IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】制御棒遠隔連結解除機構
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/14 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G21C7/14 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525288
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2022048421
(87)【国際公開番号】W WO2023076672
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,687
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521315799
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー アドバンスト テクノロジーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャーゴッツ、スコット、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジーグラー、ライアン、ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ジェイソン、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハスレット、デイビット、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】フレミング、エミリー、ディー.
(57)【要約】
トルク・チューブと、連結棒とスパイダとを備える制御棒組立体と、連結棒の下端に回転可能に固定され、係止カムを含む係止カム組立体と、スパイダ内に回転不能に配設され、進入スロットを有する係止凹部を含む係止環部と、を有し、第1の軸位置では係止カム組立体がトルク・チューブに対して回転可能であり、第2の軸位置では係止カム組立体がトルク・チューブに対して回転不能である、制御棒駆動機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央内腔を画定する内面を備えるトルク・チューブと、
前記トルク・チューブの前記中央内腔内に配設された連結棒とスパイダとを含み、前記連結棒が前記スパイダに離脱自在に固定可能である、制御棒組立体と、
前記連結棒の下端に回転可能に固定される係止カム組立体であって、前記係止カム組立体は、本体部と前記本体部から外径方向に延出する少なくとも1つの係止カムとを含む、係止カム組立体と、
前記スパイダ内に回転不能に配設される係止環部であって、前記係止環部は、中央内腔を画定する内面と前記内面中にある少なくとも1つの係止凹部とを含み、前記係止凹部が前記係止環部の上縁から下方に延在する進入スロットを含む、係止環部と、
を備え、
前記連結棒は、前記係止カム組立体が前記トルク・チューブに対して回転可能である第1の位置と、前記係止カム組立体が前記トルク・チューブに対して回転不能である第2の位置との間を、前記トルク・チューブに関して軸方向に可動である、制御棒駆動機構。
【請求項2】
前記少なくとも1つの係止カムが前記少なくとも1つの係止凹部の前記進入スロット内に配設される場合、前記係止カム組立体は、前記係止環部に対して回転不能であり、前記係止環部に対して軸方向に可動である、請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【請求項3】
前記連結棒が前記第1の位置にある場合、前記係止カム組立体は前記係止環部の上方にあり、前記連結棒が前記第2の位置にある場合、前記少なくとも1つのカムは前記係止凹部内に配設される、請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【請求項4】
前記少なくとも1つの係止凹部が、第1のカム面と、第2のカム面と、前記第1のカム面と前記第2のカム面との間に延在する係止面と、を更に備える、請求項3に記載の制御棒駆動機構。
【請求項5】
前記第1のカム面及び前記第2のカム面が、前記係止環部の長手方向中央軸に対して同一の傾きである、請求項4に記載の制御棒駆動機構。
【請求項6】
前記少なくとも1つの係止カムが、垂直な係止面と、前記少なくとも1つの係止凹部の前記第1のカム面及び前記第2のカム面と同一の前記傾きを有する斜めのカム面と、を含む、請求項5に記載の制御棒駆動機構。
【請求項7】
前記係止面が、前記係止環部の前記長手方向中央軸を含む垂直面中に存在する、請求項5に記載の制御棒駆動機構。
【請求項8】
前記係止カム組立体の前記少なくとも1つのカムは、2つのカムを含み、
前記係止環部の前記少なくとも1つの係止凹部は、2つの係止凹部を含む、
請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【請求項9】
