(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】増大された安定性プロファイルを有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241029BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241029BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241029BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/08
A61K47/14
A61K47/16
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/32
A61K31/137
A61K47/02
A61K9/00
A61K9/70
A61P43/00 111
A61K47/38
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523612
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022047456
(87)【国際公開番号】W WO2023069733
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504322976
【氏名又は名称】アクエスティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ポール ワルガクキ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ クマール カインザン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ブオーノ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マーク ショベル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クーンズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル グッドリッチ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ツォディコフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA89
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB22
4C076CC29
4C076DD22Z
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4C076DD37
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4C206MA72
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4C206NA03
4C206NA10
4C206NA11
4C206NA12
4C206ZC02
(57)【要約】
可溶性薬物送達フィルムは増大された安定性を示し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分、
デンプンエーテルを含むフィルム形成ポリマー、及び
乾燥剤
を含む、増大された溶解を有する医薬組成物。
【請求項2】
前記デンプンエーテルがデンプンのヒドロキシアルキルエーテルである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
デンプンの前記ヒドロキシアルキルエーテルがデンプンのヒドロキシプロピルエーテルである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記フィルム形成ポリマーがエンドウ豆デンプンである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記乾燥剤がシリカを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記乾燥剤がヒュームドシリカ又はメソポーラスシリカを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記フィルム形成ポリマー及び前記乾燥剤が重量で10:1~2:1の比を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記有効成分が、前記組成物の0.1%~80重量%を構成する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
安定剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記安定剤がキレート剤を含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
酸化防止剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記安定剤がイオン交換樹脂を含む、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
前記イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
透過エンハンサーを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
アドレナリン受容体相互作用物質を含む透過エンハンサーを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記透過エンハンサーがオイゲノールを含む、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
処理溶媒を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
前記処理溶媒が有機処理溶媒である、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記処理溶媒が、エタノール、アセトン、アセトニトリル、t-ブタノール、メタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトアルデヒド、ジオキサン、又はメチルイソシアニドの1種以上を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
前記処理溶媒が少なくとも20%エタノールを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項21】
前記処理溶媒が少なくとも30%エタノールを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項22】
前記処理溶媒が少なくとも40%エタノールを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項23】
前記処理溶媒が少なくとも50%エタノールを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項24】
可塑剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
前記可塑剤がポリオールを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
前記可塑剤がペンタトールを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
前記可塑剤が、スクラロース;ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコールを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
粘度増強剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
前記粘度増強剤が、ゼラチン、キサンタムガム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、キトサン、天然ゴム、ポリビニル、架橋ポリマー、又は他の合成ポリマーを含む、請求項27記載の組成物。
【請求項30】
界面活性剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
前記界面活性剤がLabrasol(登録商標)を含む、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
前記界面活性剤がGMOを含む、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
エステラーゼ阻害剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項34】
前記エステラーゼ阻害剤がNaFを含む、請求項32記載の組成物。
【請求項35】
甘味剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項36】
前記甘味剤がスクラロースを含む、請求項34記載の組成物。
【請求項37】
前記甘味剤がMagnasweet(商標)を含む、請求項32記載の組成物。
【請求項38】
着香剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項39】
着色剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項40】
有効成分、
HClを含むpH調節剤、及び
非還元糖を含む可塑剤
を含む、増大された安定性を有する医薬組成物を送達するための医薬組成物。
【請求項41】
前記非還元糖がポリオールである、請求項37記載の組成物。
【請求項42】
前記非還元糖がペンタトールである、請求項37記載の組成物。
【請求項43】
前記非還元糖がキシリトールである、請求項37記載の組成物。
【請求項44】
前記pH調節剤が2.5~3.5の製剤pHをもたらし、可塑剤が重量で1:20~1:8の比を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項45】
有効成分、
安定剤、
可塑剤
を含む医薬フィルム製品であって、小体積崩壊アッセイに従って測定して約1~約240秒の範囲の小体積崩壊値を有する、前記医薬フィルム製品。
【請求項46】
約2~約30秒の範囲の小体積崩壊時間を有する、請求項42記載の医薬フィルム製品。
【請求項47】
約2~約10秒の範囲の小体積崩壊時間を有する、請求項42記載の医薬フィルム製品。
【請求項48】
増大された安定性を有する医薬組成物を製造する方法であって、小体積崩壊アッセイに従って測定して約1~約60秒の範囲の溶解プロファイルを有する組成物を形成することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記フィルム製品が、小体積崩壊アッセイに従って測定して約2~約30秒の範囲の部分浸漬溶解値を有する、請求項45記載の方法。
【請求項50】
小体積崩壊アッセイに従って測定して約2~約10秒の範囲の部分浸漬溶解値を有する、請求項42記載の医薬フィルム製品。
【請求項51】
増大された溶解速度を有する医薬製剤を製造する方法であって、
有効成分を提供すること
メソポーラスシリカを含む乾燥剤を組み込むこと、及び
エンドウ豆デンプンを含むフィルム形成ポリマーを適用すること
を含む、前記方法。
【請求項52】
増大された安定性を有する医薬製剤を製造する方法であって、
有効成分を提供すること、
2.5~3.5の製剤pHをもたらすpH調節剤を組み込むこと、及び
キシリトールを含む可塑剤を組み込むこと
を含む、前記方法。
【請求項53】
経粘膜送達されるエピネフリンを安定化する方法であって、
有効成分、
2.5~3.5の製剤pHをもたらすpH調節剤、
メソポーラスシリカを含む乾燥剤、及び
キシリトールを含む可塑剤
を含む医薬組成物を投与すること;並びに
医薬として活性な形態のエピネフリンの有効血漿中濃度を1時間未満で達成すること
を含む、前記方法。
【請求項54】
前記pH調節剤がHClである、請求項49記載の方法。
【請求項55】
前記pH調節剤がHClである、50記載の方法。
【請求項56】
前記有効成分がエピネフリンのプロドラッグを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項57】
分解物を更に含む、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
前記分解物が、エピネフリンの前記プロドラッグの加水分解生成物である、請求項57記載の組成物。
【請求項59】
前記分解物が、対象に送達された、送達有効成分の一部である、請求項57記載の組成物。
【請求項60】
前記分解物レベルが、6か月の終わりに約3.5%以上で存在する、請求項57記載の組成物。
【請求項61】
前記分解物レベルが、12か月の終わりに約2.3%以上で存在する、請求項58記載の組成物。
【請求項62】
前記分解物レベルが、24か月の終わりに約2.4%以上で存在する、請求項58記載の組成物。
【請求項63】
前記分解物が約2.2×10
-3 %の分解速度を有する、請求項58記載の組成物。
【請求項64】
前記分解物が、25℃で少なくとも3年間の保存の間貯蔵寿命を維持する、請求項58記載の組成物。
【請求項65】
前記分解物が、25℃で少なくとも4年間の保存の間貯蔵寿命を維持する、請求項58記載の組成物。
【請求項66】
前記分解物が、25℃で少なくとも5年間の保存の間貯蔵寿命を維持する、請求項58記載の組成物。
【請求項67】
分解物増大の速度が、少なくとも3か月間実質的に変わらない、請求項58記載の組成物。
【請求項68】
分解物増大の速度が、少なくとも5か月間実質的に変わらない、請求項58記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は2021年10月22日に出願された米国仮特許出願第63/271,001号の優先権を主張し、その全体を引用により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、経口送達に特に好適な薬学的方法及び組成物に関する。フィルム製品は、フィルム形成ポリマー、有効成分、及び乾燥剤を含み得る。組成物は、安定剤、酸化防止剤、透過エンハンサー、又はアドレナリン受容体相互作用物質の1種以上を含む賦形剤も含み得る。
【発明の背景】
【0003】
(背景)
医薬品有効成分は種々の形態で投与され得るが、フィルム送達は優れた官能特性製品を提供でき、代替剤形の物理的及び化学的安定性を改善できる。しかし、この送達方法は、緩徐な薬物放出及び透過性、フィルムのもろさ及び劣った安定性プロファイルと関連し得る。有効量の医薬品有効成分を送達すると同時に、改善された溶解速度及び改善された安定性を示す改善された製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
一般に、増大された溶解を有する医薬組成物は、有効成分、デンプンエーテルを含むフィルム形成ポリマー、及び乾燥剤を含み得る。
【0005】
ある実施態様において、デンプンエーテルはデンプンのヒドロキシアルキルエーテルであり得る。
【0006】
ある実施態様において、デンプンのヒドロキシアルキルエーテルはデンプンのヒドロキシプロピルエーテルであり得る。
【0007】
ある実施態様において、フィルム形成ポリマーはエンドウ豆デンプンであり得る。
【0008】
ある実施態様において、乾燥剤はシリカを含み得る。ある実施態様において、乾燥剤はヒュームドシリカ又はメソポーラスシリカを含み得る。ある実施態様において、フィルム形成ポリマー及び乾燥剤は、重量で10:1~2:1の比を有し得る。
【0009】
ある実施態様において、有効成分は0.1重量%~80重量%の組成物を含み得る。
【0010】
ある実施態様において、医薬組成物は安定剤を含み得る。ある実施態様において、安定剤はキレート剤を含み得る。ある実施態様において、医薬組成物は酸化防止剤を更に含む。ある実施態様において、安定剤はイオン交換樹脂を含み得る。樹脂はカチオン交換樹脂であり得る。
【0011】
ある実施態様において、医薬組成物は透過エンハンサーを含み得る。ある実施態様において、透過エンハンサーを含む医薬組成物はアドレナリン受容体相互作用物質を含み得る。
【0012】
ある実施態様において、透過エンハンサーはオイゲノールを含み得る。
【0013】
ある実施態様において、医薬組成物は処理溶媒を含み得る。処理溶媒は有機処理溶媒であり得る。
【0014】
ある実施態様において、処理溶媒は、エタノール、アセトン、アセトニトリル、t-ブタノール、メタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトアルデヒド、ジオキサン、又はメチルイソシアニドの1種以上を含み得る。
【0015】
ある実施態様において、処理溶媒は少なくとも20%エタノールを含み得る。ある実施態様において、処理溶媒は少なくとも30%エタノールを含み得る。ある実施態様において、処理溶媒は少なくとも40%エタノールを含み得る。ある実施態様において、処理溶媒は少なくとも50%エタノールを含み得る。
【0016】
ある実施態様において、医薬組成物は可塑剤を含み得る。ある実施態様において、可塑剤はポリオールを含み得る。ある実施態様において、可塑剤はペンタトールを含み得る。ある実施態様において、可塑剤は、スクラロース;ソルビトール、マンニトール、又はキシリトールなどの糖アルコールを含み得る。
【0017】
ある実施態様において、医薬組成物は粘度増強剤を含み得る。
【0018】
ある実施態様において、粘度増強剤は、ゼラチン、キサンタム(xantham)ガム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、キトサン、天然ゴム、ポリビニル、架橋ポリマー、又は他の合成ポリマーを含み得る。ある実施態様において、医薬組成物は界面活性剤を含み得る。ある実施態様において、界面活性剤はLabrasol(登録商標)を含み得る。ある実施態様において、界面活性剤はGMOを含み得る。
【0019】
ある実施態様において、医薬組成物はエステラーゼ阻害剤を含み得る。ある実施態様において、エステラーゼ阻害剤はNaFを含み得る。ある実施態様において、医薬組成物は甘味剤を含み得る。ある実施態様において、甘味剤はスクラロースを含み得る。ある実施態様において、甘味剤はMagnasweetを含み得る。
【0020】
ある実施態様において、医薬組成物は着香剤を含み得る。
【0021】
ある実施態様において、医薬組成物は着色剤を含み得る。
【0022】
一般に、増大された安定性を有する医薬組成物を送達するための医薬組成物は、有効成分、HClを含むpH調節剤、及び非還元糖を含む可塑剤を含み得る。
【0023】
ある実施態様において、非還元糖はポリオールであり得る。ある実施態様において、非還元糖はペンタトールであり得る。ある実施態様において、非還元糖はキシリトールであり得る。
【0024】
ある実施態様において、pH調節剤は2.5~3.5の製剤pHを生み出し得て、可塑剤は重量で1:20~1:8の比を有する。
【0025】
一般に、医薬フィルム製品は、有効成分、安定剤、可塑剤を含み得て、該フィルム製品は、小体積崩壊(small volume disintegration)アッセイに従って測定して、約1~約240秒の範囲の小体積崩壊値を有し得る。
【0026】
ある実施態様において、フィルム製品は約2~約30秒の範囲の小体積崩壊時間を有し得る。ある実施態様において、フィルム製品は約2~約10秒の範囲の小体積崩壊時間を有し得る。
【0027】
一般に、増大された安定性を有する医薬組成物を製造する方法は、小体積崩壊アッセイに従って測定して約1~約60秒の範囲の溶解プロファイルを有する組成物を形成することを含み得る。
【0028】
ある実施態様において、フィルム製品は、小体積崩壊アッセイに従って測定して約2~約30秒の範囲の部分浸漬溶解(partial immersion dissolution)値を有し得る。ある実施態様において、フィルム製品は、小体積崩壊アッセイに従って測定して約2~約10秒の範囲の部分浸漬溶解値を有し得る。
【0029】
一般に、増大された溶解速度を有する医薬製剤を製造する方法は、メソポーラスシリカを含む乾燥剤を組み込んでいる有効成分を提供すること及びエンドウ豆デンプンを含むフィルム形成ポリマーを適用することを含み得る。
【0030】
