(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】低GWP熱伝達組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20241029BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20241029BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C09K5/04 A ZAB
C09K5/04 F
C09K5/04 C
F25B9/00 Y
F25B1/00 396U
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523726
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022047466
(87)【国際公開番号】W WO2023069738
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ハルス、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】フォグル、ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】クエラー、カイル
(72)【発明者】
【氏名】カヨーデ、オルワセイ
(57)【要約】
約40重量%~約60重量%の二酸化炭素(CO2)、約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO1233zd(E))を含む冷媒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約40重量%~約60重量%の二酸化炭素(CO
2)、
約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び
2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd(E))
の相対百分率で存在する、冷媒。
【請求項2】
以下の3つの化合物を、
約50重量%~約60重量%のCO
2、
約35重量%~約45重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)
の相対百分率で含む、請求項1に記載の冷媒。
【請求項3】
以下の3つの化合物を、
約50重量%~約55重量%のCO
2、
約35重量%~約40重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)
の相対百分率で含む、請求項1に記載の冷媒。
【請求項4】
以下の3つの化合物を、
約54重量%のCO
2、
約38重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約8重量%のHFCO-1233zd(E)
の相対百分率で含む、請求項1に記載の冷媒。
【請求項5】
以下の3つの化合物を、
54重量%+/-1重量%のCO
2、
38重量%+/-1重量%のHFO-1234ze(E)、及び
8重量%+/-1重量%のHFCO-1233zd(E)
の相対百分率で含む、請求項1に記載の冷媒。
【請求項6】
CO
2、HFO-1234ze(E)、及びHFCO-1233zd(E)から本質的になる、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の冷媒を含む、極低温冷凍システム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の冷媒を用いてプロセス流を冷却することによってプロセス流に含まれる成分を分離する方法であって、前記プロセス流が合成ガス流又はその一部を含む、方法。
【請求項9】
冷媒であって、
約40重量%~約60重量%の二酸化炭素(CO
2)、
約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び
2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd(E))
から本質的になる、冷媒。
【請求項10】
請求項9に記載の冷媒を用いて極低温プロセス流を冷却することによって、前記極低温プロセス流に含まれる成分を分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年10月22日に出願された米国特許仮出願第63/271,069号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、冷凍用途において有用性を有する組成物、方法及びシステムに関し、ある特定の態様では、極低温冷凍用途を含む低温冷却用途において有用な熱伝達及び/又は冷媒組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロカーボンベースの流体は、エアコンディショニング、ヒートポンプ及び冷凍システムなどのシステムにおける作動流体として、とりわけエアロゾル噴射剤として、発泡剤として、及びガス状誘電体としての他の使用を含む、多くの商業的及び工業的用途において広範な使用が見出されている。
【0004】
熱伝達流体は、商業的に実行可能であるためには、物理的、化学的及び経済的特性のある種の非常に特異的な、ある場合には非常に厳格な組み合わせを満たさなければならない。更に、多くの異なるタイプの熱伝達システム及び熱伝達装置があり、多くの場合、そのようなシステムで使用される熱伝達流体が、個々のシステムの要求に合致する特性の特定の組み合わせを有することが重要である。例えば、蒸気圧縮サイクルに基づくシステムは、通常、比較的低い圧力での熱吸収による液体から蒸気相への冷媒の相変化と、蒸気の比較的高い圧力への圧縮と、この比較的高い圧力及び温度での熱除去による蒸気の液相への凝縮と、次いで圧力を下げてサイクルを再び開始することとを含む。
【0005】
例えば、ある種の炭化水素及びフルオロカーボンは、多くの用途において長年にわたって多くの熱交換流体において好ましい成分である。例えば、プロパン及び1,1,12-テトラフルオロエタン(HFC-134a)の両方が極低温冷凍プロセスにおいて使用されて、非常に低い温度、例えば-30℃以下の温度での冷却を達成してきた。(例えば、液化天然ガスを製造するためのプロパン及びHFCを含む混合冷媒の使用を開示している米国特許出願公開第2010/0281915号を参照されたい。)しかしながら、これらの冷媒の各々の使用には潜在的な欠点がある。特に、プロパンは可燃性流体であり、明らかな欠点となり得る。
