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特表2024-541098インスリンを含む超長時間持続型薬学組成物
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  • 特表-インスリンを含む超長時間持続型薬学組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】インスリンを含む超長時間持続型薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241029BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K38/28
A61K47/42
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
A61P35/00
A61P7/00
A61P3/04
A61P9/10
A61P3/00
A61K47/04
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529935
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2022018645
(87)【国際公開番号】W WO2023096358
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/KR2021/017429
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】524190999
【氏名又は名称】ウントゥバイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UNDBIO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11, Simin-ro 434beon-gil, Uijeongbu-si, Gyeonggi-do, 11796, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】524191000
【氏名又は名称】ジョン,ヨン ス
【氏名又は名称原語表記】JUN, Yong Soo
【住所又は居所原語表記】104-304, 18, Janggok-ro 596beon-gil, Uijeongbu-si, Gyeonggi-do, 11776, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヒョク ジン
(72)【発明者】
【氏名】サヒブ,マハラジャ キシャン
(72)【発明者】
【氏名】ペヌマジ,ソーマ シェカール
(72)【発明者】
【氏名】パティル,ヘマント ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】アバド,サティアシラ ババジ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ガ ビン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD22E
4C076EE43M
4C076FF12
4C076FF14
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF32
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF67
4C076GG41
4C076GG46
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB34
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA12
4C084ZA45
4C084ZA51
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZB26
4C084ZC21
4C084ZC33
4C084ZC35
(57)【要約】
本発明は、インスリングラルギン、コラーゲン、一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体をpH2~5にて含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を開示する。また、本発明は、前記組成物の製造方法及び糖尿病を含む代謝障害の治療のためのその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物であって、
前記薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;
前記薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;
前記薬学組成物は、同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体」を含む注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い持続時間を示す、安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項2】
前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」は、インスリングラルギンであることを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項3】
前記インスリングラルギンは、100IU乃至1,000IU/mlの濃度範囲で存在することを特徴とする、請求項2に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項4】
前記コラーゲンは、ヒトコラーゲンであることを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項5】
前記薬学組成物は、作用持続時間が24時間以上であることを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項6】
前記薬学組成物は、1週間に2回又は3回投与されることを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、同一の用量の前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」を含む市販の注射用薬学組成物に比べて免疫原性が低いことを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項8】
前記薬剤学的に許容可能な賦形剤は、安定化剤、等張化剤、界面活性剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、酸性化剤、pH調節剤、有機溶媒、水溶性溶媒、可溶化剤及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項9】
等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物であって、
前記薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;
前記薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;
