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▶ ビオンテック・ソシエタス・エウロパエアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コロナウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/215 20060101AFI20241029BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K39/215 ZNA
A61P31/14
A61P37/04
A61K31/7115
A61K9/127
A61K47/16
A61K47/18
A61K47/24
A61K48/00
C12N15/50
C12N15/88 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523699
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021079285
(87)【国際公開番号】W WO2023066496
(87)【国際公開日】2023-04-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522021206
【氏名又は名称】ビオンテック・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BioNTech SE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン,ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムイク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,アネッテ
(72)【発明者】
【氏名】ギュラー,アルプテキン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB15
4C076CC35
4C076DD48H
4C076DD63H
4C076EE23H
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085CC31
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA24
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルス感染の予防または処置のためのRNAの分野に関する。特に、本発明は、コロナウイルス感染に対するワクチン接種および抗体および/またはT細胞応答などの有効なコロナウイルス抗原特異的免疫応答の誘導のための方法および薬剤に関する。特に、ある実施態様において、本発明は、対象においてコロナウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に対する免疫応答を誘導するために、SARS-CoV-2Sタンパク質のエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、すなわち、ワクチン抗原をコードするワクチンRNAを対象に投与することを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードするRNAを含む、組成物または医薬製剤。
【請求項2】
前記SARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性フラグメントは、前記SARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質の前記S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項1に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項3】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成する前記アミノ酸配列がコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が好ましくは前記コードされているアミノ酸配列の配列を変えない、請求項1または2に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項4】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項5】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項6】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項7】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成する前記アミノ酸配列が分泌型シグナルペプチドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項8】
前記分泌型シグナルペプチドが、好ましくはN末端でSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントに融合している、請求項7に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項9】
(i)分泌型シグナルペプチドをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)分泌型シグナルペプチドが配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む、
請求項7または8に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項10】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号6のヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列もしくは配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項11】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項12】
前記RNAが、ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、特に、前記修飾ヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択され、特に、前記修飾ヌクレオシドが、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項13】
前記RNAが5’キャップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項14】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAが配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項15】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAが配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項16】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAがポリA配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項17】
前記ポリA配列が少なくとも100ヌクレオチドを含む、請求項16に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項18】
前記ポリA配列が配列番号14のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる、請求項16または17に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項19】
前記RNAが液体、固体、またはそれらの組み合わせとして製剤化されているまたは製剤化される、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項20】
前記RNAが注射用に製剤化されているまたは製剤化される、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項21】
前記RNAが筋肉内投与用に製剤化されているまたは製剤化される、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項22】
前記RNAが粒子として製剤化されているまたは製剤化される、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項23】
前記粒子が脂質ナノ粒子(LNP)またはリポプレックス(LPX)粒子である、請求項22に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項24】
前記LNP粒子が((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびコレステロールを含む、請求項23に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項25】
前記RNAリポプレックス粒子が前記RNAとリポソームの混合により得られ得る、請求項23に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項26】
前記RNAがmRNAまたはsaRNAである、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項27】
医薬組成物である、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項28】
ワクチンである、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項29】
前記医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または添加物をさらに含む、請求項27または28に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項30】
キットである、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項31】
前記RNAおよび所望により粒子形成成分が別のバイアルにある、請求項30に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項32】
対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答の誘導のために組成物または医薬製剤を使用するための指示をさらに含む、請求項30または31に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項33】
医薬用途のための、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項34】
前記医薬用途が対象においてコロナウイルスに対する免疫応答を誘導することを含む、請求項33に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項35】
前記医薬用途がコロナウイルス感染の治療的または予防的処置を含む、請求項33または34に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項36】
ヒトへの投与用である、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項37】
前記コロナウイルスがベータコロナウイルスである、請求項32~36のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項38】
前記コロナウイルスがサルベコウイルスである、請求項32~37のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項39】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項32~38のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項40】
対象においてコロナウイルスに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象にSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAを含む組成物を投与することを含む、方法。
【請求項41】
前記SARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性フラグメントが前記SARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質の前記S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成する前記アミノ酸配列がコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が好ましくは前記コードされているアミノ酸配列の配列を変えない、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド979~1584と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む、
請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成する前記アミノ酸配列が分泌型シグナルペプチドを含む、請求項40~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記分泌型シグナルペプチドが好ましくはN末端でSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、または前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントに融合している、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(i)分泌型シグナルペプチドをコードするRNAが配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48、配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド1~48と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)分泌型シグナルペプチドが配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む、
請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号6のヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列もしくは配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するフラグメントのヌクレオチド配列を含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有する免疫原性フラグメントのアミノ酸配列を含む、
請求項40~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAが配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントが配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む、
請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記RNAが、ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、特に、前記修飾ヌクレオシドが、シュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択され、特に、前記修飾ヌクレオシドが、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)である、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記RNAがキャップを含む、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAが配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAが配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項40~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたは前記SARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを構成するアミノ酸配列をコードする前記RNAがポリA配列を含む、請求項40~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリA配列が少なくとも100ヌクレオチドを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ポリA配列が配列番号14のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記RNAが液体、固体、またはそれらの組み合わせとして製剤化されている、請求項40~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記RNAが注射により投与される、請求項40~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記RNAが筋肉内投与により投与される、請求項40~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記RNAが粒子として製剤化されている、請求項40~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記粒子が脂質ナノ粒子(LNP)またはリポプレックス(LPX)粒子である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記LNP粒子が((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよびコレステロールを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記RNAリポプレックス粒子が前記RNAとリポソームの混合により得られ得る、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記RNAがmRNAまたはsaRNAである、請求項40~64のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【請求項66】
コロナウイルスに対するワクチン接種のための方法である、請求項40~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
コロナウイルス感染の治療的または予防的処置のための方法である、請求項40~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記対象がヒトである、請求項40~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記コロナウイルスがベータコロナウイルスである、請求項40~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記コロナウイルスがサルベコウイルスである、請求項40~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項40~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物が請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物である、請求項40~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
請求項40~72のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコロナウイルス感染予防または処置のためのRNAの分野に関する。特に、本発明はコロナウイルス感染に対してワクチン接種し、抗体および/またはT細胞応答などの有効なコロナウイルス抗原特異的免疫応答を誘発するための方法および薬剤に関する。これらの方法および薬剤は特に、コロナウイルス感染の予防または処置に有用である。ここに開示するRNAの対象への投与はコロナウイルス感染に対して該対象を保護し得る。特に、ある実施態様において、本発明は対象においてコロナウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に対する免疫応答を誘導するために、SARS-CoV-2Sタンパク質のエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、すなわち、ワクチン抗原をコードするワクチンRNAを対象に投与することを含む、方法に関する。ワクチン抗原をコードするRNAの対象への投与は対象におけるワクチン抗原(および疾患関連抗原)に対する免疫応答を誘導するための、ワクチン抗原を提供し得る(適切な標的細胞によるRNA発現後)。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスはスパイクタンパク質、エンベロープタンパク質(E)、膜タンパク質(M)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)の計4構造タンパク質をコードする、プラス鎖、一本鎖RNA((+)ssRNA)エンベロープウイルスである。スパイクタンパク質(Sタンパク質)は受容体認識、細胞への付着、エンドソーム経路を介する感染およびウイルスとエンドソーム膜の融合により駆動されるゲノム放出を担う。異なるファミリーメンバー間の配列は変わるが、Sタンパク質内に保存領域およびモチーフがあり、それによりSタンパク質をS1およびS2の2サブドメインに分割することが可能となる。S2はその膜貫通ドメインと共に、膜融合を担うが、S1ドメインはウイルス特異的受容体を認識し、標的宿主細胞と結合する。数コロナウイルス単離株内で、受容体結合ドメイン(RBD)が同定され、Sタンパク質の一般構造が定義された(図1)。
【0003】
2019年12月、中国の武漢で原因不明の肺炎の大流行が起こり、新規コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)が根本原因であることが明らかとなった。SARS-CoV-2の遺伝子配列はWHOで利用できるようになり、公開(MN908947.3)され、該ウイルスはベータコロナウイルスサブファミリーに分類された。配列分析により、系統樹はヒトに感染する他のコロナウイルスよりも重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス単離株、すなわち中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスとの密接な関係を明らかにした。
【0004】
SARS-CoV-2感染、およびその結果生じる疾患COVID-19は、世界中に広がっており、影響を受ける国が増え続けている。2020年3月11日に、WHOは、COVID-19大流行をパンデミックと特徴づけた。2020年12月1日時点で、世界的に確認されたCOVID-19症例は6,300万例を超えており、死亡者は140万例を超えており、191もの国/地域が影響を受けている。現在進行中のパンデミックは、依然として、世界の公衆衛生および経済の安定にとって重要な課題であり続けている。
【0005】
全ての個体に感染リスクがあり、なぜならば、SARS-CoV-2に対する既存の免疫が存在していないからである。感染後、一部の個体は中和抗体反応および細胞媒介性免疫の点で防御免疫を獲得したが、全ての個体ではない。しかしながら、この保護がどの程度のものであるか、かつどれくらいの期間続くかは、現時点では不明である。WHOによれは、感染個体の80%は、病院での治療を必要とすることなく回復するが、15%は、より重度の疾患を発症し、5%は、集中治療が必要となる。加齢および基礎疾患は、重度の疾患の発症の危険因子と考えられている。
【0006】
COVID-19の症状は、一般に、咳および発熱を伴い、胸部X線検査では、すりガラス陰影または斑状陰影が認められる。しかしながら、多くの患者は、発熱またはX線写真での変化を伴うことなく症状を呈しており、感染は、伝染の制御に関連する無症候性の場合がある。症候性対象の場合には、疾患の進行は、人工呼吸を必要とする急性呼吸窮迫症候群を引き起こす場合があり、その後に多臓器不全および死に至る場合がある。入院患者での一般的な症状として、(頻度の高い順に)発熱、空咳、息切れ、倦怠感、筋肉痛、吐き気/嘔吐または下痢、頭痛、脱力感、および鼻漏が挙げられる。COVID-19を有する患者の約3%では、無嗅障害(嗅覚消失)または味覚障害(味覚消失)が唯一の症状の場合がある。
【0007】
全ての年齢でこの疾患を患う可能性があるが、特に、60歳超の人で症例致死率(CFR)が高くなる。心血管疾患、糖尿病、高血圧、および慢性呼吸器疾患等の併存疾患もまた、CFRの増加と関連している。感染患者への職業的曝露に起因して、COVID-19患者の中では医療従事者が過半数を占めている。
【0008】
ほとんどの状況において、分子検査を使用して、SARS-CoV-2を検出して感染を確認する。SARS-CoV-2ウイルスRNAを標的とする逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査方法は、COVID-19の疑わしい症例を診断するための絶対的に標準的なインビトロ方法である。検査するサンプルを、綿棒を使って鼻および/または喉から採取する。
【0009】
SARS-CoV-2は、4つの構造タンパク質を有するRNAウイルスである。これらのうちの1つであるスパイクタンパク質は、宿主細胞上に存在しているアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)に結合する表面タンパク質である。従って、スパイクタンパク質は、ワクチン開発に関連する抗原と考えられる。
【0010】
BNT162b2(配列番号20)は、COVID-19を予防するためのmRNAワクチンであり、COVID-19の予防において95%以上の有効性を示した。このワクチンは、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入されている、完全長SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S)をコードする5’キャップmRNAで作られている。完成品は、活性物質としてBNT162b2を含む注射用分散液の濃縮物として提示される。他の成分は、下記である:ALC-0315(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、ALC-0159(2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、スクロース、および注射用水。
【0011】
Sタンパク質の配列は、「SARS-CoV-2単離株Wuhan-Hu-1」:GenBank:MN908947.3(完全ゲノム)およびGenBank:QHD43416.1(スパイク表面糖タンパク質)の配列に基づいて選択された。活性物質は、一本鎖の5’キャップされたコドン最適化mRNAからなり、このmRNAは、SARS-CoV-2のスパイク抗原に翻訳される。コードされたスパイク抗原タンパク質の配列は、抗原的に最適な融合前確認(P2S)を保証する2つのプロリン変異を含む。このRNAは、ウリジンを全く含まず;RNA合成では、ウリジンの代わりに、修飾されたN1-メチルシュードウリジンが使用される。このmRNAは、宿主細胞中でSARS-CoV-2のSタンパク質に翻訳される。次いで、このSタンパク質は、細胞表面上で発現されて適応免疫応答を誘導する。このSタンパク質は、ウイルスに対する中和抗体の標的として同定されており、関連するワクチン構成要素と考えられる。BNT162b2を、21日間隔にて、希釈したワクチン溶液30μgで2回筋肉内(IM)投与する。
【0012】
最近、SARS-CoV-2の新しい循環型バリアントが出現したことで、ワクチン介入の地理的なおよび時間的な効果について重大な懸念が生じている。出現して急速に世界的に優勢になった最も初期のバリアントのうちの1つは、D614Gであった。
【0013】
アルファバリアント(B.1.1.7、VOC202012/01、501Y.V1、またはGRYとしても知られる)は、英国で初めて検出された。このアルファバリアントは、S遺伝子中のいくつかの変異を含む多数の変異を有している。これは、本質的に感染力がより高いことが分かっており、その増殖率は、複数の国において、他のSARS-CoV-2系統と比べて40~70%高いと推定されている(Volz et al., 2021, Nature, https://doi.org/10.1038/s41586-021-03470-x; Washington et al., 2021, Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.03.052)。
【0014】
ベータバリアント(B.1.351またはGH/501Y.V2としても知られる)は、南アフリカで最初に検出された。このベータバリアントは、S遺伝子中にいくつかの変異を持つ。これらの変異のうちの下記の3つは、RBDにおいて免疫回避に関連する部位に存在している:N501Y(アルファと共有)、E484K、およびK417N。
【0015】
ガンマバリアント(P.1またはGR/501Y.V3としても知られる)は、ブラジルで最初に検出された。ガンマバリアントは、ベータと共通の2つ(N501YおよびE484K)、ならびに417位の異なる変異(K417T)を含む、スパイクタンパク質に影響を及ぼすいくつかの変異を持つ。
【0016】
デルタバリアント(B.1.617.2またはG/478K.V1としても知られる)は、インドで最初に記録された。このデルタバリアントは、P681R(アルファと共有されており、かつフューリン開裂部位に隣接する変異位置)、ならびにRBD内に存在しており、かつACE2への結合の増加および中和抗体耐性に関連しているL452Rを含む、スパイクタンパク質に影響を及ぼすいくつかの点変異を有している。また、スパイクタンパク質中における156/157位での欠失も存在している。
【0017】
これら4種のVOCは、世界中に広まっており、最初に同定された地理的地域では支配的なバリアントとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
SARS-CoV-2に対する効果的なワクチン戦略が、依然として必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
概要
本発明は一般にSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質を含む、アミノ酸配列、すなわち、ワクチン抗原をコードするRNA、すなわち、ワクチンRNAの投与を含む、対象の免疫治療処置を包含する。故に、ワクチン抗原は対象におけるコロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する免疫応答を誘導するために、SARS-CoV-2 Sタンパク質のエピトープを含む。ワクチン抗原をコードするRNAは投与されると、標的抗原(コロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質)またはその進行産物により標的とされる、免疫応答、例えば、抗体および/または免疫エフェクター細胞の誘導、すなわち、刺激、プライミングおよび/または増殖のために、抗原を提供する(適切な標的細胞によるポリヌクレオチドの発現後)。ある実施態様において、本発明により誘導される免疫応答はB細胞介在免疫応答、すなわち、抗体介在免疫応答である。これに加えてまたはこれとは別に、ある実施態様において、本発明により誘導される免疫応答はT細胞介在免疫応答である。ある実施態様において、免疫応答は抗コロナウイルス、特に抗SARS-CoV-2免疫応答である。
【0020】
ここに記載するワクチンは、活性本体として一本鎖RNAを含み、これはレシピエントの細胞に侵入したら、各タンパク質に翻訳され得る。抗原配列をコードする野生型またはコドン最適化配列に加えて、RNAは安定性および翻訳効率に関するRNAの最大有効性について最適化された1以上の構造要素を含み得る(例えば、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テイル、またはこれらの組み合わせ)。ある実施態様において、RNAはこれらの要素全てを含む。ある実施態様において、cap1構造は、RNA薬物物質の5’末端の特異的キャッピング構造として利用され得る。ある実施態様において、ベータ-S-ARCA(D1)(m27,2’-OGppSpG)またはm27,3’-OGppp(m12’-O)ApGはRNA薬物物質の5’末端の特異的キャッピング構造として利用され得る。5’-UTR配列として、所望により翻訳効率を上げるための最適化「コザック配列」と共に、ヒトアルファ-グロビンmRNAの5’-UTR配列(例えば、配列番号12)が使用され得る。3’-UTR配列として、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするために、コード配列とポリ(A)-テイルの間に配置された「スプリット遺伝子のアミノ末端エンハンサー(amino terminal enhancer of split)」(AES)mRNA(Fと称される)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称される)由来の2つの配列要素(FI要素)の組み合わせ(例えば、配列番号13)が使用され得る。これらはRNA安定性および総タンパク質発現増強に寄与する配列のエクスビボ選択過程により同定された(引用により本明細書に包含させるWO2017/060314参照)。あるいは、3’-UTRはヒトベータ-グロビンmRNAの2個の反復3’-UTRであり得る。さらに、30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列(ランダムヌクレオチドの)およびさらなる70アデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長のポリ(A)-テイル(例えば、配列番号14)が使用され得る。このポリ(A)-テイル配列はRNA安定性および翻訳効率を高めるために設計された。
【0021】
さらに、分泌型シグナルペプチド(sec)を、好ましくはsecがN末端タグとして翻訳されるような方法で、抗原コード化領域に融合し得る。ある実施態様において、secはSタンパク質の分泌型シグナルペプチドに対応する。融合タンパク質で一般に使用されるとおり、大部分がアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる短リンカーペプチドをコードする配列を、GS/リンカーとして使用し得る。
【0022】
ここに記載するワクチンRNAを、投与用RNA粒子を産生するために、タンパク質および/または脂質、好ましくは脂質と組み合わせ得る。種々のRNAの組み合わせを使用するならば、投与用RNA粒子を産生するためにこれらRNAを一緒にまたは別々にタンパク質および/または脂質と組み合わせてもよい。
【0023】
ある態様において、本発明はSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAを含む、組成物または医薬製剤に関する。
【0024】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性フラグメントはSARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0025】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は多量体複合体、特に三量体複合体を形成できる。この目的のために、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列の多量体複合体、特に三量体複合体の形成を可能とするドメインを含み得る。ある実施態様において、多量体複合体の形成を可能にするドメインは、三量体化ドメインを含み、例えば、ここに記載する三量体化ドメイン(例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質三量体化ドメイン)を含む。ある実施態様において、特に、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアント、またはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列が、SARS-CoV-2 Sタンパク質の三量体化ドメインを含まない部分に対応する場合には、三量体化は、三量体化ドメイン、例えば、T4-フィブリチン由来「フォルドン」三量体化ドメイン(例えば、配列番号10)の付加により達成される。
【0026】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列はコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ、ここで、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変えない。
【0027】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0028】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0029】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0030】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0031】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は分泌型シグナルペプチドを含む。
【0032】
ある実施態様において、分泌型シグナルペプチドは、好ましくはN末端で、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントに融合される。
【0033】
ある実施態様において、
(i)分泌型シグナルペプチドをコードするRNAは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)分泌型シグナルペプチドは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。
【0034】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号6のヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号6のヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0035】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0036】
ある実施態様において、RNAは修飾RNA、特に安定化mRNAである。ある実施態様において、RNAは少なくとも1個のウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、RNAは各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から独立して選択される。
【0037】
ある実施態様において、RNAはウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0038】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される。
【0039】
ある実施態様において、RNAは5’キャップを含む。
【0040】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
【0041】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
【0042】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、ポリA配列を含む。
【0043】
ある実施態様において、ポリA配列は少なくとも100ヌクレオチド含む。
【0044】
ある実施態様において、ポリA配列は配列番号14のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる。
【0045】
ある実施態様において、RNAは液体、固体またはそれらの組み合わせとして製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0046】
ある実施態様において、RNAは注射用に製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0047】
ある実施態様において、RNAは筋肉内投与用に製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0048】
ある実施態様において、RNAは粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0049】
ある実施態様において、粒子は脂質ナノ粒子(LNP)またはリポプレックス(LPX)粒子である。
【0050】
ある実施態様において、LNP粒子は((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよびコレステロールを含む。
【0051】
ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAとリポソームの混合により得られ得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAと脂質の混合により得られ得る。
【0052】
ある実施態様において、RNAはコロイドとして製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、RNAはコロイドの分散相を形成する粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、RNAの50%以上、75%以上または85%以上が分散相に存在する。ある実施態様において、RNAはRNAおよび脂質を含む粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを有機相に溶解した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、有機相はエタノールを含む。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを水相に分散した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、水相に分散された脂質はリポソームを形成する。
【0053】
ある実施態様において、RNAはmRNAまたはsaRNAである。
【0054】
ある実施態様において、組成物または医薬製剤は医薬組成物である。
【0055】
ある実施態様において、組成物または医薬製剤はワクチンである。
【0056】
ある実施態様において、医薬組成物は1以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物をさらに含む。
【0057】
ある実施態様において、組成物または医薬製剤はキットである。
【0058】
ある実施態様において、RNAおよび所望により粒子形成成分は個別のバイアルに封入される。
【0059】
ある実施態様において、キットは、対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答を誘導するための組成物または医薬製剤の使用上の指示をさらに含む。
【0060】
ある態様において、本発明は、医薬用途のためのここに記載する組成物または医薬製剤に関する。
【0061】
ある実施態様において、医薬用途は対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答の誘導を含む。
【0062】
ある実施態様において、医薬用途はコロナウイルス感染の治療的または予防的処置を含む。
【0063】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤はヒトへの投与用である。
【0064】
ある実施態様において、コロナウイルスはベータコロナウイルスである。
【0065】
ある実施態様において、コロナウイルスはサルベコウイルスである。
【0066】
ある実施態様において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0067】
ある態様において、本発明は、対象にSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAを含む組成物を投与することを含む、対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答を誘導する方法に関する。
【0068】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性フラグメントは、SARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0069】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は、多量体複合体、特に三量体複合体を形成できる。この目的のために、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列の多量体複合体、特に三量体複合体の形成を可能とするドメインを含み得る。ある実施態様において、多量体複合体形成を可能にするドメインは三量体化ドメイン、例えば、ここに記載する三量体化ドメインを含む。
【0070】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列はコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ、ここで、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変えない。
【0071】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0072】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0073】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0074】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0075】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列は、分泌型シグナルペプチドを含む。
【0076】
ある実施態様において、分泌型シグナルペプチドは、好ましくはN末端で、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントに融合される。
【0077】
ある実施態様において、
(i)分泌型シグナルペプチドをコードするRNAは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)分泌型シグナルペプチドは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。
【0078】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号6のヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列もしくは配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメント;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0079】
ある実施態様において、
(i)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAは、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または
(ii)SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0080】
ある実施態様において、RNAは修飾RNA、特に安定化mRNAである。ある実施態様において、RNAは少なくとも1個のウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、RNAは各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から独立して選択される。
【0081】
ある実施態様において、RNAはウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0082】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される。
【0083】
ある実施態様において、RNAはキャップを含む。
【0084】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
【0085】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
【0086】
ある実施態様において、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAは、ポリA配列を含む。
【0087】
ある実施態様において、ポリA配列は少なくとも100ヌクレオチド含む。
【0088】
ある実施態様において、ポリA配列は配列番号14のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる。
【0089】
ある実施態様において、RNAは液体、固体またはそれらの組み合わせとして製剤化される。
【0090】
ある実施態様において、RNAは注射により投与される。
【0091】
ある実施態様において、RNAは筋肉内投与により投与される。
【0092】
ある実施態様において、RNAは粒子として製剤化される。
【0093】
ある実施態様において、粒子は脂質ナノ粒子(LNP)またはリポプレックス(LPX)粒子である。
【0094】
ある実施態様において、LNP粒子は((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよびコレステロールを含む。
【0095】
ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAとリポソームの混合により得られ得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAと脂質の混合により得られ得る。
【0096】
ある実施態様において、RNAはコロイドとして製剤化される。ある実施態様において、RNAはコロイドの分散相を形成する粒子として製剤化される。ある実施態様において、RNAの50%以上、75%以上または85%以上が分散相に存在する。ある実施態様において、RNAはRNAおよび脂質を含む粒子として製剤化される。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを有機相に溶解した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、有機相はエタノールを含む。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを水相に分散した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、水相に分散された脂質はリポソームを形成する。
【0097】
ある実施態様において、RNAはmRNAまたはsaRNAである。
【0098】
ある実施態様において、方法はコロナウイルスに対するワクチン接種のための方法である。
【0099】
ある実施態様において、方法はコロナウイルス感染の治療的または予防的処置のための方法である。
【0100】
ある実施態様において、対象はヒトである。
【0101】
ある実施態様において、コロナウイルスはベータコロナウイルスである。
【0102】
ある実施態様において、コロナウイルスはサルベコウイルスである。
【0103】
ある実施態様において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0104】
ここに記載する方法のある実施態様において、組成物はここに記載する組成物である。
【0105】
ある態様において、本発明はここに記載する方法に使用するためのここに記載する組成物または医薬製剤に関する。
【0106】
数ある中で、本開示は、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードする脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物が少なくとも1回の用量のワクチン組成物の投与を含むレジメンにより成人ヒト対象集団に投与後7日以内に血清における該エピトープに対する検出可能な抗体力価を達成できることを教示する。さらに、本開示は、そのような抗体力価の持続を教示する。ある実施態様において、本開示は、対応する非修飾mRNAで達成されるのと比較して、修飾mRNAを使用したとき、このような抗体力価の上昇を教示する。
【0107】
ある実施態様において、提供されるレジメンは少なくとも1回投与を含む。ある実施態様において、提供されるレジメンは最初の投与および少なくとも1回のその後の投与を含む。ある実施態様において、最初の投与は少なくとも1回のその後の投与と同じ量である。ある実施態様において、最初の投与は全てのその後の投与と同じ量である。ある実施態様において、最初の投与は少なくとも1回のその後の投与の量と異なる。ある実施態様において、最初の投与は全てのその後の投与の量と異なる。ある実施態様において、提供されるレジメンは2回投与を含む。ある実施態様において、提供されるレジメンは2回投与からなる。
【0108】
具体的実施態様において、免疫原性組成物は容器、例えば、バイアルに単回用量として製剤化される。ある実施態様において、免疫原性組成物はバイアルに多回用量製剤として製剤化される。ある実施態様において、多回用量製剤はバイアルあたり少なくとも2回分含む。ある実施態様において、多回用量製剤は、例えば、バイアルあたり2回分、3回分、4回分、5回分、6回分、7回分、8回分、9回分、10回分、11回分または12回分など、バイアルあたり計2~20回分を含む。ある実施態様において、バイアルにおける各回分は等体積である。ある実施態様において、初回分は、その後の投与分と体積が異なる。
【0109】
「安定な」多回用量製剤は許容されないレベルの微生物増殖を示さず、活性生物学的分子成分の崩壊または分解が実質的にないかまたはない。ここで使用する「安定な」免疫原性組成物は、対象に投与したとき所望の免疫応答を誘発する能力を維持している製剤を含む。
【0110】
ある実施態様において、多回用量製剤は、多回用量容器への複数回または反復接種/刺入する特定の期間安定に維持される。例えば、ある実施態様において、多回用量製剤は、多回用量容器内に入れられたとき、少なくとも3日間、最大10回使用に安定であり得る。ある実施態様において、多回用量製剤は2~20接種/挿入に安定なままである。
【0111】
ある実施態様において、例えば、ここに記載するレジメンによるSARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードする脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物の投与は、一部対象(例えば、全対象、大部分の対象、約50%以下、約40%以下、約40%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下など)でリンパ球減少症をもたらし得る。数ある中で、本発明は、このようなリンパ球減少症が時間と共に回復し得ることを教示する。例えば、ある実施態様において、リンパ球減少症は、約14日、約10日、約9日、約8日、約7日またはそれ未満の日数以内に回復する。ある実施態様において、リンパ球減少症はグレード3、グレード2またはそれ以下である。
【0112】
故に、数ある中で、本発明は、成人の適切な集団に投与したとき、ここに記載するある特徴(例えば、ある効果の達成)を示すことにより特徴づけられる、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードする脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物を提供する。ある実施態様において、提供される組成物は、温度が特定の閾値を超えない条件下で製造、保管、輸送、特徴づけおよび/または使用され得る。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、提供される組成物は、製造、保管、輸送、特徴づけおよび/または使用の一部または全ての間、光から(例えば、特定波長から)保護され得る。ある実施態様において、提供される組成物の1以上の特性(例えば、サイズ、特定の部分または修飾の存在などにより評価し得る、例えば、mRNA安定性;脂質ナノ粒子安定性または凝集、pHなどの1以上)は、投与前、製造、保管、輸送および/または使用中の1回以上の時点で評価され得るまたは評価されている。
【0113】
数ある中で、本発明は、mRNA内のヌクレオチドが修飾されていない(例えば、天然に存在するA、U、C、G)ある提供される組成物および/またはこのような組成物に関して提供される方法が、内因性アジュバント効果により特徴づけられる(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)ことを証明する。ある実施態様において、このような組成物および/または方法は抗体および/またはT細胞応答を誘導し得る。ある実施態様において、このような組成物および/または方法は、慣用のワクチン(例えば、タンパク質ワクチンなどの非mRNAワクチン)と比較して、高いT細胞応答を誘導し得る。
【0114】
これとは別にまたはこれに加えて、本発明は、mRNA内のヌクレオチドが修飾されている提供される組成物(例えば、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードする脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物)および/またはこのような組成物に関する提供される方法が、内因性アジュバント効果を有しないまたは非修飾結果を有する以外同等な組成物(または方法)と比較して、減少した内因性アジュバント効果により特徴づけられる(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)ことを証明する。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、このような組成物(または方法)は、抗体応答および/またはCD4+ T細胞応答の誘発により特徴づけられる(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)。なおさらにこれとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、このような組成物(または方法)は、別のワクチン形式(例えば、ペプチドワクチン)で観察されるより高いCD4+ T細胞応答を誘導することにより特徴づけられる(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)。修飾ヌクレオチドが関与するある実施態様において、このような修飾ヌクレオチドは、例えば、3’UTR配列、抗原コード化配列および/または5’UTR配列に存在し得る。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドは1以上の修飾ウラシル残基および/または1以上の修飾シトシン残基であるまたはこれらを含む。
【0115】
数ある中で、本発明は、提供される(例えば、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードする脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物)および/または方法が、コードされるポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするタンパク質[例えばSタンパク質]または、ある実施態様において、そのエピトープであり得るまたはそれを含み得るその一部)の持続発現により特徴づけられる(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)ことを証明する。例えば、ある実施態様において、このような組成物および/または方法は、ヒトに投与したとき、このようなヒトからの生物学的サンプル(例えば、血清)における検出可能なポリペプチド発現を達成し、ある実施態様において、例えば、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも148時間またはそれ以上を含む、少なくとも少なくとも36時間またはそれ以上である期間、このような発現が持続することにより特徴づけられる。
【0116】
本明細書に接した当業者は、少なくとも一部(例えば、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)のエピトープであるまたはそれを含む)をコードする種々のmRNA構築物を記載していることを理解する。本明細書に接した当業者は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも一部、例えば少なくともSARS-CoV-2 Sタンパク質のRBD部分をコードする種々のmRNA構築物を記載していることを特に理解する。なおさらに、本明細書に接した当業者は、本明細書が、SARS-CoV-2がコードするポリペプチド(例えば、SARS-CoV-2がコードするSタンパク質)の少なくとも一部(例えば、エピトープであるまたはそれを含む)をコードするmRNA構築物の特別の特徴および/または利点を記載していることを理解する。ある実施態様において、mRNAコンストラクトは、SARS-CoV-2がコードするポリペプチドの少なくとも1つのドメイン(例えば、WO2021/159040に記載されているようなSARS-CoV-2がコードするポリペプチドの1つまたは複数のドメイン、例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のヘプタペプチド反復配列1(HR1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のヘプタペプチド反復配列2(HR1)、および/またはこれらの組み合わせを含む)をコードし得る。数ある中で、本明細書は、ある実施態様において、完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードしない、SARS-CoV-2 RBD部分をコードするあるmRNA構築物の驚くべきかつ有用な特徴および/または利点を特に証明している。何らかの特定の理論に拘束されることを願わないが、本明細書は、完全長未満のSARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする、特にこのようなSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくともRBD部分をコードする提供されるmRNA構築物が、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそれに使用するおよび/またはここに記載する免疫学的効果(例えば、SARS-CoV-2中和抗体および/またはT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)の産生)の達成に特に有用および/または有効であり得ることを示唆する。
【0117】
ある実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の受容体結合部分を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むRNA(例えば、mRNA)を提供し、該RNAはポリペプチドの細胞内発現に適する。ある実施態様において、このようなコードされるポリペプチドは完全Sタンパク質を含まない。ある実施態様において、コードされるポリペプチドは、例えば、配列番号5に示す受容体結合ドメイン(RBD)を含む。ある実施態様において、コードされるポリペプチドは配列番号29または31のペプチドを含む。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)はポリカチオン性ポリマー、ポリプレックス、プロテインまたはペプチドにより複合体化され得る。ある実施態様において、このようなRNAは脂質ナノ粒子(例えば、ここに記載のもの)に製剤化され得る。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)は免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそれにおいて使用するのにおよび/またはここに記載する免疫学的効果(例えば、SARS-CoV-2中和抗体および/またはT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)の産生)の達成に特に有用および/または有効であり得る。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)は、ヒト(例えば、SARS-CoV-2への曝露および/または感染があることが知られているヒトおよび/またはSARS-CoV-2への曝露が知られていないヒトを含む)のワクチン接種に有用であり得る。
【0118】
本明細書に接した当業者は、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、このようなコードされるSARS-CoV-2スパイクタンパク質が少なくとも1以上のアミノ酸置換、例えば、ここに記載するプロリン置換を含み得る実施態様および/またはmRNA配列が、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト対象にコドン最適化されている実施態様を含む)をコードする核酸配列を含む種々のmRNA構築物を記載することをさらに認識する。ある実施態様において、このような完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、配列番号7に示すものであるまたはそれを含むアミノ酸配列を有し得る。なおさらに、本明細書に接した当業者は、数ある中で、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする核酸配列を含むあるmRNA構築物の特定の特徴および/または利点を記載することを認識する。何らかの特定の理論に拘束されたくはないが、本発明は、完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする提供されるmRNA構築物が、特に対象集団(例えば、特定の年齢集団)における免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそのために使用するのに特に有用および/または有効であり得ることを示唆する。例えば、ある実施態様において、このようなmRNA組成物は、若年(例えば、25歳、20歳、18歳、15歳、10歳未満またはそれ以下)対象に特に有用であり得る;それとは別にまたはそれに加えて、ある実施態様において、このようなmRNA組成物は、高齢対象(例えば、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳を超えるまたはそれ以上)に特に有用であり得る。具体的実施態様において、ここに提供するこのようなmRNA構築物を含む免疫原性組成物は、少なくとも、一部対象(例えば、ある年齢群対象において)、投与レベルおよび/または投与数依存的全身反応原性(例えば、発熱、疲労、頭痛、悪寒、下痢、筋肉痛および/または関節痛など)および/または局所忍容性(例えば、疼痛、発赤および/または腫脹など)の最小から中程度の増加(例えば、30%以下の増加、20%以下の増加または10%以下の増加またはそれ未満)を示す;ある実施態様において、このような反応原性および/または局所忍容性は、特に、若年年齢群(例えば、25歳、20歳、18歳未満またはそれ以下)対象および/または年配(例えば、高齢)年齢群(例えば、65~85歳)で観察される。ある実施態様において、完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする提供されるmRNA構築物は、SARS-CoV-2感染に関連する重症疾患のリスクが高い対象集団(例えば、高齢集団、例えば、65~85歳群)におけるSARS-CoV-2中和抗体応答レベルを誘導するための、特に免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそれにおいて使用するのに特に有用および/または有効であり得る。ある実施態様において、本明細書に接した当業者は、数ある中で、若年および高齢年齢集団における好都合な反応原性プロファイル(例えば、ここに記載のもの)を示す完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする提供されるmRNA構築物がここに記載する免疫学的効果(例えば、SARS-CoV-2中和抗体および/またはT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)の産生)を達成するための免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそれにおいて使用するのに特に有用および/または有効であり得ることを認識する。ある実施態様において、本発明はまた、完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする提供されるmRNA構築物が、このようなmRNA構築物を含む免疫原性組成物で免疫化し、続いてSARS-CoV-2株に曝露させた非ヒト哺乳動物対象(例えば、アカゲザル)における、SARS-CoV-2ウイルスRNAの早期の排除により特徴づけられるとおり、SARS-CoV-2感染に対する保護に特に有効であり得る。ある実施態様において、SARS-CoV-2ウイルスRNAのこのような早期の排除は、このようなmRNA構築物を含む免疫原性組成物で免疫化し、続いてSARS-CoV-2株に曝露させた非ヒト哺乳動物対象(例えば、アカゲザル)の鼻で観察され得る。
