(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】抗CD122抗体、抗CD132抗体、及び関連する二重特異性結合性タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241029BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241029BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241029BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241029BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241029BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/12
A61P37/02
A61P35/00
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525790
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2022127036
(87)【国際公開番号】W WO2023078113
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/128208
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520428270
【氏名又は名称】シャンハイ エピムアブ バイオセラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,シーヨン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,リニ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ダンキン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ルイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
CD122に結合する能力を有する抗体、CD132に結合する能力を有する抗体、並びにその抗原結合性断片で調製されたFIT-Ig及びduobodyフォーマットでの二重特異性CD122/CD132結合性タンパク質が提供される。抗体及び二重特異性結合性タンパク質は、疾患、例えばT細胞機能不全障害又はがんを処置又は予防するために有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6つのCDR、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含む、CD122に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合性断片であって、
CDR-H1がDYVIS(配列番号44)の配列を含み;
CDR-H2が、EIYPGDGNTYYNEMFKG(配列番号45)、EIYPGDAQTYYNEMFKG(配列番号47)、EIYPGDANTYYNEMFKG(配列番号48)、又はEIYPGEGNTYYNEMFKG(配列番号49)の配列を含み;
CDR-H3がGSYTYDNYAMDF(配列番号46)の配列を含み;
CDR-L1が、RSSQNIVHSNGNTYLE(配列番号50)、RSSQNIVHSEGQTYLE(配列番号53)、RSSQNIVHSNANTYLE(配列番号54)、RSSQNIVHSNGQTYLE(配列番号55)、RSSQNIVHSNAQTYLE(配列番号56)の配列を含み;
CDR-L2がKVSNRFS(配列番号51)の配列を含み;及び
CDR-L3がFQGSHIPWT(配列番号52)の配列を含み、
場合によりCDRがKabat番号付けにしたがって定義される、
単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項2】
抗体が可変重鎖ドメインVH及び可変軽鎖ドメインVLを含み、
VHドメインが、配列番号3、63、64、若しくは65の配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、及び/又はVLドメインが、配列番号4、66、67、68、若しくは69の配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む;
あるいは
VHドメインが、配列番号21~29のいずれか1つから選択される配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、及び/又はVLドメインが、配列番号30~43のいずれか1つから選択される配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む、
請求項1に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項3】
抗体がキメラ又はヒト化抗体であり、場合により抗体がヒト化抗体であり、
並びにさらに場合により、抗体のVHドメインが、Kabat番号付けにしたがって、アミノ酸残基1Eと、28T、30T、38R、48M、67V、69M、72N、73T、91Yから選択される1~9個の残基とを含み;並びにVLドメインが、Kabat番号付けにしたがって、7S、36F、37Q、及び46Rから選択される1~4個のアミノ酸残基を含む、
請求項1に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項4】
抗体が、
からなる群から選択されるVH及びVL配列の組合せを含み、
場合により抗体が、配列番号21の配列を含むVHドメイン及び配列番号41の配列を含むVLドメインを含む、
請求項1に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項5】
抗体が、Fc領域、例えば、配列番号70のアミノ酸配列を有するFc領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片を含む融合物又はコンジュゲート。
【請求項7】
生物学的試料中のCD122を検出する方法であって、生物学的試料を請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された抗体若しくは抗原結合性断片又は請求項6に記載の融合物若しくはコンジュゲートと接触させることを含む、方法。
【請求項8】
6つのCDR、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含む、CD132に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合性断片であって、
CDR-H1がSYWMH(配列番号57)の配列を含み;
CDR-H2がHIYLGGGATNYAEKFRS(配列番号58)の配列を含み;
CDR-H3がSQPYYYGMDS(配列番号59)の配列を含み;
CDR-L1がRASQDISNYLN(配列番号60)の配列を含み;
CDR-L2がYKSRLHS(配列番号61)の配列を含み;及び
CDR-L3がHQGHTIPFT(配列番号62)の配列を含み、
場合によりCDRがKabat番号付けにしたがって定義される、
単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項9】
抗体が可変重鎖ドメインVH及び可変軽鎖ドメインVLを含み、
VHドメインが、配列番号5の配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、及び/又はVLドメインが、配列番号6の配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む;
あるいは
VHドメインが、配列番号14~18のいずれか1つから選択される配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、及び/又はVLドメインが、配列番号19若しくは20のいずれか1つから選択される配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、
場合により、抗体のVHドメインが、Kabat番号付けにしたがって、アミノ酸残基1Eと、37M、38K、48I、66K、67A、69L、71A及び78Aから選択される1~8個のアミノ酸残基とを含み;並びにVLドメインが、Kabat番号付けにしたがって、70E及び71Yから選択される1~2個のアミノ酸残基を含み、
場合により、抗体が、
からなる群から選択されるVH及びVL配列の組合せを含み、
場合により抗体が、配列番号14の配列を含むVHドメイン及び配列番号19の配列を含むVLドメインを含む、
請求項8に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項10】
抗体がキメラ又はヒト化抗体であり、場合により抗体がヒト化抗体である、請求項8に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項11】
抗体が、Fc領域、例えば、配列番号70のアミノ酸配列を有するFc領域を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片を含む融合物又はコンジュゲート。
【請求項13】
生物学的試料中のCD132を検出する方法であって、生物学的試料を請求項8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体若しくは抗原結合性断片又は請求項12に記載の融合物若しくはコンジュゲートと接触させることを含む、方法。
【請求項14】
請求項1~5及び8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片をコードする核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項1~5及び8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体又は抗原結合性断片をコードする核酸分子を発現する宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~5及び8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体若しくは抗原結合性断片、請求項6及び12に記載の融合物若しくはコンジュゲート、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、又は請求項16に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項18】
CD122に特異的に結合する第1の抗原結合性部位、及びCD132に特異的に結合する第2の抗原結合性部位を含む、CD122及びCD132に特異的に結合する二重特異性結合性タンパク質であって、
第1の抗原結合性部位が、6つのCDR、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1がDYVIS(配列番号44)の配列を含み;
CDR-H2が、EIYPGDGNTYYNEMFKG(配列番号45)、EIYPGDAQTYYNEMFKG(配列番号47)、EIYPGDANTYYNEMFKG(配列番号48)、若しくはEIYPGEGNTYYNEMFKG(配列番号49)の配列を含み;
CDR-H3がGSYTYDNYAMDF(配列番号46)の配列を含み;
CDR-L1が、RSSQNIVHSNGNTYLE(配列番号50)、RSSQNIVHSEGQTYLE(配列番号53)、RSSQNIVHSNANTYLE(配列番号54)、RSSQNIVHSNGQTYLE(配列番号55)、RSSQNIVHSNAQTYLE(配列番号56)の配列を含み;
CDR-L2がKVSNRFS(配列番号51)の配列を含み;及び
CDR-L3がFQGSHIPWT(配列番号52)の配列を含み、
場合により、第1の抗原結合性部位が、請求項2~4のいずれか一項において定義されるVHドメイン及びVLドメインを含み;
並びに/又は
第2の抗原結合性部位が、6つのCDR、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、
CDR-H1がSYWMH(配列番号57)の配列を含み;
CDR-H2がHIYLGGGATNYAEKFRS(配列番号58)の配列を含み;
CDR-H3がSQPYYYGMDS(配列番号59)の配列を含み;
CDR-L1がRASQDISNYLN(配列番号60)の配列を含み;
CDR-L2がYKSRLHS(配列番号61)の配列を含み;及び
CDR-L3がHQGHTIPFT(配列番号62)の配列を含み、
場合により、第2の抗原結合性部位が、請求項8~10のいずれか一項において定義されるVHドメイン及びVLドメインを含み;
CDRがKabat番号付けにしたがって定義される、
二重特異性結合性タンパク質。
【請求項19】
第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を含み、
第1のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ、VL
A-CL-VH
B-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含み;第2のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ、VH
A-CH1を含み;第3のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ、VL
B-CLを含み;
VL
A-CLがVH
A-CH1と対になって、第1の抗原Aに特異的に結合する第1のFabを形成しており、及びVL
B-CLがVH
B-CH1と対になって、第2の抗原Bに特異的に結合する第2のFabを形成しており、並びに
第1の抗原A及び第2の抗原BがそれぞれCD122及びCD132であり、場合により第1の抗原AがCD122であり、及び第2の抗原BがCD132であり;
半分子としての前記3つのポリペプチド鎖が他の半分子としての別の前記3つのポリペプチド鎖と会合してFIT-Igタンパク質を形成している、
請求項18に記載の二重特異性結合性タンパク質。
【請求項20】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体及び請求項8~10のいずれか一項に記載の抗体のFabアーム交換に基づくデュオボディフォーマットにおいて、場合により(i)配列番号10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む重鎖、及び配列番号11のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む対になる軽鎖、並びに(ii)配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む重鎖、及び配列番号13のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む対になる軽鎖を有する、請求項18に記載の二重特異性結合性タンパク質。
【請求項21】
第1のポリペプチド鎖が、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、
第2のポリペプチド鎖が、配列番号8のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、及び
第3のポリペプチド鎖が、配列番号9のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む、
請求項19に記載の二重特異性結合性タンパク質。
【請求項22】
以下の特徴:
(i)CD122発現細胞に結合し、前記細胞結合能力が、細胞ベースアッセイにおいてフローサイトメトリーにより測定された場合に、約5nM若しくはそれ未満、4nM若しくはそれ未満、3nM若しくはそれ未満、2nM若しくはそれ未満、又は1nM若しくはそれ未満のEC50により反映されること;
(ii)CD132発現細胞に結合し、前記細胞結合能力が、細胞ベースアッセイにおいてフローサイトメトリーにより測定された場合に、約80nM若しくはそれ未満、60nM若しくはそれ未満、40nM若しくはそれ未満、20nM若しくはそれ未満、又は10nM若しくはそれ未満のEC50により反映されること;
(iii)CD122及びCD132を含む複合体への結合においてシグナル伝達を刺激すること;
(iv)WAVEsystem又はBiacoreアッセイにより測定された場合に、約30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、又は5nM未満のK
DでヒトCD122及びヒトCD132に結合し;並びに約100nM、80nM、60nM、40nM、20nM、又は10nM未満のK
DでカニクイザルCD122及びカニクイザルCD132と交差反応性であること;
(v)CD122及びCD132を発現する細胞の増殖を刺激すること;
(vi)制御性T細胞よりもCD8+及び/又はCD4+ T細胞の増殖を優先的に刺激すること;
(vii)in vivo及び/又はin vitroでエフェクターT細胞及び/又はNK細胞の抗腫瘍免疫を向上させること、例えば、腫瘍負荷/成長/細胞拡大を低減させることであって、場合により前記抗腫瘍免疫が抗腫瘍細胞傷害性を含むこと
のうちの1つ以上を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載の二重特異性結合性タンパク質。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか一項に記載の二重特異性結合性タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸分子、又は請求項24に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~6及び8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体若しくは抗原結合性断片、又は請求項19~22のいずれか一項に記載の二重特異性結合性タンパク質を調製する方法であって、
請求項15又は請求項25に記載の宿主細胞を、抗体、抗原結合性断片、又は二重特異性結合性タンパク質の産生を可能とする条件下で培養すること;及び
培養物から抗体、抗原結合性断片、又は二重特異性結合性タンパク質を回収すること
を含む、方法。
【請求項27】
請求項19~22のいずれか一項に記載の二重特異性結合性タンパク質、請求項23に記載の核酸、請求項24に記載のベクター、又は請求項25に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項28】
エフェクターT細胞及び/又はNK細胞の機能が障害され、並びに免疫応答が下方調節される疾患を処置又は予防する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項17又は請求項27に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
対象がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
疾患が、T細胞機能不全障害又はがん、例えば、黒色腫、転移性黒色腫、腎細胞癌、卵巣がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、脳のがん、頭頸部がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮頸癌、肝細胞癌、前立腺がん、若しくは膀胱がんである、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CD122に結合する能力を有する抗体、CD132に結合する能力を有する抗体、及び二重特異性結合性タンパク質、例えば二重特異性CD122/CD132結合性タンパク質(例えば、FIT-Ig及びデュオボディフォーマット)に関する。本明細書に開示される抗体及び二重特異性結合性タンパク質は、疾患、例えばT細胞機能不全障害又はがんを処置又は予防するために有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
IL-2は、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む異なる免疫細胞を調節する多面的サイトカインである。IL-2の2つの異なる受容体複合体が異なる細胞タイプ上に同定された:アルファ鎖(IL-2Rα、CD25としても公知)、ベータ鎖(IL-2Rβ、CD122としても公知)及びガンマ鎖(IL-2Rγ、CD132としても公知)から構成される高親和性(KD約10pM)IL-2受容体複合体;CD122及びCD132から構成される中親和性(KD約1nM)受容体。高親和性複合体は、免疫抑制性制御性T細胞(Treg)上に構成的に発現され、活性化されたT細胞上に一過的に発現されるが、中親和性受容体は、メモリー表現型(MP)CD8+ T細胞及びNK細胞上に典型的には発現される。
【0003】
CD122及びCD132のヘテロ二量体化は、IL-2への結合における有効なシグナル伝達のために必要であると考えられる。シグナル伝達は、ヤヌスキナーゼ(JAK)-STAT経路、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)-AKT経路、及びマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を含む、いくつかの細胞内経路を介して起こる(Boyman, O. & Sprent, J. Nat. Rev. Immunol. 12, 180-190, 2012)。CD25は、細胞質キナーゼ活性化ドメインの欠如に起因してIL-2シグナル伝達経路に直接的に関与しない。
【0004】
