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特表2024-541039切断されたタンパク質および融合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】切断されたタンパク質および融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20241029BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 38/45 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/54
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N9/12
A61K38/17
A61P21/00
A61P43/00 107
A61K38/45
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525585
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 AU2022051290
(87)【国際公開番号】W WO2023070156
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2021903439
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
2.TWEEN
3.TRITON
4.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】594202523
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】カリー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マルティーノ,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA23
4C084BA41
4C084DC25
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB221
4C084ZB222
4C084ZC191
4C084ZC192
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、生産的な組織修復および再生、および特に、ポリペプチド、前記ポリペプチドを含む組成物、および前記ポリペプチドまたは組成物を使用する生産的な組織修復および再生のための方法に関する。ある態様において、本発明は、切断されたサイトカインフィンガーモチーフ(cif)モチーフを含むNAMPTのC末端部分を含むか、実質的に前記部分からなるか、前記部分からなる、ポリペプチドを提供する。別の態様において、本発明は、完全長NAMPTcifまたは切断バリアントのポリペプチドおよび組織への送達または組織内保持を増強する部分を含むか、実質的にそれらからなるか、それらからなる、融合タンパク質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されたサイトカインフィンガー(cif)モチーフを含むNAMPTのC末端部分を含むか、実質的に前記部分からなるか、または前記部分からなる、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドの、NAMPTタンパク質に由来するか、またはNAMPTタンパク質に対して相同性または同一性を有する唯一のアミノ酸配列が、切断されたcifモチーフである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
CCR5に結合し、および/または筋前駆細胞の増殖を刺激する、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドの、CCR5に結合し、および/または筋前駆細胞の増殖を刺激する唯一のアミノ酸配列が、切断されたcifモチーフである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
cifモチーフの切断がN末端切断である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
cifモチーフの切断がC末端切断である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
N末端および/またはC末端切断が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
切断が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と同等のアミノ酸配列の、N末端の1~12残基の切断である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
切断が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と同等のアミノ酸配列の、N末端の1~20残基の切断である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
切断が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と同等のアミノ酸配列の、N末端の1~28残基の切断である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
切断が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と同等のアミノ酸配列の、N末端の1~35残基の切断である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
cifモチーフが、配列番号1、2、または3のいずれかに表すアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
cifモチーフが、配列番号1に表すアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列と等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一である配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列と等しい、または少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、ポリペプチド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、長さ約110、約109、約108、約107、約106、約105、約104、約103、約102、約101、約100、約99、約98、約97、約96、約95、約94、約93、約92、約91、約90、約89、約88、約87、約86、約85、約84、約83、約82、約81、約80、約79、約78、約77、約76、約75、約74、約73、約72、約71、約70、約69、約68、約67、約66、約65、約64、約63、約62、約61、約60、約59、約58、約57、または約56アミノ酸に等しいか、それ未満である、ポリペプチド。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、長さ110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56アミノ酸に等しいか、それ未満である、ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列を含むか、または前記配列に対して1、2、3、4、5、6、7、または8つの保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列を含み、かつCCR5または組織幹細胞と相互作用する活性を保持している、ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチドであって、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列からなるか、または前記配列に対して1、2、3、4、5、6、7、または8つの保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列からなり、かつCCR5または組織幹細胞と相互作用する活性を保持している、ポリペプチド。
【請求項20】
配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
実質的に配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
配列番号4のアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
配列番号6のアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
配列番号8のアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号10のアミノ酸配列からなる、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
モノマー形態である、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
ダイマー形態である、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
ホモダイマー形態である、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチドおよび組織への送達または組織内保持を増強する部分を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、融合タンパク質。
【請求項31】
組織への送達または組織内保持を増強する部分が、細胞外マトリックス(ECM)結合部分である、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
ECM結合部分が、以下のECM部分:コラーゲン、フィブロネクチン、テネイシンC、オステオポンチン、フィブリノゲン、およびヘパラン硫酸、のいずれか1つ以上に結合する、請求項30または31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
ECM結合部分が、プラセンタ成長因子(PlGF)、アンフィレグリン(Areg)、コラゲナーゼまたはフォン・ヴィレブランド因子(vWF)に由来する、請求項30~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
ECM結合部分が、正電荷を有するアミノ酸残基を含むか、実質的に前記残基からなるか、または前記残基からなる、請求項30~33のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
正電荷を有するアミノ酸残基が、RRRPK、RKKK、KRRR、または配列番号12および13を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
請求項30~35のいずれか一項に記載の融合タンパク質であって、ECM結合部分が、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列と等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなり、ここで、ECM結合部分が、前記ECM結合部分の由来である配列番号12~16のいずれかのECM結合部分と同じ親和性か、顕著な差のない親和性か、または少なくとも80%、95%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の親和性で1つ以上のECMタンパク質に結合する、融合タンパク質。
【請求項37】
ECM結合部分が、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる、請求項30~36のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
請求項30~37のいずれか一項に記載の融合タンパク質であって、前記融合タンパク質が、配列番号4~11のいずれかのアミノ酸配列に融合、連結、または直接連結された配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列を、含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、融合タンパク質。
【請求項39】
ECM結合部分およびNAMPTの完全長サイトカインフィンガーモチーフを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる融合タンパク質であって、ECM結合部分が、以下のECM分子:コラーゲン、フィブロネクチン、テネイシンC、オステオポンチン、フィブリノゲン、およびヘパラン硫酸、のいずれか1つ以上に結合する、融合タンパク質。
【請求項40】
ECM結合部分が、プラセンタ成長因子(PlGF)、アンフィレグリン(Areg)、コラゲナーゼ、またはフォン・ヴィレブランド因子(vWF)に由来する、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
ECM結合部分が、正電荷を有するアミノ酸残基を含むか、実質的に前記残基からなるか、前記残基からなる、請求項39または40に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
正電荷を有するアミノ酸残基が、RRRPK、RKKK、KRRR、または配列番号12および13を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、請求項41に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
請求項39~42のいずれか一項に記載の融合タンパク質であって、ECM結合部分が、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列と等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなり、ここで、ECM結合部分が、前記ECM結合部分の由来である配列番号12~16のいずれかのECM結合部分と同じ親和性か、顕著な差のない親和性か、または少なくとも80%、95%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の親和性で1つ以上のECMタンパク質に結合する、融合タンパク質。
【請求項44】
ECM結合部分が、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる、請求項39~43のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
NAMPTのサイトカインフィンガーモチーフが、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる、請求項39~43のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
請求項1~29のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項47】
請求項30~45のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項48】
請求項46または47に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項49】
請求項46または47に記載の核酸、または請求項48に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項50】
請求項1~49のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、組成物。
【請求項51】
請求項50に記載の組成物であって、(a)組織幹細胞(サテライト細胞など)またはその前駆細胞またはその子孫細胞、(b)マクロファージまたはその前駆細胞またはその子孫細胞、および(c)足場または保持材のうち1つ、2つ、または全てをさらに含む、組成物。
【請求項52】
サテライト細胞の増殖などの、幹細胞の増殖を刺激する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物を、細胞または対象に投与し、それによって幹細胞の増殖を刺激することを含む、方法。
【請求項53】
対象において筋組織の再生を刺激する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物を対象の筋肉に投与し、それによって筋組織の再生を刺激することを含む、方法。
【請求項54】
筋組織の再生を刺激する方法であって、前記方法が、有効量の、請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは融合タンパク質を含むかまたはコードする細胞、および場合により、筋肉への送達または筋肉内保持を増強する構成要素を含む組成物を筋肉に投与することを含み、ここで前記ポリペプチドまたは融合タンパク質がサテライト細胞に結合し、かつ筋芽細胞の増殖および筋再生を刺激する、方法。
【請求項55】
前記細胞がマクロファージである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記マクロファージが組織から単離される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記マクロファージが、骨髄前駆細胞またはiPSCなどの幹細胞から誘導される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
医薬として使用するための、または治療に使用するための、請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物。
【請求項59】
筋幹細胞の増殖の刺激に使用するための、請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物。
【請求項60】
筋再生を刺激するための医薬の製造における、または幹細胞治療における、請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物の使用。
【請求項61】
炎症が望ましくない対象において筋組織の再生を刺激する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~51のいずれかに記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物、または細胞を筋肉に投与し、それによって、この対象における筋組織の再生を刺激することを含む、方法。
【請求項62】
望ましくない炎症が、TLR活性化によって媒介される炎症である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
TLR活性化がTLR4活性化である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
対象において炎症性ミオパチーを処置する方法であって、前記方法が、有効量の請求項1~51のいずれか一項に記載のポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物を対象の筋肉に投与し、それによって炎症性ミオパチーを処置することを含む、方法。
【請求項65】
炎症性ミオパチーが、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、または壊死性自己免疫性ミオパチーである、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産的な組織修復および再生、および特に、ポリペプチド、前記ポリペプチドを含む組成物、および前記ポリペプチドまたは組成物を使用する生産的な組織修復および再生のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は2021年10月27日に出願された豪州仮出願2021903439号からの優先権を主張し、その内容の全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の背景
骨格筋は、典型的には成人の体重のおよそ40%を形成する。骨格筋は筋形成による発達の過程で形成され、ここで、体節として知られる沿軸中胚葉のブロックの対により、筋幹細胞を形成する一過性の筋節が生じ、かつこれが拡張し、筋管表面への筋芽細胞の融合を通して、統合された、かつ複雑な筋系を形成する。筋形成のさらなる段階においては、筋幹細胞(サテライト細胞と呼ばれる)が遊走して個々の筋線維の筋細胞膜および基底膜のニッチを占有する。有羊膜類は全ての筋線維のセットを備えて誕生し、かつ、成体において、筋肉の修復は、一般的には、既存の線維のサイズの増加を通してなされる。生涯にわたって、筋組織の恒常性、成長、再生および修復は、中胚葉由来の骨格筋常在幹細胞によって駆動される。分子レベルにおいて、休止期のサテライト細胞は、転写因子PAX7を要求し、かつ発現し、かつPAX3も発現する。骨格筋の損傷の後、サテライト細胞の一部は活性化し、分化および融合して新たな筋線維を形成するか、または損傷した筋線維と合併し、かつ損傷した筋線維を修復する、筋芽細胞を形成する。この筋原性プログラムは、筋原性調節因子であるMYF5、MYOD、MYOGおよびMRF4によって管理されている。筋ニッチに関連するその他多くの因子および細胞が、恒常性および再生の背景において、機能的組織の複雑な細胞プロセスおよび最終的な産生に関与すると考えられている。それゆえに、現在まで、サテライト細胞の活性化および増殖を刺激するシグナルの出所および性質を特定することは困難であった。
【0004】
サテライト細胞は、分化した組織中の特定の解剖学的ニッチを占有する、単能性の組織常在幹細胞の原型である。数十年の研究により、多種多様な侵襲に応答して効果的に筋修復を調整するこのシステムの優れた能力が明らかにされてきた。この実証された再生能力に反して、単離された筋幹細胞の移植は未だ治療への影響をもたらすに至っておらず、筋幹細胞を刺激する再生促進処置は、現時点では全く欠けている。
【0005】
筋芽細胞に基づく治療において使用するための、新たな、および/または、改善された組成物および方法が、必要とされている。
【0006】
本明細書におけるいかなる先行技術の参照も、その先行技術が任意の法域において一般常識の一部を形成すること、またはその先行技術が、理解され、他の先行技術と関連するとみなされ、および/または他の先行技術と組み合わされると、当業者によって合理的に予測され得ることを、認めるか、または示唆するものではない。
【発明の概要】
【0007】
ある態様において、本発明は、切断された、または改変されたNAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドを提供する。
【0008】
この態様において、本発明は、切断されたcifモチーフを含むNAMPTのC末端部分を含むか、実質的に前記部分からなるか、または前記部分からなる、NAMPTポリペプチド断片を提供する。好ましくは、前記ポリペプチドの、NAMPTタンパク質に由来するか、またはNAMPTタンパク質に対して相同性または同一性を有する唯一のアミノ酸配列は、切断されたcifモチーフである。
【0009】
この態様において、本発明は、切断されたcifモチーフを含むNAMPTのC末端部分を含むか、実質的に前記部分からなるか、または前記部分からなる、ポリペプチドを提供する。好ましくは、前記ポリペプチドの、NAMPTタンパク質に由来するか、またはNAMPTタンパク質に対して相同性または同一性を有する唯一のアミノ酸配列は、切断されたcifモチーフである。
【0010】
任意の実施形態において、ポリペプチドはCCR5に結合し、および/または筋前駆細胞の増殖を刺激する。
【0011】
任意の実施形態において、前記ポリペプチドの、CCR5に結合し、および/または筋前駆細胞の刺激を刺激する唯一のアミノ酸配列は、切断されたcifモチーフである。
【0012】
任意の実施形態において、cifモチーフは、配列番号1、2、または3のいずれかに表すアミノ酸配列を含むか、または、前記配列からなる。好ましくは、NAMPTポリペプチドは、切断された配列番号1のアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。
【0013】
任意の実施形態において、cifモチーフの切断は、N末端切断および/またはC末端切断であってもよい。ある実施形態において、N末端および/またはC末端切断は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35アミノ酸である。好ましくは、前記切断は、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と同等のアミノ酸配列の、N末端および/またはC末端の、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35アミノ酸である。
【0014】
任意の実施形態において、切断は、cifモチーフのN末端の1~12、1~20、1~28、または1~35残基の切断である。好ましくは、切断は、配列番号1に表されるアミノ酸配列のN末端の1~12、1~20、1~28、または1~35残基の切断、またはそれと同等の切断である。
【0015】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列、または配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列に等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一である配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。代わりに、前記ポリペプチドは、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列、または配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列に等しい、または少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。
