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特表2024-540924(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミド、並びに関連の結晶形態、組成物、及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミド、並びに関連の結晶形態、組成物、及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07D401/04
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/454
A61K45/00
A61K9/48
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523549
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022047050
(87)【国際公開番号】W WO2023069458
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,509
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/393,163
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
2.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】519051621
【氏名又は名称】ジービー005, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ベイリ
(72)【発明者】
【氏名】アル - アクラビ、ファフミ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD46
4C076DD59
4C076EE23
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA28
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA03
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドの結晶形態が提供される。(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドを含有する医薬組成物、並びにそれらの調製及びキナーゼ全般のモジュレートにおける使用、及び具体的に癌の処置のための関連方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-{3-[(1S)-1-{[6-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラジン-2-イル]アミノ}エチル]フェニル}-5-メチルピリジン-3-カルボキサミドの固体結晶形態。
【請求項2】
結晶形態が形態Iである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項3】
9.2011±0.2、13.9620±0.2、及び16.1506±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項2に記載の固体結晶形態。
【請求項4】
20.4516±0.2、8.0416±0.2、及び13.3485±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項2に記載の固体結晶形態。
【請求項5】
実質的に図1に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項3に記載の固体結晶形態。
【請求項6】
結晶形態が実質的に純粋な形態Iである、請求項2に記載の固体結晶形態。
【請求項7】
結晶形態が形態IIである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項8】
4.2759±0.2、8.5794±0.2、及び24.2411±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項7に記載の固体結晶形態。
【請求項9】
20.98±0.2、12.07±0.2、15.78±0.2、及び24.26±0.20.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項7に記載の固体結晶形態。
【請求項10】
実質的に図3に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項7から9までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項11】
結晶形態が実質的に純粋な形態IIである、請求項7に記載の固体結晶形態。
【請求項12】
結晶形態が形態IIIである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項13】
10.2543±0.2、13.5006±0.2、及び13.9691±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項12に記載の固体結晶形態。
【請求項14】
22.22±0.2、19.27±0.2、20.81±0.2、及び8.70±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項12に記載の固体結晶形態。
【請求項15】
実質的に図5に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項12から14までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項16】
結晶形態が実質的に純粋な形態IIIである、請求項12に記載の固体結晶形態。
【請求項17】
結晶形態が形態IVである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項18】
8.6027±0.2、11.9598±0.2、13.9360±0.2、21.5845±0.2、及び25.4090±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項17に記載の固体結晶形態。
【請求項19】
19.7438±0.2、8.3694±0.2、及び18.8538±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項17に記載の固体結晶形態。
【請求項20】
実質的に図9に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項17から19までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項21】
結晶形態が実質的に純粋な形態IVである、請求項17に記載の固体結晶形態。
【請求項22】
結晶形態が形態Vである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項23】
6.4014±0.2、9.1908±0.2、14.8143±0.2、17.5539±0.2、21.5891±0.2、23.9883±0.2、及び25.5807±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項22に記載の固体結晶形態。
【請求項24】
8.49±0.2、6.11±0.2、20.95±0.2、及び21.17±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項22に記載の固体結晶形態。
【請求項25】
実質的に図11に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項22から24までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項26】
結晶形態が実質的に純粋な形態Vである、請求項22に記載の固体結晶形態。
【請求項27】
結晶形態が形態VIである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項28】
6.8339±0.2、10.1404±0.2、15.6784±0.2、16.1217±0.2、17.5940±0.2、20.6765±0.2、25.5122±0.2、及び26.7363±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項27に記載の固体結晶形態。
【請求項29】
23.93±0.2、13.05±0.2、18.36±0.2、及び8.54±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項27に記載の固体結晶形態。
【請求項30】
実質的に図13に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項27から29までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項31】
結晶形態が実質的に純粋な形態VIである、請求項27に記載の固体結晶形態。
【請求項32】
結晶形態が形態VIIである、請求項1に記載の固体結晶形態。
【請求項33】
6.727、8.4799、9.4854、12.0161、17.1901、18.8407、19.0691、19.7285及び20.2268±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項32に記載の固体結晶形態。
【請求項34】
実質的に図15に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる、請求項32から33までのいずれか一項に記載の固体結晶形態。
【請求項35】
結晶形態が実質的に純粋な形態VIIである、請求項32に記載の固体結晶形態。
【請求項36】
請求項1から35までのいずれか一項に記載の固体結晶形態を含む医薬組成物。
【請求項37】
追加の治療的活性な化合物を含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
経口投与のために製剤化される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
ゲルカプセル剤の形態である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項41】
ポリエチレングリコールモノラウラートをさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項42】
ビタミンEをさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ブチル化ヒドロキシトルエンをさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項44】
1~25mgの(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドを含む医薬組成物。
【請求項45】
2mg、又は5mg、又は10mg、又は20mg、又は25mgの(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドを含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
以下:
1~25mgの(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロ-ヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミド;
ポリエチレングリコール;
プロピレングリコールモノラウラート;
ビタミンE;及び
ブチル化ヒドロキシトルエン
を含む医薬組成物。
【請求項47】
キナーゼ阻害によってモジュレートされる疾患又は状態を処置するための方法であって、請求項1から35までのいずれか一項に記載の固体結晶形態、又は請求項36から46までのいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項48】
キナーゼがチロシンキナーゼである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
チロシンキナーゼがブルトンチロシンキナーゼ(BTK)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
疾患又は状態が癌である、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドの結晶形態、並びに(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドを含む生成物、並びにそれらの使用及び調製の関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼは、真核細胞における細胞内及び膜貫通シグナル伝達タンパク質の大きいグループである。これらの酵素は、ATPから標的タンパク質の特定のアミノ酸残基への末端(ガンマ)ホスファートの移動に関与する。標的タンパク質における特定のアミノ酸残基のリン酸化は、それらの活性をモジュレートすることができ、細胞のシグナル伝達及び代謝における甚大な変化に至る。タンパク質キナーゼは、細胞膜、細胞質ゾル及び小器官、例えば、核に見出すことができ、代謝、細胞成長及び分化を含めた複数の細胞機能、細胞シグナル伝達、免疫応答のモジュレーション、並びに細胞死を媒介することに関与する。セリンキナーゼは、標的タンパク質におけるセリン又はスレオニン残基を特異的にリン酸化する。同様に、チロシン受容体キナーゼを含めたチロシンキナーゼは、標的タンパク質におけるチロシン残基をリン酸化する。チロシンキナーゼファミリーとしては、以下が挙げられる:TEC、SRC、ABL、JAK、CSK、FAK、SYK、FER、ACK、並びにERBB、FGFR、VEGFR、RET及びEPHを含めた受容体チロシンキナーゼサブファミリー。受容体チロシンキナーゼスーパーファミリーのサブクラスIとしては、ERBB受容体が挙げられ、以下:ErbB1(上皮成長因子受容体(EGFR)とも呼ばれる)、ErbB2、ErbB3及びErbB4、の4つのメンバーを含む。
【0003】
キナーゼは、健康及び疾患に関連する鍵となる生物学的プロセスに対して制御を発揮する。さらに、様々なタンパク質キナーゼの異常活性化又は過剰発現は、良性及び悪性の増殖によって特徴付けられる複数の疾患及び障害、並びに免疫系の不適切な活性化に起因する疾患の機序に関わる。したがって、選択のキナーゼ又はキナーゼファミリーの阻害剤は、限定されないが以下:固形腫瘍、血液悪性腫瘍、血栓、関節炎、グラフト対宿主病、ループス・エリテマトーデス、乾癬、大腸炎、回腸炎、多発性硬化症、ぶどう膜炎、冠状動脈脈管症、全身性硬化症、アテローム動脈硬化症、喘息、移植拒絶反応、アレルギー、虚血、皮膚筋炎、天疱瘡など、を含む、癌、血管疾患、自己免疫疾患、及び炎症状態の処置において有用だと考えられる。
【0004】
Tecキナーゼは、限られているわけではないが造血起源の細胞中に優勢に発現される非受容体チロシンキナーゼのファミリーである。Tecファミリーとしては、TEC、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、誘発性T細胞キナーゼ(ITK)、静止リンパ球キナーゼ(RLK/チロシンタンパク質キナーゼにはTXK)、及び骨髄発現キナーゼ(BMX/ETK)が挙げられる。
【0005】
BTKは、B細胞受容体シグナル伝達並びにB細胞発達及び活性化の調節において重要である。ヒトにおいてBTKをコード化する遺伝子の突然変異は、X連鎖無ガンマグロブリン血症に至り、これは、B細胞の成熟の欠損、免疫グロブリン及び末梢B細胞のレベルの減少、並びにT細胞非依存性免疫応答の低下を含めて、免疫機能の低減によって特徴付けられる。BTKは、Src-ファミリーキナーゼによって活性化され、PLCガンマをリン酸化し、B細胞機能及び生存に対する効果に至る。追加として、BTKは、肥満細胞、マクロファージ及び好中球の細胞機能にとって重要であり、BTK阻害が、炎症、骨障害、及びアレルギー性疾患を含めた、これらの及び関連の細胞によって媒介される疾患の処置において有効であることを示す。BTK阻害はリンパ腫細胞の生存においても重要であり、BTKの阻害がリンパ腫及び他の癌の処置において有用であることを示す。依って、BTK及び関連キナーゼの阻害剤は、抗炎症剤、並びに抗癌剤として大変興味深い。BTKは、血小板機能及び血栓形成にも重要であり、BTK選択的阻害剤も抗血栓剤として有用であることを示す。さらに、BTKは、インフラマソーム活性化のために必要とされ、BTKの阻害は、脳卒中、痛風、2型糖尿病、肥満誘発インスリン抵抗性、アテローム動脈硬化症及びマックル・ウエルズ症候群を含めて、インフラマソーム関連障害の処置において使用することができる。加えて、BTKはHIV感染T細胞中に発現され、BTK阻害剤を用いる処置は、感染細胞をアポトーシス死に対して感作させ、ウイルス生成の減少をもたらす。したがって、BTK阻害剤は、HIV-AIDS及び他のウイルス感染症の処置において有用だと考えられる。
【0006】
以降「化合物1」と称される(S)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-2-フルオロ-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール-4-カルボキサミドは、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の経口的に利用可能な、選択的な、強力な阻害剤であり、それによって、BTK推進疾患における潜在的な処置選択肢を提供する。BTK阻害に対する化合物1の効力は、無細胞酵素アッセイ及び全血機能アッセイの両方におけるnM範囲にある。それは中枢神経系(CNS)浸透剤であり、末梢組織及びCNS組織の両方において急速なBTK不活性化動態を実証する。カイノームスキャンにおいて、化合物1は、349のキナーゼに対して高いキナーゼ選択性を呈し、2つのキナーゼ(TEC及びTXK)のみが1μMで>50%阻害を実証する。
【0007】
化合物1の非晶質形態(即ち、化合物5~6)は、米国特許出願公開番号US2022/0009920として公開されている米国特許出願17/225,984に記載されている(参照によりそれ全体で本明細書に組み込まれる)。化合物1は、化学式C2226FN、383.47、の分子量及び以下:
【化1】

