(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】補助的な又は自動的な車両操縦のための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241029BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20241029BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W30/08
G08G1/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523683
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021081663
(87)【国際公開番号】W WO2023083474
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー・ラース
(72)【発明者】
【氏名】ペジック・アルディン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA31
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241DC01Z
3D241DC25Z
3D241DC35Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181EE02
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
エゴ車両(1)が、制御手段(2)と少なくとも一つの周辺部及びオブジェクトを捕捉するためのセンサを包含しており、該エゴ車両(1)を車両操縦するために捕捉された周辺部及び捕捉されたオブジェクトを基にした軌道計画が実施され、該オブジェクト用に各々それらによって引合・反発ルールが定められるボイド(10,11,12)が生成され、且つ、該軌道計画が、ボイド(10,11,12)を基にして実施されるエゴ車両(1)の補助的な又は自動的な車両操縦のための方法であって、以下の方法ステップを特徴とする方法:イニシャライズ、即ち、ボイド(10,11,12)が、座標系に取り込まれるステップ、引合・反発ルールを用いるステップ、並びに、定められた挙動モデルに従ってシミュレーションするステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゴ車両(1)が、制御手段(2)と少なくとも一つの周辺部及びオブジェクトを捕捉するためのセンサを包含しており、
該エゴ車両(1)を車両操縦するために捕捉されたオブジェクトを基にした軌道計画が実施され、
該オブジェクト用に各々それらによって引合・反発ルールが定められるボイド(10,11,12)が生成され、且つ、
該軌道計画が、ボイド(10,11,12)を基にして実施される
エゴ車両(1)の補助的な又は自動的な車両操縦のための方法であって、
以下の方法ステップを特徴とする方法:
イニシャライズ、即ち、ボイド(10,11,12)が、座標系に取り込まれるステップ、
引合・反発ルールを用いるステップ、並びに、
定められた挙動モデルに従ってシミュレーションするステップ。
【請求項2】
互いに近隣にあり且つ並列に配置されているオブジェクトが、引き合うボイドとして、一方、互いに並列にしかし互いに大きな間隔を持って配置されているオブジェクトが、反発し合うボイドとして定められることによって、引合・反発ルールが決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
静的オブジェクトが、反発するボイド(11,12)として、可動オブジェクトが、引き合うボイド(13)として定められることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
可動オブジェクトが、経時的に観察され、推移履歴が作成され、該推移履歴を基にして、引き合うボイド(13)が定められることを特徴とする請求項2或いは3に記載の方法。
【請求項5】
捕捉されたオブジェクト及び/或いはボイドがオブジェクトリストに保存されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