【0016】
ある実施形態において、配列に対する「%同一性」または「~%同一である」ことは、ポリペプチドが同じ長さ、例えば同じアミノ酸数を有しているが、その長さにわたるアミノ酸が、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のみ同一であることを意味する。典型的には、アミノ酸配列の同一性における唯一の違いは、保存的置換によるものである(例えば、下記の表3に要約するもの)。
【0017】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、長さ約110、約109、約108、約107、約106、約105、約104、約103、約102、約101、約100、約99、約98、約97、約96、約95、約94、約93、約92、約91、約90、約89、約88、約87、約86、約85、約84、約83、約82、約81、約80、約79、約78、約77、約76、約75、約74、約73、約72、約71、約70、約69、約68、約67、約66、約65、約64、約63、約62、約61、約60、約59、約58、約57、または約56アミノ酸に等しいか、それ未満である。
【0018】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、長さ110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56アミノ酸に等しいか、それ未満である。
【0019】
ある実施形態において、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列に等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるポリペプチドのアミノ酸配列は、長さ約110、約109、約108、約107、約106、約105、約104、約103、約102、約101、約100、約99、約98、約97、約96、約95、約94、約93、約92、約91、約90、約89、約88、約87、約86、約85、約84、約83、約82、約81、約80、約79、約78、約77、約76、約75、約74、約73、約72、約71、約70、約69、約68、約67、約66、約65、約64、約63、約62、約61、約60、約59、約58、約57、または約56アミノ酸に等しいか、それ未満である。
【0020】
ある実施形態において、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列に等しい、または少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドのアミノ酸配列は、長さ110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56アミノ酸に等しいか、それ未満である。
【0021】
任意の実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、前記配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、また8つの保存的(例えば、下記の表3に要約するもの)または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列を含み、かつCCR5または組織幹細胞と相互作用する活性を保持している。好ましくは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加は、431から435番目、または472から491番目(例えば配列番号19のヒトNAMPTに対応する番号)のアミノ酸の置換、欠失、または付加ではない。
【0022】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、N末端切断を有する配列番号8のアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。好ましくは、N末端切断は6アミノ酸未満である。
【0023】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、cifモチーフに存在するC末端アルファヘリックスを含む。
【0024】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号4または5のアミノ酸配列と等しい、または少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号4または5と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0025】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号6または7のアミノ酸配列と等しい、または少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6または7と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0026】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号8または9のアミノ酸配列と等しい、または少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号8または9と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0027】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号10または11のアミノ酸配列と等しい、または少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号10または11と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0028】
ある実施形態において、切断されたNAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドは、配列番号1の402~413番目の残基のN末端切断、またはそれと同等のN末端切断を有し、かつ、前記ポリペプチドは配列番号1の414~491番目のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1の414~491番目のアミノ酸配列と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0029】
ある実施形態において、切断されたNAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドは、配列番号1の402~421番目の残基のN末端切断、またはそれと同等のN末端切断を有し、かつ、前記ポリペプチドは配列番号1の422~491番目のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1の422~491番目のアミノ酸配列と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0030】
ある実施形態において、切断されたNAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドは、配列番号1の402~429番目の残基のN末端切断、またはそれと同等のN末端切断を有し、かつ、前記ポリペプチドは配列番号1の430~491番目のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1の430~491番目のアミノ酸配列と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0031】
ある実施形態において、切断されたNAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドは、配列番号1の402~435番目の残基のN末端切断、またはそれと同等の切断を有し、かつ、前記ポリペプチドは配列番号1の436~491番目のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。好ましくは、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1の436~491番目のアミノ酸配列と等しいか、または少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0032】
ある実施形態において、前記ポリペプチドは、モノマー、ダイマーまたはマルチマーの形態であってもよい。ダイマー形成を促進するために、本明細書に記載される任意のポリペプチドが、ホモダイマー形成またはヘテロダイマー形成を可能にするように改変されてもよい。前記改変は、例えば、天然または非天然のいずれかの、例えばジスルフィド結合を形成するシステインなどの、共有結合を形成するアミノ酸の付加であってもよい。典型的には、システインなどの、共有結合を形成するアミノ酸の付加は、前記ポリペプチドのN末端またはC末端における付加である。ある実施形態において、前記ポリペプチドは、N末端またはC末端に追加のシステインを有する、配列番号4、5、6、7、8、9、10、または11のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。
【0033】
別の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドのモノマー同士の共有結合、好ましくはジスルフィド結合によって形成される、ダイマーポリペプチドが提供される。
【0034】
別の実施形態において、前記ポリペプチドは、本明細書に記載される切断されたcifモチーフを2つ以上含むか、実質的に前記モチーフ2つ以上からなるか、または前記モチーフ2つ以上からなる。好ましくは、前記2つ以上の切断されたcifモチーフは、リンカーによって隔てられている。
【0035】
ペプチドリンカーは、Gly-Gly-Ser(GGS)、Gly-Gly-Gly-Ser(GGGS)、またはGly-Gly-Gly-Gly-Ser(GGGGS)、またはそれらのバリエーションのいずれかの、1回以上の繰り返しであってもよい。ある実施形態において、前記リンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(G4S)3を含んでもよく、または前記配列からなってもよい。ある実施形態において、前記ペプチドリンカーはアミノ酸配列GGGGS(長さ6アミノ酸のリンカー)またはさらに長い配列を含み得る。前記リンカーは、様々な長さの、グリシンおよびセリン残基(GS)の繰り返しの連続、すなわち、(GS)n、ここでnは1~15以上の任意の数、であってもよい。例えば、前記リンカーは(GS)3(すなわちGSGSGS)、またはより長い(GS)11であってもよく、またはさらに長いものであってもよい。nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11以上を含む任意の数であり得ると理解されるだろう。
【0036】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される本発明のポリペプチド、および、1つ以上のECMおよび/またはその他の組織特異的結合部分などの、組織への送達または組織内保持を増強する部分を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、融合タンパク質を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、完全長NAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチド、および、1つ以上のECMおよび/またはその他の組織特異的結合部分などの、組織への送達または組織内保持を増強する部分を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、融合タンパク質を提供する。ある実施形態において、完全長NAMPTサイトカインフィンガー(cif)ポリペプチドは、配列番号1に表すアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる。
【0038】
任意の実施形態において、ECM結合部分は、以下のECM分子:コラーゲン、フィブロネクチン、テネイシンC、オステオポンチン、フィブリノゲン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカン、のいずれか1つ以上に結合する。
【0039】
任意の実施形態において、ECM結合部分は、プラセンタ成長因子(PlGF)、アンフィレグリン(Areg)、コラゲナーゼ(col)、またはフォン・ヴィレブランド因子(vWF)に由来する。好ましくは、PLGF、Areg、col、またはvWFは、ヒトのものである。
【0040】
任意の実施形態において、ECM結合部分は、正電荷を有するアミノ酸残基を含むか、実質的に前記残基からなるか、前記残基からなる。好ましくは、正電荷を有するアミノ酸残基の連続的な配列。ある実施形態において、正電荷を有する残基は、RRRPK、RKKK、KRRR、または、配列番号12および13を含む、本明細書に記載される他のいずれかの配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。別の実施形態において、ECM結合部分は、少なくとも2つの、正電荷を有するアミノ酸残基の連続的な配列を含む。
【0041】
任意の実施形態において、ECM結合部分は、配列番号12~16のいずれかを含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる。別の実施形態において、ECM結合部分は、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列と等しい、または少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなり、ここで、ECM結合部分は、前記ECM結合部分の由来である配列番号12~16のいずれかのECM結合部分と同じ親和性か、顕著な差のない親和性か、または少なくとも80%、95%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の親和性で、1つ以上のECMタンパク質に結合する。
【0042】
ある実施形態には、当業界において知られる、細胞外マトリックス(ECM)結合部分が含まれる。例示的なECM結合ペプチドが、米国公開2014/0011978号および米国公開20140010832号に記載される。薬物またはペプチドを、リンカーで、またはリンカーなしで、ECM結合部分などの結合部分に接合するために、標準的な方法が使用される。
【0043】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、シンデカン結合部分などの、1つ以上の、シグナル伝達増強部分を含む。典型的には、シンデカン結合部位は、シンデカンを介した、CCR5シグナル伝達の持続または増強をもたらすために含まれる。
【0044】
任意の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、サテライト細胞に結合し、かつ、サテライト細胞の活性化、筋芽細胞の増殖、および/または筋再生を刺激する。
【0045】
ある実施形態において、前記融合タンパク質は、配列番号1~11のいずれかのアミノ酸配列と融合、連結、または直接連結された、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。好ましくは、前記融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と融合、連結、または直接連結された、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。好ましくは、前記融合タンパク質は、N末端からC末端の順で、配列番号12~16のいずれかのアミノ酸配列、およびそれと融合、連結、または直接連結された配列番号1~11のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる。ある実施形態において、前記タンパク質は、配列番号29~31のいずれかによってコードされるアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。
【0046】
任意の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、例えば配列番号19を含むか、実質的に前記配列からなるか、前記配列からなる、完全長のNAMPTと同等またはそれ以上のレベルまで、または、例えば配列番号1または2を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる、完全長のNAMPTcifと同等またはそれ以上のレベルまで、筋前駆細胞(例えば筋芽細胞)の増殖を刺激する。好ましくは、筋前駆細胞(例えば筋芽細胞)の増殖は、実施例1を含む、本明細書に記載されるアッセイによって判定される。
【0047】
任意の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、完全長のNAMPTよりも顕著に低いレベルまで、TLR4の活性化を刺激する。例えば、完全長のNAMPT(例えば、配列番号19のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなるポリペプチド)と同等か、または90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%または10%低いレベルまで、TLR4の活性化を刺激する。任意の実施形態において、ポリペプチドまたは融合タンパク質は、NAMPTのサイトカインフィンガーモチーフ(例えば、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド)と同じか、または顕著な差のないレベルまで、TLR4の活性化を刺激する。TLR4活性化のレベルは、実施例1を含む、本明細書に記載されるアッセイを使用して決定されてもよい。
【0048】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される、例えば、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、17、または18のいずれかのアミノ酸配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなるポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする、単離された核酸も提供する。ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子は、配列番号25~31のいずれかに表すポリヌクレオチド配列、または前記配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、実質的に前記配列からなるか、または前記配列からなる。
【0049】
前記核酸分子は、RNAまたはDNA、またはRNA:DNA、またはそれらの化学的に改変された形態であってもよい。例えば、前記核酸は、ウイルスまたは非ウイルスベクターの形態であってもよい。
【0050】
別の態様において、本発明は、場合により制御配列と連結された、前記核酸を含む、ベクターを提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、前記ベクターを含む宿主細胞、および前記ポリペプチドまたは融合タンパク質を製造する方法、および場合により、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質を回収する方法を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を発現する細胞を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、ケモカイン受容体と相互作用または結合する活性、または筋組織幹細胞と相互作用する活性を提供する、筋再生を刺激することに使用するための、組成物を提供する。ある実施形態において、本願は、ケモカイン受容体と相互作用または結合する活性、またはサテライト細胞と結合または相互作用する活性を提供する、線維化を伴わず、または実質的に線維化を伴わずに筋再生を刺激することに使用するための、組成物を提供する。ある実施形態において、ケモカイン受容体は、CCR5ケモカイン受容体、または、NAMPTcifに結合する組織幹細胞受容体を含む、NAMPTに結合する組織幹細胞受容体である。ある実施形態において、CCR5と相互作用する活性を提供する細胞またはその他の薬物を含む組成物は、組織幹細胞、特に筋幹細胞に結合する。
【0054】
ある実施形態において、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞、および、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。ある実施形態において、組成物は、(a)組織幹細胞(サテライト細胞など)またはその前駆細胞またはその子孫細胞、(b)マクロファージまたはその前駆細胞またはその子孫細胞、および(c)足場または保持材(retentive material)、のうち1つ、2つ、または全てをさらに含んでもよい。
【0055】
ある非限定的な実施形態において、筋幹細胞ケモカイン受容体シグナル伝達を促進することは、筋体積減少(volumetric muscle loss)損傷または筋肉の変性/萎縮、または筋障害または神経筋障害、筋変性または神経筋変性状態、ミオパチー、またはそれらの傾向を含む、筋損傷を有する対象の処置において、特に有用である。ある実施形態において、ケモカイン受容体に結合する活性は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を発現する、マクロファージまたは幹細胞などの細胞の形態で提供される。
【0056】
別の態様において、本発明は、サテライト細胞の増殖などの、幹細胞の増殖を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を、細胞または対象に投与し、それによって幹細胞の増殖を刺激することを含む。
【0057】
ある実施形態において、ケモカイン受容体はCCR5受容体である。
【0058】
ある実施形態において、CCR5受容体は、組織幹細胞または組織幹細胞の子孫細胞のCCR5受容体である。ある実施形態において、CCR5受容体は、サテライト細胞またはサテライト細胞の子孫細胞のCCR5受容体である。
【0059】
ある実施形態において、インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)、およびエクスビボ(ex vivo)における利用が企図される。
【0060】
別の態様において、本発明は、対象において筋組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を対象の筋肉に投与し、それによって筋組織の再生を刺激することを含む。
【0061】
任意の実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、CCR5アゴニストである。すなわちこれは、受容体シグナル伝達、またはサテライト細胞の活性化および増殖などの、下流の現象を刺激する。ある実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、組織幹細胞を特異的に活性化させる。ある実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、サテライト細胞を特異的に活性化させる。
【0062】
本明細書に記載されるように、ある実施形態において、前記方法によって刺激される組織の再生は、最小限の線維化(minimal fibrosis)と関連する。すなわち、別の実施形態において、本願は、再生処置のために、患者または生物学的組織対象において線維化の発達を低下させるための、ポリペプチド、融合タンパク質、組成物、細胞、および方法を提供する。
【0063】
ある実施形態において、本願は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボにおいて筋組織を再生させるのに適した方法を提供する。したがって、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞は、幹細胞ベースの治療および組織工学における使用を企図される。別の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞は、インビトロにおける人工肉の生産に使用するためのものである。
【0064】
別の態様において、本発明は、筋組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を筋肉に投与することを含み、ここで本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞は、サテライト細胞に結合し、かつサテライト細胞の活性化、筋芽細胞の増殖、および筋再生を刺激し、かつ、実質的な線維化(瘢痕形成)を伴わない。
【0065】
別の態様において、本発明は、炎症が望ましくない対象において筋組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を筋肉に投与することを含み、ここで本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞は、それによって、この対象における筋組織の再生を刺激する。
【0066】
ある実施形態において、望ましくない炎症は、TLRの活性化、好ましくはTLR4の活性化によって媒介される炎症である。
