンによって実施される。方法は、1つ以上の入力を受信することを含む。1つ以上の入力は、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む。本方法は、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して解剖学的構造のデジタルツインを生成することを含む。本方法は、医療処置のためのガイドツールとして機能するユーザインターフェースにデジタルツインを提示することを含む。
【0146】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、1つ以上の入力は、ベースライン記録、伝導速度ベクトル推定値、又は解剖学的構造に沿って伝搬する典型的な波をシミュレートするための格子ボルツマンモデルを含むことができる。
【0147】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、デジタルツインは、ベースライン記録、伝導速度ベクトル推定値、又は格子ボルツマンモデルに基づくことができる。
【0148】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、デジタルツインは、到来方向推定、クラスタリング、ボクセル化、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、電気がその解剖学的構造を通ってどのように流れるかを決定するように生成することができる。
【0149】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、DOA推定は、心内心電図又は体表面心電図から、催不整脈作用の伝導速度ベクトル推定値を自動的に識別することができる。
【0150】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、ユーザインターフェースは、最良の伝導速度ベクトルに基づいて電気が解剖学的構造を通ってどのように流れるかを示すデジタルツインに関する1つ以上のシミュレーションを提供することができる。
【0151】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、医療処置は少なくともアブレーション処置を含むことができる。
【0152】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、解剖学的構造は、心臓の心房を含むことができる。
【0153】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、1つ以上のプローブは、患者固有のデータを含むことができる。
【0154】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、生成エンジンは、1つ以上の追加の入力を受信することができる。
【0155】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、生成エンジンは、医療処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ及び提案を生成することができる。
【0156】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、生成エンジンは、1つ以上の追加の入力に基づいてデジタルツインの再マッピング動作を実行することができる。
【0157】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、生成エンジンは、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツイン局所興奮時間マップを生成することができる。
【0158】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、生成エンジンは、デジタルツイン局所興奮時間マップに影響を及ぼしたアブレーションモデルに基づいて、デジタルツインモデル内のアブレーションされた細胞の伝導速度ベクトル推定値を更新することができる。
【0159】
本明細書の1つ以上の実施形態又は方法実施形態のいずれかによれば、デジタルツインは、心房細動患者のために生成することができる。
【0160】
1つ以上の実施形態による、方法が提供される。本方法は、心臓の心房の心房デジタルツインを介して、精密な解剖学的構造の電気生理学を深く理解することを可能にする。本方法は、1つ以上のプロセッサによって実行される生成エンジンによって実施される。本方法は、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して心房デジタルツインを生成することと、医療処置のためのガイドツールとして機能するユーザインターフェースに心房デジタルツインを提示することと、を含む。本方法はまた、心房デジタルツインにわたって1つ以上の異なるアブレーションアプローチをシミュレートすることと、最小面積のアブレーションで不整脈を低減する、1つ以上の異なるアブレーションアプローチからアプローチを選択することと、を含む。
【0161】
1つ以上の実施形態による、方法が提供される。本方法は、心臓の心房の心房デジタルツインを介して、精密な解剖学的構造の電気生理学を深く理解することを可能にする。本方法は、1つ以上のプロセッサによって実行される生成エンジンによって実施される。本方法は、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を利用して心房デジタルツインを生成することと、医療処置のためのガイドツールとして機能するユーザインターフェースに心房デジタルツインを提示することと、を含む。本方法はまた、心房デジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートすることと、アブレーションにとって最も重要な1つ以上の相互作用に基づいて病巣を決定することと、を含む。
【0162】
図中の流れ図及びブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の考えられる実装形態の構造、機能性、及び動作を示すものである。この点に関して、流れ図又はブロック図における各ブロックは、示された論理機能を実施するための1つ又は2つ以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、又は命令の部分を表し得るものである。いくつかの代替的な実装形態において、ブロックに示される機能は、図に示される順序以外の順序で行われてもよい。例えば、連続して示す2つのブロックは、実際に、実質的に同時に実行されてもよく、あるいはそれらのブロックは、ときには、関連する機能性に応じて、逆の順序で実行されてもよい。また留意されたい点として、ブロック図及び/又はフロー図の各ブロック、並びにブロック図及び/又はフロー図のブロックの組み合わせは、特定の機能又は動作を実行する専用のハードウェアベースシステムによって実施されてもよく、あるいは、専用のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを動作させること又は実行することもできる。
【0163】
特徴及び要素が特定の組み合わせにて上記で説明されたが、当業者であれば、特徴又は要素の各々を単独で使用することもでき、又は他の特徴及び要素と組み合わせて使用することもできることを理解するであろう。加えて、本明細書に説明される方法は、コンピュータ又はプロセッサで実行するために、コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装され得る。本明細書で使用するコンピュータ可読媒体とは、電波又は他の自由に伝搬する電磁波、導波管若しくは他の伝送媒体を通って伝搬する電磁波(例えば、光ファイバーケーブルを通過する光パルス)、又は動線を通って伝送される電気信号などの、それ自体が一過性の信号であるものとして解釈されるべきではない。
【0164】
コンピュータ可読媒体の例としては、電気信号(有線又は無線接続を介して送信される)及びコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気媒体、光磁気媒体、コンパクトディスク(compact disk、CD)及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)などの光学媒体、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(static random access memory、SRAM)、及びメモリスティックなどが挙げられるが、これらに限定されない。プロセッサをソフトウェアとともに使用して、端末、基地局、又は任意のホストコンピュータで使用するための無線周波数送受信機を実装することができる。
