(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】位相ランダム化アプリケーションのための離散的パルス制御
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20241029BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20241029BHJP
【FI】
H04B10/516
H04B10/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524992
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 IL2022051129
(87)【国際公開番号】W WO2023073700
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152551
【氏名又は名称】ヘカ セキュリティ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HEQA SECURITY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リヴネ,ニッツァン
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンベルグ,ハガイ
(72)【発明者】
【氏名】ピルニャク,イェフダ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンフェルダー,ピニャス
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA11
5K102AA15
5K102AB11
5K102AH02
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC06
5K102PB03
5K102PH01
5K102RD05
5K102RD28
(57)【要約】
レーザ光源から放出される光/放射を制御する技術が開示されており、レーザ光源の電気供給信号は、放出される光/放射がデータで電コードされる時間間隔中にレーザ光源を駆動するように構成された複数の固定の事前定義された動作供給信号と、データエンコードの時間間隔同士の間にレーザ光源を駆動するための可変のアイドル供給信号とを生成するために変調される。この変調は、ランダムな時間間隔およびレーザ光源の発振閾値よりも大きい固定のアイドル供給信号レベル/強度を含むようにアイドル供給信号を生成すること、および/または、前記レーザ光源の発振閾値よりも大きいランダムなレベル/強度またはランダムに交互に変化するレベル/強度を有するアイドル供給信号を含むようにアイドル供給信号を生成することの少なくとも一方を含み、それにより、供給信号を発振閾値未満に減少させることなく、前記データエンコードの時間間隔の間のランダムな位相変化に影響を与える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から放出される光/放射を制御するための制御システムであって、当該システムは、前記レーザ光源を駆動する供給信号を制御可能に生成するように構成された信号発生器と、前記信号発生器の動作を制御するための制御信号を生成するように構成された制御ユニットとを具え、これにより、放出される光/放射をデータエンコードに使用可能である時間間隔中に前記レーザ光源を駆動する固定の事前定義された動作供給信号と、データエンコードの時間間隔同士の間に前記レーザ光源を駆動する可変のアイドル供給信号とを生成し、前記制御信号は、前記アイドル供給信号の生成を引き起こすように構成され、このアイドル供給信号は、ランダムな時間間隔および前記レーザ光源の発振閾値よりも大きい固定のアイドル供給信号レベル/強度、および/または、前記レーザ光源の発振閾値よりも大きいランダムなレベル/強度またはランダムに変化するレベル/強度を有するアイドル供給信号の少なくとも1つを有し、それにより、供給信号を前記発振閾値未満に低下させることなく、前記データエンコーディングの時間間隔の間のランダムな位相変化に影響を与えるように構成されたことを特徴とする、制御システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、関連する位相範囲を所定数の位相セグメントに分割し、前記アイドル供給信号の各々について、所定数の位相セグメントのうちの1つをランダムに選択し、前記アイドル供給信号の各々によって影響を受けた位相変化が、それぞれの位相セグメント内でランダムになるように制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、複数の可能な位相セグメントからランダムに選択された位相変化をもたらすために、複数のバイナリ信号から選択されたバイナリ信号にしたがって前記アイドル供給信号を変調するように構成されている、請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
乱数発生器(RNG)または擬似RNGを含み、前記制御ユニットが、前記RNGまたは擬似RNGによって生成された乱数を前記アイドル供給信号の位相セグメントの選択に用いるように構成されている、請求項2または3に記載の制御システム。
【請求項5】
制御可能に切り替えられる入力信号を有するアナログコンバイナ構成によって前記アイドル供給信号を生成するように構成された離散信号レベル発生器を含み、前記制御ユニットが、前記アナログコンバイナによって所望のアイドル供給信号を出力するために、前記制御可能に切り替えられる入力信号を設定するための制御信号を生成するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
ランダムに交互に変化する信号レベルを有するアイドル供給信号の生成を引き起こすように構成されたノイズ源を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
ランダムな信号長および時間間隔を有するアイドル供給信号を生成させるように構成されている、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
ランダムな信号長および時間間隔、並びに2つの離散的なレーザ電流駆動レベルを有するアイドル供給信号を生成させるように構成されている、請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
ノイズ源によって生成された信号に応答してHIGH状態とLOW状態との間でトグルするように構成されたコンパレータを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記レーザ光源の固定の事前定義された動作供給信号を生成するための時間持続の間、前記コンパレータをHIGH状態に保持するように構成されたパルス信号源を含む、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記ノイズ源と前記パルス信号源からの信号を合計し、前記コンパレータの入力端子を駆動するように構成されたアナログコンバイナを含む、請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
前記パルス信号源は、前記コンパレータのラッチ入力を駆動するように構成されている、請求項10に記載の制御システム。
【請求項13】
前記レーザ光源は、QKDデータエンコーディングのためのレーザ光/放射を生成するように構成され、前記制御システムは、前記固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を生成するように構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の制御システムと、固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔中に前記レーザ光源から放出される光/放射にデータをエンコードするように構成された電気光学変調器とを具えることを特徴とする、量子通信送信機。
【請求項15】
前記制御システムによって生成され、前記固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を受信し、それに基づいて前記電気光学変調器によってデータをエンコードするように構成されている、請求項14に記載の量子通信送信機。
【請求項16】
データ通信のためにレーザ光源から放出される光/放射を制御する方法であって、放出される光/放射がデータでエンコードされる時間間隔中に前記レーザ光源を駆動するように構成された複数の固定の事前定義された動作供給信号と、データエンコードの時間間隔同士の間に前記レーザ光源を駆動するための可変のアイドル供給信号とを生成するために、レーザ光源の電気供給信号を変調するステップを含み、この変調するステップは、ランダムな時間間隔および前記レーザ光源の発振閾値よりも大きい固定のアイドル供給信号レベル/強度を含むように前記アイドル供給信号を生成すること、および/または、前記レーザ光源の発振閾値よりも大きいランダムなレベル/強度またはランダムに交互に変化するレベル/強度を有するアイドル供給信号を含むように前記アイドル供給信号を生成し、供給信号を前記発振閾値以下に減少させることなく、前記データエンコードの時間間隔の間のランダムな位相変化に影響を与えること、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項17】
ある位相範囲を所定数の位相セグメントに分割するステップと、前記アイドル供給信号の各々について、所定数の位相セグメントのうちの1つをランダムに選択するステップと、前記アイドル供給信号の各々によって影響を受けた位相変化が、それぞれの位相セグメント内でランダムになるように制御信号を生成するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アイドル供給信号を生成するステップは、1つまたは複数のアナログ信号を制御可能に選択することと、それらを組み合わせて所望のアイドル供給信号を提供することを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ノイズ信号を生成するステップと、前記ノイズ信号に対応する態様で供給信号のレベルをランダムに交互に変化させることによってアイドル供給を生成するステップとを含む、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ノイズ信号に対応する方法でコンパレータをHIGH状態とLOW状態の間でトグルさせるステップを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
データエンコードの時間間隔を定義するように構成されたパルス信号でコンパレータをラッチするステップを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を生成するステップを含む、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記データエンコードの時間間隔中に、前記レーザ光源によって放出される光/放射に量子ビット状態をエンコードするステップを含む、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記データエンコードの時間間隔中に、前記レーザ光源によって放射される光/放射にQKDデータをエンコードするステップを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光通信システムの分野に関し、特に量子鍵配送(QKD)システムで使用されるような位相ランダム化を必要とするアプリケーションに関する。
【0002】
ここに開示される主題の背景として関連すると考えられる文献を以下に列挙する。
[1]C.H.Bennett and G.Brassard,“Quantum cryptography:public key distribution and coin tossing,”in Proceedings of the International Conference on Computers, Systems & Signal Processing,Bangalore,India,pp.175-179(1984).
