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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】燃料電池の給気システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/08 20060101AFI20241029BHJP
   F04D 25/02 20060101ALI20241029BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20241029BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241029BHJP
   H01M 8/04111 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
F04D25/08 Z
F04D25/02 Z
F04D17/10
H01M8/04 N
H01M8/04111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523472
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 DE2022100750
(87)【国際公開番号】W WO2023066426
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】102021127332.3
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505448822
【氏名又は名称】アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】スラヴィック,ザーザ
(72)【発明者】
【氏名】フィルシンガー,ディートマー
【テーマコード(参考)】
3H130
5H127
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC01
3H130AC03
3H130AC30
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130CA05
3H130CB05
3H130CB19
3H130DA02Z
3H130DB01X
3H130DB02X
3H130DD05X
3H130DD06X
3H130EA02C
5H127AB04
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB37
5H127EE18
(57)【要約】
本発明は燃料電池の給気システム(1)に関し、該給気システムは、回転可能な圧縮羽根車(3)と回転可能な膨張羽根車(4)とを収容しているハウジング(2)を備えており、前記ハウジング(2)は圧縮部(5)と膨張部(6)とを含んでおり、前記圧縮部(5)は前記圧縮羽根車(3)を収容するように構成されており、前記膨張部(6)は前記膨張羽根車(4)を収容するように構成されている。本発明によれば、前記圧縮部(5)及び前記膨張部(6)は、前記圧縮部(5)を流れる圧縮ガスと前記膨張部(6)を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な圧縮羽根車(3)と回転可能な膨張羽根車(4)とを収容しているハウジング(2)を備えており、前記ハウジング(2)は圧縮部(5)と膨張部(6)とを含んでおり、前記圧縮部(5)は前記圧縮羽根車(3)を収容するように構成されており、前記膨張部(6)は前記膨張羽根車(4)を収容するように構成されている、燃料電池の給気システム(1)において、
前記圧縮部(5)及び前記膨張部(6)は、前記圧縮部(5)を流れる圧縮ガスと前記膨張部(6)を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されており、前記圧縮羽根車(3)と前記膨張羽根車(4)とが一体化された単一部品のシステム羽根車(13)として構成されており、前記システム羽根車(13)は回転軸(14)を備えており、前記圧縮部(5)と前記膨張部(6)とを分離するハウジング隔壁(19)にラビリンスシールの形態のシール(23)が装備されており、前記ラビリンスシール(23)は前記圧縮羽根車(3)と前記ハウジング隔壁(19)との間に設けられており、前記膨張羽根車(4)の直径は前記圧縮羽根車(3)より小さい、
ことを特徴とする給気システム(1)。
【請求項2】
前記膨張部(6)は少なくとも部分的に前記圧縮部(5)を囲繞するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の給気システム(1)。
【請求項3】
前記圧縮羽根車(3)は第1材料で製作されており、前記膨張羽根車(4)は前記第1材料に対応する第2材料で製作されていることを特徴とする請求項1又は2記載の給気システム(1)。
【請求項4】
前記膨張部(6)は少なくとも部分的に前記圧縮部(5)に軸方向に隣接して設けられており、前記圧縮部(5)と前記膨張部(6)とは、前記ハウジング隔壁(19)を共有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項5】
前記回転軸(14)は電動機(8)により回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項6】
前記電動機(8)は電動機ハウジング(7)に囲繞され、前記電動機ハウジング(7)は前記回転軸(14)を支持するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の給気システム(1)。
【請求項7】
前記電動機ハウジング(7)は少なくとも部分的に前記ハウジング(2)と一体化されていることを特徴とする請求項6記載の給気システム(1)。
【請求項8】
前記回転軸(14)は組立型の回転軸であることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項9】
前記回転軸(14)は前記電動機(8)のロータ(10)を収容するように構成されることを特徴とする請求項8記載の給気システム(1)。
【請求項10】
前記回転軸(14)にラジアル軸受(33)が装備されており、該ラジアル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項11】
前記回転軸(14)にアキシャル軸受(34)が装備されており、該アキシャル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項12】
前記回転軸(14)のテーパ形状部分に、及び/又は、前記回転軸(14)を囲繞するテーパ形状のスリーブ(30)上に、更なるシール手段(25)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項13】
前記更なるシール手段(25)はラビリンスシールから成ることを特徴とする請求項12記載の給気システム(1)。
【請求項14】
前記システム羽根車(13)は撥液性及び/又は耐液性を有することを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載の給気システム(1)。
【請求項15】
前記電動機(8)の方を向いた前記システム羽根車(13)のハブ端面(26)は撥液性及び/又は耐液性を有することを特徴とする請求項14記載の給気システム(1)。
【請求項16】
前記ハブ端面(26)は突出部(27)を有することを特徴とする請求項15記載の給気システム(1)。
【請求項17】
前記膨張部(6)の中の前記膨張羽根車(4)の上流側に流路断面積可変機構が備えられていることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項記載の給気システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1に記載の燃料電池の給気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動システムにおいては、また特に自動車の駆動システムでは、その駆動のための動力源として、燃料電池がますます多用されるようになってきた。燃料電池の稼働中には、その燃料電池へ空気中の酸素が供給されており、即ち給気が行われている。この用途に適した給気システムとしては、内燃機関(エンジン)の出力を増大させるための給気システムとしてその有効性が広く認められている、排気タービン式過給器(排気ターボチャージャー)と呼ばれる給気システムがある。
