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特表2024-540907経カテーテル手術のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】経カテーテル手術のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20241029BHJP
   A61B 18/24 20060101ALI20241029BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61B18/24
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523435
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022078352
(87)【国際公開番号】W WO2023069983
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,451
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】デュポン ピエール イー.
(72)【発明者】
【氏名】エルマリア サミー
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA02
4C026BB01
4C026BB10
4C026DD03
4C026FF17
4C160KK03
4C160KK12
4C160MM33
4C160NN01
4C160NN15
(57)【要約】
組織を切り裂くためのシステムは、第一の露出窓および第二の露出窓において組織を切り裂くように構成されている1つまたは複数の切り裂き装置を含むカテーテルを含む。システムはまた、1つまたは複数のアライナを含み、1つまたは複数のアライナは、展開可能であり、展開すると、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置と組織との間の接触を促進するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の露出窓および第二の露出窓において組織を切り裂くように構成されている1つまたは複数の切り裂き装置を含む、カテーテル;ならびに
展開可能であり、展開すると、該第一の露出窓および/または該第二の露出窓において該1つまたは複数の切り裂き装置と該組織との間の接触を促進するように構成されている、1つまたは複数のアライナ
を含む、組織を切り裂くためのシステム。
【請求項2】
第一の露出窓が、1つまたは複数の切り裂き装置のうちのある切り裂き装置が組織を穿刺して該組織中に開口を形成することを可能にするようにカテーテル中に配設され;
該カテーテルの少なくとも一部が該組織の該開口中に配置されているとき、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナが、展開すると、該組織と第二の露出窓との間の接触を促進するように配設されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナが、展開すると、切り裂き装置による組織の穿刺のための該組織に対するカテーテルの位置決めを促進するように配設されている、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
第一のアライナが展開するとき、第二のアライナが該第一のアライナからは組織の反対側に配置されている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
第一の露出窓と第二の露出窓とが隣接する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つに結合可能であり、起動するとエネルギーを組織に伝達するように構成されているエネルギー源であって、伝達されるエネルギーが、第一の露出窓および/または第二の露出窓において該1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つを通って該組織へと通る、エネルギー源
をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つが光ファイバを含み、
エネルギー源が、レーザエネルギーを組織に伝達するように構成されたレーザ源であり、伝達されるレーザエネルギーが、該光ファイバを通して第一の露出窓および/または第二の露出窓において組織へと通って該組織を切り裂く、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の電極であり、
エネルギー源が、電気手術エネルギーを組織に伝達するように構成された電気手術エネルギー源であり、伝達される電気手術エネルギーが、1つまたは複数の電極から、またはそれらの間で、第一の露出窓および/または第二の露出窓において組織へと通って該組織を切り裂く、請求項6記載のシステム。
【請求項9】
カテーテルが、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み;
第一の露出窓が、該カテーテル中、第二の露出窓に対して遠位に配設され;
第二の露出窓が、該カテーテル中、該1つまたは複数のアライナのうちの該少なくとも1つに対して遠位に配設されている、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
カテーテルが、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み;
第一の露出窓が、該カテーテル中、該1つまたは複数のアライナのうちの該少なくとも1つに対して遠位に配設され;
該1つまたは複数のアライナのうちの該少なくとも1つが、該カテーテル中、第二の露出窓に対して遠位に配設されている、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
第二のカテーテルをさらに含み、
前記カテーテルが該第二のカテーテルに通して配置可能であり;かつ
該第二のカテーテルが1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
切り裂き、デブリの排出、および可視化を容易にするために第一の露出窓および/または第二の露出窓の方向に作業容積を送達するための1つまたは複数の作業流路をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
第二のカテーテルをさらに含み、
前記カテーテルが該第二のカテーテルに通して配置可能であり;かつ
該第二のカテーテルが、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置と接触している組織を可視化するためのイメージングシステムを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
1つまたは複数のアライナが、
拡張可能なバルーン;
カテーテルに回転可能に結合された1つまたは複数のヒンジ式アーム;または
該カテーテルの遠位端における変形可能なセグメント
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
第一の露出窓および第二の露出窓において組織を切り裂くように構成されている、1つまたは複数の切り裂き装置;ならびに
展開可能であり、展開すると、該第一の露出窓および/または該第二の露出窓において該1つまたは複数の切り裂き装置と該組織との間の接触を促進するように構成されている、1つまたは複数のアライナ
を含む、組織を切り裂くためのカテーテル。
【請求項16】
第一の露出窓が、1つまたは複数の切り裂き装置のうちのある切り裂き装置が組織を穿刺して該組織中に開口を形成することを可能にするようにカテーテル中に配設され;
該カテーテルの少なくとも一部が該組織の該開口中に配置されているとき、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナが、展開すると、該組織と第二の露出窓との間の接触を促進するように配設されている、請求項15記載のカテーテル。
【請求項17】
1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナが、展開すると、切り裂き装置による組織の穿刺のための該組織に対するカテーテルの位置決めを促進するように配設されている、請求項16記載のカテーテル。
【請求項18】
カテーテルを組織に向けて前進させる工程;
該組織中に開口を形成するために、該カテーテルの第一の露出窓において該組織を穿刺する工程;
該カテーテルの少なくとも一部分を該組織中の該開口に通して前進させる工程;
該カテーテルの第二の露出窓において切り裂き装置と該組織との間の接触を促進するために、1つまたは複数のアライナを展開させる工程;および
該カテーテルの該第二の露出窓において該組織をスライスする工程
を含む、方法。
【請求項19】
切り裂き装置による組織の穿刺のための該組織に対するカテーテルの位置決めを促進するために、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナを展開させる工程;および
第二の露出窓において該組織と該切り裂き装置との間の接触を促進するために、該カテーテルの少なくとも一部が該組織の開口中に配置されているとき、該1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナを展開させる工程
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第二のアライナが展開するとき、第一のアライナが該第二のアライナからは組織の反対側に配置されている、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下、その内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、2021年10月19日に出願された米国特許仮出願第63/257,451号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