【0067】
ある実施形態において、対象は、炎症性ミオパチーと診断されていてもよい。例示的な炎症性ミオパチーは、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、壊死性自己免疫性ミオパチー(necrotizing autoimmune myopathy)を含む。
【0068】
この態様において、本発明は、対象において炎症性ミオパチーを処置する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を対象の筋肉に投与し、それによって炎症性ミオパチーを処置することを含む。好ましくは、炎症性ミオパチーは多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、または壊死性自己免疫性ミオパチーである。
【0069】
NAMPTおよびCCR5への言及は、哺乳類、非哺乳類脊椎動物、魚類、および鳥類を含む、任意の動物由来のものを含む、それらのホモログおよびオルソログを含む。
【0070】
ある実施形態において、本願は、筋組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を含むかまたはコードする細胞、および場合により、筋肉への送達または筋肉内保持を増強する構成要素を含む組成物を筋肉に投与することを含み、ここで、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、サテライト細胞に結合し、かつ筋芽細胞の増殖および筋再生を刺激する。
【0071】
ある実施形態において、細胞はマクロファージである。ある実施形態において、マクロファージは組織から単離される。ある実施形態において、マクロファージは、骨髄前駆細胞またはiPSCなどの幹細胞から誘導される。ある実施形態において、マクロファージまたはマクロファージ前駆細胞(単球)は、血液、リンパ、骨髄などの、しかしこれらに限定されない、供給組織(supply tissue)から単離され、かつ、次に、所望の組織ニッチに指向した表現型を誘導するために、インビトロの細胞または組織培養を受ける。ある実施形態において、細胞組成物は、凍結保存され、および/または、送達剤(delivery agent)を含有する。
【0072】
当業界で知られるように、マクロファージは、インビトロにおいて幹細胞から様々な手段によって生成されてもよい。IFNγまたはLPSの存在下で、BMSCなどの幹細胞から生成されたマクロファージは、一般的には、「M1マクロファージ」と称される、「炎症性」マクロファージとして考えられる。IL-4またはIL-10の存在下で生成したマクロファージは、「消炎」活性と呼ばれるものを有し、かつ「M2」マクロファージと称される。
【0073】
ある実施形態において、対象のマクロファージは、M2マクロファージマーカーを発現する。
【0074】
ある実施形態において、前記マクロファージ細胞は、mmp9、arg2、mmp13a、L-plastinおよびcd163のうち1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つを発現する。
【0075】
別の実施形態において、前記マクロファージサブセットは、prox1aおよびpou2f3を発現する。
【0076】
ある実施形態において、前記組成物は、幹細胞および/またはマクロファージ細胞をさらに含む。
【0077】
ある実施形態において、幹細胞はサテライト細胞である。別の実施形態において、幹細胞は単能性または複能性(multipotent)幹細胞である。
【0078】
前記方法のある実施形態において、活性成分または主成分は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質、またはその薬学的に許容される塩、水和物、ホモログ、オルソログ、互変異成体、立体異性体、プロドラッグ、であるか、またはそれのみである。
【0079】
プロドラッグは、いくつかの化学的または物理的プロセス(例えば酵素的プロセスおよび代謝的加水分解(metabolic hydrolysis))を介して本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質に変換され得る薬物を指す。すなわち、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される、生物学的に活性な化合物の前駆体も指す。プロドラッグは、対象に投与される際に不活性であってもよいが、インビボにおいて活性化合物へと変換される。プロドラッグ化合物は、溶解性、組織適合性、または生体における遅延放出の利点をしばしば提供する。「プロドラッグ」という用語は、そのようなプロドラッグが対象に投与された際に活性化合物をインビボで放出する、任意の共有結合した担体を含むことも意図される。活性化合物のプロドラッグは、前記活性化合物に存在する官能基を、日常的な操作またはインビボのいずれかにおいて修飾が切断されて親活性化合物になるように、修飾することによって調製されてもよい。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノ、またはメルカプト基が、活性化合物のプロドラッグが対象に投与された際に開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基、または遊離メルカプト基を形成する任意の基に結合している、化合物を含む。
【0080】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、リンカー、安定性増強、シグナル伝達増強、送達増強、または標識部分などの、1つ以上の部分をさらに含む。
【0081】
別の態様において、本発明は、本明細書において定義されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含む、組成物を提供する。薬学的に、かつ生理学的に活性な化合物が提供される。細胞組成物が、明らかに提供される。
【0082】
ある実施形態において、前記細胞はマクロファージである。ある実施形態において、マクロファージは組織から単離される。ある実施形態において、マクロファージは、骨髄前駆細胞またはiPSCなどの幹細胞から誘導される。ある実施形態において、マクロファージまたはマクロファージ前駆細胞(単球)は、血液、リンパ、骨髄などの、しかしこれらに限定されない供給組織から単離され、かつ、次に、所望の組織ニッチに指向した表現型を誘導するために、インビトロの細胞または組織培養を受ける。ある実施形態において、細胞組成物は、凍結保存され、および/または、送達剤を含有する。
【0083】
当業界で知られるように、マクロファージは、インビトロにおいて幹細胞から様々な手段によって生成されてもよい。IFNgまたはLPSの存在下で、BMSCなどの幹細胞から生成されたマクロファージは、一般的には、「M1マクロファージ」と称される、「炎症性」マクロファージとして考えられる。IL-4またはIL-10の存在下で生成したマクロファージは、「消炎」活性と呼ばれるものを有し、かつ「M2」マクロファージと称される。
【0084】
ある実施形態において、対象のマクロファージは、M2マクロファージマーカーを発現する。
【0085】
ある実施形態において、前記マクロファージ細胞は、mmp9、arg2、mmp13a、L-plastinおよびcd163のうち1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つを発現する。
【0086】
別の実施形態において、前記マクロファージサブセットは、prox1aおよびpou2f3を発現する。
【0087】
ある実施形態において、組成物は、ハイドロゲル、糊、泡、または保持材、足場などの支持材を含むか、または前記支持材と共に投与される。繊細な構造は、より繊細な組織の再生を可能にするために、一般的には適している。例として、特定のフィブリン、コラーゲン、ハイドロゲルおよびアルギン酸製剤などの、非常に早く吸収される材料が使用され得る。代わりに、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(poly-4-hydroxybutarate)などの、ゆっくりと吸収される合成物(synthetics)が使用され得る。絹繊維、または筋細胞外マトリックスなどの哺乳類の起源に由来する非常に滑らかな製品も企図される。ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの非吸収性の合成物が、支持および信頼性をもたらす。ある実施形態において、組成物は、フィブリンハイドロゲルを含む。別の実施形態において、RAFT-アクリルアミドベースの支持体表面が、組織の再生、および標的部位におけるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞の標的部位での生物学的利用能を増強するために、提供される。
【0088】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞、および、以下のいずれか1つまたは2つまたは3つまたは4つを含む組成物が提供される:(i)サテライト細胞またはその前駆細胞またはその子孫細胞、(ii)マクロファージまたはその前駆細胞またはその子孫細胞、(iii)足場(半固体または個体の支持体)または保持材、(iv)組織への送達を増強する部分または細胞内保持部分。
【0089】
ある実施形態において、足場または保持材は、フィブリンまたはアクリルアミドハイドロゲルなどの、ハイドロゲルである。ある実施形態において、組織への送達を増強する部分または細胞内保持部分は、ECM結合部分である。
【0090】
本明細書で使用する「含む(comprise)」という用語、および「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などのこの用語の活用形は、文脈上別段の要求がある場合を除き、さらなる添加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図されない。
【0091】
「からなる」が意味するものは、「からなる」という語句の前に記載されるあらゆるものを含み、かつそれに限定される。すなわち、「からなる」という語句は、列挙された要素が要求されるかまたは必須であること、およびその他の要素が存在してはいけないことを示す。
【0092】
「実質的に~からなる」が意味するものは、この語句の間に列挙されるいずれの要素も含み、かつ、その他の要素は、列挙された要素について本開示において指定される活性または作用を妨げず、それに寄与しないものに限定される。すなわち、「実質的に~からなる」という語句は、列挙された要素が、要求されるかまたは必須であることを示すが、その他の要素(例えば、ポリペプチド配列のN末端またはC末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の追加のアミノ酸残基)は任意選択であり、かつ、列挙された要素の活性または作用に影響するか否かに依存して、存在する場合としない場合がある。
【0093】
前記の段落に記載された、本発明のさらなる態様および前記態様のさらなる実施形態が、実施例の形で提供される下記の説明から、および付属の図面を参照することによって、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1-1】図1.筋体積減少損傷マウスNAMPT補給。A-D、NAMPTの局所的送達により、成体マウス筋損傷モデルにおいて筋再生が促進される(模式図、I)。(B)筋体積欠損(volumetric muscle defect)を作成し、フィブリンハイドロゲルを介して送達されるNAMPTで、直接処置した。マッソントリクローム染色した、マウス大腿直筋(RF)筋(処置から10日後)の、欠損の中央を通る代表的な組織切片は、NAMPT送達が、再生した筋肉の領域(濃い赤色、定量、C)を顕著に増加させたことを実証する一方で、同時に線維化した組織の顕著な減少を示す(紫色/青色、白色の破線は線維化した筋線維および健常な筋線維の境界を定め、一方筋肉の周囲の筋膜は青色で染色される(定量、D))。C-D、平均±SEM。多重比較のためのDunnettの事後検定(Dunnett's post hoc test)を伴う一元配置分散分析(群ごとにn=5マウス)。E-I、外因性NAMPT補給に際し、サテライト細胞は、増強された増殖を実証した。マウス筋損傷を、フィブリンで送達されるNAMPT(0.5μg)、またはフィブリンのみのコントロールで処置した。(E-F)サテライト細胞の総数(PAX7)(E)および、増殖期のサテライト細胞の数(PAX7/Ki67)(F)を、処置から4日後に収集した組織において、フローサイトメトリーで定量した。グラフは、収集した組織における、10,000細胞あたりのサテライト細胞の分画を示す(フィブリン群n=6、NAMPT処置群n=5)。(G)処置から6日後に収集した組織について、PAX7(サテライト細胞、黄色)、小麦胚芽凝集素(WGA、マゼンタ)、および核(DAPI、青色)を染色した、代表的な筋再生凍結切片。(H-I)処置から6日後において、中心核筋線維(Centrally nucleated muscle fiber)を定量した(群ごとにn=6マウス)(H)。ヘマトキシリンおよびエオシンによる、代表的な組織学組織切片(histology tissue section)(I)。E-F、H、平均±S.E.M.スチューデントの両側t検定。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
【0095】
図2-1】図2.NAMPTは筋幹細胞上に存在するCCR5受容体に結合し、かつ増殖を誘導する。(A)外因性NAMPT補給は筋芽細胞の増殖を増強する。C2C12筋芽細胞の増殖に対する外因性に導入された因子の効果を評価する、インビトロアッセイ。増殖はEdUの取り込みによって特定した。NAMPT投与(市販のNAMPT供給源2つ、hrNAMPT(1)およびhrNAMPT(2)を検証した)は、筋芽細胞増殖の用量依存的な増加をもたらした。この効果は、CCR5受容体を介して特異的に媒介される。NAMPTとCCR2/CCR5二重阻害剤セニクリビロック(CVC)およびCCR5特異的阻害剤マラビロク(MVC)との共投与は、NAMPTの増殖促進応答を消失させる一方で、CCT2阻害剤PF-4136309(PF)との共投与は、筋芽細胞の増殖に対するNAMPTの刺激効果を妨げない。この発見と一致して、CCR5の内因性リガンドmrCCL8およびmrCCL4はC2C12の増殖を増強するよう機能した一方で、CCR2特異的リガンドmrCCL2は、コントロールの増殖率を超えて増殖率を増加させることはなかった。NAMPTとNAMPT酵素阻害剤GMX1778との共投与が筋芽細胞の増殖に対する効果に影響を与えなかったことから、NAMPTの増殖促進機能は、そのエネルギー代謝における細胞内の役割とは別のものである。平均+S.D.。Tukeyの多重比較検定を伴う二元配置分散分析。(B-C)NAMPTのC末端フラグメントはサイトカイン活性を調節する。(B)NAMPTは、他のサイトカインにおいて保存されている「サイトカインフィンガー」(cif)を含有する。(C)NAMPTcifは、NAMPTのCCR5への結合を阻害する。平均±SEM。
図2-2】同上。
【0096】
図3-1】図3.ヒトNAMPTサイトカインフィンガーのN末端切断バリアント。正電荷を有するアミノ酸を含有するN末端の領域を切断することによって設計したヒトNAMPTサイトカインフィンガー(hNAMPTcif)バリアントの、予測される構造。(A)ヒトNAMPTcif(例えば配列番号19の完全長NAMPTの402~491番目の残基);(B)hNAMPTcif-T1(完全長NAMPTの414~491番目の残基)は、N末端のベータストランド、ループ、およびそれに続くベータストランドを取り除く。(C)hNAMPTcif-T2(完全長NAMPTの422~491番目の残基)は、T1から始まり、N末端のループ、および1つのリジンを含む短いヘリックスを取り除く。(D)hNAMPTcif-T3(完全長NAMPTの430~491番目の残基)は、T2から始まり、3つのリジンおよび2つのアルギニンを含むN末端のループを取り除く。(E)hNAMPTcif-T4(完全長NAMPTの436~491番目の残基)は、T3から始まり、1つのヒスチジンを含むN末端のベータストランドおよびループを取り除く。(F)ヒトNAMPTサイトカインフィンガーおよびその切断バリアントは、筋前駆細胞の増殖を刺激する。C2C12マウス筋芽細胞を、10nMの完全長NAMPT(FL-NAMPT)、ヒトNAMPTサイトカインフィンガー(hNAMPTcif)、またはhNAMPTcifのN末端切断バリアント(hNAMPTcif-T1、hNAMPTcif-T2、hNAMPTcif-T3、ここで数字が大きくなるごとにより短いhNAMPTcifフラグメントを表す)で、48時間処置した。CyQuant Proliferation Assayキットを使用して、細胞増殖の定量を行った。データは増加%vs.PBS処置ネガティブコントロールとして表示する。10%ウシ胎児血清(FBS)をポジティブコントロールとして使用した。条件ごとにn=3-6の技術的反復、2回の独立した実験。アスタリスクは1標本t検定の有意性を表し、ここで*:p<0.05、かつ**:p<0.01。FL-hNAMPTに対するMann-Whitney検定について、#はp<0.05を表し、かつ##はp<0.01を表す。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
【0097】
図4図4.ECM結合ドメインと融合したNAMPTcifは、増殖促進活性を保持している。C2C12マウス筋芽細胞を、2nM、10nM、または20nMのNAMPTcif(NAMPTcif)、またはプラセンタ成長因子2由来のN末端ヘパリン結合配列と融合したNAMPTcif(PlGF-NAMPTcif)で、48時間処置した。CyQuant Proliferation Assaキットを使用して、細胞増殖の定量を行った。データは増加%vs.PBS処置ネガティブコントロールとして表示する。平均±SEM.。n=4の独立した実験。対応のない両側t検定。n.s.:統計学的に有意ではない。
【0098】
図5図5.NAMPTcifは、完全長NAMPTと比較して、TLR4活性を誘導しない。HEK-Blue TLRレポーター細胞(reporter cell)を、19nMのNAMPTcif、またはプラセンタ成長因子由来のN末端ヘパリン結合配列と融合したNAMPTcif(PlGF-NAMPTcif)で、24時間処置した。微量のエンドトキシンによって誘導されるシグナル伝達を抑止するために、5μg/mlのポリミキシンBを各処置ウェル(treatment well)に加えた。TLR4の定量は、細菌性リポ多糖(LPS)の連続希釈液によって生成した検量線に対して決定し、かつ同等のLPS濃度として報告した。平均±SEM.。条件ごとに、n=2の、3つの反復ウェル(triplicate well)を伴う独立した実験。Dunnettの多重比較検定を伴う一元配置分散分析。*:p<0.05。
【0099】
図6図6.ヒトNAMPT「サイトカインフィンガー」N末端切断バリアント。構造的要素および/または正電荷を有するアミノ酸を含有する領域のN末端およびC末端切断によって設計されたヒトNAMPT「サイトカインフィンガー」バリアントの、予測される構造。構造は、例えば配列番号19の完全長ヒトNAMPTに対応するアミノ酸番号によって表される。
【0100】
図7図7.ヒトNAMPTバリアントは筋前駆細胞の増殖を刺激する。C2C12マウスの筋芽細胞を、20nMの完全長NAMPT(NAMPT)またはNAMPTバリアント(NAMPTxxx-xxx、ここでxxxはアミノ酸番号)で、48時間処置した。CyQuant Proliferation Assayキットを使用して、細胞増殖の定量を行った。データは増加%vs.PBS処置ネガティブコントロールとして表示する。箱およびひげは、中央値と最小値および最大値を表す。タンパク質ごとにn=4-5の独立した実験。統計学的有意性は、正確なp値として示した。条件ごとの、増殖の顕著な増加は、1標本t検定によって分析した。条件間の有意性は、Tukeyの事後検定を伴う一元配置分散分析によって分析した。
【0101】
図8図8.ヒトNAMPTバリアントはヒトサテライト細胞の増殖を刺激する。ヒト初代サテライト細胞を、20nMの完全長NAMPT(NAMPT)またはNAMPTバリアント(NAMPTxxx-xxx、ここでxxxはアミノ酸番号)で、48時間処置した。培地は成長因子IGF-1ならびにFGF-2を含有していた。CyQuant Proliferation Assayキットを使用して、細胞増殖の定量を行った。データは増加%vs.PBS処置ネガティブコントロールとして表示する。20%FBSによる処置をポジティブコントロールとして使用した。箱およびひげは、中央値と最小値および最大値を表す。タンパク質ごとにn=6-10の独立した実験。統計学的有意性はp値として示し、かつ1標本t検定によって決定した。
【0102】
図9図9.ヒトNAMPTバリアントはヒト内皮細胞の増殖を刺激する。臍静脈由来のヒト初代内皮細胞を、20nMの完全長NAMPT(NAMPT)またはNAMPTバリアント(NAMPTxxx-xxx、ここでxxxはアミノ酸番号)で、48時間処置した。CyQuant Proliferation Assayキットを使用して、細胞増殖の定量を行った。データは増加%vs.PBS処置ネガティブコントロールとして表示する。10%FBSによる処置をポジティブコントロールとして使用した。箱およびひげは、中央値と最小値および最大値を表す。タンパク質ごとにn=6の独立した実験。統計学的有意性はp値として示し、かつ1標本t検定によって決定した。
図10】NAMPTタンパク質の最小バージョンは、ゼブラフィッシュの幼生において、筋損傷に応じた増殖を増強する。針刺し筋損傷後の、NAMPT402-491およびNAMPT422-491による処置は、損傷範囲内における細胞増殖の顕著な増加を誘導した。NAMPTの最も小さいバージョン(NAMPT422-491)は、特に創傷中で、ヒト組み換えNAMPT(hrNAMPT)と比較して顕著に高いレベルで、細胞増殖を刺激した。代表的な画像をパネル(A)に示す。(B)のバイオリンプロットは、‘損傷’範囲におけるEdU陽性細胞の数を示し、かつ、‘外部’は、損傷範囲を取り囲む2つの隣接した体節を表す(n=22 コントロール、n=9 hrNAMPT処置、n=6 NAMPT402-491、およびn=8 NAMPT422-491)。バイオリンプロット中の黒く太い線および黒い破線は、それぞれ中央値および四分位値を示す。Tuckeyの多重比較検定を伴う二元配置分散分析。
【発明を実施するための形態】
【0103】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0104】
発明の詳細な説明
本明細書において開示および定義される発明は、テキストまたは図から言及されるかまたは明らかな個々の特徴2つ以上の、全ての異なる組み合わせまで及ぶと理解されるだろう。これらの異なる組み合わせの全てが、本発明の様々な異なる態様を構成する。
【0105】
次に、本発明の特定の実施形態について詳細に言及する。本発明を実施形態と併せて説明するが、本発明をそれらの実施形態に限定することは意図しないと理解されるであろう。対照的に、本発明は全ての代替、改変および同等物をカバーすることが意図され、これらは、請求項によって定義されるように、本発明の範囲内に含まれてもよい。
【0106】
当業者は、本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたは同等である、本発明の実施において使用され得る多くの方法および材料を、認識するであろう。本発明は、記載された方法および材料には全く限定されない。本明細書において開示および定義される発明は、テキストまたは図から言及されるかまたは明らかな個々の特徴2つ以上の、全ての異なる組み合わせまで及ぶと理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全てが、本発明の様々な異なる態様を構成する。
【0107】
本明細書において参照される全ての特許および刊行物は、参照によってその全体が組み込まれる。
【0108】
本明細書の解釈上、単数形で使用される用語は複数も含み、その逆も同様であろう。
【0109】
本明細書において式で使用される一般的な化学的用語は、それらの通常の意味を有する。
【0110】
本発明は、インビボにおいて組織の再生を調節することが特定された特定のマクロファージサブセットの、驚くほど直接的かつ重要な役割に基づき、創傷に誘引されるマクロファージの一部が組織常在幹細胞と共に一過性の幹細胞ニッチを形成し、かつその活性化を誘導することを実証する。このニッチ特異的マクロファージサブセットの除去は、損傷部位内に存在する増殖性前駆細胞の数の重度の減少、および結果的な再生不全をもたらす。本明細書において、損傷という用語は、外因性または内因性に与えられるかまたは存在する創傷であって、失われた組織を置き換えるか、または、疾患プロセス、感染または外傷の結果、加齢、食生活の乱れおよび運動不足、などの任意のプロセスを通して失われた機能的組織を再構築または再生するために、組織の再生が要求される、任意の創傷に関する。
【0111】
偏性のサテライト細胞-マクロファージニッチは、リアルタイムで、かつ創傷内で、効率的な骨格筋の再生および損傷の修復を導くことが特定されてきた。これは、創傷に誘引されるマクロファージの一部が、一過性の幹細胞ニッチを形成し、かつ筋形成促進的(pro-myogenic)であることを実証する。このニッチ特異的マクロファージの除去は、損傷部位内に存在する筋原性前駆細胞の数の重度の減少、および、結果的な筋再生不全をもたらす。
【0112】
したがって、炎症促進および抗炎症現象を調節する、これらのよく説明された能力に伴って、特定のマクロファージ集団は、一過性の幹細胞活性化ニッチ(前記細胞が共に空間的に固定され、筋組織と直接相互作用する)も提供する。幹細胞は、筋幹細胞などの組織幹細胞であってもよい。例えば、幹細胞は骨格筋幹細胞(サテライト細胞)である。その他の筋幹細胞は、心臓組織幹細胞または非横紋筋(non-striated muscle)細胞を含む。
【0113】
