(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】微生物発酵による食料残渣の循環使用
(51)【国際特許分類】
C12P 7/6463 20220101AFI20241029BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20241029BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20241029BHJP
C12P 7/62 20220101ALI20241029BHJP
C12P 7/6409 20220101ALI20241029BHJP
C12P 7/6427 20220101ALI20241029BHJP
C12P 7/6431 20220101ALI20241029BHJP
C12N 9/98 20060101ALI20241029BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20241029BHJP
C12N 9/46 20060101ALI20241029BHJP
C12N 9/44 20060101ALI20241029BHJP
C12N 9/42 20060101ALI20241029BHJP
C12N 9/26 20060101ALI20241029BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20241029BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20241029BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20241029BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20241029BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241029BHJP
A23C 19/00 20060101ALI20241029BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241029BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20241029BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
C12P7/6463
C12P21/00 B
C12P7/04
C12P7/62
C12P7/6409
C12P7/6427
C12P7/6431
C12N9/98
C12N9/24
C12N9/46
C12N9/44
C12N9/42
C12N9/26 Z
A21D2/14
A21D13/00
A23G1/32
A23G9/32
A23L7/109 A
A23C19/00
A23L2/00 Z
A23D9/02
A23L27/60 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523750
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022079246
(87)【国際公開番号】W WO2023067081
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517068553
【氏名又は名称】テクニッシェ ウニベルシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】マスリ、マームード
(72)【発明者】
【氏名】ブリュック、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グラバン、ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】クオーラ、ファーラー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド、コリンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェルボワン、ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ピルツ、メラニア
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B032
4B046
4B047
4B064
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB18
4B014GG14
4B014GG15
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4B064DA10
4B117LK10
4B117LK21
4B117LK24
(57)【要約】
本発明は、微生物脂質を製造する、任意に微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香族化合物を製造する方法に関する。本発明はさらに、微生物脂質の使用に関する。本発明はまた、少なくとも5つの酵素を含む組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物脂質を製造する方法、任意に微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する方法であって、前記方法は、工程:
a)第1の基質を提供することであって、ここで、前記第1の基質は、食料残渣(複数可)、好ましくは食料グレードの食料残渣(複数可)である、提供すること;
b)糸状菌および細菌から選択される第1の微生物を前記第1の基質と培養し、それによって前記第1の微生物が少なくとも1つの酵素および酵素的に処理された第1の基質を生産し、任意にさらにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を生産するのを可能にすること;任意に、1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養し、それによって前記1つ以上の微細藻類がタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を生産するのを可能にすること;
c)任意に、前記少なくとも1つの酵素を取得し、第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理し、それによって酵素的に処理された第2の基質を提供することであって;ここで、前記第2の基質は、食料残渣(複数可)、好ましくは食料グレードの食料残渣(複数可)であり;ここで、好ましくは、該第1の基質および該第2の基質は、同じタイプである、提供すること;
d)第2の微生物(ここで、前記第2の微生物は、油性微生物である)を、前記酵素的に処理された第1の基質を含む培地および/または、工程c)が存在する場合は、前記酵素的に処理された第2の基質を含む培地を培養し、それによって前記油性微生物が微生物脂質を生産することを可能にすること;
e)任意に、何らの溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに、前記培養された第2の微生物の純粋に酵素的な処理を実施し、工程d)において生産された前記微生物脂質をこれに続く回収することに適したものとすること;および
f)工程d)において生産された前記微生物脂質を、好ましくは密度に基づく分離法によって回収すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記食料残渣(複数可)が、各発生で、ベーカリー食料残渣(複数可)、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;果物食料残渣(複数可)、例えば果肉、果皮、若しくは果汁;植物性食料残渣(複数可)、例えば野菜の皮、野菜の果肉、若しくは野菜ジュース;製粉食料残渣(複数可)、例えばふすま若しくはふすま粉;魚食料残渣(複数可)、例えば魚加工残渣;魚介類残渣(複数可)、例えば魚介類加工残渣;ビール醸造者の使用した穀物;シリアル食料残渣(複数可)、例えば米、小麦、キビ、若しくはトウモロコシ;レストラン食料残渣(複数可)、例えばレストランの残り物;動物性食料残渣(複数可)、例えば牛乳若しくはチーズ;スーパーマーケットの食料残渣(複数可)、例えば賞味期限切れ食料;またはそれらの任意の組合せを含むかまたはそれからなる;好ましくはベーカリー食料残渣(複数可)、より好ましくはパン食料残渣(複数可)を含むかまたはそれからなる食料残渣(複数可)から独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糸状菌が、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、およびCeratocystis paradoxa、好ましくはCeratocystis paradoxa;Trichoderma sp.、例えばTrichoderma reeseiおよびTrichoderma harzianum;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えば.Rhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Thermomyces sp.;Penicillium sp.;Aureobasillium sp.;Ischnoderma sp.、例えばIschnoderma benzoinum;Polyporus sp.、例えばPolyporus durus;Pycnoporus sp.、例えばPycnoporus cinnabarinus;Phanerochaete sp.、例えばPhanerochaete chrysosporium;並びにXylaria spから選択され;好ましくはCeratocystis sp.、Trichoderma sp.、Aspergillus sp.、およびFusarium spから選択され;
前記細菌が、Clostridium sp.、例えばClostridium stercorarium、Clostridium beijerinckii、およびClostridium acetobutylicum;Halobacillus sp.、例えばHalobacillus trueperiおよびHalobacillus karajensis;Halomonas sp.、例えばHalomonas meridianaおよびHalomonas elongata;Rhodothermus sp.、例えばRhodothermus marinus;Streptomyces sp.、例えばStreptomyces griseus、Streptomyces olivochromogenes、Streptomyces griseorubens、およびStreptomyces matensis;並びにBacillus sp.、例えばBacillus nato、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、およびBacillus stearothermophilusから選択され;並びに/または
前記微細藻類が、Chlorella sp.、例えばChlorella vulgaris、およびChlorella protothecoides;Scenedesmus sp.、例えばScenedesmus obliquus;Dunaliella sp.、例えばDunaliella salina;Haematococcus sp.、例えばHaematococcus pluvialis;Crypthecodinium sp.、例えば Crypthecodinium cohnii;Schizochytrium sp.、例えばSchizochytrium limacinum;並びにTetraselmis sp.、例えばTetraselmis chuiから選択され;好ましくはChlorella sp.、およびScenedesmus sp.から選択される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の微生物が、油性酵母、油性真菌、油性細菌、および油性微細藻類から選択される油性微生物である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法であって;
ここで、好ましくは、
前記油性酵母は、Cutaneotrichosporon sp.、例えばCutaneotrichosporon oleaginosus;Trichosporon sp.、例えばTrichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、およびTrichosporon asahii;Rhodospirillum sp.;Rhodosporidium sp.、例えばRhodosporidium toruloides;Rhodosporon sp.;Candida sp.、例えばCandida viswanathiiおよびCandida freyschussii;Cryptococcus sp.、例えばCryptococcus curvatus;Lipomyces sp.、例えばLipomyces starkeyi;Yarrowia sp.、例えばYarrowia lipolytica;Rhodotorula sp.、例えばRhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、およびRhodotorula glutinis;並びにApiotrichum sp.、例えばApiotrichum curvarum;好ましくはCutaneotrichosporon sp.、より好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択され;
前記油性真菌は、Cunninghamella sp.、例えばCunninghamella echinulate;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Mucor sp.、例えばMucor moelleri;Mortierella sp.、例えばMortariella isabellinaおよびMortierella alpine、好ましくはMortierella alpine;並びにHumicola sp.から選択され;
前記油性細菌は、Rhodococcus sp.;Acinetobacter sp.;およびBacillus sp.から選択され;並びに
前記油性微細藻類は、Chlorella sp.、Pseudochlorococcum sp.、Nannochloris sp.、Nannochloropsis sp.、Isochrysis sp.、Tribonema sp.、Dunaliella sp.、Ankistrodesmus sp.、Botryococcus sp.、Pavlova sp.、Scenedesmus sp.、Skeletonema sp.、およびNitzschia sp.から選択され;
より好ましくは、前記第2の微生物は、Cutaneotrichosporon sp.、例えばCutaneotrichosporon oleaginosus.から選択される油性酵母である、
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の微生物が、Cutaneotrichosporon oleaginosus、Trichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、Trichosporon asahii、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、Rhodotorula glutinis、Apiotrichum curvarum、Cryptococcus curvatus、Candida viswanathii、およびCandida freyschussii;好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択される油性酵母である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法の前記工程b)が、糸状菌および細菌から選択される第1の微生物を前記第1の基質と培養し、それによって前記第1の微生物が少なくとも1つの酵素、酵素的に処理された第1の基質、並びにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を生産するのを可能にすることを含み;任意にさらに、1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養し、それによって前記1つ以上の微細藻類がタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を生産するのを可能にすることを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、好ましくは遠心分離、濾過、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、蒸留、およびそれらの組合せのいずれかを使用して、前記タンパク質バイオマスおよび/または前記芳香化合物を回収する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記培地がさらに、追加の炭素源、窒素源、微量金属、および/またはビタミンを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法がさらに、
- 好ましくは前記基質(複数可)を製粉すること、混合すること、細断すること、および/若しくは篩い分けすることによる、機械的前処理;
- 前記基質(複数可)を溶剤中で、好ましくは水中で溶解すること;
- 好ましくは酸、例えば硫酸を使用する、前記基質(複数可)の化学的加水分解;
- 好ましくは50℃から200℃の温度での10分から240分間の、より好ましくは80℃から170℃の温度での30分から90分間の、前記基質(複数可)の熱前処理;
- 前記基質(複数可)の発酵前処理、好ましくは嫌気性発酵;並びに/または
- 1つ以上の酵素、任意に市販の酵素を使用する、前記基質(複数可)の酵素的前処理;
によって、前記第1の基質を前処理するおよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質を前処理する工程を含み、
ここで、前記1つ以上の酵素は、プロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、サブチリシンA、並びにペプシン;並びに加水分解酵素、好ましくはグリコシド加水分解酵素、より好ましくはα-アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、キシログルカーゼ、ガラクタナーゼ、アラビナーゼ、マンナナーゼ、リパーゼ、グルコアミラーゼ、およびペクチナーゼから選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、何らの溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理を実施する前記工程e)を含み、ここで、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理は、単独での、またはプロテアーゼと組み合わせた/その後にプロテアーゼが続く、加水分解酵素での前記微生物の処理である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記少なくとも1つの酵素を取得し、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理する工程c)を含み、前記前処理することが、前記第2の基質を、前記第1の微生物を培養することから得られる、好ましくは直接得られる液体酵素調製物の形態の、または凍結乾燥酵素調製物、任意に溶液中で再構成される凍結乾燥酵素調製物の形態の前記少なくとも1つの酵素と接触させることを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの酵素が、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼの酵素活性から選択され;
任意にセルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼの酵素活性から選択される1つまたはいくつかの活性を含有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、微生物脂質を生産し、それから食品を調製する方法であり、前記方法がさらに、工程f)において回収した微生物脂質を含む食品、好ましくはベーカリー製品、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;菓子製品、例えば小麦粉菓子若しくは砂糖菓子;乳製品、例えばアイスクリーム若しくはベビーミルク;スプレッド、例えばマーガリン、マヨネーズ、若しくはソフトチーズ;インスタント食料、例えばインスタントラーメン、ピザ、ピザ生地、若しくはソース;飲み物;ベジタリアン食料若しくはビーガン食料、例えば肉類似物および乳類似物;お菓子、例えばカカオフリーのチョコレート;並びに/またはチョコレート製品を調製する工程g)を含み;
任意に、前記方法がさらに、前記食品の食料残渣(複数可)を前記第1の基質としておよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質として使用することによって、前記食品の前記食料残渣(複数可)をリサイクルする工程h)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
食品、好ましくはベーカリー製品、例えばベーカリー製品、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;菓子製品、例えば小麦粉菓子若しくは砂糖菓子;乳製品、例えばアイスクリーム若しくはベビーミルク;スプレッド、例えばマーガリン、マヨネーズ、若しくはソフトチーズ;インスタント食料、例えばインスタントラーメン、ピザ、ピザ生地、若しくはソース;飲み物;ベジタリアン食料若しくはビーガン食料、例えば肉類似物および乳類似物;お菓子、例えばカカオフリーのチョコレート;並びに/またはチョコレート製品の製造における、微生物脂質、好ましくは請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を使用して製造される微生物脂質の使用。
【請求項15】
セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼから選択される少なくとも5つ、好ましくは少なくとも6つ、より好ましくは少なくとも7つの酵素を含む組成物であって、
ここで、任意に、前記組成物は、
セルラーゼ;アミラーゼ;ヘミセルラーゼ;限界デキストリナーゼ、例えば麦芽限界デキストリナーゼ;およびペクチナーゼ;または
セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;およびマンナナーゼ;または
セルラーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物脂質を製造する方法、任意に微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する方法に関する。本発明はさらに、微生物脂質の使用に関する。本発明はまた、少なくとも5つの酵素を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
食用油および脂肪は、人間にとって必須の栄養要件であることが知られている。健康な成人は、1日おおよそ5gの、体内で製造することができない、リノレン酸および不飽和脂肪酸を必要とする。2018年に、食用油の世界生産量は、2億400万トンに達した。例えばパーム油は、総製造油の36%を占め、その消費量は、おおよそ6,900万トンに達した。食糧農業機関(FAO)によると、パーム油についての需要は、2050年までに1億5,600万トンに達すると予想されている。過剰な土地使用、単一栽培および単一種に味方する生物学的に多様な生息地の除去に起因するトリグリセリド油の植物ベースの製造の潜在的な悪影響を考慮して、パーム油などの食料についてのそのような増加する需要は、環境リスクである。
【0003】
特に、世界人口の増大は、食用脂肪などの、食料についての需要における必然的な増加をもたらす。さらに、そのような食料についての増加する需要は、一人あたりの廃棄物の増加する量および環境への影響と関連付けられてきた。国連の食糧農業機関は、平均して、人間の消費のために世界全体で製造される食料の約3分の1が失われているかまたは無駄にされていると推定した。
【0004】
WWFの研究によると、ベーカリー残渣は、最も処分されている食料の1つである。2015年には、おおよそ450万トンのドイツのベーカリー製品が、170万トンの残渣をもたらした。従って、39万8000ヘクタールの農地が不必要に使用され、246万トンの温室効果ガスが産生された。
【0005】
すなわち、食料残渣(複数可)、例えば食料廃棄物を低下させる必要がある。また、食品および食料用原料を環境に優しい方法で製造する方法を提供する必要もある。さらに、持続可能な食料バリューチェーンを促進する手段についての必要がある。
【発明の概要】
【0006】