技術の背景
経カテーテル心臓弁修復置換術は、手術を受けるには病状が重すぎる心不全患者の治療に変革をもたらした。経験ベースの増加に伴い、この処置法は、その有効性および安全性により、より若く、より健康な患者へと対象を拡大することが可能になっている。
【0003】
しかし、このより若い患者集団は、彼らが受け入れる埋め込みデバイスよりも長く生きることができるため、新たな課題を提示する。外科的再手術は、以前に埋め込まれたデバイスが新たな修復およびデバイスに干渉しないよう、その取り出しが容易になっているが、これは、経カテーテル処置の場合には簡単ではない。また、長期的な炎症反応を最小限にするために多くの場合に望ましいデバイス内皮化のせいで、長期の埋め込み後に容易に取り出し可能であるようにデバイスを設計することは困難である。その結果、新たな修復を可能にするために自己組織および以前に埋め込まれたデバイスを確実に改変する、または取り出すことができるような手術を実施するためには、新たな技術およびツールが必要である。
【0004】
臨床的に重要なこのような種類の問題は、弁尖の切断を必要とする。たとえば、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)においては、新たな弁が、既存の自己弁尖または人工弁尖による冠動脈の閉塞を引き起こすおそれがある。閉塞を防ぐために、既存の弁尖を真っ二つにスライスする、または取り出す必要がある。第二の例として、経カテーテル僧帽弁置換術においては、左心室流出路が開いたまま残ることを保証するために、ときには自己前尖の一部を除去する必要がある。または、弁が以前に修復されているならば、前尖を切断して、クリップが後尖に付いたまま残り、新たな弁によって左心室自由壁に押し当てられるようにしなければならない。
【0005】
心臓内部の組織を切断する際の大きな課題は、組織が石灰化沈着物を含むことである。このような弁尖および弁輪組織の石灰化物は、しばしば、修復されなければならない弁狭窄の原因となる。いくつかのグループが、弁尖におけるカルシウム沈着物を破砕するためのカテーテル送達式衝撃波を提案している。同様に、冠動脈の中および周囲の石灰化病変は狭窄およびステント内再狭窄を招く。いくつかの技術は、バルーン拡張を可能にするために、衝撃波発生器を備えた液体充填バルーンを使用して、血管を取り囲む組織中のカルシウムを破砕する。中程度に石灰化した病変の閉塞した血管を開通させるためにはエキシマレーザが使用される。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、第一の露出窓および第二の露出窓において組織を切り裂くように構成されている1つまたは複数の切り裂き装置(lacerator)を含むカテーテル;ならびに、展開可能であり、展開すると、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置と組織との間の接触を促進するように構成されている1つまたは複数のアライナを含む、組織を切り裂くためのシステムに関する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、第一の露出窓が、1つまたは複数の切り裂き装置のうちのある切り裂き装置が組織を穿刺して組織中に開口を形成することを可能にするようにカテーテル中に配設され;カテーテルの少なくとも一部が組織の開口中に配置されているとき、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナが、展開すると、組織と第二の露出窓との間の接触を促進するように配設されている、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナが、展開すると、切り裂き装置による組織の穿刺のための組織に対するカテーテルの位置決めを促進するように配設されている、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、第一のアライナが展開するとき、第二のアライナが第一のアライナからは組織の反対側に配置されている、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、第一の露出窓と第二の露出窓とが隣接する、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つに結合可能であり、起動するとエネルギーを組織に伝達するように構成されたエネルギー源をさらに含み、伝達されるエネルギーが、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つを通って組織へと通る、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つが光ファイバを含み;エネルギー源が、レーザエネルギーを組織に伝達するように構成されたレーザ源であり、伝達されるレーザエネルギーが、光ファイバを通って第一の露出窓および/または第二の露出窓において組織へと通って組織を切り裂く、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の切り裂き装置のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の電極であり;エネルギー源が、電気手術エネルギーを組織に伝達するように構成された電気手術エネルギー源であり、伝達される電気手術エネルギーが、1つまたは複数の電極から、またはそれらの間で、第一の露出窓および/または第二の露出窓において組織を通過して組織を切り裂く、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、カテーテルが1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み;第一の露出窓が、カテーテル中、第二の露出窓に対して遠位に配設され;第二の露出窓が、カテーテル中、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つに対して遠位に配設されている、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、カテーテルが1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み;第一の露出窓が、カテーテル中、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つに対して遠位に配設され;1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つが、カテーテル中、第二の露出窓に対して遠位に配設されている、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、第二のカテーテルをさらに含み、カテーテルが第二のカテーテルに通して配置可能であり;かつ第二のカテーテルが1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含む、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、切り裂き、デブリの排出および可視化を容易にするために第一の露出窓および/または第二の露出窓の方向に作業容積(working volume)を送達するための1つまたは複数の作業流路をさらに含むシステムに関する。いくつかの態様において、本開示は、第二のカテーテルをさらに含み、カテーテルが第二のカテーテルに通して配置可能であり;かつ第二のカテーテルが、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置と接触している組織を可視化するためのイメージングシステムを含む、システムに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数のアライナが、拡張可能なバルーン;カテーテルに回転可能に結合された1つまたは複数のヒンジ式アーム;またはカテーテルの遠位端における変形可能なセグメントの少なくとも1つを含む、システムに関する。
【0008】
本開示は、第一の露出窓および第二の露出窓において組織を切り裂くように構成されている1つまたは複数の切り裂き装置;ならびに、展開可能であり、展開すると、第一の露出窓および/または第二の露出窓において1つまたは複数の切り裂き装置と組織との間の接触を促進するように構成されている1つまたは複数のアライナを含む、組織を切り裂くためのカテーテルに関する。
【0009】
いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の切り裂き装置のうちのある切り裂き装置が組織を穿刺して組織中に開口を形成することを可能にするように、第一の露出窓がカテーテル中に配設され;カテーテルの少なくとも一部が組織の開口中に配置されているとき、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナが、展開すると、組織と第二の露出窓との間の接触を促進するように配設されている、カテーテルに関する。いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナが、展開すると、切り裂き装置による組織の穿刺のための組織に対するカテーテルの位置決めを促進するように配設されている、カテーテルに関する。
【0010】
