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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】改善された方法および酵素
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/06 20060101AFI20241029BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20241029BHJP
   C07D 493/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241029BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 9/90 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C12P17/06
C12N15/61
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/31
C07D493/08
A61Q13/00 101
A61K8/49
C11B9/00 G
C12N9/90 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523670
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022079172
(87)【国際公開番号】W WO2023067043
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2115120.4
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2204546.2
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイヒホルン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】スカーデュア,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ウルマン,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
【Fターム(参考)】
4B064AC19
4B064BG09
4B064BG10
4B064CA21
4B064CB28
4B064CC24
4B064CD05
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA17Y
4B065AA57X
4B065AA72
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA51
4C083AC841
4C083AC842
4C083KK02
(57)【要約】
アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログとこれらを含む組成物とを作製する、改善された方法、該方法に使用されるために改善されたスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素、該酵素をコードする核酸構築物およびベクター、ならびに該酵素を発現する宿主細胞。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式(I)
で表される化合物を作製するための方法であって、ここで方法が、式(II)
【化2】

式(II)
で表される化合物を、配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ここでSHC酵素が、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、前記方法。
【請求項2】
式(II)で表される化合物が、C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にある(E,Z-異性体)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)
【化3】

式(I)
で表される化合物を含む混合物を作製するための方法であって、ここで方法が、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物
【化4】

式(II)
【化5】

式(IIa)
を、配列番号1もしくは配列番号43~49の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくは配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有しかつ配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含む、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、前記方法。
【請求項4】
式(I)で表される化合物を含む混合物が、式(Ia)
【化6】

式(Ia)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、で表される化合物をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(Ia)で表される化合物が、式(V)
【化7】

式(V)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、で表される立体配置を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物が、以下のいずれか1つ:
i)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)
ii)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
iii)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)
iv)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
v)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
vi)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
vii)i)~vi)のいずれかの組み合わせ
を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物が、次:
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)、
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)、
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、ならびに;
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(III)
【化8】

式(III)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、で表される化合物が、副産物として作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(IIIa):
【化9】

式(IIIa)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、に示される相対立体配置を有する化合物が、副産物として作製される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(VI)
【化10】

式(VI)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、で表される化合物が、副産物として作製される、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(VIa):
【化11】

式(VIa)
式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される、に示される相対立体配置を有する化合物が、副産物として作製される、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式中Rが、メチルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
SHC酵素が、配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、かつSHC酵素が、配列番号1に対し1~7、好ましくは2~6、より好ましくは3~5アミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SHC酵素が、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、355、483、および539に対応する1以上の位置にて含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
SHC酵素が、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、483、および539に対応する、好ましくは位置2、5、35、166、211、483、および539に対応する1以上の位置にて含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
SHC酵素が、以下:
(xvi) 配列番号1の位置2に対応する位置でのアスパラギン(N)残基;
(xvii) 配列番号1の位置5に対応する位置でのプロリン(P)残基;
(xviii) 配列番号1の位置35に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(xix) 配列番号1の位置116に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(xx) 配列番号1の位置166に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(xxi) 配列番号1の位置211に対応する位置でのバリン(V)残基;
(xxii) 配列番号1の位置212に対応する位置でのアルギニン(R)残基;
(xxiii) 配列番号1の位置317に対応する位置でのメチオニン(M)残基;
(xxiv) 配列番号1の位置355に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(xxv) 配列番号1の位置382に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(xxvi) 配列番号1の位置399に対応する位置でのバリン(V)残基;
(xxvii) 配列番号1の位置483に対応する位置でのシステイン(C)残基;
(xxviii) 配列番号1の位置539に対応する位置でのヒスチジン(H)残基;
(xxix) 配列番号1の位置585に対応する位置でのアラニン(A)残基;または
(xxx) それらのいずれかの組み合わせ
から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
SHC酵素が、配列番号1において以下:
(xiv) I2N、T35A、A355T、およびL539H;
(xv) T166A;
(xvi) I2NおよびY483C;
(xvii) I2N、Y483C、およびL539H;
(xviii) I2N、L5P、T35A、L539H;
(xix) I2N、L5P、T35A、およびY483C;
(xx) I2N、L5P、T35A、T166A、およびL539H;
(xxi) I2N、L5P、T35A、T166A、E211V、およびL539H;
(xxii) I2N、L5P、T35A、E211V、S212R、Y483C、およびL539H;
(xxiii) I2N、T166A、およびY483C;
(xxiv) I2N、T166A、Y483C、およびL539H;
(xxv) I2N、T166A、E211V、およびY483C;または
(xxvi) I2N、T166A、E211V、Y483C、およびL539H
の対応する位置から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
SHC酵素が、配列番号1に対する以下: I2NおよびT166Aのアミノ酸置換を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
SHC酵素が、L5P、T35A、E211V、Y483C、およびL539Hから選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
SHC酵素が、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、または42、好ましくは配列番号4、6、18、20、22、24、30、32、34、36、38、40、または42、より好ましくは配列番号30、32、34、36、38、40、または42、最も好ましくは配列番号30、38、40、42のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1または13~20のいずれか一項に記載されるとおりのスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項21に記載の核酸分子または請求項22に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
請求項1または13~20のいずれか一項に記載されるとおりの、スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)酵素。
【請求項25】
式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を含む組成物であって、該組成物が、請求項4~20のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または得ることができる、前記組成物。
【請求項26】
式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物が、固体形態であり、好ましくはアモルファス形態または結晶形態である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
式(Ia)で表される化合物が、式(V)の立体配置を有する、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
フレグランス組成物または消費者向製品の製造のための、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
請求項25~27のいずれか一項に記載されるとおりの組成物を含む、フレグランス組成物または消費者向製品。
【請求項30】
請求項3~20のいずれか一項のプロセスによって得ることができる産物を含む混合物であって、混合物が、I、Ia、III、IIIa、IV、IVa、V、Va、VI、および/またはVIaからを含む、前記混合物。
【請求項31】
組成物が、III、IIIa、IV、IVa、V、Va、VI、および/またはVIaをさらに含む、請求項25または請求項26に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は一般に、アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログを作製する、改善された方法に関する。本開示はさらに、該方法に使用されるために改善されたSHC酵素、該酵素をコードする核酸構築物およびベクター、ならびに該酵素を発現する宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
アンベルケタールは、強力で執拗なアンバリー(ambery)かつウッディ(woody)の匂いを提供するものであって、単独でまたは他のウッディ成分もしくはアンバリー成分と組み合わせて、フレグランス組成物に有用である。アンベルケタールは伝統的に、マノオールから数多の化学転換を介して調製される。しかしながら、天然マノオールの供給は限定されている。WO2021/209482は、アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログを多価不飽和アルコールから、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素を使用して産生するための方法を開示する。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示の一側面は、式(I)
【化1】

式(I)
で表される化合物を作製するための方法に関し、ここで方法は、式(II)
【化2】

式(II)
で表される化合物を、配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ここでSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0004】
式(I)で表される化合物を作製するための方法のいくつかの態様において、方法は、式(II)で表される化合物が、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合がZ-立体配置にあるように(E,Z-異性体)することである。
【0005】
本開示のさらなる側面は、式(I)
【化3】

式(I)
で表される化合物を含む混合物を作製するための方法に関し、ここで方法は、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を
【化4】

式(II)
【化5】

式(IIa)
配列番号1もしくは配列番号43~49の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくは配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有しかつ配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含む、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0006】
式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、方法は、式(I)で表される化合物を含む混合物が、式(Ia)
【化6】

式(Ia)
で表される化合物をさらに含み、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。いくつかの態様において、式(Ia)で表される化合物は、式(V)で
【化7】

式(V)
表される立体配置を有し、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0007】
式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、方法は、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物が、以下のいずれか1つを含む:
i)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)
ii)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
iii)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)
iv)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
v)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
vi)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
vii)i)~vi)のいずれかの組み合わせ。
【0008】
式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、方法は、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物が、次を含む:
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、ならびに;
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)。
【0009】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、式(III)
【化8】

式(III)
で表される化合物は、副産物(by-product)として作製され、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0010】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、式(IIIa):
【化9】

式(IIIa)
に示される相対立体配置を有する化合物は、副産物として作製され、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0011】
式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、式(VI)
【化10】

式(VI)
で表される化合物は、副産物として作製され、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
【0012】
式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、式(VIa):
【化11】

式(VIa)
に示される相対立体配置を有する化合物は、副産物として作製され、式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、Rは、メチルである。
【0013】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、かつSHC酵素は、配列番号1に対し1~7、好ましくは2~6、より好ましくは3~5アミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含む。
【0014】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、355、483、および539に対応する1以上の位置にて含む。
【0015】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、483、および539に対応する、好ましくは位置2、5、35、166、211、483、および539に対応する、1以上の位置にて含む。
【0016】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、以下から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) 配列番号1の位置2に対応する位置でのアスパラギン(N)残基;
(ii) 配列番号1の位置5に対応する位置でのプロリン(P)残基;
(iii) 配列番号1の位置35に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(iv) 配列番号1の位置116に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(v) 配列番号1の位置166に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(vi) 配列番号1の位置211に対応する位置でのバリン(V)残基;
(vii) 配列番号1の位置212に対応する位置でのアルギニン(R)残基;
(viii) 配列番号1の位置317に対応する位置でのメチオニン(M)残基;
(ix) 配列番号1の位置355に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(x) 配列番号1の位置382に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(xi) 配列番号1の位置399に対応する位置でのバリン(V)残基;
(xii) 配列番号1の位置483に対応する位置でのシステイン(C)残基;
(xiii) 配列番号1の位置539に対応する位置でのヒスチジン(H)残基;
(xiv) 配列番号1の位置585に対応する位置でのアラニン(A)残基;または
(xv) それらのいずれかの組み合わせ。
【0017】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号1の位置に対応する以下から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) I2N、T35A、A355T、およびL539H;
(ii) T166A;
(iii) I2NおよびY483C;
(iv) I2N、Y483C、およびL539H;
(v) I2N、L5P、T35A、L539H;
(vi) I2N、L5P、T35A、およびY483C;
(vii) I2N、L5P、T35A、T166A、およびL539H;
(viii) I2N、L5P、T35A、T166A、E211V、およびL539H;
(ix) I2N、L5P、T35A、E211V、S212R、Y483C、およびL539H;
(x) I2N、T166A、およびY483C;
(xi) I2N、T166A、Y483C、およびL539H;
(xii) I2N、T166A、E211V、およびY483C;または
(xiii) I2N、T166A、E211V、Y483C、およびL539H。
【0018】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号1に対する以下アミノ酸置換:I2NおよびT166Aを含む。
【0019】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、L5P、T35A、E211V、Y483C、およびL539Hから選択される、配列番号1に対する1以上のアミノ酸置換をさらに含む。
【0020】
式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいくつかの態様において、SHC酵素は、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、または42、好ましくは配列番号4、6、18、20、22、24、30、32、34、36、38、40、または42、より好ましくは配列番号30、32、34、36、38、40、または42、最も好ましくは配列番号30、38、40、42のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をさらに含む。
【0021】
本開示のさらなる側面は、式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいずれかに記載のとおりのスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関連する。
本開示のさらなる側面は、本開示に従う核酸分子を含むベクターに関する。
【0022】
本開示のさらなる側面は、本開示に従う核酸分子または本開示に従うベクターを含む宿主細胞に関する。
本開示のさらなる側面は、式(I)で表される化合物を作製するための方法および式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法のいずれかに記載のとおりのスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)酵素に関連する。
【0023】
本開示のさらなる側面は、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物とを含む組成物に関し、ここで該組成物は、本開示に従う式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法よって得られるか、またはそれによって得ることができる。
【0024】
いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物が、固体形態であり、好ましくはアモルファス形態または結晶形態である。いくつかの態様において、組成物は、式(Ia)で表される化合物が、式(V)で表される立体配置を有する。
【0025】
本開示のさらなる側面は、フレグランス組成物または消費者向製品(consumer product)の製造のための、本開示に従う組成物の使用に関する。
本開示のさらなる側面は、本開示に従う組成物を含むフレグランス組成物または消費者向製品に関する。
【0026】
本開示のさらなる側面は、本開示の化合物を作製するための方法のいずれかに記載のとおりのプロセスによって得ることができる産物(product)を含む混合物に関し、ここで混合物は、I、Ia、III、IIIa、IV、IVa、V、Va、VI、および/またはVIaを含む。
本開示のさらなる側面は、組成物が式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を含み、さらにIII、IIIa、IV、IVa、V、Va、およびVIおよび/またはVIaを含む、本開示に従う組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
記載
アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログを産生するための、新しく、より効率的で、費用対効果の良い、持続可能な方法を提供する必要性が依然としてある。アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログの産生方法の財政的実行可能性(financial viability)ならびに持続可能性は、改善された基質変換率および産生収率、減少した副産物収率、ならびに工業的に関連する条件下で改善された反応能力(reaction performance)全般を得ることによって増強され得る。結果的に、改善されたアンベルケタールおよびアンベルケタールホモログの産生プロセスへのニーズが依然としてある。結果的に、アンベルケタールおよびアンベルケタールホモログを産生するためには、改善されたSHC酵素および該酵素を発現する宿主細胞へのニーズが依然としてある。
【0028】
本発明者らは驚くべきことに、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素が、後に本明細書に記載のとおり式(IIa)で表される化合物を式(Ia)で表される化合物へ変換できることを見出した。それらはさらに、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物(ここで式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物は、混合物に含まれている)は夫々、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物へ変換できる。さらに、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素の1以上の特定位置に対応するアミノ酸残基の置換によって、後に本明細書に記載のとおり、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への改善された変換および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への改善された変換がもたらされる。
【0029】
具体的には、本明細書の他のどこかおよび実験の部において詳しく述べられるとおり、本明細書に記載の方法、酵素、および宿主細胞は、以下の有利な効果のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはすべてを発揮する:
●式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の、改善された変換比率
●式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物の、改善された収率
●改善された反応能力(例として、変換比率、産生能、高基質濃度での収率)
【0030】
結果的に、本開示の側面および態様は、本明細書に記載のとおりの問題およびニーズの少なくともいくつかを解決する。
【0031】
方法
本明細書に記載の方法は、本開示のSHC酵素による、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への酵素的変換を伴うこともある。本明細書に記載の方法は、本開示のSHC酵素による、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への酵素的変換を伴うこともある。本明細書に記載の方法は、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物(ここで式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物は、混合物に含まれている)から、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物夫々への酵素的変換、あるいは式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を含む混合物への酵素的変換を伴うこともある。
【0032】
結果的に、ある側面において、本開示は、式(I)
【化12】

式(I)
で表される化合物を作製するための方法を提供し、ここで方法は、式(II)
【化13】

式(II)
で表される化合物を、本明細書に記載されるとおりのスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含む。
【0033】
ある側面において、本開示は、式(Ia)
【化14】

式(Ia)
で表される化合物を作製するための方法を提供し、ここで方法は、式(IIa)
【化15】

式(IIa)
で表される化合物を、本明細書に記載されるとおりのスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含む。
【0034】
ある側面において、本開示は、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法を提供し、ここで方法は、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物を、本明細書に記載のとおりのスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含む。式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物は、混合物中に存在していてもよい。
【0035】
いくつかの態様において、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素は、配列番号1または配列番号43~49の配列と、少なくとも30%、40%、50%、60%、または70%の、好ましくは少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0036】
好ましい態様において、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素は、配列番号19の配列と、少なくとも30%、40%、50%、60%、または70%の、好ましくは少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、ここでSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を含む。好ましくは、配列番号1に対する1以上のアミノ酸置換は、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にある。
【0037】
本開示によるSHC酵素は、後により詳細に本明細書に記載される。
本明細書に記載のすべての式におけるRは、H(水素)およびC1~C4アルキルから選択されてもよい。いくつかの態様において、Rは、H(水素)である。いくつかの態様において、Rは、エチルである。いくつかの態様において、Rは、n-プロピルである。いくつかの態様において、Rは、イソ-プロピルである。好ましい態様において、Rは、メチルである。
【0038】
結果的に、いくつかの態様において、式(I)で表される化合物を作製するための方法が提供され、ここで方法は、式(II)で表される化合物を、配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ここでSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択され、好ましくは式中Rは、メチルである。
【0039】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物を含む混合物を作製するための方法が提供されるが、ここで方法は、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を、配列番号1もしくは配列番号43~49の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくは配列番号1の配列と少なくとも70%の同一性または類似性を有しかつ配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585に対応する1以上の位置にて含む、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含み、ならびに式中Rは、HおよびC1~C4アルキルから選択され、好ましくは式中Rは、メチルである。いくつかの態様において、式(I)で表される化合物を含む混合物は、後に本明細書に記載されるとおり、式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物で表される立体配置を有する式(Ia)で表される化合物をさらに含む。
【0040】
本明細書に使用されるとき、「接触させること」は、本明細書に記載のとおりのスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素との化合物の物理的相互作用(これによって、酵素によって触媒される反応が促進される)に対応することもある。
【0041】
「式(II)で表される化合物と接触させること」および「式(IIa)で表される化合物と接触させること」は、単一の異性体とまたはこれら化合物の異性体の混合物と接触させることに対応することもある。化合物の「異性体」は、本明細書に使用されるとき、好ましくは化合物の立体異性体を指す。
【0042】
SHC酵素は、後に本明細書に記載されるとおりの宿主細胞において産生されてもよい。かかる宿主細胞は、本明細書に記載の方法において使用されてもよい。いくつかの態様において、SHC酵素は、基質(例として、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物)を受け入れるか、および/または前記基質と相互作用するために、膜(細胞膜もしくはSHC酵素が固定化された膜など)と結び合されていてもよく、その膜(細胞膜など)は、全細胞(例として、後に本明細書に記載のものなどの組換え宿主細胞)の一部であり得る。SHC酵素はまた、粗細胞抽出物または無細胞抽出物にも存在していてもよい。結果的に、当業者は、「接触させること」がまた、本明細書に後に記載のとおりのSHC酵素を発現する細胞との、該細胞の膜画分との、該細胞の粗細胞抽出物との、または該細胞の無細胞抽出物との、化合物の物理的相互作用にも対応してもよいことを理解している。SHC酵素はまた、SHC酵素が基質(例として、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物)と相互作用できる固定化形態であってもよい(例として、酵素担体と結び合わされていてもよい)。「固定化」という記載は、後に本明細書において提供される。SHC酵素はまた、可溶性の形態でも使用されてもよい。
【0043】
式(II)および(IIa)で表される化合物
式(II)で表される化合物、式(IIa)で表される化合物、ならびにこれらを含む混合物は代替的に、「基質」、「(生物)変換基質」、または「反応基質」として本明細書に言及されることもあり、すべての用語は交換可能である。式(II)で表される化合物における炭素原子の番号付けは以下のとおりである:
【化16】