エゴ車両(1)の位置と移動方向を基にして、特徴空間が定められるが、全てのボイド(13)用の引合ルールが、特徴空間のある一点に収束されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
特徴空間が、軌道計画のクロソイド・パラメータを基にして定められることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
特徴空間が、他の交通参加者に拡張されることを特徴とする請求項6或いは7に記載の方法。
【請求項9】
周辺捕捉を実施するためのセンサ類として、少なくとも一台のカメラセンサ(6)及び/或いはライダセンサ(7)、レーダセンサ(8)、或いは、超音波センサ(9a-9d)が設けられていることを特徴とする先行請求項のうち少なくとも何れか一項に記載の駐車アシストシステム。
【請求項10】
引合・反発ルールが、シンプルな行動規範の組合わせとして表されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
引合・反発ルールが、幾何学的、帰還制御的、或いは、論理的に実現されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
引合・反発ルールが、優先度、加重、及び/或いは、平均化を基に実現されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
制御手段(2)と少なくとも一つの周辺部及びオブジェクトを捕捉するためのセンサを包含するエゴ車両(1)の補助的な又は自動的な車両操縦のためのエゴ車両(1)用のドライバーアシストシステムであって、該制御手段(2)が、先行請求項のうち何れか一項に記載の方法に基づいて軌道計画を実施することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エゴ車両の補助的な又は自動的な車両操縦のための方法、特に好ましくは、コンピュータに実装される方法、並びに、エゴ車両の補助的な又は自動的な車両操縦のためのエゴ車両用のドライバーアシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
該当する車両、例えば、乗用自動車(PKW=Personenkraftfahrzeuge)、貨物用動力車両(LKW=Lastkraftwaegen)や自動二輪には、センサシステムの助けを借り周辺部乃至周囲の状況を捕捉し、交通状況を認識し、ドライバーを、例えば、制動介入或いは操舵介入によって、或いは、光学的、触覚的或いは聴覚的警告によって、サポートできるドライバーアシストシステムが益々装備されるようになってきている。周辺状況を捕捉するためのセンサシステムとしては、通常、レーダセンサ、ライダセンサ、カメラセンサ、超音波センサなどが用いられる。続いて、センサ類によって割出されたセンサデータから、周辺部に関する帰納的推理を図ることができ、これにより、例えば、所謂、周辺モデルを作成することができる。その後、これに基づき、ドライバーへの警告/情報、乃至、制御された操舵、制動及びアクセルを実施するための命令を出力することができる。この様にセンサ及び周辺データを処理するアシスタント機能によって、運転タスク乃至車両操縦をサポートする、或いは、場合によっては、完全に引き受ける(半自動、或いは、全自動化)することにより、例えば、他の交通参加者との事故を回避したり、煩雑なマヌーバを容易にしたりすることが可能である。即ち、該車両では、例えば、緊急ブレーキアシスタント(EBA, Emergency Brake Assist)を用いることで、自律的緊急ブレーキ(AEB, Auto-matic Emergency Brake)を実施する、車間調整クルーズコントロール乃至アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)を用いることで、速度調整や追従制御を実施することが可能である。
【0003】
