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特表2024-541089ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤による頭痛及び片頭痛の治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤による頭痛及び片頭痛の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241029BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/713
A61P25/06
A61P25/04
A61K45/06
C12N15/113 140Z
C12N15/09 110
C12Q1/6883 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529509
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 US2022080208
(87)【国際公開番号】W WO2023092112
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,640
(32)【優先日】2021-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】プラビーン、カビタ
(72)【発明者】
【氏名】コッポラ、ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX01
4C084AA17
4C084AA20
4C084BA35
4C084NA14
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤を投与することによって、頭痛もしくは片頭痛を有する対象を治療するか、または対象が頭痛もしくは片頭痛を発症するのを予防する方法、及び頭痛もしくは片頭痛を発症するリスクが高い対象を識別する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭痛を有するか、または頭痛を発症するリスクを有する対象の治療方法であって、前記方法が、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
【請求項2】
片頭痛を有するか、または片頭痛を発症するリスクを有する対象の治療方法であって、前記方法が、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
【請求項3】
前記SCN11A阻害剤が、SCN11A核酸分子にハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記SCN11A阻害剤が、Casタンパク質、及びSCN11Aゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記gRNAが、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記SCN11A阻害剤が、小分子を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記SCN11A阻害剤が、抗体を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記対象由来の生体試料中のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の存在の有無を検出することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤を標準用量で対象に投与することをさらに含み、前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子が、前記生体試料中に存在しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤を、標準用量と同じかまたはそれ未満の用量で、前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象に投与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子が、スプライス部位バリアント、ストップ-ゲインバリアント、スタート-ロスバリアント、ストップ-ロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレーム-インデルバリアント、または短縮型SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするバリアントである、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
頭痛もしくは片頭痛を予防する治療剤を投与することによって、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤による対象の治療方法であって、前記対象が、頭痛もしくは片頭痛を有するか、または頭痛もしくは片頭痛を発症するリスクを有し、前記方法が、
前記対象が、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)の予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するかどうかを、
前記対象から生体試料を採取するか、またはすでに採取しており、
前記生体試料について配列分析を実施するか、またはすでに実施しており、前記対象が、前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定することによって判断し、
前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する前記治療剤を標準用量でSCN11A参照型である対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を前記対象に投与するか、
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準用量と同じかそれ未満の量で前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する前記治療剤を投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を前記対象に投与するか、あるいは
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である対象に、標準用量と同じかそれ未満の量で前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する前記治療剤を投与するか投与し続けることを含み、
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在が、前記対象の頭痛または片頭痛の発症リスクが低いことを示す、前記治療方法。
【請求項15】
前記対象がSCN11A参照型であり、前記対象に、前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する前記治療剤を標準用量で投与するか投与し続け、前記SCN11A阻害剤を投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型であり、前記対象に、前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する前記治療剤を標準用量と同じかまたはそれ未満の量で投与するか投与し続け、前記SCN11A阻害剤を投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子が、スプライス部位バリアント、ストップ-ゲインバリアント、スタート-ロスバリアント、ストップ-ロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレーム-インデルバリアント、または短縮型SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするバリアントである、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記SCN11A阻害剤が、SCN11A核酸分子にハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記SCN11A阻害剤が、Casタンパク質及びSCN11Aゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記gRNAが、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記SCN11A阻害剤が、小分子を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記SCN11A阻害剤が、抗体を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、頭痛を有するか、または頭痛を発症するリスクを有する、請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療剤が、非ステロイド系抗炎症薬、アセトアミノフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラクトロメタミン、メクロフェナム酸ナトリウム、ジフルニサル、トルメチン、ケトプロフェン、及びフルルビプロフェン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、片頭痛を有するか、または片頭痛を発症するリスクを有する、請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療剤が、非ステロイド系抗炎症薬、アセトアミノフェン、トリプタン、麦角、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬、吐き気止め、高血圧薬、抗うつ薬、抗てんかん薬及びボトックス、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
頭痛または片頭痛の発症リスクが高い対象の識別方法であって、前記方法が、
前記対象から採取した生体試料中のナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)の予測される機能喪失型バリアント核酸分子の存在の有無を判定するか、またはすでに判定していることを含み、
その場合、
前記対象がSCN11A参照型である場合、前記対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが高く、
前記対象が、前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアントの核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、前記対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが低い、前記識別方法。
【請求項30】
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子が、スプライス部位バリアント、ストップ-ゲインバリアント、スタート-ロスバリアント、ストップ-ロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレーム-インデルバリアント、または短縮型SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするバリアントである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
SCN11A参照型である対象に、前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、もしくは抑制する治療剤を標準用量で投与し、及び/またはSCN11A阻害剤を投与することをさらに含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、前記頭痛または前記片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤を標準用量と同じかまたはそれ未満の量で投与し、及び/またはSCN11A阻害剤を投与することをさらに含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記SCN11A阻害剤が、SCN11A核酸分子にハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記SCN11A阻害剤が、Casタンパク質、及びSCN11Aゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記gRNAが、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記SCN11A阻害剤が、小分子を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記SCN11A阻害剤が、抗体を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、頭痛を発症するリスクを有する、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記治療剤が、非ステロイド系抗炎症薬、アセトアミノフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトロラクトロメタミン、メクロフェナム酸ナトリウム、ジフルニサル、トルメチン、ケトプロフェン、及びフルルビプロフェン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、片頭痛を発症するリスクを有する、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記治療剤が、非ステロイド系抗炎症薬、アセトアミノフェン、トリプタン、麦角、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬、吐き気止め、高血圧薬、抗うつ薬、抗てんかん薬及びボトックス、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)の予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するための、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤。
【請求項45】
前記SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子が、スプライス部位バリアント、ストップ-ゲインバリアント、スタート-ロスバリアント、ストップ-ロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはインフレーム-インデルバリアント、または短縮型SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドをコードするバリアントである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
SCN11A参照型であるか、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するための、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤。
