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特表2024-540952線維化の治療における使用のための好中球エラスターゼ阻害剤
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  • 特表-線維化の治療における使用のための好中球エラスターゼ阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】線維化の治療における使用のための好中球エラスターゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20241029BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P19/04
A61P1/16
A61P19/02
A61P9/00
A61P7/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P11/00
A61P25/00
A61P1/00
A61P37/06
A61P9/10 101
A61P1/04
A61P29/00 101
A61P17/02
A61P9/12
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523709
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022079286
(87)【国際公開番号】W WO2023067103
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/262,788
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522108231
【氏名又は名称】メレオ バイオファーマ 4 リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】パーキン,ジャクリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パブレティック,スティーブン ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】イム,アニー
(72)【発明者】
【氏名】ホルツマン,ノア ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ピア,コーディー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、アルベレスタットなどの好中球エラスターゼ阻害剤を投与することによる、線維化の治療に関する。特に、本発明は、臓器拒絶反応、例えば、移植片対宿主病に任意選択で関連する閉塞性細気管支炎症候群などの別の疾患と組み合わせた線維化の治療に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記線維化は、肝線維症、関節線維症、心臓線維症、縦隔線維症、後腹膜腔線維症、骨髄の線維化、架橋線維症、肝臓の線維化、腎性全身性線維症、皮膚線維症、強皮症、及び全身性硬化症、例えば、肝線維症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組織に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記組織は、肝臓組織、肺組織、脳組織、心臓組織、胃腸組織、及び皮膚組織からなる群から選択される1つ以上の組織を含み、例えば、前記組織は、肺組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組織は、移植片対宿主病(GVHD)に関連する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
疾患に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
前記疾患は、移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、慢性肺同種移植機能不全(CLAD)、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)、肺移植関連拘束性同種移植症候群(LT-RAS)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、移植片対宿主病関連閉塞性細気管支炎症候群(GVHD BOS)、移植片対宿主病関連拘束性慢性肺機能低下(GVHD R-CLFD)、肝疾患、心臓疾患、肝硬変、線維胸、放射線誘発肺損傷、グリア性瘢痕、動脈硬化、腎疾患、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド障害、癒着性関節包炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、高血圧、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪症、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択される1つ以上であり、例えば、前記疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び肝硬変から選択される1つ以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
移植片拒絶を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記移植片は、皮膚、腎臓、心臓、肝臓、肺、及び膵臓からなる群から選択される1つ以上の臓器を含み、例えば、前記移植片は、肺を含む、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
(i)前記対象は、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群を有する、または有するリスクがあり、及び/または
(ii)前記移植片拒絶は、慢性移植片拒絶である、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【請求項14】
移植片対宿主病(GVHD)に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【請求項16】
(i)前記GVHDは、慢性GVHD(cGVHD)であるか、または前記GVHDは、急性GVHD(aGVHD)であり、及び/または
(ii)前記GVHDは、骨髄移植後に現れ、及び/または
(iii)前記GVHDは、造血幹細胞移植後に現れ、及び/または
(iv)前記GVHDは、眼、関節、筋膜、性器、肺、肝臓、皮膚、または消化管(例えば、口、食道)からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とし、及び/または
(v)前記GVHDは、肺、肝臓、皮膚、または消化管からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とし、及び/または
(vi)前記対象は、中程度または重度のcGVHDを有し、及び/または
(vii)前記対象は、閉塞性細気管支炎症候群を有する、または有するリスクがある、
請求項7または14~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及びGVHDに関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
GVHDに関連する閉塞性細気管支炎症候群(BOS)を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【請求項19】
(i)前記BOSは、造血幹細胞移植に関連し、例えば、前記造血幹細胞移植は、同種間造血細胞移植であり、または
(ii)前記BOSは、骨髄移植に関連する、
請求項7または17~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
(i)前記対象は、好中球増加症を有し、例えば、前記好中球増加症は、気道好中球増加症であり、及び/または
(ii)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、移植前または後に、前記対象に投与され、及び/または
(iii)前記治療または予防は、好中球エラスターゼを阻害することを含む、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
(i)前記線維化の治療、予防、または低減は、1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含み、及び/または
(ii)前記対象は、1つ以上のバイオマーカーのレベルが上昇しており、及び/または
(iii)前記線維化の治療、予防、または低減は、12週間にわたって1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含む、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
(i)前記バイオマーカーは、コラーゲンバイオマーカーであり、
例えば、前記コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー及び/またはIV型バイオマーカーであり、任意選択で、
前記コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C3)、及び/またはVI型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C6)であり、例えば、
前記コラーゲンバイオマーカーは、前記III型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C3)であるか、または
(ii)前記バイオマーカーは、エラスチンバイオマーカーであり、
例えば、前記エラスチンバイオマーカーは、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)から選択される、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)前記治療または予防は、前記対象の予測されるFEV1%を改善するか、その低下を予防することを含み、及び/または
(ii)前記治療または予防は、前記対象のBOSグレードを改善するか、その低下を予防することを含み、及び/または
(iii)前記cGVHDの治療は、対象におけるcGVHD重症度スコアを改善することを含み、及び/または
(iv)前記cGVHDの治療は、対象のLee cGVHD Symptom Scale、特に肺に影響を及ぼすcGVHDを患う対象のLee cGVHD Symptom Scaleの肺スコアを改善することを含む、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
(i)対象の肺機能を改善することを含み、及び/または
(ii)対象の肺機能の悪化を予防することを含み、及び/または
(iii)対象の疾患の進行または悪化を予防することを含む、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
(i)アルベレスタットは、遊離塩基の形態であり、及び/または
(ii)アルベレスタットは、アルベレスタットトシラートの形態である、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
(i)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回投与することを含み、及び/または
(ii)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回最大240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含み、及び/または
(iii)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回60mg、120mg、180mg、または240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含み、及び/または
(iv)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含み、及び/または
(v)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、第1期間に1日2回60mg、続いて、第2期間に1日2回120mg、続いて、第3期間に1日2回180mg、その後1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含み、及び/または
(vi)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、2週間にわたって1日2回60mg、続いて、2週間にわたって1日2回120mg、続いて、2週間にわたって1日2回180mg、その後1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含み、及び/または
(vii)アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を経口投与によって投与することを含み、及び/または
(viii)1つ以上の免疫抑制剤を前記対象に投与することをさらに含む、
先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩による治療を必要とするヒト対象を特定する方法であって、前記対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを決定することを含み、ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、前記治療を必要とする対象が特定される、前記方法。
【請求項28】
ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの前記上昇したレベルは、上昇した好中球エラスターゼ活性に等しい、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
好中球エラスターゼ活性を決定する方法であって、ヒト対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを評価することを含み、ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示される、前記方法。
【請求項30】
(i)前記対象は、GVHDであると診断されており、任意選択で、前記GVHDは、GVHD BOSであり、及び/または前記対象は、造血幹細胞移植を受けており、及び/または
(ii)デスモシン及びイソデスモシンなどの前記バイオマーカーのレベルは、クロマトグラフィー及び/または質量分析、例えば、質量分析を伴う同位体希釈液体クロマトグラフィータンデムによって測定され、及び/または
(vi)前記対象からの前記サンプルは、血液サンプル、例えば、血漿サンプルである、
請求項27~29のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月20日に出願の米国仮出願第US 63/262788号の優先権の利益を主張するものである。この出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、線維化を治療または予防するための新しい方法に関し、該方法は、好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
線維化
線維化(線維性瘢痕化としても知られている)は、疾病率及び/または死亡率の主要な原因であり、治療法が存在しない。線維化とは、外傷または損傷に対する修復応答としての線維性結合組織の発生、また病理過程として生じる過剰な線維性結合組織の沈着を意味する。線維性結合組織は、コラーゲン線維を含む。線維化は、体内の多くの組織で生じる場合があり、かつ炎症、外傷及び/または組織(例えば、臓器)移植から起こる可能性がある。組織の例としては、肺、肝臓、脳、心臓、消化管、及び皮膚が挙げられる。
【0004】
コラーゲンの合成、細胞外マトリックス(ECM)の主要構成成分、及び線維化の間には関連がある。[1]特に、ECMにおいて、コラーゲンの産生、沈着及びリモデリングの間に均衡が存在する。しかし、線維化の間に、この均衡が崩れると、コラーゲンが沈着する。ECMの蓄積の増大もまた、線維化の病態形成の一因となることもある。加えて、炎症の影響を受ける組織は、線維化になりやすい。これは、炎症が、コラーゲンタンパク質などの細胞外マトリックス(ECM)構成成分の過剰な蓄積を引き起こすことがあり、それにより、正常組織機能を最終的に妨げる線維化が起こるためである。