の構造を有する。
化合物1の臨床的な有望性を考慮すると、経口投与に適当な薬学的薬物生成物の文脈において化合物1の新たな改善及び/又は増強された形態、並びに化合物1を含む組成物及びそれの製造及び使用に関連する方法の必要性がある。本発明は、以下の詳細な記載及び付着されている図面によって証明される通り、これらの及び関連の必要性を満たす。
【0008】
固体薬物形態は、非晶質状態又は結晶状態のいずれかで存在することができる。結晶形態の場合において、分子は3次元格子部位に位置付けされる。化合物が溶液又はスラリーから再結晶化する場合、それは「多形」と称される特性である異なる空間格子配置で結晶化し、異なる結晶形態は、「多形体(複数)」と、又は個々に「多形体(単数)」と称される。所与の物質の異なる多形体は、溶解度及び溶解、真密度、結晶形状、圧密挙動、流動特性、及び/又は固体状態安定性など1つ又は複数の物理的特性に関して互いに異なることがある。2つの(又はそれ以上の)多形形態で存在する化学物質の場合において、不安定な形態(単数又は複数)は、一般に、十分な時間期間の後に所与の温度でより熱力学的に安定な形態(単数又は複数)に変換する。この転換が急速でない場合、熱力学的に不安定な形態は、「準安定な」形態と称される。一般に、安定な形態は、最低溶解度、及び最大化学的安定性を呈する。しかしながら、準安定な形態は、市販形態においてそれの使用を可能にするための正常な貯蔵条件下で十分な化学的及び物理的な安定性を呈することができる。この場合において、準安定な形態は、安定性が低くても、増強された溶解度又はより良好な経口生物学的利用能など、安定な形態のものよりも望ましい特性を呈することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一実施形態において、化合物1の新規な固体結晶形態が提供される。より特定の実施形態において、新規な固体結晶形態は、化合物1の6つの異なる多形体であり、これらは本明細書において「形態I」、「形態II」、「形態III」、「形態IV」、「形態V」、「形態VI」、及び「形態VII」と称される。
【0010】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態Iであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態Iである。形態Iは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0011】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態IIであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態IIである。形態IIは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0012】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態IIIであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態IIIである。形態IIIは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0013】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態IVであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態IVである。形態IVは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0014】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態Vであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態Vである。形態Vは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0015】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態VIであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態VIである。形態VIは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0016】
ある実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は形態VIIであり、さらなる実施形態において、実質的に純粋な形態VIIである。形態VIIは、(例えば)X線粉末回折(XRPD)及びそれによって発生される特徴的なディフラクトグラムを含めて、本明細書において開示されている様々な分析技術によって特徴付けることができる。
【0017】
他の実施形態において、化合物1の結晶形態が提供され、結晶形態は、2つ以上の形態の混合物である。下記に定義されている通り、混合物は、1つの結晶形態が他の結晶形態(単数)又は形態(複数)の5~95重量%を範囲とする比で存在する場合に提供される(この範囲の上又は下の比は、実質的に純粋な結晶形態の特徴である)。
【0018】
他の実施形態において、化合物1の固体結晶形態を調製するためのプロセスが提供される。
【0019】
他の実施形態において、1種又は複数の薬学的に許容される担体との組合せにおいて化合物1を含む医薬組成物が提供される。こうした組成物は、多様な異なる形態で製剤化することができる。例えば、該組成物は、経口投与のために製剤化することができる。
【0020】
ある実施形態において、医薬組成物は、追加の治療的活性な薬剤(即ち、化合物1に加えて)を含むことができる、又はこうした追加の治療的活性な薬剤は、別々の医薬組成物として存在し、化合物1と同時投与することができる(例えば、同じ時に)。
【0021】
さらなる実施形態において、追加の治療的活性な薬剤は、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤及び/又は抗炎症剤である。より特定の実施形態において、免疫抑制剤は、インターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、ダプソーン、スルファサラジン、アザチオプリン、抗CD20剤(リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、若しくはベルツズマブ、又はそのバイオシミラーバージョンなど)、抗TNFアルファ剤(エタネルセプト、インフリキシマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ、若しくはセルトリズマブ・ペゴル、又はそのバイオシミラーバージョンなど)、リガンド又はそれの受容体に向けての抗IL6剤(トシリズマブ、サリルマブ、オロキズマブ、エルシリルマブ、又はシルツキシマブなど)、リガンド又はそれの受容体に対する抗IL17剤(セクキヌマブ、ウステキヌマブ、ブロダルマブ、又はイキセキズマブなど)、リガンド又はそれの受容体に対する抗IL1剤(リロナセプト、カナキヌマブ、又はアナキンラなど)、リガンド又はそれの受容体に対する抗IL2剤(バシリキシマブ又はダクリズマブなど)、アレファセプトなどの抗CD2剤、ムロモナブ-cd3などの抗CD3薬剤、アバタセプト又はベラタセプトなどの抗CD80/86剤、フィンゴリモドなどの抗スフィンゴシン-1-ホスファート受容体剤、エクリズマブなどの抗C5剤、ナタリズマブなどの抗インテグリンアルファ4剤、ベドリズマブなどの抗α4β7剤、シロリムス又はエバロリムスなどの抗mTOR剤、タクロリムスなどの抗カルシニューリン剤、抗BAFF/BlyS剤(ベリムマブ、VAY736、又はブリシビモドなど)、レフルノミド及びテリフルノミドから選択される。
【0022】
さらなる実施形態において、追加の治療的活性な薬剤は、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、又はそのバイオシミラーバージョンなどの免疫抑制剤である。
【0023】
さらなる実施形態において、追加の治療的活性な薬剤は、サリドマイド及びそれの類似体(レナリドミド、ポマリドミド及びイベルドミド)などの免疫調節薬イミド(IMiD)、抗PD1、抗CTLA4、抗Tim3及び抗Lag3モノクローナル抗体などのチェックポイント遮断剤、イネビリズマブ及びタファシタマブなどの抗CD19モノクローナル抗体、IRAK阻害剤、メトトレキセート及びテモゾロマイドなどの化学療法剤、又は抗CD19 CAR T細胞治療である。
【0024】
他の実施形態において、医薬組成物はポリエチレングリコールを含む。別の実施形態において、医薬組成物は、ポリエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールモノラウラートを含む。他の実施形態において、医薬組成物はビタミンEを含む。他の実施形態において、医薬組成物はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は1~25mgの化合物1を含む。
【0025】
別の実施形態において、キナーゼ阻害によってモジュレートされる疾患又は状態を処置するための方法であって、化合物1の有効量、又はそれを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。より特定の実施形態において、キナーゼは、(以下に限定されないが)BTKなどのチロシンキナーゼである。
【0026】
ある実施形態において、疾患又は状態は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、又は血栓塞栓性疾患である。
一実施形態において、医薬の製造における化合物1又は化合物1の結晶形態、若しくはその医薬組成物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】形態I XRPDパターンを示す図である。
図2】形態I TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図3】形態II XRPDパターンを示す図である。
図4】形態II TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図5】形態III XRPDパターンを示す図である。
図6】形態III TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図7】形態III DVSプロットを示す図である。
図8】DVS試験の前後の形態III XRPDパターンを示す図である。
図9】形態IV XRPDパターンを示す図である。
図10】形態IV TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図11】85℃及び155℃に加熱された形態V XRPDパターンを示す図である。
図12】形態V TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図13】形態VI XRPDパターンを示す図である。
図14】形態VI TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図15】形態VII XRPDパターンを示す図である。
図16】形態VII DSCサーモグラムを示す図である。
図17】形態VII TGAサーモグラムを示す図である。
図18】形態I~VIIのXRPDパターンのオーバーレイを示す図である。
図19】提案された結晶形態変換を示す図である。
図20】形態III DSCサーモグラムを示す図である。
図21】形態III TGA及びDSCサーモグラムを示す図である。
図22】形態III XRPDパターン安定性分析を示す図である。
図23】形態III単結晶X線構造を示す図である。