一般に、増大された安定性を有する医薬製剤を製造する方法は、2.5~3.5の製剤pHをもたらすpH調節剤を組み込んでいる有効成分を提供すること及びキシリトールを含む可塑剤を組み込むことを含み得る。
【0031】
一般に、経粘膜送達されるエピネフリンを安定化する方法は、有効成分、2.5~3.5の製剤pHをもたらすpH調節剤、メソポーラスシリカを含む乾燥剤、及びキシリトールを含む可塑剤を含む医薬組成物を投与すること;並びに医薬として活性な形態のエピネフリンの有効血漿中濃度を1時間未満で達成することを含み得る。ある実施態様において、pH調節剤はHClであり得る。
【0032】
ある実施態様において、有効成分はエピネフリンのプロドラッグを含み得る。
【0033】
ある実施態様において、組成物は分解物を含み得る。分解物は、エピネフリンのプロドラッグの加水分解生成物であり得る。
【0034】
ある実施態様において、分解物は、対象に送達された、送達有効成分の一部であり得る。
【0035】
ある実施態様において、分解物レベルは、6か月の終わりに約3.5%以上で存在し得る。
【0036】
ある実施態様において、分解物レベルは、12か月の終わりに約2.3%以上で存在し得る。
【0037】
ある実施態様において、分解物レベルは、24か月の終わりに約2.4%以上で存在し得る。
【0038】
ある実施態様において、分解物は、約2.2×10-3 %の分解速度を有し得る。
【0039】
ある実施態様において、分解物は、25℃で少なくとも3年間の保存の間貯蔵寿命を維持し得る。
【0040】
ある実施態様において、分解物は、25℃で少なくとも4年間の保存の間貯蔵寿命を維持し得る。
【0041】
ある実施態様において、分解物は、25℃で少なくとも5年間の保存の間貯蔵寿命を維持し得る。
【0042】
ある実施態様において、分解物増加の速度は、少なくとも3か月間実質的に変化しない可能性がある。
【0043】
ある実施態様において、分解物増大の速度は、少なくとも5か月間実質的に変化しない可能性がある。
【0044】
他の態様、実施態様、及び特徴は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
(図面の簡単な説明)
【
図1】DSF及びDESF製剤の崩壊データを描写する。
【0046】
【
図2】フィルムから透過した平均パーセントDSF及びDESFを示す。
【0047】
【
図3】
図3A及び3Bは、製剤にわたる加水分解データを示す。
【0048】
【
図4】
図4A及び4Bは、ジピベフリンの薬物放出を示す。
【0049】
【
図5】
図5A及び5Bは、SVD及びPIDの関数としての組織透過を示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【
図8】製剤の投与の後の経時的なエピネフリン濃度を示す。
【0053】
【
図9】製剤からの中央値エピネフリンTmaxを示す。
【0054】
【0055】
【
図11】温度の関数としての加水分解生成物反応速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(発明の詳細な説明)
一般に、可溶性薬物送達フィルムは増大された安定性を示し得る。本製剤及び方法に従って、24か月以上の安定性が達成された。例えば、薬物は、活性物質のプロドラッグ、例えばエピネフリンのエステル、酸性化剤、溶媒系、乾燥剤、酸化防止剤、ポリマー系、及びイオン交換樹脂を含み得る。例示的な組成物としては、エピネフリン可溶性フィルム、ジピベフリン可溶性フィルム(DSF)、及びジイソブチリルエピネフリン可溶性フィルム(DESF)がある。医薬として活性な成分を投与することはプロドラッグを投与することを含み得る。薬物又は医薬の経皮的又は経粘膜的な送達は、プロドラッグ、薬物、活性物質又は医薬が、単独又は組み合わせて、少なくとも1つの生体膜を、部分的又は完全に、効果的で効率よい方法で透過するか又は他の方法で越えることを必要とし得る。例えば、ヒト対象の病状を治療する方法は、プロドラッグ及びマトリックスからの透過エンハンサーを含む組成物を投与することを含み得て、該透過エンハンサーは、粘膜組織を通るプロドラッグの透過を促進して、ヒト対象における医薬として活性な形態のプロドラッグの有効血漿中濃度を1時間未満で達成する。酸性化剤は、粘膜刺激につながることなく、最適なpHを提供し、製剤安定性を促進するように選択できる。フィルムを製造するために使用される溶媒系は、液体中間体の全体的な水添加量及びフィルム中の残留水分を減少させるように最適化できる。乾燥剤及び酸化防止剤は、湿害及び酸化損傷を減少させるために提供できる。ポリマー系は、ポリマーにより誘導された酸化分解物を最低限にし、崩壊時間を減少させるように設計できる。本明細書での製剤は、フィルム及びフィルムコーティングの厚さを最大50%減少させて、それにより崩壊時間を減少させ、薬物放出を早めることができる。樹脂は、例えば、遊離ナトリウムを選択的に封鎖することにより安定性を増大させるために組み込むことができる。
【0057】
使用される医薬活性成分の量は、所望の治療強度及び層の組成によって決まるが、好ましくは、医薬成分は、組成物の約0.001%~約99%、より好ましくは約0.003~約75%、最も好ましくは約0.005%~約50重量%を構成し、これは0.005%超、0.05%超、0.5%超、1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、約50%、50%超、50%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.05%未満、又は0.005%未満を含む。他の成分の量は薬物又は他の成分に応じて変動し得るが、典型的には、これらの成分は、組成物の総重量の90%以下、50%以下、好ましくは30%以下、最も好ましくは15%以下を構成する。
【0058】
フィルムの厚さは、各層の厚さ及び層の数に応じて変動し得る。前述のように、層の厚さ及び量の両方は、侵食動態を変化させるために調節され得る。好ましくは、組成物が2層のみを有する場合、厚さは、0.005mm~2mm、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmの範囲であり、これは、0.1mm超、0.2mm超、約0.5mm、0.5mm超、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満を含む。各層の厚さは、層化された組成物の全体の厚さの10~90%で変動し得るが、好ましくは30~60%で変動し、これは、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、70%超、90%超、約90%、90%未満、70%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、又は10%未満を含む。従って、各層の好ましい厚さは、0.01mm~0.9mm、又は0.03mm~0.5mmで変動し得る。
【0059】
当業者が理解するように、全身送達、例えば経粘膜又は経皮送達が望ましい場合、治療部位は、フィルムが、血液、リンパ液、又は他の体液中に所望のレベルの医薬を送達及び/又は維持することが可能である任意の領域を含み得る。典型的には、そのような治療部位は、口、食道、耳、眼球、肛門、鼻、及び膣の粘膜組織、並びに皮膚を含む。皮膚が治療部位として利用される場合、通常、上腕又は大腿部などの、動作がフィルムの付着を妨害しない比較的大きい領域の皮膚が好ましい。
【0060】
本医薬組成物は、もともと湿潤組織である粘膜組織に付着することができる一方で、皮膚又は創傷などの、他の表面上でも使用することができる。本医薬フィルムは、適用に先立ち、水、唾液、傷からの排液又は発汗など水性ベースの流体により皮膚が湿っている場合、皮膚へ付着することができる。このフィルムは、例えば、水洗い、シャワー、入浴又は洗浄により、水との接触が原因でそれが侵食されるまで、皮膚に付着することができる。
【0061】
(フィルム形成ポリマー)
フィルム形成ポリマー又は複数のポリマーは、水溶性、水膨潤性、水混和性、水分散性、又は水溶性、水膨潤性、水混和性、又は水分散性ポリマーのいずれかの1つ以上の組合せであり得る。フィルム形成ポリマーは、セルロース若しくはセルロース誘導体又はデンプンを含み得る。それは、デンプンのヒドロキシアルキ(hydroxyalky)エーテル、又はデンプンのヒドロアルキルエーテル、又はデンプンのヒドロキシプロピルエーテルも含み得る。デンプンはエンドウ豆デンプンであり得る。フィルム形成ポリマーの具体例はPVP K90を含み得る。それは、Lycoat(登録商標)RSも含み得る。フィルム形成ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガンカント(tragancanth)ガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、及びこれらの組合せがあるが、これらに限定されない水溶性ポリマーであり得る。有用な水混和性ポリマー又は水分散性ポリマーの具体例には、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMCAS」)、又はこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。
【0062】
ポリマー系は、ポリマーにより誘導される酸化分解物を最低限にし、崩壊時間を減少させるように構築できる。フィルムコーティングの厚さを減少させることは、崩壊時間を減少させ、そのため薬物放出を早めることができる。
【0063】
フィルム形成ポリマー又はフィルム形成ポリマーポリマー(polymer polymers)の組合せは、医薬組成物の約5%~約50重量%であり得る。例えば、単一のフィルム形成ポリマーは、医薬組成物の約5%~約50% w/wであり得る。第2又は追加のフィルム形成ポリマーは、重量で医薬組成物の約5%~約50% w/wであり得る。ある実施態様において、2つ以上のフィルム形成ポリマーの組合せは、医薬組成物の約5%~約50% w/wであり得る。例えば、フィルム形成ポリマー又はフィルム形成ポリマーの組合せは、医薬組成物の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50% w/wであり得る。
【0064】
添加剤はフィルムに含まれ得る。添加剤のクラスの例としては、保存剤、抗微生物剤、賦形剤、滑沢剤、緩衝剤、安定剤、発泡剤、顔料、着色剤、充填剤、増量剤、甘味剤、着香剤、香料、放出修飾剤、補助剤、可塑剤、流動加速剤、離型剤、ポリオール、顆粒化剤、希釈剤、結合剤、緩衝剤、吸収剤、滑剤、接着剤、接着防止剤、酸味剤、柔軟剤、樹脂、粘滑剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマー、粘着防止剤、帯電防止剤及びこれらの混合物がある。これらの添加剤は医薬活性成分と共に加えられ得る。本明細書で使用される通り、用語「安定剤」は、医薬品有効成分、別の賦形剤、又はこれらの組合せの凝集又は他の物理的分解、並びに化学的分解を予防することが可能である賦形剤を意味する。
【0065】
組成物の安定化は、組成物の成分を、例えばエステル交換及び加水分解を含むいくつかの分解経路から保護することを助けることができる。本明細書に記載される組成物及び方法は、これらの機構を阻むことにより、これらの経路のいずれかに対処できるか、又は経路の組合せに対処できる。例えば、プロドラッグは、加水分解又はエステル交換により分解生成物を形成して、中間体プロドラッグ、第1のプロドラッグの変形体若しくは誘導体、又は医薬品有効成分を形成できる。
【0066】
プロドラッグは、式(I)の化合物(式中
【化1】
R
1a、R
1b、R
2及びR
3のそれぞれは、独立に、H、C1-C16アシル、アルキルアミノカルボニル、アルキルオキシカルボニル、フェナシル、サルフェート若しくはホスフェートであり得るか、又はR
1aとR
1bは共に、R
1aとR
2は共に、R
1aとR
3は共に、R
1bとR
2は共に、R
1bとR
3は共に、若しくはR
2とR
3は共に、ジカルボニル、ジサルフェート又はジホスフェート部分を含む環状構造を形成するが、但し、R
1a、R
1b、R
2及びR
3のうち1つはHでないことを条件とする)又はその医薬として許容し得る塩を含み得る。
【0067】
ある実施態様において、R2及びR3はHであり、各R1a及びR1bは、独立に、エタノイル、n-プロパノイル、イソプロパノイル、n-ブタノイル、イソブタノイル、sec-ブタノイル、tert-ブタノイル、n-ペンタノイル、イソペンタノイル、sec-ペンタノイル、tert-ペンタノイル、又はネオペンタノイルであり得る。
【0068】
例えば、エピネフリンのジエステルは、モノ-エステル若しくは非エステル形態、又はこれらの組合せへの加水分解を受け得る。別の例において、トリエステルは、ジ-エステル、モノ-エステル、若しくは非エステル形態、又はこれらの組合せへの加水分解を受け得る。エステル交換は混合エステルプロドラッグをもたらし得る。
【0069】
有用な添加剤は、例えば、ゼラチン、ヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナッツタンパク質、グレープシードタンパク質などの植物性タンパク質、ホエイプロテイン、ホエイプロテインアイソレート、血液タンパク質、卵タンパク質、アクリル酸付加タンパク質(acrylated proteins)、水溶性多糖、例えばアルギナート、カラギーナン、グアーガム、寒天、キサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム及び関連ゴム(ガッチゴム、カラヤゴム、トラガンカントゴム)、合成ゴム レシチン、ペクチン、ローカストビーン、デンプン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース ヒドロキシアルキルセルロース並びにヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロースエステル及びヒドロキシアルキルセルロースエステル;カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えば、カルボキシメチルセルロース及びそれらのアルカリ金属塩; 水溶性合成ポリマー、例えば、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVA/酢酸ビニルコポリマー、及びポリクロトン酸を含み得て;また好適なものは、フタル酸付加ゼラチン(phthalated gelatin)、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性化学誘導体、所望の場合四級化されていてよい、例えばジエチルアミノエチル基などの三級又は四級アミノ基を有するカチオン性修飾アクリレート及びメタクリレート;又は他の類似ポリマーである。
【0070】
追加成分は、全組成物成分の重量に基づいて、1%超、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、約80%、80%超、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、約3%、又は1%未満を含む、約80%までの範囲、望ましくは約0.005%~50%及びより望ましくは1%~20%の範囲内であり得る。他の添加剤は、望ましくは、全フィルム成分の重量に基づいて、0.02%超、0.2%超、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、4%超、約5%、5%超、4%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、又は0.02%未満を含む、約0.005%~約15重量%及び望ましくは約0.02%~約2%の濃度範囲のマグネシウム アルミニウム、ケイ素、チタンなどの酸化物などの粘着防止剤、流動剤及び乳白剤を含み得る。ある実施態様において、組成物は、組成物の重量に基づいて、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、4%超、5%超、10%超、15%超、約20%、20%超、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、2%未満、1%未満、及び0.5%未満を含む約0.1%~約40%の範囲、及び望ましくは約0.5%~約20%の範囲の濃度で加えられた、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシド、低分子量を有する有機可塑剤、例えば、グリセロール、グリセロールモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテート、トリアセチン、ポリソルベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、糖アルコール、エリスリトール、トレイトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、ジエチルスルホコハク酸ナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、植物抽出物、脂肪酸エステル、脂肪酸、油などを含み得る可塑剤を含み得る。フィルム材料のテクスチュア特性を向上する化合物、例えば、動物性又は植物性脂肪などを、望ましくはそれらの水素化形態で更に添加してもよい。この組成物はまた、製品のテクスチュア特性を向上する化合物を含み得る。他の成分は、フィルムの容易な形成及び全般的品質に寄与する結合剤を含み得る。結合剤の非限定的な例としては、デンプン、マルトデキストリン、天然ゴム、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン(polyvinyloxoazolidone)、又はポリビニルアルコールがある。
【0071】
更なる可能性のある添加剤は、活性成分との包摂化合物を形成する物質などの、溶解度増強剤を含む。このような物質は、非常に不溶性が高い且つ/又は不安定な活性物質の特性を改善するのに有用であり得る。概して、これらの物質は、疎水性内部空洞及び親水性外部を有するドーナツ型の分子である。不溶性且つ/又は不安定な医薬活性成分は、疎水性空洞内に嵌合し、これにより包接錯体が生じ、これは水に溶ける。従って、包接錯体の形成は、非常に不溶性の高い且つ/又は不安定な医薬活性成分の、水への溶解を可能にする。このような作用物質の特に望ましい例はシクロデキストリンであり、これはデンプンから誘導される環状炭水化物である。しかし、他の類似の物質は、本発明の範囲内に収まると考えられる。
【0072】
表面張力低下剤、消泡剤及び/又は脱泡剤成分も、フィルムと共に使用され得る。これらの成分は、フィルム形成組成物からの、捕捉された空気などの空気の除去を助ける。そのような捕捉された空気は、不均一なフィルムにつながることがある。シメチコンは、一つの特に有用な消泡剤及び/又は脱泡剤である。しかし本発明は、そのように限定されず、且つ他の好適な消泡剤及び/又は脱泡剤が使用され得る。シメチコン及び関連作用物質は、高密度化目的で利用され得る。より具体的には、このような作用物質は、空隙、空気、湿気、及び類似の望ましくない成分の除去を促進することができ、これにより、より緻密なフィルムを、従ってより均一なフィルムを提供する。この機能を実行する作用物質又は成分は、高密度化剤(densification agent)又は密度上昇剤(densifying agent)と称される。上述の通り、捕捉された空気又は望ましくない成分は、不均一なフィルムへつながり得る。上記で言及された、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,425,292号及び米国特許第8,765,167号に記載されたあらゆる他の任意の成分も、本明細書に記載されるフィルムに含まれ得る。
【0073】
本明細書記載の医薬フィルムは、任意の所望のプロセスにより形成され得る。好適なプロセスは、米国特許第8,652,378号、第7,425,292号及び第7,357,891号に説明されており、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。一実施態様において、フィルム用量組成物(dosage composition)は、湿潤組成物を最初に調製することにより形成され、この湿潤組成物は、ポリマー性担体マトリクス及び治療有効量の医薬活性成分を含む。この湿潤組成物は、流延してフィルムとされ、その後充分に乾燥され、自立型のフィルム組成物を形成する。この湿潤組成物は、流延して個々の用量にされるか、又はこれは流延してシートとされ、次にこのシートが個々の用量に切断される。
【0074】