組換えヒトIL-2(rhIL-2)が開発されており、転移性黒色腫及び腎細胞癌の処置のために承認されている。しかし、その臨床での使用は、その短い半減期、並びに血管漏出症候群(VLS)、高血圧、及び肝臓毒性を含む重度の有害効果により限定されている。Krieg et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. 107, 11906-11911, 2010)によれば、血管漏出毒性は、血管及び肺内皮細胞上の高親和性IL-2受容体複合体の発現に関し、肺浮腫に繋がる。IL-2誘導性肺浮腫は、CD25の枯渇によりin vivoで大きく低減させることができた。他方、がん療法におけるIL-2の有用性は、Treg細胞上の高親和性受容体へのIL-2の優先的な結合によりさらに損なわれる可能性があり、これは、腫瘍特異的エフェクターT細胞の拡大増殖及び活性化を阻害し、そのため抗腫瘍有効性を鈍化させ得る(Sun, Z. et al. Nat. Commun. 10:3874, 2019)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEG化又は他の同等の技術によりCD25への結合を回避し、半減期を延長させるrhIL-2バリアントを設計するための様々な努力が為されている。これらの設計されたタンパク質の一部は所望される機能活性を有するが、それらの多くはin vivoで高いレベルの免疫原性を抱えている(Verhoef, J. J. F. et al. Drug Discov. Today 19, 1945-1952 (2014))。したがって、所望される生物学的活性及び安全性プロファイルを有するIL-2経路の抗腫瘍アゴニストを作出する必要性が当分野において依然として存在する。
【0006】
IL-2Rβ(CD122)及びIL-2Rγ(CD132)に同時に結合するがIL-2Rα(CD25)に結合せず、したがってIL-2Rαに関する問題を回避しながらIL-2の活性を有する二重特異性抗体が非常に所望され、前記二重特異性抗体は、IL-2RβとIL-2Rγとの会合及び下流のシグナル伝達を促す生物学的活性を抗体分子の安全性と共に兼ね備えるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、T-regを優先的に活性化させることなくヒト免疫エフェクター細胞においてIL-2Rシグナル伝達の活性化を誘導して、エフェクターT細胞及びNK細胞の活性化に向けて均衡をシフトさせるための新規の抗CD122抗体、抗CD132抗体、並びにIL-2Rβ(CD122)及びIL-2Rγ(CD132)に同時に結合する操作された二重特異性タンパク質を提供することにより上記の必要性に対処する。
【0008】
特に、一部の実施形態において、本開示は、抗CD122単一特異性抗体、例えば、CD122に対する高い結合能力を有する抗CD122単一特異性抗体を提供する。一部の実施形態において、本開示はまた、CD132に結合する単一特異性抗体、例えば、高い親和性でCD132に結合する単一特異性抗体を提供する。一部の実施形態において、本開示はまた、優先的にCD122及びCD132からなる中親和性IL-2Rβγ受容体に結合する能力を有するCD122/CD132二重特異性結合性タンパク質を提供する。一部の実施形態において、CD122/CD132二重特異性結合性タンパク質は、PCT国際公開WO2015/103072に記載されるようなFabs-in-Tandem免疫グロブリン(FIT-Ig)のフォーマット、又はLabrijn et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2013) 110(13):5145-50に記載されるようなデュオボディ(duobody)のフォーマットである。一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性多価結合性タンパク質は、CD122及びCD132を含む複合体への結合においてシグナル伝達を刺激するため、制御性T細胞よりもエフェクターT細胞及び/又はNK細胞の増殖を優先的に刺激するため、並びにin vivo及び/又はin vitroでエフェクターT細胞及び/又はNK細胞の抗腫瘍免疫を向上させるために有用である。一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性多価結合性タンパク質は、腫瘍負荷/成長/細胞拡大を低減させるために有用である。
【0009】
一部の実施形態において、本開示はまた、本明細書に記載される抗CD122及び抗CD132抗体並びにCD122/CD132二重特異性結合性タンパク質を製造及び使用する方法を提供する。様々な組成物、例えば、エフェクターT細胞及び/若しくはNK細胞の機能障害並びに/又は免疫応答の下方調節と関連付けられる個体における障害を処置又は予防する方法において使用し得る組成物もまた開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2はデュオボディ(Duobody)構造の概略図である。
【
図3】
図3は、CD122/CD132二重特異性抗体FIT2019-86bは、組換えCD122(三角形)及びCD132(菱形)タンパク質に結合するが組換えCD25(黒丸)タンパク質には結合しないことを示す。
【
図4A】
図4A及び
図4Bは、FIT2019-86b(三角形)及びDuo2019-86(逆三角形)は細胞表面CD122(
図4A)及びCD132(
図4B)に結合することを示す。
【
図4B】
図4A及び
図4Bは、FIT2019-86b(三角形)及びDuo2019-86(逆三角形)は細胞表面CD122(
図4A)及びCD132(
図4B)に結合することを示す。
【
図4C】
図4C及び
図4Dは、huFIT2019-86b-51は細胞表面CD122(
図4C)、及びCD132(
図4D)に結合することを示す。関連しないhIgGを陰性対照として使用した。
【
図4D】
図4C及び
図4Dは、huFIT2019-86b-51は細胞表面CD122(
図4C)、及びCD132(
図4D)に結合することを示す。関連しないhIgGを陰性対照として使用した。
【
図5】
図5は、FIT2019-86b(三角形)によりCD122/CD132複合体は活性化されるが、Duo2019-86(逆三角形)によっては活性化されないことを示す。
【
図6A】
図6Aは、FIT2019-86b(正方形)並びに参照分子、neo2/15(菱形)、H9(白丸)及びhIL-2(三角形)によるCD8+ T細胞上のpSTAT5の活性化を示す。
【
図6B】
図6Bは、huFIT2019-86b-51(黒丸)並びに参照分子、neo2/15(逆三角形)、H9(黒四角)及びhIL-2(三角形)によるCD8+ T細胞上のpSTAT5の活性化を示す。
【
図7A】
図7Aは、FIT2019-86b(正方形)並びに参照分子、neo2/15(菱形)、H9(白丸)及びhIL-2(三角形)によるTreg細胞上のpSTAT5の活性化を示す。
【
図7B】
図7Bは、huFIT2019-86b-51(黒丸)並びに参照分子、neo2/15(逆三角形)、H9(黒四角)及びhIL-2(三角形)によるTreg細胞上のpSTAT5の活性化を示す。
【
図8A-C】
図8A~8Cは、各々のグループ化されたバーの下に示されるようなFIT2019-86b、huFIT2019-86b-32並びに参照分子、neo2/15、H9及びIL-2への曝露におけるCD8+ T細胞(
図8A)、CD4+ T細胞(
図8B)、及びTreg細胞(
図8C)の増殖プロファイルを示す。
【
図8D-F】
図8D~8Fは、各々のグループ化されたバーの下に示されるようなhuFIT2019-86b-51、並びに参照分子、neo2/15、H9及びIL-2への曝露におけるCD8+ T細胞(
図8D)、CD4+ T細胞(
図8E)、及びTreg細胞(
図8F)の増殖プロファイルを示す。培地及びCD3/CD28ビーズを対照として使用した。
【
図9】
図9は、FIT2019-86b(逆三角形)及びビヒクル対照(黒丸)で処置された免疫不全M-NSGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルの腫瘍成長曲線を示す。
【
図10】
図10は、FIT2019-86b(逆三角形)及びビヒクル対照(黒丸)で処置された免疫不全M-NSGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルの体重変化を示す。
【
図11】
図11は、1mg/kg、0.3mg/kg、0.1mg/kg及び0.03mg/kgの4つの投薬量におけるhuFIT2019-86b-51、並びにビヒクル対照で処置された免疫不全NCGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルの腫瘍成長曲線を示す。
【
図12】
図12は、1mg/kg、0.3mg/kg、0.1mg/kg及び0.03mg/kgの4つの投薬量におけるhuFIT2019-86b-51、並びにビヒクル対照で処置された免疫不全NCGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルの体重変化を示す。
【
図13】
図13は、1mg/kg及び0.3mg/kgの2つの投薬量におけるhuFIT2019-86b-51、並びにビヒクル対照で処置された免疫不全NCGマウスにおけるNSCLC細胞/PBMC併用移植モデルの腫瘍成長曲線を示す。
【
図14】
図14は、1mg/kg及び0.3mg/kgの2つの投薬量におけるhuFIT2019-86b-51、並びにビヒクル対照で処置された免疫不全NCGマウスにおけるNSCLC細胞/PBMC併用移植モデルの体重変化を示す。
【
図15】
図15は、FIT2019-86b(逆三角形)、IL-2(正方形)及びビヒクル対照(黒丸)で処置されたマウスの体重変化を示す。
【
図16】
図16は、FIT2019-86b、IL-2又はPBS対照の注射後1日目(黒)、4日目(白)及び7日目(水平の縞模様)におけるPBMCのうちのCD8+ T細胞とCD4+ T細胞との比を示す。バーの各々の群は個々のマウスからのデータを表し、すべてのデータは、同じマウスの1日目におけるそれぞれの比に対して正規化した。
【
図17A-B】
図17は、IL2RβへのIL2の結合と競合するhuFIT2019-86b-51及び参照分子の能力を示す。
図17A:IL2を固定化されたチップ上のIL2Rβ(C4.I - C4.R)、IL2Rβ+ huFIT2019-86b-51(C5.I - C5.R)及びランニングバッファー(C6.I - C6.R)の注入;
図17B:IL2を固定化されたチップ上のIL2Rβ(C4.I - C4.R)、IL2Rβ+ IL2(C5.I - C5.R)及びランニングバッファー(C6.I - C6.R)の注入。
【
図17C-D】
図17C:IL2を固定化されたチップ上のIL2Rβ(C4.I - C4.R)、IL2Rβ+ H9(C5.I - C5.R)及びランニングバッファー(C6.I - C6.R)の注入;並びに
図17D:IL2を固定化されたチップ上のIL2Rβ(C4.I - C4.R)、IL2Rβ+ neo2/15(C5.I - C5.R)及びランニングバッファー(C6.I - C6.R)の注入。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、抗CD122抗体、抗CD132抗体、その抗原結合性部分、及び二重特異性結合性タンパク質、例えば、CD122及びCD132のいずれにも結合するFIT-Ig又はデュオボディ(duobody)に関する。本開示の多様な態様は、抗CD122かつ抗CD132抗体及びその抗体断片、ヒトCD122及びヒトCD132に結合するFIT-Ig及びデュオボディ結合性タンパク質、並びにこれらの医薬組成物のほか、このような抗体、機能的抗体断片、及び結合性タンパク質を作製するための核酸、組換え発現ベクター、及び宿主細胞に関する。本開示の抗体、機能的抗体断片、及び二重特異性結合性タンパク質を使用して、in vitro又はin vivoにおいて、エフェクターT細胞及び/若しくはNK細胞の機能を改善し、及び/又は免疫応答をアップレギュレートし、並びに疾患、とりわけ、T細胞機能不全障害又はがんを処置するための方法もまた、本開示により包含される。
【0012】
定義
本明細書で別途規定されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。本明細書と辞書又は外部の定義との間に何らかの潜在性の曖昧さがある場合は、本明細書で提供される定義が優先する。さらに、文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本出願では、「又は」の使用は別途指示されない限り「及び/又は」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」並びに他の形、例えば「含む(includes)」及び「含まれる(included)」の使用は、限定するものでない。同様に、「要素(エレメント)」又は「成分」などの用語は、別途特記されない限り、1つの単位を含む要素及び成分、並びに複数のサブユニットを含む要素及び成分を包含する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載されるKabat番号付けシステムに従って番号付けされ、本明細書中では「Kabatに従う番号付け」と称される。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabat, et al., 1991の647~660頁参照)が、κ及びλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLについて使用され、Kabat EUインデックス番号付けシステム(Kabat, et al., 1991の661~723頁参照)が、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3、本明細書中では、この場合、「Kabat EUインデックスに従う番号付け」と称することによってさらに明確化される)について使用される。
【0014】
ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の配列に関する一般的な情報もまた、Kabatら、1991に記載されている。
【0015】
本明細書中で使用される用語「インターロイキン-2」又は「IL-2」は、特に指示がない限り、任意の脊椎動物、例えば霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)のような哺乳動物などの脊椎動物供与源に由来する任意の天然(native)IL-2をいう。この用語は、プロセシングされていないIL-2、並びに細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のIL-2を包含する。プロセシングされていないヒトIL-2は、成熟IL-2分子には存在しないN末端20アミノ酸シグナルペプチドをさらに含む。
【0016】
本明細書中で使用される用語「CD25」又は「IL-2受容体α」は、特に指示がない限り、任意の脊椎動物、例えば霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)のような哺乳動物などの脊椎動物供与源に由来する任意の天然(native)CD25を指す。この用語は、「全長」でプロセシングされていないCD25、及び細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のCD25を包含する。この用語はまた、CD25の天然に存在するバリアント、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントを包含する。特定の実施形態では、CD25はヒトCD25である。
【0017】
本明細書中で使用される用語「高親和性IL-2受容体」は、受容体γ-サブユニット(共通サイトカイン受容体γ-サブユニット、yc、又はCD132としても公知である)、受容体β-サブユニット(CD122としても公知である)及び受容体α-サブユニット(CD25としても公知である)からなる、IL-2受容体のヘテロ三量体を指す。
【0018】
用語「中親和性IL-2受容体」又は「IL-2受容体βγ」は、α-サブユニットを含まず、γ-サブユニットとβ-サブユニットのみを含むIL-2受容体を指す。
【0019】
「従来(conventional)のCD4+ T細胞」という用語は、制御性T細胞以外のCD4+ T細胞を指す。従来のCD4+メモリーT細胞は、CD4、CD3は発現するが、FOXP3は発現しないことを特徴とする。「従来のCD4+メモリーT細胞」は、従来のCD4+T細胞のサブセットであり、CD45RAを発現する「従来のCD4+ナイーブT細胞」とは対照的に、CD45RAを発現しないことでさらに特徴付けられる。
【0020】
「制御性T細胞」又は「Treg細胞」という用語は、他のT細胞(エフェクターT細胞)の反応を抑制することができるCD4+ T細胞の特殊なタイプを指す。Treg細胞は、CD4、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)及び転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現によって特徴づけられる(Sakaguchi, Annu Rev Immunol 22, 531-62 (2004))。Treg細胞は、腫瘍が発現する抗原を含む抗原に対する末梢の自己寛容の誘導と維持に重要な役割を果たしている。
【0021】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」は、その導出の起源又は供与源のために、その天然の状態でそれに付随する天然に会合している成分に会合していないか、同じ種に由来する他のタンパク質を実質的に含有しないか、異なる種に由来する細胞によって発現されるか、又は天然に存在しないタンパク質又はポリペプチドである。化学合成されるか、又はそれが天然に由来する細胞と異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然に会合している成分から「単離されている」。タンパク質は、当技術分野で周知であるタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に会合している成分を実質的に含有しないようにすることもできる。
【0022】
抗体、結合性タンパク質又はペプチドとの第2の化学種との相互作用に関する用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、その相互作用が第2の化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、タンパク質一般というより特異的なタンパク質構造を認識して結合する。一般的に、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」及び抗体を含有する反応において、エピトープAを含有する分子(又は、遊離の非標識のA)の存在は、抗体に結合する標識されたAの量を低減する。
【0023】
用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すわなち2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖で構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又は、Ig分子の必須のエピトープ結合特性を保持するその任意の機能的断片、変異体、バリアント若しくは誘導体を広く指す。そのような変異体、バリアント又は誘導体の抗体フォーマットは、当技術分野で公知であり、非限定的な実施形態は以下で議論される。
【0024】
完全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略す)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略す)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が間に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置される、3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHドメインの第1、第2及び第3のCDRは、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3として一般的に数え上げられる。同様に、VLドメインの第1、第2及び第3のCDRは、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3として一般的に数え上げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってよい。
【0025】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、それはインタクトな抗体のパパイン消化によって生成することができる。Fc領域は、天然配列Fc領域又は変異型Fc領域であってよい。免疫グロブリンのFc領域は、一般的に2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択で、例えばIgM及びIgE抗体のFc領域の場合には、CH4ドメインを含む。IgG、IgA及びIgD抗体のFc領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。対照的に、IgM及びIgE抗体のFc領域は、ヒンジ領域を欠くが、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインを含む。抗体エフェクター機能を変化させるためにFc部分にアミノ酸残基の代替物を有する変異型Fc領域は、当技術分野で公知である(例えば、Winterら、米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号を参照)。抗体のFc部分は、1以上のエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)並びに/又は抗体及び抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。一部の場合には、これらのエフェクター機能は治療抗体にとって望ましいが、他の場合には、治療目的によっては、不必要であるか、有害でさえあるかもしれない。ある特定のヒトIgGアイソタイプ、特にIgG1及びIgG3は、それぞれFcγR及び補体C1qへの結合を通してADCC及びCDCを媒介する。さらに別の実施形態では、抗体のエフェクター機能が変化するように、抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域で少なくとも1つのアミノ酸残基が置き換えられる。免疫グロブリンの2つの同一の重鎖の二量体化は、CH3ドメインの二量体化によって媒介され、CH1定常ドメインをFc定常ドメイン(例えば、CH2及びCH3)に連結するヒンジ領域の中のジスルフィド結合によって安定化される。IgGの抗炎症活性は、IgG Fc断片のN連結グリカンのシアリル化に依存する。適当なIgG1 Fc断片を作製することができ、それによって、大いに増強された効力を有する、完全に組換えのシアリル化IgG1 Fcを生成するように、抗炎症活性の正確なグリカン必要性が決定された(Anthonyら、Science、320:373-376(2008)を参照)。
【0026】