本開示は、カテーテルを組織に向けて前進させる工程;カテーテルの第一の露出窓において組織を穿刺して組織中に開口を形成する工程;カテーテルの少なくとも一部分を組織中の開口に通して前進させる工程;1つまたは複数のアライナを展開させて、カテーテルの第二の露出窓において切り裂き装置と組織との間の接触を促進する工程;カテーテルの第二の露出窓において組織をスライスする工程を含む、方法に関する。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数のアライナのうちの第一のアライナを展開させて、切り裂き装置による組織の穿刺のための組織に対するカテーテルの位置決めを促進する工程;およびカテーテルの少なくとも一部が組織の開口中に配置されているとき1つまたは複数のアライナのうちの第二のアライナを展開させて、第二の露出窓において組織と切り裂き装置との間の接触を促進する工程をさらに含む、方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、第二のアライナが展開するとき、第一のアライナが第二のアライナからは組織の反対側に配置されている、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面を参照して本開示の様々な態様をさらに説明することができる。いくつかの図を通して類似の構造が類似の符番で参照されている。示される図面は必ずしも一定の縮尺で描かれてはおらず、概して、本開示の原理を説明することに重きが置かれている。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的として解釈されるべきではなく、1つまたは複数の例示的態様を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な基礎としてのみ解釈されるべきである。
【0013】
図1】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための例示的な経カテーテル手術システム100を示す。
図2】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための経カテーテル手術システム100の例示的なカテーテル先端設計を示す。
図3】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための経カテーテル手術システム100のカテーテル先端に組み込まれた灌注および吸引機構を示す。
図4】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、1つまたは複数のアライナを含む例示的なカテーテルを示す。
図5】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、1つまたは複数のアライナを含む例示的なカテーテルを示す。
図6】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、1つまたは複数のアライナを含む例示的なカテーテルを示す。
図7】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、アライナとして1つまたは複数のヒンジ式アームを含む例示的なカテーテルを示す。
図8】1つまたは複数の態様による、図7のカテーテルを用いて経カテーテル手術を実施する例示的な方法を示す。
図9】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、アライナとして1つまたは複数の変形可能部分を含む例示的なカテーテルを示す。
図10】1つまたは複数の態様による、図9のカテーテルを用いて経カテーテル手術を実施する例示的な方法を示す。
図11】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのためのカテーテルの例示的なハンドルシステムを示す。
図12】1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術システムのための、アライナを展開させるための1つまたは複数の機械的機構を含むカテーテルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
添付の図面と併せて読まれる本開示の様々な詳細な態様が本明細書に開示される。しかし、開示される態様は単に例示的であることが理解されなければならない。加えて、本開示の様々な態様と関連して記される各例は、例示的であることを意図したものであり、限定的であることを意図したものではない。
【0015】
本明細書全体を通して、以下の用語は、そうではないことを文脈が明らかに指図しない限り、本明細書において明示的に関連する意味を有する。本明細書中で使用される「1つの態様において」および「いくつかの態様において」という語句は、同じ態様を指す場合もあるが、必ずしもそうではない。さらに、本明細書中で使用される「もう1つの態様において」および「いくつかの他の態様において」という語句は、異なる態様を指す場合もあるが、必ずしもそうではない。したがって、以下に記すように、本開示の範囲または精神を逸脱することなく、様々な態様を容易に組み合わせ得る。
【0016】
加えて、「~に基づいて」という語は排他的ではなく、そうではないことを文脈が明らかに指図しない限り、記載されていないさらなる要素に基づくことをも許す。加えて、本明細書全体を通して、単数形冠詞(「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」)の意味は複数の指示対象を含む。「~の中」の意味は「~の中」および「~の上」を含む。
【0017】
本開示は、経カテーテル手術のシステムおよび方法を記載する。以下の態様は、電気手術および他の経カテーテル心臓手術を含む技術分野における技術的課題、欠点および/または欠陥を克服する技術的解決手段および技術的改善を提供する。以下さらに詳細に説明するように、本明細書における技術的解決手段および技術的改善は、石灰化物切断の改善、手術侵襲性の低減および手術領域の直接視覚化の局面を含む。このような技術的特徴に基づいて、さらなる技術的利点がこれらのシステムおよび方法のユーザおよび術者に利用可能になる。そのうえ、開示される技術の様々な実用例が記載され、これらが、当技術分野における新規かつ有用な改善でもあるさらなる実用的利点をユーザおよび術者に提供する。
【0018】
経カテーテル組織切断は通常、高周波エネルギーをガイドワイヤに通して、拍動する心臓内または血管内の組織を切断または穿通する経カテーテル電気手術を使用して実施される。組織中の特定の位置にエネルギーを集中させるために、ガイドワイヤは、切断の領域を除いて絶縁され、血液は、ブドウ糖などの非導電性無菌溶液で置き換えられる。
【0019】
経カテーテル電気手術の弁への応用例は、BASILICA(bioprosthetic or native aortic scallop intentional laceration to prevent iatrogenic coronary artery obstruction)術、LAMPOON(laceration of the anterior mitral leaflet to prevent left ventricular outflow obstruction)術およびELASTA-Clip(electrosurgical laceration and stabilization of MitraClip)術を含む。
【0020】
しかし、従来の経カテーテル電気手術的切断には欠点があるといえる。これらの欠点の3つの例が、(1)石灰化物を切り開くことができないこと、(2)煩雑な処置、および(3)組織を直接的には視覚化することができないこと、である。
【0021】
第一の欠点は、電気手術は、組織を切り開くのには有効であるが、自己弁尖および人工弁尖によく見られる石灰化物を切り開くのには有効とはいえないことである。
【0022】
第二の欠点は、処置が煩雑であることである。この従来の手法を使用して弁尖をスライスするためには、弁尖に通してカテーテルループを形成しなければならない。これは、まず、電気手術を使用して弁尖に穴を切り開けることを要する。次いで、第二のカテーテルを導入して、弁尖を通って突き出る第一のカテーテルの端部を捕えて、それを患者から引き抜くことができるようにしなければならない。第一のカテーテルの、絶縁材が除去されているV字形部分を、それが弁尖中の穴と整合するまで、血管系に通して引っ張らなければならない。次いで、第一のカテーテルに電気を通しながらその両端を引っ張って弁尖を切り開かなければならない。
【0023】
第三の欠点は、超音波および/またはX線透視法しか利用できないため、切断中に組織が直接的には視覚化されないことである。
【0024】
図1は、1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための例示的な経カテーテル手術システム100を示す。
【0025】
いくつかの態様において、経カテーテル手術は、上記3つの欠点の1つまたは複数に対処し、またはそれを解決し得る。いくつかの態様において、経カテーテル手術システム100が経カテーテルレーザ手術システムである場合、レーザの使用が石灰化物の切断を可能にする。レーザは、体内に見られる組織とミネラル化沈着物の両方を切断するのに有効である。たとえば、ホルミウム:ヤグおよびツリウムファイバレーザを使用するレーザ結石破砕術は、数あるミネラル化沈着物および石灰化物の中でもとりわけ腎結石を破砕するのに非常に有効な技術であると立証され得る。
【0026】
本明細書に記載される態様は組織の切り裂きに関する。本明細書に記載される「組織」は、任意の望ましい組織であり得る。たとえば、組織は、対象動物(たとえばヒトまたは非ヒト動物)の自然な組織成長によって生育または生成された組織などの自己組織であり得る。このような組織は、弁組織、弁尖組織、心組織または他の組織であり得る。もう1つの例として、組織は、非自己組織、たとえば、別の動物(たとえば別のヒトまたは非ヒト動物)によって生育され、対象動物内に配置された組織、対象動物内に配置された合成組織(たとえば人工弁尖)または他の組織であり得る。組織は、潜在的に石灰化した組織であってもよい。