本医薬組成物は、口、膣、器官、又は他の種類の粘膜表面などの粘膜表面に付着することができる。本組成物は、医薬を運搬し、且つ粘膜表面への適用及び付着時に、保護層をもたらし、且つ治療部位、周囲の組織、及び他の体液に医薬を送達する。水溶液又は唾液などの体液中の侵食の制御、並びに送達と同時又はその後のフィルムの緩徐で自然な侵食を前提とすると、この組成物は、治療部位での有効な薬物送達に適した滞留時間を提供する。
【0075】
ある実施態様において、医薬組成物は、(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤(charge-modifying agent);(c)pH制御剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(f)繊毛抑制剤(ciliostatic agent);(g)下記から選択される膜浸透増大剤:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、若しくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)NOドナー化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)小疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び(xi)(i)~(x)に列挙される膜浸透増大剤のあらゆる組合せ;(h)上皮結合生理機能の調節剤;(i)血管拡張剤;(j)選択的輸送増強剤;及び(k)化合物が共に効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増大された経粘膜送達のために化合物の安定化をもたらす、安定化送達ビヒクル、キャリア、粘膜付着剤、担体又は複合体形成種から選択される粘膜送達増進剤と組み合わせて、親水性糖にα連結により結合した疎水性アルキル基を有する好適な非毒性、非イオン性アルキルグリコシドを有し、ここで、経粘膜送達増強剤を有する化合物の製剤が、対象の血漿中の化合物の生物学的利用能の増大をもたらす。浸透エンハンサーは、引用により本明細書中に組み込まれているJ. Nicolazzoらの文献、J. of Controlled Disease, 105(2005)1-15に記載されている。
【0076】
(浸食性の動態及び浸食時間)
組成物の滞留時間は、製剤に使用される水浸食性ポリマーの浸食速度及びそれらのそれぞれの濃度に依存する。浸食速度は、例えば、異なる溶解度特性を有する成分若しくはヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの化学的に異なるポリマーを共に混合することにより;低分子量ヒドロキシエチルセルロースと中分子量ヒドロキシエチルセルロースを混合するなど、同じポリマーの異なる分子量グレードを使用することにより;種々の親油性値若しくは水溶性特性の賦形剤若しくは可塑剤(基本的に不溶性の成分を含む)を使用することにより;水溶性有機及び無機塩を使用することにより;ヒドロキシエチルセルロースなどのポリマーと共に、部分的架橋のためにグリオキサールなどの架橋剤を使用することにより;又は、一旦得られると、フィルムの結晶性若しくは相転移を含むフィルムの物理的状態を変化させ得る処理後照射若しくは硬化により調整され得る。これらの戦略は、フィルムの浸食動態を調節するために単独又は組み合わせて利用され得る。適用と同時に、医薬組成物フィルムは粘膜表面に付着し、正しい位置にとどめられる。水吸収により組成物が軟化し、それにより異物感が漸減する。組成物が粘膜表面に置かれているので、薬物の送達が起こる。滞留時間は、選択された医薬の送達の所望のタイミング及び担体の所望の寿命に応じて、広範囲にわたり調節され得る。しかし一般に、滞留時間は、約数秒から約数日の間で調整される。好ましくは、ほとんどの医薬の滞留時間は、約5秒~約24時間で調節される。より好ましくは、滞留時間は、約5秒~約30分で調節される。薬物送達の提供に加え、一旦組成物が粘膜表面に付着すると、それは治療部位の保護も提供し、侵食性包帯として作用する。親油性作用物質は、侵食性を緩徐化して崩壊及び溶解を減少させるように設計され得る。
【0077】
アミラーゼなどの酵素に対し感受性があり、水に非常に溶けやすい賦形剤、例えば、水溶性有機塩及び無機塩などを添加することにより、本組成物の侵食性の動態を調整することも可能である。好適な賦形剤は、クロリド、カーボネート、バイカーボネート、シトレート、トリフルオロアセテート、ベンゾエート、ホスフェート、フルオリド、サルフェート、又はタートレートのナトリウム塩及びカリウム塩を含み得る。添加される量は、侵食動態を変更すべき程度、並びに組成物中の他の成分の量及び性質に応じて異なり得る。
【0078】
いくつかの実施態様において、フィルム用量は、約1~約30分、例えば、約1~約20分、又は1分超、5分超、7分超、10分超、12分超、15分超、20分超、30分超、約30分、又は30分未満、20分未満、15分未満、12分未満、10分未満、7分未満、5分未満、又は1分未満の速度で分散及び溶解することが可能であり得る。舌下分散速度は頬側分散速度より短いことがある。
【0079】
例えば、一部の実施態様において、フィルムは、単独又は第2ポリマー成分と組合せてポリエチレンオキシドを含有し得る。第2ポリマーは、別の水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、水不溶性ポリマー、生分解性ポリマー又はそれらの任意の組合せであり得る。好適な水溶性ポリマーとしては、先に提供されたもののいずれも挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施態様において、水溶性ポリマーは、親水性セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを含む。一部の実施態様において、1種以上の水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性ポリマーもまた、ポリエチレンオキシド-ベースのフィルム中に含まれてよい。先に提供された水膨潤性、水不溶性又は生分解性ポリマーのいずれも利用され得る。第2ポリマー成分は、ポリマー成分中約0%~約80重量%の量で、より具体的には約30%~約70重量%、及び更により具体的には約40%~約60重量%の量で利用されてよく、これは重量で5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、及び70%超、約70%、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、又は5%未満を含む。
【0080】
(小体積崩壊(SVD))
溶解試験は、医薬開発及び品質管理において中心的な性能試験である。溶解試験は、インビボ性能との関係又はクオリティ・バイ・デザイン(QbD)の範囲内の製造重要品質特性(CQA)との関係を確立するためにますます発達した。全体としての目標は、製品のライフサイクル内で製品性能をより良好に制御することである。この目的のために、バスケット(それぞれUSP1)及びパドル(それぞれUSP2)を有する1リットルの容器を使用する古典的なUSP溶解作業条件の使用は確立されており、新たな溶解方法の開発のための第一選択として使用される。しかしながら、利用可能な材料の量、分析感度、識別又は生体関連性(biorelevance)の欠如から生じる限界により、非公定方法の使用が是認され得る。特に、早期開発において、薬物候補のスクリーニングの間に、製剤は動物での試験のために開発されることが多く、溶解は、理想的には、胃腸環境を模する媒体を使用し、並びに動物生理機能と一致する体積で実施されるべきである。古典的方法が適していない別の場合は、低投与量薬物に関してか、又は、分析方法が、製剤中の薬物の低濃度のために溶解した薬物の量を精密に検出するのに充分な感度がない場合がある。これらの問題を克服するために、より小さい試料サイズ及びより低い体積の媒体を使用する可能性のため、物質及び材料消費の点で種々の利点を与える小体積崩壊の構想が最近起こって、剤形スクリーニング又は製剤選択のための有益なツールとして作用できる。
【0081】
舌下投与により適用された用量の崩壊/滞留時間は、舌下空間内にとどまる用量の重要な設計要素である。現在、USP<701>が崩壊時間を決定するために利用されるが、結果は、機械的に撹拌されている水性媒体への曝露後の用量崩壊に関して得られ、終点は「触知不能な塊」の形成であると理解されている。インビボ用量崩壊をより良好に理解及び予測するために、体積限定の非撹拌方法(小体積崩壊又は「SVD」と称される)が、単一面及び縁(single side and edges)からの用量の溶媒和を強調する、より識別性の高い崩壊方法を生み出すために応用され得る。この場合、SVDは、ペトリ皿内の水性媒体体積の表面に適用された用量を利用する。
【0082】
SVD時間は、フィルムが水又は唾液と接触したときフィルムが分散するのにかかる(秒での)時間であると記載される。20mL水又は唾液を含むペトリ皿に、フィルムストリップが浸される。フィルムは水を吸収し、膨潤し始める。しばらくすると、フィルムは破裂し、分散する。フィルムが分散又は崩壊するのにかかる時間が小体積崩壊時間として書き留められる。
【0083】
例えば、体積は、20mL、媒体:滅菌された水又は模擬唾液を含み得る。SVDは、可視化並びに用量膨張、破裂(終点と考えられる)、及び崩壊までの時間も強調できる。SVD時間は、新規及びジェネリックフィルム製品のDOEにより推進される製品設計並びにインビボフィルム崩壊時間の予測モデルの変数として使用されてきた。
【0084】
(脂肪酸)
脂肪酸は、薬物調製品又は薬物ビヒクル中の不活性成分として使用することができる。脂肪酸はまた、それらの特定の機能作用及びそれらの生体適合性の性質のために、製剤成分として使用することもできる。遊離脂質及び複合脂質の一部の双方の脂肪酸は、主要な代謝燃料(貯蔵及び輸送エネルギー)、全ての膜及び遺伝子調節因子の必須成分である。総説については、引用により本明細書中に組み込まれているRustan A.C.及びDrevon, C.A.の文献、「生命科学百科事典、脂肪酸:構造及び性質(Fatty Acids:Structures and Properties, Encyclopedia of Life Sciences)」(2005)を参照されたい。人体で代謝される必須脂肪酸には、二つのファミリーが存在する:ω-3及びω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。第一の二重結合がω炭素から三番目と四番目の炭素原子の間に認められる場合、これらは、ω-3脂肪酸と称される。第一の二重結合が六番目と七番目の炭素原子の間に認められる場合、これらは、ω-6脂肪酸と称される。PUFAは更に、炭素原子の付加及び不飽和化(水素の除去)により体内で代謝される。リノール酸は、ω-6脂肪酸であり、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノリン酸(linolinic acid)、アラキドン酸、アドレン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸及びドコサペンタエン酸に代謝される。α-リノレン酸は、ω-3脂肪酸であり、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びドコサヘキサエン酸(DHA)に代謝される。
【0085】
パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びエイコサペンタエン酸などの脂肪酸が、Na+K+-APTaseポンプの活性化に関与する機序を介して、ブタの冠動脈平滑筋細胞の弛緩及び過分極を誘導したこと、並びにシス不飽和度が増大するにつれて、脂肪酸がより高い効力を有したことが報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Pomposiello, S.I.らの文献、Hypertension 31:615-20(1998)を参照されたい。興味深いことに、リノール酸の代謝産物であるアラキドン酸に対する肺血管反応は、投与量、動物種、アラキドン酸投与の様式、及び肺循環の調子に応じて、血管収縮性にも血管拡張性にもなり得る。例えば、アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ-依存性及び-非依存性の肺血管拡張を引き起こすことが報告されている。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Feddersen, C.O.らの文献、J. Appl. Physiol. 68(5):1799-808(1990)を参照されたい;並びに、Spannhake, E.W.らの文献、J .Appl. Physiol. 44:397-495(1978)及びWicks, T.C.らの文献、Circ. Res. 38:167-71(1976)を参照されたい。
【0086】
多くの研究が、EPA及びDHAの、摂取可能な形態として投与された後の血管の反応性に対する効果を報告した。いくつかの研究は、EPA-DHA又はEPA単独が、前腕微小循環における、ノルエピネフリンの血管収縮作用を抑制し又はアセチルコリンに対して血管拡張反応を増強したことを見出した。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Chin, J.P.F.らの文献、Hypertension 21:22-8(1993)、及びTagawa, H.らの文献、J Cardiovasc Pharmacol 33:633-40(1999)を参照されたい。別の研究は、EPA及びDHAの両方が、全身の動脈系コンプライアンスを増大させ、且つ脈圧及び総血管抵抗を低下させる傾向があることを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Nestel, P.らの文献、Am J. Clin. Nutr. 76:326-30(2002)を参照されたい。その一方で、研究は、EPAではなく、DHAが、高脂血症の過体重男性の前腕微小循環において、血管拡張機序を増強し、且つ収縮筋反応を減弱したことを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Mori, T.A.らの文献、Circulation 102:1264-69(2000)を参照されたい。別の研究は、インビトロにおける分離されたヒト冠状動脈の律動収縮に対するDHAの血管拡張作用を発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Wu, K.-T.らの文献、Chinese J. Physiol. 50(4):164-70(2007)を参照されたい。
【0087】
(アドレナリン受容体相互作用物質)
アドレナリン受容体(又はアドレノレセプター)は、カテコールアミンの、特にノルエピネフリン(ノルアドレナリン)及びエピネフリン(アドレナリン)の標的である、Gタンパク質-共役受容体のクラスである。エピネフリン(アドレナリン)は、α-及びβ-アドレノレセプターの両方と相互作用し、各々、血管収縮及び血管拡張を引き起こす。α受容体は、エピネフリンに対する感受性が低いが、末梢α1受容体のほうがβ-アドレノレセプターよりも多いので、活性化された場合に、α受容体はβ-アドレノレセプターにより媒介される血管拡張を無効にする。結果、高いレベルの循環エピネフリンは、血管収縮を引き起こす。より低いレベルの循環エピネフリンでは、β-アドレノレセプター刺激が優位であり、血管拡張、それに続く末梢血管抵抗の減少を生じる。α1-アドレノレセプターは、平滑筋収縮、散瞳、皮膚、粘膜及び腹部内臓(vicera)における血管収縮、並びに胃腸(GI)管及び膀胱の括約筋収縮に関して知られている。α1-アドレナリン受容体は、Gqタンパク質-共役受容体スーパーファミリーの一員である。活性化時に、ヘテロ三量体Gタンパク質、Gqは、ホスホリパーゼC(PLC)を活性化する。その作用機序は、カルシウムチャネルとの相互作用を伴い、細胞内カルシウム含量を変化させる。総説については、引用により本明細書中に組み込まれている、Smith R. S.らの文献、Journal of Neurophysiology 102(2):1103-14(2009)を参照されたい。多くの細胞が、これらの受容体を有する。
【0088】
α1-アドレナリン受容体は、脂肪酸の主要受容体であり得る。例えば、良性前立腺肥大(BPH)の治療に広く使用されるノコギリヤシ抽出液(SPE)は、α1-アドレナリン作動性、ムスカリン作動性、且つ1,4-ジヒドロピリジン(1,4-DHP)系カルシウムチャネルアゴニスト受容体に結合することが報告されている。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Abe M.らの文献、Biol. Pharm. Bull. 32(4)646-650(2009)、及びSuzuki M.らの文献、Acta Pharmacologica Sinica 30:271-81(2009)を参照されたい。SPEは、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びリノール酸を含む、様々な脂肪酸を含んでいる。ラウリン酸及びオレイン酸は、α1-アドレナリン作動性、ムスカリン作動性、且つ1,4-DHP系カルシウムチャネルアゴニスト受容体に非競合的に結合することができる。
【0089】
ある実施態様において、透過エンハンサーは、アドレナリン受容体相互作用物質であり得る。アドレナリン受容体相互作用物質とは、アドレナリン受容体の作用を修飾するか、且つ/又は他の方法で変化させる化合物又は物質を指す。例えば、アドレナリン受容体相互作用物質は、それらの結合能を増加又は減少させることにより、受容体の刺激を防止することができる。そのような相互作用物質は、短期作用型でも長期作用型でも提供され得る。ある短期作用型相互作用物質は迅速に作用することができるが、それらの作用は数時間しか持続しない。ある長期作用型相互作用物質は作用するまでに長時間を要し得るが、それらの作用はより長く持続し得る。この相互作用物質は、例えば、所望の送達及び投与量、医薬品有効成分、透過修飾因子、透過エンハンサー、マトリクス、及び治療される病態のうちの1つ以上に基づき、選択及び/又は設計され得る。アドレナリン受容体相互作用物質は、アドレナリン受容体遮断剤であり得る。アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペン(例えば、イソプレンの単位に由来する、植物精油中にみられる揮発性不飽和炭化水素)、又はC3-C22アルコール若しくは酸、好ましくはC7-C18アルコール若しくは酸であり得る。ある実施態様において、アドレナリン受容体相互作用物質は、ファルネソール、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸、エイコサペンタン酸、及び/又はドコサペンタン酸を含み得る。この酸は、カルボン酸、リン酸、硫酸、ヒドロキサム酸、又はそれらの誘導体であり得る。この誘導体は、エステル又はアミドであり得る。例えば、アドレナリン受容体相互作用物質は、脂肪酸又は脂肪族アルコールであり得る。
【0090】
C3-C22アルコール又は酸は、直鎖C3-C22炭化水素鎖、例えば、任意に少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三重結合、又は少なくとも1つの二重結合及び1つの三重結合を含む、C3-C22炭化水素鎖を有するアルコール又は酸であり得る;前記炭化水素鎖は、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C3-5シクロアルキル、3~5員のヘテロシクロアルキル、単環式アリール、5~6員のヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1-4アルキルカルボニル、又はホルミルにより任意に置換されており;更に、任意に、-O-、-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、又は-O-C(O)-O-が間に挟まっている。Ra及びRbのそれぞれは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0091】