前記連結棒は、円筒状内腔を画定する下端を含み、前記係止カム組立体の前記本体部は、前記円筒状内腔内に回転可能に配設される、請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【請求項10】
トルク・チューブを有する制御棒駆動機構とともに用いられる連結解除機構であって、
前記トルク・チューブ内に回転不能に配設される連結棒と、
前記連結棒の下端に回転可能に固定される係止カム組立体であって、前記係止カム組立体は、本体部と前記本体部から外径方向に延出する少なくとも1つの係止カムとを含む、係止カム組立体と、
前記トルク・チューブ内に回転不能に配設される係止環部であって、前記係止環部は、中央内腔を画定する内面と前記内面中にある少なくとも1つの係止凹部とを含み、係止凹部が前記係止環部の上縁から下方に延在する進入スロットを含む、係止環部と、
を備え、
前記連結棒は、前記係止カム組立体が前記連結棒に対して回転可能である第1の位置と、前記係止カム組立体が前記連結棒に対して回転不能である第2の位置との間を、前記制御棒駆動機構に関して軸方向に可動である、連結解除機構。
【請求項11】
前記少なくとも1つの係止カムが前記少なくとも1つの係止凹部の前記進入スロット内に配設される場合、前記係止カム組立体は、前記係止環部に対して回転不能であり、前記係止環部に対して軸方向に可動である、請求項10に記載の連結解除機構。
【請求項12】
前記連結棒が前記第1の位置にある場合、前記係止カム組立体は前記係止環部の上方に配設され、前記連結棒が前記第2の位置にある場合、前記少なくとも1つのカムは前記係止凹部内に配設される、請求項10に記載の連結解除機構。
【請求項13】
前記少なくとも1つの係止凹部は、第1のカム面と、第2のカム面と、前記第1のカム面と前記第2のカム面との間に延在する係止面とを更に備え、前記第1のカム面及び前記第2のカム面は、前記係止環部の長手方向中央軸に対して同一の傾きである、請求項12に記載の連結解除機構。
【請求項14】
前記少なくとも1つの係止カムが、垂直な係止面と、前記少なくとも1つの係止凹部の前記第1のカム面及び前記第2のカム面と同一の前記傾きを有する斜めのカム面と、を含む、請求項13に記載の連結解除機構。
【請求項15】
前記係止面が、前記固持環部の前記長手方向中央軸を含む垂直面中に存在する、請求項13に記載の連結解除機構。
【請求項16】
前記係止カム組立体の前記少なくとも1つのカムは、2つのカムを含み、
前記係止環部の前記少なくとも1つの係止凹部は、2つの係止凹部を含む、
請求項10に記載の連結解除機構。
【請求項17】
前記連結棒は、円筒状内腔を画定する下端を含み、前記係止カム組立体の前記本体部は、前記円筒状内腔内に回転自在に配設される、請求項11に記載の連結解除機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれている、2021年10月29日に出願した米国特許仮出願番号63/273,687号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書にて開示される発明は、一般に、原子炉における反応炉出力レベルを制御するシステム及びその使用方法に関し、より詳細には、熱原子炉用制御棒の動作を制御するシステム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱原子力発電所において、原子炉心は、所望の核分裂連鎖反応を支持するように選択されたサイズ及び組成を有する核分裂性物質を備える。炉心は、一次冷却水中に浸漬された圧力容器内に配設される。更に、中性子吸収材を備える「制御棒」を反応炉心を通過する案内管に挿入することで、反応を制御し又は停止させることが知られている。制御棒は、挿入されると、連鎖反応を減速又は停止させるように中性子を吸収する。
【0004】
制御棒は、制御棒駆動機構(CRDM:control rod drive mechanism)によって動作される。制御棒を「調整する(regulating)」ことによって、反応速度制御を連続的に調節可能にするように制御棒の挿入を連続的に調節可能である。「停止(shutdown)」用の制御棒については、挿入度合いは全挿入か全引抜かのいずれかである。通常稼働では停止棒は反応炉心から完全に引き抜かれているが、スクラム(SCRAM)時には連鎖反応を迅速に停止させるように停止棒が完全に挿入される。制御棒は調整棒と停止棒の双方の機能を果たすように設計されることもできる。いくつかのそのような二重の機能を持った制御棒では、SCRAM発生時に制御棒がCRDMから取り外し可能となって、外れた制御棒が重力の作用で反応炉心内に落下するように構成されている。艦船のシステム等のいくつかのシステムでは、液圧又は他の(重力以外の)積極的な力も加えて、外れた制御棒を炉心内に駆動する。
【0005】