【0006】
HFC-134aに関して、このハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒及び多くの他の飽和HFC冷媒を取り巻く懸念は、多くのそのような製品が地球温暖化を引き起こす傾向を持つことである。この特性は、一般に地球温暖化係数(Global Warming Potential、GWP)として測定される。化合物のGWPは、既知の基準分子、すなわちGWP=1を有するCO2に対する化学物質の温室効果への潜在的寄与の尺度である。例えば、以下の公知の冷媒は、以下の地球温暖化係数を有する。
【0007】
【0008】
上記冷媒の各々は多くの点で有効であることが証明されているが、これらの物質は、比較的高いGWPを有する物質を使用することがしばしば望ましくないので、ますます好まれなくなっている。したがって、低温及び極低温冷凍用途を含む冷凍用途において望ましくないGWPを有するこれら及び他の既存の冷媒の代替物が必要とされている。
【0009】
性能特性に関しては、本出願人らは、任意の可能性のある代用冷媒が、とりわけ優れた熱伝達特性、化学的安定性、低毒性又は無毒性、低燃焼性又は不燃性、及び潤滑剤相溶性などの、最も幅広く用いられている流体の多くに存在するこれらの性質もまた、有していなければいけないという認識に至った。
【0010】
使用効率に関しては、冷媒の熱力学性能又はエネルギー効率の喪失は、電気エネルギーの需要の増加の結果として化石燃料の使用量の増加がもたらされることにより、二次的な環境への影響を有し得ることに留意することが重要である。
【0011】
燃焼性に関しては、多くの熱伝達用途において、不燃性又は比較的低燃焼性の組成物を使用することが重要又は必須であると考えられる。本明細書で使用される場合、「不燃性」という用語は、参照により本明細書に組み込まれる2002年のASTM規格E-681に従って決定されるように不燃性であると決定される化合物又は組成物を指す。残念ながら、冷媒組成物に使用するのにその他の点では望ましいであろう多くのHFCは、可燃性が高い。例えば、フルオロアルカンジフルオロエタン(HFC-152a)は可燃性であり、したがって多くの用途で単独で使用するのは実現可能ではない。
【0012】
上述の特性の多く又は全てを一度に達成することができる低温冷媒(例えば深冷分離用冷媒)を実現する困難性は、例えば、米国特許出願公開第2019/0309202号(「’202出願」)に開示されている冷媒によって説明される。特に、’202出願は、極低温を達成するためのプロセスにおいて、少なくとも5つの異なる成分(及び1つの任意の成分)を含む混合冷媒ブレンドの使用を開示している。これらの成分は、(1)窒素又はアルゴン、(2-任意選択)メタン又はクリプトン、(3)テトラフルオロメタン、(4)トリフルオロメタン又はフルオロメタン、(5)2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロペン、及び1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンのうちの少なくとも1つ、並びに(6)1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、モノクロロ-トリフルオロプロペン、及びヘキサフルオロ-2-ブテンのうちの少なくとも1つ、である。他の存在し得る欠点の中でも、’202出願に開示されている冷媒ブレンドは、単に冷媒ブレンド中に5つ以上の別個の成分を有するブレンドを使用することの複雑さのために望ましくない可能性があり、それは望ましくない大きな蒸発器グライドを有する可能性を含む。
【0013】
したがって、本出願人らは、好ましくは上記の欠点の1つ以上を回避しながら、低温冷凍用途において特に有用である冷媒及び熱伝達組成物、並びに熱伝達方法及びシステムの必要性を認識するようになった。
【発明の概要】
【0014】
本出願人らは、本発明の組成物が、優れた予想外の方法で、150GWP以下の代替物及び/又は以前に使用されていた冷媒の代替物及び/又は代替品の必要性を満たすことを見出した。それらは特に低温及び極低温冷媒を含み、同時に低燃焼性であり(例えば、軽度にのみ燃焼性である(すなわち、ANSI/ASHRAE 34-2019、冷媒の指定及び安全性分類による2L分類を有する)、又はより好ましくは、ASTM E-681及び23℃(すなわち、クラス1)による不燃性である)、優れた熱伝達性能特性を有し、また好ましくは過度に高くないグライドを有する非毒性流体(最も好ましくはクラスA1)を含む。本明細書で使用される場合、「150以下のGWP」という用語は、150以下のGWP(以下に記載されるように測定される)を有する冷媒を指すために便宜上使用される。
【0015】
本発明は、少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約40重量%~約60重量%の二酸化炭素(CO2)、
約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び
2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd(E))の相対百分率で存在する、冷媒を含む。本段落に記載する冷媒は、便宜上、「冷媒1」と呼ばれることがある。
【0016】
本発明はまた、少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約60重量%のCO2、
約35重量%~約45重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。本段落に記載する冷媒は、便宜上、「冷媒2」と呼ばれることがある。
【0017】
本発明はまた、少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約55重量%のCO2、
約35重量%~約40重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒3」と呼ばれることがある。