不飽和度がより高い脂肪酸は、薬物の透過を増強するのに有効な候補である。不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸よりも高い増強を示し、且つ増強は、二重結合の数とともに増大された。引用により本明細書中に組み込まれている、A. Mittalらの文献、「皮膚浸透エンハンサーとしての脂肪酸の状態-総説(Status of Fatty Acids as Skin Penetration Enhancers - A Review)」、Current Drug Delivery, 2009, 6, pp. 274-279を参照されたい。二重結合の位置もまた、脂肪酸の増強活性に影響を及ぼす。二重結合の位置の差に起因する脂肪酸の物理化学特性の差異は、皮膚浸透エンハンサーとしてのこれらの化合物の効力を決定する可能性が最も高い。二重結合の位置が親水性末端へシフトされるにつれ、皮膚分布は増加する。偶数位置に二重結合を有する脂肪酸は、奇数位置に二重結合を有する脂肪酸よりも、角質層及び真皮の両方の構造の乱れに、より迅速に作用することも報告されている。鎖内のシス-不飽和は、活性を増加させる傾向があり得る。
【0092】
アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペンであり得る。精油中のテルペンの血圧降下活性が報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Menezes I.A.らの文献、Z. Naturforsch. 65c:652-66(2010)を参照されたい。ある実施態様において、透過エンハンサーはセスキテルペンであり得る。セスキテルペンは、3つのイソプレン単位からなり、且つ実験式C15H24を有する、テルペンのクラスである。モノテルペンのように、セスキテルペンは、非環式であることも環を含むこともあり、多くの独自の組合せが含まれる。酸化又は転位などの生化学修飾は、関連するセスキテルペノイドを生成させる。
【0093】
アドレナリン受容体相互作用物質は、リノール酸などの不飽和脂肪酸であり得る。ある実施態様において、透過エンハンサーは、ファルネソールであり得る。ファルネソールは、非環式セスキテルペンアルコールである15-炭素有機化合物であり、これはピロリン酸ファルネシルの天然の脱リン酸化された形態である。標準的条件下で、これは無色の液体である。これは疎水性であり、従って水に不溶性であるが、油分とは混和性である。ファルネソールは、シトロネラ、ネロリ、シクラメン、及びゲッカコウなどの植物の油分から抽出することができる。これは、脊椎動物におけるメバロン酸からのコレステロールの生合成の中間工程である。これは、繊細な花の香り又は弱い柑橘-ライムの香りを有し、且つ香水及び香料において使用される。ファルネソールが、初代造血細胞よりむしろ急性骨髄性白血病芽球及び白血球細胞株を選択的に死滅させることが報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Rioja A.らの文献、FEBS Lett 467(2-3):291-5(2000)を参照されたい。ファルネシルアナログの血管作動特性が報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Roullet, J.-B.らの文献、J. Clin. Invest., 1996, 97:2384-2390を参照されたい。ファルネソール及びN-アセチル-S-trans, trans-ファルネシル-L-システイン(AFC)、ファルネシル化されたタンパク質のカルボキシル末端の合成模倣物の両方は、ラット大動脈輪において血管収縮を阻害した。
【0094】
ある実施態様において、相互作用物質はアポルフィンアルカロイドであり得る。例えば、相互作用物質はジセントリンであり得る。
【0095】
一般に、相互作用物質を、血管拡張剤又は治療用血管拡張剤とすることもできる。血管拡張剤は、血管を開く又は拡げる薬物である。血管拡張剤は、通常、高血圧症、心不全、及び狭心症を治療するのに用いられるが、例えば緑内障を含む他の病態を治療するのに用いることもできる。抵抗血管に対して主に作用する一部の血管拡張剤(動脈拡張薬)は、高血圧症、及び心不全、及び狭心症に使用される;しかしながら、反射性の心刺激が、一部の動脈拡張薬を狭心症に不適とする。静脈拡張薬は、狭心症に非常に有効であり、時には、心不全に使用されるが、高血圧症の一次療法としては使用されない。血管拡張薬は、動脈及び静脈の双方を拡張させるという点で混合型(又はバランス型)血管拡張剤となることができ、従って、高血圧症、心不全、及び狭心症において広く応用できる。一部の血管拡張剤は、それらの作用機序を理由として、場合によっては、それらの治療的有用性を強化することができるか又はいくつかの追加の治療的利益を提供することができる他の重要な作用も有する。例えば、一部のカルシウムチャネルブロッカーは、血管を拡張させるだけでなく、心臓の機械的機能及び電気的機能を低下させ、それにより、それらの抗高血圧作用を強化することができ、且つ不整脈をブロックすることなどの追加の治療的利益を付与することができる。
【0096】
血管拡張薬は、それらの作用部位(動脈性対静脈)に基づいてか又は作用機序によって分類することができる。主に抵抗血管を拡張させる薬物(動脈拡張薬;例えば、ヒドララジン)もあり、主に静脈の容量血管に影響を及ぼす薬物(静脈拡張薬;例えば、ニトログリセリン)もある。フェントラミンなどの、多くの血管拡張薬は、混合型の動脈及び静脈拡張性を有する(混合型拡張薬;例えば、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤)。
【0097】
しかしながら、主要な作用機序に基づいて血管拡張薬を分類することがより一般的である。これらの薬物のクラス、並びに血管拡張を生じさせる他のクラスには:α-アドレナリン受容体アンタゴニスト(α-遮断薬);アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB);β2-アドレナリン受容体アゴニスト(β2-アゴニスト);カルシウムチャネル遮断薬(CCB);中枢作用型交感神経遮断薬;直接作用型血管拡張剤;エンドセリン受容体アンタゴニスト;神経節遮断薬;ニトロ拡張薬;ホスホジエステラーゼ阻害剤;カリウムチャネル開口薬;レニン阻害剤が含まれる。
【0098】
一般に、活性又は不活性な成分又は材料は、血流増加又は組織の潮紅を生じさせ、APIの経粘膜的な取り込みの変化又は相違(増加又は減少)を可能にする物質若しくは化合物、及び/又は正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化(増加又は減少)させる補助剤として使用される物質若しくは化合物であり得る。
【0099】
(乾燥剤)
乾燥剤は、物理吸着により、又は化学反応により水分を吸収することにより医薬品を湿害から保護し、それにより製品の安定性を改善するように設計された化合物である。好適な乾燥剤は、シリカ、ヒュームドシリカ又はメソポーラスシリカを含み得る。乾燥剤の例としては、Cab-o-Sil及びSyloid 244FPなどの二酸化ケイ素変形体がある。乾燥剤は、医薬組成物の1~15重量%であり得る。例えば、それは、医薬組成物の2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、又は15% w/wであり得る。
【0100】
(安定剤)
安定剤は、医薬品有効成分(API)が、患者により消費されるか、又は他の方法で効果を生じるまで、製品又は医薬組成物の望ましい性質を維持するのを助けるように設計された材料である。例えば、ゲル化剤は、懸濁剤及び乳剤などの液体剤形を安定化できる。例としては、メタクリル酸コポリマー、酢酸セルロース、アルギネート及びポリスチレンスルホン酸がある。安定剤はpH調節剤及び可塑剤に関連して使用されて、医薬組成物の分解又は加水分解を予防又は減少させることもできる。安定剤は、酸化防止剤、イオンスカベンジャー、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、乳化剤及び/又は界面活性剤、及びUV安定剤としても分類され得る。安定剤は、組成物又は組成物の成分を分解経路、例えば、エステル交換及び/又は加水分解から、これらの機構のいずれか又はこれらの機構の組合せを防ぐことにより保護できる。例としては、ポリスチレンスルホン酸がある。
【0101】
安定剤はイオン交換樹脂であり得る。それはカチオン交換樹脂であり得る。それは、イオンを捕捉するように構築できる。それは塩基性イオンを捕捉できる。それは、AmberLite(登録商標)HPR1100 Na Ion、Amberlite(登録商標)IR-120(H)又はAmberlite(登録商標)IRP64などのAmberlite(登録商標)樹脂であり得る。それはキレート剤であり得る。それは、エグタズ酸(EGTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はクエン酸、酒石酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]酢酸、又は(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)であり得る。単一の安定剤は、医薬組成物の約0.1%~約50% w/w、好ましくは医薬組成物の約0.1%~約100% w/wであり得る。例えば、それは、医薬組成物の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10% w/wであり得る。
【0102】
ある実施態様において、安定剤は、物質の望ましくない酸化を防止することができる酸化防止剤、キレート錯体を形成し、そうしなければ触媒として作用するだろう微量の金属イオンを失活させることができる金属イオン封鎖剤、乳液を安定化することができる乳化剤及び界面活性剤、物質を紫外線の有害作用から保護することができる紫外線安定剤、紫外線を吸収しそれが組成物に侵入することを防止する化学物質であるUV吸収剤、放射エネルギーに化学結合を破壊させずに、それを熱として消散させることができる消光剤、又は紫外線により形成されるフリーラジカルを除去することができるスカベンジャーを含み得る。
【0103】
紫外線安定剤の例としては、UV吸収剤(例えば、ベンゾフェノン)、UV消光剤(すなわち、UVエネルギーに分解作用を持たさずに、該エネルギーを熱として消散させる任意の化合物)、スカベンジャー(すなわち、UV放射線への曝露から生じるフリーラジカルを除去する任意の化合物)、及びそれらの組合せがある。
【0104】
他の実施態様において、安定剤は、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、システインHC1、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチオニン、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、没食子酸プロピル、グルタチオン、チオグリセロール、一重項酸素消光剤、ヒドロキシルラジカルスカベンジャー、ヒドロペルオキシド除去剤、還元剤、金属キレート化剤、洗浄剤、カオトロープ、及びそれらの組合せを含む。「一重項酸素消光剤」は、アルキルイミダゾール(例えば、ヒスチジン、L-カモシン、ヒスタミン、イミダゾール4-酢酸)、インドール(例えば、トリプトファン及びその誘導体、例えばN-アセチル-5-メトキシトリプタミン、N-アセチルセロトニン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ベータ-カルボリン)、含硫アミノ酸(例えば、メチオニン、エチオニン、ジエンコル酸、ランチオニン、N-ホルミルメチオニン、フェリニン、S-アリルシステイン、S-アミノエチル-L-システイン)、フェノール系化合物(例えば、チロシン及びその誘導体)、芳香族酸(例えば、アスコルビン酸塩、サリチル酸、及びそれらの誘導体)、アジド(例えば、アジ化ナトリウム)、トコフェロール及び関連ビタミンE誘導体、並びにカロテン及び関連ビタミンA誘導体を含むが、これらに限定されない。「ヒドロキシルラジカルスカベンジャー」は、アジド、ジメチルスルホキシド、ヒスチジン、マンニトール、ショ糖、グルコース、サリチル酸塩、及びL-システインを含むが、これらに限定されない。「ヒドロペルオキシド除去剤」は、カタラーゼ、ピルビン酸塩、グルタチオン、及びグルタチオンペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されない。「還元剤」は、システイン及びメルカプトエチレンを含むが、これらに限定されない。「金属キレート化剤」は、EDTA、EGTA、o-フェナントロリン、及びクエン酸塩を含むが、これらに限定されない。「洗浄剤」は、SDS及びラウロイルサルコシンナトリウムを含むが、これらに限定されない。「カオトロープ」は、塩酸塩グアニジウム、イソチオシアネート、尿素、及びホルムアミドを含むが、これらに限定されない。本明細書で考察される通り、安定剤は、0.0001%~50重量%で存在することができ、これは、重量で、0.0001%超、0.001%超、0.01%超、0.1%超、1%超、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、又は0.0001%未満を含む。
【0105】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、他の分子の酸化を減少若しくは予防することが可能であるか、又は他の方法で医薬の貯蔵寿命を改善することが可能な分子である。酸化防止剤は、有機及び無機分子の酸化を遅延又は阻害し、分解を予防する効率よい賦形剤である。酸化防止剤(すなわち、酸化プロセスを減速、阻害、中断及び/又は停止する、医薬として適合性のある化合物(複数可)又は組成物(複数可))は、特に以下の物質:トコフェロール及びそれらのエステル、ゴマ油のセサモール、ベンゾイン樹脂の安息香酸コニフェリル、ノルジヒドログアイエチン樹脂(nordihydroguaietic resin)及びノルジヒドログアエアレチン酸(NDGA)、没食子酸エステル(とりわけ、没食子酸メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、ラウリル)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA/BHT、ブチル-p-クレゾールとも);アスコルビン酸並びにその塩及びエステル(例えば、パルミチン酸アスコルビル)、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)並びにその塩及びエステル、モノチオグリセロール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオン酸を含む。典型的酸化防止剤は、トコフェロール、例えば、α-トコフェロール及びそのエステル、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチル化ヒドロキシアニソールである。用語「トコフェロール」はトコフェロールのエステルも含む。公知のトコフェロールは、α-トコフェロールである。用語「α-トコフェロール」は、α-トコフェロールのエステル(例えば、酢酸α-トコフェロール)を含む。
【0106】
金属イオン封鎖剤(すなわち、有効成分又は別の賦形剤などの別の化合物と、ホスト-ゲスト錯体形成に加わることができる任意の化合物;封鎖剤とも称される)は、塩化カルシウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、グルコノデルタ-ラクトン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの組合せを含む。金属イオン封鎖剤は、シクロデキストリン、シクロマンニン(1,4位でα連結により連結した5つ以上のα-D-マンノピラノース単位)、シクロガラクチン(1,4位でβ連結により連結した5つ以上のβ-D-ガラクトピラノース単位)、シクロアルトリン(1,4位でα連結により連結した5つ以上のα-D-アルトロピラノース単位)などの環状オリゴ糖、及びこれらの組合せも含む。pH調整剤は、酸(例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、リン酸、アスコルビン酸、酢酸、スクシニンク酸(succininc acid)、アジピン酸、マレイン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]酢酸、(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、そのような酸性物質の無機塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩など)、そのような酸性物質の有機塩基(例えば、塩基性アミノ酸、例えばリジン、アルギニンなど及び同類のもの、メグルミン及び同類のもの)との塩、並びにそれらの溶媒和物(例えば水和物)を含む。pH調節剤の他の例は、ケイ化微結晶性セルロース、アルミノメタケイ酸マグネシウム、リン酸のカルシウム塩(例えば、リン酸水素カルシウムの無水物又は水和物、炭酸若しくは炭酸水素カルシウム、ナトリウム若しくはカリウム、及び乳酸カルシウム又はそれらの混合物)、カルボキシメチルセルロースのナトリウム及び/又はカルシウム塩、架橋されたカルボキシメチルセルロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム及び/又はカルシウム)、ポラクリリンカリウム、アルギン酸ナトリウム及び/又はカルシウム、ドクサートナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、若しくは亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、及びオレイン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの組合せを含む。
【0107】
例示的な医薬製剤において、酸化防止剤は、医薬組成物の約0.1%~約20重量%であり得る。例えば、それは、医薬組成物の約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、14%、16%、18%又は20% w/wであり得る。酸化防止剤の例としては、EGTA、EDTA、クエン酸、L-システイン、及びコーヒー酸がある。
【0108】
(pH調節剤)
pH調節剤賦形剤は、その酸化防止性及び医薬の安定性を維持するのを助ける能力のために医薬産業において使用されており、保存剤としても使用できる。pH調節のために、塩基又は酸の添加は、緩衝剤の使用よりも多くの場合好ましい。pH調節剤は、pH2.5~6、好ましくは2.5~4.0、及びより好ましくは2.5~3.5の製剤をもたらし得る。製剤のpHは、粘膜刺激につながることなく、粘膜表面を通る活性物質の透過性のバランスを保ち、製剤安定性を促進する。pH調節剤は直鎖の酸であり得る。pH調節剤の例としては、塩化水素酸、リン酸、フッ化水素酸、及びクエン酸がある。ある実施態様において、pH調節剤は制酸剤であり得る。
【0109】
ある状況において、フィルム組成物は、フィルム組成物のpHを制御するために緩衝剤を更に含み得る。任意の所望のレベルの緩衝剤が、医薬活性成分が組成物から放出される際に遭遇する所望のpHレベルを提供するために、フィルム組成物に組み込まれ得る。この緩衝剤は、医薬活性成分のフィルムからの放出及び/又は体への吸収を制御するのに充分な量で提供されることが好ましい。一部の実施態様において、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸水素塩及びそれらの組合せを含み得る。
【0110】
(処理溶媒)
処理溶媒は有機/水性溶媒系を組み込んで、結合水を置換し減少させ、それにより液体中間体の全体的な水分添加量を減少させる。溶媒は、水性有機性又は水性アルコール性、例えば、少なくともアルコール又は有機溶媒及び水を含む混合物であり得る。いくつかの実施態様において、それはエタノール/水混合物であり得る。処理溶媒は、水よりも揮発性が高い有機溶媒を含み得る。ある状況において、有機溶媒は水との共沸混合物を形成し得る。処理溶媒は、2%~70%水、5%~60%水、又は10%~50%水を含み得る。例えば、処理溶媒は50:50エタノール/水w/w混合物であり得る。他の実施態様において、処理溶媒はアセトン又はアセトニトリルを含み得る。他の実施態様において、処理溶媒は、t-ブタノール、メタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトアルデヒド、ジオキサン、ジクロロメタン、又はメチルイソシアニドの1種以上を含み得る。処理溶媒は、上記溶媒の1種以上の混合物でもあり得る。
【0111】
(API添加量)