抗体の関連で「抗原結合部分」、「抗原結合性断片」及び「機能的断片」という用語は互換的に使用され、抗原、すなわち、その部分又は断片が由来する完全長抗体と同じ抗原(例えば、CD122、又はCD132)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片が発揮することができることがわかっている。抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含される結合性断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片);(ii)F(ab')2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価の断片);(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v) 単一の可変ドメインを含むdAb断片(Wardら、Nature、341: 544-546(1989);PCT公開番号WO90/05144);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする、合成リンカーによって連結することができる(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、Science、242: 423-426(1988);及び、Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5879-5883(1988)を参照)。そのような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語及び上に与えられる同等の用語の中に包含されるものである。単鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現される、二価の二重特異性抗体であるが、同じ鎖の上の2つのドメインの間で対形成を可能にするには短か過ぎるリンカーを使用し、それによってドメインを別の鎖の相補的なドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を形成する(例えば、Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90: 6444-6448 (1993)を参照)。そのような抗体結合部分は、当技術分野で公知である(Kontermann及びDubel編、Antibody Engineering (Springer-Verlag、New York、2001)、790ページ(ISBN 3-540-41354-5))。さらに、単鎖抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデム型Fvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線状抗体」も含む。(Zapataら、Protein Eng.、8(10): 1057-1062(1995);及び米国特許第5,641,870号)。
【0027】
免疫グロブリン定常(C)ドメインは、重(CH)又は軽(CL)鎖定常ドメインを指す。ネズミ及びヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。
【0028】
用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在するかもしれない可能な天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原決定因子(エピトープ)に向けられている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を一般的に含む、ポリクローナル抗体調製物と対照的に、各mAbは、抗原上の単一の決定基に向けられている。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈するべきでない。
【0029】
用語「ヒト配列」は、本出願に係る抗体又は結合性タンパク質の軽鎖定常ドメインCL、重鎖定常ドメインCH、及びFc領域に関連して、ヒト免疫グロブリン配列の配列であるか、又はヒト免疫グロブリン配列由来の配列であることを意味する。本開示のヒト配列は、ネイティブなヒト配列、又は1若しくは複数(例えば、最大20、15、10)のアミノ酸残基変化を含むそのバリアントであり得る。
【0030】
用語「キメラ抗体」とは、ある生物種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列並びに別の生物種由来の定常領域配列を含む抗体、例えば、ヒト定常領域に連結されたネズミ重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0031】
用語「CDRグラフト抗体」とは、ある生物種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体であるが、その中でVH及び/又はVLのCDR領域のうちの1種以上の配列が別の生物種のCDR配列と置き換えられている抗体、例えば、ヒトCDRのうちの1種以上がネズミCDR配列と置き換えられている、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0032】
用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト生物種(例えば、マウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体であるが、その中でVH及び/又はVL配列のうちの少なくとも一部分がより「ヒト様」に、すなわち、ヒト生殖系列可変配列に、より類似するように変化させられている抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプは、非ヒト生物種(例えば、マウス)由来のCDR配列がヒトVH及びVLフレームワーク配列へと導入されている、CDRグラフト抗体である。ヒト化抗体は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、かつヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域及び定常領域を含むが、非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はそのバリアント、誘導体、アナログ又は断片である。本明細書で使用される場合、CDRの文脈での用語「実質的に」とは、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域のうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに対応し、かつフレームワーク領域のうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1種、典型的には2種の可変ドメインの実質的に全てを含む(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)。一実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの、少なくとも一部分も含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖並びに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域も含むことができる。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含む。具体的な実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含む。
【0033】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEをはじめとする免疫グロブリンのいずれかのクラス、並びに、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4をはじめとするいずれかのアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、2種以上のクラス又はアイソタイプ由来の配列を含むことができ、かつ、具体的な定常ドメインは、当技術分野で周知の技術を用いて、所望のエフェクター機能を最適化するために選択することができる。
【0034】
ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域が、親配列(例えば、ドナー抗体CDR)に正確に対応する必要がないか、又はアクセプターフレームワークが、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれにも対応しないように、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により変異誘発されることができる。しかしながら、例示的な実施形態では、そのような変異は、広範囲ではないであろう。通常は、ヒト化抗体残基のうちの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、親FR及びCDR配列のものに対応するであろう。ドナー抗体中のその位置に出現する同じアミノ酸を回復させる特定のフレームワーク位置での復帰変異(back mutation)が、特定のループ構造を保存するため、又は標的抗原との接触のためにCDR配列を正しい方向に向かせるために、多くの場合に用いられる。
【0035】
用語「CDR」とは、抗体可変ドメイン配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれの中に3個のCDRがあり、これらはCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と称される。用語「CDRセット」とは、本明細書で使用される場合、抗原に結合することが可能な単一の可変領域中に存在する3個のCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、種々のシステムに応じて異なって定義されてきた。Kabatにより記載されるシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland (1987)及び(1991))は、抗体のいずれの可変領域にも適用可能である明白な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3個のCDRを定義する正確な残基境界も提供する。
【0036】
当技術分野で認識される、用語「Kabat番号付け」とは、抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基よりも可変的(すなわち、超可変的)であるアミノ酸残基を番号付けするシステムを指す。Kabat et al., Ann. NY Acad. Sci., 190: 382-391 (1971);及びKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242 (1991)を参照されたい。
【0037】
過去20年間にわたる可変重鎖及び軽鎖領域のアミノ酸配列の広範な公開データベースの成長と解析により、可変領域配列内のフレームワーク領域(FR)とCDR配列との間の典型的な境界が理解され、当業者はKabat番号付け、Chothia番号付け、又は他のシステムに従ってCDRを正確に決定することができるようになった。例えば、Martin, "Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains," Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering (Springer-Verlag, Berlin, 2001)、チャプター31、432-433頁を参照のこと。
【0038】
用語「多価結合性タンパク質」は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合性タンパク質を表す。多価結合性タンパク質は、特定の場合には、3個以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に天然に存在する抗体でない。
【0039】
用語「二重特異性結合性タンパク質」(別段の記載がない限り、用語「二重特異性抗体」と互換的に使用できる)は、異なる特異性の2つの標的に結合可能な結合性タンパク質を指す。本開示のFIT-Igは、4つの抗原結合部位を含み、典型的には4価結合性タンパク質である。本開示のデュオボディ(duobody)は2つの抗原結合部位を有し、典型的には2価の結合性タンパク質である。本開示に従うFIT-Ig又はデュオボディは、CD122とCD132の両方に結合し、二重特異性である。
【0040】
2つの長い(重)V-C-V-C-Fc鎖ポリペプチドと4つの短い(軽)V-C鎖ポリペプチドを含むFIT-Igは、4つのFab抗原結合部位(VH-CH1とVL-CLとの対、VH-CH1::VL-CLと表記されることもある)を示す6量体を形成する。FIT-Igの各半分は、重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドを含み、3つの鎖のVH-CH1及びVL-CLエレメントの相補的免疫グロブリン対合は、タンデムに配置された2つのFab構造抗原結合部位をもたらす。本開示において、Fabエレメントを含む免疫グロブリンドメインは、ドメイン間リンカーを使用することなく、重鎖ポリペプチド中で直接融合されることが好ましい。すなわち、長い(重鎖)ポリペプチドのN末端V-Cエレメントは、そのC末端で別のV-CエレメントのN末端に直接融合され、このV-Cエレメントは、今度はC末端Fc領域に連結される。二重特異性FIT-Ig分子では、タンデムFabエレメントは異なる抗原と反応する可能性がある。各Fab抗原結合部位は重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位あたり合計6個のCDRを有する。
【0041】
FIT-Ig分子の設計、発現及び特性決定に関する記述は、PCT公開WO 2015/103072に記載されている。このようなFIT-Ig分子の一例は、重鎖と2つの異なる軽鎖を含む。重鎖は、CLがVHBに直接融合している構造式VLA-CL-VHB-CH1-Fc(即ち「フォーマットLH」)又はCH1がVLBに直接融合している構造式VHA-CH1-VLB-CL-Fc(即ち「フォーマットHL」)を含み、FIT-Igの2つの軽鎖ポリペプチドは、それぞれ対応して式VHA-CH1及びVLB-CL(「フォーマットLH」の場合)、又はVLA-CL及びVHB-CH1(「フォーマットHL」の場合)を有する;ここで、VLAは抗原Aと結合する親抗体由来の可変軽ドメインであり、VLBは抗原Bと結合する親抗体由来の可変軽ドメインであり、VHAは抗原Aと結合する親抗体由来の可変重ドメインであり、VHBは抗原Bと結合する親抗体由来の可変重ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、CH1は重鎖定常ドメインであり、Fcは免疫グロブリンFc領域(例えば、IgG1抗体の重鎖のC末端ヒンジ-CH2-CH3部分)である。二重特異性FIT-Igの実施形態において、抗原A及び抗原Bは、異なる抗原、又は同じ抗原の異なるエピトープである。本開示では、A及びBの一方はCD122であり、他方はCD132であり、例えば、AはCD122であり、BはCD132である。
【0042】
本開示のデュオボディ(duobody)結合性タンパク質は、「デュオボディ(Duobody)」フォーマットと呼ばれる、Labrijnら、Proc Natl Acad Sci U S A. (2013) 110(13):5145-50に記載されるように改変されたFc領域を含む。一部の実施形態では、CH3領域の一方は置換K409Rを含み、Fc領域の他方のCH3領域は置換F405Lを含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「kon」(同様に「Kon」、「kon」)は、当技術分野で公知であるように、会合複合体、例えば抗体/抗原複合体を形成する、結合性タンパク質(例えば、抗体)の抗原への会合のためのon速度定数を指すものである。本明細書で互換的に使用されるように、「kon」は、用語「会合速度定数」又は「ka」によっても知られる。この値は、下の式によって示されるような、抗体のその標的抗原への結合速度又は抗体と抗原の間の複合体形成の速度を示す:
抗体(「Ab」)+抗原(「Ag」)→Ab-Ag
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「koff」(同様に「Koff」、「koff」)は、当技術分野で公知であるように、会合複合体(例えば抗体/抗原複合体)からの結合性タンパク質(例えば、抗体)の解離のためのoff速度定数又は「解離速度定数」を指すものである。この値は、下の式によって示されるような、その標的抗原からの抗体の解離速度又は遊離の抗体及び抗原へのAb-Ag複合体の経時的分離を示す:
Ab+Ag←Ab-Ag
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「KD」(同様に「Kd」)は「平衡解離定数」を指すものであり、平衡時の滴定測定で、又は会合速度定数(kon)によって解離速度定数(koff)を除することによって得られる値を指す。会合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)及び平衡解離定数(KD)は、抗原への抗体の結合親和性を表すために使用される。会合及び解離速度定数の決定方法は、当技術分野で周知である。蛍光ベースの技術を使用することは、高感度、及び平衡時の生理的バッファー中でサンプルを検査する能力を提供する。他の実験手法及び機器、例えばWAVEsystem(グラフティング結合干渉(grating-coupled interferometry)(GCI)アッセイ(Creoptix AG, Switzerland)、BIAcore(登録商標)(生体分子相互作用分析)アッセイ(BIAcore International AB、Uppsala、Sweden)などを使用することができる。例えば、Octet(登録商標) RED96システム(Pall ForteBio LLC)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)は、別の親和性アッセイ技術である。さらに、KinExA(登録商標)(動態排除アッセイ)アッセイ(Sapidyne Instruments社、Boise、Idaho、から入手可能)を、使用することもできる。
【0046】
用語「単離された核酸」は、ヒト介入によって、それが天然に一緒に見出されるポリヌクレオチドの全てと又は一部と会合していないか、天然に連結されていないポリヌクレオチドに機能的に連結されるか、又はより大きな配列の一部として天然に存在しないポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNA又は合成起源、又はその一部の組合せのもの)を意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すものである。1タイプのベクターは「プラスミド」であり、それは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞の中で自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点及びエピソーム哺乳動物ベクターを有する細菌ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の後に宿主細胞のゲノムに組み入れることができ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことが可能である。そのようなベクターは、「組換え発現ベクター」(又は、単に「発現ベクター」)と本明細書で呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用である発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。プラスミドは最も一般的に使用される形態のベクターであるので、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用することができる。しかし、本開示は、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクターを含むものである。
【0048】
用語「機能的に連結される」は、記載される要素が、それらがそれらの意図された方法で機能することを許す関係にある、並置を指す。コード配列に「機能的に連結される」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合する条件の下で達成されるような方法で連結される。「機能的に連結される」配列には、目的の遺伝子に連続している発現制御配列、及び目的の遺伝子を制御するためにトランスで又は離れて作用する発現制御配列のいずれも含まれる。本明細書で使用される場合、用語「発現制御配列」は、それらが連結されるコード配列の発現及びプロセシングを実行するのに必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適当な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに、必要に応じて、タンパク質分泌を増強する配列が含まれる。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、そのような制御配列は、プロモーター、リボゾーム結合部位及び転写終結配列を一般的に含む。真核生物では、一般的に、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現及びプロセシングのために必須である要素を含むものとし、その存在が有利である追加の要素、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列を含むこともできる。
【0049】
「形質転換」とは、本明細書で定義される場合、それにより外因性DNAが宿主細胞に侵入するいずれかのプロセスを指す。形質転換は、当技術分野で周知の様々な方法を用いて、天然条件又は人工的条件下で起こり得る。形質転換は、外来性核酸配列を原核生物又は真核生物宿主細胞へと挿入するためのいずれかの公知の方法に依存し得る。方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、かつ、限定するものではないが、トランスフェクション、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェクション、及び粒子ボンバードメントが挙げられる。そのようにして「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自律的に複製するプラスミドとして又は宿主染色体の一部分としてのいずれかで複製可能である、安定的に形質転換された細胞を含む。そのような細胞は、限定された期間にわたって、挿入されたDNA又はRNAを一時的に発現する細胞も含む。