【0005】
線維化及び移植片拒絶
線維化は、臓器の移植後に観察されることがある。臓器、骨髄、及びヒト幹細胞の移植は、ヒトの健康を進歩させてきた。しかし、移植には、非自己組織を認識し、反応する免疫系の能力による課題がつきまとう。これは、組織が遺伝的に類似しているが、同じドナーからのものでなく、ヒト白血球抗原(HLA)組織型ミスマッチが存在する場合、同種移植において特にリスクとなる。
【0006】
実質臓器移植後の移植片拒絶は、被移植者の免疫系(特に被移植者の成熟αβT細胞)が、ドナーの臓器の細胞に発現している外来性のHLA抗原を認識する場合に起こり得る。これは、ミスマッチのドナー抗原に対する宿主のアロ応答性によって生じる。急性拒絶反応は、典型的には、移植後、最初の週から数ヶ月の間に起こり、かつ慢性拒絶反応の発症の主要な危険因子である。慢性拒絶反応に対する他の危険因子としては、炎症及び/または感染が挙げられる。慢性拒絶反応は、典型的には、移植後、数ヶ月から数年で発症し、かつ長期移植片機能損失の主要な原因である。臨床的に、慢性拒絶反応は、同種移植実質が線維性瘢痕組織に置き換わること(すなわち、線維化)を伴う場合がある。したがって、移植片拒絶に関連する線維化は望ましくない。
【0007】
線維化及び移植
肺移植は、進行性肺疾患または不可逆性肺不全患者にとって重要な治療選択肢であり、約3,500件の肺移植が、毎年世界的に行われている。しかし、急性肺拒絶反応は、移植後の最初の年の間に全ての肺移植患者のうちの約3分の1に影響を及ぼし、かつ慢性肺拒絶反応(または慢性肺同種移植機能不全(CLAD))を発症するリスクが増加し、これにより、肺移植後の長期生存に対する主要な障害が残ったままである。これは、移植後3ヶ月を超えて生存する肺移植の被移植者の、同種移植機能損失及び死亡の主要な原因となっている。
【0008】
肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)は、CLADの一形態であり、肺機能の低下として現れ、これは、しばしば進行性である。これは、肺同種移植における小気道の炎症、破壊、及び/または線維化が原因であり、これにより、閉塞性細気管支炎(OB)が生じると考えられている。診断後の生存期間の中央値は、3~5年である[2]。肺移植関連拘束性同種移植症候群(RAS)は、CLADの別の形態であり、これは、肺機能の慢性的な持続的拘束性低下として現れることがある。[3]RASは、末梢肺線維症の特性を示し、かつ肺移植患者の生存に著しく影響を及ぼす。したがって、移植片拒絶に関連する線維化は望ましくない。
【0009】
高い発現率にもかかわらず、現在、慢性移植片拒絶に対する、特にLT-BOSに対する適切な治療法が存在しない。特にLT-BOSにおける慢性移植片拒絶に対する現在の選択肢としては、免疫抑制療法(多くの場合、3剤併用)、及び新マクロライド(アジスロマイシンなど)、ならびに付随する胃食道逆流及び感染の治療が挙げられる。しかし、現在利用可能な治療法を裏付けるエビデンスは限られており、治療応答は通常、乏しく、かつ重篤な有害事象のリスクが高く、免疫抑制療法は、免疫再構築を大いに損ね、これにより、感染のリスクが増加する。最後の手段として、肺の再移植が考慮される場合があるが、転帰は乏しく、ドナー臓器は不足している。その結果、ISHLT/ATS/ERS BOS Task Forceは、2014年に、現在利用可能な治療法は、LT-BOSの予防または治療において有意な利益をもたらすことが証明されていないと結論づけた[4]。
【0010】
線維化及び移植片対宿主病
移植拒絶反応におけるさらなる合併症として、移植片に含まれる成熟ドナーαβT細胞が同種移植の被移植者に対して開始する免疫応答は、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす場合がある。典型的には、GVHDは、同種間造血幹細胞移植の状況で見られるが、輸血を受けた場合の免疫不全患者で生じる場合もある。急性GVHDは、皮膚、肝臓、肺及び/または消化管への損傷を特徴とするのに対して、慢性GVHDは、より多様な症状を示し、自己免疫症候群に似ている場合がある。標準治療は、免疫抑制療法であるが、上述したように、これは、有害事象の高いリスクを有し、感染のリスクを増加させる[5]。幹細胞移植後、対象は、GVHD BOSを発症する可能性があるが、この際、BOSは、閉塞性肺疾患の一例である。あるいは、幹細胞移植後、対象は、GVHD関連拘束性慢性肺機能低下(GVHD R-CLFD)などの拘束性肺疾患を発症する場合がある。[6]拘束性及び閉塞性肺疾患は、線維性態様を含む場合がある。したがって、GVHDに関連する線維化は望ましくない。
【0011】
好中球エラスターゼ(NE)阻害剤
NE阻害剤は、様々な疾患の治療に含まれてきた。しかし、好中球エラスターゼ阻害及び線維化(特に、GVHDに関連する線維化)の低減につながるメカニズムは、十分に解明されておらず、十分に確立されていない。さらに、ヒトにおける治療効果がこれまでに実証されていないと考えられている。
【0012】
アルベレスタットは、慢性移植片拒絶(特にLT-BOS)及びGVHD(参照により本明細書に援用されるWO2021/053058を参照)の治療においてこれまでに調査されており、肺機能の改善が示された。しかし、アルベレスタットを使用したNEの阻害が、具体的に、移植片拒絶もしくはGVHDに関連する線維化、または他の疾患に関連する線維化の治療において有用であるとは開示されていない。
【0013】
したがって、線維化を治療及び予防するための新しい治療法が必要とされている。特に、慢性移植片拒絶(特にLT-BOS)及びGVHD(特にGVHD BOS)から選択される疾患に関連する線維化を治療及び予防するための新しい治療法が必要とされている。加えて、線維化を低減することを含む、疾患を治療及び予防するための新しい治療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
驚くべきことに、アルベレスタットなどの好中球エラスターゼ(NE)の阻害剤が、特にヒト対象における、線維化、特にGVHD BOSに関連する線維化の治療及び予防において有益であることを実証する。
【0015】
本明細書に記載される発明は、本発明者らが知る限りでは、線維化とNEとのメカニズムの間に立証された関連性がないため、予想外である。例えば、線維化の主要なドライバーは通常、好中球ではなく、コラーゲンなどの細胞外マトリックス(ECM)構成成分の過剰な蓄積及び/または沈着であると考えられている。NE阻害剤は、対象におけるBOSまたはGVHDに関連する線維化を治療または予防する際に有効であるとは、これまでに実証されていない。実際、本発明者らが知る限りでは、NE阻害は、線維化の治療をそれを必要なヒト対象に行うことに関して、これまでに実証されていない。
【0016】
したがって、本発明は、線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0017】
本発明は、組織に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0018】
本発明は、疾患に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0019】
本発明は、移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0020】
本発明は、移植片拒絶を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0021】
本発明は、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0022】
本発明は、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0023】
本発明は、肺移植関連拘束性同種移植症候群(LT-RAS)に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0024】
本発明は、肺移植関連拘束性同種移植症候群(LT-RAS)を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0025】
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0026】
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0027】
本発明は、GVHD BOSに関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0028】
本発明は、GVHD BOSを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けている。
【0029】
本発明は、GVHD R-CLFDに関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0030】
本発明は、GVHD R-CLFDを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けている。
【0031】
本明細書に記載する本発明の方法では、対象は、好ましくはヒト対象である。
【0032】
加えて、実施例において示すように、デスモシン及びイソデスモシン(DES及びIDESまたはDES/IDES)などのバイオマーカーの分析は、GVHD BOSにおいてNE活性が上昇していることを示す。この観察結果は、NEレベルの決定及びNE阻害を必要とする対象の特定を補助するためのバイオマーカーの使用を容易にし得る。
【0033】
したがって、本発明は、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩による治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、該方法は、対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを決定することを含み、ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、治療を必要とする対象が特定される。
【0034】
本発明はまた、好中球エラスターゼ活性を決定する方法を提供し、該方法は、対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを評価することを含み、ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示される。
【0035】
特に、本発明は、NE阻害剤、特にアルベレスタットによる治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを測定して、ベースラインまたは参照レベルに対してレベルを比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示され、かつ、この対象には、NE阻害剤、特にアルベレスタットによる治療が必要であることが示される。
【0036】
特に、本発明は、好中球エラスターゼ活性を決定する方法を提供し、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを測定して、ベースラインまたは参照レベルに対してレベルを比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示される。
【0037】
加えて、実施例で示すように、例えば、コラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)とコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)との2つのバイオマーカーの比率の分析は、GVHD BOSを患う対象における線維性活性の指標として機能する。この観察結果は、線維性活性を評価するためのバイオマーカー比率の使用を容易にし得る。
【0038】
したがって、本発明はまた、好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットによる治療を受けている患者の線維性活性をモニタする方法を提供し、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルを測定し、かつサンプルにおけるコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルを測定することと、
-対象におけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルとコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルとの比率を評価することと、
-ベースラインまたは参照比率に対して比率を比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照比率と比較した比率の減少により、線維性活性の低下が示される。
【0039】
したがって、本発明はまた、好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットによる治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、ここで、該対象は、線維性疾患を患っており、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルを測定し、かつサンプルにおけるコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルを測定することと、
-対象におけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルとコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルとの比率を評価することと、
-ベースラインまたは参照比率に対して比率を比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照比率と比較した比率の増加により、この対象には、好中球エラスターゼ阻害剤による治療が必要であることが示される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】経時的に(数週間)アルベレスタットの用量を漸増させた(0~240mg)、患者(N=7)における血漿デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)のベースラインからのパーセントの変化(%CFB)を示す。x軸では、0(mg)は、ベースライン(すなわち、0週目の治療前)を意味し、60mgを2週目に投与し、120mgを4週目に投与し、180mgを6週目に投与し、かつ240mgを8週目に投与した。ボックス=ベースラインからの変化の平均、及びヒゲ=標準偏差である。
図2】アルベレスタットの用量を漸増させた(0~240mg)、経時的な(wk=週)、患者の血液サンプル(N=7)における好中球エラスターゼ活性のベースラインからのパーセントの変化(%CFB)を示す。ザイモサン刺激に応答した好中球エラスターゼ放出を測定することによって、ex vivoで評価した。
図3A】アルベレスタット治療を受けている対象で測定した際の、経時的なPRO-C3レベル(ng/mL)を示す。ULN=正常上限値(すなわち、参照範囲の上限値)。対象を2週間ごとに検査した。
図3B】アルベレスタット治療を受けている対象で測定した際の、経時的なPRO-C6レベル(ng/mL)を示す。対象を2週間ごとに検査した。
図4】アルベレスタット治療を受けている対象(n=7)における、経時的な血液サンプル中のPRO-C3:C3Mの比率を示す。対象を、アルベレスタット用量漸増の間、2週間ごとに検査した。
図5】試験期間にわたる、各対象(n=7)からの血液サンプル中のPRO-C3及びDES/IDESのベースラインからの%変化(%CFB)を示す。対象を、アルベレスタット用量漸増の間、2週間ごとに検査した。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明は、本開示が、特許請求される主題の例として見なされ、かつ添付の特許請求の範囲が例示される特定の実施形態に限定されることを意図していないという理解を前提として行われる。本開示は、種々の実施形態及び技術への言及を提供する。しかし、本発明の趣旨及び範囲内に留まりながら、多くの変形及び修正が行われ得ることが理解されるべきである。本開示の全体を通して使用される見出しは、便宜上、提供されるものであり、いかなる形であれ特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。任意の見出しの下で例示される実施形態は、任意の他の見出しの下で例示される実施形態と組み合わされる場合がある。
