(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/12 20060101AFI20241029BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20241029BHJP
C22C 38/50 20060101ALI20241029BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C21D8/12 A
C22C38/00 303U
C22C38/50
H01F1/147 175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523397
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2022074302
(87)【国際公開番号】W WO2023070982
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111244023.3
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116856
【氏名又は名称】江蘇省沙鋼鋼鉄研究院有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521514565
【氏名又は名称】江蘇沙鋼集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523108810
【氏名又は名称】張家港揚子江冷軋板有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ユェ チョンシァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ホンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー シォンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ドンファン
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA00
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA05
4K033CA07
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4K033KA03
5E041AA02
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5E041BD09
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5E041HB11
5E041NN01
5E041NN06
5E041NN18
(57)【要約】
本発明は、新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼およびその生産方法を開示する。前記珪素鋼は、製鋼、連続鋳造、熱間圧延、焼ならし、酸洗、予熱なしシングルスタンド冷間圧延、焼鈍、冷却、コーティングおよび仕上げを順次行って生産される。製鋼においてCu、Cr、Ni、Nb、V、Tiを添加せず、珪素鋼の化学組成はSi:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、C≦0.0025%、残部が鉄であり、Mn/S≧380、Al/N≧200である。本発明は磁気性能を保証しながら強度を向上させ、先行技術に存在する磁気性能と強度の両立問題を解決し、新エネルギー自動車の駆動モータへの適用要件を満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼、連続鋳造、熱間圧延、焼ならし、酸洗、予熱なしシングルスタンド冷間圧延、焼鈍、冷却、コーティングおよび仕上げを順次行って、0.25mm~0.35mmの任意厚さの無方向性珪素鋼を調製し、
連続鋳造工程において、得られた連続鋳造ビレットの化学組成は質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%、Mn/S≧380、Al/N≧200を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、
熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを順次加熱、粗圧延、仕上げ圧延、巻取して熱間圧延コイルプレートを得、仕上げ圧延時の圧延開始温度は950±20℃であり、圧延終了温度は840±20℃であり、総圧下率は94~95%であり、巻取時の巻取温度は620±20℃であり、
焼ならし工程において、未再結晶組織の面積の割合は5%~20%である、ことを特徴とする新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項2】
熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを1080℃~1110℃に加熱して160min~180min保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項3】