【0003】
ただし、燃料電池から排出される排気は実質的に低温である。本開示においては燃料電池からの排気を膨張ガスと呼ぶが、その理由は、燃料電池からの排気は給気システムの膨張羽根車に作用してこれを回転駆動するガスであること、それに、燃料電池からの排気には一般的に排気と呼ばれているガスに特有の成分が含まれないことによる。そして、回転可能に配設された圧縮羽根車と、同じく回転可能に配設された膨張羽根車とを備え、膨張羽根車が圧縮羽根車と一体回転するように圧縮羽根車に連結されている給気システムにおいて、その膨張ガスの温度が低温であるならば、作動補助手段を備えることが必要となる。この作動補助は、例えば電動機(モーター)などの補助駆動手段を用いてエネルギを供給することでも行うことができ、また、熱エネルギを利用しても行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は高い動作効率を有する燃料電池の給気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1に記載した特徴を備えた燃料電池の給気システムにより達成される。その他の請求項は、本発明の好適且つ重要な構成上の特徴を備えた特に有利な構成例を記載したものである。
【0006】
本発明は燃料電池の給気システムに関する。本発明に係る給気システムは、回転可能な圧縮羽根車と回転可能な膨張羽根車とを収容しているハウジングを備えており、前記ハウジングは圧縮部と膨張部とを含んでおり、前記圧縮部は前記圧縮羽根車を収容するように構成されており、前記膨張部は前記膨張羽根車を収容するように構成されている。本発明によれば、前記圧縮部及び前記膨張部は、前記圧縮部を流れる圧縮ガスと前記膨張部を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されている。換言するならば、圧縮ガスが流れる前記圧縮部及び膨張ガスが流れる前記膨張部は、膨張ガスが圧縮ガスを冷却し、圧縮ガスが膨張ガスを冷却するように構成されている。こうすることで、例えば、簡明な構成で、圧縮後の圧縮ガスの温度を低く抑えるためのいわゆる給気冷却器を不要化することができ、また、少なくとも給気冷却器を小型化することができ、これらは動作効率の向上に資する。また、これを実現するには、例えば、前記圧縮部を前記膨張部に隣接させて設けることで、両者が互いに接する部位において壁面熱交換が行われるようにすればよい。以上に加えて、膨張ガスには更に別のエネルギも供給され前記膨張部の中でエネルギ転化が行われる。
【0007】
本発明に係る給気システムの1つの構成例では、前記膨張部が少なくとも部分的に前記圧縮部を囲繞するように構成されている。こうすることで、簡明な構成で、壁面熱交換を実現することができ、なぜならば、膨張ガスと圧縮ガスとの間にそれらガスの熱を伝達可能な壁体を設けるだけでよいからである。
【0008】
この点に関して付言すると、ここで言う壁面熱交換とは、圧縮ガスと膨張ガスとの間に介在する壁体を通して行われるところの、圧縮ガスから膨張ガスへの、また場合によっては逆に膨張ガスから圧縮ガスへの、熱伝達を意味するものである。
【0009】
前記圧縮羽根車及び前記膨張羽根車はそれらが一体化された単一部品のシステム羽根車として構成されており、前記システム羽根車は回転軸を備えている。本発明に係る給気システムの利点として、圧縮羽根車及び膨張羽根車を一体化して単一部品としているため、従来公知のものと比べて軸方向寸法が格段に短縮された給気システムとを提供し得ることがある。更に、給気システムの構成部品である例えば回転軸やハウジングなどを低コストで製作することができる。また更なる利点として、膨張ガスに混入している水素や潤滑液を給気システムの外へ導出できることがある。これによって潤滑液の燃料電池への浸入が防止される。
【0010】
前記システム羽根車は2種類の材料で製作したものとすることもでき、即ち、前記圧縮羽根車を第1材料で製作し、前記膨張羽根車を第1材料とは異なる第2材料で製作することも可能である。ただし、その場合には接合工程が必要となり、接合工程は通常かなり高コストである。一方、圧縮ガス及び膨張ガスの温度は、エンジンの機関本体の温度やエンジンの排気の温度ではないため、前記膨張羽根車を、前記第1材料に対応する第2材料で製作することも可能であり、そうすることで前記膨張羽根車の低コストで製作できる。換言するならば、これは、前記システム羽根車を単一材料で製作するということであるが、ただしその単一材料は、複合材料、及び/又は、合金材料、等々の材料とすることができる。前記圧縮羽根車は第1材料で製作されている。
【0011】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記膨張部は少なくとも部分的に前記圧縮部に軸方向に隣接して設けられており、前記膨張部と前記圧縮部とはハウジング隔壁を共有している。前記ハウジング隔壁を設ける位置は、前記システム羽根車の近傍とすることが好ましい。前記システム羽根車は、実質的に、前記圧縮羽根車と前記膨張羽根車とを背中合わせにしてそれら2つの羽根車を軸方向に隣接させて構成したものであるため、以上のように構成することで、前記圧縮羽根車に連なる圧縮流路の中へ深く入り込んだ位置に前記圧縮羽根車を配置しつつ、前記膨張羽根車に連なる膨張流路から前記膨張羽根車へ膨張ガスを供給することが可能となる。そして、これによって、特に簡明な構成で、前記熱交換を実現し得る。
【0012】
更に別の構成例では、前記回転軸を電動機で回転駆動するようにしている。換言するならば、前記圧縮羽根車及び前記膨張羽根車の両方を電動機で回転駆動するか、或いは少なくとも回転補助するようにしており、これによって前記給気システムの給気能力を大いに強化している。
【0013】
前記電動機は電動機ハウジングに囲繞され、前記電動機ハウジングは前記回転軸を支持するように構成されていることが好ましい。換言するならば、前記回転軸を回転可能に支持する支持構造を、前記電動機ハウジングを用いて構成するとよい。これにより、簡明な構成で、前記回転軸を確実に支持することができ、なぜならば、こうすることで、前記回転軸の支持構造がいかなるものであっても、当該支持機構を前記システム羽根車から離れた位置に、即ち、膨張ガスから離れた位置に設けることができ、もって、当該支持機構を膨張ガスから少なくとも最大限に防護できるからである。
【0014】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記電動機ハウジングは少なくとも部分的に前記ハウジングと一体化されている。特に、前記電動機ハウジングが前記膨張部の少なくとも一部分と一体化されているとよく、それによって、製造コストを低減すること、及び/又は、電動機を好適に空冷することが可能となる。
【0015】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記回転軸は組立型の回転軸である。換言するならば、前記回転軸は少なくとも2個の部品から成る回転軸であって、それら部品どうしが結合されることで1本の回転軸を成している。部品どうしを結合するには、例えば、材料接合による結合、及び/又は、力による接合、及び/又は、形状嵌合などの手段を用いることができる。この構成の利点は、用いる電動機の構造に応じて、その電動機のステータとロータの何れか一方を、この回転軸の一部で受け得ることにある。
【0016】
前記回転軸は前記電動機のロータを収容するように構成されることが好ましく、また、前記回転軸は前記ロータと一体回転するように前記ロータに結合されていることが好ましい。前記ロータと一体回転するように前記ロータに結合する手段は、必要に応じた適宜の結合手段とすればよい。前記回転軸を組立型の回転軸とすることによって、簡明な構成で、前記回転軸の内部空洞に前記ロータを確実に収容することが可能となる。
【0017】
