(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】土壌再生および土壌水文学改善のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/14 20060101AFI20241029BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241029BHJP
C12N 1/14 20060101ALN20241029BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20241029BHJP
A01G 7/00 20060101ALN20241029BHJP
C09K 101/00 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C09K17/14 H
C09K17/32 H
C12N1/20 Z
C12N1/14 Z
C12N1/16 Z
A01G7/00 605A
C09K101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523131
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022046679
(87)【国際公開番号】W WO2023069313
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524076028
【氏名又は名称】ローカス ソリューションズ アイピーコー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】カラトゥル カールティク エヌ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4H026
【Fターム(参考)】
4B065AA17X
4B065AA70X
4B065AA77X
4B065AC20
4B065BD50
4B065CA47
4B065CA49
4H026AA07
4H026AA08
4H026AB01
(57)【要約】
本発明は、土壌構造および水文学を改善するための組成物およびその使用の方法を提供する。有利なことに、本発明の組成物および方法は、例えば、水不足、水使用の非効率性、土壌の健全性の低下、養分溶脱および流出、ならびに土壌から生じる温室効果ガス排出に関する増大しつつある問題に対する、環境に優しく、無毒で、費用効果の高い解決策として構築することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に灌漑添加剤を適用する段階を含む、土壌を灌漑するかつ/または土壌の1つもしくは複数の特性を改善する方法であって、該灌漑添加剤が、表面活性分子を含み、かつ該灌漑添加剤が、該土壌に適用された水性流体の表面張力を低下させ、それにより該土壌全体にわたっての該水性流体の分散、浸透、および/または地中浸透(percolation)を改善する、前記方法。
【請求項2】
前記表面活性分子が、合成界面活性剤、微生物もしくは植物由来の生物系界面活性剤、または天然に存在する基質に由来する界面活性剤であり、該表面活性分子が、25 nm未満のミセルサイズを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記表面活性分子が、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体から選択される生物系界面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生物系界面活性剤がソホロ脂質である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記灌漑添加剤が、水性液体と混合され、かつ、灌漑システムを介して土壌に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
土壌が水性液体で灌漑される前または後に、前記灌漑添加剤が土壌に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記灌漑添加剤が、水性流体の量に対して10~100 ppmの濃度で適用される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
改善される土壌の特性が、土壌圧縮であり、前記灌漑添加剤が、該土壌内の細孔に浸透しかつ該土壌の多孔性を増加させることにより、土壌の圧縮を改善する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
微生物土壌処理組成物を土壌に適用する段階をさらに含み、該微生物土壌処理組成物が、土壌および/または植物の根にコロニー形成することができる1種または複数種の有益な微生物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記灌漑添加剤の適用から約30日後に、前記微生物土壌処理組成物が適用される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記微生物土壌処理組成物の適用から約30日後に前記灌漑添加剤が再度適用され、続いて、さらに30日後に該微生物土壌処理組成物の再適用が行われ、かつこれが、所望のレベルの灌漑および/または土壌の1つもしくは複数の特性における改善が達成されるまで無期限に繰り返される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記1種または複数種の有益な微生物が、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ギズハウス(Trichoderma guizhouse)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、メイエロジマ・ギリエルモンディ(Meyerozyma guilliermondii)、ピキア・オクシデンタリス(Pichia occidentalis)、ピキア・クドリアヴゼヴィ(Pichia kudriavzevii)、ウィッカハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)、およびデバリオマイセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記有益な微生物が、バチルス・アミロリケファシエンスNRRL B-67928およびトリコデルマ・ハルジアナムである、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記有益な微生物がウィッカハモマイセス・アノマルスNRRL Y-68030である、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記有益な微生物が枯草菌B4 NRRL B-68031である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記灌漑添加剤なしで灌漑された土壌と比較して、水の使用量が少なくとも25%低減される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月18日付で出願された米国仮特許出願第63/256,688号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
土壌は、鉱物、気体、液体、有機物および微生物の複雑な混合物である。特定の種類の土壌の具体的な組成は、例えば、人間活動、地理的位置および気候などの要因に基づいて変化する。
【0003】
土壌有機炭素(SOC)は土壌物質の重要な構成要素であり、主に動植物組織の残骸、生きた微生物バイオマスおよび微生物プロセスの副産物、ならびに有機-鉱物複合体からなる。より広範な炭素交換サイクルの一部として、SOCのわずかな変化でさえ、ある地域の大気中の二酸化炭素レベルに大きな影響を与える可能性がある(土壌炭素ストックの1 Pg = 大気中CO2の0.47 ppm)。SOCの隔離は、CO2が植物および微生物の残渣ならびに他の有機物質を経由して大気から土壌に移動し、それらが長い平均滞留時間(MRT)で土壌に貯蔵される場合に起こる。SOC隔離は、例えば、植物の成長を増大させ、地上および地下の植物バイオマスを保持し、かつ/または侵食および分解からSOCを保護および安定化することによって、達成することができる。
【0004】
低下、圧縮、疎水性ならびに非効率的な水および養分の輸送は全て、ある種の土壌で発生する可能性のある問題の例であり、それぞれが環境への悪影響だけでなく、農家にとっても悪い結果をもたらす可能性がある。したがって、土壌再生は生態学者にとっても農家にとっても、土壌管理の重要な部分となっている。土壌再生は、表土の低下および浸食を最小限に抑え、枯渇するよりも多くのSOCを保持し、土壌の生物多様性を高め、かつ適切な水および養分の循環を維持することによって、土壌の健全性を回復することを必要とする。
【0005】
土壌の低下は、特に黒泥土などの有機含有量の高い土壌では益々大きな問題になっている。ある種の土壌は、排水の結果として時間の経過とともに低下 (「沈下」といわれることもある)する可能性があり、これによって土壌環境が酸素化され、土壌微生物および/またはその細胞外酵素による有機物の好気性分解が促進される。さらに、乾燥した表土は風によって侵食される可能性がある。
【0006】
さらに、土壌中の炭素豊富な有機物の微生物による分解量が増加すると、その結果、これらのプロセスによる二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素などの大気中温室効果ガス(GHG)排出速度が増加し、SOCの量が減少する。
【0007】
侵食と分解によるSOC損失を超えるようにバイオマス炭素の投入量を増やすことによって土壌炭素収支がプラスになる。バイオマスの分解速度は、例えば、気候、水分レベル、および土壌中に存在する植物-生きている植物または死んでいる植物-の種類を含め、多くの要因によって影響される(Lal 2018)。
【0008】
土壌炭素の蓄積速度に影響を与えるもう1つの重要な要因は、土壌団粒の形成および安定性である。健康で強固な根系は、炭素を捕捉する土壌団粒を形成し安定化させるのに効果的であり、有機物やミネラルが根に絡みつく。土壌微生物(例えば、菌糸体)やその増殖副産物(例えば、多糖類)も、炭素と土壌鉱物粒子との結合を促進し、これらの団粒を形成および安定化させることができる。さらに、土壌団粒サイズが大きくなるほど、土壌中の有機物を消費する微生物によって生成される細胞外酵素による土壌の分解が低下することが研究によって示されている(Trivedi, P. et al. 2017; Trivedi, P. et al. 2015; Possinger et al. 2020; Grandy 2007)。
【0009】
粒度分布、有機物含有量、鉱物特性および水分含有量も土壌圧縮の原因となることがあり、土壌粒子が互いに押し付けられると、それによってその間の細孔空間が減少する。細砂分率が高く炭素含量が低い、淘汰良好な細砂質のロームやローム質の細砂は、特に圧縮されやすい。
【0010】
圧縮は、例えば、家畜による踏みつけ、重機の使用、特定の灌漑方法、および不適切に管理された耕作方法によっても引き起こされることがある。不耕起栽培は、土壌の団粒化を増加させることでSOCの蓄積を改善すると考えられているが、不耕起栽培または減耕起栽培は、その採用から数年間は、土壌の圧縮を実際に増大させる可能性がある。減耕によるSOCの蓄積と土壌微小団粒の成長が、その結果もたらされる土壌圧縮の悪影響を打ち消し始めるまでには、数年かかることもある。
【0011】
時間の経過とともに、圧縮は物理的な土壌の低下と、微生物個体群の減少と、SOCの減少と、細孔のサイズ、構造および数の変化とをもたらす。その結果、土壌強度は嵩比重とともに増加し、一方、水および空気の伝導性、透水性および拡散性は減少する。浸透抵抗の高い土壌層は、根張りの深さと密度を低下させ、植物の養分摂取、水吸収および水利用効率の減少をもたらす。さらに、水や養分の輸送効率が悪いと、リン酸塩や硝酸塩の流出が引き起こされ、例えば、有害な藻類の発生をもたらす可能性がある。
【0012】
土壌疎水性は、土壌に起こりうるもう一つの問題である。土壌は本質的にもともと疎水性でありうるが、土壌が長時間放置されて乾燥しているか、または高い有機含有量を有する場合、疎水性が悪化することが多い。また、火災は、土壌や落葉落枝中の疎水性物質が揮発、熱分解され、土壌断面の奥深くに再分布されるため、土壌の撥水性を誘発または増強する可能性がある。
【0013】
土壌の疎水性は、灌漑ベースの用途の普及や浸透を制限する可能性がある。土壌の疎水性は、水溜り、蒸発および表面流出を引き起こす可能性があり、植物の根域への水の浸透と供給が制限されるため、植物の成長に直接的な影響をもたらす。
【0014】
農業と畜産業の両方に劇的な影響を与える可能性のあるさらなるもう1つの問題は、水の使用量である。米国内のある地域では、過度の耕作、過度の工業化および/または過度の開発が、地下水や帯水層の減少をもたらしている。他の地域では干ばつが発生し、広範な水不足と作物収量の減少をもたらしている。広い農地を灌漑するために必要な水の量と、家畜の飲用に必要な水の量とによって、両産業について水利用効率を高めることが必要とされており、そしてここで、望ましい生産レベルを達成するために必要な水の量はより少ない。
【0015】
土壌界面活性剤(または湿潤剤)は、土壌の撥水性や水利用効率の悪さによる悪影響を打ち消すために利用されてきた。その作用機序は市販品によって異なるが、一般に、界面活性剤は、疎水性尾部と親水性頭部を持つ有機分子から構成されている。この化学構造により、水の表面張力を低下させ、かくして土壌粒子間への水の浸透を高めることができる。さらに、界面活性剤は土壌を湿潤性にする。これは、湿潤剤の疎水性尾部が土壌粒子上の疎水性コーティングと化学的に結合する一方で、親水性頭部が水分子を引き寄せて土壌中に輸送するためである。土壌界面活性剤は、水の使用量と土壌の健全性を管理するための効果的な手段となりうるが、これらの化合物の多くは合成化学物質であり、環境中に残留する可能性がある。中にはヒトおよび/または動物に有毒なものもある。
【0016】
現在の農作物を生産する方法および芝生や庭を手入れする方法の経済的コストと環境への影響は、農業と園芸産業の持続可能性に負担をかけ続けている。土壌の健全性、水と養分の利用効率は、この負担に関わる重要な側面である。したがって、農家、造園業者、および日々の消費者のために、土壌と水の管理に取り組むための安全で改善されたアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
発明の簡単な概要
本発明は、土壌の灌漑を改善するための組成物およびその使用方法を提供する。有利なことに、本発明の組成物および方法は、例えば、水不足、水利用の非効率性、土壌の健全性の低下、養分の溶出および流出、ならびに土壌から生じる温室効果ガス排出に関する増大しつつある問題に対する、環境に優しく、無毒で、費用効果の高い解決策として構築することができる。
【0018】
ある種の態様において、本発明の組成物および方法は、以下の例示的な利点のいずれかに有用でありうる:
(a) 土壌の層全体にわたっての水および養分の分散、地中浸透(percolation)および/または保持を改善し、それにより植物の根による水および養分の取り込みを改善しかつ水および肥料の使用必要量を低減する;
(b) より寒冷な気候でも植物の脈管内における水と養分の循環を改善する;
(c) 土壌の圧縮を減少および/または防止し、それにより土壌全体にわたっての水、養分、根および微生物の移動を改善する;
(d) 土壌上および土壌中の水溜まりを減少させ、それにより蒸発、流出および湛水を減少させる; ならびに
(e) 土壌有機含有量(SOC)を増加させ、土壌から生じる温室効果ガス排出を減少させる。
【0019】
ある種の態様において、本発明は、表面活性分子を含む灌漑添加剤を提供する。表面活性分子は、合成界面活性剤、微生物もしくは植物由来の生物系界面活性剤、および/または天然由来の基質を用いて生産される界面活性剤でありうる。好ましい態様において、表面活性分子は、湿潤剤として機能し、土壌中の水と接触させると、作物、芝および観葉植物を含む植物の散水効率を高める。
【0020】
好ましい態様において、本組成物の表面活性剤は、100 nm未満、75 nm未満、50 nm未満、より好ましくは25 nm未満のミセルサイズを有する。ある種の態様において、ミセルサイズは10 nm未満、8 nm未満、または5 nm未満である。
【0021】
好ましい態様において、表面活性分子は微生物由来の生物系界面活性剤である。生物系界面活性剤は、精製形態および/または粗製形態で適用することができる。粗製形態の生物系界面活性剤は、例えば、生物系界面活性剤および生物系界面活性剤を産生する微生物の培養から生じる発酵培地を含む、細胞増殖の他の生成物を含むことができる。
【0022】
本方法による生物系界面活性剤は、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、セロビオース脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチンおよびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体などの高分子量ポリマーから選択することができる。
【0023】
ある種の具体的な態様において、生物系界面活性剤は、例えば、ラクトン性SLP、酸性SLP、アミノ酸-SLP結合体、塩形態SLP、またはこれらのいずれかの誘導体などの、ソホロ脂質(SLP)である。
【0024】
