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特表2024-541083フラボキサートの制御放出製剤及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】フラボキサートの制御放出製剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/453 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 9/24 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/54 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K31/453
A61K9/24
A61K9/32
A61K9/54
A61K47/32
A61K47/38
A61P13/08
A61P13/10
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529297
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2022061141
(87)【国際公開番号】W WO2023089553
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202111053299
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522355765
【氏名又は名称】スシュマ ポール バーリア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100231902
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 李花
(72)【発明者】
【氏名】スシュマ ポール バーリア
(72)【発明者】
【氏名】ニシャント バーリア
(72)【発明者】
【氏名】ガービンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】アヌパマ ディーワーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA40
4C076AA44
4C076AA53
4C076AA94
4C076BB04
4C076BB05
4C076CC44
4C076DD05
4C076DD09F
4C076DD28
4C076DD29C
4C076DD41
4C076DD47
4C076DD55
4C076DD57
4C076DD67
4C076DD68
4C076EE09
4C076EE10J
4C076EE11J
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE33
4C076EE38
4C076EE45
4C076EE48
4C076EE48J
4C076EE49
4C076EE58
4C076FF25
4C076FF31
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA02
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZC20
4C086ZC50
(57)【要約】
本開示は、二相薬物放出プロファイルを有する、二層錠剤、多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、MUPS(マルチプルユニットペレットシステム)錠剤、ペレット又はカプセルに充填されたビーズとしての、フラボキサート又は同様の親油性酸可溶性薬剤の制御放出製剤又は持続放出製剤に関する。本開示はまた、そのような製剤の調製方法及びその使用にも関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相薬物放出プロファイルを有するフラボキサートの制御放出経口製剤であって、
有効成分として約600~800mgのフラボキサート塩、
少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つのポリマー、
を含み、
前記界面活性剤は少なくとも「8」の親水性-親油性バランス値を有し、
前記製剤は少なくとも1つの即時放出薬物層及び少なくとも1つの持続放出薬物層を含み、
前記少なくとも1つの即時放出薬物層は前記製剤の約10~30wt%であり、そして
前記少なくとも1つの持続放出薬物層は前記製剤の約70~90wt%である、制御放出経口製剤。
【請求項2】
単回投与で、約10%w/w~35%w/wのフラボキサート塩が最初の2時間以内に放出され、残りのフラボキサート塩が最大12~24時間放出される、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマーは、親水性セルロース系ポリマーもしくはその塩、疎水性セルロース系ポリマーもしくはその塩、イオン性メタクリレートコポリマーもしくはその塩、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネート(HPMC AS)、オイドラギット(Eudragit)L30D55、オイドラギット(Eudragit)L100、又はそれらの組み合わせを含む、請求項3記載の制御放出経口製剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、長鎖アルキルスルホネート又は長鎖アルキルスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、第四級アンモニウム塩、脂肪族アルコール、例えば、ラウリル、セチル及びステリルなど、グリセリルエステル、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項6】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、Tween-20、Tween-80、又はそれらの組み合わせを含むポリソルベートグレードを含む、請求項5記載の制御放出経口製剤。
【請求項7】
少なくとも1つの希釈剤をさらに含み、前記少なくとも1つの希釈剤はマンニトール、ソルビトール、微結晶セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、デンプン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項8】
少なくとも1つの結合剤をさらに含み、前記少なくとも1つの結合剤はデンプン、ポリビニルピロリドン、天然又は合成ガム、セルロース系ポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項9】
少なくとも1つの崩壊剤をさらに含み、前記少なくとも1つの崩壊剤はデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項10】
少なくとも1つの潤滑剤又は流動促進剤をさらに含み、前記少なくとも1つの潤滑剤又は流動促進剤はタルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の制御放出経口製剤。
【請求項11】
前記製剤は12~24時間にわたってフラボキサート塩を放出する、請求項1~10のいずれか1項記載の制御放出経口製剤。
【請求項12】
前記フラボキサート塩はフラボキサート塩酸塩である、請求項1~11のいずれか1項記載の制御放出経口製剤。
【請求項13】
前記製剤は固体剤形、好ましくは錠剤又はカプセルである、請求項1~12のいずれか1項記載の制御放出経口製剤。
【請求項14】
前記錠剤は、二層錠剤、三層錠剤又は多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、マルチプルユニットペレットシステム錠剤、ペレット、又はカプセルに充填されたビーズである、請求項13記載の制御放出経口製剤。
【請求項15】
前記錠剤は硬度が約6kg/cm~約40kg/cmである、請求項13又は14記載の制御放出経口製剤。
【請求項16】
前記錠剤は1つ以上の機能性コーティング又は非機能性コーティングを含む、請求項13~15のいずれか1項記載の制御放出経口製剤。
【請求項17】
前記機能性フィルムコーティングは、可溶性ポリマーを含むエチルセルロース分散体、又は水溶性成分を含む腸溶性ポリマー系分散体である、請求項16記載の制御放出経口製剤。
【請求項18】