【0018】
本発明はまた、少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約54重量%のCO2、
約38重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約8重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒4」と呼ばれることがある。
【0019】
本発明はまた、少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
54重量%+/-1重量%のCO2、
約38重量%+/-1重量%のHFO-1234ze(E)、及び
8重量%+/-1重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒5」と呼ばれることがある。
【0020】
本発明は、以下の3つの化合物から本質的になる冷媒であって、各化合物が、
約40重量%~約60重量%のCO2、
約30重量%~約45重量%のHFO-1234ze(E)、及び
2.0重量%~約15重量%のHFCO-1233zd(E)以下の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒6」と呼ばれることがある。
【0021】
本発明はまた、以下の3つの化合物から本質的になる冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約60重量%のCO2、
約35重量%~約45重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒7」と呼ばれることがある。
【0022】
本発明はまた、以下の3つの化合物から本質的になる冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約55重量%のCO2、
約35重量%~約40重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒8」と呼ばれることがある。
【0023】
本発明は、以下の3つの化合物から本質的になる冷媒であって、各化合物が、
約54重量%のCO2、
約38重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約8重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒9」と呼ばれることがある。
【0024】
本発明はまた、以下の3つの化合物から本質的になる冷媒であって、各化合物が、
54重量%+/-1重量%のCO2、
38重量%+/-1重量%のHFO-1234ze(E)、及び
8重量%+/-1重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒10」と呼ばれることがある。
【0025】
本発明は、以下の3つの化合物からなる冷媒であって、各化合物が、
約40重量%~約60重量%のCO2、
約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び
2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO1233zd(E)
の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒11」と呼ばれることがある。
【0026】
本発明はまた、以下の3つの化合物からなる冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約60重量%のCO2、
約35重量%~約45重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒12」と呼ばれることがある。
【0027】
本発明はまた、以下の3つの化合物からなる冷媒であって、各化合物が、
約50重量%~約55重量%のCO2、
約35重量%~約40重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約5重量%~約10重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒13」と呼ばれることがある。
【0028】
本発明はまた、以下の3つの化合物からなる冷媒であって、各化合物が、
約54重量%のCO2、
約38重量%のHFO-1234ze(E)、及び
約8重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒14」と呼ばれることがある。
【0029】
本発明はまた、以下の3つの化合物からなる冷媒であって、各化合物が、
54重量%+/-1重量%のCO2、
38重量%+/-1重量%のHFO-1234ze(E)、及び
8重量%+/-1重量%のHFCO-1233zd(E)の相対百分率で存在する、冷媒を含む。この段落に記載される冷媒は、便宜上、「冷媒15」と呼ばれることがある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】二重冷媒分留プロセスを使用し、本発明による冷媒を使用するCO
2回収システムの一実施形態のプロセスフロー図である。
【
図2】混合冷媒分留プロセスを使用し、本発明による冷媒を使用するCO
2回収システムの一実施形態のプロセスフロー図である。
【
図3】冷凍用途にて有用な、例示的な熱伝達システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義:
本発明の目的では、重量%にて表現される量に関係する用語「約」とは、成分の量が、±2重量%の量で変動し得ることを意味する。
【0032】
本発明の目的では、摂氏度(℃)の温度に関する「約」という用語は、規定温度が±5℃の量で変動し得ることを意味する。
【0033】
「能力」という用語は、冷凍システムにおいて冷媒によって提供される冷却の量(BTU/hr)である。これは、冷媒が蒸発器を通る際の冷媒のエンタルピ(BTU/lb)の変化を、冷媒の質量流量で乗じることによって実験的に決定される。エンタルピは、冷媒の圧力及び温度の測定から決定することができる。冷凍システムの能力は、冷却される領域を特定の温度に維持する能力に関連する。冷媒の能力は、冷媒が提供する冷却又は加熱の量を表し、冷媒の所与の体積流量に対する熱量をポンプ圧送する圧縮機のある程度の能力を提供する。換言すれば、特定の圧縮機を考慮すると、より高い能力を有する冷媒は、より多くの冷却又は加熱力を供給するであろう。
