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特表2024-540995放射性核種を含むペプチド結合アルギン酸塩ゲル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】放射性核種を含むペプチド結合アルギン酸塩ゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/06 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20241029BHJP
   A61K 33/241 20190101ALI20241029BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20241029BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20241029BHJP
   A61K 33/245 20190101ALI20241029BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 5/09 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61K51/06 100
A61K51/08 100
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 125
A61K9/06
A61K47/65
A61K47/61
A61K33/24
A61K33/241
A61K33/243
A61K33/244
A61K33/245
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/34
A61K33/38
A61K33/06
C07K7/00
A61K38/00
C07K5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524407
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022079090
(87)【国際公開番号】W WO2023066994
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】20211268
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524149322
【氏名又は名称】ブルー ウェーブ セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドーニッシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ダーレ、ヨースタイン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076CC27
4C076EE36
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA12
4C084BA01
4C084BA17
4C084MA27
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC711
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA02
4C086HA03
4C086HA04
4C086HA05
4C086HA06
4C086HA07
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA10
4C086HA11
4C086HA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA27
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC71
4H045BA12
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、放射線療法に使用するためのアルギン酸塩系ゲルに関する。より詳細には、本発明は、ペプチド結合アルギン酸塩、少なくとも1種類の二価カチオン、および少なくとも1つの放射性核種カチオンを含むアルギン酸塩ゲルと、少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を提供するための方法と、前述のアルギン酸塩ゲルを含む組成物と、医薬品として使用するための前述のアルギン酸塩ゲルまたは組成物と、増殖性疾患の治療のための方法に使用するための前述のアルギン酸塩ゲルまたは組成物と、アルギン酸塩および放射性核種カチオンを含むキットとを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
前記アルギン酸塩が、前記二価カチオンと前記少なくとも1つの放射性核種カチオンとをキレート化する、
アルギン酸塩ゲル。
【請求項2】
前記ペプチド配列が、インテグリン結合ペプチド配列、LDL結合ペプチド配列、MMP-2結合ペプチド配列、IL13R2a結合ペプチド配列、VDAC1結合ペプチド配列、NBD結合ペプチド配列、cMYC結合ペプチド配列、CXCR4結合ペプチド配列、MDGI結合ペプチド配列、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のアルギン酸塩ゲル。
【請求項3】
前記ペプチドが、RGD、TFFYGGSRGKRNNFKTEEY、MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR、ACGEMGWGWVRCGGSLCW、SWTWEKKLETAVNLAWTAGNSNKWTWK、TALDWSWLQTE、WPGSGNELKRAFAALRDQI、RACRFFC、ACGLSGLGVA、およびRPKPQQFFGLMの群から選択される、請求項1または2に記載のアルギン酸塩ゲル。
【請求項4】
前記ペプチド配列が、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアルギン酸塩ゲル。
【請求項5】
前記ゲルが粒子の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアルギン酸塩ゲル。
【請求項6】
前記少なくとも1つの放射性核種カチオンが、前記アルギン酸塩ゲルの表面下100μm未満、好ましくは前記アルギン酸塩ゲルの表面下50μm未満、より好ましくは前記アルギン酸塩ゲルの表面下10μm未満に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルギン酸塩ゲル。
【請求項7】
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの放射性核種カチオンと、を含むアルギン酸塩を含む少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を提供する方法であって、前記方法が、
iv)アルギン酸塩の溶液を用意するステップであって、前記アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、ステップと、
v)ステップi)からの前記溶液を、二価カチオンを含む水溶液に滴下して、少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を形成するステップであって、前記二価カチオンが、Ca2+、Sr2+、およびBa2+から選択される、ステップと、
vi)ステップii)の前記アルギン酸塩ゲル粒子を、少なくとも1つの放射性核種カチオンを含む溶液と接触させるステップと
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアルギン酸塩ゲルを、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に含む、組成物。
【請求項9】
キットであって、
第1の容器において、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと
を含む、アルギン酸塩
を含む、アルギン酸塩ゲルと、
場合により、適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キット。
【請求項10】
キットであって、
第1の容器において、
-水溶性アルギン酸塩であって、
前記アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、水溶性アルギン酸塩と、
-水と、
-場合により、別の適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
-水に不溶性の粒子であって、前記粒子が、アルギン酸塩と、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の二価カチオンとを含む、水に不溶性の粒子と、
-水と
を含み、
第3の容器において、
-少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
-適切な溶媒と
を含む、キット。
【請求項11】
医薬品として使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲルまたは請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
増殖性疾患の治療に使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲルまたは請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記増殖性疾患が癌である、請求項11または請求項12に記載の使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲルまたは請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記増殖性疾患が過形成性疾患または新生物性疾患である、請求項12または請求項13に記載の使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲルまたは請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記ゲルまたは組成物が、癌性組織が除去された対象の腔に投与される、請求項13に記載の使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載のゲルまたは請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線療法に使用するためのアルギン酸塩ゲルに関する。より詳細には、本発明は、ペプチド結合アルギン酸塩、少なくとも1種類の二価カチオン、および少なくとも1つの放射性核種カチオンを含むアルギン酸塩ゲルと、少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を提供するための方法と、前述のアルギン酸塩ゲルを含む組成物と、医薬品として使用するための前述のアルギン酸塩ゲルまたは組成物と、増殖性疾患の治療のための方法に使用するための前述のアルギン酸塩ゲルまたは組成物と、アルギン酸塩および放射性核種カチオンを含むキットとを提供する。
【背景技術】
【0002】
αおよびβ粒子放出放射性核種は、癌などの様々な疾患に対する治療で使用する場合に魅力的な固有の特性を有する。しかしながら、放射性核種の送達は困難であり得る。
【0003】
α放射体は、内部放射性核種治療のために微粒子およびコロイドに結合して使用できることが以前に示唆されている。しかしながら、多くのコロイド製剤およびセラミック粒子製剤およびマイクロスフェア製剤は、マイクロスフェアが毒性であるかまたは免疫原性反応を引き起こすので、非生体適合性製剤または非生分解性製剤を表す。粒子を容易に分解することができないため、毒性および免疫原性反応は、典型的には放射線が崩壊した後も長期間続く。
【0004】
望ましくない細胞への放射線の送達が成功するかどうかは、放射性同位体漏れに起因する予期せぬ副作用を防止するための安定な放射性同位体-担体相互作用、ならびに不要な細胞への放射性同位体-担体の特異的標的化に依存する。先行技術の製剤の問題は、放射性核種が組成物から放出され得ること、および/または最初に組み込まれた放射性核種の放射性崩壊から形成された娘核種が担体に結合し得ないことである。その結果は、放出された放射性核種が拡散するかまたは標的から輸送される場合の望ましくないオフターゲット毒性である。従来技術の製剤に関する別の問題は、多くの場合、標的化を達成するために、望ましくない細胞に近い構造物(例えば、骨)への非特異的結合、または望ましくない細胞に近い局所適用に依存することである。
【0005】
したがって、放射線療法のための改善された薬物が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】アルギン酸塩によるカチオンのキレート化を示す図である。
図2】アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアの顕微鏡写真を示す図である。
図3】カルシウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したラジウム-223からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図4】カルシウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合した鉛-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図5】カルシウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したビスマス-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図6】ストロンチウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したラジウム-223からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図7】ストロンチウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合した鉛-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図8】ストロンチウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したビスマス-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図9】ストロンチウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したアクチニウム-225ならびに崩壊娘放射性核種フランシウム-22およびビスマス-213からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図10】バリウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したラジウム-223からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図11】バリウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合した鉛-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図12】バリウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したビスマス-211からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図13】溶液中における、アルギン酸カルシウム微粒子に結合したアクチニウム-225ならびにその崩壊娘放射性核種フランシウム-221およびビスマス213からの放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図14】アルギン酸カルシウム微粒子に結合した様々な量のアクチニウム-225の添加による放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図15】アルギン酸カルシウム微粒子に結合した様々な量のフランシウム-221の添加による放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図16】アルギン酸カルシウム微粒子に結合した様々な量のビスマス-213の添加による放射能の経時的な測定の結果を示す図である。
