(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】負圧制御される第2のシール座を備えたガスインジェクタ
(51)【国際特許分類】
F02M 61/04 20060101AFI20241029BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241029BHJP
F02B 43/00 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
F02M61/04 G
F02M21/02 G
F02M21/02 301B
F02M21/02 301R
F02M21/02 301K
F02B43/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529562
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022076657
(87)【国際公開番号】W WO2023088596
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021213023.2
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー シュミーダー
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト シュティーア
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066AB08
3G066BA36
3G066CC14
3G066CD10
(57)【要約】
本発明は、ガス状の媒体を吹き込むガスインジェクタであって、第1のシール座(4)に設けられた貫通開口(3)を開閉する閉鎖要素(2)と、閉鎖要素(2)を操作するためのアクチュエータ(5)と、閉鎖要素(2)を戻すための戻し要素(6)と、ガス状の媒体の通流方向でガス供給接続片(12)と第1のシール座(4)との間に配置されていて、ガスインジェクタ内のガス流路(A)を開閉する第2のシール座(7)と、ガスインジェクタの通流方向で第2のシール座(7)の上流側に配置された負圧接続片(80)と、負圧接続片(80)に流体接続されていて、この負圧接続片(80)を負圧源(81)に接続して、第2のシール座(7)を開放するように構成された調整弁(8)とを備える、ガスインジェクタに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体を吹き込むガスインジェクタであって、
第1のシール座(4)に設けられた貫通開口(3)を開閉する閉鎖要素(2)と、
前記閉鎖要素(2)を操作するためのアクチュエータ(5)と、
前記閉鎖要素(2)を戻すための戻し要素(6)と、
前記ガス状の媒体の通流方向でガス供給接続片(12)と前記第1のシール座(4)との間に配置されていて、前記ガスインジェクタ内のガス流路(A)を開閉する第2のシール座(7)と、
前記ガスインジェクタの通流方向で前記第2のシール座(7)の上流側に配置された負圧接続片(80)と、
前記負圧接続片(80)に流体接続されていて、該負圧接続片(80)を負圧源(81)に接続して、前記第2のシール座(7)を開放するように構成された調整弁(8)と
を備える、ガスインジェクタ。
【請求項2】
前記第2のシール座(7)は、軸線方向に可動のピストン要素(20)と、ハウジング構成部材(11)との間に形成されている、請求項1記載のガスインジェクタ。
【請求項3】
前記ピストン要素(20)に配置されていて、前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路と、前記調整弁(8)との間の接続路を開閉する第3のシール座(9)をさらに備え、前記ピストン要素(20)は、前記第2のシール座(7)と前記第3のシール座(9)との間で往復運動可能である、請求項2記載のガスインジェクタ。
【請求項4】
前記第3のシール座(9)は、前記ピストン要素(20)に設けられた半径方向外側に向けられたフランジ(23)と、前記ハウジング構成部材(11)に設けられた当接ディスク(13)との間に形成されている、請求項3記載のガスインジェクタ。
【請求項5】
前記ピストン要素(20)は、前記第2のシール座(7)を密封するピストン端面(22)を有する中空ピストンである、請求項2から4までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項6】
前記ピストン要素(20)の外周囲に形成されていて、前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路と、前記調整弁(8)との間の接続路内に位置する制御室(15)をさらに備える、請求項3から5までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項7】