式(II)。
【0044】
式(IIa)で表される化合物における炭素原子の番号付けは以下のとおりである:
【化17】

式(IIa)。
【0045】
式(IIa)で表される化合物は、式(II)で表される化合物の「構造異性体」である。本明細書に記載のSHC酵素は、後に本明細書に記載されるとおり、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物を有用産物へ変換するのに殊更好適である。
【0046】
式(II)で表される化合物の異性体の混合物と接触することを含む態様において、少なくとも1つの異性体は、式(I)で表される化合物へ変換される。式(IIa)で表される化合物の異性体の混合物と接触することを含む態様において、少なくとも1つの異性体は、式(Ia)で表される化合物へ変換される。式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物と接触させることを含む態様において、式(II)で表される化合物は、式(I)で表される化合物へ変換されてもよく、および/または式(IIa)で表される化合物は、式(Ia)で表される化合物へ変換されてもよい。
【0047】
式(II)および式(IIa)で表される化合物は、例えば、E,E-、Z,E-、Z,Z-、またはE,Z-立体配置(代わりにE,Z-、Z,E-、Z,Z-、またはE,Z-異性体としても本明細書に言及される)を有する式(II)で表される化合物または式(IIa)で表される化合物として、4つの異なる異性体の形態で生じていてもよい。いくつかの態様において、式(II)で表される化合物は、C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にある(E,Z-異性体)。いくつかの態様において、式(II)で表される化合物は、C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にある(E,E-異性体)。
【0048】
C-8とC-9との間の二重結合をZ-立体配置で、かつC-4とC-5との間の二重結合をE-立体配置で有する式(II)で表される化合物は、Z,E-異性体に対応する。C-8とC-9との間の二重結合をZ-立体配置で、かつC-4とC-5との間の二重結合もZ-立体配置で有する式(II)で表される化合物は、Z,Z-異性体に対応する。
【0049】
いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物は、C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にある(E,Z-異性体)。いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物は、C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にある(E,E-異性体)。
【0050】
C-6とC-7との間の二重結合をZ-立体配置で、かつC-2とC-3との間の二重結合をE-立体配置で有する式(IIa)で表される化合物は、Z,E-異性体に対応する。C-6とC-7との間の二重結合をZ-立体配置で、かつC-2とC-3との間の二重結合もZ-立体配置で有する式(IIa)で表される化合物は、Z,Z-異性体に対応する。
【0051】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物は、その異性体の2つのまたは2つより多い混合物である。いくつかの態様において、混合物は、E,E-異性体と、式(II)で表される化合物の1以上の他の異性体とを含む。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体と、式(II)で表される化合物の1以上の他の異性体とを含む。結果的に、いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびZ,E-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体およびZ,E-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。
【0052】
いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物は、その異性体の2つのまたは2つより多い混合物である。いくつかの態様において、混合物は、E,E-異性体と、式(IIa)で表される化合物の1以上の他の異性体とを含む。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体と、式(IIa)で表される化合物の1以上の他の異性体とを含む。結果的に、いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびZ,E-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体およびZ,E-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。
【0053】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物は、その異性体の3つのまたは3つより多い混合物である。いくつかの態様において、混合物は、E,E-異性体と、式(II)で表される化合物の2以上の他の異性体とを含む。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体と、式(II)で表される化合物の2以上の他の異性体とを含む。結果的に、いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、Z,E-、Z,Z-、およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。
【0054】
いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物は、その異性体の3つのまたは3つより多い混合物である。いくつかの態様において、混合物は、E,E-異性体と、式(IIa)で表される化合物の2以上の他の異性体とを含む。いくつかの態様において、混合物は、E,Z-異性体と、式(IIa)で表される化合物の2以上の他の異性体とを含む。結果的に、いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、E,E-、Z,E-、およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、混合物は、Z,E-、Z,Z-、およびE,Z-異性体を含んでいてもよい。
【0055】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物は、E,Z-、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含む混合物である。好ましい混合物は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体および/またはE,E-異性体、好ましくはE,Z-異性体を含む。
【0056】
いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物は、E,Z-、E,E-、Z,E-、およびZ,Z-異性体を含む混合物である。好ましい混合物は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体および/またはE,E-異性体、好ましくはE,Z-異性体を含む。
【0057】
いくつかの態様において、組成物は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体および/または式(II)で表される化合物のE,E-異性体、好ましくは式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体および/または式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体、好ましくは式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とを含む。任意に、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体、式(II)で表される化合物のZ,Z-異性体、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体、および/または式(IIa)で表される化合物のZ,Z-異性体は、混合物中に含まれていてもよい。
【0058】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体を、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素を接触させることを含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体および/またはE,E-異性体、好ましくは式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体を、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素を接触させることを含む。
【0059】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(II)で表される化合物のE,E-異性体とE,Z-異性体とを含むか、本質的にはこれらからなるか、またはこれらからなる混合物を、スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素とを接触させることを含む。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体との、少なくとも一方または両方を含む。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体の、一方も両方も含まない。
【0060】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体とE,Z-異性体とを含むか、本質的にはこれらからなるか、またはこれらからなる混合物を、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素とを接触させることを含む。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体との、少なくとも一方または両方を含む。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体の、一方も両方も含まない。
【0061】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(II)で表される化合物のE,E-異性体および式(II)で表される化合物のE,Z-異性体および/または式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体および/または式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体を含むか、本質的にこれらからなるか、あるいはこれらからなる混合物を、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素と接触させることを含む。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体との、少なくとも一方または両方を含む。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体との、少なくとも一方または両方を含む。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体の、一方も両方も含まない。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体とZ,Z-異性体の、一方も両方も含まない。
【0062】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(II)で表される化合物の他の1以上のE異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、96:4と等しいかもしくはこれより大きいか、または約96:4である。いくつかの態様において、比率は、97:3と等しいかもしくはこれより大きいか、または約97:3である。いくつかの態様において、比率は、98:2と等しいかもしくはこれより大きいか、または約98:2である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0063】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(II)で表される化合物の他の1以上のE異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。
【0064】
いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(II)で表される化合物の他の1以上の異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、10:90から99:1まで、10:90から90:1まで、20:80から80:20まで、50:50から80:20まで、または60:40から80:20まで及んでもよい。
【0065】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物の他の1以上のE異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0066】
式(II)aで表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物の他の1以上の異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
【0067】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物の他の1以上の異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体の、他のすべての異性体に対する比率は、10:90から99:1まで、10:90から90:1まで、20:80から80:20まで、50:50から80:20まで、または60:40から80:20まで及んでもよい。
【0068】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0069】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
【0070】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比は、10:90から99:1までもしくは約10:90から約99:1まで、10:90から90:1までもしくは約10:90から約90:1まで、20:80から80:20までもしくは約20:80から約80:20まで、50:50から80:20までもしくは約50:50から約80:20まで、または60:40から80:20までもしくは約60:40から約80:20まであってもよい。
【0071】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0072】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
【0073】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90から99:1までもしくは約10:90から約99:1まで、10:90から90:1までもしくは約10:90から約90:1まで、もしくは20:80から80:20までもしくは約20:80から約80:20まで、50:50から80:20までもしくは約50:50から約80:20まで、または60:40から80:20までもしくは約60:40から約80:20までであってもよい。
【0074】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。
【0075】
いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0076】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
【0077】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対する比率は、10:90から99:1まで、10:90から90:1まで、20:80から80:20まで、50:50から80:20まで、または60:40から80:20までであってもよい。
【0078】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより大きいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより大きいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0079】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。いくつかの態様において、比率は、30:70と等しいかもしくはこれより小さいか、または約30:70である。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより小さいか、または約20:80である。いくつかの態様において、比率は、10:90と等しいかもしくはこれより小さいか、または約10:90である。
【0080】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体と式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体の、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対する比率は、10:90から99:1まで、10:90から90:1まで、20:80から80:20まで、50:50から80:20まで、または60:40から80:20までであってもよい。
当業者は、上で考察された比率が、例えば、立体異性体の重量または濃度を割ることによって決定されてもよいことを理解している。
【0081】
異性体の混合物における所定の異性体の、1以上の他の異性体に対する比率は、ガスクロマトグラフィー(任意に質量分析と組み合わせて)、および核磁気共鳴(NMR)分光法などの、当業者に利用可能なルーチンの方法を使用して定量化されてもよい。前記方法の例は、Encyclopedia of Analytical Science: 3rd Edition, Eds. Paul Worsfold, Alan Townshend, Colin Poole, Manuel Miro, Elsevier (2019)(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの当該技術分野における標準的なハンドブックにおいて見出され得る。当業者は、これらの方法がまた、例えば水性溶液などの混合物中の異性体の濃度を定量化するためにも使用されてもよいことを理解している。混合物中の異性体の濃度は、複数の量的単位、たとえばモル濃度、モル濃度、質量パーセンテージ、千分率(ppth)、百万分率(ppm)、および十億分率(ppb)などを使用して表現されてもよい。これらの単位の相互変換も、濃度値に基づく所定の混合物中の異性体重量の算出もすべて、当業者の能力の範囲内に十分ある。
【0082】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択される。好ましくはRは、メチルである。Rがメチルである式(II)で表される化合物は、夫々の化合物であるE,E-ヒドロキシファルネシルアセトン(E,E-HFA)、Z,E-ヒドロキシファルネシルアセトン(Z,E-HFA)、Z,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン(Z,Z-HFA)、およびE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン(E,Z-HFA)、ならびにそれらの混合物を網羅するヒドロキシファルネシルアセトン(HFA)と称されてもよい。ヒドロキシファルネシルアセトンの異性体のなかでも、E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトンが好ましい。
【0083】
式(IIa)で表される化合物の異性体のなかでも、E,Z-異性体およびE,E-異性体が好ましく、E,Z-異性体がさらに好ましい。
【0084】
結果的に、いくつかの態様において、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物を含む混合物は以下のいずれか1つを含む:
i)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)
ii)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
iii)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)
iv)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
v)C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
vi)C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、およびC-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)
vii)i)~vi)のいずれかの組み合わせ。
【0085】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物を含む混合物は次を含む:
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)
- C-8とC-9との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(II)で表される化合物(E,E-異性体)
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合が、Z-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)、ならびに;
- C-6とC-7との間の二重結合が、E-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合も、E-立体配置にあるような、式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)。
【0086】
かかる混合物は任意に、式(II)で表される化合物の異性体および式(IIa)で表される化合物の異性体を、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体:式(II)で表される化合物のE,E-異性体:式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体:式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体の特定比率、たとえばこれらに限定されないが、37:9:29:16もしくは約37:9:29:16、または27:36:13:24もしくは約27:36:13:24で、含んでいてもよい。任意に、混合物は、式(II)で表される化合物のZ,E-異性体、式(II)で表される化合物のZ,Z-異性体、式(IIa)で表される化合物のZ,E-異性体、および/または式(IIa)で表される化合物のZ,Z-異性体を含む。
【0087】
当業者は、本開示の文脈において、「式(II)で表される化合物と接触させること」を受け、化合物のすべてが式(I)で表される化合物へ変換される必要はないことを理解している。類似して、「式(IIa)で表される化合物と接触させること」を受け、化合物のすべてが式(Ia)で表される化合物へ変換される必要はない。ある例として、反応副産物(例えば、本明細書に後に記載されるもの)が形成されてもよく、あるいは式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物が完全には変換されなくてもよい。別の例として、式(II)で表される化合物の2以上の異性体を含む混合物において、必ずしもすべての異性体が式(I)で表される化合物へ変換されるとは限らない。別の例として、式(IIa)で表される化合物の2以上の異性体を含む混合物において、必ずしもすべての異性体が式(Ia)で表される化合物へ変換されるとは限らない。別の例として、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のすべてが式(I)で表される化合物へ変換されるとは限らず、および/または式(IIa)で表される化合物のすべてが式(Ia)で表される化合物へ変換されるとは限らない。
【0088】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物のすべてが式(I)で表される化合物へも反応副産物へも変換されずに、式(II)で表される化合物と式(I)で表される化合物とを含む組成物などの産物がもたらされる。いくつかの態様において、組成物などの産物において式(II)で表されるいずれの非変換化合物も、式(II)で表されるいずれの化合物も含まない産物が得られるように、産物から単離および/または精製されてもよい。いくつかの態様において、式(II)で表される化合物のすべてが、式(I)で表される化合物または反応副産物へ変換される。
【0089】
いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物のすべてが式(Ia)で表される化合物へも反応副産物へも変換されずに、式(IIa)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物とを含む組成物などの産物がもたらされる。いくつかの態様において、組成物などの産物において式(IIa)で表されるいずれの非変換化合物も、式(IIa)で表されるいずれの化合物も含まない産物が得られるように、産物から単離および/または精製されてもよい。いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物のすべてが、式(Ia)で表される化合物または反応副産物へ変換される。
【0090】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において、式(II)で表される化合物のすべてが、式(I)で表される化合物へも反応副産物へも変換されず、および/または式(IIa)で表される化合物のすべてが、式(Ia)で表される化合物へも反応副産物へも変換されない。いくつかの態様において、組成物などの産物において式(II)で表されるいずれの非変換化合物および/または式(IIa)で表されるいずれの非変換化合物も、式(II)で表されるいずれの化合物および/または式(IIa)で表されるいずれの化合物も含まない産物が得られるように、産物から単離および/または精製されてもよい。いくつかの態様において、式(II)で表される化合物のすべてが、式(I)で表される化合物または反応副産物へ変換される。いくつかの態様において、式(IIa)で表される化合物のすべてが、式(Ia)で表される化合物または反応副産物へ変換される。
【0091】
単離および/または精製は、後に本明細書において考察される。
式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物が異性体の混合物に対応する態様において、様々な異性体の存在は、変換に影響を与えることもある;例えば、反応速度が減少することもある。
【0092】
よって、本明細書に記載のSHC酵素は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体を、式(II)で表される化合物の異性体の混合物から、式(I)で表される化合物へ変換することが可能であってもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体を、式(IIa)で表される化合物の異性体の混合物から、式(Ia)で表される化合物へ変換することが可能であってもよい。
【0093】
本明細書に記載のSHC酵素は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体を、式(II)で表される化合物の異性体と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物から、式(I)で表される化合物へ変換することが可能であってもよい。
本明細書に記載のSHC酵素は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体を、式(IIa)で表される化合物の異性体と式(II)で表される化合物とを含む混合物から、式(Ia)で表される化合物へ変換することが可能であってもよい。
【0094】
混合物は、式(II)で表される化合物の異性体の2つ、例えばE,Z-異性体およびE,E-異性体を含んでいてもよい。混合物は、式(II)で表される化合物の異性体の3つ、例えばE,Z-異性体と、E,E-異性体と、Z,E-異性体またはZ,Z-異性体のいずれかとを含んでいてもよい。混合物は、式(II)で表される化合物の4つの異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。式(II)で表される化合物の他の異性体の存在は、E,Z-異性体の式(I)で表される化合物への変換比率を減少させることもある。理論によって拘束されることは望まないが、考えられる説明は、他の異性体が式(II)で表されるE,Z-異性体とSHC酵素へのアクセスについて競合することがあり、よって式(II)で表される化合物のE,Z-異性体から式(I)で表される化合物への変換のための競合インヒビターとして作用しても、および/または代替基質として作用してもよいことであり得る。結果的に、反応基質は、式(IIa)で表される化合物の2~4つの異性体、好ましくは2つの異性体の異性体混合物を指すこともある。いくつかの態様において、反応基質は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体との異性体混合物を含むか、本質的にこれからなるか、またはこれからなる。
【0095】
混合物は、式(IIa)で表される化合物の異性体の2つ、例えばE,Z-異性体およびE,E-異性体を含んでいてもよい。混合物は、式(IIa)で表される化合物の異性体の3つ、例えばE,Z-異性体と、E,E-異性体と、Z,E-異性体またはZ,Z-異性体のいずれかとを含んでいてもよい。混合物は、式(IIa)で表される化合物の4つの異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体を含んでいてもよい。結果的に、反応基質は、式(IIa)で表される化合物の2~4つの異性体、好ましくは2つの異性体の異性体混合物を指すこともある。いくつかの態様において、反応基質は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体との異性体混合物を含むか、本質的にこれからなるか、またはこれからなる。
【0096】
混合物は、式(II)で表される化合物の異性体の2つ、例えばE,Z-異性体およびE,E-異性体と、式(IIa)で表される化合物の異性体の2つ、例えばE,Z-異性体およびE,E-異性体とを含んでいてもよい。混合物は、式(II)で表される化合物の異性体の3つ、例えばE,Z-異性体、E,E-異性体、およびZ,E-異性体またはZ,Z-異性体の1つと、式(IIa)で表される化合物の異性体の3つ、例えば、E,Z-異性体、E,E-異性体、およびZ,E-異性体またはZ,Z-異性体の1つとを含んでいてもよい。混合物は、式(II)で表される化合物の4つの異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体と、式(IIa)で表される化合物の4つの異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体とを含んでいてもよい。
【0097】
結果的に、反応基質は、式(II)で表される化合物の2~4つの異性体、好ましくは2つの異性体と、式(IIa)で表される化合物の2~4つの異性体、好ましくは2つの異性体との異性体混合物を指すこともある。
いくつかの態様において、反応基質は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体、式(II)で表される化合物のE,E-異性体、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体、および式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体の異性体混合物を含むか、質的にこれらからなるか、またはこれからなる。
【0098】
式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物は、Fujiwaraら(Tetrahedron Letters,1995 Vol 36(46),8435-8438)(その全体が参照されることによって本明細書の組み込まれる)によって描かれる一般手順に倣い合成されてもよい。追加の一般手順は、GB2108985.9(その全体が参照されることによって本明細書の組み込まれる)に記載されている。
【0099】
代替的に、式(II)で表される化合物は、図1において簡潔に実証されるとおりに得られてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。
【0100】
式(I)および式(Ia)で表される化合物
本明細書に使用されるとき、「式(I)で表される化合物を作製すること」および「式(Ia)で表される化合物を作製すること」はまた、夫々の化合物を「産生すること」または「得ること」とも称されることがある。それはまた、夫々の化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、もしくはこれらからなる混合物を「産生すること」または「得ること」ことも指すことがある。
【0101】
式(I)および(Ia)で表される化合物は、数多のキラル炭素原子を含む。よって、例えばエナンチオマーおよびジアステレオマーなど、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物との1以上の異性体が生じていてもよい。式(I)で表される化合物に加えて、本明細書に記載の方法によって作製された産物は、式(I)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。式(Ia)で表される化合物に加えて、本明細書に記載の方法によって作製された産物は、式(Ia)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。これに関連して、これら他の異性体は、酵素的変換の副産物を表していてもよい。本明細書に記載の方法によって得られる異性体は、本明細書に記載のとおりのSHC酵素が接触させられる式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の異性体に依存してもよい。
【0102】
非限定例として、式(II)で表される化合物を本明細書に記載のとおりのSHC酵素と接触させることは、式(IV):
【化18】

式(IV)
で表される化合物の作製がもたらされてもよい。
【0103】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくは式中Rはメチルである。
【0104】
Rがメチルである式(IV)で表される化合物はまた、(-)-エピ-8-アンベルケタールとしても知られている。Rがメチルである式(I)で表される化合物はまた、(+)-アンベルケタールとしても知られている。結果的に、いくつかの態様において、式(I)で表される化合物および式(I)で表される化合物の1以上の他の異性体、これらに限定されないが、式(IV)で表される化合物などが作製され、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。よって、後に本明細書に記載の化合物などの産物は、式(I)で表される化合物と、任意に式(I)で表される化合物の1以上の他の異性体と(これらに限定されないが、式(IV)で表される化合物など)を含んでいてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。
【0105】
式(Ia)で表される好ましい化合物は、式(V):
【化19】

式(V)
で表される立体配置を有する。
【0106】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。
結果的に、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式(V)で表される化合物の作製をもたらす。よって、後に本明細書に記載の化合物などの産物は、式(V)で表される化合物と、任意に式(Ia)で表される化合物の1以上の他の異性体とを含んでいてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。
【0107】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、後に本明細書に記載の化合物などの産物をもたらし、これは式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物を含んでいてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。任意に、産物は、式(I)で表される化合物の1以上の他の異性体、これらに限定されないが式(IV)で表される化合物など、および/または式(Ia)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。
【0108】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物の、本明細書に記載のとおり方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる、式(I)で表される化合物の組み合わせられた他のすべての異性体に対する比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、55:45と等しいかもしくはこれより大きいか、または約55:45である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、65:35と等しいかもしくはこれより大きいか、または約65:35である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、75:25と等しいかもしくはこれより大きいか、または約75:25である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0109】
いくつかの態様において、式(V)で表される化合物の、本明細書に記載のとおり方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる、式(Ia)で表される化合物の組み合わせられた他のすべての異性体に対する比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、55:45と等しいかもしくはこれより大きいか、または約55:45である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより大きいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、65:35と等しいかもしくはこれより大きいか、または約65:35である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより大きいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、75:25と等しいかもしくはこれより大きいか、または約75:25である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより大きいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより大きいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより大きいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより大きいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、99:1と等しいかもしくはこれより大きいか、または約99:1である。
【0110】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって、式(I)で表される化合物のみが作製され、かつ式(I)で表される化合物の他の異性体、例えば式(IV)で表される化合物は作製されず、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって、式(V)で表される化合物のみが作製され、かつ式(Ia)で表される化合物の他の異性体は作製されず、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される。
【0111】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物および/または式(V)で表される化合物以外のいずれの異性体も、いずれの他の異性体も含まない産物が得られるように、本明細書に記載の方法によって作製された組成物などの産物から分離されてもよい;例えば、式(IV)で表される化合物は、任意に式中Rは、H(水素)、メチル、またはエチルであり、産物から分離され、もはや産物中には存在しない。換言すれば、本明細書に記載のとおりの組成物は、例えば、式(I)で表される化合物の100wt%を含み、かつこの化合物の他の異性体を含まない組成物であってもよい(代替的に本明細書において100:0比率と称される)。類似して、本明細書に記載のとおりの組成物は、例えば、式(V)で表される化合物の100wt%を含み、かつ式(Ia)で表される化合物の他の異性体を含まない組成物であってもよい。本明細書に記載のとおりの組成物は、例えば、式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる混合物、好ましくはこれらを含む混合物であってもよい。分離方法は当業者に知られており、本明細書において以前に考察されている。
【0112】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物の、本明細書に記載のとおり方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる、式(I)で表される化合物の組み合わせられた他のすべての異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1である。いくつかの態様において、比率は、98:2と等しいかもしくはこれより小さいか、または約98:2である。いくつかの態様において、比率は、97:3と等しいかもしくはこれより小さいか、または約97:3である。いくつかの態様において、比率は、96:4と等しいかもしくはこれより小さいか、または約96:4である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。
【0113】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物の、方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる式(I)で表される化合物の他のすべての異性体に対する比率は、本明細書に記載のとおり、50:50から100:0まで、もしくは約50:50から約100:0までか、60:40から99:1まで、もしくは約60:40から約99:1までか、70:30から98:2まで、もしくは約70:30から約98:2までか、80:20から97:3まで、もしくは約80:20から約97:3までか、または90:10から97:3まで、もしくは約90:10から約97:3までであってもよい。
【0114】
いくつかの態様において、式(V)で表される化合物の、本明細書に記載のとおり方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる、式(Ia)で表される化合物の組み合わせられた他のすべての異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1である。いくつかの態様において、比率は、98:2と等しいかもしくはこれより小さいか、または約98:2である。いくつかの態様において、比率は、97:3と等しいかもしくはこれより小さいか、または約97:3である。いくつかの態様において、比率は、96:4と等しいかもしくはこれより小さいか、または約96:4である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。
【0115】
いくつかの態様において、式(V)で表される化合物の、方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる式(Ia)で表される化合物の他のすべての異性体に対する比率は、本明細書に記載のとおり、50:50から100:0まで、もしくは約50:50から約100:0までか、60:40から99:1まで、もしくは約60:40から約99:1までか、70:30から98:2まで、もしくは約70:30から約98:2までか、80:20から97:3まで、もしくは約80:20から約97:3までか、または90:10から97:3まで、もしくは約90:10から約97:3までであってもよい。
【0116】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物の、本明細書に記載のとおり方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1である。いくつかの態様において、比率は、98:2と等しいかもしくはこれより小さいか、または約98:2である。いくつかの態様において、比率は、97:3と等しいかもしくはこれより小さいか、または約97:3である。いくつかの態様において、比率は、96:4と等しいかもしくはこれより小さいか、または約96:4である。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいか、または約95:5である。いくつかの態様において、比率は、94:6と等しいかもしくはこれより小さいか、または約94:6である。いくつかの態様において、比率は、93:7と等しいかもしくはこれより小さいか、または約93:7である。いくつかの態様において、比率は、92:8と等しいかもしくはこれより小さいか、または約92:8である。いくつかの態様において、比率は、91:9と等しいかもしくはこれより小さいか、または約91:9である。いくつかの態様において、比率は、90:10と等しいかもしくはこれより小さいか、または約90:10である。いくつかの態様において、比率は、85:15と等しいかもしくはこれより小さいか、または約85:15である。いくつかの態様において、比率は、80:20と等しいかもしくはこれより小さいか、または約80:20である。いくつかの態様において、比率は、75:25と等しいかもしくはこれより小さいか、または約75:25である。いくつかの態様において、比率は、70:30と等しいかもしくはこれより小さいか、または約70:30である。いくつかの態様において、比率は、65:35と等しいかもしくはこれより小さいか、または約65:35である。いくつかの態様において、比率は、60:40と等しいかもしくはこれより小さいか、または約60:40である。いくつかの態様において、比率は、55:45と等しいかもしくはこれより小さいか、または約55:45である。いくつかの態様において、比率は、50:50と等しいかもしくはこれより小さいか、または約50:50である。いくつかの態様において、比率は、49:51と等しいかもしくはこれより小さいか、または約49:51である。いくつかの態様において、比率は、49:51と等しいかもしくはこれより小さいか、または約49:51である。いくつかの態様において、比率は、48:52と等しいかもしくはこれより小さいか、または約48:52である。いくつかの態様において、比率は、47:53と等しいかもしくはこれより小さいか、または約47:53である。いくつかの態様において、比率は、46:54と等しいかもしくはこれより小さいか、または約46:54である。いくつかの態様において、比率は、45:55と等しいかもしくはこれより小さいか、または約45:55である。いくつかの態様において、比率は、44:56と等しいかもしくはこれより小さいか、または約44:56である。いくつかの態様において、比率は、43:57と等しいかもしくはこれより小さいか、または約43:57である。いくつかの態様において、比率は、42:58と等しいかもしくはこれより小さいか、または約42:58である。いくつかの態様において、比率は、41:59と等しいかもしくはこれより小さいか、または約41:59である。いくつかの態様において、比率は、40:60と等しいかもしくはこれより小さいか、または約40:60である。
【0117】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物の、方法によって作製されたかまたは組成物などの産物中に含まれる式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)に対する比率は、本明細書に記載のとおり、50:50から100:0まで、もしくは約50:50から約100:0までか、60:40から99:1まで、もしくは約60:40から約99:1までか、70:30から98:2まで、もしくは約70:30から約98:2までか、80:20から97:3まで、もしくは約80:20から約97:3までか、または90:10から97:3まで、もしくは約90:10から約97:3までか、または93:7から97:3まで、もしくは約97:3から約97:3までであってもよい。
【0118】
異性体の混合物中の、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の所定の異性体の、夫々の化合物の1以上の他の異性体に対する比率、ならびに異性体の量および濃度は、本明細書において以前考察されたとおり、ガスクロマトグラフィー(任意にキラルカラム上)またはNMR分光法(任意にシフト試薬の存在下)などの、当業者に利用可能なルーチンの方法を使用して、決定されてもよい。同じ方法が、式(I)で表される化合物の所定の異性体の、式(V)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物の別の異性体に対する比率を決定するために使用され得る。
【0119】
本明細書に記載の方法によって作製される式(I)で表される化合物、および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、例えば、混合物中に含まれていてもよい。本明細書に記載の方法によって作製される式(I)で表される化合物、および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、例えば、固体形態で、好ましくはアモルファス形態または結晶形態であってもよい。本明細書に記載の方法によって作製される式(I)で表される化合物、および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、例えば、反応混合物中固相であってもよい。
【0120】
かかる形態は、化合物が固体形態/固相で存在することで、化合物の作製後の下流処理が簡素化され得るところ、有利なこともある。非制限例として、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞が生体触媒として使用され、かつ式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が固体形態(アモルファス形態もしくは結晶形態など)で作製されたとき、化合物は、濾過および/または遠心分離などの単純な技法を介して反応混合物(これはまた、後に本明細書に記載されるとおりの細胞培養物にも対応することもある)から容易に分離されてもよい。任意に、得られた式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、本明細書に記載のとおりさらに単離および/または精製されてもよいが、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が固体形態(アモルファス形態もしくは結晶形態など)で作製されなかったケースと比べて、いずれにせよ、より少ない材料(例として溶媒)および/またはより少ないエネルギー投入しか要されない。
【0121】
式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、これが作製された後に単離および/または精製されてもよい。結果的に、いくつかの態様において、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が単離される。任意に、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が精製される。用語「単離」は本明細書に使用されるとき、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)などの化合物の、これに付随する構成要素からの分離(代替的に本明細書において「抽出」とも称される)を指す。化合物の単離度または純度は、当該技術分野において一般的に使用されるいずれの方法、例としてガスクロマトグラフィー(GC)、クロマトグラフ法(例としてHPLC)、またはNMR分光法によっても測定され得、これらはすべて当業者に知られており、Encyclopedia of Analytical Science: 3rd Edition(上記参照)などの標準的なハンドブックに集約されている。
【0122】
単離は、当該技術分野において一般的に使用されるいずれの方法によっても達成されてもよい。好適な方法の例は、非水混和性溶媒を使用する蒸気抽出、蒸留、または有機溶媒抽出(これらは、反応産物と未反応基質とを水性相にとどまる生体触媒から分離する)の後、これに続く溶媒の蒸発を包含し、ガスクロマトグラフィー分析によって決定されるとおりの粗反応産物が得られる。これらの方法は当業者に知られており、Encyclopedia of Analytical Science: 3rd Edition(上記参照)などの標準的なハンドブックに集約されている。
【0123】
一例として、産生された式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、非水混和性溶媒などの有機溶媒(例えばトルエン)を使用し、反応混合物全体から抽出されてもよい。代替的に、産生された式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、水混和性溶媒(例えば、エタノール)または非水混和性溶媒(例えば、トルエン)を使用し、固相反応の混合物(例えば、遠心分離または濾過によって得られた)から抽出されてもよい。さらなる一例として、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、本明細書に以前考察されたとおり、固相中に結晶としてまたはアモルファス形態で存在していてもよく、残存する固相(細胞材料またはそのデブリ)から、また液相からも濾過を用いて、分離されてもよい。さらなる一例として、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の融点を上回る温度にて、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、水性相の上端に油層を形成することもあり、その油層が除去されて収集され得る。油層が除去された後の化合物の完全な回収を確実にするために、有機溶媒が、式(I)で表されるいずれかの残留化合物(例として(+)-アンベルケタール)および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)を抽出するために、バイオマスを含有する水性相へ加えられてもよい。有機層は油層と合せられ得るが、これの後に、その全体がさらに処理されて、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が単離および精製される。式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)はさらに、最終産物から選択的に結晶化されて、副産物と、式(II)で表されるいずれの未反応化合物および/または式(IIa)で表される化合物とが除去されてもよい。
【0124】
精製は、当該技術分野において一般的に使用されているいずれかの方法によって達成されてもよく、前記方法は当業者に知られており、Encyclopedia of Analytical Science: 3rd Edition(上記参照)などの標準的なハンドブックに集約されている。単離および精製のさらなる例は、本明細書の実験の節に提供される。
【0125】
用語「選択的結晶化」は、副産物は結晶化溶媒中に溶解したままであるのに、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)が溶媒から、単離結晶材料が式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)のみを含有する(またはそれが、いずれの副産物を含有するなら、その場合これらは嗅覚的に許容し得る量でしか存在しない)程度まで結晶化させられるところの処理ステップを指す。式(I)で表される化合物は、例えば、式(III)もしくは(IIIa)で表される化合物などの副産物がないか、または実質的にない(後に本明細書に記載される)。式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物は、例えば、式(VI)もしくは式(VIa)で表される化合物などの副産物がないか、または実質的にない(後に本明細書に記載される)。選択的結晶化ステップは、エタノールなどの水混和性溶媒または同種のものを使用してもよい。式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の選択的結晶化は、式(II)で表される未反応化合物および/または式(IIa)で表される未反応化合物の存在によって、また式(I)および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)など)の他の検出可能な副産物に対する比率によっても、影響を及ぼされてもよい。式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換が10%しか得られなかった場合であっても、産生された化合物の選択的結晶化はそれでもやはり可能なこともある。類似して、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への(好ましくは式(V)で表される化合物への)変換が10%しか得られなかった場合であっても、産生された化合物の選択的結晶化はそれでもやはり可能なこともある。
【0126】
得られた式(I)で表される最終化合物のおよび/または式(Ia)で表される最終化合物(式(V)で表される化合物など)の純度は、ルーチンのガスクロマトグラフィー(GC)技法を使用して決定され得る。類似の技法はまた、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む混合物にも適用され得る。
【0127】
式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、または式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む混合物を含む産物の嗅覚純度(olfactive purity)は、結晶材料またはエタノール中の結晶材料の溶液を試験することによって決定されてもよい。式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む混合物は、熟練した嗅覚専門家または熟練した嗅覚専門家パネルによって、式(I)で表される化合物の市販参照物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の市販参照物、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む市販参照混合物に対し、その嗅覚純度、品質、およびその官能プロファイルについて試験されてもよい。産物はまた、材料がその嗅覚プロファイルに関して仕様を満たし、よって嗅覚的に許容し得る産物を提供しているかどうかを決定するために、応用研究においても熟練した嗅覚専門家によって試験されてもよい。
【0128】
用語「嗅覚的に純粋な」は、本開示の産物に関して使用されるとき、式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、または式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)産物とを含む混合物が、化合物(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)、(Va)、(VI)、および/または(VIa)、および/または反応混合物中に見出されるいずれか他の材料がないこと、あるいはかかる化合物および/または材料が存在するはずである場合、それらが、その用語が本明細書に定義されるとおり嗅覚的に許容し得る量で存在することを意味することが意図される。
【0129】
本開示の態様において、式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、または式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)との産物を嗅覚的に純粋な形態で含む混合物は、重量で5%未満の化合物(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)、(Va)、(VI)、および/または(VIa)のいずれか、および/または反応混合物中に見出されるいずれかの他の材料を含有している。
【0130】
より具体的な態様において、式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、または式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)との産物を嗅覚的に純粋な形態で含む混合物は、重量で4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、もしくは0.05%未満の、化合物(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)、(Va)、(VI)、および/または(VIa)の各々、および/または反応混合物中に見出されるいずれかの他の材料を含有している。
【0131】
より具体的な態様において、式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、または式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)との産物を嗅覚的に純粋な形態で含む混合物は、重量で4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、もしくは0.05%未満の、化合物(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(VI)、および/または(VIa)の各々、および/または反応混合物中に見出されるいずれかの他の材料を含有している。
【0132】
式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の抽出および/または選択的結晶化における使用に好適な水混和性および非水混和性の有機溶媒の非限定例は、脂肪族炭化水素、好ましくはペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、もしくはシクロオクタンなどの5~8個の炭素原子を有するもの、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、もしくはジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、脂肪族の非環式および環状のエーテルまたはアルコール、好ましくはエタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどの4~8個の炭素原子を有するもの、あるいは酢酸エチルもしくは酢酸n-ブチルなどのエステル、あるいはメチルイソブチルケトンなどのケトン、あるいはそれらの混合物を包含する。好ましい溶媒は、ヘプタン、メチルtert-ブチルエーテル(また、MTBE、tert-ブチルメチルエーテル、三級ブチルメチルエーテル、およびtBMEとしても知られている)、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、および/またはそれらの混合物である。好ましくは、エタノールなどの水混和性溶媒が、反応混合物の固相からの式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の抽出のために使用される。エタノールの使用は、取り扱いが容易で無毒、環境に優しく、再生可能な原料を使用して産生できるため、有利なこともある。
【0133】
用語「%純度」は、本明細書に使用されるとき、材料中の所望される化合物である、材料中の化合物のパーセンテージ(例えば、所望される化合物の質量の、全材料の質量に対するパーセンテージ比率によって表される)を指す。いくつかの態様において、式(I)で表される化合物(例として(+)-アンベルケタール)は、得られた粗産物から単離されて、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度まで精製される。
【0134】
いくつかの態様において、式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物は、得られた粗産物から単離されて、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度まで精製される。
【0135】
いくつかの態様において、式(I)で表される化合物(例として(+)-アンベルケタール)と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む産物は、得られた粗産物から単離されて、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度まで精製される。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって得られる反応混合物または培養ブロス中の式(Ia)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の濃度は、1mg/Lから20000mg/L(20g/L)まで、または約1mg/Lから約20000mg/Lまでもしくはそれ以上、たとえば、20g/Lから200g/Lまで、もしくは約20g/Lから約200g/Lまでか、100g/Lから500g/Lまで、もしくは約100g/Lから約500g/Lまでか、150g/Lから500g/Lまで、もしくは約150g/Lから約500g/Lまでか、250g/Lから500g/Lまで、もしくは約250g/Lから約500g/Lまでか、300g/Lから500g/Lまで、もしくは約300g/Lから約500g/Lまでか、350g/Lから500g/Lまで、もしくは約350g/Lから約500g/Lまでか、400g/Lから500g/Lまで、もしくは約400g/Lから約500g/Lまでか、または450g/Lから500g/Lまで、もしくは約450g/Lから約500g/Lまでであってもよい。例示の濃度値は、1mg/Lもしくはそれ以上、20g/Lもしくはそれ以上、50g/Lもしくはそれ以上、100g/Lもしくはそれ以上、150g/Lもしくはそれ以上、200g/Lもしくはそれ以上、250g/Lもしくはそれ以上、300g/Lもしくはそれ以上、350g/Lもしくはそれ以上、400g/Lもしくはそれ以上、または450g/Lもしくはそれ以上である。
【0137】
式(III)および(VI)で表される化合物
いくつかの態様において、式(III):
【化20】