【0027】
いくつかの態様において、経カテーテル処置は、経カテーテル手術システム100に使用される1つまたは複数のカテーテルの設計により、煩雑さが軽減され得る。いくつかの態様において、経カテーテル処置は、レーザ手術の使用により、煩雑さが軽減され得る。いくつかの態様において、経カテーテル手術システム100は、1つまたは複数の切り裂き装置105の少なくとも1つに結合可能であり、起動するとエネルギーを所望の組織に伝達するように構成されたエネルギー源104を含み得る。いくつかの態様において、たとえば心臓内の経カテーテルレーザ手術のためにエネルギー源104から伝達されたエネルギーは、第一のカテーテル110、すなわち送達チューブを通過し得る1つまたは複数の切り裂き装置105を介して所望の組織に送達され得る。いくつかの態様において、第一のカテーテル110は、アウターシース102を有する第二のカテーテル101の中を通過し得る。いくつかの態様において、第二のカテーテル101およびアウターシース102は操舵可能および/または回転可能であり得る。いくつかの態様において、第二のカテーテル101、特に第二のカテーテル101のアウターシース102は、第一のカテーテル110、第一のカテーテル110内の1つまたは複数の切り裂き装置105、作業流体および/または作業容積をはじめとする1つまたは複数の要素を所望の組織に送達するために使用され得る。いくつかの態様において、生理食塩水または別の流体を第二のカテーテル101に通してアウターシース102の遠位端の周辺、第一のカテーテル110の遠位端の周辺および/または1つまたは複数の切り裂き装置105の遠位端106の周辺に流すことにより、切り裂き装置105と組織との間の接触区域から血液を瀉出することができる。第一のカテーテル110は、ステンレス鋼、ニッケルチタンまたは任意の他の望ましい材料を含み得る。いくつかの態様において、以下さらに詳細に説明するように、第一のカテーテル110はインナーチューブおよび中間シースを含み得る。また、いくつかの態様において、発生する任意のデブリを捕えるために、塞栓保護フィルタが使用されてもよい。本明細書中で使用される「遠位」という語は、第二のカテーテル101(または第一のカテーテル110)のハンドル(このハンドルから、ユーザは第二のカテーテル101(または第一のカテーテル110)を操作し得る)から離れる方向を指す。本明細書中で使用される「近位」という語は、第二のカテーテル101(または第一のカテーテル110)のハンドルに向かう方向を指す。
【0028】
上記従来の経カテーテル電気手術の第二および第三の欠点は関連している。標準的なカテーテルおよびイメージングシステムは、カテーテル先端を弁尖に配置し、その地点を焼いて穴を開けるのには十分に正確である。しかし、標準的なカテーテルおよびイメージング技術では、任意の線または曲線に沿って組織を切り開くことは不可能である。標準的なカテーテルおよびイメージング技術は、組織中の穴にワイヤループを通した後、ループを引っ張ることができる方向に切断線を形成することを可能にするだけである。
【0029】
図1および2を参照すると、いくつかの態様において、第二のカテーテル101は、バルーンカテーテルまたは任意の他の適当なカテーテルタイプであり得る。たとえば、いくつかの態様において、第二のカテーテル101はバルーンカテーテルであり得る。いくつかの態様において、第二のカテーテル101は、アウターシース102と、アウターシース102を中心にそれに対して封着された関係で形成された、拡張させ得るバルーン211とを含み得る。いくつかの態様において、第二のカテーテル101はその遠位端に開口を含み、この開口が、患者の組織に向けられ、1つまたは複数のデバイスまたは要素、たとえば第一のカテーテル110をその中に通して患者の組織に送ることを可能にし得る。第二のカテーテル101の遠位端の開口はアウターシース102の遠位端にあり得る。いくつかの態様において、組織は、潜在的に石灰化した組織、たとえば弁組織(たとえば弁尖、弁輪、腱索など)もしくは動脈組織または他の心組織をはじめとする心組織を含み得る。
【0030】
いくつかの態様において、バルーン211は、第二のカテーテル101の遠位端に、切り裂かれる組織の近くで、アウターシース102に対して封着された関係で位置し得る。第二のカテーテル101の遠位端に位置し、切り裂かれる組織の近くに位置することにより、バルーン211は、第二のカテーテル101および切り裂かれる組織に対して位置決めされ、配置されて、バルーン211が膨らむとき、バルーン211の少なくとも一部分が組織と接触するようにし得る。いくつかの態様において、バルーン211を膨らませるために、流体をアウターシース102に通してバルーン211に提供してもよい。
【0031】
いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105の入った第一のカテーテル110を、第二のカテーテル101のアウターシース102に通して前進させて、第一のカテーテル110の遠位端および1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つの遠位端106が第二のカテーテル101の遠位端に向かって、またはその中を通って動くようにし得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105を、第一のカテーテル110および第二のカテーテル101のアウターシース102に通して前進させて、1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つの遠位端106が第一のカテーテル110の遠位端および第二のカテーテル101の遠位端に向かって、またはその中を通って動くようにし得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105の近位端はエネルギー源104に結合され得る。いくつかの態様において、エネルギー源104は、制御可能に起動されるとエネルギーを1つまたは複数の切り裂き装置105に通し、1つまたは複数の切り裂き装置105の遠位端106(または他の部分)から外へ、たとえば組織に向けて伝達し、それによって組織に照射を加えて組織を切り裂き得る。本明細書に記載される「切り裂く(lacerate)」とは、関心対象の組織に穴を開ける、または穿つことを含み得る。本明細書に記載される「切り裂く」はまた、関心対象の組織の一定長さ分をスライスまたは切断することを含み得る。
【0032】
いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つは光ファイバを含み、エネルギー源104は、レーザエネルギーを光ファイバに通して伝達するためのレーザエネルギー源を含む。光ファイバの遠位端106はファイバチップを含み得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つは電気手術ワイヤを含み、エネルギー源104は、電気手術エネルギーを電気手術ワイヤに通して伝達するための、RFエネルギー源などの電気手術エネルギー源を含む。電気手術ワイヤの遠位端106は電極を含み得る。電気手術態様において、システムは単極であっても双極であってもよい。単極システムにおいて、電気手術ワイヤは、その上に(たとえば、その遠位端106の近くに)1つの非絶縁電極を有し得、患者は、別の位置で患者に取り付けられた、または他のやり方で患者と接触する、たとえばパッチを介して患者の背または臀部に取り付けられた、第二の電極を有するであろう。双極システムにおいては、小さな距離だけ離間され、1つまたは複数の電気手術ワイヤに(たとえば、1つまたは複数の電気手術ワイヤの遠位端106またはその近くで)結合された2つの電極があり得、エネルギーは、2つの電極間で組織を通って流れることになる。したがって、いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105は1つまたは複数の電極であり、エネルギー源は、切り裂かれる組織に電気手術エネルギーを伝達するように構成された電気手術エネルギー源であり、伝達される電気手術エネルギーは、1つまたは複数の電極から、またはそれらの間で、組織を通って流れる。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つは、たとえば熱エネルギーおよび/または極低温エネルギーをはじめとする任意の他の望ましいエネルギー源を伝達するのに適し得、エネルギー源104は、任意の他の望ましいエネルギーを1つまたは複数の切り裂き装置105に伝達するのに適し得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105のうちの少なくとも1つは、鋭利な刃などの機械的切り裂き装置であってもよく、エネルギー源104に結合されてもよいし、結合されなくてもよい。
【0033】
いくつかの態様において、本開示の経カテーテル手術はスティーラブルカテーテルシステムを含み得る。1つまたは複数の切り裂き装置105がスティーラブルカテーテルシステムに組み込まれて、それにより、エネルギー送達機構をスティーラブルカテーテルシステムと組み合わせ得る。いくつかの態様において、この組み合わせが、切り裂かれる組織に対する1つまたは複数の切り裂き装置105、たとえば1つまたは複数の切り裂き装置105の遠位端106の正確な位置決めおよび動きを可能にする。この機能は、たとえばワイヤループを形成するステップなしで弁尖の切り裂きを可能にして、それにより、手術を効果的に完了するために必要なステップを最少に減らし、侵襲性を下げることができる。さらに、切り裂きの方向は、ループを引っ張ることによって決まる方向に限定されない。たとえば、典型的な経カテーテル電気手術では、基部-先端部方向の弁尖切り裂きのみが可能である。弁尖を異なるパターンで切り裂くこと、または弁尖を完全に切除することが望ましい場合もあり、それをこの経カテーテルレーザ切り裂きが可能にする。
【0034】
