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特表2024-541001近視の発症又は進行のリスクを特定するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】近視の発症又は進行のリスクを特定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/18 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A61B3/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524456
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022080715
(87)【国際公開番号】W WO2023079019
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21306550.1
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.BLUETOOTH
3.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ドローブ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA11
4C316AA13
4C316AA25
4C316AA26
4C316FC11
4C316FC15
(57)【要約】
本開示は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法に関する。本方法は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定することを含み、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータを含み、前記感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである。本方法は、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することも含む。時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステムも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法(100)であって、
- 対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定すること(110)であって、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータ(SRx)を含み、前記感度パラメータ(SRx)は、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである、特定すること(110)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)と、
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、屈折光学パラメータ、前記対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、前記対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は前記対象についての個人情報に関するパラメータを更に含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、複数の所定のリスクカテゴリーから選択されるそれぞれのリスクカテゴリーを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(430)と、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、前記リスクカテゴリーそれぞれを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)は、
- 前記リスクカテゴリーそれぞれに関連する前記パラメータそれぞれについて、前記パラメータそれぞれの前記特定された値が、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定すること(410)、
を含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記パラメータそれぞれについての前記基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての前記時間枠にわたる前記近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(420)は、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれが割り当てられている、前記少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定すること(510)と、
- 前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクとして、最大数のパラメータに割り当てられている、前記複数の所定のリスクカテゴリーのうちのリスクカテゴリーを特定すること(512)と、
を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(420)は、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーのそれぞれの1つに重みを割り当てること(520)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれが割り当てられている、前記少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定すること(522)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれに割り当てられる前記重みに、前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算すること(524)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーについて計算された前記スコアを合計することによって最終スコアを計算すること(526)と、
- 前記最終スコアに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(530)と、
を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記最終スコアに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(530)は、前記最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較すること(528)を含む、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、前記近視の発症又は進行のリスクと前記少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値を、前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルに入力すること(610)と、
- 前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用してリスク比の値を計算すること(620)と、
- 前記リスク比の前記計算された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(630)と、
を更に含み、
前記リスク比の前記計算された値(630)は、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供し、且つ前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用して実施される、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記リスク比に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(630)は、前記リスク比の前記計算された値を少なくとも1つの第2の所定の閾値と比較することを含む、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、
- 前記対象の近距離屈折を示す第1のパラメータ(310)と、
- 前記対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離屈折を示す第3のパラメータ(310)と、
- 前記対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離快適範囲及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータ(350)と、
を含み、
前記第5のパラメータの前記値を前記特定すること(350)は、
- 前記第1~第4のパラメータの前記特定された値に基づいて、前記遠距離快適範囲及び前記近距離快適範囲を特定すること(330)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記重複度を特定すること(340)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記特定された重複度に基づいて、前記第5のパラメータに値を割り当てること(350)と、
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステム(700)であって、
- 対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段(710)であって、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータ(SRx)を含み、前記感度パラメータ(SRx)は、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである、手段(710)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段(720)と、
を含むシステム(700)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのパラメータの前記値を特定するための前記手段及び前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定するための前記手段の少なくとも1つは、回路を含む、請求項13に記載のシステム(700)。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のシステム(700)に、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法(100、300、400、500A、500B、600)のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の態様は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法に関する。本開示の種々の態様は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステムに更に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折異常の一形態である近視は、入射する光が網膜上に直接焦点を結ばず、その手前で焦点を結ぶ人間の眼の症状であり、遠くの物体を見る場合には焦点が合わずに見えるが、近くの物体を見る場合には焦点が合って見える像を生じさせる。低度近視(例えば、>-5D)及び高度近視は、両方とも眼病変、重度の視覚障害及び極端な場合には失明のリスクを増加させることに関連する。従って、近視の発症及び近視進行の抑制は、アイケアの臨床及び研究領域の両方で深刻な負担となっている。
【0003】
近視は、多くの要因を含む複雑な症状であり、近視の進行速度を評価するために長期間にわたる継続的な経過観察が必要である。加えて、近視の発症を予測することは、通常、極めて困難である。幾つかのモデルは、近視の発症及び進行の予測を可能にするが、精度及び信頼性が低い。特に、これらのモデルは、近視になる前の集団及び近視集団で観察される分散の大部分を説明することができず、これらの予測モデルで重要な因子が欠けていることを示唆している。
【0004】
従って、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを、近視になる前の集団及び近視集団で特定する、より正確で信頼性の高い手段を求めることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを正確且つ確実に特定する方法及びシステムを提供することである。この目的を達成するために、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクの特定が、少なくとも対象の感度パラメータの特定された値に基づき得る方法及びシステムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法に関する。本方法は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定することを含み、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータを含み、前記感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである。本方法は、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することも含む。
