(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】軌道車両知能アンチクライミングシステム、制御方法及び軌道車両
(51)【国際特許分類】
B61K 9/08 20060101AFI20241029BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20241029BHJP
B61D 15/06 20060101ALI20241029BHJP
B61F 19/06 20060101ALI20241029BHJP
B61G 7/14 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B61K9/08
B61D37/00 G
B61D15/06
B61F19/06
B61G7/14 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523781
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2022123123
(87)【国際公開番号】W WO2023066015
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111223607.2
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520112818
【氏名又は名称】シーアールアールシー チンダオ スーファン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】チェン ダーウエイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン フイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ニン
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオチン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン グオジエン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ウエイジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジーチアン
(57)【要約】
本願は、軌道車両知能アンチクライミングシステム、制御方法及び軌道車両を提供する。軌道車両知能アンチクライミングシステムは、障害物をリアルタイムに検知するための検知モジュールと、アンチクライマー本体と、前記アンチクライマー本体に接続され、前記アンチクライマー本体に対して突き出し可能なエネルギ吸収部とを含む知能アンチクライマーと、前記検知モジュール及び前記知能アンチクライマーにそれぞれ信号接続されており、前記検知モジュールが障害物を検知したことに応じて、前記知能アンチクライマーが対応する動作を行うように制御するための制御モジュールと、を含む。本願によれば、車両前方の障害物を自発的に認識し、知能アンチクライマーを自動的に制御してリアルタイムの対応を行わせ、エネルギ吸収性能を自発的に高め、ひいては都市軌道車両の許容衝突速度を高め、ドライバー及び乗客の人身安全と車体構造の完全性を守ることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物をリアルタイムに検知するための検知モジュールと、
アンチクライマー本体と、前記アンチクライマー本体に接続され、前記アンチクライマー本体に対して突き出し可能なエネルギ吸収部とを含む知能アンチクライマーと、
前記検知モジュール及び前記知能アンチクライマーにそれぞれ信号接続されており、前記検知モジュールが障害物を検知したことに応じて、前記知能アンチクライマーが対応する動作を行うように制御するための制御モジュールと、を含むことを特徴とする軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項2】
前記知能アンチクライマーは、ストッパをさらに含み、
前記エネルギ吸収部は、前記アンチクライマー本体に対して第1の位置及び第2の位置を有し、前記第1の位置において、前記エネルギ吸収部の少なくとも一部は前記アンチクライマー本体の内に位置し、前記第2の位置において、前記エネルギ吸収部は前記アンチクライマー本体から突き出して前記ストッパによって前記第2の位置にロックされることを特徴とする
請求項1に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項3】
前記知能アンチクライマー内にはトリガ機構が設けられており、前記トリガ機構は、前記アンチクライマー本体のうち、前記エネルギ吸収部に近い後端部に設けられ、前記トリガ機構は、前記エネルギ吸収部の前記アンチクライマー本体からの弾き出しをトリガするように構成されることを特徴とする