以下に、本発明の要素を説明する。これらの要素は、特定の実施態様を用いてリストするが、しかしながら、それらを任意の方法でおよび任意の数で組み合わせて追加の実施態様を作り出し得ることが理解されるべきである。さまざまに説明する例および好ましい実施態様は、本発明を明示的に説明する実施態様のみに限定すると解釈されるべきでない。この説明は、明示的に説明する実施態様の2つ以上を組み合わせる実施態様、または明示的に説明する実施態様の1つ以上を任意の数の開示する要素および/または好ましい要素と組み合わせる実施態様を支持し包含すると理解されるべきである。さらに、この出願における全ての説明する要素の任意の順列および組合せは、文脈が他に示さない限り、本出願の説明によって開示しているとみなされるべきである。
【0007】
第1の態様においては、本発明は、微生物脂質を製造する方法、任意に微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する方法に関し、前記方法は、工程:
a)第1の基質を提供することであって、ここで、前記第1の基質は、食料残渣(複数可)、好ましくは食料グレードの食料残渣(複数可)である、提供すること;
b)糸状菌および細菌から選択される第1の微生物を前記第1の基質と培養し、それによって前記第1の微生物が少なくとも1つの酵素および酵素的に処理された第1の基質を生産し、任意にさらにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を生産するのを可能にすること;任意に、1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養し、それによって前記1つ以上の微細藻類がタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を生産するのを可能にすること;
c)任意に、前記少なくとも1つの酵素を取得し、第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理し、それによって酵素的に処理された第2の基質を提供することであって;ここで、前記第2の基質は、食料残渣(複数可)、好ましくは食料グレードの食料残渣(複数可)であり;ここで、好ましくは、該第1の基質および該第2の基質は、同じタイプである、提供すること;
d)第2の微生物(ここで、前記第2の微生物は、油性微生物である)を、前記酵素的に処理された第1の基質を含む培地および/または、工程c)が存在する場合は、前記酵素的に処理された第2の基質を含む培地を培養し、それによって前記油性微生物が微生物脂質を生産することを可能にすること;
e)任意に、何らの溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに、前記培養された第2の微生物の純粋に酵素的な処理を実施し、工程d)において生産された前記微生物脂質をこれに続く回収することに適したものとすること;および
f)工程d)において生産された前記微生物脂質を、好ましくは密度に基づく分離法によって回収すること
を含む。
【0008】
一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、各発生で、ベーカリー食料残渣(複数可)、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;果物食料残渣(複数可)、例えば果肉、果皮、若しくは果汁;植物性食料残渣(複数可)、例えば野菜の皮、野菜の果肉、若しくは野菜ジュース;製粉食料残渣(複数可)、例えばふすま若しくはふすま粉;魚食料残渣(複数可)、例えば魚加工残渣;魚介類残渣(複数可)、例えば魚介類加工残渣;ビール醸造者の使用した穀物;シリアル食料残渣(複数可)、例えば米、小麦、キビ、若しくはトウモロコシ;レストラン食料残渣(複数可)、例えばレストランの残り物;動物性食料残渣(複数可)、例えば牛乳若しくはチーズ;スーパーマーケットの食料残渣(複数可)、例えば賞味期限切れ食料;またはそれらの任意の組合せを含むかまたはそれからなる;好ましくはベーカリー食料残渣(複数可)、より好ましくはパン食料残渣(複数可)を含むかまたはそれからなる食料残渣(複数可)から独立して選択される。
【0009】
一つの実施態様においては、前記糸状菌は、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、およびCeratocystis paradoxa、好ましくはCeratocystis paradoxa;Trichoderma sp.、例えばTrichoderma reeseiおよびTrichoderma harzianum;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えば.Rhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Thermomyces sp.;Penicillium sp.;Aureobasillium sp.;Ischnoderma sp.、例えばIschnoderma benzoinum;Polyporus sp.、例えばPolyporus durus;Pycnoporus sp.、例えばPycnoporus cinnabarinus;Phanerochaete sp.、例えばPhanerochaete chrysosporium;並びにXylaria spから選択され;好ましくはCeratocystis sp.、Trichoderma sp.、Aspergillus sp.、およびFusarium spから選択され;
前記細菌は、Clostridium sp.、例えばClostridium stercorarium、Clostridium beijerinckii、およびClostridium acetobutylicum;Halobacillus sp.、例えばHalobacillus trueperiおよびHalobacillus karajensis;Halomonas sp.、例えばHalomonas meridianaおよびHalomonas elongata;Rhodothermus sp.、例えばRhodothermus marinus;Streptomyces sp.、例えばStreptomyces griseus、Streptomyces olivochromogenes、Streptomyces griseorubens、およびStreptomyces matensis;並びにBacillus sp.、例えばBacillus nato、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、およびBacillus stearothermophilusから選択され;並びに/または
前記微細藻類は、Chlorella sp.、例えばChlorella vulgaris、およびChlorella protothecoides;Scenedesmus sp.、例えばScenedesmus obliquus;Dunaliella sp.、例えばDunaliella salina;Haematococcus sp.、例えばHaematococcus pluvialis;Crypthecodinium sp.、例えば Crypthecodinium cohnii;Schizochytrium sp.、例えばSchizochytrium limacinum;並びにTetraselmis sp.、例えばTetraselmis chuiから選択され;好ましくはChlorella sp.、およびScenedesmus sp.から選択される。
【0010】
一つの実施態様においては、前記第2の微生物は、油性酵母、油性真菌、油性細菌、および油性微細藻類から選択される油性微生物であり;
ここで、好ましくは、
前記油性酵母は、Cutaneotrichosporon sp.、例えばCutaneotrichosporon oleaginosus;Trichosporon sp.、例えばTrichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、およびTrichosporon asahii;Rhodospirillum sp.;Rhodosporidium sp.、例えばRhodosporidium toruloides;Rhodosporon sp.;Candida sp.、例えばCandida viswanathiiおよびCandida freyschussii;Cryptococcus sp.、例えばCryptococcus curvatus;Lipomyces sp.、例えばLipomyces starkeyi;Yarrowia sp.、例えばYarrowia lipolytica;Rhodotorula sp.、例えばRhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、およびRhodotorula glutinis;並びにApiotrichum sp.、例えばApiotrichum curvarum;好ましくはCutaneotrichosporon sp.、より好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択され;
前記油性真菌は、Cunninghamella sp.、例えばCunninghamella echinulate;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Mucor sp.、例えばMucor moelleri;Mortierella sp.、例えばMortariella isabellinaおよびMortierella alpine、好ましくはMortierella alpine;並びにHumicola sp.から選択され;
前記油性細菌は、Rhodococcus sp.;Acinetobacter sp.;およびBacillus sp.から選択され;並びに
前記油性微細藻類は、Chlorella sp.、Pseudochlorococcum sp.、Nannochloris sp.、Nannochloropsis sp.、Isochrysis sp.、Tribonema sp.、Dunaliella sp.、Ankistrodesmus sp.、Botryococcus sp.、Pavlova sp.、Scenedesmus sp.、Skeletonema sp.、およびNitzschia sp.から選択され;
より好ましくは、前記第2の微生物は、Cutaneotrichosporon sp.、例えばCutaneotrichosporon oleaginosus.から選択される油性酵母である。
【0011】
一つの実施態様においては、前記第2の微生物は、Cutaneotrichosporon oleaginosus、Trichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、Trichosporon asahii、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、Rhodotorula glutinis、Apiotrichum curvarum、Cryptococcus curvatus、Candida viswanathii、およびCandida freyschussii;好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択される油性酵母である。
【0012】
一つの実施態様においては、前記方法の前記工程b)は、糸状菌および細菌から選択される第1の微生物を前記第1の基質と培養し、それによって前記第1の微生物が少なくとも1つの酵素、酵素的に処理された第1の基質、並びにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を生産するのを可能にすることを含み;任意にさらに、1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養し、それによって前記1つ以上の微細藻類がタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を生産するのを可能にすることを含む。
【0013】
一つの実施態様においては、前記方法はさらに、好ましくは遠心分離、濾過、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、蒸留、およびそれらの組合せのいずれかを使用して、前記タンパク質バイオマスおよび/または前記芳香化合物を回収する工程を含む。
【0014】
一つの実施態様においては、前記培地はさらに、追加の炭素源、窒素源、微量金属、および/またはビタミンを含む。
【0015】
一つの実施態様においては、前記方法はさらに、
- 好ましくは前記基質(複数可)を製粉すること、混合すること、細断すること、および/若しくは篩い分けすることによる、機械的前処理;
- 前記基質(複数可)を溶剤中で、好ましくは水中で溶解すること;
- 好ましくは酸、例えば硫酸を使用する、前記基質(複数可)の化学的加水分解;
- 好ましくは50℃から200℃の温度での10分から240分間の、より好ましくは80℃から170℃の温度での30分から90分間の、前記基質(複数可)の熱前処理;
- 前記基質(複数可)の発酵前処理、好ましくは嫌気性発酵;並びに/または
- 1つ以上の酵素、任意に市販の酵素を使用する、前記基質(複数可)の酵素的前処理;
によって、前記第1の基質を前処理するおよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質を前処理する工程を含み、
ここで、前記1つ以上の酵素は、プロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、サブチリシンA、並びにペプシン;並びに加水分解酵素、好ましくはグリコシド加水分解酵素、より好ましくはα-アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、キシログルカーゼ、ガラクタナーゼ、アラビナーゼ、マンナナーゼ、リパーゼ、グルコアミラーゼ、およびペクチナーゼから選択される。
【0016】
一つの実施態様においては、前記方法は、何らの溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理を実施する前記工程e)を含み、ここで、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理は、単独での、またはプロテアーゼと組み合わせた/その後にプロテアーゼが続く、加水分解酵素での前記微生物の処理である。
【0017】
一つの実施態様においては、前記方法は、前記少なくとも1つの酵素を取得し、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理する工程c)を含み、前記前処理することは、前記第2の基質を、前記第1の微生物を培養することから得られる、好ましくは直接得られる液体酵素調製物の形態の、または凍結乾燥酵素調製物、任意に溶液中で再構成される凍結乾燥酵素調製物の形態の前記少なくとも1つの酵素と接触させることを含む。
【0018】
一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼの酵素活性から選択され;
任意にセルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼの酵素活性から選択される1つまたはいくつかの活性を含有する。
【0019】
一つの実施態様においては、前記方法は、微生物脂質を生産し、それから食品を調製する方法であり、前記方法はさらに、工程f)において回収した微生物脂質を含む食品、好ましくはベーカリー製品、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;菓子製品、例えば小麦粉菓子若しくは砂糖菓子;乳製品、例えばアイスクリーム若しくはベビーミルク;スプレッド、例えばマーガリン、マヨネーズ、若しくはソフトチーズ;インスタント食料、例えばインスタントラーメン、ピザ、ピザ生地、若しくはソース;飲み物;ベジタリアン食料若しくはビーガン食料、例えば肉類似物および乳類似物;お菓子、例えばカカオフリーのチョコレート;並びに/またはチョコレート製品を調製する工程g)を含み;
任意に、前記方法はさらに、前記食品の食料残渣(複数可)を前記第1の基質としておよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質として使用することによって、前記食品の前記食料残渣(複数可)をリサイクルする工程h)を含む。
【0020】
さらなる態様においては、本発明は、食品、好ましくはベーカリー製品、例えばベーカリー製品、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;菓子製品、例えば小麦粉菓子若しくは砂糖菓子;乳製品、例えばアイスクリーム若しくはベビーミルク;スプレッド、例えばマーガリン、マヨネーズ、若しくはソフトチーズ;インスタント食料、例えばインスタントラーメン、ピザ、ピザ生地、若しくはソース;飲み物;ベジタリアン食料若しくはビーガン食料、例えば肉類似物および乳類似物;お菓子、例えばカカオフリーのチョコレート;並びに/またはチョコレート製品の製造における、微生物脂質、好ましくは上記で定義した方法を使用して製造される微生物脂質の使用に関する。
【0021】
さらなる態様においては、本発明は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼから選択される少なくとも5つ、好ましくは少なくとも6つ、より好ましくは少なくとも7つの酵素を含む組成物、好ましくは上記で定義した方法の工程b)において製造される組成物に関し、
ここで、任意に、前記組成物は、
セルラーゼ;アミラーゼ;ヘミセルラーゼ;限界デキストリナーゼ、例えば麦芽限界デキストリナーゼ;およびペクチナーゼ;または
セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;およびマンナナーゼ;または
セルラーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼを含む。
【0022】
さらなる態様においては、本発明は、微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する方法に関し、ここで、前記方法は、上記で定義した、微生物脂質を製造する方法を含み、工程b)においては、前記第1の微生物はさらに、タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造し、および/または、工程b)が1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養することを含む場合は、前記微細藻類は、タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する。
【0023】
一つの実施態様においては、工程d)において、前記第2の微生物は、微生物脂質を製造し、さらにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する。
【0024】
一つの実施態様においては、前記方法は、前記タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を回収する工程を含む。
【0025】
一つの実施態様においては、微生物脂質を製造する前記方法、前記微生物脂質、前記タンパク質バイオマス、前記芳香化合物、前記第1の微生物、前記共培養すること、前記微細藻類、前記第2の微生物、および前記回収することは、上記で定義したとおりである。
【0026】
さらなる態様においては、本発明は、
a)上記で定義した、微生物脂質を製造する方法を使用して微生物脂質を提供すること;任意にさらに、好ましくは上記で定義した、微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する方法を使用して、タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を提供すること;
b)前記微生物脂質を含み、任意にさらに前記タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を含む食品を調製すること
を含む、食品を調製する方法に関する。
【0027】
一つの実施態様においては、前記食品、前記微生物脂質、微生物脂質を製造する前記方法、前記タンパク質バイオマス、前記芳香化合物、並びに微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する前記方法は、上記で定義したとおりである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物などの、食品の持続可能な製造のための方法を提供することが、本発明の一目的である。一つの実施態様においては、そのような微生物脂質およびタンパク質バイオマスは、ヒトまたは動物によって直接消費し得るか、またはベーカリー製品などの食料製品に組み込み得る。さらに、例えば食料残渣を使用して、微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物などの、製品の価値を調製することによって、食料廃棄物を低下させることが、本発明の一目的でる。特に、食料残渣を食料バリューチェーン中にリサイクルすることが、本発明の一目的である。そのような食料残渣のリサイクリングは、持続可能な食料バリューチェーンを提供することを可能にする。
【0029】
本発明の方法は、食料バリューチェーンを、食料残渣および/または食料ロスを有する、線形バリューチェーンから、食料残渣を、微生物油、タンパク質バイオマス、および/または芳香化合物などの、貴重な製品の製造についての基質としてリサイクルする循環バリューチェーンに変換する点で、有利である。本発明の方法は、リソースの使用、例えば食料原料の使用の効率を改善する。さらに、本発明の方法は、食料残渣の市場価値向上を可能にする。すなわち、食料廃棄物の経済的、環境的、社会的コストは、本発明の方法によって首尾よく低下する。
【0030】
本明細書において使用する用語「微生物脂質」は、油性微生物、例えば酵母油、細菌油、および/または真菌油によって製造される脂質に関する。一つの実施態様においては、用語「微生物脂質」は、「単細胞油」または「微生物油」と互換的に使用される。典型的には、微生物脂質は、不飽和脂肪酸が豊富である。一つの実施態様においては、微生物脂質は、食用微生物脂質である。そのような微生物脂質は、微生物脂質を含む食品を調製するために使用することができる。例えば、微生物脂質は、高い飽和脂肪酸含有量を有する脂肪および/またはパーム油などの環境に優しくない脂肪を置き換えるために使用することができる。微生物脂質は、植物油のそれらと同様の脂肪酸組成を有するが、それらは、より持続可能であると考えられている。実際、微生物脂質の製造は、季節によって影響を受けず、それらは、大量にかつ低下したスペース要求で製造することができ、それらは、油性微生物によって広範囲の炭素源から製造することができる。微生物は、脂質を、例えばそれらの乾燥細胞重量(DCW)の20%も蓄積するそれらの能力の結果として油性であると定義される。例えば、油性微生物は、トリグリセリド(TAG)および遊離脂肪酸(FA)の形態で脂質を蓄積することができる真菌、酵母、藻類およびいくつかの細菌の種などのいくつかの真核微生物を含む。一つの実施態様においては、本発明の方法で製造する微生物脂質の組成は、当業者によって適切な微生物および/または基質を選択することによってカスタマイズすることができる。
【0031】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「タンパク質バイオマス」は、高いタンパク質含有量、例えば乾燥バイオマスの最大60重量%以上のタンパク質含有量を有するバイオマスに関する。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、少なくとも20重量%または少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%または少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%または少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%のタンパク質含有量を有する、および/またはタンパク質からなる。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、マイコプロテインを含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマス、例えばマイコプロテインを含むかまたはそれからなるタンパク質バイオマスは、本発明の微生物脂質を製造する方法の副産物として製造される。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、マイコプロテイン、例えばFusarium venenatum、Neurospora intermedia、および/またはAspergillus oryzaeによって製造されるマイコプロテインを含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、食用タンパク質バイオマスである。例えば、そのようなタンパク質バイオマスを使用して、前記タンパク質バイオマスを含む食品を調製することができる。さらに、微生物タンパク質バイオマスはさらに、タンパク質に富む飼料および食品サプリメントに加工することができる。一つの実施態様においては、前記タンパク質バイオマスは、酵素的に加水分解するか、またはさらなる加工、例えば、食品への加工について直接使用する。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、細胞壁タンパク質、構造タンパク質、および膜タンパク質から選択されるタンパク質(複数可)を含む。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマス、例えば本発明の微生物脂質を製造する方法の副産物として製造されるタンパク質バイオマスは、マイコプロテイン、例えばFusarium venenatum、Neurospora intermedia、および/またはAspergillus oryzaeによって製造されるマイコプロテインを含む。一つの実施態様においては、第1の微生物は、Fusarium venenatum、Neurospora intermedia、および/またはAspergillus oryzaeを含む。一つの実施態様においては、第1の微生物は、Aspergillus oryzaeを含まないかまたはそれからならない。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスは、Fusarium venenatum、Neurospora intermedia、および/またはAspergillus oryzaeによって製造される。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマス、好ましくはF.venenatumによって製造されるタンパク質バイオマスは、アミノ酸含有量:4から6.5重量%の範囲、例えば約5.25重量%のアラニン;5.5から6.5重量%の範囲、例えば約6.13重量%のアルギニン;5.0から6.0重量%の範囲、例えば約5.75重量%のアスパラギン酸;2.0から4.5重量%の範囲、例えば約3.25重量%のシスチン;12.0から14重量%の範囲、例えば約13.13重量%のグルタミン酸;3.5から5.5重量%の範囲、例えば約4.75重量%のグリシン;2.0から4重量%の範囲、例えば約3.00重量%のヒスチジン;3.5から5.5重量%の範囲、例えば約4.25重量%のイソロイシン;2.0から3.5重量%の範囲、例えば約2.75重量%のロイシン;6.0から8.5重量%の範囲、例えば約7.25重量%のリジン;2.0から4.0重量%の範囲、例えば約3.00重量%のメチオニン;3.0から6.0重量%の範囲、例えば約4.50重量%のフェニルアラニン;1.5から3.5重量%の範囲、例えば約2.25重量%のプロリン;5.0から6.5重量%の範囲、例えば約5.75重量%のセリン;2.5から4.5重量%の範囲、例えば約3.50重量%のスレオニン;3.0から6.0重量%の範囲、例えば約4.50重量%のチロシン;および/または4.0から6.0重量%の範囲、例えば約5.00重量%のバリンを含む。一つの実施態様においては、工程b)において製造される前記タンパク質バイオマスは、
