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特表2024-541038炭化または黒鉛化された3D物体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】炭化または黒鉛化された3D物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/532 20060101AFI20241029BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20241029BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20241029BHJP
   C01B 32/97 20170101ALI20241029BHJP
   C01B 32/984 20170101ALI20241029BHJP
   C04B 35/83 20060101ALI20241029BHJP
   C04B 35/573 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C04B35/532
C01B32/05
C01B32/205
C01B32/97
C01B32/984
C04B35/83
C04B35/573
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525584
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022078542
(87)【国際公開番号】W WO2023072613
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021128414.7
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コルンマイヤー・トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ダーフィト
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AB05
4G146BA02
4G146BA03
4G146BA31
4G146BA32
4G146BB02
4G146BB04
4G146BB06
4G146BC23
4G146BC27
4G146BC35B
4G146BC36A
4G146BC37A
4G146MA14
4G146MB05
4G146MB14
4G146NA01
4G146NB07
4G146NB14
4G146NB18
4G146QA04
(57)【要約】
本発明は、炭化または黒鉛化された3D物体を製造する方法に関し、このような3D物体を特に簡単に実現するという課題に基づき、該方法を用いることにより、構造の乱れなく、比較的複雑な3D物体も製造することができる。前記課題は、炭化もしくは黒鉛化可能な材料を、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合して、混練可能なほぼ形状安定性のコンパウンドとし、そしてこのコンパウンドを成形して3Dブランクとし、その後、高められた温度で、所定の時間にわたって乾燥及びガス放出プロセスを行い、その後、炉中、保護ガス雰囲気下に3Dブランクを炭化もしくは黒鉛化して3D物体を製造し、この際、炭化もしくは黒鉛化に必要な温度には、低い加熱速度で接近する、ことによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化または黒鉛化3D物体を製造するための方法であって、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、セルロースもしくはトウモロコシデンプンまたはこれらの材料の一部もしくは全ての混合物でできた炭化または黒鉛化可能な材料を、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合して、混練可能な形状安定性のコンパウンドを形成し、そしてこのコンパウンドを、テフロンまたはシリコーンでできた型を用いて成形して3Dブランクを形成し、そしてこの型から3Dブランクを取り出すこと、及び所定の時間にわたって室温でまたは最大100℃で後続の乾燥及びガス放出プロセスを行い、その後、140℃から最大450℃までの温度で安定化及び均質化工程を行い、その後、炉中、保護ガス雰囲気下に3Dブランクの炭化または黒鉛化を行って3D物体を製造し、この際、炭化または黒鉛化のために必要な温度には1℃/分の加熱速度で接近し、その後、温度処理を行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維または黒鉛繊維を、混練性を維持しながら炭化もしくは黒鉛化可能な前記材料に混ぜ入れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3Dブランクの成形を、手で及び/またはひな形を用いて行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
3Dブランクの安定化及び均質化が、炉の加熱中に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
3D成形品を、様々な結晶構造を有する純粋な炭素が生じるまで、1,000℃の一定の温度で真空または保護ガス下に炭化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