前記制御室(15)と前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路との間に絞り(18)が存在している、請求項6記載のガスインジェクタ。
【請求項8】
前記負圧接続片(80)に流体接続されるアキュムレータ(19)をさらに備え、前記調整弁(8)は、前記負圧接続片(80)と前記アキュムレータ(19)との間に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項9】
前記第2のシール座(7)は、エラストマー製のシール要素(70)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のガスインジェクタを備える内燃機関。
【請求項11】
前記内燃機関は、負圧源として吸気管(81)を有し、前記調整弁は、前記吸気管(81)と前記負圧接続片(80)との間の接続管路に配置されている、請求項10記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状の媒体、特に水素または天然ガスを吹き込むガスインジェクタであって、負圧制御されて開放可能である第2のシール座を備えたガスインジェクタに関する。
【0002】
背景技術
ガスインジェクタは、先行技術に基づき種々異なる構成で公知である。液状の燃料用の燃料インジェクタと比較すると、ガスインジェクタに課される技術的な要求は明らかに異なっている。ガスインジェクタにおける1つの問題は、より長い期間にわたるガスインジェクタの密封である。この場合には、例えば、ガス状の燃料が、内燃機関の停止状態において、シール座が閉鎖されているにもかかわらず、ガスインジェクタから燃焼室内へと、本来であれば閉鎖されているシール座を越えて拡散し、場合により周辺環境に達してしまうことが回避されなければならない。しかしながら、このことは、絶対に回避されなければならない。
【0003】
発明の開示
請求項1記載の特徴を有する、ガス状の媒体を吹き込むための本発明に係るガスインジェクタは、従来のものに比べて、ガスインジェクタがより長い時間にわたって閉鎖されている場合でも、ガスインジェクタからのガス状の媒体の起こり得る損失を大幅に減じることが可能となるという利点を有している。さらに、特にエラストマーシール座として形成された第2のシール座の開放については、改善された密封のほかに、第2のシール座のシール直径が大きい場合でも確実な開放を達成することもできる。本発明に係るガスインジェクタは、極めて単純かつ廉価に構成されている。このことは、本発明によれば、ガスインジェクタが、シール座に設けられた貫通開口を開閉する閉鎖要素を備えていることによって達成される。さらに、閉鎖要素を操作するためのアクチュエータが設けられている。ガスインジェクタは、さらに、閉鎖要素を戻すための戻し要素を備えている。ガスインジェクタを通るガス状の媒体の通流方向でガス供給接続片と第1のシール座との間に配置された第2のシール座は、ガスインジェクタを通るガス流路を開閉する。ガスインジェクタは、ガスインジェクタを通る媒体の通流方向で第2のシール座の上流側に配置された負圧接続片を備えている。さらに、本発明に係るガスインジェクタは、負圧接続片に配置されていて、この負圧接続片を負圧源に接続して、第2のシール座を開放するように構成された調整弁を備えている。この調整弁は、好ましくは2ポート2位置弁である。したがって、2つのシール座を設けることによって、ガスインジェクタのより長い休止状態および非作動時でも、ガスインジェクタのガス密性を保証することができる。燃焼室に向けられた第1のシール座がシールされなくなると仮定したとしても、第2のシール座に基づき、ガスインジェクタから場合により流出する少なくとも一定量のガス状の媒体は、第1のシール座と第2のシール座との間の体積に減じられている。さらに、第2のシール座を開放するための負圧を用いた空気圧式の操作によって、ガスインジェクタの極めて単純かつ廉価な構造を達成することができる。これによって、場合により電気的に操作可能な遮断要素において起こることがあるガスインジェクタにおける熱問題も回避することができる。
【0004】
従属請求項には、本発明の好適な改良形態が示してある。
【0005】
好ましくは、第2のシール座は、軸線方向に可動のピストン要素と、ハウジング構成部材との間に形成されている。ピストン要素によって、負圧を用いた第2のシール座の簡単かつ確実な開放が可能となる。
【0006】
好ましくは、ガスインジェクタは、ピストン要素に配置された第3のシール座をさらに備えている。この第3のシール座は、ガスインジェクタ内のガス流路と、調整弁との間の接続部を開閉する。ピストン要素は、第2のシール座と第3のシール座との間で往復運動可能である。したがって、第2および第3のシール座は同時に閉鎖されていない。