前記薬学組成物は、一以上の代謝障害の治療に使用するための同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」を含む市販の注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示すことを特徴とする、安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項10】
前記代謝障害は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症及び動脈硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項9に記載の安定した超長時間持続型注射用薬学組成物。
【請求項11】
請求項1の薬学組成物を、これを必要とする患者に投与することを含むことを特徴とする、患者の第1型又は第2型糖尿病の治療方法。
【請求項12】
等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、生理学的に許容される塩、コラーゲン及び2乃至5のpHを有する一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射液の製造方法であって、
a)塩酸(HCl)溶液及び注射用水により、インスリングラルギンを可溶化する段階;
b)pH2乃至5の緩衝剤を製造する段階;
c)前記段階b)の緩衝剤に等張化剤を溶解する段階;
d)前記段階a)のインスリングラルギン溶液を前記段階c)の緩衝剤で希釈する段階;
e)一定に撹拌しながら前記段階d)の溶液にコラーゲンを添加する段階;及び
f)溶液の最終pHを2乃至5に調節する段階;を含むことを特徴とする、安定した超長時間持続型注射液の製造方法。
【請求項13】
前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体」は、インスリングラルギンであることを特徴とする、請求項12に記載の安定した超長時間持続型注射液の製造方法。
【請求項14】
薬学組成物からの等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩の放出を調節する方法であって、
前記方法は、等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び2乃至5のpHを有する一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む薬学組成物をpH2乃至5で剤形化する段階と、投与直後に生理学的pHで前記組成物を沈澱させる段階と、を含む、インスリン類似体、誘導体又は代謝物の放出調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲には、生物薬剤学分野、特に、超長時間持続型インスリングラルギン(glargine)剤形に関する。具体的には、本発明は、インスリングラルギン、コラーゲン及びこれらの1種以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定化された注射液に関する。また、本発明は、前記組成物の製造方法、及び糖尿病(diabetes mellitus)を含む代謝障害の治療のためのその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、身体がブドウ糖を代謝できないか、又は、ブドウ糖の代謝が不足した状態で特徴づけられる深刻な医学的病態である。2019年には、全世界の大人の人口の約9.3%が糖尿病患者として診断されており、2045年には、この患者数がほぼ11%に増加すると予想される(https://www.statista.com/statistics/271464/percentage-of-diabetics Worldwide/)。
【0003】
糖尿病は、全世界的に主な死亡原因となっている。糖尿病には、次の二つの主要な類型がある:膵β細胞の損傷でインスリンの分泌が不十分になり、生命を維持するためには外因性インスリンの頻繁な投与を必要とする第1型糖尿病;及び
血糖を調節するための内因性インスリンの不足によって発生し、食餌療法、運動、薬物又はインスリン注射を通じて管理され得るが、約20%の場合はインスリン注射で調節される第2型糖尿病;に区分される。
【0004】
二つの類型の糖尿病ではインスリンの使用によって低血糖症が頻繁に起こるが、これは、人体の血糖調節のために人体で正常に分泌される内因性インスリン量を予測することが非常に難しいためである。糖尿病患者の血糖数値を正常範囲内に維持するためには、周期的にインスリンを投与しなければならない。
【0005】
インスリン注射は、糖尿病を患っている患者に処方される。インスリンは、血液内のブドウ糖数値を調節するために分泌される天然ホルモンである。健康な人の場合、血糖濃度が上昇するとき、インスリンが膵臓で血液に放出される。食事後に増加した血糖数値は、インスリン分泌の増加で速く調節される。インスリンは、過剰の血糖をグリコーゲンに転換し、これを肝臓に貯蔵するのに重要な役割をする。
【0006】
1920年代にインスリンが導入されて以来、糖尿病の治療を改善するための持続的な努力がなされてきた。極度の血糖数値を回避するために、糖尿病患者には、食事と共に度々インスリンを複数回注射する治療法を施行する。
【0007】
インスリンは、51個のアミノ酸からなるポリペプチドであって、次の2個のアミノ酸鎖に分けられる:21個のアミノ酸を有するA鎖と30個のアミノ酸を有するB鎖。二つの鎖は、2個の二硫化架橋結合を通じて互いに連結されている。インスリン製剤は、長い間、糖尿病の治療に使用されてきた。
【0008】
伝統的には、速効型一般インスリン製剤又はその中間作用型インスリンプロタミン製剤が糖尿病患者を治療するのに使用された。時間の経過と共に、新しいインスリン類似体と誘導体が開発された。インスリン類似体及び誘導体は、ヒトインスリン構造で一以上のアミノ酸の位置が変化するか、又はアミノ酸鎖の長さが異なる。
【0009】
多くのインスリン、インスリン類似体及び誘導体が市販されている。一般的に使用されるインスリン、インスリン類似体又はインスリン誘導体は、次のように分類される。
【0010】
速効型インスリン類似体(Bolus):例えば、インスリンアスパルト(Novolog(登録商標));インスリンリスプロ(Humalog(登録商標));インスリングルリジン(Aprida(登録商標))、速効型ヒトインスリン(Viaject(登録商標))。このような類似体は、投与してから5分乃至15分以内に作用を開始し、3時間乃至4時間にわたって活性を示す。
【0011】
短時間作用型インスリン(Bolus):例えば、レギュラーインスリン(Humulin(登録商標)又はNovolin(登録商標))。レギュラーインスリンは、投与してから30分以内に作用を開始し、作用持続時間は約5時間乃至8時間である。
【0012】
中間作用型インスリン:例えば、イソフェンインスリン、アスパルトプロタミン及びリスプロプロタミンがこれに属し、投与してから1時間乃至3時間後に作用する。作用時間は16時間乃至24時間である。
【0013】
長時間作用型インスリン(Basal):例えば、インスリングラルギン、インスリンデグルデク(degludec)及びインスリンデテミル(detemir)。このような類似体は、1時間乃至2時間以内に作用を開始し、作用持続時間は、約12時間から約24時間まで多様である。