更に、その際、走行すべき軌道や、車両の移動経路を割出すことが可能である。センサ類を用いることによって、静的なターゲット乃至オブジェクトを検出でき、これにより、例えば、先行車との間隔や道路の推移、乃至、ルートを推定することができる。その際、オブジェクトの検出乃至認識、及び、特にその妥当性検証は、例えば、先行車両が、それぞれのアシスタント機能、乃至、機関制御にとって重要性を有しているか否かを認識するために、重要である。そのための判断条件とは、例えば、「目標車両(ターゲット)として認識された自分の車両(エゴ車両)と同じレーン上を走行しているオブジェクト」である。既知のドライバー・アシスタント・システムは、例えば、センサの助けを借り、ターゲット車両が、自分のレーン内にいるか否かを割り出すために、レーン推移を推定する。そのために、レーンマーク、周縁建造物に関する情報だけでなく、他の車両が走行したパスも用いられる。更に、適切なアルゴリズム(例えば、カーブ・フィッティング・アルゴリズム)が、エゴ車両の未来のパス、乃至、軌道を、予測するために用いられる。更に、他の交通参加者からこのパスに対する差異を、それぞれの交通参加者がどのパスを走行しているのかを判断するためにも討ち入ることができる。
【0004】
既知のシステムは、信頼性情報或いは理想的な信頼性情報、例えば、測定値の標準偏差などを使用していない。但し、この様なセンサ用のエラーモデルは、信頼性情報、例えば、直接、加重ファクタとして用いるには、十分に正確ではない。この際、何よりも二つのエラー源が重要である:即ち、自分のレーン推移の誤予測、並びに、観察下にある交通参加者乃至他の交通参加者の位置の誤測定、乃至、信頼できない測定が挙げられ、これらは、予測されたパスの多大なズレの原因となり得る。双方のエラー源は、正しい信頼性情報を知っていなければ、補正できない。結果として、計算負荷は高く、複数のオブジェクトや新しいオブジェクトタイプへの拡張性は、低い。特にACCなどのドライバー・アシスタント機能では、多くのケースにおいて、対象となるオブジェクトを、長い距離において事前に選択しなければならない。オブジェクト捕捉は、通常、十分なセンサ到達距離と検出確実性を有するレーダセンサによって実施される。それにもかかわらず、測定開始時点における幾何学的乃至キネマティクス的推定は、まだ低品質すぎる、或いは、測定回数が少なすぎる、乃至、作成された測定点が少なすぎることが多々ある。その際使用されているフィルタのバリエーションは、大きすぎることが多々あり、例えば、200メートルはなれた所にあるレーダオブジェクトを、例えば十分な信頼性をもってレーンに帰属できない。
【0005】
DE 10 2015 205 135 A1は、あるシーンの関連するオブジェクト(例えば、ガードレール、レーン中央線、交通参加者)を、群れ(Swarm)内のオブジェクトとして描写する方法を開示している。これらのオブジェクトは、外部センサ類によって認識され、オブジェクト・コンスタレーション(位置関係)内に描写されるが、このオブジェクト・コンスタレーションは、二つ乃至それ以上のオブジェクトを包含している、即ち、測定/オブジェクトは、演算時間を節約し、推定の精度を高めるために統合される。同様に、同じオブジェクトの異なる測定の統合も、演算時間節約のために技術的に必要なコンスタレーションではあるが、これは、同じオブジェクトの異なる測定であり、異なるオブジェクトではないため、意味論的コンスタレーションではない。外部センサ類のデータとは、例えば、センサローデータ乃至前処理済み、及び/或いは、予め設定されている判断条件に基づいて選択されたセンサデータである。例えば、これは、画像データ、レーザスキャナ・データ乃至オブジェクトリスト、或いは、(例えば、特定のオブジェクト部品又はオブジェクトエッジを描写する)所謂「点群(独:Punktwolke = 英:Point cloud)」であることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 10 2015 205 135 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術を出発点とする本発明が解決しようとする課題は、有利な演算時間において、推定の精度を高めることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、請求項1及び並列独立請求項の総合的な教えによって解決される。本発明の目的にかなった実施形態は、従属請求項において請求される。
【0009】
