(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高速時系列テンプレートマッチングによる地中ケーブルの位置特定
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525688
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022048763
(87)【国際公開番号】W WO2023081249
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
(72)【発明者】
【氏名】ゾン、 シェン
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB21
2G064BC12
2G064BC33
2G064CC01
2G064CC51
(57)【要約】
高速時系列テンプレートマッチングおよび分散型光ファイバセンシング(DFOS)による地中ケーブル位置特定のための方法は、光センサーファイバと、光センサーファイバと光通信し、光パルスを生成し、生成したパルスを光センサーファイバに取り込み、光センサーファイバからの後方散乱信号を受信するように構成されたDFOSインタロゲータと、DFOSインタロゲータによって受信されたDFOSデータを分析し、光センサーファイバに沿った位置で発生する振動活動を後方散乱信号から決定するように構成されたインテリジェントアナライザと、を含むDFOSシステムを設けること、光センサーファイバに近接する現場位置にプログラム可能な振動発生器を配置すること、プログラム可能な振動発生器に、当該振動発生器によって生成される固有の振動パターンを送信すること、送信された固有の振動パターンを生成するようにプログラム可能な振動発生器を作動させること、DFOSシステムを作動させ、決定された振動活動を収集/分析して、振動発生器によって生成された固有の振動パターンを示す振動活動をさらに決定することを含む。
【選択図】
図1(A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速時系列テンプレートマッチングおよび分散型光ファイバセンシング(DFOS)による地中ケーブル位置特定のための方法であって、
光センサーファイバと、
前記光センサーファイバと光通信するDFOSインタロゲータであって、光パルスを生成し、前記生成されたパルスを前記光センサーファイバに取り込み、前記光センサーファイバからの後方散乱信号を受信するように構成されたDFOSインタロゲータと、
前記DFOSインタロゲータによって受信されたDFOSデータを分析し、前記光センサーファイバに沿った位置で発生する振動活動を前記後方散乱信号から決定するように構成されたインテリジェントアナライザと、
を含むDFOSシステムを設けること、
前記光センサーファイバに近接する現場位置にプログラム可能な振動発生器を配置すること、
前記プログラム可能な振動発生器に、当該振動発生器によって生成される固有の振動パターンを送信すること、
送信された前記固有の振動パターンを生成するように前記プログラム可能な振動発生器を作動させること、
前記DFOSシステムを作動させ、前記決定された振動活動を収集/分析して、前記振動発生器によって生成された前記固有の振動パターンを示す振動活動をさらに決定すること、を含む方法。
【請求項2】
前記振動発生器によって生成された前記固有の振動パターンを示す前記振動活動を前記光センサーファイバに沿った物理的な位置に関連付けること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物理的な位置はGPS座標と相関している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記振動発生器を前記光センサーファイバに沿って異なる位置に再配置し、発生させる異なる振動パターンを前記振動発生器に送信すること、前記振動発生器およびDFOSシステムを作動させて前記振動発生器の新たな位置を決定すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記振動発生器に送信される前記固有の振動パターンを生成すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記後方散乱信号からウォーターフォールデータを生成すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記振動発生器によって生成された前記固有の振動パターンを示す振動活動の決定は、前記ウォーターフォール画像のパターンマッチングを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パターンマッチングは、