【0007】
特に好適には、第3のシール座は、ピストン要素に設けられた半径方向外側に向けられたフランジと、ハウジング構成部材に設けられた当接面との間に形成されている。ハウジング構成部材は、好ましくはピストン要素用のガイド構成部材としても働く。
【0008】
ピストン要素は、好ましくは、ピストン端面を備えた中空ピストンであり、このピストン端面において第2のシール座は密封される。この第2のシール座は、好ましくはハウジングの、半径方向内側に向けられた突出部に形成されているため、ピストン要素の軸線方向運動によって、第2のシール座の開閉が可能となる。このために、中空ピストンは、好ましくは、ピストン周壁に設けられた1つ以上の貫通路を有している。
【0009】
さらに好適には、ガスインジェクタは、ピストン要素の外周囲に形成されていて、ガス流路と調整弁との間の接続路内に位置する制御室を備えている。好ましくは、この制御室とガス流路との間に絞りが存在している。この絞りは、ガス流路から、開放された調整弁により形成されるガスインジェクタの負圧領域へのガス状の媒体の流出を阻止する。絞りは、好ましくは、ハウジング構成部材に対するピストン要素の外周面における絞り間隙であるか、または代替的には、絞りは、ハウジング構成部材、特に当接ディスク内に形成されている。
【0010】
さらに好適には、ガスインジェクタは、調整弁の下流側に配置されたアキュムレータを備えている。したがって、このアキュムレータは、調整弁と負圧源との間に配置されている。アキュムレータと負圧軸との間には、さらに好適には、絞りが設けられている。これによって、内燃機関の始動時に、第2のシール座を開放するための制御容積内に存在するガス状の媒体が、内燃機関の負圧源であってよい吸気路内に一気に供給されず、そこで、点火可能な混合物が形成されることが保証される。アキュムレータと、特に絞りとを介して、吸気路内へのガス状の媒体の緩速な放出が可能となる。
【0011】
さらに好適には、第2のシール座に、保持金属薄板を備えたエラストマーシール要素が配置されている。保持金属薄板によって、単純に構成されたシール要素、例えば標準化されたOリングの使用が可能となり、また、シール要素と保持金属薄板との間のより大きなシール面によるシール要素の封止能も可能となる。さらに、保持金属薄板は、シール要素の弾性変形のための十分な膨出室を提供することができる。
【0012】
さらに好適には、アクチュエータは、閉鎖された室内に配置されている。アクチュエータ用の閉鎖された室は、好ましくは金属ダイヤフラムによって密封されている。これによって、アクチュエータがガス状の媒体に接触せず、アクチュエータの構成部材の腐食問題を回避することができる。
【0013】
さらに、本発明は、本発明に係るガスインジェクタを備える内燃機関に関する。この内燃機関は、好適には、負圧源として、調整弁を介してガスインジェクタに流体接続される内燃機関の吸気管を備えている。この吸気管とガスインジェクタとの間の接続管路の開口は、好ましくは、吸気管内のスロットルバルブの下流側に位置している。
【0014】
さらに好適には、内燃機関は多数のガスインジェクタを備えており、これら全てのガスインジェクタは、単一の共通の調整弁にのみ接続されている。これによって、本発明による吹込み装置に対する投資コストを大幅に削減することができる。
【0015】
さらに好適には、内燃機関は触媒を備えており、この触媒には、調整弁の開放によって流出するガス状の媒体の制御量が案内される。好ましくは、調整弁と触媒との間の接続路に、ガス状の媒体を一時的に貯留するためのアキュムレータが配置されており、これによって、冷間始動後にガスインジェクタが十分に温度調整されていて、ガス状の媒体の制御量の成分を環境にとって懸念のないガス成分に変換することができることが保証されている。
【0016】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】閉鎖状態にある本発明の第1の実施例によるガスインジェクタの概略的な断面図である。
【
図2】閉鎖状態にある
図1のガスインジェクタの第2のシール座の拡大図である。
【
図3】開放状態にある
図1のガスインジェクタの第2のシール座の概略図である。
【
図4】開放状態にある第2の実施例によるガスインジェクタの概略的な部分断面図および付加的な詳細図である。
【
図5】閉鎖状態にある第2の実施例によるガスインジェクタの概略的な部分断面図および付加的な詳細図である。
【
図6】開放状態にある第3の実施例によるガスインジェクタの概略的な部分断面図である。
【
図7】開放状態にある第4の実施例によるガスインジェクタの概略的な部分断面図である。
【
図8】本発明の第5の実施例によるガスインジェクタの概略図である。
【0018】
発明の好適な実施形態
以下に、
図1~
図3を参照しながら、本発明の第1の好適な実施例によるガスインジェクタ1を詳細に説明する。
【0019】