本発明に係るエゴ車両の補助的な又は自動的な車両操縦のための方法では、該エゴ車両は、制御手段、並びに、周辺を捕捉するための少なくとも一つのセンサ、好ましくは、複数のセンサを包含しているが、これらのセンサが、エゴ車両の周辺内のオブジェクトを捕捉する。更に、エゴ車両の車両操縦がその軌道計画に基づいて実施される軌道計画が、捕捉された周辺に基づいて実施されるが、軌道計画では、周辺のオブジェクトが参照される。これらのオブジェクト用には、引合・反発ルールに基づいて決定されるボイドが作成される。続いて、軌道計画が、これらのボイドを基に実施される。その結果、推定の精度が高められ、必要となる演算時間が有意に短縮され得ると言う長所が得られる。更に、本発明に係る方法は、イニシャライズするための方法ステップも包含しているが、オブジェクト、乃至、作成されたボイド(OSBs - Object-Selection-Boids)は、引合・反発ルール、並びに、設定自在な運動モデルに基づいたシミュレーションを用いることにより、座標システム(乃至、エゴ座標系)内に落とし込まれる。その結果として、測定データ自体の有無やどの測定データが存在しているのかなどを考慮する必要の無いシンプル且つフレキシブルな様々な測定データの使用が可能になる。更なる測定データが、存在している場合、それらも使用され、より良い結果を得られる。幾つかの測定データが無い場合でも、残りの測定データから十分に良好な結果を達成できる。
【0010】
本発明の解釈における「軌道計画」と言う概念は、明示的に、空間と時間における計画(軌道の計画)に加え、純粋な空間的計画(パス計画)も包含している。同様に、ボイドは、システムの一部、例えば、速度のアダプション、或いは、特定のオブジェクト(「Object-of-Interest Selection」)の選択のためのみに使用されることができる。
【0011】
尚、互いに近隣にあり且つ並列に配置されているオブジェクトは、引き合うボイドとして、一方、互いに並列にしかし互いに大きな間隔を持って配置されているオブジェクトは、反発し合うボイドとして定められることによって、引合・反発ルールが決定されることが好ましい。
【0012】
また、静的オブジェクトが、反発するボイドとして、可動オブジェクトが、引き合うボイドとして定められることも理に適っている。可動オブジェクトは、その際、その推移履歴を作成し、ボイドを、その推移履歴を基にして、引き寄せる(或いは、逆に突き放す)ために、経時的に観察されることができる。
【0013】
本発明の更なる有利な形態によれば、可動オブジェクトは、経時的に観察(トラッキング)されることができるため、推移履歴を作成し、該推移履歴を基に、引き合うボイドを定めることができる。
【0014】
更には、捕捉されたオブジェクト及び/或いはボイドは、全ての補足されたデータ(位置、速度、シグナル強度、等級、仰角やそれに類するデータ)と共に全ての補足されたオブジェクトが保存されるオブジェクトリスト内に保存されることができる。
【0015】
尚、エゴ車両の位置と移動方向を基にして、特徴空間を定めることが理に適っているが、全てのボイド用の引合ルールは、特徴空間のある一点に収束することができる。この様にすることで、測定精度を付加的に改善できる。
【0016】
尚、特徴空間は、軌道計画のクロソイド・パラメータを基にして定められる。
【0017】
特徴空間は、他の交通参加者に有利に拡張されることも可能である。これにより、測定精度を非常に高め、加えて、周辺捕捉も、非常に改善することができる。
【0018】
また、周辺を捕捉するためのセンサとして、少なくとも一台のカメラ及び/或いはライダセンサ及び/或いはレーダセンサ及び/或いは超音波センサ及び/或いは従来の技術から既知の他の周辺を捕捉するためのセンサを装備することが理に適っている。
【0019】
更に、行動規範、乃至、引合・反発ルールを、簡単な行動規範の組み合わせとして表すことができる。この際、該行動規範乃至引合・反発ルールは、幾何学的、帰還制御的、或いは、論理的に実現することが可能である。
【0020】
尚、行動規範乃至引合・反発ルールは、優先度、加重、及び/或いは、平均化を基に実現することが理にかなっている。
【0021】
加えて、(魚群や鳥の群れの行動を参考にした)群モデルを用いることも可能であるが、この場合、方向を調整することにより、群参加者の衝突回避を実施する、乃至、他の群参加者との衝突を回避する。更に、隣人について行けるようにする、並びに、一緒にいるだけでなく、衝突回避を有利にするために、隣の群参加者に速度が合わせられる。続いて、群のセンタリングが実施されるが、その際、ボイドが群れの近くに留まるように方向の調整が想定されている。これは、直接的な隣人におけるセンタリングのみにより、達成される。例えば、群の周縁部にボイドがある場合、群中央の方向に、より多くの隣人が存在しており、よって、直接的な隣人の中央も群中央の方向にある。
【0022】