請求項1又は2に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項4】
前記トリガ機構は、前記制御モジュールに電気信号的に接続されていることを特徴とする
請求項3に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項5】
緊急ブレーキモジュールをさらに含み、前記緊急ブレーキモジュールは、前記制御モジュールに信号接続されており、緊急信号を前記制御モジュールに送信するために用いられ、前記制御モジュールにより前記エネルギ吸収部の前記アンチクライマー本体からの弾き出しを制御することを特徴とする
請求項1に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項6】
前記緊急ブレーキモジュールは、軌道車両の運転室内に設けられていることを特徴とする
請求項5に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項7】
前記緊急ブレーキモジュールは、緊急ブレーキボタンであり、前記緊急ブレーキボタンは、前記運転室の運転台に設けられていることを特徴とする
請求項6に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステム。
【請求項8】
制御モジュールは、検知モジュールが検知した障害物を受信して、アルゴリズムにより障害物の種類を認識することと、
障害物の種類が軌道車両であると認識された場合、2つの軌道車両の相対速度をさらに判断することと、
前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することと、
2つの軌道車両の衝突エネルギーが前記知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量より大きい場合、前記知能アンチクライマーに命令を送信して、前記知能アンチクライマーの弾き出しをトリガすることと、を含むことを特徴とする軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法。
【請求項9】
前記した、前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することは、
軌道車両の質量及び前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することをさらに含むことを特徴とする
請求項8に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法。
【請求項10】
請求項1-7のいずれか1項に記載の軌道車両知能アンチクライミングシステムが設けられており、前記知能アンチクライマーは、前記軌道車両の先頭部の下方に取り付けられていることを特徴とする軌道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月20日に提出された、出願番号が2021112236072であり、名称が「軌道車両知能アンチクライミングシステム、制御方法及び軌道車両」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、軌道車両安全の技術分野に関し、特に、軌道車両知能アンチクライミングシステム、制御方法及び軌道車両に関する。
【背景技術】
【0003】
都市化の進展に伴い、都市軌道の乗客数が増加し、列車の発車間隔が短縮されつつあり、車両運行時の安全性及び信頼性は、生産運営事業者及び一般市民が注目する第一の問題である。都市軌道車両の積極的な安全保護措置をさらに強化し、衝突事故の発生を低減させるとともに、受動的安全保護の観点から、如何に軌道車両の衝突安全性を向上させ、ドライバー及び乗客の安全をできるだけ守ることについての検討は、現在の軌道車両の開発における焦点問題となっている。
【0004】
都市軌道車両の構造の特徴、連結要求及び曲線通過能力の制約により、運行中には、車体の先端部のエネルギ吸収装置の取り付けと変形の空間が限られているため、全車のエネルギ吸収量が比較的低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、軌道車両知能アンチクライミングシステムを提供し、車両前方の障害物を自発的に認識し、知能アンチクライマーを自動的に制御してリアルタイムの対応を行わせ、エネルギ吸収性能を自発的に高め、ひいては都市軌道車両の許容衝突速度を高め、ドライバー及び乗客の人身安全と車体構造の完全性を守ることができる。
【0006】
本願は、軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法をさらに提供する。