【0119】
ある実施態様において、本発明は、完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質(例えば、1以上のアミノ酸置換を有する完全長SARS-CoV-2 Sタンパク質)をコードするオープンリーディングフレームを含むRNA(例えば、mRNA)を提供し、該RNAはポリペプチドの細胞内発現に適する。ある実施態様において、コードされるポリペプチドは配列番号7のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)はポリカチオン性ポリマー、ポリプレックス、プロテインまたはペプチドにより複合体化され得る。ある実施態様において、このようなRNAは脂質ナノ粒子(例えば、ここに記載のもの)に製剤化され得る。
【0120】
ある実施態様において、ここに提供される免疫原性組成物は、SARS-CoV-2ポリペプチドの複数の(例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10などを含む、例えば、少なくとも2以上の)免疫反応性エピトープまたはそのバリアントを含み得る。あるこのような実施態様において、このような複数の免疫反応性エピトープは複数のRNA(例えば、mRNA)によりコードされ得る。あるこのような実施態様において、このような複数の免疫反応性エピトープは単一RNA(例えば、mRNA)によりコードされ得る。ある実施態様において、複数の免疫反応性エピトープをコードする核酸配列は、単一RNA(例えば、mRNA)で互いにリンカー(例えば、ある実施態様においてペプチドリンカー)により離され得る。何らかの特定の理論に拘束されたくはないが、ある実施態様において、提供されるポリエピトープ免疫原性組成物(例えば、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするものを含む)は、SARS-CoV-2バリアントの遺伝的多様性を考慮して、多数のウイルスバリアントに対する保護の提供に特に有用であり得るおよび/または多様なおよび/または他の点で頑強な(例えば、永続性、例えば、1回以上投与後約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日またはそれ以上検出可能な)中和抗体および/またはT細胞応答、特に、特別頑強なTH1型T細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞)応答を獲得する機会を増やし得る。
【0121】
ある実施態様において、本発明は、提供される組成物および/または方法が単回投与で1以上の特定の治療結果(例えば、ここに記載する有効な免疫応答および/またはコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメントの検出可能な発現)を達成することにより(例えば、ある実施態様において成人集団であり得るまたはそれを含み得る適切な集団に投与したとき)特徴づけられることを証明する;あるこのような実施態様において、結果を、例えば、ここに記載するmRNAワクチンの非存在下で観察されるものとの比較として、評価し得る。ある実施態様において、特定の結果は、1以上の別の戦略で必要であるより低用量で達成され得る。
【0122】
ある実施態様において、本発明は単離メッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドを含む免疫原性組成物を提供し、ここで、単離mRNAポリヌクレオチドはSARS-CoV-2 Sタンパク質の受容体結合部分を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含み、単離mRNAポリヌクレオチドは少なくとも1個の脂質ナノ粒子に製剤化される。例えば、ある実施態様において、このような脂質ナノ粒子は、20~60%イオン化可能カチオン性脂質、5~25%非カチオン性脂質(例えば、中性脂質)、25~55%ステロールまたはステロイドおよび0.5~15%ポリマーコンジュゲート脂質(例えば、PEG-修飾脂質)のモル比を含み得る。ある実施態様において、脂質ナノ粒子に含まれるステロールまたはステロイドはコレステロールであり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、中性脂質は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、ポリマーコンジュゲート脂質はPEG2000 DMGであり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、このような免疫原性組成物は約1mg~10mgまたは3mg~8mgまたは4mg~6mgの総脂質含有量を含み得る。ある実施態様において、このような免疫原性組成物は約5mg/mL~15mg/mLまたは7.5mg/mL~12.5mg/mLまたは9~11mg/mLの総脂質含有量を含み得る。ある実施態様において、このような単離mRNAポリヌクレオチドは、免疫原性組成物を少なくとも1回投与された対象における免疫応答の誘導のための有効量で提供される。ある実施態様において、提供される単離mRNAポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは完全Sタンパク質を含まない。ある実施態様において、免疫原性組成物において提供されるこのような単離mRNAポリヌクレオチドは自己複製RNAではない。
【0123】
ある実施態様において、免疫応答は、SARS-CoV-2タンパク質(ある実施態様において、例えば、安定化融合前スパイク三量体を含む)またはそのフラグメントに対する結合抗体力価の産生を含み得る。ある実施態様において、免疫応答は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する結合抗体力価の産生を含み得る。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物は、最初の投与後検出可能な結合抗体力価を達成するために確立されており、このような提供される免疫原性組成物を受けた対象集団で、例えば、約2週間で少なくとも70%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%および100%までを含む)の抗体陽転である。
【0124】
ある実施態様において、免疫応答は、SARS-CoV-2タンパク質(ある実施態様において、例えば、安定化融合前スパイク三量体を含む)またはそのフラグメントに対する中和抗体力価の産生を含み得る。ある実施態様において、免疫応答は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する中和抗体力価の産生を含み得る。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物は、適切な系(例えば、SARS-CoV-2に感染したヒトSARS-CoV-2に感染したヒトおよび/またはその集団および/またはそのためのモデル系)で中和抗体力価を達成することが確立されている。例えば、ある実施態様において、このような中和抗体力価は、1以上のヒト集団、非ヒト霊長類モデル(例えば、アカゲザル)および/またはマウスモデルで示されている。
【0125】
ある実施態様において、中和抗体力価は、適切な対照(例えば、非ワクチン接種対照対象または生存弱毒化ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチンまたはタンパク質サブユニットウイルスワクチンまたはそれらの組み合わせをワクチン接種した対象)で観察されるものに対して、B細胞のウイルス感染の減少に十分である(例えば、そうであると確立されている)力価である。あるこのような実施態様において、このような減少は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上である。
【0126】
ある実施態様において、中和抗体力価は、適切な対照(例えば、非ワクチン接種対照対象または生存弱毒化ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチンまたはタンパク質サブユニットウイルスワクチンまたはそれらの組み合わせをワクチン接種した対象)で観察されるものに対して、無症候性ウイルス感染の割合の減少に十分である(例えば、そうであると確立されている)力価である。あるこのような実施態様において、このような減少は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上である。ある実施態様において、このような減少はSARS-CoV-2 Nタンパク質血清学の評価により特徴づけられ得る。無症候性感染に対する顕著な保護が実生活観察によっても確認された(Dagan N. et al., N Engl J Med. 2021, doi: 10.1056/NEJMoa2101765. 印刷前のEpub. PMID: 33626250もまた参照)。
【0127】
ある実施態様において、中和抗体力価は、適切な対照(例えば、非ワクチン接種対照対象または生存弱毒化ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチンまたはタンパク質サブユニットウイルスワクチンまたはそれらの組み合わせをワクチン接種した対象)で観察されるものに対して、ワクチン接種対象の上皮細胞および/またはB細胞とウイルスの融合の減少または遮断に十分である(例えば、そうであると確立されている)力価である。あるこのような実施態様において、このような減少は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上である。
【0128】
ある実施態様において、中和抗体力価の誘導はB細胞数増加により特徴づけられ得て、これは、ある実施態様において形質細胞、クラススイッチIgG1およびIgG2陽性B細胞および/または胚中心B細胞を含み得る。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物は、適切な系(例えば、SARS-CoV-2に感染したヒトSARS-CoV-2に感染したヒトおよび/またはその集団および/またはそのためのモデル系)でこのようなB細胞数増加を達成することが示されている。例えば、ある実施態様において、このようなB細胞数増加は、1以上のヒト集団、非ヒト霊長類モデル(例えば、アカゲザル)および/またはマウスモデルで示されている。ある実施態様において、このようなB細胞数増加は、マウスモデルの排出リンパ節および/または脾臓で、このようなマウスモデルの提供される免疫原性組成物での免疫化後(例えば、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日後)示され得る。
【0129】
ある実施態様において、中和抗体力価の誘導は、血中循環B細胞数の減少により特徴づけられ得る。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物は、適切な系(例えば、SARS-CoV-2に感染したヒトSARS-CoV-2に感染したヒトおよび/またはその集団および/またはそのためのモデル系)でこのような血中循環B細胞数の減少を達成することが確立されている。例えば、ある実施態様において、このような血中循環B細胞数の減少は、1以上のヒト集団、非ヒト霊長類モデル(例えば、アカゲザル)および/またはマウスモデルで示されている。ある実施態様において、このような血中循環B細胞数の減少は、マウスモデルでこのようなマウスモデルの提供される免疫原性組成物での免疫化後(例えば、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日後)示され得る。理論に拘束されることを願わないが、血中循環B細胞数減少はリンパ系区画へのB細胞ホーミングによるものであり得る。
【0130】
ある実施態様において、提供される免疫原性組成物により誘導される免疫応答はT細胞数増加を含み得る。ある実施態様において、このようなT細胞数増加は、T濾胞性ヘルパー(TFH)細胞数増加を含み得て、これは、ある実施態様においてICOS上方制御された1以上のサブセットを含み得る。当業者は、胚中心におけるTFH増殖が適応性B細胞応答に不可欠であり、またヒトにおいて、ワクチン接種後循環で生じるTFHが一般に高頻度の抗原特異的抗体と相関することを理解する。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物は、適切な系(例えば、SARS-CoV-2に感染したヒトSARS-CoV-2に感染したヒトおよび/またはその集団および/またはそのためのモデル系)でこのようなT細胞数増加(例えば、TFH細胞)を達成することが確立されている。例えば、ある実施態様において、このようなT細胞数増加(例えば、TFH細胞)は、1以上のヒト集団、非ヒト霊長類モデル(例えば、アカゲザル)および/またはマウスモデルで示され得る。ある実施態様において、このようなT細胞数増加(例えば、例えば、TFH細胞)は、マウスモデルの排出リンパ節、脾臓および/または血液で、このようなマウスモデルの提供される免疫原性組成物での免疫化後(例えば、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日後)示され得る。
【0131】
ある実施態様において、提供される免疫原性組成物により誘導されるSARS-CoV-2に対する防御反応は、SARS-CoV-2のための適切なモデル系で確立されている。例えば、ある実施態様において、このような防御反応は、動物モデル、例えば、非ヒト霊長類モデル(例えば、アカゲザル)および/またはマウスモデルで示され得る。ある実施態様において、提供される免疫原性組成物で少なくとも1回免疫化を受けている非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)またはその集団を、例えば、鼻腔内および/または気管内経路を介して、SARS-CoV-2に曝露させる。ある実施態様において、このような曝露を、提供される免疫原性組成物で少なくとも1回の免疫化(例えば、少なくとも2回の免疫化を含む)の数週間(例えば、5~10週間)後に実施し得る。ある実施態様において、このような曝露は、提供される免疫原性組成物で少なくとも1回の免疫化(例えば、少なくとも2回の免疫化を含む)を受けている非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)で検出可能なレベルのSARS-CoV-2中和力価(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質および/または例えば、安定化融合前スパイク三量体、S-2Pを含むが、これに限定されないそのフラグメントに対する抗体応答および/またはSARS-CoV-2の受容体結合部分に対する抗体応答)が達成されたとき、実施し得る。ある実施態様において、防御反応は、曝露非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)の気管支肺胞洗浄液(BAL)および/または鼻腔スワブにおける検出可能なウイルスRNAの不在または減少により特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する免疫原性組成物は、提供される免疫原性組成物で少なくとも1回の免疫化(例えば、少なくとも2回の免疫化を含む)を受けている曝露動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)集団におけるBALおよび/または鼻腔スワブにおける検出可能なRNAの非存在を示すパーセントが、非免疫化動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)集団と比較して高いことにより特徴づけられ得る。ある実施態様において、ここに記載する免疫原性組成物は、提供される免疫原性組成物で少なくとも1回の免疫化(例えば、少なくとも2回の免疫化を含む)を受けている曝露動物、例えば、非ヒト(例えば、アカゲザル)集団が、非免疫化動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル)集団と比較して、例えば、8日以内、6日以内、4日以内などを含む10日以内の鼻腔スワブでウイルスRNAの排除を示し得ることにより特徴づけられ得る。
【0132】
ある実施態様において、ここに記載する免疫原性組成物は、それを必要とする対象に投与したとき呼吸器疾患増強のリスクを実質的に増加させない。ある実施態様において、このようなワクチン関連呼吸器疾患増強は、複製の抗体依存的増強および/または不十分な中和活性およびTh2に偏った応答を誘導するワクチン抗原と関連し得る。ある実施態様において、ここに記載する免疫原性組成物は、それを必要とする対象に投与したとき複製の抗体依存的増強のリスクを実質的に増加させない。
【0133】
ある実施態様において、mRNA組成物(例えば、脂質ナノ粒子に製剤化)の単回投与は、ワクチン接種10日以内に治療的抗体応答を誘導できる。ある実施態様において、このような治療的抗体応答は、このようなmRNAワクチンが動物モデルで0.1~10μgまたは0.2~5μg用量でワクチン接種後10日目に測定して、約10~100μg/mL IgGの産生を誘導できるとき特徴づけられ得る。ある実施態様において、このような治療的抗体応答は、このようなmRNAワクチンが動物モデルで0.1~10μgまたは0.2~5μgの用量でワクチン接種20日目に測定して、約100~1000μg/mL IgGを誘導する点で特徴づけられ得る。ある実施態様において、単回投与は、動物モデルで測定して、ワクチン接種15日後10~200pVN50力価のシュードウイルス中和力価を誘導し得る。ある実施態様において、単回投与は、動物モデルで測定して、ワクチン接種15日後50~500pVN50力価のシュードウイルス中和力価を誘導し得る。
【0134】
ある実施態様において、mRNA組成物の単回投与は、SARS-COV2免疫原性タンパク質またはそのフラグメント(例えば、スパイクタンパク質および/または受容体結合ドメイン)をコードするこのようなmRNA構築物の非存在下で観察されるものと比較して、少なくとも50%以上(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上を含む)抗原特異的CD8および/またはCD4 T細胞応答を拡大できる。ある実施態様において、mRNA組成物の単回投与は、SARS-COV2免疫原性タンパク質またはそのフラグメント(例えば、スパイクタンパク質および/または受容体結合ドメイン)をコードするこのようなmRNA構築物の非存在下で観察されるものと比較して、少なくとも1.5倍以上(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍以上を含む)抗原特異的CD8および/またはCD4 T細胞応答を拡大できる。
【0135】
ある実施態様において、レジメン(例えば、mRNA組成物の単回投与)は、SARS-COV2免疫原性タンパク質またはそのフラグメント(例えば、スパイクタンパク質および/または受容体結合ドメイン)をコードするこのようなmRNA構築物の非存在下で観察されるものと比較して、少なくとも50%以上(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上を含む)Th1 表現型(例えば、IFN-ガンマ、IL-2、IL-4および/またはIL-5の発現により特徴づけて)を示すT細胞を増殖できる。ある実施態様において、レジメン(例えば、mRNA組成物の単回投与)は、SARS-COV2免疫原性タンパク質またはそのフラグメント(例えば、スパイクタンパク質および/または受容体結合ドメイン)をコードするこのようなmRNA構築物の非存在下で観察されるものと比較して、Th1 表現型(例えば、IFN-ガンマ、IL-2、IL-4および/またはIL-5の発現により特徴づけて)を示すT細胞を例えば少なくとも1.5倍以上(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍以上を含む)増殖できる。ある実施態様において、T細胞表現型はTh1優性サイトカインプロファイル(例えば、INF-ガンマ陽性および/またはIL-2陽性により特徴づけられる)および/またはIL-4分泌がないかまたは生物学的に重要でないものであり得るかまたは含んでよい。
【0136】
ある実施態様において、ここに記載するレジメン(例えば、mRNA組成物の1回以上の投与)はCD4+T細胞の産生を誘導するおよび/または達成する。数ある中で、本発明は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBD含有部分をコードするmRNA組成物(例えば、加えて完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードしない)がRBD特異的CD4+ T細胞のこのような誘導および/または産生に特に特に有用および/または有効であり得ることを証明する。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBD含有部分をコードし、かつ、ある実施態様において、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードしないmRNA組成物)により誘導されるRBD特異的CD4+ T細胞は、Th1優性サイトカインプロファイル(例えば、INF-ガンマ陽性および/またはIL-2陽性により特徴づけられる)を示すおよび/またはIL-4分泌がないかまたは生物学的に重要でないことを示す。
【0137】
ある実施態様において、mRNA組成物(例えば、ここに記載のもの)を受けた対象におけるCD4+および/またはCD8+ T細胞応答(例えば、ここに記載)の特徴づけは、対象から採取したPBMCを使用するエクスビボアッセイを使用して実施し得る。
【0138】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物の免疫原性は、提供されるmRNA組成物を受けた対象の血液サンプルに存在するSARS-CoV-2 Sタンパク質に対するIgG、IgMおよび/またはIgAの検出および/またはSARS-CoV-2シュードウイルスおよび/または野生型SARS-CoV-2ウイルスを使用する中和アッセイである血清免疫原性アッセイの1以上により評価し得る。
【0139】
ある実施態様において、mRNA組成物(例えば、ここに記載のもの)は、10μg~100μgまたは1μg~50μgの用量でワクチン接種後7日以内に比較的低い有害作用(例えば、グレード1~グレード2疼痛、発赤および/または腫脹)をもたらす。ある実施態様において、mRNA組成物(例えば、ここに記載のもの)は、10μg~100μgの用量でワクチン接種後7日以内に比較的低い全身事象の観察(例えば、グレード1~グレード2発熱、疲労、頭痛、悪寒、嘔吐、下痢、筋肉痛、関節痛、薬物療法およびこれらの組み合わせ)をもたらす。
【0140】
ある実施態様において、mRNA組成物は、10~100μg用量または1μg~50μgで対象に投与したとき、SARS-CoV2免疫原性タンパク質またはそのフラグメント(例えば、スパイクタンパク質および/または受容体結合ドメイン)に対するIgGがワクチン接種21日100~100,000U/mLまたは500~50,000U/mLレベルで産生され得ることにより特徴づけられる。
【0141】
ある実施態様において、mRNAはSARS-CoV-2の天然に折りたたまれた三量体受容体結合タンパク質をコードする。ある実施態様において、mRNAは、コードされるバリアントがACE2に例えば、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pMまたはそれ未満のKdを含む10pMまたは未満のKdで結合するように、このような受容体結合タンパク質のバリアントをコードする。ある実施態様において、mRNAは、コードされるバリアントが5pMのKdでACE2に結合するようにこのような受容体結合タンパク質のバリアントをコードする。ある実施態様において、mRNAはACE2受容体結合部位を含む三量体SARS-CoV-2の受容体結合部分をコードする。ある実施態様において、mRNAは、コード配列がACE2受容体結合部位を有し、ACE2に結合する三量体タンパク質の発現を指示するように、SARS-CoV-2の受容体結合部分および三量体化ドメイン(例えば、T4フィブリチンの天然三量体化ドメイン(フォルドン))のコード配列を含む。ある実施態様において、mRNAは、KdがSARS-CoV-2の単量体受容体結合ドメイン(RBD)に対するより小さいように三量体SARS-CoV-2の受容体結合部分またはそのバリアントをコードする。例えば、ある実施態様において、mRNA は、KdがSARS-CoV-2のRBDに対するより少なくとも10倍(例えば、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍などを含む)小さいように、三量体SARS-CoV-2の受容体結合部分またはそのバリアントをコードする。
【0142】
ある実施態様において、mRNA(例えば、ここに記載のもの)によりコードされる三量体SARS-CoV-2の受容体結合部分は、低温電子顕微鏡法(cryoEM)により特徴づけして、閉鎖高次構造でACE2およびB0AT1中性アミノ酸酸トランスポーターと複合体形成しているとき約3~4オングストロームサイズを有すると決定され得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物または方法を特徴づけるおよび/またはそれにより達成される幾何平均SARS-CoV-2中和力価は、COVID-19回復期ヒトパネル(例えば、発症20~40日後および無症候性回復期の開始少なくとも14日後にCOVID-19回復期ヒトから得た血清パネルの、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍またはそれ以上を含む少なくとも1.5倍に達し得る。
【0143】
ある実施態様において、ここに提供されるmRNA組成物は、このような組成物(例えば、少なくとも1回投与、少なくとも2回投与など)で処置された対象が、適切な対照(例えば、そのように処置されず、合理的に同等な曝露条件下でウイルスに曝露されている同等な対象または集団に対する確立された予測レベル)と比較して、関連部位(例えば、鼻および/または肺などおよび/または感染しやすい他のいずれかの組織)におけるウイルスRNAの減少および/またはより短期的存在を示し得ることにより特徴づけられ得る。
【0144】
ある実施態様において、mRNA構築物(例えば、ここに記載のもの)により発現されるRBD抗原は、例えば、免疫原性を高めるために、T4-フィブリチン由来「フォルドン」三量体化ドメインの付加により修飾され得る。
【0145】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ある局所反応(例えば、疼痛、発赤および/または腫脹など)および/または全身事象(例えば、発熱、疲労、頭痛など)がワクチン接種後2日目に出現および/またはピークであり得ることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、ある局所反応(例えば、疼痛、発赤および/または腫脹など)および/または全身事象(例えば、発熱、疲労、頭痛など)がワクチン接種後7日目に回復し得ることにより特徴づけられる。
【0146】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、mRNA組成物(例えば、ここに記載のもの)を受けた対象で通例の臨床検査値のグレード1またはそれ以上の変化または臨床検査値異常が観察されないにより特徴づけられる。このような臨床検査アッセイの例はリンパ球数、血液学的変化などを含み得る。
【0147】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、最初の投与(例えば、10~100μgを含むまたは1μg~50μgを含む)後21日まで、SARS-CoV-2 Sポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGの幾何平均濃度(GMC)が、COVID-19回復期ヒト血清のパネルの602単位/mLと比較して200~3000単位/mLまたは500~3000単位/mLまたは500~2000単位/mLに達し得ることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与(例えば、10~30μgを含む;または1μg~50μgを含む)後7日までに、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGの幾何平均濃度(GMC)が、例えば、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍またはそれ以上を含む、少なくとも8倍またはそれ以上に増加し得ることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与(例えば、10~30μgを含む;または1μg~50μgを含む)後7日までに、SARS-CoV-2 Sポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGの幾何平均濃度(GMC)が、1500単位/mL~40,000単位/mLまたは4000単位/mL~40,000単位/mLに増加し得るにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する抗体濃度は、最初の投与後、例えば、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、少なくとも45日、少なくとも50日を含む少なくとも20日またはそれ以上または2回目の後、例えば、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日またはそれ以上を含む少なくとも10日またはそれ以上持続し得る。ある実施態様において、抗体濃度は最初の投与後35日または2回目の投与後少なくとも14日まで持続し得る。
【0148】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与(例えば、1~50μgを含む)後7日目に測定したとき、SARS-CoV-2 Sポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGのGMCが、COVID-19回復期ヒト血清のパネルで観察される抗体濃度と比較して、例えば、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも95%高いことを含む、少なくとも30%高いことにより特徴づけられる。多くの実施態様において、ここに記載するIgGの幾何平均濃度(GMC)はRBD結合IgGのGMCである。
【0149】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与(例えば、10~50μgを含む)後7日目に測定したとき、SARS-CoV-2 Sポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGのGMCが、COVID-19回復期ヒト血清のパネルで観察される抗体濃度と比較して、少なくとも1.1倍高い(例えば、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍高い、少なくとも7倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも9倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも15倍高い、少なくとも20倍高い、少なくとも25倍高い、少なくとも30倍高いことを含む)ことにより特徴づけられる。多くの実施態様において、ここに記載するIgGの幾何平均濃度(GMC)はRBD結合IgGのGMCである。
【0150】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与後21日目に測定して、SARS-CoV-2 Sポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対するIgGのGMCが、COVID-19回復期ヒト血清のパネルで観察される抗体濃度と比較して、少なくとも5倍高い(例えば、少なくとも6倍高い、少なくとも7倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも9倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも15倍高い、少なくとも20倍高い、少なくとも25倍高い、少なくとも30倍高いことを含む)ことによりにより特徴づけられる。多くの実施態様において、ここに記載するIgGの幾何平均濃度(GMC)はRBD結合IgGのGMCである。
【0151】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、SARS-CoV-2中和幾何平均力価(GMT)の増加(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上)が最初の投与21日後に観察されることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、2回目の投与(例えば、10μg~30μgを含む)を受けた対象で7日後に相当大きな血清中和GMTが達成され、COVID-19回復期血清パネルの94と比較して、150~300に達することにより特徴づけられる。
【0152】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも70%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも80%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも90%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも95%であることにより特徴づけられる。
【0153】
ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は、投与少なくとも7日後(例えば、2回目の投与後)SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導することにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は、投与後14日以内(例えば、2回目の投与後)にSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導することにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は、ワクチン接種レジメン後少なくとも7日後SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導するにより特徴づけられる。ある実施態様において、ワクチン接種レジメンは最初の投与および2回目の投与を含む。ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与は、少なくとも21日間離して投与される。あるこのような実施態様において、SARS-CoV-2に対する免疫応答は、最初の投与後少なくとも28日後に誘導される。
【0154】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する抗体の幾何平均濃度(GMC)が、本発明のmRNA組成物(例えば、10~30μgの用量(両端を含む))を受けた対象の血清で測定して、回復期血清パネル(例えば、ここに記載のもの)におけるより実質的に高いことにより特徴づけられる。ある実施態様において、対象が2回目の投与(例えば、1回目の最初の投与21日後)を受けている可能性があるとき、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する抗体の幾何平均濃度(GMC)は、該対象の血清において測定して、回復期血清パネルGMCより8.0倍~50倍高い可能性がある。ある実施態様において、対象が2回目の投与(例えば、1回目の最初の投与21日後)を受けている可能性があるとき、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する抗体の幾何平均濃度(GMC)、該対象の血清において測定して、回復期血清パネルGMCと比較して、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍またはそれ以上を含む、少なくとも8.0倍またはそれ以上であり得る。
【0155】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、SARS-CoV-2中和幾何平均力価が、最初の投与後28日目または2回目の投与後7日目に測定して、回復期血清パネルの中和GMTと比較して、少なくとも1.5倍またはそれ以上(例えば、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍またはそれ以上を含む)であり得ることにより特徴づけられる。
【0156】
ある実施態様において、対象に投与されるレジメンは単回投与であり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、対象に投与されるレジメンは複数回投与(例えば、少なくとも2回投与、少なくとも3回投与またはそれ以上)を含み得る。ある実施態様において、対象に投与されるレジメンは最初の投与および2回目の投与を含み得て、これらは少なくとも2週間離して、少なくとも3週間離して、少なくとも4週間離してまたはそれ以上離して与えられる。ある実施態様において、このような投与は少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも12カ月またはそれ以上離し得る。ある実施態様において、投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日またはそれ以上離すなどの日数を離し得る。ある実施態様において、投与を約1~約3週間離してまたは約1~約4週間離してまたは約1~約5週間離してまたは約1~約6週間離してまたは約1~6週間以上離して行い得る。ある実施態様において、投与を、例えば約14~約48日など約7~約60日の期間離し得る。ある実施態様において、投与間の最小日数は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21またはそれ以上であり得る。ある実施態様において、投与間の最大日数は約60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21またはそれ以下であり得る。ある実施態様において、投与は約21~約28日離し得る。ある実施態様において、投与は約19~約42日離し得る。ある実施態様において、投与は約7~約28日離し得る。ある実施態様において、投与は約14~約24日であり得る。ある実施態様において、投与は約21~約42日であり得る。
【0157】
ある実施態様において、特に約3週間より長い期間抗体および/またはT細胞力価上昇を達成することが確立された組成物について - 例えば、ある実施態様において、提供される組成物は、約3週間より長い期間抗体および/またはT細胞力価(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の関連部分に特異的)上昇を達成することが確立されている - あるこのような実施態様において、投与レジメンは単回投与しか含まなくてよくまたは2回投与を含んでよく、これは、ある実施態様において、互いに約21日または3週間より長い期間離し得る。例えば、あるこのような実施態様において、このような期間は約4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間またはそれ以上または約1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月またはそれ以上またはある実施態様において、約1年またはそれ以上であり得る。
【0158】
ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与(および/または他のその後の投与)は筋肉内注射により投与され得る。ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与を三角筋に投与し得る。ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与を同じ腕に投与し得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、21日離した一連の2回投与(例えば、各0.3mL)として投与される(例えば、筋肉内注射により)。ある実施態様において、各用量は約30μgである。ある実施態様において、各用量は30μgより高い、例えば、約40μg、約50μg、約60μgでよい。ある実施態様において、各用量は30μgより少ない、例えば、約20μg、約10μg、約5μgなどであり得る。ある実施態様において、各用量は約3μgまたはそれ以下、例えば、約1μgである。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は16歳以上(例えば、16~85歳を含む)の対象に投与される。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は18~55歳の対象に投与される。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は56~85歳の対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は単回投与として投与される(例えば、筋肉内注射による)。
【0159】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、このようなmRNA組成物および/または方法により誘導されたRBD特異的IgG(例えば、ポリクローナル応答)がSARS-CoV-2 RBD結合親和性を有する対照ヒトモノクローナル抗体(例えば、J. ter Meulen et al., PLOS Med. 3, e237 (2006)に記載のCR3022)と比較して高いRBDへの結合親和性を示すことにより特徴づけられる。
【0160】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアントのパネル(例えば、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上)にわたり中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、このようなSARs-CoV-2スパイクバリアントはRBDにおける変異(例えば、配列番号1と比較して、Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519Pなどであるがこれらに限定されない)および/またはスパイクタンパク質における変異(例えば、配列番号1と比較して、D614Gなどであるがこれに限定されない)を含む。当業者は、種々のスパイクバリアントおよび/またはそれを記載するリソース(例えば、the Table of mutating sites in Spike maintained by the COVID-19 Viral Genome Analysis Pipeline and found at https://cov.lanl.gov/components/sequence/COV/int_sites_tbls.com)を認識しており、本明細書に接して、ここに記載するmRNA組成物および/または方法が、ワクチン接種した対象において、このようなバリアントおよび/またはこれらの組み合わせのいずれかまたは全てに関して中和活性を示す血清を誘導する能力により特徴づけられ得ることを知る。
【0161】
具体的実施態様において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDをコードするmRNA組成物は、ワクチン接種した対象の血清が、RBDバリアント(例えば、配列番号1と比較して、Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519Pなどであるがこれらに限定されない)およびスパイクタンパク質バリアント(例えば、配列番号1と比較して、D614Gであるが、これに限定されない)を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントのパネル(例えば、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上)にわたり中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0162】
具体的実施態様において、S2サブユニットにおける中央らせん頂部でアミノ酸986位および987位の2連続プロリン置換を含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントをコードするmRNA組成物が、ワクチン接種した対象の血清がRBDバリアント(例えば、配列番号1と比較して、Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519Pなどであるがこれらに限定されない)およびスパイクタンパク質バリアント(例えば、配列番号1と比較して、D614Gであるが、これに限定されない)を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントのパネル(例えば、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上)にわたり中和活性を示すことにより特徴づけられる。例えば、ある実施態様において、配列番号7(SP2)をコードするmRNA組成物は、RBDバリアント(例えば、配列番号1と比較して、Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519Pなどであるがこれらに限定されない)およびスパイクタンパク質バリアント(例えば、配列番号1と比較して、D614Gであるが、これに限定されない)を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントのいずれか1つに対して免疫応答を誘発する。
【0163】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質の501位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質にN501Y変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0164】
該配列番号1と比較してスパイクタンパク質の501位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質にN501Y変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較してH69/V70欠失、Y144欠失、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失などであるが、これらに限定されない)。
【0165】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「Variant of Concern 202012/01」(VOC-202012/01;系統B.1.1.7としても知られる)に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。該バリアントは、以前英国公衆衛生庁により最初のVariant Under Investigation in December 2020(VUI - 202012/01)として名付けられたが、Variant of Concern(VOC-202012/01)に再分類された。VOC-202012/01は、英国においてCOVID-19パンデミック中の2020年10月に前の月に採取したサンプルから最初に検出されたSARS-CoV-2のバリアントであり、12月半ばまでには急速に拡散し始めた。これは英国におけるCOVID-19感染率の顕著な増加と相関する;この増加は、少なくとも一部ヒト細胞におけるACE2への結合に必要なスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン内のN501Y変化によるものと考えられる。VOC-202012/01バリアントは、13非同義変異、4欠失および6同義変異(すなわち、タンパク質を変える17変異と変えない6変異がある)の23変異により定義される。VOC 202012/01におけるスパイクタンパク質変化は欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hを含む。VOC-202012/01における最も重要な変化の1つは、アミノ酸501位のアスパラギン(N)からチロシン(Y)への変化であるN501Yを含む。この変異は、単独でまたはN末端ドメイン(NTD)における69/70位の欠失と共にウイルスの感染性を増強し得る。
【0166】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較して欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0167】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。このバリアントは最初に2020年10月のサンプルにおいて観察され、それ以降501.V2バリアントの300を超える症例が南アフリカで全ゲノムシーケンス(WGS)により確認され、その地域では2020年12月にはウイルスの優性型となった。予備的結果は、このバリアントの感染性が増加している可能性を示す。501.V2バリアントはD80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vを含む複数スパイクタンパク質変化により規定され、さらに最近集めたウイルスは、L18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244のさらなる変化を有する。
【0168】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244に変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0169】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるH69/V70欠失を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0170】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質においてH69/V70欠失を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較してY144欠失、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229Iなどであるが、これらに限定されない)。
【0171】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「Variant of Concern 202012/01」(VOC-202012/01;系統B.1.1.7としても知られる)に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0172】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較して欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0173】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がデンマーク国立血清研究所(SSI)によりΔFVI-スパイクとしても名付けられたSARs-CoV-2スパイクバリアント「Cluster 5」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。これはデンマークの北ユランで発見され、ミンク農場でミンクからヒトに拡散したと考えられている。Cluster 5において、ウイルスのスパイクタンパク質のいくつかの異なる変異が確認されている。特異的変異は69-70デルタHV(タンパク質の69番目および79番目の位置でのヒスチジン残基およびバリン残基欠失)、Y453F(チロシン位のチロシンからフェニルアラニンへの変化)、I692V(イソロイシン位のイソロイシンからバリン)、M1229I(メチオニン位のメチオニンからイソロイシン)および所望によりS1147L(セリン位のセリンからロイシン)を含む。
【0174】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較して欠失69~70、Y453F、I692V、M1229Iおよび所望によりS1147Lの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0175】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0176】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229Iなどであるが、これらに限定されない)。
【0177】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「Variant of Concern 202012/01」(VOC-202012/01;系統B.1.1.7としても知られる)に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0178】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較して欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0179】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびD614Gおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244の変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0180】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位および614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異およびD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0181】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位および614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異およびD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、A570D、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229Iなどであるが、これらに限定されない)。
【0182】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「Variant of Concern 202012/01」(VOC-202012/01;系統B.1.1.7としても知られる)に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0183】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較して欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0184】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびD614Gおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244の変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0185】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における484位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるE484K変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0186】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における484位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるE484K変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0187】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0188】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244の変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0189】
ブラジルバリアントとして知られる系統B.1.1.248は、P.1系統と名付けられているSARS-CoV-2のバリアントの1つであり、17の特有のアミノ酸変化を有し、その10がそのスパイクタンパク質にあり、N501YおよびE484Kを含む。B.1.1.248はB.1.1.28が元であった。E484KはB.1.1.28およびB.1.1.248両者に存在する。B.1.1.248は多数のS-タンパク質多型[L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027I、V1176F]を有し、南アフリカから報告されたバリアントとある重要なRBD位置(K417、E484、N501)が類似する。
【0190】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「B.1.1.28」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0191】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「B.1.1.248」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0192】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してL18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176Fの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0193】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位および484位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異およびE484K変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0194】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位および484位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異およびE484K変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0195】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0196】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244に変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0197】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「B.1.1.248」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0198】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してL18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176Fの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0199】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位、484位および614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異、E484K変異およびD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0200】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における501位、484位および614位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるN501Y変異、E484K変異およびD614G変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、A570D、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、A701V、L18F、R246I、K417N、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0201】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびD614Gおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244の変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0202】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるL242/A243/L244欠失を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0203】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるL242/A243/L244欠失を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、K417N、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0204】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0205】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701Vおよび欠失242~244および所望により配列番号1と比較してL18F、R246IおよびK417Nに変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0206】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における417位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるK417NまたはK417T変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0207】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における417位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるK417NまたはK417T変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、E484K、A701V、L18F、R246I、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0208】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0209】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびK417Nおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246Iおよび欠失242~244を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0210】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「B.1.1.248」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0211】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してL18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176Fの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0212】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質における417位および484位および/または501位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるK417NまたはK417T変異およびE484Kおよび/またはN501Y変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントに対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0213】
ある実施態様において、配列番号1と比較してスパイクタンパク質における417位および484位および/または501位に変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントまたは該配列番号1と比較してスパイクタンパク質におけるK417NまたはK417T変異およびE484Kおよび/またはN501Y変異を含む1以上のSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較して1以上のさらなる変異を含み得る(例えば、配列番号1と比較して、H69/V70欠失、Y144欠失、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H、D80A、D215G、A701V、L18F、R246I、L242/A243/L244欠失、Y453F、I692V、S1147L、M1229I、T20N、P26S、D138Y、R190S、H655Y、T1027I、V1176Fなどであるが、これらに限定されない)。
【0214】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「501.V2」に対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0215】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してD80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびK417Nおよび所望により配列番号1と比較してL18F、R246Iおよび欠失242~244の変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。該SARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異も含み得る。
【0216】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清がSARs-CoV-2スパイクバリアント「B.1.1.248」に対する中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0217】