制御システムを完全にするために、制御棒/CRDM結合が設けられる。既知の結合は、下端にスパイダが固定されている連結棒を含む。連結棒の上部は、CRDMと動作可能に連結する。調整棒では、この連結部は、送りねじ又は他の漸進的な調節要素を含む。従来、送りねじは、連結棒、スパイダ及び制御棒とともに、並進する組立体(「制御棒組立体」としても知られる)として緊急脱落する。しかし、いくつかの既知の手法では、送りねじはCRDM内に保持することができ、制御棒組立体の残りの部分が緊急脱落する。費用とシステム全体の複雑性を軽減するために、典型的には単独のCRDMがスパイダを介して複数の制御棒と連結される。この仕組みでは、全ての制御棒が単独のスパイダと、ともに並進する制御棒組立体(CRA:control rod assembly)として結合する。実際には、多少の冗長性をもたらすように、いくつかのCRDMユニットが設けられ、その各々がスパイダを介して複数の制御棒と結合する。スパイダは、連結棒の下端から横方向に延在して、複数の制御棒の取り付け箇所が設けられる。
【0006】
例えばメンテナンスのための長期停止等のある種の作業の際には、CRAの並進する制御棒を反応炉心中に長期間全挿入することが必要となる場合がある。従って、並進する制御棒を、連結棒とスパイダとの間等の決まった位置で、連結棒の垂直運動によって遠隔でCRDMに対する係合及び係合解除が可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態は、中央内腔を画定する内面を有するトルク・チューブと、トルク・チューブの中央内腔内に配設された連結棒とスパイダとを含み、連結棒がスパイダに離脱自在に固定可能である、制御棒組立体と、連結棒の下端に回転可能に固定される係止カム組立体であって、係止カム組立体は、本体部と本体部から外径方向に延出する少なくとも1つの係止カムとを含む、係止カム組立体と、スパイダ内に回転不能に配設される係止環部であって、係止環部は、中央内腔を画定する内面と内面中にある少なくとも1つの係止凹部とを含み、係止凹部が、係止環部の上縁から下方に延在する進入スロットを備える、係止環部と、を有し、連結棒は、係止カム組立体がトルク・チューブに対して回転可能である第1の位置と、係止カム組立体がトルク・チューブに対して回転不能である第2の位置との間を、トルク・チューブに関して軸方向に可動である、制御棒駆動機構を提供する。
【0008】
本開示の別の一実施の形態は、トルク・チューブを有する制御棒駆動機構とともに用いられる連結解除機構であって、トルク・チューブ内に回転不能に配設される連結棒と、連結棒の下端に回転可能に固定される係止カム組立体であって、係止カム組立体は、本体部と本体部から外径方向に延出する少なくとも1つの係止カムとを含む、係止カム組立体と、トルク・チューブ内に回転不能に配設される係止環部であって、係止環部は、中央内腔を画定する内面と内面中にある少なくとも1つの係止凹部とを含み、係止凹部が係止環部の上縁から下方に延在する進入スロットを含む、係止環部と、を含み、連結棒は、係止カム組立体が連結棒に対して回転可能である第1の位置と、係止カム組立体が連結棒に対して回転不能である第2の位置との間を、制御棒駆動機構に関して軸方向に可動である、連結解除機構を提供する。
【0009】
添付の図面は、本明細書に組み込まれその一部を構成しており、本発明の1つ又は複数の実施の形態を図示し、且つその記述とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0010】
以下で、添付の図面を参照して本発明の記述をより十全に行うが、図面において本発明の実施の形態をいくつか示すものの、その全ては示さない。実際、本発明は多くの異なった形態で実施することができ、本明細書に記載する実施の形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、本開示が該当する法的要件を満たすようにそれらの実施の形態は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的な制御棒組立体を含む、原子炉圧力容器の下部の部分斜視断面図である。
図2図1に示す制御棒組立体の側面図である。
図3図2に示す制御棒組立体の制御棒及び連結棒の斜視図である。
図4A】本開示の一実施の形態による連結解除機構を含む制御棒組立体の下端の側面図である。
図4B】本開示の一実施の形態による連結解除機構を含む制御棒組立体の下端の斜視図である。
図5A図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結棒の下端の斜視図である。
図5B図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結棒の下端の側面図である。
図6A図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の係止環部の側面図である。
図6B図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の係止環部の底面図である。
図6C図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の係止環部の断面図である。
図7A図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、係合状態における部分側面図である。