ある種の態様において、灌漑添加剤は、例えば、担体、pH調整剤、殺虫剤、除草剤、肥料、微生物接種剤、鉱物源、植物種子、染料、安定剤、乳化剤、プレバイオティクスおよび/またはポリマーなどの追加物質を含むことができる。
【0025】
ある種の態様において、本発明は、土壌を灌漑する方法であって、本発明によるある量の灌漑添加剤を水性流体と組み合わせて処理済の灌漑流体を作成する段階、および処理済の灌漑流体を土壌に投与する段階を含む該方法を提供する。ある種の態様において、灌漑添加剤は、灌漑の間中、水性流体とともに連続的に適用される。有利なことに、本方法は、土壌の健全性、土壌の水文学を改善し、その結果、植物の健全性における改善をもたらす。
【0026】
いくつかの態様において、本方法は、灌漑添加剤を水性流体と最初に混合することなく、灌漑添加剤を、乾燥形態で、または担体と混合して、土壌に適用する段階を含み、ここで未処理の灌漑用水および/または雨水がそれらと土壌中でまたは土壌上で接触すると、灌漑添加剤を活性化する。このように、いくつかの態様において、本方法は、灌漑添加剤を土壌に適用した後に、水性灌漑流体を土壌に適用する段階を含む。
【0027】
ある種の態様において、灌漑添加剤は、水と土壌粒子との間の表面張力および/または界面張力を減少させるために土壌に適用され、それにより、以下のうちの1つまたは複数を提供する: 灌漑中の土壌への水および養分の分散、浸透、および/または地中浸透の改善; 硬いまたは圧縮された土壌のほぐし; ならびに土壌の多孔性および通気性の増加。有利なことに、これによって土壌内の根の成長、空気の移動、および保水能力のための空間を増大させることができる。
【0028】
ある種の態様において、灌漑添加剤は、そのナノ粒子ミセルサイズにより、水と土壌の間の表面張力および/または界面張力を低下させるのに、ならびに圧縮された土壌の多孔性を増加させるのに特に有用である。灌漑添加剤の超小型ミセルサイズは、硬くて密に詰まった土壌のマイクロサイズやナノサイズの孔に水が浸透することを可能にし、それによって孔が緩み、空気、養分および水の流れが増加する。これは、土壌中や根に有害な真菌を異常増殖させる可能性のある、過剰な水による根腐れを防ぐのにさらに役立ちうる。
【0029】
ある種の態様において、灌漑添加剤は、水と根の細胞との間の表面張力および/または界面張力を低下させ、それにより、植物の脈管系内への、および脈管系全体にわたっての、水および養分の輸送の増強を容易にする。
【0030】
有利なことに、本方法は、灌漑添加剤を用いない灌漑と比較して、所望のレベルの灌漑を達成するための水の使用必要量を少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも30%低減することができる。
【0031】
有利なことに、ある種の態様において、灌漑添加剤は広い温度範囲で有効である。したがって、いくつかの態様において、より寒い場所および気候(例えば、赤道からさらに離れた場所、高地にある場所、および冬季の温帯な場所)の土壌に灌漑添加剤を適用することで、より低い温度による植物の休眠、細胞代謝の低下および/または水輸送効率の低下にもかかわらず、その循環を促進することができる。さらに、いくつかの態様において、より温暖な気候(例えば、赤道に近い場所、砂漠地域の場所、および夏季の温帯の場所)の土壌に灌漑添加剤を適用することは、高温による水の滞留および蒸発を減少させるのに特に有用でありうる。
【0032】
本方法は、例えば、圧縮土壌、乾燥土壌、侵食土壌、栄養枯渇土壌、湛水土壌、火災被害土壌、疎水性土壌、および/または植物が成長している土壌を含めて、多種多様な条件の土壌の灌漑を改善するのに有効である。
【0033】
ある種の態様において、本方法は、1つまたは複数の微生物土壌処理組成物の適用によってさらに増強することができる。例えば、ある種の態様において、最初に灌漑添加剤を土壌に適用し、続いて一定期間(例えば、30日)後に微生物土壌処理組成物を適用する。このサイクルは無期限に、かつ/あるいは所望のレベルの灌漑、ならびに/または所望のレベルの土壌の健全性、土壌の水文学および/もしくは植物の健全性の改善が達成されるまで、繰り返すことができる。
【0034】
ある種の態様において、土壌処理組成物は、生物系界面活性剤、酵素および/または他の代謝物などの、1つまたは複数の土壌コロニー形成微生物および/またはその増殖副産物を含む。該組成物は、微生物が生産された発酵培地を含んでもよい。
【0035】
ある種の態様において、微生物は細菌、酵母および/または真菌である。いくつかの態様において、組成物は2つ以上のタイプおよび/または種の微生物を含む。
【0036】
1つの態様において、土壌処理組成物は、例えば、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens) NRRL B-67928または枯草菌(B. subtilis) NRRL B-68031などの、バチルス属種(Bacillus sp.)細菌を含む。1つの態様において、組成物は、例えば、T.ハルジアナム(T. harzianum) T-22などの、トリコデルマ属種(Trichoderma sp.)真菌を含む。ある種の態様において、バチルス属種およびトリコデルマ属種は一緒に利用される。
【0037】
1つの態様において、組成物は、例えば、ウィッカハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)、メイエロジマ・ギリエルモンディ(Meyerozyma guilliermondii)、メイエロジマ・カリビカ(Meyerozyma caribbica) (例えば、M. カリビカ(M. caribbica) MEC14XN、別名M.カリビカ亜種ローカス(M. caribbica subsp. Locus.))、サッカロマイセス・ボウラルディ(Saccharomyces boulardii)、デバリオマイセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、ピキア・オクシデンタリス(Pichia occidentalis)、および/またはピキア・クドリアヴゼヴィ(Pichia kudriavzevii)などの、1つまたは複数の酵母を含む。
【0038】
有利なことに、いくつかの態様において、微生物は土壌にコロニー形成し、根の滲出物および消化された有機物を、嵩高で炭素に富む微生物バイオマスおよびネクロマス(死細胞)に変換する。いくつかの態様において、微生物はバイオフィルムを形成する。いくつかの態様において、1種または複数種の微生物は植物の根にコロニー形成し、未処理の土壌および/または植物と比較して、例えば、植物の根の取り込みのための養分の可溶化、根圏全体にわたっての水および塩の分散、ならびに/または地上および地下の植物バイオマスの増加を補助する。
【0039】
ある種の態様において、本方法は、例えば、地上および地下の植物バイオマスの増加、微生物バイオマスおよび/もしくはネクロマスの増加、ならびに/または土壌団粒のサイズおよび/もしくは安定性の増加を介して、SOC隔離を増強しながら圧縮を低減するのに有用でありうる。さらに、いくつかの態様において、本方法は、不耕起栽培または減耕起栽培と組み合わせて利用し、これらの栽培から生じる土壌の圧縮を低減することができる。
【0040】
さらに、ある種の態様において、本方法は、例えば、肥料の過剰使用および/もしくは生物学的利用能の低さ、ならびに/または炭素利用効率(CUE)の低い微生物による土壌の分解によって引き起こされる、二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素などの、温室効果ガスの土壌から生じる排出を低減することができる。
【0041】
本発明の方法および組成物は、土壌および/または植物の健全性を効率的に増強するために、単独でまたは他の組成物および方法との組み合わせで使用することができる。例えば、いくつかの態様において、本方法は、除草剤、肥料、殺虫剤および/または他の土壌改良剤などの追加の成分を土壌および/または植物に適用する段階を含む。正確な材料およびその量は、例えば、本開示の利益を有する栽培者または土壌科学者によって決定されうる。
【0042】
有利なことに、本組成物および方法は、従来再生不可能と考えられてきた土壌資源の再生に役立つと同時に、水利用効率を改善し、土壌GHG排出を抑制および/または回避し、合成肥料の必要性を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
本発明は、土壌灌漑を改善するための組成物およびその使用方法を提供する。有利なことに、本発明の組成物および方法は、例えば、水不足、水利用の非効率性、土壌の健全性の低下、養分の溶出および流出、ならびに土壌から生じる温室効果ガス排出に関する増大しつつある問題に対する、環境に優しく、無毒で、費用効果の高い解決策として構築することができる。
【0044】
選択された定義
本明細書において使用される場合、「農業」とは、食物、繊維、バイオ燃料、医薬、化粧品、サプリメント、観賞物としての目的のためにおよび他の使用のために、植物を栽培することおよび育種することを意味する。本発明によれば、農業は園芸、造園、ガーデニング、植物保全、山林管理および森林再生、放牧および草原の回復、果樹栽培、樹木栽培、ならびに農業経営(agronomy)を含むこともできる。農業には、土壌の管理、モニタリングおよび維持がさらに含まれる。
【0045】
本明細書において使用される場合、「ブロス」、「培養ブロス」または「発酵ブロス」とは、少なくとも養分および微生物細胞を含む培地をいう。
【0046】
本明細書において使用される場合、「炭素利用効率」または「CUE」という用語は、微生物が取り込んだ炭素を、成長およびバイオマス生産と呼吸とに配分する効率の、一般化された尺度をいう。CUEは、CO2生産/排出と成長の合計に対する成長(バイオマス生産)として計算することができる。微生物は「低CUE」または「高CUE」に分類されることが多く、ここで0.50より大きいCUEは高いとみなされ、0.50より小さいCUEは低いとみなされる。
【0047】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書において使用される「発酵すること」、「発酵プロセス」または「発酵反応」などの語句は、プロセスの成長段階および生成物生合成段階の両方を包含することが意図される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「単離された」または「精製された」化合物は、天然においてはそれが結合している、細胞物質などの、他の化合物を実質的に含まない。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、天然に存在する状態において隣接している遺伝子または配列を含まない。精製または単離されたポリペプチドは、天然に存在する状態において隣接しているアミノ酸または配列を含まない。微生物株の文脈における「単離された」とは、その株が天然において存在する環境から取り出されていることを意味する。したがって、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、または担体と結合した胞子(もしくは株の他の形態)として存在しうる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「生物学的に純粋な培養物」とは、天然においてはそれが結合している物質から、単離されている培養物である。好ましい態様において、培養物は、他の全ての生細胞から単離されている。さらに好ましい態様において、生物学的に純粋な培養物は、それが天然において存在するような状態の同じ微生物の培養物と比較して、有益な特徴を有する。有益な特徴は、例えば、1種または複数種の増殖時副生成物の産生の増強でありうる。
【0050】
ある種の態様において、精製された化合物は、重量あたり少なくとも60%が、関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、重量あたり少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%が、関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量あたり少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100% (w/w)が、所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって、測定される。
【0051】
本明細書において使用される場合、「増強すること」とは、改善することまたは増加することを意味する。例えば、植物の健全性の増強とは、種子の発芽および/または出芽の増加、害虫および/または疾患に対する免疫の改善、ならびに干ばつおよび/または水分過剰などの、環境ストレス要因を生き延びる能力の改善を含む、植物の生育能力および発育能力を改善することを意味する。植物成長の増強および/または植物バイオマスの増強とは、地上および/もしくは地下での植物のサイズおよび/もしくは質量を増加させること(例えば、樹冠/葉の体積、高さ、幹尺(trunk caliper)、枝の長さ、苗条の長さ、タンパク質含有量、根のサイズ/密度および/または全体的な成長指数の増加)、ならびに/または植物が所望のサイズおよび/もしくは質量に達する能力を改善することを意味する。収量の増強とは、例えば、植物1株当たりの果実、葉、根および/もしくは塊茎の数および/もしくはサイズを増加させることにより、かつ/または果実、葉、根および/もしくは塊茎の品質を改善すること(例えば、味、食感、ブリックス、クロロフィル含有量および/もしくは色を改善すること)により作物中の植物によって生産される最終生成物を改善することを意味する。
【0052】
「代謝物」とは、代謝によって産生される任意の物質(例えば増殖時副生成物)、または特定の代謝プロセスに関与するのに必須な物質をいう。代謝物は、代謝の出発物質、中間体、または最終生成物である有機化合物であることができる。代謝物の例は、生物系界面活性剤、バイオポリマー、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、およびアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本発明は「微生物ベースの組成物」を利用し、これは、微生物の増殖または他の細胞培養物の増殖の結果として産生された成分を含む組成物を意味する。したがって、微生物ベースの組成物は、微生物それ自体、および/または微生物の増殖時の副生成物を含みうる。微生物は、栄養状態(vegetative state)であるか、胞子もしくは分生子の形状であるか、菌糸の形状であるか、繁殖体の任意の他の形状であるか、またはこれらの混合物でありうる。微生物は、浮遊性であってよく、もしくはバイオフィルムの形であってもよい、または両方の混合物であってもよい。増殖時の副生成物は、例えば、代謝物、細胞膜の成分、タンパク質、および/または細胞の他の成分でありうる。微生物はインタクトなものであってよく、または溶解されてもよい。いくつかの態様において、微生物は、そこでそれらが増殖した増殖培地とともに、微生物ベースの組成物中に存在する。微生物は、組成物1グラムあたり、または1 mlあたり、例えば、少なくとも1×104 CFU、1×105 CFU、1×106 CFU、1×107 CFU、1×108 CFU、1×109 CFU、1×1010 CFU、1×1011 CFU、1×1012 CFU、もしくは1×1013 CFUか、またはより大きいCFUという濃度で存在しうる。
【0054】
本発明は、「微生物ベースの生成物」をさらに提供し、これは、所望の結果を達成するための実践において適用される生成物である。微生物ベースの生成物は、単に、微生物の培養プロセスから採取される、微生物ベースの組成物でありうる。あるいは、微生物ベースの生成物は、追加された、さらなる成分を含みうる。これらの追加の成分は、例えば、安定剤や、緩衝剤や、水、塩溶液などの適した担体や、もしくは任意の他の適した担体や、微生物のさらなる増殖を支援するための追加の養分や、無栄養価の増殖エンハンサーや、ならびに/または、それが適用される環境において、微生物および/もしくは組成物を追跡することを容易にする作用物質を含みうる。微生物ベースの生成物はまた、微生物ベースの組成物の混合物をも含みうる。微生物ベースの生成物はまた、何らかの様式において加工されている、微生物ベースの組成物の、1種または複数種の成分をも含み得、ここで該様式は、例えばろ過、遠心分離、溶解、乾燥、精製などであるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書において使用される場合、「植物」という用語は、木本、観賞用または装飾用、作物または穀物、果実植物または野菜植物、花または樹木、大型藻類または微細藻類、植物プランクトンおよび光合成藻類(例えば、緑藻クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii))の任意の種を含むが、これらに限定されない。「植物」はまた、単細胞植物(例えば、微細藻類)および植物の発育の任意の段階で存在する構造またはコロニー(例えば、ボルボックス)に大きく分化した複数の植物細胞を含む。そのような構造は、果物、種子、苗条、茎、葉、根、花びらなどを含むが、これらに限定されない。植物は、例えば庭に単独で立っていることもあれば、例えば果樹園、作物または牧草地の一部として、多数の植物のうちの1つであることもある。
【0056】