[2]H.K.Lo,and J.Preskill,”Phase randomization improves security of quantum key distribution”,preprint quant-ph/0504209 (2005).
[3]P.Hiskett,G.Bonfrate,G.Buller and J.Townsend,“Eighty kilometre transmission experiment using InGaAs/InP SPAD-based quantum cryptography receiver operating at 1.55 μm”,Mod.Opt.48,1957(2001).
[4]Z.Cao,Z.Zhang,H.-K.Lo and X.Ma,”Discrete-phase-randomized coherent state source and its application in quantum key distribution”,New J.Phys.17,053014(2015).
[5]H.-K.Lo,X.Ma and K.Chen,”Decoy state quantum key distribution”,Phys.Rev.Lett.94,230504(2005).
【背景技術】
【0003】
このセクションは、必ずしも先行技術ではない、本出願に関する背景情報を提供することを意図する。
【0004】
BB84[1]のような量子鍵配送(QKD)プロトコルは、量子ビットリソースとして単一光子源に依存する。しかし、単一光子源は依然として課題があり、多くのQKDシステムは微弱なコヒーレント・レーザ・パルスに基づいている。
【0005】
微弱なコヒーレントレーザパルスは特定の条件下で信頼性の高い量子ビットとして機能することが証明されているが、パルス間のコヒーレンスを利用して量子ビットの値に関する情報を抽出するシステムでは、攻撃の可能性の存在によってシステムのセキュリティが失われることが証明されているため、コヒーレンス自体が問題となっている[2]。
【0006】
このため、このようなコヒーレント攻撃を防御するための一般的なソリューションは、伝送パルスのシーケンス間の位相ランダム化を確保することにあり、これにより、伝送パルスの連続シーケンス間の位相関係が不明なため、傍受者による情報の取得を防止することができる。
【0007】
位相ランダム化を実現するために、主に2つの方法が一般的に採用されている。第1の方法は、送信機のレーザ光源の後に位相変調器を導入するものである。位相変調器は、伝送パルスのシーケンスごとにランダムな電圧で作動され、それによって伝送パルスの連続シーケンス間にランダムな位相シフトが設定される。第2の方法は、半導体レーザの物理的性質に依存するもので、レーザ駆動電流(本明細書では注入電流Iとも呼ぶ)は通常、外部の電気パルス発生器によって直接変調される。このような半導体レーザの注入電流Iを、レーザ閾値電流より低い電流レベルI=I0、I0<Ithと、レーザの動作/作動電流レベルI=I1と、レーザ閾値電流より大きい値I1>Ithとの間で発振する値に設定することにより、レーザ光源は「ON」状態と「OFF」状態の間で繰り返し利得スイッチングされ、(1/0)モードで動作する。この方法では、レーザ光源が十分な時間間隔で「OFF」状態(すなわちI0<Ith、誘導発光の開始前)にある場合、レーザ光源のキャビティから光子が一掃され、次の「ON」状態(すなわち、I1>Ith)は、前のパルスとは位相関係のない自然放出からの増幅に依存する。こうして、位相のランダム化が達成される[3]。
【0008】
これらの方法により位相ランダム化を保証できるが、QKDの目的には離散的な位相ランダム化で十分であることが証明された。利得スイッチングに必要な無限分解能の位相シフトや物理的なランダム化とは異なり、離散的な位相ランダム化には、デコイ状態プロトコルを使用しない場合はN=4、デコイ状態QKDプロトコルを使用する実装の場合はN=10[4]という最小数のランダム位相値が必要である。デコイ状態を使用しないQKDのセキュアビットレートは、弱いレーザ信号を使用するため顕著に低くなり[5]、このため、例えば10以上の位相値のデコイ状態のQKDを使用することが、より強いレーザ信号を使用できるため、より高いセキュアビットレートを実現でき推奨される。
【0009】
現在使用されている位相ランダム化技術では、位相変調器を追加する必要があり、システムのコストと複雑さが増加するか、利得/強度スイッチング回路を利用する必要があるが、その場合、レーザ光源の繰り返しの「ON/OFF」スイッチングによって、望まないノイズ関連の影響(電力および/または波長の不安定性、スイッチングレートの制限など)が発生する可能性がある。
【0010】
米国特許公開第2017/237505は、連続可変量子通信システム用の送信機を開示しており、この送信機は、コヒーレント光源と、当該コヒーレント光源がコヒーレント光を生成するようにコヒーレント光源に第1の信号を印加するように構成された第1のコントローラと、位相制御要素であって、第1の信号に摂動を印加するように構成されており、各摂動が、生成されたコヒーレント光の部分間の位相シフトを生成する、位相制御要素と、第1の光学部品であって、光強度変調を生成するように構成されており、前記コヒーレント光源が、生成された光をこの光学部品に供給するように構成された、第1の光学部品と、第2のコントローラであって、生成された光の第1の部分が受光される期間中に光パルスが放出され、生成された光の第2の部分が受光される期間中に光パルスが放出されるように、前記光学部品に第2の信号を印加するように構成された、第2のコントローラと、放出された光パルスの振幅を変調するように構成された強度制御要素とを具え、前記位相制御要素および前記強度制御要素は、放出された光パルスの位相および振幅の連続値の情報をエンコードするように構成されている。
【発明の概要】
【0011】
本出願は、位相変調器を追加することなく、また利得スイッチング手段を使用することなく、離散位相ランダム化を行うシステムと方法を提供する。本明細書で開示する離散的位相ランダム化技術は、レーザ光源を駆動する電源信号を、変調のためにレーザ光の発振閾値Ith以上に維持される動作供給レベルとアイドル供給レベル間で切り替えることによって直接位相変調を採用し、これによって従来のソリューションの前述の欠点を最小化または排除する。このように、レーザ光源を駆動する動作供給信号レベルとアイドル供給信号レベルが常にレーザ光源の発振閾値より大きいことを保証することにより、連続する伝送時間間隔/ギャップ間の緩和発振と連続した送信時間間隔/ギャップ間のターンオン遅延が回避される。
【0012】
広い態様において、本開示は、レーザ光源を駆動する一定のアイドル供給信号電力レベル(例えば、アイドル電気供給/注入電流I0)を生成しながら、動作レジーム間(原文:between the working regimes)の時間間隔(τj)をランダムに変化させることによって、および/または、例えば、動作レジーム間の一定の時間間隔(τ)を維持しながら、アイドル供給信号の電力/レベルをランダムに変化させることによって、光送信機システムのデータ伝送パルスの動作レジーム間のランダムな位相変化をもたらすシステムおよび方法を提供する。(例えば、QKD)データ伝送パルスが生成される動作レジームの時間間隔中(原文:during the working regimes)、レーザ光源は、一定/固定の動作供給信号(例えば、動作電気供給/注入電流I1)によって駆動され、所望の安定した波長と位相でレーザ光の連続的かつ中断のない放出を保証する。
【0013】
本明細書で使用される動作供給信号という用語は、データ伝送パルスが生成される動作レジームの時間間隔中に、レーザ光源を駆動する電気供給/注入電流(または電圧)をいう。したがって、動作供給信号は、データ伝送パルスを生成するためにデータをエンコードするために、レーザ光源によるレーザ光の所望の安定した波長と位相での連続的で中断のない放射を保証するのに十分なパワー/レベルを有する。動作供給信号はデータそのものでエンコードするのではなく、後に電気光学変調器などによりデータでエンコードされる光信号を生成するために使用されることに留意されたい。
【0014】