【0042】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門的及び科学的用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書の全体を通して、及び添付の特許請求の範囲において、以下の用語は、明示的に別段の記載がない限り、以下の意味で定義される。
【0043】
文脈上別段の解釈が必要な場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形は、非限定的であり、包括的な意味であり、すなわち、「を含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0044】
化合物(compounds)、塩(salts)などに複数の形式が使用される場合、単一の化合物(compound)、塩(salt)なども意味すると解釈される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「または」は、一般に、用途の文脈上別段に明確に示されない限り、「及び/または」を含む意味として使用される。
【0046】
また、本明細書では、両端による数の範囲の記述は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、列挙される値の列挙される値±10%を意味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」とは、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の結果としては、疾患または病態に関連する症状の緩和及び/または症状の程度の減少が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」または「治療すること」とは、a)疾患または病態を阻害すること(例えば、疾患または病態から生じる1つ以上の症状を軽減させること、及び/または疾患または病態の程度を減少させること)、b)疾患または病態に関連する1つ以上の症状の発症を遅らせるか、または停止させること(例えば、疾患または病態を安定化させること、疾患または病態の悪化または進行を遅らせること)、及びc)疾患または病態を緩和すること、例えば、臨床症状の後退を引き起こすこと、疾患状態を緩和すること、疾患の進行を遅らせること、生活の質を改善させること、及び/または生存を延長させること、のうち1つ以上を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「予防」または「予防すること」は、疾患の臨床症状が発症しないように、疾患または障害の発生を防ぐレジメンを指す。したがって、「予防」は、疾患の徴候が、対象において検出可能となる前の、対象への治療の施行(例えば、治療物質の投与)に関する。対象は、疾患または障害を発症するリスクのある個体、例えば、疾患または障害の発症または発生に関連することが知られている1つ以上の危険因子を有する個体である場合がある。したがって、本発明における用語「予防すること」は、このように、移植を受ける予定か、または移植を最近受け、関連病態がまだ発症していない対象に投与することを含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」または「有効量」とは、所望の生物学的または医学的応答を誘発するのに有効な量を指し、これには、疾患を治療するための対象への投与が、疾患に対してそのような治療を行うのに十分な化合物の量が含まれる。有効量は、特定の化合物、及び治療される対象の特性、例えば、年齢、体重などに依存して変化する。有効量は、ある範囲の量を含み得る。当技術分野において理解されているように、有効量は、1つ以上の用量である場合があり、すなわち、単回用量または反復用量が、所望の治療エンドポイントを達成するのに必要とされる場合がある。有効量は、1つ以上の治療薬の投与に関連して考慮される場合があり、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せると、望ましいまたは有益な結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。任意の同時投与される化合物の好適な用量は、任意選択で、化合物の複合作用(例えば、相加効果または相乗効果)に起因して減らされる場合がある。
【0051】
用語「溶媒和物」は、本発明の化合物及び1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えば、エタノールまたは水を含む分子複合体を説明するために本明細書で使用される。用語「水和物」は、溶媒が水である場合に使用され、いかなる疑いも避けるために、用語「水和物」は、用語「溶媒和物」に包含される。
【0052】
用語「薬学的に許容される塩」は、生理学的にまたは毒物学的に容認できる塩を意味し、適切な場合、薬学的に許容される塩基付加塩及び薬学的に許容される酸付加塩を含む。例えば、化合物がアミノ基などの塩基性基を含有する場合、形成され得る薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、エシレート、トシラート、ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、樟脳酸塩、キシナホ酸塩、p-アセトアミド安息香酸塩、ジヒドロキシ安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、オレイン酸塩、重硫酸塩などが挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩、例えばヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。好適な塩の総説については、Stahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」(Wiley-VCH,2011)を参照されたい。
【0053】
「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」とは、薬学的使用に適した、化合物、塩、組成物、剤形などを意味する。
【0054】
用語「対象」とは、好ましくは、ヒト、通常、移植を受けている、または移植を受ける予定のヒトを指す。
【0055】
本明細書で参照される全ての文献は、全目的のために、参照によりその全体が援用される。
【0056】
アルベレスタット
本発明で使用される好ましい好中球エラスターゼ阻害剤は、アルベレスタットである。
【0057】
アルベレスタットは、参照によりその全体が本明細書に援用されるWO 2005/026123 A1(実施例94、85頁)及び[6]に記載されている、強力な経口的に生物が利用可能な好中球エラスターゼ阻害剤である。アルベレスタットは、化学名がN-{[5-(メタンスルホニル)ピリジン-2-イル]メチル}-6-メチル-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-2-オキソ-1-[3-(トリフロロメチル)フェニル]-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドであり、以下の化学構造を有する。
【化1】
【0058】
アルベレスタットはまた、AZD9668及びMPH996と呼ばれている。
【0059】
アルベレスタットは、任意の薬学的に許容される形態、例えば、任意の遊離塩基形態、塩形態、及び/または溶媒和物形態で本発明にて使用され得る。アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、任意の薬学的に許容される物理的形態、適切には固体形態で存在し得る。
【0060】
アルベレスタットの特定の塩については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO 2010/094964 A1に記載されている。アルベレスタットの記載される塩としては、トシラート、p-キシレン-2-スルホン酸塩、塩化物、メシル酸塩、エシレート、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、及び硫酸塩が挙げられる。
【0061】
好ましくは、アルベレスタット遊離塩基またはアルベレスタットトシラートは、本発明の方法にて使用されるが、アルベレスタットトシラートがより好ましい。
【0062】
アルベレスタットはまた、薬学的に許容されるプロドラッグ形態で、本発明の方法のいずれかで使用されてもよい。
【0063】
好中球エラスターゼ阻害剤
好中球エラスターゼ(NE)は、肺組織を攻撃し、継続的に破壊する酵素である。NEを阻害する化合物については、[7]で調査されており、かつWO2017207430、WO2017102674、WO2016050835、WO2016050835、WO2016016368、WO2016016366、WO2016016365、WO2016016364、WO2016016363、WO2015124563、WO2016020070、WO2015091281、WO2014135414、WO2014122160、WO2015096873、WO2015096872、WO2014029832、WO2014029831、WO2014029830、WO2014009425、WO2013084199、WO2013037809、WO2011103774、WO2011110858、WO2011110859、WO2011110852、WO2011039528、WO2010034996、WO2009061271、WO2009058076、WO2009060206、WO2007137080、WO2007137080、WO2007140117、WO2008036379、WO2008036379、WO9962538、WO9962538、WO9962514、WO9739028、WO9616080、WO9533763、WO9533762、WO9527055、WO9311760、WO9220357、WO9215605、WO9215605、WO03058237、WO03031574、WO03031574、WO2008030158、WO2007129963、WO2007129962、WO2006098684、WO2005026124、WO2005026123、WO2005021509、WO2005021512、WO2004043924、WO2009060158、WO2009037413、WO2009013444、WO2007129060、WO2007107706、WO2007107706、WO2006136857、WO2006082412、WO2006082412、WO9623812、WO9521855、WO9401455、WO9324519、WO9321214、WO9321210、WO9321213、WO9321209、WO9321212、WO2006070012、WO2005082863、WO2005082863、WO2005082864、WO9912933、WO9912933、WO9912931、WO9736903、WO2004020412、WO2008104752、WO2008097676、WO200809767、WO2008085608(これらのそれぞれは、参照により援用される)を含む、様々な公開公報によって知られている。これらの公開公報に記載されている好中球阻害剤のそれぞれは、本発明の方法で使用することができ、かつ本発明の方法における使用のために個別に本明細書に開示されているものとして言及される。
【0064】
好ましい好中球エラスターゼ阻害剤アルベレスタットに加えて、本発明にて使用することができるその他の例示的な好中球エラスターゼ阻害剤は、シベレスタット、ONO-5046-Na、デペレスタット、Prolastin、KRP-109、DX-890、プレエラフィン、MNEI、BAY 85-8501、POL6014、α1-AT、シルチノール、ONO-6818(2-(5-アミノ-6-オキソ-2-フェニル-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-1-イル)-N-[(1R,2R)-1-(5-tert-ブチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-1-ヒドロキシ-3-メチルブタン-2-イル]アセトアミド)、エラスタチナール、SSR 69071(2-[[6-メトキシ-4-(1-メチルエチル)-1,1-ジオキソ-3-オキソ-1,2-ベンズイソチアゾール-2(3H)-イル]メトキシ]-9-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン)、及びM0398(N-(メトキシサクシニル)-L-アラニル-L-アラニル-L-プロリル-L-バリンクロロメチルケトン);ならびにそれらの薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を含む。好ましい好中球エラスターゼ阻害剤アルベレスタットに加えて、本発明にて使用することができるその他の例示的な好中球エラスターゼ阻害剤は、シベレスタット、ONO-5046-Na、デペレスタット、Prolastin、KRP-109、DX-890、プレエラフィン、MNEI、BAY-85-8501(PHP-303とも呼ばれる)、BAY-678、DMP-777、GW-311616、POL6014、α1-AT、シルチノール、ONO-6818(2-(5-アミノ-6-オキソ-2-フェニル-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-1-イル)-N-[(1R,2R)-1-(5-tert-ブチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-1-ヒドロキシ-3-メチルブタン-2-イル]アセトアミド)、エラスタチナール、SSR 69071(2-[[6-メトキシ-4-(1-メチルエチル)-1,1-ジオキソ-3-オキソ-1,2-ベンズイソチアゾール-2(3H)-イル]メトキシ]-9-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン)、及びM0398(N-(メトキシサクシニル)-L-アラニル-L-アラニル-L-プロリル-L-バリンクロロメチルケトン);ならびにそれらの薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を含む。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される好中球エラスターゼ阻害剤は、ONO-6818(フレセレスタットとしても知られている)などの、NEの特異的、かつ可逆的な阻害剤である。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される好中球エラスターゼ阻害剤は、DMP-777(CAS番号:157341-41-8)などの、NEの不可逆な阻害剤である。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される好中球エラスターゼ阻害剤は、シベレスタット、BAY-678(CAS番号:675103-36-3)、BAY-85-8501(CAS番号:1161921-82-9)、DMP-777(CAS番号:157341-41-8)、またはGW-311616(CAS番号:198062-54-3)などの、NE及びPR3の阻害剤である。
【0065】
好中球エラスターゼ阻害剤という用語は、化合物の全ての薬学的に許容される形態、例えば、全ての薬学的に許容される塩、溶媒和物、異性体、及びプロドラッグ形態を含む。
【0066】
特定の実施形態では、好中球エラスターゼ阻害剤は、小分子化合物であり、すなわち、分子量が約900ダルトン未満である。
【0067】
好ましくは、好中球エラスターゼ阻害剤は、ヒト好中球エラスターゼの阻害剤である。
【0068】
本発明の多くの実施形態がアルベレスタットに関連するが、「アルベレスタット」に言及する本明細書に記載の各実施形態及び全ての実施形態について、本発明は、「好中球エラスターゼ阻害剤」の使用を含む対応する実施形態も提供することを理解されたい。
【0069】
治療法
本発明は、概して、線維化、組織に関連する線維化、または疾患に関連する線維化(例えば、移植片拒絶、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)、移植片対宿主病(GVHD)、またはGVHD関連閉塞性細気管支炎症候群(BOS))などを治療または予防することを、それを必要とする対象に行う方法を提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を該対象に投与することを含む。
【0070】
したがって、本発明は、線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0071】
本発明は、対象における線維化を低減するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0072】