【0014】
混合インスリン:例えば、NPHと一般インスリンの混合物。混合インスリンの混合比率が異なる様々な変形製剤がある。このような混合製剤の作用は、約30分以内に開始する。混合インスリンは、同一の類型のインスリンを含む。他の二つの類型のインスリンは混合できない。すなわち、インスリンリスプロは、インスリンデテミル、インスリンアスパルト又はインスリングラルギンと混合できない。インスリンリスプロの混合剤形は、インスリンリスプロレギュラーとインスリンリスプロプロタミンの2つの形態のインスリンリスプロのみを混合できる。
【0015】
インスリングラルギンは、1日1回投与される長時間作用型基底(basal)インスリンの一つである。インスリングラルギンは、酸性溶媒で剤形化され、変更された等電点(isoelectric point)を有する。インスリングラルギンは、生理学的pHで等電性であり、皮下注射後に沈澱され、無定形デポ(depot)を形成する。この皮下に形成されたデポが漸進的に再溶解されることが主要な遅延原理である。インスリングラルギンの長い作用持続時間(最大24時間)は、微細沈澱粒子の形成;インスリングラルギンの単量体単位での微細沈殿物の解離速度;及び皮下組織からのインスリングラルギンの遅い吸収速度と直接関連している。しかし、多くの患者において、インスリングラルギンは24時間にわたって持続されない。薬物は、皮下組織に注入された後で沈澱され、徐々に再溶解されて吸収される。「ピークのない持続性(peak less)」作用があるが、薬物は、個人間の変動性と関連しており、多くの患者は、特に高容量で作用ピークを示す。
【0016】
インスリングラルギンのさらに他の短所は、イソフェンインスリンと異なり、可溶性インスリンと混合できないので、沈澱が発生するという点にある。したがって、2種の(混合)インスリンを使用する多くの患者は、1日の注射回数を増やすか、基底-ボーラス注射療法に変更しなければならない。さらに、多くの患者に現れるインスリン抵抗性は、長時間作用型インスリンを長期間使用したときに発生し、この場合、インスリン注射用量の増加が要求される。試験管内研究によると、グラルギンは、インスリン受容体よりもインスリン類似成長因子-1(IGF-1)受容体に優先的に結合する。これは、長期間使用したとき、細胞有糸分裂異常の促進可能性を示すことができる。よって、さらに長い作用持続時間を示すだけでなく、個人間の変動性が減少し、さらに少ない有糸分裂異常の促進効果を示すインスリングラルギン剤形が必要である。
【0017】
生体物質は、体内での効率的な薬物伝達のために薬物及び製薬分野で広く活用されている。公知の生体高分子のうちコラーゲンは、優れた生体適合性及び生分解性、弱い抗原性、及び公知の「分子構造、生物学的特性及び身体と相互作用する方式」によって最も魅力的な選択の一つとして浮び上がった(Friess、1998;Lee等、2001)。
【0018】
哺乳動物で最も豊富なタンパク質であるコラーゲンは、全ての脊髄動物の体内タンパク質の約30%を占める主要な構造タンパク質である。筋と骨にある細胞外タンパク質の90%以上、及び皮膚にある50%以上がコラーゲンで構成されている。主に、牛又は豚などの動物の皮膚、主に牛又は馬のアキレス腱が現在のコラーゲンの主要供給源である。
【0019】
現在まで、28種の類型のコラーゲンが確認及び記述されており、最も一般的な類型は次の通りである;
第1類型:骨の組織部位の主成分
第2類型:軟骨の主成分
第3類型:網状繊維の主成分
第4類型:基底膜の上皮分泌層である基底板の主成分
第5類型:主に、細胞表面、毛髪及び胎盤で発見される。
【0020】
インスリンとコラーゲンの結合親和度及び組み合わせを含む薬学組成物を開示する多くの先行技術がある。
【0021】
米国特許出願20130225492には、薬物及びコラーゲンを含む薬学組成物が開示されており、この組成物は、取り扱い性が良好であり、徐放性を有する。徐放性薬学組成物は、薬物;コラーゲン;及び単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類から選ばれる少なくとも1種の糖;を含む。
【0022】
米国特許第5,922,356B2号には、治療学的有効物質を有効成分として、コラーゲンを薬物担体として、グリコサミノグリカンを添加剤として含有する徐放性製剤が疾病の治療又は予防に使用されることが開示されている。
【0023】
日本特許0543453には、コラーゲンを必須成分として含有する担体と、創傷治癒促進活性を有する生理活性物質とを混合することによって得られる創傷治癒促進用局所徐放性製剤が開示されている。
【0024】
日本特許56122317には、コラーゲンの濃度が減少するとき、ゲル化されたコラーゲンを含有する薬剤の分解が加速化されること、及び薬物の放出速度が速くなることが開示されている。
【0025】
Yaoi等、1991には、8個の細胞外基質タンパク質であるフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲンの第1、第2、第3、第4及び第5類型がインスリンに結合する能力を分析することによって、インスリンとコラーゲンの結合効率に対して開示している。
【0026】
Manolache等、2016には、pH7.4でコラーゲンゲル、酸化亜鉛及びインスリングラルギンを含むゲル複合体及び当該マトリックスに対して開示している。
【0027】
米国特許6,468,959には、ゼラチン、分画ゼラチン、コラーゲン加水分解物、架橋されたゼラチン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる構成要素を含むマトリックスに分散された、与えられた純電荷を有する、少なくとも一以上のペプチド薬剤を含む経口、口腔内(buccal)、舌下又は鼻腔投与が可能な剤形として乾燥ペレットが開示されており、前記親水性分子群の構成要素は、前記ペプチド薬剤と共に、シュードコアセルベートを形成するのに十分な反対の純電荷を保有する。
【0028】
米国特許出願20140213963には、インスリン貯蔵所、及び貯蔵所を密封するブドウ糖-反応性プラグを含み、選択的にブドウ糖-反応性プラグの露出した表面を覆い、貯蔵所を追加的に密封する保護微細多孔性膜を含む生体適合性インスリン伝達装置が開示されており、ここで、プラグは、刺激に反応してプラグの多孔性を変更するように適用された刺激-反応性成分及び無機成分を有する重合体マトリックスを含み、そして、プラグは、高血糖の濃度に反応して貯蔵所からインスリンを放出し、低血糖ブドウ糖の濃度に反応して貯蔵所からインスリンが放出されることを防止する機能をする。
【0029】
インスリン及びコラーゲンを含む組成物は、先行技術に公知となっている。前記先行技術の組成物は、ゲル、ペレット又はインプラント剤形である。ゲル又はインプラントとしてインスリンを投与するためには特殊な注射器又は装置が必要であるので、投与容易性が低下する。糖尿病患者は、インスリンを繰り返し投与しなければならないので、投与容易性が重要である。ゲルやインプラントの投与は、注射部位に痛みを誘発し、腫れが頻繁に発生し、患者に不便を与えるので順応度が低い。また、このような薬剤投与のための特殊な注射器又は装置は、製品の総費用を増加させ、多くの患者に適していない。ペレットとしてインスリンを経口投与する場合、吸収率に大きな変動性がある。インスリンの経口投与の場合、 薬物動態学的反応は度々予測できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって、標準ペン及び注射器を用いて投与しやすいだけでなく、同一の用量の市販されるインスリングラルギン組成物に比べて増加した生体利用率、さらに長い作用持続期間及び減少した免疫原性を有するインスリングラルギン及びコラーゲン剤形が必要である。