本明細書において使用される場合、「作物植物」とは、営利のためおよび/またはヒト、動物もしくは水生生物の糧のために栽培される任意の種の植物または藻類か、ヒトによって使用される任意の種の植物または藻類(例えば、繊維、化粧品、および/もしくは薬物の生産)か、ヒトによって楽しみのために観賞される任意の種の植物または藻類(例えば、造園もしくは庭園における花もしくは低木)、あるいは工業、商業または教育において使用される任意の植物もしくは藻類、またはその一部をいう。作物植物は、遺伝子導入植物および植物品種を含めて、伝統的な育種および最適化方法により、またはバイオテクノロジーおよび組み換え方法により、またはこれらの方法の組み合わせにより得ることができる植物でありうる。
【0057】
全ての植物および植物部分は本発明から恩恵を受けることができる。これに関連して、植物は、望ましいおよび望ましくない野生植物または作物植物(天然に存在する作物植物を含む)などの全ての植物および植物集団を意味すると理解される。
【0058】
植物組織および/または植物部分は、苗条、葉、花、根、針葉、茎、柄、果実、種子、塊茎および根茎などの、植物の全ての空中および地下の部分および器官を意味すると理解される。植物部分はまた、作物材料ならびに植物性および生殖性繁殖材料、例えば挿し穂、塊茎、根茎、接ぎ穂および種子を含む。
【0059】
本明細書において使用される場合、状態もしくは出現を「防止すること」、またはそれらの「防止」とは、該状態もしくは出現の開始、拡大、または進行を、遅らせる、阻害する、抑制する、未然に防ぐ、および/または最小限にすることを意味する。防止とは、無期限の、絶対的な、または完全な防止を含みうるが必須ではなく、このことは、それが後に進行しつづけうることを意味する。防止とは、そのような状態もしくは出現の開始の重大性を減少させること、および/または、より重大なもしくは広範な状態もしくは出現への、その進行を失速させることを含むことができる。
【0060】
本明細書において提供される範囲は、範囲内の全ての値の略記として理解される。例えば、1~20という範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20とともに、前述の整数の間にある全ての小数の値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9などからなる群からの、任意の数を、数の任意の組み合わせを、または任意の部分範囲をも含むことが、理解される。部分範囲に関しては、範囲のいずれかの末端から拡張する「入れ子の部分範囲」が、具体的に意図される。例えば、1~50という例示的な範囲の入れ子の部分範囲は、一方の方向において、1~10、1~20、1~30、および1~40を含みうるか、または他方の方向において、50~40、50~30、50~20、および50~10を含みうる。
【0061】
本明細書において使用される場合、「減少」とは負の変化をいい、「増加」という用語は正の変化をいい、ここで負または正の変化は少なくとも0.25%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。
【0062】
本明細書において使用される場合、「基準」とは、標準の条件または対照の条件をいう。
【0063】
本明細書において使用される場合、「土壌改良剤」または「土壌調整剤」とは、土壌および/または根圏の特性を増大させるために土壌に添加される、任意の化合物、任意の材料、または化合物もしくは材料の任意の組み合わせである。土壌改良剤は、有機物および無機物を含むことができ、かつ、例えば、肥料、防除剤、および/または除草剤をさらに含むことができる。養分に富んだ、水はけのよい土壌は、植物の成長および健全性のために必須であり、かつしたがって、土壌改良剤は、土壌の養分含量および水分含量を変化させることによって、植物バイオマスを増大させるために使用することができる。土壌改良剤は、土壌構造(例えば、圧縮の防止)を含むが、これに限定されない、土壌の多くの異なる品質を改善するために、養分濃縮および貯蔵能力を改善するために、乾燥土壌の保水性を改善するために、ならびに水分を多く含む土壌の排水を改善するために使用することもできる。
【0064】
本明細書において使用される場合、「界面活性剤」とは、相間の表面張力(または界面張力)を低下させる化合物をいう。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、起泡剤、および分散剤として作用する。「生物系界面活性剤」とは、生きている生物によって産生される界面活性剤である。
【0065】
「含む(comprising)」との移行語は、「含む(including)」、または「含む(containing)」と同義であって、包括的であるかまたはオープンエンド型であり、かつ、列挙されていない追加の要素や方法の段階を除外するものではない。対照的に、「からなる」との移行句は、特許請求の範囲において特定されていない、要素、段階、または成分を、一切含まない。「から本質的になる」との移行句は、ある請求項の範囲を、該請求項に記載の発明の、特定された材料または段階、「および基本的かつ新規な特徴に実質的な影響を及ぼさない、材料または段階」に限定する。「含む」との語の使用は、列挙された要素「からなる」か、または該要素「から本質的になる」という、他の態様の可能性がある。
【0066】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「または」との語は包括的であると理解される。具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「1つの(a)」、「および」、および「その(the)」との語は、単数であるかまたは複数であると理解される。
【0067】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「約」との語は、当技術分野における通常の許容性の範囲内として、たとえば平均の標準偏差2以内として、理解される。約とは、記述される値の、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内として理解されうる。
【0068】
本明細書における、可変部分の任意の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一の基としての可変部分の定義を、またはリストに挙げられた基の任意の組み合わせとしての可変部分の定義を含む。本明細書における、可変部分または局面についての態様の列挙は、任意の単一の態様としてのその態様を、または任意の他の態様とのもしくはその部分との任意の組み合わせとしてのその態様を含む。本明細書において引用される全ての参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0069】
土壌を灌漑するための方法
本発明は、土壌の健全性、構造および水文学を改善するための組成物およびその使用方法を提供する。有利なことに、本発明の組成物および方法は、例えば、水不足、水利用の非効率性、土壌の健全性の低下、養分の溶出および流出、ならびに土壌から生じる温室効果ガス排出に関する増大しつつある問題に対する、環境に優しく、無毒で、費用効果の高い解決策として構築することができる。
【0070】
ある種の態様において、本発明の組成物および方法は、以下の例示的な利点のいずれかに有用でありうる:
(a) 土壌の層全体にわたっての水および養分の分散、地中浸透および保持を改善し、それにより植物の根による水および養分の取り込みを改善しかつ水および肥料の使用必要量を低減する;
(b) より寒冷な気候でも植物の脈管内における水と養分の循環を改善する;
(c) 土壌の圧縮を減少および/または防止し、それにより土壌全体にわたっての水、養分、空気、根および微生物の移動を改善する;
(d) 土壌上および土壌中の水溜まりを減少させ、それにより蒸発、流出および湛水を減少させる; ならびに
(e) 土壌有機含有量(SOC)を増加させ、土壌から生じる温室効果ガス排出を減少させる。
【0071】
本発明は、灌漑添加剤組成物、および土壌に灌漑添加剤を適用する段階を含む土壌の灌漑方法を提供する。有利なことに、本組成物および方法は、土壌の健全性、土壌の水文学、その結果として、植物の健全性を改善する。
【0072】
ある種の態様において、本発明による灌漑添加剤は土壌改良剤または土壌調整剤である。
【0073】
ある種の態様において、灌漑添加剤は表面活性分子を含む。表面活性分子は、合成界面活性剤、微生物もしくは植物由来の生物系界面活性剤、および/または天然由来の基質を用いて生産される界面活性剤でありうる。好ましい態様において、表面活性分子は、湿潤剤として機能し、土壌中の水と接触させると、作物、芝および観葉植物を含む植物の散水効率を高める。
【0074】
好ましい態様において、表面活性分子は微生物由来の生物系界面活性剤である。生物系界面活性剤は、精製形態および/または粗製形態で適用することができる。粗製形態の生物系界面活性剤は、例えば、生物系界面活性剤および生物系界面活性剤を産生する微生物の培養から生じる残りの発酵培地中での細胞増殖の他の生成物を含むことができる。
【0075】
本方法による生物系界面活性剤は、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、セロビオース脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチンおよびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体などの高分子量ポリマーから選択することができる。
【0076】
ある種の具体的な態様において、生物系界面活性剤は、例えば、ラクトン性SLP、酸性SLP、塩形態SLP、またはこれらのいずれかの誘導体などの、ソホロ脂質(SLP)である。
【0077】
本明細書において使用される場合、「ソホロ脂質」、「ソホロ脂質分子」、「SLP」または「SLP分子」という用語は、例えば、酸性(直鎖) SLP (ASL)およびラクトン性SLP (LSL)を含む、SLP分子の、全ての形態およびその異性体を含む。さらに、モノアセチル化SLP、ジアセチル化SLP、エステル化SLP、疎水性鎖長の異なるSLP、脂肪酸-アミノ酸複合体が結合したカチオン性SLPおよび/またはアニオン性SLP、エステル化SLP、SLP-金属複合体、SLP-塩誘導体(例えば、直鎖SLPのナトリウム塩)、SLPアミノアルコール、脂肪族鎖からカルボニル基を除去したSLPなどが、本開示において記述されているものおよび/または記述されていないものを含めて、含まれる。
【0078】
好ましい態様において、本発明によるSLPは、一般式(1)および/または一般式(2)により表され、複数の構造相同体の集合体として得られる:
式中、R
1およびR
1'は独立して、直鎖または分枝鎖であってよく、かつ1つまたは複数のヒドロキシ基を含んでいてもよい、8~20個、特に12~18個の炭素原子、より好ましくは14~18個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖または単一もしくは複数の、特に単一の、不飽和炭化水素鎖を表し、R
2およびR
2'は独立して、水素原子、あるいは直鎖または分枝鎖であってよく、かつ1つまたは複数のヒドロキシ基を含んでいてもよい、1~9個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する飽和アルキル官能基または単一もしくは複数の、特に単一の、不飽和アルキル官能基を表し、R
3、R
3'、R
4およびR
4'は独立して、水素原子または-COCH
3を表す。R
5は典型的にはHである。
【0079】
SLPは、典型的には、スターメレラ種(Starmerella spp.)酵母および/またはカンジダ種(Candida spp.)酵母、例えば、スターメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、カンジダ・アピコラ(Candida apicola)、カンジダ・バチスタエ(Candida batistae)、カンジダ・フロリコラ(Candida floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・ステレート(Candida stellate)および/またはカンジダ・クオイ(Candida kuoi)などの、酵母によって産生される。具体的な態様において、微生物はスターメレラ・ボンビコラ、例えばATCC 22214株である。SLPは、広範囲の温度、pHおよび塩分濃度条件において環境適合性、高い生分解性、低毒性、高い選択性および特異的活性を有する。
【0080】
いくつかの態様において、表面活性分子は、合成界面活性剤および/または市販の界面活性剤を含む、別のタイプの界面活性剤である。これらは、例えば、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60、TWEEN 80、TWEEN 21、SPAN、INCROCAS 30、INCROCAS 35、INCROCAS 40、ACCONON C-10、ACCONON CA-15、ACCONON CA-9、ACCONON CC-6、CROVAL A-40、CROVAL A-70、GELUCIRE 44/14、GELUCIRE 50/13、LABRASOL、SOLUTOL HS15、VOLPO 10、VOLPO 20、PLURONIC F108、PLURONIC F127、PLURONIC F68、PLURONIC F87、PLURONIC L44、PLURONIC R 17R4、TETRONIC 304、OP-10、Calfoam ES-603、Nonidet P40、Triton X-100、TERGITOL 15-S-9、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル50、エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシドのトリブロック共重合体、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン40ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン75ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン6ソルビトールミツロウ誘導体、ポリオキシエチレン20ソルビトールミツロウ誘導体、ポリオキシエチレン20ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン50ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン2セチルエーテル、ポリオキシエチレン10セチルエーテル、ポリオキシエチレン20セチルエーテル、ポリオキシエチレン2ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン20ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン21ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレン 40、ステアリン酸ポリオキシエチレン 50、ステアリン酸ポリオキシエチレン100、モノラウリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン4ソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキルフェノールエトキシレート(例えば、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖類、アルキルグルコシド、糖エステル、親油性モノステアリン酸グリセロール、自己乳化型モノステアリン酸グリセロール、モノステアリン酸ポリグリセロール、ポリグリセロールアルキレート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンミツロウ、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルコールエトキシレート、直鎖第一級アルコールエトキシレート、第一級脂肪族オキシアルキル化アルコール、ノニルフェノールエトキシレート、第一級アルキルポリ(オキシエチレンエーテル)、アルキルポリグリコシド、ポリ(エチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド)、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、およびラウリルアミンオキシド、アルキルアミノエチルグリシンクロリド、レシチン、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、ならびにN-アシルグルタミン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0081】
ある種の好ましい態様において、表面活性剤はラウリル硫酸ではない。
【0082】
好ましい態様において、本組成物の表面活性剤は、100 nm未満、75 nm未満、50 nm未満、より好ましくは25 nm未満のミセルサイズを有する。ある種の態様において、ミセルサイズは10 nm未満、8 nm未満、または5 nm未満である。
【0083】
例えば、いくつかの市販の界面活性剤および/または合成界面活性剤は、Triton X-100 (7.5 nm)、Tween-20 (8.5 nm)、Tween-80 (11.7 nm)、Nonidet P40 (15.4 nm)およびドデシル硫酸ナトリウム(3.5~6 nm)を含めて、20 nm未満のミセルサイズを有する。さらに、いくつかの態様において、ソホロ脂質生物系界面活性剤のミセルサイズは10 nm未満である。
【0084】