図2は、1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための経カテーテル手術システム100の例示的なカテーテル先端設計を示す。
【0035】
いくつかの態様において、組織切り裂きの安全性および有効性をさらに改善するために、経カテーテル手術システム100は、切り裂き、デブリの排出および可視化を容易にするために、第二のカテーテル101のカテーテル先端103で、また、いくつかの態様では、第一のカテーテル110の遠位端で、作業容積を送達するための1つまたは複数の作業流路を含み得る。カテーテル先端103は、第二のカテーテル101の遠位端に配置され得る。第一のカテーテル110および1つまたは複数の切り裂き装置105が送達されるとき通過し得るカテーテル先端103は、1つまたは複数の切り裂き装置105を取り囲み得る、カテーテル先端103に組み込まれた作業容積を含むように構築されることができる。いくつかの態様において、作業容積は、周囲の血液から切り裂きゾーンを封じ込めるように作用し得る。この容積は、灌注および吸引のための、第二のカテーテル101中の1つまたは複数の作業流路に接続されることができる。たとえば、血液を押し出し、切断を高めるための、生理食塩水などの無菌溶液の灌注。切断デブリを排出するためには吸引を使用し得る。いくつかの態様において、不透明である周囲の血液から切り裂きゾーンを密封することにより、作業容積は、組織切り裂き中に切り裂きゾーンのイメージングを増強し得る。これは以下さらに詳細に説明する。
【0036】
いくつかの態様において、カテーテル先端103は、切断される組織の組織層の背面で作業容積を囲い込む延長部材を含んでもよい。
【0037】
いくつかの態様において、カテーテル先端103は多くの方法で設計することができる。いくつかの態様において、第一のカテーテル110は、1つまたは複数の切り裂き装置105のためのより大径のルーメンを含み得、このより大径のルーメンは、生理食塩水、ブドウ糖または他の流体がたとえば第一のカテーテル110の遠位端で第一のカテーテル110から流れ出ることを許し得る。カテーテル先端103の代替設計は、灌注と吸引の両方を提供する同心的作業流路を含む(図3を参照)。さらに、カテーテル先端103は、組織切り裂き中に、たとえば、イメージングおよび照明のためにそれぞれカメラ208および発光ダイオード(LED)209を使用して可視化を可能にする内視鏡イメージングを含むことができる。いくつかの態様において、可視化のための光学窓210は、透明な固体であってもよいし、ここに示すようなバルーン211であってもよい。図2の(A)は、血管系に通して誘導するためにバルーン211がしぼんでいる状態を示す。図2の(B)は、バルーン211が膨らんで組織とでより大径の接触領域を形成し、切断中に光学窓210に対して組織を保持するために把持フィンガ207が使用されることを示す。組織把持フィンガ207は、切断される組織の周囲に囲い込まれた容積を形成するために、固いカップ形状(図示せず)であってもよい。図2の(C)は、把持フィンガ207を引っ込めた状態の光学窓210を示す。組織把持フィンガ207は、組織を穿刺するために組織と切り裂き装置105との間の接触を促進するための、以下さらに詳細に説明するアライナであり得る。いくつかの態様において、以下さらに詳細に説明するように、切り裂き装置105を組織および把持フィンガに通して前進させて、押し込みおよび/または引っ張り切り裂き処置中に把持フィンガ207がアライナとして働くようにし得る。いくつかの態様において、バルーン211は、第一のカテーテル110および/または1つまたは複数の切り裂き装置105を光学窓210の中で中心に置く、または他のやり方で正確に配置し得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切り裂き装置105の位置および向きが作業容積に対して固定されてもよいし、1つまたは複数の切り裂き装置105が作業容積に対して移動可能であってもよい。
【0038】
いくつかの態様において、弁尖切断の安全性および有効性をさらに改善するために、第一のカテーテル110および/または1つまたは複数の切り裂き装置105が送達されるとき通過するカテーテル先端103は、切り裂きを直接的に可視化し得るよう、たとえばカテーテル先端103に組み込まれたカメラ208および/またはLED209を含む光学イメージングデバイス/システムを含むように構築されることができる。いくつかの態様において、生理食塩水などの透明な液体を使用して作業容積を満たすと、イメージングを容易にしながらも切り裂きを増強し得る。
【0039】
いくつかの態様において、組織切り裂きの安全性および有効性をさらに改善するために、第一のカテーテル110および/または1つまたは複数の切り裂き装置105が送達されるとき通過するカテーテル先端103は、たとえば、図2の組織把持フィンガ207などの把持機能または把持機構を使用して弁尖または他の組織を把持する能力を有する延長部材を有するように構築されることができる。いくつかの態様において、把持能力を有するカテーテル先端103は、切り裂き中にカテーテルに対する弁尖または他の組織の動きを制御するために使用されてもよいし、切り裂き中に弁尖または他の組織に対するカテーテルの動きを制御するために使用されてもよい。いくつかの態様において、把持能力を有するカテーテル先端103はまた、弁尖または他の組織を周囲の組織から切り離して、遠位の周辺構造を損傷することなく組織の全厚の切断を可能にするために使用されてもよい。
【0040】
いくつかの態様において、把持機構はまた、切り裂きに伴う流体およびデブリを封じ込めるために作業容積(たとえば、カテーテル先端103、周辺の弁尖組織、把持機構などが入る)を完全に囲い込むために使用されてもよい。
【0041】
いくつかの態様において、経カテーテル手術システム100は、血液中に逃げ込む切り裂きデブリを捕えるための塞栓保護フィルタを含んでもよい。いくつかの態様において、塞栓保護フィルタは、カテーテル先端103に組み込まれてもよいし、アウターシース102に組み込まれてもよいし、別個の構成要素であってもよい。
【0042】
図3は、1つまたは複数の態様による、経カテーテル手術のための経カテーテル手術システム100のカテーテル先端103に組み込まれた灌注および吸引機構を示す。
【0043】
いくつかの態様において、カテーテル先端103の作業流路は、たとえば、切り裂きおよびデブリ除去を最適化するための灌注および吸引のために、作業容積の作業流体を提供し、除去し得る。いくつかの態様において、図3の(A)および(B)は、灌注および吸引のための作業流路の2つの例を示す。
【0044】
いくつかの態様において、図3の(A)は、切り裂き装置105、いくつかの態様では、第一のカテーテル110および切り裂き装置105が、灌注のためのインナールーメン302および吸引のためのアウタールーメン303によって包囲されている、作業流路の同心的流路を示す。
【0045】
いくつかの態様において、図3の(A)は、切り裂き装置105、いくつかの態様では、切り裂き装置105を含む第一のカテーテル110が、灌注のための第二のルーメン305および吸引のための第三のルーメン306から切り離された第一のルーメン内にある、作業流路の代替流路を示す。いくつかの態様において、代替流路構成では、各ルーメン305/306と、切り裂き装置105、いくつかの態様では、第一のカテーテル110のためのルーメンとは、カテーテル先端103中の別々の開口である。
【0046】
本明細書には、システム100の吸引、灌注およびイメージング部品が第二のカテーテル101のアウターシースおよび先端103を通して配置されている態様を記載したが、これは非限定的な例であることが理解されるべきである。たとえば、第一のカテーテル110は、バルーン211、把持フィンガ207、カメラ208、LED209、灌注ルーメン302/305および/または吸引ルーメン303/306のいずれかまたはすべてを含み、構成要素のいずれかまたはすべてが第一のカテーテル110を通って延び、そこから展開するようになっていてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、経カテーテル手術システム100は、1つまたは複数の切り裂き装置105と切り裂かれる組織との間の接触を促進するための1つまたは複数のアライナを含み得る。いくつかの態様において、第一のカテーテル110は、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの態様において、第二のカテーテル101は、1つまたは複数のアライナのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの態様において、1つまたは複数のアライナは展開可能であり、展開すると、1つまたは複数の切り裂き装置105と組織との間の接触を促進するようになっている。いくつかの態様において、展開すると、1つまたは複数の切り裂き装置105は、第一のカテーテル110および/または第二のカテーテル101から外向きに拡張し得る。
【0048】
次に図4を参照すると、第一のカテーテル110がアライナ402とともに示されている。図示しないが、第一のカテーテル110は、上記態様のいずれかで説明した第二のカテーテル101中に少なくとも部分的に配置され得ることが理解されるべきである。加えて、第一のカテーテル110は、以下にさらに説明するように、インナーチューブおよび中間シースを含み得る。アライナ402は、第一のカテーテル110に展開可能に結合され得る。アライナ402は、拡張可能なバルーン、ヒンジ式アーム、第一のカテーテル110の変形可能な部分または切り裂き装置105と組織404との間の接触を維持するための任意の他の適当なデバイスもしくは機構であり得る。組織404は弁尖として断面図で示されているが、任意の他の望ましい組織が切り裂かれてもよいことが理解されるべきである。ユーザがアライナ402を選択的に展開し得るよう、1つまたは複数の制御機構が第一のカテーテル110を近位方向に通過し得る。たとえば、いくつかの態様において、バルーンアライナ402の膨張または拡張を可能にするために、流体流路が第一のカテーテル110の中を通過し得る。いくつかの態様において、たとえば、第一のカテーテル110の近位端にあるトリガが、ユーザがヒンジ式アームを選択的に展開させ、拡張させることを許し得る。