設計されたパターンを有する2Dマトリックスをパターンテンプレートに相関させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ウォーターフォールデータ画像は、N個の時系列からなるN個の列を含み、前記パターンマッチングは、前記N個の時系列のすべてに適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パターンマッチングは、前記ウォーターフォールデータ画像の前記N個の列のそれぞれに対する前記パターンテンプレートの類似のサブシーケンスの決定を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造に関する。より具体的には、本開示は、DFOSと組み合わせた高速時系列テンプレートマッチングを使用した地中ケーブルの位置特定に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の通信サービスプロバイダが直面している重要な課題は、ネットワークインフラストラクチャを構成する何百万マイルもの埋設および吊り下げられた光ファイバを効率的に管理することである。したがって、埋設および吊り下げられた光ファイバの位置特定を容易にするシステム、方法、および構造は、当該技術への歓迎すべきものである。
【発明の概要】
【0003】
当該技術分野における進歩は、高速時系列データテンプレートマッチングを使用した分散型光ファイバセンシング地中ケーブル位置特定に関する本開示の態様によりなされる。
【0004】
従来技術とは対照的に、本発明の態様によるシステムおよび方法は、時系列類似度検索に基づくケーブル位置特定を提供する。本発明の技術は、バックグラウンドノイズから区別可能なオン/オフパターンで作成された特別に設計された振動パターン、または二次ポイントセンサー(携帯電話、タブレット、加速度計など)から収集された実際の現場振動信号のいずれかを迅速に検索するために使用することができる。さらに、本発明のシステムおよび方法は、様々なバイブレータによって生成される、様々な持続時間の、様々な場所(ケーブルの埋設部分または空中部分など)での様々な信号パターンで動作し、現場技術者が結果を受け取るまでに数秒以上待つ必要がないように、リソースが限られたプラットフォーム(ラップトップやエッジデバイスなど)を使用する。
【0005】
高速時系列テンプレートマッチングおよび分散型光ファイバセンシング(DFOS)による地中ケーブル位置特定のための方法は、光センサーファイバと、前記光センサーファイバと光通信するDFOSインタロゲータであって、光パルスを生成し、前記生成されたパルスを前記光センサーファイバに取り込み、前記光センサーファイバからの後方散乱信号を受信するように構成されたDFOSインタロゲータと、前記DFOSインタロゲータによって受信されたDFOSデータを分析し、前記光センサーファイバに沿った位置で発生する振動活動を前記後方散乱信号から決定するように構成されたインテリジェントアナライザと、を含むDFOSシステムを設けること、前記光センサーファイバに近接する現場位置にプログラム可能な振動発生器を配置すること、前記プログラム可能な振動発生器に、当該振動発生器によって生成される固有の振動パターンを送信すること、送信された前記固有の振動パターンを生成するように前記プログラム可能な振動発生器を作動させること、前記DFOSシステムを作動させ、前記決定された振動活動を収集/分析して、前記振動発生器によって生成された前記固有の振動パターンを示す振動活動をさらに決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0007】
【
図1(A)】本開示の態様によるDFOSシステムを示す概略図である。
【0008】
【
図1(B)】本開示の態様による、帯域外信号生成を伴う符号化定振幅DFOSシステムを示す概略図である。
【0009】
【
図2】本開示の態様による方法の概要を示す概略図である。
【0010】
【
図3】本開示の態様による、100Hzのサンプリングレートを有する、同じ長さのオン/オフサイクルを有する4秒周期の例示的な周期的方形波信号のグラフである。
【0011】
【
図4】本開示の態様に従って、100Hzのサンプリングレートを有する、同じ長さのオン/オフサイクルを有する4秒周期の例示的な周期的方形波信号のグラフである。
【0012】
【
図5(A)】本開示の態様による、Z正規化処理を行った後に重ねられた指定パターンを有する実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフである。
【
図5(B)】本開示の態様による、Z正規化処理を行った後に重ねられた指定パターンを有する実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフである。
