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特表2024-541032SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクト
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20241029BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241029BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20241029BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20241029BHJP
   C12N 9/64 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C07K19/00
C12Q1/66
C12N15/62 Z
C12N15/50
C12N9/99
C12N9/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525341
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 IN2022050949
(87)【国際公開番号】W WO2023073733
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111049482
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】レイ ウパサナ
(72)【発明者】
【氏名】トリパティ プレム プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ベグム フェローザ
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ アミット クマール
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ20
4B063QQ22
4B063QQ36
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR57
4B063QR66
4B063QS05
4B063QS15
4B063QS38
4B063QX02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
トリプシン/トリプシン様プロテアーゼは、宿主細胞へのSARS-CoV-2の侵入を助長することが報告されている。スパイクはS1及びS2ドメイン間にプロテアーゼ開裂部位を有する。プロテアーゼの開裂特性を使用して、スパイク開裂に対する抗ウイルス性の候補をスクリーニングするための薬剤スクリーニングアッセイを設計することができる。クレームされた発明において、我々は、S1及びS2間でスパイクを開裂するプロテアーゼに対する薬剤をスクリーニングするための概念実証アッセイシステムを開発している。我々は、レポータータンパク質、S1及びS2間のプロテアーゼ開裂部位、並びにセルロース結合ドメインを含有する融合基質タンパク質を設計した。セルロース結合ドメイン(CBD)の存在により、基質タンパク質をセルロースに固定することができる。プロテアーゼが基質を開裂すると、CBDはセルロースに結合したまま、レポータータンパク質が除去される。放出されたレポーターは、プロテアーゼ活性の読み出しとして使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクト。
【請求項2】
(i)配列番号1を有する融合タンパク質、
(ii)設計された基質、
(iii)レポータータンパク質、
を含む、請求項1に記載の組換えコンストラクト。
【請求項3】
前記設計された基質が、タンパク質精製のために一端にヘキサヒスチジンタグを有する、請求項2に記載の組換えコンストラクト。
【請求項4】
メチオニンが、ヘキサヒスチジンのN末端に付加されている、請求項2に記載の組換えコンストラクト。
【請求項5】
前記レポータータンパク質が、
(a)ヘキサヒスチジン残基の前記N末端における開始コドンであるメチオニン、
(b)前記セルロース結合ドメイン配列の3’末端における2つの終止コドン、
を含む、請求項2に記載の組換えコンストラクト。
【請求項6】
a.配列番号3を有するレポータータンパク質、