a) タンパク質(g) 11.5
総炭水化物(g) 1.7
総脂肪(g) 2.9
食物繊維(NSP)(g) 6.0
塩(mg) 4、
例えばFusarium venenatumによって製造されるバイオマス;
b) タンパク質: 91重量%
脂質 2重量%
グルカン 1重量%、
例えばTrichoderma reeseiによって製造されるバイオマス;または
c) タンパク質:23.1重量%
脂質 19重量%
キチン 20重量%
グルカン 35重量%
例えばAspergillus nigerによって製造されるバイオマス
を含むか、またはそれらからなる。
【0032】
一つの実施態様においては、工程b)において、第1の微生物は、タンパク質バイオマスを製造しおよび/または第1の微生物は、タンパク質バイオマスを製造する1つ以上の微細藻類と共培養する。一つの実施態様においては、該方法は、工程b)において製造されるタンパク質バイオマスを、例えば遠心分離、濾過、沈降、凝固、浮遊、およびそれらの組合せのいずれかによって、好ましくは遠心分離、濾過、およびそれらの組合せによって取得する工程を含む。一つの実施態様においては、工程d)において、第2の微生物はさらに、微生物脂質の製造の副産物として、タンパク質バイオマスを製造する。一つの実施態様においては、該方法は、工程d)において製造されるタンパク質バイオマスを、例えば遠心分離、濾過、沈降、凝固、浮遊、およびそれらの組合せのいずれかによって、好ましくは遠心分離、濾過、およびそれらの組合せによって取得する工程を含む。一つの実施態様においては、用語「タンパク質バイオマスを回収すること」および「タンパク質バイオマスを取得すること」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、前記方法は、微生物脂質を製造し、それを用いて食品を調製する方法であり、ここで、前記食品を調製することはさらに、前記タンパク質バイオマスを前記食品に組み込むことを含む。一つの実施態様においては、本発明の方法は、微生物脂質およびタンパク質バイオマスを製造する方法であり、第1の微生物は好ましくは、そのバイオマスの少なくとも30%をタンパク質として製造する微生物である。
【0033】
有利なことに、本発明の方法は、微生物タンパク質バイオマスを、微生物脂質を製造する方法の副産物として製造することを可能にする。すなわち、タンパク質を製造するための家畜の集約的飼育への代替手段は、食用微生物タンパク質バイオマスを製造するための微生物の培養である。一つの実施態様においては、本発明の方法を用いて製造されるタンパク質バイオマスは、直接バイオマスとして、または食品のタンパク質含有量を増加させるためのサプリメントとして消費することができる。本発明の方法の利点は、タンパク質バイオマスの製造が、経済的に実行可能であり、すなわち豆腐および他の大豆誘導体などの、より確立された肉代替品、並びに肉自身と首尾よく競合し得ることである。さらなる利点は、本発明の第1および第2の微生物が、大規模培養において培養することができ、大量の微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を提供し得ることである。
【0034】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「芳香化合物」は、香り(smell)または匂い(odor)、好ましくは心地よい香りまたは匂いを有する化合物、例えば匂い物質(odorant)、芳香剤(aroma)、香り物質(fragrance)または香料(flavor)に関する。一つの実施態様においては、芳香化合物は、香料化合物である。一つの実施態様においては、芳香化合物は、本発明の方法の副産物として製造される。一つの実施態様においては、芳香化合物は、ベンズアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、エチルマルトール、バニリン、アニソール、アネトール、エストラゴール、チモール、酢酸ゲラニル、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、酪酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酪酸ペンチル、ペンタン酸ペンチル、酢酸オクチル、酢酸ベンジル、アントラニル酸メチル、酢酸ヘキシル、ミルセン、ゲラニオール、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ネロリドール、オシメン、リモネン、カンファー、メントール、カルボン、テルピネオール、アルファ-イオノン、ツジョン、ユーカリプトール、ジャスモン、カプロン酸エチル、イソアミルアルコール、3-メチル-1-ブタノール、1-オクテン-3-オール、およびそれらの組合せから選択され;好ましくはシトロネロール、ゲラニオール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、およびそれらの組合せから選択される。一つの実施態様においては、芳香化合物は、酢酸エチルであり、ここで、該芳香化合物は、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis fimbriataから選択される糸状菌によって、例えばコーヒーの殻である基質を用いて製造する。一つの実施態様においては、芳香化合物は、カプロン酸エチル、イソアミルアルコール、3-メチル-1-ブタノール、1-オクテン-3-オール、および/または酢酸エチルから選択され、ここで、該芳香化合物は、Neurospora sp.から選択される糸状菌によって、例えばアルファ化米などの米である基質を用いて製造する。
【0035】
一つの実施態様においては、芳香化合物は、蒸留、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、およびそれらの組合せのいずれかを使用して取得する。一つの実施態様においては、芳香化合物は、培養培地中に分泌され、前記芳香化合物は、前記培養培地から、例えば過冷却を有する真空下の蒸留などの蒸留によって、親有機性浸透蒸発によって、固相微量抽出によって、およびそれらの組合せによって取得する。芳香は、食料の最も重要な特質の1つであり、消費者による製品受入れと直接関連している。本発明の方法は、そのような芳香化合物を、微生物脂質を製造する方法の副産物として効率的な方法で製造することを可能にする。有利なことに、そのようなバイオテクノロジーによって製造した芳香化合物は、持続可能な芳香化合物であり、例えば食料業界にとって添加物として有用である。
【0036】
本明細書において使用する用語「第1の基質」は、好ましくは、第1の微生物および/または第2の微生物などの微生物の増殖、代謝、および/または活性のための栄養素を含む、食料残渣(複数可)、例えば炭水化物、タンパク質、脂肪、およびミネラルに関する。一つの実施態様においては、第1の基質は、微生物の増殖を可能にする物質を提供する材料である。一つの実施態様においては、第1の基質は、ベーカリー食料残渣(複数可)、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;果物食料残渣(複数可)、例えば果肉、果皮、若しくは果汁;植物性食料残渣(複数可)、例えば野菜の皮、野菜の果肉、若しくは野菜ジュース;製粉食料残渣(複数可)例えばふすま若しくはふすま粉;魚食料残渣(複数可)、例えば魚加工残渣;魚介類残渣(複数可)、例えば魚介類加工残渣;ビール醸造者の使用した穀物;シリアル食料残渣(複数可)、例えば米、小麦、キビ、若しくはトウモロコシ;レストラン食料残渣(複数可)、例えばレストランの残り物;動物性食料残渣(複数可)、例えば牛乳若しくはチーズ;スーパーマーケットの食料残渣(複数可)、例えば賞味期限切れ食料;またはそれらの任意の組合せ;好ましくはベーカリー食料残渣(複数可)、より好ましくはパン食料残渣(複数可)を含むかまたはそれからなる食料残渣(複数可)から選択される。一つの実施態様においては、第1の微生物は、第1の基質の存在に応答して少なくとも1つの酵素を製造する。例えば、少なくとも1つの酵素は、基質の成分上に酵素的に作用するように構成されている適応酵素(複数可)である。一つの実施態様においては、第1の微生物を第1の基質と接触させることによって、該第1の微生物が刺激されて、基質の成分上に酵素的に作用するのに、例えば基質を消化するのにおよび/または増殖のために基質の成分を使用するのに適した酵素を製造する。一つの実施態様においては、第1の基質は、第1の微生物についての誘導系、特に基質について特異的な酵素を製造することについての誘導系である。一つの実施態様においては、第1の基質は、第2の基質を前処理してそこから増殖培地を提供するように構成されている、少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物を調製するために使用する。一つの実施態様においては、第2の基質を、前処理して、例えば前記少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物を用いて消化して、第2の微生物についての栄養素を含む培地を取得する。一つの実施態様においては、酵素的に処理した第1の基質および/または酵素的に処理した第2の基質は、第2の微生物を増殖させることについての培地である。
【0037】
一つの実施態様においては、前記第1の基質は、前記第1の微生物を刺激して、該基質を消化するように調整されている酵素を製造するための前記第1の微生物についての誘導系である。そのような調整されている酵素系を次いで使用して、好ましくは第1の基質と同じタイプである第2の基質を消化する。例えば、第1の基質および第2の基質は両方とも、同じタイプの食料残渣(複数可)、例えばベーカリー食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、前記誘導系、すなわち第1の基質を用いた第1の微生物の培養から取得される前記酵素は、別個に調製し、液体調製物として、またはさらなる使用のために任意に溶液中で再構成される凍結乾燥調製物として使用する。
【0038】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「食料残渣(複数可)」は、処分するか、または処分することが意図されている若しくは要求されている、生のまたは調理済みの、任意の食料物質に関する。本明細書において使用する用語「残渣(複数可)」は、単数形「残渣」および複数形「残渣」を含む。実施態様の多くにおいては、用語「残渣(複数可)」を単数形である動詞と組み合わせて使用するとき、該動詞および該用語「残渣(複数可)」の組合せは、たとえ該動詞が単数形であっても、単数形および複数形の両方に関するとして理解されるべきである。同様に、用語「残渣(複数可)」を複数形である動詞と組み合わせて使用するとき、該動詞および該用語「残渣(複数可)」の組合せは、たとえ該動詞が複数形であっても、単数形および複数形の両方に関するとして理解されるべきである。食料残渣(複数可)はさらに、住居並びに食料品店、レストラン、農産物直売所、組織のカフェテリアおよびキッチンなどの商業施設、並びに従業員の昼食室のような産業源からの食べられなかった食料および食料調製物残渣(複数可)に関する。例えば、食料残渣(複数可)は、食べられないまままたは未使用のまま放置されている食料、例えば食料製造、食料物流、食料保管、食料小売りに由来する食料残渣(複数)、並びに家庭、レストラン、およびケータリングのものなどの消費者の食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、食料残渣(複数可)は、ベーカリー食料残渣(複数可)、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;果物食料残渣(複数可)、例えば果肉、果皮、若しくは果汁;植物性食料残渣(複数可)、例えば野菜の皮、野菜の果肉、若しくは野菜ジュース;製粉食料残渣(複数可)、例えばふすま若しくはふすま粉;魚食料残渣(複数可)、例えば魚加工残渣;魚介類残渣(複数可)、例えば魚介類加工残渣;ビール醸造者の使用した穀物;シリアル食料残渣(複数可)、例えば米、小麦、キビ、若しくはトウモロコシ;レストラン食料残渣(複数可)、例えばレストランの残り物;動物性食料残渣(複数可)、例えば牛乳若しくはチーズ;スーパーマーケットの食料残渣(複数可)、例えば賞味期限切れ食料;またはそれらの任意の組合せを含むかまたはそれからなる;好ましくはベーカリー食料残渣(複数可)、より好ましくはパン食料残渣(複数可)を含むかまたはそれからなる食料残渣(複数可)から独立して選択されるベーカリー食料残渣を含む、またはそれからなる食料残渣から独立して選択される。一つの実施態様においては、食料残渣(複数可)は、食料グレードの食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、食料残渣(複数可)は、腐敗した食料および/または腐った食料ではない。一つの実施態様においては、食料残渣(複数可)は、食用に適さないカビを含まない。一つの実施態様においては、食料残渣(複数可)は、ヒトおよび/または動物の健康に有毒なおよび/または有害な成分を何ら含まない。例えば、果物または野菜の食料残渣(複数可)は、果物若しくは野菜、例えばニンジン、ナシ、リンゴ、ジャガイモ、バナナ、若しくはライチの果肉または皮などの、ジュース調製物、インスタント食料調製物、および/または缶詰プロセスの残渣である。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、食料グレードを有する。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、肉を含まないかまたは肉からならない。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、肉がない。一つの実施態様においては、用語「食料残渣(複数可)」は、食料廃棄物および食料ロス、例えば回収からの食料サプライチェーンに沿った食料ロス、例えば回収後のロスを含む。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、食料グレードの食料残渣(複数可)を含むかまたはそれからなり、好ましくは前記食料残渣(複数可)は、化学汚染物質、感染因子、および/または病原体を含有しない。好ましい実施態様においては、食料残渣(複数可)は、ベーカリー製品食料残渣(複数可)、例えばパン食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、用語「ベーカリー食料残渣(複数可)」および「ベーカリー製品食料残渣(複数可)」は、同義的に使用する。一つの実施態様においては、ベーカリー食料残渣(複数可)は、初期の農業生産から最終の家庭消費までの、サプライチェーン全体を通した任意の段階で発生する任意の食料残渣(複数可)に関する。一つの実施態様においては、第1の基質として使用する食料残渣(複数可)および第2の基質として使用する食料残渣(複数可)は、同じタイプの食料残渣(複数可)であり、例えば第1の基質および第2の基質は、両方ともベーカリー製品食料残渣(複数可)であり、例えば両方ともパン残渣(複数)である。一つの実施態様においては、第1の基質は、第1の微生物が、前記第1の基質、好ましくは前記第1の基質および第2の基質を分解するように調整された前記少なくとも1つの酵素を製造する誘導系である。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)は、傷んでいない(unspoiled)食料である。
【0039】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「食料グレードの食料残渣(複数可)」は、消費、例えばヒトの消費および/若しくは動物の消費について安全であり、並びに/または消費可能な食料/飼料製品にさらに加工することについて安全である材料に関する。例えば、そのような食料グレードの食料残渣(複数可)は、傷んでいない(not spoiled)および/または腐っていない食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、食用食料残渣(複数可)である。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、傷んでいない食料残渣である。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、食用成分を含むかまたはそれらからなる。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、ヒトおよび/または動物にとって有毒な成分を含まない。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、非毒性成分からなるかまたは非毒性濃度の成分からなる。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、食料廃棄物を含まない。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、化学汚染物質、感染因子、および/または病原体を含有しない。一つの実施態様においては、食料グレードの食料残渣(複数可)は、化学汚染物質および/または病原体を含まない。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)、好ましくは前記食料グレードの食料残渣(複数可)は、調理されていない食料、傷んだ食料、期限切れの食料、および顧客の皿などの皿からの残り物を含まない。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)、好ましくは前記食料グレードの食料残渣(複数可)は、食料からなる。一つの実施態様においては、前記食料残渣(複数可)、好ましくは前記食料グレードの食料残渣(複数可)は、非食料成分を含まない。
【0040】
本明細書において使用する用語「第1の微生物」は、糸状菌および細菌から選択される微生物に関する。一つの実施態様においては、第1の微生物は、第1の基質に適応した、例えば該第1の基質を消化するように適応した、少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物を製造することができる。一つの実施態様においては、第1の微生物は、引き続き第2の基質を消化して第2の微生物についての増殖培地を提供するために使用することができる少なくとも1つの酵素を製造し、該第2の微生物についての増殖培地として使用することができる、酵素的に処理された基質を提供する。一つの実施態様においては、工程b)において、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物を製造し、これを、工程c)において第2の基質を前処理するために使用し、それによって第2の微生物についての増殖培地として使用することができる酵素的に処理された第2の基質を提供する。
【0041】
一つの実施態様においては、第1の微生物は、糸状菌および細菌から選択され、ここで、糸状菌は、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、およびCeratocystis paradoxa、好ましくはCeratocystis paradoxa;Trichoderma sp.、例えばTrichoderma reeseiおよびTrichoderma harzianum; Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Thermomyces sp.;Penicillium sp.;Aureobasillium sp.;Ischnoderma sp.、例えばIschnoderma benzoinum;Polyporus sp.、例えばPolyporus durus;Pycnoporus sp.、例えばPycnoporus cinnabarinus;Phanerochaete sp.、例えばPhanerochaete chrysosporium;並びにXylaria spから選択され;好ましくはCeratocystis sp.、Trichoderma sp.、Aspergillus sp.、およびFusarium spから選択され;並びに
前記細菌は、Clostridium sp.、例えばClostridium stercorarium、Clostridium beijerinckii、およびClostridium acetobutylicum;Halobacillus sp.、例えばHalobacillus trueperiおよびHalobacillus karajensis;Halomonas sp.、例えばHalomonas meridianaおよびHalomonas elongata;Rhodothermus sp.、例えばRhodothermus marinus;Streptomyces sp.、例えばStreptomyces griseus、Streptomyces olivochromogenes、Streptomyces griseorubens、およびStreptomyces matensis;並びにBacillus sp.、例えばBacillus nato、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、およびBacillus stearothermophilusから選択される。一つの実施態様においては、第1の微生物は、前記糸状菌および前記細菌から選択され、ここで、該第1の微生物は、Aspergillus awamoriでなくおよび/またはAspergillus oryzaeでない。一つの実施態様においては、第1の微生物は、前記糸状菌および前記細菌から選択され、ここで、前記糸状菌は、Aspergillus awamoriおよび/またはAspergillus oryzaeを含まない。
【0042】
一つの実施態様においては、Aspergillusは、Aspergillus niger、例えばAspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535、またはAspergillus terreus、例えばAspergillus terreus CBS 117.37である。一つの実施態様においては、第1の微生物がAspergillus sp.である場合は、該Aspergillus sp.は、Aspergillus niger、例えばAspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535、およびAspergillus terreus、例えばAspergillus terreus CBS 117.37から選択される。一つの実施態様においては、Aspergillus nigerは、Aspergillus niger van Tieghemである。一つの実施態様においては、Aspergillus nigerは、Aspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535である。一つの実施態様においては、Aspergillusは、Aspergillus awamoriでない。一つの実施態様においては、第1の微生物がAspergillus sp.である場合は、該Aspergillus sp.は、Aspergillus awamoriでなくおよび/またはAspergillus oryzaeでない。一つの実施態様においては、第1の微生物は、Aspergillus awamoriでなくおよび/またはAspergillus oryzaeでない。
【0043】
