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特表2024-541009櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20241029BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241029BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/86
H10K85/50
H10K85/10
H10K71/12
H10K71/16 164
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524623
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2022097420
(87)【国際公開番号】W WO2023071203
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111243277.3
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522400560
【氏名又は名称】隆基緑能科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LONGI GREEN ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ティアオ▼ 一凡
(72)【発明者】
【氏名】解 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】呉 兆
(72)【発明者】
【氏名】李 子峰
(72)【発明者】
【氏名】孫 朱行
(72)【発明者】
【氏名】劉 童
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲チェン▼
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107FF15
5F251AA11
5F251CB13
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA06
5F251XA01
5F251XA55
(57)【要約】
本願は、櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法を開示する。前記ペロブスカイト電池は、透明電極層及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層はポリチオフェンポリマー正孔材料である。その製造方法は、透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上にペロブスカイト吸収層を合成し、その後ペロブスカイト吸収層上に電子輸送層と電極層を順次設けるステップと、を含む。前記電池は、櫛形繊維構造の均一且つ高密度の正孔輸送層を有し、正孔輸送層と吸収層の接触面が増加し、その正孔輸送層が櫛形繊維構造であり、正孔輸送材料と光起電力吸収層の接触面積が増加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極層及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層はポリチオフェンポリマー正孔材料である、ペロブスカイト電池。
【請求項2】
前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項1に記載のペロブスカイト電池。
【請求項3】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層は、厚さ50~200nmの薄膜層と、長さ500~1500nmの櫛形繊維構造とからなる、請求項1又は2に記載のペロブスカイト電池。
【請求項4】
前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、チオフェン正孔材料モノマーの気相重合により得られる、請求項1から3のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項5】
前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、
前記透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、を含む方法によって製造される、請求項4に記載のペロブスカイト電池。
【請求項6】
前記チオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン及び3-ドデシルオキシチオフェンから選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項7】
前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmである、請求項5又は6に記載のペロブスカイト電池。
【請求項8】
強酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含む、請求項5から7のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項9】
櫛形繊維構造の正孔輸送層を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層を得る、請求項8に記載のペロブスカイト電池。
【請求項10】
ペロブスカイト吸収層、電子輸送層及び電極層をさらに含み、前記ペロブスカイト吸収層は前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上に設けられ、前記電子輸送層と電極層は前記ペロブスカイト吸収層上に順次設けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項11】
前記ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して嵌合構造が形成される、請求項10に記載のペロブスカイト電池。
【請求項12】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層の厚さはペロブスカイト吸収層の厚さよりも小さい、請求項10又は11に記載のペロブスカイト電池。
【請求項13】