前記システム羽根車は2つの羽根車を一体化して単一部品としたものであることから、前記給気システムの給気能力の低下を防止する上で、若しくは少なくともその給気能力の低下幅を小さく抑える上で、前記圧縮部と前記膨張部との間が適切に封止されている必要がある。そのため、前記圧縮部と前記膨張部とを区画しているハウジング隔壁に、ラビリンスシールの形態のシールが裝備されている。ラビリンスシールは、非接触形軸封シールとも呼ばれ、相対的に運動する2つの部品の間を封止して、その封止箇所の両側に存在する空間どうしを互いから封止するものである。
【0018】
より詳しくは、前記ラビリンスシールは前記圧縮羽根車と前記ハウジング隔壁との間に設けられており、当該ラビリンスシールによって、前記圧縮羽根車と前記ハウジング隔壁との間に存在する間隙の流路長が伸長され、もって当該間隙における流動抵抗が増強される。かくして前記圧縮部と前記膨張部との間の流体的な封止がなされる。
【0019】
前記回転軸はラジアル軸受で支持されるようにするとよく、そのラジアル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受の形態のものとすることができる。また、異なる形態のラジアル軸受を組合せて用いることも可能である。即ち、例えば滑り軸受の形態のラジアル軸受と、例えば転がり軸受の形態のラジアル軸受とで、前記回転軸を支持するのもよい。或いはまた、2つのラジアル軸受の組合せを、空気軸受の形態のラジアル軸受と、転がり軸受の形態のラジアル軸受との組合せとしてもよい。様々な組合せが考えられる。
【0020】
更に、前記回転軸にアキシャル軸受を装備するのもよく、そのアキシャル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受の形態のものとすることができる。通常は、アキシャル軸受は1つ備えれば十分であり、それゆえ異なる形態のアキシャル軸受を組合せて用いる必要はない。ただし、例えば、互いに分離した2つの軸部分から成る回転軸を用いる場合などには、異なる形態のアキシャル軸受を組合せて用いることもあり得る。
【0021】
この点について付言すると、転がり軸受の形態の軸受が用いられる場合には、アキシャル軸受を装備することは必須ではない。ただしそのような場合でも、異なる形態の軸受を組合せて用いるいわゆるハイブリッド化は、コストを抑える上で有利であり、具体的には例えば、前記システム羽根車に近い側に装備する軸受を空気軸受とし、前記システム羽根車から遠い側に装備する軸受を転がり軸受とするのもよい。その上で、更なるシール手段を裝備することによって、前記圧縮羽根車と前記膨張羽根車とを一体化して単一部品とした前記システム羽根車のために前記ハウジングの前記圧縮部の中へ潤滑剤が浸入してしまうという事態を防止することができるか、または、その浸入する潤滑剤の浸入量を少なくとも最大限に低減できる。
【0022】
前記更なるシール手段は、前記回転軸の外周を囲繞するように裝備されており、前記ハウジングと前記電動機ハウジングとの間を、また特に、前記ハウジングと前記電動機との間を、封止するものである。前記更なるシール手段は、前記回転軸の外周面がテーパ形状の軸部分の当該外周面上に、及び/又は、前記回転軸の外周に嵌合された外周面がテーパ形状のスリーブの当該外周面上に設けられる。前記更なるシール手段は、ラビリンスシールから成るものとすることが好ましい。前記更なるシール手段の利点については以下の通りである。先ず、前記回転軸の回転が停止しているか又はその回転速度が非常に遅いときには、潤滑剤、水、潤滑油などの液体が、前記回転軸の前記軸部分の、又は前記スリープの、テーパ形状の外周面をつたって前記更なるシール手段の中へ浸入し得る。しかるに、前記回転軸の前記軸部分の、又は前記スリーブの、その外周面のテーパ形状の方向を、テーパの大径側が前記膨張部の方を向き、テーパの小径側が前記電動機ハウジングの方を向くようにしておけば、前記回転軸が回転を開始したときに又はその回転速度が上昇したときに、それまで前記更なるシール手段の中に浸入し滞留していた液体は、遠心力の作用を受けて前記膨張羽根車の方へ移動して前記更なるシール手段から排出される。尚、ここでテーパの大径側及び小径側とは、前記回転軸の直径、及び/又は、前記スリーブの直径をいうものである。
【0023】
封止機能を更に強化するために、前記システム羽根車が撥液性を有するようにするとよい。換言するならば、前記システム羽根車が液体を撥ね飛ばすことのできる撥液性、及び/又は、水滴が衝突しても侵蝕を生じることのない耐蝕性を有するようにするとよい。これらは、前記システム羽根車の形状を適宜の形状とすることでも実現でき、また、前記システム羽根車に、また特にその全体のうちの前記膨張羽根車の部分に、コーティングを施す、及び/又は、硬化処理を施すことでも実現できる。
【0024】
液体を撥ね飛ばせるようにするには、前記電動機の方を向いた前記システム羽根車のハブ端面を、撥液性を有する面とするのがよい。それには、例えば、当該ハブ端面に撥液性のコーティング層を形成するのもよい。ただし特に好適であるのは、当該ハブ端面の形状を、液体を撥ね飛ばすのに適した形状とすることである。当該ハブ端面の形状を例えば前記電動機ハウジングの方向に凹ませてもよい。特に好適な1つの構成例では、当該ハブ端面の形状を、当該ハブ端面が突出部を有する形状にしており、また特に、当該ハブ端面の外周に沿って延在する突出部を有する形状にしている。こうすることで、遠心力の作用により、前記膨張羽根車の方へ移動させられた液体が前記膨張部の流出口へ導かれるようにすることができる。
【0025】
水滴が前記システム羽根車に衝突したならば、前記システム羽根車にかなりの大きさの衝撃が加わり、従ってかなりの大きさの力が作用する。それゆえ、水滴の衝突による損傷を防止するために、前記システム羽根車に、水滴の衝突に耐え得るだけの耐侵蝕性及び/又は硬度を有するコーティング層を形成するとよく、また、前記システム羽根車の全体又は一部に硬化処理を施すのもよい。それらによって前記システム羽根車が耐液性を有するものとなる。
【0026】
この点について付言すると、例えば前記システム羽根車が、前記電動機ハウジングと前記膨張羽根車との間に前記圧縮羽根車が位置するように構成されたものである場合には、撥液性に関する以上の説明は、当然のことながら、前記圧縮羽根車についての説明となり得る。
【0027】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記膨張部の中の前記膨張羽根車の上流側に流路断面積可変機構が装備されている。当該流路断面積可変機構は、例えば、排気ターボチャージャーに装備されている公知のガイド機構と同様の機構などでもよく、より具体的には、いわゆるVGS機構、VTG機構、それに、軸方向移動型の摺動弁機構などでもよい。
【0028】
本発明の更なる利点、特徴、及び細部構成については、数々の好適な実施の形態についての以下の説明並びに添付図面を参照することで明らかとなる。本明細書のこれまでの説明の中で言及した様々な特徴及びそれら特徴の組合せ、並びに、添付図面に関する以下の説明の中で言及し、及び/または、図面中に示す様々な特徴及びそれら特徴の組合せは、それら説明ないし図面に示される通りの組合せで利用できるばかりでなく、それとは異なる組合せでも利用でき、また、個々の特徴を単独で利用することも可能であり、そのように特徴を利用した場合でも本発明の範囲から逸脱するものではない。また、添付図面については以下に示す通りである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来技術に係る、燃料電池の給気システムとして用い得る電動機を備えた給気システムの縦断面図である。
図2】第1実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面図である。
図3】第2実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図4】第3実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面図である。
図5】第4実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面図である。
図6】第5実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面図である。
