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特表2024-540919環境にやさしい高強度高成形性鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】環境にやさしい高強度高成形性鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241029BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241029BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C21D9/46 G
C22C38/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523510
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2022015870
(87)【国際公開番号】W WO2023068763
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139497
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 スン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 キュン-レ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジュン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ヒュン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 サン-ホ
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA05
4K037EA11
4K037EA16
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB11
4K037FA02
4K037FA03
4K037FC03
4K037FC04
4K037FC07
4K037FE01
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG00
4K037FH01
4K037FJ05
4K037FK02
4K037FK03
4K037FK05
4K037FK08
4K037FL01
4K037FL02
(57)【要約】
本発明は、自動車等に用いられる鋼板に関し、高強度及び高成形性の特徴を有するだけでなく、環境にやさしく製造される鋼板及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含み、
微細組織は、面積分率で、15~35%の硬質相及び65~85%の軟質相を含む、環境にやさしい高強度高成形性鋼板。
【請求項2】
前記軟質相は、面積分率で、再結晶フェライトが60%以上、未再結晶フェライトが5%以下であるものを含む、請求項1に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板。
【請求項3】
前記硬質相は、マルテンサイト又はマルテンサイトと微量のベイナイトとが混合された混合組織であるものを含む、請求項1に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板。
【請求項4】
前記硬質相のアスペクト比は1.2以下であるものを含む、請求項1に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板。
【請求項5】
前記鋼板は、引張強度(TS)780MPa以上であり、伸び率(El)が18%以上である、請求項1に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板。
【請求項6】
重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含む鋼スラブを用いて熱延鋼板を製造する段階と、
前記熱延鋼板を70~90%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階と、
前記冷延鋼板をAc1~Ac1+50℃の温度範囲まで加熱して保持する段階と、
前記冷延鋼板を650~700℃の温度範囲まで1~10℃/sの平均冷却速度で徐冷した後、300~580℃の温度範囲まで5~50℃/sの平均冷却速度で急冷を行う冷却段階と、
を含む、環境にやさしい高強度高成形性鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記熱延鋼板は、
鋼スラブを1100~1300℃の温度範囲に加熱する段階と、