前記電子輸送層と前記櫛形繊維構造の正孔輸送層における櫛形繊維構造の先端との安全距離は10nm以上である、請求項10から12のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項14】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層内の単一の櫛形繊維の直径は100~1000nmであり、前記単一の櫛形繊維の表面は粗い、請求項13に記載のペロブスカイト電池。
【請求項15】
透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上にペロブスカイト吸収層を合成し、その後ペロブスカイト吸収層上に電子輸送層と電極層を順次設けるステップと、を含む、ペロブスカイト電池の製造方法。
【請求項16】
前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン及び3-ドデシルオキシチオフェンから選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
正孔輸送層上にペロブスカイト溶液をスピンコートし、ペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に延在するようにする、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
正孔輸送層上にペロブスカイト前駆体ポリマーを蒸着することで、ペロブスカイト前駆体ポリマーがペロブスカイト吸収層を形成し、櫛形構造の空隙内に延在する、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池の技術分野に関し、具体的には、櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年10月25日に中国特許局に提出された、出願番号202111243277.3、発明の名称「櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ては参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、変換効率の高速な向上、製造プロセスの成熟化、及び低価格の理由から、学界や産業界で大きな注目を集めている。現在のペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層の堆積基板に応じて主に(1)堆積基板が電子輸送層(ETL)である構造と、(2)堆積基板が正孔輸送層(HTL)である構造との2つに分けられる。(2)の堆積基板が正孔輸送層(HTL)であるものは、トランスペロブスカイト太陽電池とも呼ばれている。トランスペロブスカイト太陽電池は安定性が高く、加工温度が低く、そして合成装置が簡単であるため、産業界で好まれている。
【0004】
トランスペロブスカイト太陽電池の正孔輸送層は通常1つの薄膜であり、ペロブスカイト層内で光によって励起された正孔が薄膜界面を通って正孔輸送層に輸送され、電流が形成される。この過程において、電池の効率及び安定性は正孔輸送層とペロブスカイト層の接触面積によって大きく決定され、接触面積が大きいほど、正孔輸送能力は強くなり、光によって励起された電子と正孔の再結合効率は低く、これにより電池の効率が向上し、安定性が高くなる。
【0005】
日本特許JP2011035243Aには、2つの電極層、P型半導体吸収層及びN型半導体吸収層を含む有機光電変換素子が開示されており、正孔輸送層の材料はPEDOT:PSSであり、PEDOT:PSSは、PSSによる水溶性により、P型半導体吸収層とN型半導体吸収層の間にスピンコートされる現在商業化されている唯一のポリマー正孔輸送層となる。該特許出願における櫛形構造層はP型吸収層であり、PN接合の接触面積を増加することを目的とするが、PN接合の接触面積の増加は、電子と正孔の再結合を効果的に回避することができない。また、正孔輸送の過程では、PEDOTのみが正孔輸送の役割を果たし、PSSは水溶性を与える絶縁材料としてのみ使用され、正孔輸送の効率が大きく制限され、電池の効率が低下する。また、PSSの吸水性は、環境腐食によるペロブスカイト層の破壊を引き起こすことがあり、PSCの耐用年数が短くなる。現在では、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、エチレングリコール(EG)等の有機溶媒で二次溶解する方法はPSSを完全に除去することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する技術的問題を解決するために、本願は、櫛形繊維構造の正孔輸送層を有するペロブスカイト電池及びその製造方法を提供し、前記ペロブスカイト電池は、ペロブスカイト層吸収層と正孔輸送層の接触面積を増加させることによって、電子と正孔の再結合を減少させ、PSSを含まない櫛形繊維構造の正孔輸送層を使用することで、正孔輸送速度を高め、電池効率と電池寿命を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1態様によれば、透明電極層及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層はポリチオフェンポリマー正孔材料である、ペロブスカイト電池を提供する。
【0008】
選択的に、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。
【0009】
選択的に、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層は、厚さ50~200nmの薄膜層と、長さ500~1500nmの櫛形繊維構造とからなる。
【0010】
選択的に、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、チオフェン正孔材料モノマーの気相重合により得られる。
【0011】
選択的に、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、
前記透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、を含む方法によって製造される。
【0012】
選択的に、前記チオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン及び3-ドデシルオキシチオフェンから選ばれる1つ又は2つ以上である。
【0013】
選択的に、前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmである。
【0014】