本明細書で使用されるアイドル供給信号という用語は、動作レジームの時間間隔同士の間(between)でレーザ光源を駆動し、動作レジーム中(during)にレーザ照射される波長とは異なる波長でレーザ照射されるように構成された電流(または電圧)をいう。アイドル供給信号のパワー/レベルは、連続する動作レジーム間の時間間隔の少なくとも一部において、時間的に変化するか、または動作レジーム中にレーザ光源によって生成されたレーザ光の波長と異なる波長を有するレーザ光源によるレーザ光の連続的な誘導放出を提供するように構成されている。
【0015】
本明細書で開示される実施形態において、動作レジーム中にレーザ光源を駆動する動作供給信号(I1)、および動作レジーム間にレーザ光源を駆動するアイドル供給信号(I0)は、常にレーザ光源の発振閾値(Ith)よりも大きい(すなわち、I0>IthかつI1>Ith)。ただし、動作供給信号(I1)のパワー/レベルは一般的に固定され安定しているが、アイドル供給信号(I0)のパワー/レベルは、動作供給信号(I1)のパワー/レベルよりも小さくも大きくもなり得ることに留意されたい。
【0016】
いくつかの実施形態では、2πの位相範囲が予め定義された数(N)の位相セグメントに分割され、そこから伝送パルス間の位相変化が、動作レジーム間にレーザ光源を駆動する各アイドル供給信号に対してランダムに選択される。乱数発生器/アルゴリズム(本明細書ではまとめてRNGと呼ぶ)を使用して、動作レジーム間でレーザ光源を駆動する各アイドル供給信号について、N個の位相セグメントから位相セグメントをランダムに選択することができる。
【0017】
任意だがいくつかの実施形態では好ましくは、信号発生器を使用して、レーザ光源を駆動するための電気供給パルス信号を制御可能に生成し、時間間隔を規定し、その間に動作供給信号とアイドル供給信号がそれによって生成される。信号発生器によって規定されるこれらの動作および/またはアイドル時間間隔、および/またはそれらのパワー/レベルは、信号発生器への適切な制御信号の印加によって制御可能に調整することができる。したがって、信号発生器には、動作レジーム間の時間間隔(τj)を変更し、これらの時間間隔中に固定の事前定義されたアイドル供給信号が生成されるようにする制御信号が提供され、それによって、RNGを使用してランダムに選択された位相セグメント内で位相変化が引き起こされ、すなわち、動作レジーム間の時間間隔(τj)の持続時間は、RNGによって生成された乱数にしたがって設定される。
【0018】
代替的または追加的に、信号発生器には制御信号を供給することができ、これにより動作レジーム間に固定の事前定義された時間間隔が設定され、これらの時間間隔中にレーザ光源を駆動するアイドル供給信号が変化され、それによって、乱数発生器を使用してランダムに選択された位相セグメント内で位相変化が引き起こされ、すなわち動作レジーム間でレーザ光源を駆動するアイドル供給信号のレベル/パワー
は、RNGによって生成された乱数に従って設定される。
【0019】
動作レジーム間でレーザ光源を駆動するアイドル供給信号は、アナログコンバイナと制御可能なスイッチ入力信号を用いた離散信号レベル発生器によって生成することができる。離散信号レベル発生器は、入力端子が制御可能なセレクタ/スイッチを介して2つ以上の異なる電圧レベル(例えば、「0」とVi、ここでiはインデックス整数)に電気的に結合され、それによって結合/合計される入力端子のそれぞれの電圧入力レベルを選択するように構成された1以上の入力アナログコンバイナと、当該1以上の入力アナログコンバイナによって生成された出力信号を結合/合計し、レーザ光源を駆動するための所望の出力電圧信号を生成するように構成された1以上の出力アナログコンバイナとを使用することができる。
【0020】
一部の実施形態では、アイドル供給信号はノイズ源(例えば、一種の半導体アバランシェノイズ発生器)によって変調される。プロセッサ(例えば、PCコンパレータ)を使用して、ノイズ源によって生成されたノイズ信号でアイドル供給信号を変調し、それによって動作レジーム間にランダムな位相変化を引き起こすことができる。
【0021】
一態様では、レーザ光源から放出される光/放射を制御するための制御システムが提供され、このシステムは、レーザ光源を駆動する供給信号を制御可能に生成するように構成された信号発生器と、信号発生器の動作を制御するための制御信号を生成するように構成された制御ユニットとを具え、これにより、放出される光/放射がデータエンコードに使用可能である時間間隔中にレーザ光源を駆動する固定の事前定義された動作供給信号と、データエンコード時間間隔の間にレーザ光源を駆動する可変のアイドル供給信号とを生成する。前記制御信号は、アイドル供給信号の生成を引き起こすように構成され、このアイドル供給信号は、ランダムな時間間隔および前記レーザ光源の発振閾値よりも大きい固定のアイドル供給信号レベル/強度、および/または、前記レーザ光源の発振閾値よりも大きいランダムなレベル/強度またはランダムに交互に変化するレベル/強度を有するアイドル供給信号の少なくとも1つを有し、それにより、供給信号を前記発振閾値未満に低下させることなく、データエンコード時間間隔間のランダムな位相変化に影響を与えるように構成される。
【0022】
制御ユニットは、システムの位相範囲を所定数の位相セグメントに分割し、アイドル供給信号の各々について、所定数の位相セグメントのうちの1つをランダムに選択し、アイドル供給信号の各々によって影響を受けた位相変化が、それぞれの位相セグメント内でランダムになるように制御信号を生成するように構成され得る。制御ユニットは、多数の可能な位相セグメントからランダムに選択されたバイナリ状態/信号にしたがってアイドル供給信号を変調するように構成され得る。
【0023】
制御システムは、いくつかの実施形態では、乱数発生器(RNG)または擬似RNGを具える。制御ユニットは、RNGまたは擬似RNGによって生成された乱数をアイドル供給信号の位相セグメントの選択に使用するように構成され得る。例えば、所定の位相セグメントの数は、可能な実施形態では4に設定される。他の可能な実施形態では、所定の位相セグメントの数は10またはそれ以上に設定される。
【0024】
制御システムは、いくつかの実施形態では、制御可能に切り替えられる入力信号を有するアナログコンバイナ構成によってアイドル供給信号を生成するように構成された離散信号レベル発生器を具える。制御ユニットは、アナログコンバイナによって所望のアイドル供給信号を出力するために、制御可能に切り替えられる入力信号を設定するための制御信号を生成するように構成され得る。
【0025】
制御システムは、いくつかの実施形態では、ランダムに交互に変化する信号レベルを有するアイドル供給信号を生成するように構成されたノイズ源を具える。システムは、ランダムな信号長と時間間隔を持つアイドル供給信号を生成するように構成され得る。他の可能な実施形態では、制御システムは、ランダムな信号長と時間間隔、および2つの個別のレーザ電流駆動レベルを有するアイドル供給信号を生成するように構成される。
【0026】
コンパレータを用いて、ノイズ源によって生成された信号に応答してHIGHとLOWの状態を切り替えることができる。任意で、パルス信号源を使用して、レーザ光源の固定の事前定義された動作供給信号を生成するのに必要な時間、コンパレータをHIGH状態に保持する。アナログコンバイナを使用して、ノイズ源とパルス信号源からの信号を合計し、コンパレータの入力端子を駆動することができる。可能な実施形態では、パルス信号源はコンパレータのラッチ入力を駆動するように構成される。
【0027】
レーザ光源は、QKDデータエンコーディングのためのレーザ光/放射を生成するように構成され得る。制御システムは、固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を生成するように構成され得る。
【0028】
別の態様では、本明細書に開示された実施形態のいずれか1つの制御システムと、固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔中にレーザ光源によって放出される光/放射にデータをエンコードするように構成された電気光学変調器とを含む量子通信送信機が提供される。前記量子通信送信機は、前記制御システムによって生成され、前記固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を受信し、それに基づいて電気光学変調器によってデータをエンコードするように構成され得る。
