(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】外因性タンパク質を発現する組換えロタウイルス及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/46 20060101AFI20241029BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20241029BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N15/46 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/33
C12N15/31
C12N15/11 Z
C12N15/40
C12N15/50
C12N15/52 Z
C12N7/01
C12N5/10
A61K39/00 H
A61P31/12
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523176
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022078305
(87)【国際公開番号】W WO2023069950
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パットン,ジョン・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,アシャ・アン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA99
4C085GG01
(57)【要約】
本明細書に開示されているものは、組換えロタウイルス(RV)をコードするポリヌクレオチド、それを使用する方法、及び組換えRVを生成するためのシステムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列、及び
異種ポリヌクレオチド、
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
プロモーターが、T7プロモーター又はT3プロモーターである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
プロモーターがT7プロモーターである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
RV NSP3をコードする配列が、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
異種ポリヌクレオチドが、ペプチド又はタンパク質をコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
異種ポリヌクレオチドが、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
ペプチド又はタンパク質が、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
ペプチド又はタンパク質が、微生物ペプチド又はタンパク質を含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
ペプチド又はタンパク質が、細菌ペプチド又はタンパク質を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
ペプチド又はタンパク質が、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
ペプチド又はタンパク質が、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
NoVペプチド又はタンパク質が、NoV VP1タンパク質を含む、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
NoVペプチド又はタンパク質が、配列番号24、26又は80~84から選択される、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
ペプチド又はタンパク質が、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドが、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
SARS-CoV-2タンパク質が、S1タンパク質又はその断片である、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
ペプチド又はタンパク質が、切断部位を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
切断部位がプロテアーゼ切断部位である、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
切断部位がトロンビン切断部位(配列番号28)である、請求項20に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
切断部位が自己切断型ペプチド配列である、請求項20に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
自己切断型ペプチド配列が、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
ペプチド又はタンパク質が、リンカーを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
リンカーが、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
異種ポリヌクレオチドが、約2.6kb以下の長さである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
異種ポリヌクレオチドが、約1.55kb以下の長さである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
異種ポリヌクレオチドが、約1.3kb以下の長さである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
ペプチド又はタンパク質が、糖タンパク質である、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
ペプチド又はタンパク質が、1つ以上のグリコシル化部位を含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
異種ポリヌクレオチドが、レポーターをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
レポーターが、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される、請求項31に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
レポーターが、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している、請求項31に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項35】
配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、感染性粒子。
【請求項37】
請求項1~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを細胞に導入することによって作製される、感染性粒子。
【請求項38】
請求項36又は37に記載の感染性粒子を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を任意にさらに含む、医薬組成物。
【請求項39】
対象において1つ以上の微生物に対して免疫応答を誘発する方法であって、請求項38に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与して、1つ以上の微生物に対して免疫応答を誘発することを含む、方法。
【請求項40】
1つ以上の病原体がNoVを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
1つ以上の病原体が、RV及びNoVを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
1つ以上の病原体がSARS-CoV-2を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
1つ以上の病原体が、RV及びSARS-CoV-2を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
1つ以上の病原体に対して対象に予防接種する方法であって、請求項38に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与して、1つ以上の病原体に対して対象に予防接種することを含む、方法。
【請求項45】
1つ以上の病原体がNoVを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
1つ以上の病原体が、RV及びNoVを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
1つ以上の病原体がSARS-CoV-2を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
1つ以上の病原体が、RV及びSARS-CoV-2を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
組換えロタウイルス(RV)をインビトロで生成する方法であって、
請求項1~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを細胞に導入すること、細胞がポリヌクレオチドを発現することを可能にすること、細胞を十分な時間にわたってインキュベートして、RVを産生させること、及び細胞により産生されたウイルスを採取して、RVをインビトロで生成することを含む、方法。
【請求項50】
方法が、可能にするステップの前に、1つ以上の追加のポリヌクレオチドを細胞に導入することをさらに含み、1つ以上の追加のポリヌクレオチドが、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含み、RVタンパク質をコードするそれぞれの配列が、プロモーターに作動可能に連結している、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
1つ以上の追加のポリヌクレオチドが、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の追加のポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結しているキャッピング酵素をコードする配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
キャッピング酵素が、アフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
細胞が、MA-104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
細胞が、異種RNAポリメラーゼを発現する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
異種RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼ及びT3 RNAポリメラーゼから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
細胞が、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
方法が、細胞中で発現する場合に糖タンパク質に融合しているRVタンパク質を産生する、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物を含む又は請求項36若しくは37に記載の感染性粒子を含む、細胞。
【請求項60】
細胞が、MA-104細胞、ベロ細胞又はBHK-1細胞である、請求項59に記載の細胞。
【請求項61】
細胞が、異種RNAポリメラーゼを発現する、請求項60に記載の細胞。
【請求項62】
異種RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼ及びT3 RNAポリメラーゼから選択される、請求項61に記載の細胞。
【請求項63】
組換えロタウイルス(RV)を生成するためのシステム、プラットフォーム又はキットであって、
(a)請求項1~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、及び
(b)(a)のポリヌクレオチドを発現することができる細胞、
を含む、システム、プラットフォーム又はキット。
【請求項64】
VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む1つ以上の追加のポリヌクレオチドをさらに含み、RVタンパク質をコードするそれぞれの配列が、プロモーターに作動可能に連結している、請求項63に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【請求項65】
1つ以上の追加のポリヌクレオチドが、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする少なくとも1つの配列を含む、請求項64に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【請求項66】
細胞が、異種RNAポリメラーゼを含み、アフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素を任意に含む、請求項64に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【請求項67】
細胞が、MA-104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される細胞系からの細胞を含む、請求項63に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【請求項68】
細胞が、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞を含む、請求項67に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【請求項69】
細胞が、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞、ベロ細胞、及びMA-104細胞を含む、請求項68に記載のシステム、プラットフォーム又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月18日に出願した米国特許仮出願第63/256,960号及び2021年10月18日に出願した米国特許仮出願第63/256,875号の利益を主張し、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利についての記述
本発明は、国立衛生研究所により授与されたTR002529及びAI44881の政府援助で行われた。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
配列表
配列表が本出願に付随し、120,469バイトのサイズであり、2022年10月18日に作成され、「144578_00351.xml」と名付けられたST26フォーマットの配列表のxmlファイルで提出されている。配列表は、出願と共にEFS-Webを介して電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
ロタウイルス(RV)及びノロウイルス(NoV)は、幼児(young children)及び高齢者における急性胃腸炎(AGE)及び急性下痢エピソードの主因である(1,2)。米国及び多くの他の国々における小児予防接種プログラム(childhood immunization program)における有効なRVワクチン-一価ワクチン(RV1)であるRotarix(GSK Biologicals)及び五価ワクチン(RV5)であるRotaTeq(Merck and Company)の開発及び導入は、RVによる入院及び死亡の発生率の低減をもたらし、これらのワクチンは、予防接種を受けた小児中に中和抗体を生成することにかなり成功している(3,4)。RVワクチンが広く使用されている国々では、小児の人生の最初の5年間におけるNoV媒介下痢性疾患及び入院の増加が、より明白になった(5,6)。NoV疾患の発生率は、幼児、高齢者集団及び免疫防御の低い対象において高く、彼らには有効な予防処置が緊急に必要である(7)。NoV疾患は非常に伝染性があり、AGEを引き起こすのにわずか10個の感染性粒子を要し、高い環境安定性を有し、感染後の排出が数週間にわたって続く(8)。しかし、ウイルス培養に適切な細胞系の欠如のため、並びに薬物及びワクチン評価に成功した動物モデルの欠如のため、有効な抗NoV薬又はワクチンを開発することが何年も非常に困難であった(9,10)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、NoVに対して免疫を誘発する新規組成物及び方法が当該技術において必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示の一態様では、ポリヌクレオチドが提供される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。
【0007】
本開示の別の態様では、感染性粒子が提供される。一部の実施形態において、感染性粒子は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。
【0008】
一部の実施形態において、感染性粒子は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。
【0009】
本開示の別の態様では、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を任意にさらに含む医薬組成物。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。
【0010】
一部の実施形態において、医薬組成物は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される感染性粒子を含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0011】