【請求項47】
前記SCN11A阻害剤が、SCN11A核酸分子にハイブリダイズする阻害性核酸分子を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記阻害性核酸分子が、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記SCN11A阻害剤が、Casタンパク質、及びSCN11Aゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記gRNAが、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項49または請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記SCN11A阻害剤が、小分子を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記SCN11A阻害剤が、抗体を含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット11(SCN11A)阻害剤を用いた頭痛または片頭痛を有する対象の治療、及び頭痛または片頭痛を発症するリスクが高い対象の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭痛は非常に一般的な症状であり、ほとんどの人が生涯に何度も経験する。頭痛の主な症状は、頭部または顔部の痛みである。痛みは、拍動痛、持続痛、鋭痛、または鈍痛であり得る。頭痛は、薬物療法、ストレス管理、及びバイオフィードバックによって治療することができる。頭痛の痛みは、脳、血管、及び周囲の神経の間で相互作用するシグナルから生じる。頭痛が起こると、未知のメカニズムによって特定の神経が活性化され、筋肉及び血管に影響を及ぼす。これらの神経は、痛みのシグナルを脳に送る。
【0003】
片頭痛は、一次性頭痛の中で2番目に多いタイプである。片頭痛の症状には、中程度から重度の痛み、吐き気または嘔吐、ズキズキする痛みまたは拍動痛、4時間~3日間続く痛み、光、騒音、または臭気に対する過敏症、及び/または胃の不調または腹痛が含まれる。片頭痛の原因は、はっきりとわかっていない。
【0004】
電位依存性ナトリウムチャネルは、ほとんどの興奮性細胞における活動電位の上昇段階で基本的な役割を果たす膜タンパク質複合体である。αサブユニットは、電位依存性のゲーティング及びコンダクタンスを媒介し、補助的なβサブユニットは、チャネルの運動特性を調節し、複合体の膜局在を促進する。各αサブユニットは、3つの細胞内ループで接続された4つのドメインからなり、各ドメインは、6つの膜貫通セグメントならびに細胞内及び細胞外リンカーからなる。SCN11Aは、脊髄後根神経節及び三叉神経節の侵害受容性(痛覚)ニューロンに存在する電位依存性ナトリウムチャネルのαサブユニットをコードする遺伝子である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、頭痛を有するか、または頭痛を発症するリスクがある対象の治療方法を提供し、この方法は、SCN11A阻害剤を対象に投与することを含む。
本開示はまた、片頭痛を有するか、または片頭痛を発症するリスクがある対象の治療方法を提供し、この方法は、SCN11A阻害剤を対象に投与することを含む。
【0006】
本開示はまた、頭痛もしくは片頭痛を予防する治療剤の投与により、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤を用いた対象の治療方法も提供し、その場合、対象は、頭痛もしくは片頭痛を有しているか、または頭痛もしくは片頭痛を発症するリスクを有しており、方法は、対象由来の生体試料を採取するか、またはすでに採取しており、生体試料に対して配列分析を実施するか、すでに実施しており、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定することによって、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するかどうかを判断し、頭痛もしくは片頭痛を治療、予防、もしくは抑制する治療剤を標準用量でSCN11A参照型である対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与するか、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象に、標準用量と同じかそれ未満の量で頭痛もしくは片頭痛を治療、予防、もしくは抑制する治療剤を投与するか投与し続け、及び/または対象にSCN11A阻害剤を投与するか、あるいはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である対象に、標準用量と同じかそれ未満の量で頭痛もしくは片頭痛を治療、予防、もしくは抑制する治療剤を投与するか投与し続けることを含み、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する遺伝子型が存在する場合、それは、対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが低いことを示している。
【0007】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を発症するリスクが増加している対象の識別方法を提供し、この方法は、対象から採取した生体試料中の、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の存在の有無を判定するか、またはすでに判定していることを含み、その場合、対象がSCN11A参照型である場合、対象は頭痛または片頭痛を発症するリスクが高く、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、対象は頭痛または片頭痛を発症するリスクが低い。
【0008】
本開示はまた、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するための、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤も提供する。
【0009】
本開示はまた、SCN11A参照型であるか、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するためのSCN11A阻害剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の態様に関する様々な用語は、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される。特に指示されない限り、そのような用語には当技術分野における通常の意味を付与するものとする。具体的に定義されている他の用語は、本明細書に示されている定義と一致する形で解釈されるものとする。
【0011】
別段に明示的な定めのない限り、本明細書に示されているいずれの方法または態様も、そのステップを特定の順序で行う必要があるものとして解釈するようには意図されていない。したがって、ステップを特定の順序に限定すべきことが、請求項または説明において、方法クレームによって具体的に定められていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには意図されていない。このことは、ステップもしくは作業フローの手筈に関する論理事項、文法構成もしくは句読法に由来する一般的意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0012】
本明細書で使用される場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、単数形「a」、「an」、及び「the」には、複数の参照対象が含まれる。
本明細書で使用される場合、用語「約」とは、列挙された数値が近似値であり、小さな変動が、開示される実施形態の実践に有意に影響しないであろうことを意味する。数値が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、用語「約」とは、数値が±10%変動し、開示された実施形態の範囲内に留まることができることを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、特定の実施形態では所望に応じて「からなる」または「本質的に~からなる」で置き換えられ得る。
本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、核酸分子またはポリペプチドに関して、核酸分子またはポリペプチドが、例えば血液及び/または動物組織とは別の、その天然環境以外の状態にあることを意味する。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子またはポリペプチドは、他の核酸分子または他のポリペプチド、特に動物起源の他の核酸分子またはポリペプチドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、核酸分子またはポリペプチドは、高度に精製された形態、すなわち、95%を超えて純粋または99%を超えて純粋であることができる。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、二量体または交互にリン酸化もしくは誘導体化された形態のような代わりの物理的形態における同じ核酸分子またはポリペプチドの存在を排除しない。
【0014】
本明細書で使用するとき、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むことができ、DNA及び/またはRNAを含むことができ、かつ一本鎖、二本鎖または多重鎖であることができる。核酸の一方の鎖は、その相補鎖も指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「対象」には、哺乳動物を含む任意の動物が含まれる。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタなど)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)、及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、ヒトは、医師のケア下にある患者である。
【0016】
本開示により、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子(特定の対象において、これらのバリアントがホモ接合型またはヘテロ接合型である)が、頭痛または片頭痛を発症するリスクの低下と関連していることが観察された。SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、頭痛または片頭痛と関連していないと考えられる。そのため、SCN11A参照型である対象、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象を、頭痛もしくは片頭痛が抑制もしくは予防されるか、その症状が軽減または予防されるか、及び/または症状の発症が抑制または予防されるように、SCN11A阻害剤で治療してもよい。また、頭痛または片頭痛を有するそのような対象を、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤でさらに治療してもよいと考えられる。
【0017】
本開示の目的のために、ヒトなどの特定の対象を、i)SCN11A参照型、ii)SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のヘテロ接合型、またはiii)SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のホモ接合型の3つのSCN11A遺伝子型のうちの1つを有するものとして分類することができる。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のコピーを有さない場合、その対象はSCN11A参照型である。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の単一コピーを有する場合、その対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である。SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するバリアントSCN11Aポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子はまた、SCN11A mRNAまたはポリペプチドの完全な喪失、発現の減少、または異常な発現を生じさせる任意の核酸分子(ゲノム核酸分子、mRNA分子、cDNA分子など)であり得る。部分的機能喪失(または予測される部分的機能喪失)を有するSCN11Aポリペプチドを有する対象は、SCN11Aに関して低形質性である。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を2コピー(同一のまたは異なる)有する場合、その対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である。
【0018】
SCN11A参照型であると遺伝子型決定されるかまたは判定された対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクが高い。SCN11A参照型またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型のいずれかであると遺伝子型決定されたかまたは判定された対象については、そのような対象をSCN11A阻害剤で治療することができる。
【0019】
本明細書に記載のいずれかの実施形態において、SCN11A阻害剤を投与することによって頭痛または片頭痛を予防する対象は、頭部損傷(外傷後頭痛)を有する対象、頭痛もしくは片頭痛を発症する遺伝的素因のある対象、または片頭痛もしくは頭痛の家族歴のある対象を含むがこれらに限定されない、頭痛または片頭痛を発症するリスクのある任意の人物である。さらに、対象は、ストレス、睡眠不足、うつ病、不安などのライフスタイル上のリスク因子を有していてもよい。また、いくつかの実施形態では、任意の対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクを有し得る。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤の投与を、頭痛または片頭痛を既に有していた対象においてさらなる頭痛または片頭痛が発症することを予防するために実施してもよい。
【0020】
本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかでは、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するSCN11Aバリアントポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)であり得る。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、SCN11A mRNAまたはポリペプチドの発現の減少、または異常な発現を生じさせる任意の核酸分子(ゲノム核酸分子、mRNA分子、cDNA分子など)である。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、参照型SCN11Aと比較して、SCN11Aリガンドに対するin vitro反応の低下と関連している。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、ヒト参照ゲノム配列と比較して、SCN11Aポリペプチドの未成熟切断を生じさせるか、または生じさせると予測されるSCN11Aバリアント核酸分子である。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、in vitro予測アルゴリズム、例えば、Polyphen、SIFT、または同様のアルゴリズムによって、損傷すると予測されるバリアントである。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、SCN11A核酸分子において非同義アミノ酸置換を引き起こすか、または引き起こすと予測されるバリアントであり、その対立遺伝子の頻度は、対象が選択される母集団において1/100対立遺伝子より少ない。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、任意の希少型ミスセンスバリアント(対立遺伝子頻度<0.1%;または1,000対立遺伝子に1つ)、または任意のスプライス部位、ストップ-ゲイン、スタート-ロス、ストップ-ロス、フレームシフト、インフレームインデル、もしくは他のフレームシフトSCN11Aバリアントである。