加熱された鋼スラブをAr3~1000℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱間圧延を行う段階と、
前記熱間圧延後、400~700℃の温度範囲で巻き取り、0.1℃/s以下の冷却速度で冷却する段階と、
を含む、請求項6に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記急冷後200~800秒間、過時効処理する段階をさらに含む、請求項6に記載の環境にやさしい高強度高成形性鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられる鋼板に関し、高強度及び高成形性の特徴を有するだけでなく、環境にやさしく製造される鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費及び耐久性の向上は、自動車メーカーが解決しなければならない重要なイシューである。そのために、薄い高強度鋼(steel)を使用すると、環境、燃費、耐衝突性、及び耐久性の様々なイシューを同時に改善することが可能である。一例として、米国の高速道路安全保険協会は、搭乗者保護のための衝突安定性に対する規制を次第に強化してきており、2013年からは25%のスモールオーバーラップ(small overlap)といった過酷な衝突成分を要求している。このような解決策としては自動車の軽量化があるが、軽量化のためには鋼材の高強度化が必要であり、高い成形性も同時に要求される。
【0003】
特に、自動車の衝撃安定性に対する規制が拡大するにつれて、車体の耐衝撃性を向上するためのメンバ(member)、シートレール(seat rail)、ピラー(pillar)などの構造部材には、強度に優れた鋼が採用されている。このような部品は、安定性、デザインに応じて複雑な形成を有し、主にプレス金型で形成して製造されるため、高強度と共に高レベルの成形性が要求される。
【0004】
しかし、鋼の強度が高くなると、衝撃エネルギー吸収に有利な特徴を有するが、一般に強度が高くなると、伸び率が減少して成形加工性が低下するという問題点がある。さらに、降伏強度が過度に高い場合には、成形時に金型において素材の流入が減少し、成形性が低下するという問題がある。そこで、自動車産業界では、強度及び成形性に優れた、すなわち、強度及び伸び率のバランス(TS×El)に優れた鋼材の開発を鉄鋼業界に求めている実情である。
【0005】
鉄鋼メーカーは、このようなニーズに応えるために様々な製品を開発している。一例として、二相組織鋼(Dual Phase Steel、DP鋼)、変態誘起塑性鋼(Transformation Induced Plasticity Steel、TRIP鋼)、複合組織鋼(Complex Phase Steel、CP鋼)、フェライト-ベイナイト鋼(Ferrite-Bainite Steel、FB鋼)などがあり、製銑、製鋼、連鋳、熱延、及び冷間圧延と焼鈍工程により製品が製造される。
【0006】
一方、世界中の環境保護に対する要求が増加しており、企業はESG(Environment、Social、Governance)二酸化炭素(CO)の排出減少のために力量を集中している。様々な鉄鋼メーカーでは、二酸化炭素排出ゼロ(zero)計画を発表しており、コークス還元を行っていた従来の方式は二酸化炭素の排出量が多いという問題を有するため、水素を利用して還元するDRI技術など、環境にやさしい技術への関心が高い。
【0007】
通常、冷間圧延と焼鈍に必要なエネルギーは、製銑工程の副生ガスを使用するが、DRIなど環境にやさしい技術を適用する場合、副生ガスが減少してエネルギーコストが増加するため、省エネのためには熱処理温度を低くする技術が必要である。そして、副生ガスを使用して熱源を作ると、これもCOを発生させるため、使用量を最小限に抑えることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面は、二酸化炭素(CO)の発生を低減させて、環境にやさしく製造される高い強度と成形性を有する鋼板及びそれを製造する方法を提供しようとするものである。
【0009】
本発明の課題は、上述した事項に限定されない。本発明の更なる課題は、明細書の全体的な内容に記述されており、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の明細書に記載された内容から本発明の更なる課題を理解する上で何ら問題がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含み、
微細組織は、面積分率で、15~35%の硬質相及び65~85%の軟質相を含む、環境にやさしい高強度高成形性鋼板に関する。
【0011】
本発明の他の一態様は、重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含む鋼スラブを用いて熱延鋼板を製造する段階と、