選択的に、強酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含む。
【0015】
選択的に、櫛形繊維構造の正孔輸送層を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層を得る。
【0016】
選択的に、前記ペロブスカイト電池はペロブスカイト吸収層、電子輸送層及び電極層をさらに含み、前記ペロブスカイト吸収層は前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上に設けられ、前記電子輸送層と電極層は前記ペロブスカイト吸収層上に順次設けられる。
【0017】
選択的に、前記ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して嵌合構造が形成される。
【0018】
選択的に、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層の厚さはペロブスカイト吸収層の厚さよりも小さい。
【0019】
選択的に、前記電子輸送層と前記櫛形繊維構造の正孔輸送層における櫛形繊維構造の先端との安全距離は10nm以上である。
【0020】
選択的に、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層内の単一の櫛形繊維の直径は100~1000nmであり、前記単一の櫛形繊維の表面は粗い。
【0021】
本願の第2態様によれば、
透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上にペロブスカイト吸収層を合成し、その後ペロブスカイト吸収層上に電子輸送層と電極層を順次設けるステップと、を含む、ペロブスカイト電池の製造方法を提供する。
【0022】
選択的に、前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmである。
【0023】
選択的に、前記チオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン及び3-ドデシルオキシチオフェンから選ばれる1つ又は2つ以上である。
【0024】
選択的に、正孔輸送層上にペロブスカイト溶液をスピンコートし、ペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に延在するようにする。
【0025】
選択的に、正孔輸送層上にペロブスカイト前駆体ポリマーを蒸着することで、ペロブスカイト前駆体ポリマーがペロブスカイト吸収層を形成し、櫛形構造の空隙内に延在する。
【0026】
以上は本願の技術的解決手段を概略的に説明したが、本願の技術的手段をより明瞭に理解して明細書の内容に基づいて実施できるように、且つ本願の上記及び他の目的、特徴及びメリットをより分かりやすくするために、以下において、特に本願の具体的実施形態を挙げる。
【発明の効果】
【0027】
本願の電池は、櫛形繊維構造の均一且つ高密度の正孔輸送層を有し、正孔輸送層と吸収層の接触面が増加する。また、正孔輸送層は水溶液スピンコート法で製造されないため、従来の正孔輸送ポリマー材料中の絶縁体PSSが除去され、正孔輸送層の輸送効率が向上し、本願の電池は、その正孔輸送層が櫛形繊維構造であり、正孔輸送材料と光起電力吸収層の接触面積が増加し、正孔輸送の距離が短縮されるため、電子-正孔対の再結合が減少し、電池効率と電池寿命が向上する。
【0028】
本願の電池は、チオフェン正孔材料モノマーを用いて櫛形繊維構造の正孔輸送層を製造し、従来の正孔輸送層製造に必要なPSSが除去され、正孔輸送層の輸送効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本願の実施例又は関連技術における技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下において、実施例又は関連技術の説明に用いられる図面について簡単に説明するが、当然ながら、以下に記載する図面は本願の実施例の一部であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到し得る。
図1】ペロブスカイト電池の断面模式図である。
図2】酸化鉄堆積層構造の模式図である。
図3】不純物FeCl含有の正孔輸送層の模式図である。
図4】純粋な正孔輸送層の模式図である。
図5】単一の櫛形繊維の電子顕微鏡による模式図であり、aは正孔輸送層内の単一の櫛形繊維の模式図であり、bは単一の櫛形繊維の形態の電子顕微鏡による模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下に本願の実施例における図面を参照し、本願の実施例における技術的解決手段を明確に、完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得られた他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0031】
説明すべきは、明細書および特許請求の範囲では、特定の構成要素を指すために特定の用語が使われている点である。技術者が同じ構成要素を指すために異なる用語を使用する場合があることを、当業者は理解するのであろう。本明細書および特許請求の範囲は、構成要素を区別する方法として用語の違いを使用せず、構成要素の機能の違いをその区別の基準として使用する。例えば、明細書および特許請求の範囲全文で言及されている「含む」または「備える」はオープンな用語であるため、「含むがそれらに限定されない」と解釈すべきである。以下の明細書の説明は、本願を実施するための好ましい実施形態であるが、その説明は、明細書の一般的な原則を目的としており、本願の範囲を限定するものではない。本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものに従うものとする。
【0032】
本願はペロブスカイト電池を提供し、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料である。
【0033】
本願は、正孔輸送層を創造的に櫛形繊維構造に製造し、正孔輸送層とペロブスカイト吸収層の接触面積が増加し、電子と正孔の再結合が減少し、本発明者によって製造された正孔輸送層は、チオフェン正孔材料モノマーの気相重合により製造され、従来の正孔輸送層製造に必要な絶縁材料PSSが除去されたため、正孔輸送層の輸送効率が大幅に向上し、電池効率と電池寿命が向上する。
【0034】
透明電極層5については、機能を果たすことができれば、本願は何ら制限もせず、例えば、透明電極層は、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等であってもよい。