図7】第6実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図8図7に示した本発明に係る給気システムの細部詳細図である。
図9】第7実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図10】第8実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図11】第9実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面図である。
図12】第10実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図13】第11実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図14】第12実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
図15】第13実施例の本発明に係る燃料電池の給気システムの縦断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示したのは、燃料電池の給気に用い得る従来技術に係る給気システム1である。この給気システム1は、圧縮羽根車3及び膨張羽根車4を回転可能に収容しているハウジング2を備えており、このハウジング2は圧縮部5と膨張部6とを含んでいる。圧縮部5は圧縮羽根車3を収容するように構成されており、膨張部6は膨張羽根車6を収容するように構成されている。圧縮部5と膨張部6との間に、電動機ハウジング7が設けられており、この電動機ハウジング7は、電動機8を収容するように構成されていると共に、圧縮羽根車3及び膨張羽根車4を回転可能に支持するように構成されている。電動機8は、包埋加工やコーティング加工によって被覆されることもあり、その場合の被覆は、焼結、溶融、鋳造、射出成形などの加工処理によって行われる。これらの加工処理によって、冷却媒体に浸漬可能な堅固な閉鎖構造を形成することができる。
【0031】
圧縮羽根車3は、圧縮羽根車の回転軸9を介して電動機8のロータ10に連結されており、電動機8は、ロータ10を囲繞するステータ12を備えている。膨張羽根車4は、膨張羽根車の回転軸11を介してロータ10に連結されている。膨張羽根車4は燃料電池から排出される膨張ガスによって回転駆動されて回転運動を発生し、この回転運動がロータ10及び圧縮羽根車3へ伝達される。そして、ロータ10が、膨張羽根車4及び圧縮羽根車5を、回転駆動及び/又は回転補助するように構成されている。
【0032】
図2に示したのは、第1実施例の本発明に係る燃料電池の給気システム1である。この実施例の本発明に係る給気システム1の特徴として、特に、圧縮羽根車3及び膨張羽根車4はそれらが一体化された単一部品のシステム羽根車13として構成されているということがある。圧縮羽根車3は第1材料で製作されており、この第1材料は膨張羽根車4の製作材料である第2材料に対応する材料である。システム羽根車13の製作材料として2種類の材料を用いることも可能であるが、その場合にも、複数の異なる材料成分から成る単一材料で製作することで、システム羽根車13を低コストで製作することができる。
【0033】
システム羽根車13を回転駆動する回転軸14は、組立型の回転軸である。ここでいう組立型の回転軸14は、特に、2つの軸部分から成る回転軸であって、ロータ10を収容するように構成したものである。回転軸14は電動機ハウジング7の中で回転可能に支持されている。一方の軸部分である回転軸第1部分15は、その両端部のうちのシステム羽根車13の方を向いた端部16が中空円筒形に形成されており、ロータ10は、回転軸第1部分15と一体回転するように回転軸第1部分15に結合されている。他方の軸部分である回転軸第2部分17は、システム羽根車13と一体回転するようにシステム羽根車13に結合されている。回転軸第2部分17は更に、その両端部のうちの回転軸第1部分15の方を向いた端部が回転軸第1部分15の端部16の中に嵌合されており、この端部16に一体的に結合されている。図示した組立型の回転軸14の実施形態は、ロータ10を回転軸14に組み込み回転軸14と一体化するための可能な構成形態の一例に過ぎない。その他の可能な構成形態としては、例えば、回転軸第1部分15の一方の端部を中空円筒形に形成し、力による接合によって、及び/又は、形状嵌合によって、回転軸第1部分15と回転軸第2部分17とを結合する構成形態などがある。
【0034】
第1実施例の本発明に係る給気システム1のハウジング2では、圧縮部5と膨張部6とが給気システム1の長手軸心18の延在方向である軸方向に互いに隣接して設けられており、また、圧縮羽根車3の下流側に形成されている圧縮部5の圧縮流路20と膨張羽根車4の上流側に形成されている膨張部6の膨張流路21とが、圧縮部5と膨張部6とに共有されているハウジング隔壁19によって流体的に分離されている。また、ハウジング隔壁19は、ハウジング2の圧縮部5と膨張部6との間を密封するためのシール手段22を介して、ハウジング2に組付けられている。
【0035】
圧縮部5と膨張部6の間には、膨張部6を圧縮部5に対して実質的に封止するために、また逆に言えば圧縮部5を膨張部6に対して実質的に封止するために、ラビリンスシールの形態のシール23が装備されている。このラビリンスシール23は、圧縮羽根車3と、この圧縮羽根車3に対向するハウジング隔壁19の壁面24との間に設けることが好ましい。
【0036】
電動機ハウジング7と膨張羽根車4との間には、電動機ハウジング7から膨張部6の中や圧縮部5の中への潤滑剤の浸入を防止するために、及び/又は、電動機ハウジング7の中への膨張ガスの浸入を防止するために、回転軸第2部分17を囲繞するようにして設けられた、更なるシール手段25が装備されており、この更なるシール手段25はラビリンスシールの形態のシール手段とすることが好ましい。
【0037】
圧縮部5及び膨張部6は、圧縮部5の中を流れる圧縮ガスと膨張部6の中を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されている。また、その圧縮ガスと膨張ガスとの間の壁面熱交換はハウジング隔壁19を介して行われる。
【0038】
図3に示したのは、第2実施例の本発明に係る給気システム1の縦断面の部分拡大図である。圧縮部5及び膨張部6は、圧縮部5の中を流れる圧縮ガスと膨張部6の中を流れる膨張ガスとが熱交換を行うように構成されている。この点に関して注意すべきことは、ここでいう熱交換とは、圧縮部5と膨張部6との間でガスの交換が行われるのではなく、圧縮部5と膨張部6との間を区画して閉塞している壁体を介してガスの熱交換が行われるのであり、即ち、壁面熱交換が行われるということである。
【0039】
膨張部6は少なくとも部分的に圧縮部5を囲繞するように構成されており、また特に、圧縮部5の渦巻流路37の領域を囲繞するように構成されている。また、ハウジング2の組立作業の手間を軽減するべく、圧縮部5と、膨張部6のうちの圧縮部5の周囲を囲繞する部分である膨張部第1部分38とは、それらが一体化された単一部品として製作されている。この構成により得られる利点は、圧縮されて圧縮ガス温度TKが200℃以上となった圧縮ガスが、膨張ガス温度TEが約90℃の膨張ガスを加熱することで、膨張羽根車4で発生する熱力学的変化による温度勾配(この温度勾配は給気システム1の給気能力に影響を及ぼす)を増強し得ること、またその一方で、より低温の膨張ガスがより高温の圧縮ガスを冷却するため、圧縮ガスを空冷するための空冷機構を不要化し得ることにある。膨張羽根車4の下流側では膨張ガス温度TEが約20℃にまで低下することから、その温度が低下した膨張ガスを電動機ハウジング7の冷却に利用することができる。その利用のために、図5の第4実施例の本発明に係る給気システム1の細部詳細図に示したように、冷却ジャケット35は膨張部6に接続されており、その接続は、流れがそれら冷却ジャケット35と膨張部6の中を通過し得るような接続である。この構成とすることで、電動機ハウジング7の水冷機構を完全に不要化でき、それが可能であるのは特に、微細水滴が気化する際に電動機ハウジング7の熱を奪うからである。冷却ジャケット35の中を通過した膨張ガスは不図示のハウジング排気口から環境中へ排出される。尚、軸受33及び34は、空気軸受の形態の軸受である。
【0040】