ある種の態様において、小さなミセルサイズ(例えば、20 nm未満)、またはより好ましくは、超小型ミセルサイズ(例えば、10 nm未満)を有する灌漑添加剤は、水と土壌の間の表面張力および/または界面張力を低下させるのに、ならびに圧縮された土壌の多孔性を増加させるのに特に有用である。灌漑添加剤のミセルサイズは、密に詰まった土壌のマイクロサイズやナノサイズの孔に水が浸透することを可能にし、それによって孔が緩み、根の動き、微生物の動き、空気、養分および水の流れが増加することを可能にする。
【0085】
ある種の態様において、灌漑添加剤は、例えば、担体、pH調整剤、殺虫剤、除草剤、肥料、微生物接種剤、鉱物源、土壌改良剤、土壌調整剤、植物種子、染料、安定剤、乳化剤、プレバイオティクスおよび/またはポリマーなどの追加物質を含むことができる。
【0086】
ある種の態様において、本発明は、土壌を灌漑する方法であって、本発明によるある量の灌漑添加剤を水性流体と組み合わせて処理済の灌漑流体を作成する段階、および処理済の灌漑流体を土壌に適用する段階を含む該方法を提供する。ある種の態様において、灌漑添加剤は、土壌の灌漑中ずっと連続的に適用される。
【0087】
いくつかの態様において、本方法は、灌漑添加剤を水性流体と最初に混合することなく、灌漑添加剤を、乾燥形態で、または担体と混合して土壌に適用する段階を含み、ここで未処理の灌漑用水および/または雨水がそれらと土壌中でまたは土壌上で接触すると、灌漑添加剤を活性化する。そのような態様において、本方法は、灌漑添加剤を土壌に投与する前または後に、例えば、前後24時間以内に、好ましくは12時間以内に、より好ましくは60分以内に、灌漑流体を土壌に適用する段階を含む。
【0088】
水性灌漑流体は、任意の利用可能な水源、または処理済の灌漑水の性能を増強するために本明細書において教示される任意の添加剤と組み合わされた処理水を含むことができる。水は、河川、湖沼および地下水などの、任意の一般的な水源源からのものでよく、例えば、任意の飲料水、一部の非飲料水、および流出水などの再生水を含んでもよい。
【0089】
ある種の態様において、表面活性剤は、適用される灌漑液の総量と比較して、約0.001重量%~約50重量%、約0.01重量%~約25重量%、約0.5重量%~約15重量%、約2重量%~約12重量%、約3重量%~約10重量%、またはその中の任意の範囲の濃度で利用される。
【0090】
ある種の態様において、表面活性剤は、灌漑液中の水の量と比較して、約1~1,000 ppm、約5~500 ppm、または約10~約100 ppmの濃度で利用される。
【0091】
ある種の態様において、灌漑添加剤を土壌に適用して水と土壌内容物との間の表面張力および/または界面張力を減少させ、それにより灌漑中の土壌への水および養分の分散、浸透、および/または地中浸透の改善を提供し; ならびに土壌上および土壌中の水溜まりを減少させ、それにより蒸発、流出および湛水を減少させる。
【0092】
ある種の態様において、灌漑添加剤を土壌に適用して、密な土壌細孔の浸透を介して硬い土壌または圧縮された土壌を緩め、その結果、土壌の多孔性および通気性の増加をもたらす。有利なことに、これにより、土壌内の根の成長および保水能力のための空間を増加させることができる。
【0093】
有利なことに、本方法は、灌漑添加剤を用いない灌漑と比較して、所望のレベルの灌漑を達成するための水の使用必要量を少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも30%低減することができる。
【0094】
いくつかの態様において、灌漑添加剤は、水と根の細胞との間の表面張力および/または界面張力を低下させ、それにより、植物の脈管系内への、および脈管系全体にわたっての、水および養分の輸送の増強を容易にする。
【0095】
有利なことに、ある種の態様において、灌漑添加剤は広い温度範囲で有効である。したがって、いくつかの態様において、より寒い場所および気候(例えば、赤道からさらに離れた場所、高地にある場所、および冬季の温帯な場所)の土壌に灌漑添加剤を適用することで、より低い温度による休眠、代謝の低下および/または水輸送効率の低下にもかかわらず、その循環を促進することができる。さらに、いくつかの態様において、より温暖な気候(例えば、赤道に近い場所、砂漠地域の場所、および夏季の温帯の場所)の土壌に灌漑添加剤を適用することは、高温による水の滞留および蒸発を減少させるのに特に有用でありうる。
【0096】
ある種の態様において、本方法は、例えば、圧縮土壌、乾燥土壌、侵食土壌、栄養枯渇土壌、湛水土壌、火災被害土壌、疎水性土壌、および/または植物が成長している土壌を含めて、多種多様な土壌条件の灌漑を改善するのに有効である。
【0097】
ある種の態様において、本方法は、1つまたは複数の微生物土壌処理組成物の適用によってさらに増強することができる。例えば、ある種の態様において、最初に灌漑添加剤を土壌に適用し、続いて一定期間(例えば、20~60日、または約30 (+/- 10)日)後に微生物土壌処理組成物を適用する。ある種の態様において、最初に微生物土壌処理を土壌に適用し、続いて一定期間(例えば、20~60日、または約30 (+/- 10)日)後に灌漑添加剤を適用する。これらの交互適用のいずれかのサイクルは無期限に、かつ/あるいは所望のレベルの灌漑、ならびに/または所望のレベルの土壌の健全性、土壌の水文学および/もしくは植物の健全性における改善が達成されるまで、繰り返すことができる。
【0098】
ある種の態様において、微生物土壌処理組成物は、生物系界面活性剤、酵素および/または他の代謝物などの、1つまたは複数の土壌コロニー形成微生物および/またはその増殖副産物を含む。該組成物は、微生物が生産された発酵培地を含んでもよい。
【0099】
ある種の態様において、微生物は細菌、酵母および/または真菌である。いくつかの態様において、組成物は2つ以上のタイプおよび/または種の微生物を含む。
【0100】
1つの態様において、土壌処理組成物は、例えば、B.アミロリケファシエンスNRRL B-67928または枯草菌NRRL B-68031などの、バチルス属種細菌を含む。1つの態様において、組成物は、例えば、T.ハルジアナムT-22などの、トリコデルマ属種真菌を含む。ある種の態様において、バチルス属種およびトリコデルマ属種は一緒に利用される。
【0101】
1つの態様において、組成物は、例えば、ウィッカハモマイセス・アノマルス、メイエロジマ・ギリエルモンディ、メイエロジマ・カリビカ(例えば、M. カリビカMEC14XN、別名M.カリビカ亜種ローカス)、サッカロマイセス・ボウラルディ、デバリオマイセス・ハンセニイ、ピキア・オクシデンタリス、および/またはピキア・クドリアヴゼヴィなどの、1つまたは複数の酵母を含む。以下に記述されるものなどの、他の微生物も想定される。
【0102】
有利なことに、いくつかの態様において、微生物は土壌にコロニー形成し、根の滲出物および消化された有機物を、嵩高で炭素に富む微生物バイオマスおよびネクロマス(死細胞)に変換する。いくつかの態様において、微生物はバイオフィルムを形成する。いくつかの態様において、1種または複数種の微生物は植物の根にコロニー形成し、未処理の土壌および/または植物と比較して、例えば、植物の根の取り込みのための養分の可溶化、根圏全体にわたっての水および塩の分散、ならびに/または地上および地下の植物バイオマスの増加を補助する。
【0103】
ある種の態様において、本方法は、例えば、地上および地下の植物バイオマスの増加、微生物バイオマスおよび/もしくはネクロマスの増加、ならびに/または土壌団粒のサイズおよび/もしくは安定性の増加を介して、SOC隔離を増強しながら圧縮を低減するのに有用でありうる。さらに、いくつかの態様において、本方法は、土壌の団粒化とSOCの蓄積を促進することを目的とした不耕起栽培または減耕起栽培と組み合わせて利用することができ、これらの栽培から生じる土壌の圧縮を低減することができる。
【0104】
いくつかの態様において、本方法は、植物の地上および地下のバイオマスを増加させるが、これには、例えば、葉の体積の増加、茎および/もしくは幹の直径の増加、根の成長および/もしくは密度の増強、ならびに/または植物の総数の増加が含まれる。1つの態様において、これは、植物の根が成長する根圏の全体的な快適性を改善することによって、例えば、土壌の多孔性、根圏の養分および/または水分保持特性を改善することによって達成される。1つの態様において、土壌処理組成物は、例えば、根圏の根と土壌の界面における、根細胞の外層を通る水および有益な分子の浸透を増強する。
【0105】
いくつかの態様において、本方法は、土壌マイクロバイオームの生物多様性の改善をもたらすことができる。本明細書において使用される場合、生物多様性の改善とは、土壌内の微生物種の多様性を増加させることをいう。いくつかの態様において、生物多様性の改善は、低CUE微生物に対する高CUE微生物の比率を増加させること、および/または低CUE微生物を高CUE微生物に変換することを含む。
【0106】
いくつかの態様において、本方法は、柔らかく水っぽい、排水不良の土壌によって引き起こされる根腐れの事例の低減をもたらすことができる。根は十分な酸素の吸収を妨げられ、これが酸素欠乏と根腐れを引き起こす。湛水土壌条件はまた、例えば、ナラタケ(Armillaria mellea)、ナラタケモドキ(Clitocybe tabescens)、フザリウム属種(Fusarium spp.)、フハイカビ属種(Pythium spp.)、フィトフトラ属種(Phytophthora spp.)、およびアファノミセス属種(Aphanomyces spp)を含みうる有害な真菌の胞子形成および繁殖の増加を促進する環境を作り出す。
【0107】
さらに、ある種の態様において、本方法は、例えば、肥料の過剰使用および/もしくは生物学的利用能の低さ、ならびに/または炭素利用効率(CUE)の低い微生物による土壌の分解によって引き起こされる、二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素などの温室効果ガスの土壌から生じる排出を低減することができる。
【0108】
いくつかの態様において、本方法は、組成物を現地に適用する前に、地域の状況について現地を評価する段階、地域の状況についてカスタマイズされた組成物の好ましい配合(例えば、灌漑添加剤および/または微生物土壌処理組成物の種類、組み合わせおよび/または比率)を決定する段階、ならびに好ましい配合で組成物を生産する段階を含む。
【0109】
地域の状況は、例えば、土壌条件(例えば、土壌の種類、圧縮のレベル、土壌微生物叢の種、土壌有機内容物(soil organic content)の量および/または種類、GHG前駆体基質の量および/または種類、存在する肥料または他の土壌添加剤もしくは土壌改良剤の量および/または種類); 作物および/または植物の条件(例えば、栽培されている植物の種類、数、齢、および/または健全性); 環境条件(例えば、現在の気候、季節、または時期); その現地でのGHG排出量および種類; 組成物の適用様式および/または適用率、ならびにその現地に関連する他のものを含むことができる。
【0110】
評価後、これらの地域の状況に合わせて組成物をカスタマイズできるように、組成物の好ましい配合を決定することができる。次いで、組成物は、好ましくは、適用現場から300マイル以内、好ましくは200マイル以内、さらにより好ましくは100マイル以内の微生物増殖施設で培養される。
【0111】
いくつかの態様において、地域の状況は定期的に、例えば、年に1回、隔年、またはさらには毎月評価される。このようにして、組成物の配合は、変化する地域の状況の固有のニーズを満たすために、必要に応じてリアルタイムで変更することができる。
【0112】
いくつかの態様において、本方法はまた、土壌の水分保持および分散の増加、圧縮の低減、GHGの発生および/もしくは発生の低減、ならびに/または土壌中の炭素の蓄積に対する本発明の方法の効果を評価するために、1つまたは複数の測定を実施する段階を含む。1つの態様において、本方法は、単に土壌をサンプリングし、水分および組成を試験する段階を含む。
【0113】
ある種の態様において、本方法はまた、植物および/または土壌におけるGHGの発生および/もしくは発生の低減に対する、かつ/またはSOCの蓄積に対する本発明の方法の効果を評価するために、1つまたは複数の測定を実施する段階を含む。
【0114】
測定は土壌処理組成物の現地への適用後のある時点で実施することができる。いくつかの態様において、測定は、約1週間もしくはそれ以下、2週間もしくはそれ以下、3週間もしくはそれ以下、4週間もしくはそれ以下、30日もしくはそれ以下、60日もしくはそれ以下、90日もしくはそれ以下、120日もしくはそれ以下、180日もしくはそれ以下、および/または1年もしくはそれ以下の後に実施される。
【0115】
さらに、測定は経時的に繰り返すことができる。いくつかの態様において、測定は、毎日、毎週、毎月、隔月、半月、半年、および/または毎年繰り返される。
【0116】
ある種の態様において、GHG発生の評価は、現地からのGHG排出を測定する形をとることができる。電子捕獲検出を伴うガスクロマトグラフィーは、実験室における試料の試験に一般的に使用される。ある種の態様において、GHG排出は、例えば、フラックス測定および/またはその場での(in situ)土壌プロービングを使用して、現地で行うこともできる。フラックス測定は、例えば、ある土壌の領域を囲むチャンバを使用して、土壌表面から大気へのガスの排出を分析し、次いで、一定期間にわたってチャンバ内のガスの蓄積を観察することによりフラックスを推定する。プローブは、土壌中のある深さでの関心対象のガス濃度の測定から始め、それをプローブと周囲の表面状態との間で直接比較して、土壌ガスプロファイルを作成することに使用することができる(Brummell and Siciliano 2011, at 118)。
【0117】
GHG排出の測定は、他の形態の直接排出測定、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)および/または燃料投入量の分析を含むこともできる。直接排出測定は、例えば、汚染を引き起こす運転活動(例えば、燃料を燃焼する自動車)を特定し、連続排出監視システム(CEMS)を通じてそれらの活動の排出量を直接測定することを含みうる。燃料投入分析は、使用されたエネルギー資源の量(例えば、消費された電気、燃料、木材、バイオマスなどの量)を計算し、燃料源中の、例えば炭素の含有量を決定し、その炭素含有量を消費された燃料の量に適用して排出量を決定することを含みうる。
【0118】
ある種の態様において、植物が成長している現場、例えば、農業用地、作物、芝生もしくは芝農場、牧草地/平原または森林の炭素含有量は、例えば、植物の地上および/または地下バイオマスを定量化することによって測定することができる。一般に、例えば樹木の炭素濃度は、バイオマスの約40~50%と考えられている。
【0119】
バイオマスの定量化は、例えば、サンプル地域の植物を収穫し、乾燥前後の植物の異なる部位の重量を測定する形態をとることができる。バイオマスの定量化は、例えば、植物の幹の直径、高さ、体積、および他の物理的パラメータを測定するような、非破壊的な観察方法を用いて実行することもできる。例えば、レーザープロファイリングおよび/またはドローン分析などの、遠隔定量化を使用することもできる。
【0120】
いくつかの態様において、現地の炭素含有量は、サンプリング地域の落葉、木質残骸および/または土壌の炭素含有量をサンプリングして測定することをさらに含むことができる。特に、土壌は、例えば、全有機体炭素(TOC)パーセントを決定するための乾式燃焼を用いて; 活性炭素を検出するための過マンガン酸カリウム酸化分析により; および炭素パーセントからトン/エーカーに変換するための嵩密度測定(単位体積当たりの重量)により分析することができる。
【0121】
いくつかの態様において、本発明は、例えば、農業、家畜生産、林業/植林、および湿地管理に携わる事業者が使用する炭素クレジットの数を低減するために使用することができる。
【0122】
本発明の方法および組成物は、土壌および/または植物の健全性を効率的に増強するために、単独でまたは他の化合物との組み合わせで使用することができる。例えば、いくつかの態様において、本方法は、除草剤、肥料、殺虫剤および/または他の土壌改良剤などの追加の成分を土壌および/または植物に適用する段階を含む。正確な材料およびその量は、例えば、本開示の利益を有する栽培者または土壌科学者によって決定されうる。
【0123】
いくつかの態様において、本方法は、例えば、不耕起栽培または減耕起栽培、輪作、および/またはオフシーズンの被覆作物の植栽などの、既存の土壌再生の実践と組み合わせて使用される。
【0124】
適用の様式
本明細書において使用される場合、組成物または生産物をある場所に「適用すること」とは、組成物または生産物がその場所に効果を及ぼしうるように、組成物または生産物をその場所と接触させることをいう。適用の様式は、組成物の配合に依存し、例えば、噴霧、流入、散布、注入、拡散、混合、浸漬、霧化および霧吹きを含むことができる。灌漑添加剤および/または微生物土壌処理組成物の配合物としては、例えば、液体、乾燥粉末および/もしくは湿潤性粉末、流動性粉末、粉剤、顆粒、ペレット、エマルジョン、マイクロカプセル、ステーキ、オイル、ゲル、ペーストおよび/またはエアロゾルを含むことができる。
【0125】
1つの態様において、本発明の組成物が適用される場所は、植物が植えられるかまたは成長している土壌(例えば、作物、畑、果樹園、木立、牧草地/平原または森林)を含む、土壌(または根圏)である。本発明の組成物は灌漑流体と予め混合することができ、および/または組成物は水の有無にかかわらず、土壌表面に適用することができ、ここで土壌適用の有益な効果は、降雨、スプリンクラー、湛水、点滴、または他の形態の灌漑によって活性化することができる。
【0126】