医薬品有効成分(API)は充分に高いAPI負荷で提供されて各APIの投与量を最適化すると同時に、剤形サイズを制限できる。一例において、API負荷は、8%超、10%超、12%超、14%超、16%超、18%超、20%超、22%超、又は24% w/w超であり得る。API負荷は、2%~40% w/w、又は5%~30% w/wであり得る。
【0112】
(透過エンハンサー)
透過エンハンサーは、表面、例えば粘膜表面を通る薬物又はAPIの透過を改善するために提供され得る。一例はオイゲノールである。透過エンハンサーは、1%超、2%超、5%超、10%超、12%超、14%超、16%超、18%超、20%超、25%超、30%超、35%超、又は40%w/w超の濃度で提供され得る。
【0113】
特定のクラスの透過エンハンサーは、医薬活性成分のインビボにおける取込み及び生物学的利用能を向上させることができる。特に、フィルムを介して口へ送達される場合、透過エンハンサーは、対象の粘膜を通り血流へ入る医薬活性成分の透過性を向上させることができる。透過エンハンサーは、医薬活性成分の吸収の速度及び量を、組成物中の他の成分に応じて、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、100%超、150%超、約200%以上、又は200%未満、150%未満、100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、若しくは5%未満、又はこれらの範囲の組合せだけ、向上させることができる。
【0114】
化学的浸透エンハンサーは、生体膜を通り共投与される薬物の透過速度を制御する物質である。大規模な研究が、浸透エンハンサーが腸管及び経皮の透過性をどのように変化させ得るかについてのより良い理解を得ることに焦点を当てているが、頬側及び舌下の浸透増強に係わる機序に関しては、ほとんどわかっていない。
【0115】
頬側粘膜は、頬の内側の裏打ち、並びに歯茎と上下唇の間の領域の輪郭を描き、且つこれは、100cm2の平均表面積を有する。頬側粘膜の表面は、波打つ基底膜(厚さおよそ1~2μmの細胞外物質の連続層)により、下側結合組織(粘膜固有層及び粘膜下層)から分離されている重層扁平上皮からなる。この重層扁平上皮は、基底領域から細胞が脱落する表在領域へと移るにつれ、サイズ、形状、及び含有物が変化する、細胞の分化している層からなる。そこにはおよそ40~50の細胞層が存在し、厚さ500~600μmの頬側粘膜が生じている。
【0116】
構造的に、舌下粘膜は頬側粘膜と同等であるが、この上皮の厚さは100~200μmである。この膜も、角質化されず、比較的薄いことで、頬側粘膜よりも透過性が高いことが明らかにされている。舌下粘膜への血流は頬側粘膜と比べてより遅く、1.0ml/分-1/cm-2の桁である。
【0117】
頬側粘膜の透過性は、皮膚の透過性よりも大きいが、腸の透過性よりも小さい。透過性の相違は、各組織の間の構造的相違の結果である。頬側粘膜の細胞間隙中の組織化された脂質ラメラの非存在は、皮膚の角質化された上皮と比べ、外来化合物のより高い透過性をもたらし;他方で、増加した厚さ及び密着結合の欠如により、頬側粘膜は腸組織よりも透過性が低い。
【0118】
頬側粘膜の一次障壁特性は、頬側上皮の上側1/3~1/4に起因するとされている。研究者らは、表面上皮を越える、角質化されていない口腔粘膜の透過性障壁はまた、膜被覆顆粒から上皮細胞間隙へ押し出された内容物に帰せられることを知っている。
【0119】
口腔の角質化されていない領域の細胞間脂質は、表皮、口蓋、及び歯肉の脂質よりも、より極性のある性質であり、且つこの脂質の化学的性質の差は、これらの組織間で認められる透過性の差に寄与し得る。結果的に、より効果的な障壁を作り出すのが、角質化された上皮の角質層での細胞間脂質充填の程度がより大きいことのみではなく、その障壁内に存在する脂質の化学的性質でもあるようである。
【0120】
口腔粘膜内の親水性領域及び親油性領域の存在により、研究者らは、頬側粘膜を通る2種の薬物輸送経路-傍細胞(細胞間)及び経細胞(細胞を越える)-の存在を仮定した。
【0121】
頬側粘膜を通る薬物送達は、上皮及び吸収に利用可能な領域の障壁の性質により限定されるので、全身循環へ治療的に適切な量の薬物を送達するためには、様々な増強戦略が必要である。化学的浸透エンハンサー、プロドラッグ、及び物理的方法の使用を含む様々な方法を、頬側粘膜の障壁特性を克服するために利用することができる。
【0122】
化学的浸透エンハンサー、すなわち吸収プロモーターは、膜の損傷及び/又は毒性の惹起を伴わずに、共投与される薬物の膜透過又は吸収の速度を増大させるために、医薬製剤に添加される物質である。皮膚、鼻粘膜、及び腸を越える化合物の送達に対する化学的浸透エンハンサーの作用を調べる、多くの研究が存在する。近年、頬側粘膜の透過性に対するこれらの作用物質の作用に、より多くの注意が払われている。頬側粘膜を越える透過性は受動拡散プロセスであると考えられるので、定常状態フラックス(Jss)は、フィックの拡散第一法則に従い、ドナーチャンバー濃度(CD)の増加とともに増加するはずである。
【0123】
界面活性剤及び胆汁酸塩は、インビトロ及びインビボの両方において、様々な化合物の頬側粘膜を越える透過性を増強することが示されている。これらの研究から得られたデータは、透過性の増強が、粘膜の細胞間脂質に対する界面活性剤の作用によるものであることを、強力に示唆している。
【0124】
脂肪酸は、いくつかの薬物の皮膚を通る透過を増強することが示されており、且つこれは、示差走査熱量測定及びフーリエ変換赤外線分光法により、細胞間脂質の流動性の増加に関連することが示されている。加えて、エタノールによる前処理が、腹側舌粘膜を越えるトリチウム水及びアルブミンの透過性を増強し、且つブタの頬側粘膜を越えるカフェイン透過性を増強することが示されている。また、口腔粘膜を通る化合物の透過性に対するAzone(登録商標)の増強作用のいくつかの報告もある。更に、生体適合性且つ生分解性ポリマーであるキトサンが、腸及び鼻の粘膜を含む、様々な組織を通る薬物送達を増強することが示されている。
【0125】
経口経粘膜的薬物送達(OTDD)は、全身作用を達成するための、医薬活性物質の口腔粘膜を通る投与である。OTDDの透過経路及び予測モデルは、例えばM. Sattarの文献「経口経粘膜的薬物送達-最新の状況及び今後の見通し(Oral transmucosal drug delivery-Current status and future prospects)」、Int’l. Journal of Pharmaceutics, 47(2014)498-506に説明されており、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。OTDDは、学術界及び産業界の科学者の注意を引き付け続けている。皮膚及び鼻の送達経路と比べて口腔内の透過経路の限定された特性化にもかかわらず、イオン化分子が頬側上皮を透過する程度に関する発明者らの理解の最近の進展、並びに口腔を研究するための新たな分析技術の出現、並びに頬側及び舌下の透過を予測するインシリコモデルの進行中の開発により見通しは明るい。
【0126】
より広範なクラスの薬物を、頬側粘膜を越えて送達するためには、この組織の障壁能を低下させる可逆的方法が利用されるべきである。この要件は、頬側粘膜の透過性の制約を安全に変更する浸透エンハンサーの研究を促している。頬側浸透は、胆汁酸塩、界面活性剤、脂肪酸及びそれらの誘導体、キレート化剤、シクロデキストリン及びキトサンなどの、様々なクラスの経粘膜的及び経皮的浸透エンハンサーを使用することにより改善され得ることが示されている。薬物透過増強のために使用されるこれらの化学物質の中で、胆汁酸塩が最も一般的である。
【0127】
化合物の頬側透過に対する胆汁酸塩の増強作用に関するインビトロ研究は、Sevda Senelの文献「頬側経路による薬物透過増強:可能性及び制限(Drug permeation enhancement via buccal route:possibilities and limitations)」、Journal of Controlled Release 72(2001)133-144において考察されており、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。その記事はまた、濃度100mMでのジヒドロキシ胆汁酸塩、グリコデオキシコール酸ナトリウム(SGDC)及びタウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)及びトリ-ヒドロキシ胆汁酸塩、グリココール酸ナトリウム(GC)及びタウロコール酸ナトリウム(TC)の、頬側上皮の透過性の作用に関する最新の研究についても、組織学的作用に関連した透過性の変化を含めて考察している。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、硫酸モルヒネが、各々、モデル化合物として使用された。
【0128】
キトサンもまた、動物モデル及びヒト志願者において、極性小分子及びペプチド/タンパク質薬物の鼻粘膜を通る吸収を促進することが示されている。他の研究は、腸粘膜及び培養されたCaco-2細胞を越える化合物の浸透に対する増強作用を示している。
【0129】
透過エンハンサーは植物抽出物であり得る。植物抽出物は、植物材料の蒸留により抽出された精油でも、精油を含む組成物でもあり得る。ある状況において、植物抽出物は、植物材料から抽出された化合物の合成アナログ(すなわち、有機合成により生成された化合物)を含み得る。植物抽出物は、フェニルプロパノイド、例えば、フェニルアラニン、オイゲノール、酢酸オイゲノール、桂皮酸、桂皮酸エステル、桂皮アルデヒド、ヒドロ桂皮酸、カビコール、若しくはサフロール、又はそれらの組合せを含み得る。植物抽出物は、クローブ植物、例えばクローブ植物の葉、茎、又は花芽の精油抽出物であり得る。クローブ植物は、シジギウム・アロマティクム(Syzygium aromaticum)であり得る。この植物抽出物は、20~95%のオイゲノールを含み、40~95%のオイゲノールを含み、60~95%のオイゲノール、例えば、80~95%のオイゲノールを含み得る。この抽出物はまた、5%~15%の酢酸オイゲノールも含み得る。この抽出物はカリオフィレンも含み得る。この抽出物はまた、最高2.1%のα-フムレンも含み得る。クローブ精油中により低い濃度で含まれる他の揮発性化合物は、β-ピネン、リモネン、ファルネソール、ベンズアルデヒド、2-ヘプタノン及びヘキサン酸エチルであり得る。他の透過エンハンサーを、薬物の吸収を改善するために、組成物へ添加してもよい。好適な透過エンハンサーは、天然又は合成の胆汁酸塩、例えばフシジン酸ナトリウム;グリココーレート又はデオキシコーレート及びそれらの塩など;脂肪酸及び誘導体、例えばラウリン酸ナトリウム、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン、及びパルミトイルカルニチン;キレート化剤、例えば、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]酢酸、(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)、EDTA二ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、アゾン、コール酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、ソルビタンラウレート、グリセリルモノラウレート、オクトキシノニル-9、ラウレス-9、ポリソルベート、ステロール、又はグリセリド、例えばカプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、例えばLabrasol(登録商標)などを含む。透過エンハンサーは、植物抽出物の誘導体及び/又はモノリグノールを含み得る。透過エンハンサーは真菌抽出物でもあり得る。
【0130】
(可塑剤)
可塑剤は、フィルム形成剤として使用されるポリマーに、該ポリマーをしなやかで柔らかくするために加えられて、フィルムの柔軟性及び可塑性を増大させ得る。可塑剤は、固体剤形、特に経口固体剤形にしばしば使用される。例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、有機エステル、例えば、ジエチルエステル、ジブチルエステル、セバシン酸(sebacete)ジブチル、クエン酸エステル、トリアセチンがある。他の例としては、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、又は分留ココナツオイルなどの油又はグリセリドがある。それは、炭水化物、ポリアルコール又は糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、イソマルト、マルチトール及び加水分解水添デンプン(HSH)であり得る。可塑剤は、2%超、4%超、6%超、8%超又は10%超w/wで提供できる。
【0131】
(粘度調整剤)
粘度調整剤は、医薬成分の厚さ又は質感を変更するように設計される。粘度調整剤は、そのような製品を、増粘剤、テクスチャライザー、ゲル化剤及び硬化剤として含み得る。多くの粘度調整剤が、液体をゲル、ペースト又は粉末に変換して、製剤者が末端消費者のために理想的な製品を作ることを助け得る。粘度調整剤は液体の厚さを減少させて、流動性を改善し、最終的にそれをよりおいしくすることができる。特定の例は天然又は合成ゴムであり、それらは糖から誘導できる。粘度調整剤は、0.2%超、0.4%超、0.6%超、0.8%超、1%超、1.2%超、1.4%超、又は1.6%超で提供できる。例は、ゼラチン、キサンタムガム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、キトサン、天然ゴム、及び他の合成ポリマーである。
【0132】
(界面活性剤)
界面活性剤は、表面、界面に吸着して、表面若しくは界面張力を減少させる作用物質であるか、又は液体間の表面張力を低下させるために使用される。界面活性剤は、疎水性医薬品有効成分の湿潤及び分散を助け、通常、懸濁液中の固体と液体の間の界面張力を減少させることにより作用する。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性であり得る。これらの界面活性剤は組成及び極性が異なる。好適な界面活性剤の例としては、エトキシレート、Labrasol(登録商標)、又はTranscutol(登録商標)、及びPEG-脂肪酸エステル、PEGアミンエーテルなどのPEG誘導体がある。例は、構造形成脂質及び脂肪族アルコール、すなわちモノオレイン酸グリセリル(GMO)などのモノグリセリド及びフィタントリオール(PHT)も含み得る。
【0133】
乳化剤及び/又は界面活性剤の例としては、ポロキサマー又はプルロニック、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエトキシル化及び水添ヒマシ油、アルキル多糖(polyoside)、疎水性骨格上のグラフトされた水溶性タンパク質、レシチン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル/ポリオキシエチレンステアレート、ケトステアリルアルコール/ラウリル硫酸ナトリウム、カルボマー、リン脂質、(C10-C20)-アルキル及びアルキレンカルボキシレート、アルキルエーテルカルボキシレート、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、アルキルアミドサルフェート及びスルホネート、脂肪酸アルキルアミドポリグリコールエーテルサルフェート、アルカンスルホネート及びヒドロキシアルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、イセチオネートのアシルエステル、α-スルホ脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルフェノールグリコールエーテルスルホネート、スルホスクシネート、スルホコハク酸のモノエステル及びジエステル、脂肪族アルコールエーテルホスフェート、タンパク質/脂肪酸縮合生成物、アルキルモノグリセリドサルフェート及びスルホネート、アルキルグリセリドエーテルスルホネート、脂肪酸メチルタウリド、脂肪酸サルコシネート、スルホリシノレート、及びアシルグルタメート、四級アンモニウム塩(例えば、ジ-(C10-C24)-アルキル-ジメチルアンモニウムクロリド又はブロミド)、(C10-C24)-アルキル-ジメチルエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、(C10-C24)-アルキル-トリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド)、(C10-C24)-アルキル-ジメチルベンジルアンモニウムクロリド又はブロミド(例えば、(C12-C18)-アルキル-ジメチルベンジルアンモニウムクロリド)、N-(C10-C18)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド(例えば、N-(C12-C16)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド)、N-(C10-C18)-アルキル-イソキノリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキルサルフェート、N-(C12-C18)-アルキル-ポリオイルアミノホルミルメチルピリジニウムクロリド、N-(C12-C18)-アルキル-N-メチルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキルサルフェート、N-(C12-C18)-アルキル-N-エチルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキルサルフェート、(C16-C18)-アルキル-ペンタオクスエチルアンモニウム(pentaoxethylammonium)クロリド、ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N,N-ジ-エチルアミノエチルステアリルアミド及び-オレイルアミドの、塩化水素酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸との塩、N-アシルアミノエチル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキルサルフェート、及びN-アシルアミノエチル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキルサルフェート(上記において、「アシル」は、例えばステアリル又はオレイルを意味する)、並びにこれらの組合せがある。
【0134】
先に記載された水-ベースのエマルジョンで典型的に使用される乳化剤は、好ましくは、リノール酸、パルミチン酸、ミリストレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セトレイン酸又はオレイン酸及び水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される場合に、現場で得られるか、或いはソルビトール及び無水ソルビトールのラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、若しくはオレイン酸エステル、モノオレエート、モノステアレート、モノパルミテート、モノラウレートを含むポリオキシエチレン誘導体、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、アリルエーテル、アルキルアリールエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート及び/又はソルビタンモノパルミテートから選択されるかのいずれかである。
【0135】
(エステラーゼ阻害剤)
エステラーゼ阻害剤は、薬物の所望の薬物動態を達成するのが望ましい分析操作の間のエステル、アミド及びカルバマートなどの薬物の化学的又は酵素加水分解を防ぐ。そのような加水分解は、血液、血漿及び組織に存在する非特異的エステラーゼの作用により起こる。そのようなエステラーゼ阻害剤の例としては、フッ化ナトリウム(NaF)、ジイソプロピル-フルオロホスフェート(DFP)及び1,5,ビス(4-アリルジメチルアンモニウムフェニル)-ペンタン-3-オンジブロミド(ADAPP)、H2NSO3
-、I-、SCN-、NO3
-、NO2
-、N3
-、I-、Br-、Cl-、SO4
2-、S-2、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4-、HSO4-、SO3
2-、CO3-、又はC2O4
2がある。
【0136】
(甘味剤)