焼ならし工程において、焼ならし温度を840℃~860℃とし、180s~200s保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項4】
焼鈍工程において、焼鈍温度を960℃~980℃とし、40s~45sに保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項5】
シングルスタンド冷間圧延工程において、マルチパス圧延を行い、総圧下率は85±3%であり、最終パス以外の各パスの圧下率はいずれも30%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項6】
前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ35mm~40mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.00mm~2.30mmの熱間圧延板に仕上げ圧延する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項7】
前記無方向性珪素鋼は、厚さ0.25mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは35mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.00mmである、または、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.30mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは37.5mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.15mmである、または、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.35mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは40mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.30mmである、ことを特徴とする請求項6に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項8】
製鋼工程において、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiの合金化材料を添加しない、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項9】
請求項1に記載の生産方法によって調製される、ことを特徴とする新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼。
【請求項10】
前記無方向性珪素鋼の再結晶粒子径は50μm~80μmである、ことを特徴とする請求項9に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項11】
前記無方向性珪素鋼の降伏強度≧460Mpa、引張強度≧550Mpa、鉄損P
1.0/400≦18.5W/kg、磁束密度B
5000≧1.67Tである、ことを特徴とする請求項9に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項12】
前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦17.5W/kgである、または、厚さ0.30mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦18.0W/kgである、または、厚さ0.35mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦18.5W/kgである、ことを特徴とする請求項11に記載の無方向性珪素鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼材料調製の技術分野に属し、新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼およびその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性珪素鋼は、回転磁界中で作動する電動機および発電機の回転子の鉄心材料であり、低鉄損および高磁束密度を含む良好な磁気性能が要求され、磁気性能の改善は当業者にとって無方向性珪素鋼の中心的な研究テーマである。化学組成の観点から、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiなどの一連の合金元素の添加は、これらの合金元素の高含有による無方向性珪素鋼の磁気性能の劣化を避けるために、通常厳しく制限されている。
【0003】
近年、新エネルギー自動車の急速な発展に伴い、駆動モータに使用される無方向性珪素鋼に対して、より高い性能が要求されている。具体的に、新エネルギー自動車の駆動モータは、他の従来のモータに比べて回転速度が高く、技術の発展に伴い、新エネルギー自動車の駆動モータの回転速度は依然として上昇しており、使用される無方向性珪素鋼には、良好な磁気性能に加えて、高い強度が求められている。