1つの態様において、その場所は植物または植物部分である。組成物は、種子処理としてそれに直接適用されてもよく、または植物もしくは植物部分の表面に(例えば、根、塊茎、茎、花、葉、果実もしくは花の表面に)適用されてもよい。1つの態様において、組成物は植物の1つまたは複数の根と接触させることができる。組成物は、例えば、植え付け前に根に噴霧もしくは浸漬することによって根に直接的に、および/または、例えば、植物が成長する土壌に組成物を投与することによって間接的に適用することができる。組成物は、植物の種子に植え付け前もしくは植え付け時に、または植物の任意の他の部分および/もしくはその周囲環境に適用することができる。
【0127】
1つの態様において、本方法が畑、柑橘園、牧草地もしくは草原、森林、芝生もしくは芝農場、芝、または別の農作物において使用される場合、本方法は、水、肥料、農薬または他の液体組成物を供給するために使用される灌漑システム中に組成物を投与する段階を含むことができる。したがって、植物および/または土壌は、例えば、土壌注入、土壌ドレンチング、センターピボット灌漑システムの使用、まき溝への噴霧、マイクロジェット、ドレンチ噴霧器、ブーム噴霧器、スプリンクラーおよび/または点滴灌漑器により組成物で処理することができる。有利なことに、本方法は数百エーカーまたはそれ以上の土地を処理するのに適している。
【0128】
1つの態様において、本方法がより小規模な環境で使用される場合、本方法は、芝生および庭園用の手持ち式噴霧器のタンクに組成物(水および他の任意の添加剤と混合)を注ぐ段階、ならびに土壌または別の現場に組成物を噴霧する段階を含むことができる。組成物は、標準的な手持ち式水まきの中で混合し、その場所に注ぐこともできる。
【0129】
土壌、植物および/またはそれらの環境は、植物を栽培するプロセス中の任意の時点で処理することができる。例えば、組成物は土壌に、種子または植物がそこに植えられる時の前に、それと同時に、またはその後に適用することができる。それらはまた、植物の開花時、結実時、ならびに葉の落葉中および/または落葉後を含めて、植物の発生および成長中のその後の任意の時点で適用することもできる。
【0130】
1つの態様において、本発明による方法および組成物は、未処理の環境で成長する植物と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、またはそれ以上の、植物の根の質量、茎の直径、植物の高さ、樹冠密度、クロロフィル含有量、花の数、芽の数、芽のサイズ、芽の密度、葉の表面積、および/または養分取り込みの1つまたは複数の増加をもたらす。
【0131】
1つの態様において、本発明による方法および組成物は、同様の未処理の地域と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、またはそれ以上の、土壌のある地域におけるSOCの増加をもたらす。
【0132】
1つの態様において、本発明による方法および組成物は、同様の未処理の地域と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、またはそれ以上の、土壌水分保持の増加をもたらす。
【0133】
1つの態様において、本発明による方法および組成物は、同様の未処理の地域と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、またはそれ以上の、水使用の減少をもたらす。
【0134】
1つの態様において、本発明による方法および組成物は、同様の未処理の土壌と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれ以上の、CO2、N2Oおよび/またはCH4などの、土壌から生じるGHG排出の減少をもたらす。
【0135】
微生物土壌処理組成物
ある種の態様において、本発明は、1つまたは複数の土壌コロニー形成微生物ならびに/またはその増殖副産物、例えば生物系界面活性剤、酵素、多糖類および/もしくは他の代謝物を含む微生物土壌処理組成物を提供する。組成物はまた、微生物が生産された発酵ブロス/培地を含んでもよい。
【0136】
いくつかの態様において、本発明の微生物は、それらが適用される土壌に既に存在する微生物よりも大きいCUEを有する。いくつかの態様において、対象組成物の微生物は「高CUE」であり、これは、バイオマス生産に割り当てる炭素の割合が、呼吸に割り当てられる割合よりも大きいことを意味する。
【0137】
ある種の態様において、微生物は細菌、酵母および/または真菌である。いくつかの態様において、組成物は2つ以上のタイプおよび/または種の微生物を含む。有利なことに、いくつかの態様において、微生物は根圏にコロニー形成し、根の滲出物および消化された有機物を、嵩高で炭素に富む微生物バイオマスおよびネクロマス(死細胞)に変換する。
【0138】
好ましい態様において、本発明による微生物ベースの組成物は非毒性であり、例えば、ヒトまたは他の非害虫動物の皮膚または消化管に刺激を引き起こすことなく高濃度で適用することができる。したがって、本発明は、微生物ベースの組成物の適用が、栽培者および家畜などの、生物の存在下で行われる場合に特に有用である。
【0139】
1つの態様において、複数の微生物を一緒に使用することができ、ここで微生物は植物および根の健全性、ならびにSOCの増加、土壌低下の防止および/または低下した土壌の再構築に対して相乗的な利益を生み出す。
【0140】
組成物中の微生物および他の成分の種および比率は、例えば、どの土壌タイプ、植物および/または作物が処理されるか; 組成物が適用されるときがどの季節、気候および/または時期であるか; ならびにどのような適用様式および/または適用速度が利用されるかなどの、適用時の特定の地域の状況に合わせてカスタマイズおよび最適化することができる。したがって、組成物は任意の所与の現場に合わせてカスタマイズ可能でありうる。
【0141】
植物の健全性を促進する組成物中の微生物は、活性型もしくは不活性型、または栄養細胞、胞子および/もしくは任意の他の形態の珠芽の形態であってもよい。
【0142】
本発明によって有用な微生物は、例えば、細菌、酵母および/または真菌の非植物病原性株でありうる。これらの微生物は、天然の微生物であってもよく、または遺伝子組み換えされた微生物であってもよい。例えば、微生物は、特定の特徴を示すように特定の遺伝子で形質転換されうる。また、微生物は所望の菌株の変異体であってもよい。本明細書において使用される場合、「変異体」とは、参照微生物の菌株、遺伝的変種または亜型を意味し、ここで変異体は参照微生物と比較して1つまたは複数の遺伝的変種(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異または反復拡張)を有する。変異体を作製するための手順は、微生物学の分野において周知である。例えば、UV突然変異誘発やニトロソグアニジンはこの目的に広く使用されている。
【0143】
ある種の態様において、微生物は酵母または真菌である。本発明による使用に適した酵母および真菌の種は、オーレオバシディウム属(Aureobasidium) (例えば、A.プルランス(A. pullulans))、ブラケスレア属(Blakeslea)、カンジダ属(例えば、C.アピコラ、C.ボンビコラ、C.ノダエンシス(C. nodaensis))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオマイセス属(Debaryomyces) (例えば、D.ハンセニイ(D. hansenii))、エントモフトラ属(Entomophthora)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora) (例えば、H.ウバラム(H. uvarum))、ハンセヌラ属(Hansenula)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces) (例えば、K.ファフィ(K. phaffii))、メイエロザイマ属(Meyerozyma) (例えば、M.ギリエモンディ(M. guilliermondii)、M.カリビカ(M. caribbica)、MEC14XN) モルティエレラ属(Mortierella)、マイコリザ属(Mycorrhiza)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファイコマイセス属(Phycomyces)、ピキア属(Pichia) (例えば、P.アノマラ(P. anomala)、P.ギリエモンディ(P. guilliermondii)、P.オクシデンタリス(P. occidentalis)、P.クドリアヴゼヴィ(P. kudriavzevii))、プレウロタス属種(Pleurotus spp.) (例えば、P.オストレアタス(P. ostreatus))、シュードザイマ属(Pseudozyma) (例えば、P.アフィディス(P. aphidis))、サッカロマイセス属(Saccharomyces) (例えば、S.ボウラルディ・セクエラ(S. boulardii sequela)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、S.トルラ(S. torula))、スターメレラ属(Starmerella) (例えば、S.ボンビコラ(S. bombicola))、トルロプシス属(Torulopsis)、トリコデルマ属(Trichoderma) (例えば、T.リーセイ(T. reesei)、T.ハルジアナム(T. harzianum)、T.ハマタム(T. hamatum)、T.ビリデ(T. viride))、ウスチラゴ属(Ustilago) (例えば、U.メイディス(U. maydis))、ウィッカーハモマイセス属(Wickerhamomyces) (例えば、W.アノマルス(W. anomalus))、ウィリオプシス属(Williopsis) (例えば、W.ムラキイ(W. mrakii))、ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces) (例えば、Z.バイリイ(Z. bailii))、および共生菌を含む。
【0144】
本明細書において使用される場合、「菌根菌」は、植物の根と非寄生性の菌根関係を形成する任意の種の真菌を含む。真菌は、その亜型(例えば、アーバスキュラー菌根、エリコイド菌根、およびラン菌根)を含めて、外生菌根菌および/または内生菌根菌でありうる。
【0145】
本発明による菌根菌の非限定的な例としては、グロムス門(Glomeromycota)、担子菌門(Basidiomycota)、子嚢菌門(Ascomycota)、接合菌門(Zygomycota)、ビョウタケ目(Helotiales)およびタバコウロコタケ目(Hymenochaetales)に属する種、ならびにアカウロスポラ属種(Acaulospora spp.) (例えば、A.アルピナ(A. alpina)、A.ブラシリエンシス(A. brasiliensis)、A.フォヴェアータ(A. foveata))、アマニタ属種(Amanita spp.) (例えば、A.ムスカリナ(A. muscaria)、A.ファロイデス(A. phalloides))、アンフィネマ属種(Amphinema spp.) (例えば、A.ビソイデス(A. byssoides)、A.ディアデマ(A. diadema)、A.ルゴサム(A. rugosum))、アストライオス属種(Astraeus spp.) (例えば、A.ハイグロメトリカム(A. hygrometricum))、ビソコルチシウム属種(Byssocorticium spp.) (例えば、B.アトロビレンス(B. atrovirens))、ビソポリア・テレストリス(Byssoporia terrestris) (例えば、B.テレストリス・サルトリィ(B. terrestris sartoryi)、B.テレストリス・リラシノロセア(B. terrestris lilacinorosea)、B.テレストリス・オーランティアカ(B. terrestris aurantiaca)、B.テレストリス・サブルテア(B. terrestris sublutea)、B.テレストリス・パークシィ(B. terrestris parksii))、ケアニーエラ属種(Cairneyella spp.) (例えば、C.バリアビリス(C. variabilis))、カンテレラス属種(Cantherellus spp.) (例えば、C.シバリウス(C. cibarius)、C.マイナー(C. minor)、C.シンナバリヌス(C. cinnabarinus)、C.フリエシィ(C. friesii))、セノコッカス属種(Cenococcum spp.) (例えば、C.ゲオフィラム(C. geophilum))、ケラトバシジウム属種(Ceratobasidium spp.) (例えば、C.コルニゲルム(C. cornigerum))、コルチナリウス属種(Cortinarius spp.) (例えば、C.アウストロヴェネトゥス(C. austrovenetus)、C.カペラトゥス(C. caperatus)、C.ヴィオラセウス(C. violaceus))、エンドゴーン属種(Endogone spp.) (例えば、E.ピシフォルミス(E. pisiformis))、エントロフォスポラ属種(Entrophospora spp.) (例えば、E.コロンビアーナ(E. colombiana))、フンネリフォルミス属種(Funneliformis spp). (例えば、F.モセアエ(F. mosseae))、ガマラダ属種(Gamarada spp.) (例えば、G.デブラロッキエ(G. debralockiae))、ギガスポラ属種(Gigaspora spp.) (例えば、G.ギガンテアン(G. gigantean)、G.マルガリータ(G. margarita))、グロムス属種(Glomus spp.) (例えば、G.アグレガタム(G. aggregatum)、G.ブラシリアヌム(G. brasilianum)、G.クラルム(G. clarum)、G.デセルティコーラ(G. deserticola)、G.エツニカタム(G. etunicatum)、G.ファシクラタム(G. fasciculatum) G.イントララディセス(G. intraradices)、G.ラメロサム(G. lamellosum)、G.マクロカルパム(G. macrocarpum)、G.モノスポラム(G. monosporum)、G.モセアエ(G. mosseae)、G.ヴェルシフォルメ(G. versiforme))、オウギタケ属種(Gomphidius spp.) (例えば、G.グルチノサス(G. glutinosus))、ヘベロマ属種(Hebeloma spp.) (例えば、H.シリンドロスポラム(H. cylindrosporum))、ハイドナム属種(Hydnum spp.) (例えば、H.レパンダム(H. repandum))、ヒメノサイフス属種(Hymenoscyphus spp.) (例えば、H.エリカエ(H. ericae))、アセタケ属種(Inocybe spp.) (例えば、I.ボンガルディ(I. bongardii)、I.シンドニア(I. sindonia))、チチタケ属種(Lactarius spp.) (例えば、L.ハイグロフォロイデス(L. hygrophoroides))、リントネリア属種(Lindtneria spp.) (例えば、L.ブレヴィスポラ(L. brevispora))、メラノガスター属種(Melanogaster spp.) (例えば、M.アンビグオウス(M. ambiguous))、メリニオマイセス属種(Meliniomyces spp.) (例えば、M.ヴァリアビリス(M. variabilis))、アミガサタケ属種(Morchella spp.)、モルチエレラ属種(Mortierella spp.) (例えば、M.ポリセファラ(M. polycephala))、オイジオデンドロン属種(Oidiodendron spp.) (例えば、O.マイヌス(O. maius))、パラグロムス属種(Paraglomus spp.) (例えば、P.ブラシリアヌム(P. brasilianum))、パキシルス属種(Paxillus spp.) (例えば、P.インヴォルタス(P. involutus))、アオカビ属種(Penicillium spp.) (例えば、P.ピノフィラム(P. pinophilum)、P.トミリ(P. thomili))、チャワンタケ属種(Peziza spp.) (例えば、P.ホワイティ(P. whitei))、ペゾロマ属種(Pezoloma spp.) (例えば、P.エリカエ(P. ericae)); フレボプス属種(Phlebopus spp.) (例えば、P.マルギナタス(P. marginatus))、ピロデルマ属種(Piloderma spp.) (例えば、P.クロセウム(P. croceum))、ピソリトゥス属種(Pisolithus spp.) (例えば、P.チンクトリウス(P. tinctorius))、シュードトメンテラ属種(Pseudotomentella spp.) (例えば、P.トリスティス(P. tristis))、リゾクトニア属種(Rhizoctonia spp.)、リゾデルメア属種(Rhizodermea spp.) (例えば、R.ヴェルウェンシス(R. veluwensis))、リゾファガス属種(Rhizophagus spp.) (例えば、R.イレグラリス(R. irregularis))、リゾポゴン属種(Rhizopogon spp.) (例えば、R.ルテオルベセンス(R. luteorubescens)、R.シュードロセオラス(R. pseudoroseolus))、リゾスキフス属種(Rhizoscyphus spp.) (例えば、R.エリカエ(R. ericae))、ベニタケ属種(Russula spp.) (例えば、R.リヴェセンス(R. livescens))、スクレロシスティス属種(Sclerocystis spp.) (例えば、S.シヌオサム(S. sinuosum))、スクレロデルマ属種(Scleroderma spp.) (例えば、S.セパ(S. cepa)、S.ヴェルコサム(S. verrucosum))、スクテロスポラ属種(Scutellospora spp.) (例えば、S.ペルシダ(S. pellucida)、S.ヘテロガマ(S. heterogama))、セバシナ属種(Sebacina spp.) (例えば、S.スパラソイデア(S. sparassoidea))、セッチェリオガスター属種(Setchelliogaster spp.) (例えば、S.テヌイペス(S. tenuipes))、スイラス属種(Suillus spp.) (例えば、S.ルテウス(S. luteus))、タナテフォラス属種(Thanatephorus spp.) (例えば、T.ククメリス(T. cucumeris))、イボタケ属種(Thelephora spp.) (例えば、T.テレストリス(T. terrestris))、トメンテラ属種(Tomentella spp.) (例えば、T.バジア(T. badia)、T.シネレオウンブリナ(T. cinereoumbrina)、T.エリナリス(T. erinalis)、T.ガルジニィ(T. galzinii))、トメンテロプシス属種(Tomentellopsis spp.) (例えば、T.エキノスポラ(T. echinospora))、トレチスポラ属種(Trechispora spp.) (例えば、T.ハイメノシスティス(T. hymenocystis)、T.ステルラタ(T. stellulata)、T.テレフォラ(T. thelephora))、トリコファエア属種(Trichophaea spp.) (例えば、T.アブンダンス(T. abundans)、T.ウールホペイア(T. woolhopeia))、ツラスネラ属種(Tulasnella spp.) (例えば、T.カロスポラ(T. calospora))およびティロスポラ属種(Tylospora spp.) (例えば、T.フィブリロース(T. fibrillose))が挙げられる。