式(III)
で表される化合物は副産物として作製される。いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。例えば、式(III)で表される化合物は、式(IIIa):
【化21】

式(IIIa)
で表される立体配置を有していてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択され、好ましくは式中Rは、メチルである。
【0138】
いくつかの態様において、式(VI):
【化22】

式(VI)
で表される化合物は副産物として作製される。いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。例えば、式(VI)で表される化合物は、式(VIa):
【化23】

式(VIa)
で表される立体配置を有していてもよく、任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択され、好ましくは式中Rは、メチルである。
【0139】
当業者は、式(III)で表される化合物、式(IIIa)で表される化合物、式(VI)で表される化合物、および/または式(VIa)で表される化合物などの、特定の副産物の産生が、使用される特定の基質(例えば、式(II)で表される化合物、式(IIa)で表される化合物、または式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物)、ならびに使用される生体触媒(本明細書に記載のとおり)および/または生物変換反応条件に依存してもよいことを理解している。
【0140】
本明細書に記載の方法は、例えば、式(III)で表される化合物の1以上の異性体および/または式(VI)で表される化合物の1以上の異性体を作製してもよい。本明細書に記載の組成物などの産物は、式(III)で表される化合物の1以上の異性体および/または式(VI)で表される化合物の1以上の異性体を含んでいてもよい。結果的に、いくつかの態様において、式(IIIa)で表される立体配置を有する式(III)で表される化合物および/または式(VIa)で表される立体配置を有する式(VI)で表される化合物(任意に式中Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択される)は、副産物として作製される。いくつかの態様において、組成物などの産物は、式(IIIa)で表される立体配置を有する式(III)で表される化合物を含む。いくつかの態様において、組成物などの産物は、式(VIa)で表される立体配置を有する式(VI)で表される化合物を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって作製されるか本明細書に記載の方法の産物中に含まれる式(III)で表される化合物のみが、式(IIIa)で表される立体配置を有する化合物である。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって作製されるか本明細書に記載の方法の産物中に含まれる式(VI)で表される化合物のみが、式(VIa)で表される立体配置を有する化合物である。
【0141】
いくつかの態様において、式(III)で表される化合物の少なくとも50wt%または約50wt%は、式(IIIa)に示される立体配置を有する。いくつかの態様において、式(VI)で表される化合物の少なくとも50wt%または約50wt%は、式(VIa)に示される立体配置を有する。例えば、式(III)で表される化合物の少なくとも60wt%もしくは約60wt%、少なくとも70wt%もしくは約70wt%、少なくとも80wt%もしくは約80wt%、または少なくとも90wt%もしくは約90wt%は、式(IIIa)に示される立体配置を有していてもよい。例えば、式(VI)で表される化合物の少なくとも60wt%もしくは約60wt%、少なくとも70wt%もしくは約70wt%、少なくとも80wt%もしくは約80wt%、または少なくとも90wt%もしくは約90wt%は、式(VIa)に示される立体配置を有していてもよい。いくつかの態様において、式(IIIa)に示される立体配置を有する化合物は、作製されたかまたは産物中に含まれる式(III)で表される化合物の唯一の異性体である、すなわち式(III)で表される化合物の100wt%が式(IIIa)に示される立体配置を有する。いくつかの態様において、式(IIIa)に示される立体配置を有する化合物は、式(III)で表される化合物の、99wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約99wt%であるか、95wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約95wt%であるか、90wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約90wt%であるか、85wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約85wt%であるか、80wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約80wt%であるか、あるいは75wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約75wt%であってもよい。いくつかの態様において、式(VIa)に示される立体配置を有する化合物は、作製されたかまたは産物中に含まれる式(VI)で表される化合物の唯一の異性体である、すなわち式(VI)で表される化合物の100wt%が式(VIa)に示される立体配置を有する。いくつかの態様において、式(VIa)に示される立体配置を有する化合物は、式(VI)で表される化合物の、99wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約99wt%であるか、95wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約95wt%であるか、90wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約90wt%であるか、85wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約85wt%であるか、80wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約80wt%であるか、あるいは75wt%と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約75wt%であってもよい。
【0142】
いくつかの態様において、式(III)で表される化合物の50wt%から100wt%まで、もしくは約50wt%から約100wt%までか、60wt%から99wt%まで、もしくは約60wt%から約99wt%までか、または70wt%から95wt%まで、もしくは約70wt%から約95wt%までが、式(IIIa)で表される立体配置を有する。いくつかの態様において、式(VI)で表される化合物の50wt%から100wt%まで、もしくは約50wt%から約100wt%までか、60wt%から99wt%まで、もしくは約60wt%から約99wt%までか、または70wt%から95wt%まで、もしくは約70wt%から約95wt%までが、式(VIa)で表される立体配置を有する。
【0143】
混合物中の、式(III)で表される化合物の異なる異性体の、および/または式(VI)で表される化合物の異なる異性体の、比率、量、ならびに濃度の決定は、本明細書において以前考察されたいずれの方法によっても実施されてもよい。
【0144】
本明細書に記載の方法に好適な反応条件は、後に本明細書に考察され、例は実験の節においてさらに与えられる。適切な反応条件の追加の例はWO2021/209482(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)から見出されてもよい。
【0145】
本明細書に記載の方法によって得られる産物
ある側面において、本明細書に記載の方法によって作製された組成物などの産物が提供される。本明細書に使用されるとき、「作製された産物」はまた、「産生される」か、本明細書に記載の方法「によって得られる」か、または前記方法「によって得ることができる」とも称されることがある。
【0146】
いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(VI)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(III)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。組成物は、式(III)で表される1以上の異性体、例えば式(IIIa)で表される立体配置を有する化合物を含んでいてもよい。組成物はさらに、式(I)で表される1以上の異性体、例えば式(IV)で表される化合物を含んでいてもよい。組成物は、式(II)で表される化合物の1以上の異性体、例えば未変換量または未反応量の式(II)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。
【0147】
いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物、式(IV)で表される化合物、および式(III)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物、式(IV)で表される化合物、および式(IIIa)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(IIIa)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。
【0148】
いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物、および式(I)で表される化合物の1以上の異性体、例えば式(IV)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。組成物は例えば、式(III)で表される化合物、例えば式(IIIa)で表される化合物をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(II)で表される化合物の1以上の異性体、例えば未変換量または未反応量の式(II)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。
【0149】
いくつかの態様において、組成物は、式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、組成物は、式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物と、式(IV)で表される化合物とを含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。組成物は、式(VI)で表される1以上の異性体、例えば式(VIa)で表される立体配置を有する化合物を含んでいてもよい。組成物は、式(Ia)で表される1以上の異性体をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(IIa)で表される化合物の1以上の異性体、例えば未変換量または未反応量の式(IIa)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。
【0150】
いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。組成物は、式(IV)で表される化合物をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(Ia)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(III)で表される化合物、例えば式(IIIa)で表される化合物をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(VI)で表される化合物、例えば式(VIa)で表される化合物をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(II)で表される化合物の1以上の異性体、例えば未変換量または未反応量の式(II)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。組成物は、式(IIa)で表される化合物の1以上の異性体、例えば未変換量または未反応量の式(IIa)で表される化合物の異性体をさらに含んでいてもよい。いくつかの態様において、組成物は、式(III)で表される化合物を含まない。いくつかの態様において、組成物は、式(IIIa)で表される化合物を含まない。いくつかの態様において、組成物は、式(VI)で表される化合物を含まない。いくつかの態様において、組成物は、式(VIa)で表される化合物を含まない。
【0151】
いくつかの態様における、本明細書に記載の組成物中に存在する式(I)で表される化合物およびその異性体(例えば式(IV)で表される化合物)、式(Ia)で表される化合物およびその異性体(例えば式(V)で表される化合物)、式(II)で表される化合物およびその異性体、式(IIa)で表される化合物およびその異性体、式(III)で表される化合物およびその異性体(例えば式(IIIa)で表される化合物)、ならびに式(VI)で表される化合物およびその異性体(例えば式(VIa)で表される化合物)において、Rは、H(水素)、およびメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどのC1~C4アルキルから選択され、好ましくはRはメチルである。
【0152】
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物における式(I)で表される化合物の式(III)で表される化合物(例として式(IIIa)で表される化合物)に対する比率は、60:40から99:1まで、または約60:40から約99:1までであってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物における式(I)で表される化合物の式(III)で表される化合物に対する比率は、65:35から99:1までもしくは約65:35から約99:1までか、70:30から99:1までもしくは約70:30から約99:1までか、75:25から99:1までもしくは約75:25から約99:1までか、80:20から99:1までもしくは約80:20から約99:1までか、85:15から99:1までもしくは約85:15から約99:1までか、90:10から99:1までもしくは約90:10から約99:1までか、95:5から99:1までもしくは約95:5から約99:1までか、65:35から98:2までもしくは約65:35から約98:2までか、70:30から97:3までもしくは約70:30から約97:3までか、75:25から96:4までもしくは約75:25から約96:4までか、80:20から95:5までもしくは約80:20から約95:5までか、85:15から90:10までもしくは約85:15から約90:10までであってもよい。
【0153】
いくつかの態様において、本明細書に記載の粗産物などの組成物における式(I)で表される化合物の式(II)で表される化合物に対する比率は、90:10から100:0まで、または約90:10から約100:0までであってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の粗産物などの組成物における式(I)で表される化合物の式(II)で表される化合物に対する比率は、92:8から100:0までまたは約92:8から約100:0までか、94:6から100:0までまたは約94:6から約100:0までか、95:5から100:0までまたは約95:5から約100:0までか、96:4から99.5:0.5までまたは約96:4から約99.5:0.5までか、97:3から99:1までまたは約97:3から約99:1までか、98:2から99:1までまたは約98:2から約99:1までであってもよい。
【0154】
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物における式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)の式(VI)で表される化合物(例として式(VIa)で表される化合物)に対する比率は、60:40から99:1まで、または約60:40から約99:1までであってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物における式(Ia)で表される化合物の、好ましくは式(V)で表される化合物の、式(VI)で表される化合物に対する比率は、65:35から99:1までまたは約65:35から約99:1までか、70:30から99:1までまたは約70:30から約99:1までか、75:25から99:1までまたは約75:25から約99:1までか、80:20から99:1までまたは約80:20から約99:1までか、85:15から99:1までまたは約90:10から約99:1までか、90:10から99:1までまたは約90:10から約99:1までか、95:5から99:1までまたは約95:5から約99:1までか、65:35から98:2までまたは約65:35から約98:2までか、70:30から97:3までまたは約70:30から約97:3までか、75:25から96:4までまたは約75:25から約96:4までか、80:20から95:5までまたは約80:20から約95:5までか、85:15から90:10までまたは約85:15から約90:10までかであってもよい。
【0155】
いくつかの態様において、本明細書に記載の粗産物などの組成物における式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)の式(IIa)で表される化合物に対する比率は、90:10から100:0まで、または約90:10から約100:0までであってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の粗産物などの組成物における式(I)で表される化合物の、好ましくは式(V)で表される化合物の、式(II)で表される化合物に対する比率は、92:8から100:0までまたは約92:8から約100:0までか、94:6から100:0までまたは約94:6から約100:0までか、95:5から100:0までまたは約95:5から約100:0までか、96:4から99.5:0.5までまたは約96:4から約99.5:0.5までか、97:3から99:1までまたは約97:3から約99:1までか、98:2から99:1までまたは約98:2から約99:1までであってもよい。
【0156】
組成物における、式(I)で表される化合物およびその異性体、例えば式(IV)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物およびその異性体、例えば式(V)で表される化合物、式(II)で表される化合物およびその異性体、式(IIa)で表される化合物およびその異性体、式(III)で表される化合物およびその異性体、例えば式(IIIa)で表される化合物、ならびに式(VI)で表される化合物およびその異性体、例えば式(VI)で表される化合物の比率、量、および濃度の決定は、本明細書に以前考察されたいずれかの方法によって実施されてもよい。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって得られるかまたはそれによって得ることができる組成物は、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)を固体形態で、好ましくはアモルファス形態または結晶形態で含む。
【0158】
フレグランス組成物
本明細書に記載の方法によって作製された組成物などの産物は、フレグランス組成物に含まれていてもよい。結果的に、フレグランス組成物の製造のための、本明細書に記載のとおりの組成物の使用がさらに提供される。いくつかの態様において、フレグランス組成物は、式(I)で表される化合物を含む。任意に、フレグランス組成物は、式(I)で表される化合物、例えば式(IV)で表される化合物、の異性体を含む。いくつかの態様において、フレグランス組成物は、式(Ia)で表される化合物、好ましくは式(V)で表される化合物を含む。いくつかの態様において、フレグランス組成物は、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物を含む。いくつかの態様において、組成物は、式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物を含む。任意に、フレグランス組成物は、式(Ia)で表される化合物の異性体を含む。
【0159】
「フレグランス組成物」は、本明細書に使用されるとき、式(I)で表される化合物と、任意に式(I)で表される化合物(例えば式(IV)で表される化合物など)の1以上の異性体と、基材とを含むいずれかの組成物を包含する。それはさらに、式(Ia)で表される化合物と基材とを含むいずれかの組成物を包含する。それはさらに、式(V)で表される化合物と、任意に式(Ia)で表される化合物の1以上の他の異性体と、基材とを含む組成物を包含する。それはさらに、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物と基材とを含むいずれかの組成物を包含する。それはさらに、式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物と基材とを含み、任意に式(I)で表される化合物の1以上の異性体および/または式(Ia)で表される化合物の1以上の他の異性体を追加して含む、いずれかの組成物を包含する。
【0160】
本明細書に使用されるとき、「基材」は、精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大員環および複素環などの、広範囲にわたる目下利用可能な天然産物ならびに合成分子から選択される、知られている全てのフレグランス成分を、および/またはフレグランス組成物中におい物質と併せて従来使用されている1以上の成分もしくは賦形剤(例えば、当該技術分野において一般的に使用されている担体材料、希釈剤、および他の助剤;それらの例は、Perfume Engineering: Design, Performance and Classification (2012), Miguel Teixeira et al., Butterworth-Heinemann, UK(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの標準的なハンドブックから見出され得る)と混和されて、包含するものと理解されていてもよい。
【0161】
好適なフレグランス成分はさらに市販されている。かかる成分の非限定例は、次を包含する:
- 精油ならびに抽出物、例として、海狸香、コスタスルート(costus root)油、オークモスアブソリュート、ゼラニウム油、ツリーモス(tree moss)アブソリュート、バジル油、果実油、たとえば、ベルガモット油およびマンダリン油、ミルテ油、パルマローザ油、パッチュリ油、プチグレン油、ジャスミン油、バラ油、白檀油、アブサン油、ラベンダー油、および/またはイランイラン油;
- アルコール、例として、桂皮アルコール((E)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オール);cis-3-ヘキセノール((Z)-ヘキサ-3-エン-1-オール);シトロネロール(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);ジヒドロミルセノール(2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール);エバノール(Ebanol)(商標)((E)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタ-4-エン-2-オール);オイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール);エチルリナロール((E)-3,7-ジメチルノナ-1,6-ジエン-3-オール);ファルネソール((2E,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール);ゲラニオール((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール);スーパーミュゲ(Super Muguet)(商標)((E)-6-エチル-3-メチルオクタ-6-エン-1-オール);リナロール(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール);メントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール);ネロール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール);フェニルエチルアルコール(2-フェニルエタノール);ロジノール(Rhodinol)(商標)(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);サンダロア(Sandalore)(商標)(3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタン-2-オール);テルピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロパン-2-オール);またはティンベロール(Timberol)(商標)(1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール);2,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、および/または[1-メチル-2(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル]-メタノール;
- アルデヒドならびにケトン、例として、アニスアルデヒド(4-メトキシベンズアルデヒド);アルファアミル桂皮アルデヒド(2-ベンジリデンヘプタナール);ゲオルギーウッド(Georgywood)(商標)(1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);ヒドロキシシトロネラール(7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール);イソEスーパー(Iso E Super)(登録商標)(1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);イソラルデイン(Isoraldeine)(登録商標)((E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン);3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール;マルトール;メチルセドリルケトン;メチルイオノン;ベルベノン;および/またはバニリン;
- エーテルならびにアセタール、例として、アンブロックス(登録商標)(3a,6,6,9a-テトラメチル-2,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[e][1]ベンゾフラン);ゲラニルメチルエーテル((2E)-1-メトキシ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン);ローズオキシド(4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン);および/またはスピランブレン(Spirambrene)(登録商標)(2',2',3,7,7-ペンタメチルスピロ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2,5'-[1,3]ジオキサン]);
- 大員環、例として、アンブレットリド((Z)-オキサシクロへプタデカ-10-エン-2-オン);ブラシル酸エチレン(1,4-ジオキサシクロへプタデカン-5,17-ジオン);および/またはエグザルトリド(Exaltolide)(登録商標)(16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン);ならびに
- ヘテロ環、例として、イソブチルキノリン(2-イソブチルキノリン)。
【0162】
本明細書に使用されるとき、「担体材料」は、におい物質の観点から実際的にニュートラルの材料、すなわち、におい物質の官能特性を有意には改変しない材料であると理解されてもよい。用語「希釈剤」は、におい物質、例えばフタル酸ジエチル(DEP)、ジプロピレングリコール(DPG)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、クエン酸トリエチル(TEC)、およびアルコール(例として、エタノール)と併せて従来使用されているいずれかの希釈剤を包含するものと理解されてもよい。用語「助剤」は、フレグランス組成物の嗅覚性能には特に関連しないとの理由から、該組成物に採用されてもよいいずれかの成分を包含するものと理解されてもよい。例えば、抗酸化アジュバントなどの、助剤は、フレグランス成分(単数もしくは複数)または該成分(単数もしくは複数)を含有する組成物を加工する補助剤として作用する成分であってもよく、あるいはフレグランス成分もしくは同成分を含有する組成物の操作または保管を改善させてもよい。該抗酸化剤は、例えば、チノガード(Tinogard)(登録商標)TT(BASF)、チノガード(登録商標)Q(BASF)、トコフェロール(tocopherol)(その異性体、CAS 59-02-9;364-49-8;18920-62-2;121854-78-2を包含する)、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(BHT、CAS 128-37-0)、および関連するフェノール、ヒドロキノン(CAS 121-31-9)から選択されてもよい。助剤はまた、色または質感をフレグランス組成物へ付与するなどの追加の恩恵を提供する成分でもあり得る。助剤はまた、光への耐性または化学安定性の増大を、フレグランス組成物中に含有される1以上の成分へ付与する成分でもあり得る。本明細書に考察されるフレグランス成分、担体材料、希釈剤、および助剤は、非限定例として理解されるべきである;当業者は、当該技術分野において一般的に使用されている好適な基材を承知しており、それらの例は、Perfume Engineering: Design, Performance and Classification(上記参照)などの標準的なハンドブックにおいて利用可能なものである。
【0163】
本明細書に記載のとおりの、式(I)で表される化合物、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)、および式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む混合物はさらに、目下利用可能な(+)-アンベルケタール成分が商業的に使用されている実質的にすべての製品を包含するファブリックケア、洗面用具、美容用品および洗浄製品、洗剤製品、ならびに石鹸製品などの高級フレグランスまたは消費者製品に限定されないがこれらを包含する複数の組成物に含まれていてもよい。
【0164】
本開示はさらに、本明細書に記載のとおりの組成物またはフレグランス組成物(それらのいずれの態様も包含する)を含む消費者向製品を提供する。消費者向製品は、例えば、化粧品(例として、オードパルファムもしくはオードトワレ)、洗浄製品、洗剤製品、または石鹸製品であってもよい。
式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む混合物を含むフレグランスおよび消費者向製品は、ユニークな嗅覚特性を呈するところ、有利なこともある。
【0165】
結果的に、いくつかの態様において、フレグランス組成物または消費者向製品は、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)とを含む組成物を含み、ここで該組成物は、本明細書に記載の方法によって得られるかまたはそれによって得ることができる。いくつかの態様において、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)は、固体形態にあり、好ましくはアモルファス形態または結晶形態にある。
【0166】
出発材料および中間体
ある側面において、本開示は、本明細書に記載の方法に使用される出発材料および中間体を提供する。
【0167】
また本明細書に提供されるのは、式(II)で表される化合物を含むか、本質的にこれからなるか、またはこれからなる混合物もある。例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物の異性体の3つ、例えばE,Z-異性体と、E,E-異性体と、Z,E-異性体またはZ,Z-異性体のいずれかとを含んでいる。いくつかの態様において、混合物は、式(II)で表される化合物の4つすべての異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体を含んでいる。
【0168】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。
【0169】
また本明細書に提供されるのは、式(IIa)で表される化合物を含むか、本質的にこれからなるか、またはこれからなる混合物もある。例えば、混合物は、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物の異性体の3つ、例えばE,Z-異性体と、E,E-異性体と、Z,E-異性体またはZ,Z-異性体のいずれかとを含んでいる。いくつかの態様において、混合物は、式(IIa)で表される化合物の4つの異性体、すなわちE,Z-異性体、E,E-異性体、Z,E-異性体、およびZ,Z-異性体を含んでいる。
【0170】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。
【0171】
また本明細書に提供されるのは、式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物を含むか、本質的にこれからなるか、またはこれからなる混合物もある。例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらからなっていてもよい。例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。
【0172】
例えば、混合物は、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-8とC-9との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-4とC-5との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(II)で表される化合物(E,Z-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合もE-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,E-異性体)と、C-6とC-7との間の二重結合がE-立体配置にあり、かつC-2とC-3との間の二重結合がZ-立体配置にあるような式(IIa)で表される化合物(E,Z-異性体)とを含んでいても、本質的にこれらからなっていても、またはこれらかなっていてもよい。任意に、混合物はさらに、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。
【0173】
いくつかの態様において、Rは、H(水素)、およびC1~C4アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルなどから選択され、好ましくはRはメチルである。
【0174】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約20:80であるか、30:70と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約30:70であるか、40:60と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約40:60であるか、50:50と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約50:50であるか、60:40と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約60:40であるか、70:30と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約70:30であるか、80:20と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約80:20であるか、85:15と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約85:15であるか、90:10と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約90:10であるか、95:5と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約95:5であるか、あるいは99:1と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約99:1である。
【0175】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約95:5であるか、90:10と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約90:10であるか、85:15と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約85:15であるか、80:20と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約80:20であるか、70:30と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約70:30であるか、60:40と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約60:40であるか、50:50と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約50:50であるか、40:60と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約40:60であるか、30:70と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約30:70であるか、20:80と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約20:80であるか、あるいは10:90と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約10:90である。
【0176】
式(II)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比は、10:90から99:1までもしくは約10:90から約99:1まで、10:90から90:10までもしくは約10:90から約90:10まで、または約5:95から約95:5まで、または約4:96から約96:4まで、または約3:97から約97:3まで、または約2:98から約98:2まで、または約1:99から約99:1まで、または約20:80から約80:20まで、50:50から80:20までもしくは約50:50から約80:20まで、または60:40から80:20までもしくは約60:40から約80:20まであってもよい。任意に、混合物はさらに、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。
【0177】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90と等しいかもしくはこれより大きいか、または約10:90であってもよい。いくつかの態様において、比率は、20:80と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約20:80であるか、30:70と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約30:70であるか、40:60と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約40:60であるか、50:50と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約50:50であるか、60:40と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約60:40であるか、70:30と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約70:30であるか、80:20と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約80:20であるか、85:15と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約85:15であるか、90:10と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約90:10であるか、95:5と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約95:5であるか、あるいは99:1と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約99:1である。
【0178】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいか、または約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約95:5であるか、90:10と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約90:10であるか、85:15と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約85:15であるか、80:20と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約80:20であるか、70:30と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約70:30であるか、60:40と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約60:40であるか、50:50と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約50:50であるか、40:60と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約40:60であるか、30:70と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約30:70であるか、20:80と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約20:80であるか、あるいは10:90と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約10:90である。
【0179】
式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体とE,E-異性体とを含む混合物において、E,Z-異性体のE,E-異性体に対する比率は、10:90から99:1までもしくは約10:90から約99:1まで、10:90から90:1までもしくは約10:90から約90:1まで、もしくは20:80から80:20までもしくは約20:80から約80:20まで、50:50から80:20までもしくは約50:50から約80:20まで、または60:40から80:20までもしくは約60:40から約80:20までであってもよい。任意に、混合物はさらに、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の1以上の他の異性体を含んでいてもよい。
【0180】