特定の実施形態では、線維化は、関節線維症である場合がある。関節線維症は、膝、臀部、足首、足関節、肩(五十肩、癒着性関節包炎)、肘(硬直した肘)、手首、手関節、及び脊髄椎骨のうち1つ以上で起こる場合がある、瘢痕組織形成(すなわち、線維化)の形態である。
【0073】
特定の実施形態では、線維化は、肝線維症である場合がある。肝線維症は、肝臓組織に取って代わり、肝機能を破壊する、瘢痕組織及び小結節を指す肝硬変である場合がある。肝線維症は、通常、アルコール依存症、脂肪肝疾患、B型肝炎、またはC型肝炎によって引き起こされる。肝線維症は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)としても知られている脂肪肝疾患によって引き起こされる場合がある。特定の実施形態では、線維化は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に関連する肝線維症である場合がある。特定の実施形態では、線維化は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に関連する場合がある。特定の実施形態では、NAFLDは、非アルコール性脂肪症(例えば、単純な脂肪肝または脂肪症)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維化、及び肝硬変のうち1つ以上を含む場合がある。特定の実施形態では、線維化は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関連する肝線維症である場合がある。特定の実施形態では、線維化は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関連する場合がある。
【0074】
特定の実施形態では、線維化は、肝臓の線維化である場合がある。肝臓の線維化は、反復損傷に対する肝臓の創傷治癒応答の結果である場合がある。例えば、肝臓損傷(例えば、ウイルス性肝炎によって生じる)後、実質細胞は、再生して、壊死した細胞またはアポトーシス細胞に取って変わる場合がある。このプロセスは、炎症性応答及びECMの沈着に関連する場合がある。肝臓の損傷が持続する場合、最終的には肝再生は失敗し、肝細胞は、大量のECMによって置換される場合があり、線維化に至る。
【0075】
特定の実施形態では、線維化は、心臓線維症である場合がある。心臓線維症は、線維化を起こす心筋梗塞に起因して損傷を受けた心臓の領域を意味する場合がある。心臓線維症はまた、心筋線維症としても知られている。心筋線維症には、2つの形態がある。第1は、間質性線維症であり、これは、うっ血性心不全、高血圧及び老化の結果である場合がある。第2は、置換性線維症であり、これは、以前の心筋梗塞の結果である場合がある。特定の実施形態では、心筋線維症は、間質性線維症または置換性線維症である。
【0076】
特定の実施形態では、線維化は、縦隔線維症である場合がある。縦隔線維症は、呼吸器及び血管を遮断することがある、リンパ節の石灰化線維症を特徴とする線維化の形態である。
【0077】
特定の実施形態では、線維化は、後腹膜腔線維症である場合がある。後腹膜腔線維症は、大動脈、腎臓、及び多数のその他の構造を含む後腹膜腔における軟組織の線維化である。
【0078】
特定の実施形態では、線維化は、骨髄の線維化である場合がある。骨髄の線維化または骨髄線維症は、骨髄における血球の正常な産生を妨げる骨髄内の瘢痕化である。
【0079】
特定の実施形態では、線維化は、架橋線維症である場合がある。架橋線維症は、肝臓損傷のいくつかのタイプで見られる線維化のタイプであり、門脈から門脈三分岐までの線維化を指す。
【0080】
特定の実施形態では、線維化は、腎性全身性線維症である場合がある。腎性全身性線維症は、皮膚、関節、眼、及び/または内部臓器の線維化を伴い得る。
【0081】
特定の実施形態では、線維化は、皮膚線維症である場合がある。皮膚線維症は、損傷に応答して皮膚に形成する瘢痕組織であり、ケロイドと呼ばれることもある。
【0082】
特定の実施形態では、線維化は、強皮症または全身性硬化症である場合がある。強皮症は、主として皮膚に影響を及ぼすが、腎臓、心臓、及び/または肺などの他の臓器を巻き込む可能性もある、結合組織の自己免疫疾患である。
【0083】
本発明は、組織における線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態では、組織は、肺組織である。特定の実施形態では、組織は、肝臓組織である。特定の実施形態では、組織は、脳組織である。特定の実施形態では、組織は、心臓組織である。特定の実施形態では、組織は、胃腸組織である。特定の実施形態では、組織は、皮膚組織である。
【0084】
組織の線維化を治療または予防するための方法の特定の実施形態では、組織は、GVHDにも関連する。したがって、本発明は、GVHDに関連する組織における線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態では、組織は、肝臓、脳、心臓、胃腸組織及び皮膚組織からなる群から選択される。特定の実施形態では、組織は、肺組織である。特定の実施形態では、組織は、肝臓組織である。特定の実施形態では、組織は、脳組織である。特定の実施形態では、組織は、心臓組織である。特定の実施形態では、組織は、胃腸組織である。特定の実施形態では、組織は、皮膚組織である。
【0085】
本発明は、疾患に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0086】
特定の実施形態では、疾患は、移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、慢性肺同種移植機能不全(CLAD)、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、GVHD関連BOS(GVHD BOS)、肺移植関連拘束性同種移植症候群(LT-RAS)、GVHD関連拘束性慢性肺機能低下(GVHD R-CLFD)、肝疾患、心臓疾患、肝硬変、線維胸、放射線誘発肺損傷、グリア性瘢痕、動脈硬化、腎疾患、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド異常、ペロニー病及び癒着性関節包炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、及び高血圧から選択される場合がある。特に、疾患は、LT-BOS、GVHD BOS、及びBOSから選択される場合がある。特定の実施形態では、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝硬変から選択される場合がある。
【0087】
線維胸は、結果として肺及び胸郭の動きを低下させる、重度の瘢痕化(線維化)及び肺を取り囲む胸膜腔の層の融合を特徴とする場合がある。グリア性瘢痕は、中枢神経系への損傷後に生じるアストログリオーシスを伴う反応性細胞プロセスとして定義される形成(グリオーシス)である場合がある。動脈硬化は、生物学的老化及び/または動脈硬化症の結果として生じる場合がある。デュピュイトラン拘縮(デュピュイトラン病、デュピュイトラン疾患、バイキング病、及びケルト手とも呼ばれる)は、1つ以上の指が曲げた位置で永久的に屈曲したようになる病態である。拘束性慢性肺機能低下(R-CLFD)は、肺機能の拘束性低下によって定義される場合があり、肺胞単位での線維性の変化を伴う場合がある。
【0088】
本発明は、移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0089】
本発明は、移植片拒絶を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0090】
移植片拒絶は、臓器移植拒絶反応と呼ばれる場合もある。
【0091】
急性移植片拒絶(急性肺拒絶反応など)を患う対象は、慢性移植片拒絶(CLAD及び特にLT-BOSなど)を発症するリスクが増加する。したがって、本発明は、急性移植片拒絶を患う対象における線維化の発症を予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0092】
本明細書に記載の方法は、慢性移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するのに有用である。特定の実施形態では、方法は、慢性移植片拒絶に関連する線維化を治療するためのものである。その他の実施形態では、方法は、慢性移植片拒絶に関連する線維化を予防するためのものである。
【0093】
移植片は、任意の実質臓器、特に頻繁に移植される実質臓器のものを含み得る。そのため、移植片は、皮膚、腎臓、心臓、肝臓、消化管、肺、及び膵臓からなる群から選択される1つ以上の臓器を含み得る。
【0094】
心臓(すなわち、心臓の)同種移植の慢性拒絶反応は、心臓同種移植脈管障害(CAV)によって現れる。これは、典型的には、冠血管の閉塞を特徴とする。CAVの5年間の発生率は、30~40%である。したがって、本発明は、CAVを治療または予防することを、それを必要とする対象に行うための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。
【0095】
腎臓同種移植の慢性拒絶反応は、心臓同種移植腎障害(CAN)によって現れる。CANは、腎機能低下の主要な原因であり、10年時点での移植片機能損失の約40%を占めている。したがって、本発明は、CANを治療または予防することを、それを必要とする対象に行うための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。
【0096】
好ましい実施形態では、移植片は、肺を含む。移植片は、単一または二重の肺移植であり得る。移植片は、心肺移植であり得る。したがって、本発明は、肺移植拒絶反応に関連する線維化を治療または予防することを、それを必要とする対象に行うための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。これは、慢性肺移植拒絶反応である場合がある。
【0097】
肺同種移植の慢性拒絶反応は、慢性肺同種移植機能不全(CLAD)によって現れる。
【0098】
したがって、本発明は、CLADに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0099】
本発明は、CLADを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0100】
CLADの表現型は、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)である。閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans)は、閉塞性細気管支炎(obliterative bronchiolitis)と呼ばれることもある。線維化は、閉塞性細気管支炎に関連する場合がある。典型的な特性には、呼気時のCTにおける閉塞性の肺機能欠陥、及び空気トラッピング/モザイク減衰が含まれる。
【0101】
本発明は、LT-BOSに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0102】
本発明は、LT-BOSを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0103】
CLADの別の表現型は、肺移植関連拘束性同種移植症候群(RAS)である。典型的な特性には、末梢肺線維症が含まれる。
【0104】
本発明は、LT-RASに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0105】
本発明は、LT-RASを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0106】
本発明によるLT-BOS及び/またはLT-RASに関連する線維化を予防する方法は、LT-BOS及び/またはLT-RASのリスクがある対象にとって特に有用である。このような対象は、原発性移植片機能不全、胃食道逆流、感染、気道虚血、急性拒絶反応、リンパ性細気管支炎、微生物(例えば、Pseudomonas aeruginosa及びAspergillus fumigatus)による感染及びコロニー形成、ドナー及び被移植者遺伝性、HLA抗体の微粒子物質及び存在、または自己抗原に対する抗体(K-α1チューブリン及びコラーゲンVなど)からなる群から選択される1つ以上の危険因子を有し得る。
【0107】
本発明は、BOSに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0108】
本発明は、BOSを治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0109】
本発明は、GVHDに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0110】
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するための方法をさらに提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0111】
GVHDを伴う線維化は、組織移植後に現れる場合がある。いくつかの実施形態では、移植は、皮膚、造血幹細胞、血液、及び骨髄からなる群から選択される。好ましい実施形態では、移植は、造血幹細胞である。特定の実施形態では、移植は、造血幹細胞、例えば、同種間造血細胞移植である。
【0112】
GVHDは、急性移植片対宿主病(aGVHD)であり得る。疾患は、慢性移植片対宿主病(cGVHD)であり得る。急性GVHDは、通常、皮膚、肝臓、及び消化管への損傷を特徴とするのに対して、慢性GVHDは、通常、より多様な症状を示し、例えば、好酸球性筋膜炎、強皮症のような皮膚疾患、ならびに、唾液及び涙腺の関与を伴う自己免疫症候群に似ている場合がある。
【0113】
追加の実施形態は、aGVHD及びcGVHDを含むGVHDの線維化などの症状の発生を阻害するための方法を提供し、該方法は、薬学的有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、同種間造血幹細胞の移植の被移植者に投与することを含む。
【0114】
GVHDに関連する上記の方法では、GVHDは、眼、関節、筋膜、性器、肺、肝臓、皮膚、または消化管(例えば、口、食道)からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする場合がある。
【0115】
特に、GVHDに関連する上記の方法では、GVHDは、肺、肝臓、皮膚、または消化管からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする場合がある。特に、GVHDに関連する上記の方法では、GVHDは、肝臓、皮膚、または消化管からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする場合がある。
【0116】
慢性GVHDは、種々の基準に従って分類される場合がある。2005年及び2014年のNational Institutes of Health Consensus Development Projects on Criteria for Clinical Trials in Chronic GVHDでは、慢性GVHD分類システム周辺の用語を標準化した[8]。
【0117】
1つの分類システムは、NIH重症度スコアであり、これは、関与する臓器の数及び重症度に基づいて、軽度、中程度、または重度に分けられる。したがって、cGVHDを治療することに関する本発明の方法では、対象は、NIH重症度スコアに従って軽度、中程度、または重度であるcGVHDを患っている場合がある。特に、cGVHDは、中程度または重度である場合があり、典型的には重度である。さらに、cGVHDを患う対象のcGVHDの重症度スコアを改善するための方法が、本明細書で提供され、該方法は、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を投与することを含む。
【0118】
患者報告アウトカムに基づく別の分類システムは、Lee cGVHD Symptom Scaleである[9]。したがって、cGVHD患者のLee cGVHD Symptom Scaleを改善するための方法が、本明細書で提供され、該方法は、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を投与することを含む。特に、肺に影響を及ぼすcGVHDを患う対象のLee cGVHD Symptom Scaleの肺スコアを改善するための方法が、本明細書で提供され、該方法は、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を投与することを含む。
【0119】
閉塞性細気管支炎症候群(BOS)は、移植片対宿主病(GVHD)の稀ではあるが、破壊的な合併症であり、この合併症は、GVHD BOS(またはGVHD関連BOS)と称される場合もある。
【0120】