一つの実施態様においては、Ceratocystis paradoxaは、Ceratocystis paradoxa CBS 374.83またはCeratocystis paradoxa DSM 63054である。一つの実施態様においては、前記第1の微生物は、Aspergillus sp.、好ましくはAspergillus niger、より好ましくはAspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535;およびCeratocystis sp.、好ましくはCeratocystis paradoxa、より好ましくはCeratocystis paradoxa CBS 374.83から選択される。一つの実施態様においては、前記Aspergillus sp.は、Aspergillus awamoriおよび/またはAspergillus oryzaeを含まない。一つの実施態様においては、第1の微生物は、Aspergillus awamoriでない。一つの実施態様においては、第1の微生物は、Aspergillus oryzaeでない。
【0044】
一つの実施態様においては、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素を製造することができ、さらにタンパク質バイオマスを製造することができる生物、例えばAspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Trichoderma sp.;およびFusarium sp.、例えばFusarium venenatum;好ましくはFusarium venenatumから選択される微生物である。一つの実施態様においては、前記第1の微生物は、少なくとも1つの酵素およびタンパク質バイオマスを製造する微生物であり、前記微生物は、Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Trichoderma sp.;およびFusarium sp.、例えばFusarium venenatum;好ましくはFusarium venenatumから選択される。
【0045】
一つの実施態様においては、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素を製造することができ、さらに芳香化合物を製造することができる生物であり、Ceratocystis、例えばCeratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、およびCeratocystis paradoxa;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、およびAspergillus niger、好ましくはAspergillus niger;Ischnoderma sp.、例えばIschnoderma benzoinum;Polyporus sp.、例えばPolyporus durus;Pycnoporus sp.、例えばPycnoporus cinnabarinus;Phanerochaete sp.、例えばPhanerochaete chrysosporiumから選択される。好ましい実施態様においては、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素を製造することができ、さらに芳香化合物を製造することができる生物であり、Aspergillus niger、Ceratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、Ceratocystis paradoxa、lschnoderma benzoinum、Polyporus durus、Pycnoporus cinnabarinus、およびPhanerochaete chrysosporiumから選択され;好ましくはCeratocystis paradoxaまたはAspergillus nigerである。一つの実施態様においては、前記第1の微生物は、少なくとも1つの酵素および芳香化合物を製造する微生物であり、前記微生物は、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis paradoxa CBS 374.83またはCeratocystis paradoxa DSM 63054などの、Ceratocystis paradoxa;およびAspergillus sp.、例えばAspergillus niger van Tieghemなどの、Aspergillus nigerから選択される。一つの実施態様においては、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素を製造することができ、さらにタンパク質バイオマスおよび芳香化合物を製造することができ、好ましくはAspergillus sp.、より好ましくはAspergillus oryzaeから選択される生物である。
【0046】
一つの実施態様においては、第1の微生物は、少なくとも1つの酵素を製造することができ、さらに芳香化合物およびタンパク質バイオマスを製造することができる生物、例えばAspergillus oryzaeなどの、Aspergillus sp.である。一つの実施態様においては、第1の微生物は、タンパク質バイオマスを製造する生物、例えばChlorella microalgaなどの微細藻類と共培養する。一つの実施態様においては、第1の微生物を培養する前記工程b)において、少なくとも1つの酵素および酵素的に処理された第1の基質を、製造し;任意に、タンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物、好ましくはタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を、製造する。
【0047】
一つの実施態様においては、第1の微生物を培養することは、前記第1の微生物を適切な増殖条件に供することを含む。一つの実施態様においては、用語「培養すること」および「増殖させる」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、第1の微生物を培養することは、前記第1の微生物を前記第1の基質と接触させることを含む。一つの実施態様においては、第1の基質は、第1の微生物についての増殖基質である。一つの実施態様においては、第1の微生物を培養する前記工程b)において、前記第1の微生物は、第1の基質に特異的な酵素活性を有する、少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物を製造し、任意にさらにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する。一つの実施態様においては、第1の微生物は、タンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を製造する微細藻類と共培養する。一つの実施態様においては、本発明の方法が微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/若しくは芳香化合物を製造する方法である場合は、該第1の微生物は、該第1の微生物が、前記少なくとも1つの酵素を製造することに加えて、タンパク質バイオマスおよび/若しくは芳香化合物を製造することができるように選択し、並びに/または該第1の微生物は、タンパク質バイオマスおよび/若しくは芳香化合物を製造することができる1つ以上の微細藻類と共培養する。一つの実施態様においては、酵素的に処理された基質を製造する微生物に言及するとき、該微生物が、基質を酵素的に処理する、1つ以上の酵素、好ましくは酵素混合物を製造することを意味し;例えば、該微生物が、基質を酵素的に処理する、前記少なくとも1つの酵素、好ましくは前記酵素混合物を製造することによって、酵素的に処理された基質を間接的に製造することを意味する。一つの実施態様においては、用語「少なくとも1つ」および「1つ以上」は、互換的に使用される。
【0048】
本明細書において使用する「糸状菌」は、糸状構造、特に菌糸を有する真菌に関する。一つの実施態様においては、糸状菌は、Ceratocystis sp.、例えばCeratocystis fimbriata、Ceratocystis moniliformis、およびCeratocystis paradoxa CBS 374.83 またはCeratocystis paradoxa DSM 63054などのCeratocystis paradoxa、好ましくはCeratocystis paradoxa;Trichoderma sp.、例えばTrichoderma reeseiおよびTrichoderma harzianum;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535などのAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Thermomyces sp.;Penicillium sp.;Aureobasillium sp.;Ischnoderma sp.、例えばIschnoderma benzoinum;Polyporus sp.、例えばPolyporus durus;Pycnoporus sp.、例えばPycnoporus cinnabarinus;Phanerochaete sp.、例えばPhanerochaete chrysosporium;並びにXylaria spから選択され;好ましくはCeratocystis sp.、Trichoderma sp.、Aspergillus sp.、およびFusarium spから選択される。一つの実施態様においては、前記糸状菌は、Aspergillus sp.、好ましくはAspergillus niger、より好ましくはAspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535;およびCeratocystis sp.、好ましくはCeratocystis paradoxa、より好ましくはCeratocystis paradoxa CBS 374.83から選択される。
【0049】
工程b)の観点から本明細書において使用する用語「細菌」は、第1の基質を用いて培養するとき、少なくとも1つの酵素を製造することができる任意の細菌に関する。一つの実施態様においては、前記細菌は、Clostridium sp.、例えばClostridium stercorarium、Clostridium beijerinckii、およびClostridium acetobutylicum;Halobacillus sp.、例えばHalobacillus trueperiおよびHalobacillus karajensis;Halomonas sp.、例えばHalomonas meridianaおよびHalomonas elongata;Rhodothermus sp.、例えばRhodothermus marinus;Streptomyces sp.、例えばStreptomyces griseus、Streptomyces olivochromogenes、Streptomyces griseorubens、およびStreptomyces matensis;並びにBacillus sp.、例えばBacillus nato、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、およびBacillus stearothermophilusから選択される。
【0050】
本明細書において使用する用語「少なくとも1つの酵素」は、1つ以上の酵素、好ましくは酵素混合物に関する。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、前記第1の基質および/若しくは第2の基質を標的とする、並びに/または前記第1の基質および/若しくは第2の基質の少なくとも1つの成分を標的とする活性を有する。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、基質を酵素的に処理して、増殖培地および/または増殖培地用の成分を提供することができる。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、基質を酵素的に処理して、前記基質を栄養素に変換する、並びに/または前記基質から栄養素、好ましくは第1の微生物および/若しくは第2の微生物の増殖のための栄養素を放出することができる。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、前記基質が前記第1の微生物および/または第2の微生物にとって適切な増殖培地となるように、該基質上に作用する。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼの酵素活性から選択され;任意にセルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼの酵素活性から選択される1つまたはいくつかの活性を含有する。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;ラミナリナーゼ;およびそれらの組合せのいずれかである。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、酵素混合物である。一つの実施態様においては、酵素混合物は、少なくとも2つまたは3つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つ、さらにより好ましくは少なくとも7つの酵素を含む。一つの実施態様においては、酵素混合物は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼから選択される少なくとも2つまたは3つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つ、さらにより好ましくは少なくとも7つの酵素を含む。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、前記基質に適応されている、すなわち、前記第1の微生物を前記基質と接触させることによって、前記第1の微生物は、前記基質上に特異的に作用する酵素を製造する。例えば、パン残渣(複数可)を前記基質として使用する場合は、本発明の方法の工程b)において製造される少なくとも1つの酵素および/または本発明の組成物は、
セルラーゼ;アミラーゼ;ヘミセルラーゼ;限界デキストリナーゼ例えば麦芽限界デキストリナーゼ;およびペクチナーゼ;並びに/または
セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;およびマンナナーゼ;並びに/または
セルラーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼ
を含み得る。
【0051】
一つの実施態様においては、本発明の組成物は、本発明の方法の工程b)において製造される少なくとも1つの酵素である。一つの実施態様においては、本発明の方法の工程b)において製造される少なくとも1つの酵素は、本発明の組成物である。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、食料グレードを有する。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、食料グレードの酵素または食料グレードの酵素組成物である。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素は、少なくとも1つの食料グレードの酵素を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、前記第1の基質が食料グレードの食料残渣(複数可)である場合は、前記少なくとも1つの酵素は、食料グレードの酵素または食料グレードの酵素組成物である。
【0052】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「酵素的に処理された第1の基質」は、前記第1の微生物によって製造される前記少なくとも1つの酵素と接触させた第1の基質に関する。一つの実施態様においては、酵素的に処理された第1の基質、またはその成分は、前記第2の微生物についての増殖培地として使用するかまたは前記第2の微生物についての増殖培地中のサプリメント(複数可)として使用する。一つの実施態様においては、工程d)において使用する前記培地は、酵素的に処理された第1の基質および/若しくは酵素的に処理された第2の基質を含むかまたはそれらからなり、並びに/または前記酵素的に処理された第1の基質および/若しくは酵素的に処理された第2の基質の成分、好ましくは栄養素を含むかまたはそれらからなる。一つの実施態様においては、酵素的に処理された第1の基質は、前記第1の基質の加水分解物である。
【0053】
工程b)の観点から本明細書において使用する用語「微細藻類」は、タンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を製造することができる任意の微細藻類に関する。一つの実施態様においては、工程b)において使用する前記微細藻類は、Chlorella sp.、例えばChlorella vulgarisおよびChlorella protothecoides;Scenedesmus sp、例えばScenedesmus obliquus;Dunaliella sp、例えばDunaliella salina;Haematococcus sp、例えばHaematococcus pluvialis;Crypthecodinium sp、例えば Crypthecodinium cohnii;Schizochytrium sp、例えばSchizochytrium limacinum;並びにTetraselmis sp、例えばTetraselmis chuiから選択され;好ましくはChlorella sp.およびScenedesmus sp.から選択される。一つの実施態様においては、工程b)は、前記第1の微生物を微細藻類と共培養して、前記少なくとも1つの酵素および前記第1の微生物によって製造される前記酵素的に処理された第1の基質に加えて、前記微細藻類によって製造されるタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を取得することを含む。前記微細藻類によって製造されるそのようなタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物は、前記タンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を含む食品を調製するために使用することができる。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスを製造するために工程b)において使用する微細藻類は、Chlorella vulgaris、Dunaliella salina、Haematococcus pluvialisおよびScenedesmus obliquusから選択される。一つの実施態様においては、タンパク質バイオマスを製造することができる微細藻類は、Chlorella vulgaris、Dunaliella salina、Haematococcus pluvialisおよびScenedesmus obliquusから選択される。一つの実施態様においては、芳香化合物を製造するために工程b)において使用する微細藻類は、Crypthecodinium cohnii、Schizochytrium limacinum、Tetraselmis chui、Chlorella vulgaris、およびChlorella protothecoidesから選択される。一つの実施態様においては、芳香化合物を製造することができる微細藻類は、Crypthecodinium cohnii、Schizochytrium limacinum、Tetraselmis chui、Chlorella vulgaris、およびChlorella protothecoidesから選択される。
【0054】
一つの実施態様においては、工程b)における前記第1の微生物を培養することは、25℃から37℃の範囲の温度で実施する。一つの実施態様においては、工程b)の前記第1の微生物を培養することは、pH4からpH8の範囲のpHで実施する。一つの実施態様においては、工程b)の前記第1の微生物を培養することは、2日から12日間、好ましくは3日から10日間実施する。一つの実施態様においては、工程b)の前記第1の微生物を培養することは、pO2>20%で実施する。一つの実施態様においては、工程b)の前記第1の微生物を培養することは、撹拌(agitation)下、好ましくは100rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。例えば、パドルスターラーを、使用し得る。一つの実施態様においては、工程b)の前記第1の微生物を培養することは、25℃から37℃の範囲の温度で、pH4からpH8の範囲のpHで、3日から10日間、pO2>20%で、撹拌(agitation)下、好ましくは100rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。
【0055】
一つの実施態様においては、工程b)における前記第1の微生物を培養することは、前記第1の微生物を、2日から12日間、好ましくは3日から10日間、25℃から37℃の範囲の温度で、pH4からpH8の範囲のpHで、および/または溶存酸素(pO2)pO2>20%で培養することを含む。
【0056】
一つの実施態様においては、本発明の方法の工程b)は、糸状菌および細菌から選択される第1の微生物を前記第1の基質と培養し、それによって前記第1の微生物が少なくとも1つの酵素、酵素的に処理された第1の基質、およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造することを可能にすることを含み;任意にさらに、1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養し、それによって前記1つ以上の微細藻類がタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を製造することを可能にすることを含む。
【0057】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養すること」は、前記第1の微生物の前記微細藻類との組合せ培養、例えば同じ容器中での培養に関する。一つの実施態様においては、共培養は、前記第1の微生物および前記微細藻類を、該第1の微生物および該微細藻類の両方に適した培養条件に供することを含む。一つの実施態様においては、第1の微生物に適した培養条件が微細藻類に適した培養条件と異なる場合は、工程b)における前記共培養は、存在する場合は、前記第1の微生物および微細藻類を引き続き第1の微生物に適した培養条件および微細藻類に適した培養条件に供することを含み、またはその逆である。
【0058】
一つの実施態様においては、前記方法は、工程b)において前記第1の微生物によって製造されるタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を取得し;並びに、任意に、前記1つ以上の微細藻類によって製造されるタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を取得する工程を含む。一つの実施態様においては、工程b)が1つ以上の微細藻類を前記第1の微生物と共培養することを含む場合は、前記方法は、前記1つ以上の微細藻類によって製造されるタンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を取得する工程を含む。一つの実施態様においては、用語「取得すること」および「回収すること」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、前記タンパク質バイオマスおよび/または前記芳香化合物を回収することは、遠心分離、濾過、蒸留、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、およびそれらの組合せのいずれかを使用して実施する。一つの実施態様においては、工程b)において前記微細藻類によって製造される前記微生物脂質を回収することは、遠心分離、溶媒抽出例えばヘキサンを用いたもの、溶媒なしの抽出例えば微細藻類の細胞壁の酵素的加水分解およびその後の破壊された細胞の半連続遠心分離などの遠心分離を含むもの、コールドプレス、解乳化、およびそれらの任意の組合せを含み;好ましくは遠心分離、溶媒なしの抽出例えば微細藻類の細胞壁の酵素的加水分解およびその後の破壊された細胞の半連続遠心分離などの遠心分離を含むもの、コールドプレス、およびそれらの任意の組合せのいずれかを含む。一つの実施態様においては、工程b)における前記微細藻類によって製造される前記微生物脂質を回収することは、溶媒ベースの抽出および化学薬品ベースの解乳化なしである。例えば、タンパク質バイオマスは、遠心分離および/または濾過を使用して回収する。例えば、芳香化合物は、蒸留、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、およびそれらの組合せを使用して回収する。
【0059】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「第2の基質を前処理すること」は、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素と接触させること、好ましくは前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で酵素的に処理することに関する。一つの実施態様においては、前記第2の基質を少なくとも1つの酵素で前処理することによって、前記第2の基質は、第2の微生物が増殖することを可能にする化合物、好ましくは栄養素に変換されおよび/またはこれらを放出し、例えば第2の基質は、前記第2の微生物についての増殖培地におよび/または該増殖培地についての成分に変換される。一つの実施態様においては、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理することは、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物と、6~72時間、好ましくは12~48時間、より好ましくは20~30時間;例えば20~80℃、好ましくは30~60℃の範囲の温度で、および/またはpH3からpH9、好ましくはpH4からpH7の範囲のpHで、接触させることを含む。一つの実施態様においては、第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理することは、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で酵素的に処理することを含むかまたはそれからなる。