【0146】
ある種の態様において、本発明は、グロムス門ならびにグロムス属、ギガスポラ属、アカウロスポラ属、スクレロシスティス属およびエントロフォスポラ属由来の真菌を含む、内生菌根菌を利用する。内生菌根菌の例としては、グロムス・アグレガタム(Glomus aggregatum)、グロムス・ブラシリアヌム(Glomus brasilianum)、グロムス・クラルム(Glomus clarum)、グロムス・デセルティコーラ(Glomus deserticola)、グロムス・エツニカタム(Glomus etunicatum)、グロムス・ファシクラタム(Glomus fasciculatum)、グロムス・イントララディセス(Glomus intraradices) (リゾファガス・イレグラリス(Rhizophagus irregularis))、グロムス・ラメロサム(Glomus lamellosum)、グロムス・マクロカルパム(Glomus macrocarpum)、ギガスポラ・マルガリータ(Gigaspora margarita)、グロムス・モノスポラム(Glomus monosporum)、グロムス・モセアエ(Glomus mosseae) (フンネリフォルミス・モセアエ(Funneliformis mosseae))、グロムス・ヴェルシフォルメ(Glomus versiforme)、スクテロスポラ・ヘテロガマ(Scutellospora heterogama)、およびスクレロシスティス属種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
ある種の態様において、微生物は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を含む細菌である。細菌は、例えば、アグロバクテリウム属(Agrobacterium) (例えば、A.ラジオバクター(A. radiobacter))、アゾトバクター属(Azotobacter) (A.ヴィネランディ(A. vinelandii)、A.クロコッカム(A. chroococcum))、アゾスピリルム属(Azospirillum) (例えば、A.ブラシリエンシス)、バチルス属(Bacillus) (例えば、B.アミロリケファシエンス、B.サーキュランス(B. circulans)、B.ファームス(B. firmus)、B.ラテロスポラス(B. laterosporus)、B.リケニフォルミス(B. licheniformis)、B.メガテリウム(B. megaterium)、B.ムチラギノーサス(B. mucilaginosus)、枯草菌)、フラテウリア属(Frateuria) (例えば、F.オーランティア(F. aurantia))、ミクロバクテリウム属(Microbacterium) (例えば、M.レバニフォルマンス(M. laevaniformans))、ミクソバクテリア属(myxobacteria) (例えば、ミキソコッカス・ザンサス(Myxococcus xanthus)、スチグナテラ・オーランティアカ(Stignatella aurantiaca)、ソランギウム・セルロサム(Sorangium cellulosum)、ミニシスティス・ロセア(Minicystis rosea))、パントエア属(Pantoea) (例えば、P.アグロメランス(P. agglomerans))、シュードモナス属(Pseudomonas) (例えば、P.アエルギノサ(P. aeruginosa)、P.クロロラフィス亜種オーレオファシエンス(P. chlororaphis subsp. Aureofaciens) (クルイヴェル(Kluyver))、P.プチダ(P. putida))、リゾビウム属種(Rhizobium spp.)、ロドスピリラム属(Rhodospirillum) (例えば、R.ルブラム(R. rubrum))、スフィンゴモナス属(Sphingomonas) (例えば、S.パウシモビリス(S. paucimobilis))、および/またはチオバチルス・チオオキシダンス(Thiobacillus thiooxidans) (アシドチオバチルス・チオオキシダンス(Acidothiobacillus thiooxidans))でありうる。
【0148】
ある種の態様において、微生物は、土壌中の窒素、カリウム、リンおよび/または他の微量養分を固定および/または可溶化することができる。
【0149】
1つの態様において、微生物は、アゾスピリルム属、アゾトバクター属、クロロビウム科(Chlorobiaceae)、シアノセイス属(Cyanothece)、フランキア属(Frankia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、根粒菌、トリコデスミウム属(Trichodesmium)、メイエロジマ・ギリエルモンディ、メイエロジマ・カリビカ、枯草菌「B4」NRRL B-68031、およびバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens) NRRL B-67928からなる群より選択される、窒素固定微生物、またはジアゾ栄養生物である。特定の態様において、窒素固定微生物はアゾトバクター・ヴィネランディ(Azotobacter vinelandii)、M.ギリエモンディ、MEC14XN、枯草菌B4、またはB.アミロリケファシエンスNRRL B-67928である。有利なことに、いくつかの態様において、窒素固定微生物の使用は、土壌中の窒素取り込みを増強し、肥料の必要量を低減し、および/または亜酸化窒素の土壌排出を低減しうる。
【0150】
別の態様において、微生物は、例えば、ウィッカハモマイセス・アノマルス、バチルス・ムチラギノーサス(Bacillus mucilaginosus)、フラテウリア・オーランティア(Frateuria aurantia)またはグロムス・モセアエから選択される、カリウム動員微生物、またはKMBである。特定の態様において、カリウム動員微生物は、W.アノマルスNRRL Y-68030またはF.オーランティアである。
【0151】
ある種の態様において、微生物はリン動員微生物、例えば、ウィッカハモマイセス・アノマルスである。この微生物は、土壌における養分と水の動員、可溶化および吸収を助ける有益な有機酸および生物系界面活性剤を産生する。いくつかの態様において、W.アノマルスは土壌中のカリウムを可溶化することができる。さらに、W.アノマルスは、リン酸塩を利用可能な形態の無機リンに動員する酵素フィターゼを産生する。さらに、W.アノマルスは酢酸エチルを産生し、これは、ある種の態様において、多くの植物維管束病原菌によって形成されるものなどのバイオフィルムを破壊することができる。1つの態様において、W.アノマルス株NRRL Y-68030が利用される。
【0152】
1つの態様において、組成物は1種または複数種のバチルス属種の微生物を含むことができる。例えば、1つの態様において、組成物は枯草菌(例えば、菌株NRRL B-68031「B4」)およびB.アミロリケファシエンス(例えば、菌株NRRL B-67928「B. amy」)を含む。
【0153】
1つの態様において、組成物はトリコデルマ属種真菌、例えばT.ハルジアナムT-22を含むことができる。
【0154】
ある種の態様において、組成物はトリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)およびバチルス・アミロリケファシエンスを含む。特定の態様において、バチルスはB. amyである。
【0155】
1つの態様において、組成物は体積あたり1~99%のトリコデルマ属および重量あたりまたは体積あたり99~1%のバチルス属を含むことができる。いくつかの態様において、トリコデルマ属とバチルス属との比は、約1:100~約100:1、約1:50~約50:1、約1:25~約25:1、約1:10~約10:1、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1または約1:4~約4:1である。
【0156】
1つの態様において、本組成物の微生物は、組成物全体の約5~20重量%、または約8~15重量%、または約10~12重量%を含む。1つの態様において、組成物は約1×106~1×1012、1×107~1×1011、1×108~1×1010、または1×109 CFU/mlのトリコデルマ属を含む。1つの特定の態様において、組成物は約1×106~1×1012、1×107~1×1011、1×108~1×1010、または1×109 CFU/mlのバチルス属を含む。
【0157】
他の例示的な微生物は、例えば、シュードモナス・クロロラフィス、スターメレラ・ボンビコラ、サッカロマイセス・ボウラルディ、デバリオマイセス・ハンセニイ、ピキア・オクシデンタリス、および/またはピキア・クドリアヴゼヴィを含むことができる。
【0158】
組成物中の微生物および他の成分の種および比率は、例えば、処理される植物、植物が成長している土壌の種類、処理時の植物の健全性、植物に影響を及ぼす害虫または病原体の種、および他の要因に応じてカスタマイズすることができる。
【0159】
有利なことに、いくつかの態様において、微生物の組み合わせは互いに相乗的に働いて、植物の健全性、成長および/または収量を促進する。例示的な態様において、トリコデルマ・ハルジアナムおよびB. amyは、1つの組成物として互いに相乗的に働き、植物の健全性を促進する。トリコデルマ・ハルジアナムは、根に付着し、根を伸長させる有益な真菌であり、養分の取り込みの増加に役立つ。B. amyは、土壌中のNPKなどの養分を可溶化し、最終的には植物の根が吸収できる根域に移動させるのに役立つ有機酸を産生する有益な根粒菌である。いくつかの態様において、B. amyは窒素固定にも有用である。これらの微生物は両方とも生物系界面活性剤も産生し、これによって水の利用効率を改善し、根からの水および養分の浸透および取り込みを改善する。
【0160】
1つの態様において、組成物はB.アミロリケファシエンスNRRL B-67928「B. amy」を含む。B.アミロリケファシエンス「B. amy」微生物の培養物は、the Agricultural Research Service Northern Regional Research Laboratory (NRRL), 1400 Independence Ave., S.W., Washington, DC, 20250, USAに寄託されている。この寄託物には寄託機関によってアクセッション番号NRRL B-67928が割り当てられており、2020年2月26日に寄託された。
【0161】
1つの態様において、組成物は枯草菌NRRL B-68031「B4」を含む。B4微生物の培養物は、the Agricultural Research Service Northern Regional Research Laboratory (NRRL), 1400 Independence Ave., S.W., Washington, DC, 20250, USAに寄託されている。この寄託物には寄託機関によってアクセッション番号NRRL B-68031が割り当てられており、2021年5月6日に寄託された。
【0162】
1つの態様において、組成物はW.アノマルスNRRL Y-68030を含む。この微生物の培養物は、the Agricultural Research Service Northern Regional Research Laboratory (NRRL), 1400 Independence Ave., S.W., Washington, DC, 20250, USAに寄託されている。この寄託物には寄託機関によってアクセッション番号NRRL Y-68030が割り当てられており、2021年5月6日に寄託された。
【0163】
本培養物の各々は、37 CFR 1.14および35 U.S.C 122の下、特許商標庁長官がそれを取得する資格があると判断した者にとって、本特許出願の係属中に培養物を利用可能であることを保証する条件の下で寄託されている。寄託物は、本出願の写しまたはその所産が提出されている国の外国特許法の要請に応じて利用することができる。しかしながら、寄託物の利用は、行政措置によって付与された特許権の適用を制限して本発明を実践する認可とはならないことが理解されるべきである。
【0164】
さらに、本培養寄託物は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定にしたがって保管され、公的に利用可能となり、すなわち、その培養寄託物を汚染させることなく生存させておくために必要なあらゆる注意を払いつつ、寄託試料の最新の分譲請求から少なくとも5年間、およびいかなる場合にも、寄託日から少なくとも30年間、または培養物の開示を公表しうるあらゆる特許の権利行使可能期間にわたって保管される。寄託者は、寄託物の状態に起因して保存機関が請求時に試料を分譲できない場合には、寄託物を交換する義務を受け入れる。本培養寄託物の公共への利用可能性に対する制限はすべて、それを開示する特許の付与に際して、変更不可に取り除かれる。
【0165】
特定の態様において、組成物に含まれる各微生物の濃度は、組成物の1×106~1×1013 CFU/g、1×107~1×1012 CFU/g、1×108~1×1011 CFU/g、または1×109~1×1010 CFU/gである。
【0166】
1つの態様において、組成物の全微生物細胞濃度は、最大1×109 CFU/g、1×1010、1×1011、1×1012および/もしくは1×1013またはそれ以上のCFU/gを含めて、少なくとも1×106 CFU/gである。1つの態様において、本組成物の微生物は、体積あたりまたは重量あたり組成物全体の約5~20%、または約8~15%、または約10~12%を構成する。
【0167】
組成物は、残りの発酵基質ならびに/または精製もしくは未精製の増殖副産物、例えば酵素、生物系界面活性剤および/もしくは他の代謝物を含むことができる。微生物は生きていてもまたは不活性であってもよい。
【0168】
本発明の微生物および微生物ベースの組成物は、例えば、植物バイオマスの増加および/または炭素-鉱物土壌団粒の形成/安定化に有用ないくつかの有益な特性を有する。例えば、組成物は、生物系界面活性剤、タンパク質および/または酵素などの、微生物の増殖から生じる産物を精製形態または粗製形態のいずれかで含むことができる。さらに、微生物は、植物の成長を増強し、オーキシン産生を誘導し、土壌中の養分の可溶化、吸収および/またはバランスを可能にし、ならびに植物を害虫および病原体から保護しうる。
【0169】
組成物は、生きた培養物および/もしくは不活性培養物を含む発酵培地、精製形態もしくは粗製形態の増殖副産物、例えば生物系界面活性剤、酵素、および/もしくは他の代謝物、ならびに/または任意の残留養分を含むことができる。
【0170】
発酵産物は、抽出または精製の有無にかかわらず、直接使用されうる。所望であれば、抽出および精製は、標準的な抽出および/もしくは精製方法または文献に記述されている技法を用いて容易に達成することができる。
【0171】
組成物中の微生物は、活性型もしくは不活性型であってもよく、または栄養細胞、生殖胞子、菌糸体、菌糸、分生子もしくは任意の他の形態の微生物繁殖体の形態であってもよい。組成物はまた、これらの微生物形態のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0172】
1つの態様において、微生物の菌株の組み合わせが組成物に含まれる場合、微生物の異なる菌株は別々に増殖され、次いで、一緒に混合されて組成物を産生する。
【0173】
有利なことに、本発明によれば、組成物は、微生物が増殖した培地を含みうる。組成物は、例えば、少なくとも重量あたり1%、5%、10%、25%、50%、75%、または100%の増殖培地でありうる。組成物中のバイオマスの量は、重量あたり、例えば、0%~100%の間の全ての割合を含めて0%~100%の範囲でありうる。