並列独立請求項として、本発明は、エゴ車両の補助的な又は自動的な車両操縦のためのエゴ車両用のドライバーアシストシステムも包含しているが、このシステムにおいては、該エゴ車両は、制御手段、並びに、周辺を捕捉するための少なくとも一つのセンサ、好ましくは、複数のセンサを包含しているが、これらのセンサが、エゴ車両の周辺内のオブジェクトを捕捉する。制御手段は、補足された周辺を基にした軌道計画を実施するが、エゴ車両の車両操縦は、該軌道計画に基づいて実施される。周辺及びオブジェクト捕捉のためのセンサとしては、例えば、レーダ、ライダ、カメラ或いは超音波センサを挙げることができる。オブジェクトは、軌道計画のために参照されるが、これらのオブジェクト用に、引合・反発ルールを基にして定められるボイドが、これによりボイドを考慮した軌道計画が可能になる様に、作成される。
【0023】
更に、該ドライバーアシストシステムは、周辺を補足するためのセンサに加えて、本発明の方法を実施するために、コンピュータ、プロセッサ、コントローラ、計算機、或いは、これらに類するものも包含するシステムであることもできる。その際、そのコンピュータプログラムが、一台のコンピュータ内において、或いは、従来の技術において既知な他のプログラミング自在な計算手段内において実施された時に本発明に係る方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが、想定されていることも可能である。同様に、本方法は、既存のシステムにおいて、コンピュータに実装されている方法として、実施される、乃至、後に導入されることも可能である。本発明の解釈における「コンピュータに実装されている方法」と言う概念は、フローチャート、乃至、コンピュータによって実現される、或いは、実施される手順のことを表現している。その際、コンピュータは、プログラミング自在な演算ルールを用いてデータを処理する。しかし本方法において重要な特徴は、例えば、新しいプログラム、複数の新しいプログラム、アルゴリズムやこれらに類するものによって、後になってから実装することも可能であると言うことである。その際、該コンピュータは、制御手段として、乃至、制御手段の一部(例えば、(Integrated Circuit)-モジュール、マイクロコントローラ、又は、システム・オン・チップ(SoC))として、構成されていることも可能である。
【0024】
要約すると、本方法は、センサによって補足されたオブジェクトと、意味論的に定義されたボイドの群との、引合・反発ルール(行動規範)を基にボイド同士と捕捉されたオブジェクトとの間において言うならば「シフトされる」、関係を記述するものである。よって、軌道計画は、ボイドによって選択されたオブジェクトのセンサデータを基にして実施されることができる。本発明の特別な形態によれば、ボイドのシフトは、各々の処理サイクルにおいて、改めて、同一のスタート地点から実施されることができる。更に、ボイドのシフトは、各々の処理サイクルにおいて、ひとつ前のサイクルのボイドのポジションをベースにして実施されることもできる。
【0025】
以下、目的にかなった実施例によって、本発明をより詳しく説明する。図の説明:
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明に係るアシスタント・システムを備えた自車両の非常に簡略化した概略的な描写であり;
【
図2】
図2は、エゴ車両が、既に複数の他の車両が走行しているカーブを通過する交通シーンの簡略化された描写であり;
【
図3】
図3は、本発明に係る測定原理が、様々な測定点を基にして描かれている
図2の交通シーンの簡略化された描写であり;そして、
【
図4】
図4は、個々のOSBs用のナビゲーション・モジュールの作動方法のデザインの簡略化した概略的な描写である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の符号1は、エゴ車両であり、これは、制御手段2(ECU, Electronic Control Unit又はADCU, Assisted and Automated Driving Control Unit)、様々なアクチュエータ(操舵系 3、エンジン 4、ブレーキ 5)、並びに、周辺捕捉用センサ類(カメラ 6、ライダセンサ 7、レーダセンサ 8、並びに、超音波センサ 9a-9d)を有している。ここでエゴ車両1は、制御手段2が、アクチュエータとセンサ類乃至それらのセンサデータにアクセスできることにより、(部分的に)自動的に操縦されることができる。アシストされた、乃至、(部分的に)自動化された走行の分野では、周辺及びオブジェクト認識のためのセンサデータが、様々なアシスタント機能、例えば、車間制御(ACC, Adaptive Cruise Control)、緊急ブレーキアシスタント(EBA, Electronic Brake Assist)、レーン維持制御、乃至、レーン維持アシスタント(LKA, Lane Keep Assist)、駐車アシスタントやこれらに類似する機能を、制御手段2乃至、そこにインストールされているアルゴリズムによって可能にするために、使用されることが可能である。