電動機ハウジング7から膨張部6の中へ浸入する潤滑剤の浸入量を低減し、好ましくはその潤滑剤の浸入を完全に防止する機能を増強した実施例が、図7及び図8に示した第6実施例であり、図8図7の領域VIIIを詳細に示した細部詳細図である。これらの図から明らかなように、更なるシール手段25の方を向いたシステム羽根車13のハブ端面26は、更なるシール手段25を受容するように陥凹した陥凹湾曲面形状に形成されている。より詳しくは、この陥凹湾曲面形状は、更なるシール手段25を軸方向において部分的に覆うように突出した部分を有する形状とされている。換言するならば、ハブ端面26は突出部27を有しており、この突出部27は更なるシール手段25の外周面28を部分的に囲繞するように形成されている。以上を換言するならば、システム羽根車13は、液体を撥ね飛ばすことのできる撥液性を有する形状に形成されている。そのため、更なるシール手段25づたいにシステム羽根車13へ移動した潤滑剤は、システム羽根車13の遠心力の作用によって径方向外方へ移動させられ、そして突出部27によって膨張部6の流出口44の方へと導かれる。同様にして、膨張部6の中に貯留していた液体状の水分も流出口44の中へ送り込まれるため、電動機ハウジング7の中へ水分が浸入するおそれも低減されている。
【0041】
潤滑剤の浸入量を低減し、ないしはその潤滑剤の浸入を完全に防止する機能を増強した別の2つの実施例を、図9図10とに示した。尚、当然のことながら、これら実施例の構成は追加的に用いられるものであり、それら構成だけが他の部分と別個に用いられるというものではない。図9に示したのは、第7実施例の本発明に係る給気システム1の縦断面の部分拡大図である。同図に示したように、更なるシール手段25を備えた回転軸中間部分29はその外周面がテーパ面形状に形成されており、電動機ハウジング7に近い側の軸径である回転軸中間部分第1軸径W1は、膨張羽根車4の方を向いた側の軸径である回転軸中間部分第2軸径W2より小径である。従って、回転軸中間部分外周面31と、長手軸方向18に対して直交する回転軸中間部分肩端面32とが成す角度φは90°より小さい。換言するならば、回転軸中間部分29の軸径は軸心方向18に沿って電動機ハウジング7から膨張部6の方へ行くに従って拡大している。尚、回転軸中間部分29の軸径の拡大の仕方は、連続的な拡大としてもよく、不連続的な拡大としてもよい。
【0042】
図10に示したのは、第8実施例の本発明に係る給気システム1の縦断面の部分拡大図である。この実施例では回転軸中間部分29の外周にスリーブ30が嵌合されている。スリーブ30は、その外周面36がテーパ面形状に形成された中空円筒体である。この構成の利点は、回転軸14を低コストで製作し得ることにある。図10に示した縦断面から明らかなように、スリーブ30の外周面36は開き角βをもってシステム羽根車13へ向かって開いており、この開き角βは0°より大きい。
【0043】
回転軸14及び/又はスリーブ30の外周面をテーパ面形状とすること、及び/又は、そのテーパ面形状に対応させてハブ端面26を陥凹湾曲面形状及び/又は突出部27を有する形状とすること、そして特にその突出部27を設ける位置をハブ端面26の最大外径の部分としていることで、更なるシール手段25の中に貯留していた液体を膨張部6の流出口42の中へ移動させることが可能となっている。
【0044】
第1実施例の給気システム1では、回転軸14は滑り軸受で支持されている。即ち、回転軸第1部分15と回転軸第2部分17とは、各々が1つずつの滑り軸受の形態のラジアル軸受33で回転可能に支持されており、またそれに加えて、システム羽根車13から遠い側の軸部分である回転軸第1部分15は滑り軸受の形態のアキシャル軸受34で回転可能に支持されている。
【0045】
図4に示した第3実施例の給気システム1は、第1実施例の給気システム1と殆ど同じ構成であるが、ただし、2つのラジアル軸受33と1つのアキシャル軸受34との合計3つの軸受を何れも転がり軸受の形態の軸受としており、また、回転軸第1部分15を支持している方のラジアル軸受33とアキシャル軸受34との合計2つの軸受の機能を1つの転がり軸受の機能に集約している。第1実施例の本発明に係る給気システム1に対する第2実施例の本発明に係る給気システムの更なる相違点として、電動機ハウジング7に、水冷用の冷却ジャケット35が装備されていることがある。また、膨張部6の近くに配設されている方の転がり軸受の形態のラジアル軸受33の中へ浸入する水素(特に燃料電池の排気中の「未燃焼」の水素)の浸入を低減するために、ないしはその水素の浸入を完全に防止するために、更なるシール手段25が当該ラジアル軸受33をその径方向の全域に亘って覆うようにしている。換言するならば、更なるシール手段25の径方向の延展範囲を、転がり軸受の形態の当該ラジアル軸受33の径方向の延展範囲より広くしている。
【0046】
不図示の別の実施例の本発明に係る給気システム1では、電動機ハウジング7と膨張部第2部分41とは、それらが一体化された単一部品として製作されており、ここでいう膨張部第2部分とは、膨張部6のうちの、膨張部第1部分38と電動機ハウジング7との間に位置する部分である。この実施例の利点は、電動機ハウジング7と膨張部第2部分41とが別体であったならば両者間の継ぎ目を密封するために必要なはずのシール手段が不要となるため、シール手段22を削減し得ることにある。
【0047】
不図示の別の実施例では、回転軸14は、転がり軸受機構によって支持されている。ただし当然のことながら、転がり軸受機構に替えて滑り軸受機構で支持することも可能である。膨張部6は電動機ハウジング7と一体化されており、この電動機ハウジング7は冷却ジャケット35を備えている。更に、膨張部6にはハウジング隔壁19も一体化されている。更なるシール手段25は確実な取付け方で電動機ハウジング7に取付けられており、その取付け方は、力による接合ないし形状嵌合とすることが好ましく、また特に、ボルトで締結することが好ましい。電動機ハウジング7の、システム羽根車13とは反対側の端面には、インバータ回路板が取付けられている。冷却ジャケット35は水冷機構を構成している。
【0048】
図6に示したのは、第5実施例の本発明に係る給気システム1の縦断面図である。この給気システム1の特徴は、形態の異なる軸受を組合せて用いていることにある。その具体例として、ここでは、システム羽根車13に近い方のラジアル軸受33を空気軸受の形態の軸受とし、システム羽根車13から遠い方のラジアル軸受33を転がり軸受の形態の軸受としている。また、用いる軸受33、34はいずれも、空気軸受、及び/又は、転がり軸受、及び/又は、滑り軸受の形態の軸受とすることができる。即ち、異なる形態の軸受を組合せて用いることができる。用いる軸受33、34が転がり軸受であるる場合には、当該転がり軸受33、34に浸入する水素の浸入量を抑えるために、また特に、未燃焼の水素を含有している可能性のある燃料電池の排気の浸入量を抑えるために、当該転がり軸受33、34の、システム羽根車13の方を向いた側面39に、追加のシール手段40が装備されることに留意すべきである。冷却ジャケット35は水冷機構を構成している。
【0049】
図11に示したのは、第9実施例の本発明に係る給気システム1である。システム羽根車13は、電動機ハウジング7に近い側に位置する圧縮羽根車3と、電動機ハウジング7から遠い側に位置する膨張羽根車4とで構成されている。環境中の空気を吸入する圧縮羽根車3は、電動機ハウジング7の冷却ジャケット35を通してその空気を吸入し、それによって電動機8の冷却がなされる。
【0050】
不図示の別の実施例では、膨張羽根車4の上流側の膨張流路21に流路断面積可変機構を装備しており、それによって膨張羽根車4の上流側の流路の断面積を可変にしている。流路断面積可変機構としては、例えば、軸方向移動型の摺動弁機構、公知の可変タービンジオメトリに採用されている回動式案内翼機構、等々が用いられる。
【0051】
本発明に係る給気システム1の更に別の実施例である図12に示した第10実施例及び図13に示した第11実施例では、給気システム1の給気能力に適合させるために、システム羽根車13にいわゆるトリミングを施せるようにしてあり、そのトリミングはハウジング隔壁19を利用して行われる。即ち、膨張羽根車4の直径を圧縮羽根車3の直径より小さくしてあり、ハウジング隔壁内径寸法Dに調節加工を加えることで、膨張羽根車4の外周縁とハウジング隔壁19の内周縁との間の間隙寸法Aを調節できるようにしている。尚、この間隙寸法Aの調節に関しては、ハウジング隔壁内径寸法Dの調節可能範囲の最小限界値及び最大限界値であるハウジング隔壁内径最小寸法Dmin及びハウジング隔壁内径最大寸法Dmaxは予め適切に定めておく。以上によって、ハウジング隔壁内径寸法Dに調節加工を施すことで、膨張羽根車4及び圧縮羽根車3という2つの羽根車に作用するスラスト力に調節を加えることができる。