図24】製造プロセス概要を示す図である。
図25】血漿プロファイル平均±SDを示す図である。
図26】用量によるCSF対非結合血漿比を示す図である。
図27】単一及び複数の用量血漿プロファイル(平均±SD)を示す図である。
図28】15mgの絶食、中脂肪食、及び高脂肪食の血漿プロファイル(平均±SD)を示す図である。
図29】単独で及びイトラコナゾールとの化合物1の血漿プロファイル(平均±SD)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示によると、化合物1の新規な固体結晶形態が提供される。より特定の実施形態において、新規な固体結晶形態は、化合物1の7つの異なる多形体;すなわち、形態I、形態II、形態III、形態IV、形態V、形態VI又は形態VIIである。これらの形態は、結晶格子の構造における化合物1の非晶質形態と異なり、各形態は、特有のX線粉末回折(XRPD)パターン及び示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを与える。
【0029】
本明細書で使用される場合、「非晶質」は、反復結晶格子の非存在に起因する良く秩序だった回折線の欠如を指す。
【0030】
一実施形態において、本開示は、9.2011、13.9620及び16.1506±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態Iを提供する。別の実施形態において、実質的に図1に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態Iが提供される。
【0031】
一実施形態において、本開示は、4.2759、8.5794及び24.2411±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態IIを提供する。別の実施形態において、実質的に図3に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態IIが提供される。
【0032】
一実施形態において、本開示は、10.2543、13.5006及び13.9691±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態IIIを提供する。別の実施形態において、実質的に図5に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態IIIが提供される。
【0033】
一実施形態において、本開示は、8.6027、11.9598、13.9360、21.5845及び25.4090±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態IVを提供する。別の実施形態において、実質的に図9に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態IVが提供される。
【0034】
一実施形態において、本開示は、6.4014、9.1908、14.8143、17.5539、21.5891、23.9883及び25.5807±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態Vを提供する。別の実施形態において、実質的に図11に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態Vが提供される。
【0035】
一実施形態において、本開示は、6.8339、10.1404、15.6784、16.1217、17.5940、20.6765、25.5122及び26.7363±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態VIを提供する。別の実施形態において、実質的に図13に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態VIが提供される。
【0036】
一実施形態において、本開示は、6.727、8.4799、9.4854、12.0161、17.1901、18.8407、19.0691、19.7285及び20.2268±0.2度2シータにピークを有するXRPDパターンによって特徴付けられる形態VIIを提供する。別の実施形態において、実質的に図15に示されている通りのXRPDパターンによってさらに特徴付けられる形態VIIが提供される。
【0037】
この発明の実践において、単一の多形体(即ち、形態I、形態II、形態III、形態IV、形態V、形態VI又は形態VII)は、実質的に純粋な形態で利用することができる、又は1つ若しくは複数の多形体の混合物として利用することができる。
【0038】
さらなる実施形態において、化合物1の固体結晶形態;すなわち、形態I、形態II、形態III、形態IV、形態V、形態VI又は形態VIIの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、キナーゼ阻害によってモジュレートされる疾患又は状態を処置するための方法が提供される。
【0039】
一実施形態において、キナーゼはチロシンキナーゼであり、より特定の実施形態において、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)である。
【0040】
一実施形態において、キナーゼ阻害によってモジュレートされる疾患又は状態は、癌である。
【0041】
本発明は、いかなる方法でも限定すると解釈されるべきでない以下の例によってさらに例示される。
【実施例
【0042】
多形スクリーニング
スラリー、冷却及び蒸発結晶化、抗溶媒沈殿、熱的及び機械的処理を含めて、様々な結晶化方法を使用して、化合物1の多形スクリーニングを行った。
【0043】
(例1)
分析方法
(例1A)
X線粉末回折(XRPD)
X線回折計(PANalytical Empyrean)を用いて、XRPDパターンを同定した。該システムは、PIXcel1D検出器が備えられていた。試料を0.013°2θのステップサイズにて3から40°2θで走査した。管電圧及び電流は、それぞれ45KV及び40mAであった。(形態VIIは、0.011°2θのステップサイズにて4から40°2θで走査し、管電圧及び電流は、それぞれ40KV及び15mAであった。)
【0044】
(例1B)
示差走査熱量計(DSC)
Discovery DSC 250(TA Instruments、US)を使用して、DSCを行った(形態VIIには、Discovery DSC Q2000を使用した)。試料をアルミニウムピンホール気密パンに入れ、重量を正確に記録した。次いで、試料を25℃から最終温度に10℃/minの速度で加熱した。
【0045】
(例1C)
熱重量分析(TGA)
TGAをDiscovery TGA 55(TA Instruments、US)上で実施した(形態VIIには、Discovery TGA Q500を使用した)。試料を開口風袋重量アルミニウムパンに入れ、自動秤量し、TGA炉に挿入した。試料を室温(RT)から最終温度に10℃/minの速度で加熱した。
【0046】
(例1D)
動的蒸気収着(DVS)
水分収着/脱着データをVsorp Dynamic Moisture Sorption Analyzer(ProUmid GmbH&Co.KG、Germany)上で収集した。試料を風袋重量試料チャンバーに入れ、自動秤量した。
【表A】
【0047】
(例1E)
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)
溶媒としてd-DMSOを使用する、オートサンプラー(SampleXpress 60)が備えられているBruker AVANCE III HD 300又は400を使用して、H-NMRを行った。
【0048】
(例1F)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
Agilent HPLC 1260シリーズ機器を用いて、HPLC分析を行った。
【表B】
【0049】
(例2)
出発材料の特徴付け
薄黄色の固体(2.66g、99.78%の純度)としての化合物1の単一バッチを、多形スクリーンのための出発材料として使用した。材料は、低い結晶化度及び粒子サイズ10~20μmを有するほとんどロッド様の結晶であった。XRPD特徴付けは、材料が形態I及び170℃に加熱した後に形態Iに変換される形態IIの混合物であることを明らかにした。
【0050】
(例3)
多形スクリーン
結晶性材料を生成するための様々な技法を評価した。
(例3A)
蒸発結晶化
蒸発結晶化研究をTHF、メタノール、アセトン、イソプロパノール及びジクロロメタン(即ち、溶解度>3mg/mLを提供する溶媒)において、速い及び遅い蒸発速度下で行った:
速い:室温(約25℃)で窒素パージすることによって乾燥させた溶液
遅い:ドラフトチャンバー内にて室温(約25℃)で蒸発乾固させた溶液
溶解度をHPLCによって測定し、残留固体を、蒸発の後に、XRPDによって分析した。全ての場合において、非晶質材料のみが得られた。
【0051】
(例3B)
スラリー
出発材料を13種の単一溶媒に添加し、結果として得られた懸濁液を3日間室温(約24℃)又は50℃で撹拌した。得られた任意の固体を特徴付け、結果は表1に要約されている(負荷濃度はmg/mLである)。形態II、III、IV及びVを示されている通りに単離した。
【表1】
【0052】
(例3C)
冷却結晶化
出発材料(約20mg)を秤量してバイアルに入れ、溶媒を添加し、ほぼ清澄飽和溶液又は懸濁液をもたらし、これらを50℃で撹拌した。これらを次いで室温に冷却した(約24℃、徐冷)、又は濾液を冷蔵庫に直接入れた(2~8℃、急速冷却)。固体をメタノール及びエタノールから得て;これらの固体の冷却は形態IIをもたらした。全ての他の状態は溶液をもたらした。結果は溶媒(表2)に表されている。
【表2】
【0053】
(例3D)
抗溶媒沈殿
溶媒/抗溶媒実験を12種のシステムで行った。高い溶解度を提供する溶媒としては、DMSO、THA、アセトン、酢酸エチル、2-ブタノン及びIPAが挙げられる。低い溶解度を提供する溶媒としては、IPAc、ACN、MTBEが挙げられ、ヘプタンを抗溶媒として選択した。出発材料(約20mg)を溶媒中に溶解させることで、飽和溶液を調製した。濾過の後に、室温(約25℃)で濁りが観察される又は10Vに到達するまで、抗溶媒を20~100μLのアリコートで濾液に徐々に添加した。沈殿が生じたならば、生成物を適切に特徴付け、結果は表3に示されている。
【0054】
形態IがDMSO/水(1:1)、EtOc/ヘプタン(1/3)及びIPA/水(1/3)から得られた。
【0055】
形態IIがアセトン/水(1/2)から得られた。
【0056】
形態VIが2-ブタノン/水(1/2)から得られた。残りの状態は、溶液として残るか、分析のための不十分な固体を提供するかのいずれかであった。
【表3】
【0057】
(例4)
同定された多形形態の特徴付け
7つの結晶形態を同定し、形態I、II、III、IV、V、VI及びVIIとして割り当てた。
形態I
高い結晶化度及び微粒子サイズを有する不規則な形状化結晶である形態Iをヘプタンスラリーから、又は出発材料を約170℃に加熱することによって得た。形態I XRPDは図1に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表4において下記にリストされている:
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】
【0058】
TGAプロファイルにおいて165℃の前に0.6%の重量損失があった(図2)。
【0059】
形態II
形態IIは、メタノール又はエタノールからスラリー又は冷却することによって得られる高い結晶化度を有する不規則な結晶である。形態IIのXRPDは図3に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表5において下記にリストされている:
【表5-1】