【0034】
「性能係数」という用語(以下「coefficient of performance、COP」)は、冷媒の蒸発又は凝縮を伴う特定の加熱又は冷却サイクルにおいて冷媒の相対的な熱力学的効率を表すのに特に有用な、広く受け入れられている冷媒性能の尺度である。冷蔵工学では、この用語は、蒸気の圧縮時に圧縮機によって印加されるエネルギーに対する有効な冷蔵又は冷却能力の比率を表し、したがって冷媒などの熱伝達流体の所与の体積流量に対する熱量をポンプ圧送する所与の圧縮機の能力を表す。換言すれば、特定の圧縮機を考慮すると、より高いCOPを有する冷媒は、より多くの冷却又は加熱力を供給するであろう。特定の動作条件における冷媒のCOPを推定するための1つの手段は、標準的な冷却サイクル分析技術を用いた冷媒の熱力学的特性からのものである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、R.C.Downing,FLUOROCARBON REFRIGERANTS HANDBOOK,Chapter 3,Prentice-Hall,1988を参照されたい)。
【0035】
「吐出温度」という用語は、圧縮機の出口における冷媒の温度を指す。低い吐出温度の利点は、好ましくは圧縮機部品を保護するように設計されたシステムの熱防御面を作動させることなく既存の設備の使用を可能にし、吐出温度を下げるための液体注入などの高価な制御装置の使用を回避することである。
【0036】
「地球温暖化係数」(以下「GWP」)という用語は、異なる気体の地球温暖化への影響を比較することを可能にするために開発された。具体的には、ある気体の1トンの排出が、二酸化炭素の1トンの排出に対して相対的に、所与の期間にわたってどのくらいのエネルギーを吸収するかの尺度である。GWPが大きいほど、所与の気体は、CO2と比較して、その期間にわたって地球をより一層温めることになる。GWPに通常使用される期間は、100年である。GWPは、アナリストが異なる気体の放出推定値を合計することを可能にする、一般的な尺度を提供する。http://www.protocolodemontreal.org.br/site/images/publicacoes/setor_manufatura_equipamentos_refrigeracao_arcondicionado/Como_calculus_el_potenical_de_Calentamiento_Atmosferico_en_las_mezclas_de_refrigerantes.pdfを参照されたい。
【0037】
「職業曝露限界(Occupational Exposure Limit、OEL)」という用語は、ASHRAE Standard 34-2016 Designation and Safety Classification of Refrigerantsに従って決定される。
【0038】
「質量流量」という用語は、単位時間当たりの導管を通過する冷媒の質量である。
【0039】
「熱力学的グライド」という用語は、一定圧力での蒸発器又は凝縮器における相変化プロセス中に様々な温度を有する非共沸冷媒混合物に適用される。
【0040】
「低温冷凍」という用語は、約-45℃からほぼ周囲温度までの温度で蒸発する冷媒で動作する熱伝達システム及び方法を指す。
【0041】
「極低温冷凍」という用語は、約-45℃未満の温度で蒸発する冷媒で動作する熱伝達システム及び方法を指す。
【0042】
冷媒及び熱伝達組成物
本出願人らは、本明細書に記載の冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒が、以下を含む1つ以上の非常に有利な特性を提供することができることを見出した。すなわち、熱伝達特性、低毒性又は無毒性、軽度の可燃性(クラス2L)、より好ましくは不燃性(クラス1)、ほぼ0のオゾン層破壊係数(Ozone Depletion Potential、「ODP」)、並びに好ましくは低温及び極低温冷凍における冷媒の動作温度範囲にわたるPOE及び/又はPVE潤滑剤との許容可能な混和性を含む潤滑剤適合性である。
【0043】
出願人らは、冷媒1~15の各々を含む、本発明の冷媒組成物が、特に低いGWPを含む、達成困難な特性の組み合わせを達成することができることを見出した。したがって、本発明の組成物は、150以下、好ましくは75以下のGWPを有する。
【0044】
更に、冷媒1~15の各々を含む本発明の冷媒組成物は、低いODPを有する。したがって、本発明の組成物は、0.05以下、好ましくは0.02以下、より好ましくは約ゼロのODPを有する。
【0045】
加えて、冷媒1~15の各々を含む、本発明の冷媒組成物は、許容可能な毒性を示し、好ましくは約400より大きいOELを有する。当業者が認識しているように、約400より大きいOELを有する不燃性冷媒は、ASHRAE規格34のうちの、望ましい「クラス1A」に分類されている冷媒をもたらすため、有利である。
【0046】
本出願人らは、本明細書に記載の冷媒1~15のそれぞれを含む熱伝達組成物を含む本発明の熱伝達組成物が、以下を含む特性の例外的に有利で予想外の組み合わせを提供することができることを見出した。すなわち、熱伝達特性、使用条件下での化学的安定性、低毒性又は無毒性、軽度の可燃性又は不燃性、ほぼ0のオゾン層破壊係数(「ODP」)、150以下のGWP、並びにPOE及び/又はPVE潤滑剤との許容可能な混和性を含む許容可能な潤滑剤適合性である。
【0047】
熱伝達組成物は、冷媒1~15の各々を含む、本発明の任意の冷媒から本質的になることができる。
【0048】
本発明の熱伝達組成物は、冷媒1~15の各々を含む、本発明の任意の冷媒からなることができる。
【0049】
本発明の熱伝達組成物は、ある特定の機能性を増強させるか、又はそれを組成物に提供する目的で他の成分を含み得る。そのような他の成分は、冷媒1~15の各々を含む、本発明の冷媒に加えて、潤滑剤、不動態化剤、可燃性抑制剤、染料、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、酸化防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、及び耐摩耗添加剤、並びに、熱伝達組成物の特定の特性を調節する他の化合物及び/又は成分のうちの1つ以上を含むことができ、全てのそのような化合物及び成分の存在は、本発明の広義の範囲内に含まれる。