【0007】
種々の実施形態によれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、屈折光学パラメータ、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は対象についての個人情報に関するパラメータを更に含み得る。幾つかの実施形態では、対象の視覚状態に関連するパラメータは、前述のパラメータの全て及び前記対象の感度パラメータを含み得る。
【0008】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、それぞれのパラメータの特定された値に基づいて、複数の所定のリスクカテゴリーから選択されるそれぞれのリスクカテゴリーを少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てることを含み得、且つ少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを更に含み得る。
【0009】
種々の実施形態によれば、それぞれのパラメータの特定された値に基づいて、それぞれのリスクカテゴリーを少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てることは、それぞれのリスクカテゴリーに関連するそれぞれのパラメータについて、それぞれのパラメータの特定された値が、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定することを含み得る。
【0010】
種々の実施形態によれば、それぞれのパラメータについての基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。
【0011】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーが割り当てられている、少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定することを含み得、且つ時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクとして、最大数のパラメータに割り当てられている、複数の所定のリスクカテゴリーのうちのリスクカテゴリーを特定することを更に含み得る。
【0012】
種々の他の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、複数の所定のリスクカテゴリーのそれぞれの1つに重みを割り当てることと、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーが割り当てられている、少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定することとを含み得る。本方法は、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられる重みに、前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算することと、複数の所定のリスクカテゴリーについて計算されたスコアを合計することによって最終スコアを計算することと、最終スコアに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することとを更に含み得る。
【0013】
種々の実施形態によれば、最終スコアに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較することを含み得る。
【0014】
種々の実施形態によれば、1つ以上の所定のリスクカテゴリーは、低リスクカテゴリー、中リスクカテゴリー及び高リスクカテゴリーを含み得る。
【0015】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、近視の発症又は進行のリスクと少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立され得る。
【0016】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、少なくとも1つのパラメータの特定された値を、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに入力することと、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルを使用してリスク比の値を計算することと、リスク比の計算された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することとを含み得る。リスク比の計算された値は、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供し得、且つ機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルを使用して実施され得る。
【0017】
種々の実施形態によれば、リスク比に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、リスク比の計算された値を第2の所定の閾値と比較することを含み得る。
【0018】
種々の実施形態によれば、前記対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、前記対象の近距離屈折を示す第1のパラメータと、前記対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータとを含み得る。前記対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、前記対象の遠距離屈折を示す第3のパラメータと、前記対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータとを含むこともできる。前記対象の遠距離快適範囲及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータが特定され得る。第5のパラメータの値を特定することは、第1~第4のパラメータの特定された値に基づいて、遠距離快適範囲及び近距離快適範囲を特定することと、遠距離及び近距離快適範囲の重複度を特定することと、遠距離及び近距離快適範囲の特定された重複度に基づいて、第5のパラメータに値を割り当てることとを含み得る。
【0019】
種々の実施形態によれば、近視の発症又は進行のリスクを特定することは、より高い程度の近視への進行の可能性及び/又は近視の進行速度を特定することを含み得る。
【0020】
種々の実施形態によれば、時間枠は、約6ヶ月以下、約1年以下、約2年以下、約3年以下、約4年以下又は約5年以下であり得る。
【0021】
本開示の第2の態様は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステムに関する。本システムは、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段を含み、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータを含み、前記感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである。本システムは、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段を更に含む。
【0022】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段及び対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段の少なくとも1つは、回路を含み得る。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段及び対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段は、同じ回路であり得る。
【0023】
種々の実施形態によれば、本システムは、第2の態様のコンピューティングシステムに第1の態様の方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品を更に含み得る。
【0024】
本発明は、非限定的な例及び添付の図面と併せて考慮することで詳細な説明を参照してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】種々の実施形態による、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法100の例示的な概略図である。
図2】種々の実施形態による、対象の感度パラメータSRxの値を特定するために用いられる対象の確信度確率関数200の例を示す図である。
図3】種々の実施形態による、対象の遠距離快適範囲と近距離快適範囲との重複度を示す第5のパラメータの値を特定する方法300の例示的な概略図である。
図4】種々の実施形態による、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400の例示的な概略図である。
図5A】種々の実施形態による、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法500Aの例示的な概略図である。
図5B】種々の実施形態による、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法500Bの例示的な概略図である。
図6】種々の実施形態による、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法600の例示的な概略図である。
図7】種々の実施形態による、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステム700の例を示す図である。
図8A】種々の実施形態による、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400、500A及び500Bの使用条件の例の表を示す。
図8B】種々の実施形態による、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400、500A及び500Bの使用条件の例の表を示す。
図9A】種々の実施形態による、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法300、400、500A及び500Bによる使用条件の別の例の表を示す図である。
図9B】種々の実施形態による、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法300、400、500A及び500Bによる使用条件の別の例の表を示す図である。
図9C】種々の実施形態による、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法300、400、500A及び500Bによる使用条件の別の例の表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明は、例示として、本開示が実施され得る特定の詳細及び実施形態を示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施することできるように十分に詳細に説明される。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構造的及び論理的変更形態がなされ得る。種々の実施形態は、幾つかの実施形態が、新しい実施形態を形成するように1つ以上の他の実施形態と組み合わされ得るため、必ずしも相互に排他的ではない。
【0027】
本明細書で例示的に説明する本開示は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、限定を欠いて適切に実施され得る。従って、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」等は、限定することなく拡大解釈されるものとする。単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる」等の変形例は、従って、記載した整数又は整数の群を包含するが、他の任意の整数又は整数の群を排除しないことを意味すると理解される。加えて、本明細書で採用する用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として用いられ、かかる用語及び表現の使用では、図示及び説明する特徴又はその一部の任意の均等物を排除する意図はないが、様々な修正形態が本開示の範囲内で可能であることが認識される。従って、本開示は、例示的な実施形態及び任意の特徴で具体的に説明されているが、本明細書で具現化される本開示の修正形態及び変形形態が当業者によって用いられ得ることを理解されたい。
【0028】
実施形態に関連して説明する特徴は、他の実施形態における同じ又は類似の特徴に対応して適用可能であり得る。実施形態に関連して説明する特徴は、これらの他の実施形態で明示的に説明されない場合でも、他の実施形態に対応して適用可能であり得る。更に、実施形態に関連して特徴について説明するような追加形態、及び/又は組み合わせ及び/又は代替形態は、他の実施形態における同じ又は類似の特徴に対応して適用可能であり得る。
【0029】
種々の実施形態に関連して、特徴又は要素に関して用いる冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、特徴又は要素の1つ以上への言及を含む。本明細書で用いるように、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0030】
特許請求の範囲における括弧内の参照符号は、本開示の理解を容易にするためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0031】