前記非機能性フィルムコーティングは、苦味のある薬物の製品受容性を高めるための香料を含む又は含まないヒドロキシプロピルメチルセルロース系フィルムコーティング分散体である、請求項16記載の制御放出経口製剤。
【請求項19】
前記製剤は、
約0~2時間の間に有効成分の約10%~約35%、
約2~4時間の間に有効成分の約35%~約75%、
約4~6時間の間に有効成分の約50%~約90%、
約6~8時間の間に有効成分の約75%以上、
を放出する、請求項1~18のいずれか1項記載の制御放出経口製剤。
【請求項20】
有効成分としてフラボキサート塩を含む二相薬物放出プロファイルを有する錠剤を製造する方法であって、
(a)ある量のフラボキサート塩を、ある量の適切な充填剤、結合剤、界面活性剤、及び制御放出ポリマーと適切な比率の水性及び有機溶媒媒体中で混合して、即時放出層又は持続放出層用のブレンド材料を個別に得ること、
(b)工程(a)で得られたブレンド材料を、適切な乾式造粒機を使用して、又は適切な造粒装置を使用して非水性溶媒もしくは水アルコール溶媒中の結合ポリマーの溶液を用いて造粒して、顆粒を得ること、
(c)工程(b)で得られた顆粒を適切な温度で乾燥させて、乾燥顆粒を得ること、
(d)工程(c)で得られた乾燥顆粒を適切なサイズのメッシュを通して篩い分けして、所望のサイズの顆粒を得ること、
(e)工程(d)で得られた顆粒を可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化して、製剤を得ること、及び
(f)工程(e)で得られた製剤を圧縮して、錠剤を形成すること、
を含む、方法。
【請求項21】
前記フラボキサート塩の量は、即時放出層については約100mg~200mgであり、持続放出層については約300mg~700mgである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
工程(a)における前記水性及び有機溶媒媒体は水及びイソプロピルアルコールである、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
水とイソプロピルアルコールの適切な比率は70:30であり、即時放出層については乾燥混合ブレンドの約30%w/v~60%w/vであり、即時放出層については乾燥混合ブレンドの約40%w/v~約60w/vである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
有効成分として約600mg~800mgのフラボキサート塩又は類似の親油性酸可溶性薬物を含む、二相薬物放出プロファイルを有する錠剤を製造する方法であって、
(a)ある量の有効成分、充填剤、結合剤、及び制御放出ポリマーを混合して、即時放出層又は持続放出層を個別に調製すること、及び
(b)前記個別の層を圧縮して、錠剤を得ること、
を含む、方法。
【請求項25】
1つ以上の機能性コーティング又は非機能性コーティングを用いて又は用いずに前記錠剤をコーティングすることをさらに含む、請求項20~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記錠剤は硬度が6Kg/cm~40Kg/cmである、請求項20~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記錠剤は、二層錠剤、三層錠剤又は多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、マルチプルユニットペレットシステム錠剤、ペレット、又はカプセル中に充填されたビーズである、請求項20~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
請求項1~19のいずれか1項記載の製剤を投与することを含む、前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎、膀胱三角部炎(uretherotrigonitis)などの様々な病理学的状態に起因する頻尿症、夜間頻尿症、排尿障害、切迫感、恥骨上の水胞痛(vesicle suprapubic pain)、頻尿、尿失禁のうちの少なくとも1つの症状、カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる;膀胱鏡検査又はカテーテル挿入の前の膀胱尿道けいれんの緩和;下部尿路の外科的介入の続発症及び/又は尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用を治療又は改善する、方法。
【請求項29】
前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎、膀胱三角部炎などの様々な病理学的状態に起因する頻尿症、夜間頻尿症、排尿障害、切迫感、恥骨上の水胞痛、頻尿、尿失禁、及び尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用;カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる膀胱尿道けいれん;良性前立腺肥大症(BPH)及び過活動膀胱の刺激症状の治療又は症状軽減のための、又は膀胱鏡検査又はカテーテル挿入の前の予防としての、又は下部尿路の外科的介入の続発症の治療又は症状緩和のための、請求項1~19のいずれか1項記載の製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、二相薬物放出プロファイルを有する、二層錠剤、多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、MUPS(マルチプルユニットペレットシステム)錠剤、ペレット又はカプセルに充填されたビーズとしての、フラボキサート又は同様の親油性酸可溶性薬剤の制御放出製剤又は持続放出製剤に関する。本開示はまた、そのような製剤の調製方法及びその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
経口摂取は、投与の容易さ、高い患者のコンプライアンス、費用対効果、無菌性の制約の軽減、及び剤形の設計の融通性により、便利で一般的に使用されるドラックデリバリー経路である。しかしながら、経口剤形の主な課題は、生物学的利用能が低いことにある。
【0003】
2-ピペリジノエチル3-メチルフラボン-8-カルボキシレート塩酸塩(以下、フラボキサート又はフラボキサート塩酸塩と呼ぶ)は、1960年に Recordati Laboratories によって合成されたフラボン酸誘導体でである。フラボキサートは、強力な平滑筋弛緩特性を持つ鎮痙薬である。それはホスホジエステラーゼ酵素を阻害し、カルシウム拮抗作用により、平滑筋を弛緩させる。この薬物は泌尿生殖器に優先的に作用し、腸には作用しない。中枢及び直接平滑筋弛緩作用の両方がある。リドカインと同じくらい強い局所麻酔作用があるが、抗コリン作用はない[M Zor, E Aydur, RR Dmochowski. Flavoxate in urogynecology: an old drug revisited. International Urogynecology Journal, 06 Dec 2014, 26(7):959-966]。ラットの脳組織を使用したところ、下部尿路の神経制御に直接的又は間接的に関与する受容体(α-及びβ-ノルアドレナリン作動性、ムスカリン性、セロトニン作動性及びアヘン剤受容体及びカルシウム結合部位)に対して弱い結合活性しか有さないことが示されている。
【0004】
フラボキサート塩酸塩はムスカリン受容体に対してわずかな親和性を示し、阻害濃度中央値(IC50)は12.2μmである。この発見は、抗コリン薬、例えば、オキシブチニン(IC50が5.4μm)などに典型的なムスカリン受容体への強い結合とは明らかに対照的である。また、下部尿路疾患の治療においてフラボキサート塩酸塩によって示される典型的な抗コリン作用の臨床効果(口渇、震え、かすみ目及び頻脈)の発生率と重症度の低さの説明にも役立つ。さらに、フラボキサート塩酸塩の平滑筋弛緩作用は、閉塞症状(排尿躊躇、断続性、滴下及び滞留)を軽減する[R. Ruffmann. A Review of Flavoxate hydrochloride in the Treatment of Urge Incontinence, The Journal of International Medical Research 1988; 16: 317-330]。そして、抗コリン薬を投与するときに通常見られるような、フラボキサートによる残尿量の望ましくない増加は起こらない。
【0005】