【0165】
本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、限定を目的としたものではない。本明細書で使用するとき、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の形態をも含むものとする。「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成部品の存在を示すものであるが、1つ若しくは他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではない点を更に理解されたい。
【0166】
本明細書の異なる実施形態の説明は例示の目的で示されたものであるが、網羅的であることも開示される実施形態に限定されることも意図していない。多くの改変及び変形が、記載される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用的な用途、又は市場に見られる技術と比較した技術的改良点を最も良く説明するため、又は当業者による本明細書に開示される実施形態の理解を可能とするために選択されたものである。
【0167】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも1つのプロセッサ上で実行される生成エンジンによって実施されるアブレーション処置ガイダンス方法であって、
前記生成エンジンによって、1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む1つ以上の入力を受信することと、
前記生成エンジンによって、前記1つ以上の画像及び前記伝導速度ベクトル推定値を利用して解剖学的構造のデジタルツインを生成することと、
前記生成エンジンのユーザインターフェースを介して、前記デジタルツインを提示して、前記解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供し、前記解剖学的構造の電気生理学情報を提供することと、
を含むアブレーション処置ガイダンス方法。
(2) 前記1つ以上の入力は、前記1つ以上の画像、前記伝導速度ベクトル推定値、及びベースライン記録又は格子ボルツマンモデルを含む、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(3) 前記生成エンジンは、到来方向推定、クラスタリング、ボクセル化(voxelizing)、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、前記解剖学的構造を通る電気の流れを決定する、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(4) 前記1つ以上の入力は、心内心電図又は体表面心電図からの催不整脈作用を含む、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(5) 前記生成エンジンは、前記1つ以上の入力から前記伝導速度ベクトル推定値を自動的に識別して前記デジタルツインを生成するために、到来方向推定値を利用する、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【0168】
(6) 前記精密アブレーションガイダンスは、前記伝導速度ベクトル推定値に基づいて、電気が前記デジタルツインを通ってどのように流れるかをシミュレートすることを含む、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(7) 前記生成エンジンは、1つ以上の追加の入力を受信し、
前記生成エンジンは、アブレーション処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ提案を生成するか、又は前記1つ以上の追加の入力に基づいて、前記デジタルツインの再マッピング動作を行う、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(8) 前記生成エンジンは、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツイン局所興奮時間マップを生成し、
前記生成エンジンは、前記デジタルツイン局所興奮時間マップに影響を与えたアブレーションモデルに基づいて、前記デジタルツインモデルにおけるアブレーションされた細胞の伝導速度ベクトル推定値を更新する、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(9) 前記精密アブレーションガイダンスは、前記デジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートすることと、前記1つ以上の相互作用に基づいてアブレーションのための病巣を決定することとを含む、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
(10) 前記解剖学的構造は、心臓の心房を含み、
前記1つ以上の入力は、患者固有のデータを含む、実施態様1に記載のアブレーション処置ガイダンス方法。
【0169】
(11) アブレーション処置ガイダンスを提供するための生成エンジンを実行する少なくとも1つのプロセッサを備えるシステムであって、前記生成エンジンは、前記システムに、
1つ以上の画像及び伝導速度ベクトル推定値を含む1つ以上の入力を受信させて、
前記1つ以上の画像及び前記伝導速度ベクトル推定値を利用して、解剖学的構造のデジタルツインを生成させて、
前記生成エンジンのユーザインターフェースを介して、前記デジタルツインを提示させて、前記解剖学的構造の精密アブレーションガイダンスを提供させ、前記解剖学的構造の電気生理学情報を提供させる
ように構成されている、システム。
(12) 前記1つ以上の入力は、前記1つ以上の画像、前記伝導速度ベクトル推定値、及びベースライン記録又は格子ボルツマンモデルを含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記生成エンジンは、到来方向推定、クラスタリング、ボクセル化、及び動的3次元生成のうちの1つ以上を実行することに基づいて、前記解剖学的構造を通る電気の流れを決定する、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記1つ以上の入力は、心内心電図又は体表面心電図からの催不整脈作用を含む、実施態様11に記載のシステム。
(15) 前記生成エンジンは、前記1つ以上の入力から前記伝導速度ベクトル推定値を自動的に識別して前記デジタルツインを生成するために、到来方向推定値を利用する、実施態様11に記載のシステム。
【0170】
(16) 前記精密アブレーションガイダンスは、前記伝導速度ベクトル推定値に基づいて、電気が前記デジタルツインを通ってどのように流れるかをシミュレートすることを含む、実施態様11に記載のシステム。
(17) 前記生成エンジンは、1つ以上の追加の入力を受信し、
前記生成エンジンは、アブレーション処置のための1つ以上の異なるアブレーションアプローチ提案を生成するか、又は前記1つ以上の追加の入力に基づいて、前記デジタルツインの再マッピング動作を行う、実施態様11に記載のシステム。
(18) 前記生成エンジンは、デジタルツインモデルに基づいてデジタルツイン局所興奮時間マップを生成し、
前記生成エンジンは、前記デジタルツイン局所興奮時間マップに影響を与えたアブレーションモデルに基づいて、前記デジタルツインモデルにおけるアブレーションされた細胞の伝導速度ベクトル推定値を更新する、実施態様11に記載のシステム。
(19) 前記精密アブレーションガイダンスは、前記デジタルツインに関して巣状興奮間の1つ以上の相互作用をシミュレートすることと、前記1つ以上の相互作用に基づいてアブレーションのための病巣を決定することとを含む、実施態様11に記載のシステム。
(20) 前記解剖学的構造は、心臓の心房を含み、前記1つ以上の入力は、患者固有のデータを含む、実施態様11に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】