【0049】
いくつかの態様において、切り裂き装置105の第一の露出窓406および切り裂き装置105の第二の露出窓408が、切り裂き装置105と組織404との間の接触を可能にし得る。いくつかの態様において、第一の露出窓406と第二の露出窓408とは隣接する。いくつかの態様において、第一の露出窓406および第二の露出窓408は、第一のカテーテル110中に第一のカテーテル110の外面中の開口または部分的開口として配設される。たとえば、いくつかの態様において、第一の露出窓406は、第一のカテーテル110の最遠位端に軸方向開口として配設されて、切り裂き装置105が第一のカテーテル110から遠位方向に軸線に沿って通過することを許し得る。いくつかの態様において、以下さらに詳細に説明するように、第二の露出窓408は、第一のカテーテル110の半径方向外側の壁にスロットとして形成されて、切り裂き装置105が第二の露出窓408において軸方向と横方向の両方で組織404と接触することを許し得る。いくつかの態様において、第一の露出窓406は、カテーテル110中、第二の露出窓408に対して遠位に配設され、第二の露出窓408は、カテーテル110中、アライナ402に対して遠位に配設される。
【0050】
いくつかの態様において、切り裂き装置105は、第一のカテーテル110中での切り裂き装置105の遠位への前進に依存して、第一の露出窓406および/または第二の露出窓408で選択的に露出可能であるような、第一のカテーテル110の中を通って移動可能な単一の切り裂き装置であり得る。いくつかの態様において、第一のカテーテル110は2つの切り裂き装置105Aおよび105Bを含んでもよい。いくつかの態様において、第一の切り裂き装置105Aは、第一の露出窓406を通して露出して組織404と接触し得、第二の切り裂き装置105Bは、第二の露出窓408を通して露出して組織404と接触し得る。いくつかの態様において、第一の切り裂き装置105Aと第二の切り裂き装置105Bとは同じタイプであってもよい。たとえば、第一の切り裂き装置105Aおよび第二の切り裂き装置105Bはそれぞれ、レーザエネルギーを伝達するための光ファイバであってもよいし、電気手術エネルギーを伝達するための電気手術ワイヤ(または電極)であってもよい。いくつかの態様において、第一の切り裂き装置105Aと第二の切り裂き装置105Bとは異なるタイプであってもよい。たとえば、第一の切り裂き装置105Aが光ファイバであり、第二の切り裂き装置105Bが電気手術ワイヤ(または電極)であってもよいし、その逆であってもよい。
【0051】
いくつかの態様において、第一の露出窓406において、切り裂き装置105、すなわち第一の切り裂き装置105Aが組織404を穿刺して、組織404中に開口を形成し得る。いくつかの態様において、第二の露出窓408において、切り裂き装置105、すなわち第二の切り裂き装置105Bが組織404をスライスし得る。いくつかの態様において、図4に示すように、組織404の穿刺によって形成された組織404中の穴の中に第一のカテーテル110が少なくとも部分的に配置されている状態で、第一のカテーテル110および/または切り裂き装置105(または、態様によっては第二の切り裂き装置105B)を軸方向に振動させ、横方向に動かして組織404をスライスし得る。いくつかの態様において、アライナ402は、穿刺によって形成された組織404中の穴の中に第一のカテーテル110が少なくとも部分的に配置された後で展開されて、第二の露出窓408において切り裂き装置105(または、態様によっては第二の切り裂き装置105B)と組織404との間に、組織404の所望のスライスを促進するのに十分な接触を維持し得る。
【0052】
次に図5を参照すると、第一のカテーテル110のもう1つの態様が示されている。図5中、図4に関して詳述したものと同じまたは類似の特徴を示すために類似の符番が使用されている。図5に示す第一のカテーテル110は、本明細書中で注記される場合を除き、形状および機能において図4に示す第一のカテーテル110に類似し得る。具体的には、図5を参照すると、第一の露出窓406は、カテーテル110中、アライナ402に対して遠位に配設され、アライナ402は、カテーテル110中、第二の露出窓408に対して遠位に配設されている。図4を参照して詳述したように、アライナ402は、穿刺によって形成された組織404中の穴の中に第一のカテーテル110が少なくとも部分的に配置された後で展開されて、第二の露出窓408において切り裂き装置105(または、態様によっては第二の切り裂き装置105B)と組織404との間に、組織404の所望のスライスを促進するのに十分な接触を維持し得る。
【0053】
図4および5を参照すると、第一のカテーテル110の具体的な設計は、切り裂かれる特定の組織404、患者の特定の解剖学的構造、切り裂かれる所望の組織への接近の角度または方向などに依存して選択され得る。いくつかの態様において、図4の第一のカテーテル110は、押すことによって弁尖などの組織を切り裂くとき(すなわち、カテーテル110を図4に示す方向412に前進させて組織をスライスするとき)特に好都合であり得る。いくつかの態様において、図5の第一のカテーテル110は、引くことによって弁尖などの組織を切り裂くとき(すなわち、カテーテル110を図5に示す方向414に前進させて組織をスライスするとき)特に好都合であり得る。
【0054】
図6を参照すると、第一のカテーテル110のもう1つの態様が示されている。図6中、図4および図5に関して詳述したものと同じまたは類似の特徴を示すために類似の符番が使用されている。図6に示す第一のカテーテル110は、本明細書中で注記される場合を除き、形状および機能において図4および5に示す第一のカテーテル110に類似し得る。図6を参照すると、第一のカテーテル110は第一のアライナ402Aおよび第二のアライナ402Bを含む。第一の露出窓406は、カテーテル110中、第一のアライナ402Aに対して遠位に配設され、第一のアライナ402Aは、カテーテル110中、第二の露出窓408に対して遠位に配設され、第二の露出窓408は、カテーテル110中、第二のアライナ402Bに対して遠位に配設されている。第一のアライナ402Aおよび第二のアライナ402Bは、同じタイプであってもよいし、異なるタイプであってもよい(たとえばバルーン、ヒンジ式アームなど)。第一のアライナ402Aおよび第二のアライナ402Bは、独立して展開可能または拡張可能であり得る。いくつかの態様において、組織404に対して近位にあるとき、第一のアライナ402Aを展開させて、第一の露出窓406において切り裂き装置105(または、いくつかの態様では、第一の切り裂き装置105A)と組織404との間の接触を促進して組織404を穿刺し得る。いくつかの態様において、切り裂き装置105は、第一のアライナ402Aの展開なしでも、第一の露出窓406において組織404を穿刺し得る。態様によっては、穿刺するために展開させた後、第一のアライナ402Aを折りたたんで、またはしぼませて、第一のカテーテル110の、第一のアライナ402Aを含む部分を、組織404に穿孔された開口に通して前進させるようにしてもよい。押し込みによる切り裂き(すなわち、矢印412の方向)の場合、その後、第二のアライナ402Bを展開または拡張させて、第二の露出窓408において切り裂き装置105(または、いくつかの態様では、第二の切り裂き装置105B)と組織404との間の接触を促進して、組織404をスライスし得る。したがって、第一のアライナ402Aは、第二のアライナ402Bが展開するとき、組織404の、第二のアライナ402Bとは反対側に配置され、または、引っ張りによる切り裂き(すなわち、矢印414の方向)の場合、組織404を穿刺し、カテーテル110を組織404中の開口に通して前進させた後、第一のアライナ402Aを展開または拡張させて、第二の露出窓408において切り裂き装置105(または、いくつかの態様では、第二の切り裂き装置105B)と組織404との間の接触を促進して、組織404をスライスし得る。
【0055】
次に図7を参照すると、アライナ402として1つまたは複数のヒンジ式アーム710を含む第一のカテーテル110の斜視図が示されている。第一のカテーテル110は、インナーチューブ720と、インナーチューブ720を包囲する中間シース730とを含むものとして示されている。インナーチューブ720と中間シース730とは互いに対して移動可能であり得る。第一のカテーテル110のインナーチューブ720は、第二の露出窓408の少なくとも一部分を画定するための切り欠き706を含み得る。第一のカテーテル110の中間シース730は、切り欠き706と重なって第二の露出窓408の少なくとも一部分を画定し得る切り欠き732を含み得る。切り裂き装置105は、重なり合った切り欠き706、732に通して露出させ得る。第一のカテーテル110のインナーチューブ720の最遠位端の開口714が第一の露出窓406の少なくとも一部分を画定し得る。中間シース730の最遠位端の開口738が開口714と重なり、第一の露出窓406を少なくとも部分的に画定し得る。いくつかの態様において、1つまたは複数のヒンジアーム710は、ダブルピンジョイント712によって第一のカテーテル110のインナーチューブ720に回転可能に結合され得る。1つまたは複数のヒンジ式アーム710は、第一のカテーテル110の縦軸から離れる方向に回転させて外向きに展開または拡張させ得る。1つまたは複数のヒンジ式アーム710は、折りたたまれる第一のカテーテル110の縦軸に向けて内向きに回転させ得る。ダブルピンジョイント712は、ダブルピンジョイント712および/または1つまたは複数のヒンジ式アーム710を切断することなく、切り裂き装置105がその中を通過することを許し得る。たとえば、上述したように、切り裂き装置105を開口714、738に通して遠位方向に前進させて組織を穿刺し得る。穿刺の後、切り裂き装置105を第一のカテーテル110中で近位方向に後退させて、組織が切り欠き706、732の中へと折りたたまれることを可能にし得る。次いで、切り裂き装置を第一のカテーテル110中で遠位方向に前進させて、切り欠き706、732の中へと折りたたまれた組織をスライスし得る。この切り裂き装置105の後退および前進を繰り返して、所望の経路に沿って組織をスライスし得る。たとえば、いくつかの態様において、第一のカテーテル110が所望の切断方向に弁尖を横切って横方向に動かされるとき、切り裂き装置105を切り欠き706、732内で軸方向に振動させ得る。図示するような1つまたは複数のヒンジ式アーム710は、特に弁尖の逆行性切り裂きを可能にし得る。