図17】様々なアルギン酸塩ゲルの経時的な重量を示す図である。
図18】前述のペプチドの細胞への結合に関連する実験における、平均チャネル数対MDCK細胞に添加されたFITC-RGDペプチドの濃度を示す図である。
図19】様々なアルギン酸塩ゲルを添加した細胞の経時的な細胞数の変化を示す図である。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、請求項1に記載のアルギン酸塩ゲルであって、アルギン酸塩ゲルは、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、二価カチオンと少なくとも1つの放射性核種カチオンとをキレート化する、
アルギン酸塩ゲルに関する。
【0008】
有利には、ゲルはキレート化によって放射性核種カチオンに結合することができるが、ペプチド配列は特定の細胞に選択性をもたらす。
【0009】
別の態様では、本発明は、請求項6に記載されるように、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの放射性核種カチオンと、を含むアルギン酸塩を含む少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を提供する方法であって、本方法は、
i)アルギン酸塩の溶液を用意するステップであって、アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、ステップと、
ii)ステップi)からの溶液を、二価カチオンを含む水溶液に滴下するステップであって、前述の二価カチオンが、Ca2+、Sr2+、およびBa2+から選択され、少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を形成する、ステップと、
iii)ステップii)のアルギン酸塩ゲル粒子を、少なくとも1つの放射性核種カチオンを含む溶液と接触させるステップと
を含む、方法に関する。
【0010】
別の態様では、請求項7に記載されるように、本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に、上記のアルギン酸塩ゲルを含む組成物に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、キットであって、
第1の容器において、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと
を含む、アルギン酸塩
を含む、アルギン酸塩ゲルと、
場合により、適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットに関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、キットであって、
第1の容器において、
-水溶性アルギン酸塩であって、
アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、
水溶性アルギン酸塩と、
-水と、
-場合により、別の適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
-水に不溶性の粒子であって、当該粒子が、アルギン酸塩と、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の二価カチオンとを含む、水に不溶性の粒子と、
-水と
を含み、
第3の容器において、
-少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
-適切な溶媒と
を含む、キットに関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、請求項10に記載されるように、医薬品として使用するための上記のゲルまたは組成物に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、請求項11に記載されるように、増殖性疾患の治療に使用するための上記のゲルまたは組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語、表記および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有することを意図する。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明確性のためにおよび/または容易に参照するために本明細書で定義され、本明細書にこのような定義を含めることは、当技術分野で一般的に理解されるものとの実質的差異を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0016】
本発明者らは、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩を含むアルギン酸塩ゲルを使用して、放射性核種を安定にキレート化し、望ましくない細胞に放射線を選択的に送達することができることを発見した。放射性核種カチオンは、アルギン酸塩への結合についてアルギン酸塩ゲルのゲル化イオンと競合することができ、元のゲル化イオンの一部を置き換え、それによってそれ自体がゲルネットワークの一部になることができる。放射性核種カチオンがアルギン酸塩によってキレート化されてアルギン酸塩系ゲルの一部を形成する場合、アルギン酸塩ゲルは、キレート化によって放射性核種を効果的かつ強固に定位置に保持することができる。ペプチドは、重要な選択性をもたらし得る。したがって、放射性核種を含むそのようなアルギン酸塩ゲルは、有望な薬物候補を表す。
【0017】
したがって、一態様では、本発明は、ペプチド結合アルギン酸塩を含むアルギン酸塩ゲルであって、ペプチドが、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチドであり、アルギン酸塩ゲルが、アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される放射性核種カチオンをさらに含む、アルギン酸塩ゲルに関する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、二価カチオンと少なくとも1つの放射性核種カチオンとをキレート化する、
アルギン酸塩ゲルに関する。
【0019】
アルギン酸塩、構造Iは、褐藻類に見られる構造多糖であり、乾燥物質の最大40%を構成する。その主な機能は、藻類組織に強度と柔軟性を与えることである。アルギン酸塩は、(1→4)結合β-D-マンヌロン酸(M)およびα-L-グルロン酸(G)残基の非分枝二元コポリマーである。以下の構造Iの図において、「G」および「M」は、それぞれα-L-グルロン酸β-D-マンヌロン酸を識別する。炭素の番号付け、ならびにグリコシド結合の種類(αおよびβ)も示されている。
【化1】
【0020】
2つのウロン酸モノマーの相対量およびポリマー鎖に沿ったそれらの連続配置は、アルギン酸塩の起源に応じて大きく変化する。ウロン酸残基は、ブロックのパターンでポリマー鎖に沿って分布しており、ここで、グルクロン酸(G)残基のホモポリマーブロック(Gブロック)、マンヌロン酸(M)残基のホモポリマーブロック(Mブロック)およびM単位とG単位の交互配列を有するブロック(MGブロック)が共存する。したがって、アルギン酸塩分子は、モノマー組成物単独では記述することができない。平均ブロック長を計算するために、アルギネート鎖中のM残基およびG残基の配列のNMR特性評価が必要である。また、NMR分光法によって、アルギン酸塩が規則的な繰り返し単位を有しないことも示されている。アルギン酸塩の機能特性は、主にG含有量、Gブロック長におけるGの平均数および分子量によって影響される。
【0021】
アルギン酸塩は、次の順序、すなわちPb2+>Cu2+=Ba2+>Sr2+>Cd2+>Ca2+>Zn2+>Co2+>Ni2+で減少するカチオンに対して強い親和性を有する。アルギン酸塩は、ほとんどの二価および多価カチオンと共にゲルを形成するが、カルシウムが最も広く使用されている。アルギン酸塩ゲルを形成するために使用されるカチオンは、「ゲル化イオン」と呼ばれる。ほとんどの一価カチオンおよび二価Mg2+イオンはゲル化を誘導しないが、Ba2+およびSr2+のようなイオンはCa2+より強いアルギン酸塩ゲルを生成する。ゲル化反応、すなわちアルギン酸塩系ゲルの形成は、カチオンがアルギン酸塩分子内のGブロック間の鎖間結合に関与して、ゲルの形態の三次元ネットワークを生じさせるときに起こる。図1に示すように、図1に暗い球として示され、ゲル化カチオンと呼ばれることがあるカチオンは、ヒドロキシル基およびグリコシド結合中の酸素原子のカチオンと孤立電子対電子との間のイオン相互作用を介してアルギン酸塩によって効果的にキレート化される。例えば、連続するグルクロン酸残基は、カチオンと架橋する能力を有する。特に、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムは、ゲルを形成するアルギン酸塩ポリマー鎖を効果的に架橋する。
【0022】
例えばカルシウムイオンによるゲル化は、室温および生理学的pHで形成および固化され得る熱安定性ゲルの瞬間的な形成をもたらす。ゲル強度は、グルロン含有量およびGブロック中のG単位の平均数に依存する。さらに、分子量が増加したアルギン酸塩を使用すると、少なくとも分子量の特定の限界まで、ゲルの強度も増加する。高いG含有量は、一般に、より強く、より堅く、より脆く、より多孔性のゲルをもたらす。逆に、高いM含有量は、より弾性でより弱いゲルをもたらす。
【0023】
本発明は、アルギン酸塩ゲルを提供する。本明細書で使用される「ゲル」という用語は、液体が相互浸透する能力を有する三次元ネットワーク組織を意味することを意図しており、構造コヒーレントマトリックスは液体の大部分を含み得る。ゲルは前述の液体を含んでもよく、または乾燥していてもよい。「乾燥」ゲルは、「湿潤」ゲルを乾燥させることによって調製されていてもよく、または沈殿などの当業者に既知の任意の他の方法で得られていてもよい。ゲルは、ブロックゲル、フォーム、ペースト、非晶質ゲル、および粒子を含むがこれらに限定されない様々な形態であってもよい。水が溶媒である場合、ゲルは「ヒドロゲル」として定義され得る。
【0024】
バイオポリマーアルギン酸塩は、マンヌロン酸塩に富むポリマーまたはグルロン酸塩に富むポリマーとして生じ得ること、すなわち、アルギン酸塩の組成割合は、マンヌロン酸塩に富むアルギン酸塩においては50%を超えるマンヌロン酸であり、一方、組成割合は、グルロン酸塩に富むアルギン酸塩においては50%を超えグルロン酸塩であることが文献から知られている。Gリッチなアルギン酸塩は、より高い割合のグルロン酸残基を有し、一連のより多くの連続するグルロン酸部分、すなわちGブロックサイズを有し得る。Gリッチなアルギン酸塩は、Mリッチなアルギン酸塩よりも多くのカチオンに結合することができ、したがってより強いポリマーゲルマトリックスを形成できることがさらに知られている。Mリッチなアルギン酸塩は、結合部位がより少なく、したがって、架橋されたときにより弱いゲルを形成する。Mリッチなアルギン酸塩およびGリッチなアルギン酸塩から作製されたゲルは強度が異なり、異なる量の放射性核種にも結合、例えばキレート化する。当業者に知られているように、ポリマー鎖長(重合度、DPn)または重量平均分子量もしくは数平均分子量の変動が許容される。
【0025】
したがって、本発明のアルギン酸塩ゲルは、Mリッチなアルギン酸塩、Gリッチなアルギン酸塩、またはそれらの組み合わせに基づくことができる。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲルは、Gリッチなアルギン酸塩に基づく。好ましい実施形態では、アルギン酸塩ゲルのGブロック中のG単位の平均数は1を超える。ゲルは、ヒドロゲル、オルガノゲルまたはキセロゲルであり得る。好ましくは、ゲルはヒドロゲルである。
【0026】
本発明のアルギン酸塩ゲルは、好ましくは、500~350000、好ましくは10000~250000、より好ましくは25000~150000の分子量を有するアルギン酸塩を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルギン酸塩ゲル」という用語は、任意の種類のカチオンをキレート化するアルギン酸塩から形成された任意のゲルを指す。当業者は、一般にアルギン酸塩ゲル、それらの構成、およびそのようなゲルの形成方法に精通している。
【0028】
本発明のアルギン酸塩ゲルは、細胞接着ペプチドなどの細胞接着性ペプチドなどの増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩を含む。本明細書で使用される場合、「受容体」という用語は、分子、すなわちエピトープ部位の特定の空間的および極性の構成を認識することができる任意の化合物または組成物を意味する。受容体は、典型的には、膜貫通受容体などの膜受容体などの細胞表面受容体であり、少なくとも1つの細胞外分子を受容する、例えば結合することができる。有利には、受容体は、増殖性疾患に罹患した細胞によって単独で発現されるか、または過剰発現される。細胞と生体材料との相互作用は、材料表面の接着分子を認識する細胞受容体を介して媒介されることが多い。したがって、アルギン酸塩ゲルにおける、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有するペプチドの存在は、そのようなペプチドを含まない対応するゲルと比較して、アルギン酸塩ゲルに対する細胞適応性を改善し得る。アルギン酸塩の化学的特性および物理的特性は、他の化合物をアルギン酸塩ポリマーに結合することによって改変することができることが当技術分野から知られている。しかしながら、ペプチドがアルギン酸塩ポリマー上に存在する場合、ゲルの特性は、ペプチドの存在および/または量ではなく、主にアルギン酸塩のG含有量および分子量に関連することが知られている。さらに、ペプチドの量は、アルギン酸塩のゲル化にも影響を及ぼさないことが実証されており、これは、放射性核種カチオンの組み込みに依存するのと本質的に同じ機構であり、少なくとも3.9x10-6から2x10-5モルのペプチド/gアルギン酸塩の範囲である。
【0029】
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列は、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用する、例えば結合することができることが当業者に既知のペプチド配列の群から選択される。受容体は、好ましくは、前述の細胞の表面上に発現される受容体である。
【0030】
増殖性疾患は、悪性または良性であり得る。増殖性疾患に罹患した細胞は、腫瘍細胞、癌細胞、過形成性疾患に罹患した細胞、新生物性疾患に罹患した細胞を含むまたはそれらからなる群から選択され得る。好ましい実施形態では、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドは、癌細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドである。本明細書で使用される場合、「癌細胞」および「腫瘍細胞」という用語は、異常な増加した速度で分裂する細胞を指す。癌細胞は、扁平上皮癌、非小細胞癌(例えば、非小細胞肺癌)、小細胞癌(例えば、小細胞肺癌)、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原性癌、黒色腫、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、胆管癌、乳頭状癌、移行細胞癌、絨毛癌、セモノマ、胚性癌、乳癌、消化管癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および頸部および頭部の扁平上皮癌などの癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、腱索肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫などの肉腫、ならびに神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、髄芽腫、シュワン細胞腫および上衣腫を含む神経系の腫瘍を含むが、これらに限定されない。当業者は、増殖性疾患に罹患した特定の種類の細胞、特に癌細胞と相互作用するために使用され得るペプチド配列について知識がある。
【0031】