【0031】
先行技術のいずれにおいても、インスリングラルギン、コラーゲン及びpH2乃至5を有する一以上の薬剤学的に許容される賦形剤を含み、作用持続時間が長く、同一の濃度で市販されているインスリングラルギン製剤よりも生物学的利用効率が大きい注射剤の剤形は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本明細書で使用された「インスリン」という用語は、哺乳動物のインスリン、インスリン類似体又は誘導体を含む。
【0033】
本発明で使用される「インスリン類似体又は誘導体」という用語は、自然に分泌されたインスリン分子の類似体又は誘導体を含み、すなわち、ヒトインスリン又は動物インスリンの構造を変形させ、物理化学的、薬物動態学的、及び薬力学的特性が変化したインスリンの類似体又は誘導体を含む。
【0034】
本発明の様態のうち一つは、等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供する。ここで、組成物は、pHが2~5であり、投与時には溶液で、投与直後に生理的pH(physiological pH)でデポを形成し、組成物は、同一の用量を有する市販の薬剤のうち「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」を含む注射用組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示す。
【0035】
本発明の様態のうち一つは、インスリングラルギン又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、pHが2乃至5で;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;薬学組成物は、同一の濃度又は同一の用量のインスリングラルギンを含む市販の注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示す。
【0036】
本発明の様態のうち一つは、インスリングラルギン又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、pHが2乃至5で;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;そして、薬学組成物は、増加した生体利用率及び24時間以上の作用持続時間を示す。
【0037】
本発明の様態のうち一つは、インスリングラルギン又はその生理学的に許容される塩;ヒトコラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、pHが2乃至5で;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;薬学組成物は、同一の濃度又は同一の用量のインスリングラルギンを含む市販の注射用組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示す。
【0038】
本発明の様態のうち一つは、等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;薬学組成物は、同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」を含む市販の注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示し;薬剤学的に許容可能な賦形剤又は担体は、一つの安定化剤、等張化剤(isotonic agent)、界面活性剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、酸性化剤、pH調節剤、有機溶媒、水性溶媒、可溶化剤及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0039】
本発明の様態のうち一つは、5乃至8.5の等電点を有するインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を投与することを含む、患者の第1型及び第2型糖尿病を治療する方法を提供する。ここで、薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩」を含む注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示し、そして、薬学組成物は、1週当たりに2回乃至3回投与される。
【0040】
本発明の様態のうち一つは、5乃至8.5の等電点を有するインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び2乃至5のpHを有する一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射液の製造方法を提供し、この方法は次の段階を含む:
a)数μLの1M HClの助けで、注射用水に正確に秤量された亜鉛含有インスリングラルギン結晶を溶解する段階;
b)pH2乃至5の緩衝剤を製造する段階;
c)緩衝剤に等張化剤を溶解する段階;
d)段階(A)の濃縮インスリングラルギンを段階b)の緩衝剤で希釈する段階;
e)一定に撹拌しながら段階d)の溶液にコラーゲンを添加する段階;
f)溶液の最終pHを2乃至5に調節する段階。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、pH2乃至5でインスリングラルギン、コラーゲン及びこれらの一以上の賦形剤を含む安定した超長時間持続型注射液を開示する。また、本発明は、前記組成物の製造方法、及び糖尿病を含む代謝障害の治療のためのその用途を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】コラーゲンの存在下でのインスリングラルギンの標準曲線を示す。
図2】先行技術に係るGla-100又はGla-300を1日1回投与した血漿インスリン濃度のシミュレーションを示す(参考文献:1型糖尿病での長時間持続インスリングラルギンの皮下吸収モデリング(Modelling of Subcutaneous Absorption of Long-Acting Insulin Glargine in Type 1 Diabetes)、Michele等:IEE Trans Biomed Eng 202;67(2):624-631。)
図3】本発明で使用する「インスリングラルギン放出の試験管内モデル」を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
24時間以上の持続時間を示すだけでなく、投与が容易で、生体利用率がさらに高く、且つ免疫原性が低いインスリングラルギンを含む薬学組成物を製造するために、他の剤形に対して研究する中で、本発明者等は、ヒトI型コラーゲンを酸性pHでインスリングラルギンと混合させる場合、生理学的pHでインスリングラルギンの可溶性代謝物であるM-1及びM-2の形成が大きく減少した(M-1、M-2は、生理食塩水でプロテアーゼに露出させ、細胞間質液(interstitial fluid)の組成と同様に処理したときに発生するインスリン代謝産物)ことを観察した。インスリングラルギンの前記代謝物は、血糖低下活性を担当するので、前記代謝物の形成を減少できる全ての薬物剤形は、薬物の持続放出程度及び溶出扁平度と直接的な相関関係を有し、このような試験管内のM-1、M-2形成動態により、薬剤学的にデポが注射部位で形成される限り、循環される活性薬物の半減期が長くなり、薬物学的な効果が改善されたと解釈される。