【0013】
【
図6】本開示の態様による、クエリに対して最大の相関を提供するスライディング窓の位置を見つけるために、tsにおけるすべてのn-m+1のスライディング窓を反復する例示的なスライディング窓を示す図である。
【0014】
【
図7(A)】本開示の態様による、ウォーターフォール画像からの実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフであり、垂直線は、サブシーケンスがクエリに最も類似するスライディング窓の開始位置および終了位置である図である。
【
図7(B)】本開示の態様による、ウォーターフォール画像からの実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフであり、クエリおよびサブシーケンスの両方のオーバーレイを示す図である。
【0015】
【
図8】本発明の態様によるタプル反復を示す例示的なフロー図である。
【0016】
【
図9】本開示の態様によるシステムおよび方法の全体的な動作を示す例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0018】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0019】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0020】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0021】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0022】
追加の背景として、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順番に接続された光ファイバケーブルに沿って任意の場所で環境条件(温度、振動、音響励起振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要で広く使用されている技術であることに注目することから始める。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、ブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射に起因する可能性がある。DFOSは、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号を使用することもできる。一般性を失うことなく、以下の説明では反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも同様に適用できる。
【0023】
図1(A)は、一般化された従来技術のDFOSシステムの概略図である。理解されるように、現代のDFOSシステムは、光パルス(または任意の符号化信号)を周期的に生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0024】
ファイバに沿った位置では、信号のごく一部が反射され、インタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を伝送する。詳細には示されていないが、インタロゲータは、
図1(B)に示すような当技術分野で知られているコヒーレント受信機構成を採用することができる符号化DFOSシステムを含むことができる。
【0025】
反射信号は電気領域に変換され、インタロゲータ内で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間に基づいて、インタロゲータは信号がファイバ上のどの位置から来ているかを判断し、ファイバ上の各位置の行動を感知することができる。
【0026】
当業者であれば、質問信号に信号符号化を実装することにより、より多くの光パワーをファイバに送信することができ、これにより、レイリー散乱ベースのシステム(例えば、分散型音響センシング、すなわちDAS)及びブリルアン散乱ベースのシステム(例えば、ブリルアン光時間領域反射率測定法、すなわちBOTDR)の信号対雑音比(SNR)を有利に改善できることを理解し、認識するであろう。
【0027】
多くの現代の実装で現在実施されているように、専用ファイバは、光ファイバケーブルのDFOSシステムに割り当てられ、異なるファイバで伝送される既存の光通信信号から物理的に分離されている。しかし、帯域幅の需要が爆発的に増加していることを考えると、DFOS運用のためだけに光ファイバを経済的に運用および保守することはますます困難になっている。その結果、より大きなマルチファイバケーブルの一部である共通ファイバ、または、DFOSデータに加えてライブ通信トラフィックを同時に伝送する共通ファイバ上で、通信システムとセンシングシステムを統合することへの関心が高まっている。