本開示では、ペプチドは、それらのペプチド配列の関連部分または全体を構成するアミノ酸の一文字略語を使用して言及される。これらの略語は当業者によく知られている。一実施形態では、ペプチド配列は、インテグリン結合ペプチド配列、LDL結合ペプチド配列、MMP-2結合ペプチド配列、IL13R2a結合ペプチド配列、VDAC1結合ペプチド配列、NBD結合ペプチド配列、cMYC結合ペプチド配列、CXCR4結合ペプチド配列、MDGI結合ペプチド配列、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。好ましい実施形態では、ペプチド配列は、インテグリン結合ペプチド配列を含む群から選択される。本明細書で使用される場合、「結合」という用語は、受容体結合ペプチドに言及する場合、前述の受容体と相互作用し得るペプチド配列を有するペプチドに起因して、前述の受容体と相互作用および/または化学的に結合することができると理解され得る。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つのペプチドは、RGD、c(RGDfK)などのインテグリン結合ペプチド、TFFYGGSRGKRNNFKTEEYなどのLDL結合ペプチド、MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCRなどのMMP-2結合ペプチド、ACGEMGWGWVRCGGSLCWなどのIL13R2a結合ペプチド、SWTWEKKLETAVNLAWTAGNSNKWTWKなどのVDAC1結合ペプチド、TALDWSWLQTEなどのNBD結合ペプチド、WPGSGNELKRAFAALRDQIなどのcMYC結合ペプチド、RACRFFCなどのCXCR4結合ペプチド、ACGLSGLGVAなどのMDGI結合ペプチド、YHWYGYTPQNVI、YHWYGYTPENVI、YHWYGYTPQDVI、YHWYGYTPKNVI、YHWYGYTPQKVI、KLARLLT、cyclo(KLARLLT)などのEGFR結合ペプチド、およびサブスタンスP(RPKPQQFFGLM)などのNK1結合ペプチドを含むまたはそれらからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのペプチドは、RGD、TFFYGGSRGKRNNFKTEEY、MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR、ACGEMGWGWVRCGGSLCW、SWTWEKKLETAVNLAWTAGNSNKWTWK、TALDWSWLQTE、WPGSGNELKRAFAALRDQI、RACRFFC、ACGLSGLGVA、およびRPKPQQFFGLMの群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのペプチドは、標的受容体および/または腫瘍発現に基づいて、以下の表1から選択される。
【表1】
【0034】
アルギン酸塩分子当たりの、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有するペプチドの数は変化し得る。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩分子は、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する1つのペプチドを含む。好ましい実施形態では、アルギン酸塩分子は、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも2つのペプチド、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも5つを含む。いくつかの実施形態では、本発明のアルギン酸塩ゲルは、少なくとも2つのアルギン酸塩分子を含み、アルギン酸塩の少なくとも1つは、別のアルギン酸塩よりも多くの前述のペプチドを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのペプチドは、インテグリン結合ペプチドを含むまたはそれらからなる群から選択される。インテグリンは癌において役割を果たし、インテグリンに特異的に結合することができる治療薬を開発する機会を表すことが知られている。
【0036】
特定の実施形態では、アルギン酸塩は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)の配列を有するペプチドを含む。RGDペプチド配列は、インテグリンαvβ3に結合することが示されている。配列RGDを含むペプチドを含むアルギン酸塩は、アルギン酸塩ヒドロゲルと細胞との間の生物学的相互作用を開始する能力を有することが示されており、αvβ3へのRGDペプチドの標的化結合が腫瘍イメージング研究で使用されている。好都合には市販されているRGD-アルギン酸塩を使用して、インテグリン発現腫瘍を特異的に標的化することができる。次いで、ゲルは、放射性核種に結合し、インテグリン発現腫瘍を効果的に標的化することができる。様々な種類のインテグリン受容体に対する親和性および選択性は細胞タイプ間で異なり、RGDの隣接アミノ酸ならびにペプチドの立体配座および長さに依存する。したがって、当業者によって理解されるように、最適なRGD含有ペプチド配列の種類およびRGD密度は、標的となる増殖性疾患に罹患した細胞に応じて異なり得る。
【0037】
少なくとも1つのペプチドは、直鎖状であり得る。少なくとも1つのペプチドは環状であり得る。有利には、特定の環状ペプチドは、細胞受容体に対する親和性の増加、例えばEGFRおよびインテグリン受容体への結合の増強を示している。
【0038】
少なくとも1つのペプチドは、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列からなり得る。好ましくは、ペプチドは、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列およびさらなるペプチド配列、例えば増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列とアルギン酸塩との間のさらなるペプチド配列を含む。さらなる配列は、例えば、「スペーサー」、すなわち、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列とアルギン酸塩との間の所望の距離を確保するための、例えば受容体とのより良好な相互作用を可能にするための、配列であり得る。そのようなさらなる配列の非限定的な例は、GGGGRGDSPなどのGRGDSPなどの少なくとも1~4個のグリシンを含む配列である。
【0039】
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドは、共有結合などを介して、例えばアミド結合を介して、アルギン酸塩に直接連結されていてもよく、または増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドは、連結基を介してアルギン酸塩に連結されていてもよい。
【0040】
ペプチドをアルギン酸塩に直接または連結基を介して連結する方法は、当技術分野でよく知られており、水性カルボジイミドカップリングなどの標準的な化学を使用してもよい。適切な連結基は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、様々な連結基が抗体薬物複合体の分野で知られている。連結基の非限定的な例としては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)および2-(マレイミドメチル)-1,3-ジオキサン(MD)が挙げられる。本発明の目的のために、アルギン酸塩は、関連ペプチドをアルギン酸塩に結合させることによって調製されてもよく、またはペプチド結合アルギン酸塩として商業的に入手されてもよい。例えば、ペプチド結合アルギン酸塩RGD-アルギン酸塩は市販されており、NOVATACH-4GRGDSPの商品名で販売されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明のアルギン酸塩ゲルは、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有するペプチドを含まないアルギン酸塩、例えば非置換アルギン酸塩をさらに含む。
【0042】
アルギン酸塩および少なくとも1つのペプチドは、当業者に既知の任意の方法、例えば商業的に得られる方法、例えば当業者に利用可能な任意の合成プロトコルを使用して合成される方法、例えば酵素的、合成的および/または化学的に製造される方法によって得ることができる。
【0043】
本発明のアルギン酸塩ゲルは、少なくとも1種類の二価カチオンをさらに含む。二価カチオンは、アルギン酸塩および少なくとも1つの二価カチオンが一緒になってアルギン酸塩ゲルを形成するように選択される。ゲル形成に必要なカチオンの量は当業者によく知られており、所望のゲル強度、使用されるアルギン酸塩の種類(GリッチまたはMリッチ)、およびゲル化溶液の等張性などの要因に基づいて決定することができる。50~150mMの濃度がしばしば使用される。二価カチオンは、好ましくは、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群から選択され、より好ましくは、二価カチオンは、Ba2+、Sr2+、Ca2+、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0044】
当業者は、様々な形態のアルギン酸塩ゲルを提供する方法について知識を有する。少なくとも1つのペプチドおよび少なくとも1つの二価カチオンを含むアルギン酸塩は、例えば、前述のアルギン酸塩を前述のカチオンの溶液中に滴下する拡散法(外部ゲル化)、水に不溶性の前述のカチオンの塩を使用するin situゲル化(内部ゲル化)、または冷却時のゲル化によってゲル化することができ、前述のアルギン酸塩および前述のカチオンは高温の溶液中に存在し、アルギン酸塩ゲルは溶液の冷却時に形成される。
【0045】
本発明のアルギン酸塩ゲルは、少なくとも1つの放射性核種カチオンをさらに含む。本明細書で使用される場合、放射性核種、放射性同位体または放射性同位体とも呼ばれ得る「放射性核種」という用語は、過剰な核エネルギーを有し、それを不安定にする原子である。この過剰なエネルギーは、次の3つの方法のうちの1つにおいて使用され得る:ガンマ線として核から放出される、その電子の1つに伝達されて、それを変換電子として放出する、または核から新しい粒子(アルファ粒子またはベータ粒子)を作成し放出するために使用される。これらのプロセスの間、放射性核種は放射性崩壊を受けると言われる。得られた核種は、娘核種または子孫核種と呼ばれる。
【0046】
好ましくは、少なくとも1つの放射性核種は、アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの放射性核種は、アクチニウム-225、アクチニウム-228、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、放射性核種は、ラジウム-223およびアクチニウム-225から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、放射性核種はラジウム-223である。有利には、本発明のアルギン酸塩ゲルは、ラジウム-223の娘崩壊核種、すなわち、ポロニウム-215、鉛-211、ビスマス-211、タリウム-207、および鉛-207にも結合し得る。
【0049】
他の実施形態では、放射性核種はアクチニウム-225である。ラジウム-223と同様に、本発明のアルギン酸塩ゲルは、有利には、アクチニウム-225の娘崩壊核種、すなわちフランシウム221、およびビスマス213、ならびにポロニウム-213、タリウム-209、および鉛-209にも結合する。
【0050】
上述のように、アルギン酸塩系ゲルは、ヒドロキシル基およびグリコシド結合中の酸素原子のカチオンと孤立電子対電子との間のイオン相互作用を介したアルギン酸塩によるカチオンのキレート化によって形成される。放射性核種カチオンは、例えば元の架橋カチオンの一部を置き換え、それによってそれ自体がゲルネットワークの一部になることによって、アルギン酸塩への結合について競合することができる。したがって、放射性核種カチオンは、ゲルである三次元ネットワークの一部になり得る。放射性核種カチオンがアルギン酸塩によってキレート化されてアルギン酸塩系ゲルの一部を形成する場合、放射性核種は、放射性核種のキレート効果によってアルギン酸塩ゲル内の所定の位置に効果的かつ強固に保持されるが、アルギン酸塩構造は、アルファ粒子放出の反跳エネルギーを吸収するのに十分に柔軟であり、それによって新しく形成された娘崩壊核種を効果的に保持する。
【0051】
好ましい実施形態では、ゲルは不均一なゲルである。例3~7に示すように、放射性核種は、そのようなアルギン酸塩ゲルから効果的に放出されない。
【0052】
活性薬物、すなわち放射性核種を保持するこの様式は、アルギン酸塩ヒドロゲルに薬物を封入する頻繁に使用される方法と対照的である。このようなヒドロゲルでは、架橋アルギン酸塩ポリマー分子は実際に水を適所に保持しており、架橋ポリマー鎖間の水が占める空間は、薬物を封入することができる細孔として作用する。しかしながら、アルギン酸塩ゲルは、分子量が約5万を超える分子を効果的に保持するが、より低い分子量を有する分子は、それらの電荷および分子量に比例する速度で拡散する。本発明のアルギン酸塩ゲルは、キレート化の原理に基づいており、当該技術分野で説明されているような細孔への封入よりも有意に安定な活性薬物の組み込みを可能にし得る。
【0053】
本発明によれば、ゲルは、酸化状態2+(二価カチオン)、酸化状態3+(三価カチオン)、または酸化状態4+(四価カチオン)を有する少なくとも1つの放射性核種カチオンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの放射性核種カチオンは、少なくとも1つの二価の放射性核種カチオンである。アルギン酸塩系ゲルの架橋カチオンは典型的には二価カチオンであるので、二価放射性核種カチオンは比較的容易にこれらのカチオンの代わりになると予想することができる。驚くべきことに、本発明者らは、本発明のアルギン酸塩ゲルが架橋カチオンとしてCa2+、Ba2+および/またはSr2+を含む場合、ゲルはまた、放射性核種ルテチウム-177(3+の酸化状態を有する元素)およびトリウム-227(4+の酸化状態を有する元素)に結合することができることを見出した。ゲルはまた、トリウム-227の娘崩壊核種に結合し得る。例6に示すように、利用可能なトリウム-227の約30%がアルギン酸塩ゲルに結合しているが、利用可能なラジウム、鉛およびビスマス核種の100%がアルギン酸塩ゲルに結合している。したがって、開示されたアルギン酸塩ゲルは、ラジウム、鉛またはビスマスを含むその娘崩壊核種の除去によるトリウム-227の精製に使用することができる。
【0054】
アルファ粒子は、非常に高いエネルギーを有しながら、通常100μm未満の非常に短い距離しか移動しない。少なくとも1つの放射性核種カチオンがアルファ放射体であるか、またはアルファ放射体を含む場合、放射性核種カチオンがゲルの表面近くではなく、ゲルの中の遠すぎる位置にあると、かなりの数のアルファ粒子が失われる可能性がある。したがって、少なくとも1つの放射性核種カチオンが少なくとも1つのα放射体であるかまたはそれを含む場合、少なくとも1つの放射性核種カチオンは、ゲルの表面下100μm未満、好ましくはゲルの表面下50μm未満、より好ましくは10μm未満に位置するべきである。放射性核種カチオンのこのような配置は、ゲル化後に少なくとも1つの放射性核種カチオンを導入することによって、すなわち、ゲルを最初に形成し、次いで、ゲル化中に放射性核種カチオンを導入するのではなく、放射性核種カチオンをゲルに適用することによって得ることができる。したがって、本発明のアルギン酸塩ゲルの放射性標識は、放射性核種カチオンの溶液または懸濁液を粒子の形態などのゲルの懸濁液と均一に混合し、次いで、遠心分離またはカラム精製などによって標識粒子から残留未結合放射性核種カチオンを分離することによって有利に実施することができる。
【0055】