したがって、本明細書に詳しく記載されるマクロファージ由来の因子は、幹細胞の活性の調節、休止期の組織幹細胞の直接的な活性化、および組織の再生において使用することを企図される。本明細書に記載されるマクロファージ由来の因子の1つは、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT、ビスファチンおよびPBEF(プレB細胞増強因子:pre-B cell enhancing factor)としても知られる)である。発明者によって、NAMPTは、アップレギュレートされ、かつ損傷部に留まるマクロファージにより産生されていることが特定された。本明細書に記載および例示するように、筋幹細胞の増殖を誘導する、NAMPTの特定の誘導体、特にcifモチーフの切断形態および様々な融合ポリペプチドが開発されてきた。
【0114】
したがって、NAMPTポリペプチドおよび融合タンパク質は、組織機能の完全な回復、すなわち生産的な組織修復および再生を促進するために、創傷の治癒を刺激することおよび治癒の質を改善することにおける使用を企図される。
【0115】
ポリペプチドおよび融合タンパク質への言及は、休止期の組織幹細胞を活性化するバリアント、および、組織への送達の増強またはシグナル伝達機能性の向上などの、生産および臨床または商業利用に適した、当業界で知られる適応を含む、それらの誘導体を含む。前記用語はオルソログおよびアイソフォームを含む。
【0116】
筋肉に関する「再生」への言及は、本明細書において広い文脈で使用され、かつ筋幹細胞(サテライト細胞とも呼ばれる)の活性化の直接的な結果としての、筋肉および筋肉関連組織に対する間接的な効果を含む。すなわち、再生は、筋肉の創傷修復および筋肉の維持、成長、修復、筋細胞が生産的に増殖して機能性の組織を形成する能力の増大を含む。前記用語は、筋組織の生成および損傷した筋肉の修復を含み、かつ、筋幹細胞の活性化および増殖、筋芽細胞の増殖、筋細胞への初期分化(early differentiation)および筋線維への最終分化(terminal differentiation)と共に開始する、筋再生(筋形成)のプロセスに関連する。ある実施形態において、再生は最小限の線維化に関連し、これは、線維化または衰弱した組織よりも正常な、または正常に近い生物学的特性を有する、天然の構造または再生された組織の成立を可能にする。筋肉の機能特性は、強度(例えば伸張性筋収縮)、力、および持久力を含む筋収縮機能、ならびに物理的な長さおよび体積の、標準的な試験によって決定されてもよい。前記用語は、市販の培地における筋組織の成長も含む。
【0117】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるNAMPTのC末端フラグメントによる筋肉の処置は、臨床的に関連性のある体積創傷モデル(volumetric wound model)において、わずかなまたは最小限の線維化を伴った。
【0118】
本発明は、炎症が特に望ましくないミオパチーを有する対象の処置、または前記対象における筋組織の再生に、特に利用される。例えば、本発明は、炎症が望ましくない対象において筋組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を筋肉に投与することを含み、ここで本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞は、それによって、この対象における筋組織の再生を刺激する。
【0119】
ある実施形態において、望ましくない炎症は、TLR活性化、好ましくはTLR4活性化によって媒介される炎症である。
【0120】
ある実施形態において、対象は炎症性ミオパチーと診断されていてもよい。例示的な炎症性ミオパチーは、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、壊死性自己免疫性ミオパチーを含む。その他の炎症性ミオパチー、それらの臨床的特徴、およびそれらを診断する方法が、(Dalakas, 2015, N Engl J Med 2015;372:1734-47)に記載される。
【0121】
本発明は、対象において炎症性ミオパチーを処置する方法を提供し、前記方法は、有効量の本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、組成物、または細胞を対象の筋肉に投与し、それによって炎症性ミオパチーを処置することを含む。好ましくは、炎症性ミオパチーは、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、または壊死性自己免疫性ミオパチーである。
【0122】
ある実施形態において、本願は、薬学的または生理学的に活性な再生組成物(regenerative composition)であって、
・本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞、
・サテライト細胞またはその前駆細胞またはその子孫細胞
・マクロファージまたはその前駆細胞またはその子孫細胞
・足場または保持材
・組織への送達を増強する構成要素
のうち1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つを含む、組成物を可能にする。
【0123】
特定の実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されるように、モノマーまたはダイマー形態のポリペプチドまたは融合タンパク質は、生物学的担体または細胞外マトリックスへの接着に適した薬物を作製するために、改変される。加えて、前記薬物は、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(heparin sulphate proteoglycan)(シンデカンなど)のコレセプター(co-receptor)に結合する部分を付加することによって、CCR5受容体を通したシグナル伝達を増強するように改変される。
【0124】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物は、インビトロ、エクスビボ、またはインビトロで筋再生を刺激することに使用するためのものであるか、またはその使用のための組成物の製造に使用するためのものである。
【0125】
ある実施形態において、本明細書に記載される組成物は、人工筋肉の生産(直接的または間接的な消費のための、例えば魚類、鳥類、または他の非ヒト動物の筋肉など)に使用するためのものであるか、またはその際に使用される。例えば、成長培地への補給は、拡張性(scalability)およびより効率的な筋肉の増殖を可能にする。
【0126】
ある実施形態において、本明細書に記載される組成物は、幹細胞治療において使用するためのものであるか、またはその際に使用される。すなわち、前記組成物は、インビトロで増殖をサポートし、および/または、移植片に含まれて(または前処置として)、インビボで増殖および組織の統合を促進する。
【0127】
ある実施形態において、本願は組織の再生を刺激する方法を提供し、前記方法は、単離した、または組織常在の、組織幹細胞またはその前駆細胞に、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質、および場合により組織への送達を増強する構成要素を含むかまたはコードする、組成物を投与することを含み、ここで前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、組織幹細胞またはその前駆細胞に結合し、かつ休止期の組織幹細胞の増殖および組織の再生を刺激(活性化)する。ある実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、標的組織への送達を増強する構成要素または部分を含む。
【0128】
ある実施形態において、本明細書に記載される組成物は、筋の、神経筋の、または筋骨格の、欠損、障害、または損傷の処置に使用するためのものであるか、その際に使用されるか、またはその使用のための組成物の製造に使用するためのものである。筋の、神経筋の、または筋骨格の、欠損、障害、または損傷は、当業界において知られている。欠損および障害は、例えば、かつ限定を伴わず、サルコペニア、悪液質および筋ジストロフィー、筋萎縮症、筋仮性肥大(muscle pseudo hypertrophy)または筋ジストロフィー状態およびミオパチーにおいて見られる。スイススタイル(Swiss-style)の使用、処置の方法、および/またはEPC2000スタイルの請求項などの、全ての適切なフォーマットが包含される。
【0129】
本明細書で使用する「単離された細胞」という用語は、元々その細胞が発見された生体から採取された細胞か、またはそのような細胞の子孫を指す。前記細胞はインビトロで、例えばその他の細胞の存在下で培養されていてもよい。また、前記細胞は、後に第2の生体に導入されるか、またはその細胞(またはその細胞の由来である細胞)が単離された元の生体に再導入されることを予定されてもよい。
【0130】
本明細書で使用する「単離された細胞集団」などの用語は、混合した、または不均一な細胞の集団から、採取されかつ分離された、細胞の集団を指す。いくつかの実施形態において、単離された集団は、細胞が単離または濃縮された元の不均一な集団と比較して、実質的に純粋な細胞の集団である。
【0131】
ある実施形態において、本願は、薬学的または生理学的に活性な再生組成物であって:
(i)本明細書で定義されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞、
(ii)組織幹細胞(サテライト細胞など)またはその前駆細胞またはその子孫細胞
(iii)マクロファージまたはその前駆細胞またはその子孫細胞
(iv)足場または保持材
(v)組織への送達を増強する構成要素
のうち1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つを含む、組成物を可能にする。
【0132】
ある実施形態において、本願は、本明細書に記載される1つ以上の幹細胞、間質細胞、プレサテライト細胞(pre-satellite cell)またはサテライト細胞、プレマクロファージ(pre-macrophage)またはマクロファージ、またはマクロファージ由来の因子、の1つ以上を含む、細胞組成物を提供する。ある実施形態において、複能性の「組織幹細胞」はプレ筋細胞(pre-muscle cell)または任意のプレマクロファージ細胞を含み、これらの細胞は、実質的に天然の形態で、または、非自家性または自家性の因子を発現するように改変されて、生産されてもよい。同様に、複能性の「組織幹細胞」という用語は、組織幹細胞の活性化した子孫細胞を含んでもよい。
【0133】
筋幹細胞を含む組織幹細胞は、(エクスビボまたはインビトロまたはインビボの手順のために)単離または誘導され得る。
【0134】
幹細胞は、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含む培地または組成物と、任意の時間、接触させられ得る。例えば、幹細胞は、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞と、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、またはそれ以上の間、接触させられ得る。幹細胞は、中胚葉系、内胚葉系、外胚葉系、神経系、間葉系、および造血系からなる群から選択される細胞系に分化するように、誘導または刺激され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、幹細胞は、ヒト幹細胞、複能性成体幹細胞、多能性(pluripotent)成体幹細胞、または胚性幹細胞である。
【0136】
ヒト成体幹細胞は、有糸分裂であり、かつ典型的には、娘細胞の1つは幹細胞のままである。成体組織は、それらの組織の特定のニッチを占有しかつそれらの局所環境を能動的に感知およびそれに対して応答する、1つ以上の常在拘束(committed)前駆細胞または幹細胞を含む。各組織は、典型的には、特定の範囲の細胞タイプに分化する子孫細胞を生産するように拘束された、それ自身の常在拘束幹細胞を有する。筋組織は、筋芽細胞を生産するように拘束されたサテライト細胞を含む。このタイプの、他のよく研究された幹細胞は、多くの様々な細胞タイプ、とりわけ、筋肉、軟骨、骨、脂肪を生産する間葉系幹細胞(MSC)、および血液細胞および造血システムを生産する造血幹細胞(HSC)、および神経幹細胞(NSC)である。心臓、腸、および肝臓を含め、全ての組織は常在性の幹細胞の集団を含有している。成体幹細胞は、典型的には複能性であり、これはいくつかの、しかし3つの胚葉全てに由来する全ての細胞ではない、細胞に分化できる細胞を指す。すなわち、複能性の細胞は、部分的に分化した細胞である。MSCは、例えば当業界においてよく知られる数多くの方法によって得ることができる。USPN 5,486,358;6,387,367;およびUSPN 7,592,174、およびUSPN 2003/0211602を参照。MSCは、骨、脂肪、およびそれらが常在するその他の組織に由来してもよい。~に「由来する」は、直接的な由来を指さず、それが本来どこに由来していたかの指標に過ぎない。
【0137】
ある実施形態において、幹細胞は、非胚性または成体の複能性幹細胞である。
【0138】
ある実施形態において、幹細胞はHSCまたはMSCである。
【0139】
CCR5を発現する成体幹細胞は、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞への曝露によって、分化するよう刺激され得る。細胞は例えば当業界において知られる筋原性調節因子の発現の変化についてモニタリングされる。
【0140】
細胞は、標準的な培地または具体的に定義された培地において培養されてもよい。
【0141】
細胞の発現は、当業界において知られる技術によって改変されてもよい。
【0142】
誘導された、または部分的に誘導された多能性幹細胞は、幹細胞の簡便な供給源である。これらは分化した成体細胞、例えばヒトの包皮からの誘導体である。
【0143】
ヒトiPS細胞は、リプログラミング因子の特定のセットを、非多能性細胞に導入することによって生成され得、前記因子は例えばOct3/4、Soxファミリー転写因子(例えばSox1、Sox2、Sox3、Sox15)、Mycファミリー転写因子(例えばc-Myc、1-Myc、n-Myc)、クルッペル様ファミリー(Kruppel-like family: KLF)転写因子(例えばKLF1、KLF2、KLF4、KLF5)、および/またはNANOG、LIN28、および/またはGlis1などの関連する転写因子を含み得る。例えば、リプログラミング因子は1つ以上のプラスミド、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターを使用して細胞に導入され得る。いくつかの場合において、ベクターはゲノムに統合され、かつリプログラミングが完了した後に取り除かれ得る。いくつかの場合において、ベクターは統合されない(例えばプラス鎖に基づくもの、非感染性の(パッケージングされていない)自己複製性ベネズエラ馬脳炎(VEE)ウイルス由来の一本鎖RNA種、Simplicon RNA Reprogramming Kit、Millipore、SCR549およびSCR550)。SimpliconのRNAレプリコンは、限られた細胞分裂回数で自己複製できる多シストロン性(polycystronic)の転写産物において、4つのリプログラミング因子(OKG-iG;Oct4、Klf4、Sox2、およびGlis1)全てを発現する、合成インビトロ転写RNAである。Simpliconキットを使用して生産される、誘導されたヒト多能性幹細胞は、「統合フリー(integration-free)」かつ「フットプリントフリー(footprint-free)」と称される。ヒトiPS細胞も、例えば転写因子の作用を模倣する低分子であるmiRNA、または細胞系譜特定因子(lineage specifier)の使用によって、生成され得る。ヒトiPS細胞は、脊椎動物の3つの胚葉、例えば内胚葉、外胚葉、または中胚葉の、任意の細胞に分化するそれらの能力によって特徴づけられる。ヒトiPS細胞は、適したインビトロ培養条件において無期限に増殖するそれらの能力によっても特徴づけられる。ヒトiPS細胞はアルカリホスファターゼ、SOX-2、OCT-4、NanogおよびTra-1-60マーカーを発現する。
【0144】
「ナイーブ型」および「プライム型」という用語は、ヒトiPS細胞の異なる多能性状態(pluripotency state)を特定する。ナイーブ型およびプライム型のiPS細胞の特徴は、当業界で説明される。ナイーブ型ヒトiPS細胞は、着床前胚の内部細胞塊のES細胞のものに類似した多能性状態を呈する。このようなナイーブ型の細胞は、細胞系譜の特定および拘束に向けてプライミング(prime)されていない。雌性ナイーブ型iPS細胞は、2つの活性X染色体によって特徴付けられる。培養において、ナイーブ型ヒトiPS細胞の自己複製は、白血病阻止因子(LIF)およびその他の阻害物質に依存する。培養されたナイーブ型ヒトiPS細胞は、円形のドーム型のコロニーおよび頂底極性の欠如によって特徴づけられる、クローンの形態を呈す。培養されたナイーブ型の細胞は、本明細書の他の箇所に記載される1つ以上の多能性マーカーをさらに呈し得る。適切な条件下において培養されるナイーブ型ヒトiPS細胞の倍化時間は、16および24時間の間であり得る。
【0145】
プライム型ヒトiPSCは着床後のエピブラスト細胞のものと類似した多能性状態を発現する。このような細胞は、細胞系譜の特定および拘束に向けてプライミングされている。雌性プライム型iPSCは、1つの活性X染色体および1つの不活性X染色体によって特徴づけられる。培養において、プライム型ヒトiPSCの自己複製は、線維芽細胞成長因子(FGF)およびアクチビンなどの因子に依存する。培養されたプライム型ヒトiPSCは、上皮単層によって特徴づけられるクローンの形態を呈し、かつ頂底極性を呈す。適切な条件下において培養されるプライム型ヒトiPSCの倍化時間は、それらが由来した成体細胞からのレベルに依存して、24時間以上であり得る。
【0146】
胚性幹細胞(ESC)は特徴的に多能性である。すなわち、前記細胞は、異なる条件下で、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)の全ての細胞タイプ特徴に分化する能力を有する。多能性の細胞は、3つの胚葉全てに分化できるそれらの能力によって主に特徴づけられる。いくつかの実施形態において、多能性の細胞は、未分化の細胞である。多能性の細胞は、また、インビトロで1年より長い間、または30代より長い間分裂する潜在的な能力を有し得る。
【0147】
ESCは典型的には胚盤胞の内部細胞塊の多能性幹細胞である(米国特許第5,843,780号、6,200,806号を参照)。このような細胞は、体細胞核移植由来の胚盤胞の内部細胞塊からも同様に得ることができる(米国特許第5,945,577号、5,994,619号、6,235,970号を参照)。胚幹細胞を識別する例示的な特徴は、遺伝子発現プロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件に対する反応性を含むが、これらに限定されない。
【0148】
ある実施形態において、幹細胞は成体である。
【0149】
ある実施形態において、幹細胞は、対象にとって自家性または非自家性である。
【0150】
ある実施形態において、幹細胞は哺乳類またはヒトのものである。
【0151】
マクロファージ、およびサテライト細胞を含む幹細胞は、当業界で認識される方法であって、かつ本明細書に記載される方法であって、かつiPSCの使用および場合により遺伝子編集の手順を含む方法を使用して、調製されてもよい。
【0152】
ある実施形態において、単離されたマクロファージまたは幹細胞由来のマクロファージは、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を発現するように改変される。一般的には、M2タイプのマクロファージが選択されるかまたは提供される。
【0153】
ある実施形態において、幹細胞は、活性化および増殖を誘導するために、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞と、インビトロ、エクスビボ、またはインビボにおいて、接触させられる。インビトロまたはエクスビボで処置された幹細胞は、修復をもたらすために創傷部位に導入されてもよく、または、損傷した組織の再生をもたらすかまたは本明細書に記載される筋肉に関する状態を処置または改善するために、全身性に投与されてもよい。
【0154】
ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または前記ポリペプチドまたは融合タンパク質を発現する細胞は、機能化されたハイドロゲルの形態で、単独で、または移植用の細胞と共に、投与されてもよい。このようなハイドロゲルまたは類似のバイオマテリアルまたは足場は、創傷部位における増強された移植効率を提供する。
【0155】
ハイドロゲルは、フィブリンベースなどの、ECMベースであってもよい。代わりに、ハイドロゲルはRAFTテクノロジーを使用したアクリルアミドベースなどの非ECMベースであってもよい(Chiefari et al Macromol. 31:5559-5526, 1998およびFairbanks et al Advanced Drug Delivery Reviews 91: 141-152, 2015を参照)。適した材料は、放出動態を調節し、かつ、当業界において知られる、組織再生のための所望の機械的および物理的特性を有する。
【0156】
ある実施形態において、サテライト細胞は、CCR5機能化ハイドロゲルまたはその他のバイオマテリアルに封入される。
【0157】
本明細書に記載される細胞組成物および/または薬物を含むキットも提供される。筋肉の修復または再生に適したキットが、特に企図される。前記ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞が、投与のため予め製剤化され得、または、製剤の成分が、キットで提供され得る。前記ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞は、例えばハイドロゲルまたは局所適用のためのその他の支持媒体中に製剤化される。前記ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクターまたは細胞は、例えば、凍結乾燥体または液体であってもよい。
【0158】
本明細書において互換的に使用される「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、長さが定義されていない限りは任意の長さの、コードアミノ酸(coded amino acid)および非コードアミノ酸(non-coded amino acid)、および化学的または生化学的に改変または誘導体化されたアミノ酸を含む、アミノ酸のポリマー形態を含む。前記用語は、改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドなどの、改変されたポリマーも含む。
【0159】
タンパク質は、「N末端」を有する、または「N末端の」と表現され、かつ「C末端」を有する、または「C末端の」と表現される。「N末端」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの始端に関し、遊離アミン基(amine group)(--NH2)を有するアミノ酸が末端にある。「C末端」という用語は、アミノ酸の鎖(タンパク質またはポリペプチド)の終端に関し、天然においては遊離カルボキシ基(--COOH)が末端にある。本願において、C末端およびN末端フラグメントへの言及は、選出された部分が由来する完全長分子の領域を広く説明し、かつ、完全長または天然の分子を除外する。C末端フラグメントは、C末端のアミノ酸を全て含まなくてもよいが、含んでもよく、かつ、N末端フラグメントは、N末端のアミノ酸を全て含まなくてもよいが、含んでもよい。
【0160】
本願は、実施例に記載される最初の知見に基づいて、様々なポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞の使用を開示し、かつ可能にする。
【0161】
血清プロテアーゼに対してペプチドを安定化させるための、または細胞内ポジショニング(intracellular positioning)を促進するための、数多くのペプチド改変が当業界で知られており、かつ、それらが包含される。そのような改変ペプチドのいくつかは細胞内で核酸から発現され得、その他は合成的に製造される。同様に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を1つ以上の特定の細胞タイプに標的化させることが望ましい場合、これは当業界で知られるように、標的細胞のエクスビボ操作、またはECM結合部分などの標的細胞または組織に特異的に結合する標的化部分の組み込みのいずれかによって達成されてもよい。
【0162】
「保存的アミノ酸置換」は、天然または非天然産生のアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する天然または非天然産生のアミノ酸に置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当業界において定義されてきた。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばLys、Arg、His)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばAsp、Glu)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えばGly、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、Cys)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばAla、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、Trp)、ベータ分岐(beta-branched)側鎖を有するアミノ酸(例えばThr、Val、Ile)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばPhe、Trp、His)を含む。すなわち、予測されるCCR5の必須でないアミノ酸残基は、例えば、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置き換えられてもよい。その他の許容される置換の例は、アイソステリック(isosteric)な考察に基づく置換(例えばメチオニンに対するノルロイシン)、またはその他の性質に基づく置換(例えばフェニルアラニンに対する2-チエニルアラニン)である。全てのアミノ酸サブ分類を表2に表し、かつ、例示的な置換を表3に表す。