式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において、式(II)で表される化合物の式(IIa)で表される化合物に対する比率は、50:50と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約50:50であっても、60:40と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約60:40であっても、70:30と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約70:30であっても、80:20と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約80:20であっても、85:15と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約85:15であっても、90:10と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約90:10であっても、95:5と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約95:5であっても、あるいは99:1と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約99:1であってもよい。
【0181】
式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において、式(II)で表される化合物の式(IIa)で表される化合物に対する比率は、99:1と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約99:1であってもよい。いくつかの態様において、比率は、95:5と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約95:5であるか、90:10と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約90:10であるか、85:15と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約85:15であるか、80:20と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約80:20であるか、70:30と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約70:30であるか、60:40と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約60:40であるか、50:50と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約50:50であるか、40:60と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約40:60であるか、30:70と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約30:70であるか、20:80と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約20:80であるか、あるいは10:90と等しいかもしくはこれより小さいかまたは約10:90である。
【0182】
式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において、式(II)で表される化合物の式(IIa)で表される化合物に対する比率は、10:90から99:1までもしくは約10:90から約99:1まで、10:90から90:1までもしくは約10:90から約90:1まで、もしくは20:80から80:20までもしくは約20:80から約80:20まで、50:50から80:20までもしくは約50:50から約80:20まで、または60:40から80:20までもしくは約60:40から約80:20までであってもよい。
【0183】
スクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素
本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のとおりのスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素を利用する。
【0184】
いくつかの態様において、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ酵素は、配列番号1または配列番号43~49の配列と、好ましくは配列番号1の配列と、少なくとも30%、40%、50%、60%、または70%の、好ましくは少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。配列番号1は、Bacillus megaterium由来のSHC酵素(BmeSHC)を表す。配列番号43は、Alicyclobacillus acidocaldarius由来のSHC酵素(AacSHC)を表す。配列番号44および45は、Zymomonas mobilis由来のSHC酵素(夫々、ZmoSHC1およびZmoSHC2)を表す。配列番号46は、Bradyrhizobium japonicum由来のSHC酵素(BjaSHC)を表す。配列番号47は、Thermosynechococcus elongatus由来のSHC酵素(TeISHC)を表す。配列番号48は、Acetobacter pasteurianus由来のSHC酵素(ApaSHC)を表す。配列番号49は、Gluconobacter morbifer由来のSHC酵素(GmoSHC)を表す。これらの酵素の更なる記載は、WO2021/209482に見出されることもある。
【0185】
いくつかの態様において、本明細書に記載のスクアレン-ホペンシクラーゼ(SHC)酵素は、配列番号1または配列番号43~49の配列と、好ましくは配列番号1の配列と、少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、もしくは100%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも30%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも35%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも40%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも45%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも50%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも55%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも60%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも65%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも70%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも75%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも80%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも85%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも90%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも95%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも95.5%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも96%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも96.5%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも97%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも97.5%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも98%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも98.5%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも99%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は、少なくとも99.5%である。いくつかの態様において、同一性または類似性は100%未満である、すなわちアミノ酸配列は、配列番号1とも配列番号43~49とも、好ましくは配列番号1とも同一ではない。配列の定義「同一性」および「類似性」、ならびにそれらの決定のための方法は、本明細書の後の「一般的な定義」と題する節において提供される。
【0186】
本明細書に記載のSHC酵素は、その配列へ修飾を導入することによって、配列番号1または配列番号43~49によって表されるSHC酵素に、好ましくは配列番号1によって表されるSHC酵素に由来してもよい。かかる酵素はまた、本明細書において「SHCバリアント」、「SHC変異体」、または「SHC誘導体」とも称されることがある。本明細書に記載のSHC酵素はまた、既存のSHCバリアントの配列への追加的修飾の導入によって、他のSHCバリアントに由来してもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、天然に存在しないものであってもよい。
【0187】
換言すれば、SHCバリアントなどの用語「バリアント」は、それが由来するポリペプチドとの比較において1以上の配列修飾を含む本明細書に記載のポリペプチド(酵素)として理解されるべきである。バリアントが由来するポリペプチドはまた、本明細書において、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチド(すなわち、親SHC酵素または参照SHC酵素)とも称されることがある。親のSHC酵素は、野生型の酵素であってもよい。親SHC酵素は、野生型ポリペプチドのホモログ、オルソログ、またはパラログであってもよい。親SHC酵素は、別のバリアントであってもよい、すなわち、先に得られたバリアント酵素と比較して、そのアミノ酸配列における追加の修飾の導入に由来する酵素であってもよい。よって、本明細書に記載のSHC酵素は、SHCバリアントの「旧世代」に由来してもよく、それらの親SHC酵素と比較して改善された特性を呈することもある。バリアント酵素に含まれてもよい配列修飾の例は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、N末切断(truncations)、C末切断、またはそれらの組み合わせである。バリアント酵素は、例えば、ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、指向進化、遺伝子シャフリング、CRISPR/Cas媒介変異誘発等など(それらの例はまた、In Vitro Mutagenesis: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology 1498), 1st Edition, Reeves A. (Ed), Humana Press (2017)(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの標準的なハンドブックにおいても利用可能である)、当業者に知られている変異誘発技法を使用して、該酵素をコードするヌクレオチド配列を修飾した後に、合成的に作製されても、または細胞(もしくはin vitro)産生によって作製されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、合成的に作製される。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、組換え宿主細胞によって産生される。
【0188】
本明細書に記載のSHCの配列修飾は、配列番号1または配列番号43~49によって、好ましくは配列番号1によって表されるSHC酵素などのその親SHC酵素と比較したとき、当該技術分野において利用可能であってかつ後に本明細書に「一般的な定義」と題される節においてさらに考察される標準的なバイオインフォマティクスアルゴリズムを使用して、それら夫々のアミノ酸配列のまたは該酵素をコードする核酸のヌクレオチド配列の直接比較を介して同定されてもよい。これらのアルゴリズムは典型的には、ルーチンの配列アラインメント法を利用するが、前記方法において、ある配列の特定の位置に対応する特定のヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、それに対してアラインされる参照配列の対応する位置に一致させられる。
【0189】
配列番号1を例にとり、かかる方法を使用すると、当業者は、配列番号1が参照配列として使用され、かつ問題になっているSHC酵素アミノ酸配列がそれに対してアラインされている場合、例として、SHC酵素のどのアミノ酸の位置が、例えば配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585(または配列番号1の別の他の位置)に対応するかを容易に同定し得る。同様に、配列番号1をコードする核酸のヌクレオチド配列1と問題のSHC酵素とが代わりにアラインされている場合、特定のアミノ酸残基をコードする対応するヌクレオチドの位置が同定されてもよい。この点に関し、当業者は、配列番号1のN末端でのメチオニン(M)残基が位置1に対応すること、配列番号1のC末端でのセリン(S)残基が位置が625に対応すること、および配列番号1のN末端とC末端との間にあるアミノ酸が夫々位置2~624に対応することを理解している。
【0190】
アミノ酸置換は、親(参照)アミノ酸配列中のアミノ酸残基(またはアミノ酸配列をコードする核酸のヌクレオチド配列中のヌクレオチド)を置き換えて、同数のアミノ酸を有するバリアント(誘導体)配列をもたらす配列修飾を指す。アミノ酸置換は、いずれか他のアミノ酸による置換に対応していてもよい。アミノ酸置換は保守的であってもよい。「保存的」置換の定義は、後に本明細書において提供される。アミノ酸置換は、配列番号1または配列番号43~49によって、好ましくは配列番号1によって表される配列などの親SHC酵素配列の複数の特定のアミノ酸位置に対応していてもよい。複数のアミノ酸が置換された態様において、それらは、連続した位置に、連続していない位置に、またはポリペプチド配列において空間的に離れた位置に対応していてもよい。
【0191】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を含む。置換の好ましい位置は、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585の群から選択でされてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の好ましいSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、355、483、および539の位置に対応する1以上の位置にて含む。好ましくは、配列番号1に対する1以上のアミノ酸置換は、配列番号1の位置2、5、35、166、211、212、483、および539に対応する1以上の位置にある。より好ましくは、配列番号1に対する1以上のアミノ酸置換は、配列番号1の位置2、5、35、166、211、483、および539に対応する1以上の位置にある。
【0192】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、または少なくとも14のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも2つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも3つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも4つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも5つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも6つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも7つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも8つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも9つのアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも10のアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも11のアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも12のアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも13のアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。いくつかの態様において、少なくとも14のアミノ酸が、配列番号1に対して置換されている。置換の好ましい位置は、位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585、好ましくは2、5、35、166、211、212、355、483、および539、より好ましくは2、5、35、166、211、212、483、および539、最も好ましくは2、5、35、166、211、483、および539の群から選択されてもよい。
【0193】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し1~7、好ましくは2~6、より好ましくは3~5アミノ酸の置換を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、1~7、好ましくは2~6、より好ましくは3~5アミノ酸の置換を、配列番号1の位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585、好ましくは2、5、35、166、211、212、355、483、および539、より好ましくは2、5、35、166、211、212、483、および539、最も好ましくは配列番号1の2、5、35、166、211、483、および539に対応する1以上の位置にて含む。
【0194】
本明細書に使用されるとき、「保存的な」アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の交換可能性を指す。保存アミノ酸の置換は、実例として、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいてなされてもよい。
【0195】
保存的置換のためのアミノ酸残基の類似クラスの例は、下の表に与えられる。
【表A】
【0196】
代替の保存アミノ酸残基置換クラス:
【表B】
【0197】
アミノ酸残基の代替の物理的および機能的な分類:
【表C】
【0198】
例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンである;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保守的なアミノ酸置換の群は次:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。本明細書に開示のアミノ酸配列の置換バリアントは、開示された配列において少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されているバリアントである。好ましくは、アミノ酸変化は保存的である。天然に存在するアミノ酸各々への好ましい保存的置換は、以下のとおりである:Ala→Ser;Arg→Lys;Asn→GlnまたはHis;Asp→Glu;Cys→SerまたはAla;Gln→Asn;Glu→Asp;Gly→Pro;His→AsnまたはGln;Ile→LeuまたはVal;Lys→Arg;GlnまたはGlu;Met→LeuまたはIle;Phe→Met、Leu、またはTyr;Ser→Thr;Thr→Ser;Trp→Tyr;Tyr→TrpまたはPhe;およびVal→IleまたはLeu。
【0199】
本明細書に記載の配列番号1における特定の位置に対応する好ましい置換位置にて生じる好ましい置換は、下に指し示される。
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置2に対応するイソロイシン(I)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはグルタミン(Q)によって、より好ましくはアスパラギン(N)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0200】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置5に対応するロイシン(L)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはプロリン(P)、メチオニン(M)、またはシステイン(C)によって、より好ましくはプロリン(P)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置35に対応するトレオニン(T)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはアラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、グリシン(G)、またはロイシン(L)によって、より好ましくはアラニン(A)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0201】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置116に対応するイソロイシン(I)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)、またはグルタミン(Q)によって、より好ましくはトレオニン(T)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0202】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置166に対応するトレオニン(T)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはアラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、グリシン(G)、またはロイシン(L)、より好ましくはアラニン(A)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0203】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置211に対応するグルタミン酸(E)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはバリン(V)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、グリシン(G)、またはロイシン(L)によって、より好ましくはバリン(V)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0204】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置212に対応するセリン(S)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはアルギニン(R)、リシン(K)、またはヒスチジン(H)によって、より好ましくはアルギニン(R)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0205】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置317に対応するロイシン(L)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはメチオニン(M)、プロリン(P)、またはシステイン(C)によって、より好ましくはメチオニン(M)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0206】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置355に対応するアラニン(A)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)、またはグルタミン(Q)によって、より好ましくはトレオニン(T)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0207】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置382に対応するセリン(S)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはトレオニン(T)、アスパラギン(N)、またはグルタミン(Q)によって、より好ましくはトレオニン(T)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0208】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置399に対応するイソロイシン(I)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはバリン(V)、アラニン(A)、またはグリシン(G)、ロイシン(L)によって、より好ましくはバリン(V)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0209】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置483に対応するチロシン(Y)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはシステイン(C)、メチオニン(M)、またはプロリン(P)によって、より好ましくはシステイン(C)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0210】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置539に対応するロイシン(L)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはヒスチジン(H)、アルギニン(R)、またはリシン(K)によって、より好ましくはヒスチジン(H)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0211】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1の位置585に対応するグルタミン酸(E)が、いずれかのアミノ酸によって、好ましくはアラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、グリシン(G)、またはロイシン(L)によって、より好ましくはアラニン(A)によって置換されているアミノ酸配列を含む。
【0212】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの好ましいSHC酵素は、配列番号1の配列と少なくとも30%、40%、50%、60%、もしくは70%、好ましくは少なくとも70%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはここでSHC酵素は、配列番号1に対し1以上のアミノ酸置換を、位置2、5、35、116、166、211、212、317、355、382、399、483、539、および585、好ましくは2、5、35、166、211、212、355、483、および539、より好ましくは2、5、35、166、211、212、483、および539、最も好ましくは2、5、35、166、211、211、483、および539に対応する1以上の位置にて含む。いくつかの態様において、配列番号1の配列との同一性または類似性は、少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、または100%である。
【0213】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、以下から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) 配列番号1の位置2に対応する位置でのアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)、もしくはグルタミン(Q)残基;
(ii) 配列番号1の位置5に対応する位置でのプロリン(P)、メチオニン(M)、もしくはシステイン(C)残基;
(iii) 配列番号1の位置35に対応する位置でのアラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、グリシン(G)、もしくはロイシン(L)残基;
(iv) 配列番号1の位置116に対応する位置でのトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)、もしくはグルタミン(Q)残基;
(v) 配列番号1の位置166に対応する位置でのアラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、グリシン(G)、もしくはロイシン(L)残基;
(vi) 配列番号1の位置211に対応する位置でのバリン(V)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、グリシン(G)、もしくはロイシン(L)残基;
(vii) 配列番号1の位置212に対応する位置でのアルギニン(R)、リシン(K)、もしくはヒスチジン(H)残基;
(viii) 配列番号1の位置317に対応する位置でのメチオニン(M)、プロリン(P)、もしくはシステイン(C)残基;
(ix) 配列番号1の位置355に対応する位置でのトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)、もしくはグルタミン(Q)残基;
(x) 配列番号1の位置382に対応する位置でのトレオニン(T)、アスパラギン(N)、もしくはグルタミン(Q)残基;
(xi) 配列番号1の位置399に対応する位置でのバリン(V)、アラニン(A)、グリシン(G)、もしくはロイシン(L)残基;
(xii) 配列番号1の位置483に対応する位置でのシステイン(C)、メチオニン(M)、もしくはプロリン(P)残基;
(xiii) 配列番号1の位置539に対応する位置でのヒスチジン(H)、アルギニン(R)、もしくはリシン(K)残基;
(xiv) 配列番号1の位置585に対応する位置でのアラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、グリシン(G)、もしくはロイシン(L)残基;または
(xv) それらのいずれかの組み合わせ。
【0214】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、以下から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) 配列番号1の位置2に対応する位置でのアスパラギン(N)残基;
(ii) 配列番号1の位置5に対応する位置でのプロリン(P)残基;
(iii) 配列番号1の位置35に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(iv) 配列番号1の位置116に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(v) 配列番号1の位置166に対応する位置でのアラニン(A)残基;
(vi) 配列番号1の位置211に対応する位置でのバリン(V)残基;
(vii) 配列番号1の位置212に対応する位置でのアルギニン(R)残基;
(viii) 配列番号1の位置317に対応する位置でのメチオニン(M)残基;
(ix) 配列番号1の位置355に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(x) 配列番号1の位置382に対応する位置でのスレオニン(T)残基;
(xi) 配列番号1の位置399に対応する位置でのバリン(V)残基;
(xii) 配列番号1の位置483に対応する位置でのシステイン(C)残基;
(xiii) 配列番号1の位置539に対応する位置でのヒスチジン(H)残基;
(xiv) 配列番号1の位置585に対応する位置でのアラニン(A)残基;または
(xv) それらのいずれかの組み合わせ。
【0215】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対応する以下の位置から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) 2、35、355、および539;
(ii) 166;
(iii) 2および483;
(iv) 2、483、および539;
(v) 2、5、35、539;
(vi) 2、5、35、および483;
(vii) 2、5、35、166、および539;
(viii) 2、5、35、166、211、および539;
(ix) 2、5、35、211、212、483、および539;
(x) 2、166、および483;
(xi) 2、166、483、および539;
(xii) 2、166、211、および483;または
(xiii) 2、166、211、483、および539。
【0216】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、以下から選択される、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む:
(i) I2N、T35A、A355T、およびL539H;
(ii) T166A;
(iii) I2NおよびY483C;
(iv) I2N、Y483C、およびL539H;
(v) I2N、L5P、T35A、L539H;
(vi) I2N、L5P、T35A、およびY483C;
(vii) I2N、L5P、T35A、T166A、およびL539H;
(viii) I2N、L5P、T35A、T166A、E211V、およびL539H;
(ix) I2N、L5P、T35A、E211V、S212R、Y483C、およびL539H;
(x) I2N、T166A、およびY483C;
(xi) I2N、T166A、Y483C、およびL539H;
(xii) I2N、T166A、E211V、およびY483C;または
(xiii) I2N、T166A、E211V、Y483C、およびL539H。
【0217】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T35A、A355T、L539H。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211V置換を含む。
【0218】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: T166A。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211Vおよび/またはL539H置換を含む。
【0219】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、Y483C。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211Vおよび/またはL539H置換を含む。
【0220】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、Y483C、L539H。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211V置換を含む。
【0221】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、L5P、T35A、L539H。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211V置換を含む。
【0222】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、L5P、T35A、Y483C。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211Vおよび/またはL539H置換を含む。
【0223】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、L5P、T35A、T166A、L539H。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211V置換を含む。
【0224】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、L5P、T35A、T166A、E211V、L539H。
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、L5P、T35A、E211V、S212R、Y483C、L539H。
【0225】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T166A、Y483C。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211Vおよび/またはL539H置換を含む。
【0226】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T166A、Y483C、L539H。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211V置換を含む。
【0227】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T166A、E211V、Y483C。任意に、それはさらに、配列番号1に対しL539H置換を含む。
【0228】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T166A、E211V、Y483C、L539H。
【0229】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、配列番号1に対し以下のアミノ酸置換を含む: I2N、T166A。任意に、それはさらに、配列番号1に対しE211Vおよび/またはL539H置換を含む。任意に、それはさらに、配列番号1に対しY483C置換を含む。
【0230】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、L5P、T35A、E211V、Y483C、およびL539Hから選択される、配列番号1に対する1以上の置換をさらに含む。
当業者は、本明細書に記載のアミノ酸置換を表す位置の番号付けが、本明細書の他のどこかで考察されるとおり、配列番号1の対応する位置を指すことを理解している。
【0231】
いくつかの態様において、ここで説明するSHC酵素のいずれかが、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、または42、好ましくは配列番号4、8、18、20、22、24、30、32、34、36、38、40、または42、より好ましくは配列番号30、32、34、36、38、40、または42、最も好ましくは配列番号30、38、40、または42のいずれかと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号30、34、36、40、または42のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号4のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号6のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号8のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号10のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号12のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号14のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号16のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号18のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号20のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号22のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号24のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号26のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号28のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号30のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号32のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号34のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号36のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号38のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号40のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号42のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は、少なくとも91%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも92%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも93%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも94%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも95%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも95.5%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも96%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも96.5%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも97%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも97.5%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも98%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも98.5%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも99%同一であってもよい。アミノ酸配列は、少なくとも99.5%同一であってもよい。アミノ酸配列は、同一であってもよい。