3D成形品を、2,000℃以上の一定の温度で、真空または保護ガス下に炉中で黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
3D成形品を、2,500℃を超える温度で、真空または保護ガス下に炉中で完全に黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
保護ガスとしてアルゴンまたはヘリウムが使用されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
目的の温度が達成されるまで約1℃/分の加熱速度を用いた3D成形品の黒鉛化の後に、約30分間から数時間にわたる温度処理を行うことを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
混練可能なコンパウンドに金属粉またはケイ素粉を混ぜ入れ、その結果、>1,000℃で、炉中、保護ガス下で3Dブランクを高温処理すると、炭化金属または炭化ケイ素でできた3D成形品が製造されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
黒鉛化された発泡3D物体を、炉中、>1,200℃の温度下に、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いて気体状のSiOを供給しながら、SiCでできた3D物体に変換することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化もしくは黒鉛化された3D物体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温下での使用にも適しているこのような炭化もしくは黒鉛化3D物体は、様々な部材、例えば炉のライニング、建築部材、または任意の中空体、容器または坩堝であることができる。
【0003】
3D物体は、カーボンブラックまたは黒鉛の簡単な成形及びその後の焼結によっては製造することができないため、一般的には、適切な炭素含有でかつ成形可能なコンパウンドを製造する必要がある。この目的のためには、カーボンブラック、コークスまたは黒鉛をグラニュールの形で、適切なバインダー、例えば熱可塑性バインダーと混合することが通常である。バインダーとしては、コールタールまたは石油ピッチをベースとするピッチ、または合成樹脂も考慮される。
【0004】
次いで、これらの混合物を、プレスしてグリーン成形品に成形し、そして炉中、約3,000℃で炭化または黒鉛化し、その際、バインダーが揮発成分に分解する。バインダーの残物として炭素及びバインダーコークスが多孔性構造物の形で残留する。
【0005】
その代わりに、グリーン成形品を、抵抗要素として炉内に各電極間に配置し、そして電流によって加熱することもできる。
【0006】
このような成形品の炭化または黒鉛化の際の困難さは、その場合に必要な高温下に揮発性物質が程度の差はあれ激しくガスを放出し、これが、亀裂やガスの内包など構造の乱れを招き得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実現が格別観点であり、かつ比較的複雑な3D物体でも構造の乱れなく製造することを可能にする、炭化もしくは黒鉛化された3D物体の製造方法を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、炭化もしくは黒鉛化可能な材料と、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質とから構成される、混練可能でほぼ形状安定性のコンパウンドを製造し、このコンパウンドを成形して3Dブランクとし、その後、高められた温度下に乾燥プロセス及びガス放出プロセスを行い、その後、この3Dブランクを、炉中で真空または保護ガス下に炭化もしくは黒鉛化して3D物体を製造し、この際、炭化もしくは黒鉛化のために必要な温度には、低い加熱速度で接近することによって達成される。
【0009】
炭化もしくは黒鉛化可能な材料としては、好ましくは、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、セルロースもしくはトウモロコシデンプン、またはこれらの材料の一部のもしくは全部の混合物などが考慮される。
【0010】
製造される3D物体の強度または多孔性に影響を及ぼすためには、竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維または黒鉛繊維を、混練性を維持しながら炭化もしくは黒鉛化可能な材料に混ぜ入れることができる。
【0011】
第一の実施形態では、3Dブランクの成形は、適当なひな形を用いて手で行われる。
【0012】
特別な態様の一つでは、3Dブランクは、型中で成形することによって行われる。
【0013】
保護ガスとしては、好ましくはアルゴンまたはヘリウムが使用される。
【0014】
代替的に、3Dブランクを、乾燥プロセスの後に、空気中170℃のまたは空気中最大450℃までの安定化温度で安定化及び均質化工程に付して、3D成形品を生じさせることができ、この際、250℃の温度が好ましい。
【0015】
安定化及び均質化工程は、原則的に、アルゴンなどの保護ガス下に行うこともできる。
【0016】
3Dブランクの安定化及び均質化は、炉の加熱中にも起こり得る。
【0017】
本発明では引き続き、3D成形品を、約1,000℃の一定温度で、様々な結晶構造の純炭素が生じるまで炭化して3D物体とする。
【0018】
本発明の他の続け方では、3D成形品を、2,000℃以上の一定温度で黒鉛化する。
【0019】
最後に、3D成形品は、2,500℃超の温度で完全に黒鉛化させることができる。
【0020】