【0028】
図2には、エゴ車両1が、既に複数の前方を走行中の車両10a,10b,10c,10dがいるカーブに進入する典型的な交通シーンが、描写されている。その際、エゴ車両1は、周りを取り巻いているオブジェクト(前方を走行中の車両10a-10d、路面標示、道路縁建造物、及び、これらに類似するオブジェクト)を、周辺捕捉用のセンサ類を用いて検出し、自己用のパス乃至走行されるべき軌道を、これらの情報を基に作成する。更に、他の交通参加者の動きを予測し、軌道計画に用いることができる。例えば、車両11dの検出個所と動き予測を基にして作成された軌道(黒い矢印で示した)は、車両10dの動き予測を基にした軌道は、レーン推移に従っておらず、カーブ領域内での望まれない車線変更を伴うため、最適であるとは言えない、或いは、誤っている。
【0029】
本発明に係る方法の場合、この後、あるシーン内の重要なオブジェクト(ガードレール、レーン中央線、交通参加者及びこれらに類似するオブジェクト)は、一つの群の中のオブジェクト(即ち、オブジェクトの謂わば群団又は連合)として描写される。既知のシンプルなオブジェクトの統合(シンプルなクラスタ)とは異なり、捕捉されたオブジェクトは、この際、統合されるだけでなく、個々でも維持され、互いに影響し合う、即ち、互いに相互作用し合う。その際、これらのオブジェクトの挙動は、センサデータ、並びに、互いの関係、即ち、所謂ボイド(群挙動をシミュレーションするための相互作用するオブジェクト)と類似するオブジェクトの相互作用をベースに、シンプルなルールで定義される。その際、ボイドは、測定されたオブジェクトに相当し、オブジェクトを統合したコンスタレーションではない、即ち、ボイドは、意味論的に個々のオブジェクトを表し、単純なコンスタレーションではない。ボイド・ベースのモデルの場合、モデルの煩雑さは、例えば、セパレーション(分離:ボイドの集まりに対抗する動き乃至方向の選択)、アジャストメント(調整:隣接するボイドの平均的な方向に相当する動き乃至方向の選択)、コヒーレンス(干渉:隣接するボイドの平均的位置に相当する動き乃至方向の選択)と言ったシンプルなルールに従う個々のオブジェクト乃至ボイドの相互作用の結果である。
【0030】
図3には、
図2の道路シーンを例に、ボイド11, 12, 13を用いた道路標示や車両、乃至、それらの走行パスの測定原理を描写している。例えば、サイクル毎に、(例えば、区間毎の直線としてモデリングされた)道路標示が改めて測定され、道路標示オブジェクトの既存のリストに加えられる。続いて、引合・反発ルールが算出される(例えば、近隣且つ並列なオブジェクトは、引き合い、並列ではあるが大きな間隔を有しているものは、反発し合う)。よって、反発し合うボイド11は、車線縁用に、反発し合うボイド12は、車線中央用に作成される(例えば、道路標示検出、ガードレール検出、及び、道路縁建造物検出によって)。同様に、車両10a-10dも、表現されることが可能である。この際、センサによって認識された車両は、例えば、短い推移履歴として表現される。例えば、引き合うボイド13は、車両10c、乃至、その移動パスを、ボイド13が、車両10cの推移履歴を基に作成されることにより、表現される。これらの測定、乃至、割り出されたボイドは、同様に、これまでの測定のリスト(オブジェクト・リスト)に挿入され、決められたルールに従って、そのポジションが、訂正される。
【0031】
尚、例えば、他の車両10a-10dが走行したパスの観察よるレーン推移推定における誤差は、エゴ車両1、乃至、それらの車両が、各々の軌道計画を、予め定められているルールを考慮しながら、実施することにより、補正されることが理に適っている。ルールの例としては以下を挙げることができる:「ガードレールは、レーンと平行」、「レーンは、少なくともほぼ一定の幅を有している」、「車両は、レーンと並行に走行する」、「ガードレールは、測定点中央を通っている」、「ガードレールは、屈折や分岐を有していない」、並びに、これらに類似するルール。これにより、自動的に、その推移がガードレールと平行なパス(「emergent behaviour」)乃至軌道が得られる。更に、測定値は、例えば、αβフィルタの様に、設定自在に加重することが可能である。