【0028】
運用上、DFOSシステムは、レイリー散乱ベースのシステム(例えば、分散型音響センシング、すなわちDAS)およびブリルアン散乱ベースのシステム(例えば、ブリルアン光時間領域反射測定法、すなわちBOTDR)であり、符号化実装を含むことができると仮定する。当該符号化設計では、このようなシステムは、低電力動作のため、ファイバ通信システムと統合される可能性が高く、光増幅器の応答時間の影響もより大きくなる。
【0029】
ブロック図に例示的に示した配置では、符号化された質問シーケンスがデジタル的に生成され、デジタル/アナログ変換(DAC)および光変調器を介してセンシングレーザーに変調されると仮定する。変調された質問シーケンスは、質問のためにファイバに送られる前に、最適な動作電力に増幅される場合がある。
【0030】
有利なことに、DFOS動作は、同じファイバのWDMを介して通信チャネルと統合することもできる。センシングファイバ内では、質問シーケンスと戻ってきたセンシング信号は、離散的(EDFA/SOA)方法または分散的(ラマン)方法のいずれかによって光学的に増幅することができる。戻ってきたセンシング信号は、増幅と光バンドパスフィルタリングを経てコヒーレント受信機に送られる。コヒーレント受信機は、信号の両偏波の光場を検出し、アナログ/デジタル変換(ADC)サンプリングとデジタル信号プロセッサ(DSP)処理のために4つのベースバンドレーンにダウンコンバートする。当業者であれば容易に理解し認識するように、復号動作は、ファイバの質問されたレイリー応答またはブリルアン応答が生成するためにDSPで実行され、次いで、その応答のあらゆる変化が識別され、センサーの読み取り値として解釈される。
【0031】
図を引き続き参照すると、符号化された質問シーケンスはデジタルで生成されるため、帯域外信号もデジタルで生成され、その後、DACによって波形が作成される前に符号シーケンスと合成される。デジタルで一緒に生成される場合、帯域外信号は符号シーケンスの時間外にのみ生成されるため、一緒に加算すると、合成された波形は一定の振幅を持つことになる。
【0032】
当業者には理解され認識されるように、DFOS/DASシステムは、可聴周波数範囲の音響振動を検出し、記録し、聴取することが示されている。ただし、感度を制限要因の1つは、センサーとして使用される光ファイバケーブルの物理的なレイアウトである。
【0033】
屋外用途の場合、通信グレードの太い光ファイバケーブルは、可聴範囲の低振幅の振動に対して物理的にあまり反応しない。したがって、音響信号の品質は、ファイバの種類、レイアウト、およびファイバケーブルへの音響圧力波の結合方法に大きく依存する。
【0034】
容易に理解されるように、光ファイバケーブルは、都市部と農村部の両方で広く配備されており、より広い帯域幅、伝送距離、および信頼性を有利に提供する。
【0035】
このような配備を支援するために、時系列類似度検索に基づく新規の地中ケーブル位置特定方法を開示する。これから説明するように、本発明の方法は、特別に設計された振動パターン(バックグラウンドノイズと区別可能なオン/オフパターンで作成)または二次ポイントセンサー(携帯電話、タブレット、加速度計など)から収集された実際の現場振動信号のいずれかを迅速に検索する。有利なことに、これは、光ファイバケーブルに沿った様々な場所(例えば、ケーブルの埋設部分または架空部分)で発生する、様々な振動持続時間を示す、様々な振動子によって生成される様々な信号パターンで動作する。限られたリソースのプラットフォーム(ラップトップやエッジデバイスなど)上で即時のフィードバックを提供するため、現場技術者は結果を受け取るまでに数秒以上待つ必要がなく、従来の技術よりも迅速かつ容易に現場技術者が地中ファイバケーブルの位置を特定できるようになる。
【0036】
本開示と従来技術との間の限定された相違点を強調することができる。
【0037】
既存のアプローチや先行技術の問題点/相違点
【0038】
手動位置特定とマッチング
【0039】
手動検索処理は、人間が目視検査することによって実行できるが、このような操作には余分な労力と時間がかかり、エラーが発生しやすい。
【0040】
画像処理によるパターン認識
【0041】
この処理を自動化するために、いくつかの画像パターン検出方法を採用することができる。しかし、従来のエッジ検出方法は、ウォーターフォール画像上の特定の幅と長さの垂直バーなど、単純な形状と構造を持つパターンにしか機能しない。このパターンは、バイブレータを使用してファイバの近くを一定時間連続的に振動させることによって生成できる。試験場所によっては、ウォーターフォール画像に連続的な交通信号や周囲からのその他の振動信号が含まれるため、ノイズが非常に多くなる可能性がある。単純な形状パターンを他のソースと区別するには、十分な長さと幅が必要であり、これにより試験装置と試験時間の長さに対する要件が増える。従来の画像パターン検出器は、特殊な構造パターンの設計が難しく、様々な条件下で一貫した結果を得ることができず、複雑さが計算性能に悪影響を及ぼす。