種々の実施形態によれば、用語「近視」と、本明細書で用いるように、対象の屈折異常を指し得、ジオプトリー(D)で測定され得る。近視という用語は、従って、とりわけ、眼の軸長の増加に起因する軸性近視、眼の屈折要素の状態に起因する屈折性近視、眼の屈折面の1つ以上、特に角膜の過剰な又は増加した曲率に起因する、例えばコーエン症候群を有する対象における高い角膜及び水晶体屈折力による、曲率近視及び透光体の1つ以上の屈折率の変動に起因する屈折率近視を含み得る。
【0032】
種々の実施形態によれば、用語「リスク」は、本明細書で用いるように、ある状況の発生、例えば時間枠にわたる対象に対する近視の発症又は進行の尤度、確率又は可能性を指し得る。従って、用語「リスクを特定する」は、時間枠にわたる対象に対する近視の発症又は進行の尤度又は確率を特定又は予測するプロセス又は方法を指し得る。種々の実施形態によれば、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、対象の片眼又は両眼に対するものであり得る。
【0033】
種々の実施形態によれば、用語「発症」は、本明細書で用いるように、視力の低下及び断続的な霧視等の近視に関連する症状の最初の発生又は出現を指し得る。本開示に関連して、時間枠にわたる近視の発症は、時間枠にわたる正視の、例えば近視予備群又は近視ではない対象に対するかかる症状の最初の発生を指し得る。
【0034】
種々の実施形態によれば、用語「進行」は、本明細書で用いるように、時間枠にわたる近視対象の近視の悪化を指し得る。換言すれば、対象は、既に近視を有している。特に、進行という用語は、時間枠にわたる近視対象の近視の進行の速度又は率、例えばある期間にわたる約-2.00Dから約-3.00Dまで又は約-6.00Dまでの球面測定値からの進行を指し得る。別の例では、進行という用語は、軽度近視から中等度近視若しくは高度近視への又は中等度近視から高度近視への対象の進行を指し得る。
【0035】
種々の実施形態によれば、用語「軽度近視」は、本明細書で用いるように、-3.00D以下の負の等価球面度数に対応し得、用語「中近視」は、本明細書で用いるように、-3.00D~-6.00Dの等価球面度数に対応し得、用語「高度近視」は、-6.00D以上の負の等価球面度数に対応し得る。等価球面度数は、球面度数、例えば近視及び円柱度数、例えば乱視の関数であり得る。例えば、等価球面度数は、球面度数+0.5(円柱度数)に等しくてもよい。
【0036】
種々の実施形態によれば、用語「値」は、本明細書で用いるように、数値、例えば離散的な数値又は数値の範囲を指し得る。代替として又は追加として、用語「値」は、テキスト、例えばテキストの文字列、例えば「はい」、「いいえ」、「重複」又は「重複なし」を指し得る。
【0037】
種々の実施形態によれば、用語「視覚状態に関連するパラメータ」は、本明細書で用いるように、対象の視覚状態又はシステムに関連するパラメータ、例えば因子を指し得る。本開示に関連して、視覚状態に関連するパラメータという用語は、それぞれ正視対象又は近視対象に対して、時間枠にわたる近視の発症又は進行に影響を及ぼすか又はそれを生じるパラメータを含み得る。例えば、視覚状態に関連するパラメータは、遺伝的要因、環境的要因又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0038】
種々の実施形態によれば、用語「対象」は、本明細書で用いるように、正視の、即ち近視ではない又は近視になる前の個人を指し得、従って、リスクを特定することは、前記正視の個人に対する時間枠にわたる近視の発症のリスクを特定することを指し得る。種々の他の実施形態によれば、用語「対象」は、本明細書で用いるように、近視又は屈折異常の個人を指し得、従って、リスクを特定することは、前記近視の個人に対する時間枠にわたる近視の進行のリスクを特定することを指し得る。
【0039】
種々の実施形態によれば、用語「感度パラメータ」は、本明細書で用いるように、対象の感度パラメータ、例えば個人化された感度パラメータの値を指し得る。幾つかの実施形態では、感度パラメータは、特定の感度パラメータを含む。例えば、特定の感度パラメータは、以下から選択され得る。対象の少なくとも一方の眼のための少なくとも1つの眼用レンズの球面の変化に対する球面感度、対象の少なくとも一方の眼のための少なくとも1つの眼用レンズの円柱度数及び/又は軸の変化に対する円柱及び/又は軸感度、対象の少なくとも一方の眼のための少なくとも1つの眼用レンズの両眼バランスの変化に対する球面両眼感度、対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの付加の変化に対する付加感度。幾つかの他の実施形態では、感度パラメータは、特定の感度パラメータの幾つかの単一の値の平均値又は加重平均値を指すグローバル感度パラメータを含む。
【0040】
図1は、例として、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法100の概略図を示す。方法100は、ステップ110において、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定することを含む。対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータSRxを含み、感度パラメータSRxは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである。方法100は、ステップ120において、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを更に含む。
【0041】
図2は、対象の感度パラメータSRxの値を特定するために用いられる対象の確信度確率関数200の例を示す。対象の確信度確率関数200は、対象の眼の前に載置されるレンズの光学特徴値の関数として、対象によって行われる選択の確信度のグラフとして表され得る。対象の確信度確率関数200は、対象の回答と、推定されたパラメータ値の関数としての確信度の確率との積として定義され、対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変動に対する対象の選択に基づいて得ることができる。換言すれば、対象の確信度確率関数200は、2つの視覚状態間又は対象の眼の前に連続的に載置される2つの異なるレンズ間で選択を行う場合の対象の確信度を反映する。これは、標準的な検眼、例えば、固定ジャクソン・クロスシリンダーを用いるか又は用いないジャクソン・クロスシリンダー法、2色テスト、知覚評価テスト、両眼バランステスト又は当業者に公知の他の検眼方法から特定され得る。
【0042】
例えば、対象は、2つの視覚状態間又は対象の眼の前に連続して載置される2つの異なるレンズ間、例えば確信度確率関数200上の選択1及び選択2を選択するように求められ得る。0%の確信度の値は、対象が2つの視覚状態又は2つのレンズ間を選択できない場合、例えば、対象がそれぞれの視覚状態、例えば、選択1又は選択2で見られる像の品質における任意の差異も知覚できない場合に得られる値である。これは、検眼中に値「0」、「分からない」又は「ヌル」によって表され得る。-100%の確信度の値は、対象が、2つの視覚状態の第1のもの又は第1のレンズ、例えば選択1が、見られる像のより良好な品質を提供することを確信している場合に得られる値である。これは、検眼中に値「-1」によって表され得る。+100%の確信度の値は、対象が、第2の視覚状態又は第2のレンズ、例えば選択2が、見られる像のより良好な品質を提供することを確信している場合に得られる値であり、検眼中に値「+1」によって表され得る。任意の不確実な回答は、推定又は測定された確信度に応じて「-1又は+1」間の値によっても表され得る。
【0043】
対象の確信度確率関数200は、次いで、特定の光学特徴値に対して推定される全ての回答を平均化することによって計算され、次いで任意の非推定値に補間される。確信度の確率が不確信度の所定の範囲に含まれるレンズの光学特徴の値に対応して、不感帯210が定義され得る。幾つかの実施形態では、不確信度の範囲は、範囲[-70%、70%]、[-60%、60%]又は好ましくは[-50%、50%]若しくは[-40%、40%]である。換言すれば、不感帯210は、確信度の確率が所定の範囲、例えば[-50%、50%]を下回る2つの境界である高レベル220及び低レベル230によって定義及び限定される。
【0044】
感度パラメータSRxの値は、次いで、式1によって表されるように、不感帯210の大きさの半分に等しくなるように定義され得る。
【数1】
即ち、感度パラメータSRxの値は、対象の確率確信度関数200の0%における確信度の値に対応し得る。
【0045】
換言すれば、不感帯210は、対象にとって許容できるか、又は対象が、いずれのレンズがより良好な視力を提供するかを決定できない光学特徴の値の範囲に対応し得る。感度パラメータSRxの値は、次いで、対象の眼の前に載置されるレンズの光学特徴の値の変化に対して対象が無反応である光学特徴変化の不感帯210の半分の幅として、対象の確信度確率関数200から特定され得る。
【0046】
感度パラメータSRxの値を特定する方法は、文献の国際公開第2020/016398号パンフレットから公知である。確信度確率関数を特定する方法は、文献の国際公開第2018/015381号パンフレットから公知である。
【0047】
調節ラグ、例えば、対象の眼(単数又は複数)が視覚刺激に応答して正確に焦点を合わせることができない程度は、近視の発症後に強く増加することが示されており、近視対象は、正視者よりも霧視に対する感受性が低いことが示されている(Rosenfield M.et al.Optom.Vis.Sci.1999,76(5):303~307)。現在、「variations dioptriques」の「les optimales convexes et concaves」等の検眼測定方法は、感度パラメータSRxの推定を提供する。しかし、これらの検眼測定方法は、対象、特に子供によって完全に理解されない可能性がある複雑な指示を伴う追加の検査を含む。種々の実施形態によれば、対象の調節ラグは、対象の確信度確率関数200上の対象の不感帯210、従って対象の感度パラメータSRxの値に関連し得る。
【0048】
有利には、対象の確信度確率関数200に基づいて対象の感度パラメータSRxの値を特定することは、対象、特に幼い子供にとって複雑であり得る追加の測定又は指示を必要とすることなく、感度パラメータSRxを精密且つ正確な方法で特定する直接的且つ単純な方法を提供する。
【0049】
再度図1を参照すると、方法100のステップ110は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定することを更に含み得る。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータは、以下を更に含み得る。屈折光学パラメータ、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は対象についての個人情報に関するパラメータ。
【0050】
種々の実施形態によれば、対象の屈折光学パラメータは、対象の屈折異常の他覚測定値、例えば検眼中に得られる球面度数を含み得る。前記パラメータは、任意の検眼装置、例えば眼位計、屈折計、自動屈折計及び/又は検影器を用いて取得され得る。更なる例では、屈折光学パラメータは、例えば、前年における低度近視から中度近視又は高度近視までの、近視対象についての以前の時間枠、例えば前年における近視進行の速度を含み得るか又はそれであり得る。
【0051】
種々の実施形態によれば、対象のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータは、十分な光への対象の曝露レベルを含み得る。例えば、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータは、対象の身体活動レベル、精密作業の期間及び/又は教育レベル等の環境因子を含み得る。幾つかの実施形態では、対象のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータは、対象が1日当たり屋外で過ごす時間、例えば身体運動又は屋外遊技セッションに従事する時間であり得る。幾つかの他の実施形態では、対象のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータは、1日当たりの日光又は自然光への平均曝露、自然光曝露の強度、平均UV指数、緯度又はそれらの任意の組み合わせであり得る。理論に縛られるものではないが、不十分な光曝露、1日当たりの屋外で費やされる不十分な時間、近見で費やされる長い期間及び高等教育レベルは、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを増加させることが観察されている。従って、屋外で過ごす時間の長さは、網膜ドーパミンの産生及び放出に対する日光への長時間の曝露の影響に少なくとも部分的に起因し得る近視の発症に対する予防効果に関連する。
【0052】
種々の実施形態によれば、対象の遺伝的履歴に関するパラメータは、対象が有する近視の親の数を含み得るか又はそれであり得る。別の例では、対象の遺伝的履歴に関するパラメータは、対象が有する近視の親戚、例えば祖父母の数を含み得るか又はそれであり得る。理論に縛られるものではないが、時間枠にわたる近視の発症及び進行に対するリスクは、その親から遺伝する場合があり、近視の家族歴は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスク増加と相関することが示されている。
【0053】
種々の実施形態によれば、光学バイオメトリックパラメータは、対象の軸長(mm単位)、硝子体腔深さ(mm単位)、脈絡膜厚さ(μm単位)の他覚測定値を含み得、且つ角膜ヒステリシスを含む他の角膜特性を更に含み得る。前記パラメータは、検眼中、任意の検眼装置、例えば眼位計、屈折計、自動屈折計及び/又は検影器を用いて取得され得る。
【0054】