具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、ワクチン接種した対象の血清が配列番号1と比較してL18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176Fの変異を含むSARs-CoV-2スパイクバリアントに対して中和活性を示すことにより特徴づけられる。
【0218】
ここに記載するSARs-CoV-2スパイクバリアントは配列番号1と比較してD614G変異を含んでも含まなくてもよい。
【0219】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物および/または方法は、このようなmRNA組成物および/または方法を受けた対象の少なくとも50%でSARS-CoV-2に対する保護を提供するおよび/またはSARS-CoV-2感染の重症度を軽減することができる。
【0220】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は18~55歳の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は56~85歳の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は年配対象(例えば、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳を超えるなど、例えば65~85歳の対象)を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は18~85歳の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は18歳以下の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は12歳以下の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は10歳以下の対象を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は青年期集団(例えば、約12歳~約17歳の個体)を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、小児集団(例えば、ここに記載する)を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、乳児(例えば、1歳未満)を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、母親が妊娠中にこのようなここに記載するmRNA組成物を受けた乳児(例えば、1歳未満)を含まない。何らかの特定の理論に拘束されたくはないが、ラット試験は、妊娠中にこのようなmRNA組成物を与えた雌ラットで誘導されたSARS-CoV-2中和抗体応答が胎児に継承され得ることを示唆する。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、母親が妊娠中にこのようなここに記載するmRNA組成物を受けていない乳児(例えば、1歳未満)を含む。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は妊婦を含み得る;ある実施態様において、母親が妊娠中にワクチン接種(例えば、少なくとも1回投与を受けた者または両投与を受けた者のみ)した乳児は、生後数週間、数カ月または数年(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間またはそれ以上または1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月またはそれ以上または1年、2年、3年、4年、5年またはそれ以上)の間ワクチン接種しない。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、母親が妊娠中にワクチン接種(例えば、少なくとも1回投与を受けた者または両投与を受けた者のみ)した乳児は、生後、例えば生後数週間、数カ月または数年(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間またはそれ以上または1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月またはそれ以上または1年、2年、3年、4年、5年またはそれ以上)、ワクチン接種を減らす(例えば、低用量および/または少ない投与 - 例えば、ブースター - 回数および/または一定期間にわたる低総曝露)またはワクチン接種を減らす(例えば、一定期間にわたる低用量および/または少ない投与 - 例えば、ブースター - 回数)必要があるかもしれずない。ある実施態様において、ここに提供する組成物は妊婦を含まない集団に投与される。
【0221】
ある特定の実施態様において、ここに提供する組成物は、妊娠約24週後の最初の投与を含むレジメンにより妊婦に投与される(例えば、妊娠約22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週後またはそれ以降);ある実施態様において、ここに提供する組成物は、妊娠約34週前の最初の投与を含むレジメンにより妊婦に投与される(例えば、妊娠約30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週の前)。ある実施態様において、ここに提供する組成物は、妊娠約24週(例えば、妊娠約27週後、例えば、約24週~34週または約27週~34週)後の最初の投与および約21日後の2回目の投与を含むレジメンにより妊婦に投与される;ある実施態様において、両投与は出産前に投与される。何らかの特定の理論に拘束されたくはないが、理想的には出産前の、このようなレジメン(例えば、妊娠約24週または27週後および所望により妊娠約34週前の最初の投与を含む)および所望により約21日以内の2回目の投与は、別の投与レジメン(例えば、妊娠中のどこかの時点での投与、妊娠中の投与自制および/または例えば、妊娠中1回しか投与できないような妊娠後期の投与)と比較して、安全性(例えば、早産または胎児罹病もしくは死亡のリスク軽減)および/または有効性(例えば、乳児に授けられるワクチン接種の繰り越し)の点である利点を有し得る。ある実施態様において、例えば、ここに記載する特定のレジメンにより、妊娠中ワクチン接種した母親から生まれた乳児は、さらにワクチン接種を必要としない可能性があるまたは生後一定期間(例えば、ここに記載するとおり)、ワクチン接種を減らす(例えば、低用量および/または少ない投与 - 例えば、ブースター - 回数および/または一定期間にわたる全体的曝露減少)必要がある可能性がある。
【0222】
ある実施態様において、ここに提供する組成物は、女性がワクチンを受けた後(例えば、ワクチンの最初の投与を受けた後、ワクチンの最後の投与を受けた後など)一定期間妊娠しないよう指示される集団に投与される;あるこのような実施態様において、期間は少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間またはそれ以上であり得るかまたは少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月またはそれ以上であり得る。
【0223】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、例えば、ここに記載する、1以上の特にハイリスクな状態または行動歴を有する1以上の集団を含む。例えば、ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、職の専門性および/または環境的曝露がSARS-CoV-2感染するリスクを劇的に増加させ得る対象を含み得る(例えば、公共交通機関労働者、囚人、食料品店店員、長期療養施設入居者、食肉処理者または他の肉加工労働者、医療従事者および/または初期対応要員、例えば、緊急対応要員を含むが、これらに限定されない)。具体的実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は医療従事者および/または初期対応要員、例えば、緊急対応要員を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、喫煙または電子タバコ喫煙(例えば、常習的喫煙または電子タバコ喫煙を含み、6カ月、12カ月またはそれ以上の間)の行動歴を有するものを含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、SARS-CoV-2感染によりかかりやすいことが特定されているある民族集団を含み得る。
【0224】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、SARS-CoV-2感染によりかかりやすいことが特定され得る血液型のある集団を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、免疫低下対象(例えば、HIV/AIDSを有する者;(例えば、抗腫瘍処置を施されている)癌患者;ある免疫抑制剤を摂取している患者(例えば、移植患者、癌患者等);免疫抑制治療が是認されることが予測される自己免疫性疾患または他の生理学的状態(例えば、3カ月以内、6カ月以内またはそれ以上);および免疫系に影響する遺伝疾患を有する者(例えば、先天性無ガンマグロブリン血症、先天性IgA欠損症))を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は感染性疾患を有する者を含み得る。例えば、ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団はヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/または肝炎ウイルス(例えば、HBV、HCV)に感染した者を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は基礎疾患を有する者を含み得る。このような基礎疾患の例は、高血圧、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、例えば、慢性肺疾患、喘息など、癌および例えば、ループス、関節リウマチ、慢性肝疾患、慢性腎疾患(例えば、ある実施態様において、60mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過速度(GFR)により特徴づけられるようなステージ3またはそれより悪い)などの他の慢性疾患を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、例えば、特に約30kg/m2を超える肥満度指数(BMI)の者を含む、過体重または肥満対象を含み得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物で処置する集団は、例えば、血清学または鼻腔スワブに基づきCOVID-19と先に診断されているかまたは現在のまたは先のSARS-CoV-2感染の証拠がある対象を含み得る。ある実施態様において、処置する集団は白人および/または非ヒスパニック/非ラテン系を含む。
【0225】
ある実施態様において、あるここに記載するmRNA組成物は、アジア人集団(例えば、中国人集団)への投与または具体的実施態様において、年配のアジア人集団(例えば、60歳以上、例えば、60~85または65~85歳)への投与のために選択され得る。
【0226】
ある実施態様において、ここに提供されるmRNA組成物は、投与前、先の感染および/または現在の感染の証拠を示さないことが判明した対象に投与するおよび/または評価する;ある実施態様において、先の感染および/または現在の感染の証拠は、対象に存在するインタクトウイルスまたは何らかのウイルス核酸、タンパク質、脂質などの証拠(例えば、血液、細胞、粘液および/または組織などのその生物学的サンプル中)および/またはそれに対する対象の免疫応答の証拠であり得るかこれを含み得る。ある実施態様において、ここに提供されるmRNA組成物は、投与前、先の感染および/または現在の感染の証拠を示すことが判明した対象に投与するおよび/または評価する;ある実施態様において、先の感染および/または現在の感染の証拠は、対象に存在するインタクトウイルスまたは何らかのウイルス核酸、タンパク質、脂質などの証拠(例えば、血液、細胞、粘液および/または組織などのその生物学的サンプル中)および/またはそれに対する対象の免疫応答の証拠であり得るかこれを含み得る。ある実施態様において、投与1の日のN結合抗体試験結果陽性または核酸増幅検査(NAAT)結果陽性に基づき、対象は先に感染していたと考えられる。
【0227】
ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物は、例えば悪寒、発熱、頭痛、注射部位疼痛、筋肉痛、疲労の1以上を含み得る副作用のリスクを知らされている対象に投与する;ある実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物を、1以上のこのような副作用が生じ、軽度または中程度を超えるものであり、1日以上の期間持続するならばまたは対象が組成物の接種と関連し得ると合理的に考える何らかの重度なまたは予測不能な事象を経験するならば、医療従事者に知らせるよう要請されている対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物は、例えば、アレルギー、出血性疾患または抗凝血薬物療法摂取、母乳育児、発熱、免疫低下状態または免疫系に影響する薬物療法摂取、妊娠または妊娠を計画するなどの1以上を含み得る特定の健康状態を、医療従事者に知らせるよう要請されている対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を、他のCOVID-19ワクチンを受けていること、医療従事者に知らせるよう要請されている対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を、熱性疾患を経験する、免疫抑制剤治療を受けている、抗凝血剤治療を受けている、出血性疾患に罹患している(例えば、筋肉内注射が禁忌のもの)または妊娠および/または母乳育児/授乳の健康状態の1つを有しない対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を他のCOVID-19ワクチンを受けていない対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を、RNA(例えば、mRNA)組成物のあらゆる成分にアレルギー反応を有しない対象に投与する。このようなアレルギー反応の例は、呼吸困難、顔面および/または咽頭腫脹、動悸、発疹、めまいおよび/または脱力を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を、最初の投与を受け、最初の投与に対してアレルギー反応(例えば、ここに記載のもの)がなかった対象に投与する。ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物の投与を受けた後対象でアレルギー反応が生じたら、このような対象に、例えば、解熱および/または抗炎症剤などのこのようなアレルギー反応を管理および/または低減する処置などの1以上の介入を投与し得る。
【0228】
ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物の少なくとも1回投与を受けた対象は、2回目の投与後数日(例えば、少なくとも7日、少なくとも8日、9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日など)経過しない限りかつするまで、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)への曝露を避けるよう指示される。例えば、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物の少なくとも1回投与を受けた対象は、2回目の投与後数日(例えば、少なくとも7日、少なくとも8日、9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日など)経過しない限りかつするまで、SARS-CoV-2感染に対する予防手段(例えば、ソーシャルディスタンスの維持、マスク着用、頻繁な手洗いなど)を取るよう、指示される。従って、ある実施態様において、ここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物を投与する方法は、最初の投与を受け、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)への曝露を避けるための防手段を取っていた対象へのこのようなここに提供するRNA(例えば、mRNA)組成物の2回目の投与を含む。
【0229】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、例えば、ワクチンプライミングのために、それを必要とする対象の排出リンパ節に送達され得る。ある実施態様において、このような送達は提供されるmRNA組成物の筋肉内投与により実施され得る。
【0230】
ある実施態様において、異なる特定のmRNA組成物を異なる対象集団に投与し得る;それとは別にまたはそれに加えて、ある実施態様において、異なる投与レジメンを異なる対象集団に投与し得る。例えば、ある実施態様において、特定の対象集団に投与されたmRNA組成物は、これらの対象集団における1以上の特定の効果(例えば、効果の発生率および/または程度)により特徴づけられ得る。ある実施態様において、このような作用は、例えば力価および/または中和抗体および/またはT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞などのTH1型T細胞)の持続、曝露(例えば、注射および/または経鼻曝露など)に対する保護、副作用(例えば、反応原性)の発生率、重症度および/または持続などであり得るまたはこれを含み得る。
【0231】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、例えば、核酸増幅検査(NAAT)などの臨床検査に基づき、1000人年あたりのCOVID-19発生率を低減することが確立されたレジメンにより投与し得る。ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、過去のSARS-CoV-2感染の血清学またはウイルス学的証拠がない(例えば、最後の投与を受けた後最大7日)提供されるmRNA組成物の少なくとも1回投与を受けた対象における、核酸増幅検査(NAAT)などの臨床検査に基づき、1000人年あたりのCOVID-19発生率を低減することが確立されたレジメンにより投与し得る。ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、1000人年あたりの確認された重症COVID-19発生率を低減することが確立されたレジメンにより投与し得る。ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、過去のSARS-CoV-2感染の血清学またはウイルス学的証拠がない提供されるmRNA組成物の少なくとも1回投与を受けた対象における1000人年あたりの確認された重症COVID-19発生率を低減することが確立されたレジメンにより投与し得る。
【0232】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、対象からの血清で測定して一定期間対照レベル(例えば、ヒトSARS-CoV-2感染/COVID-19回復期血清に基づき決定した対照レベル)に達するまたは超えるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する中和抗体を産生することが確立されたレジメンおよび/または一定期間例えば、ある実施態様において、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)内の少なくとも1以上のMHC制限(例えば、MHCクラスI制限)エピトープを認識するT細胞の誘導を含む、細胞介在免疫応答(例えば、SARS-CoV-2に対するT細胞応答)の誘導をすることが確立されたレジメンにより投与し得る。あるこのような実施態様において、期間は少なくとも2カ月、3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも12カ月またはそれ以上であり得る。ある実施態様において、ワクチン誘導T細胞(例えば、CD8+ T細胞)により認識される1以上のエピトープは、集団における対象の、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上を含む、少なくとも50%に存在するMHCクラスIアレルに提示され得る;あるこのような実施態様において、MHCクラスIアレルはHLA-B*0702、HLA-A*2402、HLA-B*3501、HLA-B*4401またはHLA-A*0201であり得る。ある実施態様において、エピトープはHLA-A*0201 YLQPRTFLL;HLA-A*0201 RLQSLQTYV;HLA-A*2402 QYIKWPWYI;HLA-A*2402 NYNYLYRLF;HLA-A*2402 KWPWYIWLGF;HLA-B*3501 QPTESIVRF;HLA-B*3501 IPFAMQMAY;またはHLA-B*3501 LPFNDGVYFを含み得る。
【0233】
ある実施態様において、有効性を、ワクチン接種レジメン前および途中で過去のSARS-CoV-2感染の血清学またはウイルス学的証拠がない個体における1000人年(per 1000 person-years)あたりのCOVID-19発生率として評価する;それとは別にまたはそれに加えて、ある実施態様において、有効性を、ワクチン接種レジメン前および途中で過去のSARS-CoV-2感染の血清学またはウイルス学的証拠があるおよびない対象における1000人年あたりのCOVID-19発生率として評価する。あるこのような実施態様において、このような発生率は、最終ワクチン接種(例えば、単回投与レジメンにおける最初の投与;2回投与レジメンにおける2回目の投与など)後一定期間内に確認されたCOVID-19例である;ある実施態様において、このような期間は、特定の日数(例えば、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日またはそれ以上)以内(すなわち、7日までおよび7日を含む)であり得る。ある実施態様において、このような期間は7日以内または14日以内または21日以内または28日以内であり得る。ある実施態様において、このような期間は7日以内であり得る。ある実施態様において、このような期間は14日以内であり得る。
【0234】
ある実施態様において(例えば、有効性を評価するある実施態様において)、対象は、対象からのサンプルにおけるSARS-CoV-2核酸の検出、SARS-CoV-2を特異的に認識する抗体(例えば、SARS-Co-V-2スパイクタンパク質)の検出、COVID-19感染の1以上の症状およびこれらの組み合わせの1以上が確立されたならば、COVID-19感染を経験したと決定する。あるこのような実施態様において、SARS-CoV-2核酸の検出は、中鼻甲介スワブサンプルの、例えば、NAAT検査を含み得る。あるこのような実施態様において、関連する抗体の検出は血液サンプルまたはその一部の血清検査を含み得る。あるこのような実施態様において、COVID-19感染の症状は発熱、今までになかった咳嗽またはその増加、今までになかった息切れまたはその増加、悪寒、今までになかった筋肉痛またはその増加、今までになかった味覚または嗅覚喪失、咽喉炎、下痢、嘔吐およびこれらの組み合わせであり得るまたはそれを含み得る。あるこのような実施態様において、COVID-19感染の症状は発熱、今までになかった咳嗽またはその増加、今までになかった息切れまたはその増加、悪寒、今までになかった筋肉痛またはその増加、今までになかった味覚または嗅覚喪失、咽喉炎、下痢、嘔吐、疲労、頭痛、鼻閉または鼻汁、悪心およびこれらの組み合わせであり得るまたはそれを含み得る。あるこのような実施態様において、対象は、このような対象がこのような症状の1つを経験し、また、SARS-CoV-2核酸もしくは抗体または両方の検査で陽性であるならば、COVID-19感染を経験したと決定される。あるこのような実施態様において、対象は、このような対象がこのような症状の1つを経験し、また、SARS-CoV-2核酸検査で陽性であるならば、COVID-19感染を経験したと決定される。あるこのような実施態様において、対象は、このような対象がこのような症状の1つを経験し、また、SARS-CoV-2抗体検査で陽性であるならば、COVID-19感染を経験したと決定される。
【0235】
ある実施態様において(例えば、有効性を評価するある実施態様において)、対象は、このような対象が安静時の重症全身疾病の臨床徴候(例えば、1分あたり30以上の呼吸速度、1分あたり125以上の心拍、室内気でsea levelで93%以下のSpO2または300mHg未満のPaO2/FiO2の1以上)、呼吸不全(例えば、高酸素流、非侵襲性人工呼吸、機械的人工呼吸、ECMOの必要性の1以上)、ショックの証拠(収縮期血圧90mmHg未満、拡張期血圧60mmHg未満、昇圧剤必要)、顕著な急性腎臓、肝臓または神経機能障害、集中治療室入院、死亡およびこれらの組み合わせの1以上を経験したならば、重症COVID-19感染を経験したと決定する。
【0236】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、(i)各投与後7日までの1以上の局所反応(例えば、ここに記載のもの);(ii)各投与後7日までの1以上の全身事象;(iii)最初の投与から最後の投与後1カ月までの有害事象(例えば、ここに記載のもの);および/または(iv)最初の投与から最後の投与後6カ月までの重度有害事象(例えば、ここに記載のもの)の少なくとも1つを報告する対象のパーセンテージを減らすことが確立されたレジメンにより投与し得る。
【0237】
ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物を受けた1以上の対象を、例えば、投与した組成物の成分に対する免疫応答の存在、SARS-CoV-2または他のコロナウイルスへの曝露および/または免疫応答の証拠、何らかの有害事象などを評価するため、モニターし得る(例えば、例えば1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年またはそれ以上を含む、例えば1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月またはそれ以上を含む、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれ以上を含む、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日またはそれ以上の期間)。ある実施態様において、モニターは遠隔訪問によるものであり得る。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、モニターは直接面会であり得る。
【0238】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物によりもたらされる処置効果は、ワクチン接種後1カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、18カ月および/または24カ月で、(i)予め決定した閾値を超えるSARS-CoV-2抗S1結合抗体レベル;(ii)予め決定した閾値を超えるSARS-CoV-2抗RBD結合抗体レベル;および/または(iii)閾値レベルを超えるSARS-CoV-2血清中和力価、例えば、ベースラインにより特徴づけられ得る。ある実施態様において、抗S1結合抗体および/または抗RBD結合抗体レベルおよび/または血清中和力価は、幾何平均濃度(GMC)、幾何平均力価(GMT)または幾何平均上昇倍率(GMFR)により特徴づけられ得る。
【0239】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物によりもたらされる処置効果は、例えば、ベースライン、ワクチン接種後1カ月、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、18カ月および/または24カ月で、予め決定した閾値を超えるSARS-CoV-2血清中和力価を示す処置対象のパーセンテージが、このような予め決定した閾値(例えば、ここに記載のもの)を超えるSARS-CoV-2血清中和力価を示す非処置対象のパーセンテージより高いことにより特徴づけられ得る。ある実施態様において、血清中和力価は、幾何平均濃度(GMC)、幾何平均力価(GMT)または幾何平均上昇倍率(GMFR)により特徴づけられ得る。
【0240】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物によりもたらされる処置効果は、SARS-CoV-2 NVA特異的結合抗体の検出により特徴づけられ得る。
【0241】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物によりもたらされる処置効果は、核酸増幅検査によるSARS-CoV-2検出により特徴づけられ得る。
【0242】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物によりもたらされる処置効果は、例えば、ある実施態様において、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)内の少なくとも1以上のMHC制限(例えば、MHCクラスI制限)エピトープを認識するT細胞の誘導を含む、細胞介在免疫応答(例えば、SARS-CoV-2に対するT細胞応答)の誘導により特徴づけられ得る。ある実施態様において、ワクチン誘導T細胞(例えば、CD8+ T細胞)により認識される1以上のエピトープは、集団における対象の、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上を含む、少なくとも50%に存在するMHCクラスIアレル上に提示され得る;あるこのような実施態様において、MHCクラスIアレルはHLA-B*0702、HLA-A*2402、HLA-B*3501、HLA-B*4401またはHLA-A*0201であり得る。ある実施態様において、エピトープはHLA-A*0201 YLQPRTFLL;HLA-A*0201 RLQSLQTYV;HLA-A*2402 QYIKWPWYI;HLA-A*2402 NYNYLYRLF;HLA-A*2402 KWPWYIWLGF;HLA-B*3501 QPTESIVRF;HLA-B*3501 IPFAMQMAY;またはHLA-B*3501 LPFNDGVYFを含み得る。
【0243】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物の一次ワクチン有効性(VE)は、一次VE1または一次VE1および一次VE2両者が>30%またはそれ以上(例えば、40%を超える、50%を超える、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、97%を超える、98%を超えるまたはそれ以上を含む)である十分な証拠(事後確率)があるとき確立され得て、ここで、一次VEは一次VE=100×(1-IRR)として定義され;IRRはワクチン群のCOVID-19罹病率対プラセボ群の対応する罹病率の比として計算される。一次VE1は、ワクチン接種前感染の証拠がなかった参加者における確認されたCOVID-19に対するここに記載する予防的mRNA組成物のVEを表し、一次VE2は、ワクチン接種後の全参加者における確認されたCOVID-19に対するここに記載する予防的mRNA組成物のVEを示す。ある実施態様において、一次VE1およびVE2を、2.5%の全体の第1種過誤を制御するために、連続的に評価し得る(階層的検定)。ある実施態様において、1以上のここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物が上記一次VEエンドポイントを達成することが示されているとき、二次VEエンドポイント(例えば、ワクチン接種前感染の証拠がなかった参加者における確認された重症COVID-19および全参加者における確認された重症COVID-19)を、例えば、上記一次VEエンドポイント評価(階層的検定)に使用したのと同じ方法で、連続的に評価し得る。ある実施態様において、一次および/または二次VEエンドポイントの評価は、例えば、次の(i)プラセボ群で1年あたり1.0%罹病率および(ii)参加者の20%が評価不可能となるまたは血清でSARS-CoV-2の先の感染の証拠があり、さらなる感染に免疫がある可能性があるとの仮説に基づき、ワクチン群またはプラセボ群1:1比で無作為化した少なくとも20,000以上の対象(例えば、少なくとも25,000以上の対象)に基づき得る。
【0244】
ある実施態様において、1以上のここに記載するmRNA組成物を、免疫応答の維持および/または増強継続の達成が確立されたレジメンにより投与し得る。例えば、ある実施態様において、投与レジメンは、最初の投与と、その後、所望により1回以上の投与を含み得る;ある実施態様において、このようなその後の投与のいずれかの必要性、タイミングおよび/または強度を、1以上の免疫応答またはその特性の維持、増強および/または修飾のために選択し得る。ある実施態様において、投与の数、タイミングおよび/または量は、適切な集団に投与されたとき有効であると確立されている。ある実施態様において、投与の数、タイミングおよび/または量を個々の対象について調節し得る;例えば、ある実施態様において、個別の対象における免疫応答の1以上の特性を、最初の投与を受けた後少なくとも1回(および所望により1回を超えて、例えばしばしば予め選択した間隔で、一般に離れた複数回)評価し得る。例えば、抗体、B細胞および/またはT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞)および/またはそれにより分泌されるサイトカインの存在および/または特定の抗原および/またはエピトープに対する応答の特性および/または程度が評価され得る。ある実施態様において、その後の投与の必要性、タイミングおよび/または量を、このような評価に鑑みて決定し得る。
【0245】
上記のとおり、ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物を受けた1以上の対象を、抗体、B細胞および/またはT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞)および/またはそれにより分泌されるサイトカインの存在および/または特定の抗原および/またはエピトープに対する応答の特性および/または程度の評価の実施を含む、例えば、投与した組成物の成分に対する免疫応答の存在、SARS-CoV-2または他のコロナウイルスへの曝露および/または免疫応答の証拠、何らかの有害事象などを評価するために、いずれかの特定の投与を受けてから、モニターし得る(例えば、例えば1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年またはそれ以上を含む、例えば1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月またはそれ以上を含む、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間またはそれ以上を含む、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日またはそれ以上の期間)。ここに記載する組成物の投与は、1以上のこのようなモニタリング段階を含むレジメンで投与し得る。
【0246】
例えば、ある実施態様において、最初の投与に対する2回目の投与(および/または先の投与に対するその後の投与)の必要性、タイミングおよび/または量を、このような2回目(またはその後の)投与が最初の(または他の先の)投与で観察される免疫応答(例えば、ここに記載のもの)の増幅または修飾を達成するように、評価、決定および/または選択する。ある実施態様において、免疫応答(例えば、ここに記載のもの)のこのような増幅は、最初の投与後に観察される免疫応答レベルと比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上であり得る。ある実施態様において、免疫応答のこのような増幅は、最初の投与後に観察される免疫応答レベルと比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍またはそれ以上であり得る。
【0247】
ある実施態様において、最初の投与に対する2回目(および/または先の投与に対するその後)の投与の必要性、タイミングおよび/または量を、後続の投与が先の投与後に観察される免疫応答(例えば、ここに記載のもの)の持続性を伸ばすように、評価、決定および/または選択する;あるこのような実施態様において、持続性は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月またはそれ以上延長され得る。ある実施態様において、最初の投与後観察される免疫応答は、対象からの血清で測定してSARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する中和抗体の産生および/または細胞介在免疫応答(例えば、ある実施態様において、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)内の少なくとも1以上のMHC制限(例えば、MHCクラスI制限)エピトープを認識するT細胞の誘導を含む、例えば、SARS-CoV-2に対するT細胞応答の誘導)により特徴づけられ得る。ある実施態様において、ワクチン誘導T細胞(例えば、CD8+ T細胞)により認識される1以上のエピトープは、集団における対象の、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上を含む、少なくとも50%に存在するMHCクラスIアレル上に提示され得る;あるこのような実施態様において、MHCクラスIアレルはHLA-B*0702、HLA-A*2402、HLA-B*3501、HLA-B*4401またはHLA-A*0201であり得る。ある実施態様において、エピトープはHLA-A*0201 YLQPRTFLL;HLA-A*0201 RLQSLQTYV;HLA-A*2402 QYIKWPWYI;HLA-A*2402 NYNYLYRLF;HLA-A*2402 KWPWYIWLGF;HLA-B*3501 QPTESIVRF;HLA-B*3501 IPFAMQMAY;またはHLA-B*3501 LPFNDGVYFを含み得る。
【0248】
ある実施態様において、最初の投与に対する2回目の投与(または先の投与に対する他のその後の投与)の必要性、タイミングおよび/または量は、このような2回目(またはその後の)投与が免疫応答の対照レベルを維持するまたは超えるように評価、決定および/または選択する;あるこのような実施態様において、対照レベルは、ヒトSARS-CoV-2感染/COVID-19回復期血清および/または対象から採ったPBMCサンプル(対象が無症候性であったときはPCR確認診断後、例えば、15日、16日、17日、18日、19日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日またはそれ以上を含む、少なくとも14日またはそれ以上などの、例えば、少なくとも一定期間)に基づいて決定する。ある実施態様において、免疫応答は、対象からの血清で測定してSARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する中和抗体の産生および/または細胞介在免疫応答(例えば、ある実施態様において、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)内の少なくとも1以上のMHC制限(例えば、MHCクラスI制限)エピトープを認識するT細胞の誘導を含む、例えば、SARS-CoV-2に対するT細胞応答の誘導)により特徴づけられ得る。ある実施態様において、ワクチン誘導T細胞(例えば、CD8+ T細胞)により認識される1以上のエピトープは、集団における対象の、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上を含む、少なくとも50%に存在するMHCクラスIアレル上に提示され得る;あるこのような実施態様において、MHCクラスIアレルはHLA-B*0702、HLA-A*2402、HLA-B*3501、HLA-B*4401またはHLA-A*0201であり得る。ある実施態様において、エピトープはHLA-A*0201 YLQPRTFLL;HLA-A*0201 RLQSLQTYV;HLA-A*2402 QYIKWPWYI;HLA-A*2402 NYNYLYRLF;HLA-A*2402 KWPWYIWLGF;HLA-B*3501 QPTESIVRF;HLA-B*3501 IPFAMQMAY;またはHLA-B*3501 LPFNDGVYFを含み得る。
【0249】
ある実施態様において、2回目(またはその後の)投与の必要性、タイミングおよび/または量の決定は、最初の(または他の先の)投与後(例えば、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日またはそれ以上後)対象からの血清において測定するARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)に対する中和抗体の存在および/または発現レベルおよび/または細胞介在免疫応答(例えば、ある実施態様において、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドおよび/またはその免疫原性フラグメント(例えば、RBD)内の少なくとも1以上のMHC制限(例えば、MHCクラスI制限)エピトープを認識するT細胞の誘導を含む、例えば、SARS-CoV-2に対するT細胞応答の誘導)の評価の1以上の工程を含み得る。ある実施態様において、ワクチン誘導T細胞(例えば、CD8+ T細胞)により認識される1以上のエピトープは、集団における対象の、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上を含む、少なくとも50%に存在するMHCクラスIアレル上に提示され得る;あるこのような実施態様において、MHCクラスIアレルはHLA-B*0702、HLA-A*2402、HLA-B*3501、HLA-B*4401またはHLA-A*0201であり得る。ある実施態様において、エピトープはHLA-A*0201 YLQPRTFLL;HLA-A*0201 RLQSLQTYV;HLA-A*2402 QYIKWPWYI;HLA-A*2402 NYNYLYRLF;HLA-A*2402 KWPWYIWLGF;HLA-B*3501 QPTESIVRF;HLA-B*3501 IPFAMQMAY;またはHLA-B*3501 LPFNDGVYFを含み得る。
【0250】
ある実施態様において、ここに提供するキットは、例えばある実施態様において、出荷温度、出荷時間および/または位置を提供できる、リアルタイム輸送モニタリングログ用装置を含み得る。
【0251】
ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、ある実施態様において、単回用量容器または多回用量容器(例えば、投与用の単回用量または複数用量を保持するよう配置および構築されるおよび/またはある実施態様において保持し得る)であり得る、容器(例えばバイアルまたはシリンジ)、例えば、ガラス容器(例えばガラスバイアルまたはシリンジ)で輸送、保管および/または利用できる。ある実施態様において、多回用量容器(例えば多回用量バイアルまたはシリンジ)は2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の用量を保持するおよび/または保持し得る;ある特定の実施態様において、5用量を保持するおよび/または保持し得るように設計され得る。ある実施態様において、単回用量または多回用量容器(例えば単回用量または多回用量バイアルまたはシリンジ)は、例えば、移動および/または投与の際の幾分かの損失を可能とするため、示される用量より多い体積または量配置および構築されるおよび/または保持し得る。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、防腐剤無添加ガラス容器(例えば、防腐剤無添加ガラスバイアルまたはシリンジ、例えば、単回用量または多回用量防腐剤無添加ガラスバイアルまたはシリンジ)で輸送、保管および/または利用し得る。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、凍結液体(例えば、ある実施態様において、0.45mlの凍結液体(例えば、5用量を含む))を含む防腐剤無添加ガラス容器(例えば、防腐剤無添加ガラスバイアルまたはシリンジ、例えば、単回用量または多回用量防腐剤無添加ガラスバイアルまたはシリンジ)で輸送、保管および/または利用し得る。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、室温未満、4℃以下、0℃以下、-20℃以下、-60℃以下、-70℃以下、-80℃以下、-90℃以下などに維持され得る。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、ウイルスまたはシリンジ)は、-80℃~-60℃の温度に維持され得て、ある実施態様において、遮光される。ある態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、約25℃未満の温度に維持され得て、ある実施態様において、遮光される。ある態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、約5℃未満(例えば、約4℃未満)の温度に維持され得て、ある実施態様において、遮光される。ある態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、約-20℃の温度に維持され得て、ある実施態様において、遮光される。ある態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられ、輸送、保管および/または利用される容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、約-60℃以上の温度(例えば、ある実施態様において、約-20℃以上、およびある実施態様において、約4~5℃以上であって、いずれの場合も、所望により約25℃未満)に維持され得て、ある実施態様において、遮光されるか、または、その逆で実質的に約-20℃未満の保管温度を達成するための積極的工程(例えば、冷却手段)が取られない。
【0252】
ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられる容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、耐熱材または容器および/または温度調節材と共におよび/またはその状況下で輸送、保管および/または利用される。例えば、ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物および/またはそれが入れられる容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)は、氷および/またはドライアイスおよび/または保冷材と共に輸送、保管および/または利用される。ある特定の実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物が入れられる容器(例えば、バイアルまたはシリンジ)はトレイまたは他の維持デバイスに入れられ、温度調節(例えば、氷および/またはドライアイス)材および/または保冷材とさらに接触している(または他の方法で存在下である)。ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物が入れられる複数容器(例えば、複数バイアルまたはシリンジ、例えば、ここに記載の単回使用または多回使用バイアルまたはシリンジ)は、温度調節(例えば、氷および/またはドライアイス)材および/または保冷材と同時に存在し(例えば、一般的トレイ、ラック、箱など)および一緒に包装される(または他の方法で存在下である)。一例に過ぎないが、ある実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物が入れられる複数容器(例えば、複数バイアルまたはシリンジ、例えば、ここに記載の単回使用または多回使用バイアルまたはシリンジ)は一般的トレイまたはラックに入れられ、複数のこのようなトレイまたはラックが、保温(例えば、断熱)シッパーにおいて温度調節材(例えば、ドライアイス)に囲まれた大箱に並べられる。ある実施態様において、温度調節材は、定期的に補充される(例えば、到着した場所で24時間以内および/または2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、10時間毎、12時間毎、14時間毎、16時間毎、18時間毎、20時間毎、22時間毎、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎など)。好ましくは保温シッパーへの再導入は低頻度であり、望ましくは1日2回を超えて行わない。ある実施態様において、保温シッパーは、開けてから5分、4分、3分、2分または1分またはそれ以内に再び閉じなければならない。ある実施態様において、一定期間、所望により特定の温度範囲内で保温シッパーに保管されている提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は有用なままである。例えば、ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物を含むここに記載される保温シッパーが、約15℃~約25℃の範囲内の温度であるまたは維持(例えば、保管)されているならば、RNA(例えば、mRNA)組成物は10日間まで使用できる;すなわち、ある実施態様において、10日を超えない期間、約15℃~約25℃範囲内の温度である保温シッパー内に維持されている提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は対象に投与される。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物が約15℃~約25℃の範囲内の温度に維持されている保温シッパー内であるまたは維持(例えば、保管)されているならば、10日間まで使用できる;すなわち、ある実施態様において、10日を超えない期間、約15℃~約25℃の範囲内の温度に維持されている保温シッパーに維持されている提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は対象に投与される。
【0253】
ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は凍結状態で輸送および/または保管される。ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA組成物は、ある実施態様において、防腐剤を含まない、凍結懸濁液として輸送および/または保管される。ある実施態様において、凍結RNA(例えば、mRNA)組成物は解凍される。ある実施態様において、解凍されたRNA(例えば、mRNA)組成物(例えば、懸濁液)は、白色乃至灰白色不透明非晶質粒子を含み得る。ある実施態様において、解凍されたRNA(例えば、mRNA)組成物は、室温以下(例えば、約30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、8℃、4℃未満など)の温度で維持(例えば、保管)されるならば、解凍後数日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日または6日)まで使用され得る。ある実施態様において、解凍されたRNA(例えば、mRNA)組成物は、約2℃~約8℃の温度で保管(例えば、数日間)後、使用され得る;それとは別にまたはそれに加えて、解凍されたRNA(例えば、mRNA)組成物は、室温で解凍後数時間(例えば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)以内に使用され得る。故に、ある実施態様において、解凍され、6日、5日、4日、3日、2日または1日を超えない期間、室温以下の温度およびある実施態様において、約2℃~約8℃で維持された提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は対象に投与される。これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、解凍され、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間または1時間を超えない時間室温に維持された提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は対象に投与される。ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物は、濃縮状態で輸送および/または保管される。ある実施態様において、このような濃縮組成物は投与前希釈される。ある実施態様において、希釈組成物は希釈後約10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間または1時間以内に投与される;ある実施態様において、このような投与は、希釈後6時間以内である。故に、ある実施態様において、提供されるRNA(例えば、mRNA)組成物の希釈調製物は、希釈後6時間以内に対象に投与される(例えば、ここに記載するとおり、適切な温度、例えば、室温未満、4℃以下、0℃以下、-20℃以下、-60℃以下、-70℃以下、-80℃以下などおよび一般に約2℃以上例えば約2℃~約8℃または約2℃~約25℃で維持された後)。ある実施態様において、未使用組成物を希釈後数時間(例えば、約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間またはそれ以下)以内に廃棄する;ある実施態様において、未使用組成物を希釈6時間以内に廃棄する。
【0254】
ある実施態様において、保存、輸送または利用されるRNA(例えば、mRNA)組成物(例えば、凍結組成物、液体濃縮組成物、希釈液体組成物など)は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日またはそれ以上、または少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間またはそれ以上、または少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月またはそれ以上の期間、-60℃を実質的に超える温度で維持されており;あるこのような実施態様において、このような組成物は、このような期間約-20℃を超える温度でおよび/またはこのような期間約4~5℃までの温度で維持されて得ておよび/または約4~5℃を超える、および所望により約25℃の温度で、二(2)カ月未満および/または所望により約一(1)カ月までの期間維持され得る。ある実施態様において、このような組成物は、実質的に約4~5℃を超える温度で、特に約25℃またその付近の温度で、約2週間、またはある実施態様において1週間の期間、保管、輸送または利用(または他に曝露)され得ない。ある実施態様において、このような組成物は、実質的に約-20℃を超える温度で、特に約4~5℃またはその付近の温度で、約12カ月、11カ月、10カ月、9カ月、8カ月、7カ月、6カ月、5カ月、4カ月、3カ月、2カ月の期間、または、ある実施態様において、約8週間または6週間の期間または実質的に約2カ月または、ある実施態様において、3カ月または、ある実施態様において4カ月を超える期間、保管、輸送または利用(または他に曝露)され得ない。
【0255】
ある実施態様において、保管、輸送または利用されるRNA(例えば、mRNA)組成物(例えば、凍結組成物、液体濃縮組成物、希釈液体組成物など)は遮光され得る。ある実施態様において、このような組成物の光への曝露を低減または最小化するために1以上の工程をとり得る(例えば、バイアルまたはシリンジなどの容器に入れ得る)。ある実施態様において、直接日光および/または紫外線への曝露は回避される。ある実施態様において、希釈溶液は、通常の室内灯条件下取り扱いおよび/または利用され得る(例えば、室内灯への曝露を最小化または低減する特定の工程を取ることなく)。ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物の取り扱い(例えば、希釈および/または投与)中無菌技術の厳守が望まれるであることは、理解されるべきである。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、静脈内に投与(例えば、注射)されない。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、皮内に投与(例えば、注射)されない。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、皮下に投与(例えば、注射)されない。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、静脈内、皮内または皮下のいずれかに投与(例えば、注射)されない。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物はその何らかの成分に過敏症であることが知られる対象に投与されない。ある実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物が投与された対象は、アナフィラキシーの1以上の徴候がモニターされる。ある実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物が投与された対象は、SARS-CoV-2に対する異なるワクチンの少なくとも1回投与を先に受けている;ある実施態様において、RNA(例えば、mRNA)組成物が投与された対象は、SARS-CoV-2に対する異なるワクチンを先に受けていない。ある実施態様において、対象の体温を、RNA(例えば、mRNA)組成物の投与直前に測る(例えば、このような組成物の解凍、希釈および/または投与の直前または直後);ある実施態様において、このような対象で発熱が確認されたら、投与を遅らせるかキャンセルする。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、抗凝血剤治療を受けているまたは出血性疾患または筋肉内注射が禁忌である状態に罹患しているまたは疑われる対象に投与しない。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、対象が副作用およびリスクに関する組成物情報を入手するために接触した医療専門家により投与される。ある実施態様において、ここに記載するRNA(例えば、mRNA)組成物は、死亡、能力障害または先天性異常/出生欠損(例えば、対象の子供)の発生、入院患者入院(現在の入院の延長を含む)、命を脅かす事象、死を防ぐための内科的または外科的介入、通常の生活機能を実施する能力の持続するまたは顕著なもしくは相当な崩壊;または個体を危険にさらす可能性があり、他の結果の1つを予防するために内科的または外科的介入(処置)が必要であり得る他の重要な医学的事象の例えば1以上を含み得る、あらゆる重度有害事象の有害事象報告の提供に同意している医療専門家により投与される。
【0256】
ある実施態様において、提供されるRNA組成物は、例えば、局所反応事象の1以上の発生率が下に示す発生率を超えないことが確立されているレジメンにより、18歳未満または17歳未満または16歳未満または15歳未満または14歳未満または13歳未満の個体の集団に投与される:
・注射部位の疼痛(最初の投与および/または2回目の投与後75%および/または2回目の投与後低発生率、例えば、2回目の投与後65%);
・注射部位の発赤(最初の投与および/または2回目の投与後5%未満);および/または
・注射部位の腫脹(最初の投与および/または2回目の投与後5%未満)。
【0257】
ある実施態様において、提供されるRNA組成物は、例えば、全身反応事象の1以上の発生率が下に示す発生率を超えないことが確立されているレジメンにより、18歳未満または17歳未満または16歳未満または15歳未満または14歳未満または13歳未満の個体の集団に投与される:
・疲労(最初の投与および/または2回目の投与後55%);
・頭痛(最初の投与および/または2回目の投与後50%);
・筋肉痛(最初の投与および/または2回目の投与後40%);
・悪寒(最初の投与および/または2回目の投与後40%);
・関節痛(最初の投与および/または2回目の投与後20%);
・発熱(最初の投与および/または2回目の投与後25%);
・嘔吐(最初の投与および/または2回目の投与後10%);および/または
・下痢(最初の投与および/または2回目の投与後10%)。
【0258】
ある実施態様において、1以上の局所反応および/または全身反応事象の1以上の症状(例えば、ここに記載)を軽減する薬物療法が、提供されるRNA組成物を投与され、局所および/または全身反応事象の1以上(例えば、ここに記載)を経験した18歳未満または17歳未満または16歳未満または15歳未満または14歳未満または13歳未満個体に投与される。ある実施態様において、解熱および/または疼痛薬物療法がこのような個体に投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0259】
図1】SARS-CoV-2 Sタンパク質のSタンパク質構成の概略説示。S1サブユニット内の配列は、シグナル配列(SS)および受容体結合ドメイン(RBD)からなり、RBDはヒト細胞受容体ACE2への結合に関連するSタンパク質内の重要なサブユニットである。S2サブユニットはS2プロテアーゼ開裂部位(S2’)、続く膜融合のための融合ペプチド(FP)、中央らせん(CH)ドメインを伴う7回反復領域(HR1およびHR2)、膜貫通ドメイン(TM)および細胞質テイル(CT)を含む。
図2】例示的なSARS-CoV-2ワクチンコンストラクト。完全および野生型Sタンパク質に基づき、(1)中和感受性部位を保持する安定化変異を含む第一7回反復領域(HRP1)に近距離に変異を伴う完全タンパク質、(2)S1ドメインまたは(3)RBドメイン(RBD)のみをコードする異なる構築物を設計した。さらに、タンパク質フラグメントを安定化するために、フィブリチンドメイン(F)をC末端に融合させた。全構築物を、細胞膜へのゴルジ輸送を確実とするためシグナルペプチド(SP)で開始した。
図3】RNAの一般的構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを伴うコード配列およびポリ(A)テイルを備えたRNAワクチンの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。UTR=非翻訳領域;sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン;GS=グリシン-セリンリンカー。
図4】RNAの一般的構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを伴うコード配列およびポリ(A)テイルを備えた薬物物質RNAの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。GS=グリシン-セリンリンカー;UTR=非翻訳領域;Sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン。
図5】RNAの一般的構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、ベネズエラウマ脳炎脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼレプリカーゼおよび内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを備えたSARS-CoV-2抗原のコード配列およびポリ(A)テイルのRNAワクチンの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。UTR=非翻訳領域;Sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン;GS=グリシン-セリンリンカー。
図6】SARS-CoV-2 Sタンパク質のSタンパク質構成の図式的概観およびSARS-CoV-2ワクチン開発のための構築物。野生型Sタンパク質に基づき、T4フィブリチン三量体化ドメイン(F)および自発性膜貫通ドメイン(TM)に融合するRBDフラグメントをコードする2つの異なる膜貫通アンカーRBDベースのワクチン構築物を設計した。構築物(1)はSARS-CoV-2-Sシグナルペプチド(SP;Sタンパク質のAA1~19)から開始し、構築物(2)はヒトIg重鎖シグナルペプチド(huSec)から開始して、細胞膜へのゴルジ輸送を確認にした。
図7】膜貫通アンカーRBDベースのワクチン構築物をコードするLNP-C12製剤化modRNAで免疫化6日、14日および21日後の抗Sタンパク質IgG応答。BALB/cマウスを4μgのLNP-C12処方膜貫通アンカーRBDベースのワクチン構築物(BNT162b3c/BNT162b3dのサロゲート)で1回IM免疫化した。免疫化後6日、14日および21日目、動物を出血させ、血清サンプルを、ELISAで測定した抗S1(左)および抗RBD(右)抗原特異的免疫グロブリンG(IgG)の総量について分析した。6日目(1:50)、14日目(1:300)および21日目(1:900)について、異なる血清希釈をグラフに含めた。グラフの1つの点は1匹のマウスを表し、全てのマウスサンプルをデュプリケートで測定した(群サイズn=8;群についての平均+SEMが含まれる)。
図8】膜貫通アンカーRBDベースのワクチン構築物をコードするLNP-C12製剤化modRNAで免疫化6日、14日および21日後のSARS-CoV-2シュードウイルスの中和。BALB/cマウスを4μgのLNP-C12処方膜貫通アンカーRBDベースのワクチン構築物(BNT162b3c/BNT162b3dのサロゲート)で1回IM免疫化した。免疫化後6日、14日および21日目、動物を出血させ、血清をSARS CoV-2シュードウイルス中和について試験した。グラフはpVN50血清希釈(血清無しの陽性対照と比較して、感染事象の50%減少)を示す。グラフの1つの点は1匹のマウスを表す。全てのマウスサンプルをデュプリケートで測定した。群サイズn=8。平均+SEMを、各群について水平バーによりひげと共に示す。LLOQ、定量下限。ULOQ、定量上限。
図9A】BNT162b3 -例示的な機能的50%SARS-CoV-2中和抗体力価(VN50)。(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)を、1日目(全ての用量レベル)および22日目(30μgの若年参加者コホートを除く全ての用量レベル)に、3、10、20および30μgのBNT162b3で免疫化した(群あたりn=12)。血清を、1日目(ベースライン)、ならびに8日目、22日目(ブースト前)、29日目、36日目、43日目、50日目、85日目および184日目に採取した。SARS-CoV-2 50%中和力価(VN50力価)および95%信頼区間を示す。検出限界(LOD)より小さい値を0.5*LODとしてプロットする。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。水平点線はLODを表す。VN50=50%SARS-CoV-2中和抗体力価。
図9B】BNT162b3 -例示的な機能的50%SARS-CoV-2中和抗体力価(VN50)。(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)を、1日目(全ての用量レベル)および22日目(30μgの若年参加者コホートを除く全ての用量レベル)に、3、10、20および30μgのBNT162b3で免疫化した(群あたりn=12)。血清を、1日目(ベースライン)、ならびに8日目、22日目(ブースト前)、29日目、36日目、43日目、50日目、85日目および184日目に採取した。SARS-CoV-2 50%中和力価(VN50力価)および95%信頼区間を示す。検出限界(LOD)より小さい値を0.5*LODとしてプロットする。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。水平点線はLODを表す。VN50=50%SARS-CoV-2中和抗体力価。
図10】BNT162b3での免疫化後にSARS-CoV-2 GMT抗体陽転した参加者の例示的頻度。ワクチン接種スケジュールおよび血清サンプリングは図9におけると同じである。50%SARS-CoV-2中和抗体力価(VN50)に関する抗体陽転を、3、10、20および30μg BNT162b3を投与した(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)について示す。30μg BNT162b3で免疫化した若年参加者は、ブースター用量を受けなかった。抗体陽転は、ベースラインと比較した機能的抗体応答の最小4倍増加として定義される。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。GMT=幾何平均力価。
図11A】BNT162b3での免疫化後の例示的S1結合抗体力価。ワクチン接種スケジュールおよび血清サンプリングは図9におけると同じである。3、10、20および30μg BNT162b3で免疫化した(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)に関して、幾何平均S1結合抗体価および95%信頼区間を示す。定量下限(LLOQ)と比べて小さい値は、0.5*LLOQとしてプロットされている。定量上限(ULOQ)と比べて大きい値は、2*ULOQとしてプロットされている。点線の横線は、LLOQおよびULOQを表す。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。30μg BNT162b3で免疫化した若年参加者は、ブースター用量を受けなかった。S1=SARS-CoV-2スパイクタンパク質のサブユニット。