【表5-2】
【0060】
複数の熱事象がDSC曲線において観察された(図4)。第1の吸熱ピークは、形態IIの脱水/脱溶媒和であり、第2の吸熱ピークは、形態Iの溶融であった。140℃の前におよそ4.0%の重量損失がTGAプロファイルにおいて観察され、1.7%エタノールがNMRによって検出された。
【0061】
形態III
形態IIIは、単一溶媒におけるスラリーから得られる高い結晶化度を有する不規則な結晶である。形態IIIのXRPDは図5に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表6において下記にリストされている:
【表6-1】

【表6-2】
【0062】
1つの溶融ピークがDSC曲線において観察され、TGAプロファイルにおいてRTから165℃の間で明白な重量損失はなく(図6)、形態IIIが無水物形態であることを示した。形態I及び形態IIIの競合スラリーの結果は、形態IIIがRTから80℃で最も安定な形態であることを示す。DVSデータは、形態IIIが非吸湿性(最大90%RHまで<0.5%の重量増加、図7を参照されたい)であるとともに結晶形態がDVS試験後も未変化のままであることを示した(図8)。
【0063】
形態IV
形態IVは、MTBEスラリーからのみ得られる高い結晶化度を有する不規則な結晶である。形態IVのXRPDは図9に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表7において下記にリストされている:
【表7-1】

【表7-2】
【0064】
形態IVのDSC(図10)は、200℃の前に2つの吸熱ピークを示し、それぞれ、形態IVの脱溶媒和及び形態Iの溶融に対応する。105~170℃の間でおよそ9.5%の重量損失がTGAプロファイルにおいて観察された。9.8%のMTBEがNMRによって検出された。
【0065】
形態V
形態Vは、トルエンスラリーからのみ得られる高い結晶化度を有する不規則な結晶である。形態VのXRPDは図11に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表8において下記にリストされている:
【表8-1】

【表8-2】

【表8-3】
【0066】
形態Vを85℃及び155℃で加熱し、結果として得られた固体形態をPXRDによって分析した(図11、上部のトレース)。85℃に加熱された形態Vは、未変化のままであり;155℃に加熱することは、非晶質形態の形成をもたらす。DSCは、150℃の前に2つの吸熱ピークを示した(図12)。TGAプロファイルは、90~170℃の間でおよそ1.0%の重量損失を示した。1.0%トルエンがNMRによって検出された。
【0067】
形態VI
形態VIは、MEK/HO抗溶媒結晶化から得られる高い結晶化度を有する不規則な結晶である。形態VIのXRPDは図13に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表9において下記にリストされている:
【表9-1】

【表9-2】

【表9-3】
【0068】
DSCは、120℃の前に13%の重量損失でブロード吸熱ピークを示した(図14)。12%のMEKがNMRによって検出された。
【0069】
形態VII
形態VIIが、ヘプタン/2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)再結晶化を介する化合物1の単離中に観察され、2-MeTHF溶媒和物であると決定した。より具体的には、化合物1の溶液を2-MeTHF(3体積)中に60℃で溶解させた。ヘプタン抗溶媒(4.1体積)を次いで1時間かけて添加し、温度を60℃で維持した。混合物を次いで20℃に冷却し、4時間の間20℃でかき混ぜた。結果として得られた固体を濾過によって単離し、ウェットケーキをヘプタン(1.4体積)で洗浄し、30分間乾燥させ、次いで、真空オーブン中にて55℃で少なくとも12時間の間乾燥させた。
【0070】
形態VIIのXRPDは図15に示されており、XRPDトレースからの有意なピークは、表10において下記にリストされている:
【表10-1】

【表10-2】

【表10-3】
【0071】
形態VIIのDSC及びTGA(それぞれ、図16及び17)は、122~124℃で1つの吸熱ピークを示し、形態VIIの脱溶媒和に対応する。102~105℃の間でおよそ6.6%の重量損失が、TGAプロファイルにおいて観察された。9.9%の2-メチル-THGがNMRによって検出された。
【0072】
同定された固体形態の要約
7つの新たな結晶形態を同定し、形態I~VIIとして割り当てた。図18は、全ての7つの形態のXRPDオーバーレイを示す。形態I及びIIIは無水物であり;形態II、IV、V、VI、及びVIIは溶媒和物又は水和物である。形態II及び形態IVは、加熱することで形態Iに変換し、表11を参照されたい。表12は、様々な形態についての特徴付けデータを示している。
【表11】

【表12】
【0073】
相互変換研究
等量の形態I及び形態IIIを水及びヘプタン中で混合することでスラリーを形成し、室温(約25℃)又は80℃で撹拌した。残留固体を単離し、特徴付け、全て形態IIIへの変換を示した。したがって、形態IIIは形態Iよりも安定と考えられる。7つの結晶形態の提案された変換マップは図19に示されている。
【0074】
(例5)
形態IIIの調製&特徴付け
(例5A)
形態IIIの120mg調製物
酢酸イソプロピル(2.5mL)中の出発材料(150mg)の懸濁液を室温で3日間撹拌した。結果として生じた固体を濾過によって単離することで、不規則な形状化結晶が提供された(120mg;80%の収率)。参照形態III材料と比較した場合の、結果として生じた材料のXRPD分析は、材料が形態IIIであることを裏付けている。この形態III材料を、下に記載されている研究のために使用した。
【0075】
(例5B)
DSC&TGA分析
以下の通りにDSCを使用して、化合物1、形態IIIの熱処理を行った:
25℃で平衡化;
傾斜10℃/minから190℃;
-40℃で平衡化;及び
傾斜5℃/minから300℃。
【0076】
図20は、結果として生じたDSC曲線を示しており、下の曲線は、傾斜10℃/minから190℃であり;中間の曲線は、-40℃で平衡化であり、上の曲線は、傾斜5℃/minから300℃である。ガラス転移温度は110℃である。175.8℃の開始温度での吸熱ピークが検出された。
【0077】
図21は、形態IIIのTGA及びDSCサーモグラムのオーバーレイを示している。溶融の前の明白な重量損失は、TGAプロファイルにおいて観察されなかった。
【0078】
(例5C)
固体状態安定性
化合物1、形態IIIの固体状態安定性を二重に(試料1及び試料2)7日間、下記の条件下で検査し、結果として生じた固体をXRPDによって分析した:
40℃/75%相対湿度(開口);及び
60℃(蓋をした)。
【0079】
図22は、出発材料のXRPDパターン及び上記の条件への曝露後に単離された材料を示しており、形態IIIが、判定された条件下で化学的及び物理的の両方で安定であったことを示している。
【0080】
化合物1、形態IIIの固体状態安定性をその上、下記の条件下で3カ月間検査した:
40℃/75%相対湿度;及び
25℃/60%相対湿度
形態IIIは、判定された条件下で安定であった。
【0081】
(例5D)
溶解度試験
試料の視覚判定を介する溶媒添加方法を使用して、初期の固体のおよその溶解度を決定した。結果は表13に要約されている。出発材料は、DMSO中に溶けやすく(>250mg/mL)THF及びジオキサン中にやや溶けにくく(>20mg/mL)、MTBE、水、及びn-ヘプタン中で非常に低い溶解度(<0.6mg/mL)を有する。
【表13】

値は、最も近い整数に四捨五入され、溶解が観察されなかったならば「<」として、溶解が第1のアリコートの添加後に生じたならば「>」として報告されている。
【0082】
形態IIIは非吸湿性であり、40℃/75%湿度及び60℃で1週間、化学的に及び物理的に安定であった。
【0083】
形態IIIは粉砕後に未変化のままであったが、結晶化度はわずかに減少した。
【0084】
形態IIIは、IPAC、IPA及びCANなど、単一溶媒からのスラリーによって調製することができる。
【0085】
化合物1、形態IIIの特徴付け
以下の研究(例6~10)の各々において、出発材料は化合物1(遊離形態、塩でない)形態IIIであった。材料は、凝集を有する非吸湿性の不規則な形状化結晶を含む薄黄色の固体であった。例1に記載されているのと同じ分析方法を用いた。
【0086】
(例6)
pKa決定
Sirius T3滴定器を使用して、pKを判定した。酸性及び塩基性部位は非常に弱く、Sirius T3によって検出不可能であった。平均pKaの個々の結果(25℃で行われる漸増について)は以下の通りであった:
滴定イオン強度 カイ二乗
ポイント3-510.168 0.6254
ポイント52-102 0.1830.8024
ポイント103-153 0.1960.6051
【0087】
(例7)
ビヒクルにおける溶解度試験
ビヒクル溶液を以下の通りに調製した:
【表C】
【0088】
(例8A)
溶解度試験
室温で24時間及び72時間の間、並びに45℃で4時間及び24時間の間、溶解度を決定した。約30/100mgの化合物1をビヒクル(2mL)に添加し、混合物を室温で24時間又は72時間の間撹拌した。懸濁液を濾過又は遠心分離し、濾液をHPLCによって分析した。溶解度及びpH結果は、表14及び15に表されている。24時間後に、高い溶解度(>50mg/mL)Cremophor HS 15、Gelucire 44/14、Gelucire 48/16及びPEG400/TPGS(3/1)において観察された。72時間後に、高い溶解度(>50mg/mL)がPG、PEG400、Capryol 90、及びLabrasolにおいて観察された。
【表14】