甘味剤は、以下の非限定的リスト:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びそれらの組合せ;サッカリン及びその様々な塩、例えばナトリウム塩;ジペプチドベースの甘味料、例えばアスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア・レバウディアナ(Stevia Rebaudiana)(ステビオシド);ショ糖の塩素誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、及び同類のものから選択されてよい。また、水素化されたデンプン加水分解物及び合成甘味料3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシド、特にカリウム塩(アセスルファム-K)、並びにそれらのナトリウム塩及びカルシウム塩、並びに天然の強力な甘味料、例えばLo Han Kuoなども企図される。他の甘味料もまた、使用されてよい。
【0137】
甘味剤は、2つの範疇-栄養性及び非栄養性に広く分類され得る。栄養性甘味剤はカロリーを送達し、その名前が示唆する通り、非栄養性は送達しない。非栄養性甘味剤は、バルク(糖アルコール)及び高強度(人工)と更に特徴付けられ得る。いくつかの例としては、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムK、Magnasweet、ステビア、及び糖アルコールがある。
【0138】
(香料及び色)
香料は、天然及び合成の香味のある液体から選択されてよい。このような作用物質の例示的なリストは、揮発油、合成香味油、香味のある芳香族、油分、液体、含油樹脂、又は植物、葉、花、果実、茎、及びそれらの組合せから誘導された抽出物を含む。例の非限定的な代表的リストは、ミント油、ココア、及び柑橘油、例えばレモン、オレンジ、ライム及びグレープフルーツなど、並びにリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、アプリコットを含む果実のエッセンス、又は他の果実香料を含む。他の有用な香味料は、アルデヒド及びエステル、例えばベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、シトラール、すなわちアルファシトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわち、ベータ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(柑橘果実)、アルデヒドC-9(柑橘果実)、アルデヒドC-12(柑橘果実)、トルイルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(緑色果実)、又は2-ドデセナール(柑橘、マンダリン)、それらの組合せなどを含む。
【0139】
着香剤は、製剤の官能特性を増大させ、又はその苦味若しくは他の不快な味を隠そうとして製剤に加えられ得る。苦味の減少は、味/味相互作用の機構-味及び香りのマスキングの基礎的な原理により、相補的な味-甘味、酸味、及び塩気とのバランスを取ることにより達成され得る。いったん苦味が減少されると、オレンジ、ブドウ又はミントなどの医薬用着香剤を、活性薬剤及び賦形剤との適合性、患者背景、並びに投薬頻度及び他の生活の質因子に基づいて選択できる。適切な薬物製剤は、嗜好性を達成するために頑強でバランスの取れた基剤を要する。
【0140】
(着色剤)
着色剤(colorant)又は着色剤(coloring agent)は、主に、独特な外観を医薬剤形に付与するために使用される。好適な着色剤は、特に経口医薬調合物のために、剤形の美的概観を増大させる。1938年のFood Drug and Cosmetic Actは、染料の3つの分類をつくった:(1)FD&C色素-食品、薬物、及び化粧品での使用に認定できる着色剤;(2)D&C色素-粘膜と接触する場合又は摂取される場合薬物及び化粧品での使用に安全であると考えられる染料及び顔料;並びに(3)外用D&C色素-その経口毒性のため、摂取用の製品での使用には認定できないが、外用塗布される製品での使用には安全であると考えられる着色剤。医薬において広く使用されている着色剤のいくつかの例としては、FD&C青色1号-ブリリアントブルー、(青の色調)、FD&C青色2号-インジゴチン、(藍の色調)、FD&C赤色3号-エリスロシン、(ピンクの色調)、FD&C赤色40号-アルラレッド、(赤の色調)、FD&C黄色5号-タートラジン、(黄色の色調)及びFD&C黄色6号-サンセットイエロー、(オレンジの色調)がある。
【0141】
着色剤の他の例は、公知のアゾ染料、有機若しくは無機の顔料、又は天然由来の着色剤を含む。無機顔料、例えば鉄又はチタンの酸化物が好ましく、これらの酸化物は、全成分の重量を基準として、約0.001~約10%、好ましくは約0.5~約3%の範囲の濃度で添加され、これは0.001%超、0.01%超、0.1%超、0.5%超、1%超、2%超、5%超、約10%、10%超、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、又は0.001%未満を含む。
【0142】
(透過エンハンサー及び医薬品有効成分の配列)
所望の粘膜表面に送達される浸透エンハンサー及び医薬品有効成分(API)の配置、順序、又は配列を、所望の薬物動態プロファイルを達成するために様々にすることができる。例えば、フィルムによってか、スワブ、スプレー、ゲル、すすぎによってか、又はフィルムの第1の層によって先ず透過エンハンサーを適用し、その後、単一のフィルムによってか、スワブによってか、又はフィルムの第2の層によってAPIを適用することができる。本配列は、例えば、フィルムによってか、スワブによってか、又はフィルムの第1の層によって先ずAPIを適用し、その後、フィルムによってか、スワブ、スプレー、ゲル、すすぎによってか、又はフィルムの第2の層によって透過エンハンサーを適用することによって、逆転又は変更できる。別の実施態様において、フィルムによって透過エンハンサーを適用し、且つ薬物を別のフィルムによって適用してもよい。例えば、所望の薬物動態プロファイルに応じて、APIを含有するフィルムの下に位置する透過エンハンサーフィルム、又は透過エンハンサーを含有するフィルムの下に位置するAPIを含有するフィルムである。
【0143】
例えば、浸透エンハンサーを、前処置のみとしてか、又は少なくとも1種のAPIと組み合わせて用いて、APIの更なる吸収のために粘膜をプレコンディショニングすることができる。この処置に、ニートの浸透エンハンサーによる別の処置を続けて、前記少なくとも1種のAPIの粘膜への適用に続けることができる。本前処置は、別個の処置(フィルム、ゲル、溶液、スワブなど)としてか、又は1つ以上の層の多層フィルム構造体内の層として適用することができる。同様に、本前処置は、浸透エンハンサー又はAPIの有無にかかわらず第二のドメインの放出の前に粘膜へ溶解及び放出するように設計された単一のフィルムの別個のドメイン内に含まれてもよい。その後、本有効成分は、第2の処置から、単独で又は追加の浸透エンハンサーと組み合わせて送達され得る。互いに対して異なる比率か他の処置の総負荷に対して異なる比率かのいずれかで、追加の浸透エンハンサー及び/又は少なくとも1種のAPI若しくはプロドラッグを送達する第3の処置又はドメインが存在してもよい。これにより、希望通りの薬物動態プロファイルを得ることができる。このように、本製品は、意図された薬物動態プロファイル及び/又は薬力学的効果を達成する所望の吸収量及び/又は吸収速度に繋がる粘膜への適用順序、組成、濃度、又は総負荷を変更できる浸透エンハンサー及びAPIを含む単一又は複数のドメインを有し得る。
【0144】
本フィルム形式は、明確な面が存在しないように、又はフィルムが、縁が境界を共にする(共有された境界(border)又は境界(limit)を有するか又はそこで合する)多層フィルムの少なくとも1つの面を有するように向きを合わせることができる。
【0145】
本医薬組成物は、チュアブル又はゼラチンベースの剤形、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液剤、粉末吸入、又はフィルムであり得る。本組成物は、テクスチャ(textures)、例えば、表面の極微針又は微小突起を含み得る。最近、皮膚透過性の増大におけるミクロンスケール針の使用が、巨大分子を始めとして特に巨大分子に関して、経真皮送達を著しく増加させることが示されている。ほとんどの薬物送達研究は、インビトロにおいて広範な分子及びナノ粒子に対する皮膚透過性を増加させることが示されている中実の極微針を重要視している。インビボ研究は、オリゴヌクレオチドの送達、インスリンによる血糖値の低下、並びにタンパク質ワクチン及びDNAワクチンからの免疫応答の誘導を実証した。そのような研究に関して、ニードルアレイが、皮膚に孔をあけて拡散若しくはイオン導入法による輸送を増大させるために、又は極微針表面コーティングから皮膚へ薬物を放出する薬物担体として使用されている。中空の極微針もまた開発され、インスリンを糖尿病ラットへ微量注入することが示されている。極微針の実際の用途に対処するためには、極微針破砕強度の皮膚挿入力に対する比(すなわち、安全域)が、小さい先端半径及び大きい壁厚を持つ針について最適であることが分かった。ヒト対象の皮膚に挿入された極微針は無痛であると報告された。まとめると、これらの結果は、極微針が、可能性のある広範な用途のために治療的化合物を皮膚へ送達する有望な技術となることを示唆している。マイクロエレクトロニクス産業のツールを使用して、極微針が、広範なサイズ、形状及び材料で作製されている。極微針は、例えば、封入された薬物を、侵襲性を最低限にする様式で送達するポリマー性の微視的な針であり得るが、他の好適な材料を使用することができる。
【0146】
本出願人らは、極微針が、特に特許請求された組成物による、口腔粘膜を通る薬物の送達を増強するために使用することができることを見出した。極微針は、口腔粘膜中にミクロンサイズの孔を作製し、これは該粘膜を越える薬物の送達を増強することができる。中実、中空、又は溶解性の極微針を、金属、ポリマー、ガラス及びセラミックを含むがこれらに限定されない、好適な材料から作製することができる。微細加工プロセスは、フォトリソグラフィー、シリコンエッチング、レーザー切断、金属電気めっき、金属電解研摩及び成型を含み得る。極微針は、組織を前処理するために使用され、且つフィルムの適用前に取り除かれる中実であり得る。本出願に説明される薬物負荷されたポリマーフィルムは、極微針自体のマトリクス材料として使用することができる。これらのフィルムは、それらの表面上に作製された極微針又は微小突起を有することができるが、それらは、粘膜にマイクロチャネルを形成した後に溶解して、それを通り薬物が透過することができる。
【0147】
用語「フィルム」は、長方形、正方形、又は他の所望の形状を含む、任意の形状のフィルム及びシートを含み得る。フィルムは、任意の所望の厚さ及びサイズであり得る。好ましい実施態様において、フィルムは、使用者に投与され、例えば、使用者の口腔へ配置されることができるような厚さ及びサイズを有し得る。フィルムは、約0.0025mm~約0.250mmの比較的薄い厚さを有し得るか、又はフィルムは、約0.250mm~約1.0mmのやや厚めの厚さを有することができる。一部のフィルムに関して、厚さは、更に比較的大きくてもよく、すなわち約1.0mmよりも大きくてもよく、或いは比較的薄くてもよく、すなわち約0.0025mm未満であってもよい。例えば、フィルムは、10mm×10mmから30mm×30mmまでの寸法を有し得る。フィルムは、単層であることができ、又はフィルムは、積層フィルム若しくは多重キャストフィルムを含む、多層であることができる。透過エンハンサー及び医薬活性成分は、単一の層中で一緒にされるか、各々が個別の層に含有されるか、或いはそうでなければ各々が、同じ剤形の離れた領域中に含有されることができる。ある実施態様において、ポリマーマトリクスに含有される医薬活性成分は、マトリクス中に分散され得る。ある実施態様において、ポリマーマトリクス中に含有される透過エンハンサーは、マトリクス中に分散され得る。
【0148】
口腔溶解性フィルムは、3つの主要クラス:即時溶解性、中等度溶解性及び緩徐溶解性に分類することができる。口腔溶解性フィルムはまた、前記カテゴリーのいずれかの組合せを含むことができる。即時溶解性フィルムは、口内で、1秒超、5秒超、10秒超、20秒超、及び30秒未満を含む、約1秒~約30秒で溶解することができる。中等度溶解性フィルムは、口内で、1分超、5分超、10分超、20分超又は30分未満を含む、約1~約30分間で、溶解することができ、緩徐溶解性フィルムは、口内で30分超かけて溶解することができる。一般的傾向として、即時溶解性フィルムは、低分子量親水性ポリマー(例えば、約1,000~9,000ダルトンの分子量を有するポリマー、又は最大200,000ダルトンの分子量を有するポリマー)を含む(又はからなる)ことができる。対照的に、緩徐溶解性フィルムは一般に、高分子量ポリマー(例えば数百万の分子量を有する)を含む。中等度溶解性フィルムは、即時溶解性フィルムと緩徐溶解性フィルムの間に収まる傾向があり得る。
【0149】
中等度溶解性フィルムであるフィルムを使用することが好ましいこともある。中等度溶解性フィルムは、かなり迅速に溶解することができるが、良好なレベルの粘膜付着も有する。中等度溶解性フィルムはまた、柔軟であり、迅速に湿潤可能であり、且つ典型的には使用者にとって非刺激性である。このような中等度溶解性フィルムは、最も望ましくは約1分~約20分の充分迅速な溶解速度を提供することができる一方で、使用者の口腔内に一旦配置されたならば、フィルムが容易に取り外されないような、許容し得る粘膜付着レベルを提供する。これにより、医薬活性成分の使用者への送達が確実になり得る。
【0150】
医薬組成物は、1種以上の医薬活性成分を含み得る。この医薬活性成分は、単一の医薬成分でも医薬成分の組合せでもあり得る。医薬活性成分は、抗炎症性鎮痛薬、ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒薬、血管収縮剤、止血薬、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼薬、抗ウイルス薬、抗リウマチ薬、高血圧治療薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、抗不安薬、制吐化合物、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はワクチンであり得る。本医薬活性成分は、化合物、薬物の医薬として許容し得る塩、プロドラッグ、誘導体、薬物複合体又は薬物のアナログであり得る。用語「プロドラッグ」とは、体内で代謝されて、生物学的活性薬物を生成させることができる、生物学的に不活性の化合物を指す。例えば、医薬として(pharmaceutaically)活性な成分は、エピネフリンのエステル、例えば、ジピベフリンであり得る。例えば、J. Andersonらの文献「プロドラッグ、ジピベフリンの眼内加水分解の部位、及びその眼内代謝と親化合物、エピネフリンの代謝との比較(Site of ocular hydrolysis of a prodrug, dipivefrin, and a comparison of its ocular metabolism with that of the parent compounds, epinephrine)」、Invest., Ophthalmol. Vis. Sci. July 1980を参照されたい。ある実施態様において、プロドラッグを投与することは、1種以上のアドレナリン受容体を刺激する。ある実施態様において、プロドラッグを投与することは、エピネフリンに対して、α1アドレナリン受容体を活性化しない可能性がある。ある実施態様において、医薬として活性な形態のプロドラッグは60分未満のTmaxを有する。ある実施態様において、プロドラッグは30分未満のTmaxを有する。ある実施態様において、プロドラッグは15分未満のTmaxを有する。
【0151】
一部の実施態様において、2種以上の医薬活性成分がフィルムに含まれ得る。この医薬活性成分は、ACE阻害剤、狭心症治療薬、抗-不整脈薬、抗-喘息薬、抗-コレステロール血症薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗けいれん薬、抗欝薬、糖尿病治療薬、下痢止め調製品、解毒薬、抗-ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗炎症薬、抗-脂質薬、抗躁薬、悪心治療薬、卒中防止薬、抗-甲状腺調製品、アンフェタミン、抗-腫瘍薬、抗ウイルス薬、座瘡治療薬、アルカロイド、アミノ酸調製品、鎮咳薬、抗-尿酸血症薬、抗-ウイルス薬、同化作用調製品、全身性及び非全身性感染症治療薬、抗-新生物形成薬、パーキンソン治療薬、抗-リウマチ薬、食欲増進薬、血液修飾因子、骨代謝調節因子、心臓血管系作用薬、中枢神経刺激薬、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去剤、栄養補助食品、ドパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症管理薬、酵素、勃起障害治療、不妊治療薬、胃腸薬、ホメオパシーレメディ、ホルモン、高カルシウム血症及び低カルシウム血症管理薬、免疫調節物質、免疫抑制薬、片頭痛調製品、酔い止め薬、筋弛緩薬、肥満症管理薬、骨粗鬆症用調製品、子宮収縮薬、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、プロスタグランジン、精神治療薬、呼吸器系薬剤、鎮静薬、禁煙補助薬、交感神経遮断薬、振戦治療調製品、尿道系薬剤、血管拡張薬、緩下薬、制酸薬、イオン交換樹脂、下熱薬、食欲抑制剤、去痰薬、抗-不安薬、抗-潰瘍薬、抗炎症性物質、冠動脈拡張剤、脳血管拡張薬、末梢血管拡張薬、向精神薬、刺激薬、高血圧治療薬、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗生物質、トランキライザー、抗精神病薬、抗-腫瘍薬、抗凝固薬、抗血栓薬、催眠薬、制吐薬、抗-悪心薬、抗けいれん薬、神経筋作用薬、血糖上昇剤及び降下剤、甲状腺及び抗-甲状腺調製品、利尿薬、抗痙攣薬、子宮弛緩剤、抗-肥満薬、赤血球形成薬、抗-喘息薬、鎮咳剤、粘液溶解薬、DNA及び遺伝子改変薬、診断薬、造影剤、色素、又はトレーサー、及びそれらの組合せであり得る。
【0152】
例えば、本医薬活性成分は、ブプレノルフィン、ナロキソン、アセトアミノフェン、リルゾール、クロバザム、リザトリプタン、プロポフォール、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマク、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、チアラミド塩酸塩、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニド、エダラボン、ルラシドン、エソメプラゾール、ルマテペロン、ナルデメジン、ドキシラミン、ピリドキシン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、塩酸トリペレナミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジン、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p-ブチルアミノ安息香酸2-(ジエチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニン、ジクロニン塩酸塩、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウム、オイゲノール、トリメチルアンモニウムブロミド、ナファゾリン硝酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸オキシメタゾリン、フェニレフリン塩酸塩、トラマゾリン塩酸塩、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロムスルホン酸(sulfanate)ナトリウム、ルチン、ヘスペリジン、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン、スルファメチゾール、ニトロフラゾン、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロルジン(cefalordin)、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、サイクロセリン、サリチル酸、ポドフィラム樹脂、ポドリフォックス(podolifox)、カンタリジン、クロロ酢酸、硝酸銀、プロテアーゼ阻害剤、チマジン(thymadine)キナーゼ阻害剤、糖又は糖タンパク質合成阻害剤、構造タンパク質合成阻害剤、付着及び吸着阻害剤、並びにヌクレオシドアナログ、例えばアシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、及びガンシクロビルなど、ヘパリン、インスリン、LHRH、TRH、インターフェロン、オリゴヌクリド(oligonuclides)、カルシトニン、オクトレオチド、オメプラゾン、フルオキセチン、エチニルエストラジオール、アミオジピン(amiodipine)、パロキセチン、エナラプリル、リシノプリル、ロイプロリド、プレバスタチン(prevastatin)、ロバスタチン、ノルエチンドロン、リスペリドン、オランザピン、アルブテロール、ヒドロクロロチアジド、プソイドエフェドリン、ワルファリン、テラゾシン、シサプリド、イプラトロピウム、バスプリオン(busprione)、メチルフェニデート、レボチロキシン、ゾルピデム、レボノルゲストレル、グリブリド、ベナゼプリル、メドロキシプロゲステロン、クロナゼパム、オンダンセトロン、ロサルタン、キナプリル、ニトログリセリン、ミダゾラムベルセド、セチリジン、ドキサゾシン、グリピジド、B型肝炎ワクチン、サルメテロール、スマトリプタン、トリアムシノロンアセトニド、ゴセレリン、ベクロメタゾン、グラニステロン(granisteron)、デソゲストレル、アルプラゾラム、エストラジオール、ニコチン、インターフェロンβ1A、クロモリン、ホシノプリル、ジゴキシン、フルチカゾン、ビソプロロール、カルシトリル、カプトプリル、ブトルファノール、クロニジン、プレマリン、テストステロン、スマトリプタン、クロトリマゾール、ビサコジル、デキストロメトルファン、ニトログリセリン、ナファレリン、ジノプロストン、ニコチン、ビサコジル、ゴセレリン、及びグラニセトロンであり得る。ある実施態様において、本医薬活性成分は、エピネフリン、エピネフリンのプロドラッグ、ベンゾジアゼピン、例えば、ジアゼパム又はロラゼパム又はアルプラゾラムである。