【表2】
【表3】
【0163】
いくつかの実施形態において、Trp残基が置換される。
【0164】
本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、インビボにおいてプロテアーゼ耐性を向上させることなどによって、ペプチドの薬物動態特徴を改変することが知られている改変を含んでもよい。
【0165】
ある実施形態において、前記ペプチドは、GGSまたはGGSの繰り返し、および当業界で知られるバリアントなどの、1つ以上のリンカーまたはスペーサー、改変されたまたは非天然のまたは非タンパク原性のアミノ酸、改変された側鎖、改変された骨格、末端修飾された基を含むか、または改変された空間的制約(spatial constraint)を含むか、またはD-レトロインバーソペプチド(D-retro-inverso peptide)である。ある実施形態において、前記ペプチドは偽ペプチド、擬ペプチド、ペプトイド、アザペプチド、環化(cyclized)ペプチド、ステープルペプチド、エーテルペプチドまたはラクタムペプチドであるか、または空間的拘束を含む。
【0166】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、脂質、炭水化物、ポリマー、タンパク質、ナノ粒子、ペプチド、プロテオグリカン、抗体またはそのフラグメントもしくは抗原結合形態、アプタマー、または核酸と、適宜、接合されるかまたは他の方法で接着/結合/発現される。
【0167】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、筋細胞または筋細胞組織または関連する構造、例えばECMに、特異的に結合する。
【0168】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、生理学的または薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体、およびプロドラッグを含む。
【0169】
ある実施形態において、必須でないアミノ酸は、変更されてもよい。「必須でない」アミノ酸残基への言及は、ポリペプチドの野生型配列から、その内因性または非自家性CCR5に結合する能力を消失させるかまたは実質的に変更することなく変更し得る、残基を意味する。
【0170】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、上記配列に対して1、2、3、4、5、または6つの保存的アミノ酸置換(例えば上記表3で概略したもの)または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を、含むかまたはコードするが、CCR5と相互作用する活性を保持している。
【0171】
ある実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を発現できる、核酸分子も提供する。本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、本明細書において開示される。
【0172】
ある実施形態において、前記核酸分子は、RNAまたはDNAまたはRNA:DNA、またはそれらの化学的に改変された形態である。
【0173】
ある実施形態において、ヌクレオチドの少なくとも1つのタイプ(例えばシステインおよび/またはウラシル)のある割合が、インビボにおけるその安定性を向上させるために、化学的に改変される。
【0174】
ある実施形態において、核酸は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの形態である。
【0175】
ある実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞、または組成物は、エクスビボで細胞に投与される。本発明は、遺伝子改変細胞デポ(depot)(例えばCAR T細胞、TCR、遺伝子改変マクロファージなど)の使用を包含する。
【0176】
ある実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、筋幹細胞などの標的細胞に薬物を特異的に標的化させる、抗体または抗体フラグメントを含む。
【0177】
ある実施形態において、本願は、本明細書で上記に定義されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含む、医薬組成物または生理学的組成物を提供する。
【0178】
本願は、筋損傷、または筋肉を修復または再生する能力が低下しているかまたは最適でないヒトを処置する方法であって、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含む有効量の組成物、または、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含む組成物であって、筋幹細胞の増殖および筋再生を刺激するのに十分である組成物を投与することを含む、方法を可能にする。
【0179】
組成物は、生理学的または薬理学的または薬学的に許容される担体であって、生物学的にも、その他の点においても望ましくないものではない担体を含む。本明細書に記載される化合物の、薬理学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、または誘導体は、生物学的にも、その他の点においても望ましくないものではない塩、エステル、プロドラッグ、または誘導体である。
【0180】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、改変される。ポリペプチドおよび融合タンパク質の活性は、定義された境界内における追加の部分、隣接する残基、および置換に対して寛容である。同様に、骨格の改変および置き換え、側鎖の改変、およびN末端およびC末端の改変は、当業界で慣用される。一般的には、改変は、安定性または薬理学的プロファイル、標的化/送達を増強させるためのものである。例えば、ペプチドの環化またはステープリング(stapling)は、ペプチドの安定性を増強するために慣用される。別の実施形態において、ペプチドまたは薬物は、安定性、送達、または標的組織に対する特異性のために適応された部分を含む、マイクロ粒子またはナノ粒子または泡、ゲル、リポソーム、コンジュゲート、または融合タンパク質、の形態である。
【0181】
ある実施形態において、薬物またはそれらをコードする核酸は、適切な場合は、リポソーム、ハイドロゲル、エマルション、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、またはバイロソーム(virosome)中に集められる。
【0182】
ある実施形態において、抗体または抗体フラグメントまたはミミックなどの特異的結合部分が、ポリペプチドまたは融合タンパク質を筋環境(muscle environment)に標的化させるために使用される。
【0183】
ある実施形態において、ポリペプチドまたは融合タンパク質は、mRNAの送達を介するものなどのインビボにおける生合成、CRISPR構成要素などの遺伝子編集、または細菌または細胞を通して送達される。
【0184】
組成物は、一般的には、ポリペプチドまたは融合タンパク質、ペプチドミメティックまたは適切な場合はコードする核酸、および薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む。ある実施形態において、担体はナノキャリア(nanocarrier)であってもよい。
【0185】
ある実施形態において、本開示のポリペプチドまたは融合タンパク質は、天然産生の分子ではなく、天然産生の完全長分子の特定の特徴または機能を持たない、天然産生の分子の改変された形態である。例えば、NAMPTの酵素活性は無くてもよい。
【0186】
別の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、ペプチド中の少なくとも2つのアミノ酸に共有結合しているリンカーを手段として固定される。安定性および細胞透過性を向上させるための様々な環化戦略が当業界で知られている。
【0187】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、前記のものまたはそのプロドラッグをコードする核酸分子の形態、または前記のものまたはそのプロドラッグをコードする核酸分子を含むベクターの形態で送達される。ある実施形態において、前記核酸はmRNAである。本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、筋幹細胞の表面に結合、または内部で機能して、シグナル伝達および増殖を刺激してもよい。
【0188】
別の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞は、その他の薬学的に許容される担体に加えて、水溶液中でミセル、不溶性の単分子膜、液晶、またはラメラ層(lamellar layer)などの凝集体として存在する脂質などの、両親媒性の薬物と組み合わせられる。
【0189】
ある実施形態において、本開示は、内因性CCR5と相互作用する、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を含む、医薬として使用するため、または治療に使用するための組成物を可能にする。
【0190】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質、または前記ペプチドを発現できる核酸分子を含む、筋幹細胞の増殖を刺激するための組成物を可能にする。
【0191】
ある実施形態において、対象の組成物は、第2の生理学的に活性な治療薬または予防薬または再生剤(regenerative agent)と共投与される。例示的なサイトカインは、IGF-1、TGF-β、GDF-5、bFGF、PDGF-b3、IL-4のうち1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0192】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞の、筋再生を刺激するための医薬の製造における、または幹細胞治療における使用を提供する。
【0193】
ある実施形態において、本願は、本明細書に記載されるCCR5と相互作用する薬物のスクリーニングアッセイを提供し、前記アッセイは、薬物が筋幹細胞の増殖および筋再生を誘導する能力、またはその指標を評価することを含む。
【0194】
ペプチドベースの治療薬は、低分子で操作することが難しい生物学的標的に対して強力かつ選択的であることが知られているため、有用な分子を提供する。直鎖ペプチドの薬物動態特性を改善するために、改変されたペプチドが成功裏に開発されてきた。
【0195】
本開示のペプチドはアミノ酸を含む。「アミノ酸」への言及は、天然産生のアミノ酸または非天然産生のアミノ酸を含む。
【0196】
ペプチド組成物は、一般的かつ慣例的には、理解されたパラメーターの範囲内で、部分、隣接するペプチド残基、および置換の追加によって、改変できる。ペプチドは、標準的なペプチド化学を使用して日常的に改変された、骨格、側鎖、ペプチド結合の置き換え、および末端修飾をさらに含み得る。
【0197】
本明細書に記載されるアミノ酸配列に組み込まれるアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、L-β-ホモアミノ酸、D-β-ホモアミノ酸、またはN-メチル化アミノ酸、糖アミノ酸(sugar amino acid)、および/またはそれらの混合であってもよい。非天然アミノ酸はプロテアーゼに認識されなくてもよく、それによって、半減期が変更されてもよい。ある実施形態において、D-レトロ逆転配列(D-retro inversion sequence)が採用される。
【0198】
非天然産生のアミノ酸は、対応する天然産生のアミノ酸の化学的アナログを含む。天然でないアミノ酸および誘導体の例は、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルへプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体を含むが、これらに限定されない。
【0199】
ある実施形態において、ペプチドは、それらの薬力学的特性を増強するため、当業界で認識されている改変を使用して改変される。ペプチドは、アラニン置換などの置換を受けてもよく、または架橋可能な部分で置換されてもよく、および/または連結されてもよい。適した残基は、ヘテロ-低級アルキル、ヘテロ-メチル、エチル、プロピル、およびブチルから選択される、追加のアルファ炭素置換を含んでもよい。トリフルオロエチルアミンなどのペプチド結合の置き換えが、より安定かつ活性なペプチドミメティックを生産するために使用される。
【0200】
したがって、環状またはステープルペプチド、ペプトイド、ペプトマー(peptomer)、およびペプチドのペプチドミメティック形態が包含される。
【0201】
骨格が固定されたペプチドミメティックおよび環状ペプチドは、エキソペプチダーゼから保護される。ペプチドは、切断後にN末端をC末端にカップリング(coupling)させることで環化し得る。これは、直接的なカップリングによって、または生体直交(biorthogonal)反応による定められた環化を可能にする特定の官能基の導入によって達成し得る。例示的な改変にはCys-Cysジスルフィド架橋、マクロラクタムペプチド、チオエーテルペプチドまたはステープルペプチドなどを形成するリンカーを含むための側鎖修飾が含まれる。ペプチド環化にはクリックバリアント(click variant)が特に有用である。別のアプローチは、N末端とカップリングした2-アミノ-d、1-ドデカン酸(Laa)を使用し、かつAsnをリポアミン(lipoamine)で置き換えることによる。
【0202】
より定められた構造は、複素環、Nメチル化アミン結合、またはメチル化アルファ炭素原子を有するより強固な骨格の使用によって得ることができる。
【0203】
ペプチドのステープリングのために使用される手法の中で、二構成要素二重(two-component double)Cu触媒アジド-アルキン環付加(Cu-catalysed azide-alkyne cycloaddition: CuAAC)戦略は、ペプチドを生物学的に活性な高次構造に固定し、かつ同時に薬物動態特性を改善する。さらに、この戦略は、容易に合成され得、かつステープル、蛍光標識タグおよび光スイッチリンカー(photo-switchable linkers)の機能化を促進する、非天然のアジドアミノ酸を使用する。ステープルの独立した機能化は、複雑な機能性がペプチドのN末端またはC末端ではなくステープルに付加されるため、特に有用である。加えて、このアプローチは、様々な機能化ステープルペプチドを生成するために1つの直鎖ペプチドのみを要求するため、リンカーの様々な機能性、ひいてはペプチド全体の特性の探索を促進する。
【0204】
アザペプチドは、1つ以上のアミノ残基がセミカルバジドに置き換えられたペプチドアナログである。この窒素からα-炭素中心への置換は、高次構造の固定をもたらし、ペプチドをアザアミノ酸残基の部分で直鎖形状から曲げる。もたらされるアザペプチドターン高次構造(azapeptide turn conformation)は、X線結晶学および分光学によって観察されており、ならびに計算モデルに基づいて予測されている。生物学的に活性なペプチドアナログにおけるアザ置換は、活性および選択性の増強、ならびに作用時間の延長および代謝安定性などの改善された特性をもたらしてきた。
【0205】
また、半減期は、アシル化またはアミド化末端によって向上させてもよい。ペプトイドはN-アルキル化オリゴグリシン側鎖で生産される。いくつかの実施形態において、ペプチドはアセチル化、アシル化(例えばリポペプチド)、ホルミル化、アミド化、リン酸化(Ser、Thr、および/またはTyr上)、硫酸化、またはグリコシル化されてもよい。
【0206】
本明細書で使用される「大員環化(macrocyclization)試薬」または「大員環形成(macrocycle-forming)試薬」という用語は、2つの反応性基(reactive group)間の反応を媒介することによってペプチドミメティック大員環(peptidomimetic macrocycle)を調製するために使用してもよい、任意の試薬を指す。反応性基は、例えば、アジドおよびアルキンであってもよく、このケースにおいて大員環化試薬は、CuBr、CuI、またはCuOTfなどの反応性Cu(I)種、ならびにCu(COCH、CuSO、およびCuClなどの、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤を加えることによってインサイチュ(in situ)で活性Cu(I)試薬に変換できるCu(II)塩、を提供する試薬などのCu試薬を含むが、これらに限定されない。
大員環化試薬は、例えば、CpRuCl(PPh、[CpRuCl]4、または反応性Ru(II)種を提供してもよいその他のRu試薬などの、当業界で知られるRu試薬を追加で含んでもよい。その他のケースにおいて、反応性基は末端オレフィンである。このような実施形態において、大員環化試薬または大員環形成試薬は、安定化された、グループVIII遷移金属カルベン触媒などの後期遷移金属カルベン錯体触媒(late transition metal carbine complex catalyst)を含むがこれに限定されない、メタセシス触媒である。例えば、このような触媒は、酸化状態が+2、電子数が16、かつ5配位の、RuおよびOs金属中心である。追加の触媒が、(Grubbs et al., "Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis" Acc. Chem. Res. 1995, 28, 446-452)および米国特許第5,811,515号において開示される。さらに別のケースにおいて、反応性基はチオール基である。このような実施形態において、大員環化試薬は、例えば、ハロゲン基などの、2つのチオール反応性基で機能化されたリンカーである。
【0207】
ある実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ポリペプチドと比較した際に、構造安定性の向上、標的に対する親和性の向上、タンパク分解性の分解に対する耐性などの、改善された生物学的特性を呈する。別の実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、水溶液中で1つ以上のαヘリックスを含み、および/または、対応する非大員環ポリペプチドと比較して増大したαらせん度(degree of α-helicity)を呈する。
【0208】
例えば、ペプチドの配列が分析され得、かつ、本発明のアジド含有およびアルキン含有アミノ酸アナログが適切な位置で置換され得る。適切な位置は、生物学的活性のために分子の二次構造のどの面が要求されるのか、すなわち、本発明の大員環形成リンカーが、他のどの面を横切って、生物学的活性のために要求される面を立体的にブロックすることなく大員環を形成し得るのかを確認することによって決定される。このような決定は、活性に重要な残基(および面)を可視化するために、二次構造と天然の結合パートナーとの間の錯体のX線結晶学などの方法を使用して;活性に重要な残基(および面)を機能的に特定するために、二次構造中の残基の連続的な変異生成によって;またはその他の方法によってなされる。このような決定によって、適切なアミノ酸が、アミノ酸アナログおよび本発明の大員環形成リンカーによって置換される。例えば、らせん二次構造について、らせんの面の1つ(例えば、らせんの軸に沿って長軸方向に延び、かつらせんの軸を中心として半径方向に45-135°延びる分子の面)は、生物学的活性のために、インビボまたはインビトロで別の生体分子と接触することが要求されてもよい。このようなケースにおいて、大員環形成リンカーは、面が活性に直接要求されない部分においてらせんの面の長軸に沿って延び、2つの炭素を連結するように設計される。
【0209】
ペプチドミメティック大員環は、水溶液中でらせんを含んでもよい。例えば、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ポリペプチドと比較して増大したらせん構造を呈してもよい。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ペプチドと比較して向上した熱安定性を呈する。その他の実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ポリペプチドと比較して向上した生物学的活性を呈する。さらに他の実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ポリペプチドと比較して向上した、タンパク分解性分解に対する耐性を呈する。さらに他の実施形態において、ペプチドミメティック大員環は、対応する非大員環ポリペプチドと比較して向上した生細胞への浸透能力を有する。
【0210】
「アミノ酸アナログ」という用語は、天然産生のアミノ酸と構造的に類似する分子であって、かつペプチドミメティック大員環の形成においてアミノ酸を置換され得る分子を指す。アミノ酸アナログは、本明細書で定義されるアミノ酸と構造的に同一である化合物を含むがこれに限定されず、ただしアミノ基とカルボキシ基の間に1つ以上の追加のメチレン基を含めること、またはアミノ基またはカルボキシ基を類似の反応性基で置換すること(例えば2級アミンまたは3級アミンによる1級アミンの置換、またはエステルによるカルボキシ基の置換)を除く。
【0211】
前記ペプチドは、N末端のアセチル、ホルミル、ミリストイル、パルミトイル、カルボキシ、2-フラノシル基、およびまたはC末端のヒドロキシ、アミド、エステル、またはチオエステル基を含んでもよい。ある実施形態において、ペプチドはN末端においてアセチル化されており、かつC末端においてアミド化されている。ある実施形態において、例えばDOTA、DPTAなどのキレート剤が導入される。ペプチドは、インビボまたはインビボにおけるペプチドの半減期を延長するために、例えばPEG化(pegylation)、脂質化(lipidation)、XTEN化(xtenylation)、PAS化(pasylation)、およびその他のアプローチによって改変されてもよい。ある実施形態において、ペプチドの溶解性および生物学的利用能を向上させるために、PEG化が使用される。pegの様々な形態が当業界で知られており、かつ、HiPeg、分岐かつ派生した(forked)Peg、遊離可能なPeg、末端基NHSエステルを有するヘテロバイファンクショナル(heterobifunctional)なPeg、マレイミド、ビニルスルホン(vinyl sulphone)、ピリジルジスルフィド(pyridyl disulphide)、アミン、およびカルボン酸を含む。治療用のPEG化ペプチドの例は、Amgenによって作られるpegfilagrastin(Neulasta)を含む。
【0212】
リンカーまたはスペーサーは、当業界で知られるアミノ酸または核酸またはその他の原子構造であってもよく、典型的には長さ2から10アミノ酸またはヌクレオチドである。スペーサーは、本明細書に記載される、ナノ粒子、抗体フラグメント、リポソーム、細胞浸透および/または細胞内送達部分を含むコンストラクトなどの、CCR5と相互作用するコンストラクトの正しい配向を可能にするために十分可動性があるべきである。スペーサーの形態の1つは、コンストラクトが細胞標的化のための抗原結合部分を含む場合の使用に適した、IgGのヒンジ領域である。
【0213】
抗原結合分子は、例えば細胞外の受容体(extracellular receptor)、抗体または抗体フラグメント(ScFvなどの分子を含む)を含む。シグナルペプチドは、N末端側に存在してもよい。2つ以上のエピトープに特異的に結合できるバイスペシフィック抗体が当業界で知られており、かつ、本発明のCCR5と相互作用する薬物において、例えば筋環境またはその他の基質に結合するために使用され得る。
【0214】
ある実施形態において、ペプチドは、送達剤と接合されるか、または他の方法で会合(共有結合または非共有結合)している。ある実施形態において、送達剤は、ペプチドを組織、標的細胞、または細胞集団に送達する。
【0215】
ポリペプチドまたは融合タンパク質の誘導体は、本明細書に記載される、生物学的に活性なそれらのフラグメントであって、記載される構造またはオルソログを含むフラグメントを含む。システマティックな短縮、またはアラニンスキャニング、または保存されているモチーフの周辺のモデリングが、CCR5アゴニスト作用を有する最小のペプチドを特定するために、日常的に行われ得る。
【0216】
誘導体は、最適なアラインメントの後の比較のウインドウ(window of comparison)にわたってアミノ酸またはポリヌクレオチドの配列同一性パーセントを有する分子も含む。ある実施形態において、同一性パーセントは少なくとも80%-99%であり、これは80と99との間の任意の数を含む。
【0217】
ペプチドまたは薬物の生物学的活性に適したアッセイは当業者に知られており、かつ本明細書に記載される。
【0218】
いくつかの実施形態において、ペプチド活性のマーカーは、サテライト細胞シグナル伝達(例えばMAPK)、幹細胞および筋芽細胞の増殖および分化のアップレギュレーションを含む。
【0219】
ある実施形態において、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、天然産生のアミノ酸残基ではない部分によって改変される。前記部分は、検出可能な標識、本明細書に記載される非天然産生のアミノ酸、反応性基、脂肪酸、コレステロール、脂質、生物学的に活性な炭水化物、ナノ粒子、低分子薬、およびポリヌクレオチドからなる群から選択されてもよい。ある特定の実施形態において、前記部分は検出可能なタグ標識である。ある例において、検出可能な標識は、フルオロフォア(fluorophore)、蛍光原性基質(fluorogenic substrate)、発光原性基質(luminogenic substrate)、およびビオチンからなる群から選択される。当業界で認識されるタグまたは標識は親和性剤(affinity agent)を含み、かつ検出のための部分は蛍光および発光化合物、金属、色素を含む。その他の有用な部分は、親和性タグ、ビオチン、レクチン、キレート剤、ランタニド、蛍光色素、FRETアクセプター/ドナーを含む。