【表15】
【0089】
(例8B)
さらなる溶解度試験
化合物1(約0.5g)を各賦形剤に、視覚的に飽和されるまで添加した。混合を容易にするためにガラスビーズを用いる温度制御混合器上で、混合物を少なくとも48時間の間室温(液体賦形剤)又は40℃(半固体賦形剤)でインキュベートした。0.45μmのPVDFフィルターを使用して、試料を次いで遠心分離することで、液体及び固体部分を分離した。濾液中の溶解化合物の量をHPLCによって定量化した。そこで確認された任意の固体粉末のXRPD分析は、形態の変化がなかった。溶解度結果は表16に表されており、化合物1が、スクリーニングされた賦形剤のほとんどにおいて高い溶解度(>30mg/g)を有していたことを示す。
【表16】
【0090】
(例9)
バイオ関連の媒体における溶解度試験
FaSSIFの調製
FaSSIF緩衝溶液:6mLの0.2M NaOH、388.7mgのNaHPO、及び608.2mgのNaClを溶解させ、水で100mLに希釈した。pHは6.51であった。FaSSIF媒体:34.56mgのSIF粉末を15mLのFaSSIF緩衝溶液中に溶解させた。溶液を撹拌し、周囲温度で光保護にて2時間の間平衡化した。SIF粉末はBiorelevant.comから購入した。
【0091】
FeSSIFの調製
FeSSIF緩衝溶液:408.4mgのNaOH、868.5mgの酢酸、及び1.1802gのNaClを溶解させ、水で100mLに希釈した。溶液のpHは4.98であった。FeSSIF媒体:168.42mgのSIF粉末を15mLのFeSSIF緩衝溶液中に溶解させた。溶液を光から保護した。
【0092】
FaSSGFの調製
FaSSGF緩衝溶液:222mgのNaClを水で溶解させ、次いで、1N HClを添加することで、pHを1.6に調整した。FaSSGF媒体:1.2mgのSIF粉末を10mLのFaSSIF緩衝溶液中に溶解させた。溶液を撹拌し、周囲温度で光保護にて2時間の間平衡化した。
【0093】
FaSSIF-V2の調製
FaSSIF-V2緩衝溶液:154.4mgのNaOH、246.7mgのマレイン酸及び445.6mgのNaClを溶解させ、水で100mLに希釈した。pHは6.51であった。FaSSIF-V2媒体:28.64mgのFaSSIF-V2粉末(Biorelevant.comから購入した)を8mLのFaSSIF-V2緩衝溶液中に溶解させた。溶液を撹拌し、周囲温度で光保護にて2時間の間平衡化した。
【0094】
FeSSIF-V2の調製
FeSSIF-V2緩衝溶液:363.3.4mgのNaOH、710mgのマレイン酸、及び814.4mgのNaClを溶解させ、水で100mLに希釈した。溶液のpHは5.8であった。FeSSIF-V2媒体:156.16mgのFeSSIF-V2粉末を8mLのFeSSIF-V2緩衝溶液中に溶解させた。溶液を光から保護した。
【0095】
バイオ関連の媒体における溶解度試験
溶解度を疑似胃腸液(FaSSGF、FaSSIF、FeSSIF、FaSSIF-V2、及びFeSSIF-V2)及びpH6.5の緩衝液、pH5.8の緩衝液媒体中にて37℃で0.5時間、2時間及び24時間の間測定した。約15mgの試料を秤量して試料バイアルに入れ、次いで、3.0mLのFaSSGF、FaSSIF、FeSSIF、FaSSIF-V2、FeSSIF-V2、pH6.5の緩衝液及びpH5.8の緩衝液媒体(SIF粉末のない緩衝溶液中の溶解度を比較のために行った)をそれぞれ添加した。試料を各媒体について二重に調製した。懸濁液を37℃で最大24時間の間振盪した。1時間、4時間及び24時間で、懸濁液を濾過し、濾液をHPLCによって分析し、結果を表17に表した。残留固体はXRPD分析のために回収されたが、形態変化を示さなかった。
【表17】

(例10)
様々なPHでの水性媒体における溶解度試験
pH1.0の溶液の調製(0.1N HCl)
0.833mLの濃塩酸を水で100mLに希釈した(pH=1.0)。
pH1.2の緩衝溶液の調製
水の適切な量を0.1N HClに添加することで、pHを1.2に調整。
pH7.4の緩衝溶液の調製
KHPO(1360.0mg)及びNaOH(310.0mg)を200mLの体積フラスコ中で混合する。水を添加することで、固体を溶解し、体積を希釈した。フラスコを振盪することで、良好な混合を達成した。(pH=7.42)。
【0096】
異なるpHの媒体及び水における溶解度試験
溶解度をpH1.0の水、pH1.2の緩衝液及びpH7.4の緩衝液中にて室温及び37℃で測定した。約10~15mgの試料を秤量して試料バイアルに入れ、次いで、2.0/3.0mLの0.1N HCl溶液、pH1.2の緩衝液及びpH7.4の緩衝液媒体、及び水をそれぞれ添加した。試料を各媒体について二重に実行した。懸濁液を室温又は37℃で振盪した。4時間、24時間、48時間で、懸濁液を遠心分離し、濾液をHPLCによって分析し;結果を表18に表した)。残留固体をXRPD分析のために回収したが、形態変化は試験中に生じなかった。全ての例において、非常に低い溶解度が観察された。
【表18】
【0097】
(例11)
化合物1、形態IIIの単結晶X線構造
Cu Kα放射(λ=1.54178Å)が備えられているBruker Smart APEX II CCD回折計上で、単結晶X線回折研究を実施した。
【0098】
化合物1、形態IIIの結晶をEtOAc/ペンタンから成長させた。
【0099】
無色結晶の0.23×0.2×0.17mmの一片を、パラトーン油を有するCryoloopに載せた。Φ及びω走査を使用して100(2)Kで窒素ガス流中にて、データを収集した。結晶から検出器の距離は40mmであり、曝露時間は、1.25°の走査幅を使用してフレーム当たり2θ範囲に依存して1秒、2秒、3秒、又は5秒であった。データ収集はθにおける67.679°に対して97.7%完全であった。指数-11<=h<=11、-11<=k<=11、-13<=l<=13をカバーする合計27594の反射を収集した。6852の反射が、0.0232のRintで、対称非依存性であることが見出された。指数付け及び単位格子の精密化は、三斜晶格子を示した。空間群はP1であることが見出された。データは、Bruker SAINTソフトウェアプログラムを使用して統合し、SADABSソフトウェアプログラムを使用して目盛り付けした。直接法(SHELXT)による解は、提案されている構造と一致する完全なフェージングモデルを生成した。
【0100】
全ての非水素原子をフルマトリックス最小二乗(SHELXL-2014)によって異方的に精製した。ライディングモデルを使用して、全ての炭素結合水素原子を置いた。SHELXL-2014における適切なHFIXコマンドを使用して、それらの位置をそれらの親原子に対して拘束した。絶対立体化学を最終的に割り当てた(フラック=0.04(3))。構造は図23に示されている。非対称ユニットにおいて該化合物の2つのコピーがある。結晶学的データは以下の通りであった:
結晶系 三斜晶
空間群 P1
単位格子寸法 a=9.61280(10)Å α=110.7050(10)°
b=9.78860(10)Å β=90.9170(10)°
c=10.85140(10)Å γ=96.4060(10)°
体積 947.470(17)Å
Z 2
密度(算出) 1.344Mg/m
吸収係数 0.764mm-1
F(000) 408
結晶サイズ 0.23×0.2×0.17mm
データ収集についてのシータ範囲 4.363から70.453°
指数範囲 -11<=h<=11、-11<=k<=11、-13<=l<=13
収集された反射 27594
独立反射 6852[R(int)=0.0232]
シータに対する完全性=67.679° 97.7%
吸収補正 等価物からの半経験的
最大及び最小透過率 0.5220及び0.4322
精密化方法 Fに関するフルマトリックス最小二乗
データ/抑制/パラメータ 6852/3/505
に関する適合度 1.026
最終R指数[I>2シグマ(I)] R1=0.0262、wR2=0.0715
R指数(全てのデータ) R1=0.0266、wR2=0.0720
絶対構造パラメータ 0.04(3)
最も大きい回析ピーク及びホール 0.181及び-0.168e。Å-3
【0101】
製剤開発
化合物1ソフトゲルカプセル剤の製剤開発及びバッチ製造を調査した。化合物1、形態IIIを出発材料として使用した。7つの製剤を調製し、それらの溶解度、動態学的溶解度、浸透性、物理的安定性及び化学的安定性を評価した。製剤A7は、化合物1、PEG400、ラウログリコール90、ビタミンETPGS及びBHTを含む。製剤A7ソフトゲルカプセル剤を3つの強度(2mg、5mg&25mg)で製造した。ソフトゲルシェルは、ゼラチン(195型)、ソルビトールスペシャル-グリセリンブレンド、二酸化チタン、FD&C青色#1、赤色酸化鉄及び精製水を含む。
【0102】
(例12)
製剤A1~A6の調製
6つの製剤(A1、A2、A3、A4、A5及びA6)を22.7mg/gの標的化合物1濃度で調製した。これらの製剤は、グリセリド、界面活性剤、及び親水性共溶媒の比に基づいて様々な製剤型を作り出すように設計した。ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、任意の潜在的な酸化分解を最小化するために、抗酸化剤として製剤の各々に含ませた。表19は製剤組成物を示している。
【表19】
【0103】
(例13)
製剤A1~A6の溶解度
Fiber Opticを有するPion Rainbow Dynamic Dissolution Monitor及びDistek Dissolution System 2500(Dissolution Apparatus Type II)を使用し光ファイバー溶解を介して、製剤A1~A6の溶解度を評価した。3つのバイオ関連媒体を評価した:表20に詳述されている通り、FaSSGF(pH=1.3)、FaSSIF(pH=6.5)、及びFeSSIF(pH=5.5)。
【表20】
【0104】
各製剤の溶解度を各溶解槽(N=1、500mLの体積、37℃、75rpmのパドル速度)中にて6時間の期間かけて光ファイバープローブによって連続的にモニタリングした。全ての製剤は、各媒体において結晶性化合物1単独(対照として使用された)よりも溶解度の増加を示し、A1、A3及びA4は最も高い溶解度を呈した。
【0105】
(例14)
製剤A1、A3及びA4の浸透性
Pion μFlux器具(2区画)及び光ファイバープローブを有するPion Rainbow Dynamic Dissolution Monitorを使用して、製剤A1、A3及びA4の浸透性を評価した。FaSSIF媒体を含有する区画に試験製剤を添加し、アクセプターシンク緩衝液を第2の区画に入れた。2つの区画を、GIT-0脂質溶液でコーティングされたメンブランフィルターによって分離させた。(この設定は、腸管膜における受動拡散を模倣する)。各区画における光ファイバープローブは、6時間の期間をかけて膜の各側の化合物1濃度を連続的にモニタリングした。表21は、6時間後の各製剤についての百分率の化合物1浸透性を示している。
【表21】
【0106】
(例15)
物理的安定性評価(室温及び40℃で温度保持)
製剤A1、A3及びA4の物理的安定性を室温(15~25℃)及び40℃で評価した。2つのセットの試料(各々約3g)を単一ガラスバイアル中にアリコートした。一方のセットを室温で7日間保持し、他方を40℃で7日間保持した。色変化、相分離又は沈殿などの外観における変化を、視覚的観察を介してモニタリングした。室温又は40℃で物理的不安定性の兆候は観察されなかった。
【0107】
(例16)
物理的安定性評価(温度サイクル約40℃/-20℃)
製剤A1、A3及びA4の物理的安定性を温度サイクリング条件下で評価した。各試験製剤(A1、A3及びA4)の試料(各々約3g)をガラスバイアル中にアリコートし、各温度条件で約24時間の間、高い(40℃)及び低い(-20℃)温度の3つのサイクルに曝露した。表22に示されている通り、色変化、相分離又は沈殿は観察されなかった。
【表22】
【0108】
(例17)
可塑剤負荷
可塑剤負荷は、ソフトゲルカプセル内のカプセル化後の充填溶液中への可塑剤移行の可能な効果を評価する。2種の可塑剤、ソルビトールソルビタン溶液及びソルビトールスペシャル-グリセリンブレンドA810を評価した。5%の各可塑剤を各製剤中に添加して、負荷を行った。添加試料を室温(15~25℃)及び40℃で貯蔵し、観察をT=0で及び次いで最大7日の間毎日記述した。沈殿は観察されなかった。相分離が、両方の可塑剤の存在下で製剤の全てにおいてバイアルの底に清澄な液滴として観察され、可塑剤及び充填移行が混和性ではないこと並びに可塑剤がカプセルシェルから移行する可能性がないことを示唆した。表23及び24は結果を要約している。
【表23】