【0050】
潤滑剤
本発明の熱伝達組成物は、冷媒1~15の各々を含む本明細書に記載した冷媒、及び潤滑剤を含む。本出願人らは、潤滑剤、特にPOE及び/又はPVE潤滑剤並びに本明細書に記載の冷媒1~15のそれぞれを含む熱伝達組成物を含む本発明の熱伝達組成物が、冷媒に関して本明細書で特定された有利な特性に加えて、特に低温冷凍及び極低温冷凍を含む意図された使用のための動作温度及び濃度範囲にわたってPOE及び/又はPVE潤滑剤との許容可能な混和性を含む優れた冷媒/潤滑剤適合性を含む非常に有利な特性を提供することができることを見出した。
【0051】
本発明の冷凍機械に使用されている、ポリオールエステル(Polyol Ester、POE)、ポリアルキレングリコール(Polyalkylene Glycol、PAG)、PAGオイル、シリコーンオイル、鉱物油、アルキルベンゼン(Alkylbenzene、AB)、ポリビニルエーテル(Polyvinyl Ether、PVE)、ポリエーテル(Polyether、PE)、及びポリ(α-オレフィン)(poly(alpha-olefin)、PAO)などの一般的に使用される冷媒潤滑剤が、本発明の冷媒組成物とともに使用され得る。
【0052】
好ましくは、潤滑剤は、PAG、POE、及びPVEから選択される。
【0053】
潤滑剤はPOEであるのが好ましい。
【0054】
潤滑剤はPVEであるのが好ましい。
【0055】
潤滑剤はPAGであるのが好ましい。
【0056】
一般に、POE潤滑剤を含む本発明の熱伝達組成物は、熱伝達組成物の重量に基づいて、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、又は0.1重量%~約1重量%、又は0.1重量%~約0.5重量%の量でPOE潤滑剤を含む。
【0057】
本発明の熱伝達組成物中に使用するのに好ましい市販のPOEとしては、Emery2917(登録商標)及びHatcol2370(登録商標)として入手可能なジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、並びにCPI Fluid Engineeringによって商品名Emkarate RL32-3MAF及びEmkarate RL68Hとして販売されているものを含むペンタエリスリトール誘導体が挙げられる。Emkarate RL32-3MAF及びEmkarate RL68Hは、以下の特性を有する好ましいPOE潤滑剤である。
【0058】
【0059】
一般に、PVE潤滑剤を含む本発明の熱伝達組成物は、熱伝達組成物の重量に基づいて、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、又は0.1重量%~約1重量%、又は0.1重量%~約0.5重量%の量でPVE潤滑剤を含む。
【0060】
本発明の熱伝達組成物で使用するのに好ましい市販のポリビニルエーテルとしては、出光から、FVC32D及びFVC68Dの商品名にて販売されている潤滑剤が挙げられる。
【0061】
本発明の熱伝達組成物に使用するのに好ましい市販のPAG潤滑剤としては、Nippon-Denso ND oil-8、ND oil12、出光PS-DI、Sanden SP-10の商品名で販売されている潤滑剤が挙げられる。
【0062】
本発明の新規及び基本的な特徴から逸脱することなく、本明細書に含まれる教示を考慮して、本明細書において言及されていない他の添加剤もまた含まれ得る。
【0063】
方法、使用、及びシステム
冷媒1~15を含む冷媒、及び本明細書に開示される熱伝達組成物は、低温冷凍及び極低温冷凍を含む熱伝達用途における使用のために提供される。
【0064】
圧縮機を含む本発明の熱伝達システム、及びシステム内の圧縮機用潤滑剤に関して、システムは、システム内の潤滑剤充填量が、約5重量%~60重量%、又は約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約50重量%、又は約30重量%~約40重量%であるように、冷媒及び潤滑剤の充填量を含むことができる。本明細書で使用するとき、「潤滑剤充填量」という用語は、システム内に含まれる潤滑剤及び冷媒の合計の割合として、システム内に含まれる潤滑剤の総重量を指す。このようなシステムはまた、熱伝達組成物の約5重量%~約10重量%、又は約8重量%の潤滑剤充填量を含み得る。
【0065】
例示的な熱伝達システム
以下に詳細に説明されるように、本発明の好ましいシステムは、熱伝達組成物の冷媒及び関連する成分が、既知の方式でシステムを通って流れ、冷凍サイクルを完了することができるように、配管、弁、及び制御システムを使用して全てが流体連通した、圧縮機、凝縮器、膨張装置、及び蒸発器を含む。このような基本的なシステムの例示的概略図を
図3に示す。特に、
図3に概略的に示すシステムは、圧縮機10を示し、これは、圧縮された冷媒蒸気を凝縮器20に提供する。圧縮された冷媒蒸気は、凝縮して液体冷媒を生成し、これが次に、低減された温度及び圧力の冷媒を生成する膨張装置40に向けられ、この低減された温度及び圧力の冷媒が、次に、蒸発器50に提供される。蒸発器50内で、液体冷媒は体からの熱、又は冷却されている流体を吸収することにより冷媒蒸気を生成し、これが次に、圧縮機の吸引ラインに提供される。
【0066】
低温システム及び方法
本発明による熱伝達システムは、互いに流体連通した圧縮機、蒸発器、凝縮器、及び膨張装置と、冷媒1~15の各々を含む本発明の冷媒と、POE潤滑剤、PVE潤滑剤、又はそれらの組み合わせを含む潤滑剤と、を含む、低温熱伝達システムを含む。
【0067】
本発明による熱伝達方法は、冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒を、約-45℃~ほぼ周囲温度の温度範囲で蒸発させる工程を含む低温熱伝達方法を含む。
【0068】
極低温システム及び方法
本発明による熱伝達システムは、互いに流体連通した圧縮機、蒸発器、凝縮器、及び膨張装置と、冷媒1~15の各々を含む本発明の冷媒と、POE潤滑剤、PVE潤滑剤、又はそれらの組み合わせを含む潤滑剤と、を含む、極低温熱伝達システムを含む。