図7B図4A及び図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、係合解除状態における部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び図面では参照符号を反復使用するが、そのことによって本開示に基づく本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表すことが意図されている。
【0013】
以下で、本発明の現在の好ましい実施の形態について述べるが、そのうちの1つ又は複数の例を添付の図面に示す。各例は本発明を限定するためではなく、説明するために提供される。実際、本発明においてはその範囲及び精神から逸脱することなく変更及び変形が可能であることが当業者に明らかとなる。例えば、一実施の形態の部分として図示又は記述される特徴は、別の一実施の形態に用いられて、更に別の一実施の形態を生み出すことができる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものの範囲内に該当するような変更及び変形を含むものとする。
【0014】
本明細書では、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「上方(above)」又は「下方(below)」等の、しかしこれらに限定されない、遠隔の連結解除機構を有する制御棒組立体の向きに対する方向又は位置を指す言葉は、本明細書の図に示す、通常の意図する操作における連結解除機構の向きに対する方向及び相対位置を指す。従って、例えば「垂直」及び「上」という語は、図の視点における垂直の方向及び相対的に上の位置を指し、時に反応炉が異なった向きに配置されるとしても、上記の意味合いで理解すべきものである。
【0015】
更に、本開示及び添付の特許請求の範囲で用いる「又は(or)」の語は、排他的な「又は」ではなく、両立的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の指定があるか、文脈から明らかであるのでない限り、「XはA又はBを用いる」という文言は、自然数個取り出す組合せ(natural inclusive permutation)のうちの任意のものを意味することが意図されている。つまり、「XはA又はBを用いる」という文言は、「XはAを用いる」、「XはBを用いる」又は「XはAとBの双方を用いる」という場合のうちの任意のものによって満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲で用いる冠詞「a」及び「an」は、単数形に関するものであるように別段の指定があるか、文脈から明らかであるのでない限り、一般に「1つ又は複数の」を意味すると解釈されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、以下の用語は、文脈で別様に定まるのでない限り、ここで明示的に関連付けた意味を少なくとも有する。以下で特定する意味は必ずしも用語を限定せず、単に用語の説明的な例を記載したものである。「a」、「an」及び「the」の意味は複数を指すことを含んでよく、「~に(in)」の意味は「~内に(in)」及び「~上に(on)」を含んでよい。本明細書で用いる「一実施の形態において」という句は、同一の実施の形態を指す場合があるとはいえ、必ずしもそうであるとは限らない。
【0016】
図1を参照すると、例示的な原子炉圧力容器10の関連する部分は、圧力容器10の底に近接して配置される反応炉心12を含む。炉心12は、例として濃縮酸化ウラン(すなわち、235U/238U比を上げるように処理されたUO)等の放射性物質を含む、又は含有する。制御棒駆動機構(CRDM)14組立体を概略的に図示する。例示的なCRDM14は、圧力容器10の内に配設された内部型CRDMである。代替の実施の形態では、外部型CRDMを採用することができる。通常、各々複数の制御棒と結合する複数のCRDMユニットが存在するが、図1においてこれらのCRDMユニットは追加して示さない。圧力容器10は、そのような追加のCRDMユニットのための空間を示して描かれている。
【0017】
CRDM14の下方には制御棒案内フレーム16が存在し、図1の斜視図では制御棒/CRDM結合組立体(すなわちスパイダ32及び連結棒30、両者とも図3に示す)を視界から遮蔽している。案内フレーム16の下方に延出しているのが、複数の制御棒18である。図1は、制御棒18が炉心12内に最大限挿入される全挿入の位置における制御棒18を示す。全挿入の位置では、スパイダ32(図3)は、制御棒案内フレーム16内の下部位置20に位置する。図1の例示的な実施の形態では、CRDM14及び制御棒案内フレーム16は、両端がそれぞれCRDM14及び案内フレーム16と結合し内部を連結棒30(図3)が通過する中空管を備えるスタンドオフ22によって、離隔される。
【0018】