【0060】
一つの実施態様においては、工程c)が存在する場合は、工程c)における前記第2の基質を前処理することは、30℃から80℃の範囲の温度で実施する。一つの実施態様においては、工程c)の前記第2の基質を前処理することは、pH4からpH9の範囲のpHで実施する。一つの実施態様においては、工程c)の前記第2の基質を前処理することは、撹拌(agitation)下、好ましくは200rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。一つの実施態様においては、工程c)の前記第2の基質を前処理することは、30℃から80℃の範囲の温度で、pH4からpH9の範囲のpHで、撹拌(agitation)下、好ましくは200rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。一つの実施態様においては、存在する場合は、工程c)における前記第2の基質を前処理することは、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素、好ましくは酵素混合物、任意に本発明の組成物で、6~72時間、好ましくは12~48時間、より好ましくは20~30時間;例えば20℃から80℃、好ましくは30℃から60℃の範囲の温度で、および/またはpH3からpH9、好ましくはpH4からpH7の範囲のpHで処理することを含む。一つの実施態様においては、存在する場合は、工程c)における前記第2の基質を前処理することは、前記第2の基質を液体、例えば緩衝系を含む培地中で前記少なくとも1つの酵素で処理することを含む。
【0061】
一つの実施態様においては、前記方法は、前記少なくとも1つの酵素を取得し、前記第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前処理する工程c)を含み、ここで、前記前処理することは、前記第2の基質を、前記第1の微生物を培養することから取得した、好ましくは直接取得した、液体酵素調製物の形態の、または凍結乾燥酵素調製物、任意に溶液中で再構成される凍結乾燥酵素調製物の形態の、前記少なくとも1つの酵素と接触させることを含む。一つの実施態様においては、工程c)の前記少なくとも1つの酵素を前記取得することは、前記少なくとも1つの酵素を、液体の形態でまたは凍結乾燥酵素調製物の形態で取得することを含む。一つの実施態様においては、前記少なくとも1つの酵素のそのような凍結乾燥酵素調製物は、第2の基質を前記少なくとも1つの酵素で前記前処理することの前に溶解する。
【0062】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「酵素的に処理された第2の基質」は、前記第1の微生物によって製造される前記少なくとも1つの酵素と接触させた第2の基質に関する。一つの実施態様においては、酵素的に処理された第2の基質、またはその成分は、前記第2の微生物についての増殖培地として使用するかまたは前記第2の微生物についての増殖培地中のサプリメント(複数可)として使用する。一つの実施態様においては、酵素的に処理された第2の基質は、前記第2の基質の加水分解物である。
【0063】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「同じタイプの」は、同じタイプまたは実質的に同じタイプの食料残渣(複数可)を含むかまたはそれらからなる第1の基質および第2の基質に関し、例えば第1の基質および第2の基質は両方とも、ベーカリー製品食料残渣(複数可)である。例えば、同じタイプの第1の基質および第2の基質は、同じ供給源、例えば食料残渣(複数可)の同じバッチ由来である、および/または同じ若しくは類似の組成を有する。一つの実施態様においては、第1の基質および第2の基質が同じタイプであるとき、該第1の基質および第2の基質は、同一である。一つの実施態様においては、第1の基質の組成および第2の基質の組成は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%類似している;すなわち、成分、および任意にそれらの濃度は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の類似性を有する。一つの実施態様においては、第1の基質および第2の基質が同じタイプであるとき、該第1の基質および該第2の基質は両方とも、ベーカリー食料残渣(複数可)、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;果物食料残渣(複数可)、例えば果肉、果皮、若しくは果汁;植物性食料残渣(複数可)、例えば野菜の皮、野菜の果肉、若しくは野菜ジュース;製粉食料残渣(複数可)、例えばふすま若しくはふすま粉;魚食料残渣(複数可)、例えば魚加工残渣;魚介類残渣(複数可)、例えば魚介類加工残渣;ビール醸造者の使用した穀物;シリアル食料残渣(複数可)、例えば米、小麦、キビ、若しくはトウモロコシ;レストラン食料残渣(複数可)、例えばレストランの残り物;動物性食料残渣(複数可)、例えば牛乳若しくはチーズ;スーパーマーケットの食料残渣(複数可)、例えば賞味期限切れ食料;またはそれらの任意の組合せである。好ましい実施態様においては、第1の基質および第2の基質が同じタイプであるとき、該第1の基質および該第2の基質は両方とも、ベーカリー食料残渣(複数可)、好ましくはパン食料残渣(複数可)である。
【0064】
本明細書において使用する用語「第2の微生物」は、油性微生物、好ましくは油性酵母、油性真菌、油性細菌、および油性微細藻類から選択される油性微生物に関する。油性微生物は、当業者に知られている。油性酵母、油性真菌、油性細菌、および油性微細藻類は、典型的には微生物脂質を製造することができる微生物である。
【0065】
一つの実施態様においては、前記油性酵母は、Cutaneotrichosporon sp.Cutaneotrichosporon oleaginosus; Trichosporon sp.、例えばTrichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、およびTrichosporon asahii;Rhodospirillum sp.;Rhodosporidium sp.、例えばRhodosporidium toruloides;Rhodosporon sp.;Candida sp.、例えばCandida viswanathiiおよびCandida freyschussii;Cryptococcus sp.、例えばCryptococcus curvatus;Lipomyces sp.、例えばLipomyces starkeyi;Yarrowia sp.、例えばYarrowia lipolytica;Rhodotorula sp.、例えばRhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、およびRhodotorula glutinis;並びにApiotrichum sp.、例えばApiotrichum curvarumから選択される。好ましい実施態様においては、前記油性酵母は、Cutaneotrichosporon sp.、好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択される。一つの実施態様においては、油性酵母は、Rhodosporidium toruloidesでない。一つの実施態様においては、前記Rhodosporidium spは、Rhodosporidium toruloidesを含まない。一つの実施態様においては、前記第2の微生物がRhodosporidium sp.である場合は、該Rhodosporidium sp.は、Rhodosporidium toruloidesでない。一つの実施態様においては、前記油性酵母がRhodosporidium sp.である場合は、該Rhodosporidium sp.は、Rhodosporidium toruloidesでない。
【0066】
一つの実施態様においては、前記油性真菌は、Cunninghamella sp.、例えばCunninghamella echinulate;Aspergillus sp.、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus tubingensis、Aspergillus terreus、およびAspergillus niger;Neurospora sp.、例えばNeurospora intermedia;Monascus sp.、例えばMonascus purpureus;Rhizopus sp.、例えばRhizopus oryzae;Fusarium sp.、例えばFusarium venenatum;Mucor sp.、例えばMucor moelleri;Mortierella sp.、例えばMortariella isabellinaおよびMortierella alpine、好ましくはMortierella alpine;並びにHumicola sp.から選択される。
【0067】
一つの実施態様においては、前記油性細菌は、Rhodococcus sp.;Acinetobacter sp.;およびBacillus sp.から選択される。
【0068】
一つの実施態様においては、前記油性微細藻類は、Chlorella sp.、Pseudochlorococcum sp.、Nannochloris sp.、Nannochloropsis sp.、Isochrysis sp.、Tribonema sp.、Dunaliella sp.、Ankistrodesmus sp.、Botryococcus sp.、Pavlova sp.、Scenedesmus sp.、Skeletonema sp.、およびNitzschia sp.から選択される。
【0069】
一つの実施態様においては、第2の微生物は、油性酵母であり、好ましくは、Cutaneotrichosporon oleaginosus、Trichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、Trichosporon asahii、Lipomyces starkeyi、Rhodosporidium toruloides、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、Rhodotorula glutinis、Apiotrichum curvarum、Cryptococcus curvatus、Candida viswanathii、およびCandida freyschussii;例えばCutaneotrichosporon oleaginosusから選択される。一つの実施態様においては、第2の微生物は、Rhodosporidium toruloidesでない。例えば、第2の微生物は、Cutaneotrichosporon oleaginosus、Trichosporon oleaginosus、Trichosporon capitatu、Trichosporon asahii、Lipomyces starkeyi、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula graminis、Rhodotorula gracilis、Rhodotorula glutinis、Apiotrichum curvarum、Cryptococcus curvatus、Candida viswanathii、およびCandida freyschussiiから選択される油性酵母であり得る。好ましい実施態様においては、第2の微生物は、油性酵母であり、好ましくはCutaneotrichosporon sp.、より好ましくはCutaneotrichosporon oleaginosusから選択される。本発明による一つの実施態様によれば、本発明による方法において使用する油性微生物は、油性酵母、油性真菌、油性細菌、および油性微細藻類から選択され;好ましくは油性酵母である。好ましい実施態様においては、前記油性微生物/酵母は、Cutaneotrichosporon oleaginosus(C. oleaginosus)である。
【0070】
本明細書において使用する用語「前記酵素的に処理された基質を含む培地」は、酵素的に処理された第1の基質および/若しくは酵素的に処理された第2の基質を含む並びに/または前記酵素的に処理された第1の基質および/若しくは第2の基質の成分を含む培地;例えば工程b)において取得される第1の基質の加水分解物および/若しくは工程c)において取得される第2の基質の加水分解物を含むかまたはそれらからなる培地に関する。一つの実施態様においては、前記酵素的に処理された第1の基質および/または前記酵素的に処理された第1の成分は、工程b)において取得される加水分解物、好ましくは前記第1の基質の加水分解物である。一つの実施態様においては、前記酵素的に処理された第2の基質および/または前記酵素的に処理された第2の成分は、工程c)において取得される加水分解物、好ましくは前記第2の基質の加水分解物である。一つの実施態様においては、工程d)において使用する培地は、前記第1の基質の加水分解物および/または前記第2の基質の加水分解物を含む。一つの実施態様においては、前記培地は、前記第2の微生物についての増殖培地である。一つの実施態様においては、用語「培地」および「増殖培地」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、培地は、例えば生物、例えば第2の微生物が増殖するのを可能にする成分/栄養素を含む。一つの実施態様においては、培地は、酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質の少なくとも成分を含み、任意にさらに追加の炭素源、窒素源、有機酸例えば酢酸、微量金属、および/またはビタミンを含む。この文脈において、「追加の」は、培地が、前記酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質に由来する炭素源、窒素源、有機酸、微量金属、および/またはビタミン、並びに、加えて、前記酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質に由来しない、さらなる炭素源、窒素源、有機酸、微量金属、および/またはビタミンを含み得ることを意味する。一つの実施態様においては、前記炭素源は、食料グレードの炭素源である。一つの実施態様においては、用語「酵素的に処理された基質を含む培地」は、酵素的に処理された基質、例えば工程b)の酵素的に処理された第1の基質若しくは工程c)の酵素的に処理された第2の基質を含む培地、および/または酵素的に処理された基質(複数可)の成分を含む培地に関する。例えば、酵素的に処理された基質の成分を回収し得、前記成分を培地中に組み込み得るかまたは酵素的に処理された基質を培地として直接使用し得る。例えば、工程b)において取得される酵素的に処理された第1の基質および/または工程c)において取得される酵素的に処理された第2の基質は、工程d)において使用する培地として直接使用し得る。酵素的に処理された第1の基質および酵素的に処理された第2の基質を混合して、工程d)についての培地を提供し得る。一つの実施態様においては、工程b)および/またはc)において使用する培地(単数)/培地(複数)は、それぞれ酵素的に処理された第1の基質および第2の基質を含み、工程d)において第2の微生物を培養するための培地として使用する。一つの実施態様においては、工程d)において使用する培地は、前記酵素的に処理された第1の基質を含む工程b)において使用する培地を含むか若しくはそれからなり、および/または前記酵素的に処理された第2の基質を含む工程c)において使用する培地を含むか若しくはそれからなる。一つの実施態様においては、用語「酵素的に処理された第1の基質」および「第1の基質の加水分解物」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、用語「酵素的に処理された第2の基質」および「第2の基質の加水分解物」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、そのような加水分解物、例えば第1の基質の加水分解物および/または第2の基質の加水分解物は、工程d)において第2の微生物を増殖させるための培地として使用する。一つの実施態様においては、酵素的に処理された基質を含む工程b)および/またはc)の細胞培養ブロスを、工程d)についての培地として使用する。一つの実施態様においては、工程b)の後、または工程c)が存在する場合は、工程c)の後、第2の微生物は、それぞれ工程b)または工程c)において使用する培地中で工程d)において培養する。例えば、第2の微生物は、工程b)および/または工程c)が実施された、容器、例えば細胞培養容器に添加し得る。
【0071】
一つの実施態様においては、工程d)において使用する酵素的に処理された第1の基質は、工程b)において使用する培地を含み;ここで、任意に、前記培地は、濾過されおよび/または遠心分離されている。一つの実施態様においては、工程d)において使用する酵素的に処理された第2の基質は、工程c)において使用する、液体、例えば培地を含み:ここで、任意に、前記液体は、濾過されおよび/または遠心分離されている。一つの実施態様においては、工程d)において使用する培地は、工程b)および/または工程c)において使用する培地であり;ここで、任意に、前記培地は、濾過されおよび/または遠心分離されている。一つの実施態様においては、工程b)および/またはc)において使用する液体、例えば、培地は、工程d)に移し、工程d)において培地として使用する。
【0072】
一つの実施態様においては、工程b)において製造される前記酵素的に処理された第1の基質は、工程d)において培地中で前記酵素的に処理された第1の基質を使用する前に遠心分離する。一つの実施態様においては、製造される酵素的に処理された第1の基質を含む工程b)において使用する増殖培地を遠心分離し、そのような遠心分離の上清を、工程d)についての培地としてまたは工程d)についての培地の成分として使用する。一つの実施態様においては、工程c)において製造される前記酵素的に処理された第2の基質は、前記酵素的に処理された第2の基質を工程d)において培地中で使用する前に遠心分離する。一つの実施態様においては、製造される酵素的に処理された第2の基質を含む工程c)において使用する培地を遠心分離し、そのような遠心分離の上清を、工程d)についての培地としてまたは工程d)についての培地の成分として使用する。例えば、そのような遠心分離は、5,000rpmから20,000rpmの範囲、例えば14,000rpmでの、1分から60分間、例えば20分間の遠心分離であり得る。一つの実施態様においては、そのような遠心分離を使用して、タンパク質バイオマスを、酵素的に処理された基質を含む上清から該バイオマスを分離することによって回収することができる。
【0073】
一つの実施態様においては、前記培地はさらに、追加の炭素源、窒素源、有機酸、微量金属、および/またはビタミンを含む。一つの実施態様においては、前記培地は、単糖類、好ましくはペントースまたはヘキソース、より好ましくはグルコース、キシロース、マンニトール、アラビノース;およびオリゴ糖などの炭水化物;オリゴアミノ酸およびアミノ酸または他のペプチド加水分解物などのタンパク質加水分解物;脂肪酸;有機酸、好ましくは酢酸;ミネラル;ビタミンおよび微量元素、並びにそれらの組合せのいずれかを含む。一つの実施態様においては、追加の炭素源は、糖、グリセロール、糖アルコール、糖酸、脂肪酸、脂肪アルコール、および脂肪エステルから選択される。一つの実施態様においては、窒素源は、尿素、タンパク質加水分解物、アミノ酸、無機亜硝酸塩から選択される。一つの実施態様においては、微量金属は、V、Mo、Cu、およびFeから選択される。一つの実施態様においては、ビタミンは、ビタミンC、ビタミンB、ビタミンA、およびビタミンEから選択される。一つの実施態様においては、前記追加の炭素源、窒素源、有機酸、微量金属、および/またはビタミンは、食料グレードを有する。
【0074】
一つの実施態様においては、前記炭素源は、炭水化物:アミノ酸;脂肪酸;好ましくは単糖類、好ましくはペントースまたはヘキソース、より好ましくはグルコース、キシロースおよび/またはマンニトール;オリゴ糖;動物組織、植物組織のまたは微生物の加水分解物;並びに前述のもののいずれかの組合せを含む群から選択され、ここで、より好ましくは、前記炭素源は、グルコースである。一つの実施態様においては、前記培地中の前記炭素源の濃度は、50mMから400mM、好ましくは200mMから300mMの範囲である。前記グルコースは、単独で使用し得るかまたは例えば、ペプトン、トリプトンなどの、適切な加水分解物と組み合わせて使用し得る。一つの実施態様においては、加水分解物は、藻類加水分解物、リグノセルロース加水分解物、植物加水分解物、海洋大型藻類および微細藻類の加水分解物などの、海洋バイオマス加水分解物、トウモロコシ加水分解物、小麦加水分解物または他の加水分解物である。リサイクル工程を含む本発明による方法のいくつかの実施態様においては、加水分解物はまた、微生物加水分解物、例えば油性微生物の加水分解に由来する、酵母加水分解物、例えば、好ましくはそのような加水分解物を使用して脂質を製造した後の酵母自身であり得る。
【0075】
一つの実施態様においては、培地中の炭素の窒素に対する重量比(C:N)は、特にそれが制限された窒素培地である場合は、(100~200):1である。別の実施態様においては、培地中の炭素の窒素に対する重量比(C:N)は、特にそれが窒素制限された培地でないとき、(10~100):1、好ましくは(10~50):1である。一つの実施態様においては、培地は、窒素に富む培地である。上およびさらに下に示す重量比は、出発培地における、すなわち工程d)が始まるときの重量比である。本明細書において使用する用語「窒素に富む培地」は、制限された窒素培地でない培地を指す。一つの実施態様においては、「窒素に富む培地」は、炭素の窒素に対する重量比(C:N)が<100、好ましくは≦80、より好ましくは25~80である培地を指す。
【0076】
一つの実施態様においては、工程d)において使用する前記培地は、窒素に富む培地である。一つの実施態様においては、工程d)において使用する前記培地はさらに、窒素源を、好ましくはペプトン、トリプトンまたは他のペプチド加水分解物などの、タンパク質加水分解物の形態で含み、ここで、好ましくは、前記ペプチド加水分解物は、動物組織、植物組織および/または前記油性微生物の成分を含む。一つの実施態様においては、窒素源は、ペプトン、トリプトンまたは他のペプチド加水分解物などの、タンパク質加水分解物から選択され、ここで、好ましくは、前記ペプチド加水分解物は、動物組織、植物組織および/または前記油性微生物の成分を含む。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、そのような追加の窒素源の存在が、脂質およびバイオマスの製造を、全体で増加させることを可能にすると考える。
【0077】
一つの実施態様においては、前記有機酸は、酢酸、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸、吉草酸、アクリル酸、クロトン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシ酪酸、乳酸およびそのような酸のそれぞれの塩(複数可)、並びに前述の有機酸のいずれかの混合物を含む群から選択される。好ましくは、前記有機酸は、酢酸または酢酸塩である。一つの実施態様においては、前記有機酸は、酢酸または酢酸塩のみであり;別の実施態様においては、前記有機酸は、酢酸または酢酸塩の、他の前述の有機酸のいずれかとの組合せである。本明細書において使用する用語「有機酸」は、そのプロトン化の程度に関係なく、それぞれの有機酸を包含することを意味する、すなわち、例えばそれが、それぞれのpKa値(複数可)に依存して、それぞれプロトン化されるまたは脱プロトン化されるpHの水溶液中であるときの、そのプロトン化状態(複数可)並びに脱プロトン化状態(複数可)の前記酸を包含することを意味することに留意すべきである。本明細書において使用する用語「有機酸」はまた、有機酸の塩(複数可)、例えばそのような有機酸のそれぞれの金属塩を包含することを意味する。そのような金属塩の例は、それぞれの有機酸のアルカリ塩またはアルカリ土類塩である。塩は、それらの解離した形態または非解離の形態であり得る。本明細書において使用する用語「有機酸の混合物」は、それらのそれぞれの酸形態の有機酸の混合物、すなわち他の有機酸との混合物、それらの酸形態の有機酸のそれらの塩形態の他の有機酸との混合物、および有機酸の塩の他の有機酸の塩との混合物を包含することを意味する。本明細書において使用する用語「有機酸」は、脂肪酸またはアミノ酸を包含しないこともまた、留意すべきである。本明細書において使用する句「炭素源および有機酸」は、「炭素源」が「有機酸」と異なることを暗示する。それゆえ、2つの実体は、化学的に異なる。一つの実施態様においては、前記有機酸の濃度は、20mMから200mM、好ましくは30mMから100mMの範囲である。一つの実施態様においては、工程d)において使用する培地は、有機酸が補充される。
【0078】