【0021】
本明細書に記載されている実施形態のいずれかでは、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドは、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有する任意のSCN11Aポリペプチドであり得る。
【0022】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、SCN11A参照型ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列(UCSC Genome Browser on Human Dec. 2013 (GRCh38/hg38) Assemblyのchr3:38845764-39051944におけるENST00000302328.9を参照のこと)を参照配列として使用して、第3染色体の位置に変異を含み得る。UCSC Genome Browser on Human Dec.2013(GRCh38/hg38)Assemblyのchr3:38845764-39051944におけるENST00000302328.9で提供されているSCN11Aゲノム核酸分子の配列は、単なる例示的な配列である。SCN11Aゲノム核酸分子の他の配列も可能である。例示的なSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
【表1-1】
【0024】
【表1-2】
【0025】
【表1-3】
【0026】
【表1-4】
【0027】
【表1-5】
【0028】
【表1-6】
【0029】
【表1-7】
【0030】
【表1-8】
【0031】
【表1-9】
【0032】
【表1-10】
【0033】
【表1-11】
【0034】
【表1-12】
【0035】
【表2-1】
【0036】
【表2-2】
【0037】
【表2-3】
【0038】
【表2-4】
【0039】
【表2-5】
【0040】
【表2-6】
【0041】
【表2-7】
【0042】
【表2-8】
【0043】
【表2-9】
【0044】
【表2-10】
【0045】
【表2-11】
【0046】
本明細書に記載のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の任意の1つ以上(すなわち、任意の組み合わせ)を、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて使用して、対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが増加しているか減少しているかを判定することができる。特定のバリアントの組み合わせは、SCN11Aと頭痛または片頭痛の発症リスクの増加または減少との特定の相関関係の統計解析に使用されるマスクを形成することができる。いくつかの実施形態では、SCN11Aと頭痛または片頭痛を発症するリスクの増加または減少との特定の相関関係の統計解析に使用されるマスクは、本明細書に記載されるこれらのSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の1つ以上を除外することができる。
【0047】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、対象は、頭痛を有し得る。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、対象は、頭痛を発症するリスクを有し得る。いくつかの実施形態では、頭痛は、緊張型頭痛、副鼻腔炎性頭痛、アイスピック頭痛、空腹及び/または渇きによる頭痛、群発性頭痛、ホルモン性頭痛、カフェイン性頭痛、労作性頭痛、高血圧性頭痛、外傷後頭痛、反復発作性頭痛、または慢性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は緊張型頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は副鼻腔炎性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛はアイスピック頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は、空腹及び/または渇きによる頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は群発性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛はホルモン性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛はカフェイン性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は労作性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は高血圧性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は外傷後頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は反復発作性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛は慢性頭痛である。
【0048】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、対象は、片頭痛を有し得る。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、対象は、片頭痛を発症するリスクを有し得る。片頭痛は、頭の片側の痛み、ならびに吐き気、及び光や音に対する過敏症によって識別可能な神経疾患である。片頭痛が近づいている兆候は、その前に現れる前兆である。片頭痛の前兆は、しびれ、ならびに光の点滅または視野内の斑点などの視覚障害によって識別することができる。いくつかの実施形態では、片頭痛は、網膜性片頭痛、眼性片頭痛、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、反復発作性片頭痛、慢性片頭痛、または片頭痛発作重積である。いくつかの実施形態では、片頭痛は網膜性片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は眼性片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は、前兆を伴う片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は、前兆を伴わない片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は片麻痺性片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は反復発作性片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は慢性片頭痛である。いくつかの実施形態では、片頭痛は片頭痛発作重積である。
【0049】
本開示は、頭痛を有するか、または頭痛を発症するリスクがある対象の治療方法を提供し、この方法は、SCN11A阻害剤を対象に投与することを含む。
本開示は、片頭痛を有するか、または片頭痛を発症するリスクがある対象の治療方法を提供し、この方法は、SCN11A阻害剤を対象に投与することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、阻害性核酸分子を含む。阻害性核酸分子の例には、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、及びショートヘアピンRNA(shRNA)が含まれるがこれらに限定されない。そのような阻害性核酸分子を、SCN11A核酸分子の任意の領域を標的とするように設計することができる。いくつかの実施形態では、アンチセンスRNA、siRNA、またはshRNAは、SCN11Aゲノム核酸分子またはmRNA分子内の配列とハイブリダイズして、対象の細胞におけるSCN11Aポリペプチドの発現を低下させる。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、アンチセンス分子を含み、これは、対象の細胞において、SCN11Aのゲノム核酸分子またはmRNA分子とハイブリダイズし、SCN11Aポリペプチドの発現を低下させる。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、SCN11Aゲノム核酸分子またはmRNA分子内にハイブリダイズするsiRNAを含み、対象において、細胞におけるSCN11Aポリペプチドの発現を低下させる。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、shRNAを含み、これは、対象の細胞において、SCN11Aのゲノム核酸分子またはmRNA分子とハイブリダイズし、SCN11Aポリペプチドの発現を低下させる。
【0051】
阻害性核酸分子は、RNA、DNA、またはRNAとDNAの双方を含み得る。阻害性核酸分子は、例えばベクター中の異種核酸配列または異種標識へも連結または融合させることができる。例えば、阻害性核酸分子は、阻害性核酸分子と異種核酸配列とを含むベクター内に、またはそれらを含む外来性ドナー配列として存在してもよい。阻害性核酸分子を異種標識に連結させるか、または融合させることもできる。標識は、直接検出可能(例えば、蛍光色素分子)であり得るか、または間接的に検出可能(例えば、ハプテン、酵素、または蛍光色素分子消光剤)であり得る。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な手段によって検出可能であり得る。そのような標識には、例えば、放射性標識、顔料、染料、色原体、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識は、例えば、化学発光物質、金属含有物質、または酵素(その場合、酵素依存性の二次的シグナルの生成が起こる)でもあり得る。用語「標識」はまた、コンジュゲートされた分子を続いて基質と一緒に添加して使用して、検出可能なシグナルを生成するように、コンジュゲートされた分子へ選択的に結合し得る、「タグ」またはハプテンも指し得る。例えば、ビオチンをタグとして使用して、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジンのコンジュゲートと一緒にタグへ結合させ、比色基質(例えばテトラメチルベンジジン(TMB)など)または蛍光発生基質を使用して、HRPの存在の検出を調査することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識としては、myc、HA、FLAGもしくは3×FLAG、6×Hisもしくはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限らない。多数の標識には、例えば、粒子、蛍光色素分子、ハプテン、酵素ならびにそれらの比色性、蛍光性及び化学発光性の基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0052】
阻害性核酸分子は、例えば、ヌクレオチド、または、例えば、ヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチド置換体のような非天然ヌクレオチドもしくは修飾ヌクレオチドを含み得る。そのようなヌクレオチドには、修飾された塩基、糖、もしくはリン酸基を含有するヌクレオチド、またはその構造内に非天然部分を組み込んでいるヌクレオチドが含まれる。非天然ヌクレオチドの例としては、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、アミノ化ヌクレオチド、脱アミノ化ヌクレオチド、アルキル化ヌクレオチド、ベンジル化ヌクレオチド、及びフルオロフォア標識されたヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
阻害性核酸分子は、1つ以上のヌクレオチド類似体またはヌクレオチド置換体を含み得る。ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸の部分のいずれかに対する修飾を含有するヌクレオチドである。塩基部分への修飾としては、A、C、G、及びT/Uの天然修飾及び合成修飾、ならびに異なるプリン塩基またはピリミジン塩基(例えば、シュードウリジン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、及び2-アミノアデニン-9-イルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。修飾塩基として、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル誘導体及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル誘導体及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ(例えば、5-ブロモなど)、5-トリフルオロメチル、及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、ならびに3-デアザアデニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ヌクレオチド類似体にはまた、糖部位の修飾が含まれ得る。糖部位に対する修飾には、リボース及びデオキシリボースの天然修飾ならびに合成修飾が含まれるが、これらに限定されない。糖修飾としては、2’位での以下の修飾:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル、O-、S-もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルが挙げられるが、これらに限定されず、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換または非置換のC1-10アルキルまたはC2-10アルケニル、及びC2-10アルキニルであり得る。例示的な2’糖修飾としてはまた、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCH)]も挙げられるが、これらに限定されず、式中、n及びmは、独立して1~約10である。2’位での他の修飾としては、C1-10アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールもしくはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性の改善のための基、またはオリゴヌクレオチドの薬物動力学的特性の改善のための基、及び類似する特性を有する他の置換基が挙げられるが、これらに限定されない。同様の修飾はまた、糖上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’-5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行われ得る。修飾された糖としては、CH及びSなどの架橋環酸素で修飾を含有するものも挙げられ得る。ヌクレオチド糖類似体は、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体も有し得る。