【0174】
1つの態様において、組成物は、土壌、種子、植物全体、または植物部分(根、塊茎、茎、花および葉を含むが、これらに限定されない)に適用するために配合されることが好ましい。ある種の態様において、組成物は、例えば、液体、粉剤、顆粒、微粒剤、ペレット、水和剤、流動性粉末、エマルジョン、マイクロカプセル、オイル、またはエアロゾルとして配合される。
【0175】
組成物の効果を改善または安定化するために、組成物を適当なアジュバントと混和した後、そのままで、または必要に応じて希釈後に、使用することができる。好ましい態様において、組成物は、液体として、濃縮液体として、または水および他の成分と混合して液体製品を形成することができる乾燥粉末もしくは顆粒として配合される。1つの態様において、組成物は、乾燥製品の貯蔵および輸送中に最適な浸透圧を確保するために、浸透圧調節物質に加えて、グルコース(例えば、糖蜜の形態で)を含むことができる。
【0176】
組成物には、さらなる成分、例えば、緩衝剤、担体、同じまたは異なる施設で生産される他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、保存剤、微生物増殖のための養分、追跡剤、殺生物剤、他の微生物、界面活性剤、乳化剤、滑沢剤、溶解度調整剤、pH調整剤、保存剤、安定剤および紫外線耐性剤を加えることができる。
【0177】
組成物のpHは、関心対象の微生物に、およびそれが適用される土壌環境に適しているべきである。いくつかの態様において、pHは、約2.0~約10.0、約2.0~約9.5、約2.0~約9.0、約2.0~約8.5、約2.0~約8.0、約2.0~約7.5、約2.0~約7.0、約3.0~約7.5、約4.0~約7.5、約5.0~約7.5、約5.5~約7.0、約6.5~約7.5、約3.0~約5.5、約3.25~約4.0、または約3.5である。pHを好ましい値付近に安定化させるために、炭酸塩およびリン酸塩などの、緩衝剤およびpH調節剤が使用されてもよい。
【0178】
任意で、組成物は使用前に貯蔵されてもよい。貯蔵時間は短いことが好ましい。したがって、貯蔵時間は60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、または12時間未満でありうる。好ましい態様において、生細胞が製品中に存在する場合、製品は、例えば、20℃未満、15℃未満、10℃未満、または5℃未満のような低温で貯蔵される。
【0179】
しかしながら、微生物ベースの組成物は、さらなる安定化、保存および貯蔵なしに使用されうる。有利なことに、これらの微生物ベースの組成物の直接使用は、微生物の高い生存性を維持し、外来因子および望ましくない微生物の夾雑の可能性を低減し、微生物増殖の副産物の活性を維持する。
【0180】
他の態様において、組成物(微生物、増殖培地、または微生物および培地)は、例えば、意図される使用、企図される適用方法、発酵容器のサイズ、および微生物増殖施設から使用場所までの任意の輸送様式を考慮して、適切なサイズの容器に入れることができる。したがって、微生物ベースの組成物が入れられる容器は、例えば、1パイントから1,000ガロンまたはそれ以上でありうる。ある種の態様において、容器は1ガロン、2ガロン、5ガロン、25ガロン、またはそれ以上である。
【0181】
組成物は、他の農業用化合物および/または作物管理システムと組み合わせて使用することができる。1つの態様において、組成物は任意で、例えば、天然および/もしくは化学殺虫剤、忌避剤、除草剤、肥料、水処理剤、非イオン性界面活性剤および/もしくは土壌改良剤を含んでもよく、またはそれらとともに適用されてもよい。しかしながら、好ましくは、組成物は、ベノミル、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、二酸化水素/ペルオキシ酢酸、イマジリル、プロピコナゾール、テブコナゾールおよびトリフルミゾールを含まず、かつ/またはそれらとともに使用されない。
【0182】
組成物が適合性のある化学添加剤と混合される場合、化学物質は、本組成物の添加前に水で希釈されることが好ましい。
【0183】
1つの態様において、本組成物は、例えば、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などの、アンチスカラント;
例えば硫酸ストレプトマイシンおよび/もしくはGalltrol(登録商標) (A.ラジオバクター菌株K84)などの、殺菌剤;
例えば二酸化塩素、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ハロゲン化複素環および/もしくは二酸化水素/ペルオキシ酢酸などの、殺生物剤;
例えばN-P-K肥料、硝酸カルシウムアンモニウム17-0-0、チオ硫酸カリウム、窒素(例えば10-34-0、Kugler KQ-XRN、Kugler KS-178C、Kugler KS-2075、Kugler LS 6-24-6S、UN 28、UN 32)および/もしくはカリウムなどの、肥料;
例えばクロロタロニル、マニコゼブヘキサメチレンテトラミン、アルミニウムトリス、アゾキシストロビン、バチルス属(例えばB.リケニフォルミス菌株3086、枯草菌、枯草菌株QST 713)、ベノミル、ボスカリド、ピラクロストロビン、キャプタン、カルボキシン、クロロネブ、クロロタロニル、硫酸銅、シアゾファミド、ジクロラン、ジメトモルフ、エトリジアゾール、チオファネート-メチル、フェナミドン、フェナリモール、フルジオキソニル、フルオピコリド、フルトラニル、イプロジオン、マンコゼブ、マネブ、メファノキサム、フルジオキソニル、メフェノキサム、メタラキシル、ミクロブタニル、オキサチアピプロリン、ペンタクロロニトロベンゼン(キントゼン)、リン酸、プロパモカルブ、プロパニル、ピラクロストロビン、オオイタドリ(Reynoutria sachalinensis)、ストレプトマイセス属種(Streptomyces spp.) (例えばS.グリセオビリディス(S. griseoviridis)菌株K61、S.リディカス(S. lydicus) WYEC 108)、硫黄、尿素、チアベンダゾール、チオファネートメチル、チラム、トリアジメフォン、トリアジメノールおよび/もしくはビンクロゾリンなどの、殺菌剤;
例えばアンシミドール、塩化クロルメコート、ジアミノジド、パクロブトラゾールおよび/もしくはウニコナゾールなどの、成長調節物質;
例えばグリホサート、オキシフルオルフェンおよび/もしくはペンジメタリンなどの、除草剤;
例えばアセフェート、アザジラクチン、B.スリンジエンシス(B. thuringiensis) (例えば亜種イスラエレンシス(israelensis)菌株AM 65-52)、ボーベリア・バシアナ(Beauveria bassiana) (例えば、菌株GHA)、カルバリル、クロルピリホス、シアントラニリプロール、シロマジン、ジコフォール、ダイアジノン、ジノテフラン、イミダクロプリド、イザリア・フモソロサエ(Isaria fumosorosae) (例えばアポプカ(Apopka)菌株97)、リンダンおよび/もしくはマラチオンなどの、殺虫剤;
例えば過酸化水素(30~35%)、ホスホン酸(5~20%)および/もしくは亜塩素酸ナトリウムなどの、水処理剤;
同様に糖脂質、リポペプチド、ディート、珪藻土、シトロネラ、精油、鉱物油、ニンニク抽出物、唐辛子抽出物、ならびに/または本開示の利益を有する当業者によって適合性であると判定される任意の既知の市販殺虫剤および/もしくは自家製殺虫剤として特徴付けられる農業用化合物との使用に適合性である。
【0184】
好ましくは、組成物は以下の化合物: ベノミル、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、二酸化水素/ペルオキシ酢酸、イマジリル、プロピコナゾール、テブコナゾールもしくはトリフルミゾールを含まない、および/または以下の化合物: ベノミル、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、二酸化水素/ペルオキシ酢酸、イマジリル、プロピコナゾール、テブコナゾールもしくはトリフルミゾールの適用と同時に、もしくはその適用の前後7~10日以内に適用されない。
【0185】
ある種の態様において、組成物および方法は、例えば、植物もしくは害虫への殺虫性化合物の浸透を増強することにより、または植物の根に対しての養分の生物学的利用能を増強することにより他の化合物の有効性を増強するために使用することができる。微生物ベースの製品はまた、他の処置、例えば、抗生物質処置を補足するために使用することもできる。有利なことに、本発明は、細菌感染の処置および/または予防に効果的であるために作物または植物に投与されなければならない抗生物質の量を減らすのに役立つ。
【0186】
本発明による微生物の増殖
本発明は微生物の培養ならびに微生物代謝物および/または微生物増殖の他の副産物の生産のための方法を利用する。本発明はさらに、所望の規模での微生物の培養および微生物代謝物の生産に適した培養プロセスを利用する。これらの培養プロセスは、浸漬培養/発酵、固体状発酵(SSF)、ならびにそれらの改変、ハイブリッドおよび/または組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書において使用される場合、「発酵」とは、制御された条件下での細胞の培養または増殖をいう。増殖は好気性または嫌気性でありうる。好ましい態様において、微生物は、SSFおよび/またはその改変版を用いて増殖される。
【0188】
1つの態様において、本発明は、バイオマス(例えば、生存可能な細胞物質)、細胞外代謝物(例えば小分子およびタンパク質)、残留養分および/または細胞内成分(例えば酵素および他のタンパク質)の生産のための材料および方法を提供する。
【0189】
本発明によって使用される微生物増殖容器は、工業的使用のための任意の発酵槽または培養リアクタでありうる。1つの態様において、容器は、pH、酸素、圧力、温度、湿度、微生物密度および/または代謝物濃度などの、培養プロセスにおける重要な因子を測定するために機能的制御/センサーを有してもよく、または機能的制御/センサーに接続されてもよい。
【0190】
さらなる態様において、容器はまた、容器内の微生物の増殖をモニターすること(例えば、細胞数および増殖相の測定)が可能でありうる。あるいは、容器から毎日試料を採取し、希釈プレーティング技法などの、当技術分野において公知の技法による計数に供してもよい。希釈プレーティングは、試料中の生物数を推定するために使用される簡単な技法である。この技法はまた、異なる環境または処理を比較できる指標を提供することもできる。
【0191】
1つの態様において、本方法は、培養に窒素源を補充する段階を含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、および/または塩化アンモニウムであることができる。これらの窒素源は、単独でまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0192】
本方法は、増殖中の培養物への酸素投与を提供することができる。1つの態様では、低酸素含有空気を除去し、含酸素空気を導入するために、空気の微動を利用する。浸漬発酵の場合、含酸素空気は、液体の機械的撹拌のための羽根車、および液体中に酸素を溶解するために気泡を液体に供給するための空気スパージャを含む機構を通して、毎日補充される大気中の空気であってもよい。
【0193】
本方法は、培養に炭素源を補充する段階をさらに含むことができる。炭素源は、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトールおよび/またはマルトースなどの、炭水化物; 酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸および/またはピルビン酸などの、有機酸; エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノールおよび/またはグリセロールなどの、アルコール; 大豆油、キャノーラ油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ゴマ油および/またはアマニ油などの、油脂などであることができる。これらの炭素源は、単独でまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0194】
1つの態様において、微生物に対しての増殖因子および微量養分が培地に含まれる。これは、必要とするビタミンを全て産生できない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデンおよび/またはコバルトなどの微量元素を含む、無機養分も培地に含まれてもよい。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、および微量元素の供給源を、例えば、トウモロコシ粉のような粉もしくはミールの形態で、または酵母抽出物、ジャガイモ抽出物、牛肉抽出物、大豆抽出物、バナナ皮抽出物などのような抽出物の形態で、または精製された形態で含めることができる。例えば、タンパク質の生合成に有用なものなどのアミノ酸も含めることができる。
【0195】
1つの態様において、無機塩が含まれてもよい。使用可能な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、および/または炭酸ナトリウムであることができる。これらの無機塩は、単独でまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0196】
いくつかの態様において、培養のための方法は、培養プロセスの前におよび/または間に、培地中に追加の酸および/または抗菌剤を添加する段階をさらに含んでもよい。抗菌剤または抗生物質は、培養物を夾雑から保護するために使用される。
【0197】
さらに、浸漬培養中の泡の形成および/または蓄積を防止するために、消泡剤が添加されてもよい。
【0198】
混合物のpHは、関心対象の微生物に適しているべきである。pHを好ましい値付近に安定化させるために、炭酸塩およびリン酸塩などの、緩衝剤およびpH調節剤が使用されてもよい。金属イオンが高濃度で存在する場合、培地中にキレート剤を使用することが必要になることもある。
【0199】
微生物は、浮遊性形態で、またはバイオフィルムとして増殖させることができる。バイオフィルムの場合、容器は、微生物がバイオフィルム状態で増殖できる基質をその中に有していてもよい。システムはまた、例えば、バイオフィルムの増殖特性を促進および/または改善する刺激(せん断応力などの)を加える能力を有していてもよい。
【0200】
培養物のpHは、関心対象の微生物に、および組成物が適用される土壌環境に適しているべきである。いくつかの態様において、pHは、約2.0~約10.0、約2.0~約9.5、約2.0~約9.0、約2.0~約8.5、約2.0~約8.0、約2.0~約7.5、約2.0~約7.0、約3.0~約7.5、約4.0~約7.5、約5.0~約7.5、約5.5~約7.0、約6.5~約7.5、約3.0~約5.5、約3.25~約4.0、または約3.5である。pHを好ましい値付近に安定化させるために、炭酸塩およびリン酸塩などの、緩衝剤およびpH調節剤が使用されてもよい。
【0201】
1つの態様において、培養方法は約5°~約100℃、約15°~約60℃、約20°~約50℃、約20°~約45℃、約25°~約40℃、約25°~約37℃、約25°~約35℃、約30°~約35℃、約24°~約28℃、または約22°~約25℃で実行される。1つの態様において、培養は一定の温度で連続的に実行されうる。別の態様において、培養は温度の変化に供されうる。
【0202】
1つの態様において、本方法および培養プロセスにおいて使用される装置は無菌である。反応器/容器などの培養装置は滅菌ユニット、例えばオートクレーブから分離されていてもよいが、滅菌ユニット、例えばオートクレーブに接続されていてもよい。培養装置はまた、接種を開始する前にその場で滅菌する滅菌ユニットを有していてもよい。空気は、当技術分野において公知の方法により滅菌することができる。例えば、周囲の空気は、容器に導入する前に少なくとも1つのフィルタを通過させることができる。他の態様において、培地は低温殺菌されてもよく、または任意で、熱を全く加えなくてもよく、低水分活性および低pHを利用して望ましくない細菌の増殖を制御することができる。
【0203】
1つの態様において、本発明は、本発明の微生物株を増殖および代謝物産生に適切な条件の下で培養することにより、例えば、生物系界面活性剤、酵素、タンパク質、エタノール、乳酸、β-グルカン、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸、および脂質などの微生物代謝物を産生するための方法、ならびに、任意で、代謝物を精製するための方法をさらに提供する。本方法により産生される代謝物含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%であることができる。
【0204】
関心対象の微生物によって産生される微生物増殖副産物は、微生物内に保持されるか、または増殖培地中に分泌されうる。培地は、微生物増殖副産物の活性を安定化させる化合物を含みうる。
【0205】
発酵培地のバイオマス含量は、例えば、5 g/l~180 g/lもしくはそれ以上、または10 g/l~150 g/lでありうる。
【0206】
細胞濃度は、例えば、少なくとも1×106~1×1013、1×107~1×1012、1×108~1×1011、または1×109~1×1010 CFU/mlでありうる。
【0207】
微生物の培養および微生物副産物の産生のための方法および装置は、バッチ、準連続プロセス、または連続プロセスで実施することができる。