【表24】
【0109】
(例18)
製剤A7
製剤A1~A6と同じ条件に従って、製剤A7を調製した。製剤A7は、ラウログリコールFCC(プロピレングリコールモノラウラート(I型))の代わりにラウログリコール90(プロピレングリコールモノラウラート(II型))を使用した以外、製剤A4と同じ構成成分及び量を含有する。これらの賦形剤は、異なる比のモノ-及びジエステルを含有する。
【表D】
【0110】
(例19)
最大の薬物溶解度
製剤A1、A3、A4及びA7における化合物1の最大溶解度を評価することで、製剤当たりの最大可能薬物負荷を決定した。
各プロトタイプのプラセボ製剤を調製し、化合物1で過飽和した。ビーズを混合するガラス付の温度制御振盪器上で、混合物を少なくとも48時間の間40℃でインキュベートすることで、最大溶解度が達成されることを確実にした。試料を次いで、0.45μmのPVDFフィルターを使用して遠心分離することで、液体及び固体部分を分離した。濾液中の溶解化合物1の量をHPLC分析によって定量化し、表25に示した。
【表25】
【0111】
(例20)
安定性試験
製剤A1、A3及びA7を調製し、4つのセットの試料に分割し、そこに以下を添加した:
何もなし(対照)
5%水
ゲル1:ゲル004007-L3DXHBHMは、可塑剤としてソルビトールスペシャル-グリセリンブレンドを含有する
ゲル2:ゲル004013-LSMHRS1HMは、可塑剤としてソルビトールソルビタン溶液を含有する
【0112】
着色料として二酸化チタン、酸化鉄、赤色及びFD&C青色#1を使用して、ゲルを調製した。ゲル004007の1つの乾燥させた見本をゲル1試料に添加し、004013の1つの乾燥させた見本をゲル2に添加した。
【0113】
試料を6mLの琥珀ガラスバイアル中に室温、40℃、50℃及び5℃で最大8週間貯蔵した。対照試料(化合物1単独)を研究試料と並行して分析し、対照ピークを総不純物から減算した。40℃での貯蔵後の化合物1関連の不純物は、表26にリストされている。
【表26】
【0114】
安定性結果は表27~34に表されている。T=0で観察された不純物のほとんどは、化合物1単独出発材料中に存在し、したがって、製剤関連の不純物と考えられなかった。
【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】
【0115】
全ての3つの製剤(A1、A3、及びA7)は、40℃、50℃及び5℃で最大2週まで同様の安定性を示した。8週後、40℃でのA7の安定性を分析した。
【0116】
(例21)
バッチ製造-A7に基づいて2mg、5mg&25mgのカプセル剤
図24は、バッチ製造プロセスの流れ図表を表している。2mg、5mg及び25mgの化合物1を含有する3つの強度のソフトゲルカプセル剤を製造した。充填製剤の組成物は同等であり、カプセルサイズを変動することによって用量を調整した。充填ミックスを5mg及び2mgのバッチのために分けた。充填製剤の組成物は表35に表されている。ソフトゲルシェルの組成物は表36に示されている。
【表35】

【表36】
【0117】
Becomix 2.5Lを使用して、槽を混合することによって、充填混合物を調製した。槽を40℃に予備加熱した。プロピレングリコールモノラウラート、ビタミンETPGS、及びBHTをBecomix槽に添加し、1.0m/sのアジテーター速度(右モードで範囲0.5~1.5m/s)で及び5.0m/sのホモジナイザー速度(範囲5~10m/s)で15分以上の間、-0.9バールで維持された真空下で混合した。それらのそれぞれの検証された範囲内に必要とされる通りにアジテーター及びホモジナイズ速度を調整することによって、生成温度を混合プロセスの全体にわたって38℃~42℃の間に維持した。化合物1を次いで、光から保護するために点灯された黄色光下で添加した。化合物1の容器をポリエチレングリコール400で濯ぐことで、完全な移動を確実にした。混合物をさらに60分間40℃で混合した。溶液を次いで30分間40℃で脱気し、Becomix槽からの放出時に325-メッシュインラインフィルターを介して濾過して、任意の非溶解材料を除去した。インプロセスアッセイを充填材料上で行い、標的充填重量を適宜調整した(表37)。充填材料を、カプセル化の準備が整うまで、ステンレス鋼ホッパーの中に40℃で貯蔵した。
【表37】
【0118】
40℃でカプセル化中に、加熱された閉ヘッドホッパーを使用した。3つのダイを3つのカプセル強度について評価し;全ての3つのダイは適当なシールを生成した。
2mgにはG2VDを使用した
5mgにはG4VHを使用した
25mgにはG20BAを使用した
ゼラチン、ソルビトールスペシャル-グリセリンブレンドA810を可塑剤として、及び精製水を使用して、ゲル質量を調製し、二酸化チタン、赤色酸化鉄、FD&C青色#1、及び精製水を添加することによって不透明な青色に色変換した。インプロセス充填重量、シェル重量及びシール厚を実施の全体にわたって10分毎にモニタリングした。インプロセスチェックの要約は表38に表されている。
【表38-1】