【0042】
ニューラルネットワークなどの教師あり学習アプローチ
【0043】
ニューラルネットワークベースの画像パターン検出器は、十分な数の良質な訓練例を使用して事前にモデルが訓練されている場合に、良好な性能を発揮することができる。しかし、このような訓練は、ウォーターフォール画像にはそのような信号は自然には存在しないため、様々な場所の様々な条件での十分な大規模なデータセットを収集するために収集に時間と労力の両方がかかる。
【0044】
これらのアプローチとは対照的に、高速時系列テンプレートマッチングのための本発明のAIモジュールは、ルート全体(数十キロメートル)の大規模なウォーターフォール画像内で信号パターンを自動的に検出する。当業者であれば理解できるように、このような動作には、アノテーション付きの訓練データが不要であること、カスタマイズされた信号パターンで動作すること、センシング距離、環境要因、振動源の強度によって生じる変動に対して堅牢であること、限られたコンピューティングリソースしか必要とせずに即時/リアルタイムの結果を提供することなどの特徴がある。
【0045】
当業者であれば理解し認識するように、これらの特徴は多くの実用的な利点をもたらす。
【0046】
低誤報率
【0047】
本発明の技術は訓練データを必要とせず、任意のパターンで動作できるので、合成信号のセットを事前に設計し、過去の毎日のウォーターフォールデータで検証して、最も低い偽陽性率をもたらすいくつかの候補パターンを選択することができる。
【0048】
カスタマイズ可能なパターン
【0049】
信号が後で変化したとしても、本発明の技術はモデルを再訓練することなくシームレスに移行する。
【0050】
動作時間と装置重量の削減
【0051】
設計された信号パターンは、より短く弱いパターンや、ノイズの多い環境から捕捉されたパターンであっても、より容易に検出される。その結果、携帯可能な小型の振動源を信号源として使用することで、全体的なタスクを容易に完了できる。現場作業員は、現在の代替品よりも持ち運びが容易な、より軽量で小型でコンパクトな振動源装置を高く評価する。残念ながら、このようなバイブレータは通常一貫性がなく、他のソースによって簡単に影響を受け、その結果、ウォーターフォール画像に壊れたパターンが現れる。
【0052】
リアルタイムフィードバック
本発明の技術およびシステムは軽量であるため、必要なのは中級レベルのラップトッププロセッサのみである。その結果、必要な計算はローカルで実行され(クラウドコンピューティングシステムにデータを送信する必要はない)、ユーザーにとって重要な利点であるリアルタイムの結果が現場でリアルタイムに利用できるようになる。その結果、ユーザーは対象のケーブルが地中にあるか否かを即座に知ることができる。
【0053】
図2は、本開示の態様による方法の概要を示す概略図である。この図を参照すると、ハードウェア要素には、次のものが含まれていることがわかる。
【0054】
光ファイバ。既存の敷設された通信用ファイバケーブル、または新しく敷設された専用ファイバを使用できる。
【0055】
分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)。光ファイバに沿った振動信号を検出し、ウォーターフォール信号画像をリアルタイムで連続的に生成できる、DASまたはDVSとすることができる。
【0056】
信号源として機能する、ハンマードリルやバイブレータなどの携帯型振動装置。
【0057】
バイブレータを予め定義されたモードとして動作させたり、現場の対象信号を収集するためのオーディオ記録装置として動作させたりすることができるプログラム可能なコントローラ。
【0058】
AIの分析手順には以下が含まれる。
【0059】
生のウォーターフォールデータ上で対象の信号パターンを検索する時系列テンプレートマッチング手順。時系列テンプレートマッチング手順は、ウォーターフォール画像上のN個の領域を出力する。N個の領域の1つは試験用バイブレータの振動に対応する信号を含む、または、N個の領域のいずれも試験用バイブレータの振動に対応する信号を含まない。これは本発明の重要な要素であり、このモジュールは事前訓練なしで任意の信号パターンで動作することができ、計算はリアルタイムで結果を提供するのに十分に効率的である。
【0060】
前のモジュールからのN個の領域を処理する領域選択手順。このモジュールは、プローブバイブレータによって変更された信号を含む領域を選択する。プローブバイブレータが監視ファイバの変形を変更しない場合は、どの領域も選択されない。