図11B】BNT162b3での免疫化後の例示的S1結合抗体力価。ワクチン接種スケジュールおよび血清サンプリングは図9におけると同じである。3、10、20および30μg BNT162b3で免疫化した(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)に関して、幾何平均S1結合抗体価および95%信頼区間を示す。定量下限(LLOQ)と比べて小さい値は、0.5*LLOQとしてプロットされている。定量上限(ULOQ)と比べて大きい値は、2*ULOQとしてプロットされている。点線の横線は、LLOQおよびULOQを表す。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。30μg BNT162b3で免疫化した若年参加者は、ブースター用量を受けなかった。S1=SARS-CoV-2スパイクタンパク質のサブユニット。
図12A】BNT162b3での免疫化後の例示的RBD結合抗体力価。ワクチン接種スケジュールおよび血清サンプリングは図9におけると同じである。3、10、20および30μg BNT162b3で免疫化した(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)に関して、幾何平均RBD結合抗体価および95%信頼区間を示す。定量下限(LLOQ)と比べて小さい値は、0.5*LLOQとしてプロットされている。定量上限(ULOQ)と比べて大きい値は、2*ULOQとしてプロットされている。点線の横線は、LLOQおよびULOQを表す。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。30μg BNT162b3で免疫化した若年参加者は、ブースター用量を受けなかった。RBD=受容体結合ドメイン。
図12B】BNT162b3での免疫化後の例示的RBD結合抗体力価。ワクチン接種スケジュールおよび血清サンプリングは図9におけると同じである。3、10、20および30μg BNT162b3で免疫化した(A)若年参加者(18~55歳)および(B)高齢参加者(56~85歳)に関して、幾何平均RBD結合抗体価および95%信頼区間を示す。定量下限(LLOQ)と比べて小さい値は、0.5*LLOQとしてプロットされている。定量上限(ULOQ)と比べて大きい値は、2*ULOQとしてプロットされている。点線の横線は、LLOQおよびULOQを表す。矢頭はベースライン(投与1前、1日目)および投与2(22日目)を示す。30μg BNT162b3で免疫化した若年参加者は、ブースター用量を受けなかった。RBD=受容体結合ドメイン。
図13】若年参加者(18~55歳)におけるBNT162b3誘導T細胞のサイトカイン分極化。1日目(投与1前)および29日目(投与2後7日)に得たPBMC(若年参加者:3μg、n=9;10μg、n=10;20μgおよび30μg(ブーストなし)、各n=11)を、RBD[Sのaa327~528に融合したaa1~19]を表す重複ペプチドプールで一夜刺激し、フローサイトメトリーで分析した。同じサブセットの全循環T細胞の画分として、(A)は、RBD特異的CD8+を示し、(B)は、示されたサイトカインを産生するCD4+ T細胞を示す。データ点上の値は用量コホートあたりの平均画分を示す。参加者PBMCを単一インスタンスとして試験した(a~b)。
図14】高齢参加者(56~85歳)におけるBNT162b3誘導T細胞のサイトカイン分極化。1日目(投与1前)および29日目(投与2後7日)に得たPBMC(高齢参加者:3μg、n=9;10μgおよび30μg、各n=12;20μg、n=11)を、RBD[Sのaa327~528に融合したaa1~19]を表す重複ペプチドプールで一夜刺激し、フローサイトメトリーで分析した。同じサブセットの全循環T細胞の画分として、(A)は、S特異的CD8+を示し、(B)は、示されたサイトカインを産生するCD4+ T細胞を示す。データ点上の値は用量コホートあたりの平均画分を示す。参加者PBMCを単一インスタンスとして試験した(a~b)。非刺激対照PBMCにおける高いバックグラウンド応答に起因して、以下の数の高齢参加者がCD8データセットから除外された:3μg:n=2、20μg:n=1;および30μg:n=1。
図15】BNT162b3誘導T細胞応答の発生率および強度。1日目(プライム前)および29日目(ブースト7日後、いかなるブーストも受けなかった、30μgを投与した成人を除く)に得たPBMCを、CD4+またはCD8+T細胞エフェクターについて富化し、直接エクスビボIFNγ ELISpotの評価のために、一夜、BNT162b3(RBDb3およびTMDb3)によりコードされるRBDおよびTBD配列を表す重複ペプチドのプールで刺激した。細胞培養培地は陰性対照として役立った。各ドットは培地のみ対照から減算後の1治験参加者についてデュプリケートウェルからの正規化平均スポット数を表す。評価可能なELISPOTデータを有する用量コホートあたりの参加者数の総数に対する29日目にT細胞応答が検出可能であった参加者数が提供される。成人対象(3μg、n=9;10および20μg、各n=10;30μg、n=8)および高齢者対象(3μg、n=8;10および30μg、各n=9;20μg、n=11)のデータ。
図16A】最悪グレードによる非自発的局所反応(対象による評価)の頻度。プライム後7日目までのプライム。若年投与範囲コホート。プライム後7日目までのプライム(1回目のワクチン投与)後の若年参加者(18~55歳)により報告された局所的な非自発的反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
図16B】最悪グレードによる非自発的局所反応(対象による評価)の頻度。ブースト後7日目までのブースト。若年投与範囲コホート。ブースト後7日目までのブースト(2回目のワクチン投与)後の若年参加者(18~55歳)により報告された局所的な非自発的反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。30μg若年コホートに関しては、ブーストを控えた。
図17A】最悪グレードによる非自発的局所反応(対象による評価)の頻度。プライム後7日目までのプライム。高齢投与範囲コホート。プライム後7日目までのプライム(1回目のワクチン投与)後の高齢参加者(56~85歳)により報告された局所的な非自発的反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
図17B】最悪グレードによる非自発的局所反応(対象による評価)の頻度。ブースト後7日目までのブースト。高齢投与範囲コホート。ブースト後7日目までのブースト(2回目のワクチン投与)後の高齢参加者(56~85歳)により報告された局所的な非自発的反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
図18A】最悪グレードによる非自発的全身反応(対象による評価)の頻度。プライム後7日目までのプライム。若年投与範囲コホート。プライム後7日目までのプライム(1回目のワクチン投与)後の若年参加者(18~55歳)により報告された全身の非自発的反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
図18B】最悪グレードによる非自発的全身反応(対象による評価)の頻度。ブースト後7日目までのブースト。若年投与範囲コホート。ブースト後7日目までのブースト(2回目のワクチン投与)後の若年参加者(18~55歳)により報告された非自発的全身反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。30μg若年コホートに関しては、ブーストを控えた。
図19A】最悪グレードによる非自発的全身反応(対象による評価)の頻度。プライム後7日目までのプライム。高齢投与範囲コホート。プライム後7日目までのプライム(1回目のワクチン投与)後の高齢参加者(56~85歳)により報告された非自発的全身反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
図19B】最悪グレードによる非自発的全身反応(対象による評価)の頻度。ブースト後7日目までのブースト。高齢投与範囲コホート。ブースト後7日目までのブースト(2回目のワクチン投与)後の高齢参加者(56~85歳)により報告された非自発的全身反応(最悪グレード)の頻度。百分率算出の分母は、投与群および間隔毎の入手可能な局所反応に関する情報を有する対象の数である。
【発明を実施するための形態】
【0260】
詳細な記載
本発明を下に詳述するが、本発明は、特定の方法、プロトコールおよび試薬は変わり得るため、これらに限定されないことが理解される。ここで使用される用語は特定の実施態様を説明する目的しかなく、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解される。特に断らない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0261】
好ましくはここで使用する用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Koelbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に定義されるとおりである。
【0262】
本発明の実施は、特に断らない限り、当分野における文献で説明される、化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組み換えDNA技術の慣用の方法を使用する(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0263】
下記において、本発明の要素が記載される。これらの要素は特定の実施態様と共に列記されるが、しかしながら、これらは何らかの方法で、何らかの数を組み合わされ、さらなる実施態様を作り得ると解釈されるべきである。種々に記載した例および実施態様は、明確に記載した実施態様にのみ本発明が限定されると解釈してはならない。この記載は、明確に記載した実施態様と何らかの数の開示された要素を組み合わせる実施態様を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、全ての記載した要素のあらゆる並べ替えおよび組み合わせが、文脈に反しない限り、この記載により開示されると考えられるべきである。
【0264】
いくつかの文献がこの明細書を通して引用されている。ここに引用される文献の各々(全特許、特許出願、科学的刊行物、製造者の仕様書、指示など)は、前記であれ後記であれ、引用によりその全体として本明細書に包含させる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有していなかったことを認めたものと解釈されるものではない。
【0265】
定義
次に、本発明の全態様に適用される定義を提供する。次の用語は、特に断らない限り次の意味を有する。何らかの未定義の用語は、当分野で認識される意味を有する。
【0266】
用語「約」は、おおよそまたは近似を意味し、ここに示す数値または範囲の状況において、ある実施態様において、記載されるまたは請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%または±3%を意味する。
【0267】
本発明を記載する文脈(特に特許請求の範囲における文脈)における単数表現は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈される。ここでの値の範囲の列挙は、単に該範囲内の各個々の値をいう省略方法として用いることが意図される。ここで特に断らない限り、各個々の値が、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に包含される。ここに記載する全ての方法は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、任意の適当な順番で実施し得る。ここに提供される任意かつ全ての例または例示的用語(例えば、「など」)は、単に本発明をより良く説明することを意図し、特許請求の範囲の範囲に限定を付すものではない。本明細書のあらゆる用語は、本発明の実施に必要な何らかの特許請求されていない要素を示すと解釈してはならない。
【0268】
特に断らない限り、用語「含む」は、本明細書で、「含む」により導入される一覧のメンバーに加えて、さらなるメンバーが所望により存在し得ることを示すために使用される。しかしながら、用語「含む」がさらなるメンバーが存在する可能性を含まない本発明の特定の実施態様として考えられ、すなわち、この実施態様の目的で、「含む」は「からなる」または「から本質的になる」の意味を有するとして理解される。
【0269】
ここで使用する「減少」、「低減」、「阻害」または「損なう」などの用語は、好ましくは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%またはそれ以上のレベルの全体的減少または全体的減少を引き起こす能力に関する。これらの用語は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわち、0へのまたは本質的に0への減少を含む。
【0270】
「増加」、「増強」または「超える」などの用語は、好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%またはそれ以上の増加または増強に関する。
【0271】
本開示により、用語「ペプチド」はオリゴおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合により互いに結合した約2以上、約3以上、約4以上、約6以上、約8以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上および最大約50、約100または約150の連続アミノ酸を含む、物質をいう。用語「タンパク質」または「ポリペプチド」は、大型ペプチド、特に少なくとも約150アミノ酸を有するペプチドをいうが、用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ここでは通常同義で使用される。
【0272】
「治療タンパク質」は、対象に治療有効量で提供されたとき、対象の状態または疾患状態に正のまたは有利な効果を有する。ある実施態様において、治療タンパク質は治療的または緩和的性質を有し、疾患または障害の1以上の症状の改善、緩和、軽減、逆転、発症遅延または重症度低減のために投与し得る。治療タンパク質は予防的性質を有し得て、このような疾患の発症遅延またはこのような疾患または病態の重症度低減のために使用し得る。用語「治療タンパク質」はタンパク質またはペプチド全体を含み、その治療活性フラグメントも意味し得る。タンパク質の治療活性バリアントも含み得る。治療活性タンパク質の例は、ワクチン接種用抗原およびサイトカインなどの免疫刺激剤を含むが、これらに限定されない。
【0273】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関連する「フラグメント」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短くなっているアミノ酸配列を表す配列をいう。C末端で短くなっているフラグメント(N末端フラグメント)は、例えばオープンリーディングフレームの3’末端を欠く切断オープンリーディングフレームの翻訳によって得られ得る。N末端で短くなっているフラグメント(C末端フラグメント)は、例えば、切断オープンリーディングフレームが翻訳開始に働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠く切断オープンリーディングフレームの翻訳によって得られ得る。アミノ酸配列のフラグメントは、アミノ酸配列の例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%アミノ酸残基を含む。アミノ酸配列のフラグメントは、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50または少なくとも100連続アミノ酸を含む。
【0274】
ここでの「バリアント」は、少なくとも1個のアミノ酸修飾により親アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然に存在するまたは野生型(WT)アミノ酸配列であってよくまたは野生型アミノ酸配列の修飾体であり得る。好ましくはバリアントアミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1~約20アミノ酸修飾および好ましくは1~約10または1~約5アミノ酸修飾を有する。
【0275】
ここでの「野生型」または「WT」または「天然」は、アレルバージョンを含む、天然に見られるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列を有する。
【0276】
本発明の目的で、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。用語「バリアント」は、全変異体、スプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、高次構造、アイソフォーム、アレルバリアント、種バリアントおよび種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。用語「バリアント」は、特に、アミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0277】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列に1または2またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定部位に挿入されるが、ランダム挿入と得られた産物の適切なスクリーニングも可能である。アミノ酸付加バリアントは、1以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50以上アミノ酸のアミノおよび/またはカルボキシ末端融合を含む。アミノ酸欠失バリアントは、配列の1以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50以上アミノ酸の除去により特徴づけられる。欠失はタンパク質のどの位置でもよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端および/またはC末端短縮化バリアントとも称される。アミノ酸置換バリアントは、配列における少なくとも1個の残基が除去され、その位置に他の残基が挿入されることにより特徴づけられる。相同タンパク質またはペプチドで保存されていないアミノ酸配列の位置および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のものに置換する修飾が好ましい。好ましくはペプチドおよびタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は保存的アミノ酸変化、すなわち、類似荷電または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖に関連するアミノ酸ファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸の4ファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、まとめて芳香族アミノ酸と分類されることもある。ある実施態様において、保存的アミノ酸置換は、次のグループ内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、スレオニン;
リシン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
【0278】
好ましくは、あるアミノ酸配列と該あるアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列の間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%。類似性または同一性の程度は、好ましくは、対照アミノ酸配列の長さ全体の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に対して示される。例えば、対照アミノ酸配列が200アミノ酸からなるならば、類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200アミノ酸、ある実施態様において、連続アミノ酸に対して示される。ある実施態様において、類似性または同一性の程度は、対照アミノ酸配列の長さ全体に対して示される。配列類似性、好ましくは配列同一性決定のためのアラインメントは、当分野で知られるツールで、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えば、Alignを使用して、標準設定で使用して、好ましくはEMBOSS::needle, Matrix: Blosum62, Gap Open 10.0, Gap Extend 0.5で実施できる。
【0279】
「配列類似性」は、同一または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2個のアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2個の核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0280】
用語「%同一」、「%同一性」または類似の用語は、特に、比較する配列と最適アラインメントで同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージをいう。該パーセンテージは純粋に統計であり、2配列間の差異は、必ずしも、比較する配列の全体にわたり、無作為に分布されているとは限らない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して、最適アラインメント後、配列を比較することにより実施される。比較のための最適アラインメントは、手動でまたはSmith and Waterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482の局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Neddleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443による局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 88, 2444による類似性サーチアルゴリズムの助けを借りてまたは該アルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA )の助けを借りて、実施し得る。ある実施態様において、2つの配列のパーセント同一性は、United States National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイト(例えばblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で利用可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定する。ある実施態様において、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムで使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)予測閾値設定10;(ii)ワードサイズ設定28;(iii)クエリー範囲の最大マッチ設定0;(iv)マッチ/ミスマッチスコア設定1、-2;(v)ギャップ・コスト設定線形;および(vi)低複雑性領域用フィルターの使用を含む。ある実施態様において、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムで使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)予測閾値設定10;(ii)ワードサイズ設定3;(iii)クエリー範囲の最大マッチ設定0;(iv)マトリクス設定BLOSUM62;(v)ギャップ・コスト設定 存在:11伸長:1;および(vi)条件的組成的スコアマトリクス調節を含む。
【0281】
パーセンテージ同一性は、比較する配列が対応する同一位置数を決定し、この数を比較する位置数(例えば、対照配列における位置数)で除し、この結果を100倍することにより得る。
【0282】
ある実施態様において、類似性または同一性の程度は、対照配列の長さ全体の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域に対して示される。例えば、対照核酸配列が200ヌクレオチドからなるならば、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200ヌクレオチド、ある実施態様において、連続ヌクレオチドに対して示される。ある実施態様において、類似性または同一性の程度は対照配列の長さ全体に対して示される。
【0283】
相同アミノ酸配列は、本開示により、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%および好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を示す。
【0284】
ここに記載するアミノ酸配列バリアントは、例えば、組み換えDNA操作により、当業者により容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al. (1989)に詳述される。さらに、ここに記載するペプチドおよびアミノ酸バリアントは、例えば、固相合成および類似の方法などにより、既知ペプチド合成技術の助けを借りて、容易に製造され得る。
【0285】
ある実施態様において、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)のフラグメントまたはバリアントは、好ましくは「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」なる用語は、それが由来するアミノ酸配列と同一または類似の1以上の機能的性質を示すあらゆるフラグメントまたはバリアントに関し、すなわち、機能的に等価である。抗原または抗原性配列に関して、ある特定の機能は、フラグメントまたはバリアントが由来するアミノ酸配列により示される1以上の免疫原性活性である。ここで使用する用語「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」は、特に親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸が変えられ、なお、親分子または配列の機能の1以上、例えば、免疫応答の誘導を満たすことができる、アミノ酸配列を含むバリアント分子または配列をいう。ある実施態様において、親分子または配列のアミノ酸配列の修飾は、分子または配列の特徴に顕著に影響しないまたは改変しない。異なる実施態様において、機能的フラグメントまたは機能的バリアントの機能は、減少していてよいが、なお顕著に存在し、例えば、機能的バリアントの免疫原性は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施態様において、機能的フラグメントまたは機能的バリアントの免疫原性は親分子または配列と比較して増強され得る。
【0286】
指定のアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)「由来の」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源をいう。好ましくは、特定のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列は、特定の配列またはそのフラグメントに同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列は、特定の配列またはそのフラグメントのバリアントであり得る。例えば、ここで使用するのに適する抗原は、天然配列の望ましい活性を維持しながら、それらが由来する天然に存在するまたは天然配列と配列が異なるように変えられ得ることは、当業者に理解される。
【0287】
ここで使用する「指示材」または「指示」は、本発明の組成物および方法の有用性の伝達に使用できる、刊行物、記録、ダイアグラムまたは表現のための何らかの他の媒体を含む。本発明のキットの指示材は、例えば、本発明の組成物を含む容器に添付されまたは組成物を含む容器と共に輸送され得る。あるいは指示材は、指示材と組成物がレシピエントにより協同的使用されることを意図して、容器と別々に輸送され得る。
【0288】
「単離」は、天然状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離」されていないが、その天然状態で共存する物質から部分的にまたは完全に分離された同核酸またはペプチドは「単離」されている。単離核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在できまたは、例えば、宿主細胞などの非天然環境で存在できる。
【0289】
本発明の状況での「組み換え」なる用語は、「遺伝子操作を介する製造」を意味する。好ましくは、本発明の状況での組み換え核酸などの「組み換え物体」は天然に存在しない。
【0290】
ここで使用する用語「天然に存在する」は、物体が天然に見られ得るとの事実をいう。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在し、天然源から単離でき、実験室で人為的に修飾されていないペプチドまたは核酸は天然に存在する。
【0291】
ここで使用する「生理学的pH」は、約7.5のpHをいう。
【0292】
用語「遺伝子修飾」または単に「修飾」は、核酸での細胞のトランスフェクションを含む。用語「トランスフェクション」は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本発明の目的で、用語「トランスフェクション」はまた細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みも含み、ここで、細胞は対象、例えば、患者に存在し得る。故に、本発明により、ここに記載する核酸のトランスフェクションのための細胞はインビトロまたはインビボに存在でき、例えば、細胞は患者の臓器、組織および/または生命体の一部を形成し得る。本発明により、トランスフェクションは、一過性でも安定的でもよい。トランスフェクションのいくつかの適用に関して、トランスフェクトされた遺伝子材料が一過性にのみ発現されるならば、十分である。RNAを、そのコードするタンパク質を一過性に発現するように、細胞にトランスフェクトし得る。トランスフェクション過程で導入された核酸が通常核ゲノムに統合されないため、外来核酸は有糸分裂を介して希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅が可能である細胞は、希釈率が大きく減少する。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望まれるならば、安定なトランスフェクションを行うべきである。このような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためのウイルスベースの系またはトランスポゾンベースの系を使用して達成され得る。一般に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを、細胞がそのコードするタンパク質を一過性に発現するように、トランスフェクトし得る。
【0293】
用語「抗体陽転」は、ワクチン接種前から投与2の1カ月後における4倍以上の上昇を含む。
【0294】
コロナウイルス
コロナウイルスは、エンベロープ、プラス鎖、一本鎖RNA((+) ssRNA)ウイルスである。既知RNAウイルスの中で、最大のゲノム(26~32kb)を有し、系統学的に4属(α、β、γおよびΔ)に分類され、ベータコロナウイルスはさらに4分化系列(A、B、CおよびD)に細分される。コロナウイルスは、広範なトリおよびヒトを含む哺乳動物種に感染する。一部ヒトコロナウイルスは、一般に軽度呼吸器疾患を引き起こすが、重症度は乳児、高齢および免疫不全者で大きくなり得る。各々ベータコロナウイルス分化系列CおよびBに属する中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)は高度病原性である。両ウイルスとも、ここ15年以内に動物リザーバーからヒト集団に出現し、高致死率の大流行を引き起こした。非定型肺炎(コロナウイルス疾患2019;COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の大流行が2019年12月半ばに中国で発生し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態にまで発展した。SARS-CoV-2(MN908947.3)はベータコロナウイルス系統Bに属する。SARS-CoVと少なくとも70%配列類似性を有する。
【0295】
一般に、コロナウイルスは4構造タンパク質、すなわち、エンベロープ(E)、膜(M)、ヌクレオカプシド(N)およびスパイク(S)を有する。EおよびMタンパク質はウイルス集合に重要な機能を有し、Nタンパク質はウイルスRNA合成に必要である。重要な糖タンパク質は、ウイルス結合および標的細胞への侵入を担う。Sタンパク質は、一本鎖不活性前駆体として合成され、産生細胞でフューリン様宿主プロテアーゼにより2つの非共有結合的結合したサブユニット、S1およびS2に開裂される。S1サブユニットは、宿主細胞受容体を認識する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。S2サブユニットは融合ペプチド、2つの7回反復領域および膜貫通ドメインを含み、その全て、大型高次構造再構成を行うことにより、ウイルスと宿主細胞膜の融合に介在するのに必要である。S1およびS2サブユニットは、大型融合前スパイクを形成するために三量体化する。
【0296】
SARS-CoV-2のS前駆体タンパク質は、S1(685 aa)およびS2(588 aa)サブユニットにタンパク分解的に開裂される。S1サブユニットは、宿主アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して感受性細胞へのウイルス侵入を媒介する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0297】
抗原
本発明は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAの使用を含む。故に、RNAは、対象におけるコロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する免疫応答を誘導するために、少なくともエピトープSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性バリアントを含むペプチドまたはタンパク質をコードする。SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメント(すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質)を含むアミノ酸配列は、ここでは「ワクチン抗原」、「ペプチドおよびタンパク質抗原」、「抗原分子」または単に「抗原」とも称される。SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、ここでは「抗原性ペプチドまたはタンパク質」または「抗原性配列」とも称される。
SARS-CoV-2コロナウイルス完全長スパイク(S)タンパク質は、1273アミノ酸からなり、配列番号1:
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT
(配列番号1)
のアミノ酸配列を有する。
【0298】
本開示の目的のために、上記配列は、野生型SARS-CoV-2タンパク質のアミノ酸配列と見なされる。ここに示すSARS-CoV-2 Sタンパク質の位置番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列およびSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントにおける対応する位置に関連している。
【0299】
特定の実施態様において、配列番号1の完全長スパイク(S)タンパク質は、プロトタイプ融合前高次構造が安定化されるような方法で修飾される。融合前高次構造の安定化は、完全長スパイクタンパク質のAS残基986および987の2連続プロリン置換の導入により得られ得る。特に、スパイク(S)タンパク質安定化タンパク質バリアントは、アミノ酸残基986位がプロリンに交換され、かつアミノ酸残基987位もプロリンに交換される方法で得られる。
【0300】
ある実施態様において、プロトタイプ融合前高次構造が安定化されるようなSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、配列番号7:
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT
(配列番号7)
に示されるアミノ酸配列を含む。
【0301】
当業者は、種々のスパイクバリアントおよび/またはそれを記載するリソースを認識している。例えば、以下の株、そのSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列、特に、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較したその改変体、例えば、配列番号1と比較した改変体は、本明細書において有用である。
【0302】
B.1.1.7(「Variant of Concern 202012/01」(VOC-202012/01)
B.1.1.7は、英国においてCOVID-19パンデミック中の2020年10月に前の月に採取したサンプルから最初に検出されたSARS-CoV-2のバリアントであり、12月半ばまでには急速に拡散し始めた。これは英国におけるCOVID-19感染率の顕著な増加と相関する;この増加は、少なくとも一部ヒト細胞におけるACE2への結合に必要なスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン内のN501Y変化によるものと考えられる。B.1.1.7バリアントは、13非同義変異、4欠失および6同義変異(すなわち、タンパク質を変える17変異と変えない6変異がある)の23変異により定義される。B.1.1.7におけるスパイクタンパク質変化は欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hを含む。
【0303】
B.1.351(501.V2)
南アフリカCOVID-19バリアントの通称で知られている系統B.1.351は、SARS-CoV-2のバリアントである。予備的結果は、このバリアントの感染性が増加している可能性を示す。B.1.351バリアントは、L18F、D80A、D215G、欠失242~244、R246I、K417N、E484K、N501Y、D614GおよびA701Vを含む複数スパイクタンパク質変化により規定される。B.1.351ゲノムのスパイク領域には、特に興味のある3つの変異:K417N、E484K、N501Yが存在する。
【0304】
B.1.1.298(Cluster 5)
B.1.1.298はデンマークの北ユトランドで発見され、ミンク農場を介してミンクからヒトに拡散したと考えられている。ウイルスのスパイクタンパク質のいくつかの異なる変異が確認されている。特異的変異は、欠失69~70、Y453F、D614G、I692V、M1229Iおよび適宜S1147Lを含む。
【0305】
P.1(B.1.1.248)
ブラジル(ian)バリアントとして知られるB.1.1.248系統は、P.1系統と命名されているSARS-CoV-2のバリアントのうちの1つである。P.1は、多くのSタンパク質修飾[L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、D614G、H655Y、T1027I、V1176F]を有しており、南アフリカからのB.1.351バリアントと、ある重要なRBD位置(K417、E484、N501)で類似している。
【0306】
B.1.427/B.1.429(CAL.20C)
CAL.20Cとしても知られるB.1.427/B.1.429系統は、Sタンパク質における下記の修飾:S13I、W152C、L452R、およびD614Gにより定義され、これらのうち、L452R修飾が特に懸念される。CDCは、「懸念される変異株」としてB.1.427/B.1.429を列挙している。
【0307】
B.1.525
B.1.525は、P.1およびB.1.351バリアントに見られるのと同じE484K修飾を有しており、B.1.1.7およびB.1.1.298に見られるのと同じΔH69/ΔV70欠失も有している。また、修飾D614G、Q677HおよびF888Lも有している。
【0308】
B.1.526
B.1.526は、ニューヨーク地域で単離されたウイルスの新たな系統として検出されており、以前に報告されたバリアントと変異を共有している。この系統で最も一般的なスパイク変異は、L5F、T95I、D253G、E484K、D614GおよびA701Vである。
【0309】
下記の表は、VOI/VOCであるSARS-CoV-2循環株の概要を示す。
【0310】
【表1】
【0311】
ある実施態様において、ここに記載するワクチン抗原は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質、そのバリアントまたはそのフラグメントを含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。
【0312】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列を含む。
【0313】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列のフラグメントもしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1または7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0314】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、SARS-CoV-2スパイクS1フラグメント(S1)(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニット)、そのバリアントまたはそのフラグメントを含む、それから本質的になるまたはそれからなる。
【0315】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列を含む。
【0316】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0317】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列を含む。
【0318】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0319】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)、そのバリアントまたはそのフラグメントを含む、それから本質的になるまたはそれからなる。配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、そのバリアントまたはそのフラグメントはここでは「RBD」または「RBDドメイン」とも称する。
【0320】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列を含む。
【0321】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0322】
ある実施態様よって、シグナルペプチドは、SARS-CoV-2 Sタンパク質、そのバリアントまたはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に直接的にまたはリンカーを介して融合される。従って、ある実施態様において、シグナルペプチドは、上記ワクチン抗原に含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合する。
【0323】
このようなシグナルペプチドは、一般に約15~30アミノ酸長を示し、好ましくは、限定されないが抗原性ペプチドまたはタンパク質のN末端に位置する配列である。ここに定義するシグナルペプチドは、好ましくは、RNAによりコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の既定の細胞内コンパートメント、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソームコンパートメントへの輸送を可能とする。ある実施態様において、ここで定義するシグナルペプチド配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質のシグナルペプチド配列、特に配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列を含む配列またはその機能的バリアントを含むが、それらに限定されない。
【0324】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列を含む。
【0325】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0326】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列を含む。
【0327】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0328】
ここで定義するシグナルペプチド配列は、免疫グロブリンのシグナルペプチド配列、例えば、免疫グロブリン重鎖可変領域のシグナルペプチド配列をさらに含むが、それらに限定されず、ここで、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであり得る。特に、ここで定義するシグナルペプチド配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含む。
【0329】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含む。
【0330】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~119、配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0331】
このようなシグナルペプチドは、好ましくはコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の分泌を促進するために使用される。より好ましくはここに定義されるシグナルペプチドは、ここに定義されるコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質に融合される。
【0332】
従って、特に好ましい実施態様において、ここに記載するRNAは抗原性ペプチドまたはタンパク質およびシグナルペプチドをコードする少なくとも1個のコード領域を含み、該シグナルペプチドは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質、より好ましくはここに記載する抗原性ペプチドまたはタンパク質のN末端に融合される。
【0333】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1または7のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1または7のアミノ酸配列を含む。
【0334】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1または7のアミノ酸配列、配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸配列もしくは配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1または7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0335】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号7のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列のフラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0336】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列、配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列もしくは配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列のフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0337】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列を含む。
【0338】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0339】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列を含む。
【0340】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0341】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号3のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号3のアミノ酸配列もしくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0342】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号4のヌクレオチド配列、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号4のヌクレオチド配列もしくは配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号3のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号3のアミノ酸配列もしくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号4のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0343】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列を含む。
【0344】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0345】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列を含む。
【0346】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0347】
ある実施態様よって、三量体化ドメインは、SARS-CoV-2 Sタンパク質、そのバリアントまたはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に、直接的にまたはリンカーを介して融合される。従って、ある実施態様において、三量体化ドメインは、上記ワクチン抗原(これは上記のとおり所望によりシグナルペプチドに融合し得る)に含まれる、SARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合される。
【0348】
このような三量体化ドメインは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に位置するが、これに限定されない。ここに定義する三量体形成ドメインは、好ましくはRNAによりコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の三量体化を可能とする。ここに定義する三量体化ドメインの例は、T4フィブリチンの天然三量体化ドメインであるフォルドンを含むが、これに限定されない。T4フィブリチン(フォルドン)のC末端ドメインはフィブリチン三量体構造の形成に必須であり、人工三量体化ドメインとして使用され得る。ある実施態様において、ここに定義する三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含むが、それらに限定されない。ある実施態様において、ここに定義する三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含むが、それらに限定されない。
【0349】
ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列を含む。
【0350】
ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列、配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列もしくは配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0351】
ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0352】
ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド配列、配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号11のヌクレオチド配列もしくは配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、(i)配列番号11のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0353】
このような三量体化ドメインは、好ましくはコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の三量体化を促進するために使用される。より好ましくはここに定義する三量体化ドメインはここに定義する抗原性ペプチドまたはタンパク質に融合される。
【0354】
従って、特に好ましい実施態様において、ここに記載するRNAは抗原性ペプチドまたはタンパク質およびここに定義する三量体化ドメインをコードする少なくとも1個のコード領域を含み、該三量体化ドメインは、抗原性ペプチドまたはタンパク質、より好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に融合される。
【0355】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0356】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号6のヌクレオチド配列、配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列もしくは配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号6のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0357】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号17、21または26のヌクレオチド配列、配列番号17、21または26のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号17、21または26のヌクレオチド配列もしくは配列番号17、21または26のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号17、21または26のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0358】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号18のアミノ酸配列もしくは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0359】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列を含む。
【0360】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0361】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列を含む。
【0362】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0363】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列を含む。
【0364】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0365】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列を含む。
【0366】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0367】
ある実施態様よって、膜貫通ドメインドメインは、SARS-CoV-2 Sタンパク質、そのバリアントまたはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に、直接的にまたはリンカー(例えばグリシン/セリンリンカー)を介して融合される。従って、ある実施態様において、膜貫通ドメインは、上記ワクチン抗原(これは上記のとおり所望によりシグナルペプチドおよび/または三量体化ドメインに融合していてよい)に含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合される。
【0368】
このような膜貫通ドメインは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に位置するが、これに限定されない。好ましくはこのような膜貫通ドメインは、存在するならば、三量体化ドメインのC末端に位置するが、これに限定されない。ある実施態様において、三量体化ドメインはSARS-CoV-2 Sタンパク質、そのバリアントまたはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質と膜貫通ドメインの間に存在する。
【0369】
ここに定義する膜貫通ドメインは、好ましくはRNAによりコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の細胞膜への固定を可能とする。
【0370】
ある実施態様において、ここに定義する膜貫通ドメイン配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の膜貫通ドメイン配列、特に配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む配列またはその機能的バリアントを含むが、それらに限定されない。
【0371】
ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列は、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列は、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む。
【0372】
ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0373】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列を含む。
【0374】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0375】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列を含む。
【0376】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0377】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列を含む。
【0378】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0379】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列を含む。
【0380】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0381】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド配列もしくは配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸配列もしくは配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0382】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド配列、配列番号32のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0383】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号28のアミノ酸配列もしくは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0384】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号27のヌクレオチド配列、配列番号27のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号27のヌクレオチド配列もしくは配列番号27のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号28のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号28のアミノ酸配列もしくは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号27のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0385】
ある実施態様において、上記ワクチン抗原は、上記ワクチン抗原に含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列からなるまたは本質的にそれからなるSARS-CoV-2コロナウイルススパイク(S)タンパク質の連続配列を含む。ある実施態様において、上記ワクチン抗原は、220アミノ酸、215アミノ酸、210アミノ酸または205アミノ酸を超えないSARS-CoV-2コロナウイルススパイク(S)タンパク質の連続配列を含む。
【0386】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、BNT162b1(RBP020.3)、BNT162b2(RBP020.1もしくはRBP020.2)、またはBNT162b3(例えば、BNT162b3c)としてここに記載されるヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ここでRBP020.2として記載されるヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、BNT162b3(例えば、BNT162b3c)としてここに記載するヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。
【0387】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号21のヌクレオチド配列、配列番号21のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号21のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0388】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号19または20のヌクレオチド配列、配列番号19または20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号19または20のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0389】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号20のヌクレオチド配列、配列番号20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号20のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0390】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、かつ(i)配列番号30のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含み;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列、または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、かつ(i)配列番号30のヌクレオチド配列を含み;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0391】
ここで使用する用語「ワクチン」は、対象への接種により免疫応答を誘導する組成物をいう。ある実施態様において、誘導された免疫応答は防御免疫を提供する。
【0392】
ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAは対象の細胞で発現され、抗原分子を提供する。ある実施態様において、抗原分子の発現は細胞表面または細胞外間隙内で生じる。ある実施態様において、抗原分子はMHCの状況で提示される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAは対象の細胞で一過性に発現される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、特に抗原分子をコードするRNAの筋肉内投与後、筋肉における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、脾臓における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、抗原提示細胞、好ましくは特化された抗原提示細胞における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞、マクロファージおよびB細胞からなる群から選択される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、肺および/または肝臓における抗原分子をコードするRNAの発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、脾臓における抗原分子をコードするRNAの発現は、肺の発現量の少なくとも5倍である。
【0393】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、リンパ節および/または脾臓へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、投与後6時間以降および好ましくは最大6日までまたはそれ以上、リンパ節および/または脾臓で検出可能である。
【0394】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞卵胞、被膜下洞および/またはT細胞帯、特にリンパ節のB細胞卵胞および/または被膜下洞へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0395】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞(CD19+)、被膜下洞マクロファージ(CD169+)および/またはT細胞帯の樹状細胞(CD11c+)およびリンパ節の中間洞、特にB細胞(CD19+)および/またはリンパ節の被膜下洞マクロファージ(CD169+)へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0396】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、脾臓白髄へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0397】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞、DC(CD11c+)、特にB細胞周囲の物および/または脾臓のマクロファージ、特にB細胞および/またはDC(CD11c+)へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0398】