本発明は、GVHD BOSに関連する線維化を治療または予防するための方法も提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0121】
本発明は、GVHD BOSを治療または予防するための方法も提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0122】
好ましい実施形態では、対象は、同種間造血細胞移植などの造血幹細胞移植を受けている。
【0123】
好ましい実施形態では、患者はヒト対象である。
【0124】
したがって、本発明は、GVHD BOSに関連する線維化を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、該対象は、造血細胞移植を受けている。
【0125】
GVHD BOSに関連する上記の方法では、GVHDは、眼、関節、筋膜、性器、肺、肝臓、皮膚、または消化管(例えば、口、食道)からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする場合がある。特に、GVHD BOSに関連する上記の方法では、GVHDは、肝臓、皮膚、または消化管からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする場合がある。
【0126】
特定の実施形態では、対象は、好中球増加症、例えば、気道好中球増加症を有している。
【0127】
GVHD BOSに関連する線維化の治療または予防における使用のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩も提供される。特に、ヒト対象におけるGVHD BOSに関連する線維化の治療または予防における使用のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩も提供され、該ヒト対象は、造血細胞移植を受けている。
【0128】
GVHD BOSに関連する線維化を治療または予防するための医薬品の製造のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。特に、ヒト対象におけるGVHD BOSに関連する線維化を治療または予防するための医薬品の製造のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩の使用も提供され、該ヒト対象は、造血細胞移植を受けている。
【0129】
拘束性慢性肺機能低下(R-CLFD)もまた、移植片対宿主病(GVHD)の破壊的な合併症であり、この合併症は、GVHD R-CLFD(またはGVHD関連R-CLFD)と称される場合もある。
【0130】
本発明は、GVHD R-CLFDに関連する線維化を治療または予防するための方法も提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0131】
本発明は、GVHD R-CLFDを治療または予防するための方法も提供し、該方法は、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、治療は、対象における線維化を低減することを含む。
【0132】
好ましい実施形態では、対象は、同種間造血細胞移植などの造血幹細胞移植を受けている。
【0133】
好ましい実施形態では、患者はヒト対象である。
【0134】
いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含む。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上のバイオマーカーのレベルが上昇しており、例えば、対象は、NE阻害剤を投与する前に、1つ以上のバイオマーカーのレベルが上昇している。いくつかの実施形態では、対象は、NE活性が上昇しており、例えば、対象は、NE阻害剤を投与する前に、NE活性が上昇している。いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、8週間にわたって1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含む。
【0135】
コラーゲンの代謝回転の間、コラーゲン合成及び分解の両方の副生成物として、異なるペプチドが生成される。コラーゲン合成の副生成物は、コラーゲンが細胞外マトリックスに組み込まれる前に切断されるプロコラーゲンのプロペプチドを含む。[10][11]これにより、血液中で検出され得るコラーゲンの個々の形態ごとに固有の断片(例えば、ネオエピトープ)の放出がもたらされる。コラーゲン分解の副生成物は、コラーゲン線維を切断する特定のメタロプロテアーゼ(MMP)から生じ、異なるネオエピトープが現れる。合成ペプチド及び分解ネオエピトープの両方は、血液循環中に放出され、血液中で検出され得る。コラーゲン合成とコラーゲン分解との副生成物(例えば、バイオマーカー)の比率は、コラーゲンのリモデリング、ゆえに線維化の有用な指標である。例えば、コラーゲン合成副生成物のレベルとコラーゲン分解副生成物のレベルとの比率の減少は、線維化の低減に関連する可能性がある。
【0136】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、コラーゲンバイオマーカーである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、コラーゲン合成バイオマーカーである。いくつかの実施形態では、コラーゲン合成バイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー及び/またはVI型コラーゲンバイオマーカーである。いくつかの実施形態では、コラーゲン合成バイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー及びVI型コラーゲンバイオマーカーである。いくつかの実施形態では、III型コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンのN末端プロペプチドである(PRO-C3)。いくつかの実施形態では、VI型コラーゲンバイオマーカーは、VI型コラーゲンのN末端プロペプチドである(PRO-C6)。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、PRO-C3である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、PRO-C6である。
【0137】
健康なボランティアでは、血漿PRO-C3レベル(すなわち、参照レベル)は、競合的ELISAによって測定した際に約10+/-2ng/mlであった。[1]いくつかの実施形態では、PRO-C3の参照レベルは、約8~12、約9~11、または約10ng/mlである。いくつかの実施形態では、参照レベルは、競合的ELISAによって測定される。
【0138】
健康なボランティアでは、血漿PRO-C6レベル(すなわち、参照レベル)は、競合的ELISAによって測定した際に約8+/-1ng/mlであった。[1]いくつかの実施形態では、PRO-C3の参照レベルは、約7~9、または約8ng/mlである。いくつかの実施形態では、参照レベルは、競合的ELISAによって測定される。
【0139】
いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、PRO-C3及び/またはPRO-C6のレベルを低下させることを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、コラーゲン分解バイオマーカーである。いくつかの実施形態では、コラーゲン分解バイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー(C3M)及び/またはVI型コラーゲンバイオマーカー(C6M)である。いくつかの実施形態では、コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー(C3M)及びVI型コラーゲンバイオマーカー(C6M)である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、C3Mである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、C6Mである。
【0141】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、エラスチンバイオマーカーである。いくつかの実施形態では、エラスチンバイオマーカーは、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)から選択される。いくつかの実施形態では、エラスチンバイオマーカーは、デスモシン(DES)である。いくつかの実施形態では、エラスチンバイオマーカーは、イソデスモシン(IDES)である。
【0142】
健康なボランティアでは、血漿DES/IDESレベル(すなわち、参照レベル)は、LC-MS/MSを使用して、約0.2ng/mlであった。血漿DES/IDESレベルは、DES及びIDESの総濃度を指す。したがって、いくつかの実施形態では、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)のレベルは、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)の総レベルである。いくつかの実施形態では、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)の参照レベルは、0.2ng/mlである。いくつかの実施形態では、参照レベルは、LC-MS/MSによって測定される。
【0143】
したがって、いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)のレベルを低下させることを含む。
【0144】
したがって、いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、デスモシン(DES)、イソデスモシン(IDES)、PRO-C3及びPRO-C6のレベルを低下させることを含む。
【0145】
したがって、いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、デスモシン(DES)、イソデスモシン(IDES)、及びPRO-C3のレベルを低下させることを含む。
【0146】
したがって、いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、PRO-C3:C3Mの比率を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、線維化の治療、予防、または低減は、PRO-C6:C6Mの比率を減少させることを含む。
【0147】
本明細書に記載のバイオマーカーのいずれか(例えば、PRO-C3、PRO-C6、DES及びIDES、C3M及びC6Mのうち1つ以上)のレベルの低下は、方法(例えば、ex vivo方法)によって決定することができる。例えば、バイオマーカーのレベルは、対象から血液サンプルを採取して、ex vivo方法でそのサンプルを評価することによって決定することができる。バイオマーカーのレベルの低下は、本明細書に記載のNE阻害剤を投与する前に、バイオマーカーのベースラインまたは参照レベルを確立し、次に、本明細書に記載のNE阻害剤を投与した後に、バイオマーカーのレベルを決定することによって決定することができる。
【0148】
記載される方法では、NE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、移植の前に対象に投与することができる。例えば、アルベレスタットの投与は、移植の14日、7日、3日、2日、または1日前に開始することができる。
【0149】
記載される方法では、NE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、移植の後に対象に投与することができる。例えば、アルベレスタットの投与は、移植のその日に、または移植の1日、2日、3日、7日、もしくは14日後に開始することができる。
【0150】
BOS、特にLT-BOSまたはGVHD BOSに関する本発明による方法はまた、対象の1つ以上の肺機能パラメータを改善することを含む場合がある。拘束性肺疾患、特にLT-RAS、R-CLFDまたはGVHD R-CLFDに関する本発明による方法はまた、対象の1つ以上の肺機能パラメータを改善することを含む場合がある。
【0151】
特に、本発明による方法は、対象のFEV1を改善することができる。努力呼気肺活量(FEV)は、設定された期間、例えば、1秒間にわたって測定される最大強制努力による呼気肺活量である(FEV1)。
【0152】
特に、本発明による方法は、対象の予測されるFEV1%を改善することができる。予測されるFEV1%は、対象のFEV1と、類似して一致する人種または民族性、性別、年齢、身長及び体重の標準的な人間の予測FEV1との比率であり、パーセンテージとして表される。
【0153】
したがって、有効量のNE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を投与することによって、線維化及びLT-BOSを患う対象における予測されるFEV1%を増加させるための方法も提供される。
【0154】
したがって、有効量のNE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を投与することによって、線維化及びGVHD BOSを患う対象における予測されるFEV1%を増加させるための方法も提供される。
【0155】
特定の実施形態では、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物による治療は、ベースラインのFVC%予測測定値と比較して、予測されるFEV1%を少なくとも約1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10%、15%、20%、30%、40%または50%増加させる。さらなる実施形態では、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物による治療は、FEV1%の低下を防ぐ。
【0156】
LT-BOSまたはGVHD BOSに関する本発明による方法はまた、対象のBOSグレードを改善することを含む場合がある。1993年に採用されたBOS分類スキームにより、移植後の肺機能低下の重症度に基づく病期分類システムが提供され、臨床的意志決定及び研究目的で使用されている。この病期分類システムは、最近では2002年に改変された[2]。2002年からのBOS分類スキームを、本発明に従って使用する。

【表1】
【0157】
したがって、LT-BOSまたはGVHD BOSに関連する線維化の治療に関連する実施形態では、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物による治療は、BOSグレードを少なくとも1グレード改善する。LT-BOSまたはGVHD BOSに関連する線維化の治療に関連するさらなる実施形態では、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物による治療は、BOSグレードの低下を防ぐ。
【0158】
BOSの診断は、熟練した臨床医によって行うことができる。高解像度胸部CTスキャンなどのイメージング検査、及び肺機能検査は、BOSの検出を補助できる。胸部x線も、使用されてよい。外科的肺生検が、BOSを診断するために行われる場合がある。肺生検により、管腔の線維性閉塞を伴う小気道の関与が明らかとなる場合がある。気管支肺胞洗浄(BAL)により、好中球及び/またはリンパ球性炎症が明らかとなる場合がある。
【0159】
BOS及び結合組織疾患、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、感染、毒性臭気曝露、またはスティーヴェンズ-ジョンソン症候群に関連する線維化を治療または予防する方法もまた本発明で提供され、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0160】
本発明の方法で治療される患者は、いくつかの実施形態では、ベースラインFEV1が予測FEV1の30%以上、例えば、ベースラインFEV1が35%以上、または40%以上であり得る。患者は、ベースラインFEV1が予測FEV1の20~90%であり、例えば、30~80%、35~75%、または40~50%であり得る。
【0161】
理論に拘束されることを望まないが、アルベレスタットは、好中球エラスターゼを阻害するその能力によって本発明の方法において有益であると考えられる。したがって、本発明は、移植片拒絶に関連する線維化、GVHDに関連する線維化、LT-BOSに関連する線維化、BOSに関連する線維化、またはGVHD BOSに関連する線維化を含む、本明細書に記載の病態のいずれかに罹患しているか、そのリスクがある対象における好中球エラスターゼを阻害する方法も提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。