【0004】
しかしながら、鋼材の強度を向上させるという先行技術において、化学組成の観点から、鋼材強度を向上させる目的を達成するために、通常Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiなどの一連の合金元素の添加量を増加させる必要がある。上記したように、これらの合金元素の添加増は、無方向性珪素鋼の磁気性能の劣化につながる。
【0005】
このことから分かるように、無方向性珪素鋼の磁気性能と強度の影響について、化学組成の設計方向は矛盾している。したがって、無方向性珪素鋼の磁気性能と強度をいかに同時に確保するかは、新エネルギー自動車の駆動モータに適用される無方向性珪素鋼が直面する重要な問題である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、磁気性能を保証しながら強度を向上させ、先行技術に存在する磁気性能と強度の両立問題を解決する、新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼およびその生産方法を提供することである。
【0007】
上記の発明の目的を達成するために、本発明の実施形態は、新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼を提供し、その化学組成は質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、Mn/S≧380、Al/N≧200である。
【0008】
さらに、前記無方向性珪素鋼の再結晶粒子径は50μm~80μmである。
【0009】
さらに、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mm~0.35mmの鋼板であり、降伏強度≧460Mpa、引張強度≧550Mpa、鉄損P1.0/400≦18.5W/kg、磁束密度B5000≧1.67Tである。
【0010】
さらに、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mmの鋼板であり、鉄損P1.0/400≦17.5W/kgである、または、厚さ0.30mmの鋼板であり、鉄損P1.0/400≦18.0W/kgである、または、厚さ0.35mmの鋼板であり、鉄損P1.0/400≦18.5W/kgである。
【0011】
上記の発明目的を達成するために、本発明の実施形態は、新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法を提供し、無方向性珪素鋼の化学組成は質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、Mn/S≧380、Al/N≧200であり、
前記無方向性珪素鋼の再結晶粒子径は50μm~80μmであり、
前記生産方法は、製鋼、連続鋳造、熱間圧延、焼ならし、酸洗、シングルスタンド冷間圧延、焼鈍、冷却、コーティングおよび仕上げを順次行って無方向性珪素鋼を生産し、
熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを1080℃~1110℃に加熱して160min~180min保持した後、順次粗圧延、仕上げ圧延、巻取を行って熱間圧延コイルプレートを得、仕上げ圧延時の圧延開始温度は950±20℃であり、圧延終了温度は840±20℃であり、総圧下率は94~95%であり、巻取時の巻取温度は620±20℃であり、
焼ならし工程において、焼ならし温度を840℃~860℃とし、180s~200s保持し、
焼鈍工程において、焼鈍温度を960℃~980℃とし、40s~45s保持する。
【0012】
好ましくは、シングルスタンド冷間圧延工程において、マルチパス圧延を行い、総圧下率は85±3%であり、最終パス以外の各パスの圧下率はいずれも30%以上である。
【0013】
好ましくは、得られた無方向性珪素鋼は厚さ0.25mm~0.35mmの鋼板であり、前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ35mm~40mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.00mm~2.30mmの熱間圧延板に仕上げ圧延する。
【0014】
好ましくは、得られた無方向性珪素鋼は厚さ0.25mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは35mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.00mmである、または、得られた無方向性珪素鋼は厚さ0.30mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは37.5mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.15mmである、または、得られた無方向性珪素鋼は厚さ0.35mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは40mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.30mmである。