上記熱延鋼板を70~90%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階と、
上記冷延鋼板をAc1~Ac1+50℃の温度範囲まで加熱して保持する段階と、
上記冷延鋼板を650~700℃の温度範囲まで1~10℃/sの平均冷却速度で徐冷した後、300~580℃の温度範囲まで5~50℃/sの平均冷却速度で急冷を行う冷却段階と、を含む、環境にやさしい高強度高成形性鋼板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による高い強度及び成形性、特に強度と延性のバランス(TS×El)に優れた鋼板を提供できることにより、プレス成形時におけるクラック又はシワ等の加工欠陥を防止することができるため、複雑な形状への加工が要求される構造用などの部品に好適に適用することができる。また、不可避に自動車が衝突した場合に、クラックが形成されにくい耐衝突性に優れた自動車部品の製造に効果的である。
【0013】
また、製造過程で焼鈍熱処理温度を下げることで、二酸化炭素(CO)の発生を低減させ、環境にやさしく(Eco-Friendly)製造される鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】連続焼鈍工程の熱処理段階をグラフで示したものである。
図2】任意のFe-C状態図であって、成分と焼鈍温度との関係を説明するためのものである。
図3】硬質相のアスペクト比を測定する方法の一例を模式化した模式図である。
図4】実施例のうち、発明例1の微細組織を観察した写真である。
図5】実施例のうち、比較例1の微細組織を観察した写真である。
図6】実施例のうち、比較例4の微細組織を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される用語は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。また、本明細書で使用される単数形は、関連する定義がそれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、構成を具体化し、他の構成の存在や付加を除外するものではない。
【0018】
他に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示されている内容に一致する意味を有するものと解釈される。
【0019】
自動車素材として使用される高強度鋼は代表的に、二相組織鋼(Dual Phase Steel、DP鋼)、変態誘起塑性鋼(Transformation Induced Plasticity Steel、TRIP鋼)、複合組織鋼(Complex Phase Steel、CP鋼)、フェライト-ベイナイト鋼(Ferrite-Bainite Steel、FB鋼)などがある。
【0020】
これらのうち、DP鋼は軟質相(soft phase)と硬質相(hard phase)を含み、一部の残留オーステナイトを含むことができる。このようなDP鋼は降伏強度が低く、引張強度が高く降伏比(Yield Ratio、YR)が低く、高い加工硬化率、高延性、連続降伏挙動、常温耐時効性、焼付硬化性などに優れ、場合によっては穴拡げ性に優れるという特徴がある。
【0021】
しかし、引張強度780MPa以上の超高強度を確保するためには、強度向上に有利なマルテンサイトのような硬質相(hard phase)の分率を高くしなければならず、この場合は降伏強度が上昇し、プレス成形中にクラック等の欠陥が発生し得るという問題がある。したがって、強度及び伸び率に同時に優れた特性を確保することが重要である。
【0022】
そこで、本発明の発明者らは、常温で行う冷間圧延の圧下率を上げて組織を微細に分散させ、熱処理温度を調整することにより、再結晶駆動力を増加させて鋼の延性に影響を及ぼす軟質相(soft phase)の十分な再結晶を誘導できるようにした。また、強度確保に有利な硬質相の微細化及び分布度を均一に確保することにより、優れた強度及び伸び率のバランスを確保できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0023】
一方、上記DP鋼を製造するためには鋼スラブを作製した後、この鋼スラブを熱間圧延、冷間圧延、焼鈍工程を経て製造する。上記冷間圧延工程とは、主に冷延鋼板の製造時に行われる工程であって、熱延コイルを常温で一定の圧下率で圧延することを意味する。通常、上記冷間圧延はTCM(Tandum Cold rolling Mill)で可逆式圧延を行う。上記TCMは、低い製造コストによる大量生産という利点を有する。一方、焼鈍工程は、加熱炉内で鋼板(冷延鋼板)を一定の温度区間で加熱、保持することにより、再結晶と相変態現象を通じて硬度を低下させ、加工性を改善することができる。上記焼鈍工程を経ていない鋼板は、硬度、特に、表面硬度が高く加工性が不足するのに対し、焼鈍工程が行われた鋼板は、再結晶組織を有することにより、硬度、降伏点、抗張力が低くなる効果が得られる。