【0220】
ある実施形態において、検出可能な標識を含んでもよい前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、キットにおいて、前記ポリペプチドまたは融合タンパク質の保存されている残基が例えばアラニンで置換された、薬物の改変コントロールバージョンを伴う。前記薬物を含むキットは、販売を企図され、かつ、スクリーニング目的または治療目的のために使用されてもよい。
【0221】
このタイプのペプチドは、例えば(Sambrook et al. MOLECULAR CLONING. A LABORATORY MANUAL (Cold Spring Harbour Press, 1989)、特にセクション16および17);(Ausubel et al CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (John Wiley & Sons, Inc. 1994-1998)、特にチャプター10および16);および(Coligan et al. CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE (John Wiley & Sons, Inc. 1995-1997)、特にチャプター1、5、および6)などの組み換え核酸手法の利用によって得られてもよい。
【0222】
代わりに、このタイプのペプチドは、従来の液相合成法またはだんだん使用されるようになってきた固相合成法を使用して合成されてもよい。例えば、最初の参照は、溶液合成、または例えばAthertonおよびSheppardによって(SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS: A PRACTICAL APPROACH (IRL Press at Oxford University, Oxford, England, 1989)、特にチャプター9を参照)で説明されるか、またはRobergeら(1995 Science 269: 202)によって説明される、固相合成に対してなされてもよい。
【0223】
アザペプチド合成は、選択的ヒドラジン機能化のための煩雑な溶液相合成経路によって以前は妨げられていた。近年、アザペプチド合成のためのサブモノマー手順により、多様な側鎖を、共通のセミカルバゾン中間体に付加することが可能になり、溶液相および固相化学によるアザペプチドライブラリを構築するための手段が提供された。要するに、セミカルバゾンの組み込み、脱プロトン化、N-アルキル化、および直交脱保護(orthogonal deprotection)によるサブモノマー戦略を使用して、アザ残基がペプチド鎖に導入される。結果として生じるセミカルバジドのアミノアシル化および伸長が、所望のアザペプチドをもたらす。さらに、化学変換(chemical transformation)の多くが、セミカルバジド残基の直交化学(例えばマイケル付加およびNアリール化)を利用してきた。 加えて、アザグリシン残基の酸化が、ペリ環状反応(例えばディールス・アルダーおよびアルダー・エン化学)において反応するアゾペプチド(azopeptide)をもたらした。アザグリシン残基のこれらの変換の多くはLubell研究室によって開発され、前記研究室は、がんおよび加齢黄斑変性などの疾患の処置のために有望な生物学的活性を有するリガンドの合成において、このような化学を利用してきた。成長ホルモン放出ペプチド6(His-d-Trp-Ala-Trp-d-Phe-Lys-NH2、GHRP-6)のアザペプチドアナログが、例えば分化クラスター36(cluster of differentiation 36: CD36)受容体のリガンドとして追求され、かつ、加齢黄斑変性症ならびにアテローム性動脈硬化症などの血管新生に関する疾患の処置の開発のために有望な活性を示した。アザペプチドは、がん細胞において有望なアポトーシス誘導活性を呈する、立体構造的に固定されたミトコンドリア由来カスパーゼ活性化第2因子(second mitochondria-derived activator of caspase: Smac)ミメティックのシリーズを作るためにも採用されてきた。環状アザペプチド誘導体の合成は、ヒト腫瘍の転移および腫瘍によって誘導される血管新生に対して効力を呈する抗がん剤シレンギチド、シクロ(RGDf-N(Me)V)、およびその親化合物シクロ(RGDfV)の立体構造-活性相関を研究するために、アザスキャン(aza scan)を行うために使用された。アザペプチドの合成および利用における技術革新は、(Acc Chem Res. 2017 Jul 18;50(7):1541-1556)に記載される。
【0224】
代わりに、ペプチドは、endoLys-C、endoArg-C、endoGlu-Cおよびブドウ球菌V8-プロテアーゼなどのプロテイナーゼによってアダプターポリペプチド(adaptor polypeptide)を消化することによって生産され得る。消化されたフラグメントは、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)手法によって精製され得る。ペプチドおよびペプチドアナログの薬力学パラメーターを最適化するため取られてもよい手段は、(Werle M. et al (2006) Strategies to improve plasma half-life time of peptide and protein drugs amino Acids 30(4):351-367; and Di L (2014) Strategic approaches to optimising peptide ADME properties AAPS J 1-10)によって説明される。
【0225】
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質は、例えばナノ粒子、リポソーム、ミセル、または例えばPEGを介して、当業界で知られるように安定化されてもよい。リポソームを形成する方法は、(Prescott, Ed. Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33以降)に記載され、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。ポリマーナノ粒子は、理想的には、無毒で、ナノ粒子に物理的に吸着されない界面活性剤を使用する。ある態様において、生分解性サーフマー(surfmer)が使用される。例えば、生分解性の、ポリ(エチレングリコール)(PEG)化N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)ベースのサーフマーが合成され、かつ親油性のNPを安定化させるために使用される。特に、NPのコアは、HPMA二重結合によって機能化されたポリ(乳酸)(PLA)鎖を含むマクロモノマーから作られる。次に、生体適合性かつ水溶性である均一なポリ(HPMA)骨格およびポリマーの完全な分解性を保証する加水分解性の(hydrolysable)PEGおよびPLAペンダント(pendant)によって、ナノ粒子を形成するポリマー鎖が構成される。合成されたサーフマーによってもたらされる安定性は、得られた両親媒性共重合体のフラッシュナノ沈殿を後に伴うエマルションフリーラジカルポリマー形成および溶液フリーラジカルポリマー形成の両方のケースにおいて研究される。
【0226】
その他の安定化または非自家性部分は、NMEG、ECM結合、シンデカン結合アルブミン、アルブミン結合タンパク質、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0227】
伝統的なFc融合タンパク質および抗体は、無誘導相互作用ペア(unguided interaction pair)の例である一方、Spiess et al. (2015) Molecular Immunology 67(2A): 95-106によって説明されるように、様々な人工Fcドメインが、非対称相互作用ペア(asymmetric interaction pair)として設計されてきた。Fcコンジュゲートは、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgA(IgA1、IgA2)、IgE、またはIgM免疫グロブリンのFcドメイン由来のアミノ酸配列を含んでもよい。このような免疫グロブリンドメインは、宿主細胞においてヘテロまたはホモダイマーまたはマルチマーアミロイド形成を促進する、1つ以上のアミノ酸改変(例えば欠失、付加、および/または置換)を含んでもよい。
【0228】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞を含むナノ粒子は、当業界で知られる組織タイプ特異的結合剤(binding agent)、抗体またはそのフラグメントの接合によって、さらに改変され得る。
【0229】
その他の適した結合剤が当業界で知られており、かつ、アフィマー(affimer)、アプタマー、または適したリガンド(受容体)またはその一部などの、抗原結合コンストラクトを含む。
【0230】
モノクローナル抗体などの抗体、または誘導体またはそのアナログは、以下を含むがこれらに限定されない:Fvフラグメント;単鎖Fv(scFv)フラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’)2フラグメント;ヒト化抗体および抗体フラグメント;ラクダ化(camlized)抗体および抗体フラグメント、および前記の多価バージョン。多価結合試薬も適宜使用されてもよく、以下を含むがこれらに限定されない:モノスペシフィック(monospecific)またはバイスペシフィック抗体;典型的には共有結合で連結されるかまたはその他の方法で安定化(すなわちロイシンジッパーまたはらせん安定化)されたscFvフラグメントである、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム(scFv)フラグメント、ダイアボディ、トリボディまたはテトラボディなど。
【0231】
本明細書で使用される「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体によって認識されるエピトープに結合する能力を保持している、抗体の任意の部分を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、単鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド連結されたFvs(dsFv)、およびVまたはV領域のいずれかを含むフラグメントを含むがこれらに限定されない。抗体の抗原結合フラグメントは、様々な領域を単独で、または、ヒンジ領域の一部、CH1、CH2、CH3、またはそれらの組み合わせと組み合わせて、含み得る。6つのCDR全てよりも少ないCDRを含有するフラグメントもまた機能性であってもよいが、好ましくは、抗体フラグメントは抗体全体の6つのCDRを全て含有する。
【0232】
「単鎖FV」(「scFv」)は、単一のポリペプチドにおいて抗体の軽鎖可変領域(V)と連結された抗体の重鎖可変領域(V)を含有するが、抗体の定常ドメインのいくつかまたは全てを欠いている、抗原結合フラグメントである。VHとVLとの間の連結は、VLおよびVH領域の適切な3次元フォールディングが起こり、scFvの由来する抗体全体の標的分子結合特異性が維持されることを保証するために選択される、短い可動性のペプチドを通して達成され得る。scFvは、抗体の定常ドメインのいくつかまたは全てを欠いている。
【0233】
一般的には特に天然のリガンドに基づくが、抗体およびその誘導体およびアナログおよびアプタマーを含む、受容体特異的結合剤を作る方法は、当業界で知られている。ポリクローナル抗体は、動物の免疫化によって生成され得る。モノクローナル抗体は、標準的な(ハイブリドーマ)方法論に従って調製され得る。ヒト化抗体を含む、抗体の誘導体およびアナログは、標準的な方法に従って、モノクローナル抗体をコードするDNAのDNAフラグメントを単離し、かつ適切なV領域を適切な発現ベクターにサブクローニングすることによって、組み換え的に調製され得る。ファージディスプレイおよびアプタマーテクノロジーは、文献に記載され、かつ、非常に高い親和性と低い交差反応性を有する標的特異的結合試薬の、インビトロにおけるクローナルな増幅を可能にする。ファージディスプレイ試薬およびシステムは市販されており、かつニュージャージ州ピスカタウェイのAmersham Pharmacia Biotech, Inc.から市販されるRecombinant Phage Antibody System(RPAS)、およびフロリダ州マルコ・アイランドのMoBiTec, LLCから市販されるpSKAN Phagemid Display Systemを含む。アプタマーテクノロジーは、例えば米国特許第5,270,163号;5,475,096号;5,840,867号、および6,544,776号に記載されるが、これらに限定されない。
【0234】
場合により、1つ以上のアミノ酸残基が、以下からなる群から選択される:グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、および脂質部分に接合されたアミノ酸、および有機誘導体化剤(organic derivatizing agent)に接合されたアミノ酸。CCR5と相互作用するペプチドは、少なくとも1つのN-連結糖(N-linked sugar)を含んでもよく、かつ、2つまたは3つ以上のN-連結糖を含んでもよい。また、ペプチドはO-連結糖を含んでもよい。CCRと相互作用するペプチドまたは薬物は、患者に対する使用(patient use)に適した方法でタンパク質をグリコシル化させる様々な細胞株において生産されてもよく、前記細胞株は人工の昆虫または酵母細胞、およびCOS細胞、CHO細胞、HEK細胞およびNSO細胞などの哺乳類の細胞を含む。いくつかの実施形態において、CCR5ペプチドはグリコシル化され、かつチャイニーズハムスター卵巣細胞株から得られるグリコシル化パターンを有する。ほとんどの実施形態において、CCR5と相互作用する薬物は、合成され、かつ当業界で知られる手法を使用して構成要素部分を付加される。
【0235】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される対象ポリペプチドまたは融合タンパク質は、哺乳類(例えばマウスまたはヒト)において約0.5、1、2、3、4、6、12、24、36、48、または72時間の半減期を有する。代わりにこれらは、コンジュゲートおよび担体の特徴および投与の様式に依存して、哺乳類(例えばマウスまたはヒト)において約0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、20、25、または30日の半減期を呈してもよい。いくつかの実施形態において、ペプチドは筋組織における保持を最大化するため、かつ全身循環を避けるかまたは最小化するために、改変される。薬物は、ゲル、泡、糊、ハイドロゲル、パッチ、およびフィルムなどの、当業界で知られる様々な保持増強組成物において投与されてもよい。
【0236】
ペプチドのサイズは、その水力学的半径(hydrodynamic radium)および腎クリアランスを変更するために改変されてもよい。しばしばリンカーを伴うPEG化および脂質化は、クリアランスの減少およびプロテアーゼからの保護によって薬物の血清半減期を増加させる、確立された改変である。第二世代PEG化プロセスでは、分岐構造ならびにPEG付着のための代替化学の使用が導入された。特に、マレイミドまたはヨードアセトアミドなどのシステイン反応性基を有するPEGは、PEG化をペプチド中の単一残基に標的化し、最終産物の不均一性を低下させることを可能にする。さらに、PEGの機能性アナログである生分解性親水性アミノ酸ポリマーが開発されており、これは均一でありかつ容易に生産されるXTEN(US20190083577を参照)およびPASを含む。ConXによって開発された抗体とペプチドの化学的連結は、以前の方法の不利な点の多くを克服することを約束するハイブリッドペプチド半減期延長方法の範囲を示す。
【0237】
経口および注射可能な溶液可溶化添加剤(solution solubilizing excipient)は、水溶性の有機溶媒(ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシド)、非イオン性界面活性剤(CremophorEL、CremophorRH40、CremophorRH60、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシン酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80、SolutolHS15、ソルビタンモノオレエート、ポロキサマー407、Labrafil M-1944CS、Labrafil M-2125CS、Labrasol、Gellucire 44/14、Softigen 767、およびPEG300、450、または1750のモノ-およびジ-脂肪酸エステル)、非水溶性の脂質(ひまし油、とうもろこし油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、紅花油、ごま油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、およびヤシ油およびパーム種子油の中鎖トリグリセリド)、有機液体/半固体(ビーズワックス、d-α-トコフェロール、オレイン酸、中鎖モノ-およびジグリセリド)、様々なシクロデキストリン(α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)、およびリン脂質(水素化大豆ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、L-α-ジミリストイルホスファチジルコリン、L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール)を含む。経口および注射投与のために薬物を可溶化する化学的な手法は、pH調整、共溶媒、錯体化、マイクロエマルション、自己乳化(self-emulsifying)薬物送達システム、ミセル、リポソーム、およびエマルションを含む。
【0238】
コンストラクト/ベクター
レシピエント細胞から本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を発現させるためのコンストラクトまたはベクターは、ペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターを含む、1つ以上のDNA領域を含み得る。プロモーターは誘導性または恒常的であり得る。適した恒常的プロモーターの例は、例えば最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、伸長成長因子(Elongation Growth Factor - 1a: EF-1a)遺伝子プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バールウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロブリンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどの、しかしこれらに限定されないヒト遺伝子プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0239】
発現コンストラクトは、組み換えまたは合成手法を含む任意の適した方法によって、とりわけ、プラスミド、バクテリオファージ、バキュロウイルス、哺乳類ウイルス、人工染色体などの、当業界で知られておりかつ利用可能である様々なベクターを利用して、生成されてもよい。発現コンストラクトは環状または直鎖状であり得、かつ複製および真核生物への統合に適しているべきである。ベクターとして有用であるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。哺乳類の細胞へ遺伝子を移行させるために、数多くのウイルスベースのシステムが開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための簡便なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当業界で知られる手法を使用して、ベクターに挿入され、かつレトロウイルス粒子にパッケージングされる。次に、組み換えウイルスは単離され、かつ対象の幹細胞に送達され得る。数多くのレトロウイルスシステムが当業界で知られている。
【0240】
ペプチドが前記ペプチドをコードする核酸として提供される本発明の特定の実施形態において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、かつそれが細胞内に入るように(例えばレトロウイルスベクターの使用によって、直接投与によって、マイクロ粒子照射(microparticle bomberdment)によって、脂質または細胞表面受容体でコーティングすることによって、またはそれをホメオボックス様ペプチドまたはその他の細胞内標的部分と連結して投与することによって)投与することで、それがコードするタンパク質の発現を促進するために、インビボで投与されてもよい。代わりに、核酸は、発現のために細胞内に導入され、かつ宿主細胞のDNA内に組み込まれてもよい。
【0241】
本明細書で互換的に使用される「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそのアナログまたは改変バージョンを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。それらは、単鎖、二重鎖、および多重鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、およびプリン塩基、ピリミジン塩基、またはその他の天然の、化学的に改変された、生化学的に改変された、非天然の、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。
【0242】
核酸は「5’末端」および「3’末端」を有すると言われるが、それはモノヌクレオチドがオリゴヌクレオチドを作るために、1つのモノヌクレオチドのペントース環の5’リン酸がその近くのモノヌクレオチドの3’酸素に一方向にホスホジエステル結合を介して接着されるという形で反応するためである。オリゴヌクレオチドの末端は、その5’リン酸がモノヌクレオチドのペントース環の3’酸素と連結されていなければ「5’末端」と称される。オリゴヌクレオチドの末端は、その3’酸素が別のモノヌクレオチドのペントース環の5’リン酸と連結されていなければ「3’末端」と称される。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部であってもまた、5’および3’末端を有すると言われてもよい。直鎖状または環状のいずれのDNA分子においても、離れた要素が、「下流」または3’の要素に対して「上流」または5’であると称される。
【0243】
「コドン最適化」が使用されてもよく、かつ、一般的には、本来のアミノ酸配列を維持したまま、本来の配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子でより頻繁に、または最も頻繁に使用されるコドンに置き換えることによって、特に宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を改変するプロセスを含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸配列は、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、またはその他任意の宿主細胞を含む所定の原核細胞または真核細胞において、天然産生の核酸配列と比較してより高い使用頻度を有するコドンに置換するよう改変され得る。コドン使用表は、例えば「Codon Usage Database」において容易に利用可能である。これらの表は数多くの方法で適応され得る。参照によってその全体が全ての目的のため本明細書に組み込まれる、(Nakamura et al. (2000) Nucleic Acids Research 28:292)を参照。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズムも利用可能である(Gene Forgeを参照)。
【0244】
本明細書に記載される核酸分子は、DNAまたはインビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを含むRNAなどの、いかなる形態であってもよい。核酸はゲノムDNA、cDNA、mRNA、組み換え的に生産された分子および化学的に合成された分子、およびそれらの改変された形態を含む。核酸分子は、単鎖または二重鎖、かつ直鎖または環を形成するように共有結合で閉じられていてもよい。RNAは、安定化配列、キャップ、およびポリアデニル化によって修飾されていてもよい。RNAまたはDNAは、ペプチドを発現するためにプラスミドとして送達されてもよい。RNAベースのアプローチが日常的に利用可能である。
【0245】
「RNA」という用語はリボヌクレオチド残基を含む分子、および好ましくは、完全にまたは実質的にリボヌクレオチド残基によって構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」はβ-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシ基を有するヌクレオチドに関する。前記用語は二重鎖RNA、単鎖RNA、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNAなどの単離されたRNA、合成RNA、組み換え的に生産されたRNA、ならびに1つ以上の塩基の付加、欠失、置換および/または変更によって改変された天然産生のRNAと異なるRNAを含む。このような変更は、RNAの末端または内部などに、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおいて、非ヌクレオチド物質を付加することを含み得る。RNA分子のヌクレオチドは、非天然産生のヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの、標準的でないヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたRNAは、アナログまたは天然産生RNAのアナログと称され得る。