本開示の別の態様では、対象において1つ以上の微生物に対して免疫応答を誘発する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を任意にさらに含む医薬組成物の有効量を対象に投与して、1つ以上の微生物に対して免疫応答を誘発することを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される感染性粒子を含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はSARS-CoV-2を含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びSARS-CoV-2を含む。
【0012】
本開示の別の態様では、1つ以上の病原体に対して対象に予防接種する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を任意にさらに含む医薬組成物の有効量を対象に投与して、1つ以上の病原体に対して対象に予防接種することを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される感染性粒子を含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はSARS-CoV-2を含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びSARS-CoV-2を含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びNoVを含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体はSARS-CoV-2を含む。一部の実施形態において、1つ以上の病原体は、RV及びSARS-CoV-2を含む。
【0013】
本開示の別の態様では、組換えロタウイルス(RV)をインビトロで生成する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを細胞に導入すること、細胞がポリヌクレオチドを発現することを可能にすること、細胞を十分な時間にわたってインキュベートして、RVを産生させること、及び細胞により産生されたウイルスを採取して、RVをインビトロで生成することを含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、プロモーターは、T7プロモーター又はT3プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポジティブセンスウイルス転写物をコードする。一部の実施形態において、RV NSP3をコードする配列は、配列番号1をコードする配列又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性を有する配列である。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードする。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ペプチド又はタンパク質をコードし、NSP3のインフレームにある。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、抗原性ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、微生物ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、細菌ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ウイルスペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、ノロウイルス(NoV)ペプチド又はタンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、NoV VP1タンパク質を含む。一部の実施形態において、NoVペプチド又はタンパク質は、配列番号24、26又は80~84から選択される。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドを含む。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質又はペプチドは、Nタンパク質、Sタンパク質、又はNタンパク質若しくはSタンパク質のいずれかの断片から選択される。一部の実施形態において、SARS-CoV-2タンパク質は、S1タンパク質又はその断片である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、切断部位を含む。一部の実施形態において、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態において、切断部位はトロンビン切断部位(配列番号28)である。一部の実施形態において、切断部位は自己切断型ペプチド配列である。一部の実施形態において、自己切断型ペプチド配列は、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号29)である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、GAG可動性リンカー又はGSG可動性リンカーである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約2.6kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.55kb以下の長さである。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、約1.3kb以下の長さである。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、糖タンパク質である。一部の実施形態において、ペプチド又はタンパク質は、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態において、レポーターは、蛍光レポーター、酵素及び抗原タグから選択される。一部の実施形態において、レポーターは、RVタンパク質をコードする配列の3’のインフレームに融合している。一部の実施形態において、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性を有する配列をコードする、ポリヌクレオチド。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22のいずれか1つを含む又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、本方法は、可能にするステップの前に、1つ以上の追加のポリヌクレオチドを細胞に導入することをさらに含み、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含み、RVタンパク質をコードするそれぞれの配列は、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結しているキャッピング酵素をコードする配列を含む。一部の実施形態において、キャッピング酵素は、アフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素である。一部の実施形態において、細胞は、MA-104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される。一部の実施形態において、細胞は、異種RNAポリメラーゼを発現する。一部の実施形態において、異種RNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ及びT3 RNAポリメラーゼから選択される。一部の実施形態において、細胞は、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞である。一部の実施形態において、本方法は、細胞中で発現する場合に糖タンパク質に融合しているRVタンパク質を産生する。
【0014】
本開示の別の態様では、細胞が提供される。一部の実施形態において、細胞は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、細胞は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含む。一部の実施形態において、細胞は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される感染性粒子を含む。一部の実施形態において、細胞は、MA-104細胞、ベロ細胞又はBHK-1細胞である。一部の実施形態において、細胞は、異種RNAポリメラーゼを発現する。一部の実施形態において、異種RNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ及びT3 RNAポリメラーゼから選択される。
【0015】
本開示の別の態様では、組換えロタウイルス(RV)を生成するためのシステム、プラットフォーム又はキットが提供される。一部の実施形態において、システム、プラットフォーム又はキットは、(a)ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、並びに(b)(a)のポリヌクレオチドを発現することができる細胞を含む。一部の実施形態において、システム、プラットフォーム又はキットは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む1つ以上の追加のポリヌクレオチドをさらに含み、RVタンパク質をコードするそれぞれの配列は、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする少なくとも1つの配列を含む。一部の実施形態において、細胞は、異種RNAポリメラーゼを含み、アフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素を任意に含む。一部の実施形態において、細胞は、MA-104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される細胞系からの細胞を含む。一部の実施形態において、細胞は、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞を含む。一部の実施形態において、細胞は、T7 RNAポリメラーゼを含むBHK-1細胞、ベロ細胞、及びMA-104細胞を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】ヒトNoV VP1カプシドタンパク質のドメイン。VP1は、シェル(S)及び突出(P)ドメインに細分化され得る。Pドメインは、P1及びP2サブドメインにさらに分解される。
【
図1B】色により識別されたVP1のSドメイン(緑色)、並びにP1(シアン色)及びP2(青色)サブドメインを有するNoVカプシドの表面提示。
【
図1C】S(緑色)、P1(シアン色)及びP2(青色)のNoV VP1ダイマーのリボン提示。
【
図2】ヒトNoV VP1タンパク質の部分を発現する組換え(r)SA11ウイルスを生成するために使用された、修飾セグメント7(NSP3)cDNAを有するプラスミド。図解は、NSP3(非構造タンパク質3)、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(2A)、3xFLAG(3FL)、1xFLAG(1FL)若しくは6xヒスチジン(6xHis)タグ、及び/又はトロンビン切断部位(Th)、並びに完全VP1、又はP2及びPのサブドメインのコード配列におけるヌクレオチド位置を示す。赤色矢印は、2A翻訳停止再開部位の位置を示し、星印は、ORE(オープンリーディングフレーム)の終点を示す。コードされたNSP3及びVP1産物のサイズ(コードしたアミノ酸(aa)の数で表した)を括弧内に提示する。T7(T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列)、Rz(D型肝炎ウイルスリボザイム)、UTR(非翻訳領域)。
【
図3A】NoV VP1タンパク質のFLAGタグ付き領域を発現するrSA11ウイルスの特性。二本鎖RNAを、rSA11感染MA104細胞から回収し、ゲル電気泳動により分離させ、臭化エチジウム染色により検出した。rSA11/wt(wt、野生型)のゲノムセグメントには1~11が標識されている。修飾セグメント7 RNA(黒色矢印)のサイズ(キロベースペア、kbp)が示されている。
【
図3B】プラークアッセイを、MA104細胞を使用して実施し、クリスタルバイオレット染色により検出した。
【
図3C】rSA11プラークの平均直径値が、95%信頼区間(黒色線)と共に示されている。
【
図3D】rSA11単離物により達成された力価をプラークアッセイにより決定した(プラーク形成単位、PFU)。
【
図3E】全細胞溶解産物(WCL)を、rSA11ウイルスに感染させたMA104細胞から調製し、FLAG抗体を使用する免疫ブロットアッセイにより検査して、VP1タンパク質産物(P2、P、VP1)、2Aリードスルー産物[赤色星印]、並びにRV NSP3、VP6、ブタテッショウウイルス2Aエレメント及びb-アクチンに特異的な抗体を検出した。タンパク質分子量マーカー(MWM)のサイズ(kDa)が示されている。
【
図4A】Hisタグ付きNoVカプシドタンパク質を発現するrSA11ウイルスの特性。dsRNAを、Hisタグ付きタンパク質を発現するプラーク精製rSA11単離物に感染させたMA104細胞から回収し、ゲル電気泳動により分離させ、臭化エチジウム染色により検出した。rSA11/wtのRNAセグメントには1~11が標識されている。rSA11単離物の修飾セグメント7 RNA(黒色矢印)のサイズ(kbp)が示されている。
【
図4B】プラークアッセイを、MA104細胞を使用して実施し、クリスタルバイオレット染色により検出した。
【
図4C】プラークの平均直径値であり、95%信頼区間(黒色線)に注目すること。
【
図4D】rSA11単離物により達成された力価をプラークアッセイにより決定した。
【
図4E】全細胞溶解産物(WCL)を、rSA11ウイルスに感染させたMA104細胞から調製し、抗6xHis抗体を使用する免疫ブロットアッセイにより検査して、VP1タンパク質産物(P及びVP1)、並びにRV NSP3、VP6、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(2A)及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体を検出した。タンパク質マーカー(MWM)のサイズ(キロダルトン)が示されている。
【
図5A】NoV Pタンパク質dsRNAを発現するrSA11/RIX NSP3ウイルスの特性を、プラーク精製rSA11及びrSA11/RIX NSP3-2A-P His単離物に感染させたMA104細胞から回収し(プラーク1~3)、ゲル電気泳動により分離させ、臭化エチジウム染色により検出した。rSA11/wtのRNAセグメントには1~11が標識されている。rSA11単離物の修飾セグメント7 RNA(黒色矢印)のサイズ(kbp)が示されている。
【
図5B】プラークアッセイを、MA104細胞を使用して実施し、クリスタルバイオレット染色により検出した。
【
図5C】rSA11単離物により達成された力価をプラークアッセイにより決定した。
【
図5D】全細胞溶解産物(WCL)を、rSA11及びrSA11/RIX NSP3-2A-P His単離物に感染させたMA104細胞から調製し、抗6xHis抗体を使用する免疫ブロットアッセイにより検査して、Pタンパク質、2Aリードスルー産物、並びにRV SA11 NSP3、VP6、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(2A)及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体を検出した。
【
図6A】rSA11により発現されたNoVカプシドタンパク質の二量体化。(A)MA104細胞をモック感染させ、又はrSA11/wt若しくはrSA11/NSP3-2A-fP2、rSA11/NSP3-2A-fP、rSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1fに感染させ、細胞を採取するときに9時間p.i.までインキュベートした。細胞溶解産物を、ドデシル硫酸ナトリウム及びβ-メルカプトエタノールを含有する試料緩衝液と混合し、25℃又は95℃のいずれかで10分間インキュベートし、4~20%ポリアクリルアミドゲルのBiorad電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットした。ブロットを、M2 FLAG抗体、モルモットポリクローナル抗NSP3若しくは抗VP6抗体、又はウサギ抗Bアクチンモノクローナル抗体でプローブした。一次抗体は、HRP結合二次抗体を使用して検出した。タンパク質分子量マーカー(MWM)のサイズ(キロダルトン、kDa又はkD)が示されている。
【
図6B】MA104細胞をモック感染させ、又はrSA11/wt若しくはrSA11/NSP3-2A-PHis、rSA11/NSP3-2A-VP1His、rSA11/NSP3-2A-VP1ThHisに9h.p.i.で感染させ、細胞を採取した。細胞溶解産物を上記のとおりに調製し、4~20%ポリアクリルアミドゲルのBiorad電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットした。ブロットを、マウス抗6xHis抗体、モルモットポリクローナル抗NSP3若しくは抗VP6抗体、又はウサギ抗Bアクチンモノクローナル抗体でプローブした。一次抗体は、HRP結合二次抗体を使用して検出した。タンパク質マーカー(MWM)のサイズ(キロダルトン)が示されている。
【
図7A】適切に折り畳まれたrSA11株から発現したNoV VP1カプシドタンパク質。(A)rSA11/wt、rSA11/NSP3-2A-fVP1、rSA11/NSP3-2A-VP1f及びrSA11/NSP3-2A-VP1Hisウイルスに感染させたMA104細胞から調製した溶解産物を、折り畳まれたVP1タンパク質の立体構造依存性エピトープを認識するNoV VP1特異的モノクローナル抗体(抗NoV GII.4 NVB43.9、絶対的抗体)を使用する免疫沈降(IP)アッセイにより解析した。抗原-抗体複合体を磁気IgA/Gビーズの使用により回収し、ゲル電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットした。ブロットを、免疫沈降VP1タンパク質を検出するために抗FLAG及び抗6xHis抗体でプローブし、モルモットポリクローナル抗NSP3若しくは抗VP6抗体、又はウサギ抗Bアクチンモノクローナル抗体でプローブした。青色矢印は、免疫沈降VP1タンパク質を示している。Ig軽鎖(Ig/L)及びIg重鎖(IgH)。
【
図7B】溶解産物をNSP2特異的マウスモノクローナル抗体(#171)により同様に解析し、ブロットを、免疫沈降NSP2タンパク質を検出するためにマウス抗NSP2抗体(#516)でプローブし、モルモットポリクローナル抗NSP3若しくは抗VP6抗体、又はウサギ抗Bアクチンモノクローナル抗体でプローブした。kDaで分子量マーカー(MWM)の位置を示している。
【
図8A】NoVタンパク質を発現するrSA11株の遺伝子安定性。rSA11株をMA104細胞中で5回(P1~P5)連続継代させた(A)ゲノムRNAを感染細胞溶解産物から回収し、ゲル電気泳動により解析した。ウイルスゲノムセグメントの位置が標識されている。rSA11株に導入された修飾セグメント7(NSP3)dsRNAの位置が、黒色矢印で示されている。