【0050】
用語「組換え宿主細胞」(又は、単に「宿主細胞」)は、外来性DNAが導入された細胞を指すものである。一実施形態では、宿主細胞(例えば、米国特許第7,262,028号に記載される宿主細胞など)は、抗体をコードする2つ以上(例えば、複数)の核酸を含む。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代も指すものである。ある特定の改変は、変異又は環境の影響のために後の世代において起こることがあるので、実際、そのような後代は親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書で用いる用語「宿主細胞」の範囲になお含まれる。一実施形態では、宿主細胞には、生物界のいずれかから選択される原核生物及び真核生物の細胞が含まれる。別の実施形態では、真核細胞には、原生生物、真菌、植物及び動物の細胞が含まれる。別の実施形態では、宿主細胞には、限定されるものではないが、原核生物の細胞株大腸菌(Escherichia coli);哺乳動物細胞株CHO、HEK293、Jurkat、COS、NS0、SP2及びPER.C6;昆虫細胞株Sf9;並びに、真菌細胞酵母(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、障害又は1つ以上のその症状の重症度及び/又は持続期間を低減又は改善するのに;障害の進行を予防するのに;障害の退行を引き起こすのに;障害に伴う1つ以上の症状の再発、発生又は進行を予防するのに;障害を検出するのに;あるいは、別の療法(例えば、予防的又は治療的薬剤)の予防的又は治療的効果を増強又は向上させるのに十分である療法の量を指す。
【0052】
本開示に係る抗体、その機能的断片、及び結合性タンパク質は、抗体及び結合性タンパク質を精製するために当技術分野で利用可能な様々な方法及び材料のうちの1つ以上を使用することによって(意図される用途のために)精製され得る。このような方法及び材料としては、限定されるものではないが、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、又は抗体、その機能的断片若しくは結合性タンパク質の特異的リガンドに結合した樹脂、粒子、又は膜を用いる)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、イオン交換粒子又は膜を用いる)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」;例えば、疎水性粒子又は膜を用いる)、限外濾過、ナノ濾過、透析濾過、サイズ排除クロマトグラフィー(「SEC」)、低pH処理(汚染ウイルスを不活性化するため)、及びこれらの組み合わせにより、意図する用途に許容される純度を得る。汚染ウイルスを不活性化するための低pH処理の非限定的な例は、本開示の抗体、その機能的断片又は結合性タンパク質を含む溶液又は懸濁液のpHを、18℃~25℃で60~70分間、0.5Mリン酸を用いてpH3.5に低下させることを含む。
【0053】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために、標準の技術を使用することができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、又は当技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実行することができる。前述した技術及び手順は、当技術分野で周知である従来の方法によって、及び本明細書全体で引用及び議論される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されている通りに一般的に実行することができる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)を参照。
【0054】
抗CD122及び抗CD132単特異的抗体
本開示の抗CD122及び抗CD132抗体は、当技術分野で公知の多数の技術のうちのいずれかにより、例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが標準的技術により宿主細胞へとトランスフェクションされている、宿主細胞からの発現により、生成することができる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核生物又は真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために通常使用される広範囲の技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれかで本開示の抗体を発現させることができるが、正確にフォールディングされ、かつ免疫学的に活性な抗体をアセンブリ及び分泌するために広く使用されているように、真核細胞での抗体の発現、例えば哺乳動物宿主細胞での発現が特に想定される。
【0055】
一部の実施形態において、本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(DHFR選択マーカーと共に用いられる、dhfr- CHO細胞を含む(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4216-4220 (1980)に記載される)、例えば、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol., 159: 601-621 (1982)に記載される通り)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞へと導入される場合、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現、又はさらに、宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌を可能にするために十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することにより生成される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。
【0056】
宿主細胞はまた、Fab断片又はscFv分子などの機能的抗体断片を生成するためにも用いることができる。上記手順の変法が、本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。例えば、本開示の抗体の軽鎖及び/又は重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAを用いて宿主細胞をトランスフェクションすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術もまた、目的の抗原に対する結合に必要でない軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方をコードするDNAの一部、又は全部を除去するために用いることができる。そのような切断型DNA分子から発現される分子もまた、本開示の抗体により包含される。
【0057】
本開示の抗体、又はその抗原結合部分の組換え発現に関する例示的システムでは、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによりdhfr- CHO細胞へと導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子が、該遺伝子の高レベルの転写を駆動するための、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントにそれぞれ機能的に連結される。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、該ベクターでトランスフェクションされているCHO細胞の選択を可能にする、DHFR遺伝子も担持する。抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために、選択されたトランスフェクトされた宿主細胞が培養されて、完全な抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学の技術が、組換え発現ベクターを準備し、宿主細胞をトランスフェクションし、トランスフェクタントについて選択し、宿主細胞を培養して、かつ培養培地から抗体を回収するために用いられる。本開示はさらに、本開示の組換え抗体が生成されるまで、好適な培養培地中で本開示のトランスフェクションされた宿主細胞を培養することにより、本開示の組換え抗CD122又は抗CD132抗体を製造する方法を提供する。方法は、培養培地から組換え抗体を単離するステップをさらに含むことができる。
【0058】
抗CD122抗体
一部の実施形態では、本開示は、CD122の細胞外ドメインにおいて、CD122に結合するタンパク質を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、CD122に特異的に結合する単離された抗CD122抗体又はその抗原結合性断片を開示する。さらなる実施形態では、抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、この場合、
・CDR-H1は、DYVIS (配列番号44)の配列を含み、
・CDR-H2は、EIYPGDGNTYYNEMFKG (配列番号45)の配列を含み、
・CDR-H3は、GSYTYDNYAMDF (配列番号46)の配列を含み、
・CDR-L1は、RSSQNIVHSNGNTYLE (配列番号50)の配列を含み、
・CDR-L2は、KVSNRFS (配列番号51)の配列を含み、
・CDR-L3は、FQGSHIPWT (配列番号52)の配列を含み、
CDRは、Kabatの番号付けに従い規定される。
【0059】
一部の実施形態では、抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号44~46及び50~52のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。アミノ酸修飾は、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加、例えば、保存的置換でありうる。
【0060】
一実施形態では、本開示に従う抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号3の重鎖可変ドメインVHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3、及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。CDRは、最も広く使用されるCDR定義スキーム、例えば、Kabat、Chothia又はIMGTによる定義を使用して、当業者により決定されうる。
【0061】
一実施形態では、本開示に従う抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインVH、及び軽鎖可変ドメインVLを含み、この場合、
・VHドメインは、配列番号3の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を含む、及び/あるいは
・VLドメインは、配列番号4の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を含む。
【0062】
一部の実施形態では、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列を含む抗CD122抗体は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有する一方で、同じであるか、又は改善された結合特性、例えばKdで、CD122に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、CDR以外の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。場合により、抗CD122抗体は、N末端ピログルタミン酸形成を排除するために、配列番号3のVH配列と比較して、Q1E変異を含む。一部の実施形態において、抗CD122抗体は、組換え抗体製造中に不均一性をもたらす可能性のある翻訳後修飾(PTM)を緩和するため、CDR-H2及び/又はCDR-L1中の「DG」(Asp-Gly)、「NT」(Asn-Thr)、及び「NG」(Asn-Gly)を含み、例えば、配列番号45として示されるCDR-H2中の「DG」、配列番号45、48及び49として示されるCDR-H2中の「NT」、配列番号50及び55として示されるCDR-L1中の「NG」、配列番号50及び54として示されるCDR-L1中の「NT」などが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、本開示に従う単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、ヒト化抗体である。
【0064】
一部の実施形態では、本開示に従うヒト化単離抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、結合特性を改善するように、フレームワーク領域内の位置において、1つ以上の復帰変異を含む。一部の実施形態では、本開示に従うヒト化抗CD122抗体又は抗原結合性断片のVHドメインは、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:28位におけるThr(28T)、30位におけるThr(30T)、38位におけるArg(38R)、48位におけるMet(48M)、67位におけるTyr(67Y)、69位におけるMet(68M)、72位におけるAsn(70N)、73位におけるThr(70T)、及び/又は91位におけるVal(70V)への復帰変異を含む。一実施形態では、本開示に従うヒト化抗CD122抗体又は抗原結合性断片のVLドメインは、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:7位におけるSer(7S)、36位におけるPhe(36F)、37位におけるGln(37Q)及び/又は46位におけるArg(46R)への復帰変異を含む。
【0065】
一部の実施形態では、本開示に従う単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含むヒト化抗体であり、この場合、
・CDR-H1は、DYVIS (配列番号44)の配列を含み、
・CDR-H2は、EIYPGDGNTYYNEMFKG (配列番号45)、EIYPGDAQTYYNEMFKG (配列番号47)、EIYPGDANTYYNEMFKG (配列番号48)、又はEIYPGEGNTYYNEMFKG (配列番号49)の配列を含み、
・CDR-H3は、GSYTYDNYAMDF (配列番号46)の配列を含み、
・CDR-L1は、RSSQNIVHSNGNTYLE (配列番号50)、RSSQNIVHSEGQTYLE (配列番号53)、RSSQNIVHSNANTYLE (配列番号54)、RSSQNIVHSNGQTYLE (配列番号55)、RSSQNIVHSNAQTYLE (配列番号56)の配列を含み、
・CDR-L2は、KVSNRFS (配列番号51)の配列を含み、
・CDR-L3は、FQGSHIPWT (配列番号52)の配列を含み、
CDRは、Kabatの番号付けに従い規定される。
【0066】
一部の実施形態では、本開示に係る単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従う、(i)配列番号44、45、46; (ii)配列番号44、47、46; (iii)配列番号44、48、46;又は(iv)配列番号44、49、46からなる群から選択される、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3のアミノ酸配列を含むヒト化抗体である。
【0067】
一部の実施形態では、本開示に係る単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、Kabatの番号付けに従う、(i)配列番号50、51、52; (ii)配列番号53、51、52; (iii)配列番号54、51、52; (iv)配列番号55、51、52;又は(i)配列番号56、51、52からなる群から選択される、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のアミノ酸配列を含むヒト化抗体である。
【0068】
一実施形態では、本開示に従う単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、以下のVH/VL配列対:配列番号21/30、22/30、23/30、24/30、25/30、26/30、21/31、22/31、23/31、24/31、25/31、26/31、21/32、22/32、23/32、24/32、25/32、26/32、21/33、21/34、21/35、27/36、27/37、27/38、27/39、27/40、21/36、28/36、29/36、27/41、27/42、27/43、及び21/41からなる群より選択される、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖可変ドメインVLのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含むヒト化抗体である。CDRは、最も広く使用されるCDR定義スキーム、例えば、Kabat、Chothia又はIMGTによる定義を使用して、当業者により決定されうる。
【0069】
一部の実施形態では、本開示に従う単離された抗CD122抗体又は抗原結合性断片は、以下からなる群から選択される、VH配列とVL配列との組合せを含む。
【0070】
【0071】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号21の配列を含むか、又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号41の配列を含むか、又はこれからなるVLドメインを含む。
【0072】
本開示に従う抗CD122抗体又は抗原結合性断片についての一部の実施形態では、抗体又は抗原結合性断片は、天然Fc領域の場合もあり、バリアントFc領域の場合もあるFc領域を含む。特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、又はIgDに由来するヒトFc領域である。抗体の有用性に応じて、バリアントFc領域を使用して、少なくとも1つのエフェクター機能、例えばADCC及び/又はCDCを変化させる(例えば、これを低減するか、又はこれを消失させる)ことが所望でありうる。一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのエフェクター機能を変化させる1つ以上の変異、例えば、L234A及びL235Aを伴うFc領域を含む抗CD122抗体又は抗原結合性断片を提供する。
【0073】
一部の実施形態では、本開示に従う抗CD122抗体の抗原結合性断片は、例えば、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;又は単鎖抗体分子(例えば、scFv)でありうる。
【0074】
一実施形態では、本明細書で記載される抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、CD122細胞外ドメイン又はその部分に結合する。一部の実施形態では、CD122は、ヒトCD122、例えばSwiss Protアクセッション番号PI4784を有するヒトCD122であり、その全配列は、シグナルペプチド(残基1~26)、細胞外ドメイン(残基27~240)、膜貫通ドメイン(残基241~265)及び細胞質ドメイン(残基266~551)からなる551個のアミノ酸を有する。本明細書で記載される抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、CD122の細胞外ドメイン内のエピトープに結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号3及び4のVH/VL配列対を有する抗体(例えばCD122-mAb77)と同じエピトープでCD122に結合する。
【0075】
一実施形態では、本明細書で記載される抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、CD122に対する、ナノモル(10-7~10-9)範囲、例えば、8×10-7M未満、5×10-7M未満、3×10-7M未満、1×10-7M未満、8×10-8M未満、5×10-8M未満、3×10-8M未満、2×10-8M未満、1×10-8M未満、8×10-9M未満、6×10-9M未満、4×10-9M未満、2×10-9M未満、又は1×10-9M未満の解離定数(KD)を有する。
【0076】
がんの一部は、同じタイプの非癌組織、好ましくは同じ患者からの組織と比較して、高いCD122レベルを示す。したがって、本明細書に記載の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片は、CD122をタンパク質レベルで測定するために適用することができる (例えば、イムノアッセイによって)。
【0077】
抗CD132抗体
一部の実施形態では、本開示は、CD132の細胞外ドメインでCD132に結合するタンパク質を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CD132に特異的に結合する単離された抗CD132抗体又はその抗原結合性断片を開示する。さらなる実施形態では、抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含み、この場合、
CDR-H1は、SYWMH (配列番号57)の配列を含み、
CDR-H2は、HIYLGGGATNYAEKFRS (配列番号58)の配列を含み、
CDR-H3は、SQPYYYGMDS (配列番号59)の配列を含み、
CDR-L1は、RASQDISNYLN (配列番号60)の配列を含み、
CDR-L2は、YKSRLHS (配列番号61)の配列を含み、
CDR-L3は、HQGHTIPFT (配列番号62)の配列を含み、
CDRは、Kabatの番号付けに従い規定される。
【0078】