【0007】
本願は、軌道車両をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一側面の実施形態は、
障害物をリアルタイムに検知するための検知モジュールと、
アンチクライマー本体と、前記アンチクライマー本体に接続され、前記アンチクライマー本体に対して突き出し可能なエネルギ吸収部とを含む知能アンチクライマーと、
前記検知モジュール及び前記知能アンチクライマーにそれぞれ信号接続されており、前記検知モジュールが障害物を検知したことに応じて、前記知能アンチクライマーが対応する動作を行うように制御するための制御モジュールと、を含む軌道車両知能アンチクライミングシステムを提供する。
【0009】
本願の一つの実施形態によれば、前記知能アンチクライマーは、ストッパをさらに含み、
前記エネルギ吸収部は、前記アンチクライマー本体に対して第1の位置及び第2の位置を有し、前記第1の位置において、前記エネルギ吸収部の少なくとも一部は前記アンチクライマー本体の内に位置し、前記第2の位置において、前記エネルギ吸収部は前記アンチクライマー本体から突き出して前記ストッパによって前記第2の位置にロックされる。
【0010】
本願の一つの実施形態によれば、前記知能アンチクライマー内にはトリガ機構が設けられており、前記トリガ機構は、前記アンチクライマー本体のうち、前記エネルギ吸収部に近い後端部に設けられ、前記トリガ機構は、前記エネルギ吸収部の前記アンチクライマー本体からの弾き出しをトリガするように構成される。
【0011】
本願の一つの実施形態によれば、前記トリガ機構は、前記制御モジュールに電気信号的に接続されている。
【0012】
本願の一つの実施形態によれば、緊急ブレーキモジュールをさらに含み、前記緊急ブレーキモジュールは、前記制御モジュールに信号接続されており、緊急信号を前記制御モジュールに送信するために用いられ、前記制御モジュールにより前記エネルギ吸収部の前記アンチクライマー本体からの弾き出しを制御する。
【0013】
本願の一つの実施形態によれば、前記緊急ブレーキモジュールは、軌道車両の運転室内に設けられている。
【0014】
本願の一つの実施形態によれば、前記緊急ブレーキモジュールは、緊急ブレーキボタンであり、前記緊急ブレーキボタンは、前記運転室の運転台に設けられている。
【0015】
本願の別の側面の実施形態は、制御モジュールは、検知モジュールが検知した障害物を受信して、アルゴリズムにより障害物の種類を認識することと、
障害物の種類が軌道車両であると認識された場合、2つの軌道車両の相対速度をさらに判断することと、
前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することと、
2つの軌道車両の衝突エネルギーが前記知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量より大きい場合、前記知能アンチクライマーに命令を送信して、前記知能アンチクライマーの弾き出しをトリガすることと、を含む軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法を提供する。
【0016】
本願の一つの実施形態によれば、前記した、前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することは、
軌道車両の質量及び前記相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマーの退避状態でのエネルギ吸収量と比較することをさらに含む。
【0017】
本願の別の側面の実施形態は、上述した軌道車両知能アンチクライミングシステムが設けられており、前記知能アンチクライマーは、前記軌道車両の先頭部の下方に取り付けられている軌道車両をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
本願の実施形態に係る軌道車両知能アンチクライミングシステムは、制御モジュールにより知能アンチクライマーが弾き出し動作を行う必要があるか否かを自発的に判断し、アンチクライマーのエネルギ吸収容量を向上させ、当該システムの認識速度が速く、信頼度が高く、エネルギ吸収性能を自発的に高め、都市軌道車両の許容衝突速度をさらに高め、ドライバー及び乗客の人身安全及び車体構造の完全性を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本願又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本願の一部の実施形態に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をせずに、これらの図面に基づいてその他の図面を取得することができる。
【
図1】本願の実施形態に係る軌道車両知能アンチクライミングシステムの接続関係の模式図である。