【
図8B】ゲノムRNAを、3つの希釈(1:10、1:100及び1:1000)の溶解産物に感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した。rSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1Hisの修飾セグメント7(NSP3)dsRNAの遺伝子安定性は、連続継代の際に再編成RNAを生じた(赤色矢印で示されている)。
【
図8C】ゲノムRNAを、3つの希釈(1:10、1:100及び1:1000)の溶解産物に感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した。rSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1Hisの修飾セグメント7(NSP3)dsRNAの遺伝子安定性は、連続継代の際に再編成RNAを生じた(赤色矢印で示されている)。
【
図8D】rSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1HisウイルスのP5溶解産物から単離された大型(L)及び小型(S)プラークから調製されたゲノムRNA。再編成セグメント7 RNAは、fVP1/R1、fVP1/R2及びVP1 His/Rとして示されている(赤色矢印)。
【
図8E】rSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1HisウイルスのP5溶解産物から単離された大型(L)及び小型(S)プラークから調製されたゲノムRNA。再編成セグメント7 RNAは、fVP1/R1、fVP1/R2及びVP1 His/Rとして示されている(赤色矢印)。
【
図8F】再編成RNAから調製されたcDNAをシーケンシングすることによって決定された再編成セグメント7 RNA(R)配列の構成。配列欠失が破線で示されている。
【
図9A】NoV VP1を発現するように修飾されたrSA11ウイルスから生成されたrSA11バリアントの特徴付け。ゲノムRNAをrSA11/NSP3-2A-fVP1及びrSA11/NSP3-2A-VP1His感染細胞溶解産物から回収し、ゲル電気泳動により解析した。ウイルスゲノムセグメントの位置が標識されている。rSA11株に導入された修飾セグメント7(NSP3)dsRNAの位置が、黒色矢印で示されており、ランダムバリアントの生成が赤色矢印で示されている。
【
図9B】全細胞溶解産物(WCL)を、変異rSA11ウイルスに感染させたMA104細胞から調製し、RV NSP3、VP6及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体を使用して免疫ブロットアッセイにより検査した。NSP3抗血清よるプロービングは、多数のNSP3タンパク質バンドを示している。
【
図9C】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9D】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9E】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9F】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9G】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9H】ゲノムRNAを、fVP1バリアントプール(V1~V4)及びVP1Hisバリアントプール(V5~V6)から単離された大型(L)及び小型(S)プラークに感染させた細胞から回収し、ゲル電気泳動により解析した(V:バリアント)。
【
図9I】変異セグメント7 RNAから作製されたcDNAをシーケンシングすることによって決定された再編成セグメント7 RNA(Rと示されている)配列の構成。配列欠失が破線で示されている。再編成変異セグメントのサイズが括弧内に示されている。
【
図10A】RV粒子密度に対するゲノムサイズの影響。(A~B)。MA104細胞を、rSA11/wt、rSA11/NSP3-fP2、rSA11/NSP3-fP、rSA11/NSP3-fVP1、rSA11/NSP3-PHis、rSA11/NSP3-VP1HisウイルスにMOIの5で感染させた。12時間p.i.(感染後)に、細胞を回収し、非イオン性洗剤で処理して溶解し、EDTAで処理して、RVビリオンをDLPに変換した。DLPをCsCl勾配の遠心分離によりバンド形成し、これらの密度(g/cm
3)を屈折計の使用により決定した。粒子密度は
図10A、10Bに埋め込まれた表に示されている。
【
図10B】RV粒子密度に対するゲノムサイズの影響。(A~B)。MA104細胞を、rSA11/wt、rSA11/NSP3-fP2、rSA11/NSP3-fP、rSA11/NSP3-fVP1、rSA11/NSP3-PHis、rSA11/NSP3-VP1HisウイルスにMOIの5で感染させた。12時間p.i.(感染後)に、細胞を回収し、非イオン性洗剤で処理して溶解し、EDTAで処理して、RVビリオンをDLPに変換した。DLPをCsCl勾配の遠心分離によりバンド形成し、これらの密度(g/cm
3)を屈折計の使用により決定した。粒子密度は
図10A、10Bに埋め込まれた表に示されている。
【
図10C】CsCl勾配から回収されたDLPのdsRNAゲノムの電気泳動プロファイル。パネルCのRNAはパネルA(
図10A)のDLPに由来し、パネルD(
図10C)のRNAはパネルBのDLPに由来する。rSA11/wtのRNAセグメントには、1~11が標識されている。修飾セグメント7 RNAの位置は黒色矢印で示されており、赤色矢印は、試料中に生成されたバリアントを示している。
【
図10D】CsCl勾配から回収されたDLPのdsRNAゲノムの電気泳動プロファイル。パネルCのRNAはパネルA(
図10A)のDLPに由来し、パネルD(
図10C)のRNAはパネルBのDLPに由来する。rSA11/wtのRNAセグメントには、1~11が標識されている。修飾セグメント7 RNAの位置は黒色矢印で示されており、赤色矢印は、試料中に生成されたバリアントを示している。
【
図11】SARS-CoV-2 S1タンパク質をコードするrSA11を生成するために使用された修飾セグメント7(NSP3)cDNAを有するプラスミド。模式は、NSP3、ブタテッショウウイルス2Aエレメント、3x又は1xFLAg(GL)、6xHis(His)及び完全S1のコード配列のヌクレオチド位置を示す。赤色矢印は、2A翻訳停止-再開部位の位置を示し、星印は、OREの終点を示す。コードされたNSP3及びS1タンパク質のサイズ(配列をコードしたアミノ酸(aa)の数に関して)を括弧内に示す。T7(T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列)、Rz(D型肝炎ウイルスリボザイム)、UTR(非翻訳領域)。
【
図12A】SARS CoV-2 S1タンパク質を発現するrSA11ウイルスの特性。dsRNAを、プラーク精製rSA11単離物に感染させたMA104細胞から回収し、ゲル電気泳動により分離させ、臭化エチジウム染色により検出した。rSA11/重量(weight)(wt)のRNAセグメントには、1~11が標識されている。rSA11単離物のセグメント7 RNA(黒色矢印)のサイズ(Kbp)が示されている。
【
図12B】細胞溶解産物を、rSA11ウイルス9に感染させた細胞から感染の9時間後(h.p.i.)に調製し、抗FLAG及び抗6xHis抗体を使用する免疫ブロットアッセイにより検査して、Sタンパク質を検出し、同じブロットを、SARS CoV-2 S1タンパク質、RV NSP3、VP6及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体で再プローブした。
【
図12C】プラークアッセイを、MA104細胞を使用して実施し、クリスタルバイオレット染色により検出した。
【
図12D】rSA11単離物により達成された力価をプラークアッセイにより決定した。
【
図13】rSA11ウイルスから発現したSARS CoV-2 S1タンパク質がグリコシル化される。全細胞溶解産物を、rSA11ウイルスに感染させた細胞から9h.p.iに調製し、Endo H試薬を用いて又は用いることなく処理し、抗FLAG及び抗6xHis抗体を使用する免疫ブロットアッセイにより検査して、S1タンパク質を検出し、同じブロットを、SARS CoV-2 S1に特異的な抗体で再プローブする。免疫ブロットを、RV NSP3及びVP6に特異的な抗体によってもプローブし、同じブロットを、細胞ベータアクチンに特異的な抗体により再プローブする。
【
図14A】rSA11ウイルスから発現したSARS CoV-2 S1タンパク質は、ヒトACE-2受容体に結合することができる。rSA11/wt及びrSA11/NSP3-2A-S1ウイルスに感染させたMA104細胞から調製した溶解産物を、組換えACE-2ヒトIgGタンパク質を使用する免疫共沈降アッセイにより検査した。タンパク質-抗体複合体を、タンパク質IgA/Gビーズを使用して回収し、ゲル電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットし、抗FLAG及び抗6xHis抗体、SARS CoV-2 S1抗体、RV、NSP3、VP6及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体によりプローブした。
【
図14B】rSA11ウイルスから発現したSARS CoV-2 S1タンパク質は、ヒトACE-2受容体に結合することができる。rSA11/wt及びrSA11/NSP3-2A-S1ウイルスに感染させたMA104細胞から調製した溶解産物を、組換えACE-2ヒトIgGタンパク質を使用する免疫共沈降アッセイにより検査した。タンパク質-抗体複合体を、タンパク質IgA/Gビーズを使用して回収し、ゲル電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットし、抗FLAG及び抗6xHis抗体、SARS CoV-2 S1抗体、RV、NSP3、VP6及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体によりプローブした。
【
図15】RV感染細胞におけるSARS CoV-2 S1タンパク質の局在化。MA104細胞を、モック感染させた又は組換えSA11ウイルス:wt、NSP3-2A-S1fに感染させた。9h.p.i.に細胞を3.7%ホルムアルデヒドに固定した。その後、全ての細胞をウサギS1抗体、マウスNSP2抗体と共にインキュベートし、続いてAlexa488抗ウサギiIgG(緑色)及びTRITC抗マウスIgG(赤色)とインキュベートして、感染細胞中のS1タンパク質及びNSP2タンパク質の位置を検出した。核は、DAPIで染色することによって検出した。細胞を、フルオレセインイソチオシアネート及びテトラメチルロジウムイソチオシアネートウインドウを使用するEcho Revolve蛍光顕微鏡(20×対物レンズ)により解析した。
【
図16A】SARS CoV-2 S1fタンパク質を発現するrSA11株の遺伝子安定性。S1タンパク質を発現するrSA11株をMA104細胞中で5回連続継代(P1~P5)させた。ゲノムRNAを感染細胞溶解産物から回収し、ゲル電気泳動により解析した。ウイルスゲノムセグメントの位置が標識されている。rSA11株に導入された修飾セグメント7(NSP3)dsRNAの位置が、黒色矢印で示されている。
【
図16B】rSA11/wt及び連続継代SA11/NSP3-2A-S1fウイルス(P1~P5)に感染させたMA104細胞から調製された溶解産物を、免疫ブロットアッセイにより検査し、FLAG抗体、SARS CoV-2 S1抗体、RV、NSP3、VP6及び細胞ベータアクチンに特異的な抗体によりプローブした。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ゲノム全体又は個別のウイルス遺伝子の遺伝子解析は、7個のNoV遺伝子群(genogroup)の確認を導き出し、カプシドタンパク質VP1及びRNA依存性RNAポリメラーゼの配列研究は、30個を超える遺伝子型を確認した(7)。ヒトに起こるNoV疾患は、大部分が遺伝子群I(GI)、II(GII)及びIV(GIV)に含まれる株が原因である(11)。しかし、GIIは、世界中でヒト疾患を引き起こしている主な遺伝子群である。GII.4遺伝子型は、1990年代から優勢であり、全てのヒトNoV疾患の55~85%を占める(12~14)。遺伝子群内には高度な遺伝的多様性があり、1つの遺伝子群に含まれる株が原因の感染は、別の遺伝子群に対する保護を一般に与えず、このことは有効な普遍的ワクチンの開発を困難にしている(15)。
【0018】
NoVゲノムは、およそ7.6kbpであり、3個のオープンリーディングフレーム(ORF1~3)を含有し、ORF-3は主要な構造タンパク質であるVP1をコードする。ウイルスカプシドは、90個のVP1ダイマーから構成され、これはシェル(S)ドメイン及び突出(P)ドメインから構成される(16)。Sドメインは、最も高度に保存されたVP1ドメインであり、一方、Pドメインはより可変性があり、一次アミノ酸配列が不連続であるP1及びP2サブドメインを含む。高度に可変性のP2サブドメインは、タンパク質の免疫優性領域を表し、中和抗体の標的であり、NoVの定義された受容体結合部位を含有する(17,18)。NoV感染後の免疫応答は、血清ヒト組織-血液型抗原を測定することによって確認され得る(19,20)。
【0019】
3つのタイプのNoVワクチンが開発されており、非複製ウイルス様粒子(VLP)、P粒子及び組換えアデノウイルスベクター化ワクチンである(21~23)。大部分のワクチン研究は、成人において実施され(24~26)、一方、免疫原性及び安全性を試験するために小児及び乳児に実行されたGI.1及びGII.4二価ワクチンの第II相試験は、調合剤が頑強な免疫応答を誘起することを示した(27)。RV及びNoV疾患の両方を同時に予防する試みでは、2個のNoV VLP(GII.4及びGI.3)、並びにオリゴマーRV VP6を含有する三価ワクチンが動物モデルで試験された(28,29)。RV VP6は、高度に保存されたタンパク質であり、RV感染から保護する有意な免疫応答を誘起することができ、NoV抗原に対する免疫応答を増加するアジュバントとして作用することができる(30)。
【0020】
近年のRV逆遺伝学的システムの開発は、外来性タンパク質の発現ベクターとしての組換えRVの生成をもたらした(31~36)。RVゲノムは11個のセグメントのdsRNAからなり、合計サイズは18.5kbpである。全てのセグメントは、セグメント11を除いて単一OREを含有する。これらは、6個の構造的(VP)又は6個の非構造的(NSP)ウイルスタンパク質をコードする(37)。A群RV(RVA)のゲノムセグメント7は、感染細胞中でウイルス(+)mRNAの翻訳エンハンサーとして作用するRNA結合タンパク質である36kDaタンパク質のNSP3をコードする(38,39)。
【0021】
RVをワクチン発現ベクターとして使用するために、本発明者たちは、NSP3 ORFを2A翻訳エレメントの使用により修飾して、SARS CoV-2 スパイクタンパク質の領域を発現させることによってRV-SARS-CoV-2ワクチンを作製する可能性を探究した(31)。SARS CoV-2 Sタンパク質のドメインを発現する、ウエルで成長させ遺伝子的に安定した組換えRVが作製され、これらのウイルスのNSP3産物は、機能的であり、二量体化することが可能であり、細胞ポリ(A)結合タンパク質の核局在化を誘導することが可能である(31,32,40)。したがって、本発明者たちは、RV及びNoV感染の両方に対して免疫保護を誘導することができる混合RV-Novワクチンを作製するのに有効なベクターシステムとして、RVを開発した。
【0022】
ポリヌクレオチド
本開示の一態様では、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドが提供される。本発明者たちは、一部の実施形態において、ポリヌクレオチドがポジティブセンスウイルス転写物をコードし、細胞中に発現して、機能性遺伝子産物を生成し得ることを本明細書において開示する。したがって、一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーター、例えば、T3プロモーター(配列番号31)又はT7プロモーター(配列番号30)に作動可能に連結する。
【0023】
本明細書に使用されるとき、「作動可能に連結する」とは、2個以上の核酸(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、これは、転写調節エレメント(プロモーター)と転写配列との機能的関係を指す。例えば、プロモーターは、適切な細胞中のコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に作動可能に連結する。一般に、配列に作動可能に連結するプロモーター転写調節エレメントは、転写配列に物理的に近接している、すなわち、シス作用性である。しかし、一部の転写調節エレメント、例えばエンハンサーは、転写が高められるコード配列に物理的に近接する又は密接して配置される必要はない。例示的なプロモーターには、T7バクテリオファージプロモーター(配列番号14)及びT3バクテリオファージプロモーター(配列番号15)が挙げられる。好適なプロモーターは、当該技術に公知のプロモーターから選択され得る。一部の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞であり、MA-104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される。
【0024】
一部の実施形態において、RV NSP3タンパク質は、配列番号1である、又は配列番号1に少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性又は少なくとも約99%の同一性を有する配列である。
【0025】
一部の実施形態において、NSP3をコードする配列、例えば、配列番号9は、異種ポリヌクレオチドが、NSP3配列のインフレームのタンパク質又はペプチドをコードし、それによってNSP3及び異種ポリヌクレオチドの両方をコードする単一mRNAの転写を可能にするように、配列の3’末端に融合した異種ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態において、NSP3及び異種ポリヌクレオチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドは、切断部位をコードする配列を含む。一部の実施形態において、切断部位は、自己切断型ペプチド、例えば、ブタテッショウウイルス2Aエレメント(配列番号13)である。よって、一部の実施形態において、開示されている組成物は、ペプチド又はタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列のインフレームに融合している自己切断型ペプチドをコードする配列のインフレームに融合したNSP3をコードする、ポリヌクレオチドを5’から3’まで含む。したがって、そのような組成物の転写及び翻訳は、細胞中に、異種ポリヌクレオチドによりコードされたペプチド又はタンパク質に融合している自己切断型ペプチド、例えば配列番号13に融合したRV NSP3タンパク質のNからC末端まで含む融合タンパク質の産生をもたらし、翻訳後に、融合タンパク質の自己切断は、2つの別個のタンパク質(1)機能性RV NSP3タンパク質及び(2)異種ポリヌクレオチドにコードされたタンパク質又はペプチドをもたらす。一部の実施形態において、組成物は、NSP3タンパク質をコードする配列の3’及びインフレームに配置され、切断部位の5’に配置されたリンカー、例えば、可動性リンカーをコードする配列をコードする配列をさらに含む。あらゆる理論又は機構に限定されることなく、本発明者たちは、NSP3タンパク質と切断部位との間に可動性リンカーを付加することが切断を改善すると考える。一部の実施形態において、リンカーは、(GAG)nリンカー(GAGリンカーとも称される)であり、ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上である、又は(GSG)nリンカー(GSGリンカーとも称される)であり、ここでn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上である。