一部の実施形態では、抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号57~59及び60~62のCDR配列内に、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つであるが、5つ以下の残基修飾を含む。アミノ酸修飾は、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加、例えば、保存的置換でありうる。
【0079】
一実施形態では、本開示に従う抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号5の重鎖可変ドメインVHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3、及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。CDRは、最も広く使用されるCDR定義スキーム、例えば、Kabat、Chothia又はIMGTによる定義を使用して、当業者により決定されうる。
【0080】
一実施形態では、本開示に従う抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインVH、及び軽鎖可変ドメインVLを含み、この場合、
・VHドメインは、配列番号5の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を含む、及び/あるいは
・VLドメインは、配列番号6の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有する配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列を含む抗CD132抗体は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有する一方で、同じであるか、又は改善された結合特性、例えばKdで、CD132に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、CDR以外の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。場合により、抗CD132抗体は、N末端ピログルタミン酸形成を排除するために、配列番号5のVH配列と比較して、Q1E変異を含む。
【0082】
一実施形態では、本開示に従う単離された抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、ヒト化抗体である。
【0083】
一部の実施形態では、本開示に従うヒト化単離抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、結合特性を改善するように、フレームワーク領域内の位置において、1つ以上の復帰変異を含む。一部の実施形態では、本開示に従うヒト化抗CD132抗体又は抗原結合性断片のVHドメインは、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:28位におけるThr(28T)、30位におけるThr(30T)、38位におけるArg(38R)、48位におけるMet(48M)、67位におけるTyr(67Y)、69位におけるMet(68M)、72位におけるAsn(70N)、73位におけるThr(70T)、及び/又は91位におけるVal(70V)への復帰変異を含む。一実施形態では、本開示に従うヒト化抗CD132抗体又は抗原結合性断片のVLドメインは、ヒト残基から、Kabatの番号付けに従う残基:70位におけるGlu(70E)及び/又は71位におけるTyr(71Y)への復帰変異を含む。
【0084】
一部の実施形態では、本開示に係る単離された抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、上記の配列番号57~59及び60~62の6つのCDRセットを含むヒト化抗体である。
【0085】
一実施形態では、本開示に従う単離された抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、以下のVH/VL配列対:配列番号14/19、15/19、16/19、17/19、18/19、14/20、15/20、16/20、17/20、及び18/20からなる群より選択される、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖可変ドメインVLのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含むヒト化抗体である。CDRは、最も広く使用されるCDR定義スキーム、例えば、Kabat、Chothia又はIMGTによる定義を使用して、当業者により決定されうる。
【0086】
一部の実施形態では、本開示に従う単離された抗CD132抗体又は抗原結合性断片は、以下からなる群から選択される、VH配列とVL配列との組合せを含む。
【0087】
【0088】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号14の配列を含むか、又はこれからなるVHドメイン、及び配列番号19の配列を含むか、又はこれからなるVLドメインを含む。
【0089】
本開示に従う抗CD132抗体又は抗原結合性断片についての一部の実施形態では、抗体又は抗原結合性断片は、天然Fc領域の場合もあり、バリアントFc領域の場合もあるFc領域を含む。特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、又はIgDに由来するヒトFc領域である。抗体の有用性に応じて、バリアントFc領域を使用して、少なくとも1つのエフェクター機能、例えばADCC及び/又はCDCを変化させる(例えば、これを低減するか、又はこれを消失させる)ことが所望でありうる。一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのエフェクター機能を変化させる1つ以上の変異、例えば、L234A及びL235Aを伴うFc領域を含む抗CD132抗体又は抗原結合性断片を提供する。
【0090】
一部の実施形態では、本開示に従う抗CD132抗体の抗原結合性断片は、例えば、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;又は単鎖抗体分子(例えば、scFv)でありうる。
【0091】
一実施形態では、本明細書で記載される抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、CD132細胞外ドメイン又はその部分に結合する。一部の実施形態では、CD132は、ヒトCD132、例えばSwiss Protアクセッション番号P31785を有するヒトCD132であり、その全配列は、シグナルペプチド(残基1~22)、細胞外ドメイン(残基23~262)、膜貫通ドメイン(残基263~283)及び細胞質ドメイン(残基284~369)からなる369個のアミノ酸を有する。本明細書で記載される抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、CD132の細胞外ドメイン内のエピトープに結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号5及び6のVH/VL配列対を有する抗体(例えばCD132-mAb17)と同じエピトープでCD132に結合する。
【0092】
一実施形態では、本明細書で記載される抗CD132抗体又はその抗原結合性断片は、CD132に対する、ナノモル(10-7~10-9)範囲、例えば、8×10-7M未満、5×10-7M未満、3×10-7M未満、1×10-7M未満、8×10-8M未満、5×10-8M未満、3×10-8M未満、2×10-8M未満、1×10-8M未満、8×10-9M未満、6×10-9M未満、4×10-9M未満、2×10-9M未満、又は1×10-9M未満の解離定数(KD)を有する。
【0093】
CD122×CD132二重特異性結合性タンパク質
別の態様では、本開示は、CD122/CD132二重特異性結合性タンパク質、例えばCD122及びCD132のいずれにも結合することが可能であるFIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)又はデュオボディ(duobody)を提供する。FIT-Ig又はデュオボディ内の各可変ドメイン(VH又はVL)は、標的抗原、すなわち、CD122又はCD132のうちの1つに結合する、1つ以上の「親」モノクローナル抗体から得られうる。FIT-Ig又はデュオボディ結合性タンパク質は、本明細書で開示される抗CD122モノクローナル抗体及び抗CD132モノクローナル抗体の可変ドメイン配列を使用して作製されうる。例えば、親抗体は、ヒト化抗体である。
【0094】
本開示の一態様は、FIT-Ig又はデュオボディ分子内で所望される少なくとも1つ以上の特性を有する親抗体の選択に関する。一実施形態では、抗体の特性は、抗原特異性、抗原に対する親和性、細胞結合能力、生物学的機能、エピトープ認識、安定性、可溶性、作製効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティ、組織交差反応性、及びオーソログ抗原への結合からなる群から選択される。
【0095】
一部の実施形態では、本開示に従う二重特異性FIT-Igタンパク質は、ドメイン間ペプチドリンカーを伴わずに構成される。当技術分野では一般に、タンデム結合部位を有する多価操作免疫グロブリンフォーマット内では、可撓性リンカーが、結合部位を、空間的に隔てるのに使用されない限り、隣接する結合部位が、互いに干渉することが理解される。しかし、本開示のCD122/CD132 FIT-Igについては、本明細書で開示される鎖の式に従う免疫グロブリンドメインの配置は、トランスフェクト哺乳動物細胞内の発現が十分であり、適切にアセンブルされ、標的抗原であるCD122及びCD132に結合する、二重特異性の多価免疫グロブリン様結合性タンパク質として分泌されるポリペプチド鎖を結果としてもたらすことが発見されている。下記の実施例を参照されたい。さらに、合成リンカー配列の、結合性タンパク質からの除外は、哺乳動物免疫系により認識可能な抗原性部位の創出を回避することが可能であり、このようにして、リンカーの消失は、FIT-Igの免疫原性の可能性を低下させ、天然抗体と同様の循環中半減期をもたらす、すなわち、FIT-Igは、免疫オプソニン化と肝臓での捕捉によって速やかに除去されない。
【0096】
一部の実施形態では、本出願に従うCD122×CD132二重特異性結合性タンパク質は、
a) CD122に特異的に結合する第1の抗原結合部位、及び
b) CD132に特異的に結合する第2の抗原結合部位
を含む。
【0097】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合性タンパク質は、二重特異性結合性タンパク質のCD122結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットを含む。一部のさらなる実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合性タンパク質は、二重特異性結合性タンパク質のCD122結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。
【0098】
一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合性タンパク質は、二重特異性結合性タンパク質のCD132結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗CD132抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRである、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のセットをさらに含む。一部のさらなる実施形態では、本明細書で記載される二重特異性結合性タンパク質は、二重特異性結合性タンパク質のCD132結合部位を形成するように、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗CD132抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。
【0099】
一実施形態では、本出願に従う二重特異性CD122/CD132結合性タンパク質内のCD122結合部位、及びCD132結合部位は、ヒト化されており、それぞれ、ヒト化VH/VL配列を含む。
【0100】
二重特異性FIT-Ig結合性タンパク質
一実施形態では、本出願に従うCD122×CD132二重特異性結合性タンパク質は、CD122及びCD132に結合することが可能である二重特異性FIT-Ig結合性タンパク質である。FIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)結合性タンパク質は、6つのポリペプチド鎖を含み、2つの外部Fab結合領域、及び2つの内部Fab結合領域を伴う4つの機能的Fab結合領域を有する単量体の二重特異性の四価結合性タンパク質である。
図1に示されるように、結合性タンパク質は、(外部Fab-内部Fab-Fc)×2のフォーマットを採用し、抗原A及び抗原Bの両方に結合する。一態様では、本出願に従うCD122×CD132二重特異性結合性タンパク質は、二重特異性FIT-Ig結合性タンパク質であり、この場合、FIT-Igタンパク質の2つのFabドメインは、CD122に特異的に結合する第1の抗原結合部位を形成し、FIT-Igタンパク質の他の2つのFabドメインは、CD132に特異的に結合する第2の抗原結合部位を形成する。一部の実施形態では、本開示に従うFIT-Ig結合性タンパク質は、免疫グロブリンドメインの間のリンカーを利用しない。
【0101】
さらなる実施形態において、本開示は、二重特異性FIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)結合性タンパク質を提供し、これは第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、
(i)フォーマットLHにおいて、第1のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CLがVHBへと直接融合されたVLA-CL-VHB-CH1-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHA-CH1を含み;第3のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLB-CLを含む;又は
(ii)フォーマットHLにおいて、第1のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CH1がVLBへと直接融合されたVHA-CH1-VLB-CL-Fcを含み;第2のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLA-CLを含み;第3のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHB-CH1を含み;
VLが軽鎖可変ドメインであり、CLが軽鎖定常ドメインであり、VHが重鎖可変ドメインであり、CH1が重鎖定常ドメインであり、Fcが免疫グロブリンFc領域、例えば、IgG1のFc(場合により、アミノ末端からカルボキシル末端へと、ヒンジ-CH2-CH3を含む)であり、
VLA-CLが、VHA-CH1と対合して、第1の抗原Aに特異的に結合する第1のFabを形成し、VLB-CLが、VHB-CH1と対合して、第2の抗原Bに特異的に結合する第2のFabを形成し、
第1の抗原AがCD122であり、第2の抗原BがCD132である、又は第1の抗原AがCD132であり、第2の抗原BがCD122であり、
第1のポリペプチド鎖のうちの2つと、第2のポリペプチド鎖のうちの2つと、第3のポリペプチド鎖のうちの2つとが会合して、FIT-Igタンパク質を形成する。
【0102】
本出願に係る二重特異性FIT-Ig結合性タンパク質のいくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLA-CL-VHB-CH1-Fcを含み、ここで抗原AはCD122であり、抗原BはCD132であるか、又は抗原AはCD132であり、抗原BはCD122である。
【0103】
FIT-Ig結合性タンパク質の一部の実施形態では、CD122結合部位は、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成されるFab(例えば、AがCD122である場合、VLA-CL及びVHA-CH1により形成されるFab;又はBがCD122である場合、VLB-CL及びVHB-CH1により形成されるFab)であり、本出願に従う任意の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRのセット、すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。一部のさらなる実施形態では、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、それぞれ、CDR-H1として配列番号44の配列; CDR-H2として配列番号45、47~49の配列; CDR-H3として配列番号46の配列; CDR-L1として配列番号50、53~56の配列; CDR-L2として配列番号51の配列; CDR-L3として配列番号52の配列を含む。
【0104】
一部の実施形態では、FIT-Ig結合性タンパク質内の、CD122に結合するFabは、本出願に従い、本明細書で記載される任意の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片に由来するVH/VL対を含む。一部のさらなる実施形態では、VH/VL対は、以下のVH/VL配列対:配列番号3/4、21/30、22/30、23/30、24/30、25/30、26/30、21/31、22/31、23/31、24/31、25/31、26/31、21/32、22/32、23/32、24/32、25/32、26/32、21/33、21/34、21/35、27/36、27/37、27/38、27/39、27/40、21/36、28/36、29/36、27/41、27/42、27/43、及び21/41、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、95%、若しくは99%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む。一部の実施形態では、FIT-Ig結合性タンパク質内の、CD122に結合するFabは、配列番号21のVH配列、及び配列番号41のVL配列を含む。
【0105】
FIT-Ig結合性タンパク質の一部の実施形態では、CD132結合部位は、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成されるFab(例えば、AがCD132である場合、VLA-CL及びVHA-CH1により形成されるFab;又はBがCD132である場合、VLB-CL及びVHB-CH1により形成されるFab)であり、本出願に従う任意の抗CD132抗体又はその抗原結合性断片に由来する6つのCDRのセット、すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む。一部の実施形態では、FIT-Ig結合性タンパク質内の、VL-CLの、VH-CH1との対合により形成される、CD132に結合するFabは、6つのCDRのセットを含み、この場合、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、それぞれ、配列番号57、58、59、及び60、61、62の配列を含む。一部のさらなる実施形態では、CD132に結合するFabは、配列番号22及び24の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性を有する配列、あるいは配列番号5/6、14/19、15/19、16/19、17/19、18/19、14/20、15/20、16/20、17/20、及び18/20の配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性を有する配列を含むVH/VL対を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、かかるFIT-Ig結合性タンパク質のFab断片は、抗原CD122及びCD132の一方に結合する親抗体からのVLA-CL及びVHA-CH1ドメインを組み込み、抗原CD122及びCD132の他方に結合する別の親抗体からのVLB-CL及びVHB-CH1ドメインを組み込む。いくつかの実施形態では、CD122及びCD132を認識するタンデムのFab部分は、それぞれVH-CH1::VL-CL対合によって形成される。
【0107】
本開示では、CD122/CD132 FIT-Ig結合性タンパク質は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、この場合、第1のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CLがVHCD132へと直接融合されたVLCD122-CL-VHCD132-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含み;第2のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHCD122-CH1を含み;第3のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLCD132-CLを含む。代替的実施形態では、CD122/CD132 FIT-Ig結合性タンパク質は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖を含み、この場合、第1のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、CH1がVLCD132へと直接融合されたVHCD122-CH1-VLCD132-CL-ヒンジ-CH2-CH3を含み;第2のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VLCD122-CLを含み;第3のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、VHCD132-CH1を含む。一部の実施形態では、VLCD122は、抗CD122抗体の軽鎖可変ドメインであり、CLは、軽鎖定常ドメインであり、VHCD122は、抗CD122抗体の重鎖可変ドメインであり、CH1は、重鎖定常ドメインであり、VLCD132は、抗CD132抗体の軽鎖可変ドメインであり、VHCD132は、抗CD132抗体の重鎖可変ドメインであり;場合により、ドメインVLCD132-CLは、抗CD132親抗体の軽鎖と同じであり、ドメインVHCD132-CH1は、抗CD132親抗体の重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインと同じであり、ドメインVLCD122-CLは、抗CD122親抗体の軽鎖と同じであり、ドメインVHCD122-CH1は、抗CD122親抗体の重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインと同じである。