【0232】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、または41、好ましくは配列番号3、7、17、19、21、23、29、31、33、35、37、39、または41、より好ましくは配列番号29、31、33、35、37、39、または41、最も好ましくは配列番号29、37、39、または41のいずれかと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号29、33、35、39、または41のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号3と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号5と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号7と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号9と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号13と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号15と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号17と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号19と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号21と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号23と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号25と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号27と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号29と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号31と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号33と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号35と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号37と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号39と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素のいずれかが、配列番号41と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。
【0233】
ヌクレオチド配列は、少なくとも91%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも92%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも93%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも94%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも95%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも95.5%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも96%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも96.5%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも97%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも97.5%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも98%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも98.5%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも99%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、少なくとも99.5%同一であってもよい。ヌクレオチド配列は、同一であってもよい。
【0234】
本明細書に使用されるとき、用語「活性」または「酵素活性」または「生物活性」は、酵素の、基質との反応による標的産物の提供能を指す。「SHC活性」または「SHC酵素活性」または「SHC生物活性」は、例えば、本明細書に記載のSHC酵素の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換能、例えばヒドロキシファルネシルアセトンから(+)-アンベルケタールへのそれらの変換能を指すこともある。それはまた、例えば、本明細書に記載のSHC酵素の、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への、好ましくは式(V)で表される化合物への変換能も指すことがある。それはまた、例えば、本明細書に記載のSHC酵素の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換能も指すことがあり、ここで式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物は、本明細書に以前記載されとおり混合物に含まれている。
【0235】
その酵素活性を呈するSHC酵素はまた、本明細書において機能酵素とも称されることがある。酵素活性は、例えば、標的産物の増加、基質(もしくは出発材料)の減少の監視を介して、または時間の関数としてのこれらのパラメータの組み合わせを介して、活性試験として知られているものを使用して決定され得る。
【0236】
本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(II)で表される化合物(例としてヒドロキシファルネシルアセトン)から式(I)で表される化合物(例として(+)-アンベルケタール)への変換のための酵素活性が増大していてもよく、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換のための酵素活性が増大していてもよい。増大した酵素活性は、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への酵素的変換のいずれかの側面を指してもよく、例えば、増加した総変換(total conversion)(収率)、増大した変換率(例として(これらに限定されないが)、反応の最初の4時間での、または最初の6時間での、または最初の12時間での、または最初ので24時間での、または最初の48時間での、最初の72時間での、または最初の96時間での、または最初の120時間での、または最初の144時間での、または最初の168時間での)、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の増大した産生、および/または副産物の減少した産生を包含する。増大した酵素活性は、一般に増大した産生能によって定義されてもよく、これは、1時間の反応時間当たり(典型的には反応開始の時点から測定される)、1グラムの生体触媒当たり、および1リットルの反応物当たりに産生される式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の点で定義されてもよい。
【0237】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法に従うSHC酵素の利用は、その親SHC酵素の利用と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い産生能をもたらす。
【0238】
SHC酵素活性を決定して定量化するためのアッセイは当該技術分野において知られており、さらなる例は本明細書の実験の節において提供される。一例として、本明細書に記載のSHC酵素の活性は、適切な条件下で適切な基質で酵素(単数もしくは複数)を産生した宿主細胞または完全組換え宿主細胞から精製された酵素(単数もしくは複数)あるいは抽出物をインキュベートすること、ならびに基質および反応産物の分析(例として、Encyclopedia of Analytical Science: 3rd Edition(上記参照)などの当該技術分野における標準的なハンドブックにおいて考察されるとおりのガスクロマトグラフィー(GC)またはHPLC分析による)を実行することによって決定され得る。SHC酵素活性アッセイおよび反応産物の分析のさらなる詳細は、例において提供される。これらのアッセイは、組換え宿主細胞(例としてE. coli)において酵素を産生することを包含していてもよい。
【0239】
本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(II)で表される化合物の増大した総変換を提供してもよい。したがって、本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法は、その親SHC酵素を使用する方法と比較して、式(II)で表される化合物の増大した総変換を有してもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(IIa)で表される化合物の増大した総変換を提供してもよい。したがって、本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法は、その親SHC酵素を使用する方法と比較して、式(IIa)で表される化合物の増大した総変換を有してもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物の増大した総変換を提供してもよい。したがって、本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法は、その親SHC酵素を使用する方法と比較して、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物の増大した総変換をもたらしてもよく、ここで式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物は、本明細書に以前記載されたとおり混合物に含まれている。
【0240】
本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の増大した変換率を提供してもよい。したがって、本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法は、その親SHC酵素を使用する方法と比較して、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の増大した変換率を提供してもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、反応の最初の2時間にわたる、最初の4時間にわたる、最初の6時間にわたる、最初の8時間にわたる、最初の12時間にわたる、最初の24時間にわたる、最初の36時間にわたる、最初の48時間にわたる、最初の72時間にわたる、最初の96時間にわたる、最初の120時間にわたる、最初の144時間にわたる、または最初の168時間にわたる、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の増大した変換率を提供してもよい。したがって、本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法は、例えば、その親SHC酵素を使用する方法と比較して、反応の最初の2時間にわたる、最初の4時間にわたる、最初の6時間にわたる、最初の8時間にわたる、最初の12時間にわたる、最初の24時間にわたる、最初の36時間にわたる、最初の48時間にわたる、最初の72時間にわたる、最初の96時間にわたる、最初の120時間にわたる、最初の144時間にわたる、または最初の168時間にわたる、好ましくは最初の24時間にわたる、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の増大した変換率を提供してもよい。
【0241】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素によって呈される、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の、総変換および/または比率は、その親SHC酵素と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い。
【0242】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素によって呈される、その親SHC酵素と比較した、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の、総変換および/または比率の改善は、本明細書に記載の式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において得られる。
【0243】
本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、親SHC酵素と比較して、式(II)で表される化合物の式(I)で表される化合物に対する改善された変換(これは代替的に、式(I)で表される化合物の収率として定義されてもよい)を提供してもよい。換言すれば、本明細書に記載のSHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、変換される1グラム/モルの式(II)で表される化合物当たりに形成される、より多くのグラム/モルの式(I)で表される化合物をもたらしてもよい。本明細書に記載のSHC酵素は、例えば、その親SHC酵素と比較して、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への改善された変換(これは代替的に、式(Ia)で表される化合物の収率として定義されてもよい)を提供してもよい。換言すれば、本明細書に記載のSHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、変換される1グラム/モルの式(IIa)で表される化合物当たりに形成される、より多くのグラム/モルの式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)をもたらしてもよい。
【0244】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素によって達成される、式(II)で表される化合物からおよび/または式(IIa)で表される化合物から、式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換は、その親SHC酵素と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍高い。
【0245】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素は、モルパーセントで与えられ、かつ採用される式(II)で表される化合物のモルに基づき、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換を達成する。好ましくは収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは35から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。好ましくは、変換は、24時間の反応時間にてまたはその後に測定される。
【0246】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素によって呈される、本明細書に記載のその親SHC酵素と比較した、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換の改善は、本明細書に記載の式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において得られる。本明細書に記載のSHC酵素を特徴付けてもよい非限定の追加パラメータは次である:数ある中でも、特異性(例として基質特異性、結合特異性、基特異性、光学特異性、補因子特異性、幾何学的特異性)、反応速度、副産物形成、反応条件に対する感度(例としてpH、温度、基質濃度、SDSなどの可溶化剤の濃度)、産物阻害への耐性。
【0247】
本明細書に記載のSHC酵素は、その親酵素と、同じ反応条件(例として同じpH、温度、基質濃度、SDSなどの可溶化剤の濃度)下、または各酵素の活性に最適と個々に定義された条件であって互いに同じであっても異なっていてもよい前記条件下で比較されてもよい。SHC酵素の、その親SHC酵素と比較した、反応条件のいずれかに関する反応能力は、産生能、式(II)で表される化合物のおよび/または式(IIa)で表される化合物の総変換あるいは増大した変換率、あるいは式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の収率などの上述のパラメータのいずれも使用して査定されてもよく、かつ例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍まで改善されていてもよい。好ましくは、反応能力は、24時間の反応時間にてまたはその後に測定される。
【0248】
本明細書に記載のとおりのSHC酵素の反応能力は、いずれかの基質濃度、例えば少なくとも1g/L以上の基質濃度を使用して査定されてもよい。本明細書に記載のSHC酵素を発現する宿主細胞が利用される態様において、反応能力は、上に定義されるとおりのいずれかの基質濃度および/またはいずれかの細胞濃度、例えば少なくとも1g/L以上の細胞濃度を使用して査定されてもよい。
【0249】
とりわけ、本明細書に記載のSHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、高い基質濃度にて改善された反応能力を呈することもある。50g/L以上の式(II)で表される化合物濃度は、高い基質濃度であるとみなされることもある。いくつかの態様において、SHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、50g/L以上、60g/L以上、70g/L以上、80g/L以上、90g/L以上、100g/L以上、110g/L以上、120g/L以上、130g/L以上、135g/L以上、150g/L以上、175g/L以上、または200g/L以上、または250g/L以上の式(II)で表される化合物濃度にて、好ましくは135g/L以上の濃度にて改善された反応能力を呈してもよい。
【0250】
本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞が利用されるいくつかの態様において、SHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、高い細胞濃度にて改善された反応能力を呈してもよい。50g/L以上の細胞濃度は、高い細胞濃度であるとみなされることもある。SHC酵素は、その親SHC酵素と比較して、50g/L以上、60g/L以上、70g/L以上、80g/L以上、90g/L以上、100g/L以上、110g/L以上、120g/L以上、130g/L以上、150g/L以上、175g/L以上、または200g/L以上、または250g/L以上の細胞物濃度にて、好ましくは175g/L以上の濃度にて改善された反応能力を呈してもよい。
【0251】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素によって呈される、その親SHC酵素と比較した、反応能力の改善は、本明細書に記載の式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物において得られる。
いくつかの態様において、SHC酵素の基質に対する比率、またはSHC酵素を発現する宿主細胞の基質に対する比率は、生物変換反応を最適化するために調整されてもよい。
【0252】
いくつかの態様において、SHC酵素またはSHC酵素を発現する宿主細胞は、基質に対し、0.1~4対1のもしくは約0.1~4対1(0.1~4:1)の、0.1~3対1もしくは約0.1~3対1(0.1~3:1)、0.1~2対1もしくは約0.1~2対1(0.1~2:1)の、0.25~2対1のもしくは約0.25~2対1(0.25~2:1)の、0.5~2対1のもしくは約0.5~2対1(0.5~2:1)の、0.1対1のもしくは約0.1対1(0.1:1)の、0.5対1のもしくは約0.5対1(0.5:1)の、1対1のもしくは約1対1(1:1)の、1.5対1のもしくは約1.5対1(1.5:1)の、または2対1のもしくは約2対1(2:1)の、好ましくは0.1対1のもしくは約0.1対1(0.1:1)の、0.5対1のもしくは約0.5対1(0.5:1)の、または1対1のもしくは約1対1(1:1)の重量比率を有する。
【0253】
結果的に、本明細書に記載のSHC酵素は、親SHC酵素と比較して、以下の利益の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはすべてを呈してもよい:
●式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の、改善された変換比率
●式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物の、改善された収率
●改善された反応能力(例として、変換比率、産生能、高基質濃度での収率)。
【0254】
本明細書に使用されるとき、本明細書に記載のSHC酵素の「選択性」は、酵素の具体的な基質との、別の基質と比較した反応能を指すこともある。非限定例として、SHC酵素は、式(II)で表される化合物のE,Z-異性体に対し、E,E-異性体または別の異性体と比較して選択的であり得るが、これは酵素がE,E-異性体または別の異性体よりE,Z-異性体を変換する傾向が高いことを意味する。別の非限定例として、SHC酵素は、式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体に対して、E,E-異性体または別の異性体と比較して選択的であってもよい。別の非制限例として、SHC酵素は、化合物の具体的な構造異性体、例えば式(II)で表される化合物または式(IIa)で表される化合物に対し選択的であってもよい。別の非限定例として、本明細書に記載され、かつ本明細書に記載の方法に使用されるSHC酵素は、実例として、式(II)で表される化合物に対し75%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約75%である選択性を有していてもよい。さらなる非制限例として、SHC酵素またはその親SHC酵素は、80%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約80%であるか、85%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約85%であるか、90%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約90%であるか、95%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約95%である選択性を有していてもよい。例えば、SHC酵素またはその親SHC酵素は、最大100%までまたは約100%の、例えば100%未満または約100%の(99.5%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約99.5%であるか、99%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約99%であるか、98%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約98%であるか、あるいは97%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約97%である、などの)選択性を有していてもよい。
【0255】
別の非限定例として、本明細書に記載され、かつ本明細書に記載の方法に使用されるSHC酵素は、実例として、式(IIa)で表される化合物に対し75%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約75%である選択性を有していてもよい。さらなる非制限例として、SHC酵素またはその親SHC酵素は、80%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約80%であるか、85%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約85%であるか、90%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約90%であるか、95%と等しいかもしくはこれより大きいかまたは約95%である選択性を有していてもよい。例えば、SHC酵素またはその親SHC酵素は、最大100%までまたは約100%の、例えば100%未満または約100%の(99.5%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約99.5%であるか、99%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約99%であるか、98%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約98%であるか、あるいは97%と等しいかもしくはこれ未満かまたは約97%である、などの)選択性を有していてもよい。
【0256】
本明細書に開示の式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)を作製するための方法は、後に本明細書に考察されるとおり使用される特定の酵素(具体的なSHCバリアントなど)の、最適温度範囲もしくは最適温度、および/または最適pH範囲もしくは最適pH、および/または可溶化剤(SDSなど)の最適濃度範囲もしくは最適可溶化剤(SDSなど)の濃度にて実行されてもよい。例は、実験の節においてさらに提供される。追加の例は、WO2021/209482から見出されることもある。
【0257】
核酸およびベクター
本明細書に記載のSHC酵素は、塩基配列によってコードされていてもよい。ヌクレオチド配列を含む核酸分子は、例えば、単離された核酸分子であってもよい。結果的に、本開示はさらに、本明細書に記載のとおりのスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0258】
用語「核酸」または「核酸分子」は本明細書に使用されるとき、交換可能であって、本開示のポリヌクレオチドを指し、これはDNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはRNAであり得、二本鎖または一本鎖、センス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。
【0259】
用語は殊更、本明細書に記載のSHC酵素をコードするポリヌクレオチド、例として完全長のヌクレオチド配列またはそのフラグメント(これはその酵素活性を呈するSHCポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする)へ適用される。用語はまた、cDNAの対応するゲノムDNAがイントロンをしたがって異なる配列を有するcDNA、隣接(flanking)遺伝子の少なくとも1つを欠くゲノムフラグメント、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生されかつ隣接遺伝子の少なくとも1つを欠くcDNAのまたはゲノムDNAのフラグメント、隣接遺伝子の少なくとも1つを欠く制限フラグメント、およびcDNAまたは天然に存在する核酸の縮重バリアントである核酸などの、別々の分子も包含する。
【0260】
核酸分子は、具体的な宿主細胞における発現のためにコドン最適化配列を含んでいてもよい。「コドン最適化」は、本明細書に使用されるとき、既存のコード配列を修飾するか、またはコード配列を設計するか、例えばコード配列から転写された転写産物RNA分子の発現宿主細胞もしく生物における翻訳を改善するか、またはコード配列の転写を改善するために採用されるプロセスを指す。コドン最適化は、これらに限定されないが、発現宿主細胞のコドン選択(codon preference)に適合するコード配列のためのコドンを選択することを包含するプロセスを包含する。例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、または微生物細胞、好ましくはE. coliなどの微生物細胞およびその他のコドン選択に適合させるため。微生物細胞の例は、酵母、糸状菌、および藻類などの真核生物、ならびに細菌および古細菌などの原核生物を包含する。コドン最適化はまた、RNAの安定性および/または翻訳に潜在的に負の影響をもたらす要素(例として終止配列、TATAボックス、スプライス部位、リボソーム侵入部位、反復および/またはGCリッチ配列、およびRNA二次構造または不安定性モチーフ)も排除する。
【0261】
この点に関し、SHC酵素をコードする核酸分子は、供給源(source)の生物において見出されるとおりの元のヌクレオチド配列を含んでいてもよく、または選択された宿主細胞、たとえばE. Coliおよび他の細胞における発現のためにコドン最適化された配列を含んでいてもよい。
【0262】
本開示はさらに、調節配列、例えばプロモーター配列などの転写開始配列へ作動可能に連結された、本明細書に記載のとおりのSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物を提供する。「核酸構築物」は本明細書に使用されるとき、典型的には標的細胞へ導入されるべき人工的に創出された核酸を指す。よって、本明細書に記載のとおりのSHC酵素をコードするヌクレオチド配列へ作動可能に連結されている調節配列は、自然界ではそれと結び付けられていなくてもよい。
【0263】
任意に、他の調節配列、たとえば転写ターミネーター、エンハンサー、リプレッサー、サイレンサー、コザック配列、ポリA配列等が、SHC酵素をコードするヌクレオチド配列へ作動可能に連結されていてもよい。
【0264】
上に言及された調節配列は、これらに限定されないが、誘導性および非誘導性の、構成的の、細胞周期調節性の、代謝調節性の、エンハンサー、オペレーター、サイレンサー、リプレッサー、および当業者によって知られておりかつ細胞において遺伝子発現を推進するかまたは別のやり方で調節するその他の要素を包含する。かかる調節配列は、これらに限定されないが、構成的発現へ向かわせる調節配列、あるいは例えばCUP-1プロモーター、例えばTet-on系もしくはTet-off系において採用されるときのTet-リプレッサー、Lacオペロン調節配列、またはTrpオペロン調節配列などの誘導性発現を可能にする調節配列を包含する。
【0265】
非限定例として、Lacオペロン調節配列が着目するヌクレオチド配列へ作動可能に連結されているとき、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)は、例として100pM~1.0mMの濃度範囲において遺伝子発現の有効な誘導因子である。この化合物は、Lacオペロンの転写を始動させるラクトース代謝物であるアロラクトースの分子模倣体であり、したがってヌクレオチド配列がLacオペレーターの制御下にあるとき、ヌクレオチド配列の発現を誘導するために使用されてもよい。
【0266】
本明細書に記載の核酸構築物はさらに、追加のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、例えば、マーカーもしくはレポーターとして機能する配列、および/またはタグ(例えばHis-タグ)などの、コードされたポリペプチドの単離および/または精製(例としてアフィニティクロマトグラフィーを介する)を可能にする配列等を含んでいてもよい。この点に関し、核酸構築物は、SHC酵素の融合を表す「ハイブリッド」、「融合」、または「キメラ」のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、例えばマーカー、レポーター、またはタグを含んでいてもよい。融合タンパク質は、それらが起源にもつSHC酵素と比較して、1以上のアミノ酸(これらに限定されないが、ヒスチジン(His)など)を、大抵タンパク質のN末端にて含み得るが、またC末端にても、あるいはタンパク質の内部領域内で融合されて、含み得る。かかる融合タンパク質またはかかるタンパク質をコードする核酸構築物は典型的には、3つの目的を果たす: (i)組換えタンパク質の産生を増大させること; (ii)組換えタンパク質の可溶性を増大させること; ならびに(iii)アフィニティ精製のためのリガンドを提供することによって組換えタンパク質の単離および/または精製に役立つこと。本明細書に記載のSHC酵素は、その産生に使用される細胞構成要素またはin vitro構成要素から分離されるときに、単離される、と称されてもよい。
【0267】
マーカーは、選択可能なマーカーであってもよい。用語「選択可能なマーカー」は、それを発現する宿主細胞の選択のために、選択的条件へ曝された際、該細胞へ選択的利点を授与することによって使用され得るポリペプチドを指す。選択可能なマーカーは、正または負の選択を可能にしてもよい。好適な選択マーカーは当該技術分野において知られており、かかるマーカーおよび選択方法は、例として、Mortensen and Kingston (2009) Curr Protoc Mol Biol 86:9.5.1-9.5.13(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの標準的な刊行物、ならびにAusubel et al.(2003)およびSambrook and Green(2012)(上記参照)などの標準的なハンドブックにおいて考察されている。当業者は、特定の選択可能なマーカーが、適用される宿主細胞および/または選択条件に応じて正または負の選択を可能にしてもよいことを理解している。正の選択可能なマーカーは、選択的条件へ曝された際、宿主細胞の成長を可能にするマーカーであり、ここで成長はそのような条件でなければ生じない。負の選択可能なマーカーは、選択的条件へ曝された際、宿主細胞の成長を妨げるマーカーである。ヌクレオチド構築物に含まれる追加配列によってコードされていてもよい好適なマーカーまたはレポーターポリペプチドの非限定例は、ベータ-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ヒグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、ベータ-ガラクトシダーゼ、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を包含する。
【0268】
好適なタグの例は、AviTag、カルモジュリン-タグ、ポリグルタマート-タグ、E-タグ、FLAG-タグ、HA-タグ、His-タグ、Myc-タグ、S-タグ、SBP-タグ、Softag 1および3、Strep-タグ、TC-タグ、V5-タグ、VSV-タグ、X-プレスタグ、イソペプタグ(isopeptag)、SpyTag、BCCP、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-タグ、GFP-タグ、Halo-タグ、マルトース結合タンパク質-タグ、Nus-タグ、チオレドキシン-タグ、およびFc-タグを包含する。
【0269】
当業者は、本開示の核酸構築物に含まれていてもよい好適な調節配列および追加の配列を、ならびに本明細書に記載の核酸構築物に到達するために使用され得る分子ツールボックス技法を承知しており、例は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 3rd edition, John Wiley & Sons Inc (2003)などの標準的なハンドブックから、およびSambrook and Green, Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 4th Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)から見出されてもよい; これら両方ともそれら全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる。さらなる例は、WO2021/209482から見出されることもある。
【0270】
本開示はさらに、本明細書に記載のとおりの核酸分子または核酸構築物を含むベクターを提供する。本明細書に使用されるとき、「ベクター」は、外来遺伝物質を人工的に細胞中へ持ち込むためのビヒクルとして使用される核酸分子であって、その細胞内ではそれが複製および/または発現され得る。ベクターは線状または環状であってもよい。ベクターは、低コピー数(例として1細胞当たり1~2コピー)、中コピー数(例として1細胞当たり3~20コピー)、高コピー数(例として1細胞当たり>20コピー)で宿主細胞において維持されていてもよい。低コピー、中コピー、および高コピーのベクターの複製起点は、当業者に知られている。ベクターは、例えば、プラスミド、メガプラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルスベクター(例としてアデノウイルスベクターもしくはレトロウイルスベクター)、ノックアウトまたはノックイン構築物、あるいは人工染色体、たとえば細菌の、酵母の、植物の、または哺乳動物の人工染色体であってもよい。好ましいベクターはプラスミドである。当業者は、例えばプラスミドのケースにおいて、核酸構築物とベクターとの用語が重複していてもよいことを理解している。
【0271】
本明細書に記載の核酸分子、核酸構築物、またはベクターによってコードされるタンパク質は、宿主細胞へそれらが導入された際、発現されることが好ましい。
【0272】
宿主細胞、宿主細胞を作製する方法、および宿主細胞を使用して式(I)で表される化合物を作製する方法
ある側面において、本開示は、本明細書に記載のとおりの核酸分子、核酸構築物、またはベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は好ましくは、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する(代替的に本明細書において「産生する」とも称される)。本開示の宿主細胞は代替的に、本明細書において「細胞」、「組換え細胞」、または「組換え宿主細胞」と称される。これに関連して「組換え」は、細胞へ導入された遺伝子修飾を指す。
【0273】
宿主細胞は、本明細書に記載の方法において使用されてもよい。例えば、本明細書に記載のとおりの式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)を作製するための方法は、本明細書に記載のとおりの宿主細胞を培養することを含んでいてもよい。用語「培養」は、生細胞が本明細書に記載のとおりのSHC酵素を産生するように、生細胞を増殖させる(multiplying)プロセスを指す。結果的に、SHC酵素に関連した利益および本明細書に記載のSHC酵素を使用する方法はまた、SHC酵素を発現する宿主細胞へも、宿主細胞を使用する方法へも適用される。
【0274】
本明細書に記載の核酸分子、核酸構築物、またはベクターは、当業者に利用可能である標準的な分子ツールボックス技法(これは宿主細胞(例として原核生物または真核細胞)に応じて異なってもよい)を使用して宿主細胞に導入されてもよい。かかる技法の例は、トランスフェクションまたは(ウイルス)形質導入である。かかる技法の追加の例はさらに、Ausubel et al.(2003)、およびSambrook and Green(2012)(上記参照)などの標準的なハンドブックから見出されてもよい。
【0275】
導入された(「形質転換する」)核酸は、組み込まれる(integrated)、すなわち細胞の染色体中へ共有結合的に連結されることがあっても、またはそうでなくてもよい。原核生物および酵母において、例えば、導入された核酸は、プラスミドなどのエピソソーム要素上に維持されていてもよい。真核細胞に関し、安定的にトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクトされた核酸が、染色体複製を通して娘細胞によって受け継がれるように、染色体中へ組み込まれたものである。この安定性は、真核細胞の、導入された核酸を含有する娘細胞の集団から構成される細胞株またはクローンの樹立能によって実証される。原核細胞および/または真核細胞において、核酸の宿主細胞のゲノム中への組み込みは、例えば、相同組換え、非相同の末端結合(end-joining)等の細胞DNA修復機構を通して生じてもよい。核酸の組み込みは、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regular interspaced shorted palindromic repeat)(CRISPR)-Cas会合(-associated)ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ(例としてCreリコンビナーゼ)などのヌクレアーゼを使用する、宿主細胞の染色体中への断絶の導入によって、媒介されてもよい。ヌクレアーゼおよびリコンビナーゼは当業者に知られており、宿主細胞の形質転換におけるそれらの利用はさらに、Musunuru Kiran, Genome Editing: A Practical Guide to Research and Clinical Applications, 1st Edition, Academic Press (2021)、およびGhosh Dipanjan (Ed), Advances in CRISPR/Cas and Related Technologies, 1st Edition, Academic Press (2021)(これら両方とも、それら全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの標準的なハンドブックにおいて考察されている。
【0276】
典型的には、導入された核酸はレシピエントの宿主細胞に本来存在しないが、しかし所定の宿主から核酸を単離し、続いてその核酸の1以上のコピーを同じ宿主中へ導入すること、例として、本明細書に記載のSHC酵素を発現する遺伝子などの、ある遺伝子の産物の産生を増強するか、またはある遺伝子の発現パターンを変更させることは、本開示の範囲内にある。いくつかの場合において、導入された核酸は、例として相同組換えもしくは部位特異的変異誘発によって、内在性の核酸配列を修正するか、または置き換えたりさえもするであろう。
【0277】
結果的に、本明細書に記載の宿主細胞によるSHC酵素の発現は、相同発現(ここで該酵素をコードするヌクレオチド配列は細胞中に本来存在する)または異種発現(ここで該酵素をコードするヌクレオチド配列は細胞中に本来存在しない)を指してもよい。
【0278】
適切な宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、例えば細菌、古細菌、酵母、糸状菌、藻類、植物細胞、動物細胞、両生類細胞(メラニン保有細胞(melanophore cells)を包含する)、昆虫細胞、蠕虫(worm)細胞、および哺乳動物細胞から選択されてもよい。
【0279】
藻類の宿主細胞は、Botryococcus braunii、Chlorella、Dunaliella tertiolecta、Gracilaria、Pleurochrysis carterae、およびSargassumなどの当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。酵母宿主細胞は、Saccharomyces(例えばSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces boulardii)、Candida(例えばCandida utilis、Candida krusei)、Schizosaccharomyces(例えばSchizosaccharomyces pombe、Schizosaccharomyces japonicus)、PichiaまたはHansenula(例えばPichia pastorisもしくはPichia pastoris (Komagatella phaffi)、またはHansenula polymorpha)、Yarrowia、Kluyveromyces、およびBrettanomyces(例えばBrettanomyces claussenii)などの当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。
【0280】