【0026】
一部の実施形態において、切断部位をコードする配列は、プロテアーゼ切断部位、例えばトロンビン切断部位、例えば配列番号12をコードする。
【0027】
一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの担体部分をコードする配列を含む。一部の実施形態において、担体部分は、分泌ペプチド、例えば、インターロイキン2分泌タンパク質、SARS CoV-2 S1分泌タンパク質、又は細胞表面受容体のリガンド、例えば、免疫グロブリンIgG、胎児受容体FcRnである。
【0028】
本発明者たちは、上記に記載された異種ポリヌクレオチド配列が感染性生物体、例えば、NoV又はSARS-CoV-2に由来するタンパク質又はペプチドをコードする配列を含むことをさらに企図する。したがって、一部の実施形態において、開示されている組成物は、NoVタンパク質又はペプチド、例えば、NoVをコードする異種ポリヌクレオチドのインフレームに融合した、RV NSP3をコードする配列を含む。
【0029】
一部の実施形態において、NoV VP1タンパク質は、配列番号24又は26から選択されるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、NoV VP1をコードし、配列番号25を含む。一部の実施形態において、ノロウイルスタンパク質は、配列番号24又は26及び80~84から選択される。
【0030】
本発明者たちは、例示的なロタウイルスNSP3ノロウイルス融合タンパク質を本明細書にさらに開示する。したがって、本開示の別の態様では、さらなるポリヌクレオチドが提供される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2~11から選択されるタンパク質をコードする、又は配列番号2~11から選択される配列に少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性又は少なくとも約99%の同一性を有する配列をコードする。
【0031】
一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13~22を含む、又は配列番号13~22のいずれか1つに少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性又は少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む。
【0032】
感染性粒子
本開示の別の態様では、感染性粒子が提供される。一部の実施形態において、感染性粒子は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列、及び異種ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、感染性粒子は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞に導入することによって作製される。
【0033】
本明細書に使用されるとき、「感染性粒子」とは、生物体又は細胞に感染を引き起こすことができる任意の粒子を指す。例示的な感染性粒子には、ウイルス粒子、ビリオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ウイルス」、「ウイルス粒子」及び「ビリオン」は、本明細書において交換可能に使用され得る。
【0034】
一部の実施形態において、感染性粒子はRV、例えば、RV株SA11である。
【0035】
限定されることを望むものではないが、本開示は、プロモーター、例えば、T7プロモーター(配列番号30)に作動可能に連結しているRVタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物を逆遺伝学的手法に用いて、組換えRV、例えば、組換えRV株RIX4414を生成することができる。よって、一部の実施形態において、組換えRVは、本開示の組成物を含んでもよい。
【0036】
一部の実施形態において、細胞は、BHK-1細胞、MA104細胞及びベロ細胞から選択される。一部の実施形態において、細胞は、T7ポリメラーゼを発現するBHK-1細胞であり、BHK-T7細胞としても公知である。
【0037】
医薬組成物
本発明者たちは、対象への投与に好適であり得る組換えロタウイルス(RV)を作製するのに有用な組成物、方法及びシステムを本明細書に開示する。したがって、本開示の別の態様では、医薬組成物が提供される。一部の実施形態において、医薬組成物は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、組換えRV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞にトランスフェクトすることによって作製される感染性粒子を含む。
【0038】
本明細書に開示されている組成物及び方法を医薬組成物として投与してよく、したがって、化合物を組み込んだ医薬組成物は、本明細書に開示されている組成物の実施形態であると考慮される。そのような組成物は、薬学的に許容される任意の物理的形態を取ってよく、例証的には、これらは経口投与用医薬組成物であり得る。そのような医薬組成物は、本開示の組成物の有効量を含有し、有効量とは、投与される組成物の1日用量に関する。各投与量単位は、所定の組成物の1日用量を含有してよい、又は各投与量単位は、1日用量の分数、例えば、用量の二分の一又は三分の一を含有してよい。各投与量単位に含有される各組成物の量は、療法に選択される特定の組成物の素性及び他の要因、例えば、これが与えられる適応症に部分的に依存し得る。本明細書に開示されている医薬組成物は、周知の手順を用いて患者に投与した後、活性成分の急速な、持続性の又は遅延性の放出を提供するように処方され得る。
【0039】
医薬組成物は、免疫応答を誘発する又は病原体、例えば、RV、NoV、SARS-CoV-2に対して予防接種する方法に利用され得る。本明細書に開示されるとき、用語「処置」又は「処置すること」は、言及された疾患又は障害について、症状を軽減すること、もたらされた症状の原因を一時的若しくは永続的に排除すること、及び/又はもたらされた症状の出現を予防若しくは緩徐すること、若しくは進行若しくは重症度を逆転することを、それぞれ意味する。このように、本明細書に開示されている方法は、治療的及び予防的投与の両方を包含する。例として、対象には、病原体、例えば、RV、NoVに感染するリスクがあり得、本開示の医薬組成物の投与は、病原体に対して保護的免疫応答を誘発する又は予防接種する。
【0040】
本明細書に使用されるとき、用語「有効量」とは、対象への単回又は多回用量の投与の際に、診断又は処置を受けている対象に所望の効果を提供する組成物の量又は用量を指す。開示されている方法は、病原体、例えば、RV、NoV、SARS-CoV-2に対して免疫応答を誘発する、又は病原体に対して予防接種するための有効量の本開示の組成物(例えば、医薬組成物中に存在する)を投与することを含んでよい。
【0041】
有効量は、公知の技術の使用によって及び類似の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者として担当診断医が容易に決定することができる。投与される組成物の有効量又は用量の決定には、多数の要因が担当診断医により考慮され、例えば、対象の種;大きさ、年齢及び一般的な健康;関与する疾患若しくは障害の関与程度又は重症度;個別の対象の応答;投与される特定の組成物;投与様式;投与される調合剤の生物学的利用性(bioavailability characteristics);選択される用量レジメン:併用投薬の使用;並びに他の関連する状況であり得る。
【0042】
経口投与は、本明細書に開示されている組成物及び方法の例証的投与経路である。他の例証的投与経路には、経皮(transdermmal)、経皮(percutaneous)、静脈内、筋肉内、鼻腔内、頬側、鞘内、脳内又は直腸内経路が挙げられる。投与経路は、どのようにも変わってよく、用いられる化合物の物理的特性、並びに対象及び介護者の利便性によって制限され得る。
【0043】
当業者が理解するように、好適な製剤には、2つ以上の投与経路に好適なものが挙げられる。例えば、製剤は、鞘内及び脳内投与の両方に好適なものであり得る。あるいは、好適な製剤には、1つの投与経路のみに好適であるもの、並びに1つ以上の投与経路に好適であるが、1つ以上の他の投与経路に好適ではないものが挙げられる。例えば、製剤は、経口、経皮(transdermmal)、経皮(percutaneous)、静脈内、筋肉内、鼻腔内、頬側及び/又は鞘内投与に好適であるが、脳内経路には好適ではないものであり得る。
【0044】
医薬組成物の内部成分及び処方の方法は慣用的なものである。薬学に使用される通常の処方の方法が、本明細書に使用され得る。全ての通常のタイプの組成物を使用してよく、錠剤、咀嚼錠、カプセル剤、液剤、非経口用液剤、鼻腔内噴霧剤又は散剤、トローチ剤、坐剤、経皮パッチ剤及び懸濁剤が挙げられる。一般に組成物は、所望の用量及び使用される組成物のタイプに応じて、合計で約0.5%~約50%の化合物を含有する。しかし、化合物の量は、「有効量」として、すなわち、所望の用量を、そのような処置を必要とする患者に提供する化合物の量として最適に定義される。本明細書に開示されている組成物及び方法に用いられる化合物の活性は、組成物の性質に大きく依存しているとは考えられず、したがって、組成物は、主に又は単に利便性及び経済性のために選択及び処方され得る。
【0045】
カプセル剤は、化合物を好適な希釈剤と混合し、適切な量の混合物をカプセルに充填することにって調製される。通常の希釈剤には、不活性な粉末物質(例えば、デンプン)、粉末セルロース(とりわけ、結晶性セルロース及び微晶性セルロース)、糖(例えば、フルクトース、マンニトール及びスクロース)、穀物粉及び同様の食用粉末が挙げられる。
【0046】
錠剤は、直接圧縮、湿式造粒又は乾式造粒により調製される。これらの製剤は、希釈剤、結合剤、滑沢剤及び崩壊剤を通常(化合物の他に)組み込む。典型的な希釈剤には、例えば、様々なタイプのデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸又は硫酸カルシウム、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)及び粉糖が挙げられる。粉末セルロース誘導体も使用され得る。典型的な錠剤結合剤には、デンプン、ゼラチンなどの物質、及び糖(例えば、ラクトース、フルクトース、グルコースなど)が挙げられる。天然及び合成ゴムを使用することもでき、アカシア、アルギン酸塩、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。ポリエチレングリコール、エチルセルロース及びワックスも結合剤として機能することができる。
【0047】
錠剤には、例えば、風味増強剤及び封止剤として糖がコーティングされ得る。化合物は、また、大量の美味物質、例えばマンニトールを製剤に使用することによって咀嚼錠として処方されてもよい。即時溶解錠剤様製剤を、例えば、患者が剤形を消費するのを確実にするために及び一部の患者が固形物の嚥下の際に経験する困難さを回避するために用いることもできる。
【0048】
滑沢剤を錠剤処方に使用して、錠剤及びパンチがダイに固着するのを防止することができる。滑沢剤は、タルクなどの滑りやすい固体、ステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、ステアリン酸、並びに水素化植物油から選択され得る。
【0049】
錠剤は崩壊剤を含有することもできる。崩壊剤は、湿潤すると膨張して錠剤を分解し、化合物を放出する物質である。これらには、デンプン、粘土、セルロース、アルギン及びガムが挙げられる。さらなる例証として、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、木材セルロース、粉末天然海綿、カチオン交換性樹脂、アルギン酸、グアーガム、柑橘パルプ、ラウリル硫酸ナトリウム、並びにカルボキシメチルセルロースを使用することができる。
【0050】
組成物は、例えば、活性成分を胃の強い酸分から保護するため、腸溶性製剤として処方され得る。そのような製剤は、酸性雰囲気で不溶性であり、塩基性環境で可溶性であるフィルム又はポリマーにより、固体剤形をコーティングすることによって作り出すことができる。例証的なフィルムには、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートが挙げられる。
【0051】
経皮(transdermal)パッチ剤を化合物の送達に使用することもできる。経皮パッチ剤は、化合物が溶解又は部分的に溶解される樹脂性組成物、及び組成物を保護し、樹脂性組成物と皮膚との接触を保持するフィルムを含むことができる。薬剤が浸透圧作用により押し出される複数の孔があけられている膜を有するものなど、他のより複雑なパッチ組成物を使用することもできる。
【0052】
また当業者が理解するように、製剤は、製剤をヒトへの投与に好適にするような特性(例えば、純度)を有する材料(例えば、活性賦形剤、担体(例えば、シクロデキストリン)、希釈剤など)により調製され得る。あるいは、製剤は、製剤を非ヒト対象への投与に好適であるが、ヒトへの投与に好適ではないようにする純度及び/又は他の特性を有する材料によって調製され得る。
【0053】
組換えロタウイルス(RV)を生成する方法
本発明者たちは、追加の異種タンパク質、例えばNoVタンパク質に融合したNSP3をコードするポリヌクレオチドを導入することにより、SA11背景で逆遺伝学的システムを使用して組換えRVを生成した。したがって、本開示の別の態様では、RVをインビトロで生成する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを細胞に導入すること、細胞がポリヌクレオチドを発現することを可能にすること、細胞を十分な時間にわたってインキュベートして、RVを産生させること、及び細胞により産生されたウイルスを採取して、RVをインビトロで生成することを含む。コンピテントRVの生成に成功するためには、11個のRVゲノムセグメントのそれぞれが細胞において発現しなければならない。したがって、一部の実施形態において、本方法は、可能にするステップの前に、1つ以上の追加のポリヌクレオチドを細胞に導入することをさらに含み、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含み、RVタンパク質をコードするそれぞれの配列は、プロモーターに作動可能に連結している。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5から選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP4及びNSP5からそれぞれ選択される、RVタンパク質をコードする配列を含む10個の別個のポリヌクレオチドである。よって、一部の実施形態において、本方法は、一部の実施形態において、別個のポリヌクレオチドでそれぞれコードされている11個のロタウイルスタンパク質のそれぞれをコードする配列を含むポリヌクレオチドを導入することを含む。一部の実施形態において、1つ以上の追加のポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結しているキャッピング酵素をコードする配列を含む。一部の実施形態において、キャッピング酵素は、アフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素(配列番号27でコードされている)である。
【0054】
細胞
本発明者たちは、開示されているポリヌクレオチドを含み、開示されている方法及びシステムに使用することもできる細胞を本明細書に開示する。したがって、本開示の別の態様では、細胞が提供される。一部の実施形態において、細胞は、組換えRV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、細胞は、MA104細胞、ベロ細胞及びBHK-1細胞から選択される。
【0055】
RVワクチン株は、伝統的にはベロ細胞を使用して生育される。このRVを産生する方法は、対象に投与するためのRVの生成に好適であることが見出されている。したがって、一部の実施形態において、細胞はベロ細胞である。
【0056】
一部の実施形態において、本明細書に開示されている細胞は、異種RNAポリメラーゼをさらに含み、異種RNAポリメラーゼは、開示されている組成物中でプロモーターと結合し、ポリヌクレオチドが細胞内に導入されたときに、ポリヌクレオチドに基づいて配列依存性RNA重合を触媒する。本明細書に使用されるとき、「異種RNAポリメラーゼ」とは、分子生物学的技術を介して、例えば、形質導入、トランスフェクション、リポフェクションなどを介して細胞に導入されるRNAポリメラーゼを指す。一部の実施形態において、異種RNAポリメラーゼは、T7バクテリオファージRNAポリメラーゼ又はT3バクテリオファージRNAポリメラーゼを含み、これらはそれぞれ単にT7ポリメラーゼ及びT3ポリメラーゼとしてより一般的に公知である。
【0057】
したがって、一部の実施形態において、細胞は、T7 RNAポリメラーゼ又はT3 RNAポリメラーゼをさらに含む。一部の実施形態において、そのような細胞は、例えばBHK-T7細胞と称され、それは、これらがBHK-1細胞に由来するが、異種RNAポリメラーゼT7バクテリオファージRNAポリメラーゼを発現するからである。よって、本明細書に使用されるとき、「BHK-T7細胞」とは、異種RNAポリメラーゼT7バクテリオファージRNAポリメラーゼを発現するBHK-1細胞である。
【0058】
免疫応答を誘発する方法
本開示は、対象に投与されたときに、抗原が由来する病原体による自然感染に対して保護的であり得る異種抗原を含み得る感染性粒子を含む、医薬組成物を提供する。したがって、本開示の別の態様では、1つ以上の病原体に対して免疫応答を誘発する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含む医薬組成物を対象に投与して、1つ以上の病原体に対して免疫応答を誘発することを含む。
【0059】
一部の実施形態において、本方法は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトすることによって作製される感染性粒子を含む、医薬組成物を対象に投与して、1つ以上の病原体に対して免疫応答を誘発することを含む。