種々の実施形態によれば、対象についての個人情報に関するパラメータは、対象の性別、年齢、民族的背景又はそれらの組み合わせを含み得るか又はそれであり得る。対象の個人情報に関するパラメータは、糖尿病、小児関節炎、ブドウ膜炎及び全身性エリテマトーデス等の基礎疾患も含み得ることが更に想定される。近視は、前記疾患を有する個人、例えば子供でより一般的であることが観察されている。
【0055】
従って、方法100のステップ110は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定することを含み得、このパラメータは、対象の感度パラメータSRx、対象の屈折光学パラメータ、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は対象についての個人情報に関するパラメータを含み得る。幾つかの実施形態では、方法100のステップ110は、対象の視覚状態と関連する全ての前述のパラメータの値を特定することを含む。
【0056】
種々の実施形態によれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、対象の遠距離快適範囲と近距離快適範囲との重複度を示す第5のパラメータも含み得る。
【0057】
図3は、例として、対象の遠距離快適範囲と近距離快適範囲との重複度を示す第5のパラメータの値を特定する方法300の概略図を示す。ステップ310では、方法300は、対象の近距離屈折を示す第1のパラメータを特定することを含み得る。例えば、第1のパラメータ、例えば対象の近距離屈折は、対象の近視処方に対応し得、対象の検眼中に取得され得る。ステップ310は、対象の遠距離屈折を示す第3のパラメータを特定することも含み得る。例えば、第3のパラメータ、例えば対象の遠距離屈折は、対象の検眼中に得られる対象の遠視処方に対応し得る。
【0058】
方法300のステップ320は、対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータを特定することを含み得、且つ対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータを特定することを更に含み得る。近距離及び遠距離屈折感度は、それぞれ対象の近距離及び遠距離確信度確率関数を用いて特定され得る。対象の近距離及び遠距離確信度確率関数を特定する方法は、図2を参照して上で説明した対象の感度パラメータSRxを取得するために用いられる方法と同じであり得る。手短に言えば、対象の近距離及び遠距離確信度確率関数は、特定の光学特徴値、例えば近視及び遠視処方それぞれについて推定される回答を平均化することによって計算され得る。次いで、近視及び遠視処方確信度確率関数は、任意の非推定値に補間され得る。近距離及び遠距離不感帯は、それぞれ対象の近距離及び遠距離確信度確率関数上で定義され得る。近距離及び遠距離不感帯は、確信度の確率が不確信度の所定範囲、例えば、[-50%、50%]に含まれるレンズの光学特徴の値に対応し得る。換言すれば、近距離及び遠距離屈折不感帯は、それぞれ近距離又は遠距離確信度確率関数上の高レベル及び低レベルによって定義及び限定され得、それらは、確信度の確率が所定範囲、例えば[-50%、50%]を下回る2つの境界である。近距離又は遠距離屈折感度の値、例えば第2及び第4のパラメータは、それぞれ次いで近距離又は遠距離不感帯サイズの半分に等しいと定義され得る。代替として、近距離及び遠距離屈折感度、例えば第2及び第4のパラメータは、例えば近距離若しくは遠距離条件のいずれか一方又は例えば近距離及び遠距離条件の両方で測定される様々な特定の感度パラメータSRxから計算され得るグローバル感度パラメータに両方とも等しいものとして定義され得る。
【0059】
幾つかの実施形態では、近距離屈折感度、例えば第2のパラメータ又は遠距離屈折感度、例えば第4のパラメータのいずれか一方が測定され得、いずれか一方のパラメータは、例えば、近視発症若しくは進行のリスクと第2若しくは第4のパラメータとの間の関係を提供する予測モデルを介して、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するために用いられ得る。従って、測定を実行し、第2又は第4のパラメータを取得するのに要する時間が有利に短縮され得る。例えば、小さい子供の場合、測定を実行するのに要する時間は、関連する基準となり得る。幾つかの他の実施形態では、近距離及び遠距離屈折感度、例えば第2及び第4のパラメータの両方が測定され、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するために用いられ得る。
【0060】
ステップ330では、方法300は、ステップ310及び320でそれぞれ取得された対象の近視処方、例えば第1のパラメータ及び近距離屈折感度、例えば第2のパラメータに基づいて特定され得る近距離快適範囲を特定することを含み得る。近距離快適範囲は、式2に従って計算され得る。
近距離快適範囲=近視処方±(K_near×近距離屈折感度) - (2)
式2では、係数(K_near)は、対象固有の、例えば個人化された係数を表し得る。近距離快適範囲に対する関連する信頼区間は、2×K_near×近距離屈折感度によって与えられる。係数K_near及び関連する信頼区間は、近距離屈折感度、例えば第2のパラメータの関数、例えばガウス関数の幅に依存し得る。幾つかの実施形態では、95%信頼区間が用いられ得る。この場合、K_nearは、近距離屈折感度に対するガウス分布を仮定して1.96であり得る。代替として、50%、90%、98%又は99%等の他の信頼区間を用い得る。
【0061】
方法300のステップ330は、近距離快適範囲と同様の方法で遠距離快適範囲を特定することも含み得る。遠距離快適範囲は、ステップ310及び320でそれぞれ取得された遠視処方、例えば第3のパラメータ及び遠距離屈折感度、例えば第4のパラメータに基づき得る。遠距離快適範囲は、式3に従って計算され得る。
遠距離快適範囲=遠視処方±(K_far×遠距離屈折感度) (3)
式3では、係数(K_far)は、対象固有の、例えば個人化された係数を表し得る。遠距離快適範囲に対する関連する信頼区間は、2×K_far×遠距離屈折感度によって与えられる。係数K_far及び関連する信頼区間は、遠距離屈折感度、例えば第4のパラメータの関数、例えばガウス関数の幅に依存し得る。幾つかの実施形態では、95%信頼区間が用いられ得る。この場合、K_farは、近距離屈折感度に対するガウス分布を仮定して1.96であり得る。代替として、50%、90%、98%又は99%等の他の信頼区間を用い得る。
【0062】
方法300のステップ340は、近距離及び遠距離快適範囲の重複度を特定することを含み得る。換言すれば、ステップ340は、遠距離快適範囲が近距離快適範囲と重なるかどうかを特定することを含む。幾つかの実施形態では、遠距離及び近距離快適範囲が重なると特定された場合、ステップ340は更に、遠距離屈折、例えばステップ310で特定された第3のパラメータが、ステップ330で特定された近距離快適範囲内にあるかどうかを特定することを含み得る。
【0063】
ステップ350では、方法300は、ステップ340で特定され得る近距離及び遠距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータに値を割り当てることを含み得る。例えば、第5のパラメータに割り当てられ得る値は、以下を含み得るが、それらに限定されない。「重複なし」、「重複あり」、「重複はあるが遠距離屈折は近距離快適帯にない」。代替として、第5のパラメータに割り当てられ得る値は、近距離及び遠距離快適範囲のパーセンテージ重複度を含み得る。
【0064】
上で示したように、視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータは、方法300を用いて特定され得る、遠距離快適範囲と近距離快適範囲との重複度を示す第5のパラメータを含み得る。理論に縛られるものではないが、遠距離及び近距離快適範囲が重複した場合、対象は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクが低いことが観察されている。逆に、遠距離及び近距離快適範囲が重複しない場合、対象は、近視を発症する有意なリスクがあり、例えば、時間枠にわたる近視になる前の対象について近視発症の有意なリスク又は時間枠にわたるより高度の近視に進行する有意なリスクがある(Drobe B.et al.Ophthal.Physiol.Opt.1995,15,375-378)。従って、第5のパラメータは、既存の又は新規の近視発症又は進行モデルの予測力を改善するために追加の要因を提供し得る。
【0065】
非限定的な実施形態では、対象の視覚状態に関連するパラメータの例は、対象の視力又は視覚欠損、例えば遠視、乱視、老視又は近視性黄斑変性症、網膜剥離及び緑内症等の視覚問題をもたらす眼疾患等の任意の他の視覚疾患に関するパラメータを更に含み得る。
【0066】
図1のステップ120は、対象の視覚状態に関連する前述の少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを含む。
【0067】
種々の実施形態によれば、対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、時間枠内でより高い程度の近視への進行の可能性を特定することを含み得る。進行の可能性は、リスク比、例えばパーセンテージ若しくは比の形態で表され得るか、又はカテゴリーリスク、例えばより高い程度の近視に進行する低リスク、中リスク若しくは高リスクとして表され得る。幾つかの実施形態では、より高い程度の近視は、低度近視、中度近視又は高度近視を含み得る。例えば、正視の対象について、対象の発症又は進行のリスクを特定することは、時間枠にわたる非近視から低度近視への対象の進行リスクを特定することを含み得る。更なる例として、正視の対象について、対象のリスクを特定することは、対象が近視を発症し得る年齢を予測することを含み得る。別の例では、近視の対象について、対象の発症又は進行のリスクを特定することは、時間枠内でより高度の近視に、例えば低度近視から中度近視若しくは高度近視に進行する対象のリスクを特定することを含み得る。更なる例として、近視の対象について、対象のリスクを特定することは、対象が低度近視から中度近視又は高度近視に進行する年齢を予測することを含む。
【0068】
種々の実施形態によれば、対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、近視の進行速度を特定することを含み得る。進行速度は、時間枠内の近視の度数の変化を予測することを含み得る。予測される近視の度数の変化は、約1D以下、約1~2D、約2~3D、約3~4D、約4~5D、約5~6D、約6~7D、約7~8D、約8~9D又は約9~10Dであり得る。
【0069】
種々の実施形態によれば、対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、時間枠にわたるもの、即ち相対的なものである。対象の近視の発症又は進行のリスクを予測するための時間枠は、近視の発症又は進行のリスクに関する情報を含むデータベースが確立されるのと同じ時間枠、例えば以下に説明するような縦断的研究の時間枠であり得る。例えば、時間枠は、約6ヶ月、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約8年又は約10年を含み得るが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、時間枠は、5年以下である。即ち、より高い度数の近視への対象の進行の確率及び/又は近視の進行速度は、示された時間枠に対して確立される。
【0070】
図1のステップ120を再度参照すると、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、種々の実施形態に従い、近視の発症又は進行のリスクと少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立され得る。換言すれば、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、機械学習アルゴリズムを用いて実装され得る予測モデルを使用して実装及び特定され得る。例えば、1つ以上のニューラルネットワークは、同じ又は類似のプロファイル、例えば感度パラメータSRx、年齢、遺伝的履歴、屈折パラメータを有し得る、多数の個人、例えば集団サンプルの視覚状態に関連するパラメータの一連の特定された値を入力し、近視の発症又は進行のリスクと視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータとの間の関係に関する情報を含む相関テーブル又は任意のデータベースを構築することによって訓練され得る。一実施形態では、前記データベース又は相関テーブルは、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクと、視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータとの相関を確立した縦断的研究を含むか又はそれであり得る。
【0071】
種々の実施形態によれば、機械学習アルゴリズムは、例えば、以下の教師あり、半教師あり及び教師なし学習からなる群から選択され得る:サポートベクターマシン(SVM)、単純ベイズ分類、ランダムフォレスト、人工ニューラルネットワーク、決定木、K平均、学習ベクトル量子化、自己組織化マップ、グラフィカルモデル、好ましくは回帰アルゴリズム、例えば線形、多変量、ロジスティック、相関ルール学習、ディープラーニング、次元削減及びアンサンブル選択アルゴリズム。
【0072】
非限定的な実施形態では、自己申告パラメータは、少なくとも1つの予測モデルによって算出され得ることが想定される。例えば、自己申告パラメータは、ソーシャルネットワークからのデータ又は視覚欠損若しくは疾患に関連する遺伝的リスクスコアを含む。かかる自己申告パラメータは、従って、予測モデルを修正する。
【0073】
機械学習アルゴリズムに基づいて少なくとも1つの予測モデルを構築する方法は、国際公開第2020/126513号パンフレットから公知であり得る。
【0074】