【0044】
本発明の組成物は、酸性であり、生体内に投与された後、生理学的pHでデポを形成する。本発明者等は、注射部位(生理学的pH)で三重螺旋タンパク質であるヒトI型コラーゲン分子がインスリンを捕まえ、注射部位で細胞外基質内の間質液において、プロテアーゼの作用を抑制するために、注射部位で生理学的pHであるpH7.4で既に結晶化されたインスリングラルギンに対する追加障壁を形成することを観察した。全身血流循環を通じて吸収されるインスリングラルギンに対して、2区画モデルを提案した。第一の区画は、沈殿物が再溶解され、6量体が形成された後、6量体が単量体に変化することを確認する区画で、第二の区画は、皮下組織の血管毛細孔を介して血液に移送されることを確認する区間である。これを通じて、インスリンの放出が、生理学的pHであるpH7.4でコラーゲンの追加障壁によって制御されることを確認できた。また、コラーゲンは、注射部位でインスリンを分解するプロテアーゼを抑制することを確認できた。このようなプロテアーゼ抑制は、血液内のインスリンの生体利用率を増加させ、コラーゲンは、インスリンと相互協力しながら血糖数値の調節を促進できることを意味する。よって、本発明の薬学組成物は、同一の濃度のインスリングラルギンを含む市販の組成物に比べて生体利用率がさらに優秀である。
【0045】
本発明の薬学組成物は、インスリングラルギン及びコラーゲンの全てが酸性pHで可溶性であるので、溶液である。本発明の溶液は、通常の注射器又はペンで投与しやすく、投与のための如何なる特別な注射器又は装置も必要としない。容易な注射投与により、患者の順応度が高くなる。また、本発明の薬学組成物は、既存のペン及び注射器を通じて容易に投与され得るので、費用の面で効果的であり、患者に追加的な負担を与えない。
【0046】
本明細書で使用された「薬学組成物」という用語は、哺乳動物に影響を及ぼす特定の疾病又は病態を予防、治療又は制御するために、哺乳動物、例えば、ヒトに投与される治療化合物を含有する混合物を意味する。
【0047】
本明細書で使用された「コラーゲン」は、骨、軟骨、筋及びその他の連結組織を構成する繊維質タンパク質を意味する。本明細書で使用された「コラーゲン」は、コラーゲンの第1、第2、第3、第4、第5類型、ヒトコラーゲン、加工又は変形したコラーゲンを含むが、これに制限されない。
【0048】
本明細書で使用された「緩衝剤」という用語は、弱酸とその塩又は弱塩基とその塩を含有する溶液であって、pH変化に耐性がある溶液を意味する。本明細書で使用された「緩衝剤」は、ホスフェート、アセテート、シトレート、アルギニン、グリシルグリシン又はトリス(すなわち、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)緩衝剤及び相応する塩、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されない。
【0049】
本明細書で使用された「保存剤」は、真菌及びその他の微生物の成長を防止するために使用できる化合物を称する。本明細書で使用された「保存剤」は、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、2-フェノキシエタノール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されない。
【0050】
本明細書で使用された「等張化剤」は、生理学的に許容され、製剤と接触する組織細胞膜を横切って水の循環を防止し、製剤に適した等張性(tonicity)を付与する化合物を称する。「等張化剤」は、グリセリンなどの化合物であって、このような目的のために公知の濃度で一般的に使用される。他の使用可能な等張性調節剤は、塩、例えば、塩化ナトリウム、デキストロース、ラクトース及びこれらの組み合わせを含む。
【0051】
本明細書で使用された「pH調節剤」は、酸及びアルカリの組み合わせを意味する。本明細書で使用された「pH調節剤」は、o-リン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、フマル酸又はリンゴ酸からなる群から選ばれ得る。アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はトリエタノールアミン及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0052】
本明細書で使用された「可溶化剤」は、治療化合物及び/又は重合体を可溶化するか、又は部分的に可溶化できる物質を称する。本明細書で使用された適切な「可溶化剤」は、ポリソルベート及びポロキサマー、非イオン性及びイオン性界面活性剤、食品酸類及び塩基類(例えば、重炭酸ナトリウム)、多価アルコール、アルコール及びこれらの組み合わせなどの湿潤剤を含むが、これに制限されない。
【0053】
本明細書で使用された「酸性化剤」は、プロトン又は水素イオンを提供し、及び/又は電子を収容する化合物を称する。適切な酸性化剤は、ギ酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酒石酸、ジアトリゾ酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸又は無水クエン酸及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されなく、このような酸性化剤は、微粒子固体の形態を含む。
【0054】
本明細書で使用された適切な「有機溶媒」は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるが、これに制限されない。
【0055】
本明細書で使用された適切な「水溶性溶媒」は、水、注射用水、及び水とアルコール混合物を含む。
【0056】
本明細書で使用された「界面活性剤」は、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとの脂肪酸エステル類或いはエーテル類(Span(登録商標)、Tween(登録商標)、特に、Tween(登録商標)20及びTween(登録商標)80、Myrj(登録商標)、Brij(登録商標)、Cremophore(登録商標)又はポロキサマー、Pluronics(登録商標)及びTetronics(登録商標)、ポリソルベート(TweenTM)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリエトキシル化アルコールポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100TM)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721TM、胆汁塩(デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、ポリオキシルヒマシ油(CremophorTM)、ノニルフェノールエトキシレート(TergitolTM)、シクロデキストリン、レシチン、メチルベンゼトニウムクロリド(HyamineTM)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに制限されない。
【0057】