【
図2】
図1における知能アンチクライマーが退避状態にある構造の概略図である。
【
図3】
図1における知能アンチクライマーが突き出し状態にある構造の概略図である。
【
図4】本願の実施形態に係る軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法のフローチャートである。
【
図5】本願の一つの具体的な実施形態に係る軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、本願における図面を参照しながら、本願における技術案を明確かつ完全に説明する。勿論、説明する実施形態は、全ての実施形態ではなく、本願の一部の実施形態に過ぎない。本願における実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働をしないうちに取得する全ての他の実施形態は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0021】
第1の形態において、
図1から
図3に示すように、本願の実施形態は、軌道車両知能アンチクライミングシステムを提供する。当該軌道車両知能アンチクライミングシステムは、検知モジュール2と、知能アンチクライマー3と、検知モジュール2及び知能アンチクライマー3にそれぞれ信号接続されている制御モジュール1とを含む。具体的には、
【0022】
検知モジュール2は、障害物をリアルタイムに検知するために用いられ、検知モジュール2は、軌道車両の先頭部に取り付けられ、軌道車両の前方の障害物を検知するために用いられてもよく、検知モジュール2は、信号収集センサであってもよく、ハイビジョンカメラ等の画像を収集する装置であってもよい。
【0023】
知能アンチクライマー3は、アンチクライマー本体31と、アンチクライマー本体31に接続されてアンチクライマー本体31に対して突き出し可能なエネルギ吸収部32とを含み、アンチクライマー本体31は、エネルギ吸収モジュールでもあり、アンチクライマー本体31においてエネルギ吸収部32が取り付けられ、エネルギ吸収部32は、アンチクライマー本体31の軸方向に沿ってアンチクライマー本体31から突き出し、これにより、エネルギ吸収構造の全長を長くすることができ、よって、エネルギ吸収ストロークを増加させ、受動的安全性能を向上させることができる。
【0024】
なお、通常の状態では、エネルギ吸収部32の少なくとも一部は、アンチクライマー本体31の内に隠れて、軌道車両の外見に影響を与えず、軌道車両の頭部構造の特徴を変えずに済む。
【0025】
制御モジュール1は、検知モジュール2及び知能アンチクライマー3にそれぞれ信号接続されており、制御モジュール1は、シングルチップマイクロコンピュータであってもよく、検知モジュール2が障害物を検知したことに応じて、知能アンチクライマー3が対応する動作を行うように制御するために用いられる。
【0026】
ここで、「知能アンチクライマー3が対応する動作を行うように制御する」ことは以下のように理解される。制御モジュール1は、障害物列車と本軌道車両の衝突エネルギーがアンチクライマー本体31自体のエネルギ吸収量を超えたと判断した場合、制御モジュール1は、エネルギ吸収部32のアンチクライマー本体31からの突き出しをトリガして、知能アンチクライマー3のエネルギ吸収容量を向上させ、エネルギ吸収性能を自発的に高め、軌道車両の許容衝突速度をさらに高め、ドライバー及び乗客の人身安全と車体構造の完全性を守ることができる。制御モジュール1は、障害物列車と本軌道車両の衝突エネルギーがアンチクライマー本体31自体のエネルギ吸収量範囲内にあると判断した場合、弾き出し信号を知能アンチクライマー3に送信しなくてもよく、その場合、知能アンチクライマー3は弾き出し動作を行わない。
【0027】
一つの具体的な実施形態において、アンチクライマー本体31は、エネルギ吸収管構造であり、アンチクライマー本体31の一方の端部は取り付け端であり、他方の端部は開口端であり、エネルギ吸収部32は、アンチクライマー本体31内のエネルギ吸収管構造に挿設され、両者は同軸に設けられ、アンチクライマー本体31は取り付け端を介して車体に取り付けられ、アンチクライマー本体31自体は可動ではなく、エネルギ吸収部32は、アンチクライマー本体31の開口端に対して最大長さまで突き出すことができる。
【0028】
エネルギ吸収体が突き出した後に固定位置に保持されるために、本願の一つの実施形態によれば、
図2及び
図3に示すように、知能アンチクライマー3はストッパ33をさらに含む。
【0029】