フラボキサート塩酸塩は、前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎、尿道三角炎などの様々な病理学的状況に起因する頻尿、特に夜間頻尿、排尿困難、切迫感、恥骨上の水胞痛、頻尿及び尿失禁、及び尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用の症状を緩和するために治療的に使用されている。さらに、フラボキサートは、カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる膀胱尿道けいれん、膀胱鏡検査又はカテーテル挿入前、又は下部尿路の外科的介入の続発症の緩和にも適応されている。フラボキサートは、前立腺肥大症(BPH)及び過活動膀胱の刺激性症状を緩和するためにも使用される。しかしながら、フラボキサート塩酸塩の使用は膀胱機能不全の治療のみに限定されない。薬物としてのフラボキサート塩酸塩は、早産及び腹部月経困難症の痛みの治療にも使用される。腎疝痛もフラボキサート塩酸塩で効果的に治療されており、この化合物は体外(衝撃波)結石破砕術中に補助的な鎮痙薬としても投与されている。
【0006】
薬物としてのフラボキサートは、100mg及び200mgの糖衣即時放出(IR)錠剤の強度で市販されている。治療用量は通常、1日あたり600~800mgの3~4回投与である。場合によっては、1日あたり最大1200mgの用量が使用され、より効果的であることが判明している。フラボキサートは1日3~4回、場合によっては2錠を1日3~4回投与する必要がある。この用量計画は患者のコンプライアンスに影響を及ぼし、錠剤の負担が増えるため、治療の有効性に影響を及ぼす可能性のある投与の仕損ないが生じる。切迫性尿失禁及び過活動膀胱などの慢性的な投与が必要な適応症では、1日3~4回の治療は非常に受け入れられず、不便である。従来のIR剤形では、患者のコンプライアンスが低下するリスクがあり、例えば、高齢者は錠剤を定期的に服用することを忘れ、又は知らず知らずのうちに処方量を超えて摂取することによる過剰投与のより深刻なリスクが存在する可能性がある。高齢者の睡眠不足は夜間頻尿によっても引き起こされるが、これはしばしば見落とされている。フラボキサートのIR錠剤を夕方に摂取しても、夜間の睡眠時間をすべてカバーすることはできない。さらに、フラボキサートの半減期が短いため、患者が一晩眠っている間に治療効果をもたらすのに十分な量の活性物質を含む剤形を単回投与で摂取することが不可能になる。したがって、従来のフラボキサートのIR錠剤の主な欠点の1つは、その投与スケジュールである。
【0007】
制御放出性又は持続放出性(CR又はER)製品の利点は製薬分野でよく知られており、文書化されている。この利点には、血漿中濃度のピークから谷までの変動を最小限に抑えることによって、長期間にわたって薬剤の望ましい血中濃度を維持できることが含まれるが、これに限定されない。ER製品の薬物血漿中レベルは、鋭いピークがなく、IR剤形の複数回投与から得られる総AUCと同等の血漿中濃度対時間曲線のAUC(曲線下面積)で狭いウィンドウ内に維持される。これにより、血中に直ちに放出される高濃度の薬物に関連する副作用がさらに回避される。さらに、ER製品には、夜間の反復投与を回避できるという利点もある。これにより、患者のコンプライアンスが向上し、患者の生活の質が向上する。
【0008】
フラボキサート塩酸塩は、溶解性が低く、圧縮性が低い薬剤である。したがって、この薬剤のもう1つの課題は、コンパクトな経口投与可能な錠剤を形成することである。摂取可能な錠剤の形で必要とされる大量の用量に対応するには、錠剤の最終的な総重量が実用限界を超えないように、制御放出ポリマー、結合剤及び賦形剤の量を低く抑える必要がある。非常に大きく、噛むことができない錠剤は、高齢者にとっては簡単に摂取できず、ましてや体力が低下している状態の人には簡単に摂取できない。フラボキサートの溶解度が低いために、特定のデリバリープロファイルを提供するには一般に比較的大量の賦形剤が必要となるために、ER製剤のデリバリーは常に課題であった。
【0009】
すでに述べたように、経口剤形の設計における主な課題は、その生物学的利用能が低いことにある。経口生体利用能は、水溶解度、薬物透過性、溶解速度、初回通過代謝、全身前代謝、及び排出機構に対する感受性を含む幾つかの要因に依存する。経口生体利用能が低い最も一般的な原因は、溶解度の低さ及び透過性の低さに起因する。
【0010】
JPS63154619Aは、遅延放出製剤を使用してフラボキサート塩酸塩を投与する問題に対処しようとしている。この日本特許出願には、速溶性フラボキサート製剤と遅溶性フラボキサート製剤を調製し、それらを1:0.5の比率で混合して、従来のIR法で製造された100mgのフラボキサートによって得られる持続時間の2倍以上の放出を達成することによるER製剤が記載されている。しかしながら、この特許出願の医薬製剤は、24時間の有効性を提供することができない。
【0011】
米国特許第9,750,701号明細書は、錠剤にくぼみを設けることによって錠剤に異方性の物理的特性を与えることにより、フラボキサートなどの薬物の遅延放出プロファイルを達成することを提供している。
【0012】
Satyavathiら [K. Satyavathi, M. Venu, P. Gayathri, P. Bhojaraju and L.K. Kanthal. Formulation and development of Flavoxate hydrochloride ER capsules. IJPSR, 2014; Vol. 5(5): 1949-1956] は、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用してフラボキサートのERカプセルを作製し、それらをペレットとして押出し、ペレットに薬物を装填し、薬物を含んだペレットにERコーティングを施すことを記載している。溶解プロファイルは、この製剤が24時間の治療網羅を提供できないことを示している。
【0013】
EP0393572A2、EP0250374B1及び米国特許第9,642,809号及び同第5,165,937号明細書は、フラボキサートの制御放出を提供する試みを行っており、これらをすべて参照により本明細書に組み込む。米国特許第9,642,809号明細書には、水溶性微結晶マトリックスに薬物を組み込むことによる薬物の制御放出が記載されている。EP0250374B1は、600mg又は800mgのフラボキサートの単回用量デリバリーには不適切な60:40の薬物-賦形剤比を教示している。
【0014】
EP0393572A2及び米国特許第5,165,937号明細書は、フラボキサートの外部拡散のために、経口剤形中の添加剤及び賦形剤の中でも特に酸性化剤(例えば、酒石酸又はクエン酸など)を強制的に組み込むことを示唆している。フラボキサートは、塩形成されていない状態ではあまり可溶性でなく、腸内環境の塩基性pHにより徐々に脱塩が起こる傾向がある腸内環境に存在している間は塩形成状態を維持することが有利である。酸性化剤を使用しないフラボキサートの製剤の課題は、フラボキサートが塩形成されていない形態ではあまり溶解せず、適切な量のフラボキサートを達成し、フラボキサートの制御放出を促進するには酸性化剤が必要であることである。クロスオーバー試験は、フラボキサート塩酸塩のCR錠剤400mgを投与された6人の健康な成人ボランティアを対象に実施された。観察されたフラボキサートの治療有効レベルの持続時間は、1mcg/ml以上の血漿中濃度で11.35時間であり、これは最小有効値である。したがって、この試験は1日1回の調製には適していない。
【0015】
RASHIDら、2021 [Development and evaluation of Flavoxate HCl double core compressed tablet formulations by swellable granulation technique. Acta Poloniae Pharmaceutica- Drug Research, Vol. 78 No. 5 667-677] には、フラボキサートHClの二重コア差動放出錠剤の開発が記載されている。この論文は、フラボキサート塩酸塩錠剤の外側コア顆粒に大量のアビセルPH10lを組み込むことを開示している。この論文はまた、HPMC K15を含む場合に、持続放出性内部コアに必須成分としてクエン酸を組み込むことも開示している。この論文は、Kollidon SRを含み、HPMC K15を含まない持続放出性内部コアも開示している。この論文は、酸の組み込み、又は患者のコンプライアンスを保証するサイズと、長期間にわたる持続放出を保証する量のフラボキサートHClの両方を有する錠剤を得るために組み込まれるフラボキサートHClの量を制限する大量の賦形剤の組み込みのいずれかを教示している。
【0016】