本発明のアルギン酸塩ゲルは、in vivoで放射性崩壊を送達するのに特に適している。ゲルは、生体適合性および生分解性であり、例えば、セラミックおよびガラスによって記載されるような固体鉱物を含む製剤に見られるものよりも高いレベルの物理的柔軟性および圧縮性を提供し得る。さらに、腫瘍細胞と相互作用するためのペプチドの存在は、アルギン酸塩ゲル、したがって放射性核種が腫瘍細胞に物理的に近いことを確実にする、高度に選択的な放射線療法に寄与し得る。アルギン酸塩ゲルの形態(例えば、粒子対ブロックゲル)および対象への投与の種類(例えば、静脈内投与対腫瘍部位への直接注射)に応じて、ペプチドは、例えばADC(抗体薬物複合体)技術で使用される標的化単位を反映する「標的化単位」として作用し得る、および/またはアルギン酸塩ゲルが経時的に所定の位置に留まることを確実にするように機能し得る。ゲルの物理的形態もまた、後者に寄与し得る。さらに、放射性核種およびその子孫のゲルへの安定なキレート化は、放射能の漏れを最小限に抑えて効率的な放射線療法を確実にする。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明のアルギン酸塩ゲルは、ブロックゲルの形態である。他の実施形態では、ゲルは、発泡体、ペースト、または非晶質ゲルの形態である。さらに他の実施形態では、ゲルは粒子の形態である。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明のアルギン酸塩ゲルは、少なくとも1つの粒子、例えば少なくとも1つのナノ粒子、例えば少なくとも1つの微粒子、例えば少なくとも1つのロッド、例えば少なくとも1つの繊維、例えば少なくとも1つの噴霧乾燥粒子および/または凍結乾燥粒子の形態であり、好ましくは少なくとも1つの微粒子である。有利には、粒子は、注射可能な組成物に容易に組み込まれ得る。さらに、粒子は乾燥しており、したがって容易に貯蔵することができる。
【0058】
したがって、これらの実施形態では、本発明は、アルギン酸塩ゲル粒子であって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、0、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、二価カチオンと少なくとも1つの放射性核種カチオンとをキレート化する、
アルギン酸塩ゲル粒子をもたらす。
【0059】
アルギン酸塩ゲルとの関連で記載される実施形態および特徴は、アルギン酸塩ゲル粒子に等しく適用される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「粒子」という用語は、ビーズなどの球体などの材料の質量を指す。いくつかの実施形態では、粒子は、ナノ粒子または微粒子、好ましくはナノ粒子である。本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、1000nm未満、例えば1~1000nmの直径を有する任意の粒子を指す。同様に、「ナノ粒子」という用語は、約1~1000nmの間の平均直径を有する複数の粒子を指す。「微粒子」という用語は、1000μm未満、例えば1~1000μmの直径を有する任意の粒子を指す。同様に、「微粒子」という用語は、約1~1000μmの間の平均直径を有する複数の粒子を指す。
【0061】
有利には、アルギン酸塩ゲル粒子は、10~100000nm、例えば50~10000nm、例えば50000~80000nm、好ましくは10~40000nmのサイズを有する。粒子の「サイズ」への言及は、粒子の最大直線寸法の長さへの言及である。例えば、真球状の粒子のサイズは、その直径である。サイズは、例えば、動的光散乱を特徴とする粒子の流体力学的半径を指すことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲル粒子は、前述のペプチドのうちの1つのみを含む。他の実施形態では、粒子は、前述のペプチドのうちの2つ以上、例えば5つ、例えば10個を含む。前述のペプチドの数は、粒子のサイズに基づいて選択され得る。ペプチドは、互いに同じであっても異なっていてもよい。ペプチドと粒子との質量比は、ペプチドの分子量および粒子の直径に依存し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲル粒子は、1つの放射性核種カチオンを含む。他の実施形態では、粒子は、アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含むまたはそれらからなる群から独立して選択される複数の放射性核種カチオン、例えば2つ、例えば3つ、例えば5つの放射性核種カチオンを含み、好ましくは、アクチニウム-225、アクチニウム-228、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、およびそれらの組み合わせから独立して選択される。すべての実施形態において、粒子当たりの放射性核種カチオンの数の完全な制御は期待できないことに留意されたい。粒子が放射性核種カチオンを含有する溶液と接触する放射性標識プロセス中に、粒子あたりの放射性核種カチオンの統計的分布が生じる。
【0064】
アルギン酸塩系ゲルの溶液は調製方法に強く依存することが示されている。ゲル化イオンがアルギン酸塩溶液の液滴中に拡散することによってゲル粒子が形成されると、粒子中のポリマーの不均一な分布が得られる。この観察は、ゲル化ゾーンに向かうアルギン酸塩分子の拡散速度に対するゲル化イオンの粒子への拡散速度の差によって説明することができる。外部溶液からのカルシウムは、アルギン酸塩粒子に拡散する。非ゲル化イオンが存在しない場合(例えばナトリウム、例えば塩化ナトリウム)、ゲル化粒子内のアルギン酸塩分子は粒子の外縁領域に移動する。これにより、ゲル粒子の中央よりも高いアルギン酸塩濃度の局所的な領域が生じる。この種類のゲル化は「不均一」と呼ばれ、得られたゲルは「不均一ゲル」と呼ばれる。しかしながら、非ゲル化イオンが存在する場合、非ゲル化イオンは、アルギン酸塩への結合についてゲル化イオンと競合する。非ゲル化イオンはゲル化を誘発しないが、ゲル化イオンの架橋作用を遅延させる。この場合、ゲルは、「均一」ゲル化と呼ばれる、アルギン酸塩粒子全体にわたって本質的に均一なアルギン酸塩濃度で形成する。得られたゲルを「均一ゲル」と呼ぶ。どちらの場合も、ゲル化プロセスはほぼ瞬時である。
【0065】
より均一な粒子は、より不均一な粒子よりも機械的に強く、より高い多孔度を有し得る。例えば、塩化ナトリウムを塩化カルシウムと共に添加すると、より均一な粒子が形成される。ゲル化イオンと非ゲル化イオンの両方の高濃度でゲル化した高分子量アルギン酸塩で最大の均一性に達する。したがって、例2は、マイクロスフェアの形態の均一なアルギン酸塩ゲル粒子を放射性核種カチオンでコーティングできることを示しているが、好ましい製剤は、不均一なゲル化を利用して、アルギン酸塩ゲル粒子の外側部分内のアルギン酸塩濃度を増加させることができる。ゲル粒子の外側部分に沿ったより高いアルギン酸塩濃度は、粒子に強度を与えるとともに、例えば放射性核種カチオンのためのより多くの結合部位を提供する。
【0066】
したがって、好ましい実施形態では、アルギン酸塩ゲル粒子は不均一なゲル粒子である。他の実施形態では、アルギン酸塩ゲル粒子は均一なゲル粒子である。
【0067】
いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲル粒子は、必要に応じてゲルにさらなる強度を与えるため、および/またはアルギン酸塩ゲルの表面電荷を負電荷から正電荷に変化させるためなどに、ポリカチオンでコーティングされる。好適なポリカチオンのAON限定的な例は、ポリ-L-リジンである。あるいは、アルギン酸塩ゲルは、例えば表面電荷を正電荷に変化させるために、バイオポリマーキトサンでコーティングされてもよい。正の表面電荷は、例えば、アニオン性放射性核種を結合するのに有用であり得る。
【0068】
別の態様では、本発明は、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの放射性核種カチオンと、を含むアルギン酸塩を含む少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を提供する方法であって、本方法は、
i)アルギン酸塩の水溶液を用意するステップであって、アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、ステップと、
ii)ステップi)からの溶液を、二価カチオンを含む水溶液に滴下するステップであって、前述の二価カチオンが、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、およびZn2+から選択され、少なくとも1つのアルギン酸塩ゲル粒子を形成する、ステップと、
iii)ステップii)のアルギン酸塩ゲル粒子を、少なくとも1つの放射性核種カチオンを含む溶液と接触させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0069】
上記のゲル、特にゲル粒子の文脈で記載された実施形態および特徴は、ゲル粒子を提供する方法にも適用される。
【0070】
この方法は、微粒子を提供するのに特に適している。有利には、この方法は、少なくとも1つの放射性核種カチオンが粒子の全体にわたってランダムに分布するのではなく、粒子の表面近くに含まれるゲル粒子を提供する。
【0071】
ステップi)の溶液中のアルギン酸塩の濃度は、乾燥物質含有量について補正して、好ましくは0.2~15%(wt/v)、より好ましくは0.7~5%(wt/v)、さらにより好ましくは1.5~2%(wt/v)である。
【0072】
ステップii)の二価カチオンを含む水溶液は、好ましくは10~200mM、より好ましくは50~250mM、例えば50~100mMの前述のカチオンの総濃度を有する。二価カチオンは、ゲル化を誘導し、ヒトにおいて非毒性であるかまたは許容される毒性を有するカチオンでなければならない。好ましい実施形態では、ステップii)の二価カチオンは、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0073】
ステップi)の溶液を、ステップii)の二価カチオンを含む水溶液に滴下する。滴下の目的は、ある程度球形である粒子を形成することであり得る。そのような場合、滴下は、粒子のサイズおよびサイズ分布を制御することができる静電ビーズ発生器を使用して有利に実施することができる。しかしながら、粒子は、代わりに、手動または重力液滴形成、同軸空気流、および当業者に知られている他の技術などの他の手段によって形成されてもよい。アルギン酸塩マイクロ粒子およびナノ粒子を製造するためのいくつかの技術が当技術分野で知られている。別の方法は、水溶性アルギン酸ナトリウムまたはペプチド結合アルギン酸塩および水溶性塩化カルシウムで構成される液滴の直接噴霧乾燥を含む。水中油型乳化および錯化反応などの他の技術を文献に見出すことができる。ゲル化方法または装置の選択は、本発明の有用性を損なうものではない。
【0074】
放射性核種をアルギン酸塩の非ゲル固体粒子に結合させることも可能である。
【0075】
参照のために、ヒトでの使用に適したアルギン酸塩ゲルを調製するための手順のさらなる例は、例えばASTM Guideline F2315に見出すことができる。
【0076】
開示された方法の利点は、ステップii)から生じる少なくとも1つのゲル粒子をあらかじめ形成および/または保存し、ステップiii)を後で行うことができることである。例えば、ステップii)のゲル粒子は、必要になるまで、例えばステップii)の溶液中に保存され得る。あるいは、ステップii)のゲル粒子を噴霧乾燥または凍結乾燥プロセスに供してもよい。水またはNaCl溶液中に保存された滅菌アルギン酸塩マイクロスフェアは、特に溶液中にカルシウムが少量存在する場合、数年間安定であることが示されている。例9は、アルギン酸塩ゲル粒子の安定性をさらに示す。
【0077】
いくつかの実施形態では、ステップiii)は、3~8のpHを維持するために緩衝溶液中で行われる。そのような緩衝剤の使用は、ゲル粒子の構造的完全性の維持に寄与し得る。ステップiii)の持続時間は、典型的には20~180分、例えば30~120分である。凍結乾燥ゲル粒子を使用する場合、当業者に知られているように、放射性核種溶液の体積は、粒子の再水和を可能にするように調整されるべきである。
【0078】
上記で開示された方法は、外部ゲル化の概念を利用する。本発明者らは、本発明のゲル粒子の調製のために、開示された方法が、ステップii)のカチオンと共混合された放射性核種カチオンを用いてゲル化を実施することと比較してより有利であることを見出した。後者は、特許請求の範囲に記載の方法のように表面の近くではなく、ゲル粒子内に放射性核種カチオンの組み込みをもたらす。上述のように、アルファ粒子は、非常に高いエネルギーを有しながら、通常100μm未満の非常に短い距離しか移動しない。したがって、例えば>100μmのサイズを有する粒子内に放射性核種カチオンを放出するアルファ粒子を組み込むことは、粒子自体内のエネルギーの吸収に起因してかなりの数のアルファ粒子の損失をもたらす。したがって、本発明の方法は、アルファ放射体を含む粒子を調製する場合に特に有用である。
【0079】
本発明のアルギン酸塩ゲル粒子は、均一または不均一ゲル化手順のいずれかによって、すなわち均一ゲル化のために、典型的には濃度が最大0.9%のNaClなどのある量の非ゲル化イオンを含むアルギン酸塩溶液およびゲル化イオン溶液を用いて、または等張性を作り出すために塩の添加を含まずに作製することができる。ゲル化溶液は、マンニトールの使用によってNaClを含まない等張性にすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、ステップii)の二価カチオンを含む水溶液は、例えば均一なゲル化のために、NaClをさらに含む。他の実施形態では、不均一なゲル化が望まれる場合前述の溶液は実質的な量のNaClを含まない。
【0080】
有利には、この方法は、滅菌アルギン酸塩溶液、滅菌カチオンゲル化溶液を使用することによって無菌的に実施されてもよく、粒子を生成するために使用される滅菌装置は、適切な手段によって滅菌されてもよい。例えば、滅菌アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアは、滅菌凍結乾燥アルギン酸ナトリウムを滅菌水または他の適切な希釈剤に溶解することによって製造することができる。NISCO VAR1静電ビーズ発生器などのマイクロスフェアの製造のための装置は、オートクレーブおよびエタノール消毒によって滅菌することができる。ゲル化浴溶液は、フィルター滅菌によって滅菌することができる。アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアの全製造は、装置を層流空気流(LAF)滅菌ベンチに置くことによって行うことができる。
【0081】
さらに、あらかじめ形成された滅菌アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアへの放射性核種カチオンの導入は、適切な放射性核種カチオンの滅菌溶液を用いて行うことができる。ゲルマイクロスフェアをコーティングするためのインキュベーション後、滅菌溶液の使用によって洗浄を行うことができる。放射性核種でコーティングされた滅菌アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアを滅菌容器に保存することができる。
【0082】
本明細書に開示されるアルギン酸塩ゲルは、従来の薬学的に許容される担体を含有する薬学的に許容される組成物などの所望の投与単位製剤中に活性成分として存在し得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物がレシピエントにとって生理学的に許容されなければならず、組成物の一部である場合、組成物の他の成分と適合性でなければならないことを意味する。「組成物」という用語は、任意の製剤における、1つ以上の本発明による化合物と1つ以上の追加の化学成分との混合物を指す。
【0083】
したがって、別の態様では、本発明は、
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に、二価カチオンおよび少なくとも1つの放射性核種カチオンをキレート化する、
アルギン酸塩ゲルを含む、組成物に関する。
【0084】
好ましい実施形態では、ゲルは粒子の形態であり、その結果、本発明は、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に、二価カチオンと少なくとも1つの放射性核種カチオンとをキレート化する、
アルギン酸塩ゲル
を含む、アルギン酸塩ゲル粒子
を含む、組成物に関する。
【0085】
上記のゲル、特にゲル粒子の文脈で記載された実施形態および特徴は、本発明の組成物にも適用される。
【0086】
組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と組み合わされた活性剤、すなわちゲルを含み、組成物を治療的使用に特に適したものにするので、医薬組成物であると見なされ得る。
【0087】
組成物は、好ましくは、本発明の多数のアルギン酸塩ゲル粒子を含む。粒子は、同じであっても異なっていてもよく、すなわち放射性核種カチオンおよび/またはペプチドの種類および数に関して同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、放射性核種カチオンで標識された単分散粒子または多分散粒子を含む粒子懸濁液である。