【0015】
好ましくは、前記シングルスタンド冷間圧延工程において、前記酸洗工程後の鋼板を予熱することなく、直接圧延を開始する。
【発明の効果】
【0016】
先行技術と比較すると、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)化学組成の観点から、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiなどの合金元素を添加せず、Si、Al、Mn、Snなどの元素含有量の設計と組み合わせて、無方向性珪素鋼の磁気性能を改善し、無方向性珪素鋼が低鉄損、高磁束密度を有することを保証すると同時に、化学組成に基づいて、粒子径を50μm~80μmに制御することにより、鋼板の精製結晶強化を実現し、無方向性珪素鋼が高強度を有することを保証し、低コストおよび低生産難易度を確保した上で、無方向性珪素鋼の磁気性能と強度の総合的な最適化を実現し、無方向性珪素鋼が新エネルギー自動車の駆動モータへの適用要件を満たすことができ、
(2)さらに、化学組成の設計に基づいて、熱間圧延工程、焼ならし工程、シングルスタンド冷間圧延工程、焼鈍工程の一連工程制御を通じて、一方では、無方向性珪素鋼の再結晶粒子径を微細化し、優れた磁気性能と高強度の無方向性珪素鋼を確実に得ることができ、他方では、冷間圧延における割れ断裂問題を回避し、既存の生産工程で一般的に使用されているプレロール予熱または二次冷間圧延を省略し、予熱なしシングルスタンド冷間圧延工程だけで最終圧延を実現し、低生産難易度、低コストおよび安定的かつ連続的な生産を確保することができ、他方では、加熱温度、圧延開始温度、焼ならし温度等の低温制御を通じて、生産エネルギー消費を大幅に削減することができ、さらに、焼ならし温度が低く保持時間が短いだけでなく、酸洗工程前の鋼板表面の酸化スケールの厚さを減らし、酸洗効率を高め、最終的な無方向性珪素鋼の表面品質と収量を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態に関連して、本発明の技術的解決策をさらに説明する。
【0018】
本発明の実施形態では、無方向性珪素鋼が提供される。該無方向性珪素鋼の化学組成は質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、Mn/S≧380、Al/N≧200である。
【0019】
ここで、化学組成中の各元素の作用および効果は以下のように説明される。
C、S、N、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Ti、P:これらの元素の含有量の増加は、鉄損増加や磁束密度低下などを含む無方向性珪素鋼の磁気性能の低下を招く。本発明では、製鋼難易度および製鋼コストを上昇させることなく、これらの元素の含有量の上限を適切に下げ、C≦0.0025%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、P≦0.015%としている。
【0020】
Si、Al:Siは固溶強化元素であり、その含有量の増加は、鋼板強度を高め、鋼板の抵抗率を高め、鉄損を低下させることができる。本発明中のSi含有量(質量%で)を2.95%~3.15%に制御し、Alの含有量を増加させると、鋼板の抵抗率を高め、鉄損を低下させるが、磁束密度を低下させる。本発明中のAl含有量(質量%で)を0.75%~0.95%に制御している。また、AlはNと粗大なAlN析出物を形成しやすいため、鋼板の鉄損を低下させてしまう。本発明中のAl含有量(質量%で)とN含有量(質量%で)はさらにAl/N≧200を満たすことにより、鋼板磁気性能へのN元素の不利な影響を有利な影響に変換することができ、製鋼におけるN元素の制御難易度を下げる。さらに、SiとAlの含有量の増加によって冷間圧延が難しくなることを招いてしまうため生産難易度の増加による生産コストが上昇することを回避するために、本発明中のSi含有量(質量%で)とAl含有量(質量%で)はさらにSi+2Al:4.6%~4.9%を満たす。
【0021】
Mn:Mnの適量の添加は、鋼板の磁気性能の向上に有利であり、MnはSによる熱脆性を抑制することができ、Sと粗大なMnS析出物を形成しやすくなって、鋼板の鉄損を低下させる。本発明中のMn含有量(質量%で)とS含有量(質量%で)はさらにMn/S≧380を満たすことにより、鋼板磁気性能へのS元素の不利な影響を有利な影響に変換することができ、製鋼におけるS元素の制御難易度とコストを低減することができる。
【0022】
Sn:粒界偏析元素であり、磁気性能を改善することができる。本発明中のSn含有量(質量%で)は0.03%~0.04%である。
【0023】
以上のように、本実施形態では、化学組成上、合金コストの低減、生産難易度の低減、生産コストの低減を図りつつ、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiなどの合金元素を添加せず、Si、Al、Mn、Snなどの元素の含有量の設計と組み合わせて、無方向性珪素鋼の磁気性能を改善し、無方向性珪素鋼が低鉄損、高磁束密度を有することを確保することができる。
【0024】