【0052】
不図示の別の実施例では、回転軸を支持する転がり軸受機構に軸方向のプリテンションを作用させるように構成したプリテンション付与システムを装備しており、そのプリテンションで、軸方向の荷重に対抗するようにしている。
【0053】
回転軸を支持する軸受として転がり軸受を用いる場合には、その転がり軸受に緩衝要素を付加するのもよく、例えば、弾性力を提供する金属製の部材や緩衝性を有する合成樹脂製の部材などから成る緩衝要素を用いるのもよい。
【0054】
図14及び図15に示したのは、第12実施例及び第13実施例の本発明に係る燃料電池の給気システム1である。図14に示した第12実施例の給気システム1は、図5に示した第4実施例の給気システム1と殆ど同じ構成であるが、ただし、電動機ハウジング7にハウジング第1開口部43とハウジング第2開口部44とが形成されており、ハウジング第1開口部43から流入した膨張ガスがロータ10とステータ12との間に画成されている空気流通間隙部45の中を通過してハウジング第2開口部44から流出することで、ステータ12及びロータ10が冷却されるようにしている。これによって電動機8を冷却する冷却機能が高められている。
【0055】
図15に示した第13実施例の給気システム1は、図11に示した第9実施例の本発明に係る給気システム1と殆ど同じ構成であるが、ただし、電動機8を冷却する冷却機能を高めるために、外気をハウジング第1開口部43から流入させ、その流入した外気が空気流通間隙部45の中を通過してハウジング第2開口部44から膨張部6へ供給されるようにしてある。この第13実施例において、ハウジング第1開口部43は、電動機ハウジング7の両端部のうちのシステム羽根車13とは反対側の端部の近傍に形成されている。
【0056】
第12実施例と第13実施例のいずれにおいても、空気流通間隙部45の中を通過する流れの方向を整えることが望ましく、そのため、第12実施例ではハウジング第1開口部43の形成位置の高さを、また第13実施例ではハウジング第2開口部44の形成位置の高さを、いずれも空気流通間隙部45の高さに揃えてあり、換言するならば、長手軸心18からそれら開口部43、44までの径方向距離が、長手軸心18から空気流通間隙部43までの径方向距離と等しくなるような位置に、それら開口部43、44が形成されている。
【0057】
不図示の別の実施例では、圧縮部5をガイドジオメトリを可変としている。ガイドジオメトリを可変とするには圧縮部5を、圧縮羽根車3の上流側に可変ガイドベーン機構を設けた構成とする、及び/又は、圧縮羽根車3の下流側に可変ノズルベーン機構を設けた構成とすればよい。尚、圧縮部5にガイドベーン機構とノズルベーン機構との両方を設ける場合には、それら2つのベーン機構のうちの一方を固定ベーン機構としても構わない。
【0058】
揺動軸を中心として揺動可能な複数枚のガイドベーンを圧縮羽根車3の上流側に列設して構成した可変ガイドベーン機構を用いることで、圧縮羽根車3に流入する空気流の流入角を圧縮羽根車3の回転速度に応じた最適角度に調節することができる。また、光学絞り機構と同様に構成した可変オリフィスを備えた可変ガイドベーン機構を用いるならば、空気流の流量を容易に最適流量に調節することができる。また、回動可能な複数枚のガイドベーンを備えた可変ノズルベーン機構を用いるならば、圧縮部5から流出する空気流の流量を容易に最適流量に調節することができる。
【0059】
電動機8としては、様々な構造の電動機を用いることができる。ステータ12の巻線も様々な巻き方のコイルとすることができる。例えば、そのコイルは、スロット付きコイルとすることもでき、スロットレスコイルとすることもできる。そのコイルの巻き方も、集中巻きと分布巻きとのいずれとすることもできる。
【0060】
不図示の別の実施例では、圧縮羽根車3と膨張羽根車4との何れか一方の羽根車に、回転軸14を嵌合する軸孔を形成するようにしている。この軸孔は、回転軸14を螺合して結合することのできる雌ネジ孔としてもよく、或いは、回転軸14を圧入して結合することのできる圧入孔としてもよい。
【0061】
不図示の別の実施例では、速度、加速度、温度、圧力、等々の量のうちの何れか又は幾つかを測定するための測定手段を備えるようにしている。測定手段として用いるセンサなどは、電動機8の、羽根車3、4とは反対の側に配設することが好ましい。
【0062】
不図示の別の実施例では、第2の圧縮羽根車を備えるようにしている。その第2の圧縮羽根車は、電動機8の、羽根車3、4とは反対の側に配設するようにしている。
【符号の説明】
【0063】
1 給気システム
2 ハウジング
3 圧縮羽根車
4 膨張羽根車
5 圧縮部
6 膨張部
7 電動機ハウジング
8 電動機
9 圧縮羽根車の回転軸
10 ロータ
11 膨張羽根車の回転軸
12 ステータ
13 システム羽根車
14 回転軸
15 回転軸第1部分
16 端部
17 回転軸第2部分
18 長手軸心
19 ハウジング隔壁
20 圧縮流路
21 膨張流路
22 シール手段
23 シール
24 壁面
25 更なるシール手段
26 ハブ端面
27 突出部
28 外周面
29 回転軸中間部分
30 スリーブ
31 回転軸中間部分外周面
32 回転軸中間部分肩端面
33 ラジアル軸受
34 アキシャル軸受
35 冷却ジャケット
36 スリーブ外周面
37 渦巻流路
38 膨張部第1部分
39 側面
40 追加のシール手段
41 膨張部第2部分
42 流出口
43 ハウジング第1開口部
44 ハウジング第2開口部
45 空気流通間隙部
A 間隙寸法
D ハウジング隔壁内径寸法
min ハウジング隔壁内径最小寸法
max ハウジング隔壁内径最大寸法
TE 膨張ガス温度
TK 圧縮ガス温度
W1 回転軸中間部分第1軸径
W2 回転軸中間部分第2軸径
φ 角度
β 開き角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は燃料電池の給気システムに関する。本発明に係る給気システムは、回転可能な圧縮羽根車と回転可能な膨張羽根車とを収容しているハウジングを備えており、前記ハウジングは圧縮部と膨張部とを含んでおり、前記圧縮部は前記圧縮羽根車を収容するように構成されており、前記膨張部は前記膨張羽根車を収容するように構成されている。本発明によれば、前記圧縮部及び前記膨張部は、前記圧縮部を流れる圧縮ガスと前記膨張部を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されている。
前記圧縮羽根車及び前記膨張羽根車はそれらが一体化された単一部品のシステム羽根車として構成されており、前記システム羽根車は回転軸を備えている。前記圧縮部と前記膨張部とを区画するハウジング隔壁にラビリンスシールの形態のシールが装備されている。前記ラビリンスシールは前記圧縮羽根車と前記ハウジング隔壁との間に設けられており、前記膨張羽根車の直径は前記圧縮羽根車の直径より小さい。前記システム羽根車は撥液性を有し、前記電動機の方を向いた前記システム羽根車のハブ端面は突出部を有する。