b.配列番号4を有するスパイクタンパク質開裂配列、
c.配列番号5を有するセルロース結合ドメイン、
から構成される、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
i.配列番号1を有する融合タンパク質を提供する工程と、
ii.工程(i)で得られる前記融合タンパク質にトリプシン様プロテアーゼ及び試験対象薬剤を添加して反応混合物を得る工程と、
iii.セルロースマトリックス/スラリーを提供する工程と、
iv.工程(ii)で得られる前記反応混合物を工程(iii)で得られる前記セルロースマトリックスと混合する工程と、
v.工程(iv)で得られる前記混合物を遠心分離して、レポーターアッセイのために前記反応上清から前記レポータータンパク質を得る工程と、
vi.前記レポーターシグナルを測定する工程であって、インヒビターを含まないコントロールと比較したレポーターシグナルの減少が、スクリーニングされる前記薬剤の陽性活性を確認する工程と、
を含む、SARS-CoV-2に対する薬剤スクリーニングのためのインビトロアッセイシステム。
【請求項8】
薬剤が、カモスタットメシル酸塩、カテプシンBインヒビター、フーリンインヒビターII、プロテアーゼインヒビター、フーリンインヒビターI、トリプシンインヒビター、オボムコイド、クニッツトリプシンインヒビター、セリンプロテアーゼインヒビター、TMPRSS2インヒビターからなる群から選択される、請求項7に記載のインビトロアッセイシステム。
【請求項9】
セルロースマトリックスが、33質量/体積%のスラリー組成物における反応に使用されるバッファ中のセルロースから構成される、請求項7に記載のインビトロアッセイシステム。
【請求項10】
前記レポータータンパク質が、ルシフェラーゼ及び蛍光レポーターからなる群から選択される、請求項7に記載のインビトロアッセイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レポーターを用いたインビトロのトリプシン/トリプシン様プロテアーゼに基づくSARS-CoV-2スパイクタンパク質開裂アッセイシステムの開発に関する。このアッセイシステムは、sars-cov-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクトを含む。
【背景技術】
【0002】
トリプシン様プロテアーゼは、コロナウイルス感染(SARS-CoV、SARS-CoV2、MERS-CoV等)を助長する重要な役割を担うことが知られている[1-4]。これらの酵素はスパイクタンパク質を開裂して、細胞への侵入に関する宿主受容体との相互作用を促進する。コロナウイルスはS1/S2及びS2/S2’と呼ばれる特異的な開裂部位を有することが知らており、これらは更なるプロセシングのために気道プロテアーゼにより特異的に認識される。Kamら[2]及びWeberら[1]は、スパイクタンパク質における潜在的なプロテアーゼ開裂部位を特定するためにそれぞれSARS-CoV及びMERS-CoVの研究を行い、タンパク質分解プロセシングを担う2つの部位(S1/S2及びS2/S2’)を特定することができた。SARS-CoV2スパイクはこれら2つの部位と共に、S1/S2付近に特別な多塩基性の開裂部位を有することも知られており、異なるプロテアーゼによる認識に影響を受けやすい[3,4,5]。Hoffmannらによれば、SARS-CoV-2スパイクにおいて、S1/S2開裂部位は676から688番残基であり、S2’部位は811から818番残基であり、SARS-CoV及びMERS-CoVスパイク開裂配列に類似している[1,2,4]。トリプシンのような気道セリンプロテアーゼは、そのエンベロープ糖タンパク質を開裂することにより、インフルエンザAウイルス感染を媒介する上で重要であることが知られており、SARS-CoV及びSARS-CoV2スパイクを認識して開裂することも示されている[2,5]。II型膜貫通型セリンプロテアーゼTTSPのような他のセリンプロテアーゼは、コロナウイルススパイクタンパク質のプロセシング、及びその感染力を高める上で重要であることが広く研究されてる[1-4]。同様に、フーリン及びカテプシンのような他のプロテアーゼがあり、SARS-CoV2スパイクタンパク質をそのダウンストリームプロセシングに特異的な領域において開裂することも知られている[5]。従って気道プロテアーゼ及びトリプシン様プロテアーゼはコロナウイルスのウイルス感染力を高めるのに重要な役割を担うため、近い将来、抗ウイルス治療の潜在的な標的となり得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明の主な目的は、レポーターを用いたインビトロのトリプシン/トリプシン様プロテアーゼに基づくSARS-CoV-2スパイクタンパク質開裂アッセイシステムの開発である。本アッセイシステムは、sars-cov-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクトを含む。