そして、本実施形態では、前記無方向性珪素鋼の再結晶粒子径は50μm~80μmである。これにより、前記化学組成により無方向性珪素鋼の低鉄損、高磁束密度を確保すると同時に、粒子径を50μm~80μmに制御することにより、鋼板の精製結晶強化を実現し、無方向性珪素鋼の高強度を確保することができ、低コストと低生産難易度を図りつつ、無方向性珪素鋼の磁気性能と強度の総合的な最適化を達成し、無方向性珪素鋼が新エネルギー自動車の駆動モータへの適用要件を満たす。
【0025】
具体的に、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mm~0.35mmの鋼板であり、降伏強度≧460Mpa、引張強度≧550Mpa、鉄損P1.0/400≦18.5W/kg、磁束密度B5000≧1.67Tである。
【0026】
ここで、さらに、前記無方向性珪素鋼は具体的に厚さ0.35mmの鋼板であり、その鉄損P1.0/400≦18.5W/kgである、または厚さ0.30mmの鋼板であり、鉄損P1.0/400≦18.0W/kgである、または厚さ0.25mmの鋼板であり、鉄損P1.0/400≦17.5W/kgである。
【0027】
さらに、本実施形態は、前記無方向性珪素鋼の好ましい生産方法をさらに提供する。該生産方法は、製鋼、連続鋳造、熱間圧延、焼ならし、酸洗、シングルスタンド冷間圧延、焼鈍、冷却、コーティングおよび仕上げを順次行って前記無方向性珪素鋼を生産する。すなわち、前記無方向性珪素鋼は、該好ましい生産方法によって調製され得る。本実施形態の生産方法は、前記の優れた磁気性能、高強度の無方向性珪素鋼をスムーズに製造できるだけでなく、生産難易度が低く、生産コストが低いという利点を有し、無方向性珪素鋼の安定した生産を確保することができる。
【0028】
具体的に、製鋼工程では溶融鉄を溶融鋼に精錬し、連続鋳造工程において製鋼工程で得られた溶融鋼を連続鋳造機を用いて連続鋳造ビレットとする。理解されるように、製鋼工程で得られた溶融鋼の化学組成および連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットの化学組成は、いずれも前記生産方法から最終的に得られた無方向性珪素鋼の化学組成と一致する。すなわち、質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、Mn/S≧380、Al/N≧200である。
【0029】
本実施形態では、熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを1080℃~1110℃に加熱して160min~180min保持した後、順次粗圧延、仕上げ圧延、巻取を行って熱間圧延コイルプレートを得、仕上げ圧延時の圧延開始温度は950±20℃であり、圧延終了温度は840±20℃であり、総圧下率は94~95%であり、巻取時の巻取温度は620±20℃であり、焼ならし工程において、焼ならし温度を840℃~860℃とし、180s~200s保持し、焼鈍工程において、焼鈍温度を960℃~980℃とし、40s~45s保持する。
【0030】
このように、本実施形態の生産方法では、熱間圧延工程における加熱温度を低く制御することにより、連続鋳造ビレット中のMnS、AlNなどの粗大析出物の固溶を回避し、後続の粗圧延、仕上げ圧延工程における析出物制御をより確実に行い、最終的に得られた方向性珪素鋼の磁気性能の基礎を固め、仕上げ圧延時の圧延開始温度、圧延終了温度、総圧下率および巻取時の巻取温度を制御し、化学組成におけるSi+2Al:4.6%~4.9%の設計と組み合わせて、熱間圧延コイルプレートの組織が安定しており、貯蔵容量が一致であり、後続の焼ならし工程における熱間圧延コイルプレートの再結晶温度を安定的に維持し、後続の焼ならし工程の再結晶程度の正確な制御のための条件を提供し、熱間圧延工程を基に、焼ならし工程における焼ならし温度と保持時間の設計により、焼ならし工程で部分再結晶が発生し(すなわち完全な再結晶が完了しないか、または完全な再結晶が発生しない)、得られた鋼板中の未再結晶組織の面積比、再結晶粒子径を正確に制御(具体的には、未再結晶組織の面積比が約5%~20%)し、再結晶粒子径≦50μmであり、これにより、焼鈍工程において再結晶粒子径の制御のための条件を提供する一方、未再結晶組織と再結晶晶粒間の多数の粒界を形成して後続の冷間圧延における割れの拡大を回避し、冷間圧延工程の圧延難易度を低下させ、冷間圧延工程の安定した生産を確保し、先行技術において一般的に使用されるプレロール予熱または二次冷間圧延を省略し、低コストの予熱なしシングルスタンド冷間圧延工程だけで最終圧延を完了することができ、焼ならし工程を基に、焼鈍温度と保持時間の設計により、焼鈍工程において完全な再結晶が発生し、再結晶晶粒が大きく成長しないため、最終的な無方向性珪素鋼の完成品に含まれる再結晶粒子径が小さくなる。
【0031】