【表38-2】
【0119】
(例22)
乾燥及び水分含有量
数日にわたって充填水分及び硬さを測定することによって、充填カプセルの乾燥をモニタリングした。カプセルを以下の範囲内の硬さに乾燥させた:
25mgカプセル:7.0~10.0ニュートン
2mg&5mgカプセル:7.0~11.0ニュートン
各時点で、Bareiss Hardness Durometerを使用して5つのカプセルを硬さについて試験した。プレートに平行な継ぎ目を有する試験プレート上に、カプセルを置いた。硬度計プランジャーを、カプセルと丁度接触するまで調整した。硬さ試験は、ソフトゲルの2mm変位に必要な適用力を測定する。充填カプセルの水分含有量(FM)も、Karl Fischer Titratorを使用して試験した。5つのカプセルからの充填材料を除去し、二重に試験した。硬さ及び水分結果は表39に表されている。
【表39】
【0120】
(例23)
水分進入
水分進入研究をバッチの各々について行った。カプセルシェルから充填材料中への水分進入について試験するため、充填材料をカプセル化プロセスの最初、中盤及び最後に試験した。選択されたカプセルから直ちに、並びに5分、10分、及び15分の保持時間の後に、充填材料を除去し、水含有量について試験し、カプセル化中に生じた任意の水進入は著しくなかったことを示した。結果は表40に要約されている。
【表40A】
【0121】
(例24)
2mg&プラセボ;5mg&プラセボ;10mg、20MG、25mg&プラセボカプセル剤
「即時放出」、経口投与のための軟ゼラチンカプセル剤(ソフトゲル)を2mg、5mg、10mg及び25mg強度で調製した。2mg、5mg及び10mg軟ゼラチンカプセル剤は、不透明、楕円、プリントなしで着色された青色であり、最も大きい寸法で<22mmのサイズの淡黄色から緑色の不透明な半固体を含有していた。25mg軟ゼラチンカプセル剤は、不透明、長円形、プリントなしで着色された青色であり、淡黄色から緑色の不透明な半固体を含有していた。
【表E】
【0122】
カプセルの含有量均一性、残留の溶媒及び元素不純物は、薬学的標準(USP<905>;USP<467>Option 1;及びUSP<232>/<233>それぞれ)に適合していた。任意の不特定の分解生成物は<1.0%で存在し、総分解生成物は<3.0%であった。
【0123】
化合物1を含有する全てのカプセルは、共通の充填並びに同じゼラチン組成物及び厚さを有している。表40はカプセル充填構成成分を提示しており、表41はカプセルシェル構成成分を提示している。表42はカプセル成分の供給元及び機能を提示している。
【表40B】

【表41】
【0124】
以下の加工助剤(軟ゼラチンカプセル化において典型的に使用される)も用いられた:分画ヤシ油(トリグリセリド、中鎖)はゼラチンリボンを潤滑することで、ツーリングに張り付くことを防止する;漂白されていない大豆レシチンは、カプセルが加工中に互いに張り付くのを最小化する。
【表42】
【0125】
2mgカプセル剤のカプセル化は、最適以下のシールをもたらした。漏出が、安定に加速条件で3カ月時点にて30℃/65%RH及び40℃/75%RH条件の両方で観察され、カプセル化のために使用されたダイによって引き起こされたと決定した。
【0126】
適当なダイセットを確立するために、ツーリング研究を行った。全てのポケットを各ダイについて試験し、G2VD(充填ダイ、8ポケッ横及び200ポケット合計)が最適なシールをもたらすことが確認された。G3VALダイは、試験されたものの中で最良のシールを生成した。
【0127】
10mgカプセル剤のための適切なツーリングを決定するための研究を行い、ダイセットG7.5VKが最適な結果を生成した。充填重量、シェル重量及びシール厚のためのインプロセスチェック(IPC)をカプセル化の最初及び最後に行った(表43)。
【表43】
【0128】
通常瓶にパッケージ化されたソフトゲルが一緒に張り付き、「ブリック」を形成する時にブリック化が起こる。ブリック化の重症度は、瓶を軽くたたくことでブリックを取り外すことができる場合の軽度から、ソフトゲルが分離しない場合の重症までを範囲とすることができる。ブリック化は、典型的に、安定性判定中に加速条件で、最も共通して親水性充填製剤において観察される。ブリック化は、加速条件下で2mg、5mg及び25mgのカプセル剤について観察された。充填材料の平衡水含有量を達成するのに最適な乾燥時間を決定するため、乾燥研究を行った。水ができるだけ多く除去されるのを確実にするため乾燥を完了する前に平衡に達するまでの硬さ、充填水分及び水分活性について、カプセルを試験した。
【0129】
(例25)
仕上げ製品試験
仕上げカプセルを分析し、結果は表44に示されている。
【表44】
【0130】
(例26)
I相臨床試験
以下を評価するための健康な対象における第1相用量漸増研究:
化合物1の安全性、耐容性、薬物動態、及び薬力学、
化合物1薬物動態に対する食物の効果、
化合物1薬物動態に対する製剤の効果、並びに
化合物1を用いるCYP3A媒介薬物-薬物相互作用。
【0131】
研究は、単一及び複数の漸増用量の安全性、耐容性及びPKを評価するために健康なヒト対象への化合物1の投与を調査する。追加の目的としては、PKに対する製剤の効果、PKに対する食物の効果、PKに対するCYP3A阻害剤の効果、及びCYP3A活性に対する化合物1の効果を判定することが挙げられる。AUC、AUC、Cmax、及びTmaxを含めたPKパラメータが決定される。追加の探索目的は、BTK阻害の時間経過につれて、薬力学を評価する。研究は、18~55歳の年齢で、48kgを超える体重、BMI18.5~30.0kg/mを有し、臨床的に重大な異常がない、最大144人の健康な男性及び女性対象で行われる。
【0132】
研究は、下に記載されている通りの3つのパート(パートA~C)からなっていた。
【0133】
パートA(用量漸増、単一及び複数の漸増用量)
パートAは、摂食状態(標準的な中程度脂肪食)で投与される、相互用量漸増での、無作為化、二重盲検、プラセボ制御、単一及び多用量研究である。パートAは、9つのコホート(最大7つの単一漸増用量[SAD]コホート[コホート1~6&14]、及び最大3つの複数漸増用量[MAD]コホート[コホート7~9])からなる。対象は、以下のいずれかを受けるようにコホート当たり3:1比で無作為化される:化合物1製剤A(コホート1~4はN=6及びコホート5~9&14はN=9);又はプラセボ(PBO;コホート1~4はN=2及びコホート5~9&14はN=3)。この例の臨床試験プロトコールに使用される製剤Aは、例18の製剤A7と同等である。
単一漸増用量コホート:コホート1~6
コホート1~4: 1日目、全ての対象は、単一用量の製剤A化合物1又はプラセボを受ける。
コホート5、6&14:-1日目、全ての対象は、プラセボを受ける(ベースラインECG判定を確立)。
1日目、対象は、単一経口用量の化合物1又はプラセボを受ける。
【表F】

複数の漸増用量コホート:(コホート7~9)
コホート7及び8:1日目、全ての対象が10日間の製剤A化合物1又はプラセボの1日1回複数用量投与を開始する。
コホート9: -1日目、全ての対象がプラセボを受ける。
1日目、全ての対象が、10日間の化合物1又はプラセボの1日1回複数用量投与を開始する。
【表G】

より高い用量での単一用量コホートの開始は、以前の投薬コホートに登録された全ての対象からの、最後の用量後7日を通した安全性データの審査で決定される。用量制限毒性の非存在下で、次に高い用量のコホートが始まる。
【0134】
パートB
パートAからの安全性データに基づき、パートBは、パートAにおいて評価された最も高い用量以下の用量で開始される。
【0135】
製剤効果
コホート10は、無作為化、2処置、2期間、2順序、単一用量レベル製剤効果評価である。
処置順序ABにおいて、対象(N=5)は1日目に摂食状態で化合物1製剤Aを受け、その後、製剤Bが8日目に摂食状態で投与される。
処置順序BAにおいて、対象(N=5)は、1日目に摂食状態で化合物1製剤Bを受け、その後、8日目に摂食状態で製剤Aが投与される。
2~7日目は休薬日である。
【表H】
【0136】
食物効果
コホート11は、無作為化、2処置、2期間、2順序、単一用量レベル食物効果評価である。コホート11において使用される製剤は製剤Aである。処置順序FHにおいて、対象は、1日目に絶食状態で化合物1、及び8日目に摂食状態(高脂肪、高カロリー食)で第2の用量を受ける。処置順序HFにおいて、対象は、1日目に摂食状態(高脂肪、高カロリー食)で化合物1、及び8日目に絶食状態で第2の用量を受ける。2~7日目は休薬日である。
パートB(コホート10及び11)のための処置期間の概要
【表I】
【0137】
パートC(CYP3Aを用いる薬物-薬物相互作用)
パートCにおいて、摂食投与は、標準的な中脂肪食からなる。利用される製剤は製剤Aである。パートCのための用量は、パートAからの安全性データに基づく。
【0138】
コホート12は、イトラコナゾール(ITZ)を用いる非盲検、固定順序、多用量DDI研究である。対象は、1日目に絶食状態で投与される化合物1の単一経口用量を受ける。3日目に開始するとともに6日目まで通して続けて、対象は、絶食状態で1日1回(QD)イトラコナゾール200mgを受ける。5日目に、対象は、イトラコナゾールの投与の1時間後、絶食状態で投与される化合物1を受ける。
【表J】
【0139】
コホート13は、ミダゾラム(MDZ)を用いる非盲検、固定順序、多用量DDI研究である。対象は、1日目に摂食状態でミダゾラムの経口用量(2mg)を受ける。3日目に開始するとともに12日目まで通して続けて、対象は、摂食状態で1日2回(BID)化合物1を受ける。3日目及び11日目に、対象は、摂食状態で化合物1の朝用量と同時に投与されるミダゾラムの単一経口用量(2mg)を受ける。
【表K】