【0029】
さらに別の態様では、データ通信用にレーザ光源から放出される光/放射を制御する方法が提供され、この方法は、放出される光/放射がデータでエンコードされる時間間隔中に前記レーザ光源を駆動するように構成された複数の固定の事前定義された動作供給信号と、データエンコード時間間隔の間に前記レーザ光源を駆動するための可変のアイドル供給信号とを生成するために、レーザ光源の電気供給信号を変調するステップを含む。この変調するステップは、ランダムな時間間隔と、レーザ光源の発振閾値よりも大きい固定のアイドル供給信号レベル/強度とを含むようにアイドル供給信号を生成すること、および/または、レーザ光源の発振閾値よりも大きいランダムなレベル/強度またはランダムに交互に変化するレベル/強度を有するアイドル供給信号を含むようにアイドル供給信号を生成し、それによって、供給信号を発振閾値以下に低下させることなく、データエンコード時間間隔の間のランダムな位相変化に影響を与えること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ある位相範囲を所定数の位相セグメントに分割するステップと、アイドル供給信号の各々について、所定数の位相セグメントのうちの1つをランダムに選択するステップと、アイドル供給信号の各々によって影響を受けた位相変化が、それぞれの位相セグメント内でランダムになるように制御信号を生成するステップを含む。アイドル供給信号を生成するステップは、1つまたは複数のアナログ信号を制御可能に選択することと、それらを組み合わせて所望のアイドル供給信号を提供することを含む。
【0031】
この方法は、いくつかの実施形態では、ノイズ信号を生成するステップと、前記ノイズ信号に対応する方法で供給信号のレベルをランダムに交互に変化させることによりアイドル供給を生成するステップとを含む。この方法は、ノイズ信号に対応する方法でコンパレータをHIGH状態とLOW状態の間でトグルさせるステップを含む。この方法は、データエンコード時間間隔を定義するように構成されたパルス信号でコンパレータをラッチするステップをさらに含み得る。
【0032】
可能な応用例では、この方法は、固定の事前定義された動作供給信号が生成される動作時間間隔を示す同期信号を生成するステップを含む。可能な応用例では、この方法は、データエンコード時間間隔中にレーザ光源によって放出される光/放射に量子ビット状態をエンコードするステップを含む。任意だがいくつかの実施形態では好ましくは、この方法は、データエンコード時間間隔中にレーザ光源によって放出される光/放射にQKDデータをエンコードするステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明を理解し、本発明が実際にどのように実施され得るかを知るために、添付図面を参照して、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。図面に示される特徴は、特に明示されない限り、本発明のいくつかの実施形態のみを例示することを意図する。図面では、対応する部品を示すために同じ参照数字が使用されている。
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、いくつかの実施形態による位相ランダム化に使用可能なレーザの電源変調信号を図式化したものであり(図示された電流は、発振閾値電流I
thに関して正規化されている)、
図1Aは、位相ランダム化のための連続する動作レジーム間の可変時間間隔(本書では可変ギャップ幅とも呼ばれる)の使用を示し、
図1Bは、位相ランダム化のための連続する動作レジーム間の可変注入電流(本書では可変ギャップ深度とも呼ばれる)の使用を示す。
【
図2】
図2A~
図2Cは、可能な実施形態によるランダム化位相パルス生成システムを概略的に示す図であり、
図2Aは、可変時間間隔ベースの制御方式を示すブロック図および図解を示し、
図2Bは、可変注入電流ベースの制御方式を示すブロック図および図解を示し、
図2Cは、位相範囲を所定数の位相セグメントに分割する方法を示す。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bはそれぞれ、可能な実施形態による、連続する動作レジーム間のパルス幅位相依存性および振動干渉強度をグラフで示す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、可能な実施形態による電圧生成スキームを概略的に示し、
図4Aは、4つの可能な入力電圧レベルから最大16の電圧レベルを生成することを示すブロック図であり、
図4Bは、特定の電圧レベル(16の可能な電圧レベルのうちの1つ)を生成する数値例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、連続する動作レジーム間でランダムな位相変化を引き起こすためにノイズ源を利用する、可能な実施形態による光パルス発生システムを概略的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、連続する動作レジーム間でランダムな位相変化を引き起こすためにノイズ源を利用する、可能な実施形態による光パルス発生システムを概略的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、可能な実施形態によるアイドル供給信号の可能な状態変調信号を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の1または複数の具体的および/または代替的な実施形態を、図面を参照して以下に説明するが、これらはあらゆる観点において例示に過ぎず、いかなる形でも限定ではないとみなされるべきである。当業者にとって、このような具体的な詳細がなくても、これらの実施形態が実施され得ることは明らかであろう。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装のすべての特徴または詳細が明細書に細かく記載されているわけではない。その代わりに、当業者が本明細書に開示された主題の原理を理解すれば、位相ランダム化を実施および使用できるように、本発明の原理を明確に説明することに重点が置かれている。本発明は、本明細書に記載された本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態および実施形態で提供されてもよい。
【0035】
本開示は、光送信機のレーザ光源を固定された所定のアイドル供給信号で駆動しながら、動作レジーム間の時間間隔/ギャップをランダムに変更することによって、および/または、動作レジーム間でランダムに変化するアイドル供給信号でレーザ光源を駆動することによって、光送信機のデータ伝送パルスの動作レジーム間にランダムな位相変化を適用する技術を提供する。
【0036】
動作レジームの時間間隔中、動作供給信号は、所望の安定した波長と位相でレーザ光の連続的な中断のない放射を保証する供給電力/レベルでレーザ光源を駆動するために使用される。一方、アイドル供給信号は、レーザ光源による連続的な刺激発振を保証するように構成されるが、その波長は、動作レジーム中に生成されるレーザ光の波長とは異なるか、または動作レジーム間の時間間隔内で経時的に変化する。動作供給信号とアイドル供給信号のパワー/レベルは、光送信器の動作を通じてレーザ光の連続的な誘導放出を保証するように、常にレーザ光源の発振閾値を上回るように維持されるように構成される。
【0037】
本発明のいくつかの例示的な特徴、プロセス段階、および原理の概要を説明するために、図に概略的および図式的に示されている位相ランダム化技術の例は、QKDシステムを対象とする。これらのQKDシステムは、安全なQKDプロトコルの実装に使用される多くの機能、プロセス、および原理を示す実装例の1つとして示されているが、他の用途にも有用であり、さまざまなバリエーションで実装することができる。したがって、本明細書では、図示した実施例を参照しながら説明を進めるが、本明細書の記載、説明、および図面から原理が理解されれば、特許請求の範囲に記載された発明は、他の無数の方法で実施することも可能であることを理解されたい。このようなすべての変形例、および当業者に明らかで光通信用途に有用な他の任意の変更が好適に採用されてもよく、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0038】