ある実施態様において、ワクチン抗原はリンパ節および/または脾臓、特に上記リンパ節および/または脾臓の細胞で発現される。
【0399】
本開示により使用するのに適するペプチドおよびタンパク質抗原は、一般に免疫応答を誘導するためのSARS-CoV-2 Sタンパク質のエピトープまたはその機能的バリアントを含むペプチドまたはタンパク質を含む。ペプチドまたはタンパク質またはエピトープは、標的抗原、すなわちそれに対する免疫応答が誘導される抗原に由来し得る。例えば、ペプチドもしくはタンパク質抗原または該ペプチドもしくはタンパク質抗原内に含まれるエピトープは、標的抗原または標的抗原のフラグメントもしくはバリアントであり得る。標的抗原はコロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質であり得る。
【0400】
抗原分子またはその進行産物、例えば、そのフラグメントは、免疫エフェクター細胞により運搬されるBCRまたはTCRなどの抗原受容体または抗体に結合し得る。
【0401】
ペプチドおよびタンパク質抗原、すなわち、ワクチン抗原をコードするRNAの投与により本発明により対象に提供されるペプチドおよびタンパク質抗原は、好ましくは、ペプチドまたはタンパク質抗原が提供される対象における免疫応答、例えば、液性および/または細胞性免疫応答の誘導をもたらす。該免疫応答は好ましくは標的抗原、特にコロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する。故に、ワクチン抗原は標的抗原、そのバリアントまたはそのフラグメントを含み得る。ある実施態様において、このようなフラグメントまたはバリアントは標的抗原と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、用語「抗原のフラグメント」または「抗原のバリアント」は、免疫応答の誘導をもたらす薬剤を意味し、その免疫応答は抗原、すなわち標的抗原を標的とする。故に、ワクチン抗原は標的抗原に対応し得るまたは含み得る、標的抗原のフラグメントに対応し得るまたは含み得るまたは標的抗原またはそのフラグメントと相同である抗原に対応し得るまたは含み得る。故に、本開示により、ワクチン抗原は標的抗原の免疫原性フラグメントまたは標的抗原の免疫原性フラグメントと相同であるアミノ酸配列を含み得る。本発明の「免疫原性抗原のフラグメント」は、好ましくは標的抗原に対する免疫応答を誘導できる抗原のフラグメントに関する。ワクチン抗原は組み換え抗原であり得る。
【0402】
用語「免疫学的に等価」は、例えば、免疫学的効果のタイプに関して、同じまたは本質的に同じ免疫学的性質を示すおよび/または同じまたは本質的に同じ免疫学的効果を発揮する、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子を意味する。本開示において、用語「免疫学的に等価」は、好ましくは免疫化に使用する抗原または抗原バリアントの免疫学的効果または性質に関して使用する。例えば、アミノ酸配列は、該アミノ酸配列が、対象の免疫系に曝されたとき、対照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導するならば、該対照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0403】
ここで使用する「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されている、T細胞などの免疫エフェクター細胞の状態をいう。活性化は、シグナル伝達経路の開始、誘導されるサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。用語「活性化免疫エフェクター細胞」は、数ある中で、細胞分裂を行っている免疫エフェクター細胞をいう。
【0404】
用語「プライミング」は、T細胞などの免疫エフェクター細胞がその特異的抗原と初めて接触し、エフェクターT細胞などのエフェクター細胞への分化が引き起こされる、過程をいう。
【0405】
用語「クローン増殖」または「増殖」は、特定の主体が繁殖する過程をいう。本発明において、本用語は、好ましくは免疫エフェクター細胞が抗原により刺激され、増殖し、該抗原を認識する特異的免疫エフェクター細胞が増幅される、免疫学的応答の状況で使用する。好ましくはクローン増殖は免疫エフェクター細胞の分化を誘導する。
【0406】
用語「抗原」は、免疫応答がそれに対して産生され得るエピトープを含む薬剤に関する。用語「抗原」は、特に、タンパク質およびペプチドを含む。ある実施態様において、抗原は、免疫系細胞、例えば樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞により提示される。抗原またはT細胞エピトープなどのその進行産物は、ある実施態様において、T細胞またはB細胞受容体または抗体などの免疫グロブリン分子により結合される。従って、抗原またはその進行産物は、特に抗体またはTリンパ球(T細胞)と反応し得る。ある実施態様において、抗原はコロナウイルスSタンパク質、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質などのウイルス抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
【0407】
用語「ウイルス抗原」は、抗原性性質を有する、すなわち個体に免疫応答を誘導できる、あらゆるウイルス成分をいう。ウイルス抗原はコロナウイルスSタンパク質、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質であり得る。
【0408】
用語「細胞表面に発現される」または「細胞表面と結合する」は、抗原などの分子が細胞の原形質膜と結合し、位置し、ここで、該分子の少なくとも一部が該細胞の細胞外間隙に面し、例えば、該細胞の外側に位置する抗体により、該細胞外面から接近可能であることを意味する。この状況で、一部は、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも20アミノ酸である。結合は直接的でも間接的でもよい。例えば、結合は、1以上の膜貫通ドメイン、1以上の脂質アンカーによる、または、細胞の原形質膜の外側小葉に見られ得る何らかの他のタンパク質、脂質、サッカリドまたは他の構造との相互作用によるものであり得る。例えば、細胞表面と結合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であってよくまたは膜貫通タンパク質である他のタンパク質との相互作用により細胞表面と結合するタンパク質であってよい。
【0409】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当分野でのその通常の意味に従い使用され、故に、タンパク質および他の分子による結合のために接近可能である細胞の外側を含む。抗原は、細胞表面に位置するならば、該細胞の表面で発現され、例えば、該細胞に添加された、抗原特異的抗体による結合のために接近可能である。
【0410】
本発明における用語「細胞外部分」または「エキソドメイン」は、細胞の細胞外間隙に面し、好ましくは、例えば、該細胞の外側に位置する抗体などの結合分子により、該細胞の外側から接近可能である、タンパク質などの分子の一部をいう。好ましくは本用語は、1以上の細胞外ループまたはドメインまたはそのフラグメントをいう。
【0411】
用語「エピトープ」は、免疫系により認識される抗原などの分子の一部またはフラグメントをいう。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体により認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続または不連続部分を含み得て、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約8~約25アミノ酸長であり得て、例えば、エピトープは好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。ある実施態様において、エピトープは約10~約25アミノ酸長である。用語「エピトープ」はT細胞エピトープを含む。
【0412】
用語「T細胞エピトープ」は、MHC分子の状況で提示されたとき、T細胞により認識されるタンパク質の一部またはフラグメントをいう。用語「主要組織適合遺伝子複合体」および略語「MHC」はMHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、全脊椎動物に存在する遺伝子の複合体をいう。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または罹患細胞のシグナル伝達に重要であり、ここで、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープと結合し、T細胞上のT細胞受容体により認識されるようにそれらを提示する。MHCによりコードされるタンパク質は、細胞表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチドフラグメント)および非自己抗原(例えば、侵入微生物のフラグメント)両者をT細胞に提示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは一般に約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたは短いペプチドが有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは一般に約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いまたは短いペプチドが有効であり得る。
【0413】
ペプチドおよびタンパク質抗原は例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸または50アミノ酸長を含む、2~100アミノ酸であり得る。ある実施態様において、ペプチドは50アミノ酸より大きくてよい。ある実施態様において、ペプチドは100アミノ酸より大きくてよい。
【0414】
ペプチドまたはタンパク質抗原は、ペプチドまたはタンパク質に対する抗体およびT細胞応答を進展させる免疫系の能力を誘導または増加できるあらゆるペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0415】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、免疫エフェクター細胞により認識可能である。好ましくは、ワクチン抗原は、免疫エフェクター細胞により認識されたら、適切な共刺激シグナル存在下、ワクチン抗原を認識する抗原受容体を運搬する免疫エフェクター細胞の刺激、プライミングおよび/または増殖を誘導できる。本発明の実施態様の状況において、ワクチン抗原は、好ましくは細胞表面、好ましくは抗原提示細胞に提示されているかまたは提示される。ある実施態様において、抗原は、ウイルス感染細胞などの罹患細胞により提示される。ある実施態様において、抗原受容体は、MHCの状況で提示される抗原のエピトープに結合するTCRである。ある実施態様において、TCRの結合は、T細胞により発現されたおよび/またはT細胞上で抗原提示細胞などの細胞により抗原に対して提示されたとき刺激、該T細胞のプライミングおよび/または増殖をもたらす。ある実施態様において、TCRの結合は、T細胞により発現されたおよび/または罹患細胞に提示される抗原に対してT細胞で提示されたとき、罹患細胞の細胞溶解および/またはアポトーシスをもたらし、ここで、該T細胞は、好ましくは細胞毒性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出する。
【0416】
ある実施態様において、抗原受容体は、抗原におけるエピトープに結合する抗体またはB細胞受容体である。ある実施態様において、抗体またはB細胞受容体は抗原の天然エピトープに結合する。
【0417】
核酸
ここで使用する用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組み換えにより産生されたおよび化学合成された分子などのDNAおよびRNAを含むことを意図する。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。RNAは、インビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。本発明では、ポリヌクレオチドは好ましくは単離されている。
【0418】
核酸はベクターに含まれ得る。ここで使用する用語「ベクター」は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、レトロウイルス、アデノウイルスまたはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクターまたは細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に知られるあらゆるベクターを含む。該ベクターは、発現およびクローニングベクターを含む。発現ベクターはプラスミドならびにウイルスベクターを含み、一般に所望のコード配列と、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫または哺乳動物)またはインビトロ発現系で操作可能に結合したコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般にある所望のDNAフラグメントの操作および増幅に使用され、所望のDNAフラグメントの発現に必要な機能的配列を欠き得る。
【0419】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、該ワクチン抗原を産生するよう処理された、抗原提示対象の細胞などの細胞で発現される。
【0420】
ここに記載する核酸は組み換えおよび/または単離分子であり得る。
【0421】
本発明において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施態様において、RNAはリボヌクレオチド残基の全てまたは大部分を含む。ここで使用する「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドをいう。RNAは、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換えにより産生されたRNAならびに1以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により天然に存在するRNAと異なる修飾RNAを包含し、これらに限定されない。このような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端への非ヌクレオチド物質の付加をいい得る。ここでは、RNAのヌクレオチドが化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることもまた意図される。本発明に関して、これらの改変RNAは天然に存在するRNAのアナログと考慮される。
【0422】
本発明のある実施態様において、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当分野で確立されているとおり、mRNAは、一般に5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチドコード領域および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。ある実施態様において、RNAはインビトロ転写または化学合成により産生される。ある実施態様において、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写により産生され、ここで、DNAはデオキシリボヌクレオチドを含む核酸をいう。
【0423】
ある実施態様において、RNAはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得られ得る。転写制御用プロモーターは、あらゆるRNAポリメラーゼのあらゆるプロモーターであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニングおよびインビトロ転写のための適切なベクターへのその導入を含む。cDNAは、RNAの逆転写により得られ得る。
【0424】
本発明のある実施態様において、RNAは「レプリコンRNA」または単に「レプリコン」、特に「自己複製RNA」または「自己増幅性RNA」である。ある特に好ましい実施態様において、レプリコンまたは自己複製RNAはssRNAウイルス、特にアルファウイルスなどのプラス鎖ssRNAウイルスに由来するまたはそれ由来の要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的代表である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質で複製する(アルファウイルスライフサイクルのレビューのためにJose et al., Future Microbiol., 2009, vol. 4, pp. 837-856を参照のこと)。多くのアルファウイルスの総ゲノム長は、一般に11,000~12,000ヌクレオチドの範囲であり、ゲノムRNAは、一般に5’キャップおよび3’ポリ(A)テイルを有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾および複製ならびにタンパク質修飾に関与)および構造タンパク質(ウイルス粒子を形成)をコードする。ゲノムに一般に2つのオープンリーディングフレーム(ORF)がある。4非構造タンパク質(nsP1-nsP4)は、一般にゲノムの5’末端付近で始まる第一ORFにより一緒にコードされ、一方アルファウイルス構造タンパク質は、第一ORFの下流に見られ、ゲノムの3’末端付近に伸びる第二ORFにより一緒にコードされる。一般に、第一ORFは第二ORFより大きく、比はおおよそ2:1である。アルファウイルスに感染した細胞において、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳され、一方構造タンパク質をコードする遺伝子情報は、真核生物メッセンジャーRNA(mRNA;Gould et al., 2010, Antiviral Res., vol. 87 pp. 111-124)を模倣するRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわちウイルスライフサイクル早期に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャーRNAのように直接作用する。アルファウイルス由来ベクターは、外来遺伝子情報の標的細胞または標的生物への送達について提案されている。単純なアプローチで、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに置き換えられる。アルファウイルスベースのトランス複製系は、2つの別々の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素に依存する:一方の核酸分子はウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子は該レプリカーゼをトランスで複製できる(故に、トランス複製系と命名)。トランス複製は、ある宿主細胞におけるこれら核酸分子の両方の存在を必要とする。レプリカーゼによりトランスで複製されることができる核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識およびRNA合成を可能とするため、あるアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
【0425】
ある実施態様において、ここに記載するRNAは修飾ヌクレオシドを有し得る。ある実施態様において、RNAは少なくとも1個の(例えば、全)ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0426】
ここで使用する用語「ウラシル」は、RNAの核酸に出現し得る核酸塩基の1つをいう。ウラシルの構造は次のとおりである。
【0427】
【化1】
【0428】
ここで使用する用語「ウリジン」は、RNAに存在し得るヌクレオシドの1つをいう。ウリジンの構造は次のとおりである。
【0429】
【化2】
【0430】
UTP(ウリジン5’-三リン酸)は次の構造を有する。
【0431】
【化3】
【0432】
シュード-UTP(シュードウリジン5’-三リン酸)は次の構造を有する。
【0433】
【化4】
【0434】
「シュードウリジン」は、ウラシルが窒素-炭素グリコシド結合の代わりに炭素-炭素結合を介してペントース環に結合している、ウリジンの異性体である修飾ヌクレオシドの一例である。
【0435】
他の例示的修飾ヌクレオシドは、次の構造を有するN1-メチル-シュードウリジン(m1Ψ)である。
【0436】
【化5】
【0437】
N1-メチル-シュード-UTPは次の構造を有する。
【0438】
【化6】
【0439】
他の例示的修飾ヌクレオシドは、次の構造を有する5-メチル-ウリジン(m5U)である。
【0440】
【化7】
【0441】
ある実施態様において、ここに記載するRNA中の1以上のウリジンは、修飾ヌクレオシドで置き換えられる。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
【0442】
ある実施態様において、RNAは少なくとも1個のウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、RNAは各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0443】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から独立して選択される。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、RNAは1を超えるタイプの修飾ヌクレオシドを含んでよく、修飾ヌクレオシドは独立してシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)およびN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。
【0444】
ある実施態様において、RNA中の1以上の、例えば、全てのウリジンを置き換える修飾ヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン)、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンまたは当分野で知られるあらゆる他の修飾ウリジンのいずれか1以上であり得る。
【0445】
ある実施態様において、RNAは他の修飾ヌクレオシドを含むまたはさらなる修飾ヌクレオシド、例えば、修飾シチジンを含む。例えば、ある実施態様において、RNAにおいて、5-メチルシチジンは、部分的にまたは完全に、好ましくは完全にシチジンの代わりとなる。ある実施態様において、RNAは5-メチルシチジンならびにシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される1以上を含む。ある実施態様において、RNAは5-メチルシチジンおよびN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、RNAは各シチジンの代わりに5-メチルシチジンおよび各ウリジンの代わりにN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。
【0446】
ある実施態様において、本発明のRNAは5’キャップを含む。ある実施態様において、本発明のRNAはキャップされていない5’-三リン酸を有しない。ある実施態様において、RNAは5’-キャップアナログにより修飾され得る。用語「5’キャップ」は、mRNA分子の5’末端に見られる構造をいい、一般に5’-から5’-三リン酸結合を介してmRNAに結合したグアノシンヌクレオチドからなる。ある実施態様において、このグアノシンは7位でメチル化される。RNAに5’キャップまたは5’キャップアナログを付すことは、5’キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写により達成できまたはキャッピング酵素を使用して転写後RNAに付加し得る。
【0447】
ある実施態様において、mRNAは、キャップ0、キャップ1またはキャップ2を含み、好ましくはキャップ1またはキャップ2を含み、より好ましくはキャップ1を含む。本開示によれば、用語「キャップ0」は、構造「m7GpppN」を含み、式中、Nは、2’位でOH部分を有する任意のヌクレオシドである。本開示によれば、用語「キャップ1」は、構造「m7GpppNm」を含み、式中、Nmは、2’位でOCH3部分を有する任意のヌクレオシドである。本開示によれば、用語「キャップ2」は、構造「m7GpppNmNm」を含み、式中、各Nmは、独立して、2’位でOCH3部分を有する任意のヌクレオシドである。
【0448】
ある実施態様において、RNAのための構成要素キャップは、次の構造を有するm27,3’-OGppp(m12’-O)ApG(m27,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGと称することもある)である。
【0449】
【化8】
【0450】
下記は、RNAおよびm27,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGを含む例示的キャップ1 RNAである。
【0451】
【化9】
【0452】
下記は他の例示的キャップ1 RNA(キャップアナログ無し)である。
【0453】
【化10】
【0454】
ある実施態様において、RNAは、ある実施態様において、下記構造を有するキャップアナログ抗逆転キャップ(ARCAキャップ(m27,3’OG(5’)ppp(5’)G))を使用して、「キャップ0」構造で修飾される。
【0455】
【化11】
【0456】
下記はRNAおよびm27,3’OG(5’)ppp(5’)Gを含む例示的キャップ0 RNAである。
【0457】
【化12】
【0458】
ある実施態様において、「キャップ0」構造は、下記構造を有するキャップアナログベータ-S-ARCA(m27,2’OG(5’)ppSp(5’)G)を使用して、産生される。
【0459】
【化13】
【0460】
下記はベータ-S-ARCA(m27,2’OG(5’)ppSp(5’)G)およびRNAを含む例示的キャップ0 RNAである。
【0461】
【化14】
【0462】
ベータ-S-ARCAの「D1」ジアステレオマーまたは「ベータ-S-ARCA(D1)」は、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマー(ベータ-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出する、故に保持時間が短い、ベータ-S-ARCAのジアステレオマーである(引用によりここに包含させるWO2011/015347参照)。
【0463】
特に好ましいキャップは、ベータ-S-ARCA(D1)(m27,2’-OGppSpG)またはm27,3’-OGppp(m12’-O)ApGである。
【0464】
ある実施態様において、本発明のRNAは5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。用語「非翻訳領域」または「UTR」は、DNA分子における転写されるが、アミノ酸配列に翻訳されない領域またはmRNA分子などのRNA分子における対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)はオープンリーディングフレームの5’(上流)(5’-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3’(下流)(3’-UTR)に存在し得る。5’-UTRは、存在するならば、タンパク質コード化領域の開始コドンの上流である5’末端に位置する。5’-UTRは、5’キャップ(存在するならば)の下流であり、例えば5’キャップに直接隣接する。3’-UTRは、存在するならば、タンパク質コード化領域の停止コドンの下流である3’末端に位置するが、用語「3’-UTR」は、好ましくはポリ(A)配列を含まない。故に、3’-UTRは、ポリ(A)配列(存在するならば)の上流であり、例えばポリ(A)配列に直接隣接する。
【0465】
ある実施態様において、RNAは配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
【0466】
ある実施態様において、RNAは配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
【0467】
特に好ましい5’-UTRは配列番号12のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい3’-UTRは配列番号13のヌクレオチド配列を含む。
【0468】
ある実施態様において、本発明のRNAは3’-ポリ(A)配列を含む。
【0469】
ここで使用する用語「ポリ(A)配列」または「ポリAテイル」は、一般にRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の中断されていないまたは中断された配列をいう。ポリ(A)配列は当業者に知られ、ここに記載するRNAにおける3’-UTRに続き得る。中断されていないポリ(A)配列は、連続アデニル酸残基により特徴づけられる。本来は、中断されていないポリ(A)配列が典型的である。ここに開示するRNAは、転写後鋳型非依存的RNAポリメラーゼによりRNAの遊離3’末端に結合されたポリ(A)配列またはDNAによりコードされ、鋳型依存的RNAポリメラーゼにより転写されるポリ(A)配列を有し得る。
【0470】
約120個のAヌクレオチドのポリ(A)配列が、トランスフェクトされた真核生物細胞におけるRNAのレベルおよびポリ(A)配列の上流(5’)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されたタンパク質のレベルに有益に影響することが示されている(Holtkamp et al., 2006, Blood, vol. 108, pp. 4009-4017)。
【0471】
ポリ(A)配列はどんな長さでもよい。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個または少なくとも100個および500個まで、400個まで、300個まで、200個までまたは150個までのAヌクレオチド、および、特に、約120個のAヌクレオチドを含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。この状況で、「本質的にからなる」は、ポリ(A)配列の大部分のヌクレオチド、一般に、ポリ(A)配列におけるヌクレオチド数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%がAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドがUヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)またはCヌクレオチド(シチジル酸)などのAヌクレオチド以外のヌクレオチドであることが可能であることを意味する。この状況で、「からなる」は、ポリ(A)配列における全ヌクレオチド、すなわち、ポリ(A)配列のヌクレオチド数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。用語「Aヌクレオチド」または「A」は、アデニル酸をいう。
【0472】
ある実施態様において、ポリ(A)配列はRNA転写中、例えば、インビトロ転写RNAの調製中、コード鎖に相補的な鎖における反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づき、結合される。ポリ(A)配列をコードするDNA配列(コード鎖)はポリ(A)カセットと称される。
【0473】
ある実施態様において、DNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、dAヌクレオチドから本質的になるが、4ヌクレオチド(dA、dC、dGおよびdT)のランダム配列により中断される。このようなランダム配列は5~50、10~30または10~20ヌクレオチド長であり得る。このようなカセットは、引用によりここに包含させるWO2016/005324A1に開示される。WO2016/005324A1に開示されるあらゆるポリ(A)カセットが本発明において使用され得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4ヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が等しく分布しているランダム配列で中断され、例えば、5~50ヌクレオチド長のポリ(A)カセットは、DNAレベルで、大腸菌中のプラスミドDNAの一定した増殖を示し、RNAレベルで、RNA安定性および翻訳効率の支持に関する有益な性質が含まれることにさらに関する。結果として、ある実施態様において、ここに記載するRNA分子に含まれるポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、4ヌクレオチド(A、C、G、U)のランダム配列で中断される。このようなランダム配列は5~50、10~30または10~20ヌクレオチド長であり得る。
【0474】
ある実施態様において、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは3’末端でポリ(A)配列に隣接せず、すなわち、ポリ(A)配列は3’末端でA以外のヌクレオチドでマスクされずまたは後続されていない。
【0475】
ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、本質的に少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドからなり得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドからなり得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は少なくとも100ヌクレオチド含む。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、約150ヌクレオチドを含む。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、約120ヌクレオチドを含む。
【0476】
ある実施態様において、RNAは、配列番号14のヌクレオチド配列または配列番号14のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリ(A)配列を含む。
【0477】
特に好ましいポリ(A)配列は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。
【0478】
本開示により、ワクチン抗原は、好ましくは、一本鎖、5’キャップmRNAとして投与され、それは、該RNAを投与される対象の細胞に入ると、各タンパク質に翻訳される。好ましくはRNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性を最適化する構造要素を含む(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列)。
【0479】
ある実施態様において、ベータ-S-ARCA(D1)は、RNAの5’末端で特異的キャッピング構造として利用される。ある実施態様において、m27,3’-OGppp(m12’-O)ApGは、RNAの5’末端で特異的キャッピング構造として利用される。ある実施態様において、5’-UTR配列はヒトアルファ-グロビンmRNAに由来し、所望により翻訳効率を高めるための最適化‘コザック配列’を有する。ある実施態様において、「分割のアミノ末端エンハンサー」(AES)mRNA(Fと称する)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称する)由来の2つの配列要素(FI要素)の組み合わせが、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするためにコード配列とポリ(A)配列の間に配置される。ある実施態様において、ヒトベータ-グロビンmRNA由来の2個の反復3’-UTRが、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするために、コード配列とポリ(A)配列の間に配置される。ある実施態様において、30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列および他の70アデノシン残基からなる110ヌクレオチド長のポリ(A)配列が使用される。このポリ(A)配列はRNA安定性および翻訳効率を高めるために設計された。
【0480】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ワクチン抗原を提供するために処置される対象の細胞で発現される。本発明の全態様のある実施態様において、RNAは対象の細胞で一過性に発現される。本発明の全態様のある実施態様において、RNAはインビトロ転写RNAである。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原の発現は細胞表面である。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原はMHCの状況で発現され、提示される。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原の発現は細胞外間隙においてであり、すなわち、ワクチン抗原は分泌される。
【0481】
本発明において、用語「転写」は、DNA配列でコードされる遺伝子がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
【0482】
本発明により、用語「転写」は「インビトロ転写」を含み、ここで、用語「インビトロ転写」は、RNA、特にmRNAが、無細胞系で、好ましくは適切な細胞抽出物を使用してインビトロ合成される過程に関する。好ましくはクローニングベクターが転写物の産生に適用される。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと称され、本発明により用語「ベクター」に包含される。本発明により、本発明において使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得られ得る。転写の制御のためのプロモーターは、あらゆるRNAポリメラーゼのあらゆるプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの具体例は、T7、T3およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモーターにより制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニングにより得て、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することができる。cDNAはRNAの逆転写により得られ得る。
【0483】
RNAに関して、用語「発現」または「翻訳」は、細胞のリボソームにおける過程に関し、それにより、mRNA鎖がペプチドまたはタンパク質を製造するようアミノ酸配列の集合を指示する。
【0484】
ある実施態様において、例えば、RNA脂質粒子として製剤化された、ここに記載するRNAの投与後、該RNAの少なくとも一部は標的細胞に送達される。ある実施態様において、該RNAの少なくとも一部は標的細胞のサイトゾルに送達される。ある実施態様において、RNAは標的細胞により翻訳されて、それがコードするペプチドまたはタンパク質を産生する。ある実施態様において、標的細胞は脾細胞である。ある実施態様において、標的細胞は、脾臓における専門抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。ある実施態様において、標的細胞は樹状細胞またはマクロファージである。ここに記載するRNA脂質粒子などのRNA粒子を、このような標的細胞のRNAへの送達に使用し得る。従って、本発明はまた、対象にここに記載するRNA粒子を投与することを含む、対象における標的細胞にRNAを送達する方法にも関する。ある実施態様において、RNAは、標的細胞のサイトゾルに送達される。ある実施態様において、RNAは、該RNAによりコードされるペプチドまたはタンパク質を産生するように、標的細胞により翻訳される。
【0485】
「コードする」は、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の既定の配列またはアミノ酸の規定配列およびそれ由来の生物学的性質を有する、生物学的過程における他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として作用する、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特異的配列の固有の性質をいう。故に、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的系においてタンパク質を生ずるならば、該タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に提供されるコード鎖および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方をタンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードするといい得る。
【0486】
ある実施態様において、本発明により投与されるワクチン抗原をコードするRNAは非免疫原性である。免疫刺激剤をコードするRNAは、本発明により投与されて、アジュバント効果を提供し得る。免疫刺激剤をコードするRNAは標準RNAまたは非免疫原性RNAであり得る。
【0487】
ここで使用する用語「非免疫原性RNA」は、例えば、哺乳動物への投与により免疫系による応答を誘導しないか、非免疫原性RNAに非免疫原性を与える修飾および処理を受けていない点でのみ異なる同じRNAにより誘導されるより、すなわち、標準RNA(stdRNA)により誘導されるより、弱い応答を誘導するRNAをいう。ある好ましい実施態様において、ここでは修飾RNA(modRNA)とも称する非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA介在活性化を抑制するための修飾ヌクレオシドのRNAへの取り込みおよび二本鎖RNA(dsRNA)の除去により、非免疫原性とされる。
【0488】
修飾ヌクレオシドを取り込むことにより非免疫原性RNAを非免疫原性にすることについて、あらゆる修飾ヌクレオシドを、RNAの免疫原性の低減または抑制する限り、使用し得る。特に好ましいのは、自然免疫受容体のRNA介在活性化を抑制する修飾ヌクレオシドである。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは修飾核酸塩基を含むヌクレオシドでの1以上のウリジンの置換を含む。ある実施態様において、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。ある実施態様において、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン)、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジンおよび5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択される。ある特に好ましい実施態様において、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)、特にN1-メチル-シュードウリジンである。
【0489】
ある実施態様において、1以上のウリジンの修飾核酸塩基を含むヌクレオシドでの置換は、ウリジンの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の置換を含む。
【0490】
T7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中、二本鎖RNA(dsRNA)を含む相当量の異常産物が、酵素の非通常性活性により産生される。dsRNAは炎症性サイトカインを誘導し、タンパク質合成阻害に至るエフェクター酵素を活性化する。dsRNAは、例えば、非多孔性または多孔性C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリクスを使用するイオン対逆相HPLCにより、IVT RNAなどのRNAから除去され得る。あるいはssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによりIVT RNA調製物からdsRNA夾雑物を除去する大腸菌RNaseIIIを使用する酵素ベースの方法が使用され得る。さらに、dsRNAはセルロース物質を使用してssRNAから分離され得る。ある実施態様において、RNA調製物をセルロース物質と接触させ、ssRNAを、dsRNAのセルロース物質への結合を可能とし、ssRNAのセルロース物質への結合を可能としない条件下で、セルロース物質から分離する。
【0491】
ここで使用する用語「除去する(remove)」または「除去(removal)」は、dsRNAなどの第二物質の集団の近くから分離される非免疫原性RNAなどの第一物質の集団などの特徴をいい、ここで、第一物質の集団は必ずしも第二物質がないものではなく、第二物質の集団は必ずしも第一物質がないものではない。しかしながら、第二物質の集団の除去により特徴づけられる第一物質の集団は、第一および第二物質が分離されていない混合物と比較して、第二物質の含有量が測定できるほどに低い。
【0492】
ある実施態様において、非免疫原性RNAからのdsRNAの除去は、非免疫原性RNA組成物におけるRNAの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満または0.1%未満がdsRNAであるようなdsRNAの除去を含む。ある実施態様において、非免疫原性RNAは、dsRNAがないまたは本質的にない。ある実施態様において、非免疫原性RNA組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物を含む。例えば、ある実施態様において、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)が実質的にない。ある実施態様において、精製調製物は、他の全ての核酸分子(DNA、dsRNAなど)に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
【0493】
ある実施態様において、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAより効率的に細胞で翻訳される。ある実施態様において、翻訳は、非修飾対応物に対して2倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、3倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、4倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、5倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、6倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、7倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、8倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、9倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、10倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、15倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、20倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、50倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、100倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、200倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、500倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、1000倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、2000倍の係数まで増強される。ある実施態様において、係数は10~1000倍である。ある実施態様において、係数は10~100倍である。ある実施態様において、係数は10~200倍である。ある実施態様において、係数は10~300倍である。ある実施態様において、係数は10~500倍である。ある実施態様において、係数は20~1000倍である。ある実施態様において、係数は30~1000倍である。ある実施態様において、係数は50~1000倍である。ある実施態様において、係数は100~1000倍である。ある実施態様において、係数は200~1000倍である。ある実施態様において、翻訳は、任意の他の顕著な量または量の範囲まで増強される。
【0494】
ある実施態様において、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAより有意に低い自然免疫原性を示す。ある実施態様において、非免疫原性RNAは、非修飾対応物より2倍低い自然免疫応答を示す。ある実施態様において、自然免疫原性は、3倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、4倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、5倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、6倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、7倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、8倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、9倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、10倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、15倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、20倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、50倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、100倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、200倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、500倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、1000倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、2000倍の因数まで低減される。
【0495】
用語「有意に低い自然免疫原性を示す」は、自然免疫原性の検出可能な低減をいう。ある実施態様において、本用語は、非免疫原性RNAの有効量が検出可能な自然免疫応答を誘発することなく投与できるような低減をいう。ある実施態様において、本用語は、非免疫原性RNAによりコードされるタンパク質の産生を検出可能に減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、非免疫原性RNAを繰り返し投与できるような低減をいう。ある実施態様において、低減は、非免疫原性RNAが非免疫原性RNAによりコードされるタンパク質の出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、繰り返し投与できるようなものである。
【0496】
「免疫原性」は、ヒトまたは他の動物の体内で免疫応答を誘発するRNAなどの外来物質の能力である。自然免疫系は、比較的非特異的および即時である免疫系の成分である。これは、適応免疫系と共に脊椎動物免疫系の2つの主成分の1つである。
【0497】
ここで使用する「内因性」は、生物、細胞、組織または系内からのまたはそこで産生されるあらゆる物質をいう。
【0498】
ここで使用する用語「外因性」は、生物、細胞、組織または系外からのまたはそこで産生されるあらゆる物質をいう。
【0499】
ここで使用する用語「発現」は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0500】
ここで使用する用語「結合」、「融合する」または「融合」は相互交換可能に使用される。これらの用語は、2以上の要素または成分またはドメインを一緒に合わせることをいう。
【0501】
コドン最適化/G/C含有量の増加
ある実施態様において、ここに記載するSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列はコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ。これはまた、コード配列の1以上の配列領域がコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列の対応する配列領域と比較して増加している実施態様も含む。ある実施態様において、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変えない。
【0502】
用語「コドン最適化」は、好ましくは、核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を変えることがない、宿主生物の典型的コドン使用頻度を反映するために核酸分子のコード領域におけるコドンの改変をいう。本発明において、コード領域は、好ましくは、ここに記載するRNA分子を使用して処置される対象における最適発現のためにコドン最適化される。コドン最適化は、細胞におけるtRNAの出現の異なる頻度によっても翻訳効率が決定されるとの発見に基づく。故に、RNAの配列は、しばしば存在するtRNAが「稀なコドン」の代わりに利用可能となるようにコドンを修飾し得る。
【0503】
本発明のある実施態様において、ここに記載するRNAのコード領域のグアノシン/シトシン(G/C)含有量は野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比較して増加しており、ここで、該RNAによりコードされるアミノ酸配列は、好ましくは野生型RNAによりコードされるアミノ酸配列と比較して修飾されない。RNA配列のこの修飾は、翻訳されるべき何らかのRNA領域の配列が、そのmRNAの効率的翻訳に重要であるとの事実に基づく。G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加した配列より安定である。数コドンが1つのおよび同じアミノ酸をコードする(いわゆる遺伝子コードの縮重)との事実に関して、安定性のための最も都合よいコドンが決定され得る(いわゆる代替コドン使用頻度)。RNAによりコードされるアミノ酸に依存して、野生型配列と比較してRNA配列の修飾について種々の可能性がある。特に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Aおよび/またはUを含まないまたはAおよび/またはUヌクレオチドの含有量が低い他のコドンにこれらコドンを置換することにより修飾され得る。
【0504】
種々の実施態様において、ここに記載するRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%またはそれ以上増加される。
【0505】
RNA投与の実施態様
ある実施態様において、本開示は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも一部を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むRNA(例えばmRNA)を提供する。このRNAは、このポリペプチドの細胞内発現に適している。ある実施態様において、そのようなコードされたポリペプチドは、完全Sタンパク質に対応する配列を含む。ある実施態様において、そのようなコードされたポリペプチドは、完全Sタンパク質に対応する配列を含まない。ある実施態様において、コードされたポリペプチドは、受容体結合ドメイン(RBD)に対応する配列を含む。
【0506】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードするRNAを含む。同様に、ここに記載する方法はこのようなRNAの投与を含む。
【0507】
ここで使用する活性プラットフォームは、好ましくは最小ワクチン用量で防御免疫化を達成するための、頑強な中和抗体および付随的/随伴性T細胞応答を誘導する抗原コードRNAワクチンに基づく。投与されるRNAは好ましくはインビトロ転写RNAである。
【0508】
3つの異なるRNAプラットフォーム、すなわち非修飾ウリジン含有mRNA(uRNA)、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)および自己増幅性RNA(saRNA)が特に好ましい。ある特に好ましい実施態様において、RNAはインビトロ転写RNAである。
【0509】
以下で、これら3つの異なるRNAプラットフォームの実施態様を記載し、ここで、その要素を説明するとき使用されるある用語は次の意味を有する。
S1S2タンパク質/S1S2 RBD:SARS-CoV-2の各抗原をコードする配列。
【0510】
nsP1、nsP2、nsP3およびnsP4:ベネズエラウマ脳炎脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼレプリカーゼおよびサブゲノムプロモーターと複製および翻訳を支持する保存配列要素をコードする野生型配列。
【0511】
virUTR:サブゲノムプロモーターの部分ならびに複製および翻訳支持配列要素をコードするウイルス非翻訳領域。
【0512】
hAg-コザック:翻訳効率を高めるための最適化「コザック配列」を有するヒトアルファ-グロビンmRNAの5’-UTR配列。
【0513】
Sec:Secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への転座を導く内因性S1S2タンパク質分泌シグナルペプチド(sec)に対応する。
【0514】
グリシン-セリンリンカー(GS):短リンカーペプチドをコードする配列は、融合タンパク質で一般に使用されるとおり、大部分アミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる。
【0515】
フィブリチン:人工三量体化ドメインとして使用されるT4フィブリチン(フォルドン)の部分配列。
【0516】
TM:TM配列はS1S2タンパク質の膜貫通部分に対応する。
【0517】
FI要素:3’-UTRは、「分割のアミノ末端エンハンサー」(AES)mRNA(Fと称する)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称する)由来の2つの配列要素の組み合わせである。これらは、RNA安定性に寄与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択過程で同定された。
【0518】
A30L70:樹状細胞におけるRNA安定性および翻訳効率を増強するために設計されたs30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列および他の70アデノシン残基からなる110ヌクレオチド長のポリ(A)テイル。
【0519】
一般に、ここに記載するワクチンRNAは、5’から3’で、次の構造の1つを含み得る:
キャップ-5’-UTR-ワクチン抗原コード化配列-3’-UTR-ポリ(A)
または
キャップ-hAg-Kozak-ワクチン抗原コード化配列-FI-A30L70。
【0520】
一般に、ここに記載するワクチン抗原は、N末端からC末端で、次の構造の1つを含み得る。
シグナル配列-RBD-三量体形成ドメイン
または
シグナル配列-RBD-三量体形成ドメイン-膜貫通ドメイン。
【0521】
RBDおよび三量体形成ドメインはリンカー、特にアミノ酸配列GSPGSGSGSを有するリンカーなどのGSリンカーにより隔離され得る。三量体形成ドメインおよび膜貫通ドメインはリンカー、特にアミノ酸配列GSGSGSを有するリンカーなどのGSリンカーにより隔離され得る。
【0522】
シグナル配列はここに記載するシグナル配列であり得る。RBDはここに記載するRBDドメインであり得る。三量体形成ドメインはここに記載する三量体化ドメインであり得る。膜貫通ドメインはここに記載する膜貫通ドメインであり得る。
【0523】
ある実施態様において、
シグナル配列は配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、
RBDは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、
三量体形成ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む;および
膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0524】
ある実施態様において、
シグナル配列は配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含む、
RBDは配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列を含む、
三量体形成ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列を含む;および
膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む。
【0525】
ここに記載のRNAまたはここに記載のワクチン抗原をコードするRNAは、非修飾ウリジン含有mRNA(uRNA)、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)または自己増幅RNA(saRNA)であり得る。ある実施態様において、ここに記載のRNAまたはここに記載のワクチン抗原をコードするRNAは、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)である。
【0526】
非修飾ウリジンメッセンジャーRNA(uRNA)
非修飾メッセンジャーRNA(uRNA)薬物物質の活性本体は、細胞に挿入したとき翻訳される一本鎖mRNAである。コロナウイルスワクチン抗原をコードする配列(すなわちオープンリーディングフレーム)に加えて、各uRNAは、好ましくは安定性および翻訳効率に関するRNAの最大有効性のために最適化された共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。好ましい5’キャップ構造はベータ-S-ARCA(D1)(m27,2’-OGppSpG)である。好ましい5’-UTRおよび3’-UTRはそれぞれ配列番号12のヌクレオチド配列および配列番号13のヌクレオチド配列を含む。好ましいポリ(A)テイルは配列番号14の配列を含む。
【0527】
このプラットフォームの異なる実施態様は次のとおりである。
RBL063.1(配列番号15;配列番号7)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-hAg-コザック-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
RBL063.2(配列番号16;配列番号7)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-hAg-コザック-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
BNT162a1;RBL063.3(配列番号17;配列番号5)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-hAg-コザック-RBD-GS-フィブリチン-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)(部分配列、S1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD))
【0528】
図3は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
【0529】
ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)
ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)薬物物質の活性本体は、同様に細胞への挿入により翻訳される一本鎖mRNAである。コロナウイルスワクチン抗原をコードする配列(すなわちオープンリーディングフレーム)に加えて、各modRNAは、uRNAとしてRNAの最大有効性を最適化するための共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。URNAと比較して、modRNAはウリジンの代わりに1-メチル-シュードウリジンを含む。好ましい5’キャップ構造はm27,3’-OGppp(m12’-O)ApGである。好ましい5’-UTRおよび3’-UTRはそれぞれ配列番号12のヌクレオチド配列および配列番号13のヌクレオチド配列を含む。好ましいポリ(A)テイルは配列番号14の配列を含む。さらなる精製工程が、インビトロ転写反応中に産生されるdsRNA夾雑物を減少させるためにmodRNAに適用される。
【0530】
このプラットフォームの異なる実施態様は次のとおりである。
BNT162b2;RBP020.1(配列番号19;配列番号7)
構造 m27,3’-OGppp(m12’-O)ApG)-hAg-コザック-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
BNT162b2;RBP020.2(配列番号20;配列番号7)
構造 m27,3’-OGppp(m12’-O)ApG)-hAg-コザック-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
BNT162b1;RBP020.3(配列番号21;配列番号5)
構造 m27,3’-OGppp(m12’-O)ApG)-hAg-コザック-RBD-GS-フィブリチン-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(部分配列、フィブリチンに融合したS1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD))
【0531】
図4は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
BNT162b3c(配列番号29;配列番号30)
構造 m27,3’-OGppp(m12’-O)ApG-hAg-コザック-RBD-GS-フィブリチン-GS-TM-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(部分配列、S1S2タンパク質の膜貫通ドメイン(TM)に融合したフィブリチンに融合したS1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD));抗原配列のN末端に内因性S1S2タンパク質分泌シグナルペプチド(aa1~19)
BNT162b3d(配列番号31;配列番号32)
構造 m27,3’-OGppp(m12’-O)ApG-hAg-コザック-RBD-GS-フィブリチン-GS-TM-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(S1S2タンパク質)(部分配列、S1S2タンパク質の膜貫通ドメイン(TM)に融合したフィブリチンに融合したS1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD));抗原配列のN末端の免疫グロブリン分泌型シグナルペプチド(aa1~22)
【0532】
自己増幅性RNA(saRNA)
自己増幅性mRNA(saRNA)薬物物質の活性本体は、細胞に侵入したとき自己増幅し、その後コロナウイルスワクチン抗原が翻訳される、一本鎖RNAである。好ましくは単一タンパク質をコードするuRNAおよびmodRNAとは対照的に、saRNAのコード領域は2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。5’-ORFは、ベネズエラウマ脳炎脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)などのRNA依存的RNAポリメラーゼをコードする。レプリカーゼORFが3’でサブゲノムプロモーターおよび抗原をコードする第二ORFに続く。さらに、saRNA UTRは、自己増幅に必要な5’および3’保存配列要素(CSE)を含む。saRNAは、uRNAとしてRNAの最大有効性を最適化するための共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。好ましくはsaRNAはウリジンを含む。好ましい5’キャップ構造はベータ-S-ARCA(D1)(m27,2’-OGppSpG)である。