以上のように、本実施形態の前記生産方法では、化学組成の設計を基に、熱間圧延工程、焼ならし工程、シングルスタンド冷間圧延工程、焼鈍工程の一連の工程を制御することにより、無方向性珪素鋼の再結晶粒子径の微細化を実現し、得られた磁気性能が優れ、強度が高い無方向性珪素鋼を確保する一方、冷間圧延における割れ断裂問題を回避し、既存の生産工程において一般的に使用されるプレロール予熱または二次冷間圧延を省略し、予熱なしシングルスタンド冷間圧延工程だけで最終圧延を完了することができ、生産の低難易度、低コストおよび安定した連続生産を確保する一方、加熱温度、圧延開始温度、焼ならし温度などの低温制御により、生産エネルギー消耗を大幅に減らし、さらに、焼ならし温度が低く保持時間が短いため、酸洗工程前の鋼板表面の酸化スケールの厚さを低減させ、酸洗効率の向上に有利であり、最終的な無方向性珪素鋼の表面品質および収量を向上させることができる。
【0032】
より好ましくは、最終的な溶融鋼に必要な化学組成に基づいて、製鋼工程において、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiの合金化材料を添加しない。これにより、合金化材料のコストを低減することができる。
【0033】
さらに好ましくは、前記シングルスタンド冷間圧延工程において、前記酸洗工程後の鋼板を予熱することなく直接圧延を開始する。先行技術において、通常冷間圧延前に鋼板を予熱して圧延する必要があるが、本実施形態では、焼ならし工程の基に、予熱なしに直接圧延を開始し、生産コストを節約することができる。
【0034】
シングルスタンド冷間圧延工程において、マルチパス圧延を行い、総圧下率は85±3%であり、このように制御することにより、シングルスタンド冷間圧延工程における異なる厚さの無方向性珪素鋼の冷間圧延貯蔵容量を基本的に一致させ、さらに後続の焼鈍工程において同じ焼鈍温度および保持時間で実施して、同一生産ラインにおいて異なる厚さの無方向性珪素鋼を連続的に生産するとき頻繁な変更操作を必要としない効果が得られる。
【0035】
そして、シングルスタンド冷間圧延工程において、マルチパス圧延を行い、最終パス以外の各パスの圧下率はいずれも30%以上である。例えば5パス圧延を行う場合、第1~4パスはそれぞれ圧下率≧30%であり、第5パスの圧下率は選択的に30%よりも小さい。これにより、シングルスタンド冷間圧延工程における冷間圧延断片の発生を効果的に回避するだけでなく、圧延パスを減少することができ、さらに最終的な無方向性珪素鋼の良好な板形状を確保することができる。
【0036】
以上のように、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mm~0.35mmの鋼板である。好ましい実施形態では、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレット厚さは220mmであり、前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ35mm~40mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.00mm~2.30mmの熱間圧延板に仕上げ圧延する。理解されるように、シングルスタンド冷間圧延工程において、厚さ2.00mm~2.30mmの熱間圧延板をさらに目標厚さの無方向性珪素鋼の完成品に圧延する。
【0037】
例えば、前記生産方法で最終的に得られた無方向性珪素鋼が厚さ0.25mmの鋼板である場合、前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ35mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.00mmの熱間圧延板に仕上げ圧延し、また、例えば、前記生産方法で最終的に得られた無方向性珪素鋼が厚さ0.30mmの鋼板である場合、前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ37.5mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.15mmの熱間圧延板に仕上げ圧延し、また、例えば、前記生産方法で最終的に得られた無方向性珪素鋼が厚さ0.35mmの鋼板である場合、前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ40mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.30mmの熱間圧延板に仕上げ圧延する。もちろん、これらは好ましい実施態様に過ぎず、本発明を具体的に実施する場合これに限定されない。
【0038】
好ましくは、焼ならし工程において、純乾燥N2雰囲気中で焼ならしを一定速度で行う。すなわち、鋼板の先頭部、中間部、後端部に対して一定のロール速度で焼ならす。
【0039】
さらに、焼鈍工程において、H2+N2の混合雰囲気中で焼鈍を一定速度で行う。すなわち鋼板の先頭部、中間部、後端部に対して一定のロール速度で焼鈍する。
【0040】
さらに、前記生産方法において、酸洗工程、冷却工程、コーティング工程および仕上げ工程は従来技術で開示された実現可能な技術によって実施することができるので、ここでは繰り返さない。
【0041】
以上のように、先行技術と比較すると、本発明の実施形態は以下の有益な効果を有する。