図4~5Bは、本発明の種々の実施形態による、カテゴリーリスクに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400、500A及び500Bの概略図を示す。換言すれば、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための予測モデルは、カテゴリーモデルを含むか又はそれであり得る。特に、予測モデルは、少なくとも低リスクカテゴリー、中リスクカテゴリー及び高リスクカテゴリーを含む1つ以上の所定のリスクカテゴリーを含み得る。
【0075】
種々の実施形態によれば、所定のリスクカテゴリーのそれぞれは、それぞれのパラメータに関連する基準値又は基準値範囲を含む。例えば、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーは、それぞれ対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータ、例えば感度パラメータSRx、屈折光学パラメータ、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ、対象についての個人情報に関するパラメータ及び/又は対象の近距離及び遠距離快適帯の重複度を示す第5のパラメータに繋がる基準値又は基準値範囲を含む。
【0076】
種々の実施形態によれば、用語「集団サンプル内の個人」と、本明細書で用いるように、群、例えば互いに少なくとも1つの共通の特徴を共有し得る任意の数の個人を指し得る。例えば、集団サンプル内の個人は、同じ又は類似の屈折光学パラメータ、年齢、民族的背景、遺伝的履歴、ライフスタイル、活動若しくは行動、光学バイオメトリックパラメータ、感度パラメータSRx及び/又は近距離及び遠距離快適範囲の重複度に関する情報を含むパラメータを共有し得る。
【0077】
種々の実施形態によれば、基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。例えば、データベースは、集団サンプル内の個人、例えば12歳未満の子供についての、ある期間にわたる近視の発症又は進行のリスクの縦断的研究に基づいて確立され得る。データベースは、従って、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを、視覚状態に関連する特定のパラメータ、例えば感度パラメータSRx、対象の近距離及び遠距離快適帯の重複度を示す第5のパラメータ、屈折光学パラメータ、個人の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び個人のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータに関連する情報を含み得る。
【0078】
図4は、例として、それぞれのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400の概略図を示す。ステップ410では、方法400は、図1のステップ110で取得されたそれぞれのパラメータの特定された値が、それぞれのリスクカテゴリーに関連するそれぞれのパラメータについて、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定することを含む。例えば、ステップ410は、感度パラメータSRxの特定された値が、低リスクカテゴリー、中リスクカテゴリー及び高リスクカテゴリーのそれぞれに対する感度パラメータSRxの基準値範囲について、対応する基準値に等しいか又は対応する基準値範囲内に入るかどうかを特定することを含み得る。基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースから確立され得る。換言すれば、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーは、それぞれ視覚状態に関連する各パラメータについての基準値又は基準値範囲を含み、ステップ410は、対象の視覚状態に関連するパラメータの特定された値が基準値に等しいか又は基準値範囲内に入るかどうかを特定することを含む。
【0079】
方法400のステップ420は、それぞれのパラメータの特定された値が、それぞれのリスクカテゴリーに関連するそれぞれのパラメータについて、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定することを含み得るステップ410に基づいて、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに、複数の所定のリスクカテゴリーから選択されるリスクカテゴリーを割り当てることを含み得る。例えば、それぞれのパラメータの特定された値が、それぞれのリスクカテゴリーについて、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にある場合、パラメータは、それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられ得る。即ち、パラメータ、例えば感度パラメータSRxの特定された値が、低リスク中リスク又は高リスクカテゴリーのそれぞれの基準値範囲に等しいか又はその範囲内にある場合、パラメータは、そのカテゴリーに割り当てられる。
【0080】
方法400のステップ430は、図5A及び5Bを参照して説明するように、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを含み得る。
【0081】
図5Aは、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する例示的な方法500Aの概略図を示す。一実施形態では、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、ステップ510において、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーが割り当てられている、少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定することを含み得る。換言すれば、ステップ510は、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれの中のパラメータの総数を特定することを含む。例えば、予測モデルは、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれの中のパラメータの合計、例えば総数を計算する命令を含み得る。
【0082】
方法500Aは、ステップ512において、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクとして、最大数のパラメータに割り当てられている、複数の所定のリスクカテゴリーのうちのリスクカテゴリーを特定することを更に含み得る。即ち、ステップ512は、所定のリスクカテゴリーのそれぞれの中のパラメータの総数を比較すること、例えば低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれの間のパラメータの総数を比較することと、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクとして、パラメータの総数が最も多い特定のリスクカテゴリーを特定することとを含む。例えば、低リスクカテゴリーが前記カテゴリー内に入る2つのパラメータを含み、中リスク及び高リスクカテゴリーがそれぞれ1つのパラメータを含む場合、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、低リスクであると特定され得る。
【0083】
図5Bは、一例として、少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられるそれぞれのリスクカテゴリーに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する別の方法500Bの概略図を示す。別の実施形態では、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、ステップ520において、複数の所定のリスクカテゴリーのそれぞれの1つに重みを割り当てることを含み得る。例えば、定量的な例えば数値が低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれに割り当てられ得る。更なる例として、低リスクカテゴリーは、重み「0」を割り当てられ、中リスクカテゴリーは、重み「1」を割り当てられ、高リスクカテゴリーは、重み「2」を割り当てられ得る。
【0084】
方法500Bは、ステップ522において、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーが割り当てられている、少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定することも含み得る。ステップ522は、方法500Aのステップ510と同じであり得る。繰り返しの説明は、簡潔にするために省略する。手短に言えば、ステップ522は、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれの中のパラメータの総数を特定することを含む。
【0085】
方法500Bのステップ524は、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられる重みに、前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算することを含み得る。例えば、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれに対するスコアは、(ステップ520で)それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられた重みに、(ステップ522で)それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられたパラメータの総数を乗算することによって計算され得る。
【0086】
方法500Bのステップ526は、次いで、複数の所定のリスクカテゴリーについて計算されたスコアを合計することにより、最終スコアを計算することを含み得る。例えば、最終スコアは、前のステップ524で特定された個々のスコアを低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれについて加算することによって計算される。
【0087】
時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するために、方法500Bは、ステップ528において、最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較することを含み得る。第1の所定の閾値は、集団サンプル内の個人についての時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクに関する情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。例えば、最終スコアは、少なくとも1つの第1の所定の閾値、例えば低リスクカテゴリー、中リスクカテゴリー及び高リスクカテゴリーの閾値と比較され得、最終スコアが少なくとも1つの第1の所定の閾値と等しいか、それよりも大きいか又はそれよりも小さいかを特定することを含み得る。
【0088】
方法500Bのステップ530は、次いで、最終スコアと少なくとも1つの第1の所定の閾値との比較に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを含み得る。例えば、前のステップ528において、最終スコアが高リスクカテゴリーの第1の所定の閾値以上であると特定された場合、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、高リスクであると特定され得る。
【0089】
図6は、例として、種々の実施形態による、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法600の概略図を示す。方法600は、ステップ610において、(ステップ110で)少なくとも1つのパラメータの特定された値を、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに入力することを含み得る。例えば、ステップ610は、とりわけ、感度パラメータSRxの特定された値並びに/又は対象の遠距離及び近距離快適帯の重複度を示す第5のパラメータを、機械学習アルゴリズムに基づく予測モデルに入力することを含み得る。
【0090】
方法600は、ステップ620において、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルを使用してリスク比の値を計算することも含み得る。上述したように、機械学習アルゴリズムは、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクと視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータとの間の関係に関する情報を含む相関テーブル又は任意のデータベースを含み得る。種々の実施形態によれば、リスク比の値は、機械学習アルゴリズムに基づいて計算され得る。例えば、機械学習アルゴリズムは、集団サンプル内の個人について、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクと、視覚状態に関連するそれぞれの少なくとも1つのパラメータとを相関させる多因子方程式を含み得る。従って、ステップ620で特定されるリスク比の計算された値は、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供し、且つ機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルを使用して実施される。
【0091】
ステップ630では、方法600は、リスク比の計算された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することを含み得る。例えば、リスク比の計算された値は、時間枠にわたる対象の近視発症又は進行のリスクの指標確率を提供するリスクパーセンテージ(%)として表され得る。更なる例として、リスク比は、時間枠にわたる0~100又は代替として0.0~1.0の範囲の値であるものとして表され得る。