【0088】
組成物は、任意の従来の薬学的に許容される賦形剤および/または担体、例えば溶媒、充填剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、粘度調整剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤、吸収遅延剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、抗微生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、キレート剤、アジュバント、甘味剤、芳香剤、および着色剤の1つまたは複数をさらに含んでもよい。当技術分野で既知の従来の製剤化技術、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、造粒、研和、乳化、カプセル化、または封入を使用して、組成物を製剤化することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象への特定の投与方法のために製剤化される。
【0090】
組成物中に存在する本発明によるゲルの量は変化し得る。いくつかの実施形態では、組成物中に存在する本発明によるゲルの量は、0.1~50重量%、例えば1~30%、例えば50~20%である。他の実施形態では、組成物中に存在する本発明によるゲルの量は、30~70重量%、例えば40~60%である。さらに他の実施形態では、組成物中に存在する本発明によるゲルの量は、50~100重量%、例えば50~70%、例えば50~80%、例えば60~98%、例えば70~95%である。
【0091】
組成物はまた、放射性核種カチオンを含まないアルギン酸塩ゲル、例えばアルギン酸塩ゲル粒子を含み得る。そのようなアルギン酸塩ゲルは、放射性核種カチオンが存在しないことを除いて、本発明のアルギン酸塩ゲルと同じであってもよく、または異なっていてもよい。放射性核種カチオンを含むアルギン酸塩ゲルと放射性核種カチオンを含まないアルギン酸塩ゲルとの比は変化し得る。好ましい実施形態では、アルギン酸塩ゲルの少なくとも90%が放射性核種カチオンを含む。ゲル1mg当たりの活性は、例えば0.1kBq/mg~100kBq/mgの範囲であり得るが、例えば放射性核種の選択に依存する。
【0092】
さらに、組成物は、夾雑物または不純物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物中の残留溶媒以外の夾雑物または不純物のレベルは、本発明によるゲルと意図される他の成分の合計重量に対して約5%未満である。ある特定の実施形態では、組成物中の残留溶媒以外の夾雑物または不純物のレベルは、本発明によるゲルと意図される他の成分の合計重量に対して約2%または1%以下である。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明によるゲルまたは組成物は無菌である。ゲルは、上に概説したように防腐的に調製され得る。滅菌は、熱、化学物質、照射、高圧、濾過、またはこれらの組合せを適用することを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって達成することができる。
【0094】
別の態様において、本発明は、キットであって、
第1の容器において、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと
を含む、アルギン酸塩と、
場合により、適切な溶媒と
を含む、アルギン酸塩ゲル
を含み、
第2の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットに関する。
【0095】
いくつかの実施形態では、ゲルはゲル粒子の形態である。いくつかの実施形態では、第1および第2の容器のすべての内容物は無菌である。いくつかの実施形態では、溶媒は薬学的に許容される。
【0096】
第1および第2の容器の内容物の濃度は、例えば、ゲルの粒子などの単位当たりの放射標識の所望のレベルに基づいて選択され得る。第1および第2の容器の成分の濃度は、薬学的に許容される組成物に関する当業者の知識に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、ゲルは凍結乾燥され、第1の容器は溶媒を含有しない。
【0097】
当業者は、第1および/または第2の容器が、少なくとも1つの担体、希釈剤、および/または賦形剤などのさらなる成分をさらに含み得ることを理解するであろう。
【0098】
内部ゲル化は、アルギン酸塩との錯化に利用可能なゲル化イオンの量を制限すること、例えば、アルギン酸塩溶液を、中性pHでは低い溶解度を有するが、より低いpHではより高い溶解度を有するCaCO、およびグルコノ-δ-ラクトン(GDL)などのゆっくり加水分解する物質と混合することによって達成することができる。GDLが加水分解し、pHが低下すると、Ca塩が溶解し、Ca2+イオンがゲル化に利用可能になる。内部ゲル化によってアルギン酸塩ゲルを作製するための別の方法は、アルギン酸塩溶液を、迅速および/またはゆっくり溶解するゲル化イオン塩、例えばCaClおよびCaSOの混合物と混合することによるものである。ゲル化イオンをリポソームに封入し、リポソームをアルギン酸塩溶液と混合することによって、内部ゲル化を行うこともできる。次いで、リポソームは、すなわち熱活性化によって不安定化され得、その後のゲル化イオンの放出はゲル化を引き起こす。
【0099】
例えば、国際公開第2006044342号パンフレットおよび国際公開第2009032158号パンフレットに開示されているような遅延ゲル化システムは、内部ゲル化によってアルギン酸塩系ゲルを作製する有用な方法である。その組成物は単純であり、追加の添加剤を必要としない。必要とされる唯一の置換基は、可溶性アルギン酸塩および不溶性アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウムである。飽和アルギン酸カルシウムが、溶解したアルギン酸ナトリウムにカルシウムイオンを供与するので、系は制御可能な時間後にゲル化する。遅延ゲル化システムは、pH変化または無機塩の添加を必要とせずに制御された速度でほぼ均一なゲルの生成を容易にするので、このシステムは、拡散/透析による、またはカルシウム塩と酸性剤の組み合わせの使用によるアルギン酸塩ゲル生成の代替物をもたらす。遅延ゲル化アルギン酸塩系は、例えば、心筋梗塞後の左心室の心臓再生における組織増量剤として使用されてきた。
【0100】
遅延ゲル化アルギン酸塩系への上に開示したような1つ以上の放射性核種カチオンの組み込みは、アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含み、腫瘍または腫瘍切除部位への直接注射を可能にする内部放射線療法のための有用なツールを表す。ゲル化反応が遅れると、ゲル化の開始前にゲル溶液を注入または注入するのに十分な時間がある。ゲル化はin situで起こり、所望の部位に放射性ゲルが生じる。
【0101】
したがって、別の態様において、本発明は、キットであって、
第1の容器において、
水溶性アルギン酸塩であって、
アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、
水溶性アルギン酸塩と、
水と、
場合により、別の適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
水に不溶性の粒子であって、当該粒子が、アルギン酸塩と、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+を含む群から選択される少なくとも1種の二価カチオンとを含む、水に不溶性の粒子と、
水と
を含み、
第3の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットに関する。
【0102】
可溶性アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸マグネシウムおよび/またはアルギン酸カリウムから選択されてもよく、アルギン酸塩は、500~350000、好ましくは10000~250000、より好ましくは25000~150000の分子量を有する。
【0103】
使用時に、放射性ゲルを形成するための遅延ゲル化システムを形成するために、第3の容器の内容物を第2の容器の内容物と混合し、混合物を第1の容器の内容物に添加することができる。
【0104】
第1、第2、および第3の容器の内容物の濃度は、例えば、ゲルの単位当たりの放射性標識の所望のレベルに基づいて選択され得る。第1、第2、および第3の容器の成分の濃度は、薬学的に許容される組成物に関する当業者の知識に基づいて選択され得る。
【0105】
当業者は、第1、第2、および/または第3の容器が、少なくとも1つの担体、希釈剤、および/または賦形剤などのさらなる成分をさらに含み得ることを理解するであろう。
【0106】
別の態様では、本発明は、
医薬品として使用するための、
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、二価カチオンおよび少なくとも1つの放射性核種カチオンをキレート化する、
アルギン酸塩ゲル、
または、
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に、二価カチオンおよび少なくとも1つの放射性核種カチオンをキレート化する、
アルギン酸塩ゲルを含む、組成物に関する。
【0107】
ゲルは、本明細書に開示されるように定義される。好ましい実施形態では、ゲルは粒子の形態である。
【0108】
本発明のアルギン酸塩ゲルおよび当該ゲルを含む組成物は、ゲルについて上に概説した利点を有する、特定の細胞、組織、器官などの1つまたは複数の特定の部位へのin vivoでの放射性崩壊の送達などのために治療的に使用することができる。
【0109】
特に増殖性疾患に感染した細胞に関する、疾患の医薬品および/または治療としての使用に関する本明細書に記載される本発明の様々な態様について、細胞は、すべての実施形態において、例えば限局性固形腫瘍の場合、体内の単一の部位に存在してもよく、または例えば分布もしくは転移した癌性疾患の場合、複数の部位に存在してもよい。
【0110】
放射性崩壊の細胞傷害効果により、本発明のゲルおよび組成物は、増殖性疾患に対して特に有用であり得る。したがって、さらなる態様では、本発明は、
増殖性疾患の治療の方法に使用するための、
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、二価カチオンおよび少なくとも1つの放射性核種カチオンをキレート化する、
アルギン酸塩ゲル、
または、
アルギン酸塩ゲルであって、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含むアルギン酸塩と、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
アクチニウム-225、アクチニウム-228、アスタチン-211、バリウム-140、ビスマス-210、ビスマス-211、ビスマス-212、ビスマス-213、カルシウム-45、カルシウム-47、銅-64、フランシウム-221、ガリウム-67、ホルミウム-166、インジウム-111、イリジウム-192、鉄-59、鉛-211、鉛-212、鉛-214、ルテチウム-177、オスミウム-191、オスミウム-193、パラジウム-103、白金-197、ラジウム-223、ラジウム-224、ラジウム-225、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、スカンジウム-46、スカンジウム-47、銀-111、ストロンチウム-85、ストロンチウム-89、テルル-129、テルル-132、テルビウム-160、テルビウム-161、タリウム-201、タリウム-206、タリウム-210、トリウム-227、トリウム-231、トリウム-234、スズ-113、タングステン-185、タングステン-187、バナジウム-48、イッテルビウム-169、イットリウム-88、イットリウム-90、イットリウム-91、ジルコニウム-95、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの放射性核種カチオンと
を含み、
アルギン酸塩が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と共に、二価カチオンおよび少なくとも1つの放射性核種カチオンをキレート化する、
アルギン酸塩ゲルを含む、組成物に関する。
【0111】
ゲルは、本明細書に開示されるように定義される。好ましい実施形態では、ゲルは粒子の形態である。
【0112】
「処置する(treating)」および「処置(treatment)」および「治療(therapy)」という用語(およびその文法的変形)は、本明細書では互換的に使用され、1)疾患を阻害すること;例えば、疾患の防止(すなわち、予防的処置、病態および/または総体症状のさらなる発症の阻止)を含む、疾患、状態もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験しているかもしくは示している対象における疾患、状態もしくは障害を阻害すること、または2)疾患の症状を緩和すること、または3)疾患を軽快すること;例えば、疾患、状態もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験しているかもしくは示している対象における疾患、状態もしくは障害を軽快すること(すなわち、病態および/または総体症状を逆転させること)を指す。これらの用語は、医薬品、医薬品有効成分(API)、および/または医薬品グレードのサプリメントの使用および/または投与に関するものであり得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「投与する(administer)」、「投与(administration)」、および「投与すること(administering)」という用語は、(1)医療従事者もしくはその認可された代理人によって、またはその指示の下で、または自己投与によって、本開示による製剤、調製物または組成物を提供、供与、投与および/または処方すること、ならびに(2)本開示による製剤、調製物または組成物を対象自体に投入するか、摂取させるか、または消費させることを指す。好ましい実施形態では、使用は、医療従事者または認可された代理人によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物の投与を含む。
【0114】
本明細書で使用される場合、「対象」は、処置または治療のために選択される任意のヒトまたは非ヒト動物を意味し、「患者」を包含し、それに限定されてもよい。これらの用語はいずれも、医療専門家(例えば、医師、看護師、ナースプラクティショナー、医師の助手、用務員、治験担当者など)または科学研究者の監督(定常的なまたはその他)を必要とすると解釈されるべきではない。
【0115】
対象は、好ましくはヒト対象である。対象は男性であっても女性であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、成人(すなわち、18歳以上)である。ある特定の実施形態では、対象は老人である。ある特定の実施形態では、対象は老人ではない。対象は、好ましくは、癌などの増殖性疾患と診断された対象である。
【0116】
標的とされる疾患組織は、軟組織部位、石灰化組織部位または複数の部位であってもよく、これらはすべて軟組織中にあってもよく、すべて石灰化組織中にあってもよく、または少なくとも1つの軟組織部位および/または少なくとも1つの石灰化組織部位を含んでもよい。一実施形態では、少なくとも1つの軟組織部位が標的とされる。標的化の部位および疾患の起源の部位は同じであってもよいが、代わりに異なっていてもよい。2つ以上の部位が関与する場合、これは起源部位を含んでもよく、または複数の二次部位であってもよい。
【0117】
「軟組織」という用語は、本明細書では、「硬質」ミネラル化マトリックスを有さない組織を示すために使用される。特に、本明細書で使用される軟組織は、骨格組織ではない任意の組織であり得る。それに対応して、本明細書で使用される「軟部組織疾患」は、本明細書で使用される「軟組織」で起こる疾患を示す。本発明は、癌および「軟部組織疾患」の治療に特に適しており、したがって、任意の「ソフト」(すなわち、非石灰化)組織に生じる癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫および混合型癌、ならびにそのような組織の他の非癌性疾患を包含する。癌性「軟部組織疾患」には、軟部組織に発生する固形腫瘍ならびに転移性および微小転移性腫瘍が含まれる。実際、軟部組織疾患は、同じ患者における軟部組織の原発性固形腫瘍および軟部組織の少なくとも1つの転移性腫瘍を含み得る。あるいは、「軟部組織疾患」は、固形腫瘍のみ、または原発腫瘍が骨格疾患である転移のみからなり得る。