【0108】
FIT-Ig結合性タンパク質に関する前述の式において、Fc領域は、ネイティブ又はバリアントFc領域であり得る。特定の実施形態において、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、又はIgDからのヒトFc領域である。特定の実施形態において、Fcは、IgG1由来のヒトFc、又は、少なくとも1つのFcエフェクター機能、例えば、FcγRへのFcの結合、ADCC及び/若しくはCDCを低減又は除去するための1つ以上の変異を含む改変ヒトFcである。変異は、例えば、L234A/L235A(Kabat EUインデックスに従う番号付け)であり得る。一実施形態では、L234A/L235A変異を有するヒト定常IgG1由来のCH1-ヒンジ-CH2-CH3に対応するFc領域は、以下のアミノ酸配列を有する:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号70)
【0109】
本開示に従うFIT-Ig結合性タンパク質のいくつかの実施形態において、CH1、CL及びFcドメインは、ヒト配列のものであるか、又はヒト配列由来のものである。本開示に従うFIT-Ig結合性タンパク質のいくつかの実施形態において、CH1は、ヒトIgG1定常CH1ドメイン、又はこれと少なくとも90%、95%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列である。FIT-Ig結合性タンパク質に関する前述の式において、CLは、ヒト定常κCLドメイン、又はこれと少なくとも90%、95%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列である。
【0110】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合性タンパク質は、親抗体の1つ以上の特性を保持する。一部の実施形態では、FIT-Igが、親抗体の結合親和性と同等である、標的抗原(すなわち、CD132及びCD122)に対する結合親和性を保持することは、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤーインターフェロメトリーにより測定される通り、FIT-Ig結合性タンパク質の、抗原標的であるCD122及びCD132に対する結合親和性が、それらのそれぞれの標的抗原に対する、親抗体の結合親和性と比較して、10倍を超えて変動しないことを意味する。
【0111】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合性タンパク質は、CD122及びCD132に結合し、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、及び第3のポリペプチド鎖から構成され、
・第1のポリペプチド鎖は、配列番号7のアミノ酸配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、
・第2のポリペプチド鎖は、配列番号8のアミノ酸配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含み、
・第3のポリペプチド鎖は、配列番号9のアミノ酸配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む。
【0112】
一実施形態では、本開示のFIT-Ig結合性タンパク質は、CD122及びCD132に結合し、配列番号7の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第1のポリペプチド鎖;配列番号8の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第2のポリペプチド鎖;及び配列番号9の配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる第3のポリペプチド鎖から構成される。
【0113】
二重特異性結合性タンパク質デュオボディ
一実施形態では、本出願に従うCD122×CD132二重特異性結合性タンパク質は、CD122及びCD132に結合することが可能であるデュオボディ(duobody)である。
図2に示されるデュオボディは、4本のポリペプチド鎖を含み、2つの機能的なFab結合領域を有する、単量体の二重特異性二価結合性タンパク質である。
【0114】
デュオボディは、それぞれがCH3ドメインに単一マッチ点変異を含む2つの親抗体を混合し、前記2つの親抗体をin vitroで制御された還元条件に供することによって生成することができる。この条件では、抗体はHL半分子に分離され、Fabアーム交換(FAE)と呼ばれる生理学的プロセスによって再集合(再アセンブリ)及び再酸化が可能になり、半分子(HL対)が他の親抗体分子由来の半分子と再結合して、高純度のbsAbが形成される。
【0115】
一部の実施形態では、本開示のデュオボディは、CH3領域の一方が置換K409Rを含み、Fc領域の他方のCH3領域が置換F405Lを含むFc領域を含む。
【0116】
一部の実施形態では、単特異的抗CD122 lgG1-K409R抗体及び抗CD132 lgG1-F405L抗体を混合し、次いで2-MEAで数時間還元する。2-MEAは透析により除去され、抗体は4℃で再酸化される。完全に形成された二重特異性デュオボディはアニオン交換クロマトグラフィーで精製される。
【0117】
一部の実施形態では、単特異的抗CD132 lgG1-K409R抗体及び抗CD122 lgG1-F405L抗体を混合し、次いで2-MEAで数時間還元する。2-MEAは透析により除去され、抗体は4℃で再酸化される。完全に形成された二重特異性デュオボディはアニオン交換クロマトグラフィーで精製される。
【0118】
一部の実施形態において、本開示のデュオボディは、かかるHL半分子を含み、ここで、
(i)CDR-H1として配列番号44、CDR-H2として配列番号45、47~49のいずれか、CDR-H3として配列番号46、及びCDR-L1として配列番号50、53~56のいずれか、CDR-L2として配列番号51、CDR-L3として配列番号52を含む、本開示の抗CD122抗体由来の1つのHL半分子。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD122抗体由来のHL半分子は、本出願に従い、本明細書に記載される任意の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片由来のVH/VL対を含む。いくつかのさらなる実施形態において、VH/VL対は、以下のVH/VL配列対からなる群から選択される配列、又はそれらと少なくとも80%、85%、90%、95%若しくは99%の同一性を有する配列を含む:配列番号3/4、21/30、22/30、23/30、24/30、25/30、26/30、21/31、22/31、23/31、24/31、25/31、26/31、21/32、22/32、23/32、24/32、25/32、26/32、21/33、21/34、21/35、27/36、27/37、27/38、27/39、27/40、21/36、28/36、29/36、27/41、27/42、27/43、及び21/41。いくつかの実施形態において、抗CD122抗体由来のHL半分子は、配列番号21のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む;
(ii)CDR-H1として配列番号57、CDR-H2として配列番号58、CDR-H3として配列番号59、及びCDR-L1として配列番号60、CDR-L2として配列番号61、CDR-L3として配列番号62を含む、本開示の抗CD132抗体由来の1つのHL半分子。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD132抗体由来のHL半分子は、本出願に従い、本明細書に記載される任意の抗CD132抗体又はその抗原結合性断片由来のVH/VL対を含む。いくつかのさらなる実施形態において、VH/VL対は、以下のVH/VL配列対からなる群から選択される配列、又はそれらと少なくとも80%、85%、90%、95%若しくは99%の同一性を有する配列を含む:配列番号5/6、14/19、15/19、16/19、17/19、18/19、14/20、15/20、16/20、17/20、及び18/20。いくつかの実施形態において、抗CD132抗体由来のHL半分子は、配列番号14のVH配列及び配列番号19のVL配列を含む;
(iii)Fc領域のCH3領域の一方が置換K409Rを含み、他方のCH3領域が置換F405Lを含むFc領域。
【0119】
一実施形態において、本開示のデュオボディは、CD122及びCD132に結合し、配列番号12/13の配列を含む、それから本質的になる、又はそれからなる抗CD122抗体由来のHL半分子;及び配列番号10/11の配列を含む、それから本質的になる、又はそれからなる抗CD132抗体由来のHL半分子から構成される。
【0120】
二重特異性結合性タンパク質の特性
一部の実施形態では、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、CD122を発現する細胞に結合することができ、この場合、細胞結合能力は、細胞ベースのアッセイにおいてフローサイトメトリーにより測定した場合に、約5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1nM以下のEC50により反映される。
【0121】
一部の実施形態では、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、CD132を発現する細胞に結合することができ、この場合、細胞結合能力は、細胞ベースのアッセイにおいてフローサイトメトリーにより測定した場合に、約80nM以下、60nM以下、40nM以下、20nM以下、又は10nM以下のEC50により反映される。
【0122】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、例えば、WAVEsystem又はBiacoreアッセイによって測定した場合に、約30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、又は5nM未満のKDで、ヒトCD122及びヒトCD132に結合する。
【0123】
他の実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、例えば、WAVEsystem又はBiacoreアッセイによって測定されるように、約100nM、80nM、60nM、40nM、20nM、又は10nM未満のKDで、カニクイザルCD122及びカニクイザルCD132に結合する。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、細胞表面でCD122及びCD132を含む複合体を発現する細胞と接触した際に、細胞内シグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、細胞表面で中親和性IL-2受容体を発現する細胞と接触した際に、細胞内シグナル伝達を活性化する。いくつかの実施形態において、本開示の二特異性結合性タンパク質は、細胞表面で高親和性IL-2受容体を発現する細胞と接触した際に、細胞内シグナル伝達を活性化する。細胞内シグナル伝達の活性化は、リン酸化STAT5(すなわち、pSTAT5)のレベルの増加を検出することによって決定され得る。pSTAT5は、例えば、実施例6に記載されるようなレポーターベースの方法及び実施例7.1に記載されるようなフローサイトメトリーベースのSTAT5リン酸化(pSTAT5)アッセイを用いて検出され得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、pSTAT5の量を、同等のアッセイにおいて、本開示の二重特異性結合性タンパク質の非存在下、又は対照抗原結合分子(例えば、アイソタイプがマッチした対照抗原結合分子)の存在下で、細胞表面にCD122及びCD132を含む複合体を発現する細胞の培養後に検出されたpSTAT5のレベルの1倍を超えて、例えば、>1.1倍、>1.2倍、>1.3倍、>1.4倍、>1.5倍、>1.6倍、>1.7倍、>1.8倍、>1.9倍、>2倍、>3倍、>4倍、>5倍、>6倍、>7倍、>8倍、>9倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、又は>100倍増加させることができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、CD122及びCD132を発現する細胞の増殖を刺激することができる。特に、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、制御性T細胞よりもエフェクターT細胞及び/又はNK細胞の増殖を優先的に刺激することができる。いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、細胞表面で高親和性IL-2受容体を発現する細胞よりも、細胞表面で中親和性IL-2受容体を発現する細胞の増殖を優先的に刺激する。細胞増殖は、一定期間にわたる細胞分裂を分析することによって決定され得る。細胞分裂は、例えば、実施例7.2に記載されているように、CFSE希釈アッセイによって分析することができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、増殖する細胞の数を、同等のアッセイにおいて、本開示の二重特異性結合性タンパク質の非存在下、又は対照抗原結合分子(例えば、アイソタイプがマッチした対照抗原結合分子)の存在下で、細胞表面にCD122及びCD132を含む複合体を発現する細胞の培養後に検出された増殖する細胞の数の1倍を超えて、例えば、>1.1倍、>1.2倍、>1.3倍、>1.4倍、>1.5倍、>1.6倍、>1.7倍、>1.8倍、>1.9倍、>2倍、>3倍、>4倍、>5倍、>6倍、>7倍、>8倍、>9倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、又は>100倍増加させることができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、制御性T細胞よりも(すなわち、制御性T細胞よりも優先して)、以下の細胞型の1つ以上の増殖/拡大を優先的に刺激する:抗原特異的T細胞(例えば、ウイルス特異的T細胞)、抗原特異的CD4 T細胞、抗原特異的CD8 T細胞、エフェクターメモリーCD4 T細胞、エフェクターメモリーCD8 T細胞、セントラルメモリーCD4 T細胞、セントラルメモリーCD8 T細胞、細胞傷害性CD8+ T細胞(すなわち、CTL)、NK細胞、抗原特異的NK細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞。
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示の二重特異性結合性タンパク質は、CD122及びCD132を発現する細胞の数(すなわち、細胞の集団の拡大)を増加させ、例えば、CD8+及び/又はCD4+ T細胞の拡大、あるいはTreg細胞よりもCD8+及び/又はCD4+ T細胞の優先的拡大を誘導する。
【0130】
医薬組成物
本開示はまた、本開示の抗体、若しくはその抗原結合性部分、又は二重特異性多価結合性タンパク質(すなわち、主要有効成分)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。具体的な実施形態では、組成物は、本開示の1つ以上の抗体又は結合性タンパク質を含む。本開示はまた、本明細書で記載される抗CD122抗体及び抗CD132抗体、又はその抗原結合性断片(複数可)の組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。特に、本開示は、CD122及びCD132に結合することが可能な少なくとも1つのFIT-Ig結合性タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。特に、本開示は、CD122及びCD132に結合することが可能な少なくとも1つのデュオボディ結合性タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0131】
本開示の医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる有効成分をさらに含みうる。一部の実施形態では、このようなさらなる成分は、予防剤及び/又は治療剤、検出剤、例えば、抗腫瘍薬、細胞傷害剤、異なる特異性の抗体、又はその機能的断片、検出用標識又はレポーターを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、医薬組成物は、障害を処置又は緩和するための、1つ以上のさらなる予防的又は治療剤、すなわち、本開示の抗体又は結合性タンパク質以外の薬剤を含む。一実施形態では、さらなる予防剤又は治療剤は、障害又は1つ以上のその症状の予防、処置、管理、又は改善において有用であることが公知であるか、使用されているか、又は現在使用されつつある。
【0132】
本開示のタンパク質を含む医薬組成物は、障害の診断、検出、若しくはモニタリング;障害若しくはその1つ以上の症状の処置、管理、若しくは改善;及び/又は調査研究における使用のためであるがこれらに限定されない医薬組成物である。一部の実施形態では、組成物は、担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含みうる。賦形剤は、一般に、主要有効成分以外(すなわち、本開示の抗体、その抗原結合性部分、又は結合性タンパク質以外)の、組成物に所望の特色ももたらす任意の化合物又は化合物の組合せである。
【0133】
核酸、ベクター、及び宿主細胞
さらなる態様では、本開示は、本開示の抗CD122抗体又はその抗原結合性断片の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離された核酸;本開示の抗CD132抗体又はその抗原結合性断片の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離された核酸;並びにCD122及びCD132の両方に結合することが可能なFIT-Ig(Fab-in-tandem immunoglobulin)などの二重特異性結合性タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする単離された核酸を提供する。このような核酸は、多様な遺伝子解析を実行するか、又は本明細書で記載される抗体又は結合性タンパク質を発現させるか、これらの1つ以上の特性を特徴付けるか、若しくは改善するために、ベクターへと挿入されうる。ベクターは、本明細書で記載される抗体又は結合性タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする、1つ以上の核酸分子であって、ベクターを保有する特定の宿主細胞内の抗体又は結合性タンパク質の発現を可能とする適切な転写配列及び/又は翻訳配列に機能的に連結された、1つ以上の核酸分子を含みうる。本明細書で記載される結合性タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸をクローニングするか、又は発現させるためのベクターの例としては、pcDNA、pTT、pTT3、pEFBOS、pBV、pJV、及びpBJ、並びにこれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
本開示はまた、本明細書で記載される抗体又は結合性タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターを発現するか、又はこれを発現することが可能な宿主細胞も提供する。本開示で有用な宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。例示的な原核宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。本開示における宿主細胞として有用な真核細胞は、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞、及び真菌細胞を含む。例示的真菌細胞は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を含む酵母細胞である。本開示に従う宿主細胞として有用な例示的動物細胞は、哺乳動物細胞、鳥類細胞、及び昆虫細胞を含むがこれらに限定されない。例示的哺乳動物細胞は、CHO細胞、HEK細胞、及びCOS細胞を含むがこれらに限定されない。
【0135】
作製のための方法
別の態様では、本開示は、抗CD122抗体又はその機能的断片を作製する方法であって、抗体又は機能的断片をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、CD122に結合することが可能である抗体又は断片を発現させるのに十分な条件下で培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。
【0136】
別の態様では、本開示は、抗CD132抗体又はその機能的断片を作製する方法であって、抗体又は抗機能的断片をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、CD132に結合することが可能である抗体又は断片を発現させるのに十分な条件下で培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。
【0137】
別の態様では、本開示は、CD122及びCD132に結合することが可能である二重特異性多価結合性タンパク質、とりわけ、CD122及びCD132に結合するFIT-Ig結合性タンパク質を作製する方法であって、FIT-Ig結合性タンパク質をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞に、CD122及びCD132に結合することが可能である結合性タンパク質を発現させるのに十分な条件下で培養培地中で培養するステップを含む方法を提供する。本明細書で開示される方法により作製されるタンパク質は、単離され、本明細書で記載される多様な組成物及び方法において使用されうる。
【0138】
抗体及び結合性タンパク質の使用