換言するならば、圧縮ガスが流れる前記圧縮部及び膨張ガスが流れる前記膨張部は、膨張ガスが圧縮ガスを冷却し、圧縮ガスが膨張ガスを冷却するように構成されている。こうすることで、例えば、簡明な構成で、圧縮後の圧縮ガスの温度を低く抑えるためのいわゆる給気冷却器を不要化することができ、また、少なくとも給気冷却器を小型化することができ、これらは動作効率の向上に資する。また、これを実現するには、例えば、前記圧縮部を前記膨張部に隣接させて設けることで、両者が互いに接する部位において壁面熱交換が行われるようにすればよい。以上に加えて、膨張ガスには更に別のエネルギも供給され前記膨張部の中でエネルギ転化が行われる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記圧縮羽根車及び前記膨張羽根車はそれらが一体化された単一部品のシステム羽根車として構成されており、前記システム羽根車は回転軸を備えている。本発明に係る給気システムの利点として、圧縮羽根車及び膨張羽根車を一体化して単一部品としているため、従来公知のものと比べて軸方向寸法が格段に短縮された給気システムとを提供し得ることがある。更に、給気システムの構成部品である例えば回転軸やハウジングなどを低コストで製作することができる。また更なる利点として、膨張ガスに混入している水素や潤滑液を給気システムの外へ導出できることがある。これによって潤滑液の燃料電池への浸入が防止される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記システム羽根車は2つの羽根車を一体化して単一部品としたものであることから、前記給気システムの給気能力の低下を防止する上で、若しくは少なくともその給気能力の低下幅を小さく抑える上で、前記圧縮部と前記膨張部との間が適切に封止されている必要がある。そのため、前記圧縮部と前記膨張部とを分離しているハウジング隔壁に、ラビリンスシールの形態のシールが裝備されている。ラビリンスシールは、非接触形軸封シールとも呼ばれ、相対的に運動する2つの部品の間を封止して、その封止箇所の両側に存在する空間どうしを互いから封止するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
より詳しくは、前記ラビリンスシールは前記圧縮羽根車と前記ハウジング隔壁との間に設けられており、当該ラビリンスシールによって、前記圧縮羽根車と前記ハウジング隔壁との間に存在する間隙の流路長が伸長され、もって当該間隙における流動抵抗が増強される。かくして前記圧縮部と前記膨張部との間の流体的な封止がなされる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明に係る給気システムの1つの構成例では、前記膨張部が少なくとも部分的に前記圧縮部を囲繞するように構成されている。こうすることで、簡明な構成で、壁面熱交換を実現することができ、なぜならば、膨張ガスと圧縮ガスとの間にそれらガスの熱を伝達可能な壁体を設けるだけでよいからである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
この点に関して付言すると、ここで言う壁面熱交換とは、圧縮ガスと膨張ガスとの間に介在する壁体を通して行われるところの、圧縮ガスから膨張ガスへの、また場合によっては逆に膨張ガスから圧縮ガスへの、熱伝達を意味するものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記システム羽根車は2種類の材料で製作したものとすることもでき、即ち、前記圧縮羽根車を第1材料で製作し、前記膨張羽根車を第1材料とは異なる第2材料で製作することも可能である。ただし、その場合には接合工程が必要となり、接合工程は通常かなり高コストである。一方、圧縮ガス及び膨張ガスの温度は、エンジンの機関本体の温度やエンジンの排気の温度ではないため、前記膨張羽根車を、前記第1材料に対応する第2材料で製作することも可能であり、そうすることで前記膨張羽根車の低コストで製作できる。換言するならば、これは、前記システム羽根車を単一材料で製作するということであるが、ただしその単一材料は、複合材料、及び/又は、合金材料、等々の材料とすることができる。前記圧縮羽根車は第1材料で製作されている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
封止機能を更に強化するために、前記システム羽根車が撥液性を有するようにするとよい。換言するならば、前記システム羽根車が液体を撥ね飛ばすことのできる撥液性、及び/又は、水滴が衝突しても侵蝕を生じることのない耐蝕性を有するようにするとよい。これらは、前記システム羽根車の形状を適宜の形状とすることでも実現でき、また、前記システム羽根車に、また特にその全体のうちの前記膨張羽根車の部分に、コーティングを施す、及び/又は、硬化処理を施すことでも実現できる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
液体を撥ね飛ばせるようにするには、前記電動機の方を向いた前記システム羽根車のハブ端面を、撥液性を有する面とするのがよい。それには、例えば、当該ハブ端面に撥液性のコーティング層を形成するのもよい。ただし特に好適であるのは、当該ハブ端面の形状を、液体を撥ね飛ばすのに適した形状とすることである。例えば、当該ハブ端面の形状を前記電動機ハウジングの方向に凹ませてもよい。本発明では、当該ハブ端面の形状を、当該ハブ端面が突出部を有する形状にしており、また特に、当該ハブ端面の外周に沿って延在する突出部を有する形状にしている。こうすることで、遠心力の作用により、前記膨張羽根車の方へ移動させられた液体が前記膨張部の流出口へ導かれるようにすることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記膨張部は少なくとも部分的に前記圧縮部に軸方向に隣接して設けられており、前記膨張部と前記圧縮部とはハウジング隔壁を共有している。前記ハウジング隔壁を設ける位置は、前記システム羽根車の近傍とすることが好ましい。前記システム羽根車は、実質的に、前記圧縮羽根車と前記膨張羽根車とを背中合わせにしてそれら2つの羽根車を軸方向に隣接させて構成したものであるため、以上のように構成することで、前記圧縮羽根車に連なる圧縮流路の中へ深く入り込んだ位置に前記圧縮羽根車を配置しつつ、前記膨張羽根車に連なる膨張流路から前記膨張羽根車へ膨張ガスを供給することが可能となる。そして、これによって、特に簡明な構成で、前記熱交換を実現し得る。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
更に別の構成例では、前記回転軸を電動機で回転駆動するようにしている。換言するならば、前記圧縮羽根車及び前記膨張羽根車の両方を電動機で回転駆動するか、或いは少なくとも回転補助するようにしており、これによって前記給気システムの給気能力を大いに強化している。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記電動機は電動機ハウジングに囲繞され、前記電動機ハウジングは前記回転軸を支持するように構成されていることが好ましい。換言するならば、前記回転軸を回転可能に支持する支持構造を、前記電動機ハウジングを用いて構成するとよい。これにより、簡明な構成で、前記回転軸を確実に支持することができ、なぜならば、こうすることで、前記回転軸の支持構造がいかなるものであっても、当該支持機構を前記システム羽根車から離れた位置に、即ち、膨張ガスから離れた位置に設けることができ、もって、当該支持機構を膨張ガスから少なくとも最大限に防護できるからである。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記電動機ハウジングは少なくとも部分的に前記ハウジングと一体化されている。特に、前記電動機ハウジングが前記膨張部の少なくとも一部分と一体化されているとよく、それによって、製造コストを低減すること、及び/又は、電動機を好適に空冷することが可能となる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明に係る給気システムの別の構成例では、前記回転軸は組立型の回転軸である。換言するならば、前記回転軸は少なくとも2個の部品から成る回転軸であって、それら部品どうしが結合されることで1本の回転軸を成している。部品どうしを結合するには、例えば、材料接合による結合、及び/又は、力による接合、及び/又は、形状嵌合などの手段を用いることができる。この構成の利点は、用いる電動機の構造に応じて、その電動機のステータとロータの何れか一方を、この回転軸の一部で受け得ることにある。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
前記回転軸は前記電動機のロータを収容するように構成されることが好ましく、また、前記回転軸は前記ロータと一体回転するように前記ロータに結合されていることが好ましい。前記ロータと一体回転するように前記ロータに結合する手段は、必要に応じた適宜の結合手段とすればよい。前記回転軸を組立型の回転軸とすることによって、簡明な構成で、前記回転軸の内部空洞に前記ロータを確実に収容することが可能となる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