【0035】
一実施形態において、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。例えば、それらから選ばれる1つ、2つ、3つ又は4つであってもよい。
【0036】
一実施形態において、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。
【0037】
例えば、薄膜層41の厚さは、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm又はその間の任意の範囲であってもよい。
【0038】
櫛形繊維構造42の長さは、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm又はその間の任意の範囲であってもよい。
【0039】
前記尺度内で、薄膜の厚さが薄いほど、正孔輸送効率は高く、櫛形繊維の長さが長いほど、その単位面積あたりの比表面積は大きく、ペロブスカイト吸収層との接触面積は大きく、正孔の輸送がより容易になる。しかし、ペロブスカイト吸収層の厚さは一般に1500nm以下であり、したがって、櫛形繊維構造42の長さを制御する必要がある。
【0040】
一実施形態において、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、チオフェン正孔材料モノマーの気相重合により得られる。
【0041】
一実施形態において、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。
図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。
前記反応は気相合成反応である。
【0042】
好ましくは、酸化電位0.7~1Vの酸化剤について、対応する機能を果たすことができれば、本願は何ら制限もせず、例えば、前記酸化剤は、酸化鉄含有物質、銀イオン(Ag)、OCl、OBrであってもよい。
【0043】
堆積される酸化剤7の厚さについて、記載された効果を達成するように操作できれば、本願は何ら制限もせず、例えば、堆積の厚さは10~60nmであり、例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm又はその間の任意の範囲である。
【0044】
強極性酸は、上述した酸化剤、例えば酸化鉄含有物質を溶解するために用いられ、例えば、濃塩酸、濃硝酸、ギ酸、酢酸等であってもよい。
【0045】
好ましくは、前記強極性酸の体積は10~40μLであり、例えば、前記強極性酸の体積は、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、35μL、40μL又はその間の任意の範囲である。
【0046】
好ましくは、チオフェン正孔材料モノマーの体積は100~300μLであり、例えばチオフェン正孔材料モノマーは、100μL、110μL、120μL、130μL、140μL、150μL、160μL、170μL、180μL、190μL、200μL、210μL、220μL、230μL、240μL、250μL、260μL、270μL、280μL、290μL、300μL又はその間の任意の範囲であってもよい。
【0047】
好ましくは、チオフェン正孔材料モノマーの濃度は0.8~2Mである。
【0048】
例えば、前記チオフェン正孔材料モノマーの濃度は、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M又はその間の任意の範囲であってもよい。
【0049】
好ましくは、強酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液は、強酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む有機溶液であり、例えば、ベンゼン溶液、クロルベンゼン溶液又はトルエン溶液であってもよい。
【0050】
好ましくは、反応温度は110~150℃であり、反応時間は1~2hである。
【0051】
チオフェン正孔材料モノマーは、溶解しにくいチオフェン正孔材料モノマー又は溶解可能なチオフェン正孔材料モノマーであり得、例えば、溶解しにくいチオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であってもよく、溶解可能なチオフェン正孔材料モノマーは3-ヘキシルチオフェン(3HT)、3-ヘキシルオキシチオフェン(3OHT)、又は3-ドデシルオキシチオフェン(3ODDT)であってもよい。
【0052】
本願は、チオフェン正孔材料モノマーを用いて櫛形繊維構造の正孔輸送層を製造し、製造において従来のPEDOT:PSSを使用せず、正孔輸送速度を高めたため、電池効率と電池寿命が向上する。
【0053】
一実施形態において、強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層4の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含む。
【0054】
ルイス酸について、櫛形繊維構造の正孔輸送層内の不純物を洗い流すことができれば、本願は何ら制限もせず、例えば、前記ルイス酸は、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール等であってもよく、例えば、塩酸、好ましくは6~12Mの塩酸で洗い流して純粋な櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。
【0055】
一実施形態において、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。
【0056】
例えば、櫛形繊維構造の正孔輸送層4をHCl、HBr、HSO等の溶液又はガスでドープすることができ、理論上の最高ドープ度は33%である。
【0057】
ドープについて、当業者は一般的な方法によってドープして、例えば上述したCl、Br又はSO 2-を櫛形繊維構造の正孔輸送層4内にドープすることができ、キャリア濃度を上げることで、正孔輸送速度をさらに向上させる。
【0058】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、ペロブスカイト吸収層6、電子輸送層2、及び電極層1をさらに含む。
【0059】
前記ペロブスカイト吸収層6は前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4上に設けられ、その後ペロブスカイト吸収層6上に電子輸送層2と電極層1が順次設けられる。
【0060】