【0024】
上記焼鈍工程は常温の鋼板を加熱し、さらに、高温に加熱しなければならないため、大量のエネルギーを必要とし、これによりエネルギーコストが増加し、燃焼後に発生するガスの浄化コストなどが発生するだけでなく、必然的に二酸化炭素(CO)などの汚染物質の発生を高め、環境にやさしくない。そこで、本発明の発明者らは、上記焼鈍工程の加熱温度を下げることができる方案について研究し、エネルギーを作る過程及び燃焼後に処理する過程で二酸化炭素(CO)などの汚染物質の発生を最小化する方案について研究した。よって、本発明者らは、COの発生比率が高く、高いエネルギーコストがかかる熱処理工程のエネルギーを節減するために、熱間圧延後の冷間圧延時に冷間圧下率を高くすることで、熱処理温度を低くしても優れた材質を確保する技術を開発し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明は、上記低い焼鈍温度を適用して省エネ及び汚染物質を最小限に抑え、環境にやさしいだけでなく、優れた強度と伸び率のバランスを有する鋼板及びその製造方法を提供する。
【0026】
まず、本発明の一態様である鋼板について詳細に説明する。上記鋼板の合金組成は、重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含む。上記合金組成について詳細に説明すると、以下の通りである。本発明で特に断らない限り、各元素の含有量は重量%を基準とする。
【0027】
炭素(C):0.05~0.10%
上記Cは固溶強化のために添加される重要な元素であり、このようなCは析出元素と結合して微細析出物を形成することで鋼の強度向上に寄与する。上記Cの含有量が0.10%を超えると硬化能が増加し、鋼を製造する際、冷却中にマルテンサイトが形成されるため強度が過度に上昇する一方、伸び率の減少を招く可能性がある。また、溶接性が低下し、部品としての加工時に溶接欠陥が発生するおそれがある。上記C含有量が0.05%未満であると、目標レベルの強度確保が困難になる可能性がある。より有利には0.06~0.08%であることが好ましい。
【0028】
シリコン(Si):0.3%以下(0は除く)
上記Siはフェライト安定化元素であって、フェライト変態を促進することで目標レベルのフェライト分率の確保に有利である。また、固溶強化能に優れ、フェライトの強度を高めるのに効果的であり、鋼の延性を低下させることなく強度を確保するのに有用な元素である。上記Si含有量が0.3%を超えると、固溶強化効果が過度になり、むしろ延性が低下し、表面スケール欠陥を誘発してめっきの表面品質に悪影響を及ぼし、化成処理性を阻害する可能性がある。より有利には0.1%以下であることが好ましい。
【0029】
マンガン(Mn):2.0~2.5%
上記Mnは、鋼中の硫黄(S)をMnSとして析出させてFeSの生成による熱間脆性を防止し、鋼の固溶強化に有利な元素である。上記Mnの含有量が2.0%未満であると、上記の効果が得られないだけでなく、目標レベルの強度の確保に困難がある。一方、その含有量が2.5%を超えると、溶接性、熱間圧延性などの問題が生じる可能性が高くなるとともに、硬化能の増加によりマルテンサイトがより容易に形成されるため、延性が低下するおそれがある。また、組織内のMn酸化物の帯(Mn-band)が過度に形成され、加工クラックのような欠陥発生の危険が高くなるという問題がある。そして、焼鈍時にMn酸化物が表面に溶出してめっき性を大きく阻害するという問題がある。より有利には2.2~2.4%であることが好ましい。
【0030】
チタン(Ti):0.05%以下(0は除く)
上記Tiは微細炭化物を形成する元素であって、降伏強度及び引張強度の確保に寄与する。また、Tiは、鋼中のNをTiNとして析出させ、鋼中に不可避に存在するAlにAlNの形成を抑制する効果があり、連続鋳造時にクラックの発生可能性を低減させる効果がある。上記Ti含有量が0.05%を超えると、粗大な炭化物が析出し、鋼中の炭素量の低減により強度及び伸び率が減少するおそれがある。また、連続鋳造時にノズル詰まりを誘発するおそれがあり、製造コストが上昇するという問題点がある。したがって、上記Tiは0.05%以下であることが好ましく、0%超であることが好ましい。
【0031】
ニオブ(Nb):0.1%以下(0は除く)
上記Nbは、オーステナイト粒界に偏析して、焼鈍熱処理時にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、微細な炭化物を形成して強度向上に寄与する元素である。上記Nbの含有量が0.1%を超えると、粗大な炭化物が析出し、鋼中の炭化物の低減により強度及び伸び率が低下する可能性があり、製造コストが上昇するという問題がある。上記Nbは0.1%以下であることが好ましく、0%超であることが好ましい。