【0118】
特定の実施形態では、治療方法、または治療方法における使用は、癌手術などの手術と連携した本発明のアルギン酸塩ゲルによる治療を含む。例えば、癌性組織が除去されたまたは除去された外科的処置の一部として、アルギン酸塩ゲルは、癌の領域、例えば癌性組織が除去された腔に投与される。好ましくは、そのような投与および治療は、外科的処置の一部として、手術と同時に、または手術の直後に行われる。したがって、投与された放射性核種は、癌組織が除去された特定の部位に放射性崩壊を送達し、投与された放射性核種カチオンおよび/またはその娘核種は、治療領域の組織および細胞にそれらの毒性効果を提供することができる。
【0119】
本発明のゲルまたは組成物が本発明による医薬品としておよび/または治療方法において使用される場合、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドは、例えば表1に基づいて、治療される特異的増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用する(例えば、結合する)のに適しているように選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、前述の増殖性疾患は、癌、非癌性腫瘍、新生物性疾患、または過形成性疾患である。いくつかの実施形態では、前述の増殖性疾患は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、乾癬、特発性肺線維症、強皮症、および肝硬変の群から選択される。
【0121】
特定の実施形態では、前述の増殖性疾患は癌である。本明細書で使用される場合、「癌」および「腫瘍」という用語は、初期腫瘍および任意の転移を含む、対象における任意の新生物成長を指す。癌は、液体または固体腫瘍型であり得る。液性腫瘍には、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)およびリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む血液起源の腫瘍が含まれる。固形腫瘍は、臓器に由来し得、肺、脳、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓の癌を含み得るが、これらに限定されない。
【0122】
いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓がん、神経膠腫、腎臓がん、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、CNS転移、腹膜がん、濾胞性リンパ腫、結腸直腸がん、小細胞肺がん、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、前立腺がんまたは混合型がんを含むまたはそれらからなるリストから選択される。
【0123】
特定の実施形態では、癌は転移性癌である。転移性がんの治療は、従来の抗がん療法を使用して困難であることは周知であるが、本発明の標的化アルギン酸塩ビヒクルは、そのようながんの有望な治療ラインを表す。
【0124】
本発明による医薬品としておよび/または治療方法において使用するためのゲルまたは組成物は、治療有効用量で対象に投与される。本明細書で使用される「治療有効用量」という用語は、任意の治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で対象において所望の治療効果をもたらすのに有効な本発明によるゲルの量を意味する。治療有効投薬量は、投与経路および剤形に応じて変化し得る。さらに、投与量は、使用される粒子、放射性核種カチオンおよび/またはその娘核種の放射性崩壊の種類、状態の段階、対象の年齢および体重などに依存し得、当技術分野で周知の原理に従って当業者によって日常的に決定され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、患者投与量当たりに使用される放射性核種カチオンの量は、1kBq~10GBq、好ましくは1kBq~100MBq、より好ましくは10kBq MBq~25MBq、さらにより好ましくは10kBq~10MBqの範囲内であり得る。投与量および最大投与量は、適切な投与量および最大投与量に関する一般的な知識に基づいて当業者によって決定され得る。当技術分野では、娘同位体の毒性副作用の現実的かつ保守的な推定値を採用しなければならないことが認められている。
【0126】
いくつかの実施形態では、粒子は、10Bq/kg-100MBq/kg体重の投与量で投与される。これに対応して、単一投与単位は、これらの範囲のいずれかに適切な体重、例えば30~150Kg、好ましくは50~100kgを乗じたものを含み得る。投与量は、放射性核種、その半減期および/または特定の子孫の選択に依存し得る。投与量、ゲルおよび投与経路は、in vivoで生成される子孫の投与量が300kBq/kg未満、例えば200kBq/kg未満、好ましくは150kBq/kg未満、例えば100kBq/kg未満であるようなものであり得る。
【0127】
本発明による医薬品としておよび/または治療方法において使用するためのアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、局所的または全身的に投与することができる。本発明によるゲルまたは組成物は、腫瘍内、髄腔内、静脈内、および動脈内を含むまたはそれらからなる群から選択される投与経路、例えば塞栓療法によって投与され得る。投与経路の選択は、ゲルの形態に基づいて選択され得る。静脈内投与の場合、ゲルはナノ粒子の形態でなければならない。
【0128】
本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物の治療有効用量は、単回用量または分割用量で投与することができる。本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、1日に1回、1日に2回以上、2日に1回、3日に1回、1週間に2回または1週間に1回、または医療専門家によって適切であると考えられる場合に投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は1日に1回投与される。他の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は1日に2回投与される。いくつかの実施形態では、投与レジメンはあらかじめ決定されており、患者群全体で同じである。他の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物による処置の投薬量および投与頻度は、以下に限定されないが、疾患の病期、症状の重症度、投与経路、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別および/もしくは食事、ならびに/または処置に対する対象の応答を含む因子に基づいて、医療専門家によって決定される。
【0129】
いくつかの実施形態では、治療有効用量は一定の間隔で投与される。他の実施形態では、用量は、必要な場合または散発的に投与される。本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、医療専門家によって投与されてもよい。本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、製剤および投与経路などの要因に応じて、食物とともにまたは食物なしで投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、特定の時刻に投与される。
【0130】
いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲルまたは組成物は経口投与される。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩ゲルまたは組成物は、食事とともにまたは食事の前に投与される。いくつかの実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は静脈内投与される。これらの実施形態では、水が特に有用な賦形剤である。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、特に注射用溶液のための液体賦形剤として用いることができる。
【0131】
好ましい単位投与製剤は、本発明によるゲルの、本明細書で前述した治療有効用量またはその適切な画分を含有する製剤である。本発明の組成物は、すべての有効成分および非有効成分が好適な系で組み合わされ、投与前に成分を混合する必要がない単回用量として単位剤形で提供されてもよい。あるいは、組成物は、上記で開示されたキットなどのキットとして提供され得、組成物を保存、調製、投与および/または使用するための説明書を含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、医薬品としておよび/または本発明による治療方法で使用するためのアルギン酸塩ゲルまたは組成物の使用期間は、標的抗原発現の減少および/または量などの治療の観察された効果によって決定される。いくつかの実施形態では、処置は、さらなる改善が予想され得ないまで持続される。ある特定の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物による処置期間は、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、例えば3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、3年、5年である。他の実施形態では、持続期間は、以下に限定されないが、症状の性質および重症度、投与経路、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別および/もしくは食事、ならびに/または処置に対する対象の応答を含む因子に基づいて、医療専門家によって決定される。
【0133】
ある特定の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、単独で投与される。他の実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、1つまたは複数の他の治療剤と組み合わせて投与される。当該1つまたは複数の他の治療剤は、増殖性疾患、例えば癌に対する効果を有することが知られていてもよく、および/または本発明のアルギン酸塩ゲルまたは組成物と共に、前述の増殖性疾患、例えば癌の治療に対する相加的または相乗的な作用機構を有してもよい。いくつかの実施形態では、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、併用療法の一部として投与される。本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物を含む併用療法は、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物を1つもしくは複数の治療剤と組み合わせて含む組成物、および/または本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物と1つもしくは複数の治療剤との同時投与を指してもよく、ここで、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物と他の治療剤(複数可)とは、同じ組成物に製剤化されていない。別々の製剤を使用する場合、本発明によるアルギン酸塩ゲルまたは組成物は、別の治療剤の投与と同時に、断続的に、互い違いに、その前に、その後に、またはこれらの組合せで投与されてもよい。
【0134】
一態様の文脈で、例えばアルギン酸塩ゲルまたは組成物を対象とする態様について記載される実施形態および特徴は、医薬品としてのまたは治療方法におけるその使用など、本発明の他の態様にも適用される。
【0135】
さらなる態様では、本発明は、治療方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のゲルまたは組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0136】
さらなる態様では、本発明は、増殖性疾患の治療方法であって、有効量の本発明のゲルまたは組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0137】
さらなる態様では、本発明は、医薬品としての本発明のゲルまたは組成物の使用を提供する。
【0138】
さらなる態様では、本発明は、増殖性疾患を治療するための本発明のゲルまたは組成物の使用を提供する。
【0139】
さらなる態様では、本発明は、
医薬品として使用するための、
キットであって、
第1の容器において、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと
を含む、アルギン酸塩
を含む、アルギン酸塩ゲルと、
場合により、適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットを提供する。
【0140】
さらなる態様では、本発明は、
増殖性疾患の治療に使用するための、
キットであって、
第1の容器において、
増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドと、
Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類の二価カチオンと、
を含む、アルギン酸塩
を含む、アルギン酸塩ゲルと、
場合により、適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットを提供する。
【0141】
さらなる態様では、本発明は、
医薬品として使用するための、
キットであって、
第1の容器において、
水溶性アルギン酸塩であって、
アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、
水溶性アルギン酸塩と、
水と、
場合により、別の適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
水に不溶性の粒子であって、当該粒子が、アルギン酸塩と、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の二価カチオンとを含む、水に不溶性の粒子と、
水と
を含み、
第3の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットを提供する。
【0142】
さらなる態様では、本発明は、
増殖性疾患の治療に使用するための、
キットであって、
第1の容器において、
水溶性アルギン酸塩であって、
アルギン酸塩が、増殖性疾患に罹患した細胞の受容体と相互作用するためのペプチド配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む、
水溶性アルギン酸塩と、
水と、
場合により、別の適切な溶媒と
を含み、
第2の容器において、
水に不溶性の粒子であって、当該粒子が、アルギン酸塩と、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Cu2+、Zn2+、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種の二価カチオンとを含む、水に不溶性の粒子と、
水と
を含み、
第3の容器において、
少なくとも1つの放射性核種カチオンと、
適切な溶媒と
を含む、キットを提供する。
【0143】
本発明は、示されている実施形態および例に限定されるものではない。本開示の様々な実施形態が本明細書に記載されているが、このような実施形態が単なる例として提供されていることは当業者には明らかであろう。本明細書に記載の実施形態に対する多数の修正および変更、ならびに変形および置換は、本開示から逸脱することなく当業者にとって明らかであろう。本開示を実践する際に、本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替形態を用いることができることを理解されたい。
【0144】
本開示のすべての実施形態は、任意選択的に、本明細書に記載の他の実施形態のうちの任意の1つまたは複数と組み合わせることができることを理解されたい。
【0145】