【0069】
本発明による熱伝達方法は、冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒を約-45℃以下の温度で蒸発させる工程を含む極低温熱伝達方法を含む。
【0070】
例示的な使用
本発明の非常に好ましい使用において、冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒は、組成物の成分又は成分の少なくとも一部を分離するためのプロセスの一部として、及び/又はシステムの一部として使用され、特に、そのような分離は、低温冷凍及び/又は極低温冷凍の範囲の温度で起こる。そのような分離プロセスの非限定的な例は、2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,338号、2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,341号、及び2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,341号に開示され、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
図1は、例えば2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,341号に記載されているような、二重冷媒CO
2分留プロセスを使用して合成ガス流931から水素及びより軽質の成分から二酸化炭素を除去するCO
2回収システムを示すプロセスフロー図である。このプロセスでは、入口ガスは、供給流931としてプラントに入る。供給流931は、通常、極低温条件下での水和物(氷)形成を防止するために脱水される。固体乾燥剤及び液体乾燥剤の両方が、この目的のために使用されてきた。
【0072】
供給流931は、2つの流れ(流れ939及び940)に分割される。流れ939は、熱交換器911において、冷却二酸化炭素蒸気(流れ938c)及び低温残留ガス(流れ933a)との熱交換によって冷却される。流れ940は、熱交換器910において、カラム再沸器液体(流れ936)及びカラムサイド再沸器液体(流れ935)との熱交換によって冷却される。熱交換器910及び911からの冷却された流れは、流れ931aに再結合される。
【0073】
流れ931aは、その後、好ましくは冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒である、冷媒950で更に冷却され、結果として生じる流れ(冷却された流れ931b)は、膨張弁912によって分留塔913の動作圧力まで膨張され、その頂部カラム供給点において、分留塔913に供給される前に、流れ931cを冷却する。
【0074】
塔頂蒸気流932は、分留塔913を出て、熱交換器914で冷却され、部分的に凝縮される。部分的に凝縮された流れ932aは、分離器915に入り、そこで蒸気(低温残留ガス流933)が、凝縮された液体流934から分離される。凝縮された液体流934は、液体流934aが熱交換器916に入る前に、ポンプ919によって分留塔913の動作圧力よりもわずかに上回ってポンプ圧送され、蒸留カラムの底部からの二酸化炭素冷媒との熱交換によって加熱され、部分的に気化される(以下に記載)。部分的に気化された流れ934bは、その後、中間カラム供給点において分留塔913への供給物として供給される。圧力変動吸着(Pressure Swing Absorption、PSA)システムへの供給物においてより高い圧力及び/又はより低い二酸化炭素含有量が望ましい場合、低温圧縮機(図示せず)を塔頂蒸気流932に適用することができる。圧縮機がこの流れで使用される場合には、ポンプ919が省略され得、分離器915からの液体は、液面制御弁を介して分留塔913に送られる。
【0075】
分留塔913は、複数の垂直に離間されたトレイ、1つ以上の充填床、又はトレイと充填物のいくつかの組み合わせを含む従来の蒸留カラムである。それはまた、カラムを流下する液体の一部分を加熱及び気化させて、ストリッピング蒸気を提供する(前述の再沸器及びサイド再沸器などの)再沸器を含み、ストリッピング蒸気は、カラムを上昇して、水素及び軽質成分のカラム底部液体生成物流937をストリッピングする。トレイ及び/又は充填物は、上方に上昇するストリッピング蒸気と下方に落下する低温液体との間の必要な接触を提供し、そのため、カラム底部液体生成物流937は、底部生成物中の水素及び軽質成分の濃度を低減させて、非常に純粋な二酸化炭素生成物を作製することに基づいて、塔の底部を出る。
【0076】
カラム底部液体生成物流937は、主に液体二酸化炭素である。小部分(流れ938)は、前述のように分離器915からの液体流934aによって熱交換器916内で過冷却される。過冷却された液体(流れ938a)は、膨張弁920によってより低い圧力に膨張され、部分的に気化され、熱交換器914に入る前に、流れ938bを更に冷却する。流れ938bは、熱交換器914において冷媒として機能して、前述のように部分的に凝縮された流れ932aの冷却を提供し、得られた二酸化炭素蒸気は、流れ938cとして離れる。
【0077】
熱交換器914からの冷却二酸化炭素蒸気(流れ938c)は、前述のように供給ガスとの熱交換によって熱交換器911内で加熱される。次いで、加温二酸化炭素蒸気(流れ938d)は、圧縮機921、923、及び925によって3段階で分留塔913の圧力を上回る圧力に圧縮され、圧縮の各段階後に、排出冷却器922、924、及び926によって冷却される。次いで、圧縮された二酸化炭素流(流れ938j)は、弁942を通してフラッシュ膨張され、分留塔913内の底部供給場所に戻される。再循環された二酸化炭素(流れ938k)は、分留塔913において更なる熱負荷及びストリッピングガスを提供する。カラム底部液体生成物流937の残りの部分(流れ941)は、流れ941aが高圧二酸化炭素流を形成するようにポンプ929によって高圧にポンプ輸送され、高圧二酸化炭素流は次にパイプライン又は再注入に流れる。場合によっては、二酸化炭素流は、断熱輸送コンテナにおいて輸送することができる低圧力の過冷却液体として送達される必要がある。これらの場合、二酸化炭素生成物(流れ941)は、熱交換器917において、貯蔵タンク条件に下げられる前に冷媒950で過冷却される。したがって、ポンプ929は、省略される。