【0032】
クロム(Cr):1.5%以下(0は除く)
上記Crは、ベイナイトの形成を容易にする元素であり、焼鈍熱処理時にマルテンサイトの形成を抑制し、微細な炭化物を形成して強度向上に寄与する元素である。上記Crの含有量が1.5%を超えると、ベイナイトが過度に形成されて伸び率が減少し、粒界に炭化物が形成される場合、強度及び伸び率が低下する可能性があり、製造コストが上昇するという問題がある。したがって、上記Crは1.5%以下で含むことが好ましく、0%超であることが好ましい。
【0033】
リン(P):0.1%以下
上記Pは、固溶強化効果が最も大きい置換型元素であって、面内異方性を改善し、成形性を大きく低下させることなく強度確保に有利な元素である。しかし、上記Pを過剰に添加する場合、脆性破壊が発生する可能性が大幅に増加し、熱間圧延中にスラブの板破断が発生する可能性が増加し、めっき表面特性を阻害するという問題がある。したがって、上記Pの含有量は0.1%以下であることが好ましく、不可避に含まれるレベルを考慮して0%は除くことができる。
【0034】
硫黄(S):0.01%以下
上記Sは、鋼中の不純物元素として不可避に添加される元素であり、延性を阻害するため、その含有量をできるだけ低く管理することが好ましい。特にSは、赤熱脆性を発生させる可能性を高めるという問題があるため、その含有量を0.01%以下に管理することが好ましい。ただし、不可避に含まれるレベルを考慮して0%は除くことができる。
【0035】
残りは鉄(Fe)を含み、通常の製造過程では、原料又は周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入することがあるため、これを排除することはできない。これらの不純物は、製造過程における通常の技術者であれば、誰でも分かるものであるため、本明細書では、その全ての内容について特に言及してはいない。
【0036】
本発明の高強度鋼板は、微細組織として硬質相と軟質相で構成され、特に、最適化された焼鈍工程によりフェライト再結晶を極大化させることにより、最終的に、再結晶フェライト基地に硬質相であるベイナイトとマルテンサイト相が均一に分布した組織を含むことが好ましい。上記微細組織における硬質相は主にマルテンサイトであり、微量のベイナイトが一部含まれて混在している相を意味し、軟質相はフェライト相を意味する。軟質相と硬質相で構成された組織における変形特性は軟質相が成形性を決定し、硬質相は強度を決定する。
【0037】
上記硬質相は、面積分率で15~35%を含むことが好ましい。上記硬質相の分率が高すぎると、強度は高いものの伸び率が低くなり、軟質相の分率が高いと、逆に伸び率は高くなるものの強度は低くなるという問題がある。本発明で提供する780MPa以上の強度を確保するためには、硬質相が面積分率で15%以上含まれることが好ましく、成形性を確保するために35%を超えないことが好ましい。
【0038】
適正な強度を確保するとともに成形性を確保するために、上記軟質相は、面積分率で65~85%であることが好ましい。上記軟質相のフェライトは、再結晶フェライトと未再結晶フェライトとに区分することができる。図3に示すように、再結晶フェライトと未再結晶フェライトとの差は、圧延方向に対する結晶粒度のアスペクト比(aspect ratio)で区分することができる。未再結晶フェライトは、図3の(b)のように、アスペクト比が大きく、詳細に分析した場合、フェライト粒内の線状の変形組織が観察される。一方、再結晶フェライトが成形性確保に有利であるため、軟質相のうち再結晶フェライトが60%以上であることが好ましく、未再結晶フェライトは軟質相ではあるが、分率が高い場合には成形性を減少させるため、5%以下であることが好ましい。
【0039】
一方、上記硬質相のアスペクト比(aspect ratio)は1.2以下であることが好ましい。アスペクト比は、図3の(a)及び(b)に示すように、圧延方向に対する結晶粒度の長軸(b)と短軸(a)の比(b/a)を意味し、硬質相のアスペクト比は、上記硬質相が圧延方向に延伸して形成された組織のアスペクト比である。上記硬質相のアスペクト比が増加すると、厚さ方向の変形抵抗性に重要な曲げ性(bending)に悪影響を与える。また、上記硬質相のアスペクト比が増加すると、穴拡げ性を低下させる。したがって、上記硬質相のアスペクト比は、できるだけ低く管理することが重要であるため、1.2を超えないことが好ましい。
【0040】
本発明の鋼板は、引張強度(TS)780MPa以上の高強度を有し、伸び率が18%以上であり、優れた強度と成形性を確保することができる。
【0041】
次に、本発明の鋼板の製造方法に対する一態様について詳細に説明する。本発明の鋼板は、まず鋼スラブを準備してこれを加熱し、熱間圧延を行った後、巻取り及び冷却を行い、冷間圧延して連続焼鈍を経て製造することができる。以下では、各段階について詳細に説明する。