本明細書に開示されている各成分、化合物、粒子またはパラメーターは、単独で、または本明細書に開示されているありとあらゆる他の成分、化合物、またはパラメーターのうちの1つまたは複数と組み合わせて使用するために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。本明細書に開示されている各成分、化合物、またはパラメーターの各量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示されている任意の他の成分、化合物、またはパラメーターについて開示された各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示されているとも解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示されている2つ以上の成分、化合物、またはパラメーターの量/値または量/値の範囲の任意の組合せも、本明細書の目的のために互いに組み合わせて開示されていることをさらに理解されたい。本明細書に記載のあらゆる特徴、およびこのような特徴の組合せは、特徴が相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0146】
本明細書に開示されている各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、またはパラメーターについて本明細書に開示されている各範囲の各上限と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを理解されたい。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限と各範囲の各上限とを組み合わせることによって導出された4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限と各範囲の各上限とを組み合わせることによって導出される9つの範囲の開示として解釈されるべきである。さらに、明細書または例に開示されている成分、化合物、またはパラメーターの特定の量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、同一の成分、化合物、またはパラメーターの範囲を形成するために、本出願の他の場所に開示されているその成分、化合物、またはパラメーターの任意の他の下限もしくは上限または範囲または特定の量/値と組み合わせることができる。
【実施例
【0147】
例1:アルギン酸塩ゲル粒子の調製
アルギン酸ナトリウム(PRONOVA LVG)を最初に蒸留水に溶解して、2%溶液を得た。平均直径150μmのマイクロスフェアの形態のアルギン酸塩ゲル粒子を、0.1mm(ビーズ直径150μmの場合)ノズル、2~5ml/時間の流速、ノズルとゲル化浴との間の静電ポテンシャル6500kVおよびノズルからゲル化浴の表面までの距離約1.5cmを有するNISCO静電ビーズ発生器(モデルVAR1)を使用して形成した。ゲル化浴は、CaClの50mM水溶液を含有していた。図2は、Nikon顕微鏡の写真管に取り付けられたデジタルカメラによって撮影された、得られたアルギン酸塩ゲルマイクロスフェアの顕微鏡写真を示す。
【0148】
以下の例では、(LVMとして識別される)Mリッチなアルギン酸塩および(LVGとして識別される)Gリッチなアルギン酸塩の両方を使用した。例のいくつかでは、アルギン酸ナトリウム(PRONOVA LVGまたはPRONOVA SLG)を使用した。アルギン酸ナトリウムを使用する例はまた、ペプチドのコンジュゲーションが典型的にはアルギン酸塩のゲル化能力に影響を及ぼさないので、ペプチド結合アルギン酸塩の代表的な例と考えることもできる。市販のNOVATACHペプチド結合アルギン酸塩は、0.8~0.4%のペプチド(GRGDSPまたはGGGGRGDSPのいずれか)を含む。この低いペプチド:アルギン酸塩比は、放射性核種カチオンをキレート化するその能力を含めて、アルギン酸塩の機能性に影響を及ぼさない。本明細書に提示される他の例は、必要に応じてNOVATACHペプチド結合アルギン酸塩を使用した。
【0149】
例2:カルシウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのRa-223および娘核種の結合-二価放射性核種カチオンの例
この例では、カルシウム架橋された均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのRa-223および娘核種の結合、および当該結合の安定性を調べた。
【0150】
既知量のあらかじめ形成されたアルギン酸塩ゲルマイクロスフェアを連続的に洗浄して、0.9%NaCl溶液を使用して過剰のゲル化イオンを除去した。8N HNO中に223RaClとして存在するラジウム-223を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のアリコートで希釈した。この溶液の放射能含有量(Bq/mlとして測定)を線量較正器(Capintec)によって決定した。次いで、約600mgのアルギン酸塩マイクロスフェア(重量)を約300kBq/mLの放射能と混合した。ラジウム同位体の結合のために、室温条件、断続的な振盪および60分間のインキュベーション条件は、利用可能なすべてのラジウムおよびラジウム-223、鉛-211およびビスマス211の崩壊娘核種を結合するのに十分であることが分かった。次いで、Ra-223被覆アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアをPBSを用いて3回洗浄した。ラジウム-223ならびに娘放射性核種である鉛-2111およびビスマス-211を同時に検出することができる高性能ゲルマニウム検出器(HPGe)を使用するガンマ分光法によって、アルギン酸塩マイクロスフェアに関連する放射能を決定した。放射性核種被覆アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアをPBS溶液中で保存した。
【0151】
次いで、同様の重量(500mg)のアルギン酸塩マイクロスフェアを含有する試料中の結合ラジウム-223およびその崩壊娘核種からの放射能をHPGeを使用して決定し、同様の重量(500mg)のアルギン酸塩マイクロスフェアを含有する試料について測定した。図3図5は、これらの測定からの結果を示す。図中、「Ra-223溶液」はアルギン酸塩マイクロスフェアを含まない試料を示し、「LVG」はGリッチなアルギン酸塩を示し、「LVM」はMリッチなアルギン酸塩を示す。データ(分析日に対するkBq/試料)を、GraFitソフトウェアを使用してプロットした。曲線の傾きは、放射性核種の放射性崩壊を表す。
【0152】
図から分かるように、アルギン酸塩マイクロスフェアはラジウム-223および崩壊娘核種に結合するが、時間中の溶液中の放射性核種の曲線に対する結合放射能曲線のより急な勾配によって示されるように、経時的にゲルネットワークから放射性核種が一定に放出されるようである。さらに、Mリッチなアルギン酸塩(LVM)は、娘崩壊放射性核種を保持する能力がさらに低下しているようである。これは、LVMアルギン酸塩に対するラジウム-223および崩壊娘核種の結合がより弱いことを示しているが、それにもかかわらず、放射性核種結合が起こる。
【0153】
この例では、アルギン酸塩の均一なゲル化を使用してマイクロスフェアを形成した、すなわちNaClからNaの形態で存在する非ゲル化イオンが存在した。以下の例3および4は、不均一ゲル化技術によってアルギン酸塩マイクロスフェアを生成する効果、すなわちNaが存在しないことを示す。
【0154】
この例では、ラジウム-223を使用したが、他の放射性核種を使用しても同様の条件および結果が得られ得る。
【0155】
例3:ストロンチウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへの放射性核種および崩壊娘核種の結合
ラジウム-223および崩壊娘放射性核種
例3のこの部分では、ストロンチウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのRa-223および娘核種の結合、および当該結合の安定性を調べた。
【0156】
蒸留水中2%濃度のアルギン酸塩(LVGおよびLVM)を、蒸留水中50mM SrClを含みNaClを含まないゲル化浴を使用して、Sr2+でゲル化させた。非ゲル化イオンが存在しないことは、不均一なゲル化プロセスをもたらす。PBSを用いてマイクロスフェアを3回洗浄し、次いで、1mLのPBSに再懸濁した。その娘放射性核種と平衡状態にある一定量のラジウム-223を添加し、マイクロスフェアと共に室温で60分間インキュベートした。図6図8は、得られたマイクロスフェアへのラジウム-223ならびに崩壊娘放射性核種である鉛-211およびビスマス-211の結合を示す。図中、「Ra-223溶液」は、アルギン酸塩マイクロスフェアを含まない試料を示し、放射性核種単独の崩壊速度の制御である。アルギン酸塩マイクロスフェアに関連する放射性核種溶液中の放射能を、高純度ゲルマニウム検出装置(HPGe)によって決定した。得られたデータ(kBq/試料)を、GraFitソフトウェアを使用して測定日に対してプロットした。曲線の傾きは、放射性核種の放射性崩壊を表す。
【0157】
図6図8の曲線は、例2と比較してカルシウムからストロンチウムへのゲル化イオンの変化にもかかわらず、Ra-223が依然としてアルギン酸塩ゲルマイクロスフェアに結合することができたことを示している。結果はまた、放射性崩壊曲線の勾配が放射性核種単独崩壊曲線とほぼ同一であることによって証明されるように、不均一なゲル化プロセスから生じる粒子が、例2で使用した均一なゲル化プロセスよりも効率的に放射性核種カチオンを結合および保持することを示している。これは、不均一ゲル化法によって作製されたマイクロスフェアが、ラジウム-223または崩壊娘核種を経時的に放出しないことの指標である。また、崩壊娘放射性核種はアルギン酸塩ネットワークから放出されず、放射性崩壊全体にわたって保持されることも明らかである。
【0158】
アクチニウム-225およびその崩壊娘放射性核種
例3の第2の部分では、ストロンチウム架橋アルギン酸塩マイクロスフェアが225-Acならびにその崩壊娘核種221-Frおよび213-Biと結合する能力を調べた。ゲル化浴が精製水中の50mM SrClで構成されている例1に記載のPRONOVA LVGアルギン酸塩(1%)を使用して、均一なカルシウム架橋アルギン酸塩微粒子を製造した。ストロンチウム架橋アルギン酸塩微粒子の直径は約230μmであった。使用前に、アルギン酸塩微粒子をダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)中で洗浄して、過剰の非架橋Sr2+イオンを除去した。吸収のために、既知量のストロンチウム架橋アルギン酸塩微粒子を含有する225-Ac三連試料(三連で約270mg)を、約2kBqの225-Acを含有するD-PBS(500μL)に懸濁し、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、微粒子を遠心分離し、上清を除去して残留放射能を分析した。続いて、500μL分のD-PBSを使用して微粒子を3回洗浄し、最後に500μLのD-PBSに再懸濁し、RIAチューブに移し、Cobra II NaIガンマカウンタを使用して計数した。ガンマカウンタは、全放射能エネルギー(15~2000keV)、180~260keV(221-Fr)、および400~500keV(213-Bi)に相当する検出器チャネルを用いて設定した。
【0159】
図9にグラフで示されている結果は、1)使用した225-Ac溶液が、崩壊娘放射性核種221-Frおよび213-Biも含有していたこと、2)ストロンチウム架橋アルギン酸塩微粒子が、225-Acだけでなく、崩壊娘放射性核種221-Frおよび213-Biにも結合することができたことを示す。結合した放射性核種の相対量は、添加された全放射能の約40%であった。しかしながら、ストロンチウム架橋アルギン酸塩微粒子の結合放射能は、存在するアルギン酸塩の量、すなわち各試料中の約270mgのアルギン酸塩微粒子の量について補正されず、アルギン酸塩の量はわずか1%であり、2.7mgのアルギン酸塩の重量をもたらした)。試料を室温で14日間保存し、D-PBSで洗浄した試料で放射能を分析した。図9はまた、崩壊娘放射性核種221-Frおよび213-Biがアルギン酸塩微粒子によって保持されていることを示す。これは、225-Acの崩壊からの221-Frの形成、ならびにその後の221-Frの崩壊から217-At(弱いガンマエネルギーのために検出されない)およびさらに213-Biへの213-Biの形成が、両方ともアルギン酸塩微粒子によって保持され、アルギン酸塩ネットワークから放出されず、放射性崩壊全体にわたって保持されることを示している。これは、225-Acおよび崩壊娘放射性核種に対するアルギン酸塩のキレート能力、ならびにアルギン酸塩微粒子内の当該崩壊娘核種の保持を実証する。
【0160】
例4:バリウム架橋された不均一ゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのRa-223および娘核種の結合
この例では、バリウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのRa-223の結合、および当該結合の安定性を調べた。
【0161】
蒸留水中2%濃度のアルギン酸塩(LVGおよびLVM)を、蒸留水中50mM BaClを含みNaClを含まないゲル化浴を使用して、Ba2+でゲル化させた。非ゲル化イオンが存在しないことは、不均一なゲル化プロセスをもたらす。マイクロスフェアを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて3回洗浄し、次いで、1mLのPBSに再懸濁した。その娘放射性核種と平衡状態にある一定量のラジウム-223を添加し、マイクロスフェアと共に室温で60分間インキュベートした。図10図12は、得られたマイクロスフェアへのラジウム-223ならびに崩壊娘放射性核種である鉛-211およびビスマス-211の結合を示す。図において、曲線の傾きは、放射性核種の放射性崩壊を表す。「Ra-223溶液」は、アルギン酸塩粒子を含まない試料を示し、放射性核種単独の崩壊速度の制御である。アルギン酸塩マイクロスフェアに関連する放射性核種溶液中の放射能を、高純度ゲルマニウム検出装置(HPGe)によって決定した。得られたデータ(kBq/試料)を、GraFitソフトウェアを使用して測定日に対してプロットした。
【0162】
例2の結果と比較した例4の結果はまた、放射性崩壊曲線の勾配が放射性核種単独崩壊曲線とほぼ同一であることによって証明されるように、不均一なゲル化プロセスによって得られたゲルが、例2で使用される均一なゲル化プロセスによって得られたゲルよりも効率的に放射性核種カチオンを結合および保持することを示している(図9)。これは、不均一ゲル化法によって作製されたマイクロスフェアが、ラジウム-223または崩壊娘核種を経時的に放出しないことのさらなる指標である。さらに、崩壊娘放射性核種である鉛-211およびビスマス-211もアルギン酸塩ネットワークから放出されず、放射性崩壊全体にわたって保持されることが図11図12から明らかである。
【0163】
上記の例では、ラジウム-223および225-Acを使用したが、他の放射性核種を使用しても同様の条件および結果が得られ得る。
【0164】
例5:カルシウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのルテチウム-177の結合
この実験では、アルギン酸塩マイクロスフェアへの三価放射性核種カチオンの結合を研究した。
【0165】
カルシウム架橋不均一アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアを、脱イオン水中50mM CaClで構成されるゲル化浴に静電的に送達された脱イオン水中2%アルギン酸ナトリウム溶液(PRONOVA LVGアルギン酸ナトリウム)から製造した。次いで、あらかじめ形成されたアルギン酸塩ゲルマイクロスフェア(2.2グラム)を0.9%NaClで洗浄し、次いで、3つの別個の試料に分割した。次いで、試料を、0.9%NaClにおいて177Lu3+(ベータ放出放射性核種)の溶液で1時間インキュベートした。インキュベーション後、アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアを0.9%NaClで3回洗浄した後、取り込まれた放射能をNaI検出器を使用して測定した。結果は、補正されていない毎分のカウントとして与えられる。
【表2】
【0166】
表2から分かるように、利用可能な放射能量のうち、約56%が、以下の表1に示すように、あらかじめ形成されたアルギン酸塩ゲルマイクロスフェアに結合した。したがって、ゲルは三価放射性核種カチオンをキレート化することができた。