糸状菌の宿主細胞は、Acremonium、Agaricus、Alternaria、Aspergillus、Aureobasidium、Botryospaeria、Ceriporiopsis、Chaetomidium、Chrysosporium、Claviceps、Cochliobolus、Coprinopsis、Coptotermes、Corynascus、Cryphonectria、Cryptococcus、Diplodia、Exidia、Filibasidium、Fusarium、Gibberella、Holomastigotoides、Humicola、lrpex、Lentinula、Leptospaeria、Magnaporthe、Melanocarpus、Meripilus、Mucor、Myceliophthora、Neocaffimastix、Neurospora、Paecilomyces、Peniciffium、Penicillium、Phanerochaete、Piromyces、Poitrasia、Pseudoplectania、Pseudotrichonympha、Rhizomucor、Schizophyllum、Scytalidium、Talaromyces、Thermoascus、Thielavia、Tolypocladium、Trichoderma、Trichophaea、Verticillium、Volvariella、またはXylariaなどの当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。種は、Acremonium cellulolyticus、Aspergillus aculeatus、Aspergillus awamori、Aspergillus foetidus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus japonicus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Chrysosporium inops、Chrysosporium keratinophilum、Chrysosporium lucknowense、Chrysosporium merdarium、Chrysosporium pannicola、Chrysosporium queenslandicum、Chrysosporium tropicum、Chrysosporium zonatum、Fusarium bactridioides、Fusarium cerealis、Fusarium crookwellense、Fusarium culmorum、Fusarium graminearum、Fusarium graminum、Fusarium heterosporum、Fusarium negundi、Fusarium oxysporum、Fusarium reticulatum、Fusarium roseum、Fusarium sambucinum、Fusarium sarcochroum、Fusarium sporotrichioides、Fusarium sulphureum、Fusarium torulosum、Fusarium trichothecioides、Fusarium venenaturn、Humicola grisea、Humicola insolens、Humicola lanuginosa、Irpex lacteus、Mucor miehei、Myceliophthora thermophila、Neurospora crassa、Penicillium funiculosum、Penicillium purpurogenum、Penicillium chrysogenum、Phanerochaete chrysosporium、Thielavia achromatica、Thielavia albomyces、Thielavia albopilosa、Thielavia australeinsis、Thielavia fimeti、Thielavia microspora、Thielavia ovispora、Thielavia peruviana、Thielavia setosa、Thielavia spededonium、Thielavia subthermophila、Thielavia terrestris、Trichoderma harzianum、Trichoderma koningii、Trichoderma longibrachiatum、Trichoderma reesei、またはTrichoderma virideを包含する。
【0281】
昆虫の宿主細胞および蠕虫細胞は、Sf9細胞、Sf21細胞、Spodoptora frugiperda細胞、Caenorhabditis細胞(Caenorhabditis elegans細胞など)、およびそれらの誘導体などの、当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。哺乳動物の宿主細胞は、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞(Cos-1およびCos-7を包含する)、HEK293細胞、HEK293T細胞、HEK293 T-RexTM細胞、PerC6(商標)細胞、HeLa細胞、Jurcat細胞、ハイブリドーマ、およびそれらの誘導体などの、当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。植物の宿主細胞は、Arabidopsis等の群などの、当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい。
【0282】
好ましい宿主細胞は、当該技術分野において知られている好適な群から選択されてもよい細菌の宿主細胞である。細菌の宿主細胞は、Bacillus(例えばBacillus cereus、Bacillus anthracis、Bacillus thuringiensis、Bacillus mycoides、Bacillus pseudomycoides、Bacillus cytotoxicus、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、および Bacillus licheniformis)、Paenibacillus、Streptomyces、Micrococcus、Corynebacterium、Acetobacter、Cyanobacteria、Salmonella、Rhodococcus、Pseudomonas、Lactobacillus、Lactococcus、Enterococcus、Alcaligenes、Klebsiella、Paenibacillus、Arthrobacter、Corynebacterium、Brevibacterium、Thermus aquaticus、Pseudomonas stutzeri、Clostridium thermocellus、Escherichia(例えばEscherichia coli)(これらの株も包含する)などの、グラム陰性菌とグラム陽性菌との両方を包含する。細菌の宿主細胞の中でも、E. coliおよびその株が好ましい。E. coliのための突然変異体、プラスミドの複数のライブラリ、代謝の詳細なコンピュータモデル、形質転換方法、および他の情報は当該技術分野において利用可能であり、酵素を発現する組換え宿主細胞の産生収率を増強するために様々な遺伝子モジュールの合理的設計ができる。好ましくは、E. coliの宿主細胞は、産業および規制当局によって安全性が認識されているE. coli株(これらに限定されないがK12株およびBL21株を包含する)である。E. coliを宿主細胞として利用することは、低コストかつ産業上経済的なプロセスが、この宿主細胞用に相対的に容易に設計され得ることを考慮すれば、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物を作製することにおいて有利なこともある。
【0283】
上に考察された群に属する数種の宿主細胞および株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、およびAgricultural Research Service Patent Culture Collection、Northern Regional Research Center(NRRL)などの、農業研究サービス特許文化コレクションなど、数多の周知なコレクションにおいて一般大衆に向けて容易にアクセス可能である。
【0284】
いくつかの態様において、宿主細胞は、Escherichia、Streptomyces、Bacillus、Pseudomonas、Lactobacillus、およびLactococcus、ならびにそれらの株の群から選択される細菌の宿主細胞であり、好ましくはEscherichia coliおよびその株である。好適な宿主細胞および形質転換方法の例はさらに、WO2021/209482から見出されてもよい。
【0285】
本明細書に記載の宿主細胞の培養は、従来のやり方で実施されてもよい。好適な細胞培養法は当業者に知られており、例えば、van't Riet, K. and Tramper, J., 1st edition, Basic Bioreactor Design, CRC Press, NY, 1991(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)において考察されている。かかる方法は、これらに限定されないが、液体媒体中の深部発酵、液体媒体状の表面発酵、および固体状発酵を包含する。細胞の培養(culturing)は、例えば、マイクロタイタープレート、振盪フラスコ、小型卓上生物反応器、中型生物反応器、および/または大型生物反応器における培養(cultivation)により、実験室および/または工業環境(industrial setting)において実施されてもよい。好適な細胞培養モードは、これらに限定されないが、連続培養、バッチ培養、および/またはフェドバッチ(fed-batch)培養、ならびにそれらの組み合わせを包含する。典型的には、細胞は、具体的な密度(例として光学密度(OD)として測定可能である)まで成長されて、本明細書に以前記載されたとおりの生物変換反応が生じるのに充分なバイオマスおよび/またはSHC酵素を産生する。
【0286】
いくつかの態様において、細胞系に好適な条件下で本明細書に記載のSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物を細胞系へ給送すること、細胞系を使用して産生されるSHC酵素を使用し、式(II)で表される化合物を式(I)で表される化合物へ変換すること、式(I)で表される化合物を細胞系から収集すること、ならびに任意に、式(I)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、細胞系において式(I)で表される化合物を作製する方法が提供される。
【0287】
いくつかの態様において、細胞系に好適な条件下で本明細書に記載のSHC酵素を産生すること、式(IIa)で表される化合物を細胞系へ給送すること、細胞系を使用して産生されるSHC酵素を使用し、式(IIa)で表される化合物を式(I)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)へ変換すること、式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を細胞系から収集すること、ならびに任意に、式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を単離および/または精製することを含む、細胞系において式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を作製する方法が提供される。
【0288】
いくつかの態様において、細胞系に好適な条件下で本明細書に記載のSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を細胞系へ給送すること、細胞系を使用して産生されるSHC酵素を使用し、式(II)で表される化合物を式(I)で表される化合物へおよび式(IIa)で表される化合物を式(Ia)で表される化合物へ変換すること、式(I)で表される化合物および式(Ia)で表される化合物を細胞系から収集すること、ならびに任意に、式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、細胞系において式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物とを含む混合物を作製する方法が提供される。
【0289】
いくつかの態様において、細胞系に好適な条件下で本明細書に記載のSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を細胞系へ給送すること、細胞系を使用して産生されるSHC酵素を使用し、式(II)で表される化合物を式(I)で表される化合物へおよび式(IIa)で表される化合物を式(V)で表される化合物へ変換すること、式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物を細胞系から収集すること、ならびに任意に、式(I)で表される化合物および/または式(V)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、細胞系において式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを含む混合物を作製する方法が提供される。
【0290】
他の核酸の発現は、例えば上に記載の生物変換反応において使用される細胞系の活性を増強することによって、方法を増強するのに役立たせてもよい。
【0291】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を培養すること、宿主細胞においてSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物を細胞培養物へ加えること、細胞培養物を、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換を促進するのに好適なpH、温度、および任意に可溶化剤(SDSなど)の条件下でインキュベートすること、式(I)で表される化合物を収集すること、ならびに任意に式(I)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、式(I)で表される化合物を作製する方法が提供される。
【0292】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を培養すること、宿主細胞においてSHC酵素を産生すること、式(IIa)で表される化合物を細胞培養物へ加えること、細胞培養物を、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)への変換を促進するのに好適なpH、温度、および任意に可溶化剤(SDSなど)の条件下でインキュベートすること、式(Ia)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を収集すること、ならびに任意に式(I)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を単離および/または精製することを含む、式(I)で表される化合物(好ましくは式(V)で表される化合物)を作製する方法が提供される。
【0293】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を培養すること、宿主細胞においてSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を細胞培養物へ加えること、細胞培養物を、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換と式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への変換とを促進するのに好適なpH、温度、および任意に可溶化剤(SDSなど)の条件下でインキュベートすること、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物とを収集すること、ならびに任意に式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、式(I)で表される化合物と式(Ia)で表される化合物とを含む混合物を作製する方法が提供される。
【0294】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を培養すること、宿主細胞においてSHC酵素を産生すること、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物を細胞培養物へ加えること、細胞培養物を、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換と式(IIa)で表される化合物から式(V)で表される化合物への変換とを促進するのに好適なpH、温度、および任意に可溶化剤(SDSなど)の条件下でインキュベートすること、式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを収集すること、ならびに任意に式(I)で表される化合物および/または式(V)で表される化合物を単離および/または精製することを含む、式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを含む混合物を作製する方法が提供される。
【0295】
生物変換反応は、より多くの生体触媒、および任意にSDSなどの可溶化剤を、上に記載の細胞培養物へ加えることによって増強されてもよい。
【0296】
宿主細胞による成長および酵素産生に好適な細胞培養条件は、宿主細胞に応じて変動してもよい。かかる条件は当業者に知られており、さらに、例えば宿主細胞が得られてもよい細胞培養収集物によって典型的には規定される(provided)。細胞培養条件および生物変換反応条件は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。当業者はさらに、細胞が当初、細胞成長および/または酵素産生に最適な条件下で培養されてもよく、続いて条件が、生物変換反応が起こるのに最適な条件(これは同じであっても異なっていてもよい)へ調整されてもよいことを理解している。
【0297】
用語「生体触媒は、本明細書に使用されるとき、本明細書に記載のとおりのSHC酵素それ自体を指してもよいが、また該酵素を発現する宿主細胞、該宿主細胞の膜画分、細胞ライセート、細胞デブリ、または無細胞抽出物も指してもよく、SHC酵素活性が存在するという共通の特色がある。
【0298】
いくつかの態様において、生体触媒は、SHC酵素を産生する組換え宿主細胞であり、これは任意に、懸濁形式であってもまたは固定化形式であってもよい。
【0299】
いくつかの態様において、生体触媒は、ルーチンの方法(例えばSeitz (2012), Characterization of the substrate specificity of squalene-hopene cyclases (SHCs), PhD thesis, University of Stuttgartに開示されるとおりであって、http://dx.doi.org/10.18419/opus-1383にて利用可能であり、その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)を使用し、粗抽出物または無細胞抽出物などの、SHC酵素を産生する組換え宿主細胞から調製される膜画分または液体画分である。
【0300】
生体触媒は、細胞培養物から(例として生物反応器の細胞培養物)から収集された細胞全体、ならびに未だ培養中の細胞(これは次いで、後に本明細書に記載のワンポット法に使用される)を包含する。生体触媒は、無傷の(intact)組換え宿主細胞および/またはその細胞デブリを包含する。
【0301】
生体触媒は固定化されていてもよい。宿主細胞および/またはSHC酵素の固定化は、当業者に知られているいずれの手段によっても、例として、Seitzら(上記参照)において、およびGuisan, J.M., Bolivar, J.M., Lopez-Gallego, F., Rocha-Martin, J. (Eds.), Immobilization of Enzymes and Cells: Methods and Protocols, Springer US, USA, 2020(その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)などの標準的なハンドブックにおいて考察されるとおりの手段によって、達成されてもよい。固定化法の例は、胞子もしくは細胞を含有する溶液を重合または凝固させることを伴う。重合性または凝固性の(solidifyable)溶液の例は、アルギナート、λ-カラギーナン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド-ヒドラジド、アガロース、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、アクリル酸ジメチル、ポリスチレンジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、ポリビニルアルコール、エポキシ担体、セルロース、酢酸セルロース、光架橋性樹脂、プレポリマー(prepolymers)、ウレタン、およびゼラチンを包含する。固定化法の別の例は、支持体上への細胞吸着を伴う。かかる支持体の例は、骨炭、コルク、粘土、樹脂、砂孔(sand porous)アルミナビーズ、多孔質レンガ、多孔質シリカ、セライト、または木材チップを包含する。宿主細胞は、支持体にコロニーを作って生物膜を形成し得る。固定化法の別の例は、グルタルアルデヒド、o-ジアニシジン、重合(polymeric)イソシアネート、シラン(例としてUS3,983,000; US4,071,409; US3,519,538、およびUS3,652,761において考察されているとおりであって、これらはすべてそれら全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)、ヒドロキシエチルアクリラート、遷移金属活性化支持体、塩化シアヌル、過ヨウ素酸ナトリウム、トルエン等といった化学剤を使用する、宿主細胞の支持体への共有結合的カップリングを伴う。培養された宿主細胞は、それら成長のいずれの相においても、例えば培養中所望の細胞密度に達した後に、固定化され得る。
【0302】
いくつかの態様において、宿主細胞は、生変換反応におけるそれら使用の前に、培養され、回収され、洗浄され、任意に保存される(例として凍結または凍結乾燥される)。
【0303】
いくつかの態様において、宿主細胞は培養され、次いで細胞の回収および洗浄はせずに、生物変換反応に先立ちその反応が生じるのに好適なように培養条件が調整される。このワンステップ(または「ワンポット」)法は、プロセスを簡素化することもあるところ、有利なこともある。これら態様において細胞を成長させるのに使用される培養培地はまた、生物変換反応における反応混合物としても使用されてもよい。式(II)で表される化合物、式(IIa)で表される化合物、および/または式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物は、始めから培養物中に存在してもよく、または後に方法の培養相へ加えられてもよい。
【0304】
細胞の培養は、炭素源および窒素源などの好適な栄養素と、任意に無機塩およびビタミンなどの追加の化合物とを含む培養培地(代替的に本明細書において成長培地と称される)を使用して起こり得る。好適な培養培地は、宿主細胞に応じて変動してもよく、商業的供給者から入手可能であるか、または公開されている組成物(例として、各宿主細胞につき一般的に入手可能なCentraalbureau Voor Schimmelcultures collection(CBS)のカタログにおける)を使用して調製されてもよい。好適な炭素源は、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換のために、本明細書に記載のとおりのSHC酵素の成長および/または産生を容易にする、組換え宿主細胞によって代謝され得るいずれかの分子を包含する。好適な炭素源の例は、これらに限定されないが、スクロース(例として、純粋な、もしくは糖蜜などの混合物から見出されるとおりの)、フルクトース、キシロース、グリセロール、グルコース、エタノール、セルロース、デンプン、セロビオース、または重合体を含有するいずれか他の炭水化物、ならびにそれらの混合物を包含する。好適な窒素源の例は、これらに限定されないが、尿素、アンモニア、アンモニウム塩、硝酸塩、ならびにそれらの混合物を包含する。炭素源と窒素源との複合体(Complex carbon and nitrogen sources)、たとえば、タンパク質加水分解物、トリプトン、大豆ミール、コーンスティープリカー、ホエイタンパク質加水分解物、卵タンパク質加水分解物、カゼイン加水分解物、酵母抽出物等もまた好適である。
【0305】
宿主細胞が酵母細胞である態様において、好ましい炭素源は、スクロース、フルクトース、キシロース、エタノール、グリセロール、グルコース、ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。
宿主細胞は、富栄養培地(rich medium)(例として、LB培地、バクト-トリプトン酵母エキス(Bacto-tryptone yeast extract)培地等)、または限定培地(defined medium)、例えば限定最小培地において培養されてもよい。
【0306】
いくつかの態様において、M9A培地などの限定最小培地または別の限定最小培地が、細胞の培養のために使用される。M9A培地は次を含んでいてもよい:14g/L KH2PO4、16g/L K2HPO4、1g/L Na3シトラート.2H2O、7.5g/L (NH4)2SO4、0.25g/L MgSO4.7H20、0.015g/L CaCl2.2H2O、5g/L グルコース、および1.25g/L 酵母エキス。
【0307】
いくつかの態様において、LB培地などの富栄養培地または別の富栄養培地が、細胞の培養のために使用される。LB媒体は次を含んでいてもよい: 10g/L トリプトン、5g/L 酵母エキス、および5g/L NaCl。
ミネラル培地およびM9ミネラル培地の追加の例は、例えばUS6524831B2およびUS2003/0092143A1から見出されてもよい。
【0308】
好適な最小培地の追加の例は、以下のとおりに調製されてもよい:
350mlの培養につき: 307mlのH2Oが、35mlのクエン酸/リン酸塩原液(133g/L KH2PO4、40g/L (NH4)2HPO4、17g/L クエン酸.H2Oを含有しており、6.3のpHを有する)へ加えられてもよく、pHは32% w/v NaOHで6.8へ調整されてもよい。溶液は、当該技術分野において使用されるルーチンの条件下でオートクレーブされてもよく、オートクレーブ後、0.85ml 50% w/v MgSO4.7H2O原液(下を見よ)、0.035ml 微量元素原液(下を見よ)、0.035ml チアミン原液(下を見よ)、および7mlの20% w/v グルコース溶液が加えられてもよい。
【0309】
微量元素原液は、次を含んでいてもよい:脱イオン水中、50g/L Na2EDTA.2H2O、20g/L FeSO4.7H2O、3g/L H3BO3、0.9g/L MnSO4.2H2O、1.1g/L CoCI2、80g/L CuCI2、240g/L NiSO4.7H2O、100g/L Kl、1.4g/L、(NH4)6Mo7O24.4H2O、1g/L ZnSO4.7H2O。チアミン原液は次を含んでいてもよい: 2.25g/Lチアミン。脱イオン水中のHCl。MgSO4原液は次を含んでいてもよい: 脱イオン水中50% w/v MgSO4.7H2O。
【0310】
典型的には、細胞培養において細胞を成長させるのに最適なpHは、4から8までである。生物変換反応に最適なpHは、使用されるSHC酵素の特性に応じて異なっていてもよい。生物変換反応混合物のpHは、4から8まで、好ましくは5から6.5まで、より好ましくは5.5から6.1までであってもよい。細胞培養または反応混合物におけるpHの調整および調節は、当業者によって知られているいずれか好適な技法によって、例えば、酸および塩基の原液の添加、または緩衝剤の添加によってなされてもよい。緩衝剤の非限定例は、クエン酸緩衝剤およびコハク酸緩衝剤を包含する。
【0311】
典型的には、細胞培養および/または生物変換反応に最適な温度は、15℃から60℃まで、好ましくは25℃から50℃まで、より好ましくは25℃から45℃までである。生物変換反応に最適なpHは、使用されるSHC酵素の特性に応じて異なっていてもよい。いくつかの態様において、最適温度は30℃である。温度は、細胞培養および/または生物変換反応を通してずっと一定に保たれてもよく、または変更されてもよい。
【0312】
本明細書に記載の特定の好ましい酵素にとって特定の最適なpHおよび温度の条件は、表5に与えられる。
【0313】
典型的には、細胞の培養は、嫌気性の、好気性の、または酸素が限定された条件下で実施される。酸素の要求は、宿主細胞および培養モードに応じて変動し、当業者には知られているであろう。好気性条件は、宿主細胞の酸素消費量が酸素の利用可能量によって限定されない条件である。酸素が限定された条件下で、酸素消費量は酸素の利用可能量によって限定される。酸素は、いずれか知られている方法によって、例として、空気雰囲気下で振盪することによって、撹拌することによって、培養物中に空気および/または酸素を注入すること(sparging)などによって、培養物へ供給されてもよい。
【0314】
任意に、可溶化剤、たとえば界面活性剤、洗浄剤、可溶性増強剤(solubility enhancer)、水混和性有機溶媒等が、細胞培養物へ、または生物変換反応混合物へ加えられてもよい。本明細書に使用されるとき、用語「界面活性剤」は、2つの液体間もしくは液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる構成要素を指す。界面活性剤は、洗浄剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および分散剤として作用してもよい。界面活性剤の例は、これらに限定されないが、Triton X-100、Tween 80、タウロデオキシコラート、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および/またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を包含する。
【0315】
Triton X-100は、SHC酵素(可溶性画分中または膜画分中/懸濁形態)を部分的に精製するために使用されてもよいものの、それはまた、生物変換反応においても使用されてもよい(例えば、Seitz(2012、上記参照)における開示、ならびにNeumann and Simon(1986), Biol Chem 367:723-729の開示と、JP2009060799とを見よ、これらの両方ともこれら全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)。
【0316】
好ましい可溶化剤はSDSである。理論によって拘束されることは望まないが、SDSの組換え宿主細胞との使用は、SDSが有利なことに宿主の細胞膜と相互作用することもあるところ、SHC酵素(これは膜結合酵素である)を、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物である基質へよりアクセスしやすくさせるために、有利なことある。加えて、細胞培養物および/または生物変換反応混合物におけるSDSの好適なレベルでの包含は、エマルションの(例として、水中の式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の)特性を改善してもよく、および/または式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物である基質のSHC酵素への宿主内でのアクセスを改善してもよい。
【0317】
当業者は、本明細書に記載の生物変換反応に使用される可溶化剤(例としてSDS)の最適濃度が、細胞バイオマス量および基質濃度に応じて変動してもよいことを理解している。また、生物変換反応にとっての可溶化剤(例としてSDS)の最適濃度は、使用されるSHC酵素の特性に応じても異なることがある。適切な濃度の決定は、ルーチンの実験法によってなされ得る。本開示の方法において、SDS/細胞の濃度比率は、生体触媒の式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物に対する比率が2:1または約2:1であるとき、好ましくは10:1から20:1まで、より好ましくは15:1から18:1までであってもよい。いくつかの態様において、SDS/細胞の濃度比率は、生体触媒の式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物に対する比率が2:1または約2:1であるとき、好ましくは10:1もしくは約10:1、11:1もしくは約11:1、12:1もしくは約12:1、13:1もしくは約13:1、14:1もしくは約14:1、15:1もしくは約15:1、16:1もしくは約16:1、17:1もしくは約17:1、18:1もしくは約18:1、19:1もしくは約19:1、または20:1もしくは約20:1であってもよい。
【0318】
本開示の方法においては、SDS濃度は、例えば0.001%から0.03%まで、好ましくは0.01%から0.025%まで、より好ましくは0.01%~0.02%(w/v %)であってもよい。これらの範囲は、細胞をODが10または約10(650nmにて測定された)にて含有する反応において使用される範囲に対応する。当業者は、好適なSDS濃度が、これらの範囲に限定されず、かつ一定のSDS/細胞の濃度比率を保つために、細胞濃度が夫々増加または減少したときに増加または減少してもよいことを理解している。
【0319】
本明細書に記載の特定の好ましい酵素にとって特定の例示SDS濃度は、表5に与えられる。本明細書に記載のとおりの宿主細胞を利用する生物変換反応のための追加の例示SDS濃度は、例8および9において与えられる。
【0320】
式(II)で表される化合物、式(IIa)で表される化合物、または式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物が、細胞培養物または反応混合液へ加えられる態様において、その添加(「給送(feeding)」)は、当業者に利用可能な標準的な手段を使用して(例として、蠕動ポンプの使用、輸注シリンジの使用等によるチュービング(tubing)を通して)なされてもよい。
【0321】
式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物は、油に可溶性であって、油に溶解されて提供されてもよい。本明細書に以前記載されたとおりの生体触媒が水性相中に存在するケースにおいて、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の添加は、三相系(水性相、固相、および油相を含む)をもたらすであろう。これは、SDSが細胞培養物および/または反応混合物中に存在するときであっても、そのケースになり得る。
【0322】
いくつかの態様において、細胞培養は連続培養である。かかる培養は、式(I)で表される化合物のおよび/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の改善された産生をもたらし得るところ、いくつかのケースにおいて有利なこともある。
【0323】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞の存在下での、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への生物変換は、モルパーセントで与えられ、かつ採用される式(II)で表される化合物のモルに基づき、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への変換をもたらす。好ましくは収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。
【0324】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞の存在下での、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への(好ましくは式(V)で表される化合物への)生物変換は、モルパーセントで与えられ、かつ採用される式(IIa)で表される化合物のモルに基づき、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100の、式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への(好ましくは式(V)で表される化合物への)変換をもたらす。好ましくは収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。
【0325】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞の存在下での、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物における、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への生物変換、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への生物変換は、モルパーセントで与えられ、かつ採用される式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物のモルに基づき、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物への変換をもたらす。好ましくは化合物(I)の収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。好ましくは化合物(Ia)の収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。
【0326】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりのSHC酵素を発現する宿主細胞の存在下での、式(II)で表される化合物と式(IIa)で表される化合物とを含む混合物における、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への生物変換、および/または式(IIa)で表される化合物から式(V)で表される化合物への生物変換は、モルパーセントで与えられ、かつ採用される式(II)で表される化合物および式(IIa)で表される化合物のモルに基づき、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100の、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(V)で表される化合物への変換をもたらす。好ましくは化合物(I)の収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。好ましくは化合物(V)の収率は、5から100まで、10から100まで、20から100まで、30から100まで、35から100まで、より好ましくは40から100まで、45から100まで、50から100まで、60から100まで、または70から100モルパーセントまでである。
【0327】
いくつかの態様において、式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の変換の好ましい比率、および/または式(II)で表される化合物の式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物の式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への、得られる変換は、例えば4、6、8、10、12、16、20、24、36、48、72、96、120、142、144、150、または168時間の、好ましくは24時間の、定められた期間にわたり決定されるが、その最中、本明細書に記載のとおりのSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞(これはSHC酵素を産生している)によって、式(II)で表される化合物は変換されて式(I)で表される化合物になり、および/または式(IIa)で表される化合物は変換されて式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)になる。
【0328】
いくつかの態様において、生物変換反応は、例えば25℃、30℃、35℃、40℃、50℃、または60℃の温度値の下で実行される。いくつかの態様において、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への、得られる変換、および/または式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の変換の比率は、25℃から55℃まで、好ましくは30℃から40℃までの温度範囲にて24~72時間の期間にわたり、反応を実行することによって決定される。いくつかの態様において、その期間は、例えば最大で計150時間までまたはこれより長く延長される。
【0329】
いくつかの態様において、本明細書に記載のSHC酵素をコードするヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞は、親SHC酵素をコードするヌクレオチド配列を同じ条件下(好ましくは、考慮されるSHC酵素の活性に最適と個々に定義されている条件下)で発現する組換え宿主細胞と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、もしくは1000倍高い、式(II)で表される化合物から式(I)で表される化合物への、および/または式(IIa)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)への変換、および/または式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物の変換の比率示す。
【0330】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの方法は、5g/L以上、10g/L以上、20g/L以上、30g/L以上、40g/L以上、50g/L以上、60g/L以上、70g/L以上、80g/L以上、90g/L以上、100g/L以上、110g/L以上、120g/L以上、130g/L以上、135g/L以上、150g/L以上、175g/L以上、または200g/L以上、または250g/L以上の、宿主細胞および/または式(II)で表される化合物および/または式(IIa)で表される化合物濃度(液体培養物中)にて実施される。
【0331】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの方法は、0.1~4対1のもしくは約0.1~4対1(0.1~4:1)の、0.1~3対1もしくは約0.1~3対1(0.1~3:1)、0.1~2対1もしくは約0.1~2対1(0.1~2:1)の、0.25~2対1のもしくは約0.25~2対1(0.25~2:1)の、0.5~2対1のもしくは約0.5~2対1(0.5~2:1)の、0.1対1のもしくは約0.1対1(0.1:1)の、0.5対1のもしくは約0.5対1(0.5:1)の、1対1のもしくは約1対1(1:1)の、1.5対1のもしくは約1.5対1(1.5:1)の、または2対1のもしくは約2対1(2:1)の、好ましくは0.1対1のもしくは約0.1対1(0.1:1)の、0.5対1のもしくは約0.5対1(0.5:1)の、または1対1のもしくは約1対1(1:1)の、宿主細胞の基質に対する重量比率にて実施される。
【0332】
本明細書に記載のSHC酵素は、本明細書に以前記載されるとおり、その親酵素とこれらの濃度にて比較したとき、改善された反応能力を呈することもある。本明細書に記載のSHC酵素の反応能力は、産生能、総変換または増大した基質変換比率、あるいは式(I)で表される化合物および/または式(Ia)で表される化合物(式(V)で表される化合物など)の収率などの、本明細書に以前考察されたパラメータのいずれも使用して査定されてもよく、これはその親SHC酵素の反応能力と比較したとき、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、40倍、41倍、42倍、43倍、44倍、45倍、46倍、47倍、48倍、49倍、50倍、51倍、52倍、53倍、54倍、55倍、56倍、57倍、58倍、59倍、60倍、61倍、62倍、63倍、64倍、65倍、66倍、67倍、68倍、69倍、70倍、71倍、72倍、73倍、74倍、75倍、76倍、77倍、78倍、79倍、80倍、81倍、82倍、83倍、84倍、85倍、86倍、87倍、88倍、89倍、90倍、91倍、92倍、93倍、94倍、95倍、96倍、97倍、98倍、99倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍まで改善されていてもよい。
【0333】
表1.配列
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】