前記電極層1は、例えば、金属電極層又は透明電極層であってもよい。
【0061】
前記ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して嵌合構造が形成される。
【0062】
ペロブスカイト吸収層6の製造方法について、一般的なペロブスカイト製造方法(スピンコート法及び蒸着法)を使用してペロブスカイト吸収層6を合成することができる。例えば、正孔輸送層上にペロブスカイト溶液をスピンコートし、ペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に延在するようにする。
【0063】
櫛形繊維構造の正孔輸送層4は、DMF、DMSO、NMP等の極性溶媒のようなペロブスカイト溶液の溶媒に対する濡れ性が高いため、ペロブスカイトは、薄膜層41及び櫛形繊維構造42と良好な接触を形成することができる。
【0064】
また、蒸着法を使用してペロブスカイト吸収層6を製造してもよく、例えば、正孔輸送層上にペロブスカイト前駆体ポリマーを蒸着することで、ペロブスカイト前駆体ポリマーがペロブスカイト吸収層を形成し、櫛形構造の空隙内に延在する。
【0065】
前記ペロブスカイト前駆体ポリマーは、例えば、PbIとFAIであってもよく、製造方法は例えば次の通りである。
(1)正孔輸送層上にまずPbIを蒸着し、その後ヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)をスピンコートしてPbIと反応させる。(2)PbIとFAIを共蒸着して、ペロブスカイト層をワンステップで形成する。気相分子が薄膜層41と櫛形繊維構造42に浸透して良好な接触を形成することがより容易であるため、PbIとFAIを共蒸着する気相合成方法を使用することが好ましく、気相法であるため、櫛形繊維の制約を受けず、堆積されたペロブスカイト層と櫛形繊維正孔輸送層は空隙なく密着し、両者は電気的に接続される。
【0066】
電子輸送層について、本願は何ら制限もせず、例えば、PCBM、グラフエン(graphene)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WO)、酸化チタン(TiO)、酸化バナジウム(VO)等であってもよい。
【0067】
電子輸送層の厚さについて、ペロブスカイト吸収層が電極層と接触しないことを保証できれば、本願は制限しない。
【0068】
一実施形態において、櫛形繊維構造42と電子輸送層2の接触によるデバイスの短絡を回避するために、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4の厚さはペロブスカイト吸収層6の厚さよりも小さい。前記ペロブスカイト吸収層6の厚さは、当業者によって一般的に使用される厚さであり、例えば、一般的には1500nm以下である。
【0069】
一実施形態において、図1に示すように、デバイスが短絡しないことを保証するために、電子輸送層2と櫛形繊維構造42の先端との安全距離3(即ち櫛形繊維を含まない層厚さ)は10nm以上である。
【0070】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料であり、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。
【0071】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料であり、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4の厚さはペロブスカイト吸収層6の厚さよりも小さく、電子輸送層2と櫛形繊維構造42の先端との安全距離3(即ち櫛形繊維を含まない層厚さ)は10nm以上である。
【0072】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料であり、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4の厚さはペロブスカイト吸収層6の厚さよりも小さく、電子輸送層2と櫛形繊維構造42の先端との安全距離3(即ち櫛形繊維を含まない層厚さ)は10nm以上である。また、強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層4の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含む。
【0073】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料であり、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4の厚さはペロブスカイト吸収層6の厚さよりも小さく、電子輸送層2と櫛形繊維構造42の先端との安全距離3(即ち櫛形繊維を含まない層厚さ)は10nm以上である。また、強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層4の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含み、そして櫛形繊維構造の正孔輸送層4を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。
【0074】
一実施形態において、図1に示すように、前記ペロブスカイト電池は、透明電極層5及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層4を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4はポリチオフェンポリマー正孔材料であり、前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4は薄膜層41と櫛形繊維構造42からなり、薄膜層41の厚さは50~200nmであり、櫛形繊維構造42の長さは500~1500nmである。前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、次のステップを含む方法によって製造される。図2に示すように、前記透明電極層5上に酸化剤7を堆積させ、好ましくは酸化電位0.7~1Vの酸化剤である。強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤7と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4の厚さはペロブスカイト吸収層6の厚さよりも小さく、電子輸送層2と櫛形繊維構造42の先端との安全距離3(即ち櫛形繊維を含まない層厚さ)は10nm以上である。また、強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層4の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含み、そして櫛形繊維構造の正孔輸送層4を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層4を得る。前記ペロブスカイト電池は、ペロブスカイト吸収層6、電子輸送層2及び電極層1をさらに含み、前記ペロブスカイト吸収層6は前記櫛形繊維構造の正孔輸送層4上に設けられ、その後ペロブスカイト吸収層6上に電子輸送層2と電極層1が順次設けられ、前記ペロブスカイト吸収層6が正孔輸送層4の櫛形構造の空隙内に入って嵌合構造が形成される。