【0061】
動作手順は以下のように進行する。
【0062】
ステップ1:DFOSシステムを使用してファイバケーブル周囲の振動を監視する。
【0063】
リアルタイム監視のために、現場ファイバをリモート端末のDFOSシステムに接続する。
【0064】
ステップ2:パターン設計および信号制御
【0065】
ウォーターフォール画像の視認性を損なうことなくバイブレータの動作時間を短縮するために、特別なパターンを使用することができる。この主なアイデアは、バイブレータ装置の振動リズムを制御できるメトロノームをプログラムすることであり、このような振動リズムによってウォーターフォール画像上に固有の信号パターンを生成することができる。
【0066】
パターンプールを設計し、検出率を最大化する。
【0067】
このステップの目的は、最小の長さで最大の一意性を有する特別なパターンを生成することである。信号を設計する際には、バイブレータの特性(慣性など)とDFOSの特性を考慮する必要がある。例えば、10Hzの矩形波を生成しても、この速度でバイブレータを動作させるように制御することは不可能であるため意味が無く、DFOSのパルスレートが低い場合は、このようなパターンがウォーターフォール画像に保存されない可能性がある。
【0068】
パターンの振幅は任意であり、正規化ステップが組み込まれたメトリックとしてピアソンの相関係数を有利に使用するため、検索結果には影響がないことに留意されたい。
【0069】
図3は、本発明の態様による、100Hzのサンプリングレートを有する、同じ長さのオン/オフサイクルを有する4秒周期の例示的な周期的方形波信号のグラフである。
【0070】
図4は、本開示の態様による、100Hzのサンプリングレートを有し、同じ長さのオン/オフサイクルを有する4秒周期の例示的な周期的方形波信号のグラフである。
【0071】
周囲データを使用してパターンを選択し、誤警報率を最小化する。
【0072】
過去の実世界データをテストデータとして使用して、各設計パターンの一意性を評価する。します。一意性は、パターンと相関の高いサブシーケンスの数として定義される。試験データは、様々な種類のバックグラウンドソースからの様々な周囲信号をカバーするために可能な限り完全である必要がある。
【0073】
ステップ3:バイブレータを信号源として使用して、設計された振動パターンを生成する。
【0074】
このステップでは、バイブレータが動作するときにDFOSによって捕捉された信号が設計されたパターンと高度に相関するように、設計されたパターンに基づいてバイブレータ装置をプログラムする。これは、メトロノームなどの別のハードウェアを使用して、装置のオン/オフサイクルの期間を制御することによって実行することができる。
【0075】
図5(A)および
図5(B)は、本開示の態様によるZ正規化で処理した後に重ねられた指定パターンを有する実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフである。
図5(A)は、振動信号とパターンが94%相関している理想的なケースである。
図5(B)は、交通騒音によって信号に悪影響を及ぼし、パターンとの相関がわずか41%である平均的なケースである。
【0076】
ステップ4:テンプレートマッチング
【0077】
図5(A)および
図5(B)では、各要素の高レベルな概要を示す。これらの図に示すように、テンプレートマッチングモジュールは、本発明のソフトウェアの重要な要素である。設計されたパターンを有する2Dマトリックスであるウォーターフォール画像を処理し、パターンテンプレートと相関するすべての信号を見つけることができる。
【0078】
次に、分散型光ファイバセンシングデータでテンプレートマッチングを使用する方法について詳しく説明する。
【0079】
ウォーターフォールデータの説明
【0080】
当業者であれば理解できるように、動作中のDFOSシステムから生成された例示的なウォーターフォール画像では、横軸はファイバ上の異なるセンシング位置(収集されたセンシング点)を表し、縦軸は異なるタイムスタンプを表し、原点は、この画像が生成された最新の瞬間である。ウォーターフォール画像上の各画素(x,y)は、時間yにおけるセンシング点xでの信号の振幅である。各列の画素は、時系列シーケンスのサンプルとして扱うこともできる。ウォーターフォール画像に合計N列がある場合は、N個の時系列が存在することになり、これらのN個の時系列にテンプレートマッチングを適用する。
【0081】
時系列類似度検索
【0082】
このタスクでは、テンプレートマッチングにピアソンの相関関係に基づく類似度検索アルゴリズムを使用する。ピアソンの相関係数を指標として使用することには、いくつかの利点がある。
【0083】
第一に、DTWのようなElastic検索ではなく、ロックステップ検索に基づいている。ロックステップ検索は、