WO202021422A1は、有効成分として約400~800mgのフラボキサート塩を含むCR経口製剤に関する出願人の別の特許出願であり、経口製剤は単層錠剤として酸性化剤を含まない。この出願は、ER薬物プロファイルを有する縮小サイズの単層錠剤の調製を開示している。
【0017】
ヒトを対象とした経口研究では、フラボキサートは腸から容易に吸収され、大部分がほぼ即座にMFCA(3-メチルフラボンカルボン酸)に転化されることが示されている。MFCAとフラボキサートはどちらも、平滑筋の弛緩に重要なcAMP依存性ホスホジエステラーゼを阻害する。IV投与(100mgに等モル)後に、フラボキサートについて以下のパラメータを計算した:T1/2 83.3分、見かけの分布体積2.89リットル/kg。MFCAの見かけの分布は0.20リットル/kgであった。尿中に遊離フラボキサートは検出されなかった(24時間)。しかしながら、用量の47%はMFCAとして排泄された。
【0018】
ボランティアにフラボキサート200mg及び400mgを単回経口投与した後に、血漿中に遊離フラボキサートはほとんど検出されなかった。MFCAのピークレベルは、200mgの投与後30~60分、及び400mgの投与後約2時間で達成された。400mg用量のAUCは、200mg用量のAUCの約2倍であった。投与量の約50%が12時間以内にMFCAとして排泄された。そのほとんどは最初の6時間以内に排泄された。反復経口投与(200 mg、TDS、7日間)後に、代謝物の累積排泄量は3日目には用量の60%で安定し、1週間後もほとんど変化がなかった(フラボキサート塩酸塩200mgフィルムコーティング錠、製品特性の概要はhttps://www.medicines.org.uk/emc/product/322/smpcで入手できる)。
【0019】
フラボキサートの半減期は短いため、24時間を通じて循環中の有効な治療レベルを維持することが困難になる。100又は200mgのフラボキサートを投与する既存のレジメンでは、1日に多くの錠剤を摂取する必要があり、その結果、患者のコンプライアンスが低下する。
【0020】
フラボキサートは水溶解度が非常に低く、溶解速度が遅いために製剤上の問題が生じる。その有効性は大幅に制限される可能性があり、吸収には大きな個人差が生じる可能性がある。薬剤の治療用血清レベルを維持するために、CR医薬剤形を提供するために多くの技術が使用されてきた。しかしながら、フラボキサートなどの比較的水に溶けにくい薬剤の場合に、CR製剤の開発には一般にかなりの実験が必要である。これは、特定のCR製剤が、十分な錠剤の硬さ及び適切な脆さなどの適切な取り扱い特性を維持しながら、所望の放出調節プロファイルをもたらすかどうかを容易に予測することができないことが多いためである。水に不溶性の薬物は一貫性のない薬物放出プロファイルを生成する傾向があるという事実により、フラボキサートのCR製剤を調製する作業は困難であることが判明している。薬物動態学的課題は非常に大きいため、50年が経過したにもかかわらず、治療用量レジメンは大きく変化していない。
【0021】
水性媒体中のフラボキサート塩酸塩の溶解度が低いため、特にこれがER固形製剤として製剤化されている場合に、経口投与後の腸管の下部、つまり、pH5~7.4の範囲での溶解又は薬物放出が低下する傾向がある。
【0022】
二相ドラッグデリバリーシステムは、1つの速放性、すなわちIR層と、1つの徐放性、すなわちCR層とから構成される、経口投与のためのドラックデリバリーシステムとして当該技術分野で知られている。層状錠剤の概念を利用して、CR及び徐放性製剤の開発が行われる。このシステムは、典型的に、最大の緩和を迅速に達成する必要があり、次いで、反復投与を避けるために徐放段階が続く場合に使用される。
【0023】
当該技術分野において、フラボキサート又はその塩の「層状錠剤」形態は知られていない。さらに、他の薬物の層状錠剤を調製するための既知の方法は、多様なアプローチを採用しており、製剤中に全く異なる成分を組み込んでいる。
【0024】
フラボキサートの治療用量は一般に600~800mg/日であり、さらに幾つかの場合には1200mg/日までの用量を複数回に分けて投与する必要がある可能性がある。フラボキサート塩酸塩の半減期は非常に短く、治療活性の持続時間は約5~6時間である。したがって、薬物の治療効果をより長期間維持し、投与頻度を減らし、これにより、患者のコンプライアンス及び生活の質を大幅に向上させる製剤を開発する必要がある。
【0025】
明らかに、単回摂取可能な剤形として、12~24時間にわたって所望の治療用血漿中濃度を達成するためのフラボキサートの即時及び持続薬物放出プロファイルを保証するCRドラックデリバリーシステムに対する満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0026】
本開示は、1日1回又は2回の治療及び最大12~24時間の有効血漿中濃度を提供する、フラボキサート又はその塩を含むCR又はER放出製剤又はドラッグデリバリーシステムを提供する。本開示は、フラボキサート又はその塩のCR製剤又はER製剤を、二相薬物放出プロファイルを有する二層、多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、MUPS(マルチプルユニットペレットシステム)錠剤、ペレット又はカプセルに充填された(filled in)ビーズとして提供する。本開示は、そのような製剤の調製方法及びその使用も提供する。
【0027】
幾つかの実施形態において、提供されるフラボキサート又はその塩のER製剤は、十分な量の薬物が直ちに放出されてIR剤形と同様の血漿中レベルを達成し、残りの薬物が長期間にわたって徐々に放出されて薬物濃度を治療域内に(within the therapeutic window)維持するように設計される。したがって、本明細書で提供される製剤は、フラボキサートの迅速かつ長期の放出を提供する。幾つかの実施形態において、本明細書で提供されるフラボキサートER製剤は、IR剤形と比較して、簡略化された投与スケジュールにより、副作用が減少し、血漿中レベルの変動を回避し、それによって患者のコンプライアンスを改善する。
【0028】
したがって、1つの態様において、本開示は、患者のコンプライアンスを改善したフラボキサート製剤を提供する。幾つかの実施形態における本開示は、IRプロファイルとERプロファイルの両方の利点を提供するフラボキサートのドラッグデリバリーシステム、及びこのドラッグデリバリーシステム又は製剤を製造するための単純かつ低コストの方法を提供する。幾つかの実施形態において、本開示のCR又はER製剤は、単一の摂取可能な剤形として投与することができ、改善された生物学的利用能を有する。
【0029】
別の態様において、本開示は、フラボキサートの二相ドラッグデリバリーシステムを提供する単純で経済的な製造方法を提供し、また、経口投与すると適切な血漿中レベルで約12~約24時間の治療効果をもたらす、生物学的利用可能なフラボキサートのER剤形を開発している。
【0030】
本開示のER製剤又はドラッグデリバリーシステムは、約12~約24時間の長期間にわたる持続放出プロファイルを提供し、単一の摂取可能な剤形として投与するのに適している。幾つかの実施形態において、製剤は二相薬物放出プロファイルを示し、それにより、従来のIR剤形と同様の血漿中レベルを達成するために最初の数時間で十分な量の薬物が放出され、残りの薬物が徐々に放出されて、薬物濃度を治療域内に維持する。
【0031】
幾つかの実施形態において、本開示の製剤は、従来のIR剤形と同様の血漿中レベルを達成するのに十分な量の薬物が最初に2時間以内に放出され、残りの薬物が約12時間~約24時間かけて徐々に放出されて、薬物濃度を治療域内に維持する二相薬物放出プロファイルを示す。幾つかの実施形態において、開発された製剤は、約10~30wt%のIR薬物層及び約70~90wt%のER薬物層を含む。幾つかの実施形態において、本開示のER製剤は、制御放出ポリマーの慎重な選択を使用することによって開発され、その結果、商業的に許容可能な形態、例えば、フラボキサートの予想外に優れた生物学的利用能、及び作用持続時間の延長を示す錠剤へと製造されうる製剤をもたらす。これにより、単回投与によってレシピエントに治療レベルの薬物を最大約12時間~約24時間投与することが可能になる。
【0032】
本開示は、二層錠剤、多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、MUPS錠剤、ペレット又はカプセルに充填されたビーズとしてのER製剤を提供する。幾つかの実施形態において、ER製剤は、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒、流動床処理又はホットメルト造粒技術によって容易に製造することができる。
【0033】