好ましくは、黒鉛化は、目的の温度に達するまで約1℃/分の加熱速度で行い、その後、3D成形品のサイズに依存して約30分にわたって、熱処理する。
【0021】
本発明の好ましい態様の一つでは、混練可能なコンパウンドには金属粉もしくはケイ素粉を混ぜ入れて、保護ガス下での>1,000℃の3D成形品の高温処理において、炭化金属または炭化ケイ素が形成されるようにすることができる。
【0022】
黒鉛化された発泡3D物体は、炉中、>1,200℃の温度下に、約30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いてガス状SiOを供給しつつ、SiCでできた3D物体に変換することもできる。
【0023】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
【実施例
【0024】
第一のプロセスステップでは、炭化もしくは黒鉛化可能な材料を流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合することによって、混練可能でほぼ形状安定性のコンパウンドを製造し、その後、このコンパウンドを成形して3Dブランクを形成する。次いで、前記3Dブランクから、乾燥またはガス放出プロセスにおいて、高められた温度下に、特に水分及びガス内包物を除去し、それによって3D成形品に変換する。それにより、3D物体を製造するための、炉中、真空または保護ガス、例えばアルゴンまたはヘリウム下でのその後の3D成形品の炭化または黒鉛化の際の亀裂の発生を回避することができる。
【0025】
炭化または黒鉛化可能な有機材料としては、好ましくは、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、並びにデンプン、例えばトウモロコシまたは馬鈴薯デンプンまたは類似物、またはこれらの材料の一部または全ての混合物を使用することができる。
【0026】
完成した炭化もしくは黒鉛化3D物体の強度または多孔性に影響を及ぼすためには、竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維もしくは他の適当な植物繊維、または黒鉛繊維を、必要に応じて更に別の流動性接着剤または流動性有機物質を所望の稠度が達成されるまで加えることによって、混練性を維持しながら炭化されたまたは黒鉛化可能な有機材料に混ぜ入れることができる。
【0027】
3Dブランクの成形は、例えばひな形を用いて手で、または型中で成形することによって行うことができ、この際、3Dブランクは、乾燥プロセスの前に、型から取り出すのがよい。3Dブランクの比較的簡単な離型を可能にするためには、テフロン、シリコーンまたは限定された弾性を有する他の材料でできた型を使用することができる。
【0028】
代替的に、3D成形品は、存在する水を除去するための室温でまたは最大100℃での乾燥プロセスの後に付すことができる。空気中140℃のまたは保護ガスもしくは真空下で最大450℃までの安定化温度での後段の安定化及び均質化工程(この際、250℃の温度が好ましい)では、ガス放出を起こして、後での炭化または黒鉛化の際の亀裂の発生を回避する。
【0029】
3D成形品は、安定化または均質化工程の間は適切な形状のままであり得ることが理解される。
【0030】
3D成形品の安定化及び均質化は、炉を加熱する間にも起き得る。
【0031】
3D成形品の安定化は、炭化/黒鉛化の時のそれの分解を予防するために必要である、というのも、そうしないと、3D成形品は融解するかまたは大きく変形してしまう虞があるからである。安定化の間、原子/分子は再組織化して、その結果、これらは高温プロセスに耐えるようになる。
【0032】
更に引き続き、3D成形品は、様々な結晶構造を有する純粋な炭素が生じるまで、約1,000℃の一定の温度で炉中で3D物体に炭化される。
【0033】
本発明の他の続け方では、次いで、3D成形品は、3D物体を形成するために2,000℃以上の一定の温度で炉中で黒鉛化される。
【0034】
最後に、3D成形品は、3D物品の成形のために2,500℃を超える温度で炉中で完全に黒鉛化することができる。
【0035】
炭化または黒鉛化は、3Dブランクの有機成分の燃焼を避けるために、保護ガス下に炉中で行う必要があることが理解される。
【0036】
炭化または黒鉛化を真空下に行うことは確かに原則的に可能であるが、この場合には、3D成形品内部と真空との間の圧力差によって揮発成分が加速され、亀裂が発生し得るリスクがある。
【0037】
この理由から、炉内に高圧をかけて、揮発性成分がゆっくりと拡散放出されるようにすることが有利であり、その結果、亀裂及び破損を確実に避けることができる。
【0038】
好ましくは、炭化または黒鉛化は、目的の温度が達成されるまで約1℃/分の加熱速度で行われ、その後、約30分にわたって温度処理を行い、この際、数時間にわたる温度処理も可能である。
【0039】
均一な炭化または黒鉛化を達成するためには、3D成形品を予め離型することが重要である。
【0040】
本発明の特別な態様の一つでは、混練可能なコンパウンドには金属粉もしくはケイ素粉を混ぜ入れて、保護ガス下での>1,000℃の3D成形品の高温処理において、炭化金属または炭化ケイ素が形成されるようにすることができる。
【0041】
黒鉛化された発泡3D物体は、炉中、>1,200℃の温度下に、約30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いてガス状SiOを供給しつつ、SiCからなる3D物体に変換することもできる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化もしくは黒鉛化された3D物体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温下での使用にも適しているこのような炭化もしくは黒鉛化3D物体は、様々な部材、例えば炉のライニング、建築部材、または任意の中空体、容器または坩堝であることができる。