図4(A)および
図4(B)に示すように1対1の調整が必要なこのタスクにより適している。
【0084】
第二に、絶対値をとるユークリッド距離とは異なり、相関は2つの系列間の相対的な傾向のみを考慮する。これは、同じバイブレータによって生成される信号の振幅は、地中の地質環境が異なる場所では異なるため、非常に重要である。
【0085】
最後に、計算の観点から、このアルゴリズムは非常に効率的であり、リアルタイム処理が可能である。
【0086】
検索処理
【0087】
次に、検索処理がどのように実行されるかを説明する。
【0088】
検索対象としてクエリが必要であり、これを「q」と記し、長さがmであると仮定すると、アルゴリズムがクエリを検索する検索空間として、長さnのより長い時間検索「ts」が必要である。検索処理は、tsに保持されるスライディング窓を使用して実行されるが、ピアソンの相関をメトリックとして使用するため、このスライディング窓の長さはqと同じである必要がある。このスライディング窓は、最初は指標0から始まり、tsの指標0から指標m-1までの要素をカバーする。各ステップiで、前の窓の最初の要素を除外し、指標m-1+iの要素をカバーする。
図6は、スライディング窓がどのように移行するかを示している。
【0089】
図6は、本開示の態様による、クエリに対して最大の相関を提供するスライディング窓の位置を見つけるために、tsにおけるすべてのn-m+1のスライディング窓を反復する例示的なスライディング窓を示す。
【0090】
各スライディング窓について、スライディング窓内の要素とクエリとの間の相関関係を計算する。クエリとの相関が最大となるスライディング窓の位置を見つけるために、tsの全てのn-m+1のスライディング窓を反復し、このスライディング窓のサブシーケンスがtsのクエリに最も類似した時系列であると見なす。
【0091】
図7(A)および
図7(B)は、本開示の態様による、ウォーターフォール画像からの実際の振動信号の振幅対時間の一対のグラフであり、
図7(A)の垂直線は、サブシーケンスがクエリに最も類似するスライディング窓の開始位置および終了位置であり、
図7(B)はクエリおよびサブシーケンスのオーバーレイの両方を示している。
【0092】
次に、ウォーターフォール画像の各列に対して同じ操作を実行する。各列の最も類似したサブシーケンスの位置とピアソンの相関値は、以下の手順でさらに処理するために保存される。
【0093】
性能の最適化
【0094】
100kmの光ファイバケーブルの40秒の時間フレームのウォーターフォール画像は2500万画素を含むので、リアルタイム処理を実現するには時間効率を最適化する必要がある。一般的な時系列類似度検索のための最新のアルゴリズムはMASSである。MASSは、
【数1】
の時間複雑度(time complexity)と、
【数2】
の補助空間複雑度(auxiliary space complexity)を持ち、nは長い時系列の長さ、mはクエリの長さである。MASSのコア:周波数領域の乗算を使用して時間領域の畳み込みを計算し、データをバッチに分割してCPUキャッシュを最大限に活用する。
【0095】
構造的には、入力データのサイズとハードウェアプラットフォームに基づいて最適なバッチサイズを推定する自動化された手順が本発明の手順に組み込まれている。地中光ファイバの位置特定アプリケーションに向けた最適化された実装は、大幅に高速化されている。これにより、通常のラップトップ上でローカルにリアルタイム処理を行うことができる。カスタマイズされた実装とMASSのオープンソース実装の性能比較が最も良好である。
【0096】
要約すると、AIモデルで採用されている本発明の手順は、ウォーターフォール画像の各列のテンプレートに最も類似したサブシーケンスを発見する。ウォーターフォール画像にN個の列がある場合、N個のタプルが生成される。各タプルには、列指標、パターンに最も相関するサブシーケンスの開始指標と終了指標、および上記のサブシーケンスとパターンの相関値という情報が保持される。
【0097】
ステップ4:領域推定
【0098】
前のステップの結果に基づいて、空間的に連続しており、同じ時間窓内で、クラスター内のすべてのシーケンスが高度に相関しているシーケンスのクラスターを見つけたいと考えている。例えば、このようなクラスターは、ウォーターフォール画像上で白い線で囲まれた領域として表現することができる。次のステップで対象の振動信号を推定するときに、領域の方が個々のシーケンスよりも情報量が多いため、個々のサブシーケンスではなく領域が最終的な対象である。このような領域が存在するのは、複数のセンシング点を含むファイバケーブルの範囲に外乱が影響するからである。
【0099】
このような領域を推定するために、前のステップの結果を利用する。相関値に基づいて降順でタプルを反復し、必要な領域数に達すると反復は停止する。各タプルには、サブシーケンスの列指標、行指標、およびピアソンの相関値が記録される。各タプルについては、