【0078】
低温残留ガス流933は、分離器915を離れ、熱交換器914において追加の冷却を提供する。加温された残留ガス流933aは、前述のように熱交換器911において供給ガスと熱交換した後に更に加熱される。次いで、加温残留ガス流933bは、更なる処理のためにPSAシステムに送られる。
【0079】
図2は、合成ガス流931からの水素及び軽質成分から二酸化炭素を除去するためのプロセスユニットの設計を示すプロセスフロー図である。このプロセスは、混合冷媒CO
2分留プロセスの使用を伴う。
【0080】
供給流931は、通常、極低温条件下での水和物(氷)形成を防止するために脱水される。固体乾燥剤及び液体乾燥剤の両方が、この目的のために使用されてきた。供給流931は、熱交換器910において、カラム再沸器液体(流れ936)及びカラムサイド再沸器液体(流れ935)との熱交換によって冷却される。流れ931aは、熱交換器911において、低温残留ガス流933と、冷媒1~15のそれぞれによる冷媒を含む本発明の冷媒950の少なくとも第1のパスとの熱交換によって更に冷却される。好ましい実施形態では、本発明の冷媒950は、熱交換器911を通る第1のパスを行い、次いで、熱交換器911を通る第2のパスを行う前に、膨張弁を通してより低い圧力にフラッシュされる。本発明の冷媒は、入口ガス供給条件に基づいて、熱交換器911において非常に効率的な冷却曲線を提供することができる。更に冷却された流れ931bは、膨張弁912によって分留塔913の動作圧力まで膨張され、中間カラム供給点で分留塔913に送られる。
【0081】
塔頂蒸気流932は、分留塔913を離れて、熱交換器911において、混合冷媒流で冷却され、部分的に凝縮される。部分的に凝縮された流れ932aは、分離器915に入り、そこで蒸気(低温残留ガス流933)が、凝縮された液体流934から分離される。凝縮された液体流934は、液体流934aが頂部供給点において分留塔913に送られる前に、ポンプ919によって分留塔913の動作圧力をわずかに上回ってポンプ圧送される。PSAシステムへの供給物においてより高い圧力及び/又はより低い二酸化炭素含有量が望ましい場合、低温圧縮機(図示せず)を塔頂蒸気流932に適用することができる。圧縮機がこの流れで使用される場合には、ポンプ919が省略され得、分離器915からの液体は、液面制御弁を介して分留塔913に送られる。
【0082】
分留塔913は、複数の垂直に離間されたトレイ、1つ以上の充填床、又はトレイと充填物のいくつかの組み合わせを含む従来の蒸留カラムである。それはまた、カラムを流下する液体の一部分を加熱及び気化させて、ストリッピング蒸気を提供する(前述の再沸器及びサイド再沸器などの)再沸器を含み、ストリッピング蒸気は、カラムを上昇して、水素及び軽質成分のカラム底部液体生成物流937をストリッピングする。トレイ及び/又は充填物は、上方に上昇するストリッピング蒸気と下方に落下する低温液体との間の必要な接触を提供し、そのため、カラム底部液体生成物流937は、底部生成物中の水素及び軽質成分の濃度を低減させて、非常に純粋な二酸化炭素生成物を作製することに基づいて、塔の底部を出る。
【0083】
カラム底部液体生成物流937は、主に液体二酸化炭素である。カラム底部液体生成物流937は、流れ937aが高圧二酸化炭素流を形成するようにポンプ929によって高圧にポンプ輸送され、高圧二酸化炭素流は次にパイプライン又は再注入に流れる。場合によっては、二酸化炭素流は、断熱輸送コンテナにおいて輸送することができる低圧力の過冷却液体として送達される必要がある。これらの場合、カラム底部液体生成物流937中の二酸化炭素生成物は、熱交換器911において、貯蔵タンク条件に下げられる前に、混合冷媒950で過冷却される。したがって、ポンプ929は、省略される。
【0084】
加温残留ガス流933aは、前述のように供給ガスと熱交換した後、熱交換器911を離れる。次いで、加温残留ガス流933aは、更なる処理のためにPSAシステムに送られる。
【0085】
次に、
図3に示す装置と
図1及び
図2に示すプロセスフローとの好ましい関係について説明する。
図1に関して、蒸気圧縮システムの蒸発器50は、熱交換器917に対応し、冷媒1~15のそれぞれを含む本発明の冷媒からの熱は、プロセス流931aが蒸発器50/911において蒸発する際にプロセス流931aに冷却を提供する。
図2の各々に関して、蒸気圧縮システムの蒸発器50は熱交換器911に対応し、冷媒1~15の各々を含む本発明の冷媒からの熱は、プロセス流931aが蒸発器50/911において蒸発する際にプロセス流931aに冷却を提供する。
【0086】
システム、方法、及び使用のための装置
一般的に使用される圧縮機の例としては、本発明の目的では、往復動式、回転式(ローリングピストン式及び回転翼式を含む)、スクロール式、スクリュー式、及び遠心式圧縮機が挙げられる。したがって、本発明は、往復動式、回転式(ローリングピストン式及び回転翼式を含む)、スクロール式、スクリュー式、又は遠心式圧縮機を備える熱伝達システムにおける使用のための、冷媒1~15の各々を含む冷媒、及び/又は冷媒1~15のいずれか1つを含有するものを含む、本明細書に記載された熱伝達組成物の、各々及びいずれかを提供する。
【0087】
一般的に使用される膨張装置の例としては、本発明の目的では、キャピラリーチューブ、固定オリフィス、熱膨張バルブ、及び電子膨張バルブが挙げられる。したがって、本発明は、キャピラリーチューブ、固定オリフィス、熱膨張バルブ、又は電子膨張バルブを備える熱伝達システムにおける使用のための、本明細書に記載された、冷媒1~15の各々を含む冷媒、及び/又は冷媒1~15のいずれか1つを含有するものを含む熱伝達組成物、の各々及びいずれかを提供する。
【0088】
本発明の目的では、蒸発器及び凝縮器は、フィンチューブ型熱交換器、マイクロチャネル熱交換器、シェルアンドチューブ式、プレート式熱交換器、及びチューブインチューブ式(tube-in-tube)熱交換器から各々独立して選択することができる。したがって、本発明は、蒸発器及び凝縮器が、フィンチューブ型熱交換器、マイクロチャネル熱交換器、シェルアンドチューブ式、プレート式熱交換器、又はチューブインチューブ式熱交換器を一緒に形成する熱伝達システムにおける使用のための、本明細書に記載した冷媒及び/又は熱伝達組成物の各々及びいずれかを提供する。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明を例示する目的で提供されるが、その範囲を限定するものではない。