【0032】
測定精度の向上は、特に、引合ルールが、特徴空間内の同じポイントの(各々一つのボイドに相当する)全ての測定を、収束させることによって達成される。その際、該特徴空間は、エゴ車両1の位置と方向から構成されている。この原理は、驚くべきことに、他の交通参加者乃至車両にも、拡張できる、例えば、「レーンに対して並行に走る車両」(即ち、静的オブジェクトの場合と同じルール、但し、ここでは車両のモデリングされた位置は変わる)、「車両は互いに衝突しない」、「同じレーンの車両は、互いに揃える」(「隊列走行」)、「車両は、ガードレールと衝突しない」、及並びに、これらに類似するルール。
【0033】
代案的に、特徴空間として、軌道のクロソイド・パラメータの空間を選択することも可能である。このケースでは、個々のボイドは、経時的な複数の個々の測定である。ここでは、これらのボイドは、例えば、縦方向には、固定され、且つ、ルールに従って、横方向とそのカーブに対してのみ動くことが可能であっても良い。これらボイドは、このケースでは、エゴ車両1が、そこを通過した時点に消去されることが実用的である。これにより、特に、メモリと演算時間の節約が可能になる。加えて、(例えば、ボイドが、予め定められている分散を有するコンパクトなクラスタを形成し)現実空間内の同じオブジェクトを表現している複数のボイドは、メモリと演算時間を節約するために統合されることも可能である。
【0034】
以下に、OSB(Object-Selection-Boid)群の構成要素が、どの様に、創発的な行動を伴う自己組織化システムに統合されるのか、但し、このOSBと言う概念は、OSB群内の一つの群構成員を示している、並びに、システム、乃至、OSB群が、どの様に、ACC機能用のシチュエーション認識に応用されるのかを示す。この際、センサ類の毎更新サイクル後、新しい周辺モデルが生成されるが、該更新サイクルとは、センサ類が、測定を実施し、周辺モデルが生成される時間である。周辺モデルは、この更新サイクル用のセンサ類によって捕捉された全ての交通参加者(TP = Traffic Participant)のリストを包含している。よって、このリストには、自己組織化システム乃至OSB群のために用いられるルートや交通参加者の位置などの情報が、包含されている。更新サイクル毎に一度、OSB群が、このリストの交通参加者とルートに関して送信され、個々のOSBsは、交通参加者に、対応する役を割り当て、それをリストに保存する。即ち、周辺モデルの毎更新サイクル後、OSB群が、特定数のシミュレーション・ステップにおいて一回シミュレートされ、交通参加者とルート全体を移動する。
【0035】
このシミュレーションは、以下の三つの本質的な方法ステップに分割できる:イニシャライズ、行動規範の使用、そして、設定自在な挙動モデルに応じたシミュレーション。シミュレーションの第一ステップでは、OSB群が、イニシャライズされるが、OSBsは、周辺モデルのエゴ座標系内に、セットされる。その際、選択された交通参加者のその時点における数、OSBsの方向角θと操舵角βは、ゼロにセットされる。全てのOSBsの速度vは、初速度vinitにセットされる。エゴレーンを表すOSB、即ち、エゴ車両の前を走行しているOSBは、エゴ車両上にセットされ、残りのOSBsは、それぞれ、間隔dlat,initをもって、そのサイドに配置される。エゴ座標系内のx-ポジションは、最初、全てのオブジェクトでゼロである。ある更なる形態バリエーションの特徴は、OSBsの方向角θ、操舵角β及び/或いはx-とy-ポジションが、センサデータ、又は、ナビゲーション用地図のデータからイニシャライズされることである。このステップは、周辺モデルの各々新しいシミュレーション乃至各々新しい更新サイクル毎に改めて実施される。
【0036】
更に第二ステップでは、OSBsの挙動が、行動規範乃至引合・反発ルール、並びに、ナビゲーション(特に、ナビゲーション・モジュール)を用いて割り出される。そのためには先ず、隣接するOSBsのみならず、最新の周辺モデル内の交通参加者とルートが、エゴ座標系から、OSB座標系に転換されなければならない。並行して、どの交通参加者とルートが、OSBsの各々の視野領域内にあるのかが、算出される。そして次に、転換された座標系を用いて、各々の行動規範が適応される、例えば、一人/台の交通参加者に追従する、及び/或いは、一人/台乃至複数人/台の交通参加者との間隔を維持する、及び/或いは、イニシャライズ・ステップにおける初期状態を維持する(特に、フォーメーションと群内における間隔を維持する)。