【0075】
一実施形態において、櫛形繊維構造の輸送層における単一の櫛形繊維の直径は100~1000nmであり、前記単一の櫛形繊維の表面は粗い(図5に示す)。
【0076】
単一の櫛形繊維の直径が細いほど、単位面積当たりの単一櫛形繊維の数量が多く、比表面積が大きいため、ペロブスカイト吸収層との接触面積が大きくなり、電子と正孔の再結合が減少する。
【0077】
例えば、単一の櫛形繊維の直径は、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm又はその間の任意の範囲であってもよい。
【0078】
本願に記載のペロブスカイト電池は、チオフェン正孔材料モノマーを用いて櫛形繊維構造の正孔輸送層を製造するため、正孔輸送速度が向上し、電池効率と電池寿命が向上する。また、櫛形構造の正孔輸送層を用いたため、ペロブスカイト吸収層と正孔輸送層の接触面積が増加し、電子と正孔の再結合が減少する。
【0079】
本願に記載のペロブスカイト電池は、他のシステム、例えば、結晶シリコン-ペロブスカイト積層電池、ペロブスカイト-ペロブスカイト積層電池、有機光起電力-ペロブスカイト積層電池等を含むペロブスカイト電池ベースの積層電池にも適用可能であり、また、色素増感型電池にも良好な汎用性と互換性を有する。
【0080】
本願は、
透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上にペロブスカイト吸収層を合成し、その後ペロブスカイト吸収層上に電子輸送層と電極層を順次設けるステップと、を含むことを特徴とする、ペロブスカイト電池の製造方法を提供する。
【0081】
前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmであり、前記チオフェン正孔材料モノマーは、EDOT、3HT、3OHT及び3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である。
【0082】
一実施形態において、正孔輸送層上にペロブスカイト溶液をスピンコートし、ペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に入るようにする。
【0083】
例えば、PbIとN,N-ジメチルフォルムアミド溶液、又は、混合ハロゲンペロブスカイト前駆体ポリマーを、正孔輸送層上にスピンコートすることで、形成されたペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に入って嵌合構造が形成される。
【0084】
一実施形態において、正孔輸送層上にペロブスカイト前駆体ポリマーを蒸着することで、ペロブスカイト前駆体ポリマーがペロブスカイト吸収層を形成し、櫛形構造の空隙内に入る。
【0085】
前記ペロブスカイト前駆体ポリマーは、例えば、PbIとFAIであり、その製造方法は次の通りである。正孔輸送層上にPbIとFAIを蒸着し、その場で反応させてFAPbI薄膜を形成し、これにより形成された薄膜(ペロブスカイト吸収層)が正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に入って嵌合構造が形成される。
【0086】
前記電極層は、例えば、金属電極層又は透明電極層であってもよい。
【0087】
前記酸化剤は、酸化電位0.7~1Vの酸化剤であり、例えば、酸化鉄含有物質、銀イオン(Ag)、OCl、OBrであってもよい。
【0088】
前記強極性酸は、例えば、濃塩酸、濃硝酸、ギ酸、酢酸等であってもよく、前記強極性酸の体積は、例えば、10~40μLであってもよく、前記チオフェン正孔材料モノマーの体積は100~300μLであってもよい。
【0089】
従来技術では、ポリチオフェン正孔材料は、従来の溶媒に不溶であり、従来の溶媒法で製造することができず、ポリチオフェン正孔材料を製造する従来の非溶媒法は、層状構造のみを製造でき、櫛形繊維構造を製造することができない。本願は、上述した方法を使用してペロブスカイト電池を製造し、チオフェン正孔材料モノマーを用いて櫛形繊維構造の正孔輸送層を製造するため、正孔輸送速度が向上し、電池効率と電池寿命が向上する。
【0090】
<実施例>
本願は、試験に使用される材料及び試験方法について一般的及び/又は具体的に説明するが、以下の実施例において、特に説明しない限り、%はwt%を表し、即ち重量百分率である。使用した試薬又は機器は製造元が示されていない場合は、市販から従来の試薬製品を入手することができる。
【0091】
<実施例1>
図1に示すように、正孔輸送層4は、50nmのPEDOT薄膜層41と500nmのPEDOT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは600nmであり、そのうち安全距離3は50nmである。図5に示すように、単一のPEDOT櫛形繊維構造の直径は100nmであり、電子顕微鏡(JEOL 7001LVF FE-SEM)の走査によってその表面が粗いことが分かった。
【0092】
PEDOT層の製造方法
物理的気相成長法によって前記透明電極層5上に20nmの酸化鉄層7を堆積させ(図2に示す)、ガラス反応器に濃塩酸10μLと1.56MのEDOTのクロルベンゼン溶液100μLを入れ、130℃の条件で1.5h反応させ、最終的にはFeCl不純物含有のPEDOTの薄膜と櫛形繊維構造(図3に示す)を得た。その後6M HClで洗浄してPEDOTの薄膜と櫛形繊維構造からなる純粋な正孔輸送層(図4に示す)を得た。
【0093】
ペロブスカイト吸収層の製造