具体的には、エネルギ吸収部32は、アンチクライマー本体31に対して第1の位置及び第2の位置を有し、第1の位置において、エネルギ吸収部32の少なくとも一部は、アンチクライマー本体31の内に位置し、第1の位置はエネルギ吸収部32が突き出さない位置であり、第2の位置において、エネルギ吸収部32がアンチクライマー本体31から突き出してストッパ33によって第2の位置にロックされ、第2の位置はエネルギ吸収部32が突き出す位置である。ストッパ33により、エネルギ吸収部32は突き出した後にアンチクライマー本体31に対して位置が固定されることができ、知能アンチクライマー3のエネルギ吸収ストロークを増加させる目的を果たすことができる。ストッパ33は、具体的には、ストッパ体であってもよく、ストッパ体は、アンチクライマー本体31に取り付けられており、ストッパ体の数は、複数であってもよく、例えば、2つのストッパ体が1組として、アンチクライマー本体31の径方向の両側に分けて設けられ、具体的な位置としては、アンチクライマー本体31の開口端側壁寄りに設けられてもよく、開口端側壁には溝が開けられ、エネルギ吸収部32の一端は先端部であり、他端は後端部であり、エネルギ吸収部32の後端部に近い側壁には、ストッパ体と一対一に対応するストッパ溝が設けられており、ストッパ体の一端は弾性体を介してアンチクライマー本体31に取り付けられ、ストッパ体の他端は下向きに傾いてエネルギ吸収部32の側壁に押し付けられ、エネルギ吸収部32が最大長まで突き出した場合、ストッパ体はちょうどストッパ溝と正対し、ストッパ体はストッパ溝内に係合されてストッパの役割を果たし、つまり、エネルギ吸収部32を位置制限して、エネルギ吸収部32を第2の位置に保持させる。
【0030】
本願の一つの実施形態によれば、知能アンチクライマー3の内にはトリガ機構が設けられており、トリガ機構はアンチクライマー本体31のうち、エネルギ吸収部32に近い後端部に設けられ、トリガ機構は、エネルギ吸収部32のアンチクライマー本体31からの弾き出しをトリガするように構成される。トリガ機構によりエネルギ吸収部32に動力を提供することにより、必要な時にエネルギ吸収部32が押し出されるようにすることができる。トリガ機構は、具体的には、急速弾き出し装置であってもよいし、高圧空気筒、油圧シリンダ又はエアシリンダ等であってもよい。
【0031】
本願の一つの実施形態によれば、トリガ機構は、制御モジュール1に電気信号的に接続されており、トリガ機構が急速弾き出し装置であることを例として、急速弾き出し装置内には適量のエネルギー貯蔵材が保存されており、制御モジュール1が急速弾き出し装置に一つの電気信号を送信すると、エネルギー貯蔵材のエネルギーの放出をトリガして、発生する衝撃力によりエネルギ吸収部32を押して弾き出す。
【0032】
具体的には、急速弾き出し装置14は、格納ハウジング、及び格納ハウジング内に設けられているエネルギー貯蔵材を含み、格納ハウジングはアンチクライマー本体31の内の後端カバーに固定されて取り付けられ、格納ハウジングの形状は、箱状、ボウル状等であってもよく、具体的な形状は限定されず、格納ハウジングの体積が小さく、占有空間が小さく、エネルギ吸収部32の取り付け空間を占有せず、格納ハウジングは、接着、締結材による接続等の方法によりアンチクライマー本体31内の後端カバーに固定されてもよく、具体的な取り付け方式は限定されず、格納ハウジングをアンチクライマー本体31内の後端カバーに取り付けることができればよい。格納ハウジング内のエネルギー貯蔵材がトリガされた後に、発生した推力をエネルギ吸収部32にできるだけ完全に作用させように、第1の位置において、エネルギ吸収部32の後端部は格納ハウジングに近接し又は接触し、それにより、エネルギーの利用率を向上させる。
【0033】
具体的にどのくらいの量のエネルギー貯蔵材を格納ハウジング内に置くかは、必要の推力に応じて決定し、必要な推力が大きいほど、置かれるエネルギー貯蔵材が多くなる。具体的には、エネルギー貯蔵材は、電気火花の存在下でエネルギーを放出することができる爆破物であってもよい。
【0034】
本実施形態は、急速弾き出し装置14により推力を提供し、スクリュー、油圧等の構造と比べると、体積が小さく、重量が軽く、占有空間が比較的小さいと共に十分な推力を提供することができる。
【0035】
本願の一つの実施形態によれば、緊急ブレーキモジュール4がさらに設けられており、緊急ブレーキモジュール4は、制御モジュール1に信号接続されており、緊急ブレーキモジュール4をトリガすることにより、緊急信号を制御モジュール1に送信し、制御モジュール1によりエネルギ吸収部32を制御してアンチクライマー本体31から弾き出す。当該緊急ブレーキモジュール4は、検知モジュール2が故障した場合に緊急に使用される。軌道車両の運行の安全性を増加させ、衝突時の損害を減少させるために用いられる。
【0036】
本願の一つの実施形態によれば、緊急ブレーキモジュール4を操作しやすくするために、緊急ブレーキモジュール4は軌道車両の運転室内に設けられており、運転室は軌道車両の頭部に位置し、運転室の視野が広く、軌道車両の前方には対向走行する軌道車両があるか否かを明確に判断することができるため、緊急ブレーキモジュール4を運転室内に設ける場合、運転者による操作が可能となっている。