【0037】
その際、該行動規範は、速度変化Δv又は操舵角変化Δβを与える。そして、ナビゲーション・モジュールは、これらの変化を、それぞれのOSBsのその時点の速度v並びにその時点の操舵角βに加える。その際、変化の優先順位付けを応用することも可能である。ルート又は交通参加者が、各々のOSBsの視野領域内にある場合、特定の操舵角変化を優先し、これのみを用いることも可能である。視野領域内にルートが無い場合、フォーメーションの変化のみを用いることができる。これと並行して、ナビゲーション・モジュールは、フォーメーションの変化と各々の交通参加者の変化との間に不一致があるか否かの確認を実施できる。不一致が、設定自在なリミットを超えた場合、各々のOSBに対する交通参加者の追従と言う優先度が、シミュレーション・ステップn回分無視され、OSBは、フォーメーション変化によって分散され、フォーメーション内へ、押し戻される、乃至、動かされる。全てのOSBsに対して、ルート乃至交通参加者が視野領域内にある場合、OSBsの各ナビゲーション・モジュールに、グローバルなターゲットへのグローバルな操舵角を与え、ルートを見つけるまでの間、OSBs用の操舵角として選択することが可能である。他のグローバルなターゲットとしては、例えば、ナビゲーション用地図、他のセンサデータ、及び/或いは、V2Xコミュニケーション・データを採用することができる。この際、各OSBは、各々ためにそれぞれ行動規範を決める、即ち、各々のOSB隣人乃至交通参加者と各々の視野領域内のルートのみを考慮する。動きは、自己組織化システムに必要な特徴である、ローカルな周辺部によって、分散的に定められる。各OSB用に得られるナビゲーション・モジュールの機能例は、
図4に示されている。
【0038】
第二ステップにおいて、行動規範に基づいてOSBsの速度と操舵角が変更された後、OSB群は、シミュレーション・ステップである第三ステップにおいて、シミュレーションされる。その際、全てのOSBsがシミュレーションされ、更新される。その後、第二と第三ステップが、OSB群がエゴ車両の視野領域全域を動くまで、設定自在なシミュレーション・ステップの回数分反復され、一回の更新サイクル用のOSB群のシミュレーションが完了し、正しい役が与えられる、乃至、マルチ・オブジェクト選択が、達成される。この選択/セレクションを改善するために、以前のサイクル用の以前の配役を保存しておくことができる。OSB群の最新の更新サイクルにおいてある交通参加者に役が与えられなかった場合、前のサイクルの役が、引き継がれる。この配役は、その間に新しい役の割り当てができた場合を除いて、三サイクル間維持される。複数のサイクル後になっても、配役ができない場合、その交通参加者には、もう役は与えられない。加えて、以前の配役を用いることで、ヒステリシスを実現できる。三サイクル、即ち、最新のサイクルと以前二つのサイクルにおいて最も頻繁だった配役が常に選択されることにより、短時間に二つの役の間を行き来することを回避している。
【0039】
更に、挙動モデルとして、例えば、自転車モデル又は単車線モデル又は、例えば、三つの状態値であるエゴ車両に対する方向角θ、x-とy-ポジションを包含する半車両モデルを想定することも可能である。モデルに影響を与えることのでき、それにより、群の各OSBsを制御できる入力値としては、速度vと操舵角βを用いることができる。OSBsに対しては、モデルとOSBsの制御を簡略化するために、操舵角の直接的な変化を、仮定することができる。この簡略化は、OSBsが、マルチ・オブジェクト選択にのみ必要とされ、エゴ車両が追従すべき実際の軌道には与えられないため可能である。加えて、従来の技術において既知な他の挙動モデルを想定することも可能なことは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0040】
1 自(EGO)車両
2 制御手段
3 操舵系
4 エンジン/モータ
5 ブレーキ
6 カメラ
7 ライダセンサ
8 レーダセンサ
9a-9d 超音波センサ
10a 車両
10b 車両
10c 車両
10d 車両
11 ボイド(道路標示、車線縁)
12 ボイド(道路標示、車線中央)
13 ボイド(車両10cの動き)
【国際調査報告】