本発明の更に別の目的は、トリプシン/トリプシン様プロテアーゼ開裂活性に関するクレームされたアッセイシステムで使用する基質である。
【0004】
従って、本発明は、レポーターを用いたインビトロのトリプシン/トリプシン様プロテアーゼに基づくSARS-CoV-2スパイクタンパク質開裂アッセイシステムを提供する。本アッセイシステムは、sars-cov-2スパイクタンパク質に対する薬剤をスクリーニングするための組換えコンストラクトを含む。
本発明の実施形態において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のトリプシン/トリプシン様プロテアーゼ開裂領域、レポータータンパク質及びセルロース結合ドメインを含む基質が設計、使用されている。基質はタンパク質精製の目的で、一端にヘキサヒスチジンタグも有する。タンパク質発現のためにヘキサヒスチジンのN末端にメチオニンを添加した。基質に相当するDNAコンストラクトを細菌系における発現のために全体にコドン修飾している。
本発明の実施形態において、アッセイシステムで使用するクレームされた基質は、トリプシン/トリプシン様プロテアーゼにより開裂される。セルロースマトリックス/スラリーはセルロース結合ドメインを捕捉し、開裂された基質からレポータータンパク質が放出され、このレポータータンパク質はその後レポーターアッセイを使用して検出することができる。
本発明の別の実施形態において、基質の設計に使用するレポーターはナノルシフェラーゼである。或いは、他のルシフェラーゼ並びに蛍光レポーターを使用してよい。コンストラクトで使用するNanolucルシフェラーゼは新規の生物発光タンパク質であり、より良好な光放出能を有し、物理的及び生化学的性質が強化されている[6]。その特異的な活性は、以前に報告された他のルシフェラーゼ(例、ホタル又はウミシイタケ)よりも大きい。その高い感度により、Nanolucルシフェラーゼは、他のルシフェラーゼと比較して、非常に少量でさえ、生物発光シグナルを引き出すことができる。設計したコンストラクトは、特異的な酵素により開裂されると、生物発光を表す際に非常に強力である。設計したアッセイシステムは、より効率的に酵素が基質を開裂し、多くの生物発光シグナルが生成され、任意の酵素特異的インヒビターが導入されるなら、シグナルは使用する薬剤量に比例して減少するという原理に基づくものである。
【0005】
略称
SARS-CoV-2 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2
MERS 中東呼吸器症候群
CBD セルロース結合ドメイン
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
TBST トリス緩衝生理食塩水Tween20
TMPRSS2 膜貫通型セリンプロテアーゼ2
CM カモスタットメシル酸塩
CB カテプシンB
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1はクレームされたアッセイシステムの原理を示す略図である。
図2図2は様々な開裂パターンを示す模式図であり、プロテアーゼがスパイクタンパク質を開裂すると、タンパク質染料で染色したSDS-PAGEゲル上で取得し、可視化することができる。
図3図3はアッセイシステムで使用する基質設計の模式図、及びクローニングした基質のベクターマップである。
図4図4は制限消化を使用した基質発現プラスミドの検証である。
図5図5はタンパク質染料で染色したSDS-PSGEゲル上の精製した基質タンパク質である。
図6図6は抗SARS-CoV-2S1/S2抗体及び抗His抗体を使用したウェスタンブロット分析による精製した基質の検証である。
図7図7はクレームされた基質及びトリプシン酵素を使用したナノルシフェラーゼアッセイに基づく開裂アッセイの結果である。
図8図8はクレームされた基質及びトリプシン酵素を使用したゲルに基づく開裂アッセイの結果である。
図9図9は異なる量のTMPRSS2で基質を処理した。