【0246】
最適化されたmRNAベースの組成物は、当業界で知られる、翻訳効率および細胞内安定性を最適化する5’および3’非翻訳領域(5’-UTR、3’-UTR)を含み得る。ある実施形態において、非キャップ5’-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処置することによって達成され得る。RNAは、その安定性を向上させ、および/または細胞毒性を低下させるために改変されたリボヌクレオチドを有していてもよい。例えば、ある実施形態において、RNA中の5’-メチルシチジンが部分的にまたは完全に、シチジンに置換される。ある実施形態において、「改変」という用語は、RNAに5’-キャップまたは5’-キャップアナログを提供することに関する。「5’-キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見られるキャップ構造であり、かつ一般的には、普通ではない5’-5’三リン酸連結を介してmRNAに結び付けられているmRNAグアノシンヌクレオチドからなる。ある実施形態において、このグアノシンは7-位でメチル化されている。「従来の5’-キャップ」という用語は、天然産生のRNA5’-キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップを指す。「5’-キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に似ており、かつRNAを安定化する能力および/またはRNAの転写を増強する能力を持つように改変されている、5’-キャップアナログを含む。RNAに5’-キャップまたは5’-キャップアナログを提供することは、インビトロにおいて前記5’-キャップまたは5’-キャップアナログの存在下でDNAテンプレートを転写することによって達成されてもよく、ここで前記5’-キャップは、生成されたRNA鎖に同時転写的に(co- transcriptionally)組み込まれるか、または、RNAは例えばインビトロ転写によって生成されてもよく、かつ、5’-キャップは、転写後に、細菌のキャッピング酵素(capping enzyme)などのキャッピング酵素を使用して、RNAに接着されてもよい。
【0247】
RNAのさらなる改変は、天然産生のポリ(A)テールの延長または切断であってもよく、または前記RNAのコーディング領域に関係しないUTRの導入、例えば既存の3’-UTRを、1つ以上、好ましくは2コピーの、アルファ2-グロビン、アルファI-グロビン、β-グロビンなどのグロビン由来3’-UTRに交換すること、またはそれを挿入することなどの、5’-または3’-非翻訳領域(UTR)の変更であってもよい。マスクされていないポリ-A配列を有するRNAは、マスクされたポリ-A配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。RNAの安定性および/または発現を向上させるために、RNAは好ましくは長さ10-500、さらに好ましくは30-300、よりさらに好ましくは65-200、かつ特に100-150のアデノシン残基を有するポリ-A配列と一緒に存在するように改変されてもよい。RNAの発現を向上させるために、RNAは、コーディング領域内において、mRNAの安定性を向上させるため、およびコドン最適化を行いそれによって細胞における翻訳を増強するために、GC含量を上昇させるように改変されてもよい。改変されたmRNAは、酵素的に合成されてもよく、かつ脂質ナノ粒子などのナノ粒子にパッケージングされてもよく、かつ、例えば筋肉内などに投与されてもよい。
【0248】
前記核酸分子は、例えばコアセルベーション(coacervation)手法または界面重合(interfacial polymerization)によって調製されたマイクロカプセル、コロイド性薬物送達システム(例えばリポソーム、マイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルションに封入され得る。このような手法は当業界で知られており、かつ、(Remington, the Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Remington, J., ed. (2000))において開示されている。特定の細胞サブセットへの薬物の標的化送達は、治療指数を増強し得る。抗体標的化薬物は、前記抗体またはその結合フラグメントによって認識される抗原を含む細胞に結合する。これは、例えばマレイミド機能化PEG-PLGA重合体ナノ粒子を含むか、またはCCR5と相互作用するポリペプチドまたは融合タンパク質を、送達部分またはシャトル剤(shuttle agent)を含む組成物に単に組み入れることを含む。
【0249】
エクスビボアプローチは、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を含有または発現するように細胞を改変するために、CRISPRなどの遺伝子編集構成要素を投与することを企図する。
【0250】
投与
本開示によると、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質を含むかまたはコードする組成物または薬物は、創傷の治癒のために、または筋減少(muscle loss)または機能性を再生する能力の減少に関連する様々な状態にある筋肉を、遅延、維持、または再生するために、患者に投与され得る。
【0251】
前記組成物は、注射によって、局所的適用または粘膜適用によって、吸入によって、または放出調節様式を含む経口経路を介して、長期にわたり、かつ対象において筋再生レベルを刺激するために有効な量で、送達されてもよい。投与は局所性または全身性(例えば、例えば静脈内、腹腔内、皮内、皮下、または筋肉内経路を介した非経口投与)であってもよく、または標的化されていてもよい。ある実施形態において、CCR5と相互作用する薬物の投与は、全身性または創傷に対して直接的である。皮下または筋肉内経路は、患部筋組織に対して直接的であってもよい。
【0252】
本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質、核酸、ベクター、または細胞は、軟膏、クリーム、パッチ、パウダー、またはその他の局所製剤に適した製剤に、製剤化され得る。低分子量のポリペプチドまたは融合タンパク質製剤は、薬物を皮膚からより深い筋組織に送達し得る。したがって、このような製剤は、皮膚を通した活性成分の透過を増強する1つ以上の薬物を含んでもよい。局所適用のために、前記ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、またはベクターは、創傷を被覆する組成物および/または皮膚をコーティングする組成物に含まれ得る。
【0253】
薬物の投与されるべき量は、標準的な臨床的手法によって、当業界の通常の技術者によって決定されてもよい。加えて、最適な投与量範囲を特定するのに役立つように、インビトロアッセイが場合により採用されてもよい。採用すべき正確な用量は、薬物の性質およびその他の臨床的要素(対象の状態、重量、年齢、その他の状態、投与の経路、および組成物のタイプ(細胞、足場化(scaffolded)、ハイドロゲルベース、または経口製剤))にも依存するであろう。治療上または予防上有効であり、かつ有害ではない、正確な投与量は、当業者によって決定され得る。医薬組成物は、従来の医薬配合手法(pharmaceutical compounding technique)に従って簡便に調製される。例えば、(Remington, the Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Remington, J., ed. (2000))および後の版を参照。
【0254】
有効量への言及は、治療上または予防上または再生上有効な量を含む。本明細書で使用される「治療上有効な量」は、ケモカイン受容体アゴニスト活性を含む組成物の量であって、動物の細胞の少なくともあるサブポピュレーションにおいて、任意の医療処置に対して適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、いくつかの所望の治療効果が生じるのに有効である量を意味する。例えば、対象に投与されるポリペプチドまたは融合タンパク質の量は、統計学的に有意な、計測可能な筋修復または再生が生じるのに十分である。治療上有効な量の決定は、当業者にとって十分可能な範囲内である。一般的には、治療上有効な量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象における病状の重篤さおよびタイプ、およびその他の薬学的に活性な薬物の投与によって異なり得る。
【0255】
本明細書で使用する「投与」という用語は、所望の効果が生じるように、所望の部位において、組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、組成物を対象の中に留置することを指す。即効性の組成物に適した投与の経路は、そのフォーマットに依存し、かつ局所性および全身性投与の両方を含む。一般的には、局所投与は、対象の全身と比較してより多くの、特定の部位に送達されているポリペプチドまたは融合タンパク質、またはポリペプチドまたは融合タンパク質で処置された細胞をもたらす。一方で、全身性投与は、実質的に対象の全身への送達をもたらす。局所投与の方法の1つは、筋肉内注射である。
【0256】
本発明によると、「投与」という用語は、対象への細胞の移植も含む。本明細書で使用する「移植」という用語は、対象に少なくとも1つの細胞を植え込むまたは移行させるプロセスを指す。「移植」という用語は、例えば自家移植(患者のある位置から細胞を取り、かつ同一の位置または同一の患者の別の位置に移行させること)、同種移植(同一の種のメンバー間での移植)、および異種移植(異なる種のメンバー間での移植)を含む。当業者は、本発明に適用可能な、筋修復および再生のための幹細胞の植え込みまたは移植の方法を、十分認識しているだろう。例えば、その両方の内容が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,592,174号および米国特許公開第2005/0249731号を参照。
【0257】
本明細書に記載されるように、本方法における筋組織の再生は、最小限の線維化に関連していてもよい。特に、本明細書に記載される方法および薬物は、損傷した、または再生していない、または萎縮している筋組織における瘢痕様組織の形成を減少および/または阻害してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、損傷した筋組織における瘢痕様組織形成の形成は、本発明の薬物を処置されないコントロールに比して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%、減少している。脂肪沈着が同様に減少してもよい。
【0258】
しかしながら、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質の、静脈内投与に適した投与量の範囲は、一般的にはキログラム(Kg)体重あたり活性化合物約1.25~5マイクログラムである。鼻腔内投与に適した投与量の範囲は、一般的には約0.01pg/kg体重から1mg/kg体重である。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験システム由来の用量-反応曲線から外挿されてもよい。坐薬は、一般的には活性成分を重量%0.5%から10%の範囲で含有し;経口組成物は、好ましくは10%から95%の活性成分を含有する。
【0259】
「誘導体」が意味するのは、アミノ酸配列の改変、または、例えば他の化学的部分との接合または錯体形成または(例えば融合タンパク質としての)発現、または当業界で理解されるであろう翻訳後修飾手法によって、ポリペプチドまたは融合タンパク質から誘導される薬物または活性体(active)である。「誘導体」という用語は、その範囲内に、機能的に同等であるかまたは機能的に増強された分子をもたらす、付加、または欠失を含む、親配列に対してなされる変更を含む。
【0260】
「単離された」が意味するのは、その天然の状態において通常伴う構成要素を実質的または実質的に含まない物質である。
【0261】
「対象」という用語は、患者を含み、かつ、任意の医学的または獣医学的関心の対象を指す。対象は、哺乳類の対象(例えばウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ラマ、ラクダなど)、非哺乳類、爬虫類、鳥類、魚類などの、脊椎動物の対象であってもよい。対象は、予防又は治療が所望されるヒトを含む。対象は、がん、創傷ケア、サルコペニアまたはその他の組織変性に関連する病態、疾患、障害、または状態の予防又は処置の必要としていてもよい。
【0262】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、またはDNAを指す。前記用語は、典型的には30ヌクレオチドより長いオリゴヌクレオチドを指す。
【0263】
本明細書で使用される配列「同一性」という用語は、比較のウインドウにわたって、ヌクレオチド-ヌクレオチドベースまたはアミノ酸-アミノ酸ベースで配列が同一であることの程度を指す。すなわち、「配列同一性パーセント」は、最適に整列された2つの配列を比較のウインドウにわたって比較し、同一の核酸塩基{例えばA、T、C、G、U}または同一のアミノ酸残基{例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、lie、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet}が両方の配列において発生している位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較のウインドウ中の位置の総数(すなわちウインドウサイズ)で割り、その結果に100をかけて配列同一性パーセントを得ることによって、計算される。本発明の目的のために、「配列同一性」は、DNASISコンピュータプログラム(Version 2.5 for Windows;Hitachi Software Engineering Co., Ltd.、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州、USAから入手可能)によって、ソフトウェアに付属のマニュアルを参照して使用される標準の初期設定を使用して計算される、「マッチパーセント(match percentage)」を意味すると理解されてもよい。また、アミノ酸の配列同一性は、European Molecular Biology Laboratoryの一部である、The European Bioinformatics Institute(EMBL-EBI)から入手可能な、EMBOSS Pairwise Alignment Algorithmsツールを使用して決定されてもよい。このツールはNeedleman-Wunschのグローバルアラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970)を利用する。Gap Open: 10.0およびGap Extend 0.5を含む初期設定が利用される。初期マトリックス「Blosum62」がアミノ酸配列および初期マトリックスに利用される。
【0264】
配列「同一性」という用語は、同一であるアミノ酸または上記表3で定義されるような保存的アミノ酸置換を構成するアミノ酸の、パーセント数値を指す。類似性は、GAP(Deveraux et al, 1984 Nucleic Acids Research 12: 387-395)などの配列比較プログラムを使用して決定されてもよい。この方法において、本明細書に例示した配列と類似するか、または実質的に長さが異なる配列は、アラインメントにギャップを挿入することによって比較され、このようなギャップは、例えばGAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。従来の分子生物学的手法を含む方法が、本明細書に記載される。このような手法は当業界において一般的に知られており、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al.;Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (2001) ;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, (1992) (定期更新)などの方法論の専門書において詳細に記載される。免疫学的手法は当業界で一般的に知られており、Current Protocols in Immunology, ed. Coligan et al.;Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, (1992) (定期更新);Advances in Immunology, volume 93, ed. Frederick W. Alt, Academic Press, Burlington, Mass., (2007) ;Making and Using Antibodies: A Practical Handbook, eds. Gary C. Howard and Matthew R. Kaser, CRC Press, Boca Raton, Fl, (2006) ;Medical Immunology, 6th ed., edited by Gabriel Virella, Informa Healthcare Press, London, England, (2007) ;およびHarlow and Lane ANTIBODIES: A Laboratory Manual, Second edition Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (2014)などの方法論の専門書において詳細に記載される。遺伝子移行および遺伝子治療の従来の方法は、本発明における使用のために適応されてもよい。例えば、Gene Therapy: Principles and Applications, ed. T. Blankenstein, Springer Verlag, 1999;Gene Therapy Protocols (Methods in Molecular Medicine), ed. P. D. Robbins, Humana Press, 1997;Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Otto-Wilhelm Merten and Mohammed Al-Rubeai, Humana Press, 2011;およびNonviral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Mark A. Findeis, Humana Press, 2010. Amino Acids. 2018 Jan; 50(1):39-68. doi: 10.1007/s00726-017-2516-0. Epub 2017 Nov 282010を参照。
【0265】
本明細書において開示および定義される発明は、テキストまたは図から言及されるかまたは明らかな2つ以上の個々の特徴の、全ての異なる組み合わせまで及ぶと理解されるだろう。これらの異なる組み合わせの全てが、本発明の様々な異なる態様を構成する。
【実施例
【0266】
実施例1-材料および方法
マウス筋体積減少損傷および再生の評価
損傷:10~12週齢の間の雄C57BL/6Jマウスを麻酔し、左後肢を剃毛した。およそ1cmの片側切開を行い、下にある筋膜を露出させた。左後肢を伸ばし、かつ、周囲の組織を退縮させることで、切開部位を介して露出させた。大腿直筋の全厚セグメント3x4mmを取り除いた。直後に、損傷部位を、欠損において重合する、hrNAMPT(1)(ハイドロゲル構成要素;40μl、8mg/mlヒトフィブリノゲン(FIB3, Enzyme Research Laboratories)、4U/mlウシトロンビン、(T4648, Sigma)、5mM CaCl2、17μg/mlのアプロチニン(ab146286, Abcam))、を200ngまたは500ng含むかまたは含まないフィブリンハイドロゲルで満たした。次に、軟部組織を縫合して閉じた。
【0267】
組織学:処置の10日後、動物を屠殺し、かつ組織学的分析のため創傷を回収した。欠損部位、および関連する大腿四頭筋の近位および遠位のセグメント(大腿直筋、内側広筋、外側広筋を含む)を切除し、かつ包埋した。連続的なパラフィン切片(創傷の中心部を通って回収された4μm切片)について組織学的分析を行った。複数の切片をマッソントリクロームで染色し(コラーゲン沈着を検出するため)、かつ線維化の程度(青色染色で表される)をImageJソフトウェア(version 1.51h, National Institutes of Health, USA)を使用した組織形態分析によって測定した。試料の一様性を維持するため、1.0mm~3.0mmの範囲の複数の深さで採取した内側広筋の長さは、切片作成の深さを決定するための、組織切片間の基準として働く。線維化の定量のために、各深さにおける平均筋線維化面積をスコア化し、かつ大腿直筋の面積で正規化した。筋肉の総面積は、各深さにおける大腿直筋の平均面積を計算することによって決定した。
【0268】
フローサイトメトリーによる免疫細胞プロファイリングおよびPAX7+細胞の定量:フィブリンハイドロゲルによって送達される0.5μgのhrNAMPT(1)またはコントロールフィブリンハイドロゲルのみで処置した4、6、または8日後、マウスをCO2窒息によって安楽死させた。欠損部位および関連する大腿四頭筋の近位および遠位のセグメントを単離し、かつ890μlの完全RPMI(10%FBSおよび2mMのGlutamax、Life Technologiesを含む)中に移した。組織を外科用の鋏および10mg/mlのコラゲナーゼII(Sigma-Aldrich)100μlおよび10mg/mlのDNAseI(Biolabs)10μlで刻み、PAX7を取得するために、100μlのディスパーゼII(10mg/ml)を前記消化物に加えた。前記混合物をボルテックスし、かつ37℃で45分間インキュベートした。500μlの氷冷PBS、5% FBS、5mM EDTAでコラゲナーゼを不活化した。続いて、前記混合物を70μmおよび40μmのフィルターを通して濾過した。前記細胞懸濁液を、1mlの完全RPMIで希釈し、かつ300Xgで10分間遠心分離した。上清を捨て、ペレットを完全RPMI250μlに再懸濁し、抗体染色のために、96ウェルU型底プレートに小分けした。前記細胞溶液を遠心分離し、上清を捨て、かつPBSで洗浄した。使用した細胞生存率染色は、PBSで希釈(1:400希釈)したZombie Aqua(Biolegend)Live-Dead色素100μlであり、かつ、4℃で30分間染色した。次に細胞をFcX(抗CD16/32抗体、Biolegend、1μg/ml)フローサイトメトリーバッファーでブロッキングし、かつ遠心分離した。一次表面抗体染色を、フローサイトメトリーバッファーで希釈した抗マウス抗体カクテル(Biolegend)100μlによる2つの別々の染色:2μg/mlの抗CD4(クローンRM4.5, #100516)、抗CD8(クローン53-6.7, #100738)、および抗CD3(クローン17A2, #100220)によるT細胞染色。2μg/mlの抗CD-11b(クローンM1/70, #101208)、1μg/mlの抗Ly6G(クローン1A8, #127628)、4μg/mlの抗F4/80(クローンBM8, #123147)、10μg/mlの抗CD80(クローン16-10A1, #104714)、および2.6μg/mlの抗CD206(クローンC068C2, #141720)による好中球およびマクロファージ染色、で行った。細胞を氷上で30分間染色し、上記のように洗浄した。前記T細胞パネルにおける内部Foxp3染色のために、細胞を100μlの固定/透過処理溶液(42080, Biolegend)で35分間固定した。次に細胞を洗浄し、かつ0.5%のサポニンおよび5μg/mlの抗Foxp3(クローン3G3, #35-5773-U100)を含むフローサイトメトリーバッファー100μlに45分間再懸濁した。次に細胞をフローサイトメトリーバッファー(100μl)に再懸濁し、かつFortessa x20(Beckman Coulter)で取得した。サテライト細胞フローサイトメトリー染色は、フローサイトメトリーバッファーで希釈した抗体カクテル(Biolegend)200μl:5μg/mlの抗VCAM/CD106ビオチン(クローン429 (MVCAM.A), #105703)、2.5μg/mlの抗ストレプトアビジン(#405250)、2μg/mlの抗CD45(クローン30-F11, #103114)、抗CD11b(クローンM1/70, #101208)、抗Ly6G(クローン1A8, #127607)、1μg/mlの抗CD31(クローンMEC13.3, #102507)、で行った。細胞は、0.5%サポニン入りかつ細胞内抗体カクテル:Biolegendの1μg/ml抗Ki67(クローン16A8, #652411)、NovusBiologicalsの10μg/ml抗Pax7(クローンPax7/497, #NBP2-34706AF488)、入りのフローサイトメトリーバッファー200μlによっても、氷上で1時間染色した。次に、細胞を25μlのInvitrogen Count Bright Absolute Counting Beads(25,000 beads, #C36950)入りフローサイトメトリーバッファー(275μl)に再懸濁し、Fortessa x20(Beckman Coulter)で取得した。全てのイベントを取得し、かつ10,000創傷細胞あたりのPAX7+細胞の数を、以下の式を使用して計算した:創傷中のPAX7+数 = 10,000xPAX7+細胞カウント/[(1/25,000)xビーズカウントx(生細胞パーセント/100)x消化後の総細胞数カウント]。増殖性のPAX7+細胞の数を定量するために、PAX7およびKi67二重陽性の細胞カウントを利用して同じ計算を行った。