【0055】
ヌクレオチド類似体は、リン酸部分で修飾することもできる。修飾リン酸部分としては、2つのヌクレオチド間の結合が、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、及び他のアルキルホスホネート、例えば、3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにボラノホスフェートを含有するように修飾され得るリン酸部分が挙げられるが、これらに限定されない。2つのヌクレオチド間のこれらのリン酸結合または修飾されたリン酸結合は、3’-5’結合または2’-5’結合を介するものであり得、結合は、3’-5’から5’-3’、または2’-5’から5’-2’などの逆向きの極性を含有し得る。様々な塩、混合塩、及び遊離酸の形態も含まれる。ヌクレオチド置換体にはペプチド核酸(PNA)も含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態では、アンチセンス核酸分子はギャップマーであり、それによって5’末端及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは、それぞれ2’-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を有する。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは、それぞれ2’-MOE修飾を有する。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、5’末端及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド間の骨格結合のそれぞれは、ホスホロチオエート結合である。
【0057】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は末端修飾を有する。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端はリン酸化される。いくつかの実施形態では、加水分解することができない5’-リン酸類似体、例えば5’-(E)-ビニル-ホスホネートが使用される。
【0058】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は、骨格修飾を有する。いくつかの実施形態では、連続するリボースヌクレオシドを連結する修飾ホスホジエステル基は、siRNAの安定性及びin vivoでの生物学的利用能を高めることが示されている。ホスホジエステル結合の非エステル基(-OH、=O)を硫黄、ホウ素、またはアセテートと置き換えて、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、及びホスホノアセテート結合を得ることができる。加えて、ホスホジエステル基をホスホトリエステルで置換することにより、その負電荷を除去することによって、siRNAの細胞取り込み及び血清成分での保持を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、siRNA分子は糖修飾を有する。いくつかの実施形態では、糖は脱プロトン化され(エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼによって触媒される反応)、それによって2’-ヒドロキシルが求核剤として作用し、ホスホジエステル結合の隣接するリンを攻撃することができる。そのような代替物としては、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、及び2’-フルオロ修飾が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は、塩基修飾を有する。いくつかの実施形態では、塩基は、プソイドウリジン、5’-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、イノシン、及びN7-メチルグアノシンなどの修飾塩基で置換され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、siRNA分子を、脂質にコンジュゲートする。脂質は、siRNAの5’末端または3’末端にコンジュゲートすることができ、それらを血清リポタンパク質と会合させることにより、in vivoでの生物学的利用能を向上させることができる。代表的な脂質としては、コレステロール及びビタミンE、ならびにパルミチン酸及びトコフェロールなどの脂肪酸などが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、代表的なsiRNAは、以下の式:
センス:mNmN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/32FN/
アンチセンス:/52FN//i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN
を有し、式中、「N」は塩基であり、「2F」は2’-F修飾であり、「m」は2’-O-メチル修飾であり、「I」は内部塩基であり、「」はホスホロチオエート骨格結合である。
【0062】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、阻害性核酸分子を、例えば、1~2時間の静脈内注入または皮下注射として投与してもよい。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、阻害性核酸分子を、約50mg~約900mg、約100mg~約800mg、約150mg~約700mg、または約175~約640mg(体重70kgの想定、及びヒトの場合のmg/kg用量乗数値37に基づいたmg/kgからmg/m用量レベルへの変換に基づくと、2.5~9.14mg/kg、92.5~338mg/m)の範囲の用量レベルで投与してもよい。
【0063】
本開示は、阻害性核酸分子のいずれか1つ以上を含むベクターも提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、阻害性核酸分子のいずれか1つ以上、及び異種核酸を含む。ベクターは、核酸分子を輸送することが可能なウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドまたはコスミド(例えば、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAなど)である。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。発現ベクターとしては、プラスミド、コスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス(カリフラワーモザイクウイルス及びタバコモザイクウイルスなど)、酵母人工染色体(YAC)、エプスタイン-バー(EBV)由来エピソーム、及び当技術分野において公知の他の発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本開示は、阻害性核酸分子のいずれか1つ以上を含む組成物も提供する。いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、担体及び/または賦形剤を含む。担体の例としては、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフィア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)ミクロスフィア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート、及び脂質微小管が挙げられるが、これらに限定されない。担体は、PBS、HBSSなどの緩衝化塩溶液を含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、認識配列(複数可)における1つ以上のニックもしくは二本鎖切断を誘導するヌクレアーゼ剤またはSCN11Aゲノム核酸分子内の認識配列に結合するDNA結合タンパク質を含む。認識配列は、SCN11A遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす調節領域内に配置することができる。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤の認識配列は、イントロン、エクソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または任意の非タンパク質コード領域に配置することができる。認識配列は、SCN11A遺伝子の開始コドンを含み、またはそれに近い場合がある。例えば、認識配列は、開始コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチドに配置することができる。別の例として、それぞれが開始コドンを含むまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とする2つ以上のヌクレアーゼ剤を使用することができる。別の例として、1つが開始コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とし、もう1つが終止コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とする2つのヌクレアーゼ剤を使用することができ、これらのヌクレアーゼ剤による切断により、2つのヌクレアーゼ認識配列間のコード領域を欠失させることができる。所望の認識配列にニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤を本明細書で開示されている方法及び組成物において使用することができる。所望の認識配列へ結合する任意のDNA結合タンパク質を、本明細書で開示される方法及び組成物において使用することができる。
【0066】
本明細書での使用に好適なヌクレアーゼ剤及びDNA結合タンパク質としては、ジンクフィンガータンパク質もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)対、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質もしくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系が挙げられるが、これらに限定されない。認識配列の長さは様々に異なり得るが、例えば、ジンクフィンガータンパク質またはZFN対については約30~36bp、各ZFNについては約15~18bp、TALEタンパク質またはTALENについては約36bp、及びCRISPR/CasガイドRNAについては約20bpである認識配列が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas系を用いて、細胞内のSCN11Aゲノム核酸分子を修飾することができる。本明細書で開示されている方法及び組成物は、SCN11A核酸分子の部位特異的切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによってCRISPR-Cas系を採用することができる。
【0068】
Casタンパク質は一般に、gRNAと相互作用することができる少なくとも1つのRNA認識ドメインまたはRNA結合ドメインを含む。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNaseまたはRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインも含み得る。好適なCasタンパク質としては、例えば、野生型Cas9タンパク質及び野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1)が挙げられる。Casタンパク質は、SCN11Aゲノム核酸分子中で二本鎖切断を生成するように完全な切断活性を有し得るか、またはSCN11Aゲノム核酸分子中で一本鎖切断を生成するニッカーゼであり得る。Casタンパク質の追加の例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、ならびにその相同体または改変体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Cas系、例えば、Cas12aは、単一のcrRNAにコードされた複数のgRNAを有し得る。Casタンパク質はまた、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。例えば、Casタンパク質を、切断ドメイン、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合させることができる。Casタンパク質は、任意の形態で提供することができる。例えば、Casタンパク質を、タンパク質、例えば、gRNAと複合体化したCasタンパク質の形態で提供することができる。あるいは、Casタンパク質を、Casタンパク質をコードする核酸分子、例えば、RNAまたはDNAの形態で提供することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、細胞を、Casタンパク質、及びSCN11Aゲノム核酸分子の標的ゲノム遺伝子座内の1つ以上のgRNA認識配列とハイブリダイズする1つ以上のgRNAに接触させることによって、SCN11Aゲノム核酸分子の標的化された遺伝子組み換えを生成することができる。gRNA認識配列は、SCN11Aゲノム核酸分子の開始コドンもしくはSCN11Aゲノム核酸分子の終止コドンを含み得るかまたはそれに近接し得る。例えば、gRNA認識配列は、開始コドンまたは終止コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置し得る。
【0070】
SCN11Aゲノム核酸分子における標的ゲノム遺伝子座内のgRNA認識配列は、Cas9ヌクレアーゼが標的とするDNA配列の直後にある2~6塩基対のDNA配列であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の近くに位置する。標準PAMは、配列5’-NGG-3’であり、その際、「N」は任意の核酸塩基であり、その後に2つのグアニン(「G」)核酸塩基が続く。gRNAは遺伝子編集のためにCas9をゲノム内のどこにでも輸送することができるが、Cas9がPAMを認識する部位以外の部位では編集を行うことはできない。さらに、5’-NGA-3’は、ヒト細胞にとって高度に効率的な非標準PAMであり得る。一般に、PAMは、gRNAの標的となるDNA配列の下流の約2~6ヌクレオチドである。PAMは、gRNA認識配列に隣接することができる。いくつかの実施形態では、gRNA認識配列は、3’末端上でPAMと隣接し得る。いくつかの実施形態では、gRNA認識配列は、5’末端上でPAMと隣接し得る。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流または下流における約1~約10、約2~約5塩基対または3塩基対であり得る。いくつかの実施形態(例えば、S.pyogenes由来のCas9または近縁Cas9を使用する場合)では、非相補鎖のPAM配列は5’-NGG-3’であることができ、その場合、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のgRNA認識配列の直近の3’側である。したがって、相補鎖のPAM配列は5’-CCN-3’であり、式中、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの相補鎖のgRNA認識配列の直近の5’側である。