【0208】
1つの態様において、微生物培養組成物の全ては、培養の完了時(例えば、所望の細胞密度または特定の代謝物の密度の達成時)に取り出される。このバッチ手順では、最初のバッチの収穫時に全く新しいバッチが開始される。
【0209】
別の態様において、発酵生成物の一部のみが任意の一時点で取り出される。この態様において、生存細胞、胞子、分生子、菌糸体および/または菌糸を有するバイオマスは、新たな培養バッチ用の接種剤として容器内に残る。取り出される組成物は、無細胞培地でありうるか、あるいは細胞、胞子もしくは他の生殖繁殖体、および/またはそれらの組み合わせを含みうる。このようにして、準連続システムが作られる。
【0210】
有利なことに、本方法は、複雑な装置または高いエネルギー消費を必要としない。関心対象の微生物は、現地で小規模または大規模に培養され、そのうえそれらの培地と混合されていても利用されうる。
【0211】
有利なことに、微生物ベースの製品が遠隔地で生産されうる。微生物増殖施設は、例えば、太陽光、風力および/または水力を利用することにより送電網から外れて作動しうる。
【0212】
微生物ベースの製品の調製
本発明の微生物ベースの製品の1つは、単に、微生物および/もしくは微生物によって産生された微生物代謝物ならびに/または任意の残留養分を含む発酵培地である。発酵産物は、抽出または精製なしに直接使用されてもよい。所望であれば、抽出および精製は、標準的な抽出および/もしくは精製方法または文献に記述されている技法を用いて容易に達成することができる。
【0213】
微生物ベースの製品中の微生物は、活性型もしくは不活性型であっても、または栄養細胞、生殖胞子、分生子、菌糸体、菌糸もしくは任意の他の形態の微生物繁殖体の形態であってもよい。微生物ベースの製品はまた、微生物のこれらの形態のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0214】
1つの態様において、微生物ベースの製品を生産するために、異なる菌株の微生物を別々に培養し、次いで一緒に混合する。微生物は、任意で、それらが増殖される培地と混和され、混合前に乾燥されてもよい。
【0215】
1つの態様において、異なる菌株は一緒に混合されるのではなく、別々の微生物ベースの製品として植物および/またはその環境に適用される。
【0216】
微生物ベースの製品は、さらなる安定化、保存および貯蔵なしに使用されうる。有利なことに、これらの微生物ベースの製品の直接使用は、微生物の高い生存性を維持し、外来因子および望ましくない微生物の夾雑の可能性を低減し、微生物増殖の副産物の活性を維持する。
【0217】
増殖容器からの微生物ベースの組成物の採取時に、採取された産物が容器に入れられる際、またはさもなくば使用のために輸送される際に、さらなる成分を添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じまたは異なる施設で生産される他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、保存剤、微生物増殖のための養分、界面活性剤、乳化剤、滑沢剤、溶解度調整剤、追跡剤、溶媒、殺生物剤、抗生物質、pH調整剤、キレート剤、安定剤、紫外線耐性剤、他の微生物およびそのような調製物に慣用的に使用される他の適当な添加剤であることができる。
【0218】
1つの態様において、有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩を含む緩衝剤を添加することができる。適当な緩衝液は、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタル酸塩、グルカル酸塩、タルトロン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニンおよびそれらの混合物を含む。リン酸および亜リン酸またはそれらの塩も使用されうる。合成緩衝液を使用することも適当であるが、上記の有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩などの天然緩衝液を使用することが好ましい。
【0219】
さらなる態様において、pH調整剤は水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムもしくは重炭酸カリウム、塩酸、硝酸、硫酸または混合物を含む。
【0220】
1つの態様において、重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムなどの、塩の水性調製物のような追加の成分を配合物に含めることができる。
【0221】
ある種の態様において、植物部分への製品の付着を延長するために、付着性物質を組成物に添加することができる。荷電ポリマーなどのポリマー、または多糖類ベースの物質、例えば、キサンタンガム、グアーガム、レバン、キシリナン、ジェランガム、カードラン、プルラン、デキストランなどを使用することができる。
【0222】
好ましい態様において、市販グレードのキサンタンガムが付着剤として使用される。ガムの濃度は、市販品中のガムの含有量に基づいて選択されるべきである。キサンタンガムが高純度である場合は、0.001% (w/v - キサンタンガム/溶液)で十分である。
【0223】
1つの態様において、グルコース、グリセロールおよび/またはグリセリンを微生物ベースの製品に添加して、例えば、貯蔵および輸送中に浸透圧調節物質として機能させることができる。1つの態様において、糖蜜を含めることができる。
【0224】
1つの態様において、微生物ベースの製品にプレバイオティクスを添加および/または同時に適用して、微生物の増殖を増強することができる。適当なプレバイオティクスは、例えば、昆布抽出物、フルボ酸、キチン、フミン酸塩および/またはフミン酸を含む。特定の態様において、適用されるプレバイオティクスの量は、約0.1 L/エーカー~約0.5 L/エーカー、または約0.2 L/エーカー~約0.4 L/エーカーである。
【0225】
1つの態様において、微生物ベースの製品に特定の養分を添加および/または同時に適用して、微生物の接種および増殖を増強する。これらは、例えば、可溶性カリ(K2O)、マグネシウム、硫黄、ホウ素、鉄、マンガン、および/または亜鉛を含むことができる。養分は、例えば、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、および/または硫酸亜鉛に由来することができる。
【0226】
任意で、製品は使用前に貯蔵されてもよい。貯蔵時間は好ましくは短い。したがって、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、または12時間未満でありうる。好ましい態様において、生細胞が製品中に存在する場合、製品は、例えば20℃未満、15℃未満、10℃未満、または5℃未満などの低温で貯蔵される。
【0227】
本発明のある種の態様において、微生物増殖施設は、新鮮で高密度の微生物および/または関心対象の微生物増殖副産物を所望の規模で生産する。微生物増殖施設は、適用の現場にまたはその近傍に位置しうる。この施設は、バッチ培養、準連続培養、または連続培養で高密度の微生物ベースの組成物を生産する。
【0228】
本発明の微生物増殖施設は、微生物ベースの製品が使用される場所(例えば、柑橘園)に位置することができる。例えば、微生物増殖施設は、使用場所から300、250、200、150、100、75、50、25、15、10、5、3、または1マイル未満でありうる。
【0229】
微生物ベースの製品は、従来の微生物生産の微生物の安定化、保存、貯蔵および輸送プロセスに頼ることなく、地域で作製することができるため、はるかに高密度の微生物を作製することができ、それにより、現地での適用に使用するための微生物ベースの製品をより少量で済ませることができ、または所望の効能を達成するために必要な場合には、はるかに高密度の微生物適用を可能にする。これにより、スケールダウンしたバイオリアクタ(例えば、発酵容器の小型化、スターター材料、養分およびpH制御剤の少量供給)が可能になり、システムが効率的になり、細胞を安定化させる必要または細胞を培養液から分離する必要がなくなりうる。微生物ベースの製品を地域で作製することで、増殖培地を製品に含めることも容易になる。培地は、発酵中に産生される、地域での使用に特に適合した作用物質を含むことができる。
【0230】
地域で生産された高密度で頑健な微生物培養物は、サプライチェーンにしばらく残っていたものよりも現地でより効果的である。本発明の微生物ベースの製品は、細胞が発酵増殖培地中に存在する代謝物および養分から分離されている従来の製品と比較して特に有利である。輸送時間の低減により、地域の需要に応じて必要な時間と量で微生物および/またはその代謝物の新鮮なバッチの生産および送達が可能になる。
【0231】
本発明の微生物増殖設備は、微生物自体、微生物代謝物、および/または微生物が増殖している培地の他の成分を含む、新鮮な微生物ベースの組成物を生産する。所望であれば、組成物は、高密度の栄養細胞もしくは珠芽、または栄養細胞および珠芽の混合物を有することができる。
【0232】
1つの態様において、微生物増殖施設は、微生物ベースの製品が使用される現場(例えば、柑橘園)にまたはその近傍に、例えば、300マイル以内、200マイル以内、またはさらには100マイル以内に位置する。有利なことに、これにより、特定の場所での使用に合わせて組成物を調整することが可能になる。微生物ベースの組成物の配合および効力は、例えば、どの土壌タイプ、植物および/または作物が処理されるか; 組成物が適用されるときがどの季節、気候および/または時期であるか; ならびにどのような適用様式および/または適用速度が利用されるかなどの、適用時の特定の地域の状況に合わせてカスタマイズすることができる。
【0233】
有利なことに、分散型微生物増殖施設は、上流プロセッシングの遅延、サプライチェーンのボトルネック、不適切な貯蔵、ならびに例えば、生存可能な高細胞数の製品と、細胞が当初増殖される関連した培地および代謝物のタイムリーな送達および適用を阻害するその他の不測の事態のために、製品の品質が低下する、遠方の工業規模の生産者に依存するという現在の問題に対する解決策を提供する。
【0234】
さらに、地域で組成物を生産することにより、特定の場所および適用時に存在する条件に合わせてリアルタイムで配合および効力を調整することができる。このことは、中心となる場所で予め作製され、例えば、所与の場所に最適でない可能性のある設定された比率および配合を有する組成物に比べて利点をもたらす。
【0235】
微生物増殖施設は、目的地の地理との相乗効果を向上させるために微生物ベースの製品を調整する能力によって生産の多用途性を提供する。有利なことに、好ましい態様において、本発明のシステムは、天然に存在する、地域の微生物およびその代謝副産物の力を利用して、GHG管理を改善する。
【0236】
個々の容器の培養時間は、例えば、1~7日またはそれ以上でありうる。培養産物は、いくつかの異なる方法のいずれかで採取することができる。
【0237】
地域での生産と、例えば発酵24時間以内の送達とにより、純粋で細胞密度の高い組成物が得られ、輸送コストが大幅に下がる。より効果的で強力な微生物接種剤の開発における急速な進歩が見込まれることから、消費者は微生物ベースの製品を迅速に届けるこの能力から大きな恩恵を受けるだろう。
【実施例】
【0238】
本発明およびその多くの利点は、例示として与えられる以下の実施例からよりよく理解されうる。以下の実施例は、本発明の方法、用途、態様および変化形の一部を例示するものである。それらは本発明を限定するものとみなされるべきではない。本発明に関して多数の変更および修正を行うことができる。
【0239】
実施例1 - 組成物
本明細書において例示されるのは、GHGの低減、炭素利用の改善、および/または炭素隔離の増強に使用するための、本発明のある種の態様による組成物である。本実施例は、限定することを意図するものではない。ここに例示したものに代えてまたは加えて、他の種の微生物を含む配合物が組成物に含まれてもよい。
【0240】
組成物は、トリコデルマ属種真菌およびバチルス属種細菌を含んだ微生物接種剤を含む。特定の例において、組成物はトリコデルマ・ハルジアナムおよびバチルス・アミロリケファシエンスを含む。さらにより具体的には、B.アミロリケファシエンスの菌株は、B.アミロリケファシエンスNRRL B-67928であることができる。
【0241】
1つの態様において、組成物は1~99体積%のトリコデルマ属および99~1体積%のバチルス属を含むことができる。いくつかの態様において、トリコデルマ属とバチルス属との比は、約1:100~約100:1、約1:50~約50:1、約1:25~約25:1、約1:10~約10:1、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1または約1:4~約4:1である。
【0242】
1つの態様において、本組成物の微生物は、組成物全体の約5~20重量%、または約8~15重量%、または約10~12重量%を含む。1つの態様において、組成物は約1×106~1×1012、1×107~1×1011、1×108~1×1010、または1×109 CFU/mlのトリコデルマ属を含む。1つの特定の態様において、組成物は約1×106~1×1012、1×107~1×1011、1×108~1×1010、または1×109 CFU/mlのバチルス属を含む。
【0243】
組成物は、組成物中の微生物の初期増殖を促進するために、追加の「スターター」材料と混合および/または同時に適用することができる。これらは、例えば、プレバイオティクスおよび/またはナノ肥料(例えば、Aqua-Yield, NanoGro(商標))を含むことができる。
【0244】
そのような増殖促進「スターター」材料の1つの例示的な配合は、以下を含む。
可溶性カリ(K2O) (1.0%~2.5%、または約2.0%)
マグネシウム(Mg) (0.25%~0.75%、または約0.5%)
硫黄(S) (2.5%~3.0%、または約2.7%)
ホウ素(B) (0.01%~0.05%、または約0.02%)
鉄(Fe) (0.25%~0.75%、または約0.5%)
マンガン(Mn) (0.25%~0.75%、または約0.5%)
亜鉛(Zn) (0.25%~0.75%、または約0.5%)
フミン酸(8%~12%、または約10%)
昆布抽出物(5%~10%、または約6%)
水(70%~85%、または約77%~80%)
【0245】
微生物接種剤および/または任意の増殖促進「スターター」材料は、灌漑システムのタンク内で水と混合され、土壌に適用される。
【0246】
具体的な例において、組成物は10.0重量%の微生物接種剤および90重量%の水を含み、ここで接種剤は1×108 CFU/mLのトリコデルマ・ハルジアナムおよび1×109 CFU/mLのバチルス・アミロリケファシエンスを含む。
【0247】
実施例2 - 微生物株
本発明は有益な微生物株を利用する。ある種の態様において、微生物は、例えば、T.ハルジアナム、T.ビリデ、T.ロンギブラキア(T. longibrachia)、T.アスペレルム(T. asperellum)、T.ハマタム、T.コニンギイ(T. koningii)、T.リーセイ、T.ギズハウス(T. guizhouse)および/またはその他の菌株などの、トリコデルマの菌株である。
【0248】
例示的なトリコデルマ・ハルジアナム菌株としては、T-315 (ATCC 20671); T-35 (ATCC 20691); 1295-7 (ATCC 20846); 1295-22 [T-22] (ATCC 20847); 1295-74 (ATCC 20848); 1295-106 (ATCC 20873); T12 (ATCC 56678); WT-6 (ATCC 52443): Rifa T-77 (CMI CC 333646); T-95 (60850); T12m (ATCC 20737); SK-55 (No. 13327; BP 4326 NIBH (日本)); RR17Bc (ATCC PTA 9708); TSHTH20-1 (ATCC PTA 10317); AB 63-3 (ATCC 18647); OMZ 779 (ATCC 201359); WC 47695 (ATCC 201575); m5 (ATCC 201645); (ATCC 204065); UPM-29 (ATCC 204075); T-39 (EPA 119200); および/またはF11Bab (ATCC PTA 9709)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0249】
いくつかの態様において、微生物は、例えば、枯草菌、B.アミロリケファシエンス(B. amylolqieufaciens)、B.リケニフォルミス、B.メガテリウム、B.ポリミキサ(B. polymyxa)および/またはその他などの、バチルス属菌株である。
【0250】
枯草菌株は、例えば、枯草菌B1 (ATCC PTA-123459)および/またはB4 (NRRL B-68031)を含むことができる。
【0251】
バチルス・アミロリケファシエンス菌株は、NRRL B-67928、FZB24 (EPA 72098-5; BGSC 10A6)、TA208、NJN-6、N2-4、N3-8、ならびにATCCアクセッション番号23842、23844、23843、23845、23350 (菌株DSM 7)、27505、31592、49763、53495、700385、BAA-390、PTA-7544、PTA-7545、PTA-7546、PTA-7549、PTA-7791、PTA-5819、PTA-7542、PTA-7790および/またはPTA-7541を有するものを含むことができるが、これらに限定されない。
【0252】
【国際調査報告】