【0003】
3D物体は、カーボンブラックまたは黒鉛の簡単な成形及びその後の焼結によっては製造することができないため、一般的には、適切な炭素含有でかつ成形可能なコンパウンドを製造する必要がある。この目的のためには、カーボンブラック、コークスまたは黒鉛をグラニュールの形で、適切なバインダー、例えば熱可塑性バインダーと混合することが通常である。バインダーとしては、コールタールまたは石油ピッチをベースとするピッチ、または合成樹脂も考慮される。
【0004】
次いで、これらの混合物を、プレスしてグリーン成形品に成形し、そして炉中、約3,000℃で炭化または黒鉛化し、その際、バインダーが揮発成分に分解する。バインダーの残物として炭素及びバインダーコークスが多孔性構造物の形で残留する。
【0005】
その代わりに、グリーン成形品を、抵抗要素として炉内に各電極間に配置し、そして電流によって加熱することもできる。
【0006】
このような成形品の炭化または黒鉛化の際の困難さは、その場合に必要な高温下に揮発性物質が程度の差はあれ激しくガスを放出し、これが、亀裂やガスの内包など構造の乱れを招き得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実現が格別観点であり、かつ比較的複雑な3D物体でも構造の乱れなく製造することを可能にする、炭化もしくは黒鉛化された3D物体の製造方法を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、炭化もしくは黒鉛化可能な材料と、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質とから構成される、混練可能でほぼ形状安定性のコンパウンドを製造し、このコンパウンドを、適切なひな形を用いて手で成形して3Dブランクとするか、あるいはテフロンまたはシリコーンでできた型中で成形しそしてこの型から3Dブランクを取り出すことによって3Dブランクとし、その後、室温でまたは最大100℃で前記3Dブランクの乾燥プロセス及びガス放出プロセスを行って3D成形品に変換し、その後、空気中で140℃から最大450℃までの温度でこの3D成形品の安定化及び均質化工程を行い、その後、この3D成形品を、炉中で保護ガス雰囲気下に炭化もしくは黒鉛化して3D物体を製造し、この際、炭化もしくは黒鉛化のために必要な温度には、低い加熱速度で接近することによって達成される。
【0009】
炭化もしくは黒鉛化可能な材料としては、好ましくは、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、セルロースもしくはトウモロコシデンプン、またはこれらの材料の一部のもしくは全部の混合物などが考慮される。
【0010】
製造される3D物体の強度または多孔性に影響を及ぼすためには、竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維または黒鉛繊維を、混練性を維持しながら炭化もしくは黒鉛化可能な材料に混ぜ入れることができる
【0011】
護ガスとしては、好ましくはアルゴンまたはヘリウムが使用される。
【0012】
代替的に、3Dブランクを、乾燥プロセスの後に、空気中170℃のまたは空気中最大450℃までの安定化温度で安定化及び均質化工程に付して、3D成形品を生じさせることができ、この際、250℃の温度が好ましい。
【0013】
安定化及び均質化工程は、原則的に、アルゴンなどの保護ガス下に行うこともできる。
【0014】
3Dブランクの安定化及び均質化は、炉の加熱中にも起こり得る。
【0015】
本発明では引き続き、3D成形品を、約1,000℃の一定温度で、様々な結晶構造の純炭素が生じるまで炭化して3D物体とする。
【0016】
本発明の他の続け方では、3D成形品を、2,000℃以上の一定温度で黒鉛化する。
【0017】
最後に、3D成形品は、2,500℃超の温度で完全に黒鉛化させることができる。
【0018】
好ましくは、黒鉛化は、目的の温度に達するまで約1℃/分の加熱速度で行い、その後、3D成形品のサイズに依存して約30分にわたって、熱処理する。
【0019】
本発明の好ましい態様の一つでは、混練可能なコンパウンドには金属粉もしくはケイ素粉を混ぜ入れて、保護ガス下での>1,000℃の3D成形品の高温処理において、炭化金属または炭化ケイ素が形成されるようにすることができる。
【0020】
黒鉛化された発泡3D物体は、炉中、>1,200℃の温度下に、約30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いてガス状SiOを供給しつつ、SiCでできた3D物体に変換することもできる。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
【実施例
【0022】
第一のプロセスステップでは、炭化もしくは黒鉛化可能な材料を流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合することによって、混練可能でほぼ形状安定性のコンパウンドを製造し、その後、このコンパウンドを成形して3Dブランクを形成する。次いで、前記3Dブランクから、乾燥またはガス放出プロセスにおいて、高められた温度下に、特に水分及びガス内包物を除去し、それによって3D成形品に変換する。それにより、3D物体を製造するための、炉中、真空または保護ガス、例えばアルゴンまたはヘリウム下でのその後の3D成形品の炭化または黒鉛化の際の亀裂の発生を回避することができる。