【0167】
例6:カルシウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアへのトリウム-227の結合
この実験では、アルギン酸塩マイクロスフェアへの四価放射性核種カチオンの結合を研究した。
【0168】
カルシウム架橋された不均一なゲル化アルギン酸塩マイクロスフェアを、上記の例5に示すのと同じ方法で作製した。0.9%NaCl溶液を用いてマイクロスフェアを3回洗浄し、0.8%NaClに再懸濁し、227Th4+の溶液でインキュベートした。利用可能な放射能量のうち、約30%があらかじめ形成されたアルギン酸塩マイクロスフェアに結合した(表3)。表3はまた、227Th(娘放射性核種)の放射性崩壊中に生成された利用可能な223Ra、211Pbおよび211Biの100%が、1時間のインキュベーション後にあらかじめ形成されたアルギン酸塩マイクロスフェアに結合することを示す。
【表3】
【0169】
上記と同じ様式で行われた追加の実験では、表3の知見を繰り返すために、2時間のインキュベーション期間後のグルロン酸塩に富むアルギン酸塩(LVG)およびマンヌロン酸塩に富むアルギン酸塩(LVM)へのトリウム-227および崩壊娘核種の結合を評価した。不均一なゲル化を使用して、カルシウム架橋アルギン酸塩マイクロスフェアを製造した。当量(mg)のマイクロスフェアを0.9%NaClで洗浄し、次いで、トリウム-227の溶液で2時間インキュベートした。結果を以下に要約し(表4)、2時間のインキュベーション期間後に、利用可能な227Thの38.8%がGリッチ(LVG)アルギン酸塩ゲルマイクロスフェアに結合し、利用可能な227Thの20.4%がMリッチ(LVM)アルギン酸塩から作製されたアルギン酸塩ゲルマイクロスフェアに結合したことを示す。
【表4】
【0170】
アルギン酸塩ゲルは、四価放射性核種カチオンに結合することができると結論付けることができる。後者の実験の結果は、2時間のインキュベーション期間後に、利用可能なトリウム-227の38.8%がアルギン酸塩マイクロスフェアに結合したことを示した。表3に示す結果は、利用可能なトリウム-227の37.7%がマイクロスフェアに結合したことを示した。アルギン酸塩マイクロスフェアに結合したトリウム-227のパーセントは、2つの実験間で本質的に同じである。結果はまた、アルギン酸塩ポリマー分子中のグルロン酸モノマーの数が増加したために、Gリッチなアルギン酸塩がMリッチなアルギン酸塩よりも効率的にトリウム-227をキレート化することができるという知見と一致している。これは、GリッチなLVGアルギン酸塩を使用して作製したマイクロスフェアは、37.7%の利用可能なトリウム-227に結合したが、20.4%の利用可能なトリウム-227のみが、MリッチなLVMアルギン酸塩使用して作製したマイクロスフェアに結合したという事実によって示される。
【0171】
例7:アルギン酸カルシウム微粒子は放射性核種カチオンを組み込み、崩壊娘核種を保持する
この例は、アルギン酸カルシウムの乾燥微粒子も放射性核種に結合し、娘核種を保持することができることを実証する。本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0053886号明細書に例示されているように、塩化カルシウムの水溶液を添加することによって、イソプロピルアルコールに懸濁したアルギン酸ナトリウム粉末の変換によってアルギン酸カルシウムを製造した。
【0172】
ラジウム-224および崩壊娘核種
13μmの平均サイズ分布(Dv50)を有するアルギン酸カルシウム微粒子の30mg試料を最初に200μlの水に再懸濁し、次いで150μlのラジウム-224溶液を添加し、続いてさらに150μlの水を添加した。試料をボルテックス混合し、次いで室温で30分間インキュベートした。水500μlのアリコートを粒子懸濁液に添加した。試料をボルテックス混合し、次いで6000rpmで1分間遠心分離した。上清を、洗浄1と標識された別のエッペンドルフチューブに移した。次いで、粒子試料を1000μlの水に再懸濁し、ボルテックスし、次いで遠心分離した。上清を、洗浄2と標識されたエッペンドルフチューブに移した。1000μlの水による洗浄を繰り返し、上清を回収して洗浄3をチューブに入れた。次いで、高純度ゲルマニウム検出器を使用して放射能について試料を分析した。
【0173】
試料を室温に保ち、標識後1日目(標識後24時間)および12日目に再度分析した。最初に粒子を水で洗浄した後、放射能を測定した。結果を表5に示す。
【表5】
【0174】
224-Raの放射性半減期t1/2=3.66日、212-Pbのt1/2=10.6時間、212-Biのt1/2=60.5分、208-Tlのt1/2=32分。使用された224-Raの溶液は、崩壊娘放射性核種212-Pb、212-Bi、および208-Tlが溶液中に一定量で存在することを意味する長期平衡状態にあった。この溶液は、アルギン酸カルシウム微粒子に添加された利用可能な放射能および放射性核種を表す。インキュベーションおよび未結合放射能を除去するための洗浄の後、アルギン酸塩微粒子に関連する放射能を、各崩壊娘放射性核種ごとに再び測定した。利用可能な放射能に対する結合放射能%を計算した。各放射性核種から放射される利用可能な放射能の約90%がアルギン酸塩マイクロスフェアに結合したことが分かる。
【0175】
標識後1日目に粒子を洗浄し、放射能を測定したところ(HPGe検出器)、さらに、利用可能な放射性崩壊計算機(http://www.radprocalculator.com)を使用して、アルギン酸塩微粒子に理論的に関連して残っている224-Ra放射能の量を計算した。計算は、標識直後の0日目のアルギン酸塩微粒子に関連する元の8720Bqの224-Raのうち、微粒子がすべての結合放射能を保持した場合、7232 Bqの224-Raが存在することを示す。8720Bqから7232Bqへの放射能の減少は、224ラジウムの自然崩壊を表す。標識後1日目のアルギン酸塩微粒子に関連する放射能は7270Bqであると測定されたので、放射能の100%は、1日後に崩壊するように調整された微粒子に依然として関連していた。
【0176】
注:娘放射性核種212-Pb、2121-Biおよび208-Tlは、224-Raの放射性崩壊の結果として連続的に生成されている。したがって、これらのデータは、結合放射能%を計算するために使用されない。最後に、標識後12日目の224-Raの自然崩壊は、900Bqであると計算され、8740Bqから減少した。アルギン酸塩微粒子に関連する測定された放射能は913Bqであり、これはまた、224-Raの減衰について調整された放射能の100%である。結論は、アルギン酸カルシウム微粒子が崩壊娘核種を含む放射性核種に効果的に結合し、放射性核種に結合し続けることである。
【0177】
アクチニウム-225および崩壊娘核種
第1の実験では、三連の50mgのアルギン酸カルシウム微粒子試料を、20kBqの225-Acを含有する溶液に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。次いで、試料を遠心分離し、上清を個々のRIAチューブに移した。500μLの精製水を各試料に添加し、粒子を再懸濁した。試料を遠心分離し、洗浄液に相当する上清を個々のRIAチューブに移した。最後に、500μLの精製水を各アルギン酸カルシウム微粒子試料に添加し、得られた懸濁液を個々のRIAチューブに移した。全放射能エネルギー(15~2000keV)、180~260keV(221~Fr)、および400~500keV(213~Bi)に相当する検出器チャネルを備えたCobra II NaIガンマカウンタを使用して、すべての管のガンマ放射能を計数した。初期ガンマ計数後、アルギン酸カルシウム試料を室温でさらにインキュベートした。試料を遠心分離し、上清を回収し、洗浄し(さらに回収し)、31日間までの特定の時点で精製水に再懸濁した。
【0178】
図13に示される結果は、アルギン酸カルシウム微粒子に関連する(CPMとしての)放射能カウントを、微粒子を含まない225-Acの同等の20kBq溶液の放射能カウントと比較する。第1の結論は、225-Ac溶液(アルギン酸カルシウム微粒子を含まない)が崩壊娘放射性核種221-Frおよび213-Biと平衡状態にあることである。しかしながら、アルギン酸カルシウム微粒子に関連する放射能は、225-Acならびに2つの崩壊娘放射性核種221-Frおよび213Biの存在も示す。この同じパターンはすべての時点で見られ、すなわち、アルギン酸カルシウム微粒子は225-Acに結合し、225-Acの放射性崩壊から形成された221-Frおよび213Biを保持する。213-Biは217-Atから生成されるため、データは、非常に弱いガンマエネルギーのために検出されない場合でも、この崩壊娘核種もアルギン酸カルシウム微粒子によって保持されなければならないことを示す。図13に提示されたデータから得られた別の結論は、利用可能な放射能の90%超がすべての時点で微粒子と関連しており、アルギン酸塩が225-Acおよびその崩壊娘放射性核種の有効なキレート剤であることを実証していることである。
【0179】
第2の実験設定では、アルギン酸カルシウム微粒子の10mg試料を、約9.4、18.8、47、および94kBq/mLに相当する様々な量(μL)の水性225-Acに1000μLの総体積で懸濁し、室温で1時間インキュベートした。次いで、試料を遠心分離し、上清をRIAチューブに移し、アルギン酸カルシウムペレットを1000μLの精製水に再懸濁した。遠心分離後、得られた洗浄物も別々のRIAチューブに移し、ペレットを1000μLの精製水に再懸濁し、別々のRIAチューブに移した。全放射能エネルギー(15~2000keV)、180~260keV(221~Fr)、および400~500keV(213~Bi)に相当する検出器チャネルを備えたCobra II NaIガンマカウンタを使用して、すべての試料を計数した。初期ガンマ計数後、アルギン酸カルシウム試料を室温でさらにインキュベートした。試料を遠心分離し、上清を回収し、洗浄し(さらに回収し)、31日間までの特定の時点で精製水に再懸濁した。カウント(CPM)対添加した225-Acの量を示す結果を、225-Ac(全放射能カウント)については図14に、221-Frについては図15に、213-Biについては図16に示す。
【0180】
すべてのアルギン酸カルシウム試料およびすべての時点で、利用可能な放射能の90%超が微粒子と関連し、1%未満が上清または洗浄液と関連していた。さらに、アルギン酸カルシウム微粒子に添加された225-Acの量(体積)が増加するにつれて、すなわち放射能濃度が増加し、微粒子に関連する放射能の量も増加した。放射能の取り込みについてプラトーに達しなかったため、225-Acおよび崩壊娘放射性核種の結合の飽和に達しなかった。したがって、アルギン酸カルシウム微粒子が225-Acおよびその崩壊娘放射性核種に結合するさらなる能力がある。これは、十分な治療放射能を有するアルギン酸カルシウム微粒子の量を製剤化するための実用的な意味を有する。
【0181】
例8:アルギン酸塩ゲル安定性
本例の目的は、アルギン酸塩ゲルの分解性がアルギン酸塩ゲルの組成物に基づいて変化し得ることを示すことであった。
【0182】
アルギン酸塩ゲルの様々な製剤を12ウェル組織培養プレートのウェルにキャストし、室温で2時間静置した。製剤は異なるアルギン酸塩からなっていた:製剤3はPRONOVA LVMアルギン酸ナトリウムを使用した。製剤24は滅菌PRONOVA SLM20アルギン酸塩を使用した。製剤25は、PRONOVA LVGアルギン酸塩を使用した。アルギン酸塩を脱イオン水に溶解して2%溶液を得た。ゲル化イオンは、脱イオン水に溶解したカルシウムであった。ゲルを0日目に秤量し、それぞれを製剤番号を付した別個の予め秤量した50mLプラスチック遠心管に入れ、各製剤に3つのゲルを入れ、各遠心管に1つのゲルを入れた。20mLの0.9%NaCl溶液を各遠心管に添加し、管を30℃、100rpmの振盪インキュベータに入れた。0.9%NaCl溶液を毎日交換した。NaCl溶液を除去し、ゲルを含むチューブを秤量することによって、調製後の様々な日にゲルを秤量した。ゲルの重量は、チューブ+ゲルの重量からチューブの重量を差し引くことによって計算した。図12のデータ点は、各製剤の3つのゲルの平均を表す。
【0183】
図17を参照すると、
製剤3(PRONOVA LVM):製剤3中のゲルが溶解するまでに24日間かかった。28日目までに、ゲルは完全に溶解した。
【0184】
製剤24(PRONOVA SLM20):製剤24中のゲルが溶解するまでに75日間かかり、76日目までにゲルは完全に溶解した。
【0185】
製剤25(PRONOVA LVG):製剤25中のゲルが溶解するまでに118日間かかり、120日目までにゲルは完全に溶解した。
【0186】
結果は、製剤の変更によってアルギン酸塩ゲルの安定性を改変できることを示している。Gリッチなアルギン酸塩は最も長い安定性を有するゲルを形成し、Mリッチなアルギン酸塩LVMは最も短い安定性をもたらした。PRONOVA SLM20は滅菌凍結乾燥アルギン酸塩である。このアルギン酸塩もゲルを形成し、LVMアルギン酸塩とLVGアルギン酸塩との間の安定性をもたらした。
【0187】
例9-MDCK細胞へのFITC-RGDの結合
本例は、細胞へのRGDペプチドの結合を調べるために行った。
【0188】
MDCK細胞(Madin Darbyイヌ腎臓、ATCC CCL-34)をトリプシン処理し、計数した後、50万個の細胞に相当する体積を15mL遠心管に移した。細胞を遠心分離し、上清を除去した後、FITC-RGDペプチドを細胞に添加した。細胞を37℃で30分間インキュベートした後、遠心分離し、上清を除去した。細胞をPBSで3回洗浄し、各洗浄の間に遠心分離した後、1mLのシース液を細胞に添加し、試料をフローサイトメトリーで分析した。図18は、細胞に添加されたFITC-RGDペプチドの濃度に対する平均チャネル数を示す。平均チャネル番号(y軸)は、FITC-RGDペプチドから測定された蛍光の表示であり、細胞に結合したFITC-RGDペプチドの量に直接関連する。図は、FITC-RGDペプチドの量が増加するにつれて、測定された蛍光が横ばいになる、すなわちプラトーに達するように見えることを示す。これは、300μMを超える濃度のFITC-RGDペプチドが、RGDについて利用可能なすべての細胞表面結合部位を飽和させることを示す。他の実験(図示せず)は、FITC-RGDペプチドの結合が、RGDペプチドに結合することができる細胞受容体に特異的であったことを実証している。
【0189】
例10:RGD-アルギン酸塩の生物学的機能の実証
実験の目的は、RGD-アルギン酸塩の生物学的機能性、特に細胞へのその結合を調べることであった。
【0190】
12マウス筋芽細胞(ATCC CRL-1772)を3D細胞培養系に播種した用量応答型の実験を設定した。細胞を、アルギン酸塩およびペプチド結合アルギン酸塩(PRONOVA UP LVGおよびNOVATACH RGD)を用いて3D細胞培養系において0.5%の最終アルギン酸塩濃度に固定化した。細胞を、アルギン酸ペプチドを含まない、0.012μmolのペプチド結合アルギン酸塩を含む、または0.0012μmolのペプチド結合アルギン酸塩を含むアルギン酸ナトリウムに曝露した。経時的な細胞数の変化を、細胞のトリプシン処理および位相差顕微鏡および血球計を用いた計数によって決定した。これらのデータを図19に示す。各データ点は、3枚の個々のディスクの平均である(N=3)。エラーバーは標準誤差を表す。
【0191】
12マウス筋芽細胞は足場依存性であると考えられ、すなわち、細胞は増殖するために基質に結合する必要がある。インテグリンは、細胞接着を担う細胞受容体であり、RGD配列は、細胞外マトリックス(ECM)への細胞接着を担う最も一般的なペプチドモチーフである。RGDペプチド配列は、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、オステオポンチン、およびいくつかの他の接着性細胞外マトリックスタンパク質を含む多くのマトリックスタンパク質内に見出される。インテグリン受容体とECM基質との間の相互作用がなければ、細胞は増殖しない。これは、ECMまたは接着タンパク質を提供しない三次元細胞培養系で細胞を培養する場合に特に明らかである。したがって、細胞増殖の増加を、in vitroで培養した場合に増殖の増加をほとんどまたは全く示さなかった細胞へのRGD-アルギン酸塩結合の尺度として使用した。RGD-アルギン酸塩を含むすべての試料は、14日目までに細胞数の測定可能な増加を示し、結果は用量依存的に現れた。したがって、RGD-アルギン酸塩は、細胞接着のために細胞上の受容体と相互作用し、細胞が三次元培養物中で成長した場合に細胞増殖の刺激をもたらす細胞接着のシグナルをもたらすと結論付けることができる。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】