【0162】
したがって、本発明は、LT-BOS、BOS、またはGVHD BOSに関連する線維化に罹患しているか、またはそのリスクがある対象における好中球エラスターゼを阻害する方法を提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。
【0163】
特に、本発明は、GVHD BOSに関連する線維化に罹患しているか、またはそのリスクがある対象における好中球エラスターゼを阻害する方法も提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含み、該対象は、造血細胞移植を受けている。
【0164】
好中球エラスターゼを阻害することによって、本明細書に記載の病態のいずれかを治療または予防する上記の方法のそれぞれも提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。
【0165】
本発明はまた、本開示にて言及される対象、特に肺に影響を及ぼすGVHDに関連する線維化を患う対象の肺機能を改善するための方法にも関し、上記方法は、有効量のNE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、GVHDは、慢性GVHDである。
【0166】
本発明はまた、本開示にて言及される対象、特に肺に影響を及ぼすGVHDに関連する線維化を患う対象における肺機能の悪化を予防する方法にも関し、上記方法は、有効量のNE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、GVHDは、慢性GVHDである。
【0167】
本発明はまた、本開示にて言及される対象、特に肺に影響を及ぼすGVHDに関連する線維化を患う患者の肺機能を安定化させるための方法にも関し、上記方法は、有効量のNE阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、GVHDは、慢性GVHDである。
【0168】
本発明はまた、本開示にて言及される対象、特にcGVHDなどのGVHDを患う対象における線維化の進行または悪化を予防するための方法にも関する。本発明はまた、本開示にて言及される対象、特にcGVHDなどのGVHDを患う対象における線維化を安定化するための方法にも関する。いくつかの実施形態では、GVHDは、慢性GVHDである。
【0169】
本発明はまた、本開示にて言及される対象、特にcGVHDなどのGVHDを患う対象における線維化の進行を予防するための方法にも関する。本発明はまた、本開示にて言及される対象、特にcGVHDなどのGVHDを患う対象における線維化を安定化するための方法にも関する。
【0170】
移植片拒絶に関連する線維化の治療または予防における使用のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物も提供される。いくつかの実施形態では、移植片拒絶は、慢性または急性移植片拒絶である。肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群に関連する線維化の治療または予防における使用のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩も提供される。GVHDに関連する線維化の治療または予防における使用のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩も提供される。
【0171】
移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するための医薬品の製造のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物の使用もまた提供される。いくつかの実施形態では、移植片拒絶は、慢性である。肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群に関連する線維化を治療または予防するための医薬品の製造のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。GVHDに関連する線維化を治療または予防するための医薬品の製造のためのアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩の使用もまた提供される。
【0172】
概して、有効量で製品をそれを必要とする対象に投与することを含む本明細書に記載の疾患を治療または予防する任意の方法は、本明細書に記載の疾患を治療または予防する方法における使用のための製品に対する対応する実施形態を提供する。加えて、本明細書に記載の疾患を治療または予防するための医薬品の製造における製品の使用のための実施形態が提供される。
【0173】
方法
前述の通り、本発明は、バイオマーカーのレベルが上昇した対象が、活性、例えば、NE活性のレベルが上昇していることを示す。
【0174】
したがって、本発明は、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩による治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、該方法は、対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを決定することを含み、ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、治療を必要とする対象が特定される。
【0175】
ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルは、上昇した好中球エラスターゼ活性に等しい。デスモシン及びイソデスモシンのレベルは、サンプル(例えば、対象からの血液サンプル)を採取して、一方法(例えば、ex vivo方法)でバイオマーカーのレベルを決定することによって決定することができる。
【0176】
したがって、本発明は、好中球エラスターゼ活性を決定する方法をさらに提供し、該方法は、対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを評価することを含み、ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示される。
【0177】
本発明はまた、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩による治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、該方法は、対象からのサンプルにおけるPRO-C3及び/またはPRO-C6のレベルを決定することを含み、ここで、ベースラインまたは参照レベルと比較したPRO-C3及び/またはPRO-C6の上昇したレベルにより、治療を必要とする対象が特定される。
【0178】
発明はまた、好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットによる治療を受けている患者の線維性活性をモニタする方法を提供し、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルを測定し、かつサンプルにおけるコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルを測定することと、
-対象におけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルとコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルとの比率を評価することと、
-ベースラインまたは参照比率に対して比率を比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照比率と比較した比率の減少により、線維性活性の低下が示される。
【0179】
本発明はまた、好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットによる治療を必要とする対象を特定する方法を提供し、ここで、該対象は、線維性疾患を患っており、該方法は、
-対象からサンプルを採取することと、
-サンプルにおけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルを測定し、かつサンプルにおけるコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルを測定することと、
-対象におけるコラーゲン合成のバイオマーカー(例えば、PRO-C3)のレベルとコラーゲン分解のバイオマーカー(例えば、C3M)のレベルとの比率を評価することと、
-ベースラインまたは参照比率に対して比率を比較することと、のステップを含み、
-ここで、ベースラインまたは参照比率と比較した比率の増加により、この対象には、好中球エラスターゼ阻害剤による治療が必要であることが示される。
【0180】
いくつかの実施形態では、対象は、BOSであると診断されている。いくつかの実施形態では、BOSは、GVHD BOSである。いくつかの実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けている。
【0181】
いくつかの実施形態では、PRO-C3、PRO-C6、C3M、及び/またはC6Mのレベルは、クロマトグラフィー及び/または質量分析、例えば、質量分析を伴う同位体希釈液体クロマトグラフィータンデムによって測定される。いくつかの実施形態では、対象からのサンプルは、血漿サンプルである。
【0182】
投薬
上述の治療指針に関して、投与される好中球阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物の用量は、治療される疾患、疾患の重症度、投与様式、患者の年齢、体重、及び性別に依存する。かかる因子は、主治医によって決定される場合がある。しかし、一般的に、満足な結果は、0.1mg/kg~100mg/kg(有効成分として測定)の1日投与量で化合物がヒトに投与される場合に得られる。
【0183】
適切には、1日用量は、1日あたり0.5~1000mg、例えば、1日あたり50~800mg、特に1日あたり50~600mg、より詳細には、120mg~550mg、さらにより詳細には、200~500mgである。例えば、1日用量は、1日あたり約240、270、300、330、360、390、420、450または480mgである。用量は、単回用量または分割用量として投与されてよく、例えば、総1日用量は、2つ以上の画分に分割されて、1日の間に投与される。用量は、日に1回、もしくは1日に複数回(例えば、1日2回)、または1週に複数回、または月1回、もしくは1月に複数回、投与されてよい。
【0184】
特定の実施形態では、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、1日2回投与される(BID投与)。さらなる実施形態では、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、1日2回投与され、ここで、各用量は、最大240mgのアルベレスタット遊離塩基に等しく、例えば、1日2回60mg、1日2回90mg、1日2回120mg、1日2回150mg、1日2回180mg、1日2回210mg、または1日2回240mgである。特に、120mgが1日2回投与されるか、または240mgが1日2回投与される。
【0185】
化合物は、有効な投薬レジメンに従って、所望の期間または持続時間、例えば、少なくとも1週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約24ヶ月、またはそれ以上にわたって、個体に投与されてよい。例えば、化合物は、対象の寿命の持続時間にわたって、毎日または断続的なスケジュールで投与されてよい。
【0186】
アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物の用量は、本発明の全ての方法で投薬量漸増レジメンに従って投与されてよい。これにより、アルベレスタットの標準的な1日用量、例えば、1日2回240mgまでの安全な用量設定が可能になる。例えば、本発明に従ったアルベレスタットの標準的な1日2回240mgまでの投薬量漸増レジメンは、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、第1期間に1日2回60mg、続いて、第2期間に1日2回120mg、続いて、第3期間に1日2回180mg、その後1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む。第1、第2、及び第3期間は、それぞれ、10~20日間、例えば、それぞれ、約2週間であってよい。特に、アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、2週間にわたって1日2回60mg、続いて、2週間にわたって1日2回120mg、続いて、2週間にわたって1日2回180mg、その後1日2回240mgで投与される。用量は、アルベレスタット遊離塩基の当量と呼ばれる。
【0187】
組成物
好中球阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、医薬組成物の形態で対象に投与される。
【0188】
したがって、本発明は、本明細書に記載の病態のいずれかを治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量の好中球エラスターゼ阻害剤、特にアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0189】
医薬組成物は、通常の診療に従って選択され得る1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を用いて調製されてよい。
【0190】
「薬学的に許容される賦形剤」としては、ヒトへの使用に対して許容可能であるとUnited States Food and Drug Administrationによって承認された、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。全ての組成物は、任意選択で、Shesky et al,Handbook of Pharmaceutical Excipients,8th edition,2017に記載されている賦形剤などの賦形剤を含有してよい。賦形剤は、アスコルビン酸及びその他の抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、デキストリンなどの炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などを含むことができる。
【0191】
医薬組成物は、経口投与を含む種々の投与に適したものを含む。組成物は、単位剤形で提供されてよく、薬学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製されてよい。そのような方法は、有効成分(例えば、本開示の化合物またはその薬学的塩)を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と結合させるステップを含む。組成物は、有効成分と液体賦形剤または微粉化された固体賦形剤またはその両方と均一かつ密接に結合させて、次に、必要に応じて、製品を成形することによって調製することができる。技術及び処方については、概して、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Edition,2012に記載されている。
【0192】
好ましい医薬組成物は、錠剤などの固体経口剤形を含む固体剤形である。錠剤は、流動促進剤、充填剤、結合剤などを含む賦形剤を含有してよい。
【0193】
本明細書記載の方法を遂行することにおいて、医薬組成物は、化合物を生物が利用可能にする任意の形態及び経路で投与することができる。したがって、医薬組成物は、経口及び非経口経路を含む種々の経路によって、より詳細には、吸入、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、鼻腔内、直腸、膣内、眼球、局部、舌下、及び頬側、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経口腔、鼻腔内、脂肪内、くも膜下腔内によって、ならびに、局所送達を介して、例えば、カテーテルまたはステントによって、投与することができる。好ましくは、医薬組成物は、経口投与される。
【0194】
経口用途で使用される場合、錠剤、トローチ、トローチ剤、水溶液、または油懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳濁液、硬もしくは軟カプセル、シロップ剤もしくはエリキシル剤が調製されてよい。経口投与に適した本明細書に記載の組成物は、それぞれが所定の量の有効成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤、または錠剤を含むがこれらに限定されない、個々のユニット(単位投薬形態)として提供されてよい。好ましくは、医薬組成物は、錠剤である。