本明細書で開示する実施形態では、発振閾値電流Ithよりも大きい動作注入電流信号I1(すなわち、I1>Ith、ここで発振閾値電流は、レーザ光源による誘導放出を保証する最低電流である)の適用によって定義される動作レジームと、同じく発振閾値電流Ithよりも大きいアイドル注入電流I0(すなわちI0>Ith)の適用によって定義される位相決定レジームとを有する注入電流変調パターンが開示され、ここでI0≠Ithである。本願発明の実施形態におけるこのような動作/アイドル注入電流信号変調パターンの使用は、従来の利得スイッチング技術とは異なり、レーザ光源の供給電力の変調には、光源の発振閾値電流Ithよりも小さい電流が用いられ、すなわちI0<Ithとなる。
【0039】
レーザ光源によって生成される光/放射線の波長λは、動作注入電流I
1とアイドル注入電流I
0に依存し、いくつかの分布帰還型レーザ(DFB)レーザでは、例えば値
で、波長電流係数の関係
にしたがう。したがって、注入電流
が異なると、異なる波長λ
iの光/放射が放出される。
【0040】
連続するパルスシーケンス同士の間の所定の時間間隔τ
jでは、異なる波長が異なる数で伝播し、すなわち波長
では連続するパルスシーケンス間の時間間隔τ
j中に得られる波長数n
kは
であり、ここでcは真空中の光の速度、nは光が伝搬する媒質の屈折率である。そのため、波の数n
kは必ずしも整数ではない。したがって、レーザ光パルスシーケンスの連続した動作レジーム間に生成される波長n
k1とn
k2の数に差がある場合、連続したパルスシーケンス間で位相差
が発生する。
【0041】
波数nkの定義から、連続するパルスシーケンス間の位相遅れΦkの値は、例えばレーザ光源に供給される注入電流を変調することによって、放出される光/放射の波長λiを変更するか、連続するレーザ光パルスシーケンスの動作レジーム間の時間間隔τjの持続時間を変更するか、または連続するレーザ光パルスシーケンスの動作レジーム間の波長λiと時間間隔τjの持続時間との両方を変更することによって、制御できることは明らかである。
【0042】
これら2つのパラメータを変更して、動作レジームのデータ伝送タイムスロット間の相対位相を制御する例を
図1Aおよび
図1Bに示す。例えば、関心のある時間間隔は、
図1Aおよび
図1Bでw1、w2、w3、...で参照されるデータエンコードの動作時間スロット/間隔であり得る。連続するレーザ光(例えば、QKDデータ伝送)パルスシーケンス間の位相制御は、
図1Aに例示されるように、いくつかの実施形態では、動作注入電流I
1、すなわち、データがエンコードされて伝送される動作レジームw1、w2、w3、・・・中に印加される電気注入電流、の印加間の時間間隔τ
j(τ
1、τ
2、τ
3、・・・)を制御することによって達成される。
図1Aに例示するように、各時間間隔τ
1、τ
2、τ
3、...ごとに、それぞれ変化する位相遅れΦ
k1、Φ
k2、Φ
k3、...が発生し、動作レジーム間の位相差に影響を与え、その動作中にレーザ光源に供給される電流は、レーザ光源の発振電流I
thよりも常に大きい。
【0043】
代替的または追加的に、連続するパルスシーケンス間の位相制御は、
図1Bに例示されるように、いくつかの実施形態において、可変アイドル注入電流
(深度)を連続する動作レジーム間にレーザ光源に供給し(すなわち、動作レジームw1とw2の間に
、動作レジームw2とw3の間に
、...など)、したがって連続する動作レジームw1、w2、w3、...の間に放出されるレーザ光/放射の波長λ
iが変更される。
図1Bに例示するように、各アイドル注入電流
に対して、所望の位相差を得るためにそれぞれの位相遅れΦ
k1’、Φ
k2’、Φ
k3’、...を生じさせ、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間に固定の時間間隔/ギャップτが維持される。
【0044】
したがって、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の時間間隔τ
j、および/または、これらの動作レジーム間の時間間隔τ
jの間にレーザ光源を駆動するアイドル供給信号
の深度/レベルを制御することにより、
図1Aおよび
図1Bに示すように、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の任意の位相差Φ
kjを設定することができる。
【0045】
本願の位相ランダム化プロトコルを実現するために、いくつかの実施形態では、2πの位相範囲が、N個の等しく分散された位相値に分割される。
連続する動作レジームw1、w2、w3、...の間の各時間間隔τ
jについて、いくつかの実施形態では、位相変化値Φ
kjが、0とN-1の間の乱数値jを生成するように構成された乱数発生器(RNG)によって選択される(ここで、j≧0かつN>1は整数)。ランダムな位相値Φ
kjは、ランダムに抽出されたj値から決定できる。レーザ光源(例えば、
図2Aおよび
図2Bの24)によって蓄積された光位相は、次に、レーザ光源を駆動するように構成された物理的に制御された信号/パルス発生器(例えば、23)により、レベルを動作レジームw1、w2、w3、...の間にレーザ光源に供給されるアイドル注入電流
のレベルを変更することにより、所望の位相変化Φ
kjを生じさせるか、または、アイドル注入電流
と動作レジームw1、w2、w3、...間の時間間隔τ
jの持続時間の両方を変化させることによって、変更される。
【0046】
可能な実施形態による光送信器のデータ伝送パルスの連続する動作レジームw1、w2、w3、...間のランダムな位相変化Φ
kiを適用するためのシステム20を
図2Aに示す。この非限定的な例では、(例えば、DFB、ファブリペロー)半導体レーザ光源24を駆動する電源/電流供給は、信号/パルス発生器ユニット23によって生成される外部電気変調信号23gによって直接変調される。信号/パルス発生器ユニット23は、いくつかの実施形態では、プログラム可能なパルス発生器によって、または例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に実装された特別にプログラムされたコントローラドライバ、および増幅器、減衰器、コンバイナなどの他の電子部品によって実装される。
【0047】
信号/パルス発生ユニット23の動作は、この例では制御ユニット22によって制御される。制御ユニット22は、この非限定的な例では、連続する動作レジームw1、w2、w3、...の間の時間間隔/ギャップτ
jをランダムに変更することによって、
図1Aに例示されるようなランダムな位相変化を引き起こすように、レーザ光源24を駆動する電力(例えば、電気電圧および/または電流)供給パターン/信号を調整するように構成されている。いくつかの実施形態では、連続する動作レジームw1、w2、w3、...の間のランダムな位相変化Φ
kiは、例えば、システム20に望まれるランダムな位相変化の数に対応する範囲内のランダムな整数値
を生成するように構成された、ランダム数発生器(RNG)ユニット21(例えば、高エントロピー物理プロセスによってランダムビットストリームを生成するように構成された集積回路によって実装される)によって設定される。
【0048】
制御ユニット22は、RNGユニット21によって生成されたランダムな整数値jを受信し、ランダムに生成された整数jの各々について、アイドル供給信号の対応する時間間隔/ギャップτjを決定するように構成されている(例えば、ルックアップテーブルを使用)。次に、制御ユニット22は、信号/パルス発生器23を作動させるように構成された制御信号22gを生成し、これにより、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の決定された時間間隔の持続時間τjでレーザ光源24を駆動する電源信号23gを生成する。このようにして、制御ユニット22によって影響を受ける各位相変化Φjは、所定の範囲の位相変化値Φk0、Φk1、...、ΦN-1、例えば、少なくとも10個の均等に分散された位相値からランダムに抽出されるΦj∈[0,2π);N=9。