(1)化学組成において、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiなどの合金元素を添加せず、Si、Al、Mn、Snなどの元素の含有量の設計と組み合わせて、無方向性珪素鋼の磁気性能を向上させ、無方向性珪素鋼が低い鉄損、高い磁束密度を有することを確保すると同時に、化学組成の基に、粒子径を50μm~80μmに制御することにより、鋼板の精製結晶強化を実現し、無方向性珪素鋼が高い強度を有することを確保し、低コストおよび低生産難易度で無方向性珪素鋼の磁気性能と強度の総合的な最適化を達成し、無方向性珪素鋼が新エネルギー自動車の駆動モータへの適用要件を満たす。
【0042】
(2)さらに、化学組成の設計に基づいて、熱間圧延工程、焼ならし工程、シングルスタンド冷間圧延工程、焼鈍工程の一連の工程を制御することにより、無方向性珪素鋼の再結晶粒子径の微細化を確保し、磁気性能が優れ、強度が高い無方向性珪素鋼を得ることを確保する一方、冷間圧延中の割れ断裂問題を回避し、従来の生産工程において一般的に使用されるプレロール予熱または二次冷間圧延を省略し、予熱なしシングルスタンド冷間圧延工程だけで最終圧延を完了することができ、生産の低難易度、低コストおよび安定した連続を確保する一方、加熱温度、圧延開始温度、焼ならし温度等の低温制御により、生産エネルギー消耗を大幅に低減させ、さらに、焼ならし温度が低く保持時間が短いため、酸洗工程前の鋼板表面の酸化スケールの厚さを低減させ、酸洗効率の向上に有利であり、最終的な無方向性珪素鋼の表面品質および収量を向上させることができる。
【0043】
上記した詳細な説明は本発明の実行可能な実施形態の具体的な説明に過ぎず、本発明の保護範囲を画定するものではなく、本発明の技術精神から逸脱することなく得られた等価な実施形態または変更はすべて本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【0044】
以下、本発明の6つの実施例を提供して本発明の技術的解決策をさらに説明する。もちろん、これらの実施例は本発明に含まれる複数の変化実施例中の一部に過ぎず、すべてではない。
【0045】
実施例1~6はそれぞれ無方向性珪素鋼を提供する。質量%で示した化学組成は表1に示したとおりである。各実施例の無方向性珪素鋼は具体的には表1に示される厚さの鋼板である。
【0046】
【0047】
実施例1~6の無方向性珪素鋼をそれぞれサンプリングして検出し、(1)金属組織試験で測定された再結晶粒子径をそれぞれ表2に示し、(2)機械的性能試験で測定された降伏強度および引張強度をそれぞれ表2に示し、(3)磁気性能試験で測定された鉄損P1.0/400および磁束密度B5000をそれぞれ表2に示す。
【0048】
【0049】
実施例1~6の無方向性珪素鋼の生産方法は以下のとおりである。
(1)溶融鉄を表1に示す化学組成の溶融鋼に精錬した。製鋼プロセス中に、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiの合金化材料を添加しない。そして、連続鋳造ビレットを用いて精錬した溶融鋼を厚さ220mmの連続鋳造ビレットとした。連続鋳造ビレットの化学組成を同様に表1に示す。
(2)ステップ1で得られた連続鋳造ビレットを加熱炉で加熱した。加熱温度および保持時間を表3に示す。その後順次粗圧延、仕上げ圧延、巻取によって熱間圧延コイルプレートを得た。粗圧延で得られた中間ビレットの厚さ、仕上げ圧延時の圧延開始温度、圧延終了温度、総圧下率、得られた熱間圧延板の厚さおよび巻取時の巻取温度を表3に示す。
【0050】
【0051】
(3)ステップ2で得られた熱間圧延コイルプレートを、純乾燥N2雰囲気中で焼ならしした。焼ならし工程は一定速度で行った。焼ならし温度、保持時間を表4に示す。焼ならし終了後、各実施例の鋼板の金属組織を試験した。測定された未再結晶組織の面積比、再結晶粒子径をそれぞれ表4に示す。ここで、未再結晶組織の面積比は、鋼板サンプリング断面の総面積に対する未再結晶組織の面積の割合である。
【0052】
【0053】
(4)ステップ3で得られた鋼板を酸洗し、酸洗後、予熱しないまま、直接シングルスタンド冷間圧延を行った。ここで、シングルスタンド冷間圧延期間中に、5パス圧延を行った。総圧下率は85±3%であり、最終パス以外の各パスの圧下率はいずれも30%以上であった。得られた鋼板の厚さを表1に示す。各パスの圧下ゲージを表5に示す。
【0054】
【0055】
(5)ステップ4で得られた鋼板をH2+N2の混合雰囲気中で焼鈍した。焼鈍工程は一定速度で行った。焼鈍温度、保持時間を表6に示す。焼鈍終了後、鋼板に対して順次冷却、コーティングおよび仕上げを行った。これによって、各実施例の無方向性珪素鋼の完成品を得た。
【0056】
【0057】
上記実施例1~6から分かるように、本発明の実施形態の無方向性珪素鋼は、優れた磁気性能を有するだけでなく、強度が高く、合金化材料のコストが低く、生産難易度が低く、生産コストが低く、新エネルギー自動車の駆動モータへの適用要件を満たす。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼、連続鋳造、熱間圧延、焼ならし、酸洗、予熱なしシングルスタンド冷間圧延、焼鈍、冷却、コーティングおよび仕上げを順次行って、0.25mm~0.35mmの任意厚さの無方向性珪素鋼を調製し、
連続鋳造工程において、得られた連続鋳造ビレットの化学組成は質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%、Mn/S≧380、Al/N≧200を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、
熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを順次加熱、粗圧延、仕上げ圧延、巻取して熱間圧延コイルプレートを得、仕上げ圧延時の圧延開始温度は950±20℃であり、圧延終了温度は840±20℃であり、総圧下率は94~95%であり、巻取時の巻取温度は620±20℃であり、
焼ならし工程において、未再結晶組織の面積の割合は5%~20%である、ことを特徴とする新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項2】
熱間圧延工程において、連続鋳造工程で得られた連続鋳造ビレットを1080℃~1110℃に加熱して160min~180min保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項3】
焼ならし工程において、焼ならし温度を840℃~860℃とし、180s~200s保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項4】
焼鈍工程において、焼鈍温度を960℃~980℃とし、40s~45sに保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項5】
シングルスタンド冷間圧延工程において、マルチパス圧延を行い、総圧下率は85±3%であり、最終パス以外の各パスの圧下率はいずれも30%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項6】
前記熱間圧延工程において、厚さ220mmの連続鋳造ビレットを厚さ35mm~40mmの中間ビレットに粗圧延した後、厚さ2.00mm~2.30mmの熱間圧延板に仕上げ圧延する、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項7】
前記無方向性珪素鋼は、厚さ0.25mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは35mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.00mmである、または、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.30mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは37.5mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.15mmである、または、前記無方向性珪素鋼は厚さ0.35mmの鋼板であり、前記中間ビレットの厚さは40mmであり、前記熱間圧延板の厚さは2.30mmである、ことを特徴とする請求項6に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項8】
製鋼工程において、Cu、Cr、Ni、Nb、V、Tiの合金化材料を添加しない、ことを特徴とする請求項1に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼の生産方法。
【請求項9】
新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼であって、
前記無方向性珪素鋼の化学組成は、質量%で、Si:2.95%~3.15%、Al:0.75%~0.95%、Si+2Al:4.6%~4.9%、Mn:0.5%~0.7%、Sn:0.03%~0.04%、Cu≦0.03%、Cr≦0.03%、Ni≦0.03%、Cr+Ni+Cu≦0.07%、Nb≦0.004%、V≦0.004%、Ti≦0.004%、Nb+V+Ti≦0.008%、C≦0.0025%、P≦0.015%、S≦0.0015%、N≦0.004%、C+S+N≦0.007%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物であり、Mn/S≧380、Al/N≧200である、ことを特徴とする新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素鋼。
【請求項10】
前記無方向性珪素鋼の再結晶粒子径は50μm~80μmである、ことを特徴とする請求項9に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素
鋼。
【請求項11】
前記無方向性珪素鋼の降伏強度≧460Mpa、引張強度≧550Mpa、鉄損P
1.0/400≦18.5W/kg、磁束密度B
5000≧1.67Tである、ことを特徴とする請求項9に記載の新エネルギー駆動モータ用の無方向性珪素
鋼。
【請求項12】
前記無方向性珪素鋼は厚さ0.25mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦17.5W/kgである、または、厚さ0.30mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦18.0W/kgである、または、厚さ0.35mmの鋼板であり、鉄損P
1.0/400≦18.5W/kgである、ことを特徴とする請求項11に記載の無方向性珪素鋼。
【国際調査報告】