【0042】
鋼スラブ加熱
上述した合金組成、すなわち、重量%で、C:0.05~0.10%、Si:0.3%以下(0は除く)、Mn:2.0~2.5%、Ti:0.05%以下(0は除く)、Nb:0.1%以下(0は除く)、Cr:1.5%以下(0は除く)、P:0.1%以下、S:0.01%以下、残りはFe及び不可避不純物を含む鋼スラブを準備した後、これを加熱する。これは、後続する熱間圧延工程を円滑に行い、目標とする鋼板の物性を確保するためのものであって、加熱工程条件を特に限定せず、本発明が属する技術分野において通常行われる方法、条件であれば構わない。一例として、1100~1300℃の温度範囲に加熱することが好ましい。
【0043】
熱間圧延
上記加熱された鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。このとき、出口側温度はAr3~1000℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延を行うことが好ましい。上記仕上げ熱間圧延時に、出口側温度がAr3未満であると、熱間変形抵抗が急激に増加し、熱延コイル(coil)の上(top)部、下(tail)部及びエッジ(edge)部が単相領域となり、面内異方性が増加して成形性が低下する可能性がある。一方、1000℃を超える場合には、相対的に圧延荷重が減少して生産性には有利であるが、厚い酸化スケール(scale)が発生するおそれがある。より好ましくは760~940℃の温度範囲で行うことができる。
【0044】
巻取り及び冷却
上記熱間圧延で製造された熱延鋼板をコイル(coil)状に巻き取ることができる。上記巻取りは400~700℃の温度範囲で行うことができる。上記巻取り温度が400℃未満であると、過剰なマルテンサイト又はベイナイトの形成により熱延鋼板の過度な強度上昇を招き、以後の冷間圧延時に、負荷による形状不良などの問題が生じる可能性がある。一方、巻取り温度が700℃を超える場合には、表面スケールが増加して酸洗性が劣化する可能性がある。
【0045】
一方、上記巻き取られた熱延鋼板を常温まで0.1℃/s以下(0を除く)の平均冷却速度で冷却することが好ましい。上記巻き取られた熱延鋼板は、移送、積置などの過程を経た後に冷却を行うことができ、冷却前の工程はこれに限定されるものではない。上記巻き取られた熱延鋼板を一定速度で冷却することにより、オーステナイトの核生成サイト(site)となる炭化物を微細に分散させた熱延鋼板を得ることができる。
【0046】
その後、後続の冷間圧延を行う前に、熱延鋼板の表面を酸洗して表面スケールを除去する工程がさらに行われることができる。上記酸洗方式は特に限定されず、本発明の属する技術分野において通常行われる方式で行えばよい。
【0047】
冷間圧延
上記のように巻き取られた熱延鋼板を常温で一定の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板に製造することができる。
【0048】
上記冷間圧延時に、70~90%の圧下率で冷間圧延を行うことが好ましい。上記冷間圧延の圧下率が70%未満であると、再結晶駆動力が減少してフェライトが粗大に形成され、オーステナイトの形成も減少して焼鈍炉の均熱帯温度を高くしてはじめてオーステナイト分率が十分に確保される。一方、冷間圧下率が90%を超えると、鋼板のエッジ(edge)部でクラックが発生する可能性が高く、圧延前の初期厚さを過度に厚くする必要があり、圧延パスが増加して生産性が低下するという問題がある。
【0049】
上記冷間圧延を行う方式について、本発明では特に限定せず、本発明が属する技術分野において行われる方式であれば、如何なるものでも適用可能である。例えば、TCM(Tandum Cold rolling Mill)方式、ZRM(Sendzimir rolling mill)方式などがある。これらについて概略的に説明すると、TCMは可逆式圧延であって、低い製造コスト、大量生産が可能であるため、生産性に優れるという利点があるが、圧下力を加える上で多少の制約があるという欠点がある。ZRMは可逆配置式であって、生産性が低いという欠点があるが、圧下力を加える上では多少容易であるという利点がある。
【0050】
上記冷間圧延の圧下率は、鉄鋼の相変態を改善して様々な物性を向上させる重要な操業因子であるため、圧下率を制御することは品質確保において特に重要である。本発明では、製品の材質、サイズ、操業環境などを考慮して適正な方式を採用することが好ましい。
【0051】
連続焼鈍