【表1-9】

【表1-10】

【表1-11】

【表1-12】

【表1-13】

【表1-14】

【表1-15】

【表1-16】

【表1-17】

【表1-18】

【表1-19】
【0334】
一般情報
別様に述べられない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって習慣的かつ日常的に理解されるのと同じ意味を有し、本開示に勘案して読まれる。
【0335】
配列同一性
本開示の文脈において、本明細書に記載のとおりのSHC酵素をコードする核酸分子などの核酸分子は、本明細書に記載のとおりのSHC酵素をコードする核酸またはヌクレオチド配列によって表される。
【0336】
所定の配列同定番号(配列番号)によって本明細書に同定されるとおりの各核酸分子またはタンパク質フラグメントまたはポリペプチドまたはペプチドまたは派生ペプチドまたは構築物は、開示のとおりのこの特定の配列に限定されないと理解されるべきである。本明細書に同定されるとおりの各コード配列は、所定のタンパク質フラグメントもしくはポリペプチドもしくはペプチドもしくは派生ペプチドもしくは構築物をコードするか、またはそれ自体がタンパク質フラグメントもしくはポリペプチドもしくは構築物もしくはペプチドもしくは派生ペプチドである。
【0337】
本出願を通してずっと、毎回それは、所定のタンパク質フラグメントまたはポリペプチドまたはペプチドまたは派生ペプチドをコードする、特定のヌクレオチド配列の配列番号(配列番号Xを例にとる)を指し、それを次によって置き換えてもよい:
i.配列番号Xと少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列;
ii.ヌクレオチド配列であって、その配列が、遺伝暗号の縮退に起因して(i)の核酸分子の配列とは異なるは前記ヌクレオチド配列;あるいは
iii.配列番号Xのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%のアミノ酸同一性または類似性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【0338】
配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、30%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、40%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、50%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、60%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、70%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、80%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、90%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、95%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、99%である。
【0339】
本出願を通してずっと、毎回、配列番号の特定のアミノ酸配列を参照し(一例として配列番号Yを挙げる)、これを、配列番号Yのアミノ酸配列と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性または類似性を有する配列を含むアミノ酸配列によって表されるポリペプチドによって置き換えてもよい。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、30%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、40%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、50%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、60%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、70%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、80%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、90%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、95%である。配列の同一性または類似性の別の好ましいレベルは、99%である。
【0340】
本明細書に記載の各ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は夫々、所定のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列とのその同一性または類似性のパーセンテージの所為から、さらに好ましい態様において、所定のヌクレオチドもしくはアミノ酸の配列と夫々、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは100%の同一性または類似性を有する。
【0341】
各非コードヌクレオチド配列(すなわち、プロモーターの、または別の調節領域の)は、特定のヌクレオチド配列の配列番号(配列番号Aを例にとる)と少なくとも60%の配列同一性または類似性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によって置き換えられ得る。好ましいヌクレオチド配列は、配列番号Aと少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する。好ましい態様において、プロモーターなどのかかる非コードヌクレオチド配列は、当業者に知られているとおりのプロモーターの活性などの、かかる非コードヌクレオチド配列の活性を少なくとも呈するか、または発揮する。
【0342】
用語「ホモロジー」、「配列同一性」等は、本明細書において互換的に使用される。配列同一性は、配列を比較することによって決定されるとおり、2以上のアミノ酸(ポリペプチドもしくはタンパク質)配列間または2以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係性として本明細書に記載される。好ましい態様において、配列同一性は、2つの所定の配列番号の完全長に、またはその一部に基づき算出される。その一部は好ましくは、両方の配列番号の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%を意味する。当該技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、一連のアミノ酸配列間または核酸配列間の一致によって決定されるとおり、かかる配列間の配列類似度(degree of sequence relatedness)も指す。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、一方のポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換体(substitutes)を、もう一方のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」および「類似性」は、これらに限定されないが、Bioinformatics and the Cell: Modern Computational Approaches in Genomics, Proteomics and transcriptomics, Xia X., Springer International Publishing, New York, 2018; およびBioinformatics: Sequence and Genome Analysis, Mount D., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2004(各々は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるものを包含する、知られている方法によって容易に算出され得る。
【0343】
「配列同一性」および「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じてグローバルまたはローカルのアライメントアルゴリズムを使用し、2つのペプチド配列または2つのヌクレオチド配列のアライメントによって決定され得る。類似した長さの配列は好ましくは、配列を全長にわたって最適にアラインするグローバルアラインメントアルゴリズム(例としてNeedleman-Wunsch)を使用してアラインされるのに対し、実質的に異なる長さの配列は好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例としてSmith-Waterman)を使用してアラインされる。配列が(例えば初期設定パラメータを使用するプログラムEMBOSS needleまたはEMBOSS waterによって最適にアラインされたとき)配列同一性の少なくともある最小限のパーセンテージを共有するとき(下に記載のとおり)、配列はそのとき「実質的に同一である」または「本質的に類似する」と称されてもよい。
【0344】
グローバルアラインメントは、2つの配列が類似の長さを有するとき、配列同一性を決定するのに好適に使用される。配列が、全体として実質的に異なる長さを有するとき、ローカルアライメント、たとえばSmith-Watermanアルゴリズムを使用するものなどが好ましい。EMBOSS needleは、Needleman-Wunschグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をそれら全長(entire length)(完全長(full length))にわたってアラインし、一致数を最大化してギャップ数を最小限に抑える。EMBOSS waterは、Smith-Watermanローカルアライメントアルゴリズムを使用する。一般に、EMBOSS needleおよびEMBOSS waterの初期設定パラメータが使用され、ギャップオープンペナルティ(gap open penalty)=10(ヌクレオチド配列)/10(タンパク質)とし、ギャップエクステンションペナルティ(gap extension penalty)=0.5(ヌクレオチド配列)/0.5(タンパク質)とする。ヌクレオチド配列の場合、初期設定スコアリングマトリックスはDNAfullであり、タンパク質の場合、初期設定スコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0345】
代替的に、パーセンテージの類似性または同一性は、FASTA、BLAST等々などのアルゴリズムを使用し、公開データベースに対して検索することによって決定されてもよい。よって、本開示のいくつかの態様の核酸配列およびタンパク質配列はさらに、「クエリ配列」として、例えば他のファミリーまたは関連配列を同定するために公開データベースに対して検索を実施するのに使用され得る。かかる検索は、Altschul, et al.(1990) J. Mol. Biol. 215:403-10(参照により本明細書に組み込まれる)のBLASTnおよびBLASTxプログラム(バージョン 2.0)を使用して実施され得る。BLASTヌクレオチド検索は、本開示のオキシドレダクターゼ核酸分子に相同のヌクレオチド配列を得るために、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長(wordlength)=12で実施され得る。BLASTタンパク質検索は、本開示のタンパク質分子に相同のアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施され得る。比較目的でギャップのある(gapped)アラインメントを得るためには、Gapped BLASTが、Altschul et al.,(1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおり利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTのプログラムを利用するとき、夫々のプログラム(例としてBLASTxおよびBLASTn)の初期設定パラメータが使用され得る。ワールドワイドウェブ上でアクセス可能なNational Center for Biotechnology Informationのホームページ(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を見よ。
【0346】
配列一致分析は、Shuffle-LAGAN(Brudno M., Bioinformatics 2003b, 19 SuppI 1: 154-162)またはMarkov確率場といった確立されたホモロジーマッピング技法によって補完されてもよい。
任意に、アミノ酸類似度の決定において、当業者はまた、本明細書に以前考察されたとおりの所謂保存アミノ酸置換体も考慮に入れてもよい。
【0347】
遺伝子またはコード配列
用語「遺伝子」は、ある領域(転写領域)を含むDNAフラグメントを意味し、これは細胞中転写されてRNA分子(例としてmRNA)になるものであって、好適な調節領域(例としてプロモーター)へ作動可能に連結されている。遺伝子は大抵、プロモーター、5'リーダー配列、コード領域、および3'非翻訳配列(3'末)(例としてポリアデニル化-および/または転写終止部位を含む)などの、作動可能に連結された数個のフラグメントを含むであろう。キメラ遺伝子または組換え遺伝子は、例えばプロモーターが転写されたDNA領域の一部または全部と天然には結び付けられていない遺伝子などの、通常自然界からは見出されない遺伝子である。「遺伝子の発現」は、適切な調節領域、具体的にはプロモーターへ作動可能に連結されているDNA領域が転写されて、生物学的に活性なRNAになる、すなわち翻訳されて、生物学的に活性なタンパク質またはペプチドになることが可能なRNAになるプロセスを指す。
【0348】
タンパク質およびアミノ酸
用語「タンパク質」または「ポリペプチド」または「アミノ酸配列」は互換的に使用され、特定の作用モード、サイズ、3次元構造、または起源へ言及せずにアミノ酸の鎖からなる分子を指す。本明細書に記載のとおりのアミノ酸配列において、アミノ酸または「残基」は、3文字記号または1文字記号によって表示される。3文字記号ならびに対応する1文字記号は当業者に周知であり、以下の意味を有する: A(Ala)はアラニン、C(Cys)はシステイン、D(Asp)はアスパラギン酸、E(Glu)はグルタミン酸、F(Phe)はフェニルアラニン、G(Gly)はグリシン、H(His)はヒスチジン、I(Ile)はイソロイシン、K(Lys)はリシン、L(Leu)はロイシン、M(Met)はメチオニン、N(Asn)はアスパラギン、P(Pro)はプロリン、Q(Gln)はグルタミン、R(Arg)はアルギニン、S(Ser)はセリン、T(Thr)はトレオニン、V(Val)はバリン、W(Trp)はトリプトファン、Y(Tyr)はチロシンである。残基は、いずれのタンパク質原性(proteinogenic)アミノ酸であってもよいが、翻訳後修飾によって形成されるD-アミノ酸および修飾アミノ酸などの非タンパク質原性アミノ酸でもよく、またいずれの非天然アミノ酸であってもよい。
【0349】
本文書およびそのクレームにおいて、動詞「を含む」およびその活用は、その非限定的な意味において、その語に続く事柄が包含されることを意味するために使用されるが、特に言及されない事柄が除外されることはない。加えて、動詞「からなる」は、本明細書に記載のとおりの組成物が、具体的に同定された構成要素以外に追加の構成要素(単数または複数)を含んでいてもよいことを意味する「本質的にからなる」によって置き換えられてもよく、該追加の構成要素(単数または複数)は本発明のユニークな特徴を変更しないものである。加えて、動詞「からなる」は、本明細書に記載のとおりの方法が、具体的に同定されたステップ以外に追加のステップ(単数または複数)を含んでいてもよいことを意味する「本質的にからなる」によって置き換えられてもよく、該追加のステップ(単数または複数)は本発明のユニークな特徴を変更しないものである。
【0350】
不定冠詞「a」または「an」による要素への参照は、文脈が明確に、要素のうち1つある、1つしかないことを要求しない限り、要素の1つより多くが存在する可能性を排除しない。よって、不定冠詞「a」または「an」は大抵、「少なくとも1(つ)の」を意味する。
【0351】
本明細書に使用されるとき、「少なくとも」をもつ具体的な値は、具体的な値以上の値を意味する。例えば、「少なくとも2つの」は、「2以上」と同じである、すなわち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、...等々であると理解されるべきである。
【0352】
さらにまた、本記載におけるおよびクレームにおける第1、第2、第3等の用語は、類似する要素同士間を区別するために使用され、必ずしも順序または時系列を記載するものではない。そう使用される用語は、適切な状況下で交換可能であること、および本明細書に記載の態様は、本明細書に記載または図示される以外の配列においても操作が可能であることが理解されるべきである。
【0353】
語「約」または「およそ」は好ましくは、数値(例として約10)に関連して使用されるとき、その値は、(10という)所定値から1%多い値であってもまたは1%少ない値であってもよいことを意味する。
【0354】
本開示の文脈において、用語「および/または」は、用語「および/または」によって接続される群のすべてのメンバーが、いずれかの組み合わせにおいて互い累積的にも、かつ互いに代替的にも表されることを意味するものと理解される。代表的に表現「A、B、および/またはC」について、以下の開示が、その条件下で理解されるべきである: i)(AまたはBまたはC)、あるいはii)(AおよびB)、あるいはiii)(AおよびC)、あるいはiv)(BおよびC)、あるいはv)(AおよびBおよびC)、あるいはvi)(AおよびBまたはC)、あるいはvii)(AまたはBおよびC)、あるいはviii)(AおよびCまたはB)。
【0355】
様々な態様が本明細書に記載されている。本明細書に同定されるとおりの各態様は、別様に指し示されていない限り、組み合わされていてもよい。
【0356】
本明細書に引用されているすべての特許出願、特許、および印刷刊行物は、全体が参照により本明細書に組み込まれるが、本開示の文言が支配する場合、いずれの定義、主題の免責(disclaimers)または否認(disavowals)を除き、かつ本明細書の明示的開示と矛盾する範囲を除く。
【0357】
本開示は、本明細書に記載の方法、プロトコル、または材料によって限定されない。当業者は、本明細書に記載の実践において使用され得る、本明細書に記載のものと類似または同等の多くの方法、プロトコル、および材料を認識するであろう。実に本開示は、記載の方法および材料には決して限定されない。また本開示は、以下の例の側面の先行開示への一般化も網羅すると理解される。
【0358】
本開示は、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の例によってさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0359】
図の記載
図1図1.式(II)で表される化合物の産生のための反応スキーム。化合物について、Rは任意に、HおよびC1~C4アルキルから選択される。
図2図2.選択されたSHCバリアントのSHC酵素活性。E,Z-HFA変換は、ライブラリスクリーニングおよび改善されたバリアントの選択の最中に試験されたとおり、BmeSHCでの変換に対して指し示される(2g/l E,Z-HFA、OD650nm 10までの細胞、0.005% SDS、50mMコハク酸塩/NaOH緩衝剤(pH5.2)、35℃、250rpm、24h)。
図3図3.選択されたSHCバリアントのSHC酵素活性。反応条件は図2において考察したものと同じであった。使用された生体触媒は発酵において産生された。
【0360】
図4図4.選択されたSHCバリアントのSHC酵素活性。E,Z-HFA変換は、突然変異の研究および改善されたバリアントの選択の最中に試験されたとおり、wt BmeSHCでの変換に対して指し示される(4g/l E,Z-HFA、OD650nmが10までの細胞、0.004% SDS、50mMコハク酸塩/NaOH緩衝剤(pH5.2)、35℃、250rpm、24h)。
図5図5.選択されたSHCバリアントのSHC酵素活性。反応条件は図4において考察したものと同じであった。使用された生体触媒は発酵において産生された。
図6図6.選択されたSHCバリアントのSHC酵素活性。E,Z-HFA変換は、wt BmeSHCでの変換に対して指し示される(4g/l E,Z-HFA、OD650nmが10までの細胞、0.004% SDS、50mMコハク酸塩/NaOH緩衝剤(pH5.2)、35℃、250rpm、24h)。
【0361】
図7図7.wtおよびバリアントのBmeSHC酵素の相対活性。反応は、135g/l E,Z-HFAおよび182g/l細胞で、バリアントの各々に最適と定義されたT、pH、およびSDS(SDS:細胞の比率)条件にて実行された。wt BmeSHCでの変換は、参照(100)として設定されている。
図8図8.BmeSHC#192とBmeSHC#192バリアントとの相対活性。反応は、135g/l E,Z HFAおよび182g/l細胞で、試験されたバリアントの各々に最適と個々に定義されたT、pH、およびSDS([SDS]:[細胞]比率)条件にて実行された。BmeSHC#192での変換は、参照として100に設定されている。
図9図9.BmeSHC#192とBmeSHC#192バリアントとの相対活性。反応は、100g/l E,Z-HFAおよび100g/l細胞で、試験されたバリアントの各々に最適と個々に定義されたT、pH、およびSDS([SDS]:[細胞]比率)条件にて実行された。BmeSHC#192での変換は、参照として100に設定されている。
【0362】