【0092】
幾つかの実施形態では、方法600は、リスク比の計算された値を第2の所定の閾値と比較することを含む追加のステップ640を含み得る。第2の所定の閾値は、集団サンプル内の個人についての時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクに関する情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。例では、第2の所定の閾値は、対象が、近視の発症又は進行の中程度又は高いリスクがあり得ることを示す閾値であり得る。
【0093】
種々の実施形態によれば、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法100、300、400、500A、500B及び600は、上で説明したように、近視の発症又は進行のリスクとそれぞれのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づき得る。幾つかの実施形態では、リスクは、カテゴリーリスク、例えば低リスク、中リスク又は高リスクとして特定され得る。代替として、リスクは、連続リスクとして、例えば、パーセンテージ又はリスク比として特定され得る。幾つかの実施形態では、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、カテゴリーリスク及び連続リスクの両方を含み得る。
【0094】
図7は、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステム700の例を示す。システム700は、少なくとも1つの回路、例えばマイクロプロセッサを含み得る、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710を含む。例えば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定する手段710は、対象の屈折異常の他覚測定値を提供するために検眼中に用いられるコンピュータ制御機械、例えば眼位計、屈折計、自動屈折計及び/又は検影器等の任意の検眼装置を含み得る。例えば、検眼装置は、対象の屈折光学パラメータ、対象の近距離及び遠距離屈折をそれぞれ示す第1のパラメータ及び第3のパラメータを特定するために用いられ得る。
【0095】
種々の実施形態によれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710は、対象の感度パラメータSRxを特定することも含み、前記感度パラメータSRxは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである。従って、少なくとも1つの回路は、感度パラメータSRxの値を特定するように構成され、例えば命令を含み得る。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの回路は、対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータと、対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータと、対象の遠距離及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータとを更に特定し得る。感度パラメータSRxの値並びに第2、第4及び第5のパラメータを特定する方法は、上記で説明されており、繰り返しの説明は、簡潔にするために省略される。
【0096】
種々の実施形態によれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710は、対象の視覚状態に関連する他のパラメータを受信するようにも構成され得る。例えば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710は、対象の入力を受信するように構成されるインターフェース712を含み得る。更なる例として、インターフェース712は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710、例えばマイクロプロセッサ上のディスプレイであり得る。このため、対象(又は第三者)は、視覚状態に関連する他のパラメータ、例えば対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は対象の個人的情報に関するパラメータを入力し得る。
【0097】
種々の実施形態によれば、回路は、アナログ回路若しくはコンポーネント、デジタル回路若しくはコンポーネント又はハイブリッド回路若しくはコンポーネントを含み得る。以下でより詳細に説明するそれぞれの機能の他の任意の種類の実装も、代替実施形態による「回路」として理解され得る。デジタル回路は、メモリに格納されるソフトウェア、ファームウェア又はそれらの任意の組み合わせを実行する専用回路構成又はプロセッサであり得る任意の種類の論理実装エンティティとして理解され得る。従って、種々の実施形態では、「回路」は、デジタル回路、例えばハードワイヤード論理回路又はプログラマブルプロセッサ、例えばマイクロプロセッサ(例えば、複合命令セットコンピュータ(CISC)プロセッサ又は縮小命令セットコンピュータ(RISC)プロセッサ)等のプログラマブル論理回路であり得る。「回路」は、ソフトウェア、例えば任意の種類のコンピュータプログラム、例えばJava等の仮想マシンコードを用いる、例えばコンピュータプログラムを実行するプロセッサも含み得る。
【0098】
システム700は、少なくとも1つのパラメータの特定された値に基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段720を更に含む。時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための前記手段720は、方法400、500A、500B及び600のステップを実行するように構成される少なくとも1つの回路を含み得る。種々の実施形態によれば、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段720、例えば、回路又はマイクロプロセッサは、コンピュータプログラム又は命令を含み得る。一例では、コンピュータプログラム又は命令は、方法400、500A、500Bのステップを実行して、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクが低リスク、中リスク又は高リスクカテゴリーのものであるかどうかを特定するように実行され得る。別の例では、命令は、方法600のステップを実行して、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供するリスク比の値を計算するように実行され得る。種々の実施形態によれば、コンピュータプログラム又は命令は、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルで実装され得る。
【0099】
種々の実施形態によれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710及び対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720は、回路、例えばマイクロプロセッサを含み得る。一実施形態では、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710と、対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720とは、同じ回路、例えばマイクロプロセッサで実装され得る。例えば、対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720、例えば、方法400、500A、500B及び600のステップを実行する命令及びコンピュータプログラムは、方法100及び300のステップ110を実行するように、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710と同じ回路で実装され得る。更なる例として、対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720は、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するために用いられる検眼装置710で実装され得る。
【0100】
有利には、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710と、時間枠にわたる対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720とを同じ回路に含めることは、前記対象のリスクを特定する直接的で単純な方法を提供する。例えば、回路を操作するオペレータは、前記リスクを特定するための任意の追加ステップを実行する必要がない。
【0101】
幾つかの実施形態では、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710及び対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720は、それぞれ回路を含み得る。換言すれば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710と、対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720とは、別々の回路で実装され得る。例えば、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段710は、検眼装置上で取得及び計算され得、対象の発症又は進行のリスクを特定するための手段720は、別のマイクロプロセッサ上で実装され得る。この実施形態では、ステップ110で取得された対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの特定された値は、予め定義された無線通信プロトコルに従って回路に送信されて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定し得る720。予め定義された無線通信プロトコルの例は、global system for mobile communication(GSM)、enhanced data GSM environment(EDGE)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA(登録商標))、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、wireless fidelity(Wi-Fi)、voice over Internet protocol(VoIP)、worldwide interoperability for microwave access(Wi-MAX)、Wi-Fi direct(WFD)、超広帯域無線(UWB)、infrared data association(IrDA)、Bluetooth、ZigBee、SigFox、LPWan、LoRaWan、GPRS、3G、4G、LTE及び5G通信システムを含む。従って、回路のそれぞれは、無線伝送をサポートするために要求される必要なハードウェアを含み得る。代替として、対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの特定された値は、有線手段を介して送信され得ることが想定される。
【0102】
種々の実施形態によれば、コンピュータプログラム製品は、システム700に方法100、300、400、500A、500B及び600のステップを実行させる命令を含み得る。方法100、300、400、500A、500B及び600のステップは、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するために用いられ得る。
【0103】
種々の実施形態によれば、本発明の方法及びシステムは、非近視又は近視対象に対するリスクを軽減するための推奨を提供することを更に含み得る。例えば、軽減オプションは、対象が、時間枠にわたる近視発症の中リスク若しくは高リスク又は近視進行の速い若しくは高い速度を有すると特定された場合に推奨され得る。軽減オプションは、以下を含み得るが、それらに限定されない。近視の進行を制御するように構成されるレンズ;アトロピン点眼薬;角膜屈折矯正;多焦点ソフトコンタクトレンズ;近視の進行を遅らせるように設計される眼鏡レンズ;対象のライフスタイル、活動又は行動の変化、例えば1日当たりの自然光において屋外で過ごす期間の増加、近見を伴う作業に費やす時間の減少、対象の栄養の変化又はそれらの任意の組み合わせ;対象に対する更なる検査、例えば更なる検眼、遺伝子検査、個人の片眼又は両眼の画像診断、眼の障害又は状態のスクリーニング又はそれらの任意の組み合わせを行う推奨。
【0104】
有利には、本発明は、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するための新規な因子として、対象の感度パラメータSRxの値を用いる。具体的には、屈折に対する感度の欠如、即ち感度パラメータSRxの値並びに/又は近距離及び遠距離屈折感度パラメータの値は、対象が知覚することができ、近視の発症又は進行に直接関連する像劣化レベルの直接的な指標を提供する。結果として、感度パラメータSRxの値並びに追加として対象の遠距離及び近距離快適帯の重複度(対象の遠距離屈折感度及び近距離屈折感度に基づく)は、既存の又は新しい近視予測モデルの予測力を向上させる追加の要因を提供する。対象についての近視の発症又は進行のリスクの同定は、前記リスクを軽減する早期介入を可能にする。
【実施例
【0105】
本明細書に開示するシステム700及び方法400、500A、500B、600を以下の例で更に説明し、これらは、例示として提供され、本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0106】