1MのPbI、N,N-ジメチルフォルムアミド溶液を用意し、60℃に加熱して30min撹拌し続けた。その後、5000rpmの速度で正孔輸送層上に20sスピンコートし、50℃と100℃の条件でそれぞれ3minと5min乾燥させた。MAPbI3ペロブスカイトを形成するために、10mg/mLのMAI(CHNHI)の無水イソプロピルアルコール溶液をスピンコートによってPbI薄膜に導入し、2000rpmの速度で20秒スピンコートした。最後に、IPAで洗浄して過剰のMAIを除去し、100℃の温度で5分間乾燥させると、前記ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して、正孔輸送層と嵌合構造が形成される。
【0094】
得られた正孔輸送層4の薄膜層41が薄く、繊維のアスペクト比が大きく、正孔輸送に寄与し、効率が向上し、前記正孔輸送層と前記ペロブスカイト吸収層は良好に接触することができ、下記実施例も同様の効果を有する。
【0095】
<実施例2>
図1に示すように、正孔輸送層4は、200nmのPEDOT薄膜層41と1200nmのPEDOT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは1500nmであり、そのうち安全距離3は100nmである。図5に示すように、単一のPEDOT櫛形繊維構造の直径は200nmであり、且つその表面は粗い。
【0096】
PEDOT層の製造方法
物理的気相成長法によって前記透明電極層5上に60nmの酸化鉄層7を堆積させ(図2に示す)、ガラス反応器内に濃塩酸40μLと1.56MのEDOTのクロルベンゼン溶液200μLを入れ、150℃の条件で2h反応させ、最終的にはFeCl不純物含有のPEDOTの薄膜と櫛形繊維構造(図3に示す)を得た。その後、12M HClで洗浄してPEDOTの薄膜と櫛形繊維構造からなる純粋な正孔輸送層(図4に示す)を得た。
【0097】
ペロブスカイト吸収層の製造
10-6mbarの真空度で、純度99.999%のPbIとFAIをそれぞれ200~300℃と80~150℃に加熱する。2つのるつぼの加熱電力を制御することによって、PbIの堆積速度を0.8Å/sに維持し、FAIの堆積速度を1.5Å/sに維持する。両者は基板上でその場で反応してFAPbI3薄膜を形成する。薄膜の厚さが800nmに達すると、堆積を終了した。その後堆積終了後の薄膜を150℃で15minアニールし、前記ペロブスカイト吸収層は、正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して、正孔輸送層と嵌合構造が形成される。
【0098】
<実施例3>
図1に示すように、正孔輸送層4は、100nmのP3HT薄膜層41と800nmのP3HT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは1000nmであり、そのうち安全距離は100nmである。図5に示すように、単一のP3HT櫛形繊維構造の直径は150nmであり、且つその表面は粗い。
【0099】
P3HT層の製造方法
物理的気相成長法によって前記透明電極層5上に40nmの酸化鉄層7を堆積させ(図2に示す)、ガラス反応器内に濃塩酸30μLと1.2Mの3-ヘキシルチオフェンのクロルベンゼン溶液300μLを入れ、150℃の条件で1h反応させ、最終的にはFeCl不純物含有のP3HTの薄膜と櫛形繊維構造(図3に示す)を得た。その後6M HClで洗浄してP3HTの薄膜と櫛形繊維構造からなる純粋な正孔輸送層(図4に示す)を得た。
【0100】
ペロブスカイト吸収層の製造方法は実施例2と同じである。
【0101】
<実施例4>
図1に示すように、正孔輸送層4は、50nmのP3OHT薄膜層41と950nmのP3OHT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは1000nmであり、そのうち安全距離は50nmである。図5に示すように、単一のP3OHT櫛形繊維構造の直径は100nmであり、且つその表面は粗い。
【0102】
P3OHT層の製造方法
物理的気相成長法によって前記透明電極層5上に10nmの酸化鉄層7を堆積させ(図2に示す)、ガラス反応器内に濃塩酸10μLと1.56Mの3OHTのクロルベンゼン溶液100μLを入れ、110℃の条件で2h反応させ、最終的にはFeCl不純物含有のP3OHTの薄膜と櫛形繊維構造(図3に示す)を得た。その後6M HClで洗浄してP3OHTの薄膜と櫛形繊維構造からなる純粋な正孔輸送層(図4に示す)を得た。
【0103】
ペロブスカイト吸収層の製造方法は実施例2と同じである。
【0104】
<実施例5>
図1に示すように、正孔輸送層4は、50nmのP3ODDT薄膜層41と900nmのP3ODDT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは1000nmであり、そのうち安全距離は100nmである。図5に示すように、単一のP3ODDT櫛形繊維構造の直径は150nmであり、且つその表面は粗い。
【0105】
P3ODDT層の製造方法
物理的気相成長法によって前記透明電極層5上に20nmの酸化鉄層7を堆積させ(図2に示す)、ガラス反応器内に濃塩酸10μLと1.56Mの3ODDTのクロルベンゼン溶液100μLを入れ、130℃の条件で1.5h反応させ、最終的にはFeCl不純物含有のP3ODDTの薄膜と櫛形繊維構造(図3に示す)を得た。その後6M HClで洗浄してP3ODDTの薄膜と櫛形繊維構造からなる純粋な正孔輸送層(図4に示す)を得た。
【0106】
ペロブスカイト吸収層の製造方法は実施例2と同じである。
【0107】
<実施例6>
図1に示すように、正孔輸送層4は、50nmのPEDOT薄膜層41と550nmのPEDOT櫛形繊維構造42からなる。ペロブスカイト吸収層6の厚さは600nmであり、そのうち安全距離は50nmである。図5に示すように、単一のPEDOT櫛形繊維構造の直径は50nmであり、且つその表面は粗い。
【0108】
PEDOT層の製造方法
その製造方法は実施例1と同じである。
【0109】
ペロブスカイト吸収層の製造方法は実施例2と同じである。
【0110】
【表1】
【0111】
要約すると、本願に記載のペロブスカイト電池は、櫛形繊維構造の正孔輸送層としてPEDOTを使用したため、その薄膜層が薄く、繊維のアスペクト比が大きく、正孔輸送に寄与し、効率が向上する。また、チオフェン正孔材料モノマーを用いて櫛形繊維構造の正孔輸送層を製造するため、正孔輸送速度が向上し、電池効率と電池寿命が向上する。
【0112】
上記の記載は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願をいかなる形でも限定することを意図しない。当業者は、以上に開示された技術内容を利用して変更を施し、又は同等に変化させた等価実施例に修飾することができるが、本願の技術的解決手段の内容を逸脱せず、本願の技術実質により以上の実施例に対してなされたいかなる簡単な修正、同等な変化と修飾であれば、全て依然として本願の技術的解決手段の保護範囲に属する。