ヒトCD122及び/又はCD132に結合するそれらの能力を踏まえると、本明細書で記載される抗体、その機能的断片、及び本明細書で記載される二重特異性多価結合性タンパク質は、例えば、これらの標的抗原の一方又は両方を発現する細胞を含有する生物学的試料中において、CD122若しくはCD132、又はこれらの両方を検出するのに使用されうる。本開示の抗体、機能的断片、及び結合性タンパク質は、慣用的イムノアッセイ、例えば、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は免疫組織化学において使用されうる。本開示は、生物学的試料中の、CD122又はCD132を検出する方法であって、生物学的試料を、本開示の抗体、その抗原結合性部分、又は結合性タンパク質と接触させるステップ、及び標的抗原への結合が生じるのかどうかを検出し、これにより、生物学的試料中の、標的の存在又は非存在を検出するステップを含む方法を提供する。抗体、機能的断片、又は結合性タンパク質は、結合した抗体/断片/結合性タンパク質、又は結合していない抗体/断片/結合性タンパク質の検出を容易とするように、検出可能な物質で直接的又は間接的に標識されていてもよい。適切な検出用物質は、多様な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、及び放射性材料を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、又はフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;適切な放射性材料の例は、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Smを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫細胞の集団の生成/拡大における使用のための、本開示の抗体又は二重特異性結合性タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、CD122及びCD132を発現する細胞の数の増加(すなわち、細胞の集団の拡大)、例えば、CD8+ T細胞及び/又はCD4+ T細胞の拡大、又はTreg細胞よりもCD8+T細胞及び/又はCD4+ T細胞の優先的な拡大から利益を得る任意の対象の処置に使用するための、本開示の抗体又は二重特異性結合性タンパク質を提供する。
【0140】
本開示の抗体(その機能的断片を含む)、及び結合性タンパク質は、対象への投与に適する医薬組成物へ組み込むことができる。典型的に、医薬組成物は、本開示の抗体又は結合性タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、任意/全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、並びにこれらの組合せを含む。多くの場合に、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。薬学的に許容される担体は、組成物中に存在する抗体又は結合性タンパク質の保管寿命又は効果を増強する、少量の補助物質、例えば、保湿剤又は乳化剤、保存剤、又は緩衝剤をさらに含みうる。本開示の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。
【0141】
本開示の方法は、注射による(例えば、ボーラス注射又は連続注入による)非経口投与のために製剤化された組成物の投与を含みうる。注射のための製剤は、保存剤を添加された単位剤形で(例えば、アンプル中又は複数回投与用容器内で)提示されうる。組成物は、このような形態、例えば、油性媒体中又は水性媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態を取る場合があり、製剤化剤、例えば、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含有しうる。代替的に、主要有効成分は、使用の前における、適切な媒体(例えば、滅菌発熱物質非含有水)による構成のための粉末形態の場合もある。
【0142】
本開示の使用は、デポ調製物として製剤化された組成物の投与を含みうる。このような長時間作用型製剤は、植込み(例えば、皮下植込み又は筋内植込み)により投与される場合もあり、筋内注射により投与される場合もある。例えば、組成物は、適切なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとしての)により製剤化される場合もあり、イオン交換樹脂により製剤化される場合もあり、難溶性誘導体(例えば、難溶性塩としての)として製剤化される場合もある。
【0143】
本開示の抗体、その機能的断片、又は結合性タンパク質はまた、多様な疾患の処置において有用である1つ以上のさらなる治療剤と共に投与される場合もある。本明細書で記載される抗体、その機能的断片、及び結合性タンパク質は、単独で使用される場合もあり、さらなる薬剤、例えば、さらなる治療剤、その意図された目的のために、当業者により選択されるさらなる薬剤と組み合わせて使用される場合もある。例えば、さらなる薬剤は、当技術分野において、本開示の抗体又は結合性タンパク質により処置される疾患又は状態を処置するのに有用であることが認知されている治療剤でありうる。さらなる薬剤はまた、治療用組成物に有益な属性を付与する薬剤、例えば、組成物の粘性に影響を及ぼす薬剤でもありうる。
【0144】
以上で、本開示について詳細に記載したので、本開示は、例示だけを目的として組み入れられるものであり、本開示の限定であることが意図されるものではない、以下の実施例を参照して、より明確に理解されるであろう。
【0145】
処置方法及び医療用途
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象においてT細胞機能不全障害を処置するための方法を提供し、該方法は、本明細書に開示される、抗CD122抗体及び/若しくは抗CD132抗体、又はCD122及びCD132に結合可能な二重特異性多価結合性タンパク質、具体的にはCD122及びCD132に結合するFIT-Ig結合性タンパク質を対象に投与することを含む。T細胞機能不全障害は、正常なT細胞の機能が損なわれ、感染性微生物、細菌、ウイルスなどの病原性抗原に対する対象の免疫応答のダウンレギュレーションを引き起こす疾患又は症状であり得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法を提供し、該方法は、本明細書に開示される、抗CD122抗体及び/又は抗CD132抗体、又はCD122及びCD132に結合可能な二重特異性多価結合性タンパク質、具体的にはCD122及びCD132に結合するFIT-Ig結合性タンパク質を対象に投与することを含む。本明細書に記載される本発明に従って処置されるがんは、任意の望ましくない細胞増殖、新生物又は腫瘍であり得る。がんは良性であっても悪性であってもよく、原発性であっても続発性であってもよい。癌は転移性であってもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、処置されるがんは、結腸、直腸、子宮頸部、口腔咽頭、鼻咽頭、肝臓、胃、頭頸部、口腔、食道、唇、口、舌、扁桃、鼻、咽頭、唾液腺、副鼻腔、咽頭、喉頭、前立腺、肺、膀胱、皮膚、腎臓、卵巣又は中皮からなる群より選択される組織のがんであり得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、処置対象となるがんは、例えば、黒色腫、転移性黒色腫、腎細胞癌、卵巣がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、脳がん、頭頸部がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮頸癌、肝細胞癌、前立腺がん、又は膀胱がんである。
【0149】
本明細書で記載される処置方法は、それを必要とする対象へと、意図される処置目的のために本発明の抗体又は結合性タンパク質、例えば、抗腫瘍活性を有する別の薬物と組み合わされて適切に存在する、さらなる有効成分を投与するステップをさらに含みうる。本開示の処置方法では、さらなる有効成分は、本開示の抗体又は結合性タンパク質を含む組成物、及び処置を必要とする対象へと投与される組成物へと組み込まれうる。別の実施形態では、本開示の処置方法は、処置を必要とする対象へと、本明細書で記載される抗体又は結合性タンパク質を投与するステップ、及び対象へと、本開示の抗体又は結合性タンパク質を投与するステップの前に、これと共時的に、又はこの後で、対象へと、さらなる有効成分を投与する別個のステップを含みうる。
【0150】
[実施例]
[実施例1]
抗CD122及び抗CD132抗体の生成及び特徴付け
配列番号1;
配列番号1、HUMAN_CD122_ECD
として示されるヒトCD122の組換え細胞外ドメイン、又は下記の配列番号2:
配列番号2、HUMAN_CD132_ECD
として示されるヒトCD132の組換え細胞外ドメインを用いてBalb/cマウスを免疫化することによりそれぞれ抗CD122及び抗CD132抗体を得た。
【0151】
マウスを2週間隔で免疫化し、2回目の注射後に週1回で血清力価についてモニターした。4回の免疫化後に、脾臓細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞株を形成させた。融合生成物を、96ウェルプレート中のヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)を含有する選択培地中に1×105脾臓細胞/ウェルでプレーティングした。融合の7~10日後に、肉眼でハイブリドーマコロニーが観察された。ハイブリドーマ細胞の上清を次にスクリーニング及び選択して、CD122特異的マウス抗体又はCD132特異的マウス抗体を産生する細胞株を同定した。
【0152】
CD122又はCD132に対する抗原特異的結合の予備的特徴付けにおいて、クローン#CD122-mAb77と命名した抗CD122ハイブリドーマ細胞株及びクローン#CD132-mAb17と命名した抗CD132ハイブリドーマ細胞株を選択した。2つのマウス抗体の可変ドメイン配列を表1に示す。Kabat番号付けに基づいて相補性決定領域(CDR)に下線を引いている。
【0153】
【0154】
抗CD122単一特異性抗体及び抗CD132単一特異性抗体の結合親和性及び動態定数は、非標識バイオセンサーを用いたWAVEsystem(Creoptix AG、Switzerland)上でのグレーティング結合干渉法(grating-coupled interferometry; GCI)を使用して決定することができる。簡単に説明すると、PCP WAVEchip(Creoptix AG)にヤギ抗ヒトIgG Fc抗体を約1500pg/mm2の密度までアミンカップリングにより予め固定化し、それを使用して試料抗体を約30pg/mm2の密度まで捕捉し、次に会合を評価するために250秒間の60μL/分での注入により1X HBS-EP+ buffer(Cytiva、Cat No. BR100669)中に段階希釈されたそれぞれの抗原、組換えヒトCD122又はCD132に曝露し、続いて1200秒の解離を行う。会合及び解離の各々のラウンド後に、WAVEchip表面は、120秒間の60μL/分でのpH 1.5 グリシン-HClバッファー注入に供することにより再生することができる。センサーグラムを25℃で記録し、データをWAVEcontrol(Creoptix AG)上で分析することができ、ブランク注入及び参照チャネルからのシグナルをサブトラクションすることにより二重参照(double referenced)することができる。Langmuir 1:1モデルをデータフィッティングのために使用する。
【0155】
[実施例2]
CD122/CD132複合体を標的化する二重特異性抗体の構築
2.1 二重特異性抗CD122/CD132 FIT-Igの生成
図1に描写されるようなFIT-Ig分子を、PCT国際公開WO 2015/103072に記載される一般的手順にしたがって構築した。CD122及びCD132に結合する能力を有する各々のFIT-Ig抗体は、以下の構造:
鎖#1(長鎖): VL
A-CL-VH
B-CH1-ヒンジ-CH2-CH3;
鎖#2(第1の短鎖): VH
A-CH1;
鎖#3(第2の短鎖): VL
B-CL
を有する3つのポリペプチド鎖からなり;ここで、各々の鎖はN末端からC末端へであり、「A」は、CD122及びCD132から選択される1つの抗原に対する抗体Aについてであり、「B」は、CD122及びCD132から選択される別の抗原に対する抗体Bについてである。
【0156】
二重特異性抗CD122/CD132 FIT-Igのアミノ酸配列は表2において例示される。
【0157】
【0158】
前記FIT-Ig抗体を製造するために、3つのポリペプチド鎖をコードするプラスミド構築物を混合し、HEK293細胞に共トランスフェクトした。細胞を7日間培養し、上清を採取し、プロテインA精製に供した。溶離液中の精製されたFIT-Igタンパク質をA280により濃度について、及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により均質性について測定した。例示されるCD122/CD132二重特異性抗体を「FIT2019-86b」と命名する。
【0159】
2.2 二重特異性抗CD122/CD132デュオボディ(duobody)の生成
Fab-アーム交換ベース二重特異性「デュオボディ(duobody)」を文献(Labrijn, A. F. et al. PNAS, 110, 5145-5150, 2013)にしたがって生成した。
【0160】
例えば、CD132-mAb17のVH及びVLを、CH3中にF405L変異を含有するヒトIgG1定常ドメイン、及びヒトカッパ定常ドメインとアセンブルさせた。CD122-mAb77のVH及びVLを、CH3中にK409R変異を含有するヒトIgG1定常ドメイン、及びヒトカッパ定常ドメインとアセンブルさせた。4つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列を表3に示す。
【0161】
【0162】
CD132-mAb17(例えばCD132-mAb17-IgG1-F405L抗体)及びCD122-mAb77(例えばCD122-mAb77-IgG1-K409R抗体)をそれぞれ製造した。具体的には、Expi293F細胞に、対応する重鎖ベクター及び軽鎖ベクターを共トランスフェクトし、7日間培養し、次に上清を採取し、プロテインAクロマトグラフィー(MabSelect SuRe(商標); GE Healthcare)に供し、溶離液をPBSに対して終夜透析し、0.2μMデッドエンドフィルター上でフィルター滅菌した。
【0163】
そのようにして得られた精製されたIgGを、それぞれ算出された比吸光係数と共にA280nmにより濃度について測定した。IgGのバッチの高速サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)評価により少なくとも94%の単量体純度が得られた。in vivoで使用されたIgGのエンドトキシンレベルはすべてIgG 1mg当たり0.1エンドトキシン単位未満であった。
【0164】
CD132-mAb17-IgG1-F405L及びCD122-mAb77-IgG1-K409R抗体を混合し、各々の抗体当たり1mg/mLの最終濃度で25mM 2-メルカプトエチルアミン(2-MEA、Sigma)とインキュベートした。混合物を37℃で90分間インキュベートし、次にPBSに対して終夜透析して、バッファー交換を通じて2-MEAを除去した。試料を4℃で終夜貯蔵して、ジスルフィド結合のための再酸化及び
図2に示されるような安定な1+1非対称二重特異性IgG1分子の生成を可能とした。例示されるCD122/CD132二重特異性抗体を「Duo2019-86b」と命名する。
【0165】
[実施例3]
ヒト化抗CD122/CD132 FIT-Igの生成及び評価
3.1 抗CD122及び抗CD132抗体のヒト化
3.1.1 抗CD132抗体のヒト化
最も高い相同性のヒト生殖系列IgV遺伝子配列及びフレームワーク配列の最良マッチングのためにV BASEデータベース(https://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php)からの利用可能なヒト配列を利用して、表1中のmAb CD132-mAb17可変領域の配列を用いてヒト化抗体を作出した。軽鎖のために、CD132-mAb17 VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3(配列番号6、表1において下線を引いている)を012遺伝子(配列番号6のVL配列についての最も近いヒトV遺伝子マッチ)のフレームワーク配列上に、JK2フレームワーク2配列をCDR-L3の後にしてグラフトした。重鎖のために、CD132-mAb17 VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3(配列番号5、表1において下線を引いている)をVH1-46(配列番号5のVH配列についての最も近いヒトマッチ)のフレームワーク配列上に、JH6フレームワーク2配列をCDR-H3の後にしてグラフトした。鋳型タンパク質の配列アライメントを通じてクエリタンパク質の3次元(3D)構造を予測することができる相同性モデリングによりCD132-mAb17の3DFvモデルを生成した。そのようなモデルにしたがってループ構造又はVH/VLインターフェースをサポートするために不可欠であるとみなされたフレームワーク位置におけるある特定のアミノ酸を、対応するマウス残基に復帰変異させて、親和性/活性に対する問題を最小化した(表4において二重下線により指し示される)。重鎖についてV37M、R38K、M48I、R66K、V67A、M69L、R71A及びV78A、並びに軽鎖についてD70E及びF71Yの潜在的な変異(すべてKabat番号付けによる)が同定された。CDRとの相互作用により決定された各々の復帰変異の重要性順位付けにしたがって、最も重要な復帰変異を優先的にヒト化VH配列に導入し、さらに他の復帰変異をこれに続けて段階的に導入した。さらには、Q1E変異(表4において斜体の太字)を常に含めて、該当する場合にN末端ピログルタミン酸形成を排除した。そのようにして設計された配列を表4に示した。
【0166】
【0167】
3.1.2 抗CD122抗体のヒト化設計
最も高い相同性のヒト生殖系列IgV遺伝子配列及びフレームワーク配列の最良マッチングのためにV BASEデータベース(https://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php)からの利用可能なヒト配列を利用して、表1中のCD122-mAb77可変領域の配列を用いてヒト化抗体を作出した。軽鎖のために、CD122-mAb77 VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3(配列番号4、表1において下線を引いている)をA17遺伝子(配列番号4のVL配列について最も近いヒトV遺伝子マッチ)のフレームワーク2上に、JK4フレームワーク2配列をCDR-L3の後にしてグラフトした。重鎖のために、CD122-mAb77 VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3(配列番号3、表1において下線を引いている)をVH1-8(配列番号3のVH配列について最も近いヒトマッチ)のフレームワーク配列上に、JH6フレームワーク2配列をCDR-H3の後にしてグラフトした。相同性モデリングによる3D Fvモデル分析にしたがってループ構造又はVH/VLインターフェースをサポートするために不可欠であるとみなされたフレームワーク位置におけるある特定のアミノ酸を、対応するマウス残基に復帰変異させて、親和性/活性に対する問題を最小化した(表5において二重下線により指し示される)。重鎖についてR28T、S30T、K38R、I48M、A67V、L69M、D72N、K73T及びF91Y、並びに軽鎖についてT7S、Y36F、L37Q及びL46Rの潜在的な変異(すべてKabat番号付けによる)が同定された。CDRとの相互作用により決定された各々の復帰変異の重要性順位付けにしたがって、最も重要な復帰変異を優先的にヒト化VH配列に導入し、さらに他の復帰変異をこれに続けて段階的に導入した。さらには、Q1E変異(表5において斜体の太字)を常に含めて、該当する場合にN末端ピログルタミン酸形成を排除した。CDR-H2又はCDR-L1中の「DG」(Asp-Gly)、「NT」(Asn-Thr)及び「NG」(Asn-Gly)は翻訳後修飾(PTM)を受ける傾向があり、これは、組換え抗体生産の間の不均質性を結果としてもたらし得る。したがって、NG(Asn-Gly)からNA(Asn-Ala)への変異、DG(Asp-Gly)からDA(Asp-Ala)への変異、DG(Asp-Gly)からEG(Glu-Gly)への変異、NT(Asn-Thr)からQT(Gln-Thr)への変異の点変異(太字及び強調を付している)を含有するVH及びVL CDRも設計し、評価した。そのようにして設計された配列を表5に示した。
【0168】
【0169】
3.2 ヒト化抗CD122/132 FIT-Igの生成及び結合評価
3.2.1 ヒト化抗CD122/132 FIT-Igの生成
実施例2.1に記載されるようなFIT-Ig分子の設計及び生成プロセスの後に、表2に列挙されるペプチド配列に基づいて、その中のVHA/VLAを、表5において設計されたヒト化抗CD122 VH/VL配列で置き換え、及びその中のVHB/VLBを、表4において設計されたヒト化抗CD132 VH/VL配列で置き換えて、CD122及びCD123の両方を認識するヒト化FIT-Igを構築した。そのような置き換えは、下記の表6に列挙されるヒト化抗CD122/CD132 FIT-Ig結合性タンパク質を作出した。
【0170】
【0171】
3.2.2 ヒト化CD122/CD132 FIT-Igの標的結合評価
グレーティング結合干渉法(GCI)によりWAVEsystem(Creoptix AG、Switzerland)上での非標識バイオセンサーを使用してヒト化CD122/CD132 FIT-Igの結合親和性及び動態定数を決定した。簡単に説明すると、PCP WAVEchip(Creoptix AG)にヤギ抗ヒトIgG Fc抗体を3830pg/mm2の密度までアミンカップリングにより予め固定化し、それを使用して、実施例3.2.1から生成されたヒト化CD122/CD132 FIT-Igを約90pg/mm2の密度まで捕捉し、次に会合を評価するために250秒間の60μL/分での注入により1X HBS-EP+ buffer(Cytiva、Cat No. BR100669)中に段階希釈(それぞれヒトCD122、ヒトCD132及びカニクイザルCD132について200nM~823pM;カニクイザルCD122について1000nM~1.37nMの3倍希釈)された組換えヒト/カニクイザルCD122又はCD132に曝露し、続いて1200秒の解離を行った。会合及び解離の各々のラウンド後に、WAVEchip表面を、120秒間の60μL/分でのpH 1.5 グリシン-HClバッファー注入に供することにより再生させた。センサーグラムを25℃で記録し、データをWAVEcontrol(Creoptix AG)上で分析し、ブランク注入及び参照チャネルからのシグナルをサブトラクションすることにより二重参照した。Langmuir 1:1モデルをデータフィッティングのために使用した。実施例3.2.1から生成されたヒト化CD122/CD132 FIT-Igについてそれにより得られた動態定数は、それらはすべて、ヒト及びカニクイザルCD122及びCD132に高い親和性で同等に結合することを示した。表7は、huFIT2019-86b-51の結合動態定数を例示したものである。