図8A~9Cに示す表における基準値又は基準値範囲は、各カテゴリーにおける感度の限界に対する例示的な好ましい閾値を提供する。例えば、感度パラメータSRxの感度の限界は、低リスクカテゴリーについては0~0.15D、中リスクカテゴリーについては0.15~0.3D、高リスクカテゴリーについては0.3Dを超える範囲であり得る。代替として、感度パラメータSRxの感度の限界は、低リスクカテゴリーについては0.1~0.2D、中リスクカテゴリーについては0.2~0.4D、高リスクカテゴリーについては0.4Dを超える範囲であり得る。上で示したように、それぞれのパラメータ、例えば、対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、屈折光学パラメータ、感度パラメータSRxについての基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人について、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。
【0107】
実施例1.近視になる前の対象及び感度パラメータSRxの使用
図8A及び8Bは、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法400、500A及び500Bの使用条件の例の表を示す。この例では、対象は、8歳の女子であり得る。図8Aを参照すると、検眼に基づいて得られた、対象の屈折光学パラメータがplanoである(円によって示される)、例えば、対象が非近視であると特定され得る。他のパラメータは、対象の遺伝的履歴及び対象のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータを含み得る。この例では、対象は、対象が1人の近視の親を有し(円によって示されている)、ライフスタイル、活動又は行動に関する対象のパラメータ、即ち1日当たりの屋外で過ごす時間が2時間を超える(円によって示されている)ことを示す。前記パラメータは、図8Aに示すような近視発症予測モデルに入力され得る。
【0108】
図8Aからわかるように、対象は、高リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えば屈折光学パラメータと、中リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えば遺伝的履歴と、低リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えばライフスタイル、活動又は行動とを有する。低リスク、中リスク及び高リスクの各カテゴリー内の基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人について、時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立され得る。各リスクカテゴリー、例えば複数の所定のリスクカテゴリーは、それぞれ1つの要因を含むため、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、困難であり得る。
【0109】
次いで、対象の感度パラメータSRxを更に特定し得る。この例では、対象の感度パラメータSRxは0.37Dの値を有すると特定され得る。図8Bを参照すると、0.37Dの対象の感度パラメータSRxは、高リスクカテゴリー内に入り、従って、高リスクカテゴリーは、ここで、2つの因子、例えば屈折光学パラメータ及び感度パラメータSRxを含み、中リスク及び低リスクカテゴリーは、それぞれ1つのパラメータを含むことがわかる。次いで、対象が時間枠内に近視を発症する高いリスクを有すると特定される場合があり、前記リスクを軽減する適切なオプションが推奨され得る。例えば、低用量のアトロピン点眼薬が処方され得るか、又は対象は、1日当たりの屋外で過ごす時間の長さを増加させることを推奨され得る。
【0110】
代替として、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、低、中及び高リスクカテゴリーのそれぞれに重みを割り当てることを含む方法500Bを用いて特定され得る。例えば、低リスクカテゴリーは、重み「0」を、中リスクカテゴリーは、重み「1」を、高リスクカテゴリーは、重み「2」を含み得る(方法500のステップ520)。ステップ522及び526を実行することにより、最終スコア5、例えば最終スコア=(0)(1)+(1)(1)+(2)(2)が計算され得る。ステップ528は、最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較することを含み得る。例えば、最終スコアは、低リスク、中リスク及び高リスクカテゴリーのそれぞれについて第1の所定の閾値と比較され得、ステップ530では、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクが特定され得る。
【0111】
代替として、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルを使用して実施される方法600に従い、リスク比の値、例えばパーセンテージを計算することによって特定され得る。
【0112】
従って、図8Bに示すように、有利には、既存の近視予測モデル内の追加パラメータとして感度パラメータSRxの使用により、モデルの予測力が向上することがわかる。
【0113】
実施例2.近視対象並びに感度パラメータSRx及び第5のパラメータの使用
図9A、9B及び9Cは、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定する方法300、400、500A及び500Bによる使用条件の例の表を示す。この例では、対象は、6歳の男子であり得る。図9Aを参照すると、検眼に基づいて得られた、対象の屈折光学パラメータが0.25~0.50D(円によって示されている)の範囲にある、例えば対象が低度の遠視を有すると特定され得る。他のパラメータは、対象の遺伝的履歴及び対象のライフスタイル、活動又は行動に関するパラメータを含み得る。この例では、対象は、対象がいかなる近視の親も有しないこと(円によって示されている)及び1日当たりの対象の屋外で過ごす時間が1時間未満であること(円によって示されている)を示す。前記パラメータは、図9Aに示すような近視発症予測モデルに入力され得る。
【0114】
図9Aからわかるように、対象は、高リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えばライフスタイル、活動又は行動と、中リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えば屈折パラメータと、低リスクカテゴリーに入る1つの要因、例えば遺伝的履歴とを有する。複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーは、それぞれ1つの要因を含むため、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定することは、困難であり得る。
【0115】
次いで、対象の感度パラメータSRxを更に特定し得る。この例では、対象の感度パラメータSRxは、中リスクカテゴリーの感度パラメータSRxに対応する0.15~0.3Dの範囲の値を有するように特定され得る。図9Bに示すように、対象が時間枠内に近視進行の中程度のリスクを有すると特定され得る。しかし、高リスクカテゴリーに入る1つの因子が依然として存在する。
【0116】
従って、対象の近距離及び遠距離屈折を示す対象の第1及び第3のパラメータが取得され得(ステップ310)、この例ではそれぞれ+0.5D及び+2.0Dとして測定され得る。ステップ320では、対象の近距離及び遠距離屈折感度を示す第2及び第4のパラメータが特定され得、この例ではそれぞれ0.5D及び0.2Dに等しいものとして計算され得る。ステップ330は、対象固有の係数K_near及びK_farを2として用いて、式2及び3に従って遠距離及び近距離快適範囲を特定することを含む。例えば、遠距離及び近距離快適範囲は、以下のように特定され得る。
遠距離快適範囲=0.5±(2×0.2)=[+0.9~+0.1]D
近距離快適範囲=2.0±(2×0.5)=[+3.0~+1.0]D
ステップ340では、遠距離快適範囲と近距離快適範囲との間の重複度が特定され得、ステップ350では、値が遠距離及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータに割り当てられ得る。この例では、遠距離快適範囲と快適範囲との間に重複がないことがわかり、例えば、第5のパラメータに割り当てられる値は、図9Cに示すように、高リスクカテゴリー内に入る「重複なし」であり得る。
【0117】
従って、方法500Aのステップ510及び512に基づいて、対象が時間枠内で急速な近視進行の高いリスクを有すると特定され得、前記リスクを軽減する適切なオプションが推奨され得る。換言すれば、対象の近距離屈折感度及び遠距離屈折感度に基づいて特定される、対象の近距離快適範囲と遠距離快適範囲との間の重複度を示す追加パラメータにより、近視モデルの予測力を向上させ得る。
【0118】
代替として、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、低、中及び高リスクカテゴリーのそれぞれに重みを割り当てるステップ520と、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーが割り当てられている、少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定するステップ522と、複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、それぞれのリスクカテゴリーに割り当てられる重みに前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算するステップ524と、複数の所定のリスクカテゴリーについて計算されたスコアを合計することによって最終スコアを計算するステップ526と、最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較するステップ528と、最終スコアに基づいて、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクを特定するステップ530とを含む方法500Bを用いて特定され得る。
【0119】
代替として、時間枠にわたる対象の近視の発症又は進行のリスクは、機械学習アルゴリズムに基づく予測モデルを使用して実施される方法600に従い、リスク比の値、例えばパーセンテージを計算することによって特定され得る。
【0120】
従って、図9Cに示すように、有利には、近視予測モデルにおける追加のパラメータとして、感度パラメータSRx及び対象の近距離快適範囲と遠距離快適範囲との間の重複度を示す第5のパラメータの使用により、モデルの予測力が向上することがわかる。代替として、第5のパラメータは、近視予測モデルにおける唯一の又は主要な特定因子であり得る。例えば、他のカテゴリーにおけるパラメータ、例えば遺伝的履歴、対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、屈折光学パラメータ及び/又は感度パラメータSRxの値が低リスクカテゴリーに入り得る場合でも、第5のパラメータが高リスクカテゴリーに入る場合、対象は、時間枠内で急速な近視進行のリスクが高い可能性がある。
【0121】
実施例3.近視の進行
この例では、対象は、11歳の近視の男子であり得る。対象は、処方、例えば屈折光学パラメータが前年のものと同じままである、例えば安定した屈折であることを示したが、長時間にわたって精密作業に従事した後に断続的な霧視を訴えている。
【0122】
この例では、検眼士(又は臨床医)は、幾つかのパラメータ、即ち対象に関する個人情報、例えば年齢及び/又は性別並びに前年の近視進行速度(弱い指標である)のみを有する。しかし、検眼士は、例えば、以前の感度パラメータSRxに基づいて、対象に対して0.52Dであると測定された、対象の感度パラメータSRxにアクセスし得、これは、対象を高リスクカテゴリーに位置付け、対象が、安定した屈折にも関わらず、急速な近視進行の傾向がある可能性が高いことを示す。対象の感度パラメータSRxの使用は、従って、既存の近視予測モデルの予測力を向上させるために、特に検眼士が対象に関する限られた情報を有する場合に追加の強力なパラメータを提供し得る。
【0123】
本開示を、特定の実施形態を参照して具体的に示し、説明してきたが、形態及び詳細における種々の変更形態が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その中でなされ得ることが当業者によって理解されるべきである。本発明の範囲は、従って、添付の特許請求の範囲によって示され、従って特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入る全ての変更形態を包含することを意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定する方法(100)であって、
- 対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定すること(110)であって、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータ(SRx)を含み、前記感度パラメータ(SRx)は、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである、特定すること(110)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)と、