【0049】
制御ユニット22によって生成される制御信号22gは、さらに、レーザ光源24による動作レジームw1、w2、w3、...に使用される動作供給信号電力(例えば、電流I1)を設定するように構成することができ、この非限定的な実施例では、動作供給信号電力は、固定された所定のレベル(例えば、I1/Ith=10、必ずしも整数ではない)に設定され、アイドル供給電力(例えば、電流I0)は、より小さい固定された所定のレベル(例えばI0/Ith=2、これも必ずしも整数ではない)に設定され、常に発振閾値(Ith)よりも明らかに大きい。しかしながら、信号/パルス発生器23は、固定された所定の動作供給電力レベル(例えば、I1)およびアイドル供給電力レベル(例えば、I0)でレーザ光源24への電力供給パルス/信号(例えば、電圧および/電流)を生成し、制御ユニット22から受信した制御データ/信号22gに基づいて、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の時間間隔/ギャップτjの持続時間のみを調整するように構成されてもよい。
【0050】
レーザ光源24によって生成されたレーザ光パルス24gは、光通信送信機(例えば、QKDシステム)25によって使用され、(例えば、電気光学変調器を使用して)データをエンコードし、これを1つ以上の受信システム(図示せず)に光学的に送信することができる。このように、制御ユニット22は、いくつかの実施形態では、(例えば、QKD)通信システムの異なるビルディングブロック間の同期に使用される同期信号22yを生成し、システム20の各動作レジームw1、w2、w3、...の開始と終了を光通信送信機25に通知して、放出されたレーザ光にデータをエンコードし、レーザ光源24がアイドル供給信号(例えば、I0)によって駆動される時間間隔τ1、τ2、τ3、...中にシステム20によって生成された光/放射を無視するように構成される。
【0051】
図2Bは、可能な実施形態によるデータ伝送パルスの連続した動作レジームw1、w2、w3、...間のランダムな位相変化Φ
kiを適用するためのシステム20’を概略的に示す。この非限定的な実施例では、(例えば、DFB、ファブリペロー)半導体レーザ光源24を駆動する電源パターン/信号(例えば、電気電圧および/または電流)は、信号/パルス発生器ユニット23’によって生成され、動作レジームw1、w2、w3、...間にレーザ光源24によって放出される光/放射の波長λ
jを変化させるように構成された外部電気変調信号23wによって直接変調される。信号/パルス発生器ユニット23’は、同様に、プログラム可能なパルス発生器によって実装されてもよく、または、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に実装された、特別にプログラムされたコントローラドライバによって実装されてもよい。
【0052】
図2Bのシステム20’は、
図2Aのシステム20とほぼ同様であり、このため同様の構成要素を示すために同じ参照数字が使用されている。システム20’の制御ユニット22’は、信号/パルス発生器23’の動作を制御して、レーザ光源24に供給されるアイドル供給信号(例えば、電流I
0
j)のレベルをランダムに調整し、それによって、レーザ光源24によって放出される光/放射の波長λ
jを動作レジームw1、w2、w3、...間で変化させ、それに対応して、動作レジームw1、w2、w3、...間でランダムな位相変化Φ
kiを引き起こすように構成されている。
【0053】
RNG21も同様に、システム20に望まれるランダムな位相変化の数に対応する範囲内でランダムな整数
を生成するのに用いられ、制御ユニット22’がそれに基づいて(例えば、ルックアップテーブルを使用して)、信号/パルス発生器23’を駆動するための対応するアイドル供給信号(例えば、電流I
0
j)を決定する。制御ユニット22’は、RNG21によって生成されたランダムな整数jに基づいて、信号/パルス発生器23’を操作するために使用される制御データ/信号22wを生成し、動作レジームw1、w2、w3、...間でレーザ光源24を駆動するためのランダムなアイドル電力供給信号(例えば、電流)レベル23wを生成する。制御ユニット22’によって生成される制御データ/信号22wは、同様に、レーザ光源24によって動作レジームw1、w2、w3、...のレーザ光の生成に使用する動作供給電力信号(例えば、電流I
1)を設定するように構成することができ、この非限定的な例では、これは固定された所定のレベル(例えば、I
1/I
th=10、必ずしも整数ではない)に設定される。
【0054】
このようにして、レーザ光源24は、ランダムなアイドル供給信号(例えば、I0
j)によって、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間に電力供給される。この非限定的な例では、動作レジームw1、w2、w3、...の間で固定の時間間隔/ギャップτが維持されるが、可能な実施形態では、必要に応じて変化されてもよい。信号/パルス発生器23’は、それに応じて、固定/定義された動作時間間隔とアイドル時間間隔および固定/定義された動作供給電流(I1)で供給信号を生成し、制御ユニット22’から受信した制御信号23wに基づいてアイドル供給信号(例えば、I0
j)のパワー/レベルをランダムに設定するように構成され得る。
【0055】
レーザ光源24によって生成されたレーザ光パルス24wは、同様に、光通信送信機(例えば、QKDシステム)25によって、(例えば、電気光学変調器を使用して)データをエンコードし、これを1以上の受信システム(図示せず)に光学的に送信することができる。制御ユニット22’は、(例えば、QKD)通信システムの異なるビルディングブロック間の同期に使用される同期信号22yを生成し、レーザ光源24によって生成されるレーザ光にデータをエンコードするために、システム20の動作レジームw1、w2、w3、...の各々の開始と終了を光通信送信機25に示し、そしてアイドル供給信号
によるシステム20’によって生成される光/放射を無視するように同様に構成することができる。
【0056】
図2Aおよび
図2Bは、DFBまたはファブリペローレーザのような半導体レーザ光源の使用を例示するが、可能な実施形態では、他のタイプのレーザ光源も同様に考慮し得ることに留意されたい。
図2Cは、可能な実施形態において、位相範囲(2π)をN個の位相セグメントまたは位相値Φ
1、Φ
2、Φ
3、・・・Φ
1Nに均等に分割することを示す。この具体的かつ非限定的な例では、位相範囲はN=10個の位相セグメントに分割され、これを
図2Aおよび
図2Bに示すように、デコイ状態を利用するQKDプロトコルの実装に利用することができ、そこから連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の位相変化Φ
jがランダムに選択される。ただし、可能な実施形態では、位相セグメントΦ
1、Φ
2、Φ
3、・・・、Φ
Nは、
図2Cに例示されているように、必ずしも均等に分散しなくてもよいことに留意されたい。
【0057】
このような実施形態の実現可能性を示す実験結果を
図3Aおよび
図3Bに示す。この実験では、波長λ=1546.10±0.01nm、コヒーレンス長L
Cのコヒーレント半導体分布帰還型(DFB)レーザ光源を、繰り返し周波数R=80.0±0.1MHz、パルス幅p
w=9.000±0.001nsで直接変調された。レーザからの変調光は、ファイバー式不平衡マイケルソン干渉計に入射された。干渉計のアーム間の差は、ΔL=0.10±0.01mに設定され、2つの連続したパルスがビームスプリッタ上で干渉し、ΔL<L
cである。干渉計の出力は高速フォトダイオードに送られ、オシロスコープでモニターされた。
【0058】
干渉計の自発的な熱変動に対する構成的な干渉の可視性Vの依存性が観測され、値V∈[0,1]および60秒を超える期間での熱位相変動2πが観測された。熱変化は制御された急速な位相変化に比べて非常に遅いため、離散的位相変化制御によって依存性
は離散的位相変化制御によって支配的になる。これは、
図3Aおよび3Bに示すように、パルス幅dp
wを変更することによって達成される。測定された検出器の強度は、完全な建設的干渉から完全な破壊的干渉への変換を示す。図示のように、位相(?