上記製造された冷延鋼板を連続焼鈍することが好ましい。連続焼鈍処理は、一例として、連続焼鈍炉(CAL)で行うことができる。連続焼鈍工程の熱処理段階に対する一例を図1にグラフで示している。図1に示すように、焼鈍炉内の加熱帯(Heating Section:HS)、均熱帯(Soaking Section:SS)、徐冷帯(Slow Cooling Section:SCS)、急冷帯(Rapid Cooling Section:RCS)、過時効帯(Over Aging Section:OAS)の熱処理段階で構成されることができる。一般に、各区間(section)の温度は、各区間(section)が終わる地点に付着された温度を測定するため、温度は、各区間(section)が終わる位置の温度を意味する。例えば、急冷帯(RCS)温度は、急冷帯が終わる区間の温度であって、図1の場合4で表される。
【0052】
上記加熱帯(HS)において、鋼板は一定の昇温速度で加熱され、鋼板は温度が上昇しつつ転位の回復、セメンタイトの析出、フェライトの再結晶及び二相域の逆変態が起こる。鋼板の厚さと幅に応じて通板速度が変わり、熱延初期組織及び冷間圧下率に応じて上記温度区間別微細組織の変化は変わり得る。
【0053】
均熱帯(SS)区間に進入すると、一定の温度に一定時間保持され、このとき、焼鈍温度に応じて二相域オーステナイト又は単相域オーステナイトの逆変態が観察される。上記均熱帯(SS)区間は、焼鈍炉においてエネルギーを最も多く消費する区間の一つとして知られている。徐冷帯(SCS)区間では、通常低い冷却速度で冷却され、SCS区間以降、急冷帯(RCS)では高い冷却速度で連続冷却され、RCS設定温度及び硬化能の程度に応じて冷却中に一部ベイナイトが生成されることができる。
【0054】
一方、図2は、任意のFe-C状態図であって、任意の成分について温度T1が決定されると、温度に該当するオーステナイトとフェライト等の比率がレバールール(lever rule)によって決定されることができる。すなわち、均熱帯(SS)の温度は相変態と密接な関連がある。相変態、物質の状態変化に影響を及ぼす因子としては、温度、圧力、組成などがあり、組成が決定される場合には、温度と圧力により調整が可能である。特に、温度と圧力が高いほど、焼鈍炉加熱中の相変態は急速に進行することができるが、温度を上げるほど、消費されるエネルギーコストが増加し、燃焼後に二酸化炭素などの炭素排出が増加することになり、環境にやさしくない。鉄鋼の製造工程において圧力と比較される変数は冷間圧下率であり、同じ温度で冷間圧下率を高めると急速に相変態が進むが、これとは逆の概念で冷間圧下率を高めると、低い温度でも相変態を作ることができる。このような原理を利用して、本発明では上記冷間圧下率を従来の方式より高い70~90%にして行う。
【0055】
通常の焼鈍工程における均熱帯温度は、Ac1+30℃~Ac3-30℃の範囲であることが一般的である。しかし、本発明は上述したように、冷間圧下率を高くして低い温度で熱処理を行ってもフェライト再結晶及びオーステナイトの形成が可能であるため、本発明の焼鈍工程はAc1~Ac1+50℃の温度範囲まで加熱し、保持することが好ましい。本発明は、上記温度範囲においても、再結晶及び相変態現象により硬度を低下させ、加工性を改善することができる。
【0056】
上記温度範囲で熱処理された冷延鋼板を冷却することにより、目標とする組織を形成することができ、このとき、段階的(stepwise)に冷却を行うことが好ましい。本発明において、上記段階的冷却は、徐冷帯(SCS)と急冷帯(RCS)で行われることができ、一例として、650~700℃の温度範囲まで1~10℃/sの平均冷却速度で徐冷した後、300~580℃の温度範囲まで5~50℃/sの平均冷却速度で急冷を行うことが好ましい。徐冷時の冷却速度を遅く行うことにより、その後、急冷時の急激な温度低下による板形状の不良を抑制することができる。
【0057】
上記徐冷の終了温度が650℃未満であると、低すぎる温度により炭素の拡散活動度が低くフェライト内の炭素濃度が高くなるのに対し、オーステナイト内の炭素濃度が低くなることで硬質相の分率が過度になり、降伏比が増加し、それにより、加工時のクラック発生傾向が高くなる。また、均熱帯との温度差が大きくなりすぎて板の形状が不均一になるという問題が発生する可能性がある。上記終了温度が700℃を超えると、後続冷却(急冷)時に過度に高い冷却速度が要求されるという欠点がある。また、上記徐冷時の平均冷却速度が10℃/sを超えると、炭素拡散が十分に起こることができず、生産性を考慮して1℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。
【0058】
上記徐冷を完了した後に急冷を行う。上記急冷冷却終了温度が300℃未満では、鋼板の幅方向及び長さ方向に冷却ばらつきが発生し、板形状が劣化するおそれがあり、580℃を超えると、硬質相を十分に確保できなくなり強度が低下する可能性がある。一方、上記急冷時の平均冷却速度が5℃/s未満であると、硬質相の分率が過度になるおそれがあり、50℃/sを超えると、むしろ硬質相が不十分になるおそれがある。
【0059】