図1は、例示的な圧力容器10の下部のみを示す。原子炉を稼働させる際には、図示の開いた上端24が1つ又は複数の圧力容器上部(図示せず)と連結され、この上部が圧力容器10の図示した下部とともに、反応炉心12、制御棒18、案内フレーム16及び内部型CRDM14を収容する密閉圧力空間を形成する。代替の一実施の形態では、CRDM14は外部型であり、反応炉圧力容器の上方に位置する。このような実施の形態では、外部型CRDMは、連結棒30が圧力容器の上部の門部を通って延出する制御棒/CRDM結合組立体によって、制御棒18と連結される。図2を参照すると、CRDM14、制御棒案内フレーム16、介在するスタンドオフ22及び制御棒18を含む制御組立体が、反応炉圧力容器から分離されて示されている。図3を参照すると、制御棒18及び制御棒組立体40の連結棒30が、それらを隠蔽するいかなる構成要素もなしに(例えば、案内フレーム、スタンドオフ又はCRDMなしに)示されている。スパイダ32によって、複数の制御棒18が対応する連結棒30の下端と連結される。
【0019】
ここで図4A及び図4Bを参照すると、本開示による連結解除機構50が示されている。連結解除機構50は、制御棒駆動機構14のスパイダ32の中央内腔28内に回転不能に固定された係止環部52を含む。図に示すように、スパイダ32は、その本体部21から上方に延在し中央内腔28を画定する装着管26を含む。装着管26は、自らの内に連結棒30の下端を選択的に受けるように構成されている。以下でより詳細に検討するように、係止環部52(図6A図6C)は、係止カム組立体33から外径方向に延出する突起によって形成されるカム38を選択的に受けるように構成された少なくとも1つの係止凹部54を含み、係止カム組立体33は、制御棒組立体40の連結棒30の下端33に回転可能に受けられる。連結解除機構50の実施の形態は、僅か1つの係止凹部54及び1つの対応するカム38を含んでもよいものの、連結解除機構50は、本実施の形態に示されるように、少なくとも一対の対向した係止凹部54と一対の対応する対向した係止カム38とを含むことが好ましい。
【0020】
当技術分野で知られていることであるが、制御棒組立体40の送りねじ(図示せず)と制御棒駆動機構14のローラ・ナットとの間の摩擦力によって、連結棒30がCRDM14のトルク・チューブ(図示せず)に対して回転することがある。以下でより詳細に検討するように、連結棒30が回転しないことが、それにより連結棒30と係止環部52との適切な位置合わせが保たれるので望ましい。図に示すように、当技術分野で知られていることであるが、本実施の形態では、連結棒30のトルク・チューブに対する回転は、トルク・チューブの内面に回転不能に固定された鍵部(図示せず)、及び鍵部スロット(図示せず)の仕組みによって防止される。知られているように、鍵部スロットは連結棒30の外面に形成されている。
【0021】
図5A及び図5Bにおいて最もよく分かるように、連結棒30の下縁27は、一連の交互に存在する尖頭部45及び谷部47によって形成される複数の突起25を含む。隣接する尖頭部45及び谷部47は、係止カム組立体33の係止カム38と摺動可能に係合するように構成された複数の斜めのカム面49でつながっている。加えて図4Bを参照すると、連結棒30の下端は、上部内部レッジ41と下部内部レッジ43との間に広がる円筒状内腔31も画定する。円筒状内腔31は、自らの内に係止カム組立体33の本体部35を摺動可能に受け、それにより係止カム組立体33が連結棒30の中へ及び外へ限定的に摺動可能であるように構成される。係止カム組立体33の上部で外側に迫り出すフランジ37は、上部レッジ41と下部レッジ43との間に摺動可能に受けられ、それにより係止カム組立体33の連結棒30に関する軸方向運動が制限される。選択的なコイルばね(図示せず)を係止カム組立体33の上部フランジ37と連結棒30の上部レッジ41との間に配設することができる。コイルばねは、組立体の上部フランジ37が連結棒30の下部レッジ43と接触するまで組立体を下方に推進することで、反応炉の通常稼働時の係止カム組立体33の振動を軽減するために用いることができる。
【0022】
図6A図6Cに示すように、係止環部52は、同心の外面64及び内面66によって形成されている。ここに示す実施の形態は、各々が係止環部52の内面66から内径方向に延出する突起55により画定された2つの係止凹部54を含む。各々の係止凹部54は、第1の斜めのカム面60と止め面61と第2の斜めのカム面62とを含む。図6Cから最もよく分かるように、第1のカム面60は係止環部52の最下縁67から止め面61の上端へと上方に延在し、止め面61は止め面61の上部から上方に延在し係止環部52の長手方向中央軸と平行である。第2のカム面62も、係止環部52の最下縁67から対応する1つの進入スロット56と交わるまで上方向に傾斜している。一対の進入スロット56は突起55を分離し、各々の進入スロット56が係止環部52の上縁68から下方に延在し、自らの内に対応する係止カム38を摺動可能に受けるように構成される。各々の進入スロット56の上端は、係止カム組立体33の対応する係止カム38及び鍵部51の双方を摺動可能に受けることが容易になるよう広がっていることが好ましい。連結棒30の鍵部51が係止環部52の進入スロット56及び通過スロット53と相互作用することで、連結棒30の係止環部52に対する回転が更に防止されることに留意されたい。係止環部52は、図4A及び図4Bに示すように、スパイダ32の上端に回転不能に固定されている。