図1から明らかであるように、ガス状の媒体を吹き込むための、特に水素を吹き込むためのガスインジェクタは、弁ニードルの形態の閉鎖要素2と、アクチュエータ5とを備えている。このアクチュエータ5は、閉鎖要素を操作して、この閉鎖要素を開放位置にもたらすように構成されている。
【0020】
アクチュエータ5は、アーマチュア50と内側磁極51とを備えたソレノイドアクチュエータとして形成されている。アクチュエータ5は、フレキシブルな金属ダイヤフラム52によりガス状の媒体に対して密封された閉鎖されたアクチュエータ室53内に配置されている。
【0021】
閉鎖要素2は、第1のシール座4に設けられた貫通開口3を開放し、また、第1のシール座4を閉鎖する。
図1には、ガスインジェクタ1の閉鎖状態が示してある。開放状態では、ガス状の媒体が燃焼室30内に吹き込まれる。
【0022】
戻し要素6が閉鎖要素を、
図1に示した閉鎖された出発位置に再び戻す。
【0023】
ガスインジェクタ1は、さらに、
図2および
図3から詳細に明らかとなる第2のシール座7を備えている。内燃機関の遮断時のガスインジェクタの閉鎖状態では、第1のシール座4も第2のシール座7も閉鎖されている。この第2のシール座7は、燃焼室30から十分に遠ざけられて配置されている。アクチュエータ5は、第1のシール座4と第2のシール座7との間に配置されている。したがって、第2のシール座7がエラストマー製のシール要素70を備えていることが可能となる。このエラストマー製のシール要素70は、閉鎖状態で極めて良好な封止性を提供することができ、これによって、ガスインジェクタのより長い休止時でも、ガスが第2のシール座7を介して、第1のシール座4の上流側に位置するガス室10内に拡散することはない。
【0024】
エラストマー製のシール要素70は、ピストン端面22に設けられた溝内に配置されていて、主として、丸み付けられた角隅を有する方形の横断面を有している。
【0025】
エラストマー製のシール要素70は、ガスインジェクタのハウジング構成部材11に接して密封を行う。このハウジング構成部材11は、全周にわたって延在する突出部11aを有しており、この突出部11aに第2のシール座7が形成されている。
【0026】
したがって、2つのシール座を使用することによって、ガスインジェクタ1の使用されていない状態において、ガス状の媒体が流入領域12から第2のシール座7を介してガス室10に流入することができないことが確保されている。
【0027】
したがって、第1のシール座4が、例えば熱的な影響に基づき封止されていないと、ガスインジェクタ1は、第1のシール座4と第2のシール座7との間でガス室10内に存在するガス体積を最大限失う。
【0028】
ガスインジェクタ1は、さらに、負圧接続片80を備えている。この負圧接続片80は、ガスインジェクタの通流方向(矢印A)で見て第2のシール座の上流側に配置されていて、調整弁8を有している。この調整弁8は2ポート2位置弁である。調整弁8は負圧接続片80に接続されていて、この負圧接続片80を負圧源に接続して、第2のシール座7を開放するように構成されている。この実施例では、負圧源は吸気管81である。調整弁8と吸気管81との間の接続用の管路83は、吸気管81において、流れ方向(矢印B)で見てスロットルバルブ82の下流側の領域に開口している。
【0029】
ガスインジェクタ1は、さらに、第3のシール座9とピストン要素20とを備えている。このピストン要素20は中空ピストンとして形成されていて、周壁領域21とピストン端面22とを備えている。エラストマー製のシール要素70はピストン端面22に配置されている(
図2参照)。さらに、周壁領域21に複数の貫通路24が設けられており、これによって、ピストン要素20の開放時(
図3参照)にガスインジェクタの内部でのガス流れが可能となる。さらに、ピストン要素20の外周面には、半径方向外側に向けられたフランジ23も形成されている。このフランジ23はピストン要素20用のガイドを成している。
【0030】
第3のシール座9は、半径方向外側に向けられたフランジ23と、ハウジング構成部材11に位置固定された当接ディスク13との間に形成されている。ピストン要素20の周壁領域21と当接ディスク13との間には、絞り間隙14が設けられている。フランジ23と当接ディスク13との間には、制御室15が形成されている。この制御室15は、1つ以上の制御孔16と半径方向間隙17とを介して負圧接続片80に接続されている。
【0031】
ピストン要素20には、さらに、戻しばね25によって、第2のシール座7において閉鎖された状態で予荷重が加えられている(
図2参照)。
【0032】
したがって、第2のシール座7と第3のシール座9とは、両方のシール座が同時に閉鎖されていないように構成されている。第2のシール座7の完全な開放状態では、第3のシール座9が閉鎖されている。このことは、
図3に示してある。第3のシール座9の閉鎖もしくは第2のシール座7の開放は、負圧源からの負圧によって提供される。