図10図10はカモスタットメシル酸塩(TMPRSS2インヒビター)の不存在下及び異なる2つの量での存在下、TMPRSS2で基質を消化した(ナノルシフェラーゼアッセイ)。CM=カモスタットメシル酸塩。
図11図11は25℃で4時間、異なる単位のフーリン(50~800mU)で基質を処理した(SES-PAGEゲル)。PL=タンパク質ラダー、S=基質、F=フーリン、BF―フーリンで消化したBSA、F50-F80=異なる量のフーリン。
図12図12はフーリンインヒビターII(フーリンインヒビター)の不存在下及び異なる2つの量での存在下、フーリンで基質を消化した(ナノルシフェラーゼアッセイ)。
図13図13は37℃で2時間、異なる量のカテプシンBで基質を消化したNanolucルシフェラーゼアッセイの結果である。CB=カテプシンB。
図14図14は基質消化に対するカテプシンBインヒビターの効果である。CI=カテプシンBインヒビター。
【発明を実施するための形態】
【0007】
クレームされた薬剤スクリーニングアッセイシステムの作用機序
基質はすべて融合タンパク質として、レポータータンパク質、次にスパイクタンパク質開裂配列及びセルロース結合ドメインを含有する[図1]。トリプシン様プロテアーゼを添加すると、基質は開裂部位で開裂され、レポータータンパク質は除去される。セルロースマトリックス/スラリーのセルロースがこの反応混合物に添加されると、セルロース結合ドメインに結合し、レポータータンパク質は反応上清からレポーターアッセイに利用できる。明確なレポーターシグナルはプロテアーゼによる開裂を示す。開裂バンドは、タンパク質染色染料を用いた染色又はウェスタンブロット分析後、SDS-PAGE上で可視化することもできる[図2]。
アッセイシステムの実用性
このアッセイシステムは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を開裂するトリプシン/トリプシン様プロテアーゼに対する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。この開裂はその宿主細胞にこのウイルスが侵入するプロセスに重要であり、クレームされた薬剤スクリーニングアッセイシステムは、スパイクタンパク質を開裂する際のトリプシン/トリプシン様プロテアーゼの機能に対する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。この薬剤はカモスタットメシル酸塩、カテプシンBインヒビター、フーリンインヒビターII、プロテアーゼインヒビター、フーリンインヒビターI、トリプシンインヒビター、オボムコイド、クニッツトリプシンインヒビター、セリンプロテアーゼインヒビター、TMPRSS2インヒビターからなる群から選択される。設計したコンストラクトは、スパイクを開裂することがまだ知られていないプロテアーゼの開裂部位を特定するのに有用となり得る。また、他の未知の宿主プロテアーゼがスパイクタンパク質開裂に関与するかどうかを特定するのに使用することもできる。設計したアッセイシステムは理解し、解釈するのが容易であり、複雑な工程は含まれない。
【実施例
【0008】
以下の実施例は本発明の説明のために示しているため、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1
レポーターを用いた基質DNA:コンストラクト設計及びクローニング
設計した遺伝子配列を細菌発現系における発現のためにコドン最適化し、融合インサート全体を細菌発現ベクタpET30aの制限酵素部位NdeI及びHindIII間にクローニングした[図3及び4]。
クローニングについての詳細は以下の通りである。
・設計する基質DNA(配列番号2)(URSCREENSARS-CoV-2BactDNA)は、開始コドン(メチオニン)-ポリhisタグ(6x)-レポーターコンストラクト(ナノルシフェラーゼ)(配列番号3)(URSCREENSARS-CoV2NanoLucDNA)-プロテアーゼ開裂部位(配列番号4)(URSCREENSARS-CoV2開裂部位DNA)-セルロース結合ドメイン(配列番号5)(URSCREENSARS-CoV2CBDDNA)-終止コドンからなる[図3]。
・ナノルシフェラーゼに使用されるソース遺伝子配列のアクセッション番号はAIS23666である[6]。
・セルロース結合ドメインに使用されるソース遺伝子配列のアクセッション番号はCAA48312.1である[7]。
・プロテアーゼ開裂部位に使用されるソース遺伝子配列のアクセッション番号はYP_009724390.1である[8]。
・タンパク質翻訳を開始することができるように、開始コドンであるメチオニンを配列に導入した。