k)はパルス幅の変化(dp
w)に直接対応して調整される。これは、2つの作動/アイドル(「ON/OFF」)レジーム間の相対位相の連続的な制御を実証し、我々の方法の適用可能性を示すものである。
【0059】
上述したように、連続する動作レジームw1、w2、w3、...間の時間間隔(ギャップ幅)τkjを制御すると、「ON」/動作レジームと「OFF」/アイドルレジームに必要な電圧レベルが2つだけであるため、デジタルシステムでの実装が簡単になるという利点がある。連続する動作レジームw1、w2、w3、...間のギャップ深度(すなわち、供給信号23g、例えばアイドル電流I0
j)の制御は、例えば、高速スイッチとパルス幅変調(PWM)技術を組み合わせることによって、またはパルス振幅変調(例えば、PAM16)によって、または電圧/電流源間の高速スイッチを駆動することによって達成することができる。
【0060】
あるいは、いくつかの実施形態では、異なるアイドル供給(例えば、電流I
0
j)信号は、
図4Aおよび
図4Bに例示されるように、それぞれの異なる電圧レベルV1、V2、...を持つ少数のデジタル出力c1、c2、...の線形結合によって実装される。この例では、制御可能なスイッチs1、s2、...とアナログコンバイナ回路41a、41b、41c(本明細書では総称してコンバイナ41と呼ぶ)を用いて、制御ユニット42によって生成された制御信号c1、c2、...に基づいて所望の出力電圧V
outを出力する。
【0061】
特に、制御ユニット42によって生成された制御信号c
i(i=1,2,3,4)は、スイッチsiによって、入力コンバイナ41aおよび41bの入力端子の電圧信号を設定する(接地/「0」とVi電圧の間で選択する)ために使用され、入力コンバイナ41aおよび41bによって生成された結合電圧V
aおよびV
bは、出力電圧V
outを生成する出力コンバイナ41cによって結合される。例えば、可能な実施形態では、V1=4mV、V2=8mV、V3=16mV、V4=32mVの4つの入力電圧レベルViを使用することができ、3つのコンバイナ41は、3dBの損失のアナログコンバイナで(すなわち、コンバイナ出力で50%の電圧低下を示す)、制御信号ciの設定によって出力V
outに16種類の電圧レベル(例えば、0mV、1mV、2mV、3mV、4mV、5mV、6mV、7mV、8mV、9mV、10mV、11mV、12mV、13mV、14mV、15mV)を与えることができる。
図4Bは、スイッチs1の接地端子(「0」ボルト)を選択するように制御信号c1を設定し、スイッチs2のV2端子(8mV)を選択するように制御信号c2を設定し、スイッチs3のV3端子(12mV)を選択するように制御信号c3を設定し、スイッチs4のV4端子(16mV)を選択するように制御信号c4を設定することにより、14mV出力を生成する例を示す。
【0062】
デジタル変調信号に電気的アナログフィルタを適用し、パルス発生回路やレーザ帯域幅でサポートされるよりも高い変調レート(例えば10倍)でスイッチングすることで、別の改善が可能である。より高速なデジタル変調信号は、動作間隔間のアイドル信号レベルとして4ビット以上の変調に使用できる。
図7に示すように、2つのデジタルレベル出力の組み合わせ(例えば2進数の「0101」と「0011」)を使用すると、信号の立ち上がりと立ち下がりの時間が有限であるため、電流と時間に対して異なる波形が生成され、したがって位相遅れの値も異なる。これにより、パルス間の必要なランダム化を維持したまま、位相ランダム化のためのアイドル時間を短縮し、システムのビットレートを向上させることができる。
【0063】
所望の数の異なる位相遅れ値を均等な分布で実現するために、異なるビット数を使用することもできる。このような高変調ビットは、高速FPGAのSERDES出力によって生成し、電流ドライバを駆動することができる。
【0064】
光信号に適用される位相をランダム化する別の方法は、内部ジッタを持ちランダムな位相シフトを導入するレーザ変調回路やパルス発生回路の電気部品を使用することにより、変調パルスの立ち上がり時間や立ち下がり時間にジッタを加えることによって実施することができる。追加されたジッタにより、アイドル期間の持続時間がランダム化される。I
0
とI1の差が十分に大きければ、ランダムに蓄積される位相の合計が、必要最小限の範囲である2piを超え得る。これらは、本明細書で開示される離散位相ランダム化の実施形態に属するのに十分であるか、または蓄積される。
【0065】
図5と
図6は、ノイズ源を使用して、アイドル供給(例えば、電流I
0)信号が動作供給(例えば、電流I
1)信号と異なる変調パターンをランダムに形成し、動作レジーム(w1、w2、w3...)間の位相ランダム化を行うノイズ駆動レーザシステム50と60を概略的に示す。これらの実施形態では、レーザ光源56の光出力のランダムな位相(Φ
k)を導入するために、レーザ光源56を駆動する供給信号は、量子データビットの関連する伝送ウィンドウ間(すなわち、動作レジームw1、w2、w3、...の間)の時間ウィンドウの間にランダムに変調される。RNG(またはアルゴリズム)によって十分にランダムなビットを生成する複雑さを避けるため、ノイズ源51を使用して、コンパレータ54を「HIGH」状態と「LOW」状態の間でランダムにトリガし、これにより、レーザ光源54の供給信号が既定のバイアス駆動電流57に対して変調される。
【0066】
いくつかの実施形態における(増幅された)ノイズ源51の可能な実装は、半導体アバランシェノイズ発生器の一種、例えばツェナーダイオードベースのノイズ発生器を利用する。ノイズ源51は、(広帯域)アナログコンバイナ53に供給され、これがノイズ信号を信号/パルスジェネレーター52によって生成された(例えば電圧)パルス信号と結合/合成するように構成されており、これらの信号はデータ伝送の動作レジーム(w1、w2、w3、...)を定義するために使用される。アナログコンバイナ53によって生成された結合信号53cは、結合信号53cがゼロ(「0」ボルト)より大きいときは常にHIGH出力信号を生成し、合成信号53cがゼロより小さいときは常にLOW出力信号を生成するように構成されたコンパレータ回路54)に供給される。コンパレータ54の出力は、HIGH/LOW出力信号を所望の変調深度に調整するために、スケーラユニット55によってスケーリングされる。スケーリングされた信号55sは、アナログコンバイナユニット58によって直流電流シンク57と結合され、レーザ光源56を駆動する。
【0067】
コンバイナユニット58の出力信号は、このようにして、送信機の動作レジーム(例えば、後段の量子ビットエンコーディング用)の送信レーザ光パルスを生成するために、レーザ光源56を駆動するための所望のパルス幅と繰り返し率を提供することができ、一方でこれらの動作レジーム間のランダムな位相変化に影響を与える。
【0068】
より詳細には、信号/パルス源52の出力がHIGH(すなわち、時間窓w1、w2、w3...)である場合、コンバイナ53の出力は常にコンパレータ閾値レベル(「0」)を上回り、コンパレータ54はHIGH状態を出力する(または、相補出力を用いて、コンパレータからLOW出力を生成することもできる)。コンパレータの出力は、スケーラユニット55によってスケーリングされ、シンク電流ユニット57からの直流電流と合計されて、レーザ光源56を所定の「動作状態」電流で駆動する。ただし、信号/パルス源52からの出力がLOWの場合、ノイズ発生器51からのノイズ以外はコンパレータ入力へ寄与しない。コンパレータ閾値は、コンパレータ出力のノイズ信号がランダムな周波数または持続時間でコンパレータ54をランダムにトリガするように設定される。このようにして、レーザ光源56に供給される駆動電流は、信号/パルス源52からの出力がLOWであるときに、ランダムな周波数または持続時間で「動作」レベルと「アイドル」レベルの間で変化し、それによってレーザ電流と電力のランダム変調が生じ、動作レジーム(w1、w2、w3、...)間の位相がランダムに変化する。