【0113】
以上に記述した装置の実施例は例示的なものに過ぎず、ここで分離部材として説明した前記ユニットは物理的に分離されたものであってもなくてもよく、ユニットとして示した部材は物理ユニットであってもなくてもよく、つまり一箇所に位置してもよく、又は複数のネットワークユニットに分布してもよい。実際の必要に応じてその一部又は全てのモジュールを選択して本実施例の解決手段の目的を実現することができる。当業者であれば、創造的な労力を要することなく理解して実施することができる。
【0114】
本明細書に記載の「一実施例」、「実施例」又は「1つ又は複数の実施例」は、実施例により説明された特定の特徴、構造又は特性が本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。また、本明細書において、「一実施例において」という言い回しは、必ずしも同一の実施例を指すものではないことに注意されたい。
【0115】
ここで提供された明細書において、大量の具体的詳細について説明した。ただし、これらの具体的詳細なしに本願の実施例が実施され得ることが理解できる。いくつかの実例において、本明細書に対する理解を曖昧にしないように、周知の方法、構造及び技術を詳しく示していない。
【0116】
最後に、説明すべきことは、以上の実施例は本願の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、前記実施例を参照しながら本願を詳細に説明したが、当業者であれば、前記各実施例に記載の技術的解決手段に対する修正、又はその一部の技術的特徴に対する同等な置換が可能であることは、当然理解されるものであり、これらの修正又は置換は、該当する技術的解決手段の本質を本願の各実施例の技術的解決手段の精神及び範囲から逸脱させるものではない点である。
【符号の説明】
【0117】
1 金属電極層
2 電子輸送層
3 安全距離
4 櫛形繊維構造の正孔輸送層
5 透明電極層
6 ペロブスカイト吸収層
7 酸化鉄層
8 FeCl不純物
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極層及び前記透明電極層上に形成された櫛形繊維構造の正孔輸送層を含み、前記櫛形繊維構造の正孔輸送層はポリチオフェンポリマー正孔材料である、ペロブスカイト電池。
【請求項2】
前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、PEDOT、P3HT、P3OHT及びP3ODDTから選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項1に記載のペロブスカイト電池。
【請求項3】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層は、厚さ50~200nmの薄膜層と、長さ500~1500nmの櫛形繊維構造とからなる、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項4】
前記ポリチオフェンポリマー正孔材料は、チオフェン正孔材料モノマーの気相重合により得られる、請求項のいずれか1項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項5】
前記チオフェン正孔材料モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン及び3-ドデシルオキシチオフェンから選ばれる1つ又は2つ以上である、請求項1に記載のペロブスカイト電池。
【請求項6】
強酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を酸化剤と接触させて反応させた後、櫛形繊維構造の正孔輸送層の不純物をルイス酸で洗い流すステップをさらに含む、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項7】
櫛形繊維構造の正孔輸送層を酸性溶液又は酸性ガスでドープすることで、ドープされた櫛形繊維構造の正孔輸送層を得る、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項8】
ペロブスカイト吸収層、電子輸送層及び電極層をさらに含み、前記ペロブスカイト吸収層は前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上に設けられ、前記電子輸送層と電極層は前記ペロブスカイト吸収層上に順次設けられる、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項9】
前記ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の櫛形構造の空隙内に延在して嵌合構造が形成される、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項10】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層の厚さはペロブスカイト吸収層の厚さよりも小さい、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項11】
前記電子輸送層と前記櫛形繊維構造の正孔輸送層における櫛形繊維構造の先端との安全距離は10nm以上である、請求項に記載のペロブスカイト電池。
【請求項12】
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層内の単一の櫛形繊維の直径は100~1000nmであり、前記単一の櫛形繊維の表面は粗い、請求項11に記載のペロブスカイト電池。
【請求項13】
透明電極層上に酸化剤を堆積させるステップと、
強極性酸とチオフェン正孔材料モノマーを含む溶液を前記酸化剤と接触させて反応させ、櫛形繊維構造の正孔輸送層を得るステップと、
前記櫛形繊維構造の正孔輸送層上にペロブスカイト吸収層を合成し、その後ペロブスカイト吸収層上に電子輸送層と電極層を順次設けるステップと、を含む、ペロブスカイト電池の製造方法。
【請求項14】
前記透明電極層上に堆積された酸化剤の厚さは10~60nmである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
正孔輸送層上にペロブスカイト溶液をスピンコートし、ペロブスカイト吸収層が櫛形構造の空隙内に延在するようにする、
又は
正孔輸送層上にペロブスカイト前駆体ポリマーを蒸着することで、ペロブスカイト前駆体ポリマーがペロブスカイト吸収層を形成し、櫛形構造の空隙内に延在する、請求項13に記載の方法。
【国際調査報告】