【0071】
gRNAは、Casタンパク質に結合し、Casタンパク質をSCN11Aゲノム核酸分子内の特定の位置に標的化するRNA分子である。例示的なgRNAは、Cas酵素がSCN11Aゲノム核酸分子に結合し、またはそれを切断するように誘導するために有効なgRNAであり、そのgRNAは、SCN11Aゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするDNA標的化セグメントを含む。例示的なgRNAは、開始コドンまたは終止コドンを含むか、またはそれに近いSCN11Aゲノム核酸分子内に存在するgRNA認識配列にハイブリダイズするDNA標的化セグメントを含む。例えば、gRNAは、開始コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置するgRNA認識配列と、または終止コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて位置するgRNA認識配列とハイブリダイズするように選択することができる。好適なgRNAは約17~約25ヌクレオチド、約17~約23ヌクレオチド、約18~約22ヌクレオチド、または約19~約21ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、20ヌクレオチドを含み得る。
【0072】
Casタンパク質及びgRNAは、複合体を形成し、Casタンパク質は、標的SCN11Aゲノム核酸分子を切断する。Casタンパク質は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的SCN11Aゲノム核酸分子に存在する核酸配列の内部または外部の部位で核酸分子を切断することができる。例えば、CRISPR複合体(gRNA認識配列とハイブリダイズし、Casタンパク質と複合体を形成するgRNAを含む)の形成は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するSCN11Aゲノム核酸分子に存在する核酸配列内またはその近傍(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、もしくは50塩基、またはそれ以上の塩基対以内)において一方または双方の鎖の切断を生じ得る。
【0073】
そのような方法は、例えば、SCN11Aゲノム核酸分子の領域が破壊されているか、開始コドンが破壊されているか、終止コドンが破壊されているか、またはコード配列が破壊されているかもしくは削除されているSCN11Aゲノム核酸分子を生じさせ得る。任意選択で、細胞を、SCN11Aゲノム核酸分子の標的ゲノム遺伝子座内の追加のgRNA認識配列とハイブリダイズする1つ以上の追加のgRNAとさらに接触させることができる。細胞を1つ以上の追加のgRNA(例えば、第2のgRNA認識配列とハイブリダイズする第2のgRNA)と接触させることによって、Casタンパク質による切断は、2つ以上の二本鎖切断または2つ以上の一本鎖切断を作り出すことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、治療方法及び/または予防方法は、対象由来の生体試料中のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の存在の有無を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子は、本明細書で開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかであり得る。
【0075】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤を用いた対象の治療方法を提供し、その場合、対象は、頭痛もしくは片頭痛を有するか、または頭痛もしくは片頭痛を発症するリスクを有する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から生体試料を採取するかまたはすでに採取しており、その生体試料について配列分析を実施するかまたはすでに実施しており、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを判定することによって、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するかどうかを判断することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量でSCN11A参照型である対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない量でSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない量でSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である対象に投与するか投与し続けることをさらに含む。SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが低いことを示す。いくつかの実施形態では、対象はSCN11A参照型である。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である。
【0076】
SCN11A参照型であるか、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型であると遺伝子型決定されるか判定される対象について、そのような対象に、本明細書に記載されるようにSCN11A阻害剤を投与することができる。
【0077】
対象由来の生体試料中のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の存在の有無を検出し、及び/または対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するか否かを判定することを、本明細書に記載の方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vitroで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin situで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vivoで実施することができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、核酸分子は、対象から得られる細胞内に存在し得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、対象がSCN11A参照型である場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量で投与する。いくつかの実施形態では、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない用量で投与する。
【0079】
いくつかの実施形態では、治療方法及び/または予防方法は、対象由来の生体試料中の、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在の有無を検出することを含む。いくつかの実施形態では、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有さない場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量で投与する。いくつかの実施形態では、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない用量で投与する。
【0080】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤を用いた対象の治療方法を提供し、その場合、対象は、頭痛もしくは片頭痛を有するか、または頭痛もしくは片頭痛を発症するリスクを有する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から生体試料を採取するかまたはすでに採取しており、その生体試料についてアッセイを実施するかまたはすでに実施しており、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判定することによって、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判断することを含む。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有さない場合、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤を標準用量で対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与する。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、頭痛または片頭痛を治療または抑制する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない量で対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与する。SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在は、対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが低いことを示す。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有さない。
【0081】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を予防する治療剤を投与することによって、対象が頭痛または片頭痛を発症することを予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から生体試料を採取するかまたはすでに採取しており、その生体試料についてアッセイを実施するかまたはすでに実施しており、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判定することによって、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかを判断することを含む。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有さない場合、頭痛または片頭痛を予防する治療剤を標準用量で対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与する。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する場合、頭痛または片頭痛を予防する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない量で対象に投与するか投与し続け、及び/またはSCN11A阻害剤を対象に投与する。SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在は、対象が頭痛または片頭痛を発症するリスクが低いことを示す。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有さない。
【0082】
対象の生体試料中の、SCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドの存在の有無の検出、及び/または対象がSCN11Aの予測される機能喪失型ポリペプチドを有するかどうかの判断は、本明細書に記載の方法のいずれかによって行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vitroで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin situで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vivoで実施することができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、ポリペプチドは、対象から採取する細胞内に存在し得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は小分子である。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は非選択的ナトリウム遮断薬である。いくつかの実施形態では、非選択的ナトリウム遮断薬は、リグノカイン、メキシレチン、またはカルバマゼピンである。いくつかの実施形態では、非選択的ナトリウム遮断薬はリグノカインである。いくつかの実施形態では、非選択的ナトリウム遮断薬はメキシレチンである。いくつかの実施形態では、非選択的ナトリウム遮断薬はカルバマゼピンである。いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は、メントール、ミベフラジル、または無機l(Ca)遮断薬である。
【0084】
いくつかの実施形態では、SCN11A阻害剤は抗体である。
頭痛を治療または予防する治療剤の例としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、及びナプロキセンナトリウムなど)、アセトアミノフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、インドメタシン、ケトロラクトロメタミン、メクロフェナメートナトリウム、ジフルニサル、トルメチン、ナブメトン、カリソプロドール、クエン酸オルフェナドリン、メトカルバモール、塩酸シクロベンザプリン、メタキサロン、プレドニゾン、エルゴタミン、リチウム、プロプラノロール、ジルチアゼム、及びオピオイド、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