【0023】
炭化または黒鉛化可能な有機材料としては、好ましくは、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、並びにデンプン、例えばトウモロコシまたは馬鈴薯デンプンまたは類似物、またはこれらの材料の一部または全ての混合物を使用することができる。
【0024】
完成した炭化もしくは黒鉛化3D物体の強度または多孔性に影響を及ぼすためには、竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維もしくは他の適当な植物繊維、または黒鉛繊維を、必要に応じて更に別の流動性接着剤または流動性有機物質を所望の稠度が達成されるまで加えることによって、混練性を維持しながら炭化可能なまたは黒鉛化可能な有機材料に混ぜ入れることができる。
【0025】
3Dブランクの成形は、例えばひな形を用いて手で、または型中で成形することによって行うことができ、この際、3Dブランクは、乾燥プロセスの前に、型から取り出すのがよい。3Dブランクの比較的簡単な離型を可能にするためには、テフロン、シリコーンまたは限定された弾性を有する他の材料でできた型を使用することができる。
【0026】
代替的に、3D成形品は、存在する水を除去するために、室温でまたは最大100℃での乾燥プロセスに付すことができる。空気中140℃のまたは保護ガスもしくは真空下で最大450℃までの安定化温度での後段の安定化及び均質化工程(この際、250℃の温度が好ましい)では、ガス放出を起こして、後での炭化または黒鉛化の際の亀裂の発生を回避する。
【0027】
3D成形品は、安定化または均質化工程の間は適切な形状のままであり得ることが理解される。
【0028】
3D成形品の安定化及び均質化は、炉を加熱する間にも起き得る。
【0029】
3D成形品の安定化は、炭化/黒鉛化の時のそれの分解を予防するために必要である、というのも、そうしないと、3D成形品は融解するかまたは大きく変形してしまう虞があるからである。安定化の間、原子/分子は再組織化して、その結果、これらは高温プロセスに耐えるようになる。
【0030】
更に引き続き、3D成形品は、様々な結晶構造を有する純粋な炭素が生じるまで、約1,000℃の一定の温度で炉中で3D物体に炭化される。
【0031】
本発明の他の続け方では、次いで、3D成形品は、3D物体を形成するために2,000℃以上の一定の温度で炉中で黒鉛化される。
【0032】
最後に、3D成形品は、3D物品の成形のために2,500℃を超える温度で炉中で完全に黒鉛化することができる。
【0033】
炭化または黒鉛化は、3Dブランクの有機成分の燃焼を避けるために、保護ガス下に炉中で行う必要があることが理解される。
【0034】
炭化または黒鉛化を真空下に行うことは確かに原則的に可能であるが、この場合には、3D成形品内部と真空との間の圧力差によって揮発成分が加速され、亀裂が発生し得るリスクがある。
【0035】
この理由から、炉内に高圧をかけて、揮発性成分がゆっくりと拡散放出されるようにすることが有利であり、その結果、亀裂及び破損を確実に避けることができる。
【0036】
好ましくは、炭化または黒鉛化は、目的の温度が達成されるまで約1℃/分の加熱速度で行われ、その後、約30分にわたって温度処理を行い、この際、数時間にわたる温度処理も可能である。
【0037】
均一な炭化または黒鉛化を達成するためには、3D成形品を予め離型することが重要である。
【0038】
本発明の特別な態様の一つでは、混練可能なコンパウンドには金属粉もしくはケイ素粉を混ぜ入れて、保護ガス下での>1,000℃の3D成形品の高温処理において、炭化金属または炭化ケイ素が形成されるようにすることができる。
【0039】
黒鉛化された発泡3D物体は、炉中、>1,200℃の温度下に、約30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いてガス状SiOを供給しつつ、SiCからなる3D物体に変換することもできる。
【0040】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 炭化または黒鉛化3D物体を製造するための方法であって、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、セルロースもしくはトウモロコシデンプンまたはこれらの材料の一部もしくは全ての混合物でできた炭化または黒鉛化可能な材料を、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合して、混練可能な形状安定性のコンパウンドを形成し、そしてこのコンパウンドを、テフロンまたはシリコーンでできた型を用いて成形して3Dブランクを形成し、そしてこの型から3Dブランクを取り出すこと、及び所定の時間にわたって室温でまたは最大100℃で後続の乾燥及びガス放出プロセスを行い、その後、140℃から最大450℃までの温度で安定化及び均質化工程を行い、その後、炉中、保護ガス雰囲気下に3Dブランクの炭化または黒鉛化を行って3D物体を製造し、この際、炭化または黒鉛化のために必要な温度には1℃/分の加熱速度で接近し、その後、温度処理を行うことを特徴とする、前記方法。
2. 竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維または黒鉛繊維を、混練性を維持しながら炭化もしくは黒鉛化可能な前記材料に混ぜ入れることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