一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、10℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、pH3からpH9の範囲のpHで実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、1日から12日間、好ましくは2日から10日間実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、pO2>20%で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、撹拌(agitation)下、好ましくは20rpmから1000rpm、例えば50rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。例えば、パドルスターラーを、使用し得る。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、10℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で、pH3からpH9の範囲のpHで、1日から12日間、好ましくは2日から10日間、pO2>20%で、撹拌(agitation)下、好ましくは20rpmから1000rpm、例えば50rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、前記第2の微生物を、1日から12日間、好ましくは2日から10日間、10℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で、pH3からpH9の範囲のpHで、および/または溶存酸素(pO2)pO2>20%で、好ましくは酵素的に処理された第1の基質またはその成分、酵素的に処理された第2の基質またはその成分、YPD、YNB、サブローブイヨン、およびそれらの任意の組合せのいずれかを含む培地中で培養することを含む。
【0079】
一つの実施態様においては、該方法は、総脂肪酸含有量に対して>60%の不飽和脂肪酸の含有量および/または<10℃、例えば、例えばおおよそ5℃などの、9℃から5℃の範囲の流動点を有する脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度10℃~20℃、溶存酸素含有量10%~30%および/またはクロトン酸の添加(総有機酸の0%~10%)、並びにそれによって、前記油性微生物が、<10℃、例えば、例えば約5℃などの、9℃から5℃の範囲の「流動点」、および/または総脂肪酸含有量に対して>60%の不飽和脂肪酸含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にする。本明細書において使用する「流動点」は典型的には、以下の規格:DIN51597、DIN EN23015:1994-05、DIN ISO3015:1982-10、DIN ISO3016:1982-10、ASTM D97、ASTM D5985のいずれかに従って、好ましくはDIN ISO3016を使用して決定する。
【0080】
微生物油の製造のための微生物の培養中に、微生物油の製造についての脂質生産性またはバイオマス生産性のいずれかにおいて相殺がある。従来、脂質は、非制限条件下でのバイオマス製造についての第1の工程、およびその後のバイオマスの増殖が停止し脂質のみが蓄積される栄養素制限相を含む2相の系で生成される。これらの条件下では、脂質生産性は、70重量/重量%を超えない。驚くべきことに、この発明は、バイオマス増殖および脂質蓄積を同時に達成することができる、完全に新しい脂質製造経路を開示する。これが、85重量/重量%を超える脂質を含有する200g L-1バイオマスを超えるバイオマスおよび脂質収率についてのオプションを提供する。
【0081】
一つの実施態様においては、油性微生物は、前記酵素的に処理された基質を含み、任意にさらに炭素源、窒素源、有機酸、微量金属、および/またはビタミンのいずれかを含む培地中で増殖させる。前記培地がある、pHに依存して、有機酸は、解離し/脱プロトン化し、その場合においては、それは、塩/カルボン酸アニオンの形態として存在し、またはそれは、非解離であり、その場合においては、それは、そのプロトン化された形態で有機酸として存在する。一つの実施態様においては、前記油性微生物が工程d)において増殖する培地は、前記酵素的に処理された基質を含む。一つの実施態様においては、用語「培養すること」および「増殖させること」は、同義的に使用される。一つの実施態様においては、「酵素的に処理された基質」に言及するとき、そのような用語は、「酵素的に処理された第1の基質」および/または「酵素的に処理された第2の基質」に関する。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、有機酸、例えば酢酸/酢酸塩の存在が、脂質生産性をよりさらに高めることを可能にし、一方、炭素源の存在は、総バイオマスにおける増加を可能にすると考える。上記で定義した、「炭素源」および有機酸は、互いに異なる2つの異なる実体であることに留意すべきである。
【0082】
一つの実施態様においては、用語「溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしの、前記培養された第2の微生物の純粋に酵素的な処理」は、a)1つ若しくはいくつかの溶媒を使用する抽出が何らないまたはb)1つ若しくはいくつかの(適切な)化学試薬を使用する解乳化が何らないまたはc)a)およびb)のいずれもない、前記油性微生物の酵素的な処理を指すことを意味する。好ましくは、そのような用語は、抽出溶媒への曝露が何らなく、解乳化化学試薬への曝露が何らない酵素的な処理を指すことを意味する。該用語はまた、前記増殖した油性微生物のいかなる他の前処理の実施も除外することを意味する。本発明の実施態様においては、「純粋に酵素的な処理」は、増殖した油性微生物のいかなる前処理の実施も除外し、その前処理は、化学的(増殖した油性微生物が曝露されるであろう1つまたはいくつかの化学試薬を使用する)または物理的(物理的状態、例えば温度、圧力、超音波、光、電磁放射線での照射等の変化などの)であり得ることに留意すべきである。
【0083】
一つの実施態様においては、前記増殖した油性微生物の前記純粋に酵素的な処理は、前記微生物の加水分解酵素での、単独での、またはプロテアーゼと組み合わせた/その後にプロテアーゼが続く処理である。一つの実施態様においては、前記加水分解酵素は、真菌、好ましくは糸状菌、より好ましくはTrichoderma、Aspergillus、Penicillium、AureobasiliumおよびFusarium属からの真菌から取得した。一つの実施態様においては、前記加水分解酵素は、誘導系の存在下で培養した真菌から取得し、ここで、好ましくは、前記誘導系は、前記油性微生物の成分、より好ましくは、前記油性微生物の細胞壁の溶解を可能にする加水分解酵素調製物を取得するために、微生物脂質を製造するために使用する前記油性微生物の1つまたはいくつかの細胞壁成分である。一つの実施態様においては、前記誘導系は、工程e)および/またはf)中に製造される前記油性微生物の前記残留バイオマスであるか、または前記残留バイオマスの一部若しくは成分である。
【0084】
一つの実施態様においては、前記真菌から取得される前記加水分解酵素は、(本発明の工程d)~f)を実施することとは)別々に調製し、前記真菌を培養することから直接取得される液体調製物として、または工程e)において使用する溶液中で引き続き再構成される凍結乾燥調製物として、工程e)において使用する。一つの実施態様においては、前記加水分解酵素は、例えば、セルラーゼ、キシログルカナーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、およびラミナリナーゼ酵素活性から選択されるが、これらに限定されない、1つまたはいくつかの活性を含有する。一つの実施態様においては、前記プロテアーゼは、存在する場合は、Aspergillus sp.、Streptomyces sp.またはBacillus sp.によって製造されるプロテアーゼから選択される。本発明による一つの実施態様においては、「純粋に酵素的な処理」はさらに、前記微生物のプロテアーゼでの処理を含む(しかしなお、前処理、または溶媒ベースの抽出若しくは化学薬品ベースの解乳化を除く)。そのようなプロテアーゼは、使用する場合はおよび使用するとき、前述の加水分解酵素を使用する処理に続くか、またはそれと組み合わせることに留意すべきである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、プロテアーゼを含む処理が、製造される脂質のそれと関連するいかなるタンパク質からの分離をも可能にし、従って脂質の放出を助けると考える。一つの実施態様においては、プロテアーゼは、Aspergillus sp.、Streptomyces sp.またはBacillus spによって製造されるプロテアーゼの群から選択される。
【0085】
一つの実施態様においては、工程e)中、存在する場合は、「溶媒ベースの抽出なしの前記培養された第2の微生物の純粋に酵素的な処理」は、前記微生物の加水分解酵素での処理である。好ましくは、そのような加水分解酵素は、別の微生物から、好ましくは真菌から、より好ましくは糸状菌から取得する。一つの実施態様においては、真菌は、Trichoderma、Aspergillus、Penicillium、Aureobasilliumおよびusarium属から選択される。より好ましい実施態様においては、糸状菌は、これが油性微生物の細胞壁の溶解を可能にする特に効率的な加水分解酵素を製造することが証明されているため、Trichoderma reeseiである。一つの実施態様においては、前記加水分解酵素は、真菌、好ましくは誘導系の存在下で培養した糸状菌から取得し、ここで、好ましくは、前記誘導系は、前記油性微生物の成分、好ましくは前記油性微生物の細胞壁の溶解を可能にする加水分解酵素調製物を取得するために、微生物脂質を製造するために使用する、前記油性微生物の1つまたはいくつかの細胞壁成分である。一つの実施態様においては、前記誘導系は、工程e)およびf)中に製造され得る前記残留バイオマス、またはその成分である。好ましくは、そのような加水分解酵素は、前記糸状菌を前記油性微生物の細胞壁断片の存在下で培養することによって製造する。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、糸状菌、例えばT. reeseiの、前記油性微生物のそのような細胞壁成分の存在への曝露が、そのような糸状菌が油性微生物の細胞壁の溶解を完了するために適した酵素(複数可)を正確に製造することを可能にすると考える。特に好ましい実施態様においては、Trichoderma属からの糸状菌、例えばTrichoderma reeseiを使用し、特に好ましい実施態様においては、ATCC寄託番号(複数可)56765および13631を有する突然変異体などの、Trichoderma reeseiの突然変異体を使用する。いったん糸状菌を培養すると、結果として生じる培養物はさらに、濃縮するなど加工し得、菌自身のバイオマスを取り除き、結果として生じる上清は、そのような形態で使用し得、またはそれは、凍結乾燥して、保存および適切な水溶液中でのこれに続く再構成のためにに保ち得る。再び、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、そのように製造される加水分解酵素が、さまざまな酵素活性、例えばセルラーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼおよびラミナリナーゼ、および、あるいは、他のものの組合せを表し得ると考える。
【0086】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する「これに続く回収に適した」は、例えば、製造される微生物脂質を、培養容器からのこれに続く回収のためにアクセス可能であるなど、これに続く回収のためにアクセス可能であるようにすることによって、微生物脂質の回収を容易にすることに関する。例えば、油性微生物の純粋に酵素的な処理を実施することにより、微生物脂質は、これに続く回収のためにアクセス可能であるようになる。一つの実施態様においては、用語「適した(amenable)」および「アクセス可能である」は、互換的に使用される。
【0087】
一つの実施態様においては、溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに油性微生物の純粋に酵素的な処理を実施することにより、微生物脂質は、これに続く回収すること、例えば密度に基づく分離法によるものに適したものとされる。一つの実施態様においては、前記密度に基づく分離法は、自然重力に基づく分離、重力補助相分離、および遠心分離から選択され、ここで、前記自然重力に基づく分離、重力補助相分離、および遠心分離のそれぞれは、単独でまたはデカンテーション、吸引若しくは他の機械的回収法と組み合わせて実施する。
【0088】
酵素的に処理された基質を含む適切な培地中での油性微生物の増殖は、前記油性微生物が微生物脂質を製造することを可能にする。しかしながら、典型的には、これらの微生物脂質は、依然として油性微生物の細胞内に含有されており、これに続く回収のためには、従って利用可能であるようにする必要がある。本発明の実施態様は従って、製造される微生物脂質を培養容器からのこれに続く回収に適したまたはアクセス可能であるようにする、増殖した油性微生物の酵素的な処理を提供する。本発明による方法は、いかなる前処理工程、例えば化学的前処理工程、またはこれに続く若しくは同時に起こる溶媒を使用する前記脂質の抽出にも頼らなければならないことのない、増殖した油性微生物の純粋に酵素的な処理を含むことに留意すべきである。そのような化学的前処理工程またはこれに続く若しくは同時に起こる抽出工程の例は、溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化である。そのような除かれる前処理工程はしかしながらまた、温度変化、圧力変化、遠心分離、超音波処理、照射などの物理的工程であり得る。本明細書において使用する用語「化学薬品ベースの解乳化」は、増殖したバイオマスの、(形成したかもしれない)任意のエマルジョンの破壊を可能にするような解乳化剤への曝露を指す。
【0089】
本発明の実施態様によれば、該方法は、溶媒ベースの抽出、化学薬品ベースの解乳化、または温度ショック、化学処理若しくは高圧均質化若しくは超音波均質化などの、他の処理を含まない。これらは潜在的に、コストまたは方法の危険特性を増やすであろうし、本発明によって避けられる。溶媒ベースの抽出および化学薬品ベースの解乳化のそのような不在の利点は、下流の製品、特に微生物油が、食品へのさらなる加工に適していることである。特に、本発明の方法で製造される微生物油は、例えば微生物油における溶媒および/または化学薬品残渣の不在のため、食品を調製するために直接使用することができる。本発明者らは驚くべきことに、そのような過酷な処理工程は厳密には必要ではないことを見出した。
【0090】
本発明による実施態様においては、製造される微生物脂質は、密度に基づく分離法を使用して回収する。その最も単純な形態においては、そのような密度に基づく分離法は、油性微生物の培養物を単に一定期間放置し、その結果として、異なる密度および/または水中での溶解度のため脂質相が水相から分離するプロセスであり得る。これは、これに続く脂質相の培養物からのデカンテーション、吸引または他の機械的除去と組み合わせ得る。他の実施態様においては、分離は、単独でのまたはこれに続く機械的除去若しくは脂質相、例えばデカンテーション若しくは吸引と組み合わせた、重力補助相分離によって、遠心分離によって起こり得る。
【0091】
一つの実施態様においては、前記方法は、溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしに、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理を実施する工程e)を含み、ここで、前記培養された第2の微生物の前記純粋に酵素的な処理は、前記微生物の加水分解酵素での、単独での、またはプロテアーゼと組み合わせた/その後にプロテアーゼが続く処理である。一つの実施態様においては、工程d)およびe)は、同じ反応容器内で実施する。これはまた、本明細書においては「ワンポット法」または「ワンポットプロセス」と呼ばれるものである。この実施態様においては、本発明による方法は、微生物脂質、特に食料グレードの微生物脂質の製造のためのワンポットプロセスと考え得る。
【0092】
一つの実施態様においては、工程e)および/またはf)は、脂質相、および前記油性微生物の加水分解物をもたらす。いくつかの場合においては、工程e)および/またはf)はさらにまた、残留バイオマスが前記脂質相および前記加水分解物とは異なる前記油性微生物の該残留バイオマスをもたらし得る。一つの実施態様においては、前記方法は、工程d)~f)の反復実施を含み、およびここで、工程e)および/またはf)から結果として生じる前記油性微生物の前記加水分解物は、工程d)を実施するために再使用/リサイクルする。そのような実施態様においては、工程e)および/またはf)から結果として生じる微生物加水分解物は、工程d)において使用する培地に再供給し、追加の炭素源(酵素的に処理された基質中に存在する炭素源に加えて)として作用し得る。工程d)~f)において副産物を再使用/リサイクルする、例えば工程e)および/またはf)から結果として生じる生成物を工程d)において再使用/リサイクルする実施態様は、廃棄物の発生を避ける。そのような実施態様は従ってまた、本明細書においては、ときどき「廃棄物のないプロセス」または「廃棄物のない方法」と呼び得る。一つの実施態様においては、工程d)~f)は、2回からn回実施し、ここで、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50から選択される、整数である。一つの実施態様においては、工程d)~f)は、2~3回実施する。反復リサイクルは、油性微生物の加水分解物などの、プロセスから結果として生じる生成物が、そのような油性微生物を増殖させるための出発培地として再使用されるため、関連するさまざまな培地を効率的に使用することを可能にし、過剰な廃棄物の製造を避ける。
【0093】
一つの実施態様においては、本発明の方法はさらに、例えば遠心分離、濾過、蒸留、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、沈降、凝固、浮遊、およびそれらの組合せのいずれかを使用して、好ましくは遠心分離、濾過、蒸留、親有機性浸透蒸発、固相微細抽出、およびそれらの組合せのいずれかを使用して、前記タンパク質バイオマスおよび/または前記芳香化合物を回収する1つ以上の工程を含む。一つの実施態様においては、本発明の方法は、流加様式、半連続様式または連続様式で実施し、ここで任意に、前記方法は、有機酸の反復添加を含む。
【0094】
一つの実施態様においては、本発明の方法は、
- 好ましくは前記基質(複数可)を製粉すること、混合すること、細断すること、および/若しくは篩い分けすることによる、機械的前処理;
- 前記基質(複数可)を溶剤中で、好ましくは水中で溶解すること;
- 好ましくは酸、例えば硫酸を使用する、前記基質(複数可)の化学的加水分解;
例えば酸、好ましくは硫酸を、0.1~10体積%の範囲の濃度で20℃~260℃、好ましくは80℃から140℃の範囲の温度で、1秒から24時間、好ましくは30分から3時間の期間、使用する
- 好ましくは50℃から200℃の温度での10分から240分間の、より好ましくは80℃から170℃の温度での30分から90分間の、前記基質(複数可)の熱前処理;
- 前記基質(複数可)の発酵前処理、好ましくは嫌気性発酵;並びに/または
- 1つ以上の酵素、任意に市販の酵素を使用する、前記基質(複数可)の酵素的前処理であって、
ここで、前記1つ以上の酵素は、プロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、サブチリシンA、並びにペプシン;並びに加水分解酵素、好ましくはグリコシド加水分解酵素、より好ましくはα-アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、キシログルカーゼ、ガラクタナーゼ、アラビナーゼ、マンナナーゼ、リパーゼ、グルコアミラーゼ、およびペクチナーゼから選択されるグリコシド加水分解酵素である、酵素的前処理
によって、前記第1の基質を前処理するおよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質を前処理する工程を含む。
【0095】
一つの実施態様においては、前記第1の基質および/または第2の基質は、前記機械的前処理、前記溶解、前記化学的加水分解、前記熱前処理、前記発酵前処理、および前記酵素的前処理のいずれかの組合せを使用して前処理する。一つの実施態様においては、前記第1の基質を前処理するそのような工程は、存在する場合は、該第1の基質を用いて前記第1の微生物を培養することの前に実施する。一つの実施態様においては、前記機械的前処理、前記溶解、前記化学的加水分解、前記熱前処理、前記発酵前処理、前記酵素的前処理、またはそれらの任意の組合せのいずれかを使用して前記第2の基質を前処理する前記工程は、第2の基質を工程c)の前記少なくとも1つの酵素で前記前処理することに加えたさらなる前処理である。例えば、前記機械的前処理、前記溶解、前記化学的加水分解、前記熱前処理、前記発酵前処理、前記酵素的前処理、またはそれらの任意の組合せのいずれかを使用して前記第2の基質を前処理する前記工程は、第2の基質を工程c)の前記少なくとも1つの酵素で前記前処理することの前におよび/またはそれに引き続き実施する。一つの実施態様においては、前記第2の基質を前処理するそのような工程は、存在する場合は、前記第2の微生物を該第2の基質と培養することの前に、好ましくは該第2の基質を工程c)の前記少なくとも1つの酵素で前処理することの前に実施する。一つの実施態様においては、前記発酵前処理は、嫌気性微生物を使用する嫌気性発酵である。一つの実施態様においては、前記発酵前処理は、pH2.5からpH5.5、好ましくはpH3からpH4の範囲のpHで、20℃から50℃、好ましくは25℃から40℃の範囲の温度で、0~30%、好ましくは5~10%の範囲のpO2で、1日~5日、好ましくは1日~3日の間、および/または50rpmから500rpmの撹拌(agitation)での前記基質の処理を含む。
【0096】
一つの実施態様においては、前記第1の基質および/または第2の基質の前記前処理は、加水分解である酵素的前処理である。一つの実施態様においては、前記第1の基質および/または前記第2の基質を前処理する前記工程は、加水分解である酵素的前処理を含む。加水分解、例えば前記食料残渣(複数可)中に含有されるデンプンのは、2つの段階を含み得;第1の段階においては、α-アミラーゼを使用してデンプンを液化し、それによってデキストリンおよびグルコースを含む溶液を提供し;第2の段階においては、液化デンプンを、グルコアミラーゼに供する。一つの実施態様においては、前記第1の基質および/または前記第2の基質を前処理する前記工程は、α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼでの処理を含む酵素的前処理を含む。一つの実施態様においては、本発明の方法は、工程f)において回収する微生物脂質を精製する、例えば物理的精製によって精製する工程を含む。
【0097】
一つの実施態様においては、酵素、タンパク質バイオマス、微生物脂質、および/または芳香化合物を製造する第1の微生物または第2の微生物の能力はさらに、遺伝子組換え、例えば非標的または標的遺伝子改変による遺伝子組換えによって改善される。一つの実施態様においては、前記非標的遺伝子改変は、化学的誘導突然変異または放射線誘導突然変異を含む。一つの実施態様においては、前記放射線誘導突然変異は、UV、イオン化、ガンマ線、X線、および中性子線のいずれかを含む。一つの実施態様においては、前記標的遺伝子改変は、CRISPR-CASシステム、細菌形質転換、および/またはプラスミドベースの挿入を含む。
【0098】
一つの実施態様においては、本発明の方法は、微生物脂質を製造し、それを用いて食品を調製する方法であり、ここで、前記方法は、工程、例えば工程f)において回収する微生物脂質を含む食品、好ましくはベーカリー製品、例えばパン、ロールパン、ビスケット、マフィン、クッキー、若しくはケーキ;菓子製品、例えば小麦粉菓子若しくは砂糖菓子;乳製品、例えばアイスクリーム若しくはベビーミルク;スプレッド、例えばマーガリン、マヨネーズ、若しくはソフトチーズ;インスタント食料、例えばインスタントラーメン、ピザ、ピザ生地、若しくはソース;飲み物;ベジタリアン食料若しくはビーガン食料、例えば肉類似物および乳類似物;お菓子、例えばカカオフリーのチョコレート;並びに/またはチョコレート製品を調製する工程g)を含み;ここで、任意に、前記方法はさらに、工程、例えば前記食品の前記食料残渣(複数可)を前記第1の基質としておよび/または、工程c)が存在する場合は、前記第2の基質として使用することによって、前記食品の食料残渣(複数可)をリサイクルする工程h)を含む。一つの実施態様においては、該方法は、食料残渣の再循環のための方法であり、すなわち食料残渣(複数可)は、さらに食品に加工される、食料グレードの製品、例えば微生物油、タンパク質バイオマス、および/または芳香化合物に変換される。そのような食品の残渣(複数可)、例えば食料残渣は引き続き、本発明の方法を使用して食料グレードの製品に変換することができる。有利なことに、本発明の方法は、食物連鎖の効率および食物資源の使用を増加させる。本発明の方法および使用の利点は、食料残渣(複数可)および/または食料ロスが、そのような食料残渣(複数可)を微生物油および任意にタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物などの、食用原料に変換することによって減少されることである。一つの実施態様においては、微生物脂質などの製品の観点から「それを用いて」または「それから」食品を調製することに言及するとき、前記製品を含む食品を調製することを意味する。