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、屈折光学パラメータ、前記対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、前記対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は前記対象についての個人情報に関するパラメータを更に含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、複数の所定のリスクカテゴリーから選択されるそれぞれのリスクカテゴリーを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(430)と、
を更に含む、請求項に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、屈折光学パラメータ、前記対象のライフスタイル、活動若しくは行動に関するパラメータ、前記対象の遺伝的履歴に関するパラメータ、光学バイオメトリックパラメータ及び/又は前記対象についての個人情報に関するパラメータを更に含み、
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、複数の所定のリスクカテゴリーから選択されるそれぞれのリスクカテゴリーを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(430)と、
を更に含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、前記リスクカテゴリーそれぞれを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)は、
- 前記リスクカテゴリーそれぞれに関連する前記パラメータそれぞれについて、前記パラメータそれぞれの前記特定された値が、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定すること(410)、
を含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記パラメータそれぞれの前記特定された値に基づいて、前記リスクカテゴリーそれぞれを前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てること(420)は、
- 前記リスクカテゴリーそれぞれに関連する前記パラメータそれぞれについて、前記パラメータそれぞれの前記特定された値が、対応する基準値と一致するか又は対応する基準値範囲内にあるかどうかを特定すること(410)、
を含む、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記パラメータそれぞれについての前記基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての前記時間枠にわたる前記近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立される、請求項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記パラメータそれぞれについての前記基準値又は基準値範囲は、集団サンプル内の個人についての前記時間枠にわたる前記近視の発症又は進行のリスクの情報を含むデータベースに基づいて確立される、請求項6に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(420)は、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれが割り当てられている、前記少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定すること(510)と、
- 前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクとして、最大数のパラメータに割り当てられている、前記複数の所定のリスクカテゴリーのうちのリスクカテゴリーを特定すること(512)と、
を含む、請求項3~のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(420)は、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーのそれぞれの1つに重みを割り当てること(520)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれが割り当てられている、前記少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定すること(522)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれに割り当てられる前記重みに、前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算すること(524)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーについて計算された前記スコアを合計することによって最終スコアを計算すること(526)と、
- 前記最終スコアに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(530)と、
を含む、請求項3~のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれに割り当てられる前記リスクカテゴリーそれぞれに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(420)は、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーのそれぞれの1つに重みを割り当てること(520)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれが割り当てられている、前記少なくとも1つのパラメータのうちのパラメータの数を特定すること(522)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーの各リスクカテゴリーについて、前記リスクカテゴリーそれぞれに割り当てられる前記重みに、前記リスクカテゴリーが割り当てられているパラメータの数を乗算することによってスコアを計算すること(524)と、
- 前記複数の所定のリスクカテゴリーについて計算された前記スコアを合計することによって最終スコアを計算すること(526)と、
- 前記最終スコアに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(530)と、
を含み、
前記最終スコアに基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(530)は、前記最終スコアを少なくとも1つの第1の所定の閾値と比較すること(528)を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、前記近視の発症又は進行のリスクと前記少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、前記近視の発症又は進行のリスクと前記少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立され、
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値を、前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルに入力すること(610)と、
- 前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用してリスク比の値を計算すること(620)と、
- 前記リスク比の前記計算された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(630)と、
を更に含み、
前記リスク比の前記計算された値(630)は、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供し、且つ前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用して実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、前記近視の発症又は進行のリスクと前記少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立され、かつ、
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値を、前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルに入力すること(610)と、
- 前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用してリスク比の値を計算すること(620)と、
- 前記リスク比の前記計算された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(630)と、
を更に含み、
前記リスク比の前記計算された値(630)は、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを示す確率を提供し、且つ前記機械学習アルゴリズムに基づく前記少なくとも1つの予測モデルを使用して実施され、
前記リスク比に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(630)は、前記リスク比の前記計算された値を少なくとも1つの第2の所定の閾値と比較することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項15】
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、
- 前記対象の近距離屈折を示す第1のパラメータ(310)と、
- 前記対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離屈折を示す第3のパラメータ(310)と、
- 前記対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離快適範囲及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータ(350)と、
を含み、
前記第5のパラメータの前記値を前記特定すること(350)は、
- 前記第1~第4のパラメータの前記特定された値に基づいて、前記遠距離快適範囲及び前記近距離快適範囲を特定すること(330)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記重複度を特定すること(340)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記特定された重複度に基づいて、前記第5のパラメータに値を割り当てること(350)と、
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項16】
前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定すること(120)は、前記近視の発症又は進行のリスクと前記少なくとも1つのパラメータとの間の関係を提供する、機械学習アルゴリズムに基づく少なくとも1つの予測モデルに基づいて確立され、
前記対象の視覚状態に関連する前記少なくとも1つのパラメータは、
- 前記対象の近距離屈折を示す第1のパラメータ(310)と、
- 前記対象の近距離屈折感度を示す第2のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離屈折を示す第3のパラメータ(310)と、
- 前記対象の遠距離屈折感度を示す第4のパラメータ(320)と、
- 前記対象の遠距離快適範囲及び近距離快適範囲の重複度を示す第5のパラメータ(350)と、
を含み、
前記第5のパラメータの前記値を前記特定すること(350)は、
- 前記第1~第4のパラメータの前記特定された値に基づいて、前記遠距離快適範囲及び前記近距離快適範囲を特定すること(330)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記重複度を特定すること(340)と、
- 前記遠距離及び近距離快適範囲の前記特定された重複度に基づいて、前記第5のパラメータに値を割り当てること(350)と、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項17】
時間枠にわたる近視の発症又は進行のリスクを特定するためのシステム(700)であって、
- 対象の視覚状態に関連する少なくとも1つのパラメータの値を特定するための手段(710)であって、前記少なくとも1つのパラメータは、前記対象の感度パラメータ(SRx)を含み、前記感度パラメータ(SRx)は、前記対象の少なくとも一方の眼の前に載置される少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの屈折光学特徴の変化に対する前記対象の感度に関するものである、手段(710)と、
- 前記少なくとも1つのパラメータの前記特定された値に基づいて、前記時間枠にわたる前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定するための手段(720)と、
を含むシステム(700)。
【請求項18】
前記少なくとも1つのパラメータの前記値を特定するための前記手段及び前記対象の前記近視の発症又は進行のリスクを特定するための前記手段の少なくとも1つは、回路を含む、請求項17に記載のシステム(700)。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のシステム(700)に、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法(100、300、400、500A、500B、600)のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】