・メチオニンに続いて、発現したタンパク質の精製のためにヘキサヒスチジン残基を導入した。
・2つの終止コドン(TAG及びTAA)をセルロース結合ドメイン配列の3’末端に導入した。
・制限エンドヌクレアーゼNde1の開裂部位をメチオニンである開始コドンより前の配列の5’末端に導入した。制限酵素開裂部位がCATATGであり、残りの部分、つまりATGが開始コドンとして利用できるため、ATGより前に余分に3つのヌクレオチド(CAT)を添加しさえすればよかった。
・制限エンドヌクレアーゼHindIII(AAGCTT)の開裂部位を終止コドンより後の配列の3’末端に導入した。
・IDTツール(Integrated DNA technologies株式会社)を使用して、細菌発現のために融合遺伝子全体をコドン最適化し、CLUSTAL OMEGAツールを使用して、(元の及びコドン最適化した)配列をアライメントし、最終的なタンパク質発現における任意の変化を確認した。
・遺伝子配列を細菌発現ベクタPet30a+のNdeI及びHindIII制限部位間に挿入した。
・NdeI及びHindIII制限酵素を使用し、プラスミドDNAの制限消化によりクローニングを更に検証した。
【0009】
実施例2
基質タンパク質の発現及び精製
我々はE・コリ(E.coli)Nico21コンピテントセル(ニューイングランドバイオラボ、240カントリーロード、イプスウィッチ、MA01938-2723、米国から入手)中で基質タンパク質(配列番号1)(URSCREENSARS-CoV-2)を発現させ、Ni-NTA精製技術を使用して精製した。基質は可溶性フラクションから精製することができた。基質発現プラスミドをNico21細胞中で形質転換し、LB-Kanプレートで培養した。プレートを一晩37℃でインキュベートし、形質転換コロニーの1つを2mlの選択培地に添加した(1次接種)。4~6時間培養後、2次接種を200ml培養物で実施し、OD600が0.4~0.5に達するまで培養物を培養した。その後、0.5mMのIPTGを添加することにより培養物を誘導し、振とう条件下、15℃で16時間インキュベートした。インキュベーション後、4度で培養物を遠心沈殿させることにより細胞を採取した。細胞を20mlの細胞溶解バッファ(50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、pH8)に再懸濁し、超音波分解した(30アンペア、20秒オン20秒オフ条件、60分)。溶解物を15000gで30分間4度で遠心分離することにより可溶性(細胞質)及び不溶性(封入体及び破片)フラクションを分離した。ペレット及び上清を10%分離SDS-PAGEゲル(4%スタッキング使用)で泳動して、タンパク質発現を確認した。ゲルを70Vで15分間泳動した後、タンパク質ラダーが分離するまで110Vで泳動した。ゲルをSimply Blueゲル染料(Invitrоgen社)で染色し、ChemiDocで可視化した。得られた可溶性フラクションを使用し、Ni-NTAカラム(Qiagen社)でタンパク質を精製した。まず、カラムを室温でQIArackに配置してカラムの末端に樹脂を下降させた。キャップを開ける前に封を切り、保存バッファを通過させた。10mlの結合バッファ(使用する結合バッファは細胞溶解バッファと同じであった)を添加することによりカラムを平衡化し、自然落下により通過させた。可溶性フラクションをカラムに添加し、5分間そのままにした後通過させた。洗浄バッファを使用してカラムを洗浄し、溶出バッファを使用してタンパク質を溶出した。洗浄バッファ及び溶出バッファはそれぞれ20mMイミダゾール及び250mMイミダゾールを含有し、細胞溶解バッファと同じ静置条件を維持した。精製後、透析バッファ(50mMのトリス、pH7.4、100mMのKCl、20%グリセロール、7mMのベータメルカプトエタノール)中、一晩4℃でタンパク質を透析した。透析後のタンパク質をSDS-PAGEで泳動し、ゲル染色を使用して確認した[図5]。多数のチューブに等分し、-80℃で保存した。