本明細書で使用された「抗酸化剤」は、アスコルビン酸塩(ナトリウム/酸)、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(bha)、ブチル化ヒドロキシトルエン(bht)、システイン/システイン塩酸塩、ジチオナイトナトリウム(ナトリウムハイドロサルファイト、ナトリウムスルホキシレート)、ゲンチジン酸、ゲンチジン酸エタノールアミン、グルタミン酸ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール(チオグリセロール)、没食子酸プロピル、サルファイトナトリウム、α-トコフェロール、α-トコフェロール水素スクシネート、チオグリコール酸ナトリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ得る。
【0058】
本明細書で使用された「一以上の安定化剤」は、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤、可溶化剤、エステラーゼ抑制剤及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されない。一以上の安定化剤は、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとの脂肪酸エステル類とエーテル類(Span(登録商標)、Tween(登録商標)、特に、Tween(登録商標)20及びTween(登録商標)80、Myrj(登録商標)、Brij(登録商標)、Cremophore(登録商標)又はポロキサマー、Pluronics(登録商標)及びTetronics(登録商標)、ポリソルベート(TweenTM)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、グリセロール、ポリエトキシル化アルコールポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100TM)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721TM、胆汁塩(デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、ポリオキシルヒマシ油(CremophorTM)、ノニルフェノールエトキシレート(TergitolTM)、シクロデキストリン、レシチン、メチルベンゼトニウムクロリド(HyamineTM)、安息香酸、酸化亜鉛としての亜鉛、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ポリビニルアルコール、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、セチルピリジニウム塩酸、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、2-フェノキシエタノール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、アスコルビン酸塩(ナトリウム/酸)、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン/シーステイン酸塩HCl、ジチオナイトナトリウム(ナトリウムハイドロサルファイト、ナトリウムスルホキシレート)、ゲンチジン酸、ゲンチジン酸エタノールアミン、グルタミン酸ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール(チオグリセロール)、没食子酸プロピル、サルファイトナトリウム、α-トコフェロール、α-トコフェロール水素スクシネート、チオグリコール酸ナトリウム、エステラーゼ抑制剤、例えば、膵臓分泌抑制剤、プロテアーゼ抑制剤、及びセリンエステラーゼ抑制剤、例えば、アプロチニン及びこれらの組み合わせから選ばれる。
【0059】
本発明の様態のうち一つは、等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又は生理学的に許容されるその塩;コラーゲン;及び1種以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;薬学組成物は、同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体」を含む市販の注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示し;そして、前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体」は、インスリングラルギンである。インスリングラルギンは、100IU乃至1,000IU/mlの濃度範囲で存在する。本発明の好ましい実施形態において、インスリングラルギンは、1ml当たりに100IU乃至300IUの濃度範囲で存在する。
【0060】
本発明の様態のうち一つは、等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体、又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及び一以上の薬剤学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射用薬学組成物を提供し、ここで、薬学組成物は、2乃至5のpHを有し;薬学組成物は、投与時には溶液で、投与直後に生理的pHでデポを形成し;薬学組成物は、同一の用量を有する前記「等電点が5乃至8.5であるインスリン類似体又は誘導体」を含む市販の注射用薬学組成物に比べて増加した生体利用率及びさらに長い作用持続時間を示し;そして、ここで、組成物に存在するコラーゲンは、ヒトコラーゲンである。本発明で使用されるヒトコラーゲンは、組換えDNA技術から得られる。本発明の好ましい実施形態において、ヒトコラーゲンタイプ1を使用するか、酸性のコラーゲン溶液に酢酸及びEDTAを用いて塩を徐々に除去し、酸性の注射用水を添加して製造した急速ヒトコラーゲン溶液を使用すると良い。一方、コラーゲンは、3mg/ml乃至10mg/mlの濃度範囲で使用しなければならない。
【0061】
本発明の組成物は、代謝障害の治療に有用である。前記代謝障害は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)及び動脈硬化症からなる群から選ばれる。本発明の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、第1型及び第2型糖尿病の治療に有用である。
【0062】
本発明の組成物は、同一の濃度又は用量の市販される組成物と比較したとき、さらに長い作用持続時間、すなわち、24時間以上の持続時間を示す。本発明の組成物は、週1回乃至3回投与され得る。
【0063】
本発明の様態のうち一つは、インスリングラルギン又はその生理学的に許容される塩;コラーゲン;及びpH2乃至5を有する一以上の薬剤学的に許容される賦形剤又は担体を含む安定した超長時間持続型注射液の製造方法を開示し、ここで、この方法は次の段階を含む:
a)亜鉛含有インスリングラルギンを精密に秤量した後で注射用水に入れ、1M HCLを数μL入れて可溶化する段階;
b)pH2乃至5の緩衝剤を製造する段階;
c)緩衝剤に等張化剤を溶解する段階;
d)段階a)の濃縮インスリングラルギンを段階b)の緩衝剤で希釈する段階;
e)一定に撹拌しながら段階d)の溶液にコラーゲンを添加する段階;及び
f)溶液の最終pHを2乃至5に調節する段階。