【0056】
次に図8A~8Cを参照すると、図7の第一のカテーテル110を使用する例示的な方法が示されている。図2を参照して詳述したように、バルーン211をアウターカテーテル101から展開させ、光学窓210(図2)を形成することができる。図2を参照して詳述した前述の利点を有することに加えて、バルーン211はまた、所望の位置で接触を維持するなど、切り裂き装置105と組織804との間の接触を維持することを支援し得る。たとえば、バルーン211は、拡張すると、組織804の少なくとも一部分(カテーテル101の所望の位置に対応する)の形状に適合する外形を有し得る。バルーン101を拡張させ、次いで組織804をバルーン211と接触させることにより、バルーン211は、外形がその一部分と整合する所望の位置へと動き得、移動により、バルーン211は、カテーテル101を所望の位置へと動かし得る。しかし、バルーン211は、図示されているが、第一のカテーテル110との使用のために必須とされないことが理解されるべきである。図8A中、カテーテル101が所望の位置に来たならば(バルーン211の結果として)、組織804を穿孔するために、切り裂き装置105を第一のカテーテル110の開口714、738(図7)に通して遠位方向に前進させ得る。その後、第一のカテーテル110を、1つまたは複数のヒンジ式アーム710が折りたたまれた状態で、組織804中に開けられた開口に通して前進させ得る。組織804中の開口に挿入した後、1つまたは複数のヒンジ式アーム710を図示のように外向きに展開させて、切り欠き706、732(図7)において切り裂き装置105と組織804との間の接触を維持し得る。次いで、図8Cに示すように、第一のカテーテルを矢印806の方向に引っ張って組織804を切り裂き得る。図7および図8A図8Cで説明した第一のカテーテル110はインナーチューブ720および中間シース730を含むものであったが、いくつかの態様では、第一のカテーテル110はインナーチューブ720のみによって画定されてもよく、中間シース730は第一のカテーテル110に組み込まれなくてもよいことが理解されるべきである。
【0057】
図7および図8A~8Cに関して1つまたは複数のヒンジ式アーム710を具体的に説明したが、1つまたは複数のヒンジ式アーム710は単にアライナ402の一例であることが理解されるべきである。たとえば、1つまたは複数のヒンジ式アーム710のアームは、図示するようにダブルピンジョイント712によってインナーチューブ110に結合される必要はない。ダブルピンジョイント712および/または1つまたは複数のヒンジ式アーム710の代わりに他の機構が使用されてもよい。単に例として、アライナ402を展開させるためにスライダクランクが使用されてもよい。いくつかの態様において、切り裂き装置105は、アライナ402に結合され、アライナを折りたたみ形態と展開形態との間で移行させる機構の少なくとも一部分であってもよい。
【0058】
次に図12Aを参照すると、第一のカテーテル110の態様が示されている。アライナ402は、ジョイント1204で第一のカテーテル110に結合され得る。切り裂き装置105は、第一のカテーテル110の中を通って近位方向に延びる制御ワイヤ1202に結合され得る。制御ワイヤ1202の遠位方向への前進が、切り裂き装置105を第一のカテーテル110中の第二の露出窓408に通して前進させ得る。切り裂き装置105の遠位端1206はアライナ402に結合され得る。したがって、制御ワイヤ1202の遠位方向への前進は、切り裂き装置105を第二の露出窓408に通して露出させると同時に、ジョイント1204を中心にアライナ402を回転させることにより、アライナ402を折りたたみ形態から展開形態へと移行させる。次いで、制御ワイヤ1202を近位方向に動かすことで切り裂き装置105を引っ込めて、切り裂き装置105が第二の露出窓408を通って露出せず、アライナ402が展開形態から折りたたみ形態へと移行するようにし得る。
【0059】
次に図12Bを参照すると、第一のカテーテル110の態様が示されている。アライナ402は、ジョイント1224で第一のカテーテル110に結合され得る。切り裂き装置105はスライダ1222に結合され得る。具体的には、切り裂き装置105の近位端がジョイント1226においてスライダ1222の遠位端に結合され得る。切り裂き装置105の遠位端はジョイント1228においてアライナ402に結合され得る。ジョイント1224、1226および1228はたとえばピンジョイントであり得る。スライダ1222の遠位方向への前進が、切り裂き装置105を第一のカテーテル110中の第二の露出窓408(図12A)に通して前進させ得る。アライナ402への切り裂き装置105の結合により、スライダ1222の遠位方向への前進は、切り裂き装置105を第二の露出窓408(図12A)に通して露出させると同時に、ジョイント1224を中心にアライナ402を回転させることにより、アライナ402を折りたたみ形態から展開形態へと移行させる。次いで、スライダ1222を近位方向に動かすことで切り裂き装置105を引っ込めて、切り裂き装置105が第二の露出窓408(図12A)を通って露出せず、アライナ402が展開形態から折りたたみ形態へと移行するようにし得る。
【0060】
図12Aおよび12Bを参照して詳述される態様において、機械的機構がアライナ402を折りたたみ形態と展開形態との間で移行させる。いくつかの態様において、機械的機構はヒンジ機構であり得る。切り裂き装置105は、アライナ402を折りたたみ形態と展開形態との間で移行させる機械的機構の少なくとも一部分を画定し得る。図12Aおよび12Bに示す態様において、第一の露出窓406(図4~6)を通して露出するための第二の切り裂き装置(たとえば、図4~6に示す第一の切り裂き装置105A)が用いられてもよいことが理解されるべきである。いくつかの態様において、図12Aおよび12Bに関して詳述した切り裂き装置105は電気手術用切り裂き装置である。
【0061】
次に図9を参照すると、第一のカテーテル110のもう1つの態様が示されている。第一のカテーテル110は中間シース930およびインナーチューブ920を含み得る。中間シース930はその遠位端に開口902を含み得、この開口902を通してインナーチューブ920を前進させ得る。開口902は中間シース930の遠位端壁にあってもよい。インナーチューブ920は、中間シース930のカニューレ内に少なくとも部分的に含まれてもよい。インナーチューブ920は、第二の露出窓408を画定する切り欠き906をインナーチューブ920の側壁中に含み得、その窓を通して切り裂き装置105を露出させ得る。いくつかの態様において、インナーチューブ920の一部分がアライナ402を画定する。いくつかの態様において、インナーチューブ920の最遠位部分がアライナ402を画定する。いくつかの態様において、アライナ402は、インナーチューブの遠位端でインナーチューブ920に結合またはその上に配置され得る。いくつかの態様において、アライナ402はインナーチューブ920の変形可能部分910であってもよい。いくつかの態様において、変形可能部分910は、中間シース930内に配置されたとき真っ直ぐになる(たとえば、切り欠き906の縦軸に対して)よう、弾性的に変形可能であってもよい。いくつかの態様において、変形可能部分910は、中間シース930から外に遠位方向に前進するとき、図示するような湾曲形状へと変形または展開し得る。いくつかの態様において、インナーチューブ920は、切り欠き906に対して遠位かつ変形可能部分910に対して近位に真っ直ぐなセグメント912を含む。真っ直ぐなセグメント912は長さ1mm以上であり得る。いくつかの態様において、真っ直ぐなセグメント912は長さ2mmである。いくつかの態様において、真っ直ぐなセグメント912は、切り裂き装置105が切り欠き906中で遠位方向に動かされるとき変形可能部分910が切断されないことを保証する。いくつかの態様において、第一のカテーテル110が所望の切断方向に弁尖を横切って横方向に動かされるとき、切り裂き装置105をインナーチューブ920内で軸方向に振動させ得る。インナーチューブ920の最遠位軸方向面に開口922が形成されて、第一の露出窓406を画定し得る。変形可能部分910が真っ直ぐである場合、切り裂き装置105を変形可能部分910および開口922に通して前進させて組織を穿刺し得る。変形可能部分910は、特に、組織の順行性切り裂きを可能にし得る。
【0062】
次に図10を参照すると、図9の第一のカテーテル110を使用する例示的な方法が示されている。図2を参照して詳述したように、バルーン211をアウターカテーテル101から展開させ、光学窓210(図2)を形成することができる。図2を参照して詳述した前述の利点を有することに加えて、バルーン211はまた、詳述したように、切り裂き装置105と組織1004との間の接触を維持することを支援し得る。インナーチューブ920が中間シース930内に配置された状態で、切り裂き装置を開口922(図9)の外へ遠位方向に前進させて、組織1004中に穴を穿ち得る。穿刺の後、切り裂き装置105を一定の距離だけ近位方向に後退させ、インナーチューブ920を中間シース930の外かつ組織1004中の穴の中に通して前進させて、変形可能部分910が外向きに展開し、湾曲することを許し得る。次いで、組織1004をスライスするために、切り裂き装置105を切り欠き906(図9)の中へと前進させ得る。矢印1010の方向に押す動作によって第一のカテーテル110を遠位方向に前進させるならば、展開される変形可能部分910が、バルーン211が組織1004と切り裂き装置105との間の接触を維持することを支援する。組織1004をスライスするために、先の態様で詳述したように、切り裂き装置を切り欠き906(図9)の中で振動させ得る。バルーン211は、第二のカテーテル101に結合され、アライナとして機能するものとして図示され、説明されるが、バルーン211は、その代わりに、図4に示すアライナ402と同様に配置されて、第一のカテーテル110に結合されてもよいことが理解されるべきである。