【0195】
水性組成物は、滅菌形態で調製され得、経口投与以外による送達が意図される場合、一般に等張であり得る。
【0196】
剤形を作るために不活性成分と組み合わせることができる有効成分の量は、目的の治療対象及び特定の投与様式に応じて変化し得る。
【0197】
併用療法
本発明において、方法は、1つ以上の追加の治療剤を対象に投与するステップをさらに含む場合がある。1つ以上の追加の治療剤の投与は、好中球阻害剤の投与の前、同時、または後に行われてよい。
【0198】
追加の治療剤としては、免疫抑制剤、抗感染剤、抗炎症剤、抗線維化剤、及び鎮痛剤が挙げられる。
【0199】
特定の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、免疫抑制剤である。例えば、1つ、2つ、または好ましくは3つの免疫抑制剤が投与されてよい。
【0200】
免疫抑制剤は、例えば、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン)、ヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス)、生物学的製剤(例えば、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ)、モノクローナル抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ)、サリドマイド、ペントスタチン、アザチオプリン、ミコフェノール酸及びメトトレキサートからなる群から選択され得る。
【0201】
特定の実施形態では、方法は、免疫抑制剤の3剤併用、例えば、タクロリムス、ミコフェノール酸、及びコルチコステロイドを対象に投与するステップをさらに含む。
【0202】
1つ以上の追加の治療剤は、抗感染剤であってよい。抗感染剤としては、抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬、抗マラリア薬、抗原虫薬、抗結核薬、及び抗ウイルス薬が挙げられる。
【0203】
1つ以上の追加の治療剤は、抗感染剤であってよい。抗炎症剤としては、糖質コルチコイドなどのステロイドが挙げられる。抗炎症剤は、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン、及びベクロメタゾンから選択されてよい。
【0204】
1つ以上の追加の治療剤は、抗線維化剤であってよい。抗線維化剤は、ニンテダニブ及びピルフェニドンから選択されてよい。
【0205】
1つ以上の追加の治療剤は、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、チロミソール、イムチオール、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、アゾジアカルボニド(azodiacarbonide)、ビスインドリルマレイミドVIII、ブレキナル、クロラムブシル、CTLA4-Ig、シクロホスファミド、デオキシスペルグアリン、レフルノミド、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミゾリビン、一リン酸ミゾリビン、ムロモナブ-CD3、ミコフェノール酸モフェチル、OKT3、rho(D)免疫グロビン、ビタミンD類似体、MC1288)、ダクリズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ、アレムツズマブ、メトトレキサート、抗胸腺細胞グロブリン、デニロイキンジフチトクス、Campath-1H、ケラチノサイト成長因子、アバタセプト、レメステムセルLスベロイルアニリドヒドロキサム酸、ペントスタチン、サリドマイド、メシル酸イマチニブ、シクロホスファミド、フルダラビン、OKT3、メルファラン、チオペタ、及びリンパ球免疫グロブリン、抗胸腺細胞、及びグロブリンからなる群から選択されてよい。
【0206】
個別に、または併用療法もしくはレジメンで組み合わせて投与される薬剤のそれぞれが、初期用量で投与され、次に、医療専門家よって、より低い有効用量に到達するまで経時的に減らされ得ることをさらに理解すべきである。例えば、本明細書における併用及びレジメンでは、プレドニゾン及びメチルプレドニゾンなどの全身糖質コルチコステロイド(コルチコステロイド)は、約1~2mg/kg/日の用量でヒト患者に投与されてよい。mTOR薬剤の初期1日用量は、1日1回投与の2~40mgのシロリムス、及び1日2回投与の0.25~1mgのエベロリムスを含む。カルシニューリン剤の初期1日用量は、約0.025~0.2mg/kg/日のタクロリムス、及び約2.5~9mg/kg/日のシクロスポリンを含む。ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標))は、約250~3,000mg/日の初期1日用量で投与されてよい。これらの薬剤のそれぞれは、造血細胞移植後に、本明細書に記載のような薬学的有効量のSyk阻害剤と組み合わせて投与されてよい。本明細書の異なる実施形態では、GVHDの治療に有用な薬剤は、例えば、局所軟膏もしくはクリームの形態で、または点眼製剤で、このような治療が必要なヒトに局所投与されてよい。
【0207】
本発明はまた、GVHDを治療するための方法を提供し、該方法は、光線療法(体外フォトフェレシスとしても知られている)を投与するステップをさらに含む。
【実施例
【0208】
本明細書で提供される実施形態は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。これらの実施形態は、本明細書に記載の方法を例示することを意味し、いかなる形であれ制限するものではない。種々の変更及び修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。そのような修正はまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0209】
以下の実施例にて使用されるアルベレスタットは、WO 2005/026123 A1(実施例94、85頁)に従って合成することができる。
【0210】
WO2021/053058(参照により本明細書に援用される。特に実施例1~5を参照されたい)によるアルベレスタットは、
-好中球エラスターゼ(NE)の強力な特異的阻害剤であり、
-GVHDに対して防御効果を示し、
-肺移植後に患者におけるBOSの発症に対する予防処置として使用することができ、
-肺移植後に患者のBOSの治療に使用することができ、
-造血細胞移植(HCT)後に閉塞性細気管支炎症候群(BOS)患者におけるアルベレスタットの第1相試験で評価される。
【0211】
実施例1:造血細胞移植後の閉塞性細気管支炎症候群患者における経口好中球エラスターゼ阻害剤であるアルベレスタットの第1b相試験:上昇したエラスターゼ及びコラーゲン代謝回転バイオマーカーへの影響
【0212】
序文
閉塞性細気管支炎症候群(BOS)は、同種間造血細胞移植(HCT)後の、慢性移植片対宿主病(GVHD)の稀ではあるが、破壊的な合併症であり、高い疾病率及び死亡率に関連する。BOSに対する治療選択肢は不足しており、新しい戦略が必要とされている。気道好中球増加症は、感染がない場合であっても、BOSの特徴であり、かつ好中球エラスターゼ(NE)は、BOSの病態形成に関与している酵素である。HCT後のBOS患者における経口NE阻害剤であるアルベレスタットの第1b相試験が行われる。エラスチン分解ペプチドデスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)、ならびに刺激された好中球エラスターゼを含むバイオマーカーを使用して、NE活性に対する直接的な効果を評価した。3型及び6型コラーゲン合成(PRO-C3及びPRO-C6)のネオエピトープ副生成物を、線維化/組織モデリングのバイオマーカーとして測定する。3型及び6型コラーゲン分解(C3M及びC6M)のネオエピトープ副生成物もまた、線維化/組織モデリングのバイオマーカーとして測定することができる。
【0213】
方法
HCT後の年齢≧18歳のBOS及び慢性GVHD患者を、National Cancer Instituteプロトコル(NCT02669251)に募集した。この第1相試験には2つのパート:8週間の患者内用量漸増期間、それに続く、最大6ヶ月の治療が可能であった継続期間があった。アルベレスタットを、1日2回60mgで開始し、2週ごとに、1日2回120mg、1日2回180mg、最後に1日2回240mgに増加させて、経口で投与した。
【0214】
好中球エラスターゼ活性、デスモシン、イソデスモシン、PRO-C3、及びPRO-C6の血液バイオマーカーを、ベースライン(アルベレスタットによる治療の前)で、ならびに、アルベレスタット用量漸増の間の2週間ごとに、すなわち、1日2回60mg、1日2回120mg、1日2回180mg、及び1日2回240mgの後に採取した。
【0215】
血漿中のDES及びIDESレベルを、同位体希釈、液体クロマトグラフィー/質量分析法(Huang et al Thorax 2012;67:502-508)によって測定した。[12][13]
【0216】
コラーゲン代謝回転及び線維化に関連する新しいエピトープ(ネオエピトープ)のバイオマーカー(PRO-C6、PRO-C3、C3M、及びC6M)を、競合酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Nordic Biosciences,Denmark)によって測定した。[1]
【0217】
ex-vivoザイモサン刺激好中球エラスターゼ(NE)活性を、以下のアッセイで測定した:ザイモサンを全血に加えて、好中球を含む白血球の脱顆粒を誘導し、過剰な遊離活性NEを血漿に放出させた。血液を遠心分離にかけ、血漿を取り除いた。血漿サンプル中のNEのレベルを、ProteaseTag(登録商標)活性好中球エラスターゼイムノアッセイ(ProAxsis Ltd,Belfast,Northern Ireland)によって測定した。
【0218】
結果を、平均値及び平均値の標準誤差(SEM)として表した。サンプルを、ベースライン及び各用量漸増段階の終了時に採取した。
【0219】
結果
7人の患者を組み入れた(男性3人及び女性4人)。組み入れの時点での気管支拡張薬後のFEV1の中央値は、予測された44%(範囲38~74)であった。7人の全ての患者が、最大用量1日2回240mgまでのアルベレスタットの用量漸増に耐えることができた。
【0220】
DES及びIDESは、ベースラインで上昇していた(平均0.464(SEM 0.0508)ng/ml、7人中6人の対象が正常上限値(ULN、0.280ng/ml)を超えていた)。レベルは、用量漸増期間中、8週目までに0.380(SEM 0.0419)ng/mlまで段階的に低下し、ベースラインからの対象の%変化の平均は、-16.2%を示した(SEM 6.794、図1)。
【0221】
ex vivoザイモサン刺激エラスターゼ活性もまた、用量漸増期間にわたって段階的な低下を示し、一部の対象は、100%の抑制を示した(図2)。
【0222】
PRO-C3及びPRO-C6によって測定したコラーゲン合成は、ベースラインでULNを超えて上昇しており、アルベレスタット治療によって低下した(図3A及び3B)。
【0223】
治療患者の7人中6人でエラスターゼ活性及びコラーゲン代謝回転のバイオマーカーに対する一貫した抑制効果が見られ、その全ての患者の肺疾患が改善するか、または安定した(治療終了時の予測されるFEV1%がベースラインレベルよりも10%未満の低下に留まると定義)。
【0224】
線維化活性の低下の徴候は、図4で観察することができ、これは、試験中の、PRO-C3(コラーゲン合成バイオマーカー)とC3M(コラーゲン合成バイオマーカー)との比率の減少を示している。
【0225】
これらの結果も、アルベレスタットによるエラスターゼの阻害と、抗線維化効果との間の機構的関連を裏付けている。図5は、対象におけるPRO-C3(コラーゲン合成バイオマーカー)に対するDES/IDES(エラスチンバイオマーカー)のベースラインからのパーセント変化(%CFB)を示している。図5から分かるように、機構的関連を示す正の相関がある。
【0226】
結論
これは、cGVHD BOS患者におけるエラスチン分解によって検出されるような上昇したエラスターゼ活性の第1のエビデンスである。
【0227】
選択的NE阻害剤であるアルベレスタットによる治療は、8週間にわたる用量漸増による、血漿デスモシン及びイデスモシンレベルの段階的な低下、及び刺激好中球エラスターゼ活性の低下に関連した。選択的NE阻害剤であるアルベレスタットによる治療は、8週間にわたる用量漸増による、少なくとも血漿PRO-C3の段階的な減少に関連した。
【0228】
したがって、NEの阻害は、エラスチン分解バイオマーカーのレベルが低下するため、エラスターゼ活性を抑制している。NEの阻害はまた、コラーゲン合成に関連するバイオマーカーのレベルが低下するため、線維化も阻害している。さらに、このデータもまた、アルベレスタットによるNE阻害と、エラスチン及びコラーゲン合成バイオマーカーの連携抑制を前提とした線維化の低減との間の機構的関連を裏付けている。線維化の低減を観察する方法は、コラーゲン合成バイオマーカーのレベルとコラーゲン分解バイオマーカーのレベルとの比率(線維化リモデリングを表す)、例えば、PRO-C3:C3Mなど、各関連バイオマーカーの比率によるものである場合がある。
【0229】
アルベレスタット治療後のエラスターゼ及びコラーゲン合成バイオマーカーの一貫した抑制は、進行性線維化、例えば、cGVHD BOSまたは肺線維症に関連する線維化に影響を与える可能性を促進する。
【0230】
これらのデータは、好中球エラスターゼの阻害剤による対象における線維化の治療の妥当性を示している。
【0231】
実施例2:アルベレスタットまたはプラセボによる参加者の治療の12週間試験(NCT03636347)。
【0232】
前述のように、コラーゲンの合成、細胞外マトリックス(ECM)の主要構成成分、及び線維化の間には関連がある。実際に、コラーゲン分解及び形成(例えば、ECMリモデリングによる)は、安定病態と比較してCOPDにおいて増加しており[Chest 2018;154(4):798-807]、ECMリモデリングは、線維化の主要な要素である[Matrix Biol.(2018)68-69,122-149]。
【0233】
NCT03636347の態様は、PiZZ、ヌルもしくは稀な多様体表現型/遺伝子型α-1抗トリプシン欠損肺疾患患者におけるコラーゲンバイオマーカーに対するアルベレスタットの効果を調査することであった。いくつかのコラーゲン分解バイオマーカーのベースラインからの%変化を、アルベレスタット及びプラセボ群で12週間の期間にわたって測定した。
【0234】
方法
組み入れ基準:α-1-抗トリプシン欠乏症及びPiZZ、ヌルまたは他の稀な遺伝子/表現型、及び11uM未満の血清抗α-1アンチトリプシンレベルが確定診断された患者(18歳~75歳);予測されるFEV1≧20%;気腫のコンピュータ処理断層撮影(CT)スキャン所見;及び非喫煙者。アルベレスタットを、1日2回120mg、1日2回240mg、または1日2回240mgまでの用量漸増で経口投与した。このため、3つのアルベレスタット治療群が存在した。
【0235】
コラーゲン分解バイオマーカーC1M(1型コラーゲン)、C6M(6型コラーゲン)、C4Ma3(4型コラーゲン)、C3M(3型コラーゲン)を、ベースラインで(例えば、アルベレスタットまたはプラセボによる治療の前に)、及びアルベレスタットまたはプラセボによる治療の12週間後に採取した。
【0236】
C3M及びC6Mに関連するバイオマーカーを、競合酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Nordic Biosciences,Denmark)によって測定した。[1]C1M及びC4Ma3に関連するバイオマーカーを、Nordic Bioscienceアッセイを用いて測定した[Chest.2017;151(1):47-59;及びLancet Respir Med.2015;3(6):462-472]。C1M、C6M、C4Ma3、及びC3M濃度をng/mLで測定した。
【0237】
サンプルを、ベースライン(ベースラインは、試験薬の最初の投与の前の最後の値として定義する)、及びアルベレスタットまたはプラセボの投与の12週間後(すなわち、12週目の値、または試験終了時の値)に採取した。
【0238】
結果及び考察
ベースラインからの変化に関するANCOVA分析に従う、12週間後のバイオマーカーごとの、アルベレスタット(3つの治療群を、1つのデータポイントで表す)及びプラセボにおける、ベースラインからのパーセンテージ変化として結果を提示する(最小2乗(LS)平均及びLS平均差は、交互作用のないモデルから取得する)。SE=標準誤差。N=試験中の患者の数。
【0239】
【表2】
【0240】