【0023】
再び図5A及び図5Bを参照すると、本実施の形態の係止カム組立体33は、各々が係止凹部54の各々に対応する一対の対向するカム突起38を含むことが好ましい。図に示すように、各々の係止カム38は、斜めの底面51と、斜めのカム面53と、底面51からカム面53に上方に延在し係止カム組立体33の長手方向中央軸に平行な止め面57と、を備える。図に示すように、各々のカム38の斜めのカム面53の傾きは、係止凹部54の第1のカム面60及び第2のカム面62の傾き、並びに連結棒30の下縁27のカム面49の傾きと同じである。
【0024】
ここで図4A図4B図7A及び図7Bを参照して、連結解除機構50の動作を検討する。図7Aに示すように、反応炉が長期間停止している間、係止カム組立体33の係止カム38は、連結棒30の運動によってスパイダ32、ひいては制御棒18(図3)の位置が変わらないように、係止環部52の進入スロット56と位置合わせされている。従って、係止カム組立体33の係止カム38は係止環部52の上方に配設することができ、その結果係止環部52が制御棒組立体40の連結棒30と係合しなくなる。先述の通り、連結棒30はトルク・チューブ26に回転不能に固定されている。
【0025】
操作者が制御棒組立体40のスパイダ32を連結棒30と係合させることを望む場合、連結棒30をトルク・チューブ26内で下方に移動させるために制御棒駆動機構14が用いられる。図7Bに示すように、各々の進入スロット56の上端は、対応する係止カム38が容易に入るように広がっており、係止カム38は、スロット56に容易に入るように斜めの下端51を含む。係止カム38が係止環部52と係合していない時、スパイダ32のコイルばね67は完全に伸びている。連結棒30が下方に移動し続けると、係止カム組立体33の端面29がばね67と接触し、この時係止カム組立体33は、フランジ37が内腔31の上部レッジ41と接触するまで連結棒30に対して上方に動く。この時、コイルばね67は圧縮され始める。
【0026】
連結棒30がトルク・チューブ26に対して下方に移動し続けると、係止カム38が進入スロット56の下端から脱出し、それにより突起55の最下縁67を通過し、この時係止カム組立体33はトルク・チューブ26ひいては係止環部52に対して自在に回転する。加えて図7Aを参照すると、各々の係止カム38の止め面57の最上部が対応する進入スロット56の下端を一たび通過すると、コイルばね67によって係止カム組立体33に上方向の力がかかることで、係止カム組立体33は連結棒30と係止環部52の双方に対して上方に動かされる。図に示すように、連結棒30の下縁27のカム面49の相互作用によって、カム係止組立体33が連結棒30を上方から見た場合における時計回り方向に回転する。また、係止カム組立体33は、係止カム38のカム面53が係止凹部54の第1のカム面60に沿って上方に摺動するように、係止環部52及び連結棒30に対して回転する。係止カム組立体33の上方運動及び時計回りの回転は、各々のカム38の止め面57が対応する係止凹部54の係止面61と接触するまで続く。この際、係止カム38は係止環部52の係止凹部54内に堅固に嵌入し、その結果対応する制御棒組立体40(図3)が係止環部52に完全に支持され、制御棒18がCRDM14によって所望の通りに操縦できる。
【0027】
連結棒30ひいてはCRDM14をスパイダ32から連結解除するためには、制御棒駆動機構14を作動させ、制御棒組立体40(図3)の送りねじを、連結棒30を下方向に動かすように係合させる。連結棒30の下縁27のカム面49は、最終的に対応する係止カム38のカム面53と接触する。連結棒30が下方に移動し続けることで、係止カム組立体33の端面29は今一たびコイルばね67と接触し、それによりコイルばね67が圧縮される。各々の係止カム38の止め面57の下端が各々の係止凹部54の係止面61の最下端を一たび通過すると、係止カム組立体33は今一たび係止環部52と連結棒30との双方に対して時計回り方向に自在に回転する。図7Bから最もよく分かるように、コイルばね67によってかかる上方向の力及び連結棒30のカム面49の相互作用によって、各々の係止カム38が対応する進入スロット56に入るまで、係止カム38のカム面53は係止凹部54の第2のカム面62に沿って上方向に摺動する。図7Bに示すように、連結棒30はこの時制御棒18から独立して上方に移動自在であり、その結果制御棒18が反応炉中に全挿入されたままとなることが可能となる。
【0028】
本発明の1つ又は複数の好ましい実施の形態を上記で記述しているが、本発明においてはその範囲及び精神から逸脱することなく種々の変更及び変形が可能であると当業者は認識すべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものの範囲及び精神内に該当するような変更及び変形を含むものとする。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
【国際調査報告】