片頭痛を治療または抑制する治療剤の例としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、及びナプロキセンナトリウムなど);アセトアミノフェン;ジクロフェナク;ケトロラク;プロポフォール;ラスミジタン;アスピリン、アセトアミノフェン、及びカフェインの組み合わせ;イソメテプテン、ジクロルアルフェナゾン、及びアセトアミノフェンの組み合わせ;トリプタン(例えば、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、ドニトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、LY-334370、及びL-694247など);麦角(例えば、ジヒドロエルゴタミン及びエルゴタミン酒石酸塩など);カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬(例えば、リメゲパント、アトゲパント、ウブロゲパント、エプチネズマブ、エレヌマブ、フレマネズマブ、及びガルカネズマブなど);吐き気止め(例えば、クロルプロマジン、ドロペリドール、メトクロプラミド、及びプロクロルペラジンなど);高血圧薬(例えば、β遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、及びメトプロロールなど)及びカルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミルなど)など);抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン及びノルトリプチリンなど);抗てんかん薬(例えば、ガバペンチン、トピラマート、及びバルプロ酸など);オピオイド;バルビツール酸;ナツシロギク;ならびにボツリヌス毒素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象の場合、SCN11A参照型である対象(標準用量を投与され得る)と比較して、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の用量を、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%低減(すなわち、標準用量よりも少なく)することができる。いくつかの実施形態では、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の用量を、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%低減することができる。さらに、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象には、SCN11A参照型である対象と比較して、より低い頻度で投与することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象と比較して、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である対象について、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の用量を、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%低減することができる。いくつかの実施形態では、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の用量を、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%低減することができる。さらに、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象と比較して、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である対象には、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の用量を、より低い頻度で投与することができる。
【0088】
頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤及び/またはSCN11A阻害剤の投与を、例えば、1日、2日、3日、5日、1週、2週、3週、1か月、5週、6週、7週、8週、2か月、または3か月後に繰り返すことができる。反復投与は、同じ用量または異なる用量であり得る。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上反復することができる。例えば、特定の投薬計画によれば、対象は、例えば、6か月、1年、またはそれ以上のような長期間にわたって治療を受けることができる。
【0089】
頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤及び/またはSCN11A阻害剤の投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内を含むがこれらに限定されない任意の好適な経路によって行われ得る。投与用の医薬組成物は、望ましくは無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与の用量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に依存する。用語「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって実質的に有害ではないことを意味する。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」、ならびに「予防する」、「予防すること」、及び「予防」とは、それぞれ、治療効果及び予防効果などの所望の生物学的応答を引き出すことを指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、薬剤または薬剤を含む組成物を投与した後の、頭痛もしくは片頭痛の低減/軽減、頭痛もしくは片頭痛の重症度の低減/軽減(例えば、頭痛もしくは片頭痛の発症の減少もしくは抑制など)、症状及び頭痛もしくは片頭痛関連の影響の低減/軽減、症状及び頭痛もしくは片頭痛関連の影響の発症の遅延、頭痛もしくは片頭痛関連の影響の症状の重症度の軽減、症状及び頭痛もしくは片頭痛関連の影響の数の低減、症状及び頭痛もしくは片頭痛関連の影響の潜時の短縮、症状及び頭痛もしくは片頭痛関連の影響の改善、二次症状の軽減、二次感染の低減、頭痛もしくは片頭痛の再発の予防、再発エピソードの数もしくは頻度の低減、症状エピソード間の潜時の増加、持続的進行までの時間の増加、回復の促進、または代替治療薬の有効性の増加もしくは抵抗性の低減、及び/または罹患した宿主動物の生存期間の延長のうちの1つ以上を含む。予防効果は、治療的プロトコルの投与後の、頭痛もしくは片頭痛の発症/進行の完全もしくは部分的回避/阻害もしくは遅延(例えば、完全もしくは部分的回避/阻害もしくは遅延など)、及び罹患した宿主動物の生存期間の延長を含み得る。頭痛もしくは片頭痛の治療は、任意の臨床病期もしくは症状の発現での、任意の形態の頭痛もしくは片頭痛を有すると既に診断された対象の治療、頭痛もしくは片頭痛の症状もしくは兆候の発生もしくは進展もしくは増悪もしくは悪化の遅延、及び/または頭痛もしくは片頭痛の重症度の予防及び/または低減を包含する。
【0091】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を発症するリスクが高い対象の識別方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、対象から採取した生体試料において、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはcDNA分子)の存在または非存在を判定するか、またはすでに判定していることを含む。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を欠く(すなわち、対象が遺伝子型的にSCN11A参照型としてカテゴリー化される)場合、対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクが高い。対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する(すなわち、対象が、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアントの核酸分子についてヘテロ接合型またはホモ接合型である)場合、その対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクが低い。
【0092】
SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の単一コピーを有する場合、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のコピーを有さない場合に比べて、対象は、頭痛または片頭痛の発症から、より保護される。特定の理論または作用機序に限定されることを意図するものではないが、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の単一コピー(すなわち、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型)は、頭痛または片頭痛の発症から対象を保護すると考えられ、さらに、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の2つのコピーを有すること(すなわち、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型)は、単一コピーを有する対象と比べて、頭痛または片頭痛を発症することから対象をさらに保護し得るとも考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の単一コピーは、頭痛または片頭痛を発症することから対象を完全に保護し得ないが、代わりに、部分的または不完全に保護する場合がある。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子の単一コピーを有する対象に依然として存在する、頭痛または片頭痛の発症に関与するさらなる因子または分子が存在し、そのために、頭痛または片頭痛の発症の完全な保護に及ばない可能性がある。
【0093】
対象が対象由来の生体試料中にSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するかどうかを判定し、及び/または対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有するかどうかを判定することは、本明細書に記載されている方法のいずれかによって実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vitroで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin situで実施することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法をin vivoで実施することができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、核酸分子は、対象から得られる細胞内に存在し得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、対象が、頭痛または片頭痛を発症するリスクが高いと識別される場合、その対象に、本明細書に記載される頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤、及び/またはSCN11A阻害剤を投与する。例えば、対象がSCN11A参照型であり、そのため頭痛または片頭痛の発症リスクが高い場合、その対象に、SCN11A阻害剤を投与する。いくつかの実施形態では、そのような対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤も投与する。いくつかの実施形態では、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない用量で投与し、SCN11A阻害剤も投与する。いくつかの実施形態では、そのような対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤も投与する。いくつかの実施形態では、対象がSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である場合、対象に、頭痛または片頭痛を治療、予防、または阻害する治療剤を標準用量と同じかまたはそれより少ない用量で投与する。いくつかの実施形態では、対象はSCN11A参照型である。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である。いくつかの実施形態では、対象は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてホモ接合型である。
【0095】
本開示はまた、頭痛または片頭痛を発症するリスクの低下に関連する、2つ以上のSCN11Aバリアント核酸分子及び/または2つ以上のSCN11Aバリアントポリペプチドを有する対象の総負荷、またはリスクスコアの測定方法も提供する。総負荷とは、頭痛または片頭痛との関連解析で実行可能な2つ以上の遺伝的バリアントの合計である。いくつかの実施形態では、対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクの低下に関連する1つ以上のSCN11Aバリアント核酸分子についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクの低下に関連する1つ以上のSCN11Aバリアント核酸分子についてヘテロ接合性である。対象の総負荷がより低い場合、対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクが高く、その対象に、頭痛もしくは片頭痛の治療剤を標準用量と同じかまたはそれより低い量で、または頭痛もしくは片頭痛の治療法を、及び/またはSCN11A阻害剤を投与するか投与し続ける。対象の総負荷がより高い場合、対象は、頭痛または片頭痛を発症するリスクが低く、その対象に、頭痛もしくは片頭痛の治療剤を標準用量で、または頭痛もしくは片頭痛の治療法を投与するか投与し続ける。総負荷が高いほど、頭痛または片頭痛の発症リスクは低くなる。
【0096】
いくつかの実施形態では、任意の2つ以上のSCN11Aバリアント核酸分子を有する対象の総負荷は、SCN11Aバリアント核酸分子のうちのいずれかの複数の重み付けされた合計を表す。いくつかの実施形態では、総負荷は、SCN11A遺伝子内またはその周辺(10Mb以内)に存在する、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、または少なくとも約1,000,000もしくはそれを上回る遺伝子バリアントを使用して計算され、遺伝子負荷は、アレルの数に各アレルについての頭痛もしくは片頭痛または関連アウトカムとの関連推定値を乗じたもの(例えば、重み付けされた加重多遺伝子負荷スコア)である。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアより高い総負荷を有する場合、その対象は、頭痛または片頭痛の発症リスクが低い。いくつかの実施形態では、対象が所望の閾値スコアより低い総負荷を有する場合、その対象は、頭痛または片頭痛の発症リスクが高い。
【0097】