対象の数
パートA(N=104)
コホート1~4:コホート当たり8人の対象 6人化合物1+2人プラセボ(合計32)
コホート5~9&14:コホート当たり12人の対象 9人化合物1+3人プラセボ(合計60)
パートB(N=22)
コホート10:10人の対象 全て化合物1
コホート11:12人の対象 全て化合物1
パートC(N=18)
コホート12~13:コホート当たり9人の対象 全て化合物1
研究持続期間
スクリーニング:28日
拘束:
コホート1~4: 4日、3夜(-1日目から3日目)
コホート5、6%14:5日、4夜(-2日目から3日目)
コホート7&8: 13日、12夜(-1日目から12日目)
コホート9: 14日、13夜(-2日目から12日目)
コホート10&11: 11日、10夜(-1日目から10日目)
コホート12: 8日、7夜(-1日目から7日目)
コホート13: 14日、13夜(-1日目から13日目)
追跡調査訪問:最終用量の約7日後
合計研究持続期間、(スクリーニング、拘束、及び追跡調査):約39日から49日
【0140】
製剤A及び製剤B
化合物1は、経口投与のための青色軟ゼラチンカプセル剤として提供される。各カプセル剤は、PEG400、プロピレングリコールモノラウラート、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート(TPGS)、及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)中に溶解させる化合物1で構成された脂質ベースの充填溶液を含有する。カプセルは、2mg、5mg又は25mgの化合物1を含有するために十分な充填溶液で充填される。軟ゼラチンカプセルシェル材料は、ゼラチン(195型)、ソルビトール-グリセリンブレンド(A810)、二酸化チタン、FD&C青色#1着色料及び赤色酸化鉄を含有する。製剤Bは、パートAからの安全性及びPKデータに基づいて評価される。
【0141】
(例27)
臨床試験の結果
健康な対象における化合物1の単一及び複数の漸増用量の安全性、耐容性、及び薬物動態プロファイル
このヒト第1研究は、例25、パートAに記載されている通り、臨床研究における投薬及び併用薬物療法を報告するための、化合物1の単一及び複数用量安全性、耐容性、薬物動態(PK;CNS浸透率を含める)及び薬力学(PD)、食物の効果、薬物相互作用、並びに心臓安全性を評価するために設計した。
【0142】
方法:これは、相互用量漸増及び適応用量選択を用いる、健康な対象における進行中の第1相、二重盲検、無作為化、プラセボ制御、単一の上昇する及び複数の漸増用量(SAD、MAD)研究である。
【0143】
安全性は、研究の全体にわたって判定され、PK及びPDは、化合物1血漿濃度について用量後最大48時間で収集される連続血液試料、BTK標的占有率(TO)及び標的係合(TE)を使用して特徴付けられる。脳脊髄液(CSF)試料は、化合物1血漿濃度とCNS浸透率(CSF/非結合血漿濃度)との間の関係を特徴付けるために、用量後2時間で収集される。化合物1 PKパラメータ(例えば、AUClast、AUCinf、Cmax、Tmax、t1/2)は、標準的な非区画方法によって推算される。
【0144】
結果:3つの完了SADコホートからの予備的な薬物動態学的結果は、摂食状態(中脂肪食)における41人の対象(5mgを受容する7人、15mgを受容する8人、45mgを受容する8人、5mg+10mgプラセボを受容する8人、100mgを受容する12人、及び200mgを受容する12人:化合物1又はプラセボを受けるために3:1比で無作為化)を含めて表される。盲検安全性データの審査は、したがって、研究薬物が一般に、重篤な有害事象又は早期研究中断は報告されずに良好な耐容性を示すことを大いに示した。予備的なPKパラメータは、表45に(表45の全ての薬物動態学的パラメータは、中央値(Min、Max)として報告されているTmax及びt1/2を除いて、平均(変動の%係数)として報告されている)、及び化合物1の平均(SD)血漿濃度-時間プロファイルを表す図25に表されている。
【表45】
【0145】
化合物1は、1~3時間を範囲とする平均血漿Tmaxで、経口投与に続いて急速に吸収され、およそ3~4時間の終末半減期を呈する。単一用量化合物1曝露(AUCinf)は、5mgから15mgの用量比例方式及び15mgから200mgのほぼ用量比例よりも多く増加した。平均化合物1 CSF:非結合血漿濃度比は1に近似し、CNS中への血漿中非結合薬物の無妨害アクセスを示した(例えば、平均(変動の%係数)として報告されている表46、及び用量によるCSF対非結合血漿比を示す図26を参照されたい)。観察された化合物1血漿曝露、CNS浸透率、及び予備的なTO及びTEPDデータは、化合物1の低用量が血液及びCNSにおいて高レベルのBTK阻害をもたらすことを示したトランスレーショナルPK/PDモデルのものと一致した。
【表46】
【0146】
結果:1つの完了MADコホートからの予備的な薬物動態学的結果は、摂食状態(中脂肪食)で、化合物1又はプラセボを受けるために3:1比で無作為化された、10日間1日1回15mgを受ける12人の対象を含めて、表されている。盲検安全性データの審査は、したがって、研究薬物が一般に、重篤な有害事象又は早期研究中断は報告されずに良好な耐容性を示すことを大いに示した。予備的なPKパラメータは、表47に(表46の全ての薬物動態学的パラメータは、中央値(Min、Max)として報告されているTmax及びt1/2を除いて、平均(変動の%係数)として報告されている)、並びに単一及び複数の用量血漿プロファイル(平均±SD)を示す図27に表されている。
【表47】
【0147】
化合物1は、1.5時間の平均血漿Tmaxで、経口投与に続いて急速に吸収され、およそ3時間の終末半減期を呈した。化合物1の最小から無の蓄積が、1日1回の投薬で観察された。
【0148】
結果:化合物1 PKに対する食物の効果を評価する予備的な薬物動態学的な結果は、絶食条件下で、又は摂食状態(中脂肪食を用いる又は高脂肪高カロリー食を用いる)で、15mgの単一用量を受容する、コホート11から12人の対象並びにコホート2及び15から15人の対象を含めて、表されている。予備的なPKパラメータは、表48に(表47の全ての薬物動態学的パラメータは、中央値(Min、Max)として報告されているTmax及びt1/2を除いて、平均(変動の%係数)として報告されている)、及び図28に表されている。
【表48】
【0149】
化合物1は、1.0~2.5時間の平均血漿Tmaxで、経口投与に続いて急速に吸収され、およそ3時間の終末半減期を呈した。食物(中脂肪、又は高脂肪高カロリー食)は、化合物1のPKに対して臨床的に有意な効果を有さなかった。
【0150】
結果:化合物1 PKに対する強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール)の薬物-薬物相互作用効果を評価する予備的な薬物動態学的な結果は、絶食条件下で2mgの化合物1の単一用量を単独で、又は1日1回のイトラコナゾール200mgとの組合せで受ける、コホート12からの9人の対象を含めて、表されている。予備的なPKパラメータは、表49に(表49の全ての薬物動態学的パラメータは、中央値(Min、Max)として報告されているTmax及びt1/2を除いて、平均(変動の%係数)として報告されている)、及び化合物1の平均(SD)血漿濃度-時間プロファイルを表す図29に表されている。
【表49】
【0151】
化合物1は、1.0~1.5時間の平均血漿Tmaxで、経口投与に続いて急速に吸収され、およそ3時間の終末半減期を呈した。イトラコナゾールの同時投与は、化合物1 AUCinf(15%)及びCmax(23%)を最小に増加した。強いCYP3A阻害剤と化合物1との同時投与は、化合物1のPKに対して臨床的に有意な効果は有さなかった。
【0152】
結論:健康な対象における第1の6つのSADコホート及び第1のMADコホートからのデータは、低用量の化合物1が、CNSにおける所望のBTK阻害を推進するのに適切な血漿曝露及びCSF浸透率を提供したことを示す。食物も強いCYP3A阻害剤の同時投与も化合物1のPKの臨床的に有意な効果を有さなかった。盲検安全性データは、単一用量研究薬物投与が用量範囲にわたって良好な耐容性を示したことを示す。
【0153】
上に記載されている様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。この明細書に言及されている及び/又は出願データシートにリストされている米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許公報の全ては、それら全体で、参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要ならば、なおさらなる実施形態を提供するために様々な特許、出願及び公報の概念を用いて修飾することができる。
【0154】
これらの及び他の変化は、上の詳細な記載に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の請求項において、使用されている用語は、本明細書及び請求項に開示されている特定の実施形態に請求項を限定すると解釈されるべきでないが、全ての可能な実施形態を、権利を与えられるこうした請求項と同等物の全範疇と一緒に含むと解釈されるべきである。したがって、請求項は本開示によって限定されない。
【0155】
この明細書において記述されている全ての公報、特許及び特許出願は、各個々の公報、特許又は特許出願が参照により組み込まれると具体的に及び個々に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
この出願は、2021年10月19日に出願された米国仮出願第63/257,509号、及び2022年7月28日に出願された米国仮出願第63/393,163号に対する優先権の利益を主張し、これらの出願は、本明細書によって参照によりそれら全体で組み込まれる。
図1
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【国際調査報告】