図8のフロー図に従う。
【0100】
図8は、本開示の態様によるタプル反復を示す例示的なフロー図を示す。
【0101】
位置特定された領域をより完全にするために、合成設計パターンの代わりに実際のシーケンスをテンプレートとして使用してその隣接空間を検索する。理想的な状況(高SNRおよび低ノイズ)の合成設計パターンも正常に機能するが、ほとんどの場合、信号は交通などの他のバックグラウンドノイズによって歪んでしまう。
【0102】
ステップ5:領域選択
【0103】
この最後のステップでは、対象の振動信号に対応する領域を選択するか、前のステップの領域のいずれも振動信号に対応していない場合は何も選択しない。
【0104】
このステップの2つのアプローチを説明する。1つは閾値に基づく方法であり、もう一つは領域の重複による方法である。
【0105】
閾値に基づくアプローチ
【0106】
閾値に基づく方法では、まず各領域について以下の値、すなわちSNR、領域ピアソン相関値、および自己相関値を計算して閾値に基づいて決定する。
【0107】
SNRの場合、この領域と周囲の領域の信号対雑音比。次に計算される値は、設計されたパターンに対する領域の類似度であり、これは、設計されたパターンに対するこの領域の空間および時間で平滑化されたサブシーケンスのピアソンの相関値として計算される。空間平滑化シーケンスは、領域内の各列からの時系列全体を(ベクトルで)追加し、列数で割ることによって生成される。次に、空間平滑化されたシーケンスに対してスライディング平均窓を使用して時間的平滑化を行う。
【0108】
上記の計算と同様に、上位相関シーケンスと時空間平滑化バージョンの両方を計算する。ここでは、サブシーケンスの代わりに完全な時系列が使用される。これは、信号が通常、周囲の領域からの固定された振動源によって生成され、通常は長時間持続するため、より広い時間範囲を考慮することができる。結果はゼロで埋められた設計パターンの自己相関と比較され、類似度は依然としてピアソンの相関によって測定される。
【0109】
最後に、各測定に閾値を設定し、領域が対象の領域であるかどうか、言い換えれば、この領域内の信号がプローブバイブレータによって引き起こされたかどうかを評価する。
【0110】
領域の重複
【0111】
別のアプローチは領域の重複であり、これは、同じ場所で2つ以上の設計されたパターンを別々に探索することによって行われる。この背後にある考え方は、設計されたパターンがウォーターフォール画像上の同じ場所に表示されるはずであるということである。また、1つのバックグラウンドノイズ領域がすべての設計パターンと相関する可能性は極めて低い、つまり、異なる設計パターンの上位の上位数個の推定領域は対象領域を除いて分離する必要がある。
【0112】
図9は、本開示の態様によるシステムおよび方法の全体的な動作を示す例示的なフロー図である。
【0113】
この図を参照すると、本発明の手順では、まず、DFOSシステムを制御(中央)局から現場試験ファイバケーブルに接続することに留意する。
【0114】
次に、技術者が振動発生器を携えて現場調査を行う。
【0115】
このような調査は、技術者が、例えば現場試験ファイバが配備されているマンホール内で、試験ファイバケーブル経路の近くで振動発生器を作動させることを含む。この操作は、中央オフィスからWifi(登録商標)/LTE(登録商標)/5Gなどを介した現場の振動発生器に対する固有のオン/オフ(振動)パターン/符号(例えば、5秒間オン、5秒間オフなど)という名前付きシーケンスパターンの生成/送信を含む。
【0116】
振動パターンの結果として、現場の試験ファイバに沿って発生する道路交通およびその他の振動源などの周囲の騒音とともに、DFOS動作中に検出される特徴的な散乱が発生する。
【0117】
DFOSおよび付随する分析システムの動作は、中央局によって提供され、現場の振動源によって機械的に影響され、現場の試験ファイバによって検出された固有の振動パターンを認識する。機械学習手順のAIアルゴリズムは、現場で生成された振動に関連する距離を識別することができる。
【0118】
これらの距離は、ケーブル距離データのGPS座標と相関付けられ、他の項目の中でも、グラフィカルな位置表示/データを生成する。
【0119】
このように決定されたグラフィカルな位置は、その後、グラフィカルユーザーインターフェイス上に表示され、後続の技術者をそのような位置に誘導することができる。
【0120】
ここまで、いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者であれば、本発明の教示がそれに限定されないことを認識するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】