【0063】
図4~10の態様は、所望により、図1~3に関して詳述した特徴のいずれかまたはすべてと組み合わされてもよいことが理解されるべきである。たとえば、詳述した第一のカテーテル110は、バルーン211、カメラ208、LED209、組織把持フィンガ207、灌注のための第一のルーメン305/302および/または吸引のための第二のルーメン306/303のいずれかまたはすべてを含み得る第二のカテーテル101とで展開されてもよい。そのうえ、バルーン211および把持フィンガ207など、第二のカテーテル101の1つまたは複数の構成要素は、切り裂き装置105と切り裂かれる組織との間の接触を促進するアライナであってもよいことが理解されるべきである。同様に、バルーン211、カメラ208、LED209、組織把持フィンガ207、灌注のための第一のルーメン305/302および/または吸引のための第二のルーメン306/303など、図1~3において第二のカテーテル101に関して詳述した構成要素のいずれかまたはすべてが、代わりに、第一のカテーテル110に組み込まれてもよいことが理解されるべきである。図4~10に関して詳述され、図示された態様はいくつかの利点を提供し得る。第一に、ツールは、切り裂きが完了するまで、弁尖を横切る穴に挿入されたままであり得る。第二に、ツールは、切断中、可視化のために心臓鏡バルーンと弁尖との間の接触を維持することを支援し得る。第三に、ツールは、組織に対する電流および/またはレーザエネルギー(または他の切り裂きエネルギー)を所望の切断方向に集中させ得る。第四に、ツールは、切断機構の周囲でのブドウ糖または生理食塩水注入を許し得る。
【0064】
上述の態様のいずれにおいても、術者は切り裂き中にカテーテルの動きを手動で制御し得るが、切り裂き装置105(たとえば機械的、光ファイバまたは電気手術ワイヤ/電極)の振動は電動式であってもよい。たとえば、図11を参照すると、経カテーテル手術ツールは電動式ハンドルを含み得る。切り裂き装置105は、ハンドルの近位端にあるバルブを通過し、つまみねじクランプを使用して電動式振動機構1102に固定され得る。モータユニット1104が、スナップ取り付け/解放機構を介してハンドルに結合して、滅菌のために袋に入れられることができるようになっている。ハンドル人間工学およびコストに基づいて、スライダクランク、スプリングリターン付きボイスコイルモータまたは空気圧式作動を含む多様なハンドル駆動機構を実現し得る。ハンドル中のポートが、切断ツールへのポンプベースの生理食塩水またはブドウ糖注入を可能にし得る。フットペダル制御が、一人の術者が切り裂き装置105(たとえば光ファイバまたは電気手術ワイヤ/電極)、電動式切り裂き装置振動および生理食塩水またはブドウ糖注入を同時に起動することを可能にし得る。
【0065】
いくつかの態様において、経カテーテル手術システムおよび方法は、本明細書に記載される具体的な利点および処置に限定されず、他のカテーテル先端外科手術処置を含んでもよい。
【0066】
いくつかの態様において、経カテーテル手術システム100および/または構成要素(たとえば、とりわけ切り裂き装置105、カテーテル先端、把持機構、作業容積、スティーラブルカテーテルシステム、光学イメージングデバイスまたはそれらの任意の組み合わせ)の制御は、1つまたは複数のコンピューティングデバイスによって実行される1つまたは複数の制御アルゴリズムによって実現され得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の制御アルゴリズムはソフトウェアを含み得、このソフトウェアが、1つまたは複数のコンピューティングデバイスによって実行されると、経カテーテル手術システムおよび/または構成要素を制御して、たとえば自動的に、手動入力によって、またはそれらの組み合わせによって処置の動作を実行させる。いくつかの態様において、ソフトウェアは、1つまたは複数のプロセッサによって読み取られ、実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(たとえばコンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形式で情報を保存または送信するための任意の媒体および/または機構を含み得る。たとえば、機械可読媒体としては、読み取り専用メモリ(ROM);ランダムアクセスメモリ(RAM);磁気ディスク記憶媒体;光学記憶媒体;フラッシュメモリデバイス;電気的、光学的、音響的または他の形式の伝搬信号(たとえば搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)などがあり得る。
【0067】
いくつかの態様において、1つまたは複数のコンピューティングデバイスはコンピュータエンジンを含み得る。いくつかの態様において、「コンピュータエンジン」および「エンジン」という語は、他のソフトウェアおよび/またはハードウェアコンポーネント(たとえばライブラリ、ソフトウェア開発キット(SDK)、オブジェクトなど)を管理/制御するように設計/プログラム/構成されている少なくとも1つのソフトウェアコンポーネントおよび/または少なくとも1つのソフトウェアコンポーネントと少なくとも1つのハードウェアコンポーネントの組み合わせを指す。
【0068】
ハードウェア要素の例は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路、回路素子(たとえばトランジスタ、抵抗器、コンデンサ、インダクタなど)、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、論理ゲート、レジスタ、半導体デバイス、チップ、マイクロチップ、チップセットなどを含み得る。いくつかの態様において、1つまたは複数のプロセッサは、複雑命令セットコンピュータ(CISC)または縮小命令セットコンピュータ(RISC)プロセッサ;x86命令セット互換プロセッサ、マルチコアまたは他のマイクロプロセッサもしくは中央処理装置(CPU)として実装され得る。様々な実施形態において、1つまたは複数のプロセッサは、デュアルコアプロセッサ、デュアルコアモバイルプロセッサなどであってもよい。
【0069】
本明細書中で使用されるコンピュータ関連システム、コンピュータシステムおよびシステムは、ハードウェアとソフトウェアとの任意の組み合わせを含む。ソフトウェアの例は、ソフトウェアコンポーネント、プログラム、アプリケーション、オペレーティングシステムソフトウェア、ミドルウェア、ファームウェア、ソフトウェアモジュール、ルーチン、サブルーチン、関数、メソッド、手続き、ソフトウェアインターフェイス、アプリケーションプログラムインターフェイス(API)、命令セット、コンピュータコード、コンピュータコードセグメント、単語、値、記号またはそれらの組み合わせを含み得る。態様が、ハードウェア要素を使用して実装されるのか、ソフトウェア要素を使用して実装されるのかの決定は、任意の数の要因、たとえば所望の計算速度、パワーレベル、耐熱性、処理サイクルバジェット、入力データ速度、出力データ速度、メモリリソース、データバス速度および他の設計または性能制約にしたがって異なり得る。
【0070】
いくつかの態様において、1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、少なくとも1つのパーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップコンピュータ、ウルトララップトップコンピュータ、タブレット、タッチパッド、ポータブルコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、パームトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、一体型携帯電話/PDA、テレビ、スマートデバイス(たとえばスマートフォン、スマートタブレットまたはスマートテレビ)、モバイルインターネットデバイス(MID)、メッセージングデバイス、データ通信デバイスなどを含んでもよいし、部分的または全体的にそれらに組み込まれてもよい。
【0071】
1つまたは複数のコンピューティングデバイスによって実行される上記1つまたは複数の制御アルゴリズムは、たとえば、レーザベースの切断機構および/または電気手術切断機構をはじめとする任意の所望の切断機構の経カテーテル手術システムを制御するために実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0072】
前述の例は当然、例示的であり、限定的ではない。
【0073】
本明細書を通して引用される刊行物は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。本開示の1つまたは複数の態様を詳細に説明したが、これらの態様は単に例示的であり、限定的ではなく、本明細書に記載される発明的方法論、例示的なシステムおよびプラットフォームならびに例示的なデバイスの様々な態様を互いに任意の組み合わせで利用し得ることを含め、数多くの変形が当業者に明らかになることが理解される。なおさらに、様々なステップを任意の所望の順序で実行してもよい(また、任意の所望のステップを追加したり、排除したりしてもよい)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】