【0533】
saRNAの細胞質送達はアルファウイルス様ライフサイクルを開始させる。しかしながら、saRNAはゲノムパッケージングまたは細胞侵入に必要であるアルファウイルス構造タンパク質をコードせず、それ故に複製コンピテントウイルス粒子の産生は、不可能である可能性は極めて低い。複製は、DNAを産生する何らかの中間工程に関与しない。saRNAの使用/取り込みは、それ故には、標的細胞内のゲノム組込みまたは他の永久遺伝子修飾のリスクがない。さらに、saRNA自体、dsRNA中間体の認識を介する自然免疫応答の効率的活性化により、その持続的複製を阻止する。
【0534】
このプラットフォームの異なる実施態様は次のとおりである。
RBS004.1(配列番号24;配列番号7)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-レプリカーゼ-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
RBS004.2(配列番号25;配列番号7)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-レプリカーゼ-S1S2-PP-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)(S1S2完全長タンパク質、配列バリアント)
BNT162c1;RBS004.3(配列番号26;配列番号5)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-レプリカーゼ-RBD-GS-フィブリチン-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)(部分配列、S1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD))
RBS004.4(配列番号27;配列番号28)
構造 ベータ-S-ARCA(D1)-レプリカーゼ-RBD-GS-フィブリチン-TM-FI-A30L70
コードされる抗原 SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)(部分配列、S1S2タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD))
【0535】
図5は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
【0536】
ある実施態様において、ここに記載するワクチンRNAは配列番号15、16、17、19、20、21、24、25、26、27、30および32からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。特に好ましいここに記載するワクチンRNAは、配列番号15、17、19、21、25、26、30および32からなる群から、例えば配列番号17、19、21、26、30および32からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0537】
ここに記載するRNAは好ましくは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。ある実施態様において、LNPはカチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質;およびRNAを含む。ある実施態様において、カチオン性脂質はALC-0315、中性脂質はDSPC、ステロイドはコレステロールおよびポリマーコンジュゲート脂質はALC-0159である。好ましい投与方法は筋肉内投与、より好ましくは筋肉内投与用水性凍結保護物質緩衝液のそれである。製剤は好ましくは筋肉内投与用の水性凍結保護物質緩衝液中のRNA脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化された防腐剤無添加、無菌分散体である。
【0538】
種々の実施態様において、製剤は、下記成分を、好ましくは下記割合または濃度で含む。
【0539】
【表2】
ALC-0315:
【0540】
【化15】
ALC-0159:
【0541】
【化16】
DSPC:
【0542】
【化17】
コレステロール:
【0543】
【化18】
【0544】
ある実施態様において、mRNA対総脂質の比(N/P)は6.0~6.5、例えば約6.0または約6.3である。
【0545】
核酸含有粒子
ワクチン抗原をコードするRNAなどのここに記載する核酸は、粒子として製剤化して投与され得る。
【0546】
本開示の文脈において、用語「粒子」は、分子または分子複合体により形成される構造化された主体に関する。ある実施態様において、用語「粒子」は、媒体に分散されたミクロまたはナノサイズ小型構造などのミクロまたはナノサイズ構造に関する。ある実施態様において、粒子は、DNA、RNAまたはそれらの混合物を含む粒子などの核酸含有粒子である。
【0547】
ポリマーおよび脂質などの正に荷電した分子と負に荷電した核酸の間の静電気的相互作用が粒子形成に関与する。これは、核酸粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。ある実施態様において、核酸粒子はナノ粒子である。
【0548】
本明細書において使用する、「ナノ粒子」は、非経腸投与に適する平均直径を有する粒子をいう。
【0549】
「核酸粒子」を、核酸の目的の標的部位(例えば、細胞、組織、臓器など)への送達に使用できる。核酸粒子は、少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質、プロタミンなどの少なくとも1個のカチオン性ポリマーまたはそれらの混合物および核酸から形成され得る。核酸粒子は脂質ナノ粒子(LNP)ベースのおよびリポプレックス(LPX)ベースの製剤を含む。
【0550】
何らかの理論に拘束されることを意図しないが、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/またはカチオン性ポリマーは核酸と一体となって凝集体を形成し、この凝集がコロイド的に安定な粒子をもたらすと考えられる。
【0551】
ある実施態様において、ここに記載する粒子はカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の少なくとも1個の脂質または脂質様物質、カチオン性ポリマー以外の少なくとも1個のポリマーまたはそれらの混合物をさらに含む。
【0552】
ある実施態様において、核酸粒子は1を超えるタイプの核酸分子を含み、ここで、核酸分子の分子パラメータはモル質量または分子構造、キャッピング、コード領域または他の特性などの基礎的構造要素に関して等、互いに類似しても異なってもよい。
【0553】
ここに記載する核酸粒子は、ある実施態様において、約30nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約70nm~約600nm、約90nm~約400nmまたは約100nm~約300nmの範囲である平均直径を有し得る。
【0554】
ここに記載する核酸粒子は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満または約0.2またはそれ未満の多分散性指数を示し得る。例として、核酸粒子は約0.1~約0.3または約0.2~約0.3の範囲の多分散性指数を示し得る。
【0555】
RNA脂質粒子に関して、N/P比は、脂質における窒素基対RNAにおけるリン酸基数の比を示す。これは、窒素原子(pHに依存して)が、通常正電荷であり、リン酸基が負電荷であるため、電荷比と相関する。N/P比は、荷電平衡が存在するとき、pHに依存する。脂質製剤は、正に荷電したナノ粒子がトランスフェクションに好都合であると考えられるため、しばしば4より大きく、12までのN/P比で形成される。この場合、RNAはナノ粒子に完全に結合すると考えられる。
【0556】
ここに記載する核酸粒子は、少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーからコロイドを得て、核酸粒子を得るために該コロイドと核酸を混合することを含み得る、広範な方法を使用して、製造できる。
【0557】
ここで使用する用語「コロイド」は、分散した粒子が沈降しない均一混合物のタイプに関する。混合物中の不溶性粒子は顕微鏡的であり、粒子径は1~1000ナノメートルである。混合物はコロイドまたはコロイド性懸濁液と称し得る。用語「コロイド」は、混合物中の粒子のみをいい、懸濁液全体をいわないこともある。
【0558】
少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーを含むコロイドの調製について、リポソーム小胞の調製に慣用的に使用される方法が適用され、適切に適合される。リポソーム小胞調製のために最も一般的に使用される方法は次の基礎的段階を共有する:(i)有機溶媒への脂質溶解、(ii)得られた溶液の乾燥および(iii)乾燥脂質の水和(種々の水性媒体を使用)。
【0559】
フィルム水和方法において、脂質をまず適当な有機溶媒に溶解し、フラスコの底に薄膜を生じるよう乾燥させる。得られた脂質フィルムを、リポソーム分散体を産生するのに適する水性媒体を使用して水和する。さらに、さらなる小型化工程が含まれ得る。
【0560】
水相と脂質を含む有機相の間の油中水型エマルジョンの形成を含む、逆相蒸発は、リポソーム小胞調製のためのフィルム水和の別の方法である。系均質化のために、この混合物の短時間音波処理が必要である。減圧下の有機相の除去により、乳状ゲルが生じ、これはその後リポソーム懸濁液に変わる。
【0561】
用語「エタノール注入技術」は、脂質を含むエタノール溶液を、針をとおして水溶液に迅速に注入する過程をいう。この行為は、脂質を溶液中に分散させ、脂質構造形成、例えばリポソーム形成などの脂質小胞形成を促進する。一般に、ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、コロイド性リポソーム分散体へのRNAの付加により得られ得る。エタノール注入技術を使用して、このようなコロイド性リポソーム分散体は、ある実施態様において、次のとおり形成される:カチオン性脂質およびさらなる脂質などの脂質を含むエタノール溶液を、撹拌下水溶液に注入する。ある実施態様において、ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、押し出しの工程を用いず得られ得る。
【0562】
用語「押し出す」または「押し出し」は、固定された、横断面プロファイルを有する粒子の製造をいう。特に、粒子を規定細孔のフィルターを篩過させる、粒子の小型化をいう。
【0563】
無有機溶媒特徴を有する他の方法も、コロイドの調製のために本発明により使用され得る。
【0564】
LNPは、一般に、イオン化可能カチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイドおよびポリエチレングリコール(PEG)-脂質などのポリマーコンジュゲート脂質の4成分を含む。各成分は搭載物保護を担い、有効細胞内送達を可能とする。LNPは、エタノールに溶解した脂質を、水性緩衝液中の核酸と迅速に混合することにより調製され得る。
【0565】
用語「平均直径」は、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用してデータ分析した、動的レーザー光散乱法(DLS)により測定した粒子の平均流体力学的直径をいい、これは、結果として、長さ寸法および無次元である多分散性指数(PI)と共にいわゆるZ平均を提供する(Koppel, D., J. Chem. Phys. 57, 1972, pp 4814-4820, ISO 13321)。ここで粒子の「平均直径」、「直径」または「サイズ」は、Z平均のこの値と同義的に使用される。
【0566】
「多分散性指数」は、好ましくは「平均直径」の定義に記載したいわゆるキュムラント分析による動的光散乱法測定に基づいて計算される。ある前提下、ナノ粒子のアンサンブルのサイズ分布の指標として解釈され得る。
【0567】
種々のタイプの核酸含有粒子が以前に粒子形態の核酸の送達に適すると記載されている(例えばKaczmarek, J. C. et al., 2017, Genome Medicine 9, 60)。非ウイルス核酸送達媒体について、核酸のナノ粒子カプセル封入は核酸を分解から物理的に保護し、特定の化学により、細胞性取り込みおよびエンドソーム脱出を助け得る。
【0568】
本発明は、核酸、核酸粒子を形成するように核酸と結合した少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーを含む粒子およびこのような粒子を含む組成物を記載する。核酸粒子は、該粒子に非共有結合相互作用により異なる形態で複合体化される核酸を含み得る。ここに記載する粒子はウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子ではない、すなわち、細胞にウイルス性に感染できない。
【0569】
適当なカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質およびカチオン性ポリマーは核酸粒子を形成するものであり、用語「粒子形成成分」または「粒子形成剤」に含まれる。用語「粒子形成成分」または「粒子形成剤」は、核酸粒子を形成するように核酸と結合するあらゆる成分に関する。このような成分は、核酸粒子の一部であり得る何らかの成分を含む。
【0570】
カチオン性ポリマー
高度な化学柔軟性を考慮して、ポリマーは、ナノ粒子ベースの送達に一般に使用される物質である。一般に、カチオン性ポリマーは、負に荷電した核酸をナノ粒子に静電的に濃縮するために使用される。これらの正に荷電した基は、しばしば5.5~7.5のpH範囲でプロトン化の状態が変化し、エンドソーム破裂をもたらすイオン不均衡に至ると考えられるアミンからなる。ポリ-1-リシン、ポリアミドアミン、プロタミンおよびポリエチレンイミンならびにキトサンなどの天然に存在するポリマーなどのポリマーは、全て核酸送達に適用され、ここでのカチオン性ポリマーとして適する。さらに、一部研究者らは、特に核酸送達のためのポリマーを合成している。ポリ(β-アミノエステル)は、特に、合成の容易さおよび生分解性により、核酸送達のために広範に使用されている。このような合成ポリマーも、ここでのカチオン性ポリマーとして適する。
【0571】
ここで使用する「ポリマー」は、その通常の意味を有し、すなわち、共有結合により結合した1以上の反復単位(単量体)を含む、分子構造である。反復単位は全で同一であってよくまたはある場合、1を超えるタイプの反復単位がポリマー内に存在してよい。ある場合、ポリマーは生物学的にもたらされ、すなわち、タンパク質などのバイオポリマーである。ある場合、さらなる部分、例えばここに記載するようなターゲティング部分もポリマーに存在できる。
【0572】
1を超えるタイプの反復単位がポリマーに存在するならば、ポリマーは「コポリマー」といい得る。ここで使用されるポリマーはコポリマーであり得ることは理解される。コポリマーを形成する反復単位は、任意の形式で配置される。例えば、反復単位は、無作為の順番で、交互の順番でまたは「ブロック」コポリマー、すなわち、各々第一反復単位(例えば、第一ブロック)を含む1以上の領域および各々第二反復単位(例えば、第二ブロック)を含む1以上の領域などを含むものとして配置され得る。ブロックコポリマーは、2(ジブロックコポリマー)、3(トリブロックコポリマー)またはそれ以上の数の異なるブロックを有し得る。
【0573】
ある実施態様において、ポリマーは生体適合性である。生体適合性ポリマーは、一般に適度な濃度で顕著な細胞死を引き起こさないポリマーである。ある実施態様において、生体適合性ポリマーは生分解性である、すなわち、ポリマーは、体内等の生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解できる。
【0574】
ある実施態様において、ポリマーはプロタミンまたはポリアルキレンイミン、特にプロタミンであり得る。
【0575】
用語「プロタミン」は、アルギニンに富み、種々の動物(魚等)の精子細胞で体性ヒストンの代わりに特にDNAと関係して見られる比較的低分子量の種々の何らかの強塩基性タンパク質をいう。特に、用語「プロタミン」は、強塩基性であり、水に可溶性であり、熱で凝固せず、加水分解により主にアルギニンを産生する、魚精子で見られるタンパク質をいう。精製された形態では、インスリン長時間作用型製剤でおよびヘパリンの抗凝血作用を中和するために使用される。
【0576】
本開示により、ここで使用する用語「プロタミン」は、天然または生物学的供給源から得られたまたはそれ由来のあらゆるプロタミンアミノ酸配列(そのフラグメントを含む)および該アミノ酸配列またはそのフラグメントの多量体形態ならびに人工であり、特に特別な目的で設計され、天然または生物学的供給源から単離され得ない(合成)ポリペプチドを含むことを意図する。
【0577】
ある実施態様において、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミンおよび/またはポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。好ましいポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは0.75・102~107Da、好ましくは1000~105Da、より好ましくは10000~40000Da、より好ましくは15000~30000Da、さらにより好ましくは20000~25000Daである。
【0578】
本発明により好ましいのは、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)などの直鎖状ポリアルキレンイミンである。
【0579】
ここでの使用が意図されるカチオン性ポリマー(ポリカチオン性ポリマーを含む)は、静電的に核酸と結合できるあらゆるカチオン性ポリマーを含む。ある実施態様において、ここでの使用が意図されるカチオン性ポリマーは、例えば核酸と複合体を形成することによりまたは核酸が封入または被包されている小胞を形成することにより、核酸が結合できる、あらゆるカチオン性ポリマーを含む。
【0580】
ここに記載する粒子は、カチオン性ポリマー以外のポリマー、すなわち、非カチオン性ポリマーおよび/またはアニオン性ポリマーも含み得る。まとめて、アニオン性および中性ポリマーがここでは非カチオン性ポリマーと称される。
【0581】
脂質および脂質様物質
用語「脂質」および「脂質様物質」は、1以上の疎水性部分または基および所望によりまた1以上の親水性部分または基を含む分子として、ここで広く定義される。疎水性部分および親水性部分を含む分子は、しばしば両親媒性物質とも称される。脂質は、通常水にほとんど溶けない。水性環境で、両親媒性質により、分子は組織化された構造および種々の相に自己集合可能となる。これらの相の1つは、水性環境で小胞、多重膜/単層リポソームまたは膜に存在するため、脂質二重層からなる。疎水性は、1以上の芳香族、シクロ脂肪族またはヘテロ環基で置換されている、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基を含むが、これらに限定されない非極性基の包含により付与される。親水性基は、極性および/または荷電基であり、炭水化物、リン酸、カルボン酸、硫酸、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシルおよび他の類似基を含み得る。
【0582】
ここで使用する用語「両親媒性」は、極性部分および非極性部分両方を有する分子をいう。しばしば、両親媒性化合物は、長い疎水性テイルに結合した極性頭部を有する。ある実施態様において、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は形式上正電荷または形式上負電荷を有し得る。あるいは極性部分は形式上陽性および負電荷両方を有し得て、双性イオンまたは分子内塩であり得る。本開示の目的で、両親媒性化合物は、1個または複数の天然または非天然脂質および脂質様化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0583】
用語「脂質様物質」、「脂質様化合物」または「脂質様分子」は、構造的および/または機能的に脂質に関係するが、厳密な意味での脂質とは考えられ得ない物質に関する。例えば、本用語は、水性環境で小胞、多重膜/単層リポソームまたは膜に存在するため両親媒性層を形成でき、親水性部分および疎水性部分両方に界面活性剤または合成化合物を含む、化合物を含む。一般的にいうと、本用語は、脂質と類似してもしていなくてもよい、種々の構造構成の親水性部分および疎水性部分を含む、分子をいう。ここで使用する用語「脂質」は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、脂質および脂質様物質両方を包含すると考えられる。
【0584】
両親媒性層に包含され得る両親媒性化合物の具体例は、リン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質を含み得るが、これらに限定されない。
【0585】
ある実施態様において、両親媒性化合物は脂質である。用語「脂質」は、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることにより特徴づけられる、有機化合物群をいう。一般に、脂質は脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合由来)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合由来)の8カテゴリーに分割され得る。用語「脂質」は脂肪の同義語として使用されることもあるが、脂肪はトリグリセリドと称される脂質のサブグループである。脂質はまた脂肪酸およびその誘導体(トリ、ジ、モノグリセリドおよびリン脂質を含む)ならびにコレステロールなどのステロール含有代謝物などの分子も包含する。
【0586】
脂肪酸または脂肪酸残基は、カルボン酸基で終わる炭化水素鎖からなる多様な分子群である;この配置により、分子は極性、親水性末端および水に不溶性である非極性、疎水性末端を有する。一般に4~24炭素長の炭素鎖は飽和でも不飽和でもよく、酸素、ハロゲン、窒素および硫黄を含む官能基に結合し得る。脂肪酸が二重結合を含むならば、分子の配置に顕著に影響するcisまたはtrans幾何異性のいずれかの可能性がある。Cis-二重結合は脂肪酸鎖を屈曲させ、鎖に二重結合が多いほど、その影響は、複雑である。脂肪酸カテゴリーの他の主要な脂質クラスは、脂肪エステルおよび脂肪アミドである。
【0587】
グリセロ脂質は、一、二および三置換グリセロールであり、トリグリセリドと称されるグリセロールの脂肪酸トリエステルが最も知られる。用語「トリアシルグリセロール」は、「トリグリセリド」と同義的に使用されることがある。これらの化合物において、グリセロールの3個のヒドロキシル基は、一般に異なる脂肪酸により、各々エステル化される。グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシド結合によりグリセロールに結合した1以上の糖残基の存在により特徴づけられる、グリコシルグリセロールである。
【0588】
グリセロリン脂質は、エステル結合により2個の脂肪酸由来「テイル」に結合したおよびリン酸エステル結合により1個の「頭部」基に結合したグリセロールコアを含む、両親媒性分子(疎水性と親水性両方の領域を含む)である。通常、リン脂質(スフィンゴミエリンもリン脂質として分類されるが)と称されるグリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(別名PC、GPChoまたはレシチン)、ホスファチジルエタノールアミン(PEまたはGPEtn)およびホスファチジルセリン(PSまたはGPSer)である。
【0589】
スフィンゴ脂質は、共通構造性質、スフィンゴイド塩基主鎖を共有する、化合物の複雑なファミリーである。哺乳動物における主要なスフィンゴイド塩基は一般にスフィンゴシンと称される。セラミド(N-アシル-スフィンゴイド塩基)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。脂肪酸は、一般に16~26炭素原子鎖長の飽和または単不飽和である。哺乳動物の主要なホスホスフィンゴ脂質はスフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であり、一方昆虫は主にセラミドホスホエタノールアミンを有し、真菌はフィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有頭部基を有する。グリコスフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基へのグリコシド結合により結合した1以上の糖残基からなる分子の多様なファミリーである。これらの例は、セレブロシドおよびガングリオシドなどの単純および複雑グリコスフィンゴ脂質である。
【0590】
コレステロールおよびその誘導体またはトコフェロールおよびその誘導体などのステロール脂質は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンと共に、膜脂質の重要な成分である。
【0591】
サッカロ脂質は、脂肪酸が糖主鎖に直接結合し、膜二重層と適合性である構造を形成する化合物をいう。サッカロ脂質において、単糖は、グリセロ脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール主鎖に置き換わる。最も知られるサッカロ脂質は、グラム陰性細菌のリポ多糖のリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。典型的リピドA分子は、7個もの脂肪-アシル鎖で誘導体化されるグルコサミンの二糖である。大腸菌の増殖に必要な最小リポ多糖は、2個の3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(Kdo)残基でグリコシル化されたグルコサミンのヘキサ-アシル化二糖であるKdo2-リピドAである。
【0592】
ポリケチドは、古典的酵素ならびに脂肪酸シンターゼと機構的特性を共有する反復および多モジュール酵素によるアセチルおよびプロピオニルサブユニットの重合化により合成される。それらは、動物、植物、細菌、真菌および海洋供給源からの二次代謝物および天然産物の大部分を占め、構造多様性が大きい。多くのポリケチドは環状分子であり、その主鎖はしばしばグリコシル化、メチル化、ヒドロキシル化、酸化または他の過程によりさらに修飾される。
【0593】
本開示により、脂質および脂質様物質はカチオン性、アニオン性または中性であり得る。中性脂質または脂質様物質は、選択したpHで非荷電または中性双性イオン形態で存在する。
【0594】
カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質
ここに記載する核酸粒子は、粒子形成剤として少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含み得る。ここでの使用が意図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、静電的に核酸に結合できる、あらゆるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む。ある実施態様において、ここでの使用が意図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、例えば核酸と複合体を形成することによりまたは核酸が封入または被包されている小胞を形成することにより、核酸と結合できる。
【0595】
ここで使用する「カチオン性脂質」または「カチオン性脂質様物質」は、正味の正電荷を有する脂質または脂質様物質をいう。カチオン性脂質または脂質様物質は、静電気的相互作用により負に荷電した核酸に結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖、ジアシルまたはそれ以上のアシル鎖などの親油性部分および一般に正電荷を有する脂質の頭部基を有する。
【0596】
ある実施態様において、カチオン性脂質または脂質様物質は、あるpH、特に酸性pHで正味の正電荷のみ有し、一方、生理学的pHなどの異なる、好ましくは高いpHで好ましくは正味の正電荷を有しない、好ましくは電荷を有しない、すなわち、中性である。このイオン化可能の挙動は、生理学的pHでカチオン性のままである粒子と比較して、エンドソーム脱出を助けることにより有効性が増強され、毒性が低減すると考えられる。
【0597】
本発明の目的で、このような「カチオンにイオン化可能な」脂質または脂質様物質は、状況に反しない限り、用語「カチオン性脂質または脂質様物質」に含まれる。
【0598】
ある実施態様において、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、正に荷電されまたはプロトン化され得る少なくとも1個の窒素原子(N)を含む頭部基を含む。
【0599】
カチオン性脂質の例は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DORIE)および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(cis,cis-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(cis,cis-9’,12’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(DMRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(cis-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DMORIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DLRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DMRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(βAE-DMRIE)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DMDAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DPDAP)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、2,3-ビス(ドデシルオキシ)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アンモニウムブロマイド(DLRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミニウムブロマイド(DMORIE)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル) 8,8’-((((2(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)アザンジイル)ジオクタノエート(ATX)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DLDMA)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DMDMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)-9-((4-(ジメチルアミノブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、N-ドデシル-3-((2-ドデシルカルバモイル-エチル)-{2-[(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-2-{(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-[2-(2-ドデシルカルバモイル-エチルアミノ)-エチル]-アミノ}-エチルアミノ)プロピオンアミド(リピドイド98N12-5)、1-[2-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル-[2-[4-[2-[ビス(2ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル]ピペラジン-1-イル]エチル]アミノ]ドデカン-2-オール(リピドイドC12-200)を含むが、これらに限定されない。
【0600】
ある実施態様において、カチオン性脂質は、粒子に存在する総脂質の約10mol%~約100mol%、約20mol%~約100mol%、約30mol%~約100mol%、約40mol%~約100mol%または約50mol%~約100mol%を構成し得る。
【0601】
さらなる脂質または脂質様物質
ここに記載する粒子はまたカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の脂質または脂質様物質、すなわち、非カチオン性脂質または脂質様物質(非カチオン的にイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む)も含み得る。まとめて、アニオン性および中性脂質または脂質様物質をここでは非カチオン性脂質または脂質様物質と称する。イオン化可能/カチオン性脂質または脂質様物質に加えて、コレステロールおよび脂質などの他の疎水性部分の付加による核酸粒子の製剤の最適化は、粒子安定性および核酸送達の有効性を増強し得る。
【0602】
核酸粒子の全体的電荷に影響してもしなくてもよいさらなる脂質または脂質様物質を取り込み得る。ある実施態様において、さらなる脂質または脂質様物質は非カチオン性脂質または脂質様物質である。非カチオン性脂質は、例えば、1以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。ここで使用する「アニオン性脂質」は、選択したpHで負に荷電したあらゆる脂質をいう。ここで使用する「中性脂質」は、選択したpHで非荷電または中性双性イオン形態で存在する多数の脂質種のいずれかをいう。好ましい実施態様において、さらなる脂質は、(1)リン脂質、(2)コレステロールまたはその誘導体;または(3)リン脂質とコレステロールまたはその誘導体の混合物の中性脂質成分の1つを含む。コレステロール誘導体の例は、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびその誘導体およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0603】
使用され得る具体的リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンを含むが、これらに限定されない。このようなリン脂質は、特にジアシルホスファチジルコリン、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルフタチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)およびホスファチジルエタノールアミン、特にジアシルホスファチジルエタノールアミン、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジフィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPyPE)およびさらに異なる疎水性鎖を有するホスファチジルエタノールアミン脂質を含む。
【0604】
ある好ましい実施態様において、さらなる脂質はDSPCまたはDSPCおよびコレステロールである。
【0605】
ある実施態様において、核酸粒子はカチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。
【0606】
ある実施態様において、ここに記載する粒子は、ペグ化脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。用語「ペグ化脂質」は、脂質部分およびポリエチレングリコール部分両方を含む分子をいう。ペグ化脂質は当分野で知られる。
【0607】
理論に拘束されることを願わないが、少なくとも1個のさらなる脂質の量と比較した少なくとも1個のカチオン性脂質の量は、核酸の荷電、粒子径、安定性、組織選択性および生物活性などの重要な核酸粒子特徴に影響し得る。従って、ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約10:0~約1:9、約4:1~約1:2または約3:1~約1:1である。
【0608】
ある実施態様において、非カチオン性脂質、特に中性脂質(例えば、リン脂質および/またはコレステロールの1以上)は、粒子に存在する総脂質の約0mol%~約90mol%、約0mol%~約80mol%、約0mol%~約70mol%、約0mol%~約60mol%または約0mol%~約50mol%を構成し得る。
【0609】
リポプレックス粒子
本発明のある実施態様において、ここに記載するRNAはRNAリポプレックス粒子に存在し得る。
【0610】
本開示の文脈において、用語「RNAリポプレックス粒子」は、脂質、特にカチオン性脂質およびRNAを含む粒子に関する。正に荷電したリポソームと負に荷電したRNAの間の静電気的相互作用は複合体化およびRNAリポプレックス粒子の自発的形成をもたらす。正に荷電したリポソームは、一般にDOTMAなどのカチオン性脂質およびDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成される。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0611】
ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はカチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的実施態様において、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0612】
ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約10:0~約1:9、約4:1~約1:2または約3:1~約1:1である。特定の実施態様において、モル比は約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1または約1:1であり得る。例示的実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約2:1である。
【0613】
ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、ある実施態様において、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nmまたは約350nm~約400nmの範囲である平均直径を有する。特定の実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nmまたは約1000nmの平均直径を有する。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。他の実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0614】
ここに記載するRNAリポプレックス粒子およびRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、非経腸投与後、特に静脈内投与後、標的組織へのRNAの送達に有用である。RNAリポプレックス粒子は、エタノール中の脂質溶液を水または適当な水相に注入することにより得られ得るリポソームを使用して調製され得る。ある実施態様において、水相は酸性pHを有する。ある実施態様において、水相は、例えば、約5mM量の酢酸を含む。リポソームは、リポソームとRNAの混合によるRNAリポプレックス粒子の調製に使用され得る。ある実施態様において、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は少なくとも1個のカチオン性脂質および少なくとも1個のさらなる脂質を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のさらなる脂質は1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1個のさらなる脂質は1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。ある実施態様において、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0615】
脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に包含させるWO2013/143683に記載される。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子を、脾臓組織または脾細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を優先的に標的とするために使用し得ることが判明している。従って、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、脾臓でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、肺および/または肝臓へのRNA蓄積および/またはRNA発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、このような抗原提示細胞でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0616】
脂質ナノ粒子(LNP)
ある実施態様において、ここに記載するRNAなどの核酸は脂質ナノ粒子(LNP)の形で投与される。LNPは、1以上の核酸分子が結合するまたは1以上の核酸分子が被包される粒子を形成できるあらゆる脂質を含み得る。
【0617】
ある実施態様において、LNPは1以上のカチオン性脂質および1以上の安定化脂質を含む。安定化脂質は中性脂質およびペグ化脂質を含む。
【0618】
ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に被包されたまたは結合したRNAを含む。
【0619】
ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質の40~55モルパーセント、40~50モルパーセント、41~49モルパーセント、41~48モルパーセント、42~48モルパーセント、43~48モルパーセント、44~48モルパーセント、45~48モルパーセント、46~48モルパーセント、47~48モルパーセントまたは47.2~47.8モルパーセントを構成する。ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質の約47.0モルパーセント、47.1モルパーセント、47.2モルパーセント、47.3モルパーセント、47.4モルパーセント、47.5モルパーセント、47.6モルパーセント、47.7モルパーセント、47.8モルパーセント、47.9モルパーセントまたは48.0モルパーセントを構成する。
【0620】
ある実施態様において、中性脂質は、5~15モルパーセント、7~13モルパーセントまたは9~11モルパーセントの範囲の濃度で存在する。ある実施態様において、中性脂質は約9.5モルパーセント、10モルパーセントまたは10.5モルパーセントの濃度で存在する。
【0621】
ある実施態様において、ステロイドは、30~50モルパーセント、35~45モルパーセントまたは38~43モルパーセントの範囲の濃度で存在する。ある実施態様において、ステロイドは、約40モルパーセント、41モルパーセント、42モルパーセント、43モルパーセント、44モルパーセント、45モルパーセントまたは46モルパーセントの濃度で存在する。
【0622】
ある実施態様において、LNPは、ポリマーコンジュゲート脂質の1~10モルパーセント、1~5モルパーセントまたは1~2.5モルパーセントを構成する。
【0623】
ある実施態様において、LNPは、40~50モルパーセントのカチオン性脂質;5~15モルパーセントの中性脂質;35~45モルパーセントのステロイド;1~10モルパーセントのポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に被包されたまたは結合したRNAを含む。
【0624】
ある実施態様において、モルパーセントは、脂質ナノ粒子に存在する脂質の総モルに基づき、決定される。
【0625】
ある実施態様において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPEおよびSMからなる群から選択される。ある実施態様において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群から選択される。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。
【0626】
ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。
【0627】
ある実施態様において、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。ある実施態様において、ペグ化脂質は次の構造
【0628】
【化19】
〔式中、R12およびR13は各々独立して10~30炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状、飽和または不飽和アルキル鎖であり、ここで、アルキル鎖は所望により1以上のエステル結合で中断されており;そしてwは30~60の平均値を有する。〕
を有するまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体である。ある実施態様において、R12およびR13は各々独立して12~16炭素原子を含む、直鎖状、飽和アルキル鎖である。ある実施態様において、wは40~55の範囲の平均値を有する。ある実施態様において、平均wは約45である。ある実施態様において、R12およびR13は各々独立して約14炭素原子を含む、直鎖状、飽和アルキル鎖であり、wは約45の平均値を有する。
【0629】
ある実施態様において、ペグ化脂質は、例えば、下記構造を有する、DMG-PEG 2000である。
【0630】
【化20】
【0631】
ある実施態様において、LNPのカチオン性脂質成分は、式(III)
【0632】
【化21】
〔式中、
L1またはL2の一方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-または-NRaC(=O)O-であり、L1またはL2の他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-または-NRaC(=O)O-または直接結合であり;
G1およびG2は各々独立して非置換C1-C12アルキレンまたはC1-C12アルケニレンであり;
G3はC1-C24アルキレン、C1-C24アルケニレン、C3-C8シクロアルキレン、C3-C8シクロアルケニレンであり;
RaはHまたはC1-C12アルキルであり;
R1およびR2は各々独立してC6-C24アルキルまたはC6-C24アルケニルであり;
R3はH、OR5、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4または-NR5C(=O)R4であり;
R4はC1-C12アルキルであり;
R5はHまたはC1-C6アルキルであり;そして
xは0、1または2である。〕
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体である。
【0633】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は、次の構造(IIIA)または(IIIB)
【0634】
【化22】
〔式中、
Aは3~8員シクロアルキルまたはシクロアルキレン環であり;
R6は、各々の場合、独立してH、OHまたはC1-C24アルキルであり;
nは1~15の範囲の整数である。〕
の一方を有する。
【0635】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施態様、脂質は構造(IIIB)を有する。
【0636】
式(III)の他の実施態様において、脂質は、構造(IIIC)または(IIID):
【0637】
【化23】
〔式中、yおよびzは各々独立して1~12の範囲の整数である。〕
の1つを有する。
【0638】
式(III)の前記実施態様のいずれにおいても、L1またはL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、ある実施態様において、L1およびL2の各々は-O(C=O)-である。前記のいずれかのある異なる実施態様において、L1およびL2は各々独立して-(C=O)O-または-O(C=O)-である。例えば、ある実施態様において、L1およびL2の各々は-(C=O)O-である。
【0639】
式(III)のある異なる実施態様において、脂質は、構造(IIIE)または(IIIF)
【0640】
【化24】
の1つを有する。
【0641】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は、構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)または(IIIJ)
【0642】
【化25】
の1つを有する。
【0643】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、nは2~12、例えば2~8または2~4の範囲の整数である。例えば、ある実施態様において、nは3、4、5または6である。ある実施態様において、nは3である。ある実施態様において、nは4である。ある実施態様において、nは5である。ある実施態様において、nは6である。
【0644】
式(III)の前記実施態様のあるその他において、yおよびzは各々独立して2~10の範囲の整数である。例えば、ある実施態様において、yおよびzは各々独立して4~9または4~6の範囲の整数である。
【0645】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、R6はHである。前記実施態様のその他において、R6はC1-C24アルキルである。他の実施態様において、R6はOHである。
【0646】
式(III)のある実施態様において、G3は非置換である。他の実施態様において、G3は置換である。種々の異なる実施態様において、G3は直鎖状C1-C24アルキレンまたは直鎖状C1-C24アルケニレンである。
【0647】
式(III)のある他の前記実施態様において、R1またはR2または両方はC6-C24アルケニルである。例えば、ある実施態様において、R1およびR2は、各々独立して次の構造
【0648】
【化26】
〔式中、R7aおよびR7bは、各場合、独立してHまたはC1-C12アルキルであり;そして
aは2~12の整数であり、
ここで、R7a、R7bおよびaは、R1およびR2が各々独立して6~20炭素原子を含むように、選択される。〕
を有する。例えば、ある実施態様において、aは5~9または8~12の範囲の整数である。
【0649】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、少なくとも1回のR7aはHである。例えば、ある実施態様において、R7aは各場合Hである。前記の他の異なる実施態様において、少なくとも1回のR7bはC1-C8アルキルである。例えば、ある実施態様において、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0650】
式(III)の種々の実施態様において、R1またはR2または両方は、構造
【0651】
【化27】
の1つを有する。
【0652】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、R3はOH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4または-NHC(=O)R4である。ある実施態様において、R4はメチルまたはエチルである。
【0653】
種々の異なる実施態様において、式(III)のカチオン性脂質は、下表に示す構造の1つを有する。
【0654】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0655】
ある実施態様において、LNPは式(III)の脂質、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。ある実施態様において、式(III)の脂質は化合物III-3である。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。ある実施態様において、ペグ化脂質はALC-0159である。
【0656】
ある実施態様において、カチオン性脂質は、LPNに約40~約50モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、中性脂質は、LPNに約5~約15モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、ステロイドは、LPNに約35~約45モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、ペグ化脂質は、LPNに約1~約10モルパーセントの量で存在する。
【0657】
ある実施態様において、LNPは、約40~約50モルパーセントの量の化合物III-3、約5~約15モルパーセントの量のDSPC、約35~約45モルパーセントの量のコレステロールおよび約1~約10モルパーセントの量のALC-0159を含む。
【0658】
ある実施態様において、LNPは、約47.5モルパーセントの量の化合物III-3、約10モルパーセントの量のDSPC、約40.7モルパーセントの量のコレステロールおよび約1.8モルパーセントの量のALC-0159を含む。
【0659】
種々の異なる実施態様において、カチオン性脂質は下表に示す構造の1つを有する。
【0660】
【表4】
【0661】
ある実施態様において、LNPは、上記表に示すカチオン性脂質、例えば、式(B)または式(D)のカチオン性脂質、特に式(D)のカチオン性脂質、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。ある実施態様において、ペグ化脂質はDMG-PEG 2000である。
【0662】
ある実施態様において、LNPは、イオン化可能脂質様物質(リピドイド)であるカチオン性脂質を含む。ある実施態様において、カチオン性脂質は次の構造を有する。
【0663】
【化28】
【0664】
N/P値は好ましくは少なくとも約4である。ある実施態様において、N/P値は4~20、4~12、4~10、4~8または5~7の範囲である。ある実施態様において、N/P値は約6である。
【0665】
ここに記載するLNPは、ある実施態様において、約30nm~約200nmまたは約60nm~約120nm範囲の平均直径を有し得る。
【0666】
RNAターゲティング
本発明のある態様は、ここに開示するRNA(例えば、ワクチン抗原および/または免疫刺激剤をコードするRNA)の標的化送達を含む。
【0667】
ある実施態様において、本発明は、肺ターゲティングを含む。肺ターゲティングは、投与されるRNAがワクチン抗原をコードするRNAであるならば、特に好ましい。RNAは、例えば、ここに記載する粒子、例えば、脂質粒子として製剤化され得るRNAを、吸入により投与することにより、肺に送達され得る。
【0668】
ある実施態様において、本発明は、リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓のターゲティングを含む。リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓のターゲティングは、投与されるRNがワクチン抗原をコードするRNAであるならば、特に好ましい。
【0669】
ある実施態様において、標的細胞は脾細胞である。ある実施態様において、標的細胞は、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。ある実施態様において、標的細胞は脾臓における樹状細胞である。
【0670】
「リンパ系」は循環系の一部であり、リンパを運搬するリンパ管のネットワークを含む、免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ性臓器、リンパ管の伝導ネットワークおよび循環リンパからなる。一次または中枢リンパ系臓器は、未成熟前駆細胞細胞からリンパ球を産生する。胸腺および骨髄は一次リンパ系臓器を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ系臓器は、成熟ナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始させる。
【0671】
RNAは、RNAが注射用ナノ粒子製剤を形成するためのカチオン性脂質および所望によりさらなるまたはヘルパー脂質を含むリポソームに結合する、いわゆるリポプレックス製剤により、脾臓に送達され得る。リポソームは、エタノール中の脂質溶液を水または適当な水相に注入することにより得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームとRNAの混合により調製され得る。脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に包含させるWO2013/143683に記載される。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子を、脾臓組織または脾細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を優先的に標的とするために使用し得ることが判明している。従って、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、脾臓でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、肺および/または肝臓へのRNA蓄積および/またはRNA発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、このような抗原提示細胞でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0672】
本発明のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する電荷およびRNAに存在する電荷の和である。電荷比少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する正電荷対RNAに存在する負電荷の比である。少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する正電荷対RNAに存在する負電荷の電荷比は次の式により計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(mol))×(カチオン性脂質の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(mol))×(RNAの負電荷の総数)]。
【0673】
ここに記載する脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、生理学的pHで、好ましくは約1.9:2~約1:2または約1.6:2~約1:2または約1.6:2~約1.1:2の正電荷対負電荷の電荷比などの正味の負電荷を有する。特定の実施態様において、生理学的pHで、RNAリポプレックス粒子の正電荷対負電荷の電荷比は約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0または約1:2.0である。
【0674】
免疫刺激剤を、対象に肝臓または肝臓組織へのRNAの優先的送達のための製剤の免疫刺激剤をコードするRNAを投与することにより、対象に投与し得る。特に、大量の免疫刺激剤の発現が望ましいおよび/または特に相当量での免疫刺激剤の全身における存在が望ましいまたは必要であるならば、このような標的臓器または組織へのRNAの送達は好ましい。
【0675】
RNA送達系は、肝臓に固有の優先度を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性ナノ粒子、特に脂質ナノ粒子、例えばリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲートの親油性リガンドに付随する。肝臓蓄積は、肝臓脈管構造または脂質代謝(リポソームおよび脂質またはコレステロールコンジュゲート)の不連続性質が原因である。
【0676】
肝臓へのインビボRNAの送達のために、薬物送達系を、RNAを、その分解を防止しながら肝臓に輸送するために使用し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面およびmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルが、生理学的条件下、ナノミセルがRNAの優れたインビボ安定性を提供するため、有用な系である。さらに、密集PEG柵からなるポリプレックスナノミセル表面により提供されるステルス性質は、宿主免疫防御を効率的に回避させる。
【0677】
肝臓ターゲティングのための適当な免疫刺激剤の例は、T細胞増殖および/または維持に関与するサイトカインである。適当なサイトカインの例は、IL2またはIL7、フラグメントおよびそのバリアントおよび延長PKサイトカインなどのこれらのサイトカイン、フラグメントおよびバリアントの融合タンパク質を含む。
【0678】
他の実施態様において、免疫刺激剤をコードするRNAを、リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓に優先的にRNAを送達するための製剤により投与し得る。特に、この臓器または組織における免疫刺激剤の存在が望まれるが(例えば、免疫応答を誘導するため、特にサイトカインなどの免疫刺激剤がT細胞プライミング中または常在免疫細胞の活性化に必要であるとき)、特に相当量で免疫刺激剤が全身性に存在することが望まれない(例えば、免疫刺激剤が全身毒性を有するため)ならば、このような標的組織への免疫刺激剤の送達が好ましい。
【0679】
適当な免疫刺激剤の例は、T細胞プライミングに関与するサイトカインである。適当なサイトカインの例は、IL12、IL15、IFN-αまたはIFN-β、フラグメントおよびそのバリアントおよび延長PKサイトカインなどのこれらのサイトカイン、フラグメントおよびバリアントの融合タンパク質を含む。
【0680】
免疫刺激剤
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは非免疫原性であり得る。このおよび他の実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、免疫刺激剤または免疫刺激剤をコードするRNAと共投与され得る。ここに記載する方法および薬剤は、免疫刺激剤が薬物動態修飾基に結合している(以後「延長薬物動態(PK)」免疫刺激剤と称する)ならば、特に有効である。ここに記載する方法および薬剤は、免疫刺激剤が免疫刺激剤をコードするRNAの形態で投与されるであるならば、特に有効である。ある実施態様において、該RNAは、全身利用能のために肝臓に標的化される。肝細胞は効率的にトランスフェクトされ得て、大量のタンパク質を産生できる。
【0681】
「免疫刺激剤」は、免疫系の成分、特に免疫エフェクター細胞のいずれかの活性化誘導または活性増加により、免疫系を刺激するあらゆる物質である。免疫刺激剤は炎症誘発性であり得る。
【0682】
ある態様により、免疫刺激剤はサイトカインまたはそのバリアントである。サイトカインの例は、インターフェロン-アルファ(IFN-α)またはインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などのインターフェロン、IL2、IL7、IL12、IL15およびIL23などのインターロイキン、M-CSFおよびGM-CSFなどのコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子を含む。他の態様により、免疫刺激剤はAPCトール様受容体アゴニストまたは共刺激/細胞付着膜タンパク質などのアジュバント型免疫刺激剤を含む。トール様受容体アゴニストの例は、CD80、CD86およびICAM-1などの共刺激/付着タンパク質を含む。
【0683】
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要な小タンパク質(約5~20kDa)のカテゴリーである。その放出は、それら周辺の細胞の挙動に影響する。サイトカインは、免疫調節因子として自己分泌シグナル伝達、傍分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子を含むが、一般にホルモンまたは増殖因子は含まない(用語に一部重複はあるが)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球および肥満細胞などの免疫細胞ならびに内皮細胞、線維芽細胞および種々の間質細胞を含む広範な細胞により産生される。あるサイトカインは、1を超えるタイプの細胞により産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系に特に重要である;サイトカインは液性および細胞ベースの免疫応答のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、増殖および反応性を制御する。あるサイトカインは、複雑な方法で他のサイトカインの作用を増強または阻害する。
【0684】
本開示により、サイトカインは天然に存在するサイトカインまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。サイトカインはヒトサイトカインであってよく、かつ脊椎動物のいずれか、特に哺乳動物のいずれかに由来してよい。ある特に好ましいサイトカインはインターフェロン-αである。
【0685】
インターフェロン
インターフェロン(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生虫およびまた腫瘍細胞などのいくつかの病原体の存在に応答して宿主細胞により産生および放出される、一群のシグナル伝達タンパク質である。典型的シナリオにおいて、ウイルス感染細胞はインターフェロンを放出し、近隣細胞の抗ウイルス防御を高めさせる。
【0686】
シグナル伝達で経る受容体のタイプにより、インターフェロンは一般にI型インターフェロン、II型インターフェロンおよびIII型インターフェロンの3クラスに分類される。
【0687】
全I型インターフェロンは、IFNAR1およびIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として知られる特異的細胞表面受容体複合体に結合する。
【0688】
ヒトに存在するI型インターフェロンはIFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωである。一般に、体が、侵入してきたウイルスを認識したとき、I型インターフェロンが産生される。それらは線維芽細胞および単球により産生される。放出されたら、I型インターフェロンは標的細胞の特異的受容体に結合し、それによりウイルスがそのRNAおよびDNAを産生し、複製することを阻止するタンパク質の発現に至る。
【0689】
IFNαタンパク質は、主に形質細胞様樹状細胞(pDC)により産生される。主にウイルス感染に対する自然免疫に関与する。その合成を担う遺伝子は、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21と称される13サブタイプに入る。これらの遺伝子は、染色体9上のクラスターに一緒に見られる。
【0690】
IFNβタンパク質は線維芽細胞により多量に産生される。主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。IFNβ1およびIFNβ3の2タイプのIFNβが記載されている。天然および組み換え形態のIFNβ1は抗ウイルス、抗細菌および抗癌性質を有する。
【0691】
II型インターフェロン(ヒトにおけるIFNγ)は免疫インターフェロンとしても知られ、IL12により活性化される。さらに、II型インターフェロンは、細胞毒性T細胞およびTヘルパー細胞により放出される。
【0692】
III型インターフェロンは、IL10R2(CRF2-4とも称される)およびIFNLR1(CRF2-12とも称される)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。I型およびII型IFNよりも最近になって発見されたが、最近の情報は、あるタイプのウイルスまたは真菌感染におけるIII型IFNの重要性を示す。
【0693】
一般に、I型およびII型インターフェロンは免疫応答の制御および活性化を担う。
【0694】
本開示により、I型インターフェロンは好ましくはIFNαまたはIFNβ、より好ましくはIFNαである。
【0695】
本開示により、インターフェロンは天然に存在するインターフェロンまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。インターフェロンはヒトインターフェロンであってよく、かつ脊椎動物のいずれか、特に哺乳動物のいずれかに由来してよい。
【0696】
インターロイキン
インターロイキン(IL)は、顕著な構造特性に基づき、4つの主要な群に分割され得る、一群のサイトカイン(分泌型タンパク質およびシグナル分子)である。しかしながら、それらのアミノ酸配列類似性はむしろ弱い(一般に15~25%同一性)。ヒトゲノムは50を超えるインターロイキンおよび関連タンパク質をコードする。
【0697】
本開示により、インターロイキンは天然に存在するインターロイキンまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。インターロイキンはヒトインターロイキンであってよく、かつ脊椎動物のいずれか、特に哺乳動物のいずれかに由来してよい。