本開示の他の態様には、フラボキサートに応答する疾患又は障害、例えば、限定するわけではないが、前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎(urethero-cystitis)、膀胱三角部炎(uretherotrigonitis)などの様々な病理学的状態による、頻尿症、夜間頻尿症、排尿障害、切迫感、恥骨上の水胞痛(vesicle suprapubic pain)、頻尿(frequency)、尿失禁、及び尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用、カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる膀胱尿道けいれん、良性前立腺肥大症(BPH)及び過活動膀胱の刺激症状を含む、泌尿生殖路の障害などを治療する方法、又は膀胱鏡検査、カテーテル治療の前の予防として処置する方法、又は下部尿路の外科的介入の続発症を治療する方法が含まれる。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示は、有効成分として約600~800mgのフラボキサート塩、少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つのポリマーを含む、二相薬物放出プロファイルを有するフラボキサートの制御放出経口製剤を提供し、ここで、前記界面活性剤は、少なくとも「8」の親水性-親油性バランス値を有し、前記製剤は、少なくとも1つの即時放出薬物層と少なくとも1つの持続放出薬物層とを含み、前記少なくとも1つの即時放出薬物層は、前記製剤の約10~30wt%であり、前記少なくとも1つの持続放出薬物層は、前記製剤の約70~90wt%である。
【0035】
幾つかの実施形態において、本開示は、二相薬物放出プロファイルを有するフラボキサートの制御放出経口製剤を提供し、単回投与で、最初の2時間以内に約10%w/w~35%w/wのフラボキサート塩が放出され、残りのフラボキサート塩は最大12~24時間にわたって放出される。
【0036】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤中の少なくとも1つのポリマーが、親水性セルロース系ポリマーもしくはその塩、疎水性セルロース系ポリマーもしくはその塩、イオン性メタクリレートコポリマーもしくはその塩、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0037】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤中の少なくとも1つのポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネート(HPMC AS)、オイドラギット(Eudragit)L30D55、オイドラギットL100、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0038】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤中の少なくとも1つの界面活性剤が、長鎖アルキルスルホネート又は長鎖アルキルスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、第四級アンモニウム塩、脂肪族アルコール、例えば、ラウリル、セチル、ステリルなど、グリセリルエステル、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0039】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤中の少なくとも1つの界面活性剤が、Tween-20、Tween-80、又はそれらの組み合わせを含むポリソルベートグレードを含むことを規定する。
【0040】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が少なくとも1つの希釈剤を含み、前記少なくとも1つの希釈剤がマンニトール、ソルビトール、微結晶セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、デンプン、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0041】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が少なくとも1つの結合剤を含み、前記少なくとも1つの結合剤がデンプン、ポリビニルピロリドン、天然もしくは合成ガム、セルロース系ポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0042】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が少なくとも1つの崩壊剤を含み、前記少なくとも1つの崩壊剤がデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0043】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が少なくとも1つの潤滑剤又は流動促進剤を含み、前記少なくとも1つの潤滑剤又は流動促進剤がタルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むことを規定する。
【0044】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が12~24時間にわたってフラボキサート塩を放出することを規定する。
【0045】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤中のフラボキサート塩が塩酸フラボキサート塩酸塩であることを規定する。
【0046】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が固体剤形、好ましくは錠剤又はカプセルであることを規定する。
【0047】
幾つかの実施形態において、本開示は、錠剤が二層錠剤、三層錠剤又は多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、マルチプルユニットペレットシステム錠剤、ペレット又はカプセルに充填されたビーズであることを規定する。
【0048】
幾つかの実施形態において、本開示は、錠剤が約6kg/cm~約40kg/cmの硬度を有することを規定する。
【0049】
幾つかの実施形態において、本開示は、錠剤が1つ以上の機能性コーティング又は非機能性コーティングを含むことを規定する。
【0050】
幾つかの実施形態において、本開示は、錠剤の機能性フィルムコーティングが、可溶性ポリマーを含むエチルセルロース分散体(dispersion)、又は水溶性成分を含む腸溶性ポリマー系分散体(enteric polymer based dispersion)であることを規定する。
【0051】
幾つかの実施形態において、本開示は、錠剤の非機能性フィルムコーティングが、苦味のある薬物の製品受容性を高めるための香料を含む又は含まないヒドロキシプロピルメチルセルロース系フィルムコーティング分散体であることを規定する。
【0052】
幾つかの実施形態において、本開示は、制御放出経口製剤が、約0~2時間の間に有効成分の約10%~約35%を放出し、約2~4時間の間に有効成分の約35%~約75%を放出し、約4~6時間の間に有効成分の約50%~約90%を放出し、約6~8時間の間に有効成分の約75%以上を放出することを規定する。
【0053】
幾つかの実施形態において、本開示は、有効成分としてフラボキサート塩を含む二相薬物放出プロファイルを有する錠剤を製造する方法を提供し、この方法は、
(a)ある量のフラボキサート塩と、ある量の適切な充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーとを、適切な比率の水性及び有機溶媒媒体(solvent media)中で混合して、即時放出層又は持続放出層用のブレンド材料を個別に得ること、
(b)工程(a)で得られたブレンド材料を、適切な乾式造粒機を使用して又は適切な造粒装置を使用して非水性溶媒もしくは水アルコール溶媒中の結合ポリマーの溶液を用いて造粒して、顆粒を得ること、
(c)工程(b)で得られた顆粒を適切な温度で乾燥させて、乾燥顆粒を得ること、
(d)工程(c)で得られた乾燥顆粒を適切なサイズのメッシュを通して篩い分けして、所望のサイズの顆粒を得ること、
(e)工程(d)で得られた顆粒を可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化して、製剤を得ること、及び、