【0153】
(エピネフリン/ジピベフリンの例)
一例において、エピネフリン又はその塩若しくはエステル(ジピベフリンなど)を含有する組成物は、例えばEpiPen(登録商標)を使用する注射により投与されたエピネフリンの生体送達(biodelivery)プロファイルに類似した生体送達プロファイルを有し得る。エピネフリン又はそのプロドラッグは、用量当たり約0.01mg~約100mgの量で、例えば、0.1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mg用量で存在し得て、これは0.1mg超、5mg超、20mg超、30mg超、40mg超、50mg超、60mg超、70mg超、80mg超、90mg超、又は100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満又は5mg未満、或いはそれらの任意の組合せを含む。別の例において、ジアゼパムを含有する組成物は、ジアゼパム錠剤又はゲル剤の生体送達プロファイルに類似した、又はより良好な生体送達プロファイルを有し得る。
【0154】
ジピベフリンは、用量あたり約0.5mg~約100mgの量で、例えば、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mg用量で存在し得て、これは1mg超、5mg超、20mg超、30mg超、40mg超、50mg超、60mg超、70mg超、80mg超、90mg超、又は100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満、又は5mg未満、或いはそれらの任意の組合せを含む。
【0155】
別の例において、組成物(例えば、エピネフリンを含む)は、(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH制御剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(f)繊毛抑制剤;(g)下記から選択される膜浸透増大剤:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、若しくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)NOドナー化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び(xi)(i)~(x)に記載の膜浸透増大剤の任意の組合せ;(h)上皮結合生理機能の調節剤;(i)血管拡張剤;(j)選択的輸送促進剤;又は(k)化合物が共に効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増大された粘膜送達のための化合物の安定化をもたらす、安定化送達ビヒクル、キャリア、粘膜付着剤、担体又は複合体形成種から選択される粘膜送達増強剤と組み合わせて、親水性糖にα連結により結合した疎水性アルキル基を有する好適な非毒性の非イオン性アルキルグリコシドを有することができ、ここで、経粘膜送達増強剤を有する化合物の製剤が、対象の血漿中の化合物の生物学的利用能の増大をもたらす。この製剤は、エピネフリンについての他の例におけるものとほぼ同じ医薬品有効成分(API):エンハンサー比を含み得る。
【0156】
ジピベフリンなどのプロドラッグとしてのエピネフリンを投与することは特定の利点を与える。一例としては、ジピベフリンは親油性であり、したがって粘膜を通る、より高い透過を有する。それは、より高いタンパク質結合により、より長い血漿半減期も有する。それは、維持された血液レベルが可能であり、α受容体と相互作用せず、したがって望まれない又は有害な血管収縮を最低限にするか又は排除する。
【化2】
【0157】
ジピベフリンは、エピネフリンに類似な方法で舌下フィルムとして提供できる。
【0158】
フィルム及び/又はその成分は、水溶性、水膨潤性又は水不溶性であり得る。用語「水溶性」とは、水を含むがこれに限定されない水性溶媒中に少なくとも部分的に溶解可能である物質を指し得る。用語「水溶性」は、物質が水性溶媒中に100%溶解可能であることを必ずしも意味しなくてよい。用語「水不溶性」とは、水を含むがこれに限定されない水性溶媒中に溶解しない物質を指す。溶媒は、水を含み得るか、或いは他の溶媒(好ましくは極性溶媒)をそれらだけで又は水と組合せて含み得る。本組成物は、ポリマーマトリクスを含み得る。任意の所望のポリマーマトリクスは、経口で溶解可能又は侵食可能であるならば、使用され得る。この用量は、容易に除去されないために充分な生体付着性を有さなければならず、且つ投与される場合にゲル様構造を形成しなければならない。これらは、口腔において中等度に溶解可能であり、且つ特に医薬活性成分の送達に適しているが、即時放出型、遅延放出型、制御放出型及び持続放出型の組成物の全てもまた、企図された様々な実施態様の中にある。
【0159】
(分岐鎖ポリマー)
本医薬組成物フィルムは、様々な構造上のアーキテクチャを持つ高度に分岐した巨大分子を含み得る樹状ポリマーを含み得る。樹状ポリマーは、デンドリマー、樹状化されたポリマー(樹状グラフト化されたポリマー)、線状樹状ハイブリッド、マルチアーム星型ポリマー、又は高分岐ポリマーを含み得る。
【0160】
高分岐ポリマーは、それらの構造において不完全性を有する、高度に分岐したポリマーである。しかし、これらは単工程反応において合成することができ、それは他の樹状構造に勝る利点であり、従って大量の利用に適している。それらの球状構造は別として、これらのポリマーの特性は、豊富な官能基、分子内空洞、低い粘性及び高い溶解度である。樹状ポリマーは、いくつかの薬物送達用途において使用される。例えば、引用により本明細書中に組み込まれている、「薬物担体としてのデンドリマー:薬物投与の異なる経路での適用(Dendrimers as Drug Carriers:Applications in Different Routes of Drug Administration)」、J Pharm Sci, VOL. 97, 2008, 123-143を参照されたい。
【0161】
樹状ポリマーは、薬物を封入し得る内部空洞を有し得る。高密度ポリマー鎖により引き起こされる立体障害は、薬物の結晶化を防止する可能性がある。従って、分岐したポリマーは、ポリマーマトリクス中に結晶性薬物を製剤化する際に、追加の利点を提供できる。
【0162】
好適な樹状ポリマーの例は、ポリ(エーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー、及び高分岐ポリマー、ポリ(エステル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(チオエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アミノ酸)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アリールアルキレンエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アルキレンイミン)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アミドアミン)ベースのデンドロン、デンドリマー又は高分岐ポリマーを含む。
【0163】
高分岐ポリマーの他の例は、ポリ(アミン)、ポリカーボネート、ポリ(エーテルケトン)、ポリウレタン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリ(エステルアミン)、ポリ(スルホンアミン)、ポリ(ウレタン尿素)及びポリエーテルポリオール、例えばポリグリセロールなどを含む。
【0164】
フィルムは、任意に他の成分を含む、少なくとも1種のポリマーと溶媒の組合せにより製造できる。溶媒は、水、非限定的にエタノール、イソプロパノール、アセトンを含む極性有機溶媒、又はそれらの任意の組合せであり得る。一部の実施態様において、溶媒は、塩化メチレンなどの非極性有機溶媒であってよい。フィルムは、選択された流延法又は堆積法及び制御された乾燥プロセスを利用することにより調製され得る。例えば、フィルムは、湿ったフィルムマトリクスへの熱及び/又は放射線エネルギーの印加により粘弾性構造を形成することを含む、制御された乾燥プロセスを通じて調製され得て、これによりフィルムの内容物の均一性が制御される。制御された乾燥プロセスは、フィルムの上側若しくはフィルムの下側、又は流延若しくは堆積若しくは押出されたフィルムを支持する基材に接触するか、又は乾燥プロセスの間に同時又は異なる時点で2つ以上の表面に接触する、空気のみ、熱のみを含むか、又は熱と空気を一緒に含むことができる。このようなプロセスの一部は、米国特許第8,765,167号及び米国特許第8,652,378号に詳細に説明されており、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。或いは、フィルムは、引用により本明細書中に組み込まれている米国特許公開第2005/0037055A1号に記載されているように押し出されてよい。
【0165】
フィルムに含まれるポリマーは、水溶性、水膨潤性、水不溶性、又は水溶性、水膨潤性、水不溶性ポリマーのいずれか1種以上の組合せであってよい。ポリマーは、セルロース、セルロース誘導体又はガムを含んでよい。有用な水溶性ポリマーの具体例は、ポリエチレンオキシド、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガンカントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。有用な水不溶性ポリマーの具体例は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。より高用量の場合、より低用量と比べて、高レベルの粘性を提供するポリマーを組み入れることが望ましいこともある。
【0166】
本明細書で使用される語句「水溶性ポリマー」及びその変形は、少なくとも部分的に水に溶解し、望ましくは完全に又は大部分は水に溶解するか、或いは水を吸収するポリマーを指す。水を吸収するポリマーは、水膨潤性ポリマーであると称されることが多い。本発明に有用な物質は、室温及び他の温度で、例えば室温を超える温度で、水溶性又は水膨潤性であり得る。更に、これらの材料は、大気圧より低い圧力で、水溶性又は水膨潤性であり得る。一部の実施態様において、このような水溶性ポリマーから形成されたフィルムは、体液との接触時に溶解可能であるのに充分に水溶性であり得る。
【0167】
フィルムへ組み入れるのに有用な他のポリマーは、生分解性ポリマー、コポリマー、ブロックポリマー又はそれらの組合せを含む。用語「生分解性」が、物理的に粉々に壊れる物質(すなわち生体侵食性物質)とは対照的に、化学的に分解する物質を含むものとすることが理解される。フィルムに組み入れられたポリマーはまた、生分解性又は生体侵食性の物質の組合せを含むこともできる。前記基準に合致する公知の有用なポリマー又はポリマークラスには:ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ酸無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、並びにそれらの混合物及びコポリマーが含まれる。追加の有用なポリマーは、L-及びD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸とセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンと(ポリ(乳酸))のコポリマー、α-アミノ酸のコポリマー、α-アミノ酸とカプロン酸のコポリマー、α-ベンジルグルタメートとポリエチレングリコールのコポリマー、コハク酸エステルとポリ(グリコール)のコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ-アルカノエート又はそれらの混合物を含む。ポリマーマトリクスは、1、2、3、4種又はそれよりも多い成分を含むことができる。
【0168】
様々な異なるポリマーを使用してよいが、フィルムに粘膜付着性の特性、並びに所望の溶解及び/又は崩壊速度を提供するポリマーを選択することが望ましい。特に、粘膜組織へのフィルムの接触を維持することが望ましい時間は、組成物に含有される医薬活性成分の種類によって決まる。一部の医薬活性成分は、粘膜組織を通る送達には数分しか必要としないことがあるのに対し、他の医薬活性成分は、最長で数時間、更にはより長い時間を必要とし得る。従って一部の実施態様において、前述の1種以上の水溶性ポリマーが、フィルムを形成するために使用され得る。しかし他の実施態様において、水溶性ポリマーと、先に提供されたような水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性であるポリマーの組合せを使用することが望ましいことがある。水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性である1種以上のポリマーを含めることは、水溶性ポリマーのみで形成されたフィルムよりも、より遅い溶解速度又は崩壊速度を持つフィルムを提供し得る。従って、このフィルムは、最長で数時間などのより長い時間、粘膜組織に付着し得るが、それはある種の医薬活性成分の送達にとって望ましくなり得る。
【0169】
(フィルム厚さ及びサイズ)
望ましくは、医薬フィルムの個別のフィルム用量は、好適な厚さ且つ小さいサイズを有することができ、これは、約0.0625~3インチ(1.5875mm~76.2mm)×約0.0625~3インチの間である。フィルムサイズはまた、少なくとも一つの態様において、0.0625インチ超、0.5インチ(12.7mm)超、1インチ(25.4mm)超、2インチ(50.8mm)超、約3インチ(76.2mm)及び3インチ超、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未満、0.0625インチ未満であり得るか、或いは別の態様において、0.0625インチ超、0.5インチ超、1インチ超、2インチ超、又は3インチ超、約3インチ、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未満、0.0625インチ未満であり得る。厚さ、長さ及び幅を含むアスペクト比は、ポリマーマトリクスの化学特性及び物理特性、医薬品有効成分、投薬量、エンハンサー、及び関与する他の添加剤、並びに望ましい分配ユニットの寸法に基づいて、当業者により最適化され得る。このフィルム用量は、使用者の頬側口腔又は舌下領域内に配置された場合に、良好な付着性を有さなければならない。更に、このフィルム用量は、穏やかな速度で分散し且つ溶解しなければならず、最も望ましくは、約1分以内に分散し、且つ約3分以内に溶解する。
【実施例】
【0170】
(実施例)
ジイソブチリルL-エピネフリン(DIE)塩酸塩を使用する一連のフィルム製剤を、賦形剤及び処理条件を変更して製造した。製剤詳細を表1Aに与える。臨床試験に使用した製剤を表1Bに示す。製剤の安定性を、3日間60℃熱ストレス試験を使用して評価した。各賦形剤変更は、総分解物の著しい減少か、特定の不純物の減少かのいずれかをもたらした。安定性データを表2に与える。
表 1A
種々のフィルム製剤の製剤組成
【表1】
表 1B - 臨床試験に使用された製剤
【表2】
表 2 - 賦形剤及び処理溶媒による漸進的な安定性改善
【表3】
表 3 -フィルム崩壊時間に対するNaClの影響
【表4】
【0171】
(酸性化剤としての塩化水素酸の安定性に対する効果)
クエン酸は、フィルム製剤(製剤33-1-1)に使用される通常の酸性化剤である。塩化水素酸のような無機酸を酸性化剤として使用して(製剤45-1-3)、結果は、HClがより良好な製品安定性を提供するので、HClがより良好な酸性化剤であることを示した。HClの使用により、加水分解分解物並びに他の未知分解物が減少し、その両方は3日間熱ストレス試験の後でアッセイ損失の減少を導いた。リン酸及びフッ化水素酸のような他の酸は、HClより有効性が低いことが分かった。
【0172】
(安定性に対するpHの影響)
図6を参照すると、pHをHClにより変えて一連の製剤を製造し、60℃での3日間熱ストレス試験を使用して安定性を評価した。データに基づくと、2.5~3.5のpH範囲が安定性に最適であることが分かる。
【0173】
(コーティング混合物を製造するための処理溶媒としての水性有機溶媒の影響)
コーティング混合物を製造するために水性エタノール性溶液を使用して製剤を製造した。製造したフィルムを、T0で、及び熱ストレス試験の後に安定性に関して比較した。結果は、有機溶媒を使用した場合、両条件で全体的な未知分解物及びアッセイ損失が更に減少したことを示した。エタノールと水の50:50混合物が溶媒として最適であることが分かり、エタノール量を減少させると不均一なフィルムになった。
【0174】
(フィルム安定性に対する乾燥剤の影響)
エステルプロドラッグは一般的に加水分解を受けやすく、保存後のアッセイの損失は、フィルム中の残留水分の存在に起因すると考えられた。自由水の存在を最低限にするために、二酸化ケイ素などの乾燥剤を使用した。Cab-O-Sil(登録商標)と比べて、製剤55-1-1に使用したSyloid 244FPが、乾燥剤を有さない製剤45-1-1と比べて、加水分解分解を減少させることが分かった。製剤中のSyloidは、粘着性が減少したフィルムももたらした。
【0175】
(フィルム安定性に対する酸化防止剤の影響)
フィルム中の未知分解物のいくつかが薬物の酸化反応から生じたと考えた。これに対処するために、コーヒー酸、L-システイン、EDTAのような数種の通常の酸化防止剤を試験して、熱ストレス試験の後にEDTAが最も有効なものであることが分かった。EDTAのようなキレート化剤の使用は、加水分解による分解物並びに他の未知分解物の減少をもたらし、その両方は3日間熱ストレス試験の後にアッセイ損失の減少をもたらした。
【0176】
(安定性に対するフィルム形成ポリマーの影響)
HPMC及びPEOのようなフィルム形成ポリマーと典型的に関連する安定性の問題を減少させるために、PVPを、アルファ化されたヒドロキシプロピルエンドウ豆デンプン(例えば、Lycoat(登録商標)RS 780)と共に利用した。フィルム形成ポリマーにおけるこの変更は、フィルム崩壊時間の減少及びアッセイ損失の減少につながる未知不純物の減少をもたらした。
【0177】
(安定性に対する樹脂の影響)
フィルム(例えば、製剤98-1-1)中のAmberlite(登録商標)IRP64のようなアニオン交換樹脂の使用は、加水分解及び未知分解物の減少か排除かのいずれかをもたらし、それは熱ストレス試験の後のアッセイ損失の減少につながった。アニオン交換樹脂は、薬物と反応するアルカリ又はアルカリ土類金属のような反応性種の除去剤として作用している可能性がある。