前記回転軸はラジアル軸受で支持されるようにするとよく、そのラジアル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受の形態のものとすることができる。また、異なる形態のラジアル軸受を組合せて用いることも可能である。即ち、例えば滑り軸受の形態のラジアル軸受と、例えば転がり軸受の形態のラジアル軸受とで、前記回転軸を支持するのもよい。或いはまた、2つのラジアル軸受の組合せを、空気軸受の形態のラジアル軸受と、転がり軸受の形態のラジアル軸受との組合せとしてもよい。様々な組合せが考えられる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
更に、前記回転軸にアキシャル軸受を装備するのもよく、そのアキシャル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受の形態のものとすることができる。通常は、アキシャル軸受は1つ備えれば十分であり、それゆえ異なる形態のアキシャル軸受を組合せて用いる必要はない。ただし、例えば、互いに分離した2つの軸部分から成る回転軸を用いる場合などには、異なる形態のアキシャル軸受を組合せて用いることもあり得る。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
この点について付言すると、転がり軸受の形態の軸受が用いられる場合には、アキシャル軸受を装備することは必須ではない。ただしそのような場合でも、異なる形態の軸受を組合せて用いるいわゆるハイブリッド化は、コストを抑える上で有利であり、具体的には例えば、前記システム羽根車に近い側に装備する軸受を空気軸受とし、前記システム羽根車から遠い側に装備する軸受を転がり軸受とするのもよい。その上で、更なるシール手段を裝備することによって、前記圧縮羽根車と前記膨張羽根車とを一体化して単一部品とした前記システム羽根車のために前記ハウジングの前記圧縮部の中へ潤滑剤が浸入してしまうという事態を防止することができるか、または、その浸入する潤滑剤の浸入量を少なくとも最大限に低減できる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
前記更なるシール手段は、前記回転軸の外周を囲繞するように裝備されており、前記ハウジングと前記電動機ハウジングとの間を、また特に、前記ハウジングと前記電動機との間を、封止するものである。前記更なるシール手段は、前記回転軸の外周面がテーパ形状の軸部分の当該外周面上に、及び/又は、前記回転軸の外周に嵌合された外周面がテーパ形状のスリーブの当該外周面上に設けられる。前記更なるシール手段は、ラビリンスシールから成るものとすることが好ましい。前記更なるシール手段の利点については以下の通りである。先ず、前記回転軸の回転が停止しているか又はその回転速度が非常に遅いときには、潤滑剤、水、潤滑油などの液体が、前記回転軸の前記軸部分の、又は前記スリープの、テーパ形状の外周面をつたって前記更なるシール手段の中へ浸入し得る。しかるに、前記回転軸の前記軸部分の、又は前記スリーブの、その外周面のテーパ形状の方向を、テーパの大径側が前記膨張部の方を向き、テーパの小径側が前記電動機ハウジングの方を向くようにしておけば、前記回転軸が回転を開始したときに又はその回転速度が上昇したときに、それまで前記更なるシール手段の中に浸入し滞留していた液体は、遠心力の作用を受けて前記膨張羽根車の方へ移動して前記更なるシール手段から排出される。尚、ここでテーパの大径側及び小径側とは、前記回転軸の直径、及び/又は、前記スリーブの直径をいうものである。
【手続補正20】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な圧縮羽根車(3)と回転可能な膨張羽根車(4)とを収容しているハウジング(2)を備えており、前記ハウジング(2)は圧縮部(5)と膨張部(6)とを含んでおり、前記圧縮部(5)は前記圧縮羽根車(3)を収容するように構成されており、前記膨張部(6)は前記膨張羽根車(4)を収容するように構成されている、燃料電池の給気システム(1)において、
前記圧縮部(5)及び前記膨張部(6)は、前記圧縮部(5)を流れる圧縮ガスと前記膨張部(6)を流れる膨張ガスとが壁面熱交換を行うように構成されており、前記圧縮羽根車(3)と前記膨張羽根車(4)とが一体化された単一部品のシステム羽根車(13)として構成されており、前記システム羽根車(13)は回転軸(14)を備えており、前記圧縮部(5)と前記膨張部(6)とを分離するハウジング隔壁(19)にラビリンスシールの形態のシール(23)が装備されており、前記ラビリンスシール(23)は前記圧縮羽根車(3)と前記ハウジング隔壁(19)との間に設けられており、前記膨張羽根車(4)の直径は前記圧縮羽根車(3)より小さ前記システム羽根車(13)は撥液性を有し、前記電動機(8)の方を向いた前記システム羽根車(13)のハブ端面(26)は突出部(27)を有する、
ことを特徴とする給気システム(1)。
【請求項2】
前記膨張部(6)は少なくとも部分的に前記圧縮部(5)を囲繞するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の給気システム(1)。
【請求項3】
前記圧縮羽根車(3)は第1材料で製作されており、前記膨張羽根車(4)は前記第1材料に対応する第2材料で製作されていることを特徴とする請求項1又は2記載の給気システム(1)。
【請求項4】
前記膨張部(6)は少なくとも部分的に前記圧縮部(5)に軸方向に隣接して設けられており、前記圧縮部(5)と前記膨張部(6)とは、前記ハウジング隔壁(19)を共有していることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項5】
前記回転軸(14)は電動機(8)により回転駆動されることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項6】
前記電動機(8)は電動機ハウジング(7)に囲繞され、前記電動機ハウジング(7)は前記回転軸(14)を支持するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の給気システム(1)。
【請求項7】
前記電動機ハウジング(7)は少なくとも部分的に前記ハウジング(2)と一体化されていることを特徴とする請求項6記載の給気システム(1)。
【請求項8】
前記回転軸(14)は組立型の回転軸であることを特徴とする請求項5項記載の給気システム(1)。
【請求項9】
前記回転軸(14)は前記電動機(8)のロータ(10)を収容するように構成されることを特徴とする請求項8記載の給気システム(1)。
【請求項10】
前記回転軸(14)にラジアル軸受(33)が装備されており、該ラジアル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受であることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項11】
前記回転軸(14)にアキシャル軸受(34)が装備されており、該アキシャル軸受は滑り軸受又は転がり軸受又は空気軸受であることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項12】
前記回転軸(14)のテーパ形状部分に、及び/又は、前記回転軸(14)を囲繞するテーパ形状のスリーブ(30)上に、更なるシール手段(25)が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項13】
前記更なるシール手段(25)はラビリンスシールから成ることを特徴とする請求項12記載の給気システム(1)。
【請求項14】
前記システム羽根車(13)は耐液性を有することを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【請求項15】
前記膨張部(6)の中の前記膨張羽根車(4)の上流側に流路断面積可変機構が備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の給気システム(1)。
【国際調査報告】