(f)工程(e)で得られた製剤を圧縮して、錠剤を形成すること、
を含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、本開示は、本方法における前記フラボキサート塩の量が即時放出層については約100mg~200mg、持続放出層については約300~700mgであることを規定する。
【0055】
幾つかの実施形態において、本開示は、本方法で、工程(a)における前記水性及び有機溶媒媒体が水及びイソプロピルアルコールであることを規定する。
【0056】
幾つかの実施形態において、本開示は、本方法における適切な比率の水とイソプロピルアルコールが70:30であり、即時放出層用の乾燥混合ブレンドの約30%w/v~60%w/vであり、即時放出層用の乾燥混合ブレンドの約40%w/v~60%w/vであることを規定する。
【0057】
幾つかの実施形態において、本開示は、有効成分として約600mg~800mgのフラボキサート塩又は類似の親油性酸可溶性薬物を含む二相薬物放出プロファイルを有する錠剤を製造する方法を提供し、この方法は、
(a)ある量の有効成分、充填剤、結合剤、及び制御放出ポリマーを混合して、即時放出層又は持続放出層を個別に調製すること、及び
(b)個々の層を圧縮して、錠剤を得ること、
を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、本開示は、本方法が、1つ以上の機能性コーティング又は非機能性コーティングを用いて又は用いずに錠剤をコーティングすることをさらに含むことを規定する。
【0059】
幾つかの実施形態において、本開示は、この方法によって得られる錠剤が6Kg/cm~40Kg/cmの硬度を有することを規定する。
【0060】
幾つかの実施形態において、本開示は、本方法によって調製される錠剤が、二層錠剤、三層錠剤又は多層錠剤、マルチコートミニ錠剤、マルチプルユニットペレットシステム錠剤、ペレット、又はカプセルに充填されたビーズであることを規定する。
【0061】
幾つかの実施形態において、本開示は、本開示の製剤の投与を含む、前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎(urethero-cystitis)、膀胱三角部炎(uretherotrigonitis)などの様々な病理学的状況に起因する頻尿症、夜間頻尿症、排尿障害、切迫感、恥骨上の水疱痛(vesicle suprapubic pain)、頻尿(frequency)、尿失禁の少なくとも1つの症状、カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる;膀胱鏡検査又はカテーテル挿入の前の膀胱尿道けいれんの緩和;下部尿路の外科的介入の続発症及び/又は尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用を治療又は改善する方法を提供する。
【0062】
幾つかの実施形態において、本開示は、前立腺炎、尿道炎、膀胱炎、尿道膀胱炎、膀胱三角部炎などの様々な病理学的状態に起因する頻尿症、夜間頻尿症、排尿障害、切迫感、恥骨上の水胞痛、頻尿、尿失禁、及び尿路の放射線療法又は外科的療法の副作用;カテーテル挿入、膀胱鏡検査又は留置カテーテルによる膀胱尿道けいれん;良性前立腺肥大症(BPH)及び過活動膀胱の刺激症状の治療又は症状緩和のための、又は膀胱鏡検査、カテーテル治療の前の予防としての、又は下部尿路の外科的介入の続発症の治療又は症状緩和のための製剤の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
「組成物」及び「製剤」という用語は、本明細書では互換的に使用され、固形経口剤形のフラボキサート塩酸塩含有医薬品を指す。
【0064】
「フラボキサート」及び「フラボキサート塩酸塩」という用語は、本開示の組成物中の有効成分である、2-ピペリジノエチル-3-メチルフラボン 8-カルボキシレート塩酸塩を指すために互換的に使用される。
【0065】
本明細書全体で使用される「制御放出」又は「持続放出」という用語は、何らかの方法で有効成分の放出を変化させる剤形、マトリックス、粒子、コーティング、その一部、又は組成物に適用されるものとする。制御放出のタイプには、修飾(modified)、延長(prolonged)、持続(sustained)、長期(extended)、遅延(delayed)などが含まれる。
【0066】
フラボキサートER製剤の調製
初期開発計画の一部として、適切な持続放出ポリマー、結合剤、希釈剤、界面活性剤、崩壊剤、潤滑剤及び流動促進剤を選択するための試験が行われた。最初のバッチは、限定するわけではないが、親水性ポリマー及び疎水性ポリマー又はそれらの組み合わせを含む適切な薬物放出ポリマーの群から調製された。
【0067】
本開示のCR製剤は、CRポリマー、すなわち、非イオン性可溶性セルロース、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース、又はこれらのポリマーのいずれかの塩、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、例えば、Natrosol(商標))など;エチレンオキシドの非イオン性ホモポリマー、例えば、約100,000~8000,000Daの分子量範囲を有するポリ(エチレンオキシド)など;メチルセルロース;エチルセルロース;天然由来の多糖類の水溶性天然ガム又はこれらのポリマーの塩、例えば、キサンタンガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、アクリルポリマー、アルギネート及びローカストビーンガムなど;水膨潤性であるが不溶性の、様々な架橋度又は粒子サイズのポリアルケニルアルコールで化学的に架橋されたアクリル酸の高分子量ホモポリマー及びコポリマー(例えば、Carbopol(登録商標)71G NF、971P、934P);ポリ酢酸ビニルとポビドンの混合物(例えば、Kollidone(登録商標) SR)、架橋高アミロースデンプン又はイオン性メタクリレートコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標) L30D、Eudragit(登録商標) L100 及び Eudragit(登録商標) L100 55);フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP);セルロースアセテートフタレート(CAP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネート(HPMCAS)を単独で又は組み合わせて使用する。CR製剤は、好ましくは、異なるグレードのHPMC及びHPMC-ASを単独で又はポリマーとして組み合わせて使用する。とりわけ、親水性セルロース系ポリマー又はその塩、疎水性セルロース系ポリマー又はその塩、及び/又はイオン性メタクリレートコポリマー又はその塩を使用する製剤は、改善された安定性、溶解プロファイル、及び生物学的利用能を示す。
【0068】
フラボキサート塩酸塩は水溶性が低いため、高負荷薬物含有量(high load drug content)で使用される。初期の研究に基づくと、少なくとも「8」の親水性-親油性バランス値(「HLB」、すなわち、界面活性剤分子の親水性部分と親油性部分のサイズ及び強度のバランス)を有する医薬上許容される界面活性剤の添加は、驚くべきことに、フラボキサートの様々な生理学的媒体における溶解速度の向上に有意な改良をもたらす。適切な界面活性剤は、例えば、長鎖アルキルスルホネート又は長鎖アルキルスルフェート、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びスルホコハク酸ジアルキルナトリウムなど、第四級アンモニウム塩、脂肪族アルコール、例えば、ラウリル、セチル及びステリルなど、グリセリルエステル、脂肪酸エステル、及び脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート60及びポリソルベート80などを含むポリソルベートグレードなど、又はそれらの組み合わせから選択することができる。単独の又は組み合わせた異なるグレードのポリソルベートは好ましい界面活性剤である。とりわけ、ポリソルベートを使用した製剤は、改善された安定性、溶解プロファイル、及び生物学的利用能を示す。
【0069】
親水性セルロース系ポリマー又はその塩、疎水性セルロース系ポリマー又はその塩、及び/又はイオン性メタクリレートコポリマー又はその塩と、ポリソルベートとの両方を使用する製剤は、改善された安定性、溶解プロファイル、及び生物学的利用能を示す。