一方、上記焼鈍工程では、冷却が完了した後、必要に応じて過時効処理(OAS)を行うことができる。上記過時効処理は、上記急冷終了温度後に一定時間保持する工程である。上記過時効処理は別途の処理を行わないものであって、一種の空冷処理と同様に見なすことができる。上記過時効を行うことで、コイルの幅方向、長さ方向にコイルの均質化がなされることで、形状品質を向上させる効果がある。そのために、上記過時効処理は200~800秒間行うことができる。
【実施例
【0060】
以下、本発明の実施例について説明する。下記の実施例は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の範疇から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能であることは言うまでもない。下記の実施例は本発明の理解のためのものであって、本発明の権利範囲は下記の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、それと均等なものによって定められるべきである。
【0061】
(実施例)
下記表1に示す合金組成(単位は重量%であり、表1に示されていない残りはFeと不可避不純物である)を有する鋼スラブを作製した後、それぞれの鋼スラブを1200℃で1時間加熱した後、仕上げ圧延温度800~920℃で仕上げ熱間圧延して熱延鋼板を製造した。上記熱延鋼板を0.1℃/sの冷却速度で冷却して650℃で巻き取った。その後、巻き取られた熱延鋼板を40%、80%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造した。
【0062】
製造された冷延鋼板に対して焼鈍温度を730~860℃の温度範囲に加熱し、表2の焼鈍温度条件で熱処理を行った。焼鈍熱処理は、図1の加熱帯(HS)、均熱帯(SS)、徐冷帯(SCS)、急冷帯(RCS)、過時効処理帯(OAS)における各段階の温度を表2に示した。一方、徐冷(表2においてSCS区間)は3℃/sの平均冷却速度で、急冷(表2においてRCS区間)は20℃/sの平均冷却速度で行った。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
上記方法で製造された各鋼板の微細組織を観察し、機械的特性及びめっき特性を評価し、その結果を下記表3に示した。
【0066】
このとき、それぞれの試験片に対する引張試験は、圧延方向の垂直方向にJIS5号サイズの引張試験片を採取した後、変形率(strain rate)0.01/sで引張試験を行った。
【0067】
そして、組織相(phase)のうち未再結晶フェライトは、ナイタル(nital)エッチング後、5000倍率でSEMを用いて観察した。このとき、観察されたフェライト相の結晶粒形状から通常の未再結晶フェライトで観察されるサブグレイン(sub grain)又は圧延方向に延伸された粒子を未再結晶フェライトと分析し、その分率を測定した。その他の相(phase)についても、ナイタルエッチング後、SEMとイメージ分析器(Image analyzer)を用いて各分率を測定した。硬質相のアスペクト比は、図3に示すように、圧延方向に対して横(a)と縦(b)の比率を測定して比率を測定し、これは一般的に使用される方法である。
【0068】
【表3】
【0069】
上記表3において、F:フェライト、YS:降伏強度、TS:引張強度を意味する。
【0070】
上記表1~3に示すように、鋼合金組成と製造条件、特に、連続焼鈍工程が本発明で提案する条件を全て満たす発明例1~3は、低い焼鈍温度でも要求される微細組織が得られ、物性が良好であり、高強度を有しながらも伸び率に優れ、焼鈍温度が低いため、環境にやさしい製造工程を提供する。
【0071】
図4は、発明例1の微細組織を観察したSEM写真であり、フェライトが60%以上再結晶し、硬質相が丸みを帯びた形状であって、アスペクト比が1.2以下である。
【0072】
比較例1~2は、圧下率が低いため、焼鈍温度を低くすると、フェライト再結晶が不足し、オーステナイトが加熱中に急速に形成され、強度は確保されるものの、伸び率が低いという問題がある。特に、比較例2は、発明例2と同様の熱処理を行ったが、圧下率が低いため再結晶が円滑に発生せず、再結晶フェライトの分率が低く伸び率が低下する。図5は、比較例1の微細組織を観察したSEM写真であり、再結晶していないフェライトが多数観察された。
【0073】
比較例3~7は、伸び率が目標とする物性を満たしていない。特に、圧下率が低いため、オーステナイトが粗大に形成されて伸び率が低く、焼鈍温度が高いため、エネルギー効率が低いという問題がある。図6は、比較例4の微細組織のSEM写真であって、硬質相の分率が大きくアスペクト比が大きいという特性を示し、伸び率などの成形性が低下したことが確認できた。
【0074】
比較例8~11は、焼鈍温度が高いためエネルギー効率が低いという問題があり、二次相の分率が高いため伸び率が低いという問題がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】