【0060】
本明細書に使用されるとき、「免疫応答を誘発する」とは、投与に応答した自然若しくは適応免疫細胞の活性レベル又は数の増加である、炎症反応の生成を指す。免疫応答の誘発は、また、対象における投与された抗原に対するホルモン免疫の増加として測定することもできる。自然/適応細胞の活性化及び数の増加、及び/又は抗原に対するホルモン免疫の増加の両方を測定する好適なアッセイは、当該技術に公知である。例えば、細胞免疫は、例えば、フローサイトメトリーにより対象における活性化T細胞の増加数によって測定され得る。ホルモン免疫応答の誘発は、対象に投与される抗原に結合する抗体によって測定してよく、多数の方法が当該技術において公知である。
【0061】
対象に予防接種する方法
本開示の別の態様では、1つ以上の病原体に対して対象に予防接種する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、ロタウイルス(RV)NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む感染性粒子を含む、医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態において、本方法は、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを、細胞にトランスフェクトすることによって作製される感染性粒子を含む、医薬組成物を投与することを含む。
【0062】
本明細書に使用されるとき、「予防接種する」又は「予防接種」とは、病原体に由来する抗原を対象に投与して、対象中で抗原に対する免疫応答を刺激し、それによって、対象が病原体に感染するような、病原体に対するある程度のレベルの免疫を提供することを含む。よって、予防接種は、予防接種を受けた対象において病原体による感染の徴候若しくは症状を低減し得る、又は中和免疫を提供し、対象における病原体の感染を予防し得る。
【0063】
組換えロタウイルス(RV)を生成するためのシステム、プラットフォーム及びキット
本開示の別の態様では、組換えRVを生成するためのシステム、プラットフォーム及びキットが提供される。一部の実施形態において、システム、プラットフォーム又はキットは、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、並びにポリヌクレオチドを発現することができる細胞を含む。
【0064】
一部の実施形態において、本開示のキットは、RV NSP3タンパク質をコードする配列及び異種ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、並びにポリヌクレオチドを発現することができる細胞を含む。本発明者たちは、本開示のキットが、一部の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドを細胞に導入するために必要な追加の試薬、例えば、トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、形質導入などのための試薬を含有してよいことを想定する。したがって、一部の実施形態において、本開示のキットは、例えば、本開示の方法に従って組換えロタウイルスをインビトロで生成するための試薬を含む。
【0065】
例証的な実施形態
1.RV及び1.3kbpまでの外来性配列の挿入を含む組換えRVであって、1.3bpの挿入を担持するRVが遺伝子的に安定している、組換えRV。
【0066】
2.RVがRIX4414である、実施形態1に記載の組換えRV。
【0067】
3.挿入が、NoV、SARS-CoV-2、アストロウイルス、エンテロウイルス及びE型肝炎からなる群から選択される非RVウイルスの少なくとも1つの抗原をコードする、実施形態1又は2に記載の組換えRV。
【0068】
4.挿入が少なくとも1つの担体部分をさらにコードする、実施形態1~3のいずれかに記載の組換えRV。
【0069】
5.少なくとも1つの担体部分が、分泌ペプチド(例えば、インターロイキン2分泌タンパク質、SARS CoV-2 S1分泌タンパク質)、又は細胞表面受容体のリガンド、免疫グロブリンIgG、胎児受容体FcRn)である、実施形態4に記載の組換えRV。
【0070】
6.挿入がSARS-CoV-2 S1タンパク質をコードする、実施形態1~5のいずれかに記載の組換えRV。
【0071】
7.挿入がNoVカプシドタンパク質をコードする、実施形態1~6のいずれかに記載の組換えRV。
【0072】
8.実施形態1~7のいずれか一項に記載の組換えRVを含む、ワクチン。
【0073】
9.ワクチンが小児に使用するためのものである、実施形態8に記載のワクチン。
【0074】
10.ワクチンが、組換えRVを安定化する少なくとも1つの化合物をさらに含む、実施形態8~9のいずれかに記載のワクチン。
【0075】
11.RV及びグリコシル化外因性カプシドタンパク質をコードする配列を含み、配列がセグメント7 RNAに挿入されている、組換えRV。
【0076】
12.RVがrSA11である、実施形態11に記載の組換えRV。
【0077】
13.外因性コード化グリコシル化タンパク質がSARS-CoV-2 S1である、実施形態11~12に記載の組換えRV。
【0078】
14.外因性コード化タンパク質配列がC末端1x-FLAGタグを含んだ、実施形態11~13に記載の組換えRV。
【0079】
15.以下のうちの少なくとも1つ:薬学的に許容される賦形剤、安定剤及び又は担体をさらに含む、実施形態11~14に記載の組換えRV。
【0080】
16.アジュバントをさらに含む、実施形態15に記載の組換えRVを含む組成物。
【0081】
17.アジュバントが、CpGなどの免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ポリアクリル酸ポリマー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、ステロール、サポニン、モノホスホリル脂質A若しくはその類似体、第四級アミン、水酸化アルミニウムゲルなどの水酸化アルミニウム組成物、又はこれらの組合せである、実施形態16に記載の組成物。
【0082】
18.組成物が、組換えRVを安定化する少なくとも1つの化合物を含む、実施形態15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【0083】
19.実施形態15~19に記載のいずれかの組成物を投与することを含む、対象を処置するための方法。
【0084】
20.対象に実施形態15~18のいずれか一項に記載の組成物が少なくとも4週間の間隔を置いて少なくとも2回投与される、実施形態19に記載の方法。
【0085】
21.実施形態1~14のいずれか一項に記載の組換えRVを含む、細胞。
【0086】
22.宿主細胞が、組換えRVでコードされたグリコシル化タンパク質を発現する、実施形態21に記載の細胞。
【実施例】
【0087】
実施例1-ノロウイルスタンパク質を発現する組換えロタウイルス
材料及び方法
細胞培養
サル胚腎臓(MA104)細胞を、5%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で成長させた(41)。T7 RNAポリメラーゼを構成的に発現するベビーハムスター腎臓細胞(BHK-T7)は、Dr.Ulla Buchholz、Laboratory of Infectious Diseases、NIAID、NIHから提供され、5%熱不活性化FBS、10%トリプトン-ペプチドブロス、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、2%非必須アミノ酸及び1%グルタミンを含有するグラスゴー最小必須培地(GMEM)に繁殖させた(42)。BHK-T7細胞は、2%Geneticin(Invitrogen)を一継代おきに補充した培地に成長させた。
【0088】
プラスミドの構築
組換えrSA11は、プラスミドのpT7/VP1SA11、pT7/VP2SA11、pT7/VP3SA11、pT7/VP4SA11、pT7/VP6SA11、pT7/VP7SA11、pT7/NSP1SA11、pT7/NSP2SA11、pT7/NSP3SA11、pT7/NSP4SA11及びpT7/NSP5SA11[https://www.addgene.org/Takeshi_Kobayashi/](36)、並びにpCMV/NP868R(33)を使用して調製した。プラスミドのpT7/NSP3-P2A-fUnaGは、P2A-3xFL-UnaGのORFを含有するDNA断片を、Takara In-Fusionクローニングキットを使用して、pT7/NSP3SA11のNSP3 ORFの3’末端に融合することによって産生した(32)。NoV GII.4 MD145-12株(GenBank:AY032605.1)のVP1ゲノムセグメントの完全長cDNAを含有するプラスミド(pUC57/MDA145_VP1)は、Genewizから購入した。プラスミドのpT7/NSP3-P2A-fP2、pT7/NSP3-P2A-fP、pT7/NSP3-P2A-fVP1は、pT7/NSP3-P2A-fUnaGのUnaG ORFを、In-Fusionクローニングにより、NoV VP1カプシドタンパク質のP2、P及びVP1領域のORFにそれぞれ置き換えることによって作製した。プラスミドの主鎖は、プライマーペア:Vector_For及びVector_Revを用いて、pT7/NSP3-P2A-fUnaGのPCR増幅によって生成した(表1)。P2、P及びVP1コード配列を含有するDNA断片は、プライマーペアのfP2_For及びfP2_Rev、fP_For及びfP_Rev、fVP1_For及びfVP1_Revをそれぞれ使用して、pUC57/MDA145_VP1から増幅した(表1)。プラズマのpT7/NSP3-P2A-VP1f、pT7/NSP3-P2A-P-His、pT7/NSP3-P2A-VP1-His、pT7/NSP3-P2A-VP1-Th-Hisを同様に作製した。プラスミドの主鎖は、プライマーペア:Vector P2A_For及びVector P2A_Revを用いて、pT7/NSP3-P2A-fUnaGを増幅することによって生成した(表1)。C末端FLAGを有するVP1、又はP、又はC末端Hisタグを有するVP1を含有するDNA断片は、プライマーペアのVP1-fFor及びVP1-fRev、P-His_For及びP-His_Rev、VP1-ThHis_For及びVP1-ThHis_Rev、VP1-His_For及びVP1-His_Revをそれぞれ用いて、pUC57/MDA145_VP1のPCR増幅によって生成した(表1)。T7転写プロモーターの制御下でRIX/NSP3-P2A-P-His挿入を含有するpuc19プラスミド(puc19/T7/RIX/NSP3-P2A-P-His)は、Bio Basic Canada Inc.から購入した。トランスフェクション品質プラスミドは、商業的に調製された(www.plasmid.com)又はQiagenプラスミド精製キットを使用して調製された。プライマーは、EuroFins Scientificにより提供及び配列決定された。
【0089】
組換えウイルス
組換えRVを生成するために使用された逆遺伝学的プロトコールは、上記に詳細に記載された。簡潔には、12ウエルプレートのBHK-T7細胞単層を、Mirus TransIT-LT1トランスフェクション試薬を使用してSA11 pT7プラスミド及びpCMV-NP868Rでトランスフェクトした。トランスフェクション混合物は、3倍高いレベルで使用されたpT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11を除いて、11pT7プラスミドのそれぞれの0.8ugを含有する。トランスフェクションした2日後、BHK-T7細胞にMA104細胞を追い播きし、培地のトリプシンを最終濃度の0.5ug/mlに調整した。3日後、BHK-T7/MA104細胞混合物を3回凍結解凍し、溶解産物を低速遠心分離(800×g、5分間)で清澄にした。清澄溶解産物中の組換えウイルスを、MA104単層で1回の継代によって増幅し、プラーク精製により回収した。ウイルスdsRNAを、TRIzol抽出により感染細胞溶解産物から回収し、Trisグリシン緩衝液中10%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分割し、臭化エチジウムにより染色して検出し、BioRad ChemiDoc MP Imaging Systemを使用して可視化した。
【0090】
プラークアッセイ
RVプラークアッセイを先に記載されたように実施した。プラークを可視化するため、アガロースオーバーレイを有する細胞単層を、3.7%ホルムアルデヒドを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)と共に一晩インキュベートした。その後、アガロースオーバーレイを取り除き、単層を、5%エタノールに溶解した1%結晶バイオレットの溶液で3時間染色した。次いで、単層を水ですすぎ、空気乾燥した。プラーク画像を、Bio-Rad ChemiDoc Imaging Systemを使用して捕捉し、直径を、ImageJソフトウエアを使用して測定し、結果をGraphPad Prismバージョン8により解析した。プラークサイズの差の統計的有意性を、独立スチューデントt検定を使用して決定し、95%信頼区間を含めた。
【0091】
免疫ブロット解析
MA104細胞を、モック感染させ又は組換えRVの1細胞あたり5プラーク形成単位(PFU)で感染させ、9h.p.iで採取した。細胞を冷PBSで洗浄し、遠心分離(5000×g、10分間)でペレット化し、未変性溶解緩衝液(300mM NaCl、100mM Tris-HCl、pH7.4、2%Triton X-100及び1×EDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル[Roche Complete])中において氷上で30分間インキュベートすることより溶解した。免疫ブロットアッセイでは、溶解産物を10%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜に移した。5%脱脂粉乳を含有するPBSでブロックした後、ブロットを、マウスモノクローナルFLAG M2(F1804、Sigma、1:2000)、マウスモノクローナル抗6xHis抗体(MCA1396GA、Bio-Rad、1:1000)、マウス2A抗体(NBP2-59627、Novus、1:1000)、モルモットポリクローナルNSP3(Lot 55068、1:2000)、VP6(Lot 53963、1:2000)抗血清又はウサギモノクローナルB-アクチン(8457S、Cell Signaling Technology(CST)、1:1000)抗体でプローブした。一次抗体を、2.5%脱脂粉乳中のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(ヤギ抗マウスIgG(CST)、ヤギ抗モルモットIgG(KPL)若しくはヤギ抗ウサギIgG(CST)又はAlexa Fluor結合抗体(ヤギ抗マウスAlexa647抗体(CST)の1:10,000希釈を使用して検出した。HRPシグナルは、Clarity Western ECL Substrate(Bio-Rad)を使用して発生させ、Bio-Rad ChemiDoc Imaging Systemを使用して検出し、 一方でAlexa Fluorシグナルは、Bio-Rad ChemiDoc Imaging Systemを使用して直接可視化した。
【0092】
rSA11ウイルスにより発現されたNoVタンパク質の二量体化能力を評価するため、細胞溶解産物を、最終濃度の1.5%ドデシル硫酸ナトリウム及び3%β-メルカプトエタノールに調整し、25℃又は95℃で10分間インキュベートした。その後、試料中のタンパク質を10%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分離させ、免疫ブロットアッセイにより検出した。
【0093】
免疫沈降アッセイ
全細胞溶解産物(WCL)を、上記に記載されたように、モック感染させた又はrSA11ウイルスを感染させた9時間p.i.にMA1単層から調製した。ウサギ抗NoV GII.4モノクローナル抗体[NVB43.9](Ab00269-23.0、Absolute Antibody、最終希釈の1:150)又はNSP2マウスポリクローナル抗体(Lot 171、最終希釈の1:200)を、細胞溶解産物に添加した。穏やかに揺動しながら4℃で18時間インキュベートした後、抗原-抗体複合体を、Pierce磁気IgA/IgGビーズ(ThermoScientific)を使用して回収し、ゲル電気泳動により分離させ、ニトロセルロース膜にブロットした。ブロットを、抗FLAG抗体(1:2000)又は抗6xHis抗体(1:1000)によりプローブして、FLAGタグ付き又はHisタグ付きVP1タンパク質を検出し、NSP2抗体(Lot#516、1:2000)によりプローブしてNSP2タンパク質を検出した。
【0094】
rSA11ウイルスの遺伝子安定性
ウイルスを、無血清DMEM培地で調製された感染細胞溶解産物の1:1000、1:100又は1:10希釈を使用してMA104細胞単層において5回連続継代した。細胞を、細胞変性効果が完了に達した(4~5日間)ときに、培地中で3回凍結解凍し、溶解産物を、低速遠心分離により清澄にした。二本鎖RNA(dsRNA)を、TRIzol抽出により清澄溶解産物から回収した。精製dsRNAを10%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分離させ、dsRNAのバンドを臭化エチジウム染色により検出した。
【0095】
不安定なバリアントの単離及びシーケンシング
個別のrSA11バリアントを、プラーク単離により連続継代ウイルスのプールから回収した(41)。バリアントをMA104細胞における1回の継代で増幅し、これらのゲノムdsRNAをTrizol抽出により回収した。試料中の完全長ゲノムセグメント7 RNAを、Platinum Taq DNAポリメラーゼを用いるSuperscript III One-Step RT-PCR System(Invitrogen)を同様に使用して、セグメント特異的プライマーペアのNSP3_5’UTR 5’GGCATTTAATGCTTTTCAGTG3’(配列番号1)及びNSP3_3’UTR 5’GGCCACATAACGCCCCTATAG3’(配列番号2)により増幅し、NSP3 ORFのC末端から3’UTR領域までの短い断片を、プライマーペアのNSP3 C末端F 5’CATTGCACGCTTTTGATGACTTAG3’(配列番号3)及びNSP3_3’UTR 5’GGCCACATAACGCCCCTATAG3’(配列番号4)により増幅した。増幅されたPCR産物をTris酢酸EDTA緩衝液中0.8%アガロースゲルの電気泳動により分離させ、産物をNucleospinゲル及びPCR Clean-up(Takara)を使用してゲル精製し、配列をEuroFins Scientificにより決定した。
【0096】
CsCl(塩化セシウム)勾配遠心分離