【0064】
本発明のさらに他の様態は、薬学組成物からの5.8乃至8.5の等電点を有するインスリン類似体、誘導体又は代謝物の放出を調節する方法を提供する。ここで、この方法は、インスリングラルギンをコラーゲン及び一以上の薬剤学的に許容される塩と共にpH2乃至5で剤形化する段階と、投与直後に生理学的pHで前記組成物を沈澱させ、インスリン周囲にコラーゲンの追加障壁を生成する段階とを含む。追加障壁は、インスリングラルギン沈殿物のインスリングラルギン6量体への放出、及び6量体から単量体への放出を制御するだけでなく、プロテアーゼ分解からインスリンを保護する。
【0065】
各実施形態は、下記の実施例で追加的に規定される。下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲はいずれの式にも制限しない。
【実施例
【0066】
実施例1:単位組成物の製造(100IU/ml)
【0067】
【表1】
【0068】
超長時間持続型インスリングラルギンは、まず、急速重合コラーゲン溶液を製造した後、これを賦形剤として用いて製造できた。
【0069】
A.急速重合コラーゲン(Rapid Polymerizing Collagen;RPC)溶液の製造
市販の遺伝子組換えヒト第1類型のコラーゲン2gを1Mの酢酸50mlに溶解させ、コラーゲン溶液を製造した。0.5Mの酢酸+50mMのEDTA溶液を用いて前記コラーゲン溶液を透析し、0.25Mの酢酸を添加し、コラーゲンの濃度が2mg/mlになるように希釈した。等電点(pH7)でコラーゲンを沈澱させた。沈殿物を注射用水で2回洗浄した。洗浄した沈殿物を注射用水に懸濁させ、最小体積の1N HClを添加して溶解させた。注射用水を添加し、コラーゲンの濃度が40mg/mlになるように希釈した。溶液は、0.2マイクロンフィルターを介して滅菌・ろ過した。その後、溶液は、滅菌されたシリコン処理したガラス瓶に入れ、2℃乃至8℃で保管した。
【0070】
B.前記製造された溶液の急速重合属性評価(PBS環境でのRPC溶液の重合動力学)
リン酸塩緩衝食塩水4.5mlを5個のガラス試験管に分配した。ガラス試験管に前記製造された急速重合コラーゲン溶液0.5mlを添加し、重合属性を試験した結果は次の通りであった。
時間 観察
0分 変化なし
1.0分 乳白色が現れはじめる。
5.0分 透明な溶液界面が見えるゲル
10分 透明なデポ
20分 フィブリル(fibril)形成
【0071】
前記製造されたコラーゲンは、生理学的pH及び塩濃度で1分内にゲルの形成を開始し、20分内に皮下細胞と類似する環境で完全なフィブリルを形成した。
【0072】
C.超長時間持続インスリングラルギン(100IU/ml濃度)5バイアル(5,000IU/50ml)の製造
182mgのインスリングラルギン(5,000IU)を注射用水25mlに懸濁させた後、最小体積の1M HClを添加して溶解させた。インスリングラルギン溶液に、1.5mgのZnに該当するZnCl、13.5mgのm-クレゾール、0.1gの85%(w/v)グリセロール、0.1mgのポリソルベート20及び200mgのRPC(5.0ml)を添加した。この溶液に1M HClを数滴添加し、pHを4に調節した。この溶液の体積が50mlになるように注射用水を添加した。溶液は、滅菌された0.2マイクロンフィルターに通過させて滅菌・ろ過した。ろ過液は、滅菌された5個のシリコン処理されたガラス瓶に無菌操作で10mlずつ分配した。
【0073】
実施例2:高濃度の単位組成物の製造(300IU/ml)
【0074】
【表2】
【0075】
高濃度の超長時間持続型インスリングラルギンは、まず、急速重合コラーゲン溶液を製造した後、これを賦形剤として用いて製造できた。
【0076】
A.急速重合コラーゲン(RPC)溶液の製造:RPC溶液は、実施例1のAに記載したように製造した。
【0077】
B.実施例2の超長時間持続型インスリングラルギン(300IU/ml濃度)5バイアル(15,000IU/50ml)の製造
インスリングラルギン546mg、15,000IUを前記実施例1のBのように溶解させた。インスリングラルギン溶液に、4.5mgのZnに該当するZnCl、13.5mgのm-クレゾール、0.1gの85%グリセロール、0.1mgのポリソルベート20及び200mgのRPC(5.0ml)を添加した。1M HClを数滴添加し、溶液のpHを調節した。この溶液の体積が50mlになるように注射用水を添加した。溶液は、滅菌された0.2マイクロンフィルターに通過させて滅菌・ろ過した。ろ過液は、滅菌された5個のシリコン処理されたガラス瓶に無菌操作で10mlずつ分配した。
【0078】
実施例3:単位組成物(100IU/ml)及び高濃度の単位組成物(300IU/ml)の標準曲線試験のための希釈溶液の製造
【0079】
A.インスリングラルギン組成物(100IU/mL)の希釈溶液の製造
注射用水25mlに、1.5mgに該当するZnCl、13.5mgのメタ-クレゾール、0.1gの85%グリセロール、0.1mgのポリソルベート20及び200mgのRPC(5.0ml)を順次添加し、希釈溶液を製造した。最小限の1Mの塩酸を入れ、pHを4に調整した後、注射用水を入れて50mlにした。この希釈溶液は、インスリングラルギン注射液100IU/mlの空試験対照液として使用した。
【0080】
B.インスリングラルギン組成物(300IU/ml)の希釈溶液の製造
注射用水25mlに、4.5mgに該当するZnCl、13.5mgのメタ-クレゾール、0.1gの85%グリセロール、0.1mgのポリソルベート20及び200mgのRPC(5ml)を順次添加し、希釈溶液を製造した。最小限の1Mの塩酸を入れ、pHを4に調整した後、注射用水を入れて50mlにした。この希釈溶液は、インスリングラルギン注射液300IU/mlの空試験対照液として使用した。
【0081】
実施例4:HPLC試験のための試験溶液の製造及び標準曲線の製作
超長時間持続型インスリングラルギン溶液である実施例1の単位組成物(インスリングラルギン溶液)100IU/mlを試験用サンプルとして使用した。実施例1の単位組成物は、前記製造した希釈溶液を用いて異なる濃度で希釈した。希釈溶液をブランクとして使用した。希釈されたサンプル2mlの分取量を5mlの30KdカットオフVivaspinチューブに入れた。チューブは、冷蔵遠心分離機を用いて5,000rpmで30分間遠心分離した。ろ過液は、下記のようにHPLC分析に使用した。
【0082】
<HPLC試験方法>
クロマトグラフィーシステム:Agilent HPLC
モード - LC
検出器 - 214nm
カラム - Kromasil C18、3.0mm×250mm、4μ
カラム温度 - 35℃
流速 - 0.6mL/分
注入量 - 5μL
【0083】
【表3】
【0084】
分析 - 無水(anhydrous)ベースで94.0%乃至105.0%。
【0085】
<試験分析結果>
【0086】
分析結果は下記の通りであり、標準曲線は、図1にグラフとして示した。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例5:インスリングラルギンの皮下への放出をシミュレーションする試験管内モデルの設定
生体内のインスリングラルギンの血液pKプロファイルを模倣する試験管内試験モデルの検証は、皮下(「Sc」)経路によって伝達された薬物の生体内のpKプロファイルに対して理解し、試験方法で提案された試験内モデルを理解する必要がある。
【0089】