【0090】
比較例1-可燃性
本発明の冷媒ではない以下に示す冷媒組成物を、本発明の冷媒と比較する目的で評価する。
【0091】
【0092】
上記で特定した冷媒ブレンドを含有するシリンダを、内容物の20%が除去されるまで蒸気弁からゆっくりと漏出させる。これは、冷凍システムからの蒸気漏れをシミュレートする。次いで、シリンダ内に残っている液体を膨張させ、ASTM-E681に従って23℃で測定したときに火炎限界を有することが分かり、これは、シリンダの残りの内容物が可燃性であることを意味する。
【0093】
実施例1-可燃性
以下の表1に示す本発明の冷媒組成物を評価する。
【0094】
【0095】
比較例1のプロセスを表E1の冷媒を用いて繰り返す、すなわち、上記で特定した冷媒ブレンドを含有するシリンダを、内容物の20%が除去されるまで蒸気弁からゆっくりと漏出させる。これは、冷凍システムからの蒸気漏れをシミュレートする。次いで、シリンダ内に残っている液体を膨張させ、23℃でASTM-E681に従って決定される火炎限界を有さないことが分かり、これは、シリンダの残りの内容物が不燃性であることを意味し、これは、表E1のブレンドがクラスA1であることを意味する。
【0096】
実施例2:低温冷凍用途-性能
特に低温冷凍システムを含む冷凍システムの特定の特性のために、特定の実施形態では、そのようなシステムが、低温システムにおいて以前に使用された冷媒に対して適切な性能パラメータシステムを示すことができることが重要である。
【0097】
2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,338号に開示されているタイプの第1のシステムは、表CE1に開示されている冷媒及び表E1に開示されている本発明の冷媒を用いて、
図1に示され、上で説明されている二重冷媒プロセスで動作される。両方の場合において、プロセス流は蒸発器917/50に入り、本発明の冷媒(冷媒E1)は蒸発する。本発明の冷媒(冷媒E1)を使用するシステムの動作は、上記の表CE1の従来の冷媒と比較して、少なくとも約3%、又は少なくとも約4%の電力消費の減少、及び冷却曲線とのより良好な一致を提供する。冷媒冷却曲線の一致は、本発明の冷媒が、冷却されているプロセス流が温度を変化させているのとほぼ同じ速度で温度を変化させていることを示す。冷却曲線のより良好な一致は、プロセス流のより効率的な冷却をもたらすであろう。
【0098】
2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,338号に開示されているタイプの第2のシステムは、表CE1に開示されている冷媒及び表E1に開示されている本発明の冷媒を用いて、
図2に示され、上で説明されているような混合冷媒プロセスで動作する。両方の場合において、プロセス流は蒸発器911/50に入り、本発明の冷媒(冷媒E1)は蒸発する。本発明の冷媒(冷媒E1)を使用するシステムの動作は、上記の表CE1の従来の冷媒と比較して、少なくとも約3%、又は少なくとも約4%の電力消費の減少、及び冷却曲線とのより良好な一致を提供する。より良好な冷却曲線の一致は、本発明の冷媒が、冷却されているプロセス流が温度を変化させているのとほぼ同じ速度で温度を変化させていることを示す。冷却曲線のより良好な一致は、プロセス流のより効率的な冷却をもたらすであろう。
【0099】
実施例3:低温冷凍用途-性能
特に低温冷凍システムを含む冷凍システムの特定の特性のために、特定の実施形態では、そのようなシステムが、低温システムにおいて以前に使用された冷媒に対して適切な性能パラメータシステムを示すことができることが重要である。そのような動作パラメータは、以下を含む。
・従来の冷媒で動作するシステムの能力の少なくとも90%、更により好ましくは95%超の能力。このパラメータは、従来の冷媒の使用のために設計された既存の圧縮機及び構成要素の使用を可能にする。
・従来の冷媒と同等又はそれ以上の効率であり、新しい混合物によるエネルギー節約につながる。
・同等又はより低いエネルギー消費。
【0100】
低温冷凍システムは例えば、(流体が冷却されている)空気-冷媒蒸発器、往復動式、スクロール式、又はスクリュー式圧縮機、熱を周囲空気と交換するための空気-冷媒凝縮器、及び熱膨張バルブ又は電子膨張バルブにおいて使用し得る。
【0101】
この実施例は、低温システムで使用される典型的な従来の冷媒、すなわち低温冷凍システムにおけるR410Aと比較した、表E1の組成物のCOP及び能力性能を示す。この実施例の低温冷凍システムは、表E1の冷媒を使用して試験され、性能結果は、R410Aでの動作と比較して以下の表E3にある。動作条件は以下のとおりであった:凝縮温度=40.6℃、凝縮器過冷却=1℃、蒸発温度=-31.6℃、蒸発器出口における過熱度=5.5℃、等エントロピー効率=70%、体積効率:100%、吸引ラインにおける過熱度=30.6℃。
【0102】
【0103】
上記の表E3に示されるように、本発明の冷媒を使用する低温冷凍システムの熱力学的性能は、システムにおけるR410Aの性能と比較して優れており、R410Aがシステムにおいて動作されるときの値と比較して95%以上の能力及び効率を有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約98.5重量%の以下の3つの化合物を含む冷媒であって、各化合物が、
約40重量%~約60重量%の二酸化炭素(CO
2)、
約30重量%~約45重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び
2.0重量%~約15重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd(E))
の相対百分率で存在する、冷媒。
【請求項2】
以下の3つの化合物を、
54重量%+/-1重量%のCO
2、
38重量%+/-1重量%のHFO-1234ze(E)、及び
8重量%+/-1重量%のHFCO-1233zd(E)
の相対百分率で含む、請求項1に記載の冷媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷媒を含む、極低温冷凍システム。
【国際調査報告】