【0099】
本発明の方法の利点は、微生物食料成分が食料グレードの成分であるため、製造される微生物食料成分、特に微生物脂質およびタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物が、前記微生物食料成分を含む食品を製造することを可能にすることである。例えば、パン残渣加水分解物の発酵によって製造される微生物脂質は、パン、プラリネ製造、アイスクリーム、インスタントラーメン、マーガリン、チョコレート、ピザ生地およびクッキー製造などの、製パン用途においてパーム油を置き換え得る。芳香化合物は、委員会実施規則(EU)No 872/2012に従って食料、好ましくは乳製品、および菓子製品に風味を付けるために使用することができる。本発明の方法で、好ましくは微生物脂質を製造する方法の副産物として製造されるタンパク質バイオマスは、ハンバーガーパティ、チリ、ナゲット、ミートソースおよびソーセージのような任意のミンチ肉または成型肉用途についての肉代替品として使用することができる。一つの実施態様においては、関与する成分の食料グレードの特性が、本発明の方法の全プロセス中に確保される。すなわち、本発明の方法は、食料資源の持続可能な使用を達成することを可能にし、食料廃棄物および食料ロスを低下させる。特に、本発明の方法は予期せぬことに、食料残渣(複数可)、好ましくは食料グレードの食料残渣(複数可)を使用して、微生物脂質、タンパク質バイオマス、および/または芳香化合物などの貴重な原料を製造することを可能にし、これらは引き続き、食料を製造するために使用することができ;そのように製造される食料からの残渣(複数可)は順番に、リサイクルし、さらなる食料を製造するために本発明の方法における基質として使用することができる。結論的には、有利なことに、本発明の方法は、サイクルとして使用することができる。
【0100】
本発明の方法のさらなる利点は、該方法が、第1の段階がバイオマス形成のための非限定的な条件下であり、第2の段階が新しい脂質製造誘導のための新しいトレンド制限条件下である、2段階プロセスにおいて油性微生物の培養を必要としないことである。その代わりに、本発明の方法は、脂質が直接蓄積される培養を可能にする。特に、前記酵素的に処理された第1の基質および/または前記酵素的に処理された第2の基質を含む培地を工程d)における前記第2の微生物に提供することによって、細胞内脂質の高い蓄積が、達成される。特に、前記培地を前記第2の微生物に提供することによって、高いタンパク質バイオマスおよび脂質収率が、達成される。例えば、乾燥細胞重量の84.9%の脂質収率が、達成された。さらに、乾燥真菌バイオマスの最大60%のタンパク質バイオマス収率が、達成された。有利なことに、栄養素制限の工程は、微生物油を前記油性微生物を用いて調製するためには必要とされない。本発明の方法のよりさらなる利点は、穏やかな下流の加工のみが必要とされ、例えば純粋に酵素的な処理を実施して、微生物脂質をこれに続く回収することに適したものにすることができ、すなわち危険な化学薬品が何ら関与せず;回収する微生物脂質がすなわち、危険な残留物を含まず食用であることである。
【0101】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「食品の製造における微生物脂質の使用」は、微生物脂質、好ましくは本発明による方法で取得される微生物脂質を含む食品を製造することに関する。一つの実施態様においては、食品の製造における微生物脂質の使用は、食品のレシピにおける脂肪(複数可)を前記微生物脂質によって置き換えることを含む。例えば、微生物脂質は、食料、例えばベーカリー製品中のパーム油などの脂肪を置き換え得る。一つの実施態様においては、食品の製造における微生物脂質の使用はさらに、タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物、好ましくは本発明の方法で取得されるタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を、前記食品の製造において使用することを含む。例えば、前記微生物脂質および前記タンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を含む食料を、提供し得る。一つの実施態様においては、用語「食品(foodstuff)」、「食品製品(food product)」、および「食料(food)」は、互換的に使用される。一つの実施態様においては、本発明の使用は、本明細書において定義する、微生物脂質を製造し、それらから食品を調製する方法を含む。一つの実施態様においては、本発明の使用は、食品の製造において、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法を使用して製造される微生物脂質を使用することを含む。
【0102】
一つの実施態様においては、本明細書において使用する用語「少なくとも5つ、好ましくは少なくとも6つ、より好ましくは少なくとも7つの酵素を含む組成物」は、酵素混合物に関する。一つの実施態様においては、前記組成物は、本発明の方法の工程b)を実施して取得することができる。一つの実施態様においては、本発明の方法の工程b)は、前記第1の微生物による前記組成物の製造をもたらす。一つの実施態様においては、組成物は、前記第1の基質に合わせて調整される。一つの実施態様においては、組成物は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;ラムノガラクツロナンリアーゼ;キシログルカナーゼ;ヘミセルラーゼ;アミログルコシダーゼ;ベータ-グルコシダーゼ;ペクチナーゼ;およびラミナリナーゼから選択される酵素を含む。好ましい実施態様においては、組成物は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼから選択される酵素を含む。一つの実施態様においては、組成物は、セルラーゼ;リケナーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;プロテアーゼ;ガラクタナーゼ;およびマンナナーゼから選択される;またはセルラーゼ;キシラナーゼ;アラビナナーゼ;アミラーゼ、例えばα-アミラーゼ;限界デキストリナーゼ;プルラナーゼ;ガラクタナーゼ;マンナナーゼ;ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ;およびラムノガラクツロナンリアーゼから選択される酵素を含む。好ましい実施態様においては、組成物、例えばパン残渣を第1の基質として使用して本発明の方法の工程b)において製造される組成物は、セルラーゼ;アミラーゼ;ヘミセルラーゼ;限界デキストリナーゼ例えば麦芽限界デキストリナーゼ;およびペクチナーゼから選択される酵素を含む。一つの実施態様においては、本発明の組成物は、セルラーゼ;アミラーゼ;ヘミセルラーゼ;限界デキストリナーゼ例えば麦芽限界デキストリナーゼ;およびペクチナーゼを含むかまたはそれらからなる。一つの実施態様においては、前記組成物は、食料グレードの組成物である。
【0103】
一つの実施態様においては、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程b)において製造され、ここで、好ましくは、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程b)において製造される前記少なくとも1つの酵素を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程b)において製造可能であり、ここで、好ましくは、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程b)において製造可能な前記少なくとも1つの酵素を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程b)において製造される前記少なくとも1つの酵素は、本発明の組成物を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、前記組成物は、微生物脂質を製造する方法の工程b)における前記第1の基質が食料グレードの食料残渣(複数可)である場合は、食料グレードの組成物である。
【0104】
一つの実施態様においては、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得され、ここで、好ましくは、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得される前記少なくとも1つの酵素を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得可能であり、ここで、好ましくは、前記組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得可能な前記少なくとも1つの酵素を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得される前記少なくとも1つの酵素は、本発明の組成物を含むかまたはそれからなる。一つの実施態様においては、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の工程c)において取得される前記少なくとも1つの酵素は、本発明の組成物である。一つの実施態様においては、本発明の組成物は、本明細書において定義する微生物脂質を製造する方法の副産物である。
【0105】
一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、18℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、pH3からpH9の範囲のpHで実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、1日から12日間、好ましくは3日から10日間実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、pO2>20%で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、撹拌(agitation)下で、好ましくは50rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、10℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で、pH3からpH9の範囲のpHで、1日から12日間、好ましくは2日から10日間、pO2>20%で、撹拌(agitation)下で、好ましくは50rpmから800rpmの範囲の回転速度での撹拌(stirring)下で実施する。一つの実施態様においては、工程d)の第2の微生物を前記培養することは、前記第2の微生物を、2日から12日間、好ましくは3日から10日間、18℃から37℃、好ましくは18℃から33℃の範囲の温度で、pH3からpH8の範囲のpHで、および/または溶存酸素(pO2)pO2>30%で培養することを含む。
【0106】
一つの実施態様においては、該方法は特に、総脂肪酸含有量に対して>60%の不飽和脂肪酸の含有量および/または<10℃、例えば、例えばおおよそ5℃などの、9℃から5℃の範囲の流動点を有する脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度10℃~20℃、溶存酸素含有量10%~30%および/またはクロトン酸の添加(例えば総有機酸の0%~10%)、並びにそれによって、前記油性微生物が、<10℃、例えば、例えば約5℃などの、9℃から5℃の範囲の「流動点」、および/または総脂肪酸含有量に対して>60%の不飽和脂肪酸含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にする。本明細書において使用する「流動点」は典型的には、以下の規格:DIN51597、DIN EN23015:1994-05、DIN ISO3015:1982-10、DIN ISO3016:1982-10、ASTM D97、ASTM D5985のいずれかに従って、好ましくはDIN ISO3016を使用して決定する。
【0107】
一つの実施態様においては、該方法は、総脂肪酸含有量に対して20%~65%の飽和脂肪酸の含有量および/または総トリグリセリド含有量に対して40%~85%のトリグリセリドPOP C18:1-C16:0)、POS(C16:0-C18:1-C18:0)、およびSOS(C18:0-C18:1-C18:0)含有量を有する脂質を製造するのに適している。一つの実施態様においては、該方法は、カカオバター様微生物油と同等である脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度20℃~33℃、溶存酸素含有量10%~30%、pH5~8、並びに/または酪酸およびプロピオン酸の添加(例えば総有機酸の1%~60%);任意にさらに、脂肪酸シンターゼ、デルタ9デサチュラーゼ、および/またはデルタ12デサチュラーゼの遺伝子改変を含むこと;並びにそれによって、前記油性微生物が、総トリグリセリド含有量に対して40%~85%のトリグリセリドPOP、POS、およびSOS含有量の高い含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にすること。
【0108】
一つの実施態様においては、該方法は、総脂肪酸含有量に対して20%~55%の飽和脂肪酸の含有量および/または総トリグリセリド含有量に対して1%~20%のトリグリセリドPPP、PPS、PSS、およびSSS含有量を有する脂質を製造するのに適している。一つの実施態様においては、該方法は、パームステアリン様微生物油および/またはパーム様微生物油と同等である脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度22℃~33℃、溶存酸素含有量>10%~40%、pH5~8、酪酸およびプロピオン酸の添加(例えば総有機酸の1%~50%);任意にさらに、脂肪酸シンターゼ、デルタ9デサチュラーゼ、および/またはデルタ12デサチュラーゼのいずれかの遺伝子改変を含むこと;並びにそれによって、前記油性微生物が、総トリグリセリド含有量に対して1%~20%のトリグリセリドPPP、PPS、PSS、およびSSS含有量の含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にすること。
【0109】
一つの実施態様においては、該方法は、総脂肪酸含有量に対して20%~55%の飽和脂肪酸の含有量および/または総トリグリセリド含有量に対して1%~60%の脂肪酸C10、C12、および/またはC14含有量を有する脂質を製造するのに適している。一つの実施態様においては、該方法は、パーム核油様微生物油と同等である脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度25℃~30℃、溶存酸素含有量>30%、pH6~8;任意にさらに、脂肪酸シンターゼ、チオエステラーゼ、デルタ9デサチュラーゼ、および/またはデルタ12デサチュラーゼのいずれかの遺伝子改変を含むこと;並びにそれによって、前記油性微生物が、総トリグリセリド含有量に対して1%~20%のトリグリセリドPPP、PPS、PSS、およびSSS含有量の含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にすること。
【0110】
一つの実施態様においては、該方法は、総脂肪酸含有量に対して10%~45%のポリ不飽和脂肪酸の含有量並びに/または総脂肪酸含有量に対して10%~45%のα-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、および/若しくはドコサペンタエン酸(DPA)の脂肪酸含有量を有する脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度15℃~28℃、溶存酸素含有量>40%、pH6~8;任意にさらに、脂肪酸シンターゼ、チオエステラーゼ、デルタ4、5、6、8、9、12、および/若しくは15デサチュラーゼ、並びに/またはデルタ5、6、および/若しくは9エロンガーゼのいずれかの遺伝子改変を含むこと;並びにそれによって、前記油性微生物が、総脂肪酸含有量に対して10%~45%のα-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、および/若しくはドコサペンタエン酸(DPA)の脂肪酸含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にすること。
【0111】
一つの実施態様においては、該方法は特に、総脂肪酸含有量に対して>50%の不飽和脂肪酸の含有量および/または総トリグリセリド含有量に対して50%のトリグリセリドPOO、OOS、およびOOO含有量を有する脂質を製造するのに適している。一つの実施態様においては、該方法は、パームオレイン油様微生物油、ヒマワリ油様微生物油、菜種油様微生物油と同等である脂質を製造するのに適している。これは、以下のパラメータを工程d)について選択する場合は、特にそうである:
前記油性微生物を、酵素的に処理された基質、例えば酵素的に処理された第1の基質および/または酵素的に処理された第2の基質を含む培地中で、以下の条件下で増殖させること:温度10℃~30℃、溶存酸素含有量10%~30%および/またはクロトン酸の添加(例えば総有機酸の0%~10%)、並びにそれによって、前記油性微生物が、<10℃、例えば、例えば約5℃などの、9℃から5℃の範囲の「流動点」、および/または総脂肪酸含有量に対して>60%の不飽和脂肪酸含有量によって特徴付けられる、微生物脂質を製造することを可能にすること。
【0112】
本明細書において使用する用語「[本]発明の」、「本発明による(in accordance with the invention)」、「本発明による(according to the invention)」等は、本明細書において記載するおよび/または請求する本発明の全ての態様および実施態様を指すことを意味する。
【0113】
本明細書において使用する用語「含むこと(comprising)」は、「含むこと(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含するとして解釈すべきであり、両方の意味を具体的に意図し、両方の意味がそれゆえ本発明による個別に開示する実施態様である。本明細書において使用する場合は、「および/または」は、他方の有無にかかわらない、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として取られるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、まさにそれぞれが個別に本明細書において記載されているかのように、(i)A、(ii)B並びに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示として取られるべきである。本発明の文脈において、用語「約」および「おおよそ」は、当業者が当該特徴の技術的効果を依然として確実にするように理解するであろう精度の間隔を示す。該用語は典型的には、示す数値からの±20%、±15%、±10%、および例えば±5%での偏差を示す。当業者によって認識されるであろうように、所与の技術的効果についての数値についての具体的なそのような偏差は、技術的効果の性質に依存するであろう。例えば、自然のまたは生物学的な技術的効果は一般に、人工のまたは工学的な技術的効果についてのものより大きなそのような偏差を有し得る。不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」を単数名詞を指すときに使用する場合は、これは、他に何か具体的に述べない限り、その名詞の複数形を含む。
【図面の簡単な説明】
【0114】
本発明を次にさらに、以下の図を参照して説明する。
以下の図の説明において言及する全ての方法は、実施例において詳細に説明するように行った。
【
図1】
図1は、食用微生物脂質を製造する持続可能な方法である本発明の方法の概略フローチャートを示す。
【
図2】
図2は、本発明の方法の流れ図を示す。第1の基質、特に食料残渣(複数可)は、第1の微生物についての基質として使用する。第1の微生物は、前記第1の基質を消化するための酵素混合物を製造し(前記酵素混合物は、酵素的に処理された第1の基質を製造する)、任意にさらにタンパク質バイオマスおよび/または芳香化合物を製造する。任意に、第1の微生物は、酵素(複数可)、タンパク質、および/または芳香化合物を製造する微細藻類と共培養することができる。酵素的に処理された第1の基質は、微生物油を製造する第2の微生物を培養するための増殖培地としてまたはその中で使用することができる。あるいはまたはさらに、酵素混合物は、好ましくは第1の基質と同じタイプである、第2の基質を酵素的に処理するために使用し、それによって、微生物油を製造する第2の微生物を培養するための増殖培地としてまたはその中で使用することができる酵素的に処理された第2の基質を取得する。酵素的に処理された第1の基質および酵素的に処理された第2の基質はまた、組み合わせて、前記第2の微生物についての増殖培地を提供することができる。
【
図3】
図3は、本発明の方法の一実施態様の流れ図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の方法の一実施態様の流れ図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の方法の一実施態様の流れ図を示す。
【実施例】
【0115】
以下において、実施例を参照するが、これらは、例示するために与えられ、本発明を限定するものではない。
【0116】
実施例1:原料の選択および組成分析-パン残渣
第1の基質および/または本発明の微生物脂質を製造する方法において使用する基質として使用することができる例示的な食料残渣(複数可)は、パン残渣などの、ベーカリー製品食料残渣(複数可)である。今日、残留パンは一般的に、パン製造用に粉砕することによりパンの食事を得るためにまたは動物の飼料として業界において使用される。あるいは、以下の実施例は、微生物発酵のための供給原料としてのパン屋が供給するパン残渣の選択およびこの原料の組成分析についての例示的なプロセスを説明する。新鮮なパン残渣は、生物学的劣化を避け、食料グレードを保つために収集して処理し、これは、頻繁な残渣集荷(例えば、残渣が販売不可能と決定された後の同じ日の)、細かくスライスしたパンをベーキングオーブン中で乾燥させること(例えばさらに一晩加熱することなしの開始温度160℃)および引き続き古いパンミルで4mmの粒子に粉砕することの工程を含む。これらのパン粉は、室温で最長2週間保存するかまたは-20℃で最長3ヶ月冷凍する。パン残渣は、タンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラル、およびビタミンなどの、栄養素が豊富であるため(表1および2を参照)、パン残渣は、本発明の微生物脂質を製造する方法において使用する基質として高度に適している。
【0117】
【0118】
【0119】
実施例2:誘導系としてのパン残渣を用いる真菌の培養を介した酵素溶液の製造-Aspergillus
この実験においては、本発明者らは、Aspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535および単一培地成分としてのパン残渣を用いる浸漬発酵を介した、例示的な酵素混合物、例えば酵素溶液の製造を研究した。従って、実施例1において前記したように取得した約100gのパン粉を、5Lのバッフル付き三角フラスコ中で二重にddH2Oと混合して2Lの総容積(5重量/体積%)とした。121℃で20分間加圧滅菌器で処理することによるこれに続く滅菌の後、接種材料(Aspergillus niger van Tiegheim ATCC 10535の胞子懸濁液)を添加した。培養物を、ロータリーシェーカー中、100rpm、28℃でインキュベートした。毎日の目視検査は、培地が真菌細胞によって黒くなり、パン粉の液化が観察されたので、基質の良好な増殖および酵素的加水分解を示した。発酵を3週間継続して、真菌にストレスを与え、最大の加水分解酵素酵素分泌を誘導した。引き続き、濾紙を用いた液体培養物の濾過を適用して、栄養細胞(vegetable cells)を除去した。胞子は、最大75.600×g(Beckman Coulter Avanti JXN-26)での遠心分離、およびその後の0.2μmの孔径での、ボトルトップ濾過またはクロスフロー濾過によって除去した。10kDaクロスフロー濾過および緩衝液交換(再生セルロースから作製した膜を、以下のパラメータで使用した:入口圧力(P1)4bar、滞留圧力(P2)1bar、および濾過液は大気圧に開放されていた)を、その後、酵素混合物を濃縮し、豊富にし(enrich)、精製するために適用した。最終の酵素溶液は、約350mlであった。酵素混合物については最初に、寒天マトリックス中に埋め込まれた着色炭水化物ポリマーを使用する定性的な酵素活性のプレスクリーニングを進めた。適用された酵素溶液の周囲の変色の範囲および結果として生じる脱色ハローの直径は、このプレスクリーニング試験における基質の変換に相関する現在の酵素量および相対活性の尺度である。表3は、関連する酵素活性を有する基質の概要を与える。
【0120】
【0121】
酵素活性は、活性なし(「-」)、活性(「+」)、良好な活性(「++」)、高い活性(「+++」)、非常に高い活性(「+++」)からほとんど変換された基質(「高」)まで評価した。酵素スクリーニングの結果を、表4に示す。
【0122】
【0123】
酵素スクリーニングは、誘導系としてのパン残渣を用いる、予想される酵素について高い活性を示した。この事前スクリーニングの後、高い活性を有する酵素についての標的の定量的スクリーニングを、引き続き行うことができる。
【0124】