インスリングラルギン溶液は、透明で、且つ緩衝されていない酸性溶液であり、Scエキストラセルラー(ECM)に注入された後で沈殿物を形成し、等電点が生理学的pHである7.4である。一方、インスリングラルギンは、生体内に注入された後で6量体に解離され、この6量体は、周辺の体液による希釈によってZn及びm-クレゾールを失い、二量体及び単量体に転換される。その後、インスリングラルギン単量体は、血液でM1とM2に代謝され、M1は主要代謝物である。M1は、標的組織のインスリン受容体と相互作用する一方で、薬理学的効果(血糖低下反応)を起こし、インスリン分解酵素によってさらに小さいペプチドに分解された後、アミノ酸に分解される。Tojeoモデルによると、300IUインスリングラルギンは、さらに凝縮した沈殿物を形成するので、6量体の放出が相対的にさらに遅い。これによって、インスリングラルギン二量体及び単量体の形成もさらに遅い。したがって、単量体の吸収とM1、M2への転換も、下記の図2に表示したように比例的にさらに遅いことが観察された。
【0090】
ところが、静脈内の経路で投与された同一の用量の薬物に対して、血漿グラルギン/グラルギン代謝物pKプロファイルの差は観察されなかった。
【0091】
一方、提案された全ての試験管モデルは、生体内のモデルを模倣しなければならない。すなわち、Sc経路を介してインスリングラルギンが伝達される場合、インスリン放出の段階でCmaxに到逹することは、同一の用量の100IU/mlバージョンよりもインスリングラルギン300IU/mlを使用した場合に比例的にさらに遅いという重要な観察をしなければならない。
【0092】
本発明者等は、皮下投与したグラルギンpKの生体バリデーションを試験管的試験で下記のように2つの区画に区分し、試験管内試験モデルを構築(図3参照)し、Sc ECMを示す生理学的緩衝溶液(PBS)透析チューブでインスリングラルギンの沈殿物反応をテストすることによって、生体内の反応を検証しようとした。区画1でグラルギン沈殿物が再溶解されながら、グラルギン沈殿物がグラルギン6量体、二量体及び単量体に解離され、区画2で単量体が0.1マイクロの皮下組織気孔(皮下組織には毛細気孔が存在する)を介して吸収・分散された後で代謝物M1、M2を形成し、透析膜を介して血液中のPBS溶液が透析される試験方法を設定した。すなわち、透析チューブ内でのインスリングラルギンの沈澱の再溶解が区画1に該当し、この可溶性グラルギン単量体の移送/吸収・分散とその代謝体の検査が区画2に該当する。しかし、標的組織が存在しないか、又は試験管内の区画2が皮下組織条件と同一でない場合、薬物の分解が起こらないこともある。
【0093】
本発明の試験管内モデルにグラルギン100IU/ml(実施例1)、グラルギン300IU/ml(実施例2)を処理し、観察される動力学が生体内のモデルで観察されたように現れる場合、本発明の試験管内モデルは、インスリン/インスリングラルギン剤形の調節・放出をテストするのに適していることを意味する。図3は、本発明で提案する試験管内モデルの概念を示す。
【0094】
実施例6:インスリングラルギンの試験管内プロテアーゼ誘導放出の動力学検証
2つの区画のインスリングラルギン検証装置(試験管内モデル)は、上述(実施例5)したように設定し、各装置には、入口が広い1Lのショート(Schott)瓶と、前記瓶内に10mlの栓がある100Kdカットオフ透析チューブとがある。具体的には、完全に事前に洗浄され、事前に滅菌された(70%エタノール水溶液に浸し、PBSで平衡化した)透析チューブに5mlの滅菌PBS(pH7.4)を添加した。事前に滅菌された1Lの瓶に滅菌PBS 1Lを添加し、前記透析チューブを入れた。透析チューブは、浮遊体(floater)の状態で垂直に維持されるようにした。滅菌テフロンコーティング5.08cm×0.95cmの磁石棒を各瓶に入れ、装置を無菌フードの下側の磁気撹拌機に配置した。
【0095】
セット1には、実施例1と同一の100IU/mlのインスリングラルギン濃度を有する0.6mlのランタス(Lantus)液を透析チューブ内のPBS液に入れた。セット2には、実施例2と同一の300IU/mlのインスリングラルギン濃度を有する0.2mlのトージェオ(Tojeo)を入れた。
【0096】
それぞれの区画1(透析チューブ)には、滅菌された遺伝子組換えラットトリプシン(rat trypsin)10milli unit及び20マイクロリットルの溶液を添加した。その後、磁気撹拌機をターンオンし、撹拌を100rpmに設定した。0.5mlのサンプルを異なる間隔で各区画(透析チューブ及び瓶から)で回収した。各サンプルは、可溶性インスリングラルギンに対してHPLCで分析し、その結果を下記に示した。
【0097】
【表5】
【0098】
上記の表に提示された結果から、30分後のインスリングラルギンの放出は、二つの区画の全てで類似することが分かった。その後、可溶性インスリングラルギンの放出は、区画1でさらにコンパクトなインスリングラルギン沈殿物/結晶の形成によってLantus(100IU/mlグラルギン剤形)よりもTojeo(300IU/mlグラルギン剤形)で比例的に遅延されたことを確認できた。これは、本発明の試験管内モデル実験で生体内のヒト及び動物pK研究と類似する観察が確認されたことを意味する。
【0099】
したがって、本発明では、区画1のデポからのグラルギンの再溶解、及び区画2へのグラルギンの吸収/拡散に対する急速重合コラーゲン(RPC)追加の効果を評価するために、この試験管内方法を使用することに決定した。
【0100】
実施例7及び8:インスリングラルギンに対するコラーゲンの異なる濃度の効果検証
5個の20mlガラス瓶に、インスリングラルギンを100IU/mlの2倍の濃度で10mlだけそれぞれ添加し、数字1から5まで表示した。1番のガラス瓶は空試験用で、2番乃至5番のガラス瓶に、それぞれ急速重合コラーゲン(RPC)10mg、20mg、40mg及び50mg(0.25ml、0.5ml、1.0ml、及び1.25mlの容量)を2倍量だけ添加した。その後、希釈溶液を用いてそれぞれ最終20ml(最終インスリングラルギン100IU/ml濃度)になるように希釈した。
【0101】
5個のインスリングラルギン検証装置(試験管内モデル)を準備した。区画1(透析チューブ)に、対照液としてRPC 0mg/ml含有インスリングラルギン溶液(100IU/ml)0.5mlを入れる。同一の方法で、2番乃至5番の装置の区画1に、RPC 1mg/ml、RPC 2mg/ml、RPC 4mg/ml、RPC 5mg/ml含有インスリングラルギン溶液0.5mlを表示された番号の順にそれぞれ入れる。各装置の区画2(瓶)で0.5mlのサンプルを互いに異なる時間間隔で回収し、サンプルをRPHPLCで分析し、インスリングラルギンの含量を確認した。
【0102】
【表6】
【0103】
一方、5個の20mlガラス瓶に、インスリングラルギンを300IU/mlの2倍の濃度でそれぞれ10mlだけ添加し、数字1から5まで表示した。1番のガラス瓶は空にしておき、2番乃至5番のガラス瓶に、それぞれ急速重合コラーゲン(RPC)10mg、20mg、40mg及び50mg(0.25ml、0.5ml、1.0ml、及び1.25mlの容量)を2倍量だけ添加した。その後、希釈溶液を用いてそれぞれ最終20ml(最終インスリングラルギン300IU/ml濃度)になるように希釈した。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例9:実施例1の単位組成物(100IU/ml)の試験管内放出
【0106】
【表8】
【0107】
実施例10:実施例2の単位組成物(300IU/ml)の試験管内放出
【0108】
【表9】
図1
図2
図3
【国際調査報告】