表1から、アルベレスタットを投与された患者(アルベレスタット群)は、コラーゲン分解バイオマーカーC1Mのベースラインからの変化が-0.6%であった。対照的に、プラセボを投与した患者(プラセボ群)は、コラーゲン分解バイオマーカーC1Mのベースラインからの変化が17.9%であった。C6Mの場合、アルベレスタット群は、ベースラインからの変化が1.1%、プラセボ群は、ベースラインからの変化が4.5%であった。C4Ma3の場合、アルベレスタット群は、ベースラインからの変化が-6.6%、プラセボ群は、ベースラインからの変化が1.9%であった。C3Mの場合、アルベレスタット群は、ベースラインからの変化が-1.7%、プラセボ群は、ベースラインからの変化が4.0%であった。概して、アルベレスタット群は、プラセボ群と比較して、バイオマーカーのベースラインからの%変化が少なかった。
【0241】
結論
これにより、全ての4つのバイオマーカーが、プラセボよりもアルベレスタットによって数値的に低い代謝回転(例えば、「より低い値」及び「変化」値)を示したことが明らかとなる。これは、ECM及びコラーゲンリモデリングの代謝回転の比率の減少を裏付けている。ECMリモデリングは、線維化の主要な要素であり、このプロセスの減衰を通して、アルベレスタットは、線維化に影響を与えることができる。
【0242】
これらのデータは、好中球エラスターゼの阻害剤による対象における線維化の治療の妥当性を示している。
【0243】
参考文献
[1]Organ et al.Respiratory Research(2019)20:148(https://doi.org/10.1186/s12931-019-1118-7)
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[14]Albarbarawi O.et al.Bioanalysis.2013 Aug;5(16):1991-2001(doi:10.4155/bio.13.164)
【0244】
本発明は、以下の番号が付された実施形態もまた提供する。
1.線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0245】
2.前記線維化は、関節線維症、肝線維症、心臓線維症、縦隔線維症、後腹膜腔線維症、骨髄の線維化、架橋線維症、腎性全身性線維症、皮膚線維症、強皮症及び全身性硬化症からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0246】
3.組織に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0247】
4.前記組織は、肺組織、肝臓組織、脳組織、心臓組織、胃腸組織、及び皮膚組織からなる群から選択される1つ以上の組織を含む、実施形態3に記載の方法。
【0248】
5.前記組織は、肺組織である、実施形態3または4に記載の方法。
【0249】
6.前記組織は、移植片対宿主病(GVHD)に関連する、実施形態3~5のいずれかに記載の方法。
【0250】
7.疾患に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0251】
8.前記疾患は、移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、慢性肺同種移植機能不全(CLAD)、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群(LT-BOS)、肺移植関連拘束性同種移植症候群(LT-RAS)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、移植片対宿主病関連閉塞性細気管支炎症候群(GVHD BOS)、移植片対宿主病関連拘束性慢性肺機能低下(GVHD R-CLFD)、肝疾患、心臓疾患、肝硬変、線維胸、放射線誘発肺損傷、グリア性瘢痕、動脈硬化、腎疾患、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド障害、癒着性関節包炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、及び高血圧からなる群から選択される1つ以上である、実施形態7に記載の方法。
【0252】
9.移植片拒絶に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0253】
10.移植片拒絶を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【0254】
11.前記移植片は、皮膚、腎臓、心臓、肝臓、肺、及び膵臓からなる群から選択される1つ以上の臓器を含む、実施形態8~10のいずれかに記載の方法。
【0255】
12.前記移植片は、肺を含む、実施形態11に記載の方法。
【0256】
13.前記対象は、肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群を有する、または有するリスクがある、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0257】
14.前記移植片拒絶は、慢性移植片拒絶である、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0258】
15.肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0259】
16.肺移植関連閉塞性細気管支炎症候群を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【0260】
17.移植片対宿主病(GVHD)に関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0261】
18.移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【0262】
19.前記GVHDは、慢性GVHD(cGVHD)である、実施形態8または17~18のいずれかに記載の方法。
【0263】
20.前記GVHDは、急性GVHD(aGVHD)である、実施形態19に記載の方法。
【0264】
21.前記GVHDは、骨髄移植後に現れる、実施形態8または17~20のいずれかに記載の方法。
【0265】
22.前記GVHDは、造血幹細胞移植後に現れる、実施形態8または17~21のいずれか1項に記載の方法。
【0266】
23.前記GVHDは、眼、関節、筋膜、性器、肺、肝臓、皮膚、または消化管(例えば、口、食道)からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする、実施形態8または17~22のいずれか1項に記載の方法。
【0267】
24.前記GVHDは、肺、肝臓、皮膚、または消化管からなる群から選択される1つ以上への損傷を特徴とする、実施形態8または17~23のいずれか1項に記載の方法。
【0268】
25.前記対象は、中程度または重度のcGVHDを有する、実施形態8または17~24のいずれか1項に記載の方法。
【0269】
26.前記対象は、閉塞性細気管支炎症候群を有する、または有するリスクがある、実施形態8または17~25のいずれか1項に記載の方法。
【0270】
27.閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及びGVHDに関連する線維化を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、前記方法。
【0271】
28.GVHDに関連する閉塞性細気管支炎症候群(BOS)を治療または予防するための方法であって、有効量のアルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含み、前記治療は、前記対象における線維化を低減することを含む、前記方法。
【0272】
29.前記BOSは、造血幹細胞移植に関連する、実施形態8または27~28のいずれかに記載の方法。
【0273】
30.前記造血幹細胞移植は、同種間造血細胞移植である、実施形態29に記載の方法。
【0274】
31.前記BOSは、骨髄移植に関連する、実施形態8または27~28のいずれかに記載の方法。
【0275】
32.前記対象は、好中球増加症を有する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0276】
33.前記好中球増加症は、気道好中球増加症である、実施形態32に記載の方法。
【0277】
34.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、移植前に前記対象に投与される、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0278】
35.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物は、移植後に前記対象に投与される、実施形態1~33のいずれか1項に記載の方法。
【0279】
36.前記治療または予防は、好中球エラスターゼを阻害することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0280】
37.前記線維化の治療、予防、または低減は、1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0281】
38.前記対象は、1つ以上のバイオマーカーのレベルが上昇している、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0282】
39.前記線維化の治療、予防、または低減は、12週間にわたって1つ以上のバイオマーカーのレベルを低下させることを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0283】
40.前記バイオマーカーは、コラーゲンバイオマーカーである、実施形態37~39のいずれかに記載の方法。
【0284】
41.前記コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンバイオマーカー及び/またはIV型バイオマーカーである、実施形態40に記載の方法。
【0285】
42.前記コラーゲンバイオマーカーは、III型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C3)、及び/またはVI型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C6)である、実施形態40または41に記載の方法。
【0286】
43.前記コラーゲンバイオマーカーは、前記III型コラーゲンのN末端プロペプチド(PRO-C3)である、実施形態40または41に記載の方法。
【0287】
44.前記バイオマーカーは、エラスチンバイオマーカーである、実施形態37~39のいずれかに記載の方法。
【0288】
45.前記エラスチンバイオマーカーは、デスモシン(DES)及びイソデスモシン(IDES)から選択される、実施形態44に記載の方法。
【0289】
46.前記治療または予防は、前記対象の予測されるFEV1%を改善するか、その低下を予防することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0290】
47.前記治療または予防は、前記対象のBOSグレードを改善するか、その低下を予防することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0291】
48.前記cGVHDの治療は、対象におけるcGVHD重症度スコアを改善することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0292】
49.前記cGVHDの治療は、対象のLee cGVHD Symptom Scale、特に肺に影響を及ぼすcGVHDを患う対象のLee cGVHD Symptom Scaleの肺スコアを改善することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0293】
50.対象の肺機能を改善することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0294】
51.対象の肺機能の悪化を予防することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0295】
52.対象の疾患の進行または悪化を予防することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0296】
53.アルベレスタットは、遊離塩基の形態である、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0297】
54.アルベレスタットは、アルベレスタットトシラートの形態である、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0298】
55.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0299】
56.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回最大240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0300】
57.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回60mg、120mg、180mg、または240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0301】
58.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0302】
59.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、第1期間に1日2回60mg、続いて、第2期間に1日2回120mg、続いて、第3期間に1日2回180mg、その後1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0303】
60.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を、2週間にわたって1日2回60mg、続いて、2週間にわたって1日2回120mg、続いて、2週間にわたって1日2回180mg、その後1日2回240mgのアルベレスタットの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0304】
61.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物を経口投与によって投与することを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0305】
62.1つ以上の免疫抑制剤を前記対象に投与することをさらに含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0306】
63.アルベレスタットまたはその薬学的に許容される塩による治療を必要とするヒト対象を特定する方法であって、前記対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを決定することを含み、ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、前記治療を必要とする対象が特定される、前記方法。
【0307】
64.ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの前記上昇したレベルは、上昇した好中球エラスターゼ活性に等しい、実施形態63に記載の方法。
【0308】
65.好中球エラスターゼ活性を決定する方法であって、ヒト対象からのサンプルにおけるデスモシン及びイソデスモシンのレベルを評価することを含み、ベースラインと比較したデスモシン及びイソデスモシンの上昇したレベルにより、上昇した好中球エラスターゼ活性が示される、前記方法。
【0309】
66.前記対象は、GVHDであると診断されている、実施形態63~65のいずれかに記載の方法。
【0310】
67.前記GVHDは、GVHD BOSである、実施形態66に記載の方法。
【0311】
68.前記対象は、造血幹細胞移植を受けている、実施形態66または67に記載の方法。
【0312】
69.デスモシン及びイソデスモシンなどの前記バイオマーカーのレベルは、クロマトグラフィー及び/または質量分析、例えば、質量分析を伴う同位体希釈液体クロマトグラフィータンデムによって測定される、実施形態63~68のいずれかに記載の方法。
【0313】
70.前記対象からの前記サンプルは、血液サンプル、例えば、血漿サンプルである、実施形態63~69のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】