いくつかの実施形態では、総負荷を、例えば、上位五分位、第二五分位、中間五分位、第四五分位、及び下位五分位の五分位に分割してもよく、総負荷の上位五分位は最低リスク群に対応し、総負荷の下位五分位は最高リスク群に対応する。いくつかの実施形態では、より高い総負荷を有する対象は、対象集団からの上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%の総負荷を含むがこれらに限定されない、最高加重総負荷を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子バリアントは、関連性について上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%のp値範囲で頭痛または片頭痛との関連性を有する遺伝子バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定される遺伝子バリアントの各々は、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6、約10-7、約10-8、約10-9、約10-10、約10-11、約10-12、約10-13、約10-14、または約10-15以下のp値で、頭痛または片頭痛との関連性を有する遺伝子バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定される遺伝子バリアントは、5×10-8未満のp値で、頭痛または片頭痛との関連性を有する遺伝子バリアントを含む。いくつかの実施形態では、同定される遺伝子バリアントは、高リスク対象において、参照集団の残りと比較して、頭痛または片頭痛との関連性を有する遺伝子バリアントを含み、そのオッズ比(OR)は、分布の上位20%については約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、もしくは約2.25以上;または約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、約2.25以上、約2.5以上、もしくは約2.75以上である。いくつかの実施形態では、オッズ比(OR)は、約1.0~約1.5、約1.5~約2.0、約2.0~約2.5、約2.5~約3.0、約3.0~約3.5、約3.5~約4.0、約4.0~約4.5、約4.5~約5.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0の範囲、または7.0超であり得る。いくつかの実施形態では、高リスク対象は、参照集団における下位十分位、五分位、または三分位の総負荷を有する。総負荷の閾値は、意図される実際の用途の性質と、その実際の用途にとって意味があると考えられるリスク差に基づいて決定され得る。
【0098】
頭痛または片頭痛に関連するSCN11A遺伝子バリアントについて総負荷を測定する実施形態では、総負荷は、対象の頭痛または片頭痛を発症するリスクスコアを表す。いくつかの実施形態では、総負荷またはリスクスコアは、本明細書に記載される遺伝子変異のいずれかを含むSCN11Aバリアントゲノム核酸分子を含むか、またはそこから生成されるmRNA分子であるか、またはmRNA分子から生成されるcDNA分子である。いくつかの実施形態では、頭痛または片頭痛に関連するSCN11A遺伝子バリアントと、同じく頭痛または片頭痛に関連する他の遺伝子の追加の遺伝子バリアントを組み合わせて、対象の総負荷を決定し、頭痛または片頭痛の発症に関する加重多遺伝子リスクスコア(PRS)を生成することができる。いくつかの実施形態では、PRSは、本明細書に記載される遺伝子変異のいずれかを含むSCN11Aバリアントゲノム核酸分子を含むか、またはそこから生成されるmRNA分子であるか、またはmRNA分子から生成されるcDNA分子である。
【0099】
本開示はまた、対象由来の生体試料中のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアントゲノム核酸分子(すなわち、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはmRNA分子から生成されるcDNA分子)の存在の有無の検出方法も提供する。集団内の遺伝子配列、及びそのような遺伝子によってコードされるmRNA分子は、一塩基多型のような多型に起因して異なり得ることが理解される。
【0100】
生体試料は、対象由来の任意の細胞、組織、または生体液に由来し得る。生体試料は、任意の臨床的に関連のある組織、例えば、骨髄試料、腫瘍生検、微細針吸引物、または体液の試料、例えば、血液、歯肉溝滲出液、血漿、血清、リンパ液、腹水、嚢胞液、もしくは尿を含み得る。いくつかの場合では、試料には、口腔スワブが含まれる。本明細書で開示されている方法において使用する生体試料は、アッセイ形式、検出方法の性質、及び試料として使用する組織、細胞、または抽出物に基づいて異なり得る。生体試料は、採用されるアッセイに応じて異なる処理を行うことができる。例えば、任意のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を検出する場合、ゲノムDNAについて生体試料を単離するかまたは濃縮するように設計した予備処理を採用することができる。多様な技術がこの目的のために使用され得る。SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のレベルを検出する場合、様々な技術を使用してmRNA分子を含む生体試料を濃縮することができる。mRNA分子の存在もしくはレベル、または特定のバリアントゲノムDNA遺伝子座の存在を検出するための様々な方法を使用することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象におけるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を検出することは、対象から採取した生体試料について配列分析を実施して、生体試料中のSCN11Aゲノム核酸分子、及び/または生体試料中のSCN11A mRNA分子、及び/または生体試料中のmRNA分子から生成されるSCN11A cDNA分子が、機能喪失(部分的または完全)を引き起こすか、または機能喪失(部分的または完全)を引き起こすと予測される1つ以上の変異を含むかどうかを判定することを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、対象におけるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはmRNAから生成されるcDNA分子)の存在の有無の検出方法は、対象から採取した生体試料にてアッセイを実施することを含む。アッセイは、生体試料中の核酸分子が特定のヌクレオチド配列を含むかどうかを判定する。
【0103】
いくつかの実施形態では、生体試料は、細胞または細胞溶解物を含む。そのような方法はさらに、例えば、SCN11Aゲノム核酸分子またはmRNA分子を含む生体試料を対象から採取し、mRNAの場合、任意選択でmRNAをcDNAに逆転写することを含み得る。そのようなアッセイは、例えば、特定のSCN11A核酸分子のこれらの位置の同一性を判定することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、in vitroでの方法である。
【0104】
いくつかの実施形態では、判定ステップ、検出ステップ、または配列分析は、生体試料中のSCN11Aゲノム核酸分子、SCN11A mRNA分子、またはSCN11A cDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を配列決定することを含み、配列決定される部分は、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすかまたは機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上の変異を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、アッセイは、核酸分子全体を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、SCN11Aゲノム核酸分子のみを分析する。いくつかの実施形態では、SCN11A mRNAのみを分析する。いくつかの実施形態では、SCN11A mRNAから得られたSCN11A cDNAのみを分析する。
【0106】
変異特異的ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用して核酸配列内のSNPのような変異を検出することができる。鋳型とのミスマッチが存在するとDNAポリメラーゼは伸長しないため、変異特異的プライマーを使用することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、試料中の核酸分子はmRNAであり、増幅ステップ前にmRNAをcDNAに逆転写する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、対象から採取した細胞内に存在する。
【0108】
いくつかの実施形態では、アッセイは、ストリンジェントな条件下でSCN11Aバリアントゲノム配列、バリアントmRNA配列、またはバリアントcDNA配列には特異的にハイブリダイズするが対応するSCN11A参照配列には特異的にハイブリダイズしない変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブなどのプライマーまたはプローブに生体試料を接触させ、ハイブリダイゼーションが生じたかどうかを判定することを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、判定ステップ、検出ステップ、または配列分析は、a)SCN11AポリペプチドをコードするSCN11A核酸分子の少なくとも一部を増幅し、b)増幅した核酸分子を検出可能な標識で標識し、c)標識した核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体に接触させ、d)検出可能な標識を検出することを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、アッセイは、RNAの配列決定(RNA-Seq)を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってmRNAをcDNAに逆転写することも含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、方法は、標的ヌクレオチド配列に結合し、SCN11Aバリアントゲノム核酸分子、バリアントmRNA分子、またはバリアントcDNA分子を含むポリヌクレオチドを特異的に検出し、及び/または識別するのに十分なヌクレオチド長のプローブ及びプライマーを利用する。ハイブリダイズ条件または反応条件は、この結果を達成するように作業者が決定することができる。ヌクレオチド長は、本明細書に記載されているまたは例示されている任意のアッセイを含む、最適な検出方法にて使用するのに十分である任意の長さであってもよい。そのようなプローブ及びプライマーは、高ストリンジェントなハイブリダイズ条件下で標的ヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズすることができる。標的ヌクレオチド配列とは異なり、かつ標的ヌクレオチド配列を特異的に検出し、及び/または識別する能力を保持するプローブを従来の方法によって設計してもよいが、プローブ及びプライマーは、標的ヌクレオチド配列内の連続ヌクレオチドの完全なヌクレオチド配列同一性を有してもよい。プローブ及びプライマーは、標的核酸分子のヌクレオチド配列と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性または相補性を有することができる。
【0112】
核酸配列決定技術の説明に役立つ実例には、連鎖停止剤(Sanger)配列決定及びダイターミネーター配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法には、精製DNA、増幅DNA及び固定細胞標本に対する標識プライマーまたは標識プローブの使用を含めて、配列決定以外の核酸ハイブリダイズ法(蛍光原位置ハイブリダイズ(FISH))が含まれる。いくつかの方法では、検出の前にまたは検出と同時に標的核酸分子を増幅してもよい。核酸増幅技術の用例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換型増幅法(SDA)、及び核酸配列ベースの増幅法(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法としては、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、及び好熱性SDA(tSDA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0113】
ハイブリダイズ技術では、プローブまたはプライマーがその標的と特異的にハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件を採用することができる。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的配列に、他の非標的配列よりも検出可能に高い程度、例えば、バックグラウンドの10倍超を含む、バックグラウンドの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれ以上でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度(少なくとも2倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度(少なくとも3倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度(少なくとも4倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態では、ストリンジェント条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度(バックグラウンドの10倍超)でハイブリダイズするであろう。ストリンジェントな条件は、配列によって決まり、環境によって異なることになる。
【0114】
DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件、例えば、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後の50℃での2×SSCの洗浄は、公知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。通常、ハイブリダイゼーション及び検出のためのストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3で約1.5M未満のNaイオン、典型的には約0.01~1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10~50ヌクレオチドなど)について少なくとも約30℃及びより長プローブ(例えば、50ヌクレオチド超など)について少なくとも約60℃である条件であるだろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加により実現してもよい。任意選択で、洗浄緩衝剤は、約0.1%~約1%のSDSを含み得る。ハイブリダイゼーションの継続時間は、一般的に約24時間未満、通常約4~約12時間である。洗浄の持続期間は少なくとも平衡に達するのに十分な長さの時間であろう。
【0115】
いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、少なくとも約4000、または少なくとも約5000のヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、もしくは少なくとも約25ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、少なくとも約18ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、少なくとも約15ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約10~約35、約10~約30、約10~約25、約12~約30、約12~約28、約12~約24、約15~約30、約15~約25、約18~約30、約18~約25、約18~約24、または約18~約22ヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約18~約30ヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、少なくとも約15ヌクレオチド~少なくとも約35ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。
【0116】