【0070】
さらに、ER製剤はまた、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤及び流動促進剤のうちの1つ以上から選択される「医薬上許容される賦形剤」を含むことができる。
【0071】
希釈剤は、例えば、マンニトール、ソルビトール、微結晶セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム及びデンプンなどのうちの1つ以上から選択されうる。
【0072】
結合剤は、例えば、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、天然又は合成ガム、及びセルロース系ポリマー、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチンなどのうちの1つ以上から選択されうる。
【0073】
崩壊剤は、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又はクロスポビドンなどのうちの1つ以上から選択されうる。
【0074】
潤滑剤及び流動促進剤は、例えば、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム又はフマル酸ステアリルナトリウムなどのうちの1つ以上から選択されうる。
【0075】
使用されるポリマー及び賦形剤は、材料及びその既知の特性に基づいて選択され、それぞれの強度の圧縮段階で適切な硬度及び厚さパラメータを達成するために、提案された製剤の様々な層を製剤化するために600及び800mgの薬物を組み込むように組成物に混合した。
【0076】
安定であり、制御又は持続薬物放出プロファイルを示す最終製剤に到達するために、様々なバッチを調査した。製剤の構成成分の一部は当該技術分野で既に知られているが、発明者の知る限りでは、血漿中のフラボキサート薬剤の治療レベルを最大で24時間維持する多層剤形の商業的に許容される形態のCR製剤を開発できた人は誰もいない。
【0077】
フラボキサートのER製剤は、錠剤、ビーズ、ペレット又はカプセルの形で入手できる。錠剤は、非コーティング錠剤、コーティング錠剤、MUPS錠剤又はミニ錠剤であることができる。例えば、ER製剤は、1つ以上の機能性コーティング又は非機能性コーティングを有する又は有しない二層、三層又は多層錠剤であることができる。機能性フィルムコーティングは、固体経口剤形(例えば、錠剤、カプセル、顆粒又はペレット)のAPI(医薬品有効成分)の薬物放出に直接影響を与えるコーティングである。例としては、限定するわけではないが、可溶性ポリマーを含むエチルセルロース分散体、又は水溶性成分を含む腸溶性ポリマー系分散体が挙げられる。非機能性フィルムコーティングはAPIの薬物放出に直接的に影響を及ぼさない。例としては、限定するわけではないが、苦味のある薬物の製品受容性を高めるための香料を含む又は含まないHPMC系フィルムコーティング分散体が挙げられる。錠剤は、直接圧縮、湿式造粒、乾式造粒又はスラグ成形(slugging)又は直接圧縮プロセスによって調製することができる。圧縮錠剤は、適切なフィルム形成性組成物でコーティングすることができる。
【0078】
本開示は、容易に摂取可能な単一錠剤のCRフラボキサート製剤の例を用いて本明細書で以下に説明されており、その調製方法もまた、本明細書で以下に提供される。
【0079】
湿式造粒法の製造手順:
有効成分、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合し、次にそのブレンドを適切なサイズのメッシュのスクリーンを通して製粉した(milled)。その後、ブレンドされた材料を、適切な乾式造粒機を使用するか、又は適切な造粒装置を使用する非水性又は水アルコール溶媒中の結合ポリマーの溶液を用いて造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを、可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤では約6Kg/cm~40Kg/cmで変化することができる。
【0080】
製品設計の観点から、経口投与用のERフラボキサート塩酸塩製剤は、
1)以下を含むIR層:
a.フラボキサート又はその医薬上許容される塩;
b.適切な比率の水性及び有機溶媒媒体に溶解又は分散された、適切な結合剤、ポリマー、界面活性剤;
c.粒子内にある(intragranularly)適切な濃度の充填剤;
d.粒子外にある(extragranularly)適切な崩壊剤、流動助剤又は潤滑剤など、
2)以下を含むER層:
a)フラボキサート又はその医薬上許容される塩;
b)適切な比率の水性及び有機溶媒媒体に溶解又は分散された、適切な結合剤、界面活性剤;
c)異なる粘度グレードの適切な比率のポリマー;
d)粒子外の(extragranularly)適切な流動助剤、潤滑剤など、
3)圧縮錠剤が、任意に適切なフィルムコーティング材料でコーティングされていること、
を含む。
【0081】
直接圧縮法の製造手順:
本開示は、フラボキサートの医薬製剤を調製する方法を提供し、IR層及びER層を個別に調製するために、有効成分、充填剤、結合剤及び制御放出ポリマーが一緒に混合される。次いで、個々の層を圧縮して、フラボキサートの600又は800mgの二層錠剤又は三層錠剤を形成する。
【0082】
本開示の範囲を限定するものではないが、代表的な目的のための例を以下に示す。
【実施例
【0083】
実施例1:湿式造粒による600mg及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表1に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。 次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0084】
【表1】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの55%w/vであった。
IR 部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの58%w/vであった。
【0085】
実施例2:600mg及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表2に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0086】
【表2】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの54%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの47%w/vであった。
【0087】
実施例3:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表3に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及びCRポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通してミ製粉した。次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0088】
【表3】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの45%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの35%w/vであった。
【0089】
実施例4:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表4に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0090】
【表4】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの55%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの58%w/vであった。
【0091】
実施例5:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表5に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0092】
【表5】
【0093】
実施例6:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表6に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0094】