二重層粒子(DLP)の密度を上記のように決定した。簡潔には、10cm細胞培養プレート中のMA104細胞を1細胞あたり5PFUのrSA11ウイルスに感染させ12h.p.i.で採取した。細胞を1mlのPBS(リン酸緩衝食塩水)に掻き落とし、溶液を最終濃度の0.5%Triton X-100に調整することによって溶解させ、氷上で5分間インキュベートした。低速遠心分離して細胞片を除去した後、溶解産物を、10mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)に調整し、間欠的に混合しながら37℃で1時間インキュベートして、RVウイルスをDLPに変換した。CsClを試料に添加して、1.367g/cm3の密度にし、試料をBeckmann SW55Tiローターにおいて110,000×gにより8℃で22時間遠心分離した。ウイルスバンドを、倒立光源を使用して勾配で検出した。ウイルスバンドを含有する分画をマイクロピペットで回収し、これらのCsCl密度を、屈折計を使用して決定した。
【0097】
GenBankアクセッション番号
rSA11ウイルスのセグメント7配列は、GenBankに委託されている:wt.(LC178572)、NSP3-P2A-NoVfP2(MN190002)、NSP3-P2A-NoVfP(MN190003)、NSP3-P2A-NoVfVP1(MN190004)、NSP3-P2A-NoV VP1f(MN201548)、NSP3-P2A-NoV P-His(MN201549)、NSP3-P2A-NoV VP1-ThHis(MN201547)、NSP3-P2A-NoV VP1-His(MZ562305)、RIX/NSP3-P2A-NoV P-His(MZ643978)。表2も参照すること。
【0098】
結果
NoVカプシドタンパク質を発現する修飾ゲノムセグメント7
NoVカプシドタンパク質の領域の発現ベクターとしてRVを生成するため(
図1)、wt.NSP3 ORFを、GAG可動性リンカーに融合したNSP3 ORFをブタテッショウウイルス2Aエレメント(P2A)及びNoVカプシドタンパク質のコード配列と共に含むカセットに置き換えることによって、pT7/SA11ベクターのゲノムセグメント7を修飾した(
図2)。修飾ORFは、また、NoVタンパク質のN末端に3xFLAGタグ(f)又はC末端に1xFLAGタグ(f)のいずれかを含有した(
図2)。蛍光タンパク質及びSARS CoV-2スパイクタンパク質を発現するrSA11株の生成に使用される同じ部位において、NoV配列をpT7/NSP3プラスミドに挿入した。同様に、FLAGタグ付きNoV配列を、Th切断部位の挿入を伴って又は伴うことなく6xHisタグ付きNoV配列に置き換えることによって、6xHisタグ付きNoVタンパク質を発現するpT7 SA11 NSP3ベクターを生成した(
図2)。この手法は、NoVタンパク質のFLAG又は6xHisタグ付きコード配列を含有したpT7/SA11NSP3-2A-NoVベクターのセットであるP2(pT7 NSP3-2A-fP2)、P(pT7 NSP3-2A-fP又はpT7 NSP3-2A-PHis)、VP1(pT7 NSP3-2A-fVP1、pT7 NSP3-2A-VP1f、pT7 NSP3-2A-VP1-ThHis及びpT7 NSP3-2A-VP1 His)の発生をもたらした(
図2)。次に、発現プラットフォームとしてヒト株ゲノムセグメント7を生成する可能性を試験するため、現行の新生児RVワクチン株Rotarixのゲノムセグメント7(RIX NSP3)を修飾して、2Aペプチドの下流にNoV PHisタンパク質を発現させ、pUC 19/RIX NSP3-2A-P Hisを合成した。
【0099】
FLAGタグ付きNoVカプシドタンパク質を発現するrSA11ウイルスの回収及び特徴付け
RVゲノムセグメントの+mRNAをコードする11個のpT7プラスミドの完全セット及びアフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素(NP8688R)をコードするCMV発現ベクターをBHK-T7細胞にトランスフェクトすることによって、NoVカプシドタンパク質を発現する組換えSA11ウイルスを生成し、pT7/NSP3SA11を、上記に記載されたようにpT7/NSP3-2A-NoVベクターに置き換えた。トランスフェクトされたBHK-T7細胞に、トランスフェクションの2日後にMA104細胞を追い播きし、細胞混合物を3日後に凍結解凍し、組換えRVを、MA104細胞で成長させることによって回収した。rSA11単離物をプラーク精製し、特徴付ける前に大量に増幅した。rSA11ウイルスの特徴を表2に要約する。
【0100】
FLAGタグ付きNoVタンパク質を発現する修飾pT7 NSP3-2A-NoVベクターにより生成されたrSA11ウイルスは、RNAゲル電気泳動に基づいて、野生型ウイルス(rSA11/wt)より大きなセグメント7 dsRNAを含有した(
図3A)。配列解析は、rSA11ウイルスのセグメント7がpT7 NSP3-2A-NoVベクターとマッチしたことを示した。FLAGタグ付きNoV P2及びPをゲノムセグメント7に導入することは、サイズを1.7kbp及び2.1kbpにそれぞれ増加させ、サイズから予想されたように、RNAゲルにおいてRVゲノムセグメント4(2.4kbp)及び5(1.6kbp)の間で移動した(表2、
図3A)。同様に、1.7kbpのNoV VP1タンパク質配列を含有するウイルス単離物(NSP3-2A-fVP1及びNSP3-2A-VP1f)の再操作セグメント7は、2.9kbpの長さを有し、RVゲノムセグメント1の近くの遅い移動位置をもたらした。よって、2A-fVP1及びVP1-f配列をセグメント7ゲノムに挿入することは、総ゲノムサイズを20.3kbpに増加させ、これはwtウイルスのパッケージング能力を9.5%超えている。rSA11のセグメント7 RNAに以前に導入された最長外来性配列は、SARS CoV-2 S1タンパク質を発現するrSA11/NSP3-fS1の3.3kbpのセグメント7 dsRNAであった。
【0101】
プラーク解析は、rSA11/wtウイルスにより形成されたプラークがrSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-fVP1及び-VP1fウイルスにより形成されたプラークより大きかったことを示し(
図3B、
図3C)、以前の研究で報告されたデータと一致した。ウイルスピーク力価の定量化は、rSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-fVP1及び-VP1fウイルスがMA104細胞に類似の力価で成長し、0.5×10
7~2.6×10
7の範囲であったことを実証した(
図3D)。小さいプラーク表現型及び低い力価の正確な理由は不明であるが、ウイルス複製の際に修飾セグメント7 dsRNAを転写するウイルスRNAポリメラーゼがより長い伸長時間を必要とすることがおそらく原因であり得る、又は外来性タンパク質配列を含有するセグメント7 mRNAを翻訳するためにより長い時間が必要となり得る。あるいは、外来性配列を含有する大きく修飾されたdsRNA及びウイルス粒子の集合体をパッケージングすることに関連した複雑さを反映し得る。
【0102】
NoVタンパク質産物の発現を決定するため、MA104細胞をrSA11株に感染させ、全細胞溶解産物(WCL)を、FLAG抗体を使用して免疫ブロットアッセイにより検査した(
図3E)。FLAG抗体によりプローブされた免疫ブロットは、rSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-fVP1及び-VP1fウイルスが、修飾NSP3 ORFの機能性2Aエレメントの予測タンパク質サイズを有する主産物として、NoVタンパク質を生成したことを示した:-fP2(18.6kDa)、-fP(37.7kDa)、-fVP1(61.9kDa)及び-VP1f(60.1kDa)(表2及び
図3E)。抗NSP3抗体及び2Aエレメント抗体によるアッセイは、P2Aエレメントのレムナント残基(2kDa)に連結したNSP3(36kDa)に相当する、38kDaタンパク質を確認した。しかし、抗FLAG抗体により実施された免疫ブロットアッセイは、NSP3-2A-NoVタンパク質化カセットのリードスルー産物;NSP3-2A-fP2、NSP3-2A-fP及びNSP3-2A-fVP1を表す、小量の大型融合タンパク質を検出した(
図3E、赤色星印)。しかし、リードスルー産物は、rSA11/NSP3-2A-VP1fウイルスでは検出されず、2Aペプチドへの下流ORFの直接融合が2Aエレメントの有効な停止-開始活性をもたらすことを示唆した(
図3E)。
【0103】
C末端6xHisタグを含有するNoVカプシドタンパク質を発現するように修飾されたrSA11ウイルスの回収及び特徴付け
6xHisタグ付けNoV P及びVP1配列を発現するウイルスのゲノムセグメント7修飾は、これらの長さを2.1kbp及び2.8kbpに増加させた(
図4A)。上記に記述されたように、rSA11/NSP3-2A-PHis、-VP1 His及び-VP1 Th Hisのプラークサイズは、rSA11/wtウイルスより有意に小さかった(
図4B、
図4C)。rSA11/NSP3-2A-PHis、-VP1His、-fVP1 Th Hisウイルスのピークウイルス力価の解析は、これらがrSA11/wtより0.5~1logまで低い最大力価となったことを示した(
図4D)。
【0104】
抗6xHis抗体により実施された免疫ブロットアッセイは、rSA11/NSP3-2A-P His、-VP1 His、-fVP1 Th Hisウイルスが、機能性2Aエレメントに予測されるサイズを有するP産物(35.8kDa)及びVP1産物(60kDa)を生成したことを示した(
図4E及び表2)。一方、抗6xHis抗体によるプロービングは、これらのウイルスで大型融合リードスルー産物の存在を検出することができず、これは、おそらくNoV ORFが2Aエレメントの直後に挿入されたためである。FLAGタグ付きNoVタンパク質産物を発現するウイルスについて上記に記載された結果を反映すると、rSA11/NSP3-2A-PHis、-VP1 His、-fVP1 Th Hisウイルスの抗NSP3抗体及び2Aエレメント抗体によるアッセイは、38kDサイズのNSP3-2Aタンパク質を確認した(
図4E)。
【0105】
NoV Pタンパク質を発現するRotarixゲノムセグメント7を含有するrSA11ウイルスの生成
ヒトワクチンベクタープラットフォームを作製する可能性を試験するため、NoV Pタンパク質を発現するように修飾されたヒトワクチン株Rotarixゲノムセグメント7(RIX 4414)を含有する組換えSA11モノリアソータントウイルスを、上記の逆遺伝学的手法を使用して生成した。RIX NSP3-2A-PHisを含有するrSA11ウイルスを、MA104細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞)で成長させることによって回収し、単離物をプラーク精製し、表2に要約されたように特徴付けた。
【0106】
RNAゲル電気泳動(
図5A)に基づいて1kbの2A NoV PHis配列の導入及び追加の配列導入が総ゲノムサイズを19.6kbpに増加したので、rSA11/ RIX NSP3-2A-PHisは、rSA11/wt(1.1kbp)より大きなセグメント7 dsRNA(2.1kbp)を含有した(表2)。プラーク解析は、rSA11/ RIX NSP3-2A-PHisがrSA11/wtウイルスより小さなプラークを形成し(
図5B)、rSA11/wtより1log低いピーク力価となった(
図5C)ことを示した。
【0107】
修飾RIX NSP3セグメントからのNoV Pタンパク質の発現を決定するため、MA104細胞を、rSA11/RIX NSP3-2A-PHisウイルスの3つの単離プラークに感染させ、全細胞溶解産物を、抗6xHis抗体を使用して免疫ブロットアッセイにより検査した(
図5D)。免疫ブロットの結果は、rSA11/RIX NSP3-2A-PHisウイルスが、主産物として35.8kDaのNoV Pタンパク質及び副産物として74.2kDaリードスルー産物(赤色星印)を、修飾RIX NSP3 ORFから発現したことを示した(
図5D及び表2)。抗(SA11)NSP3抗体によるアッセイは、rSA11/wtのSA11 NSP3タンパク質のみを確認し(
図5D)、抗体は、RIX NSP3 ORFのNSP3産物と反応しなかった(
図5D)。RIX NSP3タンパク質に対する特異的な抗体を有さなかったので、RIX NSP3タンパク質の意図的な発現を試験するため、本発明者たちは同じブロットを2A抗体で再プローブし、2kDaの2Aペプチドに融合した38kDaのRIX NSP3タンパク質の頑強な発現を確認した(
図5D)。総体的に、これらの結果は、NoVなどの別の腸内ウイルスの免疫原性タンパク質を発現するように修飾されたSA11/RIX RVリアソータント株を生成することが可能であることを示している。
【0108】
rSA11ウイルスから発現してダイマーを形成するVP1タンパク質の自己集合
rSA11ウイルスから発現したNoVタンパク質産物が感染細胞中にダイマーを形成することができるか否かを決定するため、rSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-fVP1及び-VP1f感染細胞の溶解産物を未変性試料緩衝液により25℃で処理した。FLAG抗体による免疫ブロットアッセイは、NoV P2及びPタンパク質がダイマーを形成せず、一方、rSA11/NSP3-2A-fVP1及び-VP1f溶解産物のN末端及びC末端FLAGタグ付きVP1タンパク質(fVP1及びVP1f)の両方がVP1ダイマーとして移動したことを示し(
図6A、レーン10及び12)、Pドメインによるダイマー内相互作用により調節されたVP1ダイマー形成が、発現されたVP1タンパク質内で維持されていることを示唆した。同じ電気泳動条件下で、rSA11/wt、並びにrSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-fVP1及び-VP1fウイルスのNSP3及びVP6タンパク質の両方は、25℃で安定したダイマー及びトリマーを形成し(
図6A)、以前の報告と一致した。rSA11/NSP3-VP1 His及び-VP1 Th His感染細胞の溶解産物が抗6xHis抗体でプローブされたとき、VP1二量体化について同様の結果が、Hisタグ付きVP1タンパク質(VP1His及びVP1Th His)で観察された(
図6B)。上記に示された結果を反映すると、NSP3及びVP6タンパク質は、同じ電気泳動条件下で安定したダイマー及びトリマーを形成した(
図6B)。
【0109】
NoV VP1カプシドタンパク質の天然構造への折りたたみ
rSA11/NSP3-2A-VP1ウイルスから発現したVP1産物が天然構造に折りたたむか否かについての洞察を得るため、rSA11/NSP3-2A-fVP1及び-VP1f、-VP1Hisウイルスに感染させたMA104細胞から調製された溶解産物を、抗NoV VP1立体構造依存性中和モノクローナル抗体(NVB43.9、Absolute Antibody)を使用してプルダウンアッセイによりプローブした。
図7A(青色矢印)に示されているように、抗NoV GII.4 NVB43.9抗体はFLAG及びHisタグ付きNoV VP1タンパク質(fVP1及びVP1His)の両方を免疫沈降させ、rSA11ウイルスから発現したVP1タンパク質の少なくとも一部は、正確な立体構造に折りたたまれて、保護免疫応答を誘導することができる、NoV VP1タンパク質に見出される確証的な中和エピトープを含むことを示した。抗NoV GII.4抗体によるfVP1及びVP1Hisのプルダウンの成功と異なり、この抗体が、rSA11/NSP3-2A-VP1fのVP1f産物を同様に免疫沈殿するか否かは明らかではなかった。これらの結果は、VP1-fの1xFAGの低いシグナル強度、又は近くで移動している60kDaのVP1fを不明瞭にしている抗Nov GII.4抗体のIg/Hである重鎖に関係し得る(
図7A)。溶解産物を、NSP2特異的モノクローナル抗体を使用して同様に解析した(
図7B)。さらなる疑問は、免疫沈殿VP1タンパク質の低い収率が、抗NoV GII.4 NVB43.9抗体の低い親和性又は溶出条件のいずれかによるものであるか否かであった。この疑問に答えるために、WCL及びフロースルーにおけるVP1、NSP3及びVP6タンパク質の存在を、FLAG、NSP3及びVP6抗体でプローブすることによって解析した。結果は、VP1タンパク質の主分画がフロースルー中に残り、小量のVP1タンパク質のみが免疫沈降したことを示した(
図7A、下側パネル)。このことを、NSP2の免疫沈降試料のWCL及びフロースルー中のNSP2、NSP3及びVP6タンパク質の量を試験することによってさらに検証し、NSP2タンパク質の主要部分が成功裏に免疫沈降され、ビーズから回収されたことを示した(
図7B、下側パネル)。まとめると、この結果は、rSA11ウイルスから発現した少なくとも一部のVPIタンパク質が、正確な立体構造で折りたたまれたこと及びVP1免疫沈降物の低い収率が、抗NoV GII.4抗体の不十分な結合親和性のためであり得ることを示唆している。
【0110】
NoVタンパク質を発現するrSA11株の遺伝子安定性
NoVカプシドタンパク質を発現するrSA11ウイルスの遺伝子安定性を解析するため、FLAG及びHisタグ付きタンパク質の両方を発現するrSA11ウイルス(rSA11/NSP3-2A-fP2、-fP、-PHis、-fVP1及びVP1-His)を、3つの希釈(1:10、1:100又は1:1000)で5回の連続継代に付した。SA11/NSP3-2A-fP2、-fP及びfHisに感染させた細胞から回収したdsRNAのゲルの電気泳動は、5回の連続継代(P1~P5)において、修飾ゲノムセグメント7を含むゲノムセグメントのいずれのサイズにも変化を示さず、1.1kbpまでの外来性配列を担持するウイルスが遺伝子的に安定していたことを示し(
図8A)、前の研究と一致した。対照的に、rSA11/NSP3-2A-fVP1及び-VP1Hisの連続継代は、3つの希釈の全てにおいて遺伝子不安定性の証拠を示した(
図8B及び
図8C)。新たなゲノムセグメントが3回目の継代で出現し、これは元の修飾g7セグメントであるNSP3-2A-fVP1及び-VP1 Hisの2.9kbpのサイズより小さかった。後続の継代によって、ゲノムセグメント6の下方に移動したサイズが1.2kbpのバリアントセグメントが顕著になり、2.9kbpのセグメント7はP5生成によって検出されず、高継代ウイルスプールが、配列欠失を介した2.9kbpのセグメント7 RNAに由来するバリアントが優勢であったことを示唆した。内部配列欠失の可能性を試験するため、5個のバリアントをプラーク単離によりP5ウイルスプールから回収し、4個が大型(L)プラーク表現型を有し、1個が小型(S)プラーク表現型を有した。単離プラークから抽出されたdsRNAに実施されたゲル電気泳動は、元の2.9kbpのゲノムセグメント7 RNAを含有したものがないことを示した(
図8D、
図8E)。代わりに、NSP3-2A-fVP1 P5プールのL1~L4バリアントは、再編成(文字Rで示される)fVP1/R2セグメントを含有し、一方、S1バリアントは、-fVP1/R1及び-fVP1/R2セグメントの両方を含有した(
図8D)。同様に、rSA11/NSP3-2A-VP1His P5プールから単離されたdsRNAのRNAゲル電気泳動は、大型(L1、L3~5)及び小型(S1)プラーク溶解産物が単一のタイプの小さいバリアントセグメント、VP1 His/Rのみを含有することを示した(
図8E)。
【0111】
バリアントセグメントの配列解析は、-fVP1/R1及び-fVP1/R2が2.9kbpのセグメント7 RNA、NSP3-2A-fVP1に起源し、-VP1 His/Rが大型NSP3-2A-VP1 Hisセグメントによりもたらされたことを明らかにした(