【0069】
ノイズの周波数スペクトルは十分に広く、量子データビットの関連する伝送ウィンドウ/レジーム(w1、w2、w3、...)間の各時間ウィンドウで遷移が生じる可能性が高く、量子ビットの伝送ウィンドウごとに位相変化がランダムになる。
【0070】
図6には代替実施形態が示され、ここではノイズ発生器51が信号/パルス発生器66からの閾値信号でラッチ型コンパレータ68をトリガし、コンパレータがランダムな周波数または持続時間でHIGHまたはLOW状態をトリガすることで、レーザ光源64の供給(例えば、電流)信号と電力のランダムな変調を生成し、それによって放出されるレーザ光の位相がランダムに変化する。この実施形態では、ノイズ発生器51(例えば、ツェナーダイオードベースのノイズ発生器)がコンパレータ68に信号供給し、その出力68sがスケーラ63ユニットによってスケーリングされ、所望の変調深度を生成される。スケーラユニット63からのスケーリングされた信号63sは、アナログコンバイナ58にAC結合され(例えば、1以上の容量素子を使用したAC結合回路を介して)、DCシンク電流57’と加算され、レーザ光源64を駆動する(DCシンク電流は、レーザを所望の動作駆動電流にバイアスする)。
【0071】
図示のように、コンパレータ68にはラッチ入力68cが入り、信号/パルス発生器66からのパルス信号によってラッチされ、このパルス信号は(例えば量子ビットの)伝送の動作ウィンドウ/レジーム(w1、w2、w3、...)に同期される。信号/パルス源66の出力がHIGH状態にあるとき(すなわち、動作ウィンドウ/レジームw1、w2、w3、...中)、コンパレータ68はラッチされ、コンパレータ出力は状態間で遷移せず、したがって、AC結合67により、DCシンク源57’によって生成されるDCバイアスレベルに影響は生じず、これはデータ(例えば、量子ビット)伝送ウィンドウ/レジームのための所望の電流レベルである。
【0072】
このようにして、レーザ光源64への駆動電流は、データ(例えば、量子ビット)伝送ウィンドウ/レジーム中には一定に維持され、明確に定義される。前記動作ウィンドウ/レジーム同士の間の期間では、レーザ光源64を駆動する供給(例えば、電流)信号は、ランダムな周波数または持続時間で変化され、それにより、公称動作駆動電流の上下にレーザ駆動電流のランダムな変調が生成され、動作ウィンドウ/レジーム(w1、w2、w3、...)間の位相がランダムに変化する。別の実施形態では、AC結合信号は、公称動作駆動電流の上または下に常にシフトするようにクランプされてもよい。スケーラ63は、この変調の振幅をレーザ光源64の動作に必要な設定に調整するように構成されている。任意で、しかしくつかの実施形態では好ましくは、ノイズ源51によって生成されたノイズの周波数スペクトルは十分に広く、関連するデータ伝送ウィンドウ(例えば、量子データビットの)間の各時間ウィンドウで遷移が高い確率で発生し、したがって、位相変化は、データ伝送の各ウィンドウについてランダムとなる。
【0073】
図5の直流シンク電流源57は、レーザ光源64の発振閾値電流よりもわずかに大きい直流シンク電流を生成するように構成されており、これにより、レーザ光源64を駆動する供給信号(すなわち、直流シンク電流とスケーラ63によって生成された電流の合計)が、連続的で中断のない光伝送のための発振閾値よりも常に大きくなることが保証される。しかし、
図6の直流シンク電流源57’は、動作レベルとして機能するように高いレベルに設定されており、スケーラからの信号によって高いレベルと低いレベルに変調され得る。
【0074】
可能な実施形態では、必要な位相ランダム化範囲は2πより大きくてもよいが、全範囲の係数は2πにわたって均一に分布する必要があることに留意されたい。さらに、本明細書では2πの位相範囲を10個の位相セグメントに分割する例を示すが、いくつかの実施形態では2πの位相範囲を10個以上の位相セグメント(例えば、12個、16個、...)に分割され、この場合は位相値の連続体が理想的であると考えられる(離散的な位相ではない)ことに留意されたい。
【0075】
本開示は、QKDシステムに必要な、連続するデータ通信パルス間の位相ランダム化を簡素化する技術を提供する。QKDシステムでは、これらの技術により、開示された位相ランダム化にかかる時間が短縮されるため、QKDプロセスの効率が向上し、量子ビット伝送速度が向上し、エントロピーが代替ノイズ源から抽出されるため、RNGからの乱数の消費が少なくなり、QKDプロセスの効率が向上する。さらに、実験結果が示すように、これらの技術は特定の量子ビットの状態を設定することでセットアップをさらに簡素化することができ、古典的な通信における位相コーディングに使用することができる。本明細書で開示される実施形態のさらなる用途は、量子ビット状態|0〉+Ei?|1〉間の位相の設定であり、これにより状態設定のために位相変調器を追加する必要がなくなる。これは、電流の「ON」領域で位相差を生じさせることによって行われる。
【0076】
当業者には理解されるように、本発明は、方法、システム、コンピュータプログラム製品、または前述の組み合わせとして具現化することができる。したがって、本発明は、完全にハードウェア的な実施形態、完全にソフトウェア的な実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または一般に本明細書で「システム」と呼ばれるソフトウェアとハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態を取り得る。さらに、本発明は、媒体に具現化されたコンピュータ使用可能なプログラムコードを有するコンピュータ使用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとってもよい。本発明がソフトウェアを使用して実施される実施形態では、ソフトウェアはコンピュータプログラム製品に格納され、リムーバブルストレージドライブ、メモリチップ、または通信インターフェースを使用してコンピュータシステムにロードされる。制御ロジック(ソフトウェア)は、制御プロセッサによって実行されると、制御プロセッサに本明細書に記載される本発明の特定の機能を実行させる。
【0077】
別の実施形態では、本発明の特徴は、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのハードウェアコンポーネントを使用して、主にハードウェアで実装される。本明細書に記載された機能を実行するためのハードウェアステートマシンの実装は、関連技術分野の当業者には明らかであろう。さらに別の実施形態では、ハードウェアとソフトウェアの両方を組み合わせて本発明の機能を実装することができる。本発明の多くの態様を実装するソフトウェアは、メディアに保存することができる。メディアはディスケット、テープ、固定ディスクのような磁気メディアや、CD-ROMのような光学メディアであり得る。さらに、インターネットや何らかのプライベートデータネットワーク経由でソフトウェアを提供することもできる。
【0078】
本明細書で説明し、関連する図に示すように、本発明は、光通信および量子アプリケーションのための位相ランダム化セットアップ、および関連する方法を提供する。本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特に前述の教示に照らして、当業者であれば変更が可能であることが理解されるであろう。当業者には理解されるように、本発明は、特許請求の範囲を逸脱することなく、上述した技術から1以上の技術を採用して、非常に多様な方法で実施することができる。
【国際調査報告】