【0033】
本発明に係るガスインジェクタ1の機能は以下の通りである。内燃機関の始動時に吸気管81内に負圧が発生させられる。内燃機関の始動時には、同時に調整弁8にも通電が行われ、これによって、この調整弁8が、
図2に示した閉鎖位置から
図3に示した開放位置に移行させられる。これによって、制御室15が、制御孔16と、半径方向間隙17と、接続片80とを介して負圧源に接続されている。これによって、制御室15内の圧力が減少するため、ピストン要素20が、
図2に矢印Cにより示したように、戻しばね25のばね力に抗して軸線方向で流入領域12に向かう方向へ運動させられる。これによって、第2のシール座7が開放する。
【0034】
図3には、第2のシール座7の完全な開放状態が示してあり、これによって、ガス状の媒体が、矢印Aにより示したように、中空のピストン要素20、貫通路24を通って、開放された第2のシール座7を通り過ぎてガス室10内に流入することができ、その後、アクチュエータ5の操作によって燃焼室30内に吹き込むことができる。
【0035】
図3からさらに明らかであるように、矢印Cの方向へのピストン要素20の運動によって、制御室15の容積は著しく減じられている。第2のシール座7の完全な開放状態では、フランジ23が当接ディスク13に接触している。これによって、第3のシール座9が閉鎖されているため、ガス状の媒体が、流入領域12から制御室15と制御孔16とを介して負圧接続片18に流れ、そこから、開放された調整弁8を介して吸気管内に流れてしまうことが阻止される。
【0036】
ピストン要素20を運動させることができるようにするために、フランジ23とハウジング構成部材11との間に絞り間隙18が設けられていてよい。ここでは、確かに、ある程度の漏れが、絞り間隙18を介して制御室15内へと生じ、そこから、開放された調整弁8を介して吸気管内へと生じるが、しかしながら、絞り間隙18の長さに基づき、この漏れは最小限である。
【0037】
したがって、内燃機関の運転中、調整弁8は連続的に開放状態に保たれ、これによって、ガス状の媒体を吹き込むために、第2のシール座7が常に開放されている。その後、本来の吹込みが、閉鎖要素2による第1のシール座4の開放および閉鎖によって行われる。
【0038】
第2のシール座7は負圧によって開放されるので、第2のシール座7の座直径を極めて大きく選択することが可能となる。このことは、ガス状の媒体が、液状の燃料と比較して極めて大きな体積を有しており、この体積が短時間で燃焼室30内に吹き込まれなければならないので、重要である。
【0039】
内燃機関が停止されると、調整弁8が、この調整弁8への通電の中断によって再び閉鎖される。このとき、絞り間隙18を介して、制御室15内の圧力が再びゆっくりと増加する。このことに加え、戻し要素25のアシストによって、ピストン要素20が、
図2に示した閉鎖位置に再び運動させられ、これによって、第3のシール座9が開放されており、第2のシール座7が閉鎖されている。ハウジング構成部材11には、ピストン要素20の戻し運動を終了させるストッパ11bが設けられている。
【0040】
したがって、内燃機関の遮断状態では、第1のシール座4と第2のシール座7とが閉鎖されており、これによって、より長い休止期間にわたって、ガス状の媒体の損失を懸念する必要もなくなる。
【0041】
図4および
図5には、本発明の第2の実施例によるガスインジェクタ1が示してある。同じ部材もしくは機能的に同じ部材には、第1の実施例と同じ参照符号が付してある。
【0042】
第1の実施例と異なり、第2の実施例では、エラストマー製のシール要素70がOリングとして形成されている。
図4には、第2のシール座7の開放状態が示してあり、
図5には、第2のシール座7の閉鎖状態が示してある。
図4に示した付加的な拡大図から明らかであるように、Oリングとして形成されたエラストマー製のシール要素70は、保持金属薄板71によってピストン端面22に保持される。これによって、エラストマー製のシール要素70の弾性変形が内部で可能となる膨出室72が生じる。このことは、
図5の拡大図に示してある。したがって、Oリングの形態の標準化された廉価なエラストマー製のシール要素を使用することが可能となる。保持金属薄板71を備えた構成によって、さらに、増加させられた軸線方向の公差が可能となる。したがって、エラストマー製のシール要素70をとりわけ特に廉価に提供することができる。保持金属薄板71は、好ましくは溶接結合によってピストン要素20に結合されている。
【0043】
図6および
図7には、本発明の第3および第4の実施例によるガスインジェクタ1が示してある。同じ部材もしくは機能的に同じ部材には、先の実施例と同じ参照符号が付してある。
【0044】