図8F)。-fVP1/R1(1550bp)及び-fVP1/R2(1,263bp)バリアントセグメントは、セグメント7の完全5’-UTR及びNSP3 ORFを保持したが、3’-UTRに1.6kbpのNoV VP1コード配列及び原基7bpの配列欠失を有した。-fVP1/R1及び-fVP1/R2の配列整列は、R1がNSP3 ORFのC末端及び2Aペプチド配列から287塩基の重複を有したこと、及び-fVP1/R2が-fVP1/R1バリアント配列に起源し得ることを実証した(
図8F、表3)。同様に、-VP1 His/Rのシーケンシングは、dsRNAがセグメント7の完全な5’-UTR、NSP3 ORF及び3’-UTRを保持するが、NoV VP1コード配列の1.6kbp配列欠失を有することを示した(
図8F)。プラークアッセイにより、NSP3-2A-fVP1及びNSP3-2A-VP1HisのP5プールから単離された5個のバリアントの全てが小さいバリアントセグメントの-fVP1/R2及び-VP1 His/Rのそれぞれを含有するという事実は、小さいRNAを有するバリアントが、完全長の又は大きなゲノムセグメントを有するバリアントより有利に成長し得ることを示唆し(
図8D、
図8E)、前の報告と一致した。3個全てのバリアントがNoVコード配列の欠失を有したが、これらのバリアントは、NSP3の完全ORFを含有し、NSP3タンパク質がウイルス複製に必須であり得ることを示唆した。直接RNAシーケンシングによる全ての継代におけるウイルスRNAの全集団のさらなる解析は、長い外来性配列を担持する修飾ゲノムセグメント7(NSP3-2A-VP1)に導入された欠失の機構及び多様性についてのさらに良好な洞察を提供し得る。
【0112】
遺伝不安定性が原因の配列欠失は外来性配列の挿入に限定されない
遺伝子不安定性の潜在的なホットスポット領域及び性質についてのさらに良好な理解を得るため、rSA11/NSP3-2A-fVP1及び-VP1Hisウイルスを、低MOI(感染多重度)で大量に増幅した。抽出dsRNAのゲル電気泳動解析は、多様なバリアントプール(Vと示される)を確認し、これらは、異なるタイプの再編成ゲノムセグメント7を様々なサイズでrSA11/NSP3-2A-fVP1ウイルス(fVP1/V1~V4)及びrSA11/NSP3-2A-VP1 Hisウイルス(VP1 His/V5~V7)において含有した(
図9A、赤色及び青色矢印)。バリアントプールウイルス(fVP1/V1~V4及びVP1 His/V5~V7)に感染させたMA104細胞から調製された溶解産物に実施された免疫ブロットアッセイは、NSP3抗体でプローブした場合、2つ以上の形態のNSP3タンパク質を検出した。このことは、予想されたように、バリアントゲノムセグメントがwt.NSP3タンパク質に類似した小さいNSP3タンパク質を発現し、一方、NSP3-2A-VP1カセットを含有する元のゲノムセグメント7がNSP3-2Aタンパク質を発現したことを示唆している(
図9B)。時折、予想されたNSP3-2Aタンパク質サイズよりさらに大きい、いくつかの修飾NSP3タンパク質が存在し、これはおそらく、配列欠失後のNSP3-2AペプチドへのいくつかのVP1残基の融合によって引き起こされたと思われる(
図9B)。
【0113】
さらなる評価のため、4~5個のrSA11単離物を、上記のバリアントプールのそれぞれから回収し、特徴付けた。バリアントプールからのそれぞれのプラーク精製単離物(V1~V7)のセグメント7 dsRNAのシーケンシングは、rSA11/NSP3-2A-fVP1及び-VP1 Hisウイルスの2.9kbpのセグメント7 RNAに由来する再編成ゲノムセグメント(R)の出現を明らかにした(
図9C~
図9H)。fVP1/V1プールから生成されたR1、R2及びR3のRNAは、5’-UTR及びNSP3 ORFを保持したが、VP1コード配列の1.3(R1)、1.6(R2及びR3)kbpの配列欠失、並びに3’-UTRに7bp欠失又は9b重複のいずれかを含有した(
図9I)。興味深いことに、fVP1/V1プールからのR2単離物は、154bpの重複を示し、NSP3 ORFに存在する最後のいくつかのアミノ酸及び2Aペプチドの中間に挿入された2Aエレメントのいくつかの残基と同一であった(
図9C、
図9I及び表3)。バリアント2プールからのプラーク単離物は、一種類の再編成ゲノムセグメント7(fVP1/V3/R)のみを示した(
図9D)。fVP1/V3/Rセグメントは、完全5’-及び3’-UTR、並びにセグメント7のNSP3 ORFを含有し、3xFLAG配列全体を欠いていた。2A配列の一部も、VP1配列に沿って最後の40個の塩基を除いて全て欠損していた(
図9I)。対照的に、fVP1/V4プール及びVP1 His/V5プールから単離されたプラークのdsRNAのRNAゲル電気泳動は、様々なRセグメントを確認し、そのうちの1つ(VP1 His/V5/R3)は、rSA11/wt(1104bp)より小さなゲノムセグメント7(1038bp)を有した(
図9F、レーン2)。VP1 His/V5/R3の小さいサイズは、23bpのNSP3 ORF及び41bpの3’-UTR領域を含む挿入外来性配列の1.8kbpの大きな欠失によって生じた(
図9I及び表3)。同様に、VP1 His/V6/R単離物は、2A-VP1-His外来性配列全体の欠失を伴う、NSP3 ORFからの9bp及び3’-UTRからの6bpの欠失(
図9I)が原因で、小さなゲノムセグメント7(1087bp)を含有した(
図9G、レーン2~5)。さらに、VP1 His/V7プールから単離されたバリアントプラーク(VP1 His/V7/R)は、セグメント7の完全5’-及び3’-UTR、並びにNSP3 ORFを含有するが、NSP3配列の14bp重複及びVP1-Hisコード配列の1.7kbの欠失を含有する再構成ゲノムセグメント7を確認した(
図9H、
図9I)。まとめると、これらのシーケンシングの結果は、RV株は、NSP3 ORFの3’末端にある一部のヌクレオチド及び3’UTR領域に配置される最初のいくつかを失った場合であっても、依然として効率的に複製できることを示唆している(
図9F、レーン2及び9、
図9G、レーン2~5)。よって、NoV VP1などの大きな外来性配列を発現するように修飾されたrSA11株は、後続継代において遺伝子的に不安定になり、この不安定性は、挿入された外来性配列又はNSP3配列の欠失によって説明される。
【0114】
NoVカプシド配列を含有するrSA11ウイルス粒子の密度
修飾セグメント7からNoVカプシドタンパク質を発現するように再操作されたrSA11ウイルスは、SA11/wtよりサイズが0.5~2.1kbp大きい大型のウイルスゲノムを含有した。RNAゲル電気泳動は、rSA11/NSP3-2A修飾ウイルスが、効率的にパッケージングされ、11個のゲノムセグメント全ての完全な配置を含有することを示し(
図3A、4A及び5A)、コア内の追加の配列のパッケージングは、ウイルス粒子の密度を変化させるはずである。この可能性を探索するため、rSA11/wt(ゲノムサイズ:18.6kbp)、rSA11/NSP3-2A-fP2(19.1kbp)、rSA11/NSP3-2A-fP(19.6kbp)、rSA11/NSP3-2A-fVP1(20.3kbp)、rSA11/NSP3-2A-PHis(19.6kbp)及びrSA11/NSP3-2A-VP1 His(20.2kbp)を、MA104細胞単層で増幅させた。EDTAにより処理した後にRV三重層粒子を変換することによって、二重層粒子(DLP)を感染細胞溶解産物から調製した。DLPをCsCl勾配で平衡になるまで遠心分離し、DLPバンドの密度を屈折計の使用により決定した(
図10A、
図10B)。この解析は、rSA11/NSP3-2A-fP2 DLP(1.3831g/cm
3)、rSA11/NSP3-2A-fP DLP(1.3863g/cm
3)及びrSA11/NSP3-2A-fVP1 DLP(1.3885g/cm
3)の密度が、SA11/wt DLP(1.382g/cm
3)より大きいことを示した(
図10A)。同様に、rSA11/NSP3-2A-PHis(1.3852g/cm
3)及びrSA11/NSP3-2A-VP1His(1.3885g/cm
3)の密度は、SA11/wt DLP(1.38g/cm
3)より大きかった(
図10B)。ゲル電気泳動によりバンド形成されたDLPから抽出されたdsRNAの解析は、11個のゲノムセグメントの予想された配置を含有することを検証した(
図10C、
図10D)。しかし、rSA11/NSP3-2A-fVP1からバンド形成されたDLPは、2つのバンドをCsClで示し、これはおそらく、バンド形成されたDLPが、いくつかのバリアントを含む多様なウイルス単離物を含有するという事実によるものである(
図10A)。このことは、サイズが2.9kbp(黒色矢印)、1.55kbp及び1.3kbp(赤色矢印)の3つの種類のゲノムセグメント7を確認した、バンド形成-fVP1 DLPから抽出されたdsRNAのゲル電気泳動によりさらに確証され(
図10C、レーン4)、
図8Dのレーン6に示されたものと正確にマッチングした。これらのデータは、余分な1.8kbpの異種配列を担持するrSA11/NSP3-2A-NoVウイルスが、これらのゲノムセグメント7のサイズが野生型SA11ウイルスより有意に大きくても完全なゲノム配置を保持することを示した。事実、20.2kbpのrSA11/NSP3-2A-fVP1及びVP1-Hisゲノムは、18.6kbpのrSA11/wtゲノムよりサイズが9.1%大きい(表1)。これらの結果は、RVコアが、例えば以前のリポートと一致する様々なタンパク質をコードすることができる大量の追加の外来性(異種)核酸配列を収容するための空間を有することを示す。rSA11/ゲノムセグメント7に挿入された今までで最大の外来性配列は、2.6kbpのものであるが(データ示されず)、コアの最大パッケージング能力は、未だ決定されていない。これらの知見は、天然起源の配列重複又は挿入外来性配列を有するRVバリアントの密度が野生型RVより大きいことを示す初期研究と一致している。
【0115】
考察
本明細書において実証されているように、ゲノムセグメント7の修飾を介して、NoVカプシドタンパク質の一部分を別個のタンパク質として発現させるrRVを生成することが可能である。これらの結果は、RVを潜在的なワクチン発現ベクターとして使用できることを示している。これらの結果は、例えば、小児においてRV及びNoV媒介AGEの両方を予防することができる、混合経口弱毒生RV-NoVワクチンを生成するための方法を提供する。近年、一部のNoVワクチン調合剤が成人治験で試験されたが、乳児及び幼児に使用するためのワクチン候補について探索することが強く求められている。この研究において、本発明者たちは、NoVカプシドドメインを発現するrRVのパネルを生成し、タンパク質の発現及び遺伝子安定性について試験した。全ての組換えRVは細胞培養により高い力価で成長し、NoVタンパク質は高度に発現され、RV又はNoVに対して既存の免疫がない小児に使用するための優れた発現プラットフォームとなった。さらに、RVは、ワクチンとして使用している間、極めて高いレベルの抗原発現を有し、強力な免疫応答を生成することができ、したがって、NoV抗原に対する免疫応答を増加するアジュバントとして作用することができる。さらに、RVゲノムは、1.3kpbまでの追加の配列を、遺伝子不安定性を伴うことなく収容することができ、多数の外来性遺伝子の収容を可能にし、多価ワクチンベクターとして開発することができる。このことは、CoV-2(COVID-19としても公知である)RBD(受容体結合ドメイン)及びNoV P2を含むSARS(SARS関連コロナウイルスにより引き起こされる重症急性呼吸器症候群)などの他のウイルスの免疫優性領域を発現するようにRVを再操作して、乳児及び小児用の多価ワクチン(RV-SARS-CoV-2 -NoVワクチン)を生成し、例えば、現行のRVワクチンを置き換える可能性を高める。
【0116】
この解析は、NoVカプシドタンパク質を発現する組換えRVが細胞培養により高い力価(0.5×10
7~2.6×10
7PFU/ml)に成長したことを示し、前の報告と一致しており、この高い力価は、ワクチン生産を経済的により実現可能にする。2Aエレメントの停止-再開活性は、rSA11ウイルスのいくつかの変種を示した。N末端FLAGタグ付きNoVタンパク質を発現するように修飾されたウイルス及びNoV P-Hisタンパク質を発現するように修飾されたRIXセグメント7は、小量のNSP3-2A-リードスルー産物を産生した(
図3E及び5D、赤色星印)。このことの正確な理由は本発明の実施において不明であるが、おそらくこれらが全て、下流NoVタンパク質の開始コドンの前に可動性Ala-Serリンカーを含有したからである。そのような融合リードスルー産物は、
図4Eに記載されているウイルスの場合には見出されず、配列解析は、これらのウイルスがAla-Serリンカーを有さないが、下流NoVタンパク質の開始コドンへのNSP3-2A配列の直接融合を含有したことを示した(
図3E、レーン6及び
図4E)。
【0117】
このデータは、修飾ゲノムセグメント7から発現したVP1タンパク質が、ダイマーを形成し、正確な立体構造での折りたたみが可能であることを示唆している。また、NoVタンパク質を発現する組換えRVのNSP3タンパク質は、機能的であり、ダイマーを形成する能力を保持し、全てのウイルスタンパク質の完全な補体を発現することができる。
【0118】
RVゲノムに収容され得る異種配列の量の上限は、現在決定されていないが、天然の配列重複を有する天然起源RV株は、追加の0.9kbpのセグメント7配列を含有し、サイズを2.0kbpに増加させた(56)。この研究において、rSA11/NSP3-2A-fVP1ウイルスの生成は、NoV VP1タンパク質をコードするのに十分な1.8kbpの外来性配列の収容をもたらし、総ゲノムサイズを20.3kbpに増加させた。しかし、これは現在までに作製されたうちで最大の組換えRVではなく、SARS-CoV-2 S1タンパク質をコードする2.2kbpの外来性配列を収容することができるdsRNAは、以前に作製されていた。このデータは、大きな異種配列を担持する、例えば1.8kbpのNoV VP1を担持するRVが、小さいプラーク表現型を有し、遺伝子的に不安定であり、後続の増幅において新たなバリアントの発生をもたらすことを実証している。小さいプラーク表現型及び遺伝子不安定性の正確な理由は不明であるが、調査中である(データ示されず)。配列再編成について提示された仮説は、ウイルスRNAポリメラーゼが、転写又は複製のいずれかの際にRNA合成を中断させ、自己の鋳型に戻して、RNA合成を再び開始させ得ることを示唆した(57,58)。しかし、1.3kbpまでを担持するRVは、5回を超える連続継代で遺伝子的に安定していることが見出されており(43)、よって、ワクチンプラットフォームに発展させることができる。1.3kbpの外来性配列により提供されるコード能力は、二次シグナル又はFc結合タンパク質の融合などのいくつかのさらなる修飾と共にNoV Pタンパク質(1.1kbp)を、RVに発現させるのに十分である。この種類のタンパク質修飾、例えば、Fc免疫グロブリンG1(Fc-IgG1)又は細胞表面受容体のリガンドは、発現タンパク質を特定の細胞タイプ(抗原提示細胞又はT細胞)に向けて特異的に標的化することができる。担体部分、例えば、細胞透過性ペプチド又は分泌ペプチド(例えば、インターロイキン-2分泌ペプチド)を有するNoV Pタンパク質のさらなる修飾は、細胞膜を横断する発現タンパク質の効率的な輸送を達成することができる。
【0119】
この結果は、NoVタンパク質を発現するようにヒトワクチン株ゲノムセグメント7(RIX 4414)を再操作することが可能であり、小児に使用するためのヒトRV-NoVワクチン株を開発する方法を提供する。さらに、現行のRVワクチンに存在する組換えヒトRV株を生成することができる、修飾RV逆遺伝学的システムを開発する必要がある。NoVタンパク質を発現するそのようなヒトrRVワクチン株は、免疫化動物における中和抗体の産生についての洞察を得るために試験され得る。記載されたRVシステムを、多数の疾患に対して、又は同じ病原体の2つ以上のバリアントにより引き起こされる同じ疾患に対して、例えば、2つ以上のウイルス又は同じウイルスの2つ以上のバリアントにより引き起こされる2つ以上の疾患に対して保護することができる、混合ワクチンを開発するための有効なベクターシステムとして使用することができる。
【0120】
実施例2-機能性糖タンパク質を発現する組換えロタウイルス(RV)
初期研究は、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質の一部分を発現した組換えRVを作製する可能性について調査した(Philip及びPatton、2021年)。この研究では、N末端ドメイン(NTD)、受容体結合ドメイン(RBD)及びSタンパク質のコアドメイン(CR)を発現した、セグメント7修飾を有するrSA11ウイルスが回収された(Duanら、2020年、Huangら、2020年)。同様のセグメント7修飾を使用して、NTD及びRBDの両方を含み、かつSARS-CoV-2感染の際に産生された中和抗体の一次標的であるSタンパク質の切断断片であるSARS-CoV-2 S1タンパク質の完全コード配列を含有する、組換えウイルス(rSA11/NSP3-2A-fS1)を作製した(Brouwerら、2020年、Liuら、2020年、Rogersら、2020年、Zostら、2020年、Xinら、2021年)。rSA11/NSP3-2A-fS1ウイルスの修飾セグメント7 RNAにおけるオープンリーディングフレーム(ORF)は、コードカセットNSP3-2A-3xFLAG-S1を含んだ。2A翻訳エレメントの作用を介して、ウイルスのセグメント7 RNAは、2つの産物:2Aペプチドに融合したNSP3(NSP3-2A)及び3xFLAGタグ付きS1(fS1)を生成することが予想された。NSP3-2A-3xFLAG-S1カセットでは、3xFLAGタグは、グリコシル化S産物の合成に重要なエレメントであるS1シグナルペプチドの直ぐ上流に位置した(Casalinoら、2020年)。rSA11/NSP3-2A-fS1により作製された産物の免疫ブロット解析は、ウイルスがNSP3-2Aを効率的に作製したが、おそらく、S1産物の不安定性若しくは崩壊、又はシグナルペプチドの機能に対するFLAGタグの影響が原因で予測されたfS1産物を生成するには十分ではなかったことを示した(Philip及びPatton、2021年)。本明細書に記載されている研究は、rSA11/NSP3-2A-fS1ウイルスにより作製されたS1産物を、末端ペプチドタグの性質が異なるS1タンパク質をコードする新たに設計されたrSA11ウイルスにより作製された産物と比較する。結果は、ACE2受容体の細胞外ドメインの親和性を測定すると、新たに設計されたrSA11ウイルスがS1タンパク質を効率的に発現すること、及びS1タンパク質がグリコシル化され、生体機能性であることを示した(Medina-Enriquez、2020年)。このことは、組換えRVをグリコシル化外来性タンパク質の発現ベクターとして使用できることを実証している。
【0121】
材料及び方法
細胞培養