【0698】
延長PK基
ここに記載する免疫刺激剤ポリペプチドは、免疫刺激剤部分および異種ポリペプチド(すなわち、免疫刺激剤ではないポリペプチド)を含む融合またはキメラポリペプチドとして調製され得る。免疫刺激剤は、循環半減期を延長する延長PK基に融合させ得る。延長PK基の非限定的例は下に記載される。サイトカインなどの免疫刺激剤またはそのバリアントの循環半減期を延長させる他のPK基も本発明に適用可能であることは、理解されるべきである。ある実施態様において、延長PK基は血清アルブミンドメイン(例えば、マウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
【0699】
ここで使用する用語「PK」は「薬物動態」の略語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝および排出を含む、化合物の性質を包含する。ここで使用する「延長PK基」は、生物学的活性分子に融合したときまたは一緒に投与されたとき、生物学的活性分子の循環半減期を延長させる、タンパク質、ペプチドまたは部分をいう。延長PK基の例は、血清アルブミン(例えば、HSA)、免疫グロブリンFcまたはFcフラグメントおよびそのバリアント、トランスフェリンおよびそのバリアントおよびヒト血清アルブミン(HSA)結合剤を含む(米国公開番号2005/0287153および2007/0003549に開示のとおり)。他の例示的延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、Kontermann, Expert Opin Biol Ther, 2016 Jul;16(7):903-15に開示される。ここで使用する「延長PK」免疫刺激剤は、延長PK基と組み合わせた免疫刺激剤部分をいう。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤は、免疫刺激剤部分が延長PK基に結合または融合した融合タンパク質である。
【0700】
ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独(すなわち、延長PK基に融合していない免疫刺激剤)に対して延長している。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独の血清半減期に対して少なくとも20%、40%、60%、80%、100%、120%、150%、180%、200%、400%、600%、800%または1000%長い。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独の血清半減期より少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍または50倍大きい。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間または200時間である。
【0701】
ここで使用する「半減期」は、例えば、天然機構による分解および/または排除または隔離のため、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の血清または血漿濃度がインビボで50%減少するのにかかる時間をいう。ここで使用するのに適する延長PK免疫刺激剤は、インビボで安定化され、その半減期が、例えば、分解および/または排除または隔離に耐える血清アルブミン(例えば、HSAまたはMSA)への融合により延長される。半減期は、薬物動態分析などのそれ自体知られるあらゆる方法で決定され得る。適当な技術は当業者には明らかであり、例えば、一般に適当な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適当に投与し;該対象から一定間隔で血液サンプルまたは他のサンプルを集め;該血液サンプル中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定し;そしてこうして得られたデータ(プロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する過程を含み得る。さらなる詳細は、例えば、Kenneth, A. et al., Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and in Peters et al., Pharmacokinetic Analysis: A Practical Approach (1996)などの標準的手引きに提供される。Gibaldi, M. et al., Pharmacokinetics, 2nd Rev. Edition, Marcel Dekker (1982)にも言及し得る。
【0702】
ある実施態様において、延長PK基は、血清アルブミンまたはそのフラグメントまたは血清アルブミンもしくはそのフラグメントのバリアント(本発明の目的でその全ては用語「アルブミン」に含まれる)を含む。ここに記載するポリペプチドは、アルブミン融合タンパク質を形成するようにアルブミン(またはそのフラグメントまたはバリアント)に融合され得る。このようなアルブミン融合タンパク質は、米国公開20070048282に開示される。
【0703】
ここで使用する「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子の治療タンパク質、特に免疫刺激剤などのタンパク質への少なくとも1分子のアルブミン(またはそのフラグメントまたはバリアント)の融合により形成されたタンパク質をいう。アルブミン融合タンパク質は、治療タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、インフレームでアルブミンをコードするポリヌクレオチドに連結された核酸の翻訳により産生され得る。治療タンパク質およびアルブミンは、アルブミン融合タンパク質の一部として、各々アルブミン融合タンパク質の「部分」、「領域」または「成分」(例えば、「治療タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と呼ばれ得る。高度に好ましい実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療タンパク質(治療タンパク質の成熟形態を含むが、それに限定されない)および少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むが、それに限定されない)を含む。ある実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、投与RNAの標的臓器の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞により処理され、循環に分泌される。RNAの発現のために使用される宿主細胞の分泌経路に出現する新生アルブミン融合タンパク質の処理は、シグナルペプチド開裂;ジスルフィド結合の形成;適切な折りたたみ;炭水化物の付加および処理(例えば、NおよびO結合グリコシル化など);特異的タンパク分解性開裂;および/または多量体タンパク質への集合を含み得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にN末端にシグナルペプチドを有する、処理されていない形態でRNAによりコードされ、細胞による分泌後、好ましくは特にシグナルペプチドが開裂されている処理された形態で存在する。最も好ましい実施態様において、「処理された形態のアルブミン融合タンパク質」は、N末端シグナルペプチド開裂を受けたアルブミン融合タンパク質産物をいい、ここでまた「成熟アルブミン融合タンパク質」ともいう。
【0704】
好ましい実施態様において、治療タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合していないときの同じ治療タンパク質の血漿安定性と比較して、高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、一般に治療タンパク質がインビボで投与され、血流に運び込まれるときと、治療タンパク質が分解され、血流から最終的に体から治療タンパク質を浄化する腎臓または肝臓などの臓器に浄化されるときの間の期間をいう。血漿安定性は、血流中の治療タンパク質の半減期の観点で計算される。血流中の治療タンパク質の半減期は、当分野で知られる一般的アッセイにより容易に決定され得る。
【0705】
ここで使用する「アルブミン」は、まとめてアルブミンタンパク質またはアミノ酸配列またはアルブミンの1以上の機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するアルブミンフラグメントもしくはバリアントをいう。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンまたはそのフラグメントもしくはバリアント、特に成熟形態のヒトアルブミンまたは他の脊椎動物からのアルブミンまたはそのフラグメントまたはこれら分子のバリアントをいう。アルブミンは、脊椎動物のいずれか、特に哺乳動物のいずれか、例えばヒト、ウシ、ヒツジまたはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンは、トリおよびサケを含むが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療タンパク質部分と異なる動物からでよい。
【0706】
ある実施態様において、アルブミンは、US5,876,969、WO2011/124718、WO2013/075066およびWO2011/0514789に記載のものなどヒト血清アルブミン(HSA)またはそのフラグメントもしくはバリアントである。
【0707】
用語、ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)はここでは相互交換可能に使用される。用語「アルブミン」および「血清アルブミン」は広義であり、ヒト血清アルブミン(ならびにそのフラグメントおよびバリアント)ならびに他の種からのアルブミン(ならびにそのフラグメントおよびバリアント)を含む。
【0708】
ここで使用する、治療タンパク質の治療的活性または血漿安定性延長に十分なアルブミンのフラグメントは、非融合状態の血漿安定性と比較して、アルブミン融合タンパク質の治療タンパク質部分の血漿安定性が延長または拡張されるように、タンパク質の治療的活性または血漿安定性を安定化または延長するために長さまたは構造が十分であるアルブミンのフラグメントをいう。
【0709】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の完全長を含んでよく、または治療的活性または血漿安定性を安定化またはできる1以上のそのフラグメントを含んでよい。このようなフラグメントは10以上アミノ酸長であり得て、アルブミン配列からの約15、20、25、30、50以上連続アミノ酸であり得るかまたはアルブミンの特異的ドメインの一部または全てを含み得る。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにかかるHSAの1以上のフラグメントが使用され得る。好ましい実施態様において、HSAフラグメントは成熟形態のHSAである。
【0710】
一般的にいうと、アルブミンフラグメントまたはバリアントは少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
【0711】
本開示により、アルブミンは天然に存在するアルブミンまたはそのフラグメントもしくはバリアントであり得る。アルブミンはヒトアルブミンであってよく、かつ脊椎動物のいずれか、特に哺乳動物のいずれかに由来してよい。
【0712】
好ましくはアルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンおよびC末端部分として治療タンパク質を含む。あるいはC末端部分としてアルブミンおよびN末端部分として治療タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質もまた使用され得る。他の実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端およびC末端両方に融合した治療タンパク質を有する。好ましい実施態様において、N末端およびC末端で融合した治療タンパク質は同じ治療タンパク質である。他の好ましい実施態様において、N末端およびC末端で融合した治療タンパク質は異なる治療タンパク質である。ある実施態様において、異なる治療タンパク質はいずれもサイトカインである。
【0713】
ある実施態様において、治療タンパク質は、ペプチドリンカーを介してアルブミンに連結される。融合部分間のリンカーペプチドは、部分間の大きな物理的分離を提供し、故に、例えば、その同族受容体への結合のための、治療タンパク質部分の利用可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、柔軟またはより硬いようにアミノ酸からなり得る。リンカー配列はプロテアーゼによりまたは化学的に切断可能であり得る。
【0714】
ここで使用する用語「Fc領域」は、天然免疫グロブリンの、その2つの重鎖の各Fcドメイン(またはFc部分)により形成される部分をいう。ここで使用する用語「Fcドメイン」は、単一免疫グロブリン(Ig)重鎖の部分またはフラグメントをいい、ここで、FcドメインはFvドメインを含まない。ある実施態様において、Fcドメインは、パパイン開裂部位のすぐ上流のヒンジ領域で開始し、抗体のC末端で終了する。従って、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメインまたはバリアント、部分またはそのフラグメントの少なくとも1個を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。ある実施態様において、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。ある実施態様において、FcドメインはCH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全てまたは一部)を欠く。ここでのFcドメインは、一般に免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全てまたは一部を含む、ポリペプチドをいう。これは、CH1、ヒンジ、CH2および/またはCH3ドメイン全体ならびに、例えば、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインのみを含むこのようなペプチドのフラグメントを含むポリペプチドを含むが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体を含むが、これらに限定されない、あらゆる種および/またはあらゆるサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは天然FcおよびFcバリアント分子を含む。ここに示すとおり、天然に存在する免疫グロブリン分子の天然Fcドメインからアミノ酸配列が変化するように、あらゆるFcドメインが修され得ることは、当業者に理解される。ある実施態様において、Fcドメインのエフェクター機能(例えば、FcγR結合)は減少している。
【0715】
ここに記載するポリペプチドのFcドメインは、種々の免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子由来のCH2および/またはCH3ドメインおよびIgG3分子由来のヒンジ領域を含み得る。他の例では、Fcドメインは一部IgG1分子および一部IgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含み得る。他の例では、Fcドメインは一部IgG1分子および一部IgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0716】
ある実施態様において、延長PK基は、FcドメインまたはそのフラグメントまたはFcドメインもしくはそのフラグメントのバリアント(本発明の目的でその全ては用語「Fcドメイン」に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本発明における使用に適するFcドメインは、多数の異なる供給源から得られ得る。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒト免疫グロブリンに由来する。ある実施態様において、FcドメインはヒトIgG1定常領域由来である。しかしながら、Fcドメインが、例えば、齧歯類(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えばチンパンジー、マカク)種を含む、他の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることは、理解される。
【0717】
さらに、Fcドメイン(またはそのフラグメントまたはバリアント)は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むあらゆる免疫グロブリンクラスおよびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むあらゆる免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
【0718】
多様なFcドメイン遺伝子配列(例えば、マウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)が、公的に利用可能な受託機関の形で入手可能である。特定のエフェクター機能を欠くおよび/または免疫原性を減少させるための特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインが選択され得る。抗体の多くの配列および抗体をコードする遺伝子は公開されており、適当なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2および/またはCH3配列またはそのフラグメントもしくはバリアント)は、これら配列から、当分野で認識されている技術を使用してもらされ得る。
【0719】
ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2005/0287153、US2007/0003549、US2007/0178082、US2007/0269422、US2010/0113339、WO2009/083804およびWO2009/133208に記載されるもののような、血清アルブミン結合タンパク質である。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US7,176,278およびUS8,158,579に開示のトランスフェリンである。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2007/0178082、US2014/0220017およびUS2017/0145062に開示されるもののような、血清免疫グロブリン結合タンパク質である。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2012/0094909に開示のもののような、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質の製造方法もUS2012/0094909に開示される。Fn3ベースの延長PK基の非限定的例は、Fn3(HSA)、すなわち、ヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
【0720】
ある態様において、本発明における使用に適する延長PK免疫刺激剤は、1以上のペプチドリンカーを用い得る。ここで使用する用語「ペプチドリンカー」は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2以上のドメイン(例えば、延長PK部分および免疫刺激剤部分)を接続するペプチドまたはポリペプチド配列をいう。例えば、ペプチドリンカーを、免疫刺激剤部分のHSAドメインへの接続に使用し得る。
【0721】
延長PK基を例えば免疫刺激剤と融合するのに適するリンカーは当分野で周知である。例示的リンカーはグリシン-セリン-ポリペプチドリンカー、グリシン-プロリン-ポリペプチドリンカーおよびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーを含む。ある実施態様において、リンカーはグリシン-セリン-ポリペプチドリンカー、すなわち、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドである。
【0722】
上記異種ポリペプチドに加えてまたはその代わりに、ここに記載する免疫刺激剤ポリペプチドは、「マーカー」または「レポーター」をコードする配列を含み得る。マーカーまたはレポーター遺伝子の例は、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、β-ガラクトシダーゼおよびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。
【0723】
医薬組成物
ここに記載する薬剤は医薬組成物または医薬で投与でき、何らかの適当な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0724】
ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は、対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答の誘導のための免疫原性組成物である。例えば、ある実施態様において、免疫原性組成物はワクチンである。
【0725】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAなどのここに記載する成分は、薬学的に許容される担体を含み得るおよび所望により1以上のアジュバント、安定化剤などを含み得る医薬組成物で投与され得る。ある実施態様において、医薬組成物は治療的処置または予防的処置のため、例えば、コロナウイルス感染の処置または予防に使用するためである。
【0726】
用語「医薬組成物」は、好ましくは、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物と共に、治療上有効な薬剤を含む製剤に関する。該医薬組成物は、対象への該医薬組成物の投与により、疾患または障害の処置、予防または重症度低減に有用である。医薬組成物は当分野で医薬製剤としても知られる。
【0727】
本発明の医薬組成物は、1以上のアジュバントを含み得るまたは1以上のアジュバントと共に投与され得る。用語「アジュバント」は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えば、フロイントアジュバント)、鉱物化合物(例えばミョウバン)、細菌産物(例えば百日咳菌由来毒素)または免疫刺激複合体などの不均一な化合物群を含む。アジュバントの例は、LPS、GP96、CpG オリゴデオキシヌクレオチド、増殖因子およびサイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインを含むが、これらに限定されない。サイトカインはIL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらに知られるアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバントまたはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本発明における使用に適する他のアジュバントは、Pam3Cysなどのリポペプチドを含む。
【0728】
本発明の医薬組成物は、一般に「薬学的有効量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0729】
用語「薬学的に許容される」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性性をいう。
【0730】
用語「薬学的有効量」または「治療有効量」は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量をいう。特定の疾患の処置の場合、所望の反応は、好ましくは疾患経過の阻止に関する。これは、疾患進行の減速および、特に、疾患進行妨害または逆転を含む。疾患の処置における所望の反応は、該疾患または該状態の発症遅延または発症予防でもあり得る。ここに記載する組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重大さ、年齢、生理学的状態、体格および体重を含む患者の各個のパラメータ、処置の期間、付随的治療のタイプ(存在するならば)、具体的投与経路および類似の因子による。従って、ここに記載する組成物を投与する用量は、種々のこのようなパラメータにより得る。初期用量で患者の応答が不十分である場合、高用量(または異なる、より局在化された投与経路により達成される、効果としての高用量)が使用され得る。
【0731】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝液、防腐剤および所望により他の治療剤を含み得る。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は1以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物を含む。
【0732】
本発明の医薬組成物で使用するのに適する防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含むが、これらに限定されない。
【0733】
ここで使用する用語「添加物」は、本発明の医薬組成物に存在し得るが、活性成分ではない物質をいう。添加物の例は、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、濃厚剤、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、風味剤または着色剤を含むが、これらに限定されない。
【0734】
用語「希釈剤」は、希釈および/または菲薄化剤に関する。さらに、用語「希釈剤」は、流体、液体または固体懸濁液および/または混合媒体のいずれか1以上を含む。適当な希釈剤の例は、エタノール、グリセロールおよび水を含む。
【0735】
用語「担体」は、医薬組成物の投与を促進、増強または可能にするために、活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分をいう。ここで使用する担体は、対象への投与に適する、適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質の1以上であり得る。適当な担体は、無菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、無菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0736】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、添加物または希釈剤は医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)に記載される。
【0737】
医薬担体、添加物または希釈剤は、意図される投与経路および標準薬務に関して選択され得る。
【0738】
ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。ある実施態様において、医薬組成物局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、消化管を介する吸収が関与する経腸投与または非経腸投与を含み得る。ここで使用する「非経腸投与」は、静脈内注射によるなどの、消化管を介する以外の何らかの方法での投与をいう。好ましい実施態様において、医薬組成物は筋肉内投与用に製剤化される。他の実施態様において、医薬組成物は全身投与、例えば、静脈内投与用に製剤化される。
【0739】
ここで使用する用語「共投与」は、異なる化合物または組成物(例えば、抗原をコードするRNAおよび免疫刺激剤をコードするRNA)が同じ患者に投与される過程を意味する。異なる化合物または組成物は、同時、本質的に同時または逐次的に投与され得る。
【0740】
ここに記載する医薬組成物および製品は、例えば、0.50mg/mLの濃度で、注射用溶液の凍結濃縮物として提供され得る。ある実施態様において、注射用溶液の調製のために、製剤を解凍し、例えば、1工程希釈方法で、等張塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%NaCl、食塩水)で希釈する。ある実施態様において、静菌性塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%NaCl、食塩水)は希釈剤として使用できない。ある実施態様において、希釈製剤は灰白色懸濁液である。最終注射用溶液の濃度は、投与される各用量レベルにより変わる。
【0741】
ある実施態様において、微生物汚染のリスクによりおよび調製過程の複数用量アプローチを考慮して、調整開始後6時間以内に投与を実施する。ある実施態様において、この6時間の間、調製、取り扱いおよび移動のための室温ならびに保存のための2~8℃の2つの条件が許容される。
【0742】
ここに記載する組成物は、例えば、所望の温度の維持のために冷却システム(例えば、ドライアイスであり得るまたはそれを含み得る)を利用して、温度制御条件、例えば、約4~5℃以下、約-20℃以下、-70℃±10℃(例えば、-80℃~-60℃)の温度条件下、輸送および/または保管され得る。ある実施態様において、ここに記載する組成物は温度制御保温シッパーで輸送される。このようなシッパーは、各積荷の位置および温度を追跡するためGPS可能熱センサーを含み得る。組成物は、例えば、ドライアイスの再充填により保管され得る。
【0743】
処置
本発明は、有効量のここに記載するコロナウイルスワクチン抗原をコードするRNAを含む組成物を投与することを含む、対象におけるコロナウイルスに対する適応免疫応答を誘導するための方法および薬剤を提供する。
【0744】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象にコロナウイルス、コロナウイルス感染またはコロナウイルスに関連する疾患もしくは障害に対する免疫を提供する。本発明は、故に、コロナウイルスに関連する感染、疾患または障害を処置または予防するための方法および薬剤を提供する。
【0745】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、コロナウイルスに関連する感染、疾患または障害を有する対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、コロナウイルスに関連する感染、疾患または障害の対象を発症するリスクがある対象に投与される。例えば、ここに記載する方法および薬剤は、コロナウイルスに接触するリスクがある対象に投与され得る。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、コロナウイルスが流行している地理的領域に居住している、そこに旅行するまたは旅行することが予測される対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、コロナウイルスが流行している地理的領域に居住している、そこに旅行するまたは旅行することが予測される他人と接触しているまたは接触が予測される対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、仕事を介してまたはその他接触によりコロナウイルスに曝されていることが知られている対象に投与される。ある実施態様において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、SARS-CoV-2および/またはその抗原もしくはエピトープまたはそれと交差反応性のものへの先の曝露および/または感染の証拠がある対象に投与される。例えば、ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、抗体において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1以上のエピトープと反応性のB細胞および/またはT細胞が検出可能および/または検出されている対象に投与される。
【0746】
ワクチンとして有用である組成物について、組成物は、細胞、組織または対象(例えば、ヒト)でコロナウイルス抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。ある実施態様において、組成物は、細胞、組織または対象(例えば、ヒト)でコロナウイルス抗原に対する免疫応答を誘導する。いくつかの例で、ワクチンは哺乳動物における防御免疫応答を誘導する。本発明の治療的化合物または組成物は、疾患または障害を有するまたは発症するリスクがある(または疑われる)対象に予防的(すなわち、疾患または障害を予防するため)または治療的(すなわち、疾患または障害を処置するため)に投与され得る。このような対象は、標準臨床的方法を使用して同定され得る。本開示の文脈において、予防投与は、疾患または障害が予防されるあるいは進行が遅延されるように、疾患の明白な臨床的症状が顕在化する前に行う。医学分野の状況において、用語「予防」は、疾患による死亡または罹病の負担を減少させるあらゆる活性を含む。予防は一次、二次および三次予防レベルで生じ得る。一次予防は疾患の発症の回避であるのに対して、二次および三次レベルの予防は、疾患進行および症状出現の予防ならびに機能回復および疾患関連合併症軽減による既に確立された疾患の負の影響の軽減を目的とする活性を含む。
【0747】
ある実施態様において、本発明の免疫原性組成物またはワクチンの投与は単回投与で実施されまたは複数投与によりブーストされ得る。
【0748】
ある実施態様において、1回あたり、0.1μg~300μg、0.5μg~200μgまたは1μg~100μg、例えば約1μg、約3μg、約10μg、約30μg、約50μgまたは約100μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。ある実施態様において、本発明は、単回投与での投与を想起する。ある実施態様において、本発明は、プライミング用量、続く1以上のブースター用量での投与を想起する。ブースター投与または最初のブースター投与は、プライミング用量の投与7~28日または14~24日後に投与され得る。
【0749】
ある実施態様において、1回あたり、60μgまたはそれ以下、50μgまたはそれ以下、40μgまたはそれ以下、30μgまたはそれ以下、20μgまたはそれ以下、10μgまたはそれ以下、5μgまたはそれ以下、2.5μgまたはそれ以下または1μgまたはそれ以下のここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0750】
ある実施態様において、1回あたり、少なくとも0.25μg、少なくとも0.5μg、少なくとも1μg、少なくとも2μg、少なくとも3μg、少なくとも4μg、少なくとも5μg、少なくとも10μg、少なくとも20μg、少なくとも30μgまたは少なくとも40μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0751】
ある実施態様において、1回あたり、0.25μg~60μg、0.5μg~55μg、1μg~50μg、5μg~40μgまたは10μg~30μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0752】
ある実施態様において、1回あたり、約30μgのここに記載するRNAの量が投与される。ある実施態様において、このような用量の少なくとも2回が投与される。例えば、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得る。
【0753】
ある実施態様において、ここに記載するRNAワクチンの有効性(例えば、2回投与、ここで、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得て、例えば、1回あたり約30μgの量で投与される)は、2回目の投与7日後開始(例えば、2回目を1回目の投与21日後に投与したならば、1回目の投与28日後開始)して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90または少なくとも95%である。ある実施態様において、このような有効性は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳またはそれ以上の集団で観察される。ある実施態様において、少なくとも65歳、例えば65~80歳、65~75歳または65~70歳の集団で2回目の投与7日後開始(例えば、2回目を1回目の投与21日後に投与したならば、1回目の投与28日後開始)するここに記載するRNAワクチンの有効性(例えば、2回投与、ここで、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得て、例えば、1回あたり約30μgの量で投与される)は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%または少なくとも95%である。このような有効性は、最大1カ月、2カ月、3カ月、6カ月またはそれより長い期間にわたり観察され得る。
【0754】
ある実施態様において、ワクチン有効性は、感染の証拠を有する対象数のパーセント減少として定義される(ワクチン接種した対象対ワクチン接種していない対象)。
【0755】
ある実施態様において、有効性を、COVID-19の潜在的症例についての調査を介して評価する。何らかの時点で、患者がここでの目的での急性呼吸器疾病を発症したならば、患者はCOVID-19疾病を有する可能性があると考えられ得る。評価は、SARS-CoV-2を検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験を使用して試験し得る、鼻腔(中鼻甲介)スワブを含み得る。さらに、地域の標準治療試験からの臨床情報および結果が評価され得る。
【0756】
ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連症例の定義を利用でき、ここで:
・ 確認されたCOVID-19:症状がある期間中またはその前後4日以内の次の症状の少なくとも1つの存在およびSARS-CoV-2 NAAT(核酸増幅ベースの試験)陽性:発熱;今までになかった咳嗽またはその増加;今までになかった息切れまたはその増加;悪寒;今までになかった筋肉痛またはその増加;今までになかった味覚または嗅覚喪失;咽喉炎;下痢;嘔吐。
【0757】
これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連症例の定義を利用でき、ここで、CDCにより定義される次のさらなる症状の1以上が考慮され得る:疲労;頭痛;鼻閉または鼻汁;悪心。
【0758】
ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連重症症例の定義を利用できる
・ 確認された重症COVID-19:確認されたCOVID-19および次の少なくとも1つの存在:安静時の重症全身疾病の臨床徴候(例えば、RR≧30呼吸/分、HR≧125心拍/分、室内気でsea levelでSpO2≦93%またはPaO2/FiO2<300mmHg);呼吸不全(高流酸素、非侵襲性人工呼吸、機械的人工呼吸またはECMOが必要として定義される);ショックの証拠(例えば、SBP<90mmHg、DBP<60mmHgまたは昇圧剤必要);顕著な急性腎臓、肝臓または神経性機能不全;ICU入院;死亡。
【0759】
これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、COVID-19の臨床症状がない患者には血清学的定義が使用され得る:例えば、確認されたCOVID-19がなく、SARS-CoV-2に対する抗体陽転確認:例えば、先にN結合抗体結果陰性であった患者のN結合抗体結果陽性。
【0760】
ある実施態様において、次のアッセイのいずれかまたは全てが血清サンプルで実施され得る:SARS-CoV-2中和アッセイ;S1結合IgGレベルアッセイ;RBD結合IgGレベルアッセイ;N結合抗体アッセイ。
【0761】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は小児集団に投与される。種々の実施態様において、小児集団は、18歳未満、例えば、5~18歳未満、12~18歳未満、16~18歳未満、12~16歳未満または5~12歳未満の対象を含むまたはそれからなる。種々の実施態様において、小児集団は、5歳未満、例えば、2~5歳未満、12~24カ月齢未満、7~12カ月齢未満または6カ月齢未満の対象を含むまたはそれからなる。
【0762】
ある実施態様において、小児集団は、16~18歳未満対象および/または12~16歳未満対象を含む12~18歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり30μg RNA量で投与する。
【0763】
ある実施態様において、小児集団は、12~18歳未満対象および/または5~12歳未満対象を含む5~18歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、種々の実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり10μg、20μgまたは30μg RNA量で投与する。
【0764】
ある実施態様において、小児集団は、2~5歳未満の対象、12~24カ月齢未満の対象、7~12カ月齢未満の対象、6~12カ月齢未満の対象および/または6カ月齢未満の対象を含む5歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は、例えば、21~42日離れた、例えば、21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、種々の実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり10μg、20μgまたは30μg RNA量で投与する。
【0765】
ある実施態様において、小児集団で記載されるmRNA組成物(例えば、ここに記載)の有効性を、ここに記載する種々の測定基準により評価し得る(例えば、過去のSARS-CoV-2感染の血清学またはウイルス学的証拠がない対象における1000人年あたりのCOVID-19発生率;例えば、2回目の投与7日後に測定したSARS CoV-2中和力価の幾何平均比(GMR)などを含むが、これらに限定されない)。
【0766】
ある実施態様において、ここに記載する小児集団(例えば、12~16歳未満)は、ここに記載するRNA組成物(例えば、mRNA)投与後、多系炎症性症候群(MIS)(例えば、心臓、肺、腎臓、脳、皮膚、眼および/または消化器臓器などの体の様々な部位の炎症など)の出現についてモニターし得る。小児におけるMISの例示的症状は、発熱、腹痛、嘔吐、下痢、頸部痛、発疹、目の充血、過度の疲労感およびこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
【0767】
ある実施態様において、上記の投与されるRNAは、BNT162b1(RBP020.3)、BNT162b2(RBP020.1もしくはRBP020.2)またはBNT162b3(例えば、BNT162b3c)としてここに記載するヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。ある実施態様において、上記の投与されるRNAは、RBP020.2としてここに記載するヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、BNT162b3(例えば、BNT162b3c)としてここに記載するヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。
【0768】
ある実施態様において、上記の投与されるRNAは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号21のヌクレオチド配列、配列番号21のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号21のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0769】
ある実施態様において、上記の投与されるRNAは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号19または20のヌクレオチド配列、配列番号19または20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号19もしくは20のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0770】
ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号20のヌクレオチド配列、配列番号20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号20のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0771】
ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号30のヌクレオチド配列、配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、上記の投与されるRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号30のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0772】
ある実施態様において、投与されるRNAは、(i)配列番号20のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、1回あたり約30μg量で投与される。ある実施態様において、このような用量の少なくとも2回が投与される。例えば、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得る。
【0773】
ある実施態様において、ここに記載するRNAで処置する集団は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳または少なくとも65歳の対象を含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。ある実施態様において、ここに記載するRNAで処置する集団は、55~90歳、60~85歳または65~85歳の対象を含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。
【0774】
ある実施態様において、複数回の投与間の期間は少なくとも7日、少なくとも14日または少なくとも21日である。ある実施態様において、複数回の投与間の期間は7日~28日、例えば14日~23日である。
【0775】
ある実施態様において、5回を超えない、4回を超えないまたは3回を超えないここに記載するRNAが対象に投与され得る。
【0776】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、医薬品の使用と関連する有害事象(AE)、すなわち、患者における何らかの医療上好ましくない事象、例えば、何らかの好ましくないおよび意図されない徴候、症状または疾患の発生が、医薬品と関連するものであれしないものであれ、程度が軽度または中程度であるように(例えば、用量、投与頻度および/または投与回数のレジメンで)投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、有害事象(AE)が、例えば、パラセタモールまたは鎮痛、解熱(熱さまし)および/または抗炎症効果を提供する他の薬物、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェンおよびナプロキセンでの処置などでの介入により管理され得るように投与される。NSAIDには分類されないパラセタモールまたは「アセトアミノフェン」は弱い抗炎症効果を発揮し、本発明により鎮痛剤として投与され得る。
【0777】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象におけるコロナウイルス、コロナウイルス感染またはコロナウイルスに関連する疾患または障害に対する中和効果を提供する。
【0778】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるコロナウイルスを遮断または中和する免疫応答を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるコロナウイルスを遮断または中和するIgG抗体などの抗体の産生を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるACE2へのコロナウイルスSタンパク質の結合を遮断または中和する免疫応答を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるACE2へのコロナウイルスSタンパク質の結合を遮断または中和する抗体の産生を誘導する。
【0779】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、少なくとも500U/ml、1000U/ml、2000U/ml、3000U/ml、4000U/ml、5000U/ml、10000U/ml、15000U/ml、20000U/ml、25000U/ml、30000U/mlまたはそれ以上の幾何平均濃度(GMC)のIgG抗体などのRBDドメイン結合抗体を誘導する。ある実施態様において、RBDドメイン結合抗体のGMC上昇は、少なくとも14日間、21日間、28日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、12カ月間またはそれ以上持続する。
【0780】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、少なくとも100U/ml、200U/ml、300U/ml、400U/ml、500U/ml、1000U/ml、1500U/mlまたはそれ以上の幾何平均力価(GMT)のIgG抗体などの中和抗体を誘導する。ある実施態様において、中和抗体のGMT上昇は少なくとも14日間、21日間、28日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、12カ月間またはそれ以上持続する。
【0781】
ここで使用する用語「中和」は、抗体などの結合剤が受容体結合タンパク質などのウイルスの生物学的活性部位に結合し、それにより細胞のウイルス感染を阻害する、事象をいう。コロナウイルス、特にコロナウイルスSタンパク質に関して、ここで使用する用語「中和」は、抗体などの結合剤がSタンパク質のRBDドメインに結合し、それにより細胞のウイルス感染を阻害する、事象をいう。特に、用語「中和」は、結合剤が目的のウイルスの病原性(例えば細胞に感染する能力)を排除するまたは顕著に減少させる事象をいう。
【0782】
抗原性曝露に応答して産生される免疫応答のタイプは、一般に応答に関与するTヘルパー(Th)細胞のサブセットにより区別され得る。免疫応答は、広義にはTh1およびTh2の2タイプに分割され得る。Th1免疫活性化はウイルスなどの細胞内感染のために最適化され、一方Th2免疫応答は液性(抗体)応答のために最適化される。Th1細胞は、インターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生する。Th2細胞はIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10およびIL-13を産生する。Th1免疫活性化は、多くの臨床的状況で最も高度に望まれる。Th2または液性免疫応答誘発に特化したワクチン組成物は、一般に大部分のウイルス疾患に有効ではない。
【0783】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh1介在免疫応答を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh1介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるインターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)および/またはインターフェロンガンマ(IFNγ)の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh2介在免疫応答を誘導または促進しないまたはTh1介在免疫応答の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるTh2介在免疫応答を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh2介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進しないまたはTh1介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルの誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるTh2介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10および/またはIL-13の産生を誘導または促進しないまたは対象におけるインターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)および/またはインターフェロンガンマ(IFNγ)の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10および/またはIL-13の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、IL-4の産生を誘導または促進しないまたは対象におけるインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるIL-4の産生を誘導または促進する。
【0784】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどの異なるSタンパク質バリアントのパネルを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、異なるSタンパク質バリアントのパネルは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上のSタンパク質バリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、RBDドメインにアミノ酸修飾を有するバリアントおよび/またはRBDドメイン外にアミノ酸修飾を有するバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の321位(Q)に対応するアミノ酸がSであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の321位(Q)に対応するアミノ酸がLであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の341位(V)に対応するアミノ酸がIであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の348位(A)に対応するアミノ酸がTであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の354位(N)に対応するアミノ酸がDであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の359位(S)に対応するアミノ酸がNであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の367位(V)に対応するアミノ酸がFであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の378位(K)に対応するアミノ酸がSであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の378位(K)に対応するアミノ酸がRであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の408位(R)に対応するアミノ酸がIであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の409位(Q)に対応するアミノ酸がEであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の435位(A)に対応するアミノ酸がSであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の439位(N)に対応するアミノ酸がKであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の458位(K)に対応するアミノ酸がRであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の472位(I)に対応するアミノ酸がVであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の476位(G)に対応するアミノ酸がSであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の477位(S)に対応するアミノ酸がNであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の483位(V)に対応するアミノ酸がAであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の508位(Y)がHであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の519位(H)に対応するアミノ酸がPであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。ある実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸がGであるSARS-CoV-2 Sタンパク質または天然に存在するそのバリアントを含む。
【0785】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、配列番号1における501位(N)に対応する位置に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。
【0786】
配列番号1の501位(N)に対応する位置に変異を含む該Sタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の69(H)、70(V)、144(Y)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)および244(L)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。
【0787】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、VOC-202012/01を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0788】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118H。
【0789】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0790】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置にこれら変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0791】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の69位(H)および70位(V)に対応する位置に欠失を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0792】
ある実施態様において、配列番号1の69位(H)および70位(V)に対応する位置に欠失を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の144(Y)、501(N)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)および1229(M)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。
【0793】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、VOC-202012/01を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0794】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118H。
【0795】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「Cluster 5」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0796】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置にこれら変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:欠失69~70、Y453F、I692V、M1229Iおよび所望によりS1147L。
【0797】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、配列番号1における614位(D)に対応する位置に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。
【0798】
ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、501(N)、570(A)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)および1229(M)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。
【0799】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、VOC-202012/01を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0800】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118H。
【0801】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次のD80A、D215G、E484K、N501Y、D614GおよびA701Vおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244に対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0802】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の501位(N)および614位(D)に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYであり、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。
【0803】
ある実施態様において、配列番号1の501位(N)および614位(D)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、570(A)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)および1229(M)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。
【0804】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、VOC-202012/01を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0805】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hに対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0806】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次のD80A、D215G、E484K、N501Y、D614GおよびA701Vおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244に対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0807】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、配列番号1における484位(E)に対応する位置に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。
【0808】
ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、501(N)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、417(K)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0809】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0810】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0811】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「B.1.1.28」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0812】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「B.1.1.248」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0813】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176F。
【0814】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の501位(N)および484位(E)に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYであり、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。
【0815】
ある実施態様において、配列番号1の501位(N)および484位(E)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、417(K)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0816】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0817】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501YおよびA701Vおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0818】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「B.1.1.248」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0819】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176F。
【0820】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の501位(N)、484位(E)および614(D)に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYであり、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKであり、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。
【0821】
ある実施態様において、配列番号1の位置501位(N)、484位(E)および614位(D)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、570(A)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、417(K)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0822】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびD614Gおよび所望によりL18F、R246I、K417Nおよび欠失242~244。