以下の方法は、α-アミラーゼの酵素活性を測定する方法として例示することができる。α-アミラーゼを可溶性デンプンのエンド-1,4-α-グルカン結合上に作用させて、デキストリンおよび還元糖(特にマルトース)の混合物を生成させる。溶解した3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)(2M NaOHの添加による)を、酒石酸カリウムナトリウム四水和物の存在下、95℃で生成した還元糖上に作用させて、3,5アミノニトロサリチル酸を生成させる。吸光度を540nmで測定し、3-アミノ-5-ニトロサリチル酸の量を検量線を使用することによって取得し、酵素活性を計算する。25℃およびpH6.9で1分間に可溶性デンプンから1μmolの還元糖を遊離する酵素の量を、1U(1ユニット)として定義する。
【0125】
以下の方法は、アミログルコシダーゼの酵素活性を測定する方法として例示することができる。アミログルコシダーゼをマルトースの1,4-α-グルカン結合上に作用させて、D-グルコースを生成させる。グルコースオキシダーゼを、酸素の存在下、基質としての生成したグルコース上に作用させて、過酸化水素を生成させる。ペルオキシダーゼを、アミノアンチピリンおよびフェノールの存在下、生成した過酸化水素上に作用させて、キノンイミン色素を生成させる。吸光度を500nmで測定し、キノンイミン色素の量を検量線を使用することによって取得し、酵素活性を計算する。25℃およびpH4.3で1分間に1μmolのマルトースを酸化する酵素の量を、1U(1ユニット)として定義する。
【0126】
以下の方法は、ヘミセルラーゼの酵素活性を測定する方法として例示することができる。ヘミセルラーゼをキシロース上に作用させて、還元糖を生成させる。溶解した3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)(2M NaOHの添加による)を、酒石酸カリウムナトリウム四水和物の存在下、95℃で生成した還元糖上に作用させて、3,5アミノニトロサリチル酸を生成させる。吸光度を540nmで測定し、3-アミノ-5-ニトロサリチル酸の量を検量線を使用することによって取得し、酵素活性を計算する。40℃およびpH4.5で1分間にキシロースから1μmolの還元糖を遊離する酵素の量を、1U(1ユニット)として定義する。
【0127】
以下の方法は、プロテアーゼの酵素活性を測定する方法として例示することができる。プロテアーゼをカゼイン上に作用させて、アミノ酸を生成させる。反応は、トリクロロ酢酸を添加することによって停止する。試験溶液を、引き続き0.45μmのポリエーテルスルホンシリンジフィルターを使用することによって濾過し、Folin & CiolcalteaのまたはFolinのフェノール試薬を、濾過後のアミノ酸上に作用させて、プロテアーゼの活性に直接関連しているであろう測定可能な色の変化を生成させる。吸光度を660nmで測定し、アミノ酸の量をチロシン検量線を使用することによって取得し、酵素活性を計算する。37℃およびpH8.0で1分間にカゼインから10μgのチロシンに相当するアミノ酸を製造する酵素の量を、1U(1ユニット)として定義する。
【0128】
以下の方法は、プロテアーゼの酵素活性を測定する方法として例示することができる。プロテアーゼをカゼイン上に作用させて、アミノ酸を生成させる。反応は、トリクロロ酢酸を添加することによって停止する。試験溶液を、引き続き0.45μmのポリエーテルスルホンシリンジフィルターを使用することによって濾過し、Folin & CiolcalteaのまたはFolinのフェノール試薬を、濾過後のアミノ酸上に作用させて、プロテアーゼの活性に直接関連しているであろう測定可能な色の変化を生成させる。吸光度を660nmで測定し、アミノ酸の量をチロシン検量線を使用することによって取得し、酵素活性を計算する。37℃およびpH8.0で1分間にカゼインから10μgのチロシンに相当するアミノ酸を製造する酵素の量を、1U(1ユニット)として定義する。表4に示すように、例示的な酵素混合物、すなわち本発明の例示的な組成物は、セルロース、リケナーゼ、キシラナーゼ、アラビナナーゼ、アミラーゼ例えばα-アミラーゼ、限界デキストリナーゼ、プルラナーゼ、プロテアーゼ、ガラクタナーゼ、およびマンナナーゼを含む。
【0129】
実施例3:誘導系としてのパン残渣を用いる真菌の培養を介した酵素溶液の製造-Ceratocystis
この実験において、本発明者らは、Ceratocystis paradoxa CBS 374.83および単一培地成分としてのパン残渣を用いる浸漬発酵を介した酵素溶液の製造を研究した。従って、培養および下流の加工は、実施例2において記載するように行った。最終の酵素溶液は、約30mlであった。実施例2において記載するように進めた酵素プレスクリーニングの結果を、表5に示す。
【0130】
【0131】
酵素スクリーニングは、誘導系としてのパン残渣を用いる、予想される酵素について高い活性を示した。高い活性を有する酵素の標的の定量的スクリーニングについての方法の例を、実施例2に与える。表5に示すように、例示的な酵素混合物、すなわち本発明の例示的な組成物は、セルラーゼ、キシラナーゼ、アラビナナーゼ、アミラーゼ例えばα-アミラーゼ、限界デキストリナーゼ、プルラナーゼ、ガラクタナーゼ、マンナナーゼ、ラムノガラクツロナンヒドロラーゼ、およびラムノガラクツロナンリアーゼを含む。
【0132】
実施例4:食料残渣の加水分解-パン
実施例1において記載したパン残渣中に含有される糖類、タンパク質および他の栄養素は、発酵に適している。微生物は、それを微生物油などの利益になる製品、食品産業にとって有用な製品に変換する。パン残渣としての基質の前処理を発酵前に適用して、微生物にとって容易にアクセス可能な栄養素を得ることができる。典型的な前処理方法の一つは、酵素的加水分解である。パン残渣は、高い濃度のデンプン(乾物で70%超)およびタンパク質(乾物で最大14%)を含有し、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびプロテアーゼでの処理は容易に、微生物の増殖について利用可能な化合物の放出につながる。パンの乾燥重量の主成分としての含有されるデンプンの加水分解は、2つの段階を含む。第1の段階においては、α-アミラーゼ酵素を使用してデンプンを液化し、デストリンの生成物および少量のグルコースを含む溶液を与える。液化したデンプンは、グルコアミラーゼ酵素を使用することによる糖化段階に供し、最大の末端グルコース変換を取得する。両方の段階は相互に関連していることがわかっており、これに続く段階における適切な糖化について必要とされる最適な程度の液化があった。以下の方法は、1つ以上の酵素を使用する前記基質の例示的な酵素的前処理、例えばデンプン、例えばパン残渣中に含有されるデンプンの加水分解である。水懸濁液中の均質化したパン残渣を、実験のために調製する。パンの粒子のサイズは、4mm未満である。液化については、α-アミラーゼを、添加する(例えばSUG-001、Creative Enzymes, Shirley, NY; USA)。液化は、特定のpH(例えばpH6)を有するサーモスタットまたは水浴中でおよび特定の温度(例えば80℃)下で進める。懸濁液のpHは、例えばH2SO4の1%(重量/体積)溶液およびNaOHの1%(重量/体積)溶液によって調整する。液化は、懸濁液を凍結させることによって終了させる。液化の時間は、約180分である。糖化は、グルコアミラーゼ(例えばSUG-002; DIS-1013,Creative Enzymes, Shirley, NY; USA)の添加により液化懸濁液中で実施する。糖化は、特定のpH(例えばpH4,2)を有する強化されたシェーカー中でおよび特定の温度(例えば60℃)下でおよび振盪させながら(例えば130rpm)進める。酵素活性は、80℃で5分間の懸濁液の加熱することによって終了させる。糖化の時間は、少なくとも90分である。ヘミセルラーゼ(例えばDIS-1023 Creative Enzymes, Shirley, NY; USA)およびプロテアーゼ(例えばNeutrase, Novozymes, Denmark)を、糖化工程において添加し、変換された糖類およびアミノ酸の最も高い含有量を生じる。市販の酵素を使用する代わりに、実施例2および3において記載するように製造される酵素混合物または前述のものの任意の組合せが、適している。例えば、加水分解は、特定のpH(例えばpH5、5)特定の温度(例えば55℃)および振盪(例えば130rpm)での長いインキュベーション時間(例えば24時間)での1工程のみにおいて実施することができる。該手順のバイオリアクターへの適応もまた、可能である。
【0133】
インキュベーション後、混合物を遠心分離して(例えば14,000rpmで20分間)、加水分解されていない固体残渣を分離し、栄養素を含む上清を収集する。この時点で、上清は、パン残渣加水分解物として特徴付けすることができる。プロトコールから取得されるこの加水分解物は、再水和する栄養素の適合性を評価するために凍結乾燥することができるであろう。発酵については、加水分解物は、新たに調製することができるかまたは、再水和して、そのまままたは単独での若しくは混合してのサプリメントの任意の添加により適用することができるであろう。
【0134】
実施例5:微生物食料成分の製造-微生物脂質
油性酵母などの油性微生物は、興味深い微生物脂質工場を代表する。それらの急速な増殖は、多種多様な原料を利用する能力および大型発酵槽におけるそれらの容易な培養とともに、それらを、バイオ精製プロセスについての高度に適した候補とする。油性酵母などの油性微生物は、増殖し、高いレベルの脂質を蓄積することができる。ATCC 20509 Cutaneotrichosporon oleaginosus(C. oleaginosus)株は、DCWの最大70% TAGを蓄積するその能力について研究されており、有利なことに、ココアバターまたはパーム油の脂肪酸組成に非常に類似した脂肪酸組成を有する。C. oleaginosusは、高度に多様な炭素源、例えば食料残渣(複数可)からの炭素源を使用する能力を有する。本発明者らは驚くべきことに、パン残渣などの、食料残渣(複数可)が、油性微生物についての増殖培地のための栄養素を取得することについての基質として使用できることを見出した。例えば、本発明者らは、食料残渣(複数可)を、糸状菌および細菌を使用して栄養素に首尾よく変換しており、これらの栄養素は、油性微生物についての増殖培地として使用することができる。特に、酵素的に処理された食料残渣(複数可)は、栄養素、例えば微生物脂質を油性微生物例えばC. oleaginosusを用いて製造するための、炭素源として使用することができる。実施例4において記載するように取得される加水分解物は、微生物脂質をC. oleaginosus発酵で製造することについての潜在的な代替炭素源として考えられる。
【0135】
油性生物を用いる従来の脂質製造は、第1の段階が非制限条件下でのバイオマス形成(指数関数的増殖相)を提供し、第2の脂質誘導工程(栄養素制限相)が停滞した細胞数での高い細胞内脂質蓄積を与える、2段階プロセスである。また、例えばパン残渣の加水分解物および酢酸の同時蓄積を可能にする栄養素制限の必要なしに同時に高いバイオマスおよび脂質収率(DCWの84.9%)に至る、有機酸および炭素源とのC. oleaginosusの共発酵を行うことも、可能である。穏やかな下流の加工もまた、食用微生物脂質を製造することについて好都合である。従って、例えば何らの溶媒ベースの抽出または化学薬品ベースの解乳化なしにC. oleaginosusの純粋に酵素的な処理を実施することは、製造される微生物脂質をこれに続く回収することに適したものにするために好適である。製造される微生物脂質の回収することは、密度に基づく分離法によって例えば半連続遠心分離機を用いて行う。微生物脂質を精製することは、食用油を得るための加工の最後の工程例えば物理的な精製である。
図1は、食用微生物脂質を製造する持続可能な方法として例示することができる方法を示す。
【0136】
以下の方法は、最終の生成物の脂肪酸プロファイルを、メチル化後に水素炎イオン化検出器を有するガスクロマトグラフィー(GC-FID)を使用して分析する方法として例示することができる。メチル化は、1mgの油を1mlのNaOCH3とインキュベートすることによって(80℃で20分間)簡単に行う。次いで、1mlのHCl(メタノール中37%)を添加し、混合物を再度80℃で20分間インキュベートする。結果として生じた脂肪酸メチルエステル(FAME)を、注入したGC-FID中のヘキサンによって抽出する。トリグリセロールC19:0を、内部標準として使用する。C. oleaginosusの例示的な微生物脂質の組成を、表6に示す。
【0137】
【0138】
実施例6:微生物食料成分の製造-微生物タンパク質
本発明者らは、凍結乾燥パンなどの、食料残渣(複数可)を、微生物タンパク質バイオマスを製造するための基質として使用することができることを実証した。タンパク質バイオマスは、第1の微生物を培養するときに副産物として製造される。
【0139】
実施例7:微生物食料成分の製造-芳香化合物
本発明者らは驚くべきことに、Ceratocystis種などの、微生物が、食料残渣(複数可)上で培養するときに芳香化合物を製造することを見出した。例えば、Ceratocystis種例えばCeratocystis fimbriataおよびCeratocystis moniliformisは、菌株および環境条件に依存して、桃、バナナ、洋ナシ、バラまたは柑橘類などの幅広い複雑な芳香を製造する。これらの真菌を使用することの利点は、それらの比較的急速な増殖および合成されるさまざまな複雑な芳香混合物からなる。本発明者らは、Ceratocystis paradoxa CBS 374.83が、実施例2において記載する発酵実験中に上清の強いフルーティーな香りによって検出される芳香化合物を製造することを見出した。上清は、少なくとも1つの芳香化合物を含んでいた。すなわち、本発明の方法は驚くべきことに、微生物脂質を提供するだけでなく、芳香化合物も提供する。芳香化合物を取得するために、穏やかな分離技術を使用して、完成品にできるだけ近い感覚特性を有する抽出物を提供した。例えば、膜ベースの技術である親有機性浸透蒸発(O-PV)、並びに吸着剤でコーティングされた繊維がサンプルに曝露される、非網羅的な抽出技術である固相微細抽出(SPME)を、天然芳香化合物の穏やかな回収について使用した。本発明者らは、芳香の成分の機能性を、穏やかな分離技術を使用することによって加工中に維持することが有利であることを見出した。
【0140】
本発明者らはさらに、芳香分別を実施して、芳香化合物の混合物から特定の芳香または芳香化合物の群を回収した。さらに、本発明者らは、抽出した芳香化合物を、サンプルの保持指数を対応する本物の参照化合物の保持指数と比較することによってキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)単独により、またはGC嗅覚測定(GC-O)を介して分析した。GC-Oは、ヒトの鼻を検出器として使用して、揮発性有機化合物とその知覚との間の相関関係を可能にする。従って、GCキャピラリカラムの出口は、カラムフロースプリッター中に取り付ける。カラムフロースプリッターは、ガス流を、破壊検出器例えば炎イオン化検出器(FID)または質量分析計(MS)中に、および非破壊嗅覚検出部(ODP)中に向ける2つの出口を備える。この装置を用いて、匂いの印象をMSスペクトルまたはFIDピークに直接割り当てることが可能である。
【0141】
実施例8:食料産業における微生物成分の使用法-ベーカリー製品における微生物脂質
食料産業における微生物成分への広範囲の適用が、可能である。本発明者らは、本発明の方法で取得した微生物脂質を異なるベーカリー製品において例示的に使用した。
【0142】
a)カイザーロール
成分:
- 小麦粉タイプ550または650 100%
- バターミルク 2~3%
- パン酵母 3~4%
- 微生物脂質 10~15%
- ベーキング剤 2~3%
- 塩 1.8~2.2%
- 水 55~63%
【0143】
混練:
- スターター生地
小麦粉20%、バターミルク2%、水10%およびパン酵母1%を混合して、生地混練機を最低レベルで3~4分間使用し、その後2~3分急速に混合し、滑らかな生地を得る。引き続きスターター生地をラップフィルムで覆い、それを冷蔵庫(4℃)で6~24時間そのままにする。
- メイン生地
小麦粉80%、ベーキング剤3%、塩2%、微生物脂質15%、パン酵母3%およびスターター生地をスパイラル混練機で5分から7分ゆっくりと徹底的に混練し、その後、生地が成形可能であるまで5分から8分高速で混練する。
生地の温度は、23℃と26℃との間の範囲である。
スパイラル混練機から生地を取り出した後、該生地を、最大10分間置いておく。
【0144】
加工:
- 1800gから2100gの部分を丸め、引き続きラップフィルムで覆う。
- 生地が簡単に膨らむように、それを15分から20分間そのままにする。
- 部分の成形、その後の丸み付け。
- それを食料キャリア上に置き、それを発酵室中で(温度30℃~35℃、
75%~85%の相対湿度を有する)50分から75分間発酵させる。
【0145】
ベーキング:
オーブン温度:230℃~240℃
蒸気入力:標準
ダンパー:閉
ベーキング時間:おおよそ20分
【0146】
カイザーロールは、本発明の方法を用いて製造した微生物脂質を用いて首尾よく製造された。微生物脂質を使用して製造したロールパンは、従来のカイザーロールと同じ香り、味、および食感を有していた。
【0147】
b)プレッツェル
成分:
- 小麦粉タイプ550 100%
- ベーカリーモルト 2~3%
- 塩 1.8~2.2%
- 微生物脂質 10~15%
- パン酵母 1.5~2%
- 水 45~48%
【0148】
混練:
- スターター生地
小麦粉20%、パン酵母0.2%および水12%(10℃)を、生地混練機を最低レベルで3~4分使用して混合し、その後最高レベルで3分急速に混合する。引き続きスターター生地をラップフィルムで覆い、それを室温で1時間そのままにする。次いで、それを、12時間から14時間放置して発酵させる。
- メイン生地
小麦粉80%、ベーカリーモルト2%、塩2%、パン酵母1.5%、微生物脂質10%、水10%(10℃C)およびスターター生地をスパイラル混練機で低いレベルで4分ゆっくりと混練し、その後、最高レベルで5分高速で混練する。
生地の温度は、おおよそ24℃である。
スパイラル混練機から生地を取り出した後、覆われた生地を、おおよそ20分置いておく。
【0149】
加工:
- 1800gから2100gの部分を丸め、引き続きラップフィルムで覆う。
- それを15分~20分間そのままにする。
- 部分の成形。
- 生地を、小麦粉をまぶした作業台の表面上で少しずつ転がして、おおよそ60cmの長さを有するストランドにし、
ストランドの最大直径が中心にあり、ストランドが丸まった先端を有し外側に向かってより細くなるようにする。
- 生地のすべてのまっすぐなロープをねじって、それをプレッツェルの形状に形成する。
- 生地の片をベーキングリネンで覆われたベーキングトレイ上に置く。
- 引き続き部分をラップフィルムで覆い、それを室温で1時間から2時間そのままにし、
生地を2倍の体積に発酵させた。
- プレッツェルの灰汁を提供し、保護眼鏡および保護手袋を着用する。
- プレッツェルを灰汁中でおおよそ5秒浸し、それらを取り出し、それらをベーキングペーパーで覆われたベーキングトレイ上に置く。
- プレッツェルを球根状の部分で切り、それらにいくらかの塩を振りかける。
【0150】
ベーキング:
オーブン温度:230℃の上下熱で予熱
ベーキング時間:ゴールドブラウンまで12分から14分
引き続きプレッツェルをワイヤーラック上で冷却する。
【0151】
プレッツェルは、本発明の方法を用いて製造した微生物脂質を用いて首尾よく製造された。微生物脂質を使用して製造したプレッツェルは、従来の方法で製造したプレッツェルと同じ香り、味、および食感を有していた。
【0152】
c)ビスマルク
成分:
- 小麦粉タイプ550または405 100%
- 牛乳 20~30%
- パン酵母 5~8%
- 卵 20%
- 卵黄 8%
- 微生物脂質 10~15%
- 砂糖 10%
- 塩 1.8~2.2%
- 水 60g
- 芳香:バニラおよびレモンの皮
【0153】
混練:
- スターター生地
小麦粉30%、牛乳20%、パン酵母5%および水60g(10℃)を混合して、生地混練機を最低レベルで3分から4分使用し、滑らかな生地を得る。引き続きスターター生地をラップフィルムで覆い、それを室温で30分間そのままにする。
- メイン生地
小麦粉70%、卵20%、卵黄8%、微生物脂質10%、砂糖10%、牛乳7%、塩2%、芳香およびスターター生地をスパイラル混練機で5分から7分ゆっくりと徹底的に混練し、その後、生地が成形可能であるまで10分から12分高速で混練する。
スパイラル混練機から生地を取り出した後、該生地を、20分と30分との間置いておく。
【0154】
加工:
- 1200gから1500gの部分を丸め、引き続きラップフィルムで覆う。
- 生地が簡単に膨らむように、それを15分から20分間そのままにする。
- 部分の成形、その後の丸み付け。
- それを食料キャリア上に置き、それを発酵室中で(温度30℃~35℃、
60%~70%の相対湿度を有する)50分から75分間発酵させる。
【0155】
硬化:
生地片の発酵を中断し、表面が完全に乾燥して固くなる。
【0156】
沸騰:
- チップパン中に微生物脂質を充填し、それを150℃~175℃まで加熱する。
- 温度を確認する。
-生地片を、丸い部分を上側にして焼く。
- それらを後ほど回転させ、それらをベーキング時間の終わりに向けて焼き網で押し下げる。
- ベーキング時間:3分/2分/30秒および30秒の最適な間隔で6分から8分。
【0157】
充填:
アプリコットジャムのような中身を、ビスマルクの中心に置く。
【0158】
トッピング:
まだ熱いビスマルクに、例えば砂糖または粉砂糖をまぶす。
ビスマルク(中心の穴が何らないドイツのドーナツ)は、本発明の方法を用いて製造した微生物脂質を用いて首尾よく製造された。微生物脂質を使用して製造したビスマルクは、従来の方法で製造したビスマルクと同じ香り、味、および食感を有していた。
【0159】
d) フルーツローフ
成分:
- 小麦粉タイプ550 30%
- 牛乳 20~30 %
- パン酵母 1.5%
- 水 8.5%
- 微生物脂質 13%
- 砂糖 3%
- マジパン 2 %
- 塩 1.8~2.2%
- サワークリーム 0.3%
- スパイス 0.3%
- 粉乳 1%
- ラム酒の芳香 0.3%
- バニラの芳香 0.3%
- アーモンドビター(bitterly) 0.3%
- レモンの皮 0.3%
- サルタナ 19%
- アーモンドバトンカット 0.4%
- 砂糖漬けのオレンジおよびレモンの皮 0.4%
- 海外産ラム酒 4.5%
【0160】
混練:
- スターター生地
小麦粉10%、パン酵母1.5%、水7%および塩0.3%を、生地混練機を用いて最低レベルで2分間混合し、その後3分から4分急速に混練して、冷たく(生地の温度は、24℃である)半固体のスターター生地を得る。引き続きスターター生地をラップフィルムで覆い、それを室温で30分間そのままにする。スパイラル混練機から生地を取り出した後、それを冷蔵庫(5℃)中で10時間から15時間そのままにする。
- メイン生地
小麦粉を除くメイン生地の全ての他の成分を混合して、滑らかな生地を得る。引き続きスターター生地および小麦粉を添加し、それを5分間ゆっくりと混合し、その後3分急速に混練する。簡単な生地のリラクゼーションの後、フルーツローフ混合物を充填する。
【0161】
加工:
- ウェイト部分を丸める
- 15分の生地のリラクゼーション、および引き続き伸長。
- それに蓋をして室温で発酵を行う。
- 部分の成形、その後の丸み付け。
- それを食料キャリア上に置き、それを発酵室で(温度30℃~35℃、
60%~70%の相対湿度を有する)50分から75分間発酵させる。
【0162】
ベーキング:
オーブン温度:210℃で開始し、200℃まで下げる
蒸気入力:なし
ダンパー:5分のベーキング時間後に開いた。
ベーキング時間:780gの生地片についておおよそ50分
さらにそれに液体バターをホットコートし、引き続きそれにバニラシュガーを入れる。
冷却後、フルーツローフに「甘い雪」をまぶす。
【0163】
フルーツローフは、本発明の方法を用いて製造した微生物脂質を用いて首尾よく製造された。微生物脂質を使用して製造したフルーツローフは、従来の方法で製造したフルーツローフと同じ香り、味、および食感を有していた。
【0164】
実施例9:食料産業における微生物成分の使用-チョコレート製品
本発明の方法を用いて製造した微生物脂質を使用して、多数の食料製品を製造することが可能である。例えば、以下のような製品を、製造することができる:
【0165】
【0166】
実施例10:プロセスパラメータをモデル化しながらトリグリセリド含有量を変更すること。
プロセスパラメータをモデル化しながらトリグリセリド含有量を変更すること。酵母油のTAG組成(%)
【0167】
参考文献
[1] Lieken. (2021, April 12). Lieken Brot- und Backwaren GmbH. Retrieved from www.lieken-urkorn.de: https://www.lieken-urkorn.de/produkte/produkt/bauernmild-500g
[2] USDA1. (2021, April 12). USDA, Agricultural Research Service, Fooddata central. Retrieved from https://fdc.nal.usda.gov/fdc-app.html#/food-details/172686/nutrients
[3] USDA2. (2021, April 12). USDA, Agricultural Research Service, Fooddata central. Retrieved from https://fdc.nal.usda.gov/fdc-app.html#/food-details/172684/nutrients
【0168】
明細書、特許請求の範囲において、および/または添付の図面において開示する本発明の特徴は、個別におよびそれらの任意の組合せの両方で、本発明をそのさまざまな形態で実現することについての材料であり得る。
【国際調査報告】