サル胚腎臓細胞(MA104)を、4.5g/Lグルコース(Lonza 12-640F又はCorning 15-107-CV)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン[Corning])及び5%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で成長させた(Arnoldら、2009年)。T7 RNAポリメラーゼを構成的に発現するベビーハムスター腎臓細胞(BHK-T7細胞)は、Drs.Ulla Buchholz及びPeter Collins、Laboratory of Infectious Diseases、NIAID、NIHから贈呈された。BHK-T7細胞を、10%トリプトン-ペプチドブロス(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、2%非必須アミノ酸(Gibco)、1%グルタミン及び5%熱不活性化FBSが補充されたグラスゴー完全培地(GMEM、Lonza)に成長させた(Philipら、2020年)。BHK-T7細胞の培養に使用された培地に、2%G418(Geneticin、ThermoFisher)を一継代おきに補充した。
【0122】
プラスミド
rSA11ウイルスの生成に使用されたプラスミドは、Addgene[https://www.addgene.org/Takeshi_Kobayashi/]から得て、pT7/VP1SA11、pT7/VP2SA11、pT7/VP3SA11、pT7/VP4SA11、pT7/VP6SA11、pT7/VP7SA11、pT7/NSP1SA11、pT7/NSP2SA11、pT7/NSP3SA11、pT7/NSP4SA11及びpT7/NSP5SA11を含んだ。プラスミドのpCMV-NP868R、pT7/NSP3-P2A-fUnaG及びpTWIST/COVID19スパイクは上記のとおりに誘導された(Philipら、2019年、Philip及びPatton、2020年、2021年)。プラスミドのpT7/NSP3-2A-3fS1は、Philip及びPatton(2021年)に記載されたように生成され、SARS-CoV-2スパイクS1オープンリーディングフレーム(ORF)の完全長cDNA(GenBank MN908947.3)を含有する。プラスミドのpT7/NSP3-2A-S1F及びpT7/NSP3-2A-3fS1-Hisは、pT7/NSP3-2A-3fS1と同じであり、同じS1 ORFを含有するが、S1 ORFの周囲にあるペプチドタグの配列が異なっている。
【0123】
pT7/NSP3-2A-S1fプラスミドは、Takara In Fusionクローニングキットを使用して構築し、これは、pT7/NSP3-P2A-fUnaGのベクター主鎖(pT7/NSP3-P2A領域)(増幅のプライマーペア:配列番号72 TGACCATTTTGATACATGTTGAACAATCAAATACAG及び配列番号73 AGGACCGGGGTTTTCTTCCAC)を、pTWIST/COVID19スパイクのS1 ORFの挿入(プライマーペア:配列番号74.GAAAACCCCGGTCCTGTGTTTGTTTTTCTTGTTTTATTGCCACTAGTCT及び配列番号75.GTATCAAAATGGTCACTTGTCATCGTCATCCTTGTAATCACGTGCCCGCCG)と組み合わせた。プライマーは、コード化S1タンパク質のC末端として1xFLAGタグを導入するように設計した。pT7/NSP3-2A-3fS1-Hisプラスミドは、6xHisタグをコードする配列を、In Fusionクローニングキットを使用してpT7/NSP3-2A-3fSのS1 ORFの3’末端に挿入することによって産生した。これは、pT7/NSP3-2A-3fSをプライマーペア:配列番号76.ACCACCACCACCACCACTGACCATTTTGATACATGTTGAACA及び配列番号77.GGTGGTGGTGGTGGTGACGTGCCCGCCGAGGAGAにより増幅することによって達成された。トランスフェクション品質プラスミドは、Qiagenプラスミド精製キットを使用して調製された。プライマーはEurofins Scentificから得て、プラスミド配列はEurofins Genomicsにより検証された。
【0124】
組換えウイルス
組換えrSA11を生成及び回収する詳細な手順は、以前に公開されている(Philipら、2020年、Philip及びPatton、2021年)。簡潔には、BHK-T7細胞を、Mirus TransIT-LT1トランスフェクション試薬を使用してSA11 pT7プラスミド及びpCMV-NP868Rでトランスフェクトした。pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11を、他のプラスミドより3倍高いレベルでトランスフェクション混合物に含めた。必要に応じて、pT7/NSP3SA11プラスミドを、pT7/NSP3-2A-3fS、pT7/NSP3-2A-S1F又はpT7/NSP3-2A-3fS1-Hisに置き換えた。トランスフェクトした細胞BHK-T7細胞にMA104細胞を感染の2日後に追い播きし、成長培地を最終濃度の0.5mg/mlチロシン(ブタTypeIX膵臓トリプシン、Sigma Aldrich)に調整した。完全な細胞変性効果(CPE)が観察されると、培地オーバーレイ中の細胞を、3回の凍結解凍(free thaw)に付し、溶解産物を、低速遠心分離により清澄にした。溶解産物中のウイルスをプラーク単離により回収し、MA104細胞における1回の成長により増幅した(Philipら、2020年)。ウイルスdsRNAをTrizol(Thermo Fischer)抽出(Philipら、2020年)により回収し、ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分離させ、臭化エチジウムで染色することによって検出した。cDNAを、Superscript III One-Step RT-PCR Platinum Taqキット(Thermo Fisher)及び適切なセグメント7(NSP3)プライマーを使用してdsRNAから生成し、Eurofins Genomicsによりシーケンシングした。
【0125】
免疫ブロット解析
MA104細胞溶解産物中に存在するタンパク質を、上記手順(Philipら、2020年、Philip及びPatton、2021年)に従って免疫ブロットアッセイにより検出した。細胞をモック感染させ又は5プラーク形成単位(PFU)の組換えウイルスに感染させ、9h.p.i.に収集し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)無含有プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する免疫沈降(IP)溶解緩衝液(300mM NaCl、100mM Tris-HCl、pH7.4、2%Triton X-100)(Roche cOmplete、Sigma Aldrich)]に再懸濁することによって溶解した。タンパク質を、10%ポリアクリルアミド(SDS)ゲルの電気泳動により分離させ、Bio-Rad Trans-Blot Turbo Transfer Systemを使用してニトロセルロース膜に移した。膜を、5%脱脂粉乳を含有するリン酸緩衝食塩水でブロックし、ウサギポリクローナルSARS-CoV-2 S1抗体(A20136、ABclonal、1:1000希釈)、モルモットポリクローナルNSP3(NIH Lot 55068、1:2000希釈)若しくはVP6(NIH Lot 53963、1:2000)抗血清、マウスモノクローナルFLAG M2(F1804、Sigma-Aldrich、1:2000)若しくは抗6xHis抗体(MCA1396、Bio-Rad、1:1000)、又はウサギモノクローナルb-アクチン抗体(D6A8、Cell Signaling Technology、1:1000)によりプローブした。一部の場合では、ブロットを、WesternSure ECIストリッピング緩衝液(LI-COR Biosciences)で処理した後に、異なる抗体で再プローブした。一次抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体:ウマ抗マウスIgG(Cell Signal Technology)、ヤギ抗モルモットIgG[Kirkegaard & Perry Laboratories(KPL)]又はヤギ抗ウサギIgG(Cell Signaling Technology)の1:10,000希釈を使用して検出した。シグナルを、Clarity Western ECL Substrate(Bio-Rad)を使用して発生させ、Bio-Rad ChemiDoc Imaging Systemを使用して検出した。
【0126】
エンドグリコシダーゼH(Endo H)アッセイ
6ウエルプレート中のMA104細胞単層をモック感染させた、又はrSA11ウイルス(細胞1個あたり5PFU、PFU=プラーク形成単位)に感染させた。9h.p.i.に細胞単層を洗浄し、リン酸緩衝食塩水(PBS)に掻き落とし、低速遠心分離によりペレット化し、IP溶解緩衝液の1ウエルあたり250mlで再懸濁した。細胞溶解産物中のグリコシル化タンパク質の存在を、Promega Endoglycosidase H Assay System(V4871)を使用して決定した。簡潔には、細胞溶解産物の27mlの試料を3mlの10X Denaturing Solutionと組み合わせ、95℃に5分間加熱し、室温に冷却した。加熱処理溶解産物を、3mlのヌクレアーゼ無含有水、4mlの10X Endo H Reaction Buffer及び3mlのEndo H酵素と混合し、次いで37℃で16時間インキュベートした。処理試料中のタンパク質を、上記に記載されたように免疫ブロットアッセイにより検出した。
【0127】
S1-ACE2相互作用アッセイ
Takara Capturem IP and Co-IPキット(Cat No:635721)を使用して、rSA11ウイルスにより発現されたSARS-CoV-2 S1のACE2に対する親和性を査定した。プロテインAスピンカラム及び全ての必要な緩衝液がCapturemキットに含まれた。MA104細胞単層をモック感染させた、又はrSA11ウイルス(5PFU/細胞)に感染させた。9h.p.i.に、細胞を洗浄し、PBSに掻き落とし、低速遠心分離によりペレット化し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するLysis/Equilibration Bufferに再懸濁した。氷上で15分間インキュベートした後、溶解産物を17,000gで10分間遠心分離して清澄にした。ヒトIgG1 Fc領域に融合したヒトACE2の細胞外ドメインからなる組換えタンパク質である、可溶性のhACE2-Fc(fchace2、InvivoGen)を、清澄溶解産物に添加して、1mlあたり20mgの最終濃度にし、混合物を4℃で一晩インキュベートした。hACE2-Fc及びS1タンパク質で形成された複合体を回収するため、溶解産物試料を前平衡プロテインAスピンカラムに充填し、次いで1000gにより室温で1分間遠心分離した。カラムをWash Bufferによりすすいだ後、タンパク質を、Elution Bufferの添加によりカラムから溶出させ、1000×gにより室温で1分間遠心分離した。溶出試料をNeutralization Bufferの添加により直ぐに中和した。溶出試料中のタンパク質を、上記に記載されたように免疫ブロットアッセイにより検出した。
【0128】
免疫蛍光アッセイ
遺伝子安定性
組換えRVの遺伝子安定性を、無血清DMEM及び0.5μg/mlトリプシンで調製された感染細胞溶解産物の1:10希釈を使用して、MA104細胞単層における連続継代により査定した(Philip及びPatton、2021年)。ウイルスdsRNAを、RNアーゼT1で処理して一本鎖RNAを除去した清澄細胞溶解産物からのTrizol抽出により回収した(Philipら、2019年)。ウイルスdsRNAを、8%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により解析し、臭化エチジウムで染色することによって検出した。
【0129】
GenBankアクセッション番号
GenBankに委託されているrSA11ウイルスの修飾セグメント7:rSA11/wt.(LC178572)、rSA11/NSP3-2A-3f-S1(MW059026)、rSA11/NSP3-2A-S1-1f(MZ511690)及びrSA11/NSP3-2A-3f-S1-His(MZ511689)。他のアクセッション番号には、pTWIST/COVID19スパイク中のSARS-CoV-2 S配列(GenBank MN908947)、pCMV-NP868R中のアフリカブタ熱ウイルスキャッピング酵素の配列、及びrSA11-NSP3-P2A-3fUnaGの修飾セグメント7 RNA(MK851042)が挙げられる。
【0130】
結果
S1タンパク質をコードする組換えウイルスの生成
以前の研究において、rSA11ウイルス(rSA11/NSP3-2A-fS1)は、融合N末端3xFLAGタグを有するSARS-CoV-2 S1タンパク質(3xFLAG-S1)をコードする修飾セグメント7 RNAにより生成された。このウイルスによる不十分なS1発現の基礎を理解するため、セグメント7 RNAのS1 ORFの上流及び下流でコードされているペプチドタグの性質のみが異なる、2個の類似したrSA11ウイルスを生成した。ウイルスのうちの一方のrSA11/NSP3-2A-fS1-Hisは、セグメント7 RNAのORFが6xHisタグをS1産物の末端に配置し、よって3xFLAG-S1-6xHisをコードするように操作されていることを除いて、rSA11/NSP3-2A-fS1と同一であった。rSA11/NSP3-2A-fS1-Hisウイルスは、S1産物からのシグナルペプチドの切断が原因でN末端3xFLGタグが失われ、抗FLAG抗体を用いる免疫ブロットアッセイを介した、rSA11/NSP3-2A-fS1ウイルスによるfS1合成の正確な査定を妨げる可能性に対処するために生成された。代わりに、S1産物の産生は抗6xHis抗体で査定することができる。作製された第2の組換えウイルスであるrSA11/NSP3-2A-fS1は、C末端1xFLAGタグを有するが、任意のN末端タグを有さないS1(S1-1xFLAG)を発現するように設計されたセグメント7 RNAを含有した。このウイルスの有用性では、S1シグナルペプチドの上流に位置するタグが、小胞体によるS1タンパク質の合成及びグリコシル化を妨害し得る可能性について検査した。
【0131】
組換えウイルスのrSA11/NSP3-2A-S1f及びrSA11/NSP3-2A-fS1-Hisは、rSA11/NSP3-2A-fS1-His及び野生型ウイルスrSA11/wtの生成に以前に使用されたものと同じ逆遺伝学的手順に従って産生した。この手順は、SA11プラスセンス(+)RNAを発現するT7転写ベクター(pT7)及びアフリカブタ熱ウイルスのキャッピング酵素をコードするCMV発現プラスミド(pCMV-NP868R)のセットによるBHK-T7細胞のトランスフェクションを含んだ。トランスフェクション混合物では、NSP2及びNSP5 +RNAのT7転写ベクター(それぞれ、pT7/SA11NSP2及びpT7/SA11NSP5)が、他のpT7ベクターより3倍大きなレベルで使用された。S1産物をコードするrSA11の産生に使用された修飾セグメント7転写ベクター(
図11)を、pT7/NSP3SA11の代わりにトランスフェクション混合物に添加した。トランスフェクトされたBHK-T7細胞に形成された組換えウイルスは、MA104細胞を追い播きすることによって増幅し、次いでプラーク精製により単離した。
【0132】
rSA11のゲノム及び成長特徴
組換えウイルスのdsRNAゲノムセグメントを、ゲル電気泳動により分離させて、修飾セグメント7 RNAの存在を検証した(
図12)。この解析は、rSA11/NSP3-2A-fS1、rSA11/NSP3-2A-S1f及びrSA11/NSP3-2A-fS1-Hisの全てが、rSA11/wtに典型的な1.1Kbpのセグメント7 dsRNAを欠いていたことを示した。代わりに、予想されたように、全てのS1コードrSA11ウイルスは、セグメント1 dsRNAの位置の近くにポリアクリルアミドゲルで移動し、かつ3.3Kbpのサイズを有したセグメント7 dsRNAを含有した。シーケンシングは、組換えウイルスのセグメント7 RNAが、回収に使用されたpT7転写ベクターのものと同一であったことを検証した。rSA11/NSP3-2A-fS1、rSA11/NSP3-2A-S1f及びrSA11/NSP3-2A-fS1-Hisそれぞれのゲノムセグメントの合計サイズは、20.7~20.8Kbpであり、野生型ウイルスより2.1~2.2Kbp(又は約11%)大きい。
【0133】
SARS-CoV-2のグリコシル化S1タンパク質を発現するrSA11ウイルス
続いて、MA104細胞における2回目の増幅。組換えウイルスをウイルスプールからプラーク精製し、heのN末端3xFLAGタグによるS1 RNAの翻訳をfS1に融合した。この設計では、3xFLAGタグを、グリコシル化S1の合成に重要なエレメントであるS1シグナル配列(SS)の直ぐ上流に位置付けした。以前の研究では、感染細胞中のrSA11/NSP3-2A-fS1により発現されたS1産物の性質は確実ではなく、おそらく、S1産物の不安定性若しくは切断、又はSS配列の機能性に対するFLAGタグの影響が原因であった。本研究は、rSA11/NSP3-2A-fS1ウイルスにより作製されたS1産物を再検査し、この産物を、N末端タグ配列を欠いているS1タンパク質をコードする新たに設計されたrSA11ウイルスにより生成された産物と比較した。この解析は、新たに設計されたrSA11ウイルスが、ACE2の細胞外ドメインに結合する能力を有するグリコシル化S1タンパク質を効率的に発現したことを示している。これらの結果は、RVセグメント7発現プラットフォームを使用して、グリコシル化カプシドタンパク質の発現の方向付けができることを実証している。
【0134】
開示されている主題は、様々な変更及び代替的形態を受け入れるが、特定の実施形態が本明細書において詳細に記載されている。しかし、この意図は、記載されている特定の実施形態に本開示が限定されないことである。本開示は、添付の特許請求の範囲に定義されている本開示の範囲内に入る、全ての変更、同等物及び代替物を網羅することが意図される。
【0135】
同様に、例証的な方法が本明細書に記載され得るが、この方法の記載は、本明細書に開示されている様々なステップの任意の要件又は特定の順序を意味すると解釈されるべきではない。しかし、ある特定の実施形態は、本明細書に明確に記載され得るように及び/又はステップそれ自体の性質によって理解され得るように、ある特定のステップ及び/又はある特定のステップにおけるある特定の順序を必要とし得る(例えば、一部のステップの実施は、前のステップの結果に依存し得る)。加えて、項目(例えば、入力、アルゴリズム、データ値など)の「セット」、「サブセット」又は「群」は、1つ以上の項目を含んでよく、同様に、項目のサブセット又は部分群は、1つ以上の項目を含んでよい。「複数」は、2つ以上を意味する。
【0136】
範囲に関して本明細書に使用される用語として、「約」及び「およそ」は交換可能に使用され、測定値を指すことができ、測定値は、記述された測定値を含む、また、記述された測定値にかなり近いが、測定誤差、測定及び/又は製造機器較正の差、読取り及び/又は測定設定の人的誤差、他の構成要素と関連する、特に実現シナリオ、人間又は機械による不正確な調整及び/又は物体の操作などに関連する測定における差の観点から性能及び/又は構造パラメーターを最適にするために行われた調整に起因する、関連技術に通常の技能を有する個人に理解され、容易に確認されるなどのかなり小さい量が異なり得る任意の測定値も含む。
【0137】
【0138】
【0139】
【配列表】
【国際調査報告】