例1:SHC酵素の進化: ライブラリスクリーニング、BmeSHCバリアント、新しい突然変異
酵素進化プログラムを、Bacillus megaterium SHC酵素をコードする遺伝子を鋳型として使用して行った。約11’300のSHCバリアントのライブラリを産生し、E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン(E,Z-HFA)の(+)-アンベルケタールへの環化能の増大を示すバリアントについてスクリーニングした。SHC産生のための遺伝子発現を、E. coli MC1061(DE3)において行った: 自動誘導(auto-inducing)培地中0.5ml培養し、37℃にて2hインキュベートし、これに続き20℃にて22hインキュベートした(250rpm)。細胞を遠心分離によって収集し、50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)で洗浄した。
【0363】
SHC活性スクリーニングを96ディープウェルプレートにおいて行った。0.5ml反応を、50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)において稼働させた。それらは、2g/l E,Z-HFAおよび0.004%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、SHCバリアントを産生したOD650nmが10までの細胞を含有していた。反応を、一定の攪拌(オービタル振動、250rpm)下35℃にて3時間稼働させ、例7に記載のとおりE,Z-HFAの(+)-アンベルケタールへの変換を決定するためのGC-FID分析のために溶媒抽出した。
【0364】
生産された約11’300のバリアントのうち316を検証用に選んだ。ライブラリスクリーニングへ上に記載の条件を適用した。
【0365】
上の316のバリアントのうち82を、より大規模に確認するために選んだ。20ml培養を、上に記載の培養スキームおよび細胞回収に倣い、自動誘導培地中で稼働させた。SHC活性を、上に記載の設定においてアッセイした。反応物は、2g/lまたは4g/lのE,Z-HFA、OD650nmが10または20までの細胞、細胞濃度に応じて0.01%または0.005%のSDS(SDS/細胞の一定比率)を含有していた。例7に記載のとおりE,Z-HFAの(+)-アンベルケタールへの変換を決定するためのGC-FID分析のための溶媒抽出に先立ち、反応物を35℃にて2h、4h、または6hインキュベートした(250rpm)。
【0366】
上の82のバリアントのうちの23を最終確認ステップのために選択した。20ml培養を自動誘導培地中で稼働させた(37℃にて2h、次いで20℃にて22hインキュベーション(180rpm))。細胞を遠心分離によって収集して洗浄し、50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)中OD650nmが200になるまで濃縮した。活性を96ディープウェルプレートにおいてアッセイした。50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)中の反応物は、2g/l、4g/l、または8g/lのE,Z-HFA、OD650nmが5または10までの細胞とともに、細胞濃度に応じて0.0025%または0.005%のSDS(SDS/細胞の一定比率)を含有していた。反応物を経時的に試料採取して溶媒抽出し、例7に記載のとおりE,Z-HFAの(+)-アンベルケタールへの変換を決定するためガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0367】
活性試験へ適用された条件(基質濃度、反応時間)に応じてE,Z-HFA環化活性が改善された7バリアントから、表2に列挙される突然変異が発見された。これらのバリアントは、徹底した特性付けのために選択した。2g/lのEZHFAおよびOD650nmが10までの細胞を含有する反応物におけるそれらの活性(wt BmeSHCでの変換に対するE,Z-HFA変換)を図2に示す。発酵によって産生されたときのこれらバリアントの活性を図3に示す。結果は、生体触媒の活性が、生体触媒がどのようにして産生されたか(フラスコ培養vs.発酵、自動誘導培地vs.最小培地)に強く依存していたことを指し示した。
【0368】
表2: 選択されたBmeSHCバリアントにおける突然変異
【表2】
【0369】
例2: 突然変異の研究1
突然変異の研究は、バリアント3G6および50D3の突然変異がE,Z-HFAの(+)-アンベルケタールへの環化にもたらす影響を決定するために行った。3G6および50D3突然変異のすべての実行可能な組み合わせを、単独で、ならびにY483C、L5P、およびY483C+L5P突然変異と結び合わせて研究した。176の追加バリアントを構築し、それらE,Z-HFAの(+)-アンベルケタールへの環化活性について試験した。
【0370】
培養および遺伝子発現は、ライブラリスクリーニングについて記載されたとおりマイクロタイタープレートにおいて行った(例1)。SHC活性を、0.5ml反応中、2g/lおよび4g/lのE,Z-HFA;OD650nmが10の細胞、50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)中0.004%SDSでアッセイした(250rpm)。反応物を、例7に記載のとおり溶媒抽出およびGC分析に先立ち、3または6時間インキュベートした。選択されたバリアントの突然変異を表3に示し、バリアントの活性(24hの反応後のwt BmeSHCに対するE,Z-HFA変換)を図4に示す。発酵によって産生されたこれら生体触媒の活性を図5に示す。結果は、生体触媒の活性が、細胞がどのように産生されるかに強く依存していたことを指し示した。
【0371】
突然変異の組み合わせの研究によって、次の5つの有益な突然変異を同定することができた: I2N、Y483C、L539H、L5P、T35A。
表3: 選択されたBmeSHCバリアントにおける突然変異
【表3】
【0372】
例3: 突然変異の研究2
突然変異研究1(例2)の最中に有益であるとして同定された突然変異を、同じく有益として同定された突然変異E211VおよびT166Aと組み合わせた。E211Vおよび/またはT166Aを、SHCバリアント#15、#21、#42、#47、#56、および#96へ追加した:21の追加のバリアントを構築した。
【0373】
培養および遺伝子発現は、ライブラリスクリーニングについて記載されたとおりマイクロタイタープレートにおいて行った(例1)。SHC活性を、4g/lのE,Z-HFA;OD650nmが10の細胞、50mMコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.2)中0.004%SDSを含有する0.5ml反応物においてアッセイした(250rpm)。反応物を、溶媒抽出およびGC分析に先立ち、35℃および250rpmにて3時間、6時間、または24時間インキュベートした。選択された追加のバリアントの突然変異を表4に示し、バリアントの活性(3h、6h、および24h後のwt BmeSHCに対するE,Z-HFA変換)を図6に示す。
【0374】
SHCバリアント#179、#182、#188、#192、および#193はすべて、野生型BmeSHCより4.5倍と6.5倍との間の改善(24時間の反応後のE,Z-HFA変換)を示した。
【0375】
表4: 選択されたBmeSHCバリアントにおける突然変異
【表4】
【0376】
例4: 生体触媒産生(発酵)
Escherichia coliにおけるSHC酵素産生のため、所望の野生型またはバリアントのスクアレンホペンシクラーゼ酵素をコードする遺伝子を、プラスミドpET-28a(+)中へ挿入したが、ここで前記遺伝子はIPTG誘導性T7プロモーターの制御下にある。プラスミドを、標準的な熱ショック形質転換手順を使用してE.coli株BL21(DE3)に形質転換した。
【0377】
培養培地
生体触媒産生のための初期設定として使用された最小培地は次を含有していた
●10% 10xクエン酸/リン酸塩緩衝剤(脱イオン水中、133g/l KH2PO4、 40g/l (NH4)2HPO4、17g/l クエン酸.H2O、32% NaOHを使用してpHを6.8へ調整した)、
●2.43% MgSO4溶液(脱イオン水中50% w/v MgSO4.7H2O)、
●0.01%微量元素溶液(脱イオン水中、50g/l Na2EDTA.2H2O、20g/l FeSO4.7H2O、3g/l H3BO3、0.9g/l MnSO4.2H2O、1.1g/l CoCl2、80g/l CuCl2、240g/l NiSO4.7H2O、100g/l KI、1.4g/l (NH4)6Mo7O24.4H2O、1g/l ZnSO4.7H2O)、
●0.01%チアミン溶液(脱イオン水中2.25g/l チアミン.HCl)、
●2%グルコース溶液(脱イオン水中20% w/v グルコース)。
【0378】
クエン酸/リン酸塩緩衝液は最初にオートクレーブで滅菌し、その後に加えられた他の成分はオートクレーブまたはフィルター滅菌(0.2μm)で滅菌した無菌溶液から添加した。
【0379】
発酵
発酵を750ml InforsHT反応器中で稼働させた。発酵槽へ168ml脱イオン水を加えた。反応槽に、要求されるすべてのプローブ(pO2、pH、試料採取、抗泡)、C+N給送瓶および水酸化ナトリウム瓶を備え付け、オートクレーブした。オートクレーブ後に反応器へ次を加える:
●20ml 10xリン酸塩/クエン酸緩衝剤
●14ml 50%グルコース
●0.53ml MgSO4溶液
●2ml (NH4)2SO4溶液(脱イオン水中50%(w/v)(NH4)2SO4)
●0.020ml 微量元素溶液
●0.400ml チアミン溶液
●0.200ml カナマイシン溶液(50mg/ml)
【0380】
稼働パラメータは以下のとおりであった:pH=6.95、pO2=40%、T=30℃、300rpm。カスケード: rpm定値300にて、min 300、max 1000、流れ(l/min)定値0.1、min 0、max 0.6。消泡制御: 1:9。
【0381】
種培養物をLB培地(+カナマイシン)中37℃、220rpmにて8h成長させた。発酵槽に、OD650nmが0.4~0.5になるまでこの種培養物から植菌した。発酵を最初にバッチモードで11.5h稼働させた後、滅菌後に以下:17.5ml (NH4)2SO4溶液、1.8ml MgSO4溶液、0.018ml微量元素溶液、0.360mlチアミン溶液、0.180mlカナマイシン溶液が加えられた給送溶液(滅菌グルコース溶液(143ml H2O+35gグルコース)でC+N給送を開始した。給送をおよそ4.2ml/hの一定流速にて稼働させた。培養中のC-およびN-供給源の利用可能性を評価するためグルコースおよびNH4 +の測定を外部から行った。大抵、グルコースレベルは極めて低いままである。
【0382】
培養物を計およそ25時間成長させたが、これらは典型的にはOD650nmが40~45に達していた。次いでSHC産生を、発酵槽へIPTGを1mMの濃度まで加えることによって誘導し、30℃およびpO2=20%にておよそ16h続けた。誘導の終了時、細胞を遠心分離によって収集し、クエン酸/リン酸ナトリウム緩衝剤(pH5.6)で洗浄して、さらなる使用までペレットとして4℃または-20℃にて保管した。
【0383】
例5: BmeSHCバリアントに最適化された反応条件
選択されたSHCバリアントのための反応条件は、温度、pH、およびSDS濃度に関して個々に最適化した。生体触媒は、例4に記載のとおり発酵によって調製した。
【0384】
2~5ml体積の、4g/l E,Z-HFAおよびOD650nmが10.0にてロードされた細胞(バリアントSHC酵素を発現する)との反応を、0.1Mクエン酸/リン酸ナトリウム緩衝剤(pH5.0~6.8)中、27℃から50℃まで及ぶ温度にて0.010~0.020%SDSの存在下、および一定の攪拌下(Heidolph synthesis 1 Liquidデバイス、800rpm)で稼働させた。最適化されたものとして定義された反応条件は、0.1Mコハク酸/NaOH緩衝液中で確認/調整した(pH)。導入された突然変異は、バリアントよりも、SDS濃度の最適値およびpHにいくらか影響を与えた。最適温度に対して大きなばらつきが観測された。
【0385】
表5: BmeSHCの野生型酵素およびバリアント酵素に最適化された反応条件1.
【表5】

1野生型Bme SHC酵素の最適値は比較目的のために提供する。2 OD650nmが10までの細胞を含有する反応物において。
【0386】
例6: 135g/l E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン生物変換におけるSHCバリアントの能力
選択されたBmeSHC wtまたはバリアントSHC酵素をコードする遺伝子を持つプラスミドで形質転換されたE. coli株の発酵によって産生された生体触媒を、135g/l E,Z-HFA生物変換に使用した。4ml反応をRadleys Carousel Plus/Monoblock 16において稼働させた。それらは135g/l E,Z-HFA、182g/l 細胞を含有しており、温度、pH、およびSDS濃度に関して最適と定義された条件下で稼働させた。
【0387】
図7は、wtとバリアントとのBmeSHC酵素の相対活性を、E,Z-HFAから(+)-アンベルケタールへの変換の点で時間の関数として示す。完全変換は、最良のバリアント#179、#189、#192、および#193により24~48時間で達成されたが、wt BmeSHCで完全変換に達するには72時間を要した。
【0388】
例7: GC-FID分析
試料を、基質および反応産物中のそれら含量の定量化のため、適切な体積のMBTEで抽出(激しく振盪させて)した。溶媒画分を、GC-FID分析に先立ち水相から遠心分離(卓上遠心分離機)によって分離した。1μlの溶媒相を30m x 0.32mm x 0.25μm DB-Waxカラム上へ注入した(分割比10)。カラムを一定の流れ(4ml/min H2)にて、温度勾配: 200℃、25℃/min~240℃、120℃/min~240℃、240℃にて4minで、展開した。分割流: 10ml/min、分割比: 5。吸込温度: 250℃、検出器温度: 150℃。これによって、E,Z-HFAと(+)-アンベルケタールとの分離がもたらされた。E,Z-HFA変換は、(+)-アンベルケタールピークとE,Z-HFAとのピークの面積から以下の式で算出した:
EZHFA変換(%) = 100 x (面積アンベルケタールピーク/(面積アンベルケタールピーク + 面積EZHFAピーク))
【0389】
例8: E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトンの環化
E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトンを、BmeSHCバリアント#192を使用して環化した。
反応物は、9.9g E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン、BmeSHCバリアント#192を産生した364g/l 細胞、1.15g SDS(10% SDS)を含有しており、0.1Mコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.6)中、一定の攪拌下30℃にて稼働させた(250mlフラスコ(Radleys Monoblock)中115ml総体積)。E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトンは、およそ142時間で完全に変換された。
【0390】
反応物を100ml MTBEで5回抽出し、溶媒相を遠心分離(30分、3579g、室温)によって回収して溶媒相をプールし、MgSO4上で乾燥させ、溶媒を回転蒸発によって蒸発させることで、20.9g粗産物がもたらされた。
【0391】
粗産物をエタノールに溶解し、水添加によって結晶化させた。GC分析に従い>99%純度の8gの結晶(+)-アンベルケタールが回収された。
【0392】
例9: ヒドロキシファルネシルアセトン異性体とヒドロキシファルネシルアセトンの構造異性体との混合物からのE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトンの環化
以下の4化合物の混合物をBmeSHCバリアント#192を使用して環化した:
a)Rがメチルである式(II)で表される化合物のE,Z-異性体(E,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン)
b)Rがメチルである式(II)で表される化合物のE,E-異性体(E,E-ヒドロキシファルネシルアセトン)
c)Rがメチルである式(IIa)で表される化合物のE,Z-異性体
d)Rがメチルである式(IIa)で表される化合物のE,E-異性体
この例におけるa:b:c:dの比率は、37:9:29:16であった。
【0393】
反応物は、135g/lの4化合物混合物、およびBmeSHCバリアント#192を産生した364g/l細胞、2.05g SDS(10.25% SDS)を含有しており、0.1Mコハク酸/NaOH緩衝剤(pH5.6)中、一定の攪拌下30℃にて稼働させた(250ml DASBox発酵槽中200ml総体積)。反応を合計150時間稼働させ、ここでE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン変換はおよそ80%であった。
【0394】
反応物を100ml MTBEで7回抽出し、溶媒相を遠心分離(30分、3579g、室温)によって回収してプールし、MgSO4上で乾燥させ、溶媒を回転蒸発によって蒸発させることで、27.6g粗産物がもたらされた。
【0395】
反応産物を、n-ヘプタン/MTBEを溶媒系として使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。産物含有画分をプールし溶媒を蒸発させることで、7.1g粗産物がもたらされた。
粗産物をエタノールに溶解し、水添加によって結晶化させることで、式(I)で表される化合物および式(V)で表される化合物(式中Rはメチルである)を含有する2産物画分がもたらされた。
【0396】
主産物画分(結晶、5.4g)は、式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを比率93:7で含有していた(GC分析に従うと>99%純度)。
第2産物画分(油状結晶(oily-crystalline)、708mg)は、式(I)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを比率42:58で含有していた(96.8%純度)。
【0397】
例10: 酵素の安定性に関連する構造要素における突然変異
BmeSHC酵素のモデルは、Alicyclobacillus acidocaldarius SHC(PDB ID: 2 SQC)の結晶構造を使用する相同性モデリングによって創出した。
酵素の安定性に影響を及ぼす構造要素は、これらに限定されないが、例としてα-ヘリックスを不安定化する可能性のあるグリシン残基または塩橋の形成を担うアミノ酸残基を包含する。
【0398】
スクアレンホペンシクラーゼの酵素ファミリーの特徴は、入り組んだ相互作用ネットワークによってタンパク質構造を締め付けるQWリピート(グルタミン(Q)-トリプトファン(W)モチーフ)である(Wendt et al., The structure of the membrane protein squalene-hopene cyclase at 2.0 A resolution, J. Mol. Biol 286, 175-187 (1999))。
BmeSHCにおけるQWリピートとBmeSHCのホモログにおけるQWリピートの比較により、表6に列挙されたBmeSHC#192バリアントを、突然変異がQWリピートを対象とするよう設計した。
【0399】
表6.酵素の安定性を担う構造要素における突然変異。
【表6】
【0400】
例11: BmeSHC#192バリアントでのE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン変換
表6に列挙されるバリアントの生体触媒は、例4に記載の手順で発酵によって産生した。
バリアントの各々につき、反応条件を、例5に記載のとおり反応パラメータである温度、pH、およびSDS濃度に関し、産生された生体触媒とともに個々に最適化した。選択されたBmeSHC#192バリアントに最適化された反応条件を表7に列挙する。
【0401】
表7: BmeSHC#192バリアントに最適化された反応条件。
【表7】

1 OD650nmが10までの細胞(およそ9g/l細胞)を含有する反応物において。
【0402】
生体触媒は、135g/l E,Z-HFA生物変換において182g/l細胞とともに使用した:4ml反応を、Radleys Carousel Plusにおいて、バリアント各々につき温度、pH、およびSDS濃度に関して個々に最適と定義された条件下で稼働させた。
【0403】
図8は、親酵素とバリアントBmeSHC#192酵素との相対活性を、E,Z-HFAから(+)-アンベルケタールへの変換の点で時間の関数として示す。QWリピートといった構造要素に対処することによって酵素の安定性を強化することは、酵素活性を増大させることを可能にした。3時間の反応後の変換の点で測定された初期反応速度は、試験されたすべてのバリアントで増加した。42.5hおよび70hの反応後のE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン変換は、親BmeSHC#192と比較して、2バリアントBmeSHC#192_v70およびBmeSHC#192_v72以外のバリアントでより高かった。
【0404】
例12: 1という細胞:基質の比率でのBmeSHC#192バリアントでのE,Z-ヒドロキシファルネシルアセトン変換
バリアントBmeSHC#192_v70、BmeSHC#192_v71、およびBmeSHC#192_v75の生体触媒(表6)は、例4に記載の手順で発酵によって産生した。生体触媒は、生物変換において、1という細胞:基質の比率(100g/l E,Z-HFA、100g/l 細胞)で使用した:4ml反応を、Radleys Carousel Plusにおいて、バリアント各々につき温度、pH、およびSDS濃度に関して個々に最適と定義された条件下で稼働させた(表7)。
【0405】
図9は、E,Z-HFAから(+)-アンベルケタールへの変換の点で測定された親酵素とバリアントBmeSHC#192酵素との相対活性を時間の関数として示す。バリアントBmeSHC#192_v70、BmeSHC#192_v71、およびBmeSHC#192_v75を生産する生体触媒は、親酵素BmeSHC#192を生産する生体触媒よりも良好に働いた: それらのバリアントで、親酵素のバリアントのE,Z-HFA変換より約1.25~1.35倍の増加が観察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】