【0269】
凍結切片の免疫蛍光:免疫染色は、10μmの凍結切片で、標準的なプロトコルおよび抗原賦活化液(antigen retrieval)(10%クエン酸ナトリウム、0.05%Tween20、pH6.0)を使用して行った。マウス組織へのマウス抗体の非特異的結合を最小化するために、2%BSA、5%正常ヤギ血清、0.3% Triton-XおよびAffiniPure Fabフラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Laboratories)入りPBSで切片をブロッキングした。抗体:マウス抗マウスPax7(2μg/ml、Developmental Studies Hybridoma Bank)およびAlexa Fluor結合二次抗体(Thermo Fisher)。筋肉の筋細胞膜をローダミン標識小麦胚芽凝集素(WGA)(Vector Laboratories)で可視化し、かつ、核をDAPI(Sigma-Aldrich)による染色によって可視化した。
【0270】
中心核筋線維の定量:4μmパラフィン包埋切片でヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を行った。筋線維内における核の中心化(nuclear centralisation)を、1試料あたり5枚の連続的な切片から、ImageJソフトウェア(version 1.51h, National Institutes of Health, USA)を使用した組織形態分析によってカウントした。試料の一様性を維持するために、1から3mmの範囲の複数の深さで採取した内側広筋の長さは、切片作成の深さを決定するための、組織切片間の基準として働く。線維化定量のために、各深さにおける平均筋線維化面積をスコア化し、かつ大腿直筋の面積で正規化した。筋肉の総面積は、各深さにおける大腿直筋の平均面積を計算することによって決定した。
【0271】
CCR5へのNAMPTの競合的結合(ELISA)
mrCCR5へのhrNAMPTの競合的結合:ELISAプレート(Medium binding, Greiner Bio-One)を、1%BSAまたは20nMの組み換えマウスCCR(MyBioSource)入りPBSで、4℃で一晩コーティングした。次に、ウェルを1時間室温で、0.05%Tween-20を含有するPBS(PBS-T)1%BSA入りでブロッキングした。ウェルをPBS-Tで3回洗浄し、かつhNAMPTcifで、様々な濃度(0nMから100nM)で、1時間、100nMのhrNAMPT(1)(Peprotech)を含有する0.1%BSA入りPBS-T中で、さらにインキュベートした。結合したhrNAMPT(1)分子は、ビオチン化NAMPT抗体およびHRP-ストレプトアビジン(ヒトPBEF/ビスファチンDuoSet ELISA, R&D Systems)を使用して検出した。特異的結合値を得るために、各hrNAMPT濃度について、BSAでコーティングした細胞から得られたシグナルを、非特異的結合を取り除くために使用した。hNAMPTnifの50%阻害濃度(half maximal inhibitory concentration: IC50)を得るために、A450nm = A450nmMin + (A450nmMax - A450nmMin)/(1+10^(X-LogIC50))を使用して、特異的結合データを、Prism7で非線形回帰によってフィッティングした。
【0272】
細胞培養
マウス筋細胞株C2C12(Yaffe, D. & Saxel, O. Serial passaging and differentiation of myogenic cells isolated from dystrophic mouse muscle. Nature 270, 725 (1977))を成長培地(ダルベッコ改変イーグル培地(4.5g/l D-グルコース、Lグルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し(Gibco))+20%ウシ胎児溶液-One Shot(Gibco)+1% Glut Max 100x(Gibco))で培養した。細胞を37℃、5%CO2で維持した。70%コンフルエント、8代目の細胞を、0.025% トリプシン(Tryspin)EDTA(Gibco)入りT75フラスコから抽出し、成長培地で中和し、細胞をペレットにするため180Xgで5分間スピンした。次に細胞を10mlの新鮮な成長培地に再懸濁した。500μlの細胞を、カバーガラスII(Sarstedt)チャンバースライド上の8ウェルに、1x103細胞/mlで蒔いた。再接着のために、細胞を37℃で4時間静置した。薬物処置のために、培地に適切な用量を補給し、かつ6時間培養した。
【0273】
初代マウス筋芽細胞の単離のために、E17.5のC57BL/6Jマウスの肢の骨格筋を刻み、0.125%トリプシンで、37℃で20分間消化した。細胞を10cm2組織培養ディッシュに(1ディッシュあたり胚2つ)、増殖培地(DMEM+20%FBS)中で、1時間蒔くことで、筋芽細胞を枯渇させた。非接着細胞入りの培地を、ゼラチンでコーティングされた10cm2組織培養ディッシュに、増殖培地中で24時間、再度蒔いた。ゼラチンでコーティングされた48ウェルプレート上、DMEM+20% FBS+10% L929添加培地中における共培養の前に、筋芽細胞を、線維芽細胞のために枯渇させた。1ウェルあたり、100,000の筋芽細胞を、7,500のMafB/c-Maf欠損(Maf-DKO)マクロファージ(Aziz, A., Soucie, E., Sarrazin, S. & Sieweke, M. H. MafB/c-Maf deficiency enables self-renewal of differentiated functional macrophages. Science 326, 867-871 (2009))または1,000の3T3細胞のいずれかと共に蒔いた。薬物処置のために、培地に適切な用量を補給し、24時間培養した。
【0274】
細胞表面CCR5受容体濃度
マウス筋細胞株C2C12を、過去に説明されたように培養した(上記を参照)。マウスマクロファージ細胞株Raw264.7(ATCC)を成長培地(ダルベッコ改変イーグル培地+10%FBS)中で培養した。70-80%コンフルエントにおいて、セルスクレーパーを使用して細胞を剥がし、抽出キット(Plasma Membrane Protein Extraction Kit, abcam)を使用して膜タンパク質を単離した。次に膜抽出物中のCCR5濃度をELISA(Mouse Ccr5 ELISA Kit, Biorbyt)によって測定し、次に1細胞あたりのCCR5の量を、[CCR5](分子/細胞)=[CCR5](ng/細胞)/CCR5mw*10^-9*N0、ここでN0=アボガドロ定数、を使用して計算した。
【0275】
切断hNAMPTcifバリアントの生成および増殖性アッセイ
ヒトNAMPTcif(hNAMPTcif)およびhNAMPTcifの切断バリアントを、正電荷を有するアミノ酸を含有するN末端領域を段階的に取り除くことによって設計した。4つの切断型を生産し、T1からT4の番号を付した。組み換えタンパク質は細菌の発現システムを使用して生産した。hNAMPTcifバリアントを、Hisタグ親和性精製を使用してFPLCで精製した。精製した組み換えhNAMPTcifバリアントならびに完全長NAMPTで処置したC2C12マウス筋芽細胞を使用して、細胞増殖アッセイを行った。細胞を10nMの組み換えタンパク質で、48時間、2%ウシ胎児血清を補給したDMEM中で、37℃、5% CO2で処置した。PBS処置をネガティブコントロールとして使用した。10%ウシ胎児血清をポジティブコントロールとして使用した。増殖の定量を、市販のCyQuant Proliferation Assayキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造者の指示に従って行い、かつ、Synergy H1プレートリーダー(Bio Tek)で読んだ。データは対増加パーセント(percentage increase versus)として表した。
【0276】
PlGF-NAMPTcif融合タンパク質の生成および増殖性アッセイ
プラセンタ成長因子2(PlGF2)のヘパリン結合配列をNAMPTcifのN末端に融合させ、かつ細菌の発現システムを使用して生産した。PlGF-NAMPTcifを、FPLCで、サイズ排除クロマトグラフィーを後に伴うHisタグ親和性精製を使用して精製した。細胞増殖アッセイを、生成された組み換えNAMPTcifおよび完全長NAMPTで処置したC2C12マウス筋芽細胞を使用して行った。細胞を、2nM、10nM、および20nMの濃度の組み換えタンパク質で、48時間、2%ウシ胎児血清を補給したDMEM中で、37℃、5% CO2で処置した。PBS処置をネガティブコントロールとして使用した。10%ウシ胎児血清をポジティブコントロールとして使用した。増殖の定量を、市販のCyQuant Proliferation Assayキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造者の指示に従って行い、かつ、Synergy H1プレートリーダー(Bio Tek)で読んだ。データはネガティブコントロールに対する増加パーセントとして表した。統計学的有意性を決定するために、対応のない両側t検定を使用した。
【0277】
TLR4シグナル伝達アッセイ
TLR4受容体の活性化のアッセイを、HEK-Blue TLR4レポーター細胞株(InvivoGen)を使用して行った。この細胞株において、TLR4および下流のNFκBシグナル伝達が、比色アッセイを介して定量し得るアルカリホスファターゼの発現および分泌を誘導する。微量のエンドトキシンによるTLR4活性化がないことを保証するために、HEK-Blue細胞を、24時間、19nMのNAMPTcifまたはPlGF-NAMPTcifプラス5ug/mlのポリミキシンBで処置した。TLR4活性は、細菌性リポ多糖(LPS)による活性化と同等の量として報告した。すなわち、検量線を、0.01から20ng/mLの、LPSの連続的な希釈によって生成した。アルカリホスファターゼ活性の検出を、QUANTI-Blueキット(InvivoGen)を使用して、製造者の指示に従って行い、かつプレートをSynergy H1プレートリーダー(BioTek)を使用して読んだ。データは同等のLPS濃度としてng/mlで表した。統計学的有意性を決定するために、Dunnettの多重比較検定を伴う一元配置分散分析を行った。
【0278】
幼生ゼブラフィッシュ筋損傷およびEdUパルスチェイス
ゼブラフィッシュの幼生(4dpf)を0.01%トリカイン(MS-222)(Sigma-Aldrich)入りのリンゲル溶液中で麻酔した。針刺し損傷を背側筋節において行った。これは30ゲージの針穿刺によるものであり、多くの損傷した筋線維を伴う大規模な損傷を生成する。針刺し損傷を受けた4dpfの幼生を、損傷の直後に57nMのNampt入りのリンゲル溶液中でインキュベートすることによって、Namptフラグメント処置を行った。針刺し損傷を受けた6dpf(2dpi)の幼生を、50μg ml-1 EdU(Thermo Fisher Scientific)を含有するリンゲル溶液に1時間移動し、固定の前に、さらに1.5時間チェイス(chase)した。試料はClick-iT EdU Alexa Fluor 647イメージングキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造者の指示に従い開発し、その後ファロイジン免疫染色(Thermo Fisher Scientific)を行った。損傷のいずれかの側の2つの筋節を包含する領域中のEdU+細胞を、損傷領域の外側のEdU+細胞の数として定量した。尾部造血組織におけるEdU+細胞は分析から除外した。統計学的分析は、Tuckeyの多重比較検定を伴う二元配置分散分析を使用して行った。
【0279】
実施例2-外因性NAMPT補給は筋体積減少のマウスモデルにおいて再生を加速する
筋体積減少は、通常、内因性幹細胞によって媒介される修復プロセスに対し抵抗性の損傷の範例であり、かつ、アンメットメディカルニーズの領域である。本明細書において、外因性に適用されるNAMPTの添加が、筋体積減少のマウスモデルにおいて再生を加速し得ることが示される。驚くべきことに、フィブリンハイドロゲルを介した筋欠損へのhrNAMPTの送達により、創傷部位に適用した際、筋肉の構造を完全に回復させることができたが、フィブリンのみのコントロールハイドロゲルではできなかった(図1A-D)。平均で、損傷箇所におけるhrNAMPT(0.5μg)の単回投与による処置は、平均筋面積の3.276±0.4926mmの増加、および平均線維化面積の34.76±9.32%の減少をもたらした。VML損傷モデルにおけるNAMPTの添加は、増殖性PAX7+サテライト細胞の総数および割合の両方の顕著な増加(図1E-G)、および中心核新生(de novo)筋線維の数の顕著な増加(図1H-I)をもたらした。
【0280】
これらの発見は、成体哺乳類の筋肉の急性損傷の背景において、外因性に補給されたNAMPTタンパク質が筋再生を刺激することを示唆する。
【0281】
実施例3-筋芽細胞の増殖を誘導するために、CCR5受容体を介したNAMPTの選択的シグナル伝達が要求される。
CCR5受容体は、C2C12筋芽細胞において2,470±441分子/細胞(n=6)の濃度で見られ、これは以前に報告されたCCR5の生理学的に有意義なレベルと一貫する。NAMPT-CCR5相互作用の生理学的意義を決定するために、2つのヒト組み換えNAMPTタンパク質供給源(hrNAMPT(1)およびhrNAMPT(2))をC2C12筋芽細胞に適用し、かつEdU取り込みを手段として増殖アッセイを行った。NAMPTの供給源の両方が、同等かつ顕著な、筋芽細胞増殖の用量依存的増加をもたらした(図2A)。増殖の間におけるNAMPTの細胞内および細胞外の役割を分析するために、これらの筋芽細胞を、NAMPTの酵素機能の非常に特異的かつ強力な阻害剤であるGMX1778で処置した。薬物処置は培養中のC2C12の増殖の基底レベルに対して負の効果を有さず、かつ外因性NAMPT補給の後にもたらされた筋芽細胞の増殖の増加にも影響を与えなかった(図2A)。これにより、NAMPTの増殖促進の役割はその細胞内酵素機能によるものでないことが強調された。NAMPT補給の後に見られた増殖応答の増強は、C2C12細胞において、古典的CCR5リガンドであるCCL8/MCP-2およびCCL4/MIP-1βを添加することで再現し得たが、CCR2リガンドであるCCL2/MCP-1によっては再現し得なかった(図2A)。加えて、この増殖応答はCCR2/CCR5二重アンタゴニストであるセニクリビロック(CVC)およびCCR5選択的アンタゴニストであるマラビロク(MVC)によってブロックされたが、CCR2選択的アンタゴニストであるPF-4136309(PF)の存在下ではブロックされなかった(図2A)。
【0282】
まとめると、このデータは、筋芽細胞の増殖を誘導するためにCCR5受容体を介したNAMPTの選択的シグナル伝達が要求されることを強調する。
【0283】
NAMPTは、細胞外環境に放出された場合サイトカインとして働く、大きなホモダイマー細胞内酵素である。しかしながら、サイトカイン活性に関与するNAMPTのドメインは未知である。NAMPTの結晶構造を再検討することで、NAMPTのC末端の末端構造が、そのサイズおよび構造(C末端αヘリックスおよびβシート)において古典的CCR結合ケモカイン(CCL2など)と非常に類似していることが決定された(図2B)。さらに、前記ドメインは、タンパク質のコア構造から外に伸びており、受容体への結合を促進する可能性がある。よって、NAMPTのC末端を組み換え的に再生産し、かつ、CCR5に結合するNAMPTと競合し、かつサテライト細胞の増殖を刺激するその能力を検証した。驚くべきことに、本明細書で「サイトカインフィンガー」(cif)と呼称されるこのフラグメントは、CCR5へのNAMPTの結合を阻害し(IC50=21.5nM、図2C)、かつサテライト細胞の増殖を用量依存的に刺激して、筋芽細胞の増殖を誘導する(図3F)。
【0284】
まとめると、これらのデータは、前記C末端cifドメインがNAMPTの筋サイトカイン活性に関与することを実証する。
【0285】
実施例4-hrNAMPTcifの切断バリアント
NAMPTサイトカインフィンガーの活性フラグメントをさらに調査するため、NAMPTcifの4つの切断型を生産し、かつT1からT4の番号を付し(図3B-E)、かつサテライト細胞の増殖を刺激する前記バリアントの能力を評価した。驚くべきことに、全ての分子が前記サイトカインフィンガーを含有しているにもかかわらず、hNAMPTcifおよびバリアントT1-T3については、完全長hNAMPTと比較して増強されたサテライト細胞の増殖の刺激が実証された(図3F)。
【0286】
まとめると、これらのデータは、NAMPTcifの切断型が、完全長NAMPTと比較して改善されたサテライト細胞増殖能力を有することを、予期せず実証した。
【0287】
実施例5-NAMPTサイトカイン誘導体
ECM結合/シンデカンドメインと融合したNAMPTcif
ECMおよび/またはシンデカン結合モチーフの付加は、送達を最適化し、CCR5における持続性のシグナル伝達を増大させるための好ましいアプローチの1つとして使用される(Mochizuki et al Nat. Biomed Engineering 2019を参照)。ラミニンなどの複数のタンパク質がシンデカンに結合する。特定のシンデカン結合部分の1つは、配列RKRLQVQLSIRTを有するラミニンα鎖の球状ドメイン(SB)である。結合分子(binding molecule)の付加は、当業界で知られるように、合成的な手段によって、または組み換えアプローチを使用して行われてもよい。例示的な、非限定的なECM結合部分は、RGD、またはYGISR、YIGSR、GFOGER、IKVAV、およびGEFYFDLRLKGKを含む。
【0288】
有利なことに、ECM結合部分PlGF2とNAMPTcifのN末端とを融合したものは、インビトロにおいて、融合されていないNAMPTcfの増殖促進活性を保持していた(図4)。インビトロにおいては結合すべきECMが存在しないため、融合タンパク質による活性の増大は、ECM結合部分PlGF2が細胞膜への送達を手助けし、かつ筋芽細胞のCCR5における持続性のシグナル伝達を増大させるだろう、インビボにおいて達成されるだろうと予測される。
【0289】
NAMPTサイトカインフィンガーのダイマー形成
NAMPTは本来ホモダイマーであり、かつ、既知のCCR5結合ケモカインはダイマーであり、かつ、受容体結合親和性およびシグナル伝達を変動させるマルチマー(トリマー、テトラマー、およびオリゴマー形成を通してそれ以上)を形成し得る。ある実施形態において、NAMPTcifおよび本明細書のいずれかの場所に記載される任意のポリペプチド、融合タンパク質、または誘導体が、ダイマーを形成し得る。NAMPTcifのN末端に本来存在する単一のシステイン残基が、そのダイマー形成を強制するために使用される。CCR5に対するダイマーNAMPTcifの結合親和性は、ELISAおよび表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイで検証し得る。マウス初代サテライト細胞の増殖を促進するダイマーNAMPTcifの活性は、潜在的な筋再生能力も示唆するだろう。一例として、休止期のサテライト細胞は、インビボにおいて最も高い自己複製特性を有することが示されているサテライト細胞のサブセットに特異的な、陰性または陽性の細胞表面マーカー(CD31-、CD11b-、CD45-、TER119-、Sca1-、CD34+、CD106+)に依存して、上記で使用されるような新鮮な筋肉からソーティングされる。細胞はインビトロで培養され、かつこれらの初代筋幹細胞の増殖を刺激するNAMPT誘導体の効率が評価される。
【0290】
筋減少の様々な状態を検証するモデル
上記の実施例で使用される筋体積減少モデルに加え、筋減少を分析し得る異なるモデルが存在する。
【0291】
一例として、機能誘導体(function derivative)を検証するために適したモデルの1つは、心臓毒により誘導される筋損傷の確立されたモデルである。心臓毒は、筋肉のECMを破壊することなく筋細胞を殺す筋壊死剤(myonecrotic agent)であり、ECM結合モチーフを含有する融合タンパク質を検証するための重要なモデルを提供する。これは幹細胞の大多数を無傷のまま残すため、筋幹細胞の活性化のアッセイに最も一般的に使用されるモデルである。前記の標準的なモデルは、前脛骨筋への心臓毒の筋肉内注射、および失われた線維の回復のモニタリングを含む。他のモデルの1つは、ARMIでも確立されてきた、mdxマウスである。mdxモデルは慢性的な筋線維化ならびに筋変性を呈するため、mdxモデルは、ポリペプチド、融合タンパク質、および誘導体の、幹細胞を活性化させる潜在的な能力、ならびにそれらの抗線維化能力の両方を検証するために使用される。筋再生は、確立されたタイムポイントにおいて、上記のような標準的な組織学的アッセイを使用して検証される。
【0292】
実施例6-NAMPTcif刺激からのTLR4受容体活性化の減少
筋再生において、抗炎症応答は、治癒の間の線維化および瘢痕形成の原因である。NAMPTは以前に、TLR4などの炎症性受容体への結合を通した炎症プログラムの調節因子であることが示されてきた。さらに、TLR4の活性化は、重篤な有害事象をもたらす過剰な炎症応答を引き起こす。これは、例えば炎症性ミオパチーを患っている患者など、脆弱な患者のサブセットにとって問題となる。
【0293】
炎症性ミオパチーは、免疫システムが分化した筋細胞を攻撃し、筋減少および慢性的な炎症をもたらす、筋疾患の群である。したがって、過剰な炎症応答は望ましくなく、かつ患者の状態を悪化させ得る。有害な炎症応答をトリガーすることなくこれらの脆弱な患者の筋肉を回復させ得る、効果的な処置が必要とされている。
【0294】
本明細書で、NAMPTはインビトロにおいてTLR4を活性化させることが確かめられたが、有利なことに、NAMPTcifおよびPlGF2-NAMPTcifはTLR4活性を抑止することが実証された(図5)。これらの結果は、本明細書に記載されるNAMPTcif、ポリペプチド、融合タンパク質、および誘導体が、炎症応答を避けることによって筋再生を改善する可能性があることを示唆する。
【0295】
実施例7-ヒトNAMPTバリアントは筋前駆細胞の増殖を刺激する
NAMPTサイトカインフィンガーの活性フラグメントをさらに解明するために、発明者は、追加の切断型NAMPT402-491、NAMPT414-491、NAMPT422-491、NAMPT430-491、NAMPT436-491およびNAMPT422-471(NAMPTバリアント、本明細書ではそれぞれhNAMPTcif、hNAMPTcif-T1、hNAMPTcif-T2、hNAMPTcif-T3、hNAMPTcif-T4およびhNAMPTcif-T5とも呼称される)を調査した。アミノ酸番号は、例えば配列番号19の完全長NAMPTに対応する。NAMPTバリアントの予測される構造を図6に示す。
【0296】
C2C12マウス筋芽細胞を20nMの完全長NAMPT(NAMPT)またはNAMPTバリアントで48時間処置し、筋前駆細胞の増殖を評価した。NAMPTバリアントNAMPT402-491、NAMPT414-491、およびNAMPT430-491は全て、検証した全てのNAMPTバリアントと比較して、増強された細胞増殖を示した(図7)。特に、NAMPT422-491で処置した筋前駆細胞における増殖の、完全長NAMPTと比較して統計学的に有意な増加がみられた。興味深いことに、NAMPT436-491およびNAMPT422-471は、完全長NAMPTおよびその他のNAMPTバリアントと比較してより低い、筋前駆細胞の細胞増殖を呈した。
【0297】
実施例9-ヒトNAMPTバリアントはヒトサテライト細胞の増殖を刺激する
発明者は次に、完全長NAMPT、NAMPT402-491、およびNAMPT422-491の、ヒトサテライト細胞の増殖に対する活性を比較しようとした。ヒト初代サテライト細胞を、20nMの完全長NAMPTまたはNAMPT402-491およびNAMPT422-491で48時間処置した。
【0298】
NAMPT402-491は、完全長NAMPTと比較して増加したサテライト細胞の増殖を呈し、NAMPT422-491は、完全長NAMPTおよびNAMPT402-491の両方と比較してさらに強いサテライト細胞の増殖を実証した(図8)。
【0299】
実施例10-ヒトNAMPTバリアントはヒト内皮細胞の増殖を刺激する
同様に、発明者は次に、完全長NAMPT、NAMPT402-491、およびNAMPT422-491のヒト内皮細胞の増殖に対する活性を調査した。ヒト内皮細胞は臍帯静脈に由来しており、かつ20nMの完全長NAMPT(NAMPT)またはNAMPTバリアントで48時間処置した。
【0300】
NAMPT402-491は完全長NAMPTおよびNAMPT422-491と比較して増加した内皮細胞の増殖を呈した。しかしながら、完全長NAMPTおよびNAMPT422-491も、ネガティブコントロールよりは内皮細胞の増殖を刺激した(図9)。
【0301】
実施例10-NAMPTタンパク質の最小バージョンは、ゼブラフィッシュの幼生において、筋損傷に応じた増殖を増強する
次に、発明者は、NAMPTバリアントの、インビボのゼブラフィッシュ筋損傷応答モデルにおいて細胞増殖を刺激する能力を検証した。ゼブラフィッシュの幼生に対する針刺し筋損傷後のNAMPT402-491およびNAMPT422-491による処置は、損傷範囲内における細胞増殖の顕著な増加を誘導した(図10)。NAMPTの最も小さいバージョン(NAMPT422-491)は、特に創傷中で、ヒト組み換えNAMPT(hrNAMPT)と比較して顕著に高いレベルで、細胞増殖を刺激した。
【0302】
まとめると、これらの発見は、ゼブラフィッシュの幼生の急性損傷の背景において、上記の成体哺乳類の筋肉についての結果と同様に、外因性に補給されたNAMPTタンパク質が筋再生を刺激することを示唆する。また、これは、これらのインビボ条件の両方において活性であるのはNAMPTの分泌形態であるという発見を補強する。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】