先の実施例と異なり、第3および第4の実施例では、ピストン要素20の半径方向外側に向けられたフランジ23の外側の周壁領域にリップシール26が配置されている。このリップシール26によって、絞り間隙18の特性に影響を与えることができる。特に、リップシール26によって、これらの実施例では、第2のシール座7の開放時の制御室15内への漏れ量をより少なくすることが可能となる。このために、ハウジング構成部材11に連続的な縮径部11cが設けられている。
図6では、付加的にさらに、当接ディスク13に絞り14aが形成されている。
図7では、代替的に、絞り間隙14として付加的な絞りが設けられている。その他の点では、これらの実施例は先の実施例に相当しているため、そこで述べた説明を参照することができる。
【0045】
図8には、本発明の第4の実施例によるガスインジェクタ1が示してある。同じ部材もしくは機能的に同じ部材には、先の実施例と同じ参照符号が付してある。
【0046】
第4の実施例は第1の実施例にほぼ相当している。第4の実施例では、第1の実施例に対して付加的にさらに、アキュムレータ19が設けられている。
図8から明らかであるように、このアキュムレータ19は、調整弁8と、吸気管81の形態の負圧源との間に配置されている。アキュムレータ19の出口には、絞り19aが配置されており、これによって、吸気管81内へのガス状の媒体の流出が規定されて提供される。これによって、制御室15から出発して調整弁8までの容積領域に存在するガス状の制御量が、吸気管81内によりゆっくりと流出させられる。したがって、吸気管を介して内燃機関内に供給されるガス状の媒体の量が、より長い期間にわたって分配される。これによって、特に、吸気管81内に可燃性の混合物が生じてしまうことが阻止される。その他の点では、この実施例は先の実施例に相当しているため、前述した説明を参照することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体を吹き込むガスインジェクタであって、
第1のシール座(4)に設けられた貫通開口(3)を開閉する閉鎖要素(2)と、
前記閉鎖要素(2)を操作するためのアクチュエータ(5)と、
前記閉鎖要素(2)を戻すための戻し要素(6)と、
前記ガス状の媒体の通流方向でガス供給接続片(12)と前記第1のシール座(4)との間に配置されていて、前記ガスインジェクタ内のガス流路(A)を開閉する第2のシール座(7)と、
前記ガスインジェクタの通流方向で前記第2のシール座(7)の上流側に配置された負圧接続片(80)と、
前記負圧接続片(80)に流体接続されていて、該負圧接続片(80)を負圧源(81)に接続して、前記第2のシール座(7)を開放するように構成された調整弁(8)と
を備える、ガスインジェクタ。
【請求項2】
前記第2のシール座(7)は、軸線方向に可動のピストン要素(20)と、ハウジング構成部材(11)との間に形成されている、請求項1記載のガスインジェクタ。
【請求項3】
前記ピストン要素(20)に配置されていて、前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路と、前記調整弁(8)との間の接続路を開閉する第3のシール座(9)をさらに備え、前記ピストン要素(20)は、前記第2のシール座(7)と前記第3のシール座(9)との間で往復運動可能である、請求項2記載のガスインジェクタ。
【請求項4】
前記第3のシール座(9)は、前記ピストン要素(20)に設けられた半径方向外側に向けられたフランジ(23)と、前記ハウジング構成部材(11)に設けられた当接ディスク(13)との間に形成されている、請求項3記載のガスインジェクタ。
【請求項5】
前記ピストン要素(20)は、前記第2のシール座(7)を密封するピストン端面(22)を有する中空ピストンである、請求項2
または3記載のガスインジェクタ。
【請求項6】
前記ピストン要素(20)の外周囲に形成されていて、前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路と、前記調整弁(8)との間の接続路内に位置する制御室(15)をさらに備える、請求項
3記載のガスインジェクタ。
【請求項7】
前記制御室(15)と前記ガスインジェクタ内の前記ガス流路との間に絞り(18)が存在している、請求項6記載のガスインジェクタ。
【請求項8】
前記負圧接続片(80)に流体接続されるアキュムレータ(19)をさらに備え、前記調整弁(8)は、前記負圧接続片(80)と前記アキュムレータ(19)との間に配置されている、請求項1
または2記載のガスインジェクタ。
【請求項9】
前記第2のシール座(7)は、エラストマー製のシール要素(70)を有する、請求項1
または2記載のガスインジェクタ。
【請求項10】
請求項1
または2記載のガスインジェクタを備える内燃機関。
【請求項11】
前記内燃機関は、負圧源として吸気管(81)を有し、前記調整弁は、前記吸気管(81)と前記負圧接続片(80)との間の接続管路に配置されている、請求項10記載の内燃機関。
【国際調査報告】