【0178】
(フィルム崩壊に対する塩の影響)
塩化ナトリウム(NaCl)のフィルム製剤への組込みが、小体積崩壊により試験してフィルム崩壊時間を増加させることが分かった。データを表3にまとめる。エクスビボ頬側透過データから証明される通り、より速い崩壊フィルムが薬物透過を改善することが分かった。データを
図7にまとめる。NaClの使用は、フィルムからの薬物のより速い放出及び透過をもたらし、早期の開始をもたらした。
(実施例1-ジピベフリン舌下フィルム(DSF)製剤)
表 1 ‐ DSF 製剤実施例
【表5】
(実施例2-ジイソブチリルエピネフリン舌下フィルム(DSF)製剤)
表 2 ‐ DESF 製剤実施例
【表6】
【0179】
(実施例3-pH調節剤選択)
この実施例において、DESFプラットフォームはクエン酸緩衝液系を利用して、3~4の目標pH範囲を生み出した。製剤の安定性プロファイルを改善するために、酸性化剤としてのHClの利用を検討した。酸性化剤としてのHClの影響を以下の系の間で比較した:
1.33-1-1:PVP/HMPC/PEO系、クエン酸緩衝液系により酸性化、水性溶媒
2.45-1-3:PVP/HMPC/PEO系、HClにより酸性化、水性溶媒
【0180】
HClを酸性化剤として、以下の改善が33-1-1と比較して認められた:
・加水分解分解物(例えば、エピネフリン、モノイソブチリルエピネフリン(MIE))の生成の減少
・全体的未知分解物の減少
・アッセイ損失の減少
【0181】
pHに関するアッセイ損失の影響を、2.5~6.5のpH範囲で評価して調査した。利用しているpH2.5~3.5の操作可能なpH範囲を、製剤安定性に対する影響を最低限にするために選択できたことを結論付けた。
【0182】
(実施例4‐SVD)
小体積崩壊(SVD)を適用して、単一の面及び縁からの用量の溶媒和を強調すること(highlighting)を試験した。この場合、SVDは、ペトリ皿内の水性媒体体積の表面に適用された用量を利用した。
・SVDを112-1-5ジピベフリン舌下フィルムに使用した。
・平均単位用量重量:197mg。
・主要組成情報:14.55%ジピベフリン、10.28%オイゲノール
・フィルム膨潤がおよそ2分で観察された
・膨潤は、単位用量の元の領域を越えて著しく拡大しなかった。
・フィルム破裂は、平均で、12分4秒(標準偏差:48.1秒)で始まった。
・フィルム全体の崩壊はおよそ17分で完了した。
【0183】
(実施例5-製剤の関数としてのフィルム崩壊プロファイル)
図1を参照して、フィルム崩壊プロファイルを製剤の関数として示す。
表 3 - DSF及びDESF崩壊 プロファイル
【表7】
【0184】
この系において、DSF製剤はPVP/HMPC/PEOポリマー系、12.5%ジピベフリンHClを使用した。DESF製剤はPVP/Lycoat(登録商標)RS 780ポリマー系、12.5-30%ジイソブチリルエピネフリンHClを使用した。部分浸漬崩壊(PID)、USP崩壊(ARDTM-134)、及び小体積崩壊(SVD)方法を利用して崩壊を測定した。SVDは、DSFプラットフォームとDESFプラットフォームの間で崩壊時間の有意差を示した。
【0185】
(実施例6-薬物放出試験)
薬物放出を試験するために、DSF及びDESF系を以下の製剤により類似に設計した:
〇DSF:PVP/HMPC/PEOポリマー系、12.5%ジピベフリンHCl
〇DESF:PVP/Lycoat(登録商標)RS 780ポリマー系、12.5%ジイソブチリルエピネフリンHCl
【0186】
ポリマー/崩壊剤賦形剤手法を、より薄い被覆重量で利用すると、DESFプラットフォームは、意外にも、改善されたより良好な薬物放出プロファイルを示した。全体の用量のうち、ジピベフリンかジイソブチリルエピネフリンかのいずれかの以下の量がフィルムマトリクスから放出された:
〇DSF:5分で0.5%、2時間で21%
〇DESF:5分で6%、2時間で42%
【0187】
図2を参照すると、両フィルムは二相の薬物放出プロファイルを示し、0からおよそ40分で迅速な薬物放出があり、透過パーセントは増加し続けるが、約40分後から120分まで徐々に先細りになった。
【0188】
(実施例7-組織透過に対する崩壊時間の影響)
図5A及び5Bを参照すると、組織透過に対する崩壊時間の影響が示されている。
図5Aは、SVD方法を使用して実施した。
図5Bは、PID方法を使用して実施した。両方法で、透過したAPIのパーセンテージの増加が崩壊時間の減少を示すフィルムと相関した。
【0189】
図8を参照して、ベースライン補正平均エピネフリン濃度を、製剤1、2、3及び4中のプロドラッグ(12mg)の投与後に、経時的に測定した。
【0190】
図9を参照して、中央値エピネフリンTmaxを測定した。結果を示すが、バーは最小及び最大を示す。
・Tmax(又は最大濃度到達時間)はレスキュー薬にとって重大なパラメーターである。
・12mgでの製剤1、2、3及び4で観察された最高の観察されたTmax値は、オートインジェクターの最高のTmax値より低かった。
・製剤1、2、3及び4の中央値Tmax値は、オートインジェクターの公知の値と同等であった。
【0191】
(実施例8-ポリマーと薬物の負荷比)
以下の製剤を使用して、有効なポリマーと薬物の負荷比を試験した。オイゲノールを透過エンハンサーとして使用し、NaFをエステラーゼ阻害剤として使用した。実験室規模の結果を重み正規化した。加水分解生成物と不純物を別々に測定した。
表 4 ‐ ポリマーと薬物の負荷比
【表8】
・加水分解生成物(加水分解方法)
・モノイソブトリリル(Monoisobutryryl)エピネフリン
・エピネフリン:加速条件下で観測された(40/75)
・分解物(不純物方法)
・RRT 1.81:恐らくオイゲノール関連。
・RRT 1.91:恐らくオイゲノール関連。
他の詳細不明なもの:25℃で6か月後に定量限界近く又はそれ未満のままである。
【0192】
(実施例9-8つの安定性試験)
図3A及び3Bを参照して、これらの試験を下記の通り実施して、ジイソブチリルエピネフリン舌下フィルム(DESF)中の加水分解によるジイソブチリルエピネフリンの関連物質をHPLCにより測定した。表1Bに示す4種の製剤を使用した。
要求される材料及び装置
1.1 エピネフリン標準試料
1.2 精製水又は同等物
1.3 アセトニトリル(ACN)、HPLCグレード又は同等品
1.4 ギ酸アンモニウム(Am F)、ACSグレード又は同等品
1.5 ギ酸(FA)、ACSグレード又は同等品
1.6 リン酸(H
3PO
4)、ACSグレード又は同等品
1.7 最も近い0.01mgまで正確に秤量することが可能な化学天秤
1.8 UV/PDA検出器を有するHPLC
1.9 ACE HILIC-N 1.7μm、3×100mm、p/n HILN-17-1003U HPLCカラム
1.10 Waters Empower Data Acquisition System又は同等品
1.11 リストアクションシェイカー
1.12 超音波浴
1.13 ガラスピペット、クラス「A」
1.14 メスフラスコ、クラス「A」
1.15 プラスチックシリンジ
1.16 0.45μmナイロンシリンジフィルター
洗浄溶液を下記の通り調製した:
1.17 移動相A-200mMギ酸アンモニウム中0.1%ギ酸:
12.6gのギ酸アンモニウムを正確に秤量し、クラス「A」ガラス器具で測定した1Lの精製水に溶解させる。1.0mLのFAを緩衝剤溶液に移して、よく混合する。使用前に脱気する。
1.18 移動相B-アセトニトリル中0.1%ギ酸:
1.0mLのFAを、クラス「A」ガラス器具で測定した1LのACNに移して、よく混合する。使用前に脱気する。
1.19 希釈液A-50/50水/アセトニトリル中の0.05% H
3PO
4:
1000mLの精製水を1000mLのACNと合わせる。1.0mLのH
3PO
4を移して、よく混合する。使用前に、溶液を室温に平衡化する。
1.20 希釈液B/カラム洗浄液-2-10/90水/アセトニトリル:
100mLの精製水を900mLのACNと合わせる。使用前に、溶液を室温に平衡化する。
1.21 ニードル/カラム洗浄液-1-50/50水/ACN:
500mLの精製水を500mLのACNと合わせて、よく混合する。
1.22 シール洗浄液-95/5水/ACN:
950mLの精製水を50mLのACNと合わせて、よく混合する。
標準溶液を下記の通り調製した:
1.23 エピネフリンストック標準溶液(120μg/mL)
12mg(±10%)のエピネフリン標準試料を、100.0mLメスフラスコに正確に量り入れる。およそ50mLの希釈液Aを加える。5分間又は完全に溶解するまで超音波処理する。希釈液Aにより所定の体積まで希釈して、よく混合する。
1.24 作業標準溶液0.5%(1.2μg/mLエピネフリン)
1.0mLのエピネフリンストック標準溶液をピペットで100mLメスフラスコに入れ、希釈液Bにより所定の体積にして、よく混合する。
1.25 エピネフリンLOQ溶液0.05%(0.12μg/mLエピネフリン)
2.0mLの作業標準溶液を20mLメスフラスコにピペットで入れる。希釈液Bにより所定の体積に希釈して、よく混合する。分析の日に新たに調製する。
試料の調製
1.26 不純物ストック試料溶液
フィルム試料を秤量し、以下の表に明示されたメスフラスコに移す。およそ50%の体積の希釈液Aを加えて、30分間機械的に振盪して溶解させる。希釈液Aにより所定の体積に希釈して、よく混合する。
表 5 -DESFストック試料溶液調製スキーム
【表9】
1.27 不純物作業試料溶液
10.0mLの不純物試料ストック溶液を25mLメスフラスコにピペットで入れ、アセトニトリルにより所定の体積にして、よく混合する。溶液を0.45μmナイロンシリンジフィルターにより濾過してHPLCバイアルに入れ、少なくとも1mLの濾液を廃棄する。
1.28 プラセボストック溶液
1つのプラセボフィルムストリップを20mLメスフラスコに移す。希釈液Aを体積の約半分まで加えて、30分間機械的に振盪して溶解させる。希釈液Aにより所定の体積に希釈して、よく混合する。
1.29 プラセボ作業試料溶液
5.0mLのプラセボストック溶液を25mLメスフラスコにピペットで入れ、アセトニトリルにより所定の体積にして、よく混合する。溶液を0.45μmナイロンシリンジフィルターにより濾過してHPLCバイアルに入れ、少なくとも1mLの濾液を廃棄する。
1.30 希釈液ブランク
試料及び作業標準調製に使用した希釈液Bのアリコートを分析のためにHPLCバイアルに移す。
2 計算
2.1 標準濃度(μg/mL):
【数1】
式中:
P=標準試料純度
Std Wt=エピネフリン標準試料の重量
D
S=標準希釈
2.2 関連物質の定量化:
【数2】
式中:
A
U=試料中のジイソブチリルエピネフリン関連物質ピーク面積
A
S=全てのWSA注入中の平均エピネフリンピーク面積
D
U=試料希釈
N=試料調製物中のストリップの数
LC=mg/ストリップで表したジイソブチリルエピネフリンフィルムのラベルクレーム
RRF=相対応答係数
100 %=転化パーセンテージ
報告
2.3 そのままの状態で0.05%以上の個別の加水分解不純物結果を報告する
2.3.1 LOD=0.03%(0.07μg/mL)
2.3.2 LOQ=0.05%(0.12μg/mL)。
2.4 0.05%未満の個別の加水分解不純物結果を「<0.05%」と報告する。
2.5 0.05%未満の個別の不純物結果を総不純物計算から除外する。
2.6 小数点以下第2位までの個別の加水分解不純物結果(%LC)を報告する。
2.7 既知の不純物のRRT及びRRFを表4に列記する。
表 6: 賦形剤及び不純物ピークのRRT及びRRF
【表10】
1 Empower“Relative Response Factor”フィールドに1/RRFを使用;参照:ADR-0121-01
【0193】
安定性を6か月後に測定した。データ傾向は、~95%アッセイが24か月で残っていることを予測する。
【0194】
25℃で6か月後はT=0から著しい変化を示さない(<5%)。区別は40℃で観察された。著しい(>5%)変化が、40℃6か月で形態1及び形態3に観察された。
【0195】
安定性の点から、処方4は最も安定であり、処方2は2位であり、処方3は3位であり、処方1は4位であった。
表 7: アッセイ変化率
【表11】
【0196】
(臨床試験)
安全性、忍容性、PK、及びPDプロファイルを評価するために、製剤1、2、3及び4により第1相のランダム化された単回漸増投与(SAD)試験を実施した。試験を、Health Canadaにより認可された臨床試験開始申請に準じてカナダで実施した。治験に参加する対象は、漸増方式で、舌下に投与される投与量の製剤1、2、3及び4を受け取った。4種の製剤組成を変えて、薬物負荷を含む重大な吸収係数並びに吸収、安定性及びプロドラッグの転化に影響するように設計された本発明の賦形剤の使用を評価した。目標製剤(「製剤2番」)を試験のリード候補として設計した。
試験の最重要点
・既存のオートインジェクターとの比較可能性に関する重大な臨床的尺度(C
max、T
max、及び曲線下面積、すなわちAUC)は、製剤1、2(目標)、及び4で予測された範囲内であった。
・複数の製剤のT
maxは、オートインジェクターの発表されたデータと比べてより狭い範囲に入った。
・観察されたPD値は既存のオートインジェクターデータと同等であった
・製剤1、2、3及び4は、全般的に忍容性が良好で、重篤な有害事象がなかった。
表 8: プロドラッグプロファイル
【表12】
1 Dworaczyk D., Hunt A., American Academy of Allergy, Asthma, Immunology(AAAAI)National Conferenceで発表、2020年3月16日。brynpharma.com/media/content/docs/comparative -delivery-poster.pdf;
2 Aquestive Therapeutics, Study 160455、記録済み。
【0197】
この試験は、製剤1、2、3及び4が吸収されて、迅速にエピネフリンに転化され、目標製剤に関して、観察された中央値Tmaxが15分及び観察された幾何平均Cmaxが762pg/mLであることを示した。これは、EpiPen(登録商標)及びAuvi-Q(登録商標)の両方の発表された試験結果と同等である。更に、目標製剤は、より低い投与強度で類似の中央値Tmax値を有した(6mg及び9mg投与量でそれぞれ15分及び17.5分)。試験結果から、Aquestiveは目標製剤の継続した開発を計画している。例えば、Dworaczyk D., Hunt A. American Academy of Allergy, Asthma, Immunology(AAAAI)National Conferenceで発表、2020年3月16日。brynpharma.com/media/content/docs/comparative-delivery-poster.pdf;Aquestive Therapeutics, Study 160455、記録済み;Dworaczyk D., Hunt A.の文献、J Allergy Clin Immunol Pract. 2021;147(2):(2 suppl)AB241 American Academy of Allergy, Asthma and Immunology(AAAAI)National Conferenceで発表;2020年3月16日; 2021年3月2日にアクセスされた;Worm Mらの文献、Clin Transl Allergy. 2020:10:21;Duvauchelle Tらの文献、J Allergy Clin Immunol Pract. 2018;6(4):1257-1263;1 Breuer Cらの文献、Eur J Clin Pharmacol. 2013;69:1303-1310;Edwards ESらの文献、Ann Allergy Asthma Immunol. 2013;111(2):132-137を参照されたい。
【0198】
安全性データは、製剤1、2、3及び4が、全般的に忍容性良好であり、治験内に報告された重篤な有害事象(SAE)、重要な医療事象、又は治療関連の重篤な有害事象がなかったことを示した。少なくとも関連があるかもしれない、治療下で発現した全ての有害事象(TEAE)は、コホート全体で本質的に軽度から中程度であった。
【0199】
測定されたPDマーカーは、心拍数、収縮期血圧、及び拡張期血圧でベースラインから変化する。観察された値は、製剤1、2、3及び4からの同等な影響並びにオートインジェクター治療の後で健康なボランティアにおいてこれらの測定基準に対して期待されているものを示唆した。
【0200】
図10を参照すると、収縮期血圧の平均変化が、製剤1及び2対Epipen(登録商標)で示されている。エピネフリンの投与後に対象が時間と共に収縮期血圧の変化を経験することが一般的に認められている。製剤1及び2は、EpiPen(登録商標)データと比べると、ベースライン収縮期血圧から類似の変化を示す。この薬力学「マーカー」は、製剤1及び2がそれぞれ投与後に意図された通りに作用していることを二次的に知らせている。
【0201】
表 9: 12 mg投与の後の有害事象
有害事象(AE)を製剤1~4の12mg用量投与後に測定した。ほとんどのAEは軽い重症度のものであり、重篤な有害事象はなかった。
【表13】
【0202】
(実施例9:加水分解試験における薬物負荷の影響)
表1B中の製剤を参照すると、薬物負荷及びフッ化ナトリウムに関する以下の試験は加水分解に対する最強の影響を有するようである。加水分解生成物の増大の速度は製剤3及び1において最大である;製剤3はフッ化ナトリウムを省いており、製剤1はフッ化ナトリウムを含有するが、より低い薬物負荷を有する。これらの態様は、フッ化ナトリウムが存在しないことと、より低い薬物負荷の両方が加水分解生成物の増加に寄与することを実証する。
【0203】
(加水分解生成物)
データによると、25℃で、傾向は、製剤1において24か月で~4%及び製剤2/形態4で2~3%を予測する。
表 10: %LC/月
【表14】
【0204】
類似の結果が3か月の間臨床フィルムで観察された。
【0205】
(エピネフリン)
25℃で、6か月で、定量限界(0.05%)未満である。
【0206】
40℃で、6か月で、形態1において0.5%である。
【0207】
(実施例10)
図4A及び4Bを参照すると、データは、両プラットフォームフィルムからのジピベフリンの改善された薬物放出を示す。
【0208】
(実施例11)
DESFの製造のために使用した賦形剤及びプロセスを使用して、ジピベフリンフィルム製剤を製造した。DESFプラットフォームにより達成された安定性を
図8に示す。これは(The)、加速温度でも優れた安定性が達成されることを示す。データを以下の表にまとめる。加水分解生成物の1つはモノピバロイルエピネフリン(MPE)である。
表 11: DESFプラットフォーム製剤(138-1-1)におけるジピベフリンの安定性
【表15】
(実施例12)
分解は、例えば、主としてエステル交換及び加水分解を含むいくつかの経路により起こり得る。安定剤は、組成物を、分解経路又は示されるこれらの経路の組合せから保護できる。アーレニウス系のモデルが、DESF不純物の分解速度を予測するために開発された。アーレニウスの式を使用して、反応速度と温度の関係を研究した。モデルは、モノイソブトリリルエピネフリン(PD-15)分解物レベルを正確に予測し、ICH安定性条件下で生成されたリアルタイムデータと良好に相関した。予測された分解物レベルを、40℃で6か月、30℃で12か月、及び25℃で25か月保存の最後に%LCとして測定した。予測された貯蔵寿命を、25℃で3~5年保存の間分析した。全分解物は、各保存期間の最後で仕様限界内のままであった。第1の分解物PD-15は、25℃保存で、4年(3.1~5.2年の範囲)で不合格となると予期される。25℃での分解速度を%LC/日として提示する。
表 12: 不純物分解速度
【表16】
図11を参照すると、以下の表13に反映されている通り、アーレニウス式は、反応速度をモノイソブトリリルエピネフリン加水分解生成物の温度の関数として予測した。計算された反応速度の自然対数を温度の逆数に対してプロットすると、y-切片ln(A)及び傾き-E
a/Rを有する直線が生じる。この式において、A及びRは定数であり、E
aは反応の活性化エネルギーである。温度を式に入力すると、その温度での反応速度を計算できる。
【数3】
表 13: 温度の関数としてのモノイソブトリリルエピネフリン加水分解反応速度
【表17】
【0209】
他の態様、実施態様、及び特徴は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかだろう。
【国際調査報告】