いくつかの実施形態では、そのような単離された核酸分子は、ストリンジェントな条件下でSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子及び/またはcDNA分子)にハイブリダイズする。そのような核酸分子は、例えば、本明細書に記載されているまたは例示されているようなプローブ、プライマー、変異特異的プローブ、または変異特異的プライマーとして使用することができ、プライマー、プローブ、アンチセンスRNA、shRNA、及びsiRNAを含むがこれらに限定されず、それらの各々は、本明細書の他の箇所でさらに詳細に記載されており、本明細書に記載される方法のいずれかで使用され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一である核酸分子の少なくとも約15連続ヌクレオチドにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約15~約100ヌクレオチド、または約15~約35ヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約15~約100ヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、約15~約35ヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーは、DNAを含む。いくつかの実施形態では、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーは、RNAを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるプローブ及びプライマー(変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーを含む)は、本明細書に開示される核酸分子のうちのいずれか、またはその相補体へ特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、プローブ及びプライマーは、ストリンジェントな条件下で、本明細書で開示されている核酸分子のいずれかと特異的にハイブリダイズする。
【0120】
いくつかの実施形態では、変異特異的プライマーを含む、プライマーを、次世代シーケンシングまたはハイスループットシーケンシングに使用することができる。いくつかの例では、変異特異的プライマーを含む、プライマーを、修飾することができる。特に、プライマーは、例えば超並列シグネチャ配列決定(Massive Parallel Signature Sequencing、MPSS)、ポロニー配列決定(Polony sequencing)、及び454パイロシーケンシング(Pyrosequencing)の異なるステップで使用される、様々な修飾を含み得る。プロセスのいくつかのステップで、修飾プライマーを使用することができ、これには、クローニングステップにおけるビオチン化プライマー、ならびにビーズローディングステップ及び検出ステップで使用される蛍光標識プライマーが含まれる。ポロニー配列決定は、一般的に、DNAテンプレートの各分子の長さが約135bpであるペアエンドタグライブラリを使用して実施される。ビオチン化プライマーは、ビーズ負荷ステップ及びエマルジョンPCRにおいて使用される。蛍光標識された縮重ノナマーオリゴヌクレオチドは、検出ステップで使用される。アダプターは、ストレプトアビジン被覆ビーズにDNAライブラリを固定化するための5’-ビオチンタグを含有することができる。
【0121】
本明細書に記載のプローブ及びプライマーを使用して、本明細書に開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかのヌクレオチド変異を検出することができる。本明細書に記載のプライマーを使用して、任意のSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子またはその断片を増幅することができる。
【0122】
本開示に関して、「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマー(例えば、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマー)が、SCN11A参照型ゲノム核酸分子、SCN11A参照型mRNA分子、及び/またはSCN11A参照型cDNA分子をコードする核酸配列とハイブリダイズしないことを意味する。
【0123】
いくつかの実施形態では、プローブ(例えば、変異特異的プローブなど)は標識を含む。いくつかの実施形態では、標識は、蛍光標識、放射性標識、またはビオチンである。
本開示はまた、本明細書で開示されるプローブのうちの任意の1つ以上に結合する基質を含む支持体も提供する。固体支持体は、本明細書に開示されるプローブのうちのいずれかなどの分子が会合することができる固体状態の基質または支持体である。固体支持体の形態はアレイである。固体支持体の別の形態はアレイ検出器である。アレイ検出器は、複数の種類のプローブがアレイ状、グリッド状または他の組織化されたパターンでカップリングしている固体支持体である。固体状態の基質の形態は、標準的な96ウェルタイプなどのマイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態では、通常1ウェル当たり1つのアレイを含有するマルチウェルスライドグラスを用いることができる。
【0124】
ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、任意の生物に由来し得る。例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、ヒト、または別の生物、例えば、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、もしくはラット由来のオーソログであり得る。集団内の遺伝子配列は、一塩基多型などの多型に起因して異なり得ることが理解される。
【0125】
本明細書ではまた、開示される核酸分子と相互作用し得る機能性ポリヌクレオチドを提供する。機能性ポリヌクレオチドの例としては、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、及び外部ガイド配列が挙げられるが、これらに限定されない。機能性ポリヌクレオチドは、標的分子が有する特定の活性のエフェクター、阻害剤、モジュレーター、及び刺激剤として作用することができるか、または機能性ポリヌクレオチドは、いかなる他の分子とも独立したデノボ活性を有し得る。
【0126】
本明細書で開示される単離された核酸分子は、RNA、DNA、またはRNAとDNAの双方を含み得る。単離された核酸分子を、例えばベクターにおける異種核酸配列、または異種標識に連結させるか、または融合させることもできる。例えば、本明細書で開示される単離された核酸分子は、単離された核酸分子と異種核酸配列とを含むベクター内に、またはそれらを含む外来性ドナー配列として存在し得る。単離された核酸分子を異種標識に連結させるか、または融合させることもできる。標識は、直接検出可能(例えば、蛍光色素分子)であり得るか、または間接的に検出可能(例えば、ハプテン、酵素、または蛍光色素分子消光剤)であり得る。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な手段によって検出可能であり得る。そのような標識としては、例えば、放射性標識、顔料、染料、色原体、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識は、例えば、化学発光物質、金属含有物質、または酵素(その場合、酵素依存性の二次的シグナルの生成が起こる)でもあり得る。用語「標識」はまた、コンジュゲートされた分子を続いて基質と一緒に添加して使用して、検出可能なシグナルを生成するように、コンジュゲートされた分子へ選択的に結合し得る、「タグ」またはハプテンも指し得る。例えば、ビオチンをタグとして使用して、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジンのコンジュゲートと一緒にタグへ結合させ、比色基質(例えばテトラメチルベンジジン(TMB)など)または蛍光発生基質を使用して、HRPの存在の検出を調査することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識として、myc、HA、FLAGもしくは3×FLAG、6×Hisもしくはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識としては、例えば、粒子、蛍光色素分子、ハプテン、酵素ならびにそれらの比色性、蛍光性、及び化学発光性の基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0127】
核酸分子内のヌクレオチド配列またはポリペプチド内のアミノ酸配列の特定の区間の間での同一性パーセント(または相補性パーセント)は、BLASTプログラム(塩基局所配列比較検索ツール)とPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を用いて、または、SmithとWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を使用するデフォルト設定を用いたGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park, Madison Wis.)を用いて日常的に決定することができる。本明細書において配列同一性パーセントに言及する場合、配列同一性パーセンテージは、低いよりも高い方が好ましい。
【0128】
本開示はまた、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するための、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤も提供する。本明細書に記載の頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤のいずれかを、これらの方法において使用することができる。本明細書に開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかを、これらの方法において使用することができる。
【0129】
本開示はまた、SCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子を有する対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防のための薬剤の調製に使用するための、頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤の使用も提供する。本明細書に記載の頭痛または片頭痛を治療、予防、または抑制する治療剤のいずれかを、これらの方法において使用することができる。本明細書に開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかを、これらの方法において使用することができる。
【0130】
本開示はまた、SCN11A参照型であるか、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防に使用するためのSCN11A阻害剤を提供する。本明細書に記載されるSCN11A阻害剤のいずれかを、これらの方法において使用することができる。本明細書に開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかを、これらの方法において使用することができる。
【0131】
本開示はまた、SCN11A参照型であるか、またはSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子についてヘテロ接合型である対象における頭痛または片頭痛の治療及び/または予防のための薬剤の調製におけるSCN11A阻害剤を提供する。本明細書に記載されるSCN11A阻害剤のいずれかを、これらの方法において使用することができる。本明細書に開示されるSCN11Aの予測される機能喪失型バリアント核酸分子のいずれかを、これらの方法において使用することができる。
【0132】
上記または下記で引用されている特許文書、ウェブサイト、他の刊行物、受入番号などはすべて、個々の文献が具体的かつ個別に参照によってそのように援用されることが指示されている場合と同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により援用される。配列の様々なバージョンが異なる時点での受入番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日での受入番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、該当する場合、その受入番号について言及している実際の出願日または優先権主張出願の出願日のうちの早い方を意味する。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイトなどが異なる時点で公開されている場合、特に指示されない限り、出願の有効出願日において最後に公開されたバージョンを意味するものとする。本開示のいずれの特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様も、特に指示されない限り、任意の他の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様と組み合わせて使用することができる。明瞭性及び理解を目的として本開示を説明及び実例として多少詳細に説明してきたが、特定の変更及び改変が添付の特許請求の範囲内で実施されてもよいことは明らかであろう。
【0133】
以下の実施例は、実施形態をさらに詳細に説明するために提供されている。これらは、特許請求する実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。以下の実施例は、本明細書において記載される化合物、組成物、物品、装置、及び/または方法が、どのように作製及び評価されるかについての開示及び記載を当業者に提供するものであり、純粋に例示的であることが意図され、任意の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。数(例えば、量、温度など)については、精度を確保するように努めてきたが、ある程度の誤差及び偏差が考慮され得る。別途指示のない限り、部数は、重量部であり、温度は、℃であるか、または周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【実施例
【0134】
実施例1:頭痛及び片頭痛のメタ分析
頭痛及び片頭痛のメタ分析を4つのコホート(UK Biobank,Geisinger,Malmo diet and cancer study,and Mt.Sinai BioMe Biobank)にわたって実施した。SCN11Aにおける稀な予測される機能喪失型バリアント(マイナーアレル頻度(MAF<1%))の集合は、頭痛及び片頭痛からの保護に関連することが確認され(表1を参照のこと)、SCN11Aを下方制御または阻害することにより、頭痛及び片頭痛から保護され得ることが示唆された。
【0135】
【表3】
【0136】
本明細書に記載されているものに加えて、記載されている主題の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本出願で引用される各参考文献(学術誌記事、米国及び米国以外の特許、特許出願公報、国際特許出願公報、遺伝子バンク受入番号などを含むが、これらに限定されない)は、その全体が及びあらゆる目的のために、参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】