また、抗SARS-CoV2S1/S2抗体並びに抗His抗体を用いたウェスタンブロット分析を使用し、精製した基質タンパク質を検証した[図6]。精製したタンパク質をSDSゲルローディングダイと共に、10%分離SDS-PAGEゲル(4%スタッキングを使用)にロードした。ゲルを70Vで15分間泳動した後、ラダーが分離するまで110Vで泳動した。400mA、2時間4℃条件で、転写バッファ(190mMのグリシン、25mMのトリス、pH8.3、200mlメタノール)でニトロセルロース膜(細孔サイズ0.45μm)を使用してゲルを転写させた。ポンソー染色液(5%酢酸中に1%ポンソー染色剤)を使用してブロットを染色し、転写の状態を可視化した。タンパク質転写の確認後、室温で2時間、低速振とう条件で、TBSTバッファ(20mMのトリス、150mMのNaCl、0.1%Tween20、Ph7.6)中の5%スキムミルクを使用して膜をブロッキングした。一次抗体(ウサギで産生した抗SARS-CoV2S2/S2’部位、Gene Tex社GTX135386、5%ブロッキング溶液で1:1000希釈)(又は抗His抗体)をブロットに添加し、4℃で14時間、低速振とう条件でインキュベートした。ブロットを更に室温で15分間、振とう条件下、一次抗体中でインキュベートした後、5分間、高速振とう条件で3回、TBSTバッファで洗浄した。その後、室温で1時間、低速振とう条件でブロットを二次抗体(ヤギで産生した抗ウサギIgG、NBP175346、TBSTバッファで1:5000)とインキュベートした。洗浄工程を繰り返した。ClarityのECL基質を使用し、ChemiDocでブロットを現像した。
【0010】
実施例3
開裂アッセイ
我々はまずトリプシンを使用し、基質が開裂されるかどうか、またルシフェラーゼが活性かどうかを確認した。我々はセルローススラリー(Sigmacellセルロースタイプ50を使用してバッファ中にスラリーを作製し、33質量/体積%のスラリー組成物で反応に使用した)を使用し、トリプシン処理に続いて遠心分離及び上清の回収を行った後、基質のセルロース結合ドメインを捕捉した。発光を記録した。酵素処理を行わない基質と比較し、酵素処理した基質の場合に多くのルシフェラーゼ活性が観察された。このアッセイを独立した5回に対してそれぞれ3回実施して再現性を確実にした。このように、我々の基質は活性であることが立証された[図7]。基質の開裂を更に確認するために、我々は15%SDS-PAGEで開裂アッセイ反応(37℃で1時間、50μlの0.1Mのトリス、pH7.45で反応させる)も行った。ウシ血清アルブミン(BSA)をコントロールとして使用し、開裂が非特異的であるかどうかを確認した。ゲル泳動後、Sypro Rubyタンパク質染色剤でゲルを染色した。我々はゲル染色後、予測した分子量の開裂バンドをはっきりとみることができた[図8]。従って、可視分析並びにルシフェラーゼアッセイの両方を用いることにより基質開裂を確認した。
更に我々は少数の他のプロテアーゼ、つまりTMPRSS2[図9、10]、フーリン[図11、12]及びカテプシンB[図13、14]も使用して我々のアッセイシステムを検証した。我々はこれらのプロテアーゼのインヒビターも使用しており、インヒビターを使用すると、酵素活性が確かに阻害されることを示している。試験を行う追加の各酵素に相当する典型的な結果が得られる。
【0011】
以降、ルシフェラーゼアッセイを検討して、このアッセイシステムを高スループット形態に向上させる。
1.アッセイシステムの作用機序の概念を設計する。
2.アッセイシステムで使用する基質のための融合タンパク質コンストラクトを設計する。
3.細菌における発現のためにDNAをコードする基質をコドン修飾する。
4.細菌の発現プラスミドにおける基質遺伝子のクローニング、及び基質タンパク質発現後、細菌培養物から精製を行う。
5.代表的な酵素としてトリプシン、TMPRSS2、フーリン及びカテプシンBを使用してトリプシン/トリプシン様プロテアーゼによる基質開裂を検証する。
6.ゲルを使用した検出並びにレポーターアッセイの両方により開裂アッセイを検証する。
【0012】
利点
1.インビトロアッセイシステムである。
2.基質を細菌培養物から精製するため、精製が容易である。
3.基質開裂アッセイは動物又はヒトの細胞培養物を必要としない。
4.感染性ウイルスが関与しないため、アッセイシステムは安全である。
5.アッセイシステムは独立した動物細胞培養であるため、時間の消費が少ない。
6.アッセイシステムを高スループットシステムにアップグレードすることができるため、一度に多数の薬剤をスクリーニングするのに役立つ。
7.他の未知の宿主プロテアーゼが、スパイクタンパク質開裂に関与するかどうかを特定するのに使用することもできる。設計したアッセイシステムは、理解及び解釈するのが容易であり、複雑な工程は含まれない。
〔参考文献〕

図1
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【配列表】
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【国際調査報告】