3. 3Dブランクの成形を、手で及び/またはひな形を用いて行うことを特徴とする、前記1.または2.に記載の方法。
4. 3Dブランクの安定化及び均質化が、炉の加熱中に行われる、前記3.に記載の方法。
5. 3D成形品を、様々な結晶構造を有する純粋な炭素が生じるまで、1,000℃の一定の温度で真空または保護ガス下に炭化して3D物体を形成することを特徴とする、前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 3D成形品を、2,000℃以上の一定の温度で、真空または保護ガス下に炉中で黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、前記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7. 3D成形品を、2,500℃を超える温度で、真空または保護ガス下に炉中で完全に黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、前記6.に記載の方法。
8. 保護ガスとしてアルゴンまたはヘリウムが使用されることを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 目的の温度が達成されるまで約1℃/分の加熱速度を用いた3D成形品の黒鉛化の後に、約30分間から数時間にわたる温度処理を行うことを特徴とする、前記7.または8.に記載の方法。
10. 混練可能なコンパウンドに金属粉またはケイ素粉を混ぜ入れ、その結果、>1,000℃で、炉中、保護ガス下で3Dブランクを高温処理すると、炭化金属または炭化ケイ素でできた3D成形品が製造されることを特徴とする、前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法。
11. 黒鉛化された発泡3D物体を、炉中、>1,200℃の温度下に、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いて気体状のSiOを供給しながら、SiCでできた3D物体に変換することを特徴とする、前記1.~10.のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化または黒鉛化3D物体を製造するための方法であって、カーボンブラック、黒鉛粉、天然黒鉛、セルロースもしくはトウモロコシデンプンまたはこれらの材料の一部もしくは全ての混合物でできた炭化または黒鉛化可能な材料を、流動性有機系接着剤または流動性熱可塑性有機物質と混合して、混練可能な形状安定性のコンパウンドを形成し、そしてこのコンパウンドを、適切なひな形を用いて手で成形して3Dブランクとするか、あるいはテフロンまたはシリコーンでできた型中で成形しそしてこの型から3Dブランクを取り出すことによって3Dブランクとし、その後、室温でまたは最大100℃で前記3Dブランクの乾燥及びガス放出プロセスを行って3D成形品に変換し、その後、空気中で140℃から最大450℃までの温度で前記3D成形品の安定化及び均質化工程を行い、その後、炉中、保護ガス雰囲気下に前記3D成形品の炭化または黒鉛化を行って3D物体を製造し、この際、炭化または黒鉛化のために必要な温度には1℃/分の加熱速度で接近し、その後、温度処理を行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
竹繊維、綿繊維、麻繊維、サイザル繊維または黒鉛繊維を、混練性を維持しながら炭化もしくは黒鉛化可能な前記材料に混ぜ入れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3Dブランクの安定化及び均質化が、炉の加熱中に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
3D成形品を、様々な結晶構造を有する純粋な炭素が生じるまで、1,000℃の一定の温度で真空または保護ガス下に炭化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
3D成形品を、2,000℃以上の一定の温度で、真空または保護ガス下に炉中で黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
3D成形品を、2,500℃を超える温度で、真空または保護ガス下に炉中で完全に黒鉛化して3D物体を形成することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
保護ガスとしてアルゴンまたはヘリウムが使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
1℃/分の加熱速度を用いた3D成形品の黒鉛化を目的の温度が達成されるまで行い、その後、約30分間から数時間にわたる温度処理を行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
混練可能なコンパウンドに金属粉またはケイ素粉を混ぜ入れ、その結果、>1,000℃で、炉中、保護ガス下で3Dブランクを高温処理すると、炭化金属または炭化ケイ素でできた3D成形品が製造されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
黒鉛化された発泡3D物体を、炉中、>1,200℃の温度下に、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてアルゴンを用いて気体状のSiOを供給しながら、SiCでできた3D物体に変換することを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【国際調査報告】