【0823】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の242位(L)、243位(A)および244位(L)に対応する位置に欠失を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0824】
ある実施態様において、配列番号1の242位(L)、243位(A)および244位(L)に対応する位置に欠失を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、501(N)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、417(K)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、417(K)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0825】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0826】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501Y、A701Vおよび欠失242~244および所望によりL18F、R246IおよびK417N。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0827】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、配列番号1における417位(K)に対応する位置に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTである。
【0828】
ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、501(N)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、484(E)、701(A)、18(L)、246(R)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0829】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0830】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびK417Nおよび所望によりL18F、R246Iおよび欠失242~244。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0831】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「B.1.1.248」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0832】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176F。
【0833】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1の417位(K)および484位(E)および/または501(N)に変異を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はNであり、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKであるおよび/または配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の417位(K)に対応するアミノ酸はTであり、配列番号1の484位(E)に対応するアミノ酸はKであるおよび/または配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。
【0834】
ある実施態様において、配列番号1の417位(K)および484位(E)および/または501位(N)に対応する位置に変異を含むSタンパク質バリアントは、1以上のさらなる変異を含み得る。このような1以上のさらなる変異は、配列番号1の次の69(H)、70(V)、144(Y)、570(A)、614(D)、681(P)、716(T)、982(S)、1118(D)、80(D)、215(D)、701(A)、18(L)、246(R)、242(L)、243(A)、244(L)、453(Y)、692(I)、1147(S)、1229(M)、20(T)、26(P)、138(D)、190(R)、655(H)、1027(T)および1176(V)の位置に対応する位置の変異から選択され得る。ある実施態様において、配列番号1の69位(H)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の70位(V)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の144位(Y)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の570位(A)に対応するアミノ酸はDである。ある実施態様において、配列番号1の614位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の681位(P)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の716位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の982位(S)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の1118位(D)に対応するアミノ酸はHである。ある実施態様において、配列番号1の80位(D)に対応するアミノ酸はAである。ある実施態様において、配列番号1の215位(D)に対応するアミノ酸はGである。ある実施態様において、配列番号1の701位(A)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の18位(L)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の246位(R)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の242位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の243位(A)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の244位(L)に対応するアミノ酸が欠失される。ある実施態様において、配列番号1の453位(Y)に対応するアミノ酸はFである。ある実施態様において、配列番号1の692位(I)に対応するアミノ酸はVである。ある実施態様において、配列番号1の1147位(S)に対応するアミノ酸はLである。ある実施態様において、配列番号1の1229位(M)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の20位(T)に対応するアミノ酸はNである。ある実施態様において、配列番号1の26位(P)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の138位(D)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の190位(R)に対応するアミノ酸はSである。ある実施態様において、配列番号1の655位(H)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、配列番号1の1027位(T)に対応するアミノ酸はIである。ある実施態様において、配列番号1の1176位(V)に対応するアミノ酸はFである。
【0835】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、501.V2を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0836】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:D80A、D215G、E484K、N501Y、A701VおよびK417Nおよび所望によりL18F、R246Iおよび欠失242~244。該Sタンパク質バリアントは、配列番号1の614位に対応する位置にD->G変異も含み得る。
【0837】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、「B.1.1.248」を標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。
【0838】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象において、配列番号1における次の対応する位置に次の変異を含むSタンパク質バリアントを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する:L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027IおよびV1176F。
【0839】
ここで使用する用語「・・・位に対応するアミノ酸」は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、特に配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置番号に対応するアミノ酸位置番号をいう。SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントなどの他のコロナウイルスSタンパク質バリアントにおける対応するアミノ酸位置は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、特に配列番号1に示すアミノ酸配列とのアラインメントにより判明し得る。配列または配列のセグメントをアラインし、それにより本発明によるアミノ酸位置に対する配列における対応する位置を決定する方法は当分野で周知であると考えられる。ALIGN、ClustalWまたは類似のものなどの標準配列アラインメントプログラムが、一般にデフォルト設定で使用され得る。
【0840】
ある実施態様において、抗体応答により標的とされる種々のSタンパク質バリアントのパネルは、上記Q321S、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378S、R408I、Q409E、A435S、K458R、I472V、G476S、V483A、Y508H、H519PおよびD614Gバリアントからなる群から選択される少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上のSタンパク質バリアントを含む。ある実施態様において、抗体応答により標的とされる種々のSタンパク質バリアントのパネルは、上記Q321S、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378S、R408I、Q409E、A435S、K458R、I472V、G476S、V483A、Y508H、H519PおよびD614Gバリアントからなる群からの全Sタンパク質バリアントを含む。
【0841】
ある実施態様において、抗体応答により標的とされる種々のSタンパク質バリアントのパネルは、上記Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519PおよびD614Gバリアントからなる群から選択される少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上のSタンパク質バリアントを含む。ある実施態様において、抗体応答により標的とされる種々のSタンパク質バリアントのパネルは、上記Q321L、V341I、A348T、N354D、S359N、V367F、K378R、R408I、Q409E、A435S、N439K、K458R、I472V、G476S、S477N、V483A、Y508H、H519PおよびD614Gバリアントからなる群からの全Sタンパク質バリアントを含む。
【0842】
ある実施態様において、例えば、ここに記載するRNAによりコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントについてここに記載した変異の1以上を含む。ある実施態様において、例えば、ここに記載するRNAによりコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1の501位(N)に対応する位置に変異を含む。ある実施態様において、配列番号1の501位(N)に対応するアミノ酸はYである。ある実施態様において、例えば、ここに記載するRNAによりコードされるSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、VOC-202012/01、501.V2、Cluster 5およびB.1.1.248からなる群から選択されるSARS-CoV-2バリアントのSARS-CoV-2 Sタンパク質の全変異などの1以上の変異を含む。ある実施態様において、例えば、ここに記載するRNAによりコードされる、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントは、配列番号1の80位にアラニン置換、215位にグリシン置換、484位にリシン置換、501位にチロシン置換、701位にバリン置換、18位にフェニルアラニン置換、246位にイソロイシン置換、417位にアスパラギン置換、614位にグリシン置換、242~244位に欠失をならびに987位および986位にプロリン置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0843】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、細胞介在免疫応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)を誘導する。ある実施態様において、T細胞は、LPFNDGVYF、GVYFASTEK、YLQPRTFLL、QPTESIVRF、CVADYSVLY、KCYGVSPTK、NYNYLYRLF、FQPTNGVGY、IPFAMQMAY、RLQSLQTYV、GTHWFVTQR、VYDPLQPEL、QYIKWPWYIおよびKWPWYIWLGFからなる群から選択される1以上のエピトープ(例えば、MHCクラスI制限エピトープ)を認識する。ある実施態様において、エピトープYLQPRTFLLを認識するT細胞が誘導される。ある実施態様において、エピトープNYNYLYRLFを認識するT細胞が誘導される。ある実施態様において、エピトープQYIKWPWYIを認識するT細胞が誘導される。ある実施態様において、エピトープKCYGVSPTKを認識するT細胞が誘導される。ある実施態様において、エピトープRLQSLQTYVを認識するT細胞が誘導される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、T細胞のこのような誘導を達成するレジメンにより投与される。
【0844】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、例えば、2回のここに記載するRNA投与後(ここで、2回目の投与は、1回目の投与後約21日で投与され得る)、15週以降、16週以降、17週以降、18週以降、19週以降、20週以降、21週以降、22週以降、23週以降、24週以降または25週以降検出可能な細胞介在免疫応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、細胞介在免疫応答のこのような誘導を達成するレジメンにより投与される。
【0845】
ある実施態様において、例えば、ここに記載する量およびレジメンで例えば、21日離して、投与される、例えば、1回あたり30μgの2回投与で、投与され得る、ここに記載するRNAを使用する、ここに記載するコロナウイルスに対するワクチン接種は、一定期間後、例えば、コロナウイルス感染に対する保護の減少が観察されたら、最初のワクチン接種に使用したのと同じまたは異なるワクチンを使用して繰り返し得る。このようなある期間は少なくとも6カ月、1年、2年などであり得る。ある実施態様において、最初のワクチン接種に使用したとの同じRNAが2回目またはさらなるワクチン接種で使用されるが、低用量または低投与頻度である。例えば、最初のワクチン接種は投与あたり約30μgの用量を使用するワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、このような用量の少なくとも2回が投与され(例えば、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得る)、2回目またはさらなるワクチン接種は投与あたり約30μgより少ない用量を使用するワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、このような用量の1つのみが投与される。ある実施態様において、最初のワクチン接種で使用されたのと異なるRNAが2回目またはさらなるワクチン接種で使用され、例えば、BNT162b2が最初のワクチン接種について使用され、BNT162B1またはBNT162b3が2回目またはさらなるワクチン接種で使用される。
【0846】
ある実施態様において、ワクチン接種レジメンは、少なくとも2回のここに記載のRNA、例えば、2回のここに記載のRNA(ここで、2回目の投与は1回目の投与後約21後に投与し得る)を使用する第1のワクチン接種および単回投与または複数回投与、例えば、2回のここに記載のRNAを使用する第2のワクチン接種を含む。種々の実施態様において、第2のワクチン接種を、第1のワクチン接種、例えば、最初の2回投与レジメンの投与3~24カ月、6~18カ月、6~12カ月または5~7カ月後に投与する。第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は、第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量と異なっても等しくてもよい。ある実施態様において、第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量に等しい。ある実施態様において、第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量および第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は約30μg/回である。ある実施態様において、第1のワクチン接種に使用したのと同じRNAを第2のワクチン接種に使用する。ある実施態様において、第1のワクチン接種および第2のワクチン接種で使用するRNAはBNT162b2である。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用したのと異なるRNAが第2のワクチン接種で使用される。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用されるRNAはBNT162b2であり、第2のワクチン接種で使用されるRNAは、SARS-CoV-2バリアント株、例えば、ここに記載する株のSARS-CoV-2 Sタンパク質をコードするRNAである。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用されるRNAはBNT162b2であり、第2のワクチン接種で使用されるRNAは、第2のワクチン接種時優性なまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株のSARS-CoV-2 Sタンパク質をコードするRNAである。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用されるRNAはBNT162b2であり、第2のワクチン接種で使用されるRNAは、SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどのSタンパク質バリアントについてここに記載する変異の1以上を含むSARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードする、RNAである。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用されるRNAはBNT162b2であり、第2のワクチン接種で使用されるRNAは、VOC-202012/01、501.V2、Cluster 5およびB.1.1.248からなる群から選択されるSARS-CoV-2バリアントのSARS-CoV-2 Sタンパク質の1以上の変異、例えば全変異を含む、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性バリアントまたはSARS-CoV-2 Sタンパク質もしくはその免疫原性バリアントの免疫原性フラグメントをコードするRNAである。ある実施態様において、第1のワクチン接種で使用されるRNAは、配列番号1の986位および987位にプロリン残基置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、第2のワクチン接種で使用されるRNAは、配列番号1の80位にアラニン置換、215位にグリシン置換、484位にリシン置換、501位にチロシン置換、701位にバリン置換、18位にフェニルアラニン置換、246位にイソロイシン置換、417位にアスパラギン置換、614位にグリシン置換、242~244位に欠失ならびに986位および987位にプロリン置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAである。
【0847】
ある実施態様において、ワクチン接種レジメンは、約21日離して投与する、配列番号1の986位および987位にプロリン残基置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAの2用量を使用する第1のワクチン接種および第1のワクチン接種、すなわち、最初の2回投与レジメン、約6~12カ月後、配列番号1の986位および987位にプロリン残基置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAの単回投与または複数回投与を使用する第2のワクチン接種を含む。ある実施態様において、各RNA用量は、30μg RNAを含む。
【0848】
ある実施態様において、ワクチン接種レジメンは、約21日離して投与する、配列番号1の986位および987位にプロリン残基置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAの2用量を使用する第1のワクチン接種および第1のワクチン接種、すなわち、最初の2回投与レジメン、約6~12カ月後、配列番号1の80位にアラニン置換、215位にグリシン置換、484位にリシン置換、501位にチロシン置換、701位にバリン置換、18位にフェニルアラニン置換、246位にイソロイシン置換、417位にアスパラギン置換、614位にグリシン置換、242~244位に欠失ならびに986位および987位にプロリン置換を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAの単回投与または複数回投与を使用する第2のワクチン接種を含む。ある実施態様において、各RNA用量は、30μg RNAを含む。
【0849】
ある実施態様において、第2のワクチン接種は、免疫応答のブースト(boost)をもたらす。
【0850】
ある実施態様において、ここに記載するRNAは他のワクチンと共投与される。ある実施態様において、ここに記載するRNA組成物はインフルエンザワクチンと共投与される。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物および他の注射用ワクチンは別の時点で投与される。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は他の注射用ワクチンと同時に投与される。あるこのような実施態様において、ここに提供するRNA組成物および少なくとも1個の他の注射用ワクチンは異なる注射部位に投与される。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物を同じシリンジで何らかの他のワクチンと混合しない。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2に対するワクチン接種の一部として他のコロナウイルスワクチンと組み合わせない。
【0851】
用語「疾患」は、個体の体に影響する異常状態をいう。疾患は、しばしば特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染性疾患などもともと外部起源からの因子により引き起こされ得るかまたは自己免疫性疾患など内部機能不全により引き起こされ得る。ヒトにおいて、「疾患」は、しばしば罹患している個体の疼痛、機能不全、窮迫、社会問題もしくは死亡または該個体と接している者に類似の問題を引き起こすあらゆる状態を指すようにより広義に使用される。この広義では、傷害、能力障害、障害、症候群、感染症、単発症状、異常な挙動ならびに構造および機能の異型のバリエーションを含むこともあるが、他の状況および他の目的で、これらは識別可能なカテゴリーと考えられ得る。疾患は、通常、多くの疾患の罹患および疾患を有しながらの生活が、人生観および人格を変え得るため、個体に身体的だけでなく、感情的にも影響する。
【0852】
本発明において、用語「処置」、「処置する」または「治療的介入」は、疾患または障害などの状態と戦うことを目的とする、対象の管理およびケアに関する。本用語は、症状または合併症の軽減、疾患、障害または状態の進行遅延、症状および合併症の軽減または緩和および/または疾患、障害または状態の治癒または排除ならびに状態の予防のための治療上有効な化合物の投与など、対象が有しているある状態のための処置の全スペクトラムを含むことを意図し、ここで、予防は、疾患、状態または障害と戦うことを目的とする個体の管理およびケアとして理解され、症状または合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。
【0853】
用語「治療的処置」は、個体の健康状態を改善するおよび/または寿命を延長(増加)させる、あらゆる処置に関する。該処置は、個体の疾患の排除、個体における疾患進展の停止または減速、個体における疾患進展の阻止または減速、個体における症状の頻度または重症度の低減および/または疾患を現在有するまたは先に有していた個体における再発低減であり得る。
【0854】
用語「予防的処置」または「防止的処置」は、個体での疾患の発症を予防することを意図する、あらゆる処置に関する。用語「予防的処置」または「防止的処置」は、ここで、相互交換可能に使用される。
【0855】
用語「個体」および「対象」は、ここで、相互交換可能に使用される。これらは疾患または障害を有し得るまたは感受性があるが、該疾患または障害を有しても有していなくてもよいヒトまたは他の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)をいう。多くの実施態様において、個体はヒトである。特に断らない限り、用語「個体」および「対象」は特定の齢を意味せず、故に成人、高齢者、小児および新生児を含む。ある実施態様において、用語「対象」は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳またはそれ以上のヒトを含む。ある実施態様において、用語「対象」は、少なくとも65歳、例えば65~80歳、65~75歳または65~70歳のヒトを含む。本発明の実施態様において、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0856】
用語「患者」は、処置を意図する個体または対象、特に罹患個体または対象を意味する。
【0857】
本発明のある実施態様において、コロナウイルスに対する免疫応答の提供およびコロナウイルス感染の予防または処置が目標である。
【0858】
あるエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを含む医薬組成物を、対象における該エピトープを含む抗原に対する免疫応答を誘導するために対象に投与でき、これは治療的または部分的にもしくは完全に予防的であり得る。当業者は、免疫療法およびワクチン接種の原理の1つは、疾患に対する免疫防御的反応が、処置する疾患に関して免疫学的に関連する抗原またはエピトープで対象を免疫化することにより生じるとの事実に基づくことを知っている。従って、ここに記載する医薬組成物は、免疫応答の誘導または増強のために適用可能である。ここに記載する医薬組成物は、故に、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的処置に有用である。
【0859】
ここで使用する「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体的応答をいい、細胞性免疫応答および/または液性免疫応答をいう。免疫系は、脊椎動物のより原始的な自然免疫系および獲得または適応免疫系に分けられ、その各々液性および細胞性成分を含む。
【0860】
「細胞介在免疫」、「細胞性免疫」、「細胞性免疫応答」または類似の用語は、抗原の発現により特徴づけられる、特にクラスIまたはクラスII MHCを伴う抗原の提示により特徴づけられる、細胞に向けられた細胞性応答を含むことを意味する。細胞性応答は、免疫エフェクター細胞、特に「ヘルパー」または「キラー」として作用するT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称する)は、免疫応答の制御に中心的役割を有し、キラー細胞(細胞毒性T細胞、細胞溶解T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも称される)は、ウイルス感染細胞などの罹患細胞を殺し、さらなる罹患細胞の発生を予防する。
【0861】
免疫エフェクター細胞は、ワクチン抗原に応答するあらゆる細胞を含む。このような応答性は、活性化、分化、増殖、生存および/または1以上の免疫エフェクター機能の指標を含む。細胞は、特に、溶解能を有する細胞、特にリンパ系細胞を含み、好ましくはT細胞、特に、好ましくは細胞毒性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される、細胞毒性リンパ球である。活性化により、これら細胞毒性リンパ球の各々は標的細胞の破壊を誘発する。例えば、細胞毒性T細胞は、次の手段のいずれかまたは両方により標的細胞の破壊を誘発する。まず、活性化により、T細胞は、パーフォリン、グランザイムおよびグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリンおよびグラニュライシンは標的細胞に細孔を作り、グランザイムが細胞に入り、細胞質でカスパーゼカスケードを誘発し、細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する。第二に、アポトーシスは、T細胞と標的細胞間のFas-Fasリガンド相互作用により誘導され得る。
【0862】
本発明において用語「エフェクター機能」は、例えば、ウイルスなどの病原因子の中和および/またはウイルス感染細胞などの罹患細胞の死滅をもたらす、免疫系の成分が介在するあらゆる機能を含む。ある実施態様において、本発明のエフェクター機能は、T細胞介在エフェクター機能である。このような機能は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の場合、サイトカインの放出および/またはCD8+リンパ球(CTL)および/またはB細胞の活性化、CTLの場合、例えば、アポトーシスまたはパーフォリン介在細胞溶解による細胞、すなわち、抗原の発現により特徴づけられる細胞の排出、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生および抗原発現標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を含む。
【0863】
本発明において用語「免疫エフェクター細胞」または「免疫反応性細胞」は、免疫反応中エフェクター機能を発揮する細胞に関する。ある実施態様において、「免疫エフェクター細胞」は、細胞上にMHCの状況で提示されるまたは細胞表面に発現され、免疫応答に介在する抗原などの抗原と結合できる。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージおよび樹状細胞を含む。本発明において、好ましくは「免疫エフェクター細胞」はT細胞、好ましくはCD4+および/またはCD8+T細胞、最も好ましくはCD8+T細胞である。本発明により、用語「免疫エフェクター細胞」は、適当な刺激で免疫細胞(例えばT細胞、特にTヘルパー細胞または細胞溶解T細胞)に成熟できる細胞も含む。免疫エフェクター細胞は、CD34+造血幹細胞、未成熟および成熟T細胞および未成熟および成熟B細胞を含む。抗原に曝露されたときのT細胞前駆体の細胞溶解T細胞への分化は、免疫系のクローン選択に類似する。
【0864】
「リンパ系細胞」は、細胞性免疫応答などの免疫応答を産生できる細胞またはこのような細胞の前駆細胞であり、リンパ球、好ましくはTリンパ球、リンパ芽球および形質細胞を含む。リンパ系細胞は、ここに記載する免疫エフェクター細胞であり得る。好ましいリンパ系細胞は、T細胞である。
【0865】
用語「T細胞」および「Tリンパ球」はここでは相互交換可能に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解T細胞を含む細胞毒性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。用語「抗原特異的T細胞」または類似の用語は、該T細胞が標的とし、好ましくはT細胞のエフェクター機能が発揮される、抗原を認識するT細胞に関する。
【0866】
T細胞は、リンパ球として知られる白血球細胞群に属し、細胞介在免疫に中心的役割を有する。B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球タイプと、T細胞受容体(TCR)と称される細胞表面上の特殊な受容体の存在により区別され得る。胸腺は、T細胞の成熟を担う主要な臓器である。T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されており、各々別個の機能を有する。
【0867】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中で、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞毒性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫過程における他の白血球細胞を助ける。これらの細胞は、表面にCD4糖タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても知られる。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)表面に発現されるMHCクラスII分子により、ペプチド抗原と共に提示されたとき、活性化される。活性化されたら、迅速に分裂し、活性免疫応答を制御または支援するサイトカインと称される小タンパク質を分泌する。
【0868】
細胞毒性T細胞は、ウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関与する。これらの細胞は、表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても知られる。これらの細胞は、体のほぼ全ての細胞の表面に提示されるMHCクラスIに関連する抗原に結合することにより標的を認識する。
【0869】
大部分のT細胞は、数タンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞表面に提示される、免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用できる。TCRの特異的結合は、T細胞内でシグナルカスケードを誘発し、増殖および成熟エフェクターT細胞への分化に至る。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生され、α-およびβ-TCR鎖と称される2つの別々のペプチド鎖からなる。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、表面に別個のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小サブセットを表す。しかしながら、γδ T細胞において、TCRは1つのγ鎖および1つのδ鎖からなる。このT細胞群は、αβ T細胞ほど一般的ではない(総T細胞の2%)。
【0870】
「液性免疫」または「液性免疫応答」は、分泌型抗体、補体タンパク質およびある抗微生物ペプチドなどの細胞外流体で見られる巨大分子が介在する免疫の側面である。細胞介在免疫と対照的である。抗体を含むその側面は、しばしば抗体介在免疫と呼ばれる。
【0871】
液性免疫は、Th2活性化およびサイトカイン産生、胚中心形成およびアイソタイプスイッチング、親和性成熟および記憶細胞産生を含む、抗体産生およびそれに付随するアクセサリー過程をいう。これは病原体中和、古典的補体活性化ならびに食作用および病原体排出のオプソニン促進を含む、抗体のエフェクター機能とも称される。
【0872】
液性免疫応答において、まず、B細胞が骨髄で成熟し、細胞表面で多数提示されるB細胞受容体(BCR)が獲得される。これらの膜結合タンパク質複合体は、抗原検出に特異的な抗体である。各B細胞は、抗原と結合する特有の抗体を有する。成熟B細胞は骨髄からリンパ節または他のリンパ性臓器に遊走し、そこで、病原体と遭遇し始める。B細胞が抗原に遭遇したとき、抗原は受容体に結合し、エンドサイトーシスによりB細胞内部に取り込まれる。抗原はまたMHC-IIタンパク質により処理され、B細胞の表面に提示される。B細胞はヘルパーT細胞(TH)が複合体と結合するのを待つ。この結合はTH細胞を活性化し、次いで、サイトカインを放出し、B細胞の迅速な分裂を誘導し、B細胞の多数の同一クローンを産生する。これらの娘細胞は形質細胞または記憶細胞となる。記憶B細胞はここでは不活性のままである;後に、これら記憶B細胞が再感染により同じ抗原に遭遇したとき、分裂し、形質細胞を形成する。他方で、形質細胞は多数の抗体を産生し、これは、循環系に自由に放出される。これらの抗体は抗原と遭遇し、それらと結合する。これは、宿主と外来細胞の化学的相互作用を妨害するか、適切な機能を邪魔する抗原性部位間に架橋を形成でき、またはそれらの存在はそれらを攻撃および貪食するようにマクロファージまたはキラー細胞を誘引する。
【0873】
用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含む、免疫グロブリンを含む。各重鎖は重鎖可変領域(ここではVHと略す)および重鎖定常領域からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと略す)および軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、3個のCDRおよび4個のFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端で次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。抗体は抗原と結合、好ましくは特異的に結合する。
【0874】
B細胞により発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称されることがある。タンパク質のこのクラスに含まれる5メンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、消化器分泌物ならびに呼吸器および泌尿生殖器管の粘液分泌物などの身体分泌物に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、大部分の対象の一次免疫応答で産生される主免疫グロブリンである。凝集、補体固定および他の抗体応答に最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御に重要である。IgDは、抗体機能が知られていないが、抗原受容体として役立ち得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの曝露により肥満細胞および好塩基球からメディエーターを放出させることにより、即時過敏症に介在する免疫グロブリンである。
【0875】
ここで使用する「抗体重鎖」は、天然に存在する高次構造の抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きいほうをいう。
【0876】
ここで使用する「抗体軽鎖」は、天然に存在する高次構造の抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の小さいほうをいい、κおよびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプをいう。
【0877】
本発明は、保護的、防止的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を意図する。ここで使用する「免疫応答の誘導[または誘導する]」は、特定の抗原に対する免疫応答が誘導に存在しなかったことを示し、または誘導前特定の抗原に対する免疫応答が基底レベルで存在し、それが誘導後増強されたことを示し得る。それ故に、「免疫応答の誘導[または誘導する]」は、「免疫応答の増強[または増強する]」を含む。
【0878】
用語「免疫療法」は、免疫応答の誘導または増強による疾患または状態の処置に関する。用語「免疫療法」は、抗原免疫化または抗原ワクチン接種を含む。
【0879】
用語「免疫化」または「ワクチン接種」は、例えば、治療的または予防的理由のために、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する過程をいう。
【0880】
用語「マクロファージ」は、単球の分化により産生される貪食細胞のサブグループをいう。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物により活性化されるマクロファージは外来病原体を非特異的に貪食し、病原体を分解させる加水分解性および酸化的攻撃により、マクロファージ内で殺す。分解タンパク質からのペプチドがマクロファージ細胞表面で提示され、そこで、T細胞により認識され得て、B細胞表面上の抗体と直接相互作用でき、T細胞およびB細胞活性化ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらす。マクロファージは、抗原提示細胞のクラスに属する。ある実施態様において、マクロファージは脾マクロファージである。
【0881】
用語「樹状細胞」(DC)は、抗原提示細胞のクラスに属する貪食細胞の他のサブタイプをいう。ある実施態様において、樹状細胞は造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞はまず未成熟樹状細胞に形質転換される。これらの未成熟細胞は、高食作用性活性および低T細胞活性化能により特徴づけられる。未成熟樹状細胞は、常にウイルスおよび細菌などの病原体について周囲環境をサンプリングする。それらが提示可能抗原と遭遇したら、成熟樹状細胞に活性化され、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、タンパク質を小片に分解し、成熟したらこれらフラグメントをMHC分子を使用して細胞表面に提示させる。同時に、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化における共受容体として作用する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化させる能力が大きく増強される。それらはまた樹状細胞を血流を介する脾臓へのまたはリンパ系を介するリンパ節への移動を誘導する走化性受容体であるCCR7も上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと並行して、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞ならびにB細胞を、それらに抗原を提示することにより活性化させる。故に、樹状細胞は、T細胞またはB細胞関連免疫応答を能動的に誘導できる。ある実施態様において、樹状細胞は脾樹状細胞である。
【0882】
用語「抗原提示細胞」(APC)は、細胞表面上(または表面で)少なくとも1個の抗原または抗原性フラグメントを表示、獲得および/または提示できる多様な細胞の細胞をいう。抗原提示細胞は専門抗原提示細胞と非専門抗原提示細胞に分けられ得る。
【0883】
用語「専門抗原提示細胞」は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上でMHCクラスII分子複合体と相互作用するならば、抗原提示細胞はT細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。専門抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0884】
用語「非専門抗原提示細胞」は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロン-ガンマなどのあるサイトカインにより刺激されたときに発現する抗原提示細胞に関する。例示的、非専門抗原提示細胞は、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞を含む。
【0885】
「抗原処理」は、抗原の、該抗原のフラグメントである進行産物への分解(例えば、タンパク質のペプチドへの分解)および特異的T細胞への抗原提示細胞などの細胞による提示のためのMHC分子とこれらのフラグメントの1以上の(例えば、結合による)会合をいう。
【0886】
用語「抗原が関与する疾患」は、抗原が関与するあらゆる疾患、例えば抗原の存在により特徴づけられる疾患をいう。抗原が関与する疾患は感染性疾患であり得る。上記のとおり、抗原はウイルス抗原などの疾患関連抗原であり得る。ある実施態様において、抗原が関与する疾患は、好ましくは、細胞表面に抗原を発現する細胞が関与する疾患である。
【0887】
用語「感染性疾患」は、個体間または生物間で伝染し得て、微生物病原体により引き起こされるあらゆる疾患(例えば感冒)をいう。感染症は当分野で知られ、例えば、それぞれウイルス、細菌および寄生虫が原因であるウイルス性疾患、細菌性疾患または寄生虫性疾患を含む。これに関連して、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えばクラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザおよびインフルエンザであり得る。
【0888】
ここに記載する文献および試験の引用は、前記のいずれかが関連する先行技術であることを認めることを意図するものではない。これらの文献の内容としての全ての記載は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これら文献の内容の正確性について承認するものではない。
【0889】
次の記載は、当業者が種々の実施態様を製造および使用することを可能とするために示す。特定のデバイス、技術および適用の記載は単なる例として提供される。ここに記載する例への種々の修飾が当業者には容易に認識され、ここに定義される一般的原理を、種々の実施態様の精神および範囲から逸脱することなく他の例および適用に適用し得る。故に、種々の実施態様は、ここに記載し、示す例に限定されることを意図せず、むしろ、特許請求の範囲を構成する範囲に従う。
【実施例
【0890】
[実施例1]
【0891】
BNT162b3バリアントBNT162b3cおよびBNT162b3dの免疫原性試験
膜貫通アンカーRBDベースのワクチン抗原(図6に図解;BNT162b3c(1)およびBNT162b3d(2))の潜在能力に関する考えを得るために、BALB/cマウスを4μg LNP-C12製剤化mRNAまたは対照として緩衝液で1回IM免疫化した。非臨床的LNP-C12製剤化mRNAを、BNT162b3バリアントBNT162b3cおよびBNT162b3dのサロゲートとして使用した。RNAワクチンの免疫原性を、抗体免疫応答に焦点を絞ることにより調査した。
最初の免疫化6日、14日および21日後のELISAデータは、S1タンパク質および受容体結合ドメインに対する早期の用量依存的免疫活性化を示す(図7)。免疫化6日、14日および21日後に得た血清は高SARS-CoV-2シュードウイルス中和を示し、IgG抗体力価の増加と相関した(図8)。
【0892】
[実施例2]
筋肉内投与したBNT162b3 mRNAワクチン候補の上行性用量レベルの安全性、忍容性および免疫原性を評価するための、ヒトで最初の、フェーズI/II、オープンラベル用量設定臨床治験
【0893】
材料および方法
臨床治験設計
治験BNT162-04(NCT04537949)は、筋肉内投与したBNT162b3(BNT162b3c、配列番号29、30)mRNAワクチン候補の上行性用量レベルの安全性、忍容性および免疫原性を評価するための、進行中の、ヒトで最初の、フェーズI/II、オープンラベル用量設定臨床治験である。18歳~85歳の健常男性および非妊婦が適格である。重要な除外基準は、COVID-19の先の臨床的または微生物学的診断;以前いずれかのコロナウイルスワクチンでワクチン接種された;治験ワクチン接種前24時間以内の口腔スワブSARS-CoV-2 NAAT陽性;COVID-19重症化リスクが高い者;免疫低下個体、HIV、C型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスでの感染が知られる者および自己免疫性疾患の病歴を有する者を含んだ。
【0894】
本治験のプライマリーエンドポイントは、安全性および忍容性であり、二次エンドポイントは、ワクチンにより誘発される免疫原性である。本治験では、BNT162b3候補の4つの用量レベル(3μg、10μg、20μg、30μg)を、用量漸増および漸減設計で用量レベルあたり12健常ボランティアおよび年齢コホートにてドイツの2か所で評価した。センチネル投与を各用量漸増コホートで実施した。このコホートおよび用量漸増の進行は、安全性審査委員会によるデータレビューが必要であった。対象は、ブースト投与を受けなかった若いコホート30μg用量レベルを除いて、1日目にBNT162b3プライム投与および22±2日目にブースト用投与を受けた。抗体アッセイ用血清を1日目(プライム前)、8±1日目(プライム後)、22±2日目(ブースト前)、29±3日目、36±3日目、43±4日目、50±4日目、85±7日目、184±9日目、および387±14目(ブースト後)に得た。T細胞試験用PBMCを1日目(プライム前)および29±3日目(ブースト後)に得た。示すデータは、種々の時点で記述的に要約されるワクチン誘導体液性(二次エンドポイント)および細胞免疫反応(予備的エンドポイント)の分析に焦点を絞った予備的分析に基づく。データ入手可能な全参加者を、免疫原性分析に含めた。
【0895】
各免疫化後7日目まで、治験参加者により、非自発的な局所反応および全身反応を記録した。自発的なTEAEを、ブーストワクチン後28日以内に収集した。IMP関連のAEおよび証明されたCOVID-19症例を除く任意のSAEのみを、予定された最後の FU Visitまで記録しなければならない。
【0896】
治験を、ヘルシンキ宣言および臨床試験の実施の基準ガイドラインに従い、かつ独立した倫理委員会(Ethik-Kommission of the Landesaerztekammer Baden-Wuerttemberg, Stuttgart, Germany)および所轄規制当局(Paul-Ehrlich Institute, Langen, Germany)の承認の下、ドイツで実施した。全対象は、インフォームドコンセント書面を提出した。
【0897】
RNAの製造
BNT162b3は、膜貫通アンカー三量体化SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD抗原をコードする、製造管理および品質管理の基準(GMP)グレードmRNA薬物物質を含む。RNAは、ウリジン-5’-三リン酸(UTP)の代わりに、1-メチルシュードウリジン-5’-三リン酸(m1YTP;Thermo Fisher Scientific)の存在下、インビトロ転写によりDNA鋳型から産生される。キャッピングは、トリヌクレオチドキャップ1アナログ((m27,3’-O)Gppp(m2’-O)ApG;TriLink)を使用する共転写により実施される。抗原コード化RNAは、ヒト樹状細胞においてRNA安定性および翻訳効率を増加させる配列要素を含む(Holtkamp, S. et al., Blood 108, 4009-4017 (2006); Orlandini von Niessen, A. G. et al., Mol. Ther. 27, 824-836 (2019))。mRNAを、RNA-LNP製剤を得るために脂質と製剤化する。ワクチンを、IM注射用緩衝化液体溶液として輸送および供給し、-80℃で保管した。
【0898】
タンパク質およびペプチド
11aaが重複し、BNT162b3コードSARS-CoV-2 RBD(RBDb3;[Sのaa 327~528に融合したaa1~19]およびBNT162-b3コードSASR-Cov-2 TBD(TMDb3[配列番号1のaa1207~1254])の配列全体をカバーする15量体ペプチドのプールを、IFNγ ELISpotのためのPBMCのエクスビボ刺激のために使用した。細胞内サイトカイン染色のために、RBDb3プールのみを使用した。CEF(CMV、EBV、インフルエンザウイルス;HLAクラスIエピトープペプチドプール)およびCEFT(CMV、EBV、インフルエンザウイルス、破傷風毒素;HLAクラスIIエピトープペプチドプール)(両者ともJPT Peptide Technologies)を、一般的T細胞反応性の対照として使用した。
【0899】
細胞培養および初代細胞単離
Vero E6細胞(ATCC CRL-1586)を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Sigma-Aldrich)を添加されたGlutaMAXTM(Gibco)含有ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)で培養した。細胞株を、受領後ならびに増殖および凍結保存前、マイコプラズマ汚染について試験した。末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll-Hypaque(Amersham Biosciences)密度勾配遠心分離により単離し、その後の分析前に凍結保存した。
【0900】
RBD結合IgG抗体アッセイ
組み換えSARS-CoV-2 S1(eEnzyme)またはRBD-His(Sino Biological)タンパク質で、96ウェルELISAプレートを被覆した。このプレートを、3回洗浄してブロックした。参加者からの陽性対照および熱不活性化(30分にわたり56℃)血清サンプルを、室温で解凍した。試験サンプルを、1:100から始まる10回の2倍連続希釈で、別のプレート中において希釈緩衝液で希釈した。ブランクウェルは、希釈緩衝液のみを含んだ。希釈サンプル 100μLを、ELISAプレートの対応するウェルに移し、その後、このプレートを37℃で1時間にわたりインキュベートした。洗浄して非結合成分を除去した後、このELISAプレートにホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体を添加し、次いで37℃で30分にわたりインキュベートした。プレートを再度洗浄し、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加した。室温での20分にわたるインキュベーション後、硫酸で反応を停止させた。ELISAプレートを、自動マイクロプレートリーダーを使用して反応停止後30分以内に評価した。抗体力価を、予め決定されたアッセイのカットオフ値を下回る光学濃度(OD)リードアウトを示す最初の希釈液と、このカットオフ値を超えるODリードアウトを示す最初の希釈液とを使用して、カットポイントを補間することにより算出した。この力価は、補間されたカットポイントでの希釈の逆数として示されており、重複のGMTとして報告される。LLOQは、適用された開始希釈に基づく100の力価であった。
【0901】
SARS-CoV-2中和アッセイ
MN-CPE(細胞障害効果に基づく微量中和[CPE])法は、哺乳類サンプル中の所与のウイルスに対するウイルス特異的中和抗体を定量するために使用される高感度で特異的な技術である。簡潔に説明すると、熱不活化(30分にわたり56℃)されたヒト血清を、1:2(1:10から開始)で連続希釈し、生きたSARS-CoV-2ウイルスと共にインキュベートして、抗原特異的抗体をウイルスに結合させた。次いで、血清-ウイルス混合液を、96ウェルプレート中のVero E6細胞単層上に移し、3日にわたりインキュベートして非中和ウイルスを感染させた。このインキュベーション後、プレートを倒立光学顕微鏡で観察し、ウェルを、SARS-CoV-2感染陽性(すなわち、CPEを示す)またはSARS-CoV-2感染陰性(すなわち、CPEを示さず細胞が生きていた)としてスコア付けした。中和力価を、50%超の細胞をCPEから保護した最高血清希釈度の逆数として決定し、重複の幾何平均力価(GMT)として報告した。中和を観察しなかった場合、任意の力価5(検出限界[LOD]の半分)を報告した。
【0902】
IFNγ ELISpot
IFNγ ELISpot分析を、CD4+枯渇およびCD8+T細胞富化(CD8+エフェクター)またはCD8+枯渇およびCD4+T細胞富化(CD4+エフェクター)PBMCを使用して、エクスビボ(増殖のためにさらにインビトロ培養することなく)で実施した。陽性対照(抗CD3モノクローナル抗体CD3-2(1:1,000;Mabtech))と共に試験をデュプリケートで実施した。IFNγ特異的抗体(ELISpotProキット、Mabtech)でプレコートした多スクリーンフィルタープレート(Merck Millipore)をPBSで洗浄し、2%ヒト血清アルブミン(CSL-Behring)含有X-VIVO 15培地(Lonza)で1~5時間ブロックした。3.3×105/ウェルのエフェクター細胞を、ワクチンコード化RBDを表す重複ペプチドプールで16~20時間刺激した。結合IFNγを、アルカリホスファターゼと直接コンジュゲートした二次抗体と、続くBCIP/NBT基質(ELISpotProキット、Mabtech)とのインキュベーション使用により可視化した。プレートをAID Classic Robot ELISPOT Readerを使用して走査し、ImmunoCapture V6.3(Cellular Technology Limited)またはAID ELISPOT 7.0ソフトウェア(AID Autoimmun Diagnostika)で分析した。スポット数は各デュプリケートの平均値として示した。ペプチドにより刺激されたT細胞応答を、疑陽性の制御を維持しながら、感受性をもたらすために、Moodie et al.(Moodie, Z., et al., J. Immunol. Methods 315, 121-32 (2006); Moodie, Z. et al., Cancer Immunol. Immunother. 59, 1489-501 (2010))による2統計検定(分布によらない再サンプリング)に基づき、社内ELISpot data analysis Tool(EDA)を使用して培地のみ陰性対照とインキュベートしたエフェクターと比較した。
抗CD3抗体刺激に対して応答したスポット数により反映される多様なサンプル品質を説明するために、正規化方法を適用して、個体間のスポット数/応答強度の直接比較を可能とした。この依存性は、ノイズ成分含むベイズモデルを有する対数線形様式にモデル化された(未発表)。頑強な正規化のために、各正規化をモデルから1000回サンプリングし、中央を標準化スポット数値として取った。モデルの尤度:logλE=α logλP+logβj+σε、ここで、λEはサンプルの標準化スポット数であり、αは全陽性対照λPで共通な安定因子(正規分布)であり、βjはサンプルj特異的成分(正規分布)であり、σεはノイズ成分であり、その中でσはコーシー分布であり、εはスチューデントのt分布である。βjは、各サンプルが異なるバッチとして処理されることを確実にする。
【0903】
フローサイトメトリー
サイトカイン産生T細胞を、細胞内サイトカイン染色により同定した。解凍され、2μg/mL DNAeI(Roche)添加OpTmizer培地中で4時間休息させたPBMCを、GolgiPlug(BD)存在下、ワクチンでコードされるSARS-CoV-2 RBDb3を表すペプチドプール(2μg/mL/ペプチド;JPT Peptide Technologies)で18時間、37℃で再刺激した。対照をDMSO含有培地で処理した。細胞を、4℃で20分にわたり、2% FBS(Sigma)、2mM EDTA、およびBrilliant Stain Buffer Plus(BD、製造業者の指示に従う)を補充したD-PBSを含むフロー緩衝液中において、またはBrilliant Stain Buffer Plus(BD)中において、生存能および表面マーカーに関して染色した。その後、サンプルを、製造業者(BD Biosciences)の指示に従いCytofix/Cytopermキットを使用し、固定して透過処理した。細胞内染色を、4℃で30分にわたり、Brilliant Stain Buffer Plus(製造業者の指示に従う)を補充したPerm/Wash緩衝液中で実施した。サンプルをFACS VERSE装置(BD Biosciences)で獲得し、FlowJo software version 10.6.2および10.7.1(FlowJo LLC, BD Biosciences)で分析した。RBD特異的サイトカイン産生を、DMSO含有培地で得られた値を減ずることにより、バックグラウンドに対して補正した。負の値を0と設定した。
【0904】
結果
治験設計および分析セット
2020年9月14日から2021年2月11日の間、96名の対象をBNT162b3でワクチン接種した。このうちの48名は、健常な若年参加者(18~55歳)であり、48名は高齢参加者(56~85歳)であった。1μg、10μg、20μgおよび30μg用量レベルならびに各年齢群(若年および高齢)あたり12名の参加者は、1日目に最初の投与を受け、22日目にブーストされた(Safety Review Committeeの決定に起因して2回目のワクチン(ブースト)を受けなかった、若年コホート30μgに登録された12名の参加者を除く)。治験集団は、2つの年齢群:若年参加者(18~55歳)および高齢参加者(56~85歳)に分かれた健常男性および非妊娠女性からなった。若年参加者の用量群では、参加者の平均(SD)年齢は、34.92歳であった。高齢参加者の用量群では、参加者の平均(SD)年齢は、66.69歳であった。用量群あたりの男性および女性参加者の混合は様々であったが、1つの例外を除いて、常に男性と比べて女性が多く含まれていた。全参加者のうち、42名(44%)が男性であり、54名(56%)が女性であり、95名(99%)の参加者が白人であり、1名(1%)がアジア人であり、96名(100%)の参加者が非ヒスパニック/非ラテン系であった。
【0905】
簡潔には、本治験では、死亡、重度有害事象(SAE)、用量制限毒性を伴うTEAE、または特に注目すべきTEAEは報告されず、関連AEによる中止も認められなかった(表4)。
【0906】
【表5】
【0907】
最も多く報告された非自発的な事象は、ワクチン反応原性の徴候および症状であり、典型的には、免疫化後最初の24時間以内に発症しており、例えば、全身性、注射部位反応、主に疼痛および圧痛の症状であった。症状は、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛および関節痛、疲労ならびに注射部位の反応等の反応原性事象の強度がほとんど軽度または中程度であった(図16~19)。BNT162b3を投与した4名の若年参加者(8%)は、重度局所反応を経験したが、高齢参加者はいずれも、重度局所反応を経験しなかった。BNT162b3を投与した若年参加者群および高齢参加者群それぞれの9名の参加者(19%)は、重度全身反応を経験した。全てのTEAE/反応原性の症状は、ほとんどが発症から24時間以内に自然に解消され、単純な手段(例えばパラセタモール)により管理できた。高齢参加者における反応原性(特に全身性)は、所与の用量レベルに関して若年参加者で観察したものと比べて一般に軽度であり頻度も低かった。
【0908】
一般に、BNT162b3は、18~55歳の若年参加者において3μgおよび10μgの用量で許容可能な安全性プロファイルを有したが、若年参加者における20μgの投与2の反応原性は、より低い用量と比べて好ましくなく、そのため、SRCは、30μgでの投与2を投与しないことを推奨した。56~85歳の高齢参加者では、BNT162b3は、3μg、10μg、20μgおよび30μgの用量で許容可能な安全性プロファイルを有した。
【0909】
BNT162b3ワクチン接種後通例の臨床検査値で関連する変化は生じなかったが、炎症性マーカーC反応性タンパク質(CRP)の一過性増加および血液リンパ球数の一過性減少が、ワクチン接種した対象で用量依存的方法で観察された。RNAワクチンでの以前の臨床経験に基づき、後者は、リンパ球自然免疫刺激関連一過性再分布が起因する可能性がある(Kamphuis, E., et al., Blood 108, 3253-61 (2006))。
【0910】
ワクチン誘導抗体応答
ウイルス(SARS-CoV-2)中和幾何平均力価(中和GMT)は、用量レベルとは無関係に、投与1後21日目(22日目)にはBNT162b3免疫化参加者の一部で小幅に上昇し、投与量後7日目(29日目)には若年参加者および高齢参加者で大幅に上昇した(図9)。投与1のみを受けた30μgの若年参加者群では、中和GMTは低レベルのままであり、機能的抗体価を上昇させるには2回目の投与が必要であることが示された。43日目の中和GMTは、若年者および高齢者の3、10、20μg用量群で同程度であったが、高齢参加者ではGMTがわずかに高い傾向が見られた。
【0911】
中和GMTは、50日目まで比較的安定しており(10μgの若年参加者群を除く)、力価は184日目までわずかに低下しただけであった。
【0912】
10μg以上の用量のBNT162b3を2回投与した全ての参加者は、投与2の7日後または14日後(29日目または36日目)までに抗体陽転した。10μg以上のBNT162b3を投与した全ての参加者は、50日目まで血清陽性を維持し、治験開始後6カ月でも83%以上が血清転換していた(図10)。
【0913】
BNT162b3を投与した参加者は、投与1の21日後(22日目)に、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質S1サブユニットに対して中程度の用量依存的抗体応答を示した。投与2の7日後(29日目)、S1結合GMTは、強い用量依存的な2回目の用量応答を示した。投与1のみを受けた30μg若年参加者群では、S1結合GMTは低いレベルにとどまり、抗体力価を上昇させるには2回目の用量が必要であることが示された。
【0914】
S1結合GMTは、全ての用量群で50日目まで安定したままであり、184日目までにわずかに減少し(10μg若年参加者群を除く)、結合GMTは、若年参加者と高齢参加者との間で同等であった(図11)。
【0915】
標的抗原としてSタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)のみを使用して、同様の観察を行った(図12)。
【0916】
ワクチン誘導T細胞応答
BNT162b3免疫化対象のCD4+およびCD8+T細胞応答を、3μg~30μg用量コホートにわたる38名の成人対象および37名の高齢者対象からのPBMCを用いて、直接エクスビボIFNγ ELISPOTを使用してプライムワクチン接種前(1日目)およびプライム後29日目(ブーストワクチン接種7日後、ブーストを受けなかった、30μgのBNT162b3を投与した成人対象を除く)に特徴づけした(図15)。このアッセイで、CD4+またはCD8+ T細胞エフェクターを、ワクチンコード化RBDおよびTMD(RBDb3/TMD)の完全長配列を表すオーバーラップペプチドで一夜刺激した。評価可能なELISPOTデータを有し、BNT162-b3を2回の用量を受けた65名中の65名(100%)の対象(1回のみ投与された、30μgを受けた8名の成人対象を除く)は、RBDb3/TMD特異的CD4+T細胞応答を獲得した。3名の対象(3、10、20μgを投与した)では、ベースラインサンプルで同程度のCD4+T細胞応答が示された。
【0917】
両年齢群の対象の大多数(BNT162b3の2回の用量を受けており、評価可能なELISPOTデータが入手可能な23名/29名の成人、79.3%、および34名/37名、91.9%)が、ワクチン誘導CD8+ T細胞応答を獲得した(図15)。
【0918】
RBD特異的T細胞の機能性および極性化を評価するために、ワクチン抗原の刺激に応答して分泌されるサイトカインを、85名のBNT162b3免疫化対象(若年参加者 n=41および高齢参加者 n=44)のワクチン接種前後のPBMCでIFNγ、IL-2およびIL-4特異的抗体を用いる細胞内染色(ICS)により決定した。RBD特異的CD4+ T細胞は、IFNγ、IL-2、またはその両方を分泌したが、IL-4は分泌しなかった(図13bおよび14b)。同様に、RBD特異的IFNγ+ CD8+ T細胞の一部も、IL-2を分泌した(図13aおよび14a)。
RBD特異的IFNγ+CD8+T細胞頻度は、総末梢血CD8+T細胞の数パーセントに達した(図14a)。
まとめると、これらの所見は、BNT162b3はほぼ全対象で、TH1極性化ヘルパー応答を有する、機能的および炎症促進性CD4+/CD8+T細胞応答を誘導することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
【配列表】
2024540949000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【国際調査報告】