【表6】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの55%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの58%w/vであった。
【0095】
実施例7:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表7に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。 次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0096】
【表7】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの55%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの58%w/vであった。
【0097】
実施例8:600及び800mgのフラボキサート塩酸塩を含む二相錠剤の製剤化
以下の表8に記載の濃度のフラボキサート、充填剤、結合剤、界面活性剤及び制御放出ポリマーをIR層又はER層用に一緒に混合して、ブレンド材料を得た。ブレンド材料を、適切なサイズのメッシュを備えたスクリーンを通して製粉した。 次いで、ブレンド材料を造粒した。その後、顆粒を適切な温度で乾燥させ、適切なサイズのメッシュを通して篩い分けした。このブレンドを可溶性又は不溶性の潤滑剤で潤滑化した。その後、錠剤を圧縮によって形成した。錠剤の硬度は、異なる強度の錠剤に対して6Kg/cm~40Kg/cmで調整した。
【0098】
【表8】
* ER部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの55%w/vであった。
IR部分のIPA:水(70:30)の量は、乾燥混合ブレンドの58%w/vであった。
【0099】
実施例9:600mgのフラボキサート塩酸塩を含むERカプセルの製剤化
薬物を装填した薬物ペレットは、フラボキサートのCRペレットを製造する流動床プロセス(fluidized bed process)を使用して、フラボキサートをエチルセルロース、HPMC K4M、タルク及びポリソルベート80とともにMCC球(MCC spheres)上にコーティングすることによって製造した。次いで、コーティングされたペレットを、表9に記載のとおりの粒子外内容物(extragranular contents)で適切に潤滑化した。コーティングされた薬物ペレットを、ゼラチン(硬質又は軟質)のカプセル及び非ゼラチンカプセルシェル(例えば、HPMC又はアルギン酸ナトリウムベジタリアンカプセル)に充填した。
【0100】
【表9】
【0101】
実施例10:600mgのフラボキサート塩酸塩を含むER MUPS錠剤の製剤化
MUPS錠剤は、以下の表10に示す濃度のフラボキサート含有ペレット及び粉末賦形剤の混合物を圧縮することによって製造した。ペレットは、フラボキサートを含むか、あるいは任意にフラボキサートでコーティングされた球状コア、及び薬物放出を制御するための1つ以上の保護層を有する。
【0102】
【表10】
【0103】
実施例11:インビトロ溶解薬物放出プロファイル
製品が経口投与される場合の生理的pH媒体(physiological pH media)をシミュレーションしたpH勾配溶解研究(それぞれpH1.2、pH4.5、pH6.8及びpH7.4で2時間ごと、合計8時間)において、実施例1の製剤化の代表的なインビトロ薬物溶解放出速度プロファイルを以下に示す(表11)。
【0104】
【表11】
【0105】
ER製剤のインビトロ溶解放出プロファイルは、約0~2時間で約10%~約35%放出され、約2~4時間で約35%~約75%放出され、約4~6時間で約50%~約90%放出され、約6~8時間で約75%以上(NIL)放出されることが判明した。
【0106】
実施例12:実施例1の製剤に対するWO202021422A1の製剤のインビトロ溶解薬物放出プロファイルの比較評価
実施例1の製剤を、製品を経口投与した場合の生理的pH媒体をシミュレーションしたpH勾配溶解媒体(それぞれpH1.2、pH4.5、pH6.8及びpH7.4で2時間ごと、合計で8時間)を使用するヒトGITでのシミュレーション研究の一部として、インビトロ薬物溶解方法論を用いて、WO202021422A1に開示された製剤と比較して評価し、24時間の溶解研究プロファイル(表12及び表13)とともに以下に示す。
【0107】
【表12】
【0108】
【表13】
【0109】
上記の表13から、例1の製剤は、各pH評価段階で薬物の溶解放出が改善されていることが明らかであり、8時間pH勾配と24時間溶解プロファイル研究の両方で薬剤放出プロファイルが改善されていることを示している。
【0110】
実施例13:即時放出錠剤に対する本開示の例示的な製剤のインビボ生物学的利用能(%)の比較研究
実施例1の製剤又は参照のIR製剤[Urispas(登録商標)(フラボキサートHCl、200mg)]のいずれかを18~45才(両端値を含む)の年齢の18人の男性参加者に投与した。すべての参加者は投与前に少なくとも10時間絶食し、次いで、試験製剤を水とともに投与した。参加者は、実施例1で調製した600mgの強度の持続放出性錠剤1錠、又は200mgの強度のIR錠3錠のいずれかの投与を受けた。1つのIR錠剤を8時間ごとに(つまり、0時間、8時間、及び16時間で)投与した。最大24時間までの幾つかの時点で参加者から血液サンプルを採取し、所定の時点での血漿中濃度の比較を表14に示す。
【0111】
【表14】
【0112】
さらに、実施例1の製剤の生物学的利用能のパーセンテージ(%)を、即時放出製剤[ウリスパス(登録商標)(フラボキサートHCl、200mg)](表15)と比較して、AUC(曲線下面積)の観点から評価した。
【0113】
【表15】
CI=信頼区間
ISCV=対象内変動
【0114】
実施例14:実施例1の例示的製剤対即時放出錠剤のインビトロ溶解プロファイル
実施例13の比較研究の結果に基づいて、実施例1の製剤を微調整して、実施例8の製剤を得た。各製剤のインビトロ溶解プロファイルを研究した。実施例8の製剤により調製した錠剤の生体関連溶解試験法における比較インビトロ溶解プロファイルを、最初の2時間はpH1.2で研究し、その後24時間までpH7.4バッファーで研究した(表16)。
【0115】
【表16】
【0116】
上記の表16の結果から明らかなように、実施例8の製剤化によって調製された錠剤は、実施例1の製剤と比較して改善された放出プロファイルを示す。
【0117】
実施例15:安定性データ
実施例1及び実施例8で開発されたフラボキサート又はその塩のER医薬製剤は、加速安定性データによると良好な化学的安定性を示している。開発された製剤は化学的安定性が向上しており、個々の未知の不純物レベルは0.2%w/w未満である(現在利用可能な医薬品の世界的に許容される基準による)。
【0118】
本出願に記載の安定なER又はCR製剤及びその調製方法は、ヒトの健康な機能を回復し、本出願で特定及び記載されているヒトの状態及び障害を治療するための、これらの製剤及びその調製方法の有効性及び有用性を正確に記載している。
【0119】
本明細書において、主題をその特定の好ましい実施形態を参照して説明してきたが、他の実施形態も可能である。例示の目的で、製剤は有効成分としてフラボキサート塩酸塩を含む。しかし、当業者であれば、本開示の範囲が当該技術分野で知られている他の同様の親油性酸可溶性薬物に拡張されることを理解するであろう。
【0120】
他の実施形態は、明細書を考慮し、本明細書に開示される実施形態を実践することにより当業者に明らかとなるであろう。明細書及び実施例は例示としてのみ考慮され、本開示の真の範囲及び主旨は下記の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。さらに、本出願が方法又は手順の工程を特定の順序で列挙している場合、一部の工程が実行される順序を変更することが可能であるか、あるいは特定の状況では好都合である可能性さえあり、そのような順序の特異性が特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、本明細書において以下に記載される方法又は手順の工程は、順序に固有のものとして解釈されないことが意図されている。したがって、本開示の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内に入るすべての変更は、そこに包含されることが意図される。
【国際調査報告】