【0172】
【0173】
[実施例4]
CD122/CD132二重特異性抗体のCD25結合評価
CD122/CD132二重特異性抗体、FIT2019-86bを、ELISAによりCD25結合活性について試験した。具体的には、96ウェルプレートをそれぞれ1μg/mL 組換えヒトCD25、CD122又はCD132で4℃で終夜被覆し、洗浄バッファー(PBST、0.05% Tween 20を含有するPBS)で1回洗浄し、ブロッキングバッファー(1% BSAを含有するPBST)で室温で0.5時間ブロッキングし、割り当てられた濃度のFIT2019-86bを加え、RTで0.5時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、HRP標識された抗ヒトIgG二次抗体を加え、RTで15分間インキュベートし、次にPBSTで5回洗浄した。発色のために100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)色素生成溶液を各々のウェルに加え、反応液を1N HClによりクエンチし、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー上で測定した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを用いて抗体濃度に対して結合シグナルをプロットし、それに応じてEC50値を算出した。
【0174】
図3に示されるように、FIT2019-86b抗体はCD25への結合を有しなかったが、それぞれCD122及びCD132標的に対する特異的結合活性が観察され、ヒトCD122へのFIT2019-86b抗体の結合について0.3237nMのEC
50、ヒトCD132へのFIT2019-86b抗体の結合について0.6618nMのEC
50であった。
【0175】
[実施例5]
CD122/CD132二重特異性抗体の細胞表面結合の特徴付け
FIT2019-86b及びDuo2019-86bと命名されたCD122/CD132二重特異性抗体、並びにヒト化抗CD122/CD132抗体huFIT2019-86b-51を、それぞれヒトCD122及びヒトCD132を過剰発現するHEK293細胞株を使用して細胞結合活性について測定した。
【0176】
簡単に説明すると、96ウェルプレートの各々のウェルに3×105個の細胞を播種し、400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、次に各々のウェルに100μlの抗体(5倍段階希釈、0.0064~100nM)を加え、穏やかに混合した。4℃で60分のインキュベーション後に、プレートを数回洗浄して過剰な抗体を除去した。二次蛍光色素コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch、Cat No. 109-606-098)を次に加え、細胞と4℃で20分間インキュベートした。遠心分離及び洗浄の別のラウンド後に、細胞をアッセイバッファー(2% FBSを含有する1X PBS)中にフローサイトメーター上での読み取りのために再懸濁した。メジアン蛍光強度(MFI)リードアウトを抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアで分析した。
【0177】
図4は、CD122/CD132二重特異性抗体FIT2019-86b、Duo2019-86b及びhuFIT2019-86b-51は、細胞表面上に発現されるCD122及びCD132標的の両方に対する結合活性を呈したことを実証する。
【0178】
[実施例6]
CD122/CD132二重特異性抗体によるCD122/CD132複合体のシグナル伝達経路の活性化
STAT5誘導性分泌アルカリホスファターゼ(STAT5-inducible secreted alkaline phosphatase; SEAP)レポーター遺伝子アッセイを利用してCD122/CD132複合体のシグナル伝達経路の活性化を評価した。
【0179】
簡単に説明すると、96ウェルアッセイプレートの各々のウェルに100ulの抗体(10% FBSを含むDMEM中の4倍段階希釈、0.000031nM~2nM)及び50,000細胞のHEK-Blue(商標) IL-2細胞(InvivoGen、Cat#hkb-il2)懸濁液を加え、組織培養インキュベーター(37℃、5% CO2)中で終夜インキュベートし、20uLの上清を次に各々のウェルから別の96ウェルアッセイプレートに移し、180uLのQUANTI-Blue溶液(InvivoGen、Cat code rep-qbs)と混合した。後者のアッセイプレートを37℃で60分間顕色のためにインキュベートし、マイクロプレートリーダー上で630nmの吸光度(OD630)を測定した。OD630はSTAT5活性化のレベルを表す。
【0180】
図5は、FIT-2019-86bのみがSTAT5活性化(CD122/CD132複合体の活性化を示唆する)を誘導し、Duo2019-86はSTAT5活性化を誘導しなかったことを示す。抗CD122及び抗CD132抗体の同じ可変領域が両方のフォーマットにおいて使用されたことを考慮すると、活性化能力の差異はフォーマット依存性であり得る。実施例3.2.1から生成されたヒト化抗CD122/CD132 FIT-Igを、二重特異性FIT2019-86bを陽性対照として使用してSTAT5誘導性SEAPレポーター遺伝子アッセイ(RGA)においても試験した。EC50値を算出したところ約0.1~0.3nMの範囲内であった。より低いEC50値は抗体のより良好なSTAT5活性化活性を指し示す。表8は、一部の例示されるFIT-IgのEC50値を示す。
【0181】
【0182】
[実施例7]
CD122/CD132 FIT-Igのin vitroアゴニスト効果
7.1 ヒトリンパ球におけるSTAT5リン酸化の誘導
ヒトCD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Treg細胞及びNK細胞においてIL-2Rシグナル伝達を刺激するFIT2019-86b及びhuFIT2019-86b-51の能力をフローサイトメトリーベースSTAT5リン酸化(pSTAT5)アッセイにより評価した。
【0183】
簡単に説明すると、凍結されたLeukoPakからヒトPBMCを調製した。PBMC細胞を(必要な場合に)解凍し、RPMI1640培地で2回洗浄し、5.5×106細胞/mLで再懸濁し、次に90μL/ウェルで96ウェルプレートに移し、指し示されるように10μLの抗体又は参照IL-2/IL-2バリアント(5倍段階希釈、0.00128nM~100nM)を加え、37℃で15分間インキュベートした。プレートを次にシールし、インキュベーターにさらに1時間戻した。2回目のインキュベーションの直後に、細胞を、100μLの予備加温したBD Cytofix(商標) Buffer (Cat. No. 554655)を用いて10分間37℃で固定し、次に350gで7分間遠心分離した。上清を廃棄し、200uLの予備冷却したBD Phosflow Perm Buffer III(BD、Cat#554655)を加え、細胞と氷上で30分間暗所中でインキュベートした。細胞を次に4℃で7分間450gでの遠心分離により2回洗浄し、200uLの細胞染色バッファー(Biolegend、Cat#420201)を用いて再懸濁した。次に、細胞ペレットを抗体混合物(抗CD3、Biolegend、Cat. No. 344818;抗CD4、Biolegend、Cat. No. 317408;抗CD8、Biolegend、Cat. No. 565310;抗CD25、BD、Cat. No. 562442;抗Foxp3、Biolegend、Cat. No. 560852;抗pSTAT5、BD、Cat. No. 562076;試料当たり2.5uLの各々の抗体)で染色し、RTで60分間暗所中でインキュベートした。染色後に、細胞を再び遠心分離し、2回洗浄した。引き続いて、細胞ペレットを200uLの細胞染色バッファーに再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。
【0184】
図6及び
図7に示されるように、IL-2、FIT2019-86b、及びhuFIT2019-86b-51による処理はヒトCD8+ T細胞において同等のpSTAT5活性化を呈したが、FIT2019-86b及びhuFIT2019-86b-51処理から観察されたヒトTreg細胞におけるpSTAT5活性化は有意により弱い。一方、「非CD25結合性」参照分子(PCT国際公開WO2020/005819A1に記載されているneo2/15;PCT国際公開WO2018/234862A1に記載されているH9)は、IL-2よりも大きいヒトCD8+ T細胞におけるpSTAT5活性化を示したが、FIT2019-86b及びhuFIT2019-86b-51よりも強いヒトTreg細胞におけるpSTAT5活性化を有した。
【0185】
7.2 ヒトPBMC増殖の誘導
本開示のFIT-Ig及び参照分子の間での機能活性の比較をT細胞増殖アッセイにおいてさらに行った。
【0186】
1日目に、完全培地(10% HI-FBS、1% PenStrep及び55μM 2-メルカプトエタノールを補充したRPMI1640)を用いて2E6細胞/mLの密度でヒトCD3+ T細胞を再懸濁した。T細胞を1X PBSで2回洗浄し、2μg/mLの抗CD3抗体(Biolegend、Cat NO. 300332)を予め被覆した6ウェルプレートに移した。可溶性抗CD28抗体(Biolegend、Cat No. 302934)もプレートに1μg/mLの最終濃度で加えた。プレートを37℃で4日目までインキュベートし、次にT細胞を1X PBSで1回洗浄し、完全培地を用いて1E6細胞/mLの密度まで再懸濁し、終夜静置した。
【0187】
5日目に、T細胞を収集し、1μM CellTrace CSFE(Thermo、Cat No. C34554)で染色し、完全培地に2E6細胞/mLの密度で再懸濁し、100μL/ウェルで96ウェル丸底プレートに分注し、次に試験品又は対照と37℃で4日間インキュベートした。
【0188】
9日目に、細胞を96ウェルv底プレートに移し、400g、7℃で6分間のスピニングにより1X DPBSで1回洗浄し、次に1:1000に希釈されたviability染料(eBioscience、Cat No. 65-0865-14)及び1:200に希釈されたFc block(BD Bioscience、Cat No. 564219)を用いて暗所中室温で10分間のインキュベーションにより染色した。インキュベーション後に、APCマウス抗ヒトCD4(BD、Cat NO. 555349)、PE-Cy7マウス抗ヒトCD8(Biolegend、Cat No. 301012)、BV421マウス抗ヒトCD25(Biolegend、356114)を含有する表面染色混合物を50μL/ウェルで加え、細胞と4℃で20分間インキュベートした。1X DPBSでの別の洗浄後に、細胞を、100μLの新鮮な調製されたFix/Perm溶液(1:3に希釈されたFix/Perm濃縮液、Invitrogen、Cat. No. 00-5123)で45分間、RTで暗所中で固定した。インキュベーション後に、細胞をPermバッファー(1:10に希釈されたPerm濃縮液、Invitrogen、Cat No. 00-8333)で洗浄し、PEマウス抗ヒトFoxP3抗体(Biolegend、Cat No. 320108)と1時間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後に、細胞を再び遠心分離し、Permバッファーで2回洗浄した。引き続いて、細胞ペレットを200uLの細胞染色バッファー(Biolegend、Cat#420201)に再懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0189】
上記のようなPBMC増殖アッセイの結果によりFIT-Ig(実施例3.2.1から生成されたFIT2019-86b又はヒト化CD122/CD132 FIT-Ig)を参照分子(H9、neo2/15、又はIL-2)の場合と比較すると、本開示のFIT-Igは、CD8+及びCD4+ T細胞の増殖の誘導の観点において参照分子と同等であるが、Treg細胞の増殖においてはるかに低いアゴニスト性である。
図8は、FIT2019-86b、huFIT9-86b-32及びhuFIT2019-8b-51からの結果を例示したものである。
【0190】
[実施例8]
in vivo腫瘍成長阻害
8.1 免疫不全M-NSGマウスにおけるFIT2019-86bによるin vivo腫瘍成長阻害
FIT2019-86bによるin vivo腫瘍成長阻害を免疫不全M-NSGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルにおいて評価した。簡単に説明すると、A375ヒト黒色腫細胞(ATCC# CRL-1619)を移植前に少なくとも2継代にわたり常法で培養した。凍結されたヒトPBMCを解凍し、標準的な手順にしたがって回収した。移植の日に、各々のマウスのために5×106個のA375細胞及び2×105個のPBMCを0.1mL DPBS + 0.1mL Matrigel中で混合した。得られた0.2mLの細胞懸濁液を、26ゲージ針を使用してM-NSGマウス(雌、6~7週齢)の右脇腹の皮下(sc)に注射した。80~200mm3の腫瘍体積を有するマウスを選択し、(0日目、D0に)週2回(D3、D7、D10、及びD14)の3mg/kgのFIT2019-86b又はビヒクル対照での処置のために2つの群に無作為化した。腫瘍成長及び体重を週2回測定した。以下の式:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2を使用して腫瘍の寸法に基づいて腫瘍体積を算出した。すべての動物において経時的な体重損失を測定することにより移植片対宿主病(GVHD)を評価した。20%又はそれを上回る体重損失が観察された動物を安楽死させた。
【0191】
図9は、FIT2019-86b処置はビヒクル対照と比較して有意な腫瘍成長阻害をもたらしたことを実証する。FIT2019-86bで処置された動物は14日目までに体重損失を呈し(
図10に示される)、ビヒクル対照を上回るGVHDの加速を指し示した。
【0192】
8.2 免疫不全NCGマウスにおけるhuFIT2019-86b-51によるin vivo腫瘍成長阻害
8.2.1 黒色腫/PBMC併用移植モデルにおいて
huFIT2019-86b-51によるin vivo腫瘍成長阻害を免疫不全NCGマウスにおける黒色腫/PBMC併用移植モデルにおいて評価した。簡単に説明すると、A375ヒト黒色腫細胞(ATCC# CRL-1619)を移植前に少なくとも2継代にわたり常法で培養した。凍結されたヒトPBMCを解凍し、標準的な手順にしたがって回収した。移植の日に、各々のマウスのために5×106個のA375細胞及び2×105個のPBMCを0.1mL DPBS + 0.1mL Matrigel中で混合した。得られた0.2mLの細胞懸濁液を、26ゲージ針を使用してNCGマウス(雌、6~7週齢)の右脇腹の皮下(sc)に注射した。80~200mm3の腫瘍体積を有するマウスを選択し、4つの投薬量(1mg/kg、0.3mg/kg、0.1mg/kg、0.03mg/kg)におけるhuFIT2019-86b-51、又はビヒクル対照での週2回で3週間の処置のために5つの群に無作為化した(0日目、D0)。腫瘍成長及び体重を週2回測定した。以下の式:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2を使用して腫瘍の寸法に基づいて腫瘍体積を算出した。すべての動物において経時的な体重損失を測定することにより移植片対宿主病(GVHD)を評価した。20%又はそれを上回る体重損失が観察された動物を安楽死させた。
【0193】
図11は、huFIT2019-86b-51処置はビヒクル対照と比較して有意な腫瘍成長阻害をもたらしたことを実証する。HuFIT2019-86b-51(1mg/kg)で処置された群は、14日目までにわずかな体重損失を呈し(
図12に示される)、ビヒクル対照を上回るGVHDの加速を指し示した。
【0194】
8.2.2 NSCLC細胞/PBMC併用移植モデルにおいて
huFIT2019-86b-51によるin vivo腫瘍成長阻害もまた免疫不全NCGマウスにおけるNSCLC細胞/PBMC併用移植モデルにおいて評価した。簡単に説明すると、H292腫瘍細胞(ATCC# CRL-1848)を移植前に少なくとも2継代にわたり常法で培養した。凍結されたヒトPBMCを解凍し、標準的な手順にしたがって回収した。移植の日に、各々のマウスのために2×106個のH292細胞及び4×105個のPBMCを0.1mL DPBS中で混合した。細胞懸濁液を、26ゲージ針を使用してNCGマウス(雌、6~7週齢)の右脇腹の皮下(sc)に注射した。接種の7日後(7日目、D7)に、マウスを選択し、2つの投薬量(1mg/kg、0.3mg/kg)におけるhuFIT2019-86b-51、又はビヒクル対照での週2回(D7、D10、D14、D17及びD21)の処置のために3つの群に無作為化した。腫瘍成長及び体重を週2回測定した。以下の式:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2を使用して腫瘍の寸法に基づいて腫瘍体積を算出した。すべての動物において経時的な体重損失を測定することにより移植片対宿主病(GVHD)を評価した。20%又はそれを上回る体重損失が観察された動物を安楽死させた。
【0195】
図13は、huFIT2019-86b-51処置はビヒクル対照と比較して有意な腫瘍成長阻害をもたらしたことを実証する。
図14は、huFIT2019-86b-51及びビヒクル対照での処置の間の体重変化を示す。
【0196】
[実施例9]
in vivo GVHD及びCD8拡大
FIT2019-86b及び組換えヒトIL-2(rhIL-2)の機能活性をまた、加速GVHDモデル及びin vivoエフェクターT細胞刺激アッセイにより比較した。簡単に説明すると、M-NSGマウス(雌、6~7週齢)に5×106個のヒトPBMCをi.p.で養子移入した。18日後に、マウスを出血させ、末梢血中のヒトCD45+細胞数を測定することによりヒトPBMCの生着をモニターした。全PBMCの2%より高いヒトCD45+パーセンテージを有するマウスを選択し、0日目(D0)に3つの群に無作為化した:D0においてビヒクル対照(1X PBS)で1回処置される群1(G1)のマウス;連続する5日間(D0からD4まで)1日毎に50,000IU rhIL-2で処置される群2(G2)のマウス;D0において単回の注射により5mg/kg FIT2019-86bで処置される群3(G3)のマウス。体重をD0以降1日毎に測定した。新鮮な全血試料を各々のマウスから研究のD1、D4及びD7において収集した。そして末梢血中のヒトCD45+、CD4+及びCD8+細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより測定した。
【0197】
図15は、FIT2019-86bで処置されたマウスは、D3の辺りの体重損失により現れた、GVHDの非常に迅速な発症を呈したことを示す。対照的に、ビヒクル対照及びrhIL-2処置マウスは、D4までにGVHDの徴候を呈しなかった。これは、処置されたマウスにおける免疫エフェクター細胞の活性化の増強と合致する、ビヒクル対照及びrhIL-2群と比較したGVHDの加速を指し示す。具体的には、T細胞増殖プロファイルにおける応答は、
図16において、D1における各々の個々のマウスの比に対して正規化されたCD8+対CD4+比の時間経過により示される。相対的に、FIT2019-86bで処置されたマウスは、D4以降に有意に増加された細胞傷害性ヒトCD8+ T細胞及び相対的に低減されたヒトCD4+ T細胞の割合を示し、ビヒクル対照群におけるプロファイルは相対的に安定であったが、rhIL-2で処置されたマウスにおいてヒトCD8+ T細胞の穏やかな増加を示すに過ぎなかった。
【0198】
[実施例10]
IL-2/IL2Rβ結合競合アッセイ
IL2RβへのIL2の結合と競合するhuFIT2019-86b-51及び参照分子の能力をCreoptix WAVEsystem(Malvern Panalytical)を用いてグレーティング結合干渉法(GCI)により評価した。追加の350mM NaClを含む1X HBS-EP+(Cytiva、Cat No. BR100669)を希釈及びランニングバッファーとして使用した。簡単に説明すると、製造者の指示書にしたがってPCP WAVEchip(Creoptix AG)に組換えヒトIL2を約2000pg/mm2の密度までアミンカップリングにより固定化した。試験の各々のラウンドのために、500nM IL2Rβを最初に250秒間注入し、チップ上の固定化されたIL2により約35pg/mm2の密度まで捕捉させた。500nMの試験品(ヒトIL2、H9、neo2/15又はhuFIT2019-86b-51)をIL2Rβと予備混合し(1:1の濃度比)、250秒間注入してチップ上のIL2/IL2Rβ複合体への混合物の結合を評価した。各々のラウンドの終わりに、60μL/分で60秒間のpH 1.5 グリシン-HClバッファーによりWAVEchipを再生させた。センサーグラムを25℃で記録し、データをWAVEcontrol(Creoptix AG)で分析した。理論的に、試験品/IL2Rβの混合物がIL2Rβ単独よりも低いIL2/IL2Rβ複合体への結合を示した場合、試験品はIL2と競合していることになる。そうでない場合、試験品は、IL2とは異なるIL2Rβ結合性エピトープを有する。IL2をこのアッセイにおける競合性陽性対照として使用した。
【0199】
図17に示されるように、IL2及びその誘導体とは異なり、huFIT2019-86b-51はIL2/IL2Rβ結合と競合しない。
【0200】
等価
主題発明の特定の実施形態が議論されたが、上記の明細書は例示的なものであり、制限的なものではない。本発明の多くの変形形態が、本明細書及び下記の特許請求の範囲を検討することで当業者に明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、等価の全範囲と共に特許請求の範囲、及びそのような変形形態と共に本明細書を参照することにより決定されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】