【0037】
本願の一つの実施形態によれば、緊急ブレーキモジュール4は、緊急ブレーキボタンであり、緊急ブレーキボタンは、運転者が操作しやすくするために、運転室の運転台に設けられている。
【0038】
第2の形態において、
図4に示すように、本願の実施形態は、軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法を提供し、以下のようなステップを含む。
S10において、制御モジュール1は、検知モジュール2が検知した障害物を受信して、アルゴリズムにより障害物の種類を認識する。具体的なアルゴリズムについては、本実施形態は具体的に限定せず、従来技術では障害物の種類の認識を実現できるアルゴリズムであればよい。
S20において、障害物の種類が軌道車両であると認識された場合、2つの軌道車両の相対速度をさらに判断する。
S30において、2つの軌道車両の相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマー3の退避状態でのエネルギ吸収量と比較する。
S40において、2つの軌道車両の衝突エネルギーが知能アンチクライマー3の退避状態でのエネルギ吸収量より大きい場合、知能アンチクライマー3に命令を送信し、知能アンチクライマー3の弾き出しをトリガする。2つの軌道車両の衝突エネルギーが知能アンチクライマー3の退避状態でのエネルギ吸収量の範囲内にある場合、制御モジュール1が知能アンチクライマー3に命令を送信する必要がなく、知能アンチクライマー3が退避状態を保持する。制御モジュール1により相対速度及び消費すべきエネルギーの大きさを自動的に計算し、弾き出し動作を行う必要があるか否かを自発的に判断し、アンチクライマーのエネルギ吸収容量を向上させ、当該システムの認識速度が速く、信頼度が高い。
【0039】
本願の一つの実施形態によれば、S30において、軌道車両の質量及び相対速度に基づいて2つの軌道車両の衝突エネルギーの大きさを計算し、それを知能アンチクライマー3の退避状態でのエネルギ吸収量と比較することをさらに含む。
【0040】
一つの具体的な実施形態を例として、本願に係る軌道車両知能アンチクライミングシステムの制御方法を説明し、
図5に示すように、具体的に以下のようなステップを含む。
(1)軌道車両の前方の障害物をリアルタイムに監視する。
軌道車両の通常運行中では、軌道車両の前方にある検知器はリアルタイム監視状態にあり、軌道車両の進路の前方に障害物があるか否かを随時判断する。
(2)障害物の種類及び軌道車両の運行状態を認識する。
検知器が軌道車両の前方に障害物の存在を検知した場合、アルゴリズムにより前方の障害物の種類を認識し、同じ線路を走行する軌道車両である場合、2つの軌道車両の相対速度をさらに判断する。
(3)衝突エネルギーの大きさ及び知能アンチクライマー3が弾き出し動作を行う必要があるか否かを判断する。
制御モジュール1は、軌道車両の質量及び相対走行速度に基づいて、2つの列車の衝突エネルギーの大きさを計算し、退避状態での知能アンチクライマー3は衝突エネルギーを消散できない場合、知能アンチクライマー3に命令を送信して、弾き出し動作を行う。
(4)アンチクライマーが対応する動作を行う。
弾き出し命令を受信した後、知能アンチクライマー3に内蔵された急速弾き出し装置が爆発し、爆発による強い衝撃作用で、エネルギ吸収部32はアンチクライマー本体31から弾き出され、対応する位置まで移動した後、ストッパ体はばねの作用で内側に傾き、エネルギ吸収部32を位置制限し、それにより、知能アンチクライマー3の変形ストロークを増加させ、エネルギ吸収量を増大させる。
【0041】
第3の形態において、本願の実施形態は、上述した軌道車両知能アンチクライミングシステムが設けられており、知能アンチクライマー3は、軌道車両の先頭部の下方に取り付けられている軌道車両をさらに提供する。軌道車両の頭部構造の特徴、連結要求及び曲線通過能力要求を変えずに、車体の先端部のエネルギ吸収装置の取り付け及び変形空間の制限を克服し、車両のエネルギ吸収性能を大幅に向上させる。
【0042】
最後に説明すべきことは、上記の実施形態は、本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではないことである。上記の実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記の各実施形態に記載の技術案を修正し、又はその一部の技術的特徴を等価的に置き換えることができ、これらの修正又は置き換えは、対応する技術案の本質を本願の各実施形態の技術案の趣旨及び範囲から逸脱させない。
【符号の説明】
【0043】
1:制御モジュール
2:検知モジュール
3:知能アンチクライマー
31:アンチクライマー本体
32:エネルギ吸収部
33